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1966-03-09 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月九日(水曜日)    午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 中川 俊思君    理事 大石 武一君 理事 倉成  正君    理事 田口長治郎君 理事 舘林三喜男君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       伊東 隆治君    池田 清志君       宇野 宗佑君    小枝 一雄君       小山 長規君    笹山茂太郎君       田邊 國男君    高見 三郎君       丹羽 兵助君    野原 正勝君       長谷川四郎君    藤田 義光君       森田重次郎君    足鹿  覺君       卜部 政巳君    江田 三郎君       兒玉 末男君    千葉 七郎君       西宮  弘君    松浦 定義君       森  義視君    湯山  勇君       林  百郎君  出席国務大臣         農 林 大 臣 坂田 英一君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (農林経済局         長)      森本  修君         農林事務官         (農政局長)  和田 正明君         農林事務官         (畜産局長)  桧垣徳太郎君         水産庁長官   丹羽雅次郎君         運輸事務官         (海運局長)  亀山 信郎君         郵政事務官         (電気通信監理         官)      畠山 一郎君  委員外出席者         日本電信電話公         社総務理事   黒川 広二君         日本電信電話公         社施設局次長  緒方 研二君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 三月九日  委員松井誠辞任につき、その補欠として足鹿  覺君が議長指名委員に選任された。 同日  委員足鹿覺辞任につき、その補欠として松井  誠君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案  (内閣提出第九七号)  農業信用基金協会法の一部を改正する法律案  (内閣提出第九八号)  漁船損害補償法の一部を改正する法律案内閣  提出第三九号)  北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法  の一部を改正する法律案内閣提出第八六号)      ————◇—————
  2. 中川俊思

    中川委員長 これより会議を開きます。  農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案農業信用基金協会法の一部を改正する法律案を一括して議題といたします。  両案について、それぞれ補足説明を聴取いたします。森本農林経済局長
  3. 森本修

    森本政府委員 農業近代化資金助成法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。  まず第一点は、果樹その他の永年性植物及び乳牛その他の家畜育成に必要な資金政令で定めるものを農業近代化資金に加えるための第二条第三項の改正でございます。  農業近代化資金は、農業者等資本装備高度化経営近代化に資するという観点から、現在、農舎、農機具等農業生産に関連する施設資金融通を行なうこととなっておりまして、家畜飼養農家及び果樹等栽培農家につきましても、畜舎、畜産用機具病害虫防除用機具等施設にかかる資金のほか、家畜購入または果樹等植栽に必要な資金のみの貸し付けを行なっているところであります。  しかしながら、家畜飼養農家果樹等栽培農家におきましては、施設整備多額資金を必要とするばかりでなく、生産手段たる家畜及び果樹育成過程において飼料費肥料費等多額現金支出を必要とし、しかもこれらの育成経費に充てるための資金は、中期にわたる育成期間を経過して初めて回収し得るという性格を有するものであるため、この間の農家償還負担を可及的に軽減する必要があるのであります。また、このような育成資金は、生産家畜果樹等固定資本の形成と密着して必要となるものであり、資本装備高度化をはかるという農業近代化資金制度目的を達成するためには、家畜購入資金または果樹等植栽資金にあわせて、これらの育成資金を円滑に供給することが必要であると考えられるのであります。  このような観点から、今回、家畜飼養農家及び果樹等栽培農家資本装備高度化という要請にこたえるため、資金需要に即して、搾乳牛等生産家畜育成に必要な資金及び果樹その他の永年性植物育成に必要な資金農業近代化資金に加えることといたした次第であります。  これら資金貸し付け条件といたしましては、金利は、年六分以内、償還期限及び据え置き期間は、生産家畜育成資金の場合には、家畜購入資金に準じ償還期限五年以内、うち据え置き期間二年以内、果樹等育成資金の場合には、果樹等植栽資金に準じ償還期限十五年以内、うち据え置き期間七年以内といたしております。  なお、貸し付け限度額につきましては、現行貸し付け限度額規定を適用し、施設資金と合わせて、協業経営の場合一千万円、個別経営の場合は二百万円、知事の特別の承認のあった場合五百万円といたす所存であります。  第二点は、償還期限及び据え置き期間の延長を行なうための第二条第三項第二号及び第三号の改正でございます。  現行制度におきましては、償還期限及び据え置き期間は、それぞれ十五年及び三年の範囲内で資金種類ごと政令で定められているところであります。  しかしながら、昭和四十一年度から、農村及び農業者環境整備を推進するため、政令改正によりまして、農協病院農事放送簡易水道等農村環境整備のための共同利用施設資金融資対象に加えることとしておりますが、これら資金のうちには、その施設種類によっては、現行償還期限では必ずしも実情に即さないものがあると考えられますし、また、果樹等植栽資金及び育成資金につきましても、その育成期間に比較的長期を要するため、現行据え置き期間では必ずしも十分でない面があるのであります。  このため、今回、この償還期限限度を十五年から二十年に延長するとともに据え置き期間につきましても、三年から七年に延長することといたした次第であります。  第三点は、農林中央金庫が行なう農業近代化資金貸し付けについて政府が直接利子補給を行なう制度を設ける等のための第三条の二及び第三条の三の規定新設でございます。  農業近代化資金利子補給は、従来すべて都道府県がこれを行ない、これに対して政府が補助するという方式をとっていたところであります。しかしながら、最近において農業資金需要は年々大口化しつつあり、特に企業的大規模経営業務区域が二府県以上にまたがる農業を営む法人等施設または全国段階における連合会共同利用施設等にかかる大口資金需要につきましては、農業協同組合または信用農業協同組合連合会貸し付け及び都道府県による利子補給という従来の方法によりがたい面がありますので、かような場合には、全国的機関たる農林中央金庫がこれらの機関貸し出し能力を補完して積極的にその貸し出しを推進するとともに、政府がその貸し付けにつき直接利子補給措置を講ずることが適当であると考えられるのであります。このような観点から、政府農林中央金庫が行なうこのような農業を営む法人所属団体等に対する貸し付けにつき直接利子補給金を支給する旨の契約を同金庫と結ぶことができることとし、この利子補給金支給年限利子補給金額限度等につき所要規定を設けることといたした次第であります。  なお、あわせて、農林中央金庫が行なう農業近代化資金貸し付けにつきましては、現行農林中央金庫法第十五条の二の規定による主務大臣認可を受けて十カ年以内の貸し付けという制限を緩和することといたしております。  第四点は、貸し付け相手方法人格を有しない団体を加えるための第二条第一項第四号の改正でございます。  先ほど申し上げましたように、昭和四十一年度から、農村環境整備のための資金融資対象に加えることとしているところでありますが、このような環境整備資金実情に即した融資を推進するため、今回新たに、法人格を有しない団体で一定の要件を備えているものを共同利用施設資金貸し付け相手方に加えることといたした次第であります。  以上、法律上の改善措置について御説明申し上げましたが、来年度におきましては、これらの措置にあわせて、融資ワクを八百億円に拡大するとともに、貸し付け金利につきましても、一般施設資金及び共同利用施設資金金利を五厘ずつ引き下げることとし、借り受け者の負担軽減をはかり、農業近代化資金の一そうの伸長を期しているところでございます。  以上、簡単でございますが、本法律案及びこれに関連する主要な問題についての補足説明を終わります。  農業信用基金協会法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由説明を補足して御説明申し上げます。  まず農業信用保険協会の組織に関する第三章第一節の規定新設について御説明申し上げます。  第一に、農業信用保険協会設立および会員についてでございます。  同保険協会は、会員たる資格を有する者十五人以上が発起人となり、創立総会を開く等協会設立のための事務を行ない、主務大臣による設立認可設立登記等所要手続を経て成立することといたしております。その設立手続等につきましては、農業信用基金協会設立に関する規定を準用いたしております。  保険協会会員たる資格を有する者は、農業信用基金協会及び農林中央金庫とし、その加入および脱退は任意といたしております。また、会員の有する議決権は、第七十一条の規定により各一個としておりますが、同条ただし書き規定により、出資の額が政令で定める額以上である会員に対しては、その出資金の額に応じて政令で定める基準に従い、定款で定めるところにより、二個以上の議決権を与えることができることといたしております。これは、農業信用基金協会の場合と同様に会員一人当たり各一個及び出資一口当たり一個の議決権を与えることといたしますと、農林中央金庫のように他の基金協会に比べて相対的に多額出資を行なう会員発言権だけが特別に強大になるということを避けるためのものでございます。なお、会員出資、持ち分の譲渡、加入及び脱退等につきましては、おおむね基金協会規定を準用いたしております。  第二に、保険協会業務についてでございます。  保険協会は、農業近代化資金融通を円滑にすることを目的として、一、保証保険及び融資保険並びに二、農業信用基金協会に対する貸し付け業務を行なうことといたしております。  保証保険と申しますのは、農業信用基金協会が行なう農業近代化資金にかかる債務保証についての保険でありまして、今回の制度改正主眼目をなすものであります。また融資保険とは、農林中央金庫が行なう農業近代化資金貸し付けについての保険でございます。  なお、農業信用基金協会に対する貸し付け業務は、各基金協会農業近代化資金にかかる保証債務の額を増大するために必要な原資となるべき資金及びその履行を円滑にするために必要な資金を低利で融資するものでありまして、この貸し付けにより、各基金協会保証機能の拡充とその経営基盤の強化に資することを期しているところであります。  第三に、保険協会の財務及び会計に関する事項でございます。  保険協会農業信用基金協会及び農林中央金庫会員となり、その出資によって設立される自主的な機関ではありますが、その行なう事業公共性に着目いたしまして、特に政府が同保険協会に対し、保険金支払い及び貸し付け財源に充てるため、交付金を交付することといたしております。四十一年度における政府交付金といたしましては、保険事業における保険金支払い財源に充てるべきもの四億円、貸し付け事業における貸し付け財源に充てるべきもの四十億円を予算に計上いたしているところでございます。  なお、保険協会は、保険事業に関して保険準備資金を、融資事業に関して融資資金を設けるものとし、保険準備資金にあっては、会員からの出資金及び保険金支払い財源に充てるべきものとして政府から交付された交付金の額をもってこれに充て、融資資金にあっては貸し付け財源に充てるべきものとして政府から交付された交付金の額をもってこれに充てることといたしております。なお、これらの資金は、いずれも保険協会損益計算上の損失を埋める場合を除いては、取りくずしてはならないものといたしてございます。  その他、利益及び損失の処理、責任準備金計算とその積み立て等についても、所要規定を設けております。  第四に、保険協会管理に関する事項でございます。  まず、定款変更業務方法書変更事業計画設定及び変更につきましては、総会議決事項とし、主務大臣認可または承認を受けなければならないことといたしております。また、収支予算設定及び変更についても、同様に主務大臣承認を受けなければならないこととしております。  保険協会役員は、定款で定めるところにより、総会において選任することといたしますが、その選任にあたっては、主務大臣認可を要することとなっております。その他、定款記載事項、規約、役員の定数、総会招集等保険協会管理に関する事項につきましては、おおむね現行農業信用基金協会に関する規定を準用することといたしております。  その他、保険協会の解散及び清算並びに行政庁による監督につきましても、所要規定を設けております。  次に、農業信用保険協会が行なう保証保険及び融資保険について、保険契約締結保険関係内容等に関して定めております第三章第二節及び第三節の規定について御説明申し上げます。  まず、保険契約締結に関する第七十八条の規定についてでございます。保険協会は、毎事業年度基金協会相手方として、基金協会政令で定める額以上の額の農業近代化資金の貸付けにつき保証をした場合には、当該保証をしたことにより、また、当該政令で定める額未満貸し付けにつき保証をした場合には当該保証をしたことを保険協会に通知することにより、その保証につき、保険協会とその基金協会との間に保険関係が成立する旨の契約締結することができることといたしております。これは、基金協会リスク軽減に資するため政令で定める額以上の比較的大口貸し付けにかかる保証については、基金協会保証をすれば当然に保険関係が成立する包括保険とし、当該政令で定める額未満の小口の貸し付けにかかる保証については、基金協会選択により保険関係が成立する選択保険とする趣旨のものでございます。なお、保証保険保険関係においては、基金協会借り入れ金につき保証をした金額保険価額とし、基金協会が借り受け者にかわって行なう借り入れ金の全部または一部の弁済保険事故とし、保険価額に百分の七十を乗じて得た額を保険金額としております。  次に、基金協会が支払うべき保険料の額は、保険金額政令で定める率を乗じて得た額とし、具体的には、貸し付け利息徴収方法と同様に、年々の保証残高に応じ、年〇・三%程度の保険料を徴収する考えでおります。  基金協会代位弁済をした場合には、保険協会から保険金支払いがなされることとなりますが、その保険金の額は、基金協会代位弁済をした借り入れ金の額から基金協会保険金支払い請求をするときまでに借り受け者に対する求償権を行使して回収した金額を控除した残額に、百分の七十を乗じて得た額としております。  また、保険金支払いを受けた基金協会は、その後も代位弁済に基づき借り受け者に対する求償権を有しておりますので、保険金支払い請求をした後にその求償権を行使して債権を回収した場合には、その回収金の額に百分の七十を乗じて得た金額保険協会に対し納付しなければならないことといたしております。  なお、農林中央金庫貸し付けについて行なう融資保険につきましても、おおむね同様の規定を設けております。  改正の第三点は、保険協会基金協会に対する貸し付けを行なう制度を設けることに伴い、基金協会当該借り入れ金についての管理方法等を定める第九条の二の規定新設でございます。  従来、基金協会は、会員からの出資金準備金繰り入れ金等代位弁済に充てるための基金として、預金、金銭信託等流動性のある形態管理していたところでありますが、今回、先ほど申し上げましたように、基金協会保証機能をさらに拡充強化するため、保険協会から基金協会に対し、資金貸し付けを行なうこととし、基金協会は、自己資本たる基金のほか、この借り入れ金についても、代位弁済に充てるための財源として、従来の基金と同様に流動性のある形態で保有しておかなければならないことといたした次第であります。  なお、この保険協会からの借り入れ金をもって管理する資金は、このような特別の役割りをになうものでありますので、その使用については、代位弁済及び保険協会への借り入れ金償還に充てる場合のほかは、特に主務省令で定める場合に限り使用することができることとしております。  以上がこの法律案による改正の重点でございますが、このような改正による新たな制度内容に即し、法律の題名を農業信用保証保険法と改めるとともに、関係規定につきまして、所要整備を行なうこととしております。また、附則におきましても、農業近代化資金助成法等関係法律規定所要整備を行ない、また保険協会農林中央金庫所属団体たる資格を与えるほか、登録税印紙税地方税所得税及び法人税につきまして、税制上の優遇措置を講ずる等所要規定を設けることといたしております。  なお、以上の改善措置のほか、法律改正事項ではございませんが、債務保証制度改善措置の一環といたしまして、基金協会債務保証限度率の引上げの措置を講ずることといたしております。従来、基金協会が行なう債務保証限度は、貸し付け額の八〇%以内としているところでありますが、今回、これを原則として一〇〇%、例外の場合には九〇%に引き上げることとし、さらに一そう借り受け者の受信力の補完と融資機関リスク軽減をはかり、農業近代化資金の円滑な融通を期したいと考えている次第であります。  簡単でございますが、以上をもちまして本法律案及びこれに関連する主要な問題についての補足説明を終わります。
  4. 中川俊思

    中川委員長 以上で補足説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 中川俊思

    中川委員長 次に、漁船損害補償法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。湯山勇君。
  6. 湯山勇

    湯山委員 漁船損害補償法の一部を改正する法律案につきまして、若干御質問申し上げたいと思います。  それに先立ちまして、これとの関連もございますが、昨日陳情のありました備讃瀬戸特定水域でございますけれども備讃瀬戸、それから番ノ州の埋め立て、これらによる漁業被害陳情されましたわけでございますが、あるいは政府のほうも御存じのように、この問題は、従来おとりになっているように単に県を通して調査されたのでは、なかなか実態がつかみにくいというような事情もあるかと思います。そこで、早急に農林省のほうで、あるいは水産庁のほうで、直接現地について御調査願うのが至当だと思いますが、そのような措置をおとりいただけるかどうか、まずお伺いいたしたいと思います。
  7. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 湯山先生がただいま御指摘になりました点につきましては、昨日私ども現地からの陳情を拝聴いたしました。これは御承知のとおり、運輸省工事で、実際には神戸にございます運輸省の出先がやっております工事でございます。その工事によりまして、浮土、流れましたどろが養殖真珠母貝及び魚類の養殖損害を及ぼしたので、この補償問題についての陳情でございます。公共事業でございますので、知事運輸省との間で着工前に契約が行なわれておるわけでございます。漁業権の一時停止あるいは収用等につきまして、公共補償契約が進んでおりまして、工事進行によります真珠母貝及びその他の養殖漁業損害の問題は、その実態に応じて補償する、こういう話し合いになっておるように、昨日県について調査しましたところ相なっております。  そこで、いまの御質問は、調査をすぐするかということでございますが、私ども考えといたしましては、漁民の代表である知事運輸省との契約が行なわれております。それから私のほうは、すでにさきに県の依頼等もございまして、内海区水研及び真珠研究所被害調査につきまして、県の指導をやっております。一方、運輸省神戸にございます第三港湾建設局、これも大学その他に依頼をいたしておる現状でございます。問題は、浮土による被害の総体、相当因果関係等非常に複雑な問題でございますので、のっけ本省からそこに調査に行くということでも適当でないと思いますので、これは運輸省と県と私のほうとで、事前に三者で問題を整理いたしまして、必要に応じ問題点によりまして、水研がいいか、役所がよろしいか、運輸省と一緒に見るかという、いろいろの問題がございますので、お答えといたしましては、昨日のお話でございますので、運輸省港湾局と県とタッチしております内水研等話し合いを一応いたしまして、その内容によりまして調査の形をきめたい、かように思います。
  8. 湯山勇

    湯山委員 この問題は、御存じのように、これに伴う県議会の汚職等も出ておりまして、県というのは、非常に微妙な立場にあるのではないかと思いますから、その辺も御考慮の上で、ただいま長官のおっしゃったように、御善処を願いたいと思います。  続いて、この法律の中に入るわけでございますが、運輸省あるいは郵政省、電電公社の方々、経緯を聞いていただかないと、お尋ね申し上げたことが、何のためにそういうことを聞くのかおわかりいただけないかと思いますので、ひとつごしんぼういただきたいと思います。  今回改正された中で、百三十二条の中の二号、六号、特に二号についてお尋ねいたしたいと思うのですが、二号では、漁船の「損害発生予防及び防止に関する事項調査指導及び助成」ということが規定されております。つまり、漁船保険中央会事業に対して十二億の交付金が出る。その交付金のこれは運用益というように解釈しておりますが、それにも誤解があるかもしれません。ともかくも運用益を中心とするもので助成をする、こういうことでございますが、来年度これに使われる全額は一体どれくらいを御予定になっておられるのか、その財源運用益によるか、あるいは他の財源もそれに入るのか、まずそこからお尋ねいたしたいと思います。
  9. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答え申し上げます。  いま御指摘のとおり、漁船損害補償法の百二十二条を一部改正いたしております。改正内容は、在来から中央会は、定款の定めるところによりまして、損害発生予防及び防止に関する事項調査及び指導ができることに相なっておりますが、今回の改正は、それに加えまして、助成ができるという形の改正でございます。  そこで、まず御質問の第一点の、今回の改正は、十二億円を特別会計から中央会に交付いたしますから、その十二億円は元本として預託いたさせまして、利子八千四百万円程度見込んでおりますが、その利子範囲内において八千四百万円、これは平年度でございますが、これをいろいろの事業に使うという考え方でございます。  そこで、どういうふうに使うかということは、先般もお答え申しましたとおり、中央会が今後理事会を開きまして、案をつくりまして、農林大臣承認を受けるわけでございますが、考え方といたしましては、一つは、一番大きくは、海難防止のために施設の補助をやりたいと考えております。それはたとえば救命ブイをつけるように義務づけられておるわけでございますが、救命ブイの発信がございましても、受信施設がなければ意味をなさない。したがって、救命ブイの受信施設のない漁業無線局に受信施設をつけさせる。それから救難作業のために、現在船の救難に出ました際に、船が見つかりますればその相手からお礼をもらえますが、見つからない場合にはなかなか方法がないというような場合に、これも見つからなくてもさがさなくてはならないので、そういうものに対する報償作業費の事業、それから保険事業でございますから、なるべく無事故がいいわけでございますので、無事故の者につきまして報償金を出す。それ以外に、いま問題になっております漁船保険推進事業といたしまして、いま御指摘がございましたものに関連するわけでございますが、海難防止に関する調査及び研究機関への助成、それから乗り組み員の教育指導等を考えておるわけでございます。  どのくらいのことを考えておるかというわけでございますが、それは先ほども申しましたとおり、目下団体で作業検討中でございますが、一応私どもがこの予算編成の段階におきまして考えましたものといたしましては、試験研究と委託の問題については、先ほど申しましたものが大きな金になりますので、具体的に金何百万円という形にはまだ積算しておりません。
  10. 湯山勇

    湯山委員 詳細な御説明をいただいてよくわかりました。いまの点は、先般の松井委員質問でもちょっと落ちておったかと思いますので、お尋ねした次第ですが、松井委員質問の中で、この漁船保険が出るのがおそいとか、額においても必ずしも民間よりも有利ではないと、いろいろ御指摘がありましたが、今回の調査、ことにそういう助成等をつけての調査という中には、制度自体の調査を何か機関を設けておやりになるという構想も含んでおるわけでございましょうか。
  11. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 漁船保険制度は、制度といたしまして非常に整備いたしまして、それから保険収支も今回余裕金を外部に出すほどにうまくできました制度でございますので、制度そのものを根本的にいまの段階において調査しなければならないという点は私ども感じておりませんので、漁船保険制度の体系なり仕組みを調査するということについては、この事業では考えておりません。
  12. 湯山勇

    湯山委員 そういう点については、別に機関を設けて調査する、研究するというようなことはお考えになっておられない、こういうことでございますね。
  13. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 さようでございます。
  14. 湯山勇

    湯山委員 そこで、いまの点は、またあとであるいは時間があれば触れさせていただくことにいたしまして、内容の改善がなされてくるということは非常に私どももいいことだと思います。さらにこの保険の趣旨が徹底していくということも非常にいいことだと思うのです。ただ問題は、そういう保険が普及すればするにつれて、百二条が問題になってくるのではないかというように思います。百二条と申しますのは、法令に違反して航行しておる、あるいは操業しておる、そういう場合に生じた損害については、全部または一部免責になっている、つまり、支払わなくてもいいという規定になっております。そこで、これは漁業法の違反もあるでしょうし、その他いろいろな法令に違反する場合がありますが、私がきょう特にこれについてお尋ねいたしたいと思いますのは、海上衝突予防法に触れた場合、それから公衆電気通信法に違反した場合、この二つの法令違反についてはいろいろ疑義もございますので、これを中心にきょうはお尋ねをいたしたいと思います。  もちろん、念のためでございますけれども、いまの漁船損害があった場合、これら二つの法律に触れておっても、やはり本法百二条の第一項が中心と思いますが、この免責事項は適用されるということになるでしょうか、いかがでしょうか。
  15. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 漁船損害補償法の百二条に「事故による損害が、法令に違反して航行又は操業した場合に生じたとき。」とあります。航行のほうは、船舶安全法なり海上衝突予防法なり、これに基づく政令なりの法令違反を含みますし、それから操業でございますから、漁業法なり水産資源保護法あるいはその他の法令で漁業の操業を禁止、制限いたしておりますものは、ここにいう、法令に違反して航行または操業したケースに相なります。ただ問題は、損害の補てんでございますから、法令の違反があれば必ず全額または一部の免責が行なわれねばならない、あるいは行なわれるということではございません。たとえば航行の問題等に関しましては、具体的にやはり船の運航なり退避の態様なりによりまして、過失の問題の認定の関係もいろいろございます。デリケートでございますから、法令に違反しておれば必ず免責になるというわけではございませんが、法律論としては、法令違反に含むかといえば、いま先生のあげられましたものは、法令の違反に操業の面かあるいは航行の面で含まれます。
  16. 湯山勇

    湯山委員 長官のただいまの御答弁で若干違いますのは、海上衝突予防法も、航行だけではなくて、操業も含んでおる。これはひとつ御理解願いたいと思います。  そこで、ケースによっていろいろ違う面もあると思いますけれども、ともかくも原則としては、これらの二つの法律にも違反しておるということが明瞭な場合は、当然この百二条の対象になるということが明らかにされましたので、続いてお尋ねをいたしますが、この二法によって免責をされた、つまり、海上衝突予防法の特定水域航行令、これによって免責された、つまり、保険金が支払われなかった、補てんされなかった、あるいは公衆電気通信法の施行令の保護区域、その区域でそういう事故があった、そういうのが、この法令に違反しておるという理由のもとに保険金が支払われない、つまり、免責事項の適用を受けた、そういう例がございますでしょうか。
  17. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私もその点を苦にいたしまして、昨日も調べてみたわけでございますが、全部過去にさかのぼって徹底的に調べたわけではございませんが、ないようでございます。一番新しい例としては、特定水域航行令の退避地域で追突がございました件でございますが、これは追突でございまして、先ほど申したとおり、ぶつかった船の航法の問題、あるいは退避する船の航法の問題等の関係から、免責はしないという処理を行なったのが、ごく新しい例でございます。
  18. 湯山勇

    湯山委員 いま長官のおっしゃったとおり、法令によって免責がされなかったようですけれども、理由がどういう理由か明瞭ではございませんが、追突をした船のほうはただ単に戒告にとどまったということを聞いております。ですから、必ずしもそういうことが考慮されなかったということも言い切れない。保険の面は別として、そういうことが配慮の中にあったのじゃないかという懸念もあるわけです。  そこで、今度の改正によって、さらに法令の指導、そういうものが徹底していくということになれば、いまのような問題も、従来ともすれば、私の調べた範囲では、うやむやと申しますか、事実の認定があいまいで過ごされてきたものが、今度ははっきりしてくる。そうすると、適用の例も将来出てくる可能性もあるんじゃないかというようなことも考えられますので、さらにその内容についてお尋ねを申し上げたいと思います。  これは運輸省のほうへお尋ねいたしたいと思うのですが、昨年の七月に浦賀水道を特定水域に指定されようとなさったのですが、沿岸漁民が反対をして、その指定ができなかった。それはなぜかというと、関係漁民としては、特定水域に指定されることによって、操業が非常に制限を受ける。つまり、他の水域においては、衝突予防法によって操業中の漁船のほうは退避の義務はありませんけれども、特定水域においては、一般船舶の進行してくる場合に、操業しておる漁船のほうが退避をしなければならない。逆の関係になっております。そうすると、これは重大な問題だということで、漁民が反対をして、現在なお指定されないで、そのままになっているということを聞いておりますが、その間の経緯はどうなっておるのでしょうか。
  19. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 昨年、特定水域航行令全体についての再検討を航行安全審議会で御検討願ったわけでございます。その際に、浦賀水道につきましては、最近の海上交通の激増あるいは現実に起こった衝突事故等にかんがみまして、船舶側からは特定水域に指定をするということについての強い要望があったのは御承知のとおりでございます。それに基づきまして、しかしながら、仰せのとおり、漁業との利害の調整ということはきわめて大事なことでございますので、これは水産庁とも協議いたしまして、やはり関係漁業者の納得を得る線できめたい、航路の特定水域の幅、長さ等について、十分納得のいく線できめたいと思って、非常に熱心に、あるいは県の水産課、あるいは漁業組合の方々と当方でお話し合いをしたわけでありますけれども、なかなかお話し合いがつかないという事情で、これを直ちに指定することができないという状況で、今日に立ち至っておるわけでございます。
  20. 湯山勇

    湯山委員 そういうときに、いまの漁船損害保険、もし操業中の船が退避しないで事故を起こした場合には、いまの損害の補てんが行なわれないというようなことも御考慮に入れて、お話し合いになられたでしょうか。
  21. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 一般に海難の場合に、これは漁船保険に限らず、漁船保険は私詳しくございませんけれども、通常の保険約款では、明らかに重大な過失あるいは故意によって海難が生じた場合に、保険会社が保険金を支払わないというのは、通常のすべての保険に通ずる原則であるわけであります。この場合、特定水域における一般船と漁船の衝突事故の場合がお話であろうかと思いますが、実際問題としては、この海上衝突予防法は、御承知のように、国際海上衝突予防規則をそのまま条約の批准の関係で引き写したものでございます。しかも、普通の取り締まり法規と違って、すべての条文にわたって罰則はございません。しかも、あるいは法律の二十六条という点で、一般航法については、仰せのように、特定水域においては、漁労中の漁船が他の船舶の航路を妨げないようにしろ、普通の場合と反対に規定してあるのでございます。それだから、一般船は特定水域においては常に権利船である、どんな状態のもとにおいても漁船に突っかけてよろしいということではございませんので、二十七条等におきましては、切迫した危険を避けるためにこの航法によらないでいいのだ、さらに二十九条においては、要するに、船員として当然やるべきこと、衝突を避けるために当然とるべきことをとらなかった場合においては、この法律規定があるからといって責任は解除されないぞ、この法律にこう航法が書いてあるから、自分のほうが避ける余裕が十分あるにかかわらず、むしろ漁船のほうが避けにくいという一般的な状況のもとにおいて、ぶつけてもかまわないのだということでは決してない。やはりぶつけたほうが悪いのだ、こういうことで、ある意味でいいますと、法律としては、陸上の交通法規と違いまして、海上の事情は一律に割り切れない面がございますので、そのために実際問題としては、海難審判によってその間の事情を専門的に詳しく調べて、どちらに過失があったかということが判断されるわけでございます。  いまの点を考慮に入れて漁業者との話し合いをしたかということでございますけれども、私どもが特定水域にする場合には、そういう問題は、一般の民事上の損害賠償の問題は、常に漁船側の過失と判断される、原則によれば漁船側が義務船でございますから、むしろ逆の証拠を示さない限り漁船の過失とされるというふうなことで、漁業者側が強い反対をしました。その点については、私どもも十分承知をした上で話し合いをしたわけでございます。
  22. 湯山勇

    湯山委員 そこで、重ねてお尋ねをいたしますが、現在指定になっているのはどこどこか、あるいは七月改正のときに、航行安全審議会のときにさらに追加して指定なさろうとした区域があれば、それもひとつここで明らかにしていただきたいと思います。
  23. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 現在特定水域として指定されておりますのは、備讃瀬戸それから来島海峡、釣島水道及び瀬戸内海の狭い水道のうちで、いわゆる掃海水道として指定されておるところ、この四つが現在特定水域航行令できめられております特定水域ということになっております。それから新たに昨年追加しようと思ったかというのは、追加のことが論議になりましたものは浦賀水道でございます。  それから現在特定水域になっておるもののうちで、運輸大臣が告示で指定する掃海を完了した瀬戸内海の狭い水道、つまり掃海水道につきましては、むしろ瀬戸内海はほとんど全面的に掃海が完了しておりますので、特に区域を指定してそこだけが掃海が完了しておるという趣旨の特定水域は、もうやめていいのではないかというふうに私ども考えておるわけであります。そこで、そのとき審議会の答申は得られませんでしたけれども事務当局の意見としては、掃海水道というものは一応こういう形で指定することはやめて、もっと範囲を局限して、備讃瀬戸と同じように、必要のあるところを特定水域に指定すべきではないか、こういう検討を審議会にお願いしたのでございますけれども、それについては、現在の掃海水道を廃止するという前提に対して、非常に強い反発がございます。現在のところ、まだ結論を得るに至っていない、かような状態でございます。
  24. 湯山勇

    湯山委員 昨年の七月の航行安全審議会でいまのような答申があって、それでなさろうとしたけれども、それができなかった、こういうことですから、そうすると、結局なさろうとしたことができなかったということは、運輸省としては、現在の特定水域というものは、実は実情に合わない点があるんだということをお認めになっておられるわけですね。これはいかがでしょうか。
  25. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 仰せのとおり、浦賀水道は特定水域にする必要があるのではないか、それから掃海水道として告示してあるものも、全部このまま残す必要はないのではないかという考えは持っております。しかし、それについての関係者及び学識経験者を集めた審議会の意見というもの、あるいは具体的に審議会を離れて、それに直接の利害関係を有する漁業関係あるいは船舶航行に当たる方に対して、その考えを一方的に押し切ってやる、ただ指定をするということはすべきではないというので、今日まで納得が得られないので、指定をしておりませんけれども、必要性は十分感じておりますので、むしろ現在の特定水域航行令、これは古くからやっておるものでございますけれども、船舶の交通量が非常にふえてきておる。それから非常に大型化してまいっておるというふうな実情、それから漁民の生活権と申しますか、権利というものに対する考え方も、実は戦前とは相当変わってきておる。これは国民一般の問題でございますが、そういう両方の事情から考えてみますと、むしろ抜本的に——いままで政令で特定水域を指定して、その中では単に避航義務が課せられるだけだ、漁業を禁止していないから、何ら漁業者に対しては措置する必要はないんだという考え方、単なる交通のルールだけだという考え方でいままできておりますけれども、もちろん、船舶の交通安全ということはきわめて重大でございます。重大であると同時に、漁民の権利というものも、これは簡単に侵すべきものではない。その利害の調節をはかるためには、従来の方式でいいのかどうか、むしろ根本的に考え直す必要があるのではないか、かように考えて、その問題についても航行安全審議会の意見を聞いておるところでございます。
  26. 湯山勇

    湯山委員 いつごろ結論が出る御予定ですか。
  27. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 この基本的な問題は、実はこれはいささか私見にわたりますけれども、特定水域において漁業を制限することについての補償の問題がどう考えられるか、むしろある程度補償を行なって、必要な最小限度の水域については、漁業の制限をいまよりきびしくする。いまはただ交通上のルールとして一方が避けるということだけだから、これは漁業権の侵害ではないという考え方になっております。その考え方自体に問題があるんじゃないか。むしろ、非常に交通の激しいところでは漁業をやめてもらう。あの網を使うような漁業は一切やめてもらう。そのかわり補償をするという、つまり、法律なり何なりではっきりと漁業に対して制限をするんだというたてまえを打ち出して、その上で補償をするという考え方があるんじゃないか。これは私見でございますが、その考え方を出して、審議会の御審議を待っておるというところでございます。
  28. 湯山勇

    湯山委員 審議会の結論がいつごろ出る見込みですか。
  29. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 それは、私どもは、なるべく早い機会に基本的な考え方についての御答申を得て、具体的な作業に入りたい。具体的な作業については、実は昨年御指摘の七月ごろの審議会で、相当問題の所在は、具体的な地域についてはっきりしております。考え方がはっきりいたしますれば、これは当然予算の問題にからんでまいります。来年度からでもやりたい。したがって、来年度と申しますのは昭和四十二年度の意味でございますが、私どもは、ことしの、四十一年度内に考え方をはっきりさせていただきたい、かように考えております。
  30. 湯山勇

    湯山委員 いま御答弁の基本的な考え方については、それが具体的にどうなるかによってまた賛否もあろうと思いますけれども、そういう方向については、基本的に検討の必要は私もあると思います。ただ、現在の実情が、非常に古くきめたために漁民に迷惑をかけているという事実は、率直にお認めになっていただきたいと思うのは、現に新たに浦賀水道を指定しようというときに、一番大きな問題は漁業者の反対。ですから、現在指定されているいまの釣島の水道にしても、あるいは来島海峡にしても、これはいま新たに指定するといえば、私はおそらく浦賀水道と同じ結果になるんじゃないかというように思います。備讃瀬戸は、先ほど劈頭に申し上げたように、非常に複雑な、もっと端的にいえば、妙な問題がからんでおります。何とかかっこうがついたようになっておりますけれども、これだって決してすっきりはしていないと思うのです。そこで、当然いまのように航行についての制限、漁労についての制限を設けるとすれば、その区域が最小限度必要だと私ども思います。航行安全の上から非常に大事なことなので、その指定の区域というものは必要最小限度でなければならない、このように思いますが、これはいかがでしょうか。
  31. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 仰せのとおり、特定水域では漁船に対する航法の制限がございますので、その意味で最小限度でなければならないということでございますけれども、御指摘の釣島水道、来島海峡は、昭和四年からこういう制度になっておるわけで、その当時と比べまして、先ほど申し上げますように、最近は船舶の通行量はおそらく百倍にもなっておる。しかも船の型は、最近のように十万トンをこえる船舶が航行しておる。さらにはスピードも非常に上がっておる。だから、私どもは、来島海峡、釣島水道については、あそこの自然的条件から見て、あれ以上に縮めるということは、むしろ船舶の往来に危険が生ずるんじゃないかというふうに考えております。ただ、それでは具体的な、ここのところはどうだ、ここのところはどうだということになりますれば、ここは多少がまんができる——大体海図の上で特定水域というものをはっきりさせるために、はっきりした目標を立てて、その線を結ぶ海域というきめ方をしております。これは海上のようなところにさくを建てることができませんので、ある程度明確な目標、だれでもわかる目標をつないだ関係上、あるいは——ことに西側の出口の近辺は、さらに精細に見れば、特定水域からはずしてもいいところがあるかもしれません。それはひとつ具体的に検討させていただきたい、こういうふうに考えております。
  32. 湯山勇

    湯山委員 特に御指摘申し上げたいのは、いま、昭和四年以来のことだから、交通量もふえた、そういう理由で、その裏を返してみると、もっと拡大したいというような意味の含みがおありになるんじゃないかと思いますが、私はあまり実情に合っていないと思う。この図は来島海峡ですけれども船の通っておるのはほとんど赤い区域です。ところが実際は、この海岸まで、砂地のきわまで指定になっているのです。こういう必要は毛頭ないわけで、これだと、全く漁船はこんな陰へ入っていても、砂の上に岸へくっつけていても、やはりこの特定水域の中にあるという、さっきの避航の義務があるという理屈になるので、これは全く理屈に合わないことではないでしょうか。どうでしょう。
  33. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 水面を指定しておる関係で、陸岸のぎりぎりのところまで一応指定になっておりますが、そういうところは船舶の航行が普通はございませんので、この陸岸ぎりぎりの浅いところでは普通の船は通れません。ごく小型の櫓かい船等のみが通れるわけです。そういうものについては、当然漁労しておる漁船に避航の義務はございません。櫓かいを持って歩く端舟等については、避航の義務は、漁船側が動力船であればございません。したがって、特定水域に入っておるということから直ちに全部の船に対して避航義務があるというわけではないのでございます。それから、もう少し普通の船が通れる地域で、まん中の本船の通る水域からはずれているところまで特定水域になっておるではないかということでございますが、むしろまん中の幅一海里ないし二海里のところは大型船の航路でございまして、そこはすべて小型の船が入ることは非常に危険であるということで、小型船はそのまん中の水路を避けて、その外側を航行しておる。小型船と申しましても、五百トン、六百トンの船でございます。機帆船、小型鋼船といわれるこれらのものも、やはりその水域においては地形上非常に航海が困難である、そういう意味で、特定水域の幅が大型船の航路筋よりも広くしてある、かような事情でございます。
  34. 湯山勇

    湯山委員 その幅がそれより若干広いというのはわかります。しかし、来島海峡にしても釣島水道にしても、目標がないために大ざっぱにとるというような条件の場所ではないのです。小さくてもうんと目標があるわけですし、これだけ島があり、半島があり、目標物にこと欠かない。島かと見ればみさきなり、みさきかと見れば島なりというような場所ですから、そういうところについては、これだけ大ざっぱな指定をするというのは、指定そのものの権威もない、こう私は実情を見て思うわけです。   〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕 先ほどお話のあったように、そういうところですから、最近の大型タンカーなどが通ると、その波で係留しておる漁船被害を受けた、これもお聞き及びのとおりだと思います。そこで、そういう不合理なものについては、早急に区域の変更をされるということが至当と思います。その点はいかがですか。
  35. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 先ほど申し上げましたように、決定した当時と今日の事情と異なるということを頭に置きまして、さらにいま御指摘の両水道につきましては、こまかく具体的に検討をさせていただきたい、かように思います。
  36. 湯山勇

    湯山委員 えらい失礼なことを申しますけれども、七月の改定のときにはある程度の案をお持ちだったと思うのです。そこで、これらのものが、浦賀水道ができなかったからというので、その巻き添えを食って、当然改められるべきものが改められなかったという解釈も、気を回せばできないことはない。そこで、どうでしょう、そういうものを早急に、これはあとでも触れたいと思うのですけれども、よくするほうならば、沿岸漁民も反対はしないと思います。大臣告示でもその変更はできるんだと思うのですが、いかがですか。
  37. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 来島海峡と釣島水道については、これを狭めるというふうなことは、昨年の七月には全然考えていなかったのでございます。その後に陳情がございまして、ここに問題があるということを承知したわけでございます。また審議会にわれわれ事務当局の考えとして申し上げたときも、従来の備讃瀬戸、来島海峡、釣島水道については、現状を変更するということは考えない。掃海水道について考えてまいる。特定水域航行令第一条第四号の問題。一号、二号、三号については、これを変更するということは、昨年の六月ないし七月ごろは考えていなかった。したがいまして、浦賀水道でできなかったからあと全部やめた、来島海峡、釣島水道についても縮めることをやめたというふうなことは、もしそういうことありとすれば、全くの誤解でございまして、来島海峡、釣島水道については、いまここで申し上げましたように、さらに具体的な場所について検討するということをこれから始めたい、こういうことでございます。
  38. 湯山勇

    湯山委員 局長の御答弁は、局長の御答弁の範囲内においては正しいのです。しかし、事実と相違しておるのは、当時の話では、浦賀水道の問題が片づけば、そのあとでその変更については検討しますということになっておったはずです。その後の検討も一緒に流れたわけですから、七月段階でそうでなかったことは確かにそうですけれども、それができなかった、巻き添えを食ったという解釈も、必ずしも当を得ていないわけじゃないので、これは別に議論すべきことじゃありませんから、それだけにとどめますが、私は、当然これはすみやかに改定すべきだ。おっしゃったように、実情に合わないところもあるし、それから将来にわたってあの来島海峡あたりがあのままでいいということはないです。場合によれば航行する船舶の制限も必要じゃないか。これは、岸につないでおる船が、航行する大きい船の波で被害を受けるというような状態ですから、その辺も考える必要があるのじゃないかというようなことさえも考えておりますので、ひとつ早急に御検討になって、いま申し上げましたような不合理な点を御訂正を願いたいと思います。  特に水産庁におかれても、いままで案外こういうことについて無関心でおられたのではないかという感じがいたします。そこで、水産庁のほうにおかれても、いまのような観点で、ひとつ運輸省のほうと十分折衝をしていただきたいと思いますが、その点いかがでしょうか。
  39. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 水産庁といたしましても、無関心ではなかったわけでございまして、浦賀水道あたりにつきましては、運輸省ともいろいろ意見交換をいたしたわけでございます。いま問題になっております来島と釣島の問題でございますが、本来、安全の立場から特定の地域を指定して、漁船が漁労をしている場合に退避するというのは、生命の安全、船舶の安全の立場から設けたものであり、同時に、漁船も運航するわけでございますから、それは必要であろうけれども、その範囲は最小限度にとどまるべきであって、必要以上に避航義務の範囲が広がるという必要はない。要するに、相矛盾する要請の調整でございますから、必要限度であるべきである、こういう立場で、いろいろと運輸省ともお話を申し上げておるわけでございますが、具体的なケースにつきまして、必要以上に避航義務が課せられておるならば、それは改める方向で努力いたしたい、かように考えております。
  40. 湯山勇

    湯山委員 これはいま申し上げたように、漁民にとっては生命財産につながる大きな問題だと思います。そこで、制度として考えなきゃならない問題は、利害関係者の意見を十分に聞く、これは必要なことだと思うのです。もちろん、船舶の航行の安全という公共性の大きな命題があります。それは確かにそのとおりでございますけれども、しかし、十分いまの意見を聞くという点において、私、従来のは欠けていた点があったと思います。と申しますのは、三十七年七月に改正するという、それの意見を聞かれたのが、同じようにその夏です。そうすると、もう改正しようということをいまのようにしておいて、間ぎわになって聞かれたって、なかなか意見を述べられないわけで、そういう点においても手落ちがあったと思いますので、十分意見を聞いていただきたいという点が一点と、第二点は、この法律によりますと、大臣の告示による指定、これが法律と同じ権限を持っています。何らこの間に差別がありません。大臣の指定ということは、いまのそれに指定されるかされないかが、漁船保険の適用を受けるかどうかというようなことにも関連するという点から考えれば、緊急臨時的なものは、これは大臣の告示指定でやる、その必要もあると思いますけれども、こういう恒久的な指定を単に大臣の告示だけをもってする、一方では法律でやっておる、こういうことは制度として改めなければならないと思いますが、それはいかがですか。
  41. 亀山信郎

    ○亀山政府委員 先ほど申し上げましたように、いま大臣の告示で示すというのは、掃海水道のことでございます。掃海水道につきましては、当時緊急の必要があって大臣告示で決定をいたしましたが、先ほど申し上げましたように、瀬戸内海のほとんど全域の掃海が完了しておるときに、掃海という名目で告示した水道ということは理屈ではとても抵抗できないわけです。しかし、実態は、しからばこれを全部はずしてしまう、掃海は済んだんだからこれはいらないのだということではございませんので、やはりこの掃海水道のうち、現実にやはり特定水域として来島海峡あるいは釣島水道に準ずるような地域も、その中に含まれておる。そういうところについて、どういう方法でどの程度の制限をし、どの程度の地域を指定しなきゃならぬか、政令ではっきりと具体的に明示しなければならないかという問題が残るわけです。ただいまの大臣告示でやるというのは、仰せのとおり、水雷に対する掃海というような臨時緊急な措置に限られているという点については、私も全く同意見でございますので、すみやかに第四号をこういう形をやめて、新しく具体的な指定すべき地域があればする。ただ、何度も申し上げますように、瀬戸内海における船舶の航行の安全ということは、大体この水道については、東西にわたる航行船舶についての規制が主であります。そのほかに、南北に底びき船もある。しかも、その中にはどんどん客船もふえておる。旅客の航行にも重大な関係がございますので、漁業者の権利と同時に、場合によれば、漁船も生命の安全のためにやはりルールを守ってもらわなければならぬ、ある程度のしんぼうはしてもらわなければならぬ。これは何も漁船の安全を打っちゃらかしておるわけではない。漁船も汽船もすべてを含んだ安全のための全体の制度でございます。漁業が制限されるという点だけに集中してされますと、われわれ非常に苦しいわけでございます。その点も御理解をいただきまして、いま申し上げましたような点は、先生の御指導の点はそのとおりだと考えます。
  42. 湯山勇

    湯山委員 たいへん明確な御答弁をいただいてけっこうでございました。そこで、いま必要最小限度にとどめる、こういう御方針がよくわかりましたが、さて、そうしてもなおやはり補償の問題が残ると思います。現に漁業法三十九条の六項ないし十一項ですが、ここで国の漁業権に対する補償の規定がございますね。これは特定水域等の場合は適用の対象になりませんか。
  43. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 三十九条には、はっきり「漁業調整、船舶の航行」そのほかに「てい泊、けい留」がございますが、「その他公益上必要があると認めるときは、都道府県知事は、漁業権変更し、取り消し、又はその行使の停止を命ずることができる。」その場合に、補償の規定があるわけでございます。この問題は、実はむずかしい問題を含んでおりまして、その特定水域に漁業を全部やめさせてしまうという考えをとっていないのでして、あえて特定の水域でも漁労はしてもいいのだ、ただ、ほかの船が来たときに避けなさいという形になっております。そこで、昔のようにたまに来るときには、その漁業権を持っておるほうが漁民にとってもいいわけであります。ところが、だんだんいまお話が出ましたように、最近のように船舶が非常に大きく相なってまいりまして、航行のために退避している頻度が高まってくるときに、いろいろな問題が起きてくる。そこで、思い切ってそういうところを切ってしまうか、切ってしまえば、三十九条あるいは漁業法の体系以外で、そういうことを船舶安全法の体系で考えるか、こういう問題でございます。ところが、少なくともいま名前があがっております地域におきましては、むしろ漁業権を切ってくれ、制限してくれ、変更してくれ、そして変更した分について補償してくれという形では漁民サイドからはまだ出ていない。それはまだ利用価値がある、その漁業権については利用度が制約を受ける度合いが高まっておるけれども、それを切り捨てて補償に切りかえようという動きに入っているとは私は承知いたしておりません。そこで、問題は非常にむずかしくて、漁業権を切り捨てる、変更する、あるいはここまで出ていたのをここまで詰めることによって、補償をするということでありますれば、漁業法の体系、現行法でもやれるわけであります。そうしたら、それから先は、もし船が来なかった場合に行使できたであろう権利も放棄することになる。そこで、この三十九条を直ちに働かせるという考えもいま私どももとってはおりません。県知事もとってないようでございます。漁民サイドも三十九条で御要求が出てきているという形には相なっておらない、こういうのが現状と私どもは理解しております。
  44. 湯山勇

    湯山委員 実情は、長官指摘のとおり、船舶の航海がひんぱんになった。そうすると、確かに地域的な制限というのはないにしても、網とかはえなわ、そういうのは簡単に避航できるかどうかという問題があると思うのです。そうすると、ここはやめておこう、自然にそういう形になってくる。そうすれば、ある程度の制限は受けるということは事実なので、それに対しては国が補償するということがあってもいいと私は思いますが、いかがでしょう。
  45. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私は非常に問題だと思っておるわけです。つまり、頻度がある程度高まって、切って捨ててしまうというならば、そこは補償の問題は起きない。ただ、問題の度合いは、いままで十回行けたところが六回になる、七回になるというところに、いろいろな問題があるわけでございます。これは切って捨てるとか、何月から何日までの間は使用を停止するという形での補償の問題はなかなか考えられません。頻度の問題になれば、頻度がどうかという問題との関係で、制度的に仕組むということについては、相当研究を要する問題である。はたしてそういう制度が仕組めるか。これは民間の話し合いで、つかみ金でこの辺でという手打ちをやるということなら、往々にして可能でございます。国の制度として、国の義務なり何なりとして、漁業権そのものを変更しない、あるいは許可権を変更しないでおいて、補償をするという形については、私も頭の中でいろいろ考えてみたわけでございますが、非常にむずかしい問題を含んでおります。よく研究しないと、不公平あるいは不当あるいは足らずという、いろいろややこしい問題が起こる、かように考えております。
  46. 湯山勇

    湯山委員 ではいまの法的な問題、法文の問題と一応離れて、それによって何らかの損害を受けているという事実は認められると思いますが、それはいかがでしょう。
  47. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 むずかしいことばばかり申しまして恐縮でございますが、漁業権は、例をとって申し上げますれば、一定海面を排他的に独占的に使用する水面使用権ではないわけであります。したがって、公共的な制約下においてその水面で船が走るという場合には、そこにおのずからそれを認めて、それを排除する権能を漁業権は持っておるわけであります。しかし、それにしても、一定の場所で自由にやっている場合のほかに、船が来れば——一般論でございます。特定水域でなくても、退避するか衝突するかという場合に、やはり退避するでございましょうから、そういう形において一〇〇%に使用できなくなっておるという意味においては、何らかの制約を受けておるわけでありますが、これは権利侵害であるということになりますと、漁業権の本質上ある段階までは疑義がある、かように私は存じます。
  48. 湯山勇

    湯山委員 長官の説明は私のほうで疑義があるのです。というのは、一般海域においては、たてまえだけから申しますと、それは一般航行の船の進路を妨げていいという規定ではないのでありますけれども、一般航行の船のほうが操業中の漁船を避けなければならない、こういう規定なんです。ところが、この海域においては、逆に一般航行の船舶の進路にある漁船が、操業中のものが退避する、そういうことはやはりある意味での法律の上での制限、こういうことになるのじゃないでしょうかということですから、それはもう率直に事実問題を離れてもお認めになっていいのじゃないでしょうか。
  49. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 特定水域航行令の四条が漁業権に対しては制約をかけておるという事実関係は否定いたしません。
  50. 湯山勇

    湯山委員 それで一応けっこうです。そういうことですから、それはいまの漁業法第三十九条を適用するしないは別です。それにしいて言えば該当する面もあるということをお認め願えれば、それと、先ほどの海運局長の言われた、将来きちっと補償の問題を考えようということとあわせていけば、これは政府全体としてまとまる話になると思いますので、まあ非常にしつこくお尋ねしたのですが、それを御了解願って、早急にひとついまの最小限度にすること、そうしてしかも、その制限したものについては補償措置考える。特に釣島とか来島とか、この二つのところは実際に沿岸漁業の中心です。ごらんになればわかるように、ことに一本釣りの船なんかが無数に出てきておるところですから、ぜひすみやかにこれをやっていただきたいと思います。  それからその次に、たいへんおそくなりましたが、運輸省のほうは終わりましたから、郵政省のほうにお尋ねをいたしたいのは、公衆電気通信法の関係でございます。  この公衆電気通信法は、これは非常に行き届いた法律で、これは運輸省も聞いていただいたほうがよかったかと思いますが、水底線路を設置するにあたっては、事前に届け出をされて、それから関係漁業権者の意見を十分に聞いて、それによって、差しつかえない範囲は線路の変更をする。なお、それで漁業権を侵害している場合には、その補償をするということが、要点を拾って申し上げれば、公衆電気通信法には明記されております。これは非常にいい規定であるし、大体いまの特定水域についてもこのような規定が必要だと思うわけですが、これは非常にけっこうだと思うのですけれども、しかし、実際には、現在布設されておるものについて、全部そういう措置がとられておるかというと、必ずしもそうなっていない面もあるかと思います。その点はいかがでしょうか。最近のものについてはどう、以前のものについてはどうというようなことがあれば、ひとつ簡単に御説明をいただきたいと思います。
  51. 畠山一郎

    ○畠山政府委員 お答え申し上げます。  先生いま御指摘になりました公衆電気通信法が施行されましたのは、昭和二十八年八月一日でございます。それ以前には電信法というのがございまして、明治三十三年にできました法律でございますが、その電信法におきましても、やはり水底線の保護に関する規定はございます。おそらく先生御指摘の、あまり地元との話が行き届いていない例と申しますのは、旧法の時代にできたものじゃないかと考えられます。
  52. 湯山勇

    湯山委員 よくわかりました。  それで、現在補償をやっておる件数と、年間の金額はどれくらいございますか。
  53. 黒川広二

    ○黒川説明員 お答えいたします。  この水底線路を敷きます場合には、地元の漁業組合ともお話し合いをいたしまして、御了解を得て、そしてこの水域に設置するというようなことでございまして、現在まで補償という問題までに立ち至った事例はございません。
  54. 湯山勇

    湯山委員 それでは、補償の規定というものは適用された事例はないということでございますね。要求があったことはございませんか。
  55. 黒川広二

    ○黒川説明員 ただいま持っております資料では、そういうお話し合いをしました段階で解決をしておる。全部がそうなっておる。そうしなければ、あるいはルート等を変更いたしまして、よく御了解を得て、多少遠くなりましても、そちらのほうに引くという手段をとっておりまして、補償を実際にしたという例はないのでございます。
  56. 湯山勇

    湯山委員 保護区域というのが設定されますね。資料をお持ちでしたら、保護区域の総面積はどのくらいになるか、海面の面積、これはございませんでしょうか。
  57. 黒川広二

    ○黒川説明員 総面積としてはございませんが、現在全国でこういう離島の通信確保のために公社が施設しておりますところの条数は五百十九条で、延べ四千四百キロメートルに達しております。法律では、この水底線の両側に千メートル以内で保護区域を設定してもいいということになっておりますが、実際はなるたけこれを縮小するというやり方をとっておりまして、両側に二十メートルないし五十メートル程度の保護区域を設定するにとどめておるわけでございます。面積でどれだけということを計算をしたことはございませんので、ただいま資料を持ち合わせておりません。
  58. 湯山勇

    湯山委員 私の持っておる資料によりますと、これは愛媛県だけでございますけれども、四十八条ございまして、二十メートルというのはほとんどないのです。百メートル、五十メートル、百五十メートル、まあ最低三十メートル。ですから、むしろ五、六十メートルから百メートル程度のものが多い。瀬戸内海あたりは、これは非常に漁業の上から重要な地域で、これを見ますと、ずいぶんきびしい禁止規定があるわけです。どういうのかと申しますと、原則的には、底びき網はその区域でやっちゃいけない。もり漁業をやっちゃいかぬ。もちろん船がいかりをおろしてとまることができない。これが法律による禁止です。しかし、それをさらに政令で補強しまして、その政令の補強の項目は、底はえなわはやっちゃいかぬ、それからから釣りなわの漁業はいかぬ、から釣りこぎがいかぬ、底魚釣りがいかぬ、あるいは海底の水産動植物をやすとかこれに類するものを用いて捕獲してはいかぬ、こういう実にきびしい規定があるのです。地域にもよりますけれども、島の多いところでこれだけ禁止されますと、ほとんどこれは全面的な禁止で、ここまで一体禁止する必要があるかどうかと思います。たとえば一番極端な例をあげますと、底魚釣り、一本釣り、こういうものは禁止しなきゃならないかどうか。サメを釣るとかいうのは、あるいはひっかかることがあるかもしれませんけれども、そのほかの瀬戸内海あたりの一本釣りで、海底電線に針が当たって損害を与えるというような例はまずないのです。いかがでしょうか。
  59. 黒川広二

    ○黒川説明員 お話の禁止の問題でございますが、これは私どもといたしましては、こういう島が全国で有人島が四百六十五島ございますが、三百六十六島につきましては、ただいま申し上げましたような海底ケーブルをつけております。その投資額は、昭和二十八年度以降でも約百億円になっております。この保護規定は、単に公社の財産の保護を目的としたものではございませんで、一たん水底線路の折損等によりまして通信が途絶いたしますと、それが修復までに少なくとも十余日を要しますし、また、通信不能が与える社会的な不安、治安上の問題も考えた場合に、このような事故ができるだけ発生することを防止するために定められたものと解しております。また、こういう線路を修理いたします経費といたしましては、平均一カ所二百万円ほどかかるのでございます。ただいまお話がありました一本釣り漁法でございますが、私ども漁法のことにつきましては不勉強でよくわからないのでありますが、一本釣り漁法すべてを禁止しておるわけではございませんで、底魚釣りなどで、いわゆる海底ケーブルがありますところに針がひっかかりまして、これをいためるというものだけを制限いたしておるわけでございます。なおまた、こういう底魚釣り漁法等によりまして損害があるかというふうなお話でございますが、実際の例を調べてみますと、そういう例も間々あるのでございますo
  60. 湯山勇

    湯山委員 底魚釣りでそういう被害があったというのは何釣りでしょうか。
  61. 黒川広二

    ○黒川説明員 漁法のことにつきましては、私不勉強でよくわからないのでございますが、昭和三十九年度の瀬戸内海におきますところのおもな例をちょっと申し上げますと、そのうちの一つといたしまして、三十九年の四月八日に、牛島で底魚釣りの漁法によりまして障害を発生しておる。その他例がございますが、三十九年度の例につきましてもこういう例がございます。
  62. 湯山勇

    湯山委員 お尋ねしておるのは、底魚釣りというのは、同じような一種類じゃないのです。小さなこんな魚も釣るし、メバルのようなものを釣る底魚釣りもあれば、タイ釣りの底魚釣りもあるし、いろいろあるわけです。そこで、被害を起こしたというのは、何を釣っておってやったのか。それは釣り針が違うのです。
  63. 黒川広二

    ○黒川説明員 私どものほうは、現場でこれを全部監視するということができませんので、それがどういう漁法であったかということを申し上げることができないのでございますが、針の種類など見まして、そういうものであるというふうに判断しておるわけでございます。  なおまた、このケーブルの構造といたしましては、御承知のように、外側に鋼撚線というようなものもありますし、また潮流の関係がございまして、これは最近の学説によりますと、電食を起こすというような関係で、この鉄線にもポリエチレンをかぶせる。ポリエチレンが破けてまいりますと、そこに電食を起こして障害が出るということもございますので、海底の状況によりましては、そういう鋼撚線の上にまたポリエチレンを一本一本にかぶせる。それがひっかかって裂けますと、そこが電食の原因となりまして、それがまた障害になる、こういうこともございますので、われわれといたしましては、できるだけその保護区域の範囲は狭くいたしますけれども、そういう障害の起こりますような限られたものにつきましては制限をさせていただいておる次第でございます。
  64. 湯山勇

    湯山委員 この中に入れるケーブルですか、これも浅いところと深いところで違いますね。それから潮流の関係、そういうことで大小ありますが、私の調べたところでは、瀬戸内海あたりはもうほとんど大きいほう、五センチですね。おっしゃるように、銅線を入れて、一心といって一番小さいのでも、いまの被覆をして、あと鋼線で巻くわけでしょう。ですから、それを突き破って、しかも被害を与える釣り針というのは、そうたくさんないのです。これは水産庁のほうが専門家ですから、そういう被害を与えたというのは一体何釣りですか。
  65. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私もこの法律政令を読み直して、それから漁法、漁具も全部見直してみたのであります。なお、昭和二十八年の七月にこの政令をつくります際に、水産庁も参加しまして、法制局で一つ一つ吟味した経過もあるわけです。それで、私も、ことにいま御指摘にありました底魚釣り漁業、これが一番わからなかったのですが、ただ問題は、その漁法で海底電線を切るとか、引っぱっちゃうとかいうところからこの問題があったのではないようであります。それは結局は、そこに針が刺さって、それから何年ありますか知りませんが、長い期間の間にそこに海水の浸食によりまして、長期的にその電線が弱るというところから、この針にまで及んだように承知をいたしております。そこで、底魚釣りとは何かということに相なると、私もわかりませんが、まあ私の経験上いろいろありますが、何ですか、ちょっと忘れましたが、コチや何かはやはり瀬戸内海でもこの形で釣っておりますが、問題は、電線を切るとか引っぱるとかいう問題ではなくて、穴をあけるという問題であって、そしてさらに念を押しましてお尋ねしましたところ、電電公社でも、外側はビニール等——昔は何か鉛であったのが、鉛がやはり浸食の問題であって、ビニールにしたということでございますので、もしその針の穴が電線を浸食するから困るという議論でございますれば、やはり底魚釣りの針がひっかかって、あるいは切れて残る、あるいは穴をあけるという問題でございますれば、電電公社のお立場からはそれなりにわかるような気もするわけでございます。そこで、それでは逆に言って、小さい針はいいじゃないか、大きい針で考えるかとか、こまかい話になるかならぬかということでございますので、この針素を細くしたらいいのかという議論まで実はやったわけでございますけれども、問題は、やはり浸食の問題についてもう少し議論を電電公社との間でやってみる必要があるのではないか、私はかように思っております。すぐ切れるという問題ではなくて、長い間にいたむという問題のようでございます。
  66. 湯山勇

    湯山委員 鋼鉄の針金で巻いた五センチのものへ立ち込む針というのは、角度がきまっています。そうむやみにどれでも立つものじゃありません。そうすれば、底魚釣り、一本釣り全部禁止するというのは——もしそれをやっておって、かりにいまのように何かの原因で船が沈没した、こわれた、あるいは大型船舶が通って、あおりを食って沈んだというようなことで損害を受けると、いまの漁船保険の対象からはずされるわけです。保険金をもらえないという事態が起こる。だから私は、そういうことで何にもなければ、それはおっしゃる意味も、ある程度大ざっぱにとめておこうということも、通信を守るということも、非常に重要な公共事業ですから、もちろんわからぬことはありません。しかし、そうだからといって、どれもこれものべつまくなしにこれはやってしまっておるわけです。  タコつぼはどうです。これは禁止してあるのですか、禁止してないのですか。底へなわを張ってやっておりますね。
  67. 黒川広二

    ○黒川説明員 この定義によりますと、タコつぼ等は入らないのではないかと思います。  先ほどのケーブルの構造につきまして、少し専門的にわたりまして恐縮でございますが、詳細に申し上げますと、海底電線は、中の電流を通す銅線の外側を、昔はガタパーチャ、最近はポリエチレンで絶縁をいたしまして、その外にお話しのように鋼撚線を巻くというやり方でございまして、そして深海は鋼撚線が一重、それから浅海では必要な場合には——これは非常に価格が高く、かつまた重くなるので、それを避けておるわけでございますが、鋼撚線を二重に巻くということをいたすこともございます。しかしながら、これは昔からやっておる工法でございますが、いまから約七、八年前から、こういう損傷したケーブルを見ましたところが、この二重に防護いたしたものあるいは鋼撚線等が、機械的な破壊、これは漁法だけでございませんで、下の岩盤等の関係もございますが、そういうものでやられる率と、電食でやられる、鋼撚線が電食でだんだんと腐食するという率とが、電食の率が相当あるということがわかりまして、防食ケーブルと申しまして、鋼撚線一本一本にまたポリエチレンの絶縁被覆をいたしております。それをより合わせて外側の外装、さらにその上にジュートを巻いて布設しておるわけでございます。これは鋼撚線にポリエチレンを巻きました防食ケーブルを敷くか、あるいは外装ないしは二重外装のものを敷くかは、下が岩盤であるとか砂地であるとか、どちらがケーブルの損傷が少ないかという状況によりまして、使い分けておるわけでございます。最近は瀬戸内海等ではかなりの防食ケーブルを敷いております。これは御承知のようにポリエチレンでございますから、針等のもので穴があきますと、そこが原因となって、水面に触れますと、そこからまた電食を起こす。これが少ない穴でも、そこから集中して、そこが切れてくるということも一つと、それからその外装鉄線の間を通しまして、中の心線にさわりまして、その心線がアースになるという障害もございまして、いずれの方法にいたしましても、私どもといたしましては、通信の確保の面から、そういうことのないようにいろいろ努力しておるわけでございますけれども、まだ残念ながら、技術の進歩が全部これを押えるというわけにいきませんで、この保護区域の設定をお願いしておるわけでございます。
  68. 湯山勇

    湯山委員 ポリエチレンの厚さはどれくらいありますか。
  69. 黒川広二

    ○黒川説明員 正確にはわかりませんが、大体二ミリぐらいだと思います。現物をあとで先生のところにお見せいたしまして御了解を得たいと思います。
  70. 湯山勇

    湯山委員 底魚釣りの釣り針には、その二ミリのポリエチレンを通さないのは種類はたくさんあるのです。それまで禁止しなくてもいいわけですね。
  71. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私も昨日のにわか勉強なんでございますが、おっしゃるとおり、先ほど私も申したとおり、そういう意味で侵食の問題があるとすれば、やはり針の大きさとか、それからポリエチレンの厚さとかという問題に関係があると私は昨日も考え、いまも考えておるわけであります。したがって、この問題は、そういう角度から、侵食もやはり問題である。だから、それはそれなりに考え方として認めて、しかる後に、ただ、そこを底釣り漁業というふうに機械的に押えていることがオーバーである、あるいは配慮が足らないという点でございますれば、その方向でものを考えていったらいかがかというふうにいま私は思っております。
  72. 湯山勇

    湯山委員 いま水産庁長官の言ったような点で、私は再検討の必要があるのじゃないかと思います。もし必要ならば、そのポリエチレンの厚さをかりに三ミリなら三ミリということにすれば、瀬戸内海の漁業で、沿岸の一本釣りでそれに損害を与えるというような例はほとんどなくなると思うのです。現にいまでも、底はえなわなんかは、三十九年一カ年間で事例が一つしかないのです。そうなっていますね。これはどこであったのでしょうか。
  73. 黒川広二

    ○黒川説明員 底のべなわというのでございますか、これは一件瀬戸内海で三十九年度に起こっております。
  74. 湯山勇

    湯山委員 何のはえなわですか。
  75. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 このケースは存じませんが、瀬戸内海におけるはえなわとして一応考えられるのは、タイがあろうと思っております。
  76. 湯山勇

    湯山委員 タイかハモかぐらいじゃないかと思っておったのですが、これにしてもたまたま三十九年に一回しかないというようなことですし、それからもりとやすですね。これは、あのあたりでやっているのは、水中鏡を使ってやっておるようだし、これもとにかく年間一件で、注意すれば避けられる。いたずらでするのは別です。そういうのまでやる必要は私はないと思う。ナマコをとったり、あるいはサザエをとるのは、刺さないのがいいわけで、はさむだけのものです。ですから、長官言われたように、もう一ぺんこれは検討し直していただいて、いまのような、これやっておって、船がこわれて保険がもらえない、この法律違反ということになるということをお考えいただければ、なるほど慎重にやらなければならないということもおわかりいただけると思います。そこで、郵政省、電電公社のほうで、多少政令内容等は複雑になるかもしれませんが、しかし、できるだけこれも漁民のことも考えてやるという観点に立てば、その煩はいとうべきでないと思いますので、再検討願いたいと思いますが、いかがでしょう。
  77. 畠山一郎

    ○畠山政府委員 実は私も、この水底線保護の問題につきましては、あまり勉強したことがございませんで申しわけございませんが、やはり先生御指摘のとおり、漁法、漁具の面からと、それからケーブルの構造あるいは機能の面からと、もう少し具体的に検討してみる必要があろうと存じます。この点、電電公社あるいは水産庁ともいろいろ打ち合わせしながら、再検討したいと思います。
  78. 湯山勇

    湯山委員 それでは終わります。
  79. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 午後一時三十分再開することとし、これにて休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時五十八分開議
  80. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  漁船損害補償法の一部を改正する法律案議題とし、質疑を続行します。赤路友藏君。
  81. 赤路友藏

    赤路委員 午前中湯山委員のほうから、かなり詳細にこの問題について質問があったわけなんです。あるいは最初の間私聞いていませんので、重複する点が出るかと思いますが、重複する点があれば、以前にあったことを言っていただけばいいかと思います。できるだけ時間をむだにしないように、端的に御質問を申し上げてみたいと思います。  今度のこの改正案は、保険料率を下げるということが一点、もう一つの点は、従来なかった積み立て保険料の払い戻し、これが一点、第三点目は、中央会への交付金の交付、まあこれが主たるものだと思うわけなんです。  そこで、具体的に保険料はどの程度下がるのか、これが第一点。  それから第二は、積み立て保険料の一部を払い戻す、こういうことになるわけなんだが、大体どの程度払い戻すのか。積み立て保険料の一部を払い戻すことができる規定を設けましたとなっているので、それはどの程度のものを考えているか。
  82. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正のうちで、保険料率に関連いたしましては、満期保険損害保険率料に関します部分について、必要な調整をいたしております。それで、調整の度合いはどうかといいますと、満期保険でございますから、年によって変わりますが、六年ものの例をとり、五トン未満動力船の例をとりますと、二年目は在来に比しまして九割二分に相なります。三年目は八割五分、四年目は七割九分、五年目が七割三分、六年目が六割八分、これがそれだけ満期保険損害保険料率を引き下げる形において調整をする、こういう形に相なっております。  それから第二点の、満期保険は在来途中で事故が起こりますと、全損の場合に、損害保険としての性格の面から保険金をもらえますが、積み立てたほうはもらえないわけです。今度それを返すようにしようという考え方です。そこで、今度どの程度に返すかという御質問でございますが、これも一年目には、払い込んだ保険料、積み立ての見合い部分の保険料に対して九割八分を返します。二年目は五割八分、三年目は四割八分、四年目が四割五分、五年目が四割四分、六年目が四割四分を返します。平均しまして五六%ぐらいのものを返すことになります。
  83. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、保険料のほうは、六年ものをとって考えたときは、二年目からずっと低下していくということですね。それから積み立て保険料のほうの全損分に対する払い戻しのほうは、五六%平均の、従来になかったものをこういうふうに見ていく、そういうことになるわけですね。
  84. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 そのとおりでございます。
  85. 赤路友藏

    赤路委員 四十年度の繰り越し利益金が約三十二億、その中で、責任準備金として確保するのが二十億、十二億を中央会交付金として出す、こういうような説明になっておるのですが、いま言ったように、保険料率を引き下げていく、あるいは積み立て金の払い戻しといいますか、無事戻し制度をとる、こういうようなことになってくると、利益金の将来の展望というか、見通しは、一体どういうふうになりますか。
  86. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 三十二億の利益が出ましたのは、特別会計の立場から見まして、再保険料が実際よりも高く設計されておったのが原因となって、決算上の剰余となっております。保険でございますから、長期均衡はするといたしましても、年々にいろいろフレがある。そのフレに備えますために、準備金を持っておる必要がある。それはどの程度を持てば万全であるかということにつきまして、いろいろと学者その他を使いまして、あるいは研究会で研究いたしまして、いま先生おっしゃいました二十億を持っておれば、年々のフレには心配はない、あとは長期均衡の立場におきまして、保険料、再保険料をどのように算定するかという場合には、支払うべき保険金あるいは事故及びいまのような無事戻しの関係を必要に見まして、どれだけの金をとっておけば長期的にバランスするかということで、料率設計をいたしました関係でございますので、今回考えております料率設計でございますれば、たてまえとしては、長期均衡としては剰余も出ない、不足金も出ない、バランスをする、こういう考え方で計数的には積み立てておりますので、出過ぎることも考えておりませんし、足らなくなることも考えておりません。
  87. 赤路友藏

    赤路委員 いまの長官の御答弁からいきますと、責任準備金といいますか、これは大体二十億でいい。これからの保険加入その他いろいろ条件が違ってきましょうけれども、二十億をオーバーするような利益金が出てくる場合、こういう場合も大体予想できるわけなんだが、そうした場合は、積み立て金の払い戻しであるとか、あるいは保険料金を引き下げていく、こういうふうに向ける、もっと率直に言うと、二十億が責任準備金の目標である、それ以上出てきたやつは、これは保険料を下げるなり何なり負担軽減に使用していく、こういうことですか。
  88. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 保険設計としては、保険料収入と保険金支出をバランスして料率を組んでございますので、余りはないというたてまえをとっております。それから年々の変動のために用意して二十億を保留しておく、こういう形でございまして、したがいまして、今後決算上の剰余がさらに出てくるとは私ども現在思っておりません。が、もし出たらどうするのだということでございますが、実は出た場合の問題としては、今回の十二億もやはり問題でございますが、さらに料率を下げることに使うか、新しい事業に使うか、いろいろ考え方はあろうと思うのですけれども、料率引き下げに使うということは、将来永遠にその料率になりますから、剰余金処分の方法としては、私は必ずしも適当でないと思います。が、仮定のお話でございますので、そういうものが出ました際には、もう一度今回のような研究会なり何なりにおはかりして、その処分を考えたい、かように思っております。
  89. 赤路友藏

    赤路委員 それで、この利益金が出た場合には、その時点でいろいろ使い道は考えていく、率直に言えば、こういうことですね。それでいいでしょう。  次に、この中央会交付金なんですが、十二億、これの使い道は、原則としては元金に手はつけない、そうして利子だけで大体事業をやっていく、こういうことらしいのですが、それは間違いないですか。
  90. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 そのように考えております。
  91. 赤路友藏

    赤路委員 そうすると、事業計画ですか、これは中央会が一応事業計画を立てて、農林大臣承認を得る、こういうことになっておるんだが、何も十二億という金をつかみ取りで渡したんじゃないと私は思うわけなんです。あらかじめその案といわぬまでも、大体素案の素案程度のものはあると思うんだが、これをひとつ説明していただきたいと思います。
  92. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 午前中、湯山委員の御質問に関しまして、一応触れましたのですが、もう一度簡単に繰り返しますと、海難防止事業、救難作業報償事業、無事故漁船報償事業漁船保険推進対策事業というふうなものにこれを使う、こういう考え方を持っております。なお詳しく御説明をいたしますならば、海難防止事業といたしましては、たとえば自動ブイの発信、自動ブイを船につけても、海岸局で受信がなければ意味がございませんので、そういう設備がないところにはつくらせて、それを補助する。あるいは救難作業に行って経費を要したのですが、船が助からないで、から振りに終わったというような経費の処理にいままで困っておるわけでございます。積極的に僚船の救難に出てもらうという立場で、そういうから振りになったような場合にも報償金をやる。それから無事故の漁船が現実にございましたならば、それを報償するというような仕事、その他調査、研究、協力に対する謝金というようなことを考えております。
  93. 赤路友藏

    赤路委員 これを私特に取り上げて言うのは、かなりこの事業量が大きいのですね。たとえば損害発生予防及び防止に関する事項調査指導及び助成漁船保険の普及宣伝、漁船保険事業の健全な発達をはかるための調査指導及び助成、そして海難防止事業、これがあります。無事故漁船の報償事業漁船保険推進対策事業その他漁船保険振興事業、こう事業項目では並んでおるわけですね。そこで、十二億という元金に手をつけないで、かりに年利六分五厘、七千八百万円、これをいまずらっと並べた項目にそれぞれ割り当てるとどうなるか。この前、私は、予算の第四分科会で、海難防止対策について、一体どういうふうに四十一年度予算を組んでおるか、こう言って聞いてみた。大臣はおられたが、次長のほうから答弁をもらったのですが、いろいろおっしゃいましたその中に、十二億円の中央会のほうの海難防止事業というものをおっしゃっておるわけなんですが、予算書の款項目を見てみると、海難というのでは水産庁の中にないのですね。私は、海難防止ということは真剣になって考えてもらわなきゃいけないと思う。海難関係は、これはどちらかといえば運輸省所管、海上保安庁の仕事になるからというようなことでは逃げられないと思うのです。私が特に言いたいのは、一ぺん水産庁の諸君が考えてもらいたいと思うことは、今度の四十一年度予算を見てみますと、石炭対策が二百四十億三千数百万円ある。これは大蔵省主計局の四十一年度予算の説明書を読むとわかる。ところが、海難関係には五億余りしかない。しかもそれは海上保安庁の巡視船です。一番台風の起こる——この前マリアナであれだけの被害をこうむったけれども、これなんかでも気象の予報の間違いであるということが言えるわけです。それは、気象庁が悪いとは言いませんよ。だけれども、そういうような気象観測も十分やっていない。何というか、海に出て事故が起こるということは当然なんだというように、まあそうは考えてはおらぬのだろうが、全般的にそういう傾向がある。だから、海で人命を失うなんということはあまり重要に見ないというきらいがあるように私は思うわけなんです。炭鉱でガス爆発したらたいへんなんです。だからこそ、二百四十億三千何ぼという金がつく。その内容を見てみると、企業者の利子補給があります。それから鉱害を受けた被害者に企業者のほうが補償してやれないと、それを政府のほうが補償している。一体海難にそんなものがありますか。それは企業は大事ですよ。経営が成り立たぬようでは困ります。しかし、それ以上に大事なものは、私はやはり人命だと思う。ところが、水産庁予算を見ても、海難防止に対しては款項目が何もない。だから海上保安庁まかせということにもなるんだろうが、そこで、いまの十二億出したこれですね。この七千八百万円というのをずっとこの項目の中に金を割り当てていったら一体どうなるか。まだこの項目以外に経常費が要りますね。だれか事務員がいなければならないだろうし、そうすると、名目だけ並べておっても、まるで二階から目薬になる。ほんとうに仕事ができるのかどうか。十二億円の利子を食うだけですか。これでは意味ないですよ。ほんとうにこの中央会事業を真剣になって遂行していくということになれば、これは元金を食わざるを得ない。元金を食って、初めてここへ並べておる事業というものがまともにできるんじゃないかと私は思うのだが、その辺の見解はどうでしょう。
  94. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 まず、海難救助の重要性の問題は御指摘のとおりでございますし、基本的には、いま先生もちょっと触れられましたが、海上保安庁の船艇、飛行機、それから救難活動の整備の問題、気象庁におきます気象の整備の問題、これらはそれぞれ大きく行なわれておりますが、海難救助というのは必ずしも頭についているわけではございませんで、それぞれに行なわれておるわけでございますから、海難救助という形で予算を集めてみたらどういうことになるかという点は、そういう角度からやってみる必要もあろうかと思いますが、本質的にはやはり保安庁の施設の向上、気象庁の施設の向上であり、それぞれに相当金がつぎ込まれておりまして、それがはね返って海難救助に役立つ、そういう意味で、保安庁の予算その他についても、海難の立場から、私どもも及ばずながら予算折衝の段階において協力しつつ進んでおったわけでございます。  それで、水産庁の関係に問題をしぼってまいりますと、分野の問題といたしましては、やはり漁船の建造の問題、それから安定基準の問題、あるいは漁業無線局と気象台との連絡の問題、あるいは海難救助に対します積み立て等に対する税制の問題、そういうものを積み重ねてまいりまして、これをみんな関係の各省が集まって、漁船の遭難対策を充実するということが必要であろう、かように深く思うわけであります。率直に申しまして、まだ努力が足らないと思います。今後とも——今後の問題としては、こう漁船の海難が多くては確かに私どもの立場からも問題でございますので、これを最重点課題とすべきものと私ども思っております。  ところで、この漁船保険特別会計の十二億でございますが、これは漁船保険にかけておった方々が、保険設計と保険事故との関係で余ってきた、ですから、極端に言えば、これを返せという議論もあったわけでございますが、小さい金にして返すということはもったいない。効率的にもつまらない。そこで、それなら、十二億という金をこの漁船保険の集団である中央会にいわば預託いたしまして、漁船保険に役立つような立場においてこれを使おう。漁船の遭難を防ぐということは、同時に人命の尊重にも連なるわけでございますが、基本的には漁船保険の剰余金でございますから、これをそういう方向に使う、ことばをかえますと、この金で海難対策をやるというふうに割り切ることは、この金の性格上いかがか、しかし、漁船の事故等をなくす、ひいては人命の保護等に大いに役立つという方向になるべく使いたい、そういう立場から考えれば、元本等を一年で食い荒らしてしまわないで、根気よく——利子は平年度ベース八千百万でございますが、これを一番有効に使う方法はどうか、こういう立場から考えたわけでございます。この十二億を先生が問題にされている大きな問題として、海難対策に直ちに導入するということは、漁船保険特別会計の問題としてはちょっと問題もございますし、それは別の問題として大きく取り上げていくべきものではなかろうか。漁船保険のほうでは、先ほど申しました漁船保険特別会計の立場から可能な限度において海難防止事業に差し向けていこう、これは漁船保険の健全化にも役立つという立場で、実は私ども整理をいたしまして予算要求をし、御審議を願っている次第でございます。
  95. 赤路友藏

    赤路委員 まあ理屈はやめておきましょう。ただ、私の心配するのは、その元金に手をつけないで、金利だけでやるという原則にあまりこだわり過ぎて、へたな金の出し方をしておると、結果的には役に立たぬ金を出すという結果になりかねないので、そういう点を御注意を願いたいということです。  それから、海難防止のことでいろいろ御説明があったが、確かに漁船保険の金ですから、そういう立場において考えていく、それはいい。ただ、私が次官にも、あるいは水産庁の方々にも知っていただきたいことは、過去五カ年間の炭鉱における事故死をした災害死亡者は約三千人、海難で死んだ者は三千五百人、こういうことをやはり知っておいてもらいたいということです。しかも海難関係の費用というのは、もちろん五億そこそこしかない。海上保安庁のものは十三億何ぼついておるが、これは船の建造費なんです。しかも一番重要な気象観測の船の要求すらも大蔵省にけられておる。こういう事態なんですね。だから私は、やはり漁業行政を担当する水産庁としては、直接自分のところの所管の中でないにしても、そういう諸般の情勢というものを十分見きわめて対処していくという必要があるのではないか、こういうことで、この点を申し上げた。あまり原則にとらわれ過ぎないで、死に金を使わないようにする、こういうことです。  次に、漁船保険を見てみますと、民間保険と比較してみると、民保のほうが格段に加入の率が大きいわけなんですが、これはどういうことなんですか。
  96. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 在籍漁船とその漁船保険加入の状況を、民保といいますか、この事業との関係でちょっと申し上げますと、三十八年の数字でありますが、百トンから二百トンまで八五%の船がこの特別会計によるものに入っております。小さいほうは別として、百トン以上で申し上げます。それから二百トン−五百トンが七六・四%、五百トン−千トンが三〇・六%でございます。つまり、下にいきますればいきますほど、この制度に入っておりますが、五百トン以上クラスになりますと、みんな船に保険をつけておるでございましょうから、この制度よりも民保の関係が多い、こういう形に相なっております。  その理由はどうかという点に触れられておると存ずるわけでございますが、一つは、この制度が、比較的、相対的に零細な漁民に災害があったときの主要生産手段である漁船を何とか確保しようという立場から始まっておる点が一つあります。国庫補助等も下のほうにあるわけでございます。大きいほうに相なりますと、今度は一ぱいの船の事故がございまして、一億の事業を引き受けますと、元請組合ですぐ一千万がすっ飛ぶというような関係にも相なりまして、一ぱいごとの保険につきましては、多くの組合におきまして上限を設けております。大部分は一億をこすようなものは引き受けないという定款もございます。それから制度的にも、定款できめたより大きなものを引き受けるときには農林大臣承認を受けることにしておりますのは、元請組合が破綻するということであってはならないという立場からやっておるわけでございます。つまり、一億という上限を置いておきますれば、早い話が、五百トン以上というような船はなかなか引き受けられないし、引き受けない形に相なってまいるわけでございます。そういう考え方で下に厚く考えておりますので、上のほうは民保にいく割合が非常に大きいという関係でございます。
  97. 赤路友藏

    赤路委員 零細な漁民といいますか、零細企業のほうの加入率がずっと高くて、上のほうへいくほど加入率が低い。これはまあ保険というものは、相互扶助というか、やはりある面においては、もっと率直に言えば、安全性の上に、大手の船が、危険率の大きな沿岸というか、小さい漁家のほうを相互扶助の精神で助けていくという結果になると思う。私はそれでいいと思う。いいと思うのだが、だからといって、あまりこれが極端におちいらないように、ある程度の調整というものが必要だと思う。そこで、もう大臣も来たから私はやめますが、漁船保険加入は八十九条ですか、千トン未満になっていますね。そうですか。
  98. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 さようでございます。
  99. 赤路友藏

    赤路委員 そこで、水産業協同組合法が改正されて、従来漁協の組合員は千トン以下であったものが、これは二千トン未満ということに水産業協同組合法は訂正している。そうすると、水協法が訂正され、組合へ加入するのが二千トン以下ということになれば、これは保険関係のほうも、当然制限しておる千トンを引き上げるということを考えなければならぬように思うわけなんです。この点はどういうふうに考えておられるか。
  100. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 問題の本質を否定するわけではございませんが、まず一応御理解願いたいと思いますのは、水協法で二千トンまで引き上げたのは、組合員資格でございまして、組合員が持っておる船が合わせて二千トンになるものまでは業種別組合では組合員になれるという、いわば属人といいますか、形態に属した基準であります。それから漁船保険のほうで総トン数千トン未満のものが加入できるというのは、形態の属人ではございませんで、船そのものでございます。一ぱいの船が千トン未満という意味で、水協法の二千トンと漁船保険でいう千トンというのは、ちょっと話は別の問題でございます。ただし、だんだん船が大型化しておる実態にあって、水協法のほうでも組合員資格というものを二千トンに上げる実態にあるから、漁船保険においても、総トン数の問題を考えてみたらどうか、こういう点は一つの御意見だと思います。また、われわれもそういう漁業実態変更というものを頭に置いて今後とも考えていかなければいけないと存じますが、ただ、漁船保険で一ぱい千トンといっておりましたのは、先ほどの話とからみまして、一ぱいの船が沈むと、ぽかっとたいへんな保険金になる、元請の負担が耐えられる、耐えられないという問題がございます。そういう意味で、先ほど前段におっしゃられました、比較的大きな船の加入の問題及び民保でのこの制度の扱いの問題と共通の問題でございますので、あわせて十分慎重に考えさしていただきたい、かように思っておるわけでございます。
  101. 赤路友藏

    赤路委員 大臣の時間がないようですから、一応私の質問は保留して、あとにしたいと思います。ただ、せっかくだから、一問だけ。大臣、あなたが来られたので、ちょっとこれに関連する問題なんだが、一点だけ聞いておきますが、大臣は予算委員会で、漁業共済の国の再保険は来年から実施するというふうに答えられた。それに間違いないですか。
  102. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 来年からその努力を払う、こういうことであります。
  103. 赤路友藏

    赤路委員 努力ですか。そうじゃなく、四十二年度から実施する……。
  104. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 実施の方向で努力すると言ったように記憶しております。      ————◇—————
  105. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、これを許します。芳賀貢君。
  106. 芳賀貢

    ○芳賀委員 この改正法案については、昨日、事務当局からかなり詳細な説明と、それに対する質疑を行なったわけですが、最終的な締めくくりといたしまして、責任のある農林大臣から明確な答弁を願いたいわけであります。こちらで問題点をあらかじめ整理して申し上げますので、明快なお答えを願いたいわけであります。  まず、通称マル寒法といわれるこの法律の制定の経過については、当時から農林大臣は当農林委員会の理事等をせられて、中堅的な活躍をされてきたので、御承知と思いますが、昭和三十三年の十月に、私ども社会党から、寒冷地畑作農業振興臨時措置法案と農家負債整理資金融通特別措置法案の二案を提出いたしまして、社会党としては、単に現行法のごとく北海道の寒冷地畑地帯だけを対象にするということだけでなくて、法律の中に、たとえば積算温度二千六百度以下あるいは無霜期間百七十日以内というような規定づけを行なって、北海道を中心とする、その他東北等に及ぶ寒冷地畑作農業の振興と、これを進めるためには、どうしても前提となる農家の固定負債を整理しなければならないということで、二つの法案を提出したわけです。その後、政府におきましても、三十四年の三月に、現在の北海道寒冷地畑作営農改善資金融通臨時措置法案なるものが提案されたわけであります。そこで、当委員会といたしましては、この三案を一括対象にして真剣な審議をしたわけでありますが、その結果、委員会において理事が中心となりまして、特に社会党提案の寒冷地畑作振興法案と政府提案の北海道寒冷地営農改善法案を調整いたしまして、委員会の修正という形で現在のような法律が制定されたわけであります。  特にその中で改正された重大な点は、政府案では貸し付け条件の中の金利については七分としてありましたのを、これを五分五厘に引き下げたというような点は、特徴的な修正であったと思うわけであります。そこで、このマル寒法の最も特徴とするところは、営農改善計画を立てて事業を実行する場合に、それに必要な総合的な資金融通を行なういわゆるセット融資、組み合わせ融資制度が初めて生まれたわけであります。このセット融資を創始したということについては、本法が最も貢献したものでありまして、その後、農林省におきましては、構造改善資金制度あるいは近代化資金制度等が、相次いでこれを手本にして生まれて、実行されて今日に至っておるということは、これは大臣としても御承知のとおりであります。  ただ、あの当時、審議の中で問題として取り残された点を申しますと、一つは、営農改善計画を立てる場合に当然必要になる、先ほど申しました農家の固定負債の整理というものをどうするかという問題と、その次は、経営拡大をするためには、どうしても農地及び草地の造成あるいは農用地の取得が必要になるわけでありますが、これらの資金に対してはどうするかという問題、それからこの法律の対象は、もちろん混同経営あるいは主畜経営というところに条件が置かれておりますので、これを進めるためには、当然乳牛を中心とした家畜の積極的な導入が必要であるが、これを具体的にどうするか。社会党の案ではこれが規定されておったわけでありますが、政府案にはこれが規定されておらないので、この点を議論したわけでありますが、結局話し合いの結果、農地の造成取得資金と負債整理資金については、とりあえず当時ありました自作農創設維持資金融通法を活用して実施する、これに伴って自創資金法の大幅改正を行なうというのが一点であります。その次は、家畜の導入については、当時国有貸付牛制度というものが有畜農家創設の制度に基づいてありましたので、これを並行的に活用するということで一応の話し合いがつきまして、この重要な事項については、委員会が附帯決議を付して政府の善処を促したわけであります。  その後、法律が六年以上実際に運用されたわけでありますが、現在において見れば、やはりこの問題点となりました三点の事項というものが、政府の熱意によって完全に解決されない関係もありまして、これが、本制度に対する対象農家の期待が非常に薄らいだというような点、あるいはマル寒の制度というものが影をひそめてきたというようなところの原因であることが痛感されるわけであります。  以上が、この法律の制定当時から今日に至る主たる経過でありますが、この点は、農林大臣は終始当委員会で活躍されておるので、いま私が述べました経過等については、そのとおりであるかどうか、この際、記憶を呼び起こして確認を願いたいわけです。
  107. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 今日までの経過につきましては、芳賀委員の言われるようなものであったように思います。
  108. 芳賀貢

    ○芳賀委員 次に、今回の改正案の問題について、主要なる点だけをお尋ねします。  今回の法律改正の案によりますと、償還年限の二十年を二十五年にする、据え置き期間の五年を六年にするという、この二点だけの簡単な改正でありますが、一番問題は、貸し付け条件改正するという場合には、現行の五分五厘の金利水準、これをいかように是正するかということが非常に大事な点になるわけでありますが、これには触れられていないわけです。したがって、この際、この五分五厘の金利を、現在国内全体に金利引き下げの傾向等もありますし、農林省関係の他の制度金融においても最近は相当利率の引き下げに力を入れておられますので、この改正の機会に利率の引き下げをやるべきであったと思いますが、その点はいかがですか。
  109. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 金利の問題でありますが、畑作地帯の農業振興につきましては、北海道のほか、南九州等の畑作農業について、昭和四十一年度以降その実態調査し、その結果をまって適切な処置を講ずる所存でございます。  金利につきましても、その結論との関連において対処する考えでございまして、今回金利については現行どおりとしたものでございます。なお、現行資金金利と同一のものには、農業の中でも成長部門といわれております果樹、畜産の資金があり、それぞれ五分五厘の金利が適用されております。これらの金利との比較においても、特別均衡を失していることはないので、この際、従来のままといたしたのでございます。
  110. 芳賀貢

    ○芳賀委員 それでは、引き下げの意思はないようでありますが、たとえば政府において引き下げることができないという場合、当委員会においてこの点を修正して引き下げるという態度に出た場合には、政府を代表してそれに反対されますか、意見を尊重して賛成するということになりますか、それはどうですか。
  111. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 その点は、残念ですけれども予算の関係でやはり今回は同意できないと思います。
  112. 芳賀貢

    ○芳賀委員 その次には、この改正が行なわれると、内容的には取り扱いの要項等が当然改正されるわけでありまして、そうなると、昨日も局長から説明があったわけでありますが、対象農家の条件として、現在は所得水準四十万円以下の農家をこの制度の対象にするということになっておりますが、これは六十万円以下の農家は対象になるということに改められますので、当然の結果として、従来よりも大幅に対象農家の戸数がふえるということになるわけであります。それに期待を持つわけでありますが、それと同時に、現在まですでに認定が行なわれて、営農改善計画が進められておるそれらの農家についても、所得目標を現在の六十万円から八十万円まで引き上げるということになり、さらにまた、改善資金貸し付けの最高限度についても、現在の百万円が二百五十万円に引き上げられるということになれば、現在まで進行中の改善農家に対しても、当然それに伴う計画の改定あるいは追加融資等が行なわれるということになると思いますが、この二点について、具体的に農林大臣として積極的にどのように扱うかをお示しいただきたいわけです。
  113. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 ただいま芳賀委員のおっしゃるとおり、計画の変更、追加融資の問題につきましては、必要な農家に対してはそのように処置いたしたいと思っております。追加融資の問題についても同様、御意見のとおりでございます。
  114. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第三の点としては、営農改善計画が作成されて、それを認定をしてもらうことになるわけでありますが、この点は、昨日も農政局を中心といたしまして、関係のある畜産局あるいは経済局、農地局のそれぞれの局長におかれましても、今後この法律に基づく営農改善計画あるはい構造改善計画等についても、総合的な計画を農家個々について完全に策定して、それが認定されて実行に入る場合は、たとえばマル寒法の場合においては、この法律に基づいて貸し出しする対象の事業はきめられておるわけでありますが、その中に入っておらない——これは全部入れれば問題はないわけでありますが、先ほど申しましたとおり、今後経営規模を大きく拡大するために必要な農地、草地の造成に必要な資金ですね、あるいは農地あるいは草地を取得する場合の取得資金、これは構造改善資金等においてどうしても確保しなければならぬわけでありますが、この点と、それから混同農業あるいは主畜農業の場合においても、乳牛を中心として積極的に家畜の導入が必要になるわけでありまして、この場合には畜産経営拡大資金に依存しなければならぬということに当然なるわけであります。それから農家の固定負債を整理するために必要な資金措置等については、現在自作農維持資金制度があるわけでございまして、これらが総合的に関連を持って運用されるということにならなければ、この計画の一本化の実施ということはできないということになるので、この点は特に農林大臣としても着目されて、この計画の一本化と資金措置については、同時並行的に行なわれるということについて明確にしてもらいたいわけであります。そこで、注意すべき点は、営農改善資金の場合には、昨日の和田局長の説明によりましても、最高限度を二百五十万まで引き上げるということであります。ところが、それ以外のいま申しました資金措置については、この二百五十万のワク内で出すというのではなくて、ワク外措置として適正に行なうということになるわけでありますので、この点は大臣としても解釈を間違えないようにして、明らかな説明を願いたいわけです。
  115. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 畜産経営拡大資金、それから土地取得資金というものについては、二百五十万円のこの資金に上乗せして貸し付けることになるわけであります。
  116. 芳賀貢

    ○芳賀委員 あと負債整理は……。
  117. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 その点は、維持資金も同様でございます。
  118. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第四の点といたしまして、営農改善計画の対象は、たとえば既存農家であっても開拓農家であっても、差別はないたてまえになっておるわけなんです。しかしながら、現在の制度からいいますと、開拓農家に対しましては、開拓営農振興法に基づいて、現在新開拓営農振興計画というものが進められておるわけなんです。そうなると、同一地域内でそれぞれ計画を樹立するという場合、マル寒法の対象にもなれるが、同時に新振興計画の対象にもなれるという開拓農家があるわけでありますが、この点は、従来はマル寒制度に参加できることになっておったわけですが、現在開拓行政の中においても相当これは積極的にやっておりますし、条件を比較すると、むしろ新営農振興計画の措置のほうが有利であるという点も考えられるわけですので、農林省として、この区分というものを明確にしておくべきだと思いますが、その点はいかがですか。
  119. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 開拓農家で新振興対策の対象となるものにつきましては、開拓資金貸し付けを行なうこととし、それからマル寒資金はこれに対して貸し付けないことといたしておるわけであります。それからなお、新振興対策の対象とならず、開拓者資金を借りない者につきましては、マル寒資金貸し付けを行なうこと、こういうふうにいたしておるわけであります。
  120. 芳賀貢

    ○芳賀委員 第五点といたしまして、従来も指摘されたところでありますが、営農改善計画を対象農家が作成する場合、なかなか農家自身がりっぱな計画を立てるということは容易ならぬことであります。そういうことで、従来もこの指導とか手続の取り扱い等については、主として現地における改良普及員がその指導役割り等を援助するということになっておったわけでありますが、北海道における改良普及事業等についても、農林省が非常な消極的な態度で、定数の確保にしても活動費の確保にしても、細々とやれるぐらいしか配慮されておらないわけですからして、こういう点にも難点があるわけです。  それからもう一つは、できるだけ手続の簡素化とか、それから認定作業を迅速に進めるというようなことについても、農林省として改善の努力をして、今後残された二カ年の期間にこの制度というものが十分活用されるようにされたいと思うわけです。  同時に、私ども、本名委員も北海道でありますが、この地方庁である北海道庁の農政に対する取り組みの姿勢とか、こういうような有力な制度の活用等について、最近は非常に消極的な態度でおるような点が見受けられるわけであります。あるいは開拓の問題等についても、農林省にはやかましく陳情、要請等には来るようでありますが、実際にその行政の担当とか実行という面については、中央へ来ていろいろ言うようなほどやっておらぬのではないかという心配がありますし、また農林省からごらんになっても、その点は気づかれておると思うわけです。したがって、この問題についても、今後強力に北海道に対しても国としても北海道農業を重要視しておるということを認識させて、大いに鞭撻すべきであるというふうに考えますが、事務簡素化については北海道の行政庁に対する鞭撻の意思ありやいなや、この点を明確にしていただきたいと思います。
  121. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 農業改良普及制度の充実にあたりましては、特に畑作振興等の施策の推進と関連いたしまして、営農事業を強化するために特に特技普及員の設置を進める等、その拡充につとめてまいりましたのでありますが、今後ともなお一そう努力をいたしてまいりたい、かように存じます。  それから北海道の問題でありますが、これは特に私ども重視いたしておるのでございまして、今後ともさらに積極的に道庁としても行ないますよう指導をいたしてまいりたい、かように存じております。  なお、先ほど、現在までの認定の手続等について簡素化するようにという御指摘でありますが、これらについてもなお十分検討いたして、簡素化に向かってまいりたいと思います。
  122. 芳賀貢

    ○芳賀委員 最後に、第六点として申し上げたいのは、本法の改正が行なわれますと、さらに二カ年間認定の時期が延ばされるわけですからして、法律としても二年間延長されることになるわけです。その後一体どうするかという問題が、当然農林省として予定されておると思いますが、本年の一月、予算編成の際にも、大臣といたしましても、将来にわたる北海道の畑地農業振興の問題、あるいはまた南九州の条件の非常に劣悪な畑地振興等については、今後さらに振興対策を基本的に検討するために、農林省の農政局の中に対策室を設けて、二カ年を目標にして調査を進めるということで、相当額——といってもたいした金額ではありませんが、予算を確保されて、来年も同額程度の予算を確保して、積極的な調査を進めるということは、昨日説明があったわけです。それはそれでいいと思いますが、すでに北海道においても南九州においても、それぞれ北海道寒冷地畑作営農に対する基本調査並びに報告書等が農林省として完結しておりますし、南九州についても、南九州の防災のあり方とか実態についての報告は完了しておるわけです。われわれとしては、いまさら北海道や南九州の畑地農業を農林省が調査しなければ正確な認識が得られないということは、非常に遺憾に考えております。いままで一体何をやっておるかということにもなるわけでありますが、局長の説明によると、特にマル寒法の制度あるいは南九州の防災営農の要綱による実施の成果をこれから二年間十分見きわめて、それを基礎にして、さらに強力な同地域の畑地農業の発展に役立つような制度を実現したいということが目的であると言われたわけです。そこまではいいわけですが、しからば、二年間調査をして、すぐ立法化するかということを尋ねますと、それは調査の結果をさらに慎重に検討して、検討の結果善処したいということで、この点が非常にたよりないのです。これは農林大臣としてわざわざ予算を確保して対策室まで設けるわけですからして、われわれの期待としては、二年間に基本調査はむろん進めるが、このマル寒法の制度が二年後に切れると同時に、空白期間を置かないで、直ちに強力な制度を発足させる、継続発展的に実現するということであれば話がわかるわけであります。この点を大胆に明らかにしておいてもらいたいと思うのです。
  123. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 畑作振興につきましては、農政局長からもいろいろ御説明申し上げてあるはずでございます。それどころか、私も、畑作振興が残された一番重要な問題だと確信いたしております。中心はどうしても北海道並びに南九州であろうかと思いますが、その他の地点においてもあろうかと思います。しかし、この二つの地区が一番中心の地帯であると思います。そこで、今度二年間にわたってさらに徹底したいろいろな基本的な調査等もいたして、そして結論を得まして、真剣なる畑作対策をさらに推進してまいりますことは言うまでもないのでございます。これは自分としても特に力を入れてまいりたい、かように存じておるわけであります。
  124. 芳賀貢

    ○芳賀委員 われわれは立法府にあるわけですから、何も政府内閣提出で二年後に法律を出してもらわなければ仕事ができないというわけじゃないですよ。しかし、法律をあと二年しか延長しない、その間は予算を確保して、調査して、さらに強力な施策を進めるということになれば、政府の責任において二年後には強力な立法措置をするということが、これは責任として生じてくると思うわけです。この点はやはり明らかにしてもらわぬといけないと思うのです。こちらができないからやってくれというのじゃないですよ。立法府の権威でやれるのであるが、政府としていまからそのことを予定しておられるかどうかということを明らかにしてもらえばいいと思うのです。
  125. 坂田英一

    ○坂田国務大臣 いままで申しましたことは、もちろん空白を置かずに、そういう努力を進めるという決意でございます。
  126. 芳賀貢

    ○芳賀委員 以上で質問を終わりますが、きょうはいつになく、答弁も非常に明快で、能率的だと思うのです。ぜひ今後も、問題点に対しては大臣が率先して問題の所在を明らかにしてやってもらいたい。きょうは称賛しまして、質問を終わります。      ————◇—————
  127. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 先ほどに引き続き漁船損害補償法の一部を改正する法律案議題とします。  質疑を続行いたします。赤路友藏君。
  128. 赤路友藏

    赤路委員 先ほどの漁船損害保険に関連するわけですが、これを一問だけいたしまして終わります。  けさほど来の湯山委員運輸省関係への質問に関連をしてくるわけですが、私の考え方を率直に申し上げたいと思う。これは水産行政上重要な問題だと思うので、考えてもらいたいのですが、特定水域の設定は、特に瀬戸内海のような船舶航行の非常に多いところ、しかも漁場として、零細漁民のためにはこれはなくてはならぬ海域、こういうところなんです。それだけに、いろんな問題がふくそうしてくると思うのでありますが、先ほど来の運輸省の局長の答弁を聞いておりますと、だんだん船が大型化してくる。そういうことのために、普通船舶の航海の安全ということを一応運輸省としてはたてまえにする。これは私は当然のことだと思うのですが、同時に、漁民の諸君の漁場でもあるということになりますと、この特定水域の中における漁業というものが、私はやはり問題になると思うのです。運輸省の局長の答弁では、かなりはっきりしたことを言っておるようでありますが、やはりこの際、一体、一般船舶の航行を優先的にするか。安全の優先確保ということになりますと、少なくとも特定水域内におけるところの網漁業、これに類するものは禁止しなければならぬだろう。二者択一といいますか、船舶の航海安全を確保するということになって、漁民の操業を停止するということになりますと、これは当然補償をしなければならない。この点は、私はもういまの段階で明確にしていく必要がある、こういうふうに思います。  それから、昨日の委員会でしたが、やはり香川県のほうから陳情が来ておりましたが、この備讃瀬戸航路のしゅんせつということなんですが、相当海面蓄養殖のほうに大きな影響を及ぼしておるようであります。少なくとも陳情に来た諸君のことばをもってすれば、相当な被害のようであります。これらについても、この際、一つの線を出す必要があるんじゃないか。いろいろ慎重に検討していただくことはけっこうでありますが、これが延び延びになっていきますと、ますます混乱の度合いというものがひどくなる。手のつけられぬような事態にならぬでもないと思いますので、私は、この際、水産庁のほうとしては、直ちに現地調査を行なって、そうして漁業担当官庁としての結論と申しますか、これを早急に出す必要があると思う。この点に対する当局のほうのお考えをお聞きしたいと思います。
  129. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 二つの点を御指摘に相なったわけでございますが、前段の特定水域の問題は、来島海峡及び釣島水道につきまして、特定水域ではあるけれども、釣島水道のほうは待避義務地域を別にきめておるわけでございます。その中にきめておるわけでございます。そこで、いま御質問は、水産庁が自主的に調べたらどうか、見解を整理したらどうかということでございますが、問題は、船舶航行の必要度が、漁船の操業に対してどれだけ待避義務を課する必要があるか、こういう問題でございますので、やはりどうしても水産庁としてだけの判断ではまずいので、運輸省と共同に相談すべき問題だ、かように私は思います。  それから後段の問題は、香川県の沖合いにおきます航路のしゅんせつから発生いたしましたところの浮土被害の問題で、公共事業実施中に発生しましたいわば補償紛争でございますので、これも施行者である運輸省港湾局、それから代表して契約をいたしました香川県知事、それから私のほうで、問題点を洗って調査いたしたいということを、本日午前中に申し上げた次第でございます。
  130. 赤路友藏

    赤路委員 大体長官の答弁、それがそのまますうっと軌道に乗って、そうして早い機会にそれがやられれば、それでけっこうです。ただ、各官庁が話し合いをしておると、そうなかなか簡単にいかないと思う。要するに、所管官庁の何といいますか、わりあい露骨なことばになりますけれども、利害関係が違うとでもいうのですか、運輸省のほうは、備讃瀬戸の航路しゅんせつは運輸省としてどうしてもやらなければならぬ、やられると、水産庁のほうの所管である漁民が困るというので、相反しておるのであるから、一緒に手を取って仲よういきましょうやなんということは、なかなかそう率直にいけるものじゃないですよ。だから、いまの長官のおっしゃるように、各官庁とも話し合って慎重におやりになることはけっこう、大いにそうしていただいて、各官庁とも納得の上に、お互いがそれぞれ専門家を出して調査するということが一番望ましいと思います。しかし、いつのことになるやらわからぬようなことでは、これは問題にならない。私は、やはり被害者の立場ということを十分考えて、水産庁はこの際早急に打つべき手は打って、調査すべきものは調査する、そういう踏み切り方をすべきだと思う。慎重にやることが必ずしも行政でありません。この点ひとつ次官の御答弁をお願いします。
  131. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 原則的には、赤路先生の御意見、私ども同感であります。航路の安全を主張する運輸省考え方は当然でありますけれども、そのために漁民の漁業を犠牲にすることは、われわれとしてはたえられないことである。しかし、それかといって、そのことをいかに調整していくかということが非常にむずかしい問題で、ざっくばらんに言えば、いいかげんな妥協をして解決をつける——ことに漁民自体の遭難防除あるいは人命尊重という問題も考えていかなければならぬ。そういう面から考えてみますと、この問題は、やはり高い立場で積極的に解決する方法をわれわれも考えなければならぬじゃないかと思っております。ただ、そういう場合の具体的な問題として、場合によったら漁業権を放棄して補償を取るというところまで進んだ場合において、その地域の漁民はどういう考え方を持っておるかという、漁民感情と申しますか、そういったものが、われわれ率直のところまだわかっていない。そういう問題も十分検討の上、進めるべきじゃないかと思っております。
  132. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 足鹿覺君。
  133. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、他の同僚委員から、ただいま審議中の漁船損害保険の法案については、慎重御審議になりましたので、関連をいたしまして、日本海沿岸漁民の最近の苦しい実情につきまして、特に日韓漁業協定に基づく共同規制水域の問題を中心に、ごく短時間でけっこうですので、お尋ねをしたいと思います。  日本海の沿岸漁民は、政府の宣伝もありまして、日韓漁業協定に基づいて李ラインが事実上撤廃される、これにかわって共同規制水域が設けられることによって、新しい漁場が開発できると、非常に期待をかけておったのであります。そしてその後出漁が始まったのでありますが、最初若干豊漁のときもわずかの期間あったようでありますが、最近兵庫県、鳥取県、島根県方面の底びき関係者は、漁獲高が急に少なくなりまして、出漁を見合わせる船が続出をいたしております。兵庫県の香住港とか、鳥取県の田後あるいは網代、島根県の浜田、各方面ともそういう状態なのであります。なるほど拿捕の不安からは解放されたかもしれませんが、待望しておった共同規制水域における出漁の結果は、まことに期待はずれである。このような実情について、政府は、その後の共同規制水域内における出漁の状況、漁獲の状況、その他関係事項について、いかに見ておられるか、調査をしておいでになるかどうか。私どもの鳥取県におきましては、二月十四日現在において出漁底びき漁船四十隻中、現在出漁しておりますものは十四隻程度であるといわれております。これは私がただいま申し上げたことを具体的に実証しておると思うのであります。政府がかねや太鼓で宣伝をいたしました結果が、このような事態になるとはたしてだれが思っておったでありましょうか。その点について、現況をいかようにお考えになっておられるか、今後、この不漁の原因は何であり、どういうふうにしたならばこの問題が好転するか、その対案等をこの際明らかにされたいと思いますが、いかがでありますか。
  134. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 お答え申し上げます。  日本海西区といいますか、鳥取、兵庫県を中心といたします底びき船が、本来日本国の規制としての漁業の操業地域を持っております。その操業地域の中にかつて李ラインがあったわけでございますが、その李ラインを今度の協定で共同規制水域と専管水域の形で縮めた。そうして朝鮮半島の東海岸にも、この地域の底びきが出漁できるような形に態勢は整備された。そこで、在来あまりやっておりませんでした東海岸の底びきに、日韓漁業交渉妥結後出漁をいたしまして、たしかズワイガニと承知しておりますが、その漁獲を初めて試みまして、いま先生もちょっと触れられましたが、当初ある程度の成果を上げ得たわけでございますが、その後、漁獲成績があまりよくないという事情が日韓関係の漁業ではある。それからもっと根本の問題としては、日本海西区の底びきというものが、資源との関係で、ここ数年非常に不振に相なっておる。そういう状態にあることは私ども承知をいたしておるわけであります。  そこで、問題は、日本海西区の一般論としての資源の不足からくる日本海西区の底びきの不振対策をどうするかという問題と、それから日韓関係の漁業で新しく手をつけました朝鮮半島の東海岸及び西海岸の底びきの問題に分けて考えまして、東海岸の底びきにつきましては、初めてやった関係もあり、今後漁場探査の努力も関係者で大いに進めていただく必要もあるし、われわれもいろいろ資源調査の問題はやらなければならぬ問題である、かように考えております。  基本的に、あの地域の底びき漁業が、資源との関係で総体的に不振である。この問題の解決につきましては、いま直ちにどういう手を打てばどうなる、こういう対策というものは、現在ないわけでございます。現地の御要望としては、朝鮮半島の南部及び西側の海岸のほうまで自分らの船を出せという御要望がございます。ただ、そちらのほうの側におきましてはまたそちらのほうの側で、直ちに入られることについて賛成というわけにはなっておりませんので、この関係の調整の問題は、今後の課題として非常にむずかしい問題でございまして、いま検討中の問題でございます。
  135. 足鹿覺

    足鹿委員 不漁の原因について、政府としてはどういうふうに考えておられるのか。聞けば、その共同規制水域地帯あるいは朝鮮半島の東海岸方面は、でこぼこが激しい、あるいは東海岸の場合は、沿岸から急に二百メーター内外の水深の深みになっておって、なかなか漁がむずかしいというふうに、現地で働いてきた船員が言っているのです。その話を私どもは聞いて、お尋ねしているのです。ですから、そういうことは、あなた方の海上保安庁なり出先関係機関をもっと動員をされて、そうして的確に——なぜあれだけあなた方が期待を持たせられた共同規制水域や東海岸の漁がふるわないのか、ついては、どうしたらいいか、どの方面にさらに新漁場を開拓したら見込みがあるかというような、そういう調査なり指導なりをされる責任があると私は思うのですよ。それを私は聞いておるのです。一体、あれだけの期待を抱かせておって、いまさらこういう状態になった、今後対策を検討するでは、私は政府の責任は済まされないと思うのですよ。魚がたくさんとれる、とれた魚は安くお互い国民が日韓漁業協定で食えるような宣伝ばかり、あなた方はしておったではありませんか。その裏が出ておるということに対して責任をお感じにならないのでありますか、その点を私は伺っておるのであります。
  136. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 日韓漁業協定の締結によりまして、旧李ラインが除かれて共同規制水域になって、操業の安全の確保ができる、これは非常に強く強調いたしました。それによって魚が非常にとれて云々という部分は、ちょっとそういうことを私どもは申した記憶はないわけです。ただ、いま先生があげられました朝鮮の東海岸、これはいままで長い間入り得なかった朝鮮半島の東海岸の部分に今度入る余地ができた。それからそこは非常に深いということ。それから非常に深いけれども、操業の余地はある。そこのやや深い地域における底びきの問題としては、一そうびき底びき船がどういうふうに操業するかということについては、いろいろ実際にやられる方の御検討も要るわけでございます。さればこそ、昨年、当初に出られまして、ズワイガニをおやりになったわけです。それがその後必ずしも思わしくない。ただ、ここ数カ月の実態でございますから、なお今後、先ほども申したとおり、県の試験船その他も考えまして、いい漁場といいますか、網代の探索その他ということは進めなければならない、かように私は思っております。
  137. 足鹿覺

    足鹿委員 いまあなたは重大なことを言われたようです。別に魚がたくさんとれるなどということを言った覚えはないとおっしゃったが、事実明らかに言っておったじゃないですか。漁業協定が結ばれれば、共同規制水域を設けることによって魚もとれる、拿捕もなくなって安全操業ができて、沿岸漁業の振興になると言ったじゃないですか。何を言っておるのですか。事が済んだからといって、そういう詭弁を弄してこの委員会を乗り切るつもりですか。あまり国会を侮辱しちゃ困りますよ。何言っておるのですか。
  138. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 決して国会を侮辱いたしておりませんで、安全操業ができるように相なったということはるる申しておるわけでございます。
  139. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。長官、これはやはり答弁するときは、もう少しまっすぐに答弁したらいいと思う。いまの足鹿君が言っておる東海岸における一そうびきは二十五隻なんです。そうでしょう。しかも足鹿君の言ったのは、あそこの海岸は急に深いというのですよ。この二十五隻は、ちゃんとあの条約の中で三百メートルより浅いところでは操業しないと言っているのです。そうでしょう。そうすると、いま島根、鳥取、兵庫のあの沖合い底びきで、三百メートル以下のところに操業しているような船があるかというのですよ。ないのですよ、そんなものは。だから、私いまあなたの答弁を聞いておって、あそこのところはこうなんだ、二十五隻東海岸は一そうびきが出るが、ところが、条約のときにそういう条約ができているのだから、三百より浅いところではやらないように指導すると、こう言っているわけなのですからね。だからこそ、今度は西のほうに持っていこう、こういうことでやっているのです。そうでしょう。だから、そういうことをありのままに答弁したほうがいいのです。
  140. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 私、その点重々御存じの上の御質問と思っておったわけでございます。おっしゃるとおり、日韓協定では、東海岸におきましては、韓国との漁業の調整上二十五隻にしぼりました。かつ三百メートル以遠で操業するということに相なっておるわけであります。その前提のもとにおきましてその操業をいたすわけでございます。いま赤路先生がおっしゃいました三百メートルの深度におきます操業ということにつきましては、業界の意見等もいろいろ聞いたわけでございますが、まだ新しい経験でもありますけれども、一そうびきであればある程度やれるのではないかという御意見もあったわけでございます。そうして昨年の十二月からその実態が発足いたしたわけで、十二月、一月、二月という経過を経ておるわけであります。そこで、その地域におきます操業の問題といたしましては、さらにいい漁場の調査の問題がまだ残りますということを先ほど来申しておるわけでございまして、その調査はやはり大いに進めなければならない。それから実際に操業をおやりになる方々の御研究にまつ面も多々あろうかと思いますということを先ほど来申しておる。もう一つ、やはりそこに相当無理があるから、朝鮮半島の南部及び西部の海岸のほうにこの地域の底びき船を出してくれという御要請があることも、先ほど申し添えたわけでございます。それに対しましては、そちら側の操業いたしております方々との調整上、非常に問題が残っておって、直ちにそれをそのとおりやりますというわけにはまだまいらない段階でございます。それをどうするかは、国内の漁業調整の問題でございますから、検討中でございます、かように申し上げたつもりでございます。ことばが足らなくて失礼をいたしましたが、御容赦願います。
  141. 足鹿覺

    足鹿委員 私だって、質問するからには少しは知っていますよ。東海岸に出動した連中は、浅いほうに魚が行って、自主規制の線のために入れないというのです。だからとれない、こういうことになっているのです。そういう自主規制を、漁業協定でなしにあなた方が政府の責任でやっておることは、私は当然日本政府の責任として背負うべきだと思うのです。聞けば、新しい漁場の開拓は、一年ぐらいの覚悟で試験操業をやって、新しい漁場を見つけるんだというようなことです。漁師というものは、わりあい肝が太いものだから、そういう気持ちの者もおるでしょうけれども、腕の弱い零細漁民の場合はそういうことはききません。参ってしまいます。十日間に一トン程度の水揚げでやれるわけはないじゃないですか。ですから、舞鶴の海上保安部のほうでは、海底の模様を調査するというような話も聞いておりますが、とにかく政府としては、南岸漁場その他のほうへやりたいけれども、まだそこまでには調査が立っておらぬというならば、現在の漁場というもの、東海岸及び共同規制水域における新しい漁場の開発というものは見込みがあるのかないのか、どうすればもっととれるのかとれないのか、そろいうことについてよく調査をし、どういう対策を立てておられるかということを私はいま聞いておるのです。やはりそういうことは、各県の水産試験場の試験操業船だけの努力にまつということはないはずですよ。政府としても、責任を感じたらおやりになるのがあたりまえではないかと——専管水域の問題については、このあとの質問で詳しく申し上げます。そのことを聞いておるけれども、そのことについては一向御答弁にならない。いま私が指摘した点について御答弁願いたいのです。
  142. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 明年度予算におきまして、あの水域の底びき漁業調査に対しまして、県の試験場の協力を得まして、今後の日韓交渉後の基礎資料を集めるという意味におきまして、調査予算の計上をいたしております。県の試験場も活用していろいろ調査をいたすということの手配はいたしておるわけでございますが、いま先生が御指摘の、現実にそこへ行って操業している船のすぐの操業について、いま直ちに何らかの手を打っておるかということにつきましては、率直に申しまして、現在その段階ではございません。
  143. 足鹿覺

    足鹿委員 政務次官に伺いますが、いまの水産庁長官の答弁は、あまりにも冷たいというか、事務的というか、私は納得がまいりません。これはまた別の機会に問題にいたしたいと思いますが、少なくともいま長官が御答弁になったようなことで、政府としては、これは当分成り行きを静観されるということでよろしいのでありましょうか。一応御所見があったらこの際承っておきたいと思います。
  144. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 李ラインが撤廃されることによって、従来操業できなかった区域でも操業ができるということになれば、そのことによって、少なくとも従来よりは漁獲がふえるであろう、こういう考え方をわれわれも持っておったわけであります。一般的な問題としては、確かに、遠洋海域の底びきというものが、資源の枯渇といいますか、そういった面で、従来のような成績をあげていないことも十分承知しておりますし、これは一般的な底びき問題として今後早急に検討しなければならぬ問題だと思います。  それから東海岸のいわゆる水深三百メートルから深い地区の制限された二十五隻の問題でありますが、今年初めてやったわけですが、思うように成績があがっていないということ、ただいま先生の御指摘があったとおりでございまして、これについては、やはり十分に漁場調査等も行なって、そして積極的にこの問題の解決に当たっていかなければならぬ、そういう姿勢をとらなければならぬことは当然でございます。ただ、日韓交渉が妥結されて一応操業が開始された直後でもございますし、そういった問題で十分に実態の把握ができていない関係上、打つ手も若干おくれておったと考えますが、今後とも御趣旨に沿いまして、積極的にわれわれも努力しなければならぬというふうに思っております。
  145. 足鹿覺

    足鹿委員 それでは第二の、専管水域との関係についてお尋ねをしたいと思います。  これは申し上げるまでもなく、従来の専管水域の外側六海里というものは、操業権について国際慣行上入り会い権が認められておったものです。それを放棄して、専管水域十二海里というところに線をお引きになった、そのこと自体が、いわゆる日本海沿岸の出漁漁船が今日の苦杯をなめざるを得ないような事態になった大きな原因であろうと思うのです。従来の操業の実績は私はこまかくは申し上げませんが、実際においては、いわゆる共同規制水域というものは、拿捕に対する恐怖から免れた程度にとどまり、従来の沿岸二海里の外側六海里の慣行上の地帯というものが、実際の公漁場的な存在であったことは明らかであります。しかも、国際慣行上からいえば、五年ないし十年は認められなければならぬものを、日本政府はあっさり十二海里をお認めになった。したがって、海底の状況が浅いところに魚が集まる地域においては、そこへ入れば、武装した韓国警備船が厳重に警備をしておりますから、近寄りがたい。この間、全然操業設備なしに、ただ通過をするために専管水域を通っただけで、停船を命じられ、そして船内の捜査を受けておる事実があるのです。それくらい監視船がきびしい取り締まりをしておりますから、全く近寄りがたい。従来における既得権というものは、完全にこの専管水域十二海里によって抹殺されておるのです。それが私は今日の状態になった第二の大きな原因だと言って差しつかえないと思います。このような入り会い権放棄をして異例の協定を結んだ政府の責任を私は追及せざるを得ない。その責任を感じてもらわなければならぬと思います。したがって、今後このことに対してどういうふうに対処をされようとしておるか。先ほども東海岸の問題について水産庁長官は御答弁になりましたが、朝鮮の東海岸の問題につきましては、規制措置外の沿岸漁業隻数千七百隻というものをあなた方政府が自主規制されたのです。そして三千隻にのぼる出漁船をそこにしぼられたことによって、さらにその残りのものは困っておるのです。そうでしょう。漁場を転換して遠洋漁業に出たい、かりにそういう気持ちを持っておっても、零細漁民でありますから、とてもじゃないが、その力がない。したがって、生活が苦しくなって、全く困った状態になっておることは言うまでもありません。したがって、この専管水域の設定によって困っておるのは、小資本の沿岸漁民が一番打撃を受けておる。金を借りる力もあり、自分も金を持っておるような漁業者のほうは、転換も可能でありましょうし、漁船の大型化によってさらに新しい方向へ漁場を開拓していくことも可能でありましょうが、それのできない人々というのは、共同規制水域に出てみてもしかたがない。専管水域には厳重な規制によって入れない。結局沿岸をうろうろして、わずかな漁獲を続けざるを得ない、こういう状態に現在逢着せざるを得ないありさまであります。したがって、大規模な漁場の開発、漁獲高の増加のために、一体どういう方策をもっていま述べたような悲境にある沿岸漁民の期待にこたえられる方針であるか。救済対策としては何をお考えになっておるか。たとえば漁船の大型化によって遠洋漁業へ切りかえるにしても、沿岸漁民の現在の力では転換ができないではありませんか。それもいろいろと内輪の話を聞いてみますと、きょうは申し上げませんが、あまり芳しいことは行なわれておらぬと私は見ております。事実上において、大資本優先の措置がとられておる。沿岸漁民の立場などというものは顧慮されておらない事実が横たわっておるように私は思う。具体的には本日は申し上げますまい。そういったことに対して、政府は当然責任を感ずべきだと思う。そのことをどういうふうに措置されるか、私はこの機会に明らかにしてもらいたいと思うのです。明らかにならねば、もっと具体的な資料を整備して明らかになるように、幾らでもいたしますよ。だけれども、私はそういう暴露質問考えておるのではありません。少なくとも沿岸漁民の立場が立つように、共同規制水域の付与、沿岸専管水域の設定によって漁場を締め出された零細漁民の救済をどうはかろうとしておるのか、それを明らかにしていただきたい。
  146. 丹羽雅次郎

    丹羽政府委員 李ラインというものがございまして、それを越えて中に入れなかった。あるいは見つかれば拿捕される。しかし、その際にも、見つからない場合には相当中に入れておったのだという立場におきまして、今回それを整備いたしまして、共同規制水域と専管水域に分けて、専管水域につきましては排他的支配権は認めるが、共同規制水域については拿捕をなくする、こういう方式をとったわけでございますが、その結果、前におきましてはたまたま入れたものが、入れなくなって不利になったというお立場の御意見が間々あるわけでございます。しかし、この問題につきましては、あらゆる角度から検討して、その関係を明白にするということで、専管十二海里の外側に共同規制水域ということで条約を結びまして、とりきめたわけでございますので、私どもこれを守ることになるわけでございます。  そこで、先生御指摘のとおり、比較的大きな船はもっと近くまで行ってやれた。沿岸の問題は、その問題よりも別に、日本海におきます資源の減少ということが、非常に大きな問題として響いておると私は感じておるわけでございますが、いずれにいたしましても、日本海西部の地域におきます漁業が非常に不振である。これをどうするか、その具体案を示せということでございますが、それこそ、いま私どもが日本の漁業全般の問題において当面しておる最も困難な問題でございまして、本日ここに明確にその具体案を出せとおっしゃられるわけでございますが、それはあらゆる角度から努力はいたしておりますが、御要請にこたえるような明確な答案が出せない、これがいま私ども日本国の沿岸漁業の大きな問題の現状であるということを申し述べる以外にお答えがないわけでございます。
  147. 足鹿覺

    足鹿委員 そうすると、全く、日韓漁業協定というものは、だれのための漁業協定であったかという性格の問題になってくると思うのですね。大体九千万ドルからの漁業協力資金が韓国へ支払われる。日韓合弁会社がつくられて、そしてさらに大規模な操業が計画されておるとも聞いております。さらに韓国の操業方式が近代化して、専管水域における漁獲はあげて日本に輸出をする、こういうことになりますならば、日本海沿岸の、このたびの漁業協定にわずかながらでも期待を抱いておった漁民の期待を完全にじゅうりんするのみならず、今後における日本の魚価にも大きく影響をいたしましょうし、勢いまた向こうの韓国の安い労働力を使って、さらにこれが日韓合弁関係の漁船がたくさん動いてくるということになりますと、さなきだに困った労働問題にも大きな影響が出てくるでありましょうし、結局何の利益もなかった。むしろ逆に出てきた影響は、先般国会でも問題になったと思いますが、沿岸十二海里の専管水域を認めたことの影響は、本年の一月十四日ごろですか妥結を見ました、日本漁業代表と中国代表との間において結ばれた日中民間漁業協定の際に、やはりこの専管水域や共同規制水域の線を延ばしていくと、勢い日中漁業協定の水域にも重大な影響が及んでくることが一つの大きな難関になったことは、当時の折衝の経過から見ても明らかであります。  さらにニュージーランド方面においても、タイの漁場として、非常に日本漁船の大事な漁場といわれておったところが、韓国に専管水域十二海里を認めるならば、自分たちのほうにも専管水域を設ける、規制水域を設けるという動きも出ておると伝えられております。そうなったら、結局、韓国との間に結んだ専管水域その他が国際的に波及をし、最近ではアフリカやインドネシア方面にもそれが及んでおると聞いておりますが、そのような事実はないのでありますか。あったとすれば、どのような対策を講じておいでになるのでありますか。  いままでのこの簡単な質問を通じて理解することは、日韓漁業協定というものは、日本の沿岸漁民、零細漁民に対しては何らのプラスもない。むしろいままでの漁場を奪って、漁民を窮地に追い込むだけの成果しかなかったと言われても、弁明の余地はないじゃないですか。あったらはっきり言ってください。具体的な事実をあげて説明をお願いしたい。  十二海里の問題が、他の漁場にどういう微妙な影響を及ぼしつつあるか。特に私は、ニュージーランド方面の話を新聞紙上等において読んでおりますが、外務省その他は、あなた方のほうはニュージーランドと交渉を開始して、そういうことのないようにひとつ対処してくれと哀訴嘆願をしておるという話ではありませんか。出てくることは、日本の漁民を苦しめ、さらにまた海外における有望な漁場にまでも制限を加えるような逆現象しか出ておらないではありませんか。そういう日韓漁業協定というものが、一体何の価値がありますか。私どもとしては首肯することはできません。また、あの当時において、私どもは、日韓漁業協定の問題が、一般の基本条約のときに論議になった過程においては、仮定の事実であるから、よくなるであろう、拿捕もなくなるであろう、こう言われれば、あるいは沿岸漁民を含めてそうかもしれぬと思います。しかし、今日では、もう具体的に明らかになっておるのです。この事実をあなた方ははっきり認めて、その被害を今後どう償い、どう対策を立てられるかということは、当然政府がとるべき措置だと私は思います。その点について、仮谷政務次官の御所見があれば承っておきたいと思います。
  148. 仮谷忠男

    ○仮谷政府委員 日韓条約によって十二海里の専管水域ができたことについては、確かに足鹿先生がおっしゃる面もあると思います。われわれも過去の実績から考えて、この問題はずいぶん主張をいたしたのでありますが、結局は李ラインの実質的撤廃という一つの大きな目的のために、ある程度これが犠牲にされた、こういうふうに考えられる面もあるわけでありまして、そのことが、今後の国際漁場、たとえばニュージーランドの問題等にいろいろ影響してくることをわれわれも予想をし、心配もいたしておったのでありますが、ただ、そういう問題は国際漁場の一つの方向としてもあるわけでございますが、しかし、日韓条約は特別な、御承知のような状態によって妥結したので、そのことがほかの国際漁場に影響しないように、われわれは今後総力をあげて努力をしなければならないと思っておるわけであります。  それはそれといたしまして、沿岸漁業に非常に大きなしわ寄せがきておるという考え方の問題でありますが、ざっくばらんに私どもが基本的に考えられるのは、従来李ラインがあることによって、それから向こうへは一歩も入れなかった。無理に入ったとしても、安全操業というものは絶対に確保されない。いわゆる拿捕という犠牲を覚悟してやらなければならなかった。それが今回できた日韓条約によって、いずれにしても実質的に李ラインが撤廃をされたということは、少なくとも十二海里までは漁船が安全操業を確保しながら入ることができるという点においては、李ラインの撤廃以前よりは確かに有利であるというふうに私ども考えておるわけでありまして、したがって、その専管水域の、たとえば六海里というものにかりに従来沿岸漁民が入っておったとしても、それはおそらく戦前のものであって、あるいはその当時どれだけのものが入っておって、それを今日とどう比較するかという問題は、非常にむずかしい問題ではないかというふうに考えます。むしろ私ども考えるのは、一応李ラインを撤廃することによって、漁業範囲というものは拡大されたけれども、やはり依然として沿岸漁民は漁獲高は向上しないし、生活は安定しないという現実をわれわれはどう考えていくかという問題であります。こういう問題になってきますと、やはり一般的な日本国の沿岸漁業というものは非常に不振でありまして、この対策とやはり関連して考えなければならぬわけであります。一般的な日本の沿岸漁業対策としては、御承知のように、沿岸漁業等振興法に基づいて構造改善を進めておりますし、また、大型魚礁等の公共事業化によって魚礁の設置を考えていくとか、あるいはいままでのいわゆる取る漁業から栽培漁業養殖漁業の奨励とか、その他漁港の整備改善とか、いろいろな施策を講じているわけであります。それは必ずしもそのことずばりで成果のあがっていないところに、沿岸漁業対策の非常なむずかしさがあるわけでありまして、そういった面から考えますと、なおさら日韓の問題等も関連をいたしまして、日本海の沿岸漁民の対策については、私どもは積極的に考えていかなければならぬし、一般的な沿岸漁業対策と関連をして、そしてより以上積極的に、日本海沿岸漁民の対策は考えていかなければならぬのではないか、こういうふうな考え方のもとに、今後努力を続けてまいりたい、こういうふうに思っておるわけであります。
  149. 足鹿覺

    足鹿委員 私は、審議案件とは別に関係のない問題でありますし、きょうはこの程度にとどめておきますが、少なくともただいま政務次官が御答弁になりました点について、先ほどの御答弁とただいまの御答弁を抽象論ではなくして、具体的な問題として、さらに十分大所高所から政治的に判断をされ、水産庁長官のような、きわめて冷たい、全く事務的な立場ではなくして、沿岸漁民に対するあたたかい気持ちから、少なくとも現在直面しているこの問題に対する具体的な救済あるいは振興の対策を講じられんことを強く要請をいたしまして、きょうは番外でありますから、この程度で質問を打ち切っておきます。
  150. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 次会は明十日開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時四分散会