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1966-05-11 第51回国会 衆議院 外務委員会 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年五月十一日(水曜日)    午前十時三十分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 三原 朝雄君    理事 毛利 松平君 理事 戸叶 里子君    理事 西村 関一君 理事 穗積 七郎君       愛知 揆一君    菊池 義郎君       小坂善太郎君    増田甲子七君       森下 國雄君    岡  良一君       松平 忠久君    竹本 孫一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君  委員外出席者         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         大蔵事務官         (大臣官房財務         調査官)    堀込 聡夫君     ――――――――――――― 五月十一日  委員濱野清吾辞任につき、その補欠として増  田甲子七君が議長指名委員に選任された。 同日  委員増田甲子七君辞任につき、その補欠として  濱野清吾君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十日  訪朝地方議員連盟代表団正式旅券交付実現に  関する陳情書(  第三五二号)  日韓条約無効等に関する陳情書  (第三五三号)  沖縄の祖国復帰促進に関する陳情書  (第三五四号)  在日朝鮮公民祖国との往来実現に関する陳情  書外二件  (第四三一号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  アジア開発銀行を設立する協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)      ――――◇―――――
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  アジア開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  3. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一昨日からきのうの未明にかけまして中国核実験が行なわれたことに対して、きのう外務大臣が、アジア外交政策には変わりがないというふうに参議院の外務委員会で答えていらっしゃいますし、またこの問題につきましてはあらためて委員会でいろいろと御質問をしたいと思いますので、きょうはごく簡単に一、二点だけ触れておきたいと思います。  と申しますのは、アジアの低開発地域開発のためにアジア開銀を設立するのでありますから、アジア情勢についての分析ということが必要だと思います。そこで今日のアジア情勢はきびしいものであるというふうな認識の上にお立ちになっていらっしゃるか、それともそうではないという形の上に立ってのアジア開銀の設立という立場をとっておられるか、この点をまずお伺いしたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジア情勢は決して平穏なものではない、こう考えております。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アジア情勢は平穏なものではない。それでは、アジアの平和を確立するためには日本政府としてまず何をする必要があるというふうにお考えになっていられますか。
  6. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本はあくまで平和建設方向、すなわち経済文化、そういう力を背景にして、そしてアジアの平和に貢献するように努力する、こういう方向日本アジアに対してとるべき外交方針である、外交基調である、こう考えております。
  7. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣がおっしゃったように、日本経済文化背景にしてアジアの平和の確立が必要である、こういうふうに経済の面でも必要でありますけれども、もっと当面した、そしてまた非常に具体的な重大な問題として解決すべき問題は、ベトナム平和解決への努力とか、あるいは中国国連加盟とか、中国国際会議への参加の要請とか、中国を含めた軍縮会議とか、こういうふうな問題と取り組んでいかなければ、アジアの平和の確立はあり得ないのではないかと思いますが、この点についてどうお考えになりますか。
  8. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 私は外交政策基調をそこに置くということを申したのでありまして、それ以外のことは一切関心を持たないというわけじゃない。でありますから、いま御指摘のような問題については、日本はできる限り分相応努力をしなければならぬ、こう考えております。
  9. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣は、日本は、私が申し上げたような問題についても分相応努力をする、こういう御答弁でございましたけれども分相応努力というのがどういうものであるか、何か放置しているような形にしか私どもにはとれませんけれども分相応努力とは、たとえば具体的にどういうことをされようとしているか、伺いたいと思います。
  10. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは具体的にその事柄に当面してはじめて具体的になるのでありまして、あまり思い上がった柄にもないことをやって失敗を繰り返すということは、かえって日本の威信を傷つけるのみならず、将来のまじめな努力というものに支障を生ずるようなことがありますから、やはり慎重に——分相応というのは慎重にというふうに御解釈願ってもけっこうだと思います。
  11. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それではお伺いいたしますが、中国核実験をしたことは私どもも遺憾と思います。しかしそれをとやかく言うのには、まず中国国際機関のらち外に置いておいていろいろ言っても、これはなかなか問題が解決できないと思います。たとえば中国国連加盟の問題に対して努力をするとか、あるいはまた中国全面軍縮会議の中に入れるような努力をする、こういうことが私はまずもって必要ではないかと思いますけれども、この点に対して外務大臣はどうお考えになりますか。こういう問題は、いま日本が直面しているところの、しかも同じアジアの一国として日本アジアの平和を望むならば、分相応のこととしてしなければならない問題だと考えますけれども、どうお考えになりますか。
  12. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題についてはたびたび論議されたのでありまして、この中共加盟の問題は、国際世論というものによってきまるべきものであって、日本一国がどうしようというのにはあまりに大きな問題である。しかし、日本としては、この問題について特殊の考え方を持っておるのであります。すなわち、台湾の政権台北政権というものとの関連をどうするかということでございまして、これはただに日本にとってのみならず、アジアあるいは世界全体にとっての非常に重要な問題であって、結局、国際世論というものを背景にして逐次この問題の解決に進むべきものである、こう考えております。
  13. 戸叶里子

    ○戸叶委員 国際世論背景にしてこの問題を解決するということはたびたび私どもも伺っておりますけれども、その国際世論の一部を日本もなすのだと思います。国際世論というものを盛り上げていく上において、日本のようなアジアにある国は、隣の中国国連加盟というようなことに対しては特に積極的に努力をして国際世論を盛り上げるようにしていくのが日本役割りではないか、こういうふうに考えるわけでございますけれども、この問題についてはどういうふうなお考えを持っていらっしゃいますか。
  14. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 現在の情勢においてはなかなかこれは慎重に考えなければならぬ。極東の勢力均衡を著しく破るということになるわけでありまして、今日においては軽々にこの問題を置きかえるというようなことは、日本としては賛成できない。しかし、これは国際情勢推移とともに、やはりこういう前提がだんだん変遷を遂げていく問題でございますから、それに従って日本としても考えなければならぬ。こういうわけでございまして、先ほどから、国際世論背景にしてきまっていくべき問題である、こう申し上げたのは、諸般の消息を包含しての意味であるというふうに御了解を願いたいと思います。
  15. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それでは来たるべき国連総会での日本中国に対する立場というものは、昨年とほとんど変わらない立場をとるのだ、国際情勢推移というものはこの秋にはあまり見られない、こういうふうなお考えのもとに国連総会にお臨みになるのでしょうか。この点をもう一度伺っておきたいと思います。
  16. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 こういう問題は情勢が刻々移りつつあると思うのであります。いまどうだ、こう言われたならば、従来の方針を変えようとする特別の根拠はない、こうお答えするよりしかたがない。
  17. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ということは、秋の国連総会までに変化があり得ることも考えられる、こういうふうに理解してもよろしゅうございますか。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 変化があるかもしらぬし、ないかもしらぬ。とにかく情勢はたえず動いておるということを私どもは念頭に置かなければならぬ、こう考えます。
  19. 戸叶里子

    ○戸叶委員 この問題でやっておりますと先へ進みませんから先に進みますが、たとえば今度の中国核実験の問題につきましても、政府はあげて放射能の問題をいろいろ言っておられます。これは日本国民として当然だとは思いますけれども、ただ私がここで考えられますことは、この国会におきましても部分的核停条約というものが批准されたわけです。そのときに私どもがその条約批准するにあたって強く要望したことは、この条約は決して完全なものではない、非常に不満だらけなんだけれども、一応前進という意味批准をするのだ、その中で特に地下実験というものが許されておって、アメリカなりソ連なり地下実験をどんどんしているという状態であっては、これは許すべからざることである、こういうふうな立場に立ってのあの条約批准をいたしました。そこで、その後においての地下実験というものがやはり行なわれているようでは、中国に対してとやかく言っても私はどうかと思うのですが、この地下実験というものを禁止するような、そういうような動きなり、そういうような要望なり、強い要請なり、そういうものを一体日本政府はしていられるかどうか、またそういうふうな動きというものは一体部分的核停条約に入った国々の中に見られるかどうか、この点をお伺いしたいと思います。
  20. 星文七

    星政府委員 日本といたしましては、全面的核兵器実験禁止、これを目標にして国連総会その他で日本の主張を述べているわけであります。ジュネーブの十八カ国軍縮委員会ではもちろんこの問題も昨年の二十回総会の決議を受けていろいろ討議しておりますが、御承知のように五月の十日から六月の中旬まで一応十八カ国委員会は休会に入ることになっております。いままでに全面的核停条約についての新しい動きというものはないと思いますけれども、片やスウェーデンなどの提唱しておりますいわゆる核探知クラブというものが動き出している。これは御承知のとおり日本技術者を参加せしめて、五月の二十三日から二十七日まで行なわれる、そういう状況になっております。
  21. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま外務大臣もお聞きになったようでございますが、やはり何と言っても部分的核停条約というようなものがもっと完全な地下実験もさせないというところまでいかなければ、中国としてもやむを得ざる措置としてとったのではないかと思いますけれども、この部分的核停条約というものを完全なものにするようなあらゆる努力を今後外務大臣はおやりになるようにしてほしいと思いますが、それに対するお考えをおっしゃっていただきたい。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 一応スウェーデンにおいて国際会議を催しまして、日本からもそういう方面技術者がこれに出席しております。その会議の結果につきましてまだ詳細承知しておりませんが、日本といたしましては、地震国という意味において、地下実験探知に関する技術、科学の方面相当に進んでおる。なお、その技術を応用することによって地下実験をその現地におらぬでも十分に探知できるという結論に立って、この地下実験の停止、こういう問題をだんだん進めてまいるという熱意を持ってこの問題に当面しておるという状況であります。
  23. 戸叶里子

    ○戸叶委員 探知したって何にもならないと思うのです。探知することは一歩前進かもしれませんが、探知よりもそれをやめさせるという方向にぜひやっていただきたい。努力していただきたい。日本はそれを強く言い得る立場にあると思いますのでその点をよく考えていただきたい。  そこで、私は水爆実験にちなんで思い出すことは、イギリスのチャーチル首相が、かつて、この水爆というものをやめることはつくることより困難な仕事だ、どうして水爆を使わぬ世界にするかが政治家のつとめだということを言ったことがございますけれども、これはまさにそのとおり非常にうがったことばだと思います。外務大臣、そういうことばの上に立って今後の全面禁止方向に向かってやっていただきたいということが一つと、もう一つは、さっきちょっとはっきり御返事をいただいておりませんでしたが、やはり中国というものもこの国際機関の中に入れて完全軍縮のほうに持っていかなければ、完全軍縮の効を奏することができない、こういうふうに考える次第です。この点についてどうお考えになるか、この二点を問いただして次の質問に入りたいと思います。
  24. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 技術的には無限に核開発というものが可能である、こう思うのでありますが、これを国の政策として使用するかしないか、ということは、これは政治の問題である、そういうことからあのチャーチルことばが生まれたものであると思います。特別の深い思想がこもっているわけでも何でもないと私は考えます。  それから世界軍縮会議の問題でございますが、これは理想としてはあくまでその姿勢で各国ともこの問題に対処すべきである、こう考えております。
  25. 戸叶里子

    ○戸叶委員 やはりいま言われたように、政治家としてこういう問題と取っ組み、核実験をやめさせるようにしていかなければいけない、こういうふうな態度を堅持していっていただきたいということと、もう一つは、どこの国も理想としては国際機関の中に入っていかなければ軍縮の問題は解決しないのだということがはっきりいたしましたので、やはり中国としても早く国連に加盟し、そして機関外に置くというようなことのないように日本政府としても努力をしていただきたい、これを要望したいと思います。  次に、アジア開発銀行を設立することによって、日本はどの地域開発を最も必要と考えておられるのでしょうか。
  26. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 銀行ができてから、銀行が中心になって考えることでございます。日本も、出資国一員として、その問題が論議される場合には、相当発言権があるはずであります。そういう前提のもとにいま私が申し上げることを御了解願いたいと思いますが、アジア全体といたしましては先進国経済援助が一番程度が低いのであります。なかんずくアジアのうちでも東南アジア地帯が、アジア全体の平均よりもまだ低位にある、こういうことでございます。そして現状は非常に政治的にも動揺しておる、しかもそれが日本に非常に近い地域である、こういうことでございまして、日本としては、低開発国に対する考え方としては、まず最も近接した近い関係にある東南アジアというものの開発関心を持たざるを得ない、こういう立場にあることはこれは今後といえども変わらないと私は考えます。したがって、その問題だけを排他的にやるという、それはそういう考え方は持つべきではありませんけれども日本としては自然、東南アジア開発問題に関心を持ち、また、それに対する発言の機会が今後とも多くなるだろうと私は予想しております。
  27. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アジア開発銀行性格上、これは当然軍事的な面への融資ということはあり得ないと考えますけれども、もしもベトナムなどでこの銀行を利用しようとした場合に、道路を直すとか、そういうふうな点でアジア開発銀行が利用されれば、直接は軍事的な面に利用されたのではなくても、間接的には軍事的な面に利用されるという結果になりはしないかということを心配いたしますが、こういう点について、どういうふうにお考えになりますか。たとえば、いまのような戦乱の中にあるベトナム等においては、アジア開銀からは融資をしない、こういうふうにお考えになるのかどうか、この点を承りたいと思います。
  28. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジア開銀協定条項の中にも、政治的な意図を持って資金の使用が考えられてはいかぬという趣旨のことが書いてあります。しかし、現実にベトナムのようなところで、道路であるとか橋梁であるとかを改善する、そういうような問題につきましては、これは具体的に判断しなければならぬと思うのであります。ベトナムでは戦争が行なわれておるけれども、この戦争によって容易に、また再び破壊されるという危険性のあるところは避くべきである。しかしながら、もう再び戦乱は起こりそうもない、そうしてそれの建設が大多数の平穏な国民のためにぜひとも必要であるというような場合には、これは必ずしもベトナム地域内だからといって避ける必要はないというふうに私は考えますけれども、しかし、こういったようなことは、具体的にこの問題を処理しなければならぬ、こう考えます。
  29. 戸叶里子

    ○戸叶委員 橋梁道路などが年じゅうこわされるようなところを考えなきゃならないけれども、一応おさまっていると思われるところ、再び混乱が起きないというようなところはやはり考えなきゃならないというお返事でございました。ベトナムは、今日戦乱の中にあるわけでございまして、ベトナム戦争自体が終わらなければ、こういうところはもうだいじょうぶなのだということを規定づける何ものもないと思います。したがって、南ベトナムなどへの援助ということは、結局軍事的な面に終局的には利用されるのじゃないか、こういうふうに私は考えます。具体的な面でぶつかったときに考慮を払うということでございますが、アジア開銀のどの条項でそういう考慮を払うということがあらわれているのでしょうか。その点を伺いたいと思います。
  30. 星文七

    星政府委員 先ほど大臣から言われましたように、銀行がいろいろなことを行なうにあたっては、「いずれの加盟国政治問題にも干渉してはならず、また、いずれかの決定を行なうにあたっては、関係加盟国政治的性格によって影響されてはならない。」ということが第三十六条にうたわれております。それから、そのほかの条文にも、いわゆる銀行が、サウンド・バンキングといいますか、健全なる経営ということをたてまえにしております。そういうことでございますので、いま御質問のような事態が起こってきましたときには、この二つの点から取り上げるべき問題である、考慮すべき問題であるというふうに考えております。
  31. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまの御答弁でございますけれども、ただ、この問題は、あとから述べますが、この銀行性質いかんによると思います。たとえば、米州開発銀行の場合には、域外からの融資を受けておらない。あるいはアフリカ開銀の場合にも域外からの融資を受けておらない。ところが、今度のアジア開銀特徴は、域外からもできるだけ融資を受けようというのが特徴のようでございますが、それによってアメリカからも相当融資を受けている。したがって、そういうふうなアメリカ発言権というものも相当強くなっている。そうなってまいりますと、どんなにいまおっしゃったような形でチェックしようとしても、特にベトナム問題などに首を突っ込んでおりますアメリカとしては、これを融資すべきであるというふうに強く主張すれば、そちらに引きずられてしまう可能性が非常に多いのじゃないか、こういう点を私はたいへん心配するものですから、念のために外務大臣にもう一度伺いたいと思います。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 そういう心配するような点に金を使うということは、実際から見ると、よほどアブノーマルな投資であると私は考えます。でありますから、そういう点は、たとえ当事国意図がどうあるにせよ、アジア開銀の健全な理事陣営によって独自の判断によって運営されるのでありますから、御心配のようなことは重々あるまいと思います。そういう政治的な金をアジア開銀から引っぱり出さなければならぬというような、そういう状態ではないと私は考えます。アジア開銀資金力というものは、そんなたいしたものじゃない。
  33. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま、外務大臣は、そういうふうなアブノーマルな考え方をしている者は、実際的な面に当たっている人にはないというふうにおっしゃいますけれども、いまこれから、私は、アブノーマルであるかアブノーマルでないかを、実際に証明していきたいと思います。  そこで、まず第一に伺いたいことは、一月二十八日の本会議においての椎名外務大臣外交演説でおっしゃったことは、「わが国も先進工業国一員として、あらゆる困難を克服して」「低開発国援助を飛躍的に拡充いたす所存であります。」と述べて、「本年をアジア地域に対する協力強化拡大の第一年としたい」、こういうふうに述べておられるわけです。外相が就任以来、ずっと各国会での演説を聞いておりますと、アジア諸国に対する経済協力を積極的に推進したい、こういうふうなことを言われ、しかも四十九国会、五十国会ではそれぞれ資金的、技術的援助をできる限り行ないますという趣旨のことを述べたにすぎないのでございます。ところが、今度の国会になって、急に飛躍的にアジアに対する援助を拡充したい、こういうふうな強化、拡充の第一歩を強くうたい出したわけでございますが、一体どういうふうなお気持ちで急にこういうふうな形になられたかということと、そうして、そういうふうなことをされようとする金額は一体どのくらいを考えていらっしゃるか、どういうふうな計画でなさろうとしているのか、この点をまず伺いたいと思います。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本の、アジア、特に東南アジアに対する関心は、従来からも大いにあったのであります。しかし、実際問題として、この方面経済協力がどの程度なされているかということを振り返ってみますというと、まだまことに微々たるものがある。賠償がもうすでに山を越えるという段階になりますと、むしろだんだん減ってくるというわけであります。ところが、一方、国際的に南北問題が非常にやかましい、日本先進国一員として、この南北問題に対して相当の責任を背負わされている。少なくとも国民総生産額の一%程度資金量経済協力という趣旨で使用さるべきである、こういうことが提案されて、日本もその国際会議においてこれに賛成しておる。現状は、三十九年は〇・四%台であります。目標の半分にも達しないという状況でありまして、これを数年の間にその資金量まで増加させる必要がある。のみならず、内容につきましても、最近また国際会議において提案されて、これを採択しております。それは、経済協力の少なくとも八〇%はグラントによるか、あるいはもしこれを貸すという場合にはその利率は年三%そして期限が二十五年以上でなければいかぬというようなことが提案されまして、これまた採択され、日本もこれに反対するという立場はとらなかった、これを了承して帰ってきておるわけであります。三、四年の間に、この資金の量及び質の両面においてこれを実行するということになると、これは容易じゃありません。そういうわけでありますから、これを従来よりも飛躍的にその方面に力を入れなければ、国際間の申し合わせの趣旨にも沿わないことになるわけでありますし、同時にまた日本の貿易その他の経済発展の面から申しましても、これは自衛上どうしてもそういうところまでやって、そして低開発国を引き上げて、しかる後にともども共存共栄の道を進むということでないと、日本対外経済の問題でもこういうような手を用いないと行き詰まっておる、こういうわけでありまして、いろいろの面からいたしまして、従来よりも飛躍的にその方面に力を入れなければならぬ、こういうことになっておるので、それをただ申したまでであって、アジア開銀というようなものを横目でにらんでそういうことを言っておるわけじゃない、御了解願いたいと思います。
  35. 戸叶里子

    ○戸叶委員 外務大臣のいまの御答弁、わからないでもないのですけれども、ただ私が非常に不思議に思いますのは、去年の七月三十日の外交演説では「わが国としては、国内に農業、中小企業等の問題をかかえ、また、社会開発のために多額の資本投下を必要としておりますので、援助強化拡大を一挙にはかることは困難であります」こう述べていられるのですけれども、わずか六カ月たちましたところが、今度は国会で非常に積極的にいまおっしゃったような低開発国援助策を打ち出したわけです。そこで、国内の様子が、中小企業にしてもあるいはまた国内の農業にしても、前に気づかっていたのがたいへんよくなったので、今度低開発国に対しての特別に飛躍的な援助をするのだとおっしゃるのならわかるのですけれども、国内においては依然として変わりがない、むしろ不況な状態にあるにもかかわらず、六カ月後には急に今日のような、いまおっしゃったような案をお出しになって飛躍的に援助をするのだというようなことをおっしゃるものですから、どうしてそんなに急にお変わりになったのかというふうに不思議な気持ちになったわけです。そこに心境の変化なり、国際情勢の上で、あるいは外交的な面で何かそこに変化があったのかということを不思議に思ったのでお伺いするわけです。
  36. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあ何にもものの両面があるのでありますが、表から言うのと裏から言うのと言い方が違ってくる場合もあります。それで、いまでもバイラテラルな外国との経済協力の問題等につきまして向こうからいろいろな提案があれば、それはごもっともです、希望はかなえてあげたいと思うけれども日本の国内にも非常に脆弱な面をかかえておるので御希望どおりにはいかない、こう言って、多少これは水をぶっかけるようなことを言わなくちゃならぬ場合もあります。われわれは日本経済をそれほど強いものだとは思っておりません。でありますけれども、とにかく国際水準と申しますか、国際会議において経済協力の問題が年々非常な重要性を認識されて、そして、強調されておる。そして、その申し合わせの線に沿うためには相当努力をしないとなかなかその線に到達しない。いま申し上げたとおりです、資金量にいたしましても資金の性質にいたしましても。でありますから、そういう面が非常に強調され、また、今日の国際情勢がだんだんそういうふうになってまいりますので、日本としてもそういう点をこの際強調していかなければならぬ、こういうわけであります。実際の情勢がそうひどく変わっているわけでもない、ただ情勢がそういうふうになりつつあるので、日本といたしましてもこれに順応していかなければならぬ、こういう考えからであります。
  37. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それほど日本の国内情勢は変わっておらないけれども、まあできるだけ低開発地域に対しては援助をしていくのだというふうな御答弁でございましたが、アジア開銀への出資もその一つだと思いますけれども、ほかにも何かお考えになっておられるかどうかをこの際明らかにしておいていただきたい。
  38. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 四十一年度の予算におきまして、経済協力の面において相当の予算措置が講ぜられておりまして、いままでのカーブよりもずっとカーブの角度が上向いておる、こういう状況でございますし、それからなお財政投融資の面におきましても非常な改善を見ておる。その結果、この予算の示すようにこれを実行するということになりますと、資金量の面におきましては四十一年度はおそらく国民総生産の〇・六五%くらいまでいくのじゃないか。〇・七%までいくかと思ったのでございますが、それは申し上げるとちょっと実際に沿わないという結果になるかもしれませんから、〇・六%台と申し上げておきますが、それくらいになるわけでございまして、したがって、三分半くらいの金利で二十年近い資金協力は、韓国、台湾くらいに限定されておったのが、今後他の東南アジアの国々に対しましてもだんだんこういう内容の資金協力ができるのではないか、こう考えております。
  39. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その援助の問題でございますが、それを一々あげていただいて内容を議論していきますとそこにも私は問題があると思いますけれども、それはあとの機会にいたしまして、次に移ります。  アジア開銀が一九六〇年春の十六回のエカフェの総会で打ち出されましてから、一九六一年に三人委員会ができて、その次に七人委員会がつくられて検討をされて、さらに、一九六四年の十月に十人委員会がバンコクで開かれて、アジア開銀の具体的構想がほぼまとまってきましたけれども、その後一向に進まないで、一九六五年の三月にニュージーランドのウエリントンで開かれたエカフェの会合でもきまらなかったわけです。その三月のエカフェの会合できまらなかったのが、今度は同じ一九六五年の四月七日には、ジョンソン大統領がボルチモアで東南アジア開発構想というのを打ち出して、それ以来このアジア開発銀行というのが急変してきて、つまりこのアジア開発銀行というものの機運が盛り上がってきたと思うのです。つまりアジア開発銀行が急激に発足しようという空気になったのは、アメリカが積極的に支持態度を表明してきてからでございます。それによってアジア開銀というものが促進されたということになれば、当然アメリカ発言権というものも多くなるのではないか、これは別にアブノーマルな考え方ではない、こういうように考えますけれども外務大臣のお考えはどうでございましょうか。
  40. 星文七

    星政府委員 事実を申し上げたいと思います。  アジア開銀はエカフェ——国連アジア極東経済委員会のイニシアチブに基づきまして、かつ、いまお話しのございましたように、域内諸国が長年にわたる努力の集積によって設立の運びとなった銀行でございまして、決して短期間の間にこの銀行の設立を考え、具体化したものではなく、いわんやジョンソン大統領の東南アジア援助横想とは全然関係がないわけでございまして、先ほど先生がお述べになりましたけれども、エカフェがこのアジア開銀の問題を公式に取り上げましたのは一九六三年の第一回のエカフェの地域経済協力閣僚会議においてでございます。  一方アメリカがエカフェの呼びかけに応じて銀行設立計画に参加を決定いたしましたのは、昨年の四月でございます。このことからもおわかりいただけるように、決してアメリカの圧力があってこういう銀行のあれが早まったということではないという事実が証明していると思います。
  41. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いまエカフェの総会で打ち出されたのは一九六三年とおっしゃいましたが、六〇年ですね。構想は六〇年の十六回のエカフェの会議で打ち出されたのじゃないですか。
  42. 星文七

    星政府委員 そのアジア経済協力というふうな問題はおそらく一九六〇年ぐらいに出たと思いますが、銀行というアイデアがそれにつきましてあらわれてきましたのは六三年のアジア経済閣僚会議ということが初めてでございます。
  43. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、一九六一年から三人委員会とかあるいは七人委員会というのがつくられたのは、何のための三人委員会ですか。アジア開発のためですか。アジア開銀ということを目的にしたのではないのですか。
  44. 星文七

    星政府委員 これはアジア開銀ということだけではなく、アジアのエカフェ地域経済協力、そういう大きな問題を取り上げたというのが一九六〇年であります。
  45. 戸叶里子

    ○戸叶委員 その中にアジア開銀の構想も入っていたわけでしょう。
  46. 星文七

    星政府委員 おっしゃるとおりでございます。
  47. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま何かそれが入っていなかったように聞こえたものですから、六三年に初めて打ち出されたように伺ったので、ちょっとふしぎに思ったのです。  そこで、いま御説明が国連局長からありましたけれども、ただ、私どもがたいへんにふしぎに思いますのは、御承知のように、一九六五年の三月にニュージーランドのウエリントンでエカフェの会合が開かれたわけです。そこではアジア開銀はきまっておらなかったわけですね。ところが、それから間もなく四月七日のボルチモアでのジョンソン大統領の演説があって、それからすぐ次にはアジア開銀の構想がぱっと出てきたわけです。同じ年の一、二カ月前にはきまらなかった、エカフェの総会ではきまらなくて、それから一、二カ月、二、三カ月もたった六月ごろにきまったということは、どうも私どもはふしぎに思うわけです。この点のいきさつを説明していただきたいと思う。
  48. 星文七

    星政府委員 先ほども申しましたように、一九六三年の十二月に第一回のアジア地域経済協力閣僚会議というものができまして、アジア開銀の設立の方法を検討するための政府代表者または専門家の特別会議を早急に開くようエカフェ事務局長に要請する旨の決議案を採択したわけであります。そこで、一九六四年十月に専門家グループというものができまして、アジア開銀の具体的構想に関しての報告をエカフェ事務局長に提出したわけでございます。そうして一九六五年の三月にウェリントンで第二十一回エカフェ総会がございまして、この専門家というものが今度は政府任命の専門家委員会というものを設置するようにきめました。それから一九六五年の六月から八月までに、この専門委員会会議というものが開かれまして、一九六五年の十月から十一月までの間にかけて、政府代表者準備委員会というものが開かれまして、草案をもとにいたしまして政府レベルで銀行設立の協定案が作成されたわけでございます。そうして一九六五年の十一月から十二月にかけまして第二回のアジア経済協力閣僚会議というものが開かれまして、銀行の設立協定の採択及び署名というものが行なわれたような状況でございます。
  49. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それはわかっているんです。十月から十一月までの間に署名ということになったわけでしょう。それはわかっているのですけれども、同じ年の六五年三月に同じエカフェの会合でアジア開銀が設立されるということが問題にならなかったのに、アメリカのジョンソン大統領がボルチモアでアジア開発というような構想を述べて、十億ドルをこのために使うということがきまってから、大口出資者ができてきたというようなところから、だんだんとこれが発展していったのではないか、こういうふうに考えるわけですけれども、これは間違っておりますか。
  50. 星文七

    星政府委員 すでに一九六四年の十月にバンコクにおいてアジア開銀の問題を検討いたしまして、銀行設立協定草案というものができております。それで六五年に入りまして三月に開催されましたウエリントンにおけるエカフェ総会において、このアジア開発銀行の設立を促進するという決議が出たというような状況でございます。
  51. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そのときには何とか早くやらなければならないという議論は出たけれども、今年じゅうにやるとか、近々一、二カ月の間にやるというような話は出なかったと思うのです。ところが、やはり四月のジョンソン構想というものが発表されてから急激にこれが盛り上がってきた、こういうように考えるのは間違いですか。それまではアメリカが出資するかしないかわからない、しかしボルチモアでの演説アジア開発のために十億ドルを出すのだ、それの構想が出てから、今度はアメリカも二億ドル出すのだということになって、そして大口の出資者が域外からきまった、そしてこの開発銀行ができるということの促進役になったというふうに考えては間違いですか。
  52. 星文七

    星政府委員 私の承知しております限りでは、アメリカが出資をきめたからこの問題が急に促進されたというわけではなくて、むしろアメリカは、初めのうらは、わりあいにこの銀行に入ることについてちゅうちょしておったというふうなことだと思います。ところが、エカフェのほうでいよいよ事が進んできますので、アメリカもこれに参加しようというふうになったわけでございまして、アメリカのオファーというものがきまったからこの問題が急に片づいていった、そのきっかけをつくったのはアメリカであると言うのは、少し事実と違っておるのではないかというように私は考えます。
  53. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ちょっと言い方が違うかもしれませんけれども、つまりアメリカはそれまでアジア開銀というものにちゅうちょしていた、これはおっしゃるとおりだと思うのです。ところが、今日のアジア情勢というものを見たときに、何か経済的な援助をしていかなければ困るのだ、こういうようなところから、バルチモアでジョンソンが構想を出したわけですね。その中に、東南アジア開発のためには十億ドルを出すのだ、こういうふうな構想が出てきたのが相当アジア開銀を促進することのきっかけになったというふうにとれないですか。いままでは非常にちゅうちょしていた。しかし、ここでアジアの危機というものをアメリカアメリカなりに感じているのですよ、ベトナムの問題があるから。われわれとは違った形で、何とか解決しよう、経済援助だけでも解決しようという形をとっている。それで出てきたわけですね。たとえばアメリカが米州開銀をつくるときにキューバのことが発端になって、そして、キューバのようなことを起こさないために何とかしなければいけないというので、米州開銀ができたわけですが、それと同じような気持ちで、アジア経済開発をしなければならないのだ、そのために投資しなければいけないのだ、こういうふうなことで十億ドルの投資ということが出てきて、そしてアジア開銀のほうにも十分な出資を、いままで非常に消極的であったのにやってきた、こういうふうに考えては間違いですか。
  54. 星文七

    星政府委員 私が先ほどから申し上げておりますように、この銀行のイニシアチブというものはあくまでもエカフェの加盟国が握っておったわけです。そして、アメリカはある一定の時期になってそれに入ってくることをきめた。アメリカの入ってくるということによってこの問題が急にそこで促進されたというわけじゃないと思います。やはり大きなアジア諸国動きというものに対してアメリカ域外国として出資しよう、そういうことになったというふうに私は承知しております。
  55. 戸叶里子

    ○戸叶委員 このことで議論しても尽きないと思います。ただ、いままでアジア開銀というものが促進されておらなかったのに、急激に促進されたということを私どもは非常にふしぎに思うということは、いまもって変わりません。しかし、ここで議論したくはないのです。  そこで、それじゃアメリカ発言力はそれほどないと思うということですけれども、このアジア開銀というのは、基本投票のほかに出資額に応じての票数があると思うのです。そうすると、日本アメリカというのは二億ドルずつ出しておりますから、発言権というものは票数からいって相当多いのじゃないか。この点はお認めになりますか。
  56. 星文七

    星政府委員 その点はアメリカ日本も二億ドルでございまして、一番高い出資額を出しておりますので、投票数も自然大きくなるということはおっしゃるとおりだと思います。
  57. 戸叶里子

    ○戸叶委員 ついでですからちょっと伺っておきますけれども、一体何票ぐらいあるのですか。票数はまだきまりませんか。
  58. 星文七

    星政府委員 御承知のように比例票というものがございまして、各国の持ち株数一株について一票ということになっております。出資額一万ドルについて一票となっております。わが国は二億ドルの出資を行なっておりますので、二万票の比例票というものを持っておる。アメリカもそのとおりでございます。それで、銀行の授権株式総数の十万株というものが全額に対して応募が行なわれたと仮定いたしますれば、銀行協定によりまして加盟国の比例票数の総計は十万票となる。比例票数と基本票数との割合は、比例票数のほうが総投票数の八〇%、基本投票数は二〇%ということになっておりますので、出資額十億ドルに対して全部応募ができたということになりますと、総投票数は十二万五千票、基本投票数は二万五千票ということになるというふうに考えております。
  59. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いま御説明がありましたように、やはりアメリカ日本が出資額がうんと多いので、票数も非常に多くなるわけです。したがって発言権も弱いということは言えない、こういうふうに私は思うのですが、これはお認めになると思います。  そこで、その次に入りたいことは、この条約の十九条、二十条に特別基金の条項があるわけです。去年のたしか六月ごろまで、このアジア開銀の設立にいろいろと骨を折っていた人の話を聞いてみましても、この諮問委員会で特別基金制度はつくらないということがきまっていたように伺っておりますけれども、それが今度実際にアジア開発銀行というものができてから特別基金という制度が設けられるようになった。その間のいきさつはどういうふうなことになっておるのでしょうか。
  60. 星文七

    星政府委員 この特別基金という問題は、銀行の草案をつくる当時からございました。
  61. 戸叶里子

    ○戸叶委員 草案をつくる当時からあったということですけれども、何か私が読みました本では、その当時はなかったというふうに読んでおります。それじゃ、これは間違いですね。これは「世界週報」で私は見たのですけれども、去年の七月二十九日の「世界週報」に、このころはまだ特別基金をつくる、信託制度をつくる考えはなかったというふうに書いてございましたが、これはそれじゃ間違いですね。
  62. 星文七

    星政府委員 先ほども申し上げましたとおり、一九六四年十月に専門家が集まった作業部会というものがバンコクで開かれておりますけれども、そこでアジア開銀銀行設立協定草案というものを作成しております。その中にも特別基金というアイデアは出ております。
  63. 戸叶里子

    ○戸叶委員 それじゃこの時事通信社で出している「世界週報」のほうが間違いであるというふうに了承いたします。  そこで、米州開銀というのとアジア開銀というものの違いは、先ほど私も申し上げましたように、域外からの出資をアジア開銀のほうは見ている、米州開銀のほうは域外からの出資を見ていない、ここが大きな違いであって、あとは大体米州開銀と同じである、こういうふうに見てもいいわけでしょうか。
  64. 星文七

    星政府委員 大体同じでございます。
  65. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、米州開銀のほうで特別基金として設けられているのは、つまりこれは信託制度になっているわけですけれども、今回の場合も信託制度の形をとるのでしょうか。
  66. 星文七

    星政府委員 そういう場合もございますし、それからまた、銀行の資本の中で特別基金になっておるというものもございます。前者の場合にいわゆる信託による場合は、その信託者と銀行との協定に従って、銀行の目的に沿って運営される、そういうことになっております。
  67. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、この特別基金というのは、アメリカが特に一億ドル出して特別基金制度を設けているわけですね。そうしますと、結局アメリカがよその国にお金を貸してもいいのだけれどもアメリカからお金を借りたなんということでいろいろ世間がうるさくなってもいけないから、この開銀をクッションに使って、そうしてアメリカの出している特別基金をほかの国が利用する、こういうふうに銀行出資国との間の話し合いだけでこの特別基金というのは利用されるわけですね。間に何も開銀の理事者とか、開銀の投票とか相談ということはなしに、アメリカ、つまり出資者と銀行との直接の話し合いだけでこれは利用できるわけでございますね。米州開銀がそうなっておりますが、それと同じですね。
  68. 星文七

    星政府委員 アメリカの信託基金と申しますのは一億ドルということを言っておりますけれども、これはほかの諸国が同じような出資をする場合に初めてこれを出すということを言っておりまして、まだ何もきまっていないわけでございます。その特別基金運用の方法は、先ほど申しましたように、銀行とその信託者との間の協定に基づいて、そうしてまた、大きな銀行の運営目的に沿って運営される、そういうわけでございまして、大体銀行の普通の貸し付けというものは、健全運営のたてまえからそうソフトなゆるやかな条件の緩和したもので金は出せない。信託基金ということになりますと、若干それが緩和された形になるというところに特色があるのじゃないかというふうに考えております。
  69. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうでしょう。ソフト・ローンということになるわけですね。そうすると、やはりここではアメリカの権限というものは相当強くなりますね、この特別基金の場合には。そうですね。
  70. 星文七

    星政府委員 まあその運営の方法は、その信託者だけがきめるわけではなくて、銀行としてそれをきめていくということになると思いますし、またその信託基金については、御承知のように、私から申し上げるまでもなく、それに伴ってその比例票というものがふえていくというふうな性質のものでないということでございます。
  71. 戸叶里子

    ○戸叶委員 しかしアジア開銀の中にある十億ドルのお金の融資をされる場合と、特別基金を使われる場合とでは、やはり何といってもこのアジア開銀の中ではいろいろと規則があるわけですけれども、特別基金の場合にはそういうものがないから、相当アメリカの権限というものは強いわけでしょう。こちらのほうから何か別に監督したり、ほかのアジア開銀のお金を利用するというような点は少ないのじゃないかと思うのです。
  72. 星文七

    星政府委員 協定にもございますように、「銀行が管理を受諾した特別基金は、銀行の目的及び当該特別基金に関する合意に矛盾しないいかなる方法及び条件によっても使用することができる。」ということが書いてありまして、この使用の方法は、まず第一に当該者との間の合意といいますか、それと銀行の基本的な目的ということによって運営されるわけでございまして、どういうふうに運営されるかは銀行が設立されてみないとわからないというのが実情だと思います。
  73. 戸叶里子

    ○戸叶委員 当該者というのは出資国ですね。そうですね。だから銀行を運営してみないとわからないというのですが、この条文から見て、そしてまたその目的なりいままでの米州開銀の運営方法なんかから見れば、私はそういうふうに考えられるのです。だから今後特別基金が米州開銀のような形をとられないというならまだわかるのですけれども、米州開銀のように出資国銀行との間で直接交渉していろいろやられるということになると、やはりそこに、どんなに銀行のワクの中でやるといいましても問題が残ってくるのじゃないか。発言権が非常に強くなってくるのじゃないかということを懸念するわけでございます。これを議論していてもしかたがないのですが、そういう点がどうも私は解明できない。  それで、ついでですから伺いますけれども、この場合の金利はまだわかりませんか。
  74. 星文七

    星政府委員 まだわかりません。
  75. 戸叶里子

    ○戸叶委員 アジア開銀が設立されて活動をしてからわかってくるわけですね。それで、設立して、活動して、なおかつ特別基金だけはまだ動かないという場合も考えられますか。それは考えられないですか。やはり特別基金も準備が整わないうちは、アジア開銀そのものも活動しない、こういうふうに了解していいわけですか。
  76. 星文七

    星政府委員 特別基金の運営の問題について合意ができないことには、銀行自体が発足しない、そういうことはないと思います。それは、特別基金というものは全く別なものでございますから、銀行の発足とは関係がない、そういうふうに解しております。
  77. 戸叶里子

    ○戸叶委員 次の問題に入りたいのですけれども、何か四十分から大臣は向こうにいらっしゃらなければならないというので、ちょっと中途はんぱになっても困りますから、あと五分しかないですが、どうしましょうか。——じゃもう一問入ります。  日本の国の経済援助の目的について外務大臣にお伺いしたいのですが、低開発国援助とかあるいは経済協力ということを、最近の西欧諸国は非常に重要な外交政策としているわけです。それにはそれ相応の目的もあれば期待もあるはずですけれども、それを常識的に分析してみますと、第一に考えられるのは人道主義的な援助だと思います。それは、たとえばインドの食糧飢饉というような場合に援助してあげるとか、あるいはどこかに大きな地震があったというようなときには援助するとか、こういうこと。第二は政治的な目的による援助だと思います。これはこの国際社会において、イデオロギーの対立による勢力関係を、自分の国と立場を同じくする国や、中立的な立場にある国に援助することによって、自分の国の陣営にとどめようというようなことを目的とする、まあ主としてアメリカなどでそういうふうな立場をとっておるようですけれども、そういう問題、あるいは経済的目的による援助、こういうふうに私は三つに分けられるんじゃないかと思います。たとえば経済的目的による援助というのは、わずかの援助を出しておいてよけいに何かを獲得できるというような営利的な利益が伴っているもの、こういうような三つのものに分けられるように思うのですけれども日本経済協力なり経済援助というものはどういうふうな範疇に属しているのか、どういう考え方でやっておられるのか、まず外務大臣にお伺いしたいと思います。
  78. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本のいまやっておる経済援助と申しますか、経済協力というそれの態様は、いま御指摘のような、急に地震でひどい目にあっているとかいうような場合には、これはわずかでありますけれども、とにかく人道上の見地から緊急援助を出す場合は最近においてもございました。しかし経済協力の大部分のものは、やはり経済的な意味を持っておるもの、こう御了解を願いたいと思います。ただ国内の一般の資金コストというものをほとんど無視して、そして三分ぐらいの低利で二十年も二十五年も資金を貸すというような場合には、これはもちろんそれだけの犠牲を払って、なおかつ長期的な展望からいうと、まあ日本はやはりそれによって報いられるものがあるわけでありますけれども、しかし当面政治的な意味が加わっておるのじゃないかというような論議が出るわけでありまして、そういう場合にはないとも言えないし、あるとも言えない。まあしかし長期的な展望から見て、結局多少今日犠牲を払ってそういう非常に長期低利の資金協力をやっても、結局最後にはともどもに繁栄するという見通しが立てられる場合がほとんど全部でございますから、政治的な意味も加わっておるということを言えば言えるけれども、結局は経済的な方面に重点を持っておる、こういうことが言えると思います。なかなかその区別はむずかしいと思います。
  79. 戸叶里子

    ○戸叶委員 まあ区別がむずかしいとおっしゃるのですが、経済援助なり経済協力をする場合には、やはり一国の外務大臣として政策目標というものをはっきり打ち出していくのがほんとうではないかと思います。たとえばアメリカなどは政策目標がはっきりしております。自分の陣営というものを守るために、反共という形での援助ということがはっきりしているわけですけれども、この政策目標というのはどういうところに置かれているか、この点をまず伺いたいと思います。
  80. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常にはっきりしているのは、やはり社会主義国——独裁国が新しい独裁国にほとんどグラントの形でやっておるというような場合は非常にはっきりしておりますが、われわれのやる場合には、全然何に使われるかわからぬ、とにかくまあつかみ金で持っていけ、そういうようなことは絶対ありません。これはすべて長期的に経済的な根拠があってやるのです。
  81. 戸叶里子

    ○戸叶委員 いろいろむだな面もありますので、そういう点も伺いたいと思いましたが、いま参議院のほうで大臣を要求されているようですから、あとでまた質問いたします。
  82. 高瀬傳

    高瀬委員長 戸叶君に申し上げます。大臣は参議院の本会議に十分ばかり出席いたします。その間政府委員でできるような問題について答弁を要求して、質問を続行していただければ非常にけっこうだと思うのですが、いかがですか。
  83. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そういたしましょう。  いまアジア地域アジア開銀に不参加を表明しでいる国は、ビルマ、カンボジア、インドネシアですか、それらの国が不参加を表明している理由は何でしょうか。
  84. 星文七

    星政府委員 エカフェの地域内でまだ協定に署名していない国は、ビルマとインドネシアでございます。インドネシアは御承知のように国連を脱退いたしまして、エカフェからも出ておりますので、エカフェの地域内の加盟国で応募の意を表していないのはモンゴル、それからビルマ、この二つでございます。ビルマがどういう理由によって不参加になっているか、よくわかりませんが、国内のいろいろな事情によるものだろうと思います。モンゴルはやはりソ連などが入っていないと同じような理由で、たとえば域外国がこういう銀行の資本に参加してはいけないとか、あるいはまた域内国の持っている票数は一国一票主義によって貫くべきであるというような主張からではないかと推測しております。
  85. 戸叶里子

    ○戸叶委員 理想としては一国一票なんでしょうけれども、そこで、ビルマが入っておらないというのは、いまちょっと聞き取れなかったのですが、どういう理由なんですか。
  86. 星文七

    星政府委員 ビルマの入っていない事情はよくわからないのでございますけれども、ビルマ自体のいろいろな内情によるのだろうと思います。一説によりますと、ビルマは国連以外のこういった多数国間の取りきめには入らないということを国是にしているように聞いております。しかしこれはわれわれの推測でございますので、いろいろな事情によって入っていないということだろうと思います。
  87. 戸叶里子

    ○戸叶委員 時間を省く意味で、資料をあとでいただきたいと思います。最近の三年間においての日本経済援助の額と、その国民所得との比率、並びにアメリカ、フランス、イギリスなど西欧数カ国の低開発国に対する経済援助の額、その国民所得との比率と、その中に占める日本の順位、日本が何番目くらいか、それをあとで表にしていただきたいと思うのですが、それをお願いしたいと思います。
  88. 星文七

    星政府委員 この問題は経済協力局の問題でございますので、私から軽々にお引き受けできないと思いますけれども、御趣旨経済協力局長にお伝えすることとしたいと思います。
  89. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そこで今度は投票権の問題に触れたいと思います。投票権は、先ほどもお話がありましたように、基本票とそれから出資額に応じての票数になるわけですが、基本票というのを日本では大体一五%を主張したけれども、いろいろな国の主張によって二〇%になったということなんですが、その間のいきさつを伺いたい。基本票というのはやはりある程度多いほうが日本では有利になるのじゃないかと思うのですけれども、これはどうなんでしょうか。こういう開銀などの理想的な行き方としては、基本票を多くして、そしてあと出資国が一国一票主義というふうな形をとった場合と、今回のような形をとった場合と、どっちのほうが有利なんでしょうか。
  90. 星文七

    星政府委員 アジア開銀の場合には、先ほどから何回も御指摘のように、域外国が加わっております。アジア域内で金を集めようといたしましても、おのずから資金に限度がございますので、勢い域外国からの出資も求めなければいけない。こういう一つのインセンティブと申しますか、誘い水という意味におきまして、やはり比例票というものがある程度高くなくてはいけないということで、一五%あるいは二〇%、一〇%というあれも出たわけでありますけれども、域内諸国の大多数の要望に基づきまして二〇%という数字が出たというふうに御了解願いたいと思います。
  91. 戸叶里子

    ○戸叶委員 そうしますと、やはり日本の主張した一五%のほうが二〇%より有利ではあったけれども、しかたがなしに二〇%でおさまった、こういうふうに了解してもよろしいですか。
  92. 星文七

    星政府委員 そういうふうに御了解くださって間違いございません。
  93. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一国一票主義と、それから出資額に応じての票数という考え方とは、一利一害あるのでしょうが、どっちのほうがいいのでしょうか。
  94. 星文七

    星政府委員 先ほど申し上げましたように、アジア開発銀行の域内でその所要の資本を調達しようと思いましても限度がございますので、勢い域外国から仰がなければいけない。そういうことになりますと、やはり銀行の健全運営と申しますか、銀行がほんとうに経済協力の機構としての機能を発揮するためには、私は一国一票主義ではなくて、いまアジア開銀のとりましたような八〇%、二〇%といったようなどころが妥当ではないかというふうに考えております。
  95. 戸叶里子

    ○戸叶委員 だから、やはりそういう考え方が、私がさっき心配したような問題も起きてくるわけですね。域外国のアメリカが非常にたくさんの出資をして、たくさんの票数を持っているから、発言権もたいへんに強くなってきて、日本と一緒に——日本と一緒になるというよりも、今日の日本のような自主性のない外交方針のもとではアメリカに引きずられる可能性が多い。こういうことを私は懸念するわけなんですが、一国一票主義でないというところは、域外協力する国にもよりけりですけれども、今日のようなアメリカが二億ドル出しているという状態では、やはり先ほどからの懸念というものが少し当たっているような気がするのです。これは私の考えですから、それ以上申しません。  そこでもう一点伺いたいことは、クーデターとか政変や革命などによって融資金の取り立てが不可能になるような場合も考えられると思いますけれども、そういうようなときに銀行はどういう措置をとるようになっておるのでしょうか。
  96. 星文七

    星政府委員 協定の第四十四条「業務の一時的停止」というところに、「緊急の場合には、理事会は、総務会が審議して措置を執るまでの間、新規の貸付け及び保証について業務を一時的に停止することができる。」という条文がございまして、緊急の場合というのは、戦争の場合あるいは内乱の場合あるいは銀行の財政的危機の問題、こういうものを含めまして緊急の場合といっているのではないかというふうに解釈しております。
  97. 戸叶里子

    ○戸叶委員 一次停止まではわかるのですけれども、そういうときには、その銀行なり何なりがばく大な損害をこうむるような場合も出てくると思います。そういうときに、その加盟国に負担がかかってくるのですか。どういうことになるのでしょうか。——これはやはり国民の税金で二億ドルというものを出資するわけですから、非常に重要な問題だと思うのです。それでやはりきちんとしておかなければならないと思うのですけれども、その問題、いますぐもし答弁ができなければ、しかるべく相談して早く——相談してと言っても出てくる問題じゃない。アジア開銀の人と相談しなければ、なかなか出てこない問題かもしれませんけれども、はっきりさせておいていただきたいと思うのです。——たいへん重要な問題なので、答弁が間違っていてもいけないので、あとから御返事をいただくそうですけれども、ともかく、いまアジア開銀の設立に賛成するかしないかという重要な案件に対して、私どもは真剣に討議しているのですよ。しかもこれは重要な問題ですよ。それがわかっておらないで、アジア開銀の設立に賛成しようなんでいうのは、少しおかしいと私は思うのです。非常に大事な問題だと思いますから、十分討議して、——日本政府だけでこうだと思うというだけでは済まないと私は思う。やはりはっきりさせて、そしてここで答弁していただきたい。  私はあと条約上の問題で二、三点ありますけれども、こまかい問題ですから、あとにいたしまして、三原委員質問を譲りたいと思います。しかし、この問題だけは、私はきょう真剣に討議しているのに、非常に不服であるということを表明したいと思います。
  98. 高瀬傳

    高瀬委員長 速記をとめてください。   〔速記中止〕
  99. 高瀬傳

    高瀬委員長 速記を始めてください。  会議を続行いたします。三原君。
  100. 三原朝雄

    ○三原委員 隣国の中国で、ああした第三回目の核実験がありました。重大な問題でございますし、国民として憤激にたえませんが、特にこの問題について一言申さねばと思いますけれども、きょうはアジア開銀に関します審議でございますので、後日に譲ることにいたしまして、きょうはアジア開銀について質問をいたしたいと思います。  まず、協定の内容に入ります前に、アジ銀に関します一般的な事項についてお尋ねいたしたいと思います。  まず第一に、もうすでに決定をいたしました事項でありいたしますけれども、将来のこの種問題等とも関連がございますので、特にお尋ねをいたしたいのでございますが、例のアジア開銀の本店がマニラに決定をしたのでございます。われわれとしては、東京に本店が来るものだと確信をある程度いたしておったのでございまして、実は多少の衝撃を受けたわけでございます。その理由は、一般的には二億ドルの大口出資をしたから、たぶん日本に本店が来るであろうというような楽観ムードではないかというようなことが言われておりますけれども、これには、簡単に私どもも納得できない点があります。そこでお尋ねをいたしたいわけでございますが、政府当局は、フィリピンが本店誘致に懸命な努力を事前に行なっておったことを予期しておられたかどうか。予期しておられたとするならば、外交上怠慢ではなかったかというような面も出てくるわけでございますが、こういう点について、これに対処する外交的な措置が講ぜられたかどうかという点をお尋ねしたい。  なおまた、本店誘致を東京にするというようなことを期待をいたしておったとするならば、当然具体的なこれに対します計画というようなものがあったろうと思うわけでございますが、しからば、はたして具体的にはどういう計画をなさってお進めになったかということであります。  次には、本店の誘致に失敗をしたのでございますが、私は単に楽観ムードというようなことではないという点を憂慮するわけでございまして、すなわち日本政府アジア政策なり、特にまた大国意識の過剰がアジアの諸国民に反発を買ったのではないか、あるいは対アジア経済政策等においてアジア諸国に必ずしも支持されていないというような、そうした結果がマニラ本店という形にあらわれたのではなかろうかと思うわけでございますが、こういう点についての御意見を承りたい。  なお、これはデリケートな点で、私の質問としてどうかと思うわけでございますけれども、ついでにお伺いをいたしたいのでございますが、今回の本店の設置についてアメリカが裏面的に——まあアメリカというよりも個人かもしれませんが、ブラックさんがいろいろ裏面工作をされたというようなことも、うわさで聞いておるのでございますが、この間の事情を承りたいと思うのでございます。  まず本店設置についてお願いをいたします。
  101. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題は、事前にすでにタイ、フィリピン、この二国が熱心に——この二国以外にもございましたが、この二国が非常に重要な候補者であったことはわかっておりました。これに対する対策といたしましては、日本としてはあらゆる機会、あらゆる外交ルートを通じまして、本店誘致の意思を説き、これに賛意を表するように説得をいたしたのでございます。しかし、結果においてああいうことになりましたが、これは本店も、また総裁も、両方持っていくつもりらしい、出資金にものをいわして、と言ったか言わないかわからぬけれども、とにかくそういうような宣伝がございまして一しかし、本店はやはり低開発地域に置かるべきものである、こういう主張をいたしまして、日本に本店を設置することに対抗した運動をした、こういうことが相当に目立っておったのであります。ついに、きわめて惜しいところで破れた次第でございます。  これは日本の対アジア政策というような、そういう基本的な問題に原因があるのではないかどうかというような御質問と思われますが、私は、そういう点では別に特別に日本が大国意識を出してひんしゅくを買うというような行動をとったとも思いませんし、やはり日本といたしましては現在のアジア政策あるいは東南アジア政策というのと終始変わらない主張をしてきておるのでございまして、その政策あるいは主張のためにかような結果を招いたというふうには考えておりません。  それから、米国とは言わぬが、ブラック前世銀総裁が裏面において相当工作をしたようであるがその点はどうか、こういうお話でありましたが、  これは、私はちらっとそういう批判を耳にしたことがございますけれども、そう有力な話し方でもなかったと思われるし、また、それに見合うような事実があったというようなことも私は聞いておりません。これは少し思い過ぎではないか。米国を背景にしてブラック前総裁がどういうことをやろうと、こういったような東南アジアにとって切実な問題についてそう大きな指導力がここで働くとは私は考えておりません。
  102. 三原朝雄

    ○三原委員 この問題については、すでに決定した事項でございますし、深くお尋ねしようとも思いませんが、いずれにいたしましても、企図しておったことが惜しい結果ではございますけれども破れたという事実に対しましては、政府としても将来の問題として御検討を願っておくべき事項だと思うわけでございます。  次にお尋ねをいたしたいのは、アジア銀行によりますアジアの諸国の総合的な開発日本と個別的に行なわれる開発援助との両者の問題をどうマッチさせていこうと考えておられるかという問題でございますが、両者の間におきまして無益な競合は避けねばならぬと思いますし、また、アジア開発銀行が特定国の利益に偏重してもなりませんし、またわが国が個別的に行ないます経済協力があまりにもナショナルインタレストの追及に走り過ぎて、アジア開発銀行の目的に反するようなことがあっても困るわけでございます。この間の調整はまことにデリケートな問題であり、かつ非常に困難な問題と私は思うわけでございますが、これに対しまする政府の所信をお伺いいたしたいと思うのでございます。
  103. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アジア開銀の活動分野は、アジア経済開発、そういうところをねらっておるのであります。その際に日本が、アジアの各国との間において経済開発に関して各種の協力を今後することになるのでありますが、それとの関係につきましては、もちろん矛盾するようなことは私はないと思うのでありますが、ただ、矛盾はしなくとも、少なくともそれがダブって十分な資金効率を発揮しないというようなことは極力これは避けるようにしていかなければならぬと思うのであります。どっちかといいますと、日本アジア各国との関係、さらにこれを基盤にして、そうしてアジア開銀融資が行なわれることによって二国間の経済協力関係が一そうりっぱな実を結ぶようにすることが大事ではないか。関係のある問題についてはそういうふうに考え日本の各国に対する経済協力関係考えていきたい、こう考えるわけであります。
  104. 三原朝雄

    ○三原委員 アジアにおきますただ一つ先進国であります日本の自負心の感情が、アジアの諸国から日本の大国主義としてある種の反感があることはわれわれも情報等で承知をいたしておりますが、われわれとしては、過ぐる太平洋戦争の反省という点からも十分心すべきことでありますし、その点において日本アジア政策というのは非常に過酷な道も覚悟せねばならぬと思うわけでございますが、われわれは将来ともアジアの諸国に対しては、特に卑屈になる必要はございませんけれども、さりとて低開発諸国の感情を無視して、上からの、何といいますか見おろしたような態度と申しますか、援助してやるというような恩恵的な態度、あるいは利益追求のもうけ主義一点張りの態度でも、これはいかないのでございまして、厳に慎しまねばならぬと思うわけでございます。政府はこの点に対して特にどういうような姿勢でおられるか、そうした基本的な考え方についてお伺いいたしたいと思うのでございます。
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 その点はよほど気をつけていかなければならぬ問題でありますが、いずれかといえば西欧先進国に比べて日本に対しては一般的には親近感を持っておる、あるいは親近感というものがわきやすいという状況にあると思うわけであります。ただ、あるアジアの国の首脳部が、日本はいわゆるエコノミック・アニマルであるというような酷評をしたということを聞いておりますが、あまり商売に即したような目先のことばかりをやっておるとそういう批判を受けることにもなり、また日本自身の経済発展のためにも行動範囲をみずから狭くするというようなことにもなるわけでございますので、その点はよほど気をつけていかなければならぬ。気をつけるといっても、ただ抽象的な心づかいをするというのではなくて、やはり経済協力も思い切ってできるだけのことをやるという心がまえが必要である、こう思っております。
  106. 三原朝雄

    ○三原委員 そこで少し具体的な点でお尋ねをいたしたいと思いますが、昨年の国連の貿易開発会議におきまして、開発途上にあります国々から、一次産品やこれらの国が生産をいたします工業製品の輸出に対しまして先進国が門戸を開放するようにという強い要望が表明されたのでございます。すなわち彼らは、援助より貿易といいますか、自国の経済的独立を達成するためにはどうしてもこうした援助を受けるよりも貿易体制を確立することが必要だという立場から、そうした要望をいたしたのであろうと思いますが、政府としてはこれらの要望に対しましてどのような対策を考えておられるか、お尋ねをいたしたいと思います。たとえば、先日もこの外務委員会で採択したのでございますが、あのすず協定にいたしましても、低開発国であるすずの生産国がその価格を引き上げようといたしますと、先進工業国はすずにかわる代替品の生産用意をしてこれに対抗するのだというような政府説明を受けたのであります。このような矛盾があるわけでありまして、これをどう調整していくかということが将来の問題として残されておるのであります。こういう面における政府政策を承りたいと思うのであります。この問題はいま問題になっておりまする南北問題の基本問題でもあろうと思うわけでございます。これに対します所見をお伺いいたしたいと思うのであります。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局一次産品、主として農産物、続いて鉱産物ということになりますが、農産物について言うと、先進国のうちに領土の広大な国があるわけでありますが、そういうところの農産品は、調整でありますとか、保管、輸送といったような点が非常に完備しておって、商品としてあるいは商品の輸入手続といったような面において、低開発国の同様の品物とはたいへんな違いがある。そういう現況でございますけれども、それでは低開発国はいつまでもその地位を向上することができないということになり、それがはね返って日本の不利益にもなるというわけでありますから、できるだけこれは手を差し伸べて、その商品が貿易品としてもっと高い地位を占めるようにいろいろだ施設を援助して実行さしてやる、そして日本がこれを輸入するというふうに仕向けなければいかぬと、こう思うのであります。こういったような観点からいいまして、たとえば東南アジアについていえば、日本が多々ますます弁ずる家畜飼料の問題、こういったような問題は、まだまだ開発、輸入の余地があるように思われます。そういう面につきましてはどんどん協力いたしまして、そして調整、保管、輸送といったような面をもっと引き上げて、優良な商品として市場に登場し得るように、日本はこれに協力すべきものである、こう考えております。
  108. 三原朝雄

    ○三原委員 この問題は東南アジアの諸国が植民地経済から自立の国民経済へ移行しつつある現時点におきましては、援助、供与いたします側におきましても、あるいは受ける立場におきましても非常に問題のある点でございますので、特にひとつ各国の調査を具体的に進めていただいて、きめのこまかい施策を準備願いたいと思うわけでございます。  次に、発展途上にあります国が先進国に希望いたしますもので共通の点は、より安定した、長期の、より安いコストの経済援助を、より有利な条件で供与してもらいたい、そういうような共通した考えでおられると思うわけでございますし、また一つの共通点は、より有利な援助を与えてくれる国であればその国がどこの国であってもよろしいというような切実な事情にあるということができるのでございます。しかし、日本援助を期待する諸国が今日まで共通して抱いております不満と申しますか、そういうものは、援助額が各国の必要とし期待するところからほど遠いことが第一点であります。なおまた、返済の条件が短期で利子の高いことが指摘されておるのであります。この点は先ほど戸叶委員質問に対して、大臣の、いままでの方針を変更と申しますか、より有利な条件でこれに応じようというお話を承ったのでございますが、いずれにいたしましても、今日までのわが国の返済の限度は大体十年まで、利息は五%か六%というような状態であったのでございます。日本はそこであまりにも商業的で国の貿易政策が密着しており、それは自分らのためではなく、日本自体の経済進出の手段ではないかというふうな不満なり疑惑を持たれておったのでございます。先ほど大臣の御意見も拝聴いたしましたので、特にまたこの問題を重ねてお尋ねしようとは思いませんが、こうした点についてはひとつ過去のそうした実績なり、あるいは東南アジアの各国が受けておりまするそうした感情というようなものをひとつこの際払拭するような積極的な援助協力をすべきだと思いますが、重ねてこの点について御意見を拝聴いたしたいと思います。
  109. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 非常に大事な点でございます。援助資金の量は先ほども申し上げたように、すでに四十一年においては〇・六五%くらいまではいき得ると考えております。そうすると、年々国民総生産がふえてまいりますから、それに応じて比率を上げていくということになりますと、あとたしか三、四年で八十兆——ちょっと数字を忘れましたが、それに対する一%ということになると、相当資金量になる。しかし、これは国際的にほとんど公約したような状況でありますから、やはり三年とは言わぬけれども、四年目ぐらいにはそこまで持っていかなければならないということは、財政当局においても大体覚悟しつつあるような状況でございます。  しかし、今度その内容ですね、期間及び利率という点からいうと、いま輸銀は五分七厘五毛、そういう状況でありますから、三分、二十五年なんということは、なかなかこれは日本としてもよほど努力しても、私はここ数年の間には困難ではないかと思うのでありますが、できるだけ三分、二十五年といわなくても、現在の五分七厘五毛を四分台に持っていくとか、あるいはまたその一部については三分台のものも顔を幾らか出すというようなふうにいたしまして、そして世界に対して日本が十分にその誠意を示すということが必要であろう、こう考えております。
  110. 三原朝雄

    ○三原委員 次に、先ほど戸叶委員のおことばの中にも触れられたように感じておりますが、自由主義諸国による経済援助は自由競争の原則に立ちますので、どうしても資本の輸出、あるいは自国の産業の振興とか、市場の拡大というようなととが追求されるのでありますが、またしかし私どもといたしましては、他方社会主義諸国が行なっている援助方式もやはり十分念頭に置いてしかるべきだと思うのでございます。たとえば、中国におきましては、無利子で返済期限が二十年、あるいは利息は二・五%というような商業的な性質を全く無視した援助を行なっておるようであります。この点は、立場が非常に異なりますので、簡単にそれだからどうだということにもならないと思いますけれども、われわれといたしましても、好むと好まざるとにかかわらず、やはりこの事実を無視するわけにはいかぬのでございます。将来中ソ等社会主義諸国の低開発諸国に対する援助がさらに積極化するであろうと予想するわけでございますが、これはわれわれもそうしたことを対立的に考えるわけでもありませんけれども、そうしたことを予想いたします場合には、これが対策をやはり確立しておく必要があろうと思うわけであります。現在のように究極的には自国の利益に帰するような援助方式については、再検討を要するのではなかろうかと思うわけであります。私は将来においては、そういうような見方をいたしておりますので、自由主義諸国と社会主義諸国の低開発国援助競争というのは行き過ぎかもしれませんけれども、そういう事態が生ずるのではなかろうかと予想するものでありますが、政府はこの点の長期展望に立って、そういう点をどう見ておられ、どう対処しようとなさっておられるか、所見を伺いたいのであります。
  111. 西山昭

    ○西山政府委員 ソ連、中共等をはじめとします共産圏の後進国に対しまする経済援助は、何と申しますか、いわゆる政治的な角度によってやられます場合が非常に多いのでございまして、そういう意味では、この当該国に対しまする一貫性というものが必ずしも西欧陣営がやるようには保たれていないわけであります。地域的にも比較的に片寄っておる。なかんずく共産圏から受けまする国を調べますると、比較的片寄った形において行なわれております。この自由陣営と共産陣営との援助競争の問題でございますが、数年前におきましては、そういう傾向がある意味において認められたわけでございますが、最近の傾向といたしましては、後進国におきましては、やはり長期的な視野に立ちまして、産業の開発を行ないます場合には、長期的な安定した形で外国からの援助を受けるという点が非常に重要な要素になっておりまして、その意味では、たとえばアフリカの地域にいたしましても、数年前に比べますと、よほど事情は変わってきておる。それからアジア地域におきましても、もちろん現在におきましてもソ連、中共等からの援助がございますけれども、そうしてまた御指摘のように、条件等も、ものによりましては非常に緩和された条件で経済協力が行なわれておりますけれども、これは全体の開発計画の中の一部でございまして、それをそのまま後進国においても全部に適用できるようなものとは考えていないように私どもは思っております。結局、長期的に産業の開発でどういう点がその国にとって一番大事な点であるか、またそれを総合的にどういうぐあいに外国の援助を受けて開発し、また能率的に持っていくかというような点が今後関係諸国全部につきまして共通の関心事でありまして、そういう意味におきましては、OECDの機関とか、あるいは国際銀行等が客観的にまた専門的にいろいろ検討し進めておりまして、そういう点が将来におきましてもやはり後進国援助の基礎的な判断の材料になるのじゃないか、こう考えております。
  112. 三原朝雄

    ○三原委員 現在におきましては、そうした国際機関と申しますか、そういう機関が公正な立場一つ方向づけなりをするであろうと私も予想いたしますけれども、まあ、しかし、なおまた次元の高い立場考えてまいりますれば、そうした資本主義陣営とかあるいは社会主義陣営とかいうような競争も、ある場面がつくられて、そこで調整、話し合いがなされるというようなこともあり得るかもしれないと思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、現時点におきましては、たとえば、社会主義陣営が言っておりますような平和共存という方針の中にも、経済競争についてはきわめて熾烈なものがあってしかるべきだということも肯定をしておるようでございます。そういう点もありまするし、先ほどはアメリカ等の政治的な企図というようなものが述べられましたが、私は、逆にそうした点においては、中ソ等の社会主義陣営のほうが特に政治的な企図を多分に持って経済援助等がなされるというようなことも見ておるわけでありまして、そういうようなこともありますので、この点につきましては、日本においても相当積極的に御検討を願っておきたい問題だと思うわけでございます。  次に、先ほど来戸叶先生の御質問にも出てまいりましたが、例の十億ドルのジョンソン構想という問題でございます。どうもジョンソン構想が一昨年の四月打ち出されていろいろな問題を投げかけたのでございますが、その後具体的にはジョンソン構想がどういうような姿でどう進められておるかという点についてわれわれもはっきり承知をしておりません。こういうことが実は先ほどの御意見にもございましたように、アジ銀との関係に何かひもがついておるのではなかろうかというような意見も出てまいりますし、なおまた、こうした問題について先般四月六、七日でございますか、東京において行なわれましたアジア開発閣僚会議等が、あれはジョンソン構想の下請機関だというようなデマも飛んでおるのでございますので、この際重複いたしますけれども、先ほどは明確に三者は関係がないのだという局長の御説明でございましたが、この際そういう点を明確にしておいていただきたいと思うのであります。特に十億ドルのジョンソン構想の実態等について御承知でございますれば、お聞かせ願いたいと思うのであります。
  113. 西山昭

    ○西山政府委員 昨年の四月に、ジョンソン大統領は、東南アジア地域に対しまして、東南アジア地域各国の自発的な意思によりまして開発計画ができれば、アメリカとしましては十億ドル拠出する用意があるという声明を出しました。実はこの十億ドルにつきましては、全額アメリカ政府の予算ができておるわけじゃございませんで、今後何年という限った年限を言ってはないわけでございまして、構想といたしまして十億ドル出資する用意があるのだ、こういうことでございます。具体的には昨年数千万ドル、たしか八千万ドルぐらいだったと思いますが、その一環としまして予算の支出を承認を得ております。具体的なプロジェクトといたしましては、ジョンソン構想の中でも地域的に関係があるプロジェクトだとか、そういうものに重点を置いているわけでございますが、現状におきましては、そういうプロジェクトが関係国によりましてどんどん立案されて実施の段階に移るような状況にまだなっていないわけでございます。たとえば、メコン委員会におきましては、いち早くこの十億ドルの構想が発表されましたあとにおきまして、メコン委員会でいろいろ各関係国の間で討議されまして計画が出されたわけでございますけれども、この計画自体がまだ現実性を持たないものが多いわけでございます。そういう意味では、具体的に十億ドルが地域的な開発のプロジェクトを実施に移させるという段階にはまだなっていないわけでございまして、目下メコン委員会等におきましていろいろ検討いたしております。たとえば、カンボジアの開発の計画等に重点を置いて検討いたしておりますけれども、直ちに実施されるような段階にはまだなっていないと承知しております。
  114. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ジョンソン構想の十億ドルの経過についてはいま申し上げたとおりでありますから、先般の東南アジア開発閣僚会議趣旨は全くジョンソン構想等とは関係なく考えられたのであります。また、その実際の経過から見ましても、私は特にこれを説明する必要もないくらいに考えております。結局先般集まった東南アジアの国は、民族的にもあるいは気候、風土その他の習慣は非常に近似した点がありまして、ことに主食物は米を食べている。インドネシアを除いてはほとんど人口二、三千万くらいの国である。そうしてこの地域にみな境を接して国をつくっているというような状況でありまして、これを一つ一つ開発計画を立ててそれに協力するということよりも、むしろそういう共通問題がたくさんあるので、連帯感を持ってお互いに協力をするという気持ちを持って、ほんとうにもう自力更生というような気持ちを持って立ち上がれば、これが一番経済開発の基本である、こういうふうに考えるのが当然かと思うのであります。しかし、はたして当の東南アジア諸国がそういう気持ちを持っておるかどうかということについてわれわれは確かめたわけではございませんが、しかし、開いてみますと、われわれが考えたとおり、お互いに連帯感を強くして、そうして国際的な協力組織をつくらなければ東南アジアにろくな軽工業も発達しない。こういう問題については経済開発センターというものをつくって技術的にどうすべきか、あるいは経営的にどうすべきかということよりも、さらにまたもっと程度を高くして、東南アジア諸国がお互いに分業を認め合って、認め合った分業についてはお互いに自国の市場を開放するというようなこと、さらに具体的に言えば、お互いに関税の障壁をもっと低くするとか、国内の税制というのはもっとやわらげるとかいうような、そういう享受組織までつくらないといかぬのであって、そういう問題を十分に研究して東南アジア諸国の政治の参考資料にするというようなところまで論議が進んだわけであります。次会はそういう問題を具体的に討議しようということになっておるのでございまして、これこそほんとうに東南アジア開発閣僚会議を開いたかいがあったと思うのです。ただジョンソンの十億ドルを当てにして、それを引き出すためにいたずらみたいなことをやっているというような批判があるとすればもってのほかのことであって、問題の実質を見誤っているきわめて低劣な見解からしかそういう結論は出てこないと私は考えるわけであります。  そういうわけで、今回の東南アジア開発会議というものはそんなものじゃない。しかし、そうやった結果、ぜひひとつ金を使ってくれということを言われれば、それは別に排斥する必要はないと私は考えております。
  115. 三原朝雄

    ○三原委員 いろいろアジア会議に関します一般的な問題もあるわけでありますが、時間もだいぶたちましたので、さっそく協定の内容について質問をいたしたいと思うのであります。  まず協定の総則面でお尋ねをいたしたいのでありますが、ここで「経済協力」というようなことばが出ておるわけでございますけれども、俗に経済援助または協力ということばがこうして使われるわけでございますし、先ほども大臣からこの点に触れられたのでございますが、そうした経済援助の本質と申しますか、それをひとつこの際明確にしておいていただきたいと思うのであります。  たとえば、全く民間経済ベースに立つ延べ払い輸出や投資は経済援助ともちろん言わないだろうと思いまするけれども、そういう点がやはり経済援助というようなことばの中でこなされておるというようなこと、そういうこともありますので、ひとつこの経済援助経済協力というようなものについての本質と申しますか、そういう点をここでひとつ明確にお願いをいたしたいと思うわけであります。
  116. 星文七

    星政府委員 協定の中には、いま御指摘のように、一番冒頭に「一層緊密な経済協力が重要であることを考慮し、」というような文字も使ってございますし、また第一条にも、経済成長とか経済協力を助長するというふうにうたっております。  実際アジア会議がどういうふうな形で経済協力をしていくかということは、今後の問題であろうかと思いますけれども、しかし一方、銀行はこういう使命を持ちながら、同時に健全な銀行経営というものをやっていかなくちゃいかぬという面もございますので、この点は今後銀行が設立してからの問題として取り上げるべきじゃないかというふうに考えております。
  117. 三原朝雄

    ○三原委員 いま申されましたように、経済協力という点の範囲とか性格というようなのは、なかなかむずかしい問題と思いまするし、今後の銀行運営ではっきりしてくるというようなお話がございましたが、その点をひとつ注視をしておきたいと思います。  次にお尋ねをいたしたいのは、やはりこの総論の中に「基本的性格においてアジア的である金融機関の設立が」というような字句が入っておりますが、アジア的機関とは一体どういうことを意味するのか。私もわかったようなわからぬような点があるわけでございまして、他の国際金融機関と比較しながら御説明を願いたいと思うわけであります。
  118. 星文七

    星政府委員 「アジア的である金融機関の設立」と書いてございますが、このアジア的という意味は、先ほども戸叶先生の質問に対して申し上げましたとおり、まずアジア人のイニシアチブによってできたという意味であるということが一つあると思います。それから資本の構成につきましても、域内国が六〇%持っておる。域外国が四〇%というふうなことになっておる。それからまた総裁もアジア人、エカフェの域内国から選ばれるというようなことになっております。それからまた理事が十名ということになっておりますけれども、この理事のうちの七名が域内国、三名が域外国というふうなことになっておりますので、そういう点がいわゆるアジア的金融機関ということであるのかと思います。  これを米州開発銀行とかあるいはアフリカ開発銀行などに比べまして、こういうアジア的な、地域的な色彩を強く発揮しているという点では、米州開発銀行及びアフリカ銀行とは、そういう点において差異があるということが申せようかと思います。
  119. 三原朝雄

    ○三原委員 次に第一条に関連して、これは先ほど戸叶委員からも御質問があった点でありますが、日本がかつてそうであったように、軍需工業の発展が国の工業の発展に寄与してきたことは事実でありまするし、現在アジア諸国もこういう発展過程をたどるものというような考え方を一部に持った人もおろうと思うわけでございますが、先ほどの御意見にもございましたように、銀行の目的というのが民生の向上、経済の発展だということにしてあるわけでありますが、しかし先ほどの戸叶先生のお尋ねのように、一部には軍需工業や、軍事的な面あるいは反共的な軍事経済機関というようなことまで言われるような事態でございますし、この点につきまして、ひとつ特に将来の銀行運営について考えておいていただきたいと思うわけであります。特にこれは説明は要りませんけれども、そうした問題が常に問題になりますので、そうした問題が杞憂に終わりますような運営であるべきだと思うわけであります。  一条でお伺いいたしたいのは、ここの末尾にございます「国際連合アジア極東経済委員会」すなわちエカフェ「の付託条項に規定する」云々とありますが、「付託条項」というのはどういう内容をさすものであるか、御説明願いたいと思います。
  120. 大和田渉

    ○大和田説明員 エカフェと申しますのは、御承知のように、国連経済社会理事会の下に置かれました四つの地域経済委員会一つでございます。そのエカフェがどういう任務を持つか、あるいはその活動はどういうふうに行なうのかというようなことを規定したものがいわゆる付託条項でございまして、国連経済社会理事会できめられたものでございます。その内容は十九項目からなっておりますが、任務、地域的範囲、加盟国議長の選出、報告書、本部所在地等々について規定してございます。
  121. 三原朝雄

    ○三原委員 それは資料としてあとでいただきたいと思います。  次に第二条の任務の点であります。二条の(ii)でありますが、「地域内の小加盟国及び低開発加盟国」という字句が並べてあります。特にこうして分けて書いてあるのでございますが、小加盟国というのは、普通の加盟国と、権利なり義務なり、そういうものの差があるのかどうか、そういう国はたとえばどういう国であるのか、なおまた、低開発加盟国というのがありますが、そういう点についても御説明を願いたいと思うわけであります。
  122. 大和田渉

    ○大和田説明員 具体的に小加盟国について、その権利義務が、加盟国として変わりがあるかないかという点でございますが、権利義務の関係では変わりない、同じく加盟国であるということは申し上げられると思います。ただこの第二項に規定してございますように、この銀行の任務を達成する際に特別の考慮を払うという点では、ほかの国とは違うということは申し上げられると思います。  それから具体的に、しからばどの国が小加盟国であるかという点については、結局は銀行の総務会が決定することになると思いますが、実際上、アフガニスタン、カンボジア、ラオス、ネパール、シンガポール、西サモア等々が小加盟国といえるのではないかと思っております。  それから低開発加盟国の点でございますが、これは協定第二十八条四項に総務会によって決定されるという規定がございますので、どの国が低開発国であるということの決定は、やはり総務会によって行なわれるというふうに解釈しております。
  123. 三原朝雄

    ○三原委員 次にお尋ねをいたしたいのでございますが、同じく二条の五項に国際機関との協力の問題があります。銀行の目的を達成する上に非常に有効であると思うわけでございますが、一口に国際機関といってもいろいろあると思いますが、そうした機関とどのような形態で協力されるのか、御説明を願いたいと思うのであります。
  124. 大和田渉

    ○大和田説明員 具体的にどのような協力をやるかという点につきましては、結局銀行が発足いたしましてからきまることであると思います。と同時に、いわゆる協力の対象である国際機関、これにはたとえば国際復興開発銀行国際金融公社、国連技術援助機関、国連の工業開発機関等々いろいろございますので、その性格に応じまして協力銀行が協議するということになると思います。
  125. 三原朝雄

    ○三原委員 まだ協定の内容の審議につきましては序の口でございますが、時間の都合があるようでございますので、私の質問は次会に保留させていただきまして、きょうはこれで中止をいたします。
  126. 高瀬傳

    高瀬委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後一時四分散会