運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-03-23 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第25号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十三日(水曜日)    午前十時十一分開議  出席委員    委員長 三池  信君    理事 金子 一平君 理事 原田  憲君    理事 坊  秀男君 理事 山中 貞則君    理事 吉田 重延君 理事 平林  剛君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    押谷 富三君       木村 剛輔君    小山 省二君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       羽田武嗣郎君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    村山 達雄君       毛利 松平君    山本 勝市君       渡辺 栄一君    渡辺美智雄君       小林  進君    只松 祐治君       野口 忠夫君    日野 吉夫君       平岡忠次郎君    藤田 高敏君       山田 耻目君    横山 利秋君       春日 一幸君    竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁国         民生活局長)  中西 一郎君         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主税局長)  塩崎  潤君         大蔵事務官         (関税局長)  谷川  宏君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         国税庁長官   泉 美之松君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      赤澤 璋一君  委員外出席者         国税庁次長   中嶋 晴雄君         大蔵事務官         (国税庁間税部         長)      松本  茂君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 三月二十三日  委員小山省二君、田澤吉郎君及び谷川和穗君辞  任につきその補欠として稻葉修君、池田正之輔  君及び内海安吉君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  委員池田正之輔君稻葉修君及び内海安吉君辞  任につきその補欠として田澤吉郎君、小山省二  君及び谷川和穗君が議長指名委員選任さ  れた。     ————————————— 本日の会議に付した案件  関税定率法の一部を改正する法律案内閣提出  第五九号)  関税暫定措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第六〇号)  関税法等の一部を改正する法律案内閣提出第  七二号)  関税法等の一部を改正する法律の施行に伴う関  係法律整備等に関する法律案内閣提出第一  〇三号)  物品税法の一部を改正する法律案内閣提出第  五〇号)  租税特別措置法の一部を改正する法律案内閣  提出第八五号)      ————◇—————
  2. 三池信

    ○三池委員長 これより会議を開きます。  物品税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。山田耻目君
  3. 山田耻目

    山田(耻)委員 最初に、租税特別措置に関しまして質問申したいと思うのであります。さきの本会議におきまして質問をいたしたわけでございますが、わずかな時間でありますし、また、大臣答弁も、そういう意味合いで十分掘り下げたお答えがいただけなかったという状態でございますので、大臣はきょう時間が十分ございませんようですから、最初一つだけ大臣にお伺いをいたしまして、あと、担当の局長なり次官のほうからお答えいただいたらと思うのであります。  日本税制全般につきまして、今日までわが党の議員各位から、持っておる不合理性、公平の原則を失しておる立場からの追及、こうしたものが数多く展開されてきておるわけでございますが、所得税にいたしましても、法人税にいたしましても、国税として徴税をしていきますたてまえでございますので、比較的議論にもなりやすいし、国民の目にも容易に映るものでございます。しかしながら、租税特別措置に至りましては、国民に映ずる度合いがきわめて薄うございます。課税所得として課税されます以前の作業がほとんどでございますだけに、国民の関心を呼ぶ度合いも薄いのでありますが、しかし、税体系全般から見てまいりますと、租税特別措置というものは、そのときどきの経済目的あるいは政策目的、こういうものを達成するためにとられてまいります減税措置でありますだけに、ある意味では、政治というものと特定の企業というものが容易に結びついていく税制の持つねらい以外のものを持っておりますために、それだけ、私はきわめて重要視をいたしておるわけでございます。税制の上から見ますと、公平の原則を害し、片側から見ますと、企業政治勢力の結合というものが容易に行なわれていくという不純さを持っておるように思われてなりませんだけに、国民大衆一般の目に触れにくい減税措置であるし、そういう目的意識的なものがありますだけに、この際、租税特別措置については、もっと核心に触れた答弁をいただきたいという気がいたすわけでございます。しかも、今回の大幅減税といわれます平年度三千六百億円、初年度二千四百億円の減税がそれを意味しておるのでありますけれども租税特別措置において行なわれる減税額も二千二百億円の多きに達しておるのであります。そうなってまいりますと、税の比較論からいきますと、きわめて大きな影響を持っておる、ウェートを持っておるということがいえるのであります。しかも、この租税特別措置の対象となっておる企業というものは、もちろん日本には六十余万の法人企業がございますけれども、そのうちの八%程度、一億円以上の法人企業が多くの恩恵を受けておるというふうに理解できますだけに、この際、租税特別措置の持っておる今日的意味と、そうして租税特別措置なるものがどういうふうに効果をあらわしてきておるのか、企業の安定なり、日本経済発展に寄与する上にどのような効果をあらわしてきておるのか、それがどのように国民生活に直接的に影響をもたらしておるのか、その効果並びに念査方法について大臣の御所見をいただきたいと思うわけであります。
  4. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 租税特別措置は、それによる減税額が大体二千二百億円くらい、そのうち、千四百億円余りは貯蓄奨励目的を持っておるわけであります。それから四百億円が中小企業対策、三百億円程度一般企業対策、こういうように分類されるかと思うのです。  ただいま山田さんから、その政策的効果というお話でございますが、まず、この零細貯蓄の保護、奨励という見地からの特別措置は、私は、非常に大きな効果をあげておるのじゃあるまいか、そういうふうに見ております。今日、貯蓄ということが国の経済の中で非常に大きな意味を持つわけでございますが、これはどうしても育成しなければならぬ、そういうふうに考えておるわけであります。そういう上において、これはひとり税制だけの問題じゃございませんけれども税制がこれに与える影響は非常に大きいというふうに見ておるわけであります。いろいろ御議論のあるところではございますが、非常に大きな足跡を残しておる、かように考えております。  それから、四百億円にのぼります中小企業対策、これもわが国のいま当面しておる一つの大きな問題でございます。中小企業近代化、これがなければ消費者物価問題なんかもなかなか解決しにくい、また、今日中小企業が非常に不況に悩んでおる、まあ、企業としての抵抗力が少ないからであります。そういう面から考えまするときに、これも税制の面としての相当の役割りを演じておるものである、かように考えております。また、一般企業に対しまする三百億円の特別措置、これは企業体質改善あるいは輸出振興、そういうような面におきましてそれ相応の役割りを演じておると思います。ただ、企業体質改善輸出振興、そういうようなことは、これは、ただ単に税制だけではやっていけない問題で、これはどうしてもその中心企業自己資本率改善、こういうことが重視されなければならぬと思いまするが、それには金融政策、これがどうしても緩和基調というものを続け、企業金利負担軽減というものがはかられなければならぬ。また、金利負担軽減を助長するためには、金融機関近代化合理化というものが行なわれ、そして金融機関のコストを安くするという問題もあるわけであります。あるいは国会においていろいろと御議論があります歩積み、両建て問題の合理化、こういうような問題もあります。また同時に、資本市場の育成という問題もあろうかと思います。今日まだ発展の過程にありまする資本市場、これを軌道に乗せ、そうして、企業がその資金調達を融資に求めないで、株式に、あるいは社債に求める、こういうような形、これが私は大事な問題であるというふうに考えます。しかし、それにいたしましても、税制上で役に立てばという面もあるわけでありまして、これが企業内部資本の充実、それを中心とする合理化、また、したがって、国際自由競争裏においての活躍、そういうようなものを目ざして、企業がその体制を整える誘因措置としての効果、これをねらっておるわけでありまするが、これもまた今日まで実績をあげでまいっておりまするし、また、四十一年度税制改正でつけ加えらるべき特別措置も、この経済情勢のもとにおいて特に私は有意義のことである、かように考えておるわけであります。
  5. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣、時間があまりおありにならぬようですから、簡潔に二つばかり聞いておくのでありますが、いまの御答弁では、やはり書物に書いたのを読む程度のことでございまして、実は私の質問に対する答弁として不満足に思います。それで、二千二百億円ばかりの租税特別措置というものの中で一千四百億円ばかり貯蓄奨励という項で減税措置がなされておる。この中をもっと細分化して調べてみますと、利子配当所得減税の問題、これが合わせてちょっと六百五十億円でございますね。こういう、だれが考えてみたって税の公平を失するような状態、たとえば、所得税においては標準世帯で平年度六十三万円である。配当所得のほうは、同標準世帯に換算をしていきますと百八十一万円くらいでございます。こういうふうに、だれが見ても公平の原則を失しているようなこの税制下限度合いというものが何ゆえに容認をされ、徴税方法として実施されておるかということは、あなたのおっしゃっているように貯蓄将励である。しかもそれが、配当所得利子所得だけで六百五十億円にも及び、全体の特別措置の三三%を占めておる。そのほか八百億円近い少額貯蓄減税措置なりの問題があるわけでございますが、こういう措置をおとりになって国民貯蓄意欲がうんと奨励をされてきて、そういう措置をとらなければどういう貯蓄状態である、とったことによって、どういう貯蓄状態が生まれてきたということを、やはり効果として念査をされておかれるのが当然だと私は思うのであります。こういうことについてはお触れになっていないので、全体の貯蓄奨励から見ると、六〇%をこえる減税措置でありますけれども、そういうものが一体どういう効果貯蓄奨励の上にあらわしてきておるかということについて、ひとつお答えをいただきたい。  それから、企業自己資本構成比率をもっとりっぱにしていかなくちゃならぬ、あるいは中小企業体質改善をして、企業の安定をはかってやらなくちゃならぬ、こういう意味で、いろいろ特別措置の持っておる効用というものをお述べになっておるわけでございますが、この間、武藤委員資料要求資料提出をなさっているのを見ますと、内国普通法人の数が六十五万六千八百六十五社あるわけでございます。この中で一億円以上の内国法人の数は四千九百八社であります。全体に占める比率は八%でございます。一億円以下の小さな会社というものは、全体の九二%の六十五万一千九百五十七社あるわけでございますが、自己資本構成改善し、安定をさしていく一つ目的、あるいは企業体質改善を積極的に進めていくという目的あり方として措置された特別措置が、一億円以上の企業、一億円以下の企業に分けて、どういう効果をあらわしてきておるか、その点、貯蓄奨励効果度合い企業に及ぼしておる効果度合いについて、ひとつ念査状況効果状況を御説明いただきたいと思います。
  6. 塩崎潤

    塩崎政府委員 御質問二つございまして、一つは、特別措置によって貯蓄がどの程度ふえたかという効果の秤量の問題でございます。この問題につきましても、当委員会でしばしば御議論になりまして私どもからもお答え申し上げたのでございますが、先ほど大臣が申されましたように、特別措置によって、それだけで貯蓄がどの程度ふえたかということは、もう御案内のように、抽出することは、経済現象の問題でございます以上、非常にむずかしいのでございます。昭和三十九年の税制調査会答申では、そういった意味でむしろ特別措置がときどき整理され、縮小され、あるいはまた拡大されてまいりましたが、それと貯蓄との関係を計数的に分析したところでは、特別措置というよりも、むしろ可処分所得の増加によって貯蓄はふえるのではないかというような意見がなされ、また、それに基づきまして、この貯蓄奨励に対します特別措置について意見が出されたのでございます。きょうはその数字は持ってまいりませんでしたが、そういった意味でひとつ御理解願いたい、かように考えるのでございます。  それから、第二の資本構成是正体質改善の問題で、特別措置を一億円超と一億円以下という基準で分けたこと及びその効果のお尋ねでございます。おっしゃるように、確かに六十五万六千八百六十五が法人数でございます。一億円以上の法人は四千九百ばかりでございます。そこで、私どもがなぜこのような特別措置を講じたかということでございます。私ども大臣がたびたび申しておりますように、企業体質改善というのは、現下におきまして非常に重要な政策目標である、こう申しておるのでございます。それに対しまして税制もまた貢献すべきである、過去の所得税法人税軽減状況から見ましても、所得税が一割五分、法人税が一割五分ということ自体企業体質改善としてどうかというような考え方が第一にございます。そこで、私どもとしては、企業体質改善につきましては、法人税のみならず特別措置を講じたのでございます。なぜこういった特別措置が今年度出てまいったかという点でございますが、税制調査会答申のほうにおきましては、種々の議論があったことは山田委員御存じのとおりであります。簡単に法人税率を下げることによって、さらにまた、配当課税率という昭和三十六年からの特別な制度がございます。これは私は、株主側配当控除あるいは益金算入制度を四分の一だけ削減していることがありますので、必ずしも特別措置とは考えたくないのでございますが、少なくとも、特別措置法に規定された制度でございます。これの配当軽減税率との関係で、法人税率を相当下げていこう、しかし、配当軽減税率は上げていこうという議論がございました。しかし、現在のところでは、山田委員御存じのように、所得税税負担が非常に高いというときに、法人税税率だけ下げていくこと自体はどんなものであろうか、こういった点が第一に気がつくのでございます。法人税所得税は別なような要素もございまするけれども、しかし、やはり何といっても所得に対する課税でございますので、相互にバランスを持っていかなければならない、さらにまた、中小法人個人営業者との間のバランスは大事でございます。そんなような意味から、法人税税率というものは、配当軽減税率との関係から見ても、これは最小限度にとどめたほうがいい。所得税は、ここで御指摘のように、単純に税率緩和だけでございまして、税率引き下げはございません。そんなような意味から、税率引き下げは、留保税率について非常に小規模にとどめたのでございます。しかし、中小法人につきましては、大法人に比べて軽減の幅を大きくしたというのが今回の法人税法のねらいでございます。この法人税率あり方は、先ほど山田委員指摘のように、配当所得ならば二百万円をこしても課税にならないではないか、給与所得者ならば標準世帯で六十三万円までしか非課税にならないではないかという御意見があるのでございます。これは全く、現在の法人税につきまして、シャウプ勧告以来、法人税個人株主の前取りだと考え、さらにまた、それに対する企業の反応が、法人税をその株主に転嫁していないことから結果したのだと思うのでございます。しかし、これはなかなか簡単なものではない、そんなような意味で、今後法人税率の問題をもう少し時間をかけて検討する、そこで、体質改善といたしましては、特別措置的な方向でひとつできる限り急速に体質改善したい、こんなような考え方でいたのでございます。そこで種々な方策を講じたのでございますが、今回の企業体質改善についての基本的な考え方は、ただいまおっしゃいました六十五万の中小法人にはできる限り簡便な方法、さらにまた、自分たちに手の届く方法あるいは親しみのある方法、なじみのある方法のほうがよりいいではないかという意味で、先ほども申し上げましたが、法人税率につきましては、軽減税率はこれまで三百万円以下三一%ということで、大法人所得がたとえ何十億ございましても、三百万円以下にも適用いたしておりました、こういうことをやめまして、これは中小法人のための軽減税率だということで、軽減税率はもう中小法人のものにする、そして引き下げ幅も、大法人は二%でございますが、中小法人は三%にするという措置をとったのでございます。しかし、それだけでは足りません。中小法人にはもう少し体質改善をしろということで、大法人貸し倒れ引き当て金はそのままでございますが、一億円以下の法人につきましては、二割貸し倒れ引き当て金の率を引き上げていこうということにいたしました。さらに、輸出振興につきましても、中小商社だけ海外市場開拓準備金繰り入れ率を引き上げていこう、こんなような方法をとったのでございます。  そこで、大法人もまた、私どもといたしましては、企業体質改善として無視できない部面でございますし、いろいろなやり方がございますが、これは少し努力したならばメリットのいくような方法、こんな方法を講ずることはどうであろうかということで、資本金一億円超の法人につきましては、自己資本比率改善に努力した法人についてだけ減税効果を及ぼそう、そしてまた、急速に自己資本比率をよくしていただこう、こういうふうに考えたのでございます。これは御存じのように、先般来新聞に出ておりますが、社債等も若干考えなければならぬというようなこともございますが、増資にいたしましても、社債にいたしましても、資本市場に近づき得るのはそういった法人中心でございます。公開会社あるいは大法人中心でございます。そういった法人も利用できる。しかし、これは努力しなければ減税の恩典はいかない。そこが中小法人に対する今回の減税と違っているところでございます。さらにまた、こういった自己資本比率改善するならば減税をというのは、手続上やっかいでございますし、またいろいろな意味で税務署とのトラブルも起こしがちでございますので、これはむしろ中小法人には簡単な減税をもっていったらいいということで、そういう改正案を御提案しておる次第でございます。  そんなような結果、先ほど大臣からお話もございましたように、今回の減税は、大法人中小法人と分けますと、法人税納税額におきましては六割が一億円超の法人でございます。一億円以下の法人が四割程度でございますから、今度の改正案の結果、基本的な法人税率特別措置合わせまして、大法人のほうがむしろ四割とちょっとでございます。中小法人のほうが六割近い減税額を示しておる状況でございまして、そういった意味でひとつ御理解願いたいと思う次第でございます。  なお、一億円超、一億円以下というところで区切った理由は何かという点が問題になります。これは中小企業近代化促進法その他若干違っておりますが、税制上のこれまでの沿革あるいはまた今後の政策、さらにまた、中小企業基本法等の定義では、資本金基準のほかに従業員基準というものがございますが、従業員基準が、税制では、ことに毎年毎年課税になりますような法人税ではなかなかとりにくい、そんな関係で、少し従業員基準を取り入れるならば、資本金基準を上げて中小企業の範囲を多くしたほうが、中小企業に対する減税効果も及ぶであろう、こんなような考え方でそういう基準をとった次第でございます。
  7. 山田耻目

    山田(耻)委員 第一の貯蓄奨励の問題につきましては、効果念査が非常にむずかしい。税制調査会答申もそこにはかなりこまかく触れておるわけでありますが、ただ、特別措置でありますから、時限立法であるし、念査がむずかしい、効果の判断がなかなかむずかしい、こういうものを貯蓄奨励という大義名分で残して、しかも、配当所得でめしを食っていく人には二百万円近い額まで免税である。汗水流して働いて、生産の第一線でほんとう日本発展のために努力している勤労者に対しては六十三万円から税金をかける。今度の所得税法改正を見ますと、高等学校を出て就職すると、もう税金を払っていくわけです。それほどの過酷な差別をつけなければならない根拠、そういうものが貯蓄奨励という中に一体どういう効果を持って判断なさるのか、その念査がされないままそういう体系が残されていくということは、国民がながめる税の公平負担原則から見て、これは許しがたいものじゃないか。それが十分国民を納得させ、説明できる根拠がおありになるのなら、もっと質問の角度を変えてもいいのですけれども、一番国民が疑惑を持っておるこういう点について、念査方法がむずかしいというだけでは、私は、やはり回答にはならぬと思う。徴税人口をごらんになっても、これはあなたが「税経通信」の三月号で松隈さん外と座談会をなさっておるのを私読ましてもらいましたが、確かにあなたもひどいとお感じになっておるような話しぶりなんですね。戦後の徴税人口は、一番低いところが千九十一万人くらい、現在では二千二百万人税金を取られている。そのうち、百万円以下の収益を持つ納税者が九〇%を占めている、千八百万人ですね。百万円近くの年収を取って税金を納めておるというのは、千八百万人のうち、わずか八%しかいない。しかも、ほんとうに納税しておるのは四%じゃないだろうかという。だから、ほとんどの徴税人口というものは、低所得者層に大きなしわがかかっている。そうして、日本財政経済というものがまかなわれていくということになりますと、私は、その面から見ても非常に不合理性が強い気がするのですね。ですから、いまあなたがおっしゃっているように、貯蓄奨励というものは可処分所得を増大させる、これが貯蓄奨励になるのだ。可処分所得といえば、私たちは非常にむずかしいことばに聞こえるのですけれども、要するに、自分が自由にできる金の量をふやしていく、自由に使える金がふやしていかれるというやり方だと思うのです。そうなりますと、いまの日本徴税人口なりその他を見てまいりますと、低所得者減税を大幅に引き上げてあげる、ふやしてあげる、こういう所得減税第一というやり方のほうが、税調の答申している真意であろうし、可処分所得を増大させるというのはそういうところに真意があるのであろうし、それが、やがてお互いゆとりを持つようになると貯蓄をすることになって、いわゆる企業安定の誘発をそこに求めることになるであろう、こういうふうに私が考える気持ちが、あなたのおっしゃる御答弁にはどうも乗っていけない。しかも、それが税の特別措置として特別の恩典が片側できちんと整理され、残されていっておるという税の制度から考えても、どうしても納得できない。この点について、くどいようですけれども、できましたら、株の配当並びに利子所得の人に与えておる恩典というものは昨年度六百五十億円でございますから、一体これがどういう所得階層によってその恩恵が受けられておるのか、資料その他によってもっと詳細に御説明いただくか、さもなくば、資料の御提出をお願いしなければならないということでございます。
  8. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ただいまお話のございました利子所得及び配当所得に対しますところの特別措置の減収額は、私どもが二月十九日に提出いたしました資料によりますと、利子所得の分離課税及び税率軽減及び少額貯蓄利子の非課税で六百七十億円でございます。それから配当所得に対します源泉徴収税率軽減が百七十億円であり、配当所得の源泉選択及び確定申告不要による軽減額が百六十億円でございますので、これが配当につきましては三百三十億円でございます。さらに、株式に関連いたしましては、大事なことでございますが、有価証券の譲渡所得に対します非課税が三十億円ばかり見積もってございます。以上が、利子配当についての特別措置といわれておるものでございますので、約千億円をこしておるか、かように思います。  さらにまた、もう一つ、いま御指摘所得税課税最低限と比べまして、配当所得につきまして課税最低限がどうかというお話でございましたが、これも国会に三月三日に提出いたしました資料によりましてもおわかりのとおり、所得が全部配当である者についての所得税がかからない限度額は二百十四万三千五百二十五円でございます。そういった制度が一応あるわけでございます。  先ほどお話の、効果が不分明なままに特別措置が継続しているではないかという御指摘でございますが、租税特別措置は、基本的には税制と密接な関係がありますが、何といっても、御指摘のように特別措置でございますし、負担の公平の例外でございます。したがって、私どもは絶えず効果について批判を加え、さらにまた、大方の御意見も承り、そしてまた、特別措置でございますから一定の期限が大体ついておりますので、こういった期限の来る際には常に検討してみておるつもりでございます。そのときにいろいろな政策的な考え方が出てまいりまして、必ずしも整理、縮小というかっこうにもなりませんし、新設交代というようにもなりませんことがございますことは、もう御指摘のとおりでございます。私どもは、やはり特別措置政策として必要であるけれども、これが一部面への既得権化してはおかしいと思いますし、さらにまた、これが慢性化してまいりますと、他の納税者に対しまして増税という結果を間接的に生むというふうに感じておりますので、そういった意味では、絶えず私どもは批判を加えることは必要であろうと考えております。ただ、率直に申し上げまして、外国にも特別措置が最近ではふえておりますけれども、ただ、外国は非常に流動、交代と申しますか、交代が日本ほどおそくない。効果がない——効果がないと申しますか、新しい事態に応じまして新しい施策を打ってまいりますが、一定時期が過ぎますと思い切ってやめるという傾向が見られるような感じがいたしております。そんなような角度から、私どもは常に、必要なものは存続し、不必要なものは整理し、さらにまた時代に応じて、これを時代に即応するような制度に改める、こういうことをしていきたい、かように思っております。その一例といたしまして、今回は新規重要物産免税について廃止をいたしておることは御存じのとおりでございます。さらにまた、合理化機械の特別償却につきまして、これも整理縮小をいたすことにいたしております。これもひとつぜひ御認識していただきたいと思うのでございます。新規重要物産免税の今回の廃止によります増収は、平年度七億円でございますけれども、これは御存じのように大正二年からでき上がった制度でございます。しかしながら、現在におきましてはもはや役割りを果たした、現在では、むしろ体質改善のほうが大事だ、体質改善のために特別措置にひとつ席を譲っていただく、こんなような意味で、過去には減収額が特別措置によって六十億円ばかりあった時代もございますが、そんなようなことも一つ認識いたしまして改善し、さらにまた、大企業に片寄りがちの特別償却制度につきましても整理、縮小するという措置をとったことを、ぜひひとつ御認識願えればはなはだしあわせじゃないかと思うのでございます。  なお、配当所得につきましては、現在は、分離課税以来、階級分布の姿が非常に変わってまいりました。いずれこれは資料によりまして、過去の、配当所得を分離課税する前にどのような階層が配当を持っておったかという点を御説明申し上げたいと思います。
  9. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は、本屋へ行って見ておりましたら、アメリカの国際通貨基金のアジア局次長ですか、リチャード・グードさんの本を、あなたが税制第一課長のときに訳されまして、たいへん好評な本だという、それを浄財をなげうって買ったのでありますが、しかし、あなたがかなり自信を持ってお訳しになっておるグードさんの法人税関係の解釈の中に、あなたがおっしゃっておる配当課税、資本の中に留保利潤として残る分に対する法人税課税、こういうものについては、いまあなたが御答弁なさっておるようなゆるやかなものではないと私は思います。あなたが税制第一課長のころ翻訳なさったこの本の思想というものは、もちろん、今日おっしゃっているような貯蓄奨励、可処分所得の増大ということのために行なう配当所得減税措置というものが、私の申し上げておるような質問にむしろもっと寄ってこられて御答弁いただけるものだというふうに、あの本を読みながら、あなたの識見なり人格というものを私は片側で称賛をしながら読んだのですが、どうも御答弁の趣旨は、かなり私の質問と離れた答弁にならざるを得ないこの現状に、私は非常に理解できないものを持つわけです。そこで、おっしゃっているような配当所得に対する措置なんというものは、私は、もう整理清算される時期だと思う。しかも、本会議でも質問いたしまして、総理の答弁と大蔵大臣答弁には若干のニュアンスの違いがありますけれども、やはり税の体系あり方としては、私は、その人々の主観のみによって左右されては困る。配当所得の問題については、来年の三月までがたしか期限だったように思いますので、この際これをなくしていく、あるいはもっと幅を狭めていく、そうして、所得税との関係、均衡というものをしっかりバランスをとっていく、あるいはもっとそれを一歩進めて、従来私たちが主張し続けてきておるような総合累進課税方式をとっていく、いずれかが積極的に前に向いて踏み出されていくような税制の改革というものがなされなかったならば、国民の勤労意欲をそこなうことは間違いございませんよ。このほうがこわいですよ。そういう立場で真剣に御措置なさる用意があるのかどうか、この際、あなたエキスパートですから、しっかり聞いておきたいと思います。
  10. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私の翻訳を引用していただいて非常に光栄でございます。確かにグードの考えておるこれは、私はアメリカの全体の法人税考え方だと思うのでございまして、私ども法人税との対比において考えなければならぬと思うのでございますが、ともかくも、法人税法人企業の負担であるということをグードは言っておると思うのでございます。そんなような意味で、昭和二十五年以来、シャウプ勧告によってとられました私ども法人税制が、個人株主所得税の前払いであるという勧念とは、おっしゃるように確かに一致しない点でございます。そんなような意味で、現在配当控除が実効税率で一五%でございますので、先ほど申し上げましたように、各種の控除を加味して計算しますと、二百十四万三千五百二十五円という、まことに奇異な感じの課税最低限が出てまいります。このこと自体配当所得者の減税というよりも、むしろ法人税をそういうふうに考えていくこと自体がはたしていいのかどうか、ことにまた、配当率の中に法人税を織り込まないような現在の慣習から見て、はたしていいのかどうか、このあたりをもう少し根本的に検討していかなければ、この問題はいつも御指摘のような批判を生み、普通のしろうとの方と申しますか、世間の方々は、なぜか、いや、法人税は取られておるからこうなるんだと言いましても、自分法人税を納めた意識が全くない。会社の経営者にいたしましても、おっしゃるように、その法人税を留保のうちから支払っておって、配当のほうに転嫁している。全体として見ますと、もちろん法人企業の資本蓄積がゆがんでいるということがいえるかもしれませんけれども最初の段階におきまして、配当の段階におきましては、どうも法人税は留保に帰着するような、まさしくグードの言っているような結果になっていはしまいかと思うのでございます。もちろん、これは公開会社のような大法人であって、同族法人とは、堀委員もいつも御指摘のように、違うかもしれません。これはひとつ根本的に検討していかないと、現在ある配当分離課税制度もなかなか複雑でございますし、簡単に整理もできないような感じもするので、このあたりからひとつメスを入れてまいりたい、これは四月から税制調査会で考えてまいりたい、さらにまた、配当所得につきましては、これはもちろん、そういった法人税あり方に関する考え方と密接な関係がございますが、もう一つは、支払い利子は損金になるけれども配当は損金ではない、したがって、一割配当するために二割もうけなければならぬ、支払い利子ならば、一割支払うためには一割でよろしいという、例の資本コスト論が企業の段階からしょっちゅうあるわけでございます。さらにまた、受け取り側から見ると、受け取り利子は分離課税であるのに、受け取り配当はなぜ総合課税であるか、しかし一方、配当控除という制度もあるからということを言いましても、仕組みが実に複雑、また、株主側にも経営者側にも完全に理解されていないので、どうもいままでのところ釈然としない面があることは御指摘のとおりでございます。しかしながら、一ぺんでき上がった制度でございますし、先ほど来申しておりますところの企業体質改善、その見地からの増資と借り入れとのバランス、このあたりを考えてまいりますと、なかなかむずかしい問題がございます。しかし、企業の段階以上に、おっしゃるように、個人所得税のほうがより私は税らしい税だと思いますし、一番大事な税だと思いますので、これはより完全な課税標準を実現するほうがいい、政策も、企業の段階よりもむしろ公平の観念の強い個人所得税の段階では完全な方向に持っていきたい、これは政策等の考慮も必要でございますが、そういう角度から、企業側の課税、これは法人税の問題でございます。それから受け取り側の課税、これは個人所得税の問題でございます。これらを総合いたしまして、ひとつ四月以降根本的に検討してまいりたい、かように考えております。
  11. 山田耻目

    山田(耻)委員 根本的に御検討いただくということは、不合理をなくしていくということがもちろん前提でしょうけれども、特にやはり——租税特別措置の持っておるある程度意味合いは私はわかりますけれども、出過ぎた部分については、かなり指摘できるところがあるわけですよ。こういう問題について、特にやはり特徴的なものは配当所得の問題でしょう。それはもちろん法人税との関係、あるいは配当というもの、これはドイツあたりでやっていた、配当を六%に押えて、そうして企業の安定化をはかっていった道と、日本のように、粉飾決算してでも配当をやっていくという状態、そういう根本的な問題もあるでしょうけれども、とにもかくにも、配当というものが個人所得になっていき、しかも、そこで全然一般所得とみなされないような課税の評価をされていく、こういうことについての不公平性が非常に強いのですから、この点は、私は、やはりいまの根本的に検討するという中の大切な項目としてお忘れにならないように、十分ひとつ念を押しておきたいと思うのであります。  それから、大企業法人で、これも本会議でちょっと触れておいたのですけれども、いわゆる総所得に対する課税所得金額というものが、特別措置の利用状況が非常に有効に作用しておるというか、非常に数が多いといいますか、そういうことで課税所得が非常に減額をされておる。ここにあります私の資料は三十五年度の資料でございまして、かなりいまとは数字的にも適合しないものじゃないかという気がしております。しかし、資料が入手できないものですから、しかたなくこれで聞くわけでありますけれども、たとえば金属鉱業四社、資本金が四社でこれは十四億円でございますか、総所得一〇〇%に対して課税所得は七〇・七%、一番ひどいのを見ますと、紙パルプ製造業ですけれども、五社で十二億二千万円、総所得一〇〇%に対して三八・八%しか課税対象になっていない。今度は金属の鉱工業のほうでございますが、これも七社で八億円に対して五六・五%の課税所得しかない。なぜこうなったかといえば、この中には特別措置として措置されておりますところの退職給与引き当て金、価格変動準備金、貸し倒れ準備金、輸出割り増し償却、ちょっと違いますけれども交際費、こういうものなどがいわゆる損金算入をされていって、こういうふうに課税所得の金額が減っていきますけれども、本来なら、総所得に対して課税されるべきものが、特別措置でこのように減額されて、損金算入され、課税所得が減らされていっておる。これは一つの二重の利益保護ということになるでしょう。これは三十五年の資料でございますけれども、一体総所得課税所得は、四十年度はどういう傾向値をあらわしておるのか。これは特に百九十四社くらいになるのでございましょうが、一億円以上の、あるいは十億円以上でもけっこうでございますけれども、こういう大法人特別措置を受けておる現状というものを、資料でひとつこれもいただきたい。いまここで御答弁いただいてもけっこうでございますが、なお重ねて資料をひとつ御提出いただきたいと思います。
  12. 塩崎潤

    塩崎政府委員 資料の点は、後ほど作成いたしまして御提出申し上げたいと思います。  三十五年の資料に基づきまして、特別措置が大法人にどの程度片寄っておるかという御指摘かと思います。私、当時税制一課長をしておりましたので、私がつくりまして出したといってもいいような資料だと思います。そこで、最近の特別措置に比較いたしまして、そのときの特別措置の少し様子が変わっている点も、若干ふえんして申し上げたいと思います。  三十五年の特別措置は、ただいま山田委員指摘のように、貸し倒れ引き当て金あるいは退職給与引き当て金も、特別措置といたしまして課税所得減殺要因としてあがっておると思います。引き当て金あるいは準備金の理論につきましては、いろいろ意見がございますが、三十八年から商法でも引き当て金というものを制度上取り入れたということ、さらにまた、これは一つの繰り延べでございますし、貸し倒れ引き当て金ということになりますれば、貸し金の評価に関する問題でございます。さらにまた、退職給与引き当て金は、法律上の債務性引き当て金といわれておるものでありまして、このあたりは特別措置として入れるかどうか疑問でございますが、当時におきましては、この繰り入れる率がいろいろな意味でまだ完全に熟していなかった、いわばその中に特別措置の入り込む要素も多かったのでございます。さらに、先ほど申し上げました商法も引き当て金というものは認めていなかったというようなこともありまして入れましたが、現在では、貸し倒れ引き当て金につきましても、商法の制度とあわせまして洗いがえにするとか、さらにまた、退職給与引き当て金につきましては、商法上の制度としまして最も債務性の強いものだということで、これは現在特別措置からはずして計算いたしておりますので、現在の特別措置の減収額の中にはそのようなものはあがっていないことをまず御理解願いたいと思います。  さらに、そのときの資料で気がつきますのは、当時、新規重要物産免税という制度、これは先ほど申し上げましたが、その効果が相当あり、さらにまた、特別償却がごく長期でございましたので、特別償却の制度で新規の機械を取得する際に相当特別償却による減収額が多く出ておるのではないかという気がするのでございます。そのあたり、今回もまた特別償却があがっておりますから比較はできるかと思いますが、そんな意味でひとつごらんになっていただきたい、かように考えます。  なお、先ほど大臣が申されましたように、課税所得に対する特別措置影響は、個々の会社によりまして、あるいは特別な産業によって相当影響が違うことはもちろんでございますが、特別措置を大企業中小企業ごとに分類いたしますと、そういったことにはならないのでございます。全体として見ますと、先ほど申し上げましたように、二千二百二十億円のうち、千四百七十六億円は貯蓄奨励であり、そのうちから企業に与えられておる特別措置を抜き出しますと、総計は七百四十四億円でございますが、大企業分は三百三十八億円、四五・四%、中小企業は四百六億円、五四.六%と計算される。これで想像されるのでございますが、しかし、おっしゃったように、たとえば、特別償却というものは業種指定がございまして、特定の業界にはまさしく利益がいっている面がございますので、実効所得率と申しますか、総所得に対します課税所得の割合は、おっしゃるような傾向が出てこようかと思います。これはいずれにいたしましても、三十五年とあわせました資料で提出いたしまして御検討をいただきたい、かように思います。
  13. 山田耻目

    山田(耻)委員 いまおっしゃっていた、なくなった新規重要物産のやつは七億円ぐらいじゃないかと思うのですが、これは大きなウエートでないような気がします。しかし、それは資料をお出しいただきましたらわかることでございますから、けっこうでございます。  次に、今度四十一年度特別措置でお出しになっております資本構成、自己資本率の向上に対する特別措置でありますが、こういう措置をおとりになるのに、問題意識として把握なさる前提なのですけれども、今日の自己資本の比率が非常に少なくなってきておる、弱まってきた——二割前後じゃないだろうかと思うが、こういう状態になってきた数字を、私たちは健全なものとは思っておりません。アメリカなりイギリスあるいはドイツの借り入れ資本対自己資本の比率というのは六〇対四〇くらいでございまして、自己資本六〇くらいでございましょうから、もちろん比較にもなりません。ただ、日本の資本主義経済のたどってきた幾つかの内的外的条件というものと諸外国のそれとは、その発生の過程が違っておりますから、一律にはこれは眺められないと思うのです。しかしながら、日本の現在の自己資本比率がこのように下がってきたという原因究明を一体どのようになさっておるのであろうか。それが、いわゆる法人税が高いから、企業税が高いから自己資本比率が弱まってきたというのでしたら、これはひとつ減税措置をおやりなさい。しかし、実際に私たちが今日までの討議を通して把握しておりますのは、いわゆる銀行からの借り入れを各企業は競争の形で行ないながら、日銀も政府の膨張の施策を片側で保証しながら推し進めていった高度経済成長政策の結果であろう。私はここで、日本が好況不況という立場で借り入れ資本と自己資本との相関比を過去にさかのぼってながめてみますと、昭和二十九年、三十年、日本が非常になべ底景気に入っておりましたときの自己資本比率というものは比較的高いわけです。むしろ借り入れ資本のほうが低くなってきている。好況期に入っていくと、借り入れ資本がふえてきて自己資本率が低下をしてきておる。今日、日本自己資本比率が非常に低下をしてきた原因というものは一体どこにあるのだろう、このことをまず明らかにしてもらわないと——その明らかな上に立って、今回御提案なさっておる自己資本比率を高めてあげたいというために行なう一%から一〇%を限度にして減税の対象にしてあげよう、これはあなたも「税経通信」の座談会でやっておられるように、これはごほうびなのです。あなたがそうおっしゃっているわけですね。私は、自己資本比率というものが下がってきた原因のみごとな究明がされた後に、どういう施策を講ずることが、安定の道をたどるのかという立場から結論づけられていくものと、ごほうびをやって税金を下げてあげて、そうして自己資本比率を高めていきなさいという施策のやり方の中には、政府としておとりになる道筋にかなり違いがあるような気がする。しかも、その減収によって生ずるごほうび、企業にとってはごほうびだけれども、このごほうび、ボーナスは一体だれのふところから出ていくのだろうか、このことについても政府としては解明をしなくちゃならぬ問題だと私は思うのです。まず、その点をどういう立場に立っておやりになったのか明らかにしていただきたいということが一つと、いま一つは、ことし出されております特別措置の三本の柱ということはあなたもおっしゃっているのだけれども、いまの自己資本比率を高めるというやり方、スクラップの問題、合併の問題、この三本の柱を中心として約十項目あるのですけれども、減収総額三百四十二億円、一体この自己資本比率を高めるために出されるごぼうびは、減収どれくらいになるのか、これも含めてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  14. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まずお尋ねの第一の、日本企業体質と申しますか、自己資本比率がなぜこういうふうに悪くなったかという原因の探求でございます。これは種々の議論がありますし、また考え方がございますが、私の見ておるところでは、少なくとも、日本の成長率がきわめて最近高くなった、その成長を急速にまかなうためには自己資本ではまかなうことができなかった、そのために他人からの借り入れによらざるを得なかったということが、私は自己資本悪化の基本的な原因だと思います。その背後には、日本の金融構造あるいは資本市場状態、そんなようなことが前提となっておることはもちろんでございます。これらにつきましては、証券局長もおられますので、いずれ御解明があろうかと思いますが、私の理解するところでは、基本的にはやはり世界が目を見張るような急速なる成長、それに対しまして自己資本が追っつかなかったということが根本的な原因だと思うのでございます。  そこで私は、法人税が原因であったというふうに直接的には考えておりません。しかし、法人税影響があったこともまた事実であろう、かように思います。と申しますのは、確かに、これも国会でしばしば御意見が出てまいりますように、企業の支払い利子が二兆六千億円ある、企業の利益が約二兆六千六百九十六億円でございますから、大体支払い利子企業利益が昭和三十九年では同じくらいな割合になっております。このあたりに自己資本の比率の低さを示しておると思うのでございます。それが多分に金融機関のほうに流れていっておる、ここに問題がございます。そういった意味で、企業に残る利潤というのは、支払い利子とほとんど同じくらいである、まさしく、よく言われますように、金融機関のために企業をやっておるということがよく言われますが、こんなような結果が自己資本の悪さから出てくるわけでございます。そういったことは別といたしましても、残った二兆六千六百九十六億円の利益のうち、法人税は三二・二%をいただいておるのでございます。利益処分の割合といたしましては一番割りのいい株主でございます。配当のほうは、利益を一〇〇といたして二四.三%、法人税は三二・二%でございます。しかし、株主に対しまする配当は二四・三%、内部留保は三〇・五%でございまして、いずれにいたしましても、法人税でいただく割合というものは相当高い、自己資本比率が悪い割りに高いということは、私はいなめない事実だと思います。もちろん、これがだんだんと支払い利子が利益に振りかわるようなことになりますと、この割合は根本的に変わってまいりまするけれども、現在ではそのような姿を示しておりますし、いま申し上げましたような三二・二%のうちには住民税あるいは、事業税は入れてございません。事業税はもちろん損金でございますから関係はないといえましょうが、住民税など損金とならない支出がなお八・七%あるといたしまして、これが大部分地方に流れる法人税関係の税だといたしますと、約四〇・九%くらいが、国、地方公共団体に流れていく、配当よりも割合が大きい。確かに、外国の法人税率に比較いたしましても、日本法人税率は高いようには見えませんけれども企業から支払われた利子あるいはその他の支出を引いた残りの利益の中で見ますと、法人税は、割合といたしまして、相当高いような割合に見えるのでございます。これは外国に比べますと、この割合が高いことは当然でございます。  その次に、企業減税の三本の柱と申しましたのは、私が申しておりますのは、企業体質改善の促進、中小企業体質の強化、輸出振興でございます。まず第一の企業体質改善の促進の金額は、平年度六百七十億円でございまして、そのうちの留保所得に対する法人税率引き下げは三百六十億円でございます。その次は、建物の耐用年数の短縮は百五十億円でございます。三番目は、資本構成の改善の促進、これはただいま御指摘自己資本比率改善状況に応じまして、法人税を税額控除するシステムでございます。これは九十六億でございます。それから合併の助成が三十億円、スクラップ化の促進が二十九億円、計六百七十億円でございます。中小企業体質の強化が三百五十一億円でございます。なお、三番目の輸出振興措置が三十八億円でございます。中小企業体質の強化だけ三百五十一億円となっておりまして、先ほど申し上げました法人税納税額の六割、四割が大法人中小法人の割合であるけれども軽減額から見ると、中小企業のほうが多いと申しましたのは、最初企業体質改善促進の中に、中小企業分が企業一般として入っておりまして、それを引き抜きまして、大企業中小企業を分けますと、いま申し上げました数字になることを念のために申し上げたいと思います。
  15. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連して。  いま問題になっておる自己資本比率が上がってきた場合九十六億円ですね。これは積算の基礎は一体どういうことによって九十六億円出したのか。一体、現状でそういうメリットがあったら増資が実際にはできるのか。そういう増資のあり方いかんによっては非常にアンバランスな問題が起きるんじゃないかと思うのです。たとえば、いまは世銀借款等によって、当然自分のほうの意思でなくてもある程度の借り入れ比率によって増資をしなければならぬところもあるわけですね。そうして、そういうふうに非常に増資ができるところとできないところという企業の問題があるとすると、本来ならできないところにメリットを与えてさしてやるということになるなら話の筋は通るのですが、そしてまた、非常に増資のしやすいところが増資をして自己資本比率を上げれば、それだけ法人税率は下がるんだ、そうして片や、増資がしにくい、しかし、実際には自己資本比率を上げなければならぬところは、やりたくても増資ができないから、そうすると、そのほうは、相対的に、いまのメリットのあるものから見ればデメリットで、法人税率は高いんだという、どうも私は、この問題の導入のしかたが、一般論としては、何か企業体質改善に寄与するようであるけれども、高いところに上積みをして、低いところ、実際にメリットの必要なところにメリットがいかないという、これもやはり私は企業の中身から見てさか立ちをしている発想が何かここで非常に顕著に出ていると思うのですね。その場合に、あなたのほうでは、その積算の基礎というのは、業種別かなんかではじいてないと、これは問題があると思うのですが、一体業種別かその他、資本金別でもいいし、業種別でもいいし、抽象的な議論でなしに、具体的に九十六億円というものを出した根拠をちょっと一ぺん明らかにしてもらって、そうして、少しその中身を議論しておかなければいけないんじゃないかと思うのです。
  16. 塩崎潤

    塩崎政府委員 議論の前提となるこの九十六億円の見積もりをどうしたか、そのことがこの政策考え方をあらわすのではないか、こういう御質問でございます。おっしゃるように、これは非常にむずかしい見積もりになり、いずれにいたしましても、それが恣意的にならないように、私どもとしましては、過去の自己資本の向上率をとらざるを得ない、かように思います。しかし、これは全般的には下がっておりますけれども、個々の企業をとってみると上がっているわけでございますが、こんなような計算方式をとりました。三菱経済研究所の資料をいただきまして、これは本邦企業経営分析でございますが、三十六年の上期から三十九年の下期までの資本比率の向上をした法人を基礎といたしまして、自己資本比率がどの程度向上したかということを、千百九十の法人につきまして計算いたしまして、これから分類いたしまして何%程度——一%程度のものが、たとえは三百十八件、二%のものが百八十四件、三%のものが百五十一件、九%以上のものが百三十二件、こんなふうに想定いたしまして、これから推定いたしまして、一%を向上した場合には二%法人税額を税額控除するというような計算方式を出しまして九十六億円を見積もった次第でございます。なお、ただいま御指摘の増資調整が行なわれているようなときに、あるいは世銀から増資をせがまれて増資ができるような法人についてこういったメリットを与えること自体が、かえってアンバランスではないかというお話でございます。確かに、そういった御議論もおありかと思いますが、私どもは、増資だけが自己資本比率改善の方向でもないし、内部留保はもちろん自己資本のうちに数えてまいりたいと思いますし、借り入れ金の返済もまた自己資本の向上の一つの測定でございます。さらにまた、増資調整につきましては、最近の新聞で御存じのように、だんだんと緩和の方向に向かわれている状況でございます。これは二年間の措置でございますが、私はやはりおっしゃる点もごもっともでございますし、全般が緩和され、そういったことが自由になって初めて効果のあるようなシステムになることは間違いありませんが、今後増資調整も緩和されるように私は伺っておりますし、そういった意味ではこの措置効果がある、かように考えるのでございます。過去にも、昭和二十九年から昭和三十二年の一月まででしたか、増資配当免税という特別措置のあったことを記憶しております。そのときの効果も、かけ込みとかあるいはずり下がりとか、いろいろな御批判もあったところでございますが、その間の増資について大きな増資奨励策もございましたが、やはり自己資本比率改善というねらいから特別措置があるという、これらから見まして今度の措置も御納得いただけるのではないか、かように考えております。
  17. 堀昌雄

    ○堀委員 増資調整の問題は、いま全面的に解除されると実は私は思っていないのです。そうすると、ここで増資ができるところは優良企業です。要するに、内容もいいし、優良な企業のところが増資できる。だから、優良企業のところは、いまあなたのお話のように内部留保もしやすいし、利益の大きいところこそ内部留保もできるわけだし、またその利益があるから配当の性向もいいということで増資もできる。だから、このことは、やはり高いところへ土盛りをする政策ということに結果としてなってくるわけですね。だから、いまのところ、そういうようないろいろな構造上の問題もありますから、必ずしもそれは企業だけの責任とわれわれも言わないけれども、やはりそういう中では、日本のいまの企業というのは、しばしば言うように不均等発展をしているわけですから、その利益の非常にあがる部分もあるけれども、またなかなか利益のあがらない部分もある。しかし、実際には自己資本比率を高めなければならないのに、利益のあがらないところが実は損益分岐点が非常に上がって、そこが実は借り入れ金が過大で困っているわけですから、下のほうにメリットがいくように、上はあまりメリットがなくてもいけるのですね。それをあなたのほうのこの税法というのは、上へさらに土盛りをして、下のほうにはきかない。だから、そういう意味では、こういうことをやって、内部蓄積にまで不均等発展をますます起こさせるような、そういう手助けをする税法になるのではないか。だから、その点、特に増資の問題もありますけれども、いまあなたの触れられた内部留保の問題等、いろいろある。ちょっと一つ問題になっているのは、社債をはたしていまの自己資本比率のほうで見るかどうかという問題が出ているので、ここまでくると、自己資本比率の問題ではなくて、借り入れパターンの問題であって、長期か短期か増資かというようなことになるだけであって、ここは、そういう意味では長期資本固定率か何かのような見方をするということになるのかどうか。そこでおそらく別の角度になってくると思うけれども、しかし、社債を入れるというようなことになれば、これまた上積みのほうにだけきいてくる。ことごとにこれは優良企業優遇策であって、本来のあなた方の言うような企業体質改善という面から見ると、私はどうも逆の結果になるおそれが充分にあると思う。また、その可能性を一つ一つ分析をすれば、まさに私の言うとおりであって、自己資本比率の高まるところは、中小企業のいいところしか高まりようがない。そこは、税法がそういう優良企業に土盛りをするのではなくて、そうではない形のところがどうやって自己資本の充実ができるかという面のほうに効果が及んでくるようならば、これはまた私は別だと思うのですが、このやり方はさか立ちをしている。特にまた、さっきのお話の三十六年上期から三十九年下期の平均なんというのは、これは全然だめですね。日本経済があなたがいま言った自己資本比率が低下をしたのはなぜかといえば、この期間に異常な高度成長をしたわけです。実はこの異常な高度成長の中で、証券会社を含めていま問題になっておるところの大幅増資をした時期なんですよ。過剰な借り入れも起きたけれども、しかし同時に、この時期は過大に増資も行なわれた時期なんですね。三十六年から三十九年までの間というのは、終わりのほうは少しダウンのほうに入っているけれども、三十六年上期というのはまだまだ上り坂の期に入っている。そのような推計が、現在増資調整をやったり、あるいは企業は操短をして操業率が下がっているという時期にいきなり使えるかどうかという点です。政府のこの前の中期五カ年計画が、いろいろなモデルはあったけれども、そのモデル自体が成長期のモデルを停滞期に持ってきたのでは、これは幾らモデル計算をやってみても合わないと同じように、この推計自体も、これは過去は過去として、現状にこれがびしっと合うとは思わない。だから、そういう点を見ると、この発想自体が、何か自己資本比率という抽象論としては、なるほどこれは外から見たら二〇%を割る日本自己資本比率を高めるということに異議はないでしょう。しかし、具体論として見ると、いま私が指摘をしたように、これは非常にアンバランスを助長するだけで、優良企業はいまの二%自己資本比率が上がれば税率一%下がり、ますます内部留保がふえる、そこでまた利益も上がるし条件がよくなるから、またその次の年はまた減る、また税率は減る、こうなるだろうし、片一方はちっとも変わらない、格差はますますできてくる、こういうことになるのじゃないですか。逆に私は、アンバランス助長の税制だ、だから見かけはよくて中身はおかしい、こういうことになると思うのです。いかがですか。
  18. 塩崎潤

    塩崎政府委員 堀委員御承知のように、法人税の性格が、とにかく利益のある企業に対して課税されるものでありますし、利益がなければ全く関係のない租税でございます。そこで私は、企業減税ということは、現段階における意味は、体質をよくする意味であって、これが過去のような法人税軽減いたしまして、設備拡張の資金の援助という意味はいまのところ少ないと思うのでございます。そういった意味では、法人税はまさしく企業体質改善に——体質改善といってもいろいろ意味もありましょうが、自己資本比率が向上したほうがいいというのが一般の常識的な声でございます。そこで、しからば、おっしゃったように確かに政策でございますから、できる限り弱いものに、あるいは利益の少ないものに応援すべきであるということも、また私ども考えなければならぬ点だと思うのでございます。そんなような点も考えてみまして、種々の案をつくってみました。ただ、先ほど申し上げましたように、法人税率ではどうもそういった苦しい企業に対してはほとんど働かないことが発現されたのでございます。と申しますのは、留保税率を下げても——現在のように税引き七割まで配当をしておる、そしてまた、つらい企業になりますと、積み立て金をくずして一〇〇%以上の配当をしている企業にとりまして、留保税率を二%あるいは三%軽減されても、これは全く減税の利益がないことは御存じのとおりでございます。こういった企業減税するには、もう、言うまでもなく配当軽減税率引き下げるしかない、それはしかし、先ほど来申し上げておりますように、法人税というものは、何か配当を引いた残りに課税するということでもない、さらにまた、ドイツのように、支払い配当についてしんしゃくし、さらにまた、株主側にシャウプ流の配当控除を設けておる現在の段階で、いつも御指摘のある二百十四万円まで非課税というような声があり、さらに一方、経営者からいいますと、一割配当するのには二割もうけなければならぬというようなときに、配当軽減税率を変なふうなかっこうで訂正することもこれは容易ではないという一つ考え方があるものですから、どうしても留保税率で先生のおっしゃったような方向に引きずるということもむずかしい、これは、先ほど申し上げましたように、特別措置体質改善に引っぱっていくほうがいいのではないか、こんなような考え方をとったのでございまして、それにはいろいろな考え方がございますし、この制度につきましては批判もございます。しかし、私どもが過去の経験のうちから見まして、これはそうおかしなものではない。三十六年から三十九年の傾斜時代を基礎にすること自体がおかしいじゃないか、いまの情勢に合わないのではないかというお話経済情勢はいつも同じときがございませんのでなかなかとりにくいのでございますが、このときに自己資本比率の向上した会社をとったのでございます。この会社もまた借金もふえております。しかし、自己資本比率も向上しております。そして、全般的に見た印象がどんなにいい企業でも、毎期毎期よくすることはなかなかたいへんでございます。一%向上するのもなかなか容易ではない、よほどの努力をしなればならぬという結果が見られる。二年間の特別措置でございますから、増資あるいは内部留保の増大あるいは借り入れ金の返済、また買いかけ債務が債務に入りますから、企業間信用の圧縮という形で、この適用を受けますほとんどの企業が大体半年決算でありますので、二年間四期ございましょうから、できる限り体質改善に努力して、この減税のメリットを受けるように期待し、またそういったこともできるのではないか。これはもちろん税だけではできませんし、証券局その他の各種の政策に期待することが大きいことは、私ども大臣にたびたび申しておるところであります。堀先生御存じのように、資本市場に対する政策、あるいは金融のほうにも、これらと密接な関係はしておりますが、そういった意味で私はこの措置を現在のところでは評価しておる、こういう気持ちでございます。
  19. 山田耻目

    山田(耻)委員 自己資本構成を強めていきたいということの措置だとおっしゃるわけでありますが、問題は、一億円以上ということになっておるわけでございます。そういたしますと、一億円以上の法人企業自己資本構成というものがかなり悪化してきておるということもわかりますけれども、表を見ますと、一億円以下の法人企業自己資本構成比は、一千万円未満が昭和三十八年で一三・九でございますね。一千万円から五千万円までが一四・九、五千万円から一億円までが一四・七、十億円以上は二四・九、資本階層別に比較してみますと、中小企業ほどやっぱり弱いということになるのです。自己資本構成比率を高めてあげたいというねらいがあるのでございましたら、一億円以上の法人企業に対してこういう特別措置をなさる以前に六十万九百もある一億円以下の中小企業に対してなぜそういう措置をおとりにならないのであろうか、こういう点がやはり一つの問題になります。  二番目には、あなたのおっしゃっているように、金利負担が二兆六千億円にも及んでおる。これはたいへんな圧迫なんです。これが自己資本構成比を高める上に一つの障害になっておる。法人税は三二%でございますか、これも決して低いウエートではない。いまの日本の資本構成悪化の一つの原因の中は、借り入れを過当な競争の中で行ないながら高度経済成長政策の設備投資を行なった。ここに主因があるとするならば、ほんとう企業の資本構成比率を正常な姿に置きかえたいということなら、減税措置によって得られる効果と、一番の問題点である金利との関係を無関係で論ぜられるということは、あるいは措置なさるということは、私は不適当でないだろうかと思う。この間の議論にあったと思うのでありますけれども、いま一月末で銀行の貸し出し金の総額は二十兆円である。これに要する金利が二銭五厘から三銭二、三厘の間にはまっておるといたしましても、銀行に納められる金利は一兆八千億円をこえ、一日五十億円になる。これが今日の企業自己資本構成比率を強めていくことのできない要因になっておるんじゃないだろうか。今日の事情の中で一番もうかっているのは銀行ということになるのです。もちろん、資金コストは何ぼになりましょうか、一銭三厘以下でしょうけれども、そういうものを差し引いたといたしましても、九千億円から一兆一千億円程度の利潤を銀行は得ておる。これを一〇%お下げになったら一体どうなるだろうか。自己資本比率を高めていくには、一体企業に及ぼす影響はどういう貢献度をもたらすであろうか、これだけ問題になります。特別措置の中でたった——たったと言っては申しわけございませんけれども、九十六億円、しかもそれは一億円以上の人々にである。私は、やはりこういう措置はむしろ一億円以下の中小企業に振り向けられていくべきであるし、全体的には金利をお下げになる手だてをおとりにならないと、ほんとう意味の自己資本の比率の増大、安定ということにはならないんじゃないか、こういう気がしてならないのですよ。本会議でも申しておきましたように、法人企業の受ける税の負担が高いのなら、昭和二十九年から昭和三十八年の十カ年間に法人企業の持つ総資本が四十八兆五千億円である、この十カ年間に納めたこれらの法人企業の税は四兆八千億円で、一割である。この一割の十カ年間の税金をいまそっくりこれらの法人企業にくれてあげたとして、自己資本比率は三〇%にしかならないんじゃないか。税が高くて自己資本構成比率が悪化したのなら、税を下げてあげれば、ある意味ではかなりの効果が期待できるかもしれないけれども、今日までの徴税の累積額をながめてみてもそれにしか落ちついていない。だから、あなたのやられておるのは、全く何かの目的意図を持たれたごほうびなんだ、その程度の値打ちしかない。あなたの座談会での御発言の趣旨がそういうふうに申されておるとは私は思いませんよ。しかし、あれをずっと一読しまして受ける感じというものは、全くごほうび程度のものである。そういうもので今日の自己資本構成比率改善できるのなら、私はこういう言い方はしませんけれども、問題のネックは金利のところにころがっておるんじゃないだろうか。このことに手がつけられない理由というのは一体何だろうかという点を含めて、ひとつお答えをいただきたい。
  20. 塩崎潤

    塩崎政府委員 まず第一の、中小法人こそ自己資本比率が悪い、一億円超の法人にこのような措置を講ずるよりも、むしろ中小法人にこういった措置を講じたらどうか、こういう御意見でございます。私も、数字的に見まして、山田委員の御指摘のとおり、中小法人自己資本比率は悪く、これはまた早い機会にひとつこれを向上さしていただきたい、かように考えております。しかし、これを一億円超の法人にだけ適用することにいたしましたのは先ほど申し上げたところに尽きるかと思いますが、堀委員からも御指摘のありましたように、自己資本比率自分の努力によって向上し得るのは、やはり資本市場に近づけるような、さらにまた、金融に信用のある大法人のほうがより強いように私は思うのでございます。したがって、これを同じような率で中小法人に適用いたしますと、相対的に得をいたしますのは大法人になりはしないかという結果が私は心配になったのでございます。それが第一点でございます。  第二点は、先ほど申し上げましたように、この制度は、努力は要しますが、制度が非常に複雑であり、また税務署との間の種々のトラブルも起こりそうな仕組みでございます。借り入れ金を返して、よくして、翌期はまた借り入れ金をするとかいうむずかしい操作が起こり得る可能性もあり、そんなために税法も若干複雑な仕組みをとらざるを得ない、私は、そういった複雑な仕組みは中小法人には向かないものだ、やはり中小法人には簡単なる軽減をしたほうが適するのではないか、そういった意味で、中小法人につきましては、先ほど申し上げましたように、基本的な税率引き下げ幅を、大法人は二%、しかも三百万円以下の所得についての軽減税率制度の適用をやるめ、これはもっぱら中小法人だけにするとか、あるいは同族会社の留保所得課税緩和する、あるいはまた、貸し倒れ引き当て金については中小法人だけ率を上げる、輸出商社については、中小法人についてだけ海外市場開拓準備金繰り入れ率を上げるとか、こういったことのほうがより適切ではないかというふうに考えたのでございます。このあたりは考え方でございまして、いろいろな意見ができます。  さらにまた、第二の御質問の金利との関係でございますが、おっしゃる点、二兆六千億円という金額は、法人利益と支払い利子とが同額ぐらいな金額でございます。したがって、私ども法人税減税だけで体質改善されるとは思いませんし、その他の施策と相まってということを大臣が言っておりますことは、全くそのことのねらいでございます。しかし、金利は私の所管ではございませんが、いずれ銀行局等から御説明があるかと思います。たった九十六億円でどれくらいのことができるか、おっしゃる点、まことに私どももよくわかるのでございます。しかし、特別措置はできる限り少ない金額で誘因措置となるべきもの、かように考えております。ときどき金額が大きいと、むしろ国会でおしかりを受けて、大企業に片寄る大きな金額ではないかというお話もございますが、私は、基本的にはこれはできる限り少ない金額で、負担公平の例外でございますので、一つ誘因措置として、インセンティブというふうに考えてまいりたい、これが多額になって、これが税負担一つとして考えられますと、廃止のときもなかなか廃止しにくい、そういった意味で、私はこの程度の金額で十分ではないと思いますけれども自己資本比率の点はお願いしたい、かように思う次第であります。   〔委員長退席、吉田(重)委員長代理着席〕
  21. 山田耻目

    山田(耻)委員 自己資本比率が伸びたというその積算の基礎については、さっき堀委員もお聞きになったのですけれども、たとえば、いまの特別措置でやられております退職引き当て金だとか、あるいは幾つかの準備金がございますね。こういうものは内部留保の資金に措置されていくものでございましょうが、こういうものも自己資本比率に算入されたものとして計算なさるのですか。
  22. 塩崎潤

    塩崎政府委員 財務比率について種々の考え方がございます。しかし、私どもはできる限り客観的な動きが——あまり操作のできるようなものを自己資本あるいは他人資本のうちに入れますと、弊害も生じてまいります。そういった意味で、税の制度によってでき上がっております。ことにまた、税の繰り入れ率との関係におきまして、常に動くような価格変動準備金とかあるいは退職給与引き当て金とか、さらにまた貸し倒れ引き当て金、これは長期負債と考えられておりますけれども、これは除外して、分母から落として前期、今期を比較するというふうに進めたい、かように考えております。
  23. 山田耻目

    山田(耻)委員 そういたしますと、一%以上自己資本比率を高めたということは、二重の役割りを果たすということにはならないわけですね。これはいわゆる課税対象額となる金額から差し引かれていっておるわけでございますから、それが内部留保として積み立てられていく、それが自己資本比率を高めるという二つ役割りを果たさないというふうに理解していいわけですね。
  24. 塩崎潤

    塩崎政府委員 企業財務の考え方では、自己資本は、そういった退職給与引き当て金あるいは貸し倒れ引き当て金、これは評価勘定でございますが、むしろ長期負債の考え方だと思います。したがいまして、自己資本のほうには入らないという考え方でございます。いずれ将来は払い出されるものだという考え方に立っておると思います。したがいまして、おっしゃるように自己資本には入れませんし、もう税では関係のないようにいたしたい、かように考えております。
  25. 山田耻目

    山田(耻)委員 銀行局長お見えになっていないようでございますが、結局、自己資本比率を高めるための今回の特別措置方法を採用することによって効果があるんだ、九十六億円という少額でその誘因、誘発をさせるのだ、しかし税のたてまえという面から見ても、自己資本比率を高めていくというこの施策と、銀行金利を引き下げ自己資本比率を高め、企業安定をさせるという施策とは、必ずしも同じ性格のものじゃないでしょう。しかし、銀行局長いらっしゃらぬので、次官でもけっこうでございますけれどもほんとう意味日本の今日の資本構成の決して好ましくない現状というものを改善しなければならないという一つの意図、いま一つは、企業それ自身が大中小を問わず高額な金利のために非常に苦しんでおる、こういう面からやはり見ないわけにはいかないでしょう。そういうことになってまいりますと、そこに応分な手立てを講じていかないと、企業の安定、倒産の防止、二重構造の発展的な措置ということについては有効な手立てとはなり得ない。したがいまして、金利の問題について、どういうふうに将来の方向をお考えなのか、次官、ひとつできましたらお答えいただきたいと思うのです。   〔吉田(重)委員長代理退席、金子(一)委員長   代理着席〕
  26. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 自己資本比率改善する、このための方策としていろいろお話が出ておりますが、山田委員指摘のとおり、私も、ただ租税政策によってこれが改善が行なわれて、それで十分だ、こういった考えは通らないと思うのであります。やはり総合的に、特に資本市場、金融市場の整備ということ、こういったことが企業自己資本比率を高める大きなささえになり得る、したがって、すでに御案内と思いますが、政府管掌の中小企業金融三機関に対して、去年の九月三厘の金利の引き下げをして、それからまた、追ってことしの四月以降再び三厘下げる、半年足らずで六厘、中小企業政府管掌金融機関の金利を下げたということは、ただいまの御指摘の線に沿う政府の金融政策である、同時にまた、公社債市場の育成、こういう面についていろいろ政府が手を打っておりますこと、これまた御承知だと思うのでありまして、証券局長来ておりますので、その点については、証券局長から詳しく御報告をしてもらいます。
  27. 松井直行

    ○松井政府委員 自己資本が全法人で二〇%を割ったことは非常に重大なことだと思います。この点については、まさにおっしゃるとおりでありまして、有効な方法によってこれが改善をはからなければならない緊急の課題であると信じております。いま主税局長からるる説明がありましたが、ある恩典を与えて、恩典を与えられた法人税軽減額だけが恩典になるという性質のものであるわけでもないのでありまして、自己資本の充実、つまり増資にしろ、あるいは内部留保の蓄積にしろ、あるいは借金の返済にしろ、総合的に企業の財務体質改善するための一つの誘因でありまして、われわれは個々のそうした要素になっております事項について、全力をあげてあるべき姿に持っていくということはむろんでありますが、何らかの形で税からそういう誘導効果、誘因効果を与えていただくということは、まさに非常に有意義なことであろうと信じております。  そこで、その一つの要素になっております増資の問題ですが、いまだに増資調整の段階ではないか、こうおっしゃいますが、御存じのとおり、三十六年以降、増資の乱発によりまして株式の実質価値の低下を招いたという痛い経験を持っておるわけでありまして、ほんとうに増資に値する質的な値打ちを持った企業だけに増資をしてもらおうというわけで、いまその調整段階でありますが、やがてはそういうルールが企業者の胸の中にも、あるいはアンダーライターであります証券業者の胸の中にも、あるいは金を貸します金融機関考え方にも本来の姿に返りまして、増資すべき企業だけが増資できる範囲で増資するという慣行ができ上がりますならば、あえて技術的なそうした増資調整ということは不要であるということは、もう申すまでもないところでありまして、漸次そうした形式的な規制という措置を解除してまいりますが、その最終の担保はやはり企業家の自己責任に立った企業家の考え方いかんということが根本であろうと思います。さらにこのうしろにおります金融機関というものもあわせまして本来の増資のあり方に立ち返るというルールが確立されますならば、いつでもこういう調整は撤廃してもいいという時期がくるんじゃなかろうかと思います。一方また、この自己資本の充実ということのほかに、いわゆる財務体質改善と、やや広い場からの効果も期待し得るんじゃないかとわれわれも考えておるわけでありますが、銀行からの短期の借金で長期の設備投資をまかなっていくという従来のそういう誤った資金調達方法を何とかして是正していきたいというわけで、長期の資金は自己資金でまかなうか、いわゆる増資か内部留保かあるいは長期の社債でまかなうべきであるという観点に立ちまして、最後の社債につきましては、去年の夏、店頭気配の交換、ことしの二月に入りまして上場もするということで、一応市場を再開したわけでありますが、これにつきましても、増資と同じように厳格な規制がいま行なわれておりますが、社債の発行形態あるいは社債条件の弾力化を漸次進めるということでもって、自由な市場でほんとうの長期の資金を企業が調達でき得るような場を漸次つくっていきたいということでもって株式市場それから公社債市場あわせてその育成にいま鋭意努力しておるところであります。
  28. 山田耻目

    山田(耻)委員 銀行局長いらっしゃいませんから、この問題はそれくらいにして、先へ進めていき、こられましたら、また質問します。  次は、二十九条の関係でございますが、「給与所得者等が住宅等の譲渡を受け又は住宅資金の貸付けを受けた場合の課税の特例」、一つは、これをなぜ特別措置にお入れになったのであろうか。所得税法の九条の五項、五十九条、所得税法施行令の二十一条四項、こういう所得税法の中にいわゆる非課税とすべき措置、あるいは譲渡所得などの特例に関する措置、国家公務員宿舎法第十二条による無料宿舎の利益に対する非課税、こういう法律がすでに所得税法の中にあるのでございます。この中を若干修正されまして、特にこの改正された条文を見ますと、「給与等」と「等」という字が入ったことによって二十九条の提案がなされておりますし、それから「法人税法第二条第十五号に規定する役員」、これは政令七条できめられておりますが、その下に「その他政令で定める者に該当しないもの」こういう条文が入りまして、特別措置で表面に出てきたわけであります。一体これはどういう発想で特別措置としてお組みになったのだろうか。少なくとも、所得税法よりか特別法ですから優先をいたしますから、その特別措置の中にこれを取り上げられてきた理由についてまずお聞きしたいと思います。
  29. 塩崎潤

    塩崎政府委員 お答え申し上げます。  すべての所得は、所得税法では課税所得に算入されまして総合課税を受けることはもう御存じのとおりでございます。しかし、政策的な要請に基づきまして、一定期間特定の政策を急速に遂行しようといった角度から、所得税におきましても特定の個人の所得課税しないということは当然行なわれることでございます。そういった意味政策上の理由があるものによって、非課税あるいは特別控除、準備金こういった形をなしておるものが、私は租税特別措置法で規定さるべきものだと思います。もちろん、所得税法の御指摘の九条の中には政策的なものも、たとえば一号の郵便貯金の利子のように少額のもの、こんなような意味で、おそらく政策的な角度からも若干入っておるかもわかりませんが、非課税の趣旨になっておりますし、さらにまた、九条の五号を見ていただきますと、「給与所得を有する者がその使用者から受ける金銭以外の物(経済的な利益を含む。)でその職務の性質上欠くことのできないものとして政令で定めるもの」、このあたりになりますと、政策上の考慮と申しますか、むしろ現物所得のように、その所得の性格が自分の自由に処分のできることからほど遠いもの、さらにまた、評価が非常にむずかしいもの、こんなような理由から所得税法上非課税にするというような考え方をとって非課税にしておるものでございます。いわば、九条のほうは、政策というよりもむしろより担税力の見地から、さらにまた、費用と所得との関係の不分明なものをあげまして非課税とした、こういうように私どもは理解しております。しかし、その中にはもちろん全部私の申し上げましたように割り切れ、またすっきりしたものではないのでございまして、政策措置との関係は紙一重でございます。そんなような意味で、山田委員指摘のように、二十九条も、考え方によりますれば、九条の中に規定してもいいのじゃないかということも当然言えるかと思います。しかし、これは給与所得者等の住宅の建設促進という政策目的を強く出した、こういった角度で、しかもまた、一定期間の措置と考えましたものでございますから、特別措置のほうに規定したほうがいいというふうな考え方をとった次第でございます。
  30. 山田耻目

    山田(耻)委員 五十九条には譲渡に関する特例がつくられておるわけですね。そうして施行令の二十一条の四号には、国家公務員宿舎など利益を受ける場合も非課税ということに、かなり細分化されて政令も出ているわけです。そういたしますと、いまのあなたのおっしゃっているだけではどうもすっきりしないし、この二十九条は、所得税法なり施行令を改正されることによって十分用を果たすことができるのではないか。一面、二十九条の措置というものは、さして私たちが反対する性格のものでもないのですが、ただ、こういうふうに所得税法からはずして特別措置としてお出しになった理由というのがどうもすっきりしないという気持ちがあるわけです。その気持ちが次につながっていくわけでありますが、「昭和四十五年十二月三十一日までの間に、その使用者の有する土地若しくは土地の上に存する権利又は家屋で同法の施行地にあるものを使用人である地位に基づき低い価額の対価により譲り受けた場合における経済的利益については、所得税を課さない。」、この低い価額の対価ということが、五十九条の二号で地価などを含めて明らかにされておるのですが、これは私人間における価額の対価譲り受けというふうに立法の趣旨には言われておるのだと思いますが、今回は、この前段の解釈からまいりますと、国対国が雇用しておる所得者、ここにも当然適合できるものであるというふうに解釈をして差しつかえないものかどうか、この点ひとつ……。
  31. 塩崎潤

    塩崎政府委員 条文をあげての御質問でございますので、若干条文に即しまして御説明申し上げたいと思います。  まず最初に御引用されました二十一条の関係から見て、所得税法にこの措置法の二十九条は規定されるべきではないかという点でございます。施行令の二十一条は、御案内のように、国家公務員の宿舎の貸与を受けることによる利益が規定されておりますので、まさしく措置法の二十九条と類似いたしております。しかしながら、これもまた考え方で、先生のように紙一重だといえば紙一重というふうにもなりましょうけれども、まあ考え方の置きどころでございます。所得税法施行令の二十一条のほうは、これは雇用主の都合によって、ここに書いてありますように「職務の遂行上やむを得ない必要に基づき使用者から指定された場所に居住すべきものがその指定する場所に居住するために家屋の貸与を受けることによる利益」といったふうに、多分に強制的な、雇用主のための、いわゆるエンプロイヤーのための利益とアメリカの学者あたりは言っておりますが、そういったものは、むしろ処分の自由なる所得ではないという考え方に観念上立っておるわけでございます。つまらぬ理屈だといえばそれきりでございますけれども、外国あたりではこういうものは施行令なんかに書かないで、そういうものは所得にあらわすインカムではないというふうに、解釈で言っておる問題でございます。わが国の税法はそういったおい立ちを持っておりませんので、できる限り法律あるいは政令でそういった関係から明確にして、トラブルをなくし、あるいは誤解を防ごうという趣旨からでき上がっておる。そういう考え方によれば、二十一条の四号あたりは当然所得を構成しないという考え方も、私は十分成り立つと思うのでございます。ところが、措置法の二十九条のほうは、これは経済人である企業とその間の従業員との関係でございますから、当然取引は一般経済水準の利子をつけて、あるいは経済上の対価で取引されるべきものであろうという考えでございまして、それが特に割引されておりますれば、これは経済的利益として、所得として課税せざるを得ない。それをひとつ住宅政策のために譲許をするという趣旨でございますので、二十九条に規定したほうがいい、こういう考え方をとったのでございます。それから、所得税法の五十九条も、これは譲渡とみなすということで低額譲渡の場合は含めておりますが、おっしゃるように二項ではずしております。これは譲渡がなかったものと見るわけでございますが、この趣旨は、譲渡所得課税をこの機会に行なわないで将来に引き継ごうという改正でございます。若干趣旨も違っておりますので、ここに規定するということも適当でない。これは山田委員もそういうことは例示だとおっしゃられましたが、私も例示と心得ておりまするけれども、そういった意味所得税法はでき上がっております。政策的なものと基本的なたてまえとの区分は、まさしくむずかしく限界しにくいものがございますが、現在のところそういった考え方で二十九条を御提案申し上げた次第でございます。
  32. 山田耻目

    山田(耻)委員 わかりました。「低い価額の対価により譲り受けた場合」、これはいわゆる私人間におけることは過去に幾つかあったと思うし、この所得税法上のたてまえ並びに「給与所得者等が」というたてまえからまいりますと、国と、国に従事する給与所得者、この人との関係の中で、低い価額の対価により譲り受けるということは当然あり得るものだと私は思うのですけれども、それはいかがでしょうか。
  33. 塩崎潤

    塩崎政府委員 「給与所得者等」とありますのは、御存じ所得税法の規定を引っぱったわけでございますが、字句は「使用人である地位」ということばがありますように、勤務先を意味してございますので、国、地方公共団体、あるいはもちろん企業が大部分でございます。国は、先般来、公社を含めまして、もう安く払い下げはしないということになっておりますので、この規定の適用はないかと思いますけれども考え方、法文から見れば、そういったことがございますれば、法律問題として適用になるということはもちろんでございます。
  34. 山田耻目

    山田(耻)委員 なかなかたいへんなようでございますが、結局、法文上の解釈からいくと、国が使用しておる使用人、言いかえれば給与所得者、いわゆる国家公務員、地方公務員、公共企業体の従事員もこれに適合されるものであるというふうに法律条文のたてまえからは解釈できるということについては間違いございませんね。そうなりますと、二十九条の初めに戻りまして「法人税法第二条第十五号に規定する役員」これが法人税法政令第七条によって、政令によってきめられておるのでありますが、その下に「その他政令で定める者に該当しないもの」こういうのが今度は挿入されてくるわけです。ここが一体どういう性格を持つものであるか、この「その他政令で定める者に該当しないもの」、該当するものとしないもの、この限界が政令第七条にはかなり明確に書いてありますが、「役員その他政令で定める者」と書いてございますから、ここで公務員のどの地位までを一体このものにさしておるのか、これをひとつこの際、政令はどうせ皆さんがおつくりになることですから、明らかにしておいてほしい。
  35. 塩崎潤

    塩崎政府委員 公務員という特に名称をあげての御質問でございますが、私どもは、この政令で定めるものには公務員のようなものを考えてございません。これはもう税制山田委員御存じのように、私どもが役員の中に役員と並べまして同族会社の同族株主を取り上げるのが、租税の回避を防ぐ意味におきまして、法人税法の各所に取り入れられていることは御存じのとおりでございます。その趣旨は、御存じのように、やはり役員あるいは同族株主というようなものは、企業の経営が自由にできるものだ、従業員と違うような力を持つものだ、従業員と企業との間におきまして、たとえば安く払い下げる、あるいは安い利子で借りるということはなかなか利害が相反する意味におきましてできないものである、したがって、こういった特別措置を講じて、利益を与えらるべき者は、そういった企業に対しまして支配力を持たない従業員に限るべきではないか、こういう考え方でございます。したがいまして、そういった意味で、役員の方々も使用人役員が多くなった関係上いろいろな御意見もございますけれども、ひとつ役員は遠慮していただく、さらにまた、同族株主は、いま申しましたように、かりに役員になっていなくても、これは役員と同じような力をふるい得るものだというふうに考えまして、これはひとつ排除してまいりたい、こういう考え方に立っております。
  36. 山田耻目

    山田(耻)委員 具体的にお答えしていただかぬとよくわからないのですけれども、たとえば国家公務員、地方公務員、特に公共企業体が多いのでしょうけれども、最近の住宅建設を見てまいりますと、それぞれの公社が持っておる資本で住宅を建てる比率は非常に薄くなっております。共済組合の資金で住宅を建てる、しかし土地の権利は国鉄のものである、そして管理運営は国鉄がする、あるいは公社がやる、こういう場合が非常に最近ふえてきておるわけですね。こういうのが譲渡形式を将来とられるということは当然起こり得ると思いますし、最近そういう傾向も強まってきております。したがいまして、そういう公社の場合、あるいは国家公務員の場合でも当てはまるのでありますけれども、一体、除かれるべき役員という範疇は、政令で定めるようになっておるのですけれども、これはやはりいろいろな問題を惹起する要因を含んでおる、こういう面で、公共企業体でいきますと、役員というものは理事以上、その他は職員ということになっております。国家公務員、地方公務員の場合は人事院規則できめておりますけれども、そういうながめ方で役員に該当する者、しない者というふうな線をお引きになるのか。いま私が特にしぼって聞いておりますのは、公務員関係とのこの線の引き方をお伺いしておるので、この点についてひとつお考えを述べていただかなければ、どうも質問が進まない気がするのであります。
  37. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、法人税法の性格から、法人税を納めていただく会社あるいは組合等が中心となりますので、いまおっしゃいました国あるいは公社関係の役員をどの程度にするかという点に強く重きを置いておりません。しかし、現在の法人税法の定義では、役員と申しますと「法人の取締役、監査役、理事、監事及び清算人並びにこれら以外の者で法人の経営に従事している者のうち政令で定めるものをいう。」ということになっておりまして、その政令は、ただいまおっしゃったように、明確に法人税法の施行令で七条一号には「法人の使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの」さらにまた二号には「同族会社の使用人のうち、その会社が同族会社であることについての判定の基礎となった株主等であるものでその会社の経営に従事しているもの」、こういうふうに定義されております。おっしゃるとおり、確かにこの規定は法人税の規定ではございませんし、ただいま申し上げましたように給与所得者等に適用になりますので、国鉄から従業員が安く払い下げを受け、あるいはまた安い利子で住宅資金を借りますれば適用になります。しかし、その際の役員の意味は、理事、監事及び清算人といった法律の定義、さらにまた、施行令七条の一号から見まして「法人の使用人以外の者でその法人の経営に従事しているもの」というような定義で、おっしゃる点は含まれてくるのではなかろうか。なお、私も詳細に考えてみなければならぬと思いまするけれども、一応公団、公社もこの規定で役員はこの特例から排除される、さように考えております。
  38. 山田耻目

    山田(耻)委員 国家公務員の場合は、たとえば特定職として次官以上ですか、次官以上の場合はこの役員の中に入ると規定すればできることです。これは政令のきめ方いかんですから。塩崎さんのような局長さんの立場ならこれは払い下げを受けることができるというふうな線の引き方も可能なんですね。あなたも給与所得者の一人でございましょう。そこらあたりは具体的に聞いて失礼でございますが、いかがでございますか。
  39. 塩崎潤

    塩崎政府委員 公団、公社は、いま申し上げましたような説明から入るわけですが、政府の役員といいますと、どの程度になりますか、私もいままで考えたことがございません。私のような身分の低い者が入るかどうか疑問でございますが、政令をつくる際にひとつ検討してまいりたい、かように考えております。
  40. 山田耻目

    山田(耻)委員 法律の解釈のたてまえからいきますと、いわゆる国家公務員、地方公務員、公共企業体等の職員もすべてこの法の適用を受ける、そうなってまいることはけっこうなことでございますが、とかく、いままで決算委員会などで問題になりまして、国民も非常に疑惑を持ち、不信感を持ったのですけれども、不当なる払い下げ、譲渡の措置、こういうものを合法化するというふうな印象を与えてはならないと思うのです。また、そういう政令を出してもならないと思うのです。私はきわめて大切だと思うのです。なぜ所得税法で御処置なさらなかったかという私の疑惑もそこにある。なぜ特別措置としてここへ抜き出してこられたのか。ちょっと所得税法なり施行令を改正すればできることを、なぜ特別措置でお出しになったか。しかも、今度は当然所得税法の中では所得を受けておる国家公務員も含まれてしかるべきなんですから、特にここではそういうことが政令できめられておる。従来では、法人税法第二条第十五号、政令第七条に定めてある役員以外になお政令で定める、こういう非常に疑惑を増すような御親切さを出してもらって、そうして、法律改正をなさる意図というものはどこにあるのだろうかという気持ちを私は多少持ったわけです。ですから、従来とかく国民に疑惑の念を与えたようなことを合法化することにならないように、特に政令の制定については、私たちも十分監視をしなくてはならぬ立場でございますから、特に御留意をしていただかなければならないと思います。  次に、三十一条関係でありますけれども、この法律は、税制の非課税というかっこうでここに掲げられるよりか、収用法でなぜおやりにならぬのだろうか、この点についてひとつ御見解をお聞きしたいと思います。
  41. 塩崎潤

    塩崎政府委員 収用法で税の措置をあわせて書くべきではないかという御質問かと思います。そういった考え方ももちろん可能でございます。しかしながら、税制税制といたしまして、収用を受けての規定でございますけれども、特別な考え方が第一点あるかと私は思います。  第二点は、また、申告手続その他はやはり税制の規定する特殊な分野でございますし、そこは収用法に書いたのでは、また十分目的が達成されない、こういった面もございます。  第三には、やはり租税法律主義にいたしまして、しかもまた、大蔵委員会のように専門に御検討願える委員会には、こういった問題も、収用法と離れて、収用法を頭に置きながら御議論願っていただくほうがいいのではないかということが第三の理由でございます。各常任委員会に提案される法律の中に税の規定を書けという要望がよく他の各委員会からございますが、私どもは終始お断わり申し上げてきております。昔からの慣例といたしまして、税はやはり大蔵委員会で総合的に、担税力、支払い能力の観点から、たとえ収用といえども普通所得との関係からあわせて見ていただきたい、こんな気持ちで収用関係の特例措置租税特別措置法に規定しているところでございます。
  42. 山田耻目

    山田(耻)委員 税関係についてはこちらに入れるのが適当だろうという御判断ですけれども、資産の買い取り、消滅あるいは買い取りの処分により行なう補償金、こういうものは収用法の中にもあるわけでございますから、そういう意味で、ここに入れられた理由について若干消化しにくかったわけです。  私の租税特別措置についての質問は、一応これくらいで終わりたいと思うのでありますが、またあと陸続と有能な方たち質問がありますから、これからいろいろな究明がされていくわけでございますけれども、この特別措置法というものは、きょう御答弁になったことではまだまだ理解しにくいことばかりで、むしろ矛盾を承知で強行しなければならぬというような気魄が強いような気がいたしますし、こういうような点につきましては、私が質問の第一陣を承ったわけでございますけれども、やはりお約束いただきましたように、矛盾点は解消していく、そして、税の制度としては公平の原則が守れるようにしていく、そういう立場からながめてみると、数個かなり目立った矛盾点がある。これらについては、四月からの調査会で十分御検討いただくということでございますし、しかも、その十分検討するというのはいつもどこででも聞くことばなんです。そういうものがむしろ逆に矛盾を拡大させる一つのステップにもなっておるように思えますし、この際、ひとつ思い切って申し上げたような配当所得の問題、あるいは資本構成の自己比率の増大の問題などについては、もっと大所高所から検討してもらわないと、とかく特別措置というものが、特定の因果関係で、しまいには利益と利益の結びつきになっておるのではないだろうかという幾つかの批判の生まれてくることも私はいなめない事実だと思っております。そういうことをきっちりと整理していただくという決意は、少なくともあなたの答弁からいただけたものだというふうに私は理解しておりますし、そういうふうにひとつあなたの気持ちを整理して、最後に総括としてお答えいただきたいと思います。
  43. 塩崎潤

    塩崎政府委員 特別措置につきまして山田委員からいろいろ御質問を賜わったのでございます。おっしゃる点も十分ごもっともな点があり、私どもも反省しなければいかぬ、また検討しなければいかぬ点を痛感したのでございます。四月から税制調査会も開かれることになっておりまして、政策的要請と租税負担の公平の原則をどういうようにかみ合わせるか、さらにまた、法人税等についてどういうような考え方を持っておるのがいいか、このあたり根本的に検討いたしたいと思います。かように考えております。
  44. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは、物品税について少しお伺いしたいと思います。  かなり総花的な物品税の減税というものが行なわれてきたわけでございますけれども一つは、物品税という税制上の観点からとらえられた措置であるというふうに見受けることよりか、むしろ高騰する消費者物価を安定させたいということで減税措置がなされたものだと私は理解をいたしておるわけであります。したがいまして、物品税の減税につきましては、減税額が論理的には、最終的な消費者である人々に当然還元されるべきものである、こういうふうに考えておりますけれども、いかがでございましょう。
  45. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税も消費税の一部でございますので、消費者の負担と考えるべきだと思います。市場の状況によりまして、一時の転嫁についての混乱がありましても、究極的には消費者の負担であり、今回の減税の結果は消費者に還元さるべきものだと考えております。
  46. 山田耻目

    山田(耻)委員 そういたしますと、きょうが二十三日でございますので、あともう八日しかございません。通産省のほうでずいぶんと必要な措置については手だてができ上がったものだと考えておりますけれども、物品税の減税措置というものと業者の指導というものがどのようにうまくかみ合って指導なさっておられるか、お伺いいたしたいと思います。
  47. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 いまお尋ねの件でございますが、通産省といたしましては、今回の物品税引き下げ関係の各種のもの、特に私どもが関与いたしております重工業局関係のものにつきまして、重点的に工業会等を通じまして強力な指導をいたしております。  現状でどういうふうになっておるかということにつきまして、二、三申し上げてみたいと思います。  まず乗用車でございますが、これは御存じのように、昨年一%物品税が上がりましたので、そこでその分だけ昨年は値上げをいたしたわけであります。今回は、それがまたもとの一五%になりましたので、昨年上げました額を全額これを引き下げるという措置をとることに決定をいたしております。大体、車種によりまして金額は違いますが、小さいもので約二千円、ブルーバードでありますとか、コロナでありますとかいうようなものが大体三、四千円程度、昨年上げました額を全額もう一度もとに戻すという措置をとることに工業会のほうで決定をいたしております。また電気器具関係でございますが、テレビの受像機、これも今度物品税の引き下げ対象になりました。これは、現在旧税で払って市中在庫になっておりますものがまだ相当数ございます。そういう関係もございますので、今回の税引きの絶対額、それの約七割程度のものを下げまして、そしてこれらを平均して売り出しをすることになっております。一例をあげてみますと、十九型のテレビ、標準的なもので申しますと、約六万六百円というものがございます。これにつきましては、千百円程度の値下げが行なわれるということになろうかと思います。また同じようなもので、電気冷蔵庫でございますが、これにつきましても同様な趣旨でございまして、平均価格に近い現行の製品で五万六千三百円といったような電気冷蔵庫が、約千円値下げをするということにいたしております。その他、扇風機でございますとか、あるいは時計、カメラ等につきましても同様なことで、各工業会を通じまして、私ども担当の者が強力に働きかけをいたしまして、それぞれ、いま申し上げましたような税額にほぼ近い額、あるいは現在市中で出回っております、小売り在庫等になっておりますような在庫のもの等を勘案いたしました額、この程度のものを引き下げるということに相なっておる次第でございます。   〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕
  48. 山田耻目

    山田(耻)委員 業者間の一つの指導調整の中に、若干——自動車については私わかるのですけれども、弱電機、カメラ、時計、レコード、こういうところにはかなりの混乱が生じておるように見受けられるわけです。若干今日まで過剰生産の形にあった向きも見えておりましたし、乱売の傾向もあったように見えておりましたし、そういうことの中で、この程度の物品税の引き下げでは、実際に最終消費者に減税分だけの直接的影響を与えることにはならない、むしろ中間マージンに吸収されていく可能性のほうが強いのじゃないか、そういうことがいわれておりますが、いかがでございましょうか。しかも、そういう条件を備えておる業者に対して、効果が直接的にあらわれるようなどういう行政指導、方法をおとりになっておるのか、その点について御説明いただきたいと思います。
  49. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 弱電機の中でも、冷蔵庫でございますとか、あるいはテレビでございますとか、こういう主として大メーカーの市場占有率の高いもの、こういったものにつきましては、比較的問題なく値下げが行なわれるものと私ども思っております。いま御質問のございました点は、たぶんカメラ等の問題ではないかと思います。カメラの状態は、御存じのように、相当程度在庫がございまして、現在これの生産制限等をいたしておるわけでございますが、この三月末で、百三十万台程度のカメラがなお在庫として残るというような状況でございます。また、たいへんたくさんの機種と申しますか、がございますので、一がいに物品税が下がったからといって、市況の状況によりましては、全部が全部一律に下げるということにはなってまいらないわけでございます。たとえば、性能を向上させまして、値段を少しの期間据え置きたいというようなものもありますし、また、市況の状況、在庫の状況等を見まして、物品税の引き下げ以上に大幅に値下げをするものもございます。また、ある程度物品税の値下げ程度の値下げをしたいというものもございまして——機種だけで非常にたくさんございますので、一律な値下げというようなことにはまいりません。同時にまた、ただいま御指摘のように、競争が強いものでございますので、そういった競争者の状態を見まして、各社それぞれ市況に応じた値下げをするということでございますが、全体的にこれを見てまいりますと、全体の値下げ分というものは、ほぼ減税分の値下げが行なわれるのじゃなかろうか。したがって、工業会あたりでは、上がるものもあり——上がるものと申しますか、性能の向上によって据え置くものもあり、またものによっては大幅に値下げをするというものもある。まあ、物品税の引き下げを契機といたしまして価格の変動が行なわれるわけでありますが、全体平均してみますと、大体物品税の値下げ分ぐらいが平均して値下げをされるということになるような指導をいたしておるわけでございます。
  50. 山田耻目

    山田(耻)委員 五十九品目のうち四十六品目が減税対象になるということですけれども、物品税の減税につきましては、これは調査会の答申にも今回はなかったわけですね。それを自民党のほうでお考えになっておやりになったわけでありますけれども、一体どういうふうな根拠でこれをお下げになったのか。その立場が一つと、いま一つは、物品税の減税品目の対象にならなかったものと、なったものとの区別は、一体どういう根拠から生まれてきたのだろうか。しかも、物品税の引き下げ税率度合いについても、パーセントについてもいろいろな疑惑を呼んでおります。こういう点は、物価をできるだけ安定させ、消費者にできるだけ多く買ってもらって需要を高めていく、こういう純粋な気持ちからながめておると、若干消化し切れないものが残ります。これらについて、その発想、構想をひとつお尋ねをしておきたいと思います。
  51. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税の改正の動機及びその改正考え方の御質問のようでございます。政府の税制調査会におきまして物品税の改正につきまして答申がないにもかかわらず、なぜ物品税を改正したか、こういう点が、第一点の御質問のように承りました。  政府の税制調査会におきまする審議経過は、去る十二月に出しました昭和四十一年度税制改正に関する答申といたしまして税制調査会が発表されたのでございますが、その中にもありますように、何といっても、国民の関心事でありますのは、やはり所得税法人税、相続税の減税であり、これには非常に長時間の審議をせざるを得なかった、間接税につきましても本来審議すべきであったのだけれども、しかし、何分限られた時間の制約のもとでありますので、個々の課税対象については討議するゆとりがなかった、しかし間接税の負担の軽減合理化については、所得税との関連あるいは法人税との関連においても十分これは考えていくべきである、さらにまた、御存じのように昭和四十一年中に期限の到来する物品税の暫定軽減あるいはまた非課税措置について適切なる措置を講ずべきではないか、ともかくも、現在のような経済情勢であり、それが増税といったかっこうで期限が切れるということ自体も、まさしく現在の情勢において再検討すべきではないか、これらにつきましては、ひとつ政府において十分検討しなさいという答申をいただいたのでございます。そういった意味で、全体といたしまして、物品税に関する大きな問題点は税制調査会にも十分意識されまして、政府にまかされたのでございます。政府におきましては、このような答申を受けまして、各方面と御相談申し上げて、現在のような物品税の減税案をつくったわけでございます。  そこで、どういった根拠で物品税を改正したかという第二の御質問でございます。  まず第一に、物品税につきましては、平年度三百四十七億円の減税規模ということを念頭に置きまして、これをまず第一の基準にいたしました。三百四十七億円がどうしてできたかと申しますと、直接税の減税、地方税の減税をみな含めまして、平年度三千六百億円をこえる減税を行なおう、その中の一環といたしまして物品税を取り上げたわけでございます。物品税の減税考え方でございますが、間接税につきましては、昭和三十七年以来減税が行なわれていないことは御存じのとおりでございます。  そこで、どのような税を取り上げるか、次にくる問題でございますが、現在の状況から見ますと、やはり物品税が何といっても間接税のうちで優先的に取り上げるべきではないか。揮発油税等につきましては、目的税の関係もございます。さらに、酒税あるいはたばこ専売益金等につきまして、これは別途の角度から物品税よりも減税の要請は私どもは低いものと認められたのでございます。そんなような関係で物品税を取り上げざるを得なかったというのが第二の理由でございます。  第三の理由といたしましては、税制調査会指摘いたしておりますように、四十一年中に乗用車あるいはカークラー等、期限のくる物品税の特別措置がございまして、この期限がまいりますと、むしろ増税になるような結果を招来するのでございますが、これも先ほど申し上げましたように、現在のような経済情勢のもとにおきまして、消費税とはいいながら、やはり価格の転嫁力というものは企業にまかされておる、そういった状況から見てはたしてどうであろうかというのが、第三の理由でございます。  それから第四の理由といたしまして、やはり現在の経済情勢におきして、所得税減税にもいわれましたように、消費需要の喚起、これがやはり必要であろう、かように考えられるのでございます。物品税の軽減額、この程度ではたして価格が引き下がり、大衆の消費が起こってくるかどうか、疑問を持たれる方もございまするけれども、全体といたしまして三百四十七億円という物品税の減税額、これは消費者の手元に残りますれば、健全なる消費、あるいは一部貯蓄に回るかもしれませんが、回ることは、これは現在の情勢のもとにおける経済政策としてまた至当ではないか、こんなような考え方から物品税を取り上げたのでございます。  その他、輸出振興、あるいは消費税とはいいながら、中小企業の大きな負担と申しますか、手数、負担その他のわりあい苦痛の多い部面についての緩和、これもまた現在の中小企業の問題の大事なおりから取り上げるべきである、こんなような角度を加味いたしまして物品税の減税を取り上げたわけでございます。現行法では、御存じのように、四割、三割、二割、一割、五%という税率刻みがあり、さらにまた——いまのは第二種でございましたが、第一種物品につきましては、小売り課税で二割と一割、第二種物品につきましては、いま申し上げました製造課税であって、四割、三割、二割、一割、五%と、五段階の税率を持っております。さらに第三種は、御存じのように清涼飲料とマッチにつきまして、従量課税でございますが、これらの個々の多数にわたる品目を現在の経済情勢から見まして、いまのような角度からひとつ減税をしようというのがその内容でございます。  その方法といたしまして、課税物品を製造いたしますところの製造者の企業の規模が零細であり、その税額が僅少なものは廃止する、さらにまた、しかもその生産高の大部分が輸出に向けられるようなもので中小企業の製造するようなものにつきましては、課税を廃止しよう、こういうふうな考え方を第一にとっております。第二には、国民生活に相当密接に関連いたしますところの商品でございまして、今後生活水準の向上と密接に関連する商品でございますが、これもまた同時に大量生産という基盤を通じまして輸出コストを下げる、そのためには、国内市場というものをひとつこの際つくっていこうというような考え方がとられるものがございます。こういったものは免税点というような操作では、大量生産品でございますし、耐久消費財が中心でございますので、こういったものにつきましては税率をひとつ引き下げましょうということをいたしました。今回の税率構造は、いまの五段階のほかに一五%という新しい税率を設けたのでございます。第三番目には、これは一の課税の廃止と関連はいたしますが、やはり零細企業等の生産する物品で納税者に相当な負担をかけているようなものにつきましては、ひとつ免税点の引き上げでこれを軽減していこう、こういった方針が第三の方針でございます。なお、現行の税負担水準から見まして、高級乗用車等につきましては、現状の負担を適当と考えまして、改正は行なわなかったような次第でございます。
  52. 山田耻目

    山田(耻)委員 企画庁にお尋ねするわけですが、いまの塩崎さんのお答えでも言われておりましたように、平年度三千六百億円の減税の中に二百三十八億円物品税の軽減があるわけでございますが、所得税法なり法人税法なりというものの基準に合わしてきちっと減税がなされていくわけですけれども、問題は、物品税というのは最終消費者に品物が渡るときにその分だけ確実に減税されておりませんと、物品税が下がった、消費者に利益を与えたということにはならないわけであります。今日のマーケットなり各商店の動向に対して、一体確実にその精神が具本化できるようにどういう手だてがとられておるのか。どうも地方の都市に行きますほどそういう影響が薄らいでおるような気がしてならないわけです。私は先年アメリカに参りまして約三カ月ばかり生活したわけですけれども、向こうには物品税でも州における税額、合衆国における税額がきちんと紙に張られて価格表示がされております。いま日本の物品売買の中にそういう税額を明らかにしてやられておるということは、一般商店じゃ見受けることはできませんし、繁雑なことでしょう。しかし、どの品物が幾らであるということについては、消費者は非常に敏感に感じ取っておるわけです。その敏感な感度に対して、これだけ下がったということを明確に意識づけることが、物品税の減税の持っておる意味でなくてはなりません。一月二十一日の閣議決定を見ますと、店頭指導なりあるいは店頭表示なり、具本的な方策というものがなかなか見つけ出されていないようであります。その程度のことでは、あるいはそれを商工会議所等に通達としてお示しになったぐらいのことでは、実際における店頭価格というものが引き下げられて最終消費者に渡るという形には私はならぬと思う。一体、どういう具体的な指導をなさっておられるのか、ひとつ話をしていただきたいと思います。
  53. 中西一郎

    ○中西政府委員 経済企画庁の直接の仕事としまして、いまお話のような諸点について、関係業界を指導するということはいたしておりません。関係のそれぞれの担当の省庁でやっていただくということで一貫してきておるわけです。ただ、お話のような点につきましては、価格の問題さらに品質の問題、量目の問題、いろいろな点で消費者保護に非常に関係の深いことであるというふうに考えます。そういう意味で、現在国民生活審議会にいろいろ議論していただいておりますけれども、特に消費者保護部会で御指摘のようなことを含めまして検討を進めていただいておりますが、関係各省との連絡協議会もございますし、それぞれ問題を深めておるのが現段階です。まだ取り立てて消費者保護についての結論を得たというものはございませんけれども、量目、価格、品質あるいは消費者を保護するという観点での問題の整理をいたしておるのが現状です。  お話の物品税の点につきましては、大観しますと、供給が制限されておるというようなものはあまりない、工場で生産される工業製品が多うございます。そういう意味で、需給関係からは価格の下ささえをするような、そういう要素はございませんので、各省の指導さえよろしきを得れば値下げが実現されるんじゃないか、ただその中に再販価格の関係あるいは著作物、レコード等、制度的なからみ合いのあるものもございますが、そういう点については、特に強く指導をし、監視をする必要がある、かように思っております。
  54. 山田耻目

    山田(耻)委員 あと一週間しかないのですから、いまのようにまだ検討中である、各省間でいま連絡中である。あなたたちは、特に塩崎さんの胸を張っての言い分じゃありませんけれども、平年度三千六百億円も減税するのだ、仁徳天皇以来の大できごとである、こう大蔵大臣もおっしゃっておりますが、平年度二百三十八億円、初年度二百六億円の物品税の減税というのは、最終消費者である国民の皆さんに正確に還元される措置をおとりになるのが私は政府の立場であろうと思うし、それを消費者の側に立ってしっかりと保護をなさるのがあなたの立場であろうと思う。いまおっしゃっているような答弁では、一体いつになったら確実な店頭指導ができるわけですか。確実に物品税が減税をされた価格で消費者の手に正確に渡っていくのは、いつになったら一体できるのか。
  55. 中西一郎

    ○中西政府委員 私のお答えいたしましたことに若干誤解がおありになるんじゃないかと思うのですけれども経済企画庁の現在の立場といたしましては、個々の品目について、直接関係業界に指導、監視をするという機能は持っておりません。そういう意味合いで関係各省等の御努力に期待をいたしておるわけです。その際に、消費者保護という大きな観点で、制度的なものとのからみ合いを考えながら新しい行政の方策を編み出していく一般的な方針を申し上げたのでございます。  そういう意味で、物品税の問題について八日後にどうだというお話がいまございますけれども、それを目途にして特段の作業をやっておるわけではございません。ただ、一般的に見れば、下げ得る条件は整っておると見られる、そういうことで、各省庁の御努力によって三百四十七億円は下がり得るのではないか、こういう観測をいたしております。なお、途中でどうしてもこういう点がおかしいではないかというような制度的な問題、あるいは業界の特殊的な問題を把握することができますれば、その際にはまた迅速に各省庁にそういうことを要望するという態度は捨てませんけれども、現状としてはいまのように思っております。
  56. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 私どもの所管しておりまするものにつきましては、先ほどお答え申し上げましたように、各工業会等に関係のメーカーの御参集を願いまして、私どものほうの関係当局からすでに物品税相当分の値下げをしてもらいたいということの要望を強くいたしておるわけであります。それを受けまして各メーカーは、先ほど申し上げましたように、乗用車等につきましては定価の改定をする、また、電気器具関係にいたしましても、テレビにつきましては約千円、電気冷蔵庫も約千円、ルームクーラー等は約五千円の定価の改定をするということに各メーカーが同意をいたしておるわけであります。こういったものは蔵出しの関係でございますので、店頭に出ておりまする小売りの価格に、これには物品税が幾らかかっておるということは実は書いてございません。書いてございませんが、今回の値下げについては、物品税の引き下げによる値下げであるという趣旨を明らかにする意味で、自分の広告なりあるいはポスターによる店頭掲示をするように私どものほうから各メーカーにお願いをしております。この点につきましても各メーカーはそれぞれ了承いたしまして、今後新しく刷りますところの店頭広告、あるいは今後新聞に出しまする当該商品の広告等にはそういった字句を挿入いたしましょうというふうにいま申しておる次第でございます。なお、カメラにつきましては、こういったような通産省の要請にこたえまして、先ほど申し上げましたように、機種が非常に多数ございまするので大幅値下げをするものもあり、あるいは性能向上等含めまして据え置くものもありということでございまするが、すでに二月の十六日に蔵出しをいたしまする分からこの措置を実施をするというふうに私ども承知をいたしておる次第でございます。  なお、今後の取り扱いといたしましては、私どもこういう要望をし、各業界メーカーがそれを承知をいたしておりまするので、その実効があがりますように厳重な監視をしてまいり、また、そういったようなことが行なわれない場合には、引き続きまして強く指導をしてまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  57. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうも時間がたち過ぎまして、ぽつぽつ終わりたいと思いますけれども、いまのメーカーに対する御指導はわかりました。わかりましたけれども、それが小売り業者に対して、店頭の小売り価格の中にどうあらわれてくるかということが、最終消費者にとっては直接関係のある事柄なんです。その指導が、私が当たってみます関係ではまだほとんどなされていない。あともう一週間か八日かしかないのですが、先般調べてみましたら、商工会議所あたりには通達は行っているようですけれども、なかなか店頭指導にまでは十分な手だてが講ぜられていない。このことについて、どういう手だてを講ぜられて、しかも四月一日以降、価格においてはそのことが十分組み込まれた中で小売り業者と消費者との間に売買がなされていくのかということについて、どう指導なさっておるのか。メーカーの分はわかりましたが、それ以下のことについてひとつ御説明をいただきたい。
  58. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 メーカーの指導と申しまするが、現在私ども関係しておりますものはメーカーにかかっておるわけであります。そこで、メーカーは、いま申し上げましたような各種のものにつきましては、大体代理販売店と申しまするか、指定の販売店があるわけでございまして、それぞれ定価を付して販売をいたしております。そういうことで、メーカーがそれぞれの販売店を通じて現在売っております小売りの価格を、いま申しましたような価格にまで下げて価格表を改定する。たとえば、ナショナルでいえば、幾らと書いてあるこのラベルをかえなさい、こういうふうにしておるわけです。そういう点につきましては、先ほど申し上げましたように、個々の価格について各メーカーが代理店、販売店を通じて必ず引き下げをいたします、こういうことを言っておりますので、その辺の手配は、メーカーを通じまして代理店、販売店にまで行き届きつつあるものと考えております。また同時に、店頭の広告等にもそういうことを今後掲示するというふうなことを言っておりまするし、その点等につきましては、私どものほうでは、現在全国にモニターを相当多数持っておりまして、そういう点で消費者の直接の声と申しますか、こういうものを聞くような制度もございまするので、このモニターを通じてこの実施の状況を直接的に監視をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  59. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ちょっと補足して御説明申し上げたいと思います。  ただいま通産省あるいは企画庁から御説明がありましたように、物品税の減税に伴いますところの価格の引き下げにつきましては、主管省あるいは物価の主管省において強力に促進していただくように、いまお願いしておるつもりでございます。しかし、何と申しましても、山田委員のおっしゃったように、現在八日前でありながらなかなかその効果が目に見えないではないかというような感じを持たれるのではないかと思うのでございます。私は、やはり商品を販売する政策から見ますると、四月一日から値下げする、したがいまして、現在そのために買い控えをしようということがあっては販売政策上まずいということが、業者の方々の念頭には相当あると思うのでございます。そんなような意味で、現在通産省が中心となって、四月一日以降の取り扱いについて御努力を願っておるわけでございます。しかし、私どもといたしましても、四月一日から物品税が軽減されることは必至でございますが、その前に蔵出しするならば税金が高いというのでは、業者の方々もなかなか蔵出しがしにくいという面もございましょうし、その前に蔵出しいたしますと、四月一日から減税相当分だけはそのまま引き下げるということも困難なことになるかと思います。先ほど赤澤次長も申されました在庫品の問題がそのあらわれでございますが、そんなような欠陥を補おうという意味で、値段を相当程度引き下げる商品につきましては、現在蔵出しいたしましても、未納税移出の形で税は一応ペンディングのままにして一定の場所までの蔵出しを認めよう、そして四月一日以降蔵出しするならば、物品税の軽減された低い税率を適用しよう、こんなような操作もしておるつもりであります。さらにまた、昭和三十七年の経験から申しても、将来の物品税の減税の期待ということをもちまして減税分は価格の引き下げに相当実現されておるという結果が、私の経験では申し上げられるのではないか、かように考えております。そんなような意味で、私ども、まだまだ努力は足りないと思いますが、山田委員の御指摘のように、今後、総合的な観点から大いに努力してまいりたい、かように考えております。
  60. 山田耻目

    山田(耻)委員 全体的な把握のしかたとしては、私も承知をしたいと思うのですけれども、問題は、物品税を引き下げた、一体、それが最終消費者にみごとにつながるかどうかということについては、私は、まだまだ大きな疑惑があるわけです。結局、物品税を引き下げたということによって、いわゆるメーカーどまりまでにこの恩沢があって、それ以下にはない部分がかなりあるのじゃないか。たとえばテレビ、ラジオ、扇風機、電気洗たく機、カメラ、時計、弱電機をはじめ、この種の製品というものはかなり現金正価を割った価格で、乱売とは言いませんけれども、売られておる時期が消費者の購買に直結しておったわけですね。このことが、今回の物品税引き下げるということによって、従来のそうした売り渡し価格というものが若干引き上げられて免税点を考慮されて売られていく、消費者とは何らの変化も起こらないというような事態が、この部分ではかなり起こってくるのではないだろうか、そうなりますと、現在の在庫の問題あるいは現金買いのメーカーなり小売り商店の問題という片側の側面が強く出てくるのですけれども、物品税の引き下げがもっと大幅にされていなければ、ここには効果が出ないという気がしてならないのですけれども、ここらあたりは通産省はいかがですか。
  61. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 ただいま山田委員の御指摘のような事情があることは私も承知いたしております。私どもも町へ買いに行きまして、現金であるならば定価より安く売ってくれる、あるいはそういうものの安売りをするマーケットもあちこちにあるというようなことであろうかと思います。ただ、全体から見まして、私どもといたしましては、在庫も非常に多いし、生産の段階もできるだけ過剰生産にならないように規制をしておるわけでございまして、そういう面から申しますと、いわゆる定価売りと申しますか、そういうことを今後業界で十分お互いに注意をしながら販売を進めていくということが、業界の流通秩序確立の上に非常に重要なことであるということで、これまた、たいへんむずかしいことでございますけれども、定価売りの奨励ということを私ども一生懸命やっておるつもりでございます。御指摘のような不都合な事例があるいはあちらこちらにあるかとも思いますし、たいへんまたむずかしい点を御指摘になっておりますが、私といたしましては、あくまでメーカーを通じて小売りの定価の改定をする、その趣旨を明らかにいたして、新聞広告なり店頭なりで一般の消費者にわかるようにしていくということを中心に指導いたしておりますので、実際の店頭の売り買いという点につきましては、消費者と小売り店の関係でございますので、なかなか問題も多いかと思いますが、大観いたしますれば、そういう線で今後効果があらわれてくるのじゃないかというふうに期待をいたしておるわけでございます。
  62. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうもたいへん弱い話で、たいへん私も不満足なんですけれども、ある意味では、これはもろ刃のやいばになっておるわけですよ。ですから、いまあなたがおっしゃっているように、現金正価を割って売っているのは、限られたマーケットなり一地域じゃないですよ。テレビ、ラジオにいたしましても、電気洗たく機などにいたしましても、全国どこへ行ってもその傾向は強いのです。現金正価を割っています。そういうところに物品税の効果をあらわそうとして、現金正価販売を強制されるということになりますと、高い製品を買わされるということになるわけです。これは何かといえば、物品税の値下げの幅が狭いというところに大きな原因があるわけですよ。こういうことを実際に考慮なさって適切な御指導をなさいませんと、初年度二百六億円という物品税の減税は、消費者に結びつかないと私は思うのです。この減税が結びつくのは、少なくともメーカー以上のところに結びついてしまう。一体こういう措置を放任されておるということはいけないし、それを強化するということになっていきますと、現金正価の価格を維持するようになってくる。消費者がまた今度は逆に物品税を下げられたかっこうで、高いものを買わされるということになってくる。一体こういう状態をどのようにして解消なさるおつもりなのか。やっぱりあなたのほうの指導なさる指導の方向の中には、そういうことを十分念頭に置いて御指導なさらぬと、結果的には消費者が迷惑することになります。だから、その指導のあり方と、こういう総花的な物品税の引き下げというものが、一体消費者に対して何の役に立つのか。しかも、それを最終的にねらった消費者物価の引き下げというところにどうしてつながっていくのか。そういうことを含めて明らかにしてもらいませんと、物品税の減税なんというものは、初年度二千四百億円の減税の中で占めている位置が二百六億円あるのだといってみたって、私はごまかしだという以外にないと思うのです。それで得々となさっておったのでは、消費者は迷惑しますよ。その点について、ひとつしっかりした今日の行政のしかた、将来に向かっての物品税のあり方、そうして消費者物価を下げていくあり方というものについてお答えをいただきたいと思います。
  63. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税の減税効果が、現在の減税規模程度ではたいして期待できないではないかというような御質問でございます。  私どもは、物品税の現在の構造あるいは税率が決して完全なものだと思っておりませんし、また、将来、国民生活の水準の向上に伴いまして、これはやはり減税の方向に向かうべきものであろう、かように考えております。しかし、何と申しましても、財政がこれを許すかどうかという問題でございますし、さらにまた、財政が減税を許しましても、所得税法人税、これらとバランスのとれた物品税の減税ということに次はなろうかと思います。しかしながら、過去におきまして、物品税の高い時代から減税が行なわれてまいりましたが、最も減税の大きく行なわれましたのは三十七年でございます。そのときでも二百二億円、このときでもなかなかたいした減税だというふうにもいわれたのでございますが、今回の減税は、それを上回る減税だと考えております。そんなような意味で、今回の物品税の減税は、消費需要の喚起あるいは輸出振興中小企業の負担の緩和その他から見て、私どもは高く評価されるべきだと思いますし、さらにまた、消費者の負担の軽減の見地から、これは私どもの努力によりまして、企画庁あるいは通産省の強力なる御援助によりまして、消費者の負担の軽減となるように、ひとつ価格の引き下げを進めてまいりたい、かように思っております。
  64. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 先ほど指摘になりました点、まことにごもっともなことだと思います。電気器具関係でも全国におそらく何十万軒という小売り店、販売店があろうかと思いますので、メーカーが懸命に指導いたしておりますが、なかなか全部に手が届かないところもあろうかと思います。山田委員指摘のような点になりませんように、私ども今後一そう努力してまいりたいと思いますが、ただいまお話のように、現金正価以下で店頭で売られておるというような状況がありますことは、要するに、これは消費者と販売者といいますか、その力関係からいえば、いまの状態では、非常に物がたくさんあって、そしていいものが次々に出るということでありまして、いわば買い手のほうが力関係でやや強いという状態のもとにそういう値引きが実際上行なわれておるという状態であろうかと思います。したがいまして、今回の物品税の減税によりましてこの程度価格というものは下がるのだという一般的なPRを十分いたしまして、そういうことであれば、実際問題としては当然それが小売り価格にはね返ってくるということは、消費者だれしも考えるわけであります。そういう意味合いから、物品税の引き下げにつきまして、たとえばテレビで申し上げますと、先ほど申し上げたように、標準もので約千円ぐらい小売り価格が下がってしかるべきだという宣伝を、私どもあらゆる機会を通じましてできるだけ周知徹底するようにいたしたいと思うのであります。そういうたてまえから申しますと、かりに現金正価以下で売られておるものは、そこからさらに千円がたぐらい下がっていいはずだという消費者の声になってまいるのじゃなかろうか、いわゆる実勢価格も、こういったような物品税の引き下げに応じまして、ある程度下がってくるのではなかろうか、かように考えておる次第でございます。いずれにいたしましても、御指摘の点まことにごもっともでございまして、私どもといたしましては、そういう逆ざやにと申しますか、これを機会に実勢価格が逆に上がるとか、据え置きの状態になるというようなことのありませんように、なお強力な指導を続けてまいりたいと存じておるわけでございます。
  65. 山田耻目

    山田(耻)委員 物品税については、申し上げたような心配な点、そうして消費者に渡らないでメーカーに渡っていくという矛盾、こういうものがかなり多く指摘できると思いますので、これらを十分行政指導をいただいて、二百六億円の減税というものが正しく消費者に結びつかないと、減税する目的というものが半減をすることになりますから、十分行政指導を強めていただきたい。あと、もう八日ばかりしかないのですから、その点を十分ひとつ御配慮をいただきたいと思います。  大臣がお見えになりましたので、最後に一つお伺いしておきたいと思います。これは銀行局長も含めて御答弁いただきたいと思うのでありますが、措置法の四十二条の三に、自己資本構成を高めた場合には、特別控除をしてやるという措置が出ておるわけです。主税局長のほうのお話では、大体特別措置で見る金は九十六億円ぐらいの減収になるであろう、これは措置としては、少ない金額で刺激を導き出してくるということが本来の目的なんだというような御答弁でございました。しかし、そのときに私は申し上げたのでありますが、繰り返すことになって恐縮ですけれども、今日の自己資本構成というものをながめてまいりますと、この措置の適用を受ける一億円以上の法人、これらの自己資本構成は、昭和三十六年で、十億円を基準として、以上を見ますと二七・六%、三十七年二七%、三十八年はぐっと悪くなりまして二四・九%、大企業法人のほうは、よくありませんけれども、その程度自己資本構成を持っておる。ところが一億円以下になってまいりますと、一千万円未満が、三十八年で一三・九、五千万円未満が一四・九、一億円未満が、十四・七、大体ここらあたりは平均して一四%前後であります。したがいまして、日本経済全体の安定ということ、特に大中小の法人企業の安定ということをお考えになるなら、こういう措置は、一億円以下の企業にもっと重たいウエートを置いて措置なさるのが至当ではないだろうか、それが一億円以上の企業に対してなさるということについては、片手落ちじゃないか、これから出てくる九十六億円の減収の積算基礎は一体何なのか、こういうことなどあわせてお聞きしたわけでありますけれども、私は、そういう議論を通じまして、塩崎局長の御答弁は、一億円以下の中小企業というのが全企業の九二%を占めておるので、こういうところの自己資本構成比率を高めていくということがきわめて大切なことである、しかし、法人税なり全体の税制度の検討を四月から行なっていく中で十分ひとつ取り上げて検討していかなければならぬと思うという答弁がございました。私は、これは本会議で申し上げたのでありますけれども、今日自己資本構成比率が悪化をしてきたということの主因は一体何だろうか。この主因は、借り入れ資本の増大である。そのことは、設備投資の過剰な形の中から生まれてきたものである。だから、自己資本構成比と借り入れ資本の構成比との比率の心配というものと経済の好況不況というものとは必ずしも一致しておりませんで、むしろ、なべ底景気であった昭和二十九年、三十年には、借り入れが少なくて、自己資本比率は比較的高い、そういう一つの傾向値を見てまいりますと、明らかに、今日までわが党の先輩によって指摘されたように、過剰な設備投資がこういう事態をもたらしたのである。そういうことになりますと、減税措置を新たに設定をして行なうことが、自己資本比率の増大に果たし得る役割りというものは、さして見るべきものはない。この点は、塩崎さんのおっしゃっているように、これはごほうびだ、ボーナスだ、こういう言い方に通ずる程度度合いのものであろう。だから、ほんとうに政府のほうでお考えになっておるように、資本構成比というものを改善していきたい、欧米並みに六〇対四〇という比率にはならないにしても、企業の健全性というものを強めていくために自己資本比率を高めるということで、今日の資本構成の分析でいくならば、各資本の側で、各企業の側で受けておる負担というものは一体何だろうか。これは全法人が支払っていく銀行利子は二兆六千億円に及んでおる、そのことが企業自己資本比率を高めていくのに非常に障害になっておる、こういう言い方が塩崎局長のほうからなされておるわけです。  そこで、まず銀行局長に伺っておきたいのでありますけれども、今日の貸し出し金の総額はどれくらいになっておるのかということが一点であります。それから、これによって受けている利子の総額はどれくらいになっておりますか。
  66. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 第一のお尋ねの点でございますが、これは都市銀行、地方銀行、あるいは信託銀行、相互銀行、信用金庫、あるいは商工中金、農中、保険、労働金庫等々、各種金融機関を全部含めまして、その貸し出し残高は、昨年の十二月末におきましておおよそ三十兆円でございます。それに対する支払い利子の総額は、これはちょっとただいまこまかい集計を持っておりませんが、大体のところで申し上げますと、約二兆一千億円程度にのぼろうかと思います。
  67. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣にお伺いしたいのでありますけれども、いま銀行局長の話にありましたように、金利が二兆一千億円程度とおっしゃっておる。主税局長のおっしゃっているのは、二兆六千億円程度ではなかろうかということですが、いずれにしても、二兆四、五千億円あるいは二兆六千億円程度ほんとうだと思うのです。今日のこの銀行金利の高さというのが、銀行の資金コストとあわせてみて膨大な利潤が金融機関、金融資本にはころげ込んでおるということになっておるということになっておるというふうに言えると思うのです。大中小の法人は、まさに金融機関利子を払うために企業が続けられておる。もちろん、他人資本と自己資本との構成比の悪化というものもそこに原因があるわけです。わずかばかりの減税をしたからといって、これはまさにごほうび程度のものにしかならぬということは、私はそうだと思う。この際、思い切って、銀行の貸し出し金利を一〇%お下げになったら、約二千五、六百億円浮いてくるわけです。このことが企業に与える影響というものは、私は強いと思う。しかも、特別措置などによって税の公平負担原則をこわすことなく、むしろ、そのことによって国民経済全体が安定をしていくということにも通ずるでありましょうし、あるいは勤労者の賃金の引き上げということにも連なっていく事柄でありましょう。有効需要の喚起もそこから生まれてくる要素もあるでありましょう。私はまだまだ不勉強な立場でお伺いするわけでありますけれども、外国に比べて非常に高い金利を取って、そうして企業がこういう状態におちいっていっておるというときに、きき目のない一%から一〇%程度高めたら特別措置をしてやろうという法律をおつくりになる前に、膨大な利潤を高めておる金融資本に対して、なぜ金利の引き下げをお考えにならないのだろうか。いろいろ言われておる人のことばを聞くと、金融資本にまさに従属しておるのではないだろうか、こういう言い方までされておるのであります。この際、大臣の将来にわたる構想を含めてお答えいただきたいと思います。
  68. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 ただいまお話のように、いま、企業金利負担というのが、人件費と並んで非常に重圧になっておるわけであります。私は、企業の自己資本を充実するということは、これはどうしても経済の安定のもとである、こういうふうに考えるわけで、何とかしてそれを達成したいという念願を持っておるわけであります。今日経済界が非常に不況な状態であるその一つの大きな原因は、これは企業が設備過剰であるという点もありますが、同時に、企業がその設備をなすにあたりまして、自己資本に依存しないで、外部資本にこれを依存した、つまり、借り入れ金に依存した、そういうことが今日の企業の実態であろうと思うのですが、ともかく、景気循環というものは、今後もその高さ低さは違ってくるでありましょうが、ある程度の波はあるだろうと思います。そういう際に抵抗力がないわけであります。したがって、景気の循環につれまして、不況というものが非常に深刻になる。そういうようなことを考えまするときに、今回のような不況を繰り返してはならぬ、そういうためには、何とかして自己資本の充実をはからなければならぬ、そう考えますが、その際にいろんな方策があるだろうと思います。それは、いま御指摘の金利の問題もあります。これはもとよりであります。それからまた、資金調達方法として、借金ばかりに依存しないで、株式安定資本を用いるという方向への努力もしなければならぬ、また、社債ということも考えていくべきでありましょう。まあ、いろんな努力をしてやっていかなければならぬけれども、金利の問題も、御指摘のように、これは大きな重圧となっておるわけであります。いま非常に御批判がありましたが、企業に対する金利、これはこの十年あるいは五年をとってみればはっきり出てくるわけでありますが、相当低くなっておるのです。ただ、昨年金融機関で非常に利益が上がった。これは臨時、過渡的な現象であります。おそらく、次の決算期における銀行あたりの収益状態、これは大銀行を含めまして非常に低下してくる、こういうふうに考えるわけであります。そういう局面において、金利の負担からさらに今後企業を解放するということを考えまするときには、やはり銀行の近代化合理化ということが必要なんです。銀行がそれだけの金利を企業から求める。それは、その金を何も銀行はしまっておくわけでもありませんし、また、これをむだ使いしておるわけでもない。銀行につとめている人の人件費、あるいは店舗の維持費というところに使っておるわけであります。これが、私は、銀行においても、またその他の金融機関におきましても、過当競争状態で、諸外国に比べると非常によけいかかっておる、こういうふうに思うわけであります。根本的に御指摘の問題を解決する道は、金融機関合理化近代化、これを推し進める、これが正道であるというふうに考えておるわけでありますが、今後とも、金融機関につきましてはなるべくコストを低下させて、そしてなるべく安い金利をもって企業にサービスするという、金融の本来の目的がそのまま実現できるように行政上も指導してまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  69. 山田耻目

    山田(耻)委員 一般の金融上の問題と、今回こういう提案をされております特別措置に基づく自己資本構成比率を高めていくということとは、これは角度が違って議論しなくちゃならぬ問題だと思いますけれども、しかし、ほんとう大臣のお考えのように自己資本構成比率を高めるというのならば、私は、押えどころが若干違うと思う。これは本会議でも申し上げましたように、税が過重なるがゆえに自己資本が非常に少なくなってきたということではないのでございます。原因をしっかり究明なさって、自己資本構成比率をお高めになるなら、そのような手だてをおとりになるのが、大臣のお仕事ではないかという気がしておりますから、特に銀行金利の問題に触れたわけであります。  最後に、最近の一般の庶民の金融、国民金融でありますけれども、こういうふうに物価が高くて、生活は苦しい。昨年の賃金の上昇は、税を含めて、名目一二、三%だったと思います。しかし、それもすでに物価が七・五六%に上がってまいりましたし、しかも、一般の賃金生活者が日常生活を行なうのに必要な物価というものは、高いのは三割程度も上がっております。また、一月一日からの公共料金の値上がりで、かなり生活は苦しくなってまいっております。ですから、病気になったり、結婚をしたり、出産をしたりいたしますと、いわゆる借り入れ窓口がなくて少額金融を受けることができない、そこで高利貸しに借りにいく、日歩七十銭程度の高い高利を払っている人もかなり見受けますけれども、最近そういう傾向が非常にふえてきております。一度労働省のほうから、こうした実態を調べてもらうように社労でもお願いいたしておこうと思うのですけれども、家庭不和を起こしたり、たいへんな問題を惹起しておる率がふえてまいっております。こういう少額金融などに対して、いまの国民金融公庫なりあるいは適切な窓口を設定されて、そういうどうしても必要とする経費の借金に対しては、適切なる具体的な措置を講じてあげるということがきわめて緊要ではないだろうかという気がしてなりません。これらについて大臣の所見をひとつ伺っておきたいと思います。
  70. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 金に困ったというケースを、すべて金融で解決するというわけにはまいりません。しかし、まじめにやっておって、 しかも、何らかの不測の事態で困窮するという者に対しましては、それに対する施策がなければならぬ、これは当然のことであります。そういうようなことで、国民金融公庫と申しますか、零細金融につきまして、いろいろと施策を進めているわけでございます。御承知のように、無担保、無保証という制度を創設して、その限度を五十万円までするというようなこともいたしておるわけであります。また、無担保で金を借りるという制度も創設いたしまして、二百万円まではそういう便益を得られるというふうにもいたしておるわけであります。そういうようなことでいろいろと便益をはかっていきたいと思いますが、私といたしましては、まじめにほんとうに働いて、そして何らかのチャンスに困ったというような事態ですね。こういうものに対しましては、いろいろ考案もいたしまして、政府としてもできる限りのサービスをしなければならない、そういうふうに考えております。
  71. 山田耻目

    山田(耻)委員 私が申し上げておるのは、競輪、競馬、マージャンあたりで借金がふえた人をどうこう言っておるわけではありません。いわゆる大企業あたりに働いておる労働者というのは共済組合制度を持っておりますから、冠婚葬祭、病気のときには十分間に合うとは言いませんけれども、出産を含めて何がしかの補助措置、共済措置をすることにしておるわけです。ところが、最近の中小零細の企業につとめておる人は、破産、倒産にいう一つの波の中で苦しんでいきながら、しかも病気、結婚、出産、あるいはなくなって葬式を出す、こういうときに金を借りにいくところがない、貯えもない、そういう人たちはやみ金融の高利貸しにたよらざるを得ない、 そういう傾向が非常にふえてきております。これは日本の今日の政治のひずみの中で起こってきた、全く谷間の存在ですけれども、こういう人々に対する緊急やむを得ない出費について、適切な、あたたかい金融措置というものが、もちろん少額ですけれども、五十万円とか、百万円とか、二百万円とかいうものじゃないのです。十万円かその前後のそういう少額金融について、いまあなたがおっしゃった金融制度というのは、むしろ中小零細の商売人の人たちがおもに利用される制度でありまして、そういう勤労者のみじめな人たちが受ける制度ではないと思うのです。そういう人々に対して何らか考慮されるということを特にこの時期にお考えいただく必要があろうという気持ちで御質問申し上げておるわけです。そういう意味で、ひとつ何とか考慮をしていただくように御配慮を願いたいものだというふうに考えております。
  72. 佐竹浩

    ○佐竹政府委員 ただいまの山田委員の御指摘、まことにごもっともと存じます。御承知のように、国民金融公庫はやはり生業資金の貸し付け、事業資金でございまして、ただいま先生の御指摘の分はいわば消費金融かと思います。これにつきましては、先生も先刻御承知と思いますが、実は厚生省所管で世帯更生資金貸し付け制度というものがございまして、都道府県を通じてやっておるわけでございます。これは資金が量的にも規模が小さいという問題はあろうかと思いますが、こういったような面についてさらに拡充をはかっていくということで努力していかねばならないかと存じます。
  73. 山田耻目

    山田(耻)委員 以上で私の質問を終わります。
  74. 三池信

    ○三池委員長 武藤山治君。
  75. 武藤山治

    武藤委員 突然のピンチヒッターで、大臣に、あれもこれもと行ったり来たり、飛び飛びに質問をいたしたいと思います。  まず最初に、主税局ですか、国税庁ですか、四十年度の税収がやや見込みがつくようになってきたと思うのですが、三月十五日の個人申告などもかなり様子はわかってきておると思いますが、税収の状況はどうなりそうであるか、お聞きしたい。
  76. 塩崎潤

    塩崎政府委員 四十年度租税及び印紙収入の収入状況につきましては、現在一月末の収入額を発表いたしましたものが、一番新しいものでございます。それによりますと、御案内のように、二・九%ばかり前年に対比いたしまして一般会計の収入状況は良好でございます。このことは、大臣をはじめ私どもがしばしば申し上げておりますように、法人税の即納率が非常によくなっておるということによるということでございます。そんなような関係で、最近私どもの見積りでは、先般補正予算で二千五百九十億円の減収見込みを立てましたけれども、それを上回る減収が生ずることはない。しかしながら、ときどき言われておりますように、相当の増収が生ずるのではないかというようなことは、現在のところは見込めない。せいぜい、大臣が申されておりますように、百億円か二百億円程度の増収が期待されるところではなかろうか、これも三月の申告所得税の成績いかんにもよります。聞くところによりますと、申告所得税状況も、必ずしも去年に比べましていいようにも見えないけれども、まだ一部ではございますけれども、少数の税務署からとった情報でございます。しかし、これもまだ情報でございますので、どうなるかは、これは四月に入りまして初めて税務署からの報告が出そろうことになる、収入状況といたしましては、日銀日報等から出てまいりますけれども、そういった意味で、現在のところまだ最終の姿は言い得ない段階でございます。
  77. 武藤山治

    武藤委員 まだ確定数字はわかりませんか。国税庁のほうが一足先に全国の税務署の状況というのはわかるのですか。わかれば刻々主税局長に報告しておるのですか。いまの答弁が最新の状況だ。私は一月末のは配付されたからわかるのでありますが、二月末もすでに国税庁当局ではもう数字が出ておるのではなかろうか。三月の趨勢についても、おそらくいまの主税局長答弁よりかは詰めた答えが出るのではなかろうか。二月はまだ国税庁長官、全然集計はわかりませんか。
  78. 泉美之松

    ○泉政府委員 二月末の税収につきましては、現在集計をいたしております。私ども、日銀の国庫日報を基礎にして調べておりますと、二月の税収は、三十九年度分の二月、つまり四十年の二月に比べて四十一年の二月は約三百億円余り減少いたしております。これは先ほど主税局長から申し上げましたように、九月決算の法人税の即納率が上がりまして、それが十一月に入りましたので、その延納分のものが二月には減っておるわけであります。そういったことが中心になっていまして、約三百億円余まり、三百五十億円近い減収になっております。したがって、二月末におきましては、おそらく、数字が全部まとまりますと、一月の場合よりあまり成績はよくなくなってまいるであろうと思います。それから三月十五日の申告期限の申告所得税につきましては、先ほど主税局長からお答えしたとおりでございまして、まだ全部の税務署は集まりませんけれども、若干の税務署につきまして集めましたところによりますと、前年度に比べまして約一〇一・五%というような数字になっておりまして、これは四十年が不況の年でございましたので、申告所得税が伸びないのもやむを得ない点があろうかと思いますが、そういった事情がございますので、三月、それから延納分の四月の税収というようなことを考えましても、先ほど主税局長が申し上げましたように、四十年度の税収としては百億円ないし二百億円程度の補正予算に対しての増収は期待できるだろうと思いますけれども、補正後二千五百九十億円減らしたあとに対してそんなに収入は期待できない、こういった状況でございます。
  79. 武藤山治

    武藤委員 大臣、ただいまの数字で、まあ、百億円か二百億円程度しか補正後の予算額よりも上回る見込みが立たない。最終的に四十年の国債発行を市中に出すのは、いつごろをめどにしているわけですか。
  80. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 四十年度のものは今日まで千百億円出しておるわけであります。これが千百億円で済むのならそれで済ませたい、こういうふうに考えているのですが、ただいま主税局長のほうから申し上げました租税の見通しですね、これがどういうふうになりますか、それにかかっておる。百億円以上の増収だというような際におきましては、千百億円で発行はこのまま打ち切り、こういうふうにいきたいと思っております。
  81. 武藤山治

    武藤委員 いまのは、百億円か二百億円の増の場合だと、二千五百九十億円ですから、二千三百億円出さなければならぬわけでしょう。そうすると、まだ千百億円しか出していないから、その差額は発行するわけでしょう。それをいつごろまでに出せば、現金の支出に間に合って操作がやれるのか。それとも、大臣、いまのは私の聞き間違いかどうかわかりませんが、かりに二百億円自然増が伸びた、その場合はいまの千百億円の既発行だけで何とかやりくりつくのか、それともやはり二千五百九十億円から二百億円の増収分を引いた残りは国債発行をするということですか。
  82. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 二千五百九十億円国債発行するわけです。それを半分よりちょっと、半分プラスアルファ、資金運用部で持とう、こういうふうに考えておるわけなんです。したがって、そのプラスアルファがどういうふうになりますか、それにもよりますが、もし自然増収なかりせば、市中には千二百億円か、あるいは千二百五十億円か、その辺お願いしようと思っておったのです。ところが、それの才覚がつきますれば、もうこれで打ち切りだ、出さない、こういうふうにしたいと思っております。
  83. 武藤山治

    武藤委員 次に、物品税の見積もりの問題についてちょっと主税局長にお尋ねしますが、本年の物品税の見積もりは前年より五十五億七千八百万円の減、百二十八億円の減税をして、さらに五十五億七千八百万円、それでも減額が少なくて済んだ。そうすると、八十億円ばかりは前年と比較して増になるわけですね。百二十八億円減税してこれだけの減ですから、そうすると、その八十億円ばかりの伸びは物品税の主としてどういう品目を見ておるわけですか。
  84. 塩崎潤

    塩崎政府委員 数字はおっしゃるとおりでございます。そこで、どんなものの伸びを見ているかという点でございますが、私どもは物品税につきましては、これまでの課税実績、さらにまた、業界の意見等を伺いながら、主要な品目につきまして消費の伸びを見込みまして積算いたしております。たとえば、小型乗用車は四十一年度には一割三分程度の伸びである、小型テレビにつきましては八・五%の伸びである、冷蔵庫、写真機等は横ばいでございます。ルームクーラーは一二.八%、こんなふうに見ております。場合によりましたら、その他の物品につきましてもお答え申し上げますが、一応こんなような考え方で現在の収入の見込みを立てております。
  85. 武藤山治

    武藤委員 主として大型なものが需要が拡大される、そういう見通しで税率を下げても、税収はそういうものでかなりカバーできる、こういう見積もりのようでありますが、物品税の今回の改正ですね。大きなものが中心減税をされて、私たちが常々主張しておった砂糖消費税やマッチや、あるいは婦人用のお化粧品などについては触れていない。今度の改正のねらいというか、目標というか、そういうものは何を基準にして物品税の減税をしようとしたのですか、 これをひとつ最初に……。
  86. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほど山田委員の御質問にもお答え申し上げましたように、物品税の軽減のねらいは数多くあるわけでございますが、まず第一には、所得税減税と並びまして、有効需要の喚起でございます。特に、生活水準の向上に伴いまして、耐久消費財等につきましては、これは相当減税をしていく必要があるんじゃないか、そしてその減税によりまして、さらにまた有効需要の喚起をはかろう、こういった点が第一であります。第二は、これもまた申し上げましたように、物品税は消費税の一種でございます。消費税ということは、市場の状況によりまして、価格を通じての税金の転嫁は、若干の波動はございますけれども、究極的には消費者の負担でございます。しかし、その究極的な負担とは申しましても、これを扱いますところの中小企業にとりましては、自由なる価格形成を通じまして物品税の転嫁をお願いするわけでございます。そのあたりに、中小企業としての立場からなかなかむずかしい場合がございます。そんなようなことを考えまして、第二には、中小企業の製造する物品につきましては、これは税収の少ないようなもの、あるいはまた輸出の多いようなものについて課税の廃止をする、あるいは免税点を引き上げる、こういった施策をとってきたわけでございます。さらにまた、第三には有効需要の喚起でございますが、有効需要の喚起を通じて国内市場の基盤を大きくして、コストを下げていく、そして輸出を促進していく、こんなような考え方をとったのでございます。このような考え方に基づきまして減税が行なわれたのでありますが、耐久消費財等につきましては、税率引き下げ中心でございました関係がありますし、また、物品税の税収の大宗は耐久消費財でございます。それを中心的に、二〇%の税率を一五%に下げましたので、減税の重点は相当耐久消費財に置かれたように見えますけれども、私ども考え方といたしましては、中小企業の製造する物品等につきましても減税の重点を置いて考えた、こういうことが言えるかと思います。  さらにまた、消費者の負担の軽減をねらっておるわけでございまして、御指摘がありました化粧品等につきましては、税率引き下げではございませんが、化粧品につきましては相当新しい考え方でございますが、免税点を設けております。たとえば、御指摘の口紅につきましては百五円というふうに免税点を設けることを考えておりますし、ポマード等につきましては二百十円という免税点をつくりまして、大衆の生活に熔け込みました化粧品につきましては負担を緩和しよう、その他の物品につきましてもそれ相当の配慮をしたつもりでございます。
  87. 武藤山治

    武藤委員 狩人の鉄砲の薬きょうを無税にして——薬きょうと書いてありますね。これは猟師の鉄砲のたまでしょう。こういうのは奢侈品的な、ぜいたくな遊びに使っている品物ですね。こういうものを税金をただにして、どうもほかのものとの比較をすると、減税をしたのに素意に流れておるような感じがする。鉄砲のたまを無税にしたなんというのは、どういう観点からですか。こんなものは奢侈品じゃないですか。
  88. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税の個々の物品を取り上げまして、これをどういうふうに税率を構成し、あるいはまた免税点をつくり上げるかにつきましては、種々の考え方がございまして、私どももいつも悩む問題でございます。銃は三割の税率でございまして、比較的高目のほうの税率でございます。しかしながら、薬きょうは、御存じのように、前回の昭和三十七年の改正の際に弾丸がはずされましたので、それとの関係で薬きょうをはずしたのでございます。それじゃ、なぜ弾丸をはずしたのかという御質問が出てまいりますが、これも考え方でいろいろな意見が出てまいるかと思います。消費する物品のうちの中心的な部分だけ課税したらいいではないか、消耗的なものにつきましては、課税をやめるかあるいはまた低い税率でいいではないか、こういう考え方一つ成り立つかと思います。さらにまた、そういった物品を製造する業者の方が規模の小さい零細企業者であるような場合には、そういった考え方より出てまいるかと思います。そんなような考え方で弾丸がはずれたわけでございますが、薬きょうもそういった考え方をあわせまして、前回の改正の継続といった考え方ではずしたわけでございまして、本体につきましては、御存じのように、組み立て等によりますところの租税の回避もございますので、今回は部分品も、主としてこれは輸入品でございますが、課税する形で、むしろ課税の面を強化した面があることを重ねて申し添えたいと思います。
  89. 武藤山治

    武藤委員 主税局長、それでは課税を廃止した品目は、われわれに配付されたこの資料以外にまだあるんじゃないかと思うのですが、何かあるのですか。たとえば、今回免税にしたものに室内装飾用品、茶道用具、飾り物、玩具、囲碁用具、薬きょう、羽製ふとんですか、桐だんす、皮革製品、双眼鏡、ネオン管、煙火等、これ以外にまだ課税廃止したものはあるのですか、これだけですか。
  90. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税は、御存じのように、大きな商品名は法律に規定してございます。しかし、政令におきましてなおこれをふえんいたしまして、その商品のカテゴリーに属するものを政令で詳細に規定しております。しかしながら、物品税の性格といたしまして、業界等にとっての関心事は、あるいはまた消費者にとっての関心事は、必ずしも法律に掲名されるだけのものではございません。政令と合わせて見ていただければいいわけでございますが、お示し申し上げました租税収入予算の説明に掲げております物品税の廃止物品のほかに、ほとんどそれは網羅しておりますが、なお詳細に申しますれば、政令においてこれから廃止しようというものもございます。一々読みますとたいへんでございますので、別の機会に資料によってお示ししたほうがいいかと思いますが、もしも御質問がございましたらお答え申し上げたいと思います。
  91. 武藤山治

    武藤委員 いやしくも租税法定主義のたてまえをとるわが国の税制で、いままで課税最低限をかってに物品税の問題を行政府でやってしまうだけでもここでたいへん議論になった。それを今後課税を廃止する品目を政令でやるとは何事ですか。これを政令で廃止するものがあったら全部ここで読み上げてください。大臣、そんなことが許されますか。課税しておったものを、課税最低限を引き上げる、免税点を引き上げるだけでなくて、税目を廃止するものを政令でやるという、これは租税法定主義に反するんじゃないですか。大臣、あなたの考え方はいかがですか。
  92. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほども御説明申し上げまして御了承を得ようと思ったのでございますが、物品税の構成は、商品名といたしまして法律に規定してございます。しかし、それだけではなかなかその商品名の解釈がむずかしい場合も出てまいりますし、税務署とあるいは納税者との間のトラブルも出てくるかと思います。そんなような意味で、この大きな商品名を受けまして政令でこれをふえんするというのが政令の趣旨でございまして、その法律の趣旨を逸脱いたしまして、政令におきまして特別な品名を掲示しておる、こういうものではございません。もちろん、その解釈いかん、あるいはまた、考え方いかんによりまして、それも法律にあげろという、こういう御意見もございましょうが、現在の物品税法は、そういったことよりも、技術的に詳細な面は政令に委任し、そしてまた、国会の御承認をいただきました法律のもとにおいて弾力的に動かさなければいかぬ点等がございますれば、政令においてある程度規定いたします。もちろん、政令におきますその規定のしかたも、あるいはまた、免税点も、物品税の負担に非常に密接な関係がございますので、これらにつきましては、過去から大蔵委員会において種々の御論議を経た上実施しているのが実情でございます。
  93. 武藤山治

    武藤委員 私が言っておるのはそういうことじゃないんだよ。ささいなことじゃないんだよ。さっき主税局長答弁では、これ以外に課税を廃止するものもあります、範疇はこの範疇だけれども、この中が幾つかに分かれるのだ、それが何品目になるのだ、こういう説明ならまだいいけれども、あなたは課税を廃止するものが政令であるのだと言うから、それは完全な租税法定主義の違反だ。あなたがその中身を全部出すまでわれわれはこの物品税法の採決に応じませんよ。廃止するものはこれこれこうですと至急に出さぬと、こんな不親切な説明はございませんよ。もしそういうこまかい課税を廃止するものがあるとすれば、その内容について、採決する前までに至急資料を出してもらいたい。
  94. 塩崎潤

    塩崎政府委員 さっそくいままでの慣例に従いまして資料を提出したいと思います。
  95. 武藤山治

    武藤委員 次の免税点の引き上げの問題ですが、私たち野党から見たら、まことにふに落ちない。行政府に与党がどの程度関与してきめたかわからぬけれども、この「たとえば次のように引き上げ又は新設する。」これもかなりの品目があると思うんですね。課税最低限を、免税点を今度引き上げた品目というのは、総数幾つあるのですか。
  96. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃるように、免税点もこれは政令で規定されております。このことは、価格現象が、多分に法律に規定するよりも政令のほうがより弾力的に動かし得るという過去の物品税の考え方に基づきまして現在まできておるわけでございますが、この点につきましても、大蔵委員会におきましていつも資料を御提出申し上げておる次第でございます。いずれまた早く資料を御提出申し上げたいと思いますが、政令で十九品目ばかり現在のところ免税点の引き上げを考えております。
  97. 武藤山治

    武藤委員 その免税点の引き上げをやる場合に、どうも私たちがふに落ちないのは、従来はある程度与野党の話も煮詰めて、できるだけ公正、公平にこういうものはいじろう、しかも、政令事項でやるのであるから、国会の場を通らない問題であるから、特にそういう配慮をしょう、こういう方針で従来やろうとしてきたわけです。ところがことしは、主税局はそういうことを全然せずに、行政府の恣意でやったと言われてもいたし方がないほどこっそりやってしまった。ことしの物品税はそういう経路をたどってきているわけですね。それで、こういう免税点引き上げの際にも、従来われわれは、できるだけ零細な消費者大衆に直接影響のある物品から免税点を引き上げていこう、こういう主張を続けてきたわけでありますが、そういう点考慮されていないのじゃないか。今回の場合、できるだけそういう大衆の日常生活必需品に対しては税を課さない、こういうたてまえを全然踏んでいないじゃないですか、どうですか。
  98. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもといたしましては、税制調査会答申におきまして、政府において、この問題は最近の経済情勢に顧みてしかるべく善処しろ、こういう答申をいただきまして以来、各方面の態度、さらにまた、業界の御要望等を十分承って、こういった案を考えたのでございます。そういった意味では、私どもといたしまして、減税の規模に制約がございますけれども、できる限り、大衆に関係するようなものも、先ほど化粧品の例をあげましたが、考慮したつもりでございます。
  99. 武藤山治

    武藤委員 あなたのほうは考慮したと言うし、あるいは租税法定主義にも反しない、解釈の違いだ、こうおっしゃるでしょうが、とにかく、国民の税の問題について、それを賦課する、しないをきめるのは、やはりあまり主税局、行政府が独断でやることはわれわれは許せない。これはやはり十分あなたに苦言を呈しておかなければならぬ問題だと思うのです。免税点の問題についても、資料を審議中に提出をお願いしたい。
  100. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと関連して。  改正法第十四条で、「物品税の税率は、別表に定めるところによる。」こう書いてありますね。だから、改正法に基づけば、物品税の税率は別表に定めてあるところ以外には。裏返して言えばこれは取れなくなる。別表の中に政令に委任しているところは一つもないですよ。いいですか。その点どうなるのですか。これまでの取り扱いと今後の取り扱いは……。
  101. 塩崎潤

    塩崎政府委員 堀委員の御指摘は、いままでと違って、税率が本文から別表に移されたから、したがいましてこの税率は別表で規定するものだけに適用されて、政令で定めるものには適用がないのではないか、こういう御質問だったと思うのでございます。私どもは、先ほど来申し上げておりますように、突如として、全く根拠なく政令で物品の細目を規定しているつもりではございません。法律の企図するところの品目を政令によりまして——この別表に掲げております商品をまた政令におきまして規定するつもりでございますので、法律と同じような項目があがり、またそれに基づきましてさらに個々の詳細をきわめました品目があがりますので、その法律の適用になります税率が当然政令で規定する物品に適用になる、かように考えております。
  102. 堀昌雄

    ○堀委員 ちょっと大蔵大臣にお伺いいたしますが、税法としては、いま私が読み上げたように、今度の改正法第十四条は「物品税の税率は、別表に定めるところによる。」そうすると、別表のワクがきちんときまっておりまして、もし別表で政令に委任をする部分があるならば、別表の中で、その他政令の定めるところによるとかなんとかいうのが別表にもしなければ、受けておる法律と別表の関係からして、これをかってにあと政令でつくるわけにいかぬと思うのです。法律構成上は、当然ここは別表の中に、その他政令に定めるところというものがずっと入っておればいいけれども、この別表には一言もそういうものがない。きちっと品目だけが書かれてあるのが別表で、政令にそういうことを何ら委任していない。おかしいですよ。
  103. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 主税局長答弁いたさせます。
  104. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税法の別表「課税物品表の適用に関する通則」というところがございまして、その通則の五号に「この表における用語の定義その他一から四までの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。」この規定がございますので、堀委員のおっしゃった疑問はこれで解決できるのではないか、かように考えております。
  105. 堀昌雄

    ○堀委員 私もいまの通則のそこまで考えておりませんが、もしそういうことであるならば、これはそこのところが租税法定主義の抜け穴になっているわけです。だから、いまの問題については、やはりもう少し具体的に、物品税のようなものについてここまで書くのならば——非常に特殊なものは別としても、それが書いてないからいまのようなことが起こるわけです。政令で書いてあるものが非課税にしても、それが今度は法律には全然出てこない。一体、非課税にするものを法律にあらわさないで非課税にするなんていうのは、これは租税法定主義の抜け穴で、われわれは認められない。ともかく、一〇%が五%になるという範囲は、これは課税軽減関係だからまだいいのですが、税を取るか取らないかということは非常に重大な問題ですから、一〇%を五%にする問題とは違うわけです。税を取るか取らないかということは、問題としては非常に重要ですから、この点は、いまの表が出る、出ないの問題の前に、物品税体系の今後のあり方として、政府として、大臣としてお考えを願う必要があるのではないか。いまのような形は、抜け穴が大きくつくってあるわけで、その抜け穴から出た問題だけは、もう恣意的に処置できるということになる。これをきっちり受けた款項目のうちのワク全部を言っているのならいいですよ。さっきここで話の出ました、たとえばこれまでの第二類の「ロ つり灯ろう」、それから「ハ 繊維製の調度品、どん帳及び幕類、カーテン、テーブルクロス、じゅうたん」こうなっておりますね。だから、こういうふうな一つの項目の範囲内でどれかすぽっと免税になった、そして、それに関係してこまかに規定になったものがあるというのならまだよろしい。しかし、そうではなしに、いまの問題を一つ取り上げれば、片一方つり灯ろうというのは一つですから、そのつり灯ろうを受けたところの同じものであれば、われわれも多少理解できますが、いまの第二点のように繊維製の調度品、どん帳及び幕類、カーテン、テーブルクロス、じゅうたんが並んでおって、どん帳とじゅうたんは残って、カーテンとテーブルクロスは非課税になっている、こういう項目があるときに、この中で適当な処置がされるということになれば、これはもうすでに問題がある。こういう項目にかかわりなくもし残っているとするならば、これは非常に重大な問題だと思います。だから、その次の「八 茶道用具、香道用具及び華道用具」、「十 囲碁用具、将棋用具及びチェス用具」こういうふうに法律では第二類の何と、九、十というふうに項目が分けてありますから、それを受けているならまだ多少話がわかるけれども、その点は一体どうなんですか。政令の問題とあわせて最後に大臣から政府としての答弁を求めます。
  106. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 一応こちらから答弁させます。
  107. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、私は、堀委員のおっしゃるように、物品税は、法律で規定すべき事項、政令で規定すべき事項について、その限界について問題があると思います。そして、多分にこれまでの沿革に支配された税法であることは、先ほど申し上げたとおりであります。しかし、法規的には、先ほど申し上げましたように、現在の通則におきまして、この表における用語の定義、その一から四まで、これは広範なところでございますが、規定の適用に関し「必要な事項は、政令で定める。」というふうに、非常に広範な政令がございますので、そんなようなことで法律的には説明できるのではないか、私はかように考えております。
  108. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 私は、いまの法律関係、これは勉強しておりませんので、初めて聞くわけなんです。しかし、いまの説明のように、法的には間違っておらぬ、こういうことのようです。しかし、それが法として妥当性がある法であるかどうか、この問題は、なお検討してみたい、かように思います。
  109. 武藤山治

    武藤委員 大臣、いま、なお検討してみたい、そういう前向きの答弁をされたのでありますから、一応それを了としたいのでありますが、特に行政府に非常に大きな委任をしておる問題は、物品税の免税点の引き上げ問題、償却資産の問題、特別償却の問題、耐用年数の問題、これらはみな政令でやっておるわけですね。ですから、国会の議を経ないでどんどん広げられてしまう心配があるわけで、私たちはそれを非常におそれておるわけです。ですから、そういう点については、行政当局としても十分ひとつ配慮して、抜け穴をほじって、そこから抜け出るというようなこそくな方針は一切やらぬように、厳重にわれわれは忠告をしておきますから、主税局としても今後十分注意を払ってもらいたい。  それから、今度新しく課税される問題で、税負担の均衡をはかる見地から、清涼飲料を今度は重量税方式に切りかえる。この場合に、新たに嗜好飲料、パンビタンですか、アスパラ、グロモント、オロナイン、そういう薬品みたいなものにも課税をする。そこで、いよいよ四月一日から実施するのでありましょうから、これは二年先ですけれども法律は四月一日から施行されるのでありますから、何を新たに課税しようとしておるかも確定したと思うので、どういう品名のものに課税をするのか、それの課税の結果、どのくらい税金が取れるという見込みなのか、そこらをひとつその増税分も聞かしてもらいたいと思います。
  110. 塩崎潤

    塩崎政府委員 物品税は、御存じのように、売り上げと申しますか、販売金額に課税されるものでございます。つまり、販売金額が課税標準になりますため、その金額が、税がかかるのとかからない場合とでは非常な開きがある、それが類似品、競争品との間にそんなような関係が出てまいりますと、競争上非常に弊害があることは御存じのとおりでございます。そこで、先般も衆議院の予算委員会におきまして、大原委員から、医薬品の中で嗜好飲料あるいは清涼飲料に非常に競争関係があり、しかもまた、広告、販売方法等から見まして、少し行き過ぎではないか、こういうものに対しまして物品税をかけたらどうかというようなお話がございました。今回私どもが御提案しようというものは、まさしくそのような考え方の反映でございます。これまでは、嗜好飲料に該当するものでありましても、医薬品として薬事法の適用を受けて製造販売するものにつきましては、物品税を課税しておらなかったものでございます。さらにまた、酒税法でも、アルコール分が三度以下のもので、容量が百ミリリットル以下で、薬事法の医薬品に該当するものにつきましては酒税を課さないものという解釈をとってきたわけでございます。  そこで、最近におけるこれらの物品は、御承知のとおり、先ほど申し上げましたように、テレビ広告あるいは新聞広告等におきまして、皆さま方が御指摘になりますように、さらにまた、すでに課税になっておる嗜好飲料の業界からは、自分たちの利益が害されるという批判が向けられたのでございます。現在のところ、医薬品でないもので薬品製造業者に課税しておりますものは、オロナミンCというものがございます。それ以外のものは、先ほど申し上げましたように、現在のところは課税になっておらないわけでございますが、今回は、ただいま申し上げましたような各方面からの御批判にこたえまして、少なくとも、私どもの物品税の課税されます嗜好飲料とのバランスをとる見地から——そのバランスをとるということは何かと申しますと、やはり販売方法であり、消費者の受ける印象だろうと思うのでございますが、そのあたりは新しく五十ミリリットル以下のものについては非課税にいたしますが、それをこえる大きな容器につきましては、これは嗜好飲料と競争関係にあるものと見まして物品税を課税しよう、こういうふうに考えておるのでございます。なお、新規課税の及ぼす影響を考慮いたしまして、先ほど申し上げましたように、二年後に課税する。私は、こういった物品税の課税のねらいの結果、おそらくそういった商品をつくられる方方は、五十ミリリットル以下ということにもなりましょうし、あるいはまた、販売方法、広告のしかた、これらにつきまして相当自粛された姿が出てくることを期待しておるのでございます。また、期待できると思うのでございます。
  111. 武藤山治

    武藤委員 品目は、先ほど私が指摘した以外にはありませんか。
  112. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもの調べでは、リポビタンD、アスパラC、グロモント、ポリタンD、マミヤン、 ヘルタスバーモント、 ハイトス、 エスカップ、その他まだたくさんあるようでございますが、いずれも金額は小さいし、商品名はそれほど有名ではないようでございます。
  113. 武藤山治

    武藤委員 特別措置の期限到来で、また期間を延長するルームクーラー、アンサンブル式レコード演奏装置、トランジスターテレビ受像機等七品目、これは企業近代化合理化をはかるというねらいであったんですか、それとも生産が非常にわずかであったからということでこういう措置をとってきたのか。創設当時は、どういうねらいで免税あるいは減税にしてきたんですか。
  114. 塩崎潤

    塩崎政府委員 七品目期限の延長をお願いする商品がございます。この考え方は、先ほど医薬品該当の嗜好飲料について申し上げましたような考え方で、全体的に概括して申し上げますれば、ある年度におきまして、いままでの課税されたものとのバランスから見まして、こういったものは課税しなければおかしいといったものが大部分でございます。そこで課税を始めたのでございますが、一挙に課税物品とのバランスをとるということはむずかしい、その間、武藤委員の御指摘のように、ひとつ徐々に値段等につきまして合理化していただくような意味で猶予措置を設けておるものが大部分でございます。
  115. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、これは非常に高いのですか、それとも生産能力が非常に少ないのですか。他のものと比較というけれども、他の普通のテープレコーダーあるいは普通のテレビ、そういうものとの比較上これだけ減税しなければならぬというねらいなのか。創設当時は何がねらいだったのですか。
  116. 塩崎潤

    塩崎政府委員 たとえばパッケージクーラーが今回の特例措置といたしまして期限の延長をお願いしておるわけでございます。パッケージクーラーは、御存じのようにウインドークーラーと並びまして室内を冷却する冷房施設でございます。これは一例でございますが、パッケージクーラーはウインドータイプに比べまして相当大型のものでございます。御承知のように、物品税には一つ考え方がございまして、業務用には課税しない。これはいろいろな考え方がございましょうけれども、消費税というものは、商品を選択することによって課税を逃げられるという利点があるので、消費税というよさが買われておるわけでございます。しかしながら、業務用となりますと選択の余地はない、どうしても企業の場合にはそういった大型のものを使わざるを得ない、こんな考え方がございます。そこで、一つの規格を考えまして、大型のものを非課税にしておったのでございますが、それが少し行き過ぎと申しますか、広がっておったと申しますか、パッケージクーラーも当時までは非課税というふうな扱いを受けた、しかしながら、競争関係から見ますとウインドータイプは課税され、パッケージ型のものは非課税では、これは競争上非常によろしくないというような御意見がありまして、パッケージ型のクーラーが課税されることになったわけでございます。本来ならば三〇%の課税をしてウインドータイプのクーラーと合うわけでございますが、やはり漸進的にという考え方のもとに、いま一〇%の課税をいたしておるわけでございます。そこで、今回物品税の改正が行なわれたのでございますし、その改正考え方根拠には、現在のような経済事情のもとで増税を行ないますと、少し電化の問題がむづかしくなるというような考え方で、なお今後二年間ばかり期限の延長をしょう、こういう考え方でございます。しかし一方、ウインドータイプのクーラーは二〇%に軽減されておりますので、この幅は縮まったということが言えると思います。以上、一例でございますが、おおむねこんなような考え方で期限の延長はでき上がっている、こういうように考えております。
  117. 武藤山治

    武藤委員 パッケージ型ルームクーラーというのは、どこのメーカーが一番つくっておるのですか。
  118. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私の記憶では、ダイキンその他特殊の電機メーカーがやっておられると思います。
  119. 武藤山治

    武藤委員 いまの主税局長の説明では説得力が皆無、ゼロです。納得ができません。だから、休憩後、アンサンブル式レコード演奏装置、トランジスタテレビ受像機その他七品目について、なぜ延長しなければならぬかという説得力ある説明ができるように、休憩中に勉強しておいてもらいたい。
  120. 横山利秋

    ○横山委員 関連して。  私、いまの最後の塩崎さんの発言が気になるので一言伺いますが、物品税は業務用は課税しないとおっしゃるのですね。消費者の選択の余地のないものは物品税は課税しない、こうおっしゃったが、間違いありませんか。
  121. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一般的に私は申し上げたつもりでございまして、全般的に業務用というものは全部課税しないという趣旨ではございません。なぜ業務用を課税しないかという御質問がときどきございますので、私は私なりに、選択の余地という観点から御説明申し上げておるのでございます。別な考え方があるかとも思いますけれども、私なりの考え方でございます。
  122. 横山利秋

    ○横山委員 この業務用でたいへん課税をされておるのがパチンコでございます。これはいかなる理由で課税されておるのか伺います。
  123. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私は、先ほど申し上げましたように、一つ考え方として申し上げましたが、パチンコの消費者に対してどの程度の税を取るかという考え方が基本になってパチンコに対する物品税はでき上がっておると思います。事務室で使いますところのクーラーと違いまして、パチンコという遊技具はそれを消費者が負担するものと考えまして物品税を課税しておる、こういう考え方でございます。したがいまして、私は、一律に業務用に使うものが全部非課税ということではなくて、選択の余地はもちろん問題でございましょうけれども一つ考え方でありますが、全体としての消費はつかんでいいのではないか、たとえば、今回はひとつはずそうと言っておりますが、映画用フイルム、入場税を課税してなぜ映画用フイルムにもう一ぺん課税するか、これはもうしばしば当委員会におきまして御指摘があり、批判されたところでございます。私どもは、それを両方あわせまして、映画を見る方々の担税力を測定するということでどうであろうか、こういう考え方をとっていると思うのでございます。しかもまた、徴税の難易その他種々の技術もございますが、そういった意味で、物品税はまた物品税としてのよさもあり、入場税はまた入場税としてのよさもある、かように考えております。
  124. 横山利秋

    ○横山委員 日ごろの理論的な塩崎さんに似合わぬあいまいな答弁をしておられます。私なりに意を強うしておるわけです。今回遊技具に多少減税は行なわれたのですが、聞くところによりますと、こういう話ですね。つまり、最初のねらいは、中古機械を扱っておる業者に、中古機械ぐらいなら減税してやってもいいじゃないかということでやった。ところが、調べてみたら、中古品を扱っている業者は税金を納めてないそうです。だから、税金を納めていない業者を免税してやるというばかげたことをなさったそうであります。それで、それを指摘したらびっくりして、いや、多少はメーカー側にも問題点があるのだという話だそうであります。どうも事実らしいのですが、最初減税をする気持ちと結果というものがどうも違っておったようで、なんてあさはかなことをなさったのであろうかと考えるわけです。まあ、それはフイルムとパチンコと一緒にされて議論をするには少し次元が違うと私は思うのですけれどもね。戦後の混乱期にパチンコがああいうような雰囲気で発展したときには、それは議論があると思うのですが、いま庶民のささやかな慰安になって、パチンコのメーカーにしろ業界にしろ、まずまず普通の恒常的な仕事として成立する安定した企業になっておる。そのときに、いまあなたの前段の話からいくならば、明らかにこれは入場税理論ですね。業務用、消費者に選択の余地のないものについては課税しないという理論からいうと、例外中の例外で、ちょっとことばが濁ってくるのはあなたとしては当然だと思うのです。ですから、これは少しお考えをなさるべきことではないかと思うのでございますが、いかがでございますか。
  125. 塩崎潤

    塩崎政府委員 パチンコについての免税点がどういう影響を生んでいるかという御質問であり、また、それに対する御意見だと思います。確かに、おっしゃるように、免税点は、中古機械、しかし中古というのはことばの響きは悪いのでございますが、再生されました新しい製造と私どもは考えております。修理ではございません。そういった加工度の高い一つの商品と申しますか、これまでの古い材料をまるきり変えまして新しい機械をつくります。これに対しまして、製造として課税するのは公平の見地から当然だと思います。しかし、御指摘のように、残念なるかな、徴税の面、実際面におきましてなかなかむずかしい面もございますし、価格の問題もあろうかと思います。しかしながら、実績もございますし、これはこれとしてひとつ御理解願いたいと思います。  なお、入場税の理論と考えるべきではないか、物品税の範囲を脱出するのではないかという御意見があったわけでございますが、消費税としてどのように考えますか、確かにそういった考え方をとられるかもしれません。しかし、現在の物品税の中で見まして、やはり娯楽的な——もちろん私は悪い意味で言っておるわけではありませんが、やはり娯楽的なものにつきましてある程度課税は、ひとつ物品税としてお願いしたい、所得税課税最低限がああいったまだまだマーケットバスケットでは足りないというようなところでございますので、なおこういった税収の点につきましては、ぜひひとつお許しを願いたい、かように思っております。
  126. 三池信

    ○三池委員長 午後四時より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後二時五十三分休憩      ————◇—————    午後四時十八分開議
  127. 三池信

    ○三池委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。武藤山治君。
  128. 武藤山治

    武藤委員 主税局長、さっきからの続きですが、暫定軽減、または非課税措置で七品目、ここへ出ておるのは三品目しか出ていない。あとの四品目は何と何で、それの理由は何ですか。
  129. 塩崎潤

    塩崎政府委員 さきに引き続きまして、七品目の延長の理由について御説明申し上げます。  先ほどパッケージ型クーラーにつきまして、なぜこれを延長せざるを得なかったという点につきましては御説明申し上げました。その次の物品はカークーラーでございます。御存じのように、ルームクーラーは課税することといたしておりましたが、ルームということばから見まして、自動車は入らないのであろうということでカークーラーは課税してなかったのでございます。さらにまた、カークーラーは、御存じのように、自動車のエンジンを利用いたしますものでございますから、ルーム・クーラーとも性状が違う、したがいまして、カークーラーはルームクーラーの範疇に入らないということで課税してなかったのでございますが、三十七年の物品税法改正の際に、これを新しく取り入れて課税することにいたしたのでございます。本来二〇%の税率であるのでございますが、先ほど申し上げましたと同じような理由から、一挙に負担を高くすることはどうであろうということで、これを一〇%に据え置いたのでございます。いま申し上げましたような理由から、これもひとつ延長をお願いいたしたい、こういう趣旨でございます。なお、ルームクーラーは一五%の税率となっておりますので、一〇と一五との間は、開きは前よりも少なくなっておろうかと思います。  その次は、やはり昭和三十七年に新規課税をいたしましたものでございますが、ステレオ装置でございます。ステレオのアンサンブル等を部分品課税をいたしておりましたが、それのために課税が混乱いたしました。そこで、セットとしての課税をし始めたのでございます。これもカークーラーと同じような理由から、一挙に二〇%という税率はどうかということで一〇%に据え置いたのでございます。本来の税率、今度は一五%になる予定でございますが、これもまた二年間期限の延長を願いしておるのでございます。以上が三品目でございまして、これは三十七年の新規課税のあと始末みたいなものでございます。  その次は、やや政策的な面からの税率の特恵措置でございますが、いわば物品税における特別措置的なものでございます。一つはトランジスターテレビでございます。現在非課税となっておりますが、これは新技術開発の助成、特に高出力トランジスターの開発促進をはかって、輸出増進に寄与しよう、こういう考え方でございます。アメリカにも相当な輸出が期待されるものでございますが、政策的な見地から一五%の税率にするにはなお二年間待ったほうがよかろう、こういう考え方でございます。  その次は、これはもう古くから実施いたしておりますところの、やはり政策的な育成措置としてのカラーフィルムでございます。現在一三%でございますので、一五%の税率に上げるのは、二%ではございましても、まだまだコダック等の外国品に比べまして弱いというところに着目いたしまして、延長をお願いしておるような次第でございます。  その次に、六番目はカラーテレビでございます。これも技術開発、新規生産育成という見地から、三十七年から一三%にいたしておりますが、これも一五%というのはまだ一挙には無理ではないかということで、二年間延長をお願いしておる次第でございます。  第七番目、最後の項目でございますが、小型レコードでございます。海外の第二市場等からの大量なダンピング品の流入を防止するため、国内市場の強化をはかるというような見地から、小型レコードにつきましても三十七年に育成措置が設けられました。税率は一三%になっております。今度の税率は一五%でございますが、これも先ほど申し上げました理由から、二年間延長をお願いしておるのでございます。  以上でございます。
  130. 武藤山治

    武藤委員 ただいま説明のあった減税措置、これによって基本税率との差の、この七品目についての減収予想額はどのくらいになりますか。
  131. 塩崎潤

    塩崎政府委員 初年度八十四億九千五百万円、平年度課税ベースで百十四億二千六百万円でございます。なお、この中には自動車の一六%の税率を一八%に上げるという仕組みが去年の改正にございましたが、いまの減収額の中にはその減収額も入っておりますので、それを除かなければなりません。自動車は、御承知のように今回の改正案では一五%になりましたので、その減収額の問題は消失いたしました。(武藤委員「そうじゃないよ、主税局長、七品目について聞いているんだよ。」と呼ぶ)ですから、初年度四十四億七千三百万円でございます。
  132. 武藤山治

    武藤委員 いまの七品目を製造している会社というのは、これはもう日本の代表的な会社で、件数も非常に少ないと思うんです。しかも、三十七年度につくったものをずるずると何回もこれを延長するという措置は、先ほどの説明ではどうも納得のいくような理由がない。これはやはり大きな圧力で会社の利益というようなことも非常に考慮された不明朗な感じがするのですが、一体これはいつまでこうやって暫定を延ばしていけば基本税率に戻せるという見通しなんですか。どういう状態になったらこういう暫定はやめようと考えておるのか、何かそういう目標はあるのですか。
  133. 塩崎潤

    塩崎政府委員 こういう特別措置には期限がついていることは御承知のとおりであります。   〔発言する者あり〕
  134. 三池信

    ○三池委員長 御静粛にお願いします。
  135. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、やはり法律の期待いたします期限がきました際に、その及ぼす影響等を考えはいたしますけれども、できる限り法律の期待するとおりの期限でその措置は打ち切られる、かように考えております。ことに、物品税は、先ほども申し上げましたように、開きのありました税差も今回の改正案によりまして相当近づいてまいりました。そういったことが実現する可能性は、今回の改正案によって近づいておる、かように考えております。しかしながら、何と申しましても、経済、社会情勢、生きものでございまして、そのときはまたそのときにおきまして検討が行なわれることは当然あるであろう、かように考えております。  なお、いま平年度収入ベースで百九億一千二百万円と申しました。自動車を除きますと平年度は六十六億円でございます。
  136. 武藤山治

    武藤委員 わずか七品目でこれだけ大きな税額を占めるのですが、どうも私たちは、こういう七品目を生産しておるところのメーカーは、数は非常に少ないと思うんです。こういうものを生産している会社は全部で幾つありますか、この七品目製造工場数は。
  137. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ものにもよりましょうけれども、小さなメーカーの方々もたくさんいられることは御承知のとおりでございます。しかし、おも立った商標の通ったメーカーは比較的数が少ないのでございます。たとえば、パッケージ型ルームクーラーの製造会社の名前を言えというお話がございましたが、先ほどダイキン工業と申しましたが、日立、三菱、東芝あたりもこの製造会社でございます。
  138. 武藤山治

    武藤委員 たとえばトランジスターテレビにしても、ステレオにしても、カラーテレビにしても、みなこれ大資本の企業で、私はこんなのをいつまでも延長する必要はないと思うんですよ。それの積極的な理由がどうも見つからぬ。これはやはり基本税率に戻して、他との均衡もこの辺で考えてもいいのじゃないか。これを無理に延長していくと、暫定というものが暫定でなくなっちゃって恒常化してしまう、こういううらみがあるわけです。こういう点については、主税局としても、もっと十分再検討の必要があろうと思うので、こういう暫定措置のものについては、来年からはもう一回全部洗い直してみる、そして、それをきちっと国会に報告してもらいたいと思うが、そういうことはどうですか。
  139. 塩崎潤

    塩崎政府委員 確かに、私も午前中、物品税ではございませんが、所得税法人税等の特別措置につきまして、特別措置の必然性、また存在理由もわかるけれども、問題は、それが慢性化しあるいは既得権化することである、こういうことを申し上げましたが、物品税についても私はそういうことのないことが望ましい、かように考えております。したがいまして、常に経済情勢に応ずるような税制改正を検討するのが私どもの任務でございますので、そういった意味で、物品税の個々の品目につきまして常に検討しなければならぬ、かように考えております。ただ、何と申しましても、物品税は消費者の負担でもございますし、大企業だからという意識は直接税ほど強く考えていいのかどうか、そのあたりにも問題がございますし、さらにまた、それは検討しなければなりませんけれども、一応法律によりまして二年という期限がつきますれば、やはり期限内はそれ自体制度を尊重しなければならぬと思います。しかし、その間十分検討してまいりまして、武藤委員の御指摘のような方向をできるだけ早く実現するように努力したい、かように考えております。
  140. 武藤山治

    武藤委員 今回、資本構成改善の促進とか、合併の助成、スクラップ化の促進等、かなり大きな金額に及ぶ特別措置が新設をされる、その金額については明らかにしてないのでありますが、第一の資本構成の改善についての資本金一億円超の法人について、自己資本比率が一割になった場合には、それにまた応じた税額控除をする、これによる減税額というのは一体どのくらいを見込んでおるのですか。
  141. 塩崎潤

    塩崎政府委員 すでに御配付申し上げました「昭和四十一年度租税及び印紙収入予算の説明」の三十三ページにその数字が示されております。資本構成改善の促進に伴いますところの平年度減収額は九十六億円、初年度は二十六億円でございます。
  142. 武藤山治

    武藤委員 九十六億円の積算の基礎というのは、大体どういう大ざっぱな見込みを立てて行なわれたか——いまのような問題点は午前中すでに聞きただしたそうですから、次に、特別措置の中で、農畜産物の価格安定のための基金に対しては一応必要経費として認めて課税をしない、これの対象になる農畜産物とは一体何と何を予定しておるのか、どういう法律に規定された農畜産物をどういう方法に基づいて大蔵省としては必要経費として認めるか、それを明らかにしてもらいたい。
  143. 塩崎潤

    塩崎政府委員 今回租税特別措置法におきまして、農産物安定のための支出を農業所得の計算上費用に算入するということにいたしましたのは、農産物価格安定が非常に大事であるということからきたわけでございます。御存じのように、この制度課税所得の計算に関するものでございまして、当然、費用ではないかという考え方が成り立つものでございます。しかしながら、一たん特別法人等の協同組合あるいは安定基金という特別法人に入りますと、留保の形になるものでございますから、その費用性につきましても若干疑問がある、そのあたりひとつ明らかにしよう、こういった趣旨でございます。したがいまして、私どもはこれをあまり具本的に書かなくても、特定のものに限るというようなことじゃなくて、農産物、畜産物あるいは養蚕等でございますか、そういったための安定資金を広く入れたい、かように考えて、現在検討中でございます。
  144. 武藤山治

    武藤委員 現在検討中だといいますが、もう四月一日から実施ですね。これは酪農関係生産品あるいは養鶏、豚、そういう個々のものについてはどこまでが適用されますか。私たちはこれは別に反対じゃないのです。去年も農民に対して農協が基金として出す鶏卵の不足払いの場合も当然その免除措置をやるべきだ、こういう主張を私ここでやったのを覚えておるのですが、鶏卵などもこれに入るのですか。
  145. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私どもは、租税の理論と申しますか、少なくとも自分所得のうちから支出いたしまして、その支出いたしましたものが自分から完全な支配力がなくなる、別途の人格のものが運用する、それからの見返りの利益もないといったものならば、当然損金だと思うわけでございます。そんなような角度から、民法法人あるいは基金といった特別法人を含めての外部団体に拠出するならば、これは当然損金というふうに租税の理論上考えるべきであろう、こんなような気持ちを強く持っております。そういう意味でございますので、私どもはそういった要件をひとつ書いていこう、特別法人である。あるいはみずからがそれから貸し付けを受けないことであるとか、現在所得税法法人税法もそういったものにつきましては費用あるいは損金に算入するという仕組みができ上がっておりますが、こんなような仕組みをできる限り包括的に書いてまいりまして、その中でいまおっしゃった卵とかその他の農産物も、そういった団体ができるならば自然に入るような仕組みをつくりたい、かように考えております。
  146. 武藤山治

    武藤委員 それから、今回の改正で従来の特別償却というものが政令でかなり大幅に拡大をされておりますね。金額にして見てもいろいろな項目で出ておりますが、特別償却の政令というものが年々私たちの知らぬ間にワクが広げられていくということで、たいへんわれわれは不満を表明してきたのであります。いままでの償却について、一回、効果がどうあったかという検証をしてみなければならぬと思うのでありますが、一体、大蔵省は従来の租税特別措置によるそういう効果というものを洗い落として見ているのかどうか、効果は一体そうあるのかどうか、そこらをひとつ、大蔵省の検証した結果を聞きたいものですが、わかっている範囲内で答えてみてください。
  147. 塩崎潤

    塩崎政府委員 特別措置のうちで特別償却を取り上げての御質問でございます。その特別償却がどのような効果を生んだか、午前中も山田委員から詳細な御質問が出まして、私どもは率直に特別措置貯蓄との関係につきましてお話し申し上げたところでございます。御案内のように、経済事情があらゆる要素が一緒にあらわれてきますので、税制からだけの特別措置効果がどの程度なのか、それを抜き出して判定することはなかなかむずかしいのでございます。しかし、私どもは特別償却による減収額がどの程度の減収額を生じておるかということは毎年見ておるところでございまして、その結果を見ておりますと、私どもの気がつきますことは、好況期には非常に特別償却がふえてまいります。と申しますのは、好況期には利益がふえてまいります。したがって、その投資がそれに応じて行なわれる、その際に特別償却の適用を受ける、新規機械を取得するような傾向があり、その結果、好況期には、特別償却による減収額が非常に多くなっている、ところが一方、不況の時代になってまいりますと、特別償却による減収額が減ってまいります。これは御存じのように、特別償却は少なくとも減価償却の一種でございますので、確定決算に掲げた場合に限り損金に算入する、こういうふうなシステムをとっております。そうなりますと、御存じのように、企業の利益が減ってまいりますと、まず配当のほうが優先してまいる、したがって特別償却がますますむずかしくなってくるような結果が生ずるわけでございます。そんなような関係で、しかもまた投資も少なくなるということで、特別償却の金額も、たとえば三十五年度には百億円ございました。これが好況期時代でございます。ところが、三十七年になると八十億円に減ってくる、毎年こんなような浮動をしておりますから、鉄鋼会社の事例などを見ておりますと、まさしくそのことがはっきりいたしておりまして、好況時代にはうんと償却いたしますが、不況時代には五年間の繰り越しの利益でもって、将来利益が生じたら償却の権利を行使する、こんなような傾向が見られます。そういった意味で、特別償却は、言うならば好況期においては設備投資の援助というかっこうになり、不況の時代におきましてはこれがあまり利用されていない、こんなような結果が出ていると思うのでございます。  なお、武藤委員から、これは政令によって広がってくるということはどうかという御質問でございますが、私どもは、根拠法律でいただいておるのでございますが、私どもの政令で規定いたしております範囲は、むしろこまかい、どういった機械をこれに入れるかという細目と申しますか、機械の種類でございます。これを政令にまた根拠を掲げる、それに基づきまして省令が出ている、こういったところでございます。技術的な、たとえば自動車のトランスファーマシンというようなもの、あるいは鉄鋼業の焼鈍炉といったようなものも法律に書くことももちろん可能でございますが、これは絶えず政策によって、時代によって動くものでございます。さらにまた、ときおり経済情勢に応じまして特別償却の対象の範囲は狭めたらどうかという弾力的な運営も期待されているのが実情でございます。そのような弾力的な運営を期待する意味で政令で規定さしていただいておる、こんなような状況でございます。武藤委員お話もございますので、私も今後またできる限り法律に書きまして、この点を明らかにしてまいりたい、こういうふうには努力したいと思っております。
  148. 武藤山治

    武藤委員 輸出割り増し償却が百五十六億円というとかなりな額になりますが、主として輸出商社、こういう関係の償却になると思うのですが、こういう商社の百五十六億円の償却を認められる所得状況というのはどうなっているのですか。これは欠損会社ですか、大体みな利益をあげている会社ですか。
  149. 塩崎潤

    塩崎政府委員 輸出割り増し償却制度は、御存じのように、三十九年に輸出所得控除制度の身がわりといたしましてつくられたものでございます。その結果、輸出所得控除制度がメーカーに適用されている関係上、輸出割り増し償却制度も、商社のみならずメーカーにも適用になる、こういうところでございまして、その範囲はメーカーのほうが多い。特別償却の範囲、額を見てみますと、メーカーでは三百八十五億円ございまして、商社では七十億円、こういうふうになっております。と申しますのは、償却資産の範囲は、何と申しましてもメーカーのほうが設備が中心企業で、多いわけでございます。その結果こういう姿が出てくる、かように私ども考えております。
  150. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、メーカーの場合には輸出割り増し償却を受けて、さらに合理化機械等の特別償却、これも受けるというような事例もあるのですか。ダブる場合もあるわけですか。
  151. 塩崎潤

    塩崎政府委員 おっしゃるように、制度の趣旨が、輸出所得控除の身がわりとしての海外市場開拓準備金あるいは輸出割り増し償却制度でございます。これは輸出をいたしますれば輸出割り増し償却制度の適用がありますので、一方、合理化機械の特別償却は、これまた企業近代化合理化のために特別償却を認めようとするものでございますから、特別償却は選択適用ということで、どちらか大きいほうの適用が受けられる、かようなことになっております。
  152. 武藤山治

    武藤委員 その場合の輸出割り増し償却を認める限界ですね。これは中小企業なんかの場合に輸出をかなりやっておっても、直接輸出商社との取引でないために認めない、間接的に輸出品をつくっておっても中小企業の場合適用されない、こういう事例がかなりあると聞いているのですが、一体どういう基準で——非常に手続もややこしくして、なかなか輸出中小企業のほうには行き渡らぬというような不満があるのですが、何割以上輸出製品を製造した場合にはこの割り増し償却を認める、中小企業の場合でも何割ならだいじょうぶだというような点、それはどういう基準になっているのですか。
  153. 塩崎潤

    塩崎政府委員 ただいま武藤委員の御指摘の問題は、輸出所得控除の時代から非常にやかましい問題でございます。これはドイツの制度を見習ったのでございますが、輸出したということが証明されればその適用があるわけでございます。メーカーにとってみますと、自分のものが輸出されたかどうかなかなかわからない。商社がそれを引き取って輸出をするものが多いわけでございます。そんなような関係で、輸出証明がメーカーのところになかなか手渡らない。商社のほうは税関の輸出証明で簡単にできるわけでございますが、それに基づきましてメーカーは商社から輸出証明をもらわざるを得ない、そのような関係がなかなか商社にとって苦痛でもあり、また、どれから買ったものがどの程度輸出になったかわからないというような事例もありますために、常に両者の間に紛争を生ずる、さらにまた、商社のほうが利益割合が高いから、自分のところで恩恵を受けたらいいとか、あるいはメーカーのほうが利益割合がいいから輸出所得控除の適用を受けたらいいとか、いろんな問題があり、その間はリベートで片づけようとか、種々なトラブルがあったわけでございます。現在も割り増し償却あるいは海外市場開拓準備金繰り入れ率輸出のインセンティブが与えられることになっておりますが、いずれにいたしましても、海外市場開拓準備金の率も比較的低いし、輸出割り増し償却も非常にこれは適用がむずかしい点もあるというようなことで、輸出証明の問題が、中小企業のみならず、大企業でもわずかなものなら輸出証明を取りに行っても費用倒れである、海外市場開拓準備金のように五年後にはき出すようなものについてまで、取引額の千分の五の、しかもそれに対する税金は三四、五%のものになりましょうが、そのために輸出証明を遠距離まで取りに行くこと自体がどうかという問題もあり、なお、私どもも、輸出証明の簡素化の方法はないか、ことに、おっしゃる中小企業の手数を考えますと、この輸出証明の問題をもう少し簡単にしてこの利益を受けさす方法はないか、検討してみたい、かように考えております。
  154. 武藤山治

    武藤委員 検討してみたいとおっしゃるから了解はいたしますが、大体中小企業の場合は、全生産品の二割とか三割をこの機械で製造すれば輸出品を適用するとか、何か基準があるのですか。それとも、全体の売り上げの中で輸出製品というのは一割でも五分でも輸出になればその機械は償却を認めるのかどうか、そこらは何かこまかい基準で、中小企業はなかなか適用されぬようで不満が多いのですが、どういう基準になっておるのですか。
  155. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この制度輸出奨励でございますので、輸出がふえたならば、その割合だけ償却を増そう、こういう考えでございます。したがいまして、売り上げが一〇〇だといたします、そのうちの二〇が輸出に向けられるといたします、そうすると輸出割合は二割、こういうことにいたしまして、その分だけ自分の持っておる建物あるいは機械設備につきまして割り増し償却を認める、こういった制度でございます。現行法はその八掛けでございますが、今度御提案申し上げておりますのは、その割合そのままで割り増し償却を認めよう、こういうふうな考え方をとっております。
  156. 武藤山治

    武藤委員 そうなりますと、中小企業がたとえ五%でも、今度は輸出証明さえもらえば、その分は全部割り増り償却を認める、こういうことですね。そこで、これはぜひ全国の商工会議所や中小企業団体にもその旨が徹底するようにしないと、この百五十六億円は大半、一億円以上くらいの大会社におそらく七割以上が適用になっちゃって、中小企業にはほんのおこぼれしかいかぬという状態だと私は思うのです。これについては、主税局長、本年は何か特別なそういうPRでもやるのか、従来どおりではこれはだめですよ。
  157. 塩崎潤

    塩崎政府委員 御指摘のように、国民のための税法でございますし、国民ができる限り利用していただくのが、特別措置といえども、私は国会あるいは法律の趣旨だろうと思います。私も輸出証明のトラブルを前々から存じておるわけでございますが、ひとつそういった点の検討も加え、今回の改正の趣旨をひとつ徹底いたしまして、できる限り中小企業まで含めて利用していただくようにPRにつとめたい、かように考えております。
  158. 武藤山治

    武藤委員 次に、徴税の問題になりますが、過般資料として要求した企業の欠損会社と利益会社と区別をした表を出さしたのであります。この利益会社あるいは欠損会社という概念は、これは税法上の利益会社、欠損会社と理解していいのか、それとも商法上の利益会社、欠損会社という概念に分けたのか。一番上の欠損と利益の概念はどういうことですか。
  159. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この表は、武藤委員の御要求に基づきまして主税局のほうで作成いたしましたので、私から便宜お答え申し上げます。  これは、公表利益と申しますのは、御存じのように、法人税法は、現在のたてまえにおきまして、法人の確定決算に基づきました利益をまずスタートポイントといたします。それから税法に従いまして加算減算を加えまして税務所得を出します。したがいまして、公表利益というものがいわゆる確定決算に基づく利益でございます。大法人ならばこれが新聞等に公開されておる決算でございます。小法人にいたしましても、公表利益と申しますのは、株主総会に提出いたしますところの確定決算に基づく利益でございます。
  160. 武藤山治

    武藤委員 それを聞いているんじゃないんだ。この一番上の大見出しの利益会社とそれから欠損会社という概念がありますね。これは一体税法上のほうの利益会社、欠損会社という規定なのか、それとも商法上の利益会社と欠損会社と見ているのか。この概念を聞いている。
  161. 塩崎潤

    塩崎政府委員 利益会社は税法上の調査によりますところの利益会社、税法に基づきまして利益のあった会社、欠損会社は税法に従いまして欠損になった会社、こういうふうに御理解願います。
  162. 武藤山治

    武藤委員 そうしますと、まず税法上の利益会社の一億円以上の利益会社二千六百七十三、その右側に欠損が一億円以上が三、十億円以上の資本金会社が十と、十三ありますね。これは税法上は利益だけれでも、欠損は何ですか、これは公表上欠損ですか、最初の欄は……。
  163. 塩崎潤

    塩崎政府委員 一億円以上の法人の二千六百七十三のうち、利益のあるものが二千二百二十七億円、それから欠損のものが三億円、こういうことでございます。
  164. 武藤山治

    武藤委員 そうすると、どうも私はよくわからないのは、利益会社という上の項目があって、それで中身には税法上利益で、二千二百二十七億円利益が出て、三億円から今度は赤字が出たというのは、これはどういうことなんですか。実態は、この事実関係は。
  165. 塩崎潤

    塩崎政府委員 少しこの表現と申しますか、表のつくり方が、おっしゃるように、適当でないかもしれません。所得金額というのが税法上の利益でございますから、ここに掲げております会社は、税法上は全部利益の出た会社、かようになります。したがいまして、二千二百二十七億円の利益がある会社のほかに、欠損のある会社は、三億円の欠損があったのでございますが、申告調整あるいは税務調査の結果利益が出てまいりまして、結局その会社課税所得は三千五百七十七億円になった、こういうことでございます。
  166. 武藤山治

    武藤委員 今度はわかりました。  そういたしますと、現在欠損会社資本金一億円以上で千三百九社、ずいぶん多くの会社が赤字会社のわけですね。その中で赤字でありながら公表は二百二十二億円利益を出している。そうすると、税務申告の所得の計算と商法上の所得の計算とはかなり違う点がある点は認めます。認めますが、どうも一億円以上の会社でこんなにも赤字の会社があるということはどうもなかなか理解に苦しむ。たとえば百億円以上の会社が十社も赤字だ、五十億円以上は十六社赤字がある。こんなでかい資本金会社でこう赤字があるというのは、これは会社ができたばかりで、借りのほうが多い、あるいは資本金を払い込んでもまだそれが資産になっていないで、負債勘定だけになって載っているのか。どういうわけでこんな大きい百億円の会社が赤字になっているのか、これは国税庁はどんな指導をしているのでしょう。
  167. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私が提出いたしました資料でございますので、私の知り得る範囲お答え申し上げたいと思います。  もう大きな会社でも欠損のあることは御存じのとおりでございます。しかし、武藤委員がむしろ御指摘されたいのは、税務では百五十億円の欠損であるのに……。(武藤委員「それはあとで聞くんだ」と呼ぶ)おそらくそういった趣旨でございましょうが、御存じのように、山陽特殊製鋼でもさらにまた積水化学でも、それから大阪土木にいたしましても、欠損会社が相当多いわけでございます。その結果がここに出ておる。ただ、公開決算と税務申告とは違うことは御存じのとおりでございます。
  168. 武藤山治

    武藤委員 主税局長、この表は欠損会社数を出したら、同時に、この中から公表利益を出した会社が何ぼあるかという数字を出さないと、われわれが検討するのにちょっとまずいですね。  そこでお尋ねしますが、欠損会社の中の会社数で、一億円以上が一千三百九社が赤字だ。そのうち利益と公表したのは何社あるのですか。その会社の数ですね。これを出さないと、粉飾決算をしている会社数は大体どのくらいあるかということがつかめぬわけですが、これは一体何社ぐらいあるわけですか。
  169. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この表は非常に複雑な操作のもとにでき上がりましたので、いまの御指摘のような抽出をいたしますのには、少し時間をかけていただかないと、なかなか困難でございます。御要望がございましたら、不正確になるかもわかりませんが、つくらしていただきたいと思います。
  170. 武藤山治

    武藤委員 一億円以上の会社が千三百九赤字で公表利益二百二十二億円、これは金額ですね。これは比較のしようがないわけです。何社ぐらいがどうも紛飾しているんじゃないかという私のねらいとする質問がこの表では出てこない。あとでなければ数字がわからぬということになると、これは国税庁にこれから紛飾決算と思われる数を尋ねようとしたのだけれども、きょうはその数字がわからぬから、会社数がわからぬから、中身をちょっと聞くわけにいかぬですね。こういう趨勢は前年と比較してどうですか。公表利益、税務申告、赤字、こういう会社はふえていますか、減っていますか。
  171. 塩崎潤

    塩崎政府委員 この表は武藤委員の御要望によりまして提出したものでございますが、初めて提出申し上げた資料でございまして、前年と対比するまでのゆとりもなく出したことは事実でございます。しかし、私の印象を申し上げて恐縮でございますが、この間の関係は紛飾、紛飾というだけでもないことはもう御存じのとおりでございます。武藤委員お気づきのように、商法上の利益と申しますか、複式会計の支配する分野、たとえば期間損益のずれ等は相当課税所得との間にもございますし、それからまた、景気のいいときには貸し倒れ償却を思い切って行なって、利益を少なくしてまいります。しかしながら、税務調整だけは利益を計上して、自己否認してまいる、こんなような関係が出てまいりますので、必ずしもこれが全部が全部粉飾と言えるかどうか、疑問だと思います。それから過去に、税務署におきまして早目に利益を計上すると見たものは、翌期以降は損失に出てまいる場合が往々にございますので、必ずしもそうは言えないのでございます。一般的に言えますことは、好況期には公表利益は課税所得ほど上がらない、一方、不景気のときには、課税所得がうんと沈むけれども、公表利益はそんなに減らない。言うならば、企業配当本能と申しますか、配当維持本能から公開決算は控え、できる限り安定さしたいという要望が企業の側に強いように見受けられるのでございます。
  172. 武藤山治

    武藤委員 国税庁、昭和三十九年度の査察あるいは局の調査班が調査をして脱税を逋脱した件数、それから四十年ですね、四十年はまだ年度がありますが、大体年計算で傾向はわかりますね。三十八年、三十九年、四十年と比較して、去年はどんな状況になっておるか、ちょっと数字で示してください。査察件数からでもよろしいです。
  173. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 ただいまの御質問は、調査課所管法人の調査件数あるいは調査の動向、また査察事案の動向の御質問でございますが、大体のことを申し上げますと、ただいまの査察につきましては、これは特別な問題でございますので、一般の調査事案と比べることはいかがかと思いますけれども、件数としては若干ふえております。それから調査事案につきましては、結局増差所得ということになりますが、これはある程度ふえておりますけれども、数字としては、ただいま私手持ちしておりませんので、また資料として御要求がございますれば提出いたしたいと思います。
  174. 武藤山治

    武藤委員 増差所得もふえている、査察もふえている。これは特に昨年度税収欠陥を生じたので非常に徴税が強化された、こういう意見をいろいろ納税者から聞かされるのでありますが、特に税収を確保しようとして非常に無理な調査が行なわれているのではないか。たとえば、税務署の更正決定の件数、昨年と一昨年と、ここ両三年比較してみると、昨年の更正決定のほうがずっとふえておるのじゃありませんか、それはどうでしょう。
  175. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 法人の調査でございますが、調査課所管法人と税務署所管法人と並べまして調査いたしましたものの中で、更正をいたしますものは大体八割見当でございます。この数字は、一昨年も昨年もそう変わっておりません。したがいまして、傾向としてどうということは私ども申し上げられない、かように考えております。ただ、その八割と申します数字は、これは、いわば期間損益に類するものが相当程度ございまして、実際の不正計算と申しますか、所得を隠蔽したりあるいは仮装したというものにつきましては、それほど実はございませんので、たとえば重加算税を課しましたものは一割強というような数字に相なっております。この傾向も、特に徴税強化というよりも、最近においてふえたということは認められないというふうに考えております。
  176. 武藤山治

    武藤委員 ふえたかどうか認められないという主観的答弁じゃなくて、やはり三十八年、三十九年、四十年と、これの件数でひとつ明らかにしてもらいたい。その件数もここへ持っていませんか。金額はけっこうですから……。
  177. 中嶋晴雄

    ○中嶋説明員 更正割合で申し上げます。  三十七年度につきましては、税務署所管分につきまして三六・五%でございます。これが三十八年度、三十九年度と下がるに従いまして数字を並べて申し上げますと、三六・五%、三二・四%、三一・九%ということに相なっております。なお、同じ年度につきまして調査課所管分について申し上げますと、八〇・三%、八二・一%、八〇・一%、かようになっております。
  178. 武藤山治

    武藤委員 大臣もお見えになりましたから、私も約束の時間ですし、資料を要求しておきます。  いまの四十年度分についての、たとえば年度間の、十二月までなり一月までなり、わかっている件数を入れて、資料にしてひとつ提出願いたい。調査班のものと査察のものと、さらにいまの税務署所轄のものと分けて……。どうも福田さんが大蔵大臣になってから予算が大型になったのはいいけれども、税収が欠陥を生じたために、どうも徴税強化の傾向にある、こういうちまたの不満もかなり聞きますので、数字の上で四十年度の分をひとつ明らかにしたいと思いますから、あとでひとつ資料で出してもらいたい。それから、さっき主税局長、資料で件数を出すというやつも出してもらいたい。  最後に、大臣せっかく来たから、ひとつ小さな問題ですが、私、ときどき群馬県の長谷川四郎代議士と話し合うのでありますが、魚屋さんが非常に塩っけの多い魚をオート三輪で運ぶ、最近魚屋さんも小さな三輪車、四輪車に乗っていますね。それで非常に腐食が激しいわけであります。こういうものは、やはり特別、耐用年数を縮めてやっていいんじゃないだろうか、魚屋の使用する運搬具ですね。そういう点をひとつ主税局としても十分検討していいんじゃないだろうか。特に耐用年数の場合は、これは行政府でかってにやれるのですね。ですから、ひとつそういう点を検討してもらいたいと思うのですが、大臣の所見いかがでございますか。
  179. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 検討することにいたします。
  180. 武藤山治

    武藤委員 よろしゅうございます。      ————◇—————
  181. 三池信

    ○三池委員長 関税定率法の一部を改正する法律案関税暫定措置法の一部を改正する法律案関税法等の一部を改正する法律案及び関税法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律整備等に関する法律案の各案を一括して議題といたします。  御質疑はありませんか。——御質疑もないようでありますから、各案に対する質疑は、これにて終了いたします。     —————————————
  182. 三池信

    ○三池委員長 これより討論に入るのでありますが、各案につきましては、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  おはかりいたします。  各案を原案のとおり可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  183. 三池信

    ○三池委員長 御異議なしと認めます。よって、各案はいずれも原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました各法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  184. 三池信

    ○三池委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  185. 三池信

    ○三池委員長 再び、物品税法の一部を改正する法律案及び租税特別措置法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題とし、質疑を続行いたします。春日一幸君。
  186. 春日一幸

    ○春日委員 大臣に対する質問許容時間なるものは、大体のめどはどれだけですか。
  187. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 何時間でもいいですが、参議院との関係で、五時半……。
  188. 春日一幸

    ○春日委員 いま五時十五分で、五時半までというのはどういうことですか。そんなことは認めません。衆議院優位の原則を忘れてもらっては困る。われわは歳入委員会として、ここにいま重要なる租税関係法案の審議もまさに大詰めに迫っておるのです。この重要なる段階において、衆議院における審議が阻害されるというがごときことは、当然衆議院大蔵委員長の努力によって、参議院との間に調整をはかってもらわなければならぬ。すなわち、われわれが十分審議を尽くすだけの時間の確保措置、これをとってもらわなければならぬ筋合いのものであると思いますので、わずか十五分間で退散するというがごときことあらば、委員長不信任案を提出いたします。よって、さよう御承知を願いたい。  そこで質問をいたしまするが、しかし、私も意地悪くねばるものではございませんから、重要なる政策問題を集約して、端的に質問をいたしますから、ひとつ誠意ある御答弁を願いたいと思います。  これは、本委員会でここ数年来の懸案でありますが、福田さんが大蔵大臣になられましてから、いまだこの議論はかわされておりませんので、ひとつ、あらためて提起して、大臣の所見を伺いたいと思うのであります。それは小規模事業者に対する特別勤労控除の制度を設ける必要がないかという問題についてであります。問題は、現在租税体系所得税体系が資産所得とそれから勤労所得と、この二つに分けられて税の体系が組まれておるのでございます。すべての所得課税というものは、この二つの部分の中で組み立てられておるのであります。しかしながら、収入の実態がそのとおりであるならばそれでよろしい。すなわち、資産所得に属するものか、あるいは勤労の対価として発生する給与所得に属するものか、この二つに明確に区分できるならば、私は現行体制でいいと思うのでありますが、大臣も御承知のとおり、この実態はそうではないと思うのです。特に、ここに零細事業者と言っては語弊があるかもしれませんが、いわゆる法的にいう中小企業者ですね。これらの諸君は、自分の店舗なりあるいは自分の工場なりを資産として彼らが提供しながら、彼ら自体がまた労働者として労働力を提供する。だから、零細事業者の所得は、すなわち資産から発生する所得と、みずからの勤労の対価として発生する所得との合算所得である。そして、その合算所得に対して課税の方式は、ことごとくこれを資産所得体系の中で処理がなされておる。これは私は、実態にそぐわないと思う。すなわち、その零細事業者が——極端な例を申し上げるならば、魚屋さんであるとか、旋盤が一台か二台で、従業員もなしにやっておるような町工場、あるいは勤労事業者として象徴的にいわれておる大工、左官、とび、板金というような人たちですね。こういうような諸君の所得というものは、資産所得と勤労所得の合算所得であるとするならば、そのような構成によって発生してきた所得に対しては、構成の淵源にさかのぼってそれぞれの区分課税がされてしかるべきであろうと思う。けれども、現実には一体どの部分が勤労の対価として発生した所得であるのか、どの部分が資産から発生した所得であるのか、これを区分けするということは、現実の問題としてなかなか困難ではないかと思われる。だとすれば、やはりこれを推計して、そして何らかの政策措置をとるべきではないかというのが、冒頭申し上げた勤労事業者に対する特別勤労控除の創設を必要としないかという政策理論の趣旨であります。私は、そういうような意味合いにおいて、零細所得者というよりも小額所得者の下積み、少なくとも八十五万円、これは社会党も、私どもも当面八十五万円までは夫婦子供三人の標準世帯における生活実費とこれを目しておる。したがいまして、観念的にはこのように、健康にして文化的な生活を行ない得る最低限の生活実費、これを八十五万円と想定するならば——あるいはこれが六十三万円でもよろしい。とにかく、想定されたその生活実費を一つの限界として、これに対しては——すなわち、勤労の対価として発生した所得の中の下積み、これだけの分に対しては、それらの所得を得るに必要なる経費として、これは勤労控除が十分の二引かれておる。その率を援用して八十五万円の十分の二、十七万円、これだけを特別勤労控除としてこれは控除すべき筋合いのものであると思うが、いかがでありますか。  若干説明をさらに加えますと、そのような経費が実際はかかるけれども、なかなか計上しがたい面がある。ですからこの説をなすのでありますが、たとえば、とうふ屋さんがとうふをつくろうと思えば、朝早く起きて、そしてこれを売りに行かなければならない。あるいは、うどん屋さんが仕事を終わって、かまを洗って寝るというまでには相当時間がかかる。午後の九時か十時までやって、それからどんぶりやかまを洗って寝るのには十二時ころまでかかると思う。そのためにはいろいろからだを使う、腹もへる、補給をせなければならぬ。だから、そういうような所得をすなわち勤労の対価として発生する所得政治的に認証するならは——認証することが前提ですけれども、認証するならば、そのような所得を得るためには当然それぞれの経費が伴うてくる。だが、事業所得に対してはそのような経費がいま見られていないですね。だから、これを勤労の対価として発生した所得とみなし、そうして、みなした以上は、それを得るに必要なる経費というものを特別勤労控除として控除すべし、私はこの理論は筋が立っておると思うのです。そして、しょせんは、われわれは本委員会において専門的にこのような政策理論を十分煮詰めて、勤労事業者の要望にこたえなければならない大きな政策問題であると思うが、これについて福田大臣の御意見はいかがでありますか。つまり、いま所得のあるところに課税をなす、所得のある者にはことごとく課税をするが、それが二つに区分をされている。一つは、資産所得に対する課税と、一つは、われわれの歳費から給与、賃金、工賃、こういうような給与所得的性格のものの二つに分けられておる、二大区分がされている。そうして零細事業者たち所得中小企業事業者のうちでも特に勤労事業者、大工だとか、一人親方とか、とうふ屋、魚屋、そういうおやじたちがみんな働いて所得を得る、自分自体自分の店で働いて、そうして所得を得てしる。そういう資産所得と勤労所得との合算所得というものは現実にある。それを十分認識するかしないかですね。三つあるのを二つで処理している。このことは実態にそぐわない。だから実態に即して処理するとするならば、三区分の創設を新しくすべきであるが、そうすることはなかなか困難である。だから、租税特別措置の形の中でそれに対して政策的な救済を行なっていく必要がありはしないか、こういうことなんです。だから、とうふ屋ならとうふ屋、魚屋なら魚屋は自分の店なんだ、だから自分の店から所得が発生するが、店からだけでは所得が発生しない。おやじが働くことによって初めて——そんな零細な企業で賃金を払って、給与を払っておったならば所得が全然出てこない、赤字になってしまう。けれども、女房や子供と一緒になって働くことによって初めてそこに所得が発生してくるんだから、だとすれば、そのような労働に対して所得があるのだから、その勤労所得を事業所得の中に含めてしまって課税するということは実態にそぐわないではないか。しかもこれは、区分するというても区分しようがないから、したがって、何千万円という所得を得るような人にそういうことを適用せよというのではない。少なくとも百五十万円以下の所得を小額所得とみなし、小額所得の中の下積み八十五万円——われわれの主張は八十五万円であるが、あなた方は現時点で文化的に健康的な生活が行ない得る最低限度を六十三万円とするならば、六十三万でもよろしい。それに対して十分の二、すなわち給与控除十分の二をかけて十二万六千円というものを特別勤労控除として、各種控除のほかに新しくこの控除を認めたらどうか、認むべきじゃないか、こういうことなんです。  もう一つ理論をふえんしたいと思うのですけれども、このことは、国税収入に大きな影響を与える面もあるでありましょうが、むしろ政策効果は地方税にあるのです。というのは、あの事業税は給与所得、勤労所得にはかからない。ところが大工さんや左官屋さん、自転車の修理屋さんや洋服の仕立て屋さんは現実に働いてその所得を得ておるのであるから、現実の実態は労働者なんです。他の純然たる給与所得者には事業税がかからないけれども自分の店で自分のミシンで働いておるから、その所得全部に事業税がかかってきておる。そのことは、これは深遠なる徴税理論だと思うのでよく御理解を願いたいと思うのだが、洋服の仕立て屋さんも自転車の修理屋さんも大工もとびも現実に働いて所得を得ておる、他の給与所得者である工賃、給与、歳費をもらっておる者は事業税がかからないけれども自分のミシン、自分のスパナ、自分の旋盤で働いておる者は事業税を納めておる。だから私は、いま国税のほうで、小額所得者の中の下積み何十万円まではこれが勤労の対価として発生した所得であると法律的にみなされることになれば、そのみなされた額だけは事業税においても当然免税がされる形になってくると思う。免税点がいま事業税の二十三万円か何かが六十三万円なり八十五万円なり、設定された免税点までが事業税の非課税措置が自動的にとられる形になると——中小企業等協同組合法の二十三条でも中小企業団体法でもそれぞれ国はそのような小規模事業者に対して税法上、金融上、特別措置をとらなければならないと述べておるのでありますけれども、そういうようなことは、国民金融公庫のワクをふやしたとか、基礎控除、扶養控除を引き上げたとかいうようなことで政府は答弁されておりますが、現実には特に彼らだけにフェーバーが与えられるような政策というものは、いろいろ研究もし、勉強もしてきたのだが、このことなくしてほかのことをやったところで、それは通り一ぺんのことで、そのものずばりの対策を講じたことにならない。私はこれは長い間の懸案であるから、もっとすみやかに実現をはかられてしかるべき筋合いの問題であると思うが、福田さんは大臣に御就任になって、税の根本的改革まで大いにその決意を持って意気込んでおられるので、この機会にこの問題については十分御検討を願いたいと思うが、御所見はいかがでありますか。
  189. 福田赳夫

    福田(赳)国務大臣 深遠なる所得税理論を拝聴いたしたのですが、要するに、お話のように現在の所得税、これは給与所得かあるいは資産所得かということになっておりますが、お話のケースは非常に複雑な内容かと思うのです。理論上は、あなたがおっしゃられるように、どうも資産所得と給与所得との混合じゃないかというような気もいたします。しかし、これを徴税というか、税務の一般の運用面から見てみますときに、お話のようなケースと、純粋の勤労所得者との間に問題があるわけなんです。勤労所得者のほうはガラス張りだ、どうも洗いざらいやられちゃう、しかし事業所得者は、零細事業所得者といえども、どうもいろいろとかくれみのもあるのじゃないかというようなことも言われるわけであります。そういうようなことで、これを一朝一夕に是正するということはなかなかむずかしい問題なんですが、まあしかし、勤労所得者と事業所得者との間の権衡というものが、税務の合理化によってどうしても実現していかなければならぬ、こういうふうに思いますが、現状は遺憾ながらいろいろの批判を聞かれるような状態です。その聞かれる批判に対して、ただいまお話のような制度を取り入れるというと、一そうそれにまた拍車をかけるようなことになりかねない、こういうふうな感じがいたします。高邁な御議論ではありまするが、もう少し一般の事業者に対する課税の水準というものが上がってきた後においてでないと、ちょっと取り上げにくい問題じゃないか、そんな感じをいまいたしておるわけであります。
  190. 春日一幸

    ○春日委員 私は、いまやこの問題は重要な段階にまいっておると思います。大臣に特にお聞きを願いたいと思うのでありまするが、いま大臣の御答弁を整理して裏から申しますると、事業者は大なり小なり脱税をしておるのだ、だから多少の無理があってもしんぼうできるじゃないか、こういうことであろうと思うのであります。けれども、だんだん経済が安定をしてまいりまして、税のモラルも高まってまいっておると思う。それからもう一つは、法律が厳然とありまして、多少隠蔽をしたものは五カ年過去にさかのぼって重加算税でこれをめし上げるという制度になっておるのでありますから、私は、いまや脱税なんというようなものはだんだん数が少なくなってまいっておると思いますし、これは納税者が自覚して、みずからこれを絶無にしていかなければならぬと思う。だから、私どもがここで制度として論ずる場合は、業者はおそらく大なり小なり脱税しておるから、ちょっと理論では筋は通らないけれども、この程度のことはやむを得ぬのだ、こういうことでは問題の解明にならぬと思うのです。脱税者を法律に照らしてどんどん処断していかなければならぬし、その体制が法的に確立しておる。法的措置がとられておる。それから納税者も、これはもう脱税したら五年間さかのぼって取られるのだし、そして勤労給与所得者がばりっと全部猶予なく取られておるのだから、われわれもおさめなければならぬという自覚が次第に高まってきておる。そういうような現時点において、この問題はもはや政策論として、徴税理論として厳正なる回答を与えていかなければならぬことになっておる。これは大臣御承知じゃないと思うので御承知を願いたいと思うのだが、塩崎局長は課長時代からすでに御承知だと思うのですけれども、村山直税部長時代に、これはわれわれが社会党当時、昭和二十九年、いまから十年前にこの議論を行なって、村山君は少なくとももっともだと政策的にこれに同調しました。そうして、当時彼は直税部長でありましたけれども、国税庁の直税部長通達を出して、大工、とび、左官、板金、植木職等の所得に対する特別措置を出した。そして、その当時はベースも下でございましたけれども、こういうような勤労事業者の所得のうち、五十万円までの所得は、勤労の対価として発生した部分が何十%、また七十万円までは何十%と区画し、その後この直税部長通達によって徴税がなされておりまして、そして実質上、法律によらずしてそのような区分措置がすでに行政措置でなされてきておる。そうですね。その事実関係について、ひとつ塩崎局長から御答弁願います。
  191. 塩崎潤

    塩崎政府委員 私も課長時代から春日委員の小規模事業者に対する特別控除論をずいぶん承ってきて、また研究もしてまいったのでございます。ただ、ただいま御指摘の村山直税部長時代の大工、左官、とび、板金、植木職に対しますところの給与所得の扱いというのは、少し趣旨が春日先生のおっしゃったのとは違った意味で出ておることは、春日委員御承知のとおりでございます。御存じのように、大工、左官、とび、板金、植木職のような、全く——全くと申しますか、比較的資本的な手段のない方々の、いわゆる自由職業に類するような所得者、このうちに、おっしゃるように給与的なものがございますが……。
  192. 春日一幸

    ○春日委員 わかりました。大臣、時間がないようですから、結論にしましょう。大工、とび、左官、板金、植木職なんというのは、大体資産的性格の持つ度合いが少ないといわれるけれども、八百屋さんなんか、店に一体何万円の野菜があるか、ほんとうに数えてみたらわかると思う。魚屋さん、自転車の修繕屋さん、ミシン屋さん、ミシンなんか実際一万八、九千円で買えますよ。だから、そういうような零細事業者の所得を得る資産的投資というものは大したものじゃないんだ。現実問題として大同小異なんです。だから、村山君の当時踏み切られたこと、それは彼が単独に踏み切ったのではない。あなたと相談して踏み切ったんだ。それも、法律によらずして、行政措置でそういうような違法行為も政策上必要であるということでやられておるのです。当時考えたことは、初心忘るべからずということもあるし、そんな大きな問題が法律の定めなくして行なわれておるということは重大なことなんだ。けれども、それはいいことであるし、合理性のあることだという客観的評価でこのことはそのまま推進されてきておる。私が言うのは、モラルが高まった、そして経済はおおむね安定したと見るべきである。脱税者も少なくなってきたんだし、脱税に対する追求措置もばりっとしてきたんだから、このとき所得発生の実態に即して、徴税方式もこの実情に即するようにこれを改善改革をしていく必要があると思う。  以上申し上げましたが、これはいろいろ押し問答になってもしようがないと思うので、これは各党交えて、そして、ひざとも談合ということがある、十分ひざ突き合わせて相談をして、長い間の懸案でありますから、そうして現実に行政措置で行なわれておることでもありますから、それを法の体系にオーソライズして、徴税理論の完ぺきをはかり、徴税行政を公正なものにしていくように大いに御努力ありたいことを強く要望いたしまして、毛利君がやかましくてかなわぬから、あなたは行くなら行ってください。  それで、主税局長がその気にならなければこの問題はなかなか前進しない。あなたが批判的ではなかなか前進しない。あなたは非常にがんこだけれども、よく勉強されておるし、いまや渡邊喜久造なきわが国においては、まあ山中貞則とあなたくらいが税金の問題のくろうと衆だと思う。本気になってこの問題をひとつ研究願えませんか。あなたの所見はいかがですか。
  193. 塩崎潤

    塩崎政府委員 先ほどの小規模事業者に対します特別控除、これは、私はまさしく小規模事業者の支払い能力を考えた一つの御意見だと思います。しかし、これにつきましてはいろいろ問題点がございます。第一は、大臣のおっしゃったような一般給与所得者のほうがガラス張りであってというような議論が第一に出てまいります。第二には、何といっても、資産を持ち、技術を持った方の所得は、確かに資本と労働の共同ではございまするけれども、雇用関係だけに結ばれた所得者とは違った面がありはしないか、と申しますのは、やはり給与所得者のほうが、私どもの考えでは、一代限りの所得であり、おやじが死ねばその子供はその事業を継げないというような情けない立場にある。そんなことを考えますと、相対的に見まして、給与所得者の割り高になるような新しい特別控除を設けること自体どうか、そんなことを離れて、給与所得者ももう少し上げ、小規模事業者にも特別控除を設け、ただ資産所得からなるものについてのみ普通の課税をしたらどうか、こういうことがその次に考えられるわけでございます。そうなりますと、そのこと自体、資産所得だけが重課されたかっこうになりますが、現在租税特別措置法におきまして種々の施策が講ぜられております際に、はたしてこういったことが実現性があるかどうか、このあたりも考えてみなければいかぬと思います。第三には、事業税の問題を春日先生御指摘になりました。確かに、個人事業者ならば事業税が二十四万円をこしますと課税になる、そこにつとめられる他人労働者というものは事業税は課税にならない。確かにこういった点が問題でございます。一方、法人企業になりますと、給与部分については事業税はかからない。法人利益の計算上費用になる、こんなようなことがありまして、事業税につきましては、確かにそういった面では問題でございます。そのあたりを勘案いたしまして、昭和二十九年の先ほど指摘の通達は一人親方——親方といっても、事業所得者ではありながら、同時に毎日毎日植木屋さんとなりましてある家庭に働きに行く、その際には若干その家庭に雇用されたものだというような見方もできるではないか、営業者と違いまして、生産手段の少ない、資本的な手段の少ない方々には、こういった所得のうちには給与所得的なものがあるであろうというふうな一つの推定をしまして、御存じのように百五十万円以下の収入金額のうちにはおっしゃるように何%かの給与所得はあるであろう、そんなような関係を見まして、事業税の課税標準から見ても、こういった方々に対して資産所得課税的な要素を有する事業税は課税しないほうがいいんだろう、こんなふうなシステムをとったのでございます。その二十四万円自体がいいかどうか、今後の検討問題でございますが、いまのところ資本と労働との共同による所得給与所得者のように単純なる労働によるところの所得、それからまた資産からなる所得、これらの間のバランスから見ると、おっしゃるとおり私も小規模事業者について担税力のある程度の開きはあることは認めるのでございますが、現在の状況では慎重に検討しないとなかなか容易に進み得ない、かように考えております。
  194. 春日一幸

    ○春日委員 私は、この問題は非常に重要であり、根が深い、そしてその根も一部すでに大地に根をおろしておるのですから、よく考え直していただきたいと思う。いま給与所得者所得はガラス張りだと言われておりますけれども、しかし、見ようによっては、その所得というものは全く安定しておるんですね。たとえば、あなたの所得なんか、相手が日の丸というものですね、だから何も不安はない。ところが、零細事業者の所得というものは絶えず危険にさらされておる、風前のともしびみたいなものですよ。朝は朝星夜は夜星というけれども、全くそのとおりなんです。日曜だって働かなければならぬ。六時がきたからすっとやめるというわけにはいかない。祭日だって出勤しなければならぬ。そういうような中で働かなければ、零細事業者のなりわいは成り立たないものであるという、この実態をあなたはよく見きわめなければいかぬ。相手が日の丸であるとか、日暮れ腹減り式ではなかなかっとまりやしない。勤務中にマージャンやるような官僚も絶無ではないようで、大蔵省にはあったように先国会で聞いたけれども、そんな勤労事業者はない。あれば、自業自得で、たちまち商売は失敗してしまうんですね。だから、零細事業者がその所得を得るためには容易ならざる努力が払われておる。その努力のためには経費が当然伴うてくるであろう、そのような経費を見てやらなければ、いつまでたってもこの零細事業者たちは資本の蓄積もできないし、その企業の安定もはかり得ないのである。忘れもしませんけれども昭和三十四年にあの中小企業団体法ができました。あの当時私の籍は社会党でありましたが、わが党はその当時中小企業団体の組織に関する法律という案をつくって、その中に零細事業者のためには特別勤労控除の制度を設けなければならぬというのが打ち出してあった。そして、忘れもせぬけれども、五月の連休のときに自民党と社会党の共同作業であれを修正したときに、そのとき両党間の申し合わせ——これははっきりしておりますから思い起こしていただきたいと思うのだが、小笠公韶君、それからいま労働大臣をやっておる小平君、それから神戸のゴム屋さんの首藤新八君、それからいまなくなられた私どもの水谷長三郎君と私と、それから北海道のあれと六人でやったときに、この条文は第二十二条にひとつたな上げしよう、二十三条にたな上げするということは、後日その実現をはかろう、団体法第二十三条には小規模事業者のために、政府は税法上、金融上特別の措置を講じなければならないという、こういう宣言規定をしたのだけれども、あなたのほうはこれを訓示規定と読み流して、たびたびわれわれが公約に基づいて追及すると、やれ基礎控除を上げたとか、国民金融公庫の資金ワクをふやしたとか言っておるけれども、そういう筋合いではございませんでした。あの昭和三十四年にそのことを言ったのは、昭和二十九年に直税部長通達を出さしめたことを生かしてこういう行政措置がとられておるのだから、これを法的措置にオーソライズしろと言ったんだけれども、いまごろ団体法が反対の中で成立せしめようとしているときに、いろいろと議論の未そしゃくな問題があるから、これはひとつ特に一条設けようということで二十三条を創設して残されてきておる。のど元過ぎれば熱さ忘れるで、そのまま忘れてしまって、この問題がそのまま柳に風と吹き流されてきておる。私は、この問題は、あなたもほんとうに情熱をひっさげて主税局長になられた、あと二年くらいは寿命があると思う。その間にこれは真剣にひとつ取り組んで、そうして全日本のそのような勤労事業者のために、あなたは、彼らが担税力の乏しさ、所得の少なさ、日々の事業の困難さこういうものを考えて、今日大工、とび、左官などに与えられておりますフェーバー、これが一歩前進して、的確なる法的根拠がその政策に与えられるということは当然のことだと思う。だから、ガラス張りの観念に見合うところの中小企業の事業経営の困難性、その所得を発生せしめるための辛酸ですね、これをよく理解されて、あなた方給与者がうちに帰ってしまうときに、うどん屋さんはかまを洗っておる、まだみんなが朝、春眠暁を覚えずと眠っておるときに、とうふ屋さんは笛を吹いて町々を歩いておるのである。そのようにしてあんな零細所得を得たのだから、それに対する何らかの見返りをやって税負担軽減をはかり、よってもって、彼らの自己資本の蓄積をしていく、担税力を軽減していく、これはひとつ良心的に——あなたが非常な情熱を持ってその職にあられるこのことに私は大きに期待する。そうして、その実現を大臣、政務次官に十分働きかけられ、また与党のほうも山中、坊両責任者がもう耳にたこがでさるくらいこの話は聞いてくれたと思うから、この際、ひとつ実現のために御努力を願いたいということを強く要望いたします。  それから、せっかくの機会ですからもう一つあなたにお願いをしたいと思うんだが、中小企業の従業員のための福祉厚生施設に税法上単年償却の特別措置を講ずる意思はないか。いま中小企業問題はさまざまな税制の問題、金融の問題があるが、より大きな問題として労働問題が論ぜられておる。人手不足である。なぜ来ないか。拘束外時間に従業員に対する施設が何もないということですね。だから、鉄工場の小僧や商店の店員等は二階の片すみに寄って古びた週刊誌でも寝ころんで読んでいる。何も楽しみがない、あじけない日々を過ごしておる。だから、彼らはなかなか中小企業に行きたがらない。大企業へ行ってしまって中小企業の人手不足となる。これが中小企業問題の大きな問題になってきておる。だから、企業主が彼らに拘束外時間をエンジョイせしめることのためには、たとえば図書館をつくるのもよかろう、ピンポン場をつくるのもよかろう、あるいは碁、将棋、そういういろいろの福祉施設をつくったらどうか。しかし、小規模資本の中小企業者にはなかなかそんなことは自己資本ではできることではない。だから、この場合、協同組合なり、さらに協同組合連合会等で中小企業従業員の福祉厚生センターというようなものをつくる。そうすると、そこへの出資金ですね、そういうようなものを損金算入として認めていくとかあるいは単年償却を認めていくとかして、税金によって中小企業の従業員の福祉厚生施設が完備され、よってもって、関係従業員、店員、工員が大企業と機会均等の立場を確保することができる。これは私は税法による政策として、産業政策としても必要不可欠の問題ではないかと思う。いまや、中小企業に対する各種の特別措置が講じられてきている。しかし、この問題はなお目残しになっているが、このような政策は必要とは思わないか、いかがでありますか。
  195. 塩崎潤

    塩崎政府委員 春日委員のおっしゃるように、中小企業の福利厚生施設あるいは宿舎等の施設、このあたり大企業に比べましておくれた部面でございます。私どもも特に中小企業の社宅のおくれを考えておるのでございますが、社宅等につきましては、現在貸家住宅の特別償却等による線で奨励しておるところでございます。さらにまた、一般的に中小企業のための特別償却は広範に認められるところでございます。機械、建物につきまして、大企業ならば、合理化機械ではないけれども中小企業にとっては合理化に役立つ機械であるといった程度のものについて、私どもはおっしゃるような御趣旨をくみまして相当思い切ってしているつもりであります。おっしゃる点は、福利厚生施設を中小企業者が寄り集まって広くやったらどうか、その際に税制上の援助を与えることはできないか、こういう御質問でございます。春日委員御存じのように、今回御提案申し上げております中小企業構造改善準備金という制度を設けております。これは、中小企業者が中小企業の構造改善のために協同組合等に出資したものは損金に算入する、また、協同組合のほうでこれを一定限度までためまして、たとえば合理化機械を取得する等の措置を講ずるならば、そこで特別償却を認める、こんなようなことを考えております。したがいまして、御趣旨の線が中小企業構造改善準備金の中で実現できるかどうか、これは中小企業庁の要望に基づきましてでき上がった制度でもございますので、ひとつ研究いたしまして、できる限り御趣旨の線に沿うような方向で努力したい、かように考えております。
  196. 春日一幸

    ○春日委員 ただいまの局長の御答弁によりますると、構造改善事業の中の一項目としてこれを取り上げてみてはどうかという御意見でございます。私はそれでも一歩前進であろうと思いまするし、あるいはそのような方式によっても全面的にその趣旨が達せられるかと思うのでありまするが、願わくば、このような中小企業従業員の福祉厚生問題というものは、いまや大いなる政治問題として、一個のやはり個性ある政治問題になっておるのです。だから、さまざまな構造改善の中のたとえば、というようなことではなくして、これは労働政策としても中小企業政策としても当然のことなんですね。不良化を防ぐ問題にいたしましても、これは二重、三重の効果があがると思われるので、したがって、店員、工員諸君が拘束外の時間を健全なる娯楽施設を持ち、休業時間によってその休養をとるということを可能ならしめることのためには、私は、単独政策を講じて、そうして純粋の直撃的効果の確保をはかるべきではないかと思う。この点については、十分御検討の上、御実現願いたいと思う。  それからもう一つだけ伺っておきまするが、いま自由民主党は福祉国家の建設を、われわれは中産階級国家の建設を、社会党は社会主義社会の建設を政治目標にしていろいろと政治活動を行なっておるわけでありまするが、やはり福祉国家といい、中産階級国家といい、それらのものは自分の家に住んで、そして若干の貯金を持って、まあ文化レベルの生活が営み得るということになると思う。だから、自分の家を持つということが、資本主義社会においてはやはり努力目標でなければならぬ。いわんや、今日の段階においては住宅難で、これは全く重大な問題になっておる。西ドイツなんかでは、政策の悪平等を避けて、重点施策を定めたならば、そこへさまざまな政策を総合集中させていく、これは御研究になっておるところであろうと思うが、たとえば、船腹を拡充したいと思えば、造船株を買った者は税法上の特例減免措置を講ずる、自己資金によって自分の住宅を建てた者については、一定の度合いでこれを税法上損金算入を認めていくとか、いろいろの制度を講ずることによって今日西ドイツにおいては住宅問題も解決した、あるいはそんな手段を講ずることによって海運政策も解決をした。戦後、まるで鳥が毛をむしられてまる裸になってしまったような西ドイツが、わが国の人口の半分で、国土も何分の一かでわが国の経済をはるかに凌駕するあのような繁栄を遂げておる。ここには政策のパテントがあると思うのです。そのパテントは、政策的悪平等を避けて、重点施策を講じておるからだと思う。いまや、わが国において住宅政策というものが緊急焦眉の政策であるとするならば、自己資金によって住宅を建設しようとする者に対して、所得の中から一定の限度を定めてこれを損金に算入せしめて、よってもって、住宅建設を刺激していくということなんかも、私は有益、有効な政策手段ではないかと思う。これを早期に実現をはかるの御意思はないか、いかがでございますか。
  197. 塩崎潤

    塩崎政府委員 けさほども租税特別措置法の二十九条に関連いたしまして山田委員から御質問がございました。私どもは、いま春日委員のおっしゃいました持ち家奨励を大いに促進することは税制上もとるべきだと思い、あのような提案をしたわけでございます。もう一歩進んで、住宅貯蓄控除あるいは住宅建設控除というようなものを考えたらどうかという御提案でございます。この点は、各方面からこのような要望が強く、現在におきましても私どもに対する大きな宿題となっております。しかし、残念なるかな、住宅貯蓄というものがまだまだ現在の金融、貯蓄の段階では進んでおりません。しかしながら、住宅政策は大きな課題でございますし、各方面の要望が強いようでございます。私どもは、住宅貯蓄の普及を含めて今後検討してまいりたい、また検討するように期待されておりますので努力してまいりたい、かように考えております。
  198. 春日一幸

    ○春日委員 住宅預金制度については、これを制度として設けるということについて局長は相当意欲的のようでございます。いまいろいろ政策が同時並行的に実現が迫られておりますけれども、私は、何といっても、現在の段階では、それぞれ自分家を持たせるというような方向へ政策の指導がなされていくことがきわめて必要なことだろうと考えまするし、特に、西ドイツの例なんかでは、その手段によって成功をかちえておるのでありますから、ひとつ、藤井政務次官も十分御努力をいただいて、その御実現をはかっていただきたい。  あと十分くらいいいそうでありますから、もう一つ物品税についてお伺いしたいと思うのだが、あの免税点が課税品に対して設定されておりまする趣旨、これは一体何でありますか、お伺いをしたい。
  199. 塩崎潤

    塩崎政府委員 春日委員も十分御存じの点でございますので、私からるる申し上げる必要もないかと思いますが、いろいろ理由があります。しかし、まず第一には、やはり消費税の性格からいたしまして、一定金額以下のような大衆的なものは課税しないほうが、消費税の理論から適当ではないか、安かろう悪かろうというような御批判もございますけれども、やはり大衆が購入するものは比較的値段の安いものである、そういったものは消費税をはずしたほうがよかろうというのが、免税点のとられる一番大きな理由だろうと私は思います。  第二には、これも春日委員もう御存じのとおり、でき上がる商品は相当高級なものもあり、さらにまたぜいたく視されるものがございます。しかしながら、その製造する者あるいはそれを販売する者は、非常に零細な、春日委員いつも指摘される小規模事業者のような方がおられるわけでございまして、このような方にとりましては、物品税は消費者に転嫁するとはいえ、苦痛が伴うものでございます。また、税務もそういった面でトラブルが起こることを好まない、このような見地から、第二の理由といたしまして、税務上のトラブルを少なくするという意味といったらいいかわかりませんが、そんなような観点から一定金額の免税点ができ上がっておる、こういうことが言えるかと思います。その他いろいろな理由がございましょうが、大きくいってこの二つであろうと私は考えております。
  200. 春日一幸

    ○春日委員 ただいまの局長の御答弁、全く私も同感でございます。そのような趣意を踏んまえて、さて、本年度この物品税に対する施策が講ぜられるにあたりまして、私はいささか矛盾があるのではないかと思うのでございます。正確には私どもは存じ上げませんけれども、新聞報道によりますと、今回物品税の軽減措置がはかられた。すなわちそれは、一つには税率軽減、それから免税点の引き上げ措置、この二つがとられたと思うのでございます。しかるところ、今回税率軽減措置のとられたものは免税点の引き上げ措置はとらない、こういうことのようでございます。だといたしますと、いままで免税点が設定されておりますその意義は、いまお話の中にあったような、大衆品には課税をしないで、大衆課税のそしりを回避するとか、あるいは産業政策上、中小企業者に対しまするその負担、苦痛、こういうものを緩和することのためにとられたとする。だとすれば、税率を下げることと、この大衆税の問題と、それから産業政策上の問題とは全然土俵が違うと思うのですよ。特にお考えを願いたいと思いますことは、片方をやったものは片方をやらないということは、私は変だと思う。ということは、たとえば大衆税の問題でありますが、御承知のとおり、免税点は本委員会においてもうすでに五年くらいノータッチじゃございませんか。何年ですか。
  201. 塩崎潤

    塩崎政府委員 三十七年ですから、四年目です。
  202. 春日一幸

    ○春日委員 この四年間ノータッチで推移してまいったのでありますが、四年前といえども、これは最小限に免税点の引き上げを押えてきた。この経過は、言うならば、不満足なものであった。この四年間に日本経済はうんと成長しております。経済国民所得から何からすべて成長し、よって生活水準も高まってきておると思う。だから、四年前に、たとえば千円なら千円で設定されたところの大衆品というものは、今日ではこれでは大衆が満足しない状態に移行していないか。のみならず、生産コストも高まっております。その当時千円でできたものが、四年後の今日において、高度成長政策所得倍増政策等で全く変わってきております。物価も高くなっておるから千円ではできない。悪くなっておる。一方においては、もう少し高級品を欲する。こういう情勢の中において、税率を下げたから免税点は引き上げないということでは、大衆課税というものを特に避けたということの趣意がかなわない形になってこないか。わけて、産業政策上、中小企業、零細企業に対する苦痛の問題ですけれども、この問題も同然でございますが、特に御理解を願いたいことは、三千円なら三千円、千円なら千円という免税点があれば、中小企業者はそれ以上のものをつくらない、免税点以下の製品にとどめておる、こういうことです。そういうことは、品物をよくしようと思えば、結局は値が張ってくるから、悪いままにすぎてきておるということじゃございませんか。特に、物品税の課税品目の中には貿易品が非常に多いと思う。経済レベルが国際的に高まっておるときに貿易需要もやはり高級品が求められてきた場合、日本においては、一方国内税、物品税で免税点が押えられているものだから、それ以上のものをつくらない、つくられないから製作技術がない、製作技術がないから、外国からそういうデマンドがあってもこれを供給することができない。あたら輸出のチャンスを逸しておるという形にならないか。だから私は、税収入の面から判断をいたしましても、いま千円であるものを千五百円に上げるとか、高級品には課税するという観念なんだから、したがって、それが高級品にわたらざる範囲で実際的に大衆課税を回避し、かつ、産業政策上の立場から考慮しても、この際すべからく免税点は相当程度引き上げるべきではないか。四年前と同じ形でほっておくということは適当ではないのではないか。わけて、片一方において大衆課税のそしりを回避しよう、そうして産業政策上引き上げる必要ありということで、税率軽減措置をとらざるものは免税点を引き上げられておるのだから、現実に今度引き上げようとされておるのであるから、そういうような政策目的というものは、他のものにも、すなわち税率軽減措置をとられたものでも、これは免税点を適当に引き上げてしかるべきではないかと私は思う。それで税収が大きく減るならば、これはまた、国の財源という問題から、財政上の理由から十分検討せなければならぬと思うが、中小企業たちは、三千円が免税点なら三千五百円のものをつくらないのである。千円が免税点なら千二百円のものはつくらないのである。税金はちっとも入ってこないのである。だから、これが五千円も七千円も飛躍的に高められては、これは高級品に対しても非課税になるから、それはいけないでしょうが、これが二割とか三割とかという度合いで、すなわち四年間の経済発展の実情に照らし、あるいは給与、賃金、そういうようなものが上昇したそのテンポに合わせて免税点を引き上げるということは、一方において税率軽減措置がとられたことと意義がまた違うのである。政策効果が別なのである。だから、この際私はあらためてこの問題については再検討願いたいと思うが、いかがでございますか。
  203. 塩崎潤

    塩崎政府委員 春日委員のおっしゃるように、確かに税率引き下げ効果と免税点引き上げの効果とは効果が違う場合があることはもう御指摘のとおりでございます。しかし、私どもといたしまして今回の物品税を御提案申すに至るまでには、そういった点も十分考えまして、やはり何といっても物品税の課税対象となっておる品目ごとに判断して、それができる限り広い範囲に利益か及ぶ方法を考えたのでございます。もちろん、財源が多くなればなるほどその範囲も広くなるわけでございますが、何ぶん三百四十七億円という限られた財源の中でできる限り広い範囲に利益を及ぼそう、こういう関係でございますので、私どもといたしましては、先ほど指摘のように、税率引き下げのあった商品につきましては、免税点はひとつ遠慮していただく、しかしながら、免税点は中小企業者、零細企業者にとっての影響が大きいものでございます。したがって、零細企業者が特に希望する、零細企業者にとってフェーバーの大きいようなものにつきましては免税点でいこう、そのかわり税率引き下げない、こういうことを採用したところでございます。もちろん、こういった点は今後も財源の許す限り検討しなければならぬと思うのでございますが、現在のところは、税率引き下げと免税点の引き上げとは、これはひとつ別途にお考え願いたい、もちろんねらいは違いますし、財源さえ許せばそういうことも可能でございますが、今回はそういった意味でとらなかったところでございます。
  204. 春日一幸

    ○春日委員 財源さえ許せばということを申されておりますけれども、私がいま指摘いたしておりまするように、免税点をその何倍かに引き上げれば、財源に、税収に影響を与えますけれども、しかし、現実に零細業者たちは免税点以下のものしかつくっていないのであるから、したがって、そのものに関する限りは物品税収入はあがっていないのである。だから、これを私は倍にしようとか三倍にしようとか言うのじゃない。二割とか二割五分とか三割とか、この四カ年間の推移にかんがみて、経済の実勢に即した免税点の引き上げをやってやれば、これは中小企業者が喜ぶ、技術の水準は高まる、いいものが外国へ出ていくから輸出は増大されてくるですね。だから、そういう大きな効果かあるものを——他のものについては免税点が引き上げられておって、そういうフェーバーを満喫しているのですね。しかし、そのものは税率が下げられていないからという理由で、たとえば家具なんか免税点が引き上げられておる。非常にけっこうです。それはそれでけっこうなことです。けれども税率引き下げられたからといって、いままで全然税金を納めていない中小企業者に何らのフェーバーがいかない。(「楽器ばかり」と呼ぶ者あり)いやそれは楽器ばかりでなくて、いろいろある。だから、私の理論構成は、私はまだ十分これを整理して申し上げていないが、私が一晩勉強して整理すれば、もっと秋霜烈日の理論構成ができると思う。きょうしか時間がないということだから、私は思いついて是正を求めたいということで、常識論でこれを申し上げておるのでありますが、何にも弊害がないのだし、財源には全然関係のないことなんだから、しかも、産業政策上稗益するところ甚大なんだから、しかも、国として輸出振興にもぴったり合致する政策なんだから、これはそういうふうに自民党の財政部会と大蔵省当局との間でお話し合いがついておるようだけれども、こういう問題については広く国民の声を聞いてもらいたい。というのは、野党の声を聞いてもらいたい。渡邊喜久造君が主税局長時代には、こういうような問題については、あまねく国民意見を聞くその象徴的なものとして、大蔵委員会理事会にはかられて、これはいかにと論ぜられた。各党の意見が持ち寄られて取捨選択していくうちに、三人寄れば文殊の知恵、まことにもって公正な措置がとられてきた。ところが今回は、社会党もつんぼさじき、私のごとき大蔵行政の大ベテランについてもほとんどシャットアウトされて、ほんのちょっと連絡があっただけだ、実際の話。だから、これはせっかく坊君並びに自民党の幹部諸君にぼくはお願いをしたいのだけれども、実際それは一ぺん考え直してもらいたいと思う。税収に関係のないこと、しかも産業政策として効果的なこと、これは踏み切るにやぶさかであってはならぬと思う。この議論は私正しいと思う。なお実施までには相当の期間もありますから、十分ひとつ再検討あらんことを強く要望いたします。ほんとうにこのことは、藤井政務次官もひとつ中に立ってもらって、願わくば、野党との間の善良なる慣例に基づいて、ひとつ是正されたい。私はこういうような減税の予算がすでに通っておるときに、税収に影響のあることをいまやぼったく言うわけではございません。税収に影響を与えず、産業政策、特に中小企業政策、いま破産倒産相次いでおるときに、国は膨大な三百億もする予算を講じて中小企業振興、安定策を講じておるときなんですから、予算に関係なくして政策効果があるなら、何をかためろうか。いまこのような免税点の設定があるから中小企業の経営を非常に苦しめておる。いいものをつくろうと思ってもつくれない。これははっきりいって、中小企業妨害政策なんですね。改めるにはばかってはならぬと思う。坊君に猛反省を求めまして、私の質問を終わります。
  205. 三池信

    ○三池委員長 次会は、明二十四日午前十時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後六時十九分散会