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1966-03-25 第51回国会 衆議院 決算委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月二十五日(金曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 吉川 久衛君    理事 白浜 仁吉君 理事 勝澤 芳雄君    理事 田原 春次君 理事 山田 長司君       福永 健司君    山手 滿男君       神近 市子君    栗原 俊夫君       中村 重光君    華山 親義君       森本  靖君    吉田 賢一君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (国有財産局         長)      松永  勇君         建設技官         (河川局長)  古賀雷四郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (主計局法規課          長)     赤羽  桂君         大蔵事務官         (国有財産局国         有財産第二課         長)      立川 宗正君         会計検査院事務         官         (第一局長)  斉藤  実君         専  門  員 池田 孝道君     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十九年度一般会計歳入歳出決算  昭和三十九年度特別会計歳入歳出決算  昭和三十九年度国税収納金整理資金受払計算書  昭和三十九年度政府関係機関決算書  昭和三十九年度国有財産増減及び現在額総計算  書  昭和三十九年度国有財産無償貸付状況計算書  (大蔵省所管)      ————◇—————
  2. 吉川久衛

    吉川委員長 これより会議を開きます。  昭和三十九年度決算外二件を一括して議題といたします。  大蔵省所管について、審査を行ないます。  これより質疑に入ります。勝澤芳雄君。
  3. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は、昨日に引き続きまして、特に申し上げました事業体貸しておる貸し付け状態について、質問を紡げてまいりたいと存じますが、最初に関東財務局貸しておる後楽園スタジアムでありますが、この貸し付けは、いつから、どういう形で行なわれているかという点からお尋ねいたします。
  4. 松永勇

    松永政府委員 説明員をして説明させます。
  5. 立川宗正

    立川説明員 後楽園の問題でございますが、検査院から指摘された二件のうちの七百十七坪に相当する部分、これは三十七年の一月から構内道路敷として使用しております。そしてこれにつきましては、使用料を当年の七月まで一応徴収しただけで契約がされておるという段階で指摘を受けております。それから二百六十三坪につきましては、これは三十八年の七月八日から使用されております。これにつきましては、現在まで貸し付け料が納まっておりません。
  6. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、七百十七坪は三十一年一月からですか。
  7. 立川宗正

    立川説明員 三十七年です。
  8. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 三十七年一月から、構内道路敷として貸し付けをした。それから二百六十三坪は、三十八年七月から貸し付けをした、こういうことですね。
  9. 立川宗正

    立川説明員 さようでございます。
  10. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それ以前はどうなっておったのですか。
  11. 立川宗正

    立川説明員 二百六十三坪につきましては、それ以前はその隣接地主でございます熊谷組貸し付けいたしておったわけです。それが熊谷組後楽園との間に交換がまとまりまして、そして三十八年の七月八日以後は、後楽園が国との間に貸し付け相手方になっておる、こういうかっこうになっております。それから七百十七坪につきましては、これはそれ以前は国が一般の不特定のものにも同じように使わしたというかっこうで、それまでは、つまりある程度、国のほうとして、そういう正式に後楽園契約する前に、国のほらが主体性を持って使わしたというかっこうでやっていないわけでございます。
  12. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 昨日の国有財産局長の御説明によりますと、三十三年以降については、普通財産貸し付けはやらないというような御答弁を聞いておるのですが、それと矛盾するような貸し付けが行なわれているように、いまの説明では感ぜられるのですが、その点いかがですか。
  13. 松永勇

    松永政府委員 ちょっとこの後楽園関係については、いまの二課長の説明が少し不十分だったようなので、ちょっと申し上げまして、それからいまの点に触れたいと思います。  この二百六十三坪の土地と申しますのは、もと暗渠敷土地で、細長い、図面で申しますと、(図面を示す)こういうふうに非常に細長い土地が、全体の広い土地の中の一部に、暗渠敷があったわけでございます。この暗渠敷の周囲は、これは民有地で、先ほど申し述べました熊谷組が所有しております。暗渠敷土地がここに入っておったので、この土地一体として使うように、以前から熊谷組貸しておった。ところが、この民有地が、いま言った後楽園熊谷組交換いたしましたので、後楽園の所有に入った。この一部の暗渠敷が、まだこれは国有で残っております。したがいまして、従来熊谷組貸しておったけれども、交換によってこれが後楽園のものになりましたものですから、その一体土地関係上、これを後楽園に新たに貸したという事案でございます。  それから、もう一点の七百十七坪は、こちらが例の中央線水道橋の駅でございますが、こちらから入っていく、この野球場のここの道路、この部分でございます。それから、こちらから野球場に同時に入ってくるこの部分、これはいわば道路として使われておる。それで、地形もこういうように狭長のものであったわけであります。これは国有としてこれが残っておった。事実使われるのは、野球を見に行く際にここをみな道路として使っておった、こういう土地でございます。本件については、そういう特殊な事情になっておるわけでございます。  いま勝澤先生からお話がございました、普通財産新規貸し付けは、原則として、これを三十三年からやめるようにという趣旨で運営いたしております、と申し上げたわけでございますが、これは昨日も申し上げましたように、三十三年の管財局長の通牒でもって措置いたしております。ただ、これは原則としてそういうことをはかる、ということでまいっておりますが、実際の場合には、実際の運用の面に即して、これを認めなければならない事例も若干出てまいっております。その件につきましては、本省において承認をして、認めているわけでございますが、どういう場合に認めておるかと申しますと、公共の用に供する場合、それから工事材料置き場等として、ごく暫定期間使用を認める必要があるという場合、第三点は、売り払いの話が進んでおって、売り払いを前提として、その前に相手方が実際上工事を早く着手しなければならない、したいというような事態で、やむを得ないと認めたような場合に、売り払いを前提とした貸し付けというものを認めているのでございまして、こういう事例といたしまして、三十五年以降本省において承認を認めた件数は、いまの公共用のために貸し付けするといろ件数が十六件、売り払いを前提といたしましたものが三十人件、それから砂利置き場等の、いまの短期間貸し付け、それが二十六件、その他七件となっております。その他と申しますのは、いまの三つの大きな理由のほかに、事案の内容を見ましてやむを得ないというものでございまして、たとえて申しますれば、学徒援護会貸したとか、あるいは伊勢市の庁舎を建設するための売り払い処分をすることを予定して貸し付けたというような事案、そのほか、この国会周辺で、政党関係貸したもの二件がございます。そういうような事情でございます。
  14. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それでは、この七百十七坪については、三十七年一月に構内道路敷として貸した、こう言っておりますが、会計検査院指摘によると、三十七年一月及び三十八年七月から契約未済のまま、これは使用さしているということになっております。そうすると、三十七年一月に貸し時点において、契約もされていないし、使用料も払われていない。そうすると、不法占拠さしておいて、四十年の十月二十日ですか、会計検査院から指摘されて、ようやく解決をしたような経過になっておるのですが、この七百十七坪について、私が指摘しているとおりですか。
  15. 松永勇

    松永政府委員 本件につきましては、先ほど申し上げましたような事情で、実質上これは後楽園に貸さざるを得ないという事情になったわけでございます。当時、そういう事情になったことに伴って、貸し付け契約を、成規手続をして貸すというのが当然でございますが、その点が私どもとしては手続を怠っておった。怠ったと申しますのは、相手方貸し付け料等についていろいろ交渉いたしましても、貸し付け料金額等についてなかなか折り合わないで、契約書を正式に締結するということがなかなかできなかった。そういう状態期間経過し、今日の事態になって、会計検査院等からも注意を喚起されるという事態になったわけでございます。その点、事務処理のしかたに不手ぎわがあったということはおわびいたしたいと思います。
  16. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 結局、七百十七坪については、いつから貸して、いつまで使用料を取ってあるのですか。
  17. 立川宗正

    立川説明員 七百十七坪につきましては、三十一年の一月から事実上使っているというかっこうになっておりますが、使用料のほうは、それから四十年三月三十一日までの使用料を、昨年の十月二十日に収納いたしました。
  18. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 四十年の四月一日からは、契約はどうなっておるのか。貸し付け料は取られていないというが、取られていない理由はどうなのですか。
  19. 立川宗正

    立川説明員 四十年の四月一日以降につきましては、現在相手方と折衝中でございます。近日中にこれを徴収する運びになると思います。
  20. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 三十七年の一月から四十年三月三十一日まで、これは坪単価幾ら貸したことになるのですか。普通財産貸し付け料算定基準についての通達が出ておりますね。これに基づいて、年間坪幾らであったか、そして総額一年幾らか。
  21. 立川宗正

    立川説明員 七百十七坪に相当いたします分につきましては、一坪当たり千五十八円、これは現在の正規の貸し付け料、これは先般も御説明申し上げましたけれども、相続税課税価額に百分の四を掛けた数字でございますけれども、これは事例に応じまして、従来から継続的にずっと貸しておる、あるいはそういうかっこう使用状態になっておるものにつきましては、一挙に上げるということは、やはり民間も、国のように三年ごと相続税、つまり地価が上がったことに伴いまして、直ちに一定の料率をはじいていって使用料が上がるというたてまえには必ずしもなっておりませんので、民間実情等も考慮いたしまして、著しく値上げのひどいものについては、漸増措置等の特例の措置を認めておるわけでございます。したがいまして、そういった形でやりました結果が、千五十八円というかっこうになっております。
  22. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、年間、坪千五十八円で、年間総額は、これに七百十七を掛ければいいわけですね。  それで、この普通財産の売り払い、貸し付け評価があるわけですね。貸し付けする場合、千五十八円というものを坪で算定をした基準があるわけでありますが、ここは時価単価幾らとして算定したのですか。たとえば相続税関係があるでしょう、あるいは固定資産税関係があるでしょう、あるいは近傍類地観点があるでしょう。こういう観点から、それはどういうような評価をなされておりますか。  これからの質問で、大蔵省でわからぬ点は、会計検査院のほらでわかったら、あなたのほらも資料があるでしょうから、説明してください。
  23. 立川宗正

    立川説明員 これは、相続税路線価は毎年変わりますので……。一応手元にございます資料は、三十八年三月のときの路線価は出ております。これは申し上げますと十一万七千円です。
  24. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 坪千五十八円という貸し付け料をきめた根拠になる評価は、ここを坪幾ら評価をしたかということです。それがいま言いましたように、十一万七千円ですか。一本ですか。ほかの評価はないのですか。貸し付け料をきめるときには、一本の評価だけでいいのですか。いろいろのファクターによって、総合してきめるのじゃないですか。その点どうなっておりますか。
  25. 松永勇

    松永政府委員 国有財産の売り払い価格をきめるときの時価、これはいまのいろいろなファクターを入れて売り払い価格をきめておりますが、貸し付け料につきましては、昨日も御説明申し上げましたように、相続税課税標準価格の百分の四を原則とする、これ一本でございます。
  26. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、ここの場所は、七百十七坪は十一万七千円で評価をして、坪当たり貸し付け料千五十八円になった、こういうことですか。
  27. 松永勇

    松永政府委員 本件は、三十七年から三十九年にかけて、三カ年の価格になっております。それで、いま申し上げました三十八年の相続税標準価格が十一万七千円、しかし、私ちょっといま手元に持っておりませんが、先ほど申し上げた単価は、三十七年から三十九年まで据え置いております。したがいまして、実際のこの価格算定しましたのは、おそらく三十六年の相続税課税標準価格、当時それしかわからなかったはずでございますから、その数字基礎に、この貸し付け料算定いたしていると思うのでございます。三十六年の相続税課税標準価格幾らであったかということは、ちょっと手元にないので、いま申し上げられないのでございますが……。
  28. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 貸し付け料算定基礎について、私はたいへん疑問があるわけです。新しい三十七年一月という時点貸し付けですから、三十三年以前のものならともかくも、新しい貸し付けという立場で、きのうからいろいろと御説明をされておるファクターというものが考えられるかどうかについては、疑問があるわけであります。  それからその次に、二百六十三坪は、先ほどの御説明ですと、三十八年の七月から熊谷組との交換によって貸し付けをした、こういう説明があったのですけれども、三十八年七月に貸し付げたときには、まだ熊谷組が借りておった使用料が払われていないのじゃありませんか。そうすると、熊谷組貸しておいて、その使用料をまだもらわないうちに、熊谷組後楽園と、貸し付け料の支払いを継承したということになるのじゃありませんか。そうしないと、いまあなたのほらの説明では、三十七年八月一日から四十年三月三十一日までの分がもらわれたと言っておりますが、その経過はどうなんですか。
  29. 立川宗正

    立川説明員 三十七年の八月から四十年三月までもらったというのは、七百十七坪のほうでございまして、いまおっしゃいました二百六十三坪に相当する分は、いままで全然納まっておりません。これは現在折衝いたしておりまして、これも近日中にまとまる予定でございます。
  30. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、三十八年の七月に貸し付けをしたけれども、まだ今日まで貸し付け料は何ももらっていない。  会計検査院にお尋ねいたしますが、三十八年のときに、契約しないでこういう状態に置きながら、実情の把握のしかたがおそいように思うのですが、結局、会計検査院から指摘をされたから処理が進んでいるわけです。会計検査院から指摘をされなければ、処理がおくれておるわけであります。ですから、そういう意味において、私は、会計検査院がもっと前向きで積極的に解決する方向を示さないと、国有財産の問題はいつまでたってもおくれていくと思うのです。会計検査院指摘をすることによって、大蔵省国有財産管理処分について、もっと前向きな形で、人の問題においても、経費の問題においても、あらゆる問題を考えてやらなければならぬということになると思うのですが、そういう点で、私は会計検査院指摘のやり方も、差しつかえない範囲のものだけここに書いたわけでありますけれども、その差しつかえない範囲のものでも、少し問題があると思うのでございますが、問題の取り上げ方について、もう少し会計検査院としてお考えを願いたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  31. 斉藤実

    斉藤会計検査院説明員 いま先生のおっしゃったとおり、できるだけ毎年こういうことをやるべきでございますけれども、三十九年度に、どうも国有財産処理状況がおもしろくないような感じがするということで、全部洗いざらいやってみようということで、国有財産検査課を動員しまして、そして十財務局のうちの七財務局、二十八都道府県につきまして、ここに書いてありますように、五十万円以上のものについて、五千五百九十六口座のうち三千百七十五口座、パーセンテージにいたしますと六一%のものについて検査をしてみたわけでございます。その結果、ここに指摘いたしましたような事態が出てきたということでございまして、まだ六一%でございますから、あと三九%やればなおかなりの案件が出てくるのじゃないかと思うのでございますけれども、何ぶんにも、御承知のような検査院の能力でもございますので、これを完ぺきにやりかねておる状態でございますが、今後とも、できるだけ努力いたしまして万全の検査をいたしたい、かように考えております。
  32. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この二百六十二坪については、熊谷組から後楽園にまた貸しをした、あるいは交換をしたということで、名義人が変わっておる時点解決しようとすれば、現実のこの場所を見れば、解決できたと思うのです。ですから、それを放任して使わせておいて、収益をあげさせておいて、今日でもこの問題がまだ解決していないというような取り扱い方は、私は、普通財産貸し付けのしかたとしては好ましくないと思うのです。しかも、この場所を見れば、これは貸し付けでいいかどうか、私はこれは売り払うべきところじゃないだろうかと思うのです。そういう点で、私はこの問題についてはもう少し積極的な、財務局担当者としての責任ある処置に欠けておると思うのです。人が変わるところで解決しておれば、いまもって貸したときから一銭も貸し付け料を払っていないという状態はないはずなんです。また貸し付け料を払わぬようだったら、この時点で、認めなければいいわけであります、人が変わるわけでありますから。言うならば、借地している権利の継承ということになるでしょう。ですから、それをやらずにほったらかしておいて、今日もなおかつ使用料が払われていないということは、私はたいへん問題だと思うわけであります。ましてや、いま貸し付け料改定の時期に来ているじゃありませんか。三年ごと改定するわけですね。ひとつ、この問題については早急な解決をして、その結果を委員長手元まで報告をしていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  33. 松永勇

    松永政府委員 御指摘のとおり、この処理に、もっと適切な時期を選んで、適切な措置をとればこういう事態にならないで済んだのではないかということについては、そのとおりだと思います。こういう事態をできるだけ早く解消するような措置を常に心がけるということが、国有財産管理の衝に当たっている私たちのつとめだと考えております。  本件につきましては、後楽園と話をいたしまして、本件貸し付け料については、近々のうちにまとまって収納できる見通しになっております。  しかし、先ほど先生もおっしゃったとおり、この土地は当然、貸し付けを継続すべき土地ではございません。独立して利用もできないし、またこれを売らないということも適当でない土地でございますので、早急に売り払いに移行するように、相手方交渉いたしたいと思っております。
  34. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 こういう場合、今度は売り払いの評価のしかたというのは、またむずかしいと思うのです。そこで、私は、評価の問題については、こういうような場合については、しゃくし定木にやったら、いつまでも解決しないと思うのです。ですから、そういう点は会計検査院と打ち合わせをしながら、適切な処置をしなければいかぬと私は思うのです。評価のしかたによって、必ずしも相手と話し合いがつくとは限らないし、また問題の評価というものを、こういう事実行為の上に積み重ねて、それを既定事実として、借地権の控除というものを大幅にやるというのは問題があろうと思いますけれども、検査院とよく打ち合わせてやっていただきたいと思います。  次の問題、今度は済生会病院敷地の問題でありますが、これについても、結局使用料が、あとでは徴収をされているという報告になっておりますけれども、一体使用料が徴収できなかった理由は、やはりこの使用料値上げをした時点における紛争ですか。
  35. 松永勇

    松永政府委員 大体、この普通財産貸し付けの問題で紛争を起こしますのは、貸し付け料値上げをめぐっての時期でございます。済生会も、御承知のように、社会福祉法人で、経営も必ずしも豊かではないという状況でございましたので、先ほど申しました普通財産貸し付け料は、相続税標準価格の百分の四ということを基準といたしておるものでございますから、相続税標準価格が上がるに従ってこれを上げていくということをいたして、それが、値上げの幅が非常に大きいということから、値上げ交渉が円満にまとまらない、その間、日時を経過したというような事態で、管理に当たる私たちとしては、いかに相手方値上げ交渉をうまく妥結させるかということに最大の苦心を払っているわけでございますけれども、なかなか相手方との間で交渉がまとまらないケースも多うございます。本件についても、同様のケースだったというふうに聞いております。
  36. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、貸し付け料値上げの問題がなかなか難航しているということから、言うならば、そこに永久構造物のようなものが建てられる場合においては、やはりできるだけ、貸し付けをせずに、売り払っていくということを促進しなければいかぬと思うのです。その場所によって、それが公開入札になる場合もあるでありましょうし、あるいはまたそこの必要性からいうならば、当然随意契約でやってくれという場合もあるのでありましょうから、私は競争入札必ずしも正しいと思っておりませんし、随意契約必ずしも悪いと思いませんから、やはりそういう点については、必要によって買われる人に優先的にいくようなものの考え方をしながら問題を解決していけば、貸し付けという処置でなくて、その時点で払い下げをしていくということが可能だと、私は思うのです。そういう点から見てみますと、やはり貸し付け料算定方法といいますか、いま三年ごとにやっている、それを相手に必ず承知をさせる方法はあくまでも納得ずくだということになれば、契約をせずにそのままおくということも好ましくないと私は思うわけでありますが、そういう点についての、何か法的な取り扱いといいますか、何らかの対策というものは考えられておるのですか。
  37. 松永勇

    松永政府委員 貸し付け料を三年ごとに上げていくということは、これは法律的に申しますれば、一般地代というものが上がっていく場合に、その地代を上げてもらいたいということは法的に許される権利であり、増額請求権というものはあると思うのです。ただ、その増額請求権の幅がどの程度であるか、それが妥当であるかということで相手方との紛争を生じ、状況によっては、これは裁判で解決しなければならないという問題になろうかと思います。ただその増額の幅が、従来私たち時価にスライドすると申しますか、固定資産税の上げていくのにスライドするという考え方は、どうも少し無理があるのじゃないか。一般民間事例がそのように上がっておるならば、国有財産についても同様の程度の上げ幅はお願いしなければならないと思うわけですが、そういう意味で、民間値上げ状況というものに常に注目いたしております。私のほうでは、三年ごと民間賃貸実例を大々的に調査いたしまして、最近の調査によりますれば、固定資産税引き上げ幅が最近非常に大きゅうございます。その状況で上がっていくというふうには申せません、という結論になっております。そこで、昭和四十一年度からの地代改定につきましては、民間賃貸実例を、最初調査した結果に基づき、新しく検討いたしたいということで、ただいま検討いたしておるところでございます。
  38. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それでは、この済生会の病院敷地の売り払いの価格、坪単価、それから契約条項、これはどういうことになっておりますか。
  39. 松永勇

    松永政府委員 この済生会につきましては、過去にはこういう因縁になっております。この済生会は、社会福祉法人恩賜財団済生会ということでございますが、明治四十五年の七月に、財団法人に対する無償貸し付けということで始まっております。それが大正十一年の旧国有財産法の施行に伴いまして、従来行政財産、内務省所管の財産であったものが、大蔵省所管財産に移り、大蔵省において引き続き無償貸し付けを続けておったわけでございます。さらに、昭和十七年に無償貸し付けの更新期間が参りまして、無償貸し付けの更新をいたしております。ところが、新憲法になりまして、昭和二十二年四月一日以降は、本件は無償貸し付けを廃止し、有償貸し付けにすることに移ったわけでございます。その貸し付け料につきましては、従来、二十二年以降納まっていたわけでございますが、二十九年以降の貸し付け料について、だんだん上がってくるに伴って、いろいろと向こうが払えないというような事情に立ち至って、この検査院から指摘を受けましたような事情になってまいっておったわけでございます。しかし、本件も、今後の貸し付け料は相当値上がりしていくような状況にある。しかも、本件は、済生会が将来その基礎を固めるためには、払い下げを受けてしかるべき土地ということで、貸し付け料の徴収と同時に、抜本的な将来の対策を考えてはいかがかという話し合いをいたしました結果、昨年の十一月の三十日に、その財産相手方に売り払う、同時にそれまでの貸し付け料についても、全額滞納しておったものを支払いをさせるということで、完結さしたわけであります。
  40. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 売り払いの価格や坪単価、それから条件は、どういうようになっておりますか。
  41. 松永勇

    松永政府委員 財産の売り払い価格は、総額で五億九千六百五十七万四千五百円というふうになっております。坪当たり単価は六万五千四百七十円。なお、本件につきましては、借地権を持っておったという関係で、借地権八二・五%を控除いたしております。
  42. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 売り払いの場合の借地権の控除は、どういうものが借地権が控除されるのか。それから何年貸したとか、いろいろ条件があるわけです。いつからとか、いつ以前とか……。それから借地権を控除する率はどういうことになっておるか、その二点について……。
  43. 松永勇

    松永政府委員 借地権を控除するというのは、借地借家法の保護を受ける権利であるということになります。結論的に申しますれば……。そういう事態がどういうものであるかということは、普通財産であって、そして相手方にそういう賃貸をいたしたものということになります。  それから借地権の控除の割合につきましては、その地区地区によって違っておりますが、私たち評価をいたします場合には、国においては、相続税の課税標準の際に、借地権割合というものを定めております。その割合を、国においては一応もとといたします。なお民間に対して、民間と申しますか、不動産鑑定士に評価を依頼いたします際に、不動産鑑定士もその地区の借地権割合というものを鑑定いたしてまいっております。両方を勘案いたしまして、借地権割合というものをきめる、こういう制度でございます。
  44. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、三十二年以降にあっても、普通財産貸し付けを行なったのは、売り払いの場合の借地権控除を認める、こういうことですね。
  45. 松永勇

    松永政府委員 借地権を控除するということは、戦前から借地さしておるようなもの、すなわち、いま私たちが扱っておりますのは、正確に申しますと、昭和二十二年以前に貸し付けているものについては、いまも言ったように、借地権をフルに見るといった措置をいたしております。二十三年以降国が貸したもの、そういう一時使用承認をいたして現在に至っておりますが、そういうものにつきましては、その借地権のフルではなくて、借地権相当分の八割を控除するということで認めております。これは、昭和三十三年以降に貸したものについては、そういうものは認めないということで評価をいたしております。ただ、借地権がそれではあるのかないのかという議論は、これは別個になろうかと思います。三十三年以降に貸したものであっても、その貸し付けの目的、契約の態様等によって、あるいは借地借家法上の借地権は、裁判上認められるものもあろうかと思いますけれども、評価のたてまえといたしましては、三十三年以降のものについては、現在認めないというたてまえになっております。
  46. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この貸し付け期間は、いろいろ建造物によって違うでありましょうが、どういうふうになっておりますか。
  47. 松永勇

    松永政府委員 国有財産法につきましては、貸し付け期間が定められておりまして、二十一条に、土地の定着物を貸し付ける場合は六十年、これは植樹を目的とした場合、それ以外の場合は三十年、それから建物その他の物件については十年、ということが規定されております。これをこえてはならないわけでございますが、個々の貸し付けをいたします際には、はっきりそれを何年貸すということを明示していないものが多かろうかと思っております。現在、三年ごとに更新をいたしておりますというのは、三年間貸したというものではなくて、三年間貸し付け料計算単位として、三年間をすえおくという趣旨で、運営いたしております。
  48. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 この貸し付け期間を見ておりますと、六十年とか、三十年とか、長いやつがあるわけですね。こういうふうに見てみると、普通財産貸し付けというものが、六十年、三十年貸せるような状態でいいだろうか、どうだろうか。むしろやはり一切、払い下げたほうがいいじゃないか。もし貸し付け期間中に取り上げようとしても、取り上げることが不可能じゃないだろうか、こんなふうに思うのですが、貸し付け期間については、私も少し疑問に思っておるのですが、そういう点はどうなんでしょうか。
  49. 松永勇

    松永政府委員 確かに、貸し付け期間につきましては、非常に長い貸し付け期間を置くということは、これは問題であろうと思います。現在までに貸し付けいたしましたものが、先ほどもお答えしましたように、終戦後のものについて貸しておる。最近はそういう新規の貸し付けはいたさない。売り払いを前提とした貸し付け等について、若干の例外のものを行なっておるという事情でございまして、今後、そういう長期の貸し付けをするということはいたさないつもりでおります。また現にそうやっております。ただ、貸し付けをいたしております普通財産につきましても、もしこれが国において、公共用、公用等の必要が出てまいったという場合には、他の、民法の契約解除等の手段ではなくて、国有財産法二十四条に基づきまして、貸し付け契約の解除を強行できる規定がございます。そういうことによって、現在貸し付けておる普通財産であっても、国が必要なものは取り上げる、ということも行ない得る態勢になっております。
  50. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 貸し付けを解除して引き上げる場合、いま一応国といわれておりますが、その国との関係がない面で起こったのが、御案内のように、多摩川の河川敷であります。国鉄あるいはまた道路公団が、国との関係がないのだという形で貸し付けをしておる。当事者同士で話し合いをして解決をしろという形で、補償金というものが支払われておるわけですね。あるいはまた大蔵省のもとおった人の貸し付け地に家が建っておって、それが首都高速度道路公団の道路がかかった場合には、御案内のように補償金を、首都高速度道路公団という形でやられておるのですね。国の行政目的であることには間違いないわけです。そういう点から考えてみますと、原則的にいま長期の貸し付けはやっていない、やらない方針だということ、けっこうだと思いますけれども、規定の上からできるというたてまえからいきまして、貸しておる土地を取り上げる場合、いま大蔵省と借りておる人の力関係を考えた場合に、いつも政治問題となって、国のほらが損をすることは間違いのない過去の事実でありますから、私は、これはこの辺で少し検討すべきであろうと思います。  それから次に、今度は、昭和飛行機株式会社の工場用地として使用された部分について、売り払いの折衝中だということが言われておりますが、経過はどうなっておりますか。(7)の問題です。
  51. 松永勇

    松永政府委員 説明員をして説明いたさせます。
  52. 立川宗正

    立川説明員 昭和飛行機につきましては、三十五年の六月に米軍から提供解除となりまして、返還されてきたものであります。この建物は、そもそも昭和十八年から十九年ごろにかけまして、旧軍が昭和飛行機の土地の上に建てましたものでございまして、その提供解除後、昭和飛行機と、この建物についてすみやかに売り払いをするということで折衝をしておったわけでございますが、借地権を見るかどうかとか、あるいはこの建物が非常に特殊な啓成式建物という建物でございまして、評価上いろいろ折り合わないという面がありまして、その後、再三再四これはあくまでも売り払いをするという前提交渉をやってきたわけでございますが、なかなかまとまらないで、相当、数年間たってきたということはまことに申しわけないわけでございますが、これを機会にすみやかに売り払いの交渉をまとめて、同時に過去の使用料もあわせて徴収して、本件処理をはかっていきたい、こういうふうに考えております。
  53. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、この売り払い価格の問題について少し御質問いたしておきますけれども、こういう大きいものはともかくとして、小さな、個人からの売り払いの申請書がだいぶ出されているわけでありますが、払い下げを申請した時点と、払い下げの時点というのは、相当、期間的にたっているわけであります。ですから、私は四十年の八月に申請した、しかし役所のほうでさっぱりやってくれないもので、二年たっていまになった、こういう話がよく出るわけであります。払い下げを申請する人から考えれば、あの人があそこを買った、だから自分も買おうじゃないか、こういうことで、これくらいなら買えるなと思って出すわけでありますが、それが一年たち二年たつと、どうしても今度は買えなくなってしまう。極端な場合は、倍にも上がった例があるわけであります。ですから、私はこれは時価評価ということになっておりますけれども、やはり、払い下げを申請した時点と払い下げの時点というものをある程度調節をした評価というものをしてあげないと、極端に言えば、役所の怠慢、あるいは役所の作業量が増大し過ぎて、それに間に合い切れないでおくれておるという状態があるわけです。大きなものは早く解決するけれども、なかなかこまかいものはほっておく。実はこのこまかいものが一般民衆に一番縁が深いわけであります。大きなものは、だれかがどこかで、頼まれたり頼んだりして解決しようと努力しますから、進んでいきますけれども、小さな個人個人のものというのは、なかなか解決しにくいわけであります。またそれが、取り扱う場合においても一番めんどうくさいわけであります。ですから、そういう点で、時価評価の問題についても、これは何回も議論いたしましたけれども、評価の問題は、申請を出した時点でやれというのも無理でありますが、払い下げの時点でやれというのも私はあまり酷だと思う。この調整というものについて、やはりお考えをすべきではないだろうかと思うのです。そういう点、いかがですか。
  54. 松永勇

    松永政府委員 勝澤先生もおっしゃるとおり、申請の時期をもって評価をするということは、実際問題としていろいろなむずかしいケースを起こします。なかなか困難であろうと思います。法律のたてまえから申しますと、私のほらは、契約の合意の成立をもって、売り払い価格を決定する、時期もその時期であるというたてまえをとっております。ただ、そういう集団的な住宅につきまして、いろいろと、前に申請書を出したにかかわらず国のほうでおくれたんだから、前の申請時の価格でやってくれというような要望が、あちこちに出ております。いろいろと、地方ではトラブルになっている事例もございます。しかしながら、そういうものにつきましても、要するに、たてまえとしては、合意が成立しない以前の時期を選んで、その時点での評価をするということはいたさないというたてまえであります。こういう集団的ないろいろな要望があった場合には、できるだけ集団の中の不均衡をなくするために、一括して売り払う、あるいは一括して売り払いの時期を選ぶ等の措置で、状況によりましては、その地域の公共団体等の協力も得まして、全体として、できるだけ足並みをそろえた売り払いをして、個々の人のアンバランスができるだけ起きないようにという注意をしてまいりたいと思っております。従来まで、そういうことで必ず完全に円満にやっているかと申しますと、そうではないので、今後十分そういう点は考慮してやってまいりたいと思います。
  55. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それから次に、同じく関東財務局で取り扱った学習院の問題でありますが、あなたのほうからの御報告によりますと、三月十五日に学習院に売り渡しの処置をしたというようでありますが、売り渡しの価格なり、坪単価あるいは売り渡し条件、こういうものはどうなっておりますか。
  56. 松永勇

    松永政府委員 本件につきましても、ちょうど済生会と似たようなケースになっておるわけでございます。この土地は旧近衛騎兵連隊、それから旧陸軍幼年学校の跡地の一部でございます。昭和二十一年の四月一日に学習院に使用を許可いたしました。これは学習院が戦災によりまして、例の明治神宮外苑の横にございましたところからこちらに移ってまいったわけでございます。その後、二十五年四月一日以降はこれを正式の貸し付けに移行して、自来、学習院が学校施設の用に供してまいったわけであります。ところが、この使用料につきまして、初めのうちは使用料はそのまま入っておったわけでございますが、三十七年以降の使用料値上げに、なかなか向こうが応じ切れないという事情に至りまして、当初この使用料交渉で時日を要してまいっておったわけでございますが、これも済生会と同様、将来この土地を立ちのいてもらうということはちょっと考えられない事態でございますし、学習院としても、このように国の使用料が毎年毎年上がっていくという事情では、むしろ買い取りたいというふうになりました。私のほうといたしましても、抜本的に売り払いを決意をすることにいたしまして、昨年来その売り払いの交渉をいたしました結果、本年の三月十五日、売り払いをいたしたわけでございます。  売り払いをいたしましたのは、土地一万九千三百九十九・七二坪、建物千九百二十・九一坪、金額で五億五千五百十五万四千九百円となっております。この売り払った坪数は一万九千坪ばかりでございますが、従来貸し付けておった坪数はこれより若干多うございまして、二万一千坪ばかりになっております。したがいまして、二千坪ばかり売り払いの数量を減しておりますが、これは、この地区が東京都の緑地に指定を受けており、将来公園にするという関係上、この土地を売り払いのときには落とさしたということにいたしたものでございます。なお、この評価にあたりましては、借地権がございます。その借地権は七一%、これは平均いたしましても七一%でございます。なお、このほかに、本件は学校施設としての用途に供する関係上、国有財産特別措置法による減額五割、一部については四割の措置をいたしております。売り払いにつきましては、用途指定並びに買い戻し権の特約をし、それを登記するという新しい制度の措置を講じております。
  57. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 坪単価幾らになりますか。
  58. 松永勇

    松永政府委員 坪単価は、さら地の場合の坪単価が十四万九千六百四十五円、売り払いは、先ほど申しましたように、権利を控除し、さらに減額五割をいたしました関係上、五万四千七百七十円ということになっております。
  59. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それでは、次に、行政財産の分について御質問いたすことにいたしますが、毎年度の、歳入を見てみますと、行政財産貸し付け料といいますか、こういうものが相当入っているわけであります。三十九年度の歳出を見ますと、数億あるわけでありますが、この行政財産を、むろん行政目的に使うために行政財産があるわけでありますが、その中を見てみますと、相当長期の貸し付けが行なわれているわけでありますが、こういうのは、私はやはり行政財産に置くのでなくて、普通財産に移しかえをしなければならぬじゃないだろうかと思うのですが、この毎年の行政財産の歳入との関係において、その点、どういうふうにお考えになりますか。
  60. 松永勇

    松永政府委員 行政財産はこれを貸し付け交換、売り払い、譲与もしくは出資の目的としてはならないということが十八条に規定いたしております。本来この行政目的に供することを目的としておるわけでございますから、これを他に使用させるということは、本来例外的なことでございます。そういう例外的な事情でございますが、むしろ行政財産をそういう目的に反しない範囲において使用させるということが、社会生活、社会慣行上やむを得ないというような場合には、それを認める。その認める基準といたしましては、大蔵省で、昭和三十三年に、各省に対しまして基準となることを示しております。それによりまして、各省がその使用の許可をいたしておるところでございますが、これが非常に長期になるというようなものは、確かにその長期になる理由が、行政財産を行政目的に供するという本来の目的に照らし、はたして妥当であるかどうかということは十分検討されてしかるべきことだろうと思います。事実、非常に長くなるという、しかもその長くなる相手が特定をするというようなことは、一般的には望ましくない問題でございますが、ただ、やむを得ない個々の事情につきまして、そういう長期間にわたって貸し付けをしなければならない、使用を認めなければならないというような場合には、通常の行政財産使用を認める料金よりも高くする、ということで運営をしている事例もございます。たとえば羽田の空港ビル等がその例でございます。
  61. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そこで、三十三年にきめた使用基準、私、持っていませんけれども、一体期間はどういうふうに考えておるのですか。使用期間といいますか、あるいは占用期間といいますか、こういうものはどういうふうになっておりますか。
  62. 松永勇

    松永政府委員 三十三年に各省に示しております基準というものは、これは私法上の貸し付け契約をするのではなくて、いわゆる行政上の認可をする、行政財産でございますから、認可をするということになっております。その認可は、原則として毎年認可が更新されるというたてまえになっておるわけであります。
  63. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 毎年認可というような取り扱いをしておるところに、相当長期のものがつくられておるということはどう理解をしたらいいのですか。
  64. 松永勇

    松永政府委員 毎年認可をするというたてまえになっておりますが、事柄の性質からいって、更新をせざるを得ない、もちろん更新を認めないという趣旨ではございません。更新をせざるを得ないというようなものもあろうかと思います。先ほど申しました羽田の空港の敷地に空港ビルを建てているというようなものは、これが一年ということ自体がおかしいわけでございますから、そういうものについては、更新を一応予想しておる、というようなものもあろうかと思います。
  65. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうすると、国有林野を、最近、私よく見ますと、学校に貸し付けが行なわれたり、あるいはまた観光施設に貸し付けが行なわれたりいたしておりますが、これも、いまの使用基準に基づく行政上の認可として、一年ごとの認可になっておるのですか。
  66. 松永勇

    松永政府委員 国有林野につきましては、企業用財産のほかに、普通財産も持っておるわけです。普通財産——いまのお話にございましたようなものは、普通財産を農林大臣が貸し付けをいたしておるという事例であろうかと思っております。
  67. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 あなたの関係じゃございませんけれども、ついでに、知っている範囲でお答え願いたいと思うのですが、そういうような場合は、それは払い下げをしようとすれば、払い下げができるのですか。
  68. 松永勇

    松永政府委員 これは普通財産でございますから、売り払い、貸し付け等、ちょうど大蔵省所管普通財産について行なっていると同様のことができるわけでございます。
  69. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 もしおわかりにならなければいいのですが、その場合も、貸し付けられたものについて払い下げる場合については、普通財産の場合、借地権の控除というものはあるのですか。
  70. 松永勇

    松永政府委員 私、直接担当でないので、正確なことは申せませんが、大体、農林省も、普通財産につきましては、大蔵省のやり方に準じて措置していると聞いておりますので、借地権等も、認められるものは認めるという方向で措置されているのではないかと思っております。
  71. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 そうしますと、大蔵省としては、三十三年以降、普通財産貸し付けについては、原則としてやらないという方向に向かっている、農林省のほらは、その方向なんですか、あるいは別な取り扱いをしていますか、あるいは御存じございませんか、その点はどうなっておりますか。
  72. 松永勇

    松永政府委員 この点については、農林省のことで、私よく存じません。
  73. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 最近まで、大蔵省普通財産あるいは旧軍用地というものは、土地ブームの中にいろいろ問題をかもし出したわけであります。ですから、今日の法的に整備された時代からいいますと、買い戻し権が登記されておりますから、まあまあそうひどいのはなくなったということが言えると思うのです。しかしいまの時点で考えてみますと、実は国有林野は、調べてまいりますと、かつての大蔵省財産と同じような状態にあるような気が私はするわけです。ですから、やはり大蔵省が一つの方針をきめて、そういう方針になったときには、それと類似のものについては、お互いに連絡を保って、同じ態勢で進んでいくということをしなければいけないと思うのです。最近、国有林野がつぶされて、学校用地に借りられる。学校を建てるときに一番いい場所は何かというと、結局国の安い土地でありまして、坪五円か十円くらいで借りればいいわけであります。あるいはホテルを建てるのも、いい場所はどこかといえば、国有林の場所でありまして、安くて永久構造物が建てられる。そういう点から考えると、やはり大蔵省が一つの基準をきめると同時に、ほかの省にも、そういうものについては、それにならわしていくという方向をとっていかなければいかぬのじゃないかと思いますので、これは答弁をいただかなくてもけっこうですから、農林省のときに一回やることにいたします。  そこで、行政財産の占用許可の基準、あるいは占用を許可する場合はこういうものだという基準、あるいはそこに建物を建てるときにはこういうもの以上は建ててはいけないとか、あるいは占用料について、こういうものは、私は見てみますと、もう少しきめこまかな指導をしてやらないと、各省ばらばらに行なわれているのじゃないかと思うのですが、そういう点はいかがでしょう。
  74. 松永勇

    松永政府委員 行政財産は、先ほど申しましたように、本来行政目的に供することを目的といたしております。先ほどのような使用あるいは収益を認めるということは、いわば例外でございます。そこで、本件使用を認める場合の扱いにつきまして、これは主として、こういう使用とか収益をさせる必要が出てくる庁舎等の施設の中をどうするかという場合が多うございますので、先ほど申しました庁舎等の使用、収益を許可する場合の取り扱い基準についてということで、昭和三十三年に各省庁に出しております。  ところが庁舎等以外のものにつきましては、いま一般的な取り扱い基準というものは定めていないのでございますが、これは個々の事例によって、各省各庁の長が、先ほどの考え方に即して処理をいたしておろうかと思います。事案としては、こういうケースは比較的少ないのでございます。ところが行政財産の中で、道路、河川、海浜地、こういうものについての使用、収益をさせるという場合には、これは国有財産法の特例法として、それぞれ河川法、海岸法あるいは道路法等の法律がございまして、この特例法に、占用を許可する場合、その占用の許可をする基準、占用料等についての規定がございまして、実際問題としては、都道府県等の条例によって、都道府県が徴収し、その収入は都道府県に入るということになっておるわけでございます。それで、庁舎等の使用基準につきましては、これはこの範囲をこまかく通知をいたしておりますが、大ざっぱに申しまして、その行政財産管理運営する目的から支障がないという場合において、認められるようにいたしております。その場合の使用料については、国有財産台帳に登載された台帳価格の百分の三というのを基準といたしまして、その前後一%ずつ、すなわち百分の二から百分の四の範囲において、各省各庁の長が実情に応じた使用料をきめることができるというふうに定めておるわけであります。
  75. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 行政財産で、各省でやっておる実情について、あなたのほうで資料をとれますか。とれませんか。あなたのほうでもしとれたら、各省の実情についての例を、二つ三つずつ資料として出してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか、五つ六つの省でけっこうですけれども。
  76. 松永勇

    松永政府委員 私のほうで実情が把握できる範囲のものを、実例として、取りまとめて提出いたしたいと思います。
  77. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 それは資料が出てから御説明願うことにいたしまして、最後に一つ。最近、東海道で国鉄が新幹線をつくって、またいま東名高速通路がつくられておるわけです。その道路の中に、いままで民有地だと思われたものが、登記面を見ると、官地があるという例が出ておるわけです。聞いてみますと、相当長い年、官地と承知しながら耕作しておった土地、あるいはまた、最近、京都の例でも、たんぼを民間会社が造成をして買い上げてみたら、その中のあぜ道が国有地であったというような例も出ているわけであります。そこで個人は善意であるけれども、不法占拠なり不法使用しておるのがあるわけです。あるけれども、ところが、なかなか申請しても許可してくれないから、まあまあ使っておこうということで、実は国の土地使用しておる権利を、また第三者がほしいときにはそれが引き継がれながら、こうやっておるという事例をときどき見るわけであります。ですから、そういう点からいけば、そういうものの処理というものは、なかなかたいへんなことだと思うのです。そこで、やはりこういう一般に官地官地といわれておる、登記面にはないけれども、実際に使われておるわずかな土地、たくさんの土地はむろん無理ですから、わずかな、十坪とか二十坪のばらばらになっておる土地は、支障がなければ、積極的に売り払って解決する方向をきめてやらなければいかぬと思うのです。それは大蔵省として、そういうものは、とにかく申し出によって払い下げをするんだということを、積極的に一般に公表することによって、あの土地は官地だけれども、ひとつこの際申請をして払い下げてもらおうか、そう高くもなし、むろん安くといっても無理だろうから、ということで、結局、積極的にそういうものの処理が促進されるだろうと思うのです。そういう例を私は各所に見るわけです。現地に行って見れば、なるほどこれは官地だ、しかし図面ははっきりしていない、はっきりしていないけれども、個人のものでないことは確かなんです。ですから、そういうものについて、ある程度積極的に使用者本人から申し出させることによって、市町村役場と協力しながら、どんどん解決していくという簡単な解決のしかたというものを考えていったらどうだろうと思うのです。大蔵省なりあるいは会計検査院でも、そういう点にお気づきになりましたら、何かの便法を講じて、解決してもらいたい。何も収益が上がっていないわけです。無断使用されているのです。実は知っているのはだれかといえば、それは耕作している農民なり、あるいはそれを使っている人しかないわけでありますから、そういう点について何かの方法はないのでしょうか。お考えを聞かしていただきたい。
  78. 松永勇

    松永政府委員 この問題は非常にむずかしい問題、しかもその淵源が明治初年、ものによっては徳川時代に発するというような、非常に古い問題でございまして、いわゆる青地とか、黒地だとか、いろんな名前で呼ばれているようでございますけれども、そういう土地がある。しかもそれは国有財産台帳にはもちろん載っておりません。土地台帳に、いわゆる私有地として掲記されてない結果、明治初年の太政官布告等から見て国有地である、こういうような性質のものでございます。全国にまたがって非常に数多く、しかも比較的小さなものが多うございます。そういうものの処理を今後どう進めるか。これは国有財産の例の実態調査の問題の一環にもなりますが、同時に、国有財産管理処分の適正を期するという面からも重要な問題でございます。ただいかんせん、全国に非常に数の多い、しかも実体がよくわからないという実情でございますので、これらの処理をいかに進めるか、特に現在問題になっております個々の地方では、個々の農民とか、あるいは住民は、これは自分のものであるという、自分の所有権を主張されるものでございます。国は国の所有権を主張するということで、相対立しているというケースが多うございます。いま先生のおっしゃるように、相手方が国の所有権を認めて、払い下げを受けましょうという事例の場合は比較的簡単でございますけれども、事実は、自分の所有権を、主張する。しかもその土地は数量その他実測されていませんので、確定はされていないという実情でございます。そこで、こういうものの処理を今後どら進めるかということが私たちの課題の一つでございます。  一つは、いまの東海道の高速道路、東名高速道路の敷地になるところにそういう土地があちこちに出ております。この処理を早急に進めなければならないと思います。それからもう一つは、住宅団地等が行なわれる際の一体土地の中にそういう青地があるという問題で、これを進めなければならないような事態になっております。一般的に、全国的な問題を、私たちの現在限られた人員で一挙に着手することは非常に困難な状況になっております。これからは、むしろそういう高速道路あるいは住宅団地で、具体的に処理を進めなければならないというようなものに重点を指向して、その処理の促進をはかっていかなければならないと思っております。  もう一つの問題は、先ほど申しましたように、争いがある、すなわち所有権をめぐって争いがあるという問題の処理でございます。こういう問題につきましては、本来争いがあれば、すなわち話し合いで解決ができないものにつきましては、訴訟ということになるわけでございます。民事上の訴訟を行ならということになってまいるわけでございますが、しかしその場合にも非常に件数が多くなる。しかも訴訟となれば非常に期間を要するということで、実際の道路の建設等の措置ともあわせて考えれば、何らかこれに対する解決策を考えなければならないということで、現在、法務省等とも協議いたしております。こういう問題に対する対処のしかた、取り扱いのしかたについて、早急に方針を出したいと思っておるところでございます。
  79. 勝澤芳雄

    ○勝澤委員 私は、一つの方法として、売るから、買いたい者は申し出ろと促進することによって、その場その場で簡単に解決する方法を考えていかなければならぬと思うのです。また農地ですから、一応農林省の財産から大蔵省に移して、そして払い下げるという方途もやっておるのがありますけれども、それを見ていると、半年余もかかってしまうわけです。ですから、そのくらいは簡便なしかけでやらないと、相手が農民の人たちですから、あるいは一般の小市民でありますから、めんどうなことはきらい、しかも、金はとにかく払って自分のものにしたい、という気持ちはみんな持っておる。そういう点などについてぜひ検討していただきたいということを要請して、質問を終わっておきます。
  80. 吉川久衛

    吉川委員長 ちょっと速記をやめて。   〔速記中止〕
  81. 吉川久衛

    吉川委員長 速記を始めて。吉田賢一君。
  82. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 ちょっと、国有財産局長に二点だけ簡単に伺っておきます。国有財産問題、とりわけ不動産の場合、ただいま御説明ごとく、非常に問題が多い。おそらく、いま大蔵省においても、ないしは林野庁においても、自己の所管する国有財産の広さは知らないだろうというほどに、私はこれは問題点が多いだろうと思います。したがいまして、この国有財産のあるべき事実を確定するということは、非常に重大な事業であろうと思う。何十年かかってというのでは、これまた問題続出であります。なるべく早急にこれを確定するためには、やはり内閣において、強力な総合的な調査機関の設定という方法でいくよりほかない。国土地理院というのがあるようでありますけれども、これは非常に微力なものでございます。重大問題にぶつかりますと、手もなし、能力も不足でありますので、国有財産、とりわけ不動産の客観性を具体的に把握するというために、すべからく大蔵省が主導権を持って、内閣の一つの重大な仕事にするように持っていかれたらどらか、こう思うのです。そこで政務次官、その点についてしかるべき御答弁をいただいて、後日の参考にしたいと思います。
  83. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 ただいまの御意見、まことにごもっともでございまして、国の財産の維持管理並びに処分、こういったことにつきましては、適正かつ公正に行ならべきでありまして、そういう線に沿うて、事務的な今後改善すべき手続、いろいろな制度の問題については、御意見を十分しんしゃくいたしまして、今後善処いたしたい、このように考えます。
  84. 栗原俊夫

    ○栗原委員 関連して。国有財産の問題で二、三点だけお尋ねいたします。  ただいま吉田委員からも話しましたとおり、国有財産というものの中で、特にその主体をなす不動産、土地の問題ですが、土地管理するのに、はたしてどう管理しているかということで、国民は、率直に言えば、あきれているわけですよ。あちらこちらで国有財産国有財産といっているから、がちっとはっきりしているかと思うと、何が何やらわからぬということなので、国有財産というものは、先般も予算委員会において、法務省に聞いてみましたところ、国有財産管理等には、民有の土地と違って、必ずしも本来的なものには地番登記というものはない。ではどうやってそれを具体的に管理しているのだ。たまたまあちらこちらで問題が起こり、特に先般新聞にも問題になってきた、栃木県の那須高原あたりで、一方ではどんどん子供の遊びの陣取りみたいに出てくると、それは違うのだという、対抗する何ものもないような印象を受けているのです。一体、これはどうやって国有財産である土地管理しておるのか。したがって、中に二つあると思うのです。すでに民有地、かつて民有地であったものを国有地にしたものには地籍地番がついているから、これは当然不動産登記法上、国有という登記が行なわれておると思うのですが、その他のものはどうやって管理し、しかも民間との問題が起こったときに、民間では登記簿による対抗要件を持っているけれども、国有地というものはどうやって民間に対抗するのか、これが私にはわからない。これはまことにしろうとで、国民全般もおそらく私と同じような気持ちで、いろいろと昨今起こる事案をながめておると思うので、この点をわかりやすく説明していただきたい、こう思います。
  85. 松永勇

    松永政府委員 国有地につきましては、行政財産普通財産があります。行政財産につきましては、行政目的の用に供しておりますので、それぞれ各省各庁の長が管理すると申しますか、行政目的に供することでありますから、当然管理もおおむね妥当に進んでいるであろうと思っております。普通財産につきましては、特別会計に属するものは別といたしまして、一般会計に属する普通財産は、大蔵省国有財産局、及び財務局、財務部がこれを管理することになっております。国有財産台帳に載っておる国有財産というものを管理いたしておるところでございます。ところが、先ほどお話が出ましたように、まだ国有財産台帳に載っていないで、しかも国有地のものがある、実体が不明であるというものがあるわけでございまして、この実体を明らかにするということを、三十三年以来つとめてまいっておるわけでございますが、何ぶんにも全国にわたり、しかも件数は非常に膨大でございます。明治以来の土地制度がこういう結果になっておるわけでございます。早急にこの実体不明の財産を明らかにし、そうして適正な管理を始めたいということになるわけでございます。制度の問題としては、いま言ったようなことになっておりますが、具体的な管理等についてはどうかということになるわけであります。これは何ぶんにも限られた人員をもって、この財産管理しなければならないということでございますので、巡回、それからさくを設ける等の措置で従来やってまいっておりますが、それにいたしましても全国にまたがって非常に多いし、またそういう措置をとるにつきましては相当の予算を伴うということから、必ずしもこの措置が十分であるという状況にはないものと考えられます。先年不動産侵奪罪が刑法に新設されまして、この制度の新設によりまして、国がみずから管理しておるということではございませんけれども、不動産を侵奪することの刑事罰ということが、相当な管理の裏づけ補強材料ということになりますか、そういう形になりまして、大きな作用をなしておるのは事実であります。しかし私たちも、この不動産侵奪罪だけを期待して管理をするということは適当でないので、いろいろな方法によって管理の適正を期するということで、今後もできるだけそういう予算措置も講じ、また地元公共団体とか、あるいは地元警察等にも、その国有財産の所在を明らかにして、パトロール等についての協力を得るというような措置も講じて、管理の適正を期してまいりたいというふうに考えております。
  86. 栗原俊夫

    ○栗原委員 お話をだんだん伺えば、わかったような気がいたします。しかし実際の問題として、国のものとはっきりわかっておれば、さくでも何でも結えるけれども、ここは国のものだと言えるその根拠がなかなかむずかしい。だから言い方から言えば、民有地はもちろん登記は対抗要件だ、登記しておらなくても所有権というものはあると、法的にはいえるかもしれないけれども、実際には対抗要件を備えない。いわゆる登記してない土地所有権なんというものはあってないようなものだ。実際はいたしますよ。したがって、土地を持っておる者は、おそらく対抗要件を備えるための登記をしておると思うのですが、とにかく一般の国民が民地であると主張でき得るもの以外は全部国有だ、こういう概念にしかならないような気がするのですが、その辺はどうなんですか。
  87. 松永勇

    松永政府委員 お話のような問題につきましては、先ほど申しました明治初年の太政官布告で、官民保有区分を明らかにした場合に、民有の土地土地台帳に登記するという措置を講ぜられたわけであります。したがいまして、従来国といたしましては、地番のついてない土地は民有にあらず、すなわち国有であるというたてまえでまいっておるわけであります。先ほどちょっと出ました青地の問題も、そういう意味で、民有の登記はなされていない、地番はついてないということから、国有であるということに私たちは考えておるわけでございますが、しかし個々の農民等については、それは自分のものである、明治初年以来自分が占有し、自分が使ってきた土地であるということから、自分の所有権を主張する、という事態があらわれております。もちろんそういう争いにつきましては、国としては、事柄の事情の調査にもよりますけれども、原則としては国有のものであるというたてまえをとっております。
  88. 栗原俊夫

    ○栗原委員 太政官布告による云々というのはだいぶん古くなるわけですが、その後土地が整理され、一たん民地になり地番がつく、そうした中から、いろいろな原因等によって国有に帰したというものは、これはやはり対抗要件として、国有であっても登記、こういう形を整えて管理しておるわけですか。
  89. 松永勇

    松永政府委員 調査した結果、国のものであるというものにつきましては、国有財産台帳に登記する、と同時に、土地台帳にも登記する、という方法をとってまいっております。
  90. 栗原俊夫

    ○栗原委員 なかなか具体的にはいろいろむずかしい問題がありまして、まあ登記の上には国有という表示が、いわゆる不動産登記法による登記簿には登記がされていない、しかし一方、国有財産管理のほうの台帳には載っておる、こういう場面があり得るわけですね。しかも、そういうことで、一般の大衆がいろいろとそういう権利関係等を明らかにしようとするときに、これは登記所に行ってもわからないというような——登記所でわからないものはこれは国有なんだ、とみんな理解してしまえば、それはそういう一つの決定の方法もあるかもしれませんけれども、国有であるかないかということを確認する方法は、これは登記所でなくて、どこへ行ってお尋ねすればよくわかるようになっておるわけですか。
  91. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 関連。私もそんな問題にぶつかりまして、四国である人個人が、自分は三百町歩山を持っているのだが、しかしだれもこれを証明してくれる人がないと言って、半気違いになって、十年ばかりあちらこちら回ったという人がある。そんなことから、いろいろ調査したそういう経験によりますと、山林のごときは登記所に備えつけの地図がある。この地図はいつつくったのであろうかとなると、明治初年につくったものである。だれがつくったのかというと、それは実測した結果ではない。もの知りが器用につくった。これは同じくまた、村役場にも同様なものが備えつけてある。これは、言うならば、最終的に、文字でなしに地図であらわした境界らしいのですね。こういうことで、相当いろいろ重なっておるということも経験しました。そういうものらしいのですね。あれこれ考えまして、非常に重大な問題ですから、ひとつ善処されたいと思います。
  92. 松永勇

    松永政府委員 いま栗原先生からの御質問でございますが、実は登記制度については、きょう法務省がお見えになっていないのでございますが、登記制度について、私、知識が乏しくて、正確でないかと思いますが、従来国有財産であるものは、国有財産台帳に載っているものは国有財産、これははっきりいたしております。ところが、国有財産台帳に載っていなくて、登記簿にも民有登記が載ってないというものは、先ほど申しました太政官布告から見まして、国有であるというふうに推定されるわけであります。不動産登記所のほうも、そういうことで、民有の登記がないものにつきましては、国有であるということを一応推定しているはずでございます。
  93. 栗原俊夫

    ○栗原委員 まあ、なかなか国有財産というものは大事なものでありながら、大事なほどにどうも管理が行き届いておらぬという感を深めます。一日も早くはっきりしてもらうこと、事実問題も幾つか持っているのですが、それは大蔵関係でなくて、所管の省庁をやるときにあらためてお伺いすることにして、私の質問は終わります。
  94. 吉川久衛

    吉川委員長 吉田賢一君。
  95. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は、主として先般の臨時行政調査会の答申をめぐりまして、若干伺ってみたいと思います。  予算の制度は、国の行政の目的と符合いたしまして、予算の執行によって行政目的が達せられるということは、概念的によく説明せられておるのであります。したがいまして、この予算の内容をなすものが、はたして行政目的を達するかどうかは、国民は重大な関心があるのであります。一方また、予算は金に見積もって歳入歳出がきめられますので、したがいまして、国民の負担の関係から見まして、予算は非常に重大な関係があることは申すまでもございません。そこでどう金が使われたのか、一体何ができたのかということは、これは国民として最大の関心事だと思いますが、同時にまた、国会の立場といたしましても、いかにこれが使われて、何が行政目的が達したのであろうかということは、これまた重大であることは申すまでもないのであります。こういう角度から見まして、どうするならばできるだけ少ない経費で、すなわち国民の負担が少なくなって、そしてできるだけ行政目的を達成し得るかということが最上の願いだろうと思います。こういうことについての努力はせられておると思うのだが、現実には問題は絶えません。  そこで一般的に、予算作成の行政事務の中核の大蔵省としまして、この重大な問題について、大体どこをねらっていけば、そのような線に沿うて予算が作成され、また執行せられるだろうか、そのねらいどころをひとつ述べてもらいたい、こういうふうに思うのです。
  96. 鳩山威一郎

    ○鳩山政府委員 ただいま吉田委員の、予算の実行が行政の目的を達成するかどうか、それのかぎを握っているのは予算の実行であるということは、まことに私どももそのとおりに考えておるのでございまして、従来、予算の実行につきまして、実行の結果は会計検査院検査をいたされ、不当あるいは非能率な使用につきましても、いろいろ問題点を指摘していただいておるわけでございますが、これらが、まず今後の予算の編成に十分役立てられなければならないということと、それから予算の実行自体がますます能率をあげて実行されるように、私どもも日夜その点につきまして勉強いたしておるわけでございますが、結果といたしまして、毎年度のいろいろな批難事項が出るということは、まことに私どもも力の足りない点を感ずるのでございますが、大蔵省といたしましては、その点、日夜努力をいたしておるつもりでございます。そういう観点から、私どもといたしましては、予算の編成が終わりますと、予算が国会を通過いたしますとすぐ実行にかかるわけでありますが、またその予算編成の済みました段階と、それから検査院検査が始まるわけでありますが、予算の内容につきまして、検査院と十分打ち合わせをする。それから検査院検査が終わりますと、その終わりました結果につきまして、大蔵省と十分の打ち合わせをするということを最近励行いたしておりまして、各省別にその問題点をお互いに発見し合うということにつとめておるのでございます。  予算の問題といたしましては、予算の執行は各省の責任になっておるわけでございますが、特に問題が多いいろいろな公共事業を中心とした各種の事業費が、これは使い方によっては一番差が非常に大きく出る問題でございますので、これらの問題につきましては、支出負担行為の段階で、いろいろまた各省と協議をいたしておるのでありますが、従来、その点が、あまり大蔵省が実行に強度に干渉いたしますと、またこれが予算の能率的な執行を害するじゃないかというような批判も一部にあったことは事実でございますが、そういった点から、各省に、ある程度の予算の実行は、ある点まではおまかせをして、十分効率的に使っていただかなければならぬと思います。全体として、制度としてこれをいかに能率的に実行できるような方法をくふうしていくかということが必要な問題になると思いますが、その点につきまして、いろいろ臨時行政調査会の勧告等もございまして、これらの点につきましては、非常に制度的にいろいろな示唆に富んだ勧告がなされておるわけでございますが、これらの点につきましては、後ほど、あるいは法規課長から詳細御説明いたさせてもよろしいのでございますが、内容につきまして、実行できる問題もかなりたくさん含まれております。たとえば、予算の単価が非常に不合理ではないかというような問題も指摘をされております。こういうふうな点につきましては、本年も極力是正につとめておるのでございます。またあるいは事業別の予算というような問題がありますので……。
  97. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 その辺は区別して伺いますので、打ち切ってください。  私も臨調の答申を一通りちょっと読んでみたのでありまするが、やはり問題の個所もあると思いますので、だれかが言ったごとくに、即、万能薬で、国民が期待したような結果は全部得られるというふうには思っておりません。しかしずいぶんと長年月、二年と七カ月かかっておりますし、ずいぶんとたくさんの専門家が、言うならばかなり真剣に取り組んで、そうして役所の出した資料を検討して、案文をつくるというような、そんな調査会ではなしに、自分で出かけて、国民の声を全国八カ所で相当大じかけに聞いて、あらゆる言論機関に呼びかけてその反響を見る、さらにまた委員長、会長自身は、ある機会を得てアメリカに行って、フーバー委員会の自後の推進の中核になったような、ある事務局長を訪問までして、いろいろと懇談をしたというような、相当苦心を重ねた事績があるわけです。そういうわけでありますので、何回か行政改革の答申が今日まで出ておることは、これも存じておりまするが、最大の規模の最大の努力のしぶりと思いますので、これはどういう事情にかかわらず、賛否、結論のいかんにかかわらず、各官庁も、各関係部署は真剣にこれに取り組まなければならない問題である。取り組みをしないですでに二年半たなざらしになっております。私、あとでちょっと聞きますけれども、各省から出ておりますいろいろなこれに対する回答やら意見なんかも、ちょっと目を通して見ましたけれども、なかなかに難航するらしいですね。そういうことでありますので、全体はともかくとしまして、あなたのほうのお答えをいただける範囲にきょうは限定をして聞いてみるとすると、予算編成の過程におきまして、臨調は、予算編成を円滑、合理的ならしむる原則が整備されていないのではないか。そこで大きな混乱を生じておるというようなことをちょっと指摘しております。それからもら一つ注目すべきことは、外部諸団体の陳情やら要望やら圧力が激しくて、それに伴う相当な費用、これも軽視ができないと言っておりますが、やはり民主主義の国でありまするから、全国民の声を受げ入れて、そうしてその批判、意見を聞きながら予算編成するということは、民主政治として、これもうなずけ得るのでありまするけれども、ともかく何かの力が押しまくって、そうしてぶんどっていく、だから週刊誌は、血税のぶんどり陣の展開図面というようなものを発表したりするわけですね。だから、その辺についての苦心もあろうかと思うのだが、その予算編成の際の、良心的に取り組んでおる大蔵当局と、私は実は信頼して聞くのですが、このような背景とか雰囲気のもとに、なかなか苦心が要るのだろうと思うのですが、その点はどういうふうな感じを持つのでしょうか。これは鳩山さんなり、次官から伺ってもいいと思いますが、予算・会計の改革に関する意見、三ページの劈頭に書いてあります。
  98. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 吉田委員の御指摘の点、全く同感でございまして、実は今度の四十一年度予算編成、これは御承知ごとく、財政政策の大きな転換、すなわち公債を発行してまで財政需要に応じよう、こういう予算編成でありましたので、私も新参者でございますけれども、その内部に参画をいたしまして、絶えず大蔵大臣が、特に会計検査院あるいは当決算委員会、ないしただいま御指摘の臨調の答申、こういった線を、ひとつ極力予算編成のときに生かしていく。大蔵省自体が予算の執行の面にその適不適をいろいろやるというのは、先ほど鳩山次長からも話がありましたように、いろいろ問題を含んでおりますので、むしろ大蔵省のたてまえとしては、予算を編成するときにひとつ合理的な線を打ち出すべく精力的に努力をいたしたつもりでございます。しかし長年のしきたりと申しましょうか、いろいろ結果を見ますと、まだまだ十分ではないという御批判もあろうかと思うのでありますけれども、御趣旨の線、特に臨調の答申、今後行政の効率化という面、貴重な血税を有効に生かして、安い経費でそして効果の上がる政治を打ち出す、行政を執行するということは、これは絶対に必要な条件であり目標でなければならぬ、このように考えております。
  99. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 安い経費でよい成績をあげる政府をつくっていきたい、そのような行政でありたいということは、これはもう国民の念願で、スローガンのようで、よく聞くのでございますけれども、ちょうどこれは予算重視、決算軽視はけしからぬというのと同じことで、けしからぬとはいうけれども、だれも力を入れないというのが実情なんです。でありまするから、これを突破するということは、単にスローガンとか、あるいは言うだけではどうにもなりません。これは政府だけにこんなことを言うて責めるのは無理で、むしろ省みて、やはりわれわれ自身が、つまり国民の代表が政府を鞭撻しながら、ともに一つ目的に向かっていくという体制が整ってこないと、口で言うて、そうして足を引っぱる、いろいろよいことを言いながらも、そっと手を出してもらうというようなことでは、これはどうにもならぬ。そこの間にはさまっている予算作成の大蔵官僚はえらいこっちゃな、というふうに御同情申し上げておるのです。これはなかなか容易なことじゃないが、佐藤総理も、臨調を尊重するという線は言明しておられますので、ことに池田前総理は、これが一つの大きな使命だというふうにまで、臨調最初の総会で演説をなさっておるということもありますので、いろいろな陳情につきましては十分に耳を傾けながらも、正しきにくみするというふうな態勢は、これは何としてもくずしたらたいへんだろうと思うのであります。大蔵官僚がこの点は一番強いんじゃないかと思っておりますので、信頼していきたいのですけれども、実情が、だんだんと要らざるものを膨張していくようなこともございますので、この点は憂慮にたえません。  そこで私は、一つの基本的な考え方といたしまして、例の事業別予算が、特筆すべき臨調の一つの答申になっておるようでございますし、いまさら申すまでもございませず、当委員会におきましては、毎回事業別予算が、少しはみな意見として出るのでございますが、しかし、本格的に事業別予算が日本の予算制度の上に取り上げられていこうという情勢はまだ馴致されてまいりません。しかしすでにアメリカにおきましては、一九四九年でしたか、実施の段階に入っておりますし、世界各国におきましても、大体この線に沿うて国の予算は作成されております。スカンジナビアあたりにおきましても、聞けば、国自身が一つの企業体のごとき観を呈するほどに、やはり予算が企業意識に徹底するというところまで進んでおるらしいのでありますから、私は、この事業別予算というものは、これは本格的に取り組む段階に来ておるのじゃないだろうか。この臨調の答申に対する意見を、行革の本部長の名によって、各省庁に求めたときの大蔵省の回答は、再検討を要するというような趣旨になっております。慎重に、つまり事業別予算の要素は取り入れられている、ということは、現行の制度を補充するという趣旨か、あるいは制度上改革を行なうべきかにも問題があり、国連においても研究はまだ未完成の現状であるらしい、そして先進諸国における取り扱いも参考にして、さらに慎重に調査を要するものだ、というのが、これに対する回答の要旨でございます。こうなりますと、大体姿勢として取り入れる体制に進もうとしておるのではないであろうか。その後の大蔵省取り扱い実情いかんということも聞いてみたんですが、文書として提出されたものには載っておりません。この問題につきましては、大蔵省は、何か計画もしくは調査を進めてきたのかどうか、いまの臨調のこの回答の続きといたしまして、何か報告することがあったら、ぜひひとつしておいてもらいたい。
  100. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 ただいま、事業別予算制度につきまして、その後どういうぐあいに検討をやっておるかというお尋ねでございます。御指摘のとおり、事業別予算は一九四九年、アメリカにおきまして、いわゆる行政改革のための委員会、フーバーがやっておりました委員会が、大々的に発足をいたしまして、その中の予算会計部門といたしまして、大きく取り上げられた事項でございます。わが国におきましては、一昨年の臨調において、特にこの採用を強く勧告をされておるわけでございます。私たちといたしましては、フーバー委員会の勧告が出ましてから、事務的にはいろいろと調査をしておった段階であったわけでございますが、いよいよ正式に臨時行政調査会から勧告が出たということで、本格的に検討を開始しつつある段階でございます。  この事業別予算制度につきまして、どう考えるか、あるいは今後どういうぐあいに考えて検討するか、あるいはまた世界各国はもう大体やっておるじゃないかというふうなお話がございましたのですが、そういった点につきまして簡単に申し上げますと、事業別予算制度、これは一体どういうものであるかという概念規定が第一問題であったわけであります。一応、これはアメリカのフーバー委員会が勧告をいたしましたときは、何と申しますか、事業計画を基礎として、その実現を重視するところの予算会計システム、予算編成、執行、決算と一貫したシステムである、こういううらな定義を一応なされておるわけでございます。そこでまず第一次着手といたしまして、事業別予算制度の思想というものは何を要求するかということでございますが、いまの予算書の予算科目の立て方、科目の再編成をしろ、こういうことを要求としてあげたわけでございます。どういうところにポイントがあるかと申しますと、それまでの、アメリカを含めまして、各国大体同じ、共通のような問題でございますけれども、人件費とか物件費とかいう区別が第一のポイントになっていたのであります。いかなる使途に用いるか、ということよりも、いかなる行政目的に用いるかということをあまり考えていない制度である。したがいまして、予算科目を再編成をするにあたりましては、人件費とか物件費とかいうようなことでなくて、具体的な、行政目的を如実に示すような科目に直すべきであるということを言ったわけであります。具体的に申し上げますと、どういうことでございますかといいますと、まず予算をファンクションとプログラムとアクティビティーの三つに分ける、こういうことをいっておるのであります。ファンクションというのは、日本の現在の予算制度に対応いたしますと、重要事項別経費と申しまして、予算書それ自体には載っていないわけでありますが、説明資料として予算書に添付をいたします、あの重要事項別に当たるわけでございます。それから、プログラムというのは、日本で申しますと項に当たるわけでございます。それから、アクティビティーあるいはプロジェクトというのは、日本でいう目に当たるわけでございます。こういうかっこうになってくるわけでありますが、フーバー委員会が提唱いたしました事業別予算制度は、大体その方向で、もう日本の予算書の分け方は同じようなものであると言って過言ではないと思います。特に公共事業費の分け方は、アメリカの予算書と比べまして、ほとんど大差がございません。若干違いますのは、アメリカのほうは、わりあいと地域の名前をはっきりと出す場合が多うございます。コロラド峡谷ダム計画でございますとか、地域の場所を出す場合が多いわけでございます。そういう点、若干違いますが、行政目的——空港整備事業費であるとか、農業構造改善事業費であるとかいうような行政目的を指示するという意味においては、アメリカの予算書と比較しまして何ら遜色はない、こういうぐあいに考えておるわけでございます。特に、あとで申し上げますが、事業別予算制度の最大の難点と申しますのは、コストと成果の相関関係が数量的に把握できないような分野、産業関係の予算については、これは比較的容易なわけでございますが、司法でございますとか、警察でございますとか、教育、こういった分野につきましては、そういった事業別予算制度の全面的な採用ということは非常にむずかしいのではないかということが言われておるわけでございます。そういった分野におきますところの科目の分け方というものを見てまいりましても、日本のほらがアメリカよりもよく、むしろじみちにやっておるのではないかと思われるような節もございます。ただ、事業別予算制度を採用したと言われておりますアメリカにおきまず予算書と日本と比較いたしまして、この点はやはりアメリカのほうがいい、こういうふうなお話の点は、たとえば、人件費が、アメリカの予算書では分かれております。各事業別に分かれておるというところまでは参りませんが、たとえば厚生省なら厚生省の予算の人件費が、企画部門の人件費が幾らでございますとか、あるいはエバリュエーションの人件費が幾らでございますとか、そういうのが、大づかみでございまするが、三グループぐらいに分かれておるといった点が一つ、そういう点が、日本ではやってないわけでございます。それからもら一つは、項の、先ほど申し上げましたプログラムの段階におきまして、いろいろこまかく分かれておるのでありますが、日本の予算書を見てまいりますと、各省の予算書の劈頭に、予定経費要求書の劈頭のところに、たとえば(項)農林本省でございますとか、(項)厚生本省というような項が、必ず、これは総括的な一般的な項として、具体的に行政目的を指示できないやつを、全部一括してそういう形でまとめておるわけでございます。まとめておりますが、そのまとめた項の中を、いわゆる小事項という事項に分けて、こまかにまた説明しているという段階がございます。この段階が、アメリカでは、それが独立の項になっておる、こういうような点。この制度を申し上げますと、大体その二点あたりが、今後日本の予算についていろいろ改善をしていくという点で、検討していかなければならぬ点ではないか、かように考えております。  以上の点が、事業別予算制度の第一次着手として要求いたしておりますところの、予算科目の立て方についての大体の概要でございます。  それからさらに、これが一番大事な点であるかと思いますけれども、決算の段階におきまして、事業別予算制度というのは、事業別にその達成実績を、できるだけ数量的に把握し、実際の成果を確定し、事業能率を測定する一助とする、こういうようなことをいっておるわけでございます。この段階につきましては、特に決算書並びに決算の説明書というたようなもののつくり方が問題になるわけでございますが、現在の決算の、法律的な意味におきます決算の立て方というのは、予算の科目別に計数的に執行実績を指示するにすぎないわけであります。それだけでは、なかなか見ただけではわからぬというお話でございまして、ここ数年来、いわゆる決算の説明というのを添付いたして御審議に供しているわけでございますが、この決算の説明も、臨調でも言っているわけでございますけれども、十分でない。と申しますのは、この決算の説明を見てまいりますと、たとえば先ほど申しましたファンクション別の、生活保護費でございますとか防衛関係費といったような重要経費分類につきまして、それぞれの項目について、事業量を含んだ実績を示しております。しかしながら、予算によって計画されたところの計画内容と実績の対比がどういうことになるのかとか、あるいは費用計算によって、コストがどのくらいに相なったかというような点にはまだ至っておらないわけでございます。事業別予算制度は、そういった点について決算は充実しろ、こういう思想に立っているかと存じます。かような点について、どの程度までこの事業別予算制度というものが実現可能なものであるかにつきまして、十分検討を、今後、財政制度審議会の中の法制部会——財政会計法規全般を扱う部会がございますが、そこを中心にして、検討を続けてまいりたいと存ずる次第でございます。  一方、この事業別予算制度の最初に、扱われ方でございますけれども、アメリカにおきましてこれが出ましてからしばらくは、全般的な世界情勢の次第もございまして、あまり関心を引かなかったわけでございます。最近四、五年間前より、ようやく国連におきまして、あるいはまた、国際行政学会というような、行政学者と財政学者とそれから予算の実務者とがつくっております国際機関がございますが、そういったところを中心にして、事業別予算制度というものに対する関心と研究がにわかに高まってきているわけでございます。国連におきましては、三年ほど前並びに二年ほど前に、それぞれ研究会議を持っております。それから、国際行政学会におきましても、それぞれ研究会議を持っておりまして、かなりの国がこれに参加をいたしまして、日本でも、行政管理庁、大蔵省関係省がこれに参加をして、いろいろ勉強をいたしておるわけでございますが、非常に大まかに申し上げますと、なかなか批判、問題点が多く出されております。たとえば、事業別予算制度というのは、ただいまもちょっと申し上げましたとおり、教育とか治安とか国防、警察方面には全然適用ができないではないかということでございますとか、それから、国会の予算統制というものを弱める結果にならぬかとか、あるいは、予算書を事業別だけに限って編成してしまいますと、支出官庁の責任といったものが非常につかまえにくくなるのではないかとか、それから、ヨーロッパの地方都市で、昔こういうような思想のもとにやったことがあるけれども失敗に終わったというような、いろいろな批判が実は出ているわけでございます。この国会の予算統制を弱めるとか、あるいは支出官庁の責任がはっきりせぬとかというような問題点は、実はこの事業別予算制度を突き詰めていきますと、当然そこになる問題でございまして、と申しますのは、事業別予算制度というのは、非常に誇大な表現を使いますと、いままでの予算の考え方というのが、事業に対する予算統制というものを非常に重視しているわけでございます。しかるに、この事業別予算制度というのは、事業のために予算があるんだ、こういう思想につながってきております。それで、いま予算書の科目の問題でございますとか、あるいは決算書の様式を問題にしている限りは、そういった問題が起きないわけでございますが、この思想をさらに突き詰めてまいりますと、結局、現在の日本の予算制度がとっておりますところの単年度予算制度、会計年度独立の原則、こういったものとまっこうから衝突していく。もちろん臨時行政調査会におきましても、事業別予算制度の思想の一環としてではなく、事業の長期性に合わしましたところの予算制度を考えて、予算執行の弾力性というものを確保しろということを言っておりますけれども、そういったところとぶつかってまいります。ヨーロッパとかアメリカの各国におきまして、事業別予算制度の、そういった問題があるということが指摘されておりませんのは、アメリカだとかヨーロッパは、日本と違いまして、会計年度独立の原則というものがさほど強くございません。繰り越しなどというものは、日本と比べてかなり自由でございます。それから、債務負担行為と継続費というものについても、日本よりかなりフリーにできるようなたてまえになっております。アメリカだとかヨーロッパの国におきましては、そういった面ではあまり問題は出ておりませんけれども、先ほど申し上げましたような技術論といたしまして、国防、教育、治安といったようなものはなかなかむずかしいのではないかというような問題もございます。そういった点、いろいろと批判が寄せられておるわけでございます。もちろん、全部が全部反対というような意味ではございませんので、賛成しておる国ももちろんあります。たとえば、オランダという国は、非常にこれに対しまして積極的な関心を持って、検討を進めたいというようなことを言っております。  大体以上のような状況でございます。
  101. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 だんだん詳しく御説明になりましたが、そうしますと、あなたの御説明によりますと、日本の現在の予算制度は、すでに事業別予算制度を取り入れて、大体この制度を主として用いているというふうな御理解なんですか。そういろ御説明ですか。そうじゃないのですか。
  102. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 ただいま、事業別予算制度が何を要求するかということで、二つに分けて御説明申し上げました。第一の点は、現在の予算の科目の立て方を再編成しろ、こういう点を申し上げたのでございます。その点に関する限り、日本の予算の科目の立て方は、かなりな程度事業別予算の思想が入っている、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  103. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、事業別予算というものは、行政の業績を的確に把握するということに、相当重点が置かれておるように思うのですが、これはそのとおりに理解すればいいのですか。
  104. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 さように理解していただいてけっこうだとは思うのですが、予算の科目を直せというのも、結局は、その費用と成果の関係を明確に把握するための前提要件といたしまして、予算の科目を直す、こういう意味でございますので、中心はただいま先生指摘のございましたとおり、成果と費用の関係を把握ずる、こういうところにポイントがあると思います。
  105. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そうしますと、たとえば橋をかけるのに、予算では橋の経費として何がしか出されておる。その経費によって、セメント幾ら、鉄が幾ら、人件費幾らというものが使われて、そうして橋ができる。所管はかりに建設省なら建設省、それからそれぞれの調達なりあるいは人件費があらわれておる。そこで、その橋は一体どのような行政成果があったのだろうか。つまり、かりに千万円としましたら、千万円の経費を使ってつくった橋は、はたして千万円の価値があったのだろうかどうか、もしくは、これは八百万円でできるのではないか、しかし、いまの予算ならば、千万円という支出予算があって、千万円使えばそれでいいわけなんですね。これは使途によっては、やり方によっては八百万円でできる、ということはせんさくをしないということになるのですね。ところが、われわれが常識的に、行政の業績というものは、より安い値段でよりよい橋をつくるということが、ほんとうに望ましい業績だろうと思うのですが、より安くということは触れない、つまり一千万円使えばいいのだから、よりいいということは触れないということであっては、これはその予算の執行の結果が、業績があがっておるかどうかということは、いまの制度では検討する必要はないわけですね。そういうことになるのですね。
  106. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 ただいま先生の御指摘になりましたのは、事業別予算制度の最大の欠陥として指摘されておるところでありまして、数量的なコスト、数量的な成果をまず把握しろ、把握することによって、同じような事業の内容、Aの事業とBの事業を比較して、Bの事業が、たとえば予算積算を行ならといったようなときには、Aの事業と比較検討しながらそこで査定を行ならということが可能になる。ところが、具体的な例は違うわけでありますが、先生の御指摘になりましたような全く同じ内容の批判が寄せられておりまして、たとえば学校でありますが、Aの学校がかりに一千万円で百人の学生を三ヵ年に養成できるという結果が出ておる、Bの学校が実は一割引きの九百万円で百人の学生を養成できる。そこまでは比較できるけれども、その事業の内容、つまり金の計算を別にいたしまして、教育の内容が一体どっちがより適当であったかということについては、この事業別予算制度というものは答えないのではないか、こういうような批判が一つございますが、それに対しまして、主宰者側のほらの意見といたしましては、それは予算制度のらち外の問題と申しますか、より以上の問題で、それは別個に判断しなければならない制度の問題で、予算書にそういった問題を全部ぶち込んで、一覧のもとにすぐわかるようにするということは不可能である、というようなことを言っておりました。
  107. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 これは私の理解が乏しいからかもしれませんが、これはむしろ逆じゃないのでしょうか。事業別予算の望むところは、一定の予算によってほんとうの業績があがったかどうかということを、予算執行後に計量し得るという制度ではないのでしょうか。単に数量的ではなしに、実質的に成果があがったかどうかということを知ろうというのがほんとうの合理性ではないかと思うのですが、むしろねらいはそこにあるのではないのでしょうか。たとえば、同じ官庁の営造物にいたしましても、一億円で建てたが、同時にまた隣では民間が五千万円で建てておる。かりに同じものだといたしますと、その一億円を使った予算執行は、一応は比較対照して、どうしても検討されねばならないのじゃないだろうか、あるいはそこにほんとうの業績がないのではないかという批判の余地が生ずるのではないか。私の理解が乏しいためかもしれませんが、事業別予算の所期するところはむしろ逆であって、真実ある金の効果がどのようにあらわれたかということをつかむことが、ほんとうの目的になるべきではないだろうか、こう思うのですが、それは逆ですか。つまり私が間違って理解しておるのでしょうか。
  108. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 予算の立て方と申しますか、予算制度の究極の目的ということが、それが数量的に把握できるかできないかを問わず、そういったところにポイントがあるといったことは当然のことではないかと存じますが、この事業別予算制度というのは、そこまで全部この制度でやる、またできる、ということではございませんで、そういう表現を使っていいかどうかわかりませんが、せめて企業計算的に処理し得る政府活動の分野についてだけでも、まず第一着手として、費用と成果との関連を把握する、明らかにする、といったところに、問題の第一着手としてのポイントがあるのではないか、かように考えておる次第でございます。
  109. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 企業的に予算を使うという場合には、企業の経営者なんかは、おそらく一定の予算を総会できめて、そして執行の段階で、どう安くよい成果をあげようかということに血道を上げると思いますが、しかしそれは、金を幾ら使うかということが重きではなくして、よりよい生産をあげて、よりよい企業成果をあげようという、そこに重点があるわけですから、企業的な思想で、合理的に予算を作成し、予算を執行するということであるならば、むしろ私は、実体の成果があがるということがほんとうのねらいでなければなるまいじゃないかと、こう思います。そうならば、同じ営造物にしましても、やはりより耐久力のある、より安い、より良質のものをつくるということがほんとうのねらいで、それが企業家であるならば、私はそうするのではないであろうか、そこに企業意識が乏しいというところに、ほんとうの成果というものを考えることが乏しいことになるのじゃないだろうか、こういうふうに思いますので、企業的に予算を組み立てるということは、同時に、経済的に、合理的に、よりよい価値を生み出そうとする予算の編成の趣旨ではないか、こういうふうに思うのですが、そうではないでございましょうか。
  110. 赤羽桂

    ○赤羽説明員 先ほどから申し上げておりますのも、実は逆のことを申し上げているつもりはないわけでございますが、いま問題にされておりますところの事業別予算、これを技術的にどういうぐあいに実現をしていくかということの問題をつかまえました場合には、数量的に把握できないような分野について、事業別予算制度が実際できれば、すべてそれが明らかになるようになるのだ、かような意味にまで、この事業別予算制度は、技術的に含み得ないという点を申し上げたわけでございまして、予算ないし決算の終局の目的というのは、数量的に把握できないものならできないままでもいいから、その成果というものを十分に説明し得るような段階で出す、かような意味におきましておっしゃっておると理解しておりますものですから、その点におきましては、予算制度の終局の目標と申しますか、理想と申しますか、そういった点につきましては、何ら矛盾をしていない、かように考えております。
  111. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 私は、事業別予算なるものがまだ十分に検討されないということでもあるし、また国連の研究においても、いろいろな意見が出ておるということでありまするから、はたしてどれをとって最も範としてこれを論じたらいいのかということに惑うわけでありますけれども、しかしいずれにいたしましても、この制度を用いておるアメリカにおいても、いまのジョンソンにしても、死んだケネディにいたしましても、予算の執行につきましてはかなり厳格な態度で、より高い行政の成果を期待することを、しばしば部下に言ったりしておることが伝わっております。ですから究極するところは、行政の成果というものを、より安い経費で、よりよいものを生み出していこうということへのねらいで努力して、その制度が現に行なわれているというふうにわれわれは理解すべきではないであろうか。だから、日本でもすでにそれはある程度公共事業においては行なっておるのだ、ある形はそのようにできておるのだ、システムはそうなっておるのだとはいるものの、究極のねらいとするところは、より安い経費で、よりよいものをつくり出そうということであるとするならば、最大の努力を傾注いたしまして、長所は取り入れるということにやぶさかであってはいけないと思うのです。企業、企業とおっしゃるけれども、いまの企業家ほど予算会計に敏感で、そしてみな精通しておるものはございません。お互いに、われわれも議員としては公務員でありまするが、親方日の丸ですから、破産することもありません。どんなに政策が失敗しましても、破産、倒産はございません。だから金は使いっぱなしになって、決算委員会でいろいろと論議いたしましても、論議のしっぱなしになるわけですが、会社はそうはいきません。企業体はそうはいきません。へたすれば倒産ですから、倒産のみならず、責任者は牢獄にぶち込まれることさえあるのですから、言うならば、ほんとうに身を張って、会計経理には努力しております。その企業精神というものは、経済的な合理的な、そういう観点に立ちまして、できるだけ日本の予算制度及び予算執行に取っ組んでいくというかまえがどうしても必要ではないだろうか。こういう意味において、財政審議会ですかが、調査になるような段階とか聞きますから、そういう意味において、積極的に取り組んでいただきたい、こう私は思うのです。どの程度に、何に取り入れるかということは、これは問題ありましょう。いまおっしゃったような、文教ですか、教育とか、あるいは治安、国防などについて、これは、なずみにくいという意見が出ておるようであります。しかし一面におきまして、文教行政において、この制度を採用して決して支障ないという意見も出ておりますし、現に、文部省はこれに賛成しておるのじゃなかったですか。文部省は賛成ですね。事業別予算の趣旨に根本的に賛成、こういうことを文部省は回答しておるのです。だから、文部大臣は教育行政の首長として、事業別予算の導入に賛意を表しておるようなことであります。各省、各庁それぞれあるでしょう。ことに事業庁として、たとえば運輸省、通産省、農林省、郵政省等々、事業別予算を大胆に取り入れるというかまえをして、事業別予算の長所、あるいは日本に取り入れることについての利害、長短などは十分に検討いたしまして、そしてより少ない経費でよりよい成果をあげていくということはあたりまえのことです。それをしなかったら、政府を信頼しなくなります。国会の行政監督、国会の財政統制が弱まるというような意見があるようでありますが、とんでもないことです。国会自身が、このような一種の行政の成果を目標にいたしました予算の実行に取り組むことにやぶさかであってはいけないことはもちろんですが、これが用いられることになって、統制が弱まるというようなことはあり得ない、こう私は思っております。支出官庁の責任が不明確になるだろうという意見が出ている、というようなことがあると思いますけれども、これは十分検討なさったほうがいいだろうと思います。アメリカのフーバー委員会で、例の海軍病院の事業別予算としてのシステムの翻訳されたものが出たりしておりますが、ああいったようなものを見ましても、いまのような予算の編成のしかたから見ると、少し混雑したような感じがいたしますけれども、これはこれなりに、習熟していけば、やはり身についていくのではないだろうか。いまでしたら、あなたはそれが専門家だから、みなごらんになっていますけれども、この膨大な予算書ですよ。国会議員で、一体何人読んでいるとお思いになりますか。次官、ほんとうに失礼ですけれども、国会議員はこんな大きな予算書は読みますまい。読むもので、この薄っペらい、四十一年度の予算の説明ですよ。こんなものですよ。こんなものをもって、これで十分に尽くしたとはとんでもないことですよ。たとえば、公共事業といっておりましても、これはあなたのほうのだれかが、公共事業といって編さんをしているだけの話であります。青少年対策の予算として出してありますけれども、全部出ていやしない。全部出ておりませんし、総理府が出した青少年対策の総計内容とは相当違っております。一部しか出ておらぬ。つまりこれは適当に編さんしてあるのです。そして説明がついてあるということなんです。それなら、膨大なこの予算書をほんとうに読みこなしておる議員がおるかといえば、おりませんね。予算委員会の総員のうち何人あるだろう。あなた方専門家だけですよ。国会議員の読まぬような予算書を出して、一体何になるのか。国民に知らして、国民の理解を助けるためにこれは出さなくちゃいけない。ところが、国会議員が読まぬようなものはだめです。だから、その意味におきましても、やはり行政目的が何かということを国民に知らすといろためには、こういうような便宜的なものじゃなしに、ほんとうに予算書自体で国民がわかるように、国民がみなわからなければ、それは議員がわかるように、議員がとりつくことができるようにしてもらいたい。なるほど、あそこの出版センターに行けば「国の財政」ですか、なんかは売っておりますから、そんなものでわかるじゃないかということをいえばこれは説明かもしれませんけれども、そいつはいけません。やはり財政法上の、予算としての、法律的に効果のあるものによって、予算の内容が明らかになるということでないといけませんし、予算の内容が、運営の経費が何ぼであるとか、何に幾らということじゃなしに、何の目的に向かって、どれだけの経費を組んでおるのだということは、企業体ならそうするのです。これはあたりまえです。複式簿記を用いていないからだとよくいわれますけれども、原則として、大福帳からいまは簿記の制度へすっかり脱皮するときに来ているのじゃないか。そういう意味において、私は、この予算制度は、事業別予算制度というものに、大蔵省が積極的に意欲的に取り組んでいくということにせられることは、よほど大きな成果が、国民の前に示されてくることになると思うのです。そういういうに思いますので、これは相当な決意で臨んでもらいたいのです。この点につきまして、佐藤総理も、福田大蔵大臣も、すぐにどういうふうに実施するかということは別といたしまして、大体において賛成しておられることは明らかであると、私は思っております。だから、どういうふうに進めるかについて、もう一度あなたから、大蔵省の態度をひとつ明確にしておいてもらいたい。
  112. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 事業別予算制度を導入する問題につきましては、先ほど法規課長からもいろいろ詳しい説明がございましたが、吉田委員が御指摘をされんとする精神、お考えの点は、全く私も同感でございまして、えてしてこの単年度会計主義のおちいるところは、年度末に金が余って、出張が非常にふえる、こういったことは、およそ企業家的精神をもって財政運営に当たるということから考えれば、たいへん不適当なことであります。これは、一つは、毎年予算が組まれる場合に、その前年度の実績の何%、こういう前年度実績主義というものを前提として、予算を組んでいる。この考え方は、これは一ぺん何とかメスを入れて、くふうすべきであると、私も常々その点を考えておるわけでございます。予算執行の弾力的な運営をやって、非常に倹約をして、そしてこの次の年度は、また相当まとまった積極的な予算の裏づけを大蔵省は考える。倹約したほうが前年度の実績で、次にたいへん必要な金が十分予算獲得をできないということになれば、ことしもらった予算はもう全部使ってしまえ、こういうことになりますから、私は、この点は——最近建設省関係の予算は、この継続費という形において、大蔵省はその考え方を積極的に生かして、相当くふうをいたしております。しかし、まだまだそういう問題について改善をせなければならぬ点が第一点と、もう一つ、予算の執行を早期にやる。しかも、やりかけたら早く完成する。すなわち、すべて金には金利がつくわけでございます。金には金利がついているというこの精神が、予算執行に当たっても十分反映されなければならぬというふうに思うわけでございまして、そういう点もあれこれ考え、せっかくの御指摘でございますので、大蔵大臣にも報告をいたしまして、よきをとり、予算の効率化に一そうのくふうをいたしたい、このように考えておる次第であります。
  113. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 時間の関係もありますから、要約いたしまして、早々に切り上げることにします。臨調の答申に対しまして、補助金あるいは予算単価などについては、逐次その答申の趣旨に沿うたように改まってきておる、というような報告書が実は出ておりますが、これはよほど重大な問題でございまするので、補助金につきましては、本会議においても伺ったことでありまするが、ひとつこの機会に、この委員会へ、次の点を資料としてまとめて出していただきたい、こう思います。補助金の合理化につきましては、三十八年一月二十二日付の補助金合理化審議会の答申の趣旨に従って、相当補助金は合理化もしくは運営の適正化をはかるように、予算の節減もはかったというようなこと、こういうことがうたわれております。そういういうにうたわれておりまするので、ひとつ、その後の補助金の合理化の経緯を日別に明らかにして出してもらいたい。それから、予算単価につきまして、これは特に地方財政との間には非常に深刻な問題が連年ございまして、だんだんと超過負担をめぐりまして議論が展開され、当委員会でも、私も指摘したことがあったのですが、重点的に予算単価が合理化をはかられてきたという趣旨が述べられておりまするので、この点もひとつ一覧表でよろしいから、ぜひ資料として出しておいていただきたいのであります。そこで、事業別予算につきまして、締めくくり的に伺っておきたいのでありまするが、要するに、業績を尊重するという趣旨におきまして、たとえば民間公共事業費はもちろんのことでありまするが、本年度はとりわけ公共事業を中心にいたしまして、公債発行の消費などが相当大きく出ております。この財政需要の実態からかんがみましても、公共事業につきまして、業績がどうあがるべきかということは、非常に重大な課題であろう、こう思われます。したがいまして、これは、その業績を決算の段階で十分に批判検討し得るようになっておればよろしゅうございますが、そうでないということになりますと、さきに私も若干触れておきましたように、公共事業のために相当ばく大な将来への国民の負担を残すことになるわけでありまするので、これは特に事業別の、つまり企業会計的な経済合理主義的な趣旨を取り入れた予算の執行が望ましいと思います。それからまた、その他のあらゆる公共サービス、福祉事業、たとえば郵政とか厚生省関係はもちろんでありまするが、運輸等も入るわけでありますが、こういった方面におきましても、業務活動の量というもの、業績とのつながりが相当大きいと思いますので、これにつきましても、事業別予算の趣旨、精神が十分に取り入れられていくように運営されていくことを望んでやまぬのでありますが、この点、いまの制度的に大蔵省はどうするわけにもいかないという面もあろうかと思いますけれども、すでに事業別予算を執行している面もありますから、それは大蔵省の財政執行の監督権の行使によりまして、検査院などとも連絡をしながら、所期の目的に向かって監督していくようにしてはどうか、こういうふうに思っております。これはどうでございましょうね。
  114. 藤井勝志

    ○藤井(勝)政府委員 御趣旨の点、きわめてごもっともでございまして、できるだけ御趣旨を生かすようにくふういたしたい、このように考えます。
  115. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 最後に、検査院の第一局長にちょっと伺っておきますが、あなたのほうで検査をせられるときに、一定の予算が執行せられる、その予算の成果が、実質的にどのように業績としてあがったかということは、さきに建築やら営造物、橋などを私は例にとったのでございますが、これなれば、一億円使わなくても、同じものを、もっとくふらするならば八千万円でできたであろうに、すなわちこれが国民が望ましい予算の効率的執行であろうと思うのですが、こういうところまで突っ込んで検査するということは、いまの段階でできないものであろうか。一億円の支出予算が組んであるのだから、一億円を使った、よろしい、九千万円しか使わなかった、そうするとセメントを幾らか使わなかったのじゃないだろうか、そうするとそこに問題がある、というのではなしに、むしろ九千万円使って一千万円残ったら、それは同じ結果を得たのであるから、ほうびをやってしかるべきではないか、褒賞ものでないか、言うならば、実体的に価値の判定をしていくというような検査まで、検査というものは行くべきがほんとうじゃないかと思うのですが、これはどういうものでございますか。
  116. 斉藤実

    斉藤会計検査院説明員 いま先生のおっしゃったような検査を、私たちは一応やっております。九千万円の予算がございましても、調べてみると、同じ橋なら橋、あるいは建物なら建物が、耐用年数からいいましても、性能からいいましても、同じものであるならば、もしこれが八千万円でできれば、八千万円でできたじゃないか、もう少し配慮をすればよかったのじゃないかというようなことを申し上げまして、相手方に対しては、一応これは妥当でなかったということで、批難をいたしたような例も多々ございます。ただ、褒賞の点になりますと……。
  117. 吉田賢一

    ○吉田(賢)委員 そこまではいいです。しかし、予算の積算の単価というものは、必ずしも一定していないでしょう。ですから、比較対照するのが、いまの予算制度だったら、私は必ずしもあるとは思わないのです。それは建設省は、鉄筋コンクリートのこういうものならば、予算単価幾ら道路なら道路の一平米幾らというのはあるかもしれません。しかし各省にまたがりまして、予算積算の単価というものは、必ずしもきちんと一定していないと思います。それならば、単価の面から見てなかなか比較は困難じゃないだろうか。それから、実施予算というものも、地域、時の事情、労力の需給関係、いろいろな経済社会の諸条件によって、また違うかもしれません。とするならば、比較は非常にむずかしいと思うのです。検査院がどんなに有能な人がそろっておっても、一つを見て、これは一億円のものとしてつくったが、八千万円でもできたであろうにといって、妥当にあらずといって意見を出すということは、そう簡単にいってないのじゃないだろうか。なぜならば、比較するものが十分ないのだから、そうして基準になる単価がきちんと一定していないのだから、全部されていないのだから。だから内々は、水増し予算の要求があって、概算要求があって、それはいかぬといってびしびし切られて、ちょっとでも単価をふくらましておくならば、予算をよけいとれるというようなことまでも、実際は、ないというのは保しがたいのが現状でありまして、これが一般的でありますから、なかなか比較対照するものがないのだから、私はそう簡単にいっていないのがほんとうじゃないだろうかというふうに思いますが、これは私の思い過ぎで、そうであらず、神さまのようにちゃんとやっていける、これは一億円を八千万円でできたはずだ、少し高過ぎる、それはいかぬ、というふうに意見も申し述べるというふうに、ほんとうはいっておりましょうか。
  118. 斉藤実

    斉藤会計検査院説明員 ただいまのお話でございますが、個人のことを申し上げてたいへん恐縮でございますが、私、鉄道の検査の課長をしておりましたときに、たとえば鉄道で、ある土工の工事をやるという場合に、立米当たりどれだけかかるかということを調べます。それから建設省でそういったようなものをやる場合にどれだけかかるか、あるいはまた道路公団あたりでやる場合にどれだけかかっておるかというようなこと、また鉄道の内部では、ほかのある場所で、たとえば岐阜の工事局でやる場合にはどれだけでやっているか、あるいは東京工事局でやる場合にはどれだけでやっているか、その土地の条件はどうであるか、土の質は岩であるか、玉石まじりの砂利であるか、というようなことを全部比較検討いたしまして、そうして、立米当たりの工事費は高過ぎるではないかということを批難いたしたような例は多々ございます。ただ、あらゆるものについてそういうことができるかということになりますと、それは比較できない場合もございまするけれども、比較のできる場合も相当ございます。たとえば人肩でもって土量の運搬なんかを計算している例がある。ところが現実の事態あるいはほかの省では、機械は機械土工がいま一般的であるから、機械土工で積算しておる。しかるにあるところで人肩でもって運搬するような積算をしているような場合には、一般的でないものについて、これは不当であるというようなことで批難した例もございます。そういうことでございます。
  119. 吉川久衛

    吉川委員長 本日は、これにて散会いたします。    午後一時二十九分散会