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1966-04-13 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第31号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十三日(水曜日)委員長指名 で、次の通り小委員及び小委員長選任した。  税制及び税の執行に関する小委員       岩動 道行君    砂田 重民君       谷川 和穗君    西岡 武夫君       村山 達雄君    山本 勝市君       吉田 重延君    渡辺美智雄君       只松 祐治君    平林  剛君       藤田 高敏君    山田 耻目君       竹本 孫一君  税制及び税の執行に関する小委員長                 山本 勝市君  金融及び証券に関する小委員       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    坊  秀男君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       佐藤觀次郎君    平岡忠次郎君       堀  昌雄君    武藤 山治君       春日 一幸君  金融及び証券に関する小委員長                 押谷 富三君  農林漁業用揮発油税に関する小委員       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    金子 一平君       田澤 吉郎君    坊  秀男君       村山 達雄君    毛利 松平君       山中 貞則君    有馬 輝武君       川俣 清音君    小林  進君       中澤 茂一君    西宮  弘君       竹本 孫一君  農林漁業用揮発油税に関する小委員長                 金子 一平————————————————————— 昭和四十一年四月十三日(水曜日)    午前十時五十三分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       田澤 吉郎君    谷川 和穗君       西岡 武夫君    毛利 松平君       山本 勝市君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    有馬 輝武君       小林  進君    佐藤觀次郎君       日野 吉夫君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君         労 働 大 臣 小平 久雄君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         総理府事務官         (人事局長)  檜子 正宏君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 岩尾  一君         大蔵事務官         (主計局次長) 武藤謙二郎君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (銀行局保険部         長)      上林 英男君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総         裁)      宇佐美 洵君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 四月十三日  委員野口忠夫君、日野吉夫君及び横山利秋君辞  任につき、その補欠として中澤茂一君、西宮弘  君及び川俣清音君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員川俣清音君、中澤茂一君及び西宮弘君辞任  につき、その補欠として横山利秋君、野口忠夫  君及び日野吉夫君が議長指名委員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  地震保険に関する法律案内閣提出第七三号)  地震保険特別会計法案内閣提出第七四号)  昭和四十年度における旧令による共済組合等か  らの年金受給者のための特別措置法等の規定に  よる年金の額の改定に関する法律等の一部を改  正する法律案内閣提出第七七号)  昭和四十年度における公共企業体職員等共済組  合法に規定する共済組合が支給する年金の額の  改定に関する法律等の一部を改正する法律案(  内閣提出第一二三号)  金融及び証券取引に関する件      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  地震保険に関する法律案及び地震保険特別会計法案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許し出す。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 この地震保険制度は本委員会で一ぺん注文をつけたことがございまして、その検討をまって提案をされたのでありますが、検討がやや不十分ではないかという点を考えるのであります。  まず第一にお伺いしたい庶民的な質問は、地雷保険には入りたい、けれども火災保険やそのほかの保険にはいま入る気持ちはないという人は保険加入できないわけですね。ああそうですか、これならば何かの損害保険契約をしてくださいと、だんごがつく、こういう結果になるわけです一体地震保険に入りたいのに、ほかのだんご、そのだんごのほうが大きいのですから、なぜ特定損害保険に入らなければ地震保険に入れないのかという庶民的な質問なんです。
  4. 上林英男

    上林政府委員 地震保険につきましては、わが国は有数の地震国でございますのに、この地震保険制度がなかなかできなかった理由が幾つかあるわけでございますが、それを克服いたしますにあたりましてまず考えなければなりませんのは、地震保険につきましてはやはり逆選択というおそれがあるということでございます。学者がいろいろ調査をいたしますところによりますと、日本で地震のおそれがないところはほとんどないということでございますが、しかし、実際に当たりますと、自分のところは地震の危険は全くないというふうに思い込んでおられる方もおるわけでございます。ことに、地震につきましては一たん起こりますと被害が非常に大きくなるわけでございまして、地震保険制度を安定をし、安定した保険集団をつくり、料率もそれに応じてできるだけ低廉にいたしてまいりますためには、こういうような逆選択の防止ということに配慮をいたさなければならないかと思うのであります。そのような観点から、この逆選択を防止いたしますためには、単独地震保険というものではなく、特定損害保険契約付帯をするということを考えたわけでございます。その場合におきまして、まず私どもが考えておりまするのは、現在の損害保険契約のうちにおきまして、世界的な傾向といたしましてもオールリスク保険というものが普及をいたしております。単に火災にとどまらず、落雷あるいは盗難、生計費保障というような、あらゆる危険を包含した総合保険というものが普及を続けておるわけでございまするが、この総合保険につきましても、地震につきましては免責といたしておるわけでございまして、この総合保険に自動的に付帯をするということによって、オールリスク保険の実質をさらに苛めまするとともに、先ほど来申し上げておりますような保険集団の安定ということをはかりたい、こう考えたわけでございます。もっとも、それだけに限りますと、おっしゃるような強制的な色彩が強くなることでもございますので、火災保険に任意的にこれと同時に地震保険付帯させたいという場合におきましては、火災保険契約に対して自動付帯を行なう道も考えているわけでございます。
  5. 横山利秋

    横山委員 いま最も世間の関心を呼んでいるのは松代地震ですね。あの地域人たちは、この法律案が通ったら実際問題としてどうしたらいいのですか。松代諸君の立場に立ってわかりやすいように——地震でたいへんだと思っている、地震保険が通ったぞ、地震保険に入りたいと言うと、地震保険だけではいやです、このだんごに入ってくれなければ入れてやらぬ、こういうことを言わざるを得ぬのですが、松代諸君にはどういう方法でおすすめになるのですか。もうちょっとわかりやすく説明していただきたい。保険会社がもうかるとかもうからぬとかでなくして、どういう手続で松代諸君は入ってくださいと言うのですか。
  6. 上林英男

    上林政府委員 ただいま申し上げましたように、たとえば、松代といいますか、直接地震の危険を感じておるという方々だけが地震保険に入れるような仕組みというものを考えますと、これも必要性がないではないと思いまするけれども、かりにそういうことになりますと、保険料率もそれに応じていろいろ高く考えなければいけないというような問題が起こるわけでございます。したがいまして、地震保険制度を始めるにあたりましてまず考えなければならないことは、先ほど申しましたように、保険集団の安定、大量化、それによりまする料率の低下ということでございます。したがいまして、制度として考えました場合、特定損害契約自動付帯をすることを提案申し上げておるわけでございますが、そのような意味におきまして、松代におきましてもやはり総合保険に御加入をいただくか、あるいは火災保険自動付帯をしていただくということでお願いを申し上げたいと思うわけであります。  なお、ちなみに申し上げますと、諸外国でも単独地震保険をやっておる国はないことはございませんが、しかし、そういう国におきましては、常に、地震が起こりますと急に加入者がふえましたり、あるいは、そういうことになりますと、被害によって危険が高まりまして、いわば悪循環を繰り返してなかなかうまく動いておらないということを承知しておりまするし、したがいまして、むしろ特定損害契約自動付帯をしておるという国も多いやに承知をいたしておるようなわけでございます。
  7. 横山利秋

    横山委員 松代の人にもっとわかりよいように話してもらわないといけないと思うのです。それじゃ具体的に聞きますが、この地震保険に関する法律の第二条第二項第三号、「特定損害保険契約に附帯して締結されること。」とありますが、特定損害保険契約というものはどんな種類がありますか。  それから第二番目に、それは約款なり何かで、契約書の中で、黙っておれば自動的に地震保険に入ることになるのですか。選択は自由に許されておるのか、この点はどうなんです。
  8. 上林英男

    上林政府委員 第一点の、特定損害保険契約と申しますのは、ただいま御説明申しましたように、総合保険または火災保険契約を予定いたしております。  第二点につきましては、保険契約加入するかどうかは自由でございます。ただし、総合保険に御加入になりますときは、地震保険が今後自動的に加わってくるかっこうになるわけでございます。また、火災保険任意付帯の場合には、もちろん火災保険だけを選ぶことも可能でございますし、火災保険と同時に地震保険担保する、これは任意付帯でございます。
  9. 横山利秋

    横山委員 総合保険に入るときは自動的である、火災保険に入るときは選択である、こういうわけですね。  その次は第四号で、「保険金額は、附帯される損害保険契約保険金額の百分の三十に相当する額とすること。」とある。そうすると、総合保険に入って地震が起こって火事になる、保険料は従来の一三〇出すというわけですね。保険金額は従来の一三〇以上を保障しておるわけですか。
  10. 上林英男

    上林政府委員 本体でございまする総合保険あるいは火災保険、これの金額がかりに百万円といたしますと、地震保険の場合にはその三〇%が限度になっておるわけでございます。したがいまして、地震以外の火災その他によりまして損害をこうむりましたときは、全損でございますれば百万円、ただし、地震を原因といたしまする被害が生じましたときは三十万円、こういうことになるわけでございます。
  11. 横山利秋

    横山委員 家が燃えたことは一つの事実である。それが、家が燃えたのに、いままでは一〇〇出しておればよかった。今度は同じ事実のために一三〇出さなければならぬ。もちろん、それは地震によって燃えた場合には免責だから保険金額はもらえなかった、それがもらえるようになった、あなたのほうはこういう理論でしょうね。あなたのほうはそういう理論だけれども、結局一三〇を出すということに心理的にちょっと抵抗を感ずる。説明すれば、それはなるほどそうかということにはなるんだけれども、その辺どうですかね。大体松代諸君は、あの辺が大火事になるということはまあまああり得ない、これはあるかもしれぬけれども火事発生率からいうと、地震地帯と比較的称されるところには大火事はあまりないような気がする。この総合保険の発達する地域地震頻発地域とは違うところがあるんじゃないか。それを一緒にして総合保険に入らなければ地震に入れてやらない、火災保険に入らなければ地震に入れてやらないというのは、保険に入りたい人たちの階層、地域ベースが違うのではないか、私はそう感ずるのですが、どう思いますか。
  12. 上林英男

    上林政府委員 御意見ごもっともだと思うのでございますが、先ほどから申し上げておりますように、地震保険と申しますのは、一たん被害が起こりますと非常に巨大な損害を生ずるわけでございます。そのような意味からいいまして、この地震保険制度自体の根本的にむずかしい問題がありまして、いままでに実現を見なかったわけでございます。これをいかにして実現をさせるかという方法といたしまして、逆選択を防止する、あるいは損害の過度の集積を防止する、あるいは国が長期的な観点に立ってこの地震保険制度に介入をする、この三つの要素のもとに初めて地震保険制度が成り立ち得るであろうというふうに考えているわけでございます。したがいまして、この逆選択をいかにして防止するか、ひいては、これを行ないますことによって保険料率もできるだけ安く安定をさせ得るわけでございます。かりに地震保険を欲するところだけに単独にやるということになりますと、これはどの程度加入が考えられ、あるいはどの程度事故が生ずるかということで、保険料率計算も非常に不安定になってまいるわけでございます。おのずから保険料率が高くなってくるというような難点もあるわけでございます。そのような観点と、さらに、世界的な傾向といたしまして、先ほどから申し上げておりますように、オールリスク一つ保険証書ですべての危険を担保するというのが世界的にも行なわれております。わが国におきましても、非常に便利な措置で、かつ適当であるということで、非常に進んでまいっておるわけでございます。実質的にこの総合保険制度を、地震についても担保する総合保険にする、こういう方向で、こういうものをまず頭に置きまして考えたわけでございます。なお、それでは実質的に総合保険ではあまりに強制的になるのではないか、こういう御意見もあったわけでございますが、また、先生の御趣旨とも合うわけでございますが、そういうような意味において、火災保険についての任意付帯を考えているわけでございます。
  13. 横山利秋

    横山委員 話によれば、一回の大地震最高負担限度額は、三千億円の被害めどにするというわけですね。三千億円の被害めどにして、国の責任額が二千七百億円、これは最高めどであるけれども、大体、平均といいますか、非常にむずかしい、ラフな聞き方だけれども平均年間どのくらいの損害発生すると見て計算をしているのですか。
  14. 上林英男

    上林政府委員 この支払い保険金額の額につきましては、要するに、保険契約幾ら加入をしているかというその額に比例をいたすわけでございますが、四十一年度ベース保険契約普及状況から推算をいたしますと、実は今度の料率は過去四百六十七年間地震につきまして学者がいろいろ調べてくれましたことをもとにして考えているわけでございますが、四百六十七年間地震が四十一年度の保険契約状態において起こったとしたら、約八兆円程度被害が起こるということでございますので、八兆円程度を四百六十七年間で割りました約二百億円くらいが一年間平均と考えられる、これはその後の保険普及状況によりまして、さらに被害額が大きくなるといいますか、支払い保険金の額が大きくなる、こういうことになるわけであります。
  15. 横山利秋

    横山委員 地震による損害平均額年間二百億円ぐらいだと見る。そうすると、この保険料計算は、その平均二百億円を基準にして計算をされたものか、それとも最高三千億円をめどにして保険料計算をされたものか。この三〇%に相当する、つまり「附帯される損害保険契約保険金額の百分の三十に相当する額」というのは、平均発生被害率最高に押えて計算が出てきたのか、二百億円に基準を置いてできたのですか。
  16. 上林英男

    上林政府委員 保険料率算定あるいは事故率算定につきましては、過去の四百六十七年間地震実績がございますが、これにつきまして、その規模、震源、震央距離というようなものから、現在の状態においてそういう同じような規模地震発生いたしましたときにいかなる損害が生ずるであろうかというのを算定いたしまして、その数字を四百六十七年間で割りまして、その事故率算定いたしておるわけでございます。したがいまして、御質問の点につきましては、四百六十七年間平均事故率というもので算定をすることになるわけであります。
  17. 横山利秋

    横山委員 先ほどのお話では、四百六十七年間の一年平均二百億円の損害目標にして、そしてこの保険料率を算出した。そうすると、保険契約者の数が第一の問題になってくる。それから二百億円というものが、国土保全というのが十分でないにしても、四百六十七年の間に砂防工事やいろいろなことが発展をしてきた。そうすると、損害発生が平等であっても、被害程度が少なくなってきたと一応見るのが正しいと思うのです。契約者総合保険強制加入をされ、国土保全状況発展をしてきたというのであるならば、保険料率というものに、従来の考え方と相当に違ったものがあっていいと思うのです。私は、保険料計算という非常に精密をきわめた計算については十分にここで議論をする機会はないのだけれども、それにしても、百分の三十というのはいささかちょっと高くはないか。地震保険に入ってもらう人は、普通その辺で、あなた火災保険に入ってくださいでなくして、地域ぐるみ、丸ぐるみ入れなければならぬわけですね。そうしなければ意味がない。そうだとすると、所期する目標は相当膨大でなくてはいかぬ。一体、初年度からここ数年のうちに保険契約者をどのくらいの規模に見、そして、私どもの勘で言うのですけれども、百分の三十という比較的率が高いと思われるもの、もちろん以内でしょうけれども、どうしてそういうことにしたのか伺いたい。
  18. 上林英男

    上林政府委員 先ほど申し上げました八兆円という数字は、一〇〇%の金額でございますので、今回、かりに三〇%の全額を付保されました場合には、二百億円の三〇%というものが支払い保険金になるわけでございます。その点、ことばが足りませんでしたので、御了承いただきたいと思います。  なお、今回の三〇%については高過ぎるではないかという御議論がありましたが、この地震保険担保割合をどの程度にきめるかという問題につきましては、地震保険が非常に被害が甚大であるということから、この担保割合はもっと低くあるべきであるという議論もあったわけでございますけれども、一方におきまして、やはり地震保険制度としてやるためには、実質的に意味のある、復旧に貢献のできる程度のものでなければならないという議論もあったわけでございまして、そのような意味から三〇%に限度を考えるということになったわけでございます。  なお、四十一年度におきまして地震保険がどの程度普及するかという問題につきましては、現在の総合保険の過去におきます実績、これが毎年だんだん増加をいたしておりますが、そういうものを勘案いたしまして、四十一年度におきましては八百万件の総合保険、この地震保険ももちろん自動付帯されます総合保険が締結されるものと考えております。その保険契約金額は七兆円になっております。
  19. 横山利秋

    横山委員 ここ数年の保険契約者の数、それから保険料の収入見込み、それをちょっと聞かしてください。——部長に気の毒だから、少し基礎的な資料を出してくださいよ。きわめて庶民的な質問を最初しているのですから、数字収支計算、それから契約者増加予定等、庶民的な判断の材料になる数字を、少しこの次までに出していただきましょうか。——そうしましょう。  次にお伺いしたいのですが、保険会社公認会計士監査証明を受けることになっていますか。
  20. 上林英男

    上林政府委員 当分の間免除されております。
  21. 横山利秋

    横山委員 それはどういうわけですか。
  22. 上林英男

    上林政府委員 保険会社につきましては、先生御案内のとおり、各種の金融機関同様、大蔵省の厳重な監督を受けておりますし、法的にいろいろの規制があるわけであります。また、定期的に検査もいたしておりますし、決算その他におきましても、十分な事前の指導に服しているわけであります。そういうような観点から、十分な、実質的な監督も行き届いておりまするので、そういう点におきまして公認会計士監査証明が要らないということに当分なっているわけであります。
  23. 横山利秋

    横山委員 大蔵省監督が行き届いておるというのですけれども、ぼくは、この次に公認会計士法法律案がここにかかるときに、各認可を受ける企業あるいは各私学、あらゆる分野にわたって、大蔵省なり各省の監査がどの程度実際問題として行なわれておるか、その監査が適正であるかどうかという点について、具体的事実をもって大いにその検討をしたいと思うのですが、なるほど銀行には銀行検査官がある、あるいは証券検査官がある、保険検査官もあるんですか——あるんですね。その検査官汚職をしたことがございますね。銀行検査官汚職をしたので、銀行検査官を検査する検査官大蔵省内部に設けようではないかというしゃれが飛んだことがあるそうですが、(発言する者あり)保険会社も、やはり同僚委員からいま話があったように、テーブル・ファイア事件があった。それから大体大蔵省はこの銀行なり証券なりあるいは保険なりの監査結果を秘密にしておる。なぜ秘密にしなければならないのであろうか。銀行預金者保護ということがある。証券会社にも大衆投資家保護ということもあるかもしれぬ。そんなら保険会社は何の保護ということがあるんですか。会社の信用ですか。
  24. 上林英男

    上林政府委員 おっしゃるとおり会社の信用問題もございまするが、また同時に、契約者秘密保護ということも、これは預金者保護と全く同じであると考えております。と申しますのは、たとえば、生命保険契約におきましては、これは貯蓄と保障のまざったものでございます。  これは余談でございますが、この前の航空機の事故のありましたときに相当多額な保険金をかけておったということが若干の週刊誌に出て、その人の遺族が非常に迷惑をされたというような例もあるわけであります。やはりこれは一種の貯蓄的な分野も持っておるものでございまするので、その契約者保護という観点におきましては、銀行預金者秘密保護という問題と同じ問題を含んでおるかと思います。
  25. 横山利秋

    横山委員 これは大蔵省としても自分のなわ張りがどうのこうのという気持ちが、あるいは潜在意識としてあるかもしれませんが、ここのところは一ぺんよくお考えをなさったほうがいいんじゃないか。これは大臣がいらっしゃれば私は強く力説したいところでありますが、きょうは序の口にしますけれども大蔵省銀行なり証券なり保険監査するといっても、まずあの諸君に対して自主監査あるいは証券取引所なりは中間監査というものがあるはずである。保険業界にもあるはずである。もう一つワンクッションを置いて、役所というものが常に監査をしておるから、それならば、役所の監査の結果がまずかったことに対して役所はどういう責任を負うのかとなりますと、だれ一人その監査結果が悪かったからといって辞職した人はないわけですよ。そうでしょう。そうだとするならば、だれかに責任をもってやらせる機構にしなければならぬと私は思うのです。役所というものは、窓口の人が調べ、課長が調べ、部長が調べ、局長が調べ、大臣の最終責任になる。けれども、だれが一体最終責任を必ず負うかというめどはないわけですね。それは公認会計士だとか、あるいはそういうような民間職業家はそのものずばりで責任を負って、税理士の資格剥奪だとかあるいは公認会計士の資格剥奪だとか、最後に自分の生命を賭して仕事をさせられるということになっている。役所が監査をしている、認可をしておるからといって、じゃ、その監査の結果について間違いが生じたときに、一体役所はいかなる責任を負うのかという点について、何らめどがないわけです。この際、何ぞ悪い例があるのかとお聞きになるならば、私は個々の銀行なり保険会社なりあるいは証券会社のその非違行為、それに関連いたします各証券検査官銀行検査官あるいは保険検査官、それらの責任を具体的に私はここで例証をあげることができる。けれども、それをいま個々にやるのが私の目的ではないのです。少なくとも、役所のあなたの部下の機構が一体全国に何人あって、そしてあなたが責任を負わなければならない保険会社が何社あって、どれだけの監査が的確に行なわれているか、うたた私は寒心にたえないものがあると思う。だから、この際、保険会社についても監査証明を受けさせる、その監査証明というものを、公認会計士なり何なりにワンクッションを置いて、監査の責任を役所が追及する、そういうやり方に私はすべきだと思うのです。そうでなければ、とにかく、検査官とそれから銀行保険証券等の会社人たちとのいまわしい結託だとか人間関係だとか、そういうものが常に離れぬと私は思うのです。私どもとしましても、ここで議論をいたします際に、公認会計士監査証明を中心にして議論をしたほうがしやすいのですよ。そのほうがまた的確にいくと私は思うのです。あなたのほうもまたそれに対して自分たちの立場というものを明確に議論ができると思うのです。どう思いますか。
  26. 上林英男

    上林政府委員 御趣旨の点はもちろんよくわかるわけでございます。したがいまして、この問題につきましては、金融機関全体の問題でもございますので、私どもは直接保険会社の関係でございますけれども、そういうものと相互勘案いたしまして、よく検討いたしたいと思います。
  27. 横山利秋

    横山委員 銀行証券全部に関係することでありますから、政務次官にお伺いしたい。  私のいま申し述べた趣旨よくおわかりだと思うのであります。公認会計士法の今度の提案、これは同僚諸君とも相はかりましてやりたいと思います。銀行とか証券とかあるいは保険とかいうものは、わりあいに預金者だとか投資家だとか契約者保護に名をかりて、われわれもまた常にくつの裏から足をかくような議論をする、そのために、独善経営が行なわれ、背任行為があっても、ますますその預金者保護というべールのもとに隠され、大蔵省内部におきましても、あまり表で議論せずに陰でこそこそ議論をしてそれをまとめて、そして、役人が頭取なりあるいは保険会社の社長をしかりおくで済んでしまう。ほんとうの意味預金者保護契約者保護は行なわれていないと私は痛感をいたしますが、私の言う監査証明を受けるようにこの際考え直すべきであるという点について御意見を伺いたい。
  28. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 ただいまの御意見は、確かに傾聴に値する見識だと思うのでございます。ただ、私がこの御意見を聞きながらちょっと感じたことは、そのように制度的に改正をして、率直に申させていただきますが、それが結局二重の機構になって、屋上屋というとことばは過ぎると思いますが、それがうまく相互牽制の役割りをするかいなかは、制度もさることながら、その関係機関の人たちの心がまえの問題にもやはり重大な関係があると思うのであります。そういうふうに持っていくか、先ほど保険部長から答弁いたしました免許制度によって大蔵省が直接監督をしておるわけでございますから、それに別途公認会計士を加えることによって、より効果をあげられるかどうか、十二分に検討させていただきたいと思います。
  29. 横山利秋

    横山委員 それと相関連して、あわせて検討願いたいと思うのですけれども、先般も大臣が、早稲田をはじめ私学紛争について何とかしなければいかぬ、税金を私学にまけ、私学に補助金を出す、それから融資についてもいろいろ考えておる以上は、政府としても私学に対する何らかの考えを持たなければいかぬ。どうもその考え方は政府の監督権強化という方向のようです。私はそれはとらないところなんです。しかし、その前提とたる、私学に対して超党派で税金をまけてやろう、それから補助金もふやしてやろうというときには、私学それ自身としてもガラス張りの経営をしてもらわなければいかぬ。私学のほとんどが同族会社、同族経営というような傾向のあるときに、その公共性を増しますためには、私学もまた文部大臣の監督下にあって、いまお話し銀行保険と同じように公認会計士監査は必要としないことになっているけれども、これもまた、その意味においては、むしろ当面喫緊の問題として公認会計士監査証明を受けさせるようにすべきだ。ワンクッションを置きますという意見は、私はとりません。もしも二つのクッションになるならば、各省の監督制度を簡素化すべきです。そして、公認会計士の責任を十分に追及するようにすべきです、それが公認会計士制度なんですから。その点もあわせてお考えを願いたいと思います。  次の質問をいたしますが、保険業法の十二条の三に、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定は以下一、二号については適用をしないということになっていますね。今度「地震保険に関する法律二規定スル地震保険契約ニ関スル事業ニ属スル取引二付損害保険会社ガ他ノ損害保険会社ト行フ協定、契約其ノ他ノ共同行為」というものを私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定から除外されておるわけです。私は、先年当委員会におきまして、保険会社がもうかり過ぎており、かつ、制度状況からいって税金が安過ぎる。もしも現状のままでするならば、これは保険料を安くすべきか、あるいは税金を通常の株式会社と同様に取るべきである、こう力説したことがございます。その後大蔵省の内部においては多少私の意見を取り入れられたものか、保険料の自由化なりなんなりというところへ踏み切られたようであり、あるいは税額も多少の増額があったのでありますが、どうして保険会社はああも頭がいいのか知りませんけれども、どうもあの当時の税額に比較いたしますと、どういううまい手を使われたか知らぬけれども、最近どんどん落ちています。最近の落ち方は、なるほど保有株式の再評価が下がったということもあるけれども、基本的には私は保険会社の税額が一般常識的に言って非常に少な過ぎると痛感されるわけです。世間の人に言わせれば、保険会社が配当積み立て金ですか、いわゆる俗にいう荒利益の九〇%以上は配当として契約者に還元をするんだ、だから、税金が少ないということは世間の人は知りません。日比谷に日生劇場ができる、保険会社がたいへんなビルを建てる、それなら普通の株式会社と何ら変わらぬじゃないか。どうして保険会社だけがああも税金が安いのだろう、どうしてああもうまくいくんだろう。このごろは銀行はわりあいに支店の設置が制限されたり、いろんな世間の非難を浴びたり、歩積み、両建てがいかぬとか、あるいは本委員会で提起しました未収利益の問題とか、いろいろ銀行は焦点を浴びて、自粛の措置なりいろいろなことはございましたけれども保険会社だけはどうもその点については、われわれの、また庶民の追及といいますか、公正な判断を受ける機会がわりあいに少ないと思うのであります。そういうことの基礎になっていますのがこの十二条の三の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律の規定の除外なんであります。ここで保険会社が他の損害保険会社と行なう協定並びに協約その他の共同行為はなぜ独占禁止から除外されておるのであろうか。もう少し契約の自由化なりいろいろな点を進めさして、契約者の利益を守るという立場に大蔵省が立ってしかるべきではないか。いささかその点、大蔵省保険会社に対しまして温情過ぎるのではあるまいか、こういうことが痛感されるのでありますが、具体的なことはあとでお伺いするとして、一般的なあなたの見解を伺いたい。
  30. 上林英男

    上林政府委員 一般的に申しまして、ことに損害保険事業につきましては大数の法則を基礎として成り立っておりまするので、その円滑な事業遂行のために本質的に共同行為を必要とする分野があるわけでございます。ことに、たとえば海上保険とか、航空保険とかいう場合におきまして、国際的な関係もございまするし、さらに、今回のような地震保険あるいは原子力保険というような場合におきましては損害額が非常に巨大になる場合もあるわけでございまして、こういうものに備えまして、危険をプールいたしまして、あるいは料率を統一いたしまして、そういうような共同行為をせざるを得ない場合が多々あるわけでございます。そのような意味からいいまして、保険業につきましては、従来の海上保険その他につきましても独禁法の適用除外というものがあるわけでございますが、また今回の地震保険につきましても、いま申しましたような理由から、共同行為につきまして独禁法の適用除外があるわけでございます。もちろん、だからといいまして、先生御指摘のような、これのもとに保険会社自体が自分の利益だけをはかるというようなことは絶対に許さるべきことではないと考えております。この認められております趣旨は、いま申しましたような保険業の本質なり、あるいは対象になります保険事業の性質からまいるわけでございまして、私どもも、これによりまして一般の公共性を害するようなことのないように、その面から十分な監督をいたしてまいりたいと思っておるわけでございます。
  31. 横山利秋

    横山委員 限度額三千億円、この中で二千七百億円が、国が再保険でいざというときには保証する、こういうのですよ。限度額一ぱいのときには、その九割まで国が責任を持とうというときに、なぜ一体、公正取引の確保、私的独占の禁止、そういうところから除外してまでやらなければならぬのか。もしも、この協定、契約その他の共同行為について、地震保険を締結しようとする人たちの利益のために、保険会社に、ある意味においては、もっと競争してやらせる、サービスをさせる、そういう方向に向かわなければ、二千七百億円の税金を出す一般国民はたまったものではないですよ。税金で九割までもつないでやろう、保険会社は損せぬようにもうけさせてやろう。私はあくまでこれはもうけさせてやるというふうに考える。そういうことではいかんのであるから、この際ひとつ、こういうような、いわゆる公正取引をさせる、競争をさせる、そうしてサービスをさせるようにすべきである。もしもそういうことにならないようなことになるならば、政府は、二千七百億円、つまり、九割のその再保険をやる強権を持っておるのでありますから、それを停止をするくらいの決意を持ってやらなければ——まあ、地震がどれだけ起こるか、四百六十何年という夢みたいな統計をもって、即答ができぬようなそろばんをはじいて、そうして、保険料はなるべく少なく「収支の償う範囲内においてできる限り低いものでなければならない。」と言っているのだけれども計算のしかたは人によって違う、会社によって違う。統計のとり方は四百六十何年間、夢みたいなことでありますから、よほど腰を十分に落としてあなた方やってもらわなければ、もしも地震が起こらなかったら、保険会社はまるもうけですよ。どうするのですか、そういうときに。
  32. 上林英男

    上林政府委員 第一点の共同行為の適用除外でございますが、地震保険につきましては、一たん被害が起こりますと非常に大きな被害になりますので、その危険分の分散なり公平化をはかりますために、先ほどから申しておりますプールをいたしまして、これを均一化して各保険会社にまた負担させるというようなことを考えておるわけでございます。それによりまして、たとえば、総合保険の申し込みがありましたときも、危険が自分のところに過度に負担をされては困るということで、引き受けを制限いたしましたり、あるいは会社の能力と本来の担保力と地震保険の危険度の調整などをいたさねばならないわけでございます。たとえば、一たん被害が起こりましたときには大規模被害になりますので、各保険会社の共同の査定というようなこともせざるを得ない、こういうことでございますので、その意味におきましても共同行為をやらざるを得ない分野があると思っておるのであります。したがいまして、そういう面につきましては独禁法の適用を除外していたかくつもりではあるわけでございます。しかし、この保険によりまして会社が不当なる利益を得るということは、絶対に許さるべきことではないと考えております。したがいまして、保険料率につきましても、これは過去に経験のない制度でございますので、いろいろと過去の歴史あるいは学者の御意見などをお聞きいたしまして、いろいろ計算をし、はじいているわけでございます。できるだけ合理的に運用してまいるつもりでございます。したがいまして、地震が幸いにして起こらない、保険料率に余裕が出てくるということであれば、それは保険料率を下げていく、あるいは、先ほど申しました保険金割合をふやしていく、あるいは、この制度につきましては、発足の当初でございますのでいろいろもの足りない点もあろうかと思いますが、そういう改善のほうに今後努力を向けていきたいというふうに考えているわけでございます。
  33. 横山利秋

    横山委員 あなたの説明では納得できないのです。第十二条の三を削除したら、どういう弊害があるのですか。
  34. 上林英男

    上林政府委員 いま申しましたように、ことに、この地震保険につきましては、その円滑な運営をはかりますために、危険のプール、均一化というようなことをやることも考えております。それから保険料率につきましても、統一をしてこれを運用してまいるつもりでございます。あるいは共同査定の問題、こういうことにつきまして共同行為ができなくなる、したがって、この地震保険につきまして円滑な運用ができなくなるということになろうかと思うのであります。
  35. 横山利秋

    横山委員 この十二条の三を削除しても、政府の行政指導によってこれは可能ではないですか。方法はないことはないでしょう。優先的に私的独占と公正取引の法律の規定を適用をさせておいて、そしてやる方法はあるでしょう。ないとは言えませんよ。
  36. 上林英男

    上林政府委員 ただいま申しておりますことは、中身といたしましては、実質的に共同行為に当たるわけでございますので、これを大蔵省の指導によってそうやるんだということにつきましては、法律上のいろいろの問題もあるわけでございますので、これは損害保険事業の性格から申しまして、先ほども申しましたような海上保険その他の例もあることでございます。また、この地震保険につきましても、この特質にかんがみまして、いま申しましたような共同行為についてはやらざるを得ないものであると考えておるわけでございますので、これを明文において規定をさせていただきたいと思っておるわけでございます。ただし、その運用につきましては、もちろん独禁法の精神に十分に乗った運用をし、不当に保険会社が利益を得るというようなことは絶対に避けるべきである、そういう運用をつとめて行なっていきたい、こう思っておるわけでございます。
  37. 横山利秋

    横山委員 私の申し上げておるのは、私的独占並びに公正取引の確保に関する規定は絶対条件ではないんだから、この法律を適用させておいて、この法律の運用によってできるはずだ、こう申し上げておるのですが、ちょっと御検討が足らないようですから、その検討をしておいてもらいたいと思います。  この間お調べを願いましたこれは生命保険のほうでありますが、生命保険のここ数年間の全体的な数字を見ますと、収入保険料が、三十六年度で三千百三十億円、三十七年度で九千三百三億円、三十八年度で四千八百八十五億円、三十九年度で六千六十四億円、すなわち、四年間に収入保険料は倍になっておる。純剰余金は、三十六年度で三十五億円、三十七年度三十三億円、三十八年度二十六億円、三十九年度二十三億円ある。この収入保険料が倍になっておるのに、純剰余金に至っては低下をしておる。それに対して、今度は法人税額でありますが、三十六年度は十四億二百万円、三十七年度は十二億七千四百万円、三十八年度は四億五千九百万円、三十九年度はわずか二億円である。収入保険料は額が倍になっておるのに、法人税額においてはまさに一割ちょっとになっておる。なぜ一体こういうことになるのであろうか。私も一、二心当たりはないではないのでありますけれども、一応政府側の説明を伺いたい。
  38. 上林英男

    上林政府委員 生保会社自体につきましては、税制で特別な措置が行なわれているわけではないわけでございますけれども先生御承知のように、生保会社の剰余金につきましては、九〇%以上を契約者に還元するというたてまえをとっておるわけでございます。その趣旨と申しますのは、生命保険契約は何十年かの、二十年、三十年の長い契約でございます。したがいまして、一定の予定利率を計算して計算いたしました保険料というものを算出いたしておるわけでございます。現在で申しますと四分、四%が予定利率でございますが、現実にはそれ以上に回っておる場合もあるわけでございます。死亡率につきましても一般の死亡表を使用いたしておりますが、その率につきましても死差益というものが出るわけでございます。ある意味では、今後長い期間にわたって、そういう現在の経済情勢その他が続いていくかどうかという問題もあるわけでございますので、形式的な保険料といたしましてはそういう計算で算出をいたしております。実質的に剰余が出ましたときは、これは保険料の取り過ぎでございますので、その意味契約者に還元をすべきものでございます。そういう意味で、保険料の調整という意味におきまして、あるいは保険料の割り戻しという意味におきまして、これは税法上も損金に認められているわけでございます。契約がふえるに従いまして、また責任準備金もよけい積んでまいらなければなりませんし、契約者にも契約の還元をいたしてまいらねばならないものでございますので、そういう意味におきまして、純剰余金はおっしゃったような数字にとどまっているわけでございます。  なお、課税額につきましては、このほかに、配当についての課税制度によりまして、各保険会社におきましては株式を相当持っておりますので、その面から税額自体が減ってくるという面もあるわけでございますが、いずれにいたしましても、いま申しましたように、生命保険会社につきましては特異な制度があるわけではございませんので、主としていま申しましたような理由から課税額が比較的少額にとどまっておるという実情でございます。
  39. 横山利秋

    横山委員 三十九年度の実績を見ますと、収入保険料が六千六十四億円、利息、配当金収入が千三百四十億円、その他収入が二百二十一億円、合わせて七千五百億円の収入がある、七千五百億円の収入があって法人税額が二億円である、これはどう理屈をつけても、私は庶民的な納得を得ることはできない。もちろん、売り上げが七千五百億円あっても、ほかの会社で赤字であるという会社はあるにはある。けれども三十六年度をかりに例を引いてみますと、三千九百億円の売り上げで十四億円の税金を出している、三十九年度になると、倍になって七千五百億円の売り上げがあって二億円しか税金を出しておらぬ。なるほど株式の再評価によって減額があったろう、けれども、それだけの理由ではないわけですね。私の見るところでは責任準備金の積み増し額、支払い保険金等その他支出、契約者配当準備金繰り入れ前の剰余金等々、この内容を見ますと、いかに合法的であろうと、任意な庶民的感覚から見て、国民世論から見ていささか当を得ない。普通の会社なり普通の組織からいうと、ここは何ということだろう、どうしてこういう都合のいいうまいことができるだろうか、こういう感覚を持つのは当然だと私は思う。あなたは契約者配当準備金繰り入れ額、これが契約者に返っていくからだとおっしゃる。三十六年度で四百五十億円、三十七年度で五百六十九億円、三十八年度で七百十七億円、三十九年度に至って八百八十億円、もしも年々歳々これだけのお金が契約者に返っていくことがわかっているならば、なぜ初めから掛け金をもっと下げさせないのですか。二、三年前の決算はもう明白である。こんな八百億円も契約者に返っていくことが計算すればわかっているならば、なぜ保険料をもっと下げろと言わないのですか。この契約者配当準備金繰り入れ額によって現実に契約者の手元に金が返っていく間の期間というものは、まるきり保険会社が、本来契約者の金であるべきものを、税金をまけてもらって、自分の自由に動かしている金ではありませんか。ですから、この表をもってしても、普通の会社のように税金をもっと取るべきだ。それがうまくいかぬなら、なぜ掛け金をもっと勇気をもって下げさせないのですか。  いま保険会社と類似保険といわれるものはたくさんあります。労災保険がそうであり、あるいけ協同組合の火災保険がそうである。いわゆる類似保険というものがここ数年間実に膨大な力を持ち、いまや抜くべからざる組織を持ってきた。なぜか。掛け金が安いからだ。あなた方はそれを秘して、いつ危険があるかもしれぬと言う。危険は何もないじゃありませんか。どんどん組織の中で発展していくことは、こういう保険会社にあぐらをかかせて眠らせているから、そんならおれたちがやってみるといって、それが発展していく。私は類似保険ということは好みません。あれが正当な保険だ、近代的な組織による保険事業だと思っている。あぐらをかいて、政府の恩恵を受けてぬくぬく育っている保険会社が、いまにして適正な国民世論にこたえた掛け金なりあるいは税金を取るようにしなければ、これはあなた方の責任ですよ。どうなんです。
  40. 上林英男

    上林政府委員 先生御指摘の、要するにこういうような契約者配当ができるならば、保険料を初めから安くしたらどうかというのは、まさにそのとおりだと思っております。したがいまして、保険料につきましてはできるだけこれを安くするように努力すべきだと考えております。しかし、これにつきましては、先ほど申しましたように、保険契約につきましては非常に長い期間のものでございまして、いま、たとえば予定利率をどうしたらいいか、三十年の長きにわたって現在のような利率が支配するかどうかというような問題もございます。あるいは、これはまた保険業界のいろいろな考え方、あるいは、もちろんそれは契約者の考え方につながるものでございますが、非常に割り切ったものの考え方でない場合、生命保険に入ると、早く死んだ人が得をするという考え方がございます。実はそうではないわけでございますが、したがって、そういうものにこたえるために、長生きをして、掛け金をずっと納めていけば、配当がたくさんついて、実質の保険料は減ってくる、それが早く死んだ人と長生きをなさった方の調整であるというような考え方も、これは常識的な考え方でございますが、ないわけではありません。そういうようなことで、要するに、保険の運営の方法といたしまして、いわゆる低料金、低配当という政策をとるべきか、高料率、高配当と申しますか、そういう点で調整をとるべきかという議論さえあるくらいであります。保険会社は多数の国民大衆の方々の金を預かりまして、これの支払いをいたしてまいるわけでございますので、経営の健全性というものを十分考えていかなければならないわけでございますし、その意味におきまして、若干保守的といえるかもしれませんが、予定利率あるいは死亡率というようなものを比較的確実に見ている、あるいは見過ぎているという議論もおありだろうと思いますけれども、その反面、出ました剰余につきましては、全部保険料の調整ないし割り戻しとして契約者に還元をしていくという考え方に立っているわけでございます。そのような考え方に立っておりますので、たとえば、共済組合その他との料率の比較におきまして、保険会社は高いという議論があるわけでございますが、確かに、形式的には高うございます。しかし、私どもの調べましたところによりますと、ことに、生命保険の場合、長期の場合におきましては、その長期に掛けておられまする人にとりましては、配当を引きました実質保険料は、最終的には、ことに二十年後に払い込みをいたしまする金額につきましては、生命保険会社のほうがむしろ少ないという結果も出ているのでございます。そういうような意味におきまして、いろいろ問題があるわけでございますが、先生御指摘の点につきましては、いままでも私ども常に配慮をしてきたつもりでございますが、これからもしてまいりたいと思っております。
  41. 横山利秋

    横山委員 主税局長にお伺いしますが、いま私が提起いたしました契約者配当準備金繰り入れ、これは、私はまず第一にことばが気にくわない。配当準備金の配当というのは何ですか。配当の定義は一体どういうものですか。
  42. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 私どもの税法上の定義の配当でございますれば、法人利潤のうち、出資者に対しまして支払われるもの、これを私どもは配当と申しております。
  43. 横山利秋

    横山委員 ここは配当なら配当のように税法上なぜ措置しないか。もしもこういうような保険会社の扱いにするようだったら、配当という名前が大体おかしいと私は思います。配当なら配当のようになぜしないか。配当であって、あれは配当じゃない。掛け金の繰り戻しだ。それなら契約者掛け金繰り戻し準備金と名前を変えるべきだ。そうでしょう。それから、掛け金の還元準備金だとして、私が提起しているように、実際それが本人の手元にいくまでの期間は一体どのくらいあって、そしてそれは、その間資金運用をはかるにきまっているのだから、その金は、これによりますと、三十九年度で約九百億円もあるわけですね。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕 この九百億円の金を保険会社が本人に分けるまでの資金運用は一体どうなるのか。本来、その間に資金運用をはかるならば、当然これは税金の対象になってしかるべきではないかという点の御意見を伺いたい。
  44. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 まず、先ほどから御指摘の生命保険会社課税のあり方の問題でございます。この問題は、昭和三十五年にも横山委員から御指摘がございまして、私どもは、先ほどおっしゃったように、部分的ではございまするけれども、改善したつもりでございます。当時は、昭和二十五年にシャウプ税制によりまして、受け取り配当が益金不算入になっておりまして、普通会社につきましては、負債利子控除という制度によって、受け取り配当から負債利子を引いた残りを益金算入ということにしておりましたが、生命保険会社につきましては、責任準備金中の予定利子、さらに契約者配当準備金中の利差益部分、この部分をただいま保険部長が申されましたように、相互会社の性格として契約者に全部払い戻すべきであるという考え方から、損金に算入しながら、受け取り配当につきましては負債利子控除の制度を適用してなかったのでございます。そのときに、保険会社がどんどんと剰余金をあげ、契約者配当をふやしながら、欠損金が二百億あるではないかという御指摘でございました。私どもはその御指摘に従いまして検討いたしまして、責任準備金中の予定利子部分、先ほど保険部長から申されました四分につきましても、さらにまた、契約者配当準備金中の利差益部分につきましても、これは負債利子としょうということで、負債利子にいたしまして、初めてそこで繰り越し欠損金額がなくなりまして、課税所得が昭和三十六年から出てまいったわけでございます。  それから、このような金額でございますが、これは基本的に、おっしゃるように、私どもも常識的になかなか納得しがたいシステムであろうかと思います。結局、生命保険会社保険金の受け取り人に対して、満期保険金を受け取ったときに課税するということが、大きな課税の趣旨だろうと思います。しかし、それが二十年後、三十年後に払い込み保険料と満期保険金との差額に課税すること自体、まずいいであろうかどうかという点が第一の問題点でございます。少なくとも、現在の税法は、財政が会計年度制度をとっておりますように、年々発生する所得に対して課税いたします。責任準備金部分の予定利子にいたしましても、契約者配当準備金につきましても、これは私は全部が費差費差といった、保険料の払い過ぎだけではなくて、保険会社の巧みなる運用によるところの利差益部分が相当あるわけでございます。これも一種のと申しますか、利子所得あるいは配当に準ずるような所得であろうと思いますので、これを二十年、三十年待つこと自体が、はたしていまおっしゃったような常識に合うかどうか、御存じのように、昭和三十七年でございますか、退職年金積み立て金ができましたときには、一・二%を従業員の退職金を支払うまでの遅延利子といたしまして、法人税の形で徴収するような仕組みを設けたことから見ると、このように保険金につきまして、生命保険についてだけゆうちょうに待つこと自体がはたしていいかどうか、ことに、生命保険料については所得税の控除のようなシステムがあるときに、またこういったことがいいかどうか、一つ税制上のバランスから見た疑問でございます。  第二は、もう少し違った角度でございます。これまた横山委員御指摘の、生命保険会社一つの実在する企業である、堂々と大きな事務所を持ち、多数の人を使っており、金融機関といたしまして、相当な資金量を運用しておる企業としての税があっていいのではなかろうか。法人税は株主所得税の前取りというような考え方はございますけれども、実際は完全にそうなっておりません。企業の負担部分が相当出てきている。それから見ると、いまのような課税方式でいいかどうか疑問であろうということではないかと思います。各国ともこの点悩んでおりまして、ドイツのように剰余金の五%は最低課税をするというようなシステムがありますが、このあたり、私どももひとつ研究してみなければならぬ、かように考えております。
  45. 横山利秋

    横山委員 その保険会社税制については、私も各国の状況を見てみたわけですけれども、非常に複雑といいますか、私も理解しがたい点がたくさんある。ただ、すなおにさっと目に入りましたのは、いま主税局長が言いました西ドイツ方式であります。いろいろと、責任準備金はどのくらいにしたらいいか、契約者配当はどういうふうにしたらいいか、こまかいことをいえば、私は幾つも方法があると思うのですけれども、どうもそう言っては失礼な話でありますが、先年取り上げまして、それぞれの担当のところで御検討願って実績があがったけれども、なおかつ、七千五百億円の水揚げがありながら二億円しか税金を出さないというのは、残念ながら二億円しか税金を出さないというのは、残念ながら大蔵省の皆さんよりも保険会社の人間のほうがはるかに頭がいいということを証明したようなもので、ですから、頭の悪い一人なら頭の悪いように、ずばりとした方式を考えなければだめだと私は思うわけであります。私は、契約者配当準備金の繰り入れのやり方を変えるという一つ意見は持っておりますけれども、そういうような状況であれば、西ドイツ方式のような最小限課税の制度により、事業所得が欠損でも、保険料払い戻し金及び払い戻し準備金控除前の純益、いわば、生命保険会社の公表剰余金に当たる五%相当額は課税所得とされる。確かに、いささか過酷なようではある。欠損でもというのでありますから、過酷なようではある。もしも事業所得が欠損の場合においては、何か考える方法はあると思うのです。こういうようなずばりとしたやり方を採用することによって、一回保険会社に、勇気をふるい起こして、いわゆる一般の類似保険といいますか、私はそのほうが健全に今後伸びると思っているのですが、それと相並行して健全な運営ができる、そして、なるほど保険会社もこのごろサービスがよくなった、勉強するようになったというような嵐を一ぺん吹かせてみることが、保険部長として最も今日必要な任務ではないか、あなたの時代に勇をふるい起こしてそれをおやりになるべきではないか、こう思うのですが、どうでしょう。御決意はありませんか。
  46. 上林英男

    上林政府委員 御指摘をいただきました点は、よくその御趣旨を体しまして、努力をいたしたいと考えております。  保険会社は公共的な使命を持った企業でございますので、契約者のサービス、これが何よりも第一であるということを私どもは常日ごろそう考えて努力をいたしております。また、税の問題につきましても、もちろん国家の監督を受け、国の中において、国の庇護を受けて企業体としてやっておるわけでございますから、もちろん応分の協力を十分していかなければならないと私どもは考えておりまして、そういう面につきまして、十分心して指導をし、監督をしてまいりたい、そういうふうに考えております。
  47. 横山利秋

    横山委員 平林委員が大蔵大臣に御質問があるそうですけれども、ちょっと時間を拝借しまして……。  私、きょう五はいくらい水を飲んだのですけれども、声をからして、保険部長や主税局長並びに政務次官にきつくおしかりをしておるわけであります。しかし、このおしかりは、大蔵大臣にしてみれば、この間の未収利息のときと同じように、いいことを教えてもらったと必ずおっしゃることだと思うのであります。  簡単に内容を申しますと、保険会社の売り上げが非常に伸びておるにかかわらず、税金ががたんと減っている。三十六年では三千九百億円の収入があって、十四億円の税金を出しておった。これでも少ないくらいだと思うのですが、三十九年になりますと、収入が倍になって七千五百億円、そうして税金が何とたった二億円です。全国ですよ。なぜこんなばかばかしいことが起こるのか。当面の問題は、保有株式の評価が下がったからだということはあります。けれども、それを除外してもあまりにもはなはだしい。生命保険会社と普通の会社と比べて、世間の人は同じように思っている。ところが、生命保険会社は荒利益の九割までは契約者に返すのだ、百億円もうかっても九十億円は契約者に返すから十億円だけの税金をかける、こういうしかけなんです。ぼくの言いたいのは、三十九年度で九百億円も契約者に返しているわけですよ。九百億円利益の中から浮かして契約者に返っていくまでにずいぶん時間がかかるのです。そんなことがわかっておるなら、初めから保険料を下げろと言うのです。三十六年で四百八十五億円、年々歳々契約者に返していく、こんなことがわかっておるなら、初めから保険料を下げろ、そうでなければ——いま主税局長からいろいろ説明を聞いたのです。保険部長にも聞いたのですけれども、この責任準備金だとか、支払いの保険金だとか、契約者配当金だとか、いろいろな理屈のある損金算入が許されておるけれども、他との均衡上ちょっと低過ぎる。だから、もっと税金を取りなさい。税金を取らなければ、いまたくさんのいわゆる類似保険、労済連があり、共済組合保険があり、あるいは協同組合の保険がある。それがぐんぐんいま伸びているのです。それを保険部長はそう思っていらっしゃらないかもしれないけれども保険会社はいやに思っている。それはそちらが高い、こすいことをしているからこちらのほうが正当に伸びていくのだと私は言いたいのです。ですから大臣、いま主税局長保険部長も再検討するとおっしゃったのですが、これで再検討なされば、未収利息と相並んで、来年度の予算編成では大蔵大臣は、何と横山君よく言ってくれた、君のために二千億くらいもうかった、こうおっしゃるに違いないと思う。あとから来て、私の言うことを十分おわかりになったかどうかわかりませんけれども、大臣の、例によって前向きの御意見を伺いたいと思います。
  48. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 横山委員からは毎回非常に参考になる御意見を聞かせていただきまして、まことにありがとうございます。  ただいまの問題は、生命保険の利益が、非常に高い、それに対して課税をするかあるいは保険料を下げるかという問題だろうと思いますが、私も問題点があることは承知しております。関係当局とよく相談いたしまして、できる限りのことをしてみたい、かように思います。
  49. 横山利秋

    横山委員 私は一番最初の基礎的な数字をいただいてからもう一ぺん質問することにして、平林君にバトンを渡します。      ————◇—————
  50. 吉田重延

    吉田(重)委員長代理 昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等の規定による年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案及び昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法に規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律等の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、これを許します。平林剛君。
  51. 平林剛

    平林委員 ただいまの議題に関連をいたしまして、いわゆる春闘の問題について若干お尋ねをいたしたいと思うのであります。  初めに、大蔵大臣に素朴なお尋ねをいたしたいと思うのでありますが、政府並びに大蔵大臣は、しばしば、これからの国民生活の上にゆとりのある家庭を実現をしたいというお話を述べておられるわけであります。ゆとりのある家庭とは何ぞやという問題について、かつて参議院の予算委員会で田中寿美議員がお尋ねしたところ、大蔵大臣は、これは収入だけをもっていうのではない、しかし、心も収入もゆとりのあるものを目ざしてまいりたい、たとえていうならば、百坪くらいの土地を買うて三十坪くらいの家を建て、芝生も青くして、バラの花も一つや二つ咲かせたいというようなものがゆとりのある家庭だという一つのビジョンをお話しになられたことを私は会議録で読んだわけであります。そういう考え方は、ことしの予算編成なり諸政策を実行する上において述べられたことでございますから、素朴な国民の期待としては、ことしからでも、全部一ぺんにいかなくとも、少しずつその方向にいくのではないかという期待は当然あると思うんですが、その点はいかがでしょう。
  52. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私は、就任当初から、財政政策の究極の目標は、家庭にはゆとりを、企業には蓄積を、こう申し上げておる。私は今日でもそう思っておるんです。つまり、前途に対して希望を持つ生活、これが価値ある生活だ、こういうふうに私は考えるわけであります。その日その日をただ食って過ごしてしまうという生活は価値のない生活である、やはり前途に一つの計画を持って、一日一日の努力によってこれを実現していく、そこに人生働く張りというものが出てくる、その張りを持って働けるような世の中をつくり上げていくことが政治である、私はこういうふうに考えておるわけですが、ただいまお話の住宅の問題、これも一つの問題なんです。それだけじゃありません。いろいろな問題があるわけでありますが、いま住宅問題というものは高ねの花である、われわれの手の届かないところにある。これを手の届くところにまで住宅問題というものを引き下げてこなければならぬ、それには私は政府がそういうための施策を果敢にやっていかなければならぬ、そういうことを申し上げておるわけでありますが、財政金融政策を運営するにあたりましては、私は、そういう思想を基軸としてやっていかなければならぬ、さように考えております。
  53. 平林剛

    平林委員 そのためには国民一人一人の所得も漸次ふえていかねばならぬ。そうして、いまあなたがおっしゃったような方向にいけるような環境、政治体制というものをつくっていく必要があると思うんです。ところが、最近、総理府の家計調査による勤労者世帯の家計動向、この間発表されたのを見たのでありますけれども、総理府統計局が発表した全国五万以上の都市の勤労者世帯家計調査は、昭和四十年は戦後最大の停滞ぶりを示しておるという結論が出ておるのであります。こまかい数字はあまり申し上げませんけれども、この発表によりますと、勤労者の実質的な収入と消費支出の割合が、四十年においては、実質収入においてわずかに〇.三%しかふえていない。したがって、消費支出においては逆に〇・三%マイナスになった。これは一体どこに原因があるのかといえば、一つの原因は実収入の実額の伸びが小さかったこと、もう一つは消費者物価の上昇率が大きかったこと、こういうことにあるという分析がなされておるわけであります。これは私は、大蔵大臣においても、総理府の家計調査による勤労者世帯の家計動向として御承知のことだろうと思うのであります。したがって、こういうような状態は、いまお話しになりましたようなゆとりある家庭には前進的な方向は示しておらない。そこで、何とかゆとりある家庭の実現をする場合には、こういう傾向を是正しなければならぬということについては、大臣も私と同感だろうと思うのですが、その点はいかがですか。
  54. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 そのとおり考えています。
  55. 平林剛

    平林委員 それならば、たとえば、勤労者の中でも、かなり数のある公務員であるとかあるいは公共企業体関係の職員といえども、やはりそういう方向に努力すべきであるということは、総括的に大臣もお認めになりますね。
  56. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 そのとおりであります。
  57. 平林剛

    平林委員 この点については大臣も異論があるはずはないと私は思うのでございますが、ただ、実際、具体的な政治の段階におきますと、そのとおりでございますというやつがそのとおりにいかないんですね。私は、これから労働大臣にも総理府の長官にも順次お尋ねしてまいりたいと思うのでありますが、大蔵大臣、実はそのとおりであるというお話がそのとおりにならない実例を、私最近いろいろな資料から確かめたのでございます。たとえていうと、史上最大の減税あるいは戦後最大の減税と呼ばれるいわゆる三千六百億円減税が、一人一人の国民にどういう影響を与えたかということは、本会議におきましても、またこの委員会でもいろいろ議論をしてまいりました。最近私、電電公社の職員の団体が電電公社の職員に及ぼす減税の効果を計算機を使って各職員全般について相当こまかい調査をしたという資料を見せてもらったわけであります。そうしたら、消費者物価指数、所得の伸びをかりに無視しても、昭和四十一年における税制改正前と改正後の所得税、住民税の軽減の割合は、年収の〇・六五%しか影響しない、こういう結論になったそうであります。   〔古田(重)委員長代理退席、金子(一)委員長代理着席〕 これは全員にわたって調べたらしいんですね。たとえば年齢別にも調べました。二十五歳から二十九歳くらいで配偶者が一人ある人の平均が四十三万五千四百円の収入であった。これに付する税負担の減額分は二千二百四十円でございますから、影響率、効果というのは〇・五一%、それから三十歳から三十四歳までの男子が配偶者一人、十三歳未満の子供が一人ある者が、収入としては平均して五十九万一千円であって、税負担の減額分が四千十五円、影響率、効果というのは総収入に対して〇・六八%、これは全員にわたってやったものでございまして、かなり正確なものと私は見たのでございます。つまり、史上最大の減税と呼ばれるものであっても、実際にはその年収の〇・五%程度しか影響がなかった。おそらくこれは、国家公務員の場合におきましても、それから公共企業体関係職員においても、また一般の国民におしなべてみましても、私はその程度でなかったかと思うのであります。ところが、これに対して、この四月から、例を電電公社で申し上げますと、共済組合の掛け金が上がるわけであります。基本給の大体〇・六%の増額になる。ですから、史上最大の減税と呼ばれるものも、一人一人の組合員にとりますと、一人一人の職員、国民にとりますと、総収入の〇・六五%であり、逆に共済組合の掛け金が上がることによって基本給の〇・六%増額される。つまり、米だとか国鉄運賃だとかいわなくても、掛け金だけで総収入に対する割合は相殺されまして、ゼロになる。健康保険料の問題がいま議題になっておりますけれども、これは保険料率を現行の千分の六十三から七十に上げる、あるいは標準報酬月額の条件を現行の五万二千円から十万四千円に引き上げる、こういうことでございますが、この改正案がもし成立いたしますと、一般の影響はどうであるかといえば、月収二万円の人の保険料は七十円ふえる、月収三万円の人は百五円ふえる、月収十万円のいわゆる中堅サラリーマンでは、現在の掛け金が千六百三十八円であったのに、三千五百円と二倍になる。これらを考えまずと、あの減税というものはすべて相殺されていく、もちろん減税だけでゆとりのある家庭というのをねらっているのではないということはわかりますけれども、他のいろいろなことを考えますと、いまのままですと、どうしても今日まで政府が発表になりました諸政策だけではこの所得の伸びというものは出てこない。そして、せっかくの減税もそうしたことで相殺されていく、ここで何か手を考えなければならぬのではないか、こう思うのでございます。私はこれは大臣に聞いてもらいたかったことでございます。  そこで、「昭和四十一年度の経済見通し」を読んでみますと、政府では、国民総生産においては名目一一・三%の伸びを見よう、個人消費の支出は十六兆六千億円でございますか、一一・二%の伸びを見込んでおる、こういうことでございまして、結局、経済成長率を名目一一・三%、実質七・五%ということが政府のお考えのようでございます。これは私は、この見込みどおり経済成長させていくものとすれば、これをささえるものは何かといえば、やはり個人消費支出の伸びでなければならぬ。個人の消費支出を伸ばすためには、減税や運賃の値上げや消費者米価ということを考えますと、これはやはり月給なりサラリーなりが上がっていくという方向でささえていかなければならぬのではないだろうか。そこで私は、国民の過半数である労働者にもそういう意味では賃上げを認めていかなければならぬのではないだろうか、こう思うのでございます。大蔵大臣はそういうう方向については否定なさらないと思うのですが、いかがですか。
  58. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 わが国は世界でも第五の生産国であり、非常に経済実力が高いような状態と見られる一面があります。ところが、人口が多いわけですから、一人一人の国民所得をとらえてみると、依然として二十一位、ナイジェリアの次である、こういうような状態です。したがいまして、勤労者のサラリーが他の先進国に比べて低い。これはサラリーマンばかりじゃない、勤労者ばかりじゃありません。みんなの所得が低いわけです。これをだんだんと先進国に追いつき近い越す、こういうことが経済政策の大きなねらいでなければならぬわけでございます。そういう意味におきまして、勤労者の賃金が上がってくる、これは私はそういうことに努力していかなければならぬ、こういうふうに思います。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 ただ問題は、その賃金引き上げが生産性の向上を越えて行なわれるというようなことになりますと、これは物価にはね返ってくるわけであります。そういうようなことを考えますときに、とにかく、生産性と並行しない賃上げということがあってはならぬ、私はこういうふうに思うわけであります。まあ、しかし、そういう制約を置きながら、また、あまりに急激な賃上げが物価にはね返って、物価と賃金の悪循環を激化しないようにという配意をしなければならぬという制約を置きながら、賃金が国民の総生産とともに上がっていく、これは私もまたこれを期待しておるところでございます。
  59. 平林剛

    平林委員 生産性の問題と賃金のことについては、私も議論がありますし、また、それを比較検討してまいりますれば、その面からも当然賃金は上げていかなければならぬという理屈は成り立つと思うのでありますが、きょうは時間もありませんから、そこまで参りません。  ただ、労働大臣にお尋ねしたいのですけれども、こうした経済的な背景あるいは国民生活の向上という面を目ざして、主として民間においてもあるいは公共企業体関係の職員においても現在争議が行なわれております。争議という段階までいきますか、交渉、調停の段階と申しますか、そうした経過で行なわれておるのでございますけれども、昨日労働大臣は こうした問題解決のためには、なるべく早くそれを解決していきたいという御見解を述べられたことがけさの新聞に出ておるのですけれども、この機会に、ひとつあなたの、これらの問題について行なわれておる春闘、特に私きょう取り上げたいと思います公共企業体関係の調停問題についてのお考えをお聞かせいただきたいと思うのです。
  60. 小平久雄

    ○小平国務大臣 公共企業体関係の従業員、すなわち公労協の関係のお尋ねでございますが、公労協の賃金の改定につきましても これは最初の原則は、やはり労使間の団体交渉によってきめられるということがまず基本的に一番望ましい姿である。しかしながら、今春の春闘におきましては、組合側の申請によりまして、すでに公労委のほうに調定申請がされた、こういう段階でございますから、私としては、いわば第二の段階である、この調停の段階でこの際両者の合意が成立するとしますならば、それが第二段階でございますが、やはり今日の段階としては望ましい姿である、そういうことを昨日も申し上げたのであります。もちろん、さらに仲裁裁定等の段階もあるわけでございますが、それに移行することも、これは法の定めておる順序でございますから、それを否定するわけではありませんし、やむを得ない場合はそこに行くことも、これはいままでの例に徴しましてもあり得るわけでございますが、私は、基本的な立場に立って、先ほど来申しますように、今日の段階としては、でき得べくんば調停の段階での妥結が望ましい、こういうことを申し上げたわけでございます。
  61. 平林剛

    平林委員 現在の公共企業体関係の賃金問題についての紛争、これは、いまお話のように、自主的な話し合いで解決される方向として、法律では仲裁裁定というところで政府は拘束されるのだけれども、しかし、できれは調停段階で解決されることを希望しておるというお話でございます。  ところで問題は、今日まで、労働大臣なり、労働問題について関心を持っている者は元来がそうですから、当事者間で解決することが望ましい、そして、なるべく早く解決をすることが必要だということはお述べになっているのですけれども、政府関係の場合にはどうしても予算上の問題が出てまいりまして、その隘路になるのが大蔵省ということになるわけですね。昨日の労働大臣の答弁は、このほかに、当局側に対しても一つの希望を述べられました。労働大臣にかわって申し上げますけれども、当局のほうでも、回答する以上は、去年のように三百円とか五百円とか、そういう少額回答でなくて、財政上許す限り最大限の熱意を込めた回答をしてほしいというようなことを述べられたのであります。政府の労働大臣として述べられたのです。この点は、ぜひそういう方向でこの労使の問題が解決されることが望ましいと私は思うのですけれども、ひとつ、大蔵大臣もそうした方面で努力していただけますか。
  62. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いまそういう問題は、ILOに関連しまして、公務員制度審議会でどういうふうなことがいいかということを御審議を願おう、こういうふうに思っておるのですが、それに至る過程において今日の問題が起こっておるわけです。しかし、私どもは、最終的には、とにかく公務員制度審議会、そういう場において根本的な結論を得たい、こう思っているその過程の問題でありまするから、そういうような気持ちで今回の問題も処理していく、こういうつもりでおります。
  63. 平林剛

    平林委員 大蔵大臣はちょっと私の質問をはき違えているのじゃないかと思うのです。いまお話のものは、いわゆる池田さんと総評の議長の太田さんが話し合われた当事者能力の問題についてなのです。これは、お話のように、公務員制度審議会のほうで審査を進め、その結論を待つというのが、政府の態度だろうと思うのですが、私の言わんとするのは、当面、公共企業体関係と当局者側との間に賃金を引き上げるという問題についての紛争があり、調停段階に行っておる。そこで、この調停がうまくいきませんと、あまり感心はしませんけれども、実力行使というようなことで、例年のようにストライキというようなことになり、紛争が拡大をしていく、こうならないための努力が続けられておるわけなのです。労働大臣は、そうした不測の事態にならないために、先ほどのようなお答えを社会労働委員会において述べられたのでございます。ところが、問題はお金のほうなので、大蔵大臣も同じペースに立って問題解決のために努力してくれないとこの問題は解決できませんから、大蔵大臣に全般の情勢を把握していただいて、労働大臣と同じ気持ちでこの紛争解決のために当たってもらえないかということを申し上げているわけなんです。
  64. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 この問題は、迅速にかつ平和裏に解決されることに対する希望は、私も労働大臣とちょっとも変わりありません。ただ、労働大臣がどういうふうに具体的に考えておるのか、まだそれを伺っておらない段階でございます。これは、問題は金の問題になってくる。つまり、具体的な問題なんです。その具体的な問題を伺いませんと私としてもお答えいたしかねますが、要は、労働大臣も同じ閣僚でございますから、よく相談いたしてまいるつもりであります。
  65. 平林剛

    平林委員 労働大臣、最近調停段階でも一番問題になっているのは、民間の企業においてどうなっておるかということです。現在賃金の引き上げの問題が起きておるけれども、大体どの程度になっておるか、現在までに妥結した企業は大体どの程度の賃上げ率になっているかというようなことをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  66. 小平久雄

    ○小平国務大臣 民間の関係で妥結に至ったものはまだごくわずかでございます。いま手元にその資料がございませんが、局長からお答え申し上げます。
  67. 三治重信

    ○三治政府委員 いまお尋ねの、民間の具体的な賃金の動向でございますが、まだ一次回答のところがほとんどでございまして、妥結したのはまだほんのわずかでございます。いま回答を出しているところは、われわれから見ますと、全般的に業績の非常にいい会社がそろっているように考えます。  具体的に申し上げますと、明治製菓が四月四日の回答で三千六百円、森永が三月十八日の回答で二千四百二十九円、雪印乳業が三月二十二日の回答で二千七百五十九円、日本水産が三月二十六日の回答で二千二百八十円、図書印刷が三月三十一日で二千九百円、凸版印刷が三月十五日で三千二十七円、それから最近のもので、肥料関係で、日本水素が四月六日で昨年並みの三千七百七十円、東北電気が一次回答で、三月五日ですが、千八百円、日本合成が三月十七日で千二百三十八円、それから最近のもので、日本酸素が三月三十日で二千四百円、こういうような状況でございます。
  68. 平林剛

    平林委員 この間、日本経済新聞に民間の回答状況というのが発表されておりましたので調べてみたのですが、いまお話しになった以外に、山之内製薬が三千九百五十円、武田製薬が四千四百円、三共製薬が三千九百円、東北肥料が三千七百七十五円、製鉄化学が三千七百六十円、それからいまお述べになったものでも、森永などは三千三百四十円、総評がこの間調べました状況調査によりますと、三千円から三千五百円程度の給与の引き上げがあったのが三百五十六組合、三千五百円から四千円までの引き上げがあったのが百三十九組合、四千円から五千円までのものが六十八組合、五千円から七千円未満のものが二十組合、七千円以上が十二組合ございまして、これはまあ、それぞれの事業規模によっても違うと思うのでございますけれども、大体の民間における相場といいますか、賃上げの幅というものもおおよそ定まってきたような感じでございます。  そこで、現在まで、専売公社にしても電電公社にしても、あるいは国鉄にしても、民間企業の引き上げ額が定まらないうちは、うちは回答せない、こういう態度をとっております。私は、これはきわめて自主的能力の欠除だと思うのでありますけれども、現実は、やはり大蔵大臣、あなたのほうにあるらしい。具体的数字が煮詰まってくると、財政上どうかというようなことでやらないと判断ができないという段階にあるわけであります。その意味では、この問題について大蔵省筋がしっかりした腹を早目にきめてやっていくというのが必要な段階だ、これは、私現実問題として申し上げておる。労働問題としては、こんなことはおかしなことでございますが、現実問題としてはそうなんでございまして、大蔵大臣も、三公社五現業の職員の賃金というのは、生計費、公務員賃金、民間給与その他の事情を参酌してきめるという法律の規定は御存じだと思うのでありまして、そういう意味では、これらの問題を至急に——紛争を早く解決するためにひとつあなたのほうも活動をしてもらいたいと思うのですが、いかがですか。
  69. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これは、まあ法律を尊重しなければならぬわけですが、民間賃金の動向も考えなければならぬ、こういうことになっておるわけでありまして、そういうものもしさいに検討いたしまして、なるべく結論を早く出したい、こういう考えでおります。
  70. 山田耻目

    山田(耻)委員 関連して。  公労協といいますか、三公社五現業の賃上げ要求が主体のお話でございますが、昭和二十三年に三公社五現業が法律で国家公務員から離れましてからずっと継続されてきておる取り扱いについてのことでございますけれども、この問題が今日まではっきりしませんで混乱を起こしてきたわけです。それは、いわゆる経営者のほうと従事員のほうとが、当該予算を越えて賃金の支出をしてほしい、いわばベースアップの要求ですが、ございましたときに、経営者のほうから、もう予算総則で縛られておるのだ、当該年度の予算を越えて一文の金も出すという約束はできませんということで団体交渉に応じてこなかったのがいままでの経緯です。これは、一つ大蔵省との関係でございます。いまの平林さんの質問の核にもなっておる問題であります。ところが、この法律が定まりました昭和二十三年の第三回と第四回の国会におきまして、時の労働大臣増田さんは、自由民主党の中曽根さん、社会党の山花さんなどの質問に対しまして、それは当事者能力というものではない、新たなる賃金要求が出てきたときには、事業法なり公労法の一条の性格に合わして義務を遂行する立場から、当然予算上、資金上を越えて労働協約の締結をすることがある、それが出た場合には労働協約に労使双方が調印をしてまとまったときには、資金上、予算上不可能な手続として国会に提出をすれば、国会の承認を経ることによって効力を発生するんだ、こういうふうな答弁がなされて公労法は制定されてきたわけです。ところが、いま申し上げましたように、どうも当事者能力がないという理由で公社当局は交渉に応じない、こういうかっこうを続けてまいりました。ところが、昨日の社会労働委員会におきまして、労働大臣なり三公社五現業の責任者の出席を願いましていろいろ問い詰めてまいりましたところ、それはやっていい、やることにしよう、法律のたてまえどおり、労使双方で予算上、資金上不可能なことも妥結し得るし、し得た場合には十六条の定めによって国会に手続をとろう、そういう道が労使の健全な運営の上にあるのだということで、きのうは確認されました。近く労働省のほうから、公社五現業の経営責任者のほうに文書で措置かなされるということになってまいりました。これは公労法上のたてまえでございます。  そこで、事業法の中で言われておるいわゆる予算総則の問題、給与準則の問題、これがひっかかってまいります。そのひっかかり方の問題、かかりぐあいについて、実は大蔵省の態度として答弁をしてもらわなければならぬ問題でございます。この点について、一点お伺いいたします。
  71. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 法律の解釈のことは、私ただいまここでお答えすることができません。これは労働省が主管の官庁でございますからお答えすると思いますが、ただ、実際問題としますと、三公社五現業は、これは政府機関なんです。独立の企業体ではありますけれども、政府がまるがかえであるというような機関でございますから、これが政府の意図と申しますか、考え方に大きな制約を受ける、こういうことは私は当然だろうと思います。しかし、さればといって、三公社五現業の労使が自主的に話を進める、これが一番いいことである、それによって平和的に妥当な解決ができるということが非常にいいことである。ただ、現実を見ますと、いま私どもは物価問題、これが最大の問題だ、こう言うのです。非常に急激な賃金上昇というものが各地に起こる。これはもう確かに物価に致命的な影響があると私は思います。そういうような際において、いま現実に三公社五現業でどういう要求をしておるか。七千円、八千円の要求でしょう。これは私は理解できないと思うのです。お互いにもう少し労使が足を地につけた話し合い、そういうものでなければ、私はほんとうの話し合いにならぬと思うのです。私は政府当局もそういう現実的な話し合いに臨むようにしたいと思いますが、同時に、労働組合、職員組合のほうもそういう気持ちで、あまりけたのはずれた行動をとるのはいかがなものだろうか、こういうふうに思います。
  72. 平林剛

    平林委員 大威大臣、ちょっとお急ぎのようだから、私もう一度はっきりさせておきたいと思うのですが、結局それは、賃金の上昇が物価にはね返るという点、全面的に否定はいたしませんけれども、大蔵大臣しばしば言うように、今日の物価上昇の原因というのは他のところにあるわけでございますから、そういう点では、私議論があると思います。しかし、当面この紛争を解決するためには、それはお互いに譲歩すべきところは譲歩していかなければならぬということはわかります。そこで、問題は現在どこに一番の難点があるかというと、当局側もものは言いたいのですよ。民間でもこれだけ上がっておるし、国家公務員との比較においてもこうだとか、あるいは物価上昇、現実において物価が上がっておるのだから、それを何とかせなければならぬと、ものは言いたいのだが、言えないという状態にある。言えないという状態は、財政上の問題がございますので、どうしてもあなたのところへ行くわけですよ。そこで、ここで議論をしておったのでは破局的な段階にいってしまう、そこで、大蔵大臣においても、諸般の事情を考慮して早めに解決をする、そのためには、裁定にいくまでとにかく政府は拘束されないのだから、がんばれというようなことでハッパをかけないようにしてもらいたい。労働大臣も、先ほど述べられたような決意で紛争の解決に当たりたいという希望を述べておられておるのだから、大蔵大臣もひとつ調停段階で問題が解決するように最大限の努力を払ってもらいたい。これが私のきょうの主眼なんです。大蔵大臣も、専売公社や印刷局や造幣局は、国務大臣であると同時に主管大臣なんですから、ぜひひとつあなたも当事者の一人として、財政上は一番のかなめですけれども、やはり主管大臣の一人としても、ぜひひとつ配慮を払って、調停段階で解決できるように努力しますと、御言明をいただきたい。そうすれば、きょうは大蔵大臣のほうは終わりにしたいと思うのです。
  73. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私はごもっともなお話だと思います。これが紛争だとか、あるいは仲裁だとかいう段階までいかないで、調停で片づく、こういうことは、あなたと私ちっとも違いません。ただ、これは相手のあることだと思うのです。政府側ばかりじゃ片づかない問題ですし、労働組合側も、ただいま申し上げましたような、あまりかけ離れたような態度で常に話し合いに臨むというのじゃこれは片づかないのです。まあ、平林さんは労働組合側とは非常に御懇意なようですから、どうか労働組合側に対しても、私どもに言うのと同じようなことを言って、両者が円満に話ができるように、ひとつ御協力のほどをお願い申し上げます。
  74. 山田耻目

    山田(耻)委員 大蔵大臣お急ぎのようですから一言だけ。  公労協は八千五百円要求したようでございますが、あなたのお説によりますと、かけ離れた金額だし、まあ、そのほうにもひとつ手当てをしたらどうかということですが、これは私もごもっともだと思うのです。ただ、なぜこうなってきたかといえば、経営者当局と所属する組合団体との話し合いが今日まで十分できなかった。いまの当事者能力でできなかったというところに、ストレートで調停、仲裁に移行するために、かなり理論的な賃金というものが前面に出たきらいもなしとはしないと思うのです。  そこで、二つほどお願いしておきたいのですけれども、両当事者間でまとまったと考えた場合、たとえば、調停を含めてですけれども、調停というものは、調停、あっせんが出ましたら、それを両当事者、組合と当局が労働協約に直して、判を押してはじめて調停段階の結論が出るわけでありますが、調停というものの結論は拘束性がありません。仲裁はございます。ですから、調停段階の結論というのは、両当事者の労働協約によって変えられていくべきものでございますから、そういう労働協約が調停段階で生まれても、あるいは団体交渉の段階で生まれても、それが予算総則にいう予算上、資金上を越えた金額であったとしたら、いままではいけなかった。大蔵省はおしかりになっていたのですよ。それが昭和三十一年の調停段階できめて、労働協約化されたものが、やみ給与として、八百五十円の賃金を六百円も戻入させられた時代があったわけです。当事者能力なし、そういう時代であったために、公社当局は非常に萎縮いたしまして、予算総則を越えた賃金の支出は実はタブーで、話には応じられませんと言って、ゼロ回答、ゼロ回答で続けてきたのがいままでの歴史ですから、この際それを一応改めて、純粋の法律の立場に帰ろうということで、予算総則を越えて賃金の支出の妥結をしても、それは民法上当局と組合は拘束するけれども、協定の効力というものは、国会の承認を経なければならないときめられておる十六条の手続によって国会へ上程しようじゃないかということが、昨日の社会労働委員会などでは明確に手続として明らかになったのです。それと、昨年の二月十二日の予算委員会におきまして、私が時の大蔵大臣でありました田中さんに対して、そうした場合、一体あなたはどうなさいますか、従来の態度を固執されますかと言ったら、労使関係は話し合いで円満にいくのがいいのだから、そのときには大蔵省としても十分検討する用意があるという御答弁をいただいておるわけです。ですから、きょうは、福田大蔵大臣は理解のある方でございますから、大蔵省としてもそういう労使相互間でまとまっていく結論が調停段階で生まれれば、あるいは団体交渉の段階で生まれれば——当然そこで生まれてくるものは、全く非常識なものは生まれないと思います。そういうものが生まれてくれば、大蔵省としても、予算上、資金上考慮していくという立場がここで明らかになれば、私は非常に調停の段階も団体交渉の段階も作業がスムーズに進んでいくと見ておるのです。この立場を述べていただきたいということが一つ。  それから、日本の公労協が非常にいびつな関係で伸びてきたというのは、ストライキ権がない、当事者能力がないということで伸びてきたのですが、日本と同じような公共企業体というのは諸外国にたくさんございますね。しかも、同じように国会で、予算総則で縛られておるわけです。そういう国はどのように片づけておるかというと、一番いい例はイギリスです。イギリスはホイットレー方式をとりまして、公務員組合の団体交渉の相手側はだれかといったら、イギリスの場合は大蔵大臣でございます。さいふのひもを握っておる人が窓口になっておる。日本の場合は、官房長官と、給与担当大臣と労働大臣が両翼におりまして、官房長官が窓口になっておる。これも私は大蔵大臣とやるまでの一つの段階として生まれてきたと思いますけれども、いわゆる国家法人なり、特殊法人のそういう人々の要求に対する窓口としては、大蔵大臣の意向というものを非常に大事にしなくてはならない、こういう気持ちを将来にも育てあげていかなくてはならない。そういう意味も含めて、大蔵大臣もやはり公務員賃金のあり方などについて一つの見解を示しておいていただければ非常にいいのではないかという気持ちでございます。私の質問はこれだけです。
  75. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 公労協の賃金問題は、これはいまの民間の賃金水準、これが一つの要素にへるわけです。それからもう一つの要素は、これは財政上の見地です。そういうようなことで適正にきめらるべきものであるということになっておるわけなんであります。いまお話の調停が出る、これは適正なものが出ることを期待いたしますが、そういう法で命ぜられておりますワクにのっとりまして適正な答申が出るということでありますれば、私どももできる限りこれを尊重していきたいこういう気持ちでございます。まあ、できる限り努力をいたします。
  76. 平林剛

    平林委員 総務長官もお聞きのとおりでございます。給与担当大臣として、ぜひこの紛争の解決についても、それぞれの立場で御尽力願いたいと思いますが、まず御見解を承りたい。
  77. 安井謙

    ○安井国務大臣 私のほうは一般公務員関係の給与ではございますが、きのうも実は社労委員会で山旧さんから関連のある事項だから、十分それは国務大臣として同じように考えてやるべきじゃないか、こういう御意見をいただきました。そういう趣旨におきまして私どもも十分な関心を持って、できるだけ円満に片づくという方向に努力をしたいというように考えております。
  78. 平林剛

    平林委員 実は、あなたにお尋ねしたい点は、いま私どもが質疑をしておる状況で御判断されたと思うのですが、日本の労働問題を、特に公共企業体関係の労働問題を解決するためには、法律に書いてあるとおりにはいかないんですね。公共企業体労働関係法というのがございまして、それにはいろいろの規定があって、労使が賃金の交渉をきめ、あるいは予算上、資金上不可能なものであっても協定ができる、協定した場合は、国会に提出しなければならぬという条件はあるけれども、できるとなっております。ところが、常にその法律どおりに事が運ばない。結局、第三者であるところの調停、仲裁に行きまして、勢い紛争は長引いてくる。これによるところの国家の損失、あるいは労使の紛争による混乱というものは、今日まではかり知れないものがあるわけです。ですから、何とかしてこの問題について、もう少し当局側に当事者能力というものをつける必要があるということがお互いに議論をされまして、この問題は、現在公務員制度審議会の議論に譲られておるという形になっておるわけであります。そこで、ことしの問題はとうとう片づかなかったわけであります。ことしの紛争解決をするのにその結論というもので処理できなかった。いつごろになったらそれが処理できるかという問題になるわけでございまして、総務長官から、現在これらの問題を議論しておる審議会のほうの状況をひとつ御説明いただきたいと思います。
  79. 安井謙

    ○安井国務大臣 公務員制度審議会につきましては、昨年の十一月一日から実質上の審議が始まりまして、すでに十一回でございますか、慎重、御熱心な審議が相当長時間にわたって続けられております。ただいま当面の議題になっておりますのは、御承知のとおり、ILO八十七号の国内法関係の、いわゆるたな上げ分の審議のようでございます。こういう問題が、これは日限もある問題ですから、なるべく早くおきめをいただきたいということを政府も強く要望しておりまして、それが一段落つき次第、そういったいまの当事者能力その他の問題にもおかかり願えるであろうと私どもは期待をしておるわけであります。
  80. 平林剛

    平林委員 現在までの審議会の状況は、主としてILO条約に基づく諸懸案の審議が進められておる。この当事者能力という問題については、いつごろまでに結論を出してもらいたいというお考えで担当相としておやりになっておるのですか。
  81. 安井謙

    ○安井国務大臣 政府は、出しております諮問の形は、公務員あるいは公労協の職員に関する労働関係の基本問題の一般ということでいたしております。個々の問題をいつまでにというふうには指定しておりません。いま政府が特に特別要望いたしておりますのは、例の日限のあるたな上げ分については早急に結論を願いたい、こういうものを出しておりまして、あとは全体をこの審議会でいろいろ取捨選択していただきまして、その手順によって答申が出ると期待しておりまして、この分はいつまで、この分はいつまでというふうにただいまのところ区分はいたしておりません。
  82. 平林剛

    平林委員 当事者能力の問題について具体的に話し合って、今回のような公労協の紛争が拡大をしないように、なるべく早目に解決できるような措置をとろうじゃないかと相談されたのは二年前ですね。なくなられた池田総理の時代でございます。それから二年たった。ことしも、きょう私ども社会労働委員会でも、大蔵委員会でも、関係大臣に、そういう意味でも責任があるから早目に解決をしてもらいたいという趣旨で質疑を行なったわけでございます。私はやはりある程度政府でも本腰を入れてこの問題の結論を出すように努力すべきではないかと思うのです。たとえば、ILOの問題は一応六月十四日までに出してもらわないと困るという期限がございます。同じように、私は、公共企業体の紛争については早く出してもらう、いつまでにやってもらいたいというような気がまえがなければ、あの大きな紛争を解決した動機となった池田・太田会談というものの意義はうせていく、うせないまでも半減していくということになると思うのでありまして、どうでしょうか。いつごろまでにやるという気持ちがあるというような御言明はできませんか。
  83. 安井謙

    ○安井国務大臣 この点は、審議会の御審議を願う手順、方法というものは審議会自身に実はお預けをしておるわけでありまして、いま御指摘のような当事者能力の問題は非常に大事なことであり、一刻も早く片づけるような努力がされることは好ましいと思いますが、政府が一方的にこれだけをやってくださいというふうにはなかなかいきかねる点もございます。それに、審議会は、御承知のとおりに、総評、同盟からもそれぞれ代表者とおぼしき方が相当お出になっていらっしゃいます。そういう方々と相談をしながら審議は進んでおりますので、私も平林さんの御意思のあるところは会長等へも伝えますが、実際の運営についてのあれこれのさしずはいささかはばかられますので、そういった方面からもひとつ推進願えればありがたいのではないかと思います。
  84. 平林剛

    平林委員 私はなお当事者能力の問題について、本来労働大臣にも見解を聞きたいと思ったのです。当事者能力、当事者能力と言うけれども一体どういうことなんだ。私従来の経験から言いますと、問題は、これらに関係をする当局あるいは政府、もっとしぼって言えば大蔵大臣、こういうものの決意いかんによって解決できる問題であって、とりわけて当事者能力というものを議論をするということがどうもいろいろ疑問があるわけであります。関係者の決意いかんでは即座に今日のような紛争を長引かせることをなくすことができる。それも議論するのが一つだと言えばそのとおりでございますけれども、いずれにしても、具体的に、ではどういうことがあるかという問題が、まだ政府側から、あるいは担当大臣である労働大臣からも明らかにされておりません。私はきょう実はそれを聞きまして、今度の問題について積極的努力を払ってもらうとともに、具体的な結論を出したかったのでございますけれども、労働大臣所用のために退席をされましたから、これ以上質問を続けることができません。私はきょうの問題につきましてはこの程度で終えまして、また後日、こうした問題について政府とも議論をしてまいりたいと考えております。  きょうはこれで質問を終わります。
  85. 山田耻目

    山田(耻)委員 一つ安井長官にお願いをしておかなければならないのですが、ややもすると当事者能力と仲裁制度というものが連なっておるようにお考えになる向きがあるような気がしてならぬのです。当事者能力がないから、仲裁へ持っていってきめてもらえばいいじゃないか、こういよ結論に発展してきたのですよ。ところが、当事者能力というものは、その一つの事業体に対して、その事業体の責任者が国会できめられた予算を越えて支出をしてはいかぬということをしぼっておるのが当事者能力です。仲裁制度というものは、公共企業体等労働組合からストライキ権を奪った代償制度として設置されたものであります。その仲裁制度というものが労使双方を拘束し、ILOの第五十四次報告の四十一項、六十項では政府をも拘束すると明らかにしております。それがストライキ権を奪った代償制度としてある仲裁制度です。それと当事者能力とイコールさせて今日まで仲裁に逃げ込んだところに経営者の無能、団交の否認というものが生まれてきたのであり、それが今日のいびつな労使関係をつくり上げてきたのですから、長官、制度審議会で誤った議論をなさらないように、従来の関係を持ち込まれるとそういう混乱が起こりますので、池田さんと太田さんとでやった当事者能力というものは、その後去年の一月二十八日と二月五日の次官会議を通して、現行の中で予算の移流用その他ができるだけ拡大されていくように能力をふやしてあげようじゃないかという申し合わせができております。これをこれからどのように扱っていくのか、それから、当事者能力を越えて両当事者でまとめたことを政府は一体どのように受けて実現してやるのかというような方法が確立されたら、いま平林さんが言う腹と決意がそこにくっつけば解決できる能力の問題です。仲裁制度の問題については、私はここでは申しませんけれども制度審議会では基本権をめぐる問題として提起されておりますので、これは代償措置としての仲裁制度か、基本権を与えるべきか、こういう問題で議論発展していくものでございますので、区分けをして整理していただくように、政府から出ておられる総務長官としてはしっかりけじめをつけて扱っていただくようにあなたの決意を伺っておきたいと思います。
  86. 安井謙

    ○安井国務大臣 これはもうおっしゃるとおりだと私思います。当事者能力の問題というのは、いまの調停の段階までの問題をいかに扱っていくかという問題でございます。また仲裁は、それで片づき得ない問題を別個の立場で片づけるのだというお説はそのとおりだと思うのです。要するに、この調停までの間に円滑にこの問題が片づいていけばよろしいのでありましょうが、そこに予算上、資金上の問題が生じてくる、その生じてくるものを突き破って協約を結ぶとかなんとかいうことが現実にできるような環境が生まれれば、これも一つのいまの制度のままでも当事者能力がある程度発揮できる、私はこういうことが言えると思いますが、それがいまなかなかできにくい状況にある。しかし、これは先ほど大蔵大臣も言われましたように、一方だけの問題でもないようでございます。これは両者の間の話し合いが調停なりあるいは協定なりの段階でつくのでなければ、やはり一方だけが無制限に出すという腹をきめるならこれはできましょうが、そうはなかなかいかぬと思います。これは両者が相まって考え直すといいますか、やり方について考えるという余地も今日多分に残っておるのじゃなかろうかという気もしております。しかし、それやこれやあわせまして、今後公務員制度審議会でも十分御検討願うと思います。また、これは私ども一連の、ただエスカレーター式に調停から仲裁へつながるものだというふうに、ただ機械的に考えるのじゃなくて、これは審議委員の方々もみんなそれぞれの専門家でございますから、適切な判断がいただけるものだと期待しております。
  87. 山田耻目

    山田(耻)委員 もう一つ大蔵省武藤さんにお伺いするのですが、やはりひっかかるところはおたくにいくわけですよ。いま安井長官のおっしゃっておることを聞いていますと、当事者能力がない、それを突き破って協約を締結するといえば、予算上、資金上を越えて協約を締結する道に困難さがあるのだ、その困難さの表現のうちに、能力としての困難さといえば大蔵省の関係です。それから労使双方でよく話し合わぬという困難さがあれば、これは労使双方の問題です。ところが、なぜ労使双方が今日まで話し合えなかったかといえば、あなた方大蔵省がしかるからですよ。昭和三十一年にせっかく労使双方の中で初めてまとまって八百五十円という金額がきまったときに、大蔵省が多過ぎるといって二百五十円しかやらんかった。しかも、すでにやみ給与で支給しておったので六百円戻せといって取り上げたことが非常に企業当局を苦しめることになった。それから以後は、これは二千円ぐらい上げてやらなければならぬと思うけれども、当事者能力がないから最後までゼロ回答で逃げていく、一文も上げられません、当事者能力がありませんと逃げていくものだから、片方は八千五百円くらい要求して、追っかけていって、仲裁に逃げ込んでいく、こういう不健康な状態になってきたのが、何といったって百五十万もこしておる今日の大企業である公労協の労働組合に対する労使関係の現実の姿でしょう。ここに不幸が芽ばえてきたんですよ。ですから、現行法の中でも、国鉄当局なりあるいは郵政当局あるいは電電当局が今日の予算総額を突き破って越えてよろしい、物価も七・六%上がった、企業能力でお前たちはこれだけ苦労している、生産性もこれだけ高まった、だからひとつこの際四千円支給したい、組合は八千五百円要求しておるが、しょうがない、四千五百円で妥協しようといってまとまって、労働協約を締結することが今日の法律でできるんですよ。その場合に、経営当局がしかられないように、第十六条という保護規定が設けられておる。予算上、資金上を越えた協定を結んだときには直ちに効力を発生しないぞ、国会に持っていって国会の承認を経てやるのだぞ、こう書いてあるんですよ。その手続を踏んだ関係が成立をしておったら、当事者能力はそこで今日も問題にならなかったんですよ。それをやってないから当事者能力論が出てきたんですよ。だから、これはかかって大蔵省の指導にあると私は思う。だから、三公社、五現業を担当しておる大蔵省のお役人は、そういう点に対して十分法の示すたてまえが正しく運用されるように指導していく責任があろうと思う。それが今日までどの程度積極的に指導されておったのか。それとも予算上、資金上を越えてお前ら協定を結んだら許さんぞという指導をされておったのか、この点をこの際明らかにしておいていただきたい。
  88. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 昔の例でございますが、実は私どもまだよく調べておりませんけれども、戻入を認めたということはなかったのではないかと思います。われわれ大蔵省のほうの財政の見地、それから先ほど大臣も言われましたように、民間の賃金とか、そういうことをいろいろ考えまして、大蔵省としてはどうしたらいいかということを、これまでも、あるいはいろいろと意見を聞かれれば言ったことはあると思いますけれども先ほど来お話しになったような問題もございますので、これからもなかなかいまの制度の中でむずかしい問題がございます。たとえば、予算が通ったばかりでございますので、すぐにそれに合理化でもって節約ができるというようなことは、そう簡単にはいかぬと私は思います。いろいろむずかしい問題がございますけれども、お話はよく承って、大臣に伝えます。
  89. 山田耻目

    山田(耻)委員 もう一つ、むずかしいということばがたいへん大きな威力となって三公社に当たっていくんですよ。全部大蔵省中心ですから、それほど今日大蔵省は巨大な権力を持っておると私は思うんですよ。そこで、いまあなたのおっしゃっておることばの中に、予算がきまってまだ日がない、そうしてここで四千円の賃上げ要求が出てきても、八千円の賃上げ要求が出てきても、どれだけ合理化で節約していいかわからぬというあなたの言い方は、予算総則の中で仕事をせよという言い方ですよ。ところが、次年度の賃上げ要求あるいは当年度の賃上げ要求というものは、予算総則の壁を突き破って賃上げをするというのが過去の全部の例です。賃上げというものはそんなものです。手当を何ぼかよけいよこせ、ここをちょっと移流用してよこせというようなことじゃない。そういう移流用の制度は、大蔵省の関係がもちろんございますが、いまは主管大臣の認可で大体やられている。これは運輸大臣と相談すればいい。ただ、このことは、予算総則を破るか破らないかというところに、大蔵省のワクがこれだけ強くかかっているのだから、ほんとうならば、三月三十一日に予算があがる前にこの種の問題が片づけられていいのですよ。いいけれども、今日の企業当局が団体交渉に応じないから、どうしても四月に入ってくるのです。そうなると、今度は大蔵省のほうでそれは予算総則の壁を破ることになる、そんなことは認められぬ、おまえら一文も回答してはならぬぞ、こういうことになる。これは日本だけの特別な悩みじゃなかったと私は思う。そこでイギリスがとったのは、さっきぼくが言ったように、ホイットレー方式といって、大蔵大臣が折衝の窓口になる、予算編成の前に片づけている、こういう関係をイギリスではとって、無用なトラブルを避けております。日本ではまだそこまでの政府の英知ができていない。ですから、昭和三十五年に初めて官房長官を窓口にやったのでも、たった六年前です。しかし、問題がここまでまいりますと、公務員制度審議会でお話しになって、能力の問題がここまで大きな問題に浮かび上がってきたのですから、ここでは今日の現行法を生かしていくことが一番いいじゃないかということで、当時者能力を越えたものであっても協約の締結ができるぞ、こういうことをきのうの社会労働委員会では労働大臣もついに認めざるを得なかったのです。三公社もそのことを認めてしまったのです。今後はやりましょう、だからそのことの通達を出してくれ、三治労政局長が通達を出しましょうということになった。そこで問題は、大蔵省がそういう予算上、資金上越えた労働協約を結んだときには、よろしい、よろしいから十六条の規定に基づいて国会の承認を得るようにしろという立場をおとりになれば、当事者能力は解決であります。ただ、このことが一つの整理点——どうも武藤さん不服のような顔をなすっておられますが、大体大蔵省の立場は私はわかりますけれども、公社の事業法の第一条、公労法の第一条第二項、この二つの条文をお読みになりましたら、経済要求については、重要な国の企業体であるから国民の福祉をそこなう部分も出てくるので、すみやかに円満に片づけよと書いてある。そうして八条の第一項には、賃金その他については団体交渉をやり、主文では協約を締結しなさいと書いてある。この二つの関連を見ていきますと、当事者能力の問題は別として、そのときの社会情勢なり物価上昇なり、民間賃金の動向を見て、職員の側は賃上げを要求するであろうし、経営者の側はそれを受けて、一条の精神で、あるいは公労法八条の精神で片づけて協定を結ばなければならぬ、こうなっている。それを押えたのが予算総則、当事者能力なんです。そこで、十六条の保護規定は、当事者能力をカバーしてやって、せっかく協定を結んでも効力は十六条で国会へ持っていけと書いてある。すべての保護がそこでできておるのですから、大蔵省もどうか顔色をもっとやわらげて、そういう指導が今日行き詰まりつつある労使関係の曲がり道を解決する大切な道なんですから、これをこの際ひとつ明確に答弁してほしい。しかし、大蔵大臣が所要で逃げられておりますので、武藤さんにここで聞くのもどうかと私は思いますけれども、そういう気持ち大蔵省はひとつ指導に当たってほしいということを強く要請をしておきます。
  90. 武藤謙二郎

    武藤政府委員 大臣が中座しましたので申しわけありませんが、私からそれにお返事申し上げるよりも、こういうお話があったということを大臣にお伝えすることのほうが御希望に沿うことだと思いますので、そういたします。
  91. 三池信

    ○三池委員長 午後二時三十分より委員会を再会することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時三十五分休憩      ————◇—————    午後二時三十五分開議
  92. 三池信

    ○三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  金融及び証券取引に関する件について、調査を進めます。  本日は、宇佐美日本銀行総裁が参考人として御出席になっております。  参考人には、御多用中のところ御出席をいただき、ありがとうございました。  まず、当面の金融情勢について、宇佐美日本銀行総裁から御意見を述べていただき、そのあと質疑を行なうことといたします。宇佐美日本銀行総裁。
  93. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま御紹介をいただきました日本銀行総裁の宇佐美でございます。  それでは、最近の金融、経済情勢に関し、少しく所見を述べまして御参考に供したいと存じます。  わが国経済は、このところ停滞を続けていたのでありますが、最近、景気回復のきざしがようやく顕著になるに至っておるのであります。昨年中一進一退の動きを続けてきました鉱工業生産は、年明け後回復基調に転じたものと思われます。また、出荷についても、これはすでに昨年の第三四半期から持ち直してきておりますが、本年に入ってから一そうその傾向が強まってきております。特に、これまで問題でありました商品市況もようやく底が固まってまいったような感じがいたしておりまして、しかも、これが従来はもっぱら生産調整という供給面の制限のみに依存していたのでありますが、最近に至りまして、このほかに官公需を中心とする需要の持ち直しという要因もようやく出てまいったように思われるのであります。  以上、要するに、景気は大勢的に見まして、昨年末から本年初めにかけまして底入れをいたし、その後は漸次回復に向かいつつあるものと判断をいたしております。このように、経済実態面における回復の動きが次第に広まるにつけまして、企業のマインドも明るさが見え始めてまいりました。他面、引き続き生産調整であるとか、投資抑制による一そうの需給バランスの改善をはかる必要も残っておりますけれども、また、設備投資あるいは在庫投資にもまだ格別の回復が見られておりませんけれども、当面景気の回復が始まっておると判断いたしておりますが、そのテンポはかなりゆるやかなものだろうと考えております。  この間、国際収支の動向を見ますると、買切収支が輸出の好調にささえられまして依然相当の黒字を続けておりまして、貿易外収支、資本収支は赤字でございますが、その国際収支の動向全体を見ますると、まずまず順調にあり、心強く思っておるのであります。  今後についてでございますが、海外情勢の推移いかんというところが大きいのでございますが、現在の見通しでは、輸入が、国内景気の回復に伴いまして多少増加するとは考えられますけれども、国際収支の基調では格別の問題は生じないものだろうと当面考えておるのであります。  次に、金融情勢でございますが、金融市場は引き続き全般的に緩和基調でございます。コールレートも低い水準で推移いたしており、本年に入ってからも格別の変化は認められません。金融機関の貸し出しについては、企業投資の停滞から資金需要そのものが落ちついているため、貸し出しの増勢が目立って高まるという状態ではございません。貸し出し金利につきましても引き続き低下をたどっており、すでにその低下の度合いは、三十九年の引き締め期間中の上げ幅を上回っているのであります。日本銀行といたしましては、諸般の情勢を勘案いたしまして、当面この緩和基調を持続する方針で金融政策を運用してまいっており、市場相場による政府保証債の買いオペレーション、政府短期証券の売買及び短資業者、銀行に対する貸し出しなどのいろいろの手段を適宜組み合わせまして、金融調節に遺憾のないことを期しておる次第でございます。  なお、本年一月以降、四十年度の税収不足を補うための国債が発行され、さらに四月以降は財政面から経済を振興するために本格的な国債発行がなされることになっているのでありますが、以上のような金融情勢を背景にいたしまして、現在までのところ、発行された国債の消化はきわめて順調でございまして、そのため特に金融が逼迫するといったような事態は生じておりません。日本銀行といたしましては、大蔵省とシンジケート側との間の十分なる打ち合わせに協力いたしまして、全体の資金需給を考慮しながら毎月の国債発行額をきめておるような状態でございまして、今後ともこうした努力を続けていくつもりでございます。  以上のごとく、最近の金融情勢は落ちついた推移をたどっておりますが、他面、国際面に目を転じますると、最近米国では景気が過熱の様相を呈し、このために先般来市中金利の引き上げが行なわれており、また、西ドイツをはじめ、欧州方面でも金利の上昇傾向が見られております。そのため、従来いわれておりました国際金利水準とわが国金利水準との格差は全般的に縮小しており、それはそれとして日本の金利水準が国際水準に近づいたことはけっこうな面もございますけれども、他面、内外金利の格差がここまで縮小してまいりますと、今後の金利政策の運営にあたっては、この事実を十分加味して考えてまいる必要が起こっておるわけでございます。  なお、一部に、この内外金利差の縮小によりまして、輸入金融につきまして、従来外貨金融から円金融へシフトを生じまして、これにより外貨準備が減ることを懸念する声も聞くのでありますけれども、現在までのところ特に目立ったシフトの事態は生じておらないのであります。  最後に、証券界の問題について若干触れてみたいと思いますが、最近は相場も相当回復してきており、また出来高もふえてきております。このために証券会社の内容も若干改善されてはきていますが、このような証券界の活況は、ひとり証券界だけではなく、一般国民にとっても経済の前途に明るさが見えてきたという意味においては歓迎しておるようであります。ただ、現在の証券界に対しましては、御承知のとおり、さまざまな形で日本銀行の信用供与が行なわれているわけでございます。現在の相場がこのような異例の措置によりましてささえられているという面も見のがすことはできないと思うのでありまして、日本銀行といたしましては、証券市場の立ち直りに伴いましてこうした特別の処置は漸次撤廃していきたいと考えておりますが、証券会社としても、このような事情を十分認識して、この際体質の改善に努力し、再び過去のごとき事態を生じさせないようにぜひとも努力してもらいたいと、指導を続けてまいるつもりでございます。  以上、はなはだ簡単ではございますが、当面の金融経済情勢に関し、思うところを申し上げた次第でございます。     —————————————
  94. 三池信

    ○三池委員長 続いて質疑に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。堀昌雄君。
  95. 堀昌雄

    ○堀委員 ただいま金融全般についてのお話がございましたけれども、私は、本日は証券に対する日本銀行金融諸問題あるいは証券金融の問題、これを第一点としてお伺いをいたしたいと思います。第二点は、いま最後にお触れになりました諸外国の金利の情勢に伴うところの相対的な金利幅の縮小からくる円シフト、及び国内の景気回復に伴う民間の資金需要というものからくるところの金融面におけるタイトになるという側面、それからもたらされる今後の国債その他の発行を含めての金利の諸情勢というものについて、お伺いいたしたいと思います。  最初の問題は、いまもすでにお触れになりましたけれども、政府の施策に基づきまして、昨年の七月を底にして証券市場はようやく活況を呈してまいりましたが、私どもがこれを冷静に見ておりますところでは、必ずしも正常な投資が回復をしてきておるというふうに考えられない節もあるわけでございます。過般、三月の上旬でございましたか、日本証券金融の融資残高は約六百億円に達するというような形で、信用取引を含めてかなり取引は、現状としては異常なほどの取引高が見られたわけであります。この点について、現在の証券市況の姿は、いわゆる健全なる投資という意味での姿になっておるのか、あるいは投機的要素がかなり深いのではないのか、現在及び現在から見通される——もちろん、先見性という問題はありましょうけれども、そこを含めて現在の証券市場の最近の姿というものをどんなふうにお考えになっておるか、お伺いいたしたいと思います。
  96. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御質問は、いまの証券市況をどう考えるかということでございます。端的にいいまして、ただいま申し上げましたとおり、相場が非常に回復してきておる、また、出来高も非常にふえてきておるという状態でございます。御承知のように、相場というものは、大体におきまして需要供給の関係でございますが、特に株式相場等は売り手、買い手の関係できまるものだ、また、これを根本的の考え方からいいますと、統制的な、あるいは管理相場的のものにすべきではないというふうに考えておるわけでございます。したがって、いまの相場が妥当であるかどうかということは——また、この相場はほかの相場と違います。いま御指摘になりました先見性という問題も、これは決して無視できない問題でございます。そういう点から見まして、この相場が妥当なものかどうかということは、私どもとして申し上げられないわけでございますが、ただ願うところは、非常に過度の思惑といいますかによって上がってはいないか。さらに具体的に申しますと、当面の証券会社が非常に思惑をやっているんじゃないか、こういうことにわれわれは注意をしなければならぬと思うのでありますが、私どもが調べておるところでは、証券会社が特に著しく思惑をやっているという状態ではないようでございます。ただ、小さく見ますと、いろいな問題がございまして、日本銀行の立場から的確にこれこれというふうには申し上げかねますけれども、まず私ども証券会社が著しい思惑をしているとは、資料的に見まして調べているところでは、そうは考えておらないのであります。  ただ、先ほども申し上げましたとおり、私どもとしては、非常な大きな波を打ってきたいままでの苦い経験を考えますと、やはりこれは経済の復興に伴って回復していくべきだ、かように考えてはおりますけれども、また一方、ただいま冒頭に申し上げましたとおり、いまの相場というものはいろいろな形がございますけれども、日本銀行としての資金が相当ささえておるわけでございます。その点は常に証券会社に対しても注意を与えて、忘れないでくれ、こういう大きな問題がここにあるのだということを忘れずに、健全に、それを一方において頭の中に十分刻み込んでやってもらいたい、自重してくれということを言って、また、証券会社もその点はかなり理解していると思っておる次第でございます。
  97. 堀昌雄

    ○堀委員 実は私、この状態を見ておりまして、一般的には旧ダウ・ジョーンズ平均株価というものが株価の一つの指標になっておりますが、これは先日は約千六百円に近づいてまいりまして、間もなくそれをこえるのではないかという様子であったわけであります。いまは少し下がりまして、また千五百五十円くらいなところにきておるようですが、ただ、この中身が、実は非常に値がさ株とか、あるいは仕手株と称せられる投機的に扱いやすい銘柄、これらの銘柄はまた実は共同証券に多数にたな上げされておるために、株式が、言うならばやや供給不足になっておるというものが異常な値上がりをしておる、ということは、私どもは、やはり株価が高い安いの議論ではなくして、市場全体として見て、全体のバランスをとりながら市況が上がっていくということでありますならば、これは私も正常な投資に基づくものであろうと思います。言うならば、現在の状態は、利回りのいいものは実は買われていないわけです。非常に上がっておるものは二%、三%という利回りで買われておる。そうして五、六%の利回りのあるものは実はあまり値段が上がっていない。本来、投資であるならば、利回りのいいものが買われるべきでありまして、それほど高くなくて、利回りが下がっておるものがさらに値を上げるということは、やはり健全な投資という姿ではなくて、投機的要素が非常に働いておる。その投機的要素を助長しておるのは、保有組合なり共同証券にたな上げをされておるものがその投機的なものを助長をして、それに力をかしておるというのが現実の姿ではないのか。これは株の種類別の分析をしてみても、その傾向は顕著だと思うわけでございます。  そこで、私がまずお伺いをしたいのは、資料として御提出を願っております「日証金を通ずる共同証券及び保有組合に対する日銀の融資状況」というものでございますが、その一番最後のところに「市場安定までの差当りの措置として実施されたものである。」このように実は述べられておるわけであります。そこで、この共同証券、保有組合に対する融資というものは、通常の形の融資ではなく、これはここに記載がございますように「これに要する巨額の株式買入資金を市中金融機関から調達することは、当時の金融情勢、金融機関の資金繰り等に鑑み極めて困難と認められた」こうなっておるわけですね。ですから、まず日本銀行としては、これだけの共同証券に対して六百四十一億円、保有組合に千九百六十六億円、合計約二千六百億円でございますか、こういう巨大なる信用を、それも通常の形ではなく与えられておるということは、私がただいま申し上げた異常に騰貴をしておる株との関係においては、これはかなりゆゆしい問題がここにあると考えておるわけであります。  そこで、市場安定までの差しあたりの措置でございますが、一体市場安定というのは、どういうところが市場安定なのか、その点について御説明願いたいと思います。
  98. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 市場安定というのはどのくらいの相場だという御質問ですが、実は私もこれくらいだということは申し上げられないわけでございます。ただ、ただいまお話のとおり、また、私どもからも御報告申し上げましたとおり、これは異例の措置であるという点は、私どもも常に銘記いたしております。ただ、それでは、異例の措置だから、確かにこのごろ回復してまいりましたので、早く何とかしないのかという御質問は当然出てくるかと思うのでございますが、この異例な措置を解決するには、やはりこの物件を売却処分しなければならないという問題が当然あるわけでございます。したがって、これをどういうぐあいにいまの安定相場で見るかということになりますと、これはなかなかむずかしい問題でございますが、私どもとしては、少しでもいいからだんだん市場の措置を減らしていくという方向には実は踏み切っておるわけでございます。ただ、どういう時期に、どういう方法でやるかということは、反面、株式を売る、処分するという問題がございますので、情勢を見ながらと申し上げるよりいたし方がないわけでございますが、その御報告申し上げました表でもごらん願いますとおり、まあ、若干ではございますけれども減少の方向に向かっておるということはお認め願えるのではないか、そうして、こういうことをやることがいまの市場についてどういう影響があるかという点は、やはりわれわれとしてはこれは慎重に考えていかなければならぬ、方向づけはこの表にございますとおり、状況を見ながら措置していく、それで、保有組合のほうは、実は四月も少し、百何十億円かいま話をしております。そういうふうにだんだん解除していって、市場を探りながら、といってはなんですけれども、そういう状態でいませっかくここまで回復してまいりましたので——これも御指摘のとおりいろいろな要素がありまして、この回復、全部が全部いいとも言い切れませんけれども、ここまでせっかくきたので、まあ、こういう方法で市場を探りながら進めてまいりたい、当面さように考えておるところでございます。共同証券につきましても同様の考えでおるわけでございます。
  99. 堀昌雄

    ○堀委員 最近、いま総裁がお触れになったように、保有組合については第二次の売り戻しと申しますか、措置が最近行なわれるようでございます。私たいへんけっこうだと思っているのでございますけれども、私も何も一ぺんに全部を引き揚げろなどということは、これは経済の常識として考えられないことでございます。ただしかし、証券市場のことについていろいろ伝えておる新聞等を見ておりますと、ことしの年末は千八百円は確実だとか、二千円相場も夢ではないとかいうようなことが一方でぬけぬけと言われておる。私はそういうことを言う方の常識を実は疑うわけです。もちろん、そういうたな上げ額がなければ、市場の方が何をおっしゃろうと、自由な市場で自由な価格がつくことについては、まあそんなに当委員会議論をするほどのことではないと思いますけれども、少なくとも、国家的信用によって、四千億円近いものがたな上げをされておる中で、一体現在の日本経済とにらみ合わせて、千八百円の、二千円のという、そういう株価指数が常識で考えていいものかどうかは、私は、証券界の皆さん少し反省をしていただかなければ困ると思うのですが、そういうことばが出るもとは何かと申しますと、たとえば共同証券は、この間実は少し株をお売りになりました。しかし、それは配当その他の手当てをするためということが主体であって、日本銀行にも少しはお返しになっておりますが、いまの貸し付けから見ればごくわずかなことであります。  そこで私が申し上げたいことは、日本銀行としては、少なくともこういう特殊な貸し方をしておられる以上は、情勢に伴って流動的に返してもらう——かまえ、姿勢はいつでも返してもらうのだ、そういう姿勢で、しかしその返し方は、それは共同証券と日本銀行がお話し合いになっておきめになってけっこうですけれども——ここに東京証券取引所が出しております「証券」という本がございます。これにはこういうふうに書かれておる。「保有組合では、この第一回売り戻しに加え残りの証券会社肩代り分約三百億円を、年内に売り戻す方針と伝えられる。」これは繰り上がりましたけれども、「一方、共同証券では、年内に第二回の放出をおこなう考えはないようである。もっとも市況次第では、その時期が早まることもありうるわけだ。」こうなっておるわけであります。一般的に、現在は共同証券はまあまあ売らないのだという前提で、保有組合はこういうことで早まりましたけれども、そういう土俵の大きさは当分はこのままだということがきまれば、特にいまの値がさ株、仕手株というものは大量に共同証券にたな上げをされておるという実情から、本来株数の少ないものが非常に圧縮をされておる。その狭い土俵の中でなら、要するに力で株価は動くではないのか、こういう状況が私は最近見受けられる感じがするわけであります。ですから、その点は通常のベースの貸し付けではないという前提をはっきりさせていただいて、共同証券も保有組合も、要するに市況の情勢いかんによってはいつでも売れる、いつでも売り戻しをさせますという点は、私はここではっきり総裁からお答えをいただいておきたいと思うのです。それは売るということはその情勢でありますから、売れるということが明らかであるならば、これは皆さん方、そういう土俵の狭さだけで問題を考えることができない、もしある程度上がれば土俵が広がる。いまの生産関係を見ておりますと、要するに、価格が非常に下がりましたから、操短をして生産を狭めております。しかし、価格がある程度に上がれば、これは当然みな操短をやめて、そうして正常の生産の中での価格に戻るというのが、私は経済の原則だと思う。ところが、依然として操短をさせた中だけで騰貴的な相場をやるというようなことは、その他の生産の場ではあり得ないわけでありますから、私は、この点については、まず姿勢の問題として、いつでも日本銀行は、要するに貸した金は情勢によって返してもらうという点をここで明らかにしていただきたい。返し方はまた次の問題であります。
  100. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 これが異例の措置であって、そうして、現在の証券市場をささえている大きな要素であるということにつきましては、私は再三、それを忘れちゃ困るということを、つい三月でございましたか、証券会館ができたときもそういうことを述べまして、これは非常に大事なことだから忘れずにおいてくれということを申したわけであります。ただ、ただいまのお話のように、ここで、国会の場においてそういう本来の基本的の問題を論ずるのはいいのでございますけれども、まあ、いまおっしゃいましたとおり、返してもらうのだ、しかし、いつどういうふうに売るのだということは、これは別問題だといいましても、なかなかそういうふうには——これは私がとやかく申し上げるまでもなく御承知のとおりでありますが、非常に神経質なところでございますので、常本方針では、私はここではっきり申し上げますけれども、そういう表現は——これは実際問題としてはよく考えればそこへくるわけでございますので、おりを見て共同証券にも言いますが、共同証券というのは、御承知のように私法人の株式会社でございますから、その人にも、日本銀行の根本精神は忘れずに考えてくれということは言いましても、そういう表現は私は控えたほうがいい、率直に言いまして、そういうことでなくて参ったほうがいいんじゃないか、かように考えるわけでございます。
  101. 堀昌雄

    ○堀委員 おっしゃる意味が私はよくわかりません。申し上げておりますことは、私きわめて常識的だと思うのです。要するに、異常な形で資金需要のなかったときにお貸しになったのですから、私は裏返して言わせていただくならば、それならば、この分はひとつ都市銀行その他に肩がわりをしていただきたいと思うわけです。現在は金融は緩慢といわれております。信託銀行その他は金が余って、これはどうしようかということになっています。日本不動産銀行はこの間株式を二十億円にわたって買い付けておるわけです。それだけ金があるのに、日本銀行が特例的な措置をしておるものはそのままほうっておいて、そうしてその他のところが二十億円も幾らも余っている金で買っているということは、これは総裁、異例のことなんです。そうお思いになりませんか。
  102. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま繰り返して申し上げましたとおり、これは異例の措置でございます。したがって、その当然の結果として、これは日本銀行の融資は、この表に出ておりますとおり、当然返してもらう問題でございます。それはもういまさら申し上げるまでもないのでございます。ただ、非常にデリケートな状態でございますので、これにつきましては、そういう大方針を打ち出すのは私も当然のことだろうと思うのでございますが、とかく、そういうふうに言うと、もうさっそく売るんだというような恐怖心を与えるわけでございます。ですから、そういうおっしゃるとおりの方針でございますが、その具体的のことにつきましては、ここで方針をお認め願うということで、ひとつ御了解を得たいと思っております。
  103. 堀昌雄

    ○堀委員 私はそう言っているのです。要するに、売る時期なり量なりは、その情勢に応じて共同証券なり保有組合とお話し合いになったらよろしいのですよ。ただ、共同証券や保有組合が、当分は売らないのですとか、今年中はもうこれで終わりですとかいうようなことになったのでは、それはおかしいのではないか。こんな異常な借り入れをしておるものは、できるだけ情勢によって返すのだという姿勢ですね、保有組合も共同証券も。しかし、ただ、返すのですけれども、いまはちょっとまずいから待っているだけだというなら話はわかるのですよ。いまの全体の空気はそうじゃないのです。要するに、借りているのは借りっぱなしだ、放出すれば、株の払い込み分だけはともかく要るからそれだけをやるんだというような表現では、市況に与えるいろいろな情勢は逆になっておると私は思うのです。ですから、それだけではいけない。そうじゃないのだ、日本銀行は異常な貸し付けをしているから、できるだけ早く返してもらいたいのだ、共同証券も返したいんだ、保有組合も返したいけれども、その返し方の時間と量については、少し市況の情勢も勘案しながらやらせてもらいたいんだということで、市況が動けば、場合によってはいつでもそういうことは起こり得るという可能性の弁をあけておかないと、ここではっきりかぎをかけてしまってあったのでは正常な市況にならないということを私は申し上げておるわけです。ですからその点は、いまおっしゃったことと私が申し上げておることは同じだと思うのですけれども、もう一回ひとつ確認させていただきます。
  104. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまいろいろお話がございましたが、共同証券がこの前売りましたときに、実は私も新聞生を読んで気がついたのでございますが、やはり共同証券が初めて売るということで、非常に市況に対して、露骨に言いますと、憶病といいますか、そういうようなことを言ったのではしないかと思っております。それからまた、いまのお出しになりましたもの、私、実は読んでいないのでございますが、そういうようなことをもしも証券界の人が考えていたら、これはひとつ、私もそれをよく読みまして、そうして適当の人に注意を与えたいと思っております。根本方針については、もうこれは特別の措置であるということははっきり申し上げられると思います。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 この点は以上でおきますが、私どもここで後日保有組合及び共同証券の社長等にもおいでをいただきまして、いまの日銀総裁の答弁をもとにして確認をしてまいりたいと思っております。問題は、私は、何も市況を冷やしたいと言っておるのではございません。正常な状態でフェアにおやりになるように一日も早く努力をされることのほうが資本主義らしいのじゃないか、こういうことを申し上げておるわけでありまして、そういう意味で、やはり正常な大きさに徐々に広げていくということが当面必要なのであって、せっかちに、これだけを一ぺんに引き上げろというわけでもないし、大いに値段が下がるように売り払えと言っておるのでもないのですが、そういう可能性のないところでは、投機が異常に有利に動くということは、これは日本経済のためにならない。また、多くの投資家がこのことによって大きな被害を受けるときがある。もし適正にこれらの株が放出をされないで、あるいは千八百円にいったとかりに仮定をいたしましょう。千六百円から千八百円にいくと仮定すれば、また零細な投資家がここへ集まって、なけなしの金で投資をする。そして、くろうとは巧みに売り逃げ、証券会社もこれをまたお客さんにかぶせて逃げてしまって、残るのは多数の大衆がまた被害を受ける。私たちは、ここで証券取引法を審議をいたしまして、少なくとも証券会社とはかくあるべしということで、いろいろとわれわれ議論をしておるのにかかわらず、現在の証券業者は、必ずしも私たちの真意を理解せず、自己の利益に狂奔しておられるような気がしてならないわけです。大衆が再びそういう日にあわないようにするためには、私は、日本銀行総裁としても十分腹をきめてこの問題に対処をしていただく責任があると思うのです。山一の特融の問題は、今日、二度とこういうことをしないようにするための措置をいま日本銀行がとっていただかなければならぬ段階に来ておるのじゃないか、こう思いますから、私はこれを申し上げておりますので、その点は、十分私の真意も御理解の上で、ひとつ弁を全部あけて、ただ、出すか出さないかはその情勢によるが、弁はあけました、こういうことを十分御確認をいただいておきたいと思います。
  106. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いまの根本方針の御意見並びに当面に対する態度といいますか、方策については、私も全くさように考えております。ただ、非常に敏感なものでございますからついなんでございますが、お話のとおり、これは冷やすつもりもないし、時期を見てやれということについては、私もさように考えております。
  107. 堀昌雄

    ○堀委員 二番目の問題は、実は山一の処置の問題でございます。  新聞の伝えるところによりますと、新山一構想なるものが伝えられておりまして、大蔵省、日銀の間で御検討が進められておると、このように承っております。そこで、総裁は、この山一というものをどういう角度で再建をするというふうにお考えになっておりますか。基本的なお考えか承っておきたい。
  108. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 この山一問題の再建は、確かにあの処置をとりまして以来私どもの頭の中に考えておるところでございますが、ただ、現在はまだ、新聞にはいろいろ伝えられておりますけれども、これははっきり言いますと、主力銀行三行の間でいま検討をしておる。むろん私どもは個別的にいろいろの問題については報告は受けておりますけれども、しかし全体としての構想はまだ定まっておりません。また、私自身もまだ全体としての構想については聞いておりませんので、したがって、どうするかということについて具体的のことは申し上げられませんけれども、ただ、おまえの考え、根本的には何だとおっしゃいますと、これははっきり私は申し上げられると思うのであります。と申しますのは、この処置は、もう繰り返して申し上げておりますとおり、決して山一一つを救済するためにやったのではございません。あのときの情勢判断につきましては、非常に緊急事態とわれわれは考えておりまして、また、いまでもその判断は間違っていなかったと思っておるのであります。したがって、この山一の問題をきっかけにいたしまして証券界が非常な混乱になる、また、それがひいては金融全体の問題になる、あるいは海外信用まで危機といいますか、非常に害されるのではないかというふうに考えてあの処置をとったわけでございます。したがって、あの処置をとります当初から、もしその危機を脱して、そうして返済計画を立てられるならば、われわれの日本銀行の資金というものは当然返済してもらうべきものだ、こういうふうに考えておるわけでございます。したがって、その再建計画というものを非常に重要視して、山一がどういう形であろうとも、とにかく努力して収益をあげて、利息も元本も返してもらう、残念ながら多少時間はかかるだろうけれども、そういう方針で当初から今日まできておるわけでございます。ただ、計画を立てる上において非常にむずかしい問題は、一方において非常に動いておる市場があるということでございます。幸いにもその市場が回復いたしまして、初め案がなかなかむずかしかったけれども、現状からいいますと、だんだん案が立てやすくなってきたことはそのとおりでございます。同時に、やはりいまはこうであっても、将来動く問題であるということを考えますと、いろいろ考慮すべき問題が多いので、なかなか結論が三行の間でも出ない。個々の問題については事務的にいろいろ折衝があって、また大蔵省でもお考えが当然あると思いますが、われわれももう少し検討をいたしまして、正式に発表をする段階に至れば発表をしたいと思っておるわけでございますが、ひとつ御理解願いたいのは、やはりその案自体が、皆さまをはじめ国民全体が、なるほどこれはよさそうだ、満点じゃむろんないでしょうが、まあまあこの辺かなという案をつくりたいという点でいま苦慮しておるような状態でございます。
  109. 堀昌雄

    ○堀委員 私はいわゆる新山一構想について私なりの意見をちょっと申し上げてみたいのですが、実はさっきも触れましたけれども、私ども委員会におきまして、昨年の国会で証取法の改正をいたしました。そうして、そこでは、御承知のように、私の考えとしては、これまでの株屋さんから少なくとも金融機関として信頼するに足るところの証券会社になってもらいたいということが、これが私は将来における証券市場の安定に資することだ、こう考えたわけです。ですから、その点では新山一というのは、実はその他の証券会社法律によりまして昭和四十三年の四月一日から免許になるわけでありますけれども、もし新山一というものが設立をされれば、その時点で免許を受けなければならない仕組みになっておるわけであります。言うなれば、すべての証券会社の中で一番先に免許を受けるのが実は新山一であるということになるわけでありますから、その点では、この新山一のいろいろな財務諸表の基準というものは、今後のすべての証券会社が四十三年の四月に受ける免許基準一つの一番最初の例になるという点で、きわめて重要な問題を含んでおるわけであります。たとえば、現在の法律は、証券取引法第五十四条で、「負債の合計金額の純財産額に対する比率が大蔵省令で定める率をこえた場合又はこえるおそれがある場合」には、これは断わるとなっておるわけでございます。その省令の中身としては、負債倍率は十倍に定めると規定しておるわけでございます。しかし私どもは、この省令で十倍なら、十倍ぎりぎりでいいかと申しますと、御承知のように、証券会社は借り入れ有価証券その他で随時かなり流動性がありますから、私の考えとしては、せめて八倍程度くらいに押えて、健全な内容のものでなければ免許をしないのだという一つのモデルを新山一で明らかにいたしませんと、あとはたいしたことがないではないかということで、せっかく国会で審議をして、安定的な証券市場をつくろうと考えておる私たちの意思に反した姿が生まれてくることになるわけであります。ですから、その点は新山一を考えていただく場合に、かなりきびしい、しかしあるべき姿を想定して、それを中心にしながら、大蔵省も日本銀行、三行その他もお考えをいただきませんと、日本銀行は日本銀行の立場から、三行なり十五行はそのおのおのの立場からだけこの問題を考えていただいたのでは、問題の本質がそれるのではないのか。結局、日本銀行が特融をなさったのも、そういう緊急避難というのは、将来的に安定した証券市場をつくるということが目的であったわけでありましょうから、その基本的な目的からそれるような再建を安易に認めるようなことは、私は承知できないと思います。少なくとも、特融のようなことをやったことが、将来は二度とそういうことをしないでいいという明らかな保証がとれる会社を再建するということでなくてはならないと思うのですが、その点についての総裁のお考えを承りたい。
  110. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまの御意見、まことにごもっともでございまして、まだそこまで案が固まっておりませんけれども、かりにそういう構想が出てきたといたしますと、これが再びまた何か方法を講じないといけないということになったら、もうこれこそたいへんなことだろうと思うのであります。したがって、ただいまの御注意も私はしごくごもっともだと思います。無理をしてあまり張ったものをつくって動きがとれぬという点は、確かに、われわれもこの案を考えます場合に心すべきことだろうと思っております。幸いにもここに証券局長も来ておられますので、聞かれたと思いますが、十分注意いたしまして、皆さんの御賛成を得るような案をつくることに努力いたしたいと考えております。ありがとうございました。
  111. 堀昌雄

    ○堀委員 この次に三番目の問題でございますけれども、実は前回の、二月の十八日でございますかの当委員会で、大蔵大臣及び証券局長から、現在の運用預かりの制度については、四十三年四月という免許制の時期には制度としてはなくしたいという明らかな答弁をいただいたわけであります。ところが、現実にはまだかなりの有価証券預かりによって証券会社は動いておるわけでありますが、私は、最近かなり利益が出ておりますから、その利益はまず何よりもこういうものを先に返すほうに使っていただきたい、こう思っておりますけれども証券会社のほうは、やはり企業でありますから、金もうけのほうに急であるといいますか、私どもの考えておるようにはなかなかまいっておらぬようであります。そこで、何かこれにかわる証券金融の道をつくれということが言われておるようであります。しかし、証取法では明らかに職能分離を定めておるわけでありますから、職能分離が明らかになりますと、実はブローカー業務についてはあまり金が要るはずはないわけであります。ディーラーあるいはアンダーライターについては、これは多少資金が要るだろうと思いますけれども、しかし、現実には証券会社の多くの部分はブローカーとして残ってまいるだろう、こう考えますと、そういうブローカーにそう特別な証券金融は必要でないのではないか、私はこういう感じがいたすわけであります。ちょっと大蔵省で調べていただいたところでも、都市銀行の貸し出し担保別の内訳を四〇年九月末で見ますと、貸し付け金の六兆八千二百六十億円というのに対して、現在でも有価証券担保のものがパーセンテージで四・五一%、約三千億円ばかりのものは有価証券担保で出ておるわけでありますけれども、私は、特別のそういう証券金融は今後の証取法の実施の禍程においては必要はない、こう考えておるわけであります。コマーシャルベースの、現在行なわれておる証券担保金融で果たし得る程度でよろしい、こう思っておりますが、その点、新たな証券金融についてお考えがあるのか、私の言うように、職能分離を前提として、現状の銀行その他による通常の株式担保金融で十分であるというお考えか、その点をひとつ明らかにしてもらいたい。
  112. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私も、実は今度の証取法の改正を機会に、いままでのような証券会社のやり方はぜひ直してもらいたい。たとえば、運用預かりをやめたら別の新しい金融の道が必要だということをよく言われますが、やはり今度ディーラー業務とブローカー業務をはっきり分けますと、そんなに金が要るはずがない、もうかかえ込まないということにしますれば、金も要りませんし、その証券会社の本体もきわめて安全なものになるわけでございます。そういう意味におきまして、若干の資金は、あるいは自己資本を積み立てたものとか、あるいは通常の金融ルートに乗るものは、これは必要でございましょうが、本質的に特別の措置を必要とするとは考えていないのであります。ぜひそういうことでやってくれということを私は証券業界に対しても強く申しておるのであります。  また、これは御質問もございませんでしたけれども、今後公社債というものも証券会社としてはやっていくことになると思うのですが、これも非常に無理なものを発行しまして、そうして証券会社でも抱かなければだめだということになってその資金が要るということになりましたら、これは本末転倒だと私は考えておるのであります。それは、国債を含めて、当然市中なりあるいは一般大衆なりが抱ける範囲内で出すべきものである、とすれば、そんなにそれについての資金も要るはずはないというふうに考えておるわけでございます。したがって、証券会社金融につきましては、特別の制度はむしろ考えないほうが業界のためになるのではないか。ただ、普通の意味のいろいろの金融が、これは商売をやっていますから必要だとは思いますけれども、そういう考えで当面おるわけでございます。なお、この問題は、私もそのほうはしろうとでございますが、現在のところはそういう考えでぜひ進めたい、かように考えておるところでございます。
  113. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、証取法がディーラー、ブローカーに業務を分離すると申しますことは、大衆のためでもあり、証券会社のためでもあると考えておるわけです。その点は、結局そういう証券金融のようなものがまた別にできることがこの分離を妨げることになるわけでありまして、そういうものがなければ自然にやはり落ちつくところへ落ちついていくのではないか、こう考えております。その点、私の考えと総裁はほとんど同じ御意見のようでありますが、ひとつどうかこの証取法の実施がスムーズにいくような上において証券金融というものを——いま申し上げたように変な処置をすることがかえって分離を妨げるということを私は非常に心配をいたしておりますので、その点はきちんとひとつ処理をしていただく、ただし、コマーシャルベースで都市銀行からお借りになったりいろいろすることを妨げるわけでないわけでありますから、道は開かれているということで、ひとつ十分その点ははっきりした処置をお願いをしておきたいと思います。  その次に、時間もございませんから、最後の円シフトの問題についてちょっと伺いたいと思います。  実は、二月十八日に当委員会で福田大蔵大臣とこの問題を取り上げまして、日ならずしてまたレートは上がるだろうと申し上げておりましたら、プライムレートは私の予想したように上がってまいったわけであります。あと、アメリカの景気過熱の問題はなかなか簡単にいかないだろう、ベトナムの問題が終わりますと、これはどういうことになりますかわかりません。しかし、少なくともいまのベトナムのあの戦争状態が続く限りアメリカの労働力はもう限界にきておりますし、ざらに生産力も限界にきておるということで、新規な設備投資が借り入れ金によってどんどん行なわれているという実情でありますから、これは増税あるいは財政の圧縮ということも、秋の中間選挙を控えてなかなか困難な情勢もある。しかし、金利の面でもかなり限界にきておるのでありましょうけれども、金利というのはアメリカは統制をされておりませんから、やはり需要と供給と見合って、必要があれば上がってくるだろうと思います。現在でもすでに国内金融と輸入ユーザンスの間は約一%に近いくらいの金利差ができておるのではないかと思いますが、これは、愛国心に訴えるとか、あるいはいろいろな関連によって商社が外銀を使う必要上の問題はありましょうけれども、やはりおのずから限界のあることではないのか、こう考えておるわけであります。先ほどお触れになりましたように、西ドイツにおきましてもイギリスにおきましても、比較的最近は高金利の状態でありますので、開放経済体制下の今日は、表現はいろいろありましょうけれども、相当慎重にこれは考えておかなければならない問題ではないのか、これに対抗するのは、やはりある時期には国内金利を上げる以外には、オーソドックスには方法がなくなるのではないか、こういう感じがいたしますが、その点についてひとつお答えを願いたい。
  114. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 この問題は、従来は日本の金利が国際金利より非常に高いということで責められてきておったわけでございますが、一年の間に非常に情勢が変わってまいりました。したがって、この問題については、われわれもただいま御指摘のとおり、将来の問題としても考えておかなければならぬ、かように考えておるわけでございます。ただ、現状は、一部の、ごく国内金融の金利も安いという特殊のものを除きますと、海外の金利とシフトするところまでは、かすかすでございますが、まだいっておりません。したがって、現状といたしますと、実例を聞きましても、あるいはごく小さいものはそういうことがあるかもしれませんが、大勢的にはまだシフトは起こっていない、かように申し上げられると思うのであります。ただ、いま御指摘のとおりアメリカの情勢がどうなるかという大きな問題もございますが、もし上がったときはどうなるかという点でございますが、ただ一つわれわれもこの問題を考えるのに考えなければならぬ点は、一方において、シフトすると日本の借金がそれだけ減っていく——日本は、御承知のとおり、計算がいろいろ複雑でございますので、どれくらい日本が借金があるかということは、ちょっと申し上げかねるわけでございますが、相当の債務があるということは御了解していただいておると思いますが、その借金の部分が減っていくわけですから、それだけ日本の全体のポジションといいますか、それはよくなるという問題もあります。ですから、外国と比べますと、日本の外貨準備はきわめて貧弱でございますので、これも気になる問題ですが、かりに非常に輸出がいいというようなことでよくなる範囲内ならば、あるいはポジションの改善という面で一がいにこれは悪いとも言い切れない問題でございます。したがって、その辺をよく見まして、要するに、全体としての外貨ポジションをよくして、借金が減る方向、非常にむずかしい問題でございますが、そういうことはおくとしまして、海外の金利と逆になりましてシフトが起こってきた場合に、ただ愛国心だけでも防ぎ切れる問題ではございませんので、その点は十分注意して方策を講じていきたい、目下の状態は、毎日のように実は様子を見ておるわけでございますが、いまのところ起こっておりませんが、将来の問題としては慎重に考えていきたい、かように考えております。
  115. 堀昌雄

    ○堀委員 確かにいまは起きないと思うんですが、この問題は非常に複雑なことは、いまおっしゃるように、確かにポジションはよくなりますが、外貨準備は減ります。要するに、まず日本のいまの外貨準備のネットは、大体輸入ユーザンスの残高と残念ながらほぼ同じくらいということになっておりますので、そういうことはあり得香せんけれども、もしかりに輸入ユーザンスがゼロになりますと、四カ月で日本の外貨準備はゼロになってしまうということが起きかねないわけであります。あり得ないことですけれども、可能性としてはあり得るわけであります。私もいまのところはまだそれでいいと思うんですが、それじゃアメリカの金利はもうこれ以上上がらないのかという問題は、これはちょっと日本と違いまして、確かに、アメリカは自由主義経済でありますから、向こうの金利は需要と供給でかなりラビールに動くだろう、もちろんいろいろと努力はされるでありましょうけれども、しかし、努力をされても、金利はここでストップだなんてことのできる国柄ではございませんから、いまの需要供給その他経済指標の全般を見ておりますと、あのままではなかなか済まないのではないか、まだ上がるのではないかというのが私の感じでございます。さらにあとまた〇・五%なり一%なりという形で徐々に上がってくるのじゃないか、そうなりますと、さっき申し上げましたように、単に愛国心で解決のつかないところに参る、その場合には、いまでもいろいろ措置はとっておられると思いますが、いろいろなあの手この手でやりますよりも、資本主義経済なら資本主義経済らしく、レートを上げてオーソドックスに経済を運営するということがやはり非常に必要なのではないか。円シフトの問題というのは、外貨の問題であると同時に、国内金融に転換してきて、国内金融はタイトになるという両面性を持っておるわけでありますから、国際収支は悪くなる、国内金融はタイトになる、いずれもこれは金利を上げざるを得ない情勢に追い込まれる。これは開放経済というものの一つの宿命でありますから、そうなるのではないか。ただ、私どもが心配しますのは、片や、政府が七千三百億円の国債をいまのあのレートで出していくについては、公定レートが少なくとも一銭五厘というくらのところでないと、これが一銭七厘、一銭八厘にもなりますと——これは一ぺんに一銭八厘にはならないでしょうが、一銭七厘、〇・五%というのは約二厘くらい動くわけでありますから、そのくらいのことになりますと、これは都市銀行といえどもすっかり逆ざやになって、なかなか国債も買えません。国債の発行ができなくなるというふうに、順繰り発展をしてくる問題でもありますし、その面から、政策的に今度は日本銀行に対して、国債発行に都合のいい条件をつくれといういろいろな力がかなりまた加わらぬでもないと思うのであります。そこでいろいろ無理をしますと、そのひずみが今度はいろいろな角度でまた次々と波及してくるといういろいろの問題が起こるのではないか、それに合わせて、いま民間企業がやや明るみが出てきて、資金需要が出てくる、どうも私は、今後の日本の金融は今年末に向かってだんだんそういうタイトになるのではないか、こういう感触を持っておるのでありますが、そういう諸外国の金利の今後の動向と、それに合わせての日本の金融状況、及びその金利の感覚はどんなことになるだろうか、これだけをお答えをいただいて、私の質問を終わりたいと思います。
  116. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 年末にかけての世界の金利の動向ということになると、なかなかむずかしい問題でございますが、お話のとおり、アメリカの状態も必ずしも一本調子じゃございません。どういうふうになりますか、これはまたいろいろの政治問題にも御承知のように関係があるので、いまここで、アメリカの金利がどうなるか、公定歩合が上がるだろうとか、あるいはまた増税をやるのだとか、そういうことは私として一切申し上げられないわけでございますが、金融だけに限りますと、金融というものはやはり非常に流動的なものであるということは、政府としても、また国会としても、ぜひお考えおきを願わないと、なかなか政策ができません。大体、財政というものは、国会関係とか法律関係とかがございますのでわりになんでございますが、金融政策はやはり流動性がなければいけない、そのときに合っていくという点で、私としては、これからどうなるかということは私の立場から申し上げられませんが、できるだけ政府とよく話し合いをしまして、そして、流動的にやっていく、万々一でも問題が起こりましたら、そういう見地から私どもの政策を強く進めていかなければならぬ、どういう形になって出てきますかわかりませんけれども、その決心だけはなにして、いままでのようないろいろのむずかしい問題が起こらないように、少しでも流動的に合わしていくということだけを申し上げて御了承願いたいと思います。
  117. 三池信

  118. 有馬輝武

    有馬委員 私は、本日総裁から冒頭に現在の金融状況について御報告になりました範囲内で、二、三の点についてお伺いをいたしたいと思います。  その第一は、企業の自己資本比率の問題であります。少なくとも、現在の不況について、これは過去私どもが経験した不況と異なる点は、過剰生産の中の不況だということだろうと思います。その経緯については私どもが十分に見詰めてきたことでありまして、結局は三十六年ころからの設備投資、それが行き過ぎであって、しかも借り入れ金に大きく依存してきた、利潤を確保していくためには勢い版元競争に狂奔せざるを得ないという形の中で現在の一つのネックといいますか、限界にまで追い詰められてきたと思うのでありますが、日本の企業の自己資本比率を高めるために、日銀として現在どういう指導をしておられるのか、またしようとしておられるか、この点についてお聞かせいただきたいと思います。
  119. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 確かにおっしゃるとおり、企業の自己資本は、世界各国に比べますと非常に劣っております。比べるまでもないのでありまして、つまり、内容が借り入れ金というような形でございますので、景気に対する、何といいますか、抵抗力は非常に弱くなっておると考えております。したがって、これについてはやはり何とかして是正していかなければ、国際競争力にも響いてくるのではないか、かように考えて心配しておるところでございます。ただ、日本銀行としてそれではこれをどうしたらいいのかということになりますと、やはり企業の自己資本比率を直すには、一つのきめ手というもの、これだというものがないわけでございます。いろいろの政策を総合していかなければならないのではないか。第一は、やはり企業の経営者自体がこれの改善について熱意を持たなければなりませんし、またあるいは税制上の問題もございましょうし、あるいはまた金融機関の立場から、もっと会社内容をきびしく審査するという点も必要でございましょうが、何にしても、やはりそういう改善には収益をあげるということも必要でございます。そういうふうに、いろいろな面をあわせていかないといけないと思っておりますので、これを、私どももやはりただいま申し上げたとおり、いまの状態では困る、ことに最近はむしろ悪化のほうに向かっている、改善にはなかなか向かっていないという点も十分考えなければいけないと思っておるわけです。金融機関に対してもそういう内容の審査をきびしくやって、改善方法も、常に各企業につとめるようにやっておるわけでございますが、さしあたり日本銀行としては、やはり全体の総合政策として考えるべき問題ではないか、日本銀行独自ではなかなか改善はむずかしい、かように考えておるわけでございます。
  120. 有馬輝武

    有馬委員 先ほど、たとえば設備投資等についてもなだらかな線を保っておるというような意味合いでのお話でございました。しかし、現在の過剰生産ということが、戦後の特異な現象であったかもしれませんけれども、少なくとも私は過度な設備投資が現在の状態をもたらしたとしか見れないのであります。そういう意味で、なだらかな基調を保つというふうに見ておられますけれども、これを日銀としてどのように見るかということは非常に重大な問題だと私は思うのです。最近、最近というよりもけさの新聞によりますと、興銀が調べました本年度の設備投資計画は大体一・八%の増で、前に調べられたときにはほとんどこれは横ばい状態だというのに対しまして、電力なり鉄鋼、私鉄、石油精製、海運、こういったところの投資意欲が非常に強いということを指摘いたしておりますが、造船なり化学なりあるいは合成繊維、そういったものが落ち込むのに対して、こういったものが伸びるために一・八%増というような一つの見込みを立ててておるのでありますけれども、私は、こういった状況に対して、ただ日銭が傍観しておるということは許されないと思うのです。これに対して、一・八%、この程度が望ましいのか、現状維持が望ましいのか、むしろ抑制する方向でいかなければならないのか、この段階における日本銀行の基本方針というものをお聞かせいただきたいと思うのであります。
  121. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 現在の状態は、総体として、考えると供給過剰の状態というふうに感ずるわけでございます、マクロ的に見ますると確かにそうでありますが、やはり経済成長をやっていく、あるいは今後の国際競争力をつけていくという見地からいうと、やはり必要な設備投資はやっていかなければならない。やはりそこに選別といいますか、選択の必要は起こってくるだろうと思うのであります。私どもが聞いているところでは、いまのところ——これは銀行を通じての話でございますが、話はいろいろといいますか、若干あるようでございますが、全体としては、やはり直接の融資の面からは何%くらいになるかというのはまだそれほどはっきり出てきていないように聞いておるのであります。いま御指摘の数字はどういう方法で集めたのか私存じませんけれども、日本銀行としてもその点は今後よく注意していかなければならない。現在の供給過剰——とにかく御承知のように生産調整でいまようやくやっておる。生産調整のうちにもだんだんはずれていくものもございましょうし、また全体が、日本産業の全体ではございませんけれども、しかし相当の部分生産調整でようやくもっておるという状態でございますが、今後の問題としては、御指摘のとおり十分われわれも研究をいたしまして進まなければいけないと思っております。要するに、従来のような設備過剰を非常に野方図にやるということで供給過剰にならないようにつとめなければならぬ、かように考えております。いまのところどれくらいの設備投資が出るかということについては、まだ資料がございませんので申し上げられません。
  122. 有馬輝武

    有馬委員 この過大な設備投資が一つには企業間信用の膨張の大きな原因にもなっていることは御承知のとおりであります。  それで、いまの設備投資の問題に関連いたしまして、企業間信用の問題についてお伺いをしたいと思うのでありますが、三十六年の九月末から三十九年九月末の三年間に法人企業部門で売り上げ債権が九兆三千億円増加いたしておりますが、それに伴って、その中で四兆円近くというものが決済条件の長期化になっておるわけであります。この膨大な企業間信用、とにかく受け取り条件の悪化という点に対して、日銀としてどのように今後の措置を考えておられるか。これが私は一つの一番大きな不況を脱し切れない障害になっておると思うのであります。この点についての見解をお示しいただきたいと思うのであります。
  123. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 企業間信用の問題は、実は私が日本銀行へ参りましてからすぐいろいろ調査を命じまして調べてまいったのでございますが、これも非常に複雑な関係がございまして、きわめて大ざっぱなことしかわからないのでございます。最近の情勢は、一方においてこの企業間信用の状態一つ制度化しているという面も少しあらわれてきているようであります。同時に、現金で払う部門、あるいはまた手形の期間を縮めようという部門も確かに出て、これは企業間信用の縮小のほうに役立っておるようでありますが、また中には、現金で出すけれども割り引きをうんとしろとか、それくらいなら、いま金融がゆるんでいるから、してもらわなくてもいいとか、ケース一つ一つについて、ちょうどいま経済の転換期でもありますので、いろいろな点が出てきておりますので、いまのところ、最近の情勢がどうなっているかということを調べることは容易でないという現状でございます。ただ言えますことは、一方において、やはり御承知のように、よくなったとは言いながら、倒産は依然として非常に高い水準にあるわけでございます。その原因をやはり調べますと、そういう関係が理由になっているようでございますので、もう少し時をいただいて、現状がどうなっているか——ただ一時のような勢いでふえてなさそうだということは、一方において金融緩和期でもございますし、そういう点で若干ふえているだろうとも思うのですが、一時ほどそうふえてないんじゃないか。中には、個々に聞きますと、そんなに値引きされるなら手形でけっこうだというようなものも出てきておる。いまちょうど過渡期で、いろいろな面で出ておるというふうに考えております。  それから、どういう処置をとったかということでございますが、これは通産省あたりもいろいろ措置をとられたようでございますが、金融面から言うと、やはり金融の緩和ということは、結果としてはその面のふくらむのを縮めているという効果は確かにあったんではないか、かように考えております。
  124. 有馬輝武

    有馬委員 結局、企業間信用がネックにきている。それが結局はサンウェーブなり山特鋼なりあるいは山一なりの企業間の不信用の連鎖反応を引き起こすようになってきておると思うのです。過渡期というのではなくて、私はもう限界にきておる、このように見るのであります。この点については、意見の相違と言えばそれまでのことでありますが、この点に関して、私は先ほど委員から触れられました山一再建についての御説明でまだ納得のいかない点があるわけでございます。そういう意味証券局長にまずお伺いをしたいと思いますが、特融の前提として、大蔵省は山一再建について指導されたと思うのですが、その実施状況がどうなっておったか、まずこれをお聞かせをいただきたい。具体的に申し上げますならば、店舗の問題なり、人員の問題なり、あるいは資産の売却の問題なり、こういう点についてつまびらかにしていただきたいと思います。
  125. 松井直行

    ○松井政府委員 昨年の五月山一が再建計画を発表いたしましたときの手数料収入以下の経常収支につきましては、その当時として最も適当なものであるとわれわれが考えました線に沿いまして証券業者が策定いたしましたものをここで御報告申し上げたところでありますが、その後の、その線に沿った合理化がどこまで進め得られておるかということにつきまして、次に御報告申し上げます。  まず店舗につきましては、三十九年九月末現在で百五店ありましたが、計画面で七十七店舗、それがことしの二月末で七十八店舗というふうに相なっております。それから従業員の総数でございますが、三十九年九月末で八千六十人、合理化計画面では六千人、これが二月末現在で五千七百十六人ということに相なっております。それから経常収支の面でございますが、御存じのように、一応当時といたしましては、東証の出来高がたしか八千万株をめどに手数料収入十一億円というのが基本に相なっておりましたが、証券業者の新会計年度であります去年の十月以降の状態を見ますと、十月は八千万株でありますが、十一月は二億一千二百万株、十二月が一億七千二百万株、それからことしの一月が一億五千万株、二月が一億八千万株と、計画面よりもはるかに市況が活況を呈してきてはおるというものの、こういう市況の活況という好況にささえられまして、先ほどは人員と店舗の面の合理化についてのみ申し上げましたが、そのほかに経費の節減はむろんのことやっておるわけでございまして、合理化が現実に実を結んでまいりまして、去年の十月以降ことしの二月末までの累計で、経常収支で二十一億円、その他の損益を加えますと二十六億円、これは一カ月平均にいたしますと経常収支で四億四千万円ぐらい、あるいはその他の損益を加えますと一カ月で大体五億三千万円、月々五億円前後の益を上げておるということでございまして、きびしい合理化が非常に徹底して行なわれてきた、それにあわせて市況の好転という援助もありまして、両者あわせまして当初の合理化計画が順調に進み、かつ経常収支も着実に上げておるというのが現状でございます。
  126. 有馬輝武

    有馬委員 不動産の売却はどうなっておるのか、あわせてお聞きしたいと思います。
  127. 松井直行

    ○松井政府委員 ことしの一月末の計画及び実施分について、山一証券関係の不動産の売却状況を申し上げます。  まず、計画でございますが、薄価ベースで八十二億円、これを売却価額百三十三億円で売却益を五十億円あげるという計画でございます。この薄価の八十二億円につきましては、有馬委員には先般はおそらく六十三億円と申し上げたことがあるかと存じますが、その後の合理化を一そう進める意味におきまして、処分不動産をさらに洗いました結果八十二億円になったわけでございます。これに対しまして、実施分、簿価で二十六億円、売加価額で六十八億円、売却益で四十二億円、これがことしの一月末の現況でございます。
  128. 有馬輝武

    有馬委員 大体一億株ぐらいの取り扱いの中で山一のシェアが一四、五%、そしていま報告になりました店舗、人員整理、不動産の売却、当時大体簿価で六十二億円ということでありましたが、一応その八十二億円、このうちで四十二億円のものが売却益である。これらの条件が満たされるならば、当時の証券局長の答弁によると山一再建は可能である、少なくともそういう結論だったと思うのであります。私がお尋ねしたいのは、あえて昨年の五月二十六日の本委員会における質疑の要点についてあらためてお尋ねをしたのは、少なくとも、こういったことが実現されるならば山一は再建できるということであったのに、その新山一の構想について、大蔵省が三行の動きに指導するのか相談にあずかるのかわからないけれども、一翼をにない、また日銀総裁も、この主導権を握らないけれども、報告を逐次受けておる、その新山一の構想が浮かんできた経緯について私はお伺いしたい。山一再建という当初の目標が新山一という形になぜ移ってきたのか、この経緯をまず証券局長からお聞かせをいただきたい。
  129. 松井直行

    ○松井政府委員 再建の責任者はどこまでも企業の経営者でございまして、わがほうで、日本銀行はじめ大蔵省といたしまして監督上ぜひ着目しなければならない重要点については勧告もし、注文もし、注意もするということでございますが、基本的には山一証券及びその関係者の責任問題であるということは、もう申すまでもないことでございます。おそらく現状のままで先ほど申し上げましたとおり経常収支は非常に改善いたしておりますけれども、いち早く計画的な線に沿って日銀の融資を正常のルールでスケジュールにのっとって返すということ、それから証券市場の中におきまして信用不安の原因になったこともありますので、まず証券界の信用回復の第一人者、先導者になるという必要があるというようなおそらく考え方であったのだろうと思います。普通の再建計画において行なわれますように、新旧勘定を分離するかあるいは新勘定をつくるかということにいたしまして、生まれかわった新しいものが着実に収益をあげることによって計画的に旧勘定を埋めていくという事態に早く出発する必要があるということでおそらくこういうことが考えられてきたものであろうと思います。いまおっしゃるとおり、おそらく新会社案になるかとも思いますが、まだ決定的なことは聞いておりません。いままでの過程におきまして、同一会社の中で新旧勘定を分離するということもあれば、いまのままでいくという案もありますし、あるいは全然新しい新生の山一を新設していくという再建の方法の実質的問題としていろいろあったかと思いますが、いま私が申し述べましたような基本的な条件を十分充足するためには、おそらく新生山一をつくるのが最も適当な策であろうと関係者が考えたものとそんたくいたしております。
  130. 有馬輝武

    有馬委員 私はそういうことを聞いているのではない。私が聞いておるのは、あなたの去年の五月二十六日の本委員会における答弁によると、これらの条件が具備され、実行されるならば再建は可能でありますという結論ではなかったか、それがなぜ新山一という形に移ったのかということをお伺いしておる。いま一度伺いますが、少なくとも、旧山一のままでこの条件が整っていくならば再建できるというあなたの話だったでしょう。それは、結局、あなた方は再建できるかどうかわからないけれども監督の責任上こういった手術をせざるを得ないだろう、こういう療法を山一がやることをすすめて、はたから見ておればいいのだというような安易な気持ちでこの再建策に関与してきたのかどうかということを私はお伺いしておるのです。
  131. 松井直行

    ○松井政府委員 この席で何べんも申し上げたところでございますが、当時山一自身がつくりました合理化計画案、当時としては最善のものとわれわれ考えまして、その線にのっとって再建を進めさせてきたわけでありますが、それだけで満足するわけじゃないわけでありまして、さらにもっと徹底した合理化の方法がないかどうか探求してまいりましたし、今後もなお探求してまいるつもりであります。現在の収益力をもってしますならば、先ほど申し上げたとおりでありまして、相当期間かけるならば十分再建し得る月々の収益力をあげておることは事実でありますが、計画を着実に明瞭に行なうための会計技術上の問題として、一本のままでいくか、同じ会社の中で計算を分離するか、あるいは新会社をつくるかは、多分に私技術的な面も入っておるというふうに考えておりますが、いずれにいたしましても、当時いいかげんに考えたわけではございませんでして、徹底した合理化を進めさせることによって再建が可能であるということを信じて出発いたしたわけでございまして、いま着々その成果をあげておるというふうに考えております。
  132. 有馬輝武

    有馬委員 着々と成果をあげておるなら、何も新山一という構想が生まれなくてもいいんじゃないですか。その関連づけがわからないので説明してほしいということなんです。
  133. 松井直行

    ○松井政府委員 繰り返すようでございますが、もとのままの法人でいくか、同じ法人の中で新旧勘定を分けるか——これは終戦後すでにわれわれが経験してまいった一つの再建整備の方法であります。あるいは新会社をつくっていくか、多分に技術的な要素を含んだ問題であろうと思いますが、この再建をして、非常に明確な形で計画を実行させ、日銀に対する返済も適確に行なわせ、かつ、証券市場の中におきます山一証券自体の信用も回復し、証券界全体の信用回復にも役立て、さらに、新しい証券取引法の精神にのっとりまして、やがて近く行なわれるであろう全証券業者の免許制を控えました証券界の体制整備という広い観点から考えまして、多分に技術的な問題でもあるかとも思いますけれども、新生山一案というものが生まれて出てきておるというものと私はそんたくいたしております。
  134. 有馬輝武

    有馬委員 ちっともわからない。旧山一ではどうしていけないのか、新山一でなければいかぬのかという経緯がちっともわからないけれども、これで繰り返しておってもしようがありませんから、総裁にお伺いしたいのですが、少なくとも私は、特融を行なわれた場合には、特にそのときの状況についてはわからないでもありません。しかし、一つめどがあって、つまり、いま松井証券局長の言うような、何とかなるだろう式のものじゃなくて、やはりめどがあって旧山一に対してこの特融を行なわれたと私は思うのです。担保の問題とかその他の問題については、これは予算委員会なりあるいは決算委員会なり等で同僚委員諸君がお尋ねをしたことでありますので繰り返しませんが、この再建についてどういう見通しを持っておられたのか、これをお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  135. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 当時の状態を率直に申し上げますと、とにかく、あのときの状態は、非常に緊急な状態である、かように私どもは考えました。したがって、そのときに具体的な案を、こういう再建計画というものをこれからつくるという決心はむろんいたしておりましたし、そのときからやはりこの返済をぜひ受けるということは、前々申し上げておりましたとおり考えておりましたが、具体的にどうするか、つまり、そのときに、山一もそのまま生かすかあるいはまた別の方法でやっていくかということは、あの大蔵省に申請をいたしました五月二十八日でございますか、そのときは、そういう具体案は、正直に言って持っておりませんでした。そのときの緊急状態がどう変化するかわからないという意味におきまして、具体案は持っておりませんでした。ただ、そのときにわれわれが考えたことは、これは必ずそういう方法を講じなければこの山一の特別融資というものはいけないという考えは、そのときから持っておりました。さっそくいろいろの情勢の研究に取りかかりましたし、また、幹事銀行である三行に対しても、案を至急つくってもらいたいということを言って、あのときのはっきり文句は記憶いたしておりませんけれども、全体の証券についてのいろいろの改善策といいますか、それは、できるだけ早く全体としても考える、その中にそれを含みながら山一の問題も考えていくというふうに決心いたしたことは事実でございます。したがって、そのとき証券局長がどう言われたか私存じませんけれども、しかし、そのときからもう山一に対する貸し出しは、これは日本銀行の特別措置であるので、努力によって何か方法を講じて返してもらおうという気持ちは、当時と今日と変わらないわけであります。
  136. 有馬輝武

    有馬委員 要約していまの総裁のおことばを受け取りますと、とにかく再建できるかどうかわからなかったけれども、ここで殺してしまうわけにはいかない、やむを得なかったからやったということですか。
  137. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 いや、そうではないのです。御承知のように、当時は緊急状態であります。そこで、再建案はこれだということで大蔵省に申請したのではない、ただ、そのときのわれわれの決心は、ぜひ再建案をつくって、そうして、たとえば、露骨に言いますと、この金は山一にやったんじゃないんだという決心は、当時から今日まで変わらないということであります。
  138. 有馬輝武

    有馬委員 そこでお伺いしたいと思うのでありますが、いま新山一の構想についていろいろ伝えられております。要約して、その伝えられておるところを見てみますと、資本金八十億円で新山一証券を設立して、現山一証券の営業主体を移して七月一日から営業する、新会社の資本金は、主力三行が二十四億円、旧会社が四十億円、残りを関係銀行あるいは関係企業が出資する、新会社は、主力三行から四十億円の融資を受け、旧会社から営業権を買い取る、旧会社は、それぞれ新会社の資本金を払い、新会社は三行に返済する、旧会社は、債務のたな上げ会社となって、新会社の営業収益と不動産貸し料で債務を返済する、未解決の問題は、日銀特融などの債務処理だが、政治的判断に基づき、主力銀行、関係十五行の債務の一部切り捨て、ないしはたな上げを考慮する。それで、問題は、この最後のところだと思うのでありますが、私は、先ほど委員に対する総裁の御答弁では、ある程度聞いておるけれども、これは主力三行が進めることであって、というようなお話だったと思うのでありますけれども、その主力三行ももちろん動かなければならないと思いますが、この債務処理の問題をどうするかという点で、私は、総裁と福田蔵相との政治的な判断にまつべき時期に参っておるのではないか、こう見ておるわけであります。その点について、私は、やむを得ないからというような前の特融のときの形ではなくして、はっきりとした見通しを持って総裁としてもこの問題には対処されると思うのでありますが、現時点におけるその見通しについてお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  139. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまいわゆる山一の再建案についていろいろお話がございましたが、たびたび申し上げましたように、総括的にこれをどうするということは、案としてまだきまっておりません。いま検討中であります。検討している間に、いろいろ従来私どもが聞いておるところでも常に変わってきております。だんだんこれを直しながらいま進んでおるところです。たとえば、新山一につきましても、まだ根本的に新山一をこれくらいの資本金、ただいまおっしゃったような八十億円でやろうというような点はまだ少しもきまっておりません。何をぐずぐずしているかという点でございますが、これはやはりいまの情勢から考えまして、国民の皆さんか納得できる案——まだいまお話のように疑問もありますし、こういう案はどうだろうかということを私も部分的に聞いておりますが、もっと検討すべきじゃないか、こう申しております。むろん、最後には大蔵省と日本銀行と関係銀行とが山下も含めて考えなければならぬわけでございますが、まだそこまでいっておりません。したがって、どうするかということを御返事する段階にきておりません。
  140. 有馬輝武

    有馬委員 さっきおっしゃっているように、松井証券局長に旧山一から新山一への構想の転換についての経緯を伺いましたのも、いまの総裁の御答弁を伺いたいために私は聞いておったわけです。新山一になったならば、こういう特融の問題についてこう処理するか。いま総裁が言われたように、山一にやったんじゃありません。この筋をどうやって通すかという見通しがなければ、ただいたずらに新山一は旧山一よりもベターであろうというようなことでは済まされる問題ではないと思うのであります。そういう角度からお伺いをいたしておりますので、いま一度御答弁をいただきたい。
  141. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま申し上げましたとおり、この問題については決してこれくらいでいいんじゃないかというような安易な気持ちではいたしておりません。したがって、研究に時間を要するわけでございますが、この問題につきましては、ただいま繰り返して申し上げましたとおり、根本方針はただいま申し上げたとおりであります。それをどうして実現するかというところが問題でございます。いろいろな案が出ておりますが、その全体を検討中と申し上げるよりいまのところ申し上げようがないわけであります。決していいかげんにしておるわけではございません。
  142. 有馬輝武

    有馬委員 私、与えられた時間があと五分しかございませんので、次に一つだけお伺いをいたしておきたい。  日銀法の第一二十七条では、毎事業年度の経理計画については主務大臣の認可を受けることになっておりますが、ここで総裁と銀行局長にお伺いしたいと思いますけれども、新社屋の建設の計画があるのですか。
  143. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ございます。それは、ただいまの日本銀行の建物は、明治二十九年に建てまして、三回増築をいたしております。その増築が、非常にまずいと言っちゃなんですが、不便になっておる上に、いまの全体の建物が完成したのが昭和十三年でございます。それ以来、日本銀行の仕事が非常にふえておりまして、一例を申し上げますと、札を入れます箱でございますね。あの箱は昭和十三年当時は、平均してでございますが、本店に大体五千個あったわけです。それが今日は五万一千個にのぼっております。あるいは、人間の数が当時千九百人でございましたが、現在は三千人というふうに非常に多くなっております。さらに私ども非常に不便を感じておりますのは、御承知のように、日本銀行は、各銀行その他の方面、あるいは官庁からのいろいろな現金の出入りが非常にきびしいのでございます。そうしてあそこが御承知のように非常に狭うございまして、非常に難儀いたしております。したがって、三十四年ごろからでございますか、これの増築をして何とかこれを救済しなければいかぬということで準備に取りかかっておるわけでございます。したがって、御質問のとおり改造計画を持っておるということは申し上げられると思います。
  144. 有馬輝武

    有馬委員 その新社屋については、もうすでに契約が行なわれたと聞いておりますが、銀行局長はどのように聞いておられますか。
  145. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 新しい建物の建築なり増築なりというものにつきましては、まだ日銀のほうから、こういう構想でやりたいという具体的の話は聞いておりません。ただいま先生のおっしゃいましたのは、おそらくは、その新築予定地にありますところの従来の建物を取りこわす取りこわし工事が現在行なわれておるようでございますが、その取りこわし工事について行ないたいという話はございまして、了解しております。
  146. 有馬輝武

    有馬委員 確かに、総裁が言われるように、現在の日銀のあの建物というものは、ほんとうに古典的というか、その最たるものだと思うのであります。前の、萬田さんがおられたときにも、あんな風貌でなくとも怪物に見えましたが、宇佐美さんみたいなりっぱな方でも、あそこからひょっこり顔を出されると、怪物が出てきたのじゃないかと思われるくらい古い建物でありまして、私は新社屋の建設については、これは政策委員会できあられるかどこできめられるか知りませんが、けっこうなことだと思うのであります。ただ、巷間伝えられておるところによると、その入札について、取りこわしか、新建設か知らないけれども、某銀行のサゼスチョンによって、最下位に入札したものよりも、三番目のところにやらせたというようなことが伝わっております。事実でなければよいのですが、中央銀行である日銀でそういうことが行なわれるということになると、これはどうも主務大臣への報告だけでは済まなくなってまいりますので、そこら辺の経緯について、何かありましたらお聞かせおきをいただきたいと思います。
  147. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま申し上げましたとおり、私どもは計画を持っております。したがって、その計画に基づいて、まずその土地の買収といいますか、土地を取得しなければなりません。それにつきましては、取りこわしというようなものも含めて大蔵省に了解を得ておるわけであります。ただ、それは計画自体がまだ確定いたしておりませんので、大蔵省のほうには事務的には若干お話をしておると思いますが、正式にはお話しておりません。ところで、いまお話しになったのは、取りこわしについての御質問じゃないかと思います。そうでございますか。
  148. 有馬輝武

    有馬委員 取りこわしの予算はどの程度ですか。
  149. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 取りこわしの予算はいろいろございますが、さらに取りこわすために、必要なものを別に建てておりますから、そういうものを含めて約四億円くらいでございます。これは大蔵省の御了解を得ておると私は信じております。  ところで、それをどういうふうにやったかということでございますが、私どもでは五社の大手というか、になにして、その取りこわしのための見積もり合わせをいたしまして、そこで取りこわしを頼んだわけでございます。そのときに私どもが言いましたことは、むろん非常に少ないということが——いま四億円と言いましたのは、その拡張をするための取得したなにで、取りこわし工事費はもっとずっと安いわけでございますので、それは訂正しておきます。四億円というのは、何といいますか、銀行協会の裏の古い建物とかあるいは東洋経済とか、いろいろなものを買ったものでありまして、取りこわし工事費ははるかにこれよりも安いものでございますが、それをやるときに、ただいまお話ししたように、五社を選んで、そうして見積もりをとったわけでございます。そのときに、われわれとしましては、やはり一番大事なことは、安いということも必要でございますが、安いだけでは困るので、やはり安全に計画をやって、しかも短い期間で——御承知のように非常にごちゃごちゃしておるところでございますので、なるべく短期間にやりたい、つまり工事期の問題、それから、いろいろやる場合に安全率を考えなければならぬ、日本銀行の工事場では通行人が非常に多いところでございますから、安全率も考える、いろいろな条件をつけまして、そして、むろん工事費が安いということも大事ですが、総合的に考えて、初めからそういう条件を五社に言いまして、それぞれ計画をとりまして、総合判断の結果ある一社を選んだ、こういうことでございます。
  150. 有馬輝武

    有馬委員 時間がまいっておりますので、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  151. 三池信

    ○三池委員長 速記をやめて。   〔速記中止〕
  152. 三池信

    ○三池委員長 速記を始めて。  横山利秋君。
  153. 横山利秋

    横山委員 お疲れでございますけれども、かんべんしてください。たまにこう国会に出ていただきまして私ども意見を聞いていただいて、日銀の政策の資にしていただきたい。たまに出ていただくのですから、また時間もないものですから、私どもも総裁の印象に触れることを言わなければならない。印象に残るということは、ほめることか、けなすことかになるが、どっちかといいますと、大体けなすほうが印象に残る、こう思うから、気を悪くしないで聞いていただきたい。ですから私は、いささかけなすほうをやるわけであります。  いま日本銀行は日本銀行本来の目的に忠実に沿って仕事をしておるだろうか。えらいだんびらを振りかざすようでありますが、少し考えてもらいたいのであります。通貨価値の維持、信用の調整、それが、現実問題としては物価は上がる、驚くべき信用膨張、本来の目的である正常な通貨価値の維持というものができていない。だから、そういう意味では、端的に言えば、日本銀行は何をしておるのだ、こういうことになると思うのです。いまのいろいろな現象を抜きにして私は言っております。本来、それならば日本銀行は何をするところだ。そこで現行日本銀行法を読みますと、第一条に「日本銀行ハ国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策二即シ通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成二任ズルヲ以テ目的トス」、第二条「日本銀行八専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」これが基本になっているのですね。何のためにこれを私が読んだか、そぞろに総裁もぴんと来ると思うのであります。むしろ私は、第二条の「日本銀行八専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」この現行法にあまりにも忠実じゃなかろうか。そして第一条の「通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成」という点について、結果として不十分なところがあるのではないか、私はこう考えるのです。この現行法と今日の事態というものをどういうふうにお考えになるか。私には二つあるわけです。  一つは、現行法がすでにおかしいということでありますね。この「日本銀行八専ラ国家目的ノ達成ヲ使命トシテ運営セラルベシ」そんなことをだれもいま日本銀行に期待しているものはないと思うのです。しかし、あなたがいま総裁として日本銀行法に忠実であるとするならば、政府に対してもっぱら協力なさるという意味ならわかる。そうでなくて、第一条の「通貨ノ調節、金融ノ調整及信用制度ノ保持育成二任ズル」これが本来の目的であるとするならば、これまたいまうまくいっていないじゃないか。あなたの責任だとは言いませんよ、政府の政策なんだから。けれども、結果として日本銀行の使命はうまくいっていないじゃないか、こういうことを言いたいのですが、御感想を承りたい。
  154. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいまお話の現在の日銀法につきましては、これは、御承知のように戦時中の立法でございまして、そういう文句になっておるわけであります。われわれとしましては、昨年も、この日銀法改正という問題について一応日本銀行としての案をつくりまして、これは日本銀行が国会にお出しするわけにいきませんので、政府のほうとお話し合いを願っておったのでございますが、いろいろの関係でまだ出ておりません。したがってこれは、戦時立法であって、直さなければいけないと私は思っております。  それから、どちらが大事かという点でございますが、これは私どもの日本銀行原案と申すべきものがあるわけでございますが、その中ではっきり申しておりますように、やはり日本銀行の使命というものは、第一に掲げております通貨価値の安定保持及び信用制度の保持育成、この二つを使命といたしておる。その現在生きております銀行法からいうと若干問題もありましょうが、私はそういうふうに考えておるわけであります。
  155. 横山利秋

    横山委員 にもかかわりませず——きょうはずばずば言いますからね。前任者の山際さんがいらっしゃったときと今日とは非常な違いがある。まず第一に、客観情勢の違いがある。あなたが在任されてからいわゆる吹原事件である、いわゆる山一問題である、あるいは不況である、いわゆる国債発行である、非常にたくさんの問題がここにあらわれてきた。その過程において、私どもは不幸にして政府と日本銀行総裁との間に意見の食い違いがあったということを聞いたことがない。非常に御協力なさっていると私は思う。御協力が、全部意見が合ったか、違っておったけれども、わからなんだか、それは私は知りません。知りませんけれども、いま総裁が、日本銀行法第二条があれども、これは空文だ、おれはまだ法律になってない日本銀行法改正原案というものの使命を達成することをもって本旨とするということでありますならば、もう少し違った感覚が、この通貨、信用、その保持育成の中にあらわれてもいいのじゃないか、私はこう思うのですが、言い過ぎたと思いますか。
  156. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 おもなる問題につきまして、大蔵省と日本銀行が全く同じであった、それはおかしいじゃないかという御質問でございますが、私は、日本銀行大蔵省が表面最後の結論において非常に対立関係になるということは、非常に遺憾なことに思っております。率直に御質問なので、私も率直にお答えいたしますが、結論として日本銀行大蔵省がまっこうから違うような態度、政策を打ち立てるということは、これはいけないと思っております。ただ、その過程においていろいろな議論をし、そうして、あるいは私ども大蔵省にわれわれの考えを述べ、また大蔵省も日本銀行の政策についていろいろおっしゃるということは、これはもうそのつど起こっておるのでありまして、その間、決して片方の意見が、ことにいまお話のように、政府の意見がそのままわれわれの意見に無反省になされておるということはないのであります。たとえば、いまおっしゃいましたように、国債発行なら国債発行について御質問がございませんから具体的には申し上げませんけれども、政府が出すということにわれわれがなぜ賛成したかという理由は、そのたびごとにみんなあるわけであります。山一の特別融資についても、これは私のほうが大蔵省に申請したものでございますし、それに対して大蔵省は同意、許可したという関係でございます。それぞれ何か金融政策を立てる場合には常に両方で理由が——どもがこれに賛成する場合にははっきりした理由があるということだけを御了承願いたいと思うのであります。
  157. 横山利秋

    横山委員 日本銀行の政策意思決定というものは、まあ、一々外に過程を発表すべきものではなかろうという点が言われておるけれども、しかし、日本銀行が通貨なり信用なり保持をし、そして調整をするという本来的な使命、法律以前の本来的な使命を守るためには、やはり国会なりあるいは国民の希望なり、そして逆にそれに対する反映なりということがあっても、私は差しつかえない。現にあなたも記者会見をしてみえるのですから。そういうことにいささかちゅうちょしていらっしゃるのじゃないか。まず日本銀行の考え方なり、協力を求めることなり、こういう点についてPRを十分すべきではあるまいか。私は何も政府といつもけんかをしろというわけではありません。常にベールの中で政府と話をして、そして意見がまとまったんだから、これはこっちが譲ったんだから、向こうが譲ったんだからというだけではいかぬのではないか、もう少し国民の前へ出てもいいのではないか、こういう意味を申し上げておるのです。
  158. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 日本銀行の政策についてPRをもっとすべきじゃないかというお話でございますが、まあ、このころは世界各国とも——世界がどうだからといことではございませんが、そういうことにだんだんなってきまして、私もそういう線において今後もやっていきたい、かように考えております。ただ、政府と日本銀行との違うところでございますが、これも率直に申し上げますと、日本銀行は、将来のことについてやたらにアドバルーンを上げるべきではないと私は考えておるわけであります。これは皆さまにもぜひ御了承願いたいのですが、金融というものは非常に流動的なものでありまして、将来の予想をかけていろいろのことを申し上げにくいわけであります。したがって、われわれはそういう将来どうなるであろうかということについて、むしろ手控えていくほうがいいんではないか、かように考えております。金融はほかのものと違いまして、非常に流動的でございます。たとえば、いろいろの計画を立てておりますけれども、われわれは、今月の金融はどうだろうかということで毎月新聞発表もいたして、調節の方法もやっておりますが、これもとかく狂いやすいものでございます。そういう非常に動くものでございますので、皆さんからごらんになるとはなはだまだるいというお考えもございましょうが、そういう前提で、いまお話のように、新聞記者会見もしているじゃないかということでございますけれども、やはり先行きの見通しについては、これはなかなか申し上げにくいという点はぜひ御了承願いたいと思うのでございます。政策自体のPRにつきましては、私もできるだけ国民の皆さんに、こういうわけでこういう政策をとったんだということは、機会があれば申し上げたいとは思っております。
  159. 横山利秋

    横山委員 三十九年にIMF八条国へ移行した、そして国際金融の中へ日本が入っていった、今日、国債を発行をして、金融にまさに歴史的な変化が起こった。それらの一連の問題を通じてみて、日本銀行の立場というものは、客観情勢は明らかに変わってきたと私は思うのであります。そして、金融調節の中におけるいわゆる公債を抱いた財政というものの国家権力、政府の権力というものは非常に強くなった。そして日本銀行が通貨や信用の調節並びに調整をする力というものが少なくなってきたと私は思います。したがって、この情勢の変化に即応する日本銀行のあり方というものが、先ほど総裁がおっしゃったように、本格的に考えられなければうそだと思うのであります。実現をしなければうそだと思う。つまり、日本銀行総裁の権限なり、日本銀行が組織の中において占める地位というものが、情勢の変化に即応してすみやかに改革されなければだめではないかと私は思うのであります。先般私は、本委員会において大蔵大臣に、日本銀行法の改正についての態度はいかんと言った。そうしたら大蔵大臣は、その必要は認めるけれども、いまさしあたり痛痒はない、この国会では提案はしない、次の国会で提案をするかもしれない、しかしそれは、政府にとっては現状のままがいい、日本銀行が国家目的に沿って仕事をもっぱらしてもらうほうがよろしいというのであります。日本銀行の、あなたの言う本来の使命というものが達成せられないほうがいいと思う——そうまで大蔵大臣は思っていらっしゃらないだろうけれども、必要の積極的な意味というものは、大蔵大臣ではなくて、日本銀行が、総裁が積極的にその必要性を痛感をしなければ、日本銀行の使命は私は達成されないと思うのであります。私の主張には同感でございますか。
  160. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私は、いまの日銀法は直すべきものだと思っております。ただ、いろいろの——これは私の問題でなくて、他のいろいろの理由によってなかなかその運びに至らないことは、むしろ残念に思っておるわけであります。ただ、いまこれを直さなければ日本銀行は動きがとれないのかということでございますが、決してそんなことはございません。いかにこれを直そうとも——これは率直に言えということでございますので、心し脱線するかもしれませんけれども、日本銀行法でいかにりっぱな法律ができたとしましても、政府は、第一私の任命権を持っておりますし、それでなくても、やはり財政の力というものは非常に大きいのでございます。したがって、法律的に日本銀行を圧迫しようということ——そういう法律をつくるかつくらないかは別でございますが、そういうときでも、法律がどうであろうとも、やはり通貨価値の維持あるいは信用制度の保持ということは、これは法律できめるよりも、やはりそのときの政府と日本銀行の話し合いのところで、いかに法律がりっぱでも、降参してしまえば私はだめだろうと思うのです。したがって、現状でも、政府の意見がわれわれに納得できないときは、これは反省を求めることがいまの法律でもできる、かように私は考えておるのであります。また、そうしなければならない、こう思っております。
  161. 横山利秋

    横山委員 私はそれを否定しているわけではありません。道理の通らぬことは、私は法律以前の問題として、それはいいです。いいけれども、あなたもお認めのとおりに、現行日本銀行法というものは、もはや死文化している部面がある。現状にそぐわない部面がある。そうでしょう。先般まとまりました日本銀行法改正の各条項を見ましても、現行法と比べてみて、改善のもっともな点がずいぶん多いんですね。したがって、いま総裁と言われたような運用の問題はもちろんではあるけれども、日本銀行百年のものの考え方や、政府と日本銀行がいかにあるべきかという問題は、またあなたの言われた部面と違って、いつかは、ないしはすみやかに——私の言うのはすみやかにだが、別な角度をもって、勇気を起こして改正をしなければいかぬじゃないか。組織論として、法律論として私は言うのです。決して総裁が、法律がそうだからいま何もやっておらぬとばかり、その面で私は言っているのではないのです。  そこで、改正の問題点でございます。改正の問題点で最も焦点になりましたのは、政府との関係の問題です。現行法の四十三条、業務命令は、これは非常に包括的で、かえって死文化しているからこれを廃止して、政府との関係は、改正案三十四条で「日本銀行は、その運営にあたっては、常に政府と密接な協力関係を保ち、十分な意思の疎通を図らなければならない。2 大蔵大臣が、日本銀行の運営に関する重要事項について政府の政策と調整を要すると認め、日本銀行にその旨を通知した場合は、日本銀行は、すみやかに、大蔵大臣と協議し、意見の調整を行なわなければならない。」次に三十五条で「緊急な場合における大蔵大臣の命令」があり、そしてその第二項で「日本銀行が前項の規定による命令を実施することによって受けた損失は、別に法律で定めるところにより、国が補てんする。」この改正案三十四条並びに三十五条は、少なくとも現状のもとにおいては私はかなりな進歩だと思うのです。私どもはまた別な意見がありますけれども、それは別といたしまして、現行法に比べるとかなりな進歩である。そして、政府を代表する大蔵大臣がこの条項に基づいてあなたと相談をされ、この条項によってあなたが協議に応ぜられたり、あるいは命令を受けられるというように姿勢をきちんとすべきだ。そうすることによって私は円滑なルールに乗っていくと思うのです。それ以前の、話し合ってわからぬことはないと言われましても、しょせん私どもお互いに実際国会のルールで仕事をする、個人の立場で話し合ったところで、どん詰まりにきましたところは、やはりルールがものを言うわけですから、その点について、この改正案三十四条並びに三十五条について、あなたは一体どういうふうにお考えになっておるのかという御意見を伺いたい。
  162. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 日本銀行法の改正についてきょう御質問を受けると予期しなかったものですから、ここに条文を持ってきておりませんので正確には御返事いたしかねますが、要するに私は、ただいま申し上げましたように、日本銀行はいろいろな仕事をいたしておりますけれども、通貨価値の安定と信用制度の保持、これが根本的な問題だろうと思っております。したがって、それについて大蔵省とかりに議論が分かれた場合には、これはその事件の軽重にもよりますけれども、しかし、これは重大なる問題だと考えたときは、日本銀行として主張すべきものはどこまでも主張するというふうにいたしているつもりでございまして、それはかたい決心を持っております。(横山委員法律論と運用論とをごっちゃにしてもらっては困るんですがね」と呼ぶ)ですから、法律でいかにやっても、やはり一番大事なのは人の関係だろうと思います。
  163. 横山利秋

    横山委員 総裁はいわゆる民間出身で、こういう論議はあまりえてじゃないと思われるので、どうも法律がどうきめたところで運用がうまくいかなければしまいだ、こういうところへ逃げられるのはよくないと思うのですよ。あなたの信念だけで日本銀行が運営されるものではないのですよ。これはあなただって近く——いつか知らぬけれども、いつかはおやめになる。だれがやっても一つのルールというものが必要なんです、日本銀行法に基づいてお仕事をなさるのですから。そのルールがいまこわれておるというのです。こわれたものを現状に適して改正をしなきゃならぬということはあなたもお認めだ。お認めであったら、現状に即して改正をすべき焦点というのが実はここだ、それで、これを題材にして政府との関係についてどう思うか、この改正案についていいと思うか悪いと思うか、その改正案の内容について御意見を伺いたい、こう言っているのです。
  164. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 私は、法律家でないので、はなはだ申しわけないのですけれども、しかし、その意見がかりに違ったときに、何で、だれが判断するかという問題になると思うのですが、私はそれは世論だと思うのです。したがって、その違いがはっきりしない間に交渉される——まあ、日本銀行大蔵省とがうやむやのうちに話し合うということはよくないと思うのです。したがって、たとえば日本銀行の政策に大蔵省が、まあ圧迫といっていいか、変更を命ずる、われわれはそれは反対だという場合には、いままではうやむやにやっているけれども、たとえば文書で言うとか、はっきりして、やはり最後は世論が決定するものだろうと私は思います。世論というものは、やはり端的に言えば国会かもしれませんし、あるいは、これもはなはだ抽象的で法律的ではないのですけれども、そういうところによってきめていくべき問題ではないかと私は考えているわけであります。
  165. 横山利秋

    横山委員 多少歯車がかみ合いませんね。あなたは、日本銀行法の改正について早くやらなければいかぬ、そうして自分の信念として、うやむやでなく、ときには世論に訴えるのだ、こういう御意見ですが、時間もありませんから、一応前に進みますけれども、今度はその意味について少し具体的に伺いたいと思うのです。  たとえば、いまの政府の政策はインフレ政策だと私どもは言うのですけれども、結果としてはそういう方向にいく、日本銀行は通貨価値の維持をするという意味においてはどうしてもニュアンスの違いが出てきますが、そういうニュアンスの違いで、どこにあなたのほうは歯どめを持っておられるのだろうか。政府が、どうしてもいま景気の刺激政策をやらなければいかぬという場合に、日本銀行は、通貨価値の維持がおれの任務だ、おれの任務としてはどうしてもこれ以上はいかぬという歯どめは一体何であろうかということで、私は二、三例を引いて伺いたいのですが、たとえば、通貨というものがどんどん増発されていく、一体いまの客観情勢においてどのくらいが妥当だと思うか。それは具体的にお答えになるか、あるいは抽象的でもいいのですが、政府がどんどんと景気政策をやって、通貨を発行するように仕向けていくのに対して、日本銀行はどこでその歯どめを、ようとするのか。あるいは物価がどんどん上がっていくということについて、これは通貨の増発が一つの要因でもあろう、そういう点で、どこで日本銀行としてきちんと姿勢を正そうとするのか。  こういう政府の政策とニュアンスの違う立場の日本銀行は何を歯どめにしようとするのか。時間がございませんから、いろいろ例を出せないのが残念でございますけれども、あなたの別な例でもよろしゅうございますから、日本銀行としてはこの問題についてはこういう歯どめを二、三考えているという、日本銀行としての任務を聞かせてもらいたいと思います。
  166. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 たとえば、いまの国債の問題について申し上げてみますると、政府がいよいよ国債を発行する、四十年度は別にしまして、四十一年度に出すということになりましたときに、われわれの政策委員会でも、また私個人もこれに賛成すべきかどうかということを考えたわけであります。そして、いろいろの点から考えたわけでございますが、将来の、たとえば四十二年度以降の問題は別にしまして、四十一年度に公債を出すのは賛成すべきかどうか、あるいは七千億として、それが適当であるかということについては、日本銀行としても真剣に考えたわけでございます。  それで、その理由としてたくさんの条項を考えたわけでございますが、第一には、やはり現在の状態で非常にたくさんの国債を出して、もしお話のとおりインフレにでもなるという場合には、国済収支がさっそく影響を受けるわけでございます。たとえば、輸入が非常に盛んになるだろうとか、そういう点は、現在われわれが知っている限りにおいて、日本の設備投資は供給余力が非常に多いというふうに考えたわけでございます。したがって、供給余力が多いし、また国際収支の状態もまずことしはだいじょうぶだろうというふうに考えたわけでございます。それからまた、政府が言っておるように、公共投資については明らかに日本はおくれております。民間のほうに比較するまでもなく、あらゆる点でおくれております。これはいろいろな点で影響がありまして、物価問題についても影響があるのじゃないか、したがって、こういう問題について、政府が国債を発行して、正しく、緊急なものに資金を投入してくれるならばいいのではないか、かように考えたわけでございます。  それからもう一つは、やはりこれが問題なのでございますが、また御指摘もございましたが、通貨の状態はどうか。やはりインフレ激化ということになると、通貨と物価との関係でございます。したがって、通貨の状態はどうかといいますと、いまのところ、通貨もまずそう増発されていない。去年と比較しますと増発されておりますが、しかし、それは、私どもから考えますと、やはりいままでの成長通貨の範囲内で出ておる、そういう点を考えまして、それくらいの国債発行についてはまずよかろう、それからもう一つは、量については、これは政府に対しても非常に強く言ったのですが、ぜひ市中消化の範囲内でやってもらいたい。これは政府も初めからそういう考えであったかもしれませんけれども、さっきおっしゃったように、われわれの要求として強く言っておったわけであります。もしも市中消化があぶない、とても不可能だというときには、これは国債自体について弾力的に考えてもらう、減らすというような処置は考えてもらわないといけない、こういう考えで、そのほか、データをいろいろ調べまして、まずこれくらいならいいだろう、金融というものは非常に変化するので将来はわからないけれども、現在の見込みからいって、わかったときには弾力的に直していくという前提のもとに、いまの次元でこれくらいの国債発行はいいだろう、こういうことでこれに賛成したような次第でございます。  それの一つ一つが歯どめになっているのじゃないか。国際収支が非常に悪くなってきたら、やはりこれは歯どめになるわけです。また、通貨が非常に増発されるようなら、これも歯どめになるわけでございます。また、物価がどんどん上がっていくというのも、これも歯どめになる。いろいろな歯どめをたくさん考えまして、そうしていまの状態ではまずいいのではないか。また、将来の問題としては、情勢が変わってきたら、そのときは考慮するという前提が大事だと私は思うのですが、そういうことで賛成したような次第で、政府が押しつけてきたから賛成したということでは決してないわけでございます。
  167. 横山利秋

    横山委員 時間がございませんが、そういうことを日本銀行が考え方として持って、それを実行する体制というものが、いまほど私の言う法律上体制を明確にしなければならぬときはない、こういうのが結論になるわけであります。そこで、最初の私の主張であります日本銀行法の改正を一刻も早くやるべきであるというのが結論になります。  大蔵省と去年も折衝があったというのでありますが、総裁として、いつ日本銀行法の改正をしたいと念願されるか。この国会ではもちろん間に合いませんが、次の通常国会なり何なりに提案をして日本銀行法の改正をさせたいとお考えでありますか。最後に伺いたい。
  168. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 これはどうも私が答えしても……。(横山委員「いや、いいですよ。あとでまた政府にやりますから。」と呼ぶ)まあ、私としては、やはり提案されますと、これは金融の、経済の一つの基本法になると思いますので、国会でも十分御審議を願わなければならぬというので、時間的にもなかなか問題があるかと思いますが、私が申し上げられることは、なるべく早くやってもらいたい。おっしゃるとおり、私は法律ははなはだ暗いのでありますが、しかし、法律の裏づけというものは決して軽視すべき問題ではないわけでございます。そういう考えでおります。しかし、これは政府あるいは国会のいろいろの御事情もありますので、ただ、いま直っていないからもうだめなんだということは決してございませんから、その点は御安心を願いたいと思います。
  169. 三池信

  170. 春日一幸

    春日委員 わが国財政は、今年度から公債政策を取り入れることに相なりました。しかも、この公債政策は、本年度を基点として将来はなはだ長期にまたがりまして、かつは、大蔵大臣の述べるところによりますと、相当ボリュームを持つものでございまするだけに、したがって、わが国金融政策もこれにこたえて適切なる応対策をとらなければ相ならぬと存ずるのでございます。私は、本日、堀君がやかましく時間の制限を言いますので、論点を集約してお伺いをいたしますから、そのように御答弁も御協力を願いたいのでありまするが、言うならば、公債政策のもとにおけるわが国金融政策はいかにあるべきか、ここに論点をしぼってお伺いをいたしたいと存じます。  たとえば、本年の起債総額は、政府保証債四千億円、公募地方債七百億円、事業債四千五百億円、利付金融債四千億円、これに対して七千三百億円、なかんずく七千億円が市中消化を予定されているのでございますが、かくて、かれこれ二兆円に達する債券を消化せなければ相ならぬと存ずるのでございます。したがって、これを円滑に消化いたしまするためには、少なくとも金融市場を整備することが必要であろう思う。すなわち、金融の正常化の問題でございます。金融を正常化するためには、いままで前に社会党三君が論ぜられておりまするとおり、何といっても、まず第一番はオーバーローンの解消ではないか、第二番には金利機能の回復の問題ではないか、第三番には公社債市場の整備、特に公社債の流通市場の整備育成、この三つの懸案が最もすみやかに解決されるのでなければ、これらの公債を市中消化するといったところで、そのことの意義というものは全然失われてまいるのみならず、この公債政策がわが国経済に与える影響、しかもインフレを含んだ悪い影響、これはまことにおそるべきものが予測されるので、これに対しての日銀総裁の御見解はいかがでありますか。しこうしてまた、この三つの問題についてどのような対応策を念頭に持たれておるか、この際できるだけ問題点を簡潔にお述べいただきたい。
  171. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 国債発行下における金融政策ということは、御指摘のとおりでありまして、私は非常にむずかしい問題だと考えております。ただいままず御指摘のように、国債をはじめいろいろの起債が二兆円というお話でございますが、私ども計算では純増ではもう少し減ると思います。まあ、それはどうでもいいのですが、そういう巨額のものをこの際出していくということにつきましては、これは相当の覚悟が要ると思います。しかしながら、この国債をはじめ、もろもろの案件が今後どういうふうに出ていくか、この金は政府が取り上げてしまうだけではなくて、これを吸い上げましたら、あるいはそのほか事業債等は会社が吸い上げるわけでございますが、それがみなそれぞれ出ていくわけでございますから、問題は、どういうふうに出ていくかというところにあると思うのであります。これにつきましては、国債をはじめ政府関係のものについては、大蔵大臣も再三言っておりますように、非常に早く金を流すということを言っております。われわれもそれを期待しておるわけでございます。したがって、問題は、そのとおり金が流れていくとすれば、その間の時間的ずれであるとか、あるいは流れの道をどういうふうにやるかというところに一応いま研究問題をしぼっておるわけでございます。これが政府あるいはそのほかの発行者が全部流し方がまずかったら、これはとうてい問題にならないわけでございます。その点は、われわれとしても非常に注意深くやっていって、妙なことがあればさっそく注意しなければならぬ、かように考えておるところでございます。  それから、ただいまお話のように、オーバーローンの問題でございますが、オーバーローンにつきましては、なるほどいまもう日本銀行の貸し出しは相当の額にのぼっております。しかし、そのうちいろいろ分類をいたしますと、やはり結論的に申しますと、オーバーローン自体はそんなに昨年からふえておりません。私どもはこの貸し出しのふえることをやはり非常に警戒しておりまして、これはそのときどきに、もう皆さん御承知でございますが、さしあたり、私ども金融調節というものは、短期の債券の売買あるいは政保債の買い上げのオペレーションを主体といたしまして、補足的に貸し出しによって——あるときは貸し出しをし、あるいは回収するというようなことで、貸し出しは補足的な手段としてやっていきたい。それで、貸し出しの全体の数字も、ある時限においてはいろいろございますけれども、ならしますと、そんなにふえない傾向でいけるのではないか、かように考えております。  それから、金利の問題につきましては、これもおっしゃるとおり、非常に大事な問題でございまして、公社債市場育成と申しましても、これは金利の自由化がなければ公社債市場は成り立たないわけでございます。そこに需要供給の関係があり、そうして、その間に金利がおのずから落ちつくところに落ちつくということにいたしまして、まだはなはだ不徹底でございますが、この間から、たとえば政保債の買オペをやるときも、一応そのときの相場ということで自由化ということに踏み切っておるわけでございます。まだ公社債市場はきわめて小さいのでございますが、一方において、先ほどもお話が出ましたが、証券会社も従来のような株のオペレーションといいますか、売買だけでなく、公社債というものに力を入れてもらうように指導もしていきたい、かように考えておるわけでございます。こういう問題は一挙になかなかいかないのでございますが、しかし、つとめて早くやるようにやっていきたい、かように考えております。  落としておるところがありましたら、どうぞ御指摘を願いたいと思います。
  172. 春日一幸

    春日委員 お説のとおり、この公債、社債を消化する資金量、資金能力、こういうような問題は、やはり財政の吸収と散布のメカニズムを通じて適切な運営がはかられることによって、そこに有機的な変化も生じてくるということはわれわれもいろいろと積算はいたしておるのでございますが、そのような要素を勘定の中に入れながらやってみますると、たとえば全国銀行の場合、問題をオーバーローンの解消の問題に集約して論じてみますと、銀行筋が見通しておるところによると、四十一年度の全国銀行の債券消化額はざっと一兆二千億円になるのではないかとそろばんがはじかれておる。この数字は昨四十年度の五千八百億円の二倍になるのではないかということになります。一方、いまお説のような事業債その他を含めて吸収と放出の結果を入れてみますと、すなわちそれは、実勢預金の形になってあらわれてまいるであろう、預金増加は本年度は二兆八千億円が見込まれておる、そうして貸し出し増は、このような趨勢の中においては二兆六千億円と見るべきではないか、さすれば、ざっとここの差額は二千億円くらいにしかならない、こういうことになってまいりますと、すなわち、都銀がこの公社債一兆二千億円、これを消化せんとするならば、都市銀行の外部負債依存度というものは勢い強められてこざるを得ないのではないか。すなわち、日銀に依存するにあらざればこの一兆二千億円を消化することはできなくなるのではないか。このことは、昨年来オーバーローンというものが幾ぶんか努力の結果改善されてきておる、あるいは金融趨勢あるいは経済情勢の推移によって改善されてきておるけれども、本年度においてはやはり逆戻りするようなことにならないか、これに対する日銀総裁の御見通し、並びにこれに対する日銀自体としての対応策は何であるかお伺いをいたしたい。
  173. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 ただいま御指摘の諸点は、実は私も非常に心配をいたしておるのであります。どういうふうにことしの資金調節をやっていくかという点は非常な問題でございます。しかし、冒頭に申し上げましたとおり、この資金が吸い上げっぱなしでなく出ていくという点も考えなくちゃなりませんし、やはりことしの四十一年の全体の蓄積はどのくらいになるだろうか、これは見通しの問題ではっきり申し上げませんけれども、去年の状態から推算してみますと、四十年度の数字から推算してみますと、やはり六兆円くらい、あるいは六兆円少し出るところぐらいにいくのではないか、これはもう郵便局から全部の話ですが、そういうふうに考えておるわけであります。したがって、これが今後日本の経済がどれくらいの程度で回復していくかということにも非常に影響があるわけです。したがって、この影響を、回復の速度を見ながら調節して、極端に言いますと、非常に過熱状態が起こったということになれば、これは当然大蔵省と相談しなければならないと考えておるわけであります。御承知のように、金融というものはなかなか動くものでございますので、たとえば、いまお話のように、二兆円の消化力はあるのかないのかという御質問に対しては、間違いなくあるということはなかなか言えませんが、現在の見通しではどうにかいくのではないか、かように考えております。
  174. 春日一幸

    春日委員 こういうわが国金融政策の基本的な重大問題については、時間をかけてほんとうに親身に話し合うことが、わが国経済に対して、日銀並びに大蔵委員会がその職責を果たすゆえんであると思うのだが、しかし、すでに三時間も経過いたしておりまするから、その機会は別に譲るといたしまして、ただ、私が総裁にお願いをいたしたいことは、すなわち、わが国企業金融に依存し過ぎる、金融機関は日銀の信用に依存し過ぎておる。これはわれわれ大蔵委員会もすでにしばしば資本主義諸国の経済と金融の実態調査に参っておりまするが、これは世界に類例を見ないところの日本の特異な現象である。最もすみやかに解消しなければならぬ問題であると思うが、総裁の御意見はいかがでありますか。結論的に……。
  175. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 結論は、ただいまのお説のとおりであります。
  176. 春日一幸

    春日委員 だとすれば、それに向かってあなたは真剣に取り組まれる必要があると思う。  私の前の質問に対してしかじかの御答弁がありましたけれども、その中には、希望的な観測というものが多分にあなたの答弁を支配いたしておるように私は拝聴いたしました。われわれがここに野党の立場で客観的に論じたことは、みな結果的に、半年なり一年なりの時限を置いて具体的な現実となってここにあらわれてまいってきておるのでございます。かかるがゆえに、あなたが、まあそんな心配はないであろうと言われておるけれども、半年、一年後にはかならずそのような問題が、心配どころか、わが国経済にひずみが大いなる病患となってあらわれてまいっておることにかんがみまして、ほんとうに前論者諸君が唱えられたように、西ドイツの中央銀行総裁フォッケが、絶えず辞表を懐中にひそめて、そうして時の政府に応対をして、マルクの番人としての職責を果たしてきた。このようなことも、今日西ドイツの経済があのような健全な、均衡ある発展を遂げた大きな力のもとであったと思われる。いまや、あなたがその職責の座にあられるのでありますから、どうか、希望的な観測や、時の政府に対する顧慮というものはなくして、十分ひとつ日本銀行法第一条の本来的使命に徹せられることをお願いいたしたい。  それから、私はもう一つ、二つ結論的に伺っておきたいと思うのだが、金利機能の回復の問題です。これはいよいよ公債政策がわが国財政に大幅に導入されるというこの時点において、いまこそ金利の自由化という問題が最も痛感されておるところであると思うのでございます。すなわち、公債発行下においては、金利の機能がほんとうに十分働くような環境がつくられなければならないのである。すなわち、究極的には金利の自由化の問題になってくると思うのでありまするが、日本銀行は金利機能の自由化の問題について何らかの積極的の対策を講じようとする意思があるかどうか、何らかの方法をとられようといたしておるのであるか、この点をひとつお答え願いたい。
  177. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 金利の自由化につきましては、私は年来そうしなければならぬと信じておるわけであります。また、日本銀行に参りましてからも、自由化ということについて、たとえば公定歩合を改定するときに若干の自由化もはかってみたわけでございますが、日本におきましては、自由化ということは、もう少し教育しないとなかなかできないという面も実はあるのであります。しかし私は、信念としまして、自由化はぜひ進めなければいけない、かように考えておりまして、この間、従来はオペレーションの場合でもほとんど理論価格でやっていたものを、政保債について市場に乗せて、そうして自由化をやっていく、こういうことで一つ一つ自由化に向かって進みたい、かように考えております。自由化なしには大きな意味の歯どめはない、かように考えております。
  178. 春日一幸

    春日委員 全くセルフコントロールするものは金利の自由化、金利機能にまつということでございますから、これはそのような想念を抱かれておるということでは何にもならぬ。これは女学生のもの思いと何ら異ならないのであって、日本銀行総裁たる者は、心にかくあるべしと必要を痛感されたならば、政府に迫って、あなたみずからの機能を最高度に発揚されて、その実現をされる必要がある。必要だと思っておって、思うだけでは何にもならないのですから、ひとつ大いに御努力を願いたい。  それから、公社債市場の整備の問題について申し上げたいのでありますが、公社債市場は、申し上げるまでもなく、起債市場と流通市場、これが相助け合ってというよりも、私は、起債市場のファウンデーションになるものは流通市場だと思うのです。だから私は、その流通市場というものについて特に育成強化の措置が急速にはかられなければならぬと思うのです。  ここに東京、大阪両証券取引所では二月七日から公社債売買市場が再開された。特に東京証券業協会では三月二十四日から公社債店頭気配の発表をいたして、流通市場の育成が進められたという態勢はとられておるが、さて、その実績が何であるか調べてみますると、肝心の市場売買による実商いはわずかに全体の一割にしかすぎないのである。その大半のものは証券会社の値つけバイカイにしかすぎない。私は、かような低調な状態であっては、いわゆる公社債市場とか、そのようなものがわが国経済全体の資金の流れを円滑にするとか、ここでその金利機能がうまく働くようにそこに期待するとか言ったところで、何にも効果はあがってこないと思う。これは日銀としてはどう思われておりますか。いま実績はこんな状態である。もっとも、これはわずかな期間しか経過いたしておりませんので、時間的スペースというものを念頭に置いて判断をゆるやかにする必要はあるかもしれませんけれども、しかし、最も近い将来に何らかの打開策があればそれに期待しましょう。けれども、われわれが判断をし、見通しを立てるところでは、これを打開する有効適切なる具体的手段というものはいまのところ浮んできていないかのごとく思われる。このような状態が、すなわち、証券会社によるそのバイカイ取引というものが大勢を占めていくのではないかと思われる。このことは、日銀が中心になって、大蔵省と一緒になってすみやかに当初計画に基づいて公社債市場、わけて公社債流通市場の育成強化、ここへ向かって大いなる施策を講じなければならぬと思うが、この問題について総裁の御意見を伺いたい。
  179. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 この公債市場の育成ということは、ずいぶん長く言われておりまして、今日までできなかったのであります。しかし、ただいまお話のとおり、これはまだ発足して間もないものでございますので、無理にこれを日本銀行あるいは大蔵省が盛り立てていこうとしても、若干の時間をいただかなければ無理だろうと思います。しかし、方針は、やはり公社債というものの量もある程度ふえてこないといけないと思いまして、先般来、いままでのような社債発行についてももう少し自由にできるようにしようではないかというような相談もいたしておりますし、いままでのように非常に窮屈な規格をきめて、そうしてぎりぎりにやっているよりも、発行する側の条件等も、少しはそれぞれの特殊性も含むようにしていかなければいかぬというような点、あるいはまた、証券会社にもいままでのように株の売買だけに熱中しないで、公社債市場の育成といいますか、取り扱いに熱を入れろと言っておりますが、とにかく、現在公社債を持っている人というものは非常に少ないわけでございます。これをやはりふやしていくという点で、なじみをつくらないと、いかにわいわい言っても容易ではないと思っております。しかし、そうかといって、われわれはこれを成り行きにまかすということは決して考えておりませんので、今後各方面の意見を聞いて、そうして来年の国会でももう少しこういうふうにできてきたというような御報告ができるようにいたしたい、かように考えておるわけです。
  180. 春日一幸

    春日委員 そういう事柄もむろん実情の中にはあると思います。けれども、取引の形態が、市場売買が全体の一割であり、バイカイが全体の九割であるという、この実態をいまあなたが批判されたがごとく、かすに時をもってしろといって見のがしておけば、これはそのまま常態となって、これがずっと先に過ごされていくということである。そうして、発行する公債がことしは七千三百億円、来年は一兆円だという形になってくれば、よってもって金融市場がこのことからたいへんな混乱におちいるおそれなしとしない。よってもってわが国国民経済に与えるところの被害というものをいろいろとあれこれ判断すれば、もっとすみやかに公社債市場の整備、わけて流通市場の育成強化、これがはかられなければならぬ問題であるのでありますから、現状になずむことなく、困難ならば困難を乗り越えてやるところに指導者というものの特別の使命があると思う。よくお考えになって御善処を願いたいと思います。  次は、具体的な問題についてお伺いをいたしまするが、昭和四十年の八月十一日にイギリスのセール会社が破産をいたしました。このセール会社発行の信用状が不渡りになることによりまして、わが国輸出業者、為替銀行損害を受けておることは御承知のとおりであろうと思うのでございます。この外国為替手形は、日本銀行が外国為替資金貸し付け制度による適格信用状たるの取り扱いをいたしておったのでございまして、このことは、換言すれば、実態的に日銀がセール社の信用を保証していたと同様の効果をあらわしておったものと見るべきである。日本銀行は、当然その職能上から申しましても、セールの信用状態について常に注意を払って、そうしてこの間適切な対応策をとるべきであったと思う。大蔵省からの資料によりますると、このセール会社があぶなくなってきたというのは四十年初めころからで、このころから経営の悪化が進み、すでに三月ごろから手形の支払い遅延が一部発生しておった、こういうのでございます。日本銀行はむろんロンドン、ニューヨーク、このような主要地点には駐在員を置いて、その地区における関係機関の信用を十分調査されておることと思う。そのような調査の上に立って、セール会社の信用状なるものを、輸出為替資金貸し付け制度の適格信用状としての取り扱いをなすってまいったものである。いけなくなってから取り消されておりますから、取り消されるまではこれはよろしい。日銀のギャランティーがあったのである。日銀のギャランティーがあったから為替銀行はこれを割り、輸出業者は彼に向かって荷物を出しておったものである。こういうふうな状態になったということは、日本銀行が日本銀行法第一条に基づく当然の責務を果たしていない。少なくとも私は、その道義上の責任は非常に重いと思う。しこうして、この道義上の責任たるものは、法律上、経済上の責任につながるものと思う。一体、セール会社がそのような不安な状態におちいったということは、この資料によっても昨年の初頭からあらわれてきておった。手形の支払い遅延はすでに三月から現実の問題としてあらわれてきておった。それにもかかわらず、そこが発行したところの信用状を適格信用状として取り扱ってきたということは、ずぼらにもほどがあるじゃありませんか。そうして、問題が起きたときに知らぬ顔をしているということは、一体どういうことですか。日本国内におきまする中小輸出業者が、ペイメントハウス、LC発行バンクなどの信用状態について一々調べる道もなく、それは一括して、慣例的に外為銀行、日銀の処置に信頼して、もっぱらその指示に従っているのである。為替銀行が割るからLCを組み、荷物を出す、為替銀行は、日銀が適格信用状としての処置をとっておるから、したがって輸出業者に対してその為替を割り、相手と取り組んできておる。一にかかってこの責任の源泉は日銀当局にあるじゃございませんか。この間の経緯はどういうものであるのか、この機会に明らかにいたされたい。
  181. 宇佐美洵

    ○宇佐美参考人 このセール・カンパニイというのは、ただいまお話のように、非常な破綻を来たしたわけでありますが、日本銀行の立場を申し上げますと、日本銀行はすべての日本の商社の信用状態を常に調べるということはとうてい不可能なことでございます。したがって、制度上、輸出奨励の見地から資金は供給をいたしております。その輸出が現実にあるということに基づいて、銀行がそれを持ってきた場合に、資金は供給しますが、その手形がこれは間違いないものだということで買い取ってはおらないのであります。日本銀行は手形の買い取りはいたしておりません。こういう資金が要るから、輸出奨励のために、銀行はやりたいが、資金が足りないから資金のめんどうを見てくれという制度でございまして、その買い取りをしたのではないということをまず申し上げておきたいと思うのであります。  それからもう一つ、これは御承知でもございましょうが、この場合信用状がイギリスから来ております。その信用状のうちで確認されておるもの、これはそれを確認した日本の銀行が責任を負うのでありますが、確認をしていない、コンファームしていない信用状につきましては、これは国際金融のルールでございますが、発行者だけの責任、つまり、この場合で言うとイギリス側だけに責任があって、そのコンファームされていないLCというものは日本の銀行には責任がない、こういうことになっておる金融のやり方でございます。したがって、今度の場合も、私が聞いたところでは、その確認された信用状のものについては、全部市中銀行が、関係した銀行が責任をとって済ましておる。むろんこれは、逆にその銀行はイギリスに対して要求すべきものは引き続き要求しているようでございますが、一応国内的には責任を負っておる。それから、確認されていない信用状のものにつきましても、いろいろ事情によってこれを国内的に処理しているようでございます。しかし、外国為替という立場から言いますと、責任はイギリス側にあって日本の金融機関にはない、こういうふうになっているのでございます。したがって、われわれとしては責任はないけれども、しかし、ことに中小企業のような苦心して輸出しているものに対しては、できるだけの考慮はするように申しておりますけれども法律的にはやはり信用状自体が違うものだというところに尽きておると御理解をいただきたいと思うのであります。
  182. 春日一幸

    春日委員 時間がまいりましたから、こういう問題は、後ほど政府当局並びに関係為替銀行及び日本銀行ともどもしかるべき場所を設けて問題の疑義を究明し、その責任の所在を明らかにいたさなければならぬと存じますが、ただ、いま総裁がお答えになったことは事実に反します。と申しまするのは、むろん確認信用状というものはその信用状それ自体をもってしては信用度が十分ではないので、したがって、だれかが、第三者がそれをコンファームするのである。したがって連帯保証できる立場になるものでありますから、本人の支払い得ざる場合においては連帯保証人が代理弁済するのは当然事項である。したがって、確認信用状について、その輸出銀行に対して責任を追及しないことは、これは当然事項であって、何らの恩恵事項ではないのである。それから未確認信用状というものについては、ならば伺いますが、日本銀行は、四十年八月四日まではこのセール会社発行の信用状、これを外国為替資金制度の適用を受ける資格のある信用状としての取り扱いをなしてきたものである。しかるに、ことさらに八月の五日に至って同社が開設した信用状に基づく輸出手形に対しては外国為替資金制度の適用を八月の六日から廃止するという措置をとったという積極的理由は一体何であるのか。何も、次郎さんであろうと太郎さんであろうと、そんなものは関係ないんだ。みんな外国為替資金制度によって為替銀行に貸し付けておったものであって、したがって、為替銀行の持っておる信用状というものについては、何も日本銀行が関係はしないのである、何も意思表示はしないのである、要請に基づいて資金供与を応諾しておるとするならば、八月の五日にして今後この者はその適用から除外する、こういう通達を行なったという積極的理由は一体何であるのか、こういう問題が出ていくと思うのでございます。けれども、ただいま申し上げましたように約束の時間がまいりましたから、私は非常にきちょうめんな紳士でありますので、きょうはこれにてとどめまして、問題を投げかけておくことにしますが、この問題について、私は、日本銀行や為替銀行というようなものは、輸出中小生産業者に比べますならば、その経済力が大きいのである。しかも、制度として貸し倒れ準備金、このような事態に備えて救済措置も政策的にとられておることにかんがみまして、十分この問題は実情に即して解決がはかり得るよう、日本銀行総裁みずから乗り出して、道義、条理にかなった態度をもって解決をされることを強く要望いたしまして、第二の質問は後日に譲ります。
  183. 三池信

    ○三池委員長 これにて宇佐美日本銀行総裁に対する質疑は終了いたしました。  参考人には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  次会は、明後十五日午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時七分散会