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1966-04-19 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十九日(火曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 倉成  正君 理事 小枝 一雄君    理事 舘林三喜男君 理事 本名  武君    理事 赤路 友藏君 理事 東海林 稔君    理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    坂村 吉正君       笹山茂太郎君    白浜 仁吉君       高見 三郎君    中川 一郎君       野原 正勝君    野呂 恭一君       藤田 義光君    兒玉 末男君       西宮  弘君    松浦 定義君       森  義視君    湯山  勇君       中村 時雄君    林  百郎君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         林野庁長官   田中 重五君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    中橋敬次郎君         農林事務官         (林野庁林政部         長)      木戸 四夫君         農林事務官         (林野庁林政部         調査課長)   高須 儼明君         農 林 技 官         (林野庁指導部         長)      福森 友久君         農林事務官         (水産庁漁政部         漁業調整課長) 安福 数夫君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      降矢 敬義君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 四月十四日  委員森義視辞任につき、その補欠として足鹿  覺君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員足鹿覺辞任につき、その補欠として森義  視君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員玉置一徳辞任につき、その補欠として伊  藤卯四郎君が議長指名委員に選任された。 同 日  委員伊藤卯四郎辞任につき、その補欠として  玉置一徳君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 四月十九日  野菜生産出荷安定法案内閣提出第一三一号) 同月十四日  果樹農業振興特別措置法の一部を改正する法律  案に関する請願(池田清志紹介)(第三〇二  〇号)  農林漁業団体職員共済組合法改正に関する請  願外三件(受田新吉紹介)(第三〇二一号)  同(原田憲紹介)(第三〇二二号)  同外四件(丹羽兵助紹介)(第三一〇一号)  同(臼井莊一君紹介)(第三一〇二号)  同(稻村隆一君紹介)(第三一七五号)  同外二十一件(小沢辰男紹介)(第三一七六  号)  同外四件(小山長規紹介)(第三一七七号)  同(原健三郎紹介)(第三一七八号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  入会林野等に係る権利関係近代化助長に関  する法律案内閣提出第一一一号)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  入会林野等に係る権利関係近代化助長に関する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許可いたします。森義視君。
  3. 森義視

    ○森(義)委員 先日の質問で、政府は今度考えておる入り会い林野の整備については、まず私権化をしたあと行政指導でやる、いわゆる生産森林組合協業化指導していく、こういうことで、その問題について若干入ったわけでございますが、そこで質問が保留になっておりますので、引き続いて、その点でお尋ねをしたいと思います。  この間も、大蔵省中橋税制第一課長生産森林組合税制についてお尋ねしたわけですが、林野庁として、今度どのように生産森林組合に対する税制をお考えになっておるのか。個人経営の場合においては、いわゆる林業所得から所要経費を引いて、それに対して五分五乗方式で、一般所得分離課税になっているわけですね、林業税制の場合は。ところが、生産法人の場合は、配当一般所得総合課税になるわけですね。そういう形で、個人所得の場合と団体の場合との税制について、いわゆる協業方式生産法人のほうが税率が非常に悪くなるわけです。そういう問題が生産森林組合発展を阻害している要因になっている。こういうことをこの間申し上げたわけなんです。それについて、政府が今後入り会い林野を整備して生産森林組合行政指導していくのだ、こういう方針を立てておるのですが、その一番大きな生産森林組合発展ネックになっている税制の問題について、この法律関連をして、何か具体的に税法の一部を改正するとかいう点についてお考えになっておられるのかどうか、そういうことについてお尋ねしたい。
  4. 田中重五

    田中(重)政府委員 税制の点につきましては、さしあたり、この法案考えております生産森林組合ができる場合の税制優遇措置を用意いたしております。これから独立した生産組合として経営が進められる場合には、現在では、この間も論点になりました、現在与えられている優遇措置、つまり、この法人が常時従事してきたその実態に応じた給与、賞与あるいはその他の手当を支払った場合、損金算入優遇措置がございますけれども、それ以外につきましては、今後入り会い林野権利関係の改変後における生産森林組合実態をよく見ました上で、その税制上の改善措置考えてまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  5. 森義視

    ○森(義)委員 手続上に必要とする税制上の問題については、法律の中で明らかになっておりますからいいのですが、生産森林組合法人化したあと税制の問題については、なるほどいま長官が御答弁のように、いわゆる特殊法人としての税の軽減措置が講じられている。一般法人の場合三百万円以下が三一%、特殊法人の場合においては二六%。ところが、従事割り分配金損金として落とされますけれども、いわゆる経過年度に対するあれが全然見られていないわけです。したがって、事業年度収入が多くあった場合は、従事割り分配金を除いたあと利益は、配当金という形で法人加盟者に渡されるわけです。その場合に、その配当金一般所得との総合課税になるわけですね。そうでしょう。これはいわゆる個人山林経営の場合の分離課税と違うのです。個人の場合においては、一般所得と分離して、そして収益の中から所要経費を引いて、それを五分五乗方式でかけて、それが分離課税でかかるわけです。そういう個人経営の場合の山林所得に対する課税方式と、こういう協業経営の場合の課税方式と違うわけです。そういう問題について、具体的にどういうふうにお考えになっているのか。生産森林組合行政指導をやって、入り会い林野を開拓したあと、そういう形になっても、こういう形の税法を新たに考えておる、したがって、生産森林組合法人に切りかえる行政指導にひとつ協力してほしいという具体的なものを出さないと、いままでの生産森林組合ネックが解決されない限り、行政指導だけではなかなか進んでいかないんじゃないかと思う。したがって、この機会に、生産森林組合の一番ネックになっている税制についてはこういうふうに考えておる、これは具体的に今後大蔵省とも話し合ってぜひ実現したいという明快な確約が得られるならば私はいいと思うのです。ところが、そういう具体的な内容を持った確約が得られておりませんから、これはなかなかむずかしいんじゃないか、こういうふうに思うのです。
  6. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、仰せのとおり、普通の法人総合課税と変わらない扱いにはなっておりますけれども、現在といたしましては、従事割り配当として受けました配当金について、受けたほうの側で山林所得として分離されて、五分五乗の制度にはなっております。いま先生のおっしゃる意味は、生産森林組合としての法人ではあるが、こういう入り会い林断権利関係近代化に伴って成立していくところの生産組合税制上の優遇措置について考えるべきであるという御趣旨だと考えますが、これは仰せのとおり、私もそのように考えておる次第でございます。ただ、この問題につきましては、なお関係方面との十分な了解、協議が必要であると考えますので、その段階でその具体化について十分慎重に検討いたしたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  7. 森義視

    ○森(義)委員 これは二重課税になるのじゃないですか。生産森林組合で、法人税としていわゆる源泉所得という形で取られているわけです。そしてまた、従事割り分配金、それから配当金が、総合所得の中で税金として加算される。そうすると、一方で源泉所得という形式で、生産森林組合税金を払っておる。そしてまた、自分の所得として一般所得とダブって、累進課税方式ですから 総合解税という形でふえるわけですね そうすると、二重課税になるんじゃないですか。
  8. 中橋敬次郎

    中橋説明員 税金の問題でございますので、私からお答えをさせていただきます。  ただいま御指摘の、従事分量分配金以外の配当生産森林組合から組合員に支払われました場合には、仰せのとおり、私ども配当所得として受け取る側で課税しております。これは株式会社におきます株式についての配当を受け取りましたものと、全く性質は同じというふうにお考えいただければ幸いでございます。出資に対してそれの利益が出ましたものを分配いたすものでございますから、その実質は配当所得でございまして、分量に応じて配当いたしますものとは、性格上全く違っておると私ども考えております。  いま仰せのように二重課税になっておるんじゃないかというお考えにつきましては、たとえば株式会社において法人所得課税になりまして、それがまた課税配当という形で株主にまいりました場合には、もちろん株主について所得税課税が行なわれます。これを二重課税ではないかという御意見、これは確かに一つの御見解であろうかと思います。現在、法人税課税におきましても、完全にこれを二重課税であるというふうには考えておりませんが、法人所得課税いたします場合には、その法人というものは株主によって構成されておるという点を非常に重視いたしまして、法人擬制説的な考え方で現在法人税課税いたしております。したがいまして、法人におきましてそこに発生しました法人利潤課税をいたしまして、その課税後の所得のうち株主分配をせられますと、個人において配当所持として所得税課税いたします際には、配当控除という制度を持っておりますが、この配当控除という制度は、受け取り配当金の一五%を税額控除いたすことによりまして、法人税配当所得に対します個人所得税というものを調整いたしておるという現在の考え方でございます。したがいまして、出資に対します配当に当たるこの生産森林組合におきますところの配当分について、二重課税であるという御見解は、現行体制では当たらないと思います。あるいはこの体制を変えまして、かりに配当控除がなくなったということを考えましても、それはまたそれなりに、法人所得個人所得というものを独立した課税客体であるというふうに考えるわけでございますから、理論的には一貫したものであろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、法人段階課税し、それの課税後の部分をまた個人において課税するということは、それだけでもって二重課税という非難は当たらないんじゃないかと思います。
  9. 森義視

    ○森(義)委員 中橋さんに引き続いてお尋ねしますが、一般林業個人経営の場合には、その所得から所要経費を引いた分に対するいわゆる五分五乗方式でかけられる。その場合は、他の一般所得とは総合課税されない。分離課税なんですね。ところが、生産森林組合法人の場合には、法人税がかかって、そしてあと余剰配当に対して、また一般所得との総合課税になる。これは個人経営の場合とこういう協業化の場合との税制において、だいぶ違うじゃないですか。そういうふうな協業化方向というものが、むしろ税法全体からいうならば有利にならなくちゃならないと私は理解するのです。ところが、それが逆に、いまの場合においては、個人林業経営者課税方式と比べれば不利な立場になっていますね。このことが生産森林組合発展を阻害している最大の要因になっているわけです。その点について、いま長官のほうから、その税制の問題については大蔵省とも話し合って、いまの欠陥を是正する努力をする、こういうことなんですけれども、いまこの場で、幸いお見えになっていますから、そういう話し合いができるのかどうか、大蔵省見解をもう一回ただしておきたいと思います。
  10. 中橋敬次郎

    中橋説明員 さらに問題を進めまして、個人段階におきましてその山林所得を五分五乗、分離いたしておるという点を御指摘になっておるわけでございますが、これはまた私ども山林所得に対する考え方があらわれたものでございます。と申しますのは、私ども山林所得考えます場合には、まさにその山林所得者が年々木を切りまして年々山林所得を得ておるという状態は、通常ではなかろうというふうに考えております。ところが、所得税法人税と違いまして、相当幅の広い累進課税を適用いたすことになっておりますので、前回にも申し上げましたように、多年にわたって発生いたしました所得を一時に実現しましたものに対して累進税をかけるということは、その所得性質上不適当であろうということから、何らかの累進緩和の方策というのを所得税では考えておるわけであります。これはあに山林所得のみに限りませんで、たとえば土地を売りましたときの譲渡所得に対する課税におきましても、これはやはり長年にわたって発生いたしました所得を一時に実現したものに対して課税するわけでございますから、現在は通常譲渡所得につきましては二分の一課税ということをいたしております。あるいはまた私ども退職所得を受けました場合にも、これを二分の一、分離課税しておるというような状態がございます。それで、山林所得につきましては、五分五乗という方式でもってこの累進緩和所得税で行なっておるわけでございます。それから分離しておりますのも、たまたまそういう山林所得を得たという人について、他の所得はどの程度あるかというところは、上積みして税率の高いものを適用するというよりは、分離いたしまして、山林所得だけがあるという人を想定して課税したほうがいいのではないかということで、現行の五分五葉、分離方式がとられておるわけでございます。  ところで一方、そういうものを協業化というような形でもって法人形態として行なう場合に、それに対しますところの出資配当ということになりますと、これはまた、他の全くそういう山林経営目的としておる、それのみをもって存在しております法人利潤というものが、個人段階においてどう課税されるべきであるかという点から考えなければならぬと思います。これは通常製造業者個人経営から株式会社に変わります場合に、その個人経営個人所得に対する課税と、それからそれを配当という形で受けました場合の配当所得に対する課税というものと同様の性質に変わったというふうに私ども考えております。山林経営そのもの目的としました生産森林組合という法人でございますから、それに対して出資いたしまして、出資に対する報酬というものが与えられました場合には、私どもは、これは株式配当といったものと同じように考えてしかるべきではないかと思っております。そこで、事業従事分量分配金と、それから出資に対応いたしますところの配当金というものとは、私どもはやはり性格的には違っておるのではないかと思っております。この点につきましては、なお私どもも、林野庁見解もよく承りつつ、慎重には検討いたしてまいりたいと思いますけれども、前にも申し上げました問題、それからきょう御指摘の問題、いずれも法人課税個人課税、両者につながっておる非常にむずかしい問題でございますので、この席で必ずそういうふうに実現できるということは断言できませんし、むしろ、基本的には非常にむずかしい問題に連なっておるというふうに、この前も申し上げたと同じように、きょうも申し上げる次第でございます。
  11. 森義視

    ○森(義)委員 たいへんむずかしい問題なんですけれども、この間中橋さんから御答弁があった中.で、山林所得の場合においては、経過年度のあれがわからない、データが明らかでない、こういうことで、例の従事割り分配金ですか、これを除いたあとのものはこの配当金と見ざるを得ない、こういう説明だったと思う。そうじゃないですか。途中のデータが明らかになれば、それを従事割り分配金として落とせる。それが明らかでないから、したがって、たとえば事業を行なった年から次の年まで七年間あいておった。七年目にその事業を行なった。ところが、七年間のブランクというものに対する従事割りのあれが明らかにならない、そういうデータがないから、結局計算できない。したがって、その事業を行なった従事割り以外の余剰利益については、収益については、これは配当金という形で一般所得総合課税される、こういうことになっておるわけですね。したがって、その途中の経過データが明らかになれば、これは従事割り分配金として、損益として落とされるかどうか。これは今度の森林計画の中でも、個別経営計画というのが明らかにされて、それに対して政府がオーソライズした場合、これははっきりとそれが出てくるわけですね。そうすると、そういうデータが出てきた場合においては、それは途中における従事割り分配金として損金に落とすことができるかどうか。この間の答弁ですと、データが明らかになれば落とせるというふうに理解をしたのですが、そのデータが明らかになった場合においては落とせますか。
  12. 中橋敬次郎

    中橋説明員 前回の私のお答えが不徹底でございましたので、ちょっと御理解を十分賜わってないと思いますので、補足して御説明きせていただきたいと思います。  従事分量分配金としてお配りになる分、これは組合において給与を支払っていない生産森林組合でございますれば、組合におきましては損金になるわけでございますが、そのときの従事分量を見ます期間、これをいつの期間を見るかは問題でございます。それで、現在のたてまえでは、あらゆるこういう生産森林組合等のものにつきまして見ます場合にも、その事業年度におきますところの組合員従事分量というものの基準でもちまして分配するものは、損金に落とせるということになっておるわけでございます。この前申し上げましたのは、なるほど、生産森林組合におきましては、その事業年度だけにおきます短い一年間の従事分量だけでもって分配をなさるということと、それからずっと長い期間、その森林の生育いたしますところの長い期間におきまして従事分量をとりまして、その基準で配られるということと二つあるわけでございますが、現在のたてまえでは、その前者で申しましたように、事業年度におきますところの、その一年間におきますところの従事分量基準としまして分配せられる場合には、これは給与を出さない生産森林組合では損金として落とせるわけでございます。ところが、それがまさに、大体長年にわたります従事分量も、事業年度というそのうちの一年間におきますところの従事分量も、まあ脱退をされる方とか死亡なさった方以外につきましては、ほぼ同じようなウエートと申しますか、そういうものに近いもので配られるというような観点から、私どもは、その長年のそういう事業従事分量というものを基準としてとることは非常に困難でありますから、事業年度の一年間の従事分量基準として配っていただくというたてまえをとっておるわけでございます。その点は、なるほど、生産森林組合におきましては、ほんとうは長い期間従事分量基準として分配するというのが筋ではございましょうけれども、それをまた一々記録をとり、それをもって分配をするということを立証することはなかなか困難であるというような観点から、現在では一年間内の従事分量基準といたしまして配っておられれば、それはやはりそれとして、従事分量分配金として損金に取り扱っております。こういうことを御説明したつもり、だったのであります。
  13. 森義視

    ○森(義)委員 だから、その長い間の従事分量分配金データの上で明らかになれば、それは損金として落とせるかどうか。データが明らかでないから、単年度従事分量分配金だけしか落とせない、こう言っておるわけですね。だから、長い間のデータが明らかになれば、それは落とせるのですか。
  14. 中橋敬次郎

    中橋説明員 その問題は、確かに制度改正を要します。私どもは、いま御説明申し上げましたように、長年のデータを記録せられて、それで分配基準としたということを立証することも困難ではないかという点が一つと、それからもう一つは、先ほど御説明しましたように、その長年の従事分量基準といいますものと、事業年度内におきますところの従事分量基準というものが、どの程度異なるものであるか、脱退者とか死亡者というものを除きますれば、各人別のパーセンテージをとってみましたときに、そんなに長い期間とってやらなければならぬというふうに制度化いたさなければならぬほど相違があるのかどうか、その辺はよく実態を調べまして検討いたしたいと思います。ただ、むしろ、そういうことになりますと、また森林組合のほうでも、非常に長年にわたりますところの、そういう従事分量を精細につけて、それによって分配しなければ損金にならぬということになっても、かえってむずかしい問題もあると思います。この点は両方合わせまして、それから先ほど私の申しましたような、長年にわたりますところの従事分量と、それから事業年度内におきますところの従事分量と、そう大きく変わっているのかどうかというような点も、今後慎重に検討いたしたいと思います。
  15. 森義視

    ○森(義)委員 林野庁長官、いま大蔵省のほうの御答弁をお聞きになったと思うのです。やはり今度の生産森林組合指導をする場合、その問題を事前大蔵省と話し合って、生産森林組合法人化されたあと税制の問題でこういう特典が与えられるのだ、いままでと違ってこういうふうになるんだ、そういうことが明らかにされて、初めて生産森林組合への個別経営計画行政指導がスムーズに乗っていくのではないか、こう思うのです。だから、その点が一番ネックになっているという点を考えて、今度この法案が通ったあと行政指導される場合に、その事前に、その問題についての何らかの話し合いを明らかにしておいていただきたい、こういうふうに思うわけなんです。まあ、この問題は、入り会い林野だけの問題じゃなくして、林業税制全体と関連性を持つ問題だから、全体とのにらみ合わせの中で考えていただかなければなりませんけれども、さしあたり、入り会い林野生産法人化するという方針ですので、その中で起きておる税制上のネックについてただしておきたいと思って、お尋ねしたわけですが、その点、もう一回はっきりと長官のほうから、この法案が施行と同時に、そういう税制法上の大蔵省との統一見解を明らかにして、いままでのネックを排除する、こういうことをもう一回明らかにしてほしいと思うのです。
  16. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点は、確かに仰せのとおりでございます。いま税制課長が申しましたような、収入のない一定の期間の常時従事の資料を整えるということにも、非常なむずかしさがございますけれども、その点につきましては、それの改善についても十分に検討すると同時に、また一方、この生産組合の所有する山の法正林的な森林造成方向へも持っていく必要がございますし、いずれにいたしましても、今後この法案の成立後における行政指導の最も重要な問題点といたしまして、先生のお説を十分に検討してまいりたい、こう考えている次第でございます。
  17. 森義視

    ○森(義)委員 林野庁がそういうことを言うたらいかぬですよ。途中の経緯が明らかにならぬからとか、むずかしいからとか、林野庁がそんなことを言ったら、大蔵省は絶対にそんなこと承認しないですよ。問題は、今度の長期需給計画を見ましても、個別経営計画をはっきり出さして、それに基づいてやらすのでしょう。そうでなかったら、長期需給計画なんて立つはずないですよ。個別経営計画、長期計画、森林整備計画、こういう形で、個別経営計画を出さして政府がやらすのでしょう。そうでないと、あの個別経営計画なんて絵にかいたもちになるのですよ。私は、この前の委員会でもその問題をついたわけです。今度これをはっきりさしてきたらわかるわけなんですよ。データが出てくるわけでしょう。データが出てきたら——そんなデータがとれないからとか、むずかしいからというようなことで、林野庁がそんな態度でおったら、大蔵省なかなかうんと言いませんよ。林野庁が、はっきりとその間のデータを出せる、したがって、そのデータに基づいてはっきりしてもらうということを明言していただかないとだめだと思う。林野庁がそんなたよりないことをしていたら、大蔵省はなかなか聞きませんよ。
  18. 田中重五

    田中(重)政府委員 いま私がお答えいたしましたのは、いままでのことについて申し上げていたわけでございますが、今後のこの法案の運用の面におきましても、またそのための個別経営計画指導におきましても、十分にその点に配意して、そうしてその資料の精密な積み上げが可能なように考えてまいりたいと思います。それが税制上の改善の基礎になるように指導したい、こういうふうに考えております。
  19. 森義視

    ○森(義)委員 いままでの分とこれからの分と、これは区分しなければならぬと思います。いままでの分を全部明らかにすることはむずかしいと思います。これからの分は私は明らかになっていくと思うのです。ですから、その点ははっきりとして、そうして大蔵省話し合いして、税制改正すべき点があれば改正してもらって、少なくとも政府が今後生産森林組合法人化へ行政指導していく場合には、その点をまず明らかにしてからかかってもらわなければ困るということを、念を押して申し上げておきたい。  それでは次に入りますが、昭和二十四年の漁業法改正のときに、漁業入り会いの問題をどういうふうに整理されたのか、お尋ねしたいと思います。現行漁業法成立の昭和二十四年のときに、漁業入り会いというのですか、漁業にもそういう入り会い権があったと思うのですが、そういう問題をどういうふうに法制上整理されたのか。
  20. 安福数夫

    ○安福説明員 お答えいたします。  この二十四年の新しい漁業法で明治漁業法を改正した際に、入漁権を含めまして、漁業権を一斉に消滅さした次第です。それに基づきまして、政府として漁業権、入漁権を含めて百八十一億少しの漁業権証券を交付して、一斉にそれを消滅さした、こういうことでございます。
  21. 森義視

    ○森(義)委員 当時、入り会い権は、簡単に言うならば、百八十一億で政府が買い取ったということですね。
  22. 安福数夫

    ○安福説明員 買い取ったと申しますと、ちょっと語弊があるかと思いますけれども、漁業権なり入り会い権を含めまして、これをなぜ消滅せざるを得なかったかという事情を簡単に御説明申し上げたほうがいいのじゃないかと思いますので、申し上げますと、漁業と一般の産業、土地を中心としました、土地に結びついた産業との違いというものは、根本的にちょっと違うのじゃないかという感じがするわけでございます。というのは、漁業というものは、非常に機動性を持てば持つほど漁業としては進歩すると申しますか、高度化する、そういう性格を持っておると思います。一方、普通の産業は、定置化すればするほど高度化するといいますか、定置化して集約的にそれを利用するという性格を持っておると思うのです。したがいまして、漁業が歴史的に見まして進化発展しますのは、徳川期に入ってのことだと思うのでございます。その後の漁業の発展というものは、農業から分化して、漁業として独立の道を歩む、こういう経過をたどっていったのが漁業の発展の過程だと思うのです。したがいまして、だんだん漁業自体が機動性を持ってくる、こういう問題もあるわけであります。そこに土地と水面を利用する利用の違いの相当本質的なものがあるんじゃないか、こういうふうにわれわれも考えており、実態もそういうものであろう、こういうふうに考えております。したがいまして、水面を利用する場合には、土地の場合には非常に単一的、単純化された利用が可能でございますけれども、水面の場合は、対象とします魚もいろいろ多種多様ございます。それからそのほかに海草、貝類こういったものがいろいろあるわけであります。こういったものをいろいろ含めまして、水面の利用、それをとる漁業というものは、非常に複雑な立体的な漁業形態というものがあるわけであります。そういう土地を中心とする産業の場合と非常に違う実態を持っているわけであります。  それで、徳川時代から明治の漁業法にかけまして、どういう漁業権と申しますか、漁業をやる権利というものが固定化してきたかという、その漁業の進化した過程を歴史的に振り返ってみますと、徳川時代には、藩政の徴税機構の一つとしまして、漁業が進化してまいる過程において、領主が藩政の収入源の代償としてだんだん裏づけしていった、これが徳川時代から確立してまいりました浦浜制度であったと思うのです。それが明治に入りまして、明治十九年に漁業組合準則という規則を政府がつくっております。それで、組合というものをつくりまして、従来の徳川時代からの浦浜制度というものを組合という近代的な一つ団体に切りかえていったわけです。そこで、徳川時代からのそういった慣行の漁業というものを固定化したのが明治十九年でございます。その後、いろいろ漁業についての立法の歴史があるわけでございますけれども、三十四年に至りまして、初めて法律の形で漁業法というものができたわけでございます。その際にも、漁業が徳川時代からずっとそういう自然発生的な産業として発展した過程をそのまま固定化したというものが明治漁業法であったわけであります。そこに、漁業の実態、漁業が進化してまいります関係との間に一つの問題があったというのが、二十四年の漁業法改正の場合の前提になっているわけでございます。と申しますのは、制度というものを一つつくり上げますと、ある意味では硬直性を持つといいますか、固定化するという性格を持つわけであります。先ほど申し上げましたように、漁業自体が、ある意味では機動性を持てば持つほど高度化するような性格を持っておるということはおわかりになると思うのですが、そういう関係で、固定化する制度と、漁業の実態、漁業の進化というものとの間に、矛盾相克の問題が出てきたわけであります。したがいまして、昭和二十四年に改正いたしました漁業法では、そういう漁業権あるいは入漁権というものの固定化は、ある程度漁業の発展進化にマッチしたように機動性を持たす、そういう切りかえをせざるを得ない、そこに漁業の生産力の発展があるだろう、こういう認識に基づいて昭和二十四年の漁業法の改正が行なわれた、こういう経緯でございます。したがいまして、そういう形において、徳川時代から非常に硬直性を持っておりました漁業権、入漁権、こういったものを、そういう根本的な考え方の否定——と申しますと語弊があるかと思いますけれども、そういう漁業の進化発展にマッチしたような、あまり硬直性を持たないような、そういう性格を新しい漁業法では打ち出しているわけであります。そこに、漁業調整委員会制度なり、あるいは漁場を使う場合の前提となる漁場計画をつくる過程において、そういう社会的、経済的な条件を織り込んだ漁場計画、計画的に漁場の利用をつくっていく、こういう考え方が二十四年の漁業法には織り込まれているわけであります。そういう非常に大きな制度改正という前提に立って、明治以前から百数十年続いております漁業の実態というものを一切白紙に返す、こういう趣旨で政府の資金が投入された、こういうことでございます。  非常に長くなりましたが、そういう経過で昭和の漁業法ができた、こういうことでございます。
  23. 森義視

    ○森(義)委員 入り会い権の質問の中だから、土地と海面との問題を意識しながら言っておられるわけですけれども、あなたは水産庁として、漁業の問題だけ言ってもらったらいいのですが、そこで、大体経過をずっとお聞きして、浦浜制度から明治十九年に一つ組合組織になっていって、それから三十四年に漁業法が成立した。それには浦浜制度からくるいまの入り会い制度をそのまま固定化したものとしてきておる。それではいまの進歩した漁法に追従していけないから、昭和二十四年に変えたということなのです。これは考え方によっては、今度の山村の入り会い林の場合においても、経過というものは、漁業権の整理の場合とよく似ておる一面性を持っておるわけですよ。その場合に、二十四年の漁業法の改正のときには、国が百八十一億という金を投じておるわけですね。  ここでひとつ林野庁長官にお尋ねしたいのですが、入り会い林野の今度の整理で、歴史的な経過というのは——経済的な要素、背景というものは、だいぶ違いますよ。漁業と入り会い林の場合とは違います。ところが、歴史的な経過というのは、よく似た一面を持っておるわけです。漁業の入り会いを整理する場合の国の方針、これは昭和二十四年の漁業法の改正によって、長官もよく御存じだと思うのですが、これを今度の入り会い権の整理の場合にどういうふうに対比して考えられたのか。あるいは考えてないとすれば別ですが、考えられたとすれば、どういう面で漁業の入り会いの問題と差があり、こういう点においてこういう措置がとれぬというふうなお考えがあるならばお聞かせ願いたい。
  24. 木戸四夫

    ○木戸説明員 漁業権の場合は、先ほど漁業調整課長からお話がありましたように、簡単に言いますと、百八十一億で政府が買い取った、こういうことになっておるわけでございますけれども、実は単純に政府が買い取る、こういう方針をとったわけではなかったわけでございます。その際には、漁業免許料として百八十一億を回収する、こういうことになっておったわけでございますが、一年間は回収いたしましたけれども、翌年議員修正にあいまして、その回収をすることが削除されたわけでございます。したがいまして、当初から漁業権をみずから国が買い取る、こういう方針をとったわけではなかったわけでございます。そこで、入り会い林野の場合も、いろいろ考えたわけでございますが、漁業権の場合は、議員立法で、漁業権を与えたものから回収するということが削除されたわけでございますけれども、財政上現在そういうような措置がとれないではないか、こういう考え方に立ちまして、個別私権化ということで、国が買い取る措置を講じなかったわけでございます。
  25. 森義視

    ○森(義)委員 いまの説明にありましたように、百八十一億の金が一年度だけ回収されて、あと改正でパーになってしまったのですね。もう回収しなくていいようになったでしょう。三十年間で回収するということになっていた。それが一年間だけで、あとは回収しなかった。入り会い林の場合は、国が今度の入り会い整理についてそういう形式のものを全然考えておられないわけですね。歴史的には同じような経過をたどって、こういう漁業権なりあるいは入り会い権なり、山と海との違いたけ——内容は違いますけれども、簡単に言えば山と海の違いだけです。その場合に、漁業制度の場合においては、国がこれだけの金を出して整理されたのに、入り会い林の場合には全然出きないということは、どういうことなのですか。いまの金額に直してみたらたいした金です。昭和二十四年の百八十一億というのは、普通勘定しても三百倍ということですから、二百億として六兆になるのですね。それだけの金を投じて当時の漁業権を一応買い取った形式になっておる。あとは回収するということになっておったけれども、回収してないのだから。ところが、入り会い林の場合は、そういう問題については全然考慮に入れてない。これは私は、同じような古い慣習としてとってこられた産業上の一つの重要な問題だと思うのです。だから、何らかの形を入り会い林の場合においても考えるのが、林野庁としては正しいやり方ではないかと思うのですけれども、なぜ入り会い林の場合には国のほうから金を出して整理するということを考えられなかったのか、その点を長官から御答弁願いたい。
  26. 木戸四夫

    ○木戸説明員 御承知のように、昭和二十四年にやりました漁業制度改正におきましては、農地制度、農地改革と大体同じような考え方に基づきまして、要するに、漁業権の再分配をやる、こういう考え方に立って、従来の専用漁業権を共同漁業権に変えまして、期間を十年といたしまして、十年ごとに更新するということで、その固定化を防止することになっておったわけでございますが、今回の入り会い林野法におきましては、そういうような入り会い権の再分配といいますか、それは入り会い権者にだけ再分配をするということで、漁業法の趣旨とは違った考え方に立って今度の法律を立案したわけでございますので、そういう違いがあったので、政府としては、政府が直接買って分配するという考え方に立たなかったわけでございます。
  27. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、もちろん、そういう内容は若干違うわけですから、必ずしもいわゆる入り会い林を漁業入り会いと同じように買い取り方式でやれとは言いません。しかし、それにかわるべき——少なくともこういう長い歴史を通じて同じような形式をたどってきた入り会い権の問題について、買い取り方式にかわるべき国の入り会い林整備に対する財源的な措置、そういうものを別に考えておられますか。
  28. 田中重五

    田中(重)政府委員 この入り会い林野近代化につきましては、御承知のとおりに、林業基本法に基づいて、その林業基本法の趣旨の具体化施薬の一環として、これを取り上げたということがまずスタートでございます。  そこで、林業基本法の趣旨は、あくまでも林業従事省みずからがその経営の意欲を持って、そうして一定の計画に基づいてその経営のしかたを近代化していく、その場合に、国としては、でき得る限りの助成措置を具体的に講じていこうというのが林業基本法の趣旨だと考えます。そういう意味からいいまして、入り会い林野の場合にも、やはりその林業従事者の経営近代化に対する熱意、これがまず基本とならなければならない。その熱意に基づく土地利用の高度化によるもろもろの計画がまず先行をいたしまして、それに対して補助あるいは税制、金融上の助成措置を講じていこう、こういう考え方でございまして、上のほうから国がこれを何らかの一定目的に従って支配的に引っぱっていくという考え方はないというふうに私ども考えている次第でございます。しかもこの入り会い権の内容については、先生御承知のとおりの、きわめて複雑な慣行によって形成されてきておりますだけに、やはりその入り会い集団の近代化への熱意が非常に必要であると同時に、この法案自体も、入り会い権者の自主的な創意くふうに基づいて、その意欲を示したところから取り上げていこう、こういう考え方でございます。
  29. 森義視

    ○森(義)委員 この間、入り会い集団の下から聞いた意見をひとつ資料として出してほしいと言って、まだ資料をいただいておらないのですが、いまおっしゃるように、要するに、下からの林業に対する経営の熱意というものが発露になって、政府はそれに対する熱意を有効に活用さすための方策として考えておる、だから発想が違うのだ、こうおっしゃっていますけれども、私は、おそらく各集団からのアンケートをとられた場合においては、そういう形になって出てきたものじゃないと思うのです。まだ資料をいただいてないからわかりませんけれども、やはり国の林業政策上、いわゆる国の高度の見地に立ったいまの入り会い林の粗放化の状態、あるいは全然その権利が明確になっていないから、それに対する経営意欲がない、こういうような問題に対する国の政策として、この入り会い林好の整備の考え方を出しておられるわけです。だから、下から問題が出てきて、それに対して国が補助するということじゃなくして、やはり上から国が林業全体の見地からこの問題をどう取り扱うかという形で出しておられると思うのです。そこらあたりの発想の勅機が違う。そういう下から入り会い林町を何とかして権利を明確化して、もっと有効な活用ができるように国のほうで考えてほしいという世論が出てきて、それに対して農林省あるいは林野庁が政策を考えられたのとは、出発点において違う。長官考え方と違うわけなんです。その点は漁業の場合においても同じだし、林業の場合においても、やはり国の政策としてどう考えるかということが発想になっておって、それから出発してきて、それから入り会い権者全員の意見を聞いて、それに対して、それじゃこういう点が問題点であるのだから、それを解決するためにこうしようという考え方発展してきたと思うのですが、その点どうですか。
  30. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、仰せのとおりだと思います。林業基本法の十二条に掲げられたあの趣旨は、まさに国の意思をあそこで表明をしておるというふうに理解をしなければなりませんので、そういう意味では、先生のおっしゃるとおりだと思います。と同時に、またこの基本法の趣旨からいいまして、林業従事者、これの熱意がまずスタートにならなければならないということも、これも確かに事実だろうと思うわけでございます。  この前御要求の資料は、いまお手元へ差し上げてあるわけでございます。それをごらんになっていただきたいと思いますが、この前、林野庁調査課長から御説明を申し上げましたように、いま差し上げました資料の三ページをごらんになっていただきたいと思います。この三ページに「入会林野等整備に関する態度と基本的方向」というのがございます。これは、この前調査課長からも申し上げましたように、悉皆調査ではもちろんございません。「昭和三十九年度入会林野警備促進調査」によるところの全国三十六府県、百十市町村、三百三十七集落、それについての調査でございまして、これをもって全国を律するということには問題があるかもしれませんが、この三ページの表の上の段でまん中の「整備に関する態度」という欄をごらんになっていただきますと、この整備に対して意欲が上がっているというのが、三百三十七集落のうち二百七十一集落、率にいたしまして八〇・四%ある。これは一つの例でございますけれども、こういう点にもこの入り会い林野の整備の熱意がうかがえるというふうに理解していいのではないか、こう考えておる次第でございます。
  31. 森義視

    ○森(義)委員 私、この資料のとり方について実は知りたかったから、この間資料の提出を願ったわけですが、この資料で、確かに整備に関する意欲が大体八〇%ある。しかし、このことが、権利を明確化する、特に個別私権化するという形でどこへあらわれているのですか、そういう整備に対する意欲というのは。
  32. 高須儼明

    ○高須説明員 調査課長からこの資料につきまして御説明申し上げます。  ただいま長官から申し上げました第三表でございますが、この「基本的方向」という中に「個別経営」としてございますのは、これは当然個別私権化でございます。そのほかに、「組合経営等」と申しておりますのは、この法案にございます生産森林組合あるいは農業生産法人というような形におきまして、各個人個人の持ち分を明確化いたしました後に現物出費という形を通じてつくってまいりますものでございます。また「共有」は、これは民法上の共有でございまして、やはり持ち分の明確化をはかるというような考え方に立っておるものでございます。したがいまして、この個別経営と申しますものも、また組合経営あるいは共有、いずれの形におきましても、名個人個人の権利の明確化ということが一応の前提になっておるものでございます。  なお、御参考のために申し上げますと、大体ここに「意欲がある」というものが八割というような数字が出ておるわけでございますが、現在、昭和三十九年度林業改造改善事業対象九十一カ町村のうちにも、すでにこの計画で検討を開始いたしておりますのが六十六カ町村、また昭和四十年度の百町村の中にも、一応計画を予定いたしておりますのが七十三カ町村、これは北海道を別にいたしますと、大体八割見当かと思うわけでございます。したがいまして、林業構造改善地域の町村の意欲の分布状況、あるいはこのサンプル調査から見ました例で、非常に意欲を持っておる町村が非常に高いのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  33. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、この資料で、個別経営を希望しておるのが二〇・三%でございますね。これは個別私権化ということと理解をしておられるわけですね。
  34. 高須儼明

    ○高須説明員 さようでございます。
  35. 森義視

    ○森(義)委員 私は、この資料については、またあとで時間を改めて質問をしたいと思うのですが、いま入り会い林野の集団の人々の希望は、権利を明確にするということについてはかなり意欲を持っておられると思いますが、それが直ちに個別私権化をする、あるいは分割個別私権化をする、そういうことには必ずしもつながっておらないと思うのです。個々の個別経営の場合においても、そういういまの入り会い林野を権利者全体に分割個別私権化するという形にはつながっておらない。というのは、いまの入り会い林野といっても、同じ形であるのじゃないのですね。いろいろな形であるわけです。それをそのままの姿で個別私権化するということについては、入り会い権利者全体の中でまとまるものではありませんし、たまたま割り山方式の中で自分がいいところに当たっている場合には、それを個別私権化することには賛成があるかもしれません。しかし、そんな形には全体の形がないのだから、この個別経営を希望しておるのには、おそらくそういう割り山方式で、そういう有利な地域が自分の個別経営と同じような形になっておるけれども、権利が明確でないから、売買とかそういうことができない、そういう人たちの意見がここにあらわれているのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  この点については、あらためて質問をすることにいたしまして、先ほど長官も認められましたように、今度の入り会い林野の問題については、やはり林業基本法十二条に基づく精神の上から、国の意思として、はっきり上から、こういう入り会い林野を国土全体の活用という立場に立ってどう考えていくかということが発想になっておる。したがって、私は、先ほどの漁業権の問題について、国がそういう意思で整備をしていった考え方と直接的には結びつかなくとも、発想それ自体は同じ形式だと思うわけです。したがって、漁業権のときに、国がそれほどの負担をしながらこの問題を整備した。そういう考え方からいうならば、入り会い林野の場合に直ちにそれが適用できなくても、いわゆる買い取り方式というような、国が負担をして入り会い林野を整備するということじゃなくしても、入り会い林野のこれからの国土全体に対する活用の観点から促進するという立場に立つならば、やはり何らかの財政的な問題が背景になくてはならない。ところが、いままでの経過法律の案の内容を見ていると、いわゆる法律上の手続上の問題についての、たとえば登記だとか、あるいは不動産敗将だとか、そういう税制上の一部の特典はあります。しかし、国全体がこの問題について取り組む場合における国の財源的な裏づけ、あるいは国が入り会い林野を全部整備した暁には、その内容について、造林は全部国費でやるのだ、あるいはこの地域における林道施策はこうやるのだという、こういう関連施策がはっきりと出ておらなければならないと思うのです。少なくとも漁業ではあれだけの買い取り方式で金を出すなら、入り会い林野の場合においてはそういう税例上の特典だけで事足れりということでなくして、先ほど申しましたような、いわゆる百行造林の復活で全部それを国で造林するのだ、あるいは林道をこういうふうに整備をして、いわゆる入り会い林野というものを国の全体の森林資源の計画の中にこう組み入れていくのだ、こういう方針がはっきりとしておってもいいのではないか、その程度のことは漁業権と対比して考える場合においてはやっていいのではないか、私はそう思うのですが、その点についての御見解を承りたい。
  36. 田中重五

    田中(重)政府委員 この入り会い林野権利関係近代化後の国の財政支出について、十分に考慮することによって、この法案目的とするところを達成しなければならないということは仰せのとおりであると思います。それで、この入り会い林肝の近代化後の土地利用を高めていくという場合にも、やはり林業基本法の趣旨に基づくという意味から、その林業従事者の所得の向上、地域格差の是正という面がやはりはっきり出てこなければならないので、そういう面に国の助成の手を差し伸べていく必要がある、こういうふうに考えているわけでございます。上のほうからこれを全面的に買い上げ、あるいはいまお話しの中にございました国によるところの造林というような行き方が、はたして可能かどうかの前に、妥当かどうかという点も検討の必要があろうかと思います。やはり林業従事者をまず中心として、それによって造林の助成、これについては、造林の補助率のアップ等についても、この地域に対して別に考慮する必要があろうかと思いますけれども、当面の問題といたしまして、事実上の補助席の向上になるところの造林の点数加算であるとか、あるいは林道におきましては、林道の開設について優先採択をこの地域に対してしてまいるとか、あるいはまた造林とか搬出の面に対する林道の開設のしかたについて、きめのこまかい造林作業道式のものの普及をはかるとか、そういうような面はさしあたり取り上げていくことができるのではないか。同時に、地域の造林資金の不足という面では、公庫の融資ワクの拡大をはかるとともに、いま漸次拡大されつつあります造林公社等の援助によるところのこの地域の近代化開発、これも積極的に考えていく必要があろうかというふうに考えておる次第でございます。
  37. 森義視

    ○森(義)委員 いま考えておられるのは微々たることだと思うのですが、私は先ほどなぜ漁業権の問題を出したのかというと、少なくとも入り会い権を整備する場合、あれだけの漁業に対しては、そのとおりに入り会い林野をやれとは言えない条件がたくさんありますよ。ありますけれども、あれほど国が思い切った施策を講じておるのに、入り会い林の場合においては、造林補助の補助率を引き上げるとか、そういう微々たる問題で、この入り会い林の長年にわたるところの問題を整備されようとするところに問題があるのじゃないか。したがって、入り会い林を整備したらこれになるんだ、そして現在の入り会い権者はこのように経済的にもよくなるんだ、また国土利用の観点からいったらこういうふうになるんだというくらいの施策が、もっと先に先行しなくちゃならぬと思うのです。その点は、整備されたあと、造林の問題についても、あるいは林道の問題についても考えておるんだ、こういう形では、やはりこの整備の問題がほんとうに軌道に乗らないと思うのです。整備されたらこうなるんだということを先に具体的に示さないと、国はこういう施策を考えておるということを明らかにしないと、それはなかなかいままでの長い慣習からいって、整備しにくい条件が多々あるんじゃないか、私はそう思うわけです。この前からの答弁では、入り会い権者自身が、いわゆる経営の粗放化から脱却して高度に活用しようという意欲が出てきて、その意欲に対して国が何か手当てをするんだ、援助をするんだ、全体がこういう姿勢なんですね。あくまでも入り会い権者個々のそういう意欲というものが前提になってそしてそれに対して国がこういう便宜を与えてやるんだとか、こういう援助をしてやるんだ、こういう姿勢だと思うのです。私は、その姿勢が基本的に間違っておると思うので、先ほどから漁業権の問題を引例して言うておるわけです。したがって、今度の場合、入り会い林を整備したあと、いわゆる林業基本法十二条に基づく精神によって農林業上の利用に活用していく、そういう活用できる条件の一つとして、たとえば権利関係近代化する場合には、その税制の問題はどうなるか、あるいはそういう形になった場合において、従来の造林やあるいは林道はどうなるのか、こういう問題をはっきりとやはり前提として出していかなければならぬ。だから、税制の問題なんかでも、私は、その問題が具体化される前に大蔵省との話し合いをつけてほしいということを先ほど要請したわけです。今度の造林補助の問題あるいは林道の問題についても、そういう問題が先に方針が明らかにされて、そして政府の今度の入り会い林整備計画が実現されていく過程では、政府にこういう裏づけがあるんだということをはっきりと出していくことが前提じゃないかと思うのです。その点は、どうも政府の援助施策というのですか、そういうものがあとについておるように思うのですが、私は逆じゃないかと考えるのです。その点について、もう一回長官のほうから、先んじてこういう施策を講ずるから、入り会い林の整備に協力してほしいという姿勢が出されるような明快な答弁をお願いしたいと思うのです。
  38. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの先生の御意見、ごもっともだと存じますが、やはり林業基本法の趣旨に基づいて、林業従事者の熱意が先行するということが基本にならなければ、将来の期待がなかなか持てにくいのじゃないかというふうな考え方でいるわけでございます。なお、この入り会い林野権利関係近代化をはかるとともに、どのような土地の利用計画なりあるいは将来の展望を持つのかは、それぞれの入り会い林野によって異なるであろうというふうに考えているわけでございまして、まあ、すべてが造林地になるわけではない、これは放牧採草地その他果樹農業、いろいろ利用のしかたもあるかと存じます。国といたしましては、その権利関係近代化後のその権利者の具体的な計画に即しながら、最も適切な国の助成の手を差し伸べてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  39. 森義視

    ○森(義)委員 それがあなたまかせなんですよ。要するに、入り会い権者の意思に従って、たとえば森林経営をやってていく、その他いろいろ採草放牧地でまた活用していく、そういう形でいろいろな形が入り会い権者の中から意思として出てきた場合、その意思に従って国が適切な補助、援助をしていこう、いまの答弁はこういう考え方なんです。そうでなくて、私は、やはりいまの入り会い林野の調査の中で、たとえば樹林地、それから造林を必要とする面積は何ぼある、こういうことは大体の計数として出てくるわけでしょう。いわゆる採草放牧地、果樹園芸地に変えていくとか、そういう考え方も農林業上にはあると思うのです。とにかく整備される対象面積のどれだけが林業として利用可能性のある地域であるか、どれだけが農業の構造改善に転用される地域であるか、そういう大体の方針は、二百万町歩の入り会い林野の面積の内容を検討すると出てくるわけです。そういう問題に対して、たとえば造林の問題ですと、いま樹林地が何ぼあって、造林を必要とする面積が何ぼという点が大体出てくるわけでしょう。それを手放しで、入り会い権者の意思に従って、それに対して補助をつけていく、こういう考え方は、これだけの問題を解決しようとする林野庁の計画としては、まことにあなたまかせだと私は思うのです。ちゃんとそういう計画、が出されて、これを見て初めて、なるほどこういう方向で国が考えているのか、それじゃ協力しようかという形が出てこないと、こういう大問題を整備するにしては、まことに不適当だと思うのです。だからひとつ、二百数万町歩に及ぶ入り会い林野のこれからの活用についての政府考え方、どれだけの面積がどういう形になれば一番理想的なんだというような考え方、青写真があれば、それ々示していただいて、その青写真に基づいて、たとえば国はどういう援助をしていくんだということを具体的に出してほしいと思うのです。たとえば今度の森林資源に関する基本計画の中で、昭和六十年まで五百七十万ヘクタールの造林をやろうと書いてありますね。ここの中に、今後入り会い林野の整備に伴って出てくる新しい造林地が含まれているのかどうか、こういうこともお聞きしたいと思うわけですが、とにかく全体の入り会い林野の占めるこれからの活用のビジョンというのですか、そういうものを出していただいて、それに対して個々にどういうふうに具体的な国の施策を施していくのか、こういうものをやはり出してもらわないと、もうあなたまかせで、この法律は手続法だから、その手続に従ってくるものにはこうしてやるんだ、そんな形では、これほどの重要な法律案を出す価値、意義がないと私は思うのです。法条では、そういう全体のこれからの整備計画に基づいて、二百万町歩の中で、十年間で八〇%権利を明確にしようとしているわけでしょう。それほどの意図を持ちながら、その八〇%の中でどういうふうにこれから農林業上これを活用していくのか、その面積の比率だとか、これに対する具体的な援助の対策、そういうものを出していただきたい。
  40. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い林野近代化後の土地利用の将来におけるビジョンを持てというお話でございますが、現在、やはり林業基本法に基づくところの森林資源の基本計画なり、それに基づく全国森林計画等につきましては、これを所有者別にとらえた形でその面積が出ていないということがございまして、この所有者別の将来の造林計画、これについては、なお資料の準備といたしまして、今後に属する問題だと考えておりますけれども、一方やはり二百三万町歩に及ぶ全体についての、こういう土地利用計画でいくというそのビジョンは、それが農林業上のどのような用途に使われるかの前提に立つ必要がございますので、なかなかむずかしい面があろうか、こういうふうに考えております。いまの入り会い集団約十一万事業体のうち、先生がいまお話しのとおりに、約十年間で二万六千事業体ですか、それを具体的に取り上げていく方向考えてはおりますけれども、やはりこの権利関係近代化以後の土地利用計画について、どういう利用区分別の面積が出てくるのかということにつきましては、その把握はやはり困難ではなかろうか、その個々の整備計画によって、判断せざるを得ないというふうに考えておる次第でございます。
  41. 森義視

    ○森(義)委員 個々の土地利用区分別の概算、あらかたの計画が出なければ、財政的手当てをするめどが立たないわけでしょう。いわゆる農業用として利用されるのか、林業用として利用されるのか、それから農業用でもいろいろな形の利用のしかたがある、林業用としてもいろいろの形の利用のしかたがある。それの大まかな土地利用区分の概要が出てこなければ、これから財政的なてこ入れをするといっても、その財源的な基礎が出ないんじゃないですか。たとえば造林の場合にしても、林道の場合にしても、大体入り会い林野の中で、どれだけの部分が新しく樹林地として林業上の活用をされ、それに対してどれだけの造林が必要だ、それに対して国がどれだけの手当てをするのだ、そういうものがなければ、とにかくそういう計画が出されて、計画に従って出していくのだといったって、どれだけつくるのかわからない。国の財政的な手当てのめどが立たないんじゃないですか。だから、それはあなたまかせで、つかみ取りという形になるわけですよ。
  42. 木戸四夫

    ○木戸説明員 この問題につきましては、先ほど長官からお話し申し上げておりますように、土地利用の形態はいろいろありまして、町村に行きますと、ぽっくり入り会い林野だけを整備する、こういう形ではないのだろうと思います。それぞれの山村なり農山村なりにおきましては、農業構造改善事業なり、あるいは林業構造改善事業なり、あるいは山村振興法に基づく振興対策があるわけでございまして、その一環として入り会い林野の整備をやっていく、こういう形になるのではなかろうかと思います。そこで、そういう一環として考えた場合には、この土地は農業の用に使ったほうがいいのか、あるいは林業の用に使ったほうがいいのか、あるいはさらに造林地にするのか、樹林地にするのか、あるいは開拓用地として利用したほうがいいのかは、それぞれの村で第一義的には判断をしていただくことになるのではなかろうかと考えておるわけでございます。それが出てきますのは、先ほど長官から御説明がありましたように、個々の整備計画の段階で市町村あるいは県の指導を受けつつ、当該山村においてその入り会い林野をどういうぐあいに利用したほうがいいのかということをいろいろ相談いたしまして、そして具体的な利用方法がきまるのかと思います。そこで、県段階におきましては、その整備計画を審査する際に、はたして酪農なら酪農の方面、あるいは農地なら農地の方面、あるいは林業なら林業の方面と関係行脚が集まりまして、この整備計画が達成できるかどうか、慎重に検討していただきまして、そしてその方向に基づきましてそれぞれの施策が行なわれるということになるのかと思います。先ほど先生から、全体的な構想ができないと幾ら財政投資をするかわからないではないか、こういう御指摘があったわけでございますけれども、現在農林省でやっている草地改良事業だとか、あるいは開拓パイロット事業、あるいは農地開発事業、こういうようなものは年々の予算できまってくるわけでございますので、その整備計画の審議の段階で、十分県段階で御審議を願いまして、それに続く政策として、草地改良事業なり、あるいは開拓パイロット事業なり、あるいは林業構造改善事業なりの中に組み入れていただく、こういうぐあいに考えておるわけでございます。
  43. 森義視

    ○森(義)委員 それがわからないのですが、土地利用区分はもうはっきりしておるのですよ。これは農林業上の利用だ。これは工場にするのでも住宅にするのでもないのですよ。土地利用区分は明らかになっておるわけです。農林業の中で、たとえば農業用の利用が大体どれだけの範囲か入り会い林野二百万町歩の中で、どれだけが農業上の利用だ、その中でどれだけ草地あるいは果樹園にするということで、だいぶ形が違ってくるでしょう。これは樹林地で林業上の利用だ、これは果樹園で農業上の利用だ、土地利用区分はそんな何でもやるというものじゃないのですよ。これは私はあと質問したいと思っておったのだが、整備計画を出す場合、こういう整備計画ならばこういう国の援助がある、こういう整備計画の場合はこういう国の補助がある、こういうことが明らかでなかったら、ただ整備計画を出せといっても出てこないんじゃないか。たとえば、林業上の樹林地にする場合にはこういう国の援助や補助がある、農業上の農地造成の場合にはこういう援助がある、果樹園にする場合にはこういう援助がある、こういう裏づけをしなければ整備計画は出てこないですよ。だから、整備計画をこういうふうに整備すればこういうふうに国の援助体制はあるのだ、こういうことを明らかにして整備計画の指導をしていかないと、ただ、あなたらはこれをどういうふうにやったらいいか考えなさい、その使い方によっては国がまた考えましょう、こういうことでは出てきませんよ。だから、私は、農林業上の利用ということが明らかになっているのだったら、その中で林業の利用はどれだけの面積があり、農業用にはどれだけの面積がある、その林業上の利用に対しては国がこういう財政的な援助を考えておる、そのものが明らかになってこないと、整備計画を出される場合に、それはもうまちまちになってしまって、おそらく出てこないと思うのです。ところが、そういう問題があなたまかせで、あなたから出てきたらそれに従って考えましょうという、いまの態度なんですよ。そうではなくて、国のほうから、こういう方針考えておるということを明確に出さないと、この問題はだめだと思うのですよ。だから、いまのようなお話で、土地利用区分というのはどの辺まで考えられるかわからないのだけれども、とにかく整備計画が出てきた、内容によって考えるのだ、こういうことでは、きわめて不十分だと思うのです。もう一回長官のほうから、その点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  44. 田中重五

    田中(重)政府委員 全国的な国の土地利用計画というような観点から論ずる場合には、確かにいま先生のお考えもごもっともと存じますが、やはり先ほど来申しておりますように、入り会い権者の権利関係近代化と、それからその後の土地利用の高度化への熱意、これが基本にならなければならないというところに、まず出発点があるかと思います。言うまでもなく、この法案の趣旨は、農林業用に限っておりますから、林業に進むか、農用地として土地利用が高度化されるか、いずれかでございます。やはりその土地利用のしかたについては、その入り会い権者が最もよく知っている、またそうでなければならないというふうにまず考えているわけでございます。しかしながら、一方すでに始まっております入り会い権の近代化についての国の助成の一環として、農業的利用あるいは林業的利用についての相談相手、それから法律上の相談相手等をそれぞれ県に配置をいたしまして、そうしてそのそれぞれの市町村を通じ、入り会い権者のそういう面での指導、これを行なっていくというレールはもう敷かれているわけでございます。やはりその実地に即した利用のしかたが最も今後の経営者のためにもなるわけでございますから、それについて国ができ得る限りきめのこまかい助成の手を差し伸べていくということが妥当なのではないか、こういうふうに考えているわけでございます。
  45. 森義視

    ○森(義)委員 長官、入り会い原野というのは、白紙で何も植わってない平らな面、これをどう利用するかというのとは違うのですよ。従来から利用してきているわけなんです。問題は、その利用を高度化していくわけでしょう。だから、林地として利用されてきておるのを、全部木を切ってしまって草地にするということではないわけです。大体林地として利用されていたものを、その林地としての利用をどう高度化していくか、採草放牧地としてこられたものが、そういうものにかわって農業利用にどう高度化していくか、これはさまっておるのですよ。だから、長官のように、白紙の上にそれぞれの入り会い権者が、うちはこういうふうに利用するんだ、平面なもの、何も植わっていない白紙、その土地をどう利用していくかは、ものによって違うから、出てきたら、それに従って国が考えていくというのとは違うでしょう。ちゃんといままでの入り会い林野の利用のあれは、歴史的にずっと続いたあれがあるわけですよ。それをどう高度化していくかという問題である。したがって、どれだけの樹林地があって、どれだけの造林を考えなければいかぬかという問題は出てくると思うのですよ。出てきたその上に立って、国がどういう具体的な施策を講ずるかということにいかなければならない。それを金を出さぬとおこうとするから——出さぬとおこうとするというと語弊があるかもしれませんけれども、とにかく出てきたときにやろう、こういう考え方なんですね。そうじゃなくて、国がこういう入り会い林の面積の中で今後の利用を高度化していくためには、大体こういう面積はこういうふうに活用されていくだろう、これははっきりしている。それに対してどれだけの財政的裏づけをしていくかということがはっきりと数字に出てくるわけです。それを私は示すべきだと言うのです。それを示さずに、入り会い権者の整備計画の中に出てきた内容に伴って考えていくんだということになったら、財源的手当の裏づけの予算は組めないわけです。そうでしょう。
  46. 田中重五

    田中(重)政府委員 この前もお答えをいたしましたように、林野として百五十八万ヘクタール、原野で四十五万ヘクタール、こういうことになっておりますが、その林野の百五十万ヘクタールのうち、人工林化されているものが約二九%、あとの部分は、いわゆる低質林分といいますか、薪炭林該当の林野が大部分であるというような状態になっております。それで、現在人工林になっている部分につきましては、おそらくお説のとおりに、今後も林業経営として行なわれていくであろうというふうに考えられますけれども、この低質林分地帯、広範に広がるその地帯についての薪炭林の地上処分といいますか、伐採以後の土地の利用については、その置かれた場所の立地の条件なり、あるいはこれをめぐるその地方の経済的条件なり、それから生産される商品の価値等によって、入り会い権者として、その土地をどのような用途に使っていくかということについて、考え方がいろいろあるかと思います。そういう意味合いからいきますと、入り会い権者のその土地についてのビジョンといいますか、それが基本にならないと前進はしないのではないか、こう考えているわけでございまして、現在、この法案も、そういうふうに相当に熱意が上がっているんだ、先ほどのわずかな資料であるにはしろ、この権利関係の整備を望んでいるというのが八割程度あるということは、やはり相当な意欲を持っているということを示したものだと考えていいのではないか。しかるに、その入り会い林野が、旧来の慣行によって満足に地上権の設定もできないとか、あるいはみずからの投資もなかなかしにくいとか、いろいろ障害になっておるわけでございます。いわば入り会い林野は、日本の山林原野の中に取り残された大きな穴といいますか、茂みというか、そういうものとして取り残されている。ほかの地帯が進んでいる中で取り残されている。その制約というか、拘束を取っ払おうというところに、一番のねらいがあるというふうに私ども理解をしているわけでございます。
  47. 森義視

    ○森(義)委員 長官、いわゆる薪炭林の低質林地帯、こういうものをどう活用するかという点について、整備計画の中に出てくるからということをおっしゃるのですけれども林業上の活用というのは、どう造林化して、樹林化していくかということでなくちゃならないのです。そんな低質の薪炭林を何かほかの用途に活用するとかいうことはあり得ないのです。だから、造林をするとすれば、どれだけの面積を国は造林する、それに対してどれだけの財源の裏づけをする、こういうものがはっきり出てくるはずだと思うのですが、なぜそれにこだわられるか、私はわからないのです。とにかく入り会い林の問題については、入り会い権者の意思をあくまでも尊重する、いかにも民主的なことばです。ところが、それが出てきた場合に、それに基づいて国は考える、先ほどから一貫してこういう言い方なんです。それも私はどうもはっきりしない。それではいけないのであって、大体入り会林野を農林業上どう活用していくかという問題を出発点として、この法律ができておる以上、いままでの低質林地帯、いわゆるそういう問題はどう造林化していくんだということが、はっきりと国の方針として立てられて、それに対して財源的な裏づけはこうなんだ、こういうことを事前に明確に出すべきだと言うのです。それができないというのはどういうことなのですか。いろいろ活用が違ってくるからとおっしゃるのですけれども、農林業の活用の範囲はきまっているでしょう。そんな薪炭林を今度はゴルフ場にするとか、ほかのものに活用するとか、そういう考え方じゃないでしょう。あくまで林業上の活用を考えておるのでしょう。そうすれば、出てくるはずでしょう、面積ははっきりしておるのですから。それに対する国の造林上の大体の補助財源がこれだけだ、こういうものを明確に出してもらわないと、今後の入り会い林の整備計画にも支障を来たす。その活用についても、国の方針が明確に示されない限り、入り会い権者自身が乗ってこない、こういう気がするのです。それがなぜ出せないのですか。
  48. 田中重五

    田中(重)政府委員 決して予算その他にこだわって出さないということではございません。率直にいままで申し上げているわけでございますけれども、この法案は、農林業の土地利用としての高度化、それに限っていることは申すまでもございませんが、それが農林業のどのような用途に使われていくかについては、やはり入り会い権者に自主的に判断をしてもらう必要がある、そういうふうに考えているわけでございます。やはり広範に広がっている薪炭低質林、そういうところでも、やはり農業の近代化のための土地利用として使われる部分も相当にあろうかというふうに考えられるわけでございまして、いまからそれを林業だけの立場で固定して考えるのはいかがかというふうに考えている次第でございます。
  49. 森義視

    ○森(義)委員 それでは一歩進んで質問しますが、今度の入り会い林の整備計画は、入り会い権者全体の同意を得て出されてくる。その整備計画を出されるについて、コンサルタントを配置して指導する、どういう指導をされるのですか。いわゆる整備計画が個々によって違ってくる、そういう場合に、国の方針を示さずに、現在の入り会い集団が、自分たちの権利として持っておる入り会い山をどういうふうに今後活用するかということについては、あなたたちにまかせます、こういう指導のしかたなんですか。はっきりとやはりコンサルタントを配置して、この入り会い林野の整備計画を作成する段階において指導をされるのでしょう。その指導方針が、いまの答弁ですと明らかでないわけですね。あくまでも入り会い権者の意思に従う、こういう御答弁なんです。その点は、国としては方針を示さずに、入り会い権者の個々の意見に従って出される整備計画に国は従って、いろいろな援助を考えていきましょう、こういう方針なのか。少なくとも整備計画をコンサルタントが指導される場合には、国の方針なりを明らかにしてやはり指導されなければ、どうしていいのかわからないというのが、私は現地の実情じゃないかと思うのです。その点についてどう考えておられますか。
  50. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、いまも申し上げましたように、入り会い権者はそれぞれいろいろ考え方を持っていると思います。それで、やはりその土地柄に即して、果樹なりあるいはまた採草放牧地なり造林なりというような考え方を持っていると思います。それに対して技術的なコンサルタントとしては、その立地条件等を考えながら、またその地帯をめぐる商品経済のあり方等を考えながら、その入り会い権者が最も有利だと考えるような土地利用のしかたが、必ずあるのではないかというふうに考えております。やはりそれをもととして、できるだけ国は手伝っていくというのが妥当なのではないかというふうに、先ほど来申し上げているわけでございまして、頭から林業用地にするということできめてかかることは、むしろ妥当ではないのではないかというふうに考えているわけでございます。
  51. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、くどいようですが、たとえば林業地に利用していくという方針の場合においては、こういうふうに国が補助を考えておる、あるいは行政的な援助を考えておる、こういうものが出されていく、あるいは草地あるいは果樹林等に利用されていく場合においては、国がこういう援助を考えておる、そういうものが明らかにされたら、こちらのほうが有利じゃないかという形の判断は、入り会い権者個々がするかもわかりません。しかし、国のそれに対する援助対策によって変わってくるわけです。そういうものを示さずに、その立地条件からのみその入り会い権者に判断させる、こういうことでは私は間違いだと思うのです。国の援助態勢というものがはっきりしてないから、そういう指導のしかたをするわけなんです。はっきりとしておれば、入り会い林野が今後強力化され、生産森林法人化されて、皆さんがこれを林地として優秀な活用をされるならば、国がこういうふうに考えておるというものを出していかないと、整備計画をつくる場合に出てこないと思うのです。いわゆるその土地の立地条件だけで、皆さんでかってに判断しなさい、その判断したものについては、国が考えますという形であってはならないと思う。その点は、しつこいようですが、私は、実際の問題として、今度入り会い林野を整備するという計画を出されておるけれども、どの辺まで国が援助してくれるのか、どう活用すれば一番有効に、しかもわれわれが得をするのか、こういうことを判断する場合に、国の方針が立ってないということでは、これはコンサルタントになられた方も困られると思うのです。その点については、はっきりと利用区分によって、国がどういう援助をするのだという裏づけの政策が明らかにされておらないと、整備計画を出す場合において問題点が出てきて、なかなかまとまらない、こういうように思うのです。その点どうですか。
  52. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまのお話を伺っておりますと、林業用地としてそれを高度化していく場合に、国としてはこのようなそれを助成する用意がある、それを少なくともその計画を入り会い集団が立てる前に具体的に示して、そうしてその計画が効果あるがごとく指導すべきでないか、こういうお考えのように、ただいまの御質問、受け取ったのですが、そういう意味でございますと、おっしゃるとおりだと思います。そういう意味合いで、先ほどの税制等の問題にいたしましても、それから造林の助成あるいは林道の助成につきましても、当面できることは、これはもうその趣旨を十分に徹底させると同時に、いまの制度で困難であっても、何かそこに打開をしていく必要があるという点につきましては、十分にこれを検討いたしまして、そうして、その土地利用の要請にこたえてまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  53. 森義視

    ○森(義)委員 国のそういう助成の方針が明らかになってくれば、全体に対する国の援助態勢が大まかなものができると私は思うのです。そういうものは、やはりつくった上に立って、こういうふうに助成するんだという指導をしなければ、それはいままでとあまり変わらないわけですね。入り会い林野が整備されたら、今度それが林業用の利用について、特別にこういう助成をしたいということが出ていないわけですから、従来の林業に対する助成の問題とあまり変わらないのですね。それだったらみんなもう知っているわけです。そうではなくて、入り会い林野が整備され、今後これを林業上の活用をする場合には、特別にこういう助成をするのだ、そういうものをやっぱり出していかなければならぬ。その点について、たとえば官行造林を復活するというような考え方がありますか。
  54. 田中重五

    田中(重)政府委員 前段のお話に対しましては、これはやはり林業経営していこうという入り会い集団、それができない。先ほど来申し上げておりますように、いろいろな制約に置かれているから、その土地利用の高度化が十分にはかられない。所有関係すら明らかでないから、融資の措置も与えられない。それから国がたとえば民有保安林の買い上げというようなことを行なう場合でも、入り会い林野である場合には、なかなかしにくい面が、いままでの経験からいいまして多かった。また、造林公社が入り会い林野に造林する場合でも、特に入り会い権のある土地は避けるようにというような指導、あるいは定款等で規定をしている。それが近代化されることによって人並みになるというところに、この法案観点がまずあるように考えております。とにかく取り残されている地帯であるという意識があるわけでございます。しかしながら、積極的に林業基本法の趣旨に沿って前進することはむずかしい面もございますので、そこで、今度は逆に優先的にそういう地帯の土地利用の高度化をはかっていくことについての国の助成措置については、さしあたりできることは実施していきたい。先ほども申しましたような事実上の造林補助のアップになるような、そういう点数加算等で進めてまいりたいという考え方がございます。  なお、最後の官行造林につきましては、御承知のとおり、公有林野宮行造林法、これが廃止され、保安林等の造林については、森林開発公団にその仕事が移っておりますし、それから一方、先ほども申し上げました造林公社等についての制度上の確立をはかって、入り会い林野等の造林の促進をはかってまいるというような方法で、官行造林の復活ということは言えないにしても、そういう機関の活用を積極的にはかっていくようにいたしたい、こう考えておるわけでございます。
  55. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、はっきりと出てきたわけですけれども、結局、いままでいろいろ論議してまいりましたけれども入り会い林野が、いままでいろいろと一般の私有林野等に林業政策上行なわれてきたことがやりにくい条件にあるので、やりやすい条件に、いわゆる一般の私有林野並みに人並みにする、こういうことにこの法案目的がある。いまの答弁で、入り会い林野が整備されると、特別にそれに対して国が考えていないということは、明らかになったわけですね。入り会い林野が整備されることによって、林業の活用にいままでの林業政策とは違った特別な援助体制をとるということは、全然ないわけですね。この入り会い林野の整備計画は、いままでの林野政策全体に対する国の援助体制を受けられるような体制にだけされる、そういう意味の御答弁なんですね。人並みにするということは、いまの入り会い林野は、いろいろな面で一般の私有林野に対する国の補助政策を受けられない体制にある。したがって、これを受けられる体制にだけしよう、こういうことです。そうすると、先ほどの漁業権の問題にからんでくるわけですが、この入り会い林野を整備する場合に、入り会い林野に対する国の財政上の措置ということは全然考えていないわけですね。いままでの林業政策全体の対策が入り会い林野でも受けられるような体制にだけしよう、こういうことですね。そういうふうに理解してよろしいですか。
  56. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、その他の一般の林野並みにするということだけだということではないわけでございます。いまも申し上げましたように、相当に広範な地帯が残されている。そういう中からまずそこから手をつける必要があるということでございまして、しかも面積が広いだけに、国としての損失も大きいわけでございますから、できるだけその点に関係の近代化をはかっていくというのがこの法案のねらいでございますけれども、それだけかという御質問に対しましては、もちろん、それだけではないので、さらにいまも申し上げました造林林道について、特にその地帯の開発というような林業の面からいきますと、将来の木材の需給の関係からいいましても、またその地帯の地域格差の是正という面からいっても、必要であるから、その近代化をはかることによって是正をしてまいりたい、こういう考え方でございます。したがって、造林林道等あるいは融資の点で、できるだけ優先的な考え方で扱っていきたいということは、この前から申し上げているわけでございます。
  57. 森義視

    ○森(義)委員 新しい入り会い林野の整備に伴って、整備された入り会い林野に、いままでの林業政策以上に上回った、こういう政策をするということは出てないですよ。それだけじゃありませんとおっしゃっていますけれども、たとえば、それは、造林補助率アップと申しますけれども、今度整備された入り会い林野に対しては、特別の造林補助率アップということは、どういうふうに考えていますか。
  58. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまの造林補助の三割というのをアップするということについては、なお十分に検討の必要がございますが、これを点数加算というしかたで、事実上の補助率アップに持っていきたい。この入り会い林野等に対して、そういう方法で特に手厚く助成をしていきたいという具体的な考え方を持っております。
  59. 森義視

    ○森(義)委員 それだったら、拡大造林の場合に点数加算の方法で補助率を上げていくようにしていくという御答弁が前にあった、それと同じことではないか。造林の補助率アップというものはいま特別に考えておられないのでしょう。
  60. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点については、いま申し上げましたのは、拡大造林としての点数加算のほかに、近代化された入り会い林野の造林の場合の点数加算を考えている、こういう意味で申し上げたわけでございます。
  61. 森義視

    ○森(義)委員 具体的に点数加算はどういうようになるのか、いまはっきりここで御答弁いただけますか。
  62. 福森友久

    ○福森説明員 拡大造林につきましては、普通基準の点数は百二十点になっておりますが、それをさらに入り会い林地を近代化された場合には、それに二十点さらに加算する、このように考えております。
  63. 森義視

    ○森(義)委員 いまのところは、具体的には造林の場合におけるところの補助率アップという形にあらわれてくるだけの問題ですが、そのほかには、たとえば林道の問題についてはどう考えておられますか。
  64. 田中重五

    田中(重)政府委員 林道の問題につきましては、限られた林道予算の中で、近代化された入り会い林野に対しては優先採択していくという考え方を持っているわけでございます。
  65. 森義視

    ○森(義)委員 それじゃ具体的にもし計画どおりに八〇%入り会い林が近代化されていくとすれば、どれだけの林道面積を考えておられますか。入り会い林に関する林道ですね。いま優先的に林道をつけるとおっしゃっているのですよ。十年間で八〇%入り会い林が近代化されていく、それに対する林道計画はどういうように考えておられますか、それは考えているという答弁だけでいい。そういう計画はまだできていないのではないですか。
  66. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、この入り会い林野に対する林道の開設について優先的に考えてまいるということでございますから、四十一年度におきましても、そういう考え方で、この法案がもし成立をいたしましたあと、さっそくこれに基づいて県との協議をもつ予定でございまして、その場合に、それぞれ整備の準備その他、県としてはあると思いますが、その場合に、入り会い林野近代化の程度に応じて、優先的にその地帯の開発を行なう意味での林道予算の配賦等は十分に考えるわけでございます。
  67. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、整備計画を指導される場合、いま具体的に述べられた、他に優先的に近代化されたらここへ林道を敷きますというだけではやはりいけないので、はっきりした整備計画が出されて、それが承認されて近代化されると、ここへ林道を敷きます、あるいはこの地域の造林は単価アップでこういうふうにしてやります、こういう形で示されて、初めて整備計画が具体化されてくると思うのです。それで、先ほど約束いただきました生産森林組合法人化したあと税制の問題、こういう問題がすぐその次に出てくるわけですね。近代化されたら、法人化されたら、こういうふうにします、近代化されるものは、こういうふうに国が特別な補助、融資を考えております。こういう問題が明らかにされて初めて、入り会い権者が全部集まって、今度入り会い権をこういう法律で整備するそうだ、そこで皆さんの意見を聞くというときに、コンサルタントが説明される場合に、そういう問題が明らかにされて、整備計画が出てくると私は思うのですよ。そうじゃないですか。そうじゃなければ、とにかく個別私権化されるのだ、今度は皆さんがそういう希望があればそういうようにするのだから計画を出しなさいということだけでは、出てきませんね。そこを先ほどから長時間かけて質問をしておるわけなんです。その点を明らかにしてほしい。  そこで、いままでずっとお尋ねしてまいりましたけれども、ここでひとつ締めくくりとして——この問題だけですよ。まだ法案の中に入っていないのですから、この問題だけの締めくくりとして申し上げたいわけですけれども、この法案がもし通った場合に、コンサルタントを各府県大体三名指名されますね。それに対する林野庁の具体的な指導の計画というもの、いわゆる入り会い集団に対する指導の計画というものはどういう形になっておりますか。各地によってばらばらにそれぞれ指導するのか、そうじゃないでしょう。統一した指導計画をやるわけでしょう。その指導計画の要綱というのはできておりますか。
  68. 高須儼明

    ○高須説明員 お答え申し上げます。  コンサルタントにつきましては、当面問題になっておりますのは、従来の非常に複雑な権利関係になっておりますものを、どのような形で近代的な権利に切りかえてまいるか、これが非常に問題でございまして、これに対しましては、すでに昭和四十年度の通達をもちまして、原則として、たとえば共有の性質を有する入り会い権の場合にはこういう方向、地役の性質を有する入り会い権の場合にはかような方向、あるいはまた旧慣使用権の場合にはかような方向というようなことで、一応の基準をつくって、現在の促進事業指導事業、一種の啓蒙事業的なものを実施いたしておりまして、その方向については、たびたびコンサルタントにも御集合いただきまして、今後の方向をきめてまいりたいということで、検討いたしておるわけでございます。これはおもに法律関係者のコンサルタントを中心といたしておるわけでございます。また、林業経営あるいは農業経営上の利用につきましては、入り会い林野は全体の地域の中のわずかに一点を占めておるだけでございますので、それぞれの入り会い林野そのものの利用というようなことよりは、地域全般の利用方向、これにつきましては、各県のそれぞれの御計画あるいは当該市町村におけるそれぞれの御計画の中の一環というようなことを考え合わせまして、先ほど長官が申しましたとおりに、種々の条件を考慮いたしまして、個々の地点につきましてどのような方向指導してまいるか、今後おりおりコンサルタントの方々と御相談してまいる、かような考え方でおるわけでございます。
  69. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、コンサルタントの具体的な現地の指導についての指導要綱はすでにできてやっておる、こういうことですか。
  70. 高須儼明

    ○高須説明員 本年度実施いたしておりますのは、明年度以降この事業が具体的に発足できるというようなことを一応前提といたしまして、その啓蒙事業と申しますか、昭和三十九年度におきましては、全般の問題点を調査いたしますために、先ほど資料を配付申し上げたところでございますが、そのような調査を実施いたしまして、本年度は、この事業の一種の啓蒙事業と申しますか、どのような形で推進、指導してまいったならば動くものかというような意味で、一つのためしというようなことで、調査要綱等を作成いたしておるわけでございますが、先ほども申しましたとおりに、この調査要綱の中には、権利の近代化方向一つ基準のみを書いておるわけでございます。したがいまして、今後の土地利用とか、あるいは農林業上の具体的な利用計画につきましての指導要綱というようなものにつきましては、まだ完成いたしておらない状態でございます。
  71. 森義視

    ○森(義)委員 まだ指導要綱についてはコンクリートされておらない、いま啓蒙、調査の段階にある、こういう御答弁だと思うのです。そこで、この法案を出す以上は、当然具体的な整備計画を出す、指導に当たる要綱というものは、全国統一して出すべきだと思うのです。そういうものがいまだにできてないというのは、まだ暗中模索で、どういうふうに指導していいのか、どういうふうに整備していいのかわからぬ、そのうちに法律だけ先にできた、こういう形だと思うのです。そうじゃないですか。
  72. 高須儼明

    ○高須説明員 現在、暗中模索と申しますよりは、農林業の利用につきましては、先ほど長官が申し上げましたように、個々の地域をめぐる諸条件を勘案いたしまして、基本になりますのは、入り会い権者あるいは旧慣使用権者等の自発的な意欲を持った方向を中心といたしまして、そこに起こる種々の技術的な問題点、こういったものの相談をコンサルタントたちが承りまして、それに対して都道府県及び国が助成してまいるというような方向を現在とっておるわけでございます。
  73. 森義視

    ○森(義)委員 どうも自発的な意欲を待って、出てきたら、それに国が指導するのだ、そこらあたり二転、三転しているわけなんです。私は先ほどから聞いておりまして、まだ具体的にそれぞれの入り会い林野の個々まちまちの利用形態、地域におけるところのいろいろな周辺の経済的環境等によって違ってくる事情、そういう問題でなかなかむずかしい問題なんですね。だから、そういう問題について、どういうふうに入り会い権を整備されるのが一番いいのかということについて、国で一本にまとめてしまうということは、たいへん困難性がある。それで、一本にまとめた以上は、今度はそれに従って指導していかなければならぬというところに、現地の事情との食い違いがあると思うのです。いまそういう段階じゃないかと思うのです。しかし、少なくともこういう法律に一応まとめて整備されるように踏み切られた以上は、やはりそれに対する統一した指導要綱というものをはっきりしてもらって、その資料を出してほしいわけですけれども、そういうものを出してもらって指導していかないと、事情が違うのだといって個々まちまちの指導では、いろいろと現地で混乱を起こすと思います。そういう点について指導要綱はいつできるのか、具体的にお聞きしたいと思います。
  74. 高須儼明

    ○高須説明員 お答え申し上げます。  具体的な指導要綱がいつごろできる見通しかという御質問でございますが、この法律が成立いたしました暁には、できるだけ早く準備いたしたい。それまであらゆる具体的な問題点を私ども検討いたしまして、できるだけ早くつくりたい、かように考えておるわけでございます。
  75. 森義視

    ○森(義)委員 これは実際どう指導するかということの計画がなければ、法案審議に入れないわけなんですよ。そうでしょう。入り会い権者、旧慣使用権者の自発的な意思を聞いて、それでやるのだ、先ほどの課長答弁ではこう言っている。それだったら、また考え方が違うのです。そうじゃなくして、国が施策として、林業基本法に基づいて入り会い林野をこういうふうに利用、活用していくのだという法律を出すわけですね。出した以上は、その指導方針というものを明らかにしなかったらいけないわけですね。指導方針を聞くと、権者の自由意思を尊重してやるのだ、こう言う。こういう形では、この法律のていさい自体も、私は非常にあいまいもこたるものだと思うわけなんです。だから先ほど申しましたように、いまどう整備していいのかわからぬ。いま啓蒙段階、調査段階にある。そうなると、法律だけ先に出てきているという感じがするわけです。そうでなかったら、ちゃんと調査をして、そうして啓蒙して、大体方向がきまってから法律が出るのだったら、それに対する指導要綱ははっきり出ているはずです。そうでしょう。それがいまだにつくられていない。しかもそれをついていくと、入り会い権者、旧慣使用権者の自由意思、意欲というものに応じて指導していきたい、こういう言い方をする。こういうことでは、この法案を出すのはまだ早かったのじゃないですか。まだ完全に態勢が整っていないときに、法律だけ先に出てきた、こういう形になるのじゃないですか。
  76. 田中重五

    田中(重)政府委員 そういう意味におきましては、やはり権利の関係の近代化というところにまず第一のねらいがあり、そうして林業基本法の立場からいいますと、小規模林業経営の規模の拡大という一つ考え方が出発点になっているわけでございます。そうしてその入り会い林野権利関係近代化したあと、その経営の形としては、できる限りこれを生産組合等の共同組織によるところの経営体として持っていきたい。これは農業の場合でもやはりそういう考え方で進むことになるかと思いますけれども、まあ少なくともそういう考え方で進めてまいりたい、それが指導の出発点になるかと思います。そのあとにつきましては、やはりその入り会い林野の所在する地域に応じた商品の生産方法があるかと思います。そういう意味で、入り会い林野の権利者の意向が大切だと申し上げておりますのは、やはり最も経済的なそういう農林業上の種目を選択することは、やはり入り会い権者の考え方が基礎にならなければならないだろうと、こう私ども理解をしているわけでございます。この指導要綱と申しましても、やはりコンサルタントですから、いろいろ意見をコンサルタントの側から出します。しかし、やはりその権利者の意見を十分に聞いた上で、相談に乗ってきめていくというのが妥当ではないかというふうに思うわけであります。
  77. 森義視

    ○森(義)委員 国の意思というのは、これはこの間からの質問ではっきりわかっているわけです、今度のこの法案を出してきた意思というのは。しかし、意思を実行に移す場合に、現状というものはまだはっきり把握されておらない。意思を実行に移す場合においては、その意思をどう具体的に移していくかという要綱が出てこなければいかぬ。それがはっきりしてないのですよ。いろいろと個々まちまちであるその人たちの意見を尊重していく。少なくとも意思というものは明確に出た。いわゆる火零細規模の克服という形で、森林組合の権利を拡大して森林組合方式協業化へ持っていく、こういう形で、粗放な入り会い林野を有効に活用していく、こういう意思で法律を出されておるわけですね。この国の意思というものは明確になっておる。そうすると、その国の意思を実施する場合には、相手はあまりにも複雑である。その複雑な相手に対して国の意思をどういう形で実施に移していくかという要綱が出ていない。したがって、そこまできたら、入り会い権者の意思に従うんだ、こういう形になっておるわけですね。そこで、私は先ほど申し上げましたように、国の意思が決定されて、その国の意思を具体的に実施に移す場合に、相手方の対象になる入り会い権者、旧慣使用権者の実態というものが十分把握されておらないうちに、意思だけが固まったということで、法律が出てきた、こういう形になっているんじゃないか、こういう感じがするわけです。したがって、この法律を実際に実施する場合における国の方針をどう入り会い権者、旧慣使用権者に徹底せしめるかという、統一された指導要綱がきちんと整理されていなくてはならない。たとえば割り山方式でやる場合にはどういう方法で、とめ山方式でならどういう方法でやったら一番いいか、あるいは最も古典的な経営、採草放牧地の多いところは、どういうふうに活用されたら一番いいかをはっきりさすべきである。こういう用途別、地域別の指導要綱というのが、ぴしゃっと出てこなければいかぬですよ。それがいまのところは出てないわけですね。だから出てないということは、現在の利用別、地域別の実態、そういうものが十分に把握されてない、それだけの把握じゃいけないわけですね。その取り巻く経済的な環境というものの中で、どうそれが生かされてくるかということも考えないと出てこないわけです。たいへんむずかしいわけです。したがって、おそらく出てきてないんじゃないか。そういうむずかしいものを出すためには、たいへんむずかしいから、入り会い権者の個々の地域の意思に従って国は考えていこう、こういういま状態にあるんじゃないか、こう判断するわけです。したがって、少なくともこの法律を出される以上は、国の方針がきまり、それを各地域で具体化していくには、こういう指導要綱でこういうふうにやっていく、しかもそれは複雑な実態に即した形で、どこのケースにも当てはめられるような、そういう形のものをサンプルとして準備をして、こういう形態のこういう状態の場合にはこういう方法がいいというものを指導要綱で出さないと、コンサルタントは全くどう指導していいのかわからなくなる、こういうふうに思うわけです。したがって、そういう問題をこの法案の審議過程の中で明らかに出してほしいと思う。まだ今国会だいぶ日にちもありますので、その間に指導要綱を明らかにしていただきたい、このことを資料として出していただくことをお願いいたしまして、昼食の時間が参っておりますので、質問を保留して、本会議終わったあと質問を続行させていただきたいと思います。
  78. 中川俊思

    中川委員長 本会議散会後再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時四十六分休憩      ————◇—————    午後三時五十二分開議
  79. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 休憩前に引き続き会議会を開きます。  午前に引き続き質疑を行ないます。森義視君。
  80. 森義視

    ○森(義)委員 入り会い林野近代化に伴う関連施策に関連して、いま少しお聞きしたいと思うのですが、入り会い林野の変遷の歴史なり、あるいはわが国の林野が私有化されていく歴史、さらには今日入り会い林野が利用されている状態、あるいは全国的な分布の状態、そういうものをながめてみますと、入り会い林野それ自体は、それを取り着く経済的な全体の条件と切り離しては考えられないと思うのです。したがって、入り会い林野がいまたとえば共同利用形態の残っておるところは、その付近を取り巻く経済的環境というのは非常におくれている。利用形態から申しますと、浦浜方式になっておるところのほうが、環境としては経済的に発展をしておる、そういう形になっておると思うのです。したがって、入り会い林野近代化それ自体だけでは、経済的効力を発揮するような体制はなかなか全うできない。したがって、入り会い林野を取り巻く経済的環境というものを整備する中で入り会い林野近代化されていって、初めて入り会い林野が農林業上の増進に役立つのではないか、こういうふうに実は考えるわけです。そういう点から申し上げますならば、入り会い林野近代化関連する施策と同時に、その取り巻く経済的基盤の整備のために特別に考えておられる方策があれば、お聞かせ願いたいと思うのです。
  81. 田中重五

    田中(重)政府委員 いまのお説はごもっともだと存じます。それで、この入り会い林野権利関係近代化がはかられようとするのは、林業基本法の趣旨に基づいた具体化施策の一環として取り上げているわけでございます。したがって、まず林業経営自体の近代化、合理化、これが必要でございまして、そういう意味では、基本法の第三条の趣旨に基づくところのもろもろの施策のうちで、林業構造改善等をすでに出発させているわけでございます。その中で、入り会い林野の土地利用の高度化、特に小規模林業経営の規模の拡大ということで、入り会い林野が入ってくるわけでございますし、それからそれの経営主体としての生産組合が入ってまいるということになるわけでございます。また一万、山村振興法が制定を見たわけでございますが、この場合、山村振興法の趣旨は十分に御承知のとおりでございますけれども、その中の振興山村地域、この中に入り会い林野が相当取り組まれているという実態がございます。そういう場合に、一例を申し上げますと、この四十一年度から実施になるところの峰越し林道、こういうものがやはりその入り会い林野等の環境整備を進めていく一環になろうか、こういうふうに考えております。いずれにしましても、入り会い林野近代化につきましては、環境の近代化、整備が並行してあるいは先行して行なわれていくという必要があることは、お説のとおりでございます。
  82. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、関連してお伺いしますが、戦後入り会い林野に対する林業施策として講じられた内容の中で、いろいろな法案関係だとかそういう中で、近代化が進まないから、いわゆる入り会い林野近代化していないから、それが達成できないのだという条件を除いて、ほかの条件でその入り会い林野近代化施策が成功を見なかった、入り会い林野近代化施策が成功を見なかった重要な原因は、入り会い林野近代化されておらない、入り会い林野を取り巻くいろいろな政府の施策が成功しなかった根本的な原因は、入り会い林野近代化がされておらないというところにあるのですけれども、それ以外に、地域ごとに他の条件で、入り会い林野に対するところの政府の施策が実を結ばなかった理由、原因、そういうものが戦後のこういった施策の中であれば、それに関連してお答え願いたい。
  83. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い林野の旧来の慣行によるおきてのために、その土地利用の高度化がはかれないということ以外の条件といたしましては、入り会い林野が所在する地域の一般的条件といたしまして、この薪炭材該当林分が広範に広がっているという状態がございまして、そうしてその地帯の住民のやはり資金の面におけるきわめて低位性、したがって、その地域に対する資金の投入の低き、あるいはその地帯の林道その他の整備の未熟、そういう点が、やはり入り会い林野が存在する地域の開発を、入り会い慣行とあわせておくらしていたということも言えるかと存じます。その面に対しましては、すでに申し上げておりますような低質林分の開発、低開発地帯の開発、そういうことで所要の資金の投入なり、あるいはその地帯の地上立木の販路の開拓なり、あるいは予ての地帯の林道網の整備なり、そういうことを一部実施してまいりましたけれども、今後この入り会い林野権利関係近代化にあわせて、いまの施策の一そうの促進をはかりたい、こう考えている次第でございます。
  84. 森義視

    ○森(義)委員 いまの御答弁のように、入り会い林の多い地区は、いわゆる貧しい農山村の地区が入り会い林が残っておるわけです。その地区が、入り会い林を近代化しようとしても、資金的に十分に負担能力を持っていない。したがって、これから入り会い林を近代化していって、そのあと、それを経済的事情に適応できるような体制を整えていこうとするならば、必要な資金的な援助が関連して行なわれなければ、ただ単に近代化しただけでは、その点では不十分だと思うのです。したがって、近代化以外の条件としては、特に貧しい農山村地帯が多い。したがって、入り会い林野近代化し、これを今後農林業の活用をはかっていこうという場合には、特に資金的な面の援助が非常に重要だと思うのです。その点について、前の長官答弁で、関連施策について十分考えておるとおっしゃいますけれども、これはそれぞれの地域ごとによってだいぶ違ってくると思うのですが、そういう点について特に配慮をいただかないと、これは近代化をしただけでは農林業上の投資の活用にならない。その点について、もう一回重ねて、特別な近代化以外の条件で活用されておらないというのは、私のかような考え方で正しいのかどうか、それならば、それに対してどういうような施策を考えるのか、これについて重ねて答弁を願いたい。
  85. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、いま促進を考えております一つの施策といたしまして、造林公社の問題がございます。造林公社はすでに十二県十三公社成立いたしておりまして、今後ふえていく傾向にございます。この際、造林公社制度について何らかこれを助長し、その事業成果を促進させることのできるような施策を今後この入り会い林野の趣旨とあわせて進めてまいりたい考えでございますが、この造林公社のまず掲げております業務内容の中にも、入り会い林野を避けて通るというような形が現在ございますので、むしろ、入り会い林野のような対象地域こそ優先的に考えていくような方向指導するためにも、この法案の整備が必要だということになりますし、それから主として資金源を農林漁業金融公庫の造林融資に仰いでおりますので、その資金ワクの増大を考えていくことが必要である、こう考えておりますと同時に、この造林公社と入り会い林野との関係をどのように規定していくか、生産組合をつくって、そうして生産組合みずから公庫と直結して進んでいく方法もございましょうし、公社を間に入れて、そうしてその資金のみならず、技術にも入り会い権者がたよっていくことによって、造林の促進をはかるということも必要でございましょうし、これは現在広範に成立しつつある公社の実態を十分にとらまえて、そうして御趣旨に沿うような指導的な役割りを果たせるように持ってまいりたい考えでございます。
  86. 森義視

    ○森(義)委員 造林公社のほうは、結局融資が円滑化されるというだけでしょう。現実にいままでの百行造林のような形にならないでしょう。公社造林の場合は、その点どうなんですか。
  87. 田中重五

    田中(重)政府委員 公社の場合に、まずその公庫の資金を受ける条件が整うということのほかに、やはり公社でございますから、それぞれ公社なりの技術を持った作業員あるいは職員等が配備をされることになるわけでございます。それからまた、公社になりますと、常時林業用の機械を整備していくということにもなるわけでございまして、したがって、造林上の熟練労務の確保、機械化の促進等、入り会い権者個々ではその趣旨が達成しがたいような面をこの公社が補完できるのではないか、こういうふうに考えておる次第でございます。
  88. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、三十一年に公有林野等百行造林法の一部改正で、入り会い林町もその適用範囲に加えられた。それが三十六年に今度は官行造林が廃止になって、いわゆる森林開発公団造林になった。ところが、公団造林というものは、水源涵養林とか保安林とか、そういうものに限定されて、実質上官行造林というものがなくなってしまったわけですね。そこで、私は、造林というものは、今日の経済情勢の中で、資本の回転率が勝負をするといわれているほど、回転率というものがこれから経済発展の競争過程において占める割合が非常に大きいわけですね。その中で、林業のようなものは、資本を投下してから回転率が三十年も四十年もかかる。しかも、それが国土保全的な、公共的な重要使命を帯びておる、あるいは林産物供給の経済的な至要使命と二つ持っておる。こういう林業等の投下資本の回転率の非常におそい産業に対しては、国がその基盤を整備するという観点から、民有林、国有林を通じて全部造林は国がやるべきである、こういう考え方を私は持っておるわけなんですが、そうでなければ、これはいまの経済情勢の中で、資本の回転率のおそいこんなところに投資するあれは非常に薄くなる。特にインフレ過程においてはこれはたいへんなことなんですね。だからそういう点で、公社造林という形で、もちろん技術とか機械化導入とか、いろいろな面で個人でなし得ないものをやっていこうとか、あるいは融資の道を仲立ちをしてやるとか、いろいろな面で配慮されているのはけっこうだと思うのですけれども、根本的に造林全体をそういう観点でとらまえる必要がいまきているのではないか、そういう段階にきているのではないか、こういうことを考えますので、この際、入り会い林野の整備の問題に関連して、造林は国がやる、こういう形を明確に出すべきじゃないかと思うのですが、その点、御所見いかがですか。
  89. 田中重五

    田中(重)政府委員 そのお話も、確かに一つの御見解であると存じます。現在におきましては、まずこの林業基本法の趣旨からいいまして、熱意ある林業従事者が林業経営に着手する場合に、でき得る限りの助成を国が与えていくという趣旨に立脚して、おおむねやはりそういう林業従事者に造林の拡大を期待をしておるわけでございますけれども、一方、いま先生のお話のように、低開発地帯、そうして特に造林のほうには技術が必要である、それから造林のコストが高いというような地域に対して、特に生活あるいは環境の条件の低劣な地帯の造林についてどうするか、森林開発公団の造林等は、そういうような意味におきますところの保安林あるいはその予定地、それに対して分収方式をもって造林を進めているわけでございますが、一方、それとうらはらの関係で、造林公社のほうが、また森林開発公団の負担しない面における造林の推進の担当者であるという考え方でございますので、この両方をできる限り資金需要にこたえながら進めてまいりたい。それ以外の地帯に対しては、いま申し上げました林業基本法の趣旨によって、できる限り林業従事者の経営の熱意を高揚し、刺激するような方向で持ってまいりたい、こう考えておる次第でございます。
  90. 森義視

    ○森(義)委員 特に私は、入り会い林地域に造林をそんな融資とか補助とかいう形でなくて、国でやるというのは、先ほど申しましたように、入り会い林野の地域は、非常に貧しい農山村が多い、こういう地区であるだけに、今度入り会い林野地区の近代化という問題を取り上げる場合、造林は国でやるという態度をはっきりとされることが、これが取り残された粗放な入り会い林野の今後の有効な活用に非常にプラスになる、そういうふうに実は考えるわけなんです。そういう点から、特に民有林の場合ですと、経済的採算がとれるところは、これは自力でやれる能力を持っておる人はどんどんやっていくわけです。それでもまだ計画どおりいっておりません。造林は六十何%ですから……。それが先ほどの経済性の資本の回転率からいって、あまりやれないわけですね。入り会い林野地域においては、そういう経済的採算をとるという観点で問題をとらまえるような経済力のある人たちがおらないわけです。これは個別私権化されてしまいますと、ますます個人のものになってしまう。これは自分でそれを経営する能力がない。したがって、あとで問題になる。この間も問題になっておりましたけれども、結局手放してしまう、こういう形にならさるを得ない。資金力のある者に所有が集中されてしまう、こういう形になってくると思うのです。私権化されたものが、実際に自分で活用していけるような、そういう資金的能力を持った地域じゃないのですね。それであるだけに、特別に私は、入り会い林野近代化に伴っては、その地域における造林は国でやる。いわんや、これは全体に広げてもらったらいいのですけれども、全体に広げなくても、もちろん、経済的採算のとれる地域、財産のある者はどんどんやっているから、そういうところまで手を伸ばさなくてもいいけれども入り会い林野においては、少なくとも造林は全面的に国でやる、そういう考え方でやっていただけば、その地域におけるいわゆる労働者の労働もそこで確保されていく、あるいは流出を防げる、いろいろな面で今後発展的な基盤が確保されていくんじゃないか、こういうふうに思うのです。そういう地域におけるところの造林について、他の地域と違った方法を特別に考える意向はありませんか。
  91. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、非常に重要な問題でございますし、お説ごもっともの面も多々ございます。慎重にひとつ検討させていただきたい、こう考えております。
  92. 森義視

    ○森(義)委員 それじゃその問題はそこらあたりでとめておきたいと思うのですが、慎重に検討すると、特にそういう経済的に貧困な地域における入り会い林野が多いわけでございまして、いま残されておるのは、たいていそういうところなんです。そういうところに対する開発というのは、近代化だけではだめだ。取り巻く環境の整備が必要で、資金的に余裕のない農山村民に対して特別な資金的な援助を考えるとか、あるいは造林を国でやるとか、そういう施策を別の地域と違った形で考える必要があるということを要望しておきます。  それから次に、今度の入り会い林野法律で、国有林の問題が取り上げられておらないわけです。国有林の問題については、大正四年の三月二十六日の大審院の判決で、国有林に入り会い権がない、これだけをたてにとってきておられるわけですが、国有林には大体入り会い慣行というものがあるわけですね。現在、入り会い慣行として国有林の中で認められておる面積はどのくらいですか。入り会い権じゃなくて、入り会い慣行ですよ。
  93. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い慣行として、と申しますよりも、この前もお答えを申し上げたわけでございますが、国有林野には入り会い慣行は存在しない、したがって入り会い林野はない、そういう見解に立っております。国有林の設定当時にそれがあったといたしましても、払い下げ、あるいは共用林野部分林その他立木、あるいはその他雑種物の処分の随意契約というような契約関係に切りかえられているというふうに考えているわけでございます。その面積につきましては、調査課長から申し上げます。
  94. 高須儼明

    ○高須説明員 現在、国有林野法に基づきます種々の共用林野と呼ばれておるところがございますが、これらの共用林野につきましては、新しい国有林野法に基づく契約関係ということで締結されましたものがほとんどでございまして、明治以前あるいは官有地に編入された以前におきまして、入り会い慣行の存したものが、一部あるいはそうした契約関係に切りかわったものもあるやと思われるわけでございますが、現在そのような区別をいたしました統計が存在いたしておりませんので、入り会い慣行の官有地編入以前にあったと思われるような面積につきましては、今日の統計では明確でないわけでございます。
  95. 森義視

    ○森(義)委員 なるほど長官答弁されましたように、いわゆる民法上の入り会い権だとか、あるいは自治法上の旧慣使用権というものは、明確に国有林の中に残っておるところは少ないと思います。ところが、入り会い権あるいは旧慣使用権というような形ではないけれども、入り会い慣行としては現実に残っておる。あるいは富士のすそ野なんかは、入り会い慣行として、防衛庁では二回にわたってこれを認めているわけですね。現在演習地に使うために、大体年間一千万円の補償を地元に出しておりますね。これなんかは、あるいは国有林の中には、なるほど民法上の入り会い権とか旧慣使用権はないけれども、入り会い慣行というものは認められておる。現実に私は富士のすそ野に行ったのですが、あそこの富士吉田市の中には、入り会い慣行組合が三階建ての大きなビルディングをかまえて、ビルディングの中には十八名も職員を置いて、この権利の主張をやっておるじゃないですか。そういう地域が全国でかなりあると思うのですよ。それをただ単に大審院の大正四年の判決だけで、もうないのだと言い切っていますけれども、現実にあるんだし、防衛庁あたりではそれを認めて、それに対して、演習によって入り会い慣行権者が損失を受けるものに対しては補償を出しているじゃないですか。
  96. 田中重五

    田中(重)政府委員 その点につきましては、いまも申し上げましたように、国有林野には入り会い慣行があったとしても、契約関係に切りかえられているというふうに考えているわけでございます。いまの防衛庁関係の分につきましては、それをどのようなものと規定して、いま先生のお話の補償を出したのか、必ずしも明らかでないように考えるわけでございます。で、この法律の対象とはならないのではないかというふうに考えるわけでございます。
  97. 森義視

    ○森(義)委員 法律の対象にならないように法律が書いてあるから、対象にならないのであって、やはりたくさん現実にあるわけなんですよ。これは富士のすそ野の忍草部落ですか、あそこなんは、この問題ではずいぶん長い歴史を持って闘争を続けているわけです。現実に防衛庁からそういうものを確認させて補償をもらって、そして先ほど申しましたように、職員を十八名も置いて、そういう権利闘争をやっているわけなんです。だから、これは単に契約関係で、国有林野の中で国との間に共用林野として契約を結んでおるという形で利用を認められるということじゃないのですよ。特に国有林でそういう入り会い権のあるところは、今後観光地として大きく活用されていくことが多いのですよ。そういうところは、いわゆる農林業の利用じゃなくして、地価がものすごく上がっているわけですね。特に富士のすそ野あたりの土地は、今後観光開発をやっていくと、これはたいへんな金額になるわけなんです。そういう問題は、この法律の趣旨の農林業の利用増進というワク内に入らないのです。そういう入り会い慣行をどうしていくかという問題は、当然考えなくちゃならない問題だと思うのですが、長官はそれはないのだと言い切ったけれども、現実にあるわけですし、この法案作成の過程でそういうことを調査された段階で、出てきていると思うのです。しかし、この問題をやろうとすれば、ちょっと問題が多いので、のけて通ろう、こういうことなんですか。
  98. 田中重五

    田中(重)政府委員 この法案は、あくまでも農林業近代化に資するための具体化施策の一環でございまして、その趣旨であるからこそ、税制上、手続上の恩典を与えていくという考え方でございます。いまお話しの、観光地その他農林業的利用以外の利用にその入り会い林野がかりに利用されるというような場合には、その土地の入り会い権者等におきましては、登記の手続その他税制上の負担にもたえられるような見通しも持って、その土地の利用を進めているのであろうというふうに考えられますので、この法案の対象とする必要はないというふうに考えておるわけでございます。
  99. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、答弁がちょっと変わってきたわけですけれども、やはり明治初年の官有、民有区分の以前は、林野は共同利用経営であったわけです。その中で、ある程度所有の明らかになったものだけは残して、あとは強権で全部国有にしたわけでしょう。三分の二の林野というものは国有にしてしまった。この中には、やはり入り会い権を持っておるところも、権利主張ができないまま国有に吸い上げられてしまった。しかし、それは長い歴史を通じて依然として入り会い権を主張しながら入り会いをしてきたという地域が、いまだにかなり残っておると私は思うのです。そういう問題をよけて通られたわけですが、この法律が通って、いわゆる入り会い権が区分せられぬままにこの問題が整理される場合に、この法律に基づいて、入り会い慣行者が、おれたちも入り会い権があるのだという形で所有権を主張して、入り会い権の確認訴訟を提起した場合、問題が起きてきますね。こういう点どうですか。おそらく私は、この法律一本で入り会い林野を全部整理しようとした場合、国は国有林に対する入り会い慣行と言っておるけれども、その利用者は入り会い権であると主張をしておるわけですから、はっきりするなら、この際はっきりしなきゃいかぬので、こういう訴訟は必ず起きてくると思う。それに対して何かお考えありますか。
  100. 田中重五

    田中(重)政府委員 この法案は、あくまでも農林業の土地の高度化に資する場合のみに限っているということがまずあるわけでございますから、したがって、農林業の土地利用以外の場合の利用については、ひとまず考えていない。それからその次は、民法にいうところの入り会い権の権利関係近代化の場合には、御承知のとおりに、入り会い権者の全員の合意ということを必須の条件としているわけでございます。したがって、全員の合意でそれが行なわれる場合には、これはまずこの入り会い権者からの紛争は起こらないというたてまえに立っているわけでございます。したがって、その問題が出てまいりますのは、地方自治法にいうところの旧慣使用林野の近代化後のことであろうと思います。旧慣使用林野を近代化する場合、これは法案にございますように、公有財産の所有者である市町村長が旧慣使用権者の意見を十分に聞いて、そうしてまずその旧慣使用権以外の権利はないということで、この権利関係近代化を進めていく、市議会の議決も経てまいる、そうして旧慣使用権を廃止していく、こういうことになっておりますから、したがって、そういう場合にも、旧慣使用権者が、これは入り会い権であるということをあとで訴訟として主張することは、まず考えられないわけでございますけれども、いま先生のお話しのように、これは入り会い権であるというふうな訴訟をもし提起した場合には、それはやはり訴訟の世界で争われる問題になるだろうというふうに考えるわけでございます。
  101. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、国有林の場合においては、民有林の場合のような民法上の権利としての入り会い権という形で主張されるよりも、公有林の主張と同じように、旧慣使用権として出てくるならば出てくる可能性がある。現実に富士吉田市あるいは御殿場市では、市長を先頭に立てた入り会い慣行組合なんですね。だから、そういうところでは、たとえば旧慣使用権という形で争われることになったならば、これは一ぺんに市議会で出ますよ。あそこは市長を先頭に立てて入り会い慣行の主張をやっているわけなんです。だから、これを旧慣使用権という形で認めていくということになれば、当然市議会で満場一致の議決を得られる態勢にあるわけです。そういう場合においては、当然それを分割したり、そういうことをされるのですか。
  102. 田中重五

    田中(重)政府委員 いま私がお答え申し上げましたのは、この法案によって、旧慣使用林野が、地方自治法に基づいた公有財産として、旧慣により使用収益されている場合に、その旧慣使用林野がその権利関係を廃止して、近代的な権利に移ったあとで、これは入り会い権であるという主張が出てきた場合のことを申し上げたわけでございます。したがいまして、ただいまの御質問にありますところの、国有林野に入り会い権あるいは旧慣使用林野があるという主張に対しましては、先ほどお答えしましたように、国有林野には入り会い林野も旧慣使用林野もないという考え方に立っているわけでございます。しかし、もしそれが訴訟として争われた場合には、それはやはり訴訟の世界での問題になり得るということは言えると思います。
  103. 森義視

    ○森(義)委員 現実にある問題、富士のすそ野の問題は、長官もよく御存じでしょう。現実に国有林の中に入り会い慣行があって、それを防衛庁で認めるか認めないかは知らないという長官の先ほどの答弁ですが、現実にそれは認めているのだし、その富士のすそ野の入り会い慣行を主張する人たちは、農林省へ来て盛んに交渉をやっているのです。だから、おそらく御存じだと思うのですが、そのことについては、この法律ではもう一切触れていかない、そういう態度なんですね。態度だけれども、いままでは防衛庁も一応それを認めた形で、入り会い権者のいろいろな損失に対する補償として、年間一千万ほど出しておる。それで認めてきたのだが、今度はそういう慣行的なものは全部この法律で整理してしまうのだ、こういうことになりますと、これは当然その国有林に持っておる入り会い慣行は権利として主張されてくる、これは当然予想されなくちゃならないと思うのです。いままでのような形で民法上あるいは自治法上認められておるあいまいな形ならば、これは入り会い慣行を主張して補償だけで黙っておりますけれども、これがはっきりと整理されて、慣行的な権利というものはこの際一切この法律で林野に関しては切ってしまうのだ、こういうことになれば、当然これは権利主張として出てくるわけです。そういうことを想定して考えなければならないと思うのですが、その点どうですか。
  104. 高須儼明

    ○高須説明員 先ほど来お話の出ております演習場の問題でございますが、これは私どもが聞いているところでございますので、記憶に間違いがあるかもわかりませんが、もともと複雑な経過を経てまいっておりまして、旧幕当時は藩の直轄地でございまして、その後、明治からいろいろな形で官有地に編入されたところのようでございますが、その後具有地になってまいりまして、再び陸軍演習用地となったところのようでございます。戦前、戦時中陸軍演習地となった当時以来、一応そういったような旧来の関係がないということで、現在見舞い金というような形で処理されておると思われるわけでございますが、国有地につきましては、大部分を占めております国有林野に何らかの権利関係が存在いたしましても、国有林野法に基づく契約上の権利である、かように理解いたしまして、この法案の作成に当たったわけでございます。
  105. 森義視

    ○森(義)委員 そうなると、そういう地域に対しては、林野庁と防衛庁との見解が違うということですね。林野庁は、あくまでも国有林野には入り会い慣行はないのだ、契約上はあっても、入り会い慣行はないのだ、こういう形で貫いていかれる。これは防衛庁に来てもらってただしてみますよ。どういう形で——包み金というような形で出されているのじゃないのです。防衛庁長官ははっきりと入り会い慣行を認めるという形で出しているのですよ。包み金というような、お涙ちょうだいみたいな形で出しているのだとおっしゃったけれども、防衛庁長官は二回にわたって、入り会い慣行があるということを言明しているのですよ。
  106. 高須儼明

    ○高須説明員 私ども防衛庁との事務的な検討の際におきましては、防衛庁におきましても入り会い慣行というようなものはないということで、了解いたしておるわけであります。
  107. 森義視

    ○森(義)委員 それでは防衛庁のほうから一度機会をあらためて出てもらって、どういう形で一千万円の補償を入り会い慣行者の主張に対して出しているか、これをただしてみたいと思います。
  108. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 他の機会に防衛庁と交渉いたします。
  109. 森義視

    ○森(義)委員 それでは法案の内容に入りますが、今度の第三条で、すべての入り会い権者の合意によって入り会い林野整備計画を作成されるとある。ここでいうところの入り会い権者、これは具体的にはどういうふうに——前に規定されてある入り会い権者の理解で正しいのかどうか。
  110. 高須儼明

    ○高須説明員 第三条の入り会い権者は、定義にもございますように、集団が有しております入り会い権に基づいて、使用または収益をやっている者のことをいっているわけでございますが、本日お配りいたしました資料をごらんになっていただきましても、各入り会い集団におきましては、入り会い権者を明確につかんでおるのが通常でございます。入り会い山の運営につきましては、常にそれらの人々が寄り合いをいたしまして、今日実行いたして、林野の管理をいたしておるわけでございます。ときに入り会い権者が、この資料の中におきましても、部落外に転出いたしておるところが若干あるわけでございますが、このような場合には、転出しても権利を保有するというような形で、台帳あるいは種々の証拠書類というようなものが存在しておりまして、その所在も明らかになっておるのが通常の形態でございます。特に行くえ不明とかいうようなことがいろいろ問題になってまいりますのは、明治時代当時の所有権者、所有名義者の問題であろうかと思いますが、ここに書いてございます入り会い権者とは、所有名義人という趣旨ではございませんので、今日現実に入り会い林野を使用収益する権利を有している者の集団を申しているわけでございます。
  111. 森義視

    ○森(義)委員 そうすると、現実に入り会い林野を使用し、そこから収益を得ている者、それからその入り会い集団に権利者として登記されている者、こういう範囲にいまの御答弁ですと限定されているわけですね。
  112. 高須儼明

    ○高須説明員 さようでございます。
  113. 森義視

    ○森(義)委員 そうしますと、この各入り会い集団は、その調査によると、大体入り会い権者というものが、それぞれの入り会い集団によって名義ははっきりしている、こういう形なんですけれども、必ずしも現状はそうではないと思うのです。それは入り会い集団によりまして、そういう書類をはっきりと整備しているところと、整備していないところとあるわけですね。だから、たとえば部落から出ていった場合に、直ちに権利を喪失するところと、あるいは何年以内に帰ってきた場合には権利が生まれるところと、あるいは入ってきた場合に直ちに権利を得られる場合と、それから三十年もかからないと、権利を得られない場合と、いろいろあるわけですね。たとえば部落に入ってきましても、入り区金というものを納めることによって権利が発生する、あるいは場合によっては、部落の者全部を集めて酒を一ぱいごちそうしただけで権利が発生するとか、いろいろな形があるわけですね。そういうふうに集団ごとに入り会い権者が明確でない。課長はそれははっきりしているとおっしゃるけれども、はっきりしていないと思うのです。たくさんな形があると思うのです。
  114. 高須儼明

    ○高須説明員 全国を見ました場合には、千差万別でございまして、全国に画一的な基準があるわけではございません。部落から部落に至りまして、その基準が違っております。それは先生のただいま申されたとおりでございますが、それぞれの部落におきましては、昔からのしきたり、おきてが明確にきまっておりまして、それぞれの部落をとらえましたときには、比較的明瞭でございます。ただ、先ほどおっしゃいましたように、慣行が非常に不明確になっておって、その慣行の解釈について争いのあるような場合が間々あるようでございます。このような場合には、全員が慣行を確認し合うというような方法によりまして、全員の範囲を確定し得るものと考えております。また、もちろんその話し合いがなかなかつかないような状態のある場合もあろうかと存じますが、そのような場合には、できるだけ納得のいくような状態指導してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  115. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、この第三条は、なるほど全員の合意によって整備計画ができ、規約ができる、こういうことが認可の前提になるわけですね。その場合に、これは全員ということになれば、かなり民主的であるというふうに理解をされるわけですが、実際問題として、全員の合意を得るということは至難なケースが多いと思うのです。先ほど申しましたように、それぞれの集団によって権利者の範囲とかあるいはその取り扱いが区々まちまちである。そういう場合に、全員の合意、たとえば部落に入ってきて、そして入り区金を納めて、十年で入り会い権を獲得する、こういう入り会い集団の規約がある。その場合に、九年五カ月たった、これをどうするかという問題が具体的に起きてくるわけですね。これは入り会い権者と認めるかどうか。もうあと六カ月で権者になるのだけれども、いまはないのだ。ところが、その手続をとる途中で入り会い権の権利が発効した。こういう問題が具体的には出てくると思うのです。したがって、そういうことを考えますと、ここで全員の合意というのは、いかにも民主的のように考えられますけれども、実際問題として、全員の合意というのは、どういう方法によってそういう全員の合意を得られる道を講じようとされるのか、なかなかむずかしい問題だと思うのです。何か全員の合意というのは、たとえば何月何日を切って、そこで入り会い権を持っている者だけを入り会い権者と認める、あるいは現在利用し、収益している、これだけを入り会い権者として認める、過去に権利を持っておるけれども、いまはない、そういう者はもちろん認めない、それがはっきりしておったら、全員というものがはっきり切れると思うのですが、そういうものがはっきりしていなければ、全員の合意というものはたいへんむずかしい問題だと思うのですが、自信がおありですか。
  116. 高須儼明

    ○高須説明員 ただいまおっしゃいましたような事例もあると思われます。たとえば九年五カ月経過しておるといったような場合もあろうかと思われるわけでございますが、この場合に、私ども考えておりますのは、申請の時点までに入り会い権者になった者を含めての入り会い権者の全員でございます。また村外に出ていった場合に権利を失います者、あるいは村外に出ていって再び戻ってきた場合には権利を持つであろうという慣習のあるような者、いろいろあると思われますが、あくまでも計画を作成いたしまして、申請までに明確になった権利者の範囲の全員の合意を考えておるわけでございます。この申請を行ないましたあとからその期限が到来いたしまして、入り会い権者の変更の起こりました際には、整備計画の変更という手続をここに開いておるわけでございます。その場合には、死亡による変更等いろいろな場合があろうかと思われますが、この場合の手続も、それぞれ所要の個所において規定いたしておるわけでございます。
  117. 森義視

    ○森(義)委員 そこで、もう一回お尋ねしますけれども、この法案を作成された林野庁としては、全員の合意というのはあくまでも貫いていく、これでやれる、こういう自信があってこれを出されたように、いまの答弁で承るわけなんですが、そういうふうに考えてよろしいか。
  118. 田中重五

    田中(重)政府委員 入り会い権と申しますのは、御承知のとおりに、民法でいう物権でございますし、登記なくして第三者に対抗できる強い権利でございますから、したがって、その権利を持っている者全体の合意がなければ、その権利を廃止あるいは改変することは正しくないという見解に立っているわけでございます。これはそういう観点からあくまでも全員の合意であるという必要がございますし、また、入り会い林野の慣行からいいましても、すべてある慣行をきめていく場合に、全員の合意でやっているというのが通常のやり方でございます。そういうことで、全員の合意でやらなければならないし、またそれはできるというふうに考えているわけでございます。
  119. 森義視

    ○森(義)委員 入れ会い林野の整備計画をつくる時点における権利者を網羅して、全員の合意という形で考えているのじゃないか、そういう先ほどの課長答弁であったわけですが、そういう形でとにかく自信を持って、入り会い権者全員の合意を得られるようなことを想定して、この作文をしておられるわけだし、また物権として第三者に対抗し得る民法上の権利として、当然個人個人が持っておる権利は全員が認めなければいけないというたてまえからも、第三条の全員合意という形になっておる、こういうことだと思うのです。そこで、全員合意の上で入り会い林の整備計画を出される場合に、今日入り会い林の整備計画をつくる全員の合意というのは、みな同じような状態にないわけですね。たとえば、もう林業、農業をやめて、そうして出かせぎに行っておるという人たち、あるいは今日その地域において林業、農業に携わっておるという人たち、それから将来もその地域に個人の資産を別に持っておって、引き続いてそこで居住していこうという人たち、それからもう機会があればこの地域をできるだけ離れたい、すでに子供を教育してほかの町にやっておるし、親もある時期がきたら抜けようとしておる、こういういろいろなケースがあるわけですね。その人たちの考え方の相違が、農林業上の利用という一つの大前提に立って合意できる条件にあるのかどうか、これはたいへんむずかしい問題なんです。みながそこに永住する、そうして農林業をやっておる、こういう形で入り会い権者がおるならば、これは全員の合意によるところの農林業上の利用の増進に必要な活用の方法の意見一致を見ることができると思うのです。ところが、今日入り会い権者というのは、それぞれの地域において全く区々まちまちだと思うのです。もう農林業というものに対しては早く足を洗いたいという人たち、また引き続いて農林業の規模の拡大をやってここに永住したいという人たち、大きく分けますと、大体そういうふうに分けられる。それらの人々の意見の一致はどういう点で見られるか、これはどういうようにお考えなのか。私は、この整備計画をつくる場合の全員合意、これはたいへんむずかしい問題だと思うのです。それについて自信があれば、どういう点で全員合意によるところの整備計画が作成できるというふうにお考えか、お答え願いたいと思います。
  120. 高須儼明

    ○高須説明員 確かに御指摘のとおり、この整備計画を作成してまいる場合には、非常に違った利用方向を主張する人々の集団のむずかしい関係が出てくる場合も多かろうと思うわけであります。そこでまず、原則的には、できるところから逐次やってまいるということでございまして、たとえば一千ヘクタールの入り会い林野がその部落にあるといたしましても、そのうちの一部については、採草地は今後高度集約牧野に転換してまいるとか、あるいは山寄りの地帯は生産森林組合による林業的利用に進むのであるというように、それそれ地質その他の諸条件を考えまして、最も適当な利用区分を行ないまして、それをやっていこうとする人々にその土地を与えるというような内部での話し合い、納得というようなことできめてまいる。このためには、もちろん都道府県、市町村あるいはコンサルタント等の積極的な指導、説得等が必要であろうかとも思われるわけでございます。また、将来この部落に残るよりは、部落外に転出するというような希望の方もあろうかとも思われますので、その場合には、その権利の相互間の譲渡、権利放棄というようなものも計画の一部になろうかと考えておるわけでございます。
  121. 森義視

    ○森(義)委員 最もモデル的なケースを一つ例にとって、その最初から全員合意によって整備計画ができて、それから知事の認可を得るまでの経路について、林野庁が想定しておられる最もモデル的なケースを一ぺん説明してください。たとえば百町歩ある、それで三十人のケースで、どういう環境に置かれておって、いままでの活用はどういう状態であるか、それが今度整備されていく場合、どういう指導で、どういう順序を経て、どういうふうになっていくのか、これは一ぺんモデル的なケースをひとつ経路がわかりにくいから、説明してください。
  122. 高須儼明

    ○高須説明員 具体的な例は非常に複雑な諸条件がからんでおりますので、なかなか申し上げにくいかとも思うわけでございますが、三百ヘクタールの土地を三十名で持っておる。現在そのうちの百ヘクタールは直轄利用形態で林業を営んでおるというような場合もあろうかと思われます。またあとの百ヘクタールは原野で、従来採草利用を行なっておる。その場合には割り山利用であるというようなことも考えられようかと思います。またあとの百ヘクタールは採草地、カヤ場といたしまして、共同利用を行なっておるということも考えられるわけでございます。さような場合には、直轄利用をいたしております薪炭林、大部分は薪炭林と思われますが、そのようなものにつきましては、中で十名あるいは十五名の人々が生産森林組合をつくって、それを林業的利用にしてまいる、あるいは百ヘクタールの割り山利用をいたしております採草地につきましては、各人分割するなり、あるいはまたそれを共同してミカン園の造成であるとか、果樹園造成、あるいはその一部は農用地にしてまいるかとも思われますが、さような利用方向考えられるわけでございます。またカヤ場等は今日全く利用関係がございませんので、そのような土地につきましても、農用地造成あるいは造林これは山手に比較的適地であれば造林利用でございましょうが、ほかの利用目的があれば、またそちらのほうになるかとも思われます。これらの関係をつくってまいりますためには、おそらくこの三十名の方々の中に強力な指導者が一人おられまして、若干の方々と利用計画あるいは規約案とか整備計画の案などを作成されまして、そうしてこれで部落全員の納得を得るために、じみちに説得工作を続けられるものと思うわけでございますが、そういった際には、市町村あるいは都道府県などの技術者も参加いたしまして、また私どものほうの助成にかかるコンサルタントも参加いたしまして、実体をほとんどつくり上げましてから、この法律の分野に入ってこなければ、現実はなかなか動かないと思われるわけでございます。したがいまして、この法律は、ただ認可の手続を規定いたしておりますが、現実にはそれ以前にすべての話し合いが実際上まとまるという状態にまで指導し、また持ってこなければ、実現はなかなか困難であろうかと考えておるわけでございます。
  123. 森義視

    ○森(義)委員 モデルケースを一応図解して、こういうふうになっていくのだというものを一ぺん出してください。いまそんなことを考えておられたらとってもできませんよ。入り会い権者は平等の権利を持っておるわけですね。ところが、そこですでに、平等の権利を持ちながら、指導者の指導力が影響するわけですね。権利は平等に持っておるのだけれども、この整備計画をつくる場合の権利というのは、もう平等に発効しないのですね。そういう形になりますと、たとえば入り会い山の中で、非常に樹林地としてこれから森林計画を進めていくのにいいところが、結局その地域の指導者、ボスにとられてしまう、こういう形になって、平等の権利が、整備計画をつくる過程において平等でなくなってしまうのですね。そういう問題に対する意見の統一というのはなかなかできないのです。だから私は、いまおそらく課長はそういう答弁をするだろうと思っておったのですが、そんなのでは実際にやれないと思います。したがって、もう一回モデルケースの青写真をかいてもらって、そうしてそれを図示した資料として出してください。こういう形、こういう形態がこの中へ出てくるかもしれぬ、こんな問題が起きるかもしれぬ、それをどういうふうに克服していくという——コンサルタントのそういう整備計画をつくる場合における指導方針にも、それが必要になってくるのですよ。だから、ずっとモデルケースを図示してください。私は、この形では絶対に出てこないと思うのです。ほんとうに入り会い権者の平等な権利が平等に主張されて、平等な形で整備計画ができるというようなことは、およそ山村では想定できないのです。さっき言ったように、やはり有力な指導者がおられて、その指導者が根気強く説得をされて、そうして判を押される。結局最終的には、権利者というのはめくら判を押すということになる。そういう形になってしまう。だから、そこらあたりに個別私権化するということは問題がある。だから、そのままの形で、生産森林組合で同じ平等の持ち分で出資してしまうという形で権利を切りかえるのだったら、これは平等の権利として発効します。しかし、一たんこれを分割私権化してしまうということになれば、そこに働く力というのは平等じゃないのですよ。権利は平等であっても、働く力は平等じゃないわけです。だから、出てくる形態はおかしな形態になる。出資する場合、片方は百万の価値しかない、片方は五百万の価値を持っておる。そうすると、生産森林組合の中で出資した持ち分というものは変わってくる、そういう段階も想定されるわけです。そうすると、生産森林組合の中における発言権が違ってくる。そうすると、いま持っておるところの権利というものが平等であるのが、今度生産森林組合段階になってきた場合には、もう権利が平等でなくなっておる、こういうことも想定されるわけなんです。したがって、山村の実態というものは、みなが同じ能力を持ち、みなが同じように農林業を営もうという意欲を持つ、そういう形の中で行なわれるんじゃないのですね。区々まちまちな形の中で行なわれる。そういう場合に、こういう方針指導できるというならば、これは私はまゆつばものだと思う。したがって、きょう午前中に資料の提出を要求しましたコンサルタントの指導計画要綱、それに基づく具体的な指導、こういう問題が微に入り細にわたって出されてきたら、それを対照して一ぺん検討してみたいと思っておったのですが、それと一緒に出してほしいのです。モデル的な入り会い林野近代化整備計画の最終時における、知事が認可して生産森林組合までつくり上げる段階、この段階の経路をずっとかいた資料を出していただきたいと思います。  きょうは時間が五時までということですから、質問を保留いたしまして、きょうはこれで終わりますが、資料をきょう午前中に要求しましたコンサルタントの指導要綱とあわせて出していただきたい、こういうふうにお願いしておきます。
  124. 舘林三喜男

    ○舘林委員長代理 次会は明二十日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十八分散会