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1966-05-13 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十三日(金曜日)    午前十一時八分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 倉成  正君 理事 小枝 一雄君    理事 舘林三喜男君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君    理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    金子 岩三君       笹山茂太郎君    田口長治郎君       田邉 國男君    中川 一郎君       丹羽 兵助君    野原 正勝君       藤田 義光君    松田 鐵藏君       西宮  弘君    森  義視君       湯山  勇君    玉置 一徳君  出席国務大臣         農 林 大 臣 坂田 英一君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (農地局長)  大和田啓気君  委員外出席者         専  門  員松任谷健太郎君     ————————————— 五月十二日  豚肉の安定基準価格等に関する請願小川平二  君紹介)(第四二八七号)  同(唐澤俊樹紹介)(第四二八八号)  同(小坂善太郎紹介)(第四二八九号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四二九〇号)  同(吉川久衛紹介)(第四三二〇号)  同(下平正一紹介)(第四三二一号)  同(中澤茂一紹介)(第四三二二号)  同(倉石忠雄紹介)(第四四二四号)  同(原茂紹介)(第四四二五号)  同(増田甲子七君紹介)(第四四二六号)  低毒性有機燐製剤価格引下げに関する請願  (小川平二紹介)(第四二九一号)  同(唐澤俊樹紹介)(第四二九二号)  同(小坂善太郎紹介)(第四二九三号)  同(羽田武嗣郎紹介)(第四二九四号)  同(吉川久衛紹介)(第四三一七号)  同(下平正一紹介)(第四三一八号)  同(中澤茂一紹介)(第四三一九号)  同(倉石忠雄紹介)(第四四二七号)  同(原茂紹介)(第四四二八号)  同(増田甲子七君紹介)(第四四二九号)  農林漁業団体職員共済組合法の改正に関する請  願(佐藤洋之助紹介)(第四三五〇号)  八王子市板当国有林採石反対に関する請願  (中村高一君紹介)(第四四一四号)  農地管理事業団法案成立促進に関する請願(草  野一郎平紹介)(第四四四四号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農地管理事業団法案内閣提出第三六号)      ————◇—————
  2. 中川一郎

    中川委員長 これより会議を開きます。  農地管理事業団法案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。芳賀貢君。
  3. 芳賀貢

    芳賀委員 農地管理事業団について、若干お尋ねいたします。  第一の点は、法案内容にも、農業基本法第十五条との関連をうたってありますが、農業基本法との関連は、単に基本法の第十五条の家族経営による自立農業経営拡大ということだけに主眼を置いておるのかどうか、この点について、農林大臣から明確にしてもらいたいと思います。
  4. 坂田英一

    坂田国務大臣 規模拡大については、いわゆる個人経営というだけでなしに、協業の問題、共同の問題、これらの問題を並行的にもちろん考えていくわけでございます。その間において、法律的には何ら軽重はございませんけれども、現状の事実の問題としては、やはり個人経営のほうが多くなってくるであろうと思われます。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 農業の形態という面から見れば、個別経営のほうが数が多いことは、これは言うまでもないわけですが、しかし、管理事業団内容を見ると、業務方針については、まず第一に、個別経営による自立農家経営規模拡大、次は生産法人によるいわゆる共同体主体となった経営規模拡大、これも明らかにされておるわけですが、しかし、法案全体を流れる思想は、やはり個別経営農家のいわゆる自立化というところに事業団法のねらいがあるというふうに考えられるわけで、その点を聞いておるわけです。ですから、あくまでも個別農業自立化も必要であるが、しかし、共同体経営による生産法人の近代的な経営規模拡大、これも同様の比重で事業団は扱う方針であるかどうかですね。
  6. 大和田啓気

    大和田政府委員 いま大臣が申し上げましたことのふえんになるわけでございますが、この農地管理事業団法案内容といたしましては、自立経営育成協業助長とに特段の差別をつけているわけではございません。たとえば第一条の目的で、「農地管理事業団は、農地等に係る権利の取得が農業経営規模拡大農地集団化その他農地保有合理化に資することとなるように適正円滑に行なわれることを促進するため、これに必要な業務を行なうことにより、農業構造改善に寄与することを目的とする。」というふうになっております。農業構造改善ということは、結局は構造の問題といたしましては、自立経営育成協業助長ということに帰するわけでございましょうから、むしろ法律のたてまえとしては、自立経営育成を重視して、協業助長をネグっているというものではございません。そのことは、また農地のあっせんの対象なりあるいは農地の売り渡しの対象なりで、自立経営育成と、それからそれに準ずるような協業経営というものを打ち出していることでもおわかりいただけるだろうと思います。ですから、大臣が申し上げておりますことも、また私もそう思いますが、実態として、家族自立経営というのは、とにかく相当数現実にできているわけでありますし、また将来の問題として、伸びる可能性もあるわけでございます。それから協業経営のほうは、全部の協業及び部門的な協業を含めて大体五千程度でございまして、今後伸びる可能性は私は十分あると思いますけれども、なお先駆的、実験的な段階にあるものが多いわけでございますから、農地管理事業団仕事をするにあたりましては、私は、おのずと自立経営育成ということに重点がかかっていくだろうというふうに思います。しかし、法律のたてまえなりあるいは今後の運営の問題といたしましては、特別に協業助長ということを低く評価したりあるいは無視したりして、自立経営育成といいますか、個別経営強化ということだけに専念するというふうには、私たちこの法案運営考えないわけでございます。
  7. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの局長の説明のごとくであれば、法律には、自立経営については、これは農業基本法の第十五条の規定に基づくものであるということは明文化されておるが、生産法人についてもこれを同様に扱うということであれば、その点は、基本法第十七条に協業という表現で農業共同的な経営というものを明確にしておるわけですから、この両立てでやるということであれば、いわゆる第十五条に基づく自立経営、第十七条の規定に基づく生産法人主体にした近代的な経営拡大ということで進むべきではないかと感ずるわけです。それで農林大臣にお尋ねしたわけです。そこで、管理事業団法は、この自立経営根拠を明らかにするために農業基本法の十五条を援用したわけでしょうが、それでは基本法との関係ということになれば、基本法第一条と事業団法目的については、関連があるかないか、これは大臣からお答え願いたいと思います。
  8. 坂田英一

    坂田国務大臣 御質問趣旨がはっきりわかりませんけれども、大体基本法においても、経営規模をでき得る限り合理的に持っていきたいということでございます。したがいまして、自立経営として個別的にまいります場合、それがまた共同的にあるいは協業的に行なわれる場合と、いろいろあるわけでございまして、それらに対して法的に区別をしていこうという気持ちはないのでございます。ただ、先ほども申しましたように、個別の自立経営のほうが、現状としては多くふえてまいるであろう、こういうふうに考えておるということを私から申し上げたわけでございます。
  9. 芳賀貢

    芳賀委員 その自立経営共同経営かという点は、これは局長答弁で明らかになっておるからいいですが、いまお尋ねしておるのは、基本法との関係ということであれば、基本法第一条と管理事業団趣旨目的というものはどういう関係があるかということを聞いておるわけです。基本法といえば、これは、農林大臣は当時農林水産委員長で、三十六年の国会で基本法を通したいわゆる進行係をあなたはやっておるわけですから、いまさらあらためて基本法を開いて読まなくてもわかっておると思うのです。
  10. 坂田英一

    坂田国務大臣 第一条におきまして述べておることは、芳賀委員の言われる通りに、個別経営において特に経営拡大をはかって、そして農業の発展と従事者の地位の向上をはかるということを述べておるのであることは、言うまでもございません。しかし、これが私にははっきりしませんのは、これであるからといって、協業の場合についてこれを別に重視しないという気持ちはないわけでございます。私にもはっきりわかりませんです。あなたの御質問趣旨が実ははっきりわかりません。そういう点については、個別経営であろうと協業であろうと共同経営であろうと、個人の全体の経営が充実し、そして生産性も上がり、所得向上するというふうに望んでおるわけでございます。
  11. 芳賀貢

    芳賀委員 いま尋ねておるのは、この管理事業団法の終局の目的についてですが、これは事業団の行なう事務内容は明らかでありますが、しかし、究極目的ということになれば、自立経営農家にしてもあるいは生産法人にしても、土地経営面積拡大すれば、それで目的達成ということにはならぬと思うのです。そういう手段方法を通じて、究極には、農業基本法でいえば、第一条の目的を達成するためのその基礎条件を確立するために、事業団の主要な業務目的があるということに、われわれが判断した場合はなるのではないかと思うのです。しかし、それはわからぬということになれば、これはただ面積だけふやせばいいんだという大臣のお考えかどうか。これは政策にもからむ問題ですから、大臣から明らかにしてもらって、詳しい点は局長答弁を……。
  12. 坂田英一

    坂田国務大臣 いま申しましたことは、個別経営であろうと協業であろうと、生産性を上げ、それから所得向上するということが目的でございます。この農地事業団仕事も、そういうことに進むための大きな一つ手段でありまする土地について、その目的を達成するためのことを十分行なっていこう、こういうことになるわけであると思うのであります。
  13. 芳賀貢

    芳賀委員 農業基本法の第一条というのは、これは国の農業に関する政策目標をここで掲げておるわけです。その基本は、第一は、他産業との生産性の格差を是正する、第二は、農業従事者所得の増大をはかることによって、他産業従事者との所得均衡、生活の均衡をはかる、これが基本法の第一条、いわゆる基本法そのもの目的であり、政策目標ということになるわけですが、これに到達するために、まず経営面においては経営規模拡大を行なうという前提条件の整備という意味で、管理事業団業務を行なうということでなければ法律意味はないと思うのですよ。この点が不明確であれば、何も法律をお出しになる必要もないし、われわれも審議する必要はないということになるので、けじめだけは大臣につけてもらって、あとは局長答弁でもいいと思うのですよ。
  14. 坂田英一

    坂田国務大臣 そのとおりでありまして、つまり、第一条の目的を達成するために、経営合理化し、発展させていこう、こういうことでございます。そのためには、個別経営でありまする場合においては、あまり小さな経営であってはうまくいかないということもあります。しかし、共同あるいは協業によってそれの欠点を補いながら、経営を十分に進めていくということもできますので、第一条の目的に到達するために、個別経営自立経営についても考えますし、また協業によってそれの目的を達成するような方向に向かっていくことについても全力をあげていく、こういう考え方でございます。
  15. 芳賀貢

    芳賀委員 他産業均衡のとれる農業生産性拡大ということになれば、これはたいへんな努力が必要であるが、しかし、経営規模拡大することによって、やはり粗生産等拡大ということは相当可能になると思う。しかし、それだけで純所得が増大するかというと、土地経営規模拡大だけでは解決できないと思うのです。したがって、その規模拡大によって生ずる生産物販売を通じて、やはり純粋の所得をふやすということが当然必要になるわけですから、そこに基本法第一条でうたってある農業従事者と他産業従事者所得均衡ということになれば、これは結局その所得とは何ぞやということになれば、農産物販売行為を通じて、その中に包括されておる農家が投入した労働の価値というものが、他産業労働者の賃金と相対的に均衡がとれるか、接近しておるかという、そういう政策上の努力とか配慮というものが裏づけになると思うわけです。これは直接事業団との関係はないとしても、所得均衡ということになれば、結局は農家自家労働評価というものについて、一体いまの政府あるいは自民党内閣政策基本がどこにあるかということは、たびたび議論しておる点であります。最近は、米価問題についても、農林大臣諮問機関でなくて、経済企画庁長官諮問機関的な物価問題懇談会中山会長が、米価に対する相当重大な提言を行なっておるのですよ。したがって、これは考えようによっては、わが国の農業に対して全面的な攻撃がいろいろな面から展開されたということも言えると思うのですね。それを受けて立つ農林大臣としても、相当の決意とかまえというものがなければ、理論的にも行動的にもいけないと思うわけですが、いままでは米価については他産業との均衡労賃ということで曲がりなりにもやってきたが、しかし、先般の保証乳価決定経過等を見ても、この方針は貫かれていないですよ。農林大臣がたびたび当委員会へ来て、保証乳価決定の場合には、生乳の主要な生産地域における他産業との労賃均衡を旨として努力するということはよく言っておるが、しかし、事務当局においては依然としてそういう思想を否定して、そうして農業における日雇い労賃で十分であるとして、そういう保証乳価の算定を行なっておることが、先日の農林大臣の言明以後においてこれは明らかになっておるわけです。ですから、せっかく国の機関を、新しく管理事業団を設置して、経営規模拡大だけに努力してみても、拡大された生産物の消流、販売過程の中において、その価格に対する支持体制というものが、保証乳価のように農業日雇い労賃で保証すればそれでいいということであれば、無理に管理事業団をつくって面積だけふやさして、農家に過重な労働をしいる必要はないじゃないかと思う。ですから、この基本法第一条にうたうところの、農業従事者と他産業従事者所得均衡という基本に立った場合に、今後米価問題はもちろんでありますが、米以外の主要な農産物牛乳畜産物等に対する価格支持、言いかえれば、自家労働に対する評価というものを一体どうするかということを究極目標とするならば、ここで明らかにしておいてもらいたいわけです。
  16. 坂田英一

    坂田国務大臣 この価格問題につきましては、先ほどお話になった米価等については、もちろん方向等米価審議会に諮問いたしまして決定いたすわけでありますが、生産費及び所得補償方式ということについては、この方針によるわけでございます。その内容いかんは、さらに詳細についての検討を加えることにいたしたいと思います。  それから、その他のいろいろな農産物につきましても、これらについては、いろいろの取引の現状等関係その他がございますので、それぞれの農産物に適応しながら、これらの問題を検討を加えてまいる、こういうのでございます。常に米と同じようなことをそれぞれの物資についてこれをはかっていくというわけにはいくまいと思います。それぞれの物資実態に即応してきめてまいりたい、かように考えております。
  17. 芳賀貢

    芳賀委員 そういうことでなくて、基本的な方針として、農業基本法というものをときどき思い出して、これに照らして農政を進めるということであれば、これは米だけは他産業との均衡を旨として米価をきめる、それ以外のものは均衡させなくてもいいということにはならぬと思うのです。その点がいまの答弁では不明確なんですね。
  18. 坂田英一

    坂田国務大臣 農産物価格問題については、農業基本法の第十一条に規定しておるようなわけであります。つまり「国は、重要な農産物について、農業生産条件交易条件等に関する不利を補正する施策の重要な一環として、生産事情需給事情物価その他の経済事情を考慮して、その価格の安定を図るため必要な施策を講ずるものとする。」こういうこと、また、第二項にもそれぞれ規定をしておることは、芳賀委員もよく御了承であると思います。さような関係からいたしまして、米価については、長らくの検討を加えて前進して、現在生産費及び所得補償方式によるというところまできておるわけでございます。その他の物資については、またその実情に即応しながらいくわけでございます。必ずしも米価と一緒にというわけにもいくまいと思います。
  19. 芳賀貢

    芳賀委員 どうもはっきりしないのですが、いま聞いているのは、基本法第一条関係なんですよ。他産業従事者との所得均衡をはかるということになれば、日本における農業者所得というのは、自分で労働した労働の報酬というものが所得の大部分になるわけです。均衡をはからないということを旨とするのであれば、何も議論する必要はないのですよ。   〔委員長退席舘林委員長代理着席均衡をはかるということであれば、米だけは均衡をはかるが、米以外の農産物畜産物については均衡をはからないというわけじゃないのでしょう。実際の行政的なやり方は、米価決定については、他産業との均衡相当重視して配慮されておるが、それ以外のものは均衡をはからないことを旨としてやっておるわけですから、これは反省すべき余地があると思うのですよ。あくまでも米価は他産業との均衡を旨としてやる、それ以外は旨としないでやるということであれば、そういうふうにはっきりしてもらいたい。
  20. 坂田英一

    坂田国務大臣 先ほど申しましたように、農業基本法においても、所得均衡をはかる上においても、価格問題は非常に重要であります。さようなことから、第十一条に価格問題についての規定を置いてあることについては、これは芳賀委員もよく御了承のところでありますので、詳しくは申さなかったわけでございます。ただ、そのときの価格のきめ方等については、それぞれの物資需給関係とか、あるいは今日までに行なわれてきたいろいろの経過、それからその他のいろいろな均衡問題もございますので、それぞれの物資に即応した行き方があるわけでございますので、一律に米と同じくというわけにはいきませんことは言うまでもございません。さようなことを申し上げたわけでございます。
  21. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大事な点なんですよ。経営規模拡大だけやらしてみても、とれた農産物牛乳について、他産業との所得均衡を旨としないできめるということであれば、なるたけ面積を縮小して、そうして生産物価格だけを供給不足の状態の中で高くしたほうが農民は有利なんですからね。経営規模拡大してもらうこともこれは重要ですが、規模拡大の中で生産が増大する、その生産されたものの処分、それを所得に換算する場合の方法手段というものが誤っておれば、これは面積をふやして一生懸命苦労しても何にもならぬということになるのですよ。この点がはっきりしないと、農民はあまり規模拡大を喜ばぬと思う。
  22. 坂田英一

    坂田国務大臣 何べんも同じことを申すようでございますが、基本法においても、規模の問題も重要であると同時に、価格の問題も重要だ、そのほかいろいろ規定はしておりますが、これらの問題は重要なので、特に基本法十一条でうたっておるわけでございます。さような関係でございますので、価格問題がいわゆる所得均衡あるいは生産性向上の上において、これを無視していいとか、あるいは重要でないとかいうのじゃございませんので、きわめて重要であるということは、同じ認識の上に立っておるわけでございます。
  23. 芳賀貢

    芳賀委員 農家保有面積拡大というのは、これは究極目的でないのですからね。単に所有欲を満足させるというだけで、土地を特定の農家だけに拡大させるということは、とるべき政策でないと思うのですよ。国の施策に合致させるために一つ目標を定めて、自立農家とか生産法人規模拡大をやる。生産されたものについては、努力した生産農民、投下した労働に対しては正当な保障があるということでなければいかないわけでしょう。米価が十分だということではないが、これは基本法に照らしてもややその方向をいままではたどっておるわけです。ほかのものはたどっていないですよ。たどろうとしても、それをいまの政府が阻害しておるわけですからね。せっかく事業団をつくるというのであれば、そういう阻害の要因はこの際全部除去して、もう少しすなおに価格政策というものを統一的に実行されるということが当然だと思うのです。これをあいまいにするというのはおかしいじゃないか。このくらいのことが明確にできないなら、農林大臣なんかやめたほうがいいと思うのです。
  24. 坂田英一

    坂田国務大臣 この価格の問題をあいまいにしておくという考えでないことは、これは常に申し上げておるとおりでございまして、基本法においても価格問題を重視して、十一条に述べておるわけであります。構造改善にいたしましても、それからまた、土地拡大強化という面においても、それだけでこの目的が達せられぬことは言うまでもない。しかも、これはそう急激にできるわけではない。しかしながら、実態に即応しながら徐々にこれらの問題をでき得る限りそういう方向に向けていくわけでございます。しかし、そういう途上においても、やはり価格問題はきわめて重要です。簡単に言えば、非常に大きな経営を全部やる企業があれば、ある意味においては、単位当たり価格は安くても相当所得はふえるということもできるでしょう。しかし、それは現状においてできないことは、芳賀委員もよく御了承のことでございますから、そういう点においては、問題は価格問題がきわめて重要なのであります。これらの問題は、構造の問題だけではいかないので、同時に、価格問題、また反収の増加の問題、いろいろな問題を包括しておるのでございます。それらのものを全部総合して進めていくのでございまして、この農地管理事業団は、そのうちの一番大きな農業生産性向上に当たるところの土地の問題を重視して、これは進んでおるわけでございまして、いままで一番手抜かりの面でありますので、この法案が出ておるわけであることは、これは芳賀委員もよく御存じのはずなんで、価格問題を度外視するとか、そういうことは絶対考えないのでありますことは、重ねて申し上げておきたいと思います。
  25. 芳賀貢

    芳賀委員 いま大臣の言われている第十一条と  いうのは、社会党としては、現行の農業基本法を全面的に是認しておるのじゃないのですよ。だから、十一条なんということを何回言われても、これは納得もしておりませんし、そういうものにわれわれは期待をかけておるのではないが、しかし、基本法の大目的である第一条の他産業との所得均衡、この基本というものは、価格政策の面においても行なわれていないじゃないかということを言っておるのです。十一条の中でも、米以外の農産物牛乳については、農業日雇い労賃でいいということは根拠がないでしょう。あれば明らかにしてもらいたいと思う。
  26. 坂田英一

    坂田国務大臣 この価格の問題について、何もかも一律にいくわけにはいくまい、こう思います。これは価格論議をやりますと長くなると思いますが、蔬菜蔬菜行き方がありましょうし、それぞれの行き方があると思うのです。その行き方の違いは、それぞれについて違うのでございますので、それに即応してそれぞれの価格の問題を考慮していくということになると思うのでございます。それを一律にすべてのものを米と同じくやっていくというわけにはいかないわけでございます。
  27. 芳賀貢

    芳賀委員 いま聞いておるのは、基本法第十一条の規定大臣は述べられたが、その十一条の解釈の中に、米以外の農畜産物については、農家自家労働評価をする場合には農業日雇い労賃並みでいいという、そういう根拠があれば、詳しく説明してもらいたい。
  28. 坂田英一

    坂田国務大臣 そういうものはもちろんお読みのとおり書いてありません。問題は、そう簡単に一律にいかないというのは、農家の中にも、現在、兼業農家のごとき小さい一反歩の農家もあれば、二町歩、三町歩の農家もある。蔬菜をつくるにも同様である。そういうふうに生産手段がみな違うのでありますから、そういうときに、一反歩つくっておる米作農家、それを経済の基礎にしていろいろの価格をきめるというわけにもいかない。そういう点については、それぞれ農家が非常に多種多様でありますから、いろいろの点からそれらの問題を考えていくことになるというふうに思うのです。これは一例であって、こういうことは芳賀委員も百も御承知のことでありますので、長くは申しませんが、さような関係でありますし、その農業のうちでも、蔬菜栽培、また酪農の問題、あるいは水田作の問題、それぞれによってみなその行き方が違うわけであります。これらの問題をそれぞれに即応してやっていかなければならぬものであって、また政府が一々価格に干渉することは、かえって悪いものもありましょうし、いろいろあるわけでございますので、一つ物資と全部同じような考え方でいくわけにはいかない。しかし、私は、できる限り農家所得としては生産費及び所得補償方式でいけるものならば、そういう方向に進むということはけっこうだと思います。しかし、そういうふうに進み得ないという実態がそれぞれの実態としてあり得るわけでございますので、それらの問題を進行の途上において、また構造改善行き方の途上においてどうかという、いろいろの点をこまやかにやはり考えなければ、角をためて牛を殺すという結果にもなるわけでございますので、言い方は非常に乱雑な言い方でございますけれども、そういう点についても十分お考えを願わなければならぬ、こう考えておるわけでございます。きわめて粗雑なことを短時間に申すのでありますが、大体芳賀委員もよく御了承のことであるということを思いながら、この点を申し上げておるわけでございます。
  29. 芳賀貢

    芳賀委員 おっしゃるとおり、全く御答弁が粗雑で、よくわからないですよ。大臣考えは、牛を殺して角だけ残すような農政論ですからね。これじゃいつまで論議しても果てないと思いますが、そこで、わからない点だけをいま聞いておるわけなんです。たとえば農業基本法の第一条にしても、大臣の言われる第十一条にしても、農家自家労働について農業日雇い労賃でいいという、そういう思想とか法律上の解釈は、私はないと思っておるわけですが、その点が非常にあいまいですからね。実際は政府は運用上そういう考えで扱っておるということであれば、そのとおり述べてもらえば、これ以上追及することはやめておきたいと思います。
  30. 坂田英一

    坂田国務大臣 基本法の十一条には、そういうことは一つも書いてないのでございます。したがって、標準的な規模において農業を行なうものについては、そういう日雇い農業賃金というもの、それはときによると賃金の高いこともありましょうけれども、一般においてそういうものによって計算されるようなことは、標準が一般的であるならば、考えないようにいたしていきたい、こう思います。しかし、標準が非常に小さいものも含まれておって考える場合においては、これは言うまでもない、よく御了承のことであろうと思うけれども、これはやはり一般の規模においての標準というものを考えなければならない、こう思います。そういうことも申し上げた上で、芳賀委員の御説には私も賛成でございます。
  31. 芳賀貢

    芳賀委員 そうなると、先日の保証乳価決定のやり方は誤りですね。農林省は日雇い労賃に固執して、先般の報告を聞いてみても、自家労賃保証乳価の場合には一日八時間労働で七百九十二円に計算されておる。ちょうど他産業平均労賃の約二分の一ですからね。どういうわけでその点だけに固執して日雇い労賃に押えなければならぬかということが、現在においても理解できないわけです。いま大臣答弁から判断すると、必ずしもそういうことにこだわっていないというふうにもとれるわけですが、これは農林大臣として農林省の役人に対する一貫した指導性の欠如だとわれわれは考えておるのです。大臣がそういうことはいけないということを明らかに指示すれば、現在の官僚も、権限を持っておる大臣に反抗して言うことを聞かぬというわけはないと思うのですが、どうしてその点が徹底できないのですか。
  32. 坂田英一

    坂田国務大臣 いまの問題は、いま申し上げましたように、経営規模の問題と、それからそのときの経営実態というものと、そのときに起こる所得というものとがみな関連いたしておりますので、きわめて小さい経営というものも計算の中に入れておいて、そして賃金はこうでなければならぬということであってはならないと思うのであります。ですから、私どもが将来の問題としてこれらの問題を進めていく際においては、たとえば酪農の場合ならば、一頭とかごくわずかなものを経営しておるというものを単位にしてものを考えずに、もっと大きなところ、そういうふうに進むべきものであると思うが、それらの問題と、価格の問題、それから経営規模の問題、それらが総合的によく考えられていくべきものであろう、こう考えておりますので、いま申しましたようなことを申したのであります。したがって、非常に小さい経営が現在非常に多いというときの問題をとらえていった場合の計算、その場合に計算された価格というもの、これはよほど考えていかなければならぬ、こう思いまするのと、また現実において経過的にこれらの問題も考えなければならぬという経過の問題、それから経営規模の小さなものではいかないという問題もありますから、それらの問題も比較考慮して、そして現在のような方向にいま進んでおるわけでございます。したがって、これらの問題を解決すると同時に、漸次そういう方向に進むべきものではないか、こう考えておるわけであります。
  33. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、事業団法に対して、一般的にはこれは小農切り捨ての政策に通ずるというきびしい批判がありますし、これは大臣としても承知しておられると思います。もし小農切り捨て政策でないという確信があれば、事例をあげて国民の前に明らかにしてもらいたいと思います。
  34. 坂田英一

    坂田国務大臣 農地管理事業団においては、これは強制的に土地を売買させるというのではないことは、芳賀委員もよく御承知のとおりでありまして、現実において売買が行なわれるものが、これは常にお答え申しておると思いますが、七万八千町歩かあるいは八万町歩程度毎年あるわけであります。この現実に行なわれております土地の売買その他について、これをとらえまして、経営合理化方向にそれを持っていとう、こういうのがねらいであります。したがって、小農の切り捨てというようなことにはならない、こう存じております。
  35. 芳賀貢

    芳賀委員 そうじゃなくて、この法律趣旨は、対象を明らかにしておるわけでしょう。全国五百五十万農家がすべて経営規模拡大したいという場合に、それは事業団が取り扱うというわけではないわけですね。まず第一の点は、農業基本法第十五条の規定による自立農業を実現できる農家ということになれば、これはそこで範囲は限定されるわけです。家族経営による自立農業経営農家ということになれば、これはやはり専業的な農業を営む者ということになるわけですから、全国の農家の大体二〇%以内ということに当然なるわけです。   〔舘林委員長代理退席、委員長着席〕 これ以外に範囲を拡大するということは、これは政府法案趣旨に反するということになるわけなんですが、そうじゃないですか。
  36. 坂田英一

    坂田国務大臣 この農業事業団において扱っていきたい対象農家は、農業を熱心に継続しておるというものを中心にして考えておるわけであります。能力と勤勉と熱意を持っておるものを対象にして、これらの問題を農業事業団対象にしてまいりたい、こう考えております。したがって、抽象的に申しますと、経営規模といったものには関係がないわけでございます。しかし、現実問題とすれば、やはりそう小さいものがその農家の選定に入ってくることはまず少なかろう、こう思いますけれども、ねらいとするところは、いま申しましたように、農業を熱心に、そしてりっぱにこれをやっていくという、そういうことでございます。
  37. 芳賀貢

    芳賀委員 詳しいことは、局長のほうが責任のある答弁ができると思うから、大臣には聞きませんが、大まかなことはわかると思うのです。  全体の農家の中で、事業団業務対象になる範囲というもの、これは法律規定の中でも明らかになってくるわけですからして、それをあいまいにすることはできないと思うのです。ですから、その一つの限定は、基本法第十五条にうたう、いわゆる家族農業経営による自立農家ということになるわけです。もう一つは、いわゆる生産法人による共同経営あるいは協業経営体に対して事業団助長するということになるわけでございます。だから、この法律対象になる農家というものはおよそどの範囲ということは、大臣として頭の中にあると思うのです。これはあいまいにしてはいけないのです。熱意のあるものはみんないいなんというわけには法律はいかないですよ。
  38. 坂田英一

    坂田国務大臣 ごもっともであります。やはり一つは、自立農家たらんとする熱意と能力を持っておる、こういうことになります。それは普通申しますと、それなら現に幾ら持っておるものかどうか、こういうことになりますと、これはいま申しますように、その地方の農業委員会とかあるいは町村長その他が、いつも申しておるように、その地帯における精農家その他の加わったそういう人々によって、いろいろとこれはきめてまいりたい、こういうことにいたしておる。一つは、先ほど申しましたように、協業とかあるいは共同経営をやっていこうというところ、これは相当小さくても、共同経営等によって合理的な経営ができる、熱意を持ってそれらをやるということであれば、同様にこれらをも認めてもちろん対象としていくべきものである、こういうふうに考えておるわけでございます。
  39. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、事業団法対象になる経営体の範囲ということになれば、いま私が言った範囲になるわけです。そこで、大体個別経営農家については、これを国として純粋な農業者としてあくまでも柱にして守るという目標は当然あると思いますし、共同体あるいは協業体についても、できるだけ助長して拡大させる必要があるわけですが、これについても、五年後、十年後には大体共同体によるものはどのくらい、あるいは国がどうしても専業的な農家として守り抜いていかなければならぬものはどのくらいであるかという点は、これは局長からでいいです。大臣はあまりあと長くやらぬですし、局長のほうがまだ寿命が相当長いですから、将来展望ということになれば、局長のほうがいいと思います。
  40. 大和田啓気

    大和田政府委員 私どもいま考えておりますことは、中期経済計画の中で実は自立経営協業の問題を取り上げまして、中期経済計画の前のいわゆる所得倍増計画では、粗収入百万円、経営面積平均耕地二町五反の自立経営農家百五戸をいわば十年間で育成するという見通しを立てたわけでございます。これは中期経済計画におきましては、実は十年間でそういうものができるというふうに確言できない情勢でございますので、何年間でということは言いませんでしたけれども、やはり日本の農業全体の中で、現在六百万戸近く、約五百六十万戸ほどの農家があるわけですが、その中の少なくとも二割程度、少なくとも百万戸程度のものは農業で自立できて、相当農業生産をあげていく。中期経済計画では、たしか農業生産の五割以上のシェアをその人たちが持つであろうという予測をいたしたと記憶しておりますけれども、そういうものを中期経済計画が終わりましてもなお自立経営育成ということに力を入れて、できるだけ早い機会に百五戸程度の自立経営育成されることを期待するというふうに中期経済計画では取り扱ったわけでございます。現在中期経済計画は廃止されて、また新しい長期計画の策定が進められておると思いますけれども、またこの自立経営育成というものをどういうテンポで、どういう数で行なうか、これからなお検討を深める段階でございますから、簡単に予測はいたしかねますが、私は、五、六百万農家の数というのは、今後も少しずつ減っていくでしょうが、とにかく農業で生活でき、また農業に専心する農家というのは、少なくとも日本で百万戸程度のものがなければ、日本の農業生産というのは維持発展をしない、一握りの非常に経営面積の大きい農家が、かりに五万とか十万とかいうふうに集約されただけでは、日本の農業生産の将来は、生産性の高い、またいい農村ができないのではないかという感じを持っておるわけでございます。
  41. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、共同体についてはどう判断されますか。
  42. 大和田啓気

    大和田政府委員 共同体につきましては、所得倍増計画ではある程度の見通しをたしか立てておったと記憶しておりますが、中期経済計画ではその後の動きを見ますと、先ほども申し上げましたように、協業経営というのは約五千単位でございます。そうして五千単位の中で、全体の部門を共同にしているものがたしか七%程度で、あとの九三%程度は畜産とかあるいは果樹とか、部門的な協業経営でございます。また農業生産法人の数は現在千ほどございますが、今後の見通しとして、私どもは、共同体のシェアが多少はふえるだろうし、また協業体の数もふえるだろうけれども、いまの段階で、どの程度の見通しでその数がふえること、あるいは経営面積がふえること、ないしは農業生産におけるシェアがふえることを期待することは、見通しを立てる段階がまだ無理ではないかというふうに思いましたので、協業経営が進むことを期待して、その数等の見通しについては、中期経済計画においてもたしか何も触れなかった。将来伸びることを期待し、また伸びるためのいろいろな施策を行なうべきことを言いながら、数量的な見通しというのは、たしか差し控えた記憶がございます。現在も私はそういうふうに考えることが至当ではないかというふうに考えます。
  43. 芳賀貢

    芳賀委員 いまの説明があったとおり、結局この法律対象になる農家というのは、戸数にすればおおよそ二割ということになるわけですね。したがって、残り八割がこの法律からは疎外されるということに当然なるわけですね。したがって、この専業的な農家以外の八割の兼業農家といいますか、特に全体の四五%くらいが二種兼業農家ということになっておるわけですが、あくまでも日本の中心的な農業というものを全体の二割なら二割を確保して、ここに近代的な発展の期待をかけるということは、これは農業の発展から当然のことだと思うのですよ。社会党としても、管理事業団法には賛成できがたいが、その方向については何もそれを否定しているわけでもないわけですし、ただ違う点は、この個別農家だけの経営拡大に大きな期待を持っても、それはなかなか日本の場合には実現困難な要素が多分にあるわけだから、この道だけでは簡単にいかぬわけですね。結局零細農の共同的な経営ということにもう一つ同様の熱意を持たないと、政策というものは普遍的に進んでいかないと思うわけです。この点がどうも消極的であるというような感が強いわけですからして、具体的にこの共同体経営の近代化とかあるいは規模拡大の面についても、どういうふうにやるということを明確にしてもらいたいと思いますし、もう一つは、結局法律から疎外される八割に及ぶ兼業農家に対する農業政策上のこれにかわる施策というものも、やはり明らかにしておく必要があると思うわけです。この点はいかがですか。
  44. 坂田英一

    坂田国務大臣 この自立経営並びに協業経営あるいは共同経営といったような方向に向かってでき得る限り進むわけでありますが、その対象になるのは、結論としてはやはり少ないではないかということでございますが、それはそのとおりであると思います。もちろん、協業が進めば、かなりこの面において十分これらの対象となり得るわけでございますが、現状としては非常に少ない、こういうことになろうかと思います。したがって、その対象となり得ないものについてどういうふうに考えるか、こういう御質問でありますが、これは、この農地事業団についての対象とはなり得ないものが相当の部分あるということでありまするけれども、農業政策の面としては、別にそれを区別していくわけではないのであります。たとえば農地造成によってこの経営の増大をはかってまいるという面もございます。あるいは酪農の問題でそれらの発展をはかってまいるという問題、それからまた、近郊その他の適当な地帯においては、果樹あるいは蔬菜生産という面、その他米作にしても、あるいはその反収の増加とか、あるいは生産増加の面についてのいろいろの技術的な面からの問題ということでありまして、この事業団の取り扱いの面以外に関する限りは、何らそこに区別を置くものではない。農業政策によって十分これは立てていかなければならぬ、こう思います。  なお、こういう問題からいたしまして、経営拡大が行なわれた際において、しからば残りの多くのものはどうするかという問題はありますが、これらについては、やはり中高年齢層の者をどういうふうに援助するかということは、労働省とも関連してこれらの問題も考えなければなりませんし、それからまた、この土地を手放す結果になった人々の処遇その他の問題についても十分考えてまいるということも考え、同時にこれらの問題を進めてまいらなければならないということでございます。だから、農業政策としても、また社会政策としても、十分これらの問題は考えていく予定でございます。
  45. 芳賀貢

    芳賀委員 こういう法案の場合は、特に全体の農家が初めから対象にならぬわけですから、弁明的な、申しわけ的な解明ではこれは通じないのですよ。たとえばこれは小農切り捨てになるという場合には、それに立ち向かうだけの具体的な内容というものを整えて、いや、この法案は全体の農家対象にはしないが、しかし、対象にならない零細な農業については、これと同様の、これにかわる政策というものがあるとか、こうやるということが明らかにならぬと、何か悪いことをしたように申しわけして、いやそうではありませんとか、熱意のある者はどうするといっても、実際はそうならないのですよ。特に大臣のおる石川県なんかは、専業は一割しかおらないのですからね。くにに帰ったって、事業団を早く通せなんというのは一人もいないでしょう。国の政策として、やはり局長が言ったように、全体の二割なら二割の専業的な個別農家とかあるいは共同経営体というものを拡大させなければ、日本の農業ということだけでなくて、国際的な分野においても、いまのような零細な兼業が激増する農業というものは、これは国民経済的にもたいへんなことになる。そういうようなことを熱意をもって明確にするのが農林大臣の役目ではないかと思うのですよ。そうじゃないですか。閣議があるそうですから、おいでになってもいいですが、その点だけはっきりして、それから出ていってください。
  46. 坂田英一

    坂田国務大臣 つまり、いま申しましたように、この構造改善の問題で、自立経営あるいは協業によるところの経営拡大をはかってまいるというのでございますが、その他の残された人たちに対する問題はどうかという御質問でございます。  そこで、一番全般的に考えてまいりたいことは、この事業団による土地の問題はそういうことになりますけれども、その他の各種の農業政策について、それらの部分については別にこれを疎外していくということではございませんで、一視同仁に考えていくということは、これは当然なことでございます。農業政策全般の施策は十分に講じられていくことは言うまでもないことで、その点は十分御了承を願っておきたいと思う。  それから、そのときに、規模拡大される結果として、その残された——農業政策として同様なことが行なわれておるけれども、今度はその人自身が土地を売ってこの経営を離れる、そこに離農の問題がくるわけでございますが、それらの問題については、現在離農を奨励するという考えは毛頭ないのであって、現実のままを取り上げて進んでいこうというのであります。しかしながら、その結果として土地を離れていくということになるのでありますから、それらに対しては、先ほど申しましたように、中高年齢層の就業の問題とか、その他いわゆる土地を売った場合におけるいろいろの負担の軽減の問題とか、それらについては特別の処置を講じて進んでまいりたい、こういうことなのでございます。
  47. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣、いいですよ。  次に、経営規模拡大の方法としても、単に毎年流動化する農地の一部を事業団がこれを対象にして取り扱うというだけでは、これは解決できないと思うのです。しかも事業団の場合、有権的に零細農の移動する農地を掌握して、必ず事業団に売れ、こういう強い権限で扱うわけでないのですからね。そうなると、事業団ができても、目的どおり、零細農から手放された農地というものが、自立農家規模拡大のほうへまっすぐ行くかというと、必ずしもそうではないと思う。この点、われわれはこの事業団法を支持しているわけではないが、しかし、法律を出す場合には、もう少し政策的に、有権的にこれが行なわれるというようなことも考えないと——最近は少なくとも七万五千ないし八万ヘクタールの農地が流動しておるわけですから、この点については相当確信が持てるわけですか。
  48. 大和田啓気

    大和田政府委員 現在、毎年七、八万町歩の農地が売買等によって移動されておりますが、経営規模拡大にそれが資する方向で向かう率がはなはだ少ないことは、私どものほうで差し上げた資料の中で明らかであります。それを徹底的に規模拡大方向方向づける手段としては、私は二つあるというふうに見ます。  一つは、農地法の改正でございます。現在農地を取得できる者は、原則として内地で三反歩、北海道で一町歩以上の農地を持っていなければ農地の取得ができないということに、法律でなっておりますけれども、議論をする方は、その三反歩というのは、戦後の例の飯米が非常にほしかった時代のなごりであって、農業の面から考えれば、三反歩ということはおよそ意味がないのではないか、したがって、それをもっと上げたらどうかという御議論が相当強くあるわけでございます。その方向一つあるだろうと私は思うのです。  それからもう一つは、農地管理事業団に即していえば、先買い権の規定法律につくりまして、農地管理事業団、具体的には農業委員会ということになるわけですが、そこに農地の移動についてあらかじめ相談があった場合に、国が先買いをして、もしも農地の移動が農業構造改善のためにプラスにならない場合は、ただ事業団に売ってくれとか、あるいはある農家に売ってほしいというあっせんではなくして、むしろ事業団が有権的に土地の買い入れができるような方法、法律的にいえば、これが先買い権でございますが、それを置くということが一つ考えられると思います。ただ、農地管理事業団を出発させるにあたりまして、私ども、いろいろ御批判として、何か強制的に農地の移動に官僚的なシステムが介入するのではないかという不安が多少あるようでございますし、それから、先ほど農地法の改正について申し上げましたが、保有限度の三反というものが小さいことはどうも間違いないように思いますけれども、それを引き上げて、何かそれ以下の農家土地が動くことについては政府が許可をしないという行き方がいいかというと、私はどうもそういう感じはいたさないわけでございます。したがって、農地法の取得の最小限度は三反歩ということにして、とにかくできるだけ農家の納得、農地の所有者の納得を得て構造改善目的に資するようにということで、事業団の構想も組み立てたわけでございますから、先買い権があったほうが、事業団の動きとしては動きやすいことは言うまでもありませんけれども、いまの段階としては、私は、先買い権がなくても、たとえば租税上の特典、あるいは三分三十年の融資ということで、相当構造改善にプラスになるように動き得るのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  49. 芳賀貢

    芳賀委員 実は昨年の国会においても、事業団法の審議の際に、重要な参考人の意見等も聴取したわけですが、その当時も指摘された議論の中心は、一体農地法をそのままにしてやるのかというような問題、あるいはいま局長の言われた先買い権の規定法案に入れるかどうかというような問題も、これは論議されたことは御承知のとおりであります。農地法の改正の問題は、後刻またもう少し詳しく尋ねたいと思いますが、結局一定の専業的農家を確保するという趣旨で、移動しておる農地の一部を経営規模拡大に向けるという考え方も一つの方法ですが、国全体の国民経済的に見た場合、総体の既耕地の移動の中だけで一部農家経営規模拡大するということは、農業の総生産の面においては、マイナスにはならぬけれども、相当大きなプラスになるというような結果はなかなか出てこないと思うのです。ですから、国の政策上の考えとしては、やはり積極的な規模拡大ということになれば、幸い、土地改良法によるところの土地改良長期十カ年計画、内容が十分だということは言えないとしても、そういう長期的な計画が出されたわけでありますからして、やはり国内における農用地の適地というものは、未墾地の中にも相当あると思うからして、そういう未墾地等を対象にして、国が直接の責任を持って強力にこれを開発造成するという努力の中で、国全体の農用地の面積拡大されて、それがやはり経営的には農家経営規模拡大に寄与するという方法のほうが、実は積極的であるというふうに判断されるわけです。この点は、事業団業務を通じての規模拡大と、国の積極的な政策としての農用地の造成拡大ということは、これはやはり関連を持たして進める必要があると思いますが、この点はいかがですか。
  50. 大和田啓気

    大和田政府委員 私はいまおっしゃったことに賛成でございます。私どもも既耕地の中だけで問題を処理しようとは考えておりませんで、できるだけ農用地造成、農地の造成なりあるいは草地の改良なりを進めるつもりで、あの十カ年計画をつくったわけであります。ただ、もう一つ申し上げますことは、三十六年から開拓パイロット方式ということで、新しい方式で事業を始めておりますが、この場合も、戦後のように新しく入植者を入れるということに主眼を置かないで、地元の農家の増反、経営規模拡大ということに主眼を置いてやっておるわけでございますから、いまおっしゃられた問題については、私はそのとおりだと思っております。
  51. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、先ほど兼業農家に対する対策についてもちょっと触れましたが、先ほど農林大臣は、この事業団構想の中には離農対策は全然考えていないということでありましたが、これは間違いだと思うのです。やはり二種兼業を主体とする零細農の農地保有形態がこのままでいいというわけにいかぬと思うのです。ただ、これが変化しないという大きな理由は、二種兼業の農業の部面を切り捨てた場合に、はたして他の産業で十分将来の生活の安定が得られるか、不安がないかどうかということになると、多分の不安があるわけです。したがって、一部においては婦人や年寄りが農業のほうを担当して死ぬまで働くということになるわけですから、離農対策を全然考えないで事業団法を進めるということは、これは誤りだと思うのです。これはどう考えていますか。全然そういうことは関係ないとか、考えていないということかどうかですね。
  52. 大和田啓気

    大和田政府委員 なかなか表現のむずかしい問題であろうと思います。大臣が、離農対策とこの事業団構想と必ずしも関係がないというふうに申し上げられたのは、おそらく農地管理事業団仕事としては、土地を無理に、あるいはすすめて売らせるということは考えていないので、売りに出るような場合に、積極的にそれをあっせんしたり、あるいは事業団が買い取ったりするので、したがって、離農を強制したり促進したりする意味での離農対策は考えていないというふうに申し上げたのだろうと私は思います。また別の機会には、大臣もたしか、しかし、離農対策ということは直接この事業団関連はないけれども、現実に農地を手放して農業の外に行く人は相当いるのだから、その人たちについては十分配慮するように政府としては努力したいというふうに申し上げているわけだろうと思います。それで、いま先生が言われたのは、ただその問題ばかりでなしに、兼業農家で老人や婦人の労働が過重になって、その問題を何とかすべきではないかというように言われたのだろうと思います。私は、またあとでいろいろ御議論、御意見をいただくと思いますが、零細農家あるいは小農といっても、戦前と違いますことは、小農あるいは零細農即貧農ということではなくなって、私ども農家経済調査を手がかりにして検討する限り、二種兼業農家の中で、約八割は恒常的な職業を持っております。二割程度が日雇い等である。八割程度の恒常的なレギュラーな仕事を持っている兼業農家の生活水準なり所得は、これは村における専業農家の中くらいの人たちより高いわけであります。その人たちの問題と、それからそういうレギュラーの仕事を持たない、いわばこれこそ農村の底辺にある小農あるいは零細農というものは、それは問題の処理のしかたが相当違っていいのではないかというように考えます。なかなかむずかしい問題で、その人たちに対する対策というものをずばりあげるというわけにいきませんけれども、二割程度の農村の底辺にある人たちといいますか、仕事をきっちりと持たない人たちには、一般的な労働対策といいますか、安定した仕事を得てもらうということが、問題の一番の解決の方法であろうと思います。そして、そうでない、レギュラーな職業を持つ兼業農家で、形は零細農家であるけれども、実質的には相当豊かで、生活水準も村で高いという人たちに対しては、実はいま耕している農地をそんなに耕さなくてもいい人たちですから、その人たちの農地を、売るなり貸すなり、どういう形で農業を一生懸命やろうとする人たちの手に無理なく移すかということが、大きな問題であろうと思います。
  53. 芳賀貢

    芳賀委員 所得面から見れば、農業所得でなくて、農家所得としては、むしろ専業よりも二種兼業のほうが上位にあることは、これは明らかになっておるわけですが、しかし、農業上から見ると、土地面積主体にした規模別の農家の階層というのは、五反歩未満というのが全体の三五%で、二百十万戸ということになっておるわけでありますが、これは大体が二種兼業農家ということになると思いますし、それから一町歩未満ということになれば、これは全体の七〇%で、三百八十五万戸ということになるわけですから、こういう現実を無視することはいけないことであるが、しかし、農家所得としては、専業よりも二種兼業のほうが所得水準が高いとしても、実態を見ると、先ほど申したように、ほとんど婦人の労働とかあるいは年寄りの労働農業部面をになっておるわけです。先般の報告にもありましたが、とにかく婦人が大きな農業機械を操作するなんということは容易なことではないわけです。あるいはまた年寄りも結局は死ぬまで働いておるわけですね。ですから、社会保障政策というものが十分徹底して、農村の婦人に対しても老人に対しても過重労働はしいてはいけないというような体制になって、その中で二種兼業とか一種兼業が十分生活上の安定が確保されたということと現状は違うわけです。そういう現実というものを無視して、所得相当確保されているからいいじゃないか、定着しているからいいじゃないかというものではないと思うのです。したがって、この点をもう少し人間性の面からも考えた場合、一体どうするかという点を聞いておるわけです。
  54. 大和田啓気

    大和田政府委員 あるいは詳細農政局のほうからお答えしたほうがいいかもしれませんが、いま私がお答えいたしましたのは、多少ことばが足りませんでしたので、それを補いたいと思います。  一般的に二種兼業農家の問題といたしましては、私は二つあると思います。一つは、兼業収入が相当ふえて、農業はそんなにやらなくても済む程度、いまの農地法なりあるいは農地制度のワクの中だと、小作料も非常に安いし、一たん貸すと返ってこない心配があるから、むしろ持っていて荒らしづくりをするという状態が、私は一面あると思うのです。それはそれとして十分考えなければならない問題がございます。それからもう一つは、いま御指摘になりましたように、老人、婦人、子供の労働によって二種兼業農家農業がささえられていて、生産力もそんなに上がらない、むしろ停滞なり下降ぎみにあるのを、農業生産の面でどういうふうに維持向上するかという問題があろうと思います。  第一番目の問題は、これは農地制度なりあるいは小作料の問題でございますが、二番目の問題としては、これはやはり大きな機械を使っての共同作業、機械の共同利用、あるいは農協なり農事実行組合なりが大きな機械を使って、一種の俗なことばでいえば請負耕作的なものをやって、そこで生産をある程度まで維持しながら、婦人、老人の労働の過重を防いでいくということが私は必要であろうと思います。また、そういうことを相当積極的にやらなければならないような現在の農業労働者の実情にあるというふうに私も考えております。
  55. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、若干事業団業務関係したような点についてお尋ねします。  第一の点は、事業団の役割りとして、一つは、金融面の業務を担当することに当然なるわけですが、そういうことになると、現在の国の制度としては、農地金融は、国の機関である農林漁業金融公庫がいわゆる農地並びに未墾地の取得資金の融通、あるいはまた自作農維持資金に基づくところの農地の維持というふうに、資金面は扱っておるわけですから、今度はさらに事業団農地金融をやるということになると、国の機関として二様な組織が生まれることになるわけです。しかし、事業団農地金融を行なうとしても、従来の公庫融資というものを軽視するわけにはいかぬと思うのです。三十九年の実績から見ても、取得資金は、農地について大体二百十五億、未墾地が二十億程度出ておるわけですけれども、これは相当の金額になると思うのです。これは別に自立農家とか生産法人に限るとかいうことにはなっていないわけですから、農業規模拡大されて、農業生産が増大の見込みがあるという場合には、これは対象になるわけですから、この点、金融機関としての性格上の役割りとしての公庫と事業団との比較の上に立って、一体これをどういうふうにするかということです。
  56. 大和田啓気

    大和田政府委員 農地管理事業団農地の取得のあっせん融資をするところだけで考えますと、公庫の取得資金の融資とそんなに本質的に変わらないだろうと思います。しかし、農地管理事業団はやがては農地の買い取り、売り渡しをいたしますし、交換分合も強力にあっせんしてやりたいというふうに考えておりますし、さらに取得のあっせんにいたしましても、自立経営体制なりあるいは協業経営体制なりということであっせんして資金の融資をするのと、いわば公庫が金融機関として融資をするのと、私はどうも態度の違いが相当あるのじゃないかと思います。これは実は農地管理事業団を農林省の中で議論をいたしましたときに、公庫にそれをやらすことができないかどうかということも、だいぶ議論いたした経過がございますが、私は、やはり公庫は金融機関としての制約があるので、こういう農地管理事業団のように一定の農家をつくる、あるいは協業経営助長するという立場からの積極的な金融とは異質なものであるから、公庫と性格的に似ている部分も確かにあるけれども、違う部分がむしろ重要なので、公庫と農地管理事業団は分立してしかるべきだという結論に達したわけでございます。ただ、将来の展望といたしまして、農地管理事業団がかりに農村らしい農村全体をおおうというふうになって、取得資金が考えておりますところのおおむねを吸収しますようになれば、あるいは取得資金は農地管理事業団がやって、公庫の取得資金はもうそれで使命を終わるということがあるかもわかりませんが、それはその段階でまた検討をいたすべきことであって、現在のところでは、公庫の取得資金と農地管理事業団とは両立して考えて、まずは不都合はあるまいというふうに思っております。
  57. 芳賀貢

    芳賀委員 この相違点は、融資条件が違うというくらいで、あとはたいした違いないと思うのですね。公庫にしても、事業団の行なおうとする業務上の性格とか権限を公庫に与えれば、これは絶対にできないというものじゃないと思うのですね。そうじゃないですか。
  58. 大和田啓気

    大和田政府委員 これはこういう制度の問題でございますから、絶対にできないというふうには私は思いません。ただ、農地管理事業団なり私どもが考えておりますことがうまく進むかどうかというふうに考えますと、どうも公庫は、これはあくまで金融機関でございますから、国家的な金融機関であっても、金融機関の本質というものはやはりあるわけでございますから、積極的に農地の取得のあっせん、あるいはいわんや農地の買い取り、売り渡しということは、まずは不適当であるというふうに思います。
  59. 芳賀貢

    芳賀委員 しかし、公庫資金の場合も、ほとんど資金融通をやる場合、その農地などを担保に供しておるわけですね。そこで、結局融資条件の相違ということになれば、事業団は三分の五年据え置き、三十年償還、それから取得資金のほうは、これは構造改善事業とそれでない地区によって若干の相違はあるが、三分五厘、三年、二十五年ですね。このぐらいの差ですからして、少なくとも金融機関的な面から見れば、事業団の融資条件と今後の公庫の融資条件というものを相違さしておくという必要は何もないと思うのですね。この点はどうなんですか。かりに事業団法が通った場合、直後に公庫法の農地資金の条件というものを同様に改善するという、そういう順序で考えておるのかどうか、いかがですか。
  60. 大和田啓気

    大和田政府委員 公庫の取得資金の三分五厘、二十五年ということも農業金融の条件としては、いままでは一番いい条件でございます。農地管理事業団は、その上に立って、しかも特定の農政上の目的を浮き彫りにする意味で、三分、三十年という新しい制度を設けたわけでございますから、事業団の三分、三十年と公庫の三分五厘、二十五年とが並立することは、形式的にはおかしいというふうに御指摘になる面も、確かにそのとおりだと思いますけれども、現在のところ、取得資金の三分五厘、二十五年を事業団に合わせるというふうには、私ども考えておりません。
  61. 芳賀貢

    芳賀委員 考えていなくても、そうするほうが妥当じゃないですか。
  62. 大和田啓気

    大和田政府委員 いま申し上げましたように、公庫の三分五厘、二十五年という現状に立って、農地管理事業団に特別な意味を持たせる意味で、三分、三十年にいたしたわけでございますから、形式的にいえば、確かに多少似たもので融資条件が違うということは妙だというふうにお考えになる向きもあると存じますけれども、私は、制度の力点の置き方といいますか、制度の意味からいって、この二つのものが違うことはやむを得ないというふうに思っております。
  63. 芳賀貢

    芳賀委員 公庫資金にしても、やはり政策上の目的があって三分五厘、二十五年でやっておるわけだから、これは目的なしというものじゃないでしょう。事業団を、こういうものを新しくつくる以上は、何か目的らしきものをつけないと無性格ということになるので、ただ特徴とか魅力が融資条件が公庫に比べて違うんだということだけでは、事業団の存在価値がないと思うのですよ。たとえ条件が同じであっても、やはり事業団としての特別の任務というものはあるわけだからして、これは活用しなければならぬとか、大いに推進しなければならぬという、この内容的な充実がないと、なかなか金利が安いんだとか償還年限がちょっと長いんだということだけでは、長持ちしないと思うんですよ。この点はどうですか、仮谷さん。
  64. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 従来、公庫で土地取得資金で三分五厘、二十五年というのがあったわけですけれども、率直に申し上げまして、いまたとえば年間七、八万町歩の農地が流動しておることも、その公庫の資金があることによっては何ら実効をあげていないという問題がありまして、特定の政策目標のために管理事業団の設立を実はやったわけでして、しかもこれは単に金利を安くし、長期金融をやるというだけでなくして、それをやるものについては税制上その他いろいろ特典を設けるといったような問題、さらに機構的に充実してそれを推進しようという形でありまして、単に金融だけの問題ではないと私どもは思っておるわけであります。ただ、それにいたしましても、三分五厘と三分、二十五年と三十年とたいした違いはないじゃないかという議論は、確かに出てくるわけです。ほんとうは私どもは、思い切って二分で四十年にしたいという考え方を持っておったわけですが、それが現実の程度で終わったわけでして、確かに金融の面からいえばそうたいしてかわりばえないじゃないかというふうにいわれますけれども、これは局長申し上げましたように、一つ政策を浮き彫りにして強力に推進していこうという形においてつくり上げたものでありまして、そういった点では、必ずしも金融面だけのものじゃないというふうな解釈を私どもいたしておるわけであります。
  65. 芳賀貢

    芳賀委員 この点は、やはり先ほどの小農切り捨て論ですね、その論者から見れば、事業団対象というのは、ごく限定された、農業の面から見ると、いわゆる経営力の上位の農家ということになるわけですね。その農家に対して、現在よりもさらに規模拡大のために有利な条件の資金を流すのか、われわれに対しては公庫の従来どおりの条件しか活用できないじゃないかと、こういう比較論というのが当然生まれるわけなんですね。しかし、この事業団対象以外の農家の場合においても、構造改善事業を進めるとか、集団化をはかって一これは別に正式な農業法人でなくとも、やはり集団化というのは必要になるし、整備事業も当然必要なわけですからして、そういう場合に必要な農地の取得とか交換とかそういうものは、やはり付帯的に行なわなければならぬわけですからして、それをやり得る農家の場合に、管理事業団よりも融資条件が悪い、劣っておるということは、これはやはり納得のできない点なんですよ。だから、公庫には公庫としての土地政策上あるいは農業政策上重要な任務というものは、かりに事業団が実現してもこれはあると思うのですね。したがって、今後の問題にはなりますが、事業団が実現するような場合には、やはり公庫の農地関係の融資条件というものは、当然これは大幅に改善する必要があると考えられるわけです。もう一つは、自作農維持資金の場合においても、現在の自立農家あるいは専業的な農家土地保有が困難であるという場合に、自作農資金というのは放出されるわけですからして、災害資金のようにいわれておりますが、本来の目的というのは、やはりこの自立農家あるいは専業的な農家農地が窮迫売りされぬようにするための備えだと思うわけです。この点はいまだに五分、二十年ですね。これはこういう状態で放置されておるわけですからして、やはり公庫資金としての体系から見ても、取得資金と維持資金が条件が非常に相違しておる、事業団が生まれた場合にはまた違うということでは、これはいけないと思うのですよ。事業団に賛成すればこの機会に全部直せということもわれわれ言えるが、とにかくこれは反対しておるわけですからね。この実現を予期してこうせいということは、なかなか言うべき筋合いでもないが、問題としてはこれは重要だと思われるわけです。もう少し責任のある答弁を、局長からでいいですからしていただきたい。
  66. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 確かにおっしゃるように、この法律が万能でないことはわれわれも承知をいたしております。ただしかし、経営規模拡大ということは、これは何といってもいまの農業情勢からいって、当然考えなければならぬ一つの大きな要請であって、その要請にこたえるという問題が一番大事なことじゃないかと思います。そういう面から考えてみると、これを実施していく上において、確かに先生のおっしゃったような問題も出てくると思います。私は、まあ確かに公庫の金融と事業団の場合とは若干差がありますけれども、ほんとうに土地取得あるいは未墾地取得をやろうとする者は、むしろ事業団に積極的に吸収していくというふうな考え方で臨んだほうがいいんじゃないかという考え方も持っておるわけであります。自作農の問題等もございますけれども、この問題と関連してすぐどうこうということは、われわれとしていま発言する限りではございませんが、やはり将来の農業金融政策として一つの課題ではないかという考え方であります。
  67. 芳賀貢

    芳賀委員 なお、この中で、未墾地の取得を事業団としてもあっせんをするということ、未墾地の売買のあっせん等をやるわけですが、そのときの資金面ということになれば、事業団資金ということになると思う。そこで、これは農地法との関係もありますが、事業団考えておる未墾地の売買という場合においても、あくまでも現在行なっておるいわゆる相対売買によるところの方式というものだけでやっていくか、あるいは農地法の発動によって、国が未墾地買収の取り扱いをするという二本建てでいくのか、この点はいかがですか。これは一昨年の農地法の改正の場合においても、未墾地買収の関係については農地法ではあれしておるけれども、ほとんど現実にこれは扱っていないわけだが、一体どうなるかということを、丹羽君が局長のときであると思ったが、取り上げたことがあるわけですが、今回の場合どういうふうになりますか。
  68. 大和田啓気

    大和田政府委員 未墾地の問題につきましては、さきの委員会でも申し上げたわけですけれども、農地法の買収の規定は、どうもいますぐこれをまた使うということがなかなかむずかしい情勢でございます。それで、現在は完全な個人同士の相対売買ということでやっておりますが、私は、農用地造成あるいは草地の改良を進める立場からいって、完全な個人の相対売買ではどうも力が弱いといいますか、うまく円滑にものごとが運ばないきらいがあるというふうに考えます。したがって、農地管理事業団といういわば一つの公的な機関があっせんに乗り出して、できるだけ未墾地の取得の円滑化につとめたいというのが、今回の規定を改めましたことの理由であるわけでございます。ただ私は、相対売買だけあるいは農地管理事業団が介入するという形だけで、未墾地の問題が十分であるというふうには必ずしも考えておりません。これは将来農地法をどうするかという問題にも関連いたすわけでございまして、私は、農地法を検討いたす場合の一つの課題として、単に相対売買あるいは農地管理事業団があっせんする以外に、もっと効率のある、そうしてあまり無理のない方法は考えられないかということを十分検討いたしたいと思っております。
  69. 芳賀貢

    芳賀委員 現在でも、農地法の四十四条から五十四条までのいわゆる未墾地買収関係規定が、完全に眠らされておるわけじゃないのですが、用いていないという状況になっておるわけですからして、これを全然働かさないというのはちょっと変だと思うのですね。だから、あくまでもこれだけでやるというわけではないが、相対売買と、やはり国が政策的にどうしてもこれは対象にして実行する必要があるという適地等について、正常な相対売買ができがたいというときには、やはり国の権限でこれを高度利用するということは当然だと思うのですよ。だから、これは眠らせばなしというような考えではなくて、必要な場合にはやはり伝家の宝刀をたまには用いるということがどうしても必要でないですか。これは管理事業団に限らず……。
  70. 大和田啓気

    大和田政府委員 現在の運用のやり方としましては、まあ新しく地区を画定してそこで買収するというふうには動かしておりませんけれども、大きな開拓地を国が買収して、そこで開墾事業を進めて、いわば買収漏れのような地帯がありますときは、農地法の規定を適用して未墾地の買収を実際はやっておるわけであります。あまり新しい問題としては取り上げておりませんけれども、いわば手直し的な意味では農地法の未墾地の買収規定も働かしておるわけで、完全にあらゆる場合にも絶対に動かせないというわけではございません。
  71. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、これに関連して、経営規模拡大についても、個別経営の場合に、無制限に幾らでもふやしなさいというわけではないわけですね。ですから、これも農地法の規定からいうと、農地法の三条二項三号の規定、いわゆる別表によって、都道府県別の最高限度が、これは農地あるいは採草放牧地、小作農地、小作採草放牧地に分けて、都道府県別に明らかにされておるわけですが、この経営規模拡大の場合には、生産法人はまた別の規定によるわけですが、個別経営規模拡大の限界というものは、やはり現在の農地法の別表の規定の範囲内ということで取り扱うかどうか、その点はどうお考えになりますか。
  72. 大和田啓気

    大和田政府委員 まあ、農地法の問題として、内地でいえば三町というのが一応のワクになっておりますけれども、農業基本法ができましてから、経営規模拡大という趣旨農地法を改めましたときに、家族経営で主として農業を営む限りは三町歩という制限にこだわらないというふうにいたしたわけでございます。現在の実際の動きといたしましては、たしか宮城県で四十町歩くらいの大きな稲作経営個人でやっておるというような例があるようでございますけれども、一つ農業技術の問題で、たとえば田植えの機械が十分に開発されてない、あるいは刈り取りの小型の機械が十分開発されてないということで、稲作でいえば三町歩前後が一つの壁になっていて、二町歩あるいは一町五反の農家が三町歩くらいまで伸び上がろうとする力がある反面、四町とか五町という農家が三町歩くらいに縮小しようとする動きもないわけではございません。したがいまして、私は、いま申し上げましたような自動耕うん機で耕うんの段階は完全に機械化できるけれども、田植えやあるいは刈り取りの段階の機械化が十分でないということからくる稲作の面積の壁というのは、どうも近く破られて、もう少し三町が四町になり、五町になる可能性が出てくると思っておりますが、まあ事業団によって経営規模拡大する場合に、たとえば一町五反の農家に五反をプラスして二町にするか、あるいは三町の農家に五反をプラスして三町五反にするかということは、実際問題として、私は、大体村の人たちにまかせていいというふうに思っておりますけれども、事業団のあっせんによって飛び抜けて一戸だけ、でかい経営ができるというふうに私は実際は考えておりません。したがって、事業団土地の取得のあっせんをしたりする場合には、上限面積をたとえば三町歩で切るというふうに機械的にしないほうがどうもいいのではないかというふうに思っております。
  73. 芳賀貢

    芳賀委員 これはあとでまた農地法の再検討の問題で尋ねますが、とにかく従来のあらゆる制度から見て比較すれば、条件が有利だということになるわけですから、これだけを利用して、その地域内でも特定の農家だけが例外的に規模拡大するというようなことが許されるということになると、ここからまた批判とか弊害が当然出てくると思う。農地法が厳密な規定を設けてあるのは何に基因したかということを歴史的にときどき反省してかからぬと、事業団で扱うものだけは全部農地法の例外規定としてやるからいいんだというような、恣意的な、独占的なことが、ちゃちなと言ってはちょっとおかしいが、事業団にそういう無軌道な権限だけを与えるということは、将来に問題が起きると思うわけですから、その点もやはり大事だと思う。  次に、事業団農地の信託事業を行なうことに当然なるわけで、この場合、現在は農業協同組合法の規定で信託規定が設けられておって、農協のいわゆる農地信託事業が行なわれておるはずですが、しかし、いままでの経過によると、農協の信託事業というものは全然成果をあげていないわけです。これはやはり農地局の所管ですから、法律改正したのは庄野君が局長時代、それからもう五年くらいたっているはずですが、農協の信託事業の成果というものはどの程度のものであるかというその実績の説明と、それから事業団が発足して地域指定を市町村単位に行なうわけですから、指定された市町村区域においては、当然農協の信託事業といわゆる事業団の信託事業が同一地域で競合するというような現象を生ずるわけですから、これに対する配慮と、二点についてお尋ねします。
  74. 大和田啓気

    大和田政府委員 農協の農地信託の問題は、お説のとおり、私どもが当初期待していたほどはいきませんで、現在全国で百六十件ほどございます。三十八年に三十一件、三十九年に七十九件、四十年に五十件、計百六十件でございます。これは先日も申し上げましたけれども、農協による農地信託が十分伸びませんことは、伸びるべき地盤があるのにもかかわらず伸びない理由といたしましては、一つは、確かに小作料の水準の問題があろうかと思います。これは反当千百円程度の水田の小作料でございますから、それをもらってもしかたがないということが、どうも農地信託が動かない一つの理由だろうと思います。  もう一つは、農協の性格といいますか、決して農協を非難する趣旨ではございませんけれども、現在の農協は、何といっても信用事業、購買、販売事業でございますから、そういう経済団体の農協と農地信託というのは、どうも多少異質の、なじまないものがあるのではないかと思います。もしも農協が、いわば生産事業といいますか、農業協業化の面に今後入っていきますと、私はまた関心の度合いが違ってくると思いますけれども、現在私が耳にいたしておりますことは、要するに、学校の先生やなんかが異動なんかで土地を離れて、農協に持っていって頼むと、どうもわしのところは、信託の規定を置いているけれども、めんどうくさいからやりませんと言われるという話をたまに聞くわけです。これは農協の現在の事業の性格からいって、ある程度やむを得ない面があろうと思いますけれども、積極的に農協がこの問題に取り組んでいるところが決して全部ではございません。その点が確かに問題ではないかと思います。このことは、実は農業基本法が成立いたしましたあとで、それぞれの政策を肉づけするときに、信託的なものを農協がやることが適当か、あるいは何か特別の組織をつくって、それがやることがいいかということをだいぶ議論した経過もございます。したがって、現在農協と農地管理事業団を並べて、どっちが適当かということを形式的に議論すれば、私は、事柄としては、現在のところ、農協よりも、農地管理事業団農地の信託をすることに適当だというふうにも言えるだろうと思います。ただ、現在農協がとにかく百六十件でも信託をやっておりますし、それから今後の農協の事業が一体どういうふうに変わるか、現在のように純粋に経済事業だけではなくて、多少幅広く生産の領域に農協が踏み出さないとも限りませんから、私は、制度としては、やはり農協に信託をやってもらうという制度を残しておいたらいいというふうに思います。したがって、農地管理事業団の事業実施地域として指定された村では、そこで農協が信託規定を置いて信託をやっておりますから、形式的には確かに同じようなことを両方でやるということになりますけれども、それぞれの意味があることで、競合しても、それは当分いいではないか。農協が農地の信託について今後どういうふうに考えるか、あるいは農協の仕事がどういうふうに転換するかということに関連して、将来あるいは二本立てにすることがあまり意味がなければ、どちらかに割り切るということも必要でありますけれども、現在のところは、事業団なり農協なりが両方農地の信託をやっても、住民も困らないわけでございますから、いいのではないかと私は思っております。
  75. 芳賀貢

    芳賀委員 特に貸付信託の場合は、いま局長の言った小作料の関係等があって、私も町の農協の組合長ですが、貸付信託の受託というのは、実際問題としてあまりない。内地府県ではあるかもしらぬが、北海道等の場合にはなかなかないわけです。農協がやる以上、公定の小作料とあまりかけ離れた小作料というわけには当然いかぬわけです。しかし、事業団がやる場合だいじょうぶだという保証もないでしょう。第一は、これは末端の業務は委託するわけですから、そうすれば、信託事業は現地においてどの機関に委託するかということにもなると思う。これだけ別扱いというわけにもいかぬと思う。それはどう考えておりますか。
  76. 大和田啓気

    大和田政府委員 先ほど申し上げましたように、事業団の事業実施地域で、事業団と農協とが両方やるという事態は、私はあるだろうと思います。それは両方やっても、別に過当競争ということでございませんし、当分の間両方やるという形で行なってもらって、時期を見て、もし整理するなら整理していいのではないか。事業団が信託をやるから、もう農協はやめてもらうというふうに言う必要はないと私は思っております。
  77. 芳賀貢

    芳賀委員 いや、そうじゃなくて、それは現在農協がやれることにもなっておるわけだから、これを否定しているわけじゃない。ただ、同一地区内で農協もやれる、管理事業団もやるということになった場合、事業団の信託事業というものを現地においては結局委託してやらせるということになれば、どの機関を中心にやらすかということになると思う。それは農協に委託することにするか、農業委員会からだれか選定された——町村に置くものはどういう名前になるか、いわゆる農業委員会根拠を置いてやるか、あるいは町村ですね、公共団体のほうへ中心を置くか、この三つのうち、どれかを主体にして信託事業を進めるということになると思うのですよ。
  78. 大和田啓気

    大和田政府委員 大体といいますか、原則的には、信託の仕事は市町村あるいは農業委員会に委託するというふうに考えております。
  79. 芳賀貢

    芳賀委員 その次に、これは法律には直接業務には出てこないが、特に未墾地の売買あっせん等をやるわけですから、このあっせんされた未墾地が、目的どおり農地あるいは草地として完全に造成されなければ、あっせんした意味がないわけです。したがって、この農地の造成事業、いわゆる土地改良事業との関係ですね。これも、われわれは事業団に反対だから、やりなさいということは別に言わぬが、特に昨年法律が流れて今回出した場合に、初めて未墾地というものを対象にしたわけですから、これは制度的には一歩前進した構想だとわれわれも認めておるわけです。せっかく対象にしてあっせんあるいは売買された未墾地を、そのままの形態で置くのでは何にもならぬですから、農用地としてこれが速急に造成されるということになれば、それを見届ける必要は当然あると思うのです。したがって、土地改良事業との関係ですね。あるいは相当規模が大きいものは、農地開発機械公団等の国の一つ施策もあるわけですから、こういう点は前向きにどう考えておるか。
  80. 大和田啓気

    大和田政府委員 これも全くお説のとおりでございます。私ども未墾地のあっせんをさせる場合に、ただ未墾地を取得すればいいということじゃなくて、当然農地造成なりあるいは草地改良の仕事と結びつけて、国営地区であったり、県営地区であったり、あるいは団体営地区であれば、それぞれ国、県、土地改良区と連絡をとるわけでありますし、団体営にもならないような小さなものであれば、それは公庫の土地改良資金の融資のあっせん等も、実際農地管理事業団の職員がやるという形で、ただ未墾地が動けばいい、あとはどうなってもいいというふうにはやらないように、私ども十分注意をいたしたいと思います。
  81. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、管理事業団の指定区域内における業務委託の範囲ですが、第一段階は、指定市町村の中で、いわゆる市町村農業委員会あるいは農業協同組合ですね、これらの機関に対して、事業団として主要な業務をどのように委託するかというその範囲について、まずお尋ねしたいわけです。
  82. 大和田啓気

    大和田政府委員 事業団は、本所、それから県の支所とで、最小限の人数で事業をやるつもりでありますが、貸し付けの最後の決定でありますとか、あるいはあっせんの当事者の最後の決定でありますとか、そういうものは、私は当然事業団が行なうべきものと思います。しかし、それ以外の具体的な仕事につきましては、実際農地を売却したり、あるいは貸し付けたりするような場合の相手方の選定、それから契約のあっせん等につきましては、市町村農業委員会にほぼ全面的に委託をいたしたい。それから、農地取得資金の貸し付け事務でありますとか、あるいは融資の償還でありますとか、小作料の授受でありますとか、そういう金銭的なものは、あげて信連に委託をする。信連と単協とで、当然また内部的な事務の処理の相談なり委託なりがあるだろうと思いますけれども、そういう形で、最終的な決定は、これは事業団が責任を持ってやらないとおかしいわけでございますから、最終的な決定事業団がやるとして、それ以外の実務は、市町村農業委員会、農協におおむね全部委託をさせるというふうに考えております。
  83. 芳賀貢

    芳賀委員 この点も、去年の法案では、末端市町村まで事業団の出先を置くというのが、今度は、末端は地元の市町村農業委員会農業協同組合等に可能な業務の委託をする、これも昨年の法案に比較すれば、ある程度前進しておるということは言えると思うのです。  それで、次は都道府県段階ですね。都道府県段階には必ず支所を各都道府県に設けるお考えのようですが、これも、末端市町村に置かないということになれば、別に都道府県段階に出先を置く必要はないじゃないかというように常識的には考えられるが、それはあくまで置くわけですか。置かなくてもいいという場合は、たとえば道府県とか農業会議とか農協、信連等に全面的に安心してまかせるということでやるのかですね。
  84. 大和田啓気

    大和田政府委員 事業団の事業をやらないような、たとえば予想されるのは、東京都とか大阪府とかいうものにはもちろん置きませんけれども、事業団が事業をやるところは、やはり人数といたしましても大体平均四人程度の小人数を考えておるわけでございますが、これは私は置いたほうがいいと思います。特に最終的なものは事業団が責任を持ってきめるという体制は、やはりとるべきだというふうに考えております。
  85. 芳賀貢

    芳賀委員 そこで、いま言いました道府県とか農業会議、あるいは農協の関係の連合会等には、それじゃ都道府県段階では、信連の場合は別ですが、あとは委託する意思というのはないわけですね。考えていないわけですね。
  86. 大和田啓気

    大和田政府委員 都道府県段階のたとえば農業会議につきましては、事務の委託ということは考えておりませんけれども、当然調査なりあるいは指導なり、団体の中でやってもらうのがいいという面については、やってもらうつもりでおります。しかし、事業団仕事そのものとしては、信連以外は、県の農業会議に直接委託してお願いするということは、現在考えておりません。
  87. 芳賀貢

    芳賀委員 しかし、都道府県においても、行政的に農地関係の行政、これも国の委任事務相当あるわけです。あるいは都道府県の農業会議にしても、その任務の中ばは農地関係ということになるわけですから、この機関のほうが歴史的にも実践的にも力を持っておるし、現地の判断も的確であるということが言えるわけですね。だから、三人ないし四人の未熟練な出先職員をそこへ向けてみても、実のある仕事はなかなかできないと思うのですよ。本所との事務的連絡とか指定市町村との事務的連絡等はやれるとしても、行政とか政策面にこれを反映するということになれば、やはり都道府県とか農業会議等の機関の行政的な力というものに当然期待したり、依存しなければならぬと思うのですが、そういう場合、委託はしないが、仕事はやってもらうというのは変じゃないかと思うのですが……。
  88. 大和田啓気

    大和田政府委員 都道府県あるいは農業会議につきましては、委託して仕事をやってもらうつもりはございませんけれども、指導なりあるいは調査なりについて、多少の補助金を出してやってもらうつもりでおります。  なお、農地管理事業団仕事につきましては、いろいろな団体あるいは行政機関にも関係いたしますので、どういうふうにそれぞれを位置づけて、この仕事をうまく進めるかということにつきましては、私ども十分検討いたしたつもりでありますけれども、今後も実態に即して、なお調整する必要があれば調整してまいりたいというふうに思っております。
  89. 芳賀貢

    芳賀委員 次に、指定市町村における農地の権利の移動等については、今後は農地を売り渡したいという希望がある場合は、必ず事業団に通知しなければならぬという事前義務を負わしているわけですね。事業団が買い入れるとかあっせんするとかは別にして、とにかく指定区域になった場合は、その地区内の農地の売買希望者はまず申し出ろ、何らかの通知があるまではかってに処分してはならぬということになるわけですね。それは一つ規定ですが、実際の扱いの問題として、その指定町村内において相当の件数の売り渡し希望がある、あるいは買い入れる希望がある、あるいはまたあっせんの希望があるという場合、事業団としては全面的にそれに応諾するのか、それを選別してごく一部のものだけを対象にして取り扱うのかという問題が当然出てくるわけですね。第一に融資をやる場合の資金量についても、初年度四十億円でしょう。そして対象の市町村はあらかじめめ四百市町村を考えておられるようですが、算術的にこれを配分すれば一千万になる。ところが、最近の農地、水田あるいは畑の地価の現況から見ても、水田は平均的に反当二十万円、畑地は十二万円ということになれば、おのずからその四十億円で事業団が直接取り扱える面積というのは計算が出てくるわけです。二十万円ということになれば二千町歩、十万円ということになれば四千町歩しか資金的には取り上げるわけにはいかぬということに当然なるわけですから、この貸し付け条件等によってある程度魅力を感じて希望が出ても、それを適当であると認めても、消化することができないと思うのですよ。その場合に、結局選別しなければならぬということになるでしょう。そうなれば、除外されたものは不満が出るということにもなりますから、一体事業団としては、最初からわずかな財源を用意して、末端を混乱させるようなことを予測してこういうことを進めるのはどういうわけですか。
  90. 大和田啓気

    大和田政府委員 四十一年度では確かに四十億いう財源措置を講じておるわけでございますが、四十二年度以降、通常な状態におきましては、その村で移動する農地の四割程度は融資の対象にしたいというふうに考えております。四十一年度は最初のことでもありますので、移動する農地の三分の一程度の率でございますけれども、四十二年度以降は四割という数字で考えております。現在取得資金で動かしておりますものは、移動する農地のその地帯において二割足らずでございますから、四割というと、取得資金の倍以上が事業団の融資対象に乗るというふうに考えております。それで全部というふうになるかどうか詰めて申し上げるわけにいきませんけれども、私は現在四割というふうに想定いたしておりますけれども、事業団のあっせんによって土地が動きますものは、これは確実に農業を一生懸命やろうとする農家土地が動くわけでございますから、もしも四割ということがその農村の実態においてやはり少なくて、もっともっとそれをふやすことが農業構造改善に役立つということでありますれば、別に四割ということに将来こだわらずに、必要な資金の手当は十分にいたしたい、かように思っております。
  91. 芳賀貢

    芳賀委員 いま局長の言われた、移動する面積の三割とか四割ということになれば、それは七、八万町歩を対象にしての三割、四割ですか。
  92. 大和田啓気

    大和田政府委員 それは全国で七、八万町歩でございますから、事業を実施する村四百で割れば、その約一割弱ということになるわけであります。
  93. 芳賀貢

    芳賀委員 それはおかしいじゃないですか。けたが大体違う。四十億円というと、さっき私が言ったとおり、大体千町歩台ですから、流動している面積が全部これの経営拡大のほうに回らないことは当初言ったとおりですが、しかし、一年四百億とか五百億の資金を用意してやるということになれば、相当の効果がある。しかし、年間三千町歩とか五千町歩だけをやってみても、たいした意味がない。しかも公庫資金のほうは、先ほど申したとおり、農地関係で二百億以上をこえているわけですから、それとの比較に立った場合でも、何十億なんていうものでは一けた少ないですね。初年度は一けた少なくとも、来年あたりからやはりもう一けたふやして何百億という規模でなければいかぬ。将来はやはりもう一けたふやして、少なくとも一千億とか二千億とかいう資金をちゃんと調達して、そうして目的を十分達成するということにいかないと、これは宣伝倒れになる。むしろ混乱だけを惹起して、成果があがらないということになると思います。だから、長期的な計画、たとえば五年後には順調に進めばどうするとか、並行して公庫の農地資金というものはどうするとか、これは説明できますか。
  94. 大和田啓気

    大和田政府委員 四十億に対応する農地、未墾地は大体三千町歩足らずでありますから、おっしゃるように、農地だけで七、八万町歩動いても確かにそれはわずかな数字でございます。しかし、これは指定町村が四百で、全国の三千幾つの町村ではございませんことと、それから農地管理事業団が幸いにして出発いたすとしましても、事業の実施は早くて十月でございますから、大き目に見積もって二分の一しか平年ベースで仕事ができないわけであります。したがいまして、最初の四十億という金は、私どもも決して多い金額ではなく、少ない金だと思いますけれども、二年度以降はそんなに少ないものではございません。農地管理事業団の事業の実施というのは、私も、上から押しつけて毎年何百というふうに必ず指定するというふうには言わないで、下のほうからといいますか、農家あるいは市町村のほうから希望がある場合には、おおむね五年間くらいで全国の農村にそれを及ぼす考えでありますから、もしも大方の御賛同を得て、この事業が順調に進みますならば、初年度四百、以下四年間にそれぞれ五百ずつくらい指定いたしますと、四十五年度に二千四百町村に指定があるわけです。そこで、そのときにおける農地の移動がどのくらいになるかということ、これも推定でございますけれども、いま七、八万町歩が大体八、九万町歩くらいには少なくともなるでありましょうから、その四割というふうにいたしますと、四十五年では、大体農地だけで三万三千町歩ほど農地管理事業団のあっせんによって動かす計算になります。それに見合うような資金も当然私どもは用意しなければ、この法案を出す意味がないというふうに考えておるわけでございます。
  95. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長に申し上げますが、先ほど農林大臣答弁に一時間とられたわけですから、きょうはまだこれで質疑終了というところまでいかないわけです。したがって、残余の質問は次の機会に保留さしてもらって、本日はこの程度で終わらせたいと思います。
  96. 中川一郎

    中川委員長 次会は来たる十七日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十二分散会