○春日小
委員 私は、この
共同証券と
証券保有組合の機能をいろいろ研究してまいりました過程の中で、実はそれ以前の問題として、
証券保有という基本的な問題について大きな疑義を抱くに至りましたので、この機会にこれをお伺いいたしたいと思い
ます。すなわち、その問題は、持ち合い株の弊害についてでござい
ます。
申し
上げるまでもなく、最近の傾向といたしましては、企業が安定株を確保いたし
まする手段といたしまして、同一系列の企業間で
株式の相互持ち合いなどが盛んに行なわれるようになった。ことに、大会社ではその株が分散をいたしており
まするから、したがって、たとえば二〇%程度の割合の
株式保有で全体の支配も可能である、こういうことで、持ち合い株が、このために重要な、重宝な手段としていま乱用されておるのではないかと思われるのでござい
ます。これを調べてみ
ますと、現在のところ、事業会社の
保有株というものは、三十三年三月では、当時一三%であったものが、現在では二一%に達しておる。この持ち合い株は安定株と称せられてはおるけれ
ども、一昨年から昨年にかけての現象をとらえるならば、あの
株価の暴落時には持ち合い株の
売却がひんぱんに行なわれて、
株価暴落の一要因となったことは御
承知のとおりでござい
ます。このような実績から案ずるならば、この持ち合い株というものは、
株価安定の要因にあらずして、むしろ不安定要因になってきた、こういうこともこれは認めてしかるべき問題であろうと思うのであり
ます。しかしながら私は、いまこの弊害は、そんな安定、不安定というような問題ではなくして、むしろ根本にさかのぼってよくこれを探求してみる必要がありはしないか。ということは、持ち合い株は、言うならば一個の擬制資本である、すなわち
架空資本である。何もないものが、あたかもあるかのごとくにあらわれてまいっておるものである。これは具体的に言うならば、相互に貯金しあっておるようなものであり、あるいは中小企業が手形を交換しあっているような、交換手形と何も異なるところはないと思われるものでございまして、したがって、一方がその株を売るということは、すなわち、ありもしないところの預金を引き出すようなものであって、このことがいろんな弊害を衝撃的にあらわしてくることは当然のことだと思う。東証第一部の
株式価格の総額が九兆円といたし
ますならば、この二一%とあれば実に二兆円、これが仮装信用であった。みんな持ち合って、手形を交換しあって、手形でないとしても現金を交換しあっている仮装資本というものが二兆円ある。こういうようなものがわが国
証券業界の不安定要因となっておるものではあるまいか。のみならず、このような
架空の株に対して事業会社が
配当を行なっておることは、一体見のがされていいことであろうか、許されていいことであろうか。本来は株主に
配当せなければならないところの金を、
利益を、それを仮装の株主に
配当しておるということは、言うならば、これは不当利得である、あるいは
利益の横領である、そういうことがなされておるといってもこれは過言ではない。したがって、この際持ち合い株に
相当する資本は、交換手形をなくさなければ企業資本というものが堅実化されないと同じように、これはすべからく厳守すべきものであるが、少なくとも、そのような持ち合い株に対しては
配当を禁止せなければならぬ筋合いのものではないかと思われる。この問題は、機能的には、独禁法第九条以下持ち株行為の禁止事項があるけれ
ども、そこに抵触するかしないか、独禁法上の問題は別といたしまして、とにかくお互いの株を持ち合って、それで
配当し合っておるというこのあり方は、株主の
利益を著しく侵害しておる、横領しておる、そういうきらいがあると思うので、この問題についてはこれは是正すべき問題ではないかと思うが、この機会に持ち合い株の不健全性並びにその弊害、こういう問題についてお三方いかがお考えか、御所見を伺いたいと思い
ます。
私は、この
凍結株の
放出、その機能効果、いろいろ考えてみた中において、全体的な根本的な問題として、この持ち合い株のあり方を究明するしとが必要であると思う。この問題は重大な関係であるし、特にわが国将来の
証券行政の根本的なふり方として、また会社法の根本義にも触れて重大な疑義があると思われる。すなわち、善良なる株主がその
配当分をこの持ち合い株の株主によって横取りされているのである。この際、この問題についてお三方の御所見を伺いたい。
——それでは、こういう根本的な重大問題は十分御研究の上、ひとつ次の機会に責任ある
方々から明確なる御答弁を
お願いすることにいたし
ます。
なお、加治木新
証券局長においても、
証券行政の根本的なあり方から、十分御
検討の上、次回の
金融小
委員会で責任ある御答弁を得たい。
本日はとりあえずこの問題についてのアドバルーンを
上げて、そして
証券業界全体の問題として十分御
検討の上、後日責任ある御答弁を求めることにいたしておきたいと思い
ます。