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1966-04-20 第51回国会 衆議院 外務委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年四月二十日(水曜日)    午前十時二十八分開議  出席委員    委員長 高瀬  傳君    理事 安藤  覺君 理事 鯨岡 兵輔君    理事 永田 亮一君 理事 三原 朝雄君    理事 毛利 松平君 理事 戸叶 里子君    理事 穗積 七郎君       内海 安吉君    菊池 義郎君       野田 武夫君    黒田 寿男君       帆足  計君    松本 七郎君       竹本 孫一君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (欧亜局長)  北原 秀雄君         外務事務官         (経済局長)  加藤 匡夫君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局 渡部 正郎君         外事課長)         外務事務官         (経済局国際機         関第一課長)  宮崎 弘道君         外務事務官         (条約局外務参         事官)     大和田 渉君         大 蔵 技 官         (関税局鑑査課         長)      坪井 哲郎君     ————————————— 本日の会議に付した案件  アジア開発銀行を設立する協定締結について  承認を求めるの件(条約第二号)  関税率表における物品分類のための品目表に  関する条約及び千九百五十年十二月十五日にブ  ラッセルで署名された関税率表における物品の  分類のための品目表に関する条約の改正に関す  る議定書締結について承認を求めるの件(条  約第五号)  国際情勢に関する件(日中及び沖繩問題等)      ————◇—————
  2. 高瀬傳

    高瀬委員長 これより会議を開きます。  アジア開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件を議題とし、政府より提案理由説明を聴取いたします。椎名外務大臣。     —————————————    アジア開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件    〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ただいま議題となりましたアジア開発銀行を設立する協定締結について承認を求めるの件につきまして提案理由を御説明いたします。  この協定は、アジア及び極東の地域における経済成長及び経済協力を助長し、域内開発諸国経済開発の促進に寄与するためにアジア開発銀行を設立することを目的とするもので、昨年十二月四日、マニラで開催された銀行設立全権代表会議において採択されたものであります。  この協定は、銀行の当初の授権資本を十億ドルと定めるとともに、銀行の業務の詳細、総裁、総務会及び理事会等からなる銀行の組織、銀行に対する特権免除等について規定しております。そして、少なくとも十のエカフェ域内国を含み、かつ、授権資本の六五%以上を代表する十五の署名国批准書または受諾書を寄託したときに効力を生ずることとなっております。  アジアに位置し、かつ、エカフェ域内各国と緊密な協力関係にあるわが国といたしましては、この銀行の活動を通じてアジア地域における経済協力に積極的に貢献し、もってアジア諸国とのきずなをより強固なものにしてゆくためこの協定に参加することがきわめて望ましいとの見地に立ち、この銀行に対し二億ドルを出資することを予定している次第であります。  よって、ここに、この協定締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、すみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  4. 高瀬傳

    高瀬委員長 これにて提案理由説明は終わりました。  本件に対する質疑は後日に譲ることといたします。      ————◇—————
  5. 高瀬傳

    高瀬委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。戸叶里子君。
  6. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、この間、ソ連一等書記官ポクロフスキーという方が誘拐されたというような事件につきまして、この委員会質問をいたしました。そのときに、国際的にも外交官として守られている人が東京の中央で問題を起こされたということに対して政府の所信をただしたわけです。それはなぜかと申しますと、下田外務次官が、記者会見で、あれは単なるけんかであったというような発表をされておりましたので、はたして事実がそうであったかどうかということに対して私は質問をいたしました。ところが、日本側のほうはそう解釈しておっても、ソ連のほうでは必ずしも同じ気持ちではないということをここで北原さん自身説明をしているわけでございます。そこで私は、ソ連のほうもそのとおりけんかであったというふうに納得をするまでやはり事件真相をはっきりさせるべきである、こういう要望をつけて、この次までにはっきりさせてもらいたいということで、そのまま質疑を打ち切っているわけでございます。きょうは同僚の松本議員からもその点について質問があると思いますので、私は簡単に一問だけ伺いたいと思いますが、警察庁のはうでお調べになったと思いますので、この点についての真相をお聞かせ願いたいと思います。
  7. 渡部正郎

    渡部説明員 それではポクロフスキー関係につきまして、事件の概要につきまして取り調べた結果を概略説明申し上げたいと思います。  問題の事件が起こりましたのは三月十七日のことでございますが、警察がこの事件を知りましたのは、実は三月十七日の夜の十時三十分ごろ一一〇番がかかりまして、都内の港区の芝に清風苑アパートというのがあるのでございますけれども、そこで外人けんかをしているのですぐ来てもらいたいという通報があったわけでございます。それは後ほど調べてみますと、この清風苑アパート管理人の方が電話をかけてきた。そこですぐ手配がございまして、パトカー現場に参りまして、現場と申しますのはこの清風苑アパートの全体の入り口の付近でございますけれども、そこへパトカーが参りますと、日本人一人、これは先ほど申しました管理人でございますけれども、管理人を含みまして外人が八名、日本人一名、九名の者が現場にいたわけでございます。そこで、ことばもわかりませんので、とにかくトラブルがあったという状況がはっきりしていたわけでございますけれども、そのうち問題に関係していると思われます外人六名の方につきまして三田警察署任意同行を求めたわけでございます。六人の方とも全部快く警察要望を受け入れられまして、それから署に来ていただきまして、いろいろ事情を聴取したわけでございます。その後詳細な調べをいたしているわけでございますけれども、調べの経過について詳しく申し上げても時間の関係でなんでございますので、いろいろ調べました結果、こういうことであろうという話の本筋を概略申し上げたいと思います。  問題は実は二つ起こっておりまして、最初は、このアパートコロンビア人カルデロンという人が住んでいるわけでございますが、ポクロフスキー書記官も同じアパートに住んでおりまして、かねてから見知り合いだったのでございますが、その日ポクロフスキー書記官大使館から自分アパートに帰ってこられましたところが、アパート入り口のところでかねて見知り合いの同じアパートに住んでおります先ほど申し上げましたカルデロンさんが腹痛を起こして、しゃがみ込んでいるのを見つけたそうでございます。どうしたのだということで聞いてみますと、急に腹が痛み出した、そこで部屋に連れていってもらいたいということでございましたので、ポクロフスキー氏がカルデロン氏を助け起こしまして、部屋に連れていったわけでございます。それが、時間の点は正確にはあまりはっきりしませんが、十時前後であったと思われるわけでございます。部屋に連れていきましてドアをあけたわけでございますけれども、ドアをあけましたときに——その点で実はポクロフスキーさんとカルデロンさん、あと関係者として出てまいりますアメリカ人供述食い違いがあるわけでございますけれども、まずポクロフスキーさんの申し立てによりますと、ドアをあけて自分カルデロン氏を助けて部屋の中に入った、ところが中にアメリカ人らしい男がおりまして、それが自分攻撃をかけてきた、自分は非常にからだが敏捷なのでその攻撃をかわしたけれども、普通の者だったならば、あるいはなぐられるか何かしていたかもしれない、そういう状況であったのだということをポクロフスキー氏は申し立てているわけでございます。  一方、カルデロン氏の話によりますと、当時その部屋アメリカ人友人が二人たまたま来ておりまして、それでそのアパートは実は一つのフラットが二階になっておりまして、二階のほうに浴室とか便所があるわけでございますけれども、カルデロン氏並びに友人アメリカ人二人の供述をいろいろ総合して判断いたしますと、アメリカ人の一人がたまたまそのとき二階のトイレに入っておりまして、トイレが済んで、それとカルデロン氏が部屋に入ってきたらしいということがわかりまして——申し忘れましたけれども、カルデロン氏がなぜ外に出ていたかという点でございますが、カルデロン氏はその日商用香港に立つことになっておりまして、それでその前にちょっとビールでも飲もうということでアメリカ人友人を誘ってきたそうでございますけれども、飛行場に行くためにタクシーを拾いに出たわけでございます。その呼びに出て部屋を出たときに急に腹痛を起こした、こういうことになっておるわけでございます。それで、話が前に戻りますが、そのアメリカ人の一人が二階の便所からおりてきたその時点とポクロフスキー氏がカルデロン氏を助け起こしてドアをあけたその時間がちょうど一緒でございまして、そうしてポクロフスキー氏はドアをあけたとたんにアメリカ人が二階からおりてくるのを見たためであろうと思われますけれども、何か非常にびっくりしたような形で部屋には入らず、ドアをあけたとたんに、中にいたアメリカ人を見るととたんに逃げてしまった、ポクロフスキー氏はなぜ逃げたのかわからないけれども、自分は腹が痛いものですからそのまま中へ入りまして、中におった知り合いアメリカ人冷蔵庫から薬を出してもらって手当てをした。  第一の事件と申しますか、できごとというのは、概略以上申し上げたようなことでございまして、ポクロフスキー氏とカルデロン氏その他アメリカ人との供述は食い違っておりますけれども、いずれにしましても関係者いずれもけがをしているわけでもございません。物を取られたわけでもございません。かりに何らかの被害があったといたしましても、非常に僅少であるというのがわれわれの判断でございまして、第一の現場ではそういうことが起こったわけでございます。  それから三十分ほどたちまして、ちょうど一一〇番がかかるちょっと前ということになるわけでございますけれども、腹痛もおさまりましたので、カルデロン氏が香港に行くというので、荷物を持って外に出た。その部屋に来ておりましたアメリカ人二人も、それを見送りがてら帰ろうということで、連れ立ってカルデロン氏の部屋を出たわけでございます。そうしまして、そのアパート全体の入り口——ちょっとその前が庭になっていて、噴水なんかございますけれども、アパート入り口のところに差しかかりますと、ポクロフスキー氏とそのほかソ連人——これはあと調べて、いずれも大使館の方だというのがわかったわけでございますけれども、男のソ連人大使館員が二人、それからその大使館員奥さんポクロフスキーさんの奥さんともう一人ほかの館員の奥さん現場におりまして、そこでおそらく詰問しようと思ったのじゃないかと思われる状況でございますけれども、カルデロン氏以下二人のアメリカ人を、おまえはだれだ、どこへ行くのだというようなことになったわけでございます。ところがことば関係でよく通じませんので、そのときからすでにちょっと混乱が起こりまして、カルデロン氏とアメリカ人の二人は、何が何やらわからないで行こうとするのを引きとめる形になりまして、そうしてそのときポクロフスキー氏ほかソ連大使館の方二人と、それからポクロフスキー氏の奥さん相当攻勢に出まして、十分ぐらいの間ですけれども、手に持っていた荷物を引っぱったり、あるいはアメリカ人を地面に押し付けたり、その上に馬乗りになったり、それからポクロフスキー氏の奥さんは、かさみたいなものでアメリカ人をなぐるというような状況になりまして、それでそのアメリカ人のほうは、めがねをそのため飛ばされてしまった。それから腕時計のバンドが切れて飛んでしまった。破損してしまった。双方ともそういうもみ合いで、かすり傷程度を負ったという状況であるわけでございます。たまたま十分前後の騒ぎ、一応警察的にいいますと、暴行傷害容疑ということになるわけでございますけれども、その現場に、このアパート管理人の方が通りかかりまして、そして、この方は日本人でございますので、ことばアメリカ語ソ連語も全然わからない、これはたいへんだということで、一一〇番に知らせてくれた。大体そういう状況でございます。  それで、警察といたしましては、その後双方方々に対して十分な取り調べを行なっております。ポクロフスキーさん、ほかソ連の男の方はソ連大使館員の方であるということがわかりましたので、これは刑事免責特権のある方々でございますので、警察といたしましては、大使館承認がないと取り調べその他は差し控えるという慣例になっておりますので、この件に関しましてもソ連大使館了解を求めまして、その了解のもとに取り調べに応じていただきまして、取り調べをやったわけでございます。アメリカ人のほうは観光者でございまして、間もなく帰国する予定だったのでございますけれども、事がなかなか重大でございますので、こちらの要望日本にしばらくいてもらいまして、十分な取り調べをしたわけでございますけれども、その結果、大体以上申し上げましたような状況がわかったということになっております。  なお、いま御説明申し上げました点について、何か特に御質問がございましたならば、また追加させていただきたいと思います。
  8. 戸叶里子

    戸叶委員 いま説明の中でも、ポクロフスキー氏とカルデロン氏、それからアメリカ人三人の供述が違っておるということでございますが、やはりそこら辺にも何か問題があるのじゃないかと思うのです。いま、このアメリカ人が、たいへんに、めがねを飛ばされた、なにをしたというようなことをおっしゃったわけですけれども、それはアメリカ人の側のほうでそういうことを事実として言われたことでしょうと思いますが、問題は、そのソ連ポクロフスキー氏が、単なるけんかであったのだ、そしてまたそういうふうなことも私のほうはいたしましたというようなことで納得をされたかどうかということに問題があると思うわけです。納得をしないで、これは単なるけんかに終わってしまいましたということだけ日本政府が解釈をしていても、その間に了解なり納得がいかなければ、あとで問題を起こすわけでございまして、こういう点について、やはりもっとはっきりさせていただきたいと思うわけでございます。その点を一点だけ伺いまして、あと松本委員質問を譲りたいと思います。
  9. 北原秀雄

    北原政府委員 この点、先日戸叶委員から御質問がございましたが、その後現在までのところ、本件の結末と申しますか、結果につきましてソ連側当局とはまだ話しておりませんが、近くこちらの大使館側とも連絡をとりまして、この点御質問の御趣旨を念頭に置きまして、なるべく双方了解を近づけるという努力をしていきたいと思っております。
  10. 高瀬傳

  11. 松本七郎

    松本委員 この問題は、先ほどから警察当局の十分な報告はまだ聞いておりませんから、はっきりしませんけれども、やはり過去においてソ連外交官が諸外国で誘拐されたというような事件はたくさんあるわけなんです。だからソ連側としては、やはりこの事件は単なるけんかではないという主張を変えていないだろうと思うのです。警察調べが十分なされた上で下田次官がこれは誤解に基づく単なるけんかだというような記者会見発表をするならわれわれもわかるのですけれども、十分な根拠なしに次官がああいう記者会見発表されることが一つの問題だろうと思うのです。だから、それならば、それだけの根拠があるのかどうかということをわれわれとしては追及をしたいわけなんです。  そこで警察庁外事課長さんの御説明で、私はもう少し聞いておきたいと思いますのは、第一、コロンビア人アメリカ人二人の身分ははっきりしておるのですか。その点をまず伺っておきたい。
  12. 渡部正郎

    渡部説明員 カルデロンという同宿しておりましたコロンビア人は、ちょっと外国語で読みにくいのでありますけれども、エクスポルタドラフェニックスという会社のヨーロッパ駐在員でございまして、バイヤーといいますか、そういう仕事をやっている人でございます。  それからアメリカ人のほうは、二人ともこれは本人申し立てで、旅券にもそう書いてあるのでありますが、エコノミック・コンサルタントというふうに言っております。
  13. 松本七郎

    松本委員 それらの人は、住所なんかははっきりしておりますか。
  14. 渡部正郎

    渡部説明員 住所もはっきりしております。コロンビア人のほうは、コロンビア国ポコダカラテラ十番地というふうになっております。  アメリカ人のほうは、一人はバージニア州のマクリン市フォレストビラ二百二十三番地、もう一人は、バージニア州のビエナ市コービ街の八千六百番地ということになっております。
  15. 松本七郎

    松本委員 そしてそのコロンビア人はもう日本にはいないのですか。香港へ行ってこっちへ帰ってきているのですか。
  16. 渡部正郎

    渡部説明員 このコロンビア人のほうは市場調査のために日本に昨年から入国しているわけでございますけれども、商用のために三月の十九日に香港向け出国しております。
  17. 松本七郎

    松本委員 それは香港から日本にはもう戻らないのですか。アパートの契約なんかはいつまでになっておりますか。
  18. 渡部正郎

    渡部説明員 いまのところ戻る予定というのは聞いておりませんが、アパートはまだ契約したままでございます。ときどき日本に来ているようでございます。
  19. 松本七郎

    松本委員 それで、最初に行った警察麻布警察でしょう。われわれの調べたところでは、最初麻布の小山町の警察か何かに行ったのですね。
  20. 渡部正郎

    渡部説明員 パトカーが参りましたのは三田警察からでございます。
  21. 松本七郎

    松本委員 そこでポクロフスキーさんとすれば、なるべく一緒調べてほしいということを強く要請したようです。それは食い違いなんかがあることを考慮してのことでしょうけれども、しかしコロンビア人並びにアメリカ人はどうしても一緒調べを拒否して、当座はなかなか身分を明かさなかった。それでしばらく待機しているうちに、署長の命令によってこれは別々に調査に入ったということなんですが、その事実はどうでしょうか。
  22. 渡部正郎

    渡部説明員 まず二、三の点があると思いますが、一つの点、アメリカ人は署に連れてまいりましてからすぐ名前を言っております。それからソ連側のほうで一緒調べてほしいという要望は聞いておりません。それからもう一つの点は、一緒調べるという点でございますけれども、これはやはり第一と第二の事件、先ほど申し上げましたような関係がございますので、この種の事件は原則として別々に調べるのが捜査のやり方ということになっているものでございますから、そういうことでそう扱ったのでございます。
  23. 松本七郎

    松本委員 私はこのポクロフスキーさんというのも知っているのですが、非常におとなしいまじめな人で、この人がやはり心配しているのは、カルデロンとは従来は廊下で二、三回会ったきりなんだそうです。それでその日も、あなたの言われるように非常に腹痛を起こしたといって、薬を冷蔵庫にとりに行きたいからぜひ一緒部屋に入ってくれ、こう言ってかぎを渡した。それでかぎをあけたとたんに別な人が部屋にいた。それを見てその瞬間にカルデロンのほうも腹痛どころじゃない、えらい元気になっている姿を見て、これはただごとではないというので部屋を出ようとしたところが、腕をつかまえられた、こういうのですが、そういうところの調査が、警察調べでは何か誤解だというふうにとっているところと、それからソ連の御当人にすれば、何かもっと深いものがあって計画的に自分を引きずり込んで、そこに人が待機しておった。もう一人のアメリカ人はどこにいたということはちょっとはっきりしないのですが、この御本人に聞くと、これはただごとではないというのですぐ自分ソ連大使館に行って、そして協力を求めて戻ってきたところが、今度は三人になっていて、そしてかばんを持って車に乗ろうとしている。それでこれはもう明らかに何か意図があって、失敗して逃げようとしているのだというので、それを阻止しようとすることからけんかになったわけですね。それでその奥さん管理人のところへ行って救助を求めて、一一〇番の電話ということになったらしいのですよ。だからそこらのところが私はもう少し警察としては追及すべき点じゃなかろうかと思うのです。どうでしょうか。
  24. 渡部正郎

    渡部説明員 もう一人のアメリカ人はそのときに二階にいたわけでございます。それから、腕をとらえられたというお話でございますけれども、ポクロフスキーさんはそういう意味のことを言っておられますけれども、先ほど申し上げましたとおり、アメリカ人それからコロンビア人のほうは、そういうことはなかった、ドアの外で姿を見て逃げ出した、こういう申し立てをしているわけで、その点の供述は食い違っているわけでございますけれども、目撃者もございません。証拠というようなものもございません。それよりも最初に申し上げましたように、警察的に犯罪という観点から見ますと、事案は非常に軽微でございまして、何らの肉体的ないしは物的な被害が起こっておりませんので、もし第二の事件が起こらないとすれば、第一の事件だけですと、これは警察としてはほとんど問題にする必要のない程度事件であるわけでございます。  ただ、ちょっと補足的に申し上げますけれども、四月十四日の新聞で、ソ連政府がモスクワのアメリカ大使館を通じてアメリカ政府覚え書きを出したというのを私も読んだわけでございます。事件が起こりましてから一カ月近くたっておるわけでございますが、そのときまで、そういうニュアンスの事件ということは私自身全然考えておりませんで、この事件を忘れていたような状況でございます。この新聞が出ましたので、ソ連覚え書きにいっておりますポクロフスキー氏の関係したような事件ということになりますと、この事件しかございませんので、もう一度当時の状況を復習していろいろ聞いて書類なんかを見たわけでございます。第一の事件が非常に軽微なものであったにもかかわらず、なぜ第二の事件相当攻勢に出たか、その心理というものを考えてみますと、これは私の判断でございますけれども、ドアをあけたとたんに思いがけなく中に人がいたというようなことで、ポクロフスキー氏が何らかのことを考えたのではなかろうかということは十分察知できるような状況だというふうに私は思っております。
  25. 松本七郎

    松本委員 国際的な誘拐事件——誘拐意図があったかどうかというようなことになってきた場合には、これはどうなるのですか。一方が外交官であって外交特権を持っている。外務省が警察に依頼して初めてそういう点にまで調べるわけですか。いまのお話では、警察という立場からいうと、きわめて軽微な事件ということになるかもしれないと思いますが、しかし誘拐の意図があったということになれば、これは外交上は非常に大きな問題だし、そこのところの警察と外務省の関係はどうなっておりましょうか。
  26. 北原秀雄

    北原政府委員 本件は即刻警察のほうからの調査の連絡を受けまして、外務当局といたしましては、もちろんいまの御心配になっておられますような点をも十分考慮に入れた上で、警察側と十分協議いたしたわけでございます。その結果として、本件はやはり誤解に基づく軽微の乱闘事件ということに私どもは結論を得たわけでございます。
  27. 松本七郎

    松本委員 その誤解というのは、どこのところが一番誤解の焦点なんですか。部屋に入ったときのことですか。
  28. 北原秀雄

    北原政府委員 私ども本件についてソ連大使館の代表者と話し合いましたときに、最初ポクロフスキー氏が部屋に上がってまいりましたときに、中に思いがけなくほかの人がいたということで、おそらく非常な疑念を持たれたのだろうと思います。そのときに、むしろ第二の事件の起こります前に、その事件の直後、日本警察に御連絡願えれば、事件は最も円満に片づいたのではないかということを、私どもはソ連側の代表者にも申したわけです。この点、日本側警察に何も連絡なくして、直ちに第二の事件のほうに当事者間で移っていったわけでございますが、そのためにある程度の実力行使というところに移ったという点を、私どもとしては非常に残念に思っているわけであります。
  29. 松本七郎

    松本委員 そうすると、第一の事件についてもう少し調べるということは可能なわけでしょう。
  30. 北原秀雄

    北原政府委員 先ほど外事課長から御説明があったと思いますが、確かに両方の供述食い違いがあることはあるわけであります。その食い違っている点をできる限り純粋に客観的な立場で、第三者的な立場から考えますと、やはりひょっとした、何と申しますか、思いがけなく人がいたということからして、関連したお互いの行動が非常に誇張されて感じられたんではないかというふうに私どもは考えております。
  31. 松本七郎

    松本委員 だから、思いがけなく誇張と言われるけれども、一方から言えば、しかるがゆえにこれは何らかそこに誘拐の計画があるんじゃないかという疑いが出ているわけですね。その点、もう少し当事者の納得できるような調べというものは今後さらにできないのでしょうか。それは偶然なものであるということがはっきりすれば初めて了解されることであって、何かやはりそんなに親しい友だちでもなかった、ただ廊下で二、三回会った程度のものだったし、それが腹痛で救助を求めた、入ってみたらアメリカ人がいたということで、それが単なる偶然だということだけを納得させようと思っても、私は無理じゃないかと思う。そこのところの調べというか、もう少しあらためて追及していただけないものでしょうかね。
  32. 北原秀雄

    北原政府委員 確かに現場において起こりました事件だけをあくまでも詰めて考えますと、ある程度の御疑問が残るかもしれませんが、警察当局といたしましては、当事者つまり、米国人の米国におけるいろいろなステータスの問題とか、コロンビア人の身元の問題とか、そういう点を調査された結果、全般としてこれは背後関係はないという結論に達せられたわけでございます。外務当局といたしましても、一応警察当局の責任ある調査の結果に基づきまして、それから私どもの立場からする考慮をも入れまして、大体この事件はそういう性質のものだというふうに結論を出していいんじゃないかということで、そういう結論に達したわけでございます。
  33. 松本七郎

    松本委員 いまのアメリカ人だとかコロンビア人の立場というようなものについての報告は受けることができますか、いまでなくても……。
  34. 北原秀雄

    北原政府委員 関係当事者の身元その他のあれにつきましては、警察当局としましても、現在判明している点でこの事件判断するのに大体十分だというふうに考えておられます。外務当局といたしましても、われわれ知り得た材料で大体もう十分じゃないかというふうに考えております。
  35. 松本七郎

    松本委員 十分かどうかわれわれが判断するのには、いままで調べ程度のことを詳細に聞かないことにはこっちは判断しようがないのだから、だからいままで調べられたことを、いまでなくとも詳しく報告を受けることができますかと言っておるのです。きょうの御説明だけではわれわれ納得できないものですから……。
  36. 渡部正郎

    渡部説明員 警察取り調べました限りにおきましては御報告することができると思います。  なお、補足的でございますけれども、事件当時、先ほど申し上げましたように、ソ連方々大使館了解を得て取り調べをしたわけでございますが、そのときに警察に対して、ポクロフスキーさんはもちろんですけれども、そのほかのソ連方々も、相手のアメリカ人が何かそういう特殊なバックグラウンドがあるのではないか、それをよく調べてくれというようなことは全然申しておられません。そういう事情もございまして、われわれとしては、当時先ほど申し上げましたようなモスクワで抗議をしたという新聞が出るまでは、そういう形で問題になる事件とは全然思っていなかったわけでございます。第一の事件、第二の事件とも数回にわたってあらかじめ取り調べをしておりまして、その結論から、第一の現場で何らかの誤解ポクロフスキー氏にあったということは、あとになって想像されますけれども、しかし当時の取り調べとしましては、十分取り調べた結果、単純な誤解に基づくといいますか、そういうことで、第二の事件に関連していった、そういうふうにしか考えられないというのがわれわれの判断でございます。
  37. 松本七郎

    松本委員 そうすると、ソ連大使館から外務省に、あらためてその背後関係をもう少し調べてほしいという要請がある場合には、さらに調べるおつもりですか。
  38. 北原秀雄

    北原政府委員 一応私ども外務省としましては、ソ連の代表者に対しまして調査の結果を詳しく説明いたしました。その際ソ連側の代表者からは、ひょっとして何らかの背後関係はありませんかということを聞かれました。私どもはもちろんその点を十分注意して警察当局と協議の上結論に達したわけでございますので、その結論に基づいて十分背後関係はないと思うということを丁重に御説明した次第でございます。先方としては全部納得したともしないともはっきりしたお話はございませんでしたが、私どもの先方に説明した調査の結果については、先方もこれを十分尊重する用意ありというふうに私どもは解釈いたしたわけでございます。
  39. 松本七郎

    松本委員 どうもこの点われわれが判断するについてはまだ十分とは思わないのですけれども、いままで調べたところの範囲では御報告願えるそうですから、あらためましてまた警察のほうのアメリカ人の身元その他についての調査の報告を受けたいと思う。きょうはこの程度にしておきます。      ————◇—————
  40. 高瀬傳

    高瀬委員長 関税率表における物品分類のための品目表に関する条約及び千九百五十年十二月十五日にブラッセルで署名された関税率表における物品分類のための品目表に関する条約の改正に関する議定書締結について承認を求めるの件を議題とし、審査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。戸叶里子君。
  41. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいま議題になりました関税率表における物品分類のための品目表に関する条約とそれに関連しての議定書締結についての承認を求めるの件について若干の質問をしたいと思いますが、これはいまの基本的な協定議定書と二つだけでございますか。
  42. 大和田渉

    ○大和田説明員 議定書条約は、議定書に規定がございますように不可分一体になっております。それで条約のほうは五〇年に作成されまして効力が発生しないうちにそれを修正する議定書というのが採択されました。その議定書の中に条約、それを改正する議定書も同時に効力を発生するというふうに書いてございます。したがいまして、実質的な内容から申しましても法律的にも一本であるというふうに解釈しております。
  43. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、条約、それからそれに関係した議定書、これは両方で一本である、こういうふうに解釈していいわけですね。
  44. 大和田渉

    ○大和田説明員 お説のとおりでございます。
  45. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで、私配付されました書類を見ておりますと、もう一つ関税率表における物品分類のための品目表に関する条約第十六条の改正」というのがあるわけです。その十六条の改正というのは、やはり承認を求めなければいけないのじゃないですか。
  46. 大和田渉

    ○大和田説明員 お配り申し上げました十六条の改正の点は、実は現在われわれが入ります条約の中にすでに入ってしまっているものなんでございます。したがって、お手元に配付しました条約がございますが、そこに書いてある十六条というのは別冊でお配りいたしました第十六条の改正という十六条によってすでに置きかえられているものなんです。この改正それ自身は、すでに昨年の九月三十日に効力を発生しております。したがいまして、現在わが国がこれに入るという場合には、その改正された十六条を織り込んだ条約及びその条約を改正する議定書に入るという形になっております。
  47. 戸叶里子

    戸叶委員 ちょっと私はのみ込めないのです。たとえば、いまのような場合は、一つ条約並びにその議定書、それからもう一つ十六条の改正と別の形で出すべきじゃないですか、全部承認を求めなきゃならないのですから。やはり十六条の改正というものは一つ条約として、条約といいますか、条約の改正としてあるのですから、それを出すべきじゃないですか。
  48. 大和田渉

    ○大和田説明員 先ほど御説明申し上げましたように、この十六条の改正というのは、すでに効力を発生する前でございましたら旧十六条に基づきまして受諾という手続が必要であったと思いますが、現在すでにその条約の十六条は新しい十六条に置きかえられているわけでございます。新しい十六条によりますというと、それまでに行なわれた改正はすでに受諾されたものと見なすという規定がございますので、すでに効力が発生したその改正された条約に現在わが国が入ろうとしているわけでございますが、その際には新しく受諾の手続は必要でないというふうに解釈しております。  十六条を特にお配り申し上げた理由は、かなり重要な内容を持っているという意味で御参考のつもりでお配り申し上げたわけでございます。と申しますのは、品目表の改正というのはこの議定書によりまして非常に大きくかわっておりますが、その前にも小さい改正がございます。しかし、それは議定書の付属の品目表の中にすべて織り込まれているわけなんでございます。特に十六条については、内容が重要である、技術的な内容であるという意味で御参考までにお手元にお配りしたわけなんでございます。
  49. 戸叶里子

    戸叶委員 十六条の内容が重要であればあるほど、やはりそれをはっきりさせる必要があると思うのです。それでここで参考とおっしゃるのですけれども、参考として出されるならばこの物品分類のための品目表に関する条約十六条の改正というところになぜ参考というふうにお出しにならなかったのですか。私がそれを質問いたしますのは、日韓条約のときにこりごりしておるわけです。というのは、日本と韓国との間の条約等に関する件ということで全部のものを総括してぽんと出してきたわけです。あのときにいろいろ論争の行なわれたことは御承知のとおりでございます。あの中で私どもは強行採決されたために質問ができなかったのですけれども、重要な問題がありました。たとえば請求権の放棄というような問題ですけれども、請求権の放棄というものは国会の承認を経なければならないにもかかわらず、請求権の放棄に関する共同声明ですか、何か出されたときには、ちゃんと参考という字が書いてあったわけです。そういうふうな形で一括して出されてしまいますと、すべての議員は、今度こういうものの改正があった、こうだああだということをそれほど勉強できないと思うのです。ただ公報なり何なりに載ったものを読むことによってこういうものが外務委員会なら外務委員会に提示されているなということになるわけですね。そうしますと、ここで十六条の改正のそういう大事な問題が審議されたことすらもわからなくなるというような形で一括上程されてしまうということが今後においても私は起きるんじゃないかと思うので、その点をもっと明確にしておいていただきたいと思うのです。質問がおわかりですか。
  50. 大和田渉

    ○大和田説明員 確かにお手元にお配り申し上げました十六条の改正に参考という字を落としておりますが、これはわれわれの責任でございまして、申しわけないと思います。ただ、内容的には先ほど御説明申し上げたとおり、これは参考という趣旨でお配りしておるのでございます。
  51. 戸叶里子

    戸叶委員 参考なんですか。参考という字をここに書かなかったほうが間違っておるのですか。
  52. 大和田渉

    ○大和田説明員 さようでございます。
  53. 戸叶里子

    戸叶委員 私はこれを見まして、参考でもないし、これは表にも出されておらない、一体どういうことかなということがまず一つだったのです。それからもっと原則的に言いまして、やはり先ほどから御説明がありましたように、十六条の改正というものがたいへん内容的に重大な問題であれば、それをやはり説明の中に入れて国会の承認を求めなきゃならないものじゃないかと思うのです。と申しますのは、日本はいままでこの条約議定書を批准しておらなかったのです。批准していなかったからこそこの十六条を参考という形で出されたかしれません。しかし、もしも十六条の前にこの条約議定書を批准していたとするならば、今度新しく出るときには十六条の改正について承認を求めるの件として出ると思うのです。手続上そうじゃないですか。
  54. 大和田渉

    ○大和田説明員 この改正の十六条が効力を発生する前でございました場合には、いわゆる旧十六条が適用になるわけでございます。旧十六条を適用されているという場合に、もし日本が加入するという場合には、お説のとおりこの新十六条の改正については国会の承認を求める行為があったはずだというふうに考えております。
  55. 戸叶里子

    戸叶委員 どうも納得がいかないのですよ。だとするならば、やはり一括して等という形で解決されるんじゃなくて、条約議定書とそれから十六条の改正と三つの案件をちゃんと提出すべきじゃないですか。何かその間に何々等ということでいろいろな問題を、はっきりさせないと言ったらおかしいですけれども、日韓条約等で見られるような提出のしかたというものがだんだんやられるんじゃないか。そうすると、気がつけばいいですが、気がつかないときはその内容がよくわからないと思うのです。そういう出し方は私は考え直すべきじゃないかと思うのですけれども……。
  56. 大和田渉

    ○大和田説明員 私の説明が不十分な点があったのではないかと思いますが、もう一度繰り返しますが、新十六条がすでに効力を発生しておるわけでございます。その前提の上でいま日本が入るという問題になりますと、条約そのものといたしましては、その第十六条は改正された十六条になるわけでございます。したがいまして、その改正された第十六条に基づきまして、それに入るということになるわけでございます。実際には、もし国内法の改正のように、改正がございましたその条文がすでに法律の中に織り込まれているという場合には、その条約を提出いたしまして御承認を得るということになると思いますが、条約の場合には、いわゆる認証謄本というのは当初つくりましたその原文がございまして、そのあと改正されたものはその中に織り込まれない形で存在しているわけなんでございます。実質的には、先ほど来御説明申し上げましたように、この十六条というものはすでに効力を発生しているわけでございます。したがいまして、それに入るという場合には、すでに効力を発生しているものについて、その個々について御承認を得るということではなくて、改正されたその条約に入るということについて御承認を得るという形になると思います。  それから国会への提出の形式の問題でございますが、私、日韓のことをいまここでいろいろ御説明申し上げるほどの資格はないと思いますが、一番最初に御説明申し上げたように、このたびこれについての御承認を求めているのは、条約及びそれを改正する議定書、その議定書条約と不可分一体となっておりますので、一本のものについて御承認を得、内容的には十六条の改正というものがすでに織り込まれ済みであるということでございます。ただ、先ほど先生から御指摘のように、重要なものもそうでないものも、一体これがどうなっておるのかわからないという御趣旨のお話がございましたが、私のほうでも実はそれを考えたればこそ、この十六条というものは重要であるということで特に別にこういうふうに説明の機会をあれする意味で御提出申し上げたということでございます。
  57. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、はっきりしたことは、ここで参考という字を記しておくべきであったのにそれを落とした。今後においてはそういうふうにおつけになると思いますけれども、それが一つと、それからもう一つは、この十六条というのはすでに改正をされたものであるけれども、すでに効力を発生して、そうして、今度の条約の中に含まれているのだということが一つと、それからもう一つは、もしも日本最初条約及びそれの改正された議定書というものを先に日本で批准していれば、そうしてこれだけが出る場合には、これを一本として国会の承認を得ることになるのだ、これだけのことが私ははっきりしたと思うのですが、それでよろしいわけでございますか。
  58. 大和田渉

    ○大和田説明員 お説のとおりでございます。特にこれだけを国会の御承認を得るというのは、これが効力を発生する前は旧十六条が有効であったわけでございまして、旧十六条によりますと、改正の受諾ということがうたわれております。したがって、その受諾のためには国会の御承認を得るという措置が必要であったはずなんでございます。ただ、先ほど来御説明申し上げますように、現在はこれがすでに効力を発生して、それが条約の中に織り込まれているという状況にあるわけなので、現在入る日本といたしましては、条約とそれと不可分一体である議定書、この一本のものに入るという趣旨でございます。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 まあ、私どものようなしろうと考えからしますと、やはりこの条約とそれから議定書ともう一つ十六条の改正というものと三本の——三本といいますか、実質的には二本ですけれども、その三つを並べて承認を求めるの件というふうにすべきではないか、ことに参考という字がなかったものですからそれを考えたわけでございますけれども、そうすると、今後においても、条約ですと、改正をされましても大もとの条約日本がもしも入っておらない場合には、改正されたものがあとから出ましても、改正というものを二本の形で出さないで、一本にくるめた形で出すと、こういうふうに了解していいわけですか、条約の場合には。
  60. 大和田渉

    ○大和田説明員 その個々の条約の規定のしぶりにもよりますが、一般的に申しましていま先生のおっしゃるとおりであると思います。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 半分はわかったような、半分は納得のいかないような気がするのですけれども、それでは二番目に伺いたいことは、現在この条約加盟国は二十一カ国と了解しているわけですけれども、その関税率表に準拠している国は何カ国ございますか。
  62. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 ブラッセルの関税分類表を採用いたしております国は、先ほど先生の御指摘のございました二十一カ国を含めまして、現在約七十カ国でございます。そのほかに独立国ではございませんが、この関税分類表を採用しております関税地域が十一、約十ございます。なお、現在ブラッセルの関税分類表の採用を考慮中と伝えられている国が二十足らずございます。もし最後の国も採用いたしますと、主要貿易国中ブラッセルの関税分類表に準拠していない国は、大体いわゆる共産圏諸国とそれからアメリカとカナダ、主要国中ではそういう国が採用していない国として残るわけでございます。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、いま準拠している国で条約に加盟する見通しのあるのが二十一カ国とおっしゃいましたか。
  64. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 現在加盟しております国が二十一カ国であります。そして加盟しておりませんけれども、大体ブラッセル関税分類表に準拠しております国が五十カ国、あわせて七十カ国あります。そのほかに関税地域が約十、それから現在ブラッセル関税分類表を採用しておりませんけれども、採用を考慮中と伝えられる国が、そのほかに約二十足らずあるわけであります。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 いまおっしゃったように、共産圏とアメリカとカナダ、大きな国としてアメリカとカナダがあげられたわけですけれども、アメリカとカナダはどうして加入してないわけですか。
  66. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 関税分類表につきましては、各国それぞれいろいろ歴史的な事情もございましょうし、現にわが国も昔はブラッセルの分類表を採用していなかったわけでございます。その後、大体数年前のころ、昭和三十六年にブラッセル関税分類表に大体準拠した分類表を採用することになりまして、わが国の関税定率表をこれに大体準拠したように変えたわけでございます。米国、カナダ等がこれを採用しておりません理由は、何と申しますか、これは一つには従来から歴史的に見ましても米国は関税制度につきましてかなり独自性が強うございまして、自国独自の分類体系をずっと以前から採用しておるということでございますし、かつ関税分類表は条約とは直接に関係ございませんけれども、その姉妹条約でございます関税評価に関する条約というのがございますが、評価のやり方につきましても米国はFOB制度を採用しておりまして、関税評価に関します条約で定めておりますようなCIF建ての評価の方法をやっていないわけでございます。したがいまして、その点もございますし、それからさらになぜこのブラッセル関税分類表に分類がえしないかという理由のこまかいほうの理由の一つかと思いますが、従来から米国はほかの国に比べますと、いわゆるガットの関税譲許というものが非常に多うございまして、米国の税目の全体の九〇%程度までガットで関税を譲許しているわけであります。ちなみに、わが国は品目数で約三〇%ございますが、関税分類体系を切りかえる場合に譲許品目についていろいろと再交渉まで必要になってまいります。それからまた単に分類表を変えただけではなくて、輸出入の統計の変更も必要とするというような事務的なトラブル、問題もあるやに聞いております。そこで米国、カナダは従来どおり独自の体系を維持しておるという事情にあるように考えております。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 いま伺っておりますと、その国の国内の事情によって加入してないようでございますけれども、そういうことになりますと、加盟しないということによりまして、関税の交渉とか貿易の統計の比較などをする場合に何か障害が起きてくるようなことがあるのじゃないかと思うのですけれども、この点はどうですか。
  68. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 障害と申しますとあるいはちょっときつ過ぎるかと思いますが、関税交渉その他あるいは貿易統計の比較の面で、事務的には煩瑣と申しますか、いろいろと換算したりあるいは概念規定をしたりするということにつきまして事務的な作業を要するということはございます。したがいまして、たとえば関税交渉をいたします際に、お互いに譲許しました品目の範囲を確定するという作業が常に、特に日米の場合にはつきまとうわけでございます。その場合にわがほうはBTN条約に参加いたしますと、わが国の関税分類等は、BTNで統一された一つの解釈の範囲の確定のルールがございまして、それに準拠してできる。先方のほうは、そのつど先方の範囲を十分詰めまして関税交渉を妥結させるという、その意味におきましては、事務的にはやや煩瑣な手続を要するということはございます。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう、手続を煩瑣にしないで国際的な貿易を円滑にできるようにというねらいで日本は入っているのじゃないですか。
  70. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 先ほど申し上げましたBTNの分類体系に基づいております国につきましては、その手続は比較的煩瑣な度合いが少ないということは言えます。米国の場合はいま申し上げましたように、双方分類体系が違いますので、やはり若干の煩瑣はやむを得ないというわけでございますが、これはただ米国がいろいろ国内事情の理由その他の理由で入らないということになっておりますので、いたし方ないと申しますか、そういうことになるわけでございます。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 貿易をスムーズにするために、分類表をきちんとしておけば話をするのにたいへん簡単でうまくいくのに、入らないで、しかも日本とアメリカとはたくさん貿易をしているのですから、いろいろとそのつど手続上にはめんどうなことがあると思うのです。そういうことがないねらいで入っておりながら、結局そういうことがあるということに私たちは非常に矛盾を感じるわけですけれども、それはあなたに申し上げても、アメリカの国内ですることですからしようがないといたしましても、それじゃアメリカはもう全然これに加入する意思はないわけですか、そういう話はしたことはないですか。
  72. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 現在のところ米国政府といたしましてはこれに加入する意思を表示したことはございません。ただ、関税分類ではなくて統計分類のほうにつきましては、何とかほかの国の統計分類のしかた、これはSITCというものが統計分類のほうにございますが、そちらに近づけようという動きは出ております。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 そこら辺ちょっと問題はあると思います。  そこでもう一点お伺いをしたいのは、国連の編さんによる標準国際貿易分類というのがあると思うのですけれども、それとこれとの関係はどういうことになるのでしょうか。
  74. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 国連の分類とBTNとの関係でございますが、御指摘の標準分類、これをSITCと略称いたしておりますけれども、一九五〇年にそういう分類方法を国連でつくったわけでございますが、これとBTN——ブラッセル関税分類体系と申しますが、それと関連づける可能性を検討いたしますために、国連及び関税協力理事——これは日本も国会の御承認を得まして参加しておりますけれども、この関税協力理事会その他の関係国際機関の専門家が一堂に会しまして研究しました結果、一九六〇年に国連経済社会理事会の統計委員会からいま申し上げました国連の貿易統計分類SITCとブラッセルの関税分類BTNとの結びつきを可能ならしめるために従来のSITCのほうを一部修正いたしまして、他方関税協力理事会はブラッセルの関税分類BTNにSITCの統計番号を組み入れたモデルを作成いたしまして、各国が自由の関税率表にそのモデルと同様にSITCの統計番号を記載するように呼びかけた勧告を採択しているわけでございます。現在その勧告を受諾いたしております国は、二十一カ国のBTN参加国中十九カ国でございまして、それらの国に対しましては関税分類表の関税表とSITCの統計番号とが併記されておるということで、その間の関係は非常に明確になっておるということになるわけでございます。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 そうすると、それで出されている勧告を採用している国は十九カ国とおっしゃいましたけれども、そことはうまくいっていても、そういう勧告を受けない国はやはりこの国際貿易分類との関係はあまりうまくいかないわけですね。将来はそれを受諾するような傾向にあるかどうか、この点を伺っておきたい。
  76. 宮崎弘道

    ○宮崎説明員 現在SITCとBTNとの関係をはっきりと明示するということを行なっておりません国で、BTN条約に参加しておりますのは、ギリシア及びオーストリアでございます。これは、これらの国の国内法上の問題点をいまつまびらかにいたしておりませんけれども、BTNあるいは関税協力理事会のみならず、ガットその他の国際機関でもこれをつなぎ合わせることが非常に便利だということになりまして、勧告を正式に受諾しなくても、そういう方向にだんだん統計分類も整理されつつあるわけでございます。この点は現実に各国と関税交渉いたしております過程におきまして、私ども非常に便利に感じておるところでございます。
  77. 戸叶里子

    戸叶委員 私は質問をこれで打ち切りますけれども、こういうふうな条約なり何なりに加盟するからには、その問題が、手続とかそれからまたそういうふうな問題であるならば手続が簡単にいくとか、ほかの国との貿易がスムーズにいくとか、そういう特典がはっきりしたと思うわけですから、たとえばこの条約なり議定書に加盟しておらない国と日本との貿易はある程度のそこに何らかの支障があるわけでございますから、加盟するからにはそういうところのものもスムーズにいくようにやってほしいということを私は望むわけでございます。  この点を意見として申し上げまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  78. 高瀬傳

    高瀬委員長 この際暫時休憩いたします。    午前十一時三十九分休憩      ————◇—————    午後三時三十九分開議
  79. 高瀬傳

    高瀬委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を続けます。  質疑の通告がありますのでこれを許します。黒田壽男君
  80. 黒田寿男

    ○黒田委員 私はきょうは佐藤総理に対しまして、現内閣の対中国政策の最近の動向、またそれに関連いたしましたアジア政策について質問をしたいと思います。  時間が非常に制限されておりますので、残念に思います。その質問に入ります前に、ひとつ別の問題でぜひとも総理に御質問申し上げたいと思います。これは実は、私個人と申しますより党を代表して御質問を申し上げるのであります。これは先般社会党が招請しました中国人民外交学会の使節団の入国拒否に関することであります。政府は入国拒否の理由とするところをいろいろとあげられましたが、私どもどうも納得することができない。大局的に見れば、アメリカの中国敵視政策に組み込まれました中で、日本政府は最近中国に対して硬直した政策を進めておるように考えられる。そういうことが今回の入国問題を否定的に取り扱いをさせた根本の原因であろうと私どもは考えます。しかし、政府は拒否理由といたしまして、個々的に幾つか論点をあげておられます。それにつきましても私ども承服できませんから、政府の拒否理由を一つ一つ取り上げまして、その理由にならぬことを私どもとして明らかにして再考を求めたいと思います。この要求をかちとるという運動は、御承知かもわかりませんが、社会党は断念しておるものではないのです。これからも目的を達成するまでこの運動を続けよう、そういう決心をしておりますので、そういう立場に立ちまして、きょうは党を代表いたしましての発言ということでお聞き願いたいと思います。私のほうからいままで承っております政府の入国拒否の理由を一つ一つあげまして、それに対する私どもの意見を申し述べまして、そして総理の御見解を承りたい、こういう方法でやりたいと思います。  第一は、中国人民外交学会の社会党に示した入国目的の中から内政干渉になる点が認められるので入国を拒否した、こういう理由を私ども聞かされておるのであります。しかし、私どもから見れば、アメリカ帝国主義に対して戦うという共通の課題について話し合うということが、どうして内政の干渉になるのか、そう思うのです。中国としてアメリカ帝国主義と戦うというのは一体何を言うのであるか、これはよくわかるわけです。御承知のように、中国はその不可分の領土であります台湾をアメリカによって分断せられておる。その台湾は中国本土に対する攻撃的な包囲網の強力な一環と、いま、なっております。そこで、アメリカ帝国主義のこういうやり方に対しまして、台湾解放の課題を果たすというそういう大きな問題を中国はかかえておる。これはアメリカ帝国主義に対する中国人民の戦いでありまして、これは一つの側にすぎない。他方日本の側について、ことに私どもの考え方を申し上げてみたいと思いますが、日本も沖縄がアメリカによって占領された形になっております。アジア最大のいまや軍事基地にされておりまして、日本国民ひとしくその返還を望んでいないものはないという状態であります。平和条約の、これは私どもの解釈でありますが、平和条約の規定に反して沖縄を占領し続けておるアメリカのやり方に対しまして、日本人は大多数いま沖縄返還という闘争を行のうておるのでありまして、これは日本国民のアメリカ帝国主義に対する戦いであります。このように国の完全独立、民族解放のためのアメリカ帝国主義に対する戦いという共通の課題について話し合おうというのが外交学会の訪日の目的として表示されておる、こういう目的で話し合いをしよう、こういうのであります。相手の国のことは、むろん実際問題としてはそれぞれの国が自主的にやりますので、社会党が台湾解放運動に物理的に力をかそうというようなことは全然考えておりません。また外交学会使節団は社会党の運動に対しても同じことを考えていると私は思う。  そこで、政府は内政干渉ということを言われますが、なるほど国際法から見れば、内政不干渉の義務ということが近代国際法の重要な原則の一つにはなっております。しかしこれは国家は他の国家の内政に干渉してはならないということ、そういう義務を一般的に負うておるということでありまして、それでは干渉というものは一体どういう場合を言うのであるかということを考えてみなければなりません。これは国家または国家群が一定の状態を維持しまたは変更するためにその意思を他国に対して強制的に押しつけることだ、こういうように私どもは理解をしておる。そこで干渉ということになるためには強制または威嚇が背景となっておるということが必要だ、こう私どもは理解をしております。具体的に、それでは、どのような場合が干渉になるか。これは武力による威嚇を前提として何か相手の国に他の国家がむずかしいことを言いかけたり、あるいはそれ以外の強制的措置もありましょう。たとえば外交や通商関係の断絶というようなことをほのめかして、相手国を屈服させるような申し出をするような場合、そういうように何らかの形で相手の意思を拘束するような強制もしくは強制による威嚇があれば、そこに干渉があった、こう言われるのだ、私どもはそういうようにいままで理解しておったのです。  そこで問題になりますアメリカ帝国主義反対の戦いと申しましても、それは話し合いをするということです。国家としての強制力を伴うというようなそういう大げさなものでも何でもないわけです。個々に例をあげてみれば、平和条約に反して沖縄を軍事的にも政治的にも押えておる、そういうアメリカ帝国主義のやり方は私は内政干渉ではないかと思うのです。台湾を占領しておるアメリカが中国の内政に干渉しておるのではないか、こういうことが私は干渉だと思う。ベトナム戦争こそベトナム人民に対するアメリカの干渉じゃないか、そういうように私は考えます。干渉というものはこういうものを言うので、中国人民外交学会の社会党との話し合いは決してそんなものではないのです。それを政府が非常にこう大げさに内政干渉などと言われまして、入国を拒否されたのは、ものごとを実際以上に大げさに取り扱って、あまりにもおとなげない、また一方においてあまりにも硬直的で弾力性がないやり方だと思います。こんなことを政府がやられると、私どもはあえて言いたいのです。沖縄問題で日本に干渉しているアメリカへ追随したものの言い方を政府はしておる、私たちはそういうように言いたくもなる。干渉といえば、一体どこに干渉があるかということをよくきわめていただきたいと私どもは思います。だから、私どもは内政干渉というようなことを理由にして、今回政府が外交学会の入国を拒否されたことは、どうしても合点がいきません。これが私どもの再考を求めたいと思う理由の一つです。御答弁をお願いします。
  81. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 外交学会の入国問題は、実は御承知のように本会議でも質問を受けまして、政府も処置をしたし、国会においても答弁が済んだから、これでもう済んでいた、かように私は思っていましたが、社会党はさにあらず、どうしても入国をかちとる、かように仰せられるのです。いま入国をかちとるというそのことばじりを云々するわけじゃありませんが、ここらにも私はやや所見を異にしておる、こういうものではないだろう。そういう点はやはり外交学会との話し合いじゃなくて、社会党さんとわれわれがもっと話し合いをする必要がある問題じゃないか、かように思います。国内においてかちとったとか、かちとられたとか、こういうようなことではまずいと思う。この外務委員会などは特別にラウンドテーブルで新しい企画をひとつやろう、こういうようなことをなくしよう、こういうようなお気持ちで委員長はくふうをされたんだと思うが、なかなかその効果が出ておらない、私はまことに遺憾に思います。  そこで、私がこの拒否した入国問題についてとやかく申しますと、痛くないことまでいろいろまた話をしたり、誤解を受けたりする。本来親善関係を希望するほうから申せば、もうこの問題は一応ケリをつけていただきたい。そうしてあまり根掘り葉掘り議論しない、これが日中親善友好に役立つんだ、実はこう考えていただきたいのであります。もちろん、社会党はどうしても納得がいかぬ、政府をして理屈でやり込めてみる、こういうお気持ちもおありでしょうが、政府はこの考え方、いままでとりました処置を取り消すようなことはいたしません。決意が非常にはっきりしておりますだけに、ただいまの議論が他の方向へ行くだろう、大筋からはずれて行きやしないか、こういうことを実は心配いたしますので、あまり議論をいたしたくはございません。  ただしかし、二、三の点について申し上げてみたいと思うのでありますが、いわゆる沖縄の返還問題、これは私どもも国民とともに希望いたしておりますが、しばしばその場合に申し上げましたのは、ただいまアメリカが施政権を持っておる、それはサンフランシスコ条約に基づいて持っておるんだから、この返還を実現するためにも、アメリカの理解と協力のもとにおいてこれを実現する、これが実は政府の考え方です。ところが社会党はさにあらずして、返還はそんななまやさしいことじゃないんだ、戦ってでも返還をかちとるんだ、こういう言い方をしばしばされておると思います。そこらに基本的な相違がある、私はこのことを指摘せざるを得ない。国民の皆さま方からお考えになりましても、沖縄の返還をほんとうに心から願っておるから、それは政府の考えるようなアメリカの理解と協力のもとに返還を実現するという考え方、また、とにかくアメリカを非難し、帝国主義ということでこれを攻撃することによって返還を実現するのかということは、国民がこれを最終的にきめてくれるだろう、かように私は思います。ただ、いままで私どもがアメリカと安全保障条約を結んでおりましても、これはアメリカは帝国主義だ、こういう考え方で結んでおるわけではありません。私はアメリカの平和主義というものを信頼し、その意味において結んでおる。したがって、安全保障条約は、しばしば申し上げますように、これは攻撃的なものではありません。どこまでも防御的なものだ、かように申しておるのでありまして、帝国主義的だ、かような非難には、いわゆる膨張主義あるいは侵略主義、そういうものが半面に意味しておる、かように私思いますが、そういうアメリカの主体、実体というものの認識がまず違っておるという点を指摘せざるを得ないように思うのであります。  そうして、いわゆる干渉というお話ですが、私は日本の国論が二つになるとか、こういうようなことは実は望ましいことでないと思うのです。もちろんそれぞれの党がありまして、社会党には社会党の行き方がある、また共産党には共産党の主張がある、また私ども保守党にも保守党の主張がある、かようなことではございますが、しかしあえて国論を二分さす、あるいは三分さすような行き方をされると、これは私は、どうも内政に干渉するというか、やっぱり入ってきたんだ、かように言わざるを得ない。いわゆる干渉が武力を背景にする威嚇行為によってどうこうだ、こういうようなむずかしい議論ではございません。とにかく私どもは日本として、保守党は保守党なりに、また社会党は社会党なりに、お互いに話し合って国政を進めていこう、こういう場合に特殊なものについて国論が二分されるような方向で応援されることは、これはどうも好ましい方向じゃない。私は干渉ということば自身に特にとやかく申すわけではございません。しかし、どうも黒田君の話が干渉ということばに特別な意味を持たされる、こういうことでただいま説明になりました。私はそれとやや別な考え方を持っておるということを実は申し上げたいのです。また、ただいま私どもとすれば、政府が政局を担当していて、ある程度の行き方は非常にはっきりさせておりますが、その行き方と違う方向で国論が足並みがそろわないような方向になることを非常に心配しておりますので、あえてただいまの干渉論について私の所見を申し上げたわけであります。
  82. 黒田寿男

    ○黒田委員 長々と御答弁いただきました。私も一つ一つ反駁したいと思いますけれども、時間がございませんから、政府の拒否理由とされました他の問題について申し上げてみたい。  政府が拒否理由の中で用いられましたことばの中に、国益に反するということがある。国益に反する理由で入国を認めることができない、こういうことが言われたと思います。これも私は非常に重要な意味を持っており、黙認することができない問題だと思います。元来私は国益というようなことばは乱用すべきではない、こう考えます。たとえば同じ日本国民でありましても、現在の資本主義社会ではいろいろと利害関係の違うものがあるわけです。客観的にそういう状態が存在しておる。たとえば資本家の利益と労働者の利益とはなかなか合いません。いま春闘をやっておる。要求するだけのベースアップをなかなか資本家がやらない。ここにもやはり利益の一致はない。政治的な問題を一つあげれば、政府は安保条約の持続ということを言っておられます。私どもは安保条約の廃棄と言います、同じ問題で、違った考えを同じ日本人の間で持っておるのです。そこで互いに相反することを主張しながら、それぞれ自分の言うことが国民の利益に合っているんだというように考えておる。利益ということはなかなかむずかしい問題でありますから、簡単に国益ということばで何らかのことが言いあらわされるということは非常にむずかしいことだと私は思う。かつて私ども戦争中のことを経験しておりますが、国家の利益だというようなことで、一部の独占資本あるいは軍部、またはそれに追随いたしました政治家などが、そういうものの利益を追及するためにあの大戦争をやりまして、そして負けて国民に大損害を与えたのであります。アメリカ帝国主義に反対することが国の利益に反するという場合の国の利益は、おそらくアメリカ帝国主義の政策に追随するということが国の利益になると考えておる、そういう考え方に基いておるに過ぎないと私どもは考える。現実には非常なきびしいものがある。そのくらいのことは総理大臣としても御認識願っておかなければならない。政治というものはそういうものだ。そういうわけで、政府が国の利益と考えておりましても、多数の国民はそれを国益と考えていないという例もたくさんあるわけなのです。だから、私どもは中国人民の見解も十分に聞くべきであると思う。独断的な国益論で入国を拒否するというようなことは軽々にすべきでもないし、国家の責任者、政府の責任者といたしまして、国益によってどうこうというようなことばは私は軽々しくお使いにならないほうがいいと思います。ところが、政府は国益に反するという理由で拒否されましたが、私どもは理解することができません。  ちょっと私はお尋ねしておきたいと思うのですが、グエン・カオ・キを日本政府は招請する、日にらはまだ少し先になるという予定だったようですが、何かそういうことも決定されたかのように新聞に出ておりました。一体こんな人物を日本に招請するということが国益に合するのかと私どもは言いたいのであります。そういうこともほっておけば政府はやられる。だから国益ということばはいいかげんに使うべきものではありません。そう私は思うのです。だから、国益に反するから中国の人民外交学会の使節団の入国を拒否したということは、どうも私どもには理解できないのです。  もう時間がないのですが、もう一つ政府に聞きたいと思いますので、簡単にお答え願います。
  83. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 簡単に答弁しろと言われるが、なかなかこれはむずかしいことですから、簡単には申し上げませんが、国益ということばをそう楽に使うな、確かに国益、これはそう乱用しちゃいかぬです。だから、言える立場にある人が初めでそういうことが言えるのです。だれでもかってな自分に都合のいいのがみんな国益だ、こういうことでは困る。いま黒田君が言われるように、民主主義の国家では議論百出であります。ある者は右と言い、ある者は左と言い、それが全部許されておる。それが民主主義なんです。しかしながら、最終的に国家的な意思決定をしなければならない。これを行なうんだ、こういうものが民主的にきまるんだ、かように実は私は思っております。したがいまして、意思決定がされるまでいろんな議論の出ることは私も大いに歓迎する。また、いま言われるように国益だということをそう簡単に言ってくれちゃ困る、これも私は賛成であります。しかし、最終的に外交に関する問題は政府が責任を持ってやるんだ。そうすると、政府自身が最終的に意思決定をした。そうするとやっぱり民主主義の国家においてはそれに従っていただかなければならない。これを私は皆さん方にお願いをするのです。政府の意思決定をしたにもかかわらず、おれは社会党だからその説にはどこまでも反対だ、いつまでもこういうことだけでは私は済まないと思う。これは国会におきましても、反対は反対で最終的に結論が出される。決定をされれば、反対はそこで一応消えてしまう。いままでは、過去においては反対をした、しかしそう決定されればしかたがない、それに従おう、これが民主国家のあり方ではないかと思います。  そこで私は先ほど冒頭に申しましたように、この問題は政府が責任を持って意思決定をしたのです。だから、それをいつまでも反対だ、こう言われないで、この辺で結論が出たのかと思ったら、どうしても入国をかちとるんだ、こういうことで反対のようだということを申しましたが、やっぱり意思決定はどこかでしなきゃならないのですから、したら民主国家のいき方としてこれに従っていただくということが望ましいし、またそれが責任ある政治の姿、私はかように考えております。
  84. 黒田寿男

    ○黒田委員 時間が来ておりますので、もう一つだけ簡単に御質問申し上げます。拒否理由のもう一つは、政経分離の原則に基づいて入国を認められない、こういうお話であったように思います。ところが政府は、問題となっておりますプラント類の輸出の問題では吉田書簡に拘束せられまして、この部面では政経一体ということを実行しておられるんじゃないでしょうか。私はそう思うのです。自分の都合のいいときには政経分離だと言う。自分の都合のいいときは政経一体論をやっておる。一体こういうかってな政経分離論はないと思うのです。相手の国は政経分離なんということは問題にしておりません。政府はいま貿易問題についてそういう態度をとっておられまして、一時的に障害が生じておりますけれども、しかし、とにかく貿易は進めていっておられる。貿易も進めながら——私はそれは非常にいいことだと思う。貿易も進めながら、政治面におきましてもできることから徐々にでも相手と接触を進めるという態度を放棄してはならぬと思うのです。完全に政経不可分にいかなくても、これを不可分ならしめる努力をしていただかなきゃならぬと思うのです。それが私は政府には欠けておるように思う。今回の使節団の顔ぶれから見まして、これははなはだ有力な使節団です。日中友好のためには、単に社会党が呼んだからと申しまして、社会党だけでなくて、自民党の諸君もこの機会を利用して相互に問題点を出し合って意見を交換し、あるいは場合によっては大いに意見を戦わすなどいたしまして、一致点を見つけるとともに、相違点を明らかにするというようなことで相互の理解を深めることができますならば、それだけ日中友好に貢献することができる、このように私は考える。だから政府としましても、むしろこれは見のがしてはならない好機会であった、われわれのほうじゃそういうふうに考えておる。それが逆に出られた。こういうことで佐藤内閣ははなはだ硬直した態度で入国を拒否されたと私は考えます。これは決して日中友好を進めるものではありません。かえって傷つけるようなことになることをわれわれはおそれておる。もう一度御再考を願いたいというのが私の考え方であります。時間がございませんから、私の質問はこれで終わります。
  85. 高瀬傳

    高瀬委員長 時間の関係がございますから、もし御質問があるなら続いてお願いいたします。
  86. 穗積七郎

    穗積委員 きょうは外務委員会に佐藤総理に来ていただいたわけですが、これはほかの委員会と違って、政策の問題ですから、総理自身も積極的に来て発言をしていただく機会を得たい、これは政府のほうも歓迎していただけると思ったし、私も実は質問したかったのですが、伺いますと、時間が非常に制限されておるというので、きょうはこのあと戸叶委員から別の問題で質問いたしますから、私は割愛いたしまして、いまの中国問題に関連をして具体的問題について一点だけお尋ねいたします。ですから、具体的にお答えをいただきたいのです。  いまお話がありましたように、政経分離の原則がいいか悪いかの問題はここで議論しようと思っておりません。佐藤内閣におきましても、池田内閣以上に経済、文化の交流については積極的に前向きで処理していきたいということを幾たびか言明され、いまもそういうことを言われた。ところが池田内閣ですら実行いたしました輸銀使用によるプラント輸出の問題について踏み切られて、しかも池田総理は、当時、次に日立あるいはニチボー等の陸続として続いたプラント輸出についても、これを前向きで処理していくということを、内容を示しておられたわけですが、佐藤内閣になりまして突如これを遮断して今日に至っておるわけです。これは輸銀を使うということは、輸銀法によりましても、また政府の解釈からいたしましても、延べ払いというのは政治的援助ではなくて、経済取引の一つの条件にすぎない。しかもヨーロッパ諸国は、日本よりはるかに長い期間で延べ払いを認めておる。そして例の吉田書簡の問題については、これは責任を負わない、しかも時期も相当過ぎ、情勢も変わっておるわけです。昨年来ことしにかけての日中貿易の発展状況というのは、御説明するまでもなく御承知のとおりです。対中貿易は、日本の全世界貿易の第四位にのし上がってきておるわけです。したがって、そういう背景の中で、これを経済、文化の交流については前向きで処理したいということがうそではなくて、ことばだけではなくて、真実あなたがそういうふうに考えておられるなら、この機会にぜひとも踏み切るべきであるというふうにわれわれは確信をし、熱望をするわけです。これが一つ。  それから、ついででございますから、もう一つだけ一緒にお尋ねをしておきますから、お答えをいただきたいが、同様の問題として北朝鮮のプラント契約のために技術者数名が入国をするという問題がありました。これは必要なことなんです。取引契約を決定するのに必要なことなんです。それに対して、私どもに対して、佐藤総理並びに内閣を代表する官房長官は、これは可及的すみやかに必ず実現いたしますという約束をあなた自身もしていただいたわけなんです。時期についてはおよそ三月一ぱい、あるいは四月中旬までには何とかするということまでわれわれに約束されておった。あなたは、私どもは中国や朝鮮に対して敵視政策をとっていない、あまり多くのことを議論することは、両国の友好が発展するのにじゃまになるから議論しないで待っておってもらいたい、こういうようなことを言われたのに、さっぱりやらない。あなた、大きな目玉を持っておって、うそを言ってはいけません。ともかく約束したことについては、ぜひとも実行してもらいたい。私は関連質問ですから、この二つのことを具体的にお尋ねして終えますから、再質問しないで済むようにちゃんとした御答弁をお願いいたします。
  87. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 まず第一に申し上げておきますが、うそは絶対に申しません。  さて、どうもこんな話をすると冗談みたいな話になりますが、いま日中貿易は変則的な形において進められておるものがもう五億ドルをこす、あるいはそれに近い、かように言われております。非常な伸び方だと思います。これが前向きだというか公正な扱い方をしている証拠だ、かように私は考えております。もしも私が反対であり、そうしてうしろ向きなら、これだけ貿易を増加させるはずはございません。したがって、この点は十分御理解をいただきたい。そうしてただいまのように私はあえて変則だ、かように申しましたが、外交関係のない状況において、これがそこまで来ている、だから、これはもしももっと外交関係でも開くようになればもっと変わる、さらにふえるだろう、こういうことが予想されるだろうと思います。しかし、とにかくこういう状況においても貿易がどんどんふえている。そうしてただいまもお話しになりましたが、一体輸銀そのものをつくりましたのは、これはもちろん輸出貿易をやるためにつくったわけであります。それが十二分に使えないいままでの状況、そのもとにおいてもかように貿易が拡大された、だから、いままでの政府のとっている態度、これは社会党が理解しておられる以上に前向きの姿勢ではないかと私は思います。しかし、私は同時に中共北京の放送その他をここでとやかく言うわけではありませんが、われわれが中共を非難するより以上に積極的に非常にはっきりと佐藤内閣並びに日本政府というものを攻撃している、こういう状況のもとにあるこの両国間の関係を、最も立場のいい社会党の諸君、話し合いのできる立場にある社会党の諸君にやはり公正に両方を取り扱うように御尽力願いたいものだ、かように思っております。これを特にお願いしておきます。  さらに、また次の北鮮問題でありますが……。(穗積委員「輸銀はどうするのですか」と呼ぶ)輸銀問題は、ただいまのような状況でこれは続ける。(穗積委員「やるのか、やらないのか」と呼ぶ)これはやるとか、やらないとか、ただいま申せません。  それから北鮮の問題、これについてただいま具体的なお話がございましたが、これは政府におきまして、外務、法務、あらゆるところで慎重に検討しております。  そのようにお答えをいたします。
  88. 高瀬傳

  89. 戸叶里子

    戸叶委員 きょうは、総理大臣にせっかく来ていただいたのですが、時間がたいへん短いようですから、簡単に質問をしますから、総理も簡単に、わかりやすく答弁していただきたいと思います。  今度の国会で、各委員会等を通じて国民がついていけないほど軍事問題なり防衛問題というものが発表されてきたと思います。たとえば国連への監視団とか、あるいはまた核のかさ問題とか、首相の一九七〇年以降における安保条約の長期固定化の問題とか、沖縄への自衛隊の派遣、こういったいろいろな問題が積極的に発言されたわけでございますが、どういうふうな軍事的な問題とか防衛問題を積極的に発言をしたのには、何か客観的情勢があったのかどうかをまず第一に伺いたいと思います。
  90. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 どうもどういうお尋ねかわかりませんが、ただいまのような御質問があると、私どもはやはりそれぞれ答えざるを得ない、かように考えております。
  91. 戸叶里子

    戸叶委員 いままでは、そういった質問が出ましても、それほど積極的な発表はなかったと思うのです。ところが今回の国会におきましては、たとえば国連協力をするのには監視団を出したほうがいいとか、そういう問題が出たわけでございますが、それじゃ、それらの問題をあとにおくといたしまして、この安保条約の改定の問題が出されました。これは予算委員会でも出されたのですけれども、先ごろは外務省においてもこれが発表されたわけです。そしてその中で過去の答弁、総理大臣の予算委員会等における答弁を見ましても、今度の外務省の発表を見ましても、一九七〇年以降の大体長期固定化というような考えに基づいての発表をされているようでございますが、特に国際情勢に変化がない限り、長期にこのままの状態でいきたい、こういうふうに書かれているわけでございます。国際情勢の特別な変化のない限りというのはどういうことをさしていられるのか、伺いたいと思います。
  92. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 どうも、国際情勢に特別の変化のない限りというのは、いまの状況と非常に変わった状況が起こらない限り、こういうことじゃないでしょうか。ちょっとわかりかねます。
  93. 戸叶里子

    戸叶委員 非常に変わったことがない限りというのは、そういう簡単なものじゃないと思うのです。総理大臣は、参議院の予算委員会において、全面軍縮でも行なわれない限り、こういうふうな答弁をされておりますけれども、その議員が質問した中には、中国の国連加盟とか、あるいはそういう問題が起きてくるにもかかわらず、そういう問題にはお答えになっておらないで、ただ全面軍縮でも起きない限り長期固定化の考え方であるようなお考えを述べておられるわけです。この点についてはどういうお考えを持っておられるかを伺いたい。
  94. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまの全面軍縮の場合、これはもう明らかに重大なる変化だ、かように私は思います。その他の場合は、それぞれの変化によりまして価値判断せざるを得ない、かように思います。
  95. 戸叶里子

    戸叶委員 一九七〇年はまだ四年も先のことだと思うのです。その間に、たとえば中国の国連加盟も私は出てくると思いますし、あるいは加盟する客観的情勢からしていくでしょう。それからまたベトナムの戦争に対しても、何らかの変化が行なわれると思う。そしてまたアメリカ自身も中国に対してのある程度の歩み寄りもしております。こういうことを含めて、この国際情勢の変化というふうにはお考えにならないですか。この点をはっきりしていただきたい。
  96. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 問題は、日米安全保障条約が要るか、要らないか、要らないような国際情勢の変化があるかどうかということだと思います。私は、そういう点は具体的に十分考えなければいかぬ、かようにお答えしておるわけであります。
  97. 戸叶里子

    戸叶委員 そういう点は十分考えなければいけないというそれを含んで、なおかつ一九七〇年以降、この安保条約というものを継続していかなければいけないというふうにお考えになるわけでございますか。
  98. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいまからそういう結論を出すことはいかぬ。いままで申しましたように、重大なる変化がない限り、こういう事態を解消したほうがいいとか、しなければならぬとか、かようには私は思っておらないということを申し上げておきます。
  99. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、外務省の発表しておるように、こういうふうな安保体制を今後においても続けていくことが望ましい、こういうことでございますね。
  100. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 望ましいということになると、言い過ぎかもわかりません。とにかくいまの体制を持続しておることは、その変化がないという場合において考えられるのであります。だから、これから後にそれはどういう状態が起こるかわからないのだから、いま言われますように、全面軍縮というようなことが絶対にできない、かように言うべきでもないでしょう。それはどんなことができるかわかりません。ただいまの状態のようなことが続く限り、これに重大な変化がない限り、日米安全保障条約は続くだろう、こういうことを申しておるわけであります。
  101. 戸叶里子

    戸叶委員 これからの状態という中において、たとえば中国の国連加盟とか、あるいはベトナムの問題のある程度の解決とか、そういうふうなことは入っておりませんか。そういう問題が起きた場合にはどういうふうにお考えですか。それでもなおかつやはりこの安保体制というものは続けていかなければならないとお考えになりますか。
  102. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ベトナムが平静に帰したとか、あるいは中共が国連に加盟したということと、われわれの安全ということと、この関係がどういうようになっておるのか、中共は国連に加盟をしたけれども、日本の安全は在来からちっとも違わない、中共が国連に加盟しようがすまいが、日本の安全確保の必要はあるのだ、かように私は思っておりますが、その辺が問題なんでしょう。だから日本の安全確保上重大な変化があって、それがもう心配ないのだ、こういう状態になれば、私どもはこういう条約は必要でない、かように思います。
  103. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは次にほかの角度からお伺いしたいと思いますが、下田外務次官が、核開発の能力を持ちながら、核を持たない国として大国に核軍縮を迫ろうとしているわけです。これは日本の国民として、原爆の被害の中から立ち上がった国民として当然のことだと思います。そういうことは積極的にしていただかなければなりませんが、しかし、一方において積極的に核のかさをたよったり、あるいは核兵器を持ったアメリカによって日本の防衛保障をさせたほうがいい、長期にそういうふうな形をとったほうがいいと言われるのは、核兵器の禁止とは私は違反するものではないか。たとえばそういうふうな考え方のもとで国際会議などに臨んでも、核兵器を禁止すべきであるということを主張いたしましても、これは説得力がなくなるのじゃないか、矛盾しているんじゃないかというふうに考えますけれども、この点についてはどうお考えになりますか。
  104. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 ただいま戸叶君のお話だが、ちょっと私にお尋ねの趣旨がわからないのですが、日本は核兵器はいままで持たないということを申しておりますし、核兵器を持たない国が、日米安全保障条約を結んだから、核の全面廃止について発言権が弱いんだ、これはどういうことなんでしょう。そういうお尋ねかと思うのですが……。
  105. 戸叶里子

    戸叶委員 そうじゃないのです。核兵器を持たないから弱いというのじゃないのです。いいですか。一方において核のかさに守られていたいという考え方——アメリカは核兵器を持っています。そのアメリカに安保条約によって基地を提供して、一応守ってもらった形にしているわけですけれども、そういうふうなことを永久に固定化しておきながら、核禁止の大会、核禁止ということを世界に幾らアピールしてみても、自分の国だけはアメリカのかさの中におりますよといいながら、核兵器をやめましょうと言ってみても、説得力が少ないのじゃないですか、この意見は矛盾するではないですかということを伺っておるわけです。
  106. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私は、日本の安全を確保する、これは現実の問題としてです、だれが何と言おうが、日本の安全を確保する責任があります。その立場に立ってものごとを考える。そして世界人類の平和のために何を考えるかということの主張をする、これはちっとも差しつかえないことだ、かように思います。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 私が質問しておりますことをたいへん総理大臣はうまく逃げかわしているみたいで、何かぴんとこないのです。というのは、一方において核のかさの下、あるいはアメリカの、核兵器を持っている、その安保体制のもとに置かれながら、片一方においてはアメリカに対してそれを望みながら、今度は向こうへ行って核兵器を禁止しなさいと言ってみても、説得力がないじゃないですかということなんです。それでは、それはあとでこの次の質問と合わしてお答え願いたいと思うのです。  次にお伺いしたいことは、あとわずかしか時間がないようですから、この点を抜かしまして、参議院の予算委員会で、総理大臣は沖縄への自衛隊派遣について、万一武力攻撃が起きたような場合にはどうするかという質問に対して、率直に国民感情から当然出かけていくと言われて波乱を招いて統一見解を出されたわけであります。その中でいまのように施政権をアメリカが掌握している限りという前提で自衛権の発動とか自衛隊の出動はできないということを言われました。このことはつまり施政権の一部が返還されたときにはこういうことはできるということの意味でもあると思います。そういうような同じような答弁というものは、ちょうど岸首相が沖縄の施政権の一部の返還、つまり沖縄の施政権のへこみ論として答えておられるのと私は同じだと思いますけれども、一体施政権というものが分割して返されるなんということがありますか。これは、私はずっとあの当時から考えておりましたけれども、非常に不思議に思うのですが、そういうことがあり得るかどうか伺いたいと思います。
  108. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 これは私も国民的な感情を率直に披露いたしました。ことに同胞の一体化という点からこれを率直に私申し上げました。しかし、私、こういう事柄が実際にあるのかどうか、実際問題として考えて、沖縄だけが攻撃されるようなことがあるか、また沖縄自身攻撃されるようなことがあるか、私はそんなことはないと思うのです。私が申し上げた国民的感情、これはもう間違いございません。日本民族として、日本国民として沖縄を見捨てるというような考え方はどこにもないと思います。必ず出ていってでも助ける、そういう感じだと思います。これを私は率直に申し上げたのです。第一沖縄が攻撃を受ける、こういうことは考えられるか、私どもがいま日米安全保障条約、これを締結して、そうしてその戦争抑止力というものを十分に考えております。とれならば、この安全保障条約を結んでおれば、これはもう戦争抑止力あり、わが国は安全だ、かように実は考えておる。だからいまの仮定の事実ではありますが、これを攻撃する、そういうことはないと思うのですね。起こり得ない。これは攻撃すれば必ず報復的なものをやられる。戦争に勝つということでない限りこれを攻撃するということはないわけですね。だからそういうことが、設問が非常にうまかったと言えばそれまでか知らぬが、必ずそんなことはない。  もう一つは、沖縄にアメリカの施政権はありますけれども、沖縄だけが攻撃されて、日本本土が攻撃を受けない、こういうようなことを考えたものはだれもいないと思います。私は、こういうような設問にしても、実際に考えられないことの質問だ、かように思うのであります。私はこういう点が国民に与えた、いろいろなものを巻き起こしたものは、動揺はなかなか大きかったんではないかと思います。だから私はあらためて申しますが、そういう事態は絶対に起こらない。沖縄だけが攻撃されるとか、また本土は攻撃されないで、沖縄だけの攻撃、こういうようなことはあり得ない。だから日本国民はいま持っておるような、ほんとうに同胞一体というか、その感じを率直にあらわしておればいい、私はかように思っておるのです。理論的にとやかく言っても、それはあまりにも実際問題とかけ離れたことになりますから、これはかえって問題を迷宮に入らすことがありますので、ただいまのようにはっきり申し上げておきたいと思います。
  109. 戸叶里子

    戸叶委員 その問題につきましては、沖縄が攻撃されることがないということは、首相の言ったとおりといたしましても、報復的な攻撃というものはあり得ると思うのです。たとえばB52が沖縄からベトナムへ飛んでいって沖縄へ帰ってきた場合に、やはり報復攻撃というものは受ける可能性があると思います。これは政治的にはないという希望を持っても、法律的には、国際法上はそういうことは許されているわけです。戦争区域の中に入ってしまうわけですから、中立が保てなくて入るわけですから、やはり報復攻撃というものは受けられるわけです。だからそういう場合に、私たちは沖縄というものの今日の地位というものを非常に心配するわけで、早くこの核兵器の基地なんかはなくなるようにしなければいけないと思います。  そこで、さっき私が伺ったことは、自衛隊を出す出さぬということ、前のことよりもあとのことで、もしもアメリカからの要請があった場合とか、あるいはどうこういった場合にこの自衛隊なりなんなりが出ていくような場合には、へこむんだ、主権のそれだけが返ってくるんだというような議論が、昭和三十三年の岸首相のときからされているわけですけれども、そういうことはこの際あり得ない、主権の一部が返されるというようなことはないんだ、主権というものは、立法、司法、行政、この三つがそろっての施政権が返される以外にはないんだ、こういうふうに了解してよろしゅうございますか。
  110. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 この施政権がへこむとか、施政権が一部どうなったとか、こういうことでいろいろ議論をしておられますが、法制局長官がそのために実は出てきておりますけれども、かえって法制局長官よりもしろうとの私のほうが話しがしいいかと思います。だからこの問題についても、施政権が全面的に働いておる限り、これは日本から出かけていくことはない。出かけていくことはないというのが、これは統一見解で御説明したとおりであります。私は、そういうようなことよりも大事なのは、日本民族の気持ちというもののほうが大事じゃないだろうか。とにかく施設権が働いているからそんなものはじゃまだ、ことに日本の自衛隊あたりがのこのこ行ったからといってそんなものは手助けにはならない、むしろじゃまだ、こういうことになるかもしれない。でありますが、われわれは同胞として見殺しにはできないという、その気持ちだけは脈々として私どもの中を打っている、そのことを申し上げたい。
  111. 戸叶里子

    戸叶委員 私が伺っているのはそういうことじゃないのです。沖縄の人たちは、佐藤総理がどんなに沖縄の同胞を捨てることができないという気持ちが脈々として流れているとおっしゃってみても、もっと根本的なものを望んでいるわけなんですよ。もっと原則的に、ほんとうに平和になってほしいということを望んでいるわけで、施政権も返してほしいということを望んでいるわけで、そういうふうなことばだけでは、とても沖縄の人はごまかされないと思うのです。私はこの一部の返還、全体のうちの一部の施政権の返還、いわゆるへこみ論というものが議論にされて、この間の佐藤総理の答弁の裏にもそういうことがあるわけなので、この際やはりへこみ論とかあるいは施政権の一部返還などというものはあり得ないんだ、施政権というものはちゃんと立法、司法、行政、この三つを含んだ施政権が返ってくる、そういうものだというふうに解釈してよろしいかどうか伺いたいわけです。
  112. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 私、統一見解で申しましたのは、この施政権はアメリカが完全に掌握する限りという、さように思っております。その点では誤解はないようであります。さらにそれについていろいろのお尋ねだと思いますが、その辺は法制局長官に譲ります。
  113. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 簡単にお答え申し上げます。総理が申されましたのは、いまおっしゃいましたように、全面的ということばがあったかどうか、いまのように掌握している限りはということでお話しがございました。そこで御質問として一部返還というようなことがあるかという御指摘でございます。ところで、これについてはさらに御指摘のように、だいぶ前でございますが、前の国会で議論がございました。一部へこみ論あるいは一部返還論、これも何といいますか、法律的に正確なる表現として申されたとは私は実は思っておりません。要するに基本的に考えれば、いまの平和条約の第三条によって立法、司法、行政の三権の全部及び一部はアメリカ合衆国が行使するということになっております。したがってその条約上の地位としては、アメリカ合衆国がその三権を包括的に持っております。したがって、ある場合に日本の国権の発現を施政権の作用として容認することはあり得る。理論上はあり得ることでございます。そういう事情を目して一部返還あるいは一部へこみ、通俗的にはああ言うことも不可能ではないと思いますが、もしあるとすればそういう性格のものであろうと思います。  それからさらにさかのぼりまして、平和条約三条というものが、もしも条約でもってあれ自身が変わるということがあれば、そこには、現在ある姿から見れば、一部返還ということも起こり得る。理論的な可能性としてはあり得ると思います。しかしそうでない場合には、施政権の容認という姿においてそのことが処理されていく可能性があるということになるだろうと私は思います。
  114. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、大体施政権の一部返還というのはいまの場合においてはあり得ない。この講和条約の三条でも変わらなければあり得ない。そうすると、前に高辻法制局長官がはっきりへこみ論ということばを使っていらっしゃるわけなんです。私、速記を持っていますから読めばいいのですが、時間がないから読みません。それで、私はその問題をずっと考えてみましたけれども、どうしてもへこみ論なんてあり得るはずがないと考えました。それで今度も、そのへこみ論というものは、自衛隊がアメリカの要請で出て行っても主権のへこみ論にならないというふうにいま具体的に申し上げたいのですが、時間がないので申し上げませんが、ただ問題は、平和条約の三条で、日本語の訳として——英語にはオール・アンド・エニー・パワーズということばが使ってあります。そうすると、日本語の訳として、すべてのそしてその一部の施政権の返還というような非常にまぎらわしい訳がしてあるわけです。そこで私は、そういうところから政府自身が答弁されているのかなというふうに考えましたが、その後いろいろ研究してみますと、この訳は間違いであって、オール・アンド・エニーというのは、読んで字のように、そしてまた講和条約というものの正文は英文であるのですから、やはり日本語の訳が誤訳であって、すべての、そしてなおその上にすべてを強めたのがエニーであって、日本の一部というのは間違いじゃないか。その点をやはりはっきりさせておかなければいけないじゃないかということを考えたのですが、これに対しての御意見を伺いたいと思います。
  115. 高辻正巳

    ○高辻政府委員 オール・アンド・エニーの原文、日本語では全部及び一部という点についての御指摘でございますが、大体において私も戸叶委員のおっしゃったように解すべきであろうと思います。その際に「全部及び一部」という表現がいいか悪いか。これはいろいろございましょう。私ども自身も実は責任の当事者の一人でございますが、これは少なくともそういう英文における意味に解すべきであるし、またいまの日本語でも解し得ると思っております。  それからもう一つ、前段で一部へこみ論を私が申したという御指摘がございました。これはたぶん前長官であろうかと思いますが、しかし私がもし申したといたしまして、お断わりいたしますれば、最初に申し上げたように、一部へこみ論あるいは一部返還論と申しますのは、比喩的に申してそういうことばが使われているのだろうと私は思います。
  116. 高瀬傳

    高瀬委員長 戸叶君に申し上げます。簡潔に願います。
  117. 戸叶里子

    戸叶委員 はい、それじゃ簡単にしてやめますが、いまの法制局長官のお話をお聞きになって、佐藤総理もおかしく思いませんか。全部または一部ということと、全部そしてそれを強めた意味のエニーという使い方とは非常に違うと思うのですよ。ですからやはり日本語の誤訳というものが、日本文しか読まない人にはある程度ミスリードするのではないかと思いますので、この点は何らかの措置をとるべきじゃないかと思いますが、どういうふうにお考えになりますか。
  118. 佐藤榮作

    ○佐藤内閣総理大臣 実は、私は英語がちょっと弱いものですから、これはよくまた——法制局長官の先ほどお答えたのもそれでいいんだろうと思いますけれども、もう少しよく研究してみないと、これがどういうように発展しますか、その議論にもよる、かように思いますので、よく検討してみたいと思います。
  119. 戸叶里子

    戸叶委員 たいへん残念です、こんな中途はんぱな形で議論が終わるということは。やはりこの次までにその点を、その点だけでもいいですから、非常に重要な問題ですから、法制局長官とお話し合いになってきて、何らかの形で返事をしていただきたいと思います。これはたいへん重要なことだと思いますし、学者の人たちもこの点を指摘をしております。そして今後は沖縄の問題というのは重要な問題ですから、三条というものが非常に関係のあることですから、やはりよく考えておいていただきたいと思います。
  120. 高瀬傳

    高瀬委員長 本日はこれにて散会いたします。    午後四時四十四分散会      ————◇—————