○河内
参考人 私、河内でございます。
先ほど
白澤さんから
電気業者のいろいろな考え方についてお話をちょうだいいたしましたので、私からは重複を避けまして、私のほうに関係のある事項を主体にお話を申し上げたい、かように存じます。
皆さますでに御
承知でございましょうが、
電気事業におきましては、中央
電力協議会の中に
公害対策会議を設けまして、業界が
一つになって
公害の
防止対策に実は取り組んでおる次第でございます。
火力発電所からの
排ガスの中には、いわゆる
大気汚染物質として、
すすあるいは
粉じんと、先ほど来の
脱硫の対象になっております
亜硫酸ガスがございます。この中で、
すすとか
粉じんにつきましては、ほとんど問題のないところまでいろいろな
研究も進められ、あるいは設備もついておるというのが現状でございます。ところが、私のほうの
中部電力では、
重油専焼というものを日本では一番初めに
大型の
火力に使ったという歴史的な問題もございますが、
重油の中の
硫黄については早くから目をつけてまいったわけでございます。今日常時使用いたしております
重油につきましては、石油業界にも御無理なお願いをして、なるべく
硫黄の含有率の低いものをお入れいただくように実ははかってまいっておりますが、しかしながら、先ほど
白澤さんからお話がございましたように、低
硫黄の油というものの量といいますか、そういったものがなかなか十分に確保できないので、やはりある
程度の値段とか
経済性の問題もございますが、そういった意味で、日本の置かれた位置、多くは中近東から原油を持ってまいって、これを精製していただくという特殊な事情もございましょうが、こういった意味合いで
硫黄分の量が次第に上がってまいります。これに対処するために私どもが考えましたことは、たとえば四日市
火力を
建設いたします当時、いまから五、六年前でございますか、その当時の実情は、世界を広く見ましても、
亜硫酸ガスの
対策としてはヨーロッパあるいは
アメリカにおいてもまだ――
アメリカはあえて申しますと、
亜硫酸ガスの
対策はその当時はそれほど進んでおりません。ヨーロッパにおいては、いろいろな歴史的な問題もございまして、一部には非常に
研究をされておりましたが、やはり高い
煙突を立てて
ガスの
拡散の効果をねらうということがその当時としては確立された、あるいは緒についた
一つの
方法だったと思います。しかもその
煙突から出ます
ガスの
温度をなるべく高めていこう、それから
ガスの吹き上げ
速度も高めていこう、それからできるならばたくさんの設備と申しますか、
ボイラーを
二つ、三つ、そういった合わせたものの
ガスを
一緒に
煙突から出そうというような
集合排煙方式と申しますか、そういう
方式によって
ガスの上昇効果をねらい、さらに
拡散効果をねらうというのがようやく確立された
亜硫酸ガスの
対策でございます。そういったものに目をつけまして、実は四日市でも、その当時の
技術のレベルにおいては、高い
煙突を立てるということが
方法としてとられたわけでございます。その場合に、日本で高い
煙突と申しましても、ヨーロッパのような地震のないところでは高
煙突も
技術的にもさほど問題はございませんが、日本のように台風があり、あるいは地震があるところでは、高
煙突の構造物そのものにもやはりいろいろな問題がございます。その当時の三菱造船所の
技術者の方、あるいは
日立造船所の
技術者の方々が、
煙突を高くして耐震構造とかあるいは台風構造の
煙突をつくることと、高いところへ大きなものを上げるというような
技術もなかなか並みたいていの
技術ではなかったようでございます。しかし、そういうものによって高
煙突を初めてつくりましたのが四日市
火力でございます。そしてあそこは
ボイラーを
一つの
煙突で
排煙する、先ほど申し上げましたような
集合形式に実はいたしたわけでございます。その後
中部電力といたしましては、大体がそういった
集合形式を主体にした
排煙による
ガス拡散という方途をとってまいっております。
それから常時は――常時と申しますか、われわれが運転をいたします場合に、ばい煙規制法によります緊急時の
対策といたしましては、
重油の使用量を押える、あるいは
硫黄の
含有量の低い油を貯蔵しておきまして、これをそのときに使うというような
方法を現在とっております。これは単に私どもだけでなくて、
電気事業者は一般にかような
方法をおやりになっておると存じます。
それから、それならばその次は何だろうかという問題があると思いますが、私ども
電気事業者といたしましては、やはり一番初め
燃料としてたく
重油の中の
硫黄分が少ないこと、あるいは少なくする
技術が確立されれば、しかもそれが
経済的であればたいへんけっこうだと思います。ところが、世界各国を見渡しましても、この
技術はなかなかたいへんな
技術であるということで、
重油から
脱硫する
方法にもいろいろございますが、ここに石油関係の方もおいででございますので、そういった
技術について私どもは検討はいたしましたが、ここで申し上げるのを控えます。そのほかに、燃焼いたしました
あとの
ガスの中から
亜硫酸ガスというものを除去する
方法、これも世界の各国を見渡しましても、
実験室的にはいろいろの答えが出ておるようでございますが、これをほんとうに
大型のものにし、あるいは
実用化するという段階にはどこの国もなかなか立ち至っておりませんし、その
実験も多少行なわれましたが、
実験段階でいろいろな問題にぶつかっておるのが実情でございます。
かような中で、私どもは思い切って何とかしたいということで、実は
最初にだれでも考えますことは
湿式法でございます。これは先ほど
白澤さんからるる御
説明がございましたので、重ねて申し上げませんが、その次に、
湿式法の欠点を除いて、もっといいものはやはり
乾式法でございます。この
乾式法をやりたいと私どもは思っておりましたときでございますが、ちょうど
昭和三十八年十月ごろでございましたか、三菱さんから、実はベンチテストあるいはちょっとした簡単な
試験が一応――と申しますのは、
実験室の
試験に成功したので、
一緒にテストプラントを設置して、実際に
重油専焼
ボイラーの
排ガスを使って
試験をしたいがどうだろうかというお話がございまして、さっそく私どもは喜んでこれにおこたえして
一緒に実はこの実際をいたしたわけでございます。
この要領と申しますのは、大体四日市
火力の二十二万キロの発電設備でございますが、その
ボイラーの
排ガスの約二百分の一のテストプラント、これは
電力の値に直してみますと約千キロくらいになると思いますが、そういうものを設置いたしまして、そうしてそのプロセスの基本的な事項について
試験を行ないました。それで四十年になお補足的な
試験を実施いたしたわけでございます。実際にこういった
試験は、世界のいずれの国を見ましてもなかなかやりにくいもののようでございまして、大体
試験のスケールアップというものは非常にむずかしくて、二百分の一から、普通の場合は百分の一あるいは五十分の一というようなステップ・バイ・ステップのスケールアップが普通のようでございます。ところが、日本の現在置かれております
公害についてのいろいろな問題が非常に急を要するということなので、お互いに何とかもう少し大きなものが
実験をしてみたいがといってかねがね私ども三菱さんとお話し合いいたしておりましたのが、今日までの実は経過でございます。
それで、日本のように中近東から油を持ってまりますと、どうしても今後やはり
脱硫の問題を考えなければならない。先ほどちょっと申し上げました高
煙突によるメリットと申しますか、
拡散の
程度は、実は四日市
火力では、私どもフレオン
ガスを使いまして実際に
地上濃度がどのくらいになるか調べてみました。その場合の
濃度は〇・〇三PPMというのが大体一番大きな線でございます。したがいまして、
拡散効果としては一応われわれが初期に計算いたしました計算数値よりもちょっと低い
程度の値が出ております。これも一年間ずっとやった
試験ではございませんので、その数字をもって全部を推しはかるというほどの考えは持っておりませんが、一応私どもはときどきそういう
試験をして、実際に高
煙突というものは効果があるのかということのチェックを実はいたしております。何事にもそういう新しい試みをしまして、ときどきチェックをしてその内容を確かめていくことがやはり次の新しい
方法の
解決の
一つの試みだ、かように考えてやっております。
それでいまの三菱さんと
一緒にやりました
試験の結果でございますが、大体
最初考えましたような目的あるいは効果が十分出ましたので、さらにもう少し大きなものをしてみたい。その大きなものについては、先ほど申し上げましたような
実用化に早く手が届くような努力をなるべくして、そして一歩でも、あるいは二歩、三歩というふうに先へ進むような型のものはどの
程度のものがいいだろうということでいろいろお話し合いをいたしまして、先ほどちょっと
東京電力さんからもお話がございましたように、十五万
ノーマル立米
程度のものをやってみたい、かように実は私ども考えまして、関係のお役所にもいろいろお伺い申し上げ、あるいは御指導をちょうだいしまして大体まいったわけでございます。
それからこの
方法は実は酸化マンガン法でございまして、活性酸化マンガン――普通の酸化マンガンに活性質を与えてやる
方法でございますが、この設備の内容あるいはその作用につきましては三菱重工の岡村さんからお話をちょうだいいたしたいと思いますが、それではこの次の
試験ではどんなことが解明されると考えておるのかということに対しましては、その
大型化に伴う反応条件、これはものは何でも小さいものから大きくなることによってのメリットあるいはデメリット、いろいろな問題が出てまいります。それから反応の条件が、
最初小さな
試験設備でわれわれが検討をし見きわめることができた反応が、同じように大きくてもやはりそのとおりになっていくかどうか、あるいはその
設計上に間違いがなかったか、あるいは
設計上もっと
経済的な
設計が今後できるんじゃないかというような、そういうふうなせんさくもその中で行なわれていくことと思います。それから処理をする
ガス量と
脱硫装置の最適な条件はどんなものだろうか、これはやはり
経済設計上最適な条件が必要であると思いますので、こういったものも
実用化の段階までには十分にきめておきたい。それから
大型化に伴う吸収工程あるいは再生工程といった問題は後ほどにでも出ましょうが、それについての政策上いろいろな問題点があるんじゃないか、その問題点も見きわめたい。それからプロセスの中で、おもな設備のほかにポンプだとか送風機とか付属しておりますいろいろな設備がございますが、その
製作上の問題点あるいは使用上の問題点もこの際はっきりさせたい。それから
ガスの変流が起こるんじゃないだろうか。
ガスというものは平均的な数字で流す数量を与えますが、実際にはパイプの内面に沿ったところは抵抗が大きくて流れが少なく、
まん中が多いが、しかしその値はどのくらいだというような
技術的な変流の問題。それから吸収剤の分解、実際吸収剤は分解を起こすのじゃないだろうか、あるいはまた違ったものがつくんじゃないかというような問題。それから熱損失の問題でありますが、熱損失もやはり少ないほうがいい。と申しますのは、
ガスは
煙突から
拡散されることが必要でございますが、
拡散効果もほしいから、やはり
温度は少しでも下げないほうがいい。しかし、下げないためにはどんな方途をこの
実験によって、あるいは設備の改造によって講ずるかというような問題。それから装置の性能の安定性、できたばかりで一日、二日は回りますけれども、長く回しておるといろいろな問題が出る。たとえばさびついて動かなくなるとか、あるいは腐食が意外に早くて半年ももたないということでは困る。特に
電気事業の場合には、半年ももたなくて途中でそれをとめなきゃならないということになりますと、火電のほうが主でありますから発電はしょっちゅう回っておる、しかしその間は
亜硫酸ガスが出るということでも困る。
それから強度がどうであるか。これは日本のような耐風、耐震の場合は相当
大型な設備になりますので、将来特に
実用化される場合には大きくなりましょうから、これに対する強度の問題も、図面の上で書いただけではなかなかうまくいかないのではないかというような問題がございます。
以上、私はしろうととして申し上げたのでございますが、そのほかに専門家としてのいろいろな問題点があると思いますが、これらも解明されると考えております。
それから次に
経済性の問題でございますが、やはりこういった工業化あるいは
実用化の将来を考えますと、
経済性というものを十分考えていかなければ何もならないんじゃないかと思います。それで
経済性につきまして問題になりますのは、原料がどのように安定し、しかも安く得られるかということでございます。原料はこの場合は
アンモニアを使うのでございますが、
アンモニアが容易にしかも安定した、そしてできるだけ安く手に入るということ、それから生成回収物といいますか、でき上がりますものが
硫安なのでございますが、その
硫安がほんとうに安定して引き取られるということ、それから価格もできるならば十分な価格で売れるということ、これはやはり処理費がそれだけ安くなりますのでその点は大きな因子ではないかと思います。そのほかにこの
実験によりまして設備はなるべくコンパクトにする。と申しますのは、もし既応の
発電所に設置するとなりますと、あるいは今後
発電所に設置します場合に、スペース・ファクターと申しますか、なるべく場をとらない小さなものにしたほうがいいというような問題点、これはしたがって使用材料も少なくなりましょうし、こうすることがやはり
経済につながるというふうに考えております。
それからもう
一つ大事なことは、先ほど安定性と申しましたが、たとえば生成物が売れないということで倉庫にたくさんためておくということにつきましても、
大型な設備になりますと生成物はたいへんな量になりますので、そのはけ口がないと――ほかの業界ですと操業短縮をやるという手もございますが、
電力は毎日昼夜を分かたず運転されておりますのでそういうわけにもまいらないというような、いろいろな特有の問題がございます。それでは売れなくてもいいじゃないか、捨ててもいいじゃないかと申しますが、捨てるところが実はなかなかございません。こういうことで、これについての
経済性の検討もやはり重要な問題点の
一つでございます。
そこで
脱硫技術の
開発とその見通しでございますが、私どもこれは大丈夫だ、やっていけるんじゃないかというふうに考え、しかも両社こぞって今後とも努力を傾けたい、かように実は思っております。
それから
脱硫技術について一言申し上げたいのでございますが、ただいま私どものほうでやっておりますのは
活性酸化マンガン法でございまして、
白澤さんのほうで先ほど
活性炭の問題について申されましたが、私はこういう
脱硫の
技術というものはいろいろなものが出てきていいんじゃないか、かように思います。その中で
経済性のあるものあるいは立地条件にかなったものが
最後に数種残るんじゃないか。そうして今日のように
大気汚染の問題をこれによって早く
解決しなければならぬという命題があるならば、たくさんのものを並行に練り上げて、そのものがどんどんお互いにこぞってできていくことが必要である。たとえば立地条件にかなうかかなわないかの問題がございますが、四日市のように大体石油コンビナートであり、しかも
硫安工場がありというようなところでは、
アンモニアがすぐ庭先からたやすく得られる好条件がございます。ところが、これが全然離れた遠いところになりますと、
アンモニアを運び、できました
硫安もその土地では消化できないということで、これも運ばなければならないということになりますと、
経済性に大きいひびが入るというのが
一つの
特徴でございます。その場合には
活性炭法がいいのじゃないか。あるいはほかに、もっと
硫黄が直接出るというような、外国でやっております
方法はいま検討中でございますが、そういうものも育ってくるのではないか。それと、もう
一つ必要なことは、
重油自体の
脱硫というものがもっと
経済性が高くなれば、それとこれとの見合いよって
電気業者はどれをとるべきかという問題がありますので、いま直ちにこれを、われわれはただこういう
技術を諸国に先がけてやるということは努力をいたしますが、将来どうなるかということについては次の問題だというふうに私どもは考えております。
三菱さんと私どものほうでやっておりますこの
脱硫設備は、現在
アメリカからも、日本ではこんなことをやっているそうだがということで、
政府筋からもずいぶん問い合わせがございます。
アメリカは大体
政府が
脱硫の問題を手がけて、たとえば鉱山局で主としてやっているようでございます。ドイツでもやはり国が大きくこの問題に頭を突っ込んで費用等を出しているという
情勢にございます。
いま私は
脱硫設備の内容についてはほとんど触れておりませんが、ちょうど三菱の岡村さんがおいでになりますので、その設備については後ほどお話し申し上げる予定でございます。
以上でございます。