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1966-06-07 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年六月七日(火曜日)    午前十時四十分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 小沢 辰男君 理事 藏内 修治君    理事 齋藤 邦吉君 理事 澁谷 直藏君    理事 竹内 黎一君 理事 伊藤よし子君    理事 河野  正君 理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    大坪 保雄君       大橋 武夫君    熊谷 義雄君      小宮山重四郎君    坂村 吉正君       地崎宇三郎君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    松山千惠子君       粟山  秀君    山村新治郎君       淡谷 悠藏君    石橋 政嗣君       大原  亨君    角屋堅次郎君       多賀谷真稔君    滝井 義高君       辻原 弘市君    成田 知巳君       野原  覺君    長谷川 保君       八木 一男君    八木  昇君       山田 耻目君    山本 幸一君       本島百合子君    吉川 兼光君       谷口善太郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         労 働 大 臣 小平 久雄君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府事務官         (人事局長)  増子 正宏君         労働事務官         (大臣官房長) 辻  英雄君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (婦人少年局         長)      高橋 展子君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業訓練局         長)      和田 勝美君  委員外出席者         労働事務官         (職業安定局審         議官)     住  栄作君         専  門  員 安中 忠雄君     ————————————— 六月二日  委員西岡武夫君及び大原亨辞任につき、その  補欠として保科善四郎君及び稻村隆一君が議長  の指名委員に選任された。 同日  委員保科善四郎辞任につき、その補欠として  西岡武夫君が議長指名委員に選任された。 同月三日  委員八木一男辞任につき、その補欠として山  中日露史君が議長指名委員に選任された。 同日  委員山中日露史辞任につき、その補欠として  八木一男君が議長指名委員に選任された。 同月七日  委員足鹿覺君、稻村隆一君、角屋堅次郎君、長  谷川保君及び八木昇辞任につき、その補欠と  して成田知巳君、山本幸一君、多賀谷真稔君、  野原覺君及び山田耻目君議長指名委員に  選任された。 同日  委員賀谷真稔君、成田知巳君、野原覺君、山  田耻目君及び山本幸一辞任につき、その補欠  として角屋堅次郎君、足鹿覺君、長谷川保君、  八木昇君及び大原亨君が議長指名委員に選  任された。————————————— 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件  雇用対策法案内閣提出第一三六号)      ————◇—————
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。成田知巳君。
  3. 成田知巳

    成田委員 私は、日本社会党を代表いたしまして、ILO条約批准に伴います国内関係法取り扱い、特に、いま公務員制度審議会審議中のいわゆるたな上げされました国内法取り扱いを中心にいたしまして、総理の基本的な考え方お尋ねしたいと思います。  質問に入ります前にまず申し上げておきたいのですが、私の質問は至って端的に質問いたしますから、総理の御答弁も簡明直截にお願いしたいと思います。特にあげ足取りに類するような質問はいたしませんから、御安心してひとつ御答弁を願いたいと思います。  まず最初お尋ねしておきたいことは、船田議長あっせんとこれに基づく三党の協定、これによりまして、自民社会民社共同で行ないました関係国内法修正内容政府は忠実かつ厳格に実施する責任があると思うのでありますが、総理の御答弁を伺いたいと思います。
  4. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまお尋ねのように、議長あっせん、これを三党が了承した。したがいまして、三党でその後話し合ったこと、これは当然尊重すべきでございます。
  5. 成田知巳

    成田委員 その後三党で話し合ったことを尊重するというよりは、話し合いに基づきまして政府提案原案修正されましたので、その修正内容を、政府としては、国会の議決を尊重するという意味において、忠実かつ厳格に実施する責任があるのじゃないか、こうお尋ねしたわけです。
  6. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、ILO条約がこの六月十四日に批准の効果が発効いたします。それで、それと同時にと申しますかあるいはその前に国内法を整備しなければならぬということは、しばしば私どもが各党にも申し上げ、また当委員会におきましても、その政府の意向、これは御了承である、かように私は思っております。したがいまして、ただいまのあっせん案に基づいてのその後の申し合わせ、これを尊重していって、ただいま審議会等が開催され、そういう点についての、いわゆるたな上げ部分についての扱い方について答申を求めておるというのがいまの段階でございますから、これらの点におきましては政府としては十分申し合わせを尊重してきている、かように私は思っております。
  7. 成田知巳

    成田委員 明確にしておきたいのですが、申し合わせ申し合わせと言われますが、申し合わせに基づいて法律修正が行なわれたわけですから、その修正内容について政府としては法律を尊重しなければいかぬじゃないか、これを聞いているのですから、端的にお答えいただきたいと思います。
  8. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この船田議長あっせん案、これを尊重しているという状況でございます。
  9. 成田知巳

    成田委員 これは経過があるわけですね。そのあっせん案が出まして、三党がこれを了承しまして、そのあっせん案に基づき、三党の話し合いによって政府提案原案修正されたわけです。そしてそれが法律になっていま施行されているわけです。その法律総理としては尊重し責任を持って実施する義務があるじゃないか、こういうことをお尋ねしているのです。非常に簡単なことでそんなに含みはありませんから、御安心して御答弁を願いたいと思います。
  10. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私、ただいま成田君の質問を解しかねていたのですが、御承知のように法律修正されてただいま公布されている、そういう状況でございますから、そこでただいま問題になりますのは、その修正されたいわゆるたな上げ部分、これをいかに扱うかということになっておると、かように考えております。
  11. 成田知巳

    成田委員 たな上げ分の将来の取り扱いについてはこれから質問したいと思いますが、現在生きておる法律国会院議をもって決定したその内容については、総理としては責任を持って実施する義務があるのじゃないか、こういうことをお尋ねしているのです。当然のことだと思うのです。
  12. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 それは当然のことでございます。
  13. 成田知巳

    成田委員 当然のことを聞いているのですから、別に含みはありませんから、御安心してひとつ。  そこで具体的にお尋ねいたしますが、船田あっせん案、その要点は、いま総理お持ちでありますが、「一、条約及び関連法案は本会議において審議を尽くした上で議決する。一、関連法案中の問題点については、公務員制度審議会において審議するものとする。一、関連法案中の問題点に関する条項は、公務員制度審議会答申を得るまでその施行延期し、審議会答申はこれを尊重して所要改正を行なうものとする。」このあっせんに基づきまして三党の共同修正が行なわれたわけであります。その内容総理も大体御承知と思いますが、すなわち、多くの問題点政府案は含んでおる、その問題点を含んでおるところのたとえば在籍専従規定職員団体の構成、職員団体の組織及び交渉、こういう諸規定については政令で定める日から施行する。いわゆるたな上げをされたわけなのです。問題点が多いからたな上げされたわけです。したがって、これらの規定法律の定めるとおり——法律にはそうなっておりますから、審議会答申を得た上で、しかも所要改正を加えた後、初めて政令施行日を定めるべきであります。これは提案理由説明にはっきり書いてありますね。このことは、逆からいえば、審議会答申がないのに政令施行することは法律違反になるということなんです。これはあまりにも明白な事実です。これも明白な事実でありますが、念のために総理の御答弁を伺いたい。
  14. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま法律違反だと言われるけれども法律にはその点は規定がないように私は考えている。だから法律違反ではない。つまり、船田議長あっせん案を三党がのんだ、了承した、こういう点からその扱い方についてはいろいろの論議があると、かように私は思います。いろいろの論議だ、かように考えらるべき筋のものじゃないかと。
  15. 成田知巳

    成田委員 私が法律違反と申しましたのは、たとえば自民社会民社、三党共同修正の三党で話し合ってきめたことですよ。共同修正提案理由の中にどう書いてあるか。これは民社栗山礼行君が提案理由説明をした。これは三党で案文まで練ってつくった文章です。それには「政府提案条約批准に伴う国内法改正法案は、内容的に多くの問題点が存在していることにかんがみ、この際それらの問題点については、第三者機関たる公務員制度審議会で慎重に御審議願い、その答申を得るまでの間、それらの諸条項につきましては、その施行延期するとともに、答申が行なわれた場合は、これを尊重して所要改正を行なうことといたしたのであります。」とあり、その具体的措置として問題点のある諸規定政令にゆだねたわけなのです。したがって、この共同修正というのは、答申を得るということ、答申があった場合に所要改正をやる、これが共同修正精神なんです。このことは当然じゃないか、こういうことをお尋ねしているわけです。
  16. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまその答申精神と三党話し合い精神、こういうことを言われますが、ここにいままでのいきさつを考えてみますると、三党の間に重大なる食い違いがあるのじゃないかと私は率直に言わざるを得ない。これはその後しばしば説明をされておる機会に、あるいは国会討論等におきまして、成田君御自身あるいは三木幹事長等が話し合っているところに非常な食い違いがある、かように思います。その審議会を設けるまでは、これは大体三党とも一致した。その審議会を設けてその審議会に諮問したその際の政府説明事項、これはどういう扱い方をするか答申してくださいということを言っているのと、同時に六月十四日にILO条約が発効する、それまでには国内法を整備したい、どうかそれに間に合うように御審議を願いたい、こういうことを強く要望しておる。その点がやや理解されておらない、かように私は思っておりますが、いずれにいたしましてもただいま審議会審議している問題ですから、この審議会答申、これを私どもは心から期待しております。その段階においてのとかくの議論だ、かように思いますから、この審議会審議に非常な悪影響を与えないようにこの際におきましても私は十分慎んで答弁するつもりでございますし、またどうかお聞きになるほうもその点で十分審議会圧力を加えることのないようにひとつお願いしておきます。
  17. 成田知巳

    成田委員 質問のほうで私は圧力を加えようとは思いません。むしろ総理答弁審議会圧力を加えることのないように特にお願いしたいと思いますが、いま三党の書記長幹事長経過お話がありましたが、この経過はこうなっているのです。三党書記長幹事長会談をやりましたときに、山本国対委員長それから自民党国対委員長が出られまして、民社からも書記長国対委員長が出られた。そのときに三木さんがこういう発言をされたことは事実です。公務員制度審議会審議期間は約一年とし、その間に答申を得るようにしたい。一年内に答申ができない場合には政府案どおり施行するものと解釈する、こう言われた。これに対して民社のほうは、そういう場合でも三党一致で円満に処置したい、これに対し、社会党のほうからは、この議長あっせん案精神を生かし答申を成功させるよう前向きに努力することにはやぶさかでない、こういうことを言っておるのです。そうして当時の新聞にこう書いてありますよ。施行延期のめどについてははっきりした統一見解は打ち出されず、微妙な含みを残したまま三党協力して事態を円満に収拾することに意見が一致した。ああいう非常な事態でございましたが、お互いに事態を円満に解決したいということで、その延期の時期については微妙なものがあったということですね。その後、御承知のようにあっせん案は、この問題は本会議審議を尽くして決定する、これが第一項目ですね。それに基づきまして三党の関係者の間で、提案理由説明についてもあるいは討論内容についてもいろいろ論議したわけです。最初自民党さんのほうの、たとえば澁谷さんの討論のときは三木さんと同じような意味討論内容を持ってきた。これに対して社会党民社党は、そうじゃないじゃないかということで修正した事実もあるのです。その結果澁谷さんの討論というのはこうなっていますよ。「一年後の八十七号条約効力発生と同時に、今回の修正により施行延期された各条項効力を発生するように措置されることは、わが自由民主党あげての強い要望であります。私は、やがて設置される公務員制度審議会が、公正な立場に立って一年後の本条約発効までに所要措置を完了し、各法律が完全に施行されることを心から期待してやまないものであります。」要望であり期待なんです。したがって一年内に結論が出なければ政令でやるということはどこにもないわけなんです。これをまず総理としてはお考え願いたいと思うのです。それから澁谷さんの討論と同じように、最後総理は、審議会でいま審議中だ、答申が十四日までに出ることを期待すると言われた。確かにこれは期待なんですね。  そこで総理お尋ねするのですが、期待どおり答申が出なかった場合どうか。総理期待されておる。しかし期待どおり答申が出ない。その場合総理政府責任者としてどうされるか。このことを特に私がお尋ねするのは、政府自民党は、こういうことを私たち新聞紙上その他で聞くのです。答申のあるなしにかかわらず、条約発効日である六月十四日までに政令でたな上げ条項原案どおり実施する方針だ。答申のあるなしにかかわらず政令で実施するということは、答申がなくとも政令で実施するということなんです。これは全く提案理由の三党共同修正精神を踏みにじるものだ。まず答申があることを前提にし、答申があったならば所要改正を加える、これが共同修正の三党一致した決定なんですから、答申がないときに政令施行するということは院議を無視するものだと思う。行政権立法権に優位する結果になると思う。こういうことは絶対許されないと思いますが、総理の御答弁を伺いたい。
  18. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答申があるなしにかかわらず云々、これは責任のある者が申しましたか。たとえば総理がさような言動をしたとか、あるいは安井長官がそういう話をしたとか、こういうのならこれはたいへんな問題だと思います。ただいま御指摘になりましたように、申し合わせ精神にも反することであろうし、国会における答弁とも食い違う、かように私は思います。先ほど来申し上げておりますように、審議会、これでひとつ十分御審議を願おう、こういうことで、これは三党とも了承したことだ。そうしてその答申期待している。それを待っておる。それ以外に私ども考え方はございません。これは一にその答申を待っておる、そういう状況であります。だから十分われわれの期待に沿うように、これは社会党の方もILO条約が六月十四日に発効することは御承知なんで、これはぜひそれまでに国内法も整備したいというお気持ちは私どもと同じだと思う。だからどうしても審議会においてその期待する答申が出てくる、これを社会党期待しておられるのだと思いますし、政府もそのとおりであります。そうしてただいまのように、それが出なかったらどうするのか、こういうような仮定の御質問でありますが、その質問は私はいまの段階でなさることは、これはとんでもない話だ、かように思いますし、それは審議会に対する一部の不信があってこそ初めてさような設問ができるのではないか、かように思います。私は審議会をいま信頼しております。
  19. 成田知巳

    成田委員 答申のあるなしにかかわらず政令施行するということは、政府並びに自民党責任者は言ったことはありません、こう言われたことは、そういう事実は総理としてお認めにならないということなんですね。やはりあくまでも答申の出ることを期待されておる、こういうように理解して間違いないと思いますが、それでよろしゅうございますね。  そこで、私たち答申が早く出ることを期待しておりますが、もともとこれがたな上げされたということはILO条約違反、あるいは違反のおそれがある条項だから、これをたな上げし、審議会検討しているわけです。このことは労働基本権の問題にも関連した問題なんです。そういう意味でなかなか結論が出ないという状況なんです。そこで、いま政府はそういうことはやらないと言われましたが、審議会答申が出ないのに政令でたな上げ分施行するということは、すなわち条約違反法律施行する、こういうことになるわけですから、この点についてはひとつ十分審議会における検討をやって、明快なその結論を出す必要があると私は考えます。  そこで、総理は、審議会での結論が出ない場合どうするか、答申が出ない場合どうするかという私の質問は、仮定質問だと言われるのですが、これは吉田さんがよく言われた、仮定質問には答えられないという——吉田学校の優等生の佐藤さん、またその仮定質問には答えられないと言うのですが、私は仮定じゃないと思うのですよ。たとえば、論理的にひとつ考えてみたいのですが、政府が諮問されました審議会諮問事項ですね、これに対して審議会が処理する方法というのは、論理的に考えますと——総務長官、あんまり耳打ちしないでくださいよ。審議会諮問事項を処理するやり方として、純論理的に考えた場合に、大体私は四つあると思うのです。その一つは、一括答申する場合だと思うのです。その一つは、分離答申をする場合だと思うのです。その一つは、全然答申が行なわれない場合。最後一つは、委員長意見とか、公益委員見解とか、あるいは各委員意見を併記するという、いわゆる中間報告の形で行なわれる。大体この四つに私は尽きるのじゃないかと思うのです。総理、それ以外にケースが考えられますか。大体四つですね。考えられたら、あとで教えてください。  そこで、一括答申の場合は、所要改正を行なった上政令施行すべきである。共同提案にもありますように、所要改正を行なった上政令施行すべきだ、これは当然のことだと思いますが、どうでしょうか。
  20. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま審議会で、どういうような扱い方をされるか、いろいろ検討をされております。政府でも、事務当局ではいろいろ考えておるかわかりませんが、実は私はこの審議会におまかせしておりますから、審議形式等については、これは審議会でおきめになったらいい、かように思っておるのです。ただ一に答申を待っているのがいまの状況でございます。したがって、その形式がどういうことでなければならぬとかいうようには私は考えておりません。先ほど冒頭に申しましたのも、何か形式をきめて、そうして審議会にお願いすることは、やはり審議会圧力を加えることになるんじゃないか、かようにも私は実は心配しておるのです。審議会はどこまでも権威を持って、自由に御審議される、そういうことであってほしいと思います。  それで審議会はいいのですが、ただ一言、いまの成田君のお尋ねと、前提にやや私は意見があります。それは、いま出した法律案を三党で修正をして、その実施をおくらしておる、これはILO条約にも違反するおそれがあるんだ、こういうようなお話がありましたが、ILO条約批准するという政府におきましては、これはILO条約に抵触するような法律は絶対に出しておりません。これはいろいろ社会党と私どもとの間に議論相違というか、意見相違がございますが、ただ、いま言われるようにはっきり条約違反だ、こういってきめてかかられることについては私は異存がありますから、その点は了承はしておらない。御了承いただきたい。
  21. 成田知巳

    成田委員 提案理由説明の中に、内容的に多くの問題点がある。これは条約違反または条約違反のおそれがあるということなんですよ。条約との関係でこれはたな上げしたのですから、内容的に問題があるのは、それ以外のことはないと思うのです。  そこで総理、いま条約違反のおそれはないと、いかにも専門家のごとく言われましたが、そこでひとつ、私、総理お尋ねしますが、八十七号条約を締結、批准したのは、結社の自由と団結権を保障するためである、これを阻害するような国内法は許されない、これは当然のことだと思うのです。そうだとすれば、施行をたな上げされました地方公務員法五十三条——五十三条は、登録を受けた職員団体法人格を取得し、未登録職員団体法人格はないことになっている。法人格のある登録された職員団体当局交渉する、ある意味において積極的な権限を持っておる。未登録職員団体はそれがないという、そこに差別されているんですね。このことはILO条約第七条で、法人格取得に際して労働者結社の自由と団結権を阻害するような条件のものをつけてはいけない、そういう性質の条件をつけてはいけないとはっきり書いてある。したがって、登録未登録によって法人格があるかないかがきまり、労働条件交渉上差別があるということは、これは当然ILO条約違反じゃないですか。いま、専門家のような御発言がありましたから、総理からひとつ、そうじゃないときはそうじゃないという御答弁を願いたい。その理由をひとつ明らかにしていただきます。
  22. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政府提案をいたします際には、一般に違反するような条項は考えない、私はかような確信を持ってのお話をしております。法律論でございますから、それは事務当局から説明させます。   〔発言する者多し〕
  23. 田中正巳

    田中委員長 静粛に願います。
  24. 成田知巳

    成田委員 それは総理信念なんですね。しかし、政府が出したものが、この共同提案提案理由にあるように、多くの問題点を含んでいるということになっている。政府はそう考えておったんだが、国会審議で、三党とも、多くの問題点を含んでいるということを明らかにした。だから、あなたの信念だけで問題は解決できないですね。その点、この具体的な法律違反の問題についていま一点指摘しましたが、後ほど専門家のほうから、政府にこの点を明らかにしたいと思いますが、ここで私、総理にさらにお尋ねしたいんですが、どうも政府は早く、六月十四日までに政令施行したいというような気持ちがおありのように考えるのでありますが、こういうことが一部で論議されているらしいんですね。たな上げ部分を十四日に一括施行する。問題があるから、将来審議会検討して必要あらば改正する。これを暫定施行というように言っておるようでありますが、これを政府及び使用者側の委員の方がお考えになっているようです。まず十四日に一括施行、そして将来問題があれば検討して改正しよう。このような取り扱いは私は全くのごまかしだと思うんですよ、もしそれが事実だとすれば。答申の名に値しないと思う。なぜならば、暫定施行と言いますけれども、たとえば期限づき時限立法、これはまあ暫定立法。何年何月から何年何月まで施行しますという時限立法、これはまあ暫定立法でしょう。しかしながら、法律施行する際、将来検討して、変更する必要があればこれを変更いたしますというような、いわば条件づきの法律を出すということは、法律の安全性の意味から言ってもこれは許されないと思うのですね。これが一つ。  それからもう一つ審議会答申を求めたのは、先ほど申しましたように、たな上げ部分ILO条約違反する、あるいは違反のおそれがたくさんあるからですね。それに対し、答申ですっきりした結論を出さないで、とりあえずたな上げ部分を一括施行し、後に問題あれば修正するということは、みずから条約違反を犯すおそれあることを多分に認識しながら、そういう危険な国内法を実施するということなんです。これは責任ある政府としてとるべきじゃないと思う。この二つの理由から言っても、まず一括施行して、将来検討の上改正するというようなやり方は、佐藤内閣ではおやりになるはずはない、こう考えるのですが、いかがでございましょうか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とにかくいま答申を待っているんですから、一括施行するのだ、そうして気に食わなかったら改正するんだ、こうまで論理を飛躍して進めていかれることはないんじゃないでしょうか。審議会答申を待っておるのがいまの状況であります。一般的に、原則論的に申して、なるほど法律を出します以上、その法律が変わらない、こういうところで法律を出す、これは当然でありますが、しかしその後の実情の変化では、これは法律だって、十分考えて実情に合うように是正していくのは当然でありますから、将来直すことを云々、この問題に限って、予定されているのだ、こう言われるところに問題があるのです。これは一般の法律、制度というものをわれわれが扱っていく上において、いつも検討しているその検討を放棄するものではない、かように御理解をいただきたい。  それで、まずどうしても理解していただきたいのは、必ず一括施行する、この施行に無理があるから、必ずあとで修正しなければならぬのだ、こういうような論理を進めていかれることは、この事件ではないのではないか。ただいま審議会答申を待っているこの状況で、実施の問題については何ら議論しておらない、政府は考えておらない、ただいまそういう点については触れておらない、答弁しておらない、かように御理解をいただきたいのであります。
  26. 山本幸一

    山本(幸)委員 関連して聞きたいのですけれども、先ほど書記長質問した点をもう一ぺん確認してもらいたい。  あなたの信念では、抵触していないから、国内法を出したのだとおっしゃる。ところが三党間で話し合いをした結果、いわゆる問題点について、これを審議会に回そうということになったわけです。これは客観的には抵触する疑義が多分にある、したがって、問題点ということばを使って回しているのです。あなたの信念は別にして、客観的にはやはり疑義がある、こういうことは認められますね。
  27. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 客観的には認める——この認めるのは、社会党の方が議論しておられる、反対しておられる、そういう事実は認めます。私どもは、これはILOに違反しないという信念のもとで出した。そうして御審議を願っておる。自民党の諸君は、当然政府は間違いなしにりっぱな法律案を出した、こういうことを言っておる。社会党のほうは、どうもこれはおそれがある、場合によったら、もっときつい、それは抵触する、こういうような断定をしておられる。そこが意見食い違いで、これは両者の間に意見が食い違っている、かように私は思いますので、そういうのがあとで政治的にいろいろ扱い方がきめられた、それが議長あっせんではないか、かように私は思います。
  28. 山本幸一

    山本(幸)委員 それはちょっとおかしいと思うのです。なるほどあなたの意見はそうかもしらぬけれども、倉石委員会からの経過を見ても、倉石君自体が、これは疑義があると言って、ああいう結論を出したわけですから、その後に三党間で話し合いをして、自民党も疑義があることを認めて、そこで審議会に回すことになったのでしょう。私はそういう客観性を言っているのです。あなたの意見を言っているのじゃありません。その点どうなんですか。
  29. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この議論をして、どちらが正しいとか、どちらが間違っておるとか、こういうことになると、これはうま味のないというか、政治的なものの扱い方をされないことになる。したがって、政府一つ信念を持って提案したのだ、こういうことを私は事実として申し上げた。  また、ただいま山本君は、社会党意見としては、これは疑義がある、こういうことを言っておられるので、そういう事実だけは私どもは承認する。そういう議論が正しいとかどうかではなくて、そういう事実のあることだけは、私承認しているのだから、それでいいんじゃないですか。
  30. 成田知巳

    成田委員 いまの山本委員質問に対する総理答弁は、答弁になっていないですよ。総理はそういう信念を持って法案を出されたかもわかりませんが、審議の結果、三党一致ですよ。自民党も入って、多くの問題点があるからたな上げした。しかもその点は具体的にILOが指摘しているところなんです。それを、いや私は正しいと信じますということは、裸の王様と同じですよ。自分がそう思っているだけなんで、自民党の中にも正直な子供が出てくることを、あなたは裸ですよと指摘する議員のおられることを希望します。  そこで、総理は、六月十四日、十四日と言われるが、この点について五月二十八日にILOの原口副理事から総評あてに次のような電報が来ております。これはILOのジェンクス氏の意見として出ている。ジェンクス氏は、御承知のように、ILO事務局の次長です。ジェンクス氏がこういうことを伝えている。「六月十四日を中心に国内で労使の激突を避けるようさらに長期に継続審議して、双方が合意に達するため努力されたい。」こういう電報が来ております。それから国際自由労連のベクー書記長総理あてに文書をよこしたはずだと思うのですが、その文書はこうなっておりますよ。これは総理お読みになったと思いますが、国際自由労連がベター書記長名で佐藤首相に、ILO国内法取り扱いにあたって慎重を期するよう要望する書簡を送った。その内容は「国際自由労連は日本の公務員制度審議会審議に重大な関心を抱いている。日本政府ILO条約発効後の法制上の混乱を避けるとの名目で一方的に国内法施行を強行するようなことがあれば、これはドライヤー報告の趣旨に反するばかりでなく、日本の労使関係近代化をはばむ結果になることをおそれる。国際自由労連は日本の労使関係近代化のため労使双方が合意に達するまで忍耐強く努力を続けるよう期待する。」一つ総理あての国際自由労連の書簡です。一方は原口副理事から総評に来たのですが、私たちの聞いたところによりますと、政府にも青木大使からジェンクス氏の意見というものは伝わっているはずです。その青木大使から政府に来たジェンクス氏の意見というものを明らかにしていただきたいと思う。
  31. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま読み上げられたのは、私実は知りません。そこでいま安井君からいろいろ耳打ちされて聞いていたんですが、原口君の云々は、政府は知らない。これは全然入手しておりません。労働大臣もさように申しております。それから青木大使のは、来ているということであります。その前の、原口君のほうは、ないということであります。
  32. 成田知巳

    成田委員 青木大使の政府あての報告、これはこういうことです。ジェンクス氏が、青木大使と原口副理事を呼んで、二人の前で発表した意見です。その内容は原口氏から総評に来たんです。青木大使から政府に来た内容というものを、ここで発表してください。
  33. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 労働大臣からお答えさせます。
  34. 小平久雄

    ○小平国務大臣 青木大使からの情報によりますと、ジェンクス事務局次長は、公務員制度審議会について、この問題は全く日本の国内問題であり、ILOがとやかく言う筋合いではないが、公共部門の労働組合と政府との間で忍耐強く話し合いを積み重ねることによって解決さるべきものであり、八十七号条約批准しただけですべてが解決するものではない、本条約が発効する際、理由はともあれ、政府と労組が激しく争うがごときことはいかにも残念に思われる旨、青木大使に話があった、こういうことを言ってきておるわけであります。
  35. 成田知巳

    成田委員 はっきりわかりましたね。政府は六月十四日にこだわってはいかぬということなんです。内政干政はしたくない、しかしあくまで忍耐強く話し合って労使関係の近代化のために努力すべきである。これがILO当局意見なんです。特にそれと同じようなことを、こういう報告もありますよ。いま言われたことと大体同趣旨なんですが、条約発効を非常に問題にされますが、条約の発効というのは労使関係の正常化のための出発点である、そういうようなことが書いてあります。出発点であり、条約発効に基づいて国内の労使関係のための努力が引き続き行なわれることを期待する。そして近代化の努力が行なわれている限り、国内法がたとえ整備されておらなくとも、ILO条約精神には違反しないと書いてある。このことは、公務員制度審議会で努力が続けられている限り、六月十四日の条約発効までに国内法が整備されていなくともILOの精神違反しないということを言っている。むしろ拙速を避けろ、忍耐強く労使話し合えということを言っている。私はこれは当然のことだと思う。  こういう意味におきまして、私が、以上質問した結論を申し上げ質問を終わりたいと思うのでありますが、社会党の主張というのは、たな上げ部分は、労働基本権ですね、労働基本権をどのように理解するかによって意見相違が出てくるわけですよ。この労働基本権の理解のしかたによって処理されるべきものだ。したがって、この基本問題を解決せずに、たな上げ部分を一括施行するなんということは、共同修正精神に反するだけでなしに、本末転倒したやり方なんです。したがって、十四日までに完全な意見の一致を見ない場合、どうしてもまとまらないという場合には、ILO条約に直接抵触している、このことが明らかな職員団体登録制度、こういうものについて、この二つの問題については、私聞くところによりますと、使用者側と労働者側のある程度の意見の歩み寄りもできておると聞いております。したがって、これだけを分離して施行することもやむを得ないと思います。その際に職員団体の構成は、職員が主たる構成員であればいい。登録制度は、これは廃止すべきだ。消防職員の団結権を認める。これを最低の、私たち条件にして分離実施することもやむを得ない、こう考えております。もし政府が以上の当然のことを無視しまして、審議会意見の対立があるまま一方的に政令で一括施行する、こういうようなことがありましたならば、これは国会の意思決定をじゅうりんするものだと思う。行政権国会の権威をじゅうりんするものだ、立法府の上に行政府がくることだと思う。このことは国会の権威の上からも、議会制民主主義の基本に触れる問題ですから、もし、そのようなことがあれば、国会の正常な運営は期待できないと思う。その責任はかかって政府にあるということを申し上げまして、総理の善処を強く要望して質問を終わりたいと思います。(拍手)
  36. 田中正巳

  37. 野原覺

    野原(覺)委員 八十七号条約批准に伴うたな上げ問題の処理に関するわが成田書記長質問に対する総理大臣の答弁は、私、拝聴しておりまして、きわめてあいまいもことしておるのであります。そこで私は重ねてこれを明確にしておきたいと思う。私ども実は政府筋からいろいろ報道がなされておることをいろいろな機会に聞かされておるので、この問題を取り上げたのでございまするから、あいまいにして実はこの質疑を打ち切るわけにはいかぬのであります。  最初総理大臣にお聞きしたいのでありますが、あなたは憲法で非常な権力を与えられておりますけれども、いかに総理大臣といえども国会院議というものをじゅうりんすることはできないと私は思う。これはいかがですか。
  38. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 院議は尊重してまいります。
  39. 野原覺

    野原(覺)委員 じゃ、院議を尊重すると言われるならば、たな上げ問題の処理に関する院議は何ですか。たな上げ問題の処理についての院議は、あなたは何だと御認識ですか、お聞きしたい。
  40. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 審議会を設置して、十分審議願うということであります。先ほど来答申を待っておるというのはそれであります。
  41. 野原覺

    野原(覺)委員 審議会を設置して十分に審議を願う。同時にその審議会答申があるまでは政令を出すことはいたしませんということじゃございませんか。そうでないならば、そうでないという証拠を出してください。あなたの認識の根拠になるものをお示し願わなければならない。答申があるまでは政令を出さない。それは院議には入らないのですか。いかがですか。
  42. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 だから先ほど来審議会答申期待しておると言っておる。だから、いま、出てくる前にいろんな議論をすることはお互いに差し控えましょうということを申しておる。私どもはこの審議会が自由濶達に審議されて、そうして答申を出してくる。これをただいま待っておるわけです。
  43. 野原覺

    野原(覺)委員 ごまかしてはいけないです。私は最も大事な核心をお尋ねしておる。あなたはその核心からはずそうはずそうと苦慮なされておる。ごまかしてはいけない。答申があるまでは政令を出さないというこの院議はどうなるのですか。これは院議じゃないのかと聞いておるのです。審議会答申があるまでは、政令は出さないというのは院議であるのかないのか。じゃ、それから聞きましょう。
  44. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、野原君がお聞きになるのは、ちょっと筋道違いじゃないか。三党で申し合わした、これは確かですね。しかし、これは三党の申し合わせであって、院議だというのには、少しまだ形式的に不十分なものがあるのではないかと思っております。だから、その申し合わせ、それはただいま私が理解しておるように、この精神を無視する考えはございませんよ。しかし、それを直ちに院議だと言われることは、これはちょっと飛躍がありはしないか、かように私は思います。
  45. 野原覺

    野原(覺)委員 たいへんな、御認識ですね。船田議長あっせんに基づいて三党が公約したことは事実です。その公約に基づいて、この公約というものは本会議で取り扱おうじゃないか、こういうことになって、本会議で取り扱って決議をしたのです。民社党の栗山礼行君が趣旨説明をして、それが院の決議になったのです。答申があるまでは政令を出さないということが院の決議になったのですよ。なっていないというならなっていないという証拠を出しなさい。なったのですよ。先ほど成田書記長が読み上げたように、栗山君の提案趣旨の説明というものは、自社両党、民社党、この三党で実は相談をして、これは慎重にやらないと、この段階になってまたこれが決裂をしちゃいかないというので、栗山礼行君の提案になったのです。この提案は、三党の公約をそのまま提案の中に盛り込む。つまり、審議会にかけ、審議会答申があるまでは政令は出さないことを共同提案として栗山君が趣旨説明をやって、こういうことが決議されたのです。だから、答申があるまでは政令を出さないということは院議じゃございませんか。院議でないのですか。これが院議でないならばないでよろしい。院議ではないのですか。
  46. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも私はこの議長あっせん案が、そのまま院議として決定された、かように私は思っておりません。しかし、私どもは十分その精神は尊重する。その考え方でございますけれども、いわゆる院議だと言われると、やはり形式が大事じゃないか、かように思っております。この点では、むしろ山本君あたりも、そのことばかりやっていらっしゃるからよく御承知ではないかと思っております。
  47. 山本幸一

    山本(幸)委員 いま、私の名前を特にあげられたのですが、野原君が言っているように、ほかの案件と違って、特にこの問題は三党が議長あっせん了承している。それに端を発して法律が出たわけですよ。その法律の趣旨説明が明らかになっておるというのです。しかも、この法律の趣旨説明はきわめて簡潔のものです。この趣旨説明を見れば、それに準拠して初めて院議が決定されておるわけですから、これを否定することは許されませんよ。あなたも国対委員長をやったことがあるでしょう。少し国会の運営ぐらい知りなさい。何を言っておるか。
  48. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は別にこれを否定する、かように申しておりません。この精神は尊重してまいりますが、院議だと言われれると私は異議がある、かように申しておる。これは、そういう議論で本筋とはだいぶはずれるようですから、本筋の話をやりまして、——これを私が無視していくような考えはございませんから、これは十分尊重していく、在来からの考え方でございます。
  49. 野原覺

    野原(覺)委員 三党が共同して、国会共同して、一人の反対もなく決議したものが院議でないというのですか、あなたは。栗山君の趣旨説明というものは三党共同の趣旨説明ということになっておる。そうしてこれは満場異議なく承認したのだ。この趣旨説明に基づいて各党は討論をやったのですよ。これは院議ではございませんか。つまり、船田あっせんの三カ条というものがそのまま院議になったのだ。それを院議でないというならば、私どもはもう何をか言わん。あなたは院議じゅうりんどころではない。院議自体をあなたは認めまいとする非常にファッショ的なものの考え方なんだ。船田議長の三カ条はそのまま院議になったのではないのですか。いかがですか。
  50. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は先ほど来言っておる議長あっせん案についていろいろな議論をしておる。私は、議長あっせん案そのままが院議として決定されたものだとは思いません。ただいま言われるように、その提案理由がみんな院議として決定されたのだ、こういうことだと、これは私、別に反論するわけではございませんが、栗山礼行君はこういうことも言っておる。「本件に関する諸問題を円満かつ公正に解決し、条約発効に支障を来たさざるよう各党の御協力を特に切望申し上げる次第であります。」これも院議ですか。
  51. 野原覺

    野原(覺)委員 もちろん院議ですよ。あなたはことばをごまかされちゃいけませんよ。私は総理大臣の院議に対するものの考え方——実は大事な問題をたくさんお尋ねしようと思って用意しておりますけれども、これは政治の基本なんだ。院の決議に対する総理考え方というものは単にILO条約だけの問題ではないと私は感じましたから、しつこくお尋ねをいたしますが、船田議長あっせんは三カ条からできておる。条約及び関連国内法案は本会議審議を尽くした上で議決する、これが一つ。そして二つ目には、公務員制度審議会審議するものとする、三つ目には、答申を得るまではその施行延期する、これが船田さんのあっせんなのであります。そこで、このあっせんをそのまま本会議に移したのです。それは第一条によって、条約及び関連国内法が本会議審議を尽くした上で議決する、その中身は、この三カ条のあっせんをそのまま移そうではないかというので、三党の共同修正として先ほど書記長が読み上げたものが出されたのだ。「第一に、政府提案条約批准に伴う国内法改正法案は、内容的に多くの問題点が存在していることにかんがみ、」——この点は自民党も認めたのですよ。三党の共同修正ですよ。これは民社党の修正提案じゃないよ、総理大臣。「内容的に多くの問題点が存在していることにかんがみ、この際それらの問題点については、第三者機関たる公務員制度審議会で慎重に御審議願い、」そして「答申が行なわれた場合は、これを尊重して所要改正を行なうことといたしたのであります。」これは三党の共同修正、三党の提案なんです。そこでこの三党の提案が満場一致決議されたのです。満場一致決議されて、澁谷君の討論もわが党の山田君の討論も、賛成討論に立ったわけです。この栗山君の三党修正というものについてはだれ一人異議なく承認をしておる。しからば、答申があるまで政令を出さないということは院議じゃないか。これは院議じゃないか。あなたはその点をじゅうりんしようとしているのですよ。成田書記長に対する答弁をあいまいにしておることは——院議を尊重されるならば明確に答えなさい。答申があるまでは政令は出しません、答申を待ちます、その答申は尊重しますと明確に答えるべきだ。それをあなたは答えることができないのですか。できなければあなたは院議じゅうりんなんだ。院議じゅうりんなんだ(発言する者あり)何を言っている。大事な問題じゃないか。院議じゅうりんなんだ。
  52. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は、院議は尊重します。これははっきり申します。院議は尊重します。ただいま、先ほど来議論しております船田議長あっせん案、これは三党の申し合わせだ。これははっきりしている。その申し合わせ、これはただいま議論になっている。これは三党御了承だと私は思っております。だから、いま言われる院議、これは私が無視する、そんなことはしません。だからこそ、法律はできたけれども施行期日はちゃんと法律で定める。施行はしておりません。これは各党の申し合わせもあるからです。さらにまた、審議会を設けて、そうして先ほど来議論しておりますように、その審議答申を待っておる。これも申し合わせに基づいてやっておることであります。私は、全然院議に反している、かように思っておりません。
  53. 山本幸一

    山本(幸)委員 総理、それじゃあなたは時間を急いでいる様子ですから、同情して簡潔に一言だけ申し上げますが、あなたは要するに、趣旨説明院議ではない、こうおっしゃってみえる。そこで野原君は、この種に関しては議長あっせんそのものがいわゆる修正になったのだ、したがって院議である、こういう議論をしておられるわけです。この問題は追ってまた後日やりましょう。やりましょうが、ここであなたに認めてもらいたいのは、確認してもらいたいのは、少なくとも議長あっせんが基礎になってこの法律が出たんだということと、それからこの法律は三党共同修正であり、三党共同提案であり、趣旨説明内容も、それまた三党を代表するものである、これだけは認めますか。
  54. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いま山本君の言われるとおりでございます。その点では私も誤解はしておりません。先ほど来ややことばじりをとったようなことで議論したことはまことに遺憾でしたから、本筋でいま山木君の言われる三点、これは私も同様の考え方を持っております。
  55. 野原覺

    野原(覺)委員 私は単なることばじりで申し上げておるのじゃございませんで、船田議長あっせんは、これはそのまま共同修正をした中身でございます。したがって、そのこと、院議ということばが強いとあなたはお考えのようでございますが、院で決議されたら院議なんです、これは総理も御承知のとおり。院で承認されたのなら院議でございます。その院議の中の内容には、答申があるまでは政令を出さないということも入っておるわけでございます。この点は総理大臣が議会主義者であり、そうして院議を尊重されるということでございまするから、私はこの船田議長あっせんの最も核心をなしておる公務員制度審議会答申を得るまでは政令を出さない、このことは厳に尊重されなければならぬと思います。これはあなたの今後の動き方を私どもは注視しておきたいと思うのであります。  それから、先ほどあなたは、政府提案した法案には条約違反したものはないと断言をされたのです。そうして、しかもその断言に続いて、それは社会党諸君たちが言うのだろう、こういう暴言も吐かれたのです。なぜ私が暴言かと申しますならば、これは私どもが言っておるわけじゃないのです。どなたかその発言の中にもあったように、ILOのドライヤーさんが昨年の八月三十一日に東京とジュネーブで日本の国内法についての勧告、報告を発表されたのです。それは七百ページにのぼる膨大なものになっておる。その中で二二二七項、ほんの一例です、実は二二二七項というだけに項目が数千項あるわけです。これは百や二百じゃございません。日本の国内法のILO八十七号条約に撞着、矛盾がある点を指摘しておるのは無数にあるわけでございますが、先ほど議論になった個所だけ申し上げます。「登録団体の範囲、その交渉権の程度の面に関して、登録団体と非登録団体間の差別撤廃という問題に、現在継続中の討議のなかで、さらに多くの考慮が払われるべきであると勧告する。」日本の国内法では登録団体と非登録団体は差別をいたしております。非登録団体は事実上の団体、したがって法的団体としての交渉権は与えられません。同時にまた法人格の取得ができません。法人格の取得ができませんから、たとえば自治労あるいは総評あるいは日教組、こういうものは事実上の団体でございますから法人になれない、法人になれないから財産の所有のときに非常に不都合をこれは来たすのである。交渉においても相手方はこれは法的な団体と認めないわけでございますから、いつでも相手方の御都合によって交渉を拒否することができる、このことは八十七号条約の二条、三条、四条、それぞれの条文に照らして、これは明らかに違反をしておる、だからして十分これは慎重に審議してもらわなければならぬ。八月三十一日でございますから、国内法が通過をして、ドライヤーさんは日本の公務員制度審議会審議されるということを聞いてタイムリーにこれを発表されておる。これは登録だけの問題ではありません。管理職の範囲にしてもそうなんです。管理職の範囲は政府がつとめて拡大しよう拡大しよう、課長補佐という名前をつけることによっておまえは管理職だ、おまえは組合に入っちゃいけないのだというので、五年間に七千五百名の全逓の従業員を組合からはずした。そこで全逓労働組合が憤慨をしてILOに提訴した。その結果どうなりました。ILOは勧告を日本政府に出した結果、さすがの日本の政府も公労法四条一項ただし書き、地公労法の五条一項ただし書きというのは削除したんでございますよ、これは。これは確かに改正をしたんです。ところが公労法関係では、その後管理職の面は労働組合法二条、民間労働者に準ずるようにいたしましたけれども、ふしぎなことに今度は公務員組合にまたそれを移してきたんです。したがって、この点を同じくドライヤーさんは指摘いたしております。これは違反だ。そこで、先ほど成田書記長が申し上げましたように、ジェンクス副事務局長が実は意見を出した。ジェンクス副事務局長の意見は、これは非常に私も重要なことだと思います。ジェンクスさんが意見を出しておる。手紙の中身をもう一度申し上げますと、総理大臣、聞いてください。「六月十四日は八十七号条約効力発生の日であって、」条約効力発生の日だから国内法発効の日ではございません、気をつけてください。ILOでは言っておる。「八十七号条約効力を発生したならば、その条約違反のないように国内法を整備してもらわなければ困ります。正常な労使関係出発の日が六月十四日でございますから、公務員制度審議会は慎重な努力を十分に続けてください。あわてることは要りません」と原口君に言っておる。「あわてることは要りません、十分にやってください。公務員制度審議会は六月十四日を中心に、私が聞くところでは国内で労使の激突があるように聞きますけれども、そのようなことは避けて、」その次「さらに長期に継続審議をして、双方が合意に達するための努力をされるように望みます。」いいですか、先ほど労働大臣が続み上げたのは、青木大使に対する口頭のことを、ここで口頭で述べられましたから、意を尽くしておりませんけれども、原口君に対する手紙の中身、これは翻訳したものですから、ごまかしじゃない。このことは、日本の速記録はいつでもILOに持ち込まれるおそれがありますから、私はいいかげんなことは言いません。だからして、青木大使に対してもこの種のことを言っておるはずです。したがって、六月十四日がきたからといって、八十七号条約違反しておる個所をドライヤーが昨年の八月三十一日、七百ページにのぼる膨大な書類を出して注意をしておるのでございますから、少なくとも政令施行の権限を持っておる政府におかれては、そのドライヤーの報告くらいは慎重に検討されてしかるべきだ。そうしないと、八十七号は比准をした、国内法違反をしておる、こういうことになって、また国際的に日本は大恥をかかなければならぬようになる、私どもはこの点を心配する。だからして、これで総理は退席されるようでございますから、退席されてけっこうでございますが、あなたは私のいま申したことをよくひとつ考えて、十分に慎重に対処されるようにあなたに要望いたしておきます。どうぞ退席してください。  総理大臣に尋ねたいことがたくさんあったのでございますが、残念ながら時間の関係もありますから、総務長官並びに労働大臣にお尋ねをしたいと思う。  これから質問することは、まず総務長官です。あなたは公務員制度審議会に何を諮問したのです。読み上げてください。
  56. 安井謙

    安井国務大臣 お答えいたします。  総理大臣佐藤榮作より公務員制度審議会会長あてに諮問といたしまして、「国家公務員、地方公務員及び公共企業体の職員の労働関係の基本に関する事項について貴会の意見を求める。ILO関係法律国会修正により施行延期された規定については、早急に貴会の答申を得たい。」こう諮問いたしました。
  57. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと、諮問の内容は二つあるわけです。官公労働者労働基本権のあり方が一つ、もう一つ国会院議によって——よく記憶しておいてくださいよ。院議によってきまったあのたな上げ部分、この処理、この二つである。この二つが総理府設置法の第十四条の三による公務員制度審議会設置の趣旨でもあるし、諮問の中身でもある。そういうことであるならば、ILOから指摘されておるように、日本の国内法については実はたな上げ部分だけではないのです、慎重に検討してみると。しかしながら、少なくとも国会できまったたな上げ部分というものは、労働基本権のあり方についての審議を十分にした上でこのたな上げ部分を処理していくという行き方が、問題を将来に残さないのではないかと私は思うのです。間違っておりますか、総務長官。
  58. 安井謙

    安井国務大臣 いわゆるたな上げ部分と基本的な労使の関係というものには、これは密接に関係があることは事実でございます。
  59. 野原覺

    野原(覺)委員 基本権問題についての審議を尽くさないで、たな上げだけやったのでは、これは砂上の楼閣、根底を忘れた議論になるじゃないか。たな上げ部分というのは非常に問題点があるのです。だから官公労働者はどうなければならぬか、民間労働者と比べて、なお団結権保持の国際水準から見てどうあるべきであるかということを、まず議論してかからないと、たな上げ問題はほんとういえば手がつかぬ。それは、そのくらい日本の国内法というものは不十分です。非常によくできていないからです。この点をあなたはどう考えるかと聞いておる。関連があるかとは聞いていない。労働基本権論議が先じゃないか。いやしくもあなたは公務員法関係政府の窓口でしょう。総理大臣と違ってあなたは専門家なんだ。はっきりしたことを言ってください。それでなくてもよろしいならそれでもいいから……。
  60. 安井謙

    安井国務大臣 公務員あるいは公労関係の労働の基本に関する問題は、法律関係社会的な客観的な動きによっていろいろ変わってもいくことでございますし、将来のいろいろな問題としてあり方を基本的に検討していただくということは、審議会にお願いをしておる一つの問題でございます。しかしながら同時に、このILO条約発効に伴ういわゆるたな上げ部分については、おのずから日限が切られておるわけでございますから、この部分についてはひとつ早急な御答申を願いたい、これを審議会では了承されまして、目下その全体についての審議をいただいておるわけでございます。
  61. 野原覺

    野原(覺)委員 ILO八十七号条約というのは一年後に効力が発生する特殊な規則が、八十七号条約の十五条に書かれておるわけです。どういうわけで一年後に効力発生と、他の条約に見られないこのような規則をつくったのでございましょうか。
  62. 安井謙

    安井国務大臣 これは、ILO条約批准いたしましてからその効力発生は一年後、こういうふうにきまっておるわけでございます。
  63. 野原覺

    野原(覺)委員 そういう特別な、一年後といたした理由はどこにあるとあなたは考えるかと聞いておる。
  64. 安井謙

    安井国務大臣 これは条文によってきまっておるはずでございます。
  65. 野原覺

    野原(覺)委員 あなたはそれでILOの担当大臣ですか。だから、少なくとも八十七号条約についてかってな放談は避けなさい。こういう特別な規則を設けたのは、条約違反国内法については検討整備しなければならぬという期間を与えたのです、条約だけ批准してもだめだよと。日本がILO八十七号条約批准するということは、団結権の保障をILOに約束するということだ。去年の六月十四日をもって、登録した日をもって、団結権を保障いたしますとILOに約束をしたのだ。約束した限りは、団結権制限の立法があったらこれを廃止しなければならぬ国際的な義務が生じている。それからまた団結権を保障しなければならぬ積極的な国際的義務が生じておる。しかるに何ですか。去年登録してからここまで一年間、あなたは何をやってきたのか。公務員制度審議会が設けられたからその審議会審議をしてもらうということかもしれませんけれども、そもそも公務員制度審議会の発足がおくれたのは、政府公益委員を御都合のいい者をきめないと負けるというのでおくれたのではございませんか。労働者側、とあなた方は言いたいでしょう。しかし労働者は自分の権利に関する問題でございますから、公益委員についても、彼らはやはり自分の権利を守ってくれるであろう人々を推薦する。これは当然のことです。ほんとうにあなた方が労働者の権利を守らねばならぬというならば、たとえば公務員制度審議会の発足にしたってあのような干渉をしないですみやかに発足させるべきであった。こういうように、条約関係した諸規定が完全に整備されるところの努力をしなければならぬにもかかわらず、その努力がなされていないことを、私はきわめて遺憾に思うのです。そうして六月十四が間近に迫りますと、政府原案政令を出すのだ。それでなお公務員制度審議会審議していただいて、その答申が出たら、それに基づいて政令を直したらいいのだから、とにかく六月十四日には政令を出すのだ、こういうことでございますけれども、そのような条約違反した、矛盾抵触した政令国内法が出されたら、その間の組合側の損害をどうしてあなたは弁償しますか。八十七号を批准していないならばよろしい。八十七号を批准して、国際的に団結権を保障しますと約束しておきながら、問題点のある、自民党すらも問題点があることを認めて三党共同修正に持ち込んだ、ドライヤーは七百ページの膨大な指摘をした、そういう問題点があるにもかかわらず、六月十四日が来たから直ちにこれを国内法として政令施行することは、これは厳に避けなければなりません。八十七号条約批准精神からいって、もしそのようなことをやれば、日本の国際的義務不履行という責めを負わされることになると思う。御所見を聞きたい。
  66. 安井謙

    安井国務大臣 最初審議会の構成でございますが、これは御承知のとおり二十人の審議委員、その中で労使から六名ずつ、第三者の公益側から八名。この人選をめぐりましていろいろと御議論があったことは事実でございます。しかし政府といたしましては、これは政府の任命事項でございますから、一方的にやるのも法律上必ずしも不都合じゃないと思いますが、できる限り各方面の御意見を伺いまして、そして円満な形であの構成をやったわけでございます。したがいまして、法律上は一応前国会で成立はいたしております。しかし、その施行の期日を別に政令で定めろ、これをきめられておりますいわゆるたな上げ部分につきましては、そういう趣旨からいま御検討を急いでいただいておるわけでありまして、審議会におきましてもいま非常に熱心な検討をやっておられまして、十四日に間に合うようにできるだけ早く出そうということで御検討願っておるというふうに私どもは理解しております。
  67. 野原覺

    野原(覺)委員 先ほどは総理大臣にだけ質問したので、総務長官の意見も聞きたいと思いますが、六月十四日までに労、使、公益三者の合体した意思表示に基づく答申が出ない場合は、あなたはどうしますか。
  68. 安井謙

    安井国務大臣 審議会の御答申は、審議会御自身でいろいろと形式や方法、出し方をおきめになるわけでございますので、その内容まで、いま私ども立ち入ってああこうというふうには考えない。ただ答申の出方を待つ、こういうふうなつもりでおります。
  69. 野原覺

    野原(覺)委員 答申が出なかったらどうするかということは、少なくとも政令を出すという政府が考えていなければならぬことだ。そういういいかげんなごまかしであなたは答弁をそらしてはいけませんよ。どういたしますか。答申が出なかったらどうするかと聞いているんだ。あなたは総務長官で、あなたは公務員の担当大臣だ。どうするんだ。
  70. 安井謙

    安井国務大臣 政府といたしましては、御承知のとおりこの六月十四日に条約が発効いたして動き出すわけでございます。当然行政の責任者といたしましては、これに伴う国内法も同時に発効されなければいろいろ支障を来たすということで、でき得る限りぜひこれは一緒に発足できるようにありたい、これは終始変わらない政府考え方でございます。しかしながらこの施行の部分につきましては審議会へお預けをして、政令できめる部分はお預けをして、その審議答申を待ってその処置をきめるということになっておるのでございまするから、私どもはいま鋭意この答申を急いでいただいておりまして、この答申の出た結果によりまして具体的な措置はきめる、こういうふうな態度をずっととっておるわけでありまして、いま出なかった場合というようなことを予想するのは、いささか審議会に対して不謹慎であろうかと私自身は思いますので、そういう予想はいたしておりません。これはその段階においてはっきりものはきめる、これは私、新聞社にいたしましてもその他のいろいろなところでの答弁その他につきましても同じようなことを答弁してまいっております。
  71. 野原覺

    野原(覺)委員 次にお聞きしたいことは、先ほど私が読み上げたジェンクス副事務局長の、六月十四日は条約発効の日であって国内発効の日ではない、したがって日本の国内法はドライヤー報告が指摘いたしておるようにたくさんの問題点があるんだから、十分に慎重にひとつ検討してもらいたい、この要望についてはあなたはどう考えますか。
  72. 安井謙

    安井国務大臣 私のほうへ入っております青木大使からの手紙によりますと、そういった十四日過ぎてもよろしいんだとかなんとかといったような問題には触れてないように、先ほど労働大臣も読まれましたとおり承知をいたしております。これは国内問題で、ILO発効とともにこれは起きてくる問題だが、国内問題だから慎重にひとつ国内できめてほしい、こういうことだけのように思っております。
  73. 野原覺

    野原(覺)委員 労働大臣、もう一度ひとつ読み上げてもらいたい。
  74. 小平久雄

    ○小平国務大臣 青木大使からの情報の要旨は次のとおりでございます。「今般ジェンクスと会食した際、公務員制度審議会の動向につき質問があったので、本使より累次貴信の情報に基づき、」というのは、これは外務大臣あてでしたからまあ外務省からの情報でしょう。「情報に基づき、しかるべく説明したるところ、ジェンクスは、」以下、ジェンクスのことばとして伝えておるところでございます。「この問題は全く日本の国内問題であり、ILOがとやかく言う筋合いはないが、自分がすでに何度も貴使にお話しいたしたごとく、公共部門の労働組合と政府との間で忍耐強く話し合いを積み重ねることによって解決されるべきものであり、八十七号条約批准しただけですべてが解決するものではない。したがって条約が発効する際、理由はともあれ政府と労組が激しく争うがごときことはいかにも残念に思われる。」との趣旨を述べた。ジェンクスがそう述べたと、こういうことです。
  75. 野原覺

    野原(覺)委員 非常に明快ですね。これは先ほどの労働組合側の原口代表の書簡と大体この手紙の中身の精神は共通しておると思う。第一点は、ただいま労働大臣が読み上げたように、国内法は国内問題である、だからとやかくは言わないけれども、しかし八十七号条約というものはこれは国際問題だ、ILO事務局としては八十七号条約に矛盾しないような国内法でなければならぬということを暗にこれは示唆しておるのです。これはいま読み上げたことで暗に示唆しておる。第二点は、忍耐強く話し合ってくれ、この問題は政府意見もあるだろう、あるいは労働組合側の意見もあるだろう、忍耐強く話し合えということは、六月十四日になったらしゃにむに国内法政府原案で出せということじゃないじゃないか。総務長官、あなたは、このILO八十七号条約責任者から日本政府に、青木大使を通じて日本政府に要請してきたこのことをどう考えますか。忍耐強く話し合えということをどう考えますか。六月十四日にやれとは言ってない。
  76. 安井謙

    安井国務大臣 先ほど労働大臣お読みになったように、この問題は全く日本の国内問題であり、ILOがとやかく言う筋合いはないという前提のもとにものを言っておられるのでございまして、これはやはり国内問題としてきめるべきものだとまず第一に思っております。  それから条約発効批准後一年ということは条約できまっておりますし、この一年がけしからぬという議論が出れば別でございますが、これはすでにきまっておることでございますので、この御議論は別にして、われわれはそれを施行しなければならぬ。そうしますと、条約は六月十四日に当然発効してくるわけでございます。そうなればそれに伴う国内条件、いろんな国内法関係の問題、これも同時に整備されて発効されることが行政府責任者としてはどうしても好ましい、またそうでないといろいろと困った支障があるということを十分考えております。しかしながら、これはいま申し上げましたように、審議会答申の結果によって具体的な措置はきめるというのでございまするから、その答申をいま鋭意待っておるので、答申がないのに出すといったようなことをいまここで明言した覚えはございません。(「明快だ」と呼ぶ者あり)
  77. 野原覺

    野原(覺)委員 明快でない。あなたはいまはしなくもあなたの正体を暴露したんです。一年がきまっておるとは何ですか。一年したならば政令を出すということはどこにきまっておるんですか。あなたの答弁——いや、速記を見たらよろしいでしょう。一年がきまっておるというのはどこを言うんです。
  78. 安井謙

    安井国務大臣 一年たったら政令を出すということがきまっておるとは一言も申しません。条約の発効が批准の一年後に起こる、したがいまして国内法というものも本来いえば車の両輪のように、両方で同時発足されるものが本来のたてまえであるというふうには考えておりますが、しかし国内法についてはいま審議会へ御答申を願っておるのであります。その答申の出た段階におきまして具体的な政令の扱いはきめる、こういうふうに考えております。
  79. 野原覺

    野原(覺)委員 具体的な政令の扱いは答申の出た段階できめる、ところが答申が出ない場合にどうするかということはまだきまっていない、答申が出なかった場合にどうするかということはまだきまっていない、こう理解してよろしいのか。
  80. 安井謙

    安井国務大臣 私ども答申が出るであろうということを強く期待もし、またその要望もしておりますので、おそらく出るであろう。その出た段階においてものを正式にきめたいということで、あるいは出ないんじゃないかといったような想定のもとに、ただいま何にもきめておりません。
  81. 野原覺

    野原(覺)委員 出るであろうということは出ないこともあるだろうということです。何を言っているか。出るであろうということは出ないこともあるだろう、だから出ないときにはどうするかということくらいは考えがあるでしょう。考えがあるでしょう。
  82. 安井謙

    安井国務大臣 いま待っておるのでありまして、十四日までに出ないということが確定いたしますればその段階において政府としては判断をきめる、こういうつもりでおります。
  83. 野原覺

    野原(覺)委員 その段階においては忍耐強く話し合えという趣旨に沿って話し合うこともある、そう理解してよろしいか。話し合いを続けることもある……。
  84. 安井謙

    安井国務大臣 まず第一に私ども答申が出ることを最大限にいま期待しておりますので、これが出ない場合というようなものを想定したりいろいろなことを考えるということ自身が審議会の促進に支障を来たすことにもなりはすまいか、そういう考えもありますので、その問題につきましては、しばらく私どものほうでは答弁を控えさしていただきたいと存じます。
  85. 野原覺

    野原(覺)委員 私は、先ほど登録団体と非登録団体の差別があることをドライヤーの報告が指摘しておるという点を読み上げたのですが、この点についてあなたはどう考えるか。
  86. 安井謙

    安井国務大臣 登録あるいは法人化の問題につきましては、これは手続上の問題として御承知のとおりの規定法律上いたしておるわけでございます。しかしILO八十七号条約内容というものは、登録、非登録にかかわらず、団体を結成する、あるいは団体交渉をする権利、あるいは団体活動をやる規約をきめる権利、これは登録団体であろうと非登録団体であろうと、すべて認めておるわけでございまして、それを積極的に権利制限をやっておるものとは私ども考えておらぬわけでございます。
  87. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは何のために登録団体と非登録団体を差別しておるのです。地方公務員法の条文によって説明してください。何のために差別をしている。あなたは何ら差別のないような答弁をしておりますけれども、差別はほんとうにないのですか。ないならば、それを御説明願いたい。
  88. 安井謙

    安井国務大臣 たとえば登録をされた団体は、当局側が交渉をする義務を負う、そういうふうにむしろ使用者側の義務規定を加重されております。しかし登録されていない団体だからといって当局との交渉ができないという規定はどこにもございません。またその団体自身ですべての組合の議決をし、活動をするというもの自身に別に制限を積極的に設けておるものじゃないと私どもは思っております。
  89. 野原覺

    野原(覺)委員 登録団体には交渉義務が使用者側にある、事実上の団体には義務規定がない、大きな差別じゃないか。これは重大な団結権の侵害になりますよ。あなたは事実上の団体をつくって何ら侵害にならぬと言いますけれども、片一方は義務、片一方は義務でないということは団結権行使の上について影響が大きいですよ。これは大きな差別です。法人格だってそうでしょう。登録団体は法人格を持つことができる、単一組織にしても、連合体にしても。ところが登録団体でないところのものは法人格を持つことができないとすれば、財産所有に困難を生ずるし、それから税法その他の面で非常な不利益を受ける。差別じゃございませんか。こういったような差別というものは、明らかに八十七号条約に抵触するじゃありませんか。八十七号条約にそのようなことをするなと書いてあるじゃありませんか。それでもなお政府改正原案にはこれが残っておったんです。だから、あなた方が単独強行採決したときに、これはたいへんなことだというので社会党が硬化したわけです。民社も硬化したわけです。むちゃをするな、八十七号条約に明らかに抵触する国内法を通して、またこれは国際的な舞台で日本がたいへんな批判を受けることにもなるし、日本の労働者は、国際的には八十七号に批准をしたけれども国内法では痛めつけられておるといったような、そういう日本の労働者としては承知できない状態に持っていかれる、そういうむちゃは許せないというのでたな上げしたのですよ、登録問題は。交渉法人格登録機関——登録機関もみなそうです。登録機関にしても、みな書いてある。たとえば法人格はこういうふうに書いてある。この法律が、労働組合全国中央組織が法人格を享受し得るような方法で修正されるよう配慮されるべきことを勧告する。勧告しておるんですよ。その配慮がない。たとえば自治労が会館をつくる、ところが自治労が法人格を持てないから困る、そういうような差別は八十七号に違反だよ、だからこれは勧告する、こういうことを書いてある。あるいは登録機関にしても、団体登録機能を地方公共団体の長から公平委員会に移管することは評価するが、これは地方公共団体の長が登録機関であったのです、人事委員会のないところでは。ところが今度の改正原案では、公平委員会にこれを移管しておる。ところが公平委員会と人事委員会というのは地方公共団体の長が任命するのです。そういう意味では、完全にこれは登録団体の機能も公正な機関として発動することはできないじゃないか、こういうことがまた注意されておる。しかも裁判所への出訴の対象であるような登録機関その他の担当機関による登録制度の確立を示唆しておる。公平委員会や人事委員会ではだめだ、これでは使用者の組合に対する干渉、つまり団結権の侵害になるわけです。出訴権にしてもそうです。裁判所に提訴できないものであるとするならば、裁判所への出訴の規定を設けるべきであることを指摘する。——これは国内法にない。八十七号の国際的な責任機関がこういう指摘をやっているんですよ。団交事項にはどう書いてあるか。管理運営を実際的にどこに区別の線を引くべきかについては、管理運営事項は、これは団交の対象ではない、団交事項ではないというのが今度の改正原案にあるわけです。従来にもあった。ところが何もかも管理運営でもう交渉ができないような状態に追い込まれた。たとえば全林野は野外で仕事をいたしますから、野外の詰所の窓ガラスが破れて、雪が降り込んで寒くて困るから、窓ガラスをはめてくれと組合が交渉したところが、窓ガラスは施設だ、施設は管理運営事項だといって突っぱねたんですよ。驚くべき事実があるんですよ。だから、こういうように日本の政府は管理運営事項だといって、労働組合の権利を非常に押えつけてきているが、実際的にどこに管理運営とはその線を引くのか。たとえば、電電公社が自動の電話機を据えつける、そうなると人間が余るからというので首を切られる、首を切られるということは、組合にとっては大問題だから、合理化というものは考えてくれ、われわれの首も考えた上で合理化もやれと交渉すると、何を言っているのか、自動電話機は管理運営事項だ、こう言って突っぱねたとすれば、これはどういうことになりますか。このことが指摘されているんですよ。交渉議題が使用者の決定に属する問題であるとの理由で団交のワクから除却しようとすることは実際問題として効果を失う。それを政府に注意している。団交手続、交渉方法、手続に関するこれらの諸規定の価値について深刻な疑問をいだく。これは、たとえば日時、場所、人員といろいろこまかな規定改正法にございましたね。これは深刻な疑問をいだく。規定された交渉方法と手続をさらに弾力性のあるものにするよう考慮が払わるべきであると勧告する。この問題は、公務員制度審議会が継続的に検討していくことが賢明であろう問題の一つである、こう書いてある。それから在籍専従についても書いてある。中央交渉は何と書いてあるか。中央交渉を選ぶならば、交渉の結果生ずる決定が地方当局を拘束するよう適切な措置が必要である云々と書いて、ILOでは中央交渉を認めているのです。ところがさっき言ったように、この中央交渉の問題は、登録の点で交渉義務づけられないために、そういう差別をされているために非常に難渋を来たす場合を生ずるではございませんか。しかもこの団結権で注意しなければならぬのは消防職員だ。国家公務員である消防職員には団結権を今度改正法で認めた。そうしながら地方の消防職員、監獄職員には団結権を認めないわけです。認めない理由は、これらは警察に準ずるという政府見解です。ところがILO八十七号条約では、第九条に軍隊、警察は団結権を与えなくてもよろしい、こう書いてあります。ところがオランダでは軍隊すら警察権を持っておりますけれども、これは例外だ。憲章の十九条に何と書いてあるかというと、ILOのこの条文は最低基準だ、拡張解釈はまかりならぬと書いてある。そうならば、軍隊、警察とは、あくまでも軍隊としての職務、警察としての職務を実質的に行なうものという狭い意味に解釈しなければならぬ。ところが日本の場合には、これを広義に解釈して、ILO憲章十九条違反を犯しておるわけです。  時間の関係もございまするから、いずれまたあらためてこの中身については論議をいたしまするけれども、こういうようにして、公務員制度審議会がこれらの問題を審議していただいておると私も期待し、信じたいのでございますが、もしこういう点の審議がドライヤー報告書あるいは八十七号条約に照らして、十分な審議を尽くさないままもしくは答申が出ない、そういう事態にこの指摘されているようなものが国内法として生き返ってくるということは、わが社会党は断じて承服いたしません。そのような八十七号条約侵犯の、しかも院議じゅうりんのむちゃをするならば、社会党は重大な決意をもって対処いたします。このことを申し上げて私の質問を終わります。
  90. 田中正巳

    田中委員長 この際、暫時休憩いたします。    午後零時二十三分休憩      ————◇—————    午後五時一分開議
  91. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出雇用対策法案を議題とし、審査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。滝井義高君。
  92. 滝井義高

    ○滝井委員 雇用対策法案について質問をいたすわけですが、先日国会正常化の話を論説委員たちとやりましたら、最近の国会というのはなまけている。大ざっぱな質問はするけれども法案の逐条的な審議なんていうのはほとんどやっていないのじゃないかというおしかりを受けた。いや、そうではない、私はやっているのですということを言ったわけです。ほとんど私、法案の逐条全部勉強してくるわけですが、なかなか逐条をやるというひまがないわけです。そこで、きょうは逆に逐条から先にやって、そして総論は、大事なところはあとに入っていく、というのは、こういうニューフェースの法案というのは、やはりこれはいろいろこの法案を取り扱って今後行政をやろうという人たちが逐条解説というものがないと、一体どういう考え方政府はこの法案を出したかということがなかなかわかりかねるわけです。幸い労働省は法案を提出する場合に、各条文の要旨と同時に、その説明をしてくださっておるわけです。そこで、できるだけ省いて、問題になりそうな点だけをずっと御質問をさしていただきたいと思うのです。  まず第一に、第一条の目的についてはたくさん問題があるのですが、これは省略いたしましてじかに三条に入っていきます。  この三条の一項の五号ですが、「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること。」ということがあるわけです。そこで、現在私たちが雇用対策を出そうとする場合においては、当然こういう不安定雇用というものを安定雇用に持っていく、すなわち第一条の目的でそれが完全雇用の姿を達成するということなんです。完全雇用というのは、それは不安定な雇用ではないわけです。少なくともこれは、ここの場合における一条の完全雇用というのは安定雇用なんです。そこで、政府が「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を」やるという場合には、一体当面日本における不安定な雇用というものはどういうところに不安定の雇用があるかということの認識がないと、この三条の一項の五号というものはうまく働かないわけです。  そこでお互いにこういう法案審議をして、これから現実のものとするためには、一体いま不安定雇用というものはどういうものが現実にあるかということなんです。これをまず政府の認識をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  93. 有馬元治

    ○有馬政府委員 不安定な雇用状態にある労働者の実態というのはいろいろございますが、代表的なものは臨時工、社外工あるいは季節出かせぎ労働者、こういった層に不安定な雇用状態が見られるわけでございまして、この実態を把握するということがまずその大前提になると考えております。
  94. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、そのほかに不安定なものがあるはずですね。たとえば産業によって非常に不安定な産業があるわけですね。一番いい例が石炭です。やがて石炭にとってかわる石油だって原子力発電が行なわれることになると、不安定なものになってくるわけです。これは石油を採取し尽くしてしまえば、あとはもぬけのからになっちゃうわけですから、そういうものについて一体どう考えておるのか。
  95. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘のような石炭産業については数年前からエネルギー革命によりましてこの合理化が進められておりますが、これもまさにそういった不安定雇用といいますか、合理化による人員整理をしなければならぬという意味では、雇用が全体として安定していないということはいえるかと思いますが、これらに対しましては特別の措置を別途講じておる、こういう状態に相なっておるわけでございます。
  96. 滝井義高

    ○滝井委員 そういう石炭、たとえば繊維だって同じですね、いま斜陽化の傾向にあるわけですね。こういうものについて別途に講ずると言うけれども、この雇用対策法というものはすべてをカバーしている法律だと思うのですよ。石炭の労働者だって、あるいは繊維の労働者だって、この法律によって基本というものはカバーすることになるわけです。そうしますと、いまのような、あなた方が一般的に言う臨時工とか、社外工とか、季節労務者というものに対する対策と、石炭のような斜陽化している産業に対する対策とは、これは違うのですか、同じなんですか、この法案のたてまえからいうと……。
  97. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この対策法の目的から申しまして、いまのようなケースは基本対策においてはこの雇用対策法の中に包含されるわけでございますが、個別的な特殊な対策についてはそれぞれの特別措置によって講じていく。今後起こり得る繊維、特に合繊部門等の合理化がかりに起こったとした場合に、この対策法で基本的には対処していく。具体的に不十分な点はあるいは将来起こるかもわかりませんが、原則的にはこの雇用対策法で対処をしてまいる、こういう考え方でございます。
  98. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ここに「不安定な雇用状態の是正を図るため、雇用形態の改善等を促進するために必要な施策を充実すること。」とあるわけです。そうすると、いまあなた方が一般論として言われた臨時工とか社外工とかあるいは季節の出かせぎ労務者というようなものは、一体どの程度の数が、現実の日本の産業界に潜在をしておってあるいは顕在をしておって、それをあなた方は一体何カ年間でどういう形で解消するというおつもりなんですか。「必要な施策を充実する」ということをお書きになっておるのです。
  99. 有馬元治

    ○有馬政府委員 出かせぎ労務者につきましては、私どもは六十万を下らないというふうに推定をいたしておりますが、これもなかなか確実な数字は現在のところつかめておらない状況で、漸次確実な数字をつかんで対処してまいりたい。臨時工あるいは社外工というものは、大体雇用の形態としましては臨時あるいは日雇いというふうな雇用形態をとっておる場合が多いわけでございまして、これはわれわれの調査資料によりますと、臨時工がこの三月で百六十七万、日雇いが百二十三万、こういうことに相なっております。こういった雇用形態が不安定な労働者につきまして、まず雇用形態の安定——それはいわゆる常用雇用にするというのがその一つの方向でございますが、これに向かって漸進的に改善をしてまいりたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  100. 滝井義高

    ○滝井委員 その出かせぎもひっくるめて、臨時とかあるいは日雇い等総計は三百四十万ぐらいになるわけですね。三百四、五十万の人たちを一体あなた方としてはどういう産業にどういう具体的なプロセスを経て持っていくことになるのかということなんですね。というのは、たとえばさいぜん私が産業のことを出したのは、ここに石炭産業と石油産業と鉄鋼という三つのものを並べてみますと、石炭なんかに持っていける要素というのはもうほとんどないわけです。それならば石油にうんと持っていけるか、鉄鋼にうんと持っていけるかというと、そうはいかぬでしょう。だから、ここに労働省が雇用対策法を出して不安定雇用、すなわち完全雇用に持っていくためには、労働省だけの力ではこれはもはやいかんともしがたいわけです。必然的に、あなた方がこういう法律をつくれば、その受け入れる産業の側の態勢というものが雇用対策法に関連をしてどうなるのかということをここに明らかにしてもらわないと、三条の一項五号というものは生きてこないわけです。ただこういう訓示的なものを書いただけではどうにもならぬわけです。そういうところまで——私はあとでいろいろ具体的に聞きますが、逐条ですからあまり深くつっ込みませんが、そういうことまでおやりになっておるのかどうかということです。
  101. 有馬元治

    ○有馬政府委員 基本的には、御指摘のように産業政策、経済政策の裏づけがなければ、単に雇用の形態だけを改善するといっても、おのずから限度があると思います。そこで、雇用対策基本計画を樹立する場合には、政府全体の経済施策との関連を考え、その調和をはかりながら計画を策定していく、こういう考え方で対処してまいる予定でございます。
  102. 滝井義高

    ○滝井委員 だから、そういう産業政策なり経済政策の裏づけというものは、この法案の提出にあたっては十分なされておるでしょうね、こういうことを聞いているわけです。そうしないとこの三条の一項五号というものは単なる絵にかいたもちになってしまうので、そういうことをしておるでしょうね。これはやっておるということになれば、いずれあとで関連各省をここに呼んで聞かなければならぬことになるわけです。まだ逐条ですから、ただあなたのほうに、そういう準備があるでしょうね、こういうことだけ、あるならある、ないならないと言ってもらっておけばいいわけです。
  103. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この対策法案の同じ三条の第二項によって配慮事項が規定されておりますが、これによって十分配慮し対処してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  104. 滝井義高

    ○滝井委員 それは各省も十分納得した上のことですかと、こういうことです。受け入れ態勢というものは十分つくられておりますか。
  105. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この法案施行になりますれば、関係各省とのそういった体制は十分確立されていくと思います。
  106. 滝井義高

    ○滝井委員 それでは関係各省との関係は、この法案が成立した暁には十分確立されるということでございますから、そういう確認に立って、次は三条の二項です。  「国は、前項に規定する施策及びこれに関連する施策を講ずるに際しては、国民経済の健全な発展、それに即応する企業経営の基盤の改善、国土の均衡ある開発等の諸施策と相まって、雇用機会の着実な増大及び地域間における就業機会等の不均衡の是正を図るとともに、労働者がその有する能力を有効に発揮することの妨げとなっている雇用慣行の是正を期するように配慮しなければならない。」とこうなっておる。問題は、労働者がその有する能力を有効に発揮することを妨げている雇用慣行というものは、一体具体的には現在何をさすのか。
  107. 有馬元治

    ○有馬政府委員 まず第一には、学歴偏重といいますか、学歴中心の採用が行なわれておるという点。それから終身雇用というような特殊事情がある、あるいはこれは年功序列型賃金に裏づけられておる、こういういろいろな雇用慣行がございますが、これが場合によってはその有する能力を有効に発揮する場合の妨げになることがございます。こういった雇用慣行はぜひ是正をしてまいりたい。これは社会風潮でございますので、そう簡単ではございませんけれども、漸次こういった慣行を是正してまいるという考え方でこの配慮事項が規定されておるわけでございます。
  108. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、いまの学歴中心の採用形態、終身雇用、それから年功序列の賃金体系というようなものを、新しい雇用対策法を具体的に実施するにあたって、労働省としてはそれをどういう形で——その三つの大きな国民経済の健全な発展なり産業基盤の強化改善なり、国土の均衡ある開発を、同時にそれらが妨げておることになるわけです。したがって、そういう雇用慣行というものは、これは当然打破し是正していかなければならぬ。具体的にどういう施策をもってそれを是正していこうとすることになるのか。
  109. 有馬元治

    ○有馬政府委員 現在の労働市場は、御承知のように学歴と経験年数で構成されておる。これが中心になって運営されておるわけでございますが、この体制を近代化しなければならない。近代化の一番重要な要素は学歴、経験主義でなくて、やはり能力主義の労働市場を形成しなければならない。この点がこの対策法を策定いたしましてわが国の労働市場を近代化する場合の一番大きなねらいの一つでございます。そのほかの終身雇用制あるいはそれを裏づけておる年功序列型賃金、こういったものは必ずしもそのすべてが是正すべき雇用関係だとも思いませんけれども、これはやはり雇用慣行といいますか、能力発揮を妨げておる雇用慣行につながっている場合が相当ございますので、これらもこの際ぜひいろいろな角度から是正をはかってまいる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  110. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、ここだけちょっと突っ込みますが、学歴、経験年数中心で運営される体制を近代化する、それは学歴、経験主義から能力主義に転化していくことである、きわめて明快な御答弁です。そこで、一体能力主義というものはどういうようにして企業の内部において具体化していくかということです。
  111. 有馬元治

    ○有馬政府委員 これは企業の雇用主の頭を変えなければならぬ問題でございますので、容易なことではございませんけれども、雇用対策法によりますと、その第七条に、職業に関する調査研究条項がございます。この条項によりますと、「職業の現況及び動向の分析、職業に関する適性の検査及び適応性の増大並びに職務分析のための方法その他職業に関する基礎的事項について、調査研究をしなければならない。」、こういうことになっておりますが、これらの研究の成果は必ず求人側にもあるいは求職者側にも情報として提供いたしまして、従来の考え方をできるだけ改めてもらって能力主義の体制を整備してまいる、こういうふうに考えておるわけでございます。
  112. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、能力主義を具体化するためには、企業主すなわち経営者の頭を変えなければならぬ。おやじ教育がまず第一に先行しなければならぬわけです。雇用対策法の中にはおやじ教育の部面というものはどこにもないでしょう。おやじ教育の部面がどこかありますか。
  113. 有馬元治

    ○有馬政府委員 第十条に、雇用に関する援助規定がございますが、ここに相当立ち入って雇用主に対して援助をする、指導するという措置規定してございます。人によっては少し立ち入り過ぎるという非難もございますが、私どもとしましては第十条を活用いたしまして、十分雇用主の考え方等については指導してまいりたい、こういうように考えるわけでございます。
  114. 滝井義高

    ○滝井委員 十条は公共職業安定所、公共の職業訓練等の機関は、労働者の採用、配置、適性検査、職業訓練等、労働者がその能力を有効に発揮することができるようにするため必要な対策として云々、こうなっておるので、これは別に事業主の頭を切り変えるためのものではないはずです。能力主義を採用していくためには、雇用対策法の中でいわば私落ちているところだと思うのです。あなた方がいままでの年功序列なり終身雇用なり学歴中心のこういう賃金なり雇用形態というものを大きく百八十度転換をして、経営者の頭を直して、能力主義に持っていこうとするならば、これはそういう形に経営者の頭の切りかえをしないと、労働者だけの職業訓練だけは一方で強化をしてやっていく、職業安定行政機構もやる、しかし経営者は一体どうなんだ。何もないでしょう。実は私ちょっとここで一つ例を出すのです。いま千代田化工建設というのがあります。これは日本的な経営の二本柱といわれる終身雇用と年功序列型の人事、賃金体系というものを改めるために、ここではどういうことをやろうとしておるかというと、能力主義というものは、これは主として中高年齢層に一番関心がある問題なんです。中高年齢層にすぐぴんと響く問題なんです。そこでは雇用契約に更改制を用いている。そのために、年齢を四十にするか四十五歳にするかが問題ですが、四十、四十五歳以降の中高年齢層の社員に対して、給与条件について二年ごとに契約更新方式を採用するわけです。社員の実力に応じてきめるわけです。いわば本人の能力をフルに活用し、引き出していくわけです。これはいわば能力主義の採用です。この問題は定年制の問題とも関連してくるのです。われわれの給料がぐっと上がって、退職金がよけいもらえるというのは、四十四、五歳から五十にかけての時期で、退職金の計算の基礎がずっと上がっていくわけですね。そこで四十とか四十五で契約の更改をやるということになりますと、これは非常に大きな問題になってくるわけです。ところが一つの企業が、技術革新のもとにおいて対外競争に勝とうとするには、企業の平均年齢というのができるだけ頭脳的に柔軟性に富んだ若さで、企業の構成員の年齢が平均化しなければいかぬという科学的な一つの方向があるわけですね。ここの千代田化工建設というのはプラントエンジニアリングの会社です。技術を売る会社です。これは戦後ずっと成長した会社ですが、平均年齢三十歳です。そこでそろそろここの会社にもある程度頭脳部面に老齢化のきざしが見えてくるわけです。そこで老齢化のきざしの出る前にそういう制度をつくりたいということです。これがいわゆる能力主義に一つ方向を見出しているわけです。そういうのが現実に出てきたわけですね。それで、日経連でも企業が一つの不況に直面をすると、日本的なレイオフをやろうとしたけれども、日本的なレイオフではやはり企業がかかえていかなければならぬというので、日経連みずからおやめになったのですね。これは能力主義までいっていないわけです。能力主義がいい悪いの問題ではない。少なくとも政府がこういう法案をお出しになって、この雇用の古い、いわば日本の国民経済の発展なり労働者の能力を十分発揮するための妨げになっている慣行を打破しようとするならば、やはり具体案というものを労働省が持っていなければ話にならぬわけです。私はいま一つの例を出した。すでに日本の企業の中で、いま言った千代田化工建設などというのは二年ごとにひとつやろうというので、最近労働組合に提示している。そういうのがある。そういうのがあるとすれば、労働省としては、方向としてはこういう方向でやります、しかもその一つの経営者に対する資料としては、いまあなたの言われた職業に関する調査研究というような、こういう一つの機関もつくります。しかしそれはおやじ教育にはならないのですよ。経営者の頭の切りかえにはならないのです。だから、経営者の頭の切りかえの政策というものが雇用対策法にはないのですが、私は見てみた。だから能力主義をやろうとすれば、その能力というものは経済の伸展とともに、どういう能力がこういう企業に適応するかということは、基準が変わってくるのです。毎年変わってくる。そうすると、変わってきたということをやはりおやじにもきちっと教えなければならぬ。だからむしろ私はこういう職業に関する調査研究のほかに、やはり企業の経営者を集めて、こういう雇用対策、いわば働く人たちの能力を最大限に発揮するための機関をつくって、おやじ教育をやる必要がある。日本のいまの経営者の経歴その他を調べてごらんなさい、下からたたき上げた人がまだ相当日本の企業の中枢部を占めておりますから。そういう人たちは新しい科学的なものを持ち得るという傾向もありますけれども、やはり自分の得た知識と経験とを土台にして、がんこにそれを守っていこうという傾向があるわけです。だからそういう企業家を、やはり明治以来ずっと伝統的に持ってきている企業家の頭の切りかえをやらないと、雇用対策法というものを出しても画竜点睛を欠くことになる。そういう企業家の——労働者の職業訓練をするいろいろな機関はありますよ。あなた方のそれもある。しかし経営者についてもう少し教育をするという面がないのですよ。だから、私は、よく研究その他をおやりになるのはいい。だけれども、そういうものをつくらないと、この能力主義、実力主義というのは、これはその評価が時代とともに動いていくのだから、これはえこひいきであってはならぬわけですよ。公正でなければならないのです。そうすると、たとえばきょうの日本経済新聞の社説をあなたごらんになったかどうか知りませんが、これをごらんになると、自己申告制度の実績の績み上げ、そして同時にその企業で総じて納得のいく人事労務管理的な行政が行なわれている。だから、自分で申告させるわけです。私はこういう適応性を持っております。私はこういう欠陥を持っております。こういうこともやらなければいかぬ。ところがいまはそういうことでないでしょう。日教組の勤務評定その他をごらんになっても、校長にやらせる。先生がみずからやるということはなかったわけです。どこかで先生がみずから申告するというのをやったところがあるのです、方式として。やはりそういうおやじ教育というものをどこかでやらなければいかぬ。こういうものだけをおつくりになっても、それは問題なんですよ。あなた方のいまの三条は非常に大きく出ておるのですよ。国民経済の健全な発展、それから企業経営の基盤の改善、国土の均衡ある開発、そして雇用機会の着実なる増大、地域間における就業機会の不均等の是正、労働者の能力を発揮する。きわめていいことばかりを羅列をしておるけれども、おやじは一体どうするのだというと何もない。頭を切りかえますということは、答弁では出たのですけれども、ないのです。だから、私はそういう点でも画竜点睛を欠いておるということを言いたいわけです。すでに日本で、千代田化工建設のように、二年ごとに更改しましょう、改めましょう、そして四十歳ないし四十五歳になったら、二年ごとにひとつあなたの能力をお互いに話し合って格づけいたしましょう、こういう会社さえ現実に出てきているのですからね。だから、能力主義ということを言われたことについては、この法案精神はわかった。それを具体的にどう実施するかということについて、職業のための研究機関だけはつくった。しかしそれを具体的に実践をしていく方途というものについては明白でないわけです。だから、それをひとつこの三条では国の施策として明らかにする必要がある。
  115. 有馬元治

    ○有馬政府委員 滝井先生御指摘の求人者といいますか雇用主に対する指導の問題でありますが、先ほどちょっと説明不十分でせっかく七条で各種の調査研究をしてその成果を得た場合に、どういうふうにして求人者に指導を加えるかという問題でございますが、先ほどの十条ももちろんそのための規定でございまするけれども、直接的にはその前の第九条に求人者に対する指導規定がございます。これで積極的に求人者の指導に乗り出そう、こういうねらいでございます。   〔委員長退席、竹内委員長代理着席〕 さらに求人者に対する指導体制が弱いという御指摘がございましたけれども、さかのぼって第一条の目的のところにも、その第二項に、事業主の雇用管理についてはその自主性を尊重しながら、労働者の職業を安定させるための事業主の努力を助長させるようにつとめる、こういうふうに目的にうたっておりますので、私どもとしましては、雇用対策面から企業に積極的な指導をするという体制は法制的には十分であると思います。ただ御指摘のような千代田化工の場合の社内における給与制度の問題は、この雇用対策法が直接ねらっておる部面では必ずしもないわけでございます。雇用対策法は、あくまで雇い入れ、解雇というふうな、いわば企業の労務管理における出入り口の問題を中心に対策を規定しておるわけでございまして、先ほど申しました終身雇用あるいは年功序列型賃金の弊害の問題等に言及いたしましたけれども、これは直接的というよりも、労働市場を近代化し、雇用政策を展開することによりまして、企業に間接的に反映をしていくという意味を持っておるわけでございまして、私どもも、この法律をたてに直接企業の労務管理面に介入をして、そういった給与制度の問題について直接的な介入をするというようなつもりはないのでございます。その点ちょっと私どものねらいに誤解があるといけないと思いまして、補足させていただいたわけでございます。
  116. 滝井義高

    ○滝井委員 雇い入れと解雇だけを雇用対策がねらっていることはわかるわけです。同時に、職業選択の自由とそれから事業主の雇用の管理における自主性ということもよくわかるわけです。しかし、少なくとも国の施策として今後の雇用された後におけるいままでの悪い慣行を是正をして、そして新しい慣行を打ち立てる方向というものは能力主義である、こういうことを明らかにすることはちっとも差しつかえない。そのことは職業選択の自由を阻害することにもならないし、自主的な労務管理の体制を阻害することにもならないわけです。しかし、雇い入れられあるいは解雇されるまでの間のその中身について、それが完全雇用であり、労働者の能力を発揮するような姿にしていくということ、一般的に普遍的にしていくということは、国として当然やらなければいかぬことであって、その中で雇い入れと解雇だけ、入り口と出口だけを私たちは見ておるのだ、中はどうでもいいということではないはずです。そうでなければ、中がうまく充実しておらなければ、完全雇用体制は確立できない。能力が発揮できないのですよ。だからその点は、これは何もあなた方が中のことをおそれる必要はないので、労働基準の違反をしておるかどうかということは、中に入ってみなければわからないわけです。労働基準に違反をするような雇用形態というものは間違っておる雇用形態であるから、びしびし直さなければいかぬ。だから、そういう点は何もあなた方萎縮する必要はないので、雇用の内部について何も労働省が全部干渉しろと言わない、しかし不当な間違ったことをやっておる人については、断固として法をもってこれは干渉し、取り締まらなければならぬと思うのです。私はそういうところを言っている。そういうところを日本の雇用というものは直されてはいないのですよ。あとでちょっと触れますが、直されていない。だから、あなた方がいままでの年功序列なり終身雇用体系をおつくりになろうとすれば、やはり能力主義。能力主義ということになれば、そこではやはり賃金というものはきちっと払われなければならぬ。そうすると、まず最低賃金というものはどうなるかという問題が出てくるのです。これはあとで触れますが、そういうところはちっとも言わずに、ただ雇用の入り口と出口だけだということでは、私は隔靴掻痒の感ありと言わなければならぬわけです。  ここはそれくらいにして、次は四条の二項の二号。この四条は雇用対策基本計画の策定ですね。「労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにするために必要な雇用に関して基本となるべき計画」すなわち雇用対策基本計画、雇用の需給の計画ですね。これを策定しなければならぬ。「雇用対策基本計画に定める事項は、次のとおり」とあって、「雇用の動向に関する事項」、その次の、二項の二号です。「前条第一項各号に掲げる事項について講じようとする施策の基本となるべき事項」、この「施策の基本となるべき事項」というのは、どういうことですか。
  117. 住栄作

    ○住説明員 まず一号にありますように、将来の雇用を展望した場合にいろいろ問題点が把握できるわけでございますが、そういった問題点を把握した上で前条一項の各号——一号から六号までに掲げてある施策をそれぞれの問題点に対処してどのように対応さしていくか、こういう施策の基本方針を織り込んで計画をつくっていきたい、こういうように考えております。
  118. 滝井義高

    ○滝井委員 その三条の一項の一号から六号までのものですね、その「基本となるべき事項」というのは、具体的にはどういうことなんですか。これはたとえば、三条の一項の一号というのは、「職業指導及び職業紹介の事業を充実する」とか、二号は、「技能労働者を養成確保する」とか、労働者の住宅その他の福祉を増進するとかいうようなことが三号のところに書いてある。あなたのほうの基本となる施策というのは、こういうたとえば、職業訓練所をつくるとか住宅を何万戸つくるとかというようなことが施策の基本となるべき事項ですか。
  119. 住栄作

    ○住説明員 先ほども申し上げましたように、雇用の問題点といたしまして、たとえば、技能労働力の問題が今後も大きな問題になってくると思うのでございますが、そういった場合に、将来の技能労働力の不足、特に産業の中、職種の中においてどの程度の不足があるかというようなことを問題点として把握できますので、それに対処しまして今後のたとえば訓練の規模、テンポ、そういうものをどのように考えていくか、あるいは具体的にどういう職種についてどういうような規模の訓練をやっていくか、あるいはさらには期間をどのようにするか、訓練所の配置をどのようにするか、こういうようなことを織り込んだものとして、問題点ごとに必要な対策の規模なりテンポというものをはっきりさしていきたい、こういうように考えております。
  120. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、そのことは二項じゃなくて四条の三項にあるわけですね。「雇用対策基本計画は、政府の策定する経済全般に関する計画と調和するものでなければならず、かつ、職種、技能の程度その他労働力の質的側面を十分考慮して定められなければならない。」ちゃんと書いてある。そうすると、二項の二号と三項とは、これは同じことをいっておるのですか。
  121. 住栄作

    ○住説明員 結局四条の三項は、基本計画を定めるにあたって、特に、単にそれは量的と申しますか、そういうものではなくて、十分その内容について質的な面、それから四項におきましても同様なことを書いてございますが、たとえば、特定の職種とか中小規模の事業等についてどのような配慮を加えていくかということで、単に三条の各号の政策の羅列ではなくて、実態、問題点を把握し、その問題点に対応していくための具体的な方向をはっきりしろ、こういうことで特に注意と申しますか配慮すべき事項として三項、四項があるわけでございます。
  122. 滝井義高

    ○滝井委員 まあ具体的にあとでまた私、農業その他を摘出して聞きますけれども、どうもいまの答弁では「施策の基本となるべき事項」というのが明らかでないのですね。いまのあなたのような御答弁で、訓練の規模とかテンポとか職種とか配置とかいうようなことを言われておりますけれども、雇用対策の基本計画を定めるにあたって、その施策の基本となるべき事項というのは一体何なのかということについて、どうもちょっとはっきりしません。答弁ははっきりしないということにして、次の三項の中身に入りたいのですが、この四条の三項で「雇用対策基本計画は、政府の策定する経済全般に関する計画と調和するものでなければならず、かつ、職種、技能の程度その他労働力の質的側面を十分考慮して定められなければならない。」とこうなっているわけです。そこでいままでは、日本においては戦争中もそうでございましたが、人間は人的資源として物動計画に従属する形をとってきたわけです。初めに経済計画があって、そしてあとから人間がそれにくっつけられるという形であったわけです。しかし佐藤内閣は、人間中心、人間尊重の政治をやろうというのですから、まさか経済計画に人間が従属することはないであろうと思うのです。したがって、この経済全般に関する計画と雇用対策基本計画との調和ということは、具体的に一体どういうことなのか。
  123. 有馬元治

    ○有馬政府委員 経済全般に関する計画との調和の問題でございますが、この調和という意味は非常にむずかしいのでございますけれども、広辞苑の解釈によりますと、「矛盾または衝突なく互に程よく合すること。」こういう解釈がついております。このことばを用うるについては、整合だとかいろいろなことばを考えてみたのでございますが、従来の経済に従属するというような考え方を否定して、少なくとも対等の立場において経済政策との関連を考えていこう、こういうことでこの調和ということばを使ったわけでございます。したがいまして、従前のように経済施策あるいは産業政策のいわばしりぬぐいのみをもって、雇用対策は能事終われりというふうな消極的な態度ではなく、雇用面から経済ないしは産業政策に対して積極的な発言も今後やっていこう、こういう考え方でこの規定を置いたわけでございます。
  124. 滝井義高

    ○滝井委員 そうすると、いままでは雇用計画というのは経済のしりぬぐいをやり経済に従属した形であった、しかし佐藤さんが調和の政治ということを言っているから、寛容と忍耐から寛容と調和になったんだから、したがって今後は労働政策と経済政策もお互いにそごすることなく均衡のとれた、調和のとれたものになっていく、そこには矛盾もなくうまく合体をしていく、こういうことだそうです。そうすると、経済計画の中における雇用対策基本計画の位置づけというものはどういうことになるのです。
  125. 有馬元治

    ○有馬政府委員 経済政策の中における雇用対策基本計画の位置づけの問題ですが、これは抽象的には調和の一語に尽きるわけでございまして、お互いに矛盾なく政策を立案し施行していく、こういうことでございます。
  126. 滝井義高

    ○滝井委員 その場合に、たとえばいま鉄鋼で例をとってみれば、鉄鋼というのは非常な設備投資をおやりになったわけです。そして、ここでは相当の労働力をかかえてきているわけです。しかし、こういう戦略的な大企業というものは、やはり新規若年労働力の雇用というものをやっておかないと、将来の拡大に備えることができないという場合があるわけです。そこで、たとえば来年なら来年卒業する新卒者を採用通知だけは出す。しかしいつ仕事に来いということは書いてないのですね。こういうことが行なわれたわけです。これは御存じのとおり、八幡製鉄その他で二千人も二千五百人も待機をやらしたですね。こういうことは今後行なわれないということなんでしょうね。もう採用したら、それは少なくとも四月一日からは採用されていくということで、企業が恣意的にみずからの全く私企業としての利益を確保するために、とにかく大企業だからみんなあこがれている、だからとにかく採用通知だけ出しておけ、働くのはいつでもいい、そういう若いあこがれてきた者は首切るのもいつでもできるんだというような形が行なわれたでしょう。いわゆる待機です。採用はしておくけれども、いつ来いと言ってこなかった。いつか宮崎かどこかの国鉄に採用された人が自殺しましたね。そういうことは、いままでと違って経済、企業に隷属しておった人間が今度は雇用計画を通じて対等にものが言えるということなんですから、そういう形は今後行なわれないということなんでしょうね。労働省も、今度はそういうことは許されませんぞ、幾ら企業が自主的に労務管理をやると言ったって、そういうことは許されませんぞということにはなるのでしょうね。
  127. 有馬元治

    ○有馬政府委員 かつての高度経済成長時代の設備投資過剰に伴う労働力の問題これはいろいろ今日においては批判があるわけでございますが、私どもも労働力管理をこの雇用対策法に基づいて積極的にやっていこう、こういう考え方でございますので、特に需給の逼迫しておる若年層の労働力について、大企業がその地位といいますか力を利用して恣意的に必要以上に確保する、あるいは場合によっては、先ほどのように八幡あるいは東レに見られたような待機制度を採用するというふうな横暴は、私は許されない問題だろうと思います。これまでもそういった八幡、東レあるいは国鉄の一部に見られた待機制度に対しては、私どもも積極的に企業の反省を促しておるわけでございますが、これからはこの対策法が施行になり、雇用対策基本計画というものが樹立されていけば、なおさらそういった弊害は未然に防止していく、こういう積極的な努力をしてまいりたいと考えております。
  128. 滝井義高

    ○滝井委員 非常にいいこと言っていただいて、大臣、それは間違いないでしょうね。政治として佐藤内閣として、そういう施策というものをきちっと企業に対して警告をし、やっていくという言明をひとついただかぬと、事務当局だけでは、いやいやそれは大臣は言わなかったというのじゃ困りますからね。事務当局は非常にきれいごと言っていただいたのだから……。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
  129. 小平久雄

    ○小平国務大臣 この基本計画ができますならば、これの実施にあたって、それぞれの所管の大臣なり長に向かって労働大臣は必要な要請をすることができるということも、第五条にうたってあります。のみならず、第九条の第二項においても、この求人者に対する指導の関係でございますが、そこで、たとえば「求人の時期、人員又は地域その他の求人の方法について指導することができる。」こう明らかになっておるのですから、先ほど局長からも御説明申し上げましたとおり、御指摘のような事態がかりにあれば、そういうことは困りますよということを、所管の大臣を通じてなり、あるいは直接求人者に対して要請なり指導なりをしていく、こういうことに相なろうかと思います。
  130. 滝井義高

    ○滝井委員 今度雇用対策法で雇用対策基本計画ができると、そういうことが起きたときにやっちゃ困るよということでなくて、調和するということは起こらなくなるということなんでしょう。起こらなくなる、こういう矛盾がなくなるという御答弁なんですよ。それだから調和ということばは、なかなかいいことばがなかったけれども、いま広辞苑まで出して矛盾なくうまく合体をしていくという、こういう御説明があった。だから調和ということばを使いました、こういうことでしょう。だからこれは起こったのでは間に合わないので、今後起こることはありません、いままでのような八幡製鉄や東洋レーヨン、国鉄の一部に見られたようなことは起こることがありませんよ、こういうことなんですよ。それでよろしいか、こういうことなのです。
  131. 小平久雄

    ○小平国務大臣 経済一般に対する計画と雇用対策基本計画というものが調和をするようにつくっておくということでございますし、かりにそういう問題が現実に起きたという場合には、先ほど申しましたような規定によってそれを解消させる、こういうことに労働省はすることができる、こういうことだと思うのです。
  132. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、御存じのとおり、ことし経済成長というのはやはり七%とか七・五%の成長をするわけですね。そうすると、労働力は六六年をピークとしてぐっと減少形態をとるわけです。その場合、一体経済が——まだ新経済計画は出ておりませんけれども、ことしの予算編成その他の過程から見ますと、七とか七・五の成長をするわけです。たとえば、七・五の成長を経済が続けていくとすれば、労働力の不足というのはどの程度になるのですか。
  133. 住栄作

    ○住説明員 御承知のように、四十一年度の雇用者の増加が約九十万人、こういうことになっております。そこで、これに対する供給といたしまして学卒が百七十八万、こういうことになっておりますので、現在のところ私どものごく大まかな計算でいいましても、就業者総数の交代補充約三・五%と見ましても、現在の段階では極端な労働力の不足は起こらない、こういうように考えておりますが、新規労働力が御承知のように逐年減少してまいりますので、昭和四十五年ころの状態を考えてみますと、新規労働力だけでは交代補充すらも補えないというような数字も一応推算できるのでございますが、さしあたって本年あるいは来年といたしましてはそう極端な労働力不足というようなことにはならないのではないだろうか、こういうように考えております。
  134. 滝井義高

    ○滝井委員 御存じのとおり経済成長は七・五%程度でずっと持続していくというのが内閣の一貫した予算委員会その他における答弁で明白なんですね。そうしますと、ことし四十一年をピークとして四十二年、四十三年、四十四年、四十五年とあなたが言われるようにだんだん新規若年の労働力が不足をしてきますから、したがって調和がとれなくなるわけです。経済計画と雇用対策の基本計画との調和がうまくいかないわけです。そこで、調和がうまくいかない状態をまず数字で、四十一年から四十五年まででいいですから、あなた方は一体どういうように不足の状態を見ておるか、これを説明しておいてください。ここは非常に重要なところなんです、調和の問題について。
  135. 住栄作

    ○住説明員 御指摘のように雇用対策基本計画と経済計画は調和しなければならぬのでございまして、経済計画もこの雇用対策基本計画もともに政府の計画でありますので、その間に矛盾があってはならない、こういう趣旨で調和ということを使っておるわけでございます。御承知のように新たに経済計画の策定作業が進んでおるのでございますが、私どもとしまして、この法案が成立しますならば、さっそくそういう点について具体的な作業を始めまして、経済計画の作業に反映することによってその間の調和をはかっていきたい、こういうように考えておる次第でございます。
  136. 滝井義高

    ○滝井委員 その七・五%というのは、すでに経済企画庁なり佐藤総理なり一貫してここで説明をしてきているわけです。池田さんのときのように一割とか一割五分の成長と言っているわけじゃないわけです。きわめてつつましやかな七・五%と言っているわけでしょう。それで物価は七、五、三——七%から五・五%、それから三%そこそこ、こう物価はこれから下がる、こういうことですよ。物価はとにかくとして、七・五%の経済成長を見た場合に、そのときに雇用の弾性値というものが出てくるわけだから計算できるはずでしょう。一体四十一年はどのくらい、四十二年はどのくらい、四十三年、四十四年、四十五年まで言ってみてください。数字が出ておるはずですよ。あなたのほうでわからなければ経済企画庁でもかまわないし、労働省の統計調査部でもかまわぬですよ。そんなことがわからぬで調和なんてできやせぬ。
  137. 住栄作

    ○住説明員 将来の雇用需要を正確に予測するということはなかなか困難かと思います。そこで、私どもの現在の計算で、ごく大まかに考えておりますことは、たとえば、学卒を中心とする新規労働力の供給は、大体確実に将来の予測ができるわけでございます。それと、経済の発展の要素を度外視しまして、死亡、引退の補充需要の計算も、これも大体過去の傾向からごく大まかな推算はできるのでございます。そういうことを考えてみますと、たとえば昭和四十年度におきましては、学卒供給が百五十六万、死亡、引退の補充需要が約百四十万、要するに学卒供給が補充需要を上回っておるということが言えるのでございますが、四十五年度になりますと、学卒供給が少なくなり就業者人口がふえる、こういう関係で学卒供給だけでは補充需要さえ埋められなくなる、こういうようなことが推定されるのでございます。さらに、今後の経済の発展に応じまして、新規の純増の雇用需要がどうなるかということにつきましては、いろいろ生産性の要素等もからみ合いまして、必ずしも明確な推計はできないわけでございますが、そういう点につきましては、今後、将来のこの法案にあります雇用対策を進めていく場合に、雇用の動向という面でそういう需要をどのように考えていくかということについて十分研究した上で、そういう把握の上に対策をつくっていく、こういうことにしたいと考えておるわけでございます。
  138. 滝井義高

    ○滝井委員 いろいろのファクターを動かさなくてもいいですから、いまのままずっと伸ばしていってかまいませんから、昭和四十年に学卒供給は百五十六万で、死亡、引退等の補充交代労働力百四十万、そこに十五、六万余剰が出てきておるから、これは何とかいける。そうすると四十一、四十二、四十三、四十四、四十五と労働省はこういうことを何もやっていないということになって、そうしてこういう法案を出すなんということはナンセンスですよ。少なくともこれから経済の五カ年計画を新しくつくろう、防衛力の五カ年計画をつくろうといって、松野さんのところでも用意する、それから藤山経済企画庁長官のところでも用意しておるというのに、これから物動計画に従属せずに対等にものを言う労働省が、しかも調査部を持たなければとにかく、統計調査部を持っている労働省が、これから五年先の日本の労働力の需給状況が少なくともわからぬなんというのじゃ、これはいまからやる価値がないですよ、そのくらい明らかにしなければ。私はなぜここを言うかというと、ここが一番ポイントなんですよ。いまの七・五%の経済成長で行った場合に、一体日本の労働力というのが四十五年になったときにどの程度の不足をするのかというこのことが、日本の農業や中小企業の産業構造に重大な影響を与えるのですよ。だから、そこの点をあなた方が明らかにしなかったら——これはできていなければ、待ってますよ。そんなものは明らかにされておるはずですよ。
  139. 有馬元治

    ○有馬政府委員 先生御指摘のところが一番長期計画を策定する場合にポイントになるわけでございますが、御承知のように中期計画は一応廃案になっておりますので、中期計画時代にいろいろな測定をした経緯はございますが、これをいま云々するわけにもいきませんが、今後新しい長期計画を樹立する場合にこの点は一番重要なことでございますので、私どもとしましては経済成長の内容がどういうものになっていくか、それに見合って雇用需要の構造がどういうふうに変化するか、こういうことを検討した上で今後の雇用需要の測定をいたしまして、供給サイドの見通しは十分持っておるわけでございますので、供給サイドをむしろ中心にして需要面を検討しなければならぬというふうな場合も相当あるかと思います。そこで、今後政府が樹立します長期計画にあたりましては、雇用需要の測定ということはまたあらためて私どもはやってまいりたい。決してその作業を怠っておるわけではございませんが、経済計画全体がそういった移り変わりの時期に来ておりますので、新しい長期経済計画のもとに雇用需要の測定を経済成長の中身に見合って検討していく、こういうふうに考えておるわけでございます。
  140. 滝井義高

    ○滝井委員 雇用需要の測定というものは、供給の面はわれわれのほうは資料を持っております。しかし需要のほうはわかりません、こうおっしゃるであろうと思って、すでに現実に四十一年度の予算編成の基礎になった七・五の経済成長をずっと五年間伸ばしてそれでやってみてください、こう言っているのです。政府の方針も、池田さんのときのように、そんなむちゃくちゃな高度成長をやらないのだ、安定均衡だ、こう言っているでしょう。安定均衡政策でもっていく、こういうことですよ。七・五の成長でわからぬはずはないですよ。これは計算しておるはずですよ。それがきょうわからなければ、次回でけっこうです。次回にひとつ計算をしてもらって、雇用弾性値というものを幾らに見るか、その見た結果で出していただきたいのですが、そんなもの出ないはずはないですよ。そこらの学者の書いたものだってありますよ。
  141. 有馬元治

    ○有馬政府委員 御指摘の成長率に見合う雇用需要の正確な測定は、現在のところやっておりませんので、新しい長期計画に見合って、今後雇用需要の測定をやっていこう、これが雇用対策法の某本計画を樹立する場合の一つ前提条件にもなりますので、私どもとしましては、新しい角度から雇用需要の予測をやっていきたい、かように考えております。
  142. 滝井義高

    ○滝井委員 新しい角度からおやりになるのはいいですから、七・五%の経済成長ということでやっていただきたい、こう言っておるわけですよ。これはできないはずはないでしょう。できないですか。それを、あなたのほうができなければ、私のほうで経済企画庁にやってもらいます。そんなことができない、そういうことさえできなくて、こんな大それた法案を何で出したかと私は言わざるを得ないのですよ。雇用対策基本計画の策定と書いて、そしてしかも、そのためには日本経済の均衡ある発展をはかるとか、経済の基盤を強化するとか、労働者の能力の発展をはかっていくとか、いろいろうまいことを言っているけれども、しかし、雇用需要の計画なんというのは何にもないということになれば、これは全然話にならないですよ。この法案というのは何にもなくて、ただ文章に書いているだけということになる。少なくともこういう法案を出せば、その中身が具体的にやはりある程度あなた方のほうで煮詰められたのだと私は見たのですよ。
  143. 有馬元治

    ○有馬政府委員 いまその新しい長期計画を策定中でございまして、産業構造がどういうふうに変化していくかということを見きわめて雇用需要をはじかなければ、かつての七・五%想定時代の前提でいろいろな仮定をもうけて測定してみろ、こういう御注文かもわかりませんけれども、これはやれぬことはないと思いますが、やはり新しい長期計画に見合った雇用需要の測定ということを今後やっていきたいと思いますので、これで御了承願いたいと思います。
  144. 滝井義高

    ○滝井委員 その考えはいままでの考えと同じですよ。いいですか。経済計画ができなければ私のほうの雇用計画はできません、産業構造がどう変わるかを見なければ私のほうの雇用の基本計画はできませんということは、産業構造、いわゆる経済政策に従属しているのですよ。それではいかぬのです。私はなぜこれを求めるかというと、私の言いたいのは、雇用計画によって産業構造を変えていかなければならぬということなんです。私は逆の見方をしているのです。それはどうしてかというと、もしここに、七・五の経済成長でずっと四十五年まで伸ばしていった、ところがそこに労働力が百万どうしても不足するということになれば、この百万の労働力を一体どこから出してくるかということが問題なんです。出してくるところは二つしかない。中小企業から出すか、農業から出すか以外にないのです。もう一つ、第三次産業がありますよ。これはあとで質問しますが、いまイギリスの労働党が運命をかけて雇用税というのをやっておるのです。そうして保守党のときにはゴーストップ政策をとったわけです。すなわち、国際収支がうまくいかなくなれば、国内の需要を引き締めて輸出に転化していくわけです。こういう政策をとった。ところがそれではもはやどうにもならぬので、イギリスの労働党の政策は雇用政策を中心にいま経済政策を打開しようとしておる。いわゆるポンドの危機を打開しようとし、同時に国際収支を安定化しようとしておるわけです。すなわち、雇用をもっていまや経済を主導しようとするのがイギリスの労働党の政策でしょう。そういう政策があるわけなんです。いまの安定局長の考え方なら、産業構造がどう変わるかを見てから計画を立てるというなら、産業構造に従属しておるのですから、それではもはや資本主義の自由放任のままに、いわば資本の恣意によって労働力は左右されることになって、対等と調和ではないですよ。
  145. 有馬元治

    ○有馬政府委員 これは先ほどの調和の問題になるわけですが、やはり需要の面を測定しながら共給の面が正確に測定できますので、供給面からの制約ということが今後の長期経済計画の場合に一番大きな問題になると思います。従来のように、過剰時代のように労働力は経済計画に見合って数だけそろえればよろしい、幾らでもあるのだというふうな時代は過ぎ去っておりますので、必ず今後の新長期計画においては供給面からの制約をもっと積極的に行なうべきであるという点では滝井先生のお考え方と一致しております。そういう考え方で今後の長期経済計画の樹立策定に臨んでいきたい。これは雇用対策法の基本計画を背景に経済計画のほうに績極的に発言をしていく、こういうことでございます。
  146. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、私は、経済成長というのを七・五%と見てどの程度の需要が出てくるか、こういう質問をしたら、あなた方はそれはなかなか答えができない。それならば逆に、供給計画というものはできている、こういうことですね。労働力の供給計画というのはできます、そうすると、いまの姿のままで一体、四十一年、四十二年、四十三年、四十四年、四十五年と、これから五カ年間の供給計画というのはどうなっておるのですか。
  147. 有馬元治

    ○有馬政府委員 供給計画ではなくて、供給力は確実に把握しておる。これは御承知のように四十一年度百七十八万をピークとして漸減をいたしまして、四十五年には百三十五万、これが新規学卒者の供給力でございます。これが供給サイドの一番大きな要素でございます。この見通しは確実に持っておりますので、需要サイドの事情がわかれば、これと調整をとりながら、あるいは需要サイドに積極的に、何といいますか、供給サイドから制約を加えながら全体としての経済計画を樹立していく、そして雇用計画もその中に樹立していく、こういう考え方でございます。
  148. 滝井義高

    ○滝井委員 四十一年に百七十八万、これは新規若年の労働力ですね。そうしますと、それが四十五年に百三十五万と約四十万減少してくる。そうすると、四十二年、四十三年、四十四年というこの途中をちょっと一緒に言ってください。
  149. 有馬元治

    ○有馬政府委員 四十二年は百六十六万、四十三年は百五十九万、四十四年は百四十四万、こういう数字でございます。
  150. 滝井義高

    ○滝井委員 これを見てもわかるように、十万ずつぐらいの数がずっと減っていくわけですね。そうすると、今度逆にお尋ねしますが、過去において、毎年労働力の需要の増加のテンポというのはどの程度の、何万ぐらいのテンポで増加をしてきましたか。
  151. 有馬元治

    ○有馬政府委員 昭和三十年以降十年間に、年平均百八万雇用者が伸びております。
  152. 滝井義高

    ○滝井委員 この百八万というのは新規若年労働力ですか。それとも、年間百八万の中に、いわば新規若年労働力が幾らで、それから農業その他の家事従事者なり世帯主なり、あるいは中小企業の家事従事者なり自営業者がどの程度入っているかということです。
  153. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この百八万は新規学卒が中心ではございまするが、その他の労働力の流入もございますので、この内訳、ちょっといますぐには出にくいので、お願いしたいと思いますが……。
  154. 滝井義高

    ○滝井委員 そうしますと、四十一年から四十五年に対して供給力というのは十万程度ずつずっと減少をしていく。ここ四、五年のうち、文化がだんだん進むと、この新規若年労働力の上級学校への進学の率がもう少しふえて、——ふえるということはない。むしろこの四十五年の百三十五万というのは減る可能性のほうが強いわけですね。そうしますと、過去の経済の発展の状態等から考えても、やはり百八万やそこらぐらいは需要が伸びていくということは考えなければならぬと思うのです。そうすると、これはなかなかたいへんなことになるわけです。そこでわれわれがここで問題にしなければならぬのは、そういう形になったときに、日本の経済構造というものはどう変わっていくかということです。さいぜん言うように、どこからか不足する需要を、労働力を出してこなければならぬ。供給不足ですから、需要増になってきますから、その増加する需要をどこかの産業から出してこなければならぬことになるわけです。ここに私が特に経済計画と雇用の基本計画との調和を問題にするわけです。イギリスは一体いまどうやっておるかというと、さいぜん申しましたように、選別雇用税というものをかけておるわけです。その雇用税の内容は、経済全体を三つの産業部門に大別して、第一がサービスと建設部門、第二が地方公共団体、国有企業、運輸業、農業、第三が製造工業です。ホワイトカラーとブルーカラーに分けますと、ホワイトカラーに殺到する人が多いのです。ブルーカラーに行き手がいなくなるのです。そこでブルーの賃金を上げざるを得ないことになるわけです。ところがちっとやそっと賃金を上げたってブルーに行かない。イギリスでも日本でもいま同じ傾向が出てきたのですが、製造工業なんというのは行き手がいなくなっちゃったのです。少なくなってきた。どこに行くかというと、第三次産業に行きます。額に汗をして熱気のむんむんする中で製鉄や何かの仕事に従事することはたいへんな努力を必要とします。たいへんな忍耐を必要とする。そのことでイギリスはどうやったかというと、一、二、三のこの三つの部門が雇用しておる労働者一人当たりについて一週間に最高二十五シリング、千二百六十円税金を取ることにした。雇用税を納めるわけです。そして第一のサービス業とか建設部門はもう納めた税金は納めっぱなしです。ところが第二の地方公共団体、国有企業、運輸業、農業は納めた税金はそっくり返してしまうのです。返してやる。それから第三の製造工業部門は三割のプレミアムをつけて税金を返すわけです。そうしたところが、結局イギリスの政府は、サービス業その他から納めた税金は返さないから一億三千三百万ドルの増収になるわけです。そうすると、この結果一体どういうことができるかというと、産業間の税負担の不公平を是正することができる。それからサービス部門から製造業への労働力の移動ができるわけです。サービス部門は税金を取って返さない、製造工業は税金をとっても、その上に三割のプレミアムをつけて返すわけですから、サービス業から製造業への労働力の移動ができるわけです。一九六〇年から一九六五年の間に労働力はイギリスではどういうふうに流れたかというと、八割がサービス業に流れてしまった。あとで日本の状態も各論——各論というか、いま各論に入っておるので、総論のときに質問しますが、日本も同じような状態です。そこでなぜこういう政策をとるかというと、イギリスでは、結局製造部門というのは生産の四割を輸出しておるのです。サービス部門は八%しか輸出してない。だからイギリスのポンドを守っていくために、すなわちポンドを安定させて国際収支を安定させるためにはこういうことをやらざるを得ない。結局ゴーストップ政策という保守党のとっておった政策から、イギリスの労働党の政策は人間を中心に経済を立て直そうとしておるわけです。こういう形になっておるのです。だから、労働省のほうももう少し権威を持って、いままでのように三木さんや藤山さんのほうに小平さんが従属するのじゃなくて、三木さんや藤山さんが小平さんのほうに三拝九拝して、ひとつこういうところに何とか労働力を配置することのほうが国家全体から見ていいのじゃないだろうか、そういう形の議論ができる方向に持っていかないと、労働省というものは労働者にサービスする機関でなくなるわけです。それだけの権威を確立することによって、佐藤内閣も初めていわば人間尊重の政治ができ、社会開発の芽が出ることになるわけです。だから、そういう点をもう少し小平さん、がんばってもらわなければいかぬですよ。全部有馬さんまかせ、そこらのあなたの後輩まかせではいかぬわけです。船は帆まかせ、帆は風まかせということではうまくいかないのです。だから、いま調和といういいことばをとってきておるわけですから、一挙に経済計画を長期の雇用計画に従属させようとは私は言いませんが、少なくともまず対等くらいにものを言えるようにする。雇用の供給計画というものが日本の産業構造というものを人間中心に再編成するという最大のチャンスだと思うのです。絶好のチャンスですよ。これを活用すれば、労働省の権威というものはうんと上がるのです。私は労働大臣がいまや重要閣僚、副総理格になるというくらいまで小平さんのときに持っていってもらいたいと思うのです。どうですか。いまのようにもう少し七・五%でも五%でもいいですから、やはりつくってくる、そうすると、私この次に藤山さんを呼びますよ。そのくらいのことをしてもらわないと、一生懸命やったってこんなわからない法案——見てごらんなさいよ、この法案にファンがいないですよ。この法案をぜひ祝日と同じように乱闘してでも通さなければならぬという人が自民党の中に何人おりますか、ファンがいないですよ。やはり法案を出したら法案のファンをつくらなければいかぬですよ。この法案を通すためには、乱闘してでも、滝井義高をなぐりつけてでも通すぞという迫力を持たなければいかぬですよ。それがいないんです。祝日法には佐藤総理みずからが命令を下して、そうして馬占山の大砲を撃つんだけれども、馬占山の大砲を撃ってでも号令をかけてやる人はいるんですよ。しかし、これにはそういうものを聞いたことがない。張学良の鉄砲も撃たぬという状態でしょう。だからそれじゃいかぬですよ。そういう点もう少しやはり経済計画と対等にものの言える計画をつくるということにしてもらいたいと思うのですが、ひとつ小平さんから答弁をしてください。
  155. 小平久雄

    ○小平国務大臣 経済計画と雇用計画との調和の問題でただいまるるお話しがあったわけでございますが、なおその間英国の例もお引きになり、英国ではたいへん人中心の政策に変わってまいったということでございます。私どもも仄聞いたしておりますが、しかし私は人中心の政策になるかどうか、あるいは雇用計画というものが従属的にならざるを得ないかどうかという問題は、結局はこの労働市場の需給関係がどうであるか、その状況によって私は雇用政策というものの占める重要性というものがやはり変わってまいるであろう、こう思うのです。元来今度のこの雇用対策法をお願いいたしておりますのは、先ほども説明がありましたが、日本の労働市場の状況というものは、今日ただいま確かにいわゆる若年労働等については相当の不足ということがありますが、一方においては中高年齢者がむしろ就職の困難を訴えておる、こういう状況で、全体といたしましたならば、いまがいま全体としての労働力が非常に逼塞している、こういう状態ではございません。しかし、ここ数年なりあるいは十年先なり考えますと、特に若年労働力を中心とした労働力の逼迫ということが考えられますので、それに今日から備えて、そういう事態が現実に起こる前に、今日からそれに備えた雇用対策あるいは雇用対策の基本計画というものをどうしても用意しておく必要がある、こういうところから今回の法案の御審議をお願いする、こういうことに相なったわけでございます。具体的に先ほど来政府は七・五%の経済成長ということを言っているじゃないか、こういうお話しでございますが、これに対しましては労働省でとらえておりまする労働力の供給面、これはもちろんかくかくでありますということを企画庁のほうに連絡もいたしまして、おそらく企画庁としてもこれを十分しんしゃくした上で経済の長期計画を立てるでありましょうし、また逆に七・五%をやるのにこれだけの労働力の供給ではとうてい足らぬということにかりになりましたならば、あるいは七・五%というのは一つの目標でございましょうから、これが無理だという結論になって変更しなければならぬということも起こりましょう。いずれにいたしましても、この経済計画というものと雇用計画というものがお互いにそれぞれの立場というものを十分尊重し合って、相調和をはかっていく、こういうことでございます。先ほども申しましたとおり、当面はそういまがいま全体としての労働力が逼迫しておるというのじゃありませんから、労働力に合わせて経済計画を立てるというまでは私はおそらく実際問題としてはいかないと思いますが、ここ数年先にはどうしても、やはり日本においても労働力というものを中心にしていやでもおうでも経済施策というものは考えざるを得ない、こういう事態になってまいるであろう。そのときには、かりに労働力からすれば五%きり経済成長ができないが、しかしどうしても経済施策からいえば七%なり七・五%なり伸ばしたいというならば、しからばそれに対応して労働政策、雇用対策というものをどうやるかという、こういう問題にまたはね返ってくるでありましょうし、それはお互いに反映し合っておのずから結論を得るというのがおそらくここにいう調和の趣旨であろう、こういうふうに私は理解しておるわけであります。
  156. 滝井義高

    ○滝井委員 次に移りますが、四条の四項ですね。「雇用対策基本計画において、特定の職種、中小規模の事業等に関して特別の配慮を加え、」というのは、どういう配慮を加えるのですか。
  157. 有馬元治

    ○有馬政府委員 中小企業が大企業と比較して労務の充足あるいは労働力の管理の面で非常に立ちおくれておる、不利な立場にあるということは御承知のとおりでございますが、こういう点を考えまして中小企業に労働者が喜んでいくような条件、あるいはまた就職した労働者が定着するような周囲の環境を考える、こういう意味で特別な配慮を規定したわけでございます。具体的にはこの三条の一項三号、四号にございまする福祉施設の充実の問題あるいは援護措置の問題、こういった施策を中小企業に集中的に講ずることによって、大企業との格差あるいは不利な点を改善していって中小企業の労働力を確保していこう、こういう考え方でございます。
  158. 滝井義高

    ○滝井委員 そうするといまのお答えでは、その中小企業のために福祉施設をつくったり社会保障制度を充実したりしてやるということが、この特別な配慮ということですね。御存じのとおり、いまでも中小企業というのは新規若年の労働力の確保というものはほとんどうまくいってないでしょう。新規若年労働力の確保ができなかったためにつぶれたという企業が最近中小企業では出てきつつあるわけでしょう。だからいまのあなたの言われたような福祉施設、最低賃金の問題その他を考えずして、特定の職種なり中小規模の事業に労働力の配置が可能かどうか。もし可能とすれば、それは権力でやれば可能かもしれません。しかし、それはなかなかできないことはこの前文にきちっと書いてあるわけです。職業選択の自由なり事業主の雇用の安定については自主性を尊重することと書いているわけですから、そうしますと、一体雇用対策の基本計画の中で、特定の職種ということも何かわからない。「特定の職種、中小規模の事業等に関して特別の配慮を加え、その労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るために必要な総合的な施策を定めることができる。」こう書いてあるわけです。それを雇用対策の基本計画で定めるわけですから、その具体的な内容は、特定の職種というものはどういうものであり、中小規模の事業に対して特別の配慮というものはこういうこととこういうことをやるんだということが明らかでなければならぬと思う。これは残念ながらあなた方の説明の中にも何も書いていないのです。
  159. 有馬元治

    ○有馬政府委員 特定の職種につきましてはこれから具体的に雇用審議会意見等も聞いて確定するわけでございますが、需要があっても希望者が非常に少ないというふうな職種は相当ございます。しかもそれが今後の経済発展上どうしても重要な職種であるというものは相当ございますので、その中から特定の職種に対する特別の配慮を考えてまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  160. 滝井義高

    ○滝井委員 たとえばどういうものですか、たった一つでもあげてみたら。
  161. 有馬元治

    ○有馬政府委員 たとえば鋳物工あるいはメッキ工、製かん工、こういった職種がその一例でございます。
  162. 滝井義高

    ○滝井委員 その鋳物工とか製かん工とかメッキ工というのは、いま非常に不足があるわけですか。そうしてその不足する原因というのは一体どこにあるのでしょう。特別の配慮を加えなければならないほど、鋳物工やらメッキ工、製かん工がいない、その理由は一体どこにあるのか。
  163. 有馬元治

    ○有馬政府委員 いま申し上げたような職種は、非常に労働市場において需給が逼迫しておる職種の一例でございますが、これがなぜ逼迫するのかという原因はいろいろございますが、やはり技能を身につけさせるために必要な援護措置が欠けておる、あるいは訓練施設自体が不十分である、いろいろ原因があると思います。そしてまた、現に採用される場合には、賃金その他の労働条件が一番問題になると思いますが、これらもやはり中小企業の体質の改善なりあるいは福祉施設の充実なりということをはかって、労働条件を向上した上で労働力を確保する、要するに魅力ある職場にしなければ、労働力の確保はできないのじゃないか、かように考えるわけでございます。
  164. 滝井義高

    ○滝井委員 次は六項ですが、「労働大臣は、雇用対策基本計画の案を作成する場合には、あらかじめ、関係行政機関の長と協議し、及び都道府県知事の意見を求めるとともに、その概要について雇用審議会意見を聞かなければならない。」と、こうあるわけです。都道府県知事の意見というものをどういうようにして求めるかということです。御存じのとおり、現在の日本の人口の集中の状態というものは、太平洋ベルト地帯に、新しく増加する労働力のほとんど七割か八割は集中してしまいつつありますね。最近低開発地域の開発なりあるいは新産都市なりができつつあります。当然それらの当該県知事は、みずからの地域の開発をやるために労働力の確保をしなければならない。しかし、いかにせん労働力の流れは、もう堤を切ったがごとく太平洋ベルト地帯に向かって流れていく、こういう形があるわけです。したがって知事としては、雇用対策の基本計画をつくるときには、そういう流れに反対ですということになる。いまの郡なり市なり、太平洋ベルト地帯以外のところの人口の状態を見ますと、昭和三十五年の十月の国勢調査と四十年十月の国勢調査の状態を見たら、どこも減っています。農村部で二千から三千減っております。産炭地だったら二万から三万減っています。だから全部減りつつある。しかもそれは二十歳以上の有権者のところが減りつつあるわけです。いわば労働力人口です。だからこういう状態を直そうとすれば、普通のただ雇用対策の基本計画をつくっただけではだめなんですね。相当強力な誘導政策をやらなければいかぬということになると思うのです。そうすると、それは労務統制のにおいがしてくることになるわけです。ここを労務統制のにおいをさせずに、それぞれ、その郷土にとどまらせるためにはどうするかということです。最近の農村からの出かせぎ、農村から都市への流出の状態をごらんになると、これは私、ちょっと調べてみましたが、通勤が多いのです。やはり家を捨てていくことにはならぬのです。そこで通勤が多いということはどういうことになるかというと、経済が不況傾向になるとばったり通勤がなくなるのです。それはどうしてかというと、そんな農村から通勤してくる人は不安定雇用なんです。臨時工か社外工なんです。だから不況になると企業は締め出すわけなんです。だから最近は農村からの出かせぎなり就職というのが減りつつあります。これは不況傾向で減りつつある、そういう面があるので、この府県知事の意見を求めるという求め方ですね、そしてもし県知事がそれは困ると言った場合に、労働大臣は一体どういう措置をとるのかということです。これは労働大臣がやる雇用計画というものは、日本経済という高い見地から、日本の経済計画とマッチしたものでやるわけです。それにマッチした、対等な雇用の基本計画をお立てになる。都道府県知事はやはりそれはきわめて地域的なものの考え方で立てる可能性があるわけです。もしそれを調和しようとすれば、各都道府県における地域開発計画と、国の、経済企画庁がつくるところの経済の計画とをマッチさしておかなければならぬことになるわけです。だからこの都道府県の開発計画あるいは地域の振興計画と、国の計画と、そしてそれらの二つのものにマッチした労働省の雇用の基本計画という、この三角関係は、仲たがいの三角関係ではなくして、きわめて友好な調和的な三角関係でなければならぬわけです。そういうことが一体やられることになるのかどうかです。都道府県知事の意見を求めるという、このことはそういうことを意味するのかどうか。
  165. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この条項は知事会側の意見、希望によりまして、特に府県の知事の意見を求めるというふうにいたしたわけでございますが、趣旨は先生御指摘のような趣旨でございます。しかし自然の流れにさからって地方の地域開発計画と調和させるというようなことは、これはなかなかむずかしい問題でございます。いままでは全国計画と地域開発計画が、雇用の面においては必ずしも調和されていないというふうな計画もございましたけれども、これからは雇用の問題を重視しながら、全国的な経済計画も、それから地方で樹立する地域開発計画も、お互いの間に調和がとれなければつじつまが合わない、こういう状態に相なりますので、この点は労働大臣としては全国的な視野に立って、中央と地方の両方の計画の調整をはかっていく、こういう考え方を基本に持っておるわけであります。しかし現実には、供給県と需要県との間には立場の相違から非常に意見が違ってくるのじゃないか。そういう意見を知事から求めて、どうやって調整するのだというふうな御懸念があるのだろうと思いますが、私どもはやはり現在の労働力の流れは、先生御承知だと思いますが、既成工業地帯にとうとうとして流れてくる、この自然の流れに対して、やはり地方の開発計画を相当重視するような立場で雇用基本計画というものを立てないと、自然の流れに放置しておくならば、ますます過密の弊害も出てくる、こういったような問題もございますので、できるだけ供給側の府県知事の意見も尊重して全体としての基本計画を樹立してまいりたい、かように考えておるわけでございます。
  166. 滝井義高

    ○滝井委員 ひとつぜひ高い立場から雇用の基本計画がうまくいくように、都道府県なり国の計画を立てる経済企画庁とのその三角関係がほんとうにかなえの足のようにうまくいくことを一応望んでおきます。  それから五条です。労働大臣が「雇用対策基本計画の策定のための資料の提出又は雇用対策基本計画において定められた施策であって当該行政機関の所管に係るものの実施について、必要な要請をすることができる。」こうなっておるわけです。これは文部省もあるし、防衛庁もあるし、経済企画庁もあるだろうし、通産省もあることになるわけですが、この閣議との関係というのはどういうようになるのですか。前に雇用対策の基本計画の案を作成をして閣議の決定を求めるのですよ。そうすると、閣議の決定を求める前に当然この資料を提出をして雇用対策の基本計画というものはつくられると思うのですが、一応その雇用計画の基本をおつくりになる場合は概要をその閣議でやって、そして認めてもらう。各省の大臣の協力を得てきちっと肉づけしたものを閣議でやるというのじゃなくて、労働大臣がもう個別的に各省大臣と、行政機関の長といろいろ折衝して資料をもらって、その上でつくって出す、こういうことになるのですか。その場合に他の大臣が、たとえば経済企画庁なら経済企画庁が、そんなおまえのやることはどうもおれの権限を侵す、そんなことはおれのほうでやるべきことだ、この法案をつくるときもありましたが、そういうようなことは起こりませんか。
  167. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この法案を策定する過程におきましては若干そういった面もありましたけれども、最終的にこの法案ができ上がる段階においては関係の各省全面的に協力をしていただきました。したがって、この第五条の要請の条項にありまする資料の提出等については、これは書かなくても当然この程度のことは関係各省積極的に協力していただけるわけでございますが、問題は後段の、施策の実施について、必要な要請をすることができる、この辺が法制的にも実はいろいろ問題があったのでございます。閣議できめた基本施策のワクの中における実施段階におけるアフターケアの問題でございますので、反論をすれば必要ないじゃないかという意見も当然あるわけでございますが、私どもとしましては、雇用基本計画に基づいて雇用対策を強力に推進していくためにはこの要請権限を担保しておく必要があるという判断で各省の御協力をお願いしたわけでございます。
  168. 滝井義高

    ○滝井委員 閣議で雇用対策の基本計画が決定をする。決定をすれば各省大臣は当然連帯の責任を持って自分の所管の部面における雇用対策基本計画に入っている部面は実施しなければならぬのは当然だと思うのです。それを今度はわざわざ大臣がその部門について必要な要請をまたしなければならぬ、こういうところがどうも労働省の自主性、主体性というものが私は欠けているような感じがするのです。こういうことを一番おもに言わねばならぬところは文部省なり経済企画庁なり通産省だと思うんですよ。そういうところに、やはりまた、閣議できめてそうして計画ができたにもかかわらず、今度はその計画を実施する場合に通産大臣の所管に属することについては通産省に行って、頼みます、頼みます、こう言わなければならぬというのは何かこうおかしな感じがするのです。そうでしょう。通産省の資料をもらってつくってそれを閣議決定をされたら、それは佐藤内閣の施策として各大臣が協力してやるのは当然のことなんです。ところがそれをわざわざこういう文障にして五条に載せなければならぬというところに、いままでの労働省の従属性というわけではないけれども、何か労働施策というものが各省に従属をして自主独立の精神がなかったような感じがするんです。なごりというか、尾閭骨がここに残っておるという感じがするんです。そんなものはしなくても当然のことでしょう。
  169. 有馬元治

    ○有馬政府委員 なごりというような御指摘がございましたけれども、私どもとしましてはこの基本計画を閣議で決定する際にはあくまで基本計画でございまして、これを具体化する場合には、やはりさらに関係各省と具体的な実施の段階において調整を要する問題はいろいろとあるわけでございます。そういう場合にやはりこの要請権限を背景にしながら各省と折衝をして基本計画が十分その目的を達成するように運営をしてまいりたい、かような意味でこの五条を規定したわけでございます。
  170. 滝井義高

    ○滝井委員 普通の法文は雇用対策の基本計画というのができたらその実施計画というのが別に条文にあるのが普通なんです。たとえば産炭地振興の基本計画をつくったら、今度はそれを具体的に産炭地振興の実施計画というのができてくるのが普通なんです。ところがこの中にはその基本計画はあるけれども、実施計画がないんですよ。これはどうして実施計画というのはつくらないのですか。
  171. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この基本計画の中にはそれぞれ実施計画が内容的には含まれておるわけでございまして、基本的なものだけを基本計画の中へ樹立するわけでございますが、必ずその背景には具体的な実施計画があるわけでございます。たとえば三条一項の三号で移転宿舎等を建設するという場合に、これはやはりその年次の具体的な計画がその背景にあるわけでございます。こういったことですべて実施計画がその背景になっておる、含まれておる、こういうふうに御理解いただきたいと思います。
  172. 滝井義高

    ○滝井委員 私はさいぜんこの法案にファンがない、いわゆる推進しようとする勢力がついてこないというのはそれがないからなんです。それで、こういう基本的な計画を立てたら、当面日本におけるこの法案を実施しなければならぬ部面は一体どこか。たとえばそれは石炭の労働者である、石炭離職者である、駐留軍の離職者である、あるいは林野に働いている労働者であるとかあるいは臨就とか日雇い労働者である、現実の臨時工である、社外工である、そういう人たちに対しては職業訓練をやったらいままでよりか訓練手当を百円増額します、住宅もそういう人にはわれわれの政府としては一年に五千戸ずつ五カ年間で二万五千戸つくって優先的に差し上げますとかいうような施策をつくらなければいかぬわけです。それがあってごらんなさいよ。この法案はそれらの労働者が推進力になる。それがないのです。いわば実施計画がない。それはぱらぱらっとありますよ。ぱらぱらっとありますけれども、実施計画がない。だから魅力がない。きわめて抽象的な、一般的な、経済と対等になり、調和ができておるかもしれぬけれども、やはり各省に閣議決定しても協力を要請しなければうまくいかぬということになっているから魅力がない。やはり私はここにそういうものをつくるべきだと思うのです。いまそういうものは石炭でやっておりますと言うけれども、それはやっておってもいいのです。二重になってもいいのです。それはやはり私はつくるべきだと思う。石炭の離職者が今度は新しく合理化によって三万出る。今度新しく出る三万の炭鉱離職者については、これはどこどこに持っていって移動するというなら、その残りは今度は住宅は必ずつくる、そして訓練手当というものは八百円やります、こういうきわめて具体的なものをこの法案に盛るべきだと思うのですよ。そうするとごう然とこの法案の支持者が出ますよ。絶対社会党通せ、何をぼやぼやしておる、こういうことになる。だれも言ってきていない。反対だというほうが多いのです。だから、そういう点でこの法案というものは、基本はあるけれども足がないのです。(「手もない。」と呼ぶ者あり)手もないと言っておるけれども……。だからそういう点で非常に問題です。  時間がないですから、そういう批評だけ加えておいて、もう一つ四章。四章十一条ですね。職業訓練の充実の中で十一条二項に「産業人として有為な技能労働者が養成され、及び確保されるように図らなければならない。」こういうのがあるわけです。現実に技能労働者が百八十万不足しておりますということはわかっておるわけです。それからいま御説明になったように製かん工とかメッキ工とかいうような人たちは、これはなり手がいません、こういう点は重点を置いて特別の職種として扱わなければならぬ、こうおっしゃるわけです。そうしますと、政府としては、百八十万の技能労働者が現実に不足をしておるのだから、この百八十万というものを二カ年なら二カ年、三カ年なら三カ年の計画できちっと実施しますという具体案がここに出てこなければならぬ。それはおありになるのでしょうね。
  173. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 お答えいたします。  先般の委員会でも申し上げましたように、昭和四十年二月の調査によりますと、大体百八十万、技能労働者が不足をしておる。そのうちの一番大きな数は、製造業百五十万ほどでございます。これにつきましては——技能労働者とここで言っておりますのは、生産現場で働きます者についての定義でございまして、必ずしも職業訓練あるいは学校教育だけで補充をしなくても、オン・ザ・ジョブにおきましての訓練でできるものもあるわけでございます。それらの内容を逐一分析をいたしまして、それに応ずるようなものを立てるということでございますが、実はこれは毎年二月にやりまして、そのたびごとに一定の動きがございます。そういうために、訓練局としましては、かつてできました中期経済計画の際に、三十五年から四十三年までの間、大体新しく百十万の職業訓練による技能労働者の確保が必要であるというような数字が中期経済計画のときにできましたので、それに順応いたしました計画を一応立てたわけでございます。しかし、その後におきまして、いま申しますように、百八十万あるいは百六十万という数字が毎年出てまいっておりますのとともに、また新しく経済計画が立てられようというときでございまして、それらに順応をするために、今後におきます技術革新とか需要面からするものをさらに検討いたしまして、近き将来において新しい計画をつくらなければならない、こう思いまして、ただいま事務的にも検討いたしておりますとともに、職業訓練行政全体につきまして、職業訓練審議会においてただいま総括部会を設けて鋭意検討されております。それらの検討とあわせて、今後いま申し上げましたような事情に応ずる訓練計画をつくってまいりたい、かように考えております。
  174. 滝井義高

    ○滝井委員 中期経済計画で三十四年から四十三年まで百十万の不足であったのが、あれからずいぶん養成をしたはずですよね。養成をしたけれども、まだ百十万よりかさらに七十万多い百八十万の不足になってきておる。ちょうど炭鉱の鉱害と同じです。毎年毎年一生懸命に鉱害の復旧をやるけれども、何回計算してみたって、いつ聞いてみたって、八百億あります。ちっとも減らないというのと同じことですね。これではやはり日本の経済計画というのがうまくいかないことになっちゃうわけです。そうでしょう。だから、結局、日本の経済計画をうまくやろうとすれば、来年度の予算編成にあたっては、百八十万の技能労働者、これは二年もやればメッキ工や製かん工というのは一人前になりますからね。そうでしょう。そうすると、二年間で百八十万の技能労働者をつくるような方策をやっぱりやらねばいかぬわけです。それだけの予算をやっぱりやらなければ、経済計画に狂いが出るのだから、ここは大蔵大臣なり佐藤さんに向かって、小平さんが、百八十万の不足を二カ年でこれを一人前にするのだからその金を出せ、これをやらなければ、来年になってごらんなさい、技能労働者の不足は二百万をこえますよ。そうすると、その面から中小企業というものはだめになってしまう。技能労働者を中小企業は雇えませんよ。いま中小企業が一番ほしがっているのは、ブルーカラーの技能労働者ですよ。これがいないから中小企業はどうにもならなくなってきておる。だから、それを確保しようとすれば、やはり予算で養成してやらなければいかぬわけです。これがまた、きょうはやりませんが、後期中等教育と重要な関連が出てくるのです。だからその百八十万の養成計画をぼくは持っておるのかと思ったら、これから職業訓練審議会にかけてやりますというのでは、去年は百十万と言っておったが、もうことしは百八十万になっている。これではまるっきり百年河清を待つ、いつ水が清らかになるかわからぬ。どうも情けないな。  それでは、きょうはこれで、十一条までしか終わりませんでしたが、やめておきます。
  175. 田中正巳

    田中委員長 次会は明八日午前十時より開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後七時七分散会