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大和田政府委員 農協の
農地信託の問題は、お説のとおり、私どもが当初期待していたほどはいきませんで、現在全国で百六十件ほどございます。三十八年に三十一件、三十九年に七十九件、四十年に五十件、計百六十件でございます。これは先日も申し上げましたけれども、農協による
農地信託が十分伸びませんことは、伸びるべき地盤があるのにもかかわらず伸びない理由といたしましては、
一つは、確かに小作料の水準の問題があろうかと思います。これは反当千百円程度の水田の小作料でございますから、それをもらってもしかたがないということが、どうも
農地信託が動かない
一つの理由だろうと思います。
もう
一つは、農協の性格といいますか、決して農協を非難する
趣旨ではございませんけれども、現在の農協は、何といっても信用事業、購買、
販売事業でございますから、そういう経済団体の農協と
農地信託というのは、どうも多少異質の、なじまないものがあるのではないかと思います。もしも農協が、いわば
生産事業といいますか、
農業の
協業化の面に今後入っていきますと、私はまた関心の度合いが違ってくると思いますけれども、現在私が耳にいたしておりますことは、要するに、学校の先生やなんかが異動なんかで
土地を離れて、農協に持っていって頼むと、どうもわしのところは、信託の
規定を置いているけれども、めんどうくさいからやりませんと言われるという話をたまに聞くわけです。これは農協の現在の事業の性格からいって、ある程度やむを得ない面があろうと思いますけれども、積極的に農協がこの問題に取り組んでいるところが決して全部ではございません。その点が確かに問題ではないかと思います。このことは、実は
農業基本法が成立いたしましたあとで、それぞれの
政策を肉づけするときに、信託的なものを農協がやることが適当か、あるいは何か特別の組織をつくって、それがやることがいいかということをだいぶ議論した
経過もございます。したがって、現在農協と
農地管理事業団を並べて、どっちが適当かということを形式的に議論すれば、私は、事柄としては、現在のところ、農協よりも、
農地管理事業団が
農地の信託をすることに適当だというふうにも言えるだろうと思います。ただ、現在農協がとにかく百六十件でも信託をやっておりますし、それから今後の農協の事業が一体どういうふうに変わるか、現在のように純粋に経済事業だけではなくて、多少幅広く
生産の領域に農協が踏み出さないとも限りませんから、私は、制度としては、やはり農協に信託をやってもらうという制度を残しておいたらいいというふうに思います。したがって、
農地管理事業団の事業実施地域として指定された村では、そこで農協が信託
規定を置いて信託をやっておりますから、形式的には確かに同じようなことを両方でやるということになりますけれども、それぞれの
意味があることで、競合しても、それは当分いいではないか。農協が
農地の信託について今後どういうふうに
考えるか、あるいは農協の
仕事がどういうふうに転換するかということに
関連して、将来あるいは二本立てにすることがあまり
意味がなければ、どちらかに割り切るということも必要でありますけれども、現在のところは、
事業団なり農協なりが両方
農地の信託をやっても、住民も困らないわけでございますから、いいのではないかと私は思っております。