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1966-04-14 第51回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十四日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 有田 喜一君 理事 加藤 高藏君    理事 藏内 修治君 理事 多賀谷真稔君    理事 松井 政吉君 理事 八木  昇君       大坪 保雄君    田中 六助君       西岡 武夫君    三原 朝雄君       滝井 義高君    中村 重光君       細谷 治嘉君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         通商産業大臣  三木 武夫君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第五三号)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。伊藤卯四郎君。
  3. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 三木通産大臣は、石炭対策の根本問題については相当検討されておられると思います。この間大臣所信表明を見てみますと、石炭安定化対策鉱害復旧対策産炭地域振興対策等を見れば、一応書きものとしてはまあまあとにかくよく作文しておる、こういうように見れるのですが、さてこれを具体的に着実に実行されていくことについて、はたしてそれだけの用意、準備をされておるかどうかという点について、少なからず疑問を持つわけであります。それについて、根本問題についてこれから何点か質問をいたします。  そもそも、石炭を今日のように救いがたい苦境におとしいれていったという原因をさかのぼって見てみますと、昭和三十四年から三十八年までの五カ年間に石炭単価を千二百円値下げをすれば、石炭競争相手である重油に打ち勝つことができる、そうすれば石炭経営というものも健全化することができるからと、政府が非常に強い主張をいたしまして、そうして、実はその当時も、炭鉱で必要な機材あるいは石炭輸送賃その他物価も上がる、したがって賃金の値上げもしていかなければならぬということで、炭鉱側で必要なものについてはそういうようにとめどもなく値上がりをしていく反面に、石炭単価だけをいわば政府の強制的な命令によって大手需要家方面に向かって値下げをさせられたと言っていいわけです。ところが、三十四年には重油は一キロリッター八千四百円だったのです。それが、五年後の三十八年までの五年間に一キロリッター六千円になりましたから、したがって、一キロリッター二千四百円五年間に重油値下げをしたわけです。石炭に換算してみますと、一キロリッターの油は六千カロリー石炭二トン分に該当しますから、それだけさらに石炭値下げになったと同様になるわけです。そうしますと、石炭をほとんどただでやってもなおかつ油のほうがいい、こういう計算になるのです。この点は、その当時、石炭と油との競合の上に立って、石炭トン当たり五年間に千二百円値下げをすれば油との競争ができるからという政府見通し、これは実は政府が重大なあやまちをおかしたと言っていいわけです。そもそもの原因は、ここから今日の石炭の救いがたい状態が派生してきておるわけですが、このあやまちを認め、その上に立って、一体石炭対策をどう立てるかということが、今後の石炭安定化の上にとって一番重大でございます。したがって、油との競争はもうできないということはきわめて明らかになったわけでありますから、こういう点について、このあやまちを認められるかどうか。それから、油との競争はもはやできないのだ、したがって、その上に立って石炭安定対策をどう立てるかということを政府の方針とされなければ、石炭安定化は、どんなに名文を書いてみたところで、実際政治の問題としては解決にならぬわけです。この点について、根本的な問題ですから、大臣考え方をひとつお伺いしたい。
  4. 三木武夫

    三木国務大臣 見通しは確かに誤った。これは政府だけでなしに調査団も、調査団答申政府は採択したわけでありますから、見通しを誤ったことは率直に認めざるを得ない。しかし、合理化に関する手はいろいろ打ってきたわけで、そのことが誤っておるとは思わない。千二百円に三十四年から下げれば重油に対抗できるという見通しは誤った。重油カロリー換算などをしてみると、実際は重油石炭は対抗できないと私は思う。そこで、それはエネルギー一つのプリンシプルである低廉という原則から言えば非常に悲観的だと思う。ただ、しかし、一方において、それが遠路海路から運んできたりする必要がない国内の資源であるということ、あるいはまた、その石炭産業を中心として日本の地域的な経済との間に非常に密接不可分な結びつきを持っておるということ、そういうほかの要素から考えてみて、この石炭を確保するという政策が生まれてこなければいけないので、ただ低廉であればいいというより、それ以外においても、安全供給であるとか、地域経済との関連性とかにウエートを置いて考えれば、やはり、ただコスト計算だけでない計算が成り立たなければならない。そういうことから、今後の抜本策を考えるときに、ただ低廉であるということだけにウエートを置かないで根本策が講ぜられなければならぬというのが今日の立場でございます。
  5. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 別に大臣がいま言われたことに反駁するわけじゃありませんが、どうも政府のほうでは、歩方が悪くなると、すぐ調査団とか審議会とかいう隠れみのに隠れてしまって、責任がそこにあるようにする癖がある。これは、まことに役人の諸君は頭がいいもんだから、すぐそういう隠れみのをつくったり、風よけをつくって、あやまちをおかすと、何かそこの責任のごとく言う癖がある。ところが、審議会調査団答申をした場合に、それを完全に実施したことはない。ちゃんと腹では自分が何をやるかということを持っていて、ただ調査団とか審議会というのは参考意見もしくは窮地に立った場合にそこを隠れ場所にする、こういうことが大体慣例であると言っても差しつかえないのです。三木通産大臣は別に官僚じゃないんだから、おそらく、私の言っておることに対して、伊藤君、あんたの言うとおりわしも認めておると、腹の中で思っていらっしゃると私は確信しておる。  いま答弁を伺っておりますと、われわれが言おうと思うことと同じようなことを大臣も考えておられるのじゃないかという気がしました。欧米各国でも、石炭問題と油との問題についてはどこでも悩んでおる。そういう点から、各国では、総合エネルギー計画というものを立てまして、そのエネルギー計画の中において、石炭数量価格というものを国策としてどういうように守ってやるか、いわばその国にある地下資源を守るかということとでやっています。そういうところから、あるいは国有国営国家管理もあり、あるいは、半分くらいは国有国営国家管理に移して、あと半分くらい民営にする、あるいは石炭会社が油もやっておるとか、総合エネルギーの強力な国家調整でやるか、あるいは業者間において自主調整をやるかというようなことで大体石炭問題を解決してきています。ところが、日本だけはどうもそれがないというところから、実は私は、当時池田総理大臣に、日本でも強力なエネルギー国策機関というものをつくって、石炭の必要な数量価格を維持安定する、もちろん、このためには、ただ私企業を保護する、救済するという意味でなくて、設備の近代化なり、あるいは最大の能率を上げさすように指示していく、経営にしても、これを相当監査、監督もしていくというようなことでやれば、石炭対策について国がその安定を守ってやっても、国民の間に私企業に対してそういう援助協力をするということはいかんじゃないかというような反論は起こってこないのじゃないか、だから、ぜひ国が、近代工業国各国がやっておるような強力な総合エネルギー機構をつくるようにということを何回か強調しましたら、当時の池田総理大臣も、いや、それは全く自分もそう思うというところから、最後には、それは伊藤さん、必ずつくりますということをここで確約をされたのです。なるほど、その後つくられたことはつくられたが、一体どれだけ権威があるのかないのか、どれだけこれを調整する国家的な使命を帯びてやっておるのかどうか、全く不明、全く弱体そのものです。  そこで、この石炭については、油のほうが何ぶん安いものですから、しかも、日本に輸入されてくる油は西欧諸国より一キロリットル千五百円から二千円くらい安いということが言われています。でありますから、従来の大口石炭需要家である電力会社、あるいは製鉄、セメント、国鉄、そういうところもその安い油を使い始めてきておりまして、高い石炭を使おうとしないのです。そこで、国のほうで石炭割り当てて使わせようとすると、文句を言ってなかなか政府の要請に協力をしないようになっています。というのは、需要家とすれば、カロリーが高くて値段が安いものがいいというのは当然なことですから。したがって、石炭大口需要家というものが油に切りかえていって、石炭値段の問題なり数量の問題を国が相談をしてもこれになかなか応じてくれないというのも、今日政府でも困っておられる一つの問題じゃないか、こう思うのです。この辺の問題を解決されないと、石炭安定化といっても、需要数量というものをなかなかきめられぬと思うが、国としてこれらの強力な総合エネルギー国家機関をつくってやっていくとか、そうした大口需要家との間におけるあんばい調整というものを一体どうして解決しようとされておるか。私どももそれぞれ意見は持っておりますけれども意見を申し上げたのでは、大臣から、いやごもっともです、私もそう思いますと言われたのじゃ何も意味がありませんから、ひとつ政府側で、これらの根本問題をどういうふうに解決しようとしておられるかをはっきりさしていただきたい。石炭対策は、枝葉末節の問題を幾ら論じ合っておったって解決はできぬと思う。これについて、大臣解決してやるという信念をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  6. 三木武夫

    三木国務大臣 私はこういうふうに考えておるのです。エネルギー調査会、これが六月ごろに、石炭というものを総合エネルギーの中でどのような位置づけをするかという答申を出してくれることを期待をしておるわけです。そこで、かなり長期的な展望の上に立って、日本エネルギーの中でこの程度石炭を確保するという答申が出てまいりますから、その答申も尊重しながら政府として今後の長期見通しを立てて、そして、その上に立って、需要をどうあんばいしていくかという一つ——いま言われたように、鉄鋼にしても電力にしても、エネルギーコストからすれば石炭割り高ですから、こういうものに対して、どのような仕組み鉄鋼とかあるいは電力というものが石炭と長期的な契約ができるようにしていくかということで、位置づけがきまれば、石炭の使用を確保するだけの仕組みというものを考えて、御承知のように、毎年毎年われわれが電力会社あるいは鉄鋼会社に実際いろいろと頼まなければならないというようないまの不安定の仕組みを、やはりもう少し合理的な仕組みに考えたい、これが抜本策の中に考えておる考え方方向であります。それを無理に頼まなくともやれるような仕組みというものを考えていきたい、そうして、ある程度長期的な需要を確保したい、そういう考え方を今度の抜本策の中に出していきたい、こう考えておるのでございます。
  7. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 御存じのように、日本産業経済の発展は、世界の驚異と言われるほどこの十年間くらいの間に伸びてきております。したがって、産業の食糧とも言うべき原動力のエネルギーは、非常に大きく伸びてきております。おそらく今日、七千カロリー石炭に換算して三億トン近くくらいエネルギーは消費されておるのじゃないか、こう思うのであります。ところが、年々これを計算してみると、エネルギー消費量は一割くらい伸びてきておるにもかかわらず、石炭のほうはだんだん滅って、五千五百万トンか五千万トンを割りはしないか、いや四千万トンくらいでよいのじゃないか、中には、極論として、いや三千万トンも一あったらよいのじゃないか、そういう意見すらとかく言われておるという状態なんです。したがって、これを調整するということは、さきにお伺いして大臣答弁になりませんでしたが、強力な総合エネルギー国家機構によって、あるいは油をどれだけ輸入する、あるいは水力をどうする、火力をどうする、ガスをどうする、そういうものをこの機関で調整して、その数量価格というものをそこできめていくということにすれば、生産者需要家との間の解決というものも一、これは国策として政府がこうやるのだということであれば納得のできる解決ができる。それこそ民間のそれぞれの権威者をもって構成してやるならば、需要家のほうも納得できないことはありません。世界各国でもやっておる例でありますから、日本だけがやれぬということはないわけですから、そういう強力な総合エネルギー国家機構をつくって、そこであんばい調整をしていくということにしてはいかがですか。
  8. 三木武夫

    三木国務大臣 いま通産省の中に、今年度の昭和四十一年度から、総合エネルギー政策課という一課を設けたわけです。しかし、いま御指摘のように、総合エネルギーに対しての行政組織としては、いま弱体過ぎると思います。だから、これの機構というものは将来考えなければならぬと私も考えております。いま一課くらい課をつくったということは、エネルギー問題の重要性から考えてみて、やはり弱体過ぎる。これは将来機構問題は考えなければならぬ。しかし、今度出る抜本策というものは、その機構というよりも、一つ仕組みを考えたい、石炭鉱業を安定していけるような仕組みを考えたいということで、これとこの機構とは直接のつながりを持っておるわけではありませんが、われわれとすれば、あわせて、総合エネルギー一つ行政機構としては、これは検討をいたしたいと考えております。
  9. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 これは、さっき私が申しましたように、どうもすぐ調査会答申とか何とかということをおっしゃるわけですが、大体有澤調査団最終答申が六月出されるだろうということは、これはもう一般に行き渡っております。しかし、通産省のほうで、特に石炭局大臣のほうでは、有澤最終答申案がどういうものが出てくるかということは、もう鏡に写したように御存じなんだ。ただ、答申案が出ないのに先ばしりをして言うてしまったのでは、調査団に対してはなはだどうも申しわけないというか、連中がおこるんじゃないかというようなこと等で気がねをされておるという程度で、実際は、どういう答申案が出るかということは、石炭局長などはもう一番よく知っていますよ。また、われわれも大体知っています。これは初めてじゃないんですから。何回も調査をされ、出されてあるんですから、そう天地がひっくり返ったようなものが出てくるわけじゃない。ただ、前回より一そう深刻なものが出てくるということが言えましょう。そして、これは当然予算が伴うと思います。また、税制の上において解消をしなければならないという問題などもあると思います。そうすると、臨時国会でやられるか、しからずんば四十二年度の通常国会法律案もしくは予算処理としてやられる。そういうことになってまいりますと、だんだん延び延びになってきてしまうわけですね。でありますから、この国会が大体五月の半ば過ぎまであるわけですから、その間にわたって、答申案を見なくても、答申案がこういうものが出るということがわかっておるんですから、その上に立っての石炭根本対策というものを政府は示す、あるいはこの委員会等において大臣が確信をもって表明をし、これを実行に移していくということを言われることは、責任上当然ではないかと思うのです。これはどこから出たことか、いずれにしても石炭局長あたりかその辺から出たんだろうと思うが、炭鉱には二千億からの借財がある、それがトンあたりに割ってみると四百円も五百円もの金利払いをしておる、したがって、その千二百億か千三百億かの借金に対して、三分か三分五厘くらいの低利の交付公債を発行して、あるいは十年ぐらいこれを据え置きにして、あと十年ぐらいで漸次これを償還させていくというような一つの案なども明らかにされたことがあります。それがどういう事情で引っ込められたのか知りませんが、その案は全然出てきておりません。でありますから、やはりそういうものをも立てなければならぬということまで真剣に対策を考えられてあるのですから、したがって、私は、石炭安定化健全化経営、それからその数量価格、そういうものについては、解決案を持っておられると思うのです。あるいはA案とかB案とか持っておられると思うのです。ですから、そういうものをひとつざっくばらんにお出し願いたい。有澤調査団最終答申案が出てからなんて、そんな隠れみのに隠れないで、政府ですから、何も調査団の意思によって政治をやられているわけではないのですから、あなたの諮問機関ですから、どういうものが出てくるかもわかってもおりますし、当然そうしていただきたい。もうこれは、一年、二年の問題ではなくて、この十年近くの間、移り変わり移り変わり通産大臣あるいは総理大臣が、解決せなければならぬ、解決せなければならぬと言い続けてきている。しかるにその解決ができない。そこへいけば、三木さんは政治実力者というか、経験者というか、とにかくあなたの通産大臣であることを非常に期待している。だから、その期待にこたえる意味においても、この際その根本対策について明らかに態度を示さるべきであると私は思いますから、この点についてひとつ遠慮しないで言ってください。
  10. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さん、いろいろな答申が出ないでもわかっているということでございますが、これはやはりそうも言えないのですね。いつものようなときでなくて、石炭鉱業というものが非常な大きな転換期に来ているわけですから、こういう激変の中に衆知を集めどういう答申が出るかということは、いま方向はわからぬわけでもないわけですけれども、これはやはり答申を待つことが必要である。しかも、石炭エネルギーの中における位置づけ、それと相呼応して石炭鉱業審議会における石炭鉱業再建策というものもあわせて検討されているのでありますから、そういう答申参考にしながら石炭抜本策を講ずることが民主主義政治形態としては好ましい面もあるのではないかということで、われわれとしても責任があるわけですから、私ども石炭局長にいつも言っていることは、あの審議会なるものが隠れみのみたいなことになってはいけないので、石炭局自体がこの問題について一体どうするかということを検討しなければいかぬ、そうでないと、何か審議会審議会ということで、審議会国会国民に対して責任を負うているわけではないということを口ぐせのように言っているわけであります。しかし、いまここで石炭局で考えておることを全部出すということは、時期として適当な時期だとは思わない。せっかくみなが、石炭鉱業の危機に際会して、審議会エネルギー調査会も、これは普通の審議会調査会よりもっと熱を入れてやってくれておるのですから、そういう経過等参考にするということは必要だと思います。また、どうしても財政的な処置も伴うのですから、役所だけでこうだといってやるよりも、審議会等に各方面の人々が寄ってきて、そういう人の衆知を集めてみて、これよりほかないということでやることが、石炭企業だけで問題を片づけるならばそれでいいのでしょうけれども財政負担が伴うということになってくると、国民に対しても説得力を持たなければならぬですから、そういう意味で、この審議会審議ども並行してというか、これを非常に参考としながら考えていくということが、政治の運ばし方として妥当だと私は思っておるのです。  しかし、一つだけ言えることは、私は、石炭問題をこの機会に解決しておこうという決意であることは間違いのないことでございまして、こんなことでいつもいつも石炭問題をそのときそのときで非常に不安な状態に置けば、保安の上から言ってもこれは問題になってきますから、それと災害とは別だと言えば言えるでしょうが、しかし経営の基盤が非常に不安定だということは、やはり大きな災害への一つ原因にも、大きく言えばなることにもなるわけでありますから、これはもうぜひ今度解決をしたいという決意である。しかし、手の内をいま見せてみいということは、時期として私は適当だと思わないのであります。ゆっくり、これはいつになりますか、石炭国会みたいになるでしょうね、この問題は。十分な御審議をそのときには願いたいと思っています。
  11. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 どうもこれは、そうなってくると、三木通産大臣は、解散になって選挙、新内閣、あるいはまた何か内閣改造問題なども論じられていますけれども、われわれは責任上どうしても通産大臣であることをやめさせるわけにはいかない。(「総理大臣ならいい」と呼ぶ者あり)通産大臣か、しからずんば総理大臣。  そこで、かなり責任熱意を持ってやろうとしておられる点においては、私、その労を多とします。さて、臨時国会が夏に開かれるか秋に開かれるかということになりますが、その際には当然六月の答申なんというものは明確になって出てきます。でありますから、その臨時国会で、いま大臣解決しなければならぬという決意を言われた、それを政治の上で責任を持って、あるいは法律案なり、あるいは補正予算の処置なり、そういうことで責任を持ってやる、こういうように受け取ってよろしゅうございますか。もし、いやどうも問題が大きいので四十二年の通常国会でなければならぬなんということになってくると、あなたの熱意はやはり逃げ口上じゃなかったかということになるから、臨時国会でその問題についてはとにかくやるということに受け取ってよろしゅうございますか。
  12. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、案ができれは臨時国会でいい。しかし、これはいま、やはり非常に大きな財政負担も伴いますので、この案というものはやはり相当時間もかかりましょう。したがって、必ず臨時国会を開いてやるという約束というわけにはいかぬが、この案が出れば、できるだけ次の通常国会を待たないで解決をすべきものだと私は思う。しかし、約束をいたすことは適当でない。これは内閣全体の大きな問題でありますし、財政的な問題も含みますから、約束はいたしませんけれども、成案を得たら、できるだけすみやかに、必ずしも次の通常国会を待たずにでもやるくらいの問題だというふうに私は考えております。
  13. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 われわれは、他の大臣より政治力があるという点においてあなたに期待しておるから、そのことをさっきも言ったわけです。  そこで、これも答申の問題になりましょうけれども有澤調査団が今日まで出した答申に五千五百万トンという案を出していますが、やはりそれだけは石炭需要量をつくるということについての大臣のお考えは、依然として変わらないものを持っておられると受け取ってよろしゅうございますか。
  14. 三木武夫

    三木国務大臣 伊藤さん、私はそれだけはそういうふうには考えないのです。それは、今度出すエネルギーの中における石炭位置づけという中には、やはりそういうものも含めて検討されるべきものである。コストの上から言ったら引き合わない、それでもやはり、他のエネルギー確保上の見地から、これだけはどんなことがあっても——採算から言ったら引き合わないのですから。それでもこの需要は確保するという以上は、数量に対しての検討もあってしかるべきである。それを、今度は私のほうから、五千五百万トンは切ってはいけないのだと、頭からもう数量だけはさまっているのだという形に固定的に調査会あるいは審議会を拘束しようとは私は思っていないのであります。
  15. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 それでは、審議会で、五千五百万トンというような従来から答申されてあるそれだけは、エネルギーが伸びていくに従って石炭の量というものはやはり幾らかずつ伸びていくべきであるということについて、それを尊重されるということに変わりはありませんね。
  16. 三木武夫

    三木国務大臣 私は、石炭というものは次々に需要を拡大すべき性質のものだとは思っていないのです。これは、いま言ったように、実際問題として、コストの低廉なエネルギー源ということになれば歩が悪いのですから、それでもやはり他の要素から石炭を確保しようというわけでありますから、私は、次第次第に石炭の採掘量をふやしていこうという考えでない。五千五百万トンというのは天井であって、それ以上次々に石炭の供給力をふやそうという考え方は私は持っていない。これは天井で、しかもそれだけはどんなことがあっても確保しようというのでありますから、いままでのように毎年毎年みなが苦労するのではなくして、相当長期的な、安定した、石炭経営が成り立つようにしようというのでありますから、そうなってくると、むやみに石炭の採掘量を上げていくというような状態において石炭鉱業が安定するとは思わないので、天井が五千五百万トンである。この数量についても、審議会調査会を通じて十分な検討をしてもらいたい。これは私の考えでございます。
  17. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 何も古証文を引っぱり出して責めるわけじゃありませんが、愛知さんや前尾さんが通産大臣をしておられるころ、石炭昭和四十五年ころには七千万トンぐらいまで持っていくということを非常に思い切って言われた。私は、油がどんどん入ってきますが、それと競争していけますか、石炭数量をふやしていくということを通産大臣そんなに言い切って責任持てますか、私ははなはだ疑問に思うがということを言ったら、だいじょうぶですと、ここで非常にたんかを切られたことがあるんです。それをいまあなたに古証文をたてにとるわけじゃありませんけれども、やはり自民党の政府が続いているんですから、自民党政府が続いておる限りにおいては、国会の中で主管大臣あるいは総理大臣が発言されたことは、少なくともその内閣中においては、その党の政治方針、政策としてやはり守っていって、それを守れない場合には、守れないということについてのいきさつを国会でも明らかにし、あやまちはあやまちとして、こういう国際情勢になりましたからこういうように変更せざるを得ませんとかなんとか、政治責任をもう少しはっきりさせないと、これは立ち会い演説やら街頭演説、選挙の演説じゃないんですから、立法府の最高権威国会においての論議というものは、やはり国民に対する責任があるので、私ども責任を負わなければならぬが、特に政府責任を負ってやられないと、これは政治に対する不信を招く結果をつくるということになります。あなたが非常に慎重な答弁をされておられることは、それはむしろそうあってしかるべきだという点もあります。しかし、なかなかそうでなくて、いま言うように、われわれをむしろ圧倒するような大みえを切った答弁ども、速記録を見られたらありますが、そういうこと等もあるんですから、そういうことなどについても、やはり、一つの政党がずっと政権をとっておる限りにおいては、大臣がかわりてもその責任は政党政府にあるのだ、内閣にあるのだということで、これはやはり責任を持ってもらいたい。  それから、合理化事業団が非能率の炭鉱を買いつぶすということをやられてきておる。これは計画どおりやっています。私は正確な数字をいまここで記憶をしておりませんけれども、おそらく、保安上の買いつぶしと、非能率炭鉱、いわゆるスクラップ山の買いつぶし等は、事業団が始まってから二千万トン以上買いつぶしておるんじゃなかろうかという気がします。そこで、しからば、これにとってかわるビルド炭鉱に対する近代化、それから新鉱開発、こういうものを見てみますと、新鉱開発というと、私の見る新鉱というのは、北海道で二つの炭鉱、九州で一つ炭鉱だけが長い間に新鉱という一つの型になっているんじゃないか。それから、ビルド炭鉱に対する近代化と能率化の問題を言われています。なるほど、それを見てみると、能率は確かに上がってきています。八年ばかり前には大手が在籍一人当たり十三トンであったものが、いま三十八トン以上になっています。中小も十二トンであったものが三十二トン以上になっています。これは確かに機械化したということも言えますけれども、労働者が生産と取り組んでおるところのその協力というか、われわれも坑内にずいぶん入ってみましたが、その機械とその現場に取り組んでおる姿は全く涙ぐましいほど、労働者の諸君は能率と取り組んでおります。そういう点から、相当無理もあるので、最近災害が非常に多いです。災害の多いというのは、やはり増炭に無理をしておるということも、これはいなめない事実です。それについて材料もありますけれども、これは時間の関係で申し上げません。そういう点で、合理化、スクラップのほうは計画どおりどんどんやっています。ところが、それにとってかわるべきビルド、新鉱開発というものについての対策は、特に新鉱開発などについては十分でありません。だから、そういう点からしても、石炭を自然に減産さして、したがって、需要量を少なくしていくというようなことを暗々のうちに通産省のほうでは考えておられるのではないかというような気がしますが、こういう点についてのお考えはどうです。
  18. 三木武夫

    三木国務大臣 暗々のうちに次第に減らしていこうということではないわけで、新鉱開発なんかも相当予算の上でも配慮しておるのですが、新鉱開発というのはもう少しくふうをしないと、いまのような状態ではなかなか新鉱開発というものも進んでいかぬのではないか。この点については再検討の要ありと考えております。しかし、全体としてだんだんと減らしておるという、自然消滅するような状態、そういうふうな考えはないのであります。いま言ったような、唯一と言ってもいいくらいの、水力とともに国内のエネルギー源ですから、これはやはりある程度のものは確保していくということが、エネルギーの供給の安全性から言っても国家的必要があるのですから、そういう意図ではありませんが、中には、いま御指摘のような点では再検討を要する点があることは、率直に考えておる次第でございます。
  19. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 私もこの間から釧路の太平洋炭礦にも参りまして、坑内にも入り、それから、長崎の松島炭鉱、池島にもやはり本委員会の国政調査として行って、坑内に入ってきました。この二つの炭鉱は、経営は代表的にいいほうです。なぜいいかというと、一つは、労使関係が非常にうまくいって、能率がよく上がっている。もう一つは、石炭輸送専用船なるものをみずからも持ち、したがって、海上輸送ということが輸送賃の上で非常に大きく助けています。ですから、石炭を貨車で運ぶとかトラックで運ぶとかいうのと船で運ぶのとでは、運賃の上について雲泥の違いがあります。そうかといって、そういう太平洋炭礦とか松島炭鉱のような炭鉱というのは、そうなかなかできるものではありません。やはりどうしても陸上輸送ということにならざるを得ない炭鉱が多いわけですが、したがって、そういう点から赤字がトン当たり百円、あるいは利子払いがトン当たり四百円とか五百円とか、こういう点でやはり赤字が五、六百円出る。これらの問題はやはり何とかしてもらわなければ、これは国営にしてくれるか、国家管理にしてくれるか、あるいは、もう国で、石炭は要らぬ、炭鉱はやめてしまえと言ってもらうか、どっちかにしてもらいたいという極論が、炭鉱経営者の中では中小、大手を問わず出ており、おそらく大臣の耳にも入っていると私は思うのです。これらの問題について、これもまた答申を見てと大臣は言われるかもしらないが、しかし、これは答申を見なくても現に明らかになっておることですし、それからまた、先ほど申し上げたように、千二百億の交付公債を出そうかということまで言われておったくらいですから、これらに対して、政府としてはこういうように考える、こうするということをおっしゃることは、すてばち的になっておる炭鉱の諸君に一つの希望を与えることにもなりますから、これらに対する解決の方法についてどういうようにお考えになっているかということ。  もう一つは中小炭鉱の問題ですが、最近は第二会社等が非常に多くなって、第二会社もいわば中小炭鉱と見るべきでありましょうから、第二会社も入りますが、そういうところが全石炭の三分の  一強を出しています。ところが、国の財政投融資というか、国のこれらに対するいろいろな措置としては十分の一くらいです。これでは私は非常に不公平じゃないかと思う。それで、中小は経営が悪いんだからつぶれてしまえというならともがく、中小のほうがかえって経営がいいのです。大手より中小のほうが赤字の率も少ないと見ていいのです。なぜかというと、親方が一緒になって働いておる。もちろん、設備の近代化機械化の借り入れ金が少ないために、利子払いが少ないということもありましょう。そういう点等もあわせて、中小炭鉱のほうが、あるいは第二会社のほうが、かえって能率がよくて、そして生産を上げておる。しかるに、国のこれに対する取り扱いは十分の一にも達しない。これは、国策の上から見ても、もっともっとこれらに対して優遇措置を講じて、そして、もっと能率を上げ、経営をよくさしていくというようなことをなぜしないのですか。一つの範を示す意味において、そうすべきじゃないかという考えがあるが、この二つの点について、根本的な点をひとつお示し願いたい。
  20. 三木武夫

    三木国務大臣 松島の社長とも私よく話をして、事情も聞いていますが、松島とか釧路の太平洋、これは、一つには立地的にも非常に海底をやっておるし、閉山もしなかった関係もあって、いろいろな有利な条件がある。しかし、大手はやはり金利負担が非常な重圧になっておりますから、今度の抜本策の場合でも、こういう累積しておる異常の債務の処置は一体どうするかということがこれからの問題ですけれども、この処置はしないと、これはやはり金利負担だけでもたいへんなものになりますから、抜本策の根幹に触れる一つである。どうするかということは少し時間をかしていただきたい。しかし、これは処理しなければならぬ。  中小炭鉱については、債務も少ないですから、大手みたいな金利負担の重圧は少ないが、一番の問題は、私は金融の面だと思うのです。中小企業は金融の面ではなかなかやりにくいので、中小企業についての金融の面は何かくふうが要ると考えます。とにかく、今度いろいろ抜本策を講ずる場合でも、中小企業もむろん大手と同様に考えて、中小企業がわりあいに大手に比べて借金も少ないからというようなことで見落とされるようなことのないようなことにいたしたいと思っております。
  21. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 そうすると、中小の問題は、全体の出炭量の三分の一を出しておりますから、その生産量に応じた上に立って金融措置の問題なども考慮する、こういうふうに受け取ってよろしゅうございますか。
  22. 三木武夫

    三木国務大臣 出炭量が全体の三分の一だから金融も三分の一というふうには考えていないのですけれども、中小炭鉱合理化、近代化のために資金面なんかでも相当な苦労があるでしょうから、そういう面の資金をできるだけ確保できるような配慮も——中小炭鉱にはそのほかにもいろいろありましょうが、そういう面なども今後やはり検討を加えなければならぬ点だと思います。
  23. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 市中銀行はもちろんこれは貸しません。開発銀行のほうも中小にはなかなか貸さぬ。そうすると、一体どこから金を借りるかという問題になります。したがって、中小企業金融公庫というか、そういうところで特別のワクをつくってやらなければ、これらの問題は解決しません。この点を十分考えてやってもらわなければならぬことは申し上げるまでもありませんから、この点は別にいま答弁をいただかなくともよろしゅうございます。市中銀行は貸さぬ、開発銀行もだめ、そうすると、あと、中小企業金融公庫というか、そういうところのこれらに対するワクを何か特にお考えにならぬ限りにおいては、これらの問題の解決はできないということを、これは局長も横で承知の上ですから、十分ひとつ考慮していただきたい。  それから、あと三つ問題がありますが、これは言い古しておる問題ですから、ごく簡単にお尋ねします。  この前労働大臣がおられたときに御質問申し上げたことでありますが、新鉱を開発しても、ビルド炭鉱を近代化しても、炭鉱をいまのような不安定な状態のままにしておけば、人的に老朽・老廃してしまう。もうすでに平均年齢が四十近くなってきています。そうしますと、これはもうおじいさんみたいになってしまうのですね。職員だって自分の子供を職員として炭鉱に残さない、従業員はもちろんのこと自分の子供を炭鉱に労働者として残さないというくらいですから、若い者が入ってくる道理がありません。ですから、だんだん平均年齢が老化していってしまうから、こういう状態であると人的に老朽・老廃してしまうのじゃないか。したがって、計画出炭というものはなかなかできなくなってしまうのじゃないか。だから、そういう点から、特に炭鉱労働者、坑内労働者に老齢年金制をつくる、これが一つの魅力になるのじゃないか。定年まで働けば老後の生活は保障される、あるいは、山の寿命というものはきょうあってあすないというものがありますから、転々としても、とにかく少なくとも炭鉱に十五年、二十年以上といって永年勤続をすれば、永年勤続者としてそれは計算される、そして老齢年金で老後の生活ができる、こういう一つの特別な保険制というものがつくられれば、これは大きな魅力として、Aの炭鉱にはいなくなってもBの炭鉱で働ける。そうすれば炭鉱の計画出炭というものはできていくわけでありますから、そういうものをつくる以外にもはやないのじゃないか。ああいう危険重労働だから、したがって、特に最低賃金という問題、労働諸条件の問題等もありますけれども、しかし、一番魅力になるのは老齢年金である。そういうことから、これは私、石田さんが労働大臣をしておられたときにも話をし、それから、この間小平さんとも話しました。それから、厚生省関係とも話しました。労働省も厚生省も、いずれも賛成でございます。これはあなたのところではありませんけれども、しかし、影響を受けるのはあなたのところですから、保険の問題は労働省、厚生省に関係しますけれども、その生産の上に被害を受けるか有利になるかどうかという問題は、これはあなたのところですから、やはり、あなたが音頭をとられて進めていただきたい。労働省、厚生省関係などは賛成であります。ただ、厚生年金との関係をどうするか、あるいは退職金との関係をどうするかという、その辺の扱い方をいろいろ検討し合っておるようでありますけれども、これはぜひひとつあなたが音頭とりになって積極的に促進してもらいたい。この間小平労働大臣は、できれば臨時国会にでも出すようにしたいと思います、少なくとも自分が労働大臣中にこの問題は解決できるようにしますと、ちょうど、あなたがいま、石炭問題はおれの通産大臣中に解決すると言われたと同じような、そういうなかなか意気込みの強いことを言っておられました。まことに喜ばしいことですが、どうか、ここで答弁だけうまいこと言っておったらそれでもう関所をのがれるのじゃないかというようなことでなく、せっかくこの問題は労働、厚生両省とも賛成していますから、あなたの音頭とりでひとつぜひ積極的にやってもらいたいと思うが、どうです。
  24. 三木武夫

    三木国務大臣 私もこの点については伊藤さんと同感で、やはり、あそこの働く人たちに一応安定した魅力というものが必要である。そうでないとなかなか労務者の確保はしにくい。それには、確保する方法論としてはたくさんありますが、やはり、年金制度というものは一つの大きな政策たり得る。だから、これはいま実現に向かって各省とも、技術的にもいろいろ問題がありますので、現に折衝しておりますが、これは積極的に推進したいという考えでございます。
  25. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 いまの点は、ひとつぜひ力を入れて音頭とりをやっていただくように切望いたしておきます。  それから、あと鉱害復旧の問題ですが、特にこれは福岡県がほとんどと言っていいです。ところが、一万町歩からあるのです。それで、この鉱害復旧費はおそらく六百億かかるであろうとも、八百億かかるであろうとも、その当事者の間で言われています。いずれにしても、この鉱害の復旧というものを早く完成させませんと、炭鉱地区の何となくあの不安な殺伐たる空気を一掃することはできません。それで、たとえば一千億円かかったとしても、五年間でこれをやり上げるともしするなら、年間二百億です。そうすると、これはりっぱな美田ですから、食糧の上から見ても大きな解決です。ひとつこれについては、従来のようにあんなちょこちょこっとしたようなやり方でなくて、ちょうど終戦直後、特別鉱害として国が相当力を入れてわずかの間にあの膨大な鉱害復旧をしたことがありますが、そういうふうに積極的になられて、国が年間二百億でも事業資金を出してやるということであれば、私は非常に明るさが出てくると思うのです。これをいまのような行き方でいくと、二十年も、いや、もっとかかると思うのです。ところが、筑豊のほうには山がなくなりましたから、新しい鉱害の起こる部分というのはまことに微々たるものだと言っていい。大部分はもう山はやめてしまっていますから、したがって、鉱害復旧というのも非常にやりやすくなっています。ところが、いまの行き方でありますと、あるいは臨鉱法によれば、国が出す、あるいは自治体が出す、鉱業権者が出す。ところが、鉱業権者は、山をやめてしまっておりますから、なかなか出そうとしません。鉱業権者が出さないというと、大蔵省はこれを出そうとしません。そういうところから、いつまでたっても計画復旧というものが思うようにやれないという現実が出ておるわけであります。ひとつこの点は、一通産省の問題じゃなくて、政府として、五年間なら五年間、あるいは七年間なら七年間のうちにこの一万町歩の鉱害復旧は完全にやり上げる、こういうことでやっていただきたい。その場合に、鉱業権者が、自分の山はやめたのだから、あとの被害はそう責任を持たぬでもいいのじゃないかという問題等から、なかなか出そうとしない、そこで、国の出し分というのがきめられぬ、したがって、なかなか大きな計画復旧事業というのはやれないということがあると思うのです。でありますから、鉱業権者から出さすものは、それぞれ、資力を持っておる者に対してはあとで国がとったらいいのです。一応の復旧だけは無権者鉱害と同じようにして国がやる、そして、とるべきものはあとから国が事件でも何でも起こしてとるというやり方をやれば、計画復旧というものは完全にやれると私は思うのです。だから、そういう一つの新たなやり方でこの一万町歩の鉱害復旧をやれば、これが昔のように食糧あるいは果実、野菜等を生産することのできるりっぱな田畑になって、炭田地区の住民の明るさが大きく出てまいります。でありますから、そういう一つの新たな鉱害復旧に対する政府としての復旧対策を立てなければならぬ、また、次から次へと起こってくるのはなくなってきていますから、ここらで国が大計画を立ててやる必要がある、こう思いますが、この点についてどうですか。
  26. 三木武夫

    三木国務大臣 昭和四十年度の調査で、全国の鉱害量は六百億円程度の鉱害量がある。ことしの四十一年度の予算で五十六億円程度の復旧事業は可能ですね。これでもう少しスピードを早めていく必要があります。いまのスピードだったら相当長年月かかりますから、もう少し予算もふやして、数年の間に片づけるように計画的に努力をいたしていく必要があると思うのです。これはそのような方向で考えてまいりたいと考えます。
  27. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 それから、これは局長から何かこういうことを言われたということを聞いたが、今度は無権者鉱害の減収補償というものを国がやるようになったのです。ところが、ずっと昔のものまでさかのぼるということはどうかと思うけれども、少なくとも三十三、四年ごろからの無権者鉱害については、整備事業団というものとの関係等からして、国が今度無権者鉱害の減収補償をやるということになる以上は、その整備事業団のできた少なくともそのころからの分もさかのぼって——こまかい計算はどうかと思うけれども、役所としては大体においての計算が立つわけだから、それらに対してさかのぼってやるということが公平な一つの復旧処置であると思うが、どうも石炭局長は新たなやつにはやるが古いやつにはやらぬと言われておるということを言ってわれわれのところに訴えがあるが、局長はそういうことを言うたことがありますか。
  28. 井上亮

    ○井上政府委員 これは四十一年度の予算審議いたしますときに大蔵当局ともいろいろ打ち合わせをしたわけでございますが、無権者鉱害の問題につきましては四十一年度以降について実施しようということになりまして、さかのぼる問題につきましても私どものほうからいろいろ討論いたしたわけでございますが、これは、御承知のように、過去の古いものにつきましての鉱害の実態が、その後処理しているものもあり、処理していないものもあり、いろいろ複雑な問題もありますし、それから、観念的に考えましてもなかなか困難な問題がありますので、とりあえず、私どもといたしましては、四十一年度以降について実施したいということにただいまなっておるわけでございます。お説の点につきましては、私どもなお今後とも検討はしなければならぬと思いますけれども、ただいまのところそういう方針にいたしております。
  29. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 いま局長が答弁された問題は、あなたのほうの役所だけの問題で、大蔵省との折衝もなかなかいろいろ問題もあろうかと思いますので、それらについてはやはり国会の総意というものも相当ものを申すだろうと思いますから、そういう点は大いにバックするように国会の総意をなにしますから、いまあなたの考えてみたいという点は、積極的に考えて、その対策をお考えおきを願いたいと思います。  それから、いま一点、これも大臣に伺いますが、この前大蔵大臣がおられたかどうか、ちょっといま記憶はありませんが、いまの産炭地域の振興の問題であります。実は、産炭地域の事業団が相当あちこち工場団地をつくったわけです。ところが、つくった当時、田中大蔵大臣にしても福田通産大臣にしても、炭鉱地区に来られたとき、実はなかなかはでなことをおっしゃったわけです。鉄道の修理工場を持ってくるとか、専売公社の工場を持ってくるとか、自衛隊の被服工場を持ってくるとか、そういう政府のものを持ってくれば、これが民間工場誘致のポンプの迎え水になるだろうから、政府も大いに力を入れてやるということが、地元では新聞にも発表されました。そこで、地元側では、政府がそこまで腰を入れてくれるなら、工場団地に対しては次から次へと工場というものが相当誘致されるのではなかろうかと、大きく期待した。ところが、政府の工場なんていうのはただの一つも持ってきません。だから、そういうところから、地元側では、どうも大臣連中の言うことは、地元に来たときにただ喜ばすだけの、サービスだけのことを言うことであって、実際当てにならぬ、こういうことで失望もしております。それから、もう一つは、団地はできたけれども工場はなかなか来ない。というのは、団地の地価が高過ぎる。だんだんなにしてみますと、二千円以下なら相当の工場を持ってきてもいい。ところが、実費主義ですから、三千五百円も四千円もかかるんですね。そんな高いところに何万坪も買ってその工場をつくるということはなかなかたいへんであるというところから、来たがらぬわけです。ですから、二千円以上のところは国のほうがその損失補償をしてやるとか、とにかく二千円以下にして団地に工場を誘致するということであれば、相当工場が来ると私は思うのです。ところが、三千五百円、四千円、四千円以上というのでは、これはもうなかなか工場が来ません。工場が来ないから、したがって、つくるにはつくったけれどもペンペン草が生えてくるというような状態ですから、これはひとつ、ぜひ通産大臣が大蔵大臣と相談をされて、二千円以上ではせっかく団地をつくっても意味がない、だから、二千円以上のものは国のほうでこれの損失を補償しようではないかということをきめてもらいたいと思うのです。そして、地元のほうでも、水の問題、道路の問題、あるいはまた国としても、その工場建設の資金の問題、あるいは免税の問題、そんないろいろな特典を与えないというと、この団地をつくっても、なかなか工場を誘致して炭鉱に取ってかわる近代工場地帯にするということは不可能だと思うのであります。でありますから、第一は、いまの二千円以上かかるものは国のほうでその損失補償を見てやる、それから、水道やら工業用水やら飲料水やら、そういうもの、あるいは道路をつくる、そういう問題についても国が相当それを見てやる、あるいは、そこへ相当の工場が来るなら建設資金を見てやる、あるいは、租税特別措置法なんという法律もあるのですから、当分の間免税点をどうしてやる、そういう特典を与えられれば、この工場団地に炭鉱に取ってかわる工場というものがだんだん出てくるのではなかろうか、こう思うのです。そういう点について大臣はどういうようにお考えになっておるか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  30. 三木武夫

    三木国務大臣 去年の秋ですか、私も、産炭地における誘致企業の人たちと、現地へ参りましていろいろ懇談をしたわけです。そのときに、やはり運転資金が足りない、みな相当な資力を設備にかけたわけですから、運転資金がなくて困るということで、これは今年度から産炭地域振興事業団から運転資金に貸せるような道を開きました。これは一つの改善だと思いますが、次はやはり土地の問題で、伊藤さんの言われるように、二千円をこえる土地造成は相当あるのですね。いま、二千円をこえるものはみな損失補償をしろ、こう言う。そういうわけにもいきませんが、これはやはり、土地造成については、土地に付属したところのいろいろな施設もひっくるめて、土地造成についてはもっと国家の助成というものを強化しなければなるまい。少しやはり土地が高過ぎる。そのことが誘致を困難にしておるということは率直に認めます。こういうことで、いますぐに、それをこえるものは補償せよ、そういうことにいたすというわけにはいきませんが、国の助成を強化するという線で考えてまいりたいと思っています。
  31. 伊藤卯四郎

    伊藤(卯)委員 いま大臣は、工場を持っていった場合の運転資金の問題等を言われていましたが、やはり、今日の金融の現状ですから、工場を移転する、あるいは新たにつくるというのについては、相当金が要るわけですね。その金がない。だから、これらに対するやはり建設資金あるいは移転資金、そういうものに対する特別な措置を講じてやる、あるいは、これは国ばかりの問題じゃありませんが、国・地方の税金も何年間は免税措置を講じてやる、そういう特典を与えてやらないと、その団地に移転をしたり、新しく工場をつくるということはなかなか実際上できないのじゃないか。こういう点について十分ひとつお考えおきを願いたいと思います。これについては、もう事情はわかっておることですから、別に答弁は要りませんが、そういう点をひとつ真剣にお考え願いたい。せっかく工場団地をつくってペンペン草をはやさしておったのじゃ、これはしようがありませんから、そこをりっぱな近代工業地帯として漸次発展さしていくためにはそういうことが必要であるということを十分お考えになって、その対策を積極的にひとつ立てて、せっかくの団地を生かしてもらいたいということを強く要望いたしておきます。  これで終わります。
  32. 野田武夫

  33. 多賀谷真稔

    ○多賀谷委員 抜本策あるいは鉱害、産炭地振興等については別の機会に質問いたします。  そこで、石炭鉱業合理化臨時措置法の改正にあたって一言だけ大臣決意を聞きたいと思いますが、実は、この事業団の保有鉱区及び消滅鉱区というのは、すでに閉山をいたしまして、全部水が入っておるわけであります。ですから、いわば水びたしになっておるわけです。それを再活用するということでありますから、非常に保安の注意が必要であります。ことに、古洞に当たりますと、この古洞の出水事故というのは、一瞬にして相当の人数なくなるという事例が非常に多い。先般、第一漆生炭鉱においては、古洞のあることを探知をしておって、それに注意をしながら、しかも三名なくなっておるわけです。でありますから、これはまあどこも注意が必要でしょうけれども、この再活用にあたりましては、その点最善の注意をして、そうして、保安監督署においては、あるいは鉱山保安局においては、その鉱区の設定あるいは施業案の認可においても常にタッチをして、十分保安の面からそれをチェックしていくということが必要ではないかと思います。もし、消滅をした鉱区を再び使わして、そこで事故が起ったなんということになれば、私たちを含めて政治家は一体何をしておっかということになる。ですから、これは万々そういう大きな事故が起こらないように、ひとつ大臣の所見を承りたいと思います。
  34. 三木武夫

    三木国務大臣 多賀谷さんの御指摘のとおりだと思います。閉山鉱山を再活用する場合には、やっぱり保安上の最善の注意が要る。これはわれわれとしても十分に、一般のことも必要でありますが、特にそういう保安上の注意というものは、これはよほど徹底をして注意をいたすことにいたしたいと思います。
  35. 野田武夫

    野田委員長 それでは、本案に対する質疑をこれにて終了するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  37. 野田武夫

    野田委員長 これより討論に入るのでありますが、別に討論の通告もありませんので、直ちに採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  38. 野田武夫

    野田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。     —————————————
  39. 野田武夫

    野田委員長 この際、藏内修治君外五名から、本案に対して附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  まず、提出者に趣旨の説明を求めます。藏内修治君。
  40. 藏内修治

    ○藏内委員 石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議の趣旨を、三党を代表いたしまして簡単に申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議   政府は、本法施行に当り、次の諸点について特段の措置を講ずべきである。  一、石炭鉱業合理化事業団の保有鉱区及び消滅鉱区の再活用に当つては、保安の確保につき万全の措置を講ずること。    なお、鉱害の処理等を適正に実施し、鉱区再活用による弊害を惹起せしめないよう配慮すること。   二、炭鉱機械貸付については、中小炭鉱において十分利用できうるよう運用するとともに、技術指導等についても万全を期すること。   三、石炭運賃について早急に検討すること。  以上が附帯決議の案文でありますが、特に説明を要しないと思いますので、各位の御賛同をお願い申し上げます。
  41. 野田武夫

    野田委員長 これより本動議について採決いたします。  藏内修治君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  42. 野田武夫

    野田委員長 起立総員。よって、本案に附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議について政府の所見を承ることにいたします。三木通商産業大臣
  43. 三木武夫

    三木国務大臣 ただいま決議をされました附帯決議の趣旨は、これを十分に尊重いたしまして、われわれとしてもこの趣旨が実現をできるように努力をいたしたいと思います。     —————————————
  44. 野田武夫

    野田委員長 ただいま議決いたしました法律案委員会報告書の作成につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。   〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  46. 野田武夫

    野田委員長 この際、参考人の出頭要求に関する件についておはかりいたします。  ただいま本委員会において審査中の産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案について、参考人の出頭を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  47. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  なお、参考人の出頭日時、人選等の決定につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 野田武夫

    野田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決定いたしました。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十二分散会