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1966-06-01 第51回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月一日(水曜日)    年前十一時四分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 有田 喜一君 理事 藏内 修治君    理事 始関 伊平君 理事 壽原 正一君    理事 多賀谷真稔君 理事 松井 政吉君    理事 八木  昇君       大坪 保雄君    神田  博君       西岡 武夫君    中村 幸八君       三原 朝雄君    滝井 義高君       中村 重光君    細谷 治嘉君       伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  三木 武夫君         自 治 大 臣 永山 忠則君         国 務 大 臣 藤山愛一郎君  出席政府委員         総理府事務官         (経済企画庁総         合計画局長)  鹿野 義夫君         総理府事務官         (経済企画庁総         合開発局長)  加納 治郎君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     斎藤  正君         通商産業政務次         官       進藤 一馬君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         通商産業事務官         (企業局次長) 中川理一郎君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      宮沢  弘君         自治事務官         (税務局府県税         課長)     石川 一郎君     ――――――――――――― 五月十日  産炭地域振興に関する陳情書外二件  (第四一二号)  石炭政策確立等に関する陳情書  (第四一三号)  炭鉱の保安に関する陳情書  (第四五四号)  石炭対策に関する陳情書  (第四五五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会設置に関する件  産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五五号)      ――――◇―――――
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  まず、小委員会設置の件についておはかりいたします。  本委員会に、産炭地域振興に関する諸問題を検討しその推進をはかるため、小委員十五名よりなる産炭地域振興に関する小委員会を設置するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  なお、小委員及び小委員長選任につきましては、委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  小委員及び小委員長は、追って指名の上、公報をもってお知らせいたします。  次に、ただいま設置いたしました小委員会において参考人より意見を聴取する必要が生じました場合の人選、手続並びに小委員の辞任の許可につきましては、あらかじめすべて委員長に御一任願っておきたいと存じまするが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。  次に、小委員長及び小委員に欠員を生じた場合の補欠選任に関しましては、委員長において指名することにあらかじめ決定しておきたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。      ————◇—————
  7. 野田武夫

    野田委員長 次に、内閣提出産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題として、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。細谷治嘉君。
  8. 細谷治嘉

    細谷委員 産炭地振興問題につきまして、私はこの委員会で二回にわたって御質問をしたわけでございますけれども、なお問題が残っておりますから、きょうは、産炭地市町村あるいは自治体の税財政問題、それから、陥没しておるといわれております産炭地教育の問題について主として質問をいたしたいと思うのであります。私は具体的なこまかい問題を質問をいたしまして、大きな問題につきましては後ほど多賀谷委員から質問いたすことになっております。  まずお尋ねいたしたいことは、租税特別措置法第十三条の規定によりまして、従来、取得価額が一千万円で、常用雇用者が二十人以上の製造工業に対しましては、固定資産税等減免が行なわれておったわけです。それが今度政令の改正によりまして、五百万円、十人、こういうことになったようでございますけれども、従来これに相当する減免額というのはどの程度になっておったのか、まずお尋ねしておきたい。
  9. 柴田護

    柴田(護)政府委員 昭和三十九年度で三十四件で三千四百万円、四十年度で百一件で一億二千三百万円になってございます。
  10. 細谷治嘉

    細谷委員 ただいまお伺いいたしますと、四十年度におきまして百一件で一億二千三百万円の減免が行なわれたわけでありますが、これの七五%は特別交付税関係市町村補てんされておると思いますが、そのとおりですか。
  11. 柴田護

    柴田(護)政府委員 いまのは、私の言い間違いで、普通交付税補てんされている額でございます。したがいまして、七五%で逆算した額が減免額ということになっております。
  12. 細谷治嘉

    細谷委員 一億二千三百万というのは七五%相当額でございますね。そうすると、これを〇・七五で割ったものが実際の減免額、こう理解してよろしいわけですね。  そこで、お尋ねいたしたいのでありますが、一体雇用者というのはどういう定義でございましょうか。通産省、どういうふうにお考えになっておりますか。
  13. 井上亮

    井上政府委員 雇用者とは、先生どういう趣旨でおっしゃったのでしょうか、ちょっと……。
  14. 細谷治嘉

    細谷委員 これは常用雇用者ということになっておるわけですね。ですから、出向職員とかなんとかいうのは、これは常用雇用者となるのでしょうか。おそらくお答え実態に合ってというお答えになるのでしょうけれども、この雇用者という定義がなかなかむずかしくて、いま私は四十一年五月二十二日に日本経済新聞に出ましたある市のこの問題についての具体的な問題点を御指摘しようと思って申し上げておるわけです。定義がむずかしい問題です。
  15. 井上亮

    井上政府委員 先生の御質問、誤解していると申しわけありませんので、理解いたします範囲でお答えを申し上げたいと思いますが、ただいまの御質問固定資産税減免補てん制度に関連いたしておりまして、この法律によりますと、要するに、措置対象といたしまして、原則として租税特別措置法四十五条等によります特別償却対象と同じでありますが、従来のものによりますと、生産設備幾ら以上、あるいは、かつ雇用者が二十人以上増加するものに限られておるわけであります。この雇用者とは何か、こういう御質問だと思いますが、通常、この雇用者意味は、常用雇用というふうに解釈いたしております。
  16. 細谷治嘉

    細谷委員 常用雇用者といいますと、むろん臨時職員等——臨時職員でも常用であれば広義の解釈をなさるかもしれませんが、日々雇用という形の方はいかがですか。  私のお尋ねしたい問題点は、ある市で起こった問題なんです。あるいは財政局長等承知かも存じませんけれども、ある市で、新しい工場既存工場の、ずばり言うと一角に建てた。その工場を建てるために、家屋に二千五百万円、償却資産に六億九千八百余万円を投じて会社をつくった。ところで、そこに二十四人の人が雇われたわけです。ですから、投下資本というのは、固定資産取得額というのは七億二千三百六十七万円あるわけです。ですから、これは一千万円以上になるわけです。雇用者というのは二十四名なんです。私は個々の名前も持っておるわけですけれども、二十四名のうち一人が、そこの親会社といいますか、Aという前からある既存工場じゃない、違った工場をやめた人が一人採用されておる。あとの二十三名というのは、Aの工場からBの工場出向しているのです。出向命令が出ているわけですね。在籍のまま、とにかくそちらの工場出向しなさい。具体的に言ってみますと、いままでどおりの建物で、いままでどおりの机にすわって、いままでどおりの仕事をやっておった。ただ、新しい会社ができて、そちらに出向を命ぜられた。こういうような形になっているわけですね。もともと、これが二十名というのは、産炭地振興基本計画なり実施計画にありますように、雇用増大ということを目標にして、二十名というのがつくられたわけです。一体、そういう二十三名というものは、井上局長お答えになったような雇用の増という形における雇用者という理解に立ってよろしいのでしょうか。  さらに言ってみますと、先ほど申し上げましたように、七億二千三百六十七万円の国定資産取得額、それに対しまして、固定資産課税標準額というのは六億六千六百十五万円あるのです。このうち免税されたものが六億三千七万円、こういうふうになっている。税額にいたしますと一千八万円の減税が行なわれておるわけです。ですから、先ほど財政局長お答えしたような、自治省普通交付税補てんしたものはその七割五分、おおよそ七百五十万円が補てんされた、こういうことになるわけですね。  私がお尋ねしたいポイントは、二十三名というその出向の人が雇用増大という趣旨に沿った雇用者だ、こういうことによって、市の財政からいきますと一千万円の減税をしてやった、国のほうでは交付税という国の財源を七百五十万円そのために補てんしてやった、こういう結果が生まれているわけです。これは、このせっかくの法律——私は、この産炭地振興のためには、前回の質問で、ひとつ二百万というのは無理だから三百万と十人くらいにしたらどうかという意見を申し上げておったわけなんですが、五百万と十人に今度直したということであります。私はその点は重要視しているのであります。この運用いかんによりましてはいろいろな問題点が起こり、この新聞に出ておりますような、かなりのスペースを使ったこういう問題が出てきているわけです。問題の分かれ目は、二十三名の出向者。言ってみると、同じ建物で同じ机にすわっておって、ただAからBに移ったというかっこうだけとっておった。それが雇用増大という意味における雇用者だ、こういう解釈からいまのような減免が行なわれ、交付税補てんが行なわれている。これは問題をはっきりしておきませんと大きな問題でありますから、あえて御質問しているわけです。これはひとつ通産省なり自治省に明快な答弁をしていただいて、地方で混乱が起こらないようにしていただかなければならぬ。
  17. 井上亮

    井上政府委員 ただいまお尋ねの件は、今度の改正法案に伴います適用の問題としまして具体的な例をあげての御質問でございます。これにつきます法解釈適用解釈につきましては、やはり事が重大でございますので、ただいま具体例をお聞きしたばかりでございますので、私どもその具体例に沿って解釈を明らかにいたしたいと思いますので、しばらく検討の時間をお与えいただきたいというふうに考えます。
  18. 細谷治嘉

    細谷委員 これはしかし通産省見解ではいかぬと思うのだ。石炭局長見解でなく、自治省税務局一体どう考えるか。通産の石炭局長のいまの態度は聞きました。自治省税務局一体どう考えておるか。
  19. 宮沢弘

    宮沢説明員 この問題は、先ほど細谷委員指摘のように、租税特別措置法規定に載っているわけでございます。したがいまして、租税特別措置法における解釈に従っておるわけでございます。私もまだその辺一〇〇%十分に研究いたしておりませんが、ただいま御指摘のような事例でございますと、この規定に該当するかどうか、多分に疑問の存するところではなかろうかと思います。なおこれは研究をさせていただきたいと思います。
  20. 柴田護

    柴田(護)政府委員 従来の取り扱いといたしましては、増加する雇用者という場合には、新設または増設した工場生産設備に伴う従業者増加という扱いになっております。その従業者増加という場合には、生産設備に関連する従業者は含むのだけれども、しかし日々雇用する者はこれに含まない、また、新規雇用というものだけではございませんで、それはその工場設備のために他から転勤させた者も含むのだ、しかし同一区域内の既存工場生産設備を合理化すること等によって生み出した余った人間を持ってきたものは含まない、こういう取り扱いになってきておるわけです。その辺はお話のようにいろいろ疑義があるかもしれません。しかし、従来からそういう扱いをいたしております。具体的に個々事例につきましてそういう微妙な問題になることは多々あるわけでございます。御指摘のような例以外にも多々ある。いわばボーダーラインケースに該当する事例があるわけでございます。したがって、そういうものについての不合理をどうするかという問題も、あらゆる事例につきまして、ボーダーラインケースにつきましてはあるわけでございます。いままでの取り扱いはそういう取り扱いをしてまいってきておる、こういうことでございます。
  21. 細谷治嘉

    細谷委員 いま財政局長のおっしゃった雇用増大ということが趣旨になってこういう措置が講ぜられておるわけですから、こういう措置は法に基づきまして自治体の条例というのができているわけです。自治体単位でできているわけですね。したがって、その自治体外から入ってきた者ならば、本来ならば正式の雇用者ということでありますけれども、常時雇用者であれば臨時職員でも実質的な雇用、しかも将来をある程度保証された形の現在における臨時職員ということなら、これは雇用増大という形で理解できることだと思うのです。新設工場であることは間違いありませんけれども既存工場一角既存工場の古い施設を取っ払ってそこへ建てた工場なんですね。そうしてそこにつとめておる。その自治体に住んでおって、そこの既設の工場につとめておった人が、しかも同じ机で同じ仕事をして、そして出向という名義で新会社につとめておるので、給与もそこから出ておるのだから、これはやはり特別措置対象だということになりますとどうも趣旨が没却されるんじゃないか。通産省は、ややもしますと、こんなことを言いますと井上局長色を変えるかもしらぬけれども、大体製造者側サイドに立ってものをおっしゃるわけですが、この運用自治体側に立ってものを言っていただかなければならぬ。自治省見解というものも、いま財政局長はとにかく実質的な雇用の増ということが現実としてなければならぬという立場に立っておるわけで、私は疑問があると思う。これは私は三百万にしたらどうかということを言っているわけであって、この施策について一種の積極論者でありますが、しかし、この運用がこういう形になりますと、これはたいへん国に損失も及びますし、自治体にも損失が及ぶ。不明朗さが残る問題があります。この辺はひとつすぱっとやっていただかなければならぬと思うのです。まあその点、通産省も研究する、自治省のほうも研究するということでありますから、こういう問題でもう一点の疑いもないように、税の問題でありますから運営されてしかるべきでありますが、ややもしますとこれが議会の問題になって政治的な問題に発展して、雇用という定義すらもわからなくなって、そうして、雇用者というのは何か、あなたのほうが的確に答えられなくなっているというのは、やはりあなた方のこの問題についての取り扱い一貫性がないというところから来ているのじゃないかと思うのです。ですから、この辺はひとつはっきりさしていただきたいと思います。これは重要な問題でありますから、その結果によってはまたあとでこの問題はそれぞれのサイドから私は追及もいたさなければならぬと思いますが、きょうは問題の点を明らかにするだけでひとつとどめておきたいと思うのです。  もう一つこの新聞によりますとあるのです。石炭を掘りますと鉱産税というのがかかってくるのですね。これは採掘した鉱物の量と価格によってきめるということでありますから、平たく言いますと、出炭量に対してその価格をかけて、これが課税対象額ということになるわけでありますが、山元消費というのがあるわけですね。山元消費というのを私は調べてみたのでありますけれども北海道の例をとりますと、昭和三十九年度には、北海道八市の分ですが、千五百八十三万トンの出炭をいたしまして、その場合に山元消費量というのが百十九万八千トンあるわけです。おそらく七、八%になっておると思う。それから、十一の町村では、五百十八万トンの出炭がありまして、三十七万四千トンの山元消費がある。北海道全体では二千百二万トンの出炭に対して百五十七万トンの山元消費ということで、ちょうど七・五%になっておるわけです。この山元消費について課税一体どうなっておるのか、交付税ではどういうふうに基準財政収入額の中に織り込まれておるか、ひとつこの点を御説明いただきたいと思います。
  22. 宮沢弘

    宮沢説明員 いまの鉱産税の御質問でございますが、どうもこれも明確なお答えができなくて恐縮でありますが、引いているものと私どもは思っております。
  23. 石川一郎

    石川説明員 直接の担当でございませんでよくわかりませんので、すぐ検討いたしてお答えいたしたいと思いますが、いまの段階では一応、山元消費の問題は、鉱産税自体出炭に応じてそれぞれかけることになっております。出炭量に応じた課税になっているのではないかと思います。いますぐわかりますので、よく確認いたしまして御返事を申し上げます。
  24. 細谷治嘉

    細谷委員 宮沢参事官国税法人税なり所得税においては、全出炭量一定パーセント、六%は従業員福利関係だという形で損金算入が認められて課税対象になっておらないと思うのですが、そのとおりですか。
  25. 宮沢弘

    宮沢説明員 いまのパーセンテージその他は私もはっきり存じませんが、おそらくそういう取り扱いであろうと思います。
  26. 細谷治嘉

    細谷委員 これは私もこの新聞に出ましたので初めて詳しい点について調べたのでありますけれども法人税所得税は、六%は山元消費従業員福利関係の費用、たとえば社宅のふろの石炭代という形で損金に算入されておるので課税対象にならないのです。ところが、鉱産税の場合は、はっきりと出炭量かける標準炭価という形になって、課税対象になっているのです。課税対象になっておりますけれども幾らかというと、トン当たり一円五十銭、こういう計算です。普通四千円くらいでしょう。それが一円五十銭なんです。そこからまた問題が出ている。基準財政収入額計算の中に今度は問題が出てきているわけです。その辺をちょっと私はここで明らかにしておきたい。宮沢さん、その辺はどうでしょうか。
  27. 宮沢弘

    宮沢説明員 実は、御質問の中身をあまり伺わないで参りましたので、数字その他、私は自信のないことを申し上げてたいへん恐縮でございますが、ただいま御指摘のように、鉱産税課税標準につきましては、その標準価格がきわめて低いわけでございます。その点につきましては、私どももかねて検討をいたしておりますし、やはり時代の実情に合ったような価格に直すように指導してまいりたいと思います。現在においては、御指摘のように、きわめて低いと申し上げてよかろうかと思います。
  28. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、ここで、市町村税関係財政問題もありますから、国税法人税所得税山元消費分を六%免税しているから鉱産税もその分だけは免税しろという意見を吐いておるわけではないのです。しかし、そういう事実だということは、ひとつ実態を御理解いただきたいと思うのです。  ところで、財政局長さん、現実にそういう五、六%の山元消費があるものですから、全国鉱業市町村連合会、そこで石炭協会等との話し合いが行なわれ、それを受けて各県の鉱業市町村連盟等でその地域石炭協会支部等と打ち合わせしまして、たとえば、五%程度課税すまい、そういうことは言えませんから、出炭量に対してかけていた鉱産税現実には送炭量に対して課税しているわけですね。送炭量ということになると、売るために送炭したものですし、山元消費した分は売るわけじゃないから、数量の差が起こってくるわけですね。おそらく、自治省の考え方というのは、送炭炭価出炭炭価というのは違ってくるのだ、ですから、かけ合わしたものはイコールなのだ、同じなのだ、こういう理論に立っておると思うのですが、いずれにいたしましても、送炭量通産省が示す標準炭価をかけて、そうして税がきまっておるわけですから、この通産省が示す標準炭価というのは、送炭量をもとにして、山元消費ということを考えた上で炭価をきめて通達しているでしょうか。どうなのですか。
  29. 井上亮

    井上政府委員 私のほうでは一応出炭量をベースにして炭価を考えております。要するに、一定のある山の出炭に対しまして、一体コストはどういう状況になっておるかというような点を配慮してきめるわけでございます。
  30. 細谷治嘉

    細谷委員 そうしますと、通産省が示すものは、山元炭価出炭炭価であって、送炭炭価ではない、こう理解してよろしいのですね。
  31. 井上亮

    井上政府委員 そう一がいな問題ではございませんで、山元消費にもいろいろありましょう。いわゆる山元消費と申しますのは、従業員が使うのも入るわけでございます。御承知のように、その中にはいろいろな炭が入っております。ですから、やはりコストでございますから、商品炭商品として売るもの、こういうことになっております。
  32. 細谷治嘉

    細谷委員 とうとう答えがぼけてきて、最初はすっきりしたのですが、二度目の答弁というものはわからなくなってしまった。しかし、理屈は、あなたがおっしゃるように、最初述べた山元炭価出炭炭価ということで、私が言う送炭量というのにかける標準炭価というものは通産省が示したものですから、山元消費を差し引いた、五、六%のものを差し引いた、北海道では七、八%のものを差し引いた形で補正されているとは思わない。これはやはりあくまでも私がいま言っている出炭炭価だと思うのです。  そこで、財政局長さんには特交等産炭地についてはいろいろできるだけの御配慮をいただいておると思うのでありますが、これは昭和四十年度の鉱業市町村連合会の資料によったのですけれども、三十九年の出炭量からいって交付税に算入された山元消費分基準財政収入額というのが、いま申し上げた北海道の場合、二千百二万トンの出炭があって、山元消費が百五十七万トンでありましたから、交付税に算入された基準財政収入額というものは三千六百三十万円あったわけなんです。ところが、山元消費炭価によって算出された基準財政収入額というのは、トン当たり一円五十銭しか北海道の場合は見ていませんから、一万三千円しかないわけです。そうすると、差し引き三千六百二十九万円というのが基準財政収入額過大見積もりという結果になっているわけです。北海道の十九市町村では、三千六百二十九万円という基準財政収入額過大見積もり過大算定、こういうかっこうになっているわけです。一円五十銭で計算しているところに問題がある。しかし、自治省のほうの基準財政収入額というのは、基準炭価に基づいてこれだけの収入があるものとみなしてやっているわけですから、自治省は、おれのほうは正しいのだと言うかもしれませんけれども現実には一円五十銭という形で山元消費炭価のあれが見積もられておりますから、こういう差が起こっているわけです。これは十九の産炭地市町村にとってはかなり大きな問題だろうと思うのです。この場合には、全部が交付団体でありますから、交付税が三千六百二十九万円そのままそっくり減ったと、まともにこう理解してもよろしいものなんですか。この辺どうお考えでしょうか。
  33. 柴田護

    柴田(護)政府委員 それは少し問題があるのではないかと実は思います。基準財政収入の算定をいたします場合には、総額が大体地方財政計画上の鉱産税収入にほぼ見合うということを目途にして、多少でこぼこは出てまいりますが、目途にして計算するわけですが、標準炭価に山元出炭量をかけるわけでございますけれども、その場合のデータというものは、その年のデータを使うわけにはまいりません。したがって、前年度のものを使います。そうなってまいりますと炭鉱の営業上のいろいろの問題等があって、一年一年その間に誤差が大きくなってくるといったような問題も起こってくるのじゃなかろうか。たてまえから言いますると、鉱産税の性格から言いましても、山元消費のものを引くとか引かぬとかいうのはむしろおかしいのでありまして、山元消費のものも、出炭されたのは一種の自己消費でありますから、それは課税標準としては中に入るのが税法上のたてまえだと私は考えております。それを法人税あるいは事業税で必要経費を引くか引かぬかという問題もあります。これは法人税の性格から出てくる問題でございまして、鉱産税の性格から言いますならば、これは出炭されたものに対しては当然かけるべきである。したがって、標準炭価の問題も御指摘のようにそこに一つございますかもしれませんけれども、主としての問題は、かりにそういう大きなものがあるといたしますならば、それはむしろ出炭量をつかまえるつかまえ方のデータの新旧というところに大きな差があるのではないかという気がするのであります。毎年、特別交付税の算定の際等におきましては、地元の市町村等からいろいろなデータが出てまいります。これは地元の実態に応ずるものでありましょうけれども、それをそのまま実は信用するわけにはまいりません。それは、町村によりましては多少山をかけたところもございましょうし、それから、正確に資料をつかんでいないところもございます。しかし、県の意見等も参酌いたしまして、その間の財政事情を総会的に見ながら必要な補正なり調整をやっておる、これが現状でございます。
  34. 宮沢弘

    宮沢説明員 先ほどの山元消費の問題でございますが、ただいま事務当局の者に聞かせましたところが、私は先ほど引いているのではないかということを申し上げたのでありますが、筋道といたしましては、ただいま財政局長が御答弁申し上げましたように、山元消費も当然課税標準の中に入るべきものでございますが、事実問題としては、幾つかの市町村にだけ山元消費を引いているということでございます。
  35. 細谷治嘉

    細谷委員 調べてみますと、やはり石炭の傾斜生産というのが行なわれた昭和二十五年ごろに、全国鉱業市町村連合会等と、それから各県単位で大体五%前後の山元消費というものを認めて、これに課税しないようなかっこうに現在なっておるようです。しかし、今日石炭産業というものも疲弊しておる、同時に産炭地の実情というものも疲弊しておる、こういうことでございまして、やはり、財政局長がおっしゃるように、鉱産税の性格というのは福祉費等々の法人税なり所得税についての勘案とはまた違った性格を持っており、それだけにこの鉱産税の問題が鉱業者側と市町村側との間で長い間争われているいきさつもあるわけですから、これはやはりすっきりと、昭和二十五年から十六、七年たっておるわけでありますから、きちんと法どおりに対処していくように指導なさるのがこの際妥当ではないかと私は思うのですが、これはひとつ、参事官でいかぬければ、大臣いかがでしょうか。
  36. 永山忠則

    ○永山国務大臣 おっしゃるとおりに指導していきたいと思います。
  37. 細谷治嘉

    細谷委員 次にお尋ねいたしたい点でありますが、今度の地方交付税の算定にあたりましては、自治省では、人口の激減地帯に対しては新たに激減緩和の措置を講じようということになりまして、総額五十億円程度のものを人口激減緩和のための財源として考えられておるようでありますが、そのとおりでございますか。
  38. 柴田護

    柴田(護)政府委員 計画といたしましては御指摘のとおりでございます。
  39. 細谷治嘉

    細谷委員 ところで、昭和四十年の国勢調査によりますと、とにかく人口集中が急速に進んでまいりまして、要するに田園都市あるいは農村地帯の人口の減が目立っておるわけでありますけれども、とりわけ産炭地は、そういう時代の趨勢の上に、炭鉱の急速な合理化による人員減という形で極端な人口の減を起こしておるわけですね。たとえば、ある市のごときは、四万五千人の人口があったのでありますけれども、今度の国勢調査では二万二百人、もう町に転落したほうがいいのじゃないかというように、五〇%以上の激減を示しておるところがあるわけです。それですから、私は激減補正をやることは正しいと思うのでありますが、自治省のほうでは五十億と見積もられておるのでありますけれども、お考えになっているような人口激減の補正をやりますと、どの程度産炭地に回っていくおつもりなのか、お尋ねします。
  40. 柴田護

    柴田(護)政府委員 五十億がどういうぐあいに散らばるかという問題は、これから試算をいたす段階でありまして、現在の段階では、残念でございますけれども明らかにすることができないような状態でございます。  ただ、考え方だけを申し上げますと、やはり、人口が急減するということは、交付税の算定で、特に市町村では人口を数値に使います部分が多うございますので、基準財政需要額に非常に大きな影響を及ぼす。ところが、細谷先生承知のように、段階補正をかけてまいりますと、人口が急減するほうが補正係数が上がってくる。そこで、ただ急減補正だけを考えますと問題が起ってまいります。そこで、段階補正をかけました後の補正後数値、それのある一定のパーセンテージ、——やはり激減緩和でございますから、まるまるそれを人口が減らなかったものとみなすわけにはまいりません。それをかけ合わしたものの段階補正後の数値の大体九五ないし九七%程度のものは、とりあえず四十一年度は保障をしてやる、それを逐次ならしていく、五年間ぐらいにわたってそれをゆるいカーブでもってならしていくという方法をとって、激減緩和措置だけをとりたい。これは人口急減という一つのものに対する措置であります。したがって、考え方といたしましては、その部分については激減緩和という考え方をとる、しかし、それと別個の問題として、たとえば弱小市町村に対する財源の配分といったような問題は別途の観点から進めていく、こういうように、考え方といたしましては二本立ての考え方をとってまいりたい、こう考えておるわけでございます。
  41. 細谷治嘉

    細谷委員 これも全国鉱業市町村連合会から出た資料でございますけれども、すでに財政局長は十分消化していることだと思うのでありますが、四十年の八月一日現在の調査におきまして、産炭地市町村が百四であります。百四のうち人口減少団体が八十六団体あるわけです。そしてそこの人口の減少数は四十二万三千五百六名となっておるわけです。この際八月段階で交付税に基準財政需要額として算入されたものは二百一億円であります。ところが、そのままの計算で、いわゆる新しい人口だけで基準財政需要額を計算した場合にはどうなるかといいますと、これが百八十九億円に減少してくるわけですね。ですから、言ってみますと、十二億円程度の減というのが基準財政需要額で起こってくる。人口の減だけでそういう計算です。それから、今度は、当然人口が変わってきますから種地が変わってくるのです。そうしますと、種地の変わった分だけで一億円程度基準財政需要額が減る、こういうふうに見積もられております。そこで、新しい人口で新しい種地を使っていった場合にはどういうことになるかといいますと、総額において十三億六千万円の基準財政需要額が減ってくる、こういうふうに資料は書いてあります。ところが、十月一日現在で国勢調査をやった結果は、百四団体のうち九十四団体が人口が減少した。八月一日現在の交付税算定時期の資料の人口よりももっと減っているわけですね。そしてその人口減というのは五十二万人、九十四団体の中で人口はこれだけ減っております。そうしますと、基準財政需要額が先ほど十三億六千万円の減だと申しましたが、これで計算してまいりますと、おそらく十六、七億円の基準財政需要額、言ってみますと産炭地交付税の減というのが起こるのだと、こう考えられるわけです。こうなりますと、文字どおり泣きつらにハチ。そこで、ことしはひとつ人口急激補正をやろう、そういうことで、これは自治省の決定じゃないのでありますが、私の承知している範囲では、段階補正後の人口というのが九七%未満になったものについて、先ほど局長は九五か九七くらいと言っておりましたが、九七%未満になったところにはこの補正を適用しよう、こういうことでありまして、四十一年度はその〇・八%だけを補てんしよう、四十二年度は〇・六だ、四十三年度は〇・四だ、四十四年度は〇・二だ、四十五年度になるともう新しく国勢調査をやるからぱあ、こういう考えに立っておるようであります。そういたしますと、私が計算したかりに十六億円としますと、その〇・八でありますから、二割というのが明らかに減る。重病人のところからミルクを半分くらい取る、こういう形になるのでありまして、五十億円というのが全体的なものでありまして、産炭地の分でも明らかにいまの状態において二十億近いものがあるわけでありますから、これではどうも不十分ではないか、こういう気がいたすのであります。むろん五十億のうちどの程度か知りませんが、二十五億とか三十億が産炭地の分になるのだというところまで、作業が進んでおらぬのでありますからお答えにくいかと思いますけれども、私はこのやり方ではどうもやはり産炭地の実情をささえる一つのてことしては不十分ではないかという気がいたすのでありますが、いかがですか。
  42. 柴田護

    柴田(護)政府委員 いまのお話の計算でありますが、ちょっと疑問がございます。それはおそらくは人口の代置だけで計算しておるのであって、段階補正をこまかく適用区分を変えて計算しておるのではないのではなかろうかと実は考えます。それは段階補正のカーブというのは相当きつうございますから、人口が非常に減りますとかえって需要額がふえてしまうというようなところもあるわけであります。それの計算をいたしませんで、おそらく減った人口を置きかえて、それから旧来の補正係数をかけていった数字じゃないかと思います。したがって、十七億と申しました数字がなまでそうだとは思いませんけれども、減ることは確かであります。まあお話を伺っておりますと、どうも人口急減補正だけではつまらないのではないか、しかもだんだん減らしていくというのはなおつまらぬのではないか、こういうおしかりのようでありますが、やはり人口急減補正というのは激減緩和の思想であります。したがって、人口というのは一ぺんにすぽっと減るもんじゃございません。徐々に減ってくるものでございます。逆に言いますならば、三十五年から徐々に減り始めまして、四十何万人、五十何万人という人口が五年間に減ったという場合に、人口は徐々に減るわけですから、実際に見ますると、その間五年間に、むしろ仮想人口を想定して基準財政需要額を算定しておる、言うならば交付税をずいぶんもうけておったじゃないかというおかしな理屈も成り立つわけであります。したがいまして、これは成り立つというだけでございまして、それが正しいと申し上げておるわけではございませんけれども、算定技術上そういうことになりまするので、やはり急に減りますと、行政がそのまま順応するわけでございませんので、やはり激減緩和措置をとってやりませんと困ってしまうということから来たものでございます。したがって、五年間に激減緩和をしでいく措置措置として、そういう理論構成に立たざるを得ない。しかし、それだけで産炭地がささえられるかといいますれば、これまたお話のようにささえきれるもんじゃない。それは別の観点から考えらるべきものであろうと思うのでありまして、そのために、たとえば弱小団体に対する財源を配分いたしますために、低種地に対する補正係数あるいは補正後の算定で基準財政需要額の増加といったようなことにいろいろ意を用いておるわけでございまして、単位費用の引き上げをも含めまして、全体としては交付税が、減るような形にならぬように、交付税としては強めてやろう、こういう気持ちで作業をいたしておるわけでございます。ただ、急減補正だけでやるということにはおのずから限界がございまして、それだけではささえきれるものではございませんけれども、ほかの方法を組み合わせまして、困った事態を招かないように意を用いてまいるつもりでございます。
  43. 細谷治嘉

    細谷委員 この問題については、財政局長は私の申し上げた数字をなまで信用しないようでありますが、これは私がしろうとで計算したのではないのです。昨年の八月交付税計算の際の人口は三十五年の国勢調査の人口を用いられておるので、それで計算した結果の基準財政需要額が出てきたわけですが、現在の人口を基礎にして計算してみると、補正はそのままにして、種地が変わったらこうなるのだという計算でありますから、計算が間違っておるのではないので、数字をそのまま信用していただかなければならぬ。むろん仮定の数字であります。計算は間違っていないのですから、なまでのんでいただかなければいかぬ。  ところで、大臣、今度産炭地の人口の激減というのはずいぶん考慮していただいたようでありますけれども、いま申し上げたように、私は、今日の人口事情からいきますと、そっくりそのままで二十億程度の狂いが生じてくるのではないかと思うのです。かりに二十億としますと、八割を見てやるというのですから、十六億しか見てくれないわけですね。ウナギのかば焼きのにおいだけかがせたとは申しませんよ。しかし、疲弊した病人である産炭地財政の立ち上がる栄養剤になるていのものではないという気がしてしようがないのです。しかし、その他の辺地等の問題も含めて考えているのだというけれども、その辺に考えているのは合わせて百億程度です。これでは少し不十分ではないかと私は思うのです。ひとつ八月交付税計算段階ではその点はやはり配慮していただきたいと思うのですが、大臣、いかがですか。
  44. 永山忠則

    ○永山国務大臣 人口の激減緩和のために五十億、その他隔遠地補正の算入額の増加というのが二億、住民税の減税に伴う減収を防ぐ等のため、その他の諸費人口分の包括算入額を増加したのが七十億、低種地市町村における財政基盤の充実をはかるため、道路費にかかる態容補正の割り落とし率の緩和、これが三十億、小中学校分の単位費用の引き上げ等で、大体百六十一億という関係で、結局算定で八十億減りますから、逆に百六十一億、その他の不交付団体を二十億加えると百八十何億大体ふやすというようなことが考えられておるのでございますが、具体的な関係がよくわからず、これが産炭地にどう響くかということは計数を整理してみませんとわかりませんが、お説の点に対しては十分ひとつ努力をいたしたい。産炭地の状況をよく聞き及んでおりますので、努力したいと考えます。
  45. 細谷治嘉

    細谷委員 局長すでに御承知と思うのでありますけれどもあと産炭地財政援助の特例についての質問をするわけですけれども、その前に、せんだって多久市の市長が鉱業市町村連盟の代表としてこの委員会において証言をいたした。参考人としておいでになったのです。そのとき、産炭地の公共事業公共事業とおっしゃるけれども、人口の減による交付税の減だけであの法律がいう標準負担額以上になっちゃうんです、こういうふうに言って嘆いておったのです。多久市の市長さんが来ておっしゃいましたが、多久市は四十年度の場合の標準負担額というのは千八百二十二万円なんですよ。ところが、人口減による交付税の減というのは幾らかと見積もりますと、三千三十万円あるのです。公共事業をやろうやろう、法律を六%まで修正してもらったんだから何とか標準負担額に乗ろうと思って、千八百二十二万円こそうこそうと意欲的にやっておっても、人口が減ったために三千三十万円が交付税から抜けていくというわけですから、これはたいへんな事態です。たとえば、大町というのがありますけれども、その標準負担額は六百六十一万円、人口の減によって交付税が減るだろう金額はどうだろうかというと、千四百五十七万円というのであります。こういうことで、人口減による交付税の減が標準負担額以上に減っていくわけでありますから、標準負担額までおやりなさい、それをオーバーしてやりましたならば少し補助率を引き上げてやりますよなんというこんな思想で、今日の産炭地の実情から、産炭地財政援助なんてちゃんちゃらおかしいと思うのです。これはひとつ、井上局長財政局長とお互いになわ張り争いでけんかしては困りますから、大臣から御意見を聞きますれども通産省はこれでいいのだとおっしゃる。自治省一体、今日のいま言ったような実例から言って、産炭地財政といのものに対して、これが全部と言いませんが、一つのてこになるか、財政援助なんといういいことばを使えるのかどうか。私は使えないと思うのです。もしそうだとするならば、別途の方法が講じられなければならないと思うのでありますが、この点についてひとつ大臣と財政局長の、なわ張り争いなんということでけんかということじゃなくて、大所高所からどうあるべきだというお考えをひとつ聞かしていただきたいと思います。
  46. 柴田護

    柴田(護)政府委員 私と通産省とけんかをしているとおっしゃいますが、けんかをした覚えはございません。相互に協力しておるわけでございます。ただ、御指摘のように、産炭地の人口激減の状況は、所によりましては非常にひどいところがございます。先ほど来御指摘がございましたが、北九州の福岡県筑豊地帯でも、あるいは佐賀県のいま御指摘のありました多久でも、あるいは長崎県に行きますともっとひどいところもございますが、非常に減っているところがございます。これを人口急減補正だけで片づけられるかといえば、それはなかなか片づけ切れぬものがある。これはまた別な問題で片づけなければならぬ、こう考えておるわけでございまして、先ほどお答え申し上げましたように、各般の要素を総合して考えてまいりたいということを申し上げたわけであります。産炭地振興の問題はこういうようなやり方でいいか悪いかということになってまいりますと、私どもは実は若干疑問を従来から持っておりますが、ともかく、一つの進歩の段階として、新産方式を産炭地に導入していくということは、それはそれでいいだろうということでもって賛成をしてまいったわけでございます。これはやはり、事業をやればやったところに非常に増大してまいりまする財政需要に対して、これに地方負担が追いつきますように補助率のかさ上げをはかる、こういう思想でございます。したがって、その基盤の陥没部分というものをこの産炭地域振興法の中の国庫補助のかさ上げあるいは起債の利子補給というもので片づけるということは、法の目的からいきますとやや逸脱した考え方ではなかろうかと実は思うのであります。やはり陥没の問題は別途の財政問題として考えていかなければならぬだろう。振興の問題は振興の問題として、ああいうかさ上げ方式、これが十分目的を達しているかいないかという問題は別途の問題がございますけれども、それはそれといたしまして、方法といたしましてはああいう方法も一つの進歩前進であるという考え方をとったのであります。したがって、相互に問題があるわけでございまして、一つは、陥没というものをどのようにしてかさ上げするかという問題、これは交付税プロパーの問題でございます。それから、もう一つは、振興する場合に、振興計画に応じた財政援助措置というものが、いまの振興法でいいのかどうかという問題がやはり出てまいっております。これはあえて否定をいたしません。従来、あの法律をつくりました段階におきましては、ああいう方法をまず考えて、一歩前進をしようということであります。それが現実にそぐわないということが明らかになりますれば、これは変えていくべきものだというふうに私は思います。
  47. 細谷治嘉

    細谷委員 私は、適切な比喩かどうかわかりませんが、結核の第三期患者に仁丹を飲ましたようなものだと思うのです。それより悪いんじゃないかと思うのです。たとえば、いま私が言った多久市というのは、法は六%でありますけれども、五・八%ぐらいにしかなっていないのです。今度のこの審議を通じて、じゃ事業範囲を拡大しましょう、消防施設か何か入れますと六%をちょっと上がって十五万円くらいの補助金をもらえるようでありますが、しかし、十五万円もらっても、とにかく、先ほどちょっと申し上げましたように、千八百二十二万円の標準負担額という、そこで関所が設けられておる。はたのほうでは交付税は人口減だけで三千万円から減っていっちゃうんですから、これはたいへんなことであって、とにかく結核患者でも仁丹飲んだら十分や二十分はちょっと気持ちがいいですよ。多久市あたりにとってはそれにも値しないです。私はやはり、今日の産炭地の振興に対するある程度の公共事業、一般に言われる公共事業でなくても、産炭地の振興計画に基づいて産炭地を前向きにしていく、産炭地の産業を前向きにしていく、住民に明るい希望を持たせるという意味からいきますと、この法律ではだめだ、結核患者の仁丹にも値しないものだ、こう思うのですが、いかがですか。通産省自治省、これはひとつ検討をし直していただきたい。  これに関連して私は思うのでありますが、この種の法律はだいぶ多いのです。同じようなタイプの法律は、まず一番古くできたのは、辺地等に関する財政特別措置法律、これは同じようなタイプの法律です。それから新産都市に対する財政援助の法律、工特に対する財政援助の法律、ことしできました近畿圏の財政援助の法律、それぞれ違っておりますけれども、型は同じなんです。型は同じでありますけれども、辺地というのは結核にはかかっていないのですけれども産炭地というのは結核の第三期症状なんですから、こういうタイプの法律ではいかぬのじゃないか、私はこう思うので、私はまあ率直なことを言うと、こういう問題の法律というのは自治省が地方財政という形で握ったほうがいいんじゃないかという持論を持っておるのでありますが、これはまあ産炭地域振興という法律の中で通産省がやっているのですから、なわ張りはどっちでもいいんです。問題は産炭地を救ってもらえばいいのですが、しかし、それにはこの内容ではいかぬと思うのであります。ひとつ十分に折衝して、産炭地の実情に即するような、このていの法律ではなくて、新しい見地に立った法律をひとつ出していただきたいと思うのでありますが、自治大臣、いかがでしょうか。
  48. 永山忠則

    ○永山国務大臣 まあ自治省といたしましては、人口の激減等によりまして地方財政が非常に苦しい点につきましては、先刻申しましたような後進地に対する財源の傾斜配分を、人口関係だけでなしに十分努力をいたし、さらに特別交付税に関しましても意を用いまして、財源が苦しい立場に立たないように積極的な方途を講じてやりたいというように考えておる次第でございます。  また、振興法をより以上前進すべしという問題に対しましては、通産大臣ともよく相談をいたしまして、御趣旨のある点を努力いたしたいと考えます。
  49. 細谷治嘉

    細谷委員 大臣、時間がないようでありますから、最後に、通産省自治省の両方にひっかかっておる問題を一つ。  まあきょうの石特の理事会でも、長い間の懸案でありました事業税等の問題について、やはり振興法六条に書くべきではないかという非常に強い意見があるわけであります。これを断固として拒否しているのが自治省なんです。低開発にあるにもかかわらず、低開発よりもある意味ではもっと深刻な産炭地について、この事業税を断固として拒否しているのが自治省。きのうも産炭地関係の全国の各団体が集まって決議をしております。その決議の中にも、これが重大な項目として載っているのですよ。まあ先ほどいろんな産炭地に対する措置についてお願いもしたわけでありますけれども、これは考える余地はないのですか。いま石特では、附帯決議につけて、もう有無を言わさず法律の修正をここでやろう、こういう意見すら強いんですよ。まあしかし、有無を言わさずなんというそんな暴力ざたではいきませんから、よく話し合って、実態を見きわめた上で可能な限りの措置をしたほうがいいんじゃないかと思うから、大臣のおる席で、税務局の担当者もおりますから、お尋ねしますが、去年、まあ端的に言いますと自治省に強姦されて、最後にはこの石炭特別委員会は後退したのです。今度はそれは断固として後退せぬという決意なんですが、どうでしょう。
  50. 宮沢弘

    宮沢説明員 事業税の問題につきましては、過日多賀谷委員からも御質問がございまして、御答弁を申し上げたわけでございますが、細谷委員も十分御承知のように、事業税は一応所得がいま課税標準になっておるわけでございます。所得が出ませんと、これは申し上げるまでもなく課税にならないわけでございます。そういう点から申しまして、なるほど産炭地に進出いたします企業の特殊事情もございますけれども、やはり、利益が生じましたならば、それに応じて応分の負担を産炭地所在の地方団体にしてもらうということが、税のたてまえから申しましてもしかるべきであろうという考え方でございます。低開発その他、特に低開発につきましては事業税が入っておりますけれども、その後の各立法につきましては事業税を入れておりません。それはただいま申し上げましたような理由からでございます。私どもといたしましては、やはり税の性質なり実情から申しまして、この中に入れるということは適当でないと思っております。
  51. 細谷治嘉

    細谷委員 まあ去年と同じようなことをおっしゃっているですね。進歩が一つもないですね。これはひとつ、自治省のあれは去年聞いたとおりでありますから、委員会の中において結論を出していただきたいと思います。  最後に、産炭地の教育問題についてちょっとお尋ねしたいのです。  私は産炭地全体のことについては具体的な数字を承知しておりませんけれども、いずれにいたしましても、産炭地の教育というのが重大な危機に立っておるということは、もう文部省のほうも十分認識しておるかと思うのです。そういうこともありまして、たとえば昨年の措置の充て指導主事なり補導教員等の配置もかなり重点的に産炭地に行なわれたわけでございますけれども、今年度、四十一年度の充て指導主事なり補導教員の配置の状況はどうなっているのか、これをまずお尋ねしたいと思うのであります。
  52. 斎藤正

    ○斎藤政府委員 産炭地に関連いたしまして、文部省といたしましては、教職員定数の上では急減緩和ということを昨年度より進めるということに重点を置きまして措置いたしました。県の総定数のワクを、産炭地をかかえております府県が窮屈にならないということを主にいたしまして、ことに急減の著しい中学校につきましては昨年よりも緩和の率を上げまして予算措置等もいたしました。それから、そういう急減緩和の及ばない、たとえば北海道のようなところは、これは産炭地ということではございませんで、全体といたしまして窮屈な事情がございますので、相当大幅なひずみ是正を北海道についてはいたしました。充て指導主事の問題は必ずしも産炭地等の問題を本年度は重点にいたしません。生徒指導主事の従来までの配置の計画ということの実態と、それから指導主事の充足状況というようなものを勘案いたしまして配分等をいたしておるわけでございます。
  53. 細谷治嘉

    細谷委員 いま抽象的なお答えを聞いたわけですけれども、私がつかんでおる、たとえば昨年の福岡県の実例でありますと、充て指導主事が三十人配置されまして、これは全部産炭地に行っておるのです。補導教員が百八名のうち六十九名産炭地に行っております。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕 合計、産炭地に対する特別な事情という形で、九十九名の充て指導主事なり補導教員なりが行っておるわけでありますけれども、その補導教員というのを見ますと、県下全体で百八名のうち、小学校にはたった一名、中学校には百七名行っておるのですね。ところが、統計もはっきりしておりますように、最近の非行少年の状態というのは若年化しつつあるわけです。こういう点から言って、小学校はたったの一人、こういうことになりますと、いろいろ問題点がありますけれども実態に即しておらない。数も足らないけれども、配置も実態に即しておらない、こういうふうに申し上げる以外にないと思うのですが、この点いかがですか。
  54. 斎藤正

    ○斎藤政府委員 福岡県のこの生徒指導の関係を含む指導主事の配分というものは、従来から積み上げたものを見ますと、交付税上の措置として三十九人、それから、そのほかに義務教育費国庫負担金として充て指導主事が本年度八十二人。これにつきましては、実は充足状況が十分ではございません。市町村に充て指導主事だけで四十八人、本年度現在の段階で行っておるはずでございますが、その中で生徒指導に二十九人程度。ですから、それぞれ産炭地関係あります市並びに郡を単位として配当されているのが実情でございます。
  55. 細谷治嘉

    細谷委員 若干昨年よりもふやしたようでありますけれども、たとえば、産炭地の教育の特殊事情、陥没しておると言うのでありますけれども、行って調べますと、非行少年が非常に多い。しかも集団化しておる。それもだんだん小学校のほうに波及してきておる。それから、学習意欲のない生徒が非常に多い。要保護、準要保護が非常に多い。先生はもう精神的にも肉体的にもくたくたである。こういう実態なんです。ところが、一例をたとえば特殊児童・生徒なりあるいは促進該当児童等の実態に見ましても、その収容率等はきわめて不十分だろうと私は思うのですよ。これでは、産炭地の振興振興と言いますけれども、教育の面からくずれていっておる。これが現状じゃないですか。あるいは文部省は、言ってみますれば、口では言いませんけれども、どうも福岡県をかたきのように思った面があるのではないかと私は思われてしょうがないのですがね。そうでしょう。そういう点で、ことばはなかなかうまく言いますけれども産炭地実態を把握していない。陥没しておる教育というものをもとに戻す努力というものが足りない。資料を持ってきておるのですが、いろいろな面をあげてこういうふうに申さざるを得ない。こういう点について文部省は一体どう考えておるのか。
  56. 斎藤正

    ○斎藤政府委員 決して福岡県につきまして私たちが特別の予断を持ってきびしく当たっておるわけではございません。本年度もかなり教育長ともお話をしました。ただ、産炭地問題で、定数問題で配置の状況が行政的に見まして通常の府県より特異な状況があるとかいうようなことは、行政上直していただきたいということを申しておるのであります。もう少しスムーズにいきますことを私たちは念願をして、その点は努力をしていただくことになっておるわけでございます。私どもは、産炭地関係市町村におきまして準要保護児童が他のところよりは多い、あるいは統計的に見まして虞犯少年とかその他の非行少年の率が多いとかいうような実情を承知しております。したがいまして、準要保護児童の問題につきましては、全国の産炭地につきまして、該当するものについては本年度もこの補助金を十分にまかなうように措置するつもりでおります。また、先ほど申しましたように、県内の教員の全体の配置という観点からでは、福岡県を見ますれば、急減緩和の措置あるいは過員救済等の措置によりまして相当他県の基準に比べまして教員が多くいるという点から見ますれば、それをそれぞれの事情に応じて活用されれば、私どもは教員の定数については一応措置できるというふうに考えておるわけでございます。ただ、過員救済や急減緩和の措置適用を受けないのが北海道でございました。そういう点は、僻地等の関連で定員上非常に困難であるという点で、その点については政令の改正をいたして、急減緩和とはまた別途の措置をいたしておるわけでございます。
  57. 細谷治嘉

    細谷委員 私が言うとあなた方はすぐイデオロギーにとらわれているとおっしゃるかもしれぬけれども、「産炭地の教師は訴える」という本がここにある。あなた方は教師というのはもう赤いものだと思っておるかもしれないが、これをこのまま読んでみると、産炭地の教師の実情、毎日の苦労というものが身にしみてわかるわけですよ。それでも及ばないで、現に非行化が進んでおる、集団化が進んでおる、こういうことですね。そういうことでありますから、教育がもう陥没しつつあるということは客観的な事実なんです。ですから、福岡県の知事も、とても文部省のものだけでは今日の筑豊炭田のあの教育実態には困るというので、なけなしの金で県独自の定数というのを三十名か七十名か設けてやらざるを得ない、こういうような実態になっておるわけですね。したがって、やはりもっと産炭地実態というものを考えていただかなければならぬ。先ほど財政問題について自治大臣にも申し上げたわけですけれども、ひとつ文部省の窓口からも実態をつかんでいただかなければならぬのじゃないか、こう私は思うのです。いわゆる限度政令にどうのこうのということでなくて、産炭地の問題をやはり救わなければならぬ。私はかって、いまの文部大臣の前の文部大臣の際に、限度政令にこだわるのではないかということを質問した際に、大臣はこうおっしゃっておる。それは、産炭地の教育は何とかしなければなりません、できるだけやります、しかし、まずその県の限度政令のワク内でやってもらいたい、それができなければ国全体の限度政令の中で何とかしましょう、それができなければまた別途考えましょう、こういうふうにおっしゃっておるのですけれども、文部省のやり方というものは、きわめてローカルな部分だけ見詰めて、その中で限度政令というものをがんじがらめで押しつけようとしておるというふうに映ってしょうがない。少し私が言うと、イデオロギー的に言っておるのではないか、政治的に言っておるのではないかと言うが、そうではなくて、私は産炭地の教育の実態というものを若干知っておるだけに、この点を申し上げておるわけなんです。  時間がありませんからこれ以上申し上げませんが、ひとつ十分に配慮して、県教委の苦労というものに対しても、いやあれは去年学テをやらなかったから、いろいろな補助をやっていたけれどもひとつ減らしてやれなんていうことでなく、——現実に減らしておりますよね。減らしておりますけれども、それは、あれで減らした、かたき討ちを長崎でやったのだとは決して言わぬ。明らかに長崎でやったことに間違ない。そんなことでなくて、教育という高い視野からやはり取り上げていただかなければならぬと思うのです。特にこれを強く要望して、時間がありませんから、この点はまた問題があれば他日に御質問したいと思う。
  58. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 多賀谷真稔君。
  59. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私は、地域開発について総合的な見地から、まず企画庁長官にお尋ねいたしたいと思います。  高度成長政策の強行というのが、一方で産業と国民生活のアンバランスを生じたといわれております。確かに、現在の経済における七つの大罪といわれておる交通戦争、水飢饉、地盤沈下、大気汚染、ごみ、し尿の山あるいは騒音などの問題を見れば明らかです。これはいわば人間喪失の政治だともいわれておる。なるほど、工場とすれば、工場が隣接をする、製鉄所の隣には自動車工場ができる、あるいは石油会社の隣には電力会社ができ、あるいは石油化学の工場ができ、あるいはその加工工場ができるということは、輸送費が第一要らない。コストの面から非常にいい。しかも消費地に近い、こういうことになれば、私企業の個別企業の面から見れば、私は、確かにコストも非常に安くつくし、採算も有利になる、こういうように考えるわけです。しかし、それがためには、労働者は往復三時間もあるいは四時間も通勤をしなければならない。あるいは市町村とか都道府県、国は、社会開発といって、公共投資を相当やらなければならぬ。  いま日本において全国的に市町村が赤字だというのはふしぎだと思うのです。いま問題になっております産炭地のようなところは、人口が急激に減ずるわけですから、これは赤字になるのは当然です。あるいは低開発地域といわれるところも当然でしょう。ところが、人口がどんどん急増しておるところの市町村が赤字だという。これは、人口が五%ぐらいずつ増加するならともかくとして、年率二〇%、三〇%と増加するものですから、工業用水にしても、あるいは上水道にしても、計画が常に追われておる。あるいは都市交通にしてもそのとおり。学校の施設にしてもそのとおり。結局、いまの日本の相当にのぼる公共投資というのは、人口移動の補正をやっておるようなものです。行政水準は高くなっていないのです。ただ、人口が移動する、その政治としてしりぬぐいをやっておるような形です。  そこで、企画庁としては、個別企業の採算上非常に有利な点と、国または公共団体が負担するいわゆる負担増の問題と勘案して、社会的な損益計算書を一体どう見ておるかですね。これは一体日本の政府は何をやっておるのだろうかと感ずるような状態です。ですから、企画庁としてはどういう計算をしておるのか、まず計算をお示し願いたいと思います。
  60. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 具体的な数字的な計算を申し上げることは非常に無理だと思うのですけれども、大局に立って計算的な考え方で問題を判断していきますと、御承知のように、日本の工業がある一部の地方に集中するということは、それから派生しますただいま御指摘のようないろいろな過度の人口集中、それに伴います生活環境の整備もしくは文化的施設の点等々、非常に困難な問題が起こってまいりまして、多賀谷委員のお話のように、それを是正するためにあとから追っかけてやっているというのが、残念ながらいままでの実情だと思います。  しかし、それでは相ならぬので、日本の経済がほんとうに総合的に動いてまいりますためには、地域経済の充実ということが必要であることは申すまでもございません。したがって、企画庁としても、一応、三十七年の全国総合開発計画のできましたときに地方別工業出荷額の比率というようなものを検討し想定しまして、そうして、地方においてそれぞれの立場に立って適当な水準まで持っていこうというようなことを想定して出発したのでございます。しかし、国民経済全体が急速に動いておった関係上、いろいろそれらの問題についても再検討をする必要がございますので、経済審議会の地域部会等に対してもその再検討をお願いしておりますし、また、国土総合開発の審議会におきましてもそういう問題についてお取り上げ願いたい、こう思っておるわけでございます。  そうして、やはり主たる問題は、昔のようなことでございますれば、たとえば地方に持っていくことによって労働賃金が安いというようなことが一つの魅力であったわけでございますけれども、今日はそういうことを考えるわけにまいりません。また、そう考えてはならぬわけでございますから、全国的に同じような賃金でございますと、地方に持っていく魅力というものは何かというと、やはり、道路が整備されている、輸送が完全である、あるいは生活環境がよろしい、マーケット等に対する経済的な地域的な要衝の位置というような問題、しかもこれらの問題は道路の開発とか輸送機関の開発とかということによって今日では補っていける場合がたくさんございますから、そういう問題に対して先行投資的なことをいたしてまいらなければならぬと思います。  ただ、御指摘のように、過去において、非常に過密都市ができたというために、それの対策に若干追われて、先行投資的な地方開発がおくれておったということは、これは率直に認めざるを得ないのでございまして、今後そういう面に力を入れていくことによって、総合開発計画が生き、いまお話しのそういう面にあれできますれば、いまのバランスシートも適当なバランスシートができ上がっていくと思います。
  61. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 その地方開発がまた全く総花的なんです。法律で言っても、国土総合開発法、これは昭和二十五年。それから、地方開発促進法にいたっては、北海道、東北、これは理由がある。私も九州ですから言いにくいんですけれども、九州地方開発促進法ができてから、もう乱れてきた。四国、中国、北陸、今度中部が出たわけです。それから、首都圏と近畿圏整備法ができる。それから、新産業都市建設促進法、工業整備特別地域整備促進法、低開発地域工業開発促進法、それから、特殊なものとして、産炭地域振興臨時措置法、離島振興法、奄美群島振興特別措置法、豪雪地帯対策特別措置法、山村振興法などのものは、特別地域ですから意義があると思いますが、全国、何か法律にかからぬところはないのでございますから、こう総花的なことをやって一体いいのか。これは政府だけの責任じゃない。ことに、地域的な開発促進法を出したのは議会が出した。議員立法で出したわけですから、われわれ責任を感ずるわけです。そうして、低開発にしてもその他にしても、とにかく同じような優遇措置がとられているわけです。ですから、結局、優遇措置というものは、全国にあって、何ら魅力がない。いま産炭地域の振興の法律をやっているが、いろいろ書いてあるが、全然魅力がない。どこだってみんなそういう恩恵がある。ですから、これらの点について、企画庁としては、いま緊急に地方開発をしなければならぬ地点はどういう地点だ、どういう基準でいくのだ、これをどういうようにお考えですか。お尋ねしたい。
  62. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 いま御指摘のように、それぞれの地方開発、九州開発とか四国開発とかできたわけでございますが、私はこのこと自体がすぐに悪いとは思いません。総合開発をやることはやはり地域住民の方々の意向あるいは御協力というものを十分に取り入れていかないと、総合開発がただ中央の政府から押しつけたものになっては相ならぬのでありますから、したがって、そういうものが出る必然性はあったと私は思います。しかし、そういうものが出そろって、それぞれの地域の方々の御意見がまとまってくると、そういうものを基礎にして全国総合開発は一本にまとめていく時期にならなければならぬし、またそういう方法をとることが一番いいのじゃないかと私など考えております。したがって、適当な時期には、たとえばそれぞれ法律によりまして地域開発の審議会等ができておりますけれども、これを何らかの形で総合開発の審議会等にして運営していただくことも将来は考えていいのじゃないか、そして、おのずからその中で、その地域の中の重点を他の地域の中の重点と比較しながら皆さんにお考えをいただく、こういうことが適当なことではないかと思います。お話のように、新産業都市なり工特なり、あるいは低開発地の開発計画なり、いろいろ法律ができておりますが、それが総花的になり過ぎているという御指摘は、私どもも扱ってみましてそういう感じがいたします。率直に申し上げまして、極端な例は、豪雪地帯の法律ができまして日本の半分が豪雪地帯に指定されたわけでございますが、われわれから見ますと、その半分の中から適当な重点地区を選んでまず施策を進めていかなければならぬ、こういうふうに考えるわけでございまして、山村振興法もできましたが、私どもとしてもそういう考え方でまいりたいと思いますけれども、いろいろ地方の実情等を伺えばもっともだというような点もありますから、指定は相当大きくなりますけれども、その中からおのずから順位をきめ方法を立てて、そして重点的に問題を扱っていかなければならぬと思います。そういう意味から申しますと、たとえば政府の補助というようなものについても、いまほとんど各種一律になっているじゃないかというお話でございますが、事実そのとおりになりつつあるわけでありまして、そういう点については、やはり総合開発の見地によって重点的に問題を扱っていくということを将来は考えていかなければならぬ、そういうようなことを私どもも考えておりますが、この点については国会の皆さま方の御協力を得ないとなかなかできないことでございますので、よろしく御協力を願いたいと思います。
  63. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も十分調査したわけではありませんけれども、世界の立法で最初の地域開発的なものをやったのは、一九三四年の英国の特定地域開発改良法案だと思います。これは、あの世界的な恐慌の波に洗われて、同じ地域が単一産業で立っている場合は非常に影響が大きい、こういうことで、なるべくその地域の産業を多角化しようというところから、たとえば造船地区であるとかあるいは炭鉱地区に他の産業を誘致するということで始まったと思う。これはむしろ失業問題が中心であった。しかし、その後第二次世界大戦に入ったわけですから、この法律は必ずしも十分な効果を見ないうちに戦争に突入したという形になった。しかし、ビバリッジ等が、第二次世界大戦後の失業というのは局地的失業である、全体を見れば欧州においては完全雇用体制であるが、しかし局地的失業というのは非常に大きな社会問題であるということを戦争中から言っておりまして、御存じのように、戦争が終わった一九四五年に工場配置法が英国においてできた。これは明らかに失業対策ですね。どこでも工場を配置せいというのじゃなくて、失業率の非常に高い地域、しかも継続的失業地域というものを指定して開発しようという考え方。それが、名前をもう少しはっきりいたしまして、一九六〇年の地方雇用法という法律に変わっていったわけです。それで今日あるわけですが、やはりそれは、失業率が高くて永続的な失業状態が現に存しておる、その危険がある、これに重点的に集中をして雇用の創設をしよう、こういう考え方です。それから、自由主義経済でありますアメリカでも、第二次世界大戦後いろいろ問題があった。問題はあったわけですけれども、結局特定地域再開発法案というのが通過した。これは、たとえば軍需産業であるとか繊維産業であるとか、あるいは炭鉱地帯という単一産業地帯が没落をした場合に、その開発をするための法律ですね。  ですから、私は、地域開発の当面にある重点は、やはり雇用問題じゃないかと思うのですよ。将来の日本経済全体を前進さすためというならまたいろいろあるだろうけれども、緊急にやらなければならぬ地域開発というものは、やはり雇用問題を中心に地域開発を行なわなければならぬ、こういうふうに思うわけです。その点が、どうも日本はすぐ政策が経済主義からいくものですから、住民の福祉であるとか労働者の生活の実態というものから政治がいかないのですね。ですから、非常に住民を忘れた開発計画になっておる。こういうところは非常に残念であります。  そこで、私は、いろいろあるけれども、いま一番問題の地域は、石炭地域あるいはかつての石炭地域だろうと思うのです。私も実は、内論話をしますと、産炭地域振興法というような法律を、しかも石炭局という一部局から出すというようなことは好まなかった。これはむしろ、多くの議員の賛成を得て、慢性不況地域再開発法ともいうべき、何も石炭だけに適用するのじゃない、将来繊維の地域に起こったらそれも適用するのだ、こういう法律の立法を考えたわけですけれども、とにかく各省折衝で間に合わぬということで産炭地域振興法という形になったわけですね。これは、いまから考えれば、法律の発生の過程が私は非常な不幸だったと思うのです。そこで、非常に失業者の多い地域、いま話が出ておりましたが、筑豊炭田では、生活保護費だけでも、あの筑豊炭田の八十万の人口を対象にして、大体九十億出ておるのです。それを産炭地域以外と仮定をすれば二十億で済むのですね。要するに七十億の生活保護費を出される。この生活保護費は全くむだな金です。ところが、現実には、雇用の創設もなければ増大もなく、生活に困っておるから生活保護法の適用を受けざるを得ない。  〔蔵内委員長代理退席、有田委員長代理着席〕 ですから、そういったところに重点的に、しかもあらゆる日本のすみずみまで行き渡るような、恩恵的と称する恩恵的にあらざる政策でなくて、これは重点的にひとつやってもらいたいと思うのです。長官としては大体どういうお考えですか。何なら通産省からあなたのところへ役所を移してもいいのですよ。
  64. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 産業の配置がやはり経済性の上に立つことが一つの基本条件であることは、私は肯定せざるを得ないのでありまして、自然的条件その他が不適当なところに産業を持ってこようと思っても、これはなかなかいかぬ。したがって、それぞれの地域におきます産業がある意味において集中する、同種産業が集中するということは、これはやむを得ないことであろうかと思います。しかし、御指摘のように、そういうことになりますと、将来必ずしも永久に繁栄していかないような産業を主体として握っておりますところについては非常に地域上の不況が起こるわけでありまして、したがって、その方面に比較的有利な産業をできるだけ移植していくということに対する自然的な条件の改善、道路でありますとか、交通機関その他の整備をするということを先行投資としてやりまして、そしてそこへ移していくという努力はしてまいらなければならぬと思います。同時に、雇用の問題は、御指摘のとおり重要でございまして、一部の地方に非常に未就職者がいるというような片寄った状態というものは避けてまいらなければならぬのでございますから、したがって、雇用の問題については、やはり私は二つの面から考えていかなければならぬと思います。一つは、そういう遊休労働力を他の地方に移していくということ。それには職業訓練と同時にやはり住宅問題その他の解決があろうと思います。したがって、そういうものを並行させて他の面に就職の道を開いていくということも総合開発の上で十分考えられていかなければならぬ。しかし、そういうことを考えてみましても、その地方に定住することによって職を得られていくということならば、住宅問題その他、現に住宅を所持しておられる方もあるわけでありますし、あるいは長い間の地域的な慣習の中へすわった方ですから他地方に行きにくいという方もありますから、そこにはやはり若干の先行投資を伴った産業誘致ということをあわせ考えていきまして、その適正地域に適応する産業はこれこれだという従来の考え方だけにとらわれることなしに、新たな環境づくりによって適正な条件を整備しながらそこに持っていくということが私は必要じゃないかと思うのであります。両面からこれらの問題を考えていくということが総合開発の上では必要じゃないか、こう思います。
  65. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 私も、遊休労働力を他に移すということは非常に賛成です。おっしゃるように、住宅問題が最も隘路でありますから、この推進はぜひはかるべきだと思う。しかし、それだけでは解決しない。おっしゃるように、その地域を開発をしなければならぬ、再開発を行なわなければならぬわけですが、いまおっしゃるような先行投資ぐらいでは、いまからいかぬのじゃないかと思うのです。なぜかというと、先ほど指摘されました賃金の地域差というのがだんだんなくなっている。ですから、あの地域に行けば低賃金で使えるということがだんだんなくなっていく。御存じのように、アメリカでは賃金差によって競争するということを非常にきらっているわけです。むしろその地域が賃金が安いから移動するなんという工場を禁止していますね。現実にだんだん物価水準等も上がってくる、そしてエンゲル係数等がだんだん低くなってくれば、食料以外の他の消費物資というのはむしろ都会のほうが安いということになる。そこで、賃金差というものはだんだんなくなりつつあるときに、いまのような若干の——まあ先行投資は必ず必要ですけれども固定資産税の免税をやるとかいうぐらいのことでは、とても企業は来ない。そこで、いま現実に、過密都市においては、東京都における特別区であるとか、横浜であるとか、川崎であるとかいうところでは、千平方メートル以上の工場の誘致については、いわば開発許可制をとっております。しかし、私は、大都市に工場が集まるときには、税金をかけると言うとまた問題がありますから、租税特別措置法の恩恵をなくする、逆に重税をかければこれは大問題になりますから、そうはいかぬでしょうが、いままで均一的に与えておった恩恵をなくする、その地域には租税特別措置法の恩恵を与えない、こういうふうにしなければ解決できない問題だと思うのです。みな議会人は、演壇に立てば、その税金は安くせい、支出は増大せいとこう言うが、それでは政府だってもてませんから、そういう意味においては、そういった租税特別措置法の恩恵を過密都市における工場についてはなくするといったような措置をとらないと解決できない問題だ、私はかように思うのです。これは企画庁長官の範囲でなく大蔵大臣の範囲でしょうけれども、しかし、ものの考え方は、そういうようにしなければならぬのじゃないか。  それでは、時間がありませんから私は続いて質問をいたします。イタリアの南部開発で、イタリアは非常に苦労しておる。しかし、イタリアは、御存じのように、政局は非常に不安定でありますけれども、政策は安定しておる。これは、法律に初めから長期にわたる資金の支出予算を明示しておること、議会が優先しておって、法律で明示をして、それに伴うて政府は予算の支出をしなければならぬ、さらにまた、これは公的金融機関が扱っておるというようなことですけれども、何か長期計画というものを立ててやらなければだめじゃないかという気もするわけです。  それから、通産大臣もおられますけれども、私は、いまの電力料金というものが全くさかさまになりつつあると思うのです。いまなっておるとは言いませんよ。やがて東北の電力料金は上げざるを得ないでしょう。北陸も上げるという話がある。結局どういうことになっておるかというと、九分断をされてから後のこの料金の上がり方を見ると、かなり上がっておりますけれども、その上がり方が大都市に供給をしておる電力会社の上がり方と、いわば低開発地域に送電をしておる電力会社の上がり方とは、むしろ低開発地域のほうが非常に上がる率が高い。これは、将来水力のウエートがぐっと少なくなり、火力のうちでも重油専焼のウエートが非常に高くなる。そうすれば、アラビアから持ってくるわけですから、どこの地点に持ってこようと運賃はほとんど変らない。それで、大容量の新鋭火力で多く発電をする。しかも送電線の配電コストの安い地域が安くなるのはあたりまえです。ですから、東北のように電柱を何本もつけなければ一軒がまかなえぬというところと、東京等のように一本の電柱があれば——これから電柱はなくなるでしょうけれども、何百軒もまかなえるというところとでは、コストの違いは明らかです。そうすると、いまの日本の電力料金政策を見ると、全くそういう意味地域開発の政策料金は入っていない。私は、これは今後の大きな問題になると思うのです。最近の傾向をずっと見ると、東北が三十九年度において五円四十二銭、中部が五円五十四銭。こんな状態になれば、私は東北に企業は来ないと思うのです。九州のごときは一番高いです。七円しておる。これは電灯、電力を含めてです。ですから、地域開発といっても、事電気については全くさかさまになっておる。こういう点を一体どう考えておるのか。  次に、どの地域の新産都市の計画を見ても、工特地域の計画を見ても、石油化学、鉄鋼、電力、みな同じです。こんなコンビナートをつくったらたいへんです。いま日本で大体一年間に鉄鋼が二百万トンないし三百万トンしか伸びがないという。ところが、今後国際競争に勝っていくためには一千万トンのキャパシティーの工場をつくらなければならぬという。一千万トンの工場を一つの会社がつくれば、あとは三年ぐらいじっとして投資をしないで待っていなければならぬという状態です。しかも各地域みんなそれを期待している。ですから、政府としては、親切に、この地域は何が適するということを、勇気をもって、勇断をもってやらざるを得ないんです。もしそういうことを考えれば、いま産炭地域等において問題になるのは、やはり水も少ない、資源も石炭以外にはないということになれば、機械工業です。労働力を吸収する機械工業です。なるほど、いまおる老齢化した失業者がすぐ機械工業に向くとは私は思いません。思いませんけれども、これは子弟を持っておる。ですから、どうしてもこういった地域には機械工業というものを何らかの形で考える必要がある、こういうように考えるわけです。これはなかなかむずかしい。ことに、機械工業というのは、本来、国有とは言いましても、わりあいに適さないのです。これは私のほうから言うと変ですけれども、わりあいに適さない。資源工業とは違うのです。しかし、それかといって、ルノーの自動車工場のように、国有にして公団でやっておるという工場もあるわけです。フォルクスワーゲンだってやはりそういう形態ですよ。イタリアのように、非常に不景気のときに金融機関を救済するために政府が借金を肩がわりした。そのときに株を取ったんです。ですから、イタリアの企業というのはみな政府が株を持っている。それを世界大戦後も維持しておる。政府が投資をしておる。交付公債とちょっと関係があるわけです。政府が株を持ってコントロールしておる。こういう方法が日本ですぐできるかどうかということは別として、何らか機械工業というようなものを産炭地域に持ってくることができないかどうか。そういう考え方はできないか。  それから、産炭地といっても、何でもかんでも鉱工業というわけにはいかないと思う。ですから、地域によって、あるいは特殊な農業の振興をやらすとか、あるいは観光をやらすとか、何か立地条件に合ったような施策が必要ではないかと思う。どこもここもみな工場を持ってきたいと言う。これもやはり親切でない。地元としては当然でしょうけれども、方法を考えざるを得ないと思うのです。  時間がありませんが、これらの点についてひとつ企画庁長官並びに通産大臣から御答弁を願いたい。
  66. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 電力の問題については、これは今日、戦後の経済発展の過程で、電力以外でもそうでございますが、いろいろな組織や何かができてきたと思う。それを、ここまで日本の経済が発展してきますと、いろいろな面を再検討してみなければならぬ時期が迫ってきているのではないかという感じがいたします。ただ、どういうふうにしていいかということについてはわれわれまだ結論を持っておりませんけれども、そういう問題について十分な関心を持っていかなければならぬと思います。  それから、同時に、産炭地域における機械工業の移植というような問題については、そういう面についてわれわれも十分考えてまいらなければならぬのでございまして、これは指導のいかんによって考えていけるんではないか。私が先般新潟に参りましたときにも、新潟の燕の状況は、御承知のとおり、ああいうところで金属食器ができて、しかも輸出で非常に大きな発展をしておる。むろん過去における農機具をつくったというような経験からあれに発展したのでしょうけれども、そういう発展のしかたがあるのでございます。また、同じように、あの長岡の近くの山手のほうに参りますと、化繊の織物をやっていて、小さな町ですけれども、いま百億ぐらいの輸出をしておる。その八〇%までが外国輸出であって、そうして、当時、雪が降ったときには地方の小さい鉄道ではとまってしまう。そのとき輸出に間に合わないからヘリコプターを使ったという話を聞いたのでございますけれども、そういうことでも輸出産業ができるところがあるわけです。それから、兵庫県に参りましたときに、昔柳ごうりをつくっていたところが、今日非常なビニールのハンドバックの生産地になっておりまして、日本の国内供給の何十%かを占めており、同時に東南アジアに輸出しておるという現場を私見てまいりました。ですから、ものの考え方と、地方の方々の御協力を得て、そうしてある程度の技術的な指導その他をやっていきますれば、そうした産業を移植していくことは努力次第ではできないことではないと私は思います。  それから、御指摘のように、新産都市におきましても、石油コンビナートとか、地方の方から言えば大きな工場が来るのは望ましい。モニュメントみたいに立ちますから。しかし、そうどこでもかしこでも石油コンビナートの競争をしておりましても、日本で石油コンビナートはそう要るわけではございませんから、やはり地場で起こっております産業を育成して、それをどんどん拡大をしていくという道をとってまいりませんといけないのではないかと思います。そういう面では、われわれも、地域開発をやっております場合に、よく新産都市の方がおいでになりまして、石油コンビナートをあれするのだがどうだというお話がありますが、それよりも前提として地場産業の育成をなすったらどうですかということを申すのであります。ことに、このごろみたいに景気の沈滞しているときには、なかなか中央からそういう大きな工場を持っていくわけにはいかぬ。しかし、そういう工場を将来持っていく場合に一番何が必要になるかといえば、先ほど御指摘のように、先行投資としてのそういうもの、あるいは電力等の問題がございますが、同時に、地場産業がある程度使えるということが必要である。相当私ども仕事をしておりましたけれども、たとえば、何か行った場合に修繕工場をいきなり自分で持たなければならぬということは非常に困る。その地場に適当な中小企業でも機械の修理工場があれば、それを活用できるという場面がずいぶんございます。ですから、そういう意味で、この際はあまり大きなことを考えないで地場産業の育成を少しなすったらいいじゃないですかということをよく私は新産都市の関係者には申し上げるのですが、そうすれば必ず将来何らかの形でもって大きな産業の誘致の基盤になる。そういう意味において、やはり地域開発、また産炭地振興という問題についても、そうした面を考えながら、困難ではございますけれども、何らかの形で指導もしていき、地域住民の方々の御協力を得てやっていくということが実際的に振興のワンステップあるいはツーステップを踏み出していく道ではないか、そういうふうに考えておりますので、今後、地域開発というような計画の中におきましても、われわれとしてはそういうことに留意しながらやってまいりたい、できるだけひとつ考えてまいりたい、こう思います。
  67. 三木武夫

    ○三木国務大臣 私も、多賀谷君の言うように、地域開発というものに対して疑問を持っておるのは、みなが同じようなパターンなんですね。どこへ行っても、石油コンビナートとか、何万トン級の船の港をつくるとか言うのですが、もう少し地域の特殊性が生かされることでなければならぬ。また、考えようによったら、産業ばかりでもないではないか。教育なども、そこがやはり産業的にはなかなか発展しにくいならば、そこの大学をりっぱな大学にして、そしてある学問はそこへ行かなければ勉強できぬような、そういうバランスというものが考えられてよいのではないか。単に何か同じようなパターンで、バランスを考えないでやるのではなく、特殊性を生かしていくような、そういう国土計画というようなものがやはり検討されなければならぬ。そうでないと、同じようなことといえば、いろいろな立地的な条件がありますから、そういうふうな感じを持っております。われわれとしてはそう守備範囲が広い範囲でもないわけですので、通産省としては、産業の立地というものについては、もう少し通産省の行政の中で特にこれから力を入れていってみたい。いま産業立地の問題というものは審議会等においても検討してもらって、この間も第一回の会合があったのですが、そういうふうに、産業の一つの地方的な配分というのですか、これに対してどのように考えたらいいか、政府がどの程度まで関与すべきかというような問題、いろんな問題がある。これはやはり、地域の特殊性を生かして、もう少し再検討を加えてみたい。産炭地の問題は、現在不況の関係もあって、ある程度の企業はここにもいろいろ持っていますけれども、しかし、全体とすれば、いろいろ現地の人の話を聞いてみても、中堅企業になるようなものはないですからね。いろんな寄せ集めのような感じです。だから、何かそこに一つの中堅的な企業があって、そしてそういう工業を中心として産炭地が振興されていくということが好ましいことは、これはもう明らかであります。だから、今度の石炭の根本的な対策ともにらみ合わせてみて、産炭地振興というものはやはり一つの大きな問題点だと思います。これについては、従来の惰性的な考えだけでなしに、いままでのようなことだけではどうもなかなか目的が達成できないので、もう少し力を入れていく必要を感じておる次第でございます。
  68. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 むしろ一産業の場合は案外通産省はなかなか新しいアイデアで政策を進める。たとえば、日本合成ゴム株式会社というのがありました。これは七、八年前に法律ができた。要するに、天然ゴムがだんだんなくなる。そこで、合成ゴムをつくらなければいかぬ。しかし、現実にはここ二、三年あるいは三、四年は赤字になる。だからといってそれをやっておかなければたいへんだというので、わざわざ政府が半分出資をして合成ゴム株式会社というのをつくったですね。そして、いよいよそれが一人前になるようなときには政府の株をその需要家に買わせます、こういうことで出発したわけで、これは成功しましたね。ところが、東北開発株式会社もある。これは東北という非常に広大な地域にやるから成功しなかったと私は思うのです。しかし、私は、あれは不成功だとは思わない。昭和十三年くらいですか、あの不況後にできた。それで、一人前になったものは独立さしておるわけですからね。できないものばかりあとに残しておるわけですから、非情に成績が悪いとかなんとか問題になっているけれども、私は必ずしも不成功だとは思わない。ただ、重点的にやる点を間違っておったとか、あるいはいろいろ協力が足りなかったとかいう問.題はあると思う。  そこで、産炭地にもそういうことを考えたらどうか。先ほど私は、機械工業を国営でやるとかいうことがなかなかむずかしいと言ったのですが、産業の性格としてもそれは確かにむずかしい。そこで、やはり政府が株を持ってやらしたらどうかと思うのです。そういう中堅企業に今度初めて産炭地事業団が出資をすることになった。私は、わずかな芽であるけれども非常に期待をしているのです。そこで、たとえば機械なら機械でも、各炭鉱にはみな工作部門があるわけです。かなり大きな工作部門を持っている。日本鉱業の日立鉱山の工作部門が、御存じのように日立製作所になったわけです。ですから、その工作部門でも統合をさして、とりあえず修理をやって、それで毎日食っていくだけは食っていく。それに政府からかなり援助をしてやれば、やはり中堅企業ができるのじゃないか。鋼材はあります。八幡製鉄という大きな製鉄会社があります。ですから、そういう知恵を出して、政府が万一損失が起こった場合のリスクを見てやる。無利子の金を貸してやるという趣旨から言っても、政府が株を持てばいいし、出資すればいい。あるいは危険負担の面から言っても、政府が出資をすればいい。政府出資は事業団を通じておやりになればけっこうです。何かそういう政策を立てられたらどうかと思うのです。  そこで、御存じのことをいまさら言う必要もないのですが、英国では、本年の一月から、開発地域において誘致をする企業の機械装置には四〇%の補助金を出すわけです。いままでも補助金を出しましたが、今度は四〇%も出すという。それから、工業用の建物は二〇%ないし二五%という、こういうところまで来ておるのですね。日本はまだやる仕事がありますから、ここまで私は補助金を出せとは言いませんけれども、もう少し政府が、やるならやるように、死ねというなら死ねというように、何かなまぬるいような政策をやらないで、抜本的にやってもらいたいと思うのですね。これはどうも通産省よりもほんとうならば企画庁が総合的におやりになったらいいと思うのです。企画庁というところは案外、法律はいっぱい持っておるけれども、予算をじょうずに取り得ぬというきらいもあるのでどうも困るのですけれども、実施官庁じゃないというので、なかなか勇気と勇断がないので困るのですけれども、やはり、各国の実情を見ても、広範囲に広げるのではなくて、きわめて困っておる点を、部分的に、きわめて集中的に政策をやっておる。そういう点から見れば、我田引水のようですけれども産炭地というのがいま一番困っておる地域じゃないか、こういうように思うわけです。ひとつ企画庁長官から御意見を承りたい。
  69. 藤山愛一郎

    ○藤山国務大臣 企画庁にその種の仕事をもう少し予算を取ってやれというお話でございますけれども、私は、企画庁というものは、いまでも少し仕事を持ち過ぎているのではないかと感じております。むしろ純粋に計画、企画の立場に立って、そのかわり、各省がずいぶん御迷惑かもしれませんが、各省に対していろいろものを言うということのほうが効果的じゃないかと実は考えておるのでございまして、多賀谷さんのお話でございますけれども、企画庁がそういう問題にまですぐ手を出すということについては、私はどうかと考えております。
  70. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 総合的にやるならという意味で言ったんですが、確かに企画庁は少し実施官庁になり過ぎていると言えるかもしれぬ。しかし、それほど日本の官庁は連絡がないということですね。われわれもそうですか、何か機構をつくるとすると、すぐ総理府だ経済企画庁だといって持っていくというのは、やはり各官庁が連絡不十分だというセクショナリズムに基因しているのですよ。第一、この産炭地域の法案がそうなんですよ。これは、通産省石炭局はめんどうを見るつもりであるけれども、はたして通産省全体がそういうようになっておるかどうかわからない。ましてや、運輸省や建設省がはたして応援をしてくれておるかどうかわからぬ法律なんですから、まるっきり私生子のような形になっておる。ですから、企画庁に持っていったらどうかというのは、要するに連絡が非常に悪いからなんです。日本の役所というのは、連絡はするけれども、自分の所管の法律でなければめんどうを見てやらぬという態度がいけないと思います。  そこで、時間もありませんから、通産大臣から産炭地域の問題について、私は一つの意見を述べたわけですが、これは全体的な意見ではありませんけれども、政府が徹底的な援助をしてやるという姿勢がまず必要じゃないか、こういうように思いますので、そのことの御答弁をお願いしたい。
  71. 三木武夫

    ○三木国務大臣 援助ということは適当かどうかは別として、たとえば、いま御指摘のように、事業団が出資もできるようなことになったわけですから、ある一つの中堅企業が産炭地に育つような方法については、石炭問題がこんなに根本的に検討されておる機会に、産炭地振興という問題も取り上げて、これは何らかの前進策を掲げたいと思っております。
  72. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 そういたしますと、石炭政策の抜本策が出て、それが臨時国会になるかどうかわかりませんが、臨時国会を開いていただいて、いわば石炭国会というような色彩の国会でいろいろやる。その際にはやはり、単に石炭プロパーのことだけでなくて、一番地域住民の諸君が心配をしている産炭地問題もあわせて、新しい考え方に基づく政策の樹立をお願いしたい、できれば法律改正もしてもらいたい、こう思いますが、どうですか。
  73. 三木武夫

    ○三木国務大臣 石炭の根本対策のときには、産炭地振興も一つの課題として取り入れたいと思っております。
  74. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 いいです。
  75. 有田喜一

    ○有田委員長代理 次回は明二日午前十時から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時二十二分散会