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1966-03-23 第51回国会 衆議院 石炭対策特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十三日(水曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 野田 武夫君    理事 有田 喜一君 理事 加藤 高藏君    理事 始関 伊平君 理事 多賀谷真稔君    理事 八木  昇君       大坪 保雄君    神田  博君       倉成  正君    三原 朝雄君       滝井 義高君    芳賀  貢君       細谷 治嘉君    伊藤卯四郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小平 久雄君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君         労働政務次官  天野 光晴君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君     ————————————— 本日の会議に付した案件  炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第六八号)  石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法  律案内閣提出第五三号)  産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)  産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律  案(内閣提出第五五号)  石炭対策に関する件(空知炭礦爆発事故に関  する問題)      ————◇—————
  2. 野田武夫

    野田委員長 これより会議を開きます。  昨二十二日北海道歌志内空知炭鉱爆発事故により犠牲者が出ましたことは、まことに痛哭のきわみであります。本委員会といたしまして、この際、議事に先立ちまして、犠牲者の御冥福を祈り一分間黙祷をささげたいと存じます。  各員御起立をお願いいたします。    〔総員起立黙祷
  3. 野田武夫

    野田委員長 黙祷終り。どうぞ御着席願います。      ————◇—————
  4. 野田武夫

    野田委員長 石炭対策に関する件について調査を進めます。  昨二十二日北海道歌志内市において発生いたしました空知炭鉱爆発事故について、政府報告を聴取いたします。森鉱山保安局長
  5. 森五郎

    森政府委員 空知炭鉱災害について御報告いたします。  お手元に「空知炭鉱災害について(第2報)」というのを差し上げてございますが、これを見ながらお聞き取りをいただきたいと思います。  災害の起きました炭鉱空知炭鉱空知本坑であります。鉱業権者空知炭礦株式会社。所在地、北海道歌志内字東光災害の種類でございますが、これはガス爆発と認定いたしております。事故が起きてからしばらく状況がわからなかったものですから、ガス爆発かあるいは突出であるかということについて若干時間がかかったわけでございます。災害発生日時は三月二十二日の九時二十分ごろと推定されております。災害個所は、ここに書いてございますように、マイナス百メートル桜沢北磐下西一号立て入れ、坑口より約三千メートルくらい奥でございました。罹災者状況は、現在まで確認いたしましたのは、死亡二名、行くえ不明十名、負傷者八名、計二十名となっております。  会社概要でございますが、この空知炭礦株式会社と申しますのは、昭和三十八年九月に北海道炭礦汽船株式会社から分離をいたしまして、さらに四十年の七月には赤間炭鉱と合併いたしまして今日に至っております。資本金は一億円でございます。  どういう操業をやっておるかと申しますと、空知炭鉱は、空地本坑興津坑赤間本坑及び末広坑四つの炭坑に分かれております。今回災害発生いたしましたのは空知本坑でございまして、これが本炭鉱主要地区でございます。本坑地区におります鉱山労働者は千四百三名でございまして、出炭量は月産約四万五千八百トン、大部分出炭をやって飾るという地区でございます。この桜沢地区におきましての炭層は、登川來炭層中の二番層、三番層、三番層下層及び四番層の四層でありまして、採掘法は鉄柱カッペ、採炭はコールピッフまたはハッパを併用するといういわゆる長壁式採炭法であります。  そういうことで、災害状況でございますが、災害当日、桜沢地区北磐下坑道西一号立て入れ、この付近には約二十名が入坑しております。その内訳を申しますと、北磐下坑道に三名、これは磐打ち作業をやっておりました。それから、桜沢立て入れ巻き立て付近に七名、これは坑道の拡大に五名と測量に二名が就業しております。また、この西一号立て入れの引っ立てでございますが、たいへんガスが多いという報告に基づきまして、今後の掘進対策のために鉱務課長以下係員、大部分職員でございますが、十名が入坑調査をしていた際に災害発生したということになっております。本災害によりまして北磐下坑道に就業中であった三名中の二名は死亡いたしまして、また、一番奥に入っておりました鉱務課長以下十名は行くえ不明になり、残りの八名は自力で脱出をしたという状況でございます。  災害発生をしました炭鉱側では、直ちにまず全労働者待避命令を出しまして、その他の地区の労務者を全部出坑させるという措置をとりまして、直ちに救護隊を招集し、罹災者救出にあたっておりますが、その結果、先ほど申しました二名の遺体を収容いたしました。目下行くえ不明の十名の救出に全力をあげているわけでございます。  もうちょっと詳しく状況を申しますと、この西立て入れの引っ立てからちょっと手前のところでございますが、爆発による爆風によりまして崩落がありまして、したがいまして、その十名は崩落の奥に閉じ込められておるという状況でございます。なお、この崩落付近におきましては、現在なおメタンガスが相当濃厚でございまして、また一酸化炭素も検出されるという状況でございますので、いわゆる素面では、酸素呼吸器のようなものがございませんと、そこへ行けない。それよりはるか手前のところまでは入坑できますが、それ以上奥には、いま申しましたような酸素呼吸器のようなものを持ちませんと入れないのでございます。したがって、現在そういう状況でございますので、この十名の救出になかなか時間がかかっておるという状況でございます。  災害鉱山保安局としてとった措置でございますが、災害報告を受けまして、札幌の鉱山保安監督局から石炭課長以下九名の監督官現地に急行させ、また、鉱山保安局から鉱務監督官を一名きのう現地派遣をいたしておりまして、罹災者救出作業並びに原因究明に当たらせております。  なお、政府といたしましては、進藤通商産業政務次官を長といたしまして、通産省労働省担当官による空知炭鉱災害調査団現地派遣をいたしまして、災害調査並びに対策の推進をはかっておるという状況でございます。  こういう事故を起こしましたことはまことに遺憾でございますが、何しろ現在十名の方が行くえ不明という状態でございますので、まずこの救出を第一義といたしまして、この事故原因を徹底的に究明をいたしまして対策を講じてまいりたい、かように考えておる次第でございます。  非常に簡単でございますが、以上、事故概要を御説明申し上げました。
  6. 野田武夫

    野田委員長 これにて空知炭鉱爆発事故についての政府報告を終わります。      ————◇—————
  7. 野田武夫

    野田委員長 次に、内閣提出炭鉱離職者臨時措置法の一部を改正する法律案石炭鉱業合理化臨時措置法の一部を改正する法律案産炭地域振興事業団法の一部を改正する法律案及び産炭地域振興臨時措置法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を行ないます。  質疑の通告がありますので、これを許します。滝井義高君。
  8. 滝井義高

    滝井委員 あとにもう一つ会議がありまして、十一時までしかできませんので、質問の準備はしてまいりましたけれども、大事な点だけお尋ねしたいのです。  まず第一に、管理炭鉱というのがあるわけですね。いま空知災害の問題が起こったわけですが、最近、山をつぶすかどうか、雇用対策上あるいは地域経済上第二会社にするかしないかということが非常に重要な問題になってくるわけです。その場合に、一つの違った形式として、最近は管理炭鉱方式世間でいわれておるようなものが出てきたわけです。この場合に、労働基本権というものが非常に制限されるというニュアンスが強く出てくるわけです。そのことがこういう災害を起こす一つの誘因になるわけです。労働側から考えてみますと、強く自分の労働基本権に対する主張をすると山がつぶれるおそれがある。あこそをこうしてもらわなければならぬ、あそこはどうも通風が悪いのでもう少し排気の口を広げなければならぬのだけれども、それを言うと、会社側はその日の出炭に影響するから、そんなことを言ったってできないぞと言われたらそれまでだということで、かゆいところに手が届くような主張ができないといううらみがあるわけです。この労働基本権の問題という点について、一体石炭局なり労働省の当局はどう考えておるのか。石炭山に第二会社ができ、あるいはフリーでない管理炭鉱というようなものができたわけです。いわゆる経理が非常に悪くなって、そして経理審査会等審査を受けて開発銀行から特別の融資を受けるということになると、労使ともにものが言えなくなってきておるという場合があるわけですね。特に労働側についてはものが言えない。こういうものについての労働基準行政等における監督立場というものは一体どういうことになるのか、これに対する通産省なり労働省考えをまずお聞きしておきたいと思います。
  9. 井上亮

    井上政府委員 ただいま、いわゆる管理炭鉱についての御質問があったわけでございますが、実は、世間管理炭鉱と称しておられますが、私ども通産省としては、これを管理炭鉱という名称では呼んでおりません。管理ではなくて、むしろ、このまま現在の程度の国の助成策をもってしては炭鉱存続がほとんど不可能だ、しかし、これについて特別の保護助成、一般的な保護助成でなくて特別の保護助成をさらに追加的にしてやることによって炭鉱存続が可能となるということで、もとより炭鉱がつぶれますと多数の離職者を出しますし地域社会に非常に御迷惑をかけることにもなりますので、そういう特殊な救済のしかたをいたしているわけです。そういうわけでして、これは管理炭鉱ではなくて、特殊な援助炭鉱というふうに呼んだほうが私は実情において適当であろうというふうに考えております。まあしかし、それを滝井さんは管理炭鉱とおっしゃったわけですが、管理する何ものもないわけです。先ほど御指摘になりましたように、賃金面とか保安面等におきましても、労使できめましたことをさらに政府が干渉して管理するというような気持ちは私どもは毛頭持っておりません。あくまでも経営者経営者としての責任において労働者と話し合って賃金をきめるべきであり、あるいは保安につきましても、あくまでもすべてに優先しなければいかぬというふうに石炭局でも考えておりますし、保安上問題があれば、それは労働組合といわずあるいは経営者といわず、まず優先的に保安確保のための手段をとるべきであって、それが不十分であり、さらに資金面等による問題があれば、保安局なり私どもなりにそういう話をすべきであるというふうに思っております。私どもも、及ばずながら努力をして、保安優先のたてまえからめんどうを見ていく気持ちはあるわけですから、そういうふうに考えるべきだというふうに考えております。したがいまして、いわゆる管理炭鉱について、労働者の持っておる労働基本権といいますか、そういうものを政府側において制約したりなんかする意思は毛頭持っておりません。
  10. 村上茂利

    村上(茂)政府委員 労働時間、休憩、休日、賃金その他労働条件に関する労働基準法上の法定条件を守るべきことは、先生御指摘管理炭鉱であるかいなかを問わないのでありましで、私どもは、監督実施上も何ら差別なくこれを行なうべきものと考え、かつ実施しておるような次第であります。
  11. 滝井義高

    滝井委員 ことばの上ではそのとおりだけれども、客観的に見ると、有形無形の非常に精神的な圧力をそこに働いている労働者が受けていることは、労働者を呼んでお聞きになれば、もうこれは明白なんですね。したがって、他の炭鉱ストライキをやっても、そこではストライキもやれぬ、こういう非常にシュルンペンした状態、萎縮した状態になっておることは事実ですよ。そういうことがやはり第二会社等災害が起こる一つの大きな原因になっておるということです。したがって、私は、特に今後の管理炭鉱——いま私が管理炭鉱と言ったら、いや特殊援助炭鉱と言うんだということですから、その特殊援助炭鉱に対する監督というか、労働省としても監督立場から十分これは目を光らせておいていただきたいと思うのです。これはいま四つくらいありますよ。それらのものはいままで非常にはなばなしくやっておったものなんです。ところが、これが特殊の援助炭鉱になりますと非常に意気消沈をするという状態があるわけで、労働者側が言えないところもあるのだから、ひとつぜひ、通産省のほうで言えないところは労働省がかわってやってもらう、こういうことを特に要望しておきます。  次に、この問題に少し入っていきますが、この移転就職者用宿舎はいま累計どれぐらいできておりますか。
  12. 有馬元治

    有馬政府委員 現在建設中を含めて二万八千六百七十八戸でございますが、入居可能になっておる、でき上がった戸数は二万三百九十八戸でございます。
  13. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、この所有権雇用促進事業団にあるわけですね。
  14. 有馬元治

    有馬政府委員 そうでございます。
  15. 滝井義高

    滝井委員 実は前に私論争したがことがあるんですが、移転就職者用住宅となぜしないのだと言ったら、いや、住宅というのは建設省の所管だから、厚生省労働省がこれをやる場合にはどうしても宿舎としないと大蔵あるいは建設が納得をしないのだという話が、実は私厚生省とこの住宅論争をやったときにそういう答弁があったわけです。それは、宿舎と言おうと、倉庫と言おうと、何と言おうと同じで、人間が住まれればいいわけです。名前は何と言おうと、これは人間の約束ごとですからいいですが、一体この将来の運命というのはどういうことになるのですか。これは、暫定的にとりあえず、炭鉱離職者が特別の会社に雇われる、しかし、雇われても住む住宅がないから、当分あなたはそこにおりなさい、ここで二年間だけやったら、次には飛躍をして、りっぱな住宅政策の新しい社宅に入るなり、自己の持ち家をつくる状態をつくりなさい、こういうことだと思うのです。ところが、これから炭鉱離職者がだんだんなくなっていく。炭鉱離職者臨時措置法という法律も四十三年三月三十一日にはもう終わるわけですよ。それから、いままで鉱区の買い上げをやっておったニュースクラップ方式もだんだん先細りになってくる。したがって、いままではニュースクラップなり旧方式でやっておった鉱区はしばらく閉鎖しておったけれども、今度は、もう終わるから、そろそろこれを開放しようかというふうに政策が変わってきておるわけです。したがって、この住宅についてもやはりそろそろ政策が変わらなきゃならぬ時期が来ると思うのですよ。その場合に、こういう宿舎というものは将来一体どうするつもりなのか。これは、百戸か二百戸ならば何とかなるけれども、一年に一万戸ずつぐらいふやすわけですから、だんだん二万、三万になっていくわけです。この運命労働省は一体どう考えておるか。人間運命考えなきゃならぬし、住宅運命考えなきゃならぬと思うのです。
  16. 有馬元治

    有馬政府委員 御指摘のように、移転就職者用宿舎炭鉱離職者対策として建設を始めたわけでございますが、今日においては離職者の数も相当減ってまいっておりますので、一般の広域就職者相当部分を充当いたしております。来年度の予定では一万戸のうち大体一千戸見当を炭鉱離職者用に充当いたしております。したがいまして、発足の当初からいたしますと利用のしかたが若干変わっておりますが、やはり、今後の労働力政策としまして流動化政策を積極的にとっていく考え方でございますので、この移転就職者用宿舎建設は今後も持続したいと思っております。ただ、今後年間一万戸ペースで毎年建設をしていきました場合に累積をするわけでございますが、この宿舎性格上、しょっちゅう移転をするという性格を持っておりますので、何戸持てば流動化対策に間に合うか、その辺の検討をぼつぼつ始めなければならぬ時期に来るのではないかと思って、私どもとしましてはぼつぼつ部内で検討を開始しておりますが、それが五万戸あればいいのか、十万戸程度がいいのか、この辺を目下検討中でございます。あくまで、私どもとしましては、この宿舎の従来からの性格を重視いたしまして、流動化政策に万全を期していきたい、かように考えております。
  17. 滝井義高

    滝井委員 炭鉱離職者用の目的で建てた住宅が、将来労働者中高年齢層広域流動化政策に転用されていく。しかし、問題は、そういうクッション住宅というのを一体どの程度必要とするかということは、今後労働省流動化政策をやる上に非常に重要なポイントになると思うのです。ことに、建設省の六百七十万戸住宅建設、特に一世帯一住宅の制度をやろうとすれば、当然そこにクッションが要ることになるわけです。したがって、この問題は、つなぎとして、橋渡しとして非常に重要なポイントになると私は思うのです。だから、これはぜひひとつ長期の見通しのもとに建てる。それから、五万、十万となりますと、これだけを専門に管理する一つの部局みたいなものが必要になってくる。どうせ暫定的に建てた住宅ですから、そんなに堅固に建ててはいないと思うのです。そうすると、これはへまをするとスラム街になってくるわけですね。こういう点を考えますと、この建て方についても考えなければならぬ。日本の人口構造その他から考え長期住宅政策橋渡しとしてこれを使うとすれば、初めから、ちゃちなものではなくて相当なものを建てておいて、ヨーロッパ式にたとえば二十四、五坪くらいのものを建てればなおいいけれども、そうもできないでしょうから、十七、八坪か二十坪のものを建てる。安い一DKとか二DKを建てていると、二十年くらいでスラムになってしまう。鉄筋がスラムになったくらいたいへんなことはないですよ。そういう点では、もう少しやはり、金がかかっても初めから長期のもので建てておくということが必要だと私は思う。そういう点もひっくるめてぜひ御検討を願っておきたいと思うのです。  だんだん時間がなくなりつつありますから、その次に入りますが、炭鉱離職者臨時措置法は四十三年三月三十一日までに廃止することになっておるわけですが、三十九年一月二十一日に閣議決定で、当時手帳の三年になってしまった者は予算措置救済をしてもらっておるわけですね。三十九年十二月十八日以降法律の適用が受けられなくなる者については四十三年三月三十一日まで予算措置でやってもらったわけですね。そうしますと、これは四十二年度の予算を組んだらそれで終わることになってしまうわけです。この措置政府としては一体どうすることになるのかということですね。
  18. 小平久雄

    小平国務大臣 この問題につきましては先日も多賀谷委員から御質問があったのでございますか、四十三年度以降どうするかという問題は、まあ具体的な問題としては四十三年度の予算を編成する際に検討さるべきもの、かように思いますが、現在のところ、私としては、もちろんそのときの状況にもよりますが、これを四十二年度限りで廃止するというわけにはまいらぬのではないか、まあいわゆる前向きで当然考慮さるべきものであろう、かように考えております。
  19. 滝井義高

    滝井委員 これは当初は六百人ずつくらい減らしていっておったわけですね、毎年予算を編成するときに。去年が五千八百人で、ことしは五千四百人、四百人しか減らしていないわけです。これで六百人、ずつ減らしたって、最後のぎりぎりなくなってしまうまでには十年近くかかるわけですね。そうしますと、実際問題としては、大臣がいま言われるように、客観的には廃止できないことになるわけです。問題は法律論になりますが、この炭鉱離職者臨時措置法の附則の十六条をごらんになると、「この法律は、昭和四十三年三月三十一日までに廃止するものとする。」、こうなっておるわけです。そこで、「廃止するものとする。」ということになると、法律的に言うと廃止法を出さないとこの法律は生きていくという見解があるわけです。労働省はそういう見解をとるかどうか。実はわれわれの論争ではそういう結論になっておったのですが、大臣は、そういう見解をとってよろしいとお考えかどうか。
  20. 小平久雄

    小平国務大臣 こういう表現で規定されております際においては、廃止するためにはあらためて廃止するという法律が要ると私どもとしては考えております。
  21. 滝井義高

    滝井委員 私もそうだと思います。そうしますと、廃止法を出さなかったときには一体どういう形になるのかということなんです。
  22. 有馬元治

    有馬政府委員 廃止法を出す予定にしておりますし、また、廃止に伴ってその時点における経過措置も詳細に規定する必要があると思いますので、必ず出す予定にいたしております。
  23. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、当然廃止法は出さなければならぬとして、われわれが廃止法に反対して廃止法国会を通らなかったというときには、一体どういう結果が起こりますか。
  24. 有馬元治

    有馬政府委員 まあそれは、廃止するという政府提出の法案が修正になることになりますから、国会修正されれば、その限度で現行の措置法がどういう形で生きるか、修正の内容によると思います。
  25. 滝井義高

    滝井委員 これは一九七〇年の安保の問題と同じ形が出るのです。簡単な廃止するという法律経過法がおそらく出てくるのではないかと思う。というのは、たとえば四十三年三月三十日に閉山になって黒い手帳をもらった人がおるとすれば、この人は、三月三十一日でこの廃止法を出すと不公平になるわけですね。二年何十日間かはもらわないと、それで切れると不公平になるわけですから、当然、政府は、廃止法を出すときには経過措置としてこの人たちに対して三年間だけは生かすという形にならざるを得ないと思います。そういうことになりますね。
  26. 有馬元治

    有馬政府委員 そのとおりでございます。
  27. 滝井義高

    滝井委員 そういう形になると、われわれが法律をつぶしたときには、政府の被害というのは、結局、いま予算措置でやっておるものは、生きて残っておるのですから予算措置をやらなければならない。そうすると、法律的にはその期限がなくてずっと生きていくことになるでしょう。いまの経過措置では、一番最後の三月三十一日に閉山したものに三年間だけしてやれば政府責任は終わるわけです。そうして四十三年四月一日以降に閉山になったものは、法律がないから、そこらの普通の企業の離職者と同じように炭鉱離職者は取り扱われることになるわけですね。しかし、この廃止法をわれわれがつぶした場合はそうじゃない。それから後の四十三年四月一日以降にできた合理化離職者についても、この法律は生きていくことになるでしょう。
  28. 有馬元治

    有馬政府委員 つぶされれば、廃止はできなくなると思います。まあそのときにどういうつぶし方をされるか、これから国会の御意思に従って私どもあと法律を執行するか、あるいは部分的に修正されるか、そこは国会の御意思に従うつもりでございます。
  29. 滝井義高

    滝井委員 私はどうしてこういう質問をするかということ、これは非常に複雑な状態が出てきているわけです。現実に、この法律があるにもかかわらず、黒い手帳をもらって三年間四百五十円プラス家族手当が三十円と十円ですかをもらっていた人が、三年経過すると宙ぶらりんになっているんですね。いわゆる広域職業紹介にも乗らない。もうこの手当ももらえない。そうすると、それじゃこれを緊就とか一般失対に入れてくださいといっても、なかなか入れてくれないという宙ぶらりんの形が出ているわけです。たとえば、この前たぶん多賀谷君が質問しておったと思いますが、われわれが調査してもらったところによると、四十一年度に黒い手帳の所持者で期間が満了する者の予定数が千八百九十九人、それで就職可能の者が千百人程度。そうすると、われわれが炭労に調査してもらったのでは、約八百人が宙ぶらりんになるわけですね。就職ができない。そうすると、この人たちは緊就に入れるか一般失対に入れてもらう以外には行く道がないわけです。そうじゃなかったら生活保護に行くのです。そこで、私たちは、これが全く無生産の生活保護に行くか、少なくとも幾ぶんでも働く喜びを持つ一般失対、緊就に行くか、どちらが一体人間優遇の政策としていいのかというと、やっぱり、働いて、みずからの労働で額に汗を流して金をもらうほうがいい。その証拠には、どういう結果が出てくるかというと、こういう結果が出てくる。たとえば、われわれの地域の道路を見ますと、イギリスのロンドン並みですよ。私たちの田川市に来てごらんになると、どんないなかでも、もうみんなアスファルト舗装ができた。これは、炭鉱閉山をして不況になって、不況と貧乏の渦巻く中で一つ残っておる功績ですよ。イギリスのロンドン並みです。イギリスのロンドンはいなかへ行ってもみなアスファルトですが、わが田川市においても、筑豊炭田に来るとこういう状態が出てきている。これは一つの誇りですよ。それから、もう一つある。山がつぶれることによって地域経済というものはがたっといくのです。ところが、それががたっといかない一つの歯どめがある。それは何かというと、生活保護費と、それからこの緊就の賃金、一般失対の賃金が入ってくるのです。そうすると、こういう諸君は、たとえばわれわれの山間部の町とか村でその金を使うんですよ。決してこれらの諸君は福岡に行ったり東京に来てその金を使わない。したがって、地域経済の急激な地盤沈下に対して一つのてこになっておる。その地域に落ちる。北九州市のごときは、生活保護費だけで六十億あるんですよ。その六十億の金はだれが持ってくるかというと、八割は国が持ってきて、北九州市は二割だけを実際に足せばいいのです。ちょうど緊就も同じですよ。五分の四国が見てくれる。五分の一、二割だけを自治体が出せばいい。生活保護と同じ状態です。だから、地域経済が急激な地盤沈下を起こすことに対する一つのてこになる。ところが、これを生活保護でやると、生活保護では地域に何も残らないのですよ。しかし、緊就なり一般失対でやると、ロンドン並みの道路が残る。あるいは公共事業で運動場ができ、いろいろなものが残るのですよ。だから、緊就が一日の働く時間が短いからだめだ、こう言われるけれども、これは比較の問題ですよ。どうせ金を使うのならば、何か少しでも記念碑を残せばいい、事績を残せばいい、こういう意味ですよ。そういう意味で、これを無理やりにほうっぽり出して生活保護に転落させるよりも、多賀谷君ではないが、ほんとうに人間スクラップをつくるよりも、これはまだ緊就その他に置いておくほうがもっといいですよ。  そういう意味で、地方自治体はある程度財政負担がかかるけれども、この法律というものはもう最後のぎりぎりまで廃止せずにやっていく、それから、同時に、いま非常にワクを締めている緊就、一般失対に、黒い手帳の切れた人は積極的に入れていくという政策を私はとるべきだと思うんですよ。この点についてどう思うか。
  30. 有馬元治

    有馬政府委員 緊就の地域経済に与える好影響の問題は先生御指摘のとおりでございますが、御承知のように、この緊就制度は、第一次有澤調査団の答申に基づいて、三十八年の措置法の改正以降は、新規の合理化解雇者については手帳制度でもって手当を支給して再就職の万全を期する、こういう制度にかわりましたので、したがって、現在の緊就は、この臨時措置法に基づかない閣議決定に基づく予算措置でもってやっているわけでございます。したがって、手帳の有効期限である三カ年を経過した手帳切れの方々についてさらに再就職をはかる、要するに要対策者というものが出てくるわけでございますが、これは、私ども調査では、大体二七・六%、大体三割程度手帳切れの離職者の中でさらに再就職の対策を必要とするものというふうな比率が出ておりますので、有効期限が切れた対策者の大体三割見当を目途に、一般の公共事業あるいは鉱害復旧事業、産炭地振興事業、こういった面に積極的に再就職のあっせんをしていく、もちろん、広域紹介ベースに乗って需要地に転出できる方々については、依然として広域紹介ベースで積極的な再就職をはかっていく、こういうことは継続いたしたいと思いますが、どうしても地元を離れられない方々については、いま言ったような一般公共事業その他に吸収していく、こういう考え方で現在対処している段階でございます。
  31. 滝井義高

    滝井委員 一般公共事業とか鉱害復旧事業というようなものは、これはもうそう簡単に一般の人がさっさと行ける状態ではないわけですね。そこで、どうしてもやはり緊就とか一般失対の問題の出てくる可能性があるわけです。  そこで、あなた方が三割程度残ると思われる人たちの平均年齢は幾らと思われております死
  32. 有馬元治

    有馬政府委員 平均はちょっと出しておりませんが、三十四歳以下が六・八%、それから三十五歳から四十九歳までが二〇・五%、それから五十歳から五十九歳までが四二%、六十歳以上が三〇・七%。要するに、五十歳以上を見ますと七二・七%、非常に高年齢層でございます。
  33. 滝井義高

    滝井委員 大臣、いまお示しのとおり、炭鉱労働者でも四十歳以上なんです。もはや合理化が始まってから十年になるから五十になるんですよ。そうすると、五十以上がいま言ったように七割二分でしょう。飯塚の総合職業訓練所がございますが、去年まではこの総合職業訓練所に入る人は平均は四十歳だった。ことしはもう四十六か七になったのですから、たった一年のことでぐっと違ってきたのです。この状態というものはもう急カーブですよ。したがって、ここに滞留してくる人というのは、五十歳以上の者が滞留をして、五十歳以下は広域職業紹介その他で何とかいくのです。ところが、その残る三割というのは、五十歳以上の七割にほとんど入る人が残ってくるわけです。五十以下で残る人は総体的に少なくなる。こういう形になりますと、公共事業とか鉱害復旧事業とかいうことになると、それは、請負師が一定の人数をやって、やはり相当強度な労働をやらせるわけです。そうすると、五十歳以上になると相当肉体的に——私自身もちょうど五十ですが、激しい肉体労働にはたえられませんよ。だから、やはり一般失対か緊就というものを結論的に考えざるを得ないのです。そういうことを考えざるを得ないということになると、この法律はもはやこの形で四十三年を五十年とかというように延ばさざるを得ない。そして、四十三年で閉山ニュースクラップ方式が終わるかというと、私はこれは終わらぬと思うのですよ。どうですか、石炭局長、あなたのほうの見通しとして、ニュースクラップ方式を四十三年で打ち切れる見通しがありますか。
  34. 井上亮

    井上政府委員 現下の状況におきましては、御指摘のように、ちょっと考えられないというふうに考えております。
  35. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四十一年度でも三百万トン余やりますよ。それから保安不良で二、三十万トンやると、ことしまだ三百四、五十万トンやることになるのですから、まだこれからことしやって、ことしの終わりになりますと、これは四十二、四十三、四十四と三年間離職者対策をやってもらわなければならぬことになるわけです。そうしますと、この運命を終わらせる状態ではないということが、合理化の面から客観的に出てきておる。それから、黒い手帳が切れて、そうして残る人が、あなたの御説明のように三割以上残る、しかもそれが五十歳以上の高年齢が七割おる、こういう客観的な理論からいけば、もはやこの法律廃止するという客観情勢は出てこないということですよ。だから、こういうものは、四十三年に廃止しますといって、四十三年の予算編成をする四十二年ぎりぎりになってこんなことを言ったのでは、地方自治体は計画が立たないですよ。やはり、政治というものは、三年、四年ぐらいの長期の見通しを絶えず国が自治体に与えておかないと、突如として政策を出したのでは、自治体はこれに対応できない。お金持ちの自治体なら対応できますよ。しかし、ぎくしゃくして破産寸前にある自治体ですから、財源もないし困っているから、そうすると、地方自治体もやはり三年、四年の計画を立てなければいかぬ。しかも来年は市町村長の選挙でしょう。そうすると、新しくなった市町村長は、自分の四年間の、四十二年から少なくとも四年間の実績をつくろうとすれば、やはり四年間の計画を立てる。そうすると、産炭地の市町村は、公共事業なり道路の整備計画をやる上に、緊就なり一般失対というものは非常に重要な政策のテコになるわけですよ。予算の半分以上はこういう社会事業費が占めておるのですから。はなはだしいのは七割も占めておるのです。だから、こんなものを延ばすとかどうするとか、ぐずぐずしておそくしてはいかぬ。客観情勢がもはや必至であるならば、やはり政府としては、いまから新聞に談話でも発表して、自分としては、やはりこれは三、四年か、四、五年は延ばさざるを得ない、少なくとも合理化の見通しが完全につくまでは延長せざるを得ないということを言って、市町村長に安心をさせて、陳情に来るだけの金を節約させてやる必要がある。そうしないと、陳情する金だけでも、五人来れば五万円以上かかるのです、福岡や北海道からはるばるやってくるのですから。それだけの金は産炭地教育にでも回さしてやったらいい。政治というものは、そういうあたたかみと見通しを与える必要があると思う。そういう意味で、きょう私は、ここでひとつ大臣に、そういうことならば私もこれは延長を考えようと言ってもらいたいと思うのです。
  36. 小平久雄

    小平国務大臣 滝井さんのお話、承っていまして、私も非常に啓発されたわけでありますが、ただ、先ほど職安局長から申し上げましたとおり、一応四十三年三月で法律廃止するものとするという規定がある、こういうことでございますから、すなおにこの法律に従うということになりますならば、やはり廃止するという法律を出して、もちろん、その間経過的な措置についての法律も、どういう形であるにいたしましても必要かと思いますが、それが一応政府としてはすなおな行き方かと思います。しかし、いまお話しのような事情も当然あることと思います。したがって、これは、四十三年三月三十一日限りで廃止するものとする、こうあるようでありますから、四十三年度の予算編成のときには、どうしてもこれは、予算自体が減るのですから、問題になると思います。ですから、この問題も、実際問題として、私は、その予算編成期、すなわち四十二年のうちにですか、あるいは四十二年のいわゆる概算要求をするのは八月ごろでしょうから、そのころにおいて、四十三年度以降どうするかという方針を当然きめなければならぬだろうと思います。ただ、私がいまここであらかじめ、延長をすべきだとか、廃止をすべきではないとか、そこまで申し上げるのもどうかと思いますが、要は、その四十三年度予算編成期においてどういう現実の状況であるか、また将来の見通しはどうであるのか、そこらの情勢をよく検討して、政府としてはどういう措置をとるべきかということが当然決定さるべきであろうと私は思うのであります。そこで、重ねて申しますが、いませっかくのお話でございますが、今日から私が、この法律は当然存続すべきであるとか、そこまで申し上げるのはいかがかと思いますので、その点はひとつごかんべんいただきたいと思います。
  37. 滝井義高

    滝井委員 四十三年までに石炭鉱業の合理化、いわゆるニュースクラップ方式というものが廃止にならないという客観情勢はお認めになると思うのです。これは石炭局長が言っている。それから、現実に四十一年度予算でワクをとった五千四百人の緊就というものは、来年度末までには、ということは四十三年三月三十一日ですね、四十二年度末までには終局する見通しは客観的に見てない。これも大臣お認めになると思うのですよね。いまの五千四百人が、突如として四十三年三月三十一日に消えるという見通しはないわけです。しかもそれは五十歳以上の年齢者が多くなってきておる。それから、もう一つは、黒い手帳が三年で切れて、なお三割程度これが残るという客観的な事実もお認めになったのですよ。そうすると、この三つの事態から、必然的にこの法律を四十三年三月三十一日に廃止する客観的な情勢はたいということだけは、大臣お認めになるでしょう。やるやらぬという最終決定はやるにしても、その三つの客観情勢があることだけはすなおにお認めになるわけでしょう。
  38. 小平久雄

    小平国務大臣 いま先生がおあげになったような状況にあるということは、これはもう事実ですから、認めるといいますか、現実の姿でございます。
  39. 滝井義高

    滝井委員 そうしますと、四十三年三月三十一日になったときには廃止するという客観的な情勢にないということは認めたわけです。そうしますと、いま三割程度黒い手帳が切れて残る人についても、新しい就職の対策はやらなければならぬ。できるだけ広域職業紹介等に乗せるけれども、乗らない者についての新しい再就職の対策とは一体何ぞやというと、いま考えられ得るものは緊就か一般失対に入れる以外にないのじゃないか。
  40. 有馬元治

    有馬政府委員 これは、地元で再就職させるとすれば、御指摘のような事業もございますけれども、私どもとしては、一般の公共事業、それから鉱害復旧事業、産炭地振興事業、こういった積極的な事業にまず吸収計画を立てて、また、具体的な計画を現実的に立てておりますので、そこへ就労していただく。先ほどから緊就と一般失対と同じにお考えいただいておるようでございますが、むしろ緊就は公共事業並み、作業内容も賃金労働の実態も公共事業並みという考え方でございますので、働ける人はできるだけ一般の公共事業方面へ就労していただく、こういう形で手帳切れの離職者対策を積極的に展開していきたい、かように考えております。
  41. 滝井義高

    滝井委員 一般公共事業なり鉱害復旧事業なり産炭地振興事業に入れますと、こうおっしゃるから、それはわかります。そうすると、これは公共事業並みだというならば、公業事業に入れなかったものは緊就に入れてもいいかということを私は言っている。あなたが三つのものをおあげになった。一般公共事業、それから鉱害復旧、産炭地振興の事業、それらのものになお入れないものは、非常にかたくとびらを閉ざしておいた一般失対なり緊就を少しは天の岩戸を開くくらいに、少しは光が漏れるくらいにあけてくれますか、こういうことなんですね。それらの三つのものに努力をして、なお入れなかったというときにはやっていただけますかということなんです。
  42. 有馬元治

    有馬政府委員 緊就は、御承知のように、三十七年三月末以前の合理化解雇者を対象に現在事業を施行しておりますので、これは、吸収する資格といいますか、手帳切れの離職者の方々にはその資格が現在ないわけでございます。したがって、先ほど申しましたような一般の公共事業その他の鉱害復旧事業に吸収しよう。これは緊就と大体同じ事業とわれわれは考えておるのでございます。しかし、休力その他でそういった比較的重労働方面には就労できない、こういった方々も中にはあると思いますので、これらの方々について一般の失対事業へ吸収したらどうか、こういう問題が出てきております。私どもはできるだけ民間の正常雇用なりあるいは公共事業なりに吸収するのをたてまえにしておりますが、どうしてもそういった方面に就労できない場合には失対事業にも適格者は吸収していく、こういう考え方をもって処理していきたいと思います。
  43. 滝井義高

    滝井委員 ぜひ、いま言ったように、万策尽きた場合には一般失対に入れるし、それから、三十七年以降の合理化で黒い手帳をもらって、そして切れる人が、だんだんと今度出てくるわけです。そういう者についてはやはり緊就を考えてもらわなければならぬことになるわけです。そこは大臣どうですか。非常にシビアーにものを考えていけば労働政策は立たないのですよ。だから、そこは、ある程度厳重にいくけれども、厳重にいってどうしてもどうにもならぬという者は、生産保護に転落させるよりは仕事のほうがいいですよ。人間をほんとうのスクラップにして無為徒食をさせるよりか、地域に貢献をしているという誇りを与えるほうが何ぼか人間的にもいいと思うのです。また、地域の住民感情、地域の社会教育から考えても、遊んでみんな生活保護をもらっている地域よりか、みんな朝早くから、七時にはみんな起きて行くのですから、一緒に行っているという姿のほうが地域に活気がありますよ。みんなどこもここも生活保護をもらってぶらぶらしているというよりか、みんなべんとうを持って出て、うちのおとうさんも出ている、おかあさんも失対へ行っているというほうが子供にも張りを与えますよ。それを、何か労働政策法律をつくったワクの中でぎくしゃく締め上げていって、職も与えずに、労働省から厚生省に移すということは、政策としてもよくないのですよ。いま言ったように、われわれのところは幸いに道路がロンドン並みになったのですから、それから地域経済の急激な地盤沈下を防いでくれているのですから、非常に地域経済に貢献している。その貢献のしかたも、生活保護も貢献しています。しかし、物が残るという点においては、生活保護よりはるかにこれのほうがいい。だから、それは労働省にその分だけしわが寄ってくる、背負わなければならぬ点があるかもしれぬけれども人間、働いているほうがいいのですよ。老人ホームにじっと入れて何もさせないと、自殺が多くなる。しかし、花壇でも何でもつくらせる。いま、御存じのように、ハンセン氏病だって、精神病だって、みんな作業療法をやるんですよ。いわんや、自由な人間に何にもやらせないで生活保護だけやっていれば、小人閑居して不善をなす、ばくちか何かやることになる。そうでなくて、働かせるということですよ。そこらあたり、大臣どうですか。いま言ったように、一般失対にしかかからぬ者は一般失対を考える。それから、すでに三十七年以降で今度は合理化の手帳をもらっておるが切れるという者については、やはり緊就の運営をある程度弾力的に考える。これはノーズロにする必要はない。天の岩戸をちょっと開いてくれ、こういうことなんです。
  44. 有馬元治

    有馬政府委員 手帳切れの方で働きたい方々を生活保護へ転落させるということは私ども考えておりませんので、積極的に働ける方は働いていただく。その順序といたしまして、先ほど申しましたように、一般の公共事業、鉱害復旧、それから産炭地振興事業。これは、筑豊で一例をとりますと、三百十三名の吸収計画を具体的に立てております。受け入れ体制は整備して、就職あっせんをしているのですが、手帳切れの方々は思い切ってそういった事業に就労したがらない傾向も現在のところございますけれども、これは事業の内容その他から言って緊就事業と同程度の事業でございますので、できるだけそっちのほうへ行ってもらう。御承知のように、現行の制度では緊就に吸収しにくい制度になっておりますので、まず、いま言った三つの事業で優先的に吸収してもらう。それでもどうしても吸収できない方々が、体力的な条件あるいは居住要件で出てくると思いますので、これらの方々は一般失対事業で最終的には吸収していかざるを得ないのではないか。その積極的な吸収政策のほうをまず計画を立てていまやっておりますので、いましばらく、この成果があがるかどうかを、何といいますか、ごらんいただいて、どうしてもぐあいが悪いということであれば、私どもも決してしゃくし定木に考えておるわけじゃございませんので、やはり、順序としてはそういう考え方で、この筑豊地区手帳切れの就職対策といいますか、失業対策を積極的にやっていきたい、こう思っておりますので、いましばらく御猶予いただきたいと思うわけでございます。
  45. 滝井義高

    滝井委員 法案を通すときに言質をとらないと、やる機会がないんですよ。それで、いま気持ちはわかりましたから、了承します。そこで、公共事業なり鉱害復旧事業なり産炭地振興事業という段階を置いて積極的にその地域の雇用対策をとります、もちろん広域に行く者もまず第一段階、それに行かない者はいまの三つぐらいのものに積極的にやります、しかし、居住要件、体力の状態その他から見てどうしてもそれらのものに乗らないという者については一般失対を考えざるを得ない、こういう理解のしかたで差しつかえないですね。
  46. 小平久雄

    小平国務大臣 ただいま御指摘のとおりの方向でひとつやらせることにいたしたいと思います。
  47. 滝井義高

    滝井委員 これで気持ちが通じておけば、あとは積極的にやってもらえますし、三百十二人の吸収計画をお立てになっておるそうですから、そういう実態を見て、なお一般失対の問題を最終的にどうするかということは、またいずれ話し合いをさせていただきます。  最後に伺いたいのは、炭鉱地帯の健康保険組合というのが軒並みにだめになりつつあるわけです。したがって、いままで健康保険でやっておった病院、診療所というものを閉鎖しつつある。したがって、もし北海道に起こったようなことが大牟田や三池に起こりますと、これは救急の病院がないわけです。そこで、いまわれわれの地区でどういう形になるかというと、結局私立病院か何かに持ってくる以外にない。私立病院は満床です。さあ事故が起こったというときに持っていく場所がない。こういうことが起こり始めたら、炭鉱病院全部閉鎖です。みんな第二会社になったら、そんな福祉施設なんかやる余裕がないわけです。ここなんですよ。もう目に見えない福祉の問題というものが、人が気づかないうちにみんな消えつつある。はなはだしいのは炭鉱病院を町立に移しつつある。そうすると、町の健康保険組合の直営診療所みたいになってしまって、いざ災害というときには満床で入れられない、こういう事態が起こるわけです。  そこで、まず第一歩として、炭鉱の健康保険組合というものをある程度建て直しをやらなければならぬことになるわけです。ところが、これは厚生省の所管で、厚生省は二億五千万かそこらの金は持っております。そのうちの六割は炭鉱にやろうと言っているのです。ところが、二億五千万の六割くらいもらったってどうにもならぬ。そこで、この問題については石炭政策でやらないとだめなんですね。一ついい前例を教えておきます。実は駐留軍の健康保険組合がいまやはり非常に危機です。ところが、これはいままで厚生省の所管でやっておった。それを、われわれが特に主計官等にも要請しまして、それで防衛庁に移した。そうして、いま防衛庁でその危機を救済する予算を取っています。もちろんこれは米軍側が事業主として二分の一を負担する点もあって、防衛庁に移しました。そこで、これは一挙に通産省炭鉱の健康保険組合を移すというわけにもいかぬでしょうが、あなたのほうの石炭政策予算として、ことしは間に合わぬから、四十二年度——八月からすぐに予算折衝が始まりますから、その段階でやはり取るわけです。取ったら、これを今度厚生省の健康保険のほうに移してやるとか、何か方法はあると思うのです。石炭政策の一環として取る。たとえば、年金の調査費というものを二百三万円取っておるという前例がある。この故知にならって、年金の二百三万ことし取ったと同じような形で、石炭政策の一環として、いわば健康保険組合対策と申しますか、あるいは福祉対策とかというような金をおたくが取るわけです。その金を健康保険のほうに回してやる、てこ入れをしてやるというような、ひもつきのものにすればいい。それを石炭政策の一環としてやらないと、治療対策としてやりますと、これは炭鉱と同じように、たとえば企業がいま何と申しますか過渡期になりまして、戦略産業みたいなものがずっと伸びるし、そうでないものがつぶれていくという、こういう過渡期の状態がありますから、厚生省でやりますと、石炭だけを特殊扱いするというわけにはいかぬ。六割配分するというのは、いま最高の取り扱いですよ。そこで、いま私専門的にもやっておりますけれども、うまくいかぬ。六割以上はもう無理ですよ。そうしますと、それではいまの石炭産業における健康保険、健康を維持していくための健康保険組合というものは、にっちもさっちもいかなくなる。ある程度てこ入れをやるためには、石炭政策の一環としてやるということを来年度予算編成にあたっては考えなければならぬと思います。この点ひとつ石炭局長から……。  これで終わります。
  48. 井上亮

    井上政府委員 ただいま仰せになりましたように、炭鉱の健康保険組合の財政が非常に赤字で困窮しているという実情は御指摘のとおりでございます。私どもも、かねてこの問題を重視いたしまして、厚生省とも再三にわたりまして、この赤字の健康保険組合に対する国の補助の増額という点について折衝を重ね、通産大臣からも閣議で御発言いただいて、厚生大臣に要請していただいたというようなこともあるわけでございますが、なお今日の状況で必ずしも十分ではなく、依然として健康保険組合の窮状は続いておりますので、来年度におきましては、なお私ども厚生省と十分連絡いたしまして、健康保険組合の赤字脱却対策を考究してまいりたいというふうに考えております。
  49. 滝井義高

    滝井委員 ぜひひとつそういうように要望して、私、これで終わります。
  50. 野田武夫

    野田委員長 八木昇君。
  51. 八木昇

    ○八木(昇)委員 多賀谷、滝井両委員から相当詳しく質問がありましたから、私はそれに補足する形の質問を若干試みる程度になろうかと思いますが、二、三質問いたしたいと思います。  そこで、いま滝井委員質問をしておりました、黒い手帳の期限が切れてなお今日職がない人たちをどうするかという問題は、非常に重要な問題だと思いますので、将来この問題は大きな問題に発展をしていく可能性が見通されますので、なお一、二具体的にちょっと追加して伺っておきたいと思います。  労働省の説明では、昨年求職手帳の期限の満了した人が九百二十名、それから来年度の見込み者が千四百六十名、そのうち二六%相当の人々がなお今後も就職対策が必要である、生活保護を受けておる人は一四・六%だ、こういう説明であったと思います。そうしますと、手帳の期限が満了をして他に就職先がきまっていない、しかも生活保護の適用も受けていない、こういう全体の二六%相当数の人というのは、これは、いろいろな条件が具備しないために、生活保護の適用を受けさせようとしてもそれができないというような人々だ、こういうふうに考えていいのでしょうか。
  52. 有馬元治

    有馬政府委員 そういうふうに考えるよりも、先ほど申し上げましたように、年齢的に五十歳以上が七二・七%という高年齢者でございますし、期間満了後の動向調査を私どもがやりました結果は、やはり、家事に従事する、あるいは自営業をやる、あるいは自分で就職を開拓するというような形で、残りの五五、六%が自分で身の振り方をきめていく、こういう比率になっております。必ずしも、生活保護を望んでおるけれどもなかなか受けられない、こういう人ばかりではないように私どもは承知しております。
  53. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そういう人々ばかりではないでしょうが、しかし、この二六%の人の中で、生活保護を受けられる人はもうすでに生活保護の適用を受けているでしょうから、生活保護の適用を受けたいと希望をしても保護の適用は受けられないという人たちが相当数含まれているということは事実でございましょうか。
  54. 有馬元治

    有馬政府委員 生活保護を受けたいけれども受ける資格がないという調査は私どもやっておらないのですが、現実にどの程度受けておるかという比率は、先ほど御指摘がありましたように、ちょっと一四%ではございませんが、一六・一%という比率が現地調査で出ております。この傾向は今後の手帳切れにも同じような傾向が出てくるのではないか、こういう想定で各種の対策を立てていきたい、かように考えております。
  55. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そういうようなわけで、どの程度の数の人々が生活保護の適用を受けたいけれども適用条件を具備していないために受けられないで今日滞留しておるかということの正確な数の捕捉はできないにしても、そういう人々がこの二六%の数字の中に相当数いることは確かですね。
  56. 有馬元治

    有馬政府委員 その希望調査をやっておりませんので、ちょっとわかりにくいのですが、やはり、この二七・六%という比率は、何といいますか、就職をしたいという就職意欲に燃えた方だと思います。
  57. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それは、そうばかりは断定的に言えないのじゃないですか。それは、いま生活保護の適用条件というのは非常にきびしいから、まあ若干でも財産がある、あるいは炭鉱を離職するときにある程度でも退職金をもらった、それがまだ残りがあるはずだというような事情の人の場合には、生活保護は適用しないのでしょう。ですから、この二六%の人の中にどの程度の割合いるかについては、今後調査をしてもらいたいと思います。それは、いまわからないにしても、そういう人たちがおることは間違いないと思うのです。そうなりますと、そういう事情の人で、しかも年齢的には相当高年齢、六十歳以上の人がこの二六%の中には三〇%もおるわけですから、こういうことになってきますると、この人たちを一体どうするかという問題は、先ほど来のお話のように、これは一般失対に持っていく以外には現在の日本の制度のもとではどうも考えられない、私にはそう思われるのですがね。  そこで、お伺いしたい点は、この二六%の人の中で、手帳が切れてから相当期限がたっておる人がおるわけですね。手帳の期限が切れて今日まで職がない人の中で、最高の期限がたっておる人は一体どのくらいの期限がたっているでしょうか。
  58. 有馬元治

    有馬政府委員 これは昨年の四月から満了者が出ておりますので、月別の経過を申しますと、四月が五十三、五月が八十五、六月が百四十二、七月が五十六、八月が百二十、九月が百十五、十月が百三十五、十一月が百三十、それから十二月が八十四、合計九百二十、こういう内訳でございます。
  59. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そうしますと、一番長い人はもう大かた一年たっているわけですな。全くもう政策の上からは一年間放置された形のままになっておる人がおる。しかも、この数はだんだん増大していく、こういう形になるわけですが、そこで、いずれこのどうにもならない人については失対に吸収したいという意味のことを言われたのですけれども、これはそんなに長く放置されたんじゃたまらないわけですね。この一年間は、まあ何とかして、生きておる以上は食っておるのでしょうが、ほとんどまあ人間としてはとうていたえ得られないような悲惨な生活をしていることは間違いない、こういうことになりますので、そこで、一体いつごろ決断をするつもりですか。一般失対へこの人はもう入れざるを得ない、こういう断定を下すのは……。
  60. 有馬元治

    有馬政府委員 先ほど申しましたような三百十三名の吸収計画を立てまして、これに積極的に吸収をしていく。この効果といいますか、実績があがらない場合に、それは次の手段として考えざるを得ないと思います。しかし、まあそれにはいろいろな原因がありますので、もともと六十歳近くになりますれば労働戦線から引退をするという方方も相当あると思います。したがって、その辺は、生活保護のほうがいいのか、一般失対で働いていただいたほうがいいのか、現地で相当きめこまかく対策を講じていかないと、一がいに数でどうこうということはなかなか言いにくいのじゃないか、かように考えております。
  61. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで、公共事業とか産炭地の復興事業とか、そういうようなものにこの残った層をある程度吸収したいという労働省のお話ですが、公共事業に対して計画どおりに吸収されたとしても、当面の労働省の計画では三百十三名でしょう。そうしますと、なお相当残りますね。しかも、この見きわめをつけるについては、現在の労働省考えからいけば、まだ相当先になりそうですな。そうしますと、この二六%の人たちは、職がないまま、生活保護にもならないし、一般失対にも吸収してもらえないしという状態のままなお放置される。二六%の中の全部がそうだというわけじゃないでしょうけれども、相当数というものが今後相当長期になお放置される。これはやむを得ないというお考えでしょうか。
  62. 有馬元治

    有馬政府委員 三百十三名という吸収規模は、年度末までに発生を予想される千二百名程度の見込みを前提といたしまして、先ほどの二七・六%の比率から大体割り出した吸収規模でございます。したがいまして、大体就職意欲のある方々は吸収ができるという目算のもとに計画を立てておるわけでございます。実際にやってみて、どうしても吸収できない、あるいは一般公共事業に行けないという方々が出たときに、第二段の策として失対事業に吸収するという方法、あるいは生活保護へ行ってもらうというふうな具体的な仕分けをしていきたい、かように考えておるわけでございます。
  63. 八木昇

    ○八木(昇)委員 まあ答弁としては非常に形式的な答弁です。これは、大臣、お考えになって、どうですか。就職意欲のある方々はと、こうおっしゃるけれども、この二六%の人々の年齢構成は五十歳から五十九歳までの間の人がその中の四二%でしょう。それから六十歳以上の方が三〇・七%でしょう。そうすると、この人々の中の七三%というものが五十歳以上の年齢の人ですよ。こういう人たちが、就職意欲があると言ってみたところで、一体その職があるのですか。今日まで一年間職がなかったから、こういう状態になおこの人たちは残っておるのでしょう。合計しますと四年間ですよ。しかも、それに対する対策について見きわめをつけて、やむを得ず失対に入れる者は入れるということについての見きわめを一体いつごろつけるのかというと、それについては明確な御答弁がないということでは、われわれ了承できないですよ。これは大臣からお考えを述べてもらいたい。
  64. 小平久雄

    小平国務大臣 すでに三年を経過したいわゆる手帳の期限切れの人の年齢構成比は先ほど先生がお示しのとおりでございますが、それと、期間満了の人のうち就職対策を必要と考えられる者が二七・六%でございますが、この層の年齢というものはどうも役所のほうでもよく調べてないようです。ですから、この就職対策を必要と考えられる者の年齢構成は一体どうなのかということも、私はよく調べてみる必要があるだろうと思うのです。
  65. 八木昇

    ○八木(昇)委員 それは御答弁があったのです。七〇%以上……。
  66. 小平久雄

    小平国務大臣 ですから、先生お示しのように、必ずしもこの就職対策を必要とする者のうち七〇%以上が五十以上なんだ、こうも言い切れないと思うのです。これは調査してみなければわかりませんが、まあ私の感じですから間違っているかもしれませんが、たとえば、自己就職しているとか、家業に従事しているとかという方々のほうにむしろ高年齢層の者が多いのではなかろうか。これは推測ですよ。ですから、間違っているかもしれませんよ。しかし、就職をなおしよう、こういう方々は、この中でもわりあい若い人が多いんではなかろうか、こう思うのです。ですから、そういう点もよく調べまして、要するに実情に即してこの対策を講ずるよりいたしかたありませんから、先ほど来御説明申し上げておりますように方法はいろいろ考えられましょうが、しかし、いずれにいたしましても、この二七・六%に相当する就職を希望する人については、先ほど来諸先生のお話もありますとおり、まず積極的にやはり働いてもらう、しこうして適当な収入を得てもらう、こういう立場に立って、必ずしも満足した満点の職ばかりはないかもしれませんが、何と申しましても、やはりまず働いて収入を得るのだという考えにもなってもらわなければ、これは困ると思うのです。全部が全部適しているかどうか知りませんが、とにかく、一応公共事業なり鉱害復旧事業なりでワクも準備をしてというか、そういう用意をしているわけですから、多少の御不満があっても積極的にやはり就職を願って、そしてまず働いて収入を得るということにこういう方々御自身にもお考え願わなければ、これはもうどうも気にくわぬ気にくわぬというので就職しないというのでは、いつになっても適当な職もないわけですから、これは政府の施策ももちろん私はやるべきだと思うが、しかし、御当人たちにもやはりそういう点は十分御考慮をいただいて、両々相まってやらなければこの問題の解決はできぬじゃなかろうか、私はそういう感じを抱いておるわけです。
  67. 八木昇

    ○八木(昇)委員 いまの大臣の答弁は少しごまかしておるのですが、局長の答弁では、すでに黒い手帳の期限切れになっておる者の全体のうちの二六%がなお今後も就職対策が必要であるという答弁をしておりますから、だから、すでに自家営業を始めたとかなんとかいうような人は含まれていないわけです。その二六%の人の中に、もう相当数手帳が切れて一年にもなっておる人がおる。そういうようなことですから、これはあまりずるずると長く時間をかけてもらっちゃ困る、こう言っているわけです。  それで、現在までのうちに、こういう求職手帳の期限満了者であって失対に入れたというのはむろん一名もないのでしょうね。
  68. 有馬元治

    有馬政府委員 手帳切れの方々については今日までございません。
  69. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで、先ほど来言っているのですが、手帳切れの人で、もう六十歳以上にもなって、どう考えてもほかへ持っていくことは困難だという人は、やはり失対事業に入れるべきだ。客観的に見て、そういう人たちは大体見きわめがつくんじゃないですか。そこらについて、もう手帳が切れて一年にもなっておるような人については逐次失対へ入れるというお考えになっていただくわけにいきませんか。
  70. 小平久雄

    小平国務大臣 私は先ほども申したのですが、先生が二六%とこうおっしゃっているが、二七・六%のようです。これらの方々の年齢は一体どうなのか、これらの方のうちどうしても就職を現実にされぬでおられる人はどういう事情なのか、これはやはり個々についてよく事情を調べてみないと、ここでいろいろ論議し合っても、実際的な点はなかなかこれといった結論が出ないんじゃないかと思うのです。ですから、よく現地にも話をして、こういう人たちが一体年齢はどうなのか、どういう事情で一体就職ができないでいるのか、そういう点をよく調べさせまして、具体的にこれは一人一人の就職対策をやはり考えるということに尽きるのじゃないかという気が私はするのですが、いかがでしょうか。
  71. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで、少しくどいようですけれども、個々について詳しく事情を当然これは調べてもらいたいと思います。そして、調べてもらった上で、先ほど来の御答弁のように、もうしばらく待ってもらいたい、しゃくし定木に考えておるわけではないという、そういう抽象的な態度表明だけではなくて、個々について事情を調べた上で、これは幾ら職を求めていても就職は困難だ、それから相当重労働を伴うようなそういう事業に働かせるのも困難だということが明らかな者については、もうしばらく待ってもらいたいというような当面を逃げるという態度でなくて、そういう明らかな事情の人については逐次失対に入れる窓を直ちに開くということはできませんか。
  72. 小平久雄

    小平国務大臣 その点は、先ほど来申しておりますように、また、いまも申しましたのですが、どうしてもこれは失対に入れるよりほかない、事情がそうなんだということならば、これはもう私は失対に入れることもやむを得ぬだろうと思うのです。ですから、そういう点は、もっぱら一人一人の事情によって、よくそこを調べて、それで取り計らう、こういうことにいたしたいと思います。
  73. 八木昇

    ○八木(昇)委員 きょうのところはこの問題についてはその程度で終わっておきますが、私どもが産炭地域の実態を実際はだに触れて見聞をしておりますと、もうこういう人は失対に行く以外にないという人が確かに相当数いますよ。ですから、それはもう手帳切れになって相当期間たっておりますから、やはり、そういう人については、すみやかに決断をつけて、可及的すみやかに逐次そういった処理をしてもらいたいということを、あらためて要望しておきたいと思います。  次の点に移りたいと思いますが、炭鉱を退職した人が昭和三十七年四月から十万人以上出ておるようでございますが、その後新規に炭鉱に入った人も相当おると思います。炭鉱をやめてまた炭鉱へ入ったという人もおると思いますが、要するに、炭鉱をやめて再び炭鉱へ入った人、それから、全く新規に炭鉱に入った人、これらをひっくるめてかまいませんから、最近四カ年間に炭鉱に入った人の年齢別の数といいますか、そういうものがつかめておりますか。おおよそのところでけっこうです。
  74. 井上亮

    井上政府委員 ただいま手元にある資料は大手炭鉱のみのものでございますが、三十九年度と四十年度につきまして新規に雇い入れた者の年齢別の構成につきまして調査があるわけですが、三十九年度についで申しますと、雇い入れ総数は九千七百六十三名、このうち二十歳未満が八百七十六名、二十歳から二十九歳までが三千八百三十九名、三十歳から三十九歳までが三千八百七十九名、四十歳以上が千百六十九名というような内訳に相なっております。それから、四十年度につきましては、新規雇い入れ総数が八千五百七十一名、これに対して年齢別では、二十歳未満が九百七十一名、二十歳から二十九歳までが三千三百三十五名、三十歳から三十九歳までが三千百七十八名、四十歳以上が千八十七名ということになっており、ます。ただし、これは大手炭鉱のみの統計でございます。
  75. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これは、大手の場合でこういった状況でありますから、中小ということになりますと、新規に炭鉱に入るという若い人たちは非常に少ないんじゃないか、こういうふうに考えるわけでございます。しかも、これら新規に雇い入れるにつきましては、つぶれた炭鉱に行って相当活発に勧誘をしているんですね。そこで職を失なった者をずっとたずねて回りまして、相当活発な就職勧誘をやった結果である、こういうふうに考えられるわけであります。  そこで、将来の石炭鉱業を考えます場合に、結局、どんなにいい施策を立てましても、労働者対策というものがいまのような状態でいくならば、もうこれは新しい若手労働力は炭鉱に入ってこない、その面から石炭鉱業はどうにもやっていけなくなっていくことが予想されるんじゃないか、こういうふうに考えられるわけでございます。そこで、いわゆる新規学卒者と称する人々、新制中学を出て、そうして炭鉱へ就職する人は一体どのぐらいおるのでしょうか。
  76. 井上亮

    井上政府委員 先ほど答弁申し上げました三十九年度と四十年度についての大手の調査でございますが、大手につきましては、先ほど申し上げました雇い入れ総数三十九年度九千七百六十三名のうち、新規学卒は、常用労務者で百五十四名、職員で百七十三名、それから、四十年度は、常用労務者で二百八十名、職員で百八十八名というような内容になっております。   〔委員長退席、加藤(高)委員長代理着席〕
  77. 八木昇

    ○八木(昇)委員 これもやはり、大手炭鉱の場合でこうなんでございますから、これはもう惨たんたるありさまですね。そこで、現在、基幹産業の企業ではどこでもそうですが、電力の場合に例をとりますと、新制中学を卒業して就職した者は全員、企業の中の技能者養成所に入れるわけですね。そうして、もう二年間合宿させて完全に技能教育を施して、養成所を卒業して初めて現場に配置する、こういう非常に充実したやり方をやっているわけです。そこで、新制中学を出たばかりのこの少年は坑内には下がることができない。十八歳以上にならないと坑内に下がることができない。そうしますと、その間新規学卒者は一体どういう使い方をし、あるいは技能の養成についてどういうことをやっておるのか、この実態、これは通産省労働省かよくわかりませんが、御説明願いたい。
  78. 有馬元治

    有馬政府委員 これは、御指摘のように、企業内訓練という形で、いわゆる鉱山学校に収容して企業内訓練を施して、坑内に下がれるような年齢になって坑内に入れる、こういう訓練方式をとっております。
  79. 八木昇

    ○八木(昇)委員 私は佐賀県でずっとたくさん炭鉱を見てきましたが、そういうことをやっている姿を最近見たことはありませんが、実態はどうでしょうか。
  80. 有馬元治

    有馬政府委員 これは昨年の四月末現在の実例でございますが、雄別の茂尻で二十名、同じく雄別で二十八名、それから羽幌が五十八名、それから常磐の茨城で二十六名、こういう形で訓練を行なっております。
  81. 八木昇

    ○八木(昇)委員 九州は一カ所もないのですか。
  82. 有馬元治

    有馬政府委員 九州は、ちょっとこの資料ではございません。
  83. 八木昇

    ○八木(昇)委員 その北海道のいまの実情を聞きましても、数的に言って、これはもうほとんど問題にならないですね。  もう一つお伺いしますが、工業高等学校の鉱山科あるいは採鉱科——採鉱科というのはもうないそうですが、そういうととろの新規学卒者の炭鉱への就職状況はわかっておりますか。
  84. 井上亮

    井上政府委員 これは私からお答えするのは必ずしも適当でないかと思いますけれども、一応私参考までに調査をいたしてみたわけでございます。したがいまして、責任ある答弁にはならぬかもしれませんが、調べました範囲でお答え申し上げます。  これもまた中小にはあまりこういう制度があるのは少ないわけで、ほとんどないかと思いますが、全然ないとも思いませんが、一応大手炭鉱について調べたところによりますと、会社としましては九社、鉱業高等学校あるいは高等鉱業学校と称しているところもあります。あるいは鉱員養成所というような名前でやっておるところもありますし、あるいは鉱業学校というような名前を称しているものもありますが、いずれも、中学卒業者を対象にいたしまして、中学卒業後三年程度養成するというようなことをやっておるようでございます。そういう内容の学校並びに養成所を持っております炭鉱の数は九社ございます。それから、炭鉱で見ますと十五炭鉱。これは大手についてでございます。会社の名前を言いますと、山の名前でもいいのですが、三井は芦別。それから、三菱は、二子、これは九州、それから大夕張、これは北海道です。北炭は夕張。それから、太平洋は釧路にございます太平洋炭鉱鉱業学校。住友は赤平と奔別。日炭は高松にございます。それから、雄別は、先ほど職安局長からお話しになりましたように、雄別に職業訓練所の形でございます。それから、雄別では、ほかに茂尻、尺別。それから、常磐ですが、常磐も、先ほどお話がありましたが、中堅鉱員義養成所というような形で、常磐、茨城にございます。それから、松島は、池島に養成所と、それから大島のほうに松島炭鉱鉱業学校というような名前でございます。以上、九社十五炭鉱にこういう学校並びに養成所がございます。なお、現在養成しております人員は、一年生、二年生、三年生を通じまして、この九社で五百七十名ただいま養成しておるというような実情でございます。
  85. 八木昇

    ○八木(昇)委員 そこで、これは実に惨たんたるありさまでございまして、国の重要基幹産業の中でこういう惨たんたる状態になっておる産業というものは、もうほかには、申し上げるまでもなく、ございません。そこで、やはりそういった若い労働力を確保し、そうしてそれに技能を付与してやるということの仕事ということについて、より積極的な努力を具体的に今後やってもらわなければならぬと思いますが、しかし、それにつけましても、結局、炭鉱労働者労働条件といいますか、生活環境と申しますか、そういうものをやはり抜本的に向上せしめなければ、これはもうほんとうにどうにもなりません。実際、炭鉱地帯におりますわれわれは、これはもう身にしみて感じておる。親子三代炭鉱の坑内夫だったというような家庭がずいぶん多かったのですが、もうそんなことはほんとうに夢物語になってしまっておる。いろいろな家庭の事情や、万々やむを得ず、ほんとうにいたしかたなく炭鉱へ入ったという若干の少年が年間を通じて百数十名全国でおるというようなことなのです。それで一体、石炭鉱業審議会やその他が、石炭をいかに採算に合う形で出炭をさせるかというようなことで頭を幾らひねくってみましたところで、どうにもならないと私は思いますので、そういった点、あらためて認識を深くしてもらいたいと考えるわけでございます。  そこで、あと一、二点で終わりますが、炭鉱労働者労働条件をよりよくしなければ、あとは続かないのだという観点から、炭鉱労働者の坑内夫の最低賃金ですね、これを近い将来金額を引き上げるというお考えはございませんか。
  86. 小平久雄

    小平国務大臣 御承知のとおり、炭鉱労働者の最賃は、大手につきましては三十八年から、それから中小については四十年四月から実施して、一万六千円ということでやっておるわけでありますが、これにつきましては、御承知のとおり、一般の最賃につきましても、先般、目安の増額という答申を中央最賃審議会から得ておりますので、それとの関係もございますし、それから、一方、石炭鉱業審議会の関係もございます。でありますので、それらの成り行きを見ながら今後これを改めていくということに私ども当然なるであろうし、また、いたしたい、かように思っております。
  87. 八木昇

    ○八木(昇)委員 御承知のとおりに、新規学卒者の就職した人たち、これは大体一万三千円といわれておりますが、実態はもっと高いのじゃないかと思うのです。それなのに、十八歳以上にならないと坑内には入れないし、しかも最低賃金が一万六千円ということでは、これはもう著しく実態に反しております。これは今年度中にでも実態に沿うように改定をして、できるところから何がしかでも炭鉱に対する魅力を持たせるようにしてもらいたい、こういうふうに考えます。  それから、もう一つは、石炭鉱業審議会の中間答申、それから、その前の有沢調査団の第二次答申等におきまして、労働者対策ということにつきましても相当詳しく述べてあるわけでございます。ところが、事労働者対策という問題になってきますと、ほとんどこの答申の趣旨が生かされていないと私は感じておりまして、非常に遺憾に思っておるところでございます。通産省にお伺いをいたしますが、炭鉱特別年金制の問題について調査費が二百万円ばかりについたと聞いておりますが、今後具体的なスケジュールとしてはどういうふうに考えておられますか。
  88. 井上亮

    井上政府委員 炭鉱労働者に対します特別年金制度の問題は、いままで過去一年以上にわたっていろいろ厚生省と打ち合わせてまいったわけですが、率直に言いまして、いままでの検討ではなかなか困難な問題がたくさんありまして、必ずしも進捗を見なかったわけですが、最近に至りまして、厚生省労働省通産省の三省間で本格的な検討に入っております。今後のスケジュールといたしましては、これは今後の検討の内容いかんでございますが、これは関係省も三省以外にまだ大蔵省もございますし、いろいろございますので、いまにわかに、いつにはこの特別年金制度が完全にできるということは明確にはわからぬわけでございます。しかし、従来、石炭鉱業審議会の答申を受けまして、これを推進するという立場を私どもは持っておるわけでございますから、そういう立場から申し上げますと、少なくとも、できますれば今年中には一つの成案を得て、できますれば次年度からでも実施するような意気込みでとにかく検討を進めたいというように考えております。
  89. 八木昇

    ○八木(昇)委員 実際問題として、厚生省が逃げたようなかっこうになって、こういう問題になってくると通産省へ押しつけておるというような感じを受けておりまして、私は厚生省の態度は非常に遺憾だと思います。これは社労委員会等で厚生省に対しても追及をしたいとは思うのですが、いまお話しのように、本格的な答申も六月ごろには出るわけですから、作業を急速に進めてもらいたい。そうして、各省との折衝とかその他ができ上がってから案を作成するという前に、通産省としてはこうやりたいという通産省案というものを、いろいろな雑音に惑わされずにずばっと出してもらって、しかる上で各省その他と折衝その他をやるということに、そういう態度でひとつやってもらいたい。われわれも、関係方面に対しましては極力働きかけをいたしたい、こういうふうに考えておりますので、ぜひひとつ作業を急いで一つの案々作成してもらいたい、こう思います。  十二時半までには終わりたいと思いますから、あと二つだけ質問して、さらに具体的に追及することはいたしませんが、先ほど職安局長に質問することをちょっと忘れておったのですが、大牟田三池炭鉱罹災者の未亡人の方あたりが、三池縫製、アソニット、こういう工場につとめておる。これがものすごく労働条件が悪いということについてかねて問題になっておることは御承知だと思います。私も現地に行きまして、その仕事をしておる現場も見たのですが、相当高年齢の人にはちょっとむずかしい仕事ですね。非常に緻密なあれを要する技能労働のようであります。しかもこれが月額六千円から八千円ぐらいしか収入がないというようなことで、この未亡人の中で相当高年齢の人は、もうこういったところにつとめるよりは失対事業に雇ってもらいたい、こういう希望を持っておる人が現実に相当ございます。そういう希望を持っておる人について失対事業に吸収するというお考えがないかどうか。私は、ぜひそうしてもらいたいと思っておるのですが、その点いかがでございましょうか。
  90. 有馬元治

    有馬政府委員 この三池縫製とアソニットの未亡人対策として吸収しました未亡人の中には、年齢的に言って、あるいは肉体的に言ってちょっと作業に就労させるのはむずかしいというようなケースも確かにあります。しかし、これをいますぐ失対に吸収するということは、今日まで具体的な日程にのぼっていなかったものですから、私も八木先生に質問されてそういうケースが現実に出てきているのかなという感じがするわけでございますが、御承知のように、これには会社側から生活補給金が出ておる関係もございまして、その辺の関係も今後どうするのか、検討しながらでないと、すぐ縫製から、あるいはアソニットから失対へ吸収するというようなことにはいきかねる面もあるんじゃないか。生活全体ができるように、保障されるような形で失対へ就労しなければ、就労したが、失対に吸収しても生活ができないというふうな実態が残るのではないかというふうな感じもいたしますので、もう少し具体的に検討さしていただきたいと思います。
  91. 八木昇

    ○八木(昇)委員 この点は、私も、不用意に要望してはいけない問題でございますから、実際に働いておる人の中にそういう希望を述べる人が相当数ございましたので、三池の組合の幹部の方で現在炭労の本部へ出てきている方は御存じだと思いますので、それを通じて、そういう話があったんだが組合としてはどう考えておるかという点を確かめてみました。労働組合としても、そういう希望の向きについてはぜひやはり失対事業に雇ってもらいたいという強い希望を持っているということでございますから、これは責任を持って私も質問をしておりますが、実態を調査して、なお念のために関係組合等の意見も参考のために確かめれば幸いだと思いますので、ひとつ善処してもらいたいと思います。  次に、最後ですが、きのうまた空知炭鉱爆発事故が起こったわけでありますが、一度あることは三度あるとよく言います。大体ある周期がございまして、ある時期に事故が続いて起きて、その以後は緊張しておって、少し気分がゆるんできたときにまたぽんぽんと出るという、何となくそういうケースが多い。そこで、非常にこれからあとについても不気味な感じを私としては持つわけであります。  そこで、三池炭鉱なんかの例を聞きますと、鉱山保安の関係について監督局とか監督部の監督官が立ち入り検査をする場合に、抜き打ち検査、予告なしの抜き打ち検査をやったためしがないということを言うのです。その抜き打ち検査をやってはどうしてぐあいが悪いのか、また、法的に抜き打ち検査はやれないということになっているのか、これが第一点。  第二の点は、そういう監督官は、検査をしたあと会社とはむろん十分に話し合いをするけれども労働組合との話し合いは全然やってくれない。実際働いておるのは労働者であって、会社の職員やその他から説明を聞き、いろんな事情を聴取するだけでは不十分だと思う。現場労働者の意見というものも聞いてもらいたいという希望をかねて申し述べておるけれども、そういう機会を与えられたことがない。これはもう私一年以上前に聞いたことでございますから、その後あるいは改善されたかもしれませんが、なぜ一体そうなのか、労働組合あたりと十分にやはり話し合うことが適切なのではないか、こういうふうに考えますが、その点どうお考えですか。  もう一つ、日本一の炭鉱がある大牟田でございますから、そこへ監督官の常駐者を置いてくれという要望がかねてから出ておりますが、その後これはどうなったか。今後もなお常駐者を置く気持ちがないのであるか。  もう一つは、かりに抜き打ち検査をやらないとしても、会社には予告をしているわけですね。その場合に組合にも知らせるということはできないのか。実際労働者が口々に言っているのは、近ごろ盛んに鉄粉をまいたりしている、近いうちに検査があるのだなと思っているとやっぱり来る、こう言うのです。そういう非常に当面を糊塗するような会社のやり方というのが、あらかじめ組合にも検査に来ることがわかっておればある程度暴露される、こういうこともあると思いますが、以上四点を一括して御答弁願いたい。
  92. 森五郎

    森政府委員 お答えいたします。  第一番の、抜き打ちをなぜやらぬかというお話でございますが、現在、検査は、先生御承知のように、総合検査というものがございまして、要するに、総合的にその山を見て、人事面、労務面、資金面あるいはその他の面から保安の確保上どういう問題があるかという点を検査するやり方、これは資料その他を相当そろえていただかなければなりませんので、これは予告をいたしております。それから、なお、検査の種類といたしましては、一般巡回検査並びに追跡検査、それから、特殊検査と申しまして、たとえば立て坑が落成したときのその落成検査、そういうような特殊な検査がありますが、この一般巡回検査は現在やっております。それから、追跡検査も、これは、入坑検査その他で指摘された、こういうことは直すべきであるという改善命令その他の保安上の指示がありますから、これが確実に守られておるかどうかということを見るわけでございますから、これは抜き打ちでございますし、それから、特殊検査につきましては、これは立て坑検査でありますとか、その他の検査でございまするが、大体これは抜き打ちじゃなくて予告して、たとえば会社ができたから見に行ってくるということでやっております。これが現在の検査のやり方でございます。  それから、監督官が検査に行ったときに、会社側と話をして労働組合側と話をせぬではないかという御指摘でございますが、これも、現在は、監督官がまず入坑いたしますときに、労働者の代表、たとえば大きな山でございますと監督員補佐員というものを選任しておりますので、これが立ち会うとかいうこともやっておりますし、それから、出坑後会社側と組合と両方に講評をするということにいたしておりますので、そういう事実はございません。現在はすべて監督の内容は広く労働者に周知させるという方針をとっております。  それから、三番目の、常駐の問題でございますが、これは、先生御指摘のように、大きな炭鉱には監督官を常駐させたらどうか、こういうお話でございますが、われわれのほうの考え方は、山の保安というものはあくまでその山で経営者労働者が守るべきものであるという考え方から申しまして、常駐にはどうも賛成できない。常駐いたしますと、結局監督官保安を守るというかっこうになりますので、これはかえってまずいのじゃないかということで、常駐は行なわない方針をとっております。  それから、四番目の、予告の場合に組合にも知らせろというお話でございますが、これは、先生御指摘のように、組合にも知らしてやっております。これはもちろん会社側を通じてでございますが、そういうふうにやっております。
  93. 加藤高藏

    ○加藤(高)委員長代理 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時まで休憩いたします。    午後零時三十三分休憩      ————◇—————    午後一時二十三分開議
  94. 野田武夫

    野田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  四法案に対する質疑を続行いたします。伊藤卯四郎君。
  95. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 石炭問題の基本的な解決策については、いずれ後日論議を尽くし合おうという話し合いをいたしておるわけでございますから、本日私は、炭鉱労働者の緊急な問題、さらにまた、今後の人的老朽、老廃を防止する問題、これらの点について何点か質問をし、政府考え方をひとつ明らかに伺っておきたいと思うのであります。  まず最初にお伺いしたいのは、合理化に着手しました三十四年前と現在とで炭鉱労務者の平均年齢というものがどのようにこの七、八年の間に違ってきておるかという点について、数字がわかれば、大略でよろしゅうございますからお知らせを願いたい。もしいまわからなければ、後日資料でお出し願ってもよろしゅうございます。
  96. 有馬元治

    有馬政府委員 三十四年当時の平均年齢は三十五・七歳、三十九年の平均年齢が三十八・二歳でございます。
  97. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それから、北海道のごとく、今後のビルド炭鉱というか、開発地域というか、そういう地域と、九州のごとく、炭鉱がすでに老朽化してしまっておる、そして合理化、廃山が非常に行なわれてきておるというところと、かなり年齢に開きが出てきておるのではないかと思います。こういう点も将来の炭鉱の労務対策上やはり重要な施策として考えなければならぬと思いますが、これらの点についてお調べになった点が出ておりますか。
  98. 有馬元治

    有馬政府委員 地域別の平均年齢の資料がございませんので、ちょっと先ほど申しました全国平均以外にはないのでございます。
  99. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 それでは、これは後日ひとつお調べになって資料で出していただきたい。  さらにお伺いしたいのは、炭鉱から一たび去っていった者、やめていった者が山に再び戻ってくるということはほとんどございません。たとえば、炭鉱などで人員整理をする場合に希望退職を募りますと、経営者はなるべく高年齢の人にやめてもらいたいと希望しているのであるが、それとは逆に、やめてもらいたくない中年層、若いところの諸君に希望退職の申し出が非常に多くて、年をとった者が希望退職に応じないという事実が出ております。と同時に、さっき申したように、いろいろな事情で一ぺん山から去った者が、再び戻ってくるということはほとんどない。坑内夫というものは技能工、熟練工でございます。であるから、炭鉱にとっては非常に大切な坑内夫です。ところが、この人たちが山を一たびやめるともう炭鉱には再び帰ってこないというので、今日の各炭鉱において技能工、熟練工が不足をしておるというところから、炭鉱に請負掘り、請負仕事というものが非常に多くなってきておるわけです。そういうところから炭鉱事故というものが非常に多くなってきておるということも、これももういなみがたい事実としてあらわれておるわけです。  そこで、一体どうしてこういう状態が起こってきておるのかという政府側の見方、あるいはどのようにしたらそれらを防止することができるかという対策等をあわせてひとつお聞かせ願いたい。
  100. 小平久雄

    小平国務大臣 炭鉱を去る者が比較的若い方に多い、こういう問題でございます。これはいろいろ原因もあると思いますが、しかし、基本的に申すならば、やはり、炭鉱業それ自体が安定し、あるいは将来さらに発展性があるというようなことであり、かつ、労働条件労働環境等も他に比べて劣らぬ、むしろいい、こういうことであれば、おそらく、若い者が去っていく、あるいは就職者が少なくなるというようなこともないと思えるのでありまして、基本的には、やはり、炭鉱業それ自体の体質改善と申しますか、そういうことをぜひ遂行いたしまして、要するに、そこで働く人が将来に希望を持って働ける、こういうことにしていただくことが一番重要ではなかろうかと考えております。
  101. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いま労働大臣がおっしゃったようなことは根本的な問題です。ところが、それが現実に行なわれていないというところに問題があるわけであります。もちろん、当面の問題として、労働賃金あるいは労働諸条件、そういう待遇条件というものが他の工業より非常にいいということであれば、炭鉱が不便であっても、また危険作業であっても、条件がよければそこに定着するということは、これはどこでもあることです。ところが、今日の現状では、私どもがいろいろ工場その他の関係などで重労働の関係あるいはそういう危険作業等の関係の労働者などと比較をしてみますと、やはり労働賃金労働諸条件がかなり低いし、悪いです。それから、特に退職金などになってきますと、問題にならぬように炭鉱のほうは非常に低いです。そういうところから、若い諸君は、若いうちならば他に雇われていく先がある、転業ができるというところから、中年層、若いところがどんどん足元の明るいうちにということで他の工場のほうに転職をして行ってしまいます。年をとった者は、他の工場、職場のほうに雇い手がないものですから、しかたなくその炭鉱に不平不満を持ちながら働いておる。こういうのが今日偽らざるところの炭鉱労働者の現状でございます。そういうところから、したがって、能率の点においてもやはりそれだけがんばりがきかないということも、これは当然あるわけであります。もちろんこれは炭価の問題あるいは経営等の問題に関係することでありますけれども労働省としては、やはり炭鉱が人的に老朽、老廃化をしてまいりますということになると、ビルド炭鉱をどんなに近代化しようとも、振興、開発をしようとしても、人的に老朽、老廃すれば、政府のほうで年度計画したものを出そうとしてもなかなか出せないという結果にならざるを得ないわけです。今日すでにそういう状態におちいっておることは、これはもう大臣も十分御存じだと私は思います。それらについて、労働省立場から、炭鉱労働者の老朽、老廃を防ぐ立場から、あるいは通産大臣なりあるいは厚生大臣なり、そういう関係大臣との間でそういう話し合いをされて、それらに対するところの対策立場から石炭の問題についてかくなければならぬということを話し合いをされ、そういう対策等を立てられたことがあるかどうか、これをひとつお聞かせ願いたいと思います。
  102. 小平久雄

    小平国務大臣 炭鉱労働の問題で、これはあらたまって閣僚協議会といったようなものも目下のところございませんが、閣議等におきましては、もう再三にわたりまして、炭鉱の立て直しとでも申しますか、そういう問題が話題になるわけでございまして、そういうおりには、私は労働省立場としての意見も申し上げておるわけでございます。御承知のとおり、石炭鉱業審議会がございまして、近く抜本的な対策の答申もあるように伺っておりまするし、また、そこでは労働問題につきましても大きな関心を持って御審議をくださっておると承っておりますので、その答申を待ちまして、労働省としても積極的に、炭鉱全体の立て直しのために、あるいはまた、ひいては炭鉱労働者の確保なり、それの福利の増進なりのために私どもも協力をしてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  103. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 政府側のほうでも、また自民党与党のほうでも、関心を持っておる人々が言われておることは、炭鉱の問題は、炭価問題なりあるいは経営の健全化、安定化ということも根本問題ではあるけれども、やはり炭鉱を働く者に魅力ある炭鉱にせない限りは炭鉱に人が集まってこないということが言われています。私ももちろんそのとおりであると確信しておりますが、そこで、魅力ある炭鉱という問題についての根本問題を論じますと、いまの炭価問題とか経営問題とかに深入りをしなければなりませんが、その問題はいずれ後日通産大臣あるいは大蔵大臣あるいはまた総理などにも来てもらって徹底的に掘り下げて論議をするようになろうかと思います。そこで、人的に魅力ある炭鉱ということになれば、やはり、何といっても、他の重工業関係あるいは重労働関係、危険労働関係と比較して炭鉱労働賃金等諸条件は悪くないということが一つ、それから、いま一つ根本的な問題は、これは前からずいぶん話し合いをしてきておることですが、石田さんが労働大臣をしておりますときにもお話をし、いまの小平労働大臣にもたしかお話をしたかと思います。通産大臣などにもお話をしたと思います。それから、関係の労働、通産、厚生三省の関係局長、責任者にも話をずっと続けてきておるのですが、やはり炭鉱労働者の特別の老後年金という制度をつくることが炭鉱労働者を定住さす基本的な条件になる。だから、そういう保険制度をつくる必要があるということを繰り返し繰り返し話をしてきていますが、それに対しては、労働省厚生省も、通産省はもちろんのこと、賛成でございます。三省とも賛成ということを言われておることはもう久しいのであります。しかしながら、それらが具体的なものとして三省の間で意思統一されて法律案となって出てくるというような気配は、まだ私の知る限りにおいては全然ないようであります。それから、有澤調査団長にも、これはたしか三年くらい前ではなかったかと思いますが、あの答申案が出ましたときに、やはり、そういう制度を何らか考えなければならぬというようなこと等が答申案の最後に一行ばかり書いてありました。そのことについて、私は、有澤団長に、この何らかの将来に対する安定対策考えなければならぬということの意味するものは、いま申し上げたような、そういう炭鉱労働者に対する特別の年金、たとえば定年まで働けば老後の生活はそれで保障されていくという、これが炭鉱労働者を定住させ技能工あるいは熟練工を炭鉱にとどまらす最大の策であると思うが、そういうことを意味しておるのかと有澤団長に聞きましたら、全くそのとおりでございますということも、当時の速記録の中にもきわめて明確にそれがあらわれておるわけであります。ところが、そういうように、あげてその必要性が認められ、力説されて進められてきておるのに、それが依然として具体化しないでおるというのは、これはどういうところにその難点があるのですか。三省の間の意思統一ができないのですか。あるいは厚生省は厚生年金の関係とどうとか、あるいは退職金とどうとか、何かそういうもろもろの大きな問題を幾つか解決できないためにこれが法律案となって国会に提出されるという運びに立ち至っていないのであるかどうか。それらの点を率直にひとつお聞かせ願いたいと思います。
  104. 小平久雄

    小平国務大臣 炭鉱従業員の特別年金につきましては、先生はじめ多くの先生の御熱心なおすすめもございましたし、また、いまお話しのとおり、石炭鉱調査団の報告あるいは石炭鉱業審議会の中間答申等でも指摘をされてまいった、こういうことで、特に労働省立場からすれば、先ほど来申しますとおり、魅力のある職場をつくる一つの手だてとして、こういう年金制度が設けられるということはきわめて望ましいことである、こういう立場から、従来から通産省厚生省などとも寄り寄り協議をいたしてまいったのでございます。  そこで、なぜはかばかしくいかなかったのかということでございますが、これは、厚生省のほうでも最近は非常に熱心になられておるようでありますが、特別の年金制度というものを厚生省立場でやっていいのかどうか、やるのが適当であるかどうかというような点についてまだ割り切った考えにもなられなかった点もあるようでございますし、むしろこれは、石炭鉱業自体の立て直し、振興策、そういう見地からこのような年金制度も考えるべきじゃないかといったような見方も、あるいは考え方もございました。それらの間のいろいろな調整に手間どっておった、こう思うのであります。御承知のとおり、この四十一年度の予算におきましては通産省のほうに調査費も計上されておりまするし、先ほど通産省石炭局長からも御答弁があったのでありますが、早急にこの三省間の話し合いを積極的に進めて、でき得れば四十二年度からでも実施できるようにひとつつとめたい、こういう答弁が先ほど石炭局長のほうからあったわけでございまして、私どもももちろん同じ考えでございますから、労働省立場からしても極力推進をいたしたい、かように考えておるわけでございます。
  105. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 いまの御答弁で、労働大臣のこの問題に対する熱意、真剣に取り上げなければならぬという熱意がわかりました。  そこで、この国会に出されることは、これは私もちょっと無理ではなかろうかという気もいたしますが、さきに申しましたように、有澤調査団長からもそのことについてはすでに答申が出ておることでもありますし、それからまた、さっきから申し上げるように、ずいぶん議論も尽くされてきており、関係三省とも賛成ということにもなっておるのであります。したがって、来たるべき臨時国会等にでもその法律案をお出しになれば、あるいは予算関係その他の関係等で臨時国会で成立させることは不可能といたしましても、継続審議として次の通常国会で成立させることはできるわけで、これはもう当然そうすべきだと思います。大臣もそういうことをお考えになっておるようでありますが、私どもとしては、次の通常国会においてこの法律案が成立をして、四十二年度から炭鉱労働者に対する特別老齢年金の制度というものはつくられるものであるという受け取り方をしてよろしゅうございますか。
  106. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほども申し上げましたとおり、四十一年度予算調査費が計上されたということでございまして、これから早急に内容の検討をいたそう、こういうことでございますので、でき得れば四十二年度からでも実施できるようにその検討を急ぎたい、こういう気持ちはいまや三省とも十分お互いに持ち合わせておると、私はさように信じておるわけでございますが、しからばといって、必ず来たる臨時国会に法案を出すとまでお約束できるかどうか、その点は、いまとにかく当局がやろうという決意でおるわけでございますから、時期の点まで明確にお約束といいますか、臨時国会に出るものと御理解いただいてよろしゅうございますといま申し上げるのはいかがかと思いますので、ひとつその辺は、われわれの考えておるところ、また決意しておるところを御信頼いただいておまかせを願いたい、かように思うわけでございます。
  107. 伊藤卯四郎

    ○伊藤(卯)委員 この点も、深追いをかけるということになりますと、石炭の基本問題等にも関係をさせて論議をしなければならぬことになり、さらに、炭鉱の根本的安定、健全経営等の問題、あるいは将来日本の石炭をエネルギー源としてどのくらい必要とするかという問題なども論議しなければならなくなりますから、私は、その点、本日これを深入をして論議をしようとも思っておりません。これは後日のことにいたしますが、ただ一言最後に申し上げておきたいと思いますのは、とにもかくにも、最近になって炭鉱災害というものが非常に多いということでございます。ガス爆発の大きいのだけは大きく取り上げられますけれどもあと落盤事故やら何かで死傷者の二人、三人出たことはあまり新聞にも出ないというほど、炭鉱のそうした災害というものは当然なものなりということで不問に付されておるということが今日の現状になっておるわけでございます。そういうところから、何とかして炭鉱から抜け出したい、それから自分の子供だけは炭鉱に働かせたくないというのが、炭鉱の鉱員のみならず、職員もそうです。ですから、そういうところに他から希望者のあろう道理はないわけです。そうなりますと、石炭局長もそこにおられるけれども、どんなに基本的な石炭対策を立てても、もちろん立てることもなかなか容易ではないと私は考えるが、まず何とか立てたとしても、石炭の置かれている現状から見て、炭鉱労働条件を他の工場労働よりもより魅力的なものに整えることは、なかなか困難ではないかという気がいたします。そうすると、結局、それなら一番魅力あるものは何か、定住させるものは何かといえば、もうこの老後年金によって定年後の生活が保障されるという、これよりほかに炭鉱に働く者に魅力というものをつくり得ないのではないかと私は思います。  そして、炭鉱というものは、御存じのように、金属鉱山もそうですけれども、特に炭鉱は激しいのですが、そんなに五十年も百年もというようなわけにいかぬのです。あるいは十年とか二十年とか三十年とかいうような年限で大体その炭層を掘り尽くしてしまいますと、これは閉山、廃鉱にならざるを得ないのですよ。そういうことやら、いろいろな点から、労働者の移動もかなり激しいのです。でありますから、Aの炭鉱に五年とか、Bの炭鉱に五年とか、Cの炭鉱に五年とか転々としていても、それは永年勤続として通算する。そうなりますと、炭鉱での技能熟練工というものは、いずれかの炭鉱でその本職を生かしておるということになりますから、私は、この問題というものは、そういう考え方の上に立っても真剣に解決していかなければならないのじゃないかと思うのです。  それから、石炭問題は、この六月有澤団長の最終答申案が出てから出てからということで、政府はそこに名をかりて逃げこんでばかりいるようですけれども、大体、有澤調査団の最終答申が出たくても、どういうように解決しなければならぬかということは、これはもうわかり切っておる話なんです。だけれども政府としては、解決するのになかなかあっちにぶつかりこっちにぶつかりするものだから、そこで最終答申に名をかりて逃げこんでいる。とはいっても、労働者の定住、安定という問題は、これはまた別にやれるわけです。これは、石炭問題の根本的解決ということが一〇〇%できなくても、この老後年金の問題の解決というものは、石炭問題を解決するほど私はむずかしい問題ではないと思っております。ただ、問題は、独立の年金制度にするか、あるいは厚生年金との上積み関係とか、そういうことについてどうするかという、そういう役所関係においての扱い方の点においてはとかくの議論があるかもしれません。けれども、年金をつくるということについての法案というものは、当然これは本人も一部出すことになりましょうが、経営者ももちろん一部出すことになりましょう。それから政府ももちろん出すことになる。諸外国の例を見ましても、また他の保険関係の例を見ましても扱い方は大体そういう組み合わせになっておるようであります。ですから、石炭問題が根本的に解決しなければこの問題も解決できないんだということは、私はこれは許されぬと思う。それだったら、おそらくいつまでたっても解決できないんじゃないか。そうなってくると、炭鉱はもう人的にまず先に老朽化してしまって、近代化設備をしても、新鉱開発をしようとしても、技能工、熟練工がいないということになる。そうして、相当熟練を要するものを請負掘りさせるというようなことになると、それこそ、災害事件などが続発をし、また計画的に能率も上がってきませんし、それは炭鉱としての形態をなさないと思うのです。  諸外国の例から見ても、これだけの産業経済力を持っている日本として、一番取り残されてしまっているものは社会保障ですから、特に炭鉱労働、坑内労働関係なんですから、これらの点は石炭問題の根本的解決と別個に解決のできるものなりという上に立って、労働大臣、通産大臣、厚生大臣、三大臣が話し合いをされて、関係係官らに命じて、至急そういう方面で意思統一をして、さっき申し上げたように、でき得れば来たるべき臨時国会にでも一応提案だけしておく、そして次の通常国会においては予算とともにこれを成立をさすという腹をきめてもらいたい。この主管省は労働省であるわけでありますから、これは労働大臣がどれだれ腹をきめて積極的におやりになるかどうかにかかっているわけです。通産、厚生大臣もやはり克服をして、かくなければ炭鉱はもうやっていけなくなるという悲痛な決意をされておやりにならなければならぬ。石炭問題を解決しなければという、そんなあいまいなことでやられることでないと私は思います。それとこれは別にやれるのだということでやっていただきたいと思いますから、ひとつ最後大臣の決意を、いやおれはどんなことがあってもおれの任期中にやるぞという決意を、ぜひもう一回お聞かせください。
  108. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほども御答弁申し上げたところでございますから、簡単に申し上げますが、ただいま先生からじゅじゅんとお説きのありましたところをよく体しまして、できるだけの努力をいたす決意でございます。どうぞ御了承願います。
  109. 野田武夫

    野田委員長 次会は、明二十四日午前十時理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後二時二分散会