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1966-03-04 第51回国会 衆議院 商工委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月四日(金曜日)    午前十時四十一分開議  出席委員    委員長 天野 公義君    理事 浦野 幸男君 理事 小川 平二君    理事 河本 敏夫君 理事 始関 伊平君    理事 田中 榮一君 理事 板川 正吾君    理事 中村 重光君      稻村左近四郎君    内田 常雄君       小笠 公韶君    小沢 辰男君       海部 俊樹君    神田  博君       黒金 泰美君   小宮山重四郎君       田中 六助君    中村 幸八君     早稻田柳右エ門君    大村 邦夫君       沢田 政治君    島口重次郎君       田中 武夫君    山崎 始男君       栗山 礼行君  出席政府委員         公正取引委員会         委員長     北島 武雄君         総理府事務官         (公正取引委員         会事務局長)  竹中喜満太君         通商産業政務次         官       堀本 宜実君         通商産業事務官         (大臣官房長事         務代理)    吉光  久君         通商産業事務官         (重工業局長) 川出 千速君         通商産業事務官         (軽工業局長) 伊藤 三郎君         通商産業事務官         (繊維局長)  乙竹 虔三君         通商産業事務官         (鉱山局長)  大慈彌嘉久君         通商産業鉱務監         督官         (鉱山保安局         長)      森  五郎君     ————————————— 三月三日  委員田原春次辞任につき、その補欠として山  花秀雄君が議長指名委員に選任された。 同月四日  委員山花秀雄辞任につき、その補欠として田  原春次君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二日  鉱業法第三条改正に関する請願西岡武夫君紹  介)(第一五四三号)  発明行政制度改善に関する請願田口長治郎君  紹介)(第一五四四号)  工業所有権制度改正に関する請願小渕恵三君  紹介)(第一六〇五号)  中小機械貸与企業育成に関する請願藤枝泉介  君紹介)(第一六〇六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  私的独占禁止及び公正取引確保に関する法  律の一部を改正する法律案内閣提出第三二号)      ————◇—————
  2. 天野公義

    天野委員長 これより会議を開きます。  内閣提出私的独占禁止及び公正取引確保に関する法律の一部を改正する法律案を議題として審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。田中六助君。
  3. 田中六助

    田中(六)委員 現在提出されております独禁法改正法案に関連いたしまして御質問したいと思います。  最近の経済界の諸情勢は、高度成長散策のひずみということからかなり深刻な状態になっておりまして、各企業のこうむるいろいろな被害が結局独禁法と非常に関連がございまして、カルテルそのもの不況と必ず結びついておるというふうに思われますし、この不況カルテルをめぐって、あるいは生産調整あるいは勧告操短、そういうような問題があらゆる産業別の部門に出ておりまして、この点私どももこれをほうっておくわけにはいきませんし、これに対処する通産当局あるいは公取などがほんとうに真剣に取り組んで問題を処理しておるということは、私どももこれを認め、その労を非常に多とする次第でございますが、ただ問題は、たとえば不況カルテルなどにつきましても、非常に安易に問題を解決して、そういう隠れみのにただ身をやつす、あるいはまた通産省行政指導だとか、いろいろな勧告をすることだけに終始して、経済全体あるいは企業全体の体質改善構造改善についての一つのビジョンと申しますか、そういう青写真に欠けておるのじゃないか。もしそれが事実なれば、また的を射たことなれば、日本のこれから先の経済というものは非常に問題を残すわけでございますし、開放経済体制下にある現在、ますますこの問題を等閑視することはできませんので、こういう問題を中心に、特に最近は鉄鋼方面では住金の問題がございますし、繊維のほうでは日清紡や鐘紡などにからむ問題、また石油では出光中心とする問題もございますし、こういう問題を取り上げて質問の論旨を進めたいと思います。  まず最初に公取委員長にお聞きしたいのですが、最近の独禁法違反のこういう事件に対する取り締まり体制につきまして、簡単でけっこうですから述べていただきたい。
  4. 北島武雄

    北島政府委員 公正取引委員会職員定員は、昭和四十年度二百七十七人ございまして、そのうち中央に二百二十七人、地方の事務所に五十人おるわけでありますが、全体を通じまして独禁法違反取り締まりを担当いたします審査関係職員の数は、中央で五十六人、地方で十四人、七十人、すなわち二百七十七人中の七十人が独禁法違反取り締まりに当たっている者でございます。一方件数のほうは年々ふえておりまして、この程度人員ではとうてい思うような独禁法違反取り締まりもできないような状況でございます。幸い昭和四十一年度におきましては、全体で三十人定員がふえまして、その中に審査関係人員で約十人回せると思います。そうしますと、現在の七十人の審査関係人員が八十人になる、こういうことでございますので、若干充実のほうへ一歩近づいている、こういう感じがするのでありますが、まだまだ実際の取り締まりをする件数に比べまして著しく少ないのではないか、こういう感じであります。こういう点は漸次年を追いまして充実させてまいりたいと考えております。
  5. 田中六助

    田中(六)委員 違反事件に対してそれを取り締まり審査する人員が非常に少ないと私もそう思います。将来そういうことについても十分われわれも配慮していかなくちゃいかぬと思いますが、最近の問題からちょっとそれまして、審査手続の問題ですが、これは四十六条の規定により強制審査と、それから任意の審査というように二つあるわけですが、現在強制審査などのそういう現状を説明してもらいたいのです。
  6. 北島武雄

    北島政府委員 審査探知といたしましては、外部の申告と職権による探知二つ探知がございまして、いままでの事件探知の分類をいたしてみますと、本年度一応二百八十五程度申告探知がございまして、そのうち申告に基づくものが約百四十五、それから探知が百四十ということでございますので、申告によるものと探知によるものがほぼ半々という数字になっております。これは過去数年間におきまして大体そんなふうな感じがいたします。
  7. 田中六助

    田中(六)委員 まあ大体半々ということですが、結局独禁法違反事件というのは、事犯の性質上これは迅速を要することでございますし、それが人員とかそういう関係で問題になれば、やはり私ども考えなければならぬし、事務手続合理化ということで、そういう点で能力が欠けておるならば、また公取自身考えなくちゃいかぬことでございますが、まずいずれにしても、そういう問題をはらんでおりますので、事務手続合理化、そういうことについては鋭意頭を置いて処理してもらいたいと思います。  次に通産省に伺いたいのですが、見えないので困るのですが……。
  8. 天野公義

    天野委員長 いま呼んでおります。
  9. 田中六助

    田中(六)委員 それではあとから問題にします。  委員長がおられるから、ついでに聞いておきますが、現在展開しておる各業種の、たとえば繊維鉄鋼あるいは石油と、さっき言った出光住金あるいは日清紡などの問題ですが、そういうときにわれわれが印象を受けるのは、どうしても通産省公取の方針が食い違っておるのだが、しかし結論として公取はいつも通産省の言い分に負けて追従しておるというような印象さえ受けるのですが、この点につきまして委員長の見解を聞きたいと思います。
  10. 北島武雄

    北島政府委員 新聞ではときどきはでに通産省公正委員会の対立など伝えておりますが、ゴシップ程度でございまして、実際になりますと、いろいろ話し合って究極的には意見が一致しておるのでございまして、決して、公正取引委員会お話のように常に退いておるとかというようなことはございません。両方ともお互いに話し合って、たとえば事務的には毎月一回ずつ必ず定期会合をいたしまして意思の疎通をはかっておるわけでありまして、そういう新聞で伝えられるようなことはひとつどうぞないものと御了解いただきたいと思います。
  11. 田中六助

    田中(六)委員 委員長そうおっしゃるが、最近のカルテル認可の問題とか、行政指導による勧告操短、そういう点につきまして、これは一つ法律論といたしましても、この問題のカルテル結成、そういうものも単純化しますと、まず、業界自分で自主的にそれをきめて公取に報告し、公取通産省と相談をしてこれを認可するということが一つ法律上の手続ですわね。しかしその間にわれわれが聞いておるところ、あるいは新聞で見るところ、そういう例を見ますと、あまりにも皮相かもしれないが、常に通産省は、行政指導だということからやっておるのでしょうが、それにはみ出したような印象を受ける。具体的に申しますと、住金問題にいたしましても、それはあとから別個に聞きますが、あるいは出光の問題にいたしましても、また繊維の問題にいたしましても、そういう感じを与えるということについて、私は、いまの委員長の答弁では納得できない。まだ問題はそんな簡単に、あなたがそんなことはないというふうなことではたして国民が納得するかどうかということに大きな疑問を持つわけですが、もう少しそういう具体的な事例について委員長の回答を私は求めたいと思います。
  12. 北島武雄

    北島政府委員 いわゆる行政指導による勧告操短、こういうものの性質でございますが、過去におきましては相当数がございました。昭和三十四年には二十八まで数がございましたが、その後だんだん減ってまいりました。と申しますのは、行政指導による勧告操短というのはえてしてやはりカルテル隠れみのになりやすいということであります。それで、公正取引委員会といたしましては、もし操短を必要とするような事態があるならば、ちゃんと独占禁止法上の不況カルテルという制度があるのだからそれに乗せて、そして合法的にルールの上でやるべきだ、こういう主張でございまして、これを多年繰り返しておったわけです。前池田内閣時代からも、そういう問題はやはり公正取引委員会の言うとおりだということで、三十九年一月にたしか閣議了解では、勧告操短はできるだけやめるということになりまして、つい昨年の粗鋼減産勧告操短があるまでは全然ゼロになっておったのであります。そこで、昨年七月に粗鋼減産問題が起こったわけでございますが、このときにおきましても、これは前委員長時代でございますが、粗鋼勧告操短はもし必要あるならば、これは独禁法上の不況カルテルによるべきだということを主張いたしましたのに対しまして、通産省では、これは粗鋼の会社は八十数社あって、なかなか簡単に不況カルテルはまとまらぬ。しかも粗鋼鉄鋼ほんとうわが国産業基幹物資であって、そして粗鋼についての不況回復をはからなければ他の産業不況は克服できない、こういうふうな考えで急速に減産を実施する必要があるということで、通産省責任においてこういうことをやりたい、こういうお話でございました。公正取引委員会といたしましては、あくまでもやはりそれは不況カルテルによるべきだということではございますが、通産省のそういう責任権限もあるわけでございますから、もし責任権限でおやりになるならば、公正取引委員会としてはこれは推移は見守っていこう。決して了承したわけじゃありません。了承はいたしませんが、事態推移を厳重に見守る。そして必要があるならば通産省に申し入れるということで現在まできているわけでございます。石油等の問題につきましては、これは石油業法という問題もございますので、単純な粗鋼のような行政指導ということでもないようにも思います。いわゆる単純に権限責任による行政指導、特定の法律に基づかない行政指導、それによる減産、これはできるだけ独禁法上の不況カルテルに乗せてまいりたい、こう絶えず前から主張しておりまして、かようにだんだんなってきている実情でございます。
  13. 田中六助

    田中(六)委員 あとでいろいろ問題を解明したいと思いますが、各産業自主調整というようなことをずっとやっているわけですが、この自主調整も私は非常に問題があると思うのです。生産数量調整を何らかの形でこれを協定したり共同行為によって行なって、実質的に競争が、その業界制限されておるならば、これはやはり問題があると思うのですがね。最近のそういう自主調整という、これもそういうことばに隠れ、いろいろ問題が裏面で展開されておるような気がするのですが、この点で委員長はどういうふうにお考えになりますか。
  14. 北島武雄

    北島政府委員 これは自主調整ということばが非常にあいまいなわけであります。本来自主調整といえば、ほんとうに各企業自分判断によって調整をする、市況を見て調整するというのが自主調整であろうかと思いますが、いわゆる自主調整の場合に、業者が集まって情報交換すること、これは当然のことだと私ども考えているわけです。そこまではいい。しかし、そのあと協定して減産するということになると、これはカルテルということになる。ここは全く独禁法上の問題になりますので、もし自主調整の名のもとに業者間の協定が行なわれておれば、これは不況カルテルに基づかないものであるならば、これは独占禁止法違反として私どもも追及しなければならぬわけでございます。
  15. 田中六助

    田中(六)委員 通産省のそれぞれ各局の局長といえば語弊がありますが、そういう当局責任者が盛んに自主調整というようなことば記者会見でも述べ、いろいろ言っておりますが、それは意味、内容では、非常に狭い場合もあるし広い場合もあるでしょうが、そういう最近盛んに新聞紙面をにぎわしている当局が言っている自主調整ということに対して、これと独禁法との関係委員長はどういうふうに思いますか。
  16. 北島武雄

    北島政府委員 その点はただいま申し上げたとおりでございます。かりに自主調整という名前を用いましても、その名のもとに業者間で協定してやっておれば、これは独禁法違反、こういうことになります。ただ、それがほんとう業者間の情報交換であり、それに基づいて各業者が自己の責任において調整するということであれば、これは独禁法上の問題にはならないという、その点の微妙な点はございますが、もし協定が行なわれればこれは独禁法違反、こう考えております。
  17. 田中六助

    田中(六)委員 つまり私も委員長いまおっしゃったように、非常に微妙な、すれすれの線が出てくるわけですね。そこがいろいろな問題を波及してくるわけですが、自主調整とともにひとつお聞きしたいのは、投資調整ということばがございますが、これも独禁法上の問題は、それが第三条とそれから第八条第一項第一号の事業者団体禁止行為に該当しないかどうかというような問題もはらんでいるわけですが、公取ではこの投資調整ということをどういうふうに考えていますか。
  18. 北島武雄

    北島政府委員 投資調整も先ほどの自主調整と同じような考え方でございまして、本来投資ということは企業ほんとうの重大な問題であります。企業者としてはほんとうに重大な問題でありますので、企業者責任において、これはその判断に基づいてやるべきものであります。そういった場合に、将来の業界の見通しなどからお互い業者情報交換したり何かすることは、ここまではいい。ただ、それ以上さらに進んで協定ということになると、これは独禁法上ぐあいが悪いんだ。ただ、もっとも、独禁法不況カルテルにつきまして設備の制限という問題もございますので、あるいは独禁法上認められる場合もあるかとも思われますが、一般的に投資調整の名のもとに業者協定することはやはり独禁法上は認められておらない、こういうことであります。
  19. 田中六助

    田中(六)委員 さらに今度は勧告操短というものがあるのですが、これは現在いろいろな業種について通産省勧告操短という名のもとで行政指導を行なっているわけですが、これと独禁法との関係を説明してください。
  20. 北島武雄

    北島政府委員 勧告操短は、端的には先ほどの粗鉱の減産勧告に見られるように、通産当局がその責任権限において各業者ごとに個別に数字を定めて操短勧告する、こういうことになるわけでございます。これは昔から行なわれていることでございまするが、先ほど申しましたように、えてして業者間で協定して通産省その他の主務官庁にお願いして行政指導というかっこうになると、これはカルテル隠れみののようなものになりやすい。したがって、そういうものは好ましくない。もし必要とするならば、独禁法上の不況カルテル認可申請をすべきだということを多年公正取引委員会は主張してまいりまして、だんだんそのようになってきて、勧告操短するという状態にまで至ったのでございますが、先ほど申しました去年の粗鉱の減産勧告というのが新しくまた一つできた、こういうことでございます。
  21. 田中六助

    田中(六)委員 私はこの勧告操短はあくまで勧告であって、これが強制するような結論を出しているという印象を強く持っているのです。ここにやはり問題がある。これはあとからまた通産当局に聞きたいのですが、あなたは最近の問題について、そういう印象はどうですか。
  22. 北島武雄

    北島政府委員 これは衆議院の予算委員会でも御質問がございまして、その場合に勧告操短はあくまでもやはり勧告であって、行政指導によってそれを強制することはできないのではなかろうか。ただ外国貿易及び外国為替管理法によってこれを割り当てるということがあれば、それはまた別ではあるけれども、しかしその場合におきましても独占禁止法上の不況カルテルであればアウトサイダー規制ということはできないわけでございますので、その間にバランスがとれないということを申しております。そういう問題もございますので、できるだけ不況カルテルによるべきだ、こういうふうに考えているわけでございます。
  23. 田中六助

    田中(六)委員 次はカルテルの問題ですが、私もカルテルを多少勉強して世界の一、二の例をちょっと読んでみたのですが、世界各国カルテルの構成の現状、これを私も多少解答は持っているのですが、簡単にひとつ。
  24. 北島武雄

    北島政府委員 独占禁止法本家本元であるアメリカは、カルテルは絶対禁止でございます。ただ適用除外といたしまして、輸出貿易関係、それから海上運送関係については若干のカルテルは認めております。しかし、ごくわずかでございます。  それからドイツでございますが、ドイツは戦前はカルテルの王国と言われた国でございましたが、戦後エアハルト現首相が経済大臣時代から五年間かかって競争制限禁止法をつくりました。独占禁止法でございます。それに基づいてカルテル原則として禁止、ただし例外的に認めている場合もございますが、現在では約百数十のカルテルのように私は記憶いたしております。  それから英国でございますが、英国は戦後独占禁止法−簡単に独占禁止法と申しますが、独占禁止法をつくりまして、だんだんそれを強化いたしております。カルテル原則としてはいいけれども弊害がある場合には除去するということにはなっておりますが、裁判所で弊害ある場合かどうかということは、公共利益に適するかどうかということを申請者側に挙証させるということで挙証責任の転換をはかっているので、実際にはなかなかその証明がむずかしいようでございまして、現在カルテルの数は約千程度と言われております。
  25. 田中六助

    田中(六)委員 各国カルテル内容は、結局あなたのおっしゃるように原則禁止主義と、いままでの弊害規制主義というふうな二つに分かれておるわけですが、わが国の場合一応いろいろな点で問題を残しているのはあるわけですが、原則禁止主義弊害規制主義というのとどちらがあなたはいいと思いますか。
  26. 北島武雄

    北島政府委員 これは単なることばの問題のことも多いわけでございます。わが国のように、原則禁止とは申しておりますけれども適用除外法が相当あって、カルテルが千五十二もある。一方英国弊害規制主義といいながら、カルテル公共利益に適しているかどうかという挙証責任カルテル側に負わしているので、実際は非常に厳格である、こういうこともございますので、一がいに原則禁止弊害除去のどちらがいいかということは言うべきではないので、実態を見て判断しなければならぬと思いますが、独占禁止法の精神は、やはりそういうものはいけないのじゃないか。例外的に他の政策目的達成のために、必要な場合に認めるというのが、やはり独占禁止法としては本筋だと私は思います。
  27. 田中六助

    田中(六)委員 わが国カルテルですが、最近の不況カルテルあるいは合理化カルテルの現在の認可状況、そういう件数などを説明してください。
  28. 北島武雄

    北島政府委員 昨年の十二月の末でございますが、調査によりますと、カルテルの数は千五十二ございます。そのうちで一番多いのは、中小企業団体法に基づくカルテル、これが六百二十四ございます。その次が輸出入取引法に基づくカルテルで、これが二百七、それから環境衛生法に基づくカルテル、これが百二十三、それだけでもう九百五十四となります。あと残る九十八というものを、独占禁止法上の不況カルテル十七、合理化カルテル十四、あるいは内航海運組合法関係十七、機械工業臨時措置法カルテル十七、こういうことであとの残りを埋めておるわけでございます。
  29. 田中六助

    田中(六)委員 わが国にもそういう不況カルテルなどが十七件あったり、合理化カルテルもそういうふうにあるわけですが、こういう現在実施されているカルテル効果といいますか、いろいろ結局カルテルそのもの業者間の混乱を阻止する、押えるという点に眼目があるのでしょうが、その全体的な効果についてのあなたの概念はどうです。
  30. 北島武雄

    北島政府委員 千五十二のカルテルのうち、一番大きな中小企業団体法の六百二十四というのは、不況カルテル合理化カルテルに分ければ、不況カルテルでありまして、中小企業者過当競争のために、経営の安定を欠く、あるいは欠くおそれがあるという場合に、商工組合につきまして調整事業を認められておるわけです。これは多年にわたるものも相当ございまして、私どもとしてはそう長引くことは、結局において中小企業体質改善合理化を阻害するおそれもあるのじゃないかというふうに通産省には申し上げて、できるだけ早く取りやめてもらいたいというふうに申しております。一般的に申しまして、不況カルテル効果といえば、これは値ざさえ、それに基づいて、結局において価格が下がるのを防ぐという趣旨のものでございます。下ざさえをする性質のものでございまして、それが物価に及ぼす影響というのも、なかなか軽視できないものもあるのではなかろうか、こういう感じでおります。ただ何ぶんにもわが国中小企業の特質がございますので、こういった中小企業カルテル、ことに繊維関係が相当あるので、これは相当体質的にも問題がございます。こういう点は、もっとやはり根本的に体質改善を進めないと、こういうカルテルで温存しておったのでは、中小企業ほんとうの振興はできないのではないか、私どもはわきから見ていてこういう気がいたします。
  31. 田中六助

    田中(六)委員 不況カルテル結成で一応価格が下げどまっておるという部面もあるわけでしょうが、価格が回復してきた、そういう業種はありますか。
  32. 北島武雄

    北島政府委員 独占禁止法上の不況カルテルが十七ございますが、そのうち、若干値が上がってきて、カルテル効果のあると思われるものも半ば程度ございます。しかし半ば程度は依然として価格の低下がやまないというものもあります。
  33. 田中六助

    田中(六)委員 どういう業種か具体的にはわからないですか。
  34. 北島武雄

    北島政府委員 若干価格が回復してきておるものといたしましては、構造用合金鋼、カメラ、白板紙、塩化ビニール管ですが、しかしこれらは若干でございます。他のものは依然として価格の回復が思わしくないということであります。
  35. 田中六助

    田中(六)委員 日本はカルテル王国だというふうにいわれるほど、あなたもさっきおっしゃるように、非常にたくさんのカルテル結成している。特に中小企業カルテルというものは非常に多いのですが、この実態をもう少し詳しく言ってください。
  36. 北島武雄

    北島政府委員 千五十二のカルテルの中で一番多くを占めております中小企業団体法関係カルテルでございますが、昨年末六百二十四ございまして、そのうち工業組合が四百三十一、商業組合が百九十三、あわせて六百二十四ということになっておりまして、そのうちで価格協定を行なっておりますものは六十八組合でございます。もっとも、六十八のうち、輸出向けの商品が十八、内需関係が五十の協定でございます。
  37. 田中六助

    田中(六)委員 全部で六百二十四ある、これは中小企業団体法に基づくものでしょうが、この中で、私は調べてないのですが、十年以上あるというふうによくいわれていますね、それはどの程度のものがあるのですか。
  38. 北島武雄

    北島政府委員 年数別に申しますと、十年以上のものが百十二ございます。工業組合で百十二、商業組合は長いものはございません。
  39. 田中六助

    田中(六)委員 中小企業で非常に困っているのでしょうが、十年以上もカルテル結成しているのが百十二もあるというのは、やはりこれは大きな問題だと思う。こういうのは、結局、十年間以上もカルテル結成していますと、合理化とかあるいはこれを近代化させるというような、非常にそういう意欲をなくすだろうし、大体カルテルそのものにあぐらをかく、そういうような傾向が出てくるのです。それが十年以上にもなりますと、特に中小企業では漫然と日を過ごすということになって、ひいてはわれわれがいつも問題にしております、物価、特に消費者物価というようなことと結びついてくる原因にもなるわけです。通産省の堀本政務次官がおいでですが、こういうことにつきまして、やはり通産省も漫然としておるわけにもいかないと思うのですが、まず公取委員長から、そういうことにつきましてどういうふうにお考えか、お尋ねして……。
  40. 北島武雄

    北島政府委員 中小企業団体法に基づくカルテルの中で、十年以上を占めているものの大部分が繊維関係であります。ここに問題があろうかと思います。ただ、先ほど申しましたように、こういうものが長引くということは、結局において中小企業合理化、近代化を妨げることになるのじゃないか、おくらせることになるのじゃないか、私どもわきから見ておってそういう感じがいたします。こういう点、構造上に問題もございますから、こういう点については、できるだけ早く、カルテルということでなくて、何か別な方法で中小企業の近代化をはかられたらいいのじゃないか、こういうふうな気が、わきから見ておってするわけであります。
  41. 田中六助

    田中(六)委員 政務次官がおいでですから、こういうカルテルの問題に関連いたしまして聞きたいのですが、私は冒頭に、政務次官がおられないときに申し上げたのですが、最近の経済情勢に関連しまして、通産省行政指導の名のもとに、結局業界の秩序維持ということをやっておるのですが、これがはたしてほんとう行政指導という観点からの秩序維持になるかどうか。と申しますのは、日本はどうしても、企業が対外的に輸出を伸ばしていかなくちゃいかぬという宿命を持っております。そういう点で、体質の改善あるいは企業構造改善というような観点から見ますときに、やはりいま問題になっております住金にいたしましても石油出光にいたしましても、あるいは日清紡、鐘紡にいたしましても、大きな伝統を持っておる会社でございまして、日本の経済的な発展に対しましては、大きな貢献をなしてきておる連中なんです。そういう一つ行政指導の名のもとでやっておる通産省の行為が、ただ近視眼的にあるいはせつな主義的な当面の問題の処理だけに終わって、抜本的な——通産省ではよく抜本的などということばを使うのですが、ほんとうにそういう腹でこれらの問題に対処しておるなれば別ですが、安易に、極端にいえばただその日その日のことをやるだけで終わるなれば問題がある。したがって、こういう点についての最近の行政指導通産省のやり口について、どういうふうにお考えか聞きたいと思います。
  42. 堀本宜実

    ○堀本政府委員 不況カルテルは、ことに中小企業団体法によって指定をいたしております業種が相当あるわけでございますが、御承知のように、この価格カルテル等におきましては、緊急やむを得ない、避難的な立場から、これを公取と協議の上決定をいたしておるわけでございますが、将来いつまでもそれを放任して、業界内における構造改善、もう少し近い話で言いますと近代化といいますか、そういう内部構造の改善そのものを放任してそれがマンネリズムになっていきますことは、厳に警戒をしなければならぬと思うのでございます。しかし何さま、最近の不況等によりまして、これが立ち直りを指導いたしましてもなかなかうまくまいりません。しかし将来、これにつきましては再検討いたしまして、画一的にこれをやって一応平然としておる、そのまま放任しておくという考えはございません。今後一そう検討をいたしまして指導をしてまいりたい、かように考えております。
  43. 田中六助

    田中(六)委員 政務次官にいろいろ責めてもしようがないのですが、なぜ私がこういうことを問題にするかと申しますと、やはり通産省の上のほうの高官と申しますかそういう連中は、たとえばある業種について不況カルテルを何カ月延長するんだ、事前にそういう発言をするわけですね。これとても本末転倒なんです。そういうことばが吐けるわけがない。それが一つと。  それから住金の問題にいたしましても、原料炭を削減するというようなことを大臣なども堂々と言ってのけるし、大臣も予算委員会では、この点につきましては全体的な一つの観点からそうせざるを得なかったということをおっしゃっておったのですが、私に言わせれば、やはりこれも問題があると思うのです。一つ企業意欲というか、繊維の例なども、アメリカやイギリスなどでもやはり一つのプロセスとしては非常な激動期があるのです。日本経済の現在というものは、やはり大きく飛躍する——ロストウの言じゃないのですが、まさしく離陸する大きな段階にあるわけです。したがってそういう変動期には、あらゆる変革が各業種別にあるわけです。したがって、そういうものをこわがって旧態依然たる態度で、それは大所高所から自分はやっておるのだという、私に言わせれば一つ隠れみの的な見解から末梢的な処置をとることが、将来日本の経済の発展にとっていいかどうか。やはり変動期においては、あるいは経済が拡大した現状においては、それに対処する腹がまえ、それに対処する行政措置というものをとらなければならないと思うのです。それを、旧態依然としていままで行なったような発想法で局長あるいは次官などが行なうならば、これは私は大きな誤りだと思う。大臣のお考えを直接私は聞けないから残念ですが、そういう点からいいましても私は問題があると思うのです。  次いで、私は住金の問題に具体的に触れたいと思うのですが、これは一応形の上ではけりがついたというふうになっております。しかし私は、これは絶対まだけりはついてない、むしろ永遠にわれわれが取り組む問題だというふうに思っております。この問題につきまして私がくどくど言うことは、時間もとりますし、まだほかの先生方もこの問題にいろんな観点から突っ込んでいくと思うのですが、やはり問題は言うことを聞かなければ原料炭を割り当てないという、集約すればそういうようなことをやったこと、これは私は問題があると思うのですが、この点局長の御見解を聞きたいと思います。
  44. 川出千速

    ○川出政府委員 粗鋼減産鉄鋼不況対策として行なっておるわけでございますが、その生産の削減のめどは、三十九年度の下期の一割減というところを目標にしておるわけでございます。個々の企業につきましては、もちろん一割で一律にやっておるわけではないわけでございます。その前に、原料炭の石炭のほうは国内炭だけで足りませんので、輸入原料炭に相当分を仰いでおるわけでございますけれども、トータルとして減産をしておりますので、輸入炭の輸入数量も当然減らないと、これは国内炭の保護にもならないわけでございます。したがって、この輸入炭のトータルを粗鋼減産に見合って減らしていくということが通産省考え方でございますが、それを個々の企業に割り当てる段階におきまして、通産省の指導いたしました生産数量に見合って割り当てをする方針をとっておるわけでございます。この原料炭の輸入を、個々の企業について生産数量に見合ったものよりも大幅に切り込むとかあるいは原料炭の割り当てをしない、そういうことは全然考えていないわけでございまして、現に昨年問題になっておりました最中にも、各社平等に割り当てをしたわけでございます。ただし、それは粗鋼減産をしていないときに比べれば、トータルとしては減っておる。各社の事情に応じて数量の割り当てをした次第でございます。
  45. 田中六助

    田中(六)委員 私も速記録を調べてみたのですが、大臣もちょうどあなたと同じような答弁を予算委員会でしておるのです。しかしそれは、現実に全体の量が減ったから、そちらも減少をしたのだということにだんだん解釈を、率直に言ってすりかえつつあるのじゃないかという気が私はするのです。最初やはりその業種にとっては、この住金が、あるいはこの業種が発展するかどうかということは、ちょうどわれわれ人間が生活するのに米やパンを食うのと全く同じなんです。それを減産に応じてやったのだというふうに解釈するのですが、やはり業界というものはその裏を考えるわけです。原料炭というもの、そういうものでちらつかせると、衣の下のよろいで、これはほかのところに作用するのじゃないかと当然思うのです。そういうやり口というものは、行政措置ということから関連して、こういうことをむやみやたらに振り出して言うべきでないというふうに私は思っております。これはどうですか。
  46. 川出千速

    ○川出政府委員 ただいま御答弁申し上げましたとおり、現実に原料炭の割り当ては、各社平等に生産数量に見合った割り当てを昨年もいたしましたし、今後もいたしていくつもりでございます。この粗鋼減産をいたします際に、政府のほうもあるいは業界全体も、粗鋼減産をしなければ市況の安定は得られないという根本的な考え方については一致したわけでありますが、それでは各社別にどういう基準で生産を調整していくかという問題になりますと、各社それぞれ意見、利害が異なるわけでございます。それぞれの立場からそれぞれの主張があるわけでございますけれども、そのとおりにすればまとまらないわけでございますので、いわば最大公約数と申しますか、と言うと語弊があるかもしれませんが、そういう一番まとまる段階でこれを行政指導をしていこうというのが、政府の方針でございます。
  47. 田中六助

    田中(六)委員 これは私いろいろ言っても、結局あなたと平行線になると思うのですが、いずれにしても通産省の設置法の第三条で勧告操短というのはできるのですが、しかしこれはあなたも御承知のように、拘束力や罰則というものはないわけですね。そういう原料炭の問題を出すこと自体が、私が先ほどから言っておるように一これはあなたたちの言い分もあろうが、その底意、そういうものを必要以上に感ずる。たとえば、人間が非常にある人間にぴりっとこたえることを言う。それは客観的に見たらたいしたことはない。しかしその人が、主観的には致命傷を与えられて自殺する、そういうことはあり得る。だからそういう問題を、しかもそれが将来日本の経済の発展のためにどれほど貢献するかわからぬ一つの要因をはらんでおるならば、これは問題なんだ。あなたたちは、これは単に自分たちの一つ行政指導という概念の中からやったんだ、そういうようなことで突き詰めていっても、これをとる相手方は、あるいはまたそこで問題が解決——その場で被害をこうむらない同じ会社の人でも、やはり心の底では同じようなことを思うでしょう。それがどれだけ日本の経済の将来にとって大事なことかということを考えなければいけない。そういう観点からこういう問題を処理しなければならないということをぼくは言いたいのです。その点、あなたたちも今後十分考えてほしいと思います。  それで、私さらにこの問題にちょっと一言。これも予算委員会とか調べてみますと、やはり問題になっているのですが、勧告操短が半年以上も現在続いているわけですね。しかもこれをまた一応のんでいるわけですが、そうなれば、独禁法にはっきり不況カルテルということがあるのですから、行政指導するならば、むしろそっちのほうに持っていくことのほうが私としては当然だと思う。なぜこういう問題を私取り上げるかというと、全体的な通産省行政指導というものが混乱している。一方では不況カルテルにどんどん行け行けといってすすめているかと思うと、一方ではそういうものは無視してしまって、勧告操短とかそういうようなことでやる。国民は、それは無知な人が多いからあまり問題にならぬでしょうけれども、全体的な雰囲気として、あるいは通産行政として行政指導するんだ、するんだといいながら、相矛盾したことを——それはチェンジ・オブ・ペースでいろんな場面場面によってやらなければならぬでしょう。しかし、その根底に流れるものが問題なんです。これは私は、そういう意味からでもとの勧告操短鉄鋼に対する問題があると思うのですが、この点公取委員長はどう思いますか。
  48. 北島武雄

    北島政府委員 勧告操短はできるだけ独禁法上の不況カルテルに切りかえていきたい、こういうふうに常に考えております。
  49. 板川正吾

    ○板川委員 一言、関連して伺いますが、重工業局長に伺います。輸入炭の割り当てを指示数量に見合うようにしたということですね。これは指示数量に見合う割り当てだから必要だけ割り当てたということになる。そこで伺いたいのは、その指示数量に見合う割り当てをしたというのは行政処分ですか。行政処分なら、それによって不利をこうむった者が行政処分の不服に対する裁判の救済がある。しかし、行政処分でないとすれば、救済の方法がないじゃないですか。だからその点、行政処分として行なったのですか、それともそうじゃないのか、どっちです。
  50. 川出千速

    ○川出政府委員 行政処分でございます。
  51. 田中六助

    田中(六)委員 局長にお伺いしたいのですが、さっきの、勧告操短が長過ぎるから、指導するとすれば、不況カルテルのほうに転換させるような行政指導をしたらどうだ、その点の見解をちょっと……。
  52. 川出千速

    ○川出政府委員 大臣が今度の国会で答弁しておられるところでございまするけれども、元来不況カルテルでやるべきだと思うが、現実の問題としてそれがまとまるか、そういう点で非常にむずかしいので、例外中の例外としてやむを得ずやっておる、しかし、なるべく早くこれがやめるような時期がくることを期待しておるという御答弁でございますので、私も同様に申し上げます。
  53. 田中六助

    田中(六)委員 繊維局長にお伺いしたいのですが、今度はちょうど逆に不況カルテルの延長問題ですが、けさの新聞によりますと、繊維業界不況カルテルをまた延長するように業界で意見がまとまったというふうに聞いておりますし、そういうふうになるようですが、その点お聞かせ願いたい。
  54. 乙竹虔三

    乙竹政府委員 昨日紡績協会の三木委員長が夜お見えになりまして、日清紡の露口社長と朝から折衝したが、ただいま大体日清紡カルテルに協力するというふうに話がきまったので御報告いたします、こういうことでありました。  その経緯でございますが、新聞紙上等で御承知のとおりでございまして、昨年十月にカルテルが結ばれたのでありますが、この綿糸のカルテルは半年限りであるというふうに日清紡は約束を取りつけて入ったようでございます。ただこのカルテルは、業界でやむを得ざる措置として綿糸の需要供給をバランスさせようというふうなことであったわけでございます。と申しますのは、カルテルで大体形式一割、実質九%の生産制限をする、一方また、インドネシアに対して綿糸の輸出を延べ払いで行なう、これが大体月間数量一万コリ、生産量約四%ぐらいでございますが、生産を約九%縮め、需要のほうを四%伸ばすということで大体バランスをとっていこうというようなことであったようでございます。ところが遺憾にも、また一面、日本の経済市況も半年もすれば大体回復するのじゃなかろうかというふうなこともあったようでございますが、いま申し上げましたインドネシアの件、それから一般の市況回復の件、インドネシアはおおむね非常にむずかしい状態になり、市況回復がおくれておるというふうなことで、昨年の秋、十一月以降また綿糸相場は非常に低落してまいりまして、現在のところ不況カルテルを延長せざるを得ないというのが業界の大勢であったようでございます。ところが、日清紡といたしましては昨年の経緯もこれあり、また不況カルテルはとかく生産性の悪い企業に足を合わせるというふうなことにもなりやすく、現在綿紡業界は非常に大きな構造問題に取っ組んでいかなければいけないときに、不況カルテルの延長というのはいかがであろうかというふうな点もあったようでございまして、業界の多数派と日清紡との間に意見が分かれておりました。その点につきまして、業界多数派を代表して三木紡協委員長日清紡首脳部との間に数次にわたって折衝が行なわれまして、私聞くところによりますと、業界はあげて構造問題に真剣に取っ組んでいくということを前提として、さしあたり不況カルテルを延長しようという話がついたものと了承しております。
  55. 田中六助

    田中(六)委員 私はけさほどあなたの談話も読みまして、一つ構造改善という観点からこれを許すのだ、不況カルテルの座に漫然と乗っておってはいけないというような記者会見ことばを読んで、私も、あなたのものの考え方は私と同じだし、いいというふうに思っておりますが、ただ、いままでのやり口といいますか、これについては住金問題と同じように私はやはり納得のいかない点があるわけです。それは、日本の繊維工業にしましても、現在ほんとう中小企業競争みたいな繰り返しをやっておるわけですね。こういうことをやめさせる。つまり勧告操短というかそういうものをずっと長年やってきておるし、過去十年間か十一年間同じようなことをやってきておりますし、そういう意味もあって、一昨年新法ができておるわけですね。調べてみますと、そのときの繊維局長さんは、この新法を実行するのについていろいろな談話も出しておりますし、そういうようなことで行政指導してきておって、そうしてまだその舌の根もかわかないうちに、ぱたっとまたもとに戻った行政指導をやっているわけです。こういうことについて一貫性がないというか、企業全体のあり方から見て自分たちはこれをやったんだというふうにおっしゃるかもしまれせんが、やはり私はこれも問題があるし、これから先の大手の企業と申しますか、土性骨のすわった社長のおる会社では、そう過当競争自分のところだけもうけようというような観念だけでやっているかどうかきわめて疑問です。むしろここで自分企業の体質を強めるのにはどうしたらいいかという価値判断のもとで一というのは、あなたや私どもはどうしても机上の空論、あるいは頭の先で考えることだけになる。しかしそういう人たちは自分で体験し、それが一つの職業なんです。したがってそういう点から割り出された考え方というものは非常に尊重すべきなんです。しかもそれが少人数であった、その意見が少人数で、他の多くの人々はそうでなかった、だから多数決によってそれを葬り去る。住金でもそうです。他の多くの人はこう言うんだということから、そういうような発想をいつまでも続けておると——われわれが国会でもいつも反省するのは、多数決の原理がいいか悪いかということですが、あなたたちもこの問題を昔の古いような考え方から出発して対処すると、こういう矛盾を来たすのです。旧法と新法というものがあって、新法のときはこうするんだと言っておって、それが少しは時間を置くならいいけれども、もうすかさずまた旧法に返ったようなことをやってのけるということに問題があると思うのです。したがって、こういう点につきましても、私はあなたの弁解を求めようとも思わないのですが——というのは、あなたの一つ考え方というものをけさ新聞で読んでしまったから、私は、私の質問が同じことをただ繰り返して非常に時間のむだだというような考えがあるために、私はあまり問題を追及しないのですが、そういう点につきましても、十分これからあなたたちが考えてもらいたいというふうに思います。  以上、石油の問題もありますが、私が考えるのは、いつも緊急措置緊急措置といいながら、毎回同じことを言って同じことを実施するのは、結局将来に対するビジョンがないからだと思うのです。あなたたちが、局長が次にかわっていくということだけで、短期間、一年あるいは一年半のことで済むというような考え方でこういう問題に対処はしてないでしょうけれども、まあ私のひがみか知らぬが、そういう印象を与えるのです。したがって長期的に見た、自分もそういうものの関連性のある一こま、一区切りをやっておるのだという観点から、繊維問題にいたしましても、この鉄鋼問題にいたしましても、もう一度十分問題の検討をし直して——これは一応表面上は片づいたような形をとっております。しかしその根にひそむもの、それから不平を持ちつつこれを肯定していっておるもの、そういうものにつきまして、もう一回十分この問題を蒸し返して御研究になることを私お願いいたしまして、大体質問を終わりたいと思います。  そのほかまだ歩積み両建て問題やいろいろございますが、私だけ一人でこんなに時間を取ることもどうかと思いますし、以上私の質問はまたいずれ時間をいただきましてやることにいたしまして、本日はこれで終わらせていただきます。
  56. 天野公義

    天野委員長 沢田政治君。
  57. 沢田政治

    ○沢田委員 私がこれから質問することは、部分的に見ますならば本議題とは離れておる、こういう印象を持たれるかもわかりませんけれども、非常に関連があるわけです。つまり今日の独禁法がいろいろな評価をされておるわけです。底抜けとか骨抜きとかたくさん言われておるわけですけれども、そのように、法律そのもの自体に対する不備ももちろんでありますけれども、そういう法律であっても、それを踏んまえてどのような態度を各省庁並びに公取委がとるか、これが私は非常に重要な問題だと思うわけであります。したがって、部分的には法律と遠いような関係でありますけれども、究極的には非常に重要な関連を持つ、こういう点をまず第一に了解を願いたいと思うわけです。  そこで、従来ダイナマイトとかカーリットとか、その他の在来の火薬があったわけでありますけれども、私の聞くところによると、従来の火薬にその効果がまさるとも劣らない新しい火薬が最近導入されておるわけであります。つまりそれがアンホといいまして、通産省の軽工業局では、硝安油剤爆薬というように名前をつけたようでありますけれども、このアンホと既存の火薬をめぐって産業火薬界と、あるいはそれを使用する土木、あるいはまた石炭、非鉄金属工業等の間に相当価格の問題等をめぐって紛争が起きておる、こういうことを聞いておるわけであります。そこで私のお聞きしたいのは、このアンホという爆薬は——私は爆薬じゃないと思うのです、爆薬の補助剤だと思うわけですけれども、アンホ、つまり硝安油剤爆薬、この功罪、特に安くて効果が同じものであるならば、これは当然軽工業局としても産業の発展に寄与するという角度からこれを奨励しなくちゃならぬ立場にあると思うわけであります。そういう意味で、やはりこれを産業発展に寄与するために、相当普及し、研究させる、そういうような努力を今日までやってきたのかどうか、こういう点を私はまず第一に軽工業局長にお伺いしたいわけです。
  58. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 アンホがただいま沢田先生の言われますように、爆発力において従来のダイナマイトとそう変わらないものでありますし、またある意味では安定性も大きいし、また価格も低廉であるというような点から、特にアメリカでは従来のダイナマイト等にかわりましてアンホの占める領域がふえてまいっておるわけであります。そういう情勢に対処いたしまして、三十八年の六月から七月にかけまして、産業火薬関係の調査団を編成いたしまして、これには産業火薬の学識経験者だけではなく、鉱山業界の学識経験者も参加いたしておりますが、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ等の状況を視察してまいっております。そういうような知識をもとにし、いろいろ文献も研究いたしまして、三十八年ごろから日本でもアンホを生産するようになっております。その後三十八年、三十九年、四十年と生産量も非常にふえてきておるわけでございます。ただ、このアンホがふえますと、一面従来のダイナマイトあるいはカーリットの分野が食われていくということは当然のことでございます。でありますが、われわれといたしまして、そういう既存のものが分野を減らされるということで、そういうものを排撃するというようなことはもちろんいたしておりません。そういう新しい技術の革新に伴うものは大いに取り入れまして、それによって鉱山はじめその他の需要者が安くていいものを使えるように持っていくという方針で進んでおるわけでございます。ただ一方、ダイナマイト等の進出によりまして、ダイナマイトの分野におきまして生産量が減ってくる。大体火薬類の需要というのは横ばいの状況でございますし、それがさらにアンホに食われまして、従来のダイナマイト、カーリット等の生産量が減ってくるという状況でございます。こういうものに対しましては生産設備の合理化、集中化というようなことを積極的に進めまして、国際競争力を持った価格で、さらに輸出もできるようにいたしたい、そういうことで進めておる次第でございます。
  59. 沢田政治

    ○沢田委員 ただいま局長が答弁されましたが、私の印象としてはアンホというような非常に革命的な、これは簡単に言えば、だれでもつくれる非常に画期的な爆薬が最近出てきた。たとえばこれは製造工程が非常に簡単なわけですね。硝安と軽油と九四対六の割合で物理的に混合したならば、そのまま爆薬になり得る性質を持っておるわけです。したがって、原価もこれはやはり従来の火薬の半分以下になるわけですね。これはアメリカ等は一キロ当たり四十円だそうです。そうなれば五分の一どころか六分の一の値段で爆薬というものは使用ができるようになるわけです。そういうことで非常にいいものであるから、けっこうなものであるから、これを普及したい、こういうようにつとめていますというような御答弁をいただいたわけでありますけれども、私の印象としてはそうじゃないように受け取られる面があると思うわけです。たとえば先ほども局長が答弁の中に、従来のダイナマイトやカーリットが急激に減ってくる、こういう点の真偽は別としてもそういう点にも触れられておるわけでありますけれども、従来の既存の火薬の利益を擁護するために産業に非常に貢献するような、そういう新しい爆薬というものを制限して一つ産業利益を守ろうという方向に力点を置いておるのではないか、私の印象としてはこういう感をいなめないわけであります。そういう感じを私は持っていますけれども、あなたはそうじゃないと思っていますか。
  60. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 私先ほど申し上げましたように、アンホのような新しい製品、そういうものは大いに伸ばすべきであります。ただし半面影響を受けます従来の産業火薬については、それが今後国際競争場裏におきましてそれにうちかっていく力を持ち、そうして輸出にも内需にも従来よりもより以上に安くつくる道をやはり考えていかなければならないというふうに私は考えておるわけであります。したがいまして、アンホについて需要が伸びないようにというようなことはもちろんいたしておりません。たとえばアンホに関する製造の技術上の基準とか、あるいは包装の技術上の基準でありますが、三十九年には二回にわたりまして基準も緩和をいたしております。何ぶん新しいものでありますので、その間の製造、使用上の状況を見まして、これなら安全であるという点を見まして、必要な限度に緩和をして需要の刺激になるようにいたしておるわけであります。
  61. 沢田政治

    ○沢田委員 私はこれは言い過ぎかもわかりませんけれども、先ほど既存の産業火薬の利益を守るために極力アンホを押えているような印象を受けると言いましたけれども、なぜそういう印象を受けるかという根拠を若干話してみたいと思うわけです。  と言いますのは、これは記録はありませんけれども、聞くところによるとアメリカ、カナダ等ではこれを火薬扱いにしない。法律的にも、危険物扱いにはしておるわけだけれども、火薬扱いというようなめんどうくさい制限下に置かない。それを広範に現場で調合——調合ということばがいいかどうかはわかりませんけれども、混合して、そうして安く使用させるという方向をとっておるそうです。ところがなぜアンホを火薬扱いにしたかということであります。たとえば先ほど申し上げましたように、アンホは新しい火薬ではないと思いますけれども、火薬とするならば、火薬が硝安と軽油を九四対六%の割合で混合したそれだけでは爆発しないと私は思うのです。ちょっとくらい踏んでも投げても、これは爆発しません。ぼくはここへ持ってこようと思ったのですけれども、これは火薬ということで規定をされて、議員が法律を破って火薬をここに持ってきたということになるとたいへんだということで、警務部長さんから許可を受けましたけれども、かれこれ注意を受けましたので持ってきませんでしたけれども、ここへ持ってきて雷管でそれを爆発させても、アンホそのものは爆発しない。アンホそのものは爆薬じゃないですよ。いろいろ一定の条件のもとに誘爆、伝爆する可能性があるわけであります。石にさく岩機で穴をあけてアンホなるものを充てんしてダイナマイトを装てんして、そうして雷管をつけて爆発させたところで初めて爆薬としての補助剤になるわけですね。したがって私はアンホそのものは物理的に見ても、これは何ら火薬じゃないと思うのです。やはり火薬でないものを——私の常識的な判断ですよ。火薬でないものを火薬であるとするならば、これは普通の人はつくれないわけです。つくれないから、火薬業界もこれをつくるとなれば、いろいろコントロールできるわけですね。そういう意味が非常に強いのではないか、こういうように私は考えるわけであります。私はこのアンホそのものを火薬とするならば、これはプロパンだって爆発力がありますから、ある条件のもとにおいてはこれも爆薬にしなければなりません。ガソリンだって、これはある場合においては爆発しますよ。排気、吸引、どこかで爆発しているのだから、私はそう考えるわけです。やはり火薬にしたということは、これは何かどうも既存の火薬業者利益を守るために取り扱いをめんどうにして、そうして、鉱山とか採石とか土木とか、そういうものがかってにつくらせないような方向をとるためにあえてしたのではないか、私はこういうように考えるわけでありまして、ちょうど昭和三十四年だったと思いますが、火薬業界から皆さんのほうに質問か照会というようなかっこうで書簡が来ておるわけであります。それに対して回答という形でいつの間にか火薬にした経緯があるわけでありますね。そこに私は不純といいますか、どうも動機がちょっとわからぬわけでございますので、その点を明らかにしてもらいたいと思うのです。
  62. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 アンホを火薬として保安取り締まりをするかどうかという点でございますが、確かにいろいろ議論もあったようでございます。先ほど申しました三十八年の調査団がアメリカ、カナダ、ヨーロッパを視察いたした際に、そういう各国の法制についても調査をしてまいっております。その報告によりますと、アメリカを除きましてカナダ、ヨーロッパでは火薬として規制をいたしております。アメリカでは調査報告書によりますと、ブラースティング・エージェント、ハッパ剤と訳しておりますが、ブラースティング・エージェントという扱いをいたしまして、これはいわば一種の危険物的な扱いということにしておるそうであります。そういう状況でございますので、日本としまして、比較的地形等も似通ったヨーロッパのほうの法制をもとにしまして火薬という扱いにしたわけでございます。  なおアメリカにおきましても、最近輸送中の事故によりましてアンホが爆発をしたというようなこともありまして、少なくとも輸送についてはアンホも火薬並みの扱いにすべきであるというようなことも聞いております。
  63. 沢田政治

    ○沢田委員 この点で議論しても始まりませんけれども、これは私の印象ですから許されたいと思うのだけれども、外交とかそういうものはアメリカにくっついていっているのだけれども、こういう技術のほうになると、アメリカですでにやっているものもやらない、しかも厳密な火薬扱いにするということは、私はどうしても解せないのです。と同時にもう一つ許可基準とか、火薬の扱いにするとか、そういう法律上の問題は別としても、ものをつくり出す生産者は、これは主だと思うのです。私は鉱山なり石炭なり、あるいはまた採石、土建、こういうものは一つ産業だと思うのですよ。産業が主だと思うのですよ。そのために必要な火薬というものは従だと思うのです。ところがどうも従が主になっておる。市場の関係でも価格関係でも、主になっておるような危険性が私どもとしては強く印象づけられるわけです。犬がしっぽを振るのは当然だけれども、しっぽが犬を振っている。いい悪いは別としても、そういう状態ですね。この問題に関する限り、価格の問題、市場の問題から考えて、しっぽが犬を振っているような状態だと思います。私は正常ではないと思うのです。  そこで特に金属鉱山が、昭和三十七年の五月ですか、自由化に備えて国際競争力の基盤というものを企業内部でつくり出さなければならない、これは企業の任務であると同時に、国会でも危機打開に関する決議案が出されて、国際的にこれを合理化しなければならぬ、産業基盤というものを強めなければならぬ、こういうような要請がなされているわけです。そこで特に困るのは中小企業であるわけです、零細中小鉱山であるわけです。しからば中小鉱山が火薬の面においてどういうような差別を受けているかと言いますと、これは正確にはわかりませんけれども、五割以上の高い値段で火薬産業界から買わされておるわけであります。合理化したって、これは科学的な産業じゃないので、大企業と違ってそう合理化する余地がないわけであります。したがって原材料というものを節約する方向に着眼するというのは当然だと思うわけであります。そこで何とか大企業並みの価格で火薬を買いたいものだ、こういうことで中小企業の四十社をもって構成しておる鉱業協同組合ですか、この方々がいろいろ方法を考えたわけです。ところが単独では安く売ってくれない。したがって組合をつくってひとつ窓口になって、そうしてそこで一挙に仕入れたならば、大企業並みの値段で売ってくれるのではないか、そういう方法を考えてやったところが、そういう業者をふやすとかふやさぬとかいう法律的の問題で、なかなかそれもややこしい、むずかしい。火薬業界の圧力、メーカーの圧力でなかなかそれを認めなかった。そこで今度はアンホという非常に安い火薬があるそうだ、もうすでにその前に研究しておったわけですが、そこで火薬業界に対して、アンホなるものをつくって安く売ってくれないか、こういう交渉をしたらしいんです。ところが火薬の場合は四社でほとんど独占していますね。市場を見ましても四社で九三%だと思うのです。これは寡占なんですね。これは正確じゃありませんけれども、キロ当たり百二十五円ですか、そういう値段でなければ売ることはできません、つくることはできません、こういうことで、にべもなくはねつけられた——と言っては悪いわけでありますけれども、交渉が成立しなかった。そこで今度はみずからが火薬製造の許可をとって、そうしてみずからが製造するよりほかに手がない、こういうことになって、お百度参りしたのか二百度参ったのかわかりませんけれども、軽工業局に頼んで、そうして許可を受けたわけですね。そうしてもう昭和三十九年の十一月か十二月から製造を開始して、現在若干つくっておるわけですね。その許可する際に、軽工業局で念書——念書というのは法律的にはぼくは効果ないと思うのです。黒金念書も盛んに問題になっていますけれども、どうも最近、政府は念書が好きなようですね。この念書をとった。つまりこれは、やたらにほかに売ってはいけない、限られたところしか売ってはいけない、こういう一札をとっておるわけであります。この解釈をめぐって、てんやわんやの大騒動になっておることは御承知のとおりであります。したがって、この念書なるものは、自発的に協同アンホ株式会社が出したものか、やはり火薬業界の圧力なり利益というものをおもんぱかってあなたのほうでは自主的にとったのか、どっちですか。
  64. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 火薬業界の圧力によって、あるいは依頼によって念書をとったというようなことはございません。ただ協同アンホが営業をいたします場合に、その成立の経緯からしまして、中小鉱山の自家用のアンホをつくるということから協同アンホが中小鉱山に直売をするということになっております。そういたしますと、直売であるだけにその点で安くなることが考えられるわけでございます。火薬の一般の流通は、卸商、小売り商を通じて販売をいたしておるわけであります。こういう機構の合理化ということは当然考えるべきでございますが、小売り商におきましては、特に小口の需要者に対して少量ずついろいろな種類のものを売っておる。ダイナマイトを二本、三本ほしいというような需要者もございます。また需要者のほうでは、自分で火薬庫を持っていないで、一応買うけれども販売業者のほうに預けておいて、その火薬庫を利用するというようなのもございます。そういうわけで小売り業者としては、いろいろのサイズのもの、いろいろの種類のものを常時そろえてお客に売っておるというようなことから高くなってくるわけであります。そういうような意味で小売り商としての存在理由があるわけでございます。そういうような流通機構に対して不当な混乱が起きないようにという趣旨もありまして、協同アンホの成立の趣旨から言って、自分のほうは中小の鉱山会社に売るのだという趣旨の念書の提出があった。これは非常にけっこうであるということで受領したものであるというふうに承知しております。
  65. 沢田政治

    ○沢田委員 念書をとったのか出したのか、この辺は私もやかましく言いません。それは善意に解して私は言わないわけであります。  そこで鉱山局長、特に鉱山の場合は、国際商品である関係上、国際的な価格の影響を受けることは不可避であります。そういうことで合理化ということも国家的な見地から要請しておるわけであります。そういうことでこういうアンホというような革命的——と言うと表現がオーバーでありますが、非常に低廉な、しかも効果も在来のものにまさるとも劣らぬものができてきているものと思う。やはりこれを使用することは、鉱山局の立場としても非常に奨励すべきことであると考えますか。
  66. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 先ほど先生のお話にございましたように、三十七年の自由化対策の一環ということで、国際競争力の観点から非常に関心がアンホに注がれましてできた経緯もあるわけでございます。ただいまお話しございました協同アンホ製造株式会社のおい立ちもそういうことでございまして、国際競争力の強化、そういう観点からでございます。全く御趣旨のとおり安くて競争力に役立つというものは大いに使っていくべきであるというふうに考えます。
  67. 沢田政治

    ○沢田委員 これは鉱山局長としては当然だと思うのです。当然だけれども、あまり努力のほうはどうも認められないので非常に残念だと思うわけであります。特に私は鉱山のことだけ言っているわけではないのです。私は国家的な見地から見ても、趨勢は、もとは炭主油従とか油主炭従とかいいましたけれども、やはり技術革新、産業革新の趨勢というものは、私はもうどうしても防ぎ切れないと思うのです。やはりいいものはいいし、安いものは安いのだから。だから私はこれは鉱山の問題だけではないと思うのです。特に私の聞くところによると、アメリカでは土木、鉱山を含めて既存の火薬の消費量の六五%ないし七〇%がこのアンホに切りかえになっておるというふうに聞いておるわけであります。たとえば日本の業者が香港へ行って、清水組とかああいう建設会社が土木工事をする。ほとんど外国では、特に香港なんかでも日本の業者がアンホを使っているわけですよ。ところが日本では極度の制限において——どうもどういう方法で使わせないようなことになっているのか、流通機構か、寡占体制から出ているのか、そこに非常にあやふやなものがあるわけです。特に私は建設業なんかでも国家の経費の非常な節減になると思うわけです。農林省ですか、建設省ですか、干拓事業をやっているわけです。そこのところに行って、土砂を爆破をして破砕して埋め立てをするわけですね。そういう場合アンホを使ったほうがいいんじゃないか、こんな高い爆薬よりはアンホのほうがいいじゃないか、こういうことを聞くわけですよ。もっともだ、そのとおりだと思う、われわれも知っているのだけれども、もしアンホを使った場合には会計検査院に取り締まられるということです。予算にはダイナマイトとか、カーリットとなっているので、そういう安いものを使った場合は、これは設計とかそういう関係上おこられますということを言ったわけです。だから私はなぜ軽工業局がそういうものをどんどん紹介して普及して開発していかぬか、こういう点にどうも頭がつっかかるので、考え方がつっかえてくるものだから、もう一ぺん明快な答弁を願いたいと思う。それを使ったほうがいいのかどうか。どうですか、その点、軽工業局長から御答弁願いたい。
  68. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 土建業者が見積もりを出します場合にダイナマイトを使用しておる。したがって工事単価もそういう値段で出しておるということから、会計検査院のほうでそういうチェックをするということではないかと想像いたします。私そういう点よく存じておりませんので、さらに調査をいたします。御指摘の、軽工業局としてそういう知識の普及なり販路の開拓に大いに力を尽くせという点については、全くそのとおりだと存じます。そういう努力をいたしたいと思います。
  69. 沢田政治

    ○沢田委員 特に既存火薬業界の、産業火薬業界の市場の占拠率を若干調べてみたわけでありますけれども、非常に占拠率が高いのですね。だから私は公取委員長にこういうことは望ましいかどうか若干の意見を伺いたいわけですけれども、たとえば旭化成工業株式会社が三〇%なわけです。日本化薬株式会社が二六%、日本油脂株式会社が二五%、日本カーリット株式会社が一二%、全部で九三%の市場占拠率になるわけです。ここから私は価格等の問題でも大きな問題が出てくると思いますけれども、このものだけで好ましいとか好ましくないかということを聞くのはちょっと答えにくいかと思いますけれども、そういう価格カルテルが発生してくる要因というものが、こういう状態から見て可能性があり得るというふうに、これはちょっとむずかしい質問かもわかりませんが、考えられますか。
  70. 北島武雄

    北島政府委員 特定の業界についてのいまのお尋ねですとなかなかお答えしにくいのですが、一般的に申しましてただいまのお話のような寡占状態になりますと、やはりえてして業者間の話し合いができやすくなる。そうするとそこで価格協定が行なわれやすいということは言えます。それからそういう寡占状態になると、いわば管理価格という問題も起こります。そういう点は私ども独禁法上も十分注意しなければならないと思います。
  71. 沢田政治

    ○沢田委員 そういうことを言われておるわけだけれども、こういう産業に対していままで目を向けたことがありますか。私は、独禁法は骨抜きとかなんとか言われておるけれども、やはり公取の態度にかかっていると思うわけです。態度ですね。だから公取に若干機構を強化するとか人員をふやすとかでは、実態はよくならぬわけです。どういう態度で臨むかということに大きな問題があると思うわけです。したがってそれに対して、そう思いますなんて、私が申し上げた数字を見て印象だけ述べられても困るのです。いままでこれをやっておらなければいかぬわけです。目を向けておらなければいかぬわけですよ。だからもうすでに業界新聞にもダンピングしているとかなんとか出ていますよ。私がここで読み上げるのはめんどうくさいから読み上げませんけれども。だから私は、皆さんが努力しておることはわかりますよ、努力しておるけれどもほんとうにまだぼくはうんと努力していると思わぬですよ。たとえば国民に聞いてみなさいよ。わけのわからない官庁、国家機関がたくさんあるけれども公取なんというのはわからぬ人が多いですよ。なわのれんの焼き鳥はわかっておるけれども自分の盲腸の所在は知っておるけれども公取なんて知っておる人はあまりないのです。もちろん努力しておるとは思いますよ。しかし、こういうものに私はもう少し目を向けなければいけないのじゃないかと思うわけです。  そこで具体的な問題に入るわけでありますけれども、今日火薬を使っておる石炭あるいは土建業者、さらには非鉄金属、金属を含めて、価格が非常に不明朗なんです。どこの会社がどこの会社から一キロ当たり幾らの値段で買っているかということが全然わからないのです、よそさんのほうが。まあ若干の値引き等があるけれども、大体火薬一トン幾らということは想定がつくものですね。ところが火薬に関する限りは全然わからないのですよ、幾らで売っているのか、買っているのか。これはやっぱり独占だからできるのです、寡占だからできるのですね。そうして高い建て値をつけておいて、そうして今度はリベートと称して実際にはそでの下で取引をして、安くしたり高くしたり、こういう旧態依然たるものが行なわれておると思うわけですよ。戦国時代に種子島が入ってきたとき大名がどれだけで買ったかわかりませんけれども、それと非常に似ているのです。おかしいのですよ。しかもそのリベートなるものが、係員が取っておるのか資材部長がふところに入れておるのかあるいはまた重役の渉外費になっておるのか、これはわからぬです。非常に不明朗なわけです。したがって、どうしてこういうような原因が出てくるのか。いまの既存の特に四社を含めた火薬業界の流通機構というものはどうなっていますか。非常に複雑だということを聞いていますけれども、どうなっていますか、軽工業局長
  72. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 卸商が十七ございまして、それから小売り商が約千ございます。卸商にメーカーから売りまして、卸商が大口需要者あるいは小売りへさらに売る。大口につきましては、メーカーが直接品物を出しまして、卸商を形の上で通ずるというようなのもございます。先ほど申しましたように、卸商から小売りへいきまして、小売りが相当小口の需要者に対してそれをさらに売るというような状態でございます。
  73. 沢田政治

    ○沢田委員 先ほど申し上げましたように、産業火薬の四社ですね、九三%の市場占拠をしておるこの四社が、ほんとうに困っておる会社か、無配でもう何というか、さかさに振っても鼻血が出ないような会社なのか。そうなら一応、了解はできないにしても半面においてはちょっとわかるような気がするわけだけれども、これはどうですか、やはり株主への配当とかそういうものをしていませんか。業績の状態はどうですか。さもなければこれは殿様産業ですか、これだけは。
  74. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 この四社は火薬を、専業ではございませんで、火薬以外の部門のほうがむしろ多いわけでございます。最近の決算期の状況でございますが、配当はゼロのところが一社と、あとは八%、一二%、一五%でございます。兼業の率でございますが、全体で火薬部門の占める比率は一八・三%、三七・八%、三・一%、三二・一%というような状況でございます。
  75. 沢田政治

    ○沢田委員 そこで、中小企業の鉱山が相寄って、協同アンホという会社を設立して、みずからの手によってアンホを製造している。これに対して、既存の火薬独占——まさに九三%だから独占、寡占ですね、こういう大きな会社が猛然と反撃に出ておる。こういう状況業界新聞でちらほら出ておるわけでありまして、これに対して所管官庁である軽工業局が、あっせんか調停か知らぬけれども、いろいろな努力を試みられておる。こういう点も詳細にある業界紙に出ておるわけです。そこで、特に私考えるのは、いま秋田県の大館にある協同アンホなる会社は十五、六人しかおらぬ。二千五十万ですか、ぐらいの小さな会社なわけです。これは月産にしても、許可基準では七十五トンですか、実績は四十トンくらいいっていますかな。既存の火薬業界から見たならば非常に取るに足らぬです、ところが、これに対して猛烈な巻き返しを行なっているのは、これは今日常識になっているわけです。というのは、そのけしつぶのような大館の協同アンホをつぶすのが目的と思いますと——それが目的じゃなかと私は思うのです。結局アンホというものが使われれば、ダイナマイトとかカーリットとかいうような、ぼろいもうけをするそういうものが売れなくなる。いまのうちにアンホというものの芽をつんでおかなくちゃならぬというところに私は大きなねらいを置いているのじゃないかと考えられるわけです。そうでなければ、これはああいう狂気のさたのようなダンピングはしないと思うのです。これも私の聞くところによると、まあここで名前をあげるのを私はよしましょう。私なりに知っております。産業火薬の各社がそれぞれメーカーの手を通じて、そうして協同アンホのアンホを買ったならばダイナマイトのリベートを断ち切る。あるいはダイナマイトの供給ができないかもわからぬ、こういうことで非常におどかしをしているわけです。したがって、さっき言ったように、犬がしっぽを振るのはこれは当然だけれども、しっぽが犬を振っておるので、今度はダイナマイトを売ってくれないなんて言われたらたいへんなことになるというので、みずからがつくった協同アンホ会社から鉱山業界が買うことをためらって、そうして逡巡しておる。これが実情なんですよ。こういうことは許されると思いますか。まあ軽工業局長にはこれはお聞きしません。それは非常に努力しておられると思いますし、そういうことを排除してきたと思いますけれども、現実に私の感じではそういうことが行なわれておると思うのです。もうすでに小さいいろいろな業界紙に載っているのですよ。これが一〇〇%事実かどうか別にしても、もしそういうことがかりにあったとするならば、これはもう明らかに公正取引ではない。これは不公正です。これはやはり法律違反になると思うのだけれども公取委員長どうですか。
  76. 北島武雄

    北島政府委員 具体的な会社に関する具体的な事実などもございますので、ただいまここで具体的なお答えを決定的に申し上げることはちょっとはばかりますが、ただ、いまおっしゃることをそのまま受け取りまして、そして特定のあるAという会社がそういうような行為を受けているという場合はどうか、こういうお尋ねでございますと、独占禁止法で禁じております不公正な取引の方法の各所に該当するおそれが多分にございます。
  77. 沢田政治

    ○沢田委員 鉱山局長に意見をお伺いするわけですけれども、安い火薬を使って合理化をして、コストを安くして製品を安定的に供給するという義務が、私企業でも鉱山業界にあると思うのです。特に額の多寡は別としても、財投から二十四億ですか探鉱融資をしておるわけですね。そうして中小鉱山に対しては四億円ですか新鉱床探査補助金ですね、それを出しておるわけですね。これは国際競争にうちかつために合理化の必要がある。産業基盤を強化するためにこれは当然だと思うのです。半面においてはそういう合理化を要請されておりながら、半面においては火薬業界とのどういう因縁があるか、因縁をつけられる立場にあるわけですね。火薬のほうは四社で独占しているから、売らないと言われたらたいへんなものだ、ところがやはりそれを断ち切る努力というものは鉱山産業自体としてもあると思うのです。それを昔の義理があるとか、こわいとかということで、そうしてみずからがつくって、みずからの、何と申しますか、中小企業の鉱山がつくっておるアンホを買わないで、火薬業界のものを買うという産業であるならば、私は相当余裕ある産業だと思うのです。そういうものには探査補助金を出さなくてもいいです。これは正直なところを言って、財投の金を回して探鉱資金を出す必要もないと思う。そうした現実がほんとうであるとするならば、私はそう思うのです。あなたはこの点に対してどう思いますか。
  78. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 鉱山の状況でございますが、全般的に言いますと、国際競争力の強化のために大いに努力をしなければならない状況にあると思います。そういう意味で、ただいま御指摘いただきました新鉱床探査補助金それからそのほかいろいろな探鉱融資とか全面的に国が支援しているという状況でございます。  協同アンホ製造株式会社でございますが、月産七十五トン程度まで販売ができるということになりますと安定をするという状況でございます。それで実際に出資をしている各会社も、その線に沿って、自分たちのつくった会社でございますから、そこから買うということも必要だと思います。それから火薬業界との摩擦については、軽工業局長となお打ち合わせをしまして調整をするといいますか、もう少しうまくいくようなことをさらに努力をしたいと思います。直接私のいただきました、こういう状況なら新鉱床探査補助金を切るべきではないか、そういうことに対しましては、山の状況はまだまだ大いに支援すべき状況にあると思います。
  79. 沢田政治

    ○沢田委員 私は切るべきだという主張じゃなく、そういう感じを抱くということですね。自力ではどうしてもできない。リスクも多い。そういうことだから国家的な援護をしなくちゃならぬ、こういうことでやはり国会も政府もやっておるわけです。ところが過去のくされ縁があるから、高い火薬を買わなくちゃならぬということになると、やはり合理化に対する一つの努力というものを疑わざるを得ないのですね。そういうことからそういう印象を受ける、そういう感じを受けるということを私は申し上げたはずです。  そこで軽工業局にさらにお聞きしたいわけでありますけれども、巷間伝えられておるところによると、もちろんこれは所管官庁でありますので、そういう努力は当然だと思うし、私は悪いと思いません。協同アンホと既存の火薬業界とのそういう価格上の問題、市場上の問題、そういう紛争に対して当局に冒険ということはあり得ないと思うのです。当然私は、その意味では善意に解釈しますよ。それで巷間伝えられるところによりますと、第一次、第二次のあっせんをした——一調停かあっせんかわかりませんけれども、まあ何とか双方でいい知恵はないかという意味ではないかと思うのですけれども、そうして二つの案を提示したということは新聞等に載っていますね。これは私はこの真偽のほどはわからぬわけです。どういう調停をしたのか、その中身を、まだ調停段階であるのでここではばかるということならけっこうですが、大体それをここで発表できる程度でけっこうだから、あったらちょっと聞かしてください。
  80. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 昨年、第一次、第二次と、二度、調停の案を両者に提示をしたのでございます。第一次の案におきまして、それを提示する前にそれぞれ個別に協同アンホ側、火薬側の希望を聞きまして、何とか折れ合うのじゃないかというような案を用意したわけでございます。協同アンホは、先ほど言いましたように、従来の流通機構との関連がありますので、既存の流通機構をできるだけ利用するように、あるいは火薬業界に対して株式の半分程度を持たすようにしたらどうか、そういうような案を出したわけでございます。それが、両業界ともそういう点について不満でありましたので、第二次の案におきましては、協同アンホ設立の趣旨に戻って、協同アンホとしては、中小鉱山といいますか、鉱山業界に対して製品を販売するということを基本にしまして、細部についてはさらに両業界調整をするというような案を出したわけであります。二次案も両業界としてはいれるところとならなかったわけでございます。したがいまして、われわれとしましては、当分事態を静観をいたしまして、両業界でさらに直接に話し合いをしてもらって、もう少し問題点を煮詰めてわれわれのほうに出してもらえば、また調停に乗り出したいという気持ちで現在おるわけでございます。
  81. 沢田政治

    ○沢田委員 公取委員長、あなたの意見を求めるのじゃなく、私ちょっと知っていることを一百申したいのは、先ほど言ったように、既存の産業火薬業界が、自分の売り先である鉱山に対して、これを買ったならばこれを売らぬとか、リベートを切るとか、そういう行為に出ておることは、ほぼ私の判断では察知しておるわけです。さらに、いかに不当であるかという事実は、たとえばいま一キロ当たり協同アンホでつくっておる、販売しておるアンホの値段が、私の記憶では七十三円で売っていると思うのです。間違いありませんね。七十三円か四円だと思うのです。ところが今度は既存の火薬メーカー、産業火薬のほうでは、六十五円ですか、それよりも安く売っているわけですね。それはいいでしょう。間に合う値段で安く売るなら、適法な行為で適法な競争経済をするのは、これは資本主義の原則だそうですから、それでいいでしょう。ところが、私の考えでは何といってもこれはダンピングなんですよ。これは明らかに賃金も高いのです、合成化学の労働組合に入っているのですしね。よほど出血のダンピングをしているのではないかと思うのです。それはダンピングである、ない、出血である、ない、これは議論が水かけ論になるでしょう。そこはいいです。ところが、おかしいことには、六十五円なり六十三円なりで既存の火薬業界が全国に売るのであるならば、まだ百歩譲って話がわかりますよ。ところが、協同アンホの市場というものは、秋田県を中心にして岩手県、限られているわけです。協同アンホの市場の範囲だけ安くしておるわけですね。ここに私は非常に意図的なものがあると思うのです。これは事実とするならば——私は事実だとここできめつけませんが、事実だとするならば、これはゆゆしい問題だと思うのです。  それと同時に、アンホには全然問題ないということを私は非常に強調したきらいがあると思うのだけれども、これはやはり保健衛生からいっても全然問題ないわけじゃないのです。問題は明らかにあるのです。といいますのは、露天で採石するとかハッパをかける場合これは問題ありません。ところが、坑内でこれを爆発させた場合には、やはりあとガス——爆発させたあとのガスが、実際の作業員の人体に、健康管理に、どういう影響があるかということ、これはやはり相当問題になっています。そうたいしたことはない、許容限度くらいのものだといわれていますけれども、やはりこのガスというのは非常に問題が大きいのです。特に、新しくないほどこのガスが多く出るわけです。鮮度を必要とされるわけです。つまり、硝安と軽油の混合が物理的に完全に、順当に行なわれておる場合には、完爆した場合にはあとガスというものは既存のダイナマイトとそう差異がないじゃないかといわれておるわけです。ところが鮮度が落ちてくる、そうなると油の部分が蒸発するかまたは浸出するか、こうなると、どっちが逆になった場合でもあとガスが出てくることは常識になっておるわけです。したがって私は、何といっても現場で混合さしたほうが一番いいのじゃないかと思うのです。ところが現場では保安上あぶないというのだけれども、私が先ほど申し上げましたように、そう急に爆発するわけではないのです。ある条件のもとで爆発するわけです。したがって現場でこれを混合するということになるとあぶないじゃないか、人家があるじゃないかといいますけれども、炭鉱とか鉱山とか採石場というのは、うちのそばにあるわけじゃないのです。大げさにいえば、人跡未踏とまでいかぬけれども、大体それに近いところにあるわけです。しかも鉱山、採石場には、係員であってもなくても、国家試験を通って火薬の扱いをする者がたくさんおるのです。これは事故も起こらぬわけです。しかも火薬だという認定をされるならば、今度は輸送賃というものが二倍になるわけです。火薬なんだから、いつどかんといくかわからぬのだから二倍になるわけです。さらに包装も今度は基準の包装をしなければならぬ。それでも高くなる、こういうことになるわけです。したがって、現場で製造した場合はずっと値段が下がってくるわけですよ、これは硝安と軽油をまぜればいいのだから。そうするのがどうも当然じゃないかと思うのだけれども、聞くところによると、そういうような爆薬はだれでもつくれると、革命でも起こったのでは、百姓が庭先でこの爆薬をつくられたのではたいへんである、保安上の問題としてもこれはチェックしなければならぬという議論もあるとかないとか私は聞いておるわけです。そういうような心配は全然無用だと思うのです。つまり、アンホそのものが直接爆発する性能を持っているものならば、確かにそれはいえるでしょう。だれでもそういう爆薬をつくった場合たいへんなことになります。しかしながら、ダイナマイトと雷管がなければ爆発しないのです。しかも、穴の中で、密閉された状態でそれが爆発するわけです。だから私は、そういう保安上の問題はないと思うのです。黒色爆薬を変造するとか、そういうものをするよりも全然できにくい。あるいは完全な爆薬がなければ伝爆、誘爆、導爆しないのだから、私は当然、産業上の利益産業に裨益するという面から考えたならば、山元混合というものは既存の火薬業者の意向がどうあろうが必要ではないかと考えるわけだけれども軽工業局長鉱山局長のこれに対する御見解はいかがですか。
  82. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 アンホの性質につきまして先ほど沢田先生言われまして、まさにそういう非常に安定性を持ったものではございます。ただ雷管等を使用いたします場合はそうでありますが、火災の場合におきましては、一定の時間、熱になりますとこれはやはり爆発を起こすわけでございます。現在にアメリカで起きました事故も、高速道路において、自動車のパンクしたタイヤの過熱によって自動車が火災を起こし、それが原因でアンホが爆発をしたというようなこともございます。そういう点、やはり保安上注意をする必要があると考えます。現場でやるものでありますが、現在製造につきまして保安上、いろいろ技術上の基準をきめております。そういう技術上の基準に適合するものであれば、これは許可をして差しつかえないのではないかというふうに考えております。
  83. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 アンホは新鮮度が必要だということは、先ほど御指摘いただいたとおりでございまして、協同アンホが大館にあるということは、やはり新鮮度という意味で非常なメリットがあると思います。これは中小企業が主でございますが、大手についても保安上の問題を当然考慮すべきであります。そういう点で、十分な能力のあるところには、山元で連合してつくるほうが新鮮度の点からも望ましいと考えます。
  84. 沢田政治

    ○沢田委員 ということだと思うのです。ところが事実はその逆になっておるわけです。これは産業火薬の意向なり圧力と言えば語弊があるけれども、私の考えではそういう関係から、たとえば同和鉱業の赤金鉱山というのが、たしか岩手県じゃないかと思うのですが、ここが九州からわざわざ二倍の運賃をかけて——火薬でないものを火薬だと認定したものだから、高い値段で運賃、包装をかけて九州から岩手県まで持ってきておるわけです。まさにロスなわけです。これは火薬扱いなんだから二倍の運賃を払わざるを得ない。しからば保安、衛生上最も必要な鮮度がどうかというと、鮮度が全然悪いのですよ。これは三カ月も経過しておるわけです。これは何も行政上の問題じゃなく、保健衛生という角度から考えても、森鉱山保安局長、これをどう考えますか。アンホというものが出てきておる、あとガスがあるということ、こういう事実があるということを考えたことがありますか。
  85. 森五郎

    ○森政府委員 アンホにつきましては、先生御指摘のように確かにあとガスという問題がございます。このあとガスは、人体にあまりいい影響を与えないということもございまして、現在、保安法では何らの規定も置いておらないわけでございますが、現在、有害ガス委員会というものを設けまして、これにお医者さんの専門家あるいは労働衛生の研究の専門家等を集めまして、今後アンホのあとガスについてどういう基準で使わせるかということを目下検討中でございます。
  86. 沢田政治

    ○沢田委員 これは特に金属鉱山ばかりではなく、先ほど申し上げましたように一般の土建業——炭鉱の場合も、炭を掘る場合はアンホとかダイナマイトでは爆発するから困りますが、一般の坑道を掘る場合は、これは相当大量に使われるわけです。そういうことだから、一応保健衛生の面、保安の面からも、やはり鉱山保安局はこの問題について若干勉強しておいてほしいと思うのです。  それで私さらに聞きたいのは、どうも引っかかるのは、なぜ現場でやらせぬのかということです。私自身は、どうしてもこれを火薬にするというのはおかしいと思うのです。私も個人的に軽工業局長さんと話したことがあるわけですけれども、アメリカの場合は土地が広大であるから、少しくらいの爆薬は爆薬でないと扱っても、ピストルまで許可して持たしておるのだからというような、国情、風俗、地理的な問題も加味しておると思うのですが、これは何も広いから爆発事故が起こらないとは限らないのです。アメリカで爆発事故があったということですが、これにプロパンにしてもガソリンにしても同じだと思うのです。その置かれる条件と度合いの問題だと思うのです。ですから、すぐにわかに火薬ということにならぬと思う。ですから、この問題についてはひとつ研究問題にしてもらいたいと思うし、私自身の疑問が解明できないのです。しかしながら反面においては、既存の産業をどうするかということも、やっぱり考慮を払わなければならぬと思うわけであります。たとえば、油がいい油がいいとみな油を使ったら、炭鉱の労務者の雇用をどうするかということが出てくる。ですから一挙に全部取りかえるということはできない。雇用政策を考えなければならぬ。そういう面で非常に努力されてこられたと思いますので、公取のほうとも相談し、鉱山局のほうとも相談し、軽工局も入って——私は法律でどうこうという速効を求めているのじゃないのです。事を荒立てようとしているのじゃないのです。現状産業に寄与し、正常な公正取引が行われるというその姿と事実を私は求めているものでありますから、そういう点を十二分に留意してもらいたいと思うのです。私も非常に言いたいことはたくさんあるわけです。どういう書簡を出したとか、念書に基づいてどういう態度をとったとかたくさんの問題があります。あるけれども、やはり六〇%くらいで、あとの四〇%は軽工業局長さん並びに鉱山局長さん、公取の良識を信頼して、一応時間も相当経過したので、私はその点を留保しておきましょう。  そういうことで、私の質問に足りない点は、同僚議員の方々がおりますので質問さしていただくことにして、私の質問は一応これで終わります。
  87. 板川正吾

    ○板川委員 ちょっと関連して伺いますが、この問題の経緯を考えてみますと、まず沢田君からいろいろ事実関係が言われたのですが、経緯を考えてみると、こういうことになるのじゃないかと思うのです。それはアンホという新爆薬が開発された。そうして外国でそれを使い始めた。値段が三分の一とかあるいは五分の一とか非常に安い。危険性も少ない。だからこれは非常に需要業界とすれば好ましい開発である、こういうふうに一つの前提があると思うのです。ところが一方火薬業界は、大体火薬の需要というのは、年間コンスタントにあって変動はしない。ところでその火薬業界では、値段が三分の一か四分の一というような安く、しかも危険性の少ないものが開発されたのでは、非常に業界としては困る。だからこういう便利なものはなるべく業界としては歓迎しない、こういう観点に立っただろう、こう思われるのです。そこで火薬業界としては、なるべくこのアンホなんというものは普及しないで、国民も、需要者もあまり知らないほうがいいと思っていた。ところが鉱山業界では、国際競争力等の関係もあって、合理化しなくちゃいけないからということで、いろいろ調査をしてみたところが、安いものがあるからぜひつくってほしいという希望を持った。しかし希望を持ったが、火薬業界としては困るということでいた。しかし火薬業界があまりその問題と取り組んでくれないから、需要者である鉱山関係者は、せめて自家消費の工場をつくろうじゃないか、自家消費の工場をつくって、せめて自分のものだけでもつくろうじゃないかという気持ちで、自家生産をしよう、こういうふうに考えた。ところが自家生産をされたのでは困るので、まあ火薬業界としては何とかそれをじゃまをしようというので、これは火薬と同じように危険物として扱うべきだということを通産省に働きかけた。通産省も、なるほどカナダとかあるいはアメリカですか、こういう非常に土地が広くて人口の少ないところでは危険物扱いでもいいが、ヨーロッパなりという人口の多いところは、これは危険物じゃなくて、火薬扱いにしているから、日本の条件からいうと、これはヨーロッパ並みに火薬扱いにして、あぶないものだというふうにしたほうがいいだろうということで火薬扱いにするという方針をきめた。これは火薬業界としても新しい開発をする鉱山業者に対して一つのワクをはめるのですから希望しておった。そこでそういうことになった。そしてそれでもいい、しかし生産をするのだということになったら、今度はそれはよそへ売らない、一般販売しないのだという条件をつけた。しかし火薬類取締法は保安法であって、業法じゃない。よそへ売っちゃ悪いとかなんとかという法律はない。しかし、そこで通産省が、よそへ売らないことにするなら許可をしてもいいというような方針を仲へ入ってやった。片方もそれはそれでいいというような気持ちで始めた。ところが実際このアンホが開発されて自家消費され、さらにそれが非常に便利で安くていいということになると困るので、そこで火薬業界としてはいろいろこれに対してじゃまを始めた。それはどういうじゃまを始めたかというと、いま沢田君も言いましたように、大体三つに分けられると思うのです。これは公取、ひとつ聞いてください。一つはアンホを買った山に火薬を売らないという——売らないといってはあるいは語弊がありますから、火薬の納入を辞退をするというこういう方法で火薬業界が圧力を加えておる。そうして第二は、アンホを買った山にはリベートを出さない。第三は、アンホを買って使う山のある地域には自家消費を中心に生産した新会社よりも安い値段でやる、いわゆるダンピングで、差別的な価格競争をいどんでおる。こういうようなことで自家消費を中心として始めた会社に競争なり圧力をかけてこれをつぶそうとしておる、こういうふうな現状ではないか、こう思うのです。通産省としても何とか仲へ入ってひとつ調整をしようという気持ちだったらしいのですが、なかなか調整ができない。そのできない原因はどこにあるのかというと、私は、先ほどもいわれておりまするように、四社で九三%も圧倒的なシェアを占めておる、これがものをいっておるのだと思うのです。今度は火薬の問題ですが、私も火薬の流通については一定の秩序を持つべきだと思うのです。冗談に言うのですが、青森のリンゴのように、ことしは大量にできたから大売りいたします、安売りしますという性質のものじゃない。それから需要も年間大体コンスタントなものを持っておる、こういう場合には私は一定の流通秩序を持たせる必要がある、といって急に減ったり急に多くなったりしても困る、大体同じような需要がその地域にあるならば、これはたとえば再販売価格制度、こういうものに乗せて流通を秋序化する必要があるんじゃないか。ある山には高く売り、ある山には安く売るというようなことはできないような再販売価格的なものをやったらどうか。しかし、これは再販売の法律の条件に——寡占状態ですから、競争力を失うことになりますから問題だと思うのですが、再販売価格制度に乗せるべきでなければ、通産省がこれこそは行政指導でもっと明朗な流通秩序をまず第一にやるべきではないか、私はこう思うのです。  そこで公取にお伺いしたいのですが、質問の整理上、先ほど一点、二点、三点に対して私が申し上げたものは、これは独禁法の不公正取引に該当すると思いますが、その根拠を説明していただきたいと思います。
  88. 北島武雄

    北島政府委員 これは先ほども申し上げましたように具体的な事件でございますので、かりにこういう問題があったらということでお答えいたしますから、どうぞあしからず。しかも会社の名前は、特定の名前でなくてA社ということで、そういう問題があった場合のお答えとしてひとつ御了解願います。  まず第一の段階は、アンホを買った山に火薬の納入を辞退するということを鉱山会社に申し入れる、そういうことをやっておる。これはどうか、こういう問題でございますが、火薬の製造業者が鉱山会社に対しましてただいまのようなことを申し出てやるといたしますと、これは独占禁止法で禁じております不公正な取引方法の一般指定のまず第一号、不当な取引拒絶ということに該当する疑いがございます。  それから第二に、アンホを買った山にリベートを出さないという場合にはどうか。この場合には、同じく不公正な取引方法の第四号、差別対価、「正当な理由がないのに、地域または相手方により差別的な対価をもって、物資、資金その他の経済上の利益を供給し、または供給を受けること。」これに当てはまるかと存じます。  それから第三に、アンホをA社が売っている地域には特に安い価格でもって売って、A社を打倒しようというふうな場合にはどうかということでございますが、この点は、一応まずただいま申し述べました不公正な取引方法の第四号の差別的対価、あるいは場合によっては第五号のダンピング、不当に低い対価をもって売るというようなこと、あるいはまた不当な顧客誘引というようなことで、そういうほうに該当するおそれが多分にございます。
  89. 板川正吾

    ○板川委員 われわれは一応被害者の立場から話を聞いたものですから、この事実がいわれるようなものがあるかどうかは確かめてありません。しかし、私は被害者の訴えを聞いたのですが、いまの情勢からいえば当然あり得るだろうという想定に立っておるわけであります。  そこで通産省に伺いますが、火薬の流通秩序というものが、いま沢田君も言われましたように非常に不明朗ですね。通産省行政指導を得意としておって行政指導に妙を得ておるわけだけれども、この火薬の流通秩序をもう少し明朗にする、ガラス張りにするような必要があるのじゃないかと思うが、行政指導的な方針からどういうような案をお持ちですか、どう考えておりますか。
  90. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 火薬業界のメーカーと卸、小売りとの関係というのは、御承知のように非常に長い伝統的な関係でございまして、先ほど申しましたように、それはそれなりに存在価値のある部面が相当あるわけであります。しかしながら現在のままでいいかと申しますと、決してそうではございません。やはり流通機構の合理化はやらなければならないと思っております。それで、産業構造審議会の化学工業部会の中に産業火薬分科会を設けまして、生産、流通両面につきまして検討をすでに始めておるわけでございます。特に生産面におきましては、現在まですでに一部の工場閉鎖等が行なわれつつございます。完全な国際競争力を持つため、どういう生産体制の合理化をはかり、輸出の振興はいかにあるべきかということを主にしてやっております。流通段階におきましては、現在の卸小売りの実態を把握いたしまして、それをいかに合理化して、より安くいいものを出して需要者に満足を与えるかということを主にして考える。すでに数回会合を開いて作業を進めつつある段階でございます。
  91. 板川正吾

    ○板川委員 火薬を国際競争力という問題から取り上げたり、大いに輸出振興したりするという問題から、これは取り上げて悪いということはないのですが、しかし、いまの状況からいうと、そういう観点よりも国内販売に対する火薬の流通秩序というのを重要視しなくちゃならぬのじゃないですか。いま火薬をどんどんつくって外国へ、特にきなくさいアジア地方に売り出すという必要は起こってないのじゃないか、いやそういう必要はないのじゃないか。そういう観点からながめる必要はない。問題は、国内の流通秩序をもっと明朗にするというところに力点を置かなくちゃならない、こう思うのです。先ほどの説明の中で、私の判断として申し上げたのですが、どうも既存の火薬メーカーが、特に四社が中心となっておる火薬業界というのは、一説によると火薬業界のほうがアンホを先に生産したのだそうですね。昭和三十八年に生産した。しかしこのあとから問題の大館地区における需要者のアンホの新会社がつくられたのですね。一説によると、あとからつくったほうがけんかをしかけたのだから、これは売られたけんかは買って、競争して、どっちが強いかやってみようじゃないかというように聞いております。しかし、それは問題が間違っていますね。一体、通産省はえてして生産者側の立場を考えるのですが、生産者というのは、消費者があって生産があるのですよ。安くて安全なものをつくってくれれば、何も好んで会社をつくって自家生産しようという気持ちにならないと思う。一年ほど前につくっておったけれども、あまり量をつくらないでおる。とにかくそういうものを歓迎しないのですから。あとからできたから、これに戦いをいどんだ。売られたけんかだから競争してとことんまでやろう、こういう思想は、独占の上にあぐらをかいておる思想です。普通の業者ならば、競争の激しい業者なら——火薬に競争が激しいことを好んでいるわけじゃない。普通の業界ならば、自家生産をすれば、うちで何とか希望に沿うようにやりますから、どうかひとつもちはもちやにまかしてください、こう言って、ある程度消費者の意向も聞いた上で生産をまかしてもらうのがあたりまえじゃないですか。これが普通の常識じゃないですか。それをつくらないでおいて、新会社をつくったからといって競争をいどんで、それをつぶしていこう、こういうような態度は、これは独占の上にあぐらをかいた考え方ではないか、こういう感じがするのですが、どうですか。
  92. 伊藤三郎

    ○伊藤政府委員 私も事実関係について確実にどうこうということは把握しておりませんが、先ほど来申し上げましたように、私どもとしては昨年来数次にわたりまして、両業界が円満協調するようにという趣旨で調停をやっておるわけであります。今後もそういう趣旨で、両業界ごとに問題点をさらけ出して話し合いをして、そしてまとまらないものはわれわれ役所のほうで調停を進めるということにいたしまして、何とかこの事態を円満解決するようにというふうに考えておる次第でございます。  それから先ほど輸出の点を申しましたが、少しことば足らずだったので追加して申し上げることをお許し願いたいと思いますが、いま考えておりますのは、産業用の火薬についての輸出でございまして、これは兵器用に使われる可能性はほとんどないものでございます。現在ダイナマイト、カーリツト等の在来型の火薬の稼働率が非常に落ちております。先ほど申しましたように、そういう情勢に対処しまして、一部工場の閉鎖等も行なわれております。今後さらにより合理化を進めまして、工場の集中というようなことが行なわれてくる趨勢にあるわけでございます。そういう意味で、さらに需要を喚起するという点から、産業用の火薬の輸出振興をはかる、それによりまして稼働率をより高めるということをいたします。結局はまた日本の需要者に対して、より安く品物を売るということになるわけであります。そういう意味で輸出振興も火薬産業の振興の一つであるということで考えた次第でございます。
  93. 板川正吾

    ○板川委員 この問題は常識的に見れば安い新爆薬が開発をされた。それが急激に全国へ広まったのじゃ、火薬業界として非常に困る。ですから何年か計画で、火薬業界も主力をそういう安くて安全なものの方向に置いていきます、そのある時間ひとつ話し合って、アンホが全国の鉱山に全部間に合うだけつくるということに急にもいかないでしょう。だからその過渡的なある段階を通じて、徐々にそういう方向に持っていくから、その間ある程度がまんしてくれ、こういうことならば私は話はわかると思うのです。しかし自分はあまり生産をしないで、そして需要者がたまりかねて自家生産して始めたものに、いわば売られたけんかと称して競争をいどむということはどうしても好ましい態度ではない、こう思う。それからまた火薬のような危険物はそうめったやたらに増産して、売りまくって歩くという性質のものではない。しかも国内の需要というものがコンスタントにあるというならば、正常な販売秩序というものをこの際検討すべきじゃないかと思います。  それから鉱山局長に注文しておきますが、私は消費者である需要者、鉱山業者、これがどうしても相手がつくらないというならば、自家生産をするというのはあたりまえだと思う。たとえば小売り価格が高くなれば協同組合をつくって自分たちで仕入れて自分たちで生活を守ろうというのは、生活協同組合というものがそういう面であるように、消費者の立場からあたりまえでしょう。だから、需要業界が、高いから、安いものができておるのに売らないとすれば、自分たちでつくるというのはあたりまえですよ。このことは当然伸ばしてやるべきじゃないかなと思う。これを見殺しにするような対策はとるべきじゃないだろう、しかし、この問題はやはり先ほど言ったように、過渡期的なことも考えて、両者が話し合って円満に解決することが望ましいだろう。しかしこれを、相手に競争をいどまれたからというので大資本、独占との競争にさらしてつぶれてもいいということは、鉱山行政の立場からないと思うのです。そういう点でひとつ公取鉱山局長も事実を調査して、必要があれば適切な手を打ってもらいたいということを要望をいたします。あと田中委員が何か発言したいそうでありますが、私はきょうこれで終わります。公取委員長、ちょっと……。
  94. 北島武雄

    北島政府委員 ただいまのお話のような場合は、これは利害相対立する両当事者の、一般公正な取引方法に該当するかという問題でございますが、そういう問題は多く申告を待って調査をいたします。どしどし申告がございますれば私ども調査いたします。
  95. 板川正吾

    ○板川委員 鉱山局長
  96. 大慈彌嘉久

    ○大慈彌政府委員 なお実情を十分調査しまして、軽工業局長とも相談をしまして対処したいと思います。
  97. 天野公義

    天野委員長 次会は来たる八日火曜日午前十時十五分理事会、午前十時三十分委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後一時十二分散会