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1966-04-21 第51回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十一日(木曜日)    午前十時十六分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 加藤 高藏君 理事 藏内 修治君    理事 多賀谷真稔君 理事 松井 政吉君    理事 八木  昇君       大坪 保雄君    神田  博君       田中 六助君    西岡 武夫君       野見山清造君    三原 朝雄君       田原 春次君    滝井 義高君       中村 重光君    細谷 治嘉君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       進藤 一馬君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         通商産業事務官         (石炭局産炭地         域振興課長)  飯島 三郎君         自治事務官         (大臣官房参事         官)      鎌田 要人君         自治事務官         (財政局交付税         課長)     横手  正君         参  考  人         (福岡県知事) 鵜崎 多一君         参  考  人         (北海道議会石         炭対策特別委員         長)      原田伊曽八君         参  考  人         (佐賀多久市         長)      藤井 儀作君         参  考  人         (九州産炭地域         進出企業連合会         会長)     田坂 純一君         参  考  人         (産炭地域振興         事業団理事)  堀坂政太郎君     ————————————— 四月二十一日  委員芳賀貢辞任につき、その補欠として田原  春次君が議長指名委員に選任された。 同日  委員田原春次辞任につき、その補欠として芳  賀貢君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)  産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五五号)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  本日、両案について参考人として御意見をお述べいただくために、福岡県知事鵜崎多一君、九州炭地域進出企業連合会会長田坂純一君、北海道議会石炭対策特別委員長原田伊曽八君、佐賀多久市長藤井儀作君及び産炭地域振興事業団理事堀坂政太郎君の御出席をいただいております。参考人各位には御多用中にもかかわらず遠路わざわざ本委員会に御出席いただき、まことにありがとうございました。御承知のとおり、本委員会におきましては、ただいま産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案審査をいたしておりますが、この際、産炭地振興についてそれぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、もって両案審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  参考人各位には、最初一人十分程度意見をお述べいただき、あとで委員の質疑に応じていただきたいと存じます。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっとお願いがあります。  参考人中産炭地域振興事業団堀坂理事は、最近欧州の地域開発政策を調べてまいられました。でございますので、この際、そういった事情についてもお述べをいただきたい、このことを希望いたします。
  4. 野田武夫

    野田委員長 堀坂理事には、いまお聞きのとおり、多賀谷君からの御希望がございますから、その点御了承の上御発言を願います。  それでは、まず鵜崎参考人からお願いいたします。鵜崎多一君。
  5. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 私、福岡県知事鵜崎でございます。産炭地振興の問題につきましては、皆さま方の御努力によって各種施策の前進を見ることができ、さらにまた、本日、産炭地振興関連法案の御審議にあたりまして、全国石炭関係八道県の知事の代表といたしまして意見開陳機会を与えていただきましたことを、厚く御礼申し上げます。  まず最初に、最近におきます産炭地現状は、昭和三十七、八年当時に比較いたしまして、諸施策の浸透と相まってかなりの明るさを取り戻してまいりましたが、いまなお炭鉱離職者中心といたします失業者及び生活保護者等地域内の滞留者は解消されず、中小企業、商業、農業等生産活動停滞を余儀なくされておる状況でございます。  端的な事例といたしまして、本県筑豊地域生活保護についての指標を申し上げますと、石炭合理化の始まる前の昭和三十年には二万九千八百三十人でございましたが、昭和四十年には九万七千三百八十六人に増大いたしまして、昭和四十年末におきましては全県内の四割を占める比重に増大しておるわけでございます。さらに、個々の市町村段階を見ますと、最も保護率の高い田川郡の糸田町のごときは、人口千人のうち三百四十一人が被生活保護者でございまして、筑豊市町村平均保護率は百四十六人ということになっております。これは、全国平均保護率の十六人に比較いたしますと、その異常さが容易に理解いただけると存じます。  このような異常の中から、産炭地振興を目ざしまして、石炭にかわる産業としての工業育成導入、及びその前提条件となります道路水資源開発等産業基盤整備について、国の御協力を得ながら、県、市町村一体となりまして努力しておりますが、いまなお問題の解決までには相当の時日を必要とする実情でございます。  これがため、私たち関係者一同は、特に昨年の末に産炭地域振興臨時措置法延長及び産炭地域振興事業団業務範囲拡大中心といたします機能強化について御要望申し上げたところでございます。幸い、このことにつきましては、関係法案が今国会に提案されまして、ただいま御審議をわずらわしているところでございますが、この問題は非常に緊急を要するということから、私どもは、その一日も早い成立を願っておるところでございます。  今後の問題といたしましては、事業団融資します運転資金につきましては、五億円では不十分でございますので、これが大幅な増額をお願いし、また、事業団で実施いたします工業用水事業等事業が普遍的に実施できるように、また、第三には、出資制度が今後の制度といたしまして普遍化いたしますことを、ぜひお願い申し上げておきたいと存じます。  次に、この法案関連いたします産炭地の当面いたしております問題の二、三についてお願い申し上げたいと存じます。  その第一は、中核企業導入でございまして、企業導入につきましては、今日まで本県の場合は百十数社導入をいたしておりますが、しかしながら、これらの企業は、内容的には資本金一千万円以下の弱小企業でございまして、しかも、最近の傾向といたしましては、経済不況の問題もございまして、いろいろ経営面に行き詰まりを生じているところでございます。そして、この中小企業導入さえも最近は停滞状況にあるということが言えると思います。産炭地問題が台頭いたしましてから、私たちといたしましては、地元市町村とも協力いたしまして、中核企業導入についてあらゆる努力をいたしてまいりましたが、現段階といたしましては、成果はまだ期せられていないということでございます。  これが理由をかいつまんで申し上げますと、大企業が立地いたします諸条件がまだ整備されていないということでございます。私たちといたしましては、二万数千に及ぶ滞留者をかかえておりまして、中核企業導入については、地元の民生安定という立場からも、ぜひこれについての抜本的な対策お願いいたしまして、その実現をはからねばならないという考えを持っております。先般の産炭地域振興審議会におきまして産炭地域振興事業団からも西欧諸国のいろいろな事例のお話がございまして、土地価格引き下げの問題でありますとか、さらには諸施設に対する助成制度問題等、いろいろ思い切った施策がとられておるという話を聞いております。私どもは、過密都市対策との関連におきます問題をも含めまして、これが抜本的対策の樹立について御検討をお願いいたしたいと願っております。  以上のことは離職者対策ともからむ問題でございまして、現在計画されております大規模公共事業地域内の施行部分の繰り上げ施行ということが重要かと存じております。本件を繰り上げて施行いたしまするならば、一つは中高年の滞留者雇用の場となるのでありましょうし、また、他方におきましては産炭地企業立地条件整備面の飛躍が期せられることと考えております。  次に、産炭地関連いたしました重要な施策といたしまして、やはり私が願っております石炭対策確立がぜひ必要であるということは、申すまでもないと存じます。現在石炭鉱業審議会におきまして石炭政策の抜本的な対策について審議されておりますが、石炭鉱業安定策につきましては、石炭の位置づけを速急に確立していただくことと、また、石炭鉱業の安定をはかっていただくことがぜひ必要だと存じております。そのためには、今日まで維持されておりますビルド炭鉱の膨大な借入金及び赤字経営に対しまして抜本的な対策が実施されることを望みますと同時に、このことはまた地域住民の民生安定に通ずることだと考えております。  第二は、産炭地振興の上で大きな問題になります雇用の面での炭鉱労務者の生命を保護するための保安対策につきまして、さらに政府として指導監督強化保安対策に対します助成を講じていただくことをこの際お願いいたしたいと存じております。  第三は、炭鉱労働者労働条件の向上と福利対策の充実をぜひ御検討いただきたい。特に、特別年金制度でありますとか最低賃金制度実施等につきまして適切な措置お願いいたしたいと存じております。  また、産炭地振興の問題に非常に大きな関連を持っております問題といたしましては、鉱害問題がございます。鉱害復旧につきましてはかねて要望いたしておるところでございますが、福岡県におきます鉱害量全国鉱害量の約八〇%を占めておる相当膨大なものでございまして、昭和四十二年度から臨鉱法の最終事業年度に当たります昭和四十六年度までの五カ年間の総事業量は約四百五十億円、年平均九十億円に達するものと現在推計いたしております。しかるに、昭和四十一年度本県に割り当てられております復旧費は約四十二億円でございまして、この程度規模をもっていたしますと復旧完了までには十年以上の長年月を要することとなりますので、ぜひ、産炭地域産業基盤確立及び民生の安定を促進するという意味からも、この鉱害復旧促進をはからねばならないと考えております。  これに関連いたしまして、鉱害復旧年次計画をつくり、その鉱害復旧事業拡大をはかりますと同時に、この鉱害を処理する問題について、今後はそれが強力に処理されるような体制をつくることが必要だということを、私どもこの際お願い申し上げたいと存じております。  また、懸案になっております鉱害復旧事業に対します国と地方公共団体の責任を明確にしていただきまして、鉱害復旧につきましては国が積極的に経費を負担して実施していただきたいということでございます。昭和四十年度におきまして鉱害復旧に対する県の負担率が引き上げられまして、その負担額は改定前に比しまして著しく上回ることになりましたが、こういうことでは鉱害復旧の本旨に反すると思われますので、国と地方公共団体負担区分を再検討していただきまして、地方公共団体負担軽減がすみやかに実現するようにお願いいたしたいと存じております。  最後に、炭鉱離職者対策についてもこの際お願い申し上げたいと存じます。  炭鉱離職者対策につきましては、大量の離職者が滞留いたしております現状から見まして、炭鉱離職者緊急就労対策事業事業吸収ワクの確保とその実施期限延長をはかっていただくとともに、炭鉱離職者求職手帳失効者が相当多数出てまいりましたので、それらを吸収するための産炭地域における公共事業を集中的に実施することをお願いいたしたいと存じております。  また、今後の合理化進展状況を勘案いたしまして、炭鉱離職者臨時措置法昭和四十三年以降においても存続されるようにこの際御考慮をいただきたいと存じております。  また、産炭地振興につきまして、地方財政、中でも市町村財政の問題がございます。  産炭地市町村財政の問題につきましては、昨年、産炭地域振興臨時措置法の一部改正によりまして、特定の公共事業に対する国庫負担引き上げ措置がとられ、今国会におきましては人口激減地域に対する地方交付税上の緩和策がとられつつあるやに聞いておりますが、特に、前者の振興法関連いたしまして、その適用状況を見ますと、援助対象市町村としての指定は五十六市町村ございますが、そのうちで現実にこの振興法恩典に浴しますのはわずかに二十七カ町村でございまして、内容的にもかなりの問題を持っていると考えております。しかしながら、現段階といたしましては、まだ四十年度の決算の姿が時期的に明らかになっておりませんので、これに対する具体的な改善策をここでお願いすることはできないのでございますが、今後産炭地市町村財政運営につきましては格段の御配慮を賜わりたいと考えております。  以上申し上げましたほかにも産炭地の当面する問題はたくさんございますが、特に以上の問題は産炭地の当面する重要な問題といたしまして、ぜひこれが解決お願い申し上げる次第でございます。  簡単ではございますが、私の意見を申し上げました。(拍手
  6. 野田武夫

    野田委員長 次に、原田伊曽八君。
  7. 原田伊曽八

    原田参考人 私は北海道議会石炭対策特別委員長原田でございます。本日は発言機会をお与えくださいまして、まことに光栄に存じます。  御意見を申し上げるに先立ちまして、一言ごあいさつを申し上げます。先般の空知炭鉱ガス爆発の災害に際し、衆議院石炭対策特別委員会の諸先生におかれましては、御多用中にもかかわらずわざわざ現地へお見舞い、御調査のためおいでをいただき、厚くお礼を申し上げます。おかげをもちまして、生産の再開も認められ、労使ともに力を合わせ、よりよい空知炭鉱の建設のために努力をいたしておりますので、今後ともよろしく御援助のほどをお願い申し上げます。なお、本道中小炭鉱は出炭の約三〇%を占めており、これが地域経済に与える影響は相当大きなものがありますので、これら中小炭鉱に対しましても大手炭鉱と同様の援助措置を講ぜられますよう、特にこの機会お願いを申し上げるのでございます。  まず、産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案についてでありますが、産炭地域振興につきましては、この法律の規定により策定された産炭地域振興計画に基づいて進められておりますが、この結果、北海道の場合、本年三月末までに産炭地域振興事業団あるいは市町村より特に優遇措置を受けて新設または増設したものは百七十余に及んでおります。しかし、それらの企業はいずれも中小規模のものが多いのでありまして、そのうち、五千万円以上のものは十二、一千万円から百万円までのものは百三十三、百万円以下のものは二十五となっておりまして、合計百七十に及んでおるのであります。したがいまして、現状におきましては該当地域経済をになうまでには至っておらないのであります。このような現状でありますので、この法律施行期間をさらに延長して、産炭地域振興対策を一そう強力に進める必要があると考えるものでございます。  なお、この法律延長にあたりまして、産炭地域への企業誘致促進並びにその育成が特に中心的な課題となっておりますので、低開発地域工業開発促進法と同様に、これらの企業に対しまして事業税減免した場合には、その相当額財源補てん措置がなされるよう、特に御配慮を願いたいのであります。  また、この法律第六条におきましては、固定資産税及び不動産取得税減収補てん措置として製造事業のみが対象となっておりますが、石炭の新鉱開発事業をもこれを含められるように改正していただきたいのでございます。  さらに、昨年五月にはこの法律の一部改正が行なわれ、産炭地域公共事業等促進するために地方公共団体に対し援助措置が講ぜられたのでありますが、本道の主要産炭地であります美唄、芦別、夕張等市町村がその恩恵を受けられないという不合理な現象を生じておりますので、対象事業拡大実施率等引き下げを行なうなど、この制度改善に特に御配慮を願いたいと存じます。  次に、産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案についてでありますが、産炭地域に進出した企業は、設立以来日が浅く、一方、三十九年の本道の冷害及び経済界不況等影響を受けまして、その経営は必ずしも安定しておるとは言い得ない状況であります。ために、地元金融機関からの運転資金の調達にも困難を来たしておるというのが実情であります。幸い、このたびの法律改正において、産炭地域振興事業団業務範囲拡大して、運転資金貸し付けができるように措置されますことは、経営に困難を来たしておる進出企業のためにまことに時宜に適したものと思うのであります。この制度の運用にあたりましては、産炭地域進出企業経営実情に照らし、早急に貸し付け事務を開始し、貸し付け条件等においても弾力性のある融資が行なわれますとともに、融資ワクが四十一年度五億円でございますが、これにつきましても大幅に拡大されるように特に御配慮を願いたいと存じます。  次に、出資制度についてでありますが、今後の産炭地域振興対策は、第二次石炭鉱業調査団の答申においても指摘されておりますように、地域経済中核的役割りを果たすべき優秀な企業誘致をはかることを最重点といたしておりますので、この企業に対しても出資ができるよう措置をしていただきたいと存じます。  なお、事業団事業範囲及び運営等について要望しておきたいのでありますが、事業団融資対象住宅用地の造成、各種福利厚生施設も含める等拡大措置を講ぜられるほか、設備資金融資割合を、現行四〇%でございますが、これを七〇%までに拡大していただくとともに、特に事業範囲拡大をはかられたいのでございます。  最後に、北海道支所強化拡充していただきたいということでございますが、現在は支所でございまして、ただ書類の取り次ぎ機関にすぎないのでございます。北海道は、先ほど申し上げましたように、百七十に及ぶところの企業の設置を見ておりますので、これらがスムーズにまた地元解決できるように、特段の御配慮をひとつお願いいたしたいのでございます。  改正法案に賛意を表しまして、私の意見を終わらせていただきます。(拍手
  8. 野田武夫

    野田委員長 次に、藤井儀作君。
  9. 藤井儀作

    藤井参考人 私は、最も苦しんでおる鉱業市町村立場から意見を申し上げたいと存じます。  たいへん取り急いで集約しました関係上、まっ先から委員会における「報告書」が間違っておることをおわび申し上げます。これは意見書でございます。  第一に、産炭地域振興臨時措置法の一部改正に対する意見であります。  これはもちろん、五カ年間延長するというのでございますので、大いに賛成いたしますが、しかし、ただ単に五カ年間延長しただけでありまして、私どもが痛切にお願い申し上げておった事項は一つも盛られていない。はなはだ遺憾に存ずる次第でございます。それはなぜかというと、ほんとうに中央ではわれわれ産炭地現状御存じないからだ、かように考えますので、以下少しく、現状なり、一番困っている問題を申し上げます。  昨年の国勢調査の結果、全国の三千三百七十六市町村中、人口の減ったのは二千五百七十五市町村でございます。市のうち二割以上人口が減ったのは、産炭地にある市だけでございます。また、町村のうちで三割以上人口が減ったところも、これまた産炭地町村だけでございます。こういうぐあいに産炭地市町村というものは、ああして五年前の三十六年にこの法が制定せられて何らかの救いがあるだろうとお考えになっているだろうと思いますけれども、とんでもないことでございます。こういうぐあいに、現在は一歩一歩と疲弊没落に向かって前進しているのが実情でございます。そういう実情をまず御認識いただきたいと存ずる次第でございます。その減少などにつきましては、二ページに大体の各地の市町村のひどいところを書いてございまして、崎戸町のごときは、一番ひどく、二万三千人が一万三百人と、一万二千人、五割五分も減っております。こういう状況でございます。ほんとうにこの産炭地域疲弊というものは想像以上なものがあるということをまず御認識願いたいと存ずる次第でございます。  こういうようになぜ疲弊するか、いろいろ施策を講ぜられておるけれども産炭地域が立ち上がれないのはなぜであるかというと、これはもう非常に広範にわたって事業をやらなければならない、道路関係、あるいは水関係、あるいは福利関係と、いろいろ労働省、厚生省、通産省、自治省、もう各省にわたっておりまして、これを統括するところがないからじゃないか。ほんとうに真剣に産炭地域のことを考えてやっていただいておるだろうかという気さえするのであります。それはなぜかと申しますと、三ページに書いてありますように、事業税ですらこれは免税措置をとっておらない。これはすぐできることであります。これは低開発地域に適用されておるのであります。ところが、低開発地域よりもさらに状態の悪い産炭地域になぜ適用されないか。こんな問題はすぐできることじゃないですか。これがいまだに実施されていないということは、産炭地実情御存じないからだ、私はこういうふうに申し上げたいのであります。それから、いろいろ審議会お願いいたしまして御要望申し上げておりますが、私どもは、産炭地振興の問題は、通産省じゃなくて、少なくとも総理の直轄である総理府において、総理府予算をもって、ほんとうに真剣に強力な施策を打ち出さぬというと、ほんとう産炭地域振興というものは促進されない、こういう考えをもってお願いしておりますが、これまた、いまだに総理府にそういった局をつくっていただけません。こういうものはぜひひとつ早く解決をしていただきたいとお願いする次第でございます。  今日までわれわれ産炭地市町村としては数々の御要望を申し上げました。その要望については皆さんすでに御承知と思いますが、その中で漏れている点を二、三申し上げてお願いしたいと思います。  それは、第一に、この新鉱の開発については、企業誘致による恩典、いわゆる固定資産税減免に対する補てん措置が講ぜられない。そういう措置現実に伴っていない。新鉱開発というものは産炭地開発の中で一番大事なことであります。現在、三菱は、北海道夕張佐賀多久市の古賀炭鉱に新鉱を開発せんとしておりますが、現在、私のところでは、この古賀炭鉱で、従業員千二百、組夫を入れて千六百、家族を入れますと八千近くの人間がこれによって食っておるのであります。新鉱開発によってまだ二十年、三十年の寿命は続くわけであります。その新鉱開発というものは、企業誘致工場誘致と全く同じものなんです。その一番大事な、工場誘致と匹敵する新鉱開発に対する固定資産税減免、それに対しては補てん恩典現行法では浴せられない。こういうことは非常に矛盾しておるじゃないか。ぜひこれは、企業誘致と同じように、固定資産税減免に対する補てん優遇措置を講じていただきたいと存ずる次第でございます。  第二は、四ページの第二ですが、現在、この減免補てんの範囲は租税特別措置法第十三条の規定に基づいており、その範囲が限定されております。その範囲を拡大していただきたい。というのは、現行法では、建物のあるところの下だけの固定資産に対する減免措置がとられておるのであります。これに書いてありますように、コンクリートパイル工場の長期にわたる養生期間のために製品を置いておく土場を必要としますが、そういう土場、あるいはセメントサイロ、燃料タンク、原料タンクの敷地とか、大型製かん・鉄骨工場などの屋外作業場、屋外クレーンなどの敷地は対象となっておりません。また、公害防止のための沈でん槽とか、あるいは原料搬入のためのドルフィン、油送管、原油タンク、こういうものは償却資産の対象となっておりません。少なくとも、法人税法施行令第十三条の各号、所得税法施行令第六条の各号に定めますところのもの及び敷地については、直接その工場の生産に必要欠くべからざるものでありますがゆえに、この減免補てんの範囲をそこまで拡大していただきたいとお願いする次第でございます。  なお、現行法においては、設備投資の額が一千万円以上、これに働く従業員は二十人以上ということになっております。ところが、産炭地にはそういう大きな工場はなかなか来ません。ほんとうに零細な、手袋工場とか、くつ下工場とか、人形工場とか、小さな工場しか来ないのです。したがって、この範囲をもっと拡大してほしい。すなわち、二百万円以上、従業員十人以上、こういうような小さな工場にも固定資産税減免恩典に浴するようにして、工場が来やすいようにするということが産炭地振興の一番大事なことでございます。さらに、もう一つ、現在の三年間の免除をぜひ五年間にしていただきたい。これは欧州でも全部五年間やっているようでございます。ぜひこれはその免除の期間を延長していただきたいというお願いでございます。  第三に、さきの国会改正されまして、せっかく産炭地のためにということで皆さんにたいへん御配慮願いました、また先ほど鵜崎知事からもお話のように補助金のかさ上げの問題。これは、実際いま四十年度の実績を見ますと、全国的なものはまだ統計をとっておりませんが、九州四県の概略を私調べてまいりましたところが、昭和四十年度において、六条地区では六十七市町村のうちの四十三市町村で一億四千万円の恩典にあずかっております。二条地区では五十市町村のうち十五市町村で二億二千万円。すなわち、六条市町村は数の上からは多いけれども、受ける金額は非常に少ない。六条市町村のうちで全くその恩恵を受けていないものは、多久市、庄内町、方城町、厳木町、北波多村など、人口が非常に減っておる団体に限って受けていない。というのは、財政力がないからでございます。やりたい仕事がたくさんあるのだけれども財政力がないために補助事業ができない。そういうところこそ救わなければならぬにかかわらず、仕事ができないために、その補助のかさ上げの恩典に浴していないという矛盾が生じてきています。この点をひとつ御勘案いただいて、善処していただきたいと存ずる次第でございます。  したがいましてまた、その適用事業の範囲、内容も、現在は河川、港湾、保育所、道路、いろいろございますけれども、六条市町村においては、適用事業が、こういった河川とか港湾、保育所というものは全然ないのでございます。道路につきましても、立地条件整備のために最も必要であるにもかかわらず、道路整備緊急措置法第二条第一項に規定する道路整備五カ年計画の実施の対象になる事業のうち、同施行令第二条第一項各項のいわゆる特殊改良事業というものは除外されております。これはぜひひとつ入れていただきたい。  それから、こういうぐあいに、せっかく公共事業補助率の引き上げをはかっていただいても、実際困っておる産炭地、当然配慮していただかなければならぬ困っている市町村にその恩典が浴さない点をぜひ御勘案願って、事業、業務内容の範囲の拡大その他について格段の御配慮を願いたい。これはあとで申し上げたいと思っておりますが、離島振興法並みに、産炭地の一番困っておるところのやる公共事業道路とかあるいはダムとか、こういったものについてはぜひともひとつ特別な補助金をつけていただくように御配慮願うということをお願い申し上げます。その恩典から除外されておるのが現状でございます。  以上、産炭地振興について申し上げましたが、そういった財源措置について、われわれは、人口激減団体に対する交付税を特別に見ていただきたい、あるいは基地交付金に相当する産炭地交付金を何とかひとつ創設していただきたいということをお願いしております。これもひとつ何とかお考え願いたい。  それから、特効薬として、今日産炭地財政を救う最も有効な手段として、競輪、競馬をぜひひとつ産炭地でやらしていただきたい。これはもうなくしなければならぬ時期でございますけれども、現在佐賀県では競輪を武雄市、競艇を唐津市だけでやっておる。しかもこれは戦災も災害も受けておりません。そういうところが、一億五千万円も毎年競輪及び競馬のもうけて、学校も庁舎も全部つくっております。私どもは、庁舎、じんかい焼却場もできないという状況で、学校給食もやっていない。そこで、ますますその格差は広がってくる。だから、これはひとつ、十回のところは三回くらいこうした産炭地市町村にやらして、そうして財政優遇の措置をとっていただきたい。これが特効薬と考えますので、私ども相談しますけれども、乗ってくれません。やってくれと言いますけれども、乗ってくれません。ぜひともこれは、産炭地財政を救う意味において、競輪、競馬を産炭地に、十回のうち三回くらい、三分の一くらいはやらして、恩典が受けられるように、これはもう特効薬だと考えますので、よろしくお願い申し上げます。  それから、次は産炭地域振興事業団法改正についてでございます。  これは、今回、運転資金貸し付けや、あるいは出資を行なうこと、あるいは工業用水の水源をつくるという法の改正があります。これはけっこうなことであります。これはもちろんわれわれは双手をあげて賛成でございますが、しかし、これでもまだまだ足りない。私は、この事業団法についても、さらに次のような点について改正及び充実をしていただきたい。  私は、三十九年、一年半くらい前に、西ドイツの招聘によって、ドイツに三週間、イギリスあるいはフランス、ベルギー、こういったほうも回ってきましたが、もう向こうでは非常に徹底的な産炭地振興措置をやっておるのでございます。いろいろ法律をつくって、思い切った措置をとっております。そのうちで最もわれわれに関係のある問題は、事業団がつくった土地を格安で提供しております。産炭地には、地理的条件が悪いために、普通の状態では企業は来ません。何かそこに、甘いえさと申しますか、優遇措置がなければ、企業家が来ません。ベルギーにおいてもドイツにおいても格安でやっておる。政府がつくった土地を四分の一以下でやっておる。私がベルギーの並木さんから聞いてきたんですが、一平方メートル当たり二百三十七円で譲っている。こういうような安い値段で、そうして工業をどんどん誘致しておる。現在事業団がやっておられるような時価主義、実費主義的ではなくて、二千円も三千円もとらぬで、少なくとも坪五百円くらいにして、ぜひ工場が来やすいような措置を講じていただきたいということをお願い申し上げます。  第二は、八ページに書いてありますように、産炭地域振興事業団はもっと炭鉱住宅の改善策を講ずべきである。そこまで手を伸ばしてもらいたい。実際、現存しておる炭鉱住宅はたくさんございますが、その炭住が非常に老朽化しております。スラム街と同じです。ああいうようなものは、もっと文化的にすかっとした住宅をつくり、あるいは集会所その他の施設をつくり、公園をつくってやるとか、そういう措置をしないと、石炭産業の安定化というものははかられない。すなわち、若い者が炭鉱に来ないのです。若い者が炭鉱に来なければならないのに、現在炭鉱では老齢者ばかりです。そういったことで石炭産業に対する魅力をもたらす。これは、国策としてはやはり石炭産業というものは存続しなければならなぬ問題ですから、ぜひひとつ、炭鉱住宅あるいは福祉施設、そういう施策事業団もやれるように、石炭安定のために勇断をもって講じていただきたい、こういうことをお願いいたします。  第三には、先ほども出ておりましたけれども事業団が現在資金の貸し付けをやっておりますが、これをもう少し金利を引き下げてもらいたい、こういうことでございます。少なくとも西ドイツと同じくらいな程度までひとつ金利を引き下げていただきたいということをお願いしておるわけでございます。  それから第四には、今度事業団が資金を一部出資できるような法規の改正になりましたけれども、これはただ単にボタ利用の軽量骨材生産のみに限られております。こういうことではいけない。これは、もっともっと、産炭地振興開発のために、産炭地域振興事業団自体が、あるいは政府が工場まで建ててやる、そして企業家が来やすいようにして、企業家はからだ一つ、技術一つ持ってきて仕事をする、そこまでやらぬと、産炭地にはほんとう企業家は来ません。現にベルギーでも英国でもやっておるのですから、ぜひともこれは、産炭地域振興事業団が工場の敷地造成はもちろん、その工場の建物までつくっていただくような、業務、事業の範囲の拡大お願いしたいと存ずるものでございます。  次は水の問題でございます。いま水で一番産炭地は困っております。これは工業用水どころではありません。今回工業用水だけについては法の改正がありましたけれども、実際、われわれ産炭地では、かんがい用水、飲料水にも困っております。この水の問題は、ほんとうに朝から晩まで日常生活に欠くべからざるものでありますがゆえに、困っております。こういうものは、建設省にお願いしても、あるいは農林省にお願いしても、大規模でなければなかなか許可されません。そこに一万トンか二万トンのダムをつくるにしても、これは許可にならない。ところが、実際問題としては、そういった小さなダムこそ、産炭地自体の農業の経営にもあるいは飲料水にも絶対必要なものであります。そういうものは、私は市町村でやりたい。そういうものにひとつ補助金をつけていただきたい。あるいは産炭地振興事業団がこれをやっていただいてもけっこうです。工業用水のみならず、かんがい用水あるいは飲料水を含めた多目的ダムまで産炭地域振興事業団がつくっていただく、こういうような法の改正をひとつお願い申し上げたいと思う次第でございます。  その次は、一般的な産炭地実情を申し上げます。  いろいろ一〇ページから書いておりますが、とにかく産炭地自体は財政力指数が非常に低下してきた。私のところでは、三十三年七三・九であったのが、現在三八・一。中には、一一ページに書いておりますように、山田市のごときは、三十三年七〇・五であったのが、現在二一・三になっています。そういうふうに、財政力指数がうんと下がっております。これはどういうことかと申しますと、自主的な財源がないために、仕事が全然手も足も出ない、市町村としての形態を持っておらぬということです。こういった状態に財政が逼迫しておるということを御認識いただいて、地方産炭地市町村に対する財源補てん措置を講じていただきたいということでございます。  それから、人口減によりますところの地方交付税の激減緩和の問題は、これはしばしば申し上げておりますので、詳しいことは省略いたしますが、私のところでも、実に三千万円という減少で、従来の方式で人口を主体にした基準財政需要額からこれを算定いたしますと、二億六千万円のものが三千万円減っております。厳木町のほうは実に二千六百万円、小さな町でこういうふうに減っております。ですから、これは緩和措置をとってもらわぬと市町村としては立っていかないということをあげておる例でございます。  それから、退職債でありますが、これについては長期低利な制度を採用していただきたい。私ども、実は、財政が非常に苦しいので、お国にばかりお願いしちゃいかぬ、市町村自体もできるだけの整理をしなければならぬということで、議員定数も、多久市で三十名から二十四名に減らしました。田川市では三十六名から三十名に減らしております。産炭地はどこでもそうです。議員定数も減るし、市の職員も二十三名減らしました。夫婦者は一人やめろ、親子の者はどっちか一人やめてくれ、こういうことで、人員整理を二十三名いたしました。また、電話でも旅費でも極端に削っております。節減し得るものは節減しております。電話一通話三十円かかる、それは手紙でやれ、こっちから絶対にかけるな、向こうからかかってくるのはしようがないけれども、こっちのほうから電話をかけるな、こういうことでわれわれは始末しておるのであります。それでもなおかつ、やりたい事業ができないというのが産炭地の実際の実情でございます。そういうことで、節約するものは節約しておるということを御理解いただきたいと存ずる次第でございます。  なお、ここで第三点に掲げておりますのは、学校の建設の際の起債でございます。人口急増、いわゆるベビーブームで、三十五年、三十六年にわたって、小中学校の生徒数がどんどん急増しました。ところが、文部省の補助単価が非常に安い。実際たくさんな金がかかっておる。実際補助金だけではとうていできませんし、三分の一の補助金が、実際は五分の一にしかなっておりません。われわれはそのときにたくさんの学校の起債をしております。ところが、人口が減って、現在は教室はがらあきになっております。ところが、借金は残っておる。それを毎年毎年やっぱり払っております。それが今日ほかの仕事ができない一つの大きな原因になっておるのでございます。急増によって教室をつくった。ところが、国の石炭政策によって炭鉱がつぶれ、その影響を受けて学校の教室があいてきた。そして、その起債が残っておる。これはひとつ政府で何とか考えていただきたい。あいた教室はお国にお返しします。お返ししますから、ぜひ起債返還についての措置を講じていただきたい。そうしますとわれわれのほうは非常に助かる。これはほんとうに困っておる実情でありますから、この問題はぜひとも早急に何とか実施していただきたいとお願いする次第でございます。  それから、鉱害の問題ですが、これについては、鵜崎知事さんからもお話がありましたので、私はただ、鉱害に対する交付税の補てん率について申し上げます。普通の災害では九五%という起債に対する補てんですが、鉱害復旧に対する起債については五七%です。これは同じ災害じゃないですか。同じ災害でありながら、一方は九五%の補てんをしてくれる。ところが、鉱害復旧については五七%しか補てんをしてくれない。これは矛盾です。ぜひこれは災害並みに九五%まで起債の補てんをしていただきたいということをお願いしておきます。  いろいろまだありますけれども、たいへん時間が過ぎまして申しわけございません。緊就の問題が一つ残っておりますが、これは、鵜崎さんからもお話しのように、法により延長をされたいと思います。  なお、黒い手帳の失効につきまして、三年間の黒い手帳の期限が切れた者がおります。ところが、この連中が一年間もどうにもこうにもならぬでそのまま残っておる。佐賀県でいま九十九名おります。この連中が、行くところがなくて困っておるのです。一体これはどうしてくれるのです。一般失対にも採ってはいかぬ、緊急就労にも入れてはいかぬというので、三年間の黒い手帳の切れた者は、一体どうすればいいのか。これはほんとうに困っておるのです。この問題は労働省でひとつ早急に解決していただきたい、これをお願いしておく次第でございます。石炭鉱業審議会の答申では、そういう者を入れてはいかぬということでございましたけれども、私は、マル炭事業、いわゆる緊急就労にこれをぶっ込んで、地方の産炭地ほんとう産業基盤整備をやらなければならないのでありますが、そういう基盤整備事業の中に入れる、これをお願いしておきます。私の意見審議会意見と違いますけれども、ぜひとも、この黒い手帳の期限切れの者は、もう一ぺん産炭地公共事業に使う、こういう措置をとっていただきたいということをお願いしておきます。  いろいろ申し上げましたけれども、要は、産炭地というものがこの日本の中で一番どん底の市町村であるということを再認識していただきたいのです。私はうそやはったりのことを言いません。私は機械屋でございます。千分の一も争うような発電機あるいはブロアの据えつけをやってきた男でございます。決してうそやはったりのことを言いません。産炭地実情を吐露しております。私は、あの佐倉宗吾が農民の苦痛を訴えて死を辞せず直訴に及んだ、あの気持ちで本日皆さんにお願いしておるのであります。どうか、この産炭地の苦衷を御賢察の上、すみやかに法の改正並びに予算措置を講じていただくようお願いを申し上げる次第でございます。  どうか、野田委員長さん、佐藤総理の言われる社会開発、格差是正、そういうものはまず産炭地のほうにやっていただきたい。この悲痛な産炭地状況を申し上げまして、昭和の佐倉宗吾がここにお願いを申し上げる次第であります。よろしくお願いいたします。
  10. 野田武夫

    野田委員長 次に、田坂純一君。
  11. 田坂純一

    田坂参考人 私、九州産炭地域進出企業連合会の会長をいたしております田坂でございます。  冒頭に、産炭地域振興に関しまして政府並びに国会であらゆる検討を加え推進されておりますことに対して、衷心よりお礼を申し上げる次第でございます。  しかしながら、現在、産炭地域に進出いたしております企業のほとんど大部分が四苦八苦しておるような実情でございます。私は、企業家の立場として、また二年間私自身企業をやってまいりまして、なぜ進出企業がうまくいってないのか、こうすればもっとうまくいくのじゃなかろうかという問題を第一に皆さま方にお話し申し上げたいと存じます。第二は、三十八年度、三十九年度から比べますと、産炭地域に進出してくる企業がだんだん減ってまいりまして、四十年度に至りましては産炭地事業団設備資金も大幅に余っておるというふうに聞いております。なぜ産炭地域企業が進出してこないのか、事業団がいろいろ団地を造成もいたしておりますし、相当広範囲の団地もできておりながら、企業が進出してこないのはなぜなのか、どうすればもっと進出してくるようになるか、これが第二点。時間がございませんので、以上二点について簡単に私の意見を申し上げ、最後に今度の改正法案についての意見を申し上げます。  現在、九州産炭地域に進出しております工場数は約百五十工場で、そのうちの一割はまあ何とかかんとか軌道に乗っておりますけれども、そのほかの大多数は血みどろの経営を続けております。特に、約一割の十四、五工場というものは、すでに破産をしてしまったり、あるいは破産寸前にある状況でございまして、進出工場の十に一つが破産しておるということは、これは離職者対策ともあわせ考えましてゆゆしい問題だと存ずるのでございます。  それでは、なぜうまくいってないのか。大きく申し上げまして、日本経済の不況のあおりを食ったということも大きい問題でございましょう。あるいは、進出企業の中で、調査が不十分のために、九州は電力代がこんなに高いとは思わなかったとか、あるいは、市町村のほうで水があるというのに、来てみれば、ありはするけれども、トン三十円、四十円もとるじゃないかとか、あるいは、製造はしても、販売関係においての調査が粗漏であったとか、いろいろな理由があると思います。けれども、私どもあるいは全部の企業家が口をそろえて申しますことは、金がないということでございます。現在、設備資金にいたしましても、総設備の四〇%しか事業団からは借り入れすることができない。運転資金はついてなかった。こういうことで、どうしても高い利子の金を借りて運営をしていかなくてはならぬ。担保力は底をついておる。こういうことで、たとえば同じ繊維なら繊維、あるいは窯業なら窯業を比較してみましても、既存企業は金利もほとんど高くない、あるいは償却もほとんど償却されてしまっておる。そういうところと太刀打ちしていかなくてはならない。やはり、何とか金をもっと融通していただけばということが一番のみんなの気持ちでございます。  進出企業連合会を結成しまして二年、私どもは、あらゆる努力をして、国会にも政府筋にも御陳情申し上げ、幸い去年は通産大臣が直接私ども九州にお越しになりまして、企業家のなまの声をお聞きになり、何とか検討していこうというようなことで、その後拍車をかけられて、今度の法案改正もその一つだと、非常にうれしく存ずるのでございます。本年度の予算として五億という運転資金をつけていただいたということにつきましては、これはわずかの金かもしれませんけれども、既存の企業はもろ手を上げて万歳を叫んだのでございます。今後進出してくる企業におつけになるのもさることながら、現在四苦八苦いたしておりまして、農家で言うならば、もうちょっと水をやれば干ばつのときの稲が枯れぬで済む、そういう状態でありまして、幸い五億円の金を運転資金としておつけ願いましたので、既存企業育成強化にこれを使わしていただく、しかも早急に使えるようにしていただきたい。今度五億円の運転資金がついて喜んでおりました中でも、すでにその後二、三の企業運転資金面でつぶれてまいりました。どうか、早急に法案をお認めいただきまして、企業育成ができるようにお願い申し上げたいと存ずるのでございます。  第二に、三十八年、三十九年から比べますと、産炭地域企業があまり来なくなった。事業団設備資金も大幅に余ってきた。なぜか。これも、産炭地域の立地条件が悪いとか、環境整備がまだ十分ではないとか、産炭地域の労働者はもう中高年齢層しか残っていないとか、いろいろな意見が言われておりますけれども、私はそうではないと思います。  たとえば、若手の女子労務者あたりは名古屋、大阪に賃金がいいから飛び出してしまうと申しておりまして、それがある意味では実情でございましたけれども、最近では、名目賃金の高い都市に行くよりも、自分の親の家から通い、あるいは炭鉱の福利施設をそのまま使える地元から通ったほうが実質賃金としてはいいんだというようなことで、女子労務者あたりも地元に定着しかけております あるいは、立地条件が悪いと申しましても、環境整備が行なわれておりますし、これは遠い先かもしれませんけれども、日中貿易あたりも行なわれていくということになりますと、九州はそういう面の拠点だと私は考えます。  十四、五工場つぶれたり、もうきょうでもつぶれておると申しましたが、大体、基盤のしっかりした資本構成になり、うしろだてもしっかりしているところは、何とか持ちこたえていっております。そういう意味から申しますと、私は、産炭地域に今後進出してまいります企業も資金が足りないと思うのです。そういう意味で、先般大阪、東京、名古屋で中小企業の投資育成株式会社を政府でおつくりになったと同じような趣旨のものをやれる資格を産炭地事業団にお与え願い、資本的にしっかりした企業を持ってこぬと、何でもかんでもというようなことになりますと、どうしても不況を乗り切れない。  一方、現在九州のほとんど全進出企業炭鉱離職者並びに子弟を一万人雇用をいたしております。この人たちは、一度炭鉱離職者というつらい経験をいたしておる。やっと産炭地域のこの企業に就職できた、この企業にお世話になったと安心しておりますと、それがまたつぶれてしまうということは、非常にかわいそうな実情だと存じます。また、一方、炭鉱の整理される分は整理されているから、まあいいじゃないかというふうにお考えになる向きがあるかもしれませんけれども炭鉱としては、何とかして、スクラップ山も完全にスクラップにしないで、第二会社なら第二会社に落として、賃金を下げ、あるいは福利施設も落として、やれるまでやってみようということでやっておりまして、渡り坑夫的な、いわゆるあっちこっちに移転する炭鉱労働者もありますけれども、大部分はやはり、親子三代働いているとか、あるいは炭鉱地域に愛着を持ち、離れたくない気持ちの人たちでございます。そういう第二会社になった炭鉱もやはり行き詰まって、ほんとうにつぶれていっておる状況で、今後さらに炭鉱離職者と申しますのはふえていくと私は考えます。  以上、時間の都合上、第一の運転資金の問題、第二の投資育成会社的な性格の仕事を事業団にお与えいただけないかどうか、こういう二点だけにとどめまして、私の意見を終わらせていただきます。  なお、今回の産炭地域法の改正につきましては全面的に賛成申し上げ、運転資金につきましては、さっきもほかの参考人が申されましたように、五億円というのは初年度でございますのでしょうし、来年度からは二十億、三十億とふやしていただいて、せっかくここまで政府が緒につけてこられました産炭地域事業を完全に軌道に乗せていただきたいとお願いいたす次第でございます。(拍手
  12. 野田武夫

    野田委員長 次に、堀坂政太郎君。
  13. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 私、産炭地域振興事業の実施を担当さしていただいております者といたしまして、今回の法案改正並びに産炭地域振興政策一般についての所見をまず述べさしていただきたいと存じます。  日本では、地域開発地域対策の問題としてはいろいろな制度がございます。新産都市、低開発地帯対策、首都圏整備あるいは離島対策等あるのでございますが、この産炭地域振興事業はやはり地域対策の一環であると思うのでございます。この点につきましては、私は、現在の立場から見ておりまして、政府におかれましても、あるいは国会におかれましても、地域対策としては、他の地域対策よりも相当手厚い、そしてきめのこまかい対策を打っていただいておると思うのであります。しかるにかかわらず、現地のほうでは、悲痛な、涙の流れるようなお話しか出てこないのであります。このような手厚いと思われるような対策を打たれながら、なおかつ現地がそういうふうになっておるという実情、この矛盾はどのようなことであろうかというふうに私ども考えざるを得ないのであります。およそ、産炭地問題ということになりますと、地域対策といたしまして暗い産炭地ということばに表現をされるように思うのであります。したがいまして、産炭地企業に来てくださいということをお願いいたしましたときに、暗い産炭地に出ていくのだというような企業家の印象が非常に強いのであります。また、私ども企業誘致やその他いろいろなことで業界の方にお願いにあがり、あるいはまた政府関係のいろいろな方面にあれしてまいりました場合において、非常な御同情はいただいておりますが、その中において、産炭地対策というのは不経済対策ではないかという感じがあるということを、表面立ってはなかなかおっしゃらないのでございますが、そういうことを思っておられるなというふうに私どもは感じるのであります。そういうふうな環境の中で、はたして産炭地対策というのはどういうふうに持っていったらいいのであろうかということで、実は私ども平素悩んでおるのであります。  そこで、先ほど多賀谷先生より、私が欧州を見てきたので、欧州の実情等も加えて話をするようにというお話でございましたが、私ども欧州に参りまして痛感をいたしましたのは、それぞれの国によって事情も違い、また制度も違いますので、実際にやっておる制度はまちまちでございますが、共通に流れている問題は何かということを考えてみますと、およそ、この二十世紀の中期を特色づけますところの技術革新及びエネルギー革命と申しますか、エネルギー事情の変革、こうしたことによりまして、産業の様相が非常に変わり、あるいは産業の立地が非常に変わってきておるということであります。そのことが、結局は、大消費地でありますとか、あるいは政府の存在いたしますところの首都でありますとか、あるいは臨海工業地帯でありますとかいうような特殊な地帯に産業が集まっていく、そして、片一方に、十九世紀の技術革新以来発達をしてきたところの炭鉱地帯、機業地あるいはその他の古い伝統的な機械工業の地帯は、この技術革新の波を受けまして衰退を余儀なくされる、構造的不況地帯になるという問題がまず第一にあるのであります。第二には、低開発地帯の問題でございまして、特にEECの中において非常に問題とされております問題は、イタリアの南部開発でございますとか、フランスの農村地帯、あるいは英国のスコットランドというような方面が非常に問題になっておるのであります。第三は、今日なおかなりの繁栄はしておるけれども、構造的に将来不況になるというふうに見られている地帯に対する対策、第四といたしまして、特殊な地域としての国境地帯というような問題があるように思うのであります。  このような事態に対しますところの対策が最も計画的に、そして伝統を持って行なわれておるのは英国であると思うのでありますが、この英国をはじめといたしまして、フランス等におきましても、過密都市に対するところの防止という問題と、構造的不況地帯に対するところの対策、これが地域対策であるというふうに申し上げていいのでありまして、その第二のほうの、問題のある地域に対するところの地域対策の焦点というのは、構造的不況地域になりかかっておるところの地域対策であるというように申し上げたほうがより正確であるかと思いますが、そういう実情にあると私は思っております。この点につきましては、国会図書館の御報告でございますところの「欧州における工業立地の現状対策」の中におきまして、「イギリスの地域政策は、一つは過密地域人口圧力を減ずること、並びに一つは構造的に衰退化少数工業への依存による不況地域から選定された多数の開発地域経済活動の復活を図る、」という二つの目的にしぼられておるのだ、こういうふうにうたっておられますし、また、同じ報告の中におきまして、一九五五年におきますところのフランスの各種の立地政策の中の焦点はやはりそこにしぼられておるということが書かれておるのであります。  そういう観点から見ました場合におきまして、日本の各種の立地政策の中で、産炭地域振興に対しますところの政府施策は、先ほど申し上げましたように、非常にきめがこまかく、いろいろな方面に御配慮をいただいておるのでありますが、なおかつ非常にアンバランスなところがあるということを率直に申し上げなければならないと思うのであります。  たとえば、ただいま問題になっておりますところの土地の価格が高いという問題でございます。そういう問題につきまして、いま、産炭地域あるいはその他の地域においても同様でございますが、住宅公団が住宅用地を確保する場合、あるいは住宅公団が首都圏整備関係等におきまして工業用地を造成されようといたします場合には、その用地の取得について土地収用法の規定があるのであります。私は単に権力の問題を言うのではないのでありまして、この土地収用法の規定があるということはどのようになっておるかと申しますと、もしそういう公共事業者に土地を売りました場合におきましては、その売った地主は所得の半分に課税をされるという形になるわけであります。したがいまして、今度はそれにつきましてまた一そうの改正が行なわれるように閣議決定になっているそうでございます。産炭地域振興事業団が取得いたします土地はすべてネゴシエーションのもとにおいて取得いたしておるのでありますが、このボタ山をかりに処理いたしまして、これを鉱害地等に埋めまして、両方を工業用地にするという場合等におきまして、事業団に売った地主に対してはそのような恩典がありませんので、非常に売ることを欲しないのであります。自分が伝統的につくっておった農地を手離して、普通の業界に売ったのと同じような税金をとられるというようなことは、これは産炭地振興のためにあなたは犠牲になってくださいというような形に実はなっておるのであります。あるいは、低開発地域事業が行きました場合においては、事業税減免がございます。産炭地に参りましたときには、これは事業税減免がございませんことは、先ほどるるお話があったとおりでございます。あるいは、中小企業金融公庫からお金を借りれば登録税は要らないんだが、産炭地域振興事業団から金を借りた場合においては登録税が必要である、払わなければならぬ。  このようなことになっておるのでありまして、今日、地域対策あるいは弱い中小企業に対するところのいろいろな保護制度がある。その中において、産炭地域企業誘致するということは今日のいわゆる崩壊しつつあるこのコミュニティーの救済という意味で取り上げられておるわけでありますが、この産炭地域振興事業については適用が行なわれていないのであります。このような環境の中で、地価を安くしあるいは企業ほんとうに魅力を持たせる状態に十分なっているかどうか。いろいろな優遇措置というものがあるけれども、はたしていま企業家が、この発展しつつあるところの工業大都市あるいは新産都市あるいは臨海工業地帯に工場をつくるよりも、何とか産炭地に行って産炭地の人々に働いてもらおう、このような気分に実はなり得るかどうかというところに一つの問題があるのでございます。  したがいまして、産炭地振興の問題は明るい将来の産炭地にするために、ほんとう事業に来てもらわなければいけない。事業は、これは産炭地域振興事業団が興すものでも何でもなくて、むしろ企業家の方にやってもらわなければならぬ。したがって、企業家の方々が産炭地をまずまっ先に選択し得るような条件というものを、いま現在ある制度の中においてでも、これを御配慮願うことによって、産炭地へもっと企業を引き得るような方策というものが考えられるべきであるというふうに、私はまず第一点として思うわけであります。  それから、第二の問題といたしまして、環境整備の問題であります。  産炭地につきましては、先ほどからお話のございましたように、当初この事業が始まりましたときから、産炭地にはたして企業が行くであろうかという疑問がたくさんの人からわれわれ浴びせられたのであります。今日約三百に近い企業というものが事業団融資対象にもなっておるのでございまして、生産額といたしましてはかなり生産額をあげるようになっておるのでありますが、そこに入って見ていろいろ問題があるということを先ほども御指摘になったのでございます。ほんとう産炭地の人々にまず希望を持っていただけるような環境づくりというものが必要である。環境づくり、立地条件整備という問題については、これは前々から言われていることでありますが、この地元の人に、ほんとうにこのようにわれわれの地域がなっていくんだという具体的な絵が描かれていない。地域の人々は、そういう企業が来ても、われわれの地域は将来よくなっていくんだという夢を持てないというところに今日の一つの問題がありはしないかというふうに思うのであります。  私が英国のスコットランドのファイフという産炭地に参りましたときに、これはつぶれたばかりのところでございますが、そこでは、まずきたないものは全部取っ払えということをやった。工業用地等において、きたない炭鉱施設の基礎というようなものをまず取っ払う。それから、湛水をしているようなところはボタ等を埋めて昔の自然の土地のような形にして、なおかつ、まだ沈下のおそれがあるようなところは牧草を植えて緑の地帯にした。そうして、落盤と申しますか、地盤沈下のないようなところに工業用地をつくって、その落ちついたところでこの牧草地等も工業用地として売るようにした。道路のでこぼこは、舗装する前にまず直した。自動車が活発に走れるように直した。このようなことを六カ月のうちにした。地域住民は、なるほどわれわれの地域というものは変わりつつあるなということを感じた。そこで、マスタープランというものをつくった。マスタープランというものは、将来の二十年先のことを考えたマスタープランで、それをつくって、その中で、さしあたりの二年なり三年の間にはこれとこれをやるのだということをきめて、企業家の人々に来てもらって、われわれの炭鉱地帯というのはこういうふうに変わりつつあります、皆さま方のお立場からここに企業を持ってくるためにはどういうふうにお考えになられますかということを伺って、それでその案というものを修正して今日の地域対策というものができているという話を伺ったのでありますが、これは、地元と申しますか、日本で申しますと県ということでございますか、その地元の県なりあるいは市町村連合体が一つの夢を持って、そうして、その夢を実現するために、自分らの経済力というものはこういうふうに足りないから、これとこれとこれについて国の資金というものを援助してほしいというふうに、かなり具体的に問題が提起されたということを聞いたわけでございまして、そのやり方が非常に実際的であることに私は感銘を受けたのでございます。  そういう意味において、この環境の整備ということが必要だと考えるのであります。英国の場合におきましては、たとえば、ボタ山を切りくずすとか、あるいは鉱害地というような見捨てられた土地、これの社会的価値を復帰するために要するところの経費については、八五%国が負担をしてやっておるということであります。いま日本の場合におきましては、このボタ山が崩壊をして土地をこわし、人を殺したり傷けた記録があるということは御高承のとおりでございますが、そのボタ山を使って工業用地をつくるという工事をやっておりますが、これは、先ほどからお話しのように、いわゆる原価主義という問題でやっておるのでございまして、こういう環境の中で、私どもが荒れた炭鉱地帯で工業用地を造成して何とか環境をよくしたいと思いましても、ここでやり得る限界が一つあるというように思うのであります。  第三の点につきましては、企業家がそこに企業を興すための魅力をもう少し集中的にやるという問題と、それから、早くその魅力を感じさせるような方策というものを立てなければいかぬというふうに私は思っておるのであります。  およそ、産炭地域振興事業団というような生まれて間もない、そうしてもともと金融機関でもないような機関が運転資金融資するというようなところまで政府のほうで予算を認めていただき、あるいは国会で御審議いただくということは、当初申し上げましたように、私は全く異例な措置であると思います。しかしながら、ここで現実の問題といたしましては、もしある企業が自分の工場を名古屋の周辺につくらずに産炭地に持っていくという問題を考えました場合において、もしその辺でやりますならば、中小企業金融公庫なりあるいは開発銀行から八分四里の金が借りられるのであります。最近金利は引き下がりましたが、八分四厘の金が借りられるわけであります。それに対しまして、産炭地に行きました場合においては、これはその設備資金の四〇%が六分五厘で借りることができるということであります。この金利あるいは融資条件は、日本におきますところのこの種の融資条件としては最も有利なものであります。しかしながら、その周囲に関連の原料を確保する工場あるいは下請工場というようなものを持っている地域から、この筑豊なりあるいは長崎県なり佐賀県の産炭地に行こうといたしました場合において、その程度の差ではたして企業の意欲が起こるであろうかどうかという問題になりますと、こういったような点については直さなければならないということになるのであります。  そこで、私は、英国の例を申し上げてみたいと思うのであります。英国は、御高承のように、一九三七年以来この立地政策を進めてきているのでありますが、一九六〇年に今日の地方雇用法というのを制定いたしました。さらに六三年に改正をいたしまして、ことしの一月十七日にさらに新しい政策というものを展開をいたしておるわけであります。この英国の去年の暮れまでの状態でいきまするならば、まず、そこに入ってくる企業に対してどのような援助があるかと申しますと、工業用建物にうきましては、いわゆる開発地域、この開発地域というのは、非常に疲弊しつつある産炭地はみな開発地域に当然含まれておりますが、それ以外のごく少数の低開発地域に相当する部分も開発地域に指定されておりまして、その開発地域に行きました場合については、工業用建物について二五%の補助があったのであります。それから、施設及び機械については一〇%の補助があったのであります。そのほかに、割り増し償却及び超過償却という制度、さらに、フリーデプリシエーションという制度がありました。そして、これは英国の政府が出しました「エキスパンディング・インダストリー」というパンフレットでありますが、それに、もしあなたが産業を拡張したいと思うならば開発地域においでなさい、そこにおいでになれば補助金と貸し付け金を得られますというふうに書いてあるわけでございますが、その中の説明資料で実際の具体例を見ましても、三年たった後にはその投資額の約六〇%というものが回収される、他の地域においては普通の償却をしておっても三〇%程度しか回収されない、したがって、同じ設備で開発地域に行った場合には、他の地域に投資したよりも三、四年後には四、五〇%少なくなる、したがって、その地域的なデメリットと申しますか、これは十分カバーできる状態にあるのですよ、こういうように言っておるのであります。したがいまして、開発地域に行くことは非常に有利なようにできておったのでございますが、ことしの一月十七日からは、特別償却あるいは超過償却というようなものは、企業家を開発地域に行かせることの直接の動機になるのにはやや回り遠いということと、それから、その受益する者が企業の性格あるいは収益状況によって非常に片寄っているということにかんがみまして、これを補助金の制度に全部改めまして、なお、御承知のように、英国はポンド危機で非常に悩んだところでありますので、いままで立ちおくれた英国の経済成長を取り戻し、そして進んだ他の国を追い越そうという意味において投資奨励策をとったのでありますが、一般の地域につきましては機械及び装置につきまして二〇%の補助金を出すのですけれども開発地域につきましては、これを四〇%の補助金を機械及び装置について出すのでございまして、そのほかに、この地域工業用建物については、他の地域にはない二五%ないし三五%の補助金を出すことにいたしておるのであります。そのほかに、設備資金及び運転資金等の融資、それから、先ほどお話のありましたいわゆるアドバンス・ファクトリー、なかなか工場が来にくいと思われるところの地域工業団地等をつくりました場合においては、その工業団地の上にアドバンス・ファクトリーというのをつくりまして、そこには企業家が人と材料を持ってくればすぐ事業ができる、このような制度をいたしておるのであります。したがいまして、企業家はそういうところに投資をすることが自分にとって非常に有利であるということがわかりやすいように改めたという資料を先般英国の大使館からいただいたわけでございますが、このようになっておるのであります。  こういうような施策について、英国におきましても欧州においても、やはりこれは非常に不経済な、あるいは特定の企業だけに利益を与えることではないかという議論というものがあるのでございますが、これにつきまして、経済開発審議会あるいはフランスの立法理由等の中には、いわゆる過大都市になりつつあるところに人口を集中させることによって生ずるところの支出というものは全く消費的支出になるおそれがあり、かつまた、大気汚染あるいは工業用水の不足、あるいは交通の渋帯、地盤沈下、こういった問題についての解決は行政的にも非常にむずかしい問題であるということ、あるいは、失業者を不況地帯に残しておくことによるところの財政負担、また、そういう既存の工業地帯に対するところの過去の投資がむだになるということから考えると、むしろこの開発地域産業を持ってくるということは経済成長政策に完全につながるものであるという認識に立っておるのでございまして、これはひとり英国だけではないのであります。  このような施策が講ぜられておるのでございますが、これをそのまま日本に適用するかどうかという問題につきましては、制度なりその他も非常に異なっておりますので、私は、そういったようなものをすぐ産炭地域振興事業団事業としてやらしてくださいというようなことを申し上げるものではございません。根本的に私が申し上げたい問題は、いろいろな地域対策の問題がございますが、この産炭地問題は、欧州のどこに行っても、こういう産炭地対策法律はないけれども、それがこの地域開発対策の焦点に立つものであり、また、経済成長政策に完全につながる合理的なものであるという認識のもとにいろいろな政策というものが集中されておるということにかんがみまして、現在この地域開発政策の中で講ぜられておるいろいろな制度というものを、もう少しこの産炭地対策に集中的に活用できるようにしていただきたいということをお願いいたしまして、一応の陳述を終わります。     —————————————
  14. 野田武夫

    野田委員長 これより質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。田中六助君。
  15. 田中六助

    ○田中(六)委員 鵜崎知事や田坂会長原田委員長藤井市長、堀坂理事、本日は御苦労さまでございます。  ただいま皆さまの御意見を聞きまして、私ども考えており、いままでこの委員会で問題を提起してきたそのままを皆さまがおっしゃって、私どもは、疑問点というよりも、われわれの信念あるいはいままで討議してきておった問題意識をますます強めたわけであります。  まず第一に私がお聞きしたいのは、政府に対してでございますが、ちょうど進藤政務次官並びに井上局長が来ておられますので、どちらでもけっこうでございますが、いま参考人からいろいろ問題の指摘をされましたが、政府としては産炭地域の現時点における状態をどのように把握されておるか、それからまた、将来の展望などを御説明願いたいと思います。
  16. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 ただいま各参考人から実地に即した非常に深刻なお話を承りまして、石炭対策につきましては私ども非常に熱意をもって努力をいたしておるのでございますが、まだまだ今後やらなければならない点が非常に多いので、いろいろな御意見参考にして、産炭地域のそうした状態を積極的に何とか早く解決していきたい、そういう熱意をもって努力をいたす決意でおります。
  17. 田中六助

    ○田中(六)委員 政府の決意のほどは十分わかったわけでございますが、非常に抽象的な答弁でございます。  堀坂さんに、参考人という立場ではなくて振興事業団理事という立場でちょっとお答え願いたいのですが、最近、団地の問題で非常に高いということを言われておるわけでありまして、そのために工場進出が非常におくれておる。いままでに団地をどの程度譲渡しておりますか。
  18. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 正確な数字はちょっと資料を見なければなりませんが、今日まで大体完成をいたしております土地の面積は約八十万坪でございまして、その中で約十七万坪程度が譲渡済みであると思います。なお、そのほかに造成中のものは百万坪以上ございます。
  19. 田中六助

    ○田中(六)委員 最近造成地の値段が高いということを言われておりますが、福岡県の中泉団地の例をとりますと、大体三・三平方メートル当たりが平均三千五百円から六千円で、これは立石電機の問題ですが、造成地の近所の荒れ地が二百五十円からせいぜい高くて六百円というようなことになると、話が違うということになる。やはり企業としては、具体的な問題に触れるわけですから、そういうふうなことになっておるわけです。こういうふうに造成費が高くなっておることが問題で、結局進出企業としてはそろばんが合わなければ来るわけがないし、こういう点、いままであまりデスクプラン過ぎたんではないかということが思い浮かぶわけです。こういう点の反省というか、問題点をお聞きしたいと思います。
  20. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 土地造成は事業団が発足いたしましてから始めまして、四年になるのでございますが、この間におきまして、現地の事情等が十分にわからずに発足をいたした問題もございますけれども、ただいま御指摘の中泉団地は、事業団発足以前から直方市の中核的な誘致工業団地としてぜひつくってほしいという要望がございまして、大体そこはつくるようになっておったところでございます。その後事業団事業が発足いたしまして、事業団の造成につきましては、政府からいただきました出資金及び借り入れ金で造成をし、総体的コスト主義というたてまえ等にかんがみまして、できるだけ産炭地の中で安い土地を探してつくるように努力をいたしてきておるところでございますが、産炭地はそれぞれ性格が非常に違いまして、土地が安くできてしかも立地条件がいいというところもございますし、一番困っておられるところの産炭地の中には、何とかしてくれという御要望が強いにかかわらず土地が非常に変化がある、あるいは鉱害等のおそれがある、あるいは工事費が高い、あるいは埋め立てるところが少ないので買収する地価が高いというような問題等がございまして、これを全体としてできるだけプールをして、事業団の土地全体としましては損得なしになるようなつもりで運営をいたしておるのであります。  いまの中泉団地の問題は、先ほど申し上げましたように、実は事業団が初年度に取り上げた問題でございまして、造成費は約五千円程度かかっておると思うのでございますが、これを他の地域の立地条件のいいところから若干回しまして、一応三千七百円というふうにしたものでございます。この点、事業団の土地づくりというものが、いわゆる一番有利な、立地条件のいい、採算性のいいところからだけつくるというわけにはいかないという問題、あるいは、事業団の土地の取得については、その地元の方あるいは鉱業権者が売ろうというところから買っていく以外には方法がないという問題、さらに、他の地域には絶対にあり得ないような、地下が採掘をされておって、明治以来掘ったその坑道というものがいつ表面の土地に陥没その他の鉱害を起こすかもしれないという問題等があって、その調査に技術的にも時間的にも非常に手間がかかるというような問題からいたしまして、非常に困難な性質を持っておるということを御了察賜わりたいと思うのであります。
  21. 田中六助

    ○田中(六)委員 最近半官半民の不動産屋だというような悪口まで言われておるようですから、造成費が非常に高く上がっているということもわかりますが、その点を十分頭に入れて今後の問題を進めていってもらいたいと思います。  それから、次に、事業団がいままで設備資金融資をしてきた企業のうち倒産した会社は幾つありますか。それから、時間がありませんので、その倒産した原因もちょっとかいつまんで、お答えいただきたい。大体共通した原因があるんじゃないですか。
  22. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 今日まで融資をいたしましたのは、本年の三月三十一日までで二百八十七件、六十三億三千九百五十五万円というようになっておりますが、いま御指摘の倒産をしたものは六件、それから、倒産をしていわゆる更生会社となっているものが三件でございます。その他、元金の償還等が若干遅延いたしておるものがございますが、御指摘の倒産あるいは更生会社となっているものは、全体として九件でございます。  それから、原因につきましては、基本的には、私は資本力の不足であるというふうに思います。また、経営それ自体の技術が未熟であるというような問題もあろうと思いますが、それにつきましては、産炭地事業の中には、自分が炭鉱経営しておって炭鉱を締めなければならなくなったというような事情にかんがみまして、何とかして離職者に新しい仕事をさせたいということで、全然経験のない事業等をやっている者が相当あるわけであります。十分な経験と技術を持った人ばかりを誘致することが非常に困難な実情にあることは先ほども申し上げたとおりでございますが、そういう技術と経験の未熟であること、それから、取引関係確立していないという問題、あるいは九州に進出したためにかえって経営費が高くなったというのもございます。
  23. 田中六助

    ○田中(六)委員 田坂参考人にお聞きしたいのですが、あなたの土地の田川の問題ですが、東亜手袋が倒産いたしました。私も実は、この社長から融資のことをやってくれということで、いろいろ一年くらい骨を折った者の一人ですが、倒産寸前のときに中小金融公庫から直貸しの運転資金も借りるように実は話し合いをつけたわけです。そうしたところ、結局ああいうはめになったのですが、その社長の最後の手紙に、結局、輸出の見通しが悪い、それから生産性の向上が望めない、現地の人の勤労意欲がない、それに加えて、これ以上の大荷物、つまりこれは設備費のことを言っているわけですが、償却していくにはとうてい不可能な企業であるということを、大きな資本主である三井物産から言われた、それで、その直貸しの運転資金を中小金融公庫が許可する、その保証を三井物産がしてくれなかったからということを、これは一方的になるかもわかりませんが、そう言っておるわけです。こういうような事態があるわけですが、これは確かかどうか、こういう点はお聞きになっていないですか。
  24. 田坂純一

    田坂参考人 いま田中先生のおっしゃったこと、私も社長から聞いております。と同時に、三井物産のほうからは逆のことを聞いております。だから、一口に申し上げますと、大株主であります三井物産としては、手袋の輸出がうまくいっていない、将来の望みがない、こういうことが一つと、もう一つは、社長に対する三井物産の不信があったんじゃないか。社長は、三井物産は抜き打ち的にやめろと言うのでけしからぬ、こういうふうに、どっちがほんとうかわかりませんけれども、私が公平に見ますところ、社長にも責任があるし、三井物産としても、すぐやめてしまうというようなことじゃなくて、あらゆる方面と対策を考究した上でやめるべきではなかったろうか、こういうふうに考えます。
  25. 田中六助

    ○田中(六)委員 事業団の堀坂さんにちょっとお尋ねしたいのですが、こういうケースが非常にあると思うのです。東亜手袋の場合、誘致してきて一年半ぐらいで倒産をする。大体、企業誘致の状態を見ましても、外から来たときは非常にみんな若いと思うのです。それがうまくいかないからといって、企業の自由で資本家がかってにすぐ資本を引き揚げて倒産するということになるわけですが、そういう事態に対して、事業団としては、そこまでめんどう見るのは私企業という関係でちょっと問題でしょうが、誘致した責任あるいは設備資金を出しておるということからの責任はあると思うのです。それで、短期間で、入ってきてすぐ一年半ぐらいで、おまえはだめだというようなことになる問題に対して、事業団はどう考えておられるか。企業が軌道に乗るにはこれからまだ二年、三年かかる。ぼくは三年でもまだ短いと思う。そういう点、どういうふうにお考えになるかということをちょっとお聞きしたいのです。
  26. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 産炭地域振興事業団は、単に金貸しとして債権確保の責任だけがあるということではなくして、これはやはり、国の機関といたしまして、企業が健全に育っていただくためにできるだけの力をお貸しするということが当然の責務であると思っておるのであります。   〔委員長退席、加藤(高)委員長代理着席〕 ただ、いま御指摘のように、私企業経営の問題でございまして、これをどこら辺まで強制あるいは引っぱっていくことができるかという問題になりますと、これは非常にむずかしい問題でございまして、現実にそのようになっていっているときは、すなわち、海外で品物が売れない、滞貨がたくさんあるというような事態になっておるわけであります。そこで、そういう企業を立て直すために必要なものはまず金だという問題が第一に出てくる。それから、その販路を確保するというような問題が出てくるわけであります。そういうような場合におきまして、その金と、それからよき適切な経営者を引っぱってくるというようなことについて、今日の事業団現状から申しますならば、これは業界との関連も非常に薄い新しい機関でもございますし、なかなか思うようにいかない。特に、ある一定の運転資金をここに積んでおけば、この企業はもうしばらく持ちこたえられて、新しい市場が見つかったときにやっていけるだろうというようなものにつきましても、今日までは、運転資金等は事業団で処置できなかったので、なかなか手が加えられなかったというのが実情でございます。しかしながら、実際にそういうふうな事態が起こりました場合におきましても、ほんとうにその企業というものはつぶしたくない、何とかいい更生管財人はいないかということで、あちらこちらに飛び歩いて、最も適切だと思われる更生管財人にお願いをして、そうして立ち直っていっておるという事実もございます。また、その持ってきた企業ではだめだが、他の種類の仕事の経営者のほうに、県等の力を借りてその施設を活用するというような方法等も講じておるのであります。
  27. 田中六助

    ○田中(六)委員 そういう点をよくめんどうを見てやらぬと、政府の行政指導も必要でしょうが、やはり、アフターケアといいますか、先のことだけしてやってあとはめんどうを見ぬというようなことになりますと、仏つくって魂入らずというようなことになりますので、十分そこにも気をつけてやっていただきたいと思います。  それから、井上石炭局長にちょっとお尋ねしたいのですが、この法律延長するわけですが、私は、この三条と四条について、基本計画及び実施計画の改定を行なうべきであると思うのですが、この点どうですか。
  28. 井上亮

    ○井上政府委員 産炭地域振興基本計画とその実施計画につきましては、今回この法案の通過によって法律の期限が延長されますならば、それを機会に、いままで過去の実績もございますので、そういった点を勘案しまして、今後さらに新しい五カ年計画を検討いたしたい。過日も産炭地域振興審議会を開きまして、この期限の延長機会に、現実に即した、また意欲を盛った振興計画を樹立すべく、準備に入った次第でございます。
  29. 田中六助

    ○田中(六)委員 この実施計画の延長はもちろん当然すべきでしょうが、鵜崎知事にちょっとお尋ねしたいのですが、この実施計画の作成については道府県知事の意見聴取が規定されてないわけですが、その理由としては、産炭地域振興審議会の中に関係の都道府県知事が入っておるからということが大きな理由じゃないかと思うのですが、そういう実施計画の中に入ったほうが私はいいと思うのですが、あなたはどういうお考えですか。
  30. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 産炭地域振興計画、これは一応産炭地域振興審議会で議決しまして、それが実施に移されているわけでございますが、なかなかそれがいろいろな経済の変化その他に即応しない点があるので直さなければいかぬというときに、そのつどやはり産炭地域振興審議会等の議決が少し弾力性を持って進んでいきますと実行がしやすいわけですけれども、一度議決してそのままですから、私どもはやはり、計画の実施実施のときにそれが強力に予算づけとなるような内容に持っていったほうがいいんじゃないか。それで、たとえば、先ほども申しましたように、いろいろ産炭地域振興計画の中で道路計画等を私ども計画いたしまして、六本なら六本の計画を出しましたが、一応それは取り上げられておりますけれども、そのうちの一部が取り上げられ、また、年次計画等では進捗率が一九%というようなことで、産業基盤のほうがおくれますと、企業も少し入るのがおくれる。だから、そういうものについてはやはり実施計画を計画のように進めていかなければいかぬという必要がある。その点が多少いままでだと、計画いたしました道路計画の一部が採択され、一部が予算化され、またそれは産炭地振興計画としてやりますから、一般の県内の道路計画のほかに産炭地振興道路計画でやりますが、現在のところは道路五カ年計画の中にまた入れられてやっておる。そうすると、負担関係等は特別の措置もないということになって進行しておりますから、先々は、いまお話しのように、議決して、その議決した実施計画で予算化、実施が望ましいと思います。
  31. 田中六助

    ○田中(六)委員 知事の意見は非常によくわかりました。  次いで、各委員からほとんど述べられたのですが、産炭地域については、いままで固定資産税及び不動産取得税減免補てん制度が認められておるのですが、事業税減免補てんの問題をみんな要望しているのです。通産省も、これはどっちかというと非常に強く求めているようですが、自治省が非常に反対しているということなんですが、その反対の理由をちょっと述べてください。
  32. 鎌田要人

    ○鎌田説明員 御案内のとおり、事業税は、その府県の地域内において事業を行ないます場合に、その所得が出ました場合に、その所得に対して課税されるわけでございます。したがいまして、進出企業で所得がなければ、これに対しては事業税がかからない。反面、事業税を課税するゆえんのものは、企業がその府県の区域内にあるということによりまして府県の行政上のもろもろの便益を受けておる、こういう受益関係にあるわけでございます。本件の場合におきまして、進出企業にとって常に恒久的に税金がかかってまいるという税は固定資産税でございます。固定資産税は、所得があろうとなかろうと課税をされる、こういう形でございます。反面、事業税の場合におきましては、所得が出た場合においては、所得に基づいて課税せられる以上はどういう企業だって同様ではないか、こういう思想でございます。  なお、特別償却の制度がこの事業税においても国税と同様に働くわけでございます。  第三には、現在の固定資産税不動産取得税につきまして、不均一課税を行ないます、あるいは課税免除を行ないます場合に、そのしりは地方交付税でめんどう見る、こういうたてまえは実はあまり拡充することは望ましくない。と申しますのは、ここに福岡県の知事もおられるわけでございますが、福岡県で鉱害復旧あるいは産炭地振興のためにいろいろの行政をおやりになられる、それに対応する財源というものは幾らあってもこれはほしいわけでございます。それを負けるかわりに交付税でそのしりは持ちます、こういうことは結局どういうことかといいますと、隣の佐賀県に行くべき交付税が福岡県に回ってくる、その隣の長崎県に行くべき交付税が福岡県に回ってくる、まさに貧乏人同士が——ことばがちょっと過ぎるようで恐縮でございますが、貧乏人同士の共食いという制度でございます。私どもは、交付税というのは地方団体の共有の財産だと思っておりますので、こういう制度というものは最小限度に創設をして運用をしてまいりたい。基本的にはやはり、鉱害なりあるいは産炭地の問題というものは、国の財源、地方の財源、これの割り振りをやはりきめてかかるべきものではないか、こういうふうに私は考える次第でございます。
  33. 田中六助

    ○田中(六)委員 あなたの意見もものの半面を言っておるので、低開発地域やその他の工業開発地域にはそういうことはあるんだし、産炭地というものは非常に特殊な地域ですから、やはりそういう先例もあるし、大体、救済という突き詰めた、煮詰めた問題に焦点を合わせた場合、やはりこれは、あなたたち意見があっても、われわれ国会できめればできることで、われわれももちろんこれに向かっていきますが、あなたたちももう少し、他にも先例があるし、十分検討してほしいと思います。  それから、堀坂さんにちょっとお聞きしたいのですが、これは次の問題ですが、産炭地域における工業用水の現状、それから、今後の工業用水の開発方針というものを簡単に言ってください。
  34. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 産炭地におきますところの工業用水の現状全般について私は実はあまりよく承知をしておりません。ただ、個々的な問題として見ますならば、たとえば筑豊地区におきますところの工業用水の問題は、先ほど田坂参考人からお話のございましたように、非常に割り高でございます。特に北九州地帯は工業用水が非常に不足しておるところでございますが、今日、工業用水等に供給するものといたしまして八木山ダムが完成したのでありますが、これの実質コストは十四円であるというように聞いております。また、先般山野炭鉱の災害に関連いたしまして進出いたしました繊維工場に対しまして供給を契約された工業用水は立米当たり十五円であったと思いますし、あるいは久保白ダムの開発もやはりその程度のコストがかかるようであります。それを、国の援助市町村の負担によって、久保白ダム等におきましては割り安な四円の工業用水として供給されるという御計画であるように思うのでございますが、他の地域におきましても、一般に地理的関係からいたしまして十分なダム等を構築し得るようなところはないということからしまして、大量で廉価な工業用水を確保するということについては非常に困難な問題がございますので、これは産炭地としての特種な配慮をしていただかなければならないと思います。  ただ、今度私どもがやらしていただくべく御審議をいただいております北九州工業用水につきましては、鉱害によって沈下をいたしました地盤に滞水する水、これは湛水と申しますか、約一千万トンございまして、これを鉱害復旧として捨てておるわけでございます。この水を利用し、また、鉱害復旧用の表土としてとりましたそのあとがクリークとなりまして、百数十万トンの水がたまっておる。このクリークを調整池といたし、さらに、いままで汚染水が流れておる川として水利権の設定されていなかった西川、これ等を合理的に利用することによって、実質コスト五円強で供給できるようになると思うのでございます。その他、坑内水の利用の問題、そういうような点については、いままで通産省の委託調査ということで筑豊方面等について調査を進めてまいりました。また、佐賀県におかれましては、佐賀県が炭鉱の坑内水を工業用水として使うという調査を実施しておられます。
  35. 田中六助

    ○田中(六)委員 事業団がこれを保有するわけですが、将来この工業用水道施設事業団から地元地方公共団体に移管するというような、これは将来のことですけれども、そういうことはどういうお考えですか。
  36. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 産炭地域振興の問題は、私ども事業団事業として見ました場合において、それは短期的に終わるものとは思っておりませんが、恒久的に続く事業であるかどうかという点についても疑問があるわけであります。したがいまして、今日の産炭地市町村経済事情等にかんがみまして、政府の資金等をお借りすることによって数カ町村にまたがるような工業用水を開発して工業団地に供給するということが目的でございますので、もし将来事業団制度等に変更がありまして、事業団がそのような工業用水道を確保することが困難であるという場合におきましては、これは市町村その他適当な機関にお譲りするということが必要になってくるものと思っておるのであります。
  37. 田中六助

    ○田中(六)委員 この問題は、地方自治体にとってはまた将来非常に大きな問題になると思うのです。この工業用水の開発、供給ですが、産炭地域ではそういうことをするのですが、今後原則としてそういうのは産炭地域では全部事業団がやっていくのかどうかということについてはどうです。
  38. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 産炭地域企業誘致をやるためには事業団工業用水を開発をし供給をせよという御要望は、地元の御要望でもあり、あるいは国会の附帯決議も数回つけられておるのでありまして、事業団調査等によりまして、合理的にできるものにつきましては、団地に対しますところの工業用水の供給ということを主目的といたしまして検討をいたしていくつもりでございますが、今日のところ、最も合理的に開発し供給できる地点というものが明確に映像として浮かんでおりませんので、今後の検討に待ちたいと思っております。
  39. 田中六助

    ○田中(六)委員 その他、運転資金貸し付け対象とか、金利の問題などもありますが、時間も限られておりますし、また、あと同僚が質問いたしますので、これでやめますが、参考人の方々に私がお願いをしたいのは、あなたたちの苦衷並びに地域の状態というものを私どもほんとうに皮膚で感じておりますし、十分わかっておるのです。しかし、それが、国の全体の施策としてはやはり諸問題をかかえておりますので、皆さまのかゆいところに手の届くことができないかもしれませんが、問題はやはり、皆さんが自分で自立するという精神がなければ、人から助けてもらうということから始まりますと、どうしてもものごとはうまく行かないので、それぞれ皆さんも御苦労でしょうが、自分たちでまずやるのだという考え方を持ってほしいと思います。あとは、きめのこまかい政策については私どもも一生懸命やっていこうと思いますから、ますます皆さん方もそういう点で御努力なさることを心からお祈りいたしまして、私の質問を終わります。
  40. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 多賀谷真稔君。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 堀坂参考人が、産炭地域振興という名前の法律は欧州ではないけれども地域開発として事実上産炭地が重点的に行なわれておる、こういうお話でしたが、実は、私どもも、産炭地域という特定な地域を限定することは、いまの議会勢力から言っても関係者が非常に少ないし、むしろ慢性不況地域開発法というような法律をつくって、そうして、とりあえず産炭地から行なったらどうか、こういう案も出していろいろ論議をしたのですけれども産炭地域市町村あるいは県が、むしろ何か自分だけにとにかく早くという、非常に急がれた関係があって、やむを得ず、各省間の折衝ができないままに石炭局で案をつくって国会へ出した、こういう経緯があったわけです。この点は、われわれも、どちらがよかったかという点をいまでも反省をしておるわけですが、そこで、問題は、中核企業が来ないということですね。この中核企業が来ることについて、先ほど欧州の例等をお話しになったけれども、たとえば、いま問題になっております筑豊炭田であるとか、あるいは佐賀の炭田であるとか、あるいは長崎の炭田であるとか、あるいは石狩の炭田に、中核企業的なものがどういう機種のものが一体来る可能性があるか、たとえば需要の関係等を考えて。条件をかくかくすればということはもちろん前提条件ですが、そういう条件をすればどういう機種のものが一体あの内陸に考えられるか。これをひとつ意見がありましたらお聞かせ願いたいと思います。
  42. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 ただいまの、どのような企業が可能性があるかというお話でございますが、実は、可能性があるようにどうすべきであるかという問題としてでないと、非常に私どもとしてはお答えをしにくい事情にあるということを率直に申し上げたいと思います。  九州におきまして筑豊が、産炭地の一番代表的なところといたしましてこの中核企業誘致の焦点になっておるわけでございまして、その関係としまして、九州経済同友会等の御検討の結果によりましても、あるいは地元の声といたしましても、一番最初に出ておりますのは自動車産業ということであります。また、私どもがいろいろ各方面の御意見を承っておるうちに、機械工業の中でも、いわゆるいまの新しいエレクトロニックス関係で、しかもこれは、あまり高級なというよりも、軽電気機械をつくるような工業、こういったものを誘致したいし、また、誘致したならば九州経済の構造が非常に変わるであろう、こういうのが大方の意見であります。しかしながら、今日の現状からいたしますならば、私ども自動車工業等にも数社伺っていろいろ御意見を伺い、またお願いを申し上げたのでございますが、現在の自動車工業といたしましては、むしろ企業としては集約化の傾向、それから、産業といたしましては、現在たくさんあるところの系列関係、それとの関係等からして、新しい工場の新設等については、すでに準備をしておるところの土地等でいまの倍くらいの生産というものができるような体制の準備が行なわれているのだ、もし九州企業を引っぱろうとするならば、これはそういったものが消化されてから後の問題ではないかというお話も実は承ったのであります。さらに、およそ自動車工業というのは、生産の七〇%近くが部品工場によっておりますので、その部品が立ちどころに企業の必要に応じて入ってくるような形の構成ができなければならないので、自動車工業の完成工場としていまの採算ベースは大体月算一車種一万台というのだそうでございますが、その程度のものをつくるということになると、これはそう容易なことではない。ただ、今日の状態からするならば、この部品関係で労働力を必要とするようなもの、あるいは車体工場というような関係のものから考えていくべきではないかというお話があるのであります。それとともに、実は、一番最初にどこでも言われましたのは、地価が幾らですか、はたしてわれわれ必要とする八十万坪なり百万坪なりがまとまって土地が入りますかということが言われておるのでありまして、その地価が幾らで入るだろうか、千円台で入るか、千円台も下のほうで入るだろうかといういうな質問をされておるのであります。そういうような関係で、自動車工業が機械工業の頂点に立つ一つ産業であるということは私ども十分承知いたすのでありますが、何とかそのもう少し前の段階の軽機械工業等が入れるような準備体制でもできないだろうか。また、それには、来られるならば土地を五十万坪まとめてつくりますとか、あるいは地価はこれくらいになるでしょうとかいうようなことでは、企業はすぐ飛びついてこないと私は思っております。  それから、もう一つ中核企業の問題といたしまして、これは現在までの産炭地振興の問題から見ると少し行き過ぎた議論になるかもしれませんが、昨日の御質問にありました、いわゆる産炭地石炭を使ってガスなりあるいは電気なりを起こすわけでございますが、それをさらに地元で使うように多角的に構成して、いわゆる基本計画等に書かれております石炭コンビナートというような問題等があると思うのであります。しかし、これも、中央の消費地でなくて産炭地に持っていくためには、そういった一連の産業に対する優遇措置を特別に考えなければいけないし、あるいは政府のほうの御誘導がなければならないと思うのであります。この点につきましては、石炭の安定需要の問題が非常に大切なことは私どももよく承知いたしておりますし、それから、石炭をより割り安に使っていくという観点から見ますならば、できるだけ百万トンでも五十万トンでも現地で使うようにすることが望ましいと思っておりますので、そういうふうなことができないかと思っておるのでございますが、それについては、資金対策その他の条件でもう一段の措置が必要なのではないだろうか。現在、事業団の持っておる力では、その辺まで言い出すことは非常に行き過ぎであろうというふうに思っておるのでございます。そういう方向に向かって、たとえば三池におきますところの三井コークスの設備拡張等につきましては、事業団といたしまして格別の率で努力をいたしておるつもりであります。
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この可能性をいかにしてつくり出すかという問題ですが、やはり需要構造を考えないと、残念ながら産炭地域北海道九州にあるわけですから。一体どういう機種のものが一応考えられるかという想定をして、それについてはいろいろな隘路がある、その隘路を政策的に打開をしなきゃならぬ。ところが、需要構造のほうは残念ながら政策以外の問題で、日中貿易なんということになれば、当然政策の中に入る。国内で一応考えればなかなかむずかしい問題がある。そこでお聞きしたわけです。  そこで、先ほど中小企業の投資育成会社の話が出ましたけれども、やはり、事業団が今日投資をする、出資をすることができるということの芽が出たゆえんは、事業団すなわち政府も共同責任においてその危険負担をしないと、とても自由企業にまかしておいては困難であろうというところから出ておると思う。ですから、これは将来とも産炭地域振興事業団がやるかどうかはわからないけれども、投資育成的な会社の性格を漸次帯びていく、こういうように考えざるを得ないのですが、そこで、これについてはいずれ後にお聞かせを願いたいと思いますが、運転資金について、本年は五億だったと思うのですが、業界のほうでは、幾らあってもきりがないと思うけれども、一体どのくらい予算があれば何とかやっていける、こういうように考えられておるのか。本年はなかなか間に合わないと思うのですけれども、概略わかりましたら田坂さんからお答え願いたい。
  44. 田坂純一

    田坂参考人 いま先生のおっしゃったように、多々ますます弁ずだろうと思いますけれども、私どものほうでは、来年度はせめて二十億ぐらいお願いしたいものだというふうに話し合っております。大体来年度は幾らあったら足りるかということまでは十分な検討はいたしておりません。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 藤井参考人にお尋ねしたいのですが、例の特定事業における一定の事業額を超過した場合の補助率の問題ですね。これは、この前の国会で、政府が出しました提案をいろいろ修正して、政府から再提案したという経緯があるわけです。そこで、事実上われわれはこの数字の把握が昨年は非常に困難であった。ことしも六月にならないとよくわからないということですけれども、しかし、もうこの法案も近く衆議院を通過させなければならぬ状態ですが、一体あなたのほうは具体的にどういう程度にしてもらいたいのか、そして、どの程度ならばどのくらいの市町村が恩恵を受けるという数字の概略がおわかりになりましたらお知らせ願いたいと思います。
  46. 藤井儀作

    藤井参考人 先ほども申し上げましたように、せっかくの恩典が、財政力の弱い市町村ほどその恩典に浴していないという点から考えまして、この補助にならない事業、国庫補助の対象になっていない事業市町村がやる市道、林道、農道、こういった基盤整備のための公共事業には、いわゆる離島振興法と同じように、高率補助を適用するという法律をつくっていただかない以上は、ほんとうに困った鉱業市町村は立ち上がれません。そういうふうに、二条はよろしゅうございます。六条だけでいいですから、ほんとう財政の困っている六条の区域の市町村市町村道あるいは河川改修、農道、林道といった公共事業をやる場合には補助をつけるというようなことにしていただかないと、ほんとうの意味の産業の発展の基盤整備というものはできないのです。いまの標準は〇・〇六でございますが、あれをわれわれとしては〇・〇一ぐらいにしてもらいたいということも言ったことがございますが、係数をもう少し下げていただくことも必要でございますが、いま申しましたように、現在の法ではそれが補助の対象にならない。ところが、われわれが実際やりたいのは補助の対象にいまのところないものをやりたい。市道、市町村道あるいは小さなダム、そういったものを産業の発展あるいは工場誘致のために直ちにやりたいわけです。ですから、結論は、離島振興法と同様に、産炭地市町村が行なう公共事業については高率の補助を適用する、こういうように法律改正お願い申し上げたいのです。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 実は、われわれは、この法律はさか立ちをしている、こう言ったわけです。というのは、一番財政力のないところは補助をしないで、若干財政力があるところに補助をするということで、さか立ちをしておると言うのですが、役所のほうは自力のあるところを助けてやろうというのです。どうもその点は意見が違って補助率の改定ということになったわけですが、お話しのように離島振興法どおりいくかどうか知らぬですが、考えてみたいと思います。  次に、知事さんにお尋ねしたいのですが、鉱害復旧の県費負担というのは累年増していくと思います。一体どのくらいになる予定であるか、これは概算でいいですが、事務局が見えておられれば事務局から答弁願ってけっこうですから、お知らせ願いたい。  それから、生活保護ですが、先ほどの説明によりますと、筑豊地帯において千人につき百四十六人、全国の十六人に対して約十倍程度であるというお話がありましたが、筑豊以外、要するに産炭地以外の福岡県における生活保護率、たとえば北九州とか福岡とか、あるいはまた筑後とか、そういうところの率を超過する部分の金額がどのくらいになるのか、それがここ十年くらいのうちに一体どのくらいの金額になるのか。というのは、私がそういうことをお聞きいたしますのは、これは将来における産炭地の投資と関係がある。生活保護というのはかなり永遠に続くわけですね、このままでおれば。そうすると、逆に言えば、政府はその程度の投資をすれば、必ずしも同じ人間が産炭地事業に就職するかどうかわかりませんけれども、一応計算の基礎としてそういう数字を合わせて、そうして投資効率を見た場合に、国全体の財政として、一体生活保護に多くを費やすのか、あるいは産業育成の投資として出すのかという違いであると思うわけです。そこで、本日答弁できなければ、これはいずれ試算をして至急本委員会に届けてもらいたい、このことをお願いいたします。
  48. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 鉱害の問題につきましては、先ほど申しましたように、現在把握しております鉱害量、それを年次計画で進めておるのでありますが、それによりますと大体九十億円。それが、ことしの予算では四十二億円。こういうことでございまして、それを続けてまいりますと十年かかる、こういうことになります。しかし、いま鉱害の再調査を進めておりますが、それは確たるまだ数字が出ませんけれども、ある程度非常にふえるということは確実で、そういうことから考えますと、現在の計画以上の計画を今後においては相当実施計画の中に入れてやらなければいかぬという数字になってまいると思います。そのときに、鉱害のいわゆる国と県の負担が先般の改正で相当増高してまいりますが、その一年限りの負担の増はいまちょっと——その負担の増高は四、五十億円にのぼるんじゃなかろうかというふうに思います。  それから、生活保護の問題でございますが、全県下の生活保護者の四割はもう筑豊に占められておりまして、数字はいまちょっとあれですが、全県平均の数字といたしましては、いわゆる筑豊を除いた筑後その他の農村地帯、これはそう全国平均の数字を異常に上回っておるとは見られません。ただ、筑豊地帯の産炭地が異常に上回って、ある町では一〇〇以上の数字になっております。しかし、この生活保護のこの五年間の趨勢を見ますと、昨年の春から頭打ちになってきておる実情は、産炭地においても見え始めております。しかし、数字的にはそうたくさん減少しているということではございません。また、県下で多少生活保護がふえつつある地帯は北九州地帯で、これも鉄鋼減産その他の問題が影響して、このほうは県内としてはふえる趨勢にある、こんなようなのが現況でございます。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 先ほどお願いをいたしました生活保護の問題とからんで、炭鉱離者職対策、たとえば緊就に対する事業とか一般失対、これを、県内平均、その産炭地以外の地域の平均を越える部分というような費用をあわせて出していただければ幸いだ、かように思います。
  50. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 細谷治嘉君。
  51. 細谷治嘉

    ○細谷委員 二点ばかりお尋ねしたいのですけれども、第一点は、先ほど多賀谷委員から質問があった振興法の十条と十一条の問題なんです。先ほど話がありましたように、多久の市長さんから報告を聞きましても、十一条はさか立ちをしているわけですね。これは当時からわかっておったことなんです。そこで、六条に対して百分の六ということに落したわけですね。私は、当時のことを考えてみますと、いまそうおっしゃいますけれども産炭地の連合会なり知事会も悪いと思うのだ。当時、通産省のほうからこの法律案が出てきますと、政府案にちょっと手直しして通してくれ通してくれということで、盛んに陳情があった。現に、佐賀県のほうからは、百分の十という標準負担率政府法律が出ますと、百分の六にしてくださいという陳情書が正式に出てきたのです。そのとおりしたわけなんですね。そのとおりしてもだめだということがわかっておった。ですから、これは百分の三くらいにしなければとても追いつかぬぞという意見があったのですけれども、しかし、佐賀地元が百分の六にしているのだからそれでよかろうということで修正したいきさつがあるわけですね。そういう点で、きょう参考人に私の希望も含めて申し上げておきますが、どうも、政府から法律案が出ると、政府になでられるのかどうか知りませんけれども、通してくれ通してくれといって、ちょっぴり修正の意見を付け加えて盛んに運動が始まる。これもその一つの失敗の理由だろうと私は思うのです。  そこで、お尋ねしたい点は、福岡県の知事さん、あるいは産炭地域振興事業団の方もいらっしゃっていますが、十条に基づいて、起債の充当率の引き上げと、それから利子の補給等が四十年度の事業に対してもうほぼ決定したのではないかと思うのです。その起債の充当率がどの程度上がったのか、それから、利子の補給というのが、去年の予算は一千万円でありますけれども福岡県はどの程度もらえる予定になっているのか、この数字をひとつお聞かせいただきたい、こう思うのです。  それから、多久市の市長さん、この五ぺ−ジを見てみますと、新産とか工特地域、それからいままた首都圏と近畿圏という法律が出ておる、これと全く同じ方式なんです。これは自治省から出ておりますけれども通産省のこの方式は、やはり産炭地市町村財政実情をわきまえないでやっておられる。わきまえておらぬでしょう。わきまえておらぬと言うと失礼でありますけれども、自治省ほど知らぬわけですね。ですから、自治省がつくったほかの法律をそのまままねた法律なんです。私どもはやはり事業ごとに補助率を上げていかなければならぬ。これから発展しようというのが工特あるいは首都圏なんですね。産炭地は陥没しているわけですから、寝ころんでいるわけですから、引き上げてやらないといかぬ。そのための事業なんですからね。金がないわけなんですから、たとえば、二分の一の補助ならば、それは五分の四ぐらいに引き上げてやって、事業ができるようにしなければ、陥没地帯を直すことはできないと思う。そもそも十条、十一条の規定というのが産炭地の実態をわきまえない法律の形態になっている、こう私は思っておるのですよ。これの五ページの終わりから四行目ぐらいに、補助率の引き上げということを超重点的にやってくれ、そういう方式だということでありますが、そうしなければならぬと思うのでありますけれども、どうも意味がはっきりいたしませんから、その辺についてどうお考えになっているか、これをひとつお尋ねしたい。  第二点は、この最後のほうに学校建設のための起債ということが書いてありまして、十五ぺ−ジのほうに、いわゆるかぎっ子対策、青少年の不良化という問題が書いてあるわけであります。これはたいへんな問題になっておりまして、産炭地振興ということを考える場合に、産炭地の教育ということを考えなければもうどうにもならぬところに来ておるのでありますけれども、遺憾ながら産炭地教育についての文部省の認識も十分じゃない、こういう現況にあると思うのです。この辺について、じきじき悩んでいらっしゃる多久の市長さんから、あるいは、特に福岡県あたりでは一学級七〇%ぐらいが生活保護者であり、その生活保護の事務を実質的には学校の先生がやってやる、しかし、事務官はおらぬ、補導教諭はおらぬということで悩んでいらっしゃるようでありますから、その点について、教育行政を推進する役割りを持っていらっしゃる知事さんから、事務職員なりあるいはカウンセラー等についての悩みをお話しいただければ幸いです。  以上です。
  52. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 いまお尋ねの福岡県における産炭地振興関係で、県は、産炭地振興では、起債のかさ上げでございますが、四十年度はこの起債総額では四億六千万円ほどまいりました。ただ、これの利子補給は年一千五百万円です。それから、県内の市町村関係は、先ほど申し上げましたように、指定町村は五十六ございますが、そのいろいろな補助引き上げ等の恩恵をこうむる市町村は二十七カ町村です。実は、これをどういうふうにするかということは決算の状況を見て具体的な検討をしなければいかぬということを先ほど申し上げたのでございますが、内容的には、私の県では、福岡とか北九州周辺の市町村に多く行っておりまして、肝心の筑豊のいわゆる財政力の弱いところにはそれが少ない、内容的にはそんな現状が四十年にははっきり出ております。ただ、どうその計数をいじるかは決算を見なければわからない、こういうふうに考えておりまして、そういう点を申し上げたわけであります。  それから、教育の点につきましては、御承知のように、事務職員それから養護教諭等は十三学級以上には配当されますが、十三学級以下は配当されないので、配当されない市町村にどうしても養護教諭、事務職員を置くということになりますと、現状では県費で職員を置かなければならぬということでございまして、そういう十三学級以下のところはそれで措置をいたしておりますが、特に産炭地は、先ほども申し上げましたような補導の関係の問題が非常に多く、本年は三十人の補導教諭を単独県費で設置することにいたしました。しかし、それに文部省からの補導教諭が加わりますと、三十プラスその補導職員が入って、それを産炭地関係の学校の補導教諭として各学校に配当するという形になりまして、一応県としては、単県の補導教諭として三十人、その他若干の事務職員、養護教諭等も単県費で基準外のところは配当して、多少そういう特殊の事情の指導に当たらせておりますのが現況でございます。
  53. 藤井儀作

    藤井参考人 五ページの四行目から書いております法十一条による補助率の引き上げについては、実際は六条地区はほとんど恩典に浴していないというのが実情でございまして、この補助の対象になる事業をやりたくても実際は財政上の都合でやれないという実情でございますし、また、やっても非常に少ない。四十年度から初めて、いわゆる工場団地に通ずる道路産業関連道路と言いますが、これをやりましたけれども、予算の関係でわずか三百万しかつかなかったのであります。これを引き上げておりますが、これは一定の量をこさないから、これにはその恩典がないわけなんです。こういう場合にせっかく十一条で補助率のかさ上げの恩典に浴するようにしていただいたけれども財政力が弱いためにそういった事業ができないということと、さらに、もう一つは、補助の対象にならない小さな道路がたくさんあるわけです。でありますので、五ぺ−ジの最後の二行に書いてありますように、農道とか林道とか、市町村道はもちろんのこと、工場を誘致するために必要な道路、五メートルとか六メートルの道路を失対事業でつくっておるわけなんです。これなんかは、都市計画でやれば十二メートル以上の道路でないと都市計画の道路として認定されないのです。そういう大きな道路はわれわれのような小さいところではできないから、市道のわずか五メートル、六メートルの道路を実際はつくっておるわけなんです。そういういわゆる国の補助の対象にならない市町村道路あるいは農道、林道というものに、もう一つ補助をつけていただきたいというのが私のお願いでございます。  それから、先ほど申しました小さなダム。いま産炭地域振興事業団では工業用水に限ってそういった事業をやっておられるのでありますが、われわれほんとうに困っておるのは、工業用水もさることながら、むしろ飲料水、かんがい用水に困っておるのでありまして、それには、大きなポケットがありませんので、二万トンとか三万トンとかいうような小さなダムをつくらざるを得ない。ところが、それは現在補助の対象にならないわけなんですね。差し迫って必要であるにもかかわらず、補助の対象にならないということで、つくりたくてもつくれぬでおる。こういうのが産炭地振興一つの隘路になっておりますので、産炭地自体を救うという意味において、この小さな多目的ダムの建設にも格段の高率補助をつけていただきたい。市町村道及び小規模の多目的ダムというものに特別な補助率をつけていただきたいというお願いでございます。  それから、かぎっ子の問題でございますが、これは実は、カウンセラーと申しまして、いわゆる相談員です。先ほど知事さんからおっしゃいました養護教諭とか事務職員ではなくて、それも足りませんけれども、そのほかに、そういった不良化長欠児童をたずねて歩いて、どうしているだろうか、おい、そうしちゃいかぬぞというように、ほんとうに親身になって世話する先生、相談員がほしいわけなんです。その相談員が非常に少ない。事務員とかじゃなくて、かぎっ子等にほんとうに身の上相談に応じてくれるカウンセラーの先生がほしいわけなんです。それをひとつ各学校に配置してもらいたいということをわれわれは要望しておるのです。これは現在私どものところにはたった二人しかおりません。現在十二の小、中学校がありますが、その中にたった二名しかおらない。これでは困るわけです。それからまた、ほんとうを言うと、市立の保育所、いわゆる子供を預けて仕事に行く、そういうものをつくりたい。民間の保育所はございますが、実は市としては人件費その他がかかりますので手が出ぬでおります。そういうものも市としてはやりたいのでございますが、これも財政上の都合でできないというのが産炭地の事情でございます。給食も現在私どもやっておりません。それは、給食をやると経費がふえるからということで、とてもそんな財源はないということで、とてもできません。同様に、そういう保育所の問題も、産炭地のそういうものについてはひとつ格段の補助金制度をつくっていただきたいというようないろいろお願いを持っておるのでございます。  しかし、先ほど申しましたように、われわれも今日ではつめに灯をともすような節減をしているのです。そういうふうに国ばかりにお願いするのではなく、市自体の節減は極端に節減しておりますが、しかし、それでも、もうこれ以上はどうにもならぬ。ほとほと産炭地域疲弊しております。どうか、この疲弊こんぱいしておる産炭地域にひとつ格段の施策をとっていただきたい、こういうふうにお願いをいたしまして、先ほどの競馬、競輪もぜひひとつ十分にしていただきたいということをお願いするわけでございます。
  54. 細谷治嘉

    ○細谷委員 知事さんと市長さんのほうにお願いしたいのです。  基本計画、実施計画というのはできておりますけれども、五年間過経を見ますと、全く実態とは遊離したペーパープランにすぎないということがはっきり言えるわけなんです。補助対象なり適債事業という問題があると思うので、十条関係で、たとえば福岡関係振興事業としてそういう基本計画なり実施計画に盛られたうち、どのくらいが起債対象事業になっているのか。それから、多久の市長さん、おたくのほうの関係の分で、その実施計画の事業に対してどのくらいの分を起債対象事業に取り上げておられるのか。その表を、あとでけっこうでございますが、参考に送っていただけるとたいへんけっこうだと思います。以上、お願いです。
  55. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 伊藤卯四郎君。
  56. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 堀坂さんにちょっとお伺いいたします。  あなたのところで工業用団地として造成された土地で、一番安いところで坪当たり幾らぐらいするか、一番高いところで坪当たり幾らぐらいするか、それから、平均してどのくらいになっておるか、それから、坪二千円以上の土地とその以下のところとがどういう比率になっておるか。
  57. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 一番安いのは、三・三平米千五百円ぐらいです。一番高いのが福島県の磐城市で七千三百円、それから、これは福岡県の粕屋町でございますが、五千五百円というところになっております。譲渡いたしたものの平均は平米当たり八百八十六円、三・三倍いたしますと、坪でいきますと約二千七百円ぐらいになろうかと存じます。
  58. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 二千円以上のところはどのくらいありますか。
  59. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 大体二千円以上のところが九五%ぐらいの面積になっておると思います。
  60. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私がいま値段をお伺いしたのは、私どもの耳にだいぶ入っておるのは、どうも土地が高いというので、相当大きいものを持ってきたいという人たちがそれで足踏みをしておるということを絶えず聞かされるわけです。そういう点から、われわれも、二千円以上のところは国がその損失補償をして、そしてやらなければ、せっかくたくさんの土地をつくってもペンペン草がはえてしまうというようなことになってはどうかと思う。だから、二千円以下にするようにということをかなり政府側にも強く要請をしておるのですが、事業団としてもおそらく私のいまの意見と同じような考えを持っておられると思うが、そういうことをあるいは通産大臣なり大蔵大臣なり政府に要請をされたことはありますか。
  61. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 事業団といたしましてはコストの引き下げについては極力努力をいたしておりまして、周辺の土地の価格と比べました場合には、たとえば住宅公団が住宅用地として同じようなところでつくっておられているもの、あるいは一般の工業用地として売買されているものに比べては必ずしも高くなっているとは思っていないのでございますが、いわゆる企業をよその地区から持ってくるという観点から見れば、事業団の現在の資本の構成から見ればどうしても不可能であるというように存じておりまして、その件につきましては、政府関係筋に対しまして再三意見を申し上げ、お願いをいたしておるのでございます。
  62. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 実費主義を変更してもらわなければ、あなたのほうで単独でやるというわけにはいかぬのですから、実費主義を変更してもらいたいということについて政府側と話し合いをされたことがありますか。
  63. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 事業団の運営それ自体が出資金と借り入れ金によって行なっておるのでございまして、このたてまえを全般的にこわすことについては、それがいいかどうかという問題がございますので、事業団としては、このできたものの地価、これに対してなお引き下げることができるものについては引き下げますが、それ以上の問題については、むしろ別途な方法で地価の引き下げを講じていただくほうが適当だという意見でございます。
  64. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま造成された土地に工場、事業場というものができておる数字をさっき伺いましたが、そこに働いておる人の数の中で、炭鉱にいた人と一般の人との比率というものはどうなっていますか。大体、文字に書いてあるごとく、産炭地域振興に関する法律としてこの工場団地を造成をしておるわけです。したがって、炭鉱にかわるその地域の繁栄と、炭鉱から失業する人を就職させるという二つの目的のために事業団がつくられ、土地造成をしておるわけですが、地域繁栄のためにはどうも一向になっておらぬということは、先ほどの数字できわめて明瞭である。同時に、人員の点について、私のお尋ねする点においての区分はどうなっていますか。
  65. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 融資をいたしました事業全般についての炭鉱離職者雇用につきましてはただいま統計を持っておりますが、いま先生の御質問の点は、造成した団地の上に乗っかった企業炭鉱離職者が何名働いておるかという御質問であったかと思いますが、それにつきましては、集計をいたしておりませんので、後ほどお届けをさせていただきたいと思います。
  66. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 あなた以外の四人の参考人の方々の意見はほとんど一致していて、その御意見の点は私どもも常に考えていることで、ごもっともなことなんです。工場団地をつくっておるのになかなか工場が来てくれない、事業場がつくられないという問題等について、参考人からそれぞれ意見が述べられておりました。その点、われわれもやはり、団地ができておるけれども工業用水というものが備えられてないじゃないか、飲料水というのも準備されてないじゃないか、団地はできたけれども、それに必要な工業用水、飲料水というものが伴って用意されてないということでは、これは問題にならぬと思うのです。同時にまた、建設するにあたっては、政府側としても国として特別の特典を与えてやらなければならぬことも、先ほどの参考人意見でわかりました。たとえば、建設資金の問題、あるいは運転資金の問題、あるいは税金の減免で何年間か特典を与えてやる、あるいは特に道路を十分そこへ備えつけてやるとか、もろもろのそういう特典が与えられていないところに、この団地が高いということとともに、団地がつくられたけれども活用されない原因がある。これが今日の現実です。それらについて、事業団としては、土地さえつくればいいということでは済まぬのです。やはりそれを売らなければならぬ。売れば工場ができ事業場ができるということはきまり切ったことです。したがって、そういう特典を与えてもらわなければ団地をつくってもそれが生かされませんというようなことを政府側に強く要請されたことはありますか。同時にまた、たとえば、そういう資金の面あるいは税金の減免などについて、特に大蔵省との関係などについて相談されたことがありますか。われわれには市町村から山をなすほどもろもろの陳情書、要請書が来ております。事業団として、それらを総合的に整理をして、これを政府に要請されるということになれば、さのみたくさんの数があるものじゃありません。そういう点について、いま私がお尋ねしておるようなことについて、政府側と十分話し合いをし、その整理をした要請書というのをお出しになったことがありますか。同時に、その点については、予算を伴うものでありますし、事業団は国の機関でありますから、当然われわれ国会側に対してもそういう資料をお出しになって、これをぜひとも国会でも取り上げてこれを生かしてもらいたいというような真剣さがあってしかるべきだと思うが、そういうことをわれわれは一向に見たことはありません。そういう点についてどうお考えになっていますか。
  67. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 地価の引き下げあるいは産炭地誘致したい企業についての融資条件あるいは補助金の交付等についてもっと思い切った集中的措置をとってほしい、あるいは他の地域開発の分野よりももっとこれに対して厚い対策が講じられるべきであるということの具体的な問題につきましては、私ども政府機関といたしまして、常に政府関係当局に対しまして出しておるのであります。また、石炭調査団等に対しましては、産炭地域振興事業団といたしましては常に積極的に意見を提出しておるものでございます。ただ、政府一つの機関であります関係上、政府に手続をし、いろいろお願いをしております問題について、十分に折衝を続けておる過程において、国会にこちらから問題を提起いたすことは必ずしも適当でないと存じまして、実情等につきましてはできるだけ連絡を申し上げ、お願いを申しておりますが、文書等をもって国会に出したことはございません。
  68. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いろいろ伺いまして、事情もわかりました。参考人にそれ以上お伺いするのは失礼であると思いますから、お伺いいたしません。これらの問題に対しては政府側にかなり怠慢の点があるようですから、これはいずれ審議の上において政府側とわれわれとの間で十分討論をすることにしますから、政府側もあらかじめひとつこれに対して用意をしていただきたい。
  69. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 藏内修治君。
  70. 藏内修治

    ○藏内委員 参考人にも長時間でお疲れでございましょうし、時間も経過しましたから、ごく簡単に伺います。  堀坂さんに伺いますが、産炭地域の基盤整備のための、たとえばボタ山処理であるとか、土地造成であるとか、水道事業、こういういわば間接的な地域振興事業と、直接にそこに進出しておる企業に対する融資事業、直接的な振興事業と、どちらがいま事業団の仕事としてはウエートが大きいですか。
  71. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 事業団といたしましては、御承知のように、工業用地の造成、その中にはボタ山処理によるものと一般の土地造成によるものとがありますが、それから融資事業でございます。したがいまして、事業団が現在実施いたしておりますのは、直接企業向けというふうに申し上げてよいかと思うのです。企業誘致しやすいようにするための条件整備というところに非常にウエートがかかっておって、ほとんどそれである。ただ、御承知のように、ボタ山を処理いたしまして工業用地をつくるという過程におきまして、炭鉱離職者の方に働いていただき、あるいは、危険であると思われるボタ山をできるだけ活用するということによりまして、環境の整備にも一端の寄与をいたしておるという程度であると存じます。
  72. 藏内修治

    ○藏内委員 実は、私がこういうことをまず最初に堀坂さんに伺ったのは、たとえば、産炭地域振興臨時措置法とともに事業団法というものができて、この事業団がやるべき仕事の機能としては、やはり、そういう基盤整備というか、そういうことが地域開発一つの主体としての事業団の使命でなければならない。ところが、きょうおいでになっておる参考人のお話を聞きますと、いわゆる産炭地振興の機能としての事業団にこうあってほしいという要望がほとんどない。政府にああしてくれこうしてくれというこまかいことはいろいろありましたけれども地域開発の中核体である機能を発揮すべき事業団としてこれでは困るじゃないかという、事業団に対しても改善を求める意見があっていいし、政府に対しても、これでは振興事業の主体としての事業団の機能としてまことに不足ではないかという意見があっていいのに、それがちっとも出ないことを私は非常に残念でならない。融資関係の点にはいろいろこまかい注文が出ておりますが、やはりそういう点は立法の趣旨と非常に違っているじゃないかという気がしました。それから、先ほど堀坂さん自身がいみじくも言われたのですけれども、外国の産炭地対策と比べて非常にきめこまく各方面にわたって多岐に制度がつくられておりながら、だれも喜ばない。こういう制度そのものが私はおかしいと思う。そういう点で、一つ延長の区切りが来ておるし、産炭地域振興臨時措置法という立法と事業団法とは、今度というわけにいきませんけれども、この次の機会にはひとつ新しい事態に立って基本的に考え直してみる必要がありはしないかと私は思うのです。そういう点について堀坂さんの御意見をちょっと聞かしてもらいたい。
  73. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 藏内先生の御質問に対してお答え申し上げます。  ただいま御指摘のように、環境整備の問題でございますが、環境整備の問題につきましては、御承知のように、道路その他につきましては、いわゆる国及び県、市町村関係の一連のこういった工事の施行についてのルートがあるわけであります。ただ、外国等の場合におきましては、それをたとえば市町村連合体であるところのそういう事業体にやらせるという特例措置をやったりいたしておるということを先ほど申し上げたので、日本の現状からいたしまして、たとえば道路等を、産炭地であるからということで産炭地域振興事業団が全部やるということになりますと、これはまた現在の行政系列を非常に乱すことになると思います。  いま私どもが最もこれはしなければと思います問題は、たとえば、炭鉱工業用地が三十万坪ある、そこは荒れほうだいである、その周辺にはそういう荒れた土地に住みついた人の特性としてとかく青少年の非行化という問題が伴っておるというようなところがあるわけであります。こういうような土地をもっと緑のしたたる土地にして、この産炭地中心部がきれいになったのだ、その中に工場も来れるし、あるいはきれいな住宅地帯につくれるのだ、あるいは文教施設も置けるのだというような、環境整備というものがぜひ心要であると思うのであります。また、今日ボタ山をそのまま置いておりまして炭鉱に汚水が流れたりいたしておりますものを、これをいわゆるコストで売るというたてまえだけで処理いたそうといたしますならば、非常に限界があるのであります。こういうような狭い国土の、その貴重な一部を占めているものを、できるだけ活用し得るような、社会の何らかの価値に使い得るような形に整備をしていくというようなことは、今日他の行政系列の中におきましてもできてないことでございますので、産炭地域振興事業団が土地造成等とも関連をいたしながらそういうふうなことまでできるということになりますならば、この産炭地域振興という名に幾らかでも沿った仕事ができるようになるのではないか、かように思っております。
  74. 藏内修治

    ○藏内委員 飯島振興課長に伺いますが、簡潔にお答えを願ってけっこうです。  産炭地振興の基本計画と非常に密接な関連を持っていかなければならぬものに鉱害復旧の基本計画があるだろうと思います。これはやはり基盤整備の上で鉱害復旧というのは非常に大きな問題なんですが、産炭地振興の基本計画と鉱害復旧の基本計画とはぺ−スが合っていますか、合っていませんか。
  75. 飯島三郎

    ○飯島説明員 ただいまできております基本計画ないしは実施計画におきましては、鉱害復旧の問題は具体的に全体の事業量なりあるいはそれの裏づけというものは書かれておりません。抽象的に鉱害復旧促進すべきであるという形になっております。ちょうど今度の法律延長に伴いまして実施計画の改定という問題もございまして、われわれ、関係のところといろいろ御相談いたしまして、その内容を現在検討いたしております。鉱害復旧につきましては石炭局内でいろいろ検討しておるわけでありますが、方針としては、鉱害復旧の問題もなるたけ計画を具体化するような形で織り込んでいきたいというふうに考えております。
  76. 藏内修治

    ○藏内委員 あとごく簡単にやりますが、政務次官にちょっとお願いをして、御意見があれば承っておきます。  いまお話しのように、産炭地振興の基本計画と鉱害復旧事業の基本計画とはかっちりかみ合っているわけではない。だから、私は、たとえば産炭地域振興事業団のやっておる土地造成も、つとめて鉱害地は避けておるのではないかという気がしておるのです。これは、鉱害にさわるとよけい事がめんどうだから、できるだけそういう問題のないような土地から手をつけていると思う。そういうところから、結局一番悪いところが最後まで残ってしまう。そういうことですから、政府産炭地振興をやろうということならば、この産炭地域振興事業団のやっておる基本計画と鉱害復旧の基本計画とをやはりペースを合わしてくれなければ困る。そういう点は、各事業団に個々にやらしてもしようがないので、これは通産省でやはり強力な政治的指導をやってもらわなければ困ると思うのです。この点はひとつ政務次官によくお願いをしておきたいと思います。  それから、これについて御意見を承っておきたいのですが、産炭地には、鉱害復旧事業団とか産炭地域振興事業団というものがあり、いろいろやっておる。それから、先ほどの話に戻りますが、地域全体としての有機的な関連性が何にもないのです。もうどの町村も全部工場誘地とか何とか言って騒いでおる。もうだめだと思う土地は勇敢に農村に還元したほうがいいと私は思うのです。そういう広域的な振興計画というものがない。これはやはり、北九州福岡を含めた、佐賀を含めてもいい、あるいは長崎を含めてもいいのだけれども、もっと大きな規模での関連において計画をひとつ立てていかなければいけないのじゃないか。そういう点からすると、東京には首都圏整備委員会というものがあり、近畿圏があり、中部圏がある。やはり、北九州については、もっと全体を有機的に関連づけるという意味において、北九州整備委員会のようなものを、経企庁に置かれてもいいし、自治省でもどこでも私はいいと思うのです。もう一つ高次の機関というものがなければ、有機的な関連性というか、大きな絵というものが書かれていかないのじゃないかという気がするのです。そういうものを含めて、基本的に構想を練り直していただきたいと思うのですが、御意見があれば承っておきたいと思います。
  77. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 ただいまの藏内委員の御意見に私ども同感でございまして、産炭地振興鉱害復旧の基本計画は有機的にかみ合っていかなければだめだと思うのでございます。そういう面におきまして、そうした機構をつくるかどうかは今後十分検討いたしますが、かみ合っていかなければならぬということで私ども努力いたしていきたいと思います。
  78. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 滝井義高君。
  79. 滝井義高

    ○滝井委員 堀坂さんにちょっと尋ねたいのですが、あなたのほうで造成した土地が至るところ、伊藤さんも指摘しておりましたが、ペンペン草がはえておるわけです。そこで、これは工場が来るのを待っておるといつ来るかわからない。そのうちだんだん筑豊人口がなくなってしまう。そこで、筑豊を一応北九州のやはりベッドタウン的なものとして考え考え方があるわけです。どうしてそういうことを言うかというと、まず人が住んで北九州なり福岡に通っておるうちに、おれのほうの労働者なり職員が筑豊炭田から通ってきているのだから、ひとつ筑豊に工場を持っていこうか、こういうことになるわけです。それで、まずやはり人間の交流が先なんです。そこで、だんだんできた団地が、工場が来ずに、売れずにおると、大蔵省は堀坂さんのほうに文句をつけてくる。そこで、この際堀坂さんのほうの振興事業団が、大通りに面しておるいい団地はしばらくおくとして、幾ぶんあなたのほうでおつくりになった団地の中で辺遠地区にある分については、あなたのほうから住宅をおつくりになって、そしてそれをどしどしと貸していく、あるいは払い下げる、こういうことが私は必要じゃないかと思うのですよ。この点について一体どういうお考えを持っていますか。
  80. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 お答え申し上げます。  事業団法によりまして、今日事業団が造成をできますものは工業用地のみであり、また、譲渡できるのも、これは工業者であるというふうに法定をされております。ただ、現実の問題として、筑豊におきますところの土地の事情は滝井先生の御指摘のとおりでございまして、したがいまして、私はこの用地をできるだけ活用したい。これはボタ山であったところが使われるようになることが望ましいと思っておるのでございますが、いま滝井先生のおっしゃいますように、工業用地として当然使われるべきものは、それは道路整備等が完成するまで待つとしても、ボタをとったあと等で住宅用地としてもいいというようなところについては、これは、私どもは、できればそのようにさしていただきたいというお願いをしたこともございますし、そういう意見を持っておるのであります。なお、この造成につきまして、すべて工業用地だけとしてつくろうといたしますと造成技術上非常に問題がございまして、およそボタ山に百万立米の土がたまっておるといたしますと、それを埋め立てて工業用地にする場所としてたとえば鉱害地を使ったといたしまして、それには五十万立米しか入らなかったとしますと、あと残った五十万立米のボタ山のところを工業用地として使おうとしても、なお高いから使えない。しかし、これをもし住宅用地として使うのであれば、これは少々高くても見晴らしがよくてよろしいというようなところがあるのでございまして、その辺についての運用にやや融通性を持たせていただけるようにすることによりまして、この土地の有効利用がよりはかれますし、また、現実問題といたしましては、住宅用地のほうが場合によっては高くてもなお必要とされているところもないわけではないというふうに思っております。
  81. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、幸い法案審議中ですし、あなた方のほうでは工業用地についてはやれるようになっておる。そこで、工業用の団地だけを造成してあとは無能力というのではお気の毒ですから、今度ひとつ、これは与党も反対することはないと思うので、住宅をつくれるというように修正したいと思うのです。ただ、その場合に問題になるのは、これは建設省との関係です。われわれが厚生省等に低所得階層の住宅をつくらせようとしたことがある。ところが、がんとして建設省が聞かない。それから、雇用促進事業団に住宅をつくらせようとしたが、どうしても聞かない。そのときにどういうふうにして切り抜けたかというと、宿舎として切り抜けた。役人の世界では、宿舎は住宅とは言わないのです。そこで、宿舎でみなごまかした。だから、文句を言えば、産炭地域振興事業団宿舎、こうやってすればいいことになると思う。そこで、これは、堀坂さんのほうもそういうことをできるだけ弾力を持たせてくれということですから、あとで修正のときに話し合いをして、ぜひそうしたいと思う。  それから、もう一つは、三十八年十一月十二日に産炭地域振興計画というのを政府が出したわけです。その振興計画に基づいて、振興の基本計画と、きわめて具体的な産炭地域振興実施計画ができたわけです。当時は、御存じのとおり、池田さんのときで所得倍増計画、倍増計画が間違って中期経済計画になった。それらのものにのっとって産炭地振興計画はできているわけです。ところが、いまや政府は倍増計画も御破算にするし中期経済計画も御破算にしてしまった。佐藤さんになってから、池田さんの政策を受け継いでおったのだけれども、もはや一切のものは御破算にしてしまっておるわけです。したがって、池田さんの計画というのはもうあとかたもなく消えうせて、いまや新しく佐藤内閣でつくろうとしておるのです。所得倍増計画、中期経済計画に関連をしてできた産炭地域振興計画も、これは砂上の楼閣になってしまっておる。さいぜん藏内さんも指摘しておりましたが、いまや新しい産炭地振興計画をやり直さなければならぬことになった。三十八年、三十九年、四十年、四十一年と四年たってみたら、全くできていないでしょう。細谷さんはペーパープランと言っておった。そこで、これは知事さんと堀坂さんにお尋ねしたいのですが、一体、産炭地振興の実施計画、たとえばこれは北は北海道から南は長崎に至る間の地域を指定しているわけですね。九つありますよ。釧路地域から長崎の地域に至る間。いま一番問題になっておるのは筑豊地域ですね。この筑豊地域というのは、御存じのとおり、福岡、北九州、粕屋地区、筑豊炭田、全部ひっくるめて筑豊地域、こうやっているわけです。当時の計画をごらんになりますと、失業と貧乏が渦巻いている筑豊地域の典型的なものを見ますと、個々の鉱工業等の振興として——等というのは農業があるから等を入れたということだったのですが、鉱工業を見ますと、機械金属工業、窯業、土石業、食品工業、衣服手回り品工業等の消費財、こういうようなものが中心になって産炭地の鉱工業振興をやる、こうなったわけです。当時、昭和三十五年の出荷を基礎にして、たとえば食料品で見れば、その地域全体の出荷額が三十五年で六百六億、これを四十二年、来年度においては千四百一億円にする、こうなっておるわけです。そして、特に炭田地帯、というのは筑豊です。まん中を言っているわけです。その筑豊地域の中の炭田地域の食料品の出荷は、六十四億が百二十四億と倍になるわけです。そういうように、一つ一つの業種について全部、三十五年を基礎にして四十二年の出荷計画を立てて、当時、この筑豊地域全体に政府は三十九年から四十二年までに千四百億の財政融資をやって、新規雇用を十万人ふやす、こうなっているわけです。そうすると、さいぜんの福岡県知事の御説明によっても、月とスッポンの違いですね。こういうことでは話にならぬわけです。これは基盤整備も同じです。基盤整備は、当時、道路と港湾と鉄道と用地、用水、これだけになって、鉱害復旧は基盤整備の項でなくその他の項に入れているわけです。それで、福岡県の一番疲弊の激しい筑豊地帯の興隆をやるために、たとえば仲哀トンネルとか、八木山の整備とか、八木山ダムとか、いろいろ事業はおやりになっているわけですが、知事にお尋ねしたいのは、この実施計画の中で最も大きな特徴的なやれなかったものは一体何なのか、そして、そのやれなかった理由、隘路というものは一体どこにあったか、こういうことです。  それから、もう一つ、堀坂さんのほうにお聞きしたいのは、こういうように具体的な基本計画ができ、それにのっとって肉づけの実施計画ができているのですが、これらのものは、あなたのほうの事業団として、計画したものがうまくいっておるのか。いっていないなら、その難関、隘路というものは一体どこにあるのか。  それから、知事と両方に総括してお尋ねしたいのは、一体、この砂上の楼閣の上に立っている産炭地域振興の計画をもう一ぺん根本的に洗い直してやる必要があるのではないか。ないならば、六月には石炭の抜本政策が出てくるので、抜本政策と無関係振興計画が進むはずがないのだから、抜本計画とやはり唇歯輔車の関係で進めなければならぬ。こういう点について御両所の御意見を聞きたいし、他の参考人の方からも、いまの点について何か御意見があれば、参考のためにお聞かせ願っておきたい。
  82. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 いまの産炭地振興する計画というものを、産炭地域振興審議会ができる前にそれぞれの県が準備いたしまして、その青写真はりっぱにできました。しかも、その青写真をつくりますときには、それぞれみなそれに条件をつけて青写真をつくったわけであります。たとえば、道路をつけて、それを消費地との間につなぐ、しかし、その道路産炭地振興道路計画として、その負担等についてもこういう方向でいくものだ、こういう条件をつけ、あるいはまた、進出企業についても、地元の資源を活用し、また地元雇用を十分生かすような企業、それから、先ほど言われましたいろいろ機械工業、自動車工業等の適当な企業というものをあげて、これをやるにはこうしていくべきだという条件をそれぞれ付した計画を持っておりました。その計画が実は産炭地域振興審議会で全面的に形だけはいれられたわけであります。形だけはいれられたものですから、いろいろなものが全部入ってはおりますけれども、さてそれなら、一つ道路の問題を取り上げましても、産炭地振興道路としてやるべき道路の内容については、実は特別の産炭地振興道路としてはちょっと取り扱うことが現実の問題としてできなくて、一般の道路計画の中に入れる、こういうことになりますから、そこで、事業計画には上がっておりますけれども、さてそれならどうなるかと申しますと、私どものところで言いますと、先般冷水峠が完成いたしました。これは八幡から原田に抜ける、三号線のバイパスにも似た、いわゆる筑豊のどまん中を抜ける道路でございますが、冷水峠の道路計画は数億円のができましたが、それを工場が利用できるようになるには、実は直方、飯塚、田川のバイパスというものがちゃんとできておりませんと、八幡から原田に抜けて久留米に参るその道路が、一部分の開通になりますからできないわけでございます。いまバイパス、いわゆる産炭地の中の主要道路のバイパスが、いままだ二割とかいうさっきの数字が残っておる。こういうような点は、全般の計画には載っておりますけれども、動かす各省のそれぞれの予算といいますか、それぞれの各省でそれをアレンジいたしますものには載っていないものですから、ちぐはぐになっておる。ですから、産炭地域振興事業団ができまして工場を誘致いたしますけれども、その工場誘致についても、県では、県の工場誘致をやって、私どももまた大きな工場を持ってこようというので、私自身行ってやると、いま企業にはこういう設備投資の問題があるので、ほかの地区に移ろうとは思わぬが、しばらく二、三年待ってくれと言う。しかし、待ってくれというて、そんな土地を五十万坪もほうっておくというわけにまいりません。地方財政の問題がいろいろございます。さっきお話が出ましたが、もう住宅のほうが必要ならそれを売ってしまおうかという。そうすると、五十万坪は、四、五年待ってくださいというても、何かそこに財政措置がありませんと、その計画はできない。やはり、設備投資がいまなかなかできないので、景気回復まで四、五年は、そういう方針をいわゆる企業家自身とっておりましても、土地の確保ができない。それをどうするかという点等はまだ俎上にのぼっていないものですから、手がつかない。ですから、入ってくるような入ってこないような、現実に処理するには盲点があってどうにもならない。五年先の土地を企業家が買うと言っても、普通の措置では買えませんし、また、財政的な措置が何かあるかというとありませんし、というようなことで、ある問題は動いておりますけれども、その点困っております。実際にそれならもう手を打って土地は五十万坪を確保する。そうすると大きな自動車の組み立て工場もできる。それを分割してしまいますと来れない。それを地元市町村が何年抱いておれるかといいますと、地方財政の問題がある。いまの産炭地振興関係では、ほんとう筑豊市町村財政が悪いものですから、所定の援助は受けられないということになりますと、地元は、先ほども多久の市長さんからお話があったように、苦しい苦しいといってそれで何ら手が打たれていないのかというと、全般の計画についての手はそれぞれ打っておりますけれども、実行に移らない。こういうようなことでございますから、実は、産炭地域振興計画というのは私ども持っておって、一応載せたのですけれども、先ほどお話のありましたように、一本に載っていない。たとえば鉱害の問題も、鉱害復旧の計画は持っているが、産炭地振興計画としてはまだどこも連絡する場所がないということで、それならやっていないかというと、鉱害復旧計画もある程度やっておる。そこの隘路にぶつかるととまってしまっておる。産炭地振興計画も動いてはおりますけれども。ですから、そういう意味で、産炭地振興計画の改定はぜひ必要であり、先ほどもお話がありましたように、振興計画を一ぺん産炭地域振興審議会なり政府関係機関のところで決定をして、それを実行に移す機会はぜひ必要だ、こういうふうに思っております。
  83. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 ただいまの御質問にお答えいたします前に、先ほどの造成しました団地の適用についてでございますが、ただいま滝井先生は、住宅建設を事業団がやるというようにおっしゃいましたのでございますが、それについて、実は私はそこまで申し上げたのではございませんで、ひとつその点は御了承をいただきたいと思います。事業団の主たる目的は工場誘致でございます。工場用の建物とかいう問題は次の問題であると思うのです。  それから、次に、実施計画の問題でございますが、この計画に対する遂行率いかん、実はこういうお話でございますが、私どもといたしまして、この企業誘致という観点から見て、あるいはこの期待するところの生産額に対する遂行率ということになりますと算定が非常にむずかしいのでございまして、実はこういう基本計画の中で政府なり地方公共団体が責任を持ってやれるもの、たとえば公共事業でございますとか、政府の資金あるいは県の資金等によってその事業を主体的に引っぱっていき得るようなものは、具体的な計画が出て、それに対する遂行率というものは非常にはっきりいたすと思うのでありますが、この工業生産高等に対しますところの数字は、算定のときの事情につきましては十分に承知をいたしておるわけではございませんけれども、おそらく、所得倍増計画に基づくところの各業種ごとの産業の成長率及びこの九州が負担すべき地域生産分野等を考えて、さらに現地の資源状況、労働需要等を考えられてつくられたものであると私は承知をいたしておるのでございますが、これらの事業につきましては、事業団ができるだけそのような線に沿う事業の方面に向かって誘致をするように努力いたし、あるいはまた宣伝をいたしてきたのでございまして、調査団等に来ていただきます場合も、ここに掲げてありますような業種が筑豊地帯等で最も適当であろうということで誘致活動等はやっておるのでございますが、ここに掲げておりますところの金額は既存の産業生産増加の問題等も含まれておるのでございまして、新たに来た企業生産高と、それからこの成長との比較というのは、残念ながら私のところではできないのでございます。その点ひとつ御了承を賜わりたいと思います。
  84. 滝井義高

    ○滝井委員 この実施計画をごらんになると、鉱工業等の振興できわめて具体的に書いておるわけですね。まず、機械金属工業というのは、北九州等との関連福岡との関連から考えてこれは非常に有望だ、それから、窯業があるし、土石業というのは粘土、飯塚の粘土は失敗しましたが、粘土があるし、シャモットというようなものがある、それから、食品工業、手回り品工業、これは消費財として福岡、北九州との関連でいいというように、具体的な実施計画が書いてあるわけです。しかも、三十五年の筑豊地域全体の出荷と、それから炭田地域のものを把握して、今度は昭和四十年になったらそれがどういうふうに伸びていく、その成長率は二%とか三%とかきちっと計画しておるわけです。ところが、そういう実態に少しもなっていないわけですね。一体なぜならなかったかということを探究してみる必要があるわけですよ。当時これをつくった人は異常な情熱を持ってつくっておると思う。道路その他はわかったですよ。知事さんが言うように、局部はできた。しかし、それは、原田から八幡の間をするためには、飯塚、直方、田川等のバイパスをつくらなければ、それはものの役に立ちません。しかし、それは他の地区が建設省の全国的な道路計画の中に入って、そうして特別の扱いをしてくれません。だから、産炭地をやろうとしても、局部はでき上がって万歳と言っておっても、他のところができないからだめです。これはやはり、この委員会で建設省に言って、産炭地域振興計画に載った道路は優先的にやれ、こういうことをやらなければだめです。というのは、それはできないことはない。政府は、不況になったからとにかく七割の契約を上半期に繰り上げてやる、そのうち四割は金を先払いしてやるんだということですから、やればできるんだ。ですから、これだって、河野さんが生きておったら一ぺんにできるかもしれない。なくなったからできなくなったのかもしれません。鵜崎さんがきわめて明らかに欠陥を指摘してくれましたから、いずれ建設省も呼んでかちっときめなければいかぬと思う。そうしないと、いま言ったような自動車工場に来てもらいたい、機械産業として最も水がないところに適合しておると言っても、道路ができるまでは行けませんと言われたら、その責任は産炭地にあるんじゃなくして政治に責任がある。これは十分わかりました。  そこで、いまのような具体的なものを出しておって、それが実施できないとすれば、これは堀坂君のペーパープランをもう一度やり直す必要があるんじゃないか。そういう点について、堀坂さんあたりどう考えますか。
  85. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 この計画は、やはりこういう企業筑豊に向くんだということを検討されて、一応そういう企業はこのくらいに伸ばしたいというふうに書いてあるわけでございますが、現に来ているものも、やはり筑豊の性格を見てそういった種類の企業が来ておると思うのでありますが、企業を連れてくるということは、おまえは名古屋をやめなさい、筑豊に来なさいというわけにはいかない性質のものでございまして、筑豊に来たら機械工業がなおやりやすいような誘致条件等を整備して、そういう企業が来やすいようにつくっていくということによって、現在の体制の中において目的とする産業が立地するように持っていくというのが主眼であろうと思うのであります。先生は、企業誘致の目標、鉱工業振興の目標が非常に具体的に書いてあるとおっしゃいましたけれども、目的とした企業をここに持ってくるための手段というものまでは入っておりませんし、また、そういう手段を書くことは実際問題としてこういう実施計画ではむずかしい問題でございますので、これはむしろ、客観的に経済的に考えてみてもこういうふうな産業を持ってくることが可能性があり、またそういう可能性をつくるようにするんだという意味で私どもは理解をしていかなければならないだろうと思っております。  なお、基本計画、実施計画の具体性の問題につきましては、いままで審議会等におきましても、もっと具体的なものでなければいけない、先ほど藏内先生も御指摘になりましたように、もっと地域全体といたしまして、どこに道路ができ、どこに工業団地ができ、どこの鉱害復旧ができ、どこが農業地帯に転化していくんだ、そういうような具体的な実施計画の線に直していくべきであるという意見が今日非常に強くなっておりまして、そうして、そういうふうな具体的計画をつくるように政府のほうで努力されようといたしておりますし、さらにまた、そういうところに来るべき企業誘致条件をどのようにして直していただくかということが、これからの問題として私どももっとつとめていかなければならない問題である、そういう線の具体的実施計画の変更ということをしてただきたい、かように思っておるのでございます。
  86. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 三原朝雄君。
  87. 三原朝雄

    ○三原委員 大体諸先生の意見なり参考人の方々の御意見でつまびらかにされたと思いますが、先ほど多賀谷委員の言われるように、本法の制定の経過等も反省を要するという意見も出ております。なお、鵜崎参考人からは、実施しようとする地方公共団体立場から、実施しようとすれば、いろいろな隘路があるというような点の指摘がありましたし、また、田坂参考人あたりは、実際に産炭地振興事業をやっておられて、運転資金その他で非常な隘路に逢着されて、お困りの状態も承っておるのであります。そこで、最終的には、いまも堀坂参考人なり藏内委員が言われましたように、この審議会石炭政策について抜本的な結論を出そうという時期に、国としてもそういう体制を整備すべきだという意見が結論的に出ておるわけでございまして、全く同感でございますが、先ほど多賀谷委員も言われましたけれども、国で実際そういう体制にまでこの時期にいくのであろうかというようなことを検討をしてみる場合に、非常に至難だと思うのです。六月にそうした答申が出て、予算化というようなものがなされるときに、石炭プロパーの問題だけを考えましてもたいへんな問題だ。それに産炭地域全般の問題を含めて鉱害復旧なりあるいは振興問題というようなことを考えてまいります場合に、非常に至難な問題だと私は思うわけです。  そこで、一つの提案でございますが、きょうは福岡県を例にとって、北海道あるいは佐賀からも見えておりまして、非常に恐縮でありますが、知事あたりが中心になられて、財政的にきわめて至難な現況ではございまするけれども、各市町村について——ただいまも鉱業市町村連盟とかいろいろな組織はあります。しかし、これは主として陳情的な組織であるから、各市町村についてもっと掘り下げていただいて、——たとえば、例をあげましても、先ほど知事もいろいろ御意見がありましたが、鉱害復旧の問題だけをとらえましても、早期に上流でやられた鉱害復旧が、あとで後期に下流でなされた鉱害復旧の水準点のとり方あたりに問題が出てきて、水が飲めない、あるいは、先ほど滝井委員が言われましたが、ここは住宅計画にしようという意見もあれば、あるいは工業団地にしようというような意見が出て、各市町村ごとのそうした調整問題もあるわけです。先ほど道路等の問題もありましたが、道路だけでなく、治山治水の問題、一切がそうです。あるいは、産業的に見ましても、農業適地と思いながら農業にできないという、財政上の事情なり諸般の事情からそういう問題も起きている。そこで、いまの筑豊の情勢がそうでございますので、知事が中心になられて、市町村財政は不如意でございまするけれども、たとえばかつて福岡なり北九州がマスタープランをつくったように、そこへ中央各界の有力者を加え、これには大企業も入りますので、当然企業誘致ということもみずからの責任になるというようなこともありましょうが、そういうことで、市町村中心になって各界を網羅したマスタープランをつくられる、非常に経費も要りましょうが、それは中央からの助成も仰いでやれる、しかも、同時に、その政治的責任を中央なり産業界も持つというような体制で具体的に進められてはどうか。これはたいへんな問題だと思います。先ほど多賀谷委員も言われましたが、今日の産炭地域における国政の位置と申しますか、そういうことで困難だとは思いますが、しかし、いまの各委員意見なり参考人意見を総合しますと、結論はそこに来たという感じを深くするわけです。したがって、先ほど田中委員から、地元の自主的な体制の強化が必要ではないかという御意見もありましたが、そういうところで盛り上げて、中央に責任もとらせる、もちろん現地もとりますという体制の新しい機構を何とかおつくりいただくわけにいかぬかということであります。一言お尋ねしたわけですが、どなたでもけっこうですから、お答えいただきたいと思います。
  88. 鵜崎多一

    鵜崎参考人 いま三原先生からお話のございました産炭地振興地域計画を具体的に進めていくその前提の問題について、私ども、幸いにこの振興法延長にでもなると、どうしても一つの区切った今度は現実対策を出さなければならぬと思いますので、私、御意見を伺い、私の県の体制としては、ぜひそういう御意見をいれまして、産炭地振興について、現時点を中心として今後伸ばす計画をつくってみたい、こう考えております。
  89. 堀坂政太郎

    ○堀坂参考人 ただいまの三原先生の御指摘の問題でございますが、私ども全く同感でございまして、今日の法律では振興計画は政府がつくるということになっております関係上、私ども立場から見て、地元のほうがむしろ陳情側になっているという感じがいたすわけでありますが、これは、国と地方のそれぞれの所管のところが、共同といいますか、それぞれの立場において責任を持って具体的な案をつくって、そして、地方の経済力の及ばないところについてこういうふうに負担してくれというふうな形で持ち出され、それが国の計画として決定されていくことが望ましいと思っております。
  90. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 この際参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用中にもかかわらず長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただき、まことにありがとうございました。厚く御礼申し上げます。  なお、この際産炭地域振興事業団堀坂理事に申し上げますが、産炭地域振興事業団関係者の方々には産炭地振興関係の二法案審査中必要に応じ随時参考人として出席していただきたいと存じますので、よろしくお願いいたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時八分散会