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1966-03-24 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第26号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十四日(木曜日)    午前十時十二分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       大泉 寛三君    押谷 富三君       木村 剛輔君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    羽田武嗣郎君       福田 繁芳君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺美智雄君    有馬 輝武君       小林  進君    只松 祐治君       野口 忠夫君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         国税庁長官   泉 美之松君  委員外出席者         国税庁次長   中嶋 晴雄君         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 三月二十四日  委員渡辺栄一君辞任につき、その補欠として西  岡武夫君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 三月二十三日  昭和四十年度における公共企業体職員等共済組  合法に規定する共済組合が支給する年金の額の  改定に関する法律等の一部を改正する法律案(  内閣提出第一二三号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五〇号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第八五号)      ――――◇―――――
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  物品税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。只松祐治君。
  3. 只松祐治

    只松委員 租税特別措置法はたいへんな悪法だと私たちは思っております。しかし、これが一たん法律になりますと、法は国民を拘束するわけでございまして、これがいいとか悪いとかいう論議がなかなかできなくなるわけでございます。したがいまして、せっかく大臣がお見えになっておりますので、若干この租税特別措置法の本質について、ひとつお伺いをいたしたいと思うのであります。  その道のベテランでございますから、こういうことは幼稚園みたいな問答になるかと思いますが、租税原則に、応能、公平あるいは法定等々の幾つかの基本的な問題があるわけでございます。租税特別措置法はこういう租税体系の基本的なものを根本からくずしてしまっておる。しかも、これの唯一の言いわけでございます、たとえば、これはあくまでも暫定的で、産業その他諸般の情勢に対応するために、いわばやむを得ざる措置としてつくっておるのだ、こういう答弁が行なわれるわけですけれども、これがいまや完全に恒久化をいたしておりまして、単なる特別ではなく、一般化をしてきておる現状でございます。その租税特別措置の結果、いわゆる減免税された額も非常に膨大になってきておりますが、これは行政上ゆゆしい問題ではないか、こういうふうに思います。そこで、まず、その租税原則一つの柱である応能とは、能力に応じて、力に応じて課税をする、したがって、税金を納めていくということは、大臣は一体どういうふうにお考えになっておりますか、お聞きしておきたいと思います。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 応能ということは、租税負担能力に応ずる、こういうことでありまして、その応じ方は、これはその税の種類、その性質等によりましておのおの違ってくるわけでありますが、最も端的に応能主義というものを表現しておるのは、所得税累進課税方式であります。そういう所得の高に応ずるという考え方はいろいろな税にもあるわけでありますが、また、資産税におきましてもそうであります。相続税におきましても累進的な考え方を取り入れておる。さらに、その他の物品税というようなものにおきましても、高級奢侈品というようなものに重課することは多少そういうような色彩も入っておるわけでございます。税の問題を考える上におきまして、応能方式というものは忘れることのできない重要な原則である、こういうふうに考えております。
  5. 只松祐治

    只松委員 いまいみじくも、所得税については累進方式がとられて、応能の典型的なものがある、こうおっしゃった。この租税特別措置は、利子配当所得のように、個々人の問題、資産家資産を所持し得ない者、こういう問題もございますが、主としてこれは法人の問題に関係してくることが多いわけです。いまの利子配当所得あるいは株の配当所得も、純然たる個人の問題ではなくて、やはり法人とのいろいろな関係から考えられておるようであります。私は、こういう所得税ほどの累進はしなくとも、この法人にも、特に日本のように経済構造複雑多岐にわたっておる国家では、多少めんどうでも多段階方式をとるべきが、いまおっしゃった累進課税応能に適合する、こういうふうに思うわけでございます。何らかの形ですべきではないか。それはそれといたしまして、こういうふうに税制一般としては応能原則を打ち立てて、能力に応じて累進的になっておる。ところが、法人はそういうふうにあまりなっていない上に、さらに租税特別措置によりまして、これもほとんどが法人の中で大法人中心租税特別措置が適用されておる。法のたてまえからは、必ずしも中小企業は適用しない、こういうことにはなっておりませんし、中小企業でも適用すればでき得るものがあるわけです。中小企業方々はいろいろ手続の繁雑さ、あるいは法の解釈のむずかしさ、そういうものも兼ね合わされまして、よけいに租税特別措置というものは中小業者に適用されておりません。実際上用いられておりません。したがって、大法人が勢い租税特別措置を活用しておる、こういう結果を招来いたしております。したがって、一番新しいので昭和三十八年度しかいただいておりませんけれども、少し前の昭和三十六年度等を見ますと、いわゆる一億円、十億円の大きな会社よりも一千万円以下の小さい会社のほうが、実効税率としては実際上高い税金を納めておる、こういう結果を招来いたしております。三十八年度の分では多少偏向が是正はされてきつつございますけれども、それでもなおかつ大法人中小法人実効税率はほとんど変わりはない、こういう状態でございます。これは、いま大臣がおっしゃった応能原則から遠く離れるものだと思います。あとでお聞きしますが、法定主義とはいえ、あまりにも一方的な法律租税特別措置法によって調整した結果出てきた悪い面だ。これは端的に応能原則から遠く離れておる。こういうことをこう広範囲にやっていいものかどうか、税体系一つの問題だと私は思うのですが、恒久的に、しかも広範囲にこういう租税原則を乱してまでやるべきかどうか。これは昨年度の税調基本方針でも、こういうものは順次改むべきだ、こういうふうに勧告がなされておりますし、去年も新設されて、ことしもまた相当大幅に租税特別措置が新設をされようといたしております。これは昨年度の税調長期答申にももとるわけです。大臣は、こういう税の基本方向、あるいは税調方向を無視してまでもなぜ強行されようとするのか。応能というのは、そんなに重く考えないで、簡単に考えていい、こういうふうにお  考えでございますか。
  6. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 確かに、中小法人特別措置を利用するその度合いというものは、大規模の法人に比べて少ないようでございます。そういうようなことを考えて、中小法人につきましての特別税率というものが設定されていることは御承知のとおりでございます。それにいたしましても、こういう特別措置恒久化する、これはよろしくないことである、こういうふうに私は考えております。その使命が完了するかどうか、これを常に検討していかなきゃならない、そういうふうに考えますが、あくまでも租税は公平を原則とする、また、お話のように、応能方針、これも堅持していかなければならない。そういう面に例外を設けるところの特別措置につきましては、常時これを調査して、これが廃止に努力をしていく、こういう考え方でいきたいと思います。
  7. 只松祐治

    只松委員 この応能というのは、公平という租税一大原則ともうらはら、あるいは関連を持つものでございます。この租税の公平という面から見ましても、これまた租税特別措置法というのはたいへんな問題を提起しておるし、内包しておるわけです。この公平という問題についても大臣の御所見を承っておきたいと思います。
  8. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 公平ということは、応能に比べまして非常にとらえ方のむずかしい問題と思うのでありまするが、とにかく、納税者全体を一応ながめまして、これが例外なく一つ原則運営される、これも重大な公平の一面だ、こういうふうに考えております。
  9. 只松祐治

    只松委員 税制全般から見る場合、あるいは、いま私ちょっと引例しました法人税のみをとって見る場合、これはいろいろ公平という問題の論議が出てきます。過日もちょっとお話いたしましたように、給与所得者というのは、申告納税制度のもとにかかわらず賦課税方式に近いものがとられて、前納制度というものが行なわれておる。したがって、この前納に伴う全国納税者利息というものを見れば、個々人に対してはそれほど大したことはないかもしれませんけれども、これはたいへん膨大な額になる。これは、時間があれば、主税局のほうでも利息の計算をしていただきたいと私は要求しようと思っておるのですけれども、これは膨大なものだと思います。いわゆる給与所得はのがれることができませんから、完全に把握された上に、前納利子分まで払っておる、こういう結果を招来しておる。しかも、相当強度の累進課税、片一方、法人税中心とした租税特別措置法が適用されておる部面については、応能ということにおいてもたいへんな問題がある。この公平という部面は、いま言うように、法人の中においても、大法人租税特別措置法を適用されて実効税率が非常に下がってきております。さらに、こういうふうに所得税あるいはその他の税制と勘案して考えますとそのことは顕著に言えると思います。こういう税体系を組んでおりますと、そう言っては何ですけれども、いままで税金についての関心がわりかし薄かった、しかしこのごろは、大臣はそういうところにはおいでにならないでしょうが、労働組合大会でも、重税反対とかあるいは税の軽減ということが大会スローガンに出るようになってきております。これはここ二、三年来でございます。いわゆる一般国民も、それから新聞等でも産経、毎日等税金の特集をずっと行なっております。一般新聞もそうです。あるいは一般のそういう民主団体においても税金の問題が相当重く取り上げられておる。大会スローガンというのはそうたくさん並べないわけです。その中の一本にこの税金の問題が取り上げられるようになってきておる。ようやく取り上げられつつあるくらいですから、まだほんとう組合員なり一般大衆のものになっておりません。しかし、これが少なくとも三年あるいは五年経過してまいりますと、おのずから組合員のものに、国民のものになってまいります。そういうときに、こういう租税特別措置法が施行されておって、この実態が明らかになってきた場合に、私は、国民納税意欲というものをきわめて減殺する、納税というものに対して大きな問題を提起してくるだろうと思います。これは、私がきょうから予告しておきますけれども、必ず租税特別措置法というものが問題になると思います。租税特別措置法はそういういろいろな面を持っております。大臣が間もなく退席されますので多くをお聞きするわけにまいりませんけれども、そういう国民の下々と申しますか、一般の税に対する認識状態進展度合いと申しますか、認識の深まりぐあい、こういうものはよく御考慮を願って、いまの公平の問題を私は租税特別措置にひっかけてお聞きしたわけですけれども、お考えになっておらないとたいへんな問題になりはしないか、こういうふうに思うのです。したがって、公平の問題について、あるいはそれと関連いたします法定主義という問題についても、ただ、法律をつくって強行すればいい、こういうものではないと思います。法律にあるから法定主義で、それは合法的に取れるのだ、こういうものではないだろうと思う。そういうところを考えあわせて、ひとつ税務行政を行なっていただきたい。これについて御意見をいただければいただきたいし、御要望も申し上げておきたい。
  10. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 只松さんのお話は、原則的に全く同感でございます。そういうつもりで税務行政に当たっていきたい、かように存ずる次第でございます。
  11. 只松祐治

    只松委員 この前国税庁長官にお聞きしたものですから、あるいはわからないところがあるかもしれませんが、一つは、日本納税協会というものについてちょっとお聞きしたわけですが、その際にいろいろお答えになりましたが、これの指導監督は一体どこでおやりになっているのですか。国税庁総務課ですか。
  12. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 日本納税協会は、公益法人でございまして、大蔵省監督に属しておるわけでございます。実務は国税庁総務課でやっております。
  13. 只松祐治

    只松委員 前回いろんなことを言っておられて、納税相談が十二万件というお話があったのですが、あとで十万件というふうに御訂正がありましたけれども、私の仄聞するところでは、本部職員が七人ぐらいですから、地方十二カ所はほぼ想像がつくと思いますが、こういう方々で十万件なんというのはとても相談ができようはずがない。これは長官お答えになったから、あれですが、長官お答えもあなたたちは一蓮托生の責任があると思うのです。十万件も相談する能力がございますか。これには間違いございませんかどうか、お聞きしておきたい。
  14. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 この間長官納税相談をいたしました実績についてお答え申し上げたのだと思いますが、私もはっきり実は記憶しておりませんけれども、長官の御答弁も、はっきりした資料はないがということで御答弁になったと思います。私、いま大体の資料を持っておりますので、これで申し上げたいと思いますが、三十九年度につきましては、全体で二万五千七十三件の納税相談をいたしております。そのほかに説明会等来聴者が二万五千二百七十六人ということになっております。なお四十年度、これは四十年四月から四十一年一月末まででございますが、二万八千八百七十二件の納税相談でございまして、さらに説明会等来聴者が五万三百四十一人でございます。  はなはだこまかい数字でございますが、以上のとおりでございます。
  15. 只松祐治

    只松委員 長官というとえらくなりますから、こまかいことはわからないと思いますが、いまの説明数字前回長官答弁とはだいぶ数字が違います。  それから、七人や何かの職員で、しかも雑誌を発行したり、一般的な庶務その他もありますが、もちろんこの納税相談については税理士さんとか、そういうものもお使いになるだろうと思うのですが、それにしても、納税協会機構人員をもってしてはこういう相談はできない、こういうことが言われております。  そこで、できるならば、各局別相談人員、これは法人だ、給与所得だというふうに、納税協会だといって指導するくらいですから、お調べになっていると思いますので、ひとつそういうもののデータを資料として御提出願いたい。
  16. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 ただいま申し上げました数字は、実は事項別になっておりまして、たとえば、常設相談所がございまして、そこで相談をいたしましたもの、それから、一定時に巡回相談もいたしますが、その巡回相談をいたしましたもの、第三には小規模納税者納税指導、これは継続指導を含んでおりますが、そういうもののをいたしました実績、これを合わせまして、ただいま申し上げました三十九年度二万五千件、四十年度二万八千件というような数字に相なっております。これを、いまお話がございましたように、法人税所得税というふうに分けて統計がとれますかどうか、私、ちょっといまここではお受けいたしかねますので、調べまして、また御返事申し上げたいと思います。
  17. 只松祐治

    只松委員 納税指導をやっておられるところでそのくらいのものができないはずはない、そういう調査や何かをやろうというところですから。しかし、できないということがほんとうじゃないかと思うのです。というのは、七人くらいの本部事務機構全国の連絡や何かしておるといっているが、それでできる道理がないのです。だから、できないならできないでけっこうでございますけれども、こういうのに、ことしもまた四千万円の金を出す。ほかにも大蔵省国税庁関係で多少そういうものもございますけれども、一つ問題点として、この納税協会のあり方というものは、いろいろ問題があると私は聞いておるわけです。したがって、少なくとも国費ですから、国費を使ってこれだけのことをしようというのに、末端の機構が十分に国税庁大蔵省なりで把握されておらない、こう申しても過言ではない。把握されておらない実例を出せといえば、私は即座にここへ出してみせます。多少問題を提起いたしますよ。少なくとも、とにかくこういう国費を使ってやっておられるものに対しては、もう少し大蔵省なり国税庁責任を持って、どういうふうに国費が使われておるかということを監督し、指導すべきだと思うのです。ある意味では放任状態になって、適当に事が処されておるといっても過言ではないと思う。そういうことは絶対にない、こういうふうにおっしゃいますか。それともたいへんに粗漏があるようだ、こういうふうにおっしゃいますか。それだけ聞いておきたい。
  18. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 ただいまの日本税務協会事務運営、これは国費をもって事務を委託した分についての御質問であろうと思いますが、この事務運営につきまして、監督が十分でないではないかというようなおしかりをいただいたわけでございます。日本税務協会は、この前も長官から御答弁申し上げましたとおり、昭和十九年にできた組織でございまして、これに対して、税務相談納税指導あるいは記帳指導というような事務を委託しましたのは、まだ最近日が浅いことでございます。委託経費は、三十九年度が千六百万円程度、四十年度が三千万円程度、四十一年度、このたびお願いしております予算で、それにさらに一千万円ばかり増加したところで委託事務を行なわせております。実は、日本税務協会におきます税務相談は、常設相談所が十二カ所ございまして、そのほかに定時相談所が二十七カ所設けられておるわけでございます。先生のお話税務指導員は、これは本部お話かと思いますが、全国ではさらにもう少し多人数の人がこれに従事いたしております。なお、実際の納税相談税理士等に委託いたしましてその謝金を出しておる関係で、必ずしも、人が多いから十分の納税相談ができるというものでもなかろうというふうに考えるわけでございますが、なお、御指摘の点につきましては、十分注意いたしまして、監督を厳重にしてまいりたい、かように考えております。
  19. 只松祐治

    只松委員 次に、前回質問に関連いたしまして、贈与税の問題についてお伺いをしておきたいと思う。  前回夫婦で共かせぎをして家を建てたということを例に出しまして、少なくとも、その場合の贈与税ぐらいは考慮すべきではないか、こういうお話をしたわけです。そのときにやはり長官から、長年共かせぎをしてきたという実証を示すということと、建てた家を夫婦共有名義にすればいいではないか、こういう説明があったわけです。それならば贈与税を払わなくて済むという御説明があった。ちょうどその話をしてからすぐ、今度はこういう話があった。おやじさんと息子さんたちが住んでおる。その中の長男が一生懸命に働いて、大きくなったし、家が狭いので建て増しをしようということで建て増しをした。それで、建て増しの分について、息子さんの名義届けをした。ところが、今度は登記所が、日本家屋建て増しの分に別登記することはできないと拒否した。おやじさんの名義にしろ、こういうことを言われて、おやじさんの名義届けを出したところが、四十万円からの贈与税がきた、こういう例がございます。登記所国税庁管轄下ではございませんけれども、これは国の機関として税金の問題とすれば一体の問題だと思うのです。私は前回のときも、貯金は別々にしておっても、共有名義にするとか、あるいは長年にわたってこうやって贈与してきたのだ、そういう芸当は一般国民はなかなか知恵がないし、まためんどうくさくてできないのです。したがって、こういう共かせぎしたことが明瞭なやつは免税したらどうです、こういうことを言ったわけです。趣旨については賛成だというような御答弁がありました。いま私が引例しておるのもよくある例なんです。いなか息子さんが働きに出る、現金を貯金していって、嫁を呼んだから建て増すとかなんとか、この場合、この人はよほど税務知恵があったと見えて、建て増しの分だけ自分の名義にした。どっこい登記所のほうがそれは相ならぬ。いやいやながら、しかたなしにおやじさんの名義にしたということで、いま税金がかかってきております。こういう問題については、皆さん方どうお考えになりますか。これもたくさんある例です。
  20. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 お尋ねの贈与税の問題、これは親子、夫婦間のいろいろな資産運用形態あるいは所得の動きその他というように、非常にまちまちでございまして、いろいろな場合があると思います。お話のように、それが家を建て増して、主人あるいは奥さんのほうだけの名義登記いたしますと、そこに贈与税の問題が起こることは御指摘のとおりでございまして、その際、取り扱いといたしましては、軽率に、あるいは税法を知らないために、たとえばおやじさん名義にしたとかあるいは奥さん名義にしたとかいうことで贈与税がかかってくるというような場合には、軽率な行為に基づく登記ということで、これは取り消して、共同登記にしていただく道を開いておるわけでございまして、そういう救済方法はあるわけでございますけれども、やはりお話のようないろいろな問題が現実には起こっております。納税相談でも、贈与税という問題はお話のような点が非常に多いわけでございます。登記所における増築の場合の登記名義人の問題でございますが、これは多分に事実認定の問題が入っておるのではないかと思います。増築というようなお話がございましたが、どの程度建て増しでございますか、たとえば、離れをつくるというようなことでございますと、おもやの登記とは別に、別の登記が可能ではないかと私は思いますけれども、若干価値を付加したという程度でございますと、従来の名義人登記でなければいけないというようなことを登記所で、あるいは話したのかもしれません。その辺は、私は実はよく存じませんので、想像お話して恐縮でございますが、そういうことではないかと考えております。
  21. 只松祐治

    只松委員 いまちょっと税額を言いましたが、四十万円の贈与税ですから、換算すると約百四十万円くらいの家を建てた。いなかで百四十万円ですと、まあまあの家が建っておるわけです。したがって、ちょっと建て増したというのとは違うのです。こういう問題も、国税庁のほうとしては、そういういわばものわかりのいい話があっても、今度それが法務局関係にいきますとできない、こういうのです。したがって、きょうも実は法務省の人に来てもらって私は聞こうと思ったのだけれども、そこまで詰めなくてもと思ってきたのですが、したがって、そういう問題も皆さんのほうとしては、国税庁だけではなくて、実際上こういう問題がたくさんある。場所を言ってみると、秩父で起こって、私が聞いてきた問題でございますけれども、そういう問題があって、国民というのはこういう問題のために年じゅう悩まされておる。こういうことで、本人は初め共有の登記をしようとしたけれどもできなくて、――ほんとうにむすこさんが働いてためたんだそうです。その人から私は聞いた。それでおやじ名義にした。いわゆるむすこがおやじに贈与した、こういう形で、むすこが税金を四十万円取られる、こういう形です。おやじからむすこならいいけれども、むすこが働いて共有の建て増しをした、そのむすこに四十万円の税金がかかってきた、こういう事例でございます。こういうことがたくさんあるわけでございますから、私はこの前も贈与の一例、夫婦共かせぎの例を引いて、こういうことぐらい免税にしたらどうだということをお話したけれども、皆さん方のほうでも、末端のこういう行政についてぜひ御配慮をいただきたい。特に、いまの件に関しまして法務省のほうともひとつお打ち合わせをしていただきたいと思います。
  22. 中嶋晴雄

    中嶋説明員 事実関係等につきまして、法務局について調査をしたいと思います。
  23. 只松祐治

    只松委員 それでは、租税特別措置法に話を戻しまして、引き続いて御質問をいたしたいと思います。  本年度の租税特別措置に基づく国、地方、――地方の場合は国の租税特別措置の影響をこうむるものと、県、市町村独自のものがあると思いますが、その総額は幾らになりますか。お教えをいただきたいと思います。
  24. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 現在、地方税において独自の非課税措置がございまして、これによる減収額が、四十一年度におきましては約七百五十六億円と見込まれております。国税の特別措置によりまして、はね返り減税と言われておりますものがまた第二次地方税に出てまいりますが、これが六百三十九億円、こういうふうに見積もられております。合計いたしますと千三百九十五億円、こういうふうに見積もられます。
  25. 只松祐治

    只松委員 そういたしますと、国の租税特別措置と地方も合わせますと三千六百億円をこす膨大なものになります。これは国、地方、それぞれの項目別による本年度の租税特別措置の税額の資料をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  26. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 この資料は自治省所管のものでございますが、自治省と御提出できるかどうか相談いたしまして、できる限り御提出申したいと思います。
  27. 只松祐治

    只松委員 国のやっと、それから自治省所管ですけれども、あなたのほうで税務行政上把握してあるわけですから、把握してある分についての資料でけっこうでございます。だから、自治省が出す出さないは別として、当然大蔵省として地方財政も関与しておるわけですから、自治省が出す出さないで出すということじゃないと思います。大蔵省が把握されておる分でけっこうでございますが、お願いしたいと思います。
  28. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 できるだけ御期待に沿うようにしたいと思います。
  29. 只松祐治

    只松委員 それから、ついでに、本年度までの租税特別措置によって減免税された総額、これはやはり国、地方合わせて、その分も資料をいただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  30. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 おっしゃる資料は、おそらく二十五年度以降の各年度の減収額を累計したもので足りると思うのでございますが、そういう資料ならば、私は累計いたしまして御提出申し上げたいと思います。
  31. 只松祐治

    只松委員 いまはわかりますか。いまわかっている分だけでもちょっと……。
  32. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 概数でいま申し上げましたように、二十五年度以降の特別措置を集計いたしまして、二十五年度以降の毎年度毎年度これだけの特別措置による減収額が見込まれるといったようなものを集計いたしましたものが私どもございますが、それが一兆六千六百九十一億円でございます。
  33. 只松祐治

    只松委員 それは国だけですね。
  34. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 国だけでございます。
  35. 只松祐治

    只松委員 地方を……。
  36. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 地方の分までまだ集計いたしておりませんので、地方の分を出すのはなかなか容易でないと思いますが、できる限り計算してみたいと思います。
  37. 只松祐治

    只松委員 これだけ膨大な特別措置が今日まで行なわれてきたわけでございますけれども、この特別措置が適用されて、私たちはすべて効用がない、こういうことは申しておりませんけれども、それはそれなりに効用があっても、さっき申し上げました租税の公平というような原則とももとってくる、あるいは、そういうことをするならもっとほかに、いまの不況下においては所得税の大幅減税をはかったほうがもっと経済再建になる、これはいろいろ考え方は違いましょうけれども、申し上げておるわけです。皆さん方はそうでなくて、こういう形のほうがとにかく効果がある、こういう形でこういう租税特別措置を進めてこられた。租税特別措置が適用されて今日まで最も顕著に効果をあげたと思われる例をひとつ示して、御説明いただきたい。
  38. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 この点につきましては、しばしばお話し申し上げておるのでございますが、経済現象は総合的にすべての要素が同時にあらわれます。したがいまして、特別措置だけによってこういった効果があったということを抜き出すのはなかなかむずかしい、こういうことを申し上げたのでございます。税制調査会におきましても、貯蓄と租税特別措置との関係を立証的に分析されまして、その結果判断されるのは、多少可処分所得の貯蓄の増加のほうが多いように見受けられる、こんなような答申がございましたが、貯蓄奨励の特別措置のみならず、企業に対する減税、特別償却あるいは新規重要物産のような減税にいたしましても、そういった形であらわれてくると思います。もちろん、たとえばナイロンに対しますところの重要物産免税による金額が非常に大きかった、そのものがその会社の内部留保となって残っていった、こういった効果ならば、私は出すことができると思います。さらにまた、特別償却が毎年毎年どのような利益の減殺要素として役立ち、その結果法人税がこういったというような計算はできますが、おそらく只松委員のおっしゃることは、それによって国民経済がどういうように発展していったかというむずかしい御質問だろうと思うのであります。そこまでになりますと、現在の経済分析は、個々の政策的な要因を個別に取り出しまして、独立に評価するということはなかなかむずかしい、こういった意味で私はむずかしいということで、いつも御理解を願っているつもりでございます。
  39. 只松祐治

    只松委員 先回りしてうまく先の答弁までされたのですが、私たちは、今度は逆に――皆さん方は、租税特別措置だけを見て顕著な効果をあげたと指摘するのはなかなか容易ではない、全体で見てくれ、こういうお話、まあ、経済というのはそういう面が非常に多いわけですから、そういうことも答弁できると思うのです。しかし、やはり、いままでの租税特別措置にいたしましても、あるいは本年度新設する租税特別措置にいたしましても、項目としては個々に設置されておるわけです。したがって、これもあれもあれもこれもやる、私たちからいうならば、全く大企業には至れり尽くせりの租税特別措置だ。本年度なんか見ると、全くこういうことなら、中小企業者なり俸給生活者にもしていただいたならば、何ぼサラリーマンも生活が楽になるだろうし、中小企業者も救われるだろうかと、こう思わざるを得ない。いろいろなものがまた出てきております。さっき大臣にお尋ねいたしまして、御趣旨は全く只松委員に賛成だと、こういうお話がございました。いわゆる応能、公平、法定主義という、こういう課税原則の私の考え方には主として賛成しながら、実際上は、新しくできておる租税特別措置のどれを見ましても、これは全く大会社本位のものが非常に多いわけです。本年度出ております企業の体質改善の促進に対するものということだけを見て、それじゃ、どこの会社がどういうふうにこの新設の措置を適用していって、どういうふうに効果があらわれてくるんだ、こういうことを本来ならば、もっと時間をかけて論議して、じゃ、明年度その会社というものに例をとりまして、八幡製鉄なりどこなりとっておいて、それじゃ、この会社がどれだけよくなったか、悪くなったか、ほんとうはこういう論議を時間があればして、そうして、これはいやあまり効果はなかった、それじゃ来年は廃止しなさい、再来年は廃止しなさい、こういう形のものが本来ならば当委員会においても論議をしてしかるべきところだと思うのです。時間がございませんので、こういう大ざっぱな論議で、どういう効果がありましたかというようなことを論議しておるわけでございますけれども、私たちが見て、こう至れり尽くせりのものをしなくても、逆にいうならば、あなたたちが進めておるのはいま資本主義経済でございますから、資本主義経済の原則というものは、自由競争にあることは申すまでもないわけです。こういう資本主義経済を指向しているものとして、金融その他から始まって、まして税制に至るまでこんなに至れり尽くせりのことをする必要は私はないだろうと思う。計画経済なり、あるいはニューライトと称されている方は、多少計画経済を考えておられるかもしれませんが、しかし、資本主義の原則というものはこういうものじゃない。もっと自由に競争さしてしかるべきでございます。ところが、こうやって至れり尽くせりの保護を強い者にしてやる。ところが、弱い者、中小企業、零細企業あるいは個々の力しか持たないサラリーマンというものに対しては、こういう保護規定というものはきわめて少ない、こういうことだと思うのです。顕著にこうこうこういうふうに例があらわれてきたというならば、租税特別措置でもそれなりの意義があると思うのですけれども、そういうものがあまりなくて、しかも、こうやってだんだん広範囲に租税特別措置を広げていくということは、私は労働組合における税に対する意識ということを例にして話しましたけれども、そうじゃなくても、租税体系を大いに乱すものだと思う。これだけまた本年もたくさんありますね。皆さんどうして適用されようとしておるのか、私は理解に苦しむわけです。皆さん方が指向されておる資本主義経済というものの立場を踏まえるならば、これだけ手厚い保護を加えなくても、もっとほかに保護を加えるべき面が出てくるのじゃないか。皆さん方は企業だけを中心考えておられるけれども、どうです、そこらは、これだけしなければならぬとお思いですか。
  40. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 只松委員の御指摘は、特別措置について、特に大企業と申しますか、企業に利益のあるような特別措置をなぜこういうふうに追加していくか、こういうお尋ねだと思います。この点につきましては、昨日も私が考えておりますところをちょっとお話し申し上げたつもりでございますが、まず、そもそも今回の三千六百億円の減税のうちに企業減税を加えるか加えないかということから始まるかと思います。そこで、現在の経済事情から見て、多彩な有効需要の拡大のためには、所得税物品税の減税をやるほか、なお企業の体質についても、特に中小企業の体質について強化する必要があり、その方法といたしまして、税のみならず種々の方法がございましょうが、現在の資本主義体制のもとにおきましては、政府の干渉度の少ない、さらにまた誘因として引っぱり得るものとしては、税制による措置のほうが適当ではないか、こんなような考え方から企業減税が行なわれることになったわけでございます。  そこで、企業減税を行なうとすればどういう方法があるかということが、私は第二のお答えすべき点だと思うのでございます。そこで、企業の減税を行なうとすれば、もう少し只松委員のおっしゃったような方向で、いわゆる公平、応能主義の原理のもとでやれるではないか、こういうような考え方が出るかもしれませんが、現在の法人税の構造から見まして、はたしてそれがいき得るかどうか、単純な税率の引き下げでは、むしろ所得税とのバランスがきわめて悪くなると思うのでございます。所得税の税率は三百万円まで刻みは緩和されておりますが、あれは税率の引き下げではないと思っております。税率の引き下げというのは、七〇%が六〇%になり、二〇%が一五%になるというのが引き下げだと思います。そんなような意味からいいまして、単純なる税率の引き下げは、法人税だけやりますと、私は、所得税とのバランスから見て適当ではない、しかし一方、先ほど申し上げましたように、企業の体質改善をしなければならぬという要請も、これもまた無視できない要請でございます。そんなようなことを加味しますと、法人税のあり方につきましては、只松委員いつも御指摘のように、二百十四万円まで配当所得は非課税じゃないか、あるいはまた、法人税について現在の税率がいいかどうか、このあたりはまだまだ法人税のあり方といたしまして検討しなければならぬと思うのでございます。法人税昭和二十五年以来、シャウプ勧告によりまして、個人株主の所得税の前払いというような観念をしてまいりましたが、はたしてこれが実際に生きているかどうか、世の中の人がこれに従って法人税を理解しているかどうかというと、多分に私はまだ疑問もあるかと思います。そんなような観点から見ますと、企業の体質改善をよくするとするならば、税率の引き下げ、ことに恒久的な税率の引き下げとなるようなことは避けて、むしろ端的に企業の体質の改善に向かうようなもののほうが適切ではないか、それも、期限を切って、一定期限がくるならばやめられるようなものが、また将来の財源として適当なものとして考えられはしないか、こんなような考え方から、端的な企業の体質改善を考え、それも昨年以来の中小企業の倒産の事情等を考えまして、中小企業のほうに重点を置いて特別措置を講じていった。御存じのように、貸し倒れ引き当て金は中小法人だけは二割増しで積み立てることにいたしております。これは負担公平の原則からいいますれば、同じ経済状態にあるものが同じ負担ということから見ますれば、私は、おかしいという批判が出るかと思います。しかし、中小法人の置かれた事態、ことに、経済状態の判断というのは、単に上つらの所得だけではない、将来の稼得力、さらにまた将来への危険の包蔵、これらを判断いたしまして、所得について目に見えないところの支配担税力を見出すということも、同じ公平の一つの要素だろうと私は思います。そんな意味で、公平というふうなものを機械的に判断するのではなくて、中小法人の場合には、担税力の見地から、貸し倒れ引き当て金の繰り入れ率を多くしてもいいではないか、こんなような考え方をとったのでございます。さらにまた、こういった誘因措置を講ずることによりまして、私は、全体的な経済の発展につながると思うのでございますが、こういった端的な誘因措置のほうが効果があるような場合が多い。外国でも経済成長競争をし遂げる意味におきまして、税制におきましても誘因措置がふえつつあります。ただ、外国では、勇敢に行ない、勇敢にやめるという習慣がございまして、わが国とは少し違っておるところでございますが、そんなようなことを考えまして、今回の特別措置の新設を行ない、さらにまた一方、御指摘のような、只松委員のお持ちの資料に見られておりますところの新規重要物産免税が大企業に一番片寄っておるのでございますが、このようなものはひとつやめていこう、といったこともひとつ加味してやっていることをぜひ御理解願いたい、かように思う次第でございます。
  41. 只松祐治

    只松委員 理論があるから法案を出しておる、立場があるからこういう施策をしょう、こういうことは明らかですから、話はお聞きしておきますけれども、実際上どれだけの効果があったかということもなかなかつまびらかではないし、たとえば、租税特別措置を適用いたしましても、なおかつ欠損をしておる会社があるわけですね。昨年のやつは数字があればお示しいただきたいけれども、私は持ちませんが、三十八年度のやつを見ても、十億円以上のもので、利益法人が百四十三社、欠損法人が九社というふうに出ております。昨年、本年はもっとこれが多くなってきておると思うわけでございますけれども、これだけの手厚い保護をしてもなおかつ欠損をしておるということは、私は単なる税法上の問題ではないと思う。私は、税法上ひとつも見る必要はない、こういう極論まで申しませんけれども、特に自民党の天下である資本主義社会ですから、それなりにされてけっこうでございますけれども、しかも、一年ならいいけれども、二年、三年の長きにわたってこうやって欠損を続けておるということは、これはもう税法上の問題ではないんですね。したがって、皆さん方、通産省とは違いますから、通産省ならほかの施策をする、皆さん方税法上の面から施策をするということで、税金中心にお考えになっておるかもしれませんが、こういう問題は単に税法上の問題だけではなくて、日本経済全般の問題あるいは企業経営者の問題、こういうものすべてが重なり合っているわけですから、そういう経済の再建あるいは経済の興隆という面から見ても、この租税特別措置だけに重きを置いた、こういう手厚い保護をした企業擁護というものは邪道ではないか。この体系もたいへん複雑でございますから、説明がなかなかできないので、回りくどいことを言っておるわけですが、結論的にはそういうことを言っておるわけです。しかも、こういうふうに大企業に手厚い保護をするならば、ほかにたくさんあるではないか。私がさっきちょっと言いました贈与税の問題一つとりましても、そういうふうに一生懸命働いて、すでに源泉所得を取られて貯蓄をしてきたというような者でさえも、また贈与ということで取られてくる。こういう問題がたくさんある。そういう問題は、租税特別措置を講じなくても、皆さん方行政指導でできる問題がたくさんある。しかも、こういうことの善政を行なっても、それから出てくる税収の不足あるいは税収が減るということは、わずかな額なんです。だから、こういうものはあまり指導しないで、しかも、なおかつ租税特別措置というものを強くおやりになるということはやめてもらいたい、私はこういうことを言っておるわけです。  こういう論争を幾らしましても、皆さん方皆さん方の立場でおっしゃいますから、なかなか結論が出る問題ではございませんのでこのくらいにしますけれども、一番最初申しました税制の基本原則というものを踏まえられるならば、ひとつぜひそういう点を顧慮して、新設されるならばそれだけのものを――諸外国の例を見ましても、日本みたいにこんなにたくさんないわけですから、やめるべきものは大胆にやめて、そして、いまの不況期なら不況期に対して、皆さん方考えているように企業を救っていこうとするならば、多少の抵抗はあっても、やめるべきものはやめる、新設するものは新設する。一番最初申しましたように、いままでのものを恒久化して、既得権化して、租税特別措置はだんだん広がっていって一般税法化していく、それなら一般税法の中に入れてしまったらいい。租税特別措置一般税法に入れてごらんなさい。当然、ほかのところもこうしょうといって問題が出てくる。ところが、一般税法には入れられない、租税特別措置として置いておいて、うまいことをやって、また新規にやっていく、これは私は行政機構の専横だと思う。だから、もう少しそういう点は、ある意味ではフランクに考えて、良心的に考えてやっていただきたいと思います。  次に、この租税特別措置法を適用しておる会社、適用しない会社に分けて、ひとつ欠損会社数を、特に倒産があれば倒産会社数を、いまわかればお教えをいただきたいと思います。わからなければ、資料をいただきたいと思います。これは前にもいただいたが、新しいのがございませんので、できますか。
  42. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 できる限り御要求の資料を整えたいと思いますが、あとで、どのような御要求か、詳細にお聞きいたしまして、できる範囲の資料提出したいと思います。
  43. 只松祐治

    只松委員 それからついでに、この前要求して、ないということでございましたけれども、一千万円以上の倒産した会社は、不渡り手形の関係から公表されておりますけれども、一千万円以下の場合の倒産会社というのは出てきてないわけです。これは税務署以外にはないと思うのですが、税務署でもなかなか容易でないというこの前のお話でしたけれども、しかし、これだけきびしく徴税をされておる中で、会社が倒産したかどうかということはわかると思う。ほんとうに解散した場合には解散手続をいたしますから、法務局で調べてもできるかと思うのですけれども、ひとつ、一千万円以下の会社の倒産数を、もちろん昨年度は出ないでしょうから、一昨年度と、あるいは昨年度の月別等が出ておったら、できるだけ新しいものをいただきたいと思います。
  44. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 倒産会社の資本金階級別の実態という御要求だと思います。この問題につきましては、予算委員会におきましても種々論議がございまして、倒産について政府が責任ある調査をしていないではないか、東京商工興信所あるいは銀行協会の不渡り手形等から判断しまして、倒産件数を出しておること自体問題ではないか、こんなような御意見がございました。現在のところ、率直に申し上げまして、なかなかその実態がつかまれてないような実情でございます。税務におきましても、確かに、法人数は登記所に行って調べ、申告等によりまして比較的つかんでいるほうでございますが、なかなかこの実態がむずかしいのでございます。休業中の会社、年の中途で解散した会社を含めまして七十一万四千七十二というのが、三十九年度の私どもの税務関係に出てまいります法人数でございますが、休業中の会社及び年の中途で解散した会社を除外してみますと、六十五万六千八百六十五といった数字が出ております。したがいまして、税務署におきましても、資本金階級別にどの程度のものが倒産し、あるいはどういったものがなくなったか、なかなかつかめないのが実態でございます。税務統計から法人企業の実態を見ましても、資本金階級別にもなかなかそういうような実態をつかんでいない状況でございますので、できる限り努力してまいりますが、いま申し上げました倒産のより突っ込んだ資料はなかなかむずかしいかと思います。あとでまた御意見を承って、できる限り御希望に沿うような資料をつくりたい、かように思います。
  45. 只松祐治

    只松委員 倒産というものは、特に零細同族会社あたりにいくと、なかなかむずかしい点もあるかと思いますが、いまおっしゃった解散したものあるいは休業したもの、そういうものは、国税庁で毎月統計が出て、大体お調べになっておるわけでございますから、相当確度の高いものが出てくると思います。国税庁でさえそれがもしないとすれば、そんなでたらめに法人会社に対して課税しておるのか。法人の利益があるかないか、それは大体わかっておる。しかし、これが倒れているか倒れてないか、そういうこともはっきりわからない、あるいは休業しているか休業してないかわからない、全国会社がそんなことで、どうやって完全な徴税ができるのだろうか、こういうことが言えると思います。だから、私はきょうはそこまで責任を追及しようとは思いません。そういうことで資料を要求しているわけではございませんけれども、解散したものは法務局でわかると思いますけれども、そういうことで確度の高いものは皆さん方のほうであると思うのです。なかなか発表しにくいだろうと思うのですけれども、この際これだけの租税特別措置を行なおうとおっしゃる皆さん方ですから、会社のそういう実態くらいは、引きかえとは申しませんけれども教えて、そのためにこうやってわれわれは租税特別措置はやるんだというくらいの立場をとっていただきたい。そういう意味から、ぜひ今回は出していただきたい。
  46. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 繰り返すようでございますが、非常にむずかしい御要求の資料でございますが、できる限り努力して、御希望の線に沿うようにしたい、かように思います。
  47. 只松祐治

    只松委員 時間がございませんので、物品税の問題を一言だけ聞いておきます。  物品税はだいぶ引き下げになりましたけれども、私たちは前から言っておるのは、マッチであるとかなんとか、もっと生活に密着したもので引き下げられるものがあるのではないか、こういう点はどういうふうに配慮されたか。それからいま一つは、直接物品税ということでございませんが、酒税あるいは専売益金、こういうものは、大衆課税としてはきわめて密接な関係を持っておるわけでございます。これはいつも言うように、三十万円の所得者も一億円の所得者も結局同じ税率を払うわけです。累進応能という原則からは遠く離れておる。こういう点についても、大幅な物品税の改正をやる場合には手を触れて、何らかのそういう方向を出すとか、そういうことをすべきだと思います。これだけの大幅な物品税の減税なりいろいろのことがなされておるのに、全然そういう方向が出ないのはいささか手落ちだと思うのです。そういう点についてどういうお考えですか。
  48. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 まず第一の、マッチのような大衆必需品的なものに対して物品税は大いに廃止あるいは軽減すべきではないか、それが今回の物品税にどういうふうにあらわれたか、こういう御質問でございます。私どもも、できる限り大衆課税は避けていきたい、さらにまた、生活水準の向上に応じまして、過去におきましては若干高級のものでありましても、だんだん日常生活の中に取り入れられたようなものにつきましては、物品税等の間接税を軽減していくべきだと、かように考えております。そんなような配慮が、今回の化粧品につきまして免税点を設けたということに、一例でございますけれども、あらわれておるわけでございまして、こういった考え方は今回の物品税の減税に貫かれておる、かように考えております。ただ、マッチについて何らの改善が行なわれなかったではないか、こういう御質問が次に出ようかと思います。確かに、マッチにつきましていろいろな方面からいろいろな意見がございますし、過去におきましては、私も物品税を、二課長、その前は事務官でございましたが、古くやってまいりまして、マッチについての論議が非常に多かったことを記憶しております。私どもは、マッチについて課税の論拠をこんなように考えたらどうであろうかというふうに思っておるわけでございます。もちろん発火剤としてのマッチということも一番大きな機能でございます。それが日常生活に結びついておることも事実でございます。しかし、同時に、過去におきましては、たばこをのむためのマッチということも、たばこに対して消費税がかかっておるということの一環としての考え方がマッチについては一つございました時代がございます。外国なんかの課税の事例は、おそらく多分にそういうことと関連しておるものと思います。現在はライターが普及してまいりましたので、そういう考え方は少なくてしかるべきだという考え方が正しいかと思います。現在考えられておりますのは、これもまたへ理屈ではないかということになりましょうが、広告マッチが、日本の過当競争と申しますか、販売競争と申しますか、こういった営業面におきますところの競争を反映いたしまして、無料で交付されるマッチというものがマッチの生産高の半分以上を占めておるというのが実績でございます。それが、先般有馬委員お話しのあったように、マッチに対する物品税はやめて、堂々と広告税を起こしたらいいではないかという反論が出るかもしれません。しかし、物品税物品税としての体系もあり、またそのよさもございます。そんなような関係から、現在のところ、千本一円という、過去に比べますと低い税率になっておりますが、現在のところ、マッチに対して減税は行なわなくてもいいではないか、こういう考え方のもとに行なわなかったのでございます。  それから第二の、税体系に関連する非常に広範な御質問でございます。酒、たばこ等の大衆嗜好品に対する消費税を、こうした物品税の減税と歩調を合わせて引き下げたらどうかというような御質問でございます。確かに、酒の中あるいはたばこの中には大衆の生活にきわめて密着しておるものがあることは、私も只松委員の御指摘のとおりだと思います。ただ、今回これを見送りましたのは、何と申しましても、物品税課税範囲がきわめて広範でございます。第二には、またこれの減税というものが有効需要の拡大となりまして、他の間接税よりも経済にいい影響を来たすのではないか、こういったねらいが物品税についてはあるのでございます。第三には、同時にまた国内基盤を拡大することが輸出の振興という面にも貢献する、こういったところが物品税のねらいであり、第四には、中小企業の負担を緩和をするというものも、物品税の今回の減税の大きなねらいでございます。こういった数点の物品税の減税の効果というものは、比較的と言ったほうがいいかと思いますが、酒やたばこのうちの大衆嗜好品に対する消費税の引き下げでは庶幾できない効果だろう、かように考えております。そんなような意味で、酒、たばこ等の消費税の引き下げは今回見送られたのでございます。これは、今後ひとつ税体系のあり方といたしまして根本的に検討したい。消費税はいかにあるべきか、消費と設備に対する課税はいかにあるべきか、このようなむずかしい問題もございます。それから、御指摘の奢侈品に対する課税はどういうふうな方向をもっていくならば可能であるかという点も今後検討してまいりたい、こんなふうに考えております。
  49. 只松祐治

    只松委員 いまお答えにはなりましたが、前から、たとえば酒、たばこはやめたらどうだというような意見をいろいろ社会党からも出しておる中で、常に検討いたしますとか、そのような努力いたしますというお答えが、前任者等からあっておるわけなのです。ところが、そのときそのときの委員会答弁はそうですが、一向に下がる気配もなければ、そういう考慮のあともない、こういうことだと思う。だから、やはりこれはできないならできない、こういうものからとるべきだというふうに、明確に方針を出したほうがいいだろうと思う。それとも、少なくとも委員会答弁して、そういうふうに努力するとか、善処するとか言ったならは――一ぺんだけちょろりと、この前泉さんお見えにならなかったけれども、去年で四万件ぐらいの査察を十万件とこう言って、言い違いぐらい、これはかまいませんけれども、いつもそういうふうに努力いたしますと口約する。口約といったって、これは国会で約束するわけなのですから、そうすると、やはり何らか検討するなり、努力の方向を差し示すべきだと思うのですよ。ぼくは、ほかのことも言うておって、委員会だけその場のがれと申しませんけれども、答弁でごまかしているのでなくて、検討していくなら検討していくという形でそういう努力をしていく。税金の問題を見ておっても、予算と関係してくるから、どたんばになるとなかなか最終的な結論が出ないということになるでしょうが、本国会が終わったら、来年度の経済動向なりあるいはいろいろな経済の指向方向というのはわかる、予算のきめ方というのはおよそ勘案しながら、来年度はどういう減税の方針を貫こうか、どういう増税の方向をやろうか、こういうことをきむべきだろうと思う。こまかい数字は予算編成期でいいけれども、全体として予算編成期にだだっと――物品税の場合も、衝に当たられた方々はたいへん御苦労であったと思うけれども、さあ、わずかな時間にやったもんだからというようなことであって、そう言われれば、これは何をか言わんやということになってしまうわけです。わずかな期間に、正月も休まないでがたがたとやってしまうというかっこうになっておる。やられた人はたいへんお気の毒だと思いますけれども、政治のあり方からするならば、本国会が六月で終わったならば、七月から来年度の税制問題に取り組む、こういうことだろうと思う。その面においてもそうですし、いま言うような物品税についても多少長期的に見て、このところでやはり酒やたばこも下げていくなら下げていくという方向を指向する、あなたたち答弁するように指向するならそういうことをすべきだ。それができないならできないで、こういうものは税を上げたほうがいいという方針なら方針で、ここの委員会でも堂々と答弁をしていくということにすべきだろう。その場のがれといっては失礼でございますけれども、この場に合わした答弁ではなくて、ひとつ明確な方針を出していただきたい。  最後に言っておきますけれども、明年度の税制をいろいろ扱う場合にも、本国会が終わったら、ぼつぼつ来年度の問題にとりかかって、その方針を出していく、こういうことをしていけば、大方の意見も聞けるし、税の民主化ということにも一歩近づいていく、そういう御努力をお願いいたしまして、きょうの質問を終わりたいと思います。
  50. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 最後にたばこ、酒消費税の問題について御指摘がございましたが、実は、これは以前の委員会で有馬委員からお話がありまして、私、大蔵政務次官として御答弁を申し上げたいきさつがございますので、一言御報告をして御了解を得たいと思うのであります。  実は、私も特に酒の場合は二級酒の減税問題をいろいろ内輪で話をいたしました。何とかひとつ大衆消費税の軽減措置といったことは考えられないものであろうかと、いろいろ検討をしたわけであります。ところが、申し上げるまでもないわけですが、特にたばこ、酒の消費税は保健衛生的な見地という一つの立場もございますし、同時に、最近、酒の場合小売り価格が上がりまして、その酒の中に占める税金の割合が比較的に下がってきている、こういう実態が一つあります。また、たばこの場合は、葉たばこの買い入れ価格というものをずっと上げるということによって、実質的に専売益金が相当狭められてきており、これまた、いわば実質的な減税になっておる、こういう関係からこの際ちょっと見送らざるを得ない。で、一般的に間接税のあり方ということから税制調査会において検討してもらうまでひとつ待とうではないか、こういうことに相なったわけでございますので、こちらで答弁したことをそのまま、場当たりのことでお茶を濁しておるという事情ではないことはひとつ御了解をいただきたいと思う次第でございます。
  51. 只松祐治

    只松委員 確かにそういう点は私たちは存じておりますし、そういう面もあって税率が下がったりなんかしてきているのも事実だと思う。それならばそれで、そういう答弁を明確にして、こういう実質上減税になっておりますという答弁をいまみたいに堂々とされたらいいと思う。  いまついでに言っておきますけれども、ビールやなんかは、そういってもなおかつ諸外国に比べてきわめて高いわけでありますから、これはもっと引き下げていくとか、あるいはそうじゃなくて、やはり五〇%くらい日本としては取るべきだ、こういうことを言うか、やはり基本的な方針を出して答弁されたい、こういうことを言っているのであります。ぜひそれをお願いしたいと思います。
  52. 三池信

    ○三池委員長 藤田高敏君。
  53. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、質問に先立って、いま武藤理事のほうから指摘がありましたが、私どもの質問に対して、これはたいへん失礼な言い方ですけれども、聞いてもらおうとは思わないわけですよ。しかし、やはり予算法案といわれるような重要法案に対して、政府与党の委員の出席状態がこういう状態の中で審議をするということについては、法案を成立さすかささないかという権威の問題、あるいは大蔵委員会それ自体の重要法案に対する取り組み方の問題として、私はこれは了承できないと思う。そういう点から、私は質問を続行したいところでありますけれども、一時、委員長の善処を待って質問をさせていただく。さらに、一つつけ加えておきますが、できることならばこの重要法案をきょうのうちにも上げたい、こういう強い願望が、政府与党の皆さんとしてはわれわれ以上に強いものがあると思う。そういう条件の中で、大体見通しをつけておって、採決の時間がきたらやってきて、雇い兵であろうと何であろうと、頭数さえそろえばいいのだ、こういう態度は、きわめて国会を軽視する態度であると思うのです。そういう点からいって、私ども、特に国会に出てきてまだ日の浅い者は、こういう国会の審議態度に対しては非常にふんまんやる方ないものがある。われわれといえども、質問する事項についてはしろうとじみたこともたくさんありましょうけれども、その真剣な度合いにおいては、与党の先輩諸氏と比べてまさるとも劣らぬだけの真剣さを持っておるわけです。そういう点で、ひとつ委員長の出席に対する善処方を要望して、私は一時、このまま質問をしないで、ここへ着席をして待ちたいと思います。
  54. 三池信

    ○三池委員長 藤田委員のお説、全く同感でございます。さっそく委員諸公に出席を要求いたしますから、しばらくお待ちください。  ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  55. 三池信

    ○三池委員長 速記を始めてください。藤田高敏君。
  56. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 さて私は、先輩同僚議員のほうからすでに幾つかの質問がありました租税特別措置法の一部を改正する法律案並びに物品税法の一部を改正する法律案について、以下幾つかの問題点について質問をいたしたいと思います。  当初に、若干お断わりしておきたいと思いますが、すでに質問をされた先輩議員の質問事項と若干ダブるような面が出てくるかと思います。その点については、できるだけ角度を変えたつもりで質問をしたいと思いますが、一部の重複については御配慮を願いたいと思うわけであります。  まず第一に、順序不同になりますが、租税特別措置のうち、交際費の関係についてであります。若干数字的なことをお尋ねしたいのですが、三十五年以降、法人税、交際費、特に法人税と交際費については、法人税と交際費の比率、それと自然増収の対前年度の差額、自然増収の額、こういうものの額と割合を聞かしてもらいたい。
  57. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 支出交際費のほうが三十五、六年ちょっと不明でございますので、三十七年から並べましてお答え申し上げたいと思います。三十七年の法人税収入は七千八百四億円、その次にお尋ねの、現行法によりますところの、対前年度当初予算によりますところの自然増収でございますが、これが千二百十八億円、そのときの支出交際費は三千七百八十七億円と出ております。三十八年になりますと、八千六百二十九億円の法人税収がございます。自然増収は五百五十七億円でございます。支出交際費は四千五百六十二億円でございます。三十九年は九千七百五十四億円が法人税収でございます。自然増収は、これは補正で少し直りましたけれども、当初見積もりました自然増収は二千八百六十六億円でございます。支出交際費は五千三百六十五億円でございます。なお、法人税収に対します交際費の割合は、三十七年は四八・五%、三十八年は五二・九%、三十九年は五五%、こんなような数字になると推定されます。
  58. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 四十年度及び四十一年度の推定額についてお聞かせいただきたいと思います。
  59. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 いま計算いたしますので、しばらく時間をおかし願いたいと思います。  ただ、御存じのように、税務統計は三十九年度までの実績しかございませんので、これまでの実績をもととして交際費を推定いたしているのでありまして、その点、いま申しました数字とは少し正確度も違っておりますので、そういう前提でお読み願いたい、かように思います。
  60. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 交際費のほうは推定額になると思いますが、法人税の場合、あるいは自然増収の場合は、これは先ほど特に自然増収の場合は当初予算の関係説明があったわけですから、四十年度については額が出ると思うのです。それと合わせて、自然増収は当初予算だけの対比でなくて、前年度対比においてどういうふうに伸びたか、この額もひとつ説明してください。
  61. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 交際費につきましては、おっしゃるように推計でございます。法人税収は大体予算で出ますから、これはおっしゃるように比較的固いと思われます。自然増収は、四十年度は千五百九十億円という減収が生じたために、そのうちの法人税収は千四百億円ばかり締めましたために違ってまいりますが、ともかくも、自然増収の当初予算に対する割合ということで減税を約束しておりますし、予算規模がそれででき上がっておりますので、それで計算せざるを得ないということだと思います。さらにまた、もちろん前年度に対する実績の伸びと申しますか、決算上の増収分というのも出ますけれども、ただ、税制改正がございますので、必ずしも経済の実勢を反映したものともいえない面がございます。そのあたりを捨象して考えなければなりませんが、まず、いま、前年度当初予算に対する当初の自然増収を出しまして、御説明したいと思います。  四十年度の法人税収入は八千九百六十二億円でございます。これは予算でございます。自然増収は四百八十二億円、支出交際費は五千六百億円見込まれます。四十一年度は八千九百四十七億円が法人税収でございます。法人税収はマイナスでございます。赤字が千三十四億円見込まれております。支出交際費は六千億円と見込んでおります。
  62. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 そこで一つお尋ねをしたいのですが、今回の税制改正にあたりましても、政府の主張としては、法人税中心とする企業減税に相当ウエートをかけた改正を行なっておるわけでありますが、その主張されてきたところを見ましても、他の租税特別措置の幾つかの項目とも関連をいたしますし、もうすでに議決を見た法人税とも具体的に関連をするわけでございますが、いわゆる企業の収益性を向上さしていく、あるいは企業本来の体質の改善をはかっていく、自己資本比率の向上を税の軽減を通じて求めていくのだ。そのことの是非はともかくとして、政府の主張としてはそういう主張点を柱として今日までの税制改正についての主張をされてきたと思うわけでありますが、私は、こういう税制改正をやってこられた側の主張と、そういうペースの上に立って考えた場合に、いま御説明になられた法人税と交際費の関係というものが、こういういわば最近の傾向を見ますと、交際費の支出傾向というものはずっと増大をしておるわけなんですね。パーセンテージからいいますと、たまたま主税局長は三十五年、三十六年はお触れにならなかった。これは私の邪推かもわからないけれども、三十六年までは法人税と交際費の比率というものが非常に低いわけなんですね。これは私の手元の数字でいきますと、三十五年の法人税が五千七百三十三億円、それに対して交際費が千三百四十九億円、法人税と交際費の割合は二三・五%、三十六年度は法人税が七千百四十二億円に対して交際費が千五百四十二億円、したがってその対比率は二一・五%というふうに、法人税との対比における交際費の割合というものは、三十六年までは非常に少なかった。ところが、三十七年を契機としてその比率が、さっき答弁がありましたように、三十六年までが二〇%台であったものが、三十七年になって一躍四八・五%、続いて五三%、そうして五五%、そうして確定的なものは出ておりませんが、四十年度は大体推定として五五%ぐらい、こういうふうに、交際費の占める比率というものが非常に増大をしてきておるわけですが、これに対する基本的な見解を聞かせてもらいたい。それと同時に、政府はこれを抑制する考えがあるのかどうか、この点についての見解を求めたいと思います。
  63. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 まず、交際費の数字から判断して、交際費の割合がふえているのではないか、私が申し上げました数字が三十七年から始まっているために、三十五年、三十六年の数字が意識的に落とされて、交際費の趨勢のふえたことがカムフラージュされているのじゃないか、このような御質問だと思うのであります。  まず第一に、数字的なことでございますので、少し詳しく申し上げたいと思うのでございますが、私は、交際費の金額を隠そうということは全く思っておりませんし、さらにまた、同時に、数字を提供することによりまして、誤解を生ずることを私も避けたいと思いますが、なぜ三十五年、三十六年の交際費を申さなかったかと申しますと、三十七年から税制が変わりまして、過去におきましては、資本金千万円以下の法人では、交際費は特別な手当をしなかった、と申しますのは、資本金千万円以下の法人については交際費は無条件に損金算入という企業会計のルールに従っておったために、資本金千万円以下の法人については交際費を調べていなかった、したがいまして、いま御指摘数字は、おそらく資本金千万円をこえますところの交際費をあげられた結果、法人税に対する割合が少なく、したがって、最近の全法人について調べました交際費を分子といたしまして法人税額を分母といたしますところの数字とは合わない、断続性と申しますか、全く異質のものの比較であろう、かように思いますので、こういった趣旨からひとつ御検討を願いたい、かように思います。推定をすればできるかもしれませんが、非常に危険でもございますから、私は意識的に三十五年、三十六年は省略したつもりでございます。  次に、このような数字は、確かに交際費の増加を示すではないかということでございます。法人税収を分母といたしまして、分子を支出交際費を置くことは、これは大ざっぱに申しまして、確かに法人税が企業の収益をあらわすならば、まさしく収益の増加以上に交際費がふえておるではないかというようなことを意味されるのかもしれません。しかし、法人税は、御存じのように、企業収益をそのまま反映している点もございますけれども、同時に、税制改正によりまして、たとえば三十九年には減価償却によって法人税が減った’いう面もございます。四十年には留保税率が一%下がった、あるいは三十七年には配当軽減税率が下がったとか、税収と比較されるよりも収益そのものと比較されるほうがより正確なものではないかと思うのでございますが、それはそれといたしまして、法人税収が収益を反映しておると大ざっぱに見ますならば、おっしゃるように交際費は決して減ってはいない、むしろふえる傾向にあることは、この絶対額からおわかりのとおりでございます。  そこで、この第二の御質問の、政府はこれを抑制する気持ちがあるか、こういう御主張でございます。交際費の課税が始まりましたのは、私の記憶では昭和二十九年から、そのときから行き過ぎありということで、交際費の無条件損金算入を制限してきたのでございます。当時におきましては、支払い配当よりも交際費が多いではないか、こういった非難がございましたが、確かに当時におきましてはそういった傾向を示しましたが、それはわずか一年だけで、その後は支払い配当金額のほうが多くなっております。三十九年度の税務統計を見ましても、交際費は五千三百億円でございますが、支払い配当は六千四百八十一億円でございますので、過去においての数字は私は決してそうなってないということを申し上げたいと思います。しかし、やはり交際費の行き過ぎがあるということは大方の声でございますし、社用消費がはんらんしているということは世の中で指摘が多いところでございます。これには私はいろいろな原因があるかと思います。法人税が高い、あるいはもう一つは、個人所得税の税率が非常に中堅層以上のところで高いから、給与でふやしてもらうよりも会社から交際費をもらったらいいというような声が多いようでございます。さらにまた、そういった一ぺんいい目にあいますと、なかなかこれがやめられないのが人間の性格かもしれません。アメリカにおきましても、ドイツにおきましても、社用消費がふえておるのが実情であり、税務でもそれに弱っておるのが実情だろうと思います。そこで、政府といたしまして二十九年から交際費の制限措置を始めたのでございますが、その間私も税制第一課長をいたしまして、この制限措置によって紆余曲折を経てきたことをよく知っております。結局は、業種ごとのいろいろな複雑な基準を設けたり、基準年度の基準を設けたり、いろいろなことをやってまいりましたが、いまは一番簡単な方法で、四百万円と資本金の千分の二・五との合計額を控除した残りの半分を損金に算入しないという措置となっておるのでございますが、過去におきましては、私が直しましたときには、その不算入の割合は二割でございました。ところが、大方の声もあり、資本蓄積の声もあり、また、まだまだ社用消費の行き過ぎもありということで、三十九年にはこれを三割にいたしました。さらにまた、その翌年の四十年には五割と、半分はもう損金算入しないのだということにしたのでございます。このようなことでおわかりのように、政府といたしまして、こういった社用消費の行き過ぎあるいは交際費の行き過ぎに対しましては、できるだけ税制面で行き過ぎを是正したいという気持ちでやっていることは、もうこれでおわかりのことだと思います。ただ、基本的には、これは本来企業維持の性格の強い、損金性の強いものでございますが、行き過ぎがある、この行き過ぎはなぜかという点をぜひひとつ企業の方々にも反省していただき、また税制においても反省したい、こう思っております。これはいま申し上げましたように、法人税も高い、所得税もまた高いし、個人給与で渡すよりも、社用消費ならば損金に算入になるという税制上の理由もあるということも一つ反省しながら、この交際費の措置をきめてまいりたい、そしてまた自粛を促していきたい、かように考えております。
  64. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 なるほど、御指摘というか、答弁の趣旨のように、本来的に交際費の適否についての対象条件としては、配当であるとか、それぞれの収益と対比することのほうがより正確にこの問題の当否についての結論を出すことができると思うわけですけれども、いわゆる交際費は法人税の中から特別に排除される性格のものであるから、これは専門的な理屈でなくとも、一般的に大企業の支払う税金が、四十年度でいけば八千九百六十二億円、ことしでいけば八千九百四十七億円程度法人税を払うのだ。一見、法人税で大企業もかなり国家財政のために貢献しておるじゃないか、ところが一方では、一般国民大衆には、交際費の中には、今日の資本主義経済の中でこれはある程度やむを得ないファクターもあろうかと思いますけれども、一般の目に映えるものは、やはりこれは飲み食いの費用だ、そういう点で非常にむだの多いものがこの法人税に対比して五割五分から占めておるということは、何としても私は理解できないと思うんですよ。それで、局長の答弁では不算入のワクをここ三年来二〇%から三〇%、三〇%から五〇%と上げてきた、そういう努力の過程の中から、政府としては交際費支出についての抑制策を講じてきておるのだ、そういう経過の中からわれわれの考え方を推察してほしいという答弁であったと思うわけですが、私はその経過は十分承知しております。しかし、今日の不算入の割合を五割にしましても、なおかつ約九千億円程度法人税に対して五千五、六百億円の交際費があるということは、これは私は非常に異常な状態だと思うんですよ。ですから、この不算入割合をもう全額――交際費から先ほど言った四百万円プラス資本金の千分の二・五というものを引いたものに対して損金の算入割合として五〇%という制度がありますけれども、これを全部不算入の対象にする、いわば一つの段階的な方策ですが、交際費としても限度額を現行の四百万プラス資本金の千分の二・五というところへ一線を入れて、それ以上のものは見ないのだというくらいな積極的な交際費の抑制策を政府として当然考えるべきじゃないか。と申しますのは、私のほうから多くを申すまでもないと思うのですが、今日の不況下において、先ほど私があえて自然増収の経過を聞きましたが、この損金不算入のあり方次第によっては、自然増収をある意味においてまかない得る財源も出てくるのではあるまいか。いわゆる交際費が減ったから、そのことが全部法人税の利益の対象になる性質のものではないと思うのです。これは私もよく理解しておりますが、一般的に考えて、そういう金は自然増収を埋める方向法人税の対象ワクに幾ばくなりとも充当をさしていくべきではないか。また、個々の企業体の立場からいけば、国の立場からいって、税の面で企業の体質改善をやったり、自己資本の比率を高めるという立場からいえば、こういう形の企業体質の改善についてはあまり効果がない。むしろ、それをやるよりも、今日の不況下の税の改正としては、すでに指摘をしたように、所得税の大幅減税をもっともっとやって、そういう点からこの不況克服の消費購買力を高めていくべきではないか。こういう観点から考えましても、国がそこまで税の改正をやろうとしておるのに、個々の企業が、端的に言うと、飲み食いの費用については野放しだ、今日の状態をそのまま存続するのだということでは、企業内努力としては、会社経営者の態度といいますか、その怠慢は責めらるべきものだろう、したがって、国家財政の見地から見ても、あるいは不況下におけるそれぞれの企業の体質改善をやっていくという立場からも、この交際費をもっと大幅に規制をしていくことは当然であろう、そのためには今日の条件改正をやらざるを得ないと思うのですけれども、これは個々の企業体にまかしておいたのでは私はできないと思うのです。したがって、そういう点では、この今日の条件を改正する必要があると思うのですが、これに対しての見解を聞かしてもらいたい。
  65. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 交際費につきましては、藤田委員指摘のように、現状においてその使い方、その金額等に行き過ぎがあるということは、私も認めるところでございます。しかし、これは先ほど申し上げましたが、やはり企業の費用と考えられる部面でございますし、私は、過去においてこの交際費課税制度のいろいろな資料をそろえまして気がつきましたことは、やはり弱い企業が出さざるを得ないという点が多いことに気がついたのでございます。過去におきまして業種ごとの率なんかを設けましたけれども、どうも見てみますと、注文を取らんがために交際費を使わざるを得ない下請あるいは特別な会社が多いように見受けられたのでございます。したがいまして、金融機関みたいなところはむしろ交際費がほとんど見られない、見られるところはと見てみると、大会社というよりも、むしろ大会社に入り込みまして注文を取らんがために、残念なるかな、日本の現状は相当そういう接待をやらなければいかぬ面があるように見受けられるのでございます これは基本的には過当競争であり、過当競争というものは、やはり自分の意思というよりも、企業を維持するためにどうにも必要な費用という要素が強いように見受けられる、これは、この中にも行き過ぎがあることは認められます。そういった意味で、交際費から受ける感じは、何も事業に関係のない方々を接待したという部面よりも、金額が大きいのは、言うまでもなく、いま申し上げました注文を取らんがための、あるいは事業を伸ばさんがための接待費というものの増騰というものが多いことがまた原因になっておると思います。そういった意味では、交際費は、企業収益がよほど悪くなりますと、自粛ムードが最近のように若干出てまいりますが、やはり不況期になりまして、競争が激しくなりますと、かえって使われたりするような傾向がある、このあたりに、全額損金算入の要請ということもわかりますけれども、そう簡単にもまいらない、むしろ広告費と同じように、弱い者にかえって負担がいくような結果を招来いたしますと、担税力の見地から問題があろうというような気がいたすのでございます。もちろん私は行き過ぎのあることは認めますし、外国においても、税率が高くなりましてからこのような弊害が出てまいりましたので、種々の手当てを講じていることは御存じのとおりでございます。アメリカでは一人あたりの接待費の限度は二十五ドルにするというふうな絶対額の制限をつけたり、あるいは、ほんとうにお得意を呼んだかどうか証拠を示せというようなことを言ったり、そのために、ホテルでは写真屋が繁盛しているというような笑い話が出てきております。しかしこれは、基本的には日本と違った税率の面という外国における反応からきておるのでございましょうが、わが国ではもう少しそれが過当競争からきている面がある、こういう面を考えて、この交際費の問題はひとつ処理したい、そして、やはり行き過ぎがございますが、企業が過当競争、そしてまた、こういったことによって注文を維持しなければならぬということをできる限り全体としてやめる方向が望ましい、だんだん自粛の傾向が見られておるのでありますが、そういう点を加味し、さらにまた、所得税の税率といったようなものもあわせて考えていただく、法人税も同じようなことだと思います。いま利益がある程度取れるならば、将来の企業を維持する意味で、交際費を使って、相手を喜ばしていこうというような考え方すら出ることも当然でございます。そんなことをひとつ総合的に考えまして処置していくのが、この交際費問題の適正な処理ではないか、かように考えております。
  66. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、今日の条件の中で交際費というものを全廃しろというような、そういう極論は言っていないわけです。しかし、基本的な考え方として、交際費がこのように数千億円にも及ぶというような状態が生まれているということは、日本の資本主義経済の腐敗ぶりを遺憾なく発揮していると思うんですよ。なるほど、いい悪いは別にして、投資が投資を呼ぶという形の中で過当競争というものが起こって、そのあふりが交際費の中にも結果として出てきているのではないか、こういう点についてもわかりますけれども、国の税制面から、あるいは国の行政指導を通じて企業に何を要求し、何を指導していくかということになれば、これは独占禁止法の趣旨ではないけれども、過当競争なんていうのは――私の聞いた範囲では、例の新産業体制論なども、西ドイツやアメリカあたりでは過当競争ということがなかなか理解できない。日本で言う過当競争ということは理解できぬことはないけれども、非常に理解に苦しむということをドイツあたりでは言っております。そういう点から考えても、資本主義経済の中における競争というものは、あくまでも公正な競争という点に焦点を合わせて、税制の面における配慮なりあるいは行政指導というものがなさるべきであろう、こういう基本的な筋からいけば、私は、やはり、法人税の六割にも匹敵するような過大な交際費というものは、少なくとも今日の条件よりもさらに抑制をするという指導というものが税制を通じてなされることは当然だと思う。こういうことにちゅうちょすること自身が、えらい極端なことを言うようですけれども、ある意味においては過当競争をあおること、過当競争それ自体を認めることを政府も黙認をしてきたということにさえなりかねないのであって、やはりこういう交際費的な冗費は、今日の資本主義の発展過程においては極力圧縮していくのだ。話がちょっとへんちくりんになりますけれども、中国へ行けば一これは、私が十年前に行ったときにもすでにそういう国の指導がなされておるので非常に感心をしたのですが、早い話が、労働者は八時間労働だ、時間外労働については、国防上の問題なり公共事業に支障が起こったときなり、幾つかの条件がない限り時間外労働はやらない。ですから、国賓待遇のお客さんが来ても、こういう条件になっておりますから、いわば給仕さんもおらなくてお茶も出せませんけれども、それはひとつあしからず、こういうふうにあいさつをされるわけです。この交際費の関係でも、今日の税制の中で、もう一定限度額以上は認めてくれぬことになったということになれば、それ自体が個々の企業の交際費を、乱費というか、そういうものを一つの理由にしてこういう冗費は極力セーブをしていく、こういうことにもなりますし、また、本来的にいって、経営者自体のモラルの問題としても、交際費の多い少ないによって企業競争をやる、受注量の増大をはかるということは、私は公正な資本主義経済の中における競争の理念に反すると思う。ですから、今日政府自民党のよって立つ基盤は資本主義の正当な繁栄を求めていくという、そういう理屈からいっても、交際費によって――さっき言ったような現実の結果論としてそういう現実があることはわかりますよ。あるけれども、税の改正をやったりする場合に、そういう誤れる惰性というようなものを黙認する形の中で税制の改正に取り組むということは誤りじゃないか。そういう点からいって、やはりこの交際費の限度額については、いわゆる一定の限度額として、今日の制度でいえば、四百万円プラス千分の二・五というもので一つ線を入れて、あとの不算入割合については見ない。これは私の一つの意見でありますが、社会党の意見としてもそういう意見を出しておると思うのです。これは政府に対して要求もしておると思いますが、そういう条件に沿った交際費の制度をつくるべきだ。これは積極的にそう思うわけですが、そういう点についての見解を聞かしていただくのと同時に、いま一つ、もしそういうふうに損金の不算入割合というものを、全額これは不算入にするのだということになれば、現在の交際費から割合においてどの程度圧縮されるかということをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  67. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 二つ御質問がございます。  まず第一の、交際費課税について改正を加えて、交際費について少なくするような方向の改正はどうかという御質問でございます。私どもも、別に現在の五割という益金不算入割合が絶対的にいいものだとか、これによって交際費の縮小がけかれるというふうには全く考えておりません。趣旨は先ほどるる御説明申し上げたとおりでございます。基本的には過当競争が根本原因でございます。しかし、先ほど来申し上げておりますように、税制に対する期待が藤田委員の言われるように確かに大きいこと、私にとってもありがたいことでございますが、あまりに税制によって自然の流れを抑制いたしますと、かえって弊害が出ると思います。一つは、先ほど申し上げましたように、そういった根本を直さずに、単純な交際費課税をやっただけでは弱い者がいたんでくるだけではないか、注文をとらんがために無理をする企業だけがいたむのではないかということがございます。もう一つは、やはりそういった経済の基盤が直らない前に税制だけで措置いたしますと、不自然なかっこう、たとえば、別途の金を持っておりまして、別途に接待するというような、自衛上と申しますか、本能的な反発が起きてきましても税務は混乱する、こんなような感じでございます。しかし、交際費の行き過ぎにつきましては、私も世間の言われることはもっともだと思います。そこで、基本的には過当競争の問題、さらにはまた、減税の問題もからめて考えなければならぬと思うが、交際費課税についても、おっしゃったような御提案もございます。さらにまた、企業側にいたしますれば、過去の基準年度に比較して減らしたならばある程度のメリットはあった、いまはふやそうが減らそうが、依然として半分は文句なしに益金不算入ではないかという非難もございます。このあたり仕組みの問題といたしまして考えなければいかぬ点は同時にまたあろうかと思いますので、ひとつ慎重に検討してまいりたい、かように思っております。これはもちろん交際費の動向とひとつ見合って考えるべきではないか、これは私どものほうの大臣が常に言っておるところでございます。  第二は、現在の五割という不算入割合をやめて、一定の足切り額をこえる部分を全部法人税の益金に入れたならばどうなるか、圧縮ということばでございましたが、増収といたしましては四百四十億円の増収が生ずるというふうに単純計算で見積られます。もちろん、こういったことによりまして、税金が変な形で逃げ、あるいは交際費が減るということになりますれば別でございますが、一応全額交際費について益金算入というシステムをとるならばこういった増収が生ずるという点については、現在は、三十九年度は交際費課税によりまして百三十三億円の増収を生じておりましたから、それに四百四十億円の増収が追加される、こういう結果になります。これは三十九年度ベースでございます。
  68. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 三十九年度ベースということは、いわゆる損金の不算入分を三〇%ということですから、いわば私の質問をしておる一つの仮定といいますか、これは基本的にはわが党の主張なのですけれども、不算入分を全部課税対象にしろということであれば、約その三倍ということになりますね。三十九年度ベースが三〇%ですから、それを全部はずすということは三倍になる。その約千四百億円ないし千五百億円程度のものが結局交際費として浮いてくる、こういう形になるわけです。いま言われるなにからいきますと、四百億円とか四百四十億円というから、一つの大きな数字を扱う感覚としてはさして大したことはないじゃなかろうかという感覚にもなりがちですけれども、私の論旨からいくと、これは三倍になるのです。ですから、これは非常に大ざっぱな数字ですけれども、千五百億円程度のものが交際費として節約される。そういうことになれば、それは、私、国家財政の見地から先ほど言いましたけれども、そのファクターを一応留保して、今日これだけ、今度の法人税特別措置法の改正で企業の体質改善あるいは自己資本比率というものを高めなければいかぬという要求が税制改正の中心をなしておるのですから、私は、国家財政のほうを一応留保するにしても、企業体自身が千五百億円の金を、まず交際費を節約をして企業の体質改善に充てるべきである。また、そういう行政指導を税制の改正を通じて政府がやらなければ、そういう点をはずしておいて、税率で操作をする、それも、今度の改正に出てきておるような特別措置だけでめんどうを見るということは、私は順序としてさか立ちしておると思うのです。ですから、そういう立場からいっても、社会党の基本的に主張しておるように、交際費の限度額というものは、なるほどいままでふくれ上がってきておりますから、これを切るのは企業としてはなかなかの努力でしょうけれども、私は、今日中小企業なんかこれだけばたばた倒れておるのですから、会社が倒れる思いをすれば、交際費を節約するくらいあたりまえのことですよ。これは、私の経験してきた会社でも、前後四回の企業整理というものがありましたけれども、やはり企業の合理化を経理的にはかっていくということになれば、やはり交際費なんかをまずやり玉にあげて、そういう冗費の節約をはかっていくということは当然だと思うのです。世間一般から見ましても、冒頭にも述べましたように、何千億円というような交際費が今日政府の税制のもとでまかり通るということは、国民の常識としても許せませんよ。ですから私は、くどいようでありますが、現在の制度は来年三月三十一日までだったと思いますが、その点は若干違っておりましても、一カ月くらいのずれだと思いますが、いずれにしましても、私は、まだ時間もあることですし、少なくとも来年以降は、しかも公債をかかえた中における国の財政のやり繰り、あるいはこの自己資本比率が全体的に見て八対二だといわれるような、そういうアンバランスの状態を改善していくのだという、そういう方向からいっても、この交際費の割合を私が指摘をしているような方向で、大蔵省及び政府は税調にもはかりましょうし、また、そういう方向税制改正をやるのだということを企業家、会社に向かって、いわば宣言をするというか、そういう指導方針を打ち出していくのに条件として全くいい時期に来ておると私は思うのです。そういう点で、その将来の構想と申しますか、来年度に向けての考え方もあわせて聞かせてもらいたいと思います。
  69. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御指摘のように、来年の三月に期限の切れる特別措置でございます。企業減税にからみまして、こういった国会の絶えざる批判があることを税制調査会にも反映させまして、ぜひ御審議を願い、来年度の方向をひとつ出したい、かように思います。ただ、先生のおっしゃることは、ずいぶん私もうなずけるのでございますけれども、先ほど来考えておりますように、過当競争が基本的な原因であり、これを変なふうな形で強化いたしますと、注文をとらなければならないという人たちに負担がかかるので、そのかからない方法をどうすればいいかという点を研究してまいりたいのです。数字もございますので申し上げますが、私が申し上げました四百四十億円といいますのは、四百四十億円全額三十九年度ベースの交際費を益金に入れますならばこれだけの増収が追加して生ずる、その当時は百三十三億円の増収でございましたが、それが約三倍とちょっとこえております。先生のおっしゃる意味が十分つかめませんでしたが、そのときの交際費といたしまして益金に算入される額が千八百億円と見ておりますから、それが節約になれば利益が生じて、そこから三五%か、交際費か、いずれかというような御主張だろうと思いますが、そこは単純――単純と申しましたのは、千八百億円に対して三五%の税率をかけたというだけでございます。これは利益となって残っても三五%ということで同じ結果でございます。交際費を節約すれば、かえって税収が生じないではないかという御主張がときどきございますが、それは法人利益の増加となってあらわれるのではないか、そこで法人税として取られる、どっちにしても取られるのではないかということになろうかと思うのでございますが、しかし、留保になって残る部分のほうが企業としてはいいではないか、法人税引きで留保になる部分は、法人の利益として企業に貢献するのだから、交際費とするより効果が多い、そういうことの御主張だろうと思います。そんなようなことも加味いたしまして、来年度で期限の切れる問題でございますので、税制調査会におきましては、ひとつ国会の御意見、これに対する評価、これは十分反映するような御審議を願うようにしたいと思います。
  70. 平林剛

    ○平林委員 関連して。  いま藤田委員が取り上げておる問題は、社会党としても交際費の課税については損金不算入の割合を少し高めるべきであるという主張でございまして、昨年も私この問題を取り上げたことがあるわけです。きょうは会議録を持っていませんから、こまかいことは落としてあるかもしれませんけれども、いまお話のように、交際費が四十一年度ベース推計では六千億円あるということに対して主税局長は、一つには、弱い企業の交際費というものを考えねばならないと言われました。私、ある面ではもっともだと思う。しかし、それならば、たとえば資本金を一千万円あるいは中小企業一つの基準として五千万円でもけっこうですが、これと、それからそれ以上の大きな企業との実際の交際費というものが幾らの割合になっておるかということをはっきりつかまえてこそ、これが弱い企業のほうにもあると言えるのですよ。したがって私は、去年もこの問題について調べるようにということを要求しておるのです。時間がかかる問題ですから、いままで私は黙っておりましたけれども、もし弱い企業には交際費がどうしても必要なんだということを裏づけるためには、まず、資本金別に大体交際費支出の割合がどうなっておるかということの資料がなくてはならない。これは私はきょうとは言いません。きょうとは言いませんけれども、この問題は緊急近い将来に解決しなければならない問題でございますから、資料としてその割合をひとつ提出してもらいたい。  それからもう一つ、いまあなたは過当競争、日本の企業における過当競争というものが交際費の増大を余儀なくしておるという釈明がございました。これはある一面もっともなところがあると思います。しからば、業種別の交際費の資料というものがなくて、過当競争だ、過当競争だというわけにはいきません。業種別によって、過当競争の激しいところもあれば、そうでないところもあるわけですね。あなたが政府の主税局長として、いや、過当競争もあるのだということをおっしゃるならば、業種別の交際費の調査結果というものを提出してもらいたいと考えておるわけです。これは、それが明らかになることによってさらにこまかく分析されて、必要な交際費であろうか、あるいは不必要な交際費が支出されておるのではないかという問題の分析になるわけですから、これも私は資料として提出してもらいたい。  それから第三は、先ほどアメリカの例を言われました。諸外国の例は、西ドイツにしてもイギリスにしても、交際費課税の問題についてはいろいろな制限を加えています。たとえば、私はいま記憶しておりませんけれども、アメリカとかイギリスでは、ヨットなんかを使用して使ったお金は交際費に含まないとかいうことがございます。日本とは水準が違うからヨットが基準ですが、日本でいえば、さしあたりゴルフぐらいのところでございましょうか。ゴルフ接待をして、それが交際費として認められるというようなことは、諸外国の例から見ても比較対象さるべき問題点だろうと思うわけです。そこで私は、そうした具体的な交際費の支出の内容というものを知る必要があると思うのです。しかし、これは千差万別、業種によって違いますから、そこまで言いませんが、国税庁に私がひとつ注文しておきたいのはこういうことです。交際費、交際費と一口に言うけれども、税法上からは機密費、贈答費並びにいわゆる交際費、こう分類されるわけです。この機密費、贈答費あるいは交際費の分類調査をしてもらいたいというのが、私、去年かおととし要求してあったことですから、たぶんこの問題についてはある程度心がけておられるものと思います。それについて、その分類ができておるならばそれを資料として出してもらいたい。  私、都合三つ申し上げましたけれども、いずれこの問題は、税制調査会をまつまでもなく、大蔵委員会に設けられた税制委員会でも藤田委員の取り上げた問題をさらに詳しく議論をする必要があると思いますので、きょうと言いませんけれども、その三つの資料を整えておいてもらいたい。
  71. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 御要望の資料、できる限り御期待に沿うように調整いたしまして提出したいと思います。  私どもは、いまの資本金階級別は簡単にはできませんが、いずれこれも計算してやりますが、業種別の交際費は、私現在持っております。これを若干申し上げまして、藤田委員に私の言っておることをぜひ御理解願いたいと思うのでございますが、私は税負担の公平――先ほども大蔵大臣只松委員との間に御論議がありましたように、やはり宿命的な、必然的な、不可避的な支出に対してこれを損金算入を否定するということは、どうも担税力の見地からおかしい、それから業種に属するがゆえにやむを得ない支出になるのはおかしい、そこで、平林委員のまことに適当なる御質問がございましたのでお答え申し上げます。  たとえば業種別にしますと、私がさっき申し上げましたように、金融保険業の交際費は、売り上げ千円当たりでは最も低くて三円二十五銭でございます。ところが、サービス業は十七円二十六銭、不動産業は十三円五十九銭、その次に高いのは建設業十二円七十九銭と、三円二十五銭から十七円二十六銭までちらばっておるような交際費の状況でございます。したがいまして、こういった宿命的なこういう業種に属するものは出さざるを得ないという慣習、これも私はいい慣習とは思いませんけれども、そういった慣習がある企業だけ重い負担がかかるという税制は、よほど考えていかなければいけないというふうな意味で先ほど来申し上げておるつもりでございます。そこで、過去におきましては、業種別に率をつくりましたり、そのために混乱は生じましたが、複雑な制度をやっておりました。しかし、結局は複雑であり、恣意的であり、あるいはやはり注文をとるがための中小企業の負担が重かったというようなことで、現在のような簡単な制度に改まったのでございます。資本金四百万円以下についても課税しようという考え方が、資本金と申しますか、交際費四百万円という金額がなぜいいかというのが問題でございます。それから、資本金の千分の二・五は単純なる企業の規模に応ずる交際費の許容範囲を示すものとして三十六年から実施したわけでございますが、これはよほどむずかしい、利益に対して課税する法人税と違いまして、政策的な措置だけに、よほどの配慮を講じなければならぬ、しかし、交際費の行き過ぎにつきましては、御指摘のとおり多々あり、企業減税の行なわれるこの際でございますので、国会の空気を反映するような方向でどういうふうなシステムがいいか、来年度期限が切れる問題でございますので、税制調査会で十分御討議を願いたい、さらにまた、資料は御要望により調整して提出したい、かように思います。
  72. 平林剛

    ○平林委員 私が申し上げた前の二つの点は出してもらいたいと思いますが、業種別の交際費をあげられまして、千円当たりの単価を述べられましたけれども、私はこれだけでは適当ではないと思います。総体の金額もあわせてひとつ出してもらいたい。つまり、金融保険業は単価は低いけれども、総体において動く金が大きければ交際費の額というのは大きくなるわけでしょう。ですから、いわゆるサービス業や不動産や建設の動くのと比較いたしまして、単純に金融保険業は少ないという理屈にはなりません。そういう点もありますから、総体の金額もひとつ資料として出していただきたい。
  73. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 業種別の総体の金額も私持っておりますが、資料といたしましても御提出申し上げます。平林委員の第三番目に言われました機密費、交際費、接待費、贈答費といった項目別の交際費の分類は、これはなかなか作業がやっかいでございますので、私どもも、おっしゃるように、どんなような交際費が善であり、どんなような水際費が悪であり、どういっ面を抑制するならば適当であるかという見地から研究してみたいと思います。これは即座には出せませんが、サンプルでもございまして、伝票を一々読んでまいらなければできない問題でございますし、数少ない会計では標準としては適当ではございませんので、少し時間をかけまして、これは直ちに提出ということは御勘弁願いたい、御検討願いたいと思います。
  74. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと一言だけ。いまの主税局長答弁の中で、やはりちょっと考えを変えておいてもらわなければいかぬ点があるのです。それは交際費という形で支出をされたものは実は消えてしまうんですね。だから、本来なら、そういう場合には価格の競争がなければいけないんですよ。まず私のほうはこれだけ安いんです。――資本主義社会というものは、よりよき物をより安くということが資本主義社会の競争の原則ですから、価格のほうを固定して、交際費のかっこうで日本的な――それは外国にもコミッションがありますが、この情実因縁関係を通じて販売を拡張しようというやり方は、企業としては近代的ではない。だから、交際費を減らしたら、その分は逆に価格を安くしておるならば国民大衆にまでその影響は及ぶのですよ。ところがそうではなくて、交際費のようなもので横に消してしまうから、逆に言うならば、これは価格の下方硬直性の一つのささえになってくる。だから、制度の考え方としては、私はこの前ここで福田さんと、どうしても企業減税をやるならば交際費をきちんとしろということを福田さんにお願いをして、福田さんもそうしますということであった。これは去年六月の就任時の福田さんに対する私の強い要望であった。しかし、福田大蔵大臣は、そういう約束をされたけれども、今年度は何らその面における交際費の問題については手を触れることなく、企業減税のほうは大幅にやっておるわけですね。大臣、これはお聞きになっておるし、あなたも覚えていらっしゃると思う。私はその点はここでも述べたと思うし、年末の予算委員会でも触れたと思うのです。だから、私も、この点はやはりゼロにしろということは、費用の原則から見てもちろん無理でありますからそうは言いません。しかし、現在の額が過大であることは全体が認めておることなんですよ。だから、その点については、今後の考え方として、やはり何らかの頭打ちになる問題を考えないと、どこまでいっても百分の三十でずうっといけるというようないまの感触はもっと何か問題の区切り方があっていいのではないか。それと、もう一つは、やはりいまのそういう企業に従事しておる人が、言うなれば自分たちが非常に困るときはすぐ国に助けを求めておるわけですね。いや企業減税してくれ、国債発行して景気を浮揚してくれというならば、その反面、自分たちがそういう国家的利益に奉仕するのなら、法人税も払いましょうという姿勢でなければおかしいですよ。法人税で取られるぐらいならば、交際費として飲み食いしょうという角度で問題が考えられておっちゃ困ると私は思う。だから、そういう点は、やはり企業の側としても交際費を減らして、それは多少法人税になっても、法人税になったものはやがてはまた企業にはね返ってくる、国の財政としてのメリットがあるわけだから、やはりそういう姿勢を正すという基本原則に立った税制のあり方にしてもらわないと、いまの問題と、きのう私が議論をした資本金の内部資本の充実等の問題は逆になっておるわけですから、この問題は明らかにさか立ちしている税制があるなんということは、この時点で私は考えられないのですよ。この点について、大蔵大臣、いまお入りになったところでしょうが、交際費問題をやっておるのですが、何らかの処置をしてもらわない限り、われわれとしては来年度企業減税なんということをしてもらっちゃ困ると思う。こういう問題は国民の世論でもありますので、交際費問題についてはいまだいぶ議論がされてきたのですが、まず政府として、来年度においては交際費についての処置は何らかとるという前提なくしては、もう来年度は法人税その他の企業減税に触れないという程度の強い態度でこの問題に臨んでいただきたいと思うのですが、大蔵大臣いかがですか。
  75. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 先般もお話を承ったわけでございます。私はそれに対しまして、四十年度に交際費課税は強化した、そういう今日でございますので、これを実施して、その経過を見た上で善処いたします、こういうふうに申し上げておるわけなんです。私の考えは今日もまだ変わっておりません。お話の趣旨は私もよく理解できるわけです。今後真剣にこの問題には取り組んでいく、かようにお答え申し上げます。
  76. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 大臣がお入りになりましたので、私も、実は堀議員のほうから質問をされたことに類似したことをこの交際費の問題については最終的にお尋ねをしよう、こういうふうに考えておったところでありますが、いま大臣のほうから、慎重にこの問題については取り組んでいきたいという、少なくともこの雰囲気に関する限りは熱意のある答弁がありましたので、私も大体了承するところでありますが、せっかくこの問題についてきょう私もいままで約何十分か時間をかけて質問をしてきましたので、大臣に重ねて念を押しておきたいと思うのですけれども、大臣のいまの御答弁では、四十年度にこの改正がなされた、その経過を見た上で善処をしたい、こういうことできておるわけですが、実質的には、ことしはこれでいくということになれば、二カ年間この四十年度の改正のベースでいくわけですね。先ほども触れたわけですけれども、法人税が約九千億円と見ますと、それに対して五千六百億円程度のもの、大体五割五分に匹敵するものがこの交際費で出ておるということは、これはやはり一般国民の世論としても、またわれわれの常識から言っても了解できませんし、先ほど堀議員のほうから締めくくりとしての見解が出ましたが、やはり公債を発行しなければならないほど国の財政が行き詰まってきておる、また、自然増収それ自体が昨年に比べ、あるいは一昨年に比べ大幅に減少してきておる、こういう国家財政の見地から考えるなれば、私は全部が全部と言いませんけれども、そのうちのかなり大きなファクターを占めておるであろうと思われる交際費の中には、俗に言って飲み食いの費用が大宗をなしておる。あるいは、非常に失礼というか、率直な意見でありますけれども、この中には非常に不潔な資金のワクも入っておるだろう、もっと端的に言えば、この中には機密費という形で出ておるのかどうかは知りませんけれども、俗に言われておる政治献金の要素も入っておる。私はついこの間の予算委員会の議事録を読んだわけですが、八幡製鉄の藤井副社長ですか、あの方は、交際費の問題に触れて、この中には政治献金の要素も入っておるので、それをあまり追及せぬほうがいいぞというような意味のことを繰り返しておったと思うのです。そういうものは交際費のワクの中から排除していく、少なくとも課税対象にはしていくということでないと、税制本来の筋が立たぬのじゃないか。したがって、社会党の一つ考え方として、一定の限度額をこえたら、損金の不算入の割合は現行五〇%ですけれども、これは三十九年度ベースでいきますと約一千八百億円程度に匹敵するということでありますが、過去の、もちろん税制の改正もありましたけれども、三十六年度程度、いわゆる今日の五五%程度の比率を三〇%程度に圧縮をしていく、そういうものを目標として税制調査会にはかるなり、あるいは税制委員会でお互いが検討を続けるなり、やはり具体的な目標を設定して、来年度の時限立法的な条件のありますこの交際費については、私どもの立場から言えば大幅に圧縮をしていくべきであろう。少なくとも合理的、客観的にこの程度のものは今日の資本主義経済の中で経費として認めざるを得ないだろうというところまで一つの目標を設定するくらいな熱意を持って検討される御意思があるかどうか、その点について、重ねて大臣の見解なり決意のほどをひとつお聞かせいただきたいと思います。
  77. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 決意の表明を税制調査会の答申に表現せよ、こういうことですが、政府としては税制調査会をリードするわけにはいかないのです。でありますが、税制調査会に臨む態度といたしましては、先ほど堀さんにお答えいたしましたような態度で臨む、これだけははっきり申し上げておきます。
  78. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これもこの間の横山議員のなにじゃないですけれども、議事録の上だけで見ますと、いまの御答弁では必ずしも熱意があるというふうに判断できがたいことになるかもわかりませんけれども、少なくとも、先ほどの堀議員あるいは私の重ねての決意要請に対する大臣お答えとしては、交際費そのものについては合理的な条件になるような改正をやろう、こういう方向税調に対しても、見解といいますか、考え方をしていく、こういうふうに理解してよろしいですね。
  79. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ええ。
  80. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 交際費の問題については、そういう前進的な条件が大臣答弁として確認をされましたので、私続いて、やはり租税特別措置関係の中で、利子所得の分離課税及び配当所得の源泉選択及び確定申告不要による軽減、いわゆる実質的な分離課税の問題についてお尋ねをしたいと思うわけです。この問題も本委員会において、あるいは昨年のこの委員会、本会議を通していろいろ議論もされてきたところでありますが、私は、この問題をあえて、すでに先輩同僚議員が触れておるにもかかわらず重ねて質問をしたいと思いますのは、この利子所得の分離課税及び配当所得の実質的な分離課税については、税制調査会も、あるいは、かつての主税局長であった泉さんはきょうお見えになっておられませんが、泉さんもこれは一昨年の十一月三日の「エコノミスト」に対談形式の中で、この種の分離課税というものはそもそも税制としてはおかしいんだということで、この分離課税方向というものについては否定をされておったわけです。ところが、結果として生まれてきたものは、田中前大蔵大臣の手によってこの分離課税というものはいわば強引な形でできたと私は見ておるわけであります。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕 これは決しておせじやひやかしで言うわけではないですけれども、総合的な政治力とか、あるいは政治家としての能力ということについてはわれわれの触れることでもないでありましょうし、そういう個人的な中傷にわたるような失礼なことは決して言おうと思っておらないわけでありますが、私どものしろうと判断としては、田中前大蔵大臣は、必ずしも大蔵省出身の福田さんのように、税制とか財政とかというものについての一つの専門家といいますか、そういう立場の方ではない。そういう比較からいきますと、福田さんは何といっても大蔵省御出身の大臣でありますし、いわばこの種の道にかけてはベテランだ、こういうふうに一般的なものさしを当てることはできると思うのです。そういう点からいけば、私は、少なくとも大蔵省御出身の大蔵大臣としては、この種の分離課税については、これは今日の総合累進課税をいわゆる日本税制の骨幹にしておるという今日の日本税体系の中で、こういうこぶをつけるような、いわゆる総合累進体系を乱すような税制については、私のしろうと判断として、よもや賛成をなさるまい、こう思うのです。そこで、大臣がかわられてこの問題をお尋ねするのは、私としては初めてなんです。実は、昨年の大蔵委員会で、私はこの問題で田中前大蔵大臣にかなりしつこく質問をした。そうしますと、こんなことを言って恐縮でありますけれども、半ば田中さんも興奮ぎみで答弁をされたことをいま思い出すわけでありますが、私は、やはりこの種の問題は感情的な興奮状態の中で論議をするのではなくて、税制という筋の問題として、やはり折り目をつけていく、そういう折り目の上にこの税制の改正をやっていくべきではないか、こういう観点から、福田大蔵大臣のこの分離課税に対する見解というものをあえて私はお尋ねをしたいのです。
  81. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 利子所得配当所得に対する特例措置は、これはお話のように、所得税体系においてほんとうに特例である、こういう性格だと思います。ただ、利子所得は金融機関に対する預金の増強上、これは非常に大きな働きをしておると思います。また、配当所得は株式の大衆化という点にまた相当の貢献をしておる、こういうふうに考えるわけであります。今日、貯蓄また配当を含めての蓄積、これは非常に大きな日本経済の課題になっておるわけであります。そういう際に、これを刺激し、奨励する税法上の仕組みがある、一つの特例ではありますけれども、一つの秩序というふうになっておる。これを変革することが蓄積政策にどういう影響をもたらすかということは、これは非常に慎重に考えなければならぬ問題である、そういうふうに考えておるわけであります。お話のように、特例措置であり、所得税体系を整備する上におきましては、この特例措置を排除していくという考え方は、一方においてまた大切な問題でありますが、金融、経済政策を進める上におきまして、その排除、撤廃がどういう影響を及ぼすかということを慎重に見きわめないと、これははからざる影響を生ずるというようなことにもなりかねない、かように考えますので、税制体系の合理化、近代化、そういうことにつきましては、これは今後とも努力をいたしますが、その一つ問題点としてこれを慎重に考えていきたい、ただいまはそういうふうにお答えするよりほかはないのであります。
  82. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、政治的な答弁としては大蔵大臣のいまの答弁はわからないことはないわけです。しかし、先ほど言ったように、一応今日、自他ともに財政ないしは税制の問題については、大蔵省御出身の専門家としてベテランとして認めておる福田大蔵大臣からただいまのような答弁を聞こうとは私は思わなかった。たいへんこれは釈迦に説法的な私の意見でありますし、また、こういう議事録を読み上げること自身失礼かと思いますけれども、いまの大臣の御答弁では、従来も言い古されてきたことですが、いわゆる利子の分離課税については、これは貯蓄を奨励する、このことがその政策目的としてあるのだ、こういうお話ですけれども、これは今日あなたの有力なブレーンとして国税庁長官をやられておる泉さんがどう言っておるかというと、去年の三月二十四日の私との質疑応答の中で、先ほども言いました十一月三日の「エコノミスト」の対談ではこう言っておる。「貯蓄というのは、経済学で認められている通り、可処分所得がふえることによってできるので、税制が分離課税になっているから、蓄積がふえるというものじゃない。だれも、分離課税になっているから余計しょうなんていう気を起すよりも、やはり」云々というふうに、いわゆる貯蓄というものと分離課税の問題は関係がないということを「エコノミスト」でも言って、これを私が紹介をして、あなたの見解はどうだ、こう言って尋ねると、そのことをさらに確認をした答弁がなされておる。「貯蓄というものは国民の可処分所得がふえるのに相関してふえていくものでありまして、税制上分離課税にしたから、選択課税にしたからということでふえていくものではないと私は信じております。」こう言って、はっきり当時の主税局長も言われておる。しかも、今日国税庁長官として、あなたの有力な行政上のブレーンとしての立場にある人がこういう見解を述べておるわけです。ところが、大臣が全くしろうとをだますような、いわば、なるほど精神的な意味においては、あるいは私はそれは若干の効果がないとは言いませんけれども、(毛利委員「大いに効果がある」と呼ぶ)本質的な問題として、泉さんが言っておることは、これは大臣もお認めになられるのじゃないかと思うのですが、その点についての見解はどうでしょうか。  それと、私の郷土の先輩ですけれども、毛利議員がうしろから大いに効果があるとおっしゃるのですけれども、私も、先輩議員の意見を実証づける意味において、ひとつ事務当局にお尋ねしたいのだが、この分離課税が貯蓄の上に――具体的に実証できるだけの貯蓄が、こういうふうに分離課税にしたからどういうふうにふえたかという、その実績をひとつ数字をもってお示し願いたい。号ういう実績がなければ、貯蓄はこれによってふえるのだといったって、これは抽象的な議論のやりとりになるだけであって、私は、その点については、少なくとも質問をする前にあれこれ調べて出きましたけれども、毛利議員のせっかくのやじ下すけれども、どうも過去の税制調査会のこの種のデータからも、そういう具体的な事実として貯蓄がふえたということは、遺憾ながら私は知らないのです。そういう点で、ひとつ事務当局のその種の条件を承りたいと思います。
  83. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 その関係につきましては、税制調査会の答申に数字的にも示されておると思います。泉長官もおそらくそれを引用されたのだろうと思いますが、私の記憶では、私もこのような問題は、常に国会で御論議がありましたので、検討させられたのでございますけれども、確かに、大きな意味においての貯蓄は可処分所得の増加によって増減することは当然でございます。それによるところの貯蓄の増加の大きいことは、三十九年の答申のとおりでございます。しかし、特別措置が全くこれに関係がないかというと、それはそうでもない。数学的に見まして、それによって貯蓄があった部分も私はないとは言えませんし、貯蓄者の心理というのはなかなかデリケートな面もございますので、そのあたりが特別措置にも反映している面もないでもない、このあたり、何と申しましても数字的には特別措置の効果を特別に取り出して、抜き出して評価することがむずかしいので、これだけによってどれだけの効果があがったかということは、数字的に立証できない、これは税制調査会も指摘しているとおりだと思うのでございます。
  84. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 大臣どうですか。
  85. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いま主税局長からお答え申し上げたような状況かと思います。こういうものは数字で立証しようとしたって、立証せいというのがちょっと無理なんじゃないかと思います。これは傾向で判断するほかはない。(「やめてみて、どれだけ減るかをみればいい、あまり減ったらまたやればいい」と呼ぶ者あり)そこで、いま私語がありますが、やめてみた場合に一体どうなるか、こういうことを非常に私は心配しているのです。非常に重大な経済状況のもとにおきまして、どうなるか非常に心配だというような措置をとること、これは問題じゃないか。私は、もともと白紙からスタートする議論とすれば、これは特例措置などというのをそう軽々にやるべきものじゃないと思う。しかし、一つ一つの秩序ができておるのです。その秩序の上に立っていまの貯蓄というような数字が出てき、しかもこれが銀行貯蓄についていえば、今年度のごときは昨年に比べて五〇%もふえよう、こういうような状態であります。そういう際に、どういう影響を及ぼすかというような措置、これはここで勇みたてられたからといって、簡単にお答えするというわけにはなかなかいかぬ。もう少し経済全体の動きを見た上で判断してまいりたい、かように考える次第であります。
  86. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は全くしろうとですけれども、「昭和四十年度の税制改正に関する答申及びその審議の内容と経過の説明」という去年出された税制調査会の答申を見ますと、いわゆる「利子所得課税の特例」というところに「資産所得に対する優遇措置についての長期答申考え方」で具体的に述べていますね。昭和二十四年から昭和三十八年までの個人の可処分所得がどのように推移をしたか、そういう所得の増大と関連して、個人所得における個人の貯蓄がどういうふうに変動をしてきたか、こういういわば可処分所得と預金の増大の関係、それとあわせて、ここでいま問題になっておる利子の分離課税あるいは源泉徴収あるいは非課税という税制がどういうふうに変わってきたかというデータを、十何年来のものを出しておるわけです。これによると、時間の関係で集約して申し上げますが、たとえば、昭和三十四年度は特例によって、いわば課税の面では圧縮をしておるわけです。預金者としては条件が悪くなっておる。それでも預金は伸びておるわけです。そして昭和二十八年――若干古くなりますけれども、昭和二十八年の例をとりますと、ここでは特例というものは拡充されて、いわゆる分離課税の条件がよくなっておる。しかしそのときは預金はうんと落ちておる。こういう十何年来のデータから、しかも相当なスペースをさいて税調がまとめとして出しておるものが、いわゆる可処分所得に預金というものは比例をしても、分離課税によってそういうふうに大きな変動を来たすものでないということを、税制調査会自体もこういうふうに権威あるものとして政府に答申をしてきている。私は去年も言ったのですけれども、税制調査会というものは、個々の面で私がメンバーを見たとき、こういう人はあまり好ましくないなという人がおるかもわかりませんけれども、全体的には、学者やいろいろなバラエティに富んだ専門家が一応税制調査会としてはメンバーに入っておると思うのです。そういうところが出してきておる答申を何か否定するような御答弁をなさることは、やはり客観的事実に反するのではないか、また、理論的にもこれは筋違いではないか。それで私は、今国会でも何回か大臣に対して質問をした中で、税調に関連することを大臣質問をしますと、やはり税調の結論が出ぬ先にと、こうおっしゃる。それは順序としてはそうでしょう。しかしながら、そういう大臣のお考えを生かすとすれば、やはり税調の意見というものはこれは尊重をしていく、全面的に認めるということは、尊重するということとは違う面がありましょうけれども、少なくとも、原則的には私は尊重をしていくという方向は政府としてはおとりになるべきだろう。私は、私の手元にある範囲の資料で見た場合に、いま大臣答弁になられたように、分離課税をやっておるから預金がふえるのだというようなことは、税調の結論としても言われてないのですが、これに対する見解はどうでしょうか。私は、そういう数字事務当局としても出せないということ自体が、これは客観的に、分離課税を認めることによって預金がふえるのだ、こういう政策目的を達成したということを立証できないと思うのですよ。やはりそれは数字的に立証できるものを出してもらわなければ、税調の結論として言っておりますように、先ほどの堀議員の意見ではありませんけれども、私は一ペんこれをやめてみてもいいと思うのです。やめてみて、ほんとうに減るということであれば、これは大臣なんかがおっしゃるように、この面の政策的効果はあった、こうなると思うのです。ですから、いままでの過去の実績の中からはそういうことを裏づけすることはできないと思うわけですが、その点はどうでしょうか。
  87. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私はただいま税調のいろいろな御意見を拝聴したのですが、この特別措置数字的にどういうふうにあらわれてきておるかということを判定することは非常に困難だ、こういうふうに思います。   〔吉田(重)委員長代理退席、委員長着席〕 これを、効果があったということを立証せい、これは不可能事を求めるようなものであると思います。しかし、私どもがはだに感じるところを申し上げますと、貯蓄の増強に相当効果がある、こういうふうに私自身は判断をいたしておるわけであります。また、配当の問題も同様に考えております。ですから、税の理論からいいますと、これは確かに特例ではありますけれども、非常に重要な経済の今日の段階におきまして、あえてこれが撤廃ということに踏み切る、その効果が一体どうなるかということをはっきりした見通しないままにやるということは、非常に冒険じゃないか、私はそういうふうに考えるわけです。ですから、経済界の推移等を十分見定めた上、この問題に手をつける、こういうことかと存じます。
  88. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 ただいまの答弁では、政策手段として租税特別措置を行なった、利子あるいは配当の実質的分離課税というものについてその有効な判定をすることはむずかしい、こういうことをおっしゃられたと思うのですが、私は、そういう判定をすることはむずかしいということになれば、これは租税特別措置を行なうこと自身の基本原則に反するような気がするわけです。あらためて初歩的なことを聞くようでありますけれども、租税特別措置によっていわゆる特別の措置をやることの理由はどういうものなんでしょうか。
  89. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは徴税の手続を簡素化し、国民に貯蓄意欲を促進させる、こういう意図に基づくものです。  それで、私は効果が測定できないと言っているのじゃない。効果を数字的にお示しすることは困難だ、不可能である、こういうふうに申し上げておるのであります。効果は確かにある。私ははだに感じておる、こういうことを申し上げておるわけであります。
  90. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私はもう一度最初に返ってお尋ねしますけれども、この利子及び配当の分離課税だけでなくて、租税特別措置を行なう場合の条件あるいは目的というものは、どういうものなんでしょうか。いまの御答弁を聞いていると、非常に事務的な、徴税手続がどうだこうだというようなことですけれども、租税特別措置を行なう以上は、こういう目的をもってこういう効果が上がる、少なくとも、マイナスの面があってもプラスになる、相殺関係からいってこうだというような基本原則的なものはあるのじゃないですか。それについて聞かしてください。
  91. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 これは租税一般原則に対する例外でありますから、そういう面のデメリットはあるわけであります。しかし、国として非常に重大な貯蓄政策の面において有効に働く、この貯蓄政策はきわめて重大な政策でありますので、多少のデメリットがありましてもこの特例措置をやらなければならぬ、こういう見解に基づくものであります。
  92. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 分離課税に焦点をしぼった答弁ですけれども、私が理解をしておる租税特別措置を行なう場合の目的というか、条件は、一つには、政策目的自体に合理性があるかどうかという点であります。これは特に堀議員から冒頭質問もありましたように、今日の日本税制のバックボーンともいうべき総合累進税体系に照らして考えた場合には、私はこの分離課税というようなものは基本的なたてまえに反すると思う。そういう点からいけば、これは政策目的自体の合理性には反する。ところが、大臣が強調されておりますように政策手段としての有効性の判定がある場合には、これは若干のデメリットがあってもやるのだ、こうおっしゃられるのですが、そうしますと、この分離課税の場合には、主として政策手段としての有効性の判定というものが有力な条件になっておる、私はこういうふうに大臣答弁から伺うわけです。そうしますと、有効性の判定とは何によってこれを裏づけるのか。客観的にわれわれ自身が納得する条件が出されないことには、有効性の判定を測定するものさしというものはないのじゃないですか。効果があったとかなかったとかを判定するには、分離課税にする前よりも、分離課税にしたために預金がこういうふうにふえた、そういう数字が立証されないことには、有効性の判定はできないのではないか、私はこういうふうに思うのですが、その点、どうでしょうか。
  93. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 貯蓄が伸びる要因というものが、税の問題だけでありますれば、税の要因だけで伸び縮みするものでありますれば、これは数字的にはっきり出てきます。しかし、貯蓄というものはそうじゃない。先ほどから話が出ておりますように、まず一番響くものは可処分所得が一体どういうようになるか、こういう問題です。またそのときの社会の雰囲気、レジャーだ、バカンスだというような雰囲気であれば、貯蓄の性向は非常に阻害される、こういうこともあると思うのです。さらに、通貨価値の安定の度合い、そういうことも考えなければならぬ。それが国民にどういう心理的影響を及ぼしているか、これも重大な問題だと思います。いろいろな要素が結集されて貯蓄趨勢という数字になって出てきておりますので、さあ、分離課税がその中で何%響いておりますというようなことは、これはちょっと申し上げることはできない。こういうことは私は御理解いただけるのじゃないかと思うのです。ただ、私が申し上げておることは、私どもが金融行政にタッチしておるという面からいうと、この分離課税というものは貯蓄の増強に強く働いておる、こういうふうに判断する、こういうことでございます。
  94. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これは主観的な、いわゆる心理的な感覚だけでこの種の問題を結論づけることは、政策課題を論議する、審議する態度としては、率直にいって、はなはだもって不見識だと思うのですよ。私ども言っておるように、これは全然心理的に効果がない、そういうことまではあえて極論をしていないので、いわゆる政策目的を達成する条件として、こういう分離課税という税の基本原則に反するようなことをやってまで、こういうものをやってもその効果というものは薄いじゃないか。しかも、具体的に、これはこういうふうに効果が出てきておりますといって立証するような条件さえ得られないものであれば、出すことができない程度のものであれば、税の基本体系に反するようなものはやめたらいいのじゃないか、こういうことを言っておるわけです。まあ、大臣はあれやこれやと言うのですが、重ねてお尋ねしたいと思うのですが、それでは、預貯金の増減に影響する要素は、あえて順序をつければ、可処分所得、それから社会的条件、たとえば社会保障が十分できていないから、個人の蓄積というか、預貯金によって老後の生活費用の一端にしよう、こういう社会保障が十分でないというような社会的な条件、あるいはいま言ったようなバカンスブームの時代とそうでないときの条件、こういうような社会的条件、あるいはいま問題になっておる税による効果、こういうふうに三つくらいに分けますと、その中で何が一番大きなファクターになり、順序からいってどういう順序になるでしょうか。
  95. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 やはり私は可処分所得が基軸だ思います。蓄積し得る所得がないというところに貯蓄が生まれるはずはない。あとの二つの問題、これはその程度によると思います。社会保障の条件が整わぬからと言われますが、その整わない度合いがどうであるか、あるいはレジャー、バカンスというようなお話ですが、その度合いがどうであるか。それらが税制特別措置に比べてどういうウエートになるか、そういうことかと思いますが、一番基軸はやはり可処分所得の問題だと思います。
  96. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 本会議のベルも鳴ったようでありますので、私はこのあたりで一時質問を留保します。  ただ、一つの区切りとして申し上げておきたいと思うのですが、いままでの質問のやりとりでは、可処分所得というものについての比重が必ずしもあるような御答弁ではなくて、政治的な御答弁に近いものが比重を占めておったように思うわけですが、さすがに福田さんだけあって、順序からいえば可処分所得、そして、表現の字句にとらわれるわけではないのですけれども、基軸ということを言われたですね。これはやはり理屈からいって、かなり福田さんらしいぺースに返ってきたと私は思うので、ここから午後の質問を始めたいということで、留保したいと思います。
  97. 三池信

    ○三池委員長 午後四時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後一時五十四分休憩      ――――◇―――――    午後四時十九分開議
  98. 三池信

    ○三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤田高敏君。
  99. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 午前中の質問に続きまして、例の利子所得の分離課税及び配当所得の実質的な分離課税の問題につきましてはいろいろ議論をいたしましたが、落ちつくところ、大臣の御見解としても、貯蓄そのものの奨励と申しますか、貯蓄が何によって一番大きく作用されるかという点については、可処分所得の増大することが、一番その影響力が大きいであろう、そうして、社会的条件なりあるいはこの税による影響ということも一つの要素として考えざるを得ないだろう、こういうことで、基本的なものの考え方というものについては、大方の意見が一致したと思うのであります。そういう点でお互い石で手を詰めたようなところまで問題を煮詰めるということは、それぞれの立場なりあるいは今日置かれておる諸条件を勘案して、なかなかむずかしい点もあろうかと思いますので、私は、この問題については、ここで最終的な意見集約を行ないまして、大臣の見解をただしておきたいと思うわけであります。  いわゆる可処分所得が増大することが貯蓄をふやしていく一番大きな要素になるだろう、こういう御認識について見解があらかた一致したわけですから、その方向に沿って、その認識の上に立って、午前中の大臣の御答弁でいえば、それを基軸として、今後この分離課税の問題については税調の答申案も十分尊重して検討をする、こういうふうに私としては理解をしたいんですが、そういう解釈で今後のこの問題に対するわれわれの意見を入れた善処を約されるかどうか、その点についての見解を承りたい。
  100. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 けっこうでございます。
  101. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 それでは、以上の点につきましてはこれで終わりまして、あと参議院との何か関係も国との関係であるやに承っておりますから、自余の問題につきましては、できるだけ簡単に集約して質問をしたいと思います。  大きく分けて、第三の質問点は、昨日、山田議員のほうから詳しく質問があった例の今回の改正にかかる企業の体質改善を促進する条件として、資本金一億円以上の法人に対してこの特別措置を講じていくという問題でありますが、これについては、私はきのうの質問を聞きながらどうしてもこれまた理解に苦しむわけであります。と申しますのは、政府は、今日の不況の性格については、いろいろな見方がありましょうけれども、俗にいわれておるひずみ是正、格差の是正、こういうものについては、その一つとして大企業と中小企業の格差というもの、これはやはり解消していかなければいかぬと思うのです。そういう点からいきますと、いわゆる設備の過当競争によってあふりを食って、そのあふりを食ったものは大企業以上に中小企業のほうが、見方によれば、非常に大きいんではなかろうか、というのは、大企業が設備を更新すれば、その下請け系列の中小企業もそれに見合った設備改善というものを行なわなければ、製品の面においても、系列下請け会社としての使命を果たすことができない、こういうことで、その基本は、程度の違いはありましょうけれども、やはり設備投資のあふりというものは中小企業も相似形の形で私は受けておると思う。そういう点からいけば、この種の第一の企業体質の改善の促進に大企業に対してこういう企業減税をやることが、はたして正攻法としての自己資本の向上策になるかどうかという点については、この間の私の質問の中でも触れましたように、これは非常に大ざっぱな把握のしかたでありますが、全法人の総資本が四十六兆円といたしますと、昭和二十八年から昭和三十九年までの約十年間に支払った法人税の額全部四兆円ほどぶち込んでも、その自己資本の比率というものは一〇%程度しか上がらない。したがって、今回改正をしておる程度のいわゆる企業体質の改善を税の面を通じて行なっても、結果として、その効果というものは非常に小さいのではないか、したがって、本来的な自己資本比率の向上というものは、もっとオーソドックスな企業経営なり経済政策を通じて行なうべきだ、私はそういう観点に立つわけです。そういう点からいけば、今回新たに追加しょうとしている企業の体質改善の促進という名のもとに、この借り入れ金あるいは買い掛け金がふえれば、そういうものが借り入れ金を返済しあるいは買い掛け金を支払うところの実績が上がれば、それに対して一定の減税をやるのだといろ点については、私はそう積極的な意味がないように思うわけです。そういうことをやるよりも、むしろいま言ったように、オーソドックスな形でこの企業の自己資本比率というものを高めていくべきであろう。しかし、これは一つの仮定でありますが、大法人に対してこの条件を適用するのであれば、やはり同じ法人組織である中小企業、同じ企業体であり、規模が違うだけでありますから、その共通条件としての減税は、大企業よりも、むしろ中小企業にこの第一項を適用すべきではないか。そうして、中小企業は、いわゆるここ二、三年来の倒産件数を見ましても非常に深刻な状態が続いておるわけですから、むしろ今回の税制改正に見られておりますように、いわゆる中小企業の体質強化として貸し倒れ引き当て金を大企業よりも二割ふやすとか、あるいは構造改善の施策としてプラスアルファの条件を大企業よりも多く見ていくとか、こういうことを当然なさるべきであって、その土台になるべきものは中小企業から全部剥奪してしまって、中小企業には今回の税制改正でいうところの貸し倒れ引き当て金を一般よりも二割程度上げてやる、構造改善の面について若干のプラスアルファを見てやろう、こちらで見ておるのだから土台になるべき共通条件については、これは大企業だけだ、これは私は非常に見せかけの税制改正だと思うのですよ。これは昨日もいろいろ質問がありましたが、この税制改正をして、大企業に第一項の条件を適用するのであれば、当然私は中小企業にも適用すべきであると思うわけですが、この点は、昨日に引き続いてくどいようでありますけれども、その結果をもう一度聞かしていただいて、ここでいま審議しておるこの法案がきょう成立するのか、委員会において可決されるのか、あすになるのかどうか知りませんけれども、私はやはりこういう委員会審議を通して、野党のまあまあもっともだ、これはかなり野党の意見といえども考えなければいくまいというものは、時間的に間に合うものはそこへやはり野党の意見を入れていく、こういう審議の経過というものが結果の中に生かされていく、こういうものでなければいかぬと思うのですが、その点に対して中小企業にこの条項を適用するお考えがあるかどうか、昨日までなかったとしても、きょうの時点でそういう方向に前進される御意向があるかどうか。(笑声)これは笑いましたけれども、実は内容としては非常に真剣そのもので質問をしておるということを申し上げて、御見解を承りたいと思います。
  102. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 御質問は二点あると思うのです。  一つは、今回の一億円以上の大企業に対する特例措置が意味がないのじゃないか、こういうようなお話ですが、私は自己資本の充実、会社経理の改善、こういう見地からいいまして、税だけが万能薬じゃない、これはそう思っているのです。大事なことは、企業家がそういう気がまえになることである。それから、さらに、資本市場なんかが整備されまして、自己資本調達の場がなめらかになる、こういうこと、とにかく、税以外の面においてなすべきことが多く、またそれが主軸をなす、こういうふうに考えておるのですが、いま会社の資本構成の改善という問題は非常に重大な問題であります。ですから、税の面においてもこれを刺激し、助成しよう、こういう考え方に基づくものでありまして、そういう考え方といたしましては効果を発揮するものであろうということを確信しております。  それから第二の中小企業との関係の問題でございますが、私は藤田さんのおっしゃられること、一つの理屈ではあると思います。思いますが、これは理屈倒れになる理屈である、そういうことに思うのです。あなたもしばしば言われておりますように、特例措置というものは、中小法人にはなかなか適用しにくい、これは大企業だけが均てんする、そういう傾向も現に、お話のようにあるわけなんです。ですから、ただいま御提案、御審議を願っておるような特例措置を小さい五十万もある法人全部に適用するということになると、やはり過去のような傾向を再び現出することになりはしないか、そういうふうに考えるわけであります。むしろ、中小法人に対しましては、もっと手直い、しかももっとわかりやすい方法はどうか、こういうことを考えるべきである、こういう考えになるわけであります。さような考え方から、最も中小企業にわかりいい法人税率を、大企業に比べまして特別に引き下げを行ないますとか、その他.貸し倒れ準備金なんかにつきましても特例を設けるとか、そういうようないろいろな配慮をすることにいたしたわけであります。そのほうがむしろ実際的である、さように考えた次第です。
  103. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は時間の関係でこれ以上深く論議しようとは思いませんが、この租税特別措置及び減収額の試算一覧表によりますと、今回の税制改正による一項目である資本構成の是正は約九十六億円になっておりますね。そして、中小企業貸し倒れ引き当て金の分は九十四億円、中小企業構造改善の準備金が一億円、この中小企業構造改善の準備金というのは、これは全体的にはさして大きな額ではないと私は思うのです。大臣がいま御答弁になっておられたように、実際の技術的か運営の面でむずかしい――むずかしいかむずかしくないかという論議は、きょう留保します。留保しますが、一応大臣答弁を前提にして考えた場合に、それがむずかしいというのであれば、この一億円以上の法人に対して九十六億円の減税を見込んでおるわけなんですね。それでは私は、これに匹敵するものを何らかの形で一億円未満の中小法人に適合できる条件というものを考えるべきではなかろうか。そうしないと、共通の土台になるべきものを中小企業だけはずしておいて、そうして部分的なものだけをやるのだというのでは、利は決してこれは理屈をこねようとは思いませんけれども、筋が通らないと思うのです。やはり共通の土台というものだけは、中小法人であろうと大法人であろうと、同じ基盤の上で考える。そうして中小のような弱小資本に対しては、なおかつ手厚いといいますか、プラスアルファの条件を考えてやるというのであれば、これは政府自民党の立場からいえば、それはそれなりに筋は立つけれども、この土台をはずしておいて、部分的な面だけで中小企業を見るんだというのでは、これは理屈に合わぬ。したがって、この資本構成の是正に見合う九十六億円程度のものは、別途中小企業関係に対して税の面で善処される御用意があるかどうか、その点についてお尋ねをいたしたい。
  104. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 内部資本充実のことだけに着目されておるようですが、私どもは中小企業と大企業との関係は、これは総合的に見なければならぬ、そういうふうに考えておるわけであります。総合的にごらん願えば、いかに中小企業に特別の配意をしたかということがはっきりと御認識できると思うのです。そのやり方も、また理屈だけの上に立ったことでなくて、実際的に中小企業のものに便益になるようにという配意もいたしておるわけでありまして、いかにそのバランスが中小企業に有利になっておるかということは、ただいま数字をもって主税局長から申し上げます。
  105. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 大筋は大臣のおっしゃるとおりでございますが、計数に当たって藤田委員に若干御説明を追加させていただきます。  大臣のおっしゃったように、私どもは、中小法人に対する今回の減税の重点を貸し倒れ引き当て金とか、あるいは同族会社の留保所得の引き下げ、あるいは構造改善準備金、これだけではなくて、税率にあることは大臣が申されましたが、その税率を大法人に及ぼす減税の効果と中小法人に及ぼす減税の効果を分けまして、この資料には出ておりませんが、分けてみますと、資本金一億円以下の法人につきましては、法人税の減収九百八十七億円のうち五百三十八億円となっております。そうしてまた一方、資本金一億円超の法人は四百四十九億円となっております。九百八十七億円の減税総額を一〇〇といたしますると、資本金一億円以下の法人の減税シニアが五四・五%でございます。一億円超の法人の減税シェアは四五・五%になっておる。ところで、これも昨日御説明いたしましたが、法人税の税収のうち、資本金一億円以下の法人が納めておるシェアは四〇%と考えていただいたらいい、一億円超の法人が納めていただいておるシェアは六〇%、したがいまして、このシェアから見ていただきますと、減税におけるシェアは中小法人のほうがふえたということで今回の中小法人に対する減税の利益を評価できるのではないか、かように考えております。
  106. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私はこの全体的な数字については若干の資料も用意いたしておりますが、時間の関係もありますので、これはきょうは留保いたします。ただ、私の考え方としては、なるほど、資本構成の比率是正の面だけでどうこう論じようとは私は思いません。あるいは法人税なり、その他全体的な租税特別措置の中に盛られておる全体的な条件の中でどうかという立場に立っておるわけですけれども、私は、この点は、きょうの段階では納得がいかないという立場だけを留保して、あす以降、この種の問題についてはそういう立場で納得のいくまで質疑を続行する――この法律案そのものというよりも、これに関連するようなことについては、今後時間をかけて私は納得するまで質疑をする、こういうことにして、次に進みます。  最後に、これまた同僚議員がけさ方も触れたところでございますが、物品税の問題であります。これは、私昨年も本会議で実は反対討論に立った関係で、昨年以来特に私は、この物品税を改正することに関連をして、物品税をこういう形に改正をするのであれば、その前に、間接税全体の問題として、よく大臣が言われるように、全体の問題として考えていく必要があるのではないかと思う。そうしますと、これまた釈迦に説法でありますが、砂糖、酒、物品税、たばこ消費税――たばこ消費税の場合はちょっと性格が違いますけれども、一応こういう間接税というワクへ入れて、税の所得階層別のいわゆる間接税の負担割合というものを見てみると、逆進性の一番強いのが、御承知のとおりたばこであります。これは課税最低限標準家族六十三万円で、月四万円というところを一〇〇にしてやってみますと、たばこ消費税のところが、所得一万円のところで三八七、三・八倍になっておる。その次が砂糖で、砂糖が二五二で二・五倍になっておる。酒は二三〇で二・三倍になっておる。物品税が一一四ですから、いわば一・一四倍になっておる。税の逆進性からいきますと、たばこ消費税を除くと砂糖が一番高いわけなんです。そして逆に、今度所得の多いほうを見てまいりますと、物品税というのは、大体五万円、六万円、七万円、八万円、九万円、十万円というところを見ますと、一〇四、一〇九、一〇九、一〇九、一〇四ということで、大体カーブが寝ておるわけですね。ところが、砂糖の例一つとりますと、十万円のところが六五になるわけですから、平均の一〇〇からはずっと下になっておるということで、カーブがこういうふうになるわけです。これはすでに統計数字にもあらわれてきておるところでありますが、私は、やはり今回物品税の改正を去年に引き続いてこういう形でやるのであれば、なぜこういう逆進性の強い砂糖なり、酒なり、そういうものについての検討というものがなされなかったか、そして、結果としてそういうものが物品税よりも優先してこの税制改正の中にあらわれてくるべきではなかろうか。そうしないと、さき方の質疑の中で大臣の一貫して言われておることは、部分的なことだけで論じたのではいかぬのだ、いわゆる税改正全体の中でと、こうおっしゃるのですね。そうすると、やはり私は、その論法からいけば、間接税の場合は、まさに大臣の御答弁を、理屈からいって、そのままお返ししなければいかぬということになると思う。その点について、こういう逆進性の強い間接税について手を触れなかったのはどういう理由なのか。私は、時間の関係で意見だけ先に申し上げて答弁をわずらわしたいのでありますが、私の考え方からいくと、間接税を改正をして合理的なものにしていくという前提で手をつける場合に、その条件というものは、一つには、国民の消費生活に非常に密着度の高いものを優先して考えるべきではないか。第一は、やはりいま言った税の逆進性の強い、そり返ったようなカーブをやはりなめらかなカーブになるような税の仕組みに改正をすべきではなかろうか、こういうふうに私は思うわけです。その点についての見解をあわせて承りたいと思います。
  107. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 直接税を財政運営の主軸にすべきかあるいは間接税を主軸にすべきかという議論もありますが、その辺は、私は程度問題だというふうに考えております。で、いま御指摘物品税類似の税が存在しているわけでありますが、それが逆進性が強い、これはお話のとおりでございます。そう思います。ところが、逆進性が強いたばこですね、あるいは砂糖にいたしましても、そういうものは税収の面、つまり財政運営の面から見ますると、なかなか手をつけにくい。ちょっといじっただけでも相当の額になるわけでありまして、国の財政という面もあわせて考えなければならぬ問題であります。そういうような問題で、税制の改正にあたっては、御指摘の点はこれは頭に置かなければならぬわけでございまするが、これをさて実現していくタイミングというようなことになりますと、なかなかそう簡単にいかない問題なんです。しかし、今後もお話の点は十分注意してまいりたい、かように存じます。
  108. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 私は、質問を終わろうかと思ったのですが、いまの答弁一つひっかかるのです。というのは、間接税について簡単に税率や何かをいじると、税収の面に重大な支障を来たすことがあるので、これはなかなかいじりがたい。それは、私は一言にしていえば、酒税なんかはそのワクへ入ると思います。これは御承知のとおり、直接税、間接税の比率割合からいって、直接税が五七・七%、間接税が四二・三%、この四二・三%の中に占める酒税の割合というのは一一・八%ですから、それはおっしゃる趣旨は考え方として半ば肯定できる面がある。ところが、砂糖消費税の間接税の中に占める割合というのは〇・九%なんですね。ところが、物品税のほうが三・九%ですから、大臣のおっしゃるなにからいうと、国の財政収入にまつわる条件からいけば、物品税が約四倍なんです。四倍のものに手をつけて、それよりも四分の一であるこの砂糖消費税に手がつかないということは、いまおっしゃる御答弁では、私はちょっとそうですかというわけにはいかない。ですから、その点については、私は、砂糖のように非常に国民生活にも毎日毎日関係しておる税でしょう。そういうものは、物品税の自動車だ、やれ、ステレオだとか、テレビの何々受像機だとかというものよりも、やはり国民生活にもっともっと密着したようなものを重点的に、しかも逆進性の強いものについては考えていくべきじゃないか。そうしないと、いまの大臣答弁どおりでは、このデータからいって、これは私はちょっと納得ができない。
  109. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、砂糖は一般国民に非常に広く使用されておる、こういう品物でございまして、少しくらいの税率の引き下げでは、これはそうたいした影響がないのであります。そうしますと、砂糖に手をつけるというと、どうしても大幅にしなければいかぬ。そういう際のことを考えますと、なかなか簡単に手がつけがたい。さらに問題は、砂糖には特別の問題があるのです。国内産との問題ですね。あるいは、関税政策との関係、そういうような問題がありますが、税の一点に限って見ますると、これは一人一人の砂糖消費税額、これは手をつけるなら相当大幅につけないと解決にならぬ問題だ、そういうことを思い浮かべながら申しておるわけであります。
  110. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 これまた中途はんぱになりますが、時間的な関係がありますので、私の意見を出しっぱなしの形で、この問題も将来の論議の問題として残していきたいと思います。  最後に、物品税の今回の改正でありますが、今回のような改正のあり方そのものについては、私ども社会党としては異論があるわけですけれども、一応こういう改正をする場合に、けさ方の只松委員質問ではないけれども、私は昨年も触れたのですけれども、マッチなんかに税金がかかっておるかどうかということを国民は知らぬわけですね。私は知らぬと思うのですよ。そういうものであっても、とにかく取れるところからは何ぼでも取っておけ、いわば、そういう半ば惰性に近いような考え方が残っておるのじゃないか。ここまでの物品税の改正をおやりになるのであれば、マッチのようなものはやはりなくしていく、それと第二種になるのですか、飲料用の嗜好品、いわゆる果実水とかコーヒーシロップとかあるいは紅茶シロップ、ラムネ、こういうものについては十円か二十円に五%くらいなみみっちい税金をかけるようなことをしないで、大大蔵大臣ともあろうものが、今度改正するときにはこんなものくらいはのけてしまう、こういうくらいに私はおやりになるべきだと思うのですが、どうですか。もうこれで質問を終わりますけれども……。
  111. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 いまマッチに税がかかっておる、これに国民が気がつかぬというところにまた味があるのであります。そういうような課税こそが一つの目のつけどころでもあろうかと思います。しかし、一面、あなたのおっしゃるような理屈もあるわけであります。それらは今後の検討問題として預からせていただきたい、かように思います。
  112. 藤田高敏

    ○藤田(高)委員 若干時間を超過しましたが、私の質問はこれで終わります。
  113. 三池信

    ○三池委員長 平林剛君。
  114. 平林剛

    ○平林委員 だいぶ時間も経過していますから私は簡単にやりますけれども、私の言うことになるべくいい返事をしていただければ早くやめます。いずれにしても、私の取り上げたいのは物品税の問題についてでございます。これはきょうの議論だけでは不十分ですから、いずれ税制委員会を開催したときには、その小委員会にも大臣御出席をいただいて、そこで十分議論を深めたいと思うのです。ぜひ委員長にもそういうお取り計らいをしてもらいたいと思うのです。それが了解されれば、きょう私二時間くらいやる質問を十分の一かそこらに短縮をいたしたいと思うのですが、委員長の御見解をちょっと承りたいと思います。
  115. 三池信

    ○三池委員長 平林君の御意見、私においてもできるだけそのようにいたしたいと思います。
  116. 平林剛

    ○平林委員 そこで、物品税の問題について端的に伺いますが、今度の物品税の軽減の目的は、いろいろ理由書を読んでみますと、健全な消費需要の喚起であるとか、あるいは国民生活水準の向上に密接に関連する課税物品で、その消費の拡大が輸出振興に寄与すると考えられるもの、あるいはその他の名目がつけられておるわけですけれども、私、これをほんとうは個別に区分して、一体これはどうなのかと言いたいところなんです。言いたいところなんだけれども、おそらくこれを品目別に区分をして議論をしてみますと、方々に矛盾が出てくる、私は、今度の改正案はそういう点で、はなはだ遺憾な点が多いと思うのであります。特に、この課税の廃止をされました室内装飾用品、茶道用具、飾り物、囲碁、将棋用具、皮革等の衣服類、いろいろございますが、私たちとしては物品税全般を廃止せよと言っておるのですから、方向としては間違いありません。しかし、たとえば囲碁、将棋用具、これは課税が廃止になった。しかしデパートに行きましても、あるいは専門用具の店に行きましても、品物によっては三万円あるいは五万円もするような囲碁の盤があるわけですね。私も囲碁はきらいなほうじゃございませんから、その面については、方向としてはこれはよいなあと思うけれども、そう幾つも買えませんし、どうも五万円も十万円もするような囲碁の道具をそろえるわけにはいきません。しかし、今度は囲碁、将棋、あるいは茶道用具でも、かなり高価なものまで免税される。その一方において、たとえば化粧品のようなものは、女性にとってはある程度生活必需品的なものでございます。また、子供たちにとりましては、オルガン、ピアノというようなものについては、かなり高い税率が課せられておる。こういう点は、いかにその提案趣旨をいろいろな形で好意的にながめてみましても、いろいろな矛盾があると思います。大蔵大日はこういうことはお認めになっていただけると思いますが、いかがですか。
  117. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 物品税というものは、御承知のような多数の品目に課税されるものでありますから、したがって、その一つ一つに統一的な基準というものをつくることはなかなかむずかしいと思うのです。そういう面で一つのサイドからおのおのの品目をながめてみると、どうも不均衡感というようなものが感ぜられるのではないかというふうに存じます。しかし、全体として立案にあたりましては、なるべく筋の通るように、つまり、先ほどから平林さんからもお話がありますように、あるいは消費需要の喚起というような問題あるいは需要者の負担軽減というような問題でありますとか、物品税軽減による効果を総体としてながめておるわけでありまして、いろいろの感触もありましょうが、大蔵省としては最善の努力はしてみた、こういう結果がただいま御審議をいただいておる案でございます。
  118. 平林剛

    ○平林委員 大蔵省としては最善の努力をした、しかし総体的に見れば、なるべく理屈に合うようにしておるけれども、その中には精査していけば矛盾があるかもしれない、そういうことは認めますね。
  119. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 それは一つのサイドだけから見るといろいろな感触が出てくると思います。しかし、全体としては矛盾のないようにということで最善を尽くしておる、こういうふうに御了承願いたいと思います。
  120. 平林剛

    ○平林委員 大蔵省も大蔵大臣も神ならぬ身でございますから、私がこれから本来ならこまかく展開すれば矛盾にお気づきになると思います。しかし、これは別の機会にやりますが、やはり大蔵大臣も、絶対完全無欠なものであるとはよもやお認めにはならないと思います。首を振っておる状況から見ると、その答弁を得たということに了解して話を進めます。  そこで、今回のこの課税を廃止したほかに、この課税最低限を引き上げたり、あるいは新設をされた品目がございます。けさ方政府のほうから、大蔵省から資料提出がございまして、私それを通読してみたのでございます。ところが、品名で、貴石製品等が、現行免税点が一万円であったのが今回一万五千円に引き上げられました。また、真珠製品等は五千円であったものが一万五千円に引き上げられました。貴金属製品等も五千円から一万五千円に引き上げられました。べっこう製品等も五千円から一万五千円、しっぽう製品も同じく一万五千円、毛皮製の衣服類も一万五千円、毛皮製のえり巻き類等は一万円、いろいろ改正案では免税点が引き上げられております。全部読み上げるとたいへんでございますけれども、ただいま読み上げましたのが大体比率にして一・五倍、あるいは貴金属製品、真珠製品、べっこう製品等は三倍に引き上げられたわけであります。ところが、たとえて例をあげますと、掛け時計は、従来現行免税点が三千五百円であったのが四千円に、これは率といたしますと一・四倍です。腕時計、懐中時計は三千二百円が三千五百円に、率にいたしますと一・〇九倍であります。電気置き時計が二千円から二千五百円、これは一・二五倍、置き時計が千七百円から二千五百円、これは一・四七倍、時計の側が五百円から六百円、一・二倍、つまり、私の言いたいところは、真珠、貴金属、べっこう、しっぽう等の購買数といいますか、求める需要者が比較的少ないという側のものが比率にして三倍程度引き上げられた。ところが、腕時計とか置き時計とか、こういう家庭に必要な品物については非常に率が少ない。私はそこから考えると、この比率が非常に混乱をしておる。たとえば、昭和三十七年に物品税が改正のときに免税点などいろいろな面でいじられた。それから、その後の物価上昇とか、いろいろな材料の値上がりとかを考えまして今回の改正免税点がつくられたと思うのでありますが、それにしても、非常に幅があり過ぎる。こういうところには一つの理屈はおそらくつくであろうと思いますけれども、しかし、私どもが一見したところ、非常にバランスにおいてくずれている点があるのではないか、こう思うのです。私はきょうこれで質疑応答すると時間を食いますけれども、こういう点も問題があると思うのです。この間も私ら、子供たちがやっと中学を卒業して高校へ行くようになった。高校の進学祝いに時計でも買うてやろうと思いまして、時計屋さんをあさってみると、三千円じゃ子供が高校に入ったお祝いとしてやるにしても、そうりっぱなものとは言えませんよ。大蔵大臣だって、その点は買いものをなさるときはおわかりになると思うのですが、三千円くらいの時計では――やはり子供の高校進学の祝いくらいには、はなむけとしてもうちょっとやりたいという気持ちがするのです。ところが、この高校進学祝いに税金が取られる。一方においては、書画骨とうを例に出すわけではないのですけれども、何十万円しても税金は取られないですよ。これは芸術を振興するためだという理屈はありますけれども、何百万円しても、極端なことをいえば物品税はないのです。それから、いま例に引きましたお茶の道具であるとか、あるいはまた囲碁のようなものにつきましても、これは十万円しようとも物品税課税廃止になる。高校進学のお祝いにする子供の腕時計が三千円からすでに物品税を取る。こういう点などは、免税点を引き上げた率の違いとともに、内容的な比較対象でもずいぶん矛盾があると思うのです。こういう点も、私は大蔵大臣にきょうは率直に認めておいてもらいたいと思うのですが、いかがでしょう。
  121. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 まず、立案者である主税局長からお答えいたします。
  122. 塩崎潤

    ○塩崎政府委員 先ほども大臣がおっしゃいましたように、多種多様の物品を対象といたしております物品税でございますので、各種の考え方がまた出てまいります。平林委員のおっしゃいました免税点にいたしましても、その背後にありますところの担税力理論にいたしましても、これはまた私は一つ考え方だろうと思います。しかしながら、御存じのように、ここの委員会におきましてもずいぶん御議論があり、また、これを承ってきて、参考にして改正案をつくってまいったのでありますが、間接消費税という宿命からきますところの課税方法、これが免税点あるいは税率等に非常に影響せざるを得ないというところにあると思うのでございます。確かに、おっしゃるように、高級なる製品は大きな担税力があることは私は当然であろうと思うのでございますが、これを業者を通じまして――その業者が非常に零細な業者であるような場合にはトラブルが多いし、また、その状況がたまたま転嫁の能力がないということになると、一種の事業税になるおそれがあるのではないかというような御批判が常に税制委員会において行なわれました。こんなような意味から、消費する物品の性質もさることながら、間接消費税という宿命からきます、徴税方法の宿命からきます業者の苦痛を考えまして、免税点あるいは課税廃止あるいは税率といった点に考慮を用いざるを得ないというのが現在の物品税の宿命だろうと思うのであります。そんなような意味で、先ほど御指摘であり、また例示だと思いますが、貴金属製品あるいは真珠、べっこう等の製品につきましても免税点の幅が大きい。さらにまた、五千円から一万五千円と三倍にいたしましたのは、徴税といいますか、トラブルの多いことを避ける意味におきまして、小売り業者が、これは真珠であって、こちらの免税点は五千円、こちらは貴石であるから一万五千円というふうに区別いたしましても、なかなかそれがむずかしい場合が出てまいります。こんなような関係で免税点を統一し、トラブルをなくそうとしたのが第一点であります。それから第二には、こういった製品は非常に値段の幅も広い。そういたしますと、いままでの免税点でいいかどうかというような議論も出てまいりますので、こういうふうに上げたのでございます。率直に申しまして、消費金額の大きさであるとか、消費する物の性質において、消費者から税金税務署に直接納めていただくようないわゆる支出税みたいなものができますれば、これはまさにこういった宿命ではないかと思います。しかしながら、現在まだそういった徴税方法はとれませんのでこんなような関係になる。一方、そんなような間接消費税のたてまえから見ますと、比較的大企業の製造する物品につきましては、免税点が低くてもトラブルはそんなに起こらない。もう一つは、たとえば時計のお話がございましたが、時計となりますと、やはり大量生産品でございますから、値幅は大体均一近い幅で出そろっております。百万円のものから一万円のものというような値幅はないのが大衆製品でございますし、また、工業製品の特色でございます。これは手工業品と違った価格の宿命を持っておると思うのでございますが、そんなような意味で、値幅も免税点の上げ幅も少なくいたしましたのは、少し上げますことによって減収が大きいといったような結果が出てまいります。お話の時計の免税点は、種々の点を考慮いたしまして考えておるのでございますが、何ぶん減収の影響も大きい、しかし、現在のところで三千五百円という免税点ならば、小売り価格八千円のところまで課税にならない、こういうこと、買われる方の買い方一つでもございましょうけれども、高校卒業生程度のものはどの程度になるか、人によって違いましょうし、一がいに言えませんが、まず八千円程度まで腕時計が年税となれば、平林委員のおっしゃるような点は、相当救われるのではないか、こんなような考え方でおるわけでございます。一例でございますが、免税点についての考え方を申し上げた次第でございます。しかし、これはいろんな問題点があり、見方もございます。今後また間接税のあり方といたしまして検討してまいりたい、かように考えております。
  123. 平林剛

    ○平林委員 私はたくさん言いたいことはあるんだが、この際は協力してやめますけれども、たとえば貴石製品等、こういうものについても改正案免税点が引き上げられた、その率が高いからいけないというのではないのです。いまどきこれからお嫁さんをもらうというような若い人が指輪を買うときに、一生に一度のことだからひとつエンゲージリングを買おうかいといったときに、一万五千円から税金取られるという事態は、今日の経済的な観念からいくと、必ずしも上げ過ぎたということではないですよ。いまどんなサラリーマンでも一生に一度自分の伴侶になる女性に対しては、ふだん月給安くても二万円や三万円くらいのものをひとつ買うてやろうという気になる。鼻の下は長くなくても、そういうものの物品税を取るなと私は言いたいんだ。高校進学の子供のお祝いの腕時計にも税金を取る、また、これからお嫁さんをもらうという新婚の、この神聖なしるしであるところの指輪にも今日二万円や三万円程度でもうすでに物品税を取るということは、必ずしもいい税制とは言いがたいということです。これは全国のこれから結婚する人のためにも私は大いに強調しておきたいと思うのですけれども、マッチから指輪に至るまで今日の物品税というものは、決して国民大衆にとってはいい存在ではないのですよ。それで同じ総ギリたんす、今度は免税になったんですよ。総ギリたんすに課税をしないということにするなら、どうですか、二万円や三万円のエンゲージリングくらいは税金取らないくらいのいきなところを政府は見せてやってもいいんじゃないか、こういうことなんです。いろいろ言いたいことはあるけれども、とにかく、大蔵大臣も今度の物品税の改正の中には拙速主義ということは認めてもらいたいのですよ。有能な大蔵省並びに大蔵大臣、またこれを実際に動かした有能な政治家の活躍も知っています。知っていますけれども、遺憾ながら拙速主義ということを免れることはできないのではないかと思うのですね。この拙速主義を適当な機会に直す必要が私はあると思うのです。きょうは私は全部に触れて、もっと大臣の理解も得られるような具体的なことを全部は申し上げることはできませんでしたけれども、その批判は免れることはできないのですよ。そこで、税制調査会では、こういう物品税については一度いじったら五年くらいいじるなというようなことを言うていますけれども、私はこの問題に関する限りは、拙速主義の弊というものはすみやかに調整しないと、いろんな面で矛盾があるから、この点については、ひとつ大蔵大臣が前向きで善処する、大蔵大臣よく言われますけれども、私はその程度考え方が政府としてもほしいと思うのです。これをお答えいただいて、私の質問をやめます。
  124. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまは情味あふれる御意見を拝聴いたしました。今後の税制運営上重要な参考にいたしたい、かように存じます。
  125. 三池信

    ○三池委員長 堀昌雄君。
  126. 堀昌雄

    ○堀委員 今回の租税特別措置法の第六十一条の規定についての改正の部分がございますので、あわせてこの六十一条の規定の問題についてちょっとお尋ねをしておきたいと思います。  実はこれまで農協等に対する特例といたしましては、当初再建整備関係法律といたしまして昭和二十八年に制定をされまして、その後消費生協につきましても、二十九年の四月にこの六十一条の適用を受けるという経過になっておったわけでありますけれども、三十五年の三月をもってこれらの適用が一応廃止になっておるわけでございます。ところが、現在、御承知のように、六十一条によりまして、昭和三十九年から四十四年の三月三十一日までは、農業協同組合をはじめといたしまして、各出資の組合につきましては、その留保所得につきましては二分の一を非課税とするという規定が設けられておるのでありますけれども、その後消費生活協同組合等につきましては、この特例から排除をされたまま今日に至っておるわけでございます。私どもは、ものの性格上きわめて同一の状態にあるものでありますから、これらの課税についての配慮をお願いいたしておりましたし、昨年は参議院の大蔵委員会において、租税特別措置法の改正の際、附帯決議として「租税特別措置法第六十一条の規定の適用対象に、新たに消費生活協同組合等を加えることについては、政府は税制調査会に諮って必要な措置を講ずべきである。」こういうような附帯決議もついております経緯にもかんがみまして、この際、ぜひひとつこれらの問題について、消費生活協同組合の適用については政府として考慮を払っていただきたい、かように考える次第でございますけれども、この点について、ひとつ大蔵大臣の見解をお伺いいたしたいと思います。
  127. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいま堀さんから御指摘の問題、これはいろいろのいきさつを経てきておる、そのことも承知しておるのでございます。また、参議院で決議があったことも承知しております。その決議に基づきまして、税制調査会の意見も徴しております。ところが、いまこの同種の組合、農業協同組合、森林組合または商工組合、それらはそれぞれの基本法というものに基づきまして、特に特例を設けておる。そういう体系でない生活協同組合、しかも、その実態が、ただいま申し上げましたような、三つの組合におきましては、この組合員というものが非常に制限的に活動をしておるわけです。ところが、消費生活協同組合は協同組合員はもちろんありますが、員外に対しまして活動をするという面もあるわけであります。そういうようなことを考えますときに、一般中小企業との摩擦、そういうことも考えておかなければならぬ問題、そういうようなことで、税制調査会におきましても消極的な意見になっちゃったので、参議院の御決議ではございますけれども、今回この改正には着手しなかった、こういうことに相なるわけでございます。しかし、堀さんその他から熱心な御要望があることはよく承知をいたしております。また、御意見の中にも一面の理由なしとしない、こういうふうに考えておるのであります。政府としては、すみやかに検討の上、善処する、かように考えております。
  128. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  129. 三池信

    ○三池委員長 これにて両案に対する質疑は終了いたしました。     ―――――――――――――
  130. 三池信

    ○三池委員長 これより両案を一括して討論に入ります。  通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君。
  131. 山田耻目

    ○山田(耻)委員 物品税法及び租税特別措置法の一部を改正いたします質疑がただいま終了いたしたのでありますが、われわれ日本社会党は、三月三日の本会議をはじめといたしまして、きのう、きょう、十有余時間にわたりまして質問を行なってまいりました。法案の持つ内容の矛盾点や問題点を明らかにいたしまして、是正を求めるべく旦体的な指摘をまじめに行なってきたのでありますが、まさに木を見て森を見ない、大企業ありて人なきがごとき、頑迷固陋な政府の方針、施策を改めさせることができませんでした。多くの国民大衆のためにまことに遺憾千万に存ずるのであります。負担の公平を原則とする税制のたてまえからいたしまして、全く本法案はその体をなしておりません。時限立法でありながら、古いものは十有余年にもわたっておりまして、法目的からも完全に逸脱をし、すでに既得権化されておるものが数多く指摘できるのであります。政府は税制調査会の答申を生かされて、わが党の主張もまた取り入れられまして、廃止、調整の措置を緊急にとられて、特別措置の持つ本来の法精神にすみやかに立ち返られることを強く求めてやみません。  特に、内容の一端に触れてみますと、利子の分離課税配当所得の控除につきましては、総合累進課税を規範とする税制のたてまえにももとっておりますし、また、国民各層の納税道義にも照らし、看過されるものではございません。大蔵大声は、貯蓄の奨励という抽象的な表現で目的意識的に問題をすりかえられておられるのでありますけれども、貯蓄奨励項目の中で、千四百億円に及ぶ減収額のうち、四五%、六百三十億円が高額利子所得者や配当所得者に対する利益の保証ではございませんか。経済構造の生産点で生産に取り組むことが、国を繁栄させる大切な任務と信じ、生活をささえる唯一の手段であるがゆえに、命をかけて汗とあぶらで働いておる勤労国民に対しては、標準世帯で六十三万円から税金をかけ、遊んで暮らす利子配当所得者の人々に対しては、二百四万円まで課税をしないという本特別措置は、勤労国民の勤労意欲も完全に失わせてしまう許しがたい悪法だということができるのであります。税調の答申も、国民に対しての貯蓄奨励は、国民全体の可処分所得を増すことに重点を置いて、所得減税第一主義をとれと述べておるのであります。政府為政者は国民の声にしっかりと耳を傾けて、天を仰いで恥じない行為をとるところに、政治にある者の大切な哲学が存すると思うのであります。すみやかに撤回を求めたいと存じます。  次に、物品税についてでございますが、初年度二百六億円の減税に対しましては、相次ぐ物価の高騰に対処する安定のための一助として行なうと言われておりますが、最終消費者である国民に結びつくにいたしましては、その方法、質、量ともに多大の疑惑を持たざるを得ません。税制上から措置される大蔵省の立場も、業者指導を行なう通産省も、消費者を守る企画庁の態度も、確信あるものとは思えません。むしろ、免税点の引き上げを店頭指導で強調しようとすれば、販売価格の表示方式となり、結果として小売り価格をつり上げることになりかねないのであります。まさに、もろ刃のやいばになる危険すらあるのでございます。われわれは、今日まで大衆課税となる品目については強く撤廃を求めてまいりました。免税点の大幅な引き上げも強く主張してまいったのでございますが、受け入れられることになりませんことはまことに遺憾に思います。  きわめて簡潔でありますが、以上申し上げましたように、本二法案の改正につきましては、どう考えても賛意を表するわけにはまいりません。ここに、日本社会党を代表して、明確に反対の立場を表明いたしまして、反対の討論にかえたいと思います。
  132. 三池信

    ○三池委員長 竹本孫一君。
  133. 竹本孫一

    ○竹本委員 私は、民社党を代表いたしまして、ただいま議題となりました二つの法律案につきまして、租税特別措置法の一部を改正する法律案に対しましては反対、物品税法の一部を改正する法律案につきましては賛成の討論を行なわんとするものであります。  まず、反対の理由を申し上げます。  第一に、特別措置そのものについては、根本的に再検討をすることが必要であると思われます。租税特別措置は、申すまでもなく、特定の政策目的を実現するための誘因手段として租税の軽減免除を行なうものであり、したがって、基本税制において考えられている租税負担公平の原則を大なり小なり犠牲にしなければならぬという性格を宿命的に持っておるものであります。長期税制の答申においても、このような考え方から、租税特別措置については、整理縮減の方向をたてまえとすべきであり、政策目的実現のために他に適当な手段が見出せない場合に限ってこれを設けるべき旨を述べております。特別措置による減収額は、三十六年度当時千百億円程度であったものが、四十一年度には二千二百二十億円と見込まれておりまして、わずか五年の間に倍増いたしております。しかも、その内容を見ると、利子所得及び配当所得の分離課税及び税率の軽減や少額貯蓄利子の非課税等、貯蓄の奨励を名目とする軽減措置が圧倒的に高いウエートを占めておるのであります。のみならず、これらの恩典は、主として高額所得者、大口預金者に利用せられているのが実情でありまして、一般庶民に対してはこの特別措置がどれほど貯蓄意欲を刺激するか、その効果ははなはだ疑わしいのであります。真に貯蓄の増強を目途とするならば、むしろ、先ほども言われましたように、個人可処分所得の増加や、物価安定をはかることが先決であると考えるものであります。  第二に、今回の改正が、企業の体質改善、特に中小企業の体質強化に重点を置いて措置されたことは一応認められるのでありますが、しさいにこの内容を検討してみますと、たとえば、資本金一億円以上の法人が増資、内部留保の増加、借り入れ金の返済等によって自己資本比率を向上した場合には、その向上の度合いに応じて法人税額の二%ないし一〇%に相当する税額控除を行なおうといたしておりますが、わが国における法人数六十五万のうち、一億円以上の法人はわずかに四千九百にすぎません。これは全体の〇・七五%であります。しかも、資本構成割合を見る場合に、借り入れ金、買い掛け金、その他これらに準ずる債務のうちから社債を除くことになっております。一般の通念からすれば、社債は明らかに長期債務の性格を持つものと考えられ、これを除くことは納得がいきません。また、社債を発行し得る会社はきわめて少数の大企業のみでありますから、今回の改正がそれら少数の大企業にとって特に有利となり、したがって、それだけ中小企業とのアンバランスをかえって増大せしめるものといわなければなりません。要するに、われわれは、利子及び配当に対する課税上の特例は、一部の高額資産所得者を不当に優遇するものであって、その弊害ははなはだしいものがあると考えられますので、これらの特例は、適用期限の到来を待って全面的に整理することを主張してまいりました。租税特別措置は、重ねて申せば、負担公平の原則租税の中立性を阻害し、総合累進構造を弱め、納税道義にも悪影響を及ぼすなど、多くのデメリットがあり、しかも、とかくそれが長期化し、既得権化する傾向を持っております。  以上申し述べました観点に立って、私は、本案に対し、反対の意見を表明するものであります。  最後に、物品税法の一部を改正する法律案につきましては、税制調査会の答申においては、特にその改正を提案してはいなかったものでありますが、現在の経済状況のもとにおきまして、健全な消費需要を喚起することの必要性や、輸出の振興、中小企業の育成等の立場から考慮いたしますならば、物品税課税廃止、免税点の引き上げ、税率の引き下げ等によりまして、税負担の軽減、合理化をはかる今回の措置は、不十分ながら一応適切な措置であると認められます。今回の改正に伴う減収額は、初年度二百八十七億円、平年度三百四十七億円程度でありますが、われわれは、将来物品税を廃止することを理想とし、さしあたっては生活必需品についての課税を全廃することを主張いたしておりますので、幾ぶんでもその方向に進む改正として、今回の改正には賛意を表明するものであります。  以上、簡単ながら、私の討論を終わります。
  134. 三池信

    ○三池委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより順次採決に入ります。  まず、物品税法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  135. 三池信

    ○三池委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  次に、租税特別措置法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  136. 三池信

    ○三池委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました両法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  137. 三池信

    ○三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  138. 三池信

    ○三池委員長 次会は、来たる二十九日午前十時より理事会、午前十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後五時三十四分散会