運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-12-23 第51回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十三日(木曜日)    午前九時五十一分開議  出席委員    委員長 濱地 文平君    理事 倉成  正君 理事 田口長治郎君    理事 舘林三喜男君 理事 長谷川四郎君    理事 本名  武君 理事 赤路 友藏君    理事 東海林 稔君 理事 芳賀  貢君       池田 清志君    宇野 宗佑君       金子 岩三君    草野一郎平君       小枝 一雄君    小山 長規君       笹山茂太郎君    田邉 國男君       高見 三郎君    中川 一郎君       野原 正勝君    藤田 義光君       松田 鐵藏君    森田重次郎君       亘  四郎君    卜部 政巳君       栗林 三郎君    栗原 俊夫君       兒玉 末男君    高田 富之君       千葉 七郎君    松井  誠君       松浦 定義君    森  義視君       湯山  勇君    中村 時雄君       林  百郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         農林政務次官  仮谷 忠男君         農林事務官         (大臣官房長) 大口 駿一君         農林事務官         (蚕糸局長)  丸山 文雄君  委員外出席者         参  考  人         (日本製糸協会         会長)     安田 義一君         参  考  人         (中央蚕糸協会         会長         蚕糸業振興審         議会会長)   山添 利作君         参  考  人         (全国養蚕農業         協同組合連合         会会長)    横田  武君        専  門  員 松任谷健太郎君     ————————————— 十二月二十三日  委員千葉七郎君及び山田長司辞任につき、そ  の補欠として栗原俊夫君及び高田富之君が議長  の指名委員に選任された。 同日  高田富之君及び栗原俊夫辞任につき、その補  欠として山田長司君及び千葉七郎君が議長の指  名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案内閣  提出第一一号)  日本蚕糸事業団法案内閣  提出第一二号)      ————◇—————
  2. 濱地文平

    濱地委員長 これより会議を開きます。  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案及び日本蚕糸事業団法案の両案を一括議題とし、質疑を行ないます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。栗原俊夫君。
  3. 栗原俊夫

    栗原委員 予算委員会等もあってなかなかたいへんなところを特に差し繰って出席してくれた大蔵大臣熱意感謝をいたします。  御承知のとおり、いま当委員会では蚕糸事業団法案審議されておるわけですが、もともと繭糸価格安定法があって、毎年糸値の安定がはかられてきたわけですが、その上値下値値幅がかって四万円であったものが、九万円という値幅になった。安定をしなければならぬのに、安定する値幅がかえって広がった。こういう中で、いま蚕糸関係しておる養蚕農民団体、さらに製糸関係団体等がそれぞれ相談をいたしまして、本来ならば繭糸価格安定法上値下値の幅をもっと狭めてもらう、こういうことを要望している中で、いろいろな事情の中から、中間安定帯をつくる蚕繭事業団をつくろう、こういう要望もいれられてこの法案になって出てきているわけであります。その機能については、まだまだこれで万全というわけにはいきません。いきませんけれども、とにかくこれをつくって民間も全面的に協力をした中で、自分たちの生きる道である繭糸価格の安定をはかろう、こういうことでありますが、その資本構成について特に大蔵大臣お願いをし、決意の表明をいただきたいわけでございます。  法案によれば、あの三十三年直後にできた日本蚕繭事業団出資金十億円、さらに製糸団体から五億円、農民団体から五億円、それに保管会社三千万円、合わせて二十億三千万円で出発しよう、こういうのであります。そこで問題は、それでもいいではないかという議論もあります。幾らあったら絶対間違いないという限界はおそらくないと思います。しかし、少ないより多いほうがいいということは当然なので、これもよかろうという議論もある中で、問題は、養蚕農民もなかなか楽でない経済状態の中から五億円金を出そう、製糸団体のほうでも五億出そう、こういう形で二十億三千万円がここででき上がるわけですが、そこで、繭糸価格の安定のために政府のほうでももう一つ、単に法律をつくっていままであった蚕繭事業団資本をそのまま横すべりをさせるだけでなくて、農民製糸団体も自己のふところから五億円ずつ合わせて十億出すのだから、この際政府のほうの側もいままで出しておるほかに十億出してほしい、またわれわれは出すべきだ、こう考えておるわけです。そしてこれはお忘れには万々なりますまいと思うのは、現在きんちゃくを握る大蔵大臣福田さんが当時蚕糸事業団をつくったときの農林大臣であり、とりあえず十億円を出して安定をはかろう、しかし必要によってはまだまだ十億くらいは出してもいいのだ、こういうようなこともあり、したがって、そういう中で、養蚕団体人たちもなかなか楽でない、そうしてどうも蚕糸の安定というものはできないというので、当時まだ十億くらいは出してもいいと、農民のことをよく知って述べてくれた福田さんが、いまきんちゃくを握る大蔵大臣になっておられるし、大蔵大臣も間違いなくそれは熱意を示して十億くらい出してくれるんだから、苦しい農民もひとつ五億くらいのものは協力してくれ、こういう姿の中ででき上がってきたこの蚕糸事業団法案でありますので、一度にとは言いませんけれども農民蚕糸事業団出資が終わる段階までに、ぜひ政府のほうの出資もあと十億を追加して、順次農民製糸団体の金のできる時点においては、国のほうからは二十億になるんだ、農民製糸は合わせて十億出すんだ、こういう形に持っていって、そうして中間安定帯を守る、蚕糸事業団は力がある、これは破産はしないんだ、これで守り切るのだという力をつけてやる。そのことが、せっかくできる蚕糸事業団繭糸価格安定法発動をまたないような事態を守り切る道だ、こう思いますので、ぜひ色よい御返事をこの際お伺いしたい、このように思います。ひとつ特に日本一の蚕糸県である群馬の出身である大蔵大臣でもあり、農林大臣として当時の発言もあることでありますので、この際、養蚕農民を安心させる発言を心から期待して、お願いを申し上げる次第であります。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 今回蚕糸事業団が一本化の形で進められておるに際しまして、皆さんから非常な御協力をいただいておることについて御礼を申し上げます。これがうまくいくかいかないか、これは養蚕農民に重大な関連のある問題だと思います。ただ、ただいまお話のありました資本金の問題でありますが、これは資本金ばかりの問題でなく、融資能力ということも大きな問題であろうと思います。私も蚕繭糸価格の安定というものにつきましては重大な関心を持っておることは、ただいま栗原委員からお話のとおりでございますが、とにかくこれがうまくいかなければもう困る、この段階とすると、大きな切り札としての蚕糸事業団だと思います。したがいまして、今後の推移に応じまして、必要がありますれば政府におきましてもただいまお話のような措置をとるということを申し上げて、お答えにさせていただきたいと思います。
  5. 栗原俊夫

    栗原委員 積極的なことばではありますが、農民も、国がここまでさらに熱意を示すのだから、とにかく金を持ち出してやろう。本来的に言えば、私たちは、繭糸価格安定法をもっと幅を縮めて、言うなれば、今度できる蚕糸事業団中間安定帯を即繭糸価格安定法安定帯にしたい、こう実は腹の中では思っておるのです。しかし、いろいろな事情もこれあり、こういう中間安定帯というものをとにかくつくらなければならぬ事情にあるということでつくる以上は、どうしてもこれをつくって成功させなければならぬ。そこにはやはり農民からもこれから金を取り立てる仕事もあるわけですから、それならばおれたちも出すと、こういうはずみをつけるには、必要があればということでなくて、財政とにらみ合わせて、農民の出し切るまでには政府のほうでもひとつよしここまではめんどうを見よう、この程度までぜひひとつ踏み切っていただきたい、こう思うのですが……。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま栗原委員から急に言われて、私はこうするのだとここで大みえを切れば、はっきりしたお答えになると思うのでありますが、何ぶんとっさお話でございますので、栗原委員のおっしゃることにつきましては、とくとそれを腹に置きまして検討いたしたい、かように考えております。
  7. 栗原俊夫

    栗原委員 ただいまの答弁は、私たちの考えておることを積極的に推し進めてくれる、こう理解して、質問を終わりたいと思います。
  8. 濱地文平

    濱地委員長 十時三十分に再開することといたしまして、この際、暫時休憩いたします。    午前十時二分休憩      ————◇—————    午前十時三十五分開議
  9. 倉成正

    倉成委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  繭糸価格安定法の一部を改正する法律案及び日本蚕糸事業団法案の両案を一括議題とし、参考人から意見を聴取することにいたします。  本日御出席参考人を御紹介申し上げます。日本製糸協会会長安田義一君、中央蚕糸協会会長山添利作君、全国養蚕農業協同組合連合会会長横田武君、以上の方々でございます。  参考人各位には、御多用中にもかかわらず当委員会に御出席くださいまして、まことにありがとうございます。それぞれ率直な御意見をお聞かせいただきたいと存じます。  なお、はなはだかってではございますが、時間等の都合もございますので、御意見開陳の時間は、お一人おおむね十五分程度お願いいたしたいと存じます。  議事の順序は、まず参考人各位から御意見をお述べいただいた後、委員各位から参考人の御意見に対し質疑をしていただくことにいたします。  それでは安田参考人から御意見をお述べいただきたいと存じます。
  10. 安田義一

    安田参考人 それでは御指名に従いまして、私から最初に意見を若干申し上げたいと存じます。  ただいま御審議をいただいておりまするこの法案目的といたしますところは、糸価の安定ということと、それから農家養蚕経営の安定ということに目的がある、かように私は理解をいたしております。  特に私どもが最近わが国養蚕業状況を見ておりますと、いろいろと増産の施策をしておりますのにかかわらず、なかなか繭がふえない。むしろ減産の傾向があるわけでございます。これは申すまでもなく、わが国産業構造変化、簡単に申しますならば、工業国にだんだん変わってきている、かように考えるのでございます。生糸先進国でありまするフランスでありますとかイタリアも、ちょうどだだいまの日本と同じような傾向をたどりまして、現在では輸入国になっておりますことは、皆さま御存じのとおりでございます。  もっと具体的に申しますならば、農村農業人口の減少、それに伴います農家の労賃の高騰というようなものが、蚕糸業の発展をはばんでいる、かように私は考えるのでございます。ことに最近は、農家も非常に経営につきましては、進歩というとたいへん失礼でございますが、計画的になっておりますので、繭をつくりまして、これが幾らで売れるかということがはっきりしない、できたときの相場で売買されるのだということでは、私は、昨今の進歩した農村ではなかなか養蚕業に力を入れないのではないか、かように考えております。  この法律提案をしていただきまする背景といたしましては、製糸業養蚕業というものが緊密に手を握ったのでございます。  わが国のこの業界歴史を考えますると、製糸養蚕というものは常に対立をいたしまして、繭の買い手と売り手、ただいまでも立場は同じでございますが、製糸のほうはなるべく繭を安く買いたい、農家のほうはなるべく繭を高く売りたい、これが過去の歴史でございます。しかしながら、ただいま冒頭に申し上げましたようなわが国養蚕業状況から考えますと、かような対立をいたしておりましたのでは、繭はふえない。繭がふえなければ、わが国蚕糸業はだんだん衰退をしていく、かように私ども製糸業者も気がついたわけでございます。これは互いに手をとり合って、何とか繭をふやさなければならぬ、かような意味におきまして、私どもはかねてから製糸養蚕懇談会というものを持ちまして、緊密な連絡をとっております。また、私いささか個人の意見になりまするが、私は、農家が繭を掃き立てまする前に、ことしの繭は幾らくらいで買ってあげますよ、こういうことを約束しなければ、なかなか養蚕をやる人がふえないだろう、かように考えております。私どもはこれを事前協定、こういう名前を使っておりますが、遺憾ながら、私がずいぶん口をすっぱくして言うのでございますが、まだまだ製糸業者はそこまでは至っておらぬ。と申しますることは、事前協定をいたしまして、実際に繭が出てくるまでの間にかなりの期間がかかりますので、どうしてもそれはリスクが大きい、こういうことでございます。しかし、今度ここでお取り上げを願っておりまするのは、もう少し繭の出回る近くになってひとつ繭の価格を保証しょう、これは農林大臣がお定めになります基準糸価、そういうものでひとつ製糸業者もその価格を保証しよう、こういうことに踏み切ったのでございます。これは従来の製糸業から申しますと、清水の舞台から飛びおりた、こういうことだと思います。しかしながら、こういうことによって、まず繭というものの価格をこの程度まではお買いいたしますということをお約束して、そうして繭を増産しなければならない、これが現在の状況でございます。   〔倉成委員長代理退席委員長着席〕  いろいろすでに関係の御当局からこの内容につきましては御説明があったことと存じますが、これの骨子といたしまする日本蚕繭事業団、それは大体繭糸価格安定法の定めておりまする最低糸価の一割高がこの蚕繭事業団発動の時期でございます。ただいま御審議をいただいておりまするこの蚕糸事業団といたしましては、それよりもうちょっと上のところでひとつ基準価格というものを設けて、そうしてそれを製糸のほうは農家に約束をしよう、保証をしよう、こういうことでございます。私がこの法律を御可決いただくことを熱望をいたしておりますのは、かようにいたしまして、どうかわが国蚕糸業養蚕業というものを振興いたしてまいりたい、かように考えております。過去におきましては生糸わが国輸出の大宗ということで、いろいろな国家的保護を受けておったわけでございますが、時勢の移り変わり、わが国輸出貿易の品目の中の変化によりまして、その占めておりますシェアはたいへん小さくなっております。しかしながら、なおかつ相当の外貨を獲得いたしてきております。さような意味で、私はこの法律繭価を保証することによって増産を進めたい、そういう意味で賛成でございます。  同時に、もう一つ目的でございまする繭糸価格の安定の問題でございます。これはただいま繭糸価格安定法並びに糸価特別会計によりまして、最高最低の——具体的にただいまきまっておりまする金額で申しますれば、キロ四千円と五千五百円の間でこれを安定させよう、いわゆる異常な暴騰暴落をこの法律で安定をさせよう、しかしながら、常にこれは内外の業者から指摘をされておるのでございますが、その幅が大き過ぎるじゃないか、こういうことでございます。そこで、できますことならばもっとその間で、小幅の中で安定するような方策がないものであろうか。もちろん、非常に大きな変動というものは、この最後の防波堤でありまする安定法によってぜひとも守っていただかなければならぬ。しかし、実際に生糸を扱います者、売る者から、これをつくって織物にする者、また織物を売る者、かような段階の者といたしましては、もうちょっと小幅でこれを安定させてもらいたい、そういう希望はもう業界の悲願でございます。そういうような意味におきまして、この法律は、ただいま申し上げました基準糸価というものをいうなれば最低にいたしまして、五千五百円以下のところで、それがそのとき妥当であるということならばひとつ安定をさせよう、そういうことを目的にしておるように思いますので、これまた言うまでもなく、私ども製糸業者としてぜひとも達成をいたしたい、かように希望をいたしておる次第でございます。  また、繭糸価格安定法というもので私どもはこの業界に生きてまいりましたが、ときどきこうしてもらいたいなと思うときがあるのでございます。それは、輸出のためにもまた国内の需要をまかなうためにも、五千五百円でなければ、いまの繭糸価格安定法によりますと、政府が糸を持っております場合これを売ることができないのでございます。しかしながら、業界事情、特に輸出振興というようなときには、五千五百円以下でもぜひ政府に売ってもらいたい、売ることが適切である、かように判断をされますことがしばしばございます。そういうときに、やはりこの法律改正をいたしまして、適時適切に政府の糸が売れるようにしていただけるならばたいへん好都合だ、かように常日ごろ考えております。今回政府当局におかれましても、私ども希望をおくみ取りくださいまして、関連法案として繭糸価格安定法の一部改正を御提案を願っておるのでございまするが、これまた私どもとしてはぜひひとつ達成をしたい、かように考えておる案件でございます。  たいへん簡単で大まかではございますが、私ども熱望を申し上げまして、また何か御質問がありましたら、後ほど知る限りのことはお答えいたしたいと存じます。(拍手
  11. 濱地文平

    濱地委員長 次に山添参考人お願いいたします。
  12. 山添利作

    山添参考人 この法案につきましては、前々臨時国会以来いろいろ問題のあります中に、当委員会におかれまして熱心に審議をしていただいておりますことにつきましては、私ども関係を持ちます者といたしまして、深く感謝をいたしておるのでございます。御承知のごとく、この法案は、全蚕糸業関係者があげてすみやかなる実現を鶴首しておるところでございまして、何とぞよろしくお願いをいたしたいと思います。  考えまするのに、蚕糸業歴史を通じまして、絶えず価格の安定ということが中心議題でございます。戦後昭和二十八年でございますか、繭糸価格安定法が制定されまして、これは戦前制度から比べますと、戦前における安定法のごときものに比べますと、画期的な進歩をした法律でございまして、これは制定以来四、五年の間は最低価格十九万円ということでうまく働いておったのでございまするけれども、三十二、三年の例の恐慌がございまして、それ以来、どうもこの安定法運用ということにつきましては、必ずしもうまくいっていない。何かもっと強化をする方法はないかというのが、これは業界意見でございました。もちろん、政府としては、政府のお立場があることでございましょう。しかし、その間、あつものにこりてなますを吹くというような運用上のきらいがなかったわけではございません。そういうことで、だんだん最近におきましては安定法運用も改善を見つつあるのでございますけれども、しかしながら、何と申しましても、政府のおやりになります事柄につきましては、おのずからそこに限界があるわけでありまして、またこれは異常なる暴騰暴落を阻止するという法律趣旨から申しますれば、そういうところに限界があることもやむを得ないのでございます。しかしながら、実際の繭糸価格の安定ということから申しますと、もちろん、これだけでは業界といたしましても不満足でございますし、また業者経営安定、需要の増進、輸出振興という点から申しましても、やはり価格の安定ということは、さらにさらにこれを強化する必要があるとかねがね考えておるのでございます。しかるところ、昨年来養蚕業並びに製糸業の間で、ただいま安田参考人からもお述べになりましたが、幸いにして大局的には意見が一致するけれども、さてこまかい繭の売買ということになりますと、とかく意見といいますか、立場が違いますが、養蚕製糸の間におきましてある一つの共通の、養蚕家のためにもなり、また製糸家も利益するところの方式が編み出されまして、そのことを中心として、この蚕糸事業団というような構想をもちまして一つ制度が考案せられたのでございます。これを蚕糸業振興審議会におきまして審議を尽くして、政府に答申したことも御承知のとおりでございますが、そのことを骨子といたしまして、ここに政府から御提案になったのであります。私どもはこの事柄を非常に歓迎をいたし、すみやかなる実現希望いたしておるのでございます。  この法案実現いたしますれば、繭糸価格の安定ということにつきましては画期的な強化ができると思います。安定法における最高最低値幅の中において、時の生糸あるいは繭の需給状況を勘案し、また政府のきめられます一定の基準繭糸価格というものも参酌しつつ、実情に即した相当強い安定価値というものが実現し、よほど効果的に働けるもの、かように考えておるのでございます。  なお、そういう期待を持っておりますが、これは政府のすべて監督下に置かれているのでございます。できました暁におきまして、政府におかれましては、その政府認可等監督におきましては、十分この法案趣旨に即して弾力的に考えていただきたい、こういう希望も持っております。そういう御理解がございますれば、これは養蚕並びに製糸業者方たち運営審議会というような形におきまして協力をいたしまして、適切な実効ある安定の効果期待し得るのではなかろうか、かように考えておるのでございます。  かくいたしまして、現在御承知のとおりの一番問題であります繭の増産、したがってまた、それを基礎とするところの輸出の回復と申しますか、振興と申しますか、その辺のことにつきましても、相当効果期待し得るものと私は考えております。  そういうことでございまして、われわれは、この法案によるところの繭糸価格の安定の強化ということにつきましては、非常な期待を持っておるところでございますから、このことが一日もすみやかに実現されることを希望いたしておる次第でございます。  なお、この法案が実施されました場合の実際の動きといたしましては、やはり何と申しましても、これは当面下値の安定ということに効果を発揮するわけでございます。上値ということになりますと、これは現在の需給状況から見ますと、どうしても繭の増産に待たなければ安定効果を得がたいような事情にあると考えます。輸出ということも、また繭の増産基礎を置かなければならぬ。しかしながら、それができるまで輸出をほうっておく、こういうことはまた許されないことでありますから、輸出の確保、振興ということにつきましては、これは政府の御協力を得まして、われわれ業界におきまして目下鋭意その具体的な案を練っておるところでございます。これにつきましても、おのずから財源の制約その他のことがございまして、必ずしも十分なことはできないかもしれませんが、何らかの有効適切なる方策を立てまして、この法案によるところの繭価安定の制度とあわせて実施をいたしていきたい、こういうつもりでおります。このことを一言申し上げておきたいと思います。(拍手
  13. 濱地文平

    濱地委員長 次に椎田参考人お願いいたします。
  14. 横田武

    横田参考人 安田参考人山添参考人と重複する点等もあると思うのでございますが、私は、全養連、つまり養蚕農民の意思を代表いたしまして、しばらくの間時間をいただきたいと思うわけでございます。なお、前々国会におきまして非常な熱意を持たれて本案の御審議に当たられまして、また本日は早朝からこの法案の成立に御努力を願っております各先生方に、深く私は敬意を表する次第でございます。  この蚕糸事業団法のそもそもの始まりといたしましては、昭和三十三年の大暴落、なお昭和三十八年の大暴騰、この二つの暴落暴騰を契機といたしまして、日本蚕糸業輸出産業から転落しつつある状況に到達いたしたわけでございます。したがって、私ども養蚕団体といたしましては、この暴騰暴落を防いである程度輸出を確保するとともに、養蚕農家が安心して繭の生産のできるような方途を講じてもらいたいという熱意に燃えておったわけでございます。したがいまして、数年来、この問題につきましては、中間安定構想として十分検討をしてまいってきたわけでございます。幸いにいたしまして、先般の蚕糸業振興審議会にこの問題を諮問いたされまして、私どもは数次にわたる内容の検討等を加えまして、政府に答申を申し上げましたところ、幸い今回事業団法が上程になったわけでございまして、私どもは双手をあげて、この法案を一日も早く通過をしていただきたいことをお願い申し上げておるわけでございます。  なお、蚕糸事業の全般的の安定と申しますのは、つまり、私も農家のせがれでございまして、ことしの繭は幾らになるであろう、来年の蚕糸業はどうなるであろう、こういうのが一般農民の心理でございます。幸いにいたしまして、この法案が通過し、さらに中間安定構想の中に来年度の繭の大体の支持価格が想像でき得るようになりますならば、私ども農民は安心して生産ができ得るという信念を持っておるわけでございます。  なお、輸出等の問題につきましても、昭和三十八年度を契機といたしまして、急激に減退をいたしておるわけでございますが、この法案の通過を見ますならば、ある程度日本生糸価格が安定し、また年産も安定いたしますならば、この失地の回復が可能であると私どもは信じておるわけでございます。どうかひとつ、今回提案いたされておりまする蚕糸事業団法案につきましては、私どもは一日も早く成立を期して、来年度の繭の生産安定に役立たしていただきたいということを懇願申し上げておる次第でございます。  なお、繭糸価格安定法の一部改正の問題につきましても、いままでは禁止価格、つまり三十五万円をこえなければいわゆる放出できなかった問題でございますが、この法案改正によりまして、それ以下でも放出でき得るような方途が講じられるように聞いておるわけでございます。したがって、この法案が通過いたしますならば、いつでも政府が手持ちの生糸輸出なりあるいは国内向けなり放出できまして、価格の安定ができ得るように私は想像いたしております。したがって、この両法案につきましては、養蚕団体といたしましては、少なくとも年内成立を御期待申し上げておる次第でございます。  なお、出資の問題につきましては、全養蚕農家からキロ当たり三円当て拠出をいたしております。すでに第一年度分の二億五千万円はそれぞれの府県に拠出済みでございます。したがって、この法案の通過と同時に、この二億五千万円は直ちに事業団に出資でき得るような措置を講じて待っておる次第でございます。なお二年間に製糸団体が五億円、このように民間がそれぞれ金を出し合いまして、この法案の通過を要望しておるわけでございますが、先ほど大蔵大臣の御答弁の中にも承っておりますけれども、将来政府出資と私どもの拠出による二十億円ではどうにもならないような場面が到来した場合につきましては、どうかひとつ先生方におかれまして、さらにこれに十億円くらい出していただけるような方便を講じておいていただきたいことを重ねてお願い申し上げる次第でございます。  私の申し上げることは両参考人からすでに申し上げておりますので、一日も早くこの法案の通過を御要望申し上げまして、私の意見にかえる次第でございます。(拍手
  15. 濱地文平

    濱地委員長 これにて参考人の御意見の開陳は一応終わりました。     —————————————
  16. 濱地文平

    濱地委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。田邉道國男君。
  17. 田邉國男

    ○田邉委員 参考人お話を伺いまして、一、二の点だけお伺いしたいと思います。  まず第一に、安田日本製糸協会会長にお伺いしたいのでございますが、実はただいま、この蚕糸事業団の成立については、製糸協会と養蚕団体との間に利害の点で非常な苦慮をなさって、しかも最終的には、清水の舞台から飛びおりるような心境で大同団結をして、この蚕糸事業団の成立を期するために業界は努力なさったというお話を伺って、私ども非常に敬服するわけでございます。私は、前通常国会の際にこの蚕糸事業団の成立に努力をしておったわけでございますが、その過程におきまして、私ども聞いておりますことは、製糸業界の中にやはりまだ完全なる足並みのそろっておらない方たちがおありになるのではないか。と申しますのは、正確には私期日を記憶いたしておりませんが、今春中共から製糸のある業者の人が生糸を輸入した。それがちまたに伝わりまして、非常な不安動揺を来たした。その際、私どもの伝え聞くところによりますと、会長のおひざ元の長野県にそういう不心得の製糸家がおいでになる。しかも日本輸出がやや停滞し、過剰ぎみになっておる際にもかかわらず、中共生糸を輸入する製糸家があるということにつきまして、私ども非常に驚いた次第でございます。こういう蚕糸事業団がいよいよ成立せんとするときに、あなたの業界においてはやはりまだそういう業者がおいでになるということにつきまして、今後決然たる決意をもって不心得の業者を押えることができるのか、またまだ真にこの蚕糸事業団に対する理解を十分しておらないのじゃないか、こういう点を非常に危惧しておるわけでございます。その点につきまして、私ども安田会長に伺えば、その間の事情と今後の対策につきまして、何らかのお考えがあるのではないかと考えまして、ひとつお伺いをしたい、かように考えております。
  18. 安田義一

    安田参考人 お答えいたします。  中国の生糸製糸業者が輸入したというお話でございますが、私はそういう事実を実は聞知いたしておりません。もしもっと明白に名前をあげておっしゃっていただけば、私も何か思い当たることがあれば申し上げます。中国の生糸が入ってまいりましたということは、これはいろいろのとり方があろうと思います。昨今大体月五百俵くらいの中国の糸が入っておるようでございます。通年ではこの生糸年度には六千俵くらいに達するのではなかろうかと、かように考えております。もっとも、入ってまいります糸は非常に粗悪な糸でございまして、国内におきまする太い繊度を要求いたします西陣の帯でありますとか、きわめて質のよくないと申しますか、下級の織物に使われておるようでございます。私が知っておりますのは、神戸の輸入商が中国の生糸をまず最初に輸入したように聞いております。あるいはそれが皆さんのと申しますか、田邉先生の誤解の種になったのではないかと思いますが、この業者製糸業と貿易業を兼営をいたしております。そういうことで、その貿易部のほうで中国の糸の引き合いがあったので入れたのだというふうに私は聞いております。ここではひとり生糸だけでなくて、中国産の副蚕糸、きびそでございますとか、さようなものを入れておるようでございます。また北鮮のきびそを長野県の繭糸業者が入れておるということも、私はちょっと聞いております。これは昨今御存じのように、こういうものの基本的な問題はあとで申し上げますが、きびそ等も繭の減産によりまして供給不足の形になっておりますので、そういう事例が一、二ありまして、あるいはそれが長野県の業者というふうな誤解を生んだのではなかろうかと思います。しかし、単純な製糸業者が中国の糸を入れるというようなことは、私はちょっと考えられないと思うのです。少なくとも日本製糸業者が好んで中国の糸を入れる、こういうようなことはあり得ないと思いますし、またかりにございましても、これがこの事業団の成立ということに反対だから入れた、私は、そういうふうに考えることは論理の飛躍が少しあるのじゃないか、かように考えるわけです。  それから、いわゆる十人十色と申します。私どもの団体にすら、業者といたしましては百三十余の員数を数えております。日本製糸協会のいわばらち外にございまする、いわゆる国用製糸業者、あるいは玉糸製糸業者、また同じような器械製糸に似たものでありますが、一応別団体になっておりまする組合製糸、いわゆる日糸連と呼んでおりますもの、さような団体もございます。こまかいことにつきましては、これはいずれもそれぞれのお立場なり、経営の規模なり、イデオロギー等によりまして、違うのはやむを得ない。これは製糸協会で完全に一致しろと言われてもできない相談だ、かように私は思うわけでございます。  本題に戻りますが、先ほど来、私がくどくどと申し上げておりますように、いま私ども業界では、何としても繭を増産しなければならない。しかも、できるならばもっと合理化をして、より原価の低い繭を供給することによって中国等の製糸と競争をいたしていきたい、かように考えております。さような意味におきまして、私自身が実は驚くほど、本案の成立に対して業者熱望をいたしておりまして、したがいまして、そういう御懸念はないものと私も確信をいたし、かつまた、ここにお約束をいたしてもよい、かように思うわけでございます。まあ多少なりと何か意見を異にするものが絶無だと、さように申すのは言い過ぎかもしれませんが、私どもの統制の及ぶ範囲の業者につきましては、全員一致成立を希望いたしておりますことを、私はここに確信してお答えができる。どうぞ御安心をいただきたいと思います。
  19. 田邉國男

    ○田邉委員 安田会長さんのお話を伺いますと、私ども非常に懸念をしておった点は絶対に心配ないと、確信を持って言明をなさっておられるわけで、私はまことにけっこうだと思いますが、ただ、私ども製糸業界の問題を見ておりまして、ただいま会長からのお話を伺いますと、われわれの業界には決してさようなものはないのだ、しかし、製糸の中に製糸と貿易商とをやっておるものがおる、その二枚鑑札によってそれはあくまでも貿易でやっておられることであって、われわれ製糸の関知するところではない、こういうように私は理解するわけでございますが、ただ私ども心配をいたしておりますことは、片方で製糸をおやりになっており、片方で貿易商をやっておる。一身同体でございますから、製糸養蚕のいわゆる業界の内容というものをつぶさに検討しておられるはずだと思います。この本人が二枚鑑札を持って、あれは貿易関係で輸入したので、製糸とは何ら関知しない、こう申しましても、われわれ第三者が聞きましたら、これはやはり内部事情によく精通をしておって、そして安い生糸を入れるために、そして国内の生糸を下げるために、繭の価格を下げるために入れる一つの措置である、こういうように私どもは推測せざるを得ない。そういう点につきまして、それは製糸協会の会員であるか、あるいはそれは国用製糸の会員であるか、その点が私は十分理解に苦しむわけなんですが、いまの会長の言をもってすれば、輸出生糸、いわゆる製糸協会の会員ではないというように私は聞き取りました。しかし、私ども政治に携わるものとしては、やはり国内の生産者のことも十分考えなければならない。それが競争国である中共から大量の生糸を入れる可能性がある、こういうことになりますと、日本養蚕業に対して重大な影響を来たし、これがひいてはこの蚕糸事業団の成立にも非常に影響を来たすということで、実は今日まで苦慮しておった問題でございます。日本製糸協会の会員でなければ幸いでございます。私ども国会においてそういう点を非常に重視し、非常な関心を持っておるということだけは、ひとつ製糸協会におかれても十分会員の皆さんにお話しをしていただきたい、かように考えます。  ただいま会長から日本生糸の質の問題につきましてお話がございましたが、私、全養連会長横田さんに伺いたいのでございますが、中共の生糸日本生糸は非常に質的に大きな変化を来たしておる、だから国内の需要の中でも、日本生糸は非常にいいものができるために、国内で織物として使う場合に、どうしても日本生糸ではその需要に当てはまらないのだ、だから中共の糸を使うのだ、そのために輸入が相当の数が出てくるのだ、こういうお話でございますが、一体、現在養蚕団体はいい糸ばかりおつくりになって、そして実際に国内での使用に向かない、要するに織物関係人たちの嗜好というものを十分意識し、認識して繭をおつくりになるということを指導されておらないのか、その点、いま製糸協会の会長さんのお話を伺っておりますと、これは大事なことでございまして、養蚕団体会長である横田会長はどういうような技術指導をなさっておられるのか、その点をお伺いしたいと思います。
  20. 安田義一

    安田参考人 ちょっと田邉先生誤解があるようですから、私から……。  私が申し上げましたのは、中国から入った糸はごく粗悪な糸が入っておる、そういうことを申し上げたのでございます。中国の糸自体がみんな粗悪だ、そういうことを申し上げたのじゃないのでございます。ただいまもそうでございますが、たまたま日本に輸入されます糸は、欧州にも輸出できないようなすそものが入っておる、そういうことを申し上げたわけでございます。
  21. 横田武

    横田参考人 ただいまの田邉先生の御発言の中に、非常に重要な問題が含まれておると思います。ちょうど中共生糸の輸入という時期が、ことしの春繭の出盛りにそういう情報が実は私どもに入ったわけでございます。長い間かかりまして、蚕糸業界、製糸養蚕蚕糸織物関係等がそれぞれ話し合いをいたしまして、今日の事業団法の答申を実は申し上げてまいってきたことは事実でございます。そういうさなかにおいて、そういう情報が流れたことにつきまして、実は私はひそかに憤慨をいたしたわけでございますが、その内容を調査いたしてみますと、なかなか微妙な問題がありまして、全養連の役員会等におきまして、何か阻止運動はないかというふうないろいろな発言がありましたけれども、私どもの調査の範囲内におきましては、ただいま安田会長の言われましたような、ごく少数ではありますが、粗悪の生糸——私どもその生糸の現物を見まして、日本蚕糸業の中で、しかも春繭の出回る時期にこういうことをされたことについては、私は名前を調査して公開するという発言をいたしたわけでございますが、調査の結果、それも必要のないような感じがいたしましたが、将来とも、この問題につきましては、日本製糸協会の会員でなくても、こういう不心得の者に対しましては、私は、農林省なりあるいは製糸協会の内部におきましても、この問題につきましては十分注意を払うと同時に、日本蚕糸業の将来に暗影を投げるような不心得の者の出ないように、養蚕団体として、こういう問題については自主的に注意をいたしてまいりたい。  なおまた、繭の増産の問題につきましても、事業団法が通過いたしますと、非常に値幅が縮まりまして、繭価が安定いたしますので、繭増産はできるわけでございますが、ただいま御質問のような事柄が繰り返されるならば、日本蚕糸業の将来にとりまして事態が非常にむずかしくなるのではないかと思いますので、私ども養蚕団体といたしましては、この法案の御通過を願うと同町に、この問題につきましては細心の注意を払い、日本養蚕農家立場を守ってまいりたいと存じております。  なお、省力養蚕につきまして、ただいまでは若い人たちの労働力が外へ流れまして、手間が非常に少ないわけでございまして、屋外条桑育なり、粗悪な飼育方法になっておりますけれども、技術の進歩なり、当局の指導よろしきを得まして、養蚕でき得るような態勢が整いつつありますので、将来、韓国なり中共の蚕糸業に対しましても、価格の問題は別といたしまして、私どもは技術なり経営改善によって対抗でき得るというふうな措置を将来とも講じてまいりたい、かように存じております。
  22. 田邉國男

    ○田邉委員 安田会長に重ねてお願いをいたしますが、ただいま横田会長からも非常に重大な関心を持っておられるし、私もきょうこの不心得の業者につきまして、名前をあえて伺おうとは思っておりません。しかし、結論は、日本製糸協会の会員の一人になるわけでございますから、この点やはり輸入の時期、数量等については、製糸養蚕団体が足並みをそろえて、日本の重要な産業であります養蚕業につきまして、十分の配慮をしていただきたい。そうしませんと、せっかくこの蚕糸事業団というものをつくりましても、結果において中共の輸入生糸の問題で混乱を来たすことは、またこの蚕糸事業団の運営の上に大きな支障を来たすわけでございますから、十分配慮をしていただきたいことをお願い申し上げます。  なお、横田全養連会長に伺いますが、この蚕糸事業団への出資でございますが、先ほど事業団に対する出資の手順をすでにとっておられる。その金額につきましては、二億五千万円でございますか……。
  23. 横田武

    横田参考人 三年間に五億円出す……。
  24. 田邉國男

    ○田邉委員 三年間に五億円の出資が可能であるのかどうか。もちろん私ども達成をしていただきたい、しかもこの五億というものは、さらにふやす必要があるのではないか。と申しますのは、まだまだこの額では蚕糸事業団の強力な運営は非常にむずかしい。さらにひとつ製糸養蚕団体出資を引き続いて御願いしたい。その場合、さらに次年度の三ヵ年計画というものは、やはり五億の金が出る見通しがおありになるか、その点を伺っておきたいと思います。
  25. 横田武

    横田参考人 ただいま出資金の問題につきまして、五億円を二億五千万円、二ヵ年と申し上げたわけでございますが、実は全養連の案といたしましては、二十億円では少な過ぎる、少なくとも政府から二十億円出していただき、われわれ養蚕団体も十億円出そう、こういうのが団体の原案でありましたが、蚕糸業振興審議会におきまして、養蚕団体が五億円、製糸が五億円ということに話し合いがまとまったわけでございます。すでに各府県の養蚕農家は、実は十億円まで出さなければ、いまのような資本金では思うようにならないではないかというふうな意見が、養蚕団体のおもなる府県においてあるわけでございます。ただ私どもは、少なくとも来年の春繭からこの事業団が発足して、養蚕農家のためになっていただくには、不十分ではあっても一日も早く成立をしていただいて、その後においてさらに五億円増資をしたらどうか、かような意見等もありまして、やむなく五億円にいたしたわけでございます。養蚕農家も将来さらに五億円出すという——実は現在でも出し得る可能性があるわけでございますが、お互いに友好団体、つまり日本製糸協会等もありますので、それぞれ相談をいたしながら、将来さらに両団体が五億円ずつ出し合うような気がまえでもって、実はこの法案の御進行方を願っておる次第でございます。ただ、キロ当たり三円と申しますと、十円八十銭になりますか、十円以上になるわけでございまして、そういう五十七万の養蚕農家が、十二万トンの繭を生産する中から、みずからそれぞれがキロ当たり三円を出し合ってやろうというこの気概だけを先生方におくみ取り願いまして、さらに不足の場合には出そう、こういう決意でございますが、ただ私どもは、昭和三十三年にただいま大蔵大臣福田先生が当時農林大臣で言明されましたが、田邊先生の御質問の議事録も全養連は実は持っておるわけでございます。したがって、あの十億円では私どもは不満でございますが、さらに事態の内容によりましては政府もこれにさらに十億円を出していただき、われわれ業界も十億円出し合いまして、円満な運営、つまり、日本蚕糸業が完全にこの事業団に寄りかかって繭の増産ができるようにいたしたい、かような内容を含んでおるわけでございます。
  26. 濱地文平

  27. 栗原俊夫

    栗原委員 参考人の各位に二、三お尋ねをしたいと思いますが、まず最初の点は、養蚕を安定して経営するにも、また製糸を安定して経営するにも、とりわけ生糸輸出を増大するためにも、繭糸価格の安定が必要である。これを守ってきたわが国制度繭糸価格安定法にあったわけですが、かつての上限、下限の値幅四万円が、今日では九万円に広がっておる。これでは安定するという上限、下限としては、まことに幅が広過ぎてたよりない。本来ならば、この上限、下限というものがもっと値幅を縮めて、直接国がやってくれれば一番いいのだろうと思うけれども、なかなかそういう気配も見えないところから、養蚕団体製糸団体その他から、それではおれたち協力するから、中間安定帯をつくろうというのが、この蚕糸事業団法の出発点であり、構想であろうと思うのです。  そこでお聞きするのは、かりに繭糸価格安定法の上限、下限を縮める、かつてのような四万円幅に縮める、そういう事態になっても、なおかつ、その中で繭糸価格安定法の中にさらに中間安定帯を必要とするか、また必要として、もっと安定度を高めてやっていこうという考え方があるのかどうか。ここは、実は私はいろいろとそうあればいいなと思いながら、疑問を持っている一つなんです。今回九万円の中に大体四万円見当の中間安定帯をつくるわけですが、繭糸価格安定法が四万円に上限、下限を縮めてきたときに、それでは上下一万円ずつ切って二万円の中間安定帯をつくってさらに安定度を増していこう、こういう考え方が持ち得るのかどうか、ここのところをひとつ聞かしていただきたい、こう思うわけです。
  28. 安田義一

    安田参考人 ごもっともでございまして、私ども値幅の狭い安定帯の中で繭糸価格安定——ただいまの国の制度でありまする制度が、値幅の小さいところで働いていただければ、これはたいへんけっこうなのです。そうして私どもの絶えざる希望として、常に心の中にそういうことはあるわけなのです。しかしながら、私は、これは要するに、蚕糸業日本経済に占める地位の転落ということがそういうことをはばんでいるのじゃないか。一口に言えば、大蔵省がやかましい、こういう一言でこの問題はえて片づけられがちであります。しかしながら、大蔵省の喜んでやるような蚕糸業でなくなったというところに問題があるのじゃないか、ちょっとよけいなことでございますが、私はそういう感じがいたしております。したがいまして、四万円をさらに縮めたほうがいいかどうかということにつきましては、ビジョンとしては、私は縮めたほうがいい。だから言うなれば、これはできない相談だといって笑われるのですが、マル公にしたらどうか。少なくとも本年度の繭は春繭が幾ら、初秋が幾ら、晩秋が幾らということが大体繭価協定できまるのですから、それに製糸の生産費というものを加えて、本年の春繭生糸幾らでお売りいたします、初秋は幾らでございます。晩秋は幾らでございますという、そういう取引が達成でさましたら、私は、国の内外における生糸需要というものはまだまだ伸びる、かように確信をいたしております。  先般チューリッヒにおきまするISAの大会で、また東京におきまする理事会におきましても、価格操作よろしきを得るならば年率一割の需要の増進が見込まれるということを、海外でも申し、決議もされておるわけです。かりに一割と申しますと、十年でただいまの数量の倍、六十万俵でございます。私どもが心ひそかに潜在需要というものを考えますと、現時点でも五十万俵というものを目標にして前進していけば、決して糸が余るというような事態は私は起こらないように考えております。それほど世界における絹の要望というものは大きいのでございます。そういう意味におきまして、いまの問題に返りますが、これはぜひやっていただきたい。そうしてこの業は、長年相場というものに関連をして生きてきておりますので、外国の方々も繭糸価の安定を言いますが、マル公というとちょっとあまりいい顔をしないのですね。というのは、その人たちも多少の動きというものに手慰みをしたいという感じがなぎにしもあらず。そういう感じから申しますと、私は、四万円ぐらいのところがいまの人間の頭の程度ではちょうどいいのじゃないか、かように考えるわけでございます。
  29. 栗原俊夫

    栗原委員 私の聞きたかったことは、これは少しうがった見方かもしれませんが、日本製糸業がかつて、加工業ではあるけれども、なかなか大きなスペキュレーターであって、加工実業というよりも、相場師的な性格が多分にあった。しかし、世の中の推移とともに、そういうことが許されなくなってきて、加工実業に徹してきた体質改善が行なわれておる。そういうことになれば、いま安田会長が、団体の意思でなくて、個人の考えという形で言っておられるけれども、大体安田会長の個人の考え方は、なべて業界人たちがそういう気持ちになってきたから、会長もそういう個人的な気持ちが出るのだろうと思うので、そういう意味からいうと、やはりなるべく狭くやっていく、しかし一方には、たとえ幾らでも投機的な気持ちも人間の心持ちの中にあるから、ある程度値幅は必要だ、こういう話のようであります。  ただいまお話があったとおり、生糸の潜在需要というものは、私はあると思うのです。中共の生糸がああいう形で一本値段で四年も五年も据え置かれるという話だそうですか、そういうことで、しかも値ごろが安いというけれども、私は、日本生糸も、ある程度の値ごろでもこれで確実に安定しているのだといえば、それを基準にして加工業者需要を伸ばしていく、こういう事態が出てくるのだと思うのです。  そういう観点に立っていま一つお聞きしておきたいことは、そういう事態の中で、これは製糸協会の立場に立ち、一体、今日の清算取引市場をどう考えるか、この問題なんです。これはいままで少ししつこく私も言ってきたわけですが、乾繭市場、それからまた生糸の清算市場、この無政府的なあり方と、一方、ひたすらに安定を求めて繭糸価格安定法があり、その中にさらに事業団をつくって安定をしようとしておる。これとどういう位置づけをしたらいいか。私は、新しくできる事業団が強力な資本を持って、そして市場にもオペレーションできる、こういう姿になれば、またそれも一つの行き方である、こうも考えますし、そこまでは事業団には許さないのだ、こういうことになれば、他の方法で、野放しの無政府状態の清算市場というものには強力な規制を与えなきゃならぬ。さもないと、せっかく新たに事業団をつくっても、そこからきわめて不信感が出てくる事態を招来する、このように思うわけですが、かつて製糸業家が相場に大きなウエートを考えてやってきた当時とは違って、こうして養蚕家製糸家もあげて安定を求める体質になってきた今日、どうしてもあの清算市場というものがなくてはならぬものなのかどうか、この問題です。もちろん、やめるということになれば、その影響は大きいですけれども、しかし、蚕糸業の安定そのことが発展のただ一つの道だということが確認されて、それをはばむ一切のものは、犠牲はありましょうが、経済的な何らかの救済をして、これを阻むものは取り除いていくという基本的な方策が立てられなきゃならぬ、こう思うわけなんですが、この時点で清算市場というものにどういう考えを持っておるか、なかなかそれはたいへんなことですけれども、個人の考え方でけっこうです。率直にひとつ述べていただきたい。
  30. 安田義一

    安田参考人 どうもたいへん言いにくいことを言わされるわけでございますが、率直に申しまして、私は、あれはつぶせるものならつぶしたほうがいい、こう思っております。これはうそ偽りのないことなんですね。ただ、実際はつぶせないだろうという感じがしている。これはわが国のいまのいろいろな自由の原則からしまして、私は、取りつぶすことはなかなかむずかしい、かように考えておるので、でき得るならばということばをこの上に乗せざるを得ない、かように考えております。  製糸業者立場として清算市場をどう見るかということでございますが、やはり過去におきましては、先生の御指摘のように、製糸業というのは投機利潤をねらっていた。しかし、これは、その製糸家が生まれながらにして相場好きだ、こういうことでもないのですね。相場を張らざるを得なかった、こういうふうに私は見ております。と申しますのは、繭の買い入れ価格等におきましても、これは私は、製糸業というのは、いささか狂った産業だ、自分でやっていて、そういうことを言うとおかしいですが、そういう感じがしている。大体、商法というものは、安いときに買って、高いときに売るというのが、私は商売の原則だと思うのです。ところが、製糸業というのは、春繭なら春繭が出てくるときには、安くても高くても、これが一年間にどういうふうに売れるかということの見通しがつかなくても、ぱっと買わなくちゃならぬ。たまたま高い繭を買って、一年じゅう安く売るような事態もあります。その反対もありますよ。これはフィフティ・フィフティにあるのですが、とにかく計画的な経営ができない。各産期にはどうしてもそのときの相場で繭を買わなきゃならぬ。そこで、清算市場というものでむしろ動くことを期待して買って、そこにいわゆるヘッジをして、そしてときにぼろもうけもしよう、またときに去年の損を取り返そう、そういうことで清算市場というものがどうしても不可欠であったわけですね。それで、かつて欧州の取引所が相当の不振におちいりましたときに、国用生糸を上場したい、こういうことを企画されまして、われわれ製糸業にも賛成しろということを言ってきたのですが、当時私どもの判断といたしましては、普通生糸の上にさらに国用の上場をすれば、いろいろ相場の波乱が一そう大きくなり、また海外で国用の糸が安い相場が立つと、普通糸に対しても、向こうはこんなに安いじゃないかといって、頭をたたかれる、どう考えてみても国用糸の上場をやめてもらいたい、そういうわけで、商品取引所の審議委員という、いろいろ学者の方、学識経験者で組織しております委員会がございますが、私はそこにもお百度を踏んでこの問題を頼み回った。そのときに、いまたしか青山学院の先生をしておりますかと思います真継先生という商法の大家の方が、私に、安田さんそう言うけれども、あなた方取引所がなくなって、ヘッジの場がなくなってもいいのですか、こういう質問をされますと、けっこうですと言いかねる時の状況でございます。さような意味におきまして、ただいまの時点では、取引所がなくなりますと、ヘッジの場がない、こういうことは製糸業立場としては一応言えるのです。しかし、それじゃヘッジの場が全然ないかという御質問をもしいただけば、それはくふうがありそうだ、かように考えておるわけでございます。  それから、輸出振興の問題がいまだ御質問がございませんが、ちょっとこれに関連があると思うのですが、輸出振興につきましては、二つの方法がある。一つは、先ほどのように、マル公でもないのですけれども、いわゆる一定価格にして、ある一年間なら一年間は一定価格で売りますということを海外に言って、そして買ってもらう。そうしますと、買い手はそれに基づいて織物をつくって、最終まで安心した商売ができる。いまの状況は、織物を企画して、さて売ろうとするときに、市価が下がるともうだめだ。上がれば上がったで、原料の手当てができない。こういうようなことで、海外の需要相当減らしております。そういう意味におきまして、一定価格で海外に一定量を供給するという約束ができないものだろうか、こういうことが一つ。もう一つは、非常に高くなったときに、たとえばいま五千五百五、六十円しておる、そのときに、五千円でお売りしますとか、五千二百円、それ以上はお売りしませんというような約束をして、輸出最高価格ともいうべき価格を設定いたしまして、それで海外に買ってもらう、海外のほうはそれに基づいていろいろ事業計画をしていただく、そういうことを実は私が考えて、一部の輸出商にいろいろ聞きますと、いやそういうことができればけっこうなんだ、そうすればわれわれは何も清算取引を使う必要はないんだとある業者は言った。ですから私は、これができれば、取引所の外堀だけは埋められる。まあほんとうのばくち打ちはしょうがないですよ。しかし、商社等が取引所にヘッジをして、そして実際輸出の現況というものは、これは従来からそうでございますが、五千五百円のときは向こうでは三百円、五千六百円なら四百円と、必ず下値を言ってくる。私は生糸輸出組合長に、どうして下値でなければ売れないのですかと言って、ちょっと食ってかかったことがある。ところが、これは明確な回答はいただけませんけれども、まあそういうのが過去の習慣であるとか、しきたりであるとか、そういう値段を出さなければ実際に買ってくれないんだ、そういう、言うなれば、ちょっとすてばちのような御返事をいただいたわけでございますが、そういう実情でございますから、日本輸出商はどうしても商売したいというときは、いまここで売っておいて、相場のほうでひとつ取り返してやろう、埋め合わせてやろうというので、清算取引に向かうわけですね。そこで、輸出問題というものが、ただいま申し上げましたような形において解決をいたしますならば、少なくとも取引所の外堀だけは埋まる、かように考えております。  あとはお役所の監督ということで、あちらのほうで……。
  31. 栗原俊夫

    栗原委員 だいぶ取引所の問題についてお話を伺ったのですが、次に、全養連会長さんにお伺いしたいのです。  いま輸出生糸の清算取引の関係で、安田さんからいろいろお話を承ったのですが、乾繭取引に関しても、養蚕農民の中で、ぼちぼち頭のいい筋が考え出してきておるのですよ。御承知のとおり、末端の農協が専属契約をやって、そしてそれぞれの県の養連が掛け目協定をやる、これがいま軌道に乗っておる取引形態なんですが、どうもそういうことをやっておるときに、乾繭相場はぶっとふいてきておる。おれたちはそれを売ってはいけないのか、こういう相談を私は受けるわけなんです。あそこでわれわれがとれる繭を売りつないでおけば、その値だけは確保できるじゃないか、乾繭して渡せばいい、こういう議論をふっかけられると、それはいけないんだとも、いま安田さんの言うとおり言い切れないのですね。頭の回転の少しいいところの農協長あたりはそんなことをぼちぼち考え出してきておるわけです。従来の経験からいうと、繭の出盛り期というものは、少しくそれが人工的であるなどという疑いまで持たれるような低迷をして、掛け目協定のときの相場というものが低迷する。存外そんなときに乾繭のほうは平気で、いわゆる投機者流の連中によってあふられる場面がある。あそこへ売りつないでいけばいいじゃないか、こういうことになってくると、せっかくこういうぐあいに事業団等もできて、最末端から地道に確実に積み上、げられるところが、やはりそういうものの跳梁によってくずされる危険性がある、このように実は思うわけです。専属契約を結んでおいて違反ではないかと言われればそれまでですけれども、やはり具体的にはかなりいろいろ振り売りとかそういうものでくずれておりますけれども、乾繭市場あたりであばれ回られるというと、そういう取りまとまった知能的な行動が起こってこないとも限らない。そういう点について考えますと、清算市場もそうだ、乾繭市場もそうだということから、これでいいのかどうか、こうしてもらいたいのだ、こうしなければならないのだという考え方を取りまとめて意見の発表を主張してもらわなければ、農林省当局のほうでもやはりいろいろと問題があろうかと思いますので、ひとつ御所見があったらお願いいたしたい。   〔委員長退席、田口(長)委員長代理着席〕
  32. 横田武

    横田参考人 栗原先生の地盤にも乾繭所があり、私の出身地の山梨県にも乾繭所があるわけでございます。それで、団体協約書を取りかわすと同時に、その一部を自主乾繭と称して、千貫あるものならその半分を自主乾繭にしておく、そして時期がくると適当な買い人に繭を売る、そうすると、なま繭処理よりも有利な処理ができることもある。そうすると、あとの半分の団体協約による五百貫のものに対しても同じ値にしろ、一たん価格をきめましても、またそれにならわされる、これは御指摘のとおりでございます。そこで、私ども農業団体を預かる者として、養蚕農家に、おまえ繭を高く売ってはいけないぞ、かような発言はできないわけでございます。したがって、先ほども非常に頭のいいというお話がありましたが、そういう組合がぼつぼつ生まれてきておるわけでございます。それで、関東地区における繭取引というものは、日本の繭の価格をきめるわけでございます。したがって、昭和四十年度の団体協約につきましても、蚕糸局も中に入っていただきまして、それぞれの業界等におきましてもある程度の自粛をする、しかも農業団体としての使命達成のための繭取引が行なわれるような、いわゆる相場師にならないような、農民的な立場に立って繭処理をいたしたい。そうしてまた、蚕糸事業団法が実施に移されるならば、大体において適正価格というものが生まれてくる。その適正価格によって繭取引が行なわれるならば、そういう投機的な心理もある程度静まるではないかと私は思うわけでございますが、ただ、われわれ養蚕農家は年にただ三回繭を売るだけでございます。春と夏と秋と……。ところが、製糸屋さんは、その三回買ったものを三百六十五日糸を引いて、価格が毎日変わっても、変動しながらも商売を続けていく。原料販売が年に三回というところに、養蚕農家には非常に問題があるわけでございます。したがって、乾繭取引というふうなものもところどころに生まれてくる。  この問題につきましては、私個人といたしましても、ほんとうにまとまった考えはないわけでございますが、この事業団法の発足によりまして、ある程度繭、生糸価格養蚕農家に納得できるそこそこのものが協定できますならば、そういう養蚕農家は投機的なことはある程度やめるのではないか、かように信じているわけでございます。したがって、その問題につきましては、現在私ども養蚕団体の内部においてまとまった考えはないわけでございますが、この事業団法の発足によって、自然にことしの春繭はどのくらいするだろう、ことしの夏秋蚕はどのくらいするだろうという想像的な価格が生まれますならば、そういう操作は自然になくなる、かように思っているわけでございます。したがって、繭増産が行なわれれば行なわれるほど、そういう投機的な状態はなくなるだろう、かように存じております。
  33. 栗原俊夫

    栗原委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  34. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 高田富之君。
  35. 高田富之

    高田委員 一問だけお尋ねをしたいと思うのですが、輸出振興、さらに今後の業界の発展、いろいろな問題がありますが、究極的には、いまおっしゃられましたように、今後の原料繭の増産に尽きるのではないかと思います。このままでまいりますと、やはりじり貧的に少なくなっていく傾向のほうが——あらゆる条件がその方向に向いておりますので、いま安田さんでしたか、おっしゃいましたように、五十万俵くらいはこなせるというお話でございますが、何としましても、いまの状態では原料繭に頭打ちがきておるということが最大の隘路だと私は思います。そこで、いまの相場がこれを証明しておるのじゃないかと思いますが、輸出がほとんどなくても、内需だけですでに五千五百円を突破している。これは実勢で、内需の非常に強い需要のところからきている当然の結果だと思いますが、こういうことでまいりますと、これはもう何としましても、思い切った増産体制というものに切りかえなければならぬ。幸いにして、いまは蚕糸局、政府のほうでも、この業界に対する考え方を従前とはかなり変えて、相当積極性を持った施策も打ち出そうとするかまえにはなっております。しかし、政府全体として、先ほど大蔵省のお話がちょっと出ましたが、遺憾ながらまだまだそういうところにいっていないと思うのです。  ですから、やはりここらで、私、特にお三人の方にはっきり御言明を願いたいと思いますことは、せっかくこの法案によって業界が、先ほどの御説明のとおり、自主的に結合して、そうして全体として盛り上げていこうという機運が実を結びつつある第一歩でございますので、この機会に、蚕糸業の中期あるいは長期の見通しといいますか、五年後にはこうするんだ、十年後にはこうありたいんだ、そのためにはかくかくしかじかのことはどうしてもやらなければならぬ、業界としてやる範囲はこれまで精一ぱいにやる、足らないところは、こういうことはひとつ政府がやれ、こんなようなことで、やはりこれは業界から強く空気を、これを機会に出していただくということがどうしても必要じゃないかと思うのです。先般来も、この法案につきましても政府といろいろお話し合い、この委員会でもあったわけですが、そういう点ではまだまだ、第一歩は踏み出したとはいうものの、なかなか本腰を入れていないのじゃないかという心配もあるわけなんです。そこで、現在の相場のあれが証明しておりますとおり、またあなたのおっしゃいます五十万俵消化可能というようなこと、これはおそらく全くそのとおりだと思うのですが、そういう点からいいまして、増産体制というものへの切りかえが最大の急務であると思うのです。そういうことで、ひとつ、簡潔でけっこうでございますから、そういう立場から、業界として、当面こういうふうなことでやる計画を持っておる、あるいはこういうふうなことをやっておる、さらに政府に対してはこれこれしかじかのことをやってほしいということを、率直なところを、ぜひ製糸業界から、あるいはまた養蚕代表の方、山添さんのほうからも、一言ずつお述べをいただきたい、こう思うわけでございます。
  36. 横田武

    横田参考人 ただいまの高田先生のお話のとおりでございまして、いまの日本蚕糸業は、私どもが口をすっぱくして申しておりますが、老大国のような感じがする、長い歴史を持ちながら覇気がない、なぜ覇気がないだろうかということを私はつくづく感じておるわけでございます。御指摘のとおりでございます。したがって、この法案を軸といたしまして——もちろんこれで満点とはいえないわけでございますが、私どもはこれを軸といたしまして、日本蚕糸業の再建をはかる、こういうつもりでございます。それにはまず繭増産にある。繭増産という事柄につきましては、まだ農林省でも正式にはそういうことばは使わないように私は聞いております。しかし、今回この法案の通過と同時に、大いにひとつ農林省でも繭増産ということばを使っていただきまして、私どもは画期的な蚕糸業振興策を考えてまいりたい。それには、私どもこれからいろいろと御注文申し上げるわけでございますが、先生方の御支援のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  37. 山添利作

    山添参考人 すべての問題が繭の増産にかかっておるということは、全く同感でございます。ところが、近年の農村事情によりまして、繭だけではございませんけれども、農業生産全般が非常に困難になっておることは御承知のとおりでございます。特に繭につきましては、事情がすでに需要に追っつかない事情であるにかかわらず、世間一般といたしましては、あまりに、いわゆる斜陽産業というようなことばがございます。やはり農業生産というものは、現実の生産条件とともに、世間にあるムードというものの影響が非常に作用をするということでございまして、したがって、こういう蚕糸業が全く変わってきております機会をとらえて、私どもももちろんでございますが、政府におかれましても、新しくやはり長期的な見通しに立って計画を改定する、従来五カ年計画というものがございますけれども、新しい事情に即した計画をまた立ててもらって、それによって、一面事業団によって最低価格といいますか、ほぼ生産が安心してできる価格を示しつつ、一方従来やっておりまする技術指導あるいは共同飼育とか、そういうような施策を進めていっていただきたい、かように考えておるわけでございます。特に増産ということに重点を置いてものごとを考えなければならぬという先生の御意見につきましては、全く同感でございます。
  38. 安田義一

    安田参考人 ただいま両参考人から申し上げましたことでお話は尽きるかと思いますが、この増産を進めてまいりますのに一つのネックがある。これは言うまでもなく農産物でございますので、天候、虫害その他非常に災害にかかりやすい素因を持っております。本年の繭不足もその災害によるところがかなり多かった、かように思いますので、計画の策定には災害というものを加味していかなければならぬ。非常に豊作になって計画以上の増産ができたというようなときには、直ちにその価格に波及するおそれがございます。そういう意味におきましても、この事業団というものに私ども期待をいたしておりますのは、そういう事態に、とにかくまず第一の防波堤でこれを防いでいくのだ、こういうことが一つであります。  それから、先ほど来しばしばお話が出ておりますように、今年度の繭は幾らぐらいに売れるのだというその目標を農家にお示しするということがこの事業団においてできる、こういう意味で、私はかなり増産に対して前進をするであろう、かように考えておるわけでございます。  いま先生からお話もございました計画につきましては、関係団体とよく相談いたしまして、需要その他を勘案し、若干の天災というふうなことも加味いたしまして、お役所の協力を得まして、一つの計画を立てたい、かように考えております。
  39. 高田富之

    高田委員 たいへんありがとうございました。そこで、ぜひひとつこれからそういうふうな積極的な姿勢で——この法案業界でまとまりましたのがまた国会でもこれが通過するわけですが、これを機会といたしまして、相当積極的な姿勢での、ある程度長期的な業界一つの方向というものを各団体で共同で策定されまして、われわれにも大いにしりをたたいていただきまして、ぜひ今後の発展を期していけるというふうにしたいと思いますので、ひとつ御検討をお願いいたします。ありがとうございました。  私の質問を終わります。
  40. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 林百郎君。
  41. 林百郎

    ○林委員 時間の関係もありますので、まとめてお聞きしたいと思うのですが、横田さんからちょっとお聞きしたいのです。  先ほど、この法案について養蚕団体として非常に熱意を持たれておるという、そのことは私よくわかりますけれども、ただ、この法案を今後さらに改善していくという方向でわれわれも考えていきたいと思います。従来も蚕繭事業団がございましたし、その中で、この繭の値の下がったときの処置も、この法案に盛られておるように、保管、売り渡し、加工の委託をすることができるというような規定がありましたけれども、そういうものは一度も実は発動しておらないわけです。発動しておらない。今度もまたそれがそのまま本法案の中に盛り込まれているわけです。ただ、このたびの法案の中で、養蚕家にとって若干前進したと思われるものは、基準繭価で買い入れを製糸業者に勧告する、それからその基準繭価で買い入れをしなかった製糸業者に対しては、あるいはそういうおそれがあると認められる製糸業者に対しては、買い求めの要求があった場合にこれを買い入れない、そういう規定があるわけです。そういう間接的な保護規定なんです。それで十分とお考えになっているとは思わないのですけれども、どのようなお考えなんでしょうか。それで十分とお考えになるのでしょうか。さらにあるいはこういう方向に前進をしてもらいたい——私の考えを申しますと、むしろ、生糸のほうは事業団が責任を持って値が下がったときには買い入れるというなら、なぜ繭のほうも一定の値段が下がった場合には政府がこれを買い取らないのか。そうして買い取って、事業団が製糸業者との間に幾らで売り渡すかという交渉をすればいい。そこまでいかなければ、製糸業のほんとうの基盤である養蚕業者の保護に欠けるのじゃないかということを私は思うわけですけれども、その辺についてどういうふうにお考えになっておられるか、ひとつお聞きしたいと思います。
  42. 横田武

    横田参考人 ただいまの御質問の点につきまして、私ども実は苦慮いたしたわけであります。いわゆる蚕繭事業団昭和三十四年に発足いたしました当時は、養蚕団体だけが賛成をいたしまして、他の団体はおそらく全部が反対に回ったわけでございます。われわれは養蚕農家繭価の安定をはかるために必要なんだということで賛成を申し上げて、実はつくっていただきました。ところが、最低糸価が現在における最低二十四万円、最高三十三万円ということになりますと、その値幅が先ほど栗原先生言いましたように九万円も開きがありますと、その発動が非常にむずかしいわけでございます。したがって、この蚕繭事業団は創立以来実は眠っておった。その前に三十三年には、日本全体の繭の一割をたな上げするのだということで、実際に私どもも乾繭共同化をして繭値を維持した経験を持っております。しかし、事業団発足以来はそういうものは一度もなかったわけであります。今回もこの事業団法が生まれて養蚕農家に役に立たないというふうな印象を与えてはならないということで、私どももいろいろ内部的にも検討し、振興審議会でもこの問題に集中していただいたわけでございます。したがって、繭は買い上げにはならないわけでございますが、私ども概算計算いたしますと、市場から生糸を五万俵たな上げできるということになりますと、必然的に繭価の維持がはかれるわけでございます。なお、繭糸価格安定法の一部も残されておりますし、この両法の運営によりまして、私どもは大体養蚕農民の考えておる繭価の安定がはかれるように思うわけでございますが、先生の言われるように、この法案が生まれればこれでよろしいかという点につきましては、私は絶対よろしくないということを申し上げたいのです。この法案だけにたよって養蚕農家が繭の増産をするということはなかなか困難です。したがって、まず第一に法案をつくっていただきまして、いよいよ実行に移していただき、その実行段階において、不備の点は、まず養蚕農民にできるだけ寄与できるような方向へ改善をしてまいりたい。農産物の価格安定という問題は非常にむずかしいわけでございまして、関連する産業があります。したがって、日本製糸協会あるいはまた蚕糸協会、織物業界というふうな人たちとも歩調を合わせながら、この法案の通過をまずねらいまして、その後において、不備の点につきましてはそれぞれ検討を加え、改めてまいりたいと思うわけでございます。必ずしもこの法案だけで養蚕農家が満足するという形ではないけれども、まず一つの土台をつくらなければ現状では繭増産はとりあえずできない、こういうことで私どもお願いを申し上げておるわけでございます。したがって、出資金の問題につきましても、五億円ということでございますが、将来は十億円に直し、さらに必要あらばといった福田大蔵大臣お答えもありましたが、私どもはさらに十億円政府からも出していただくようにお願いを申し上げたいという構想でございます。
  43. 林百郎

    ○林委員 時間の関係で簡潔に質問をしていきますから、あと二間ほどさしていただきたいと思います。  実は昨日私は蚕糸局のほうにも質問したのです。大体将来販売の委託をする場合、どのくらいまでの責任を持って販売の委託を受け付けるつもりかというようなことを聞いたわけですけれども、約百万貫程度というように聞いたわけです。これはもし正確を欠いたら私の責任でございます。私はそう受け取ったわけです。それは全産繭量の約三%程度、それから買い入れの限度は約三万俵、さっき五万俵というようにおっしゃいましたが、三万俵というようなことを聞きました。そうしますと、その程度で万一——これは下がった場合のことのほうが問題になります。いいときはたいして問題にはなりませんが、そういうときに、やはり繭価の——これは糸価も同じことになりますけれども、私どもはいま繭価のほうを聞いておるわけですが、その程度の本法案発動日本全国の繭価の安定がはかられるかどうかという点ですね。  それから、標準繭価がきまることになっておるわけですけれども、この標準繭価のきめ方自体、最低糸価から逆算したものからさらにそれへ一・一二五ですか、一・五を要望したけれども、一・一二五にとまっているようですが、そういう関係もありまして、そうすると、標準繭価がむしろいい場合はそれがかえって繭価を上げないような作用として、今度はそのてこに使われるきらいがあるのではないかということが心配になるわけです。  その二つの点とあわせて、あなたへの質問はこれで終わりますので、将来この法案をさらにどういう方面に積極的に充実させるべきかという点があったら、ひとつ聞かせていただきたいと思います。
  44. 横田武

    横田参考人 実は私ども生糸買い上げの要望につきましては、最初は七万俵ぐらい必要だということを申し上げておったわけでございます。ところが、二十億円の出資金になりますと、とりあえず三万俵でございますが、通算いたしますと五万俵のたな上げができるような措置が講ぜられてあるように私は見受けております。それで、繭につきましては、現在の生産量から見合いますと、前回の蚕繭事業団のときには、約三百万貫たな上げをするのだということで全国の養蚕農家に呼びかけましたが、結論的には約五十万貫の乾繭共同化になったわけでございます。したがって、繭はなまでございますので、それぞれの思惑がありまして、三百万貫たな上げするというのが五十万貫になった、こういうふうな事例から私どもは勘案いたしまして、とりあえず百万貫程度をめどといたしまして、一応とにかく二十億三千万円の出資金だというならば、それでやってもらおうということでございましたが、将来の問題につきましては、繭増産が行なわれる場合につきましては、少なくとも当初の目的の七万俵、繭は一割の三百万貫程度やはりたな上げできる措置を将来は講じてもらいたい、かように考えておる次第でございます。
  45. 林百郎

    ○林委員 わかりました。  それではもう一問だけ、今度は安田さんにちょっとお尋ねしたいわけです。安田さんは、私の知っているところですと、大きな製糸の責任者ですが、しかし、製糸協会というのはたくさんの製糸家がございますので、そういう立場からお尋ねしたいのですが、本法案目的は、蚕糸業経営の安定と、もう一つ生糸輸出の増進ということがあるわけですけれども、この二つの目的が、過去の実績からいいまして、両立し得ないのじゃないか。ということは、生糸輸出の増進をするためには、むしろ値が上がったときにそれをどう押えるかということのほうが、市場を獲得するためには非常に重要な要因になると思うのです。しかし、従来蚕糸局のとった態度を見ますと、上がったときも下がったときも、いずれも消極的ですけれども業界の要望にこたえることができないで、値が上がって、たとえば三十八年のときのように、非常にギャンブルみたいに暴騰しています。ただいまも上がっております。先ほど安田さんから、こういうときに、むしろ押えるために、政府手持ちの生糸を放出するような作用を積極的にやるべきだという御意見を聞いたわけですけれども、こういうときに、むしろこの蚕糸事業団の作用が積極的に行なわれないし、蚕糸局の指導もそういうときに積極的に行なわれないということで、上がったときには、製糸家の皆さん方ももうかりますからもうけさしてやろう、下がるときもあるからということですが、しかし、大きく国際的に生糸市場を確保するという観点に立って、むしろそのときのほうが警戒を要するわけなんですけれども、結局本法案目的は、非常に動揺の激しい製糸業界の中で、むしろ値が下がったとき、どのようにその不安を解消さしてやるかということが真のねらいで、本法案は、真に生糸輸出の増進のために作用するという要因が少ないのじゃないかというふうに思うわけですが、その辺、製糸業界としてはどうお考えになるかということが一つ。  それからもう一つ、これは具体的な本法案の適用の場合、三十一条に、基準繭価に達しない価格で繭を買い入れまたは買い入れるおそれがあるときは、事業団への買い入れを事業団としては拒否する、こういう規定があるわけですね。これはそれによって繭価を維持しょうというはからいだと思いますが、しかし、製糸家のほうから見ますと、基準繭価でもかりに買わないような製糸家があったとすれば、おそらく購繭資金なんかが非常に欠乏していて、四苦八苦の製糸家ではないかと思います。こういうものにこの条項が——おそれがあるという認定だけで、ほんとうに困って、いまこそ買い取ってもらいたいというときに、買い取るという作用を拒否されたとすれば、その製糸家はやっていけないことになる。その製糸家がやっていけないということになると、その製糸家に繭を売った人も、したがって繭代金の支払いを受けられないということになるのじゃないか。こういう条項の具体的な適用について、大きな製糸家はそういう心配はないと思いますけれども、百五十幾つの器械製糸の全体の利益を代表する安田さんとして、この適用についてどういうようなお考えがありますか、お聞きしておきたい。
  46. 安田義一

    安田参考人 第一の問題でございますが、御指摘のように、この事業団の一番働くのはやはり下値押え、そういうことは確かにそうだと思います。輸出の増進につきましては、糸価の変動の幅を縮める、そういうことで、それが輸出の増進につながる、そういうふうに私は理解をしております。これが二階から目薬じゃないかとおっしゃられれば、まあそのきらいなきにしもあらず、かように考えますが、また、この事業団ができました暁、私ども製糸業者として期待をいたしておりますことは、この事業団によって輸出の促進をやりたいものだ。先ほども質問のときに私ちょっと申し上げましたが、どんどん糸価が上がっても、それより下のところで海外に売らなければならない、また売らなければ輸出の増進ができない、そういう場合に、業界ではその差額をどうしてくれるのだ、こういう問題が、実は現在私ども輸出構想を進めております上に一つのネックになっておるわけです。五千五百円の生糸を五千円で売れ、おまえたちもうかっているからよいだろうといっても、ちょっとむずかしいのです。お互いに経済行為を営んでいる。よそに五千五百円で売れるものを、製糸業者全部が崇高な精神に燃えて輸出をやるというなら——これはこの際私白状いたしますが、わが業界でどうしても輸出しなければならないというのは、その指導的な立場にある何人かである。あとの製糸家は高いところに売れればそっちへ売ればよい、これが私は本音だと思うのです。そういう意味で、何らかの形で少し安く繭を供給してもらうとか、あるいはその差額の一部をこの事業団に補給をしてもらうとか、何かそういう構想に持っていかなければ、そういう意味での輸出増進がむずかしい。私はそういうことを実は期待しておる。表にあらわれました形としては、価格の変動を小幅にすること、それから一緒に提案になっております糸価安定制度の一部改正、その二つによって私は輸出の増進ができるのではないか、さように理解をいたしておるわけでございます。  それから、基準繭価を割るおそれのあるときということなんですが、これはこの法案の文句としては、実は率直に言って、ちょっとどうも首をひねらざるを得ない。私どもがこの構想として聞かされておりますことは、基準繭価製糸が買えないような状況になった、そういうときに発動する、このおそれがあるということは、ここに役所の方も見えておりますから、私も実はお伺いしたいのですが、おそらく実際は基準繭価をだんだん割ってくる、実はわれわれが考えておりますところでは、基準繭価を一割下がった、そうするともう買い入れる、そういうことが即行なわれるのだ、かように実態としては理解しているのです。
  47. 林百郎

    ○林委員 それでは私の質問は終わりますが、ただ一言、先ほどの田邉さんの質問以来中国生糸の輸入の問題がいろいろございまして、何かそれは国賊みたようなきついことばがこの委員会でありましたけれども、しかし、委員の中には必ずしもそういう考えのものばかりいない。ということは、日本生糸業が自由主義であり、資本主義経済であり、やはり利潤を目的としている以上は、値が上がるときには、もう繭糸価格安定法の幅だって上がっていくのです。一方、中国の生糸、北朝鮮の生糸は国家事業ですから、非常に安定さがあるわけです。場合によっては、損をしても違う面で国家が埋めればよいわけですから、そういう状態で太刀打ちできない。安いほうの中国生糸や朝鮮の生糸を入れて、そうして日本の国で利潤をはかったところで、何かその人がまるで国賊みたいに非難されることは、私としてはにわかに賛成できませんけれども製糸協会の会長のあなたとしても、十分話し合いされて歩調を合わせることはけっこうですけれども、しかし、当委員会意見全体が何かそういうものは国賊のように非難すべきものであるという意見ではないということを、私は一言付言して終わります。
  48. 田口長治郎

    ○田口(長)委員長代理 以上をもちまして、参考人の御意見に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には貴重な御見意をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。委員会を代表して厚くお礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十一分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕