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1966-04-12 第51回国会 衆議院 社会労働委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月十二日(火曜日)    午前十時五十五分開議  出席委員    委員長 田中 正巳君    理事 藏内 修治君 理事 齋藤 邦吉君    理事 澁谷 直藏君 理事 竹内 黎一君    理事 伊藤よし子君 理事 河野  正君    理事 吉村 吉雄君       伊東 正義君    大坪 保雄君       熊谷 義雄君   小宮山重四郎君       坂村 吉正君    西岡 武夫君       西村 英一君    橋本龍太郎君       藤本 孝雄君    粟山  秀君       淡谷 悠藏君    石橋 政嗣君       大原  亨君    滝井 義高君       八木 一男君    八木  昇君       山田 耻目君    本島百合子君       吉川 兼光君    谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 小平 久雄君         国 務 大 臣 安井  謙君  出席政府委員         総理府事務官         (人事局長)  増子 正宏君         運輸政務次官  福井  勇君         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君         郵政事務官         (人事局長)  曾山 克巳君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局給与課         長)      辻  敬一君         労働事務官         (職業安定局失         業保険課長)  増田 一郎君         日本電信電話公         社職員局長   遠藤 正介君         専  門  員 安中 忠雄君     ――――――――――――― 四月十二日  委員石橋政嗣君辞任につき、その補欠として山  田耻目君議長指名委員に選任された。 同日  委員山田耻目君辞任につき、その補欠として石  橋政嗣君議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 四月八日  身体障害者福祉法の改正に関する陳情書  (第二四八号)  戦争犯罪裁判関係者の補償に関する陳情書  (第二八三号)  農山漁村保健衛生施設整備等に関する陳情書  (第二八四号)  国民健康保険組合に対する定率四割国庫補助に  関する陳情書  (第二八五号)  アルコール中毒防除対策に関する陳情書  (第二九一号)  各種医療保険制度合理化に関する陳情書  (第三一一  号)  奈良県に国立心身障害者(児)のコロニー設置に  関する陳情書(第三  一二号)  日雇失業保険金日額引上げに関する陳情書  (第三一三号)  勤労者福祉対策に関する陳情書  (第三一四号)  国民年金法の一部を改正する法律案成立促進  に関する陳情書  (第三一五号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  労働関係基本施策に関する件(公共企業体等  における労働問題等)      ――――◇―――――
  2. 田中正巳

    田中委員長 これより会議を開きます。  労働関係基本施策に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、これを許します。吉村吉雄君。
  3. 吉村吉雄

    吉村委員 きょう、私は、年中行事みたいになって、たいへん芳しい傾向ではありませんけれども、たいへん世間全般から注目を浴びており、当事者労働者あるいは経営者等が真剣に考えているであろうところの、いわゆる春闘の問題について、特にその中で公労協春闘状況、これらの問題につきまして、労働省当局がどういう考え方を持ってこの春闘対処をし、あるいは公社の各理事者に対する行政当局としての指導、接触に当たっているか、こういう問題について若干質問を行ないたいと思います。  初めに、事務当局からでけっこうでございますけれども、公労協中心といたしますところの春闘闘争状況労使の間に行なわれた団体交渉その後の経緯、今日の状況、こういうものについて労働省把握している実情を御報告願いたいと思います。
  4. 三治重信

    三治政府委員 公労協関係賃金値上げ交渉の経過につきまして、簡単に御説明申し上げます。  昨年十一月、当局に平均七千八百円の賃金値上げ要求をいたしまして以来、団交を各当局とやりましたが、結論を得ず公労委調停申請をしました。一番早く公労委調停申請いたしましたのが国労でございまして、これが二月二十六日、それから一番おそく調停申請いたしましたのが全電通の三月十五日の申請でございます。それで公労委といたしましては、この調停申請を受けまして、一番最初は三月一日の総会から、逐次調停申請された各公労協組合関係につきまして調停委員会をそれぞれ成立させまして、現在事情聴取を一回ないし二回調停委員会がやっておる、こういう状況でございます。
  5. 吉村吉雄

    吉村委員 そういたしますると、関係労働組合のほうでは、それぞれ第三者機関である公労委のほうに調停申請をし、現在調停の作業中であるということでございますが、それまでの間に団体交渉は何回くらい開催をされておるか。これは各公社ごとに大体わかっている範囲でお答えを願いたい。
  6. 三治重信

    三治政府委員 正確な、何回やったかというのは、従来もわれわれ調査はそうやっておりませんが、数回行なわれておることは事実でございます。ただ、従来と変わった点としてわれわれが感じておりますのは、今年の調停申請前の団体交渉につきましては、昨年あるいは一昨年のように、何と申しますか、真剣なというのですか。   〔委員長退席竹内委員長代理着席〕 きわ立った、特別注目すべきよう——ことばはあまりいいことばではございませんが、非常に平穏に団体交渉が行なわれておって、特別に注目すべきような、ことにいままで昨年、一昨年のような、当事者能力というようなことで、または団体交渉中に有額回答をぜひ出せというふうな非常に強いと申しますか、具体的な、または変わった団体交渉は行なわれておらない。お互いに主張を述べ合った程度で団体交渉が終わって、公労協側のいわゆる労働組合側の一方的な調停申請——一方的なと言っては語弊があるかもしれませんが、労働組合側調停申請が、自主的に行なわれたという状況でございます。
  7. 吉村吉雄

    吉村委員 何回ぐらい行なわれたのですか、交渉は。
  8. 三治重信

    三治政府委員 手元の資料によりますと、国労が八回、全電通十一回、それから全林野が七回、全造幣が八回というふうに、大体七回ないし八回行なわれたような記録になっております。
  9. 吉村吉雄

    吉村委員 次にお伺いしたいのは、公共企業体等労働関係法が施行されて以来今日までの間に、いわゆる賃金引き上げの問題を中心にいたしまして、労使が直接交渉によって問題を解決をした例、その回数は、何回ありますか。
  10. 三治重信

    三治政府委員 こういう春闘ような、または全般的な賃金引き上げ交渉につきましては、いままで団体交渉で妥結したという事例はないものと考えております。
  11. 吉村吉雄

    吉村委員 そこで大臣お尋ねをしたいのでありますが、本年の公労協関係賃金引き上げ中心とするところの交渉状況あるいは情勢等については、いま労政局長から説明があったとおりであります。特徴的に言い得ることは、労使の間で団体交渉がきわめて平穏裏にということばを使われましたけれども、平穏裏に行なわれて、そしてたいした労使の間の意見の対立もないままに、あるいは意見の十分な交換のないままに調停段階に移されておる。いま一つは、公労法施行以来今日までの間に、賃金問題等中心にしたところの労使の紛争の問題というものは、労使の直接交渉によって解決をした例は皆無である、こういうことでございます。  大臣が参議院の予算委員会あるいは衆議院(しゅうぎいん)の予算委員会その他の場所で述べておりますことは、労使の問題は、賃金問題といなとを問わず、直接交渉によって解決されることが望ましいということを、大臣は再三にわたって言明をなされております。ところが、公労法関係の規制を受けるところの労使の問題については、いままで一回も直接交渉によって解決されない。本年のごときは、たいした議論もないままに調停段階に移されている。こういう状態は一体望ましい方向であると大臣考えられておるかどうか。もしそうでないとするならば、どういうふうにしてこの公労協関係労使の問題は直接交渉によらしむべきか、その指導方向労働大臣としてどうあらねばならないのか、どのよう考えておるか、この二点について、見解をまずお尋ねをしたいと思います。
  12. 小平久雄

    小平国務大臣 労使間の問題が、それはもちろん賃金問題も含めてでございますが、原則として労使間の話し合いによって自主的にあるいは平和的に解決されることが望ましいということは、私は再三申し上げておるとおりでございまして、公労協関係におきましても、原則としては私は同様の考えを持っております。  そこで、本年の場合においても、労使間の話し合いで問題が解決せずに公労委に持ち込まれておるという姿が望ましいかどうかということでございますが、これもまた、一般的に申しまして、労使間の話し合い解決することが一番望ましいのでありますが、それがどうしても解決ができない場合には、一般労働委員会なり、あるいは公労協の場合ならば言うまでもなく公労委であるとか、そういった第三者機関調停、あっせんということも、これはもちろん制度として認められておるのでありますから、ここに問題が持ち込まれるということは、私は、やむを得ざる場合においては、これはいたしかたのないというか、むしろ見ようによれば、一つの平和的な事の処理でございますから、望ましい姿である、こう言うこともできます。第二段階としては、これはやはり望ましい姿だ、さように存じます。しかしながら、これもまた申し上げるまでもなく、公労協の場合におきましては、一般労使関係と異なりまして、それぞれの企業体において、あるいは法律的にあるいは予算的に、ある程度の拘束のあることも、御承知のとおりでございます。いわゆる公共企業体当事者能力という点に若干の制約のあることも御承知のとおりでございますので、どうしても民間における場合よりも、より多くの場合において、公労委に問題が持ち込まれるということが多くなりがちであるということも、私は、実際問題として、ある程度やむを得ないところかと考えております。
  13. 吉村吉雄

    吉村委員 私の質問をいたしておりまするのは、大臣常々労使の問題というのは、労使の直接交渉によって解決されることが望ましいということを言明されておる。だといたしますならば、私は、一度や二度は調停段階等があってもいいだろうと思うのです。ところが、公労協関係賃金問題については、この法律が施行されたのはたしか昭和二十四年だと私は記憶をいたしておりますが、二十四年以来今日までの間に、一回として労使の直接交渉によって解決されたことがない。こういう事柄については原因というものがあるはずだ。この原因排除なくしては、労働大臣が強調するところの、労使の直接交渉というものによって問題を解決する、それが好ましいということは、実現をされないということになる。ですから、こういったほとんど十何年もの長い間、直接交渉によって全然解決されたことがないというこの事態に対して、直接交渉をもって解決することが望ましいとする大臣の態度からするならば、何らかの具体的な、直接交渉への道を開く、直接交渉によって解決をし得るような、そういう措置政府全体としてとっていかなければ、言明は単なる願望だけに終わってしまう、こういうことになるのではないかと思います。望ましいことは、やはり具体的な政策の裏づけによって、それが実現され得るようにしていくのが、行政当局責任のあり方だと私は思います。ですから、いまのよう公労協関係のきわめて特異な状況について、これを直接交渉の場に乗せて問題を解決していこうとすれば、あるいは解決させなければならないとするならば、その障害になっている問題について、どういうふうにして排除をしていこうとしているのか、あるいはその原因をどのよう把握をされておるのか、この点をまず大臣から明らかにしていただきたい、こう思います。
  14. 小平久雄

    小平国務大臣 ただいまお尋ねの点は、先ほどもちょっと触れましたが、公共企業体、またその従業員からなる公労協の問題につきましては、これは法律上あるいは予算上少なくも現行制度にはいろいろの制約がある、こういうことが特色であると思います。そこで結論的に申しますと、私は、結局、公共企業体当局のいわゆる当事者能力という問題であると思います。それが現行法のもとにおきまして、法的に、あるいは予算的に制約があるわけでございますが、その制約は、またしかしながら公共企業体そのもの一体どうあるべきかという問題であり、一方においてはまた国会の予算審議権との関連もあるわけでございまして、そういう点で、今後この公共企業体がどうあるべきか、あるいは当面の問題点としては、公共企業体当局のいわゆる当事者能力というものがどうあるべきかということにつきましては、御承知のとおり、いろいろ重要な問題が関連いたしますので、将来の問題といたしましては、公務員制度審議会におきまして、この間の問題を御審議いただこう、こういうことで、現に御審議をすでにお願いいたしておる段階でございます。ただ、この間にあって、政府考えとしては、いろいろ制約はございますが、しかし、全然当事者能力現行制度のもとにはないということはございませんから、できる限り現行制度のもとにおいても当事者能力を発揮して、団体交渉に応じ、またできるだけ団体交渉でまとまるものならば、ぜひひとつまとめてほしいものだ、こういう考えで臨んでおるわけでございます。
  15. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣ものごとは、ある程度までは、客観的な事実の中で真実を発見していくことが必要だろうと思うのです。公労法が施行されるまでの経緯等考えてまいりますると、実はストライキ権というものをこの法律によって制限をする。マッカーサー書簡によってそういう形になりまして、ストライキ権を制限するその代償機関として調停あるいは仲裁、こういう制度がつくられた。しかし、この調停なり仲裁裁定というものがほとんどといっていいくらい完全に実施をされたという例がない。昭和三十二年までの仲裁裁定というものは、完全に実施をされたという例はほとんど乏しい。昭和三十二年以降労働委員の選出の方法が変わって以降は、なるほど仲裁裁定というものは実施をされるようになってまいりました。  ここで問題になりますのは、労働者公労法なら公労法というものについて一体信頼感を持って見詰めているのかどうか。もし信頼感というものを失わせたとするならば、公労法運用あるいは立法の経緯等から考える場合に、労働者をして公労法に対する信頼感を失わせた最大原因というものは、初めの仲裁裁定が完全に実施されなかったこと、あるいはそれ以降の仲裁裁定もまた完全に実施をされなかったということ、こういう経緯を経て今日に至っているものと私は理解をいたしております。  ところが、その後、石田労働大臣の就任以来、仲裁裁定は尊重するというたてまえをとって、その額そのものに非常に問題はありましたけれども、あるいはこの仲裁裁定が出される経緯までについてもいろいろ問題はありましたけれども、なるほどそれ以降は仲裁裁定なるものは実施をされるようになりました。しかし、根本的には、労働者要求が、民間賃金との比較等から考えてみまして、これを妥当なものとして了承をするというような額が出されたという例は乏しい。こういうところに労働者政府あるいは公労法運用について疑問を深く持っておることはいなめない事実ではないかと思います。  さらに、先ほど冒頭にお尋ねをしましたところが、本年の公労協関係団体交渉というものは、八千五百円の賃上げ要求をしながら、しかもほとんどといっていいくらい交渉らしい交渉というものが行なわれないで、そうして直ちに調停段階に移された。この経緯一体何を物語るのか。これはおそらく団体交渉の衝に当たるところの組合当事者、あるいは公社理事者、こういった方々が団体交渉に対する熱意というものを持っていない、団体交渉によって問題を解決するという自信を持っていない。こういうことの繰り返しが、本年わずかの回数交渉によって直ちに調停段階に移さざるを得なくなっておる。こういうことになった最大原因は、そういうところにあるのではないかというふうに私は考えます。交渉によって解決をしていかなければならない問題が、交渉をしても解決しないではないかという気持ちを両当事者が持って問題に対処をしている、そういう気持ちが起こったとするならば、これは大臣常々当事者間におけるところの解決が望ましいと言っても、現実にはそれは不可能になってくる、こういうことになるのではないかと思うのです。  私は、客観的に問題を把握してもらいたいと申し上げておるのは、実はそういう経緯というものを考えた上で、いままで公労法がどういうふうに運用されてきたか、本年の団体交渉がわずかの回数によって直ちに、しかも労使意見が十分戦わされないままに調停段階に移されたというのは一体どこに原因があるのか、こういうことを考えて、そして本来の意味での当事者能力を持ったところの、あるいは当事者同士交渉によって解決し得るような、そういう具体的な措置というものをつくり上げていく、こういうふうにしなければならぬではないかと思うのです。そうでないと、いままでの公労協関係闘争が示しまするように、ある期間の団体交渉、そして調停、そして仲裁裁定、こういうことを毎年毎年繰り返しておるのです。これでは団体交渉熱意を持って当事者同士解決していこうといっても、とても解決できないということになる。これはこの公労法の中にも、あるいは関係する公社法の中にも重要な欠陥があればこそこういう事態になっている、こう見なければならぬだろうと思います。そういう点を排除をしていかなければならない。そこでその具体的な方法については、いまの大臣の答弁によりますると、公務員制度審議会検討をわずらわしておる、こういうお話でございます。これもけっこうなことだと思います。しかし、御存じのように、一昨年の春闘の中で当時の池田総理太田総評議長との間に春闘を収拾するための了解事項確認が文書をもって交換されておる。その中に、公労協関係公社当事者能力の問題については十分これを検討していくということを約束されたはずだ。その約束に従って政府関係次官会議なるものを設置したことも大臣承知のとおりだろうと思います。ところが、この次官会議なるものが結論を得ないままに、今度は公務員制度審議会のほうに問題が移行された。こういう経緯をたどっております。これを客観的に労働者の側に立って考えてみるとしまするならば、政府当事者能力の問題について、政府自体責任においてかくする、こうしたいという方針を打ち出すことをやめて、問題の本質的な解決を制限せしむるというように見られてもまたやむを得ない、こういうことになるのではないかと思うのです。政府あるいは労働省、あるいは公社当局労働者の側から信頼をされない中でほんとうの意味での団体交渉が成立するはずがない。労使関係が安定をし得るはずがない。こういうことになるだろうと思います。ですから、私はこの公務員制度審議会のほうに問題を移していっているという今日のその事態については了解します。その意図は一体どこにあるのか、こういうことについて労働者側から見れば、きわめて不信感がみなぎっておる。遷延策ではないかという不信感もある。しかもこの公務員制度審議会公社当事者能力の問題について結論を出す時期というものは相当長い期間かかるのではないかというふうに考えられる。だとするならば、その間は一体どうするのか。その間は池田太田会談によるところのメモに従って、政府責任においてこの当事者能力の問題を一体どうするのかということは政府自体が打ち出さなければならない責任があると私は思うのです。こういう事情については、労働大臣はどうお考えになっておりますか。
  16. 小平久雄

    小平国務大臣 公労協関係賃上げ要求についてのいきさつというものは、大体いま先生お話のとおりに私もなっておると思います。ただ、仲裁裁定につきましては、これも先生からお話がございましたが、三十一年からはこれを裁定どおり実施をいたしておること、これも御指摘のとおりでございます。  そこで今回の春闘にあたっても、団交が十分に行なわれないままに公労委に問題が持ち込まれたということは、結局両者に団交を真剣にやろうという熱意がないじゃないか、そういうことはどうか、こういうことでございますが、私もその点は、この団交がまずもって十分に行なわれる、どちらも熱意を持って団交をやる、こういうことがやはり本来の姿であると私も考えるのでありまして、そういう点から見れば、はなはだ残念なことだと思います。しかし、ただ、これも実際問題としますと、先ほども申しましたように、各企業体理事者にはできる限り当事者能力を発揮して団体交渉に臨むように、こういうことを政府も御承知のとおりかねがね申しておるのでありまして、ただ、時期的に見て、御承知のとおり公共企業職員賃金等は、物価あるいは公務員給与、さらには民間賃金といったようなものを勘案してきめるというたてまえに法的にもそうなっておりますから、あるいはそれらの事情把握ということについて、各企業体理事者が時期的にまだ熟していないというか、資料がまだ整わない、そういう状況のもとにおいて団交が行なわれるというような場合においては、なかなか理事者のほうでも一方においては法の制約もありますから、明確な回答もできかねるというよう事情もあるのじゃないかというふうにも解釈ができるのでありまして、そういう点で、もしあらゆる資料が整っておるのに、また法的にも相当当事者能力が発揮できる段階にあるにもかかわらず、当事者能力を発揮しない、つまり、団交熱意を持たぬというようなことであっては相ならないと私は考えておるのでございます。  それから池田太田会談お話も出ましたが、その点につきましても、政府としては昨年二月であったかと思いますが、これまた関係次官会議等も開きまして、現行法律予算等のもとにおいては、当事者能力相当制約もあるが、しかし、先ほど申しましたが、決してゼロというわけではない。現行制度のもとにおいて、でき得る限り理事者当事者能力を発揮して、現行制度運用によってこの交渉に臨んでほしい、こういう趣旨の申し合わせを当時いたしておるのでありまして、そのことも各理事者承知のはずでございますから、私どもとしては、当面はこの線に沿って各当事者がそれぞれの立場において努力をしてもらいたい、かよう考えておるわけであります。  公務員制度審議会においては、将来のこの当事者能力ということについて、どうあるべきか、こういうことで御検討をいただいておるわけでございまして、それというのも、いま先生が御指摘ようないろいろな現行法律なり予算なりの関係からしますならば、少なくともこの賃金問題、ベースアップの問題等については、いろいろ問題もございますし、スムーズにいかぬ、当事者能力が発揮できる面も十分ではないという面も確かにありますから、そういう点も含めて御検討をいただいておるわけでありまして、ただ、さらにさかのぼれば、公共企業体そのもの一体どうあるべきかという、その本質的な問題にも結局は立ち入らざるを得ないのではないかと思いますが、いずれにしても、先生指摘ような従来の経緯もございますから、そこらのところは十分しんしゃくして、そして公務員制度審議会において、現行制度は少なくとも改善するという方向において私は御検討くださるものと期待いたしておるのであります。当面政府がどうするかということは、先ほども申しましたが、いま審議会に御検討いただいておるところでございますから、先ほど来申しますように、現行制度のもとにおいてできる限り当事者能力を発揮してやっていただく、こういうことで進むほかなかろうと考えております。
  17. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣のいまの答弁は、いろいろ説明が加えられましたけれども、要約して、将来の公社当事者能力問題等については、関係法案その他の検討も含めて、公務員制度審議会のほうで検討してもらう、それまでの間については、できるだけ各公社当事者能力を発揮していただいて、そして当事者の双方の交渉あるいはその範囲の段階において問題の処理に当たってもらう、こういうことのようでございます。  運輸省、郵政省、電電公社、それぞれ関係者が出席しておるようでありますから、お尋ねをします。先ほど大臣の答弁の中にも、本年の団体交渉はわずかの回数で、そして調停段階に移された。十分交渉が煮詰まったよう考えられないことは残念である、こういう趣旨の答弁がございました。労働大臣をして残念なことであると言わしめなければならないようなそういう交渉しかできなかったという原因は、一体どこにあるのですか、それぞれお尋ねをしたい。
  18. 福井勇

    ○福井政府委員 運輸省の立場におきましてもいろいろ努力してまいりましたが、条件が十分に整わなかった等のこともございまして、先ほど申しましたように、国鉄としては八回の交渉を持ったわけでございますが、なお御指摘のいろいろの内容につきましては、詳しく鉄監局長から御報告申し上げたいと存じます。
  19. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 電電公社におきましては、ただいまの賃金問題につきましては、昨年の暮れから、回数にいたしますと大小含めまして二十回程度の団体交渉を持っております。御承知ように、電電公社の場合には、昨年の暮れに民間賃金相場が整ってから回答するという、いわゆる第一次回答をいたしております。ただいま申し上げました二十回の団体交渉におきましては、その基礎になります数字的な議論も詰めたわけでありまして、私どもといたしましては、例年に比べますと相当詰めた団体交渉をやってまいったつもりであります。ただ、先月の十五日に、労働組合のほうから調停申請をされましたので、その後の団体交渉は中断いたしております。
  20. 竹内黎一

    竹内委員長代理 吉村委員に申し上げますが、郵政省関係は、目下呼んでおりますから、ちょっとお待ちください。
  21. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの答弁では、どうも私の質問に対する具体的な答弁のていをなしていないと思います。団体交渉が何回か行なわれたことは、私も先ほど三治局長の答弁によって知っておるわけです。ただ、先ほど労働大臣の答弁の中には、十分その交渉が煮詰まった形になっていないということは残念なことであるという趣旨の答弁がございましたので、十分この交渉を煮詰めることができなかったという原因について、各公社当事者は、一体どのようなことが原因であると理解しているかをお尋ねをしたいと思います。
  22. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 私どもといたしましては、ただいまの先生の御質問に対してお答えをいたしますと、一つは時間的な制約がございまして、私どもがいわゆる賃金回答をいたします段階まで、現在の段階では、まだ至っておらないというところがその原因であろうと思います。
  23. 吉村吉雄

    吉村委員 公社としての、回答し得るそういう条件が整っていない、こういう趣旨のようでありますけれども、これはまた一体どういう理由なんですか。
  24. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 私ども、これは団体交渉の席上でも何回もお答えを申し上げておるのですが、公社の総裁が賃金をきめます基準と申しますのは、公社法の三十条に掲げておる基準が唯一のものでございます。この公社法の三十条によりますと、公務員民間労働者、その他の事情ということ——私のほうで三本の柱と申しておりますが、そのことが公社の総裁が賃金を判断する重要な要素に設定されておる。私どもが現在までの団体公渉の過程で公務員賃金の問題あるいはその他の事情の中の物価問題等については、相当詰めて議論をしてまいりました。民間賃金という問題につきましては、先ほど申し上げましたように、民間賃金相場というものを見ましてから電電が全体的に判断をすることになりますので、そういう段階まで今日の段階は来ておらない、こういう意味であります。
  25. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣お尋ねをしますけれども、実は昨年の公労協関係状況というものは、一昨年あるいは一昨々年、そして本年とだいぶ様相が違ってきております。昨年はどういう状況であったかといいますと、やはり時期は同じでありましたけれども、五百円かの有額回答をそれぞれの公社がいたしました。この有額回答は、時の労働大臣言明によりますと、池田太田会談のそのメモに従って当事者能力というものを現行制度の中で最大限発揮をした、すなわち前進をした政府の態度である、それがいままでにないところの有額回答となってあらわれたものであるということを、この委員会でも、あるいはその他の場所でも再三にわたって言明をされました。従来まで全くのゼロ回答でありましたから、なるほど昨年の五百円の有額回答というものは、その限りにおいては、あるいは前進をしたものと理解をしてもいい部分があったと思います。ところが本年になってまいりますと、ろくな交渉もしない。ろくな交渉もしないで、しかも去年と同じよう民間賃金関係というものは、必ずしも——民間賃金状況は去年と同じ状況にあると私は思うのです。そういう中で、本年については、全く交渉が煮詰まらないままにゼロ回答に近いようなそういう態度になってきた、去年前進をしたものがまた二歩後退をした、こういう形になってきたのではないかと思うのです。これでは、当事者能力の問題について政府現行制度の中でも努力をしてきたのでありますという政府の答弁とはだいぶ違って、後退をしたかっこうになっておる。この違いを労働大臣はどのように理解をし、どのよう事情を説明しようとするのか、お尋ねをしたい。
  26. 小平久雄

    小平国務大臣 いまお話ように、昨年は最初五百円くらいの有額回答をしたようでありますが、今年はまだ有額回答が出ていないというのはむしろ後退じゃないか、そういう御質問でありますが、私は必ずしもさようにもとっておらないのであります。というのは、昨年の五百円の有額回答、最初の回答がそうであったようでありますが、それも各企業体としてはいろいろ御検討の上になさったものだと思いますが、しかしその後逐次、これも調停委員会段階回答が変わっていったようでありますし、今年はおそらく私は昨年以上に各当事者がむしろ真剣に考えておる、そういう関係から有額回答が若干おくれておるのじゃなかろうかと、これは推察ですが、考えておるわけであります。というのは、率直に申しまして、私はたとえば三百円だとか五百円だとかという回答が、同じ回答としても、まずまず世間から見て、その程度では、ぎりぎりの回答であると昨年の場合にはたしてとられたかどうか、そういう点から考えますならば、私はやはり回答をする以上は、世間から見てももうぎりぎりで、これは各企業体もほんとうに熱意を込めてやったのだ、こうとられる程度のものは有額回答するならばやはりしてほしいものだ、これは私の感じでありますが、そういう考えを持ち、また期待もいたしておるのでありまして、世間の常識といいますか、一般的に考えてあまりに低い回答じゃないかというよう回答は、かえって交渉を円満にやっていくという点においていかがなものか、私はさよう考えておるのです。ですから、そういう感じからいたしますならば、時期的にはなるほど若干おくれておるかもしれませんが、それだけ各当事者が真剣に検討をいましてくれておるのであろう。先ほども話が出ましたが、また私自身が申しましたが、法の規定するところによって、公務員給与であるとかあるいは民間給与関係であるとか、物価の関係等も、各当事者としてはそれを考慮してきめなければならぬのですから、いわゆる民間春闘相場もまだ御承知のとおりきまったのは幾らもないようですから、そういう点からして、時期的にも今日では有額のぎりぎりの回答をすることが困難だ、こういう事情にあるのではなかろうか、ですから、それらがそろって、各公社当事者能力を十分発揮できる段階に至りましたならば、先ほども申しますように、各当事者がもうぎりぎりのというか、最大限のできる限りの有額回答をしてほしいものだと私は期待しております。
  27. 竹内黎一

    竹内委員長代理 吉村委員に申し上げますが、出席要求の郵政省曾山人事局長が見えております。
  28. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの労働大臣の答弁は、石田前労働大臣をここに並べて答弁をしたとすれば、これはきわめて対照的なお答えになるだろうと私は思います。いま私が問題にしておりますのは、しかも当時政府が強調しましたものは、額の問題ではない。私も五百円という額の問題を中心にして議論をしようとしておるのではないのです。池田・太田メモのその申し合わせ了解事項に従って政府は昨年どういうことを言ったかといいますと、そのメモに忠実たらんがために、その忠実であった証左として本年は——本年というのは去年です。従来はゼロ回答でありましたけれども、今年は有額回答をしました。このことは、現行制度の中で政府当事者能力の問題について真剣に努力をした、こういうことの実証でございますという態度であったわけです。私は額そのものについては、いま労働大臣も言外ににおわしておりますように、こんな五百円なんという額を回答するということは不見識もはなはだしいと、ここで申し上げた記憶がございます。ところが当時の政府の態度というものは、額の問題ではない、制度運用の問題についての政府の努力、政府熱意がかくあらしめたということを買ってもらいたい、こういう回答であったのです。その限りにおいては、ゼロ回答から有額回答になったわけでありますから、それはその努力を買う必要を感じたのでありますけれども、いまの小平労働大臣の答弁では、そんな額で問題が解決ようとは考えられないので云々ということになりました。これはまさに政府の態度が一貫してないと私は思うのです。いま私がお尋ねをしているのは、当時者能力の問題について、現行制度の中で政府がどのように運営し、また労働代表との間に約束をした事項をどのように具現化し前進をしていくか、そういうことについて私は政府の態度をお尋ねしておるわけでございますから、昨年の五百円の回答がなされた額そのものはきわめて私どもも不満でありましたけれども、それはそれなりに、公社のほうからの有額回答でありますから、前からすれば前進をしたという理解をする。本年の場合においてはいまだに何らの意思表示もなされていない。いないばかりか、交渉それ自体も、三治局長の答弁をもってすれば、きわめて平穏裏にスムーズに交渉が行なわれて、調停段階に移されました、こういうことでございます。これでは、当事者同士交渉によって解決をしていこうとする、それが労使関係の本来的なあり方だと主張する労働大臣の本旨にも沿わないでありましょう。あるいは当事者能力の問題についての政府の一昨年言明、あるいは昨年の言明等の趣旨からしましても、むしろ後退をしたという印象を客観的に受けざるを得ない、こういうことになるのではないかということについてお尋ねを申し上げておるわけですから、それはそうではない、一生懸命公社のほうでも解決するために努力をしているのだ、こういうお話だとしまするならば、それは団体交渉も十分なされ、あるいは険悪な空気になって対立することがあってもいいと思うのです。それくらいの熱意のあるところの団体交渉があってしかるべきだと思うのです。そういうものがなされないままに、きわめて事務的に何回かの交渉が終わった、すぐ調停段階に移った、こういうのがことしの特徴だとするならば、それはもう政府当事者能力の問題に対する解決の前進の姿勢というものがそこには全然見当たらない。公社もまた、現在の制度のもとでは幾ら交渉をやってもどうにもならないから、組合さん早いとこ調停に移してください、こういう意思がお互いに調和し合って、きわめてスムーズに調停段階ということになったと理解せざるを得ないと思うのです。この私の理解が客観的な理解でありますけれども、労働大臣は違っているというよう考えられますか。
  29. 三治重信

    三治政府委員 ちょっと事実の関係を御説明申し上げますが、去年はこれは両当事者の問題ですから、ことしについて有額回答公社として出さないのはいかにも政府の怠慢、後退のような御発言でございますけれども、やはり公社当局それぞれ労働組合の主張、要求というものがどの辺にあるか、どういうふうにして円満に交渉を進めていこうか、こういう態度があるわけでございます。昨年はことに全電通中心としてどうしても有額回答をできるだけ早くほしい、それでも煮詰まらぬにしても、あと公労委のごやっかいになるにしても、どうしてもほしいという非常に強い組合側の要求があったということが一つ原因であります。  もう一つ、従来有額回答的なあるいは公社当局団体交渉の場で具体的な回答をいたしました基準は、過去三年来民間で採用の初任給賃金が非常に上がりました。そうすると、民間給与の中でも初任給給与が非常に上がった事情はわかる、したがって、回答も初任給を中心にして、民間が初任給をそれだけ上げるならば、各公社当局の初任給もそれに準じて上げざるを得まい。そうすると、大体最小限はどの程度になるだろうかという回答——ことに昨年は非常に初任給の上がり方が強かった、それを直していくと大体一人当たり平均五百円くらいになるだろう、こういうことで基準をきめた。やはり目星でやるにしても、何か基準がなければならないわけであります。しかし、今年は調べたところ、民間の初任給の引き上げは取るに足らないくらい非常に少ない。やはりそういう形式的なことよりか実質的にいこうじゃないか。そうすると、公社当局の態度は、やはり民間賃金の動向を見て、民間の主要産業についてある程度賃金回答なり何なりの状況がわかれば、その上で回答します、こういう従来にない実際の当事者間においては相当積極的な態度を出している。これが具体的な回答は出ないけれども、スムーズに調停段階に行った一つ原因ではないか、こういうふうに事実の関係を申し上げておきます。
  30. 吉村吉雄

    吉村委員 いまの三治局長の答弁によりますと、あくまでも民間賃金の傾向というものがわからないということになれば、公社のほうでも回答が出し得ない、したがって調停段階にスムーズに移ったということは実はそこに原因がある、こういう見方のようでありますけれども、私はそれも一半の、ごく一部の理由にはなるかとは思います。しかし全般的に、もし公社も腹を割ってやるとするならば、交渉段階解決した例がないといういままでの歴史、現行制度のもとで、たとえば予算総則によって縛られておる、こういう状態の中で公社回答が出し得ない。私の知る限りにおきましては、国鉄のごときは国鉄当事者として交渉がある程度解決、妥結をした状態があった、その場合に政府は国鉄公社賃金がそれによって解決をすることは他の公社賃金にも影響を与える、公務員賃金にも影響を与えるということによってそれが実行を妨げるよう措置をとった例さえ私は記憶をいたしております。すなわち、いまの状態の中で、公社関係賃金の問題というものについて一番その権限を持っているものは政府の態度、政府の姿勢それ自体である。いわば制度に名をかりて、政府公労協関係賃金というものを抑制していこうとする、操縦していこうとする、こういう態度に終始をしてきたところに、今日公労協関係労使関係というものがきわめて不安な状態におちいっている最大原因がそこにあると私は考えております。ですから根本的な原因というものは、三治局長がこういう理由によって本年はというお話がありましたけれども、それは一部の理由であって、根本的な原因というものはあくまでも当事者能力の問題だ、こう理解せざるを得ない。各公社の見解はどうですか。これは簡単でいいです。
  31. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 先ほど労働省からお答えがございましたように、今回の場合には去年よりもむしろ非常に明確に、私どもとしてはできるだけ現在の制度のもとで持っておる当事者能力というものを発揮できるようにやってきたつもりであります。それで昨年の例もただいまお話がございましたように、二月に有額回答を五百円いたしましたのは、初任給の補正ということが中心でございます。ことしの団体交渉の中におきましても、私どもは見込み初任給の議論もいたしております。それから昨年はまた調停段階で別の回答調停委員会に出しておりますが、私は自主性と申しますか当事者能力の問題は、団体交渉の中でかりに有額回答をすべき場合の時期の問題は、あまり影響がない、関係はないことじゃないかと思っております。ただ、昨年の例がございますから、かりに何も出さないで今日までくればあるいはそういう誤解を労働組合のほうにも与えたかもわかりませんが、私どもの場合には、昨年の暮れに民間賃金が出てから回答するということは明確に申し上げておるわけであります。その中で、いま申し上げたように見込み初任給の議論をいたして、やってまいっておりますので、本年は昨年よりはるかに進歩した形でいっておると思っております。
  32. 吉村吉雄

    吉村委員 質問に答えていただきたいのです。経緯先ほどお聞きしましたから。私が問題にしておりますのは、現行制度の中で公社法あるいは予算総則、こういった関係があって、あなた方の当事者能力というものが十分に発揮でき得ない、こういうことが根本的な原因になっているのではないか、あるいはそのことについては政府もある程度認められておる、こういう実情にあるわけですから、もしそうだとお考えになったとするならば、現行制度ということが実は障害になっております、そういう答弁がなされるならばそのまましてもらいたい。あるいは現行制度は何ら障害になりませんと理解をされるならば、そういう回答を得たいということですから、簡単にその回答をしていただきたいと思います。   〔竹内委員長代理退席、委員長着席〕
  33. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 最初におくれましたことを深くおわび申し上げます。  ただいま端的に説明しろというお話でございますので、郵政省の考えを申し上げます。  私どもいわゆる当事者能力の問題につきましては、組合側と賃上げの問題につきまして団体交渉をするにあたり、いわゆる有額回答をする、しない、またその額等の問題につきましては自主的に十分判断をする能力を持っておるというぐあいに考えますので、そういう意味におきましては当事者能力は十分完全に持っておると理解をいたします。ただ、先生指摘ように、予算総則にありますところの給与総額等の制約によりまして、その額の問題等につきまして制約があることは十分認めます。そういった意味におきまして、当事者能力もその実施にあたっては制約を受けておるという意味におきましては、必ずしも完全な当事者能力でないということは言えようかと思います。
  34. 吉村吉雄

    吉村委員 あなたのいまの答弁は、回答し得る当事者能力はあるけれども、しかし予算総則その他によって支障をこうむるので、完全な意味での当事者能力はない、こういうことになるようでございます。実は私どもがこの国会の中で議論をしますのは、労使関係というものは何といいましても当事者間で交渉し得るそういう能力をお互いに備えた上で、その信頼感の上に立って労使関係というものが前進をしていく、そういう慣行を確立されなければならない。公労協関係の問題について最も遺憾に思うのは、公労法が施行されて以来十六年にもなるのでありますけれども、賃金の問題について労使当事者間の交渉において解決をした例は一回もないのです。ないということは一体どこに原因があるのか。いまあなた方が半分程度認められたように、現行制度の中では公社当事者能力制約を受けているというところに問題がある。それはそれだけで済めばいいのです。重要な事柄は、そのことのために労働者の側が公労法なら公労法という法律信頼し得ない気持ちが生まれてくる、あるいは公社当事者能力というものについて信頼するわけにいかないという気持ちが生まれてくる。そういう中におけるところの団体交渉というものは一体どれだけの価値を持つか。そこには不信感が相互にわいてくるだけだ。不信感のわいてきた中で労使安定というものを期するわけにはいかないであろう。したがって、公労法の問題というものは非常に大きな労使不安の原因になっておる。これはあなた方も否定するわけにはいかないだろうと思います。ですから、労使の安定、こういうものをはかっていくためには、その障害となっているところの当事者能力というものについては、一刻も早く障害点を解消するように努力をする、こういうふうにしていくのがぜひとも必要なことだ。これなくしては、公労協関係ばかりではありませんけれども、特に公労協労使関係というものは安定しない。労使関係の安定なくして生産の向上はあり得ない、能率の向上もあり得ない、こういうことになるでありましょう。ですから、こういう点については公社のほうもあまりかたくなな気持ちにならないで、ここはこう直してもらわなければ困るのですということを政府なら政府のほうに強く要望する、働きかける、こういう態度を郵政省も国鉄も全体がやはりなさらなければならないと思うのです。それが行政に携わっているあなた方労使問題を担当する人たちの立場でなくてはならないと思うのです。あたかも、そう言えば政府からおこられるかもしらんみたいなつもりで、そうして漫然と日を過ごしておるものですから、いつまでたっても問題は解決しない、こういうことになっているのではないかと思うのです。公社当事者のこれらの問題に対する対処のしかた、その姿勢というものは非常に残念なことが多い、遺憾なことが多い、こう私は言わざるを得ないと思います。  そこで、大臣に重ねてお尋ねをいたしますけれども、私どもは野党だからといって労働者の立場に立ってのみ問題を議論しようとしているのではない。一番大切な事柄は、その法律というものが国民から信頼をされるという慣行、そういう慣習を形づくっていかなければ政治というものは発展をしないであろう、この法律のもとでは労働者ばかりでなしに公社の担当者といえども十分当事者能力は発揮できない、こういうことを言わざるを得ないという状態になっておる。しかも、これは一年二年じゃないのですよ。十何年かにわたってこうなんです。それを政府責任を持って何とかするという、これはずっと前からそういう態度を示しておって、公然とそれが労働者代表との間に約束されたのは一昨年だ。そして昨年初めて有額回答という事態になってあらわれた。有額回答それ自体は額の問題ではない。当時石田労働大臣も額の問題ではないということを強調された。有額回答をするというところに政府の本問題に対する前進的な姿を買ってもらいたいということを強調された。私はそれ自体については十分理解をするという立場をとっておるのです。本年につきましても、それをさらに一歩前進をさせるよう指導のしかたを労働大臣はなすべきではなかったか。ところが、ただ漫然と団体交渉が終わって調停段階に移されたという状態のままです。しかし、これからでも決しておそくはない。去年の例からすれば決しておそくはないのです。大臣公社の担当者のほうあるいは理事者のほうに対して労使関係のあり方というものについての基本的な立場を十分徹底をさせた上で、そうして当事者間の交渉の中で解決をしていくという大臣の願望ともいうべきところの再三言明をされておることを具体的に実現をするように努力をしてもらわなければいけない、こういうふうに思います。と言ってみましても、現在はすでに調停段階に移されました。ここでお尋ねをしたいのは、いままでの公労協関係賃金問題というのは調停段階解決をされた例は乏しい。ほとんどと言ってもいいくらい仲裁段階にまで移されていっておるのが今日までの歴史的な事実だと思います。調停段階解決をした例は、これも私の記憶が間違っておるかどうかわかりませんが、賃金問題の場合にはせいぜい半分以下くらいではないかという気がします。あとは仲裁段階解決をする、解決せざるを得ないということで解決をした、こういう例でありますけれども、そこでお尋ねしたいのは、労働大臣は、本年の公労協関係賃金問題はいま調停段階に移されたのでありますけれども、できるだけ調停段階解決するということのほうに努力をしてもらいたいと思いますけれども、あなたの考え方は一体どうですか。
  35. 小平久雄

    小平国務大臣 ただいまの春闘関係からいたしますならば、団交段階解決せずに、組合側の申し出によって調停段階にいっておるわけでございますけれども、いわば第二段階として調停段階解決ができるということならばそれが一番望ましい、今日の経過からすればそう申し上げることが一番よかろうと思います。仲裁までいかずに、調停段階解決ができますならばそれが望ましいことである。
  36. 吉村吉雄

    吉村委員 あなたの考え方は、調停段階でなるたけ解決したほうがいいと思うというお話でありますけれども、そのために具体的にどういうよう指導、どういうような働きかけをしようとなさるのか。ただ漫然とこうあったほうがよろしいと思いますという願望ばかり常に述べられても困るのです。その願望を実現するために具体的にどうしようとなさるのかお尋ねをしたい。
  37. 小平久雄

    小平国務大臣 公労協関係といえどもやはり労使関係でございますから、両者に向かって労働大臣が具体的にどうせよこうせよと言うわけにはまいりません。しこうして、また労使関係でありますから、これは使用者に当たる各企業体だけの考えというわけにもいきませんで、要は労使双方が、やはり法に基づき、また現在の一般賃金なら賃金状況、こういうものにやはり深い理解を持って自主的に解決をしていただく、こういうことになるのが一番望ましいわけでございまして、われわれが企業体のほうに対してどういう考え持っておるかは、これは先ほど来の御説明でもよくわかるよう企業体も理解をいたしておるところでございますから、今後引き続いて各般の情勢を見て有額回答のできる段階になればおそらくすることだろうと思いますし、そういうことを中心にして労使双方で話し合いによって自主的に解決をしてもらいたい。調停段階でそれができれば一番望ましいことである、かように私は考えておるわけであります。
  38. 吉村吉雄

    吉村委員 労働大臣の願望はよくわかりました。当初の願望は、労使の直接交渉段階解決することが望ましい、あるいはそうなってもらいたという願望が述べられた。しかし、それについていはほとんど政府がその願望実現のための努力らしい努力を何もなしていない。いない理由は何かというと、公労協関係の問題といえども労使の問題でありますからあまり深入りしたくはございません、まあこういう態度でございます。そういうようなことだけ言っているとするならば、それはそう問題はないかもしれません。ところが、客観的に多くの国民、なかんずく当事者であるところ労働者考えておりまするものは、何といたしましても、予算総則との関係から見まして政府がこの問題についてイニシアチブをとらなければ公労協関係賃金問題というものは解決しないという歴史しかない、こういう状態であることは御存じのとおりかと思うのです。ですから、私はことばをきれいにしてもらうことはけっこうでありますけれども、だとするならば、あまり介入をしない、そうして当事者能力というものを完全に与える、こういうふうにした上でやってもらわなければいけないと思うのです。予算の総則において縛っておいて、そうして労使の問題だからそれは労使交渉のみによって解決すべきである、私のほうはあまり積極的な介入はなし得ない、こういう政府の態度では片手落ちではないか、こう言わざるを得ないと思います。ですから、介入ということばは誤解を受けると思いますけれども、いま調停段階に移されたこの公労協関係賃金問題につきましては、労働大臣として労働行政の上から見て、できるだけ調停段階解決をするようにするためには政府自体がまず腹がまえをしなければならない。やはりそれは金の問題です。金の問題について腹をきめない限りはとうていこれは解決をしないであろう。政府の姿勢がきまるのと並行して調停の作業も進んでいったという過去の歴史がこれを証明していると見ていいのではないかと思うのです。したがって、いま調停段階に移されておる時期におきましてはこの段階解決をしていきたい、とするならば政府自体が積極的にイニシアチブをとる、あるいは各公社理事者指導する、こういう立場が労働大臣として必要ではないかと思いますけれども、この点はいかがですか。
  39. 小平久雄

    小平国務大臣 各企業体企業体として法に基づいて設立され、それぞれの理事者責任を持って運営をいたしておるのでありますから、その賃金について政府が直接その賃金をどう改むべきであるとかどうこうということを申すということは、せっかく企業体ができて運営されている事情からして私は適当なことではなかろうかと思っています。  それから、結局は金の問題で、この予算総則で縛っておいてというお話でございますが、しかしこれは、予算総則もなるほど政府の案かもしれませんが、結局は国会で御議決をいただいておるのでありまして、これを頭から無視して政府公社等を指導するというわけにはいかぬし、そうすべき筋合いのものでもなかろうと思います。ただし、先ほど来申しておりますように、私は調停段階でこの際妥結ができるならば望ましい。妥結ができた場合においては、これは先般の参議院の予算委員会であったかと思いますが、当然政府としてはそれを尊重いたすべき筋合いであろう。そういう際においても、なるほどこれは予算総則で縛られまして給与総額の関係からして調停段階では予算の移用、流用というものが認められませんが、しかしそういう関係予算上、資金上もし妥結の実行が不可能だという場合には、国会の議決を求めるならば、この実行もできるという道も法律的に開けているわけですから、かりに調停段階で両者の話し合いが円満にできるならば、この法の定むところに従った手続をする、その間政府はそれを重んじて、尊重して進めていく、事を処理する、こういう法のきめておる筋道に従ってやっていくということが、私は政府の当然の責任でもあろう、かよう考えております。
  40. 吉村吉雄

    吉村委員 いま大臣のほうから国会の手続というようお話がありましたので、この機会にお尋ねをしておきたいのです。  私はできるだけ労使の問題というのは直接交渉段階解決をする、し得るようなそういう権限、能力というものを制度的に与えていく、それが政府責任だということを再三にわたって強調をいたしてまいりました。しかし、その当事者能力が与えられておったといたしましても、なおかつ問題は第三者機関に移る場合がある。公労法の場合には特にそのことを予期して調停仲裁制度が設けられておる、こういうことでございます。そこでこの機会にお尋ねをしたいのは、調停段階である答えが出て労使がこれに承認を与えた場合といえども、当然これは予算上または資金上不可能な資金の支出を内容とする場合には国会の手続を必要とするということになっております。仲裁裁定はどうかということになりますと、語気そのものは非常に強い。「委員会裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならず、また、政府は、当該裁定実施されるように、できる限り努力しなければならない。」こうなっております。「ただし、公共企業体等予算上文は資金上、不可能な資金の支出を内容とする裁定については、」先ほど申し上げましたような第十六条の国会の手続を必要とするということになっております。この限りにおいては十六条と三十五条の関係というものは、私は調停であろうと仲裁であろうと予算上、資金上国や公社を拘束し得ない、こういうことになるのでありますから、したがって裁定が出たとしても国会の承認は十六条の手続に従ってやる、こういうことに法律上はなるわけです。そういうことから考えてまいりますと、問題の解決のためにはいまの公社制度予算総則等から見て資金上、予算上の問題が出ないということはあり得ない、あり得るのが常識だということになるならば、この法律のもとでできるだけ早い機会にできるだけ円満に問題を解決するためには、調停段階で問題を処理するということのほうが最も望ましいと見なければならないと思います。なぜならば、仲裁裁定が出たとしても国会の手続を必要とするということになるわけですから、したがって調停が出た場合といえども、国会の議決を経ない限りはそれは予算上、資金上国が拘束を受けないということになるわけですから、そういう場合について言うならば当然調停段階解決していくということが最も望ましい。事務的にもそうあってしかるべきだ、こういうふうに十六条と三十五条の関係から見て理解されるのでございます。ですから、大臣がそういう法律上の根拠に立って調停段階ということを言っているかいなかは別です。できるだけ早い機会に解決していきたいという考え方から言っているものと理解をしますけれども、法律上の観点から考えてみましてもこれを調停段階解決する、こういう態度、そういう心がまえで事に当たるというのが政府のとるべき姿勢ではないかというふうに考えざるを得ない。そういう態度をずっと継続することによって労働者の、政府法律運用に対する信頼感というものが回復をしてくる、こういうことになるだろうと思いますから、先ほど来、大臣が何回か答弁をいたしております、なるほど、介入的なことはでき得ないと思いますが、客観的には政府が何らかの意思表示、積極的な姿勢を示すことなくしてこの問題は解決しないことは、客観的な歴史的な事実です。だとするならば、あまりことばや形式にとらわれないで、公労協賃金問題を政府全体として解決する、そういう姿勢を今度の本年の春闘にあたってはぜひ早い機会に打ち出すようにしてもらいたい。そのことが太田あるいは池田会談によるところの当事者能力の問題についての現行制度の中でできるだけ当事者能力を発揮させていこうとする、その言明、公約に対する政府としての忠実な態度である、このように理解せざるを得ないと思いますけれども、この点は、大臣の決意は一体どうでございますか。
  41. 小平久雄

    小平国務大臣 先ほど来、申しておるとおりでありまして、団交で妥結ができなかったという現実に即して、しかも問題が公労委に持ち込まれている、調停段階にある、こういうところからいえば、いわば第二の段階とも申すべきこの段階解決されるべきことが一番望ましいことだ、同じことを申し上げて恐縮でございますが、私は、このよう考えております。それの妥結ができた場合の取り扱いについては、先ほど申したとおりであります。なお、法律的な関係につきましては局長から答弁させます。
  42. 三治重信

    三治政府委員 調停段階労使双方が妥結が成立した場合に、予算上、資金上不可能な場合がほとんどだろうと思います。そういう場合には、十六条に基づいて国会の議決を経なければならぬ、こういうことは先生のおっしゃるとおりでございます。政府が、そういうふうな場合においてはそれをできる限り尊重するというような御質問ですが、仲裁裁定は、法律上明文がございますが、調停の場合には、今日そういう法律上の明文はございませんが、政府としては、大体同様に考えるべきものというふうに大臣がお答えになっているとおりではないかと考えます。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕
  43. 吉村吉雄

    吉村委員 大臣考え方はわかりましたので、ぜひその考え方に従って閣内においてそういうことを実現するための具体的な積極的な姿勢、行動、こういうものをとってもらいたいと思うのでありますけれども、この点はいかがですか。
  44. 小平久雄

    小平国務大臣 私が、先ほど来、申しておりますよう考え方は、私は、本日も現にそうでございますが、公式の場所でもこういうことを申しておるのでありますから、またそういう際には、各大臣予算委員会等で列席のもとで私は申しておるのですし、しますから、各それぞれの企業体等担当されておる大臣等も、この考え方は承知をいたしておるものと私は思っております。ただ、先ほども申しますように、労働大臣の立場としても、私の願望は、機会あるごとに私は述べておりますが、そうせよ、こうせよというわけにはまいりません。本日も、こうして各企業体責任者もおいでですから、労働大臣としてはどういう考えでおるかということは、十分承知をして来たものと、かように私は考えます。
  45. 吉村吉雄

    吉村委員 くどいようでございますけれども、歴史的な事実は、政府がやはりこの問題についての態度をきめなければ、公社団体交渉は進んでいかない、こういうことに尽きると思いますから、いまの大臣の答弁をそういう政府の態度、姿勢をきめるために、積極的に労働大臣として努力をする、こういう趣旨に私は理解をしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  46. 小平久雄

    小平国務大臣 私は、先ほど来申しますように、労使間に介入する意思はありませんが、私の考えについては極力理解をしてもらうように努力いたします。
  47. 吉村吉雄

    吉村委員 思わず時間が経過をしてしまったのでありますが、そこで念のためにお尋ねをしておきたい。  公労協関係労働者賃金は、先ほども言われましたように、民間賃金公務員給与水準、こういうことを考慮をしてきめるということになっております。そこで問題になっておりますのは、民間賃金との比較の中で、現在まで政府が取り来たった方法というものは、規模百人以上の事業所のその賃金等を基礎にしながらきめているということでございます。これでは公労協関係の事業といいますか、この企業というものは少なくとも何万、多いところでは四十万、五十万ということでございますから、この比較については世間の人たちも納得できるように、当該の労働者が納得できるようにするためには、規模百人以上の事業所を基準として比較をされるということは、これはもってのほかのことだと言わざるを得ないと思うのです。そういうことではとても労働者自体がその比較について理解するわけにいかない。そこにまた政府に対する不信感というものが起こってくる、こういうことでございますから、そういう点についても十分考慮の上で本年からは当たってもらう、こう要望したいと思いますが、この点はいかがでございますか。
  48. 三治重信

    三治政府委員 その百人の問題は、一昨年のときには労働者側のほうから非常に詳しい資料が出されて、民間賃金との格差あり、こういうふうな申請で、仲裁で議論されて裁定された。そのときに比較されたあと公労委の公益委員側が発表されたときに百人以上の企業のものを比較した、こういうことでございます。しかし例年は大体——民間企業と公労協関係労働者賃金とを正確に比較されたのは、一昨年ことに統計上の比較として非常に議論されたわけでございますが、例年は先生も御承知ように、ことに昨年に例をとりますと、民間賃金の動きを見て、おもだった産業の賃上げの大体額というものを基準にして、諸般の情勢を考慮して公労委の公益委員会議できめられた、こういうことでございまして、政府が、どれだけの具体的な金額とか、どこを基準にしろ、こういうことを一切申しているわけではございません。仲裁の最終段階においては、公労委の公益委員春闘の各産業の賃上げの状況を見て、それを中心にして諸般の情勢を考慮して自主的に決定されて仲裁裁定が出された、こういうことでございますから、具体的にそう毎年毎年、人事院のように百人以上の事業所を調査をして、それがどれだけ上がったということは過去の数字しかわからない。しかし、これは現実に同時比較で裁定が出るわけでございますから、そういう統計上の数字というものは、毎年毎年正確に出るわけではない、公労委の公益委員もその春の各企業の賃上げの状況中心に判断をされて決定されるのであって、そういうふうな具体的な数字の比較というものはあまり問題にならないのではないか、こういうふうに考えております。
  49. 吉村吉雄

    吉村委員 労働省の態度の中で一番遺憾な事柄は、都合の悪いと思われることについては、きわめて消極的な態度しか出ない。たとえば、公共企業体等労働関係法に規制を受けるところの組合が、ある紛争のためにこれこれの行動をしたいというような場合には、労働省公労法の十六条の解釈などというものをわざわざ出してみたり、また労働運動についてこれを抑圧しようというようなときにはきわめて積極的な態度を示す。そういう態度を示しておきながら、事賃金問題のごとく政府自体が態度をきめなければならない問題、政府自体がイニシアチブをとらなければならないような問題については当事者間で交渉してもらうために、われわれはあまりそこには介入のそしりを免れないようにしますという態度で、そこへいくと消極的になってしまう、こういうことでは私はいけないと思うのです。ですから、再三申し上げておりますけれども、とにかく今度の春闘の問題については政府みずからが積極的な態度をもって事態の収拾をはかる、調停段階において事態の収拾をはかる、こういう態度をもって臨んでいただくことを強く要望しておきたいと思うのです。  それから次にお尋ねをしたいのは、伝えられるところによりますと、公労協関係組合が本年の賃金問題を解決するため、労働者要求を実現するために今月の月末あたりから実力行使をしなければ政府公社も反省をしない、こういう認識に立って具体的に行動計画を立てているやに聞いておるのでありますが、このことはあなた方のほうから言わしむるならばそういうことはけしからぬことだというふうに言うかもしれない。私の問題にするのは、公労協労働組合が何も事を好んでいるわけではないのです。再三申し上げますように、いつの場合でも当事者間の交渉では解決しない、調停段階でも解決しない、解決したとしてもその例はきわめて少ない、仲裁裁定までいく、そういうようなことを繰り返しておると、どうしても労働者の、労働組合の運動というものもひねくれざるを得なくなってくる。そうして初めて政府に対して譲歩を迫らざるを得なくなってくる、こういうことから本年もそういう体制をとりつつあると理解をせざるを得ないわけですけれども、どうかひとつそういう立場に追い込められているところの労働者気持ちというものを、労働行政担当の責任者である労働大臣は十分理解をされた上で、私も可能ならばその事態を避ける、その前の段階で問題が解決できるようにしたいと思いますけれども、解決することを希望いたしますけれども、あまり労働者の側に対して、これをやっちゃいけない、あれはやっちゃいけないという態度を示さないように要望しておきたいと思うのですが、これらのこの労働組合の現在の体制の問題について大臣一体どのように理解をされておるのか、お尋ねをしておきたい。
  50. 小平久雄

    小平国務大臣 公労協関係組合等においていま先生お話しのような動きというかかまえ——かまえというのが適当かもしれませんが、あるいはあるやに私どもも新聞その他を通じて承知をいたしております。私も先生と同様に、いやしくも法治国家でございますからいろいろな事情はありましょうが、法に照らしてこれに反するというようなことのないように、私は組合側の自重と申しますか、それをやはり希望せざるを得ません。過去においても法に反したというような問題があって、その後の処理でいろいろな問題もあったわけですし、そういうことを繰り返さぬで済むように私としては目下期待をいたしておるところであります。
  51. 吉村吉雄

    吉村委員 その程度のことしかお答えになれないだろうというふうに考えます。ただ大臣、これはほんとうにまじめに考えてもらいたいのは、労働者は事を好んではいないのです。ところが再三私が申し上げますように、公労法施行以来、ほんとうの意味でこの公労法の立法の精神に従った運用というものがなされた例は少ないのです。それから当事者間におけるところの交渉解決したという例も少ない。その原因一体何かというと、政府の政策、政府の姿勢によって公社当事者能力を持っていないという、そういう状態がずっと続いておるのです。それをそのまま放置しておいて、そして労働者が問題解決のために、どうにもこうにも方法がなくなって、やる行動については法に従って規制する、こういう態度だけでは問題の本質的な解決にならない。ですから、今日の時点でこの問題を議論するといたしますならば、調停段階に移っているのでありますから、しかも大臣調停段階解決したいということを強調されておるのでありますから、労働者の側も納得でき得るような態度、そういうような誠意を政府みずからが早く示すことによってのみこの事態の回避というものはできる、こう私は理解せざるを得ない。したがって、そういうよう事態を回避したいとするならば、政府がそういうような態度に従って行動していくということがまず必要だ、こういうふうに考えますので、この点はぜひそのために努力をしてもらうように強く要請しておきたいと思うのです。  予定された時間がまいりましたから、一応これで質問を終わりたいと思いますけれども、とにかく法律があっても、その法律が該当するところの国民から信頼をされなくなったり、あるいはその法律があるために本来あるべき姿がそうでなくされてきたり、この場合には当事者能力がなければ労使の問題というものは解決しない、こういうことは本質的に認められながらも、制度がその障害になっている、こういう状態を放置しておいたのでは政治は正しく発展をしない。同時にまた労使の問題については、特に労使間の安定というものはあり得ない、こういうことになるはずでございますから、公務員制度審議会におけるこれからの論議はえんえんと続くだろうと思います。その結論が出るまでの間は政府責任によって、そしてこの公労協労使の問題については解決をはかっていく、そういう積極的な態度を示すことによって、今日までの間に労働者の側から失われておるところの公労法に対する信頼感というものを回復するようなそういう態度、そういう姿勢というものをこの際打ち出してもらわなければいけない、こういうふうに考えますので、ぜひ小平労働大臣——何かうわさによりますと、内閣改造するとかなんとかというお話でございますけれども、この問題をいま申し上げましたような本筋の線に従って解決をするならば、それは小平労働大臣の留任運動はむしろ労働者の側から起こってくるであろう、しかしことばだけで全然努力をしないということであればこれはどうなるかわからない、こういうことになるだろうと思いますので、ぜひひとつ異例のことではあるかもしれぬけれども、労働者の側から労働大臣の留任運動が起きるくらいの、そういう積極的な姿勢をこの際打ち出してもらうことを強く要望して質問を終わります。
  52. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 午後一時二十分まで休憩いたします。    午後零時三十九分休憩      ————◇—————    午後一時二十八分開議
  53. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。山田耻目君
  54. 山田耻目

    山田(耻)委員 午前中吉村委員のほうから、俗にいう春闘の中の公労協の賃上げに対して、従来のいきさつなり政府側の見解というものの質問があったのでありますが、大まかにずっとさわられておりますので、若干取りつきにくいのですけれども、ことしの全体の情勢というのは、物価が急速度に上がってきておる。政府が国会で答弁しておるのも、七・五ないし六%くらいの物価上昇である。昨年の賃上げが、定期昇給を含めて平均一二%前後ではないかと思いますが、これはもちろん税込みでありますから、したがいまして物価高を差し引いてまいりますと、昨年の賃上げがなかったとひとしい状態、むしろ、この物価高の平均の中で占めておる労働者の生活上必要な諸物価の値上がりというのは、二割以上の値上がりを来たしておる。生鮮食料品にいたしましても、交通費にいたしましても、家賃にいたしましても上がってきておる。したがって、生活水準は少なくとも三十四、五年度に落ちてきておるのではないかといわれておる。こういう好ましくない条件の中で起こる労働者の賃上げの欲求というのは、私は例年にないきびしさがあろうという気がしてなりません。こういう事情というものをしっかり踏まえていただかなければ、国の経営する事業体である公共企業体なり五現業の労働行政というものが、的確になされるものと私には思えないわけです。したがって第一点は、今日の物価高の中にあって、経済閣僚の一翼をになっておられる労働大臣として、ことしの賃上げというものと物価というものとの相関関係の中で、どうあるべきかということを第一点にお答えをいただきたいと思うのです。  あなたも時間がないから若干続いて質問しておきますが、第二点は、いま公労協は、午前中の話にも若干ございましたように、煮詰まらない形式の団交を一応終えて調停に移行しております。調停仲裁というものは、公労法上示されておる一応第三者の機関になっておりますけれども、調停というものと仲裁というものとは、かなり性格を異にしております。一体調停というものは何をするところなのか、それと団体交渉というものとはどういう関係にあるのか、この法律的な解明を一点しておいていただきたい。  以上二点、まず伺っておきます。
  55. 小平久雄

    小平国務大臣 まず第一に、物価高の渦中で賃上げというものがどうあるべきか、こういう御趣旨でありますが、確かに昨年は、消費者物価が御承知ように七・五%程度上昇をいたした、こういう次第でございますが、昨年は、賃金が大体名目で一〇%、それから実質で二・二%上昇した、こういう結果に統計上なっておるわけであります。しこうして、今年の物価上昇がどの程度になるか。政府は、御承知ように大体五・五%程度の消費者物価の上昇に持っていきたい、こういうことでいろいろ施策をやっておりますことは、先生が御承知のとおりでございます。それにしても、五・五%と申しましても、これがまた相当の物価の上昇であることは間違いないと思います。したがって、こういう情勢の中で行なわれる春闘でございますから、それらの事情労使双方ともよく理解いたしまして、いわゆる自主的な交渉でなるべくベースアップもきめてもらいたい、こう思います。一方におきまして、御承知のとおり経済界が非常に不況である、こういうところから、企業の側においてはいわゆる企業防衛だ、こういうたてまえで各企業の支払い能力に応じてこのベースアップ等の問題も解決すべきだ、こういう主張でおりますので、一方における消費者物価の高騰を中心とした生活防衛という組合側の主張と企業者側の主張というものが相当隔たっておることは、すでに御承知のとおりでございます。このよう状況のもとにそれぞれの立場からあるいは団交が行なわれ、公労協の場合におきますとすでに調停に持ち込まれておる、こういうことでございます。そういう中でございますから、いま具体的に数字をあげて、どの程度に賃上げが行なわるべきだというようなことを私の立場から申し上げるということは、これは適切なことではないと私は考えておるわけでございますが、いずれにしても、もう両者の主張というものも明らかであり、また、賃金というものも、国民経済全体の状況あるいは企業の状況というものをお互いに理解をして、その上で妥当なところに話し合い解決をしてもらいたい、私はさよう考えておるわけでございます。  それから、第二の団交調停とどう違うかということでございますが、法律的に詳しくは局長から御説明申し上げますが、私は、団交というものは、労使双方において、両者間において行なわれるものであるし、調停は、これはもう申し上げるまでもないことでございますが、労働委員会公労委が中に入りましてまず事情を聴取し、それから両者に対する話し合いをする、労働委員会がいわばあっせん役をして話し合い団交を進める。この場合は団交とは言わないでしょうが、両者の話し合いを進める、こういうふうに理解をいたしております。詳しくは局長からひとつ……。
  56. 三治重信

    三治政府委員 調停の場合には、三者構成といいまして労使と公益で、団交当事者を出席せしめて事情を聴取する、そうして両者の主張を縮めていって、できれば調停案の提示までいく、こういうことでございます。しかもそのときの労使は、直接当事者でないいわゆる全体的な労働者側、全体的な使用者側を代表するものがこの任に当たる、こういうのが普通であろうと思います。
  57. 山田耻目

    山田(耻)委員 労働大臣の言っていることは、何かよくしゃべっておるがわからぬのですけれども、結局物価が、政府が言っておるように七・五ないし六上がる。ことしの国家予算編成には五・五%くらい上がる。それだけ労働者の生活が苦しくなるということは間違いございませんよね、それだけ貨幣価値が下がるんですから。だから、労働者の生活が苦しくなるから、労働者は、労働再生産の上からも、社会的な生活を営んでいく上からも、妥当な賃金要求する欲求が強くなってくる。このことをあなたは認めるかどうかと私は聞いておるのです。特にことしは、そういう経済情勢悪化の中で労働者の生活が苦しいから、かなり熾烈な要求になってくると私は判断するが、あなたも判断なさるかどうか、こういうふうに私は伺っておるのですから、ポイントをはずさないように、ひとつ答弁をしてください。
  58. 小平久雄

    小平国務大臣 私は、その点は先ほども申したつもりですが、今年度は物価を五・五%程度の上昇に押えたいということで、いろいろな施策をやっておるわけです。そこで、この五・五%という率も、必ずしも低い物価の上昇ではない。したがって、組合側は生活の防衛という立場で御主張なさっておるわけでございますから、物価が安定したときに比べますれば、これは組合側の主張がそれだけ強い。強くなるということは、これはもう予想にかたくないことでございまして、ただ、先ほど申しますとおり、一方においては、不況の関係もあって各企業のほうでも企業防衛ということを言っておりますから、両者の主張は非常に対立するというか、主張するところの重点が非常に異なっておるわけで、それだけにこの争いもきびしいものだろう、かように認識しております。
  59. 山田耻目

    山田(耻)委員 労使の間がきびしくなっていくということはおわかりになっておるようで、しかもあなたは、ジャーナリストの論説じゃないですから、それに対しては、日本の二千万近い労働者の幾つかの運動、そうして経営者の態度に対して一見識持たれる日本の担当閣僚の責任者でございますからね。  そこで、私は続いてお伺いをしていくのでありますが、十一月三十日に、俗にいう三公社五現業、これを総称公労協というのでありますけれども、あなたなり官房長官に会いまして、八千五百円程度の賃金を上げてもらわないとことしはどうにもならない。しかもその積算基礎を物価高に多く求めておることは、明らかなとおりであります。その申し入れを受けられて、すでに三カ年と半ばがたっております。その後あなた方は、担当大臣間でどういう御相談をなさったのか。聞きおく程度でおやめになったのか、それとも、国の経営する事業体であるけれども、それぞれに経営責任者がおるから、経常責任者のほうで何とか言ってくるまではほうっておこう、こういうことでほうっておかれたのか、それとも何か御相談をなさったのか、その点をひとつ明らかにしてほしいと思います。
  60. 小平久雄

    小平国務大臣 その点は、先ほども申し上げましたが、それぞれ公共企業体には理事者が言うまでもなくありまして、団交等にも臨んでおるわけでございますから、それらが、かりにいわゆる若干の制約があるにいたしましても、当事者能力というものもあるわけでございますから、それに従っていわゆる労使間の話し合いを進める、こういうことにわれわれは期待をいたしておったわけであります。
  61. 山田耻目

    山田(耻)委員 労働大臣、少し私の質問を正確にとめて答えてくださいよ。いま私は当事者能力のことを言っておるのではないのですよ。そうでなくて、一体その申し入れを受けられて、その大方の部分が物価値上げによって苦しい、その物価高によって苦しい生活の要求書を受けられて、あなたはどういう態度をおとりになったのかということを聞いておるのですよ。それは三公社でやるから、それまで待とうということで待たれておるのか。いまあなたのおっしゃっておることを伺いますと、三公社五現業には当事者能力もあることだから、それぞれについて的確な答えはできない、団体交渉をやっておるように見受けるという。私は三公社のことを聞いておるのではないのです。それはここへ来ておられるからあとで聞きますが、労働大臣としてそういう申し入れを受けて、どういう態度で今日まで三カ月という日を送られてきたかを伺っておるのであります。
  62. 小平久雄

    小平国務大臣 これは、公労協の皆さんにお会いしたときにも、とにかく団交を進めてほしい、こういうことをわれわれは希望いたしておいたわけでございまして、この間、労働大臣として進んで、三公社五現業側がどういう態度で臨むべきかというように、直接私どもが指示をしたということはございません。しかし、当事者能力のことでないのだというお話ですが、このことは昨年の次官会議でも、極力現行制度のもとでも当事者能力を発揮して、団交をやるべきであるということはすでに明らかにいたしておるのですから、私どもは、その線に沿うて両者が努力をされるということを期待いたしておるような次第であります。
  63. 山田耻目

    山田(耻)委員 二月の二十四日だったと思いますが、予算の分科会で、私はあなたに大体いまと同じようなことをお伺いしたことがあります。そのときにあなたは何と答えましたか。会議録を読んでみましょうか。少なくとも、いま幾ら出したらいいということは言えないけれども、物価上昇で生活は苦しくなってきておる、関係閣僚会議で、もしもこのことについて相談をするときには、せめて物価上昇分ぐらいのことは考えなくちゃなるまいというふうなことを、労働大臣自身としては思っておるとあなたは言いましたよね。十一月三十日に、それよりかかなり金額の高いであろうと思われる八千五百円の統一要求を受けられて以後、予算分科会で私に答弁なさったような、そういうふうな事柄が、具体的に関係大臣間で相談をなされたのかどうなのかを私は聞いておるわけです。その点はいかがですか。
  64. 小平久雄

    小平国務大臣 まだ関係大臣の間でそういう相談をする段階には至っておりません。
  65. 山田耻目

    山田(耻)委員 では時期がまだ早いということですね。時期が早いということで相談していないということですか。
  66. 小平久雄

    小平国務大臣 その点は、御承知のとおり、各企業体できめる賃金というものはかくかくのことを考慮してきめるべきだ、こういう法律もあることでございますので、そういうたてまえからでございましょうが、まだ有額回答もしておらぬ、こういう状況でございますから、それに先立って政府として、どう回答すべきであるとか、どう処置すべきであるとか、そういうことを相談する段階ではまだない、かように私どもは考えております。
  67. 山田耻目

    山田(耻)委員 まあ公社組合の両当事者間で有額回答段階にまで至っていないし、ほんとうなら、有額回答段階事態が直面をしたらそういうふうなことを相談してもよろしいのだが、というふうな立場であるというふうに受け取ってよろしゅうございますね。
  68. 小平久雄

    小平国務大臣 その点は、有額回答をするにいたしましても、これはやはり各企業体にそれぞれ事情もありましょうし、それぞれ法の示すところに従って回答をなされるわけでありますから、あらかじめ政府のほうに、この程度でどうかとか、別段私はそういう相談があるものだとは思っておりません。が、先ほど申しましたのは、おのずからそこは別個の問題だと思いますが、そういう段階に入れば、おのずからまた政府としても、そういった問題をめぐって、別段労使の間に介入するという意味ではなくして、話し合い等も持たれるかとも思いますが、目下のところはまだそういう段階にきておらない、こういうことを申し上げておきます。
  69. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣、私が二月二十四日に、あなたが分科会で言っておったような事柄を閣僚間で相談をするのかと聞いたら、あなたは、まだ両当事者間で有額回答をする段階に至っていないからそうだと言っているから、じゃ逆に、そのころになったらあなたたちは閣僚で意思をきめるのかと言ったら、今度はいまみたいな、わかったのかわからないのか、法の示すところに従って両当事者間で回答するというふうな意味のことをちらっと述べられておるけれども、私は全然意味がわかりませんよ。問題は政府の意思、特に労働大臣としての意思が、ことしの物価高なりその他の中でどういうふうにあるべき態度を見つけ出すかが、いたずらに激化していこうとする今日の労働紛争をやわらげていくことができるかということを、あなたの労働大臣としての考え方の中にどのように生かしているのか、どのようにあるのか、全然ないのか、これを私はいま聞こうとして特にその点に触れておるわけなんですよ。最低物価高の率ぐらいを限度に考えるとおっしゃってきた今日までの意思は、一体いつごろおまとめになるのか、もう一度聞かしていただきたい。
  70. 小平久雄

    小平国務大臣 その点は、午前中も申し上げたのでありますが、私は労働大臣として、先ほど山田先生が御指摘ように、労働大臣の立場からすれば、こういった物価の情勢の中のことでございますから、少なくともそれを補うという程度のものは最小限としても当然考慮さるべきだろうという見解は、私は公の席で率直に申しておるわけでありまして、これは各大臣も御承知のとおり一緒でありますし、さらにその程度のものの発言というのは、私はあらゆる機会に率直に申しておるわけなんです。今度の春闘について、特にベースアップについての私の最小限の気持ちというものは、これは政府部内でも、あるいは公共企業体でも承知をしてくれておるもの、私はさように理解をいたしておるわけであります。
  71. 山田耻目

    山田(耻)委員 じゃ、労働大臣としては、公的な場所などにおいて、ことしの賃上げ紛争に対しては、最低物価上昇分くらいは見てやらなくちゃならぬということはしばしば申しておるし、これからも閣議などでは適切なその主張を貫いていく、こういうお立場でございますね。
  72. 小平久雄

    小平国務大臣 私は、一般的に申せば、先生のいま御指摘のとおりでございます。ただ、先ほどもちょっと申しましたが、特に民間等においては企業の状況等がずいぶんまちまちだろうと思います。ですから、全般的には、私の先ほどような希望と申しますか、期待と申しますか、私の気持ちは変わらないのであります。個々の問題については、これは各労使間において、もちろん企業の状況というものを全然無視してというわけにいかぬでしょうから、労使の円満な話し合いできめてほしい。全体としての気持ちは、先ほど申したとおりでございます。
  73. 山田耻目

    山田(耻)委員 いま私は一般企業、民間組合のことを聞いておるわけではないのですから、余分なことをそう答えられなくていいですよ。そこで、ただいま大臣の御答弁にありましたように、ことしの賃上げの最低の基礎は物価上昇に見合うべきものである、こういう立場が——公式にもこれからも述べるし、いままでも述べてきたし、関係閣僚会議でもこれからも主張していくという立場が明らかになりました。  そこで、公社お尋ねするのですが、電電はお見えでございますね。電電公社は経理事情もかなりいい公社でありますし、今日までの団体交渉の中で、賃上げ交渉にあたって、いま大臣が申したような意向というのが、どの程度団体交渉の中で経営者側の意思として述べられてきたのか、その点を明らかにしてほしい。
  74. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 先ほども申し上げましたとおり、私どもは昨年に第一次回答というものを行ないまして、その第一次回答におきましては民間賃金の相場が出そろったら回答する、こういう基本的な態度を申し上げておるわけであります。その後、引き続きまして本年に入りまして、団体交渉を継続してまいったわけであります。その中で、先ほども申し上げましたように、公社賃金の判断をいたします三つの要素のうちの大きな一つの要素である物価という問題につきましては、先ほどお話がありましたように七・五%程度の上昇率があるという事実を認めまして、ただ、それだけでもって私どもは賃金を幾ら上げるということを回答できる段階ではないので、第一次回答で申し上げましたように、民間賃金の相場が出ましてから、それらのこともすべて総合的に考慮いたしまして回答する、こういう態度で終始してまいったわけであります。
  75. 山田耻目

    山田(耻)委員 わかりました。それで、さっきのいま一つ質問調停仲裁との関係について、三治さんの答弁をいただいたわけでありますが、調停というものは、確かに労使の側を総括的に代表する第三者の構成ででき上がっておるわけですが、この調停委員会の機能というものは、まとめれば、確かに調停案を提示するということにはなってまいります。しかし、そこには何らの拘束性もございません。ここは仲裁と違うところです。ですから、調停段階でまとまったものは、それが労使双方を拘束するに値するものにいたすためには、労働協約を締結しなければなりません。労働協約の締結をして労使双方が調印をしたときに、初めて民法上の効力が発生するわけです。そういうふうに調停と——最終効力を発生していくのは十六条もございますが、これはあとにいたしまして、最終効力を発生していく手続というものは、労使双方の団交結論と同じなのでございます。そこで、調停団交とはイコールされておるのだ、団交の延長が調停である、だから調停段階では調停案もあれば、あっせん案もあるといわれておりますね。あっせん作業というものもある。これは労使双方を呼んで、団体交渉をより続けていくあっせんの作業だ、こういうふうに調停段階というのは、ある意味では、団体交渉の行き詰まった段階からの延長の期間であるというふうに解釈として求めるのが正しかろうと思うし、過去の慣例もそうであったように思うのです。そういうふうに労働省としてもながめておられるかどうか、この点を伺っておきたいと思います。
  76. 三治重信

    三治政府委員 公労協組合の方々は、よくそういうふうに言われております。実質上は、組合の態度がそういうふうな態度になると、そういうふうな方向調停委員会も運営される部面が一部にはある可能性が出てくるかと思いますが、しかし、法律的には労使に対する事情聴取調停委員会としてして、したがって調停委員会においては、団交の延長と申しましても労使がその調停委員会の前でお互いに意見を言い合ってどうこうということではないわけですから、私は、非常に形式は違うし、実質も相当違うというふうに考えております。それはそれぞれ使用者の立場、労働者の立場として三者構成の調停委員会に対して自分たちの主張をする、それを調停委員会の三者、労、使、公益がそれぞれ聞いて——まあその三者構成のうちで、使用者側委員は使用者側の言い分をできるだけ通そうとして発言するし、労働者側委員労働者側の発言をできるだけ有利にしようとして発言する、しかしながら、そこは団交当事者ように自分だけの主張ということではない、やはり労働者側委員とすれば労働者側全体を考える、使用者側委員としてももう少し広い見地で考える、それを公益委員が仲に立つ、しかも労使も、それぞれ全体的な労働者側、使用者側という立場で、できるだけ妥協を積極的に進めていこうという立場で妥協案ができ、調停案ができるのじゃないかというふうに考えますので、その点は、法律制度的にいえば、団交の延長とは私は考えておらないわけであります。しかしながら、実質上の作用は、やはり労使がその場でそれぞれ主張され、調停委員会としてその中でもう少しどうかというふうにお互いに歩み寄りを勧誘するわけですから、それが間接的にはこの当事者の主張を中心にして進められるという意味においては、先生のおっしゃる部面も考えられぬことはない。ことに公労法上の立場からいきますと、先生からおっしゃったように、団交できまったことも労働協約になり、調停委員会できまったことも労働協約になる、その最終的なものは同じだ、こういうことにおきましては確かにそういうことでございますが、最終的には同じ労働協約という形をとって終結するから同じだということにはならない、そのプロセスはずいぶん違う、こういうふうに考えます。
  77. 山田耻目

    山田(耻)委員 これは労働法ですからね。労働法ですから、法の趣旨というものは、労使関係がどう正常な方向で進められていくかというところにおいて、ある段階までは、法のたてまえとして団交という形式が最優先になるべきものである。労使関係が不正常になってきて争いが生じたときには、一般労働法では、ストライキという形式あるいは労働委員会という形式があるでしょう。公労法関係では仲裁という制度があるわけです。その段階における一つのセクションとして調停制度があるのですけれども、これはあっせんもしくは調停なのですよ。労使双方の団体交渉の過程に起こっておる問題点のあっせんないしは調停です。だから、この調停委員会に対しては、労使双方いずれか一方が、かってに調停申請できることになっておる。これは団体交渉一つの逃げ道にもなっているのです。だから、総じて労働法上のたてまえからいきますと、あなたはプロセスは違うとおっしゃっているけれども、労使間の問題の解決をできるだけ正常にという立場からながめていけば、調停段階団体交渉の延長という理解のしかたが正しいといわれているのですよ。私は、ここであなたと法律論争しようとは思いません。思いませんけれども、事実上調停委員会の機能とは何ぞや、そこでまとまった調停あるいはあっせんの結論というのは、両当事者が持ち帰って労働協約を締結したときに終結されていくのですよ。これは団体交渉のある延長という形式が、そこで一つの点に結びつけられていっておるのですから、この点は、今日意見が二つあるとはいえ、現実の問題としては、労働協約の締結によって調停段階の作業を終わっていくのである、こういうふうに理解をしておいていただかなければ、調停委員会をながめる今日の三公社五現業のながめ方にも間違いを生じておるのですよ。そして、指導する立場にある労働省の中にも、私は若干の間違いがあるような気がしてなりません。そこで、帰結するところは、調停段階は労働協約によって最終的な終結点があるのだ、こういうふうに、ここはひとつお間違いなく理解をいただけるものと私は思うのです。途中の意見はあったにしても、法の精神はそこに帰ってきます。  そこで、さっき電電の遠藤さんが申されておりましたように、ことしは団体交渉をかなり精一ぱいやってみた、そうして賃上げが要求されておる根拠の一つである物価高については認めましょう、あるいは民間ベースとの比較も考えましょう、人事院関係との開きも認めます、こういう意向が団交では述べられておるわけです。そして、そこで労使間でまとまり得る労働協約を結び得ずして調停に流れ込んでいっておるわけですね。この続の過程の中で、現行法にそういう行き方があるのだからいいじゃないかという一つの立場と、なぜ、調停段階へ流れていく前に、満不満はあったとしても有額回答をやってもらって、そこで具体的な数字による労使間の接近した姿を示してくれなかったのかという意見もあります。そこで私は、この調停段階の問題につきまして、その二つの意見一つのものにしてながめてみますれば、調停にかかっておっても両当事者間の団体交渉は積極的に進められなくてはならない、そして、調停段階における幾つかの調停事項の中で、政府も、今日までのいきさつを通して何らかの有額回答結論を見出すべく努力をする必要があろう、調停段階にいま移行しておってもその立場をとる必要があろうと思う。そこで、さっき労働大臣が若干まだ時期が早いと言われたこの時期が、もう調停に移行しておるのですから、私は決して時期が早いと思いません。ある意味では、調停案が出るかもしれないという、こういう段階労働者の側は、有額回答してくれ、してくれといま迫っているのです。だから私は、大体ずっと並べて経緯をたどってみますと、もう時期は早くないと思う。ここらあたりで有額回答をなさる用意があるかどうか。これは公社からも御回答いただきたいし、さっきの労働大臣の物価値上がりを最低の限度にといった立場からの具体的な指導に乗り出す時期だと私は判断しておるけれども、その点はどうですか、あわせてお答えいただきたい。
  78. 小平久雄

    小平国務大臣 本年の有額回答の時期が、昨年に比べましておくれておるという点については、先ほど午前中にも御論議のあったところでございますが、それに対して公社側からは、民間賃金状況等も勘案しなければならないので、有額回答ができないで今日に至っておるのだという趣旨の話がございました。私は、労働大臣の立場からいたしますならば、公社側が有額回答のできる事態になりますならば、なるべく早く私も有額回答をしていただくほうがよろしい、かよう考えておるわけでございまして、そこの時期がどうかということは公社側の判断にまたなければならぬわけでありまして、私のほうから、時期を限ってどうこうと言うわけにはいかないだろうと思います。
  79. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 私どもも、調停段階有額回答してもらいたいということは、しばしば——例年もそういうことでございますから、そのことは承知はいたしておりますが、先ほど来申し上げておりますように、私どもといたしましては、調停段階で必ず有額回答をするというお約束をしているわけでもありませんし、また、調停段階有額回答せねばならぬとも思っておりません。私どもが申し上げておるのは、民間賃金の実態が出てまいりまして、公社として判断すべき時期がくれば必ず回答する、第二次回答をする、こういうことを申し上げておるわけです。そのことは、先ほどまでの団体交渉経緯の中で私がお話をしたとおりであります。  もう一つの問題として、先生のおっしゃいました、調停段階労働組合に対して団交という形で回答するかどうかという問題になりますと、それは私も、先ほど労政局長のおっしゃいましたとおり、団体交渉というのは現在労働組合側が打ち切られて、調停段階に移行しておるわけです。新しい段階にきておるので、そういう形でかりに回答すべき時期がまいりましてもなすべきではないと思うのであります。ただ、現在は調停段階で、調停委員会から事情聴取という形で労使双方の意見を聞かれております。その意見を聞かれておる過程の中で、私どもとしては、調停委員会に私どもの意見を申し上げるという形で事実上の回答というのは当然なされる時期が——先ほど申し上げたような時期がまいりますればあると思いますし、また、その点につきましては、できるだけ早くいたしたいと思っておるということは、調停委員会事情聴取の場でも私ども申し上げたとおりでございます。
  80. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 ただいま山田先生からお話しのありました点につきましては、郵政省といたしましても、全逓並びに全郵政から賃上げの要求を受けまして以後、きわめて精力的に私どもとしては団交を続けてまいったつもりであります。  ただ、先ほどお話がありましたように、全逓といたしましては基準内賃金八千五百円、全郵政といたしましては、同じく基準内賃金六千三百円という要求がございました。しかも、昨年の十月一日にさかのぼってこれを実施せよという要求でございました。昨年の十月一日にさかのぼることにつきましては、私どもその必要性は認めないということで回答をいたし、さらに、目下問題になっております物価等の要素を含めましての今年度の賃上げにつきましては、これも、先ほど労働省並びに電電公社からるる申されておりますように、給与特例法で定めますところの民間賃金並びにその他の状況を勘案いたしましてきめたい。まだ民間賃金が確定をしていない以上は、ここで確たる回答は申し上げられないということを申しまして、その交渉の中で、組合といたしましてはこれを不服といたしまして調停申請をいたした次第でございます。したがって、現在調停にかかっておりまして、本日も第二回の事情聴取があるような次第であります。その中におきまして、先生指摘ように、もし団交を続ける意思が組合側にあるならば、省側もこれを受けて立つ意思があるかというお話でありますが、私どもといたしましては、続けてまいりました団交の中で組合の申しております額を少しでも実質的に下げるというようなことをする意思もございませんし、また、現在の事情聴取の中におきましても、組合側の発言におきましてもそういったことは全然見られないようでございます。そういったことを考えましても、先ほど法律論は別といたしましても、自主的に私ども団交にこれを移しまして議論していくということを認めませんので、したがって、当省といたしましても、ただいまのところ団交をいたすつもりはございません。
  81. 田中正巳

    田中委員長 暫時休憩いたします。    午後二時十八分休憩      ————◇—————    午後二時四十九分開議
  82. 田中正巳

    田中委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続けます。山田耻目君
  83. 山田耻目

    山田(耻)委員 さっき電電並びに郵政のほうから、団交の模様、調停に移行してからの模様、二つが述べられたわけでありますが、お二人の意見を伺っていますと、いま団体交渉をしてみても結論は出せない。言えば、有額回答はできない。その一つの理由として、民間給与の動向の結論が出ないから、それを待たなければ回答はできない、こういう言い方をされておりますけれども、一体民間給与の動向と郵政職員の賃金の動向、電電公社の職員の賃金の動向とどういう関係で、そういう結論をつけられたものか。確かに民間賃金の動向を見なくてはならないということは、一つの側面ではあります。しかしそれが主体的な条件ではないと私は思っておる。少なくとも主体的な条件といえば電通の経理事情なりあるいは全逓の予算上の事柄なり、そういうことが理由であるとするならば、私は一つの論拠にはなろうと思う。しかし、よそさまの賃金がきまらぬからうちのほうは一切の答弁ができません、こういう根拠は一体何によるものなのか、その点をまず明らかにしてほしいと思います。
  84. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 私ども当然郵政職員をあずかりまして、特に労働組合当局との関係におきまして賃金の問題について団交を重ねていくわけでございますので、その場合におきまして賃金を決定するよりどころ、原則といたしまして自主的に考えておる点がございます。それは当然私ども郵政従業員につきましての給与は、国民の側から見て納得のいくよう賃金であり、また国民がもっともだと思うよう賃金であってしかるべきではなかろうか、こういうぐあいに考えておるわけであります。そういった意味でいわゆる給与特例法三条の二項の精神からいたしましても、一般公務員給与民間産業の従事員の賃金並びにその他の事情を勘案いたしましてきめるというところにもさような趣旨があろうと考えておるわけでございまして、したがって、先生指摘ようにただ物価のみを問題として賃金をきめるということにつきましては、事務当局といたしましてはさよう考えていない次第でございます。
  85. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 ただいま郵政省からお答えになりましたように、私どもも再三申し上げておりますように、公社として賃金をきめる基準が公社法に書いてございます。その中で民間賃金という問題は非常に大きな一つの要素になっておるわけでございまして、また現実問題といたしましてはただいまの物価の動きが具体的には民間賃金の中にあらわれてくる。したがって、私どもといたしましては公社法の基準のとおりにそういう総合的な判断をする時期というのがおのずからあるわけでございまして、それまでの間出せない、回答できない、こういうことになっておる次第でございます。
  86. 山田耻目

    山田(耻)委員 一昨年千円という回答をなさったことがありますね。昨年は百円でございました。いずれにしても過去に団体交渉の過程を通してこれが有額回答だということで、千円なり百円なりをお出しになったことがありますね。このときの根拠は一体何ですか。
  87. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 御指摘ございましたように、昨年の二月の十七日でございましたか、組合側の賃上げ要求にこたえまして、私どもといたしましては——これは午前中も労働大臣並びに労働省当局からお話がございましたように、昨年におきまして非常に雇用が逼迫しておりまして、特に若年者の雇用が困難でありました状況から、初任給が一般民間におきましても非常に上がっておったような状態が見受けられました。当省といたしましても雇用いたします若年労働者の獲得のために、どうしてもそれと均衡をとりまして初任給を上げざるを得ないという立場がございました。したがって、ただいま御指摘にありました初任給千円をアップいたしまして、それを全従業員にならして申し上げますと、一番少ないので百円、平均いたしまして五百円という金額の回答にいたした次第でございます。
  88. 山田耻目

    山田(耻)委員 初任給の変動は民間にもあったことですね。ひとり電電公社だけではありません。あなたのおっしゃっている民間の動向のみを指さしておられるのなら、午前中の答弁の中にも、ことしは民間の初任給是正というものはあまりない、だからことしは有額回答しないのだという根拠だけで考えられていきますならば、ならした賃金の答えというものは出ないのですよ。いまあなたのおっしゃっている答弁の中には百円から五百円の傾斜が引かれていくわけですね。初任給を是正いたしますと全体を是正しなければならなくなりますね。これは賃上げの一部である、当時の有額回答の根拠としては、初任給是正等含めて原資がこれだけしかないという意味の趣旨が述べられていたと私は記憶いたしております。そういう趣旨がことしの場合に適合されるといたしますならば、いわゆる物価値上げというものはひとり電電公社の職員だけではございません。三公社五現業の職員だけではございません。民間を含めて全体にならされて与えてきた消費者に対する被害でございますから、今日の賃上げ要求の根拠を見てまいりますと、昨年のようになべて初任給の問題が議論になり、ことしはなべて物価高の問題になってきているのです。だから、民間賃金の動向というのは、確かに企業内の力の強弱にもよるでありましょうが、しかしおしなべて共通点を持っているのは物価の問題です。だから、労働大臣が、少なくとも物価の値上がり分については最低見てやらなければならぬ、こういうことを私は今日まで公的にもものを言ってきたつもりであるし、これからももちろん言い続けたいし、政府部内でも言いたい、こういう一般論をなぜあなた方は御採択なさらないのか、御採択なさらない根拠というものは一体何かという点を伺っておる。
  89. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 もちろん私どもといたしましては、物価が賃上げの要素でないということを申しておるのではございません。先ほど来たびたび申しておりますように、国民の納得する賃金であってしかるべきだという見地に立ちますならば、公務員の、特に私ども五現業の郵政の公務員賃金が先に決定されてしかるべきではない。言うならば、パターンをそこで設定することについてはいかがであるかと私は考えておる次第でございます。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕 そういった意味で、決して物価を賃金に加えないということではございません。物価が要素になって民間賃金も上がっておる点も認めました上で、民間賃金全般の、また民間賃金におきましても、物価以外の一般状況を考慮いたしまして、先生指摘になった力関係等も中にはございましょう、そういったところで、いろいろの要素で決定されました民間賃金の指数の動向を見ました上で、私ども五現業の、特に郵政公務員賃金を決定するというのが最も妥当だと考えておりまして、特に給与特例法の条文等にも適合しておると考えまして、民間賃金の動向を見た上で決定したい、かよう考えておる次第でございます。
  90. 山田耻目

    山田(耻)委員 民間賃金の動向ということをことしは非常に力説なさっているようでございます。これは公社がとった一つの新しいポーズですね。いままでは民間賃金の動向を見た上でうちのほうは回答いたしましょうというポーズをとったことは過去にないのですね。そういうポーズをことし特におとりになる原因というものは一体何でございますか。
  91. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 先ほども私申しましたように、私ども五現業の、なかんずく郵政公務員賃金は、ただ郵政公務員だけ抜き出してきめるということよりも、国民の納得する適正な賃金であってしかるべきだという見地から、特例法でうたっておりますところの一般公務員賃金民間賃金並びにほかのもろもろの要素というこの三木の柱を総合勘案いたしまして、特に一昨年ころから方針といたしましてさような方針を決定しておる次第でございます。
  92. 山田耻目

    山田(耻)委員 それならもう一つ重ねて聞いておくのですが、民間賃金の動向がたとえば四千円とか五千円とかきまりますね、きまりましたらそういうことを電通は勘案をして労使双方で労働協約を締結する、こういうことまで用意なさっておるということですね。
  93. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 ただいま四千円、五千円と例をあげられたわけでございますが、私どもといたしましては、午前中も労働当局からお話がございましたように、一般行政公務員にきまっております賃金の決定方法、つまり従業員千人以上の事業所を含む百人以上の事業所の従業員全体の賃金の動向を見るということが、私ども同じ公務員である郵政公務員につきましてもとるべき、参考にすべき方法だろうと実は考えます。ただ、午前中も吉村先生からお話がありましたが、郵政公務員の場合、実を申しますと、御指摘のあったよう従業員の多い事業所だけでなくて、約一万五、六千くらいの散在しております事業所におきましては僻陬の地にある事業所も多々あるわけでございまして、そういったところは二名とか三名とかいう従業員のおります事業所が相当ございます。そういったところにおきます——参考にすべき民間賃金全部というわけにいきませんでしょうから、具体的には五十名以上といったような事業所をとらえて私どもの郵政公務員賃金を決定するのが私は妥当かと思いますけれども、しかしこの点につきましては、先ほどお話がございましたように、民間賃金の大体の動向がきまりましたならば、その中にもろもろの事情があって若干高目のものがございましても、総合的にこの際これに従ってきたほうがいいというぐあいに考えましたようなところから、昨年は四月の末ごろにおよその金額を決定したように私は理解しております。
  94. 山田耻目

    山田(耻)委員 新しい傾向ですから私も敬意を表するのでありますが、公務員給与の比較、民間賃金の比較、これは五十人とか百人とか千人とか意見はあるでしょう。それは一応別にいたしまして、そういう民間賃金の動向を見て、そうして電通では電通労働組合にこれだけ引き上げたいという、国民に見てもらって恥ずかしくない金額を示して、それで両当事者間で賃金紛争の解決に当たる用意がある、こういうことを言っておられるのかと私は聞いておるのです。いかがでございますか。
  95. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 先ほど先生の御質問にお答えいたしましたように、組合側で出しております金額につきましては全逓の場合ですと八千五百円、全郵政の場合ですと六千三百円という数字でございます。しかもいろいろ団交で話し合って交渉していきます中で組合といたしましては、この数字につきましてはこれを引き下げるという用意はない、また事情聴取の中におきましてもそういったことを申しておるのでございます。したがって、先生お話は理論的にはいま御質問ようなことがあり得ましても、私ども実際の問題といたしまして、さようなことはなかろうと考えます。
  96. 山田耻目

    山田(耻)委員 組合側は八千五百円、あなたのほうは零と言う。そこで引く、引かぬということ、これはものごとの二つの違う人格が、利益の相反する者が議論をするときにはある事柄ですよ。しかし現実にまとまっていった過去の労働行政なり労使双方の結論というのは、適当な妥協と言っては語弊がございますけれども、それぞれに満、不満は述べてみたって、一つの点に向かって妥協いたしておるのが労働運動の特徴ですよ。労使の問題の特徴点、政治と違う点が多いのですよ。そこで、やはり全逓は八千五百円と言っておる。おたくはどう言っておるか知らぬけれども、とにかく統一要求として八千五百円と言っておる。あるいはこれが五千円でまとまるかもしれませんよ。経営者としてはできるだけ経営能力も考えて、経営の実態から説明もして納得してもらって常識的な賃金におさまってもらうという努力をなさるのがあなた方の従業員に対する労働政策の大切な姿でなくちゃならぬと私は思っておりますが、そこには当然妥協が生まれるでしょう。だから、あなたがいままでここで述べられておるものの考え方というのは、従来は労使間では当事者能力の問題があって、回答できません、予算上、資金上こういう点はものが言えません、こういう立場で一貫してきておったのだけれども、ことしからは民間賃金の動向を見て回答いたします。回答いたしますというのは、誠意をもって、これで妥協してくれぬかと当局側から具体的な資料が並べられて、経営者としてはこれ以上出せぬし、金額も民間の動向を見たり、公務員との開きを見たりして、国民も認めてくれる金額じゃないか、だからこれでひとつというような、おそらくこういうものの言い方で金額をお出しになるものだと私は思いますよ。民間の動向を見たって、ことしはそういうふうにして電通労働者回答をなさる用意があるのかと私は聞いているのですよ。あなたの言い方からいってどうなんです。
  97. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 先ほど来申しておりますように、全逓の要求に対しましては、私どもくどいようでございますけれども、民間賃金の動向を見て——民間賃金が動く、つまり上昇する、それを勘案いたしまして、上げなければならないと思えばこれは当然上げるというつもりであるという回答をいたしたわけでございます。しかし、その時期を待てないということで全逓といたしましては、あるいは全郵政といたしましては調停に持ち込みました。したがって調停に上がっており、さらには調停でもしこれがととのわずということになりますと、例年のよう仲裁に上がってまいると思います。仲裁裁定の出ましたものにつきましては、もちろん私どもといたしましてはその責任があるだけでなくて、また第三者機関でありますところの仲裁委員会におきまして決定されました賃金は最も妥当な賃金額だろうというぐあいに考えますので、当然私ども積極的にそれに従っていくつもりでおります。
  98. 山田耻目

    山田(耻)委員 私が聞かぬことを答えぬでもいいですよ。私が聞いておるのは、団体交渉をなお継続していけるものならば、民間の動向が判断できる時期に到達したならば回答いたしましょう、こういうことをあなたは言っているのですよ。私にさっきから、団体交渉もそういう答弁をしてきたと言っているのですよ。だから、その時期が来たならば仲裁に移行せずに、もしも調停段階でもう一ぺん団体交渉をやりなさいといって調停委員会労使の双方に下げたときには、あなたは民間賃金の動向がきまるのはいま四月の下旬とおっしゃいましたけれども、四月の下旬ごろ民間の動向がきまったときには、世間さまから見ても、公務員との比較から見ても、民間の動向を見てもこれが適当な賃金であるというものをお示しになって労働協約を締結なさる用意があるかどうかと私が聞いておるのです。その点答えてください。
  99. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 端的に、先生がもし調停委員会におきまして調停請求を下げて両当事者同士団交しろという、そういう差し戻しがあったらどうかという前提をおっしゃいますと、私はそういう前提がありましたならば、四月の末から五月初めというような時期におきましては例年におきましても大体賃金の出そろう時期でございますので、それに応じてもいいと思っております。ただ、くどいようでありますけれども申し上げますと、私どもの郵政公務員賃金につきましては、もろもろの業種の一般民間従業員賃金等も勘案いたしまして、それが出そろった時期ということになってまいりますと、本来なら私はその時期は六月、七月までほんとうは待つべきだと思います。しかし、そういうことを申しておりましても、常識に合わないという先生のおしかりもあると思います。また、一般賃金民間において決定するのがほぼ四月の末から五月にかけてでございますから、そういった時期にあたりまして、私、先生先ほどおっしゃいました前提を前に置いて、そのようになるということを申し上げて差しつかえないと思います。
  100. 山田耻目

    山田(耻)委員 電通もひとつお願いします。
  101. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 電電公社も大体同じでありますが、ちょっと事情が違いますのは、全電通の場合は、公労委調停委員会の場で労働組合のほうがすでに、調停段階で妥結ができるならば八千五百円の要求にこだわらないということを、これは初めてでありますが、公式に申されております。その前提に立ってお答えをいたしますと、先ほど来申し上げております、団体交渉の場ではない、調停委員会の場でございますけれども、私どもができるだけ早く諸般の事情を追って回答いたします金額というのは、先生のおっしゃるようにこれは昨年も同じでございましたが、これで妥結をしてもらいたいという金額であり、またそういう御説明をいたすつもりであります。
  102. 山田耻目

    山田(耻)委員 若干のニュアンスは違うようですけれども、要するに団体交渉で協約を締結することが、時期的に許されるならばあり得てよろしい、こういう立場でございますね。もう一度、くどいようでございますが……。
  103. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 郵政といたしましては、先ほど先生がお立てになりました前提、つまり調停委員会団交に差し戻しということでございましたならば、もちろんその段階において団交しても差しつかえないと思っております。
  104. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 同じであります。
  105. 山田耻目

    山田(耻)委員 そこでこれは、私は組合当事者でないから突き進んだことは申せないのですけれども、調停委員会の提訴がもっとおくれていたならば、団体交渉をもってことしの賃金紛争は解決できた、あるいは歩み寄りがあれば解決できる労使双方の態度であった、特に使用者側の態度であった、というふうに理解してよろしゅうございますね。
  106. 曾山克巳

    ○曾山政府委員 仮定の問題としてお尋ねになったわけでございますが、そういう仮定のもとに立ちまして、調停組合側でいたさず、依然として団交を続けてほしいという態度があったといたしますと、先生指摘ようになったと思います。
  107. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは三治さんに少し聞いておきたいのですが、第八条が団体交渉の対象事項をきめておるのですが、賃金に関するものは第八条一号に団体交渉の対象にすることができる、こうなっているわけです。八条の主文は、団体交渉でまとまったものは「労働協約を締結することができる。」旧法は「妨げない。」となっている。いまのは、協約を締結することができるのだ。この場合に、労使双方が調印した場合には民法上の拘束力を持つのだ、効果を持つのだ、こうなっております。ところがこの労働協約というものが当事者能力関係してくるのですね。そこで三公社五現業の責任者というものは予算で縛られておりますから、予算総則で、予算上、資金上越えて支出してはならないとなっております。予算上越えて支出をするというのが、新たなる年度にまたがる場合の賃金要求のあるべき正常な姿である。当然当事者能力にかかってまいります。ひっかかってきます。それが今日まで当事者能力がないからといって、労働協約を締結することをのがれてきたのが経営者の態度であったわけです。そこで団体交渉をろくすっぽやらずに調停に逃げていく、仲裁に逃げていっておった。ですから公労法第一条にいう公共の福祉など考えてまじめに団体交渉をし、その結論を経て労使紛争が円満な解決をたどるようにという精神もじゅうりんをされて、両当事者から離れて第三者にいっていた、こういう過去の経緯であったわけです。ところがいまの郵政、電電の御答弁を聞きますと、従来のその態度は消えていったと私は判断をします。たいへんけっこうなことです。これは労組法本来の姿に返ってきているのです。そこで、予算上、資金上越えて労働協約が当然締結されるのですけれども、締結されましたときには、当事者能力を欠いている経営者を保護する立場から、十六条というものがあると私は思っているのです。予算上、資金上越えておる労働協約というものは、国会の議決を経なければ効力を生まないのだと書いてあります。そこに予算編成権、審議権が一つの性格を持ち出してきておりますね。そこでいまの二方の御答弁のように、資金上、予算上越えた労働協約が締結されたときには、当然十六条の手続に従って国会の承認を経る、そういういき方がことしの公労協の賃上げ闘争の中で育てられればすなおに育っていた、こういうふうに労働省指導上理解を一致することができるかどうか、この点をひとつ明らかにしてほしい。
  108. 三治重信

    三治政府委員 結論から申し上げますとそのとおりでございます。したがってわれわれは最近のよう春闘でスケジュールをきめて、いついつまで、こういうふうなことをやられると、やはり公労法上のいろいろな問題にひっかかる。当事者能力にもわざとひっかかる、こういうふうな感じを非常に持っていたわけであります。先生がいまお述べになっていたような理解を公労協の各組合の幹部が持っていただいて、いましばらく時期というものを従来の強固なスケジュールから解放して、できる限りそういう公労法上の自主性というもので、当事者能力をお互いに完全に持っていこう、こういうふうな線に持っていっていただきたいと考えますし、公社当局のおっしゃられたことは、労働省としても、従来とも公社当局並びに政府としてそういう態度をとるべきだという主張をしているわけでございます。まあしかしこれはなかなか現実の問題としては、そうなるまでには若干時間がかかると思いますが、先生もおっしゃった方向に少なくとも公労法関係労使関係がいけば、今日までよりはずいぶん前進する姿ができるし、政府としてもそういうふうなことについて努力すべきであろうというふうに考えております。
  109. 山田耻目

    山田(耻)委員 従来私も国会で、予算委員会なり分科会あるいは社労で幾度か言ってきた意見が、ようやく、時期の問題はあったとしても、法律上の解釈と実際運営がここで成り立つ、私もたいへんうれしいわけであります。ただ若干気になりますのは、郵政と違って三公社の場合は、もちろん賃金の基礎というものは国家公務員を下回らないこと、こういうことが一つの前提になっているのですね。国家公務員から離れたわけでございます。ところが公労法の第一条の第二項には、  「国家の経済と国民の福祉に対する公共企業体及び国の経営する企業の重要性にかんがみ、この法律で定める手続に関与する関係者は」、これは両当事者をさしているのでしょうね。「関係者は、経済的紛争をできるだけ防止し、且つ、主張の不一致を友好的に調整するために、最大限の努力を尽さなければならない。」こうなっておるのです。したがいまして、時期の問題がウエートの多くを占めるよりか、企業の重要性にかんがみてすみやかに問題の解決をするために、最大の努力を注がなければならないとなっておりますね。だから郵政の場合は、国家公務員としての取り扱いを受ける要素とまではいえませんけれども、三公社とは若干性格のニュアンスを異にいたしております。一応曾山さんですか、おっしゃっていることの、民間の動向を経てという気持ちも百歩譲るといたしまして、三公社の場合は経済的な紛争が起これば企業の重要性にかんがみてすみやかに解決をしていく、こういう一条二項の趣旨からいいますと、いたずらに時期を延ばしていって、全体が終わったあと、それらのそれぞれの金額を比較して結論つけるという立場でなくて、もっと事態をすみやかに解決するという積極的意図があってしかるべきだと私は思う。だから、そういう意味では団体交渉をすみやかに展開をされて、そうして労使意見を一致するように努力されて、そうして労働協約を締結し、所要の手続をとり、紛争をおさめていく、こういうことをすみやかにおとりになる義務が、第一条の精神から考えるとあるような気がいたしますが、その点はいかがでしょうか。
  110. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 私どももいまお読みになりました第一条の精神によりまして、十分できるだけの努力をいたしてまいりましたし、また今後も続けていくつもりであります。ただ、先ほどちょっと申されましたように、現在のスケジュール闘争という問題が問題に一つございます。それから私どもがるる申し上げておりますように、民間賃金の動向といいますか、そういうものが出るということは、これは私どものあるいは努力外の問題も客観的条件としてあるわけであります。この二つを思いまして、その中で現実にいまおっしゃっているように、一条の精神に従ってできるだけすみやかに紛争を解決するように努力をいたしたいと思います。
  111. 山田耻目

    山田(耻)委員 では、電電のほうは、調停から団交に戻してすみやかにやりなさい——労働協約を締結する意思が経営者にもあるのだ、組合にもあるということになったらまとまるのですから、そういうふうになったら、私が申し上げているように、すみやかに解決に向かって努力なさる用意があるわけですね。
  112. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 現在の段階では、先ほど郵政省の人事局長がお答えになりましたように、現時点でかりに団交に戻されましても、先ほど申し上げましたような理由で、私どもは具体的な金額を提示する段階にいっておりませんので、そういうことはおそらくできないと思います。
  113. 山田耻目

    山田(耻)委員 おかしいですね。それがやはり民間ですか。
  114. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 そういうことでございます。
  115. 山田耻目

    山田(耻)委員 公共企業体が国家公務員賃金を下回ってはならない。もちろんその側面には民間賃金との均衡をということがあるでしょう。あるでしょうけれども、国家公務員の立場とは違うはずでございますね。そのために三公社五現業という一つ公共企業体が片側で発生をし、公共企業体等労働関係法を適用する。公務員のほうは公務員法を適用し、民間の場合は民間労働法を適用する。こう事業法も違い、労働法も違ってきておるのでございますから、特に経営の上でも若干の相違性を持っておる公社としては、そう民間の動向を気になさらずに一むしろ民間の動向を気にするのは従事員の側ではないでしょうか。あなたのほうは、むしろ積極的に企業の持っておる能力と、一条のいうすみやかに事態を円満に解決するという立場を主張なさるのが、経営者の態度ではないでしょうか。いかがですか。
  116. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 公社の場合には、いま先生のおっしゃられました法律労働関係法律でございますが、先ほど申し上げましたように、日本電信電話公社法によりまして、賃金の決定に公務員民間賃金とその他の事情と、この三点が明記をされております。また、公務員より下回ってはならないということも別に明記はされておらないわけであります。公務員民間賃金とその他の事情を勘案してきめるという原則になっておりまして、これは法律公社の経営者を縛っておる基準でございます。そこで私が申し上げておるのは、そのうちの大きな要素である民間賃金の動向というものは、当然これは私どもが法律考えなくちゃいけない要素の一つになっておるわけであります。したがって、先ほど申し上げましたように、現段階ではかりに御仮定のよう事情になりましても、団交で私どもが具体的な金額を出す段階にはまだ至っておらない、こう考えております。
  117. 山田耻目

    山田(耻)委員 そういたしますと、従来電電公社法ができて以来今日までかれこれ十五年くらいたっておりますね。その間の電電従事員の賃金の決定というものは、絶えずいまあなたのおっしゃっているような精神をくんでつくられてきたものでしょうか。そうじゃないでしょう。あなた方が調停仲裁に出て述べられておる議事録というものは、私も非常に多く持っております。その中で述べられておるのは経営能力の問題が主点であります。いっでも民間賃金の動向を見て、国家公務員の動向も見て、妥当常識的な賃金をきめなさいよということばがどこで述べられておりますか。いまここであなたは法律をたてにして逃げようとしてものを言っているだけです。過去の賃金決定の中で、どこでそういう立場が述べられていますか。いつもある意味では政治的な配慮、ある意味では公社のいう公社経営能力の態度が、仲裁委員会では非常に強い勢いで述べられておるじゃないですか。こういうことを私は三百代言と言っているのですよ。ふまじめですよ。だから今日の公労協が、調停仲裁にかけていきながら、わずかであるけれども実力行使を背景に進めていかなければならないという事態が生まれてくるのです。この点、あなた方も経営の責任者の列に位しているならば、もっと冷静にこの問題というものを取り上げて、法の定めるところに従って、今日ただいまからまじめに取り組んだっていいじゃないですか。民間の動向を民間の動向をと言っておりますけれども、民間でもすでに賃金を決定したところもあるのです。その民間もまた他の民間を見ているのですよ。そうして他の民間は今度は公社を見ておる。そしてその根元の一つは人事院の勧告も参考になっているのです。それぞれがそれぞれを見合っておるというのが、いまの経営者側が賃上げに臨む態度ではないのですか。民間の場合は特にそういう事情も考慮して、第一次回答、第二次回答、第三次回答といって、逐次回答額をふやしていっているというのが今日の常識でしょう。少なくともあなた方が労使関係というものを円満に育て上げようとしていくならば、第一次回答があってしかるべきだろう、第二次回答があってしかるべきだろう。少なくとも今日の第一次回答というものが出ようとするならば、民間の動向の推計、物価値上がりの推計、こういうものを基礎にして第一次回答公社労働組合に示すことができたって、一つもおかしくないじゃないですか。なぜそういう態度をおとりにならずに、全部ゼロだ、民間の動向がきまるまでは全部ゼロだ。一体こういう経営者の態度をとれという法律がどこにありますか。その態度についてひとつ答弁してください。
  118. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 だいぶおしかりを受けましたが、公社になりましたときから現在の法律はありまして、その法律に従って今日まで公社賃金問題を処理してきたと思います。ただ先ほど先生からも若干おほめのことばをいただいたように承っておるのですが、何と申しましても、過去におきましては、実際上賃金団交におきましてはそれほど明確でなかったわけであります。その点をことしはいまるる申し上げましたように、民間賃金の動向を見て、その段階回答ようと申しましたことは、私は従来よりはそういう意味賃金交渉としては進歩をしたというぐらいに先生からもおほめのことばをいただいて、五分ぐらいあとでおこられておるのですが、進歩だと思います。それから団交の場でほかの諸点にしましても、相当詰めて議論をしているわけですね。そこであとは民間賃金の相場というものが出ますれば、私どもは決して逃げも隠れもせず、態度をはっきりしょうと思っておるわけでありますから、公社法三十条の精神を守りつつ、しかも具体的に賃金交渉としては従来より現実的に進歩をしておる。ただ、こういう問題でありますから、一挙に理想的な形態までは確かにいきかねるでしょうが、過去に比べれば一歩も二歩も前進しておる公社の態度であると思っております。
  119. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 山田君に申し上げますが、大蔵省の辻給与課長が見えております。
  120. 山田耻目

    山田(耻)委員 確かに従来の態度より進んだことについて、私はいままで主張してきたことなんで、たいへんよかったと思っているのですが、ところがほんとうはそれがあたりまえだったのです。法律のたてまえからいえばあたりまえなんです。それをやらなかったから、今日まで私が国会で機会あるごとに追及してきた問題なんですね。それを今回は、当事者能力は一応別にして、両当事者間でまとまった労働協約が予算上、資金上越えておっても、労働協約は締結しましょう、そうして十六条の定めに従って国会の承認を得るというふうに労使間の団交の姿勢というものを正していきましょうという結論が出たことは、私は従来よりかりっぱだと思う。それがあたりまえのことなんです。あたりまえのことができなかったことを今日まで問題にしておったのですけれども、そうほめられたからといって、たいへんりっぱになったということを言っているのじゃないのですから、誤解しないようにひとつ……。  そこで、従来こういうことは一度もなかった。全くそのとおりでしょうよ。あなた方が当事者能力がないからといって有額回答してないという現実は、逃げ切っておったということなんです。そうして組合のほうも、幾らたたいてみたって回答してくれぬものをいつまでもほうっておくわけにいかぬということで調停仲裁結論を求めていっていたわけですよ。従来は、一口で言ってそういう態度であったと言えるのです。だから従来なかったはずなんです。しかし、なかったところに今日の公労協労働組合があれほど法律不信感を持ち——先般ドライヤーが来たときも、日本の労使間には抜きがたい不信感がある、その不信感を除去するためには定期的懇談会を持ちなさい、その定期的懇談会の経緯と結果を国会に報告しなさいと言っているのです。憲法四十一条に定めている国会というのは一体何か。立法の府でしょう。立法の府に経緯と結果を報告しなさいというドライヤーの抜きがたい不信感というものは、法律が正しく運用されていないということをさしているのですよ。過去の労使間というものがそういういびつな関係の中で残念ながら十五年なり二十年成長してきたところに、今日の不幸があると私は思っているのです。過去なかったから今回やったんで、成長だといえばかなりの成長でしょう。しかし、過去の経緯はそういうものであるということを念頭に置いてこの成長の評価をしていくのならば、私はあやまちを改むるにやぶさかであってはならぬから、団体交渉しなさいという調停委員会方向が出れば、民間の動向などといわずにすみやかに団体交渉を開いて、民間結論が出ない段階公社として出し得る金額はこの程度だ、それがある程度物価の値上がりを考え、国民の理解を求められるような金額が示される道が選ばれたっておかしくないじゃないですか。過去になかったからやらないということでなくて、そういう方向に、新しい道ではない当然の道であるけれども、法律を正しく守っていこうとする方向に返ってきたのならば、そういう道筋を追われたっておかしくないじゃないですか。いかがでございましょう。その道をぜひともとってほしいと思います。
  121. 遠藤正介

    ○遠藤説明員 私は過去の経過につきましては、大体先生と同じですが、ことしの賃金交渉については、おっしゃるように過大評価をしておるつもりもございません。ただし、現実問題としては、相当な前進だと思っております。ただ、いま御質問ように、ここで調停委員会から団体交渉に差し戻された場合に、団体交渉の場で民間賃金の動向がわからないが、いわゆる第一次回答、中間回答的なものを出すということは、公社の場合は先ほど公社法三十条を申し上げましたが、民間賃金の相場が出てから回答するということはすでに半年も前にはっきり申し上げておるわけですから、ここで団体交渉の場に移されましてもそれはできない、こういうことを申し上げておるわけです。
  122. 山田耻目

    山田(耻)委員 それは公社法三十条の精神を順守してということですけれども、公労法第や条二項、公労法第八条主文、これに忠実であるということにはなりません。その意味では、労働組合が納得するというあなた方の態度ではないと思う。この点はいずれまた後ほど明らかにしていきたいと思います。  大蔵省お見えになりましたそうで、辻さん、ひとつ質問いたしますが、いまお話をお聞きになっておりまして、いわゆる三公社五現業なるものが賃金紛争で団体交渉をやる、そうした場合に交渉がまとまる。従来はその交渉をまとめることに給与総則で若干のブレーキをかけておったのです。予算上、資金上越えていかなる給与の支給をしてもならないし、それを越えた給与というものをきめてもならない、こういう予算総則上の取りきめがありまして、大蔵省のほうからあるいは各公社に対してそういう強力な指示がなされていたものではないかと私は思うのです。それを辻さんのほうから、予算総則ともちろん当事者能力同じものですけれども、それと労使間の予算上、資金上越える労働協約の締結、このことについてお伺いをしておきたいと思います、どういう態度であったか……。
  123. 辻敬一

    ○辻説明員 三公社五現業につきましては、いずれも完全な国有の法人と申しますか、そういう性格を持っておるか、あるいはまた国営の企業でございます。御案内のように、その事業はきわめて公益性の高いものでございますし、会計経理につきましては、国家財政、国民経済と密接不可分の関係にございます。運営も国会の議決を経て定められる予算に基づいて行なわれるのでありまして、そういう意味におきましては、ただいま御指摘のとおり給与総則その他の面においても一定の制約があることは御承知のとおりでございます。
  124. 山田耻目

    山田(耻)委員 昭和三十一年であったかと思いますが、団体交渉賃金をきめたことがあるのです。これは団体交渉といったら、皆さん首をかしげられますけれども、ほんとうは調停であっせんが出まして、そのあっせんをもとにして労働協約を締結いたしました。そうして実施をしたわけです。そうしたら大蔵省のほうから、予算総額のたてまえからできない、やみ給与だといって、たしか当時八百五十円ぐらいの妥協だったと思いますけれども、二百五十円程度に残されて、あとの六百円は戻入させられたことがございます。こういう予算総額制の威力というものは、時の三公社五現業をして、大蔵省に対してたいへんな恐怖感を持たせるようになったのではないか。労働者のほうはおこりまして、抜き打ちなんとかいう一つの騒動もあったように記憶をしますけれども、一体やみ給与制度をあなた方が戻入させたときの根拠は何でありますか。この際この問題の根本に触れておりますから、明確な答弁をひとつお願いしたいと思います。
  125. 辻敬一

    ○辻説明員 三十一年度の問題につきましては、私必ずしもその間の事情を詳細に存じておらないものでございますけれども、その当時の制度給与総額あるいはそれぞれの法の規定に従いまして措置いたしたことと存じます。
  126. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうも大蔵省のおっしゃっておることはよくわからないのですけれども、やみ給与ということによって、労使双方でまとまった結論——大蔵省ちょっとわかりにくいと思いますけれども、三公社五現業で賃金をまとめる場合には二通りの道があるのです。一つは、労使双方が労働協約を締結して調印をした場合、これは民法上の効力を持つのです。ただその労働協約なるものが最終効力を発生する場合に、当該年度の予算上、資金上の総額を越える場合には、公労法十六条によって国会の承認を経なければならないと書いてあるのです。これが一つ。二つ目には、仲裁に移行した場合には、仲裁裁定というものは労使双方を拘束する。そうしてここから先は二つ意見がまた分かれるのですけれども、一つ意見は、政府をも拘束する。だから、国会は追加予算なり補正予算なり移流用の措置をとることによって方法を見つけ出すだけである。いま一つは、予算編成権、審議権を持っておるのだから、当否についても意見を持つ、こういう意見、二つあります。これは将来の問題で解決されていくでありましょうけれども、いずれにしても仲裁裁定を経て賃金を決定していく道と、労働協約の道と、二つございます。いまの昭和三十一年のやみ給与事件というのは、当事者能力を越えて出したことに対する大蔵省の判断なんであります。けしからぬ。そのことの当然とられるべき手続としては、労働協約を締結しておるのでありますから、当然十六条に従って国会の審議を経て議決を経るという立場を推奨せずに、六百円という金額をやみ給与として取り上げていった、戻入させた、こういう法律の解釈の根拠は一体——ようやくにしてそれから九年、いま私が述べたような、両当事者間で労働協約を結ぶことはできる、そしてそれが資金上、予算上越える場合には十六条の規定に従って国会の承認を得るということを、みんな満場一致で認めてもらっているのです。当時の法律といまの法律と少しも変わってはおりません。その当時の大蔵省でおとりになったやみ給与として戻入させられた事件というのが、今日当事者能力を欠いているものはあたかも予算上、資金上越えた労働協約を締結してはならないというふうな誤った法律解釈をさせていくよう一つの出発点になったと私は見ているのです。当時の見解をもう一度述べてもらえませんか。あなたのような紋切り型では、どうもお答えにはならぬような気がいたします。
  127. 辻敬一

    ○辻説明員 三十一年度の問題につきましては、なおその当時の事情を調べまして、必要でございましたら後ほどお答え申し上げます。
  128. 山田耻目

    山田(耻)委員 当時の模様を資料として提出をしてください。私のほうにお願いいたします。  どうも三治さんに聞いていると、はっきりした答弁をしてもらえそうでもあり、もらえぬようでもあり、私も困るのですけれども、しかしここまで交渉経緯と十六条の関係が明らかになってきたので、いまさらいろいろなことはないと思いますが、一ぺん労働省の統一見解、というよりは、総務長官を含めて、統一見解として、三公社五現業は当事者能力を越えて——当事者能力というのは、池田さんと太田君とがああいうことばを使いだしたこともぼくはおかしいと思うのですけれども、実はこのことに関しては当事者能力ということではないのですから、予算上、資金上越えて労働協約を結ぶことが八条の前文にいっている精神に背反をしない、こういう立場が一つ。それから予算上、資金上越えた労働協約を締結した場合には、当然十六条の手続に従って国会の承認を経て効力が発生する、こういう公労法八条の解釈と十六条の手続というものを明確にして三公社五現業に文書で配付していただく、この委員会でやりとりされた一つ結論として配付していただいて、来たるべきこの種問題の団体交渉では、そういう法律解釈から逸脱しないように、労使関係というものが健全な方向に育成されていくように注意を喚起するという意味の文書でも出していただくことはできないでしょうか。
  129. 三治重信

    三治政府委員 もうここで、この速記のついたところで、公社の方も来て、われわれもそういうふうに言っておりますから、別にあらためて文書にする必要もないと思いますし、それから何と申しますか、いまそういう態度でわれわれは——歴史上のことを言えば、われわれは四・一七以降当事者能力の問題があって、次官会議の昨年の決定もあり、そういうところでずいぶん討議しいろいろ研究した上での大体の意思統一というふうにもおとりになってけっこうではないかと思う。したがって文書とかなんとか、みんな国営企業、特殊法人のやつですから、そうあらたまったことは私は必要ないと思います。  ただ先生、ここで何も注文をつけるとか、留保をつけるということで申し上げるわけではございませんが、ただこの予算上、資金上のときにいつも問題になりますのは、予算が上がるまでは結局そこでこういうことをやっていく場合においての障害一つある。ということは、予算の上がるまでの審議の途中でこの問題が起きますと、結局提案している予算そのものが変わるじゃないか。では何でこんなでたらめな予算を出したかという議論になるものですから、やはり予算上、資金上の問題との関連におきましては、そこの予算審議の途中の場合には事実上若干困難な問題があるということを御承知いただきたいと思います。
  130. 山田耻目

    山田(耻)委員 私が聞きもせぬ変なものを持ってきて言うたって、そんなものは幾らでも議論ができる問題ですよ。そんなのはただ単なる手続の問題じゃないですか。私が言っているのは手続の問題じゃなくて、公労法というものが昭和二十四年にでき上がっていきましたときに当事者能力の問題が議論されているのですよ。三回国会、四回国会の会議録を読んでもらったらすぐわかる。自民党の中曾根さんと私のほうの山花さんとが時の増田甲子七大臣に対して明確に答弁を求めているのですよ。そうしたらいま私が言ったような答弁がもうできておるのです。予算上、資金上越えて労働協約を結んでよろしい、そういうことを経営者もしなさいと言っておるわけですよ。しかしそれは効力がないぞ、効力があるのは国会の議決を経てだぞ、こう言っているのです。強制仲裁であろうとも、三十五条による結論を下したとしても、予算上、資金上越えたものは十六条に立ち返って国会の承認を経なければ効力がないぞと言っている。そういうことが三公社五現業にいままで徹底していなかったと私は見るのです。これは善意ですよ。わかっていてやらなかったのなら公労法第一条に照らして懲戒免職に処すべき人々ですよ。公労法一条には忠実に義務を履行するようになっているから、やらなかったら懲戒免職にすべき人々だけれども、私はよく理解できなかったのだと思っているから、これは善意ですよ。だから善意の立場に立って公労法八条の注文と八条一項から四項ですかにまたがっている労働協約の対象事項については、まとまったら労働協約を締結しなさいよ。経営をあずかっておるのですからまとまるようにしなければならぬのです。そうしてまとまったもので当事者能力を越えた金額の妥結がある場合には十六条でこの手続を経るのだということをきちっと統一的に理解させる処置をしてほしいと私は頼んでいるのですよ。懲戒免職したくないから私は頼んでいるのです。いまここにお見えになっているのは郵政と電通だけでしょう。そういう統一指導が明らかに誤まっていたから三十一年のやみ給与みたいな大蔵省の措置が出てくるのです。それによって与えた労働者の損害は数が多いのですからひどいものですよ。そういう誤まった措置まで出てきた今日の歴史があるのです。いまここに来て法律の趣旨は山田が言っているとおりだということになったのですから、その趣旨をまだ誤まって理解する人がいたらいけませんので伝えてほしい。三公社五現業は八つあるのですが、ここには二つしか来ていない。四分の一しかこの議論はまだ聞いていないのですよ。だから、予算の出る前とかあととかということでなくて、そういう手続をなさるのは私は労働省の仕事ではないかと言うのです。それをひとつやってください。
  131. 三治重信

    三治政府委員 必ず他の公社現業にもきょうの質疑の法律上の諸問題についての見解は十分伝えたいと思います。
  132. 山田耻目

    山田(耻)委員 運輸省からお見えですね。
  133. 藏内修治

    ○藏内委員長代理 政務次官がおられます。
  134. 山田耻目

    山田(耻)委員 去年の二月十二日の予算委員会で私は運輸大臣にこのことを聞いたのですよ。どういう聞き方をしたかといいますと、国鉄当局と国鉄労働組合並びに動力車労働組合なりその他の組合とが一致して労働協約を結んだときには、予算上、資金上越えておっても、日本国有鉄道法五十四条の監督権を発動されてそれをしかるとかあるいは行政上の責任を追及するとか管理運営上の責任を追及するとかいうことはありませんねと伺いましたら、仮定の問題に対しては答えられぬというような横着を当時はまだ言っていた時代なんです。しかし、今日では法律のたてまえから私の主張が正しいということが立証されつつあるのですから、きょう御不在の他の二つの組合をかかえておる運輸省関係としては、当然五十四条の監督権の発動というものはそういう意味ではなさらないものと私は理解しておりますけれども、よろしゅうございますか。
  135. 福井勇

    ○福井政府委員 非常に重大な問題でありまして、これは当然大臣が出て熱心に御答弁申し上げなければならぬ筋合いだと私も思っております。当時の状況については、まことに恐縮でありますが不勉強でございますので、若干鉄監局長から答えさせていただきたいと思います。
  136. 堀武夫

    ○堀政府委員 予算上資金上支払いできないような協定を結んだ場合、国鉄に対して運輸大臣がそれをとめるとかあるいはしかるとかというようなことは五十四条でしないというふうに約束ができるか、こういう御質問ですね。この五十四条をするりと読みますと、「公共の福祉を増進するため特に必要があると認めるときは、」というのは、公共の福祉を阻害するような場合はもちろんのこと積極的に進めるような場合、そういうために特に必要があると認めるときに出す監督上の命令でございまして、ただいまの先生ような場合をこの条文は予想してないんじゃないかというふうに私は理解をいたしております。
  137. 山田耻目

    山田(耻)委員 たいへんありがとうございました。それに該当するという時代があったものでございますから伺ったのですが、あなたも非常に進んだ御意見になられておることに敬意を表しておきます。まさに五十四条は、そういう監督権が適用されて関係傘下公社を管理監督の立場から逸脱した行為であるといってしかることは五十四条の意味するところでないという立場だけははっきりしておると思います。私はあなたの解釈は正しいと思いますから、ひとつそのように運輸大臣にも伝えておいていただきたいと思います。  たいへん長くお待ちしておったのでありますが、モーニングに敬意を表して追及せぬことにしておきますが、安井さんはいま給与担当大臣でございますね。だいぶん騒々しくなってまいりまして、何か近いうちに三公社五現業がストライキ宣言をするとかあるいは四月の終わりごろに公労協と交運共闘、これは私鉄関係を含めて船、国鉄も入っておるのですが、こういうところが一体になりまして何とかして窮状を打開してもらわなければ一日の作業を休みたいという決意を表明しそうでございます。大切な国有企業に従事をしており、ないしは大切な産業に従事をしている人々でございますから、国家と国民に与える損害は至大だと思っております。おこっておる原因がわかり過ぎるほどわかっておりますだけに、いわゆる物価高による苦しみ、低賃金による苦しみというものはわかっておるだけに何とかして事態を円満に解決をしていきたいということで、実は午前中からずっといままでここへ関係者を呼びましていろいろと意見をかわしておるわけです。  そこで給与担当大臣であるあなたにお伺いをしたいのは、昨年の十一月三十日に三公社五現業の代表が官房長官なり小平労働大臣——あなたが同席なさったかどうか私はわかりませんけれども、八千五百円程度の賃金要求をしました。そうして、自来関係者間でいろいろと話し合いがされてきたわけでございますが、四月の五日に、重ねて政府の代表として官房長官が会われまして、事態の円満なる解決にということで公労協の代表と話をなさった模様でございます。お聞きでございますか。給与担当大臣ですから当然聞いておられると思いますが、いかがでしょうか。
  138. 安井謙

    ○安井国務大臣 きょうは、だいぶ前からお呼び出しをいただいておりましたにもかかわりませず、実は外国の大使三カ国ばかりの信任状提出の立ち会いをあらかじめきめておったものですからおくれまして、宮中で伺っていまかけつけてきたような次第で、まずこれは御了承いただきたいと思います。  それから、給与担当大臣であることは間違いございませんが、実は私の担当は公務員一般でございまして、公労協あるいは地方公務員につきましては、実は私のほうの担当外ということになっております。したがいまして、公労協関係のいろいろな折衝につきましては、いろいろな関連事項でお立ち会いをする場合もございますし、まあほとんど直接には労働大臣なり、あるいは政府全体の問題という形で官房長官がお会いになるというのを慣例にしております。したがって、せんだって来の、いまお話のありましたコンクリートな公労協とのいろいろなお話し合いにつきましては、実は私立ち会っておりませんので、その間の事情はよく承知しておりません。
  139. 山田耻目

    山田(耻)委員 給与担当大臣としては公務員なり地方公務員関係以外はあまりよくわからないとおっしゃれば、あなたに対して話の進めようがないのですけれども、あなたも国務大臣としてそういうことに無関心じゃないと思うのです。しかも、給与担当大臣といえば、やっぱり国家公務員だけの賃金というのが職掌であるといたしましても、たとえば三公社五現業の賃金決定にあたっては、国家公務員賃金給与というものを大切な資料としてその中核に据えておると思うのです。その担当大臣ですから、三公社五現業の給与関係についても、わしは全然知らぬという立場をおとりになるというのは、私はどうもおかしいと思う。いかがですか。
  140. 安井謙

    ○安井国務大臣 この点はむろん、国務大臣といたしまして、ことに一般公務員給与を担当しておる者といたしまして、いろいろ関連もございます。重大な関心も持っております。ただ、いろいろな職務上の都合で、そういったような会合や折衝の際に、必ずしもいつも出なければならぬというふうになっておりませんので、幸か不幸か、せんだっての場合立ち会っておりませんので、その間の事情をよく承知していない。しかし、おっしゃるとおり、公務員関係公労協の職員の給与関係もむろん広い意味では関係ございます。十二分に関心は持っておるつもりでございます。
  141. 山田耻目

    山田(耻)委員 あなたは総務長官ですから、いま問題になっております——問題というよりか、いま作業の進んでおります公務員制度審議会には御関係ございますね。そこで、若干話を進めていきたいと思うのですが、三公社五現業の賃金問題というのは、従来、当時者能力ということが誇大に災いをして、団体交渉をはばみ、調停仲裁に逃げ込んでいた。調停仲裁段階でその一つの実力行使的なものがかまえられていた。ある意味では不健康な状態だということもいえるかもしれません。しかし、その不健康な状態の源をなしておるのは、当時者能力がないがゆえに団交というものが持たれなかったというところにも大きな要因があるわけです。  そこで、いま制度審議会などでは基本権の問題について相談がなされておる。どの程度進んだか私わかりませんけれども、きょうそれを聞こうとは思いません。思いませんが、三公社五現業のよう一つの性格、国家公務員ような性格、地方公務員の性格というものは諸外国にも全く類似の型がございます。こういうものをそれぞれの国が持ちながら、同じよう賃上げ要求をされてきながらどういうふうな形で現実的な処理がされてきたかということをここでひとつ想起してもらわなくちゃならぬ。あなたが、ただ単なる給与担当大臣としてでなくて、国務大臣として、公務員制度審議会政府の代表の一人として想起してほしいのだけれども、一つは、かつてかなり大きく話題になりましたイギリスのホイットレー方式です。イギリスのホイットレー方式では、国の経営する事業は国会でやっぱり予算がきまります。この予算を越えて賃金なりの妥結というものはあり得るのです。それが、日本の場合は、当事者能力がないからといって労働協約も結ばずに仲裁に逃げておった。イギリスのホイットレー方式では、予算の最高責任者である大蔵大臣交渉相手になっているのです。そうして、そこでまとまったものが両当事者間の労働協約に直されていく。そうして、それが予算上、資金上越えておるものは国会の承認を得る。国会の承認というのは、追加予算か補正予算か移流用か、その内容について賛否の賛はいいが否を言うことができない、こういう立場できちんと労使慣行は確立されていっているのです。いま日本の場合というのは、それに似た法律体系、予算上、資金上越えた場合には十六条でやるという法律体系を持っていながらも、やらずに逃げていたところに今日の紛争の大きな要因がある。これをどうかひとつ念頭に置いてほしい。  そこで、三公社五現業というものは当事者能力で縛られてしまって団交ができないから何とかして打開の道を講じなくちゃならぬということで、昭和三十五年に、時の官房長官大平正芳さんでしたけれども、初めて官房長官を窓口とする対政府交渉が生まれてくるのです。イギリスの大蔵大臣とは違っておりますけれども、官房長官を窓口として、その両翼に給与担当大臣労働大臣とがいましてこれを補佐して三公社五現業の代表との賃金交渉の衝に当たってきた。これを当時対角線交渉と名づけていたわけです。企業ともやるし、政府ともやる。その交渉のしかたというのが、少しでも争いをせずに、実力行使などということをできるだけ控え目にして、団体交渉で問題の解決に当たりたいという公労協の幹部なり組合員の一つの願望がそこにあらわれてきているのです。そのことがいま政府部内で重要視されていない。重要視されていないということは、官房長官との会見、労働大臣との会見がその場限りでとまっておるということなんです。あなたは、いま、私は担当外だから聞かなかったとおっしゃっている。おそらく、あなたが聞いていないということは、総理も聞いていないし、大蔵大臣も聞いていないと思う。熱意がないということになりやしませんか。今日の公労協が、私が冒頭に言いましたように、歯がゆくて歯がゆくてかなわぬから、多少ちょっと何かやっつけなければならぬという気持ちになってきたということは、私はわかるような気がします。相手にしてくれる人がいないじゃないですか。どうしてもみずからの力にたより、団結にたよって何らかの意思表示をするという行動に結びついていかざるを得ないわけです。あなた方のお気持ちとして、私の言っていることがわかるのかわからないのか。わかるとすれば一体どういうふうにしていったらいいと思うのか。特に制度審議会に関係のあるあなたですから、あなたの抱負といいますか希望といいますか、そういうものを含めてでもけっこうですから、今日の問題点として述べてほしいと思います。
  142. 安井謙

    ○安井国務大臣 いまの山田さんのお話は、私どもはかねがね気にかけておるところでございます。   〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕 まあこの公労協というものは一種の企業体的な組織である、そういうたてまえから、使用者側と経営者側との話し合いで、ある程度のものがきまることが形として望ましい、こういう点は、確かおっしゃる点はあります。また、でき得ればそういうことも考えたいというのでありまするが、一つは、いまおっしゃる、要求する側とされる側との開きが大き過ぎるということ、一つ当事者能力がきわめて限定をされておるというよう事情のために常にうまくいっておりません、当事者同士交渉では。そこで、いま御指摘の、かつて官房長官が間に入っていろいろ御心配になって、そして直接担当といいますか、関係大臣労働大臣でございまするから、おそらく立ち合いながら、いろいろとお世話をしておられる、このことは、私、非常にけっこうだと思いますし、またその形は、今日やはり同じく官房長官がそういう担当の大臣と相談しながら、非常に苦労しておられることは、私は、熱意においては今日でも劣っておるとは思いません。私はたまたまそういうことで、直接公労協関係がなかったために、ほかの用務もあって、そういう場合立ち会っていなかったということがございますが、官房長官なり労働大臣は、おそらくこの問題について非常に熱心にやっておると思います。前の大平官房長官のときにいたしましても、熱心にやっていった結果は、やはり政府限りでものがきめられるというようなことでもございませんで、御承知のとおり公労委という仲裁機関にかけてそのものがきまる、まあしかし、かかってきまったものについては、政府側としても最高の熱意を持ってこの実現をはかるように努力をしておる。そのためにたいてい、少なくとも第三者機関できまった形については、これはそのものについては完全実施をされておるという形であろうと思います。その点につきましては、四、五年前の大平官房長官のときも、いまの橋本官房長官の努力も、私は同じようにやってはおることだろうと思います。しかし、残念ながら基本的な当事者能力自身が非常に弱い。しかしそれにかわるものにああいった第三者機関仲裁機関というものもあるということは事実でございます。しかし、まあこれじゃいかにもぎくしゃくしておるという点も御指摘のとおりありますので、この問題につきましては、いま御指摘公務員制度審議会におきまして十分にひとつ御検討願って、何かいい方法があればぜひ考えていただきたいということで、今度公労委からいわゆる公務員関係労働関係の基本に関する問題の諮問という形で、これは御審議を願って、そうして結論をいただきたい、こういう段階でございます。もしそのほうの結論が出ますれば、これは政府としては、十分誠意を持ってそういったものの実現をまたはからなければなるまい。いろいろ議論がございますので、いまこうきめるわけにいきませんので、これは公務員制度審議会のいろいろの御審議、そうして答申を待つというのが、いまの政府の立場でございます。
  143. 山田耻目

    山田(耻)委員 私の質問に離れておることについて折り返し聞くのは、私もおもしろくないのですけれども、あなたのおっしゃっていることの中にはたいへんな勘違いがあるのですよ、いまの後段の当事者能力仲裁につきましては……。当事者能力というものは、国営の事業であるですから、国会で予算をきめる限りにおいては、経営者はそこで縛られることは当然なんです。これはどこの国にもあるのですよ。だから、それを越えて、たとえば賃金の支出などをするときにはこういうふうにしなさいよという手続規定があるのです。してもいいということなんです。こえて支払ってもいい、妥協してもいい。その場合にはこういう手続をしなさいというのがある。仲裁裁定というものはスト権を奪った代償制度でしょう。スト権を奪われておる代償の仲裁制度というものと当事者能力と一緒にしてものを考えてもらうというところに、今日の日本官公庁労働法体系の誤りがあるのですよ。理解なさっておるあなた方としての……。いまの法律だってそんなものをきめちゃいませんよ。当事者能力当事者能力。その当事者能力を越えて、もっと具体的に言えば、予算上、資金上を越えて労働協約を締結したときには、おまえは当事者能力のないくせにそういうことをやったと言って、管理、監督の責任を問われるというものであっちゃならぬのです、労使関係ですから。前年度予算を越えてものをきめる場合があるし、今年度予算だって、争いが起こってきて、それを越えて支出する場合があるですよ。そのときには国会の承認を経なさいよ、こういって保護規定があるのが十六条です。当事者能力。そのことと、労使間で争いが起こって、いわゆる公共事業だからストライキをしちゃいけぬということから、それを守るために仲裁制度というものがあるのでしょう。いまあなたが仕事をなさっておる公務員制度審議会のもともとの発想というのは、ILO関係から出ておるのです。ILOの五十四次報告の四十一項、六十項にはそのことが書いてあるですよ。仲裁制度というものはスト権を奪った代償制度なんだ。だからこのことは、それを、法律をきめた国会なり政府は当然守らなくちゃならぬ。そのことと当事者能力とは全然別なものですから、それは区分けをして考えていただきたい。  今日ここには国鉄もお見えになっていません。郵政と電通しかお見えになっておりません。三公社五現業のうちの二つでございますけれども、三公社五現業の統一的な経営者側の気持ちというのは、予算上、資金上越えてほんとうは金を出してやりたい、賃金も上げてやりたい、しかしそういう取りきめをしてはたして大蔵省が予算を組んでくれるだろうか、国会が承認をしてくれるだろうか、こういう気持ちが過去十数年間ずっと続いてきておることは間違いございません。その一つの例が、昭和三十一年に大蔵省の同意を得ずして、調停案をのんで労働協約を結んだ金額が、やみ給与として葬り去られていったのです。戻入せられていったのです。それ以後、三公社五現業はますます頭がかたくなって、予算上、資金上を越えての金額を出したら大蔵省ににらまれる、やられるということで、十六条の保護規定までが死んでいくということになったのです。それだから何でもかんでも団交をやらずに、仲裁へいこう、仲裁へいこうとする。その仲裁というものはスト権を奪った代償制度である。労使間でしっかり平和的な交渉でまとめられていくような努力の最後の段階でいくべきが仲裁でしょう。だから仲裁委員会裁定書の前文を見てごらんなさいよ。もっともっと団体交渉を詰めてやってくれ、詰めてやってくれといつも前文が書き上げられているのはその証拠なんです。そういうふうないびつなものにしていったのは、私は政府責任があると言っているのです。政府責任があるのだから、何とかしてこれを解決するために窓口を開こうとして、官房長官なり給与担当大臣なり労働大臣なりを据えて、三十五年以降——これは法律に何もこざいませんけれども、常識の窓口として設定をして、今日に続いてきているのです。その人々が、十一月三十日に八千五百円の統一要求を受けっぱなしのまま一体何をしているのか。それはあなたのおことばように、一生懸命まじめに考えたろう、それは個人としては、御飯を食べるときにもどうしたろうかいなと思って考えられたかもしれぬ。しかしそうでなくて、政府の意思として、今日たいへんなストライキの高まりまで見せつつあるこの時点で、何とかして三公社五現業に対して当事者能力のことを心配せずに、常識として賃金紛争の解決に当たるよう有額回答をしなさいと言って指導したって、何がおかしいのですか。そういうことをするのが今日の正しい法律運用のしかたであるし、労使関係を平和的に解決するまじめな態度でなくちゃならぬと私は思っている。一ぺんもやられていない。やられていないから、実力行使を組んでいかなくちゃならぬという労働組合になっていくのですよ。だれが実力行使がしたいのですか。そういうふうに問題を置きかえて常識的にながめていただけませんと、公務員制度審議会でどのような議論がなされていこうと、本体を誤ったものになってはいかぬということで、特にあなたにはその点を要望するわけです。私の言っていることに何か間違があれば、あなたの御意見を伺いたいと思います。
  144. 安井謙

    ○安井国務大臣 山田さんのお説に間違いがあるとかなんとかいう問題ではなくて、そのお立場からの御議論は十分拝聴しなければならぬと私ども思っております。いまのような官房長官の努力につきましては、おそらく私は、官房長官自身も非常にやっておられるし、また労働大臣もいろいろ御苦労なさっていらっしゃると思いますが、やはりこれは要求する側と受ける側との食い違いができてまとまらないという問題もございます。私は、それだからといって仲裁裁定だけでよろしい、こう申すつもりはないのでございます。ただやむを得ない手段として、そういうような場合、仲裁裁定が出れば、最近の政府としてはこれを全面的にのむというような形でおさまっておることは御承知のとおりだろうと思います。しかしそれには、いま言われましたような、お説のような点もたしか今後検討しなければならぬ問題はあると思います。この点は第三者機関である公務員制度審議会にひとつ十分御検討願って、しかるべき答申をいただきたいと私どもは考えておるわけでございます。
  145. 山田耻目

    山田(耻)委員 どう責めてみたって直接の担当者でございませんから、これ以上私も言うことを差し控えたいと思いますが、しかし国務大臣としての立場、給与担当大臣としての立場がありますし、四月五日に公労協の代表と官房長官との会見では、四月十日前後——きょうは十二日でございますが、前後には三公社五現業に対して適切な指示をしたい、この適切なというのは、私は内容を私なりに知っていますが、これは言いません。適切な指示をしたいということのお話の模様でもあったようです。そこであなたもきょうの審議の模様というものを十分御理解いただきまして、官房長官に何とか早く善処しなければいけないぞ、こういう立場のお伝えを十分していただきまして、事態がとんでもない不幸を招かないように、十分な配慮がなされるように、特に委員会での私の意見として強く述べていたということをお伝えいただきまして、事態の善処を要望しておきます。  以上で終わります。
  146. 田中正巳

  147. 谷口善太郎

    ○谷口委員 簡単なことを一つ聞いておきたいのですが、問題は簡単ですけれども、実は大臣に来てもらって、失業対策といいますか、失業行政についての政府考え方を聞こうと思ったわけです。しかし大臣は御都合があって来られぬようなので、きょうは局長さん相手に伺っておきますが、一月十一日に、各都道府県失業保険主管部長に「失業保険受給資格の決定に関する疑義について」という通達をお出しになりましたか。
  148. 有馬元治

    ○有馬政府委員 失業保険課長名でもって、都道府県の主管部長あてに疑義解釈の通知を出しております。
  149. 谷口善太郎

    ○谷口委員 この内容を見ますと、資格決定につきまして、健康保険の扶養家族になっている場合は失業者として認めない、したがって失業保険も払わないというようなことになっておりまして、それを労働省はそのとおりだというような御返事をしておられるようですが、そういう内容ですか。
  150. 有馬元治

    ○有馬政府委員 健康保険の被扶養者の場合に、失業の認定に際して受給資格なしというふうな機械的な判定をする指示ではなくて、そういう場合には慎重に認定を行ないなさい、こういうふうな趣旨の通達を出しております。
  151. 谷口善太郎

    ○谷口委員 その慎重にというのはどういう内容ですか。
  152. 有馬元治

    ○有馬政府委員 労働の意思、能力という点で、そういう場合にはえてして意思、能力のない場合が実際問題として非常に多いものですから、その辺の認定を慎重に行なうように、こういう趣旨でございます。   〔委員長退席、藏内委員長代理着席〕
  153. 谷口善太郎

    ○谷口委員 これを見ますと、政府はなるほど「慎重に」ということばを使っております。しかし、健康保険の扶養家族になっておるこの場合は、東京都から出しておるのは、扶養家族になっている場合には、健康保険法施行規則第六十三条第二項の届け出、扶養家族を解除しなければならぬということが前提になっています。ですから、この場合に、このことが問題なんですね。健康保険の扶養家族であるかないかということが非常に問題になっている。そのことを聞いている。慎重にといいましても、これは健康保険に関連しないわけでしょう、労働する意思があるかないかを認定される場合は。しかしここでは健康保険の扶養家族として届け出られている者は取り消さなければだめだということについて、そう取り扱わるべきかどうかということを聞いている。それに対して政府のほうではこれを認めている回答でしょう。「慎重に」ということは書いてありますが、こういう場合がある。健康保険の扶養家族になってそれを取り消さない場合がある。そういう場合に慎重にということをいっている。どうなんです、その内容をもう少し具体的に言ってください。
  154. 有馬元治

    ○有馬政府委員 疑義解釈でございますので、失業保険課長から……。
  155. 増田一郎

    ○増田説明員 ただいまの例でございますが、質問のほうはそのことだけをもっぱら被扶養者であるからどうであるか、こうであるかという質問でございますけれども、その前段のほうに具体的な例といたしまして、「女子が結婚、妊娠、出産等のため退職し、相当日数を経過して退職の原因となった事由に変化を生じ、労働の意思、能力が回復し、求職の申込を行なった場合」というふうな前段がついております。そういう場合に、しかも被扶養者である場合はどうか、こういう質問でございます。私どもの回答を出しました趣旨といたしましては、そういった被扶養者であるかどうかということをもって画一的にやるということではなくて、やはりこの人が結婚のために退職して、妊娠して出産をいたしまして、その後安定所に出てきた、こういった具体例でございます。そういったものを全部総合的に判断をいたしまして慎重に取り扱ったらどうかということでございます。
  156. 谷口善太郎

    ○谷口委員 あなた方はそうおっしゃるけれども、この通達後に行なわれている事実は違うのですね。いまおっしゃったように、結婚したというような場合の問題にしましても、問題はあると私は思いますが、きょうは問題をしぼりますから、それは触れません。事実が私の身辺に二例起こっている。一つは、健康保険の扶養家族になったから、失業保険は出さぬと言われて拒否されたのが一つ。もう一つは、健康保険の扶養家族の取り消しをなさい、そうすると失業保険が出るようになりますからといって指導を受けている。現場では単にこういうことだけではなくて、扶養家族全般、一家族の中で失業した場合、その全体の中で実際上は実行されているという事実がある。ですから、あなた方がいかに慎重にとかあるいは前段にちゃんと限定があるのだと言いましても、ここでははっきりと健康保険の扶養家族との関連の問題で被保険者の失業保険の資格の問題が認定される、あるいは資格がなくなるというふうに認定されるということが実際上行われている。
  157. 増田一郎

    ○増田説明員 私どもといたしましては、ただいま申し上げましたような理由でございまして、被扶養者であるからそのことだけをもって画一的に受給資格を否認するというよう考え方は持っておりません。したがいまして、もし他の原因がなくして、そのことだけの理由で資格を認めないというような事例がもし先生のおっしゃるとおりにございますならば、この点につきましては調査をいたしまして、個別的な問題でございますので、そのほかにいろいろな原因があるかもしれませんが、よく調査をいたしまして、そのことだけの理由で否認するというようなことがございましたならば、これは直させるというふうにしたいと存じます。
  158. 谷口善太郎

    ○谷口委員 調査をして直すということは、実際上はそういう気はないのだというのであれば、この通達を取りかえるかどうかしないとだめですね。この通達を見ておりますと、あなた方の言うように解釈もできるし、実際上は健康保険の扶養家族になったかどうかということが失業者の認定の上に大きな作用として事実上起こっていて、それがどうも間違いである、個々の問題として間違いだろう、そういう行き過ぎはうまくないというのであったならば、そこをはっきり書いて通達を出し直す必要があるでしょう。それをやりますか、あなたの言うのがほんとうなら。
  159. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この通達はあくまでケース・バイ・ケースで慎重に判断しなさいという趣旨の通達でございますので、この通達自体を改定する必要はないと思いますが、いま御指摘ような事例について具体的な判断が間違っておるという御指摘でございますので、私どもも東京都の具体的なケースについて再検討してみたい、こうお答えしておるわけでございますので、この通達自体を訂正するつもりはいまのところございません。
  160. 谷口善太郎

    ○谷口委員 実は私の関係者が、健康保険の被扶養者を取り消しなさいと言われた。これは安定所の名前を言ってもいいです。かなり国会にも関係のある人ですが、そういう指導を受けている。結婚したのでも何でもない、夫婦で働いておった。奥さんです。新しく結婚した場合と違うのです。夫婦二人で働いている共かせぎですね。だから二人とも政府管掌もしくは組合管掌に入っていたのです。一人はやめて失業した。したがって主人の健康保険の扶養家族として登録される。そうやっておったらそれじゃだめだから取り消しなさい。結婚のことじゃないじゃないですか。名前を言ってよければ安定所の名前を言いますよ。この通達からは、いま言ったように安定所の諸君は解釈するようになっている。これはとんでもないことだと私は思う。だからこれを取り消す必要はないというのであったら、あらためてあなたのほうで通達を出しなさい。そうしなければだめです。
  161. 有馬元治

    ○有馬政府委員 健康保険の被扶養者の資格を変更するようにというふうな指示は、私どもの解釈では行き過ぎだと思いますので、そういう指示は、もしやっておるとすれば行き過ぎだと思います。ただ、問題はそのほかに具体的な資格取得の認定にあたって認定できない理由があるのではないか、こういうふうに思いますので、具体的なケースとして検討させていただきたいと思います。
  162. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それでは私は納得できないのです。結婚して御主人と一緒に家庭をつくる。だから仕事はあとする気がない——これはその人に労働する能力も、また機会があったら労働しようとする意思を持っておりましても、現実の問題として結婚して結婚生活に入ってもうつとめないというような場合は、これはあなた方の言うように、いわゆる労働する意思はない、あるいは労働する必要はないという認定はいい。そこまで考えてもいいと思うのです。そうでしょう。皆さんのむすこさんもやがて結婚するでしょう。その場合に、どこかで働いていた人が奥さんに来て、結婚して、半年か一年でも新家庭でやろう。しかし機会ができたらどこかで働こうという考えがある、これは働く意思を持っているといえると思うのです。その場合に、働く意思がないというあなた方の考えは間違いだと思うのですが、一歩譲って、結婚したことを機会に、半年なり一年なり新家庭をつくって新婚生活をやろう、働かないという気持ちであれば、働く意思を持たないというふうに認定されてもいいと思うのです。ですけれどもそうじゃないのだ。この場合健康保険の被扶養家族という条件が新しく一つ出ているのです。条件が新しく加わっている。こんな条件なんというのは、失業者の認定にあたっての条件の中にありませんよ。健康保険法あるいは医療保険法、失業保険法との間に、たとえば年金なんかに交渉法というのがありますね。ああいう関係のものが何かできたのですか。被扶養家族ということは一つの条件になっているのですか、どうですか。
  163. 増田一郎

    ○増田説明員 ただいまこの通達がそういうふうなことに読めるじゃないか、なお、現実にやっておるじゃないか、こういう御質問でございますが、私ども念のために、東京都のほうに問い合わせてその方針を聞いたわけでございます。この通達そのものの問いでございますが、この問いを具体的な事例で発せられたものか、もし具体的な事例があるならば、それを知らせてくれということで問い合わせたのでございます。そうしましたところ、東京都におきましては、これは特定の具体例を前提として行なわれたものではなくて、東京都の内部でいろいろ議論がございまして、それでこういったふうにすべきじゃないかという議論が一部にあるので、念のために本省の見解をただした、こういうことでございます。したがいまして、東京都といたしましては、そういった疑問があったのだけれども、本省のこの通達によりましてやはりそういうふうに画一的にはできないのだなということで、いままでのそういった疑念をかえってこの通達で解消したというふうに回答を受けているわけでございまして、東京都における実際の取り扱いといたしましては、この通達を出す前にそういった事例があったわけでもないわけでございます。また仮定の質問であるということでございます。そのような取り扱いは通達後におきましてもしないということにいたしておるわけでございまして、この通達を受けまして各安定所に東京都のほうから具体的にこういった事例についてこういうふうにせよというような指示をしたという事実もないわけでございまして、かえってこの通達でそういう画一的な取り扱いをしてはならないのだという認識をしたということが事実でございます。
  164. 谷口善太郎

    ○谷口委員 東京都があなた方にどういう返事を持ってきたか私は知りません。しかし、これは全国に出されております。職業安定所の名前言いましょうか。言うてもよろしいですか。事実そういうことが行なわれている。この通達からそう読み取れるようになっている。だから、あなた方が実際上そういう行き過ぎがあってはならないというなら、あらためて出すべきです。これは取り消すことができないというなら、あの通達はこういう意味であったということを出すべきです。そうしないと、局長、それはだめだと私は思うのです。出すべきです。どうです。あらためて行き過ぎかあってはいけないということを出しますか。
  165. 増田一郎

    ○増田説明員 この通達の趣旨につきましては、先ほど申し上げたとおりでございまして、全体を見てこの照会の具体的の事例の場合に、そういったことが多いのじゃないかという趣旨の回答でございまして、個々の事例につきまして、労働の意思、能力の判断を慎重にやらなければならぬということにつきましては変わりはないわけであります。なお先ほど申し上げましたように、この通達自体によりまして、そういったような誤解があるというふうなことは私もまだ聞いておりませんし、またそういったものではないというふうに考えますので、この通達自体を直すという考え方は目下のところ持っておらないのでございます。
  166. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それじゃこれを読んでみましょう。「女子が結婚、妊娠、出産等のため退職し、相当日数を経過して退職の原因となった事由に変化を生じ、労働の意思、能力が回復し、求職の申込を行なった場合は、失業保険受給資格の決定を行なうことができることとされているが、一方において、その者が健康保険法第一条第二項の被扶養者となっているときは、受給資格を否認してよろしいか」ということなんです。結婚して幾月かたった。失業保険は六カ月ありますからな。出産して一定時期がたった。もはや出産とか結婚とかいう、そういう事由がなくなって、さて働こう、こう言い出しても、その働こうということについて、一方において健康保険の被扶養者になっている場合は働く意思のないものだと認めよ、こういうことでしょう。特殊な理由じゃないじゃないですか。根本問題じゃないですか。そんなことを言ってはだめですよ。だから過去の指導としての被扶養者のあれを取り消しなさいと指導するのは当然だと思う。そのほうが正しい。だから、取り消すか、あるいはそうでなければならないという通達を新たに出すべきです。
  167. 増田一郎

    ○増田説明員 ただいまお読みになりましたのは東京都の質問でございまして、それに対しまして、私どものほうは特に慎重に確認しなさいということをいっているわけでございまして、この後段の、配偶者となっている、被扶養者となっている場合に受給資格を否認してよろしいというようなことはいっているわけではないのでございます。それで先ほども申し上げたのでございますが、この前段のほうもしばしば問題になるわけでございまして、女子が結婚、妊娠、出産等のために退職いたしまして安定所にその後やってきたというような場合に、やはりそうは申しましても、その当時の事情、受給資格の認定を受けられなかった事情が継続しているというような事例が往々にしてあるわけでございます。したがいまして、そういったこともよく考えて慎重にやりなさい、こういうことでございまして、この通達が東京都の後段のほうの問いをそのまま受けまして、被扶養者であるからというだけの理由でやってよろしいかということに対しまして、それをそうしなさいといっているわけではないわけでございます。
  168. 谷口善太郎

    ○谷口委員 そういう答弁はよろしくないですよ。いま読みましたのは、あなたのおっしゃるとおり東京都の照会の項目ですね。この照会の一について、「貴見の通り取り扱うべき場合が多いと考えられる」こう書いてあります。これは政府回答でしょう。労働省回答でしょう。「貴見の通り」というところの、出産した、妊娠した、結婚した一定時間が済んで、そういう事由がなくなって働くということを言い出したときにも、失業者として認定するかしないかという場合に、健康保険の被扶養家族であるということが前提になっているなら、それを取り消さなければだめだ、こうやっていいかといっている。それも含めてあなた方は、そういう事情があるということをいっているわけでしょう。だからあなた方、いまここで答弁をされているようなことがあなた方の真意であるなら、それはそのように受け取れるようにやらぬと、現実には違ったことになっている、何でもないことじゃないですか。そうじゃないですか。これが間違ったら、行き過ぎが起こるよう状況であったら、それをあなたは取り消すなりあるいは訂正するなりすべきだ。   〔藏内委員長代理退席、委員長着席〕 特にあなたはいまおっしゃった。逆にいい面をいっているようなことを言っていますけれども、そうじゃないのであります。
  169. 有馬元治

    ○有馬政府委員 谷口先生は少し逆にとっているのじゃないかと私は思いますが、私どもはいままで東京都あたりがいいとして出してきたケースについて、東京都は画一的な解釈をくだそうとしておったために、そう簡単ではないですよ、ケース・バイ・ケースでおやりなさいという回答をやっているのです。これはむしろ先生ような御指摘もございますし、私どももそこを一律に被扶養者をはずしてこなければだめだというふうな画一的な方法をとるべきではないという立場でこの回答をしておりますので、そこはどうも私のほうの考え方のほうが実情に合っているのではないかと思います。
  170. 谷口善太郎

    ○谷口委員 それならなぜそう書かぬのです。なぜ回答にそう書かぬのです。おまえさんのほうはこういうことを言ってきたけれども、そんなことを言って画一的に見るべきではない、なぜそう書かぬのです。なぜそういうふうに通達し、指導なさらぬのです。
  171. 有馬元治

    ○有馬政府委員 この東京都の疑義に対する失業保険課長回答をごらんいただけば、「貴見の通り取り扱うべき場合が多いと考えられる」というのが第一の判断ですね。このあとのほうへ「その者について労働の意思及び能力の確認をとくに慎重に行なうべきことは当然である。」全部がもう一律に判断されるという言い方ではなくて、やはりケース・バイ・ケースで意思、能力の確認を行なえという後段に意味があるわけでございまして、その点はケース・バイ・ケースでやるのだという考え方は、はっきりこの回答の中に出ておると思います。
  172. 谷口善太郎

    ○谷口委員 押し問答になっちゃってしょうがないと思うけれども、事実はそうでなくなってくる例があるということです。しかもそれは指導をやっておる。こういうふうにしなさいよと言っておる。そうしないと失業保険はもらえませんよと言っている。あるいはおまえさんは被扶養家族だから失業保険を出しませんぞと言っているのです。そういうことになっているのだ。だから皆さんは慎重な書き方をしておってどっちでも答弁できるように書いていますけれども、実際こういうふうに政府が書けば、一方にはいままでの条件の上に健康保険の被扶養家族という条件が一つ入っているのです。これについて東京都は聞いている。「一方において」といっている。そうしてそういう場合が多くあるだろうと思うから、慎重にやりなさいと言ったらやりますか。現実にそれが起こっているのだ。だから皆さんのおっしゃるように、むしろ逆に一律な解釈をして被害を与えてはいけないからというのであれば、なぜそういうふうに通達を書き直さぬかと言っているのです。何でもないことじゃないですか。そうでしょう。これはやはりそう回答をいただけないとちょっと納得がいきません。
  173. 有馬元治

    ○有馬政府委員 私もこの通達を見直しておるのですが、そういう趣旨の通達になっております。だから、具体的なケースについて、判断が非常にまずいということであれば私どももそれは再調査することにやぶさかではございませんが、この通達は、先ほど保険課長から説明ありましたようないきさつで、画一的にするなという趣旨の通達でございますので、その点は多少私どもの真意がどうもおわかりにくいのかもわかりませんけれども、通達の趣旨はそういう趣旨でございます。
  174. 谷口善太郎

    ○谷口委員 国会の答弁でありますから、これは画一にしてはならないということをむしろ警告をしたのだというふうに局長が言われるならば、私はこの通達を取り消すか、あるいは新たにそういう立場に立った通達をお出しになることを要求します。しかしここであなた方がはっきりそうおっしゃるなら、それをひとつけじめにして私質問をやめてもよろしいのですけれども、私はこれを見てちょっとびっくりしましたね。事実そういうことを言われてきた人に会いまして、これは幾人かから陳情を受けましたよ。びっくりしたのですよ。こんなことだったら、ほんとうに下のほうでは皆さんの真意と違った解釈をしておるのかもしれませんが、行き過ぎておることになっておるのかもしれませんが、その点は訂正いたしませんと、健康保険のほうで実際に被扶養家族として医療保険の給付が受けられぬか、あるいはその人自体が国民健保にも入らないと失業保険を取れないか、どっちかなんです。これは医療保険制度の上からいいましても重大な問題だし、それから失業保険の制度の上におきましても重大なことになるわけです。そういう危険な内容を含んで解釈ができるようなものをあなた方出しておる。しかも東京都がそういう立場から聞いておるわけです。そういう立場に対してあなた方はこういうあいまいな回答で、事実、そういう被害が起こってきているという事実があるわけです。だから、そうでないならそうでないということを、ここに書いておるのは違うのだということをここではっきり言明されるか、あるいは通達を書きかえてお出しになるかしなければならぬと私は思うのです。
  175. 有馬元治

    ○有馬政府委員 趣旨は先ほどから繰り返し申し上げておるとおりでございますので、誤解をして運用しておる面があれば私ども是正をいたしますし、あるいはこの通達の表現が多少誤解を招いておるということであれば、補足的に追加通達を出したいと思います。
  176. 田中正巳

    田中委員長 次会は、明十三日午前十時理事会、理事会散会後委員会を開会することとし、本日はこれにて散会いたします。    午後四時五十七分散会