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1966-04-06 第51回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月六日(水曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 有田 喜一君 理事 藏内 修治君    理事 始関 伊平君 理事 多賀谷真稔君    理事 松井 政吉君       大坪 保雄君    上林山榮吉君       神田  博君    中村 幸八君       西岡 武夫君    野見山清造君       三原 朝雄君    滝井 義高君       中村 重光君    細谷 治嘉君       伊藤卯四郎君  出席政府委員         通商産業政務次         官       進藤 一馬君         通商産業事務官         (重工業局次         長)      赤澤 璋一君         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         通商産業事務官         (公益事業局         長)      熊谷 典文君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君  委員外出席者         通商産業事務官         (大臣官房審議         官)      田中 芳秋君         通商産業事務官         (石炭局調整課         長)      千頭 清之君     ————————————— 本日の会議に付した案件  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第五三号)  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)  産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五五号)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  内閣提出石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。質疑の通告がありますので、これを許します。多賀谷真稔君。
  3. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 四十一年度の需給関係については、後ほど公益事業局長その他の局長が見えてから質問したいと思います。  そこで、法案について質問をいたしますが、まず、今度の法案の大きな改正の柱でありますところの、従来合理化事業団買い上げまたは交付金交付によって封鎖をした鉱区をさらに開発をする、こういう問題ですが、これは、いま役所で予定されているのは大体何カ所ぐらいあるわけですか。
  4. 井上亮

    井上政府委員 ただいま私ども調査いたしておりますが、全国で大体、該当するであろうと思われますものが、少なくとも十件ぐらいあるんじゃないかというふうに想定いたしております。
  5. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは一体埋蔵量にしてどのぐらいになるのか。さらにまた、そのことによって隣接鉱区の稼行しております鉱業権者はどのぐらい鉱命を延長することができるのか。要するに、この改正法案の出た効果といいますか、利益といいますか、そういうものを概略的にお話し願いたい。
  6. 井上亮

    井上政府委員 先ほど、この法案改正いたしました暁に該当するであろうケースが十件程度あるということを申し上げましたが、いま各現地について調査をいたしておりますが、なおまだもうちょっと検討を要するものもありますので、そういったものを入れますと、二十件近い件数がいま私ども調査の上にのぼっております。そのうちで、さしあたってすぐにでも活用できる、また開発効果もあがると思われますものが十件程度でございますが、いま私の手元に資料があるわけですが、全体を寄せておりませんが、件別でややこまかくなりますが、少し申し上げてみたいと思います。  トータルにつきましては後ほどまたお話し申し上げたいと思いますが、まず、九州の地区では、御承知大島炭鉱三菱崎戸——崎戸はまだ生きておるわけですが、一部消滅した鉱区もあるわけです。この大島崎戸との調整を行なうというようなことをいたしますと、六百二十万トンぐらいの実収炭量の増が見込まれます。それから、なお、糒炭鉱につきましては、周辺につぶれました方城とか新方城とかいろいろあるわけでございますが、こういうようなところと合わせますと、これまた実収炭量といたしましては四百万トン近いものが見込まれるのではないか。ただ、実収炭量と申しましても、経済炭量にはどのくらいなるかという問題がございますが、一応実収炭量と申しております。それから、下山田炭鉱が、上山田炭鉱消滅鉱区鉱区調整することによりまして、二百万トン近い実収炭量の増になるだろう。それから、三菱の古賀山につきましては、北方という消滅鉱区があるわけですが、これをやり直すことによりまして、これまた、これはまだ実収炭量は不明でございますが、相当な効果があるのではないかというふうに考えております。  あれこれ寄せますと、大体おそらく二千万トン近い実収炭量増加になるのではないかというふうにいま想定されております。
  7. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この鉱業権が一応消滅をして、それがまた復活するといいますか、そういう場合に、消滅した鉱業権設定した抵当権というのは生きてこないのですか。
  8. 井上亮

    井上政府委員 それはもう生きないというふうに了解しております。といいますのは、交付金交付いたしますときに、一応そういった債権債務関係をきれいに整理いたしておりますので、そういった登録をしたものを再び合理化事業団鉱業権設定する、そうして譲渡するという形になりますので、復活はしない。一ぺん債権債務関係が切れておるというふうに了解いたしております。
  9. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 必ずしも債権債務整理はされませんよ。その関係は、整理をしたものもあるでしょうが、大部分は整理をされない。法律的には整理をされない場合が多いのですね。ですから、この心配はないですか。そう言うならば、法律上の根拠を示してもらいたい。
  10. 井上亮

    井上政府委員 合理化臨時措置法施行規則の第二条の四でございますが、石炭鉱山整理促進交付金交付をするに際しまして通産省令一つ基準を定めておるわけでございます。この基準の第三号、第二条の四の第三号に、「採掘権の放棄の場合にあっては、その採掘権の上に抵当権設定されていないこと。」ということが基準として定められております。そういうような意味合いで、ただいま申しましたようなことになろうと思います。
  11. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 法律上の問題ではなくて規則として、抵当権設定を最終的にされておるものは買い上げない、要するに、交付金を出さない、こういうことになって、事前の処置として行なわれておるということで、その問題はない、こういうように了承したいと思います。  そこで、私が一番心配をいたしますのは、従来の封鎖並び買い上げられた鉱区をさらに再開発をする場合に、保安の問題について十分慎重な配慮を特別にしなければならないと思う。終山をいたしました場合と、その後の条件が水その他によって非常に違うかもしれない。あるいは、隣接鉱区のことですから、その出願をした鉱区隣接鉱区とのいわばその間といいますか、そういうような場合の鉱床の状態あるいはその後作業をする場合のいろいろな条件、こういうことについて、私は一番保安問題が心配でならない。もし一応買い上げ鉱区をさらに再許可をして大きな事故がありましたような場合には、これはたいへんな政治的な責任をわれわれ自身感ずるわけです。そこで、保安局としては、これをどういうように考えられ、チェックされるつもりですか。お聞かせ願いたい。
  12. 森五郎

    森政府委員 先生指摘のように、保安問題が確かに新しい鉱区について問題であろうと思います。特に、たとえば、いま石炭局長が例にあげました大島崎戸関係なんかは、もうあと一片盤か二片盤ばかり下がりますと、崎戸鉱区に入る。これはもちろん崎戸からやるよりも大島からいったほうが合理的であるし、あそこは大体、先生承知のように、非常にガス抜きをやっております。したがって、こういったものは比較的簡単に処理できるかというふうに考えられます。したがって、われわれのほうといたしましては、今度は、その消滅鉱区について新鉱業権者となった者から施業案を取ります。その施業案認可段階において、先生おっしゃるような点を十分チェックしてまいりたい。特に、一番私心配なのは、古い鉱区ですから、一応古洞があるわけです。古洞の水なんというものが、これは一番こわい。そこで、前の鉱業権者がやったときの坑内図面とか何かを十分整備いたしまして、要すれば、先進ボーリング、そういったようなことを内容に盛り込んで監督をしていくというふうに考えております。
  13. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、これは許可をする以前にやる必要があると思うのです。買い上げられた鉱区は、これは譲渡という形になるでしょう。それから、放棄した鉱区については、これは再度の許可ということになるのじゃありませんか。ですから、私は、その譲渡並びに許可の場合に当然調査をすべきではないかと思うのです。施業案段階でなくて、その以前の段階調査をする必要があるのじゃないかと思うのですが、これをひとつお聞かせ願いたい。
  14. 森五郎

    森政府委員 先生おっしゃるように、確かに、そういったチェックをしなければならないということは、われわれよくわかるのですが、ただ、出願許可するときに、それを施業案段階まで検討をやって許可するということは従来やっておりませんので、したがいまして、効果的には施業案認可のときにチェックができるのではないか。したがいまして、保安について十分検討をさせるという先生の御趣旨は、施業案認可のときのチェック十分目的が達せられるのではないかというふうに考えておるわけです。
  15. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 鉱区譲渡する場合、あるいは新たなる許可をする場合に、何か鉱区料をとるのですか。
  16. 井上亮

    井上政府委員 消滅鉱区につきまして合理化事業団鉱業権を取得いたしますときには、これは何もないわけです。何もないといいますか、登録を解除する手続だけになろうかと思います。ただ、今度、合理化事業団消滅鉱区鉱業権を一応取得した後に譲渡しますときには、譲渡料というものをとりたいというふうに考えております。
  17. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私が十分把握していないのかどうか知りませんが、この鉱業権譲渡をされた、すなわち事業団買い上げ鉱区、この場合には、事業団が所有しておりますから、鉱区鉱業権譲渡になるわけです。それから、放棄されたのは、事業団関係ないわけですね。ですから、これは新たなる出願者許可をするわけでしょう。
  18. 井上亮

    井上政府委員 鉱区調整のために、いままで消滅しました鉱区、これをどう活用するかという場合に、今度の法律のたてまえは、事業団鉱区消滅区域の全部または一部を区域とする採掘権設定、あるいはその採掘鉱区増加出願をした場合に、通産局長許可するという形をとっております。したがいまして、やはり出願手続採掘権設定手続をしまして、それを受けて事業団権利を取得する、そのあと譲渡する、こういう形式をとっております。
  19. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、最初事業団が放棄された鉱区について出願をし許可を得るわけですね。その後に稼行しようとする隣接採掘権者譲渡する、こういう手続になるわけですね。それでよくわかりましたが、そこで、その事業団譲渡する場合、隣接鉱業権者からその場合にはとるのですね。
  20. 井上亮

    井上政府委員 事業団譲渡しますときには一応一定の対価をいただきたいという考えでおります。
  21. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、保安局長施業案の時期では少しおそいのではないかと思うのです。役所施業案認可の際に保安上あぶなくないかどうかという点を審査するというのは、やはり不親切だと思います。それは金を払った後にやるわけですからね。ですから、むしろ私は、事業団出願をするか、あるいは事業団が少なくとも譲渡をするときには、これはやはり役所として一定基準をもって審査をする必要があるのじゃないか、こういうふうに思いますがね。
  22. 森五郎

    森政府委員 これはただいま石炭局長が御答弁申し上げましたように事業団出願するわけでありますが、これはおそらく試掘ではなく採掘願いになると思うのであります。これは一挙に試掘を経ないで採掘鉱区になるのではないかと思いますが、その場合は、一般的に許可の取り扱いとしましては、鉱物存在する、掘る価値があるという点だけで検討して許可する。そのほか、採掘上の制限とか、その上に公共物があるとか何とか、そういう点は考慮しますし、あるいは都道府県知事と協議するというかっこうにはもちろんなります。そういった別の制限はもちろんあるわけですが、その出願許可するときに施業案段階まで検討するということは、普通鉱業権出願の場合にはやってないわけです。しかし、今度事業団で所有をしましてこれを譲渡するという場合には、自分の財産を人に売るわけですから、その場合に、古洞がたくさんあるのに黙って事業団が新しい鉱業権者に売るということは考えられないわけです。特に事業団は国の機関ですから、その段階十分調査をして後に売り渡すというかっこうになりますから、先生のおっしゃる古洞の問題とかあるいは保安上の問題というのは、そのときに十分検討ができるのではないかというように考えておるわけです。
  23. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それは、あなたのお話事業団お話であって、役所保安局としてもする必要があるのじゃないですか。
  24. 森五郎

    森政府委員 これは、先生指摘のように、事業団は国の機関でありますから、われわれのほうが十分に連絡をとりまして、事前に十分なデータをとって、そういった保安上の問題について検討したいというふうに考えております。
  25. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはむしろ特別の場合ですから、私は、保安については、事業団譲渡する場合には保安について危険がないかどうかというチェック通産省はするというような一項が必要じゃないかと思うのですがね。普通の場合と違って、ことに水浸しになっておるのですからね。もう放棄したあと全部水浸しになっておるのを掘るのですから、これは普通の場合と違いますよ。出水事故というのは、御存じのように、何十名というのが一度になくなって、しかも遺体がなかなか出ない。事故が起こるとするならばこういう事故なんですからね。ですから、これはやはりむしろ修正をして、保安についての規定を入れる必要があるのじゃないかと私は思うのですがね。
  26. 森五郎

    森政府委員 先生指摘のように、保安についてチェックするということは、もちろん当然のことと考えておるわけです。ただ、手続出願という手続をとるものですから、鉱業法に一ぺん戻るわけです。したがいまして、鉱業法規定に基づきましては、いま先生のおっしゃったような点はチェックをいたしませんで、その鉱区における鉱物存在が明らかで、その鉱区鉱量とか品位というようなものが鉱業権設定に適すると認めたときには通産局長がこれを許可するというかっこうになっておりますから、そこにいま先生がおっしゃる保安の問題を入れるかどうかという問題でございまして、結局、実質的には、先ほど私が御答弁申し上げましたように、譲渡するときに十分チェックするということで目的は達せられるのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  27. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはもう少し念を入れたほうがいいと思うのですよ。そうしてこの許可通商産業局長がやるのでしょう。これは通産大臣じゃないでしょう。
  28. 森五郎

    森政府委員 通産局長でございます。
  29. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 通産局長ですから、鉱山保安局長とは全然別人格でしょう。通産大臣がやるなら、鉱山保安局長はその中に当然包含をされておる。しかし、通産局長がやるのですから、あなたのほうは言う権限は何もないのですよ。ですから、これはやはり、規定から言っても、どうしても保安問題を軽視するわけにいかない。普通の譲渡の場合と違うわけですよ。明らかに水浸しになったのを今度は売るわけですからね。これで事故でも起こってごらんなさい、大きな政治問題が起こる。一回買い上げたものを、金をもらってそれをさらに譲渡して事故が起こった。それは、だれが考えても、買い上げられた、放棄された鉱区はみな水浸しになっておるわけですからね。当然出水事故というものは予想しなければならぬ。ですから、これはひとつ十分あなたのほうで協議をして考えられて、修正案か何か出されたらどうですか。また、あなたのほうができなければ、こっちから出しますがね。
  30. 井上亮

    井上政府委員 ただいまの多賀谷先生の御意見はまことにごもっともでございまして、特に消滅鉱区を再び復活させて再活用するに際しましては、私どもとしましても、消滅鉱区性格性格だけに、特に保安の点については留意した施業案許認可をしなければいかぬというように考えております。ただ、法律のたえまえからいたしますと、今回の改正法案鉱業法一般原則に基づく改正条文になっておりますので、やはり、たてまえはあくまでも鉱業法一般原則に基づく許認可をやっているということになります。ただ、今度権利設定、あるいは譲渡ができるという意味は、もう御承知のように、合理化法消滅鉱区については再活用できないということになっているのを解除する、禁止を解除する条文だけを今度お願いしたわけでして、事前事後の諸手続につきましては鉱業法一般原則に従って厳正に許認可を行なっていくというたてまえでございますので、その点は御了解いただきたい。ただ、実際問題として、今度は運用の問題になりますと、普通の場合には、鉱業権設定し、鉱業権だけは持っていて、実際に採掘行為に入るときに施業案認可を受けるというときに、時間のズレや何かある場合が相当あるわけでございまして、今回の場合は、時間のズレがそんなにないだろうと思います。といいますのは、そこに施業案設定をして採掘に移りたいという希望もあり、かつまた、そうさしたほうが石炭政策の上から見て資源の有効活用になるという場合に、事業団鉱業権の、また消滅鉱区の再復活のための出願をするということになりますので、通例よりも鉱業権設定施業案認可との間隔がわりあいに狭いということは実態だと思いますので、そういった一連の行為の中で、やはり鉱業法一般原則に従いまして、特にこの保安の問題については厳重な審査をして、事業団といえども行動をとりたい。やはり二重にチェックすることになると思います。事業団がそれを取得するという行為のときに、事業団としてたんねんにそういった調査を行なうと同時に、今度は国としては鉱業法一般原則に基づいて施業案認可に際して保安上の確たる調査をして認可するというような行為に移りたいと思いますので、先生の御注意を体しまして、私ども保安局と相協力して、そういうことのないように、保安に遺憾のないように努力してまいりたいというふうに考えております。
  31. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事業団採掘権処分に際して保安についてのいろいろな調査をやるといっても、費用なんか出ませんよ。どこから出すのですか。この費用出ようはないでしょう。
  32. 井上亮

    井上政府委員 御承知のように、消滅鉱区につきましては、かつて消滅いたしますときに、事業団交付金交付するわけでございまして、その際やはり、坑内関係図面、あるいは坑内実態についての調査、こういった点はたんねんにいたしまして、それに基づきまして交付金額の算定をいたしておるというような実情でございますので、その消滅鉱区につきましては事業団が一番実態面はよく存じておるわけでございまして、それにさらに先生指摘のような保安上の配慮を加えて、出願に際しては、そういったような過去の知識に加えて、その後の変化がございますから、保安上の注意を加えて出願をするというような行動をとらしたいというふうに考えております。
  33. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、結局、費用は出っこないし、書類審査に終わるわけです。それから、売る場合と保安とは観点が違いますよ。それはやはり、鉱量を計算する場合、まあそういうことはないと思いますけれども、いままでの売買においては、事業団を通じない場合には、掘ったところを掘らないようにして出したりしておる。ところが、今度の場合は、掘ったところを掘らないようにして出せば、それだけ水が来ておるわけです。ですから、たいへんなことになると私は思うのです。現実に末端まで行って測量器を入れて調査をするわけではないのですよ、実際は。ですから、私は、当然事業団がこの処分をするについてはそれだけの費用を組むべきだと思う。それは、国が補助金を出すか、あるいはまた、もう買い上げ料金なんかとらないで、要った費用はその買い上げ料金から控除してやる、こういうぐらいなことをやらなければ、とてもこれは、だれも事実上やりませんよ。書類だけで、これは図面がこうなっておるからだいじょうぶだ、こういうことになります。保安局だって、ちょっと出願処分の間は手が出ないわけでしょう。幾ら保安局と協議してやりますと言ったって、結局書類審査ですよ。ですから、これはやはり、事業団費用を持たして、そして調査をするというようなことをやらなければ、ちょっとむずかしいのじゃないですか。
  34. 井上亮

    井上政府委員 たとえば、この消滅鉱区についての保安上の危険といいますと、その消滅されました鉱区の山の性格にもよりますが、特に一般的に注意を要すると思いますのは、やはり、かつて採掘したあと鉱区でありますだけに、特に筑豊あたりにおきましては古洞存在等が相当あるわけでございます。それから水の危険もあるわけでございますので、そういった点が、消滅鉱区については、一般鉱区と違った一つの特色といいますか、特に留意すべき問題点であろうかと思いますが、そういったようなものにつきましては、事業団は、御承知のように、書面調査とおっしゃいますけれども、相当詳細な実地調査もいたしまして、みずから実地調査をいたしました資料その他を把握いたしておるわけでございますし、それから、さらに、実際問題として、今度は、譲渡する区域というのは、むしろまだ手をつけないで、将来採掘予定にしておったが、それは手つかずでそのまま企業の倒産とともにつぶれたというような鉱区の再活用になりますので、古洞地域まで含めてという場合も全然ないとは言われぬかもしれませんけれども一般的には、まだ未開発といいますか、手つかず鉱区についての譲渡という場合が多かろうと思います。ただ、しかし、そういった点は、いろいろなケースによって違いますから、事業団は十分に調査しなければいかぬ。同時に、これは保安局にも従来の保安観点から検査されましたいろいろな諸データもありますので、保安局あるいは現地保安監督部とも十分連携をとりながら、そういった点を確認した上で慎重にやってもらう。法律で要請される要請されないの問題、特に鉱業法のたてまえがそうであるないという問題でなしに、事実行為として、やはりダブルチェックになるかもしれませんが、先生の御指摘のような懸念もありますから、特にそういう方針でやらしてまいりたい。  それから、なお、その過程でやはり事業団が相当な予算を持ってやらなければおざなりの調査に終わるという懸念がかりにありますならば、私ども直ちにそういう予算化について努力してまいりたい。目下のところはそういった地点はあまりないかと思いますが、ただ、万一の場合という点がありますから、万一の場合でしたら、事業団手持ち資金をもってでもやはりある程度の金のかかる調査もしなければいかぬというふうに私思っております。実行の過程で、もしどうしても手持ち資金程度では、運用可能な範囲ではなかなか予算が足らぬというような事実が出ますれば、私ども予算化の努力をいたしたいというふうに考えております。
  35. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その消滅した鉱区が、いろいろな事情によって掘るべきところを掘らなかった、こういうことですが、ちょっと局長は誤解されておると思います。倒れた炭鉱の鉱区を、坑口から水をあげて掘るわけじゃないのですよ。全然逆に掘っていくわけです。ですから、幾らいままでの書面を見ておっても、違うのですよ。それから、古洞なんか、だれも掘ろうとして掘りはしませんよ。古洞にぶつかるのです。いままでの既往の炭鉱は、どちらかといえば調査をしていない方面から掘っていくわけですから、従来の図面を幾ら見て調べてみても、なかなか十分な調査はできないのですよ。その炭鉱は、もともとそういう方面から掘る意思がないのですから、逆のほうから掘っていくわけですから、調査が十分ないのはあたりまえです。掘っていくうちに、ここなら百メートルくらいはまだだいじょうぶだ、こう思ってやっておりましたところが、実はもうすでにその鉱区は掘れておったということで、水がばっと入ってくるわけですからね。ですから、局長、幾ら言われても、やはり金をつけてやらなければだめなんです。ボーリングをするとかなんとか言っても、これはもう金がなければできませんよ。事業団なんか、手持ち資金はないのですよ。使える金はないのですよ。ただ、払うべきものを払わぬで留保しておるからあるのでしょう。それは手持ち資金というものじゃないです。払わなければならぬ金です。そこへ使うべき金じゃないのですよ。ですから、新しく譲渡を受ける鉱業権者は幾らの鉱区料を払わなければならぬという予定をされておって、そして保安調査に非常に金がかかったという場合には、それから差っ引いて、ただでもいいと思うのですよ。どうせ日本の炭鉱はいま鉱区をただでもらってもなかなか採算がとれないのです。ですから、そんなに金をとる必要もないし、金をとっておいて出水事故が起こったなんという、こういうことはすべきではないので、本来ならば、納めるべき中から保安調査費として使う、当然その程度のことがあってしかるべきだと思うのです。しかし、それでも足らない場合もあるだろう。その場合には、保安局事業団に委託をしてもいいけれども調査をさす。そして、それは将来得べき利益の中からその新しい鉱業権者が払う。こういう何らかの方法をやっぱり講じておかないと、これは事故が起こる可能性が非常に多い、私はかように思います。これをひとつもう少し明快に、予算化に努力をしますということじゃなくて、現実、この法案を通過させるに際しては、どういう予算化をするつもりであるか、費用の捻出はどこからするか、これを答えていただきたい。
  36. 井上亮

    井上政府委員 ただいまの多賀谷先生の御意見はまことに私ども参考になる御意見でございますので、先生の御意思を体しまして、私どもそのような努力をしてまいりたいというふうに考えております。ただ、予算の問題につきましては、これはいま直ちにというわけにいきませんので、いずれ近い機会のそういった時期に予算については善処してまいりたい。それから、なお、合理化事業団譲渡いたしますときに譲渡料をいただくわけでございますので、やはりそこに収入もあるわけでございますが、その予算獲得については、わりあいに理由が立ちやすい面もございますので、できるだけ、そういった努力といいますか、実現するような方向にまいりたい。  ただ、しかし、一言申し上げておきたいと思いますのは、あんまり古洞があったり、その古洞の水にぶつかって保安上危険があるような地域は、消滅鉱区の再活用は私はさせたくないというふうに……(多賀谷委員「しないという意味ですよ」と呼ぶ)しないというふうに考えておりますので、一言申し述べさせていただきたいと思います。
  37. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私は、しないという意味ですよ。そういうところは許すべきでないと言っておるのです。ですから、なかなか費用の捻出もむずかしいだろうと思うのです。そのことも言っておきます。それで、これで一番心配なのは保安問題が心配だと思うのです。  そこで、これは買い上げまたは消滅した鉱業権者が再度事業団から譲渡を受ける権利がありますか。自分で売っておって自分で買うことができるかということです。
  38. 井上亮

    井上政府委員 それはさせないという方針にいたしております。あくまでも隣接鉱区からの隣接鉱業権者というふうに考えております。自分が売ったものをまた戻してくれというのは、一応考えておりません。
  39. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 いや、隣接なんですよ。Aという鉱業権者鉱区を確保しておりまして、いわばその一部を消滅または譲渡した、そして、後になって、いろいろ計画を立ててみると、やはりすでに買い上げまたは消滅をさせた鉱区開発する必要がある、こういうように考えた場合。これは案外多いのですよ。炭鉱というのはそういうところがわからぬから今日のような混乱を招いておるのですよ。一度鉱区の一部を分割をして、いま申しましたような譲渡または処分をした後に、さらにその鉱区を掘りたい。もちろん隣接からですね。すでにいま隣接は確保しておる。こういう場合です。
  40. 井上亮

    井上政府委員 消滅鉱区の問題につきましては、これは、前採掘権者といいますか、前の採掘権者はやはりみずから放棄したわけでございます。その放棄した理由は、経済的な、経営的な理由もありましょうし、保安上の理由もありましょうし、あるいは適当な技術者、技術能力その他がなくてやめたものもあるでしょう。いろいろありますが、いずれにせよ、前の採掘権者というものは一応その鉱区を放棄したわけでございますから、これにまた再活用を認めるということは、一ぺんその者に交付金交付して、あるいは買収した場合には買い上げ代金を支払って、一応消滅したわけでございますので、私どもの現在の気持ちでは、前採掘権者に再活用ということを認めますと、いま生きております炭鉱についてもちょっと悪例を残す。無計画、無方針で鉱区消滅させて、たとえば炭が足りないとか、また都合のいいときにはやる、また都合の悪いときには売りに出すというようなことも弊害があろうかと思いまして、私ども、前採掘権者には一応再活用は認めない。ただ、その鉱区隣接しておる採掘権者が自分の鉱区消滅しました鉱区を一体として開発することによって非常に資源の活用にもなり、かつまたその隣接採掘権者の経営にも裨益するというような場合に認めてまいるという考えをとっておるわけであります。
  41. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そういたしますと、Aという鉱業権者が、その一部は買い上げに出した、一部はBという人に譲渡した、それで、Bという人から、買い上げまたは放棄した鉱区分についてその譲渡を申請した、こういう場合にはどうしますか。
  42. 井上亮

    井上政府委員 そういう場合も、私の現在の気持ちでは、やはり認めますと、それを、そういう形態をみながとって、そういう方法を乱用するといいますか、悪用するといいますか、弊害も考えられますので、あまり認めたくない。といいますのは、Aの炭鉱の人が自分で一部は放棄した、一部はBに租鉱か何かで譲渡した、全部であってもけっこうですが譲渡した、そのときに、Bが消滅をさせた、それをAがまた再活用にかかる……
  43. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 違う。Bが消滅したほうの鉱区譲渡を申請した場合。
  44. 井上亮

    井上政府委員 Aが消滅をさせたものをBが……。この場合は私は検討問題だと思います。当初Aが自分の鉱区の一部を放棄した、Bは関係ない、Bはその後残りのものをもらって、かつての放棄したものを再活用する、これは私は検討問題だと思います。先ほどちょっと勘違いをいたしまして、悪用、乱用という話をしましたが、必ずしも該当しないと思いますので、検討問題だと思います。これらの点につきまして、私ども近くこの法律が通りましたら通産省令でそういった点を明らかにしたいと思いますが、方針としましては、前採掘権者には再活用はさせたくないということだけでして、ただいまの場合なら、場合によりましたらよろしいとも考えております。
  45. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 事実問題として、案外坑内というのはわからぬわけです。そうして、政府の方針が変わるように、会社の方針も変わるのですよ。ですから、悪用とかいう意味ではなくて、事実上放棄した鉱区をまた別の坑口から掘っていっておったら、案外近いところにある、それなら採算がとれるのじゃないかというので、掘りたいという希望が出てくる。こういう例はもう幾多あるのですよ。ですから、そういうことでなかなか方針がきまらぬわけですけれども、私はいまここで何とも言えませんけれども、事実問題としてはそういうことが起こり得る。そして、それは悪用でも何でもない。要するに、日本の石炭政策というのは行ったり来たりしておるわけですね。炭鉱離職者をどんどん出しながら、今度は労務者の確保をしてみたり、買い上げをしながら、また申請をさせて再開発をしてみたり、これはもういまのあなたのやっておる石炭行政は残念ながら行きつ戻りつしておるのが実態なんですよ。ですから、これについても、資源の活用という面から見て、高所に立ってどう判断をするかということで、十分考慮をして検討してもらいたい、かように思います。  そこで、なぜこういう問題が起こったかというのです。一回買い上げ鉱区を再度掘らなければならぬということは、一体どういうところから来ておるのですか。
  46. 井上亮

    井上政府委員 これは、率直に申し上げますと、本来ならば、ある鉱業権者が自分の鉱区消滅させる、いわゆる閉山をするといいましたときに、閉山の前に鉱区調整が行なわれるというような形が、ほんとうは一番好ましい、すなおなあり方だというふうに私は考えておりますが、先生承知のように、閉山以前における、生きている炭鉱そのほかにおいてなかなかこの鉱区調整がスムーズに行なわれないというような場合もありますし、それからまた、その時点におきましては隣接鉱業権者もまだその鉱区についてまでの確たる経営の見通しを立てていないというような実情もあって消滅をする。その消滅をしたあとで、また資源の活用とかあるいは隣接鉱業権者の経営の改善とかいうようなことのために活用したほうがいいというような判断になるわけですが、私は、本来なら事前にそういう調整が行なわれることが好ましい姿だというふうに考えております。したがいまして、今後いろいろこの消滅といいますか閉山があるわけでございますが、あるに際しましては、私ども事業団にも絶えず話しておるわけでありますが、事前にやはり隣接鉱区との調整というような問題が企業相互間に行なえることをできるだけ進めてまいりたいというふうに考えております。
  47. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これはやはり、ここに鉱区の統合問題が起こってくると私は思うのです。鉱区調整といいましても、Aという企業とBという企業で鉱区調整というのは非常にむずかしい。それは、従業員の側から言いましても、その鉱命が何年ぐらいあるかということは、自分の職場が何年ぐらいあるかということで、首切りにつながるわけですから、労働組合が階級的な連帯性と言っても、鉱区問題についてはなかなかむずかしいですよ。ですから、ここに私は鉱区合同の問題が起こると思う。  そこで、最近私のところに久恒鉱業から要望書が来ておる。各委員のところにみな来ておると思いますが、それには北松炭田の総合開発の問題が書いてある。そして、現在ある炭鉱の開発を統合して行なうならば、北松炭田の石炭を全部掘ることが可能であるということが書いてある。いまのままでいけばほとんど死蔵される、こういう提案がなされておるわけですね。そこで、一体これはどういう状態であるのか、これをお聞かせ願いたい。と同時に、この前常磐炭田の統合化をお話しになった。ところが、それがいつの間にか消えてしまった。これはどこに隘路があったのか。さらに、私が心配しているのは、この前予算委員会でちょっと聞いたのですが、中部空知というか、あるいは北部空知炭田というか、この地区も、各炭鉱みな立て坑を打っておるけれども、将来を考えれば、他人の鉱区の炭鉱を掘らなければやっていけないというところが相当多い。これらの膨大な投資をしておるわけですから、その立て坑の投資を償却するためにはどうしてもそうせざるを得ない。これらも、一体いまのように鉱区をばらばらにして開発できるかどうか、非常に疑問なきを得ないわけです。私はいま企業合同のことをあなたに言うつもりはないけれども、海運界はもう企業合同をやってしまったのだし、それから、いま自動車業界は御存じのような合同機運にある。製鉄のほうも、最近再編成の問題があり、製鉄事業法の問題が提起をされておる。こういうことで、産業界は今日再編成の中にある。ひとり炭鉱だけが、依然としてそういう形態を踏襲しながら、しかも買い上げ鉱区をさらに払い下げてやらなければならぬというようなみみっちいことをしなければならないか、こう思うのです。いま抜本対策とかいろいろ言われておるけれども、内部の抜本対策をどうしてやろうとしておるのか、お聞かせ願いたい。そこで、先ほど申しました、北松炭田、常磐炭田、それからさらに北中部空知の炭田について一体どういうように開発しようとするのか、お聞かせ願いたい。
  48. 井上亮

    井上政府委員 鉱区調整の必要性につきましては先生指摘のとおりでございまして、私どもも、今回、六月に予定いたしております石炭鉱業の抜本的な安定対策に際しましては、鉱区調整を思い切って断行するという方針を盛り込みたいというふうに考えております。ただいま御指摘のありました北松炭田の総合開発と申しますと、統合と申しますか、この問題につきましては、これは常磐炭鉱についても同様でございますが、昨年の夏に関係の業者の方々に御参集をいただきまして、常磐地区全体の統合について検討を要請したわけでございます。それから、同時に、北松炭田につきましても、同じような趣旨で、鉱区調整によるメリットのある区域について、これは御承知のように鉱区調整のメリットのないところにつきましてはいろいろ問題がありますが、ある地域については、やはり、統合といいますか合併といいますか、鉱区調整を伴う統合を考慮してみたらどうかという検討をお願いしたわけです。その後両地域につきましては各経営の責任者が相当真剣に検討されました。  まず、北松炭田でございますが、北松炭田について私どもがそういったことをしたほうがいいと思いますのは、御承知の、里山鉱業の国見炭鉱、それから、飯野の松浦、久恒鉱業の楠久、実は江迎も考えておったのですが、江迎は今回閉山になったわけでございます。そういった区域についてはやはり鉱区調整を伴う一つの総合開発の可能性があるんではないか、またそれが炭鉱の経営としてもプラスになるんじゃないかという私どもの見解を添えて検討をお願いしたわけでございます。こういうことは申していいか悪いかちょっと疑問でございますが、炭鉱は、先生承知のように、労働力に依存した産業でございまして、製鉄業やあるいは機械工業、造船業のようなものと違いまして、労働生産でございます。コストの半分以上は労務費だというようなこと。それから、原材料は使わない。坑内においていろいろ機械も使いますが、要するに労働力によって炭を掘り出す。もちろんベルトコンベヤーその他の近代化はやっておりますけれども、そういう業種でございまして、主として労働力に依存する産業である。したがいまして、働く者の気持ちが合致しませんと経営としてはうまくいかない。経営的に考えまして、私ども計算をいろいろいたしてみますと、統合合併のメリットも計算上は出てくるわけですが、今日までの多年にわたる石炭経営を見ておりますと、やはり、働く者の気持ちが一体となって、節度を心得て、規律も守りやっていく、気合いが合いませんと、経営はうまくいかない、こういう例が枚挙にいとまないわけでありまして、なかなかそういう気合いがいまのところ合わない。  常磐炭鉱についてもやはりそういう問題はありますが、常磐炭鉱はもう一つ別な要素がございます。働く者の気合いの合う合わぬというほかに、むしろ、常磐炭鉱については、それより経営者間の問題もございます。これは、御承知のように、常磐の茨城炭鉱、宇部興産の向洋炭鉱、この鉱区調整が一番メリットがあるというふうに考えておるわけですが、特に宇部興産側の事情もありまして、なかなか合意に達していない。しかしながら、私どもはこの常磐の統合についてまだ絶望をいたしておりません。条件が整えば成功する場合もあり得ると考えておりますので、そういった条件を整えるにはどうしたらいいかという検討をいたしております。しかしながら、現在のところは、特殊なそういう事情がありまして、その後進捗が見られていないという実情でございます。  それから、北空知の問題につきましても、これは鉱区調整の必要性があることは先生指摘のとおりでございますが、これについては、もう私どももやっておりますけれども、さらに、今後六月を目途にした抜本的安定対策を実施するに際しまして、客観的に見てそのほうが有利だというようなものにつきましては、断行してまいりたいと考えております。  ただ、鉱区調整に限らず、企業統合について先生いろいろ御意見を言われたわけでありますが、私の意見としましては、企業統合の必要性といいますか、そのメリットにつきまして認識をいたしておる者でございまして、できますればそういう政策も今後考慮してまいりたいと考えておりますが、一般的な議論としましては、先ほども言いましたように、炭鉱経営といいますか、あるいは石炭生産といいますか、そういった労働生産に依存しておる特殊な産業でございますので、やはり一番大事なものは働く者の気持ち、これがうまくいきませんと、せっかく形式的に統合がメリットがありあるいは経営上プラスがあるといっても、結果は逆になるおそれがあるということを心配しておりまして、その辺の見きわめが今後の統合問題の一番大きなかぎになるのではないかと考えております。
  49. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 局長、日本の炭鉱の歴史を見てごらんなさい。吸収、合併、整備。いまの常磐炭鉱だって、浅野系の炭鉱と大倉系の炭鉱が合併したのです。いまいろいろ言われておる中でも、三菱鉱業の中で各山を大正あるいは昭和になってからでも吸収合併したところだってあるわけです。また、戦後においてもかなり合併しているんですよ。従業員につきましても、労務者というのはあまりないんですよ。あなたは労務者が多いと言うけれども、労務者のほうはあまり合併に対していざこざはないんですよ。問題は、あるとするならば重役陣にあるわけです。労働者なんか、合併して企業が大きくなるほうを喜んでいますよ。ですから、労務者が大部分を占めるから特に炭鉱の場合はむずかしいという事情は、むしろ全然ないんですよ。他の企業よりもメリットから言えば多いんですよ。多いから、あなたのほうは、買い上げられた炭鉱をさらに再申請をして払い下げよう、こういうのでしょう。ですから、私は、実にそういう点の根本対策というのが誤っておりはせぬかと思う。これは、局長に話をしたって、大臣の問題でしょうから、いずれ大臣にさらに質問をしますが、先ほどお話しになったような常磐だって、終戦直前に合併をしたわけです。日本製鉄株式会社だってそうでしょう。当時非常な不況にあった輪西製鉄あるいは釜石鉱山あるいは三菱製鉄、富士製鋼、九州製鋼、それに官営八幡を入れて日本製鉄株式会社をつくったんでしょう。ですから、炭鉱がこんな苦労をしている今日、その次に再編成する苦労というものは、現状の苦労から見ればたいしたことないんですよ。よその企業でも、まだ繁栄をしているものを一緒にしようということさえ行なわれようとしているんですよ。どこの企業だって、一人前にやっていけるという自信があるのに、役所は、いやそれは無理だから、とても国際競争力がないからというので、現実に合併させようとしておるでしょう。ですから、私は、新鉱開発にしても、あるいは整理をするにしても、単位の多いほうがやりやすいのです。一社一山で退職金も払えぬような山をどうして整備しますか。できないのです。まあそれはまたいずれ質問しますけれども、要するに、この法案で、鉱区買い上げたのを再び払い下げをしなければならぬということ自体が、炭鉱の一つの宿命といいますか、炭鉱というものは本来そういうものである、こういうように私は考えざるを得ないわけです。  そこで、常磐なら常磐というものだけを統合合併させようとすると、先ほどお話がありました宇部興産の職員や労働者を一体どうするのだという問題が起こるでしょう。いま各企業は、北海道にも九州にもあるから案外バランスがとれておるわけです。ですから、そういう点を考えて総合的にやらないと、一カ所だけやるというのは、なかなか安易なようでかえってむずかしい。ですから、やる場合には総合的に全体を取り上げてやらないと、いまの北松炭田の場合でも、常磐炭田の場合でも、非常にやりにくい面がある。なぜおれのところだけやらすのか、こう言えば、それは当然それだけの理由がないわけです。ですから、私は、それは総合的にやってもらいたい、こういうように思うわけですが、これはまあいずれ質問をいたしたい、かように思います。  そこで、せっかく公益事業局長あるいは重工業局の次長が見えておられますから、この前実は保留しておりました質問をぜひしておきたいと思うのです。と申しますのは、石炭合理化法の一部改正がもうこの衆議院を通過する段階に、四十一年度の需給計画がまだ立たぬということでは、われわれ国会の責任者としてはまことに申しわけないと思ってお聞きするわけであります。  石炭局長、いままでスクラップをした炭鉱が、炭量にしてどのくらいありますか。
  50. 井上亮

    井上政府委員 御承知のように、炭鉱の整備と申しますか、鉱業権買い上げあるいは鉱区消滅ということをやりました一番最初は昭和三十一年度からでございますが、昭和四十年度までに合理化事業団が買収ないしはいわゆる新方式によります交付金交付鉱区消滅、あるいは保安による整理をいたしましたもの全体を合わせますと、今日までに二千四百二十四万トン整理をいたしたわけでございます。
  51. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 二千四百二十四万トンのほかに、第二会社になったのはどのくらいあるのですか。
  52. 井上亮

    井上政府委員 資料をちょっときょうは持ってきませんでしたから、正確な点はまた後刻資料で差し上げたいと思いますが、私がただ承知しております常識的な考えとしましては、各社大体第二会社をそれぞれ大手につきましては持っておりますので、十数炭鉱は第二会社でやっておるのではないかというふうに考えます。ごく最近でも、まず三井関係では、山野、田川。住友ではまた、北松にあります潜竜とか、それぞれたくさん持っております。北炭でも空知が第二会社。ごく最近では三菱が美唄を第二会社にしております。こういったものが最近の代表的なもので、全体としましては大体十以上にはなろうかと思います。
  53. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それで、少なくとも三千万トンくらい、あるいは閉山をし、さらに第二会社にして体質を変えた。昭和三十三年からざっと見てみますると、当時四千八百万トン、一番高いときで三十六年の五千五百万トン、これから今日五千百四十万トン程度になっておるわけです。しかも、そのうち三千万トンは体質が変わっておる、こう言えるわけです。石炭界はこれだけ大きな手術をしておって、そうして五千万トンの出炭を維持しておるのに、この需要がないということですね。これは私は非常に大きな問題だと思う。それは電力も鉄鋼も私はきついとは思うけれども、石炭の比ではないでしょう。ですから、日本政府としては一体どう考えておるのか。石炭が要らぬというなら、要らぬようにすればいい。石炭を掘れと言っても、買わないということになれば、一体どういうように持っていくのか。  この前からちょっとお話ししたのですが、私は公益事業局長に聞いてみたいのですが、少なくとも、第一次答申よりも、四十一年度に引き取りを願おうとしておる線というのは非常に低いんですね。それがどうしてできないのか。なるほど、三十九年、四十年には、第一次答申の計画どおり出ませんで迷惑をかけたわけです。しかし、この程度の石炭が使われないということになれば、私は、もう日本の炭鉱の体質改善の余地がないと思うんですよ。とにかく、五千万トンくらい、あるいは最高五千六百万トンくらいの山を、三千万トン入れかえたわけですよね。それだけの手術をしてもまだうまくいかないということになれば、一体どうしたらいいかということになる。それで、なぜこの程度のものが引き取ってもらえないのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  54. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 過去において、先生指摘のように、業界同士で四十五年等の数字をいろいろきめましてやっていたことは事実でございます。四十一年度についてどうして多く引き取れないかという御質問でございますが、御承知のように、電力の最近の需給状況を申し上げますと、これは短期的なものと長期的なものがあるわけでございますが、まず、長期的に申し上げますと、昨年あるいは一昨年当時におきましては、相当やはり経済は伸びるという判断を実はいたしてきたわけであります。業界が業界同士でいろいろ話し合いをします場合にも、大体そういうベースでやっておりました。具体的に申し上げますと、昨年度の四月ごろに四十五年度を見越した数字と、最近に至りまして四十五年の需給状況を見ました数字は、電力の量といたしまして二百億キロワットアワーくらい変わっております。減少いたしております。これは、御承知のように、石炭に換算いたしますと八百万トン程度の数字でございます。もちろん、電力業界といたしましては、そういう需用が落ちたからそのまま石炭を一時的に減すという考え方は持っておりませんが、大きく申し上げますと、長期的なそういう需給見通しが電力につきましても大幅に変わったという点が申し上げられるかと思います。  それから、四十一年度の問題でございますが、御承知のように、四十年度につきましては、千九百万トンという数字をお約束いたしまして、これを完了いたしております。ところが、四十年度の実情を申し上げますと、御承知のように、需用が落ちた。当初電力の伸びは九・五%というように考えておりましたところ、それが六%というふうな状況でございまして、キロワット数で申し上げますと、計画より五十億キロワットアワーくらい落ちた。これは石炭に換算しますと二百万トンくらいになるわけでございますが、そういうような状況でございます。それで、片や、水の出が比較的よかったものでございますから、水力が順調で、火力が全般的に需用の落ちに応じて落ちてきた、こういうことでございます。ただ、その場合に、石炭につきまして落とすということは石炭業界との関係もございますので、石炭につきましては約束どおり千九百万トン引き取りまして、油のほうを落とした、こういう形になっております。ただ、それでもやはり百万トンばかり昨年よりは貯炭がふえまして、三月末におきましては四百万トンをこえる貯炭を持っておる、こういう状況になっております。  四十一年度の見通しでございますが、私ども、当初は、やはり電力需用といたしましては九%以上伸びる、こういうような見通しを持っていたわけでございますが、最近の経済見通し、特に、最近きまりました四十一年度の政府の経済見通しによりまして需用を推定いたしますと、約七・五%程度しか需用がふえない、こういう見通しになっておるわけでございます。そういたしますと、その需給状況から申し上げますと、急激な増加はなかなかむずかしい、こういう一応の状況になっておるわけでございます。もちろん、今後、石炭政策とのかね合いもございますので、どの程度御協力申し上げるか、引き取らせるかという問題は目下研究中でございますので、先ほど、まだ結論が出てない、おそいじゃないか、こういうおしかりもあったわけでございますが、目下関係局とせっかく検討中であります。
  55. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 イギリスあたりは、電力用炭は八千万トンぐらい使っておるのでしょう。
  56. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 数字はいま手元に持ち合わせておりませんが、イギリスは相当多く石炭を使っている。これは、重油との価格の問題、それから山元発電の問題、いろいろあろうと思いますが、御指摘のように、日本よりは相当多く使っているというのは事実でございます。これはもちろん石炭の出炭量が日本より圧倒的に多いということもございますが、事実でございます。
  57. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ぼくは、四十一年度が二千百七十五万トンですね、この程度がどうして使えないかという疑問を持つのですよ。四十年度は、第一次答申のときは二千四百万トン引き取りを願いたいという話をした。これは石炭側も悪いのです、石炭が出なかったわけですから。ですけれども、千九百万トン取っていただいた。これは昭和三十八年度までのベースですね。供給能力がなかったわけですから、やむを得ない。しかし、やっと供給の能力が出かかったというときに、これはもう取らぬということになると、電力が相当取らぬということになれば、日本の石炭政策というものは全般的に見直さなければならないのですよ、ことに一般炭の場合は。ですから、電力と石炭の一体化というものが一番重要なことで、電力が石炭について理解がなくて、石炭は石炭、電力は電力というふうになれば、もう日本の石炭政策というものはできないと私は思うのです。ですから、この二千百七十五万トン程度がなぜ非常にむずかしいのか。一体、あなたのほうは、電力料金をきめる際に石炭の値段を幾らと見てきめているのですか。消費者物価はみな上がっているというけれども、卸売り物価の中にはかなり下がっているものもあるのですよ。要するに、生産性が向上するものは下がっているのですよ。電力は過大な投資もあったでしょう。一時的な国民の要請もあり、経済の要請もあったでしょう。ですから、無理をして投資をした時期もある。ですから、私は、電力料金が高くなるというある時期を認めたわけであります。今日、たとえば中国電力のごとく、要するに石炭の高い時代、そのときの燃料費を基準として料金がきまっておる。しかし、今日は燃料費が非常に安くなっているけれども、下げようとしない。しかも、あそこは、御存じのように、当時は水力が少なくて火力が多い。火力は水力に比べて非常にコストが高くなるというのできめたところでしょう。関西電力だってそうでしょう。やはり火力重点であったから、関西電力は、料金を長い間上げなくて済んだだけではなくて、定率の償却をしてもまだ余裕ができているという形でしょう。ですから、私は、電力を責めるわけじゃないけれども、電力料金の中には石炭二千百七十五万トン程度は引き取るだけの余裕がつけてあるはずだと、こう言うのですよ。だから、どうしてその程度ができないだろうか。しかも、需要供給の関係で電力料金はきまるのじゃないでしょう。これは政府がきめるのですよ。しかも、これは自由経済ではないですよ。地域的拘束力を持った独占価格ですよ。ですから、それだけに政府も保護をしなければいけないし、電力については料金もぴしっときめなければならない。しかも、配当はどこだって一割配当で、無配のところは一つもないでしょう。そうしてコンスタントに配当は続けられている。しかも定率で一〇〇%償却ができているでしょう。ですから、私は、この程度の石炭が、若干重油に比べて高いからといって引き取りができない、こういうことはあり得ないと思うのですがね。それは、私企業ですから、安いものを買うにこしたことはないだろうけれども、しかし、現在の料金の中には考えられておるじゃないか、こう言いたいのです。
  58. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 いろいろな点の御指摘がございました。  まず、二千四百万トンというお話がございましたので申し上げたいと思いますが、私の記憶間違いかもわかりませんが、私どもが了解いたしておりますのは、四十二年度におきまして二千三百万トン、もちろんそのほかに電発のほうで現在石炭火力をつくっておりますので、それが動き出しました場合は二百五十万トンを計上するということで、二千五百五十万トン、こういうように了解しておるわけでございます。  四十二年度の二千三百万トンと四十一年度の二千百七十五万トンという数字でございますが、先ほど申し上げましたように、私ども協力しないという意味ではございませんが、数字の上から申し上げますと、二千三百万トンをはじきました当時の電力需給というものと、最近の電力需給というものは相当やはり変わってきておる。したがって、そういう面から見て、ひとつ数字をはじき直してみるということも一つの試みではなかろうかというふうにも考えておるわけでありますが、とにかく、そういう事態になっております。それからまた、そういうことは別にいたしましても、先生指摘のように、石炭業界といまの電力業界というのは非常に経営的に違っているじゃないか、この程度の数字は協力できるべきだ、料金に入っておるのじゃなかろうかという御質問でございますが、私の感じを率直に申し上げますと、絶対にいまの電力業界で吸収でき得ない問題ではないと私は思います。ただ、先生も御指摘になりましたように、遺憾ながら現在の電力業界というのは私企業体制でございます。したがいまして、われわれどもの考え方といたしましては、とにかく重油を使います場合と石炭を使います場合はキロワットにつきまして五、六十円違うわけでございます。具体的に申し上げますと、現在重油専焼の大体の発電単価が二円六十銭、こういうことになっております。ところが、石炭火力でやります場合には三円二十銭というのが一つの常識になっております。したがいまして、六十銭ばかり、重油を使うことと石炭を使うことによって差があるわけでございます。そういう意味で、御承知のように負担増対策というものが設けられておりまして、石炭を引き取るかわりに多少政府もめんどうを見るという対策もでき上がっているわけでございます。四十一年度の負担増対策につきましては、あるいは相当石炭数量を引き取らなければならぬような問題も出るかもわからないというような感じもございまして、大蔵省当局とも、この負担増対策についてもう少し広げるべきではないかという議論もいたしたわけでございますが、何しろ、この負担増対策の財源と石炭対策の財源というのは共通でございまして、片一方が出れば片一方がへっ込むという関係に大蔵省サイドからは見ておるわけであります。そういう意味で、四十一年度におきましては負担増対策は大体四十年度の横ばいという線で終結したわけでございます。当時、その折衝の過程におきまして、石炭につきましては四十年より四十一年度がそう大幅にはふえないだろう、要請はないだろうという前提で実は収拾したわけでございますが、その後の状況を見ますと、出炭量自体が一般炭につきましては昨年よりそうふえたわけではございませんが、残念ながら、一般産業用が、極端といいますか、一割程度落ちてきた。約二百万トン程度落ちてきた。そのかぶりを電力は受けざるを得ない。私は、これは趨勢といたしましては一般産業用が落ちて電力が漸次ふえざるを得ない、かように考えておりますが、何しろ、急激にといいますか、思わざるところで一般産業用が落ちた。その落ちたものを電力にかぶるということでございますので、電力サイドから見ますと、先生がおっしゃるように経理的な問題は別にいたしまして、私企業体制でございますので、どうして一般産業用が落ちたのだろうか、あるいは政府が要請するならばどうして負担増対策についてもう少し考えないのかというような議論があるわけでございまして、私どもといたしましても、そこをこなしながらやはり協力願わないと、これはことし限りの問題でございません。おっしゃるように、電力と石炭というものが手を握っていきませんと、おそらく石炭産業も成り立たない、かような考えを持っておるわけでございます。円滑に両者の意思が疎通して円満に将来とも引き取れるように今後努力してみたいという意味で現在検討しておる、こういう実態でございます。
  59. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ちょっと石炭局長に聞きますが、第一次答申の出る前に、長期取引数量として、九電力に対して、三十八年度は千八百万トン、四十二年度が二千三百万トンであったわけです。それで、第一次答申は修正をしたわけですね。修正をして、三十八年度が二千五十万トン、それから四十年度が二千四百万トン、四十二年度が二千五百五十万トン、そういうことになって、しかし、電発に石炭火力をやらすということになって、電発が動くのは四十二年度からですか、そうすると、二百五十万トンを電発へ引き取らす、こういうことになれば、二千三百万トン、さっき公益事業局長お話しになった二千三百万トンになるのだけれども、一体四十一年度はどういうように当時見られたのか、それから四十年度、これをちょっとお聞かせ願いたい。
  60. 井上亮

    井上政府委員 長期計画の内容につきましては、ただいま多賀谷先生からお話のとおりでございます。当時はまだ、何と申しますか、年次別にぴたっとした数字で出さなかったわけでございまして、一応四十年の見通し、これは第一次調査団で出ておりますが、次は、四十一年度を飛ばしまして、四十二年度、それからさらに四十五年度以降というようなふうに分けてやっておるわけでございますが、これはなぜ年次別に組まなかったかといえば、これはやはり、電力のほうにも需給の問題もありましょうし、先ほど公益事業局長お話のように、やっぱりそのときの経済界の好況、不況等の問題もありましょうし、それから、石炭のサイドにも、大体五千数百万トン程度ということはありますけれども、まあこれも年によりまして百万トン多いとか少ないとかというような問題もありますしいたしますので、的確にぴしゃりとした計画もなかなか無理だろう。しかし、大体の目標はやはりはっきりきめておく必要があるという意味で、四十年度、四十二年度、四十五年度以降というようなきめ方をいたしたわけでございます。したがいまして、当時の考え方、解釈としましては、大体この上昇の趨勢値、これで判断して、具体的には両業界で話し合ってきめるというふうに考えておった次第でございます。
  61. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 それで、公益事業局長の言われる二千三百万トンと、第一次答申のいう二千五百五十万トンというのは同じなんですか。電発二百五十万トンと見れば同じなんですか。
  62. 井上亮

    井上政府委員 同じでございます。その後、第一次答申以後第二次答申で数字を修正したということはございませんから、同じでございます。
  63. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 同じというのは、公益事業局長……。
  64. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 私が了解していますのは、先ほど申し上げましたように、九電力関係で二千三百万トン、電発の二百五十を含めて四十二年度は二千五百五十、こういう数字でございます。
  65. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは、私の話しておるのも、両局長が話されておるのも、この点は同じですから、その数字には違いはないのですが、そこで、それから言っても、四十一年度の二千百七十五万トンというのはむしろ低いぐらいの数字だ、こういうことが言えるわけです。そこで、一回一回、毎年電力と石炭のほうで話し合ってきめるというようなことではなく、何か事前にルールがないのかどうか。とにかく、四十一年度になってからお互いに話をしておるわけですね。石炭のほうもきわめて供給不安定だし、電力のほうも、水という問題があって、石橋さんが通産大臣のときに、天気さんのことだからどうもしょうがないと言って答弁されたことがありましたけれども、豊渇水によって非常に違う。最近は昔のように豊渇水によるウエートが少なくなりましたけれども、しかし、豊渇水という問題がある。ですから、ここはやはり調整機能というものがどうしても必要だ。これはあとからひとつ石炭局長にもあるいは公益事業局長にも答弁願いたいと思うのですが、昨年のいまごろは、石炭が足らぬと言っておりましたね。電力会社でも石炭を集めるのに非常にお困りであった。もうことしは、石炭は余った、こう言う。どうもそういう点が、一方では、弾力的でない石炭企業の状態から、貯炭がかかえられないと言うし、一方では豊渇水という問題をかかえておる。これはやはりかなり恒久的な調整機能というものを考えざるを得ない、かように思います。  そこで、公益事業局長、便利のいいときには、電力というのは私企業だ、こう言うのですよ。何か都合が悪くなると、公益的立場があると言うのです。実に上手に区別をして使い分けをしておるのです。しかし、私企業ではあるけれども、何といっても公的色彩のある私企業ですよ。発生の過程から見ても、国の水という資源を使う面から見ても、それから地域的な独占形態を見ても、これは公的な色彩のある私企業です。各国がみんな公有化、国有化の方向に行っているのを見ても、しかも、私企業でも国の管理統制が非常に強いという面から言っても、やはり公的色彩というのは非常に強い企業である、こう言わざるを得ない。そこで、あなたのほうが協力されなければ、これは全くいまからの石炭企業というものは見込みがないのです。コストを安くするとかなんとか言ったって、現時点の無政策な重油輸入を行なっておったのでは、私は、どんなに石炭がさか立ちをしても、重油に追いつく、重油に対抗し得る価格安定というものはできないと思う。   〔委員長退席、始関委員長代理着席〕  そこで、これは早急にひとつ四十一年度をきめてもらうと同時に、恒久的な調整機関というものを考慮してもらいたい。少し供給が不安定になると、石炭が足らない、少し供給が過剰になると、もう余った余ったと言う。これが石炭界の労働者にも非常に不安を与えるし、もう出炭の意欲というものがなくなる。ですから、四十一年度の問題と、それから恒久的な問題、これを答弁願って、なおこれは両者でひとつよく検討してもらいたい、かように思います。
  66. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 四十一年度の問題につきましては、結果としては至急両者で検討することにいたしますが、お話の中にございましたが、四十二年が二千三百万トン、四十一年が二千百七十五万トンということで、それから見て多くはないじゃないか。ごもっともな御議論だと思いますが、ただ、お考え置き願いたいと思いますのは、四十年度が千九百万でございまして、それが二千百七十五万と一気に飛び上がった、それから、四十一年から四十二年にはあまりふえないという関係に、どちらかというとなるわけでございますが、先ほど申し上げましたように、電力のほうも毎年毎年の伸びがございますので、可能ならばやはりその伸びに応じて計画的に伸ばしていくという形を、これは根本問題にもつながるわけでございますし、石炭サイドでもお願いしたい、かように考えております。そういう考え方は、私は将来の問題につきましても非常に大事だろうと思います。実は、私が石炭局にも申し上げておるのは、ある年は少なくていい、ある年は急にふやせというのが一番困るのだ、やはり相当計画的にやってもらいたいということと、特にその過程におきまして一番の問題は、御承知のように、電力の面は比較的計画的にできるかと思いますが、ことしのように、一般産業が減りまして、急にそれをどうこうという問題が出るわけでございます。その点が、電力業界から見ますと、少し無計画的じゃないかという問題がございますので、電力サイドの問題だけでなしに、一般産業についても、これを計画的にどうするかという点もあわせて考えませんと、出たものをどこかで使わざるを得ない、結局は電力が使わざるを得ない、こういうことになるわけでありまして、石炭サイドもその点は十分御配慮を願いたいと申し上げておるわけでございます。  なお、四十一年度の問題につきましては、そういう観点からしますと、私どもの感じといたしましては、抜本策といいますか、六月ごろには長期的な見通しが出るわけでございまして、四十一年度も、可能ならばその長期的な見通しにつなげて、だんだんふえてくるという形が一番好ましいのじゃないか、それに応じてまた負担増対策をどうするかということも根本的に考えるということが一番望ましい、かように考えているわけでございますが、とにかく、四十一年度の問題は急ぐ問題でございますので、そういう考え方は持っておりますが、両局で至急に話し合いまして、できるだけ私のほうも早くきめまして御協力申し上げたい、かように考えております。
  67. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 何か恒久的な調整機関は。
  68. 熊谷典文

    ○熊谷政府委員 実質的に、いま申し上げたようなことでございまして、どういう機関をつくるかという問題は公益事業局長としては申し上げかねます。これはむしろ石炭局サイドでひとつお考え願いたい、かように考えております。
  69. 井上亮

    井上政府委員 調整機能の問題につきましては、先生承知のように、現在電力用炭販売株式会社という会社があるわけでございますが、これは貯炭機能までは持っておりません。単に、石炭の購入、販売、その過程における代金の授受というような業務だけでございまして、いわば、価格面の適正化をはかるとかいうようなことは、この機能をもってできるわけでございます。いわゆる需給調整、貯炭機能というようなところまでは、現在の電力用炭販売会社の機構では持っていない形になっております。この貯炭問題につきましては、いま始まった問題ではございませんで、前々から、石炭の需給調整のためにはやはり何らかのそういった機能が必要ではないかという議論があったわけでございます。特に、石炭につきましては、片や需要部門に対しまして、特に電力、鉄鋼、ガス等につきましては、長期引き取り計画というようなものもあるわけでございますので、相手の需要部門も計画的に原料の購入をはからざるを得ないという立場があり、そうなりますと、今度は石炭サイドでは供給責任があるということに相なるわけでございます。それが、やはり、電力サイドについても景気の変動等によって需給の変動があり、石炭サイドにも、先生承知のように、非常に出炭の好調な時期と不振な時期とあるというようなことがありますので、供給責任とか、あるいは計画的な販売、あるいは需給の調整ということがなかなかできにくい面があるわけでございます。そのために需要部門に迷惑をかけたり、そのことがひいては石炭の需要を失うという面もあるわけでございますので、私ども、かねがねそういった調整機能は必要であるというふうに考えておったわけでございますが、これはやはり一つの大きな政策的な踏み切りにつながる問題でございますので、今後この問題につきましては、私ども、現在検討しております中で真剣に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  70. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭局長が大手各社の社長を呼んで出炭の要請をしたのはいつですか。
  71. 井上亮

    井上政府委員 たしか八月の下旬か九月の初めごろだったと思います。このときは、需要部門から炭が足らぬといって非常におしかりを受けました。特に、上期の出炭は、先生承知のように、計画に対しまして百四十万トンぐらいショートしておった時代でございます。したがいまして、需要部門からもおしかりを受け、私どもとしても、先ほど申し上げましたような需要部門に対する長期取引という観点からいたしまして、供給の責任があるわけでございますので、業界にその計画の達成という問題を呼びかけた次第でございます。その後、下期は、業界労使奮起いたしまして、上期の出炭をほぼ取り戻す程度の増産をいたした次第でございます。
  72. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 政務次官、いま両局長から話をされましたように、石炭の供給にはきわめて弾力性がない。そして、いま非常に不安定な時期ですから、なかなかコンスタントの出炭をすることができない事情にもある。また、電力のほうも、一般経済のあおりを食うのは、これはもちろん他の産業も変わりありませんが、水という問題がある。ですから、豊渇水によって非常に需用が違う、こういう問題もあるわけです。そこで、幸いにして電力用炭販売株式会社というのができておるのですから、現在は法律によって貯炭等の調整機能を持つことはできるようになっておりませんけれども、これは法律改正すればできる。ですから、せっかくそういう機関があるわけですから、別に機関をつくるのでなくて、電力用炭販売株式会社にそういう調整機能を持つようにしたらどうかと思うんです。これは政策ですから御質問をしたいと思いますが、御答弁願いたい。
  73. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 ただいま多賀谷委員の御意見、私どもも非常に必要だと思うのでございますが、十分今後検討いたしまして進めたいと思っております。
  74. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 これは、抜本策を出すときにもやはり調整機能というものを考えなければならぬと思う。電気のようにコンスタントにいくものに対して、供給のほうが非常に不安定だということになれば、需要業界のほうにも非常に迷惑をかけるし、いまは石炭の値段が下がっておるからいいけれども、石炭の値段が上がる場合には、電力料金というのは固定化していますから、これはまた非常に問題がある。いまから石炭の上がるようなことはあまりないでしょうけれども、そういう問題だってなきにしもあらずですから、やはり検討を願いたい。   〔始関委員長代理退席、大坪委員長代理着席〕  そこで、ついでに鉄鋼ですが、原料用炭についてお聞かせ願いたいと思います。原料用炭だけは、日本でも足らないんだ、掘れ掘れ、こう言ってきたわけです。新鉱開発も、助成金を出して、一般炭とは区別してやってきた。ところが、原料用炭も余るということになると、これまた大問題です。これは需要があまりないのです。よそに売るわけにいかぬ。一体、重工業局としては、この問題についてはどういうようにお考えであるのか。まず四十一年度の問題を、あわせて今後の問題をお聞かせ願いたい。
  75. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 鉄鋼用の原料炭の問題でございますが、第一次の調査団の当時の答申、これは私どもよく承知しておりますが、その答申から見まして今日までどういう状況変化があったかということにつきまして、一、二申し上げたいと思います。  答申当時から見まして、四十年度あるいは来年度四十一年度、もう今年度になっておりますが、この中で二つばかり大きな変化があろうかと思います。  一つの点は、いわゆる強弱比という問題。銑鉄をつくりますときに強粘結炭と弱粘結炭が要るわけでございますが、この強弱比、この見方が、当時から見ますと非常に変わってきております。この変わってきました原因は、一つは、高炉が非常に大型化し高圧化してきた。現在は二千トン、あるいはいま建設中のものはすでに二千五百トンというような大型に高炉がなってまいった。したがいまして、これはいわゆる粘結の強い炭が余分に要るということになるわけでございます。さらに、もう一つの事情は、従来は強粘結炭につきましては主として米炭に依存してまいりました。アメリカの炭が相当多かったわけでございますが、その後、豪州炭その他、米炭に比べましてメリット計算をしても比較的安い炭が開発されてまいったのであります。そこで、こういった安い炭を買っていく、いわゆる輸入炭の転換問題というのがここ数年間急激に行なわれております。そういったような事情から、いま申し上げました強弱比というものの見込みが、当時考えておりましたものよりも相当変わってまいりまして、いわゆる弱粘の消費量が減ってくる結果になるわけであります。  また、もう一つの点は、現在まで、あるいは今後を見通してまいりまして、いわゆるコールレーショと申しますか、石炭比の低下の問題であります。現在日本は世界で三番目の鉄鋼生産国でありますが、私どもの見るところでは、高炉及び転炉の技術につきましては、おそらく世界の第一位と言ってもいいような技術を持っておろうかと思います。そういうような観点から、石炭比が思ったよりも相当下がってまいっております。  こういったような各種の事情からいたしまして、私どもは、昨年度、四十年度におきましても、当初の見込みよりも若干少ない数量、つまり、昨年引き取りましたのは約八百五十万トンでございますが、これも使用いたしました炭は八百二十八万トンでございまして、実際の使用量よりも実は二十万トンばかり余分に引き取りをいたしております。  こういうことで、四十一年度の問題を見てまいりますと、私ども当初考えておりましたよりもさらに石炭比が下がる。また、強弱比につきましても、いわゆる弱粘使用比が若干下がる。そこにもつてまいりまして、昨年、いまも公益事業局長からもお話しございましたように、若干石炭不足でございまして、この間何らかの穴埋めをしなければならぬということで、石炭局ともお打ち合わせをいたしました結果、豪州炭及びソ連炭につきましての長期契約を去年いたしております。こういった問題が重なっておりますので、四十一年度の引き取り数量につきましては、ただいま石炭局から内示をされておりますような数量につきましては、相当むずかしい問題があるのじゃないかということでございます。長期的に見ましても、いま申し上げました第一次、第二次の調査団当時の見込みからいたしまして、四十三年度、四十五年度につきましては、各種のバックデータになります点が変わってまいろうかと思いますので、なおその点につきまして十分検討した上で、四十一年度につきましては早急に話し合いを進めて実行いたしたい、かように考えておる次第でございます。
  76. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 強弱比はどのくらい変わりましたか。
  77. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 強弱比の推移をちょっと申し上げてみますと、三十七年当時、三十七年度の強弱比の実績が五三・一対四六・九でございましたものが、四十年度におきましては、五六・六対四三・四に変わっております。
  78. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この前もこの石炭特別委員会で鉄鋼を調査したときに、われわれ心配したわけですが、だんだん大型化になり、二千トンあるいは二千五百トンになれば、かたいコークスを要求するだろう、そうすると、いよいよ日本の弱粘は使われる率が少ないのじゃないかという心配を、伊藤先生と二人でしたわけです。どうも日本の産業は何でも一流の原料を使うのですね。日本の原料があるなしにかかわらず、一流の原料を使うパンなんか現実にそうでしょう。食パンなんか、世界で一番いいアメリカの粉を買ってきて、そして食パンにして食べておる。ですから、日本の小麦なんかはまるっきりだんだん減作になっていっているでしょう。どうも日本人というのは日本の資源なんか考えないのですよ。その産業だけのことを考えるから、一番安いものを入れる。そして、日本全体の経済よりも、まず合理化、近代化ということで、日本の原料とおかまいなく、いい原料炭を要求するのですね。こういうことをいまさら申し上げても、しかたのない点もあると思うのですけれども、しかし、大体日本人というのはそうです。ですから、日本の原料がどんなに出ようが、そんなことにおかまいない。どんどん大きな高炉をつくれば、それは能率も上がるし、それだけ日本の原料はあまり役に立たぬということになる。だから、そういう全体的なメリットを、やっぱり日本経済全体としては考えざるを得ないのですね。それは単に石炭だけの問題じゃないだろう。そこで、そのことをわれわれも心配をしておったのですが、それが現実になってあらわれてきております。しかし、いままでの政策は、原料炭はとにかく、幾ら掘ってもいいとは言わなかったけれども、どちらかといえば一般炭に比べて増産をする、こういう態勢で石炭局は指導してきたわけです。今後石炭局としては一体どういうようにこの原料炭の問題を処置するのであるか、これは石炭局長からお聞かせ願いたい。
  79. 井上亮

    井上政府委員 原料炭の問題につきましては、先生指摘のように、また過去一次調査団、二次調査団全部を通じまして、原料炭については、鉄鋼業界とも話し合いまして、国内炭優先使用の原則というようなことで今日までまいったわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては、原料炭につきましては、できるだけ鉄鋼業界に国内炭を優先使用していただくという方針を、今後ともお認めいただいて継続していただきたいというふうに考えております。ただ、最近の事態で、これは先ほど重工業局からもお話が一部ありましたが、一つ今後の私どもの課題として考えていかなければいかぬ点は、何と申しますか、豪州炭の輸入が従来やや不安定、不確定な点があったわけですが、昨年の秋以来、鉄鋼業界と豪州側といろいろ折衝を重ねられまして、豪州炭の長期見通しがわりあいに明確につかまれつつある、つかまれたと言ってもいいかもしれません。そういうような新しい事態もあるわけでございます。ところが、この豪州炭と国内炭との価格差の問題があるわけでございます。九州、北海道の製鉄所におきましてはさほどの国内炭と輸入炭の値開きはないわけでございますが、特に揚げ地につきましては千円程度の価格差があるわけでございまして、先ほど、電力につきまして、公益企業、私企業の議論がありましたが、鉄鋼業につきましては、国の基幹産業ではあるけれども、これはまさに私企業で、しかも国際競争といま非常に戦っておる。輸出を伸ばさなければ鉄鋼業の将来が立たないというような鉄鋼業自体の苦況もございますので、そういった点も考え合わせまして、ただ優先使用するというだけでもなかなか御納得をいただけない点があるのではないかというふうにも考えております。もちろん、鉄鋼業界は、従来、石炭産業につきましては、稲山会長あたりも言っておられますが、やはり隣の業界を大事にしていく、こういうことで、特に鉄と石炭の歴史的関係あるいは現実にそういった関係があるわけですから、従来ともに特に御理解をいただいておったわけですが、単に御理解だけでもなかなか折衝はむずかしいと思いますので、そういった点を今後どのように配慮していくか。これは現在では負担増対策ということで関税還付の制度をもってやっていただいておりますが、これは電力についてもその点ではある意味では同じでございますが、やはり、こういった問題について、長期に安定的に引き取っていただけるように、特に鉄につきましては、従来ありました優先使用原則という問題を続けていただきますためにも、そういった問題の検討を至急いたして、円満に両業界の需給関係が進みますように、話し合いが進みますように、努力してまいりたいというふうに考えております。
  80. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 重工業局にお尋ねしますが、いま石炭局長はそういう答弁をしたわけですが、原料炭も、非常に少ない日本の資源の一つですからね。鉄鋼は最近はかなり頭打ちで、年産三百万トン程度しか鉄鋼は伸びないのじゃないかという問題も起こっておるけれども、何を言っても、外国から石炭を買っておるわけですからね。ですから、一時的には日本の供給が非常に不足で豪州炭の長期引き取り等の問題もあるでしょうけれども、しかし、これは何を言っても国内の石炭が一番供給は安定しておると見なければならぬ問題でしょうから、これもぜひひとつ協力を願いたい。鉄鋼からも見放され、電力からも見放されたら、もうこんなに苦労してやるよりも、炭鉱をつぶしたほうが早いですよ。そんならば、いまから政策をしないで、ぱっと離職金を払ったほうが早く片づく。電力もいかぬ、鉄鋼もいかぬとなったら、もう何も一生懸命努力する必要はないですよ。これはひとつ決意を聞きたい。
  81. 赤澤璋一

    赤澤政府委員 鉄鋼業界も、先ほど石炭局長から申し上げましたように、現在でも非常に熾烈な国際競争にさらされております。生産しました三分の一弱のものを全世界に輸出をいたしております。と同時に、アメリカ及びヨーロッパでも非常に合理化投資が進んでおりまして、アメリカあたりは本年度から三カ年間にわたって年間約二十億ドルもの投資をいたします。そして、高炉をはじめとする設備の大型化ということに向かっております。ヨーロッパ、EEC諸国も同様の傾向にございます。先ほどもちょっと触れましたように、今後の日本の鉄鋼業というものの需要の伸びを考えてまいりますると、国内で伸びますものと同時に、どうしても輸出というものを伸ばしていかなければ、日本の鉄鋼業は成り立たないという形になっております。そこで、輸出を伸ばすためには、こういった欧米諸国の合理化投資に対抗いたしまして、日本も今後さらに投資を進め、また技術の進展をはからなければならぬ、こういう形になっております。一方、こういう要請がありますと同時に、ただいま先生から御指摘のように、原料問題というのがやはり鉄鋼業にとっても一番重要な問題でございまして、特に炭の問題につきましては、先ほども御説明申し上げましたように、米炭からある程度豪州炭への移行、さらにはソ連炭というものも出てまいりましょうし、また、先々はあるいは中国炭という問題も出てまいろうかと思うわけでございます。しかし、いずれにいたしましても、国内炭というものは一番安定した供給源でありまするので、この安定した供給源を長期の見通しのもとに計画的に引き取っていくということが、鉄鋼原料対策としても最も重要なところであろうかと思います。先ほど公益事業局長からも申されましたように、私どもといたしましても、今後相当長期にわたる見通しを立てて、供給サイドと需要サイドとが、長期的な見通しのもとに、計画的に炭を生産をし、できた炭を全部引き取る、こういう形の長期計画と申しますか、長期に安定した供給需要の形というものをぜひつくりたいと思っておりまするし、また、その面につきましては、鉄鋼業界を指導いたしておりまする私どもとしましても、十分今後の石炭対策を考えまして協力をしてまいりたい所存でございます。
  82. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 一般産業のうちで製造工業というのが、先ほど公益事業局長指摘しておりましたが、この消費というのが二百万トン程度減っているわけです。これは一体どこに原因があるのですか。私は漸次減ることは当然だと思いますが、しかし、三十九年から四十年にかけて二百二十万トンぐらい、それから四十年度から四十一年度の見込みが百五十万トンぐらい減っておりますが、これはやはり一つは供給不足に原因があるのですか。
  83. 井上亮

    井上政府委員 この想定は、私どものほうがやはり個別産業に当たりまして大体四十一年度の需要の見通しをまとめたものでございます。個別にある程度検討を加えておりますが、総合してみますと、やはり、一番大きいのは重油転換、これが一番大きいかと思います。それから、ことしの特色としまして、特に昨年の初めぐらいから顕著だ。たわけですが、石炭のショートという問題があります。石炭業界としましては、一般炭につきましては電力にまず優先的に振り向けざるを得ないというような事情があったために、一般産業、これは暖房炭も同じで、暖房炭も非常にショートしたわけですが、そういうようなところは、どうしてもやはり、後手に回ったために、重油転換がより一そう促進されたというようなことも考えられるのではないかというふうに考えております。ただ、これは一般的には何と申しましても重油との関係だと思います。
  84. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、重油との関係で減るのはやむを得ない、なかなかこれを防ぐことはむずかしいと思いますが、少なくとも、石炭側の理由で、すなわち供給不足という理由で市場を奪われないようにする必要がどうしてもあると思うのです。それをするためには、私は、やはりある程度の貯炭を持てと言うのです。貯炭がないために、ほんとうに行き当たりばったりの政策になってしまう。これは何らかの機関でいま貯炭を持つ必要があるのじゃないか、こういうように思うのです。これは一般の製造工業についても私は言える問題ではないかと思います。  そこで、政務次官にひとつ、四十一年度の需給計画は早く決定していただきたい、これをお願いしておきます。
  85. 進藤一馬

    ○進藤政府委員 御趣旨の点、よくわかりました。
  86. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 運輸省から見えておりますから、お聞かせ願いたいと思いますが、今度の石炭合理化法の一部改正で、国鉄運賃の延納に対する保証業務というものが、いままで制度としてはあったが一時中断をしておりましたのが、また復活をすることになったのです。そこで、この石炭の運賃というのは、要するに、国鉄のコストの場合に、割引になっておるのですか、それとも石炭を基準として貨物料金というものがきめられておるのですか、これをまずお聞かせ願いたい。
  87. 堀武夫

    ○堀政府委員 石炭というものは国鉄貨物の中の大宗でございまして、従来から石炭を基準にいたしまして運賃体系ができております。
  88. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 かつては鉄道貨物輸送の四分の一を石炭が占めておった時期もあるわけですから、おそらく石炭が基準になって他の貨物の料金がきめられておる、こういうように思います。  ところで、石炭局長、外国には石炭貨物運賃の割引をしておる制度があると聞くのですが、どういうようになっておるか、知っている範囲でお知らせを願いたい。
  89. 井上亮

    井上政府委員 ドイツにおきましては、割引といいますよりも、これは補給金政策をやっております。そのほかの外国でも割引をしているというふうに聞いておりますが、私の調べました範囲では、ドイツの補助制度、これにつきまして詳細に存じておりますが、他の国の割引はどの程度やっているか、ここまでは、私ただいま資料を持ち合わせておりません。しかし、いずれにしましても、各国ともに石炭政策については運賃面からのそういった特別措置があるということは承知いたしております。
  90. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ドイツの場合は二つあるのですね。いわゆる国が差額を国庫から支払うという補助金制度、それが大体八・六%です。それから、石炭専用列車に割引制度というのが、従来なかったのが一九六〇年の九月から実施をされておる。これは一一ないし一三%の割引をやっている。そうして全体では二五%の割引になっておるのですね。ですから、いわゆる補給金制度というのと割引制度と二つ実施をされておる、こういうように聞いておるわけです。  そこで、三十六年度のときもそうでしたが、延納というのは実にごまかしです。これは、延納なんということをやらないで、割引なら割り引く、それで、いまの国鉄の情勢ではとてもできないなら、国が補償金で見てやるとか、何かはっきりした制度をとらないと、これは国鉄にも迷惑をかけることでしょう。それから、石炭業者も、延納なんだけれども、これは払わぬでもいいような錯覚を起こしているのじゃないかという気持ちがする。だから、私は、これは政策としては実にまずい政策だと思うのです。第一、いまからだんだん苦しくなるのに、払えますか。
  91. 井上亮

    井上政府委員 御指摘の点は一々ごもっともでございまして、同様の趣旨のことを、お隣におられます堀鉄監局長から、私は絶えずおしかりを受けておるわけでございます。ただ、私どもといたしましては、今回運賃値上げ分全額延納をお願いしたわけでございますが、これにつきましては、一年間というお約束にいたしておりまして、四十二年度には必ず支払いをいたしたい。先生指摘のように、石炭鉱業の現状においては、簡単に私が払いますと言っても御信用いただけないかもしれませんが、ただいま六月を目途としてやっております抜本策の検討の中で、この国鉄運賃の支払いが可能になるような策を立てるべく今後努力してまいる所存でございますし、いずれにせよ、御指摘のように、運賃について延納ときまったものを、あんまりそうたびたび延納延納というわけには信義の関係からいたしましてもできないわけでございますので、どうしても来年度は払うようにいたしたい、これにまた必要な政策の裏づけはとるように努力してまいりたいというふうに考えております。
  92. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 従前の延納した分はどうするんですか。
  93. 井上亮

    井上政府委員 昭和三十六年に値上げになりました分につきましては、半額延納ということになっておるわけでございますが、三十九年にまた再延納ということになりまして、これは昭和四十三年度から二カ年程度で分割して支払いたいというふうに考えております。
  94. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 そうすると、四十二年度から一カ年で四十一年度の延納分を払う、それから、四十三年から二カ年で三十六年以降の分を払う、こういうことですね。
  95. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりでございます。
  96. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 石炭が悪いからといって、あっちこっち迷惑をかけちゃいかぬですね。やはり集中的に政策をしないといかぬと私は思うのですね。ですから、払うものは払う、補給してもらうものは補給してもらう、こういうことでないと、ごまかす政治をすると、実に日本の経済もゆがむし、石炭企業家の良心が麻痺すると思うのです。また、そのことが非常に政策としてよくない。結局は石炭が損をするわけですよ。迷惑をかけておれば、それだけしっぺ返しがいつか来るのですよ。ですから、いろいろ問題があるだろうけれども、こういう点はけじめをはっきりつけてやるべきではないか、こういうように思います。そこで、北海道の石炭を関西まで持っていく、あるいは九州の石炭を東京まで持っていくというような交錯輸送をして、大体それはどのくらい損失しておるのですか。
  97. 千頭清之

    ○千頭説明員 ただいま手元に資料を持ってきておりませんですが、ばく然とした数字で申しわけございませんが、陸送の関係についてはほとんど交錯輸送はございません。ただ、海上輸送につきましてあると存じますが、これは、主として電力用炭につきまして、北海道の炭を中部以西に運んでおる。大体、北海道と九州との中間地点は清水くらいというふうに考えられますが、これから以西、以東へ運ぶ分は、それぞれ交錯輸送、こういうことに相なるわけでございます。電力用炭につきましては現在約二億程度のものがその交錯によって山元手取りでは減少しておるという現象になっております。ただ、生産の比率が北海道炭が多くなります。今後また九州炭が減ってまいりますので、そういった自然条件の変化によって非常に交錯輸送は年々歳々減ってきております。これはばく然とした数字で申しわけございませんが、三十九年あたりから比較いたしますと、ここ一、二年の交錯分が年々歳々一億程度ずつ減少いたしております。
  98. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 四十一年度の、要するに一年間の運賃はどのくらいですか。それと、値上がり分はどのくらいであるか、伺います。
  99. 井上亮

    井上政府委員 私のほうで計算した数字で申し上げますが、これは厳密には国鉄当局でないと正確さは期せられないかもしれません。鉄道輸送の数量、これは、私鉄を含めまして約四千万トンというように想定しております。旧運賃率の支払いでは百九十六億、新しい運賃率の支払い額が二百三十一億。したがいまして、この差額は三十五億ということになります。ただし、これは私鉄が入っております。私鉄は約三億三千万ぐらいと考えております。それからさらに、二次輸送が一億六千万ぐらいあります。この私鉄分と二次輸送分を引きますと、約三十億が今回の延納の対象金額というふうに考えております。
  100. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ドイツは、御存じのように、例の重油消費税をかけたときに、労務者離職対策とともに運賃の補給金に回したわけですね。ですから、日本の石炭の場合も、延納なんと言わないで、そういうようにしたらいいのですよ。石炭会社にそれをやる必要はないし、国鉄に直接やればいいわけですから。延納延納と問題をあとにずらして、あとになればよくするかといえば、あとはよくならないわけですね。だんだんきつくなっていくわけですから、結局借金だけがかさんでいくというようなごまかしの政治というものは、やめたほうがいいだろう。  そうすると、石炭価格は、少なくとも国鉄運賃の増だけはどうしても上げなければならない義務があるわけですね。石炭局長、そうでしょう。
  101. 井上亮

    井上政府委員 価格値上げができる状態であれば、その意味では国鉄運賃の値上げはうらやましい限りでございますけれども、石炭産業におきましては、値上げということが簡単にできない情勢にございます。先ほど来通産省の現局の各局長からも御説明いたしましたように、この引き取り問題は非常に困難をきわめておりますので、今日の段階で値上げということはとうてい考えられない情勢にございます。したがいまして、その分だけが赤字幅の増大ということに相なるわけでございます。これについては、一定量の石炭を国が必要とするというような経済政策があります限り、私どもは、これについて経営が可能なような国の助成措置を考える以外にないというふうに考えているわけでございます。
  102. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 結局補給金ですね。ことに、ぼくは前から主張しているのですが、炭田別補給金ですよ。幾ら炭鉱で合理化をしても、とにかく、石狩炭田のまん中から留萌に出すにしても、苫小牧に出すにしても、室蘭に出すにしても、相当鉄道運賃はかかっているわけでしょう。筑豊やなんかもそういう点があります。ですから、あなたのほうは結局は補給金ということを言っているわけでしょう。
  103. 井上亮

    井上政府委員 これは、補給金になりますか、あるいは別の形の助成金になりますか、私個人の気持ちといたしましては、今日の石炭産業の現状から見ますると、やはり補給金的な考慮をしなければならない段階に来ているというふうに考えております。
  104. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、会社の経理状態をお聞きいたしたいと思います。  俗に千二百億ということばがいわれておるのですが、千二百億というのは一体どういう算定の基礎ですか。
  105. 井上亮

    井上政府委員 千二百億というのは、経理関係をいろいろな角度から見まして、今日の石炭産業の過重な負担と思われるものを計算いたしたわけでございますが、過重な負担というものはどういうことかということで、第一には、私ども特に昭和三十一年くらいからいろいろ終閉山政策をやっておりますが、特にエネルギー革命がわが国において本格化しましたのが昭和三十三、四年以降であろうと思います。特に重油の価格の低落が顕著になりましたのは昭和三十四年くらいからでございます。わが国におきましては、石炭政策において千二百円引き政策というものを実施した時期がちょうど昭和三十四年からでございますが、それ以降、千二百円引き政策、あるいは、重油の価格との対抗を可能ならしめるために、石炭産業は御承知のような相当ドラスチックな閉山・合理化政策をあえて強行してまいったわけでございます。これは、もっと前からなだらかにそういった政策がとられておればまた別でしょうけれども、やはり、特に外部からの要因といいますか、エネルギー革命の顕著な進行ということに伴って強行せざるを得ない。このために、近々ほとんどわずか数年間に各社の借り入れ残高も非常にふえてまいりまして、借り入れ残高の増だけで大体千二百億くらい。当時六百六十億くらいだったと思いますが、それが今日では二千億になっておりますが、昨年度で千七百億くらいということでございますので、大体千二百億以上借り入れ残高の増加を示しております。しかも、その間石炭の価格は下がっております。出炭数量はほぼ横ばいでございます。そういうような点を考えますと、まず、この借り入れ残高の増加ということは、やはりその間の事情を一つ物語るものであろうというふうに考えております。  それから、第二の点といたしましては、この閉山・合理化関係費用を総計いたしますと、大体ラウンドで申し上げますと、やはり同じく千二百億ないし千三百億、鉱害あたりを足しますと、千三、四百億くらいと見てもよろしいかと思います。そういうような債務をこの間に負ってきている。しかし、現実にはこれを資産処分とかあるいは借り入れ金というようなことで処置し、あるいは労務者に対しては退職金もなかなか払えないで社内預金になっているものもあるというような形で処理しているものもありますが、いずれにしましても、閉山・合理化関係に要した費用だけでも千二百億以上、計算によりましては千四百億くらいに上っております。  あるいは、今度は別の角度から見まして、企業の会計経理の中の異常性のある債務というような点から考えてみましても、大体同額程度のものが考えられる。実質累積赤字だけでも現在千億に達しておるというふうに考えられます。  何がこの過重な負担かということには、まだ今後いろいろ検討すべき問題が残されておりますが、私ども、ただいま申しましたように、三つのアプローチからいたしましても、大体千三百億円程度が石炭産業が今日背負っておる過重な負担ということが言えるのではないか、しかも、これは単に石炭鉱業の責めに帰するものとしてはあまりにも酷に過ぎる問題も多いのではないかというふうに考えておるわけでございます。
  106. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 逆に言うと、一番の根本の原因は炭価の値下げでしょう。ですから、炭価の値下げによって、得べかりし利益がなくなったその損失、それから、合理化によってそれをある面までカバーしていく、この数字は幾らくらいになりますか。
  107. 井上亮

    井上政府委員 炭価の値下げによりましても、同じく、たしか私の記憶では、千数百億にのぼっておると思います。しかし、その反面、いろいろ合理化をやりましたので、合理化効果でも、コスト的には大体それに近い合理化効果を上げている事実もございます。   〔大坪委員長代理退席、委員長着席〕
  108. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ですから、ざっと言えば、千八百億くらい炭価の値下げによって損失をこうむって、六百億くらい合理化によってカバーしたといえば、千二百億ですね。あなたのほうは、出た現在の累積赤字の状態をあとからお話しになっておるけれども、原因はどこにあるのですか。問題は、やはり政治としては原因でしょう。ですから、原因の面から言うべきじゃないですか。国が千二百円なら千二百円引きをいわば強制した、それによって幾ら赤字ができたか、そして努力によってカバーしたものは幾らだ、こう考えるのが妥当ではないのですか。
  109. 井上亮

    井上政府委員 ちょっと最近記憶が薄れて正確さを欠くかもしれませんが、私の記憶では、千二百円引きをしたことに伴う損失と、その間閉山・合理化をいたしまして、あるいは能率をあげまして企業が努力した、その合理化効果とはほぼ見合うというふうに、私はちょっとここのととろが自信がないわけですが、私の記憶ではそういうふうに了解しております。ただ、見合いますけれども、その間に、何と申しますか、もっと率直に言えば、千二百円引きといいますのは、昭和三十三年度の価格に対して毎年二百円ないし二百五十円ずつ五カ年下げるということになるわけでございますが、昭和三十三年度、その基準年次になりましたそのときすでに三百円程度あるいはそれ以上の赤字であったわけです、企業といたしましては。それが、その後千二百円引きラインに沿って忠実に値段を下げてきた、しかし、下げる過程において、合理化効果はほぼそれに見合って、コスト的には合理化効果をあげてきた、したがって、やはり三十三年度にありました程度の赤字は年々残って今日に来た、それの集積が累積赤字になっておるというふうに私ども考えて分析いたしておるわけでございます。  しかし、今度は企業の負債関係で申しますと、その間、合理化効果をあげる裏には、やはり、資産処分とか、あるいは政府関係金融機関からの融資とか、民間からの融資とかいうようなものを受けて閉山・合理化をやった。その残滓は企業の債務として残って、会計経理上ではいろいろ異常債務の形にも残っておるというふうに考えておるわけでして、それから、さらに、借入金だけで申しますと、当時六百六十億ぐらいの残高が、いまや二千億の残高になっておる。その金利負担がばく大なものにのぼっております。トン当たり大体四百円から四百六十円ぐらいの平均になろうと思います。その程度の金利負担、ある会社においては七百円ぐらいの金利負担というような状況に相なっておるわけでございます。
  110. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 その出た結果について、それを何とか政府のほうで肩がわりをしてやるというのは、やっぱりおかしいんじゃないですか。問題は、その原因として、政府がそういうことを行なわしめた。私は国家賠償的な責任を言うわけではないけれども、政府がそういうことを政策として強制した、だからこういう結果になったということをつかむべきじゃないのですか。借り入れ残高が千二百億ふえた、あるいは異常債務が千二百億程度ふえた、終閉山の費用が千二百億要ったというのは、結局千二百円引きから始まっているのでしょう。問題は、やはりそういうふうに考えなければ、国は政策はできぬじゃないですかね。
  111. 井上亮

    井上政府委員 確かに一つの御意見だと思います。千二百円引き政策を強行せしめた、そこに肩がわりの論理を求めるという点については、それは一つの大きな原因でございます。しかもそれは企業の責めに帰するには気の毒だというような問題にもつながるわけでございますから、そういう考え方も一つの有力な意見かと思いますが、ただ、千二百円引きそのものについては、私の考えとしましては、やはり、当時の客観情勢といたしまして、エネルギー革命がわが国において進行しつつある、これに対応せしめるためには、やはり、何といいますか、企業の常として、価格も競争力を持つように努力しなければいかぬという面もあるわけでございます。したがいまして、それだけがきめ手であるということにもならないんではないか。一つの大きな原因といいますか、であったことは間違いはないことですけれども、そういうふうに考えております。
  112. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 ぼくはどうも合点がいかぬわけですけれども、出た結果が、異常債務があるのだ、それが千二百億ぐらいある、借り入れ残高が急増して、三十三年には六百億程度あったのが、四十年には千八百億になった、その差額が千二百億である、閉山費用が要った、それが千二百億、こういうもののとらえ方をすると、生活保護の考え方になるわけですよ。原因はどうあろうと、病気になろうと、家が焼かれようと、とにかくいま困っておるから生活保護の手当てをやるんだ、こういうことになる。こういうことは、私は産業政策としてすべきでないと思う。ですから、これはやはり、千二百円引きをしたところに原因があるということをつかむべきじゃないですか。それを言うと、これを誤ったとか誤らぬとかという議論にすぐ通ずるから、政策としては千二百円引きが悪かったとは言いたくないから、そういう理屈をつけるかもしれないけれども、私は、誤ったとか誤りでないとかいうことを言っておるのじゃない。その当時はせざるを得なかったけれども、それによって負債ができた、原因は千二百円引きだと、そこに持ってこないと、補給金なんかつきませんよ。どうして安定補給金をつけるのですか。過去の問題としては清算できるかもしれないけれども、いまからのものは、このことを言わなければ、絶対に政策はできませんよ。生活保護のように、いまの分だけを見てやる、原因は問わないんだといえば、今後の問題としては政策は起こらない。ですから、千二百円引きをした、そうして企業努力もした、しかしそれに追いつかなかったのが千二百億、こういうものの考え方が正しいんじゃないですか。
  113. 井上亮

    井上政府委員 先生のおっしゃるような考え方は、私は正しいと思います。正しいと思いますが、ただ、私ども今後の石炭産業の助成策を考えるにあたりまして、単に安定補給金制度だけでも抜本的な安定は期せられないというふうに考えておりますし、そのほかに、企業の持っている抜きがたい過去の重荷というものについての何らかの措置をしませんと、私企業の形態を考えます場合には、金融機関との今後の関係もありましょうし、あるいはそれ自体の返済利子負担等の重荷もあるわけですから、なかなか解決しない。石炭政策全体を相当やはりバラエティーを持って考えておりますし、それがまた政策としての公平を期するゆえんだとも思いますので、そういった見地で考えますと、確かに、端的な動機といいますか、原因といいますか、これは昭和三十四年度から実施いたしました千二百円引きが企業の経理悪化、困窮化の原因だったことは間違いない事実だと思いますけれども、しかし、単にそれだけに原因を求めた安定政策ではやはり不十分だという意味で、先生おっしゃるのも有力なる原因ではありますけれども、たとえば、閉山合理化政策といいましても、これは、石炭産業については、歴史的に見まして、戦前・戦後を通じまして、国の基幹産業として相当傾斜生産をやらしたり、企業のけつをたたいて国のために石炭を掘れという政策を実行してきた、一人でも多く労働者をかかえさせて、そして炭を掘らした、しかし、三十年代に入って、エネルギー革命にあいまして、その労務者についてはやはり過剰労務の姿になり、あるいは、山につきましても、そういったエネルギー革命の中における今後の石炭産業のあり方としては、やはり閉山政策も強行しなければいかぬというような事態になったわけで、地域社会、地域経済にも大きな影響のあること、あるいは膨大な量にのぼる離職者の始末を一企業の力だけで、国が政策的にそういうふうにやってきたそのあと始末といいますか、合理化政策を一企業だけの力でさせてきたわけですが、これはやはり考えてみて少し国の政策として不十分ではないかという反省のもとに、それを肩がわりなら肩がわりという考え方で善処することはできないか。もちろん、企業経理の悪化あるいは千二百円引きなかりせば、たとえ閉山合理化政策をやったとしても、それはスムーズにいったかもしれません。千二百円引き政策なかりせば、それが千二百円引きしないでも売れる状態ならば、それはできたかもしれませんけれども。ですから、一つの大きな原因であるには違いないと思いますが、私ども、ただいま石炭政策を考えるにあたりましては、単に今後の助成策の大義名分を千二百円引きだけに求めるのでは不十分ではなかろうか、こういうふうに考えております。
  114. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 やっと真意がわかったのですが、局長が言っているのは、借り入れ残高が多いとか、あるいは合理化・閉山のために費用が要ったとか、あるいは異常性のある債務が多いというためにやるんじゃなくて、原因は別にあった、構造的な原因があったんだけれども、いま端的にどういう現象でつかむことができるかというならば、こういうようなファクターでそれをつかむことができる、ですから、千二百円引きというのもそれは一つの原因であることは間違いありません、こういうことですな。
  115. 井上亮

    井上政府委員 そのとおりです。
  116. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 と申しますのは、私なぜ質問したかというと、合理化・閉山をやったから費用が要って足らなくなったのだ、首を切り過ぎて金が足らなくなったから国が見てくれなんていう、そういう理屈は通らぬわけですよ。少なくとも、私企業である以上は、閉山をすることがプラスであるかマイナスであるか、計算をしておるはずです。金利だって要る。退職金だって払うわけですから。何も国が強制的に、いわゆる企業整備のような、かつての国家総動員法のもとにおいてやったようなことをやっているわけじゃない。自由にやらしておる。ですから、その閉山費用が要ったためにというようなことなら、経営者は要らぬ。何の計算をしておるのかわからぬでしょう。ですから、そうでなくて、ずっと問題の累積してきた日本の石炭産業が、ことにエネルギー革命によってやっていけなくなった、それはいま類別をされた三つの点にあらわれておるのだ、それが千二百億だ、こういうようにおっしゃるならば、私は理解もするわけです。  それで、一つの要素によってあとから配分がきまるというようなことでは、この点は非常にアンバランスになる可能性がある。そこで、たとえば閉山とか合理化による費用によってその肩がわりの配分をきめるということになると、たとえば、合理化というよりも、首は切らなかった、退職もさせなかった、しかし投資をした、投資は成功をしたけれども、経理上は、千二百円引きによって、予定をしておった価格でないものだから、とても償却ができないというところだってあるわけでしょう。これは、閉山費用とかあるいは合理化費用をもって配分をするときには全然恩恵を受けぬ。ですから、恩恵を受ける企業と恩恵を受けない企業と、非常な格差が出る。そういういまお話しになった三つのファクターでいくならそうなる。ですから、私は、そういう点を考えて質問をしたわけです。しかし、私は、配当を十分しておるような会社にも一律にやりなさいということを言っているのじゃないのですよ。そういうものは除外してもいい。しかし、これでは日本の石炭産業はやはり救われぬのじゃないかと思うのです、過去の債務のことだけ言ったのでは。いまから採算とれぬでしょう。いまからスタートするものが採算とれる自信がありますか。私は、極端に言うなら、電力も鉄鋼もあんなに引き取りをやめるなら、もう新鉱開発なんかやめて、いまの炭鉱を維持する、あるいは減ったっていいですが、もう維持するだけでしようがないのだ、こういうように思うのです。そういうように日本政府の考え方が石炭を要らぬものに扱うなら、もう新鉱開発なんか一切やめて、そして、いまある炭鉱を維持あるいは若干増強をする、こういう程度以外には進まないのじゃないかと思うのですがね。
  117. 井上亮

    井上政府委員 石炭局長の答弁だけでは御納得いただけないかもしれませんが、私といたしましては、石炭はわが国エネルギー政策の中におきましてきわめて重要なものと考えております。将来、エネルギー革命の進行と申しますか、原子力時代、あるいはさらに、原子力を越えまして、核融合による真の意味のエネルギー革命というふうに技術が進歩していくわけです。しかし、それは相当長い年月、少なくとも十五年とか二十年以上かかる問題でございますので、その間やはり、エネルギー政策といたしまして、エネルギーの安全保障という問題、もちろん外貨問題、雇用問題等あり、あるいは石炭の持っている特殊な地域社会との密接な関係、石炭山の閉山は直ちに数万人の人口を擁する市町村の盛衰にかかわる問題になるような特殊事情、いろいろな点があるわけですが、エネルギー政策の見地から言いまして、私はやはり石炭の一定量は経済政策として必要であるというふうに考えておりますので、先生、そう悲観的になられないで、私どもも需要確保に全力をあげて努力してまいる所存でございます。  石炭政策につきましても、確かに、見通しは、率直に申しまして、赤字脱却、企業の自立安定ということは、現状の見通しではなかなか困難である。特に、生産性の向上というような点が、資源産業の常として、ある一定の限度まではいきましょうけれども、それからの技術革新といいますか、なかなか自然条件に左右されましてむずかしい点があります。一方賃金の上昇も世間一般の例からしてある程度は認めていかなければならぬということを考えますと、それとパラレルに考えられる生産性の向上ということがなかなか困難な見通しでございますので、私企業による自立安定ということは当面困難な問題だというふうに私ども認識いたしておるわけであります。しかし、そういう状況に対して、私どもといたしましては、私企業でも長期に安定できる政策というような意味で、単に肩がわり政策だけを考えているだけではありません。そのほか、安定補給金の問題もありましょうし、あるいは坑道掘進等に対する国の助成の考え方もありましょうし、いろいろ許される範囲の助成策を考慮いたしまして、この石炭産業を、二十年後あるいは三十年後になりますか、とにかく核融合時代まで、あるいは原子力が一般化するという時代までは、やはり安全保障の見地で維持していかなければならぬのじゃないかというふうに考えておる次第でございます。
  118. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 私も悲観はしていないのですけれども、しかし、石炭をまま子扱いにするくらいなら、非常に苦労して労働者を坑内に入れることも要らないし、あぶない企業に投資することもないと思う。大体、市中銀行が全然見放しておるでしょう。これはあなたのほうの統計だけれども、三十七年三月の末に、当時大正が入っおりますから、大手十八社で千三十億であったのが、四十年の九月で千八百億になっている。そのうち、市中銀行は、六百三十五億であった借り入れ残高が七百三十八億、すなわち百億しか伸びていない。それに対して、政府機関の貸し出しは、三十七年の三月には三百九十四億であったのが、千七十億になっている。要するに、八百億の借り入れ残高の増について、政府機関は七百億、市中銀行は百億ですね。結局市中銀行もお金を貸さないということです。もう政府機関だけが炭鉱に金を貸しておる。これは私企業ベースでないという実情です。金を貸すのは政府機関以外にないのだということですね。そういう中で、一体新鉱開発なんてできるのですか。
  119. 井上亮

    井上政府委員 御指摘のように、石炭産業の今日の実情は、ただいま金融問題から取り上げられましたが、私も先生と同じような見方をせざるを得ないと思っております。ただ、しかし、市中銀行の借り入れがほとんど伸びないというふうになっておりますが、確かに伸びておりません。しかし、全然貸さないかといえば、貸さないわけではありませんで、やはり、短期の運転資金としては、これは当然市中銀行がつき合ってやってくれているわけでございます。ただ、設備投資ということになりますと、市中銀行はなかなか応じないというのが実情でございまして、設備投資については、自己資金を除いては政府関係金融機関から融資しているのが実情でございます。  そこで、新鉱開発の問題でございますが、新鉱開発の問題は、金融問題、資金経理の問題よりも、むしろ当面需要部門関係のほうがより大きな基本的な問題であろう。特に原料炭について見ますと、先ほども答弁がありましたように、鉄鋼業界の考え方がございます。いくら新鉱開発をしても、豪州炭のほうがほしいんだという気持ちがあります。これについてやはり何らかの対策を講じませんと、単に国内炭優先使用原則と申しましても、やはり経営上そろばんをはじく企業でございますので、なかなか納得がむずかしい。だからといって、国内の資源の活用、あるいは雇用の問題その他を考え、かつまた安定供給というような点を考えますと、これは需要部門といえどもその点については理解してくれております。したがいまして、何らかの長期の需要確保の見通しを得まして、新鉱開発をいたしてまいりたいというふうに考えております。有望な地点があるわけです。ただ、率直に申しまして、私ども新鉱開発については石炭鉱業審議会でもいろいろ討論しておりますが、需要問題がまず当面控えております。これをまず解決することが第一のかぎに相なっております。  その次に問題になりますのが、資金の調達、どういうふうにして資金を調達するかという問題でございますが、私は、新鉱開発については、やはり主体は政府関係金融機関で融資していく以外に現状においてないというふうに考えております。なお、新鉱開発につきましては、将来性についていろいろ議論がございます。五年くらいかかって開発して、そのあとは、採算性といいますか、収支関係といいますか、これは一体どうなるんだという議論もありますが、私は、政府関係金融機関を中心の安い金利の投資をしていきます限りにおいては、一応採算レベルには達し得ると考えております。ただし、思わざる原価上の悪条件、これは今後あると思いますが、そういうときはやはり若干つらくなるというふうな見通しもございます。しかし、既存の炭鉱が現在稼行しております原料炭の山、この山は一般に比べれば比較的優秀な山でございますが、この現在稼行中の山と、ただいま私どもが考えております新鉱と比較すれば、これはバルクライン的に並べてみますと、やはり上位の優秀炭鉱になるわけでございます。また、最新鋭の技術をもってできるだけ近代化するという方針で作業をいたしておるわけでもございますので、現存の炭鉱よりもすぐれた炭鉱たり得る。したがって、一定量の石炭が安定供給その他の見地から必要だという認定があります場合には、やはり新鉱開発はすべきではないかというふうに考えております。  それから、特に資源産業、石炭産業の常としまして、老朽化した山は、事のいかんを問わずやはり閉山せざるを得ない。そのかわり新鉱を近代化してとっていくというのが資源産業の常でもあるわけでございます。直ちに現在の需給に影響があるわけではない、将来の五年先、六年先、十年先の需給の問題でもありますので、そういった長期の需給と見合って新鉱開発を促進してまいりたいと考えております。
  120. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 この新鉱開発については、予算委員会でも、あるいは本会議でも、通産大臣のほうは、いま無利子の金を貸す制度があるけれども、やはり補助率も当然上げなければならぬし、対象もふやすという答弁がありましたが、そのとおりですか。
  121. 井上亮

    井上政府委員 通産大臣は、今後の生産の努力目標をお話しになったのだろうと思います。現状においては、新鉱開発につきましては、原料炭の場合に、大体必要な額の五割は合理化事業団が無利子の融資をし、そのほか開銀融資等で調達するという予定にいたしておりますが、通産大臣は、なかなかその程度でも  私もさっきちょっと申しましたが、将来の企業収支を考えて、私はいけるのではないかと思いますが、その間いろいろな変化も想定されますので、そうなりますと苦しいという事情になりますので、さらに融資比率等について今後の研究問題として取り上げてまいりたい。対象についても同様であります。先ほど申しましたように、なかなかつらい現状からしまして、対象の拡大についても、当然これは研究をしてまいらなければならぬと考えております。
  122. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 次に、鉱害ですが、四十一年度は大体無資力鉱害と有資力鉱害とが二十七億ないし二十八億ということでほぼ見合っておるのですが、四十二年度は無資力鉱害は増大をするだろうと思う。また、せざるを得ない。そこで、有資力鉱害は、会社経理の問題もいろいろあって、なかなか伸びが悪い。ところが、有資力といっても、閉山しておる山が非常に多いのですから、被害者から考えれば、炭鉱が稼行してないという場合に非常な不安がある。また、名前は有資力でも、なかなか復旧作業をしてくれないということで、経理の悪い有資力炭鉱の場合は、被害者が非常に困っておるわけです。ですから、無資力鉱害がどんどん進捗復旧すると、もう有資力の場合はつぶしてくれという声が被害者から出る。これはもう大正炭鉱にすでにあらわれた。  そこで、石炭局長は八百億くらいの鉱害だと言われましたけれども、今後これをどういうように処置するつもりであるか。私は、率直に言うと、政府が第一次責任を持って、賠償公団、すなわち、いまの復旧事業団をさらに強化をして、そういう機関でもつくって、労災保険と同じようにやったらどうか。そして、鉱業権者から納付金をメリットにおいてとる。あるいは、これはちょっと性格が別ですが、原子力の場合の被害については、一次責任を国が負う、そしてこれは加害者からその納付金をとるという形になっておる。炭鉱の場合は原子力の場合とは性格が違いますけれども、やはりそういう時期が来ておるのじゃないか。というよりも、私は非常に時期はおそいと思うのです。むしろ、これらを言うときには、まだ炭鉱が稼行しておった時代にそういう問題を提起して、そうして、かなり蓄積した資金で行なうべきではなかったかと思いますが、いまからでもおそくない。やむを得ない。しかし、そういうふうにしなければ、総合的な復旧計画もできなければ、また、その炭鉱が生きておるために、あるいは死んだ炭鉱が有資力であるために、被害者が非常に迷惑をするという事態になると思いますが、これらをひとつ総合的に御答弁を願いたいと思います。
  123. 井上亮

    井上政府委員 鉱害問題につきまして、ただいま多賀谷先生からの御意見は、まことに私ども参考にすべき御意見であるというふうに考えております。鉱害問題につきましては、昨年来石炭鉱業審議会の鉱害部会におきまして真剣な討議を続けてまいりまして、昨年末この中間答申をいただきまして、まあ本年度予算につきましても、無資力農地鉱害の年々賠償措置等の追加新設等をいたしたわけでございますが、なお、鉱害問題につきましては、残存鉱害量だけでも、先ほど御指摘のように八百億をこえる大きな額にのぼっておりますし、これを放置いたしておくわけにまいりません。したがいまして、私どもの方針といたしましては、この全国鉱害量調査の集計に基づきまして、これをやはり年次別に計画的に、地点等ももちろん勘案いたしまして、計画的な復旧をいたすようなことにして進めていきたい。その場合に、スムーズに鉱害復旧を可能ならしめるためには、現在の石炭産業の現状からしますと、もちろん鉱業権者負担という問題は考えないわけにまいりませんけれども、これをあまり大きく期待をいたしますと、この既存の八百億をこえる鉱害復旧という問題が遅延いたすことに相なるわけでございますので、できるだけ国の助成もさらにふやしまして、助成率も高めまして、できるだけ総合的、計画的な復旧が可能になるように検討して進めてまいりたいと思います。昨年末に鉱害部会が出しましたのは中間答申でございますが、石炭産業一般の抜本策は大体六月に予定しておりますが、鉱害につきましても大体それと時期を同じうして一つの確固たる方針をまとめたいと考えておりますので、ただいま先生おっしゃいましたような御構想につきましても、やはりこの鉱害部会における審議の爼上にのせまして、十分各方面から検討してまいりたいというふうに考えております。
  124. 多賀谷真稔

    多賀谷委員 炭鉱がつぶれて、そして無資力になれば復旧してくれますけれども、その無資力になる期間というものが、被害者の側から言えば相当長いわけですね。その間はほとんど補償らしい補償もしてもらえない。そうして、やがて被害者が考えておったように無資力になった、それから復旧が始まるということでは、どうもあまりにも被害者側に冷たいのじゃないか。いまの鉱害というのは、むしろ明治以来からの鉱害の累積ですよ。ですから、私はよく言うのですけれども、その鉱害のあと始末は、むしろオール三井、オール三菱で本来やったらいいのですよ。三井鉱山のように、もうおっぱいも出ぬようになったおばあさんに賠償してくれというのではなくて、そのおっぱいを飲んで大きく育った三井化学あり、三井金属鉱業あり、東洋レーヨンがある。三菱で言ったら、三菱化成あり、旭硝子あり、三菱セメントだってある。そのときも鉱害は起こるのだけれども、しかし、それが潜在しておって地上に起こらぬときに、みんな安い石炭を買っておりますよ。日本の資本主義はそういうふうにして発展してきたわけです。筑豊炭田や佐賀炭田を見てごらんなさい。この間も私は三菱の輪田炭鉱の閉山式に行きましたが、明治十三年からの開坑だというので、要するに七十七年かかって閉山した。この石炭というのは日本経済の非常な発展の原動力になっているわけでしょう。だから、むしろ本来ならば資本別に賠償請求をやる、昔の三井合名会社や三菱合資会社があれば、その持ち株会社に訴えたいという気持ちですが、いま現実にその会社はないわけです。そこで、これは当然鉱業権者からある一定の納付金をとってやるべきです。被害者の面から言えば、どちらから金を払ってくれようと同じことなんですから、スムーズにやることがまた経費が少なくて済むし、そしてそれが公正な合理的な賠償になるわけです。何か、事業団がやれば非常に高くなって、私企業でやれば安くなるような錯覚をしている人がある。また鉱害部会が調査をされたときにもそういう意見があったが、私は言語道断だと思うのですよ。それはどこか押えているのです。まあ一部には、全体の中に一回か二回かそういうことがあるかもしれませんけれども、それをもって他を推して、政府機関がやれば賠償金額が高いなんていうことはもってのほかだ。それはむしろ政府機関は公正にやっているのです。ですから、やはりそういうように運んでいかなければ、私は暴動が起こると思うのです。よく被害者は黙っていると思う。特に、無資力でなくて経営の悪い炭鉱はどうにもならぬのです。早く無資力にやってくれと言えば、いや北海道に炭鉱があるのだというので、どうにもならぬ。だから、そういう点から言えば、国が責任を持って鉱業権者から納付金をとって賠償をやる、こういう必要があるのじゃないか、かように思います。ですから、鉱害問題はきわめて重要な問題ですから、抜本対策の中に含んで答申をするように働きかけてもらいたい、このことをお願いして、きょうの質問を終わりたいと思います。
  125. 野田武夫

  126. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 時間も相当たっておりますから、石炭の根本政策の問題については後日大臣に出席を求めてお伺いすることにいたしまして、いま審議されておりますこの合理化法改正案の一、二点についてのみちょっと伺っておきたいと思います。  合理化事業団では、従来鉱区とも書いておりまして、それから、その後は、鉱区は買い取らぬが、鉱業権消滅する、したがって、買い取った鉱区も、消滅した鉱区も、いかなることがあってもこれは採掘を許さない、こういう方針であったことは申すまでもありません。しかし、今度の改正案では、隣接鉱区からこれらの鉱区採掘することを許すということが一つ目的になっております。このように改正することが得策として採掘を許すとされたことは、その原因、目的はどういうところにあるのか、これをひとつお聞かせ願いたい。
  127. 井上亮

    井上政府委員 御承知のように、石炭鉱業合理化事業団は、昭和三十一年度以来鉱業権の買収、あるいは三十七年度以来新方式としまして、閉山炭鉱について鉱業権消滅登録、これを条件といたしまして交付金交付をいたしてまいったわけでありますが、先ほどもちょっと触れたと思いますが、昭和三十一年から今日までに、年間の出炭量にいたしますと実に二千四百万トンをこえる閉山を行なってまいったわけでございます。これら閉山炭鉱につきまして、まだ残存炭量が残っておるものが相当多いわけでございます。ところが、一方、中小炭鉱をはじめとしまして、大手の中にも一部ございますが、やはり、隣接鉱区鉱区調整するといいますか、現在、隣接鉱区の特に消滅鉱区につきましては再活用を認めないという現行法になっておりますので、これは手がつかない。しかし、それを、さらに一種の鉱区調整によりまして、仕組みといたしましては、合理化事業団出願をして、その消滅鉱区合理化事業団の所有にして、その譲渡を受けるという仕組みでございますが、そういう形による鉱区調整、これをやれば資源の活用にもなり、かつはまた、隣接する企業の経営の改善にも裨益する、そのことが国民経済的にプラスであるというような観点から、今回このような法律改正をお願いした次第でございます。
  128. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 そうすると、これはビルド鉱に類以するというわけにもまいりませんから、したがってせっかく国内にある地下資源であるから、それを埋没さしてしまうということはもったいないから、そこで、できるだけこれらの石炭を隣接鉱区からとにかく掘り出させよう、こういうことですか。
  129. 井上亮

    井上政府委員 単純にそういうだけでありませんで、やはり、一つには国の資源の有効活用でもあり、かつはまた、隣接鉱区の中小炭鉱をはじめとする、これは大手企業も入りますけれども、やはり経営の改善という、この二つの見地からでありまして、消滅鉱区を再活用することが国民経済の利益だ、こういう観点からの改正でございます。
  130. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大体計算されておると思いますが、隣接鉱区から増区を許すという数、並びにそれによって年間どのくらい出炭量が出てくるかということの概算をしておられますか。
  131. 井上亮

    井上政府委員 まだ詳細な概算はいたしておりませんが、一応私ども全国的に、事業団の持っております買収鉱区あるいは消滅鉱区、これにつきまして、その隣接鉱区からの総合的な開発という見地から見て有効であろうと思うような調査は進めております。その調査につきましては、大体隣接炭鉱の数にいたしまして二十炭鉱をこえる数にのぼっております。  それから、なお、実収炭量といたしましては二千万トンをこえる量にのぼるのではないかというふうに考えております。ただ、しかし、私どもいま研究いたしておりますのは、なるほど消滅鉱区があり、かつ隣接炭鉱がある、だからこれをすぐ活用せいというだけでは、これはほんとうの意味の活用になりません。やはり、一種の鉱区調整になりますが、この鉱区調整をやることによって相当企業の経営の改善にも役立つというような見地も織り込んで見ておりますので、さしあたって至急やることが先ほど来申しましたような点からプラスだ、至急やりたいというようなものが十炭鉱くらいあるのではないかというふうに想定いたしております。ただ、これはまだ具体的に各企業から申し出があったわけではございません。申し出があったものもありますし、ないものも入っております。
  132. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま大体埋蔵炭量二千万トンくらいと言われておるが、これは私はまるで当たるも八卦当たらぬも八卦のように思うのです。というのは、鉱区を買い取る場合には、大体埋蔵可採炭量はどのくらいあるかということが基礎になっていますから、したがって、買い取ってもらうほうの炭鉱は、可採炭量が非常に多いことを言います。それから、買い取るほうでは、それをできるだけ少なく見積もろうというのは、これは買うほうと売るほうの人情だと思うのです。そういう点で、いま局長がおっしゃる埋蔵炭量は、はたしてその中から可採炭量が幾らあるかというような点等は、これは全く当てになってならぬようなものであるということが正直のところだと私は思うのです。  そこで、さらにこれは保安等の問題にも関連しますが、隣鉱区と隣鉱区の間に国が保管をするべきところの保安炭柱というのがあるわけです。ところが、この保安炭柱というものをAが掘ったかBが掘ったか、それはいろいろあります。けれども、AかBかどっちかが相当国の保安炭柱を掘ってしまっております。掘っておる証拠には、Aの炭鉱からBの炭鉱に掘り込んで何百万トンという炭を盗掘をしたというところから、これが賠償を要求をされて、賠償を払ったり何かした例がたくさんあります。そういう点から、したがって、保安炭柱を通り越してBの山を掘ったことは明瞭であります。ところが、保安炭柱を掘ったということは、国の所有する石炭をAあるいはまたBが掘っておるわけで、そういう場合には、国として、国の保安炭柱を掘られたのであるから、当然これは賠償を取るべきものであるが、この賠償を取ったという例はあまり聞いたことがありませんが、そんなことはありますか。あったら、どこがあったか教えてください。
  133. 井上亮

    井上政府委員 はなはだ恐縮ですが、ちょっと御質問の趣旨が理解できなかった点があるのですが、保安炭柱は、これは国の施設ではございませんで、炭鉱企業のものでございますが、これは、閉山いたしますときには、保安炭柱というものは最後の上がりに際しまして採掘するというのが大体通例になっておりますが、国との関係はちょっと私聞き漏らしたわけであります。
  134. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 ちょっと待ってください。あなた方はそういうお考えでおられるのですか。保安炭柱というものは監督局が監督すべき権限の中に入っていないものですか。そういう考えだったらとんでもない間違いであるが、その点いかがです。
  135. 森五郎

    森政府委員 鉱区境には、先生おっしゃるように、保安炭柱等をとりまして、盗掘あるいはそれによっていろいろ災害が起こることを防いで、監督局がきめておるわけでございます。しかし、先生のおっしゃるように、過去においても若干、監督局がきめた何メートルというものを、盗掘と申しますか、そういう監督保安炭柱を残せという命令にそむいて掘ったという事実は私も聞いております。しかし、これはいわゆる国に損失を与えたという意味ではなくて、保安上あぶないことをしておったということになるのじゃないかと考えております。
  136. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は、賠償という問題は、金銭の問題のみを言っておるのではなくて、監督上そういうことを放任されておった、また、あえて保安炭柱を侵して掘り込んでいったというところにとかくの災害というものが起こってきておるということを言っておるのです。これは各所にあったことは事実です。そういう点から、この保安炭柱というものは保安の上から言って重要であるし、それからまた、地上に鉱害が起こった場合においても、そういうことから、私のほうの鉱区はここまでであった、あるいは私のほうはここまでであったという点から、地上に起こった鉱害を甲乙がこれをなすり合いをして、その鉱害を復旧しようとせない事実も起こっていることは御存じのとおりです。だから、この保安炭柱というものは、ほとんどそういうことでなくなっておるということが一つ。  それから、私がなぜこれをいまあなた方に聞いておるかというと、今後、隣接鉱区を増区して、さらにその可採炭量を採炭させる場合に、保安炭柱があるものなりという上に立って増区されるということになってくると、そこに非常に誤差も起こってくる。また、保安炭柱がないのであるから、あるいは古洞にたまっておるガスであるとか、古洞にはほとんど水がたまっている。さっき多賀谷委員も言っておられたようであるが、そういう点から、監督局としては、思わざるところの災害というものが起こってくることを予期せなければなりません。そういう点に対して十分調査を願わなければなりませんが、これは厳密にすればわかるけれども、実はなかなか厳密にできません。というのは、炭鉱が監督局に出しておる坑内採掘図面というものと、炭鉱自身の持っておる坑内採掘の個所図面、それは違います。そういう点からこの盗掘の問題が起こってきておることも事実ですから、こういう点等も、増区をされる場合に十分心得ておやりにならないと、とんでもないことが起こりますということを、これは大いに注意を促す意味において私は言っておるわけです。この点は、私の言うことは間違いはないと確信を持っておるから、保安局長、答弁の必要あれば答弁されてもよし、ごもっともですということになれば、そう別に無理に答弁を求めるものではありません。  ただ、問題は、事業団が買い取った鉱区と、それから鉱業権消滅をした鉱区と、これを隣接鉱区に増区をされる場合に、同じ条件で許されるのか。片方は銭を出して買い取ったから有償、片方は鉱業権消滅させたんだから無償、こういう点があるようだが、こういう点はどういうように処理されるのですか。
  137. 森五郎

    森政府委員 保安炭柱等につきましては、先生のおっしゃいますとおりでございます。したがいまして、先ほど多賀谷先生の御質問にもお答え申し上げましたように、施業案認可段階におきまして、たとえば旧坑が存在するというようなところに掘進をしていくというような場合には、十分先進ボーリング等の措置を講じまして、急に旧坑にぶち当たって水が出てくるというようなことがないように、十分監督を厳にしたいというように考えておるわけでございます。
  138. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いまの有償、無償の条件はどうですか。
  139. 井上亮

    井上政府委員 有償でございます。
  140. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その消滅のほうも有償ですか。
  141. 井上亮

    井上政府委員 両方有償にいたしたいというふうに思います。というのは、一つの価値のある国の資産でございますので、国の資産を処分するという観点に立ちますと、やはり有償たらざるを得ない。ただ、そう国はもうける必要もございませんので、その辺、どういう適正な対価にするかという点については、ただいま大蔵省と打ち合わせておりますが、形は有償でございます。
  142. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 その事業団のほうで鉱区ごとに埋蔵炭量を計算をして買い取ったのを有償ということは、これは当然筋が通る。ところが、鉱区は買い取らぬ、お前の持っておる鉱業権はこれはもう消滅をしてしまったものだぞということになりますと、まさにそれは国土であるから国の所有地であることは間違いないけれども、しかしながら、従来の鉱業権者試掘権は別として、採掘権を持っておった鉱業権者は、今度隣接坑から掘るとき、自分のほうは消滅させてただとられたのだが、国のほうで今度それを有償で隣接坑から金をとったということになると、国のみがとるのはけしからぬじゃないかという問題等も起こってくると思うが、そういう点について論議されたことはありますか。
  143. 井上亮

    井上政府委員 これは、先生よく御存じのとおり、買収については問題はなかろうかと思いますが、消滅鉱区につきましては、鉱業権者鉱業権消滅登録をさせて終末をさしたわけでございますから、一応そういう御意見もあろうかと思います。しかし、鉱業権消滅させますに際しまして、ただ国が消滅さしたわけではございませんで、その消滅登録という事実と引きかえに、やはり一種の閉山に対する国の配慮としての閉山交付金交付して、円満な終閉山ができますような配慮をいたしておるわけでございます。そういった意味合いからいたしまして、普通のただ消滅さしたというのとは事情が違うと思います。ただ、御指摘のように、買収の場合と消滅とでは、そこにちょっと形式論として違いがあることは事実でございます。しかし、消滅鉱区について交付金交付いたしますときに、やはり、残存炭量の問題だとか、坑道とかいうような点の資産価値を判断いたしまして交付金交付しておるというような事実からいたしましても、ただ消滅さしたというつもりはないわけでございます。それから、もう一つは、先ほども申しましたとおり、合理化事業が消滅鉱区出願によりまして確保する、それを希望によりまして企業に譲渡いたしますときには、やはり国の資産の処分ということで、一つの先例として、これをただにするというわけにもまいらないのではないかというような考え方でございます。
  144. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 私は、臨接鉱区から、隣の残存埋蔵炭というか、可採炭を、できるだけ地下資源開発の意味においてこれを許して掘らすということには賛成なんです。賛成であるが、ただ、さっきからだんだんと伺っておるような諸問題等がありますから、こういう点について、とかく災害を起こしたり、トラブルを起こしたり、争いが起きないように、ひとつ十分注意をしておやりなさいと、私はあなた方に対して注意をしておるわけです。  それから、もう一点だけ伺いますが、機械を貸すということが書いてあるわけですが、これはどうなんですか。大手にも中小にも貸すということですか。それから、機械を貸すといってもいろいろあるわけですが、大体どの程度の機械を主として貸そうとしておられるか、あるいは古いのも貸そうとしておられるのか、新しいものを、きわめて近代的なものを政府が機械製作所から買ってこれを貸そうとされておるのか、その辺の点と、それから、貸し賃などをとられるつもりか、あるいは、自然に年々とって、そこに買い取らすつもりであるか、その辺についての計画は大体どういうお考えですか。
  145. 井上亮

    井上政府委員 機械貸与制度につきましては、私どもといたしましては、四十一年度は初年度でございますから、予算金額としては三億程度、比較的少額でございます。これは、初年度試験的にまずやってみよう、これが非常に好成績をあげれば、次年度以降さらに、機械に対する融資と並行しまして、もうちょっと本格的に進めてまいりたいというふうに考えております。たとえば、本年度の計画で言えば三億のうち二億程度は大手炭鉱の貸与制度に使ってまいりたい、一億程度は中小炭鉱向けの貸与制度に使ってまいりたいというふうに考えております。いずれも、貸与機種といたしましては新鋭機械で、自分が買うにしては、やはり、新しい機種については危険といいますか、機械に習熟するまでの間冒険があるわけでございます。したがいまして、買いたいけれどもなかなか買えないというような新機種を中心に考えて貸与してまいりたいというふうに考えております。  貸与の機械といたしましては、もちろんドラムカッターもありますし、カッターローダー式コールカッターもありますし、ホーベルもありますし、いろいろなものがいま予定されておりますが、主としてはそういう新機種を考えております。  その場合、古ものかどうかという点でございますが、ことし考えておりますのは、新機種の新しい整備ということであります。しかし、これは、ことしは実験的にやりますけれども、成績が非常によろしいとか、あるいは事業団が今後の運用上の経験を積んでまいりますと、これは私の単なる推測、見通しでございますが、要すれば、国内でいままで使っておった、たとえば大手炭鉱あたりで使っておった機械、これが閉山あるいは縮小でもいたしますとその機械が不要になるというような場合に、それを安く事業団が買いまして、安い貸与料で、中小炭鉱に、あるいは大手炭鉱にいく場合もありましょうが、貸与する。これは貸与料が非常に安くなるということもありましょうから、一がいに古い機械はやらないとも申せないと思います。これは私の考え方でございます。しかし、概括的に申し上げれば、やはり、新しい機種を使いこなすときに、なかなか使い切れないという問題を、この貸与制度で解決してまいりたいというふうに考えております。  なお、貸与制度につきましては、いわゆる融資と違って、要するに残高というものがないわけであります。金利がついて借金がふえていくということから見ると、非常に程度が軽くて、使用料を払うということになりますので、経営の改善にも裨益するという長所がありますので、貸与制度はそういう運用をしてやってまいりたいというふうに考えております。
  146. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 大手にも甲、乙、丙、丁ありますけれども、大体において大手はある程度坑内機械においてもそれをこなし得るという水準があります。中小の場合になってきますと、これは全く千差万別のような点がありますから、そういう点において、あなた方のほうでも、中小に貸す有効な機械というものについては、やはり相当苦心が要ると私は思っています。でありますから、こういう点においては、申すまでもありませんけれども、中小のほうに貸すそういう坑内機械においては、その炭鉱にこういう機械を貸したとして使い切れるかどうか、有効かどうかということについては、ひとつ十分検討して、一〇〇%の効果のあるようにお願いをしたい。特に、中小は、市中銀行からの金も借りられない、開発銀行からの金も借りられない、全くお手上げの状態が非常に多いのですから、その坑内機械を政府が貸すことに対しては中小は非常な期待をしておると思いますから、そういう点において、それが最も希望にかなうように、最も成果のあがるように、ひとつ十分研究に研究を重ねておやりになるように、これも御忠告を申しておきます。  以上で私の質問を終わります。
  147. 野田武夫

    野田委員長 次会は明七日午前十一時三十分から委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時八分散会