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1965-12-22 第51回国会 衆議院 法務委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十二日(水曜日)    午前十時四十五分開議  出席委員    委員長 濱田 幸雄君    理事 上村千一郎君 理事 大竹 太郎君    理事 鍛冶 良作君 理事 小島 徹三君    理事 田村 良平君 理事 細迫 兼光君    理事 横山 利秋君       賀屋 興宣君    唐澤 俊樹君       小金 義照君    四宮 久吉君       濱野 清吾君    森下 元晴君       神近 市子君    田中織之進君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君  出席政府委員         法務政務次官  山本 利壽君         法務事務官         (人権擁護局         長)      鈴木信次郎君  委員外出席者         検     事         (大臣官房司法         法制調査部長) 鹽野 宜慶君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局         長)      寺田 治郎君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局         長)      矢崎 憲正君         判     事         (最高裁判所事         務総局人事局給         与課長)    武居 二郎君         専  門  員 高橋 勝好君     ————————————— 本日の会議に付した案件  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第四号)  検察官俸給等に関する法律の一部を改正する  法律案内閣提出第五号)      ————◇—————
  2. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより会議を開きます。  裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
  3. 濱田幸雄

    濱田委員長 まず、政府より提案理由説明を求めます。石井法務大臣
  4. 石井光次郎

    石井国務大臣 裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案について、その趣旨を便宜一括して説明いたします。  政府は、人事院勧告趣旨にかんがみまして、一般政府職員給与改善する必要を認め、今国会一般職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案及び特別職職員給与に関する法律の一部を改正する法律案提出いたしましたことは、御承知のとおりであります。そこで、裁判官及び検察官につきましても、一般政府職員の例に準じて、その給与改善する措置を講ずるため、この両法律案提出した次第でございます。  改正の要点は、裁判官報酬等に関する法律別表に定める三号以下の判事報酬並びに判事補及び簡易裁判所判事報酬並びに検察官俸給等に関する法律別表に定める三号以下の検事俸給及び副検事俸給の各月額を増加することとする点でありまして、改正後の裁判官報酬及び検察官俸給の各月額現行のそれに比較しますと、その増加比率は、おおむね一般政府職員についてのこれらに対応する各俸給月額増加比率と同様となっております。  この両法律案の附則におきましては、一般政府職員の場合と同様、この給与改定昭和四十年九月一日から適用すること等必要な措置を定めております。  以上が裁判官報酬等に関する法律の一部を改正する法律案及び検察官俸給等に関する法律の一部を改正する法律案趣旨であります。  何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたす次第でございます。
  5. 濱田幸雄

    濱田委員長 以上で、両案に対する提案理由説明は終わりました。     —————————————
  6. 濱田幸雄

    濱田委員長 これより、両案に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、これを許します。大竹太郎君。
  7. 大竹太郎

    大竹委員 それじゃ二、三の点についてお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、この提案理由説明によりますと、一般職比率と大体同じというように説明してあるのであります。たしか一般職平均増加率は六・四%というふうに聞いておるわけでありますが、裁判官検察官のほうも、具体的にいいますと平均六・四%というふうに承知してよろしいのでありますか、まずお尋ねいたします。
  8. 鹽野宜慶

    鹽野説明員 ただいま大竹委員の御指摘のとおり、一般政府職員の今回のアップは六・四%ということになっているわけでございます。それに対しまして、ただいま御審議をいただいております裁判官報酬法検察官俸給法改正によりますと、それぞれアップ率が違っておりますけれども、全体として裁判官検察官それぞれを見ますと、裁判官のほうは、アップになりました部分をとってそのアップ率を計算いたしてみますと、裁判官のほうは四・〇八%ということになっております。それから検察官のほうは、同じようにアップになりました部分をとって従来と比較してみますと、四・二二%のアップ率、かようなことに相なっております。この裁判官検察官アップ率が違っておりますのは、各号俸アップは、今回の取り扱いは、裁判官検察官と同じようにアップしているわけでございます。しかしながらトータルをいたしますと、四・〇八%と四・二二%という差が出てくるわけでございます。これは御承知のとおり今回の給与改定上薄下厚で、上のほうに薄く下のほうに厚いというたてまえでベースアップいたしております関係で、裁判官のほうが検察官より上級者と申しますか古参者が比較的に多いということで、具体的に当てはめて計算いたしますと、全体といたしましては検察官アップ率のほうがやや高いという結果になっているわけでございます。
  9. 大竹太郎

    大竹委員 それでは、四・〇八ないし四・二二ということになりますと、一般職の六・四よりよほど低いということになると思うのでありますが、これにつきましては、御承知のように、第何回でございましたか、国会委員会におきましても、裁判官検察官については一般職とは違った特別な職責を持っている関係もあって、むしろ一般職員よりも厚く処遇する必要があるのじゃないか、ことに御承知のように最近司法官になる人がなくて困っているというような事情からいたしましても、特に給与面——ほかの面ももちろん考えていかなければならぬのだけれども、特にこの給与の面において考えるべきであるという附帯決議等もついておるわけでありまして、そういうような点から見ると、今度の上げ方は、率直にいいますと、何らその附帯決議について考慮してないというようなことも考えられるわけであります。そういうような点についてどうお考えになりますか。
  10. 鹽野宜慶

    鹽野説明員 裁判官並びに検察官給与につきましては、政府といたしましても従来からその改善努力してきていた次第でございます。御承知のとおり昨年の臨時司法制度調査会意見におきましてもその点が一つの大きな問題点として提案されているわけでございます。政府といたしましては、昨年の臨時司法制度調査会意見に基づきまして、昨年秋の国会におきまして給与改定法律案を御審議いただきまして、臨時司法制度調査会提出いたしました具体的な改善意見のうち相当部分を実施いたしたわけでございます。その御審議をいただきました際に、ただいま御指摘のとおり委員会におきましてさらに裁判官検察官給与改善努力すべきだという附帯決議をいただきまして、私ども従来からこの関係努力いたしております者にとりましては、この附帯決議は非常に心強い、ありがたい附帯決議をいただいたと存じているわけでございます。  そこでさらにその後引き続きまして、この問題につきましていろいろ研究を続けております。最高裁判所の御意見を承りつついろいろ研究検討を続けているわけでございますが、何ぶんにも裁判官検察官のそれぞれ独自の給与体系をつくり上げるということになりますと、非常にいろいろな要素がからみ合いましてむずかしい問題でございます。御承知のとおり臨時司法制度調査会におきましても、この問題は非常に重要な問題であるというふうに指摘いたしながら、二年間の審議の過程において、具体的な構想を示すまでには至らなかったような次第で、それだけに非常にむずかしい問題であると考えられたわけでございます。  そこで現在政府におきましては、最高裁判所意見を聞きつつ、新しい給与体系をつくっていくということに努力をいたしております。何ぶんにも大きな問題でございまして、具体的な構想をまとめ上げるにはなお相当期間を要することはやむを得ないものというふうに考えている次第でございます。  そこで、今回の給与改定はさような次第でございますので、一般職員ベースアップに伴って、それにおくれをとらぬ手当をしていこうというふうな考え方で、最高裁判所とも協議をいたしまして、かような手当をするにとどめたというような次第でございます。
  11. 大竹太郎

    大竹委員 それぞれ給与体系を根本的に変えるということは、これは民間でも同じことでありますが、非常にむずかしい問題であると思うわけであります。ましてや職責は多少違いましても、やはり国家公務員として、その中で特に裁判官検察官というものを重く処遇するということは、これは非常にむずかしいことだと思いますけれども、やはり最近のように裁判官が人的に非常に不足をしている、また優秀な人が志望することが少なくなってきたというような面から考えましても、至急何とかこれをしていただかなければならぬというふうに考えるわけであります。ことに御承知のように、私どもこの九月、特に裁判官任用制度についてヨーロッパの先進国その他を視察をして帰ったわけであります。それらの報告もお手元へお届けしてあると思いますので、ごらんをいただきたいと思うわけでありますが、そういう面については、それぞれ相当考えているというふうに考えられるわけでありますので、それらを参考にして、ひとつ至急にお考えをいただきたいというふうに思うわけであります。  なお、先ほどお聞きするときにちょっと落としたわけでありますが、司法修習生についての給与はどういうことになっておりますでしょうか。
  12. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  現在司法修得生に対しましては二万四千四百五十円の給与が支給されております。これに暫定手当がつくわけでございますが、ただいま申し上げましたのが本俸ということになっておりまして、行政職俸給表(一)の六等級号俸と二号俸の中間にランクされておるわけでございます。今回の人事院勧告によります六等級号俸と二号俸アップに対応いたしましてアップさせまして二万六千五百円、アップ率は八・三八%でございますが、このように改定される予定と相なっておるわけでございます。
  13. 大竹太郎

    大竹委員 次にお聞きしたいのでありますが、たしかこの前のベースアップのときに、たとえば管理職手当と申しますかその他特別の調整額とでも申しますか、そういうものを本俸へ繰り入れたと思うのであります。そのときもたしか意見が出たのでありまして、なるほど理屈はそのほうがいいように思うけれども、やはり何といいますか、簡単にいって人事管理の面から不都合が起こるのじゃないかというような意見もあったかと思うわけであります。ことに具体的に申し上げますと、どうしてもへんぴな地区の支部長その他のような方々は、この管理職手当というようなものがないとなかなかへんぴなところへ人によっては来たがらないというような面があるのではないかというふうに考えられるわけであります。これを一年間おやりになったわけでありますが、そういうような面で不都合が起こっていないかどうかというようなことについて……。
  14. 鹽野宜慶

    鹽野説明員 まことにごもっともな御指摘でございますが、結論を申し上げますと、約一年間運用してまいりました結果を見ますと、検察官につきましては現在まで特段支障は見受けられないものでございます。それは従来、ただいま御指摘支部長等管理職手当がついていたわけでございまして、支部長に出る場合には管理職手当をもらえる、こういうことになっておりましたが、その当然の結果といたしまして本庁のほうに戻りますとこれがなくなるということになりまして、一度受けました給与本庁に戻ることによって減るということは、またそれなりにかなりきつい負担になってまいるのでございます。この点を含みまして全般的に俸給自体を上げましたので、そういう不便な点とプラスマイナス考えてみますと、現在のところ特段支障なく検察官につきましては円滑に運用できている次第でございます。  裁判官のほうも特段支障があるということは私ども最高裁判所から聞いておりませんが、なお裁判官のほうの人事運用につきましては最高裁のほうから御説明願うのが相当かと考えます。
  15. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 裁判官に対しまする管理職手当は、沿革的には一般行政官との実質的な均衡を保つために支給されたのでございますけれども裁判官立場からいたしますと、やはり管理職手当が適当かどうかという点につきまして、個々の裁判官俸給を受ける場合に、若干の疑問を持っていたような実情でございますが、しかし、こちらでいろいろと御高配いただきまして、そして現行制度のように報酬制度が改まったわけでございます。過去一年間の運用実績に照らしますれば、それによりまして別に何ら支障がなく、かえって管理職手当がなくて本俸に繰り入れられたということのほうが、むしろ気持ちがすっきりしたものが出てきたというように考えられるようなわけでございまして、その点別段いまのところは何ら支障がなく運用されておるわけでございます。
  16. 大竹太郎

    大竹委員 本日の質問はこの程度にいたしまして、また資料その他を拝見した上で……。
  17. 濱田幸雄

  18. 横山利秋

    横山委員 資料一つ要求したいと思うのですが、司法研究所長は今度幾ら上がるのですか、ちょっとその前に聞きたいのです。
  19. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 お答え申し上げます。  司法研修所長裁判官の中から任命されておりますので、したがいまして現在の所長につきましては、裁判官号俸が上がるのに準じて上がるということでございます。要するに裁判官と同じ報酬を現在の所長については受けておる、このように御了解いただけばいいかと思います。
  20. 横山利秋

    横山委員 司法研修所長は今は鈴木忠一さんですね。
  21. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 さようでございます。
  22. 横山利秋

    横山委員 十一月二十九日、この鈴木所長は、十八期司法修習生に対する講話の中で、「法律家はあり得ないようなことを取り上げて議論する風潮がある。国会での社会党の議論のような三百代言的発言がそれである。そうだよ、国民はだれでもそう思っている」、こういう発言をされたそうであります。これに対して、居並んだ十八期の司法修習生は非常に意外な発言であると考えまして、その中で司法研修所長に対して申し入れをするということになったそうであります。この聞いた人たち修習生でありますから、公人として所長がそう発言をされたと思われる。「私達はこの御発言を、かなり政治的イデオロギーを含んだ色彩をもつ強いものであると考えます。私達がこの御発言を黙過し得ないのは、政治的、政党的に中立であるべき研修所の方針を、所長自ら特定の政治的立場に立って破っておられるのではないか、そして憲法の要求する民主主義的感覚を育成すべき場である研修所にとって将来に禍根を残すことになりかねないのではないか、と憂うるからです。」こういうことを、まさかこれはうそではないと思うのですね。こういう人の給与を上げることは私どもは賛成できない。私どもに賛成してくれとか審議してくれといっておられる。これは社会党だけじゃないのですよ。「法律家はあり得ないようなことを取り上げて議論する風潮がある。」——われわれも、いやしくも国会法務行政を議論する上においては、私なんかしろうとではありますが、やはり法律を議論する者として、こういうことを言われるというのはまことに心外千万、しかも公のこういうところでお言いになるというのは、一体いかなる所存であるか、言語道断ではないか。  委員長にお願いしたいのでありますが、これはすみやかにひとつ事実を調査されまして、もしも事実であるならば適当な処置を私は御報告を願いたい、これが第一です。  それから第二番目に、先般大竹さんや鍛冶さんと一緒に外国を回ったのでありますが、いまわれわれの手元にありますのは裁判官検察官でありますが、確かに外国給与と比べて日本裁判官検察官給与が低いということが痛感されました。いまのお話によりますと、まあまあなかなかむずかしいからというて百年河清を待つようなお話しがあるけれども附帯決議をしてそれが何年先に効果が上がるというものじゃないのです。鉄は熱いうちに打ってもらわなければ困るのです。われわれもいつまでもこの法務委員をやっておるとも限らぬ。したがって先ほどのいいかげんな遷延されたお話を伺うのはまことに遺憾でありますから、外国を私どもは多少調べてきたのですが、政府手元にある外国裁判官検察官給与と比較して、日本はどの状況にあるか、その資料をもらいたい。  それからその次には、ちょっと問題がはずれるかもしれませんが、次会に一ぺん御質問したいと思うのですが、最近、刑務所拘置所等々から脱獄する者が非常に多い。これは一体どういう原因があるのか。この間も東京の拘置所へ行ってまいりまして所長の話を聞いたのですが、要するに、出ようと思えばどんなところでも出れるんだという感じは受けました。外国でもそういう感じは受けましたけれども、それにしても最近はちょっと多過ぎるではないか。裁判官検察官と並んで、一番社会の日陰で黙々として勤務しておられる刑務所拘置所職員は一体どんな給与を受け、また定員と現在員の状況はどうなっておるかという点についての資料が得たい。  それからあわせて、イギリスで死刑の廃止の状況をつぶさに調査をし、先般縁があって死刑囚竹内景助被告に会ったわけでありますが、現在死刑確定をして、いま執行を待って未決の待遇を受けておる死刑確定者は何人あるのか。もし差しつかえなければそのリストをひとつ出していただきたい。  それから最後は、委員長に御相談なんですが、次回の理事会で、法務省並び最高裁の来年度予算大蔵省にどういうふうに要求をされておるのか、その経過はどんな状況にあるのか。委員会で御報告を受けたいと思うのですけれども、少しいかがかとも思うので御遠慮申し上げて、理事会において明年度予算要求状況折衝状況についてひとつ資料をもって御説明を受けたい。  以上でございます。
  23. 濱田幸雄

    濱田委員長 ただいま横山委員発言のうちで、司法研修所長の言動についての要望がありました。これはいずれ理事会十分協議をして善処いたしたいと思います。  外国資料あるいはその他のことについての資料要求がありましたが、これは担当官庁のほうにおいて至急調製をして提出を願います。  それから予算経過のことでございますが、これも次回の理事会理事の諸公と十分御相談の上で、説明を求めるか求めぬかということも決定したいと思いますから、御了承いただきます。
  24. 田中織之進

    田中(織)委員 関連して。いまの取り扱いの問題について、来年度予算大蔵省要求しておることの説明理事会だということですと、私どもはやはり理事会に出ておらないわけです。そういう意味で早急に、委員会でなくても、懇談会の席上でもしていくということにしていただきたい。
  25. 濱田幸雄

    濱田委員長 田中委員のいまの御要望ですね、そういうことも含んで次の理事会で私ども相談をいたしまして、できるだけ御要望に沿うようにいたしたいと思っておりますけれども、これは委員長におまかせいただきたいと思います。
  26. 田中織之進

    田中(織)委員 それから横山委員の第一点の司法研修所長発言の問題でありますが、もちろん理事会で事実であるかどうかということを確かめていただくことはけっこうだと思うのですが、本来ならば私は、これは最高裁判所関係になりますか、法務省の所管になりますか、そういう事実は直ちに調べて、むしろこの場ででも少なくとも事実であるかどうかということははっきりさせていただきたいと思うのですが、その点は、どうも並んでおる政府委員関係の諸君の顔つきを見ていると、初めてのような感じを受けているようでありますから、理事会取り扱いにおまかせをいたします。非常に重大な問題だと思いますので、この点はできるだけ早い機会に事実を報告願いたい。希望申し上げておきます。
  27. 濱田幸雄

    濱田委員長 田中委員の御要望はよく了承いたします。神近市子
  28. 神近市子

    神近委員 ちょっと横山委員の御質問とダブるかもしれませんが、日本の古くからのことばに公事百年ということばがありますけれども、どうも私はその傾向が、日本のこの法務関係にはいまも伝統があると思うのです。吉田石松裁判が五十年かかったというのは一つの例でありますけれども、ともかくも日本裁判というものは非常に長くかかる。つまらない離婚の裁判だとか、あるいは民事のちょっとした所有権の問題だとか、そういうことが三年も五年もかかるというような、こんなあほうなことは私はないと思うのです。裁判というものあるいは法治というものは、国民の生活を調整するのですから、簡単に早くやることが私は必要だと思う。アメリカの例をちょっと聞きましたけれども、簡単なものは半年ぐらいで裁判が決定する。それが日本では三年、五年、長いときには七年、こういうようなことを考えると、やはり日本法務行政というものは相当批判を受ける立場に私はあると思う。それには、きょうちょうど報酬の問題が出てきましたけれども、この一番下のほうの人たちは三万数千円。きのうちょうどある週刊誌労働者俸給が書いてあったので見ましたけれども、三万円の給与をもらっている労働者は中ぐらいの人たちなんです。それを私はどうもちょっと納得できない。特に同じ官吏の中でも、法務のほうは長い研さんと、そのあとで二年間の研修をやらなければならない。それならもう少し——これは横山委員が何と言われたか知りませんが、私は給与は特別にちょっと考えていいんじゃないかと思うのです。それで一体、予算を昨年は〇・七%半ぐらいだったと私は聞いておりますが、そんなあほうなことは私はないと思う。行政の一番最高の、国民に直接関係あるところだったら、いつか横山委員がそのことをたいへん言われたようでしたが、もっとうんと予算をもらって、そして裁判官をもっとたくさんふやして、研修所人たち弁護士になったほうがずっと給与がいいというので法務関係の就職をきらう。私そこのところに、こんなにきらわれる法務というものをひとつ考え直す必要があると思うのですけれども、これは予算をとるときにどういう方法をとっておいでになるか。最小限に、もう〇・何%というようなことで一体満足していらっしゃるのか。金がないから法務関係に来る人がいない。それよりは弁護士事務所に行ったほうがいいということになる。その点をどういうふうに考えていらっしゃるか、ちょっとそれを承りたい。
  29. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ただいま神近委員から、非常に励ましのおことば並びに御叱責を受けたわけでございますが、私どもといたしまして、まことにいまおっしゃられたとおりのことを考えておりまして、私ども努力がまことに至らないということを恥じておるわけでございますけれども、しかし、なかなか給与引き上げについてはむずかしい問題がございます。昨年度の当委員会におかれまして御審議いただきました最初の判事補、それから検察官初任給引き上げで、約二一%の引き上げをお認めいただいたわけでございます。その結果、昨年度初任給が三万二千八百三十円ということになりまして、本年度ベースアップで三万五千円ということに相なったわけでございますが、これとて、いま神近委員の御指摘のとおり、決して満足すべきものでない。もっともっと努力して引き上げをしなければいけないことは重々承知いたしておるわけでございます。しかし、これだけ引き上げていただきましただけでも、三十九年度判事補の採用人員か五十六名でございましたのが、今年度の採用人員は六十八名というように、十二名ほどの増加が見られておるわけでございます。昨年度の当委員会での御配慮によりましても、この程度の人員はふえたわけでございますけれども、私どもといたしましても、なお一そう初任給引き上げということについては十分努力いたしまして、また裁判所全体の予算の獲得につきましても、いま神近委員から御指摘のありましたように十分に努力いたしまして、何とか少しでもよけいな予算をとって、裁判制度を確立いたしたい、こういうふうに存じている次第でございます。
  30. 神近市子

    神近委員 たった十二人の増員というもので喜んでいらっしゃるというようなことは、私たちには納得できないのです。少なくも、さっき申し上げたように、裁判というものは国民の生活の調整をするわけでしょう。今日のように犯罪が非常に多発になって、そうしてそれにひっかかると五年、八年、まあ短くても三年、つまらないケースがそんなにかかる。その点は大臣にもよく皆さんが説得して、そして大蔵大臣を——今度の大蔵大臣はよくもののわかるような人ですから。国民生活の一番かなめのところ、それは道路も必要だし、橋も必要でしょう。産業の振興も必要でしょう。だけれども、消極的に言って、国民生活の一番平和な、あるいは正当な生活、それが裁判が五十年かかるとか二十年かかるとか十五年かかるとか、そんなあほうなことは私はないと思うのです。今度の予算をあなた方はどの程度——ともかくいままで一%が法務予算だった。昨年は〇・七五%というような、こんなばかなことはないと私は思うのです。今度はしっかり予算をたくさんおとりになって、もっと人員をふやして、そして裁判事務をもっと急速に能率的にやる。ともかくも半年ぐらいで簡単なものは解決されていくというような外国の例を考えると、日本法務関係の仕事はあんまり気長だと思うのです。それをぜひひとつ改善していただいて、いいか悪いかということを早くきめて、そして国民が安心して、あやまちは改める、あるいは正しい人はそれで安定するというようなことをしていただかねばならない。私、このあとでいろいろ問題を提出したいと思っていますけれども、ともかくもいま一番感じることはその点であります。どのくらい今度は予算要求しようと考えていらっしゃるのですか。もう大体当たりをつけておいでになると思うのですけれども、一%以下なんということは私ども納得しませんよ。
  31. 矢崎憲正

    矢崎最高裁判所長官代理者 ただいま神近委員から御指摘のございましたように、民事、刑事を問わず、簡易な事件は、十分審理を尽くしつつ、しかもできるだけすみやかに処理する方法を考うべきでございますし、またむずかしい事件については、十分それに力を入れて、しかも迅速に裁判をしなければならない、これは御説、そのとおりでございます。私どもといたしましては、十分それについて従来も検討いたしてはおりますけれども、しかし、まだまだ御指摘のような遅延の現状が解消したとは申されませんので、その点につきましてさらに一そう十分に検討いたしたいと存じておるわけでございます。  また、予算の点でございますけれども、先ほど委員長からお話のございましたように、理事会等で裁判予算について御説明する機会をお与えくださいますようでございますけれども、その節、私どものほうからも予算の担当の責任者が出向きまして、資料等に基づきまして詳細に御説明申し上げたいと存じます。何ぶんにも皆さま方の御援助がございませんと裁判所の予算はなかなかふやしにくいのが現状でございます。どうか何ぶんその節はよろしく御援助賜わりますようお願い申し上げるわけでございます。
  32. 神近市子

    神近委員 まだ予算委員会には、ここに横山君というような優秀な方がおりますから、ひとつ応援しますから。ともかく裁判というものがいまの日本の状態では、昔からの公事百年という伝説がほとんどまだ日本には残っていると思うのです。どうしてもこれは改めなければならない。日本の近代化をするためには一番必要なことなんで、ひとつぜひ今度は委員長も御協力くださってたくさん予算をとって、そして裁判事務が急速に能率的にいけるように——訴追委員会の事情を承ってみても、こんな書類を一カ月も二カ月もかかって調べなくちゃならぬというのはたいへんな努力が要ると私は思うのです。それに何か能率的な補助をつけるということができれば非常に早く裁判はできると思うのです。私はいろいろの経験を知っておりますけれども、ともかく日本裁判がなっていません。ぜひその点を改善していただきたい。これを私は要請して、今日の質問を終わります。
  33. 濱田幸雄

  34. 鍛冶良作

    鍛冶委員 先ほど大竹委員からの質問に対してのお答えを聞いておりますと、裁判官は四・八%、検察官は四・二%、こういうことでしたね。人事院の勧告は六・四%ですね。そこで一般職のほうはどれだけ平均上がっておるのか、これを第一に聞きたい。——あなた、わからなければ、それじゃ六・四と言っておるからには、一般職は六・四上っておるのじゃないかと思うのです。しかるに、法務官は四・幾らでということはどうしても合点がいかないので、もっとこれはわれわれに、ああそうですかという説明をしてもらわないとたいへんなことだと思うのですが、どうでしょう。
  35. 鹽野宜慶

    鹽野説明員 一般職は先ほど申し上げましたように六・四%現実に上がっているわけでございます。裁判官検察官につきましては、これも先ほど申し上げたような四・数%のアップ、こういうことでございます。鍛冶委員は、裁判官のほうを四・八%とおっしゃったように伺いましたが、四・〇八%でございます。検察官のほうが上になっておるわけでございます。  そこで、これがどういうわけでこういうことになっているかという御質問でございますが、御承知のとおり一般行政官一般職と、裁判官検察官とを比較いたしますと、一般職のほうは給与体系が下から上まで非常に幅が広いわけでございます。そのうちの上のほうに裁判官検察官というものは位していることになりまして、下のほうがないわけでございます。そこで裁判官検察官にないような下のほうが今度はアップ率が高くなっておりまして、裁判官検察官に対応するような上のほうはアップ率が低くなっているわけでございます。その低い部分、すなわち全体の給料の額で申しますと多い部分、その部分裁判官検察官報酬俸給月額が対応しておりますために、アップ率が低い、こういう結果になっているわけでございまして、決して一般職と比較いたしまして損をしているというわけではないわけでございます。
  36. 鍛冶良作

    鍛冶委員 私はあまりこまかいことはわからぬのだが、それはどういうのですか。六・四ではあるけれども、どれだけのものからは四・幾ら、そういうことがあるんならその点を詳しく聞かしてもらわぬとわからぬ。
  37. 鹽野宜慶

    鹽野説明員 その点さらに御説明申し上げます。  一般職のほうにつきましては、御承知のとおり昨年の改定で一番上に指定職の甲乙というものができましたので、さらにそれに続いて一等級から八等級まで等級が並んでいるわけでございます。そこで裁判官検察官のほうと対比してみますと、裁判官検察官初任給が、この一等級から八等級までありますうちの五等級になるわけでございます。したがいまして、裁判官検察官につきましては、一般職の六等級、七等級、八等級というふうなものに見合うところはないわけでございます。そこで五等級以上の、一般職で申しますと上のほうにずっと裁判官検察官が並んでいるという形になっているわけでございます。そこで今度の給与改定上薄下厚ということで、下のほうのアップ率が高くて、上のほうにいくに従ってアップ率が低い、こういうことになっておりますので、五等級以上に相当いたしますような裁判官検察官につきましては比較的アップ率が低いほうになっているわけでございます。その結果、全体として平均いたしますと、アップ率から申しますと、一般職よりも低い、こういう結果になっているわけでございます。
  38. 鍛冶良作

    鍛冶委員 これを見るとわかるように、増率というのはアップ率ですね。これは人事院からこういう段をつけてきたのですか、それともだれがこういう段をつけたのですか。六・四と言うけれども、上のほうは三・五より上げない、こういうことですね。これは人事院のほうでそういうふうにやったのですか、どこでそういう段階をきめたのですか。
  39. 鹽野宜慶

    鹽野説明員 一般職につきまして、各等級、各号ごとにこういうアップ率が定められましたのは人事院の勧告どおりでございます。したがいまして、具体的にこまかく人事院の勧告が出ておるわけでございます。
  40. 鍛冶良作

    鍛冶委員 こういうことをせられますと、先ほどから神近委員も言われたように、裁判官というものに対しては特別の修業が要るんだ、今後の仕事の上においても特別の人格を備えなければいかぬ、こういうことで、ほかより給与をよくせいということでやっておりますね。こんなことをされると、しまいにいったらなくされてしまいますよ。あなた方のほうでこれを考えて、もっと何か手段をとられなければたいへんだと思いますが、いかがですか。
  41. 鹽野宜慶

    鹽野説明員 今回の給与につきましては、先ほども申し上げましたように、人事院勧告に基づきまして一般職給与改定が行なわれましたに伴って、裁判官検察官についても、それにおくれをとらないという程度に手当てをしたという内容でございまして、御指摘のとおり前回の附帯決議にもございましたように、裁判官検察官給与をさらにさらに改善していくという手当てには相なっていないわけでございます。その点につきましては、私どもも従来から努力をいたしております。さらに今後も努力を尽くさねばならないというふうに考えております。
  42. 鍛冶良作

    鍛冶委員 きょうはこの程度にしておきますが、これはたいへんなことですよ。
  43. 濱田幸雄

    濱田委員長 再案に対する本日の質疑はこの程度にとどめます。      ————◇—————
  44. 濱田幸雄

    濱田委員長 この際、志賀義雄君から発言の申し出がありますので、これを許します。志賀義雄君。
  45. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 人権擁護局長に伺います。  去る十二月十四日、東京各新聞に新東洋硝子という会社の大阪工場での争議で、暴力団が会社側に雇われて、ロックアウトのときに組合側応援者に傷害を与えたという事件が起こりました。これについては参議院の亀田法務委員なんかも視察に出ておりましたが、大阪府議会でも問題になりまして、警察の機動隊の装甲車が先導して入ったと、こういうこともいわれて、大阪府警ではこれを否定しておりましたが、事実はどうも会社側に雇われた者が暴行を働くときに警察側がこれを阻止もしないし、傍観をしておったということが言われております。後に、大阪地方裁判所の決定によりまして、便所、食堂及び組合事務所に入れないことは不法である、これを入れるようにという決定があったのでありますが、このことについては人権擁護局長のほうで調査なさいましたでしょうか。実は、大阪の法務局の人権擁護部長には私のほうからさっそく調査をされるように提案をしておきましたが、何か報告が参りましたでしょうか。
  46. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 御指摘の事件につきまして、実は昨日この委員会のほうから御連絡がございまして、さっそく現地大阪法務局の人権擁護部に事実について照会をしたわけでございます。その返事が今朝九時五十分に入りまして、この件について情報を集めまして、ただいま報告書を発送するところである、こういう経過になっておりますので、現在の郵便の状況でありますと、おそらく一両日中にはこの報告書が私どものほうに参るだろうと思います。これを見まして、検討いたしました上で、次の方策を立てたい、こういう順序でございます。
  47. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では、それをなるべく早くわれわれにも見せていただきました上で、あらためてどうするかということについては、擁護局長のほうの御意見も伺いたいと思いますが、とにかく、これは有名な釜ケ崎の職業安定所のほうでも確認しておりますが、自分のところでこの暴力をふるった連中を紹介したのではない。あの有名な釜ケ崎ですが、おまけに、これは私の選挙区にあるところでございますが、そこで日当二千五百円で手配師が集めたそうでありまして、新聞記者によると、われわれの給与よりだいぶいいと言って苦笑いしておりましたが、それで、こういう暴行が行なわれたんですが、これは職業安定法から申しましていろいろ疑点があるのでございまして、明らかに処罰規定、一万円以下の罰金、あるいは一年以下の懲役に該当するような条項が幾つも見えるようであります。つまり労働争議不介入、あるいは有料職業紹介事業、直接募集、こういうことについて非常に問題があるようであります。どうして、だれに頼んでこれをやったのか、暴力団というか、集められた人は暴力団の人間ではないらしい。ところが、これを集める者は、あのあたりにいろいろ何々組というのが多いです、釜ケ崎には。これを引き受けた者はだれか。たとえば職業安定法の第三十七条には「労働者を雇用しようとする者が、その被用者以外の者をして労働者の募集を行わせようとするときは、労働大臣の許可を受けなければならない。」こういう規定があります。これは、ただほんの一つにすぎませんけれども非常にここに問題があるように思います。  それから、こういう暴行事件について刑事局長なんかに伺わないで特に人権擁護局に伺うのは、便所にもいかせない、それから食堂も使用させない、組合事務所にも立ち入りを禁止するというようなことが行なわれております。これが単に偶発的な現象ならばよろしいですけれども、いまのように中小企業の倒産が多い、それから恐慌が深まっている、こういう状態のもとでは、これから来年にかけてこういう事件が頻発するおそれさえありますので、これは人権擁護上の立場からもひとつ事態を明らかにして、対策についてどういう勧告をされるか、どういうふうに法務省の該当部門なりあるいは警察当局と連絡をとられるのか、こういう点を明らかにしていただきたいと思います。とにかく、大阪府議会では、先ほど申しましたように警察の車が先導して、先頭に立ってピケラインを突破してこういう連中を入れた、こういうことさえいわれているのでありますから、そういう点について報告に、もし欠けているところがあったなら、折り返してお調べの上それを追加して、当法務委員会へお知らせ願いたいと思います。その上でいろいろと質問いたしたいと存じます。これだけです。
  48. 鈴木信次郎

    ○鈴木(信)政府委員 労働争議の際といえども暴力の行使が許されないことは申すまでもないことでありまして、御指摘のように暴力団を雇って暴力を行使をしたことがあるかどうか、あるいはそれが会社側の意思に出たかどうか、あるいは警察がこのことを知りながら傍観していたかどうか、あるいは、これまた御指摘のように、組合側に対して便所、食堂、あるいは組合事務所の使用もさせなかったか、こういった点、いずれも問題になる点でありまして、こういった点をも含めまして全般的に情報を収集して、その結果を十分に検討いたしまして結論を出したい、かように考えております。
  49. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 委員長、それではそれを擁護局長のほうからお受け取りになりましたなら委員に配付願いたいと思います。
  50. 濱田幸雄

    濱田委員長 本日はこの程度にとどめます。次会は明二十三日午前十時から理事会、午前十時三十分から委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午前十一時四十七分散会