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1966-04-21 第51回国会 衆議院 大蔵委員会税制及び税の執行に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和四十一年二月四日(金曜日)委 員会において、設置することに決した。 四月十三日  本小委員委員長指名で、次の通り選任され  た。       岩動 道行君    砂田 重民君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       村山 達雄君    山本 勝市君       吉田 重延君    渡辺美智雄君       只松 祐治君    平林  剛君       藤田 高敏君    山田 耻目君       竹本 孫一君 四月十三日  山本勝市君が委員長指名で、小委員長に選任  された。 ————————————————————— 昭和四十一年四月二十一日(木曜日)    午後三時八分開議  出席小委員    小委員長 山本 勝市君       岩動 道行君    西岡 武夫君       渡辺美智雄君    有馬 輝武君       只松 祐治君    平林  剛君       藤田 高敏君    山田 耻目君       横山 利秋君    永末 英一君  出席政府委員         大蔵政務次官  竹中 恒夫君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         国税庁長官   泉 美之松君  小委員外出席者         大 蔵 委 員 大泉 寛三君         大 蔵 委 員 小山 省二君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月二十一日  小委員竹本孫一君同月十五日委員辞任につき、  その補欠として永末英一君が委員長指名で小  委員に選任された。 同日  小委員藤田高敏君及び山田耻目君同日小委員辞  任につき、その補欠として有馬輝武君及び横山  利秋君が委員長指名で小委員に選任された。 同日  小委員有馬輝武君及び横山利秋君同日小委員辞  任につき、その補欠として藤田高敏君及び山田  耻目君委員長指名で小委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  税制及び税の執行に関する件      ————◇—————
  2. 山本勝市

    山本委員長 これより会議を開きます。  この際、一言あいさつを申し上げます。  今般、皆さまの御推挙によりまして、小委員長に就任いたしました。  税務行政につきましては、種々問題も指摘されておりますおりから、本小委員会の使命もまた重大なものがございます。つきましては、皆さまの御協力を心からお願いいたしまして、就任のごあいさつといたします。(拍手)  税制及び税の執行に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 きょうは、実は同僚諸君とともに、税の執行に関する問題をたくさん持っておるわけでありますが、あまり私ばかり時間をとるわけにいきませんので、てにをはを抜きにして、問題点を次から次へと申しますから、もしもお答えができないときには、次の機会までになるべくすみやかにひとつ問題を整理していただきたいのであります。  第一の問題は、法律でこうきまっておるのに、通達でそれをごまかしておると言っては語弊がありますけれども、おかしくなっておるという問題であります。所得税法二十三条「利子所得とは、公社債及び預貯金利子並びに合同運用信託及び公社債投資信託収益分配に係る所得をいう。」また、「利子所得金額は、その年中の利子等収入金額とする。」こういう限定制限列挙方式をとっておるわけであります。しかるところ、所得税法等の施行に伴う所得税暫定的取り扱いについて、昭和四十年八月四日、各国税局長あて国税庁長官通達によりますと、「法人税法第二条第七号に規定する協同組合等預貯金の受入れをする者が、その預貯金につき支払う同法第六十一条第一項第一号に掲げる金額で、各事業年度所得金額の計算上損金に算入されるものは利子所得とする」こうなっておるわけです。明らかに、これは所得税法第二十三条が限定制限列挙であるにかかわらず、通達をもって利子所得範囲を拡大した、これが第一問であります。かってにこんなことをやってもらっては困る。  第二番目の問題は、相続税法九条の問題であります。例をあげますが、たとえば、これだけの、この部屋じゅう土地を親が持っておる、子供がその土地の上に家を建てたという場合には、当然権利が譲渡されたとみなされるべきである。したがって、相続税法九条においては、その譲渡所得子供課税せらるべきが当然の解釈とみなされる。しかるところ、どこできめたのか、私もよくわからない、直税部長会議できめたのか、秘密通達があるのか、何かよくわからないが、取らないのであります。どうして取らないかといって聞きますと、国民感情からいって、そのとき直ちに取るというのはいかがなものであろうかということで、あれはたしか何かの会議で話がありましたよということで取ってない。しかし、その税務署なり国税庁が独断でそうしておるということでは断じてないらしい。私は、第二番目の問題は、悪いとは言わないけれども、それならそれで、なぜはっきり通達を公表してそのような措置を講じないのか。先般、物品税法の場合に、法律通達の矛盾ということを、同僚諸君が声を大にして租税法定主義を主張しましたけれども、いまさしあたりはこの二件でありますが、法律で用足しておるにかかわらず、通達が逸脱をし、ないしはかってにきめておることは言語道断である。この点について、まず御意見を伺いたい。
  4. 泉美之松

    泉政府委員 いまの第一の、利子所得範囲の問題でございますが、これにつきましては、お話のように、所得税法の第二十三条に、利子所得というのは、公社債利子、それから預貯金利子合同運用信託収益分配公社債投信収益分配、これを言うのだ、こういうことを言っておるわけでございます。問題の点は、預貯金利子とは何ぞやということになるわけでございます。預貯金利子につきましては、所得税法の第二条第十号に、預貯金というのは「預金及び貯金(これらに準ずるものとして政令で定めるものを含む。)をいう。」ということになっておるわけでございます。そこで、いまのお話協同組合の場合につきましてその実態を見ますと、それは利子所得として課税するのが適当ではないかということで、そういう解釈通達を出しておるわけでございます。  それから第二点の、親が持っておる土地の上に子供建物を建てる、それは借地権無償譲渡でございます。したがいまして、税法のたてまえからいたしますれば、この借地権無償譲渡贈与として課税すべきものである。これはおっしゃるとおりでございます。ただ、そこで、過去におきましてそういう課税をやってまいったのでございますが、親子間におきまして、あるいは夫と妻との間におきまして、そういう土地の上に建物を建てた場合に、直ちに借地権贈与ありとして課税いたしますと、どうも、いかにも納税者感情から見て適当でないという面が強く出ますので、相続の場合におきましてはさら地として評価する、建物が立っておるからそれだけ土地の値段が下がるという評価でなしに、さら地として評価するという条件つきで、そういう建物を建てたときには贈与税を課さない、こういうことにいたしておりました。これは何もこっそりやっておるわけではございませんで、公開はいたしておりませんが、実は国税庁通達を出してやっておるわけでございます。この点につきましては、実は過去のいろいろな課税の実例がございまして、どうも、そういった土地の上に家を建てたら、直ちに借地権無償譲渡だということで課税をすることが、いかにも穏当を欠くといったような感じが強いものでございますから、昨年だと思いますが、通達が出て、そういうふうな扱いになっておるわけでございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 第一の所得税法二十三条の問題は、いままでこれは雑所得として整理しておったんですよ。そうでしょう。雑所得として整理しておったものを、通達を出して利子所得とする。所得税法二十三条は制限列挙なんだから、類推解釈はできないんですよ。それを通達をもって範囲を拡大するということはいかぬというんです。  それから、二番目の問題は、あなたの御説明を聞くと、公開はしないけれども通達を出したと言うが、一体、税法解釈なり通達で、普遍的な問題をどうして秘密通達で出すのですか。そういうものはわれわれのところへは来ないのです。われわれは通達や何かをいろいろ拝見したり、もらったりしているのですが、われわれすらも、そういうもらえぬものがあるのです。もしも秘密通達でお出しになって、これは税務職員ポケットにおさめておけ、そしてそのポケットの中を見ながらやれということは、ひきょうだと私は言うのです。それは、ブラックリストのような問題については議論のあるところだろう。それでも私は承知しないと言っているのだが、人事以外の、納税者は何人も平等に恩恵を受けるべき通達を、秘密通達でなさなければならないという理由は毛頭ないと私は思う。この機会に、ほかにどんな秘密通達がありますか、ひとつ伺いたい。
  6. 泉美之松

    泉政府委員 第一の点でございますが、結局、その実態預貯金と同じようなものについては、利子所得として扱うべきだという考え通達を出したわけでございます。つまり、利子所得として源泉徴収の対象にしたほうが、納税者のほうとしても、また国のほうとしても便宜である、こういうことでございます。  それから第二点は、これは執行に関する通達でございまして、別段解釈通達として出しておるわけではございません。解釈通達からいたしますと、もうお話のように、土地の上に建物を建てたときに借地権無償譲渡があったと解するのは当然でございます。ただ、執行上そういうことをいたしますと、いかにも納税者感覚に合わないという面がございますので、相続の際におきましては、さら地で評価することについて異議がない、こういうことを条件といたしまして、そういう書類を出していただいた場合には譲渡所得はしいて課税しない、こういう執行上の通達でございまして、そういった通達はそんなにあるわけじゃございません。
  7. 横山利秋

    横山委員 あるわけじゃないけれども、あることはあるわけですね。なぜ、それが公開されないのですか。私は、こればかりでなしに幾つかの事例を知っているのですけれども、そういう一般的に納税者利益になることを秘密にやって、税理士も、うん、そういえばおれも聞いた、あれは何かあるらしいけれども、おまえ知っておるか、知らぬ、初めて聞いた、それならおれのところもやらなければいかぬ、こう言っておるのです。税理士諸君は、そのことについて、国税庁秘密に出されたことについて何か理由があるのだろう、こう考えているのですが、理由はないとおっしゃるならば、なぜ秘密になさるのですか。
  8. 泉美之松

    泉政府委員 この点は、先ほども申し上げましたように、従来は借地権無償譲渡として課税をいたしておったのでございます。ところが、先ほど繰り返して申し上げましたように、夫婦間あるいは親子間で、片一方の持っておる土地の上に建物を建てたら直ちに借地権無償譲渡だといって課税をいたしますことは、いかにも納税者感覚にぴったりしないという感じがいたしますので、そういう執行通達を出しまして、しばらく世間の様子を見た上で、いずれ正式な本通達に直す、こういう考えで昨年出されたものでございます。その結果、贈与税申告がこの三月十五日までに行なわれたわけでございますが、そういった事跡をいろいろ検討いたしました上で本通達に直す。こういうことで、暫定的な通達として出しておるものでございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 これまた、暫定的になさるべき理由が私にはわからぬのであります。何か暫定的と称しても、その内容考えれば、普遍的な意味がある。この扱いいかんによって解釈を変えられるべきものだとするならば、その恩恵を受けた者と受けない者との間にも非常な不均衡を生ずる。したがって、かりに暫定的なものであっても、秘密になさる必要はないではありませんか。即刻これは公表して、正式な通達にされることを要望したいのですが、いかがですか。
  10. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、しばらく、いままで課税しておったものを課税しないということにいたしまして、もちろんそのことは、当該納税者、そういう事態の起きた納税者に対しましては十分お知らせして、したがって、相続税のときにはさら地で評価していただいてけっこうですという書面をいただいた上でそういう処理をするようにということを通達いたしまして、そういう事例の場合には、必ず納税者にお知らせするようにということで取り計らってきているわけでございます。しかし、お話のように、そういった点を暫定通達とし、あるいは執行通達でありますから、若干秘密的なものがときにはあるわけでありますけれども、そういった納税者権利義務に大きく影響するような問題につきましては、秘密にすべき性質のものではありませんで、できるだけすみやかに本通達に直したい、かように考えておるわけでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 その次に第二番目は、先般大蔵委員会で、不動産売買あっせん調書について所得税法を修正いたしました。そして不動産売買あっせん調書は、明白に法律の文章から削除したのであります。しかるところ、私の入手いたしましたのは高松税務署長並び清水税務署長から出た文書でありますが、「不動産売買あっせん明細表提出について」、「国税事務につきましては、かねがねご協力下さいましてまことに感謝しております。つきましては、ご多忙中お手数ですが、適正な所得調査の参考といたしたいと存じますので、同封「不動産等売買あっせん明細表」を別紙の「同書き方について」により、作成のうえ昭和四十一年一月十五日までにご提出下さるようお願いします。」とある。いんぎんなお手紙です。いんぎんなお手紙ですけれども、去年、このやり方法律から削除して、なくなったばかりですよ。法律は、なるほど出せと命じておる。それが削除をされた。すぐにお出しくださいませんか、こういって同じものを出すというのは、ひきょうなやり方じゃないですか。これはなるほど「お出しくださいませんか」ではあるけれども、「お出しくださいませんか」といって、大きな声で言っておるのですよ。こういうことはきわめて悪らつなやり方だと私は思う。もう少し国税庁国会意思を尊重してもらいたい。不動産売買あっせん調書は、あなた方の意見はどうあろうとも、国会削除をして、出さなくてもよろしいということになったのです。それを「お出しくださいませんか」といって、出さなければ出さぬでいいですわと、こういううしろがつくのですね。これはよくない。これは本庁の御指示ですか。
  12. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、不動産売買あっせん調書提出義務に関する規定は、昨年の税法制定の際に削除されたわけでございます。ただ、御承知のとおり所得税法人税に関しましては、当該職員質問検査権を持っておるわけでございまして、そして、その質問検査権に基づきまして、資料照会をいたしまして、その資料照会の中に、いまお話のようなあっせん調書照会があったかと思うのであります。これは法律規定がありますと提出義務があるわけでございますが、いまお話のように照会でございますので、提出義務はないわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 理屈はそうですがね、そうだけれども、みすみす人をばかにしたやり方だと思う。しかも、あのときの議論と同じように、内容に至るまで、書き方に至るまで、きわめて明細に、所得税法に基づく不動産売買あっせん調書と同じ内容のものを出せというか、お出しくださいませんかという、内容は同じですよ。これはお出しくださいませんでしたらと、たらで、あとから続くわけですよ。私は、まだほかのやり方一般論としての質問検査権を発動されることについては、必ずしも何も出さぬでもいいというつもりはない。全くこれは、法律削除したって、こういうやり方でやれば同じことだ、国会をなめたやり方ですよ、このやり方は。あれだけ騒動があって、あっせん調書はなくなったんです。国会意思がきまったんですよ。きまっておりながら、それと同じ内容不動産売買あっせん調書を出させる。いんぎんではあろうけれども税務あり方というのは、あなたは十分御存じのとおりだ。日ならずしてすぐこういうものを不動産業者に突きつけるというのは、いかにもなめたやり方だと私は思う。不動産業者をなめているんではない、われわれをなめている、大蔵委員会与野党満場一致できめた国会をなめているやり方だ、こう考えるが、いかがですか。
  14. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、当該職員質問権でやっておることでありまして、別段国会の御意見を尊重しないとかいったような趣旨では毛頭ないのでございます。したがって、そういうふうに誤解されることのないように、今後十分注意してまいりたいと存じます。
  15. 横山利秋

    横山委員 今後十分注意をされるというのは、いかなる内容でございますか。少なくとも、私は、名実とも国会意思を尊重してもらいたい。一般的な質問検査権を発動されることまで私は決してとやかく言わぬ。けれども、明らかにこれは国会意思を——それなら、否決したら否決したでやりようがあるわいというやり方だからがまんがならぬ。少なくとも、高松並び清水のことでありますから、おそらく本庁の御意思だと思うのですが、そう考えて差しつかえないですね、おやりになったのは。   〔小委員長退席西岡委員長代理着席
  16. 泉美之松

    泉政府委員 本庁としましては、先ほども繰り返して申し上げましたように、一般質問検査権に基づきましてそういう調査をするようにということは指示いたしておりますけれども、いまお話のように、当時法律考えておったあっせん調書そのままの形でやるべきものとは思っておりません。一般質問検査権に基づいてやっていくべきだ、このように考えおります。
  17. 横山利秋

    横山委員 それでは、善処なさるということでありますから、私の手元にありますこの不動産等売買あっせん明細表、この以前議論いたしました全くきわめて微に入り細をうがった明細表でありますが、このようなことをどうなさったのか、いわゆる善処なさって、当委員会に御報告をいただきたいと思います。よろしゅうございますね。  その次に、長官に、私どものところへどんな投書がくるかということを御披露をしておきたいと思います。  一つは、これは議事録に名前まで載ったんでは恐縮でありますから、内容だけ申し上げます。某局長であります。某局長は、本庁おりまして相当仕事をなさっておる、局でいえば相当の訓育をなさる役職におられた方であります。「役人というものはゴルフ等はなすべきではない」と、厳重なことを言っておられた方であります。それが地方局長におなりになりましてから、この投書によりますと、日曜のたびに一時間半ばかりかかるところへ役所の車を使ってゴルフに行かれ、そしてその運転手は、役所運転手超過勤務を払って、そうして行っておる。あれだけ本庁等におるときにはやかましいことを言って、綱紀粛正で有名であった人が何たることか、これはぜひ剔抉をしてもらいたいという投書であります。私は、その真偽のほどは投書だけでわかりませんから、必ずしもその人のことを言うわけではありませんが、おそらくこういうことはありがちだという例証として、これが投書の第一通であります。  それから投書の二通目は、事前の通知に関する投書であります。「拝啓、政局御多端のおりからますます(中略)慶賀の至りに存じます。さて、はなはだ失礼とは思いますが、(中略)心からたよりにしておりますので、一つ質問の材料を提供いたします。ぜひ御利用を願います。なお、これは〇〇国税局」——〇〇は書いてあるのですよ。「〇〇国税局管内のことですが、全国的にもこのような実情らしいので、国税庁長官もしくは主税局長に対してぜひ質問してください。税法税理士法を忠実に執行しているか。しかし、納税者からの特別の通知によると、実行されていない事例がある。税理士法三十四条を知っているか。それによると、税務官公署当該職員は、納税者税理士に対してその調査の日時、場所をあらかじめ通知しなければならないことになっているが、〇〇のある税理士からの通知によると、〇〇局管内では完全に実行されていない。昭和四十年八月三日付〇局発第三百八十三号で、〇〇局長は次のとおりその非を自白している。法律で書いてあるということを実行せずして納税者納税義務を説く資格はない。確定申告指導の状況を長官局長は見て回っているが、申告指導等の現状がわかっているのか。指導でなくて申告の強要である。その実情は、現在の所得税法申告納税制度をとっているが、その実はない、その実情を何と思いますか。また〇〇国税局長の〇〇税理士会長に対する回答によると、税理士に対し、本人の調査立ち会いを強要しているが、自分のほうから法を守らずして、相手にそんなことを要求するのは官僚独善である」等、あとは省略いたしますが、これが第二番目の投書であります。  それから第三番目は、近江絹絲に関する投書でありまして、内容は省略いたしますけれども、子会社への売買契約等課税利益として二億円の納税申告をすべきでありますが、それにもかかわらず、二年有余も申告していないと思われる。これは法人税法脱税の疑い十分であるという投書であります。  それからその次は、「さて、私は税理士としてささやかな会計事務所を運営しておりますが、本日の税理士会において、先生が国会税理士に対する秘密通達の件について(中略)世の中は役人民主化を説いておりますが、まだ特権階級意識を持って、特にわれわれ税理士国税機関との関係は、全く税務当局はわれわれを使わなければ損だといった考えか、あるいはわれわれが仕事もせずにぶらぶらしていると思っているのか、それとも税務署所属機関と感違いしているのか。何かあればそれは税理士にやらせろ、しかも無料で奉仕するのが税理士として当然だといった考えであり、国会において実にそのとおりのことをずばりといわれておられます。私どもは、税務当局協力を惜しむものではありませんが、たとえば確定申告応接日税務署に出張しても、「御苦労さん」の一言もない、担当課長が横を通り抜けても、まるで使用人を働かしているような態度で、午後五時の退庁時間になっても何のあいさつもしない、こんなことで御協力を感謝するもしないもないのです。しかも税調査のときは予告もしない。はたしてそれだけ罪人扱いをする必要のある性質のものでしょうか。私の応援に行った税務署は〇〇局内のことでありますが、以上のとおりであります。」等、自分たちを非常に使いながら、御苦労さんの一つも言わないということに対するふんまんの投書であります。  それからその次の投書は、これは少し乱暴な字でありますから何でありますが、「電力会社ガス会社はともに経費を全部年度計算していますが、売り上げ収入金のほうは、決算の月は十日分くらいしか計上していない、残り二十日分くらいを次期決算期までの利益としていることを聞いて驚いています。何でも電気会社一社で五十億、ガス会社で二十億の脱税とされている。国税庁が摘発しかけたが、大蔵省の局長と次官が握りつぶしてしまったそうであります。」この乱暴な字だけでは信憑性について問題がありますので、私もちょっと調査をいたしております。そのほかたくさん投書、ないしは特に書類を送ってくださった方々のためにも、私は、ひとつ長官として、いま投書の二、三の例をあげましたが、十分にこの声なき意見について考えてもらいたいと思いますが、まず御感想を伺いたいと思います。
  18. 泉美之松

    泉政府委員 いまいろいろ投書を御披露いただきましたが、それらの中におきまして、税務行政あり方としていろいろ批判されておる点、われわれが率直に反省しなければならない点がいろいろあることは確かでございまして、私ども平素からそういった点につきましては十分心がけてやっておるつもりでございますけれども、御指摘のような点がまだありますことは、はなはだ遺憾に存じます。いま御指摘された事柄につきましては、それぞれいろいろ問題がございますけれども、私別にそれを陳弁しようとは存じません。そういう点につきまして、われわれが今後さらに反省を十分いたしまして、税務行政の改善に努力いたしてまいりたい、かように存じておりますことだけを申し上げておきたいと存じます。
  19. 横山利秋

    横山委員 次に、私は大蔵と法務と両方やっておるのですが、法務省の登記事務に対しまして国税当局が非常に協力を要請している模様であります。そして、これによりますと、国税当局から三十八年に八百万円、三十九年に一千六百万円、四十年に二千四百万円、四十一年に三千万円の協力費を法務省に出しておるそうでありますが、これは何費でありますか、そして何に使われておるのでありますか。
  20. 泉美之松

    泉政府委員 お話の、各登記事務所におきまして不動産の所有権変更の登記を行なうわけでございますが、それにつきまして、そういう登記資料課税上重要な資料でございますので、法務省のほうにお願いいたしまして、その資料——これは地方税法規定に基づきまして市町村にも交付することになっているわけでございますが、市町村に交付する際に、どうせカーボンを間に入れて書けば一ぺんに書けるわけでございますので、国税のほうの資料といたしまして二通同じものをいただきたいということをお願いいたしております。それにつきましては、登記所におきまして人手不足でございますので、アルバイトを雇ってそれを筆記させまして、それを送っていただくということになっておるわけでございまして、いまお話の金は、そういうアルバイトの金として国税庁のほうから法務省のほうに委託経理をお願いしておるわけでございます。
  21. 横山利秋

    横山委員 法務省のほうの数字を見ますと、「膨大な事務量の処理は到底正規の職員ではまかないきれず多くの部外応援を求めている。その具体的数字を略述すると」とあって、法務局の職員は約一万人、法務局採用の臨時職員が千三百六十人、これがいまお話のようなことかと思うのです。それから外部団体としての司法書士が約一万二千人、同じく土地家屋調査士が約二万人、両団体の補助者並びに事務員が数万人、その他市町村職員の随時応援、こういうことで登記事務がなされておる模様であります。私は、この登記事務がかくのごとく本職員よりも臨時職員やあるいは部外の司法書士や土地家屋調査士、両団体の補助者、事務員と、二倍、三倍にあたるような人たちが役所仕事をしておることについてきわめて意外な感じがすると同時に、国税局としても三千万円の予算を計上せられるならば、国税局職員として実際に事務を直接に行なうべきではないか、こう考えるのですが、いかがでしょう。
  22. 泉美之松

    泉政府委員 おことばではございますが、先ほど申し上げましたように、この登記資料につきましては、登記事務所におきましてこの資料をつくって、これを市町村と国に送付することになっておるわけでございます。したがって、国は国で調べに行けばいいじゃないか、市町村は市町村でまたそこを調べに行けばいいじゃないかというおことばかと存じますけれども、全体の行政の能率という点から申し上げますと、一ぺんに市町村の分と国の分とをカーボンを入れまして書いて、そしてそれを送付していただいたほうが全体の能率があがることになるわけでございまして、そういう意味で、また私どものほうで別に調査に行きまして、その登記資料をひっくり返してということになると、登記所のほうにもいろいろ御迷惑をかけることになりますし、登記所のほうも、いまのような形でやっていくことがお互いに望ましい、こういうことでございますので、先ほど申し上げましたようにアルバイトの賃金を委託経理として出しております。ただ、先ほどお話がございましたように、だんだんと登記事務が忙しくなってまいっておりまして、そのためにこのアルバイトの賃金を年々相当多額に増額しないと法務省の登記事務の処理に困るというようなことでございますので、年々相当額増額をいたしておるような次第でございます。
  23. 横山利秋

    横山委員 別途、これは法務委員会におきまして、数字その他資料をお願いをして議論をいたしたいと思いますが、このような登記事務のあり方について、ずいぶん私は疑問を持っておることを申し添えておきます。  その次は、先般長官並びに大臣から確約を得ました「税理士等に対する指導監督実施要領の制定について」であります。先般私の質問に対しまして、長官は大阪を題材に申しましたのですが、大阪だけが特別にやっておりますブラックリストは、これは本庁のやや逸脱行為である、したがって、そこまでつくるように指示してはおりませんという意味をもって、いわゆる狭義の意味のブラックリストについては、大阪方式については削除することを明らかにされました。さらに、しかし私は撤回を求めたのでありますが、大蔵大臣は、私も率直に言って、いま初めて聞いた、初めてのことですから、十分国税庁から状況を聞き、これも前向きで検討してみます。こういういわゆる前向きの立場を、私の納得しないという立場において明らかにされたのでありますから、長官よりも、さらに大臣の前向きの言明をいただいたことになります。自来、いわゆるこのブラックリスト問題は、全国の税理士はもとより、各方面の反響を受けました。そうして、先ほど投書の一部を御披露いたしましたように、国税庁に対する強い反発意識が出てまいったのであります。繰り返し申しますが、私も、多くの税理士の中にいわゆる非違行為がないとは申しませんし、そのことは、税務職員にしても、あるいはその他の職員についても同じようなことであるから、この際、税理士についてのみ、使うときだけは使っておいて、陰で脱税を幇助するものなりとして秘密通達を出された点について、全面的にひとついろいろ御判断もされ、各方面の御意見も聞かれたと思うのでありますから、この秘密通達の撤回について御意見を伺いたいと思います。
  24. 泉美之松

    泉政府委員 この税理士指導監督についての通達は、税理士法に基づきまして国税庁がその監督をいたすことになっております税理士税務官庁との間でございますので、いわば一種の特別な関係にあるということを考慮いたしまして、一般公開しない通達、秘通達で出したのでございます。その内容は、もう横山委員御承知のとおり税理士の職務は、納税者のために納税者の依頼を受けて、税法に基べくところの適正な納税義務の実現に御協力いただく、こういう点にあるわけでありますが、横山委員もお認めになりますように、税理士の方の中には、りっぱな方も相当多いわけでございますけれども、中に、ごくわずかでございますけれども、その業務執行内容が適正を欠く場合がございます。   〔西岡委員長代理退席、小委員長着席〕  年々国税庁のほうで懲戒処分に付さざるを得ないような事例も出ておるわけでございます。そこで、昨年通達が出まして、各税務官署におきましては、そういう税理士の方がまず調査に立ち会うということになっておるわけでございますけれども、その場合に、税理士本人の方が立ち会わないで、雇い人だけが立ち会うというような事態があるのは好ましくないので、これはやはり税理士法規定に従って税理士本人の方が立ち会うようにする、それから税理士の方が関与されてでき上がった申告書の内容につきまして税務官署で調査いたしますと、もちろん適正な申告相当多いわけでありますけれども、中には税理士の方が関与しない場合と同じぐらいの更正を受け、しかも、その更正の中には不正計算があるといったようなものまでもある、これははなはだ遺憾でありますので、そういうことのないように、そういうことが起きた場合におきましては、税理士の方に、どの程度その事案に関与しておられるかどうか、場合によりますと、伝票まで見せてもらえなくて、したがって、そういった不正計算まで摘発することができなかったというような場合もございましょうし、そのほかいろいろな事態が想像されますので、そういった税理士の方が関与されておる程度というものにつきまして調査票を作成して、そうした更正を受けて、その更正の内容の中に不正計算があるという場合で、その不正計算ができ上がるについて税理士の方が責任を負わなければならないような場合におきましては、理由書を作成して——理由書と申しますのは、一種の弁明書になるわけでございますけれども、それを提出していただく、こういうことを主体といたしまして通達が出ておるわけでございます。これは大部分の税理士の方に関係があるわけではないわけでありまして、ごく一部の、そういった業務執行上適正を欠く方の場合だけのことでございますけれども、いまお話のように、そういったことにつきまして国税庁が出した通達の中と、それから、それをふえんした各国税局長通達の中にやや穏当を欠くというふうに見られる点がございますので、これらにつきましては十分再検討をいたしたい、そして誤解のないようにやっていきたい、かように考えておるのでございます。
  25. 横山利秋

    横山委員 再検討を明白に約束をされたのですが、あらためて申し上げておきたいのですが、私がどうしてもこれはがまんがならぬといいますのは、先ほど不動産あっせん調書と同じケースなのであります。税理士法の改正案がどういう経緯をたどって廃案になったかは、あなた御存じのとおりであります。不動産業者売買あっせん調書がどういう経緯をたどって修正になったかも、あなた御存じのとおりであります。ですから、客観的に見ますと、何か国税庁並びに主税局は、国会で廃案になり修正になっても、事実上それを生かす道がある、こういうようにお考えになっておるのではあるまいか、そう見られてもしかたがないのであります。そういうようなことになりますと、私どもは意地ずくでも、この国会意思、一たんきまった税理士法改正案の廃案の経緯、不動産業者売買あっせん調書の経緯、国会意思にいささかなりともあなた方が反逆をするがごとき動向に対しては、私どもも手きびしい復讐をせざるを得ない、ことばは強いですけれども。これを見て、多くの人が何と考えるとあなたはお思いですか。あなたの前任者がお出しになったのですから、必ずしもあなた個人を責めようとは思いませんけれども、やはり国税庁の責任でございますからね。そうだとすれば、やりやがったなという気持ちですよ、私どもは。ですから、こういうようなことをなさるときには、おそらく部内でもいろいろ議論があったのではあるまいか。そのときに、国会なりあるいは私どもがどういうふうな気持ちになるかということも、私は議論があったはずだと思う。それにもかかわりませず、秘密にこういうものをお出しなさるというのは、よほどまあ、何といいますか、ばかにしている、私どもをなめたやりだ、こういうふうに私は反感を持つわけであります。いま長官お話ですけれども、これによりますと、税理士は二つの関門がある。一つは、関与状況調査票の作成でありまして、その作成は、第一に、重加算を決定することになった事案、第二番目は、前記各税について重加算を決定するに至らないが、明らかに不正計算に関与していると認められる事実、こうなっていますね。この二つのことが、私はごく一部の問題とは思いませんし、この二つについて必ず関与状況調査をするわけですから、税理士が不正計算に参画しておるといなとにかかわらず関与状況の調査をするのですから、税理士が白であろうとも、とにかく、まず犯罪視してかかるというのがこの関与状況調査です。それからその次は、それによって税理士が関与しておると見られたならば、今度は理由書を出せというわけですね。関与しておると見られるということは、あくまでも主観的でありますから、これは税務職員が、あの税理士はこの前もああいうことがあったから今度もこうだろうというような主観的な立場に立つことは当然であります。そこで理由書は、つまり、あなたの言う弁明書ですか、弁明書は、なぜ自分はそういうことになっておったのかというおわび状のようなものになるわけですね。おわび状を出さない税理士に対する措置は、調査票の回付を受けた所轄税務署長が法第五十五条に基づき総務課員に提出を求めさせることができる。この場合、提出させた理由書の一部は、調査担当者の属する課または税務署に回付するというのです。おれはそんなもの出す必要はないと税理士が言ったとすれば、これは法律上出さなければならぬことはないのですから、おれは白だ、そんなものは出す必要はないといえば、もうそこで第三の関門に入りまして、総務課員に提出を求めさせる、これは法律上の権限だという。なるほど、おれは白だという理由書を出せばそれで済むかもしれません。けれども、そこまでずっと回ってきますと、白だと思わない印象というものが税務署の中に出てしまうのですから、あいつはどうしても出さない、よけい悪いことをしているんだろう、出せば黒となるから出さないのだろうというような折り紙をつけられ、だんだん深みにわざとおとしいれていく。もしも硬骨漢の税理士おりまして、この通達というものは税理士を拘束するものではない——法律には制裁規定はありますよ。けれども、私は、法律に基づいて、これが適切であるかについて議論をしているのですから、適切でないという私の判断で、あなたも逸脱の条文があるとお認めであるとすれば、これはまさに、出さないとがんばったって処分ができないわけですよ。ところが、理由書を出さないとなれば、総務課から法五十五条によって意地でも出させる、こういうところへぐるっと回っていくわけです。そういうことは断じてなさるべきことではない。だから、いろいろな問題があるけれども、大前提として法律国会意思でひっくり返ったから、意趣晴らしにやると見られてもしかたがありませんぞ。こういうことは考え直しなさい。それから、詰めたところ、出す必要のない理由書、こういうところまできめられる筋合いのものでない理由書は撤回しなさい。この二つを特に私は長官に御判断を願いたい。
  26. 泉美之松

    泉政府委員 先ほどのおことばに対する御答弁の中で一つ漏れておった点がございますので、それをつけ加えてあらためて申し上げておきたいと思いますが、税理士とその監督官庁である国税庁との間と、それから国税庁税務職員国税庁との間、これは片一方は内部関係、片一方はいわば外部関係でございまして、それぞれ違っておるわけでございますが、私どもといたしましては、もちろん外部関係の税理士よりも内部関係の職員の場合のほうにより深い規律の正しさを求めていることは当然でございまして、これはあたりまえのことでございます。  それから、いまお話の点でございますが、理由書を提出させる対象は「税理士にも当該不正計算について責任があると認められる事案」となっておりまして、税務署のほうで主観で認めるというのではございません。認められるというのは、客観的にそういう責任があると認められる事案について提出をお願いする。なるほど、お話のように、法律上そういう理由書の提出を求めるという規定は別段ございません。したがって、この理由書の提出をしないから法律に基づいてどうこうということについてはいろいろ御意見のあることと存じます。ただ、税理士法の改正案が通過しなかったからその意趣晴らしというふうにおっしゃるのは、私どもははなはだ心外でございまして、決してそのような意思はないわけでございます。ただ、従来から税理士の大部分の方は、先ほど申し上げましたように、適正にやっていただいておるわけでありますけれども、中にその業務の執行が適正を欠くと認められるような人がおられまして、そういう人がおられますと、これがやはり税務職員との間でいろいろな刑事事件発生するおそれもあるわけでございます。どうかそういうことのないように、税理士の方が正しい仕事をしていただくようにということで、こういう指導監督についての通達を出したような次第でございます。しかしながら、いまお話のように、誤解を受ける面がございますれば、これらの点につきましては十分反省をいたしたい、かように考えておるのであります。
  27. 横山利秋

    横山委員 同僚の関連質問があるそうですから、あなたの勘違いなさっていらっしゃるところを一つだけ指摘しておきますが、この文書によれば、「理由書の提出に応じない税理士に対しては、調査票の回付を受けた所轄税務署長が、法第五十五条(監督上の措置)に基づき、総務課職員に提出を求めさせることとする。」となっているのです。だから、これはいやがおうでも出させるということですね。「この場合、提出させた理由書の一部は、調査担当者の属する課または税務署に回付する。」とあるのですから、これはいやがおうでも出させるのですよ。自動的にぐるっと回転していくということになっているのですから、あなたがお認めのように、出さなければならない筋合いのものではないという解釈にはなっていないのですよ。そうでしょう。  それから、主観と客観の相違があるとおっしゃるのですけれども、現場までいきますと、こういう証拠があるじゃないか、だから理由書を出させたんだというその証拠価値については、これはまた主観的な判断になる。だから、ことばの上では、主観と客観との違いがあるとおっしゃる気持ちはわかるのですが、現場においては、証拠価値については主観的な能力しかないのです。そういうことになるのですから、これは考え直してもらわなければいかぬ。  同僚諸君の質問があるそうですから、最後に私もう一ぺんあなたのことばを確認しますけれども、そうすると、再検討をあらためてしてくださるという意味の中には、私がるる申し上げていることをおくみ取りくださる、こう解釈してよろしゅうございますね。
  28. 泉美之松

    泉政府委員 お話の趣旨の点をくみまして、誤解のもとになるような点につきましては、再検討いたしたいと思います。
  29. 只松祐治

    ○只松小委員 いまの問題に関連して、若干御質問をしたいと思うのです。  私は小さい問題をお尋ねしたいと思うのですが、これは昨年の十一月二十一日に出されたわけですけれども、泉さんはたぶんそのころ長官におなりになった。そういたしますと、前の長官がおやめになるそのどさくさといいますか、そのときに出されたので、泉さんは主税局長ですか、全然知らなかったかどうかは別にいたしまして、直接はあまり関与しなかった。まあ、前の長官の問題だと思うのです。しかし前の長官が——こういう問題ですから長官が目を通したと思いますけれども長官がやめるまぎわあたりにこういうことをやるのはいかがであろうか。最期っぺということはないと私は思うのですが、これは事務当局のこういうどさくさにまぎれた専横の行ないがあったのではないかという気も私はするのです。前の長官の意図をそんたくするということはなかなかむずかしいかと思いますが、そういう税務行政の、長官あたりの意向とは違って、事務段階で、それこそ前の税理士法の問題やあるいは今度の公認会計士法の問題といろいろ関連させて、ここいらでひとつ締めておこうという意図があるんじゃないかと思います。長官も部下のことやなんかを、それはそうですとはなかなか言えないかもしれないけれども、多少税務の最高首脳部と事務的段階とのこういう問題があるんじゃないかとも思われるのですが、いかがですか。
  30. 泉美之松

    泉政府委員 おことばではございますが、決してそういうことはなかったと私思います。これだけの通達をつくるのでございますから、相当日時をかけて事務的に十分検討しておったわけでございます。たまたま、予定外のことで国税庁長官の更迭が行なわれましたけれども、しかし、そのどさくさにこの通達をということは毛頭ございません。ただ、先ほども繰り返して申し上げましたように、税理士の大部分の方は適正にやっておられるわけでありますけれども、中に業務の適正を欠く方がおられますので、そういった方のことを考えて、やはり適正な業務の執行をやっていただくにはどうしたらいいかという見地からこういう通達を出したのでありまして、この際引き締めてやらなくてはならぬといったような悪意に基づいておるものではございません。全く、税理士の方が適正な業務をしていただき、それによって税務行政全体が改善されるということを念願いたしまして、こういう通達を出したわけでございまして、どうかそういった点、誤解のないようにお願いいたしたいと思います。
  31. 只松祐治

    ○只松小委員 これもお聞きしないと、なかなか断定はできない問題ですが、通常、税理士さんとか、そういう商売関係、あるいはそういうものに類する問題は、税務署なり局では総務課が取り扱うわけですね。この場合には法人税課で何かそれを最終的には集約して、リストをつくって、そこに集めてくる、こういう形のものだと聞いておるわけです。そういたしますと、大法人のやつは、これはまた、私たちがいつも言っておりますように、租税特別措置法をはじめとして、いろいろ基本的な問題がある。主として税理士さんが扱っておられる中小の法人、こういうものに関しての税の問題とも関連してくるのではないか、私はこういうふうにも、これは勘ぐり過ぎかもしれませんけれども、勘ぐられる向きもある。それはそれといたしましても、こういうものをどうして法人税課あたりで集約し、そしてそこに保管してやっていくということまで、たいへん芸のこまかい話でございますけれども、なされておるか、お聞きしておきたいと思います。
  32. 泉美之松

    泉政府委員 ここに、通達の三ページの終わりごろにありますように、これはまず税務調査を行ないまして更正を行なう、そういった場合に、先ほどの関与状況調査票を作成いたしまして、そしてその関与状況調査票は、重加算税を決定することとなる事案あるいは増差所得金額が大きい事案について関与状況調査票をつくって、そして、その中で不正計算が行なわれておって、その税理士の方に不正計算について責任があると認められる事案について理由書を提出していただく、こういうことになっておるわけでございます。したがって、それは調査を担当いたしまする、税務署でございますと法人税課、所得税課、それから国税局でございますと調査部門ということになるわけでございます。したがって、これは国税局の場合にももちろんそういう書類を作成するわけでございますから、大法人を相手とする場合には作成しないで、中小法人を対象とするときにだけ作成する、こういうわけでは毛頭ございません。同じように作成するということになっているわけでございます。
  33. 只松祐治

    ○只松小委員 私も、横山さんとの一問一答はこまかく存じませんが、あなたのほうがおっしゃっておることは、よほど悪質と申しますか、全般の税理士さんではない。横山さんも、中にはそういう人もあるだろう、こういうことをおっしゃっているわけですから、これは税理士さんにたいへん失礼でございますけれども、世の中にはくずやら悪いのも多少おるわけです。弁護士の中にも弁護士会から除名されるような人もおるわけです。要するに、特に悪質というようなものを皆さん方としてマークしたい、そういうことのようにおっしゃっておるわけです。そういうことならば、この税務署管内にもしあるとしても、この国税局にはこういう人がおるとか、あるいはこの税務署にこういう特に悪質な人がおるとするならば、リストをつくるにしても——あなたはつくらないという発言をなさっていますけれども、つくるとしても、総務課あたりでこの人ぐらいが、ということなら、これはまあまああなたがおっしゃっていることと多少似通ってきます。しかし、そうじゃなくて、いまの答弁を聞きましても、さっきの横山さんのときとは、ぼくは答弁がずれてきたと思うのです。調査に関連しての問題をいま答弁なさっておりますけれども、そういう面からいって、ただ単に、特に悪質ということではなくて、やはり税の調査なり徴税上の問題として皆さん方はお取り上げになって、そういうことに多少でも妨害になったり何かするような、骨っ節のあるような税理士をマークしていきたい、こういうように、いまの答弁からも私は聞こえるし、実際上も、法人税課にリストを置くということは、そういうことではないかと思う。だから、さっきから出ておりますように、この委員会なり国会だけのその場のがれの答弁ではなくて、やはりこういう通達を出して、どこの所管に握って、どうする、こういう一連の動きを見れば、私たちとしては、長官がこの場だけできわめてわかったような御答弁をなさっても、なかなか実際上として理解がいきにくい、こういうことになるわけでございます。したがって、結論的には、撤回してもらいたい、こういうことになるわけでございます。いまの答弁からも、特に悪い人だけというあなたがさっきから御答弁になっておる趣旨とは違うように思います。総務課あたりの所管でそういう人をどうするというのなら、これはあなたが答弁されたように意義があるが、法人税課に置くということはどうしても納得できない。
  34. 泉美之松

    泉政府委員 これは三ページの終わりのほうにございますように、まず、関与状況調査票はそういう調査担当のところで二部作成いたしまして、一部は決議書に添付する、一部は総務課のほうに送るわけでございます。法人税課のほうには、決議書を引っぱり出してきますとそれが見えますけれども、票そのものをずっとそれだけつづっておくということではないのであります。それだけは総務課のほうでつづるわけでございますから、御趣旨のようになっておるわけでございます。
  35. 只松祐治

    ○只松小委員 だから、結局、特に悪い人ということだけではなくて、一般的にどの税理士さんがそれに関与しておるかということを見ることと同じになってくるわけです。あなたは総務課にも写しがあると言っておる。それから、法人税課にも置いているわけですから、Aという会社にはBという税理士さんがおる。Cという会社にはDという税理士さんがおるということで、結果的には、これは見比べることになるでしょう。そこまで一々見比べるまではしないかもしれませんけれども、およそのものは法人税課で目を通すということになるわけですから、それはさっきから答えられていることとは違うと思う。だから、総務課だけに置くというのなら総務課のあれがあるけれども、なぜ法人税課にも置かなければならないか。これは一般的徴税行政の問題と対税理士さんとの問題がある。いまは関連質問ですから、また他日やってもけっこうですが、私はそのことをここで一応指摘しておきたいと思います。
  36. 泉美之松

    泉政府委員 ちょっとお答え申し上げますが、関与状況調査票は、先ほど横山委員からお話がございましたように、重加算税を決定することとなる事案でございますので、重加算税の決定をいたしますのは、全部の更正決定件数のうちの三%から五%程度でございますので、いまお話のように、全部の法人についてそういう関与状況調査票をつくるわけでは毛頭ございません。そして、法人税課あるいは調査課のほうではそれは決議書のほうにつづってしまうわけでございますから、法人税課の手元にはないわけでございます。そして、これを総務課のほうで税理士ごとに料理するということになっておるわけでございますので、お話のように、そういう重加算税をかけられるような事案の場合、それに関与いたしました税理士の方の指導監督を行なう総務課にそういう資料を持っておる、こういうことでございます。
  37. 只松祐治

    ○只松小委員 問題があと先になったのですが、これが税理士のほうでキャッチされて、ここにあります広報に載せようということで何か話し合いがあったら、すぐ国税局のほうからお呼び出しがあって、それに載せないようにと言われた。この前の税理士法のときも、国税局が呼び出した、呼び出さないということで一騒ぎして、泉さんは出ておいでになったかどうか知りませんが、委員会で問題になったわけです。そういうことは絶対に二度といたしませんということで、当時はケリがついたわけですが、またちょっと何かあると、あなたたちは税理士法を改正しようとしているのじゃないか、こういうことを言ったわけです。いま言ったように、二度とそういうことは起こしませんと、こういうことですが、またこうやって、ちょこっと書こうとすると、国税局から呼び出しが来て、書くな、こういうことです。しかし、こういうように税理士の全部に関する問題だから書きますということで、話はもの別かれになって書いた、こういうことを私は聞いておるわけですが、あまり国税庁のほうはみみっち過ぎやしませんか。多少そういうものに書かれようが載ろうが、国税庁が堂々と仕事をやっておれば、天下の国税庁なんだから——いま日本で昔の陸軍以上に強いと言われている国税庁ですから、そんなことを書かれようが何しょうが、自分たちが正しければ、一々神経質になる必要はないのじゃないですか。そう神経質になる必要はないと同時に、そういうことで、一々弁護士会が何かするから法務省に呼び出してするとか、ちょっと芸がこまか過ぎますよ。大体、国税庁は歴代芸がこまかいんだけれども、そこまでいびり散らかさなくてもいいと思うんだ。これも二度目なんですけれども税理士今の広報あたりまで国税庁が関与するのはどうか。もしそういうことがあったとするなら、それこそ、いかなることがあっても、今後そういうことをしないで税理士会なりそういうものは自由に広報活動なり何なりを行なわせる。あれだけの人格を持った人々が集まっておられるわけですから、それまでもそういうようにいびり散らかすということは、きわめて私は越権行為だと思うのですが、どうですか。まずあったかなかったか、ひとつ……。
  38. 泉美之松

    泉政府委員 その話は私きょう初めてお聞きするわけでございまして、そういうことについて存じておりませんけれども税理士会の広報事務を国税庁のほうで制限するとか、妨げるということは適当でないと思います。ただ、おそらくそういうことがあったとすれば、この通達につきましていろいろ国会でも問題になっておることでもありますので、それが地方の税理士の方でございますとその状況がよくわからないままに誤解を来たすおそれもありましょうから、そういう誤解を起こすようなことがないように、こういう趣旨であったのではないかと思うわけでございます。したがって、一般的に申し上げまして、税理士会のそういう広報活動を妨げるとか、制限するとかいう気持ちは毛頭ございません。
  39. 只松祐治

    ○只松小委員 一般的には、あってはならないのですが、こういう問題が起きたときに、すぐ呼び出してそういうことをされるわけですね。この前の税理士法の改正問題のときにも、絶対そんなことはしないということを——もう一ぺん議事録をひっくり返してきてやってもいいのですけれども、僕らはそういうように理解しておったわけです。ひとつ、ぜひそういうことを今後一切しないように、私も強く要望しておきたいと思います。
  40. 山本勝市

  41. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 それでは、簡潔に国税庁長官意見を聞きたいと思います。  横山先生が提起をした税理士に対する指導監督実施要領の制定の問題で、いろいろやりとりがあったわけであります。私は、泉さんが主税局長から国税庁長官になられたときに、全くりっぱな人が国税庁長官になられて、税のことも詳しいし、常識は円満であるし、きわめて穏当で、全く名国税庁長官ができたということで、非常に内心喜んでおったわけでございます。こういう人であるならば、かりに部下のほうからいろいろ専門的な問題を持ち込んでこられましても、自分の才能と力量と、また自分のいままでの貫禄からいって、ともかく部下の押さえもきいて、間違った法の執行ないようにやってくれるだろうというように期待をしておったわけでございますが、どうも国税庁へ行くと、あの屋敷の中へ入ると幾らか感覚が違ってくるのかどうかわかりませんけれども、いままでの御答弁をお聞きして、どうも私、泉長官らしくない点が二、三感じられますので、そういうような点について御質問を申し上げてみたいと思います。  まず第一は、この指導監督実施要領が制定をせられた理由でございますけれども、これにも書いてあるように、税理士の業務運営の現状は必ずしも満足すべき状態とは認められない、だからこれを改善していくのだという中で、先ほど長官お話では、税理士の顧問件数の中で非常に更正決定の件数が多い、案外に多いというようなお話がございました。私はこれについてこういう考えを持っておるのです。税理士が持つようなところはどうしても更正決定が多くなるのは必然的だと私は思う。その理由を申し上げたい。  それは、大きな会社やあるいは成績のうんとあがっているところでは、高給を出して大学出の税の専門家を雇って、あるいは税務署から引っこ抜きをやって、査察官や調査官が経理課長や何かとして入っている会社がたくさんあります。そういうことで税務署にいたときの五倍ぐらいの金を払ってやらせている。実例が知りたかったら名前も教えてあげます。そういうふうなことですから、それは大きなところは確かに間違いは少ないかもしれません。それに、基礎資料がすっかり整備されておる、こういうことですから、大きな間違いは案外ない。もう一つは零細業者であります。帳面もろくにつけられない。そうかといって、税理士に頼めば月に三千円か五千円金がかかる。こういう人は、もともと帳面もつけられないのですから、これは何といったって、税務署に相談に行って、話し合いの上で、向こうの大体指示した金額を書いてくる以外に方法はない。税務署の言うとおり金額を書いてくれば、更正決定されないのはあたりまえではなかろうかと思うのです。その中間のところがどうしても税理士のところに集まってくる。事務員を頼めば月に一万二千円か一万五千円ぐらいはかかる。税理士に頼んでおけば、五千円か三千円で済む。それで、何とか資料だけは集めておいて、それをまとめて、曲がりなりにも決算書をこしらえてくるというような、税理士業務からすれば多少かけ離れているかもしれませんが、決算屋のような、あるいは税理士業務といえば税理士業務のような、あいまいな形で、ともかくあるだけの資料によって税理士書類をこしらえるわけですが、精一ぱい一生懸命やっても、もともと元本が違うのですから、なかなか税務署の組織力を動員して調べるというぐあいにはいかない。間違いやその他も出てくる。したがって、税理士が持っておるものに更正件数が多いという理由は、そういうことがあるのだということを長官に強く認識してもらいたい。いいことじゃない。いいことじゃないが、実情というものはそういうふうな実情にあるのだ。それが現在の税理士実態なのだ。税理士がかまわなければなお帳面や何かはめちゃめちゃになるのを、そこまでいかないように押えて、何とか曲がりなりにも出しておるというような実情で、税理士というものは、国税の納付、申告というものについても、正確な申告が比較的できるように協力しているのだ、こういうふうにひとつ認識を改めていただきたいと思いますが、長官の御意見はいかがでありますか。
  42. 泉美之松

    泉政府委員 お話のように、大企業でございますと、税務の専門家を雇える、零細の企業になりますとなかなかそれだけの経費を出しにくい、したがって、税理士に依頼するような企業でありますと、基本的な帳簿組織が必ずしも十分備わっておらない、そういうことのために、税理士の方がそういった企業についての申告書を作成するについてずいぶん骨が折れる事態にあるというこの実情は、私もよくわかります。その点はお説のとおりだろうと思います。しかし、そういうむずかしさの中から、やはり正しい申告書をつくるにはお骨が折れることは存じますけれども税理士として御努力を願いたいという気持ちでございます・そういったむずかしい事態であることは私も十分わかります。
  43. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 そういうふうなことの御理解をいただければ、一つは私の目的は達せられるのでございますが、実際問題として、たとえば、その内容においてどうもおかしいというように思いましても、税理士のほうで突っ込んで聞いても、この借り入れ金ははたしてあるのかないのか、間違いなくこれは個人からの借り入れ金で、こういう証書があるといって、架空の証書を見せられても、現実にはそれがほんとうに架空であるかどうか、反面調査をしてみないとわからない。税理士にそこまでやる責任もないし、また時間的に余裕もないし、これは一つの経済行為でもございますから、とてもそれじゃ引き合う仕事じゃありません、そこまでやったのでは。だから、そういうことで問題がよく出ることが多いのであります。  そこで、今回間違った不正計算を行なった者に対して理由書を出させるというのが一つの基準になっておるようでありますが、ここでいう不正計算とは一体何ですか。先ほど長官お話では、それは重加算税を取られたような者、いかにも重加算税を取られたような者だけが該当するように言っておりますが、取られたような者まさしく通達にはそういったことが書いてあります。重加算税を取られた者、また重加算税を取られないまでも、それに類似をしたような者、故意または相当の注意を怠ったということで更正決定をされた者——重加算税を取られた者はもちろん入るのだところがそのほかに、重加算税は取られないけれども、取られそうなかっこうになった者、これはものすごく範囲が広くなります。現在の重加算税というのは、仮装隠蔽ということで、税理士が関与しておっても、税理士がともかく注意しても取られるものはたくさんございます。どこまで注意したか、しなかったかということは、実際非常な水かけ論になります。これを一方的に重加算税を取られたから税理士の責任だ、重加算税を取られないけれども、重加算税を取られるに近かったから税理士の責任だということになったら、ひっかからない者はただの一人もおりません。そこまで言うのは過酷に過ぎる。そういうことを税理士に言うのだったら、税務署の職員になぜ言わない。更正決定はいろいろむずかしいことがあります。それを一方的に更正決定する。上級機関にいくと、なるほど税理士が最初から主張したとおりである、裁判で取り消してくれます。あれほどこっちが正しい法律に基づいて正しいことを言ったにかかわらず、それで飯を食っているやつが——やつと言っては語弊がありますが、飯を食っている者が税理士の言うことを聞かないで、一方的に更正決定をして取り消された裁判で負けて。その人の処分はどうなっていますか、教えてください。
  44. 泉美之松

    泉政府委員 先ほど申し上げましたように、この通達に基づきまして税理士等の関与状況調査表を作成する場合は、国税庁通達におきましては、重加算税を決定することとなる事案、——重加算税は、御承知のとおり相当事実を隠蔽仮装したことによって脱税をはかったという場合に重加算税を決定するわけでございまして、少々の金額の場合にはもちろん重加算税を課することはないわけでありまして、かなり大きな金額で、事実を隠蔽仮装した場合に課するわけであります。それからまた、増差所得金額が多額な場合に限ってそういう関与状況調査表を作成することになっています。ただ、渡辺委員がお手元にお持ちの大阪国税局通達には、いま私が申し上げました国税庁通達より少し範囲が広くなっております。そこに問題があることは、先ほど横山委員に申し上げたとおりでございます。したがって、この関与状況調査表を作成するのは、そういった重加算税を決定することとなるような事業案に限られるわけでございまして、したがって、税理士の関与されている事案の中でもごくわずかなものになるわけでございます。  それからなお、いまお尋ねの調査担当者が税理士の主張を聞かないで更正をしておいて、あとになってそれが上級機関あるいは裁判所へいって取り消された事例があるわけでございますが、それについてどういうふうな処分をしておるかということにつきましては、そういった事例につきましては、その事例を集めておきまして、そういう事例のある職員につきましては厳重に注意をすることにいたしております。ただ、その解釈問題につきましては、いろいろ通達その他で明らかにしておりますけれども通達でなお明確でないような場合もありますので、本人の責めに帰すべき事例かどうかというような個々の具体的な事案に従ってその注意の内容はそれぞれ違っております。
  45. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 長官、これは税理士のほうばかり責めるから私はあえてそういうことを申し上げたのであって、現に、申告是認の通知がきて、調査に来て、あとから更正されるというのはざらにあります。しかも、三人も四人も来て、一週間もかかって、そのとき注意してくれればあとで騒がなかったものを、そのときはこれでいいのだといって、あとから増差額がかけられる場合があります。そういうときには、相当な注意を怠ったということを税理士だけに適用して、税務職員には適用しないのか。相当な注意ということになってまいりますと、非常に限界がむずかしい。まして、重加算税を取られ、あるいは重加算税に類似した——更正を受けたことのない税理士なんというのは、全国に何%おりますか。ごく微々たる悪質税理士だけを対象にするのだとおっしゃっておりますが、重加算税を取られない税理士が全国におりますか。それからもう一つは、税務職員で、自分で決定したとおり一つも間違いがなかったという職員が何人おりますか。何%いるか答えてください。
  46. 泉美之松

    泉政府委員 そういうパーセンテージにつきましては、特に調査いたしておりませんので、私存じておりません。ただ、一般的に申し上げますと、もちろん、調査担当者は十分調査を行ない、相当多数の件数を扱っておりますので、場合によって、後ほど訂正されるといったような事例があることは事実でございます。
  47. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 税理士の場合だって同じです。積極的にこっちが脱税指導をするとかどうとかということなら話は別ですけれども、この通達おりにやられたのでは、ほとんどの税理士が全部ひっかかる。だから全管リスト等をつくりなさいと最後に書いてあります。だからこれはできます。それならば、税務署の職員もそうしてもらわなければならぬ。現実の問題としては、神様でない限り、ことしの年度に課税すべきか、来年の年度に課税すべきかということは、非常に争いが多い。それでも、考え方によっては、重加算税の対象になるようなものも多いのです。重加算税というものは、額できめているというが、そんなことはありません。これは質できめているのです。小さなものでも重加算税を取っている実例もあります。出せというなら調べてきて出します。ですから、これは長官御承知のように、そうしゃくし定木でぴしゃっとはかったように実務の上ではいかないのです。ですから、こういう通達というものは、往々にして行き過ぎになることが多い。したがってこういう点は十分に考えていただきたい。  第二番目の、税理士が自己の所得について不正申告をしたかどうか。詐欺横領なんということは別にして、税理士の不正申告というのは、一体どの程度までですか。そういうものがかりに更正されたら、処罰を受ける。税務署の職員や主税局の職員が雑誌に執筆して原稿料をもらって、合算しないで申告して、更正された例はたくさんあるのですよ。こういう場合はみな処罰しますか。これも同じことであって、あとから、不正があったら、それに対して追徴金を取るなりあるいは加算税を取るなり、延滞利息を取るなりやっている。ですから、そこら辺はバランスは十分とれているのです。それを、さらにここで強化をしてやらなければならなぬというようなことは、どうも行き過ぎではないかというような気がしてならないのであります。  その次は、にせ税理士をなくするために、立ち会いは税理士に限る、原則として税理士にやらせるというようなことも書いてございますが、立ち会いとは、法律上何ですか。第何条何項に規定していることですか、説明を願います。
  48. 泉美之松

    泉政府委員 税理士法の第三十四条、これは御承知のように事前通知規定でございます。そして、この事前通知に基づきまして、納税者のところへ当該職員が行って調査をするわけでございますが、その調査を行なうときに税理士の方が立ち会うということが行なわれておるわけでございます。
  49. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 立ち会いの定義は書いてありますか。特別な項を設けて書いてありますか。
  50. 泉美之松

    泉政府委員 立ち会いの定義は別段ございません。
  51. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 これは実際問題からして非常にむずかしいんですよ。立ち会いということは、どこまでが立ち会いなのかということは、現実にはっきりした限界はないのです。法律にも書いてなくて、省令や規則でも明確な限界がなくて、それで、一々立ち会った、立ち会わないで処罰の対象に書類をとられたらたまったものじゃない、時間的にある程度きめられちゃうのです。常識的には、立ち会いというのは、税法解釈を積極的に行なって、自分の主張を納税者にかわって税務署に言うというような税務交渉の場合に、調査をしながら、税務交渉を一方においてやるというのが、私は立ち会いだと思います。これも普通の常識的な観念です。ただ調査に行ったからといって、ともかく、税務職員が調べるときに税理士がそこにただ黙ってすわっている、聞かれれば返事をする、こういうものは、私は立ち会いではないと思うのです。これは単なる説明なんです。立ち会いというのは、行ったって行かなくたっていいんです。だからこそ、事前通知もしないでひょっと調査に行って、税理士も立ち会わないで税務署はやっているのです。査察のときに税理士を立ち会わせますか。一人だって立ち会わせていません。特調のときに税理士に立ち会わせますか。立ち会わせていませんよ。特調でなくても、十のうち三つなり四つ、百のうち二十なり二十五なりを税務署税理士が立ち会わないで、独断で行って調べているんですよ。自分たちがかってなことをしておいて、しかも、納税者のほうから、まあ本人がこられなくてもけっこうですから、事務員一人をよこして帳簿をよく説明してくださいというようなものまで立ち会いとして解釈するのですか。税理士が来なければいけないということまで国税庁は言うのですか。それなら税理士に対して、この日は調査に行きますから、必ず立ち会ってください、御都合はどうですかという調査の了解を得ますか。税理士のからだは一つですよ。一つで五件も十件も一ぺんに調査されたときに、立ち会いができますか。そういうできないようなものまで立ち会いについて云々ということをここで強く言って、懲罰の対象にするようなことを書くことは行き過ぎでありませんか。お考えはどうですか。
  52. 泉美之松

    泉政府委員 先ほどから渡辺委員のおことばではございますが、この立ち会いについて、使用人など無資格者に行なわせないこと、あるいは関与状況調査票を作成することが直ちに税理士に対する行政処分という問題とはつながっておらないわけであります。こういう関与状況調査票を作成し、理由書の提出を求めた、そういう理由書がいろいろ重なった場合に、そういう税理士についていろいろ指導して、そういうことのないようにやっていただきたいということを申し上げて、なおかつ重なっていく場合に問題になるわけでありまして、すぐにこれが懲戒処分に関連するというふうにはおとり願わないようにお願いいたしたいと思います。  それから税務調査の立ち会いというのは、税務署職員が調査に行った場合にただそばにおったというだけではない。もちろん、お話のように、その事案について、こういう経理をしたことの解釈についての意見、あるいはそれに対する税法の適用についての意見、こういったことを言っていただくのが趣旨でございまして、したがって、その税理士御本人の方が記帳をされておらない場合に、その記帳をされた人が従事員である場合に、その記帳の内容について説明を求めるのは、必ずしもそういう税理士の方ではなくて、実際に記帳した方のほうがむしろ適切でありますから、そういった場合にはそういう方にお聞きするわけでありまして、したがって、そういう税務立ち会いの中身というのは、それぞれその調査の展開に応じて生ずるいろいろな事柄に応じて税理士御本人にお聞きしなければならぬ場合と、それから職員の方でも済む場合と、これはいろいろあろうと思います。私どもは、職員の方で済む場合にまで税理士御本人が来ていただかなくてはいかぬというようなことを申しておるのではございません。
  53. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 しかしこの通達はばく然と立ち会いというものを書いてありまして、この字のとおり読めば、税務署調査に行ったときには、その帳簿の説明や何かは税理士以外の者はしてはいけないようにこの通達はとられるのですよ。そこに問題があるのです。立ち会いの定義というものがないからそういう問題が起きてくるのです。そこで、税理士会が、ただ調査に行って、税務署の職員がいろいろと問答することも全部立ち会いだ、だから税理士が行かなければだめなんだということに解釈して、全国一斉に、調査に対しては、税理士が行けないものは事務員の派遣は一切しないことにいたしましょう、立ち会いは放棄しましょう、こうやられたら、困るのはどこですか。そのほうがけっこうですか。御意見をひとつ……。
  54. 泉美之松

    泉政府委員 御承知のとおり、この税理士法に基づくところの税理士の業務の中には、税務代理の仕事が大きく出ているわけでありますけれども、その税務代理の中には、もちろんその納税者の持っておる書類に記載された事実の解明あるいは陳述も含んでおるわけでございまして、したがって、立ち会いという場合に、税理士御本人の方にお聞きしなければならぬ場合と、先ほど申し上げましたように、御本人の方は記帳しておらないので、むしろ記帳していただいたそういう職員の方にお聞きしたほうがいい場合と、両方あろうと思います。したがって、そういう立ち会いをやめてしまうというようなことをなさることは、これは税理士の方としては適切ではないと思いますので、どうかそういう穏当を欠くようなことにならないようにお願いしたいと存ずるのであります。
  55. 渡辺美智雄

    ○渡辺(美)小委員 これは、長官はいろいろ理屈をこねていますが、自縄自縛になるのですよ。ただ税理士のほうばかり取り締まろう、取り締まろうと思って強化すると、自分のほうが非常に不便になるのです。これは税理士のほうがみんな言うことを聞けばいいですけれども、一ぺんに総反抗してごらんなさい。参るのは国税局です。参るのは税務署です。納税行政に非常な支障を来たしますよ。税理士がおとなしくして、唯々諾々として羊のごとくくっついていけば別、しかし税理士のみんなが立ち会いをする義務はないんだから、立ち会いは一斉にやらないことにいたしましょうと申し合わせたら、困っちゃうのですよ。それだけに、もう少し税理士との間というものは話し合いをしてやってもらいたい。  それからもう一つは、にせ税理士の問題です。にせ税理士の問題を放置しておいて、にせ税理士とそれから税理士以外の職員のことなど区分けがつかぬと、こう言う。じゃなぜ税理士の諸君は登録をさせて監督の対象にしておるのか。税理士の諸君には身分証票を各税理士会は自主的に出させているのですよ。登録もしているが、にせ税理士のほうは野放しなんですよ。野放しのほうの人はそのままでかまわぬで、税理士の諸君は税理士の身分証明書を持ち、登録証を持ち、しかも税理士は職員のやった行為に対して責任も実際問題としては持っておる。そういうふうなものについてだけ強く当たって、にせ税理士のほうがむしろかまわれないでいく。にせ税理士を取り締まってどんどんやってきたけれども、こういう壁に突き当たったのだ。その壁をぶちこわすために、税理士会にどうしたらいいだろうかといって、相談に来るなら話は別です。しかし、そうでなくて、ただ、明々白々と、税理士でございます、看板をかけて、規則に従ってやりますという者にのみ強くこれが適用されるというようなことは、一体何のためにこういうことをおやりになるのか、私にはわからないということであります。  私はそのほかに言いたいこともたくさんあるのですけれども、割り込みで、平林さんの大事な質問があるので、私ばかりやったのでは申しわけありませんから、私は御遠慮申し上げて、その質問をあとに保留しておきたいと思いますけれども、この中で一番けしからぬことは、このリストの中で評定項目があるわけです。その中でどういうのがあるかというと、税務行政にどの程度協力したか採点しろと書いてある。そうして、この中には、国税庁から出したのは、たとえば、調査にきわめて協力的であったとか、なかったとかも書け、そういうことも書いてあるのですよ。税務行政に対してどの程度協力したかというのは、調査をする人は、自分の言うとおり、何でもはい、はい言ってくれれば、これはいい、ともかく従順な税理士税務行政にうまく協力してくれた、おれの言うことに対して一々反駁するやつは、とんでもないやつだ、これはバツのバツだというようなことをやられたのでは、税理士制度なんか崩壊してしまうのです。これはやはりめしの種のほうが大事ですから、納税者のほうのことよりは自分のほうのことになってしまいますよ。社会正義なんか実現できません。一々、弁護士が検事のところに協力したかしないか、それを点数でとるのだ、そうして、ちゃんとこういうふうなブラックリストをつくってとっておるのだ、たび重なったら、処罰の内容に積極的に活用するのだというようなことが具体的に書いてあるのです。それはきわめてその意図が明々白々であります。大阪国税局長の出した中にはきわめて穏当を欠くという面があるかもしれぬ、そうお茶を濁さないで、もうちゃんとあるのですから、大阪国税局長の出した通達は全部取りやめて、国税庁の出した通達についても再検討というぐらいの、泉長官ならずばできないような、快刀乱麻を断つような名答弁をここでぴしっと願って、私は一応ピリオドを打ちましょう。どうですか。
  56. 泉美之松

    泉政府委員 先ほどお話のにせ税理士につきまして、その取り締まりを厳重にしなければならぬということは、お話のとおりでございます。したがって、私どもといたしましても、そのにせ税理士につきましては、これは悪質な税理士法違法行為でございますので、それを摘発するように今後とも努力いたしてまいりたいと存じます。  なお、この通達につきましては、先ほど横山委員の御質問にお答えいたしましたように、国税庁通達とそれから大阪国税局長通達を含めまして、それらの中に穏当を欠き、誤解を来たすおそれがあるような点につきましては、再検討をいたしたいと存じております。
  57. 山本勝市

    山本委員長 只松祐治君。
  58. 只松祐治

    ○只松小委員 私は、質問に入る前に、いま渡辺さんも途中でおやめになり、横山さんもしり切れトンボでやめられたのは、久しく税小が開かれなかったから、いろいろ質問したいこと、言いたいこと、たくさんあるからだと思うのです。私もたくさんあるのだけれども、簡単に一問だけにしないと、平林さんが今度は全然できなくなるから、したがって、すみやかなる機会に税小をさらに開いていただきたい。いままで、ずっと開いていなかったのですよ、小委員長がきまらなかったから。そのことを特に要望いたしまして、理事の御尽力をお願いいたしたい。  次に、いまの問題とも関連するわけでございますが、資料要求をいたしたいと思います。  全国的な更正決定の状況、それから重加算税の課税状況、それは全国的なものと東京とそれから地方との二つのモデル的なものをおあげいただきたい。というのは、私は前に木村さんのときにだいぶそれをやって、資料もいただいたわけですが、その後国税庁が出しておりますが、当時、多少数字が違うかと思いますけれども国税庁のほうから出した数字では、調査率は全国で三〇%そこそこだった。埼玉で私が調べたのは四五%です。その中で、更正決定が行なわれたのは、やはり全国的に三十何%、埼玉では八七%から九〇%、その中でさらに重加算税が課せられたのは、さっき泉さんがおっしゃったように、全国的には大体三〇%、埼玉では三十何%、このくらい、いわゆる全国的なものと地方の実態とは違っておる。そういうことがあってから、いま税務署に行ったってなかなか教えてくれませんよ。教えてくれませんけれども、私はその当時税務署に行って、税務署の人に教わったわけです。私はでたらめに、推定で言っているわけではないのです。そのくらい実際違う。というのは、たとえば東京では、この前私ちょっと言いましたように、調査率が二〇%前後です。地方ではいま言うように四五%、全国平均すれば、東京とか大都市は低いから、平均三十何%になってくるのは、これもそのとおりなんです。ところが、地方ではそれ以上に、あそこは金をもうけているとか、利益が多いとかわかる上に、調査率は非常に高い。東京や大都市は低い。ですから、いまの資料とともに、全国的なモデル的なものを、ひとつ地方と大都市とをあげて資料をお願いしたいと思います。  一点だけ御質問をしたいと思いますが、何か一月の終わりごろ、これもいわゆる内部通達といいますか、秘密通達といいますか、お出しになったもののようでございますけれども、交際費等の課税の認否の問題について、そういう通達が出ておるようでありますが、私たちが常に言うように、大会社の交際費とかあるいは広告費とか、そういう面はたいへんにずさんなものがあります。こういうことはもう少しちゃんとしなさいということを言っているのです。ところが、中小企業や零細企業の場合にはこれがなかなかやかましいわけです。たとえば、一例をとりますと、私も昔三越のストライキをやって、なるほどこんなものかと思ってびっくりしたことがありますが、デパート等の仕入れというのはものすごくデパートから締め上げられるんですね。仕入れを行なう者に頭を下げていろいろなものを持っていったり何かするというのは、買収とか贈賄とか収賄と違って、慣習上なかなかたいへんなわけですね。ところが、そういうものを国税庁のほうは、商慣習ではあるけれども、なかなかお認めにならないわけです。それならば、ずばり言って、ひとつあなたのほうで利益の中からちゃんとしなさい、これだって交際費としてはお認めにならない。そういうものを何か否認せよというようなさらに明確な通達か何かお出しになったそうでございます。まず、そういうものをお出しになったかどうか。秘密でございますからなかなか言いにくいと思いますけれども、ひとつお答えをいただきたいと思います。
  59. 泉美之松

    泉政府委員 御質問の内容がちょっと私わかりかねるのでございますが、交際費を、課税上どういう経費は認める、どういう経費は認めないということでの通達は、最近になって出したことはございません。ただ、最近出した通達と申しますのは、これも昨年暮れから正月にかけまして——私も正確に記憶いたしておりませんが、そのものはこういう内容のものでございます。と申しますのは、交際費なりあるいは寄付金に使った、そしてこれを支出した、こうおっしゃるわけでありますが、それでは、どなたに寄付したのか、どなたに贈与したのかということを明らかにされない場合があるわけでございます。これはそういうことでは相手先について調査ができませんので、そういう、ただ金を出したというだけでは、損金には認めません。したがって、相手先をおっしゃっていただいて、相手先について反面調査をしても差しつかえないという場合には、それは経費として認めます、こういう通達は出しておりますが、それ以外にお話のような点についての通達を出した覚えはございません。
  60. 只松祐治

    ○只松小委員 そういうことに類似した問題です。たぶんそれも含まれると思いますが、そういう場合に、いま申し上げますように、非常に過当競争で激しい。それで、それは千円のものであるか一万円のものであるかわからないけれども、贈りものをするか、接待したか、何かとにかくそういう形でやる、それが課税対象になると、相手は、そんな千円や一万円のものでおれのところに迷惑をかけるような店なら要らない、そういうことで手伝いの出し方一つでも、デパートにいままで来ておったのをけったり、なかなか激しいことなんですよ。あそこのデパートなんかに出ている売り子というのは、相当数を出している店の売り子ですからね。ネクタイ売り場とか何かというのはデパートの店員じゃないですからね。あれについては、ひとつ皆さん方も税法調査になったらいいと思うのですけれども自分の店の売り子まで出してやっている。そうやっているところに、ちょっとでもおまえのところから何をもらった、幾らもらったということがわかれば、一ぺんに出入り禁止になっちゃう。ネクタイ一つでも、一軒だけじゃなくて、何軒も入っているわけです。私は極端なデパートの話をしているのですけれども、そういう問題もあるので、中小企業のこういうものを、裏づけまで出すということはなかなか容易ではない。そういう点を、ただ単に裏づけを出さなければだめだ、こういうふうにやるのではなくて、さっきから言われている問題を含んで、もう少し税の調査というものは民主的でなければならぬと私は思います。全部浮かして悪質だというようなものまで課税するなということをぼくら言っているのじゃないのです。やはりなれた人が見れば、この程度は、これは商慣習上使っているとかなんとかいうことはわかるわけですね。そういうのまであえて否認しろという通達まで出して全部否認したのではとてもやりきれないというわけです。ひとつ、そういう問題についても、もう少し幅のある解釈をしてほしい、こういうことをぜひしていただきたい。  ついでながら、そういうことと関連して、私常に言いますように、中小企業者のそういう問題については、おやじの酒飲み代まで交際費にしろということは申しませんけれども、そういうのは、なるほどといわれる面があったら、もう少しおおらかにしてもらいたい。その逆に、私はいろいろありますが、またあした粉飾決算の例を示して質問しようかと思っておりますけれども、表面上出さない問題でも、それこそ五億、十億というようなものをあなた方が発見し切っていないということは、大会社の調査がいかにでたらめであるかということのあらわれだと思う。こういう例は私のところにいま幾つもありますけれども、もう少し大会社をお調べになれば、わずかなものをいびり散らかさなくても、もっと出る。子供でもあまりいびっていますとひねくれますからね。税理士と敵対関係だけ持つのではなくて、私が常に言うように、青色申告はある程度の要件を認めていくとか、税理士さんとはできるだけ協力態勢をしいていくとか、権力によって徴税行政をするということではなくて、権力も全然否定しませんけれども、しかしそういうことじゃなくて、もっと話し合いといいますか、民主的といいますか、そういう税務行政を——特に渡辺さんが冒頭にえらいほめられましたけれども、泉さんも長官になって、功なり名遂げて国税庁長官になったならば、やはり多少税金というものをおれがやったときにこういうふうにりっぱにしたのだということが残るような税務行政をしていただきたいということを、ここはもうお願いですが、お願いいたしまして、もっと質問しようと思っておりましたが、平林さんの時間がなくなりますから、私の質問を終わります。
  61. 山本勝市

    山本委員長 それでは、私から一言だけ。  こういう場合はどうなりますか。実際に税理士にまかしておいた、安心してまかしておいたところが、違反になった、それで、さあというときになったら、税理士が逃げてしまった、おれにはどうにもならぬというので困る場合が具体的にあるのですね。税理士に幾らかずつ出してたのんでまかしておったところが、まあ、税理士にも言い分があるのだと思いますけれども、実際問題として違反問題が起こってきたときに、税理士に相談に行っても、もう私のほうはどうにもならぬというので逃げられる、こういうふうな場合があるのですが、かりに税理士の責任を明らかにして、注意すべきことを注意しないからその事件が起こって、税理士に対してある程度の責任を負わした場合に、その税理士に一任しておった業者自身の責任、納税者自身の責仕というものは軽くなるのかどうかという問題です。税理士にまかしておった、ところが税理士自分の注意を怠ったためにある間違いを起こした、本人はもう税理士を信頼しておるために、判を押せというから押した、何も悪意も何もなしに押したのだが、その場合に、税理士が責仕を問われたというときには、本人の責仕は、税理士が間違ったからというのでもう責仕は負わぬことになるのか、税理士税理士で、納税者自身もやはり同じように責仕を問われるのかどうかという、この一点です。
  62. 泉美之松

    泉政府委員 お尋ねの点が非常に抽象的な事柄でございますので、どういう事態を想定されておるかによって、お答えすべき内容がいろいろ違ってくるかと思うのでございますが、納税者税理士に一定の対価を払って帳簿の作成から申告書の作成までして、提出することまで依頼しておったという場合におきまして、税理士の方が相当の注意を怠って、税法に反したような申告書ができ、その結果として税務官庁から更正を受けた、こういうふうに想定いたしますと、これは税理士自身がもっと注意をして、そういうことにならないようにすべきであったという意味において、そういった注意を怠った税理士につきまして、われわれのほうで監督権を発動して、注意を促していく、そして、そういうことがたび重なるようであれば、行政処分もしなければならぬ、こういう事態になろうかと思います。ただ、そういうことになった場合に、それでは、納税者自身について、たとえば、過少申告加算税とか、重加算税とか、あるいはさらに進んで刑事罰はどうかというようなことになってきますと、これは刑事罰のほうまではそういう場合に発展しないと思います。本人に脱税意思がないわけでありますから、そういうところまではいかない。ただ、過少申告加算税となりますと、これはやはり納税者の方自身はそういうふうになっていることは知らなかったとおっしゃっても、過少申告加算税は免れることはできないと思います。一番やっかいなのは、重加算税を取るかどうかという点であろうと思います。これはそういう事態に応じてそれぞれ考えなければなりませんので、重加算税を取るかどうかということにつきましては、やはりそういった事柄の起きたその内容によってきまることと思います。納税者自身が税理士の方にまかしてしまっておったのだから、納税者の方に全然責仕なしというわけにはいきませんけれども、その責仕を追及し得ないような事例の場合には、酷になる場合もあろうかと思うわけでございます。
  63. 山本勝市

    山本委員長 帳面をつけることもわからぬから税理士をたのんだ。何もかもわかっておれば、税理士に月給を出してたのむ必要はないのだけれども、何にもわからぬから、伝票ぐらいはつくったけれどもあとのことは一切信頼して税理士にまかせた。税理士というものは権威もつけなければいかぬし、したがって責仕を負わなければならぬというたてまえで、税理士がきちんとこれでいいというものは、ほとんど無審査で通そうというような話も出たくらいで、そのかわり責仕も負わせる、それほど負わしたにかかわらず、本人までやはり責仕を問われる。これが相当軽くなれば、これは一般納税者は非常に喜ぶ点があると思いますが、これはしかしまたいずれ別に検討してまいりましょう。  それでは、平林君。
  64. 平林剛

    平林委員 時間もありませんから、明日から始まる税制調査会、この問題につきましてお尋ねをしておきたいと思います。  今度の国会では所得税法法人税法相続税法をめぐっていろいろ議論してまいりましたが、その中に長期減税の構想などについてもございましたけれども、税別調査会がいよいよあしたから始まるということになりますと、一応政府のほうにお尋ねしておいたほうがよかろうと思いまして、この機会に少しばかり主税局長のほうからお答えをいただきたいと思います。あした、何か総理大臣のほうから特別に諮問をするのですか。明日始まる税制調査会には新しい問題として何か特別に諮問するのかどうかという点をひとつ明らかにしておいていただきたい。
  65. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 平林委員のおっしゃられましたように、あすから税制調査会が、私どもの大蔵大臣がしばしば言明したように始まるわけでございます。大きな正式のいわゆる諮問事項は、税別調査会ができました昨年に、最近の経済情勢に応ずる税制改正の方策いかんという形でできておりますので、そういった意味の答申は、私どもは今回はしなくても済むのではないかというふうに考えおります。しかし、今回の税制改正を通じまして、国会で種々御議論があり、また、将来の検討にゆだねられたことがたくさんございます。そんなような意味で、私どもといたしましては、国会で論議になった、それから宿題となった事項、検討を命ぜられた事項、そんなようなことを資料として出したい、かように考えおります。さらにまた、調査会の運営のしかたといたしまして、冬部会で御検討していただきたい事項を一応項目だけ、諮問という形でございませんが、例示的に書いていただきまして、部会で検討していただく事項を出すようにいまのところは考えおります。
  66. 平林剛

    平林委員 もう少し具体的に、文書か何かでまとめたものがあれば、それをちょっと説明していただきたいのですが……。
  67. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 実は夕方次官室で省議をしていただいて、それからきめようと思っておったのでございますが、こんなように時間がなりましたので、まだ最終までいっておりませんが、主税局といたしまして考えおりますところは、まず、何といっても国会の御論議が大事でございますので、私どもといたしまして出す資料といたしましては、たとえば、第一に、税制調査会の答申と政府案との相違といったものを出したい、かように考えおります。  第二には、先ほど申し上げましたように、平林委員をはじめ多数の委員の方々が批判されたこと、宿題とされたこと、それからまた、建設的な御意見がございましたが、たとえば、長期減税構想は平林委員の御要求によりまして五つのモデルを出しました。これもそのまま出していって、こんなようなモデルも出しました。これにつきましては、千七百億円から二千七百億円の減収を伴うものでございます。その減税のしかたも、納税者に及ぼす影響は、納税人員が千万に減るものから四百万に減るものまで非常に幅がある、このあたりのものにつきましてどんなふうに考えていったらいいかという意味でひとつ出していきたい、その他の宿題となりましたものを網羅的に全部、私あるいは大臣が国会におきまして質疑応答いたしましたその議事録から選び出しまして、項目といたしまして出してみたいと思います。その中には、平林委員から御注文のありました扶養親族等の所得限度額、これも一ついまのところ一応項目として入っております。こんなようなことを出していきたい、そのように考えおります。
  68. 平林剛

    平林委員 そのお答えで大体私満足するわけでありますけれども、一部この長期減税構想についてあとでお尋ねしようと思っておるのですが、新聞によると、そういういろいろな問題を議論されて、ことし解決すべき問題も宿題の中にはたくさんあるわけですが、大きく関心を寄せなければならないのは、さしあたり、来年度の減税についてその結論を出してもらうつもりなのかどうか。つまり、ことしの十月あたりには中間的答申でも求めようというお考えがあるのかどうか、その辺はいかがですか。
  69. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御指摘のように、長期減税構想を含めての減税の問題は、最も国民の関心が高いところでございます。平林委員御指摘のように、できる限りひとつ御期待に沿うような努力をすべきだと私ども考えおります。大臣もしばしば、粘り強くがんばっていきたい、そのようなことを言っておりますが、私どももそのような気持ちで、ぜひこの方向を、どうすれば実現できるかということを税制調査会の皆さん方の御審議にゆだねたい、かように考えおります。しかし、何ぶん財政問題を伴います。しかも、何と申しましても、私どもの大臣がしばしば申しておりますように、公債によりまして減税できましたのが今年でございます。来年度はその公債という財源手段というものがきわめて限られておる、そうなりますと、多分に租税収入の自然増加ということに期待せざるを得ないかと思います。そんなような意味で、私どもの気持ちといたしまして、いままでの税制調査会の審議の経過から見ましてもそういう経過をたどったわけでありますが、経済事情を見ながら、税の自然増収の動向を見ながら、さらにまた財政事情のおもむくところを見ながら、それに応じてひとつ減税問題を進めていくのがよいのであろう、しかし、長期減税構想というものは、おっしゃられますように、確かに減税の目標を立てるわけであります。したがって、これをできるだけ早く打ち立てて、その間、当年度あるいは来年度の措置といたしましては、財政事情を考慮し、経済事情を考慮し、自然増収の状況を考慮するというようなことにならざるを得ないと思うのであります。そのような意味で、御指摘の中間答申を求めるということにつきまして、これは税制調査会の審議の結果にもよろうと思いますが、私ども内部的にはまだそういった議論が熟していないように思っております。もちろん、事情によって、法律の問題でもございませんので変わるかもしれません。しかし、私どもはこのような気持ちでもう一つ進めたい問題があるのです。それはできるだけ早く国民の皆さん方にわかるような打ち出し方をしてはどうか、私の申し上げておりますのは、税制の簡素化の点であります。国民に理解され、利用できる税制、これが理想だと思うのであります。しかし、一方、非常にむずかしい御注文もございますし、また、変な形で税制が乱用されても負担の不公平になるものでございますから、税制は複雑でありますが、ひとつ、この際思い切って簡素化を考えていこう、先ほど来の御議論を聞いておりますと、中小企業者なんかにはもう少し違った形の課税所得の計算原理があってもいいような気もいたしております。しかし、そのあたり、なかなか私も自信があるわけではございません。  それともう一つ、多分にこの問題は技術的でございますので、早目からひとつ出しまして、法文の作成その他によって変なふうなことにならないように、国民の方々に理解され、批判されてからやってもよいような面があろうかと思います。さらにまた、簡素化、簡素化と申しましても、私は税負担の増加を招くことは、現在の情勢ではむずかしいかと思います。そのような意味で、直ちに実行できるものばかりとは思っていない、こんな意味で、簡素化の問題だけは、ひとつ広く意見を聞きながら、少し財政問題の以前に答申を出していただくことはどうであろうか、そうして、納税者の方にもあらかじめ理解していただき、批判をしていただいて、それを法文化して、法律になった後のトラブルが起こらないようなことが、私は税制改正の新しい方向としていいのではないかというふうに考えおります。具体案はまだあるわけではございませんが、一つの方向ではないか、そんなような意味で、簡素化につきましては、簡素化部会を特別につくりまして、ひとつ早目に答申を出していだきたいような気がいたしております。
  70. 平林剛

    平林委員 簡素化といえば、私ら議会でも大いに議論しました執行上の簡素化もありますが、税制の今日の政策減税に片寄った点なんかはすっきり整理してもらうという機会でもありますから、そういう意味では、今後の税制調査会の成り行きというものは大いに関心を深めていきたいと思っておるわけでございます。そこで問題は、いまお話がありましたように、何でやろうとしても財政上の理由がどうしても一つの制約になりますから、ことしあるいは来年の税の収入状況ということもひとつ問題になると思うのです。  泉さん、そこで昭和四十年度、大体税収の見込みというものの結論が出たでしょうか。この間私ら議論したときは、四十年度は税収不足だということでございましたけれども、実際にはその後伸びが出てきて、結論が出たと思うのですけれども、最終的にはどうなったでしょうか。
  71. 泉美之松

    泉政府委員 四十年度の税収につきましては、三月末の実績までは判明いたしておりますが、昨年政令改正を行ないまして、四月に入ります所得税法人税の延納分、それから間接税なんかの延納分がございます。これが四月中に幾ら入るかまだ予測の範囲を出ないのでございますが、三月末の実績を基礎といたしまして四月の収入を推計いたしますと、おおむね二百億円を中心として、その前後数十億円の差がある程度の金額になるのではないか、つまり、当初予算に比べまして二千五百九十億円税収が不足するということで補正予算を組んだわけでございますけれども、二千五百九十億円までは税収が減らないで、その補正予算に比べまして、二百億円を中心として前後数十億円の違いで、それだけ収入が補正予算よりは多くなる、こういうことでございます。
  72. 平林剛

    平林委員 二千五百九十億円税の不足が成り立つというのは、一つの見込み違いとして議論をされたことがございますけれども、その後また二百億円あるいはそれにプラス数十億円ということになると、これはうれしいほうの見込み違いですな。ここまでなかなか計算するのはむずかしかったと思うのですけれども、いずれにしても結果的に見ると、あと二百数十億円増加される、これはどういうところに原因があってふえていくようになったのでしょうか。
  73. 泉美之松

    泉政府委員 これは御承知のとおり、現在金融が非常に緩和いたしておりまして、コールのレートなどが非常に下がってきております。そういう関係から、御承知のとおり、税金を延納いたしますと日歩二銭の利子税を払わなくてはならないわけでありますけれども、それを払うよりは、むしろ金を借りて納めておいたほうが、二銭の負担をしなくて一銭七、八厘で済むというようなことになりますので、そのために、特に法人税でございますが、法人税につきまして延納が非常に減りまして、即納分がふえたわけでございます。御承知のとおり法人税につきましては、事業年度末後二カ月以内に半額を納付いたしますと、他の半額は延納できるわけでございますが、最近は延納分が二二%くらいになっております。特に九月決算のものにつきましては、金融機関が多い関係もございますが、一六・四%の延納率でございまして、したがって八三%くらいのものが即納になっております。こういうことがございまして、最近は一月決算につきましては二二・二%延納になりまして、七七%くらいのものが即納になっております。こういった税収が繰り上がって入ってくる、したがって、あとで延納分を納める分は減ってくるわけでありますけれども、年度の途中で決算をすることになりますので、そういう繰り上がって納まってくる分がふえてまいったわけであります。そういったことがおもな原因と、それから、私どもの見積もりでは、揮発油税につきまして少し減るのではないかという予測をして補正予算を組んだのでございますが、実際におきましては揮発油税がそれほど減らなかったというこの二つの理由が大きく原因しております。
  74. 平林剛

    平林委員 私はまた、景気の見通しがよくなったので、それに伴って税の増加があったのかと思いましてお尋ねしたわけでありますけれども、他に原因があったようでございます。  そうすると、結局、主税局のほうの見通しとしては、昭和四十一年度末の自然増収一千億程度というのは変わらないでいくのでしょうか。これから減税の問題を議論する税制調査会におきまして仕事をしようと思えば、この財源が一番問題になるのではないか。もちろん、公債のことを考えれば、これは限度がございませんけれども、一応そういうことになるのではないかと思うので、主税局にお尋ねするのですけれども、大体どのくらい税の自然増収なり——全部減税に回すというわけにもいかないでしょうけれども、余裕金というか、そういうものに回すものはあると見たらいいのでしょうか。
  75. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 確かに、おっしゃられますように、来年度減税を行なうかどうかは、まさしく租税の自然増収がどの程度になるかによるかと思います。ただいま国税庁長官から御説明がありましたように、四十年度の自然増収と申しますか、自然減収が二百億円あるいはそれのプラスアルファだけ減少いたしましたのは、利子の低下によります即納率がよくなったことでございまして、実態経済がよくなって法人税がふえたというにはまだまだ至らないようでございます。  そこで、四十一年度の自然増収がどうなるかという問題でございます。まだ四月から始まりました今年度でございますし、その決算の見込みもまだつかまっておりませんので、いまのところ確実な資料もございませんが、四十一年度の自然増収につきましては、現在見積もっておるところが最適なものなんだろうというしかないわけであります。それを越えまして四十二年度になりますと、なおむずかしい。やはりこれは、泉長官もやられましたように、いつも主税局が九月決算の状況を見ながら四十二年度の推定をいたしまして減税目標を立てざるを得ない、こんなような感じでございます。しかし、一般的な新聞論調——私どもときどきエコノミストなどの話を聞いておりますと、経済の見通しが比較的明るさを増してまいりましたので、どういうふうになってまいりますか。私どもの期待といたしましては、当初見積もりましたような多目の自然増収、四十二年度もまた安定的な自然増収ができることを期待したい、しかし、これはまだ期待でありまして、どういうふうになるか、いまのところ言えない状況であります。かように思っております。
  76. 平林剛

    平林委員 そうすると、結局、租税特別措置を大胆に整理いたしまして、財源のこととか、あるいは徴税の民主化というか——これは民主化というかどうか、もっと捕捉すべき税源に対して国税庁がそういう方面には大胆に前進をしていく、これはしばしば委員会でも議論されたことがございまして、一々は申し上げませんけれども、取れるところからはやはり税を捕捉していく、しかもわれわれの立場でいえば、零細なところには手を出さないで、もっと大口のところに余裕があるのではないか、こういう税の公平、徴税の公平ということをやって、結局私は、財源を生み出していく以外にはないのではないかと思うのであります。これらはいずれ調査会のほうにおいてもいろいろ議論がされると思いますから、一応私の希望だけ申し上げておきます。  最後に、もう一つの点を伺いたいと思います。それは、今度課税最低限八十万円の問題について、モデルとしての減収概算額が前に私の要求で出されまして、一案、二案、三案、四案、五案とございました。これが今度の税制調査会で検討していただく一つ資料になっておるというお話でありますが、この機会にあらためて主税局長に聞きます。課税最低限八十万円、こういうことをまず描いて試案を出されまして、これから検討してもらうわけでございますが、何となく課税最低限八十万円というのが目標になったわけなんです。だから、あらためて聞きたいのです。八十万円と、数字をあげて根拠にした理由、われわれもいろいろなことを言っていますけれども、あなたのほうでこういうものを目標にしてひとつ検討してもらうという根拠は一体どこにあるか、ちょっと伺いたい。
  77. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 根拠と言われますと、平林委員の御要求に基づいて出したので、答弁もなかなかむずかしくなろうと思います。私は常識的なところが一番大きな根拠だと思います。六十三万一千円が平年度の課税最低限でございますし、初年度は六十一万三千円でございます。そのときに御議論になりますのは、納税人員、さらにはまた、私どもが今度物価だけで修正いたしました基準生計費、これらから見まして、六十一万三千円あるいは平年度の六十三万一千円ということは、現在の所得税の現状から見て少しひどいのではないか、五十六万円から六十三万円まで七万円上げたわけでございますが、これだけ上げることによりまして、九百億円をこえるような減収が生じます。そこで、減収を生じないような、例のだんだんと消え去っていく消去と申しますか、消失控除みたいな御提案もございました。私はこのあたりから研究しなければいかぬと思っておりますけれども、少なくとも六十二万円から八十万円までいたしますと十七万円、これに到達するのは相当長らく時間もかかるような感じもいたしますので、常識的な線で考えますと八十万円、これをやはり一つの実現可能な目標として私ども考えたほうがいいと思うのでございます。百万円という御提案もございましたけれども、やはり実現可能な——私どもの大臣がしばしば言っております粘り強くがんばれる目標をひとつ仕立てていったほうがいいのではないか、こんなことが非常に大ざっぱでございますが、根拠と考えるべきではないか、かように考えおります。
  78. 平林剛

    平林委員 私らが課税最低限八十万円と申し上げて政府に迫りましたのは、全国五万以上の都市の生計費がおおよそ八十万円程度になっておる、そういうことから考えて、さしあたり八十万円程度を目標にすべきではないか、こういう主張をいたしてまいったのであります。本来であれば百万円程度をねらいたいところですけれども、やはり同じような考えで、実現可能なもの、また理論上も適当なもの、こういうことで社会党は主張してまいったわけです。ところが、この問題で、泉さんがどこかへ出られて、これは、二、三年だというようなことを発言されて、それが新聞に出ていたのです。国税庁長官というのは税金を取るほうの責任者かと思ったら、どうも課税最低限八十万円の実現は三年後だというようなことを——取り上げ方、その記事の活字のしかたにもよると思うのですけれども、こういうことを言われたのでございます。このごろ外務次官が外務大臣みたいなことをしゃべって紛議をかもしたのと同じように、税の執行のほうの親分が政策的なことをしゃべったので、これはひとつ泉さんにその真意を聞いてやろうと思っていたのですけれども、あれはどういうわけですか。
  79. 泉美之松

    泉政府委員 これは私、先般大阪国税局の視察に参りましたとき、国税局おります新聞記者の諸君に会見を求められました。その際、税の執行についてのいろいろお話をしたわけでございますが、そのときに、あなたは前に主税局長をやっておられたようだが、標準世帯の課税最低限八十万円というのはいつできるんだ、こういうお話がございました。それは主税局の問題で、私の答弁すべき限りでない、しかし、先ほど主税局長お話しになっておりましたように、平年度で六十三万一千円、初年度で六十一万三千円でございますから、一挙に八十万円まで上げることはなかなかむずかしいのではなかろうか、やはり数年かかるのじゃなかろうかと言っただけであります。ところが、新聞記者のほうではそれを、私がそういう発言をきわめて確定的にしたようなことで活字にしたのであります。私の申しましたのはそういう内容のものでございます。
  80. 平林剛

    平林委員 たぶんそうだろうと思ったのですけれども、一応あなたに聞いておきたいと思ったのです。  そこで、一挙に八十万円までは無理だと思ったのでそう述べた、いまお答えのとおりであります。私たちとしては、現在の段階でも課税最低限は八十万円にすべきだ、こう主張をしておるわけでありますが、政府との間にそこに二年ないし三年の狂いがある。これは大臣も来年すぐやるというようなことはおっしゃっていませんから、そこに野党である社会党と政府との間に二年ないし三年の国民に対する課税の必要性の感覚が違う。これは財政を握っておるものと握っていないものとの違いもありますけれども、あるのです。そこで、どうなんでしょうか。課税最低限八十万円というのは、一つの政策目標のような形になってきたのです。私は、今日の国民に対する税負担の現状から見ますと、政策目標の八十万円に一ぺんに達するまでに二年も三年も待っておるわけにいかない性質のものだと思う。やはり段階的に進めていかなければならないのではないだろうか。われわれの主張はすぐに実現すべきものだ、こう言いますが、やはり現実の問題としては段階的に進めていかざるを得ない、そういうようなお考えはどうなんでしょうか。これは大臣に聞くべきものかもしれませんけれども国税庁長官も、新聞の誤報だけれども、政策的なことが言える資格を与えられておるような報道をされておるので、あなたからでもけっこうです。主税局長から、ひとつその考えはどうですか。
  81. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 国会の非常に熱心な御論議の結果、課税最低限八十万円ということが長期減税構想の大きな目標であり、国民が非常に期待しておる問題になっておることは御指摘のとおりでございます。段階的にならざるを得ないではないかというような御質問でございますが、千七百億円から二千七百億円に及ぶような減税を伴うものでございます。そんなような減税が、今年度の減税に続いて来年度直ちにできるということもむずかしかろうと思います。しかし、大臣も粘り強くがんばっていきたい、こんなことを言っておりますし、私どもも、国民の要望ならば、できる限り勉強して、おっしゃるように所得税の減税のしかたも、いままでのようなやり方を変えてでも、早く目標に到達するように、段階的にいたしましても、できる限り多目にいくような方向をひとつ考えていきたい。おっしゃるように、財源も必要な方法を考えなきゃなりませんし、特別措置も、私は一つの財源だと思います。ひとつ、御鞭韃を得まして、段階的にならざるを得ないと思いますが、その段階的でも、早目に多目に持っていきたい、かように考えおります。
  82. 平林剛

    平林委員 たいへんいい答弁で、これは政治家である大蔵大臣から言うてもらうとたいへんけっこうな話なんでございます。私は逆説的にお尋ねしたわけでございまして、非常にいいお考えで、私、感心をしたわけです。  そこで、二年ないし三年と、こう予想されているけれども、なるべく早くこれを持っていくという方法はなきにしもあらず、これはこの間、堀委員委員会で述べられておりましたし、私ども社会党の今後の減税の一つ考え方として、たとえば、低所得階層とか、あるいは比較的中間層に対してかなり減税が行き渡るようにするためには、特に課税最低限というものは重視するんだけれども、そういう財源をどこに求めるかについては、一つには租税特別措置の大胆な整理をやる、それからもう一つは、先ほど申しました徴税の合理化というような点からも求める、同時に、景気の回復をわれわれも望んでおるわけですから、そういうところの自然増収を今日最大限に振り向けるという考え方もありましょう。しかし同時に、最近の課税の方向が、高額所得者と低額所得者の場合に、必ずしも公平にいっていない面がある。たとえば、いろいろな税額控除が年間百万円の人にも及ぶけれども、年間五千万円の所得の人にも及ぶ、不必要な控除がある。こういう点をくふうすればかなり財源というものは生まれてくる、こういうことを私は考えておるわけです。こうしたことは、いまあなたがお述べになりました、できるだけ早くするというのには、社会党のこういう点も注目すべきものがある、ひとつ考えてみよう、税制調査会でもそうしたことを示唆して検討してもらおう、こういうお気持ちはあるのでしょうか。
  83. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御指摘のように、国民の明るい目標になりましたこの問題でございます。さらにまた、私が委員会の質疑を通じましてお答え申し上げましたように、できる限りむだのない減税はぜひ考えてみたい。御指摘の消去控除と申しますか、消失控除と申しますか、こんなようなことも一つの御提案でございます。税法が複雑になってはなりませんが、何かそういうようなお気持ちもくみながら進めてまいりたい、特に、利子配当の問題も残されておりますし、高額所得者に配当所得者が多いような現状を見ますと、このあたりどういうふうに考えていくか、非常にむずかしい問題でございますが、税制全般もこの明るい目標のために一ぺん見直す、技術的にいままでのような方法だけでなくて、いろいろな方法を考えてみてやっていきたい、それとまた、所得税だけじゃなくて、ほかの税法にも何らかの財源を求め、それが国民経済上無理がなければひとつ財源にして、世論となったような八十万円に近づく方法を考えてみたい、かように考えおります。
  84. 平林剛

    平林委員 いま手元に持っている課税最低限八十万円のモデルと減収概算額の試算表によると、五つの例がございまして、一つの例は、基礎控除を三十万円にし、配偶者控除、扶養控除、給与所得控除は据え置いて、課税最低限を八十万円の線に持っていく、これによる減収額は二千七百億円、第二例は、基礎控除、配偶者控除をそれぞれ十八万円にし、扶養控除と給与所得控除を八万円にすることによって減収が二千億円、まあ三例、四例、五例とあるのですけれども、それぞれの特徴があると思うのです。それをちょっと御説明いただきたい。
  85. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 大蔵委員会の審議経過を思い出していただければ、私はこういった案を平林委員の御要求によりまして出したことが御理解願えるのではないかと思うのでございます。減収額の多いものを見ていただきますとその特徴がつかめると思います。一例が二千七百億円で一番多いわけでございます。その特徴は何かと申しますと、独身者重点の減税でございます。したがいまして、基礎控除だけを思い切って上げる、こういった減税でございます。そうなりますと、独身者の課税最低限は現在二十二万円でございますが、四十三万円くらいに上がってくる、そのかわり納税人員は半分以下になる、しかしながら減収額が最も多い、こういったところに特徴があると思います。片一方、一番減収額の少ないのは第三例でございますが、これを見ておわかりのとおり、基礎控除がわずか二万円しか上がりません。一例は十四万円から三十万円と、思い切った上がり方でございますが、第三例の一番少ない減税のモデルは、むしろ世帯持ちのほうに減税の重点を置きまして、課税最低限は夫婦子三人で八十二万六千円が最も高目の課税最低限となります。こういったところが特徴でございます。そのかわり納税人員はわずか四百万ばかりしか減らない、減収額も千七百億円でとどまる、こういったやり方でございます。その両極端の間に二例、四例、五例が並ぶかと思います。しかし、これも考えてみなければいかぬことでございますが、御指摘のように、独身者というものは相当つらいのではないか、しかし、一般若年労働者の給与分も上がっております。このあたりの担税力をどういうふうに見てまいりますか、世帯持ちの担税力をどういうふうに見るか、独身者の担税力をどういうふうに見るか、さらにまた、それが経済上どうであるのか、税制調査会でひとつ大きな角度からの御検討をわずらわしたい、こんなような意味で、国会の御論議を参考として提出しながら大方の御意見を賜わってまいりたい、こんなようなつもりでおります。
  86. 平林剛

    平林委員 これをお出しになったときは、私の要求にこたえて出され、断わり書きがございました。決して固まったものではないということでございましたけれども、どうでしょうか。このように課税最低限八十万円というのが一つの政策目標になってくるといたしますと、やはりこうした第一例、第二例はじめ第五例までの案を検討してもらって、何らかの結論を出してもらう、そういうお気持ちで今度の税制調査会に臨まれるつもりなのでしょうか。
  87. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 この案は、国会で御審議になっていただきました重要な資料でございますので、これも出しまして検討していただくつもりでございます。そうして、かりに八十万円にするという御結論が出ましたら、どういった方向がいいということもひとつ出していただく、御意見を賜わりたいと思っております。何回も御議論を願いましたように、納税人員が三十一年の千百万から二千二百万までふえました。そのうちの九百万までは給与所得者でございます。給与所得者の独身者がその六〇%を占めておる状況、これをどういうふうに見ていいか、これは私ども税務の専門家だけじゃなくて、ひとつ常識的な広い視野をお持ちの方々から、担税力と申しますか、その社会的な評価あたりを聞いて、今後課税最低限を引き上げるとすれば、世帯持ちの方向にいくべきか、独身者にいくべきか、あるいは二人世帯にいくべきか、配偶者控除を引き上げるべきか、非常にむずかしい問題もあろうかと思いますが、常識的な広い角度の御意見を承ってみたい。そんなような意味で、御指摘のように何らかの方向を出すよう、それがまさしく新しい長期減税構想の具体的な一つの方向だと思うのでございます。
  88. 平林剛

    平林委員 大体私この程度にいたしますが、最後に、今度の税制審議の段階には、前の税制調査会で議論されたこまかい資料、毎年のように一冊にするやつをとうとう御提出にならなかったのですが、また新たに税制調査会か発足する——まあ、これをつくっているのは税制調査会ということに表向きはなっていますけれども、実際上の作業はあなたのほうがおやりになるわけで、事情はわかりますけれども、一体いつごろになったら出すのか、それを承っておきたいと思います。
  89. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御指摘は、税制調査会の審議経過だと思うのでございます。もう新しい税制調査会が始まる前にまだできていないではないか、まことに私も申しわけなく思っておる次第でございます。しかし、おっしゃるように私どもは事務当局で、税制調査会の先生方の御意見の速記係みたいなものでございます。そう申しましても、法案の改正に追われましたので、なかなかそのひまがなかったわけでございます。現在私の手元まで実は出ております。できる限り早い機会に出すように努力したい、かように考えおります。
  90. 平林剛

    平林委員 なるべく早く出していただきましてこれからの審議の参考にさしてもらいと思いますから、お願いしたいと思います。  終わります。
  91. 山本勝市

    山本委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後五時五十二分散会