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1965-12-24 第51回国会 衆議院 大蔵委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年十二月二十四日(金曜日)     午前十時六分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 天野 公義君 理事 金子 一平君    理事 原田  憲君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    奥野 誠亮君       大泉 寛三君    押谷 富三君       木村 剛輔君    木村武千代君       小山 省二君    斎藤 邦吉君       砂田 重民君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    福田 繁芳君       藤枝 泉介君    村山 達雄君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    岡  良一君       佐藤觀次郎君    只松 祐治君       日野 吉夫君    平岡忠次郎君       平林  剛君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (証券局長)  松井 直行君  委員外出席者         参  考  人         (財政制度審議         会会長)    小林  中君         参  考  人         (金融制度調査         会会長代理)  舟山 正吉君         参  考  人         (証券取引審議         会委員)    河野 通一君         参  考  人         (成蹊大学教         授)      肥後 和夫君         専  門  員 抜井 光三君     ————————————— 十二月二十四日  委員奥野誠亮辞任につき、その補欠として篠  田弘作君が議長指名委員に選任された。 同日  委員篠田弘作辞任につき、その補欠として奥  野誠亮君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度における財政処理特別措置に関  する法律案内閣提出第七号)      ————◇—————
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案を議題といたします。  本日は、お手元に配付いたしました名簿のとおり、参考人方々が御出席になっております。  参考人各位には、御多用中のところ御出席いただき、ありがとうございます。本委員会におきましては、本年度における公債発行の問題につきまして、連日にわたり審議を重ねているのでありますが、本日、参考人各位より御意見をお伺いすることは、本委員会審議に多大の参考になるものと存じます。参考人各位におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願いいたします。  まず、参考人方々より御意見をお述べいただき、そのあと質疑を行なうことといたします。  それでは、まず小林参考人からお願いいたします。
  3. 小林中

    小林参考人 ただいま委員長から御指名がございましたので、私から財政制度審議会経過の概要を御報告申し上げてみたいと思います。  財政制度審議会は、皆さん承知のとおり、本年の七月から十月にわたりまして四ヵ月の間今後の財政運営基本方針について審議を重ねてまいったのであります。その間数回にわたりまして総会を開きまして、そのほか二つの小委員会を設けましてその検討に当たってまいったのでありまして、十一月の一日にその検討の結果を取りまとめまして、中間報告といたしまして大蔵大臣報告したというふうなことが経過概略であります。  その中間報告概略を申し上げますると、この報告は二部に分かれておりまして、第一部は「財政運営基本的方向について」でありまするが、まずわが国の今後の経済動向について分析をいたしました。また、次に財政規模運営についてあるべき姿を述べたのであります。その次に減税の基本的考え方に触れましたのでありますが、最後公債政策についての基本的考え方を述べた次第であります。  また、第二部におきましては「歳出合理化について」でありまして、歳出重点的、合理的考え方をこれまた述べておるのであります。したがいまして、特に公債発行に関する中間報告がお手元にたぶん届いておることと思いますが、「財政制度審議会中間報告」、この中の二十ページ以下に論じておるのであります。  公債政策といたしまして、まず最初に公債発行意義を申し述べております。その次に建設公債原則を述べております。そうしてその次に市中消化原則をこれまた述べております。その次は、最後に、公債発行の歯どめについてという問題を論議をしておるのでありまして、以上が公債発行に対するところの財政制度審議会論議を重ねた結論であるのであります。したがいまして、これをお読み願えばまことにけっこうだと思いますが、いかがでございましょう。この席においてこれを朗読いたすことにいたしましょうか。それとも、以上をもちまして私のごあいさつにかえきしていただいて、引き続いて何か皆さんから御質問があれば御質問を承り、私のお答えができる範囲のものはお答えをいたしたい、かように考えますが、いかがでございましょうか。
  4. 吉田重延

    吉田委員長 参考人に申し上げますが、各委員には配付してございますから、すでにお読みいただいておることと存じております。
  5. 小林中

    小林参考人 それで、この一番最後公債発行の歯どめについてという問題でありますが、この中間報告をいたしましたあとに、財政制度審議会法制部会におきまして減債基金制度改正強化という問題を現在取り上げておるのであります。これは公債発行の歯どめだけではなくていろいろの問題が重なると思いますが、一応これもやはり公債発行の歯どめの一つのこまであるというふうにお考えを願いたいと思います。
  6. 吉田重延

    吉田委員長 次に、舟山参考人にお願いいたします。
  7. 舟山正吉

    舟山参考人 私は金融制度調査会会長代理をつとめましたので、本日は、調査会から出ております答申につきまして、その審議手続等は省略いたしまして、答申骨子だけを簡単に御説明申し上げたいと思います。  このたびの金融制度調査会に与えられましたテーマは、「国債発行に伴う金融制度のあり方」ということでございました。また、審議の日時も限られておりましたので、国債発行意義とかあるいは国債性格等論議は他の審議会に譲りまして、金融制度調査会におきましては、国債発行前提として、その金融への影響とかあるいは金融政策との関連等審議する立場をとったのでございます。国債発行につきましてはいろいろの問題点がございますが、それについて審議をいたしまして、その結果の意見答申に盛り込まれておる次第でございます。答申はお手元にあると思いますので、ここでは骨子だけを申し上げます。  まず第一には、このたび財政政策国債発行を取り入れることになりましたことにつきましては、その財政政策金融政策との調和をはかることが大事であるという点を強調しておるのであります。申すまでもないことでありますが、これまで財政は、金融市場に対しては中立という立場をとってきたのであります。経済安定的成長をはかるための総需要あるいは有効需要調整は、これまでは主として金融政策に依存してきたわけであります。しかし、このたびいわゆる均衡財政から転換いたしまして、財政の面からも、国債政策によりまして景気変動に対する補整的な機能を働かせていこうということになったのでございます。すなわち、今後公共部門民間部門との間のバランスのとれた成長をはかることを根本のねらいといたしまして、その間財政支出の面からも総需要調節を通じまして景気調節にも寄与していこうという行き方をとることになったわけであります。こうなりますと、財政政策金融政策との関係が従来以上に密接になりまして、経済安定成長を確保いたしますためには、両者が相互に補完し合うように調和のとれた弾力的な運営というものが必要になってまいります。  この見地から、まず問題になるのは国債発行規模の点であります。国債発行が過大になりますと民間資金需要を圧迫いたしてまいります。しかし、国債というものは一度発行を認めますと、財源調達の手段として安易に利用されるおそれが多分にあるのでありまして、国債発行を健全な公債政策範囲にとどめることにつきましては、いわゆる各方面からの歯どめが必要となるのであります。  そこで第一には、まず国債性格からくる制約を設けることが必要でありまして、現に国債発行財政法第四条に規定する建設公債に限るという原則が立てられておるのでありまして、当調査会におきましてもこれを支持しておるのでございます。  次に、国債発行は、日本銀行引き受けという方法をとらずに、市中公募原則とすることとして、国債発行額市場消化能力から見て無理のない範囲にとどめることを必要と認めておるのであります。  なお、次に財政政策金融政策との調和につきましては、いま申しましたように、一方国債発行適正限度に押えるとともに、また一面においては民間企業に対する資金供給の行き過ぎのないように民間における資金供給を適正化するとともに、また必要であるということを主張しておるのでございます。要するに、公共部門民間部門の間にバランスのとれた成長を確保するために、それぞれに対しまして適正な資金が供給されることでなければならないというわけであります。  次に、国債発行がこのような考え方に基づいて決定されるべきであるといたしますと、国債発行についての基本的な諸事項につきましては、財政金融両面から意見調整を事前に慎重に行なう必要があります。そしてそのためには財政金融当局消化先、その他関係者が協議する適当の場を考える必要があろうとしておるのであります。  また、国債発行に伴い日本銀行による金融調節機能はその重要性を高めてくるということも大事な点であります。日本銀行は、資金需給季節的変動調節することのほか、適正な量の成長通貨を供給するという役目を持っております。この機能をそのときそのときの経済金融情勢に応じて弾力的かつ機動的に行なうことが特に重要となってまいります。  このようにして国債発行するといたしまして、その金利期限等発行条件につきましては、本来的には自由な発行市場においてプライス・メカニズムによって決定さるべきであります。しかし、さしあたっては、現段階における市場環境金融構造前提として考えねばなりませんが、なお将来の見通しをも織り込むことも必要でありまして、たとえば金利については現在の金利体系全体におけるバランス考えますが、なお将来における金利動向をも考慮する必要があります。そして、これらの発行条件につきましては、発行者側消化先側、それぞれ立場によって要請が違うわけでありますが、それを話し合いによって調整することが適当である。換言すれば、一方的な押しつけは好ましくないということを主張しておるのであります。  なお、発行方式につきましては、シンジケート団引き受け方式、か最も有効かつ望ましい、かつ、今後相当多額国債発行が予想せられますので、その円滑な消化のためにシ団の拡大が適当であるといたしております。  次に、国債発行及びその後の国債管理のためには、国債流通市場育成をはかることがぜひとも必要でありますが、現在では環境が熟しておりません。したがって、今後これらのいろいろの点を改善いたしまして、公社債市場育成につとめるべきでありますが、さしあたっての経過的措置といたしましては、まず消化された国債流動化対策をとることが必要であります。  最後に、昭和四十年度分の国債発行につきましては、財源不足補てんという措置のほかに、不況対策を行なう必要が生じたこともからみ合いまして、いろいろの角度から議論が起こり得るのでありますが、当調査会といたしましては、もっぱら金融的立場からの考慮によりまして、まず財政支出の節約とか、政府部内蓄積資金の取りくずしとか、政府部内における財源手当を講ずるほか、資金運用部資金の活用もはかり、そしてなお足らざる分を最小限度にしぼりまして、市中公募による国債発行をすることはやむを得ないという見解をとった次第でございます。  以上、答申の主要点を御紹介申し上げました次第でございますが、あとはまた御質問によって意見を申し上げたいと思います。     —————————————
  8. 吉田重延

    吉田委員長 続いて質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。有馬輝武君。
  9. 有馬輝武

    有馬委員 小林さんに一、二の点についてお伺いをいたしたいと存じます。  まず第一に、現在国債利率について、宇佐美さんなんかは六・五%程度がいいというようなことを主張されるし、あるいは全銀協あたりでもそこら辺の利率が適当ではないかということが言われております。これに対しまして、一方では福田大蔵大臣は、低金利政策というものを考慮に入れながらやはり検討していかなければ問題をあとに残すというようなことも言っておるのでありますが、私がお伺いしたいのは、この国債利率というものか、一つの市中金利のかせになるのではないか、このような感じがいたすのであります、か、ここら辺について国債利率に対する小林さんの見解をますお聞かせをいただきたいと思います。
  10. 小林中

    小林参考人 ただいまの御質問は、いろいろむずかしき問題が伏在しているではないかと思うのであります。仰せのごとく、政府並びに日銀はただいま六分五厘程度国債発行したいというふうな考えだと私も考えておりますが、実は今回終戦後初めて国債発行をするのでありまして、従来のごとく、国の権力といいますか、力によって国債並びに政府保証債を持たせるというふうなやり方は決して好ましいことではないのでありまして、むしろ金融機関なり一般国民なりが好んで国債を持つような方向にいくことが最も私は好ましいことだと思うのであります。そういう意味からいきますと、条件がよろしいほうがいいのだという結論に達するわけであります。ただし、現在の経済不況状態からいきますと、環業界の多大なる負債がこの際長期金利引き下げを要望しておる際でありまするので、公債利率はなるべく低目に抑えていただくほうが、将来長期金利引き下げには非常に便利ではないかという考え方もあるのであります。その辺が非常にむずかしい、どちらを主として考えるべきかということであろうと思いますが、ただいまは、要するに金融機関なりあるいは国民大多数が好んで公債を持つような状態が好ましいのだというふうなことが重点になりまして、またこの公債発行によって、この公債を土台といたしまして、公社債市場育成をしていくというふうな考え方からいきましたら、そのほうを一応重点にこの際は考えたのではないか、こう考えるのであります。
  11. 有馬輝武

    有馬委員 第二の点は、いわゆる歯どめ論についてであります。財政制度審議会でも、一応二十四ページから二十五ページに歯どめについての若干の考え方が述べられておりまして、建設公債原則市中消化原則とをあげておられるのでありますけれども、これは公式的な論議としてはわかるのでありますが、実際に一たび公債発行されますと、自後の経緯がどういう道をたどっていくかということはきわめて明らかであります。こういった抽象的な歯どめ論ではとても役立たないことは小林さんだって御存じだろうと思う。それと同時に、私がここで指摘いたしたいことは、たとえば池田内閣高度成長政策の中で、意識的にむしろこれに便乗した、小林さんなんかを筆頭とする産業界方々、その足取りを見ておりますと、その産業界の真意というものは、ここであげておられますような、国民財政に対する考え方が合理的で健全なものであるということ、こういことをとても言えた義理じゃない、そういうう経緯をたどってきておるのであります。  私がここでお伺いしたいと存じますことは、現在の不況上向きになる、その時間的な問題についてでありますが、これはなかなか容易なものではないと思います。しかし、ある程度上向きになったといたしますと、勢い市中銀行その他は資金需要に悩んでくると日銀にかけ込む、こういう結果になることは、きわめて明瞭でありますが、そういった場合に、いまあげておられるような歯どめでもってこれをチェックし得るのかどうか、この点について小林さんの御見解をお聞かせをいただきたいと思うのであります。
  12. 小林中

    小林参考人 ただいまの御質問について、私の私見を申し上げたいと思います。  池田内閣当時にとりましたところの財政経済政策に対して、いま非常に手痛い御批判があったのでありますが、それは功罪相半ばすると申しましょうか、私どもから見ますと、日本の国の国際的地位向上という上から、あるいは国民生活向上という上から考えますると、むしろ功績のほうが多かったではないかと私は考えるのであります。ただいまの御質問は、公債政策を踏み切ると今後ますます公債というものは膨大になるのではないか、おまえはそれをどう歯どめをしようというのだと、こういう御質問だと思うのであります。御承知のとおり、従来は景気調整金融政策にほとんど依存をしてきて、財政政策というものはそれに補完的の地位を保ったのでありますが、今日以後におきましては財政景気調整の大きな役割りをになっていかなければならない状態になってきたのではないかと思うのであります。したがいまして、仰せのとおり、かりに四十一年度は七、八%の成長率である、四十二年度は一〇%になる、四十三年度は一一、二%に上がるということになりますると、金融は一応繁忙になりましょうし、民間投資意欲は旺盛になることは仰せのとおりだと思いますが、一方に税の収入はどんどんふえてまいると思います。さような形におきまして、公債を従来どおりに発行をする必要が、財政の上では事実なくなってくるのではないか、むしろそういう好況時におきましては、公債発行を中止をいたしまして、過去の公債の償還に充てるべきことが財政運用上必要だ、こう私考えるのでありまして、そういうふうに財政運用をしていただければ、決して公債発行が将来において大きな災いを残すようなことは私はないのではないかと思うのであります。
  13. 有馬輝武

    有馬委員 限られた時間でありますので、不況のとらえ方についても若干のズレがあると思いますが、これは論議の場ではありませんので……。問題は、今度公債発行いたしまして税収が伸びる、それまでには時間的なギャップがあることは、小林さんも御承知のとおりだろうと思います。そこら辺をかね合わせてお聞きしておりますので、いま一度お聞かせ願いたい。
  14. 小林中

    小林参考人 それは、ただいま申しましたとおり、国の財政景気調節作用をするということになりまして、政府の施策が順序よく進展をいたしてまいりますれば、私はさような長年月を要しなくて景気上昇状態を見るのではないかと思うのであります。ただし、必ずそういうことが約束できるかということになりますと、要するに、御承知のとおり経済は水ものでありまして、一年の予測さえも非常に困難なものが経済であります。さようなことを申し上げることはできぬと思いますが、そういう公債をどうするかというふうな問題を考えまする際に、先ほど申しました減債基金制度改正をいたしましてこれを強化していくのだ、そこに一般会計経常費から基金に何がしかの程度資金を毎年積み立てていって公債費返済に充てる、こういう考え方をいま考えておるのでありまして、そういうふうなことで実は健全財政の裏打ちをしてまいりたいと、かように考えているわけであります。
  15. 有馬輝武

    有馬委員 終わります。
  16. 吉田重延

  17. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 小林さんは、御承知のように長い間財界で非常に名をうたわれ、最近までは池田総理財界四天王の一人といわれていた人でありますから、ひとつ率直な意見を伺いたいと思うのです。  大体いままでの財政は、自然増収を、去年は六千億円あったのですが、それを当てにして予算を組んでおった。ところが、自然増収がなくなったから赤字公債を出すというのでは、予算制度とかあるいは政府のやる予算というものはどう考えてみても解せない点があると思うのです。公債ということばは、昔、高橋是清さんの時代公債百億ということでだいぶ問題になったことも小林さん御存じだと思うのです。佐藤首相も去年までは公債発行なんかしないということを言いながら突然赤字公債を出すというような、こういう予算制度予算というものはどう考えても解せないと思うのですが、その点はどうお考えになりますか、率直な御意見を伺いたい。
  18. 小林中

    小林参考人 ただいまの御質問は、御承知のとおりここ十年ぐらいというものは年々自然増収相当の額に達してまいっておるもので、いわゆる公債発行とか借り入れ金とかということを考える必要もない、むしろ自然増収が多かったためにある程度財政運営が安易になったという姿だと私は思うのであります。しかしながら、四十年度になりまして、日本財政が大きな曲がりかどに来て、そうして安定成長時代に入ってまいったのでありまして、従来の財政やり方とは基本的に考え方を変えていかなければいかぬということに相なったのは御承知のとおりだと思います。したがいまして、今後財政は、先ほども申しましたとおり景気調整の主役を承っていかなければならないのであります。御承知のように、今日の経済界萎靡沈滞をいたしまして、民間設備投資意欲というものは非常に冷たくなってまいっておるのでございまして、したがって、これにかかわるに政府の活動と申しましょうか、つまり、仕事をしていく力が大きく伸びて、そして民間の萎縮したものを補っていって初めて経済成長率がたとえば七、八%に達するのではないかと、かように考えるのであります。しかしながら、何と申しましても、私ども日本という国は世界的に考えましても成長率の最も高い要素をまだまだ持っている国だと私は考えております。したがいまして、かような不況がそう長く続くものではないのだ、必ず日本人はこの不況を打開してまた好況時を迎えるときが近く来ると私は確信して疑わないのであります。さように御了承を願いたいと思います。
  19. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 小林先生のは、ちょうど池田首相楽観論のような御意見でございますが、なかなかしかとはいかぬような情勢が出てきておると思います。そこで、いつ公債発行しなくてもいいような時代が来るかという見通し、これは、あなたはだいぶ財界に長くおられますし、そのほうのベテランだということを伺っておりますので、そういうふうな点を率直にちょっと伺いたいと思うのです。いつ公債発行しなくてもいいようになるだろうか。私らはこうした公債は、このまま財政規模が小さくならぬ限りはどんどんふえていくというように考えておりますが、その点は一体どのようにお考えでございますか。その点伺いたいと思います。
  20. 小林中

    小林参考人 一たん政府公債発行いたしますると、それを返済するということは非常に至難のことだ、財政運営上、さような御質問だと思いますが、私は先ほどから申し上げておりますとおり、今日の財政経済の好不況調節作用をいたすべき立場にあると考えておるのでありまして、好況時におきましては非常に税収がふえてまいるのであります。申し上げるまでもないことであります。そういうときにはよろしく財政は消極的に考えなくちゃいかん。そうしますると、そこに剰余金というものが相当出てくるのだ、そういうものを不況時に公債発行したものの返済に充てていくのだ、そういうふうな調整機関であるということをはっきり考えてまいりますると、財政というものは従来どおり一本調子でいくべきものではないのでありまして、ちょうど経済とあべこべな線をたどっていかなければ調節機能は発揮できないのだ、こういうことになると思います。どうぞさように御承知願いたいと思います。
  21. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 私たちは、いまこの状態が続きますと、相当インフレの傾向になるんじゃないか、まだインフレといわれんけれども、公債をどんどん発行して、財政規模は小さくできないということになれば、どんどんインフレの傾向にならざるを得ない、そういう場合が一体予想されるのか、これをひとつ伺いたいと思います。
  22. 小林中

    小林参考人 ただいま公債政策政府が踏み切った以上は、今後の日本経済はインフレの傾向に進んでいくのではないかという御質問だと思いますが、御承知のとおり、現在の不況の原因はわが国の産業の設備過剰であります。これはおそらく人によっていろいろの見方があると思いますが、二五%ないし三〇%に達する設備過剰を抱いているのが実情ではないかと思います。したがいまして、これが活動を起こしました場合には景気は回復してまいるのであります。ということで、大体原則としては、インフレは一方にものが少なくなる、そうして一方に需要が多くなるときに起こるのだという原則でありますが、そういう意味からいくと、日本経済は、そう簡単にインフレの実態は起こらぬと思います。ただし、公債発行するのだからインフレになるかもしらんという一つのムードが一番おそろしいことでありまして、このムードをつくっていくことは、実態とかけ離れた状態ではありますが、ほんとうにおそろしいことだと思いまして、私どもはそういう点は十分に今後注意をしていかなければいかんのではないかと思うのであります。
  23. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 時間がありませんから、最後にもうひとつ伺いますが、ムードが非常にこわいと言われますけれども、このムードができたのは、設備投資がふえたりなんかしたのは、池田首相の高度成長、所得倍増ということで、そういう発案者の一人として小林さんにも少し責任があるのじゃないかと思います。  そこで、そういう点をわれわれ考えるんですが、もう一つは、戦後財政法公債発行については第四条で規定しておるわけですね。これは昔はなかったけれども、やはり戦争が起きたときにどんどんこういうことをやるといけないという理由もありまして、とにかく財政法四条に赤字公債というものは出していけないという規則があるわけだと思うのですが、その点と抵触しないか。財政制度審議会の会長をやっておられますが、そういう意見が出たかどうかということと、あなたの御意見はどういう御意見であるかということをお伺いして、私の質疑は終わります。
  24. 小林中

    小林参考人 ただいまの御質問は、おまえはムードがおそろしいと言うが、そのムードを作った原因は池田内閣ではないかという仰せだと思いますが、その次の御質問は、税収不足を補う公債発行財政法第四条と抵触をしないかどうかという御質問だと思います。私は別に池田さんと特別の関係があるわけでもなく、世の中がいたずらに何かしら特別の関係があるかのごとく、これも一種のムードでございましょう、つくったわけでありまして、私としては池田内閣四年有半にわたっての被害者の一人であります。さようにひとつ御承知を願いたいと思います。しかしながら、池田内閣当時の政策が今日のあるいは公債発行をしなければならないような状態に持ってきた一つの理由はあったかもしれません。しかしながら、インフレのムードをつくった理由には私はまだならぬと思っているのであります。そうして、今回の特別法による公債発行は、私から申しますると、御承知のとおり四十年度の予算が成立をいたしまして、その中間におきまして大幅な税の減収が生じてきたということで、これは実にまことに異例の事情でありまして、こういうことはほとんどあまり例のないことだと私は考えるのであります。したがいまして、今日のこの姿のありのままを正直に受け入れて、そうして財政処置をいたしまして公債発行していくことは私は最も適当だと思うのであります。ただし、この公債発行いたしまする上におきましては、税収不足の補てんの公債だということをはっきり明記することと、そうしてこの特例法は四十年度に限るんだということを、これまたはっきりしておく必要があります。さようにいたしますれば、将来にこの問題でこの法律によって何らの影響は私はないものと思うのであります。かりにこれをそういうふうな公債発行によって補てんをいたさずに、増税または公共事業費その他等々の事業費の圧縮によりましてこれを補てんをしていくということを考えた場合に、いまの不況財界にどういう影響を与えるか。これは私が申すまでもなく皆さんはよく御承知のことだと思うのであります。また非常にむずかしいことだと思いますが、かりに説を曲げましても、この四十年度の公債財政法第四条に基づいて発行いたしまするということになりますると、あるいは理屈上は何とか形がつくかもしれませんが、しかし実際上は国民はそれでは納得をしない公債になるのではないかと思います。そういう悪例をつくることは今後よろしくないことだと思う。したがいまして、私は四十一年度において政府建設公債発行して、前向きに公債政策を掲げて政策の遂行に当たっていくということになりますると、この四十年度の公債と四十一年度の公債は本質的に違った公債であるということを国民に知らせる上におきましても、この処置は適当な処置だと私は考えるのであります。
  25. 吉田重延

    吉田委員長 堀昌雄君。
  26. 堀昌雄

    ○堀委員 私は、昨日予算委員会佐藤総理と公債問題について論議をいたしました中で、総理は、財政法第四条については少なくとも今回の特例のこの措置と見合うような形の改正は自分の在任中はしないということを約束していただいたわけです。私がやはりいま一番心配しておりますことは、四十二年度の財政経済全体の状況でございます。四十一律度は御承知のようにこれまた七千億円の公債発行するわけでありますから、要するに財政規模は一五%伸ばそうと思えば伸ばすことはできます。しかし、これを財政法四条のワクできっちり締めておる限りは、今度はその対策で伸ばすのには限界がございます。公共事業のワクが、きのう確認をしたところでは、少なくともガソリン税見合いの道路財源はもうすでに目的のある費用をとっておるわけですから、これを除外いたしますと、ことしの場合で公共事業費については四千二百七十八億円でございます。ガソリン税見合いの道路事業を除いたいわゆる公共事業関係というのは四千二百七十八億円。そしていま政府考えておる中で住宅対策、環境衛生、文教施設その他の施設、失業対策事業費というようなものの中から公共事業費分を引き抜いてこれを精一ぱいに広げたところを考えておるようでありますが、それを最高限に見ましても本年度で六千四十二億円というのが公共事業費の大体上限でございます。ですから、これを一五%伸ばしてみても、今度は一千億円ぐらいしか四十二年度は公債は増発できない。というのは、財政法でワクがかかっておるわけでありますから。そういたしますと、財政主導型の経済をやっていくときに、自然増収が税の面でなければもう財政のワクを伸ばすことはできなくなる。こういうことで、実は四十二年度の財政及び経済の問題が順調に非常に上がってきまして、ある程度民間の設備投資なり在庫投資、か肩がわりをしてくれるところにきておればよろしいのですけれども、そういうものは肩がわりしてくれない。肩がわりができないということは、税収が伸びてこないということになりますから、四十二年度の財政というものはたいへんむずかしくなるのではないか。その点で財政法改正ということが起こることをおそれて、実は昨日そういう議論をしたわけです。  そこで私は、小林さんに、財政制度審議会の会長として、財政法四条は少なくとも改正をしないのだということをここで審議会立場から明らかにしていただきたい、こういうふうに考えますが、いかがでございましょうか。
  27. 小林中

    小林参考人 ただいまの御質問は四十二年度の公債発行はどういうふうになるかという御懸念であるかと思います。私の存じておりまする程度におきましては、四十年度の公共事業費の総額は大体五千五百億円ないし六千億円ぐらいだというふうに承っております。したがいまして、四十一年度にかりに七千億円の公債発行するということになりますと、公債の中から一千億円ないし一千五百億円を公共事業費にプラスしていかなければならないということになると思います。またさようにおそらくいくのではないかと考えておるのでありまして、この点は四十一年度は問題はないのだ、こういうことになる。そうすると、四十二年度には、おっしゃるとおり一千億円ないし一千五百億円だけをプラスしたのだ、そうすると、今度はそれに上越ししていくことになると、これはたいへんじゃないか、こういう仰せだと思いますが……。
  28. 堀昌雄

    ○堀委員 実は、財政は一五%ぐらいずつ伸ばしていかないとうまくいかない。今度は四十一年度が四兆三千億円といたしますと、その次は六千億円か七千億円ふやさないと財政ワクは広がらない。ところが、公共事業費見合いのものは、大体来年度が七千億円になりましても、それの一五%増くらいにしかなりません。たかだか二〇%、公共事業だけ伸ばしても一千四百億円、片方は六千億円伸ばさなければならないのに、公債では千五百億円くらいにしかならない。あとのものは税が伸びてくれればいいけれども、税が伸びなければ財政規模も広げられない。
  29. 小林中

    小林参考人 公債発行額の伸ばす範囲はせいぜい千五百億円くらいじゃないか、そうすると、一方は六千億円か七千億円伸ばさなければならないのにその財源がないじゃないか、こういう仰せのわけですね。——それは私は、公共事業費そのものは公債によってあるいは二千億円、三千億円伸ばして、公共事業費をこの際思い切って前進をさせるという考え方もあるわけですが、しかし、それではいまの仰せの答えにはならぬと思います。しかし、御承知のとおり四十一年度は大体成長率が八%ないし七%というふうな考え方でおりますと、かりにその中間をとりましても七%半ということになりますと、やはり来年の下半期あたりからは多少好況のきざしが見えてくる、そうすると、民間投資も現在のごとくの沈滞状態から脱しまして順次活動してくるのではないか、そうすると、四十年度の税収不足分、こういう大幅に税収が落ちるというようなことはない。また落ちなくても横ばいだということもないわけで、多少は税収が順次増加をしていく傾向にはなると私は考えておるのでありまして、したがって、もしそれでもなおかつ足りないという場合には、政府保証債をいま少し四十年度より多く発行をいたしまして、むしろ経済を刺激するには政府保証債発行によりまして事業を興していくということが私は必要ではないかと思うのであります。そういう意味からいきましても、財政法第四条というものは財政法一つの憲法である、これは絶対に動かしてはいかぬという信念を私はかたく持っております。どうぞその点は御了承願いたいと思います。
  30. 吉田重延

    吉田委員長 春日一幸君。
  31. 春日一幸

    ○春日委員 三分か五分ということでございますので、一問だけお伺いをいたしたいと思うのであります。  今日、日本経済をおおう深刻な不況というものは、一にかかって池田内閣のあの高度成長政策、これのもたらした当然の帰結であるといわれております。しこうして、この池田内閣の高度成長所得倍増政策なるものは「コバ中」の名をもって天下にとどろくあなたのアドバイスによるもの、これまた政界の歴然事項に相なっております。この問題については、開き直ってあなたと長い時間をかけて論じ合って日本経済の将来のために備えなければならぬと思うのでありますが、本日は六、七分ということでありますから、ただ一つお伺いをいたしたいと思いますのは、何といっても経済成長の原動力となるものは設備投資であろうかと思うのでございます。ところが、わが国の経済は資本主義自由経済、しかも悪質なと申しますのは、大企業と政治権力と金融機関、この三位一体の結合によりまして、やりたいと思う設備投資をもう無制限に自由自在にやっている。一昨日うちの竹本君が質問したのでありますが、いまわが国におきます生産設備の稼働率は六七・一%であるといわれておる。実に三〇%以上のものが遊んでおる。あなたのプランによってとんでもないことになってしまっておるのであります。したがって、われわれはあなたのほうの財政中間答申にも明らかにされておりますように、将来はなだらかな安定成長へこれを軌道に乗せなければならぬとするならば、従来のあの無計画なやりたいほうだいな設備投資なるものに対して何らかの国家規制あるいは社会的規制あるいは何らかのセルフコントロール、そういうような設備投資に対する第三者的規制を加えていかなければならないのではないかと思われるのでありまするが、この問題について、財政運営の面から会長としてはどのようにお考えになっておりますか、これを伺っておきたいと思います。
  32. 小林中

    小林参考人 ただいまの御質問でありますが、何か池田内閣当時、われわれが要するに池田成長政策に参画をして、ああいうふうな案をつくったのはおまえたちの責任ではないかというおとがめをこうむったのでありますが、実は私たちは池田政策には何らの関与もしておりません。御承知のとおり、池田総理には周囲にブレーンがおりまして、その連中が主としていろいろの政策を練ってまいったのでありまして、私どもは第三者の立場でそれを承っておった次第であります。  しかしながら、私は池田政策をこの機会にかばい、擁護しようとは決して思っておらないのでありますが、池田政策なるものは十年倍増計画でありまして、本来から言えば、一年に七%半の成長率が遂げられれば十年には倍になるのだということが基本的の考え方であったのであります。ところが、十年倍増計画というものが発表されますと、財界の人間が、それはたいへんだ、乗りおくれては事だということで、お互いに設備競争を始めたということで、七%半の成長率考えたものが一三%になったり、一四%になったりして、ある意味におきましては、あるいは四年間で倍になってしまったというふうな事情が起こってきたのでありまして、それは池田政策にも多少の落ち度はあったかもしれませんが、それを受け入れた財界人、産業人の考え方にも大いに反省をしなければならない点が多々あるのではないかと思うのであります。しかしながら、これは産業人だけではなくて、その資金を供給いたしました金融機関も大いに反省をしなければならぬのではないかと思うのであります。そういう意味におきまして、これだけのひどい目にあったものですから、あるいはすぐ忘れるかもしらぬという仰せもありましょうが、今後は金融機関もあるいは産業人も、従来と違いまして相当慎重な態度を持してまいるのではないか。いまおっしゃったとおり、設備過剰問題の解決が焦眉の急でありますから、できるだけそれに専念して、操業率を九〇%くらいまでに上げていこうということに専念をしていくのではないかと考えておるのでございます。
  33. 春日一幸

    ○春日委員 規制を加える必要はなきかという点についてお答えを願います。
  34. 小林中

    小林参考人 経済というものは、法律とかそういうもので規制をされることは、私自身としてはあまり好ましいことではないと思います。やはり経済というものは、経済人の反省、自覚によっていけばそれで事足りると思っております。
  35. 吉田重延

    吉田委員長 小林参考人に対する質疑は終了いたしました。  小林参考人には御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  引き続き舟山参考人に対する質疑を行ないます。只松祐治君。
  36. 只松祐治

    ○只松委員 いま小林さんからも、産業界だけでなく、今日このようになったのは金融界も大いに反省しなければならぬ、こういうことばがございました。これは財政制度審議会報告書のほうにもそういうことが述べられております。皆さん方のほうにもそういうものが出ておりますけれども、今日のこういう経済情勢に立ち至ったということに対して、どういう御反省といってはあれですが、お考えをお持ちになっておりますか。
  37. 舟山正吉

    舟山参考人 ただいま小林参考人が申されましたことに御同感の点は多々あるのでありまして、この経済成長が高度であった反面、ひずみをもたらしております。これについては個々の企業者が勇み足をして過度の設備投資をしたということもありますが、その背後には、それに金融をつけてやったという面は見のがし得ないところであります。その際に、銀行その他の金融機関国民経済全体の立場から慎重に判断するということが要請せられるのでありますけれども、単に取引先の都合といったような点から行き過ぎるという点は否定できないと思います。これが銀行その他の金融機関に対しましてまた日本銀行が信用を供与するのでありますが、いまは管理通貨の時代でありますので、なかなか適当な歯どめがない。そこで、さしあたっての金融を緩和するために信用供与が行き過ぎるということもあり得ると思います。今日これらを総合いたしまして、現在のひずみについては各方面に責任があると考えております。
  38. 只松祐治

    ○只松委員 そういう観点から、今後も——本年度は特別措置でありますけれども、明年度以降の公債発行という問題がきょうの参考人意見を徴する中にも含まれておるわけであります。公債発行については、こういう事態を再び——今度公債発行をいたしますと、単にいまみたいな誤りである、こういうことでは済まない、こういうふうに私たち社会党は思っておるわけです。皆さん方のほうとしては、そうではなくて、正しいものだ、むしろこういうふうに推進役として現在の立場におられるわけであります。そこで、この状態というのは、率直に言ってやむを得ない、こういうふうにお考えになっておるのか、それとも積極的にここで公債政策をとるべきだ、こういうふうにお考えになっておるのか、伺いたいと思います。
  39. 舟山正吉

    舟山参考人 このごろの考え方によりますと、経済成長については、やはり民間の活動が主動力になる。しかし、それに対して財政面からも景気変動調整その他のために積極的に介入すべきである、こういう考え方になっておると思うのであります。そこで政策の転換も行なわれたわけであります。大体国債発行は、つい先ごろまではこれが罪悪視せられた。ところが最近の論説を見ますと、あるいは公債発行は非常に万能薬のような響きを与えておりますが、私はこのいずれも行き過ぎであろうと思います。国債発行は薬にもなりますけれども、また、処方を誤りますと毒にもなりまして、インフレを惹起するということを申さなければならぬと思うのであります。今後の財政政策公債発行を織り込んでいくということ自体はけっこうでありますが、問題は、その度合いであります。現在のように民間経済活動が不況の場合には、国債財源によって公共事業を興して、一方において公共部門民間部門成長バランスをはかることによって景気変動調整していくということが必要でありますけれども、これをこのままいつまでも同じ調子で続けていっていいとは考えられません。これはそのときそのときの経済情勢に応じてかげんすべきものであろうと思います。要は、運用の問題であろうと思います。
  40. 只松祐治

    ○只松委員 いろいろ御懸念の点もあるようで、要は、とおっしゃったけれども、一つ運用の問題ということにあると思うのです。この運用のために特別の政府の諮問機関というようなものを設けたらいい、こういう御意見もあるように聞いております。あとでお聞きしますほかの歯どめ策その他もありますけれども、その一つの問題として、恒常的な国債に対するそういう委員会というもの、審議機関というようなものを設けたほうがいい、こういうふうなことをお考えになっておるか、そのほかに、何か特別に運用するためにそういうものを設けたらいい、あるいは悪い、こういうお考えがございますか。
  41. 舟山正吉

    舟山参考人 今度の国債発行について歯どめと称せられるものがいろいろ考えられておりますけれども、これは絶対的のものではございません。万能の拘束力を持つものではないわけであります。基本的には、財政政策において安易に国債政策にたよるということを防がなければなりませんし、またその次には、日本銀行、大蔵省等の金融当局が安易に買いオペその他によりまして成長通貨を供給するという名前のもとに国債発行を安易にならしめて、過度の信用を供与するというようなことは避けなければならぬ点であります。これらを監視いたしますのはなかなかむずかしい問題でありますが、民間の研究団体で提案されております、ただいま御指摘になりましたような一つの機関を設けてこれを監視していこうという構想のあることを聞いておりますけれども、私個人の意見といたしましては、それも一つの適当な方策であろうと考えております。
  42. 只松祐治

    ○只松委員 次に、いろいろ歯どめの問題としていわれております建設公債という問題ですが、私たちからいえば、たとえば本年度の二千五百九十億円のやつは、きのう福田さんも赤字公債である、こういうふうにお認めになった。しかし、明年度以降のやつは赤字公債ではない、いわば経済の大きな転換によるものだ。しかし、私たちは何が大きな転換かどうか、本質的なものがどう変わってくるかどうか一向わからないのですが、それはそれといたしまして、とにかく、赤字公債建設公債というもの、これが一つの歯どめの要因になるということは、これは通説としていわれているし、皆さん方もそういうふうにお答えになっておるわけです。建設公債赤字公債の厳密な区別、これはどこでどういうふうに判断されるか、ひとつお教えをいただきたい。
  43. 舟山正吉

    舟山参考人 建設公債と俗称せられておりますけれども、一体どういうものを建設公債というかということにつきましては、世上議論が非常に多岐にわたっております。私も少しはそういうものも読んでおるのでありますけれども、まだはっきりしたことをお話し申し上げる程度の知識を持ち合わせておりませんことははなはだ残念でございます。
  44. 只松祐治

    ○只松委員 きょうは討論の場ではなくて、参考人の方に御意見を聞いておるわけです。しかし、金融制度調査会会長代理の方が、建設か赤字かということについて明確なものがなかなかつかみ得ないという現状で私たちが公債論議をしていくということは、たいへん危険なことだ、こういうことをつくづく感じます。まあ、しかし、その問題はあとで大蔵当局と論議をしていきたいと思います。  最後に、皆さん方と一番関係があるのは金利の問題ではないかと思うのですが、金利はいままで幾らを御要望になりましたか。あるいは現在いろいろの線が出ております。大体もう煮詰まってきたようでございますが、皆さん方としてはどの程度のものが妥当だというふうにお考えになっておりますか。
  45. 舟山正吉

    舟山参考人 国債金利につきましては、発行者側消化先側意見は当然対立いたします。発行者側、すなわち、財政当局ではできるだけ低い金利でやりたい、そうして財政負担を少なくしていきたい、消化先側では、有利な投資物件としてできるだけ高い金利を望むというようなことでございますが、問題は、国債を無理に民間に押しつけるということであってはいけないのでありますので、民間でも大体受け入れられる程度のものにするということが必要であります。ただ、消化先側で主張いたしますについても、コスト割れとか、いろいろなことを申しますけれども、そのコストがはたして適正なものであるか、もっと努力して引き下げる余地があるものであるかどうかということは、十分検討いたさなければなりません。これは言いかえますと、無理に低金利国債発行いたしますと、その後の流通市場におきまして直ちに発行価格割れを生ずるとかいうようなことになりまして、流通の円滑を阻害することになります。やはり市場に適合した利率でなければならぬ。これはまた、一定不変のものを長く続けるということではなくて、将来の金融情勢に応じて変えていく、その方向は、漸次一般市場の傾向にもよりまして低いほうに持っていく、こういうことでなければならぬかと考えます。具体的に今回金利を幾らにするかということは、発行者側とそれを引き受ける側との話し合いということできまるということはけっこうなことだと考えております。
  46. 只松祐治

    ○只松委員 皆さん方で要望、ほしい金利……。
  47. 舟山正吉

    舟山参考人 具体的に何分何厘にするかということにつきましては、各人いろいろ意見もございまして、調査会としてもそこに深く立ち入った意見の交換はございませんでした。
  48. 只松祐治

    ○只松委員 最後にもう一つだけちょっとお尋ねしておきたいのですが、いま一つは、市中消化ということが盛んにいわれております。問題になっております。市中消化というのは、いまのところ皆さん方が、金融機関が引き受ける、こういうことをもって市中消化の用語にかえられている。諸外国なりほかのところでは、本来純民間、個人に持たせるようないろいろなくふうをしているし、そういう点もあるわけです。将来皆さん方の御意見として、やはり皆さん方だけがそうやってお持ちになる、こういうことですか、それとも、一般市民にも与えるべきだ、あるいはぼくらから言えば、押しつけるべきだということになりますけれども、市民にもそういうものを持たしていくほうがいい、こういうふうにお考えになりますか。市中消化の問題と個人の問題を、ひとつお答え願いたいと思います。   〔委員長退席、天野(公)委員長代理着席〕
  49. 舟山正吉

    舟山参考人 現在におきましては、日本の大衆はまだ証券投資、特に確定利付の証券を持つということにはなじんでおりません。しかし、今後だんだんとそういうような貯蓄の累積ができますと、投資の金利にも敏感になりまして、証券の形で貯蓄するという形もふえていくかと思います。それでありますから、国債につきましても、将来は個人消化がふえると思います。また、奨励していいことかと思います。しかし、この段階で特にそれを方策を用いて推進するといったような必要もないじゃないかと考えております。
  50. 天野公義

    ○天野(公)委員長代理 武藤山治君。
  51. 武藤山治

    ○武藤委員 舟山さんに二、三、非常に限られた時間でございますから、簡単にお尋ねをいたしたい。  今回の財源不足二千五百九十億円を補うために赤字公債発行するわけでありますが、これの具体的引き受けについて、すでに新聞等では都銀、長銀が五一・五%、地方銀行が二六・五%ですか、残りを相互銀行、信金、生保、農林中金などが引き受ける、こういう率で今回のものは引き受けさせるが、明年度予定される七千億円程度国債についてもこの比率を適用するのか。この比率を適用された場合に一番困るのは、何といっても雑金融機関、信金、相互銀行がたいへん困るのじゃないかと私は思うのですが、その辺の見通しについての議論はどの程度行なわれて、どんな配慮をしておるのか、そこをまず最初お尋ねいたしたい。
  52. 舟山正吉

    舟山参考人 国債シンジケート団引き受けの方式によります発行につきましては、そのつどの国債発行額をシンジケート団と話し合いまして総額をきめますが、その中の配分は、金融機関その他消化先の自治にまかしてあるわけであります。来年一−三の各金融機関の引き受け率というものはお示しのとおりかと思いますが、来年度におきましては、またそのつど業者団の間に話し合いがあることと思います。また、これは外部から特に強制すべきものでもないように思います。小さい金融機関は預金コストその他が一般にコスト高である、そこで国債を持つと、あるいは逆ざやになるといったような事例も起こるかと思いますが、大体金融機関は、支払い準備としてある程度国債を持つということは、これは必要であります。その見地からは、採算ということを一応度外視して持つものもあろうと思いますし、また、余裕資金もできまして国債投資をやるものもございましょうし、一面においては、預金コストその他の経費の引き下げに努力もしなければならぬと思います。要するに、強制して持たすのではありませんから、そこにさしあたってはあまり大きな不都合を与えることはないのじゃないかというふうに考えます。
  53. 武藤山治

    ○武藤委員 舟山さんも大蔵省の偉い地位にもおった方でありますから、大蔵省の今日の窮状をできるだけうまく解決してやりたいという意思が働くことは当然だと思うのでありますが、しかし、いま総裁の発言の中に、逆ざやになる場面も幾らかあり得る。私たちの聞いておるところでは、雑金融の預金コストというものは、大体七%ぐらいの利息をとらぬと逆ざやになる。実際にはもうすでに信用金庫、相互銀行などでは、今回の表面利率六・五%、応募者利回りでも六・八%程度では、雑金融機関は、腹の中ではたいへん弱ったものだ、困ったものだ、こういう不満があるのだと私は思うのです。こういう点で、この答申を読んでみますと、答申の中には、無理のない範囲発行する、こういう原則を確立しなければならぬということが書かれておるわけでありますが、無理のない範囲というのは非常にむずかしいのであります。そこで、ちょっとお尋ねなんでありますが、都銀とか長銀の長期余裕資金、こういうものは、一体現時点でどのくらいの見通しが立つのか、また、来年度七千億円の国債発行するという段階において余裕資金というのは一体どの程度見通されるのか。その辺は、この審議会でもかなり議論のあった点だと思うのでありますが、そこらの数字は一体どの程度の余裕資金と見ていいのでございますか。
  54. 舟山正吉

    舟山参考人 都銀などの来年度の長期余裕資金につきましては、ちょっと手元に具体的の計数をお話し申し上げる資料を持っておりません。
  55. 武藤山治

    ○武藤委員 そこが一番肝心なところで、私たちが心配しておるのは、都銀、長銀の余裕資金が何ぼあるかという見通しを立ててみないと、結局またオーバーローンにそれが——いまの金融構造というものがオーバーローンなんですから、結局国債を買っても、買いオペの対象になって日銀にそれがまた戻っていく、国債自体がいかなくとも、いま保有している他の債券が日銀にいって金にかわってくる。こうなると、やはり通貨の増発というものを防ぐ歯どめがないわけでありますね。国債自体を日銀に持っていかなくても、いままで持っていたものを買いオペでどんどん出してもらう、こういう道は審議会ではふさいでないわけでございましょう、議論の中では。そこらはどうなんでございましょう。
  56. 舟山正吉

    舟山参考人 国債市中消化につきましては、ます市中の余裕金で国債を持たす、しかし、一面、日本銀行といたしましては、日本経済成長に伴う成長通貨というものはふやしてもいいというわけでありますから、それを日銀から銀行に対する貸し付けなりあるいは買いオペによって時々調節していくということになるわけでありますが、その限度が、国債発行に押されまして成長通貨以上のものを信用供与いたしますと、そこでインフレになるということであります。それでありますから、国債発行について無理のない程度ということは、むしろそういう信用供与をしっかりさせておきますれば、そこで歯どめになるのでありまして、国債発行につきましても、年額をきめるほかに、分割発行のそのつど消化先側との意見調整も必要であるということを答申もうたっておるのでありますが、もし国債を引き受けることが無理でありますならば、そこでそれを無理のない程度にとどめていくという心がけが必要だろうと思います。
  57. 武藤山治

    ○武藤委員 きょうは総裁と議論をする場所じゃありませんから、お尋ねする気持ちで尋ねておるわけでありますが、いまおっしゃった成長通貨範囲内で、国民の所得、成長率に見合った増発だけならば問題はないのでありますが、前に日銀総裁をここにお呼びして尋ねた際にも、一体適正な成長通貨とは何を基準にきめるのかというと、日本銀行としても、国民全体の通貨量はこれが適正だというものはなかなか計算できないのだ、結局各銀行からの需要が殺到し、日本銀行へ押しかけられれば、どうしても大蔵大臣がその権限を持っているのでありますから、国債発行する当局である大蔵大臣が通貨発行に対する権限を持っているといういまの法律制度でありますから、なかなか適正成長通貨という基準がないわけでありますね。したがって、買いオペをしてくれというような金融機関からの要請が強くなれば、日銀としてはどうしてもこれは発行せざるを得なくなる。だから、私はどうしても通貨の発券量というものはふえてくるのではないかと思う。だから、いま株がインフレを見越して非常に騰貴している、上昇している、あるいは国民がインフレ気分に非常な不安を持っている。こういう点は、もういまの法律制度からいくならば、当然抱かれる不安である。これをぴちっととめる妙薬はない。国債発行は良薬でもあるしあるいは劇薬でもあると、この答申の中にも書かれております。どうもその毒薬になりそうなところをぴちっととめてないような気がいたすわけであります。しかし、これは議論になりますから省略をいたしますが、そういう点で、今後指導的立場にある制度調査会方々にはそういう国民の不安というものを取り除けるような手だてを、やはり来年度の大量の発行を前にして、私は十分検討すべき問題ではないだろうか、こう考えます。そういう点についても御配慮をしてもらいたい。  第二の問題は、今度の国債発行が地方自治体というものを非常に圧迫するのではないか。政府保証債並びに地方債というものは、国債発行されたからといって減る傾向にないわけであります。逆に、地方自治団体はほとんど軒並み赤字になってきてどんどん起債をふやさなければ公共事業も引き受けられない、政府の補助事業すらも種銭がないためにやれないというような自治団体が圧倒的であります。こういう情勢のときでありますから、こういう地方債、政府保証債というものと国債とのにらみ合いを、調査会ではどの程度バランス——絶対金額がわかれば金額で説明してもらえればいいのでありますが、地方債、さらに政府保証債はこれから三年間どの程度のワクでいこう、あるいはこの程度成長で押えなければいけない、そうしなければ国の国債政策というものはうまくかみ合っていかぬのだ、そういうめどというのはどの程度想定をいたしておるのでございますか。
  58. 舟山正吉

    舟山参考人 今後国債の問題についていろいろ心配しなければならないと同時に、地方債についても同じく関心を払わなければならぬということは十分論議したところでございます。御指摘がありましたように、地方が公共事業を実施するにつきまして、国からの補助金、助成金その他に結びつきまして、自分でも資金を調達しなければならぬといったような点に難点もありますが、これらは財政制度の研究問題であろうと思います。しかしまた、地方団体がいたずらに形だけの名誉欲にかられまして事業計画を立てる、そのために資金を要求するという点にもメスを入れなければならぬことであると思います。それでありますから、地方団体がどれほどの事業をすることが適正であるかという見当をつけませんと、地方債もどの程度発行したらいいかというめどもつきかねるようなわけでございます。したがって、数字的に地方債の適正発行限度というようなものを算定することは、いまの状態ではほとんど不可能ではないかと考えます。
  59. 武藤山治

    ○武藤委員 非常に短い時間ですからこれで終わりますが、国債を来年七千億円ぐらい発行する、そのうちに、小林さんの言うように、来年の下期からだんだん景気が上昇して、再来年あたりからは自然増収が見込めるようになればいいんですが、一体、調査会の中の議論では、国債を一回発行して、それが何年ぐらい続けられる金融情勢だろうか、あるいは財政情勢だろうか、これは何年間か続けたらやめないとたいへんなことになる、金融機関も何兆円ぐらいが見通しとしてもう限界だ、そういうような将来の見通しについて——私たちは、七年後になっておそらくこの国債は償還できない、税金ではとても払えない、またその場で書きかえるなり、国債発行が行なわれる、おそらくその間に三年間くらいまた国債発行が続くからたいへんな元金になってきて、日本経済はたいへんな事態になるのではないかという心配を持つのでありますが、そういう長期的なこれからの国債発行の趨勢について、調査会ではどういう見通しを持っておられるわけでありますか。
  60. 舟山正吉

    舟山参考人 これまでは、国が借金をすること、すなわち国債を持つことを非常にきらうといったような考え方でありましたけれども、今後は国もある程度の借金を負っておる、つまり国債の残高があるということは、これはあえてとがむべきことでないという考え方でございます。したがって、ここ何年かは国債を毎年発行いたしましてもよろしいかと思いますが、それでは国債残高をどの程度にとどむべきかということは、あるいは財政規模に比べてみるとか、あるいは国民所得に比べてみるとか、いろいろの見方があると思います。各国の数字もあるわけでありますが、調査会でもそれではどの程度がよかろうかということは、突っ込んで研究する時間もございませんでした。
  61. 武藤山治

    ○武藤委員 その点については、財政制度審議会答申でも、日本は、国債は、諸外国と比較した場合少ないと断定できないということが書かれておるわけです。それは政府保証債でかなり出ている。したがって、四十年度以降の国債発行については十分そういう点を配慮しなければならぬ、こういうことも答申の中にはっきり書かれておるわけであります。ですから、そういう点、やはり調査会としては、四十一年度だけのことじゃなくて、四十二、四十三年、とにかく償還までの七年間の問題については、どういう経済推移をたどるであろうかという一つ見通しをわれわれの前にも明らかにして、七年後の償還のときにはこうなるんだ、だから国民は安心してだいじょうぶなんだ、こういう皆さん皆さんなりの一つ経済原則に基づいての見通しを明らかにしてほしい、こういう強い気持ちを私たちは持っておるわけであります。この答申は非常に抽象的で、われわれを納得させるような、不安のないような答申でないのはまことに残念でありますが、今後そういう問題についても十分調査会の中で議論をし、回答を与えていただきたいことをお願い申し上げまして、一応私の質問を終わりたいと思います。     —————————————
  62. 天野公義

    ○天野(公)委員長代理 この際、河野参考人及び肥後参考人より御意見を伺うことといたします。  両参考人には御多用中のところ御出席をいただきまして、ありがとうございました。  本委員会におきましては、本年度における公債発行の問題につきまして、連日にわたり審議を重ねているのでありますが、本日参考人各位より御意見を伺いますことは、本委員会の審査に多大の参考になるものと存じます。両参考人におかれましても、何とぞ忌憚のない御意見を述べていただきますようお願いいたします。  それでは、まず河野参考人よりお願いいたします。
  63. 河野通一

    ○河野参考人 私がこの委員会にお呼び出しを受けましたのは、証券取引審議会の関係者としてだと思うのであります。したがいまして、証券取引審議会としてこの国債発行問題についてどういうことを審議し、検討したかということを皆さんに御報告申し上げたいと思うのであります。  審議会におきましては、国債発行ということに関連するいろいろな問題を検討いたしてまいりましたことは事実でございますが、審議会の役目柄と申しますか、そういった点から当然のことでありますが、国債発行の是非あるいはその法律的な当否といったような問題については多くの論議をいたしておりません。主として国債発行されるということを前提として、第一には、その国債発行に対する受け入れ側——受け入れ側と申しますと、具体的にはたとえば証券市場であります。あるいは特に公社債市場といった問題、また国債の引き受け者の問題あるいは国債の応募者と申しますか、あるいは投資家と申してもいいのでありましょうが、そういった国債発行を受け入れる側の問題について、それがどうあるべきかということを問題といたしました。第二には、国債発行がされる場合において、その発行額、あるいは発行条件、あるいはその発行方法というものはどうあるべきかといった点を第二の問題として検討いたしました。もちろん、これらの問題につきましては、国債発行額はどの程度であるべしという具体的な数字についてまで検討いたしてまいっておりません。そういったことを中心にいたしまして、先般「公社債市場のあり方からみた国債発行の諸問題について」という文書を大蔵大臣に提出いたしたのであります。あるいはこの文書は委員各位のお手元にすでに配付されているのかと思いますので、詳細はそれによってごらんいただきたいと思うのでありますが、ごく概略だけ説明さしていただきたいと思います。  公社債市場のあり方から見た国債発行という問題の基本的な考え方は、私どもは次のように考えております。  第一は、国債市中公募を真に円滑に行なってまいりますためには、正常な公社債市場の確立といいますか、設立ということが絶対に心要であるということであります。第二に、正常な公社債市場の確立ということは、国債の適正な発行消化前提条件でありますばかりでなく、起債市場の正常化によって企業金融金融市場という問題の関係のゆがみを是正する基礎となるということであります。第三には、公社債市場がその本来の機能を発揮いたしますためには、そのにない手と申しますか、主たる担当者である証券業界の業務というものと役割りというものがきわめて重大であり、その機能なりあるいは体制の整備ということが非常に必要であるということであります。第四には、国債発行に際して、民間資金の需給、あるいは資本市場全体としての消化能力及び公共と民間との両部門の間の適正な資金の配分ということについて慎重な配慮が必要である、こういうことであります。  以上のような公社債市場の本来あるべき姿を育てあげていく必要があるという考え方に立って、以下申し上げるような具体的な国債の引き受け、消化あるいは流通市場に関する考えをわれわれとしてはとったわけであります。  第一は、国債発行にあたっては、あらかじめ発行規模等について民間政府との間において十分な意見調整が行なわれることが望ましい。第二に、国債発行条件は、円滑な市中公募を可能ならしめるものでなければならない。したがって、この発行条件は、市場の価格と金融環境を十分に勘案して決定せらるべきである。第三に、国債の引き受けのシ団、いわゆる引き受けシ団といわれておるものは、これは当然に編成されるわけでありますが、これは募集引き受けを行なうアンダーライターによって構成されることが本来のあり方である。しかしながら現状においては、応募引き受け者、サブスクライバーというものでありますが、応募引き受け者の参加もやむを得ない状態である。しかしながら、今後においては逐次本来のあり方に沿うよう配慮すべきである。ここでちょっとつけ加えておきますが、ここでアンダーライターと申しておりますものは、必ずしも証券会社だけという意味ではございません。皆さんも御承知のように、外国の例からごらんになりましても、アンダーライターは国債に関する限りは必ずしも証券会社だけではない、金融機関、特に銀行等もアンダーライターとして機能いたしておることは御承知のとおりであります。第四に、国債の円滑な市中公募のためには、機関投資家による消化や個人消化の促進がどうしても必要であります。そのためには国債の流通の円滑化と適正な市場の形成が必要でありますが、また証券会社のこの方面における機能を十分に養っていくことが必要である、こういうことであります。この点も誤解のないようにいたしたいと思うのでありますが、審議会でいろいろ議論をされました際に、具体的にはいわゆる国債の売買の窓口をいかにすべきかという問題にこの問題は関連いたしてまいります。ここで言っておりますことは、主たるそういった国債売買の窓口は証券会社であるということを言っておるのでありまして、われわれといたしましては、たとえば銀行が国債売買の窓口になることを否定いたしておるわけではございません。第五に、国債は当然証券取引所に上場されなければならない。正規の流通市場を開くことは公社債市場の正常化の前提であると考えております。第六に、流通市場における証券会社の売買機能を円滑にいたしてまいりますために必要な資金につきましては、適当なる配慮が必要に応じて行なわれなければならないと考えます。第七に、証券取引所における市場価格は、将来日本銀行国債のオペレーションを行ないます場合に、その売買価格の基準となるべきものであろうと思います。この場合においては、将来は証券市場を通じて日本銀行のオペレーションが行なわれるようになることをわれわれは期待してまいりたい、かように考えておる次第であります。  以上が、証券取引審議会として、国債発行に関連する、いま申し上げましたもろもろの問題についての意見として大蔵大臣に提出いたしました概要でございます。  私の御説明はこれで終わらしていただきたいと思います。ありがとうございました。
  64. 天野公義

    ○天野(公)委員長代理 次に、肥後参考人にお願いいたします。
  65. 肥後和夫

    ○肥後参考人 成蹊大学の肥後でございます。  昭和四十年度における財政処理特別措置に関する法律案に関する参考意見として私に特に求められましたものは、昭和四十年度の税収不足に対処するために、財政法第四条とは別個に単独の法律を制定して一般会計の歳入補てん公債発行することに関して、学究として自由な意見を述べよということであります。そこで私の卑見を主として予算における経済的な観点につきまして申し述べ、あわせて若干政治的な側面について所見を述べてみたいと思います。  ます第一に、当初見積もりに比べまして税収が大幅に減少した理由は何であったかという点でございますが、昭和四十年度の当初予算における租税及び印紙収入額三兆二千八百七十七億円は三千八百二十四億円の増収を三十九年度の当初予算に対して一応見込んでいたのでございまして、増加率は一二・二%になります。これは実際に四十年度の予算の編成にあたりましては、三十九年度補正1号後の二兆九千六百九十三億円に比べましてどうかということが問題になると思うのでありますが、これは三千百八十四億円の増加、一〇・七%の増加率になります。かりに昭和四十年度における初年度減税八百十三億円がなく、前年度どおりの税法が適用されたものといたしますと、昭和四十年度の租税及び印紙収入は三兆三千六百九十億円、前年度に比べまして一四%の増加率になります。予算編成の前提となりました「昭和四十年度の経済見通し経済運営の基本態度」における予想では、GNPの名目成長率は一二・九%程度と述べられておりました。そこで、私は特に税収の所得弾性値といったようなものを中心にして今後の税収予想の問題を述べてみたいと思うのでございますけれども、GNPの成長率に対します税収増加率の割合、すなわち税収の所得弾性値は、大体名目成長率予算編成当初一二・九%と予想されていたということになりますと、一・〇七になります。高度成長期を含みます大体二十九年度から三十八年度の十年の平均の所得弾性値は、大体一・五近くであるというふうに一応試算をされておりますので、四十年度の当初における税収の見積もりにつきましては、過去の所得弾性値の趨勢値に比べまして、かなり控え目な税収見積をしていたということになるかと思います。  ところで、昭和四十年度における租税収入の減少を、今度の政府当局の見積もりに従いまして、二千五百九十億円といたしますと、本年度の当初予算に比べまして、税収は七・六%減収になっております。三十九年度の補正後の税収に対する増加率は八・六%でございますが、これを最近のGNP成長率の大かたの見通しは、四十年度で名目で七、八%であろうという意見が大半のようでございます。あるいはもっと低目に見る向きもありますけれども、一応七、八%といたしますと、税収の所得弾性値は八%に対する八・六%でございますから、大体一・〇七になりまして、税収の所得弾性値に関しましては、ほぼ当初予算の所得弾性値と一致することになります。主税局の税収見積もりは、大体各税目ごとに積み上げ方式をとっていられるように理解していますが、一応これと別個に税収の一応の見通しを得るために、所得弾性値を利用するといたしますと、来年度何%税収が増加するだろうかという点は、経済成長率税収の所得弾性値を掛ければよろしいということになるわけでございます。  ややこみいってまいりましたが、このような論理の立て方で考えてみますと、四十年度の税収の見積もりに大幅な差が出ましたのは、むしろ税収の所得弾性値が過大な見積もりであったというよりも、経済成長率が当初の予想よりも著しく低くなった点にあるかと思われます。昭和三十九年度の後半から経済の基調が従来の需要超過型から供給超過型に変わったという戦後の日本経済史上画期的な転換がありまして、このような転換期にぶつかったことが、税収見通しに誤差を生ぜしめた根本原因であろうかと考えるわけであります。   〔天野(公)委員長代理退席、委員長着席〕  このような税収の減に当面しました際の財政政策はどうあるべきかという点でありますが、私は、これは個々の冗費を節約して財源を浮かす努力は必要でありますが、支出の絶対水準を税収の減少に合わせて削減して予算の均衡をはかろうとする方式は適当でないと考えます。もちろん一般会計だけでなく、特別会計、政府関係機関、公団等及び地方財政を含めまして、ひとつ政府財貨、サービス購入といったようなもので考えるべきであるのでありますが、この伸び率を適正な経済成長率を維持するに足る適正な水準で維持しなければならない。したがって、一種のビルトイン・スタビライザーの発動でありますけれども、経済成長率が低下しまして、税収に不足を生じました際には、これはやはり何らか公債収入を計上することによって補てんすべきだ。これが財政政策としましては一応常道的な考え方ではないかと思います。一般会計国債収入を計上いたしますことは、昭和二十二年度以来十九年間やってこなかったことでありますが、今後数年の経済情勢考えてみますと、これまで経済成長をリードしてまいりました民間投資の伸びは、四十年度はほぼマイナスであろう、それから四十一年度はほぼ横ばい程度を大きく出ないであろう、四十二年度以降かなり回復するのではなかろうかというのが、現在大かたの予想ではないかと思うのでございまして、このような経済基調で、たとえばこの適正成長率が何%であるかということは、これははっきりしたことは申し上げられないのでございますが、一応現在実質で七、八%維持することが必要であるといたしますと、民間投資が大幅に減少している現状では、政府財貨、サービス購入が経済成長率よりもかなり上回まった水準で維持されなければならないということになるのは、一種の算術的な計算でございます。他方、税収の増加率は、税収の所得弾性値が当分はかなり低目に推移すると考えられますことから、結局一般会計でも当分国債発行せざるを得ない情勢であるというふうに考えられる次第でございます。  一般会計国債発行しなくてもいい時期がいつ来るかということは、これも見通しの問題でございますけれども、かりにそういう時期が来るとすれば、それは民間投資が著しく回復し、これに並行いたしまして、この民間投資を資金的に裏づけますために、日銀民間に対する信用供与が大幅に増加する時期でありましょうが、この時期が近づくにつれて、税収の自然増加が生じ、それにつれて公債の漸減政策をとることも可能になると思われるのでございまして、このような時期が到来するまでは、法人税収の伸び悩み、個人所得税収の高額所得層の伸び悩み等のために、税収の所得弾性値はかなり低くなるのではないか。しかしながら政府支出の伸び率はかなり経済成長率よりも高くならなければならない。税収の伸び率は経済成長率と同じか、場合によってはそれよりも下がることも理論的には考え得ると思うのでございまして、そうなりますと、やはりその差額は税収以外の財源、公債で埋めざるを得ない論理になるかと考える次第でございます。四十年度はこのように経済基調の転換期に当面いたしましたために、予期しない税収の不足を生じたのでありますから、一般会計の歳入不足を補てんするために国債発行せざるを得ない段階であろうかと考えます。  四十年度一般会計における歳入補てんの方法は三通り考えられると思います。第一は、財政法第四条に基づく方法、第二は、現在審議の御対象にしていられます特例法による方法、第三は、日銀の借り入れによる方法でありますが、このうち第三の方法は問題になりませんから、第一と第二が問題になります。  第一の、財政法第四条による発行もこれは可能であると思います。その場合には公共事業費、出資金、貸し付け金の財源として発行するしかないわけでありますから、税収減に相当する二千五百九十億円の予算の減額修正を行ない、あらためて二千五百九十億円のいわゆる建設公債発行する方法でありまして、私自身の一応学究的な私見によりますと、この方法のほうが、財政法をそのままにして適用するという、あるいは財政の姿勢を正すという意味では、あるいは常道ではないかと考えるのでございます。しかしながら第二の、特例法による歳入補てん公債という形式で発行がとられるとすれば、その理由は不況の深刻化しつつある現状において、政府支出のおくれが好ましくない、政府支出のおくれをそのままにしておきますと、不況はさらに一そう深刻になる、不況の深刻化しつつある現状におきまして、なるべく短期間にこの二千五百九十億円の減額修正を行なうということは、これはおそらく技術的に不可能ではないか、このような実際問題としての困難性という理由が、おそらくこの第二の特例法による方法をとられた理由ではなかろうかと私は考える次第でございます。とすれば、現段階において税収減に伴う歳入補てん公債発行はやむを得ないとするにいたしましても、これはあくまでも四十年度一回限りにとどまることを切望するものでございます。  歴史を振り返ってみますと、日本財政史上で一般会計に歳入補てん公債が計上されましたのは、昭和七年度予算からであります。井上デフレで有名な井上準之助蔵相の奮闘かいなく、経費の節減の努力を重ねましたあげく、世界不況に勝てずに昭和六年度からついに一般会計に赤字が出るようになったのでありますが、昭和六年度につきましては、震災善後公債法による公債発行で震災復興費をまかない、それで浮いた余裕財源で税収減による歳入補てんを行なったのでありますけれども、昭和七年度については井上蔵相も歳入補てん公債発行を覚悟しなければならなかったのでありますが、政権の交代で高橋是清蔵相によって昭和七年の六月の第六十二国会で歳入補てん公債の起債が認められた、そしてさらにその七年の秋に日銀引き受け発行方式が始められまして、それから昭和二十一年度予算に至るまで、すなわち昭和二十二年の財政法が制定されるまで一般会計赤字公債が計上されるようになった、そういう経緯があります。いわゆる高橋財政日本経済の世界不況からの脱出を容易にしたのではありますけれども、昭和六年度末六十一億円の国債が七年度以降、当時一般会計が二十億円前後でございますが、年々七億、八億ずつふえまして、昭和十一年度にはついに百億円を突破し、そうしてインフレーションの進行を阻止するために強硬に公債漸減政策への方向転換をはかろうといたしまして、この大蔵相は時流の前に立ちはだかったのでありますが、彼の力をもってしてもついに時の勢いをはばむことができなかったという、そのようなわれわれは過去の経験を持っているわけでございます。それで、昭和八年の衆議院本会議で高橋蔵相は次のような予算演説をしております。「政府ハ」「多額ノ公債発行ヲ豫定シテ居ルが為メ、ソレハ軈テ通貨ノ増発トナリ、」「必要以上二物償ヲ騰貴セシメテ、社會上由々シキ結果ヲモ招来スルニアラズヤトノ疑念ヲ抱ク者ナキニアラザルヤウ感ゼラルゝノデアリマスガ」、「日本銀行ヲシテ、一面二於テ産業上二必要ナル通貨ノ供給二遺憾ナキコトヲ期セシムルト同時二、他面所謂「インフレーション」ノ弊ヲ防止セシメントシタノデアリマス、故二日本銀行ハ其市場政策二依リ、手持公債ヲバ金融界ノ状勢ヲ洞察シテ、或ハ之ヲ市場二賣放チ、或ハ之ヲ回収シテ、緩急宜シキヲ制スルニ於テハ、通貨ノ流通ハ自ラ調節セラレテ、極端ナル「インフレーション」ノ弊二陥ルが如キコトハ、有り得ベカラザルコト・信ジマス」このような大蔵相の演説にもかかわらず、ついにやはり財政の暴走を招きましたことは、われわれは歴史上の苦い経験として覚えております。こういうことでありますので、このような過去の苦い経験にかんがみまして、やはり昭和四十一年度予算以降は財政法第四条の歯どめを残して、公債発行はいわゆる建設公債に限定し、かつ財政法第五条の歯どめをも残して国債日銀引き受けを禁じ、公募方式を堅持すべきではないかと思います。もちろん、財政の適正な規模を維持するために必要な公債は、一般会計国債に限定する必要はなく、政保債及び地方債をあわせて考えるべきでありまして、これらを合わせますと、四十年度でもほとんど一兆円になります。四十一年度には、これはおそらく、私自身の腰だめの計算でございますが、一兆五千億円くらいにはなる。純増ベースでもおそらく市中で一兆二千億円くらいの公募をしなければならないのではないか、このような事態でございますので、将来に禍根を残さないよう、国会の予算審議におかれましては十分に御賢明な御配慮を望みたいと存じますし、また、政府日銀当局におかれましても緊密な連絡を保ち合って、慎重な運用をされるよう希望したいと存じます。特にこれはこれまでの昭和二十九年度から昭和三十八年度、三十九年度あたりまでの財政日銀との関係と違いまして、この場合には金融のほうでオーバーローンがありまして、財政のほうにはビルトイン・スタビライザーがきいたのでございますが、これからは財政当局も日銀当局も、かなり経済予測に基づいて最良政策を行なわなければならない。そのようなことで、しかもその経済予測というものは、私どもの過去の経験からいたしまして、非常に当たらないことが多い、誤差が大きいわけでございます。このような点からいたしましても、慎重な一応運営を望みたいと思います。  次に、これは柄にもございませんし、蛇足になるかもしれませんが、財政政策の政治的側面といったようなものについて、私の痛感しているところをつけ加えさしていただきます。一般に政府のサービスは、国民の負担を離れて国庫の財源から捻出されるような錯覚を持つ向きもないではありませんが、結局いずれにしろ、これは国民の負担になるということでございます。したがいまして、もっと政府のサービスを望むなら、当然にその負担はいまよりももっと国民にかかってくると考えなければなりません。もしそのような自覚があるならば、これが財政の暴走への最良の歯どめではないかと考える次第でございます。今後民間投資が当分横ばいになるであろう、あるいは途中でまた活況を呈することもあるかと思いますが、ここ二、三年についてはかなり低水準で推移することが予想される。それに、すでに過剰生産でございますから、新しい需要を振起するためには、道路あるいは住宅といったような、あるいは都市の再開発、上下水道の整備、このようないわゆる財政基盤の拡大が必要でございまして、ちょうど民間投資がほぼ鎮静している時期に、このような社会的間接資本の拡充をやはり心がけるべきではないか。ただし慎重に行なってほしいのでございます。  もう一つは、公共投資を行ないます場合に、単に金額の問題だけじゃなくて、土地問題に十分な御配慮をなさらないと、結局地価の騰貴に食われまして、意図として望ましかったはずの財政政策があしき所得分配におちいることはないか。結局財政民主主義と申しますものは、その財政機能が十分に経済の発展とともに国民の福祉に貢献するという国民の信頼がなければならないわけでございまして、この際やはり社会保障あるいは住宅等について一大進展を御配慮になられまして、国民大衆に将来への夢を与えていただきたいと思うのでございます。夢が与えられますならば、やはり不調整についても国民は必要に応じてあるいは耐乏に協力するのではないか、そのように感じる次第でございます。  簡単でございますが、これで終わります。     —————————————
  66. 吉田重延

    吉田委員長 質疑を続行いたします。平岡忠次郎君。
  67. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 時間の制約がありますので、きょうは私は証券取引審議会を代表してこられました河野さんに対しまして、二、三の質問をいたそうと考えております。  国債の季節の到来を迎えまして、証券業界は何をもって最重要施策としてこれに対応せんとしているのか、具体的施策につきましてその腹案を述べていただきたいと思います。たとえば、引き受けシンジケート団の構成のあり方については、強く本来的には募集引き受けを行なうアンダーライターによって構成することがたてまえであるという主張があってしかるべきだと私は思うのでありますが、引き受けの主体的構成がむしろ銀行側となっていることについてどう思っておられるか、この点について御所見をお伺いしたいのであります。もっとも、証券業界はついこの間まで破産を銀行側によって免れることができたという負い目から筋を通し得ないというのはいかにもふがいないことと思われますが、往年の銀行局長、理財局長として君臨した河野通一さんとしてはファイトがなさ過ぎるのではないか。大蔵委員会はあなたのいわば古巣であり、ホームグラウンドでありまするから、きょうは思い切ってこの重要課題につきましての御意見を開陳していただきたいと存じます。
  68. 河野通一

    ○河野参考人 証券業界が国債発行という環境のもとに、本来の機能を果たすためにどうしたらいいかという問題でありますが、これは非常に大きな問題でありますし、私どももこういった問題についていろいろ検討をいたしておりますが、やはり結局一番必要なことは、証券業界、ことに証券会社というものがその体質を強化し改善して、その機能を十分果たせるような基礎をつくるということではないかと思うのであります。そのためにはどうしたらいいかということは、これはもう平岡さんもよく御承知のように、それは長年にわたってなかなかむずかしい問題ではございますが、その第一歩として、先般国会の御承認があって、法律の改正によってだんだんそういった方向へ、いいほうへ急速に進んでいくのではないか、私はかように考えております。  それから、その中で、いま御指摘になりました国債の引き受けシ団というものの構成を一体どういうふうに考えたらいいのかという点につきましては、先ほど私が申し上げましたように、証券取引審議会といたしましては、シ団の構成は、本来のあり方として、それはアンダーライターをもって構成すべきである、アンダーライターとして構成されるシ団というものは、これはよその例でもそうでありますが、御承知のようにアメリカでもドイツでもみなそうでありますが、銀行を排除してはいない。銀行を排除してはおりませんが、やはり証券会社というものがその主体にならなければならないと思います。しかし、主体になるということは、先ほど来お話のありましたように、証券会社の機能が十分に発揮できるような条件なり素地なりというものが整うことが必要である。ところが、遺憾ながらいろいろな点から考えますと、まだ私どもとしては、証券会社がそこにおいて唯一でないまでも、主たるアンダーライターとして機能するにはまだ十分な力なり素質ができていないのじゃないかと思います。したがいまして、あるべき姿といいますか、将来においてはそういうほうへだんだん近づけていくということが必要ではあろうけれども、当面としては、応募者、まあ引き受け者といってもいいのですが、主たる大きな応募者である金融機関等においてもそれがシ団に入ることは、私は現実において必ずしも悪いことではないと考えております。ただ、これは程度問題でありまして、シ団に入る、そういったもろもろの金融機関の数なり種類なりというものはあまり多くないほうがいいと私どもは考えております。問題は、結局現実問題として、これは皆さん承知のように、引き受け手数料あるいは募集取り扱い手数料というものがどういうふうに配分されるかという実体論、実益論と申しますか、そういう問題にも関係いたしてまいるようでありますが、こういった問題は必ずしもそれがシ団に入ることによってのみ解決できる唯一の方法ではないと私は考えておりますので、そういう問題が解決を要するならば別の方法で解決ができるはずではないかというふうに考えておりますので、私はシ団の構成の種類なり数なりというものはあまり多くないほうがいいと考えております。
  69. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 公債発行にあたって重要な事柄として歯どめ論があるわけです。そこで、金融面からの歯どめとしては、国債日銀引き受けではなしに市中公募による市場消化ということが望ましい。しかし、現実にその能力に見合うところの適度な一定の限度があるということ、これは先ほど舟山参考人からの陳述にもあったとおりであります。そういうことではありますが、現実に二千六百億円の公債発行が突如としてここに問題となったわけです。政治的日程にのぼったわけであります。したがいまして、金融界にしても証券業界にしても、これは突然に対応しかねるから、なるべく政府資金運用部資金等において消化をしていただいて、自余のものをという、そういう態度であるやに聞いております。私詰めた公式な数字を聞いておらぬのですが、この二千六百億円のうち、仄聞するところによりますと、資金運用部資金において千四百億円、自余の千二百億円を市中消化に充てるべしということがおおよそ合意されておるやに聞いておりますが、その真相はどうであるか。それから、なお、もしそれが真相であったとしても、千二百億円ならば円滑に消化できるという、そういう見込みがあってシンジケート団がこれに合意しているのかどうか、この点につきましてお尋ねをしたいと思います。
  70. 河野通一

    ○河野参考人 せっかくのお尋ねでございますが、どうもそういった問題について実は私はお答え申すだけの材料も持っておりません。それから、、それに対していろいろ個人的には若干の見解も別にないではございませんが、証券取引審議会としてそういった問題をどう考えるかということになりますと、遺憾ながら私具体的にいま千二百億円のものが市中消化できるかどうか、市中といいましても、金融機関も含めてできるかできないかという問題につきましては、私ども現に検討をいたしたことはございませんし、何ともいま申し上げることはむずかしいと考えております。
  71. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 消化額の量の問題に対してはいま答える時期ではないし、その材料を持ち合わせておらぬ、かような仰せであります。  そこで、私は消化の質についてお尋ねしたいのであります。公債は、発行しましたものができるならば個人消化等によって定着することが望ましい、私はかように考えるものであります。そこで、機関投資家による消化及び個人消化の促進が必要であると考えます。その点、日本銀行への、言うなれば帰巣本能の強烈な伝書バト的な銀行業界側よりも、むしろ帰巣性においては鈍なることは土バトに近いところの証券業界側にわれわれは大きな期待をこの意味では寄せたいと思います。証券会社のこの機能を伸長するためには、したがってどうしたらよいのかということが私どもの関心事なのであります。その点につきまして、あなたの御所見を承れれば幸いだと存じます。
  72. 河野通一

    ○河野参考人 国債金融機関以外の機関投資家あるいは個人の手で多額に消化され、それが安定的に保有されることが望ましいことはお説のとおりでございます。ただ、わが国においては、個人の所得の状況あるいは金融事情その他の状況から見まして、まだ国債が非常に大きなウエートでもって直接個人の手で保有されるということは、いま直ちに私は期待されることはなかなか困難だと思います。しかし、これはできるだけそういう方向に持ってまいるということが必要であろうと思いますが、ただそのために証券会社がいろいろなことをしなければならない、またその姿なり体質なりというものを改善しなければならぬということは事実でありますが、公債の個人消化を進めるために特に何をしたらいいかという問題は、私は証券会社としては特別にはないと思うのでありまして、証券会社が持っておるいろいろな機能を発揮するために最も適当な体質の改善あるいは機能の強化ということをやることが、その証券会社の本来持っておる仕事の一環としての国債消化についてやはり役立つのだ。したがって、国債の個人消化のためにいろいろ具体的なことをやるということよりも、証券会社が本来持っておる機能を充実し強化していくということのための施策を強力に進めていくということが本筋ではないかと考えております。もちろん、証券会社は今度新しく出る国債の個人消化について非常な意欲を燃やしておるようであります。いろいろ具体的に各社の中であるいは協会の中でいろいろなセクションを設けて非常に意欲的にこれらの問題について検討し推進をしていきたいということを言っておるようでありますから、こういうことはいまの根本問題とは別に、大いに促進していくことが望ましいことは言うまでもないことであります。
  73. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 次にお尋ねしたいのは、株価の先見性についてであります。御承知のとおり、九月決算は増収減益にあらずんば減収減益であったわけでありまして、まだまだ五千億円の株式のたな上げを解除できる状態ではございませんし、引き続き来年の三月決算もこの路線を踏襲するものと思われるのであります。それにもかかわらず、最近の株式市場の活況、ダウの顕著な上昇、これはどういうことを先見しているのか疑問なきを得ないのであります。私は、株価の先見性ということがあるとしても、現在の株高が何を先見しておるかという点について多大な疑問を持つわけです。この点につきましてお教えをいただけましたら幸いです。
  74. 河野通一

    ○河野参考人 私は平岡先生に株の先見性についてお教えを申し上げるような資格もありませんし、知識も持っておらないのであります。特に、私は証券関係にいろいろ頭を突っ込んでおることは事実でありますが、株価ということについて私自身よくわからないことが実に多いので、そのわからない私に先見性とは何ぞやと言われても実に私は迷うわけであります。いま非常な過渡期にあって、証券業界自体もその辺が非常な過渡期にある、長い間の沈滞からようやく出ようというような空気が投資家の中にもある、証券業者自身にもある。そういう中で、ある程度の上下が理論と離れていろいろ出てくるということも、これは免れないような現状じゃないか。私自身は実はあまり株価の上下に関心がありませんので、この点について深く御説明を申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  75. 平岡忠次郎

    ○平岡委員 先ほど私は非常に悲観的な材料を申し述べました。それから先見性ですけれども、来年度あたりは輸出がうんと伸びていくんだというようなことがあるならば、これまた先見性がまともにあらわれているというふうに考えていいと思うのです。しかし、日本の輸出の実相というものは、最近まで非常に上昇過程をとってきたわけですが、これは主として海外の経済環境にささえられたという僥倖に起因すると思います。具体的に言いますと、日本の輸出の三割を消化するアメリカは、この十二月まで五十八カ月間にわたる長期間の好景気を持続してきたのでありますけれども、連邦準備銀行の公定歩合引き上げをきっかけにいたしましてようやく景気過熱の収束の段階に入っております。さらに、日本の輸出の五〇%を吸収した低開発国の輸入は、この一両年は非常に低開発国自身の輸出が伸びたためにドルを持っておった。そのために日本の非常に大きな輸出を十分吸収する余地があったわけでありますが、これは政府経済白書によっても明らかなように、このアップワードトレンドは今や全然期待ができないということになったわけです。ですから、輸出の展望という点から先見性があるとも思われないのです。結局とどのつまりが、今回の赤字公債、引き続いての来年度からの長期かつ多量の公債発行を展望して、インプレーテッドマネーよりはと国民のほうがあきらめて、資産内容や収益内容が悪くても株式を選ぶであろうという悲しむべき消極的先見性が積極的にあらわれているのじゃないか、こういうふうに思うのですが、どうでしょう。
  76. 河野通一

    ○河野参考人 どうも私はそういうほうはしろうとでよくわからぬのでございますが、長い目で見た株価のトレンドということについては、いまお話がありましたような経済の実勢であるとか、輸出がどうであるとか、あるいは企業自体の収益の見通しがどうであるかという長いトレンドとしては、私はある程度関心もあるし、意見もあります。しかしながら、短期的なその日その日の株が上がる下がるといった、そういう問題とは、これはいいことかどうか私にはわかりませんが、それとは関係のない動きをしておるから、そういうことについて、先ほど来、こうだということは私には言えないし、私にはあまり関心がない、こういうことを申しておるわけであります。
  77. 吉田重延

  78. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 舟山さんや河野さんのことはもう十数年聞いておりますから質疑しませんが、肥後先生に少し伺いたい。  日本予算制度、また今度の公債発行についていろいろ問題が起きたのでありますが、どうも日本予算制度というのは、実際は大蔵省の原案があって、最後は与党が予算のぶんどりをやるということが続いて、田中さんが大蔵大臣をやっておられた三年間ぐらいは、自然増収にいい子になってずっとやってきて、にっちもさっちもならなくなってきたので、公債を出す。普通ならば、これは当然内閣が瓦解するところでございますが、どうも残念ながら社会党が弱いので、百八十人持っておれば当然社会党が天下をとって解散を打つのですが、なかなかそういうわけにはいかない。おそらく舟山さんや河野さんあたりは大蔵省のベテランですが、大体いまの予算の編成、それから税金の問題などもほとんど大蔵省がやっておる。自民党にも優秀な人がたくさんおりますけれども、実際は日本の政治は官僚政治といわれるゆえんがそこにあるのじゃないか。しかも予算の膨張する点は、むしろ大蔵省が押えて、与党はほとんどそういうことにはかかわらず、ただ予算をとるというような、そういう形がずっと続いてきていると思うのです。そういう点で、肥後先生御承知のように、今度のような赤字公債を二千六百億円出すということになっておりますが、どうも自然増収があるというのがふしぎなんで、それが例外的なことだと思うのですが、それがいままで自民党の政府自然増収があることをいいことにして、やたらいろいろなことをやってきたと思うのです。そこに今度こういう財政の破綻が起きたと思うのですが、こういう点についてはどうでしょう。どういうようにお考えになっておりますか。簡単でけっこうでございますから、お伺いしたいと思います。
  79. 肥後和夫

    ○肥後参考人 どうもほんとうに組織を代表するものでございませんで、自分の研究室で、ただ自分なりに頭をひねって考えているということでございますので、こちらに列席になっていられますような大ベテランと違いまして、ほんとうの私見になってしまうと存じますが、ずっとデータを洗ってみますと、大体三十年度という年度は、二十九年度よりも租税及び印紙収入は減っている年でございます。それから三十三年度も三十二年度より減っている年でございます。そういう意味で、前年度よりも税収が減った年というのは、前にもあるわけでございますけれども、もっと長い目で見まして、二十九年度から三十七年度あたりまでの経済成長、あるいはその中での循環を見てみますと、大体これは、先ほども申し上げましたように、民間投資が経済成長率よりもかなり高い水準で推移した。この民間投資の高水準の推移は、これは企業家が非常に楽観的な強気な期待を持ったとか、あるいはシェア競争があったとか、あるいはそれにやはり金融機関のほうのシェア競争があったということもあるでございましょうが、しかし、結果としては、日銀の信用供与を裏づけとしてオーバーローンが行なわれた。オーバーローンによって民間投資が伸びたから、それで自然増収が生じて、自然増収が生じたから、いわゆる健全均衡予算を組めたという結果になる。それで、年度によってでこぼこがございますけれども、あまりにも簡単な素朴な試算で所得弾性値が一以下になっているケースがございますけれども、結局二年越しに自然増収が繰り越される、決算剰余金で繰り越されますので、大体ならしましてかなり高水準の余裕財源を獲得できたと思うのでございます。ところが、三十九年度には、大ざっぱに申しまして、ほとんど剰余金はない。したがいまして、四十一年度からは剰余金はないし、それから民間投資が低下いたしますから、税収の伸びは期待できないわけでございます。ただ、民間投資が減っておりますときに財政も一緒に減らしますと、これはたいへんなデフレになりますし、現在四十年度でも、おそらく実質成長率は二、三%ではないかという予想でございますが、実質成長率二、三%と申しますと、ドッジラインのあとの二十五年度と、それから三十三年度が三%ぐらいでございますから、やはり相当なショックを受けているわけでございまして、さらにこれに財政を落としますと、これはたいへんでございますから、一応財政は、まあ適正成長率がどうかわかりませんが、これは一応ここ二、三年経済成長率を七、八%と見るなら、それより高めで、一応のところで、数年の長期的な展望に立って適正な支出について御審議になる。まあ、おそらくその間は税収のほうはそれほど伸びないのじゃないかということなんでございますけれども…。
  80. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 当然単年度予算も、非常に日本の特殊的な財政——まあ財政民主主義というような新しい憲法も行なわれるはずであったけれども、実際は旧態依然のものじゃないかといわれておりますけれども、そこでいろいろわれわれが心配しておる点は、ことしも赤字公債が二千六百億円出る、四十一年度からは建設公債というふうに名前を変えて、相当公債が出るということになると、結局、一たんせきを切ったこの公債というものは、それはとめることができない。おそらく四、五年ぐらいは続くのじゃないか。そうすれば、これは財政的に破綻をするから、そのときは社会党の天下がくるだろうといわれておりますが、そういう無責任なやり方政府はやる。去年までは佐藤総理も絶対公債発行しないと言っていたのですが、やってみるとこういうようなことになってくるというようなことになるわけですから、私はその点でまあ一点だけにしぼってお願いするのですが、インフレとどういう関係があるか。公債発行してもインフレにならぬというような声も、まあ大蔵大臣あたり言っておりますけれども、一番問題になるのは、インフレで急場を救っていくという考え方は、これはいまの日本の資本家の中では一番いい方法だというように考えておる。困るのは、これは大衆が泣くだけでございます。そこで、インフレにならぬというあれがあるのかないのか。私たちはインフレになるという心配を持っておるのですが、この一点だけ肥後先生にお願いしたいと思います。
  81. 肥後和夫

    ○肥後参考人 それでは自由な立場で述べさせていただきます。  いままでの物価の推移を見てまいりますと、大体二十二年度までは財政インフレーションでたいへんな物価騰貴があったのです。二十四年のドッジ・ラインから、要するにインフレの原因は財政だ、一応単一為替レートを設定しまして、物価を安定させるために財政の総合収支の均衡を守れということで、これは残念ながら占領軍の指導下で一応均衡予算をやってきたわけであります。それで物価の騰勢だけはおさまったのですが、かなり高水準の騰貴をしておりまして、間にまた朝鮮動乱が入りましたから、結局卸売り物価と消費者物価が安定したのは三十年くらいだと思います。二十八年、二十九年の引き締めを経て一応三十年度くらいから安定しておるように思います。あと大体経済成長率の循環に対応しまして卸売り物価は変動しておりますけれども、それほどの上昇もありませんし、成長率が下がりますと卸売り物価も下がっているということで、ここ三十年以降十年間くらいを通して見ますと、ほぼ横ばいであるといってよろしいかと思います。消費者物価のほうは、大体三十五年度から年度の成長率三%の水準をこえるわけでございますが、データを洗ってみますと、大体二十九年度から三十年度まで個人消費の前年度の伸び率と消費者物価の前年度の伸び率とは非常に密接な相関をしております。これをどう見るかということでございますけれども、とにかく、これは要するに両方に関係があるということで、原因結果についてははっきりしませんが、個人消費の名目の伸びが非常に高い時期に消費者物価の伸びも非常に高くなりまして、そういう関係は少なくとも三十九年度までは続いております。それで、これについて個人消費が伸びたから消費者物価が騰貴するのだという見方も、あるいは成り立つかもしれませんし、あるいは一般に経済学者が言っておりますように、やはり高度成長で労働の需要が急激に伸びて賃金の平準化が行なわれた、そうしますと、生産費が上がりますと、大体需要の弾力性のない食料品その他のおくれた分野ではどうしても価格の値上がりになってくる、こういうようなことでありますから、やはりコスト・プッシュ・インフレーションと申しましても、最終的にはデマンド・プッシュ・インフレーションだ、総需要の増加があったからやはり急激な増加があって、しかも経済構造がそれに適応するのに十分な時間が与えられなかったから騰貴があった。しかしながら、もし消費者物価を安定させようというのであれば、経済成長率をあまり高くするということはやはり問題があるのではないか。それから、先ほどもほかの方から御意見がありましたように、輸出の伸びもそれほど強気には見込めないかもしれない。あるいは経済協力もあるというようなことになると、かなりこの転換期では慎重にしなければならないのじゃないか。消費者物価については、これは特に四十年度が大幅に騰貴しましたので、悲観的な見方がかなりあると私は思うのですけれども、ここ二、三年という点で見ますと、いま御心配になられておりますように、公債発行がとうとう歯どめがきかなくなって暴走するようなことがありません限り、これは最終的には国会において十分なコントロールをなさらなければならないと思うのでございますが、そのようになさいまして成長率が適正に推移するならば、一応社会的な資本の充実と並行させまして、消費者物価の安定ということも可能なのではないか。特に卸売り物価は横ばいでございますので、むしろ消費者物価に直接刺激を与えるような消費の伸ばし方よりも、住宅のような、もっと将来に夢を与えることのできるような社会的、公的な消費を伸ばす、そうすることによって消費者物価を騰貴させないで、しかも適正な財政支出を計画できる。もちろんこれは国会において十分な御配慮がなければ不可能だと思います。そのように考えております。
  82. 佐藤觀次郎

    佐藤(觀)委員 御承知のように、来年度は米の値上げ、公共料金の値上げ、それから郵便料金、私鉄、その他物価の上がるような情勢がたくさんあるわけですね。それに加えて赤字公債が出るというようなムードだけでも、これは相当そういう点を刺激するのではないかと思っておるのですが、この点について、来年は相当物情騒然だとは言わざるも、ある程度まで不安な人気が続くのではないかと思うのですが、この物価の問題について、簡単でけっこうでございますが、最後に一点だけお伺いしたいと思います。
  83. 肥後和夫

    ○肥後参考人 私が申し上げましたのは、むしろ計量的な分析の面でございまして、所得倍増計画が暴走したその理由というのは、やはりムードにあったわけでございますから、かりに公債発行が安易なムードを刺激するとすれば、やはり暴走する危険があると存じます。量的に申しますと、公共料金の物価に関する経済論理だけについて申し上げますと、経済理論的には公共料金の値上げは一種の間接税の効果と同じだ。間接税の効果でありますと、これは確かに消費者物価を一時引き上げる効果を持っていると思いますが、消費者物価の値上がりが最終的にはやはり総需要の増加によって誘因されておるのでありますと、やはり間接税の引き上げは消費を押える効果もあるわけでございますから、直接税の増税の場合と違いまして、間接税の場合には一回限りの物価騰貴の刺激はある。所得税の場合には、物価騰貴を伴わないで、消費需要を押える。間接税の場合には一回限り消費者物価を引き上げて、あと需要を抑制するというようなことになるかと思います。それで、最終的には、やはりこういうような時期でございますから、経済論理の面だけで言えば、総需要を暴走させるということは適当でないのでございまして、やはりある意味では、結局相対的な問題ですが、過去の高度成長に比べますと、やはり国民に耐乏を要請することになる。それであるからこそ、財政がその機能において国民の将来の福祉について大きな夢を与えるような、そういう実質的な内容を持ってほしい。やはり問題はその内容であると思うわけでございます。
  84. 吉田重延

    吉田委員長 堀昌雄君。
  85. 堀昌雄

    ○堀委員 時間がございませんから、一つだけお伺いをしておきたいと思いますが、今度の市中公募市中消化——私、昨日予算委員会市中公募という話をしたら、大蔵大臣は、私は市中公募と言った覚えはない、あれは市中消化ですと言うので、市中消化市中公募というのは違いがあるのかどうか。これをひとつ金融制度調査会と証取審議会の側として話してもらいたい。これは皆さん方の資料にも市中消化とあったり市中公募とあったりするのですね。私は市中公募だと思っていたら、大臣は市中消化だということです。市中公募というのは、公募ですから、原則的には明らかに買うものの意思が働くことだと思っております。それでシンジケートに全部買うものを入れちゃって、それは証券会社を通じて一部大衆にいくでしょうけれども、九三%くらいもシンジケートへぽんと渡すというのを消化というのならわかるのですが、公募じゃないような気がするものですから、そこでちょっとそういう議論をしたら、いや、私は市中公募と言った覚えはない、市中消化だ、こういうことなんです。ひとつ舟山さん、河野さんから……。
  86. 舟山正吉

    舟山参考人 御指摘の点はあまりふだん研究したこともないので面くらうわけでありますが、市中公募というのは、お話のとおりプライベート・イシュー、つまり公社債を発行してそれをあるところへ直接はめ込む、そういうのと違って、買いたいものは買え、公開する、こういう意味だろうと思います。それから市中消化は、結局市中に消化するなら——政府機関に落ちつくのでなくて、民間の市中のものに落ちつくならば、これは市中消化である。あるいは同じことを二つの表現で使うということもあり、あるいは若干違った用法もあるかと思いますが、これはいまの思いつきの解釈でございまして、必ずしも自信はございません。
  87. 河野通一

    ○河野参考人 私も法律的なことばの意味はあまり詳しく存じませんが、ごく俗に言えば、市中消化というのは、募集のやり方の方法のいかんにかかわらず、たとえば中央銀行であるとか、あるいは政府といいますか、そういうもの以外のところで持たれるということが市中消化と俗に言われていることばであって、公募というのは、先ほど舟山さんからもお話がありましたように、やはり私募に対する公募だと思います。したがって、私募も公募もどちらでもそれは市中消化になるわけですから、私募であろうと公募であろうと、市中消化ということと両方関係しておる意味において、公募よりも市中消化といったほうが広い意味じゃないか。これは想像だけですから、大蔵大臣がどういうつもりで言われたのか私にはわかりませんが、おそらくそういう意味ではあるまいかと想像いたします。これは想像でございますからわかりません。
  88. 堀昌雄

    ○堀委員 肥後さんにお願いいたします。
  89. 肥後和夫

    ○肥後参考人 これは私も全くわかりまん。大ベテランに解釈をおまかせしたいと思います。
  90. 堀昌雄

    ○堀委員 実は昨日もちょっと議論をしたのは、私は市中公募という姿が本来のあり方ではないかと思っております。ということは、金融制度調査会のほうの答申は、できるだけ買うものをたくさん入れろということになっているわけですね。そして証取審議会のほうは少数のほうがいい、こういうふうになっている。私はものの考え方からするならば、現在確かにオープンマーケットがないわけですから、ある程度割り当て的傾向はやむを得ない。現状の問題として、論理としてやむを得ない。その場合の限界は少なくとも順ざやの範囲にとどめるべきではないか。要するに、都市銀行、地方銀行までは資金コストから見て公債の利回りは順ざやでありますから、ここは多少無理に押し込んででも、そんな大ぷ純被害は受けないで済む、しかしそれ以外の生活以下は、私は逆ざやだと思っております。信金、相互銀行、農中まではコストから見たら逆ざや、逆ざやのものに無理に持たせるということは、これは厳密に言うならば、私がもし信用金庫の組合員であったとすれば、そのシンジケートに入った信用金庫の理事長を背任で訴えて裁判ができると思うのです。これは明らかに自分の意思で買うならいいですよ。自分の意思で、余資がありますから買いますというのなら、その責任はないと思うのです。しかし、シンジケートに入るという行為は、明らかにもう逆ざやなものを引き受けますという一つの契約行為が先に成立するわけでして、それは信用金庫側の自発的な意思を越えたものが作用することを承知をしてシンジケートが入るのですから、こうなると、相互銀行の株主でありその信用金庫の組合員である者がその責任者を背任で訴えた場合には、これは法律論争ではありましょうけれども、私は論争になる余地のある問題だと思っております。そこで、少なくともシンジケートのあり方というものは、証券会社と市中銀行と長期銀行と地方銀行くらいまでに限るべきで、その他は証券会社を通じて自由なる意思に基づいて買ったり買い控えをさせたりするというのが正しい姿じゃないか、私はこう思うのです。証取審議会のほうの意見に私のはやや近いと思うのです。舟山さん、金融制度調査会は一体こういう考え方に対してどういうふうに御理解になっておるか、御参考までに……。
  91. 舟山正吉

    舟山参考人 金融制度調査会答申ではその辺は深く掘り下げて表現してございませんけれども、考え方といたしましては、有価証券の販売につきましては、先進国ではお示しのとおり、少数のアンダーライターで引き受けるということでありますが、その際にはアンダーライターが自己保有分は自分の手元にとどめまして、あとは売り歩くわけでございます。ところが、日本の有価証券消化の現状を見ますと、個人消化は微々たるものであって、実際問題としては、有価証券は大口に金融機関に保有されておる、こういうことでありますので、この実態に着目いたしまして、現在のところは大口消化先シ団に入れまして、それらの意見公債条件決定等に反映させていくことのほうが公債消化が円滑にいくであろうという考えに基づいたものであります。  そのほかに、なおこれはそんたくになりますが、証券会社から公社債を買いまして、わずかであっても募集手数料等を差し引かれるということはおもしろくない、まるまる手数料はシンジケートに入ってもらいたいというような動機も働いておるかもしれぬということは認めざるを得ないと思います。それでありますから、金融制度調査会シ団範囲等に対します考え方は、現在の段階ではそのほうが国債消化を円滑ならしめるであろうという立場に立っておりまして、将来のあるべき姿を必ずこうでなければならぬときめたわけではないのであります。
  92. 堀昌雄

    ○堀委員 そうだとすると、やはりあるべき姿はいま私が申し上げたようなことであるべきだ。現状を、百円について五十銭の手数料をやって、逆ざやを少しでもカバーしてやるという親心、こういうことでございましょうか。
  93. 舟山正吉

    舟山参考人 そこまでは考えてはおらぬのでありますけれども、ただシンジケート・メンバーは地方銀行なら地方銀行、相互銀行なら相互銀行の総代格のものが入りまして、そうしてそれらの引き受けるものについては、仲介者のさやなしにまるまる消化先に与えるという方法もあるわけでありまして、政府保証債については一部そういうふうな例もあったかと承知しております。
  94. 堀昌雄

    ○堀委員 もう一つは、私は今後の公社債市場の問題なんですが、昨日は、私も総理に、あなたの在任中にひとつ金利の自由化をやりますか、やります、これは一本とりましたから。これがなければ、どうしたって公社債市場なんかできませんから、総理、安定成長というけれども、資本主義で安定成長というのは、金利のプライス・メカニズムの働かないところに安定成長はあり得ない。あなた、口で言うだけではだめだというものですから、どうもやるということに踏み切ったようでありますが、これはきわめて政治的な問題であります。ですから、私はやはりそうは言いながらも、公社債市場というのはなかなかむずかしいと思っております。そこで、皆さん答申は、いずれも公社債市場を何とかしなければならぬということになっておるのですが、具体的には、では、いまここで、政府は政保債の根つけをやるとかいろいろ考えておられるようですが、具体的に解きほぐすのはどういう形でやっていくのか。最後のところまででなくても、当面の解きほぐしのプログラム、こういうものについて金融制度調査会なり証取審議会はどういうふうにお考えになっておるか、これだけを伺って、私は終わりにしたいと思います。  それから肥後先生、いまの件について、学者の立場としてはどこから解きほぐすべきかということについてちょっと伺いたい。
  95. 舟山正吉

    舟山参考人 公社債市場育成、それから、それまでの経過的措置としての国債の流動化の必要ということは、制度調査会でも指摘しておりますけれども、その具体的な方策につきましては、まだ深く研究もしておりませんし、あるいは証取審議会のほうの問題であると思います。
  96. 河野通一

    ○河野参考人 公社債市場の非常に具体的な方法、これはいま御指摘がありましたところで何とかいきたいということで考えておりますが、具体的な方法というものはそんないい手はなかなか私はないと思います。結局、その市場において売買が円滑に行なわれ——ということは、裏から言えば、価格が妥当な価格で公正にきまる。つまり、妥当な価格であれば自由に売る人は売れる、買う人は買えるというところへ持っていかなければならない。具体的な方法は、先ほどお話がありましたように、根つけをます始めて、それからいよいよ市場に上場するという、そういう形式的な段階.はあるでしょうけれども、それだけで、形式を踏んだからといって、実際市場ができるわけではないわけでありまして——決して形式的にできるということを申し上げておるわけではありません。これらの問題につきましては、われわれとしても、今後この問題について具体的にどうしていくかということは、従来からたびたび具体的な建言もいたしておりますけれども、今後も研究いたしてまいりたいと思います。ただ、今後も研究するというほど実はのんびりした問題ではないので、公債発行ということがほんとうの意味でできるためには、公社債市場というのは並行して、あるいはむしろ先行してできておらなければならぬというのがほんとうだと思いますけれども、いま間に合いませんので、できるだけ早くそういうことにしたいと思います。  それから、先ほど舟山さんからちょっと答えられたところで大体尽きておると思いますが、公社債市場の樹立の問題を含めて私の感じを申し上げたいと思うのでありますが、市中消化とか市中公募とかいう話に関連して私が考えておりますところは、逆ざやになるという問題、それはシンジケトに入ったら背任罪になるという問題とは私は考えておりませんが、これはもちろんいろいろな考え方があると思います。おわかり願えると思いますが、ただ私は、消化という名において実際は押しつけられる、実際は一方的に割り当てられるということのほうが実態的に問題があると思う。これはむしろシ団の構成がどうであろうとか、逆ざやになるかならぬかという問題と別だと思います。と申しますことは、逆ざやということは、支払い準備金を持つ場合には、ある部分においては逆ざやということが当初はあっても理論的には差しつかえないと思いますから、そのこととは別に関係はないと思うけれども、公債がいやしくも市中消化され、それが市場に自由なルートを通して円滑に流通するというためには、私は公債発行されたスタートにおいて、それが押しつけられるとか割り当てられるということがあってはならない。その点がむしろ今度の公債消化という問題あるいは募集という問題についての一番のポイントではないかというふうに私は考えます。
  97. 肥後和夫

    ○肥後参考人 重ねて申しますが、ほんとうに研究室で、かってに自分で議論をこねくり回しております者の、まあ気がねのない意見として、あるいはある意味では無責任なことになりますでしょうが、お聞きいただきたいと思います。  一応金利のプライス・メカニズムを回復すべきだというお話は、全くごもっともなことだと思います。ところで、金利のプライス・メカニズムが回復されるその経済的な条件でございますけれども、これはちょうどその適当な水準で資金需要と供給が大体バランスしなくちゃならないわけでございます。過去、三十八年に日銀が、一応国際収支の是正といったようなことから引き締めを始めましたときには、窓口規制をやったわけでございますが、これは要するに、経済の論理といたしましては、潜在的に資金需要が非常に強かった。したがって、もし需要供給のひとしいところに金利水準を落ち着かせるとなりますと、非常に高い水準に落ち着かざるを得ない。そのような水準ではやはり民間投資の適正な伸長を期待し得ない。これは終戦直後の米の配給割り当て制と同じでございますけれども、結局、米の需給が極端にアンバランスな場合には、公定価格で配給するよりほかにないわけでございまして、過去の金融市場の根本的な性格一つには、そういうような資金需要が潜在的にきわめて強く、したがって、実質的には公定価格での配給割り当て制をやらざるを得なかったというような面があったと思いますが、ただ、最近のように民間投資需要が沈潜してまいりますと、確かに一応適正な水準でプライス・メカニズムを回復する努力が実を結ぶ、そういうような措置ができてきたと思うのでございます。ただ、一応今後の問題につきましては、やはり金利資金需要と供給の見合うところできまるわけでございますから、資金需要が、いわゆる資金需要需要者の一人として今度は財政も介入するわけでございますけれども、財政が大幅な公債発行によって一応需要者として介入してきました場合には、あるいは再び逼迫する可能性もあるかもしれません。かりにそうなりました場合に、やはり金利体系を正常化するとしますと、日本銀行からの信用供与量を大きくしなければ、すなわち資金の供給をふやさなければ、金利水準は適当な水準に落ちつかない。しかし、そのようになりました場合に、はたしてそれが適正な経済成長率を確保できるかどうかということは疑問でございますから、金利体系の正常化を一応促進し、公債市中消化をさらに進めていくためにも、やはり経済成長率を適正な水準に維持する努力を必要とします。そういう意味で、公債発行についても慎重な御配慮が要るのではないか。ただ、その資金公債市中消化については、要するに買い手が十分に引き合う値段でなければ進んで消化しないわけでございまして、そうでなければ、やはり従来の政府保証債のような、要するに相対ずくで、相談ずくで引き受けさせるようなことになってしまうかと思いますが、しかしながら、一方ではやはり現在自由化段階に入りまして、きびしい資金の効率的な配分と申しますか、やはり経済構造の体質改善をはからなければならない。そういう意味では、たとえば当面大口の需要者でありますところの金融機関におかれましても、一方では引き合わないから金利を上げろという、それもありますけれども、もう一つは、やはりその資金コストを下げる努力をされるべきではないか、両方相まって公社債市場育成されるのではないか、そう考えます。
  98. 堀昌雄

    ○堀委員 終わります。
  99. 吉田重延

    吉田委員長 春日一幸君。
  100. 春日一幸

    ○春日委員 久しぶりに河野さんがやってきたので、積もる話が山ぐらいあるのですが、刻限がだいぶ移っておりますからごく簡単に要点だけ承っておきたいと思うのですが、本問題に対するあなたのほうの大蔵大臣に対する意見書を精読いたしますると、前段においては、やはりこの流通市場が果たすべき役割りについてこれを強調されております。そうして、具体的なアドバイスとして七項目掲げられておりまするが、そこの中の第四項目には、正常なる公社債市場の確立、それから証券会社の機能を伸長せしめることのために十分なる配慮をなすべし、こういう意味の意見書が出されておると思うのでございます。したがいまして、これを裏から読むと、現状においては、すなわち公正なる公社債市場は確立されていないということ、それから現段階において証券業界の機能というものは、こういうものを受け入れるのに消化力が十分でない、こういうことを意味しておると思うのでありまするが、したがって究極的には、公債発行することは、受け入れる市場がこんな状態ではだめだ、こういうことになるのでありますか。この点、第四項目との関連において率直に御意見をお述べ願いたい。
  101. 河野通一

    ○河野参考人 ここで申しておりますことは、個人消化あるいは機関投資家による消化ということができるだけ大きなウエートを占めるようになることが望ましいということを申しております。そのためには証券業者というものがもっと機能を十分に発揚されなければならない、こういう意味でありまして、現在の状況は、いま春日さん仰せのとおり、公社債の市場というものも完全な姿にない。また証券会社の機能というものも十分満足すべき状態に遺憾ながらないということを前提にいたしておりまして、それをできるだけ早く充実強化しなければならないということであります。そこまでは、いま春日委員がおっしゃったとおりでありますが、そこから先はちょっと違うのでありまして、それができなければ公債発行はいけない、つまり公債消化はできないではないかということにはすぐ飛ばないと私は考えております。そこで、その場合には、結局機関投資家の中でも金融機関とか、そういった面が主たる応募者といいますか、応募引き受け者になって公債というものが消化されることになると思う。しかもそのことによって、私が先ほど来堀委員から御質問がありましたことにお答えしたとおり、それは決して市中消化原則を破ってない、したがって、そういう証券市場というものがまだ十分にできてないから国債発行してはいかぬということには直ちにつながらない、こう思っております。
  102. 春日一幸

    ○春日委員 禅問答みたいなんですけれども、しかしあなたたちの機関は政府の政策に合わせてものを言っておってはいかぬと思うのですよ。諮問機関なら諮問機関、あるいは審議会なら審議会として国民の前に責任を果たしていく、こうした責任を果たしていくというのであるならば、厳然として意見を述べられるべきだと思う。述べられておったら、その解明も、あなたはその機関の代表として本日ここに参られておるのだから、歯切れよくものを言わなければならぬ。個人的な意見を加えたりなんかしてはいかぬ。これは望ましいとか何とか書いてない。それは厳然として、配慮すべきものであるといっておるのですね。十分なる配慮をなすべきものである。配慮をなさざれば、消化力のないところにそんなものを供給したって、腹をこわして、さらに経済状態を悪くする。野党一同のみならず、いま金融業界、経済学者、口をそろえてこれを非難攻撃しておるのでありますから、したがってあなたも、ことが望ましいというようなアクセントでものを言われておるのじゃないのです。こういうような情勢のもとにおいてこういうことを行なうということについては、これこれのことが前提となる、だから証券市場を正常な形で確立しろ、すなわち、広義の金融市場の中で証券市場というものの位置づけを明確に行なうにあらざれば、やはりこれが金融優位の立場をあくまでも温存する形になって、金融の正常化ははかり得ないのである。申し上げるまでもなく、今日産業資金の調弁は公社債市場によるべきである。それから短期の運転資金金融市場によるべきであるということは、あなたがかつて銀行局長時代によくわれわれが教訓しておいたはずであります。十五年もたって一日の前進もないということはまことに遺憾であります。  そこで私は重ねてお伺いするが、いま堀君の御質問に対しても、これに対する具体策がない、また的確なプログラムも立ってはいない、こういうことですけれども、少なくともあなた方は証券問題については当事者なんでございましょう。少なくとも証券取引審議会委員、本日は委員長代理で出てくるぐらいだから、しかるべきさむらいになっておると思うのだが、しかもあなたはかって銀行局長であり理財局長であって、わが国のそういう財政金融というものをぐあっと背負ってきた当事者なんです。しかも、本日問題になっておりますこの公社債市場の問題、これはすでに六、七年間痛烈に論じられておる問題です。これを確立することのための手段、対策というものがいまだ何ら構想されてはいないなどというがごときは、一体あなた何をやっておるのですか。あなたは善良な人であったとは思うけれども、もう少し有能な人になってもらいたい。実際問題として何にも具体的な構想というものは立っていないのですか。あるいは確立に対するプロセス、プログラム、こういうものは何も描かれていないのですか。青写真もないのですか。ビジョンもないのですか。定まっておるものかあったら——大体あなた方の審議会で論じられておるところがあると思うのだけれども、この際それをちょっとこの委員会で頭を出しておいてもらいたい。何もないならば、毎日お茶を飲んで笑っておるのならば、それならそれであなた方の審議会のありさまを国民の前にわれわれは明らかにしなければならぬと思う。
  103. 河野通一

    ○河野参考人 冒頭にお断わりいたしておきますが、少なくとも私ども関係いたしております審議会は、政府でいろいろおとりになる政策を代弁したりすることを目的といたしておりません。ただ、いま春日さんがいみじくも御指摘のように、精神はいいのですけれども、能力が実は足らぬものですから、十分なことができないわけです。  公社債市場を具体的に育成し強化していきますためのプログラムというものは、実は私ども幾つもたびたびにわたって審議をいたしましたし、意見も出しております。ただ、この問題は、抽象的なものでは実はないので、抽象的に言いますと、先ほど来堀さんからも御指摘がありまして、私もお答え申し上げましたように、具体的に表に出る形式というものは、市場にそれが上場されて、そこで円滑な取引が行なわれる、しかもその価格が公正である、こういうことなのであります。そのためにどうするかということは、これはたいへんに広いいろいろな問題がある。たとえば、証券会社一つをつかまえてみても、証券会社がもっとそういうことに対して機能を充実しなければならぬとか、いろいろな問題が私はあると思うのです。それを一音にしてビジョンは何ぞや、いま言えと言われても、これは遺憾ながら私の能力が足らぬせいもありますけれども、そう簡単に出てこない、一言にしてこれを尽くすというわけにはなかなかこれはいかぬのじゃないかと私は考えておるのであります。しかし、今後そういった問題については、従来からもいろいろ研究いたしてまいりましたし、今後もそういった問題についてはできるだけ私どもも微力を尽くして公社債市場をなるべく早く充実し、いいものにしていくために努力する、お手伝いはしてまいる。私どもは何も当事者でありませんで、お手伝いをするほうでありますから、お手伝いだけはいたしてまいりたい考えであります。
  104. 春日一幸

    ○春日委員 当事者じゃないからそんなに本腰を入れてやれない、全く水くさい話であります。それならば、当事者であるところの証券取引の問題についてはどうかといえば、これまた取引仕法の問題であるとか、取引所の機能の拡充強化の問題であるとか、あるいは値段形成の諸問題とか、これまたあなたのほうは何にもやっていないんだな、実際の話が。だから、わが国におけるこれらの諸問題についての学識経験者というものは、あなた方数名のグループだけじゃないのですね。野に人材雲のごとくにあるんですよ。だから、あなた方がそのような責任をにのうておって何にもやれないというのであれば、いま率直に述べられたように、われら能力足らずしてその重責にたえず、よってここに辞表を提出するということで、委員長以下みんながこれを出してもらわなければ、実際全く困るのですよ。国会において論議して、それをあなた方の機関にこれを反映して、真剣に取り組んで、政府との間に具体策を練り合っていくとか、世論にさらして、さらに国会によってそれを練成してもらうとか、それは何といったところであなた方の仕事でなければならぬのですね、実際の話が。火元においてぼやほども燃えないということであっては、燎原に火のごとく燃え移っていくということにはならない。私は、この機会に、在野になってあなたに、しかも年の瀬を迎えて悪罵をたたきつけるということは本意ではないけれども、実際の話が、本委員会においては証券取引審議会に対する非難というものは、まことにごうごうたるものだ。よくこれを銘記されて——ほんの落書きみたいなものですが、あなた方が大蔵大臣意見書を出したといって新聞が報道する、あなた方は心配が小さいというようなことを言っておられるけれども、十分に配慮すべきであるということを言っておいて、配慮しなければ消化能力はなきものである、その機能なきものに大きな使命を与えるということは必ずもんちゃくを起こすんだ、こういうことになってくるんだ、論理の展開はそういうことになるのですよ。それだから、ここで質問してみると、そういうふうに書いたからといって、いま直ちにそういう能力がないというわけのものでもないとかなんとかいって、これとはまた逆の説明を加えられておる、全くの話が。そういうわけですから、どうかこの問題については、真剣に、公社債市場は正常なる形でわが国金融市場の中に正常なる位置づけをされる、そのためには具体的にどういう措置が必要であるのか、そういうことでやっていかなければ、産業資金調弁の方法と短期資金調弁の方法というものか全部こんがらがってしまって、そうして、いまのような金融不正常な状態を描いておるのですね。この点はあなた方の責任です。あるいは、そのいすをふさいでいるということは罪悪ですよ。よく御銘記あって、御反省あらんことを願います。  これに関連いたしまして舟山さんにお伺いをするのでありますが、あなたのほうがこの間金融正常化に関する答申の中で強調された点は、オーバーローンの解消のことにあったと思うのでございますね。オーバーローンを解消しなければならぬ。本日、都市銀行の預貸率は大体において一〇五%というものになり、しかもこれが膠着状態にあるといわれているが、その点の事実関係はいかがでありますか。
  105. 舟山正吉

    舟山参考人 オーバーローンに関しまして研究しました一両年前から比べまして若干は改善されているかと思いますが、なお、大銀行の外部負債の過多の状態はなかなか改まっておりません。計数はちょっといま持ち合わせがございません。
  106. 春日一幸

    ○春日委員 金融制度調査会の会長が、都市銀行の預貸率が全然まだ念頭にないなんというばかな答弁がありますか。年の瀬が迫って、年末金融の中でわが国の金融政策はいかにあるべきかと、はなはだ真剣になってみんな取り組んでいるときに、オーバーローンを解消しなければならぬというて、あなたのほうが金融正常化の答申の中で強くこれを述べておいて、本日の時点において預貸率がどんな形になっているか、正確な指数はとらえていないというようなこと、これまた通一さんと同じように、全くその職責に対していかばかり不熱心であるか、あからさまに露呈したものであると断ぜざるを得ない。われわれの調査によりますと、日銀の借り入れあるいはコールの導入、こういうようなものによって大体一〇五%の膠着状態にあるものとみなされている。このことは、どうしてオーバーローンが解消できないかといえば、わが国の財政が、やはり中央においてこれが吸い上げられた形になり、地方において放出されていくという、こういう財政機構になっている。収支の規模がそんな形になっているから、結局中央にその使命をになっております都市銀行ですね、こういうものの資金ショートを来たしてきて、こういうオーバーローンをかもし出しているものと断ずべきか。そういう中で、今回ここに発行せらるべき公債の五一%何がしのものが、話し合い、シンジケートなんといったところで、結局は政府権力によるところの押し売り、割り当てですね。これを消化能力ありといっているけれども、結局片方にオーバーローンがあるではないか、実際の話が。そこにこの分だけ上積みをされていくという形になるじゃありませんか。そうすれば、やはり財政の収支構造から見て、今後とも中央でこれが吸い上げられ、これが地方で放出されていくという形になれば、都市銀行それ自体としては、やはり資金需給という関係において、やはりその苦しさ、負担を加えていく形にはならないか。そうすれば、やはり日銀に貸してくれというか、しからずんばコールの金を導入するか、この道しかないと思うのですね。たとえば、オーバーローンの解消をしなければならぬ、金融正常化のためにはオーバーローンを解消しなければならぬとあなた方は言っているけれども、五一%以上のものをやはり都市銀行に押しつけていくとすれば、オーバーローンを解消すべしとなすあなた方の答申と、結局は結果は逆の方向に歩んでいく形にならないか、この点の理解は何でありますか。
  107. 舟山正吉

    舟山参考人 われわれ不勉強だとおしかりを受けましたが、一言申し上げますと、調査会なり審議会は与えられた諮問を勉強するので、日常常に実態を追うて指導監督する行政官庁やあるいは所管大臣と違いますので、どうも勉強の足りない点、それも勉強しておけというお話ならば、何も申し上げることはございませんけれども、与えられた諮問について誠心誠意答申する、こういう立場をとっているということを御了解願いたいと思います。  それから、それに関連をいたしますが、オーバーローンの是正、それから、つい先ごろには銀行融資の共同準則、もう少し銀行は融資にあたって慎重であり、行儀を正さなければいかぬじゃないかという答申をしてあるのであります。これが答申どおり実行されておりますと、事態も非常に改善されておるのでありますけれども、まあ、実行を見守っていく立場にはないので、その点は遺憾に思っております。  それから、御指摘の今度の国債発行について、オーバーローンの状態を重ねていくのじゃないかという点でありますけれども、従来は成長通貨の供給をもっぱら日銀から銀行に対する貸し付けできた、それからオーバーローンが発生してきた、これを改善する一助といたしましては、日銀、銀行を通ずる成長通貨のルートでなしに、市場から証券を買いオペすることによって日銀成長通貨を供給する、こういう方向に変えていかなければならぬという答申をしておるわけであります。追っかけ追っかけ公債発行量がばく大になりますと、これはいろいろの弊害をもたらしますけれども、やり方によってはそういうような弊は防げるのじゃないかと考えておる次第であります。
  108. 春日一幸

    ○春日委員 そうすると、結局は語るに落ちたみたいなもので、一応日銀引き受けの形式はとっていないけれども、実質的には、究極的には日銀引き受けそのものになってくる、こういうことですか。
  109. 舟山正吉

    舟山参考人 国債市中公募が日銭引き受けと同じだということは決して考えておりません。しかし、成長通貨の供給というものは、結局日銀から出るしかないわけであります。そこで、市中公募の方法によって安易に不適正にそれが出ることを防ぐには、市中公募の方法をとるということが必要である、こういうことは考えておるわけであります。
  110. 春日一幸

    ○春日委員 結局は、現状において都市銀行の預貸率というものが正常健全な立場であるならば、やはり市中公募市中消化の能力というものがそこに存在するわけですね。ところが、都市銀行に関する限りはオーバーローンだというのです。都市銀行が特にオーバーローンが現存しておるのですよ。その都市銀行に向かって五一%を割り当てるのでございましょう。だから、オーバーローンを激化する形にならないか。一方、金融正常化のためにはオーバーローンを解消しろとあなた方は言っておるということですよ。これが一点、オーバーローンだから、日銀借り入れの道が困難であるとなれば、やはりコール市場にコールマネーをあさる形になる、さすればコールレートが高騰してくる、そして金融正常化は逆行してくる、こういう弊害をもたらさないかと言っておるのですよ。どうせあなた方は原案を執行するでしょうから、あと二、三カ月のうちに結果は現実にあらわれてくるのですよ。そのときにあなたに来てもらって、どうだといって理論をつき合わせたほうがいいのです。そういう心配はないか、あなたの見識を伺う。大体あなたは見識があるのかないのか、それをここに記録にとどめて、ためしてみる。その点は、たとえばコールレートを高める心配はないか、それから、都市銀行の預貸率をさらに悪化せしめるの心配はないか、この点について金融制度調査会長、舟山君の御意見は何であったか、明確に記録にとどめておいてもらいたい。
  111. 舟山正吉

    舟山参考人 国債発行にあたりまして、市中銀行が安易に考えまして、これは日本銀行へ持っていけばいつでも資金が得られるのだというような態度でありますならば、これは銀行に見識がないわけであります。やはり余裕資金があって、それで国債を保有する、こういう態度に出るべきであります。そこに銀行のそういう堤防があるということが、国債発行に対する大きな歯どめになるのであります。それでありますから、それに対しまして、大蔵省なり日本銀行当局は、その銀行の資金ポジションはどうあるかということも判断に入れまして、買いオペその他の金融操作に出るべきであります。お話にもありましたように、財政資金の流れというものが大銀行に偏在する傾向がありますので、これは別途是正の道は考えなければならぬかと思いますけれども、根本的な、基本的な考え方は、以上申し上げたとおりであります。
  112. 春日一幸

    ○春日委員 これで終わりますが、いまあなたのおっしゃったように、都市銀行の当事者が安易な考え方日銀へ持ってくる、それは許しがたきことである。さすれば、自分の手持ち資金範囲内でこれを操作するということになれば、おのずからこれは貸し出し抑制ということにならざるを得ない。貸し出し抑制という形になれば、抵抗力の弱い中小企業にそのしわは寄ってこざるを得ない。ここに中小企業の金融梗塞にさらに刺激を加えていくという形になってくるのですね。だから問題は、やはりオーバーローンをさらに悪化せしめないならば、このことは、はね返って中小企業への金融梗塞の形となってあらわれてくる。これは現象的に当然の帰結だろうと思う。これは水が低きに流れるがごとく、物理的法則に基づく当然の現象だろうと思う。この点について大蔵省出の二人は答弁だめですから、肥後先生、その点どういうふうにお考えになりますか。私の憂うるところ心配ないか、どうか、ひとつ御見解をお示し願いたい。
  113. 肥後和夫

    ○肥後参考人 実はまことに申しわけございませんが、いま途中で速記の方が私の意見のあれを聞きに見えまして若干話しておりましたので、あるいは大事なポイントをそらしているかとも思いますけれども、一応お話しになられました要点は、要するに、すでに現在市中銀行の預貸率は悪化している、これに対してさらに公債発行してこれを市中に引き受けさせるということになれば、さらにまた銀行の資産内容を悪化させることにならないか、この点について参考人意見を述べよということでありましたかと了解しているのでございますが、まあ、一応この当座の問題としまして、やはりそういう心配といいますか、そういう帰結も当然予想されるかと思います。ですから、この金融の正常化は、これは過去十年の高度成長期間にかなり累積したものでございまして、一朝一夕にはやはり解消しないと思いますし、ここ数年の努力が要るのではないかと思います。ですから、まあ、その間に、公債についてはやはり一応公募、そして、日銀はいままで市中銀行への貸し出しという形で成長通貨を供給し、これがやや——三十八年度引き締め以降についてはそうでもなかったと思いますが、それまではかなり行き過ぎがあったような面もあるということでございまして、今後やはりこの日銀の裁量というのが非常に重要な意味を持ってくると思いますので、一応オペレーションをやるにいたしましても、あるいは場合によっては、やはり一挙には問題が解決いたしませんで、オペレーションなりあるいはそれとの調整で、財政との関係もありましていろいろこまかい技術的な調整が必要かと思います。あるいは、まあ貸し出しも加味するとかいうようなこともあるかと存じますけれども、数年かけて正常化に持っていくんだという精神で——精神論になりますけれども、精神で努力をしてもらいたいというよりほかに申し上げようがないんじゃないか、オーバーローンになりましたのは、やはり民間投資の伸びがきつ過ぎた、成長率以上に非常に高過ぎたからオーバーローンになり、あるいは企業ではオーバーボローイングになって自己資本比率が低下したわけでございますから、今後やはり正常化について努力を怠らないならば、事態の改善はないとはいえないんじゃないか、そう考えます。
  114. 春日一幸

    ○春日委員 いま申し上げましたように、公債がずっと引き続いて発行されていく、それの消化、引き受け、これを通じて、金融業務を通じて、これが金融のウイークポイントである中小企業にしわが寄らないように、そうして、いま非常に深刻な不況にあえいでおりまするこれらの諸君にこれ以上の被害が及ばないように、あなた方のいろいろな機関の意見を通じて十分御留意あらんことを強くお願いをいたしまして、私の質問を終わります。
  115. 吉田重延

    吉田委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、御多用中のところ長時間にわたり御出席をいただき、まことにありがとうございました。当委員会といたしましては、各参考人の御意見は今後の法案審議に十分尊重、反映せしめたいと存じます。ここに厚く御礼を申し上げます。  この際、暫時休憩いたします。    午後一時四十三分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕