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1966-04-13 第51回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十三日(水曜日)    午前十時四十二分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 有田 喜一君 理事 加藤 高藏君    理事 藏内 修治君 理事 始関 伊平君    理事 壽原 正一君 理事 多賀谷真稔君    理事 八木  昇君       大坪 保雄君    上林山榮吉君       神田  博君    田中 六助君       西岡 武夫君    三原 朝雄君       滝井 義高君    中村 重光君       細谷 治嘉君    伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       進藤 一馬君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   吉瀬 維哉君         通商産業事務官         (石炭局鉱害課         長)      佐成 重範君     ――――――――――――― 四月八日  三菱鉱業株式会社古賀鉱業所東部開発促進  に関する陳情書(  第三三一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第五三号)  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)  産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五五号)  石炭対策に関する件(最近の石炭鉱山事故  等)      ――――◇―――――
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  石炭対策に関する件について調査を進めます。  まず、最近の石炭鉱山事故等について政府に説明を求めることといたします。森鉱山保安局長
  3. 森五郎

    森政府委員 最近起きました炭鉱事故につきまして簡単に御報告申し上げます。  最初に、四十一年四月八日に起きました第一漆生出水災害につきまして申し上げます。  炭鉱名は第一漆生炭鉱漆生坑、指定は甲種でございます。鉱業権者株式会社漆生鉱業所でございます。これは三井鉱山から三十六年の一月に分離をいたしましたものでございます。所在地は福岡県の嘉穂郡稲築町でございます。災害種類出水でございます。災害発生個所杉谷左卸本卸の左三片坑道というところでございます。罹災者は、現在のところで、死亡二名、行方不明一名、重傷二名、軽傷九名、計十四名でございます。この炭鉱出炭量は月産大体一万三千五百トンでございます。鉱山労働者は四百八十三名ということでございます。  災害概況でございますが、四月八日十時ごろ災害個所でハッパをいたしまして、炭積みをいたしましたころ、延び先から出水があった。当時この部分に入っておりました鉱山労働者は全部で六十名でございます。なお、この出水が起きました左三片よりも深いところにおりました就業者は二十六名でございます。出水と同時に警報器を鳴らしまして、その警報によりまして二十六名中二十三名は退避をいたしたわけでございますが、左四片より以深におりましたと予想される二名、及びこの卸の詰めの近所を巡回中と予想される係員一名が行方不明になったわけでございます。それで、この水が出まして、八日の夜の十七時二十五分ごろに大体水位の上昇が停止をいたし、出水量は大体八千立米くらいというふうに考えられます。そういたしまして、さっそく九日から排水を開始をいたし、百五十馬力のポンプを持ち出しまして現在排水中でございます。排水完了見込みは現在ちょっとわかりませんが、だいぶ進んでおりまして、先ほど申しましたように、遺体二つ搬出をいたしたという状況になっておるわけでございます。若干下のほうに崩落等もございまして、現在排水完了のめどははっきり立っておりませんが、なるべく早急に排水を完了いたしたいというふうに考えております。  この事故につきまして、ではなぜ起きたかということでございますが、御承知のように、現在掘っておりますのは杉谷五尺層でございますが、その下に約十八メートルの間隔で間三尺層というのがありまして、これを昭和二十二年ごろから山野鉱業所で掘りまして、その上層である杉谷層を現在掘っておる。したがいまして、古洞は下のほうの層ですが、現在は古洞は上のほうまでずっと水が入っておりまして、相対関係位置から申しまして、現在の三片坑道はその古洞の水よりも下になるという関係位置になっておるわけでございます。したがいまして、われわれといたしましては、三月十四日から十七日までに総合検査をいたしまして、特に出水関係について指示事項を出しておるわけであります。それは、簡単に申しますと、そういう冠水地でございますので、冠水状態にならないように作業しろということを指示いたしておるわけであります。したがいまして、それに伴う会社側から改善計画というものを出させまして、これはボーリングによりまして水を抜き取るということをやるのですが、その計画によりまして、これは事故発生後判明いたしたのでございますが、三月二十九日にボーリングを実施いたしましたところ、約三キロ程度圧力を見たということが事故発生後判明いたしました。そういう状況でございますと、常識的には、水柱に直しますと、これは計算でございますが、約三十メートルという計算が出てまいるわけであります。したがいまして、会社としてはそういう冠水状態がわかっておったわけでございますが、その後会社側がいかなる措置をとったかということについて、目下調査をいたしておる状況でございます。  次に、山野炭鉱ガス突出災害について申し上げます。  御承知のように、山野炭鉱は去年も大災害を起こした炭鉱でございます。会社その他については省略させていただきます。災害発生日時は四月十日の十三時五分ごろでございます。災害種類ガス突出でございます。発生個所は本坑二区海八左払い左三片肩風道払い卸でございます。目下切り羽をつくっておるところというふうにお考えくださればいいと思います。深度は約マイナス八百二十メートルくらいの場所でございます。罹災者は現在のところ三名でございます。いずれも直轄係員鉱員でございます。  災害概況でございますが、いま申し上げました海八地区の左払い左三片肩風道払い卸というところの作業は、いわゆる払いを目下つくるというかっこうの準備作業でございます。すなわち、四片の四ゲート坑道を延ばしまして、三片から同様に肩風道を延ばし、それを卸で連絡をするという作業を行なっておったわけでございます。御承知のように、この海軍八尺層、ドマ八というのは従来からも非常に突出がある炭層でございますので、この山といたしましては常にこの突出並びに自然発火については十分警戒をやっておったところでございます。したがいまして、普通常識的に申しますと、払いの卸をつくる場合には、ゲート側から、すなわち、ゲート坑道側と申しますか、フケ側から切り上がるということが石炭搬出等から見て非常に便利でございますが、ガス突出等のことを考えまして、これを下からいきますとかえってあぶないところがございますので、したがって、これは作業としては非常にむずかしいのですが、上のほうから卸で下の三片、四片の連絡坑道を掘る、こういう状況であるわけであります。突出に対する体制をとっておる。なお、ここは、先進ボーリングをいたしまして、それで突出状況をさぐりながらまた掘り進む、またボーリングをするということの繰り返しでやっておりました。約六十七メートルくらい進んでおりますが、これが二カ月ぐらいかかるということで、そういう作業状況であることを御承知いただきたいと思うわけです。  そこで、そういうことであったわけでございますが、十日の十三時ごろ突然突出がございまして、そこに働いておりました、ボーリングをやっておりました三名が逃げおくれて突出炭に埋没した。これはまだ取り明けが終わっておりませんので、はっきりしたことはまだわかりませんけれども、なくなられた方の場所、並びに、上のほうに向かって倒れておられるというような状況等から考えまして、何らかの前兆があったのではないかということで、前兆を見て三人が十八度の傾斜の坑道をかけ上がった。あと五、六メートルというところで炭に埋没されておられるという状況から申しまして、何らかの前兆を感じられて待避したが、間に合わなくて埋没したというふうに考えられます。この突出炭立米に直しまして約四百八十立米、大体五、六百トンの規模でございまして、ガス突出としては非常に大きい規模のものでございます。  なお、このガス突出がございましたところは、この地区にはガス自動警報器を設置いたしておるわけでございますが、また、同時に、この作業場空気が他の作業場に流れない、いわゆる独立分流にこれはなっております。災害ガス突出いたしまして、ガス自動警報器が鳴りまして、当該区域電源遮断が行なわれたわけでございます。したがいまして、流動するガスに引火をするということはございませんで、他の地区個所には影響がなかった。また、独立分流になっておりますので、そのまま排気立て坑からガスが排出されたという状況になっておるわけでございます。救出作業は直ちに出動した鉱山救護隊によって行なわれて、遺体を収容したということになっておるわけでございます。  なお、この突出個所の取り明け完了を一生懸命やっておりますが、おおむね四月の十三日ごろには取り明けが完了するだろうというふうに考えておるわけでございます。  次に、この前当委員会で御報告申し上げました空知炭鉱事故のその後の状況でございますが、この前ここで、二十六日の一番方から千五百七十メートル、詰めから約二百メートルぐらい手前から崩落を取り明けて進みますということを申し上げておったわけでございますが、その後崩落個所の取り明けが進みまして、四月五日には基準点から千六百八メートルの地点で斉藤坑内主任遺体を収容し、さらに、四月七日、千六百二十二メートルの付近に至ったところ、この崩落ボタの一部に、奥部に通ずる小さな空隙を発見した。この空隙を利用して鉱山救護隊が奥に進入しましたところが、奥は全然詰めがばれておらなかったということでありまして、残る九人の遺体確認いたしました。この四月七日に全遺体の収容を完了いたしたわけでございます。なお、この崩落の奥は非常にガスが充満をいたしておりまして、いろいろ、空気の流動その他によりましてこれがまた爆発限界に達するというような危険も考えられるわけでございますので、この崩落のぐっと手前のところで密閉をするという計画になって、目下作業を進めておるという状況でございます。  非常に簡単でございますが、以上御報告を申し上げた一わけでございます。
  4. 野田武夫

    野田委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 詳細は後刻質問いたしたいと思いますが、第一漆生炭鉱並びに山野炭鉱災害特徴は、あらかじめ古洞のあるのが確認をされ、またガスのあることが確認をされて、それに対処しながら事故が起こった、こういうところに特徴があると思うわけです。そこで、第一漆生炭鉱の場合は、三月の十四日から十七日にかけて総合検査が行なわれて、しかも保安監督局からは指示事項として注意事項が出されておる。そうして、いわば古洞水抜きが行なわれておる。それなのに事故が起こり、そうしてついに三名の方が犠牲になられた、こういう状態ですが、この杉谷層の下の間三尺という層は、なるほど下ではありますけれども、水位から言うと、これは上になる場合が多いわけです。それで、役所のほうは冠水状態にならないようにという指示をしておるけれども、冠水状態にならないようにという指示に対して、会社はどういうように対処したか明確でないということですけれども、そういう点に問題が一つあるのではないか、こういうように思うわけです。さらに、一体かかる場合には役所としてはどういう指導をするのか、それから、もう一つは、この犠牲になった方の作業はどういう作業であったか、これをお聞かせ願いたい。
  6. 森五郎

    森政府委員 三月十四日から十七日に総合検査をいたしました。それによる指示事項はいろいろあるのでございますが、要するに、いま先生指摘のように、そういう相対関係になっておるから、冠水状態にならぬようにして作業をしろ、冠水状態がわかったら抜水しろ、水を抜いて作業をしなさい、手っとり早く言えばそういう指示でございます。それに対する改善計画を出してこいということを指示したわけでございます。それに対しまして、会社側から出しました計画は、杉谷左卸本卸湧水については資料は収集して水質試験をする、と申しますのは、これは古洞の水であるかあるいは断層を通ってくる地下水であるかということは検査によってわかりますので、そういったことを検討をする、それから、ボーリングを打って、たまっている水、湧水の探査をいたします、こういうことでございます。それを、あとでこれは判明したのですが、三月二十九日に実施をいたしております。それで、先ほど申し上げましたように、三キロの圧力確認いたしております。したがいまして、それからはまだ実は調書その他をとっておりませんが、そういうことを確認していながら、会社側がいかなる判断で左三片のゲート延べをやっておったかということについては、目下調査中でございまして、会社側改善計画でこうやりますということを監督局届け出ております。したがいまして、それに基づいていかなる作業をして、その結果どうなったかということについては、目下調査を進めている段階であります。  それから、漆生におきまして働いておりましたのは、左四片の車道延長工事をやっておりまして、ここで働いておりましたのは四名でございます。直轄が二名と組夫が二名。そのうち行方不明が二人。もう一人の人は、本卸地区の掘進の係員でございまして、これは巡回中であったというふうに考えられております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ここにもまた三名中二名組夫がなくなっているわけですね。組夫がなくなっておるのですけれども、この前の空知炭鉱でも、十二名のうち五名組夫がなくなっておる。それから、その前の山野の場合には、二百三十七名中百十四名が組夫だった、こういうことですが、組夫規制ということがいわれてかなり長いわけです。こういう仕事組夫に適当な仕事なんですかね。どうも、いつでもわれわれ事故があってはっとするのは、組夫の人が多くなくなっておる。坑内の最先端に組夫を使うということ自体、非常に問題じゃないかと思うのです。もっとも、今度の場合、組夫だからしろうとだということではない。ことに、亀田さんという武田組組夫というのは、これは有名な車道大工でして、いわゆる名人といわれた人です。しかし六十四歳です。この方はむしろ深部にいる人に危険を知らせるためになくなった。この人が自分でそういうことを感じたのでしょう。チョーク入れを同僚にことづけて、そしてみずから深部に入っていった。それは坑内係員としてはチョーク入れというのが生命だと考えたのでしょう。ですから、本人は死を覚悟した行為じゃないかと私は思うのです。しかし、これだけ組夫の問題がやかましくなっておるのに、依然として犠牲者の中に組夫の多くの人を見る。一体こういう仕事をなぜ規制できないのか、なぜこの人たち組夫として認めたのか、それをひとつお聞かせ願いたい。
  8. 森五郎

    森政府委員 災害が起きましたのは、先生承知のように、水が入りましたのが三片、それ以下四片、五片、それから卸の掘進、大体この作業はいずれも採炭作業ではございませんで、掘進あるいは巻き立て車道をつくっておったという仕事でございまして、いずれも鉱山保安法に基づく届け出も行なわれておるわけでございますから、法規上の違反は現在のところ認められてはおらないという状況であるわけでございます。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、私は、法規上を言っているのではないので、そもそも法規が悪いと言っている。そのつくり方ですね。そういうことに組夫が使えるならば、それは法律のほうが悪い、法律を直す必要があるのではないか、こういうように思うのです。ですから、掘進の場合組夫を許すという制度——この掘進といっても、起業掘進じゃないですよ。これは仕事場をつくる普通の掘進ですよ。大きな連絡坑道を何キロにもわたって掘るとか、あるいはまたその作業がやまればその仕事はなくなる、こういう性格のものではないのですよ。この程度の掘進というのは日常茶飯事のことでしょう。ですから、起業費でもないですよ。これは普通の経常費ですよ。ですから、そういうものに組夫を入れるという制度が間違いなんです。ただ掘進なら何でもいいというわけで、みな組夫を認めておるでしょう。そういうことが問題ではないですか。ですから、新鉱開発か何かするのに、その作業が終わればその労働者は要らなくなる、こういうような場合には、労働者雇用恒常化のために必要かもしれません。あるいは特殊技能が要るのなら必要かもしれませんが、こういう経常的な掘進に組夫を使うということが間違いなんで、採炭じゃないから組夫でいいのだということで、みな組夫が現実に犠牲になっておるでしょう。いま言う亀田さんのような、いわば非常に優秀な方もおられるかもしれないけれども、全体がそういう訓練のできておる者ばかりとは言えないし、また、訓練の問題ではないし、これは監督責任上の問題であるし、労働条件の問題である。ですから、ただ掘進だから許すという態度が問題なんです。何も漆生だけではないですよ、全体的なことを言っているのですが、そこが非常に問題じゃないかと思うのです。これはどういうようにお考えですか。
  10. 森五郎

    森政府委員 先生指摘のように、組夫炭鉱に多いということでございますが、この漆生に関する限り、先ほどお話し申し上げましたように、法規違反は実はないわけです。先生のおっしゃるとおり、長い目で見れば、われわれも、組夫というものはだんだん漸減していく、そして、先生指摘のような、立て坑の掘さくであるとか、あるいは非常に大きな坑道の掘さくであるとか、そういう特殊な技術を要する臨時的な仕事にこれは限定すべきであるというふうに考えておるわけでございます。もっとも、炭鉱を考えてみますと、常にそういう臨時的な特殊な技能を要する仕事というものはどこか仕事がありますから、したがって、そういうところで働いておる人は、もちろん直轄でございませんから、いわゆる概括的に言って組夫という名前がつきますが、そういう作業は私はなくならないんじゃないかというふうに考えるわけであります。したがいまして、先生指摘のような臨時的な仕事であるが、それが継続すると経常的な仕事であるというようなものについては、若干問題があろうかというふうにも考えられますが、現状炭鉱状況から考えまして、これを急に規制をして全部認めないということも、現状ではなかなかむずかしいんじゃないかというふうに考えられるわけであります。したがいまして、合理化法運用保安法運用とによりまして、御趣旨に沿うような監督をしていきたいというふうに考えておるわけでございます。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 漆生鉱でも、二百七十三名の直轄のほかに、組夫が百七十六名います。ですから、これは漆生鉱だけではないんです。筑豊炭田は大部分炭鉱がこういう状態ですよ。私はこれを解雇せよとか言っているんじゃないです。なぜ本鉱員にできないのか、こう言っているのですよ。それで、臨時といいましても、炭鉱仕事は全部臨時ですよ。働く個所が変わるんですから、そしてしょっちゅう自然条件が変わっていくんですから、全部臨時ですよ。坑内仕事というのは、同じ職場でじっとしていることはないんですから、みなほとんどが臨時です。ですから、当然掘進にはそのくらいの人間が常に要って、炭鉱の場合は本来毎日個所が違うんですよ。きょうは自分はどこの個所へ行く、どこの個所へ行くと、番割りするわけです。だから、そういうように局長が言われれば、みな臨時です。しかし、炭鉱全体としてはこれだけの労働者を維持しなければやっていけないというのですから、私は、そういうのは全部直轄にしてやっていくべきじゃないかと思うのです。いつでも問題になるでしょう。われわれも石炭政策立案の一人ですが、一体炭鉱は何をやっておるのかというだけでなくて、政治に対する不信が起こっているのですよ。また組夫が殺されたというので、われわれを含めて、いわば政治に対して非常な非難の声が起こっておる。ですから、あれだけ問題にされたものがなぜできないのか。あなたのほうがそうおっしゃれば、法律を改正して、坑内組夫を使わない、全部直轄、ただ届け出制でなくて、特別に認可をした立ての坑の開さく工事とか、あるいは何キロ以上にわたる連絡坑道とか、こういうことをきめざるを得ないのですね、あなたのほうがそういうふうにやらなければ。一般の人は、いま鉱員が集まらない、組でなければ集まらないというような事情はわからないんですよ。また、逆に言えば、そういう制度があるから一般には集まらない。いままで炭鉱には組夫というのはなかったんですよ。職安法ができてからというものは、要するに、斤先掘りというものは労務供給業だというので禁止されて、全部本鉱員になった。そうして、炭鉱事情が悪くなって、昭和三十四、五年ごろから組夫というものが初めてできた。ですから、炭鉱に関しては、造船のように最初から臨時工とか社外工というような形のものはなかった。炭鉱組夫というものができたのは最近なんです。ですから、これだけ人命問題が大きな問題になっておるときに、私は、組夫をなくするくらいがどうしてできないかと思う。なくするというのは、その労働者を首切りにするわけじゃない。直轄にする。ですから、一番困るのは、組夫のおやじである雇い主が困る。これはまた、組といいましても、何百名も使っておるような組じゃない。十名とか二十名とかで、何々組、何々組といわれる。漆生鉱でも十組以上あるんじゃないですか。平均しても十二、三名でしょう。ですから、大きな組じゃないのです。組の親方というのはまた雇用する方法はある。おそらく、しろうとじゃないでしょうから、炭鉱経験者でしょうから。ですから、私は、こういうイージーな雇用形態というものは残しておくべきじゃないと思う。今度空知でも、十二名中五名でしょう。これもわれわれは調査に行きますけれども、いま石炭政策は実に場当たりだけれども、こういうところまで一般の人々から不信の念を持って見られるというのは、これは私は政策が悪いと思う。人が集まらないで山がつぶれれば、しようがないでしょう。人が集まらないからというのでその企業がつぶれれば、やむを得ぬでしょう。炭鉱をやっていけなければ、その炭鉱はやめてもらって、ビルドでどんどん石炭を掘る以外にないでしょう。そこまでして出炭を確保しなければならぬことはないのです。ですから、これはやはり本鉱員にするように政策を改むべきじゃないか、こういうふうに私は思います。ひとつ石炭局長からも、全般的な行政ですから、御答弁願いたい。
  12. 井上亮

    井上政府委員 ただいま多賀谷先生から組夫問題につきまして御指摘がありましたが、この問題は前々から御指摘を受け、かつまた、私どもも、組夫問題につきましては、組夫使用ということは本則ではないといろ考え方を持っておるわけでございまして、御意見につきましては全面的に同感でございます。私自身も、先生指摘になりましたように、組夫の本鉱員化ということで、いろいろ関係業界とも協議し、あるいは、つぶさに現地で実情の話も聞いたわけでございますが、経営者としては組夫の本鉱員化ということを希望している向きも、私の知っておる範囲では相当ございます。ただ、従来指摘されておりましたのは、経営者が経営上の立場から安い鉱夫を使うという意味で安易に組夫依存があるんじゃないかというような御指摘もあり、私どももそういうふうに思っていた時代があったわけですが、このことは、最近の情勢で見ますと、必ずしもそうとも言い切れない。と申しますのは、組夫の賃金も相当高くなっております。それから、特に組夫を集める、また就業させるという場合に、やはり相当優遇しないと組夫自身も使えないというようなことになって、むしろ経営者の中には、先生指摘のように、組夫の木鉱員化ということの懸命な努力をしているところもございます。しかし、これも、筑豊地域において私もつぶさに鉱員の方々の話を聞き、いろいろ話も聞いてみたのですが、やはり安易な生活になれておる方も中にはおられまして、本鉱員になりますと就業規則その他にいろいろしばられるものですから、必ずしもそういう生活を好まないというような風潮も中にはあるように聞いておりまして、なかなか本鉱員化がむずかしい面もございます。しかし、請負夫の方のすべてがそういう状態だとは思いませんので、やはり、これは経営者がもうちょっと熱意を持って、そういう組夫の方々を説得して、本鉱員になってもらう努力をさらにしなければいかぬというふうに考えております。  それから、組夫規制の問題につきましては、御指摘のように、やはり絶えず私ども注意しませんと安易に流れますので、せっかくの御指摘の機会を利用しまして、近く各通産局の石炭部長ないし直接の監督に当たっております鉱業課長、これを招集いたしまして、組夫問題について今後法の運用について厳重な施行をするように指示をいたしたいというふうに考えております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この組夫といわれる鉱員も、かつてはどこかで常用されておったわけです。ですから、法の強制によって、組夫を使ってはならぬと言えば、みな本鉱員になると私は思うのです。そして、いわばもとの生活に返るわけです。それは必要じゃないですか。幾ら行政通達やあるいはやかましく言ってみても、いまの制度で許されるならば、やはり本人自身も、ここ二、三年は組夫生活になれていますから、なかなか踏み切りがつかない。ですから、企業家のほうもやはりなかなか本鉱員にするといってもむずかしい。しかし、炭鉱にはある時代に組夫という制度がなかったのだから、それをもとに返すには、これは少しひどいかもしれないけれども、法の強制によってやる以外にはない。あなた方ができなければ、法の強制でやる以外にない。そうすれば、秩序というものが昔に返る。それは一時若干出炭が減るかもしれませんけれども、いま貯炭もかなりあるというので、一時混乱があっても、すぐ正常な状態になり得ると考えるわけです。そして、いつも私が言うのですけれども、通産省はこの組夫を差別をしておるでしょう。合理化法によって山を閉山する場合には、組夫には一銭もやらない。本鉱員だけを対象にして離職金をやっているわけです。そういう差別をされた組夫。ですから、こういう存在を許すことが問題じゃないですか。立て坑の開さくとか、あるいは大きな坑道の掘さくは、組夫じゃなくて社外工ですね。組夫じゃないです。社外工という全然別な人間、専門家が来てやるわけですから、それはそれで私はいいと思うのです。ですから、原則としては組夫は認めない。この第一漆生では、組夫を差別をしているわけじゃないです。聞いてみると、四人一つの個所作業しておって、二人ずつ分かれて休んでおった。そうして四人のうち二人助かっておるのですね。そして二人はなくなっておる。助かった二人は組夫と本鉱員、なくなった二人も組夫と木鉱員、こういうふうになっている。ですから、考えてみると同じ仕事をしておるのです。四人のうち二人は組夫で、あとの二人は本鉱員で、同じ仕事をして、そして亀田さんというのは別の仕事をしておった。ですから、こういう点もひとつ抜本的な対策を講ずべきじゃないか。いままでのような通達とかそういうものじゃ、とても規制はむずかしいだろう。現実に山野でも、山野はかなり社会の批判を受けたものですから、その後は組夫を減らしておりますが、その山野においても、現在まだ組夫が三百八十名おるわけです。これは山野なんかいま少なくなったほうでしょう。ほかの筑豊炭田の山を見ると、相当組夫がいるだろう、かように考えられるわけです。これはひとつぜひ協議をして対策を出し、法の規制が要るならば法律改正を出していただきたい。このことを政務次官のほうから御答弁願いたい。
  14. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 組夫の問題は従来からもいろいろ論議されておりまして、私もお説まことに同感でございまして、十分に御趣旨を体しまして、積極的に検討いたしたいと思います。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それから、山野災害ですけれども、山野災害は、あの二百三十七名なくなりました大災害の前に、海八のガス事故が起こっておったのですね。それで、この海八といわれる層はガスが多いというのでかねてから問題になっておりましたが、これは原料炭で優良炭であるということから、会社としてはぜひ掘りたいということで、先進ボーリングをしながら切り羽をつけておったという最中に事故が起こったのです。山野はその後、御指摘のように、この払いについては、もし事故が起こった場合にも他の個所に影響がないようにというので、入気、排気が独立分流をしておる。それから、ガス自動警報器をつけて、自動的に電源が遮断されるようにしておる。保安施設についてはかなりその後万全を期しておる。ですから、この事故があって、もし他に火源があったとするならばまた大爆発を起こしたであろう点については、不幸中の幸いにして避けられておるわけです。ところが、問題は、ガス突出あるいはガスを探知するためのガス抜きボーリングをしている労働者がなくなっておるということですね。これは逃げる以外に方法はないのですか。とにかく、ガスがあるかないかをはかるボーリングをしている連中が、このガス突出によって石炭をかぶって窒息死したわけでしょう。あなたのほうはこういう場合にはどうういふうに指導しておるのですか。ちょっと徴候があったらあぶないからそのときは逃げろというふうに指導しておるのですか。何か対策があるのですか。
  16. 森五郎

    森政府委員 先生指摘ガス突出でございますが、これは非常にむずかしい問題で、特にガス突出を予知するということはなかなかむずかしい。これは外国でも非常に大きな研究問題になって、フランスでもソ連でもいろいろやっておるのですが、まだ実は現在のところいわゆるきめ手がないというのが定説になっておるわけでございます。これはいろいろ技術的にむずかしい問題でございますので、一例を申し上げれば、ガス突出に対して、たとえばガスの脱却速度、いわゆるデルターPと言っておりますが、ソ連とかフランスでは、このデルターPが変わってきたらどうだとかいうことを言っておりますが、こういう方法、それから、上下盤の接近がある場合というようなことで、変位計その他で調べるというようなことで予知をしようとか、これは技術的に非常にむずかしい問題である。したがいまして、わが国といたしましても、保安局にガス突出委員会というのがありまして、大学の先生あるいは試験所の研究員その他権威を集めまして、目下ガス突出の予知について研究をしておるわけでございます。四十年度では六百万円の予算をつけまして、これを石炭技研に請け負わせまして、現在、歌志内あるいは三井砂川というようなガス突出の多い炭鉱で、いま私が申し上げましたような、これはほんの一例でございますが、こういうデルターP、あるいは上下盤の接近の問題その他について試験を行なっておるということでございます。  そこで、では一体そういう状態で現在対策にはどうだということでございますが、これはやはり、何と申しましても、先進ボーリングをするということが一番現在では有効だ。この山野では大体四十ミリ程度のダイヤメーターのボーリングを打ったのであります。これはできれば七十五ミリとかあるいは百ミリ程度の大口径にしたほうがいいし、また、多いほうがもちろんいいわけでございます。ところが、向かい掘りと申しまして、両方からボーリングを打ってやっておって、それでガスの徴候がなかったということで掘り進んだら大きな突出をしたという例もあるわけでございます。したがいまして、いま申し上げたような先進ボーリングというのは一〇〇%いいのかという点になると、これも必ずしも一〇〇%突出を防ぎ得るものではない。過去のデータから申しまして、そういう判断ができる。また、誘導ハッパが非常に有効であるということになっております。先進ボーリングをやると同時に、誘導ハッパをやる。先生承知のように、いわゆる全員を退避させましてハッパをしまして、積極的に突出をさせるというようなこともやっているわけであります。  また、小さな突出の場合でございますが、この処置はいかに。その場合には、先生指摘のように、小さなやつはばっと来るのですから、詰めで炭をかぶるということが間々ある。したがいまして、そういうときには、その詰めにビニール袋を置いておきまして、エア管へ直結しまして、ビニールをすぐかぶる、そうして空気を吸うというようなことをやる。あるいは、そのほかに、いわゆる酸素チェンバーのようなものを置いておきまして、そこへ逃げて酸素を吸うというようなこととか、あるいは、その手前に断幕を張っておきまして、突出があると圧力で断幕が落ちるというような設備をするとか、そういうものがいずれも小突出に対する対策として実施されています。これは特に北海道が非常に多いのですが、そういうことで、突出に伴う現場で働いている者の不安感、並びにそのガスが流動して爆発を起こすというようなことのない対策をいまやっているわけでございますが、ガス突出の原理についての科学的な究明は現在日本においても研究中である、こういう状態でございます。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ガスが多い、しかもガスがどういうように含まれておるかということは研究をしてもまだ十分結果が出ていない、こういうことで、いまのところ先進ボーリングや誘導ハッパでいくのだ、こういうことですが、やはり、炭量がわずかな場合はそこを掘らさぬ以外に手はないですね。そんな炭量だと、あぶないということと関係がありますよ。炭量がわずかならば、そこはやめさせる以外に手はないでしょう、そういう癖のある炭層はね。これを全部やめろという意味ではないのです。一般的な話をしておるのです。ですから、施業案の認可のときも、いわくつきの炭層については慎重にやる必要があるのじゃないか、こういうように思うわけです。これは今後さらに検討をし、また全体的な保安対策と一緒に詳細に質問をいたしたいと思います。      ————◇—————
  18. 野田武夫

    野田委員長 次に、内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  19. 滝井義高

    ○滝井委員 先日当委員会で質問をいたしました続きでございますが、その際大蔵省、自治省が見、えておりませんでしたので、留保した分から先に質問いたしたいと思います。  まず大蔵省にお尋ねするわけですが、御存じのとおり、臨鉱法が昭和四十七年七月三十一日に期限が切れることになります。現在、各鉱業権者においては、四十七年七月三十一日を目途として農地その他の復旧計画立てておるわけでございます。ところが、予算措置の実態を見てみますと、四十一年度の農地復旧費は三十三億しか予算措置をされていないわけなのです。四十年度が二十一億、三十七年度が十一億です。事業費としてそれだけです。先日の御説明によりまして明らかになったように、既存の鉱害が、農地・家屋等全部ひっくるめて六百七十億、将来発生する分が百六十九億、これはおそらく四十七年度までに発生する分だと思います。そうすると八百三十九億発生するわけです。この既存鉱害六百七十億の中で、農地の分が四百三十億あるわけです。そうすると三十三億という四十一年度ペースの復旧でまいりますと、四百三十億ですから十二、三年かかるわけです。鉱業権者は四百三十億というものを少なくとも六年でやろうとしている。したがって、鉱業権者としては、一年に七十一億のペース、三十三億の倍以上のペースの計画立てておる。ところが、予算に出してみると三十三億で、計画の半分も認められない、こういう形が出てきたわけです。そこで、どういうことが起こってきているかというと、地方でトラブルが起こり始めているわけです。そればかりではなくて、鉱業権者は非常に苦しい財政の中から年々補償を払わなければならぬわけです。そうすると、年々補償がいま一体どの程度あるかというと、有資力が十億円です。無資力は今年一億五千万程度予算措置をしてもらいましたけれども、これが一億七千万円と石炭局鉱害課は説明をしているわけです。そうすると、十億の有資力の年々補償を払わずに鉱害復旧に回すことができる形になると、非常にいい形になる。鉱業権者もいいし、農民もいいということになるわけです。十億をできるだけ少なくするということは、鉱害復旧をよけいにやれることになる。ところが、これを一挙に予算措置で大蔵省に要求しても、なかなか大蔵省も金を出しにくいのです。七千三百億も国債を出しているのですからね。そこで、一つの打開策として施越し工事という問題が出てくるわけです。昨年三月であったと思いますが、当委員会で施越しの問題を質疑をしたときに、吉瀬主計官から答弁がありましたものは、特定のものについては施越しを認めますという答弁があったわけです。実は、私、当時うかつ千万だったのですが、特定のものについてという、特定のものにというところを実は私は聞き落としておったわけです。そこで、施越しは、有資力であろうと無資力であろうと、緊急やむを得ざるものはみな認めてくれると思っておりましたところが、どっこいそうはいかぬ。農林省から下部に流れた通達を見ますと、これは無資力だけであって、有資力は認めないということになっているわけですね。そこで、われわれははたと行き詰まったわけです。どうしてもやらなければならぬ、農民の同意をとってしまったというものが出てきたわけです。そうすると、同意までとっておって、その年度までに復旧をやらないということになると、鉱業権者と国に対する農民の不信感というものが非常につのってくることは、吉瀬主計官が身をもって、あの遠賀川の土手で、堤防で、農民から陳情された実態で思い起こしていただきたいと思うのであります。  そこで、特定のものにということは無資力だけであるということは、質問をする私もうかつであったということをきょう率直に認めているわけであります。そこで、無資力は認めていただいておりますが、有資力の問題をある程度認めていく必要があるのではないか。それは十億も二十億も認めろとは申しませんが、先日の御説明によりますと、少なくとも無資力についての施越しは大体三億程度認めている。そうすると、無資力よりか、有資力の鉱害復旧というものは、まだ生きておる炭鉱は多いのですから、大手はほとんど生きておるのですから、この三億の倍、五、六億くらいは特に今年については認める必要があるのじゃないかということなんです。来年の予算の勝負は、そのあとにどうするかということを議論すればいいので、今年そのくらいのことを認めないと、とてもやっていけない。四十七年度までの計画で見ますと実際は七十一、二億程度やらなければならぬのに、三十三億のベースでは、半分以下しか認めていないのですから、相当施越しを必要とする、こう思うのです。先日の農地局長、三木通産大臣の御答弁は、滝井君の言うことはわかった、農地局と通産省一体となって大蔵省と折衝してみよう、こういうことになったのです。そこで、これは一に吉瀬主計官のほうで認めるかどうかということにかかってきたわけです。これはひとつきょう明確な御答弁をいただきたい、こう思うわけです。
  20. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 ただいま滝井先生から御質問がございましたように、有資力鉱害復旧につきましては鉱業権者が相当の熱意を示してきておりまして、その結果有資力の復旧工事は相当促進してきておるというような現状であるやに伺っております。昨年滝井先生から御質問がございまして、私ども特に施越し工事を無資力に限定いたしましたゆえんのものは、やはり、無資力鉱害被害者が、毎年賠償額が足りなくなったあといかにもみじめな状態である、鉱業権者が無資力であるというような状態から、生活上も非常な困難がある、一方復旧工事促進はぜひとも必要である、こういうような二つの点から勘案いたしまして、農林省、通産省とも相談いたしまして、無資力鉱害の復旧につきましては一定のものにつきまして施越し工事を認める、こういうことにいたした次第でございます。しかし、施越し工事につきましては、先生先刻御承知のとおり、やはり予算制度の本質から見ますと若干はみ出した制度になるわけであります。したがいまして、補助金適正化の中央連絡協議会でも、施越し工事を認めるにあたりましては、真に国民経済上・公益上やむを得ざるものに限定しよう、そういうような精神があるわけでございまして、そういう点で、私どもといたしましては、施越し工事の拡大につきましては慎重にならざるを得ない実情があるわけでございます。しかしながら、鉱害復旧がやはり公共事業における災害復旧と同じような性格を持っておる、そういうような実情もございますし、また、先ほど御指摘のとおり、産炭地域における鉱害被害者の現状、これは相当窮状急を告げているというような事情もある、こういうことから勘案いたしまして、先刻来通産省また農林省とも相談いたしまして、有資力の鉱害復旧につきましてもこれを前向きの方向で検討したい、そして年度末までには解決したい、こう考えている次第でございます。ただ、施越し工事が起こる事情は、従来から継続してきた工事が中断するとか、そういうような実態がまずあることが必要でございまして、当初きめられた予算額を、あらかじめこれだけの額は施越し工事を認めるというわけにはなかなかまいらないわけでございます。これは、予算の年度区分の原則から申しましても、やはりそういう制約がつくのは、現在の財政法、会計法のもとではやむを得ないことであると思います。したがいまして、どの程度の施越し工事をやるかということは、やはり、今年度の予算の実行を通じまして、年度末に近くなりましてから決定されるのじゃないか、こういうぐあいに考えております。しかしながら、先生の御質問の御趣旨にもありますように、このような実情にかんがみまして、有資力鉱害につきましても、真に公益上やむを得ないものにつきましては前向きに施越し工事を認める方向に進みたい、こう考えております。
  21. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じのとおり、政府においては、ことしは景気刺激を政策の一環として七割契約をやろうという意思があるわけです。それで、少なくとも四割は上半期くらいに実施してまいりたい。このことは、予算上のワクはありますけれども、いわば広い意味の施越しの変型みたいな形をとっている。実際、いままではとても年度の上期にそんな工事はやっていない。下半期になってそれが集中しておった。ところが、それを上期にやろうという。こういう景気刺激という、鉱害を受けた農民の切実な願いよりかむしろもっとレベルの低いものにさえ政府は七割も契約しよう、こういう政治的な意図があるわけです。御存じのとおり、鉱害復旧というやつは、過去のものを見てみますと、実績主義をとるわけです。大手の炭鉱でずっとうんと復旧しておったところはよけい復旧ができるわけです。ところが、いままで閉山する目標も何もなかった炭鉱が、突如として閉山をしておるところがある。たとえば、われわれのところで言えば、多賀谷さんのいま質問をした三井山野とか、あるいは三井田川なんというところは、当時、第一次の有澤調査団の少し前までくらいは、だれも閉山するとは思わなかった。何十億という金をかけてドイツのシーメンスから立て坑を持ってきて、そうして東洋一の立て坑だといって観光にまでなっておった。ところが、ある朝、夜が明けてみたら、もはや炭鉱は閉山だ、こういう実態です。突然変異です。したがって、そろいう炭鉱は、まだ二十年も三十年もあると思っておるから、鉱害の復旧なんかやっていない。ところが、そういうのが突如として御臨終になった。脳溢血と同じですよ。だから、親子が間に合わないという状態です。そうして、急激に、ことしならことし、来年なら来年から鉱害復旧をここに五、六年のうちにやらなければならぬ、こういうことになると、実績がないから予算をつけないのですよ。幾ら言ったって、大蔵のほうも予算をつけない。そうすると、炭鉱に熱意があれば施越しを認めてやるという形が必要になる。すなわち、景気刺激のために七割の契約を結ぶということになれば、それよりかむしろこのほうがレベルが高い、重点度は高いと思うのです。  それで、いま前向きにということでございましたが、これを年度末近くで決定してもらっても、これまた効果がないのですね。御存じのとおり、年度末ということになると、工事はやりいいかもしれないけれども、春工事その他やるような形で同意をとって、年度末になって施越しを認めないと言われたのでは、これはアブハチとらずです。ますます混乱を大きくするという問題があります。そこで、いま吉瀬さんが言われた点について念を押しておきたいのですが、この前ぼくは、特定のものについてという、これでごまかされた。あとから速記を読んだ。ぼくは、実は、そんなことはない、有資力も無資力も認めるのだ、こうなったと思っていた。ところが、農林省のほうから、そうではありません、きちっと大蔵省の答弁は特定のものにと書いてあると、赤鉛筆で引いて持ってきた。なるほど特定のものと言っている。これでごまかされたかと思って、あとでじだんだを踏んだけれども、あとの祭りです。そこで、これはげすのあと知恵になりますけれども、一年おくれでやむを得ないと思うのです。そこで、いまの前向きということは、今年度から、これは私は何もかもやれとは言いませんので、ケース・バイ・ケースで、県なり現地の鉱害部が、やはりやらざるを得ない、あるいは熊本の農政局もそれはやらざるを得ないだろうというものについては、弾力的にひとつ早目に認めていただく、こういう形のものと理解してよろしいかどうか、もう一回御答弁いただきたい。
  22. 吉瀬維哉

    ○吉瀬説明員 そのとおりでございます。  それから、年度末と申し上げましたのは、極端でございまして、やはり四・四半期、少し幅広い決定をする必要があると思います。
  23. 滝井義高

    ○滝井委員 ここでどのくらい認めるかというようなやぼな額の追及はいたしません。特にケース・バイ・ケースで前進をしていただきたい。きょうはなかなか吉瀬さんはものわかりがよくて、非常によろしいです。  もう一つ、今度は、これも吉瀬さんと柴田さんに関係しますが、これは吉瀬さんがそのほうの主計官でないので、ほんとうは自治省関係の主計官にも来ていただかなければいかぬのかと思いますけれども、柴田さん実力があるから……。御存じのとおり、いまのように鉱害復旧をピッチを上げていきますと、有資力、無資力の復旧が非常に大きくなるわけです。将来発生分も入れて八百三十九億というばく大な鉱害量があるわけです。これを促進してここ七年くらいにやる。どうせこれは七年でできなければあと延長しなければならぬということは、先日ここで通産当局から、そのときは延長せざるを得ない、当然のことだという御答弁がございました。そうすると、たとえば四十年度に国、県、鉱業権者の鉱害復旧における負担率が変わったわけです。そうして、たとえば農地で言いますれば、有資力の鉱業権者の場合は、三五%負担をしなければならぬのを一五%と、半分以下に切り下げたわけです。そして、二〇%の切り下げ分を国と県で負担することになったわけです。したがって、国は、たとえば農地で言えば、五三・九五が七〇・五五になるわけです。県が一一・〇五が一四・四五、こういうように非常にふえてきたわけです。無資力の場合は、幸い農地等については従来のままだし、それから、地盤等のかさ上げ、家屋復旧、これはむしろ三五の県の負担が三〇と減ったわけです。ところが、これは率は減りましたけれども、鉱害復旧の絶対量がふえてきたものですから、県自体の負担というものは、有資力で増加をし、無資力でも絶対量がふえたために相対的には負担金額はふえる、こういう形になってきたわけです。典型的に集中してあらわれたのが福岡県の財政で、たとえば総支出予算の〇・四%くらいになってきておるわけです。県の負担というのが三割をこえて増加をする。これは、御存じのとおり、昨年柴田さんにも来てもらいまして、こういう負担分については特別交付税でことしは処置をいたします、しかし、来年は、滝井さん、われわれもやるが、あなたたち国会のほうもひとつ適切な措置をとってもらいたい、こういうように柴田さんからげたをはかせられたことを覚えております。そこで、この問題をその後に自治省としては一体何か措置をしたのかどうかということですね。四十年度は特別交付税で見ます、こういうことでその場を一応切り抜けた。ところが、ことしの予算書その他を見ますと、何にもこのことについては触れていないのですね。これはあなた方としてはどういう方針をお持ちなのかということです。
  24. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 昨年の経緯につきましては、ただいま御指摘のとおりでございます。実は、四十一年度の予算編成の際までにこの問題を片づけたかったのでございますけれども、通産省当局におかれまして鉱害量調査をやっておるから、鉱害量調査ができたところでもってこの問題の再検討をしようじゃないか、こういうお話もございまして、われわれのほうといたしましては、その鉱害量調査の結果、どのような形で鉱害復旧事業が将来行なわれるかということを見まして、この問題に対する最終的な気持ちを固めたい、こういうことになっているわけでございます。
  25. 滝井義高

    ○滝井委員 その鉱害量調査はもう終わったわけでしょう。
  26. 井上亮

    井上政府委員 終わりました。
  27. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、いま申しましたとおり、将来発生分も加えて大体八百三十九億というばく大な額になるわけですね。このおそらく八、九割というのは福岡県に集中していると思うのです。そうしますと、私どもは昨年産炭地における財政の特別措置をやったわけです。一方においては特別措置で財政を軽くしてやっておる。ところが、一方で鉱害のことで重くしてやっておれば、差し引き何にもなくなりて、実態としては、してもらわなかったと同じになってしまうのですね。それは、してもらわなかったよりいいですけれども。そうしますと、この問題を四十一年度に解決をしておらなければ、これは話にならぬことになるわけですが、鉱害量調査が終わっておるし、方針を何か形で出してもらわなければならぬと思うのです。しかも、御存じのとおり、今国会では、すでに衆議院を通ったと思いますが、地方交付税等の改正もやったわけでしょう。そうすると、そのときに単位費用その他の関係もあって、これを解決してもらっておらなければならぬわけです。どうしてかというと、御存じのとおり、いままでの解決のしかたというのは、農地の有資力で言えば、一一・〇五が一四・四五に増加をする、そうすると、一四・四五を一〇〇と見るならば、八割は起債ですね。そうすると、八割のうちの五割七分というのは普通交付税でいただくわけですね。四割三分は自己負担。それから、残りの二割のうち、八割が特交で、二割が自己負担。結局、一〇〇のうち三八・四を自治体が見なければならぬことになるわけです。そうしますと、自治体は加害者ではなくて被害者です。有資力であろうと無資力であろうと、被害者なんです。その被害者である自治体みずからの財政が非常に苦しいときに、また炭鉱の負担まであと始末で背負わなければならぬということになると、たいへんな問題になる。  そこで、たいへんな問題が一つある。その場合に私が言いたいのは、起債を八割認めた、その五七%が普通交付税だという、この五七%というものは一体どういうものを基礎にしてきめられたのかということなんです。
  28. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 そういうようなお尋ねがあるだろうと思って実は参ったわけでございますが、これは緩慢災害という考え方を従来とってきておるわけです。たとえば地すべり対策あるいは海岸侵食といったような問題でございまするが、こういうものと同じように、まあじわじわと災害が起こってくる。そういうものに対しては、本来から言えば、災害復旧じゃございませんで、むしろ、何といいますか、災害予防的な面を加えた復旧、こういう形から、普通の災害復旧事業債とやや違った形の、まあ予知し得る経費という意味があるわけでございまするけれども、そういう意味合いから、若干普通の災害復旧事業よりか充当率を低めた特別交付税の計算方法というものをとってきたわけでございます。普通の場合は元利償還金の九五%にするわけでございますが、五七%云々というのは、これはたしか災害復旧債の九五%の六割でしたか七割ぐらいでしたかの計算になると思います。そういうことでございますが、私どもは実は最近そういう考え方に若干疑問を持っておるわけでございます。つまり、災害というのは、先ほどお話がございましたが、いわば突然やってくる。したがって、その復旧については、もちろん被害者もあるわけでございまするけれども、国、地方団体が共同でこれが復旧につとめるという姿が本来だと思うわけでございまするが、鉱害復旧でございまするとか、あるいはいわゆる公の害といったようなことについては、これはある意味では予知し得る害じゃないか、いわば無過失責任とは言えないというような感じがするわけでございます。そうしますと、こういうものについては、本来ならばやはり一種の保険制度、人間にも生命保険があるわけでございますが、こういうものについても社会的な保険制度があっていいんじゃないか、こういう感じを持つわけでございます。そうしますと、公の害も含めまして、若干考え方を変えていかなければいかぬのじゃないかという感じが実はちょっとするわけでございます。現実問題といたしましては、そうは言ってみても、炭鉱も疲弊しておるわけでございますから、いまさら炭鉱についてはそうはいかぬかもしれません。しかし、今後も鉱害というものはやはりあるわけでございまして、いまの鉱害だけが鉱害であって、今後ないかといえば、地面を掘れば鉱害が起こるにきまっておるわけです。そういうものは、予知し得るものとして、財源対策というものを考えてもいいだろうというように思うわけでございます。そうしますと、今日の国、県、鉱業権者の三者の負担というものはおかしいじゃないかという感じを強く持つのでありまして、単なる財政的事由ではなくして、こういうものに対する社会的責任というものを国と府県、地方団体、それから鉱業権者というものがどういう形で分担すべきかという問題は、これはあらためて検討さるべき、また慎重に検討さるべきものではなかろうか。無資力のものは、もうすっからかんになっておるのですから、いまさらどうというわけにもいかないので、しようがない。本来から言えば、無資力のほうも有資力のほうも、保険制度があれば、それに対する対応策があったはずでございますが、残念ながら今日までなかった。無資力のものはしようがない。しかし、有資力のものについては、今後のこともあることでございますから、そういうものも含めて検討すべきじゃないか。財政的見地から言いますならば、鉱害復旧を早くやるべきことは、これは御指摘のとおりでございますが、早くやるためには、地方負担というものをどうするか、それに対する財源措置をどうするかという問題について総合的に考えてまいらなければなりません。そういう意味では、私どもが今日までとってまいりました鉱害復旧に対する財源措置、あるいは国と府県と鉱業権者との負担割合というようなものにつきましては、さらに検討すべき問題が残されておる。したがって、鉱害量調査も出てきたわけですから、これをどういう形でやるかという通産省のお気持ち、大蔵省のこれに対する意見というようなものを総合して地方負担に対する態度をきめたいというふうに思うのでございまして、現状の負担割合が決していいとは考えておりません。
  29. 滝井義高

    ○滝井委員 いまの御答弁の中で、起債八割の五七%を普通交付税でやるということについての考え方にはやはり疑問を持っておられる。同時に、三者負担の問題、国、県、鉱業権者の負担の割合等も検討する必要があるし、場合によっては保険制度というようなものを考えてみたらと、こうおっしゃるわけです。ところが、御存じのとおり、この鉱業権者というのが、あとでも触れますけれども、もはや、そのみずからの力というのは、行使するだけの能力を非常に欠いておるわけですね。もう国鉄の運賃もまけてもらわなければならぬ。それから、自分のところの労働者の首を切るためには、その首切りの金も国から借りなければならぬ。借りた金の利子も補給してもらわなければならぬ。全部国にやってもらっておる。何を自分がやっておるかというと、掘り出した石炭を売ることだけしかやっておらぬです。自分でやっておるのは、掘った石炭を売るだけですよ。それだけの能力しかないのですね。売り方もへたな売り方で、売り先は井上さんのほうの世話を受けなければ、電力も鉄鋼も買ってくれない、こういうことですから、石炭を掘って売るということだけ、しかも売り先を国から見つけてもらわなければならぬという哀れな状態。これを、いまの段階で保険制度をやろうといったって、できる段階ではない。社会党は国有化を主張している段階ですから。そうしますと、これは、好材料が立って、非常に長期の展望で政策立てるという状態ではないわけですよ。そうすると、いまの当面の問題としてどうするかというと、自治体の負担を軽くしなければならぬ。現在、八〇%の起債のうち五七%の普通交付税というものを、いま御指摘のように緩慢災害で見ておる。すなわち、海岸の侵食とか地盤の沈下とか、あるいはシラス地帯のような地すべりとか特殊土壌ですね、こういうようなものとして見ておるわけです。ところが、実際に鉱害の実態を見ると、下を掘られて、それは普通地下水を揚げて地盤が徐々に沈下していく状態とは違うわけです。下は全く空洞になってしまっているわけだ。そして、もはやその土地というものの価値がほとんどなくなっている。災害でだあっと大水が来て田畑を洗ってしまっても、洗ってしまったのは表面だけで、これはすぐ戻るのです。ところが、炭鉱地帯のやつは、もとのとおりにしようとすればばく大な金がかかる。一反歩のたんぼに本格的にやろうとすれば、いま限度が四十五万くらいですか、百万とか百二十万もかけなければならぬ。そのたんぼをもう別に買い上げたほうが得だという実態もあるわけですね。そういうところに、やはり農民がそれでなければならぬと言えば、百万かけても鉱業権者としては復旧しなければならぬことになる。とてもそういうものを緩慢災害であるなんと言えないわけですね。それから、土地の価値が非常に落ちている。この前も言いましたが、もはやそこではピルを建てることができない状態になってしまっておるわけです。災害のときなら、上が洗われて家が流されても、あとでまた建てられる。その炭鉱地帯は、新たにビルに建てかえようとしても、ピルはだめなんですよ。下が空洞なんですから、二階建てとか三階建てしか建たないのです。三階建てはちょっと無理です。二階建てだけです。ビルを建てたって、コンクリートにひびが入ってくるということになると、雨漏りがする。コンクリートの雨漏りくらい処置ないものはないわけです。私のところではコンクリートの家の上にまたもう一つ屋根を置いていますよ。そういう実態ですから、コンクリートで家をつくったって、ビルを建てたって、その上にまたトタンぶきを置かなければならぬということなんですよ。そういう実態で、普通の緩慢災として扱うわけにはいかぬですね。やはり、地すべりとかこういうものは、いまあなたの御指摘になった災害復旧事業債、いわゆる九割五分ですね、これにしなければならぬと思うのです。それから、いまあなたの御指摘になったように、その測定値と単位費用との関係で、片や一〇〇と見て九割五分かけますよ。ところが、これは言われるように六〇にしか見ないでしょう。ここにも不合理があるのです。六〇に見て、それに九五をかけて五七となる。第一、そういうふうに、初めから低く見て五七にしているわけです。ところが、鉱害地では、土地の価値が非常に急激に下がって、もはや将来に向かって回復させようとすればばく大な金を入れなければならぬ。ばく大な金を入れれば鉱業権者も国も自治体もそれにたえ得ないというので、いいかげんな復旧しかやらない。これをいわゆる効用回復と言っているでしょう。三メートルも四メートルも地盤が下がっている。しかし、いまの段階で見ると、一メートル上げたら水が上がってこないんだといって、一メートルだけしか上げてくれないわけです。こういうように効用の回復だけなんですね。もとのとおりしないわけですよ。災害は、これはもとのとおり復旧しますよ。われわれは、それはそれだけではいかぬから改良を加えよ、こういうことなんですけれども、鉱害復旧というものは、とにかく効用を回復すればいいという形です。だから、筑豊で、われわれのところでも、三メートルも四メートルも下がっているけれども、地盤を上げるのはそんなに上げない。そんなに上げたら、この八百三十九億はおそらく三倍ぐらいになる。二千四、五百億ぐらいかかるのです。それをやっていない。だから、三倍に上げなければならぬものをどうして三分の一で済ませるかというと、結局財政上の問題です。国や県の負担が多くなって、そんなことできません、鉱業権者の負担も多くなってできません、こういうことでしょう。そうすると、だれが一番損しているか。正直な住民が一番損しているわけです。もはや祖先伝来の土地はだめになる。だから、復旧するときぐらいはやはり国が責任を持ってやってもらいたい。前例がないかといえば、あるわけですね、戦争中の特別鉱害は、自治体は一割負担で済んだわけです。九割持っちゃったわけですよ。あれは鉱業権者と幾らずつか、ちょっと忘れましたけれども、自治体は一割だけで済んだ。そうしますと自治体は積極的に鉱害復旧をやることになる。鉱業権者の負担が三五から一五に軽くなっているわけです。ただ、国も困ります。国も困るけれども、鉱業権者や自治体が困るよりは国の困り方は軽いですよ。直接取る税源を持っていますから、自治体よりかよけいにいい税源を持っているのです。それから、人件費も自治体に比べたらずっと少ない。だから、そういう点から、私は、この普通交付税で見る五七%というものを緩慢災なんというけちなことを言わずに、国土保全の立場からこの際少なくとも特交並みにすべきではないかという意見を持っているわけです。これについて一体自治省なり通産当局はどう考えておるのかということです。
  30. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 御意見は、現象面だけを考えますと、お話はよくわかります。ただ、しかし、災害の性質から言いますならば、普通の災害よりはるかに悪質な、昔ほうっておいたものを、いま  その悪質なものを金がないから認めるというのに多少引っかかりを感じる、正直に申し上げて。問題は、では今後そういうものは起こらぬかといえば、今後も起こるじゃないか。今後もやはり、石炭産業を抹殺してしまうなら別でありますけれども、石炭産業を育てようとしているわけでありますから、そうである以上は、やはりどっか掘るにきまっている。掘ればやはり災害が起こるにきまっている。そうしますと、将来の問題も見きわめて、これはこれ、あれはあれとはっきりしたけじめをつけて始末をしていかなければいかぬのじゃなかろうか。私どもはこの問題にいろいろ頭を使います。頭を使いますといいますか、思い悩みますのは、結局、一般公害の問題に対する財源対策をどうするかという問題と非常に深い関連を持つから、そういうふうに思い悩むわけですそれで、先ほど私が申し上げましたように、現在の交付税のやり方はいいとか悪いとかいう問題につきましては、私どもは決していいとは考えておりません。最近、いろいろ考えてみますと、どうも少しいままでのやり方にやはり問題があるということを内々相談をし、検討しているわけでございますけれども、しかし、その前に、一体そういうものに対する国、県の負担割合がこれでいいのかというと、私どもはいいとは考えない。やはり、そういうものを考えますると、鉱業権者が非常に困っておるというものに対する救済を国と県と同じような形でもってかぶってやるべきなのか、あるいは国がもっと積極的にかぶる姿勢を示すべきなのかというところに問題が一つある。この問題を片づけて、そのあとでそれに対する財源措置というものも地方財政の立場からこの問題につきまして考えていきたい。それと同時に、将来の問題として、一体こういうものに対する鉱業権者というものの責任をどのようなかっこうで求めるべきか、それを復旧事業の場においてどのような形で求めるか、それが可能かどうかということを検討し、不可能であるかどうか知りませんが、それが可能であるとすればどうすればいいのかといったようなことまでやはり検討していかなければならぬじゃないか、そうでなければおかしいじゃないだろうか、こういう感じを持つわけでございます。したがいまして、この問題は、昨年滝井先生からいろいろお話がありました場合に、昨年度のことは昨年度、将来のことは将来のことということを申し上げましたのは、そういうものを総合的に考えて結論を出さなければ、その場その場で問題を片づけては悪例を残すのじゃないか、将来非常に悪い例を残すことになるだろうということをおもんばかりましたので、昨年さようなことを申し上げました。本年度は、鉱害調査の問題が出てまいりましたので、これがどのような形で事業が執行されるかということを見定めまして、いままで申し上げましたようなことを総合的に勘案して、関係各省と話し合いをし、きめたいというぐあいに考えておる次第でございます。
  31. 井上亮

    井上政府委員 鉱害復旧の事業量が、過去から今日までの経緯を見ましても年々増大してまいっているわけですが、先ほどもお話がありましたように、今後の鉱害復旧につきましては、私どもも、昨年一年かかりまして全国鉱害量調査を行ない、これはほぼ完了いたしまして、いま微調整の段階に入っているわけですが、御承知のような相当膨大な残存鉱害があるわけでございまして、これを今後できる限り計画的に、かつ総合的な見地も加えまして復旧していきたいというふうに考えているわけですが、そうなりますと、さなきだに疲弊しております産炭地域の地方公共団体の財政に対しましてやはり相当な負担を課するということになろうかと思います。しかし、これはまだ私個人の考え方でございますが、やはり、鉱害復旧の問題は、国土保全とかあるいは民生安定という見地から特に鉱害復旧についての現在の法体制ができておるわけでございますので、そういった見地からします場合には、もちろん根本的には賠償義務者である鉱業権者の責任はあるわけでございますけれども、特に現状にかんがみまして、やはり業者にまかしておいては十分できないという見地から、特にこの国土保全、民生安定という見地を加えて現在の復旧計画が法的にも組み立てられておるというような実情からしまして、やはり国並びに関係道県というようなところでそれ相応の負担をしていただきたいというふうに考えるわけでございます。  ただ、ただいま申しましたように、産炭地域も近年非常に疲弊しておりますので、今後増大していきます復旧量に対しまして、やはり相当な負担になることは事実でございます。したがいまして、私どもとしましては、そういう見地から、今後鉱害をどのように復旧し、どのように解決していくかという検討をいま続けておるわけでございますが、その検討の中で、この鉱害復旧に関連いたします地方公共団体の負担をどのように軽減し、どのように対処していくかというような点について検討してまいりたい。現在、石炭鉱業審議会の鉱害部会におきまして、ただいま御指摘の問題点を議題といたしまして検討することにいたしておりますので、そういった慎重な検討の末、私どもとしましても、一つの解決策といいますか、考え方を確立してまいりたいというふうに考えております。  なお、疲弊しております地方財政に対しまして、昭和四十年、四十一年、全然何もしていないわけじゃございませんで、私どもとしましては、先生承知のように、この前の通常国会におきまして産炭地域振興臨時措置法の改正をいたしまして、例の新産都市並みの助成策を講じまして、その際特に、産炭地域につきましては鉱害復旧事業というのが特異な公共事業でございますので、この鉱害復旧事業を特にいわゆる法で指定しております公共事業の中に加えまして、これについての起債の補助率のかさ上げ、こういった措置につきましてこれを対象にいたしておりますので、その意味では、やはり地方公共団体の負担の軽減のために私どもとしても一応努力はしておるということだけは付言させていただきたいと思います。
  32. 滝井義高

    ○滝井委員 一方ではそういう特別の措置をしておいて、一方でこういう負担の増をやらせるというところに実は問題があることを言っているわけです。そこで、いま両局長の御意見を聞きましたが、ともに問題を将来に譲っておるわけです。ところが、これは将来にだんだん譲っていくべき問題ではないわけです。いま石炭鉱業審議会のことが出ましたが、石炭鉱業審議会の鉱害部会においても、昨年の十二月六日の中間答申で、この財源対策をさらに検討しなさいということは言ってくれているわけです。したがって、当然これは予算編成を目当てにして言っておるので、四十一年度には何らかの措置をするということは、この前からもお互いの論議の中で出ておったわけです。ところが、それができないということになれば、少なくとも石炭の抜本対策の出る六月までには何か具体案を出してもらわないと、これではやはり地方自治体がたいへんですよ。われわれのほうも、福岡県の議会なり市町村長あるいは佐賀、長崎等からしょっちゅう、この問題は一体どうなったと言われることになる。いつも言うように、政治家というのはものごとを先に送るのが偉い政治家だというのだけれども、こんなものは先に送れば送るほどどうにもならぬことになってしまう。だから、こういう問題は、いま柴田さんの言われるような、国と県との負担の割合はどうするか、将来の問題として鉱業権者の位置づけ、鉱業権者に一体どういう形で負担をさせるかということは、やはりいままでにすでに検討済みでなければならぬことになっておる問題なんです。しかし、できておらなければ、幾ら言ったって泣く子と地頭には勝てませんからどうにもなりませんが、どうですか、六月の抜本策までには、地方財政の負担軽減の方法について、大蔵省も入れて通産当局と自治省の財政当局と話し合いの上で一体結論が出せますか。
  33. 井上亮

    井上政府委員 先ほども申しましたように、ただいま鉱害復旧の問題にからみます地方公共団体の負担増の問題につきまして石炭鉱業審議会の鉱害部会におきまして検討中でございます。一つの重要議題として上げております。検討中でございます。この結論は、私どもの見通しでは、大体おそくも六月末までには一応得たいということで、ただいま鋭意努力いたしております。おそらくそのころには一つの考え方、一つの対策というものが出るのではないかというふうに考えております。また、出さなければいかぬというふうに考えております。ただ、その内容につきましては、どのような措置になって出てくるかということにつきましては、ただいま検討中でもあり、あるいは審議中でもございますので、いまここでにわかに申し上げるわけにいきませんが、ただ、いずれにいたしましても、やはり、国と道県、賠償義務者との現状における適切な負担割合ということになるのであろうというふうに考えております。
  34. 滝井義高

    ○滝井委員 私、きょうはここで内容をお聞き申し上げようとは考えておりません。しかし、やはり六月末までには抜本対策とともに地方の財政の抜本対策を出すことが、これは去年柴田さんがここに来て特別交付税で措置しますということを大臣に補佐して答弁させるまでの経緯から考えて、私は当然のことだと思うのです。そこで、これは柴田さんのほうもひとつ具体案をどしどし遠慮なく出していただくし、井上さんのほうもそれを討議資料にして六月末までにひとつ結論を出していただきたい。こういうことで政務次官よろしいですか。
  35. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 けっこうでございます。さよう取りはからいます。
  36. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひひとつそれでお願いします。  それから、それに関連して柴田さんにお尋ねいたしたいのは、官報で自治省の財政に関する省令を出した場合に、鉱害復旧事業に要する経費は八割を見ることになりましたね。ところが、県については自治大臣の定める方法により措置するとなって、八割という数字が抜けておるわけです。市町村は八割という数字があるんですよ。これは一体どうしてでしょうか。
  37. 柴田護

    ○柴田(護)政府委員 先ほどの鉱害に対する財政制度の問題でございますけれども、これは、私どもは四十一年度の予算編成の際にきめたかったのでございますが、ただ、先ほど来お話し申し上げましたような鉱害の調査がおくれておりました事情等でおくれておりますので、急いで話を取りきめるようにいたしたいと思います。  なお、お尋ねの点はちょっと私に記憶がございませんが、おそらくは、その災害復旧事業債の認定の問題で自治大臣がきめるということに書いてあることだと思います。内容は同じ八〇%でございます。
  38. 滝井義高

    ○滝井委員 ただ、官報を見ますと、どうもちょっと勘ぐるわけです。県については八割と書かずに、自治体は八割と書いてある。県には書いてない。というのは、県は市町村より財政力が強いのでふやすことはない。減らすのじゃないかという疑いを持たれたわけです。いままで八割と書いておったのです。ところが、それが、自治大臣が定める方法により措置する、こうなっておるので、そういう疑いを持たれたけれども、いま八割でやるという言明を得ておりますから、それで安心をしております。  そうすると、もう一つお尋ねをいたしたいのは、昨年同じくこの委員会で、鉱害基金から鉱害復旧事業団に融資をしなさいということを、これもまあ一時間ばかりごしゃごしゃしながら質問をして、その言質をいただいたわけです。ところが、何か聞くところによると、基金から復旧事業団への融資は四十年度はやらなかったという話なんです。国会で言明をして、やるということだったのだが、これはほんとうにやらなかったのか。その場合に、四十一年度はやることになるのかどうか。御存じのとおり、鉱害復旧事業団というのは現在特に無資力鉱害その他について相当の仕事をやっておりまして、たとえば、九州の鉱害復旧事業団の四十一年度の無資力の復旧量を見ると二十七億円。二十七億円というのは、一番初めに無資力鉱害を始めたときに比べて千二百三十倍の事業量になるわけです。それから、直営事業量が二十三億、当初の百倍。こういうように、事業団が相当仕事をやるわけでしょう。そうすると、やはり鉱害復旧事業団に基金から金を出すというのは、右の手から左の手に貸すような感じがしますけれども、これは無資力鉱害復旧をやるには支柱的な役割りを演ずるわけで、この前私が法律論をたてにして質問したら、それはよろしい、貸しますと、大蔵省の理財局の資金課長も来て言明をしておるわけです。四十年度に貸したか貸さないか、私の聞くところでは、借れなかったというような話も聞いておるのですが、その実態をまず御説明願いたい。
  39. 井上亮

    井上政府委員 四十年度は、お説のように、融資をいたしておりません。四十一年度におきましては、ただいま、案件を検討いたしまして、大体一億程度のものを融資しようというふうな考え方を持っております。
  40. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは、まあ一億ではちょっと少ないけれども、まだ一回も貸したことがない、初めて貸す場合ですから、あるいは一億でもやむを得ないかとも思いますけれども、やはり国会で言明したことはひとつ実行をしてもらいたいと思うのですよ。これは、貸すというのについて横やりを入れたのは、あるいは言明をした大蔵省の理財局かもしれぬとも思いますけれども、そうだったらそうで、もう一ぺん理財局長でも来てもらって、はっきり確認をしておかなければいかぬと思うのです。井上さんのところのベースだけでやっておったって話にならぬと思いますが、それは一体どこからアインワントが入って、横やりが入ってそういうこになったのですか。
  41. 井上亮

    井上政府委員 鉱害課長から詳細にお答えしたほうがいいと思いますが、私の承知しております範囲では、横やりなどということではなくて、一応やりくりがついたというふうに私は了解いたしております。
  42. 佐成重範

    佐成説明員 ただいま御質問のございました鉱害基金から鉱害復旧事業団へ融資することにつきましては、四十年度におきましては、鉱害基金の融資財源十六億円という中から鉱業権者に対します賠償資金融資あるいは鉱害予防融資というものに充当いたしますと、融資源も非常に苦しゅうございましたし、また、かたがた、鉱害復旧事業団のほうも、内部留保の金額あるいは市中金融機関からの借り入れというようなもので工事所用資金をまかない得ることができましたので、四十年度は鉱害基金からの融資をしなくて済むという事態であったのであります。  四十一年度におきましては、先生指摘のように、鉱害復旧事業団の工事執行者としての工事量も非常に拡大いたしますので、当初から財政投融資計画におきまして一億円を鉱害基金から鉱害復旧事業団に対する融資のワクといたして設定いたしておりますので、四十年度と同様、内部資金あるいは市中金融機関からの借り入れと合わせまして、この一億円という融資で鉱害復旧事業団の機能を営み得るというふうにわれわれは考えております。
  43. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひひとつ間違いないように実行をしていただきたいと思います。  次は利子補給です。石炭鉱業の合理化資金の利子補給として、四十年度に九億五千万円、四十一年度に五十億三千二百万円の利子補給をおやりになったわけです。そこで、まず第一にお尋ねをいたしたいのは、この四十年度の九億五千万円の利子補給というものは、どういう会社にどういう形で利子補給をしたのか。多分これは政府関係機関から借りておる金だけについてだったと思うのですね。その実態をまず御説明願いたいと思うのです。
  44. 井上亮

    井上政府委員 昭和四十年度の利子補給につきましては、先生承知のように、政府関係金融機関の融資残高につきまして、これは昭和三十九年度末残高でございますが、それにつきまして、特にまじめに働いておってなお赤字を計上せざるを得なかったというような企業につきまして交付したわけでございます。対象企業といたしましては一応二十二社、大手は十一社、それから中小が十一社、合計といたしましては約九億五千万円という内容になっております。
  45. 滝井義高

    ○滝井委員 その各社の、大手十一社と中小十一社の九億五千万円の内訳をひとつ資料として出してもらいたいのです。
  46. 井上亮

    井上政府委員 ただいま答弁いたしました内容は、誤解のないようにちょっと訂正させていただきますが、対象企業として大手十一社、中小十一社でございまして、そのうち、年内に交付いたしましたものは、大手十一社、中小三社でございます。中小は、羽幌炭鉱と飯野炭硬でございます。内容につきましては資料をもちまして御報告申し上げます。
  47. 滝井義高

    ○滝井委員 あとで、各社にどういう割合で配分したかをぜひ資料で出していただきたいと思いますが、今度利子補給の対象債務の範囲を拡大をするということが言われているわけですが、四十一年度分のこの五十億三千二百万円というものをどういうことで使うことになるのか、利子補給の方針をひとつ詳細に御説明願いたいと思うのです。
  48. 井上亮

    井上政府委員 四十一年度の利子補給の方針につきましては、これも四十一年度の予算編成に際しまして昭和四十年度の利子補給制度を内容的に拡大いたしまして、まず対象の資金でございますが、残高でございますが、これは、当初四十年度のときは、先ほど申しましたように、財政資金の融資残高ということに限定いたしておりましたが、今回は、さらに、特に再建整備を必要とするというような企業につきましては、市中銀行の金利につきましても約三%程度の利子補給をいたしたいというふうに考えております。それから、さらに、政府関係金融機関の中でも、従来は、御承知のように、これは開発銀行の資金と合理化事業団の整備資金ということに限定されておりましたが、今回は、さらに、合理化事業団の再建資金、それから鉱害基金の融資の残高、これを新規に加えました。さらに、中小公庫につきましては、従来は設備資金だけでありましたが、長期運転資金につきましてもこれを新規に加えようというような話をいたしております。ただし、市中につきましては、運転資金は含みませんで、設備資金と整備資金のみでございます。対象企業につきましても、市中が対象になりますものは、特に再建整備を必要とする企業という限定を加えたいというふうに考えております。  なお、内容的には、政府関係の融資につきましては、従来は一般の企業につきましては三%の利子補給でございましたのが、今回は、六・五%、つまり全額利子補給という形をとりたいというふうに考えております。  なお、融資残高の時点でございますが、これも昭和四十年度末ということにいたしたいというふうに考えております。なお、実際に利子補給が出されますのは、上期の決算を終わりまして、その決算内容を審査いたしまして、合理化計画を的確に遂行しながらもなお企業収支が赤字である企業というような観点から内容を審査いたしたいというふうに考えております。
  49. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、九億五千万円というのは、二十二社を対象として、大手十一社、中小十一社だ。ところが、実際には年度内交付が大手十一社で中小二社というと、九億五千万円の金は余っているわけですね。それはどれくらい余っておるわけですか。
  50. 井上亮

    井上政府委員 現在余っておりません。全額支給いたしました。先ほど言いました対象企業というのは、要するに、財政資金の交付を受け、かつ赤字とおぼしき企業としてとにかく検討の対象にしたのが十一社でございます。
  51. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、対象企業が大手十一社、中小十一社あった、それが適格審査に合格したものは、大手十一社、中小は十一社のうち二社であった、そうして、その十三社に対して九億五千万円の利子補給をした、こういうことですね。
  52. 井上亮

    井上政府委員 二社と申しましたのは、年内に交付しましたのが二社ということで、なお十一社につきまして検討を加えておるというような状況でございます。
  53. 滝井義高

    ○滝井委員 ちょっとわからない。中小十一社のうち三社は利子補給した。そうすると、九社が残っておるわけです。これは結局審査した結果不適格になった、対象企業であると思っていたが、調べてみたら不適格であった、こう理解していいですか、こう言っておるのです。
  54. 井上亮

    井上政府委員 必ずしも不適格とはまだ断定いたしません。
  55. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、それらの九社については五十億三千二百万円の四十一年度の対象になってくるということになるわけですか。九億五千万円の四十年度のときの対象企業は二十二社であって、五十億三千二百万円の四十一年度の対象企業というものは二十二社がそのままずっと来て対象になるものなのか、二十二社というのにプラスアルファがつくか、内容がずっと変化してくるものなのか、そこらの説明をしてもらって、同時に、四十一年度の対象企業の資料も出してもらいたいと思う。
  56. 井上亮

    井上政府委員 四十一年度につきましては、先ほどお説の、大手十一社、中小十一社がそのまま上がる性質ではございません。これは、先ほども申しましたように、上期の決算、下期の決算を見て交付額をきめていきたい、対象企業も審査したいというふうに考えておりますので、大手につきましても、十一社になりますかあるいは少なくなりますか、これは上期決算を見た上できめたい。中小についても同様でございます。ただ、対象といたしましては、市中銀行の分につきましては特別再建整備を要する企業ですかち別でございますが、一般的に申しますとやはり財政資金が主体になりますので、大手、中小ともに相当数の企業が対象にのぼるであろうというふうに考えております。  それから、資料につきましては、四十年度のごく最近までの詳細な資料は次回に提出いたしますが、四十一年度につきましては、どの企業が対象に残るか、あるいは四十一年度に想定いたしております特に再建整備を必要とする企業というような点につきまして、まだ全く未定でございますので、四十一年度のほうの資料は、そういう事情でお許しをいただきたいというふうに思います。
  57. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、五十億三千二百万円の金の補給をする時期というのは、これは年度末でなければ補給しないのですか。たとえば、三月とか六月とか九月とか、それぞれ決算期は会社で違いますね。その各社の決算を見てやることになると、この五十億三千二百万円の利子補給をするのは、年度末になってしまうのか、その支給する時期というのはどういうことになるのですか。
  58. 井上亮

    井上政府委員 上期決算が大体九月でございますので、早いところは六月という会社もありましょう、たしか私の記憶では一つくらいあったと思いますけれども、大多数の企業は九月決算でございますので、十月ないし十一月ころになろうかと思います。
  59. 滝井義高

    ○滝井委員 ぼくもおそらくそうだろうと思うのです。そうしますと、抜本策との関係が一体どうなるかということなんです。実は、昨年以来、今年度予算編成のときに抜本策を出すということであったわけです。ところが、その抜本策が出ない。だから、五十億三千二百万円という利子補給をとりあえず計上しよう、そうして、その気息えんえんたる石炭企業の命をつないでいこう、こういう施策でこれは出てきたと理解をしておるわけです。そうしますと、いまのように、お金を支給するのが十一月か十二月、九月期決算を見てからということになると、抜本策が六月に出るとそんなものは要らぬことになるのです。抜本策との関係は一体それではどうなるのか。私は、これは六月までのつなぎ、六月の抜本策が出るまでのつなぎで、おそらく実施は九月、十月になるだろう、それまでの間をつながなければいかぬ、それまでに利子補給というものをやるのだと理解して見ておったわけです。しかし、いまのように、ことしの暮れにならなければ利子補給の金が出ないということになるならば、これは抜本策との関係は一体どうなるのだ、こうなるのです。
  60. 井上亮

    井上政府委員 四十年度の予算は九億五千万円でございましたが、これは上期決算を見て下期に出すということで、いわば半年分の利子補給を予算に計上いたしたわけでございます。したがいまして、四十年度の下期決算については四十一年度の上期に検討を加えまして、支出するということになります。一四十一年度につきましては上期分は下期に支出するというような、順送りの交付のしかたになろうかと思います。
  61. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、抜本策をやる場合に、負債との関係が出てくるわけですね。利子補給をしてやって、四十一年度の上期の分というのは九月にしか決算が行なわれないわけでしょう。そうすると、それが確定をして利子補給をもらうのは、あなたの言われるように、十月か十一月だ。そうすると、多賀谷さんがいま横でちょっと言っておりましたが、四十年度の下期の分というのは、四十一年の三月に決算は終わっちゃうわけですね。そうすると、その分は、一体九億五千万に幾ら足さなければならぬのかということなんです。私、実はそこも少し疑問に思って、あとで尋ねようと思っておったのですが、四十年の十二月以降のものについては石炭鉱業審議会の審議を経て各企業別に交付されるなんというのを書いた文章をちょっと読んだことがあるのです。そうしたら、この予算というものは、一体五十億三千二百万円の中に四十年度分として幾ら入っているのかということが今度問題になるわけですね。
  62. 井上亮

    井上政府委員 下期決算の内容をただいま検討いたしておりますので、幾らという額まではまだ明確につかめないわけでございます。これはただいま審議中でございますので、もう少したちますと対象企業あるいはその交付すべき額の大きさという点が検討されるかと思いますが、目下のところ、その額が幾らかということははっきりいたしておりません。
  63. 滝井義高

    ○滝井委員 上期九億五千万円出した、しかし、下期は幾ら出すかわからない。そうすると、いま四月ですから、三月の決算の終わる分についてさえわからなければ、いわんや、ことしの景気の動向その他から、これは需要と供給の関係なのですが、ことしは必ずしも需要はよくないんですよ。九月の決算というものは、よほどしっかりやらぬと、景気が上向いてきても、需要がそうよくならないということになると、やっぱりこの分についても相当要る。ところが、予算に五十億三千二百万円と額を計上したからには、何かそこに根拠がなかったら、五十億三千二百万円というはしたまでついた予算というものは出てこないわけですよ。四十年度の下期分についてどのくらい、それから、四十一年度分の上期分、九月期決算分について幾らくらいと、こう出て、そうして、それと今度は抜本政策とのからみ合いというものがどうなるのか。これは利子補給なんかしなくてもいい場合が出てくる。交付公債も利子補給も全部ひっくるめてやればいいですからね。六月に交付公債政策をとれば、元利ひっくるめてやるという政策だってあるわけでしょう。だから、その抜本策との関連いうのがどういうようにそこでかみ合っていくのかということです。というのが、利子というのはいわば負債の鏡なんです。これだけの負債があるからこそこれだけの利子補給をするということで出てきておるわけです。だから、たな上げをしなければならぬ、あるいは交付公債で処置しなければならぬ額というもの、それに見合ってこそ利子が出てくるわけでしょう。だから、抜本策との関係というものを十分われわれは配慮しておかなければならぬと思うのです。
  64. 井上亮

    井上政府委員 抜本策の関係につきましては、ただいま審議中であることは御承知のとおりでございまして、今回の四十一年度の予算におきましては、抜本策が成立いたしますまで、特に実施に移るまでの過渡期におけるいわばつなぎ対策というような意味合いで了解いたしておるわけでございまして、そのつなぎ対策の中に、いろいろ近代化資金の問題もありますし、鉱害の問題もありましょうが、この利子補給制度が非常に大きなウエートを占めておることは御指摘のとおりでございます。  五十億の積算の根拠というお話でございますが、これは、私どもの調査によりますと、昭和四十一年の三月末の残高につきまして調べてみますと、開発銀行が約五百二億、合理化事業団が三百十七億、鉱害基金が十三億九千万円、中小公庫が二十億あるわけでございます。合計いたしまして八百五十四億三千万円ほどございます。これが一応政府関係の、先ほど申しました、対象を拡大いたしました再建資金とかその他、財政資金関係の四十年度末の残高でございます。これが八百五十四億になります。それから、なお、採択率がございます。先ほど申しましたように、黒字配当会社には利子補給はしないという、ただいまそういう方針をとっておりますので、内容を審査いたしまして採択するわけでございますので、採択率を大体八七%くらいと考える。それに利子補給、これは全額でございますから六・五%をかける。かけますと、大体四十八億くらいになります。それに市中の利子補給を加えまして、大体五十億程度というふうに考えておる次第でございます。
  65. 滝井義高

    ○滝井委員 私がこの抜本策を問題にするのは、板木策というのは、いままで私たちが巷間いろいろ配布されているものを読んでみますと、長期無利子の財政資金で肩がわりするということになっているのですね。そうすると、六月に抜本策が出ると、これは利子を払わなくていいことになるわけですね。だって、長期無利子のもので債務をみんな肩がわりしてやるのですから、再度利子補給してもらわなくてもいいことになるわけですね。そういう政策になるかどうか知らぬけれども、閉山・合理化の過程の中で生じた異常債務を財政資金で長期無利子で肩がわりするということになると、中小炭鉱の陳情を聞いてみましても、聞くところによるとそんなものを大手のほうに無利子でやる、それなら棒引きと同じだ、われわれにも、こう中小の人たちも言っておりますからね。だから、そうしますと、これは利子補給なんか要らなくなるわけですよね。十一月とか十二月にこんな五十億三千二百万円を計上する必要はない。いわゆることしの三月の決算期、いわゆる下期の決算期までの処置については、これは利子補給が必要だと思うのです。しかし、その抜本策があるならば、いまあなたの言うように、四十一年度四十八億の利子補給が要る、その他を入れて五十億ということになりますと、この中から一体四十年度分がどのくらいあるかちょっとわかりませんけれども、多賀谷君は半分くらいじゃないかと言っておりますけれども、どのくらいあるかわからぬ。わからぬけれども、五十億三千二百万円については、四十年度の下期分だけを計上しておけば、あとは全部長期無利子の財政資金で肩がわりしてもらえば利子補給は要らなくなるような感じがするのですがね。どうもそこらあたりがはっきりしないものだから……。
  66. 井上亮

    井上政府委員 抜本策の内容はいま審議中でございますので明確ではございませんが、少なくとも中間答申で抜本策の方向は明確にうたわれておるわけでございまして、それによりますと、御指摘のように、長期無利子の財政資金によって、閉山・合理化過程において生じました過重な負担を処理するという方針に相なっておるわけでございます。この内容、程度につきましてただいま審議中でございますが、ただ財政資金だけについて言えば、これは全額について肩がわりできますならば、それは利子補給はまさに重複いたすわけでございますから要らないと思います。ただ、しかし、中間答申でうたっております異常債務の肩がわりと申しますのは、これは当然市中銀行の融資も対象になっておりますけれども、いわゆる石炭鉱業が閉山。合理化過程で無理をしてやってきたその過重な債務、これを肩がわりする。過重と申しますか、異常債務と申しますか、とは一体何ぞやという議論をただいまやっておるわけでございまして、これは、人によりまして、異常性、過重性というのはなかなか問題があるわけでございまして、そうなりますと、政府資金の中にも明らかに閉山・合理化過程の中から生じた過重な負担と思われるものがございます。それは私見で、まだ政府できめたわけでも何でもないわけですが、私見で言えば、たとえば整備資金というのは、まさに閉山・合理化過程から生じた過重な負担であります。その他、設備・運転資金、再建資金等につきましてもそういう問題はあろうかと思いますけれども、この額が一体政府関係でどの程度になるか、市中関係でどの程度になるかという点がまだ明確でありませんので、少なくとも過重な負担というからには全部ではない、ということになりますと、やはり現状におきまして利子補給制度は依然として炭鉱経営の窮状からしまして必要である考えます。  なお、四十一年度の予算につきましては、抜本策がほんとうに実行されますのは、六月に答申がありましても、やはり予算措置あるいは必要があれば法律措置を講じなければ実施ができないということでございますから、六月以降の臨時国会、もし臨時国会が何らかの都合でそういう審議ができなければ次の通常国会、ここで御審議をいただいて御承認を受けて実施するということに相なるわけでございますので、やはりどうしても、常識的に考えますと、この抜本策の実施は、早くて年末、おそければ次年度ということになりますが、次年度というのは非常に不幸なことでございますので、できるだけそういうことのないようにしたいと思います。いずれにしましても、今回の抜本策は、相当国会審議を要する問題が多かろうと思いますので、タイミングとしてはそういうことになろうと考えております。したがいまして、少なくとも上期決算の利子補給ぐらいは実施するということをいたしませんと、つなぎにならないという実情にあろうかと思います。
  67. 滝井義高

    ○滝井委員 大体わかったようなわからぬようなあれですが、非常に不確定要素が多くて、四十年度内にその方向を明白にして、四十一年度からは実施するといわれておった抜本策が六月になる。そうすると、六月に結論が出ても、臨時国会その他の関係があって、結局次の年になるかもしれないというような、なかなかあやふやな要素の多い政治季節になったわけですね。そうなれば、四十一年度から実施すると言っておったものが、だんだん延びて四十二年度からになるなんということでは、これは笑われるわけですよ。だから、これはもう少しふんどしを締め直して、石炭鉱業審議会の諸先生方その他を督励して早くやる必要があると思う。しかも、あいまいな利子補給を五十億三千二百万円しているけれども、いまのようなお話だと、これも足らぬことになるのです。これもやはり補正予算を必要とするということになりますので、これはもう少し積極的に構想を固めてもらって、こういう順序でやるのだということのスケジュールをはっきりしてもらいたいと思うのです。通産大臣お見えになるというのにお見えにならぬから、あと一問でやめますが、ぜひそうしてもらいたいと思います。  それから、この前私は管理炭鉱と言ったのですが、再建資金の貸し付けを受けることになった企業、これは四つぐらいあるのですが、この取り扱いというのは一体利子補給の中ではどういう形になっていくのか。それから、抜本策をとる場合に、これらの企業というものは一体どうなるのか、どういう位置づけがされることになるのか、それをひとつ明らかにしていただきたい。
  68. 井上亮

    井上政府委員 滝井先生がかつて前におっしゃいました管理企業、私は特別援助炭鉱と称しましたけれども、あるいは再建炭鉱と称してもいいかもしれませんが、再建のために政府が援助したということでございます。そういった種類会社がただいま御承知のように四炭鉱ございます。この四炭鉱につきましては、これは四十年度の利子補給の際から、財政資金については全額利子補給するという特別措置を講じております。四十一年度におきましても当然そういう措置が継続されるということになります。それから、特別援助炭鉱につきましての特色は、いわゆる中間答申でうたわれております異常債務の肩がわりというような措置が現在ないわけでございますので、これにかわります便法として、やはり五年間元本のたな上げというような措置を関係金融機関の協力を得ましてやっているというような実情でございます。  それから、なお、今後の抜本策との関連でございますが、抜本策が出たから管理炭鉱はまたさらに特別にどうなるということはございません。おそらく、抜本策につきましては、一般的な炭鉱の援助策ということになろうと思いますので、個別のところまでいま特に配慮いたしているわけではございません。肩がわりにつきましても、一般的に個別企業を審査して、過重な負担というようなものの認定を何らかの機関で確認をして実施していく、あるいはその他の助成策についても、やはり一つの制度的な形で運用していきたいというふうに考えておりますので、いわゆる特別援助炭鉱、再建企業について特にということは考えておりません。ただ、中間答申のあの思想で抜本策が答申されますれば、これは常識的に、従来の再建企業、援助炭鉱に実施しました以上の助成策が一般的な施策として加わるのではないかというふうに私は考えますので、その面では、この四炭鉱は、この抜本策が出ますれば、それ相応にまた安定の基盤がふえるというふうに考えております。ただ、しかし、現状は、日炭を除きますと、他の三社は、必ずしも経理審査会で検討いたしました当時の再建計画どおり成績をあげているとは考えておりません。少しまだ、行き足らぬ、計画より下回っているという面がございます。これは何も企業労使が悪いとは必ずしも言い切れませんので、若干この計画にズレが来ているという面がございますので、抜本策あたりが出て従来に増した援助策が出ますれば、それだけ安定度を増していくという姿になろうかと思います。
  69. 滝井義高

    ○滝井委員 市中銀行からの設備資金、整備資金というのを今度四十一年度の上期の決算を基礎にして拡大をしてますね。そうすると、この四つの援助炭鉱については、これはどうなっておりますか。四十年度分からはすでにやっておりますか。
  70. 井上亮

    井上政府委員 四十年度につきましては日炭だけが——御承知のように、要するに、日炭の施業案を不認可にした、ああいった経緯もありまして、日炭についてのみ市中融資についての利子補給もしておる。他はやっておりません。
  71. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、いまの御説明によりますと、日炭は計画どおり乗っている、他のものは計画どおり乗っていないということになると、他のものについて、財政資金に全額六・五%の利子補給を見てやるということのほかに、どうせ四十一年度の施策として市中から借りている設備資金や整備資金に利子を見てやろうというならば、何か考えてやる心要があるんじゃないですか。
  72. 井上亮

    井上政府委員 もちろん、四十一年度に、整備資金とかあるいは鉱害基金の残高につきましても全額利子補給を追加したわけでございますから、そういった面は当然いわゆる再建四社についても享受できるというふうに考えております。  ちょっとまだ私ことばが足りなかったわけでございますが、日炭については、出炭計画については経理審査会で検討しました出炭計画を上回っております。したがいまして、全般的に成績はよろしい一わけでございますが、ただ、ややこまかくなりますが、日炭については、土地の処分等がやはり計画の中に入っているわけですが、それがまた日炭再建資金の一助になるわけですが、この土地処分が必ずしも計画どおり順調に行なわれていない。したがって、資金的にはやはり苦しい事情にはあるというような問題がございます。
  73. 滝井義高

    ○滝井委員 ぜひ政務次官にお願いをいたしたいのですが、利子補給と抜本策との関連等もきわめて重要でございますので、具体的なスケジュールというか、とにかく、あいまいもこたる形でなくて、もう少し、六月には必ず抜本策をつくる、そうして次の臨時国会にはこういう形で利子補給の問題や抜本策を処理していくという腹をきめておいてもらわぬと、いまのようにだらだらといっておって、いつの日に抜本策ができるかわからぬということでは困ると思うのです。そこで、この際、経理審査会なり石炭鉱業審議会等、これらの問題をおやりになっておるところに厳重に大臣のほうから申し入れをして、六月までに必ず出せという期限を切ってやる形にしてもらいたいと思うのです。会期をたとえば一カ月延長するとすれば、これは六月の中ごろになってしまうのです。延長された場合には、六月の初めごろまでには国会に出せる、概要が報告できるというくらいにはしてもらいたいと思うのですよ。われわれのいないうちにちょこちょことやってしまって、われわれが知らなんだ、固まってしまってからわれわれ教えてもらうということでは、ぼくらは了承できないとこの前から言っておるわけですから、できればこの国会の終わりくらいまでに中間報告をしてもらうというくらいはやってもらいたいと思いますが、政府としてはそれができますか。  それから、委員長にもお願いをいたしたいのは、ぜひひとつ、この国会が終わるころ、五月十八日には終わるのですから、十日か十五日ころには、一回石炭鉱業審議会の委員にでも来てもらって、そうして抜本策の中間報告、状況報告等ぐらいはやってもらいたいと思いますが、委員長、それはできるでしょうか。
  74. 野田武夫

    野田委員長 滝井委員にお答えしますが、できるだけ御趣旨に沿うようにいたしたいと思います。
  75. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 おそくとも六月中くらいには決定いたしますように、大臣にもよく御趣旨を伝えておきます。
  76. 滝井義高

    ○滝井委員 これで終わりますが、最後に、この法律の十七条であったと記憶しておりますが、それに、いままでいわゆる役員の欠格条項で「国家公務員」と書いておった、それを「政府職員」と改めるというのは、これはどういう理由ですか。国家公務員でもいいはずなのに、どうして政府職員としたのか。結局、高級官僚がおもに行く、だから、国家公務員というとおかしいから政府職員としたのか。政府職員というと高級官僚みたいなイメージを持つわけですね。そういう意味でこれは書いたわけですか。
  77. 井上亮

    井上政府委員 これは高級職員の意味ではございません。やはり、文字どおりの意味で、広い意味でございます。特別の意味はございません。これは、法制局が明確に規定しようというような趣旨から、もっぱら立法技術上の考え方で直されただけで、特に高級公務員とかいうような意思はございません。
  78. 滝井義高

    ○滝井委員 どうも、国家公務員というほうが正確であって、政府職員というほうがあいまいな感じが、私、しろうとから見るとするのです。国家公務員という現行法をどうして政府職員と変えなければならぬのか、理由がわからぬのですよ。政府の職員だけですから、そうすると、地方公務員は入ってもいいということになるのですね。そこが何かちょっとわかりかねる。  それから、もう一つは、政党の役員を欠格条項から抜いたわけですね。これは、この法律ばかりじゃなくて、今度国会に出ている事業団関係の法律もみんな抜いているわけです。これは、今後われわれ代議士もなれる、こういうことですね。政府の方針、政策をそういうように転換したと考えていいですね。
  79. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりでございます。
  80. 滝井義高

    ○滝井委員 わかりました。じゃ、これで私の質問を終わります。
  81. 野田武夫

    野田委員長 多賀谷君。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 今度事業団が採掘権の設定または採掘鉱区の増加を出願するわけですが、事業団自身が隣接鉱区を持たなかった場合は採掘鉱区の増加というのはありませんか。私が聞かんとしておるのは、採掘鉱区というと一定の面積を必要とするわけですね。ですから、鉱業権の設定が要るわけです。そうすると、事実上、現在隣接鉱区で稼行している鉱業権者が、放棄しまたは事業団が所有しておる鉱区を掘りたい、こういう場合に、必要な鉱区が採掘権のユニットだけない場合には、一応鉱業権の設定をしなければならぬ、その鉱業権の設定をした中で、さらに隣接鉱区からの増区を認めなければならぬ、こういうことになるわけですね。そうすると、まるまる鉱業権の設定をした分が必要である場合はともかくとして、必要でない場合には、残った鉱業権というのは消滅するわけです。というのは、鉱業権のユニットがないわけですからね。そういう形になるのですか。
  83. 井上亮

    井上政府委員 御質問の趣旨がちょっとわかりかねる点があるのですが、もう少し何か具体的な例でお話しいただけますと明確になると思います。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 条文でいきますと、「事業団が当該区域の全部又は一部を区域とする採掘権の設定」という場合には、これは事業団の鉱区が隣接にない場合ですね。それから、事業団の鉱区が隣接にあれば、採掘鉱区の増加の出願という形であらわれる。その設定または増区をした鉱区をさらに現在隣接において稼行しておる鉱業権者に譲渡する、こういう形になると思うのです。そこで、私が質問をしておりますのは、消滅した鉱区の場合に、隣接をし稼行している鉱業権者は新たに鉱業権の再復活をするほどの鉱区の鉱量は要らない、それほど必要はない場合、しかしぜひその隣接の鉱区の増区を願いたいというわけですね。こういう場合に一応事業団が消滅鉱区について設定または増加をするわけですから、その場合に採掘権の設定を事業団がやる。それには面積があるわけですね。ところが、隣接からほんとうに譲り受けたいというものはそれだけ要らないわけです。ですから、その一部を増区するという形になるわけです。そうすると、残った分は結局消滅するという形になるのですか、こういうことを聞いておるわけです。
  85. 井上亮

    井上政府委員 ようやくわかりました。まだ少しわからぬ点がありますが、もう一ぺん私なりに理解した点を反すうしながらお答え申し上げます。  合理化事業団が消滅鉱区を再活用しようといいます場合に、消滅鉱区について鉱業権を取得する必要がある、あるいは隣接しておる場合に増区をするというようなことをいたすわけでございますが、そうしたものを、今度はそれに隣接する現に稼行中の鉱業権者がほしいと言った場合に譲渡する、こういう改正をいまやっておるわけですが、その場合に、事業団の持っておる、新たに取得した鉱区の一部がほしいのであって、全部がほしいのでないという場合に、その一部譲渡ができるか、こういう御質問だと思いますが、その場合は、もちろん事業団としては一部譲渡が可能でございます。ただ、しかし、その場合は、事業団は、あと要らない、またすぐには使わない遊休鉱業権、遊休鉱区を再び持つということになりますので、通常の場合は実際問題としてはそういうやり方はしないのではないか。むしろ、今回の鉱区調整の趣旨は、消滅鉱区あるいは事業団の買収しました保有鉱区、これに隣接する鉱業権者の、これは資源の活用とか、あるいは当該事業者の経営の改善というような点、もちろん、先生方御指摘のありました保安に対する配慮、あるいは鉱害に対する配慮はして鉱業権を取得しなければいかぬわけでありますが、そういう実態があって事業団は出願をする、それで鉱業権者になる、あるいは増区する、こういう行為になるだろうと思いますので、ある程度実態の調査をした上で実施するのではないか、また、それが合理的ではないかと考えますので、実際問題としてはそう問題はない、また、一部でも可能であるというふうに思います。
  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 やはり一部しか私の質問がわかっていないのです。事実問題として、現在稼行中の隣接鉱区の鉱業権者がある区域をほしいという場合、その区域は実は法定の鉱区面積がないのです。鉱区面積がないから、事業団は法定の鉱区面積だけの鉱業権の設定をしなければならぬわけです。そうしないと鉱区にならない。初めから全部は掘る意思がないのです。ところが、鉱業法によって、その鉱区面積の最低限度のユニットを持つ設定をしなければならぬ。そこで、手続上どうしても残存区域というのが残るわけです。ところが、残存区域はユニットがありませんから消滅するのです。事業団が保有できないのです。自然消滅をするという形になる。なぜ私が聞くかというと、こんなややこしい手続をなぜしますか、こういうことを聞いておるのです。なぜしますかというのは、あなたのほうが事業団を媒介にしてこの法律立てておるからそういうことになる。事業団が新たなる鉱区の設定さえしなければ、こういうややこしい問題は起こらぬ。隣接鉱区から直接増区の申請をさせればいいのでしょう。ですから、こういう二重のややこしい法律をなぜつくりますかと、こう言うのです。しかし、この法律によれば、ユニットの面積がなければ鉱業権の設定はできないから、これは実情に沿わぬではありませんか、こう聞いている。
  87. 井上亮

    井上政府委員 ようやくわかりました。そこで、先生おっしゃいますように、現に稼行中の鉱業権者が隣接の必要とする区域だけを増区すれば足りるじゃないかというおことばで、事業団がやりますと一定の法定面積に満たないことのないような体制でやらなければいかぬ、そうすると非常におかしな矛盾も起こるではないかというようなことでございますが、事業団をなぜ媒介さしたかということでございますが、私どもの考え方としましては、他の現に稼行中の鉱業権者が隣接しております消滅鉱区について任意に増区の出願なりあるいは鉱業権の取得の出願をする、そうしてそれを通産省が許可するというような形よりも、むしろ、消滅鉱区について一番実態を知悉しておりますのは事業団であり、あるいは非常な保有鉱区もあるわけですし、一ぺん事業団所有にして、それから事業団が譲渡するという形式をとりましたほうが、さらにいろいろな面で慎重を期すことにもなりますし、役所の煩瑣な事務を簡易にして、しかも丁寧に実施する、役所役所なりに鉱害の見地なりあるいは保安の見地から監督いたすという形がとれますので、事業団を特に媒介さしたということでございます。いずれにしましても、先生の御心配のようなことにはならないので、結局、稼行中の隣接鉱業権者の方としては、事業団保有鉱区のうち、いわゆる増区で足るとおっしゃいました区域、これの取得は事業団からの譲渡を通じまして可能でございますから、実際にはいわゆる隣接稼行中の鉱業権者に迷惑はかけないはずであるというふうに考えております。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは、この際は一応事業団を媒介として、面積その他については鉱業法の特例を設けたらどうですか。消滅した鉱区を復活するなんて特別なことをやるわけですから、これは法律も特例ですから、その場合にはユニットの面積がなくてもいいという特例を設けたらどうですか。そうしないと、鉱量の計算とか、金を払う時期とか、いろいろややこしい問題が起こる。やはり、事業団としては、ユニットとしてこれは全部買ってもらわないと、あと若干残って、それが自然消滅をしたなんといったら、これはだれのものになるのか、これだっておかしいですよ。自分は新たに設定して、そしてある部分だけ増区によって譲渡した。残った部分はユニットがなかったから自然消滅した。これはすぐ出願する人があったら一体どうするか。そのことを知っておればすぐ出願できる。これはたいへんなことになるのです。一回復活しておりますから、残存区域について何らの権限もない。合理化法の適用を受けないですよ。これは法律論争としては手続の問題で、大きな問題じゃありませんけれども、ややこしい問題が起こるのです。たとえば、そのもう一つ隣の鉱業権者がおりますと、もうそれは全く無主物の何ら権利のない、白紙の残存区域になる。ですから、別の隣接鉱区に増区願いを出させれば、これは金も何も出さないでも取れますよ。というのは、鉱業法によると、採掘権の認可、許可の停止条項が残存区域についてはなくなっておる。ですから、反対側の隣接鉱区から瞬間的に増区申請を出させれば手に入ることになる。ですから、これはむしろ、鉱業法の特例として、ただし書きかなんか設けて、そういう面積等については例外だということにするかなんかしたほうがいいんじゃないですか。これはいろいろの問題が起こりますよ。
  89. 井上亮

    井上政府委員 私は、多賀谷先生の御心配のようなケースというのはまず起こらぬというふうに考えておるわけです。と申しますのは、やはり、事業団が消滅鉱区を復活させる出願をしまして、事業団が鉱業権者になるという場合、これはこの法律の改正でやるわけですが、それをします場合に、ただでたらめに消滅鉱区の復活をさせるわけじゃありませんで、やはり、その地域の総合開発といいますか、隣接鉱区との総合開発、一体としての活用というような総合開発的な見地で、周辺の稼行中の炭鉱のあり方等を勘案しまして、必要によってまた要請もあって鉱業権を取得するという形をとりますので、実際問題として、先生御心配のような弊害はこれによって起こらないというふうに考えております。
  90. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 では、私、ちょっとこまかいことですけれども、順を追うて質問いたしますと、三十五条の六に、「通商産業局長は、廃止事業者が放棄した採掘権又は租鉱権の鉱区又は租鉱区の区域について鉱業権の設定若しくは鉱区の増加の出願又は租鉱権の設定若しくは租鉱区の増加の認可の申請があったときは、当該反域については、その出願を許可し、又はその申請の認可をしてはならない。」と、こうありますね。先ほど申しましたように、事業団が再活用をするために再び採掘権の設定をして隣接鉱区の鉱業権者に一部を譲渡する。その後採掘区域の増加をせしめる。残った区域は法定の面積がありませんから、自然消滅をしたその区域については三十五条の六の本則は適用ないでしょう。
  91. 井上亮

    井上政府委員 残った鉱区、つまり残った区域は一応事業団に鉱業権が残ると考えております。
  92. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱業権はなくなる。鉱業権は自然消滅するんですよ。もう事業団の権利でなくなるんですよ。封鎖鉱区でもなくなるというんじゃないですか。
  93. 井上亮

    井上政府委員 先生のおっしゃる意味は、質問して恐縮でございますが、法定区域に満たなくなるという意味で鉱業権はなくなる、消滅する、こういうふうなことでございましょうか。
  94. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうです。
  95. 井上亮

    井上政府委員 その場合には、ですから、ケースによって違うと思うのです。要するに、事業団の鉱業権を設定しました区域、範囲が非常に狭いために、その増区相当のところがなくなったためにこれがだめになるというときは、救済策としては、その区域を一体として譲渡するという以外になかろうかと思います。ですから、そういう場合もあろうかと思いますが、通常の場合は、一部譲渡ぐらいのことをしても、他に鉱業権が残れば問題はない、これは法定面積の関係で。ですから、どうしても残らぬということであれば、これは一体としての譲渡であるというふうに考える以外にないと思います。
  96. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、少なくとも増区を願う場合には、鉱業権設定の最小面積は必要である、こう考えざるを得ないでしょう。隣接の稼行業者が増区を願う場合には、少なくともユニットの採掘権に必要な面積の出願は必要である。事実上そうですね。そうしないと矛盾が起こります。
  97. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりでございます。そのとおりでございますが、ただ、実際の場合、多賀谷先生が先ほど来言っておられます、法定面積に足りるぎりぎりの区域に合理化事業団が鉱業権を設定して、そうしてそのうちのほんのわずか一部を譲渡するというような場合は、おそらく、隣接の鉱業権者としましては、むしろそういうケースのほうが少ないので、やはり消滅鉱区一体として活用するというほうが多いのじゃないかと私は思います。また、非常に微量な増区ということもちょっと常識的に考えられないわけですから、実際問題としては、一体として譲渡してもさほどの弊害は起こらないと考えております。
  98. 野田武夫

    野田委員長 伊藤委員から関連質問の申し出があります。これを許します。伊藤君。
  99. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 局長が答弁されておられる点で、隣接鉱区から消滅しておる鉱区に炭があるからその部分を増区をしてくれという場合は、これはきわめて明らかになっているのですが、それでなくて、それと全然反対なほうに炭がある、しかしそこには隣接鉱区はないということになってくると、その消滅しておる鉱区に炭がある、その部分は隣接鉱区もありませんから、それは新たな鉱業権、いわば試掘権か採掘権、当然採掘権になりましょうが、それは新しい一つの採掘権の鉱区を許可するということになるのですね、隣接はないから。そういうものを許しますかどうですかということなんです。
  100. 井上亮

    井上政府委員 そういう場合は許しません。あくまでも、今度の改正法案では、「その採掘権の鉱区及びこれと隣接する採掘鉱区に係る鉱床を一体として開発することが著しく合理的であると認められる場合」という規定をいたしておりますので、先生おっしゃるような場合は該当しないというふうに解釈しております。
  101. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その点を明らかにしておいてもらいたいと思って……。
  102. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どうも、採掘権の設定ということを事業団がやったものですから、非常にむずかしくなっておるのですよ。ですから、私が言っておるのは、事実上、施業案の認可も、それから採掘権の取得も、あるいは処分も、これは一体でなければいかぬだろう。もっとも施業案が時期によっては分離するということもありますけれども。  そこで、たとえば、これに伴って、いわゆる処分をした場合の譲渡料というか、これの換算にも一つは影響があるのですよ。なぜかというと、ユニット全体について最初からいわば譲渡料をとる、料金をとる、これをトン当たりで幾らという形をとるとするなら、いまでも非常に困難な炭鉱業者にかなりリスクをかける形になる。そこで、出炭をしたトン当たりについてとるということになると、それはきわめて妥当な状態になる。まずそれはどういうようにお考えですか。
  103. 井上亮

    井上政府委員 譲渡します場合に譲渡料をいただくわけでございますが、この譲渡料は非常識に高いものになろうとは私ども考えておりません。一つの目安としましては、事業団が買い取りましたときの価格、あるいは消滅させましたときの交付金、国から支出しました金額、これが常識的には一つの参考になろうかと思いますが、あるいは時価というような考え方もありましょう。しかし、時価といいましても、ホスコルド方式から考えれば、ほとんど炭鉱現状においてはそうたいして価値のあるものではございません。したがいまして、譲渡料については、ただいま大蔵省当局と折衝中で、考え方につきまして検討中でございますが、私は、そう高いものにはならないというふうに考えております。
  104. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、これをむしろ、よく炭鉱でやっておる租鉱料のような形で、出た出炭に対してとる、こういう方向のほうが正しいのではないかと思うのです。一回つぶした炭鉱をやる場合には、企業としては、保安の事故とは別に、やはり危険があるわけです。もっとも、かなり確実なものでないと許しはしませんけれども、しかし、危険はあるわけですね。ですから、譲渡料を納めただけでもう企業がいかなくなったということも考えられるでしょう、かなりの面積の場合には。ですから、負担を少なくする意味においても、まずなるべく確実な面積だけを譲渡してやるということも必要であろうし、それからまた、譲渡料についても出炭に応じてやる。いよいよそれを受け入れる事業団そのものが廃止をされるという、こういう時期についてはどうするかということもやはり考えなければならぬだろうし、そのときにはどこへ納めるかということも考えなければならぬし、永遠に合理化事業団があるわけではないでしょうから、その際には将来を見通して考えざるを得ないでしょう。しかし、少なくとも当初の出発においては、これはいまの石炭界の実情を見て、やはり出炭に応じて譲渡料をとってやるというのが妥当ではないか、こういうふうに思いますが、どうですか。
  105. 井上亮

    井上政府委員 先生の御意見も、私は非常に参考になる意見だと思っております。しかし、租鉱料といいましても、これはどの程度が妥当かというむずかしさにおいては、やはり譲渡価格の設定とそうたいしてむずかしさに違いはないわけでございますし、やはり譲渡というたてまえをとったほうが、あとでというよりも、その鉱区を新たに取得する、再活用をはかる、現に稼行中の隣接鉱区の鉱業権者の責任観念等の観点から言いましても、私は、租鉱料を徴収するというよりも、むしろ譲渡するという形で、自後の責任をやはり隣接のその鉱区を欲しております鉱業権者に持たせるというほうが、全体の体制としてやはりすっきりいくのじゃないか。租鉱料の設定自身がやはり相当むずかしい問題でございます。ですから、譲渡料の設定のむずかしさとむしろ同等ではないかというふうにも考えますし、そうなりますと、むしろすっきりと譲渡料をきめてあげて、自後の採掘の責任、これを鉱業権者にまかせるというほうがすっきりしはしないかというふうに考えるわけです。
  106. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは、すっきりというなら、先に払わしたほうがすっきりします。そのことを言っているのじゃない。そのことが逆に企業を弱めるのじゃないかと言っているのですよ。というのは、いまでもお金がないわけでしょう。それにいわば将来の前払いをやれというわけでしょう。そうすると、それだけでも企業負担になるでしょう。いまいろいろな政策をして石炭を助けてやろうというのに、将来十年なら十年、十五年なら十五年掘るものを前払いをせい、こういうこと自体がおかしいことはありませんかと言っているのです。
  107. 井上亮

    井上政府委員 おことばを返すようで恐縮でございますが、租鉱料形式というのも確かに一つの考え方ではあると思います。その意味では、この譲渡料についてはまだ検討しておりませんが、参考にいたしたいと思いますけれども、しかし、消滅鉱区を再活用したいというだけの鉱業権者につきましては、多賀谷先生もかねておっしゃいますように、やはり、保安に対する責任とか、あるいは、よってきたる鉱害についての処理の責任ある態度とか、あるいは一定の技術能力、あるいはそれだけの鉱区を獲得して迷惑をかけないでやっていくだけの相応の資金的なあるいは経理的な裏づけを持った方でないと安心して譲渡できないというようなことがございますので、おそらく、この法律案が通りまして申請されます、また事業団から譲渡する相手企業は、やはり相当しっかりした企業でなければならぬというふうに思いますので、よたよたした企業に鉱区を譲渡はできませんから、その意味では、そう問題はないのじゃないか。ただ、譲渡料は、そう高くして国がもうける思想は要らないわけですから、できるだけ低位にきめたいというふうに考えております。
  108. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いまよたよたしない企業がありますか。石炭運賃だって払えぬというのでしょう。鉱害だって、政府から八割以上の補助を得たいと言っているのでしょう。いま、隣接鉱区がほしいなんて言っている炭鉱で、よたよたしないのは一つもないですよ。三井も三菱もよたよたしているんですよ。そして政府が利子補給までしているんですよ。それなのに、政府が今後十年なら十年稼行する区域の譲渡料を一度にとるという手はないじゃないか、こう言っている。局長は、これはあまりよそに迷惑をかけないでやれるのですから、こういうところで自分でやればいいんですよ。それを、十年分とかあるいはかなり長い間の、五年なら五年でもいいですけれども、そういう炭量について前払いをさせるという。わずかの鉄道運賃でも延納しなければならぬというような炭鉱に酷ではないか、こういうふうに私は思うのですよ。いま、三井でも三菱でも、わずかな金をほしがるでしょう。政府から借りたがるでしょう。ですから、結局この譲渡料をまたどこかから融資をしなければならぬなんていうことになるわけですよ。一般金融機関は貸さないから政府が貸してやる、それをまた利子補給をしてやる、そんなばかな政策をとるべきではないと思うのですよ。どうなんです。
  109. 井上亮

    井上政府委員 この鉱区を取得するために政府から資金を貸さなければならぬというようなことは、いまのところ考えておりません。譲渡料につきましても、いまの石炭産業から見まして、それほど高いとは思いません。たとえば、これは多賀谷先生よく御存じのように、現在これはまだ大規模ではなくて、その意味では政策的な御批判を受けなければいかぬと思いますけれども、鉱区調整を、中小炭鉱と大手炭鉱の間、あるいは大手相互の間で現実に行なっているわけでございますが、それは私企業相互間の譲渡でございますから、相当鉱区調整の対価は高い場合があるわけですけれども、消滅鉱区の活用に際しまして、私どもといたしましては、そう売り買いのかけ引きも要らないわけでございますので、やはり社会的に公正だと思われる対価でよろしいわけでございますから、そう巨額なものにはならないというふうに考えますと、現在でもそういった鉱区調整は行なわれているわけでございますが、私は、そういう形で一応譲渡はできるのではないか。問題は、対価のきめ方をどうするか、これを実情に合うようにしなければいかぬというお説かとも思いますが、この点については、全く私どもそう考えておりまして、国は特にもうける必要はないわけでございます。まあ社会的に見て許される範囲の低率なものにいたしたいというふうに考えております。
  110. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 どのくらいとるのかちょっとわからないから、議論ができないのですけれども、事業団が算定をする鉱区ですね、事業団は政策的に、いわばあとの処理として鉱区の買い上げをやるわけですから、それをもって律することはむずかしいのではないかと私は思うのですね。ですから、一体どのくらいを考えているのですか。大体、法律を出して通過さすときには、そのくらいのことをよく協議をして出さなければいけませんよ。われわれ議論ができぬでしょう。一体どのくらいを政府は考えられていますか。
  111. 井上亮

    井上政府委員 譲渡件数といたしましては全国で大体二十ぐらいを考えておりますが、さしあたって、この法律が通りまして直ちにでも実施に移れそうな地点といいますか、それは大体十カ所ぐらいだろうというふうに考えております。
  112. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 金額は。
  113. 井上亮

    井上政府委員 金額は譲渡料の問題にからみますので、譲渡料は、いまのところ一応交付金の額等を参考にしながら時価できめるというような考え方で、いま話し合っております。
  114. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 時価というのは何ですか。
  115. 井上亮

    井上政府委員 先ほども申しました鉱区調整等におきまして、つまり、鉱区を売買しております——売買というとおかしいですが、鉱区調整しますときの対価の世間の一般的な額、あるいは、先ほど先生からもおっしゃいました租鉱料等もいろいろ参考にしてきめたいと思います。つまり、いま大手炭鉱、中小炭鉱等なりで租鉱料があるわけでありますが、それもやはり参考にしたい。しかし、一般の鉱区調整についての譲渡価格も参考にしなければならぬ。それから、ホスコルド方式的な考え方も考慮に入れなければならぬ。これでいきますとほとんど安くなる。それから、将来の収益性等も参考にする、さらには消滅鉱区について交付しました国の交付金額の算定の基礎等も参考にするというようなことでいろいろ考えまして、一番低い線でできるだけきめたいというふうに考えております。
  116. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 大体鉱区は出願によって先願主義で取得できるのですから、本来、その手続以外は、ただですよ。ですから、国が譲渡料をとるということが、政策の上から言って今後非常に問題があると私は思うのです。それが結局、やみと言えば何ですが、先願主義によって取得したものが売買される。大体、鉱業権の譲渡というものの考え方というのがおかしいですよ。一回国に返還をして、国がまた出願を許可すべきですよ。鉱区は、かつては国の所有とするとあった。ですから、そういうものの考え方はおかしいのですが、長い間の商慣習になっておりますから、それを私はとやかく言いませんけれども、合理化事業団が買い上げるというのは、政策的に買い上げているわけです。ただ、算定の基礎として鉱区の鉱量を見ている。本来、つぶれるような鉱区についてそういう算定をするのがおかしいのですよ。それは、私が申しますように、労働者の賃金であるとか、あるいは鉱害の量であるとか、あるいは他の債権者に対する債務であるとかいう点から見て、円滑に閉山を処理できるということによって行なうべきでしょうけれども、従来のように鉱量によって算定する、これは実におかしい。しかし、それはやむを得ぬとしても、これは政策的なものですね。ですから、本来、新鉱開発もむずかしいというときに、これから金をとろうというのが大体おかしいのですよ。しかし、私はゼロとは言いません。ゼロとは言いませんけれども、これをいま行なっている租鉱料のような基準で行なうとか。買い上げ代金を中心としたその基準で考えるとかいうこと自体がおかしいんじゃないですか。少なくともこの企業がやっていけるかどうかということによって算定をすべきでしょう。しかし、幾ら確実である価格といっても、やはり炭鉱のことですから、全くわからないのですよ。ですから、譲ってもらって若干やっておった、ところが、どうしてもうまくいかなかったということだって起こるわけですね。そうすると、譲渡料を出したために企業が非常な負担になっていくということだって起こり得る。ですから、私は、これについては出炭に応じてやるか、あるいはいまの出炭年数、稼行年数を見て年賦で行なうかですよ。何かこういうようにして長期支払いの方法を講じてやらなければ、結局譲渡料に必ず金融をつけなきゃなりませんよ。金融をつければ、あなたのほうはまた利子補給をしなきゃならぬですよ。そういうややこしいことをしないで、むしろそれならば年賦なら年賦でやる、あるいは月賦なら月賦でやる、しかもそれは、大体その出炭をかなりするだけの期間の余裕を見るとか、何かそういう方法をぜひ講じてもらいたい、かように思います。
  117. 井上亮

    井上政府委員 譲渡料の問題につきましては、ただいま一言で時価ということを申し上げましたが、ただ、御指摘のように、時価の見方が非常にむずかしいわけでございます。そこで、私、時価というもののいろいろなきめ方、これについてのいろいろな考え方を申し上げたわけですが、やはり、その中で一番実情に合いますのは、鉱区の自然条件とかあるいは販売先等の立地条件、これは運賃のかかる地域であるかどうかというような点もありますので、それぞれの鉱区によってみんな事情が違うと思います。それから、同時に、この消滅鉱区を再活用する趣旨が、いつも申し上げておりますように、資源の活用とあわせて鉱業権者といいますか石炭業者の経営の改善に裨益するというような二つの目的を持っておりますので、したがって、その後者のほうの観点からしますれば、それを再活用する鉱業権者、これがまた鉱害をほったらかすような鉱業権者では困りますけれども、そうでないという前提に立って考えますと、そういった鉱業権者がやはりそれを活用し得るに足るものでなければならないというふうに考えるわけでございますから、この譲渡料はそう高いものにはならないであろうし、また、したくない。すればまたこのせっかくの消滅鉱区の再活用という趣旨が生きないわけでございますから、これが生きるような譲渡料の設定を考えてまいりたいというふうに考えております。  それから、支払い方法については、これは検討いたします。ただ、初めから政府資金を融資してというところまでは考えられませんが、やはり、実情によりまして、先ほど申しましたような資源の活用、それから当該鉱業権者の経営の改善というような趣旨から言って、いろいろな意味で分割してでもどうしてもそうしたほうがプラスになるという場合には、そういう点も考慮できるかと思います。この辺は今後の研究問題として前向きに検討してまいりたいというふうに考えます。
  118. 野田武夫

    野田委員長 次会は、明十四日午前十時から理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時五十七分散会