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1966-03-30 第51回国会 衆議院 外務委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年三月三十日(水曜日)    午前十時五十一分開議  出席委員    委員長代理理事 毛利 松平君    理事 鯨岡 兵輔君 理事 三原 朝雄君    理事 戸叶 里子君 理事 西村 関一君    理事 穗積 七郎君       内海 安吉君    菊池 義郎君       濱野 清吾君    森下 國雄君       岡  良一君    黒田 壽男君       帆足  計君    竹本 孫一君       林  百郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 石井光次郎君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         警  視  監         (警察庁保安局         長)      今竹 義一君         法務事務官         (入国管理局         長)      八木 正男君         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 小川平四郎君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         警  視  長         (警察庁警備局         外事課長)   渡部 正郎君         検     事         (入国管理局次         長)      中村 正夫君         文部事務官         (初等中等教育         局財務課長)  渋谷 敬三君         文部事務官         (管理局振興課         長)      犬丸  直君     ————————————— 三月二十四日  委員竹本孫一辞任につき、その補欠として西  村榮一君が議長指名委員に選任された。 同日  委員西村榮一辞任につき、その補欠として竹  本孫一君が議長指名委員に選任された。 同月三十日  委員林百郎君辞任につき、その補欠として川上  貫一君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 三月二十九日  第三次国際すず協定締結について承認を求め  るの件(条約第四号)関税率表における物品の  分類のための品目表に関する条約及び千九百五  十年十二月十五日にブラッセルで署名された関  税率表における物品分類のための品目表に関  する条約の改正に関する議定書締結について  承認を求めるの件(条約第五号) 同月二十六日  ベトナム戦争反対に関する請願(川上貫一君紹  介)(第二一五〇号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件(日韓及び日中問題等)      ————◇—————
  2. 毛利松平

    毛利委員長代理 これより会議を開きます。  委員長は所用のために御出席されませんので、委員長指名により、理事である私が委員長の職務を行ないます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑通告がありますので、これを許します。西村委員
  3. 西村関一

    西村(関)委員 かねて社会党が招いております中国外交学会から派遣予定されておりまする代表団入国につきまして、社会党代理申請をいたしておったのでありますが、昨日、政府拒否方針決定したという通告をなさったのであります。これはまことに遺憾でございます。本日は、本委員会におきまして、同僚穗積委員がこの問題について政府の所信をただすことになっているのでございますが、私は、私の質問冒頭に一言だけこの問題について外務大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。  伝えられるところによりますと、外務法務大臣官房長官の三者にこれが取り扱いが一任されたということでございますが、官房長官の談話の中に、現在の時点において入国を認めることは国益を害するということばがあります。国益を害するというのは一体何を意味するのでございましょうか。野党第一党であるところの社会党が、従来の経過をたどりまして、第一次−第四次までの会談を通じまして大事なお客さんとして中国代表団を迎えようとする、しかもこれが大衆集会をもくろむとかいうことじゃなくて、全くお客さんとして迎えるというこの代表団に対して、現時点においてこれを受け入れることは国益を害するということばがございますが、これは一体どういうことを意味するのでございますか。大臣のお考えを伺いたいと思います。
  4. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 中共との関係は、お互いに政治的な信条を異にするものでありますけれども、お互い立場を尊重し、内政干渉的なことをやらない、こういう限度において、政経分離方針に従って、文化的、経済的交流を認めていこうというのが、しばしば政府が発表したところであります。しかるに、今般入国申請のあった中共人民外交学会代表団は、社会党の招請によって社会党内外の政治問題について協議することを目的として訪日を希望しておる、こう了解しております。
  5. 戸叶里子

    ○戸叶委員 もうちょっと大きい声で……。
  6. 毛利松平

    毛利委員長代理 椎名外務大臣、もうちょっと大きい声でやってください。
  7. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 しかるに、中共が現在とっている政治的立場は、いま申し上げたように、わが国とは全く異なるものであるのみならず、わが政府に対して、国内政策であると、あるいは外交政策であるとを問わず、しばしば批判ないし攻撃的態度を表明してきたことは周知の事実であります。かような中共の対日政策決定に重要な役割りを果たしておる中国人民外交学会代表者が、明らかに政治的活動目的として野党たる社会党との協議のために来日するということを容認するならば、その来日中の言動が勢い現在のわが国内外政策に対する批判攻撃中心となることは、これは容易に推測できるところであります。これは前述のわが国基本的立場に反する。したがって、二十八日法務省からこの代表団入国拒否という意向連絡がありましたので、これに対する外務省の意向を聞いてまいりましたので、当方といたしましてもこれに同意を与えた、こういう次第であります。
  8. 西村関一

    西村(関)委員 野党第一党である社会党お客さんとしてお招きをする中国代表団と政治的な話し合いをするということが国益を害するということなんですか。この点いかがですか。
  9. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国益というようなことばの定義をここに問題にするしないの問題よりも、日本中共に対する従来の態度から見まして、お互い立場を尊重して内政干渉的な言動はしない、そういう限度において、政経分離原則のもとに、文化的、経済的交流を認めていこうという考え方に反するものである、こういう意味において今回の入国拒否に同意した次第であります。
  10. 西村関一

    西村(関)委員 このことは社会党に対する侮辱であるのみならず、中国に対する非常な反対、反中国政策佐藤内閣の強いあらわれだというふうにいわざるを得ないし、またすでに北京においてもそういう声明を出しておる。このことは前向きに中国とも交流を行なっていこうということと相矛盾するわけなんであります。大体いままで中国に渡航をいたしました、それで向こうにお世話になった日本人の数は、自民党の幹部を含めておびただしい数にのぼっているのであります。そういうふうな現状の中でこれを拒否するということは、きわめて非礼な状態だといわざるを得ないのであります。こういうことと考え合わせまして、この問題についてはわれわれはどうしても承服することができないのであります。このことにつきましては、穗積委員があなたのお考えを聞くことでございますから、私はこれ以上この問題は触れない。ほかの問題に移りたいと思います。
  11. 毛利松平

    毛利委員長代理 西村委員、参議院にちょっと大臣は御出席願って、十分か十五分で引き返していただきますので、その間、理事同士で休憩するか質疑を続けるか御相談をしてください。——それでは質疑を続行いたします。西村委員
  12. 西村関一

    西村(関)委員 大臣がちょっと中座をせられましたから、私はほかの問題に入りたいと思いますが、去る一月三十日付のソウルにおいて発行せられておりますところの「朝鮮日報」という有力紙に、次のような記事が載っているのであります。その写しを私はここに持ってきているのでございますが、これはちょっと重要な問題をはらんでいると思いますので、この点について政府のお考えを伺いたい。  一月三十日付の「朝鮮日報」のトップには——これはその写しでございますが、「私が白凡——これは有名な朝鮮愛国者であり、統一論者であったところの金九氏のことでございますが、「私が白凡暗殺指揮者だ、金志雄日本政府亡命要請日本警視庁から数度の身元照会」、こういう大見出しでもって次のようなことが書いてあるのでございます。現在「日本に行っている金氏は、政治亡命の理由として、金九殺害を総指揮し、その家族から告発されたためであると日本当局に述べており、事件当時の職業は某機関の顧問であったと述べたと伝えられている。金氏がいつ日本に行ったかは確認されていないが、彼が日本当局にのべた住所である桂洞には、彼の家族が住んでいないことがわかった。」「関係者は、次のように述べている。治安局外事担当者談」として、「日本警視庁からこれまでにも数度、金志雄氏に対する身元照会があったし、一か月前にも再び照会がきた。」韓国の「治安当局は、昨年末、金志雄氏が金九殺害首謀者だと自白し、日本当局に保護を求めてきたので、彼の過去についてくわしく調査して知らしてほしいという日本関係当局照会依頼をうけた。」ということが一月三十日付の「朝鮮日報」に載っているのであります。もしこういうことが事実であるとするならば、これは非常に重要な問題をはらんでおると思うのでございますが、この点に対して治安当局は関知しておられるかどうか、お伺いをいたしたいと思います。
  13. 渡部正郎

    渡部説明員 お答えいたします。  まず御質問の一つの中心だと思われます、庁が、金志雄なる人物につきまして、韓国治安局ないしは関連の機関金志雄のことにつきまして問い合わせを出したかどうかという点でございますけれども、その点は、警視庁からはもちろん、警察庁その他警察からは全然お問い合わせを出した事実はございません。  なお、金志雄氏が日本政府に対して亡命のようなことを求めたかどうかという点について御説明申し上げますが、金志雄という人は、昭和三十五年の八月二十八日に、福岡県にほかの数名の者と同時に密入国してまいりまして、同日福岡県の前原警察署に自首いたしまして、その当時福岡警察におきまして密入国者として捜査をいたしまして、その結果、三十五年八月の三十日に福岡地検に送致しております。そういう事実はございます。
  14. 西村関一

    西村(関)委員 その結果はどうなりましたか。送検されましたあとの結果はどうなりましたか。
  15. 渡部正郎

    渡部説明員 お答えいたします。  送致いたしました結果は、実は警察の直接の仕事ではございませんので、責任を持って申し上げるというわけでもございませんけれども、その後私のほうで聞いておりますのは、三十五年の十一月十五日に、懲役十カ月、執行猶予三年の判決が下りまして、その後福岡入管で収容いたしまして、三十六年の三月八日ごろに仮放免になったということを聞いております。
  16. 西村関一

    西村(関)委員 仮放免になって韓国へ送還をされたのか、現在日本にいるのか、その点は警察庁としてはつかんでおられますか。
  17. 渡部正郎

    渡部説明員 その仮放免になりましてから、入管のほうのお取り扱いがいろいろあったようでございますけれども、現在東京都内に居住しているのを知っております。
  18. 西村関一

    西村(関)委員 入管ではどういう取り扱いをせられましたか。
  19. 中村正夫

    中村説明員 金志雄は現在仮放免中でございまして、いまお話のございました亡命申し出がございますので、その真相調査検討中でございます。
  20. 西村関一

    西村(関)委員 入管では亡命申し出があるということですが、警察庁としてはそういうことはないという外事課長お話ですが、どうですか。
  21. 渡部正郎

    渡部説明員 先ほど御説明を十分しなかったので、申しわけなく思っておりますけれども、初めに、昭和三十五年の八月二十八日に金志雄氏が福岡前原警察署に自首してまいりましたそのときに、政治亡命をしたいという意向福岡前原警察署申し出ております。この件は当時警察庁に報告がなされまして、金志雄なる者が亡命意思があるということは当時入管のほうに連絡してございます。と申しますのは、亡命ということばは法律上の用語とはいえないかと思いますけれども、要するに政治的亡命ということで、日本にいたいというその希望をいれるかいれないかというのは入管のほうの仕事でございますので、私のほうに申し出がありましても、入管のほうに連絡するというやり方をやっておりますので、そのときにもそういう慣例に従いまして、入管のほうに御連絡したわけでございます。当時入管のほうでは、政治亡命を認めるというような決定もなされませんでしたし、その旨の御連絡もなかったものですから、事件そのものは、そういう申し出があったにもかかわらず、通常の密航者と同じ処理をしております。  なお、ついででございますけれども、密入国者は相当数あるわけでございますけれども、中には自分本国でいろいろなことがあって政治亡命したいのだ、身柄を保護してほしいというようなことをよく言う者がたくさんございますし、中にはうそを言っているという者もありまして、そういう一般的な状況の中でこの事件も処理された、こういう経過になっております。
  22. 西村関一

    西村(関)委員 入管では仮放になって、そうして亡命申し入れがあるので目下調査中ということでありますが、三十五年からいままで六年もたっておる。その調査は一体どうなっているのか。そして亡命申し入れに対してどういう結論を出そうとしていられるのですか。
  23. 中村正夫

    中村説明員 本人申し出は、亡命ということばで申していいかどうかわかりませんが、自分金九暗殺事件首謀者である、そうして実は金九暗殺事件真相調査団というのがあるのだそうでございますが、その調査団によって告発されておる、そこで自分は逃げてきた、また、告発された人の中には、当時アメリカ大使であった丁一権氏があって、それは取り消された、自分は取り消されておらない、李承晩政権がなくなった現在においては、おそらく告発されたといっても、あるいはそのままで済ましてもらえるかもしれない、あるいはそうでなくて、行けば、極刑というようなことはないにしても、一応逮捕されて処罰されるかもしれない、というようなことを言っております。なお、直接の下手人である安なんとかという男がおるのでございますが、これは韓国ではテロにあってけがをした、ですから、自分は、帰れば、そういう正式なものではないけれども、テロにあうかもしれない、したがって、帰されるとそういう心配もあるから、日本に置いてくれというような申し出もありました。それから一方、本人の妻などは、韓国の共和党の政治局員等をしておるそうでございまして、現在あちらで相当重用されておるやに聞いておるのであります。そこらあたり申し出によりまして、はたして本人の言うことがほんとうであるかどうか、これは日本国内だけの調査でございまして、なかなかむずかしいわけでございます。したがって、そういうようなことでいま調査しておりますけれども、まだ結論は出ていないということであります。
  24. 西村関一

    西村(関)委員 さきにも聞きましたように、三十五年から今日まで仮放になったまま結論も出ていないということでは怠慢じゃないですか。もう少し真相——日本での真相糾明委員会中立系在日朝鮮人の方でつくられているということも聞いておりますが、法務省としてはこういうクエスチョンマークのある男をそのまま、仮放のまま日本に在留させておくということは問題があるというふうにお考えになりませんですか、どうですか。
  25. 中村正夫

    中村説明員 密入国者につきましては、原則として退去強制するのが相当かと考える次第でございますが、かように本人主張している場合に、それを簡単な取り調べで退去強制するというわけにもまいらず、やはりそこは慎重にいろいろと、本人主張あるいはその主張があったとしても、それが帰っても迫害を受けるようなことがあるのかないのか、そういうようなことはやはり十分に調査しなければ、何とも結論が出しがたいわけでございます。したがって、一応仮放免ということで身柄は監視いたして、本人の行動を見ながら調査を続けておるという状況でございます。
  26. 西村関一

    西村(関)委員 どうも私にはわからないのであります。中国代表団日本に入れることが国益を害するということを政府はいっておられるのでありますが、こういう韓国随一愛国者金九氏を暗殺する暗殺団首謀者だとみずから称しておる——それは真相はまだ究明中でありますけれども、しかも法務省当局では、向こうへ送り返すと身の危険があるからそういう者はそのままにしておくのだ——しておくのだとは言われないけれども、目下真相調査中だと言われるのですが、そういう者が五年も六年も日本におるということ、クエスチョンマークを投げかけられておるところのそういう男が日本におるということは、それこそ国益に反するじゃないですか。それこそ、もし日本においてその男が危害を受ける、あるいは殺されるというような事態が起こった場合には、法務省治安当局は一体どう責任を負いますか。それは大きな国際問題になる。それをそのまま五年も六年もほったらかしておくということは、私は非常な怠慢だと思うのです。もう少しはっきりして、事実本人の申し立てば虚偽であるとか、あるいは疑いがあるとかなんとか明確にしないと、ソウルの新聞にこういうことが出た以上は、これはわれわれとしてもこのままにしておくことはできないのであります。もう少し責任のある処置をとっていただきたいと思うのであります。  一体この男の身元引き受け人はだれですか。
  27. 中村正夫

    中村説明員 手元に資料がございませんので、さっそく調査して申し上げたいと思います。
  28. 西村関一

    西村(関)委員 きょうはこの問題で私が質問するということは前に通告してあるのです。身元引き受け人入管次長がわからぬというようなことでは困るじゃありませんですか。私のほうでは、わかっておりますよ。次長がおわかりにならないということはおかしいと思うのです。すぐに調べてください。この質問を続行中に調べてください。  次にお尋ねいたしますが、先ほどもちょっと触れました金九先生殺害直相糾明委員会というものができておることは御存じでございますか。
  29. 中村正夫

    中村説明員 承知しています。
  30. 西村関一

    西村(関)委員 これは本国ソウルにおいても金九先生殺害真相糾明闘争委員会というものができておる。これは正確な名前は出ておりませんが、野党並びに各界の代表者によってつくられておる。また日本国内におきましても、中立系在日朝鮮人人たち金九先生殺害真相糾明日本委員会というものをつくっておる。これらのことについては入管当局は御承知だというお答えでございましたが、これらと接触を持って調査しておられますか、どうでございますか。
  31. 中村正夫

    中村説明員 直接接触して調査しておるということはございません。
  32. 西村関一

    西村(関)委員 この日本委員会から呼訴文——アピールが出ておることは御存じですか。
  33. 中村正夫

    中村説明員 御質問がわかりませんので、アピールというのはどういう意味でございましょうか。
  34. 西村関一

    西村(関)委員 呼び訴える文というこれです。呼ぶという字と訴えるという字、これはアピールのことでしょう、この問題に対する……。
  35. 中村正夫

    中村説明員 存じておりません。
  36. 西村関一

    西村(関)委員 金志雄の問題について五年も六年も調査しておられて、その程度の接触では、私は危ぶまれると思うのです。こういう国際的に問題を投げかけておる事件に対して、一応治安当局としては疑ってかかるというのが、従来皆さんのやりなさることです。これをこのまま野放しにしておくのがごとき印象を与えるようなやり方では、これは大きな問題があると思うのです。この呼訴文といういわゆるアピールを見ますると、こういうことが書いてあるのです。これは朝総連系人たちじゃありません。むしろ民団系の人が多い。在日朝鮮人の中の中立系と目されるところの人たちによって組織されておるところの日本委員会アピールであります。これを全部翻訳してここで申し上げる時間がありませんが、その冒頭を見ますると、「一、客年十二月十八日金九先生暗殺下手人安闘煕江原道愛国青年郭泰栄の刀に刺され重傷を受けた頃、暗殺団指揮者といわれている金志雄日本政府亡命を要請し、その血ぬられた一身の安全をはかろうとする卑劣な挙措に大きな関心を集中させている。一、われわれの前にその破廉恥な犯罪人をおいて拱手傍観することはできない。又この種の部類を直接、間接に庇護している日本の一部勢力に抵抗を感ぜざるをえない。金志雄一族日本大陸侵略に大きな功労のあったことを高く評価して一部日本人が彼らを庇護している心境は知らないわけではないが、過去の事実に照らしてあやまっていることはいうまでもない。日本にかかるものがおるということにわれわれは民族的義憤を感ぜざるを得ない」云々と、韓国系人たちがこういうアピールを出しているのです。これに対して入管当局はこれを仮放になさり、そして今日まで日本に在住を認めておられる入管当局としてこれをどうお受けとめになりますですか。
  37. 中村正夫

    中村説明員 先ほど申し上げましたとおり、金志雄につきましては、昨年の十月ごろからさっそく早急に処理いたしたいと考えまして、東京入国管理事務所に命じまして諸般の調査をさせておる次第でございます。おそらくもう二、三週間のうちには、調査の結果が報告あろうかと思う次第でございます。それによって至急処置いたしたいと考えます。
  38. 西村関一

    西村(関)委員 私は身元引き受け人名前が出るまでこの問題を保留いたしまして、次の問題に移りたいと思います。委員長、この問題については、後ほど入管のほうで名前資料がつかめればこの問題に返りますから、私は次の問題に移りたいと思います。  そこで、次は在日朝鮮人国籍の問題でありますが、一月十七日の法的地位協定発効以来、永住権を申請しておる者の数は何名でございますか。
  39. 中村正夫

    中村説明員 三月十九日現在都道府県を経由しまして私どもの受理した件数は二千八百九十件であります。
  40. 西村関一

    西村(関)委員 韓国籍から朝鮮籍にかえてほしいということを言っておる者の数は何名ですか。
  41. 中村正夫

    中村説明員 とりあえずの、正確な数字ではございませんが、約一万であります。
  42. 西村関一

    西村(関)委員 これに対する取り扱いは、どういうふうになさるのですか。
  43. 中村正夫

    中村説明員 いわゆる統一見解というものが出ましたあとでございますが、それからあとの分につきまして申し上げますと、本人韓国籍ということを申し出たのが間違った場合、あるいは市町村吏員が切りかえ等において何か過誤等によって書きかえが間違ったことがあるということを本人主張しておるものがございますが、そういうもので調査いたしまして訂正いたしましたのが三十六件ございます。
  44. 西村関一

    西村(関)委員 その他のものについてはどういうお考えですか。
  45. 中村正夫

    中村説明員 現在調査中でございます。
  46. 西村関一

    西村(関)委員 どういう方針調査しておられるのですか。
  47. 中村正夫

    中村説明員 いま申し上げましたとおり、朝鮮から韓国に書きかえたのが誤りであったと認められる分について訂正いたします。
  48. 西村関一

    西村(関)委員 在日朝鮮人の方が自分国籍朝鮮民主主義人民共和国であるというはっきりした意思表示をした場合に、いわゆる統一見解なるものによって朝鮮というのは単なる符号だということで、そういう個人の自由意思を踏みにじるような措置をとられるということは、国際法に反するということは言うまでもありません。しかも永住権を申請しておる者が、法的地位協定発効以来、かねや太鼓ですすめ回っても、あらゆる手を尽くして政府永住権を早くとれと言っても、二千名そこそこにしかなっていない。しかもいま次長お話では、朝鮮籍にかえてほしいという者が一万名—一万名じゃありません。私のつかんでおるところでは二万に近い数になっておる。それがどんどん、どんどんふえていっておる、こういう事実に対してどういうお考えを持っておられるのですか。
  49. 中村正夫

    中村説明員 もともと在日朝鮮人は、外国人登録証明書の国籍欄には朝鮮と記載してございました。それが韓国と書き直した事情を申し上げますと、これはほとんど大部分が当時の韓国代表部に登録をいたしまして、そこから在外国民登録証というものをもらいまして、それを持ちまして、自分韓国の国民であるから韓国とかえてほしいという申し出がございました。それによって書き直しをしたものでございます。したがいまして、現在韓国と書いてある人の大部分は、自分意思並びに韓国代表部の証明書によりまして、韓国国籍のあるものと見て記載したものでございます。したがいまして、一たん本人自分韓国人であるということを主張し、かつ韓国の代表部もこれを証明した人が、あらためて自分韓国人ではないということを申して書きかえを求めるのでございましたならば、韓国国籍のないという証明書がない限り、ちょっと書きかえるわけにはいかない、こういう考え方でございます。
  50. 西村関一

    西村(関)委員 それが二人や、三人や、五人や、十人なら話は別ですけれども、いま次長の御答弁でも、一万をこえておる。それがますますふえてきておる。この事実に対して、これはかってに韓国籍である者を朝鮮民主主義人民共和国の国籍に移すことはまかりならぬ、こういうことはおかしいじゃないですか。国際法に違反するとはお考えになりませんですか。
  51. 中村正夫

    中村説明員 その一万の数が、何がゆえにそういうようなことをなさっているか、それはわかりませんですが、ただ大部分の方は何にも書いてないで、自分韓国と書いてあるんだけれども、これはいやである、自分自分の本意によらないで韓国になったからかえてほしい、こう申し出ております。そこで、私どもは、いま申し上げたとおり、なぜ自分韓国と書いたのが、いまになって朝鮮の誤りだとか、本意でないと言うのはどういう事情であるのか、たとえば登録する際に自分が誤って書いたというなら、それはどういう事情によるのかというような、本意でないという本人主張がどういう意味なのであるか、またその意味がこういうわけであるというならば、それを疎明するような資料を出してきていただきたい。ところが、大部分のものは同じような筆跡で同じようなことが書いてあるのがだらだら出ておるのでございます。ですから、これはもう個々人についてみんな違うはずなのがみんな同じようなので、ただ、私は本意でないから書きかえてほしいということだけしか書いていない。したがいまして、私どもとしては、それには書きかえに応ずるわけにはいかない、こういう考え方でございます。
  52. 西村関一

    西村(関)委員 そうしますと、その書類は、だれかが本人意思をひん曲げて書いたものであるかもしれないというようにとっておられるというふうな印象をいまの御答弁では受けるわけなんですが、しかし、日本文字の書けない人もあろうと思う。代筆で書いてもらう人もあろうと思う。しかし、少なくとも自分韓国はいやだと言う。朝鮮といえば朝鮮民主主義人民共和国のことをさすのでありますが、それに変えてほしいという意思表示を公式文書をもってやっておるということには間違いないのです。その数がどんどんふえていっておる。こういうことに対して、これを押えるということはおかしいと思うのです。統一見解では、何か代表部の証明を持ってこいとか、いまでは大使館の証明をもらってこいといっても、代表部がそんなものを書くはずがないし、現在の大使館がそういうものを出すはずがないということはわかり切っておる。いわば難題を吹っかけて、これを朝鮮籍にかえることを故意に拒否しておられるという印象をわれわれは受けざるを得ない。個人の自由意思をこれは阻害する。こういうことは、在日朝鮮人の方々が日本国に信頼をして、そうして日本国におけるところの生活を豊かにしていくという本旨にもとってくる。現に政府は、北とは国交はないけれども、政権のあることを認めるという立場をとっておられる。そういうことについて、いまの次長の御答弁のようなことで満足するとお考えになっておられますか。満足しない。その満足しないふんまんが累積してまいりますとどういう事態が起こるか。しかも、その数はどんどんふえていっておる。こういうようなことに対して、いまのような御答弁——国会の答弁は、すぐいろんな機関を通じて、国民並びに在日朝鮮人の方に知れるわけです。いまのような御答弁で、それで済まされるとお考えになるのか、どうでございますか。
  53. 中村正夫

    中村説明員 現在の法的見解に誤りがないと考えております。
  54. 西村関一

    西村(関)委員 法的考えに誤りがない、しかし、どんどんふえていっておるという事実に対して、そういうことは問題にしない、あくまでも政府考えを推し進めていく以外に方法がないんだということでは、混乱が起こります。その混乱を押えつけていくということでは解決にならないと思う。永住権を申請する者が二千、そうして国籍変更を願い出る者が万をこえる。その数はますますふえていっておる。こういう事態に対して、法的見解は間違いないからこのままでいくんだというんでは、これは私は問題は残ると思うのです。いま大臣もお戻りになりましたが、大臣、この問題に対してどういうお考えをお持ちになっておられますか。
  55. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局国籍の登録だろうと思うのですが、日本国籍を移したいというのでなくて、外国のAからBに移したい、こういうのでございますから、これは日本の関与する余地はきわめて限定的なものである。ただ、そういう事実が確定すれば、日本がそれを登録するということなんだろうと思いますが、私も手続のことはよく知りません。問題は、そういう基本的な事実がはたしてあるかないかというようなことが問題になると思います。私は専門のほうじゃありませんので、これ以上お答えすることはできません。
  56. 西村関一

    西村(関)委員 逆に、朝鮮籍から韓国籍にかえたいというのが何名あるのですか。
  57. 中村正夫

    中村説明員 時点で申し上げないといけませんが、過去一年間で約七千でございます。
  58. 西村関一

    西村(関)委員 それはどう理由でございまいますか。
  59. 中村正夫

    中村説明員 先ほど申し上げましたとおり、元来が朝鮮と記載してございますが、自分朝鮮でなくて、韓国国籍を持っておるものであるからかえてほしいといって、韓国の代表部の証明書を添付して申請してまいるわけであります。
  60. 西村関一

    西村(関)委員 その中には韓国に墓参に帰りたい、墓参に帰るには韓国籍を持たないと許してもらえない、朴正煕万歳を五へんぐらい言わないと帰れないというせっぱ詰まった思いで韓国籍になった。しかしその用を足した後はまた今度朝鮮籍にかえてもらいたいという、こういう申請者もあるやに聞いているのであります。その数からいいましても、七千という数はきわめてばく然とした数であります。一万という数もきわめてばく然とした数であります。その数字はもう少し正確に出していただきたいと思います。しかし、問題があるということだけは、いまの答弁では満足いたしません。これはまた審議を次回に延ばして、さらに問題を究明していきたいと思います。時間がありませんので、次の問題に移りたいと思います。  次の問題は、三月二十六日付の朝日によりますと、ほかの新聞にも出ておったわけですが、私は朝日が手元にありますからこれを引用いたします。「外国人学校制度を創設」そして見出しとしては「反日教育押える」「基準に合わねば閉校も」こういう見出しでありますが、これは前から問題になっておったことなんでありまして、昨年の十二月二十八日付の文部次官通達による在日朝鮮人に同化教育を強制し、自主的に建設され運営されている朝鮮人各種学校における民主主義的民族教育を抑圧する政策を打ち出しているのであります。その次官通達、それが今度は法の改正にまで——与党の政調会あたりと話し合って協議を続けていよいよ学校教育法の改正に乗り出すということが新聞に報道されておるのでありますが、このことに対して真相を明らかにしていただきたい。
  61. 犬丸直

    ○犬丸説明員 日本にございます外国人のみを収容する教育施設の中には、いわゆる朝鮮の方たちのみを収容する教育施設がかなりございます。その一部分は各種学校という制度のもとに認可されておるものもございますが、各種学校と申しますと、現在学校教育法の中で正規の学校以外のものであって、「学校教育に類する教育を行うものは、これを各種学校とする。」こういう制度になっておりますが、この外国人学校の問題につきましてはかなり従来から問題がございまして、日本の学校教育の制度の一環として取り扱う以上は、本来的に各種学校であっても、日本の国民の教育のための制度でなくちゃならぬはずであります。しかるに、従来いろいろな、朝鮮の方たちにおきましては終戦後しばらくの間は日本国籍を持っておられたそういうような経緯もございまして、いわゆる朝鮮人学校の中でも各種学校で認可されたものもございます。しかしながら、よく考えてみればそういう外国人のための施設というものは、日本の学校制度として本質的にはなじまないものではなかろうか、こういう反省が起こってまいりまして、最近におきましては、そういう外国人学校を各種学校として認可することは差し控える、こういう方針でわれわれ臨んでおります。ただし、基本的に申しまして、日本に在住する外国人であっても、それぞれの外国の方たちが自分の子弟に自分の国のことばを教える、あるいは母国の民族精神を教える、こういうことはいわば基本的人権的なものであって、これを否定するわけにはいきません。そこで、何かそういう外国人学校という性格に即した新しい制度が、必要ではなかろうか、現在の各種学校ではちょっとその辺が適切でないということで新しい外国人学校というものを考えるべきじゃないか、こういう方向でまいったわけでございます。先生の御指摘されました昨年の十二月二十八日の通達もそういう精神で書かれております。そういう方向で現在検討を進めております。朝日新聞に出ておりましたこともそういう検討しておる方向をキャッチしての記事かと思います。内容的にはまだあれに出ておりましたことは固まっておりませんが、そういう方向でいま検討をしておるわけであります。
  62. 西村関一

    西村(関)委員 伝えられるところによりますと、この法の改正では、文部当局が「外国人学校設立認可に対する国の関与権」を確立しよう、それから「都道府県による外国人学校の運営についての調査権」を明確にしようというようなことがあげられておると伝えられておるのですが、その点はいかがですか。
  63. 犬丸直

    ○犬丸説明員 これは今度のそういう外国人学校制度の内容をどういうふうにするかということはいろいろな考え方がございまして、文部省として固まった案はできておらないわけでございますが、外国人学校の問題は、これは従来の各種学校ですと都道府県知事が全部処理しております。日本国民の問題でもございますし、各種学校の性格として地方的な性格を持っておりますから知事が認可しておるということでいいわけでございますが、外国人学校という問題になりますと、いろいろ国籍の問題その他ございますので、知事だけにまかしておいていいのかどうか、こういうことも検討の材料としてあがっております、そういうことであります。
  64. 西村関一

    西村(関)委員 先ほど外事課長の御答弁の中にも、外国人が外国にあって自分の子女を教育する機関を設ける場合に、その国のことばなり民族精神なりを教え込むということは当然だというふうに言われましたが、その点に対して政府は何らの規制も行なわないという考えと受け取ってよろしいですか。
  65. 犬丸直

    ○犬丸説明員 私どものほうで考えております外人学校制度に関する限りにおきましては、おっしゃいましたような方向で考えております。
  66. 西村関一

    西村(関)委員 新聞の伝えるところによりますと、この法の改正によって文部省当局は反日教育を押えるという意図を持っているというふうに伝えられておりますが、その点はいかがですか。
  67. 犬丸直

    ○犬丸説明員 反日教育ということが新聞に出ておりましたけれども、どういうものが反日教育ということかということにも問題がございましょうが、少なくとも外国において行なわれる教育で——大体朝鮮の方たちから見れば外国であります。外国において行なわれる教育でございますから、それを制度として日本側も認めるということでございますから、いわば国際親善の精神にもとる、あるいはその所在国に対して故意に敵意をあおるとかいうようなことがございますれば、これは問題になろうと思います。これは国際的な慣例から見ましてもそういうことまで容認するということにはならぬと思います。そういうふうな方向で検討を進めております。
  68. 西村関一

    西村(関)委員 自由主義国であるところの日本にあって、社会主義国の国の制度なりそのよってもって立つたてまえというか精神というか、そういうものを教え込む、これは当然のことだと思うのです。そういうものまでも反日教育として押えるということではない。そこのけじめ、いわゆる反日教育とそういう民族教育とのけじめをどこにつけるか、どこに線を引くかということは、これは非常に重大な問題である。いまの御答弁のような考え方が下部末端にまで徹底すればいいのですけれども、やはり自国の精神、自国の制度を教え込む場合に、それが反日だということで国が関与する、あるいは都道府県が調査をし、場合によっては閉鎖を命ずるというようなことになりかねない危険がある。そのけじめをどこにつけるかということが大事だと思いますが、目下検討中だ、まだ煮詰まっていないということでありますから、そういう憂いのないようにという点からいうと、自主的に民主的にやっている民族教育というものを阻害する、これに圧迫を加えるというような傾向のあるこういう法の改正は——いま言われた限りにおいての趣旨は私もわかります、しかし、結果から見ると重大な問題をはらんでおるこの法の改正に対しては、文部当局は十分慎重な配慮をしなければいかぬと思うのであります。その点もう一度はっきりお考えを聞いておいてこの問題は打ち切りたいと思います。
  69. 犬丸直

    ○犬丸説明員 ただいま先生の御指摘になりましたような点もまさにこの外国人学校制度の重大な問題だと思います。御意見のありました点は私ども帰りまして上司に伝えて、十分検討の資料にいたしたいと思います。
  70. 西村関一

    西村(関)委員 私の時間はもう十分ほどしかありませんので先を急ぎますが、外務大臣、アジア外相会議政府は参加の方針をきめたということでありますが、これはどうでございますか。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 会議の前に準備会議を開く、それはバンコクで開く、それでそれに出てもらいたいというのが来ております。問題は、要するにどういう議題についてどういう運営をするのであるかということが問題でございます。でありますから、準備会議でそういう問題が討議され、決定されるだろうと思いますので、準備会議には出てみたい、その準備会議の様子いかんによって出欠をそれまではきめない、保留する、こういう態度であります。
  72. 西村関一

    西村(関)委員 そのバンコクにおける準備会議には出席して、準備会議の模様いかんによって出席するか出席しないかをきめるということですが、その模様というのは、一体外務省としてはどういう模様なら出席する、どういう模様なら欠席するというお考えですか。
  73. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 それはいまからどうもはっきりこういろ公の場所で言うことはできません。いわゆる仮定の問題でございます。結局、建設的な内容を持たずに、ただいたずらにスローガンを高く掲げて結束をかたくするとかなんというような、あまり内容のないようなものではやはり適当ではない、こう考えますので、やはりそういち議題、運営のいかんということが、日本がこれに対する終局的な態度決定する要点でありますから、その点を十分に見きわめた上で決定したい、こう考えております。
  74. 西村関一

    西村(関)委員 どうもいまの大臣のお答えは、建設的な考えを持たずにただスローガンだけでかたまるというのでは困る、建設的な内容というのは一体何をさすのか、その点、仮定の問題だと言われるけれども、重要な国際会議に出られるについては、一応の政府考え方というものは煮詰まっていなければならないと思う。こういう考えならばこういう考えで準備会議に臨むのだ、そうしてその日本政府考え方に合うならば出席をするし、合わなければ出席をしないということでなければ、ただぼんやり出ていったのでは、日本政府としてのアジア中心外交といいますか、自主外交といいますか、そういう日ごろの大臣主張に反する。仮定の問題じゃないですよ。準備会議に出るということはきまっておる、きまっておる以上は、これに臨む態度というものがなければならぬ。その点はいかがですか。
  75. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 まあそうかたいことを言わずに準備会議に出まして、なるほどこれならば日本が出席する価値があるという認識を持てば出る、そういうわけです。
  76. 西村関一

    西村(関)委員 大臣はそういうことをいつもおっしゃるのですけれども、おそらく方針はきまっているのでしょう。ここでは言えぬ、こういう席では言えぬということをさっきちょっと口をすべらされたのですけれども、ここでは言えぬけれども別なところでは言えるというふうにも一これはあげ足をとるようなことを言って申しわけないのですけれども、もう私はきまっているのだと思うのです。そういうことで、ただ一応の形をつけるために準備会議に出る。もうすでに新聞では政府積極参加に踏み切ると書いてあるじゃありませんか。「政府積極参加に踏み切る」、いまのような大臣の御答弁と違うじゃありませんか。私は、もう時間がありませんから、非常に残念ですが、約束の時間を守るためにやめなければなりませんが、この点は、じゃ、いまのところは大臣は白紙で臨む、白紙で準備会議に出る、こういうお考えだと受け取ってよろしいですか。
  77. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 白紙という——結局そういうわけです。とにかく、やる以上は建設的なものでなければいかぬ、ただ、間々そういう威勢のいい会議があるのですが、そういった空疎なものでは日本としては出席できない、そういう気持ちを持って行くのです。これは白紙といえば白紙かもしれません。
  78. 西村関一

    西村(関)委員 私はまだ数問残っておるのですが、入管の人にも残ってもらっておるのですけれども、その問題をやると時間が長くなりますし、さっきの名前の問題も残っておるのですが、約束の時間が参りましたので、もう一点だけ伺って、往来の問題とかいまの金九暗殺首謀者と目せられる者の日本亡命の問題などはあとに残したいと思います。  大臣にお伺いいたします。最近岸元首相が訪韓されるということが伝えられておりますが、この性格及び目的は何でございますか。
  79. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 純然たる民間の親善訪問でございます。
  80. 西村関一

    西村(関)委員 岸元首相といえば自民党の大ものであるということは言うまでもありません。ただ普通の民間の親善使節とは世間では受け取っていないのでありまして、重大な関心が寄せられておるわけでございますが、このただ単なる親善友好のために岸元総理が訪韓をせられるということについて、われわれの心配は、かつての日華協力委員会のように、日韓協力委員会のようなものをつくって、何らかの取りきめをやるのじゃないかという心配をしているのでございます。外務大臣としても、ただ単に握手をして帰られるものだとは考えておられないと思うのでありますが、またぞろ第二の吉田書簡のようなものをひっさげて帰られるということになりますと、これはわれわれが日韓条約に対して心配をいたしましたことがいよいよ露骨に動き出してきたという印象を受けざるを得ないのです。こういうことを伺いますと、これは仮定だから仮定の問題には答えられないというように御答弁をなさると思いますが、大臣、実際そういう心配はございませんですか。
  81. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 少なくとも向こう政府と何か話し合いを取りきめるというようなことではないと思います。また、そういうことは不可能な立場にあります。こういう、この種の親善使節というものは別に珍しいことではない。社会党なんかでもよくおやりになるのでありますから、民間と民間との間で何か意見の一致を見たとかなんとかというようなことは、それはあるかもしれませんけれども、私はそういうことに対してはいま何も申し上げることはできません。
  82. 西村関一

    西村(関)委員 政府は何らの拘束を受けないということでございますね。  入管次長さん、さっきの名前はわかりましたか。——ではお名前だけ聞いておきましょう。
  83. 中村正夫

    中村説明員 御報告申し上げます。  金志雄氏の身元保証人は弁護士の遠山丙市さんという方が保証人になっておられましたが、昭和三十八年の十一月からは亜細亜大学の教授の中山優さんという方が保証人であります。
  84. 西村関一

    西村(関)委員 いまの問題は、さきに申しましたように保留をさしていただきます。それからその他の問題につきましても、次回に保留をいたします。  これで私の質問を終わります。
  85. 毛利松平

  86. 穗積七郎

    穗積委員 先ほど西村委員が申されましたように、私は、きょうは中国人民外交学会、この使節団の入国拒否されたことについてお尋ねしたいのです。ですから、外務大臣だけでなくて法務大臣の出席も昨日来強く要求いたしておきましたが、どういうことになっておりましょうか。
  87. 毛利松平

    毛利委員長代理 いま参議院の予算分科会に入っておるので、こちらにはちょっと出席不可能のようであります。
  88. 穗積七郎

    穗積委員 いまの時間はそうであっても、事がはなはだしく緊急かつ重大でございますから、きょうじゅうでも、あるいは途中にでも短時間ちょっと出席をしていただくようにお取り計らいをいただきたいと思いますが、いかがですか。
  89. 毛利松平

    毛利委員長代理 目下努力中ですが、大体不可能な時間です。
  90. 穗積七郎

    穗積委員 向こうが済んだあとでもけっこうです。だから法務大臣に対する質問だけ保留いたしまして、きょうは本会議もありませんから、午後でも出ていただいて、やっていただきたいと思うのです。
  91. 毛利松平

    毛利委員長代理 連絡してみます。
  92. 穗積七郎

    穗積委員 この委員会は休憩しておいていただくように、委員長に強く要望しておきます。
  93. 毛利松平

    毛利委員長代理 いまのところ一時で打ち切る予定にしておりますが、法務大臣が来なければ意味がないから交渉してみましよう。際限もなく来られないのじゃしようがないから、目標を立てなければならぬので、いま交渉してみます。
  94. 穗積七郎

    穗積委員 それでは質問に入りますが、昨日私は党を代表いたしまして法務省に参りましたが、法務当局政府を代表して、われわれ社会党が招きましたお客さんである中国人民外交学会の胡愈之団長以下八人の代表団入国拒否されたわけですが、これは一体いかなる理由によるものでありますか。それを最初に明確にしていただきたいのです。
  95. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど西村委員の御質問に対して申し上げたのでありますが、従来中国との関係は、政治的な立場を異にしてはおるけれども、お互いに相手方の立場を尊重し、かつ内政に介入するということをしない、そういう限度において、政経分離原則のもとに経済、文化の交流を続けてまいる、こういう方針をとってきておることは御承知のとおりでございます。しかるに、今回の中共の人民外交学会代表団は、社会党の招請に応じて、広く国際問題等について、いわゆる政治問題について協議をする、こういう趣旨のもとに訪日されるようであります。この人民外交学会、これは言うまでもなく、中共外交政策に相当な影響力を持っておる学会のように承知しておりますが、これが日本に参りまして協議をされるということは、結局日本内外にわたる政策について、従来と同じように批判し、あるいは攻撃的な論議を進めることに相なると思うのであります。こういうことは、中共に対する日本のとってきた立場というものの限界を越えておるのであります。そういう意味で、これはお断わりすべきである、こういう考えのもとに、法務省のほうから外務省の意見を徴せられたわけであります。われわれは法務省の意見に全面的に賛成をいたしましてこれに同意を与えた、こういうわけであります。
  96. 穗積七郎

    穗積委員 入国ビザの問題は、法務大臣に、所管ですからお尋ねしたいと思うのだが、その政治的な判断のことについては大臣がおられませんからあとにいたしまして、中村入国管理局次長が御出席で、しかも中村さんは関係するジュリストでありますからお尋ねいたしますが、言うまでもなく、出入国管理令によってこの問題は処理さるべきことだと思うのです。法は万人の前に平等でなければなりません。そういたしますと、この法務省の事務当局といたしまして、いかなる法律のいかなる条項のどの辺に抵触するからこれを拒否することに決定されたか、その法的根拠を明らかにしておいていただきたいのです。
  97. 中村正夫

    中村説明員 お答え申し上げます。一般の国交がある外国人につきましては、外国人が旅券を持って在外公館に参りまして、日本入国を申請するわけです。その場合に在外公館におきましてビザを発給いたします。そこまでは外務省の査証発給規則というものがあります。それから今度はその外国人がビザを受けまして日本にやって参ります。その場合には日本に参りましてから上陸申請をいたします。そして入国審査官が書類を調査いたしまして許可を与えるわけでございます。この場合は出入国管理令によります。ところが国交のない場合には旅券がございませんので、そこで行政措置といたしまして、ビザのかわりに在外公館において渡航証明書を発給いたしまして、そして日本に参りまして、やはり同様な入管の手続をするわけでございます。最後に上陸を認めるか認めないかという最終決定をするのが入国管理局でございます。したがいまして、今回の場合、国交のない国の場合には特に代理で日本で申請をしてもらうという行政措置をとりまして、それによって入れるということの最終決定権があるところの法務省がきめて、そして外務省に連絡する。そして外務省が在外公館においてその人々に渡航証明書を出すという逆なやり方をするわけであります。したがいまして、この場合には最終の決定権のあるところの上陸に際しての審査をするところの法務省が結局はビザを出したとしても、上陸時にもう一度やるわけでありますので、最終決定権のある法務省入国をきめるというやり方をしております。
  98. 穗積七郎

    穗積委員 国交未開国の国民が入国する場合に、そのときには前提になって、いわゆる外交的な判断、これは政治の問題、外交政策の問題ですね。しかしながら、入国をする場合におきましては、出入国管理令の条章を準用することは当然でございますね。そうであるなら、このたびの場合には、一体出入国管理令のどこに、いかなる内容の規定に抵触するからこれを拒否したということが、事務当局としては当然あるべきです。
  99. 中村正夫

    中村説明員 出入国管理令の第五条に、入国をきめる場合に拒否するものがございます。それはいろいろと拒否理由がございますが、本件のような場合でございましたならば、そのうちにあります十四号で「前各号に掲げる者を除く外、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行う虞があると認めるに足りる相当の理由がある者」というのがございます。それからさらにもう一つの規定は、六条に「本邦に上陸しようとする外国人は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。」という規定がございます。したがって、先ほど申し上げたとおり、旅券と査証がまず前提になります。そういうことになっております。
  100. 穗積七郎

    穗積委員 特に今度の入国は政治的判断が主になったと思うのです。そういたしますと、ただいまお話のあった日本国の利益並びに公安を害するおそれがある相当な理由がなければならない。この代表団は、一体公安を害し日本の利益に反するというどちらでございますか、両方でございますか。
  101. 中村正夫

    中村説明員 形式的に申し上げますと、外国人が入ってくる場合には、有効な旅券と査証がなければならないわけでございます。その査証と旅券を出すかどうかという問題なのでございます。先ほど申し上げましたとおり、旅券はその国の旅券が持てませんので、入管令の一条に書いてありますとおり、在外公館において発給する渡航証明書、これを持つわけでございます。この旅券並びに査証を持ってくるということが前提でございます。その旅券を出すかどうかという問題でございます。まだ入ってこない場合でございますから、必ずしも五条まではすぐにまいらない、六条の問題と考えます。
  102. 穗積七郎

    穗積委員 そうなりますと、法務省所管のビザの発給そのもの以前、そうであるならば、外務省または内閣で最初に入国の可否について審議をして、そしてしかる後にビザの手続、審査に入るべきでございますね。それがこのたびは法務省においてそういう政治的に押しつけられた、いわば内閣の政策によって法の解釈を曲げておる、逸脱しておる、法務省所管の領域を離れておりますならば、これは法務省の関するところではなくて、内閣または外務省がこれに最初に当たるべきが順当だと思うのです。それを法務省事務当局入管局といたしましては、その段階に至る前に自分の所管、自分立場以外の政策的な要素によって決断をされる、これは法を曲げるものであり、法務省の所管の領域を乗り越えるものだと私は思う。したがって、昨日法務省から御回答がありました。ありましたけれども、これは私は昨日あなたもおられて、法務省に対して申し上げましたが、このような取り扱いがどうも不当な方法によって行なわれておる判断については、われわれはこれを受けるわけにいかない、拒否をいたしまして、その理由を明らかにして、再検討を要望したわけでございます。その点は外務大臣、いかがお考えですか。外務省から、または内閣からの圧力によって法務省の事務的な行政措置によってやった、それで国民に対しては、これは事務的な問題であるといって言いのがれをする、中国敵視政策を隠蔽しようとしておる卑劣きわまるやり方です。大臣、行政事務のやり方としていかがですか。
  103. 中村正夫

    中村説明員 先ほどちょっと御説明を落としたので穗積委員がよく御理解なさらなかったと思いますが、結局入管令とか旅券法というものがございますけれども、これは御承知のとおり、そういう法律は国交のない国を予定しての法律でございません。したがいまして、国交のない国の人たちも入れようという特別なやり方をするわけでございますので、いま申し上げたとおり、法律に基づかない部分がたくさんあるわけでありまして、申請するとかというのも、本来ならばそういうやり方がないので、行政措置でやって、法律でないものをやっておるわけでありますが、しかし根本的には穗積委員も仰せになったとおり、入管令あるいは旅券法というものの精神が背景になっておるわけでございます。  そこで、最後にいかなる場合でも上陸する場合にはその上陸を許すか許さないか、つまり日本に来るのを許さないかという最終決定権は法務省にございます。したがって、その最終決定権のある法務省側が、とにかく最初にかりに外務省がおきめになって渡航証明書をお出しになっても、法務省側が入れないということはおかしいじゃないかということになるので、最終の決定権のある法務省に処理をゆだねられておるわけでございます。したがいまして、この場合には、法務省外務省と相談いたしましてやるという形をとっております。したがって、そのときに決定の意見などをつけますのは、先ほども申し上げましたとおり、出入国管理令の五条十四号の精神をもちろんくんでおる、こういうことになっているわけであります。
  104. 穗積七郎

    穗積委員 私もそれは理解いたしております。しかし、未開国の人たち入国する場合には、だから出入国管理令が準用される、または援用されるといったのであって、むろんわかっておるが、それ以前の政治的判断につきましては、これは内閣または外務省が外交的な立場に立って、責任を持ってやるべきです。相手に対してもそうだし、われわれ社会党に対しての礼儀上からもそうである、また国民に対してもその態度を明らかにすべきである。にもかかわらず、いかにも事務的な行政措置のごとくいって、しかもその行政措置の場合におきましては、中国からもう他の使節団が多数入っておるわけですね。したがって、法務省態度としては、時の政府の、われわれから見れば間違った政策、その政策によって、正しい、万民に対して公平であるべき法解釈、それによって行なわれる行政措置が差別を受けるということは、法務省態度としてははなはだしく遺憾なことであると私は言っておるわけです。その議論はいずれまた出入国問題に限ったときにいたしましょう。その手続において誤りであるということを私は申し上げておきます。  それから、外務大臣、本質の問題に入りますが、政治的目的を持っておるから好ましくないということであって、先ほどあなたが言われたのは、中国外交学会から参りました会長、張奚若氏から佐々木更三あての電文の中に、アメリカ帝国主義に反対する闘争をさらに展開するという立場を、これは中国側の立場として言っておることですね。これが日本国益に反するとは一体何事ですか。日本の政策を事前に批判しておるわけではありませんよ。アメリカ帝国主義の政策がアジアにおける平和と独立の問題に非常にじゃまになるという考えを持っておるだけであって、そのことが中国で言われようと日本で言われようと、それは相手国の自由ではありませんか。日本関係ないことです。アメリカ帝国主義を非難することが一体何で日本国益に反しますか。われわれ社会党も、アメリカ帝国主義をはっきり非難し、その修正を求めております。それが何で国益に反しますか。日本外交政策ではありませんよ。さらに日本の内政ではありません。中国関係のある、あるいは平和を愛する日本国民を含むアジア全人民にとって、アメリカ帝国主義のいまやっておる政策というものは非常な不安を与えておる、それがいけないという、その政策の転換を求めておることが、何で一体日本国益に反しますか。何が内政干渉でしょうか、大臣
  105. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この問題を北京でおやりになるなら、これは御自由であります。日本の国内に入り込んで、そしてこれを堂々とやられるということは、日本としては日本外交政策上もこれは許すことができません。
  106. 穗積七郎

    穗積委員 許すことができないとは何ですか。日本とはおこがましい。自民党にとって不都合である、都合が悪いということは言えるでしょうけれども、日本とは僣称ですよ。われわれは社会党ではありますが、社会党だけのセクト的な立場で言っているのではありません一日本全人民の立場、あるいは全アジア人の立場に立って、アメリカ帝国主義の侵略戦争を非難し、これを食いとめなければならぬ、こう言っておるのです。自民党には都合が悪いかもしれぬ。   〔毛利委員長代理退席、鯨岡委員長代理着席〕 しかし、自民党の中でも、アメリカ帝国主義によるベトナム戦争には反対意向を外国へ行ってすらやっておるじゃありませんか。それが何が悪いのです。最近は中曾根君まで行ってやっておる。さきには宮澤喜一氏もやっておる。北京へ行っては松村さんも高碕さんもやられた。何が悪いのです。自民党内部におけるあなた方の考え方に差しつかえがあるというだけでしょう。党の利益のために、一体その方針をわれわれ社会党にまで押しつけるとは何事ですか。社会党の政治的言動は自由であります。あなた方が得意になって言っておる民主主義と政治的自由に反するではありませんか。しかも、椎名さん、よくお聞きなさい。今度の使節団は、社会党が迎えた使節団であって、その使節団、外交学会社会党との話し合いですよ。自民党政府関係のないことです。わが国における政治的自由あるいは他の政党の自主性を侵すものではありませんか。社会党に対する侮辱であり、内政干渉です。見当違いなことを言われては困ります。自民党には都合が悪いかもしれぬ。自民党の一部の諸君の考えには気にさわることになるかもしれぬ。内政ではありません。
  107. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 社会党は何をおっしゃろうと、これはわれわれと見解を異にする党でございますからかまいませんけれども、とにかくその国の政治の問題を堂々と看板を掲げて非難、攻撃のために……。
  108. 穗積七郎

    穗積委員 椎名さん、ここに書いてあるのは「アメリカ帝国主義」と書いてありますよ。「日本帝国主義」と書いてないですよ。
  109. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ベトナムの戦争はアメリカ帝国主義の戦争じゃないと私は言っておるのです。それから、一体アメリカの帝国主義とは何を言っているのかどうも私にもよくわからない。結局、日米安保条約というものを結んで、アメリカと緊密なる連携をとっていく、これは日本の外交上の基盤としてきわめて重要なものでございまして、結局これはそういう問題の批判になるのです。それに対する攻撃になる。だから日本としてもこれを許すわけにいかない。
  110. 穗積七郎

    穗積委員 それは国益に合致することです。それなら、自民党の議員諸君あるいは自民党と仲のいい松本重治氏がアメリカへ行ってやっておることは一体国益に反しますか。アメリカ自身へ行ってやっておるのですよ。一党独裁ですよ。アメリカ帝国主義が何だかもわからぬようなことなら、来てわれわれとの会談をよく耳をそばだてて聞いたらいい。アメリカ帝国主義の批判、特に一九六四年第四次使節団、私も団員として参りましたが、その中でこちらから提案したのは、こういう趣旨です。いままで一九五六年以後第四次まで来たけれども、常に一方交通であるから、相互平等の外交の原則上からも、また相互の理解と親善をはかるためにも、相互に訪問し合おう、北京で話すのと日本を見て日本の他の人にも接触しながら話すのとでは、日本に対する中国の理解が違う、一そう深まる、そういう趣旨で相互交流を提案をした。それを正しく向こうは理解されて、直ちに賛成をされて、あのコミュニケの中にも一条起こしてそういうことをしるして、それが今度行なわれるわけです。アメリカ帝国主義の問題は日本の問題ではありません。日本も被害者です。だから、アメリカ帝国主義を口にするものは全部入ってきてはいかぬ、それが国益に反するとは一体どういうことでしょうか。しかも、こっちの受け入れば、政治的な自由の認められた政党ですよ。社会党は経済団体や文化団体ではありません。その外交の問題について話し合いをすることが国益に反するとは一体どういうことでしょう。社会党の思想の自由と国民外交の行動を抑制するものです。そんな無礼なことがありますか。そのような一党独裁が許されるでしょうか。自民党政府の諸君も一緒になってこのアメリカ帝国主義の問題を議題として話し合いをしようというのではありませんよ。関係のないことじゃありませんか。
  111. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ですから、社会党がどういう主張をされようと、それは要するに日本内部でのことでございますから、それに対して国民が終局的な判断をすることになっております。それはかまわないと思います。これもいろいろ説はありましょうけれども、ただいまのところは、何を主張されようと、結局は主権者たる国民が判断し、そして大多数がこれに賛成であればそういうことになる。しかし、外国のお客さんを呼んで、そして日本内外にわたる政策を批判あるいは攻撃するということは、私はこれはまた違うと思うのです。社会党さんからいうと大事なお客さんかもしらぬけれども、お客さんによりけりであります。
  112. 穗積七郎

    穗積委員 あなたはいまの御発言の中でいろいろな誤りをおかしております。第一、内容から伺いましょう。アメリカ帝国主義を批判することがなぜ日本国益に反するのでしょうか。これは日本の問題ではありませんよ。そういうことは、アメリカ帝国主議を日本国内批判されることは、これはアメリカに追随しておる佐藤政府としては困るということですね。そうでない以上、国益に反するということはあり得べからざることなんです。アメリカのためにならぬからやめてもらうというなら話はわかる。そうじゃなくて、日本国益に反するというから、アメリカ帝国主義の問題を議論することがなぜ一体国益に反するのか。それが国益に反するなら、アメリカ帝国主義政策を支持し、それに追随しているということを表明するものではありませんか。どうですか。
  113. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ここで帝国主義の定義を論争しようとは私は思っていない。しかし、われわれが考えておる帝国主義じゃない、アメリカのいまとっておるのは。それから勢い日米安保体制というものに対する批判なり攻撃になるのでありまして、そういうことになると、これは明瞭に国益に反する問題である、こう考えます。
  114. 穗積七郎

    穗積委員 語るに落ちるで、日本は安保体制でアメリカに縛りつけられておる。その親玉のアメリカの悪口を言われては日本国益に反する。すなわちアメリカは中国を敵視しておる以上、日本もこれを敵視しなければ日本国益に反する、そういうことをみずから表明されるものですね。帝国主義の内容を私もここで論争しようと思っておりません。あなたに説教しようとも思っていない。問題は、それが日本国益に反するというから、それではアメリカに追随する佐藤内閣の外交というものを露呈する結果になるではないか、そう理解せざるを得ないではないかということに対して、あなたはいま言ったとおり、安保体制で縛られておるから、その相手国であるアメリカの悪口を言うことが日本国益に反する、すなわち日本はアメリカに追随して中国敵視政策をとるのが国益に合致すると理解しているわけでしょう。そういう理由ですね。そう理解してよろしゅうございますね。
  115. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 今回の人民外交学会の来訪ですね、それを問題にしているのです。中国全体を問題にしているのじゃないのです。あなた、いま中国を敵視するということに理解していいかというが、とんでもない話です。この問題だけを取り上げているのですから、その点は誤解のないようにお願いします。
  116. 穗積七郎

    穗積委員 大臣にお尋ねしたいのは、野党、それは合法的に認められて、尊重しなければならぬ野党第一党の社会党の国民外交の思想は許す、国内における言動も許す、しかしながら外交行動は許さないということはどういうことですか。われわれは日本国益に合致するものと考えて  これから言いますけれども、国益の内容について問題があるから言います。ベトナム問題あるいは日中の貿易の問題、これらの問題を解決することが国益に合致するというわれわれは信念によって中国との話し合いをする。日本の外交の唯一のメリットというものは、中国解決についてイニシアチブをとることです。そういう信念によって、われわれは遺憾ながらまだ政権はとってないから国を代表する外交交渉権はありませんが、そのわれわれの外交政策を伸ばすために外交行動をとることをなぜあなた方は抑圧するのですか。党に対する侮辱であり、内政干渉です。われわれが外国へ行ってやろうと、中国へ行って話そうと、また中国から来てもらって日本をよく見、その理解のもとで話し合いをするということが効果的であると考えたからわれわれは提案をし、そういう約束をしてきたのです。その日本社会党、経済団体とか文化団体ではない政党である社会党の政治的思想の自由と行動の自由、国民外交の自由というものはこれでじゅうりんされるわけです。何が悪いのですか。あなた方は日本国、日本国といいますが、選挙を通じてあなた方は国民から五〇%の支持を得ていないのですよ。主権者は国民であって、国民に反するならば悪い。自民党の利益に反するから都合が悪いなどというばかばかしいことはないはずです。許さるべきではない。いま申しましたとおり、他国であるアメリカの政策を批判することを日本国益に反するということは、これに追随することを表明しておる。それから第二点は、これは社会党に対する非常なファッショ的な抑圧です。一党独裁の抑圧です。その問題はあなたは自民党の領袖としての立場で信念を明らかにしていただきたい。
  117. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 社会党の政治行動を束縛するとか、そういう意味は一つもないのでありまして、ただ、たまたまその内容が適当でない、こう認めたわけであります。すべて外国のお客さんを呼ぶなとか、そう言っておるわけじゃない。今度の問題に関してはこれは適当ではない、こう考えております。
  118. 穗積七郎

    穗積委員 私の質問に対してあなたは答えていないですよ。社会党外交政策——相手なくして外交ができますか。内政の問題じゃありませんよ。内政の問題である税金をどうするの、あるいは教育をどうするの、それを中国を呼んで相談するわけじゃない。それならその行動は内政干渉にわたるおそれがある。そうではなくて外交のことです。しかもわれわれが申請書に書いたとおり、日本中国とに共通の問題を討議する、重大な関係のある問題について討議をする、しかもベトナム問題以来この解決については世界じゅうの人、特にアジア人のお互いとして十分この問題については討議をしなければならない。外交のことは相手があるのです。社会党の外交思想並びに外交政策並びにその政策の実施にあたって、なぜ一体これを抑圧する権限が自民党にありますか。不当な弾圧ではありませんか。
  119. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 社会党とは、外交、防衛の問題については全く百八十度の対立をしている。しかし、これは国内的には結局国民が判断する問題であります。ただ外国のお客さんをなぜそういったようなことにまで呼んで討議をしなければならぬ、こういう点についてわれわれはこれは適当でない、こう思うから入国を認めないのです。入国を認める認めないはその国の自由でございますから、そういう判断に到達して法務省のほうから連絡がありましたので、これに同意を与えた、こういうわけであります。
  120. 穗積七郎

    穗積委員 あなたは、外務大臣をしながら、ものわかりが悪いのか、あるいは国会を無視してとぼけておるのか、両方かもわかりませんが、外交の問題は内政とは違いますよ。国内だけで話して何の役に立ちますか。外交とは相手のあることです。しかも私どもがこの間も具体的に官房長官にも話をした。それは第四次使節が過ぎまして、一昨年の十月ですが、それ以後の情勢の中で特にベトナム問題というのが起きて、それをどうしても平和的に解決する方向へ向かって、アジアが戦場になることを防がなければならない、アジアの人民がアメリカの戦争の前衛隊として殺されることを防がなければならない、また一国の独立が侵されることを防がなければならない、そのためにはどうしても国内でそういうことを言うだけではなくて、具体的にわれわれの外交政策を進めるためには一番かなめに立っておるまず中国とも話をする。何となれば、日韓会談にいたしましてもベトナム戦争にいたしましても、すべてがアメリカの武力による中国封じ込め政策の一環であるからです。当面の利害関係国です。したがって、アジアの平和と独立の問題を合理的に平和的に解決するために、われわれがこの際中国の代表と十分忌憚のない話し合いをする、これが何が国益に反しますか。あなた方は見当違いの、アメリカのしり馬に乗った平和交渉をできもしないのにやって、あなたはソビエトまで行って恥をかいて帰ってきて、横山さんはそこらを回ってひやかされた。われわれ野党ですから、自民党とは別にそういう思想と政治的行動の自由があります。その意味中国と話し合いをしようというのが一体何が悪い。外交の思想、政策並びにその行動を国内に局限するということは、これはあなたはもうまるで外交の否定ですね。外交を否定された社会党というものは半身不随です。社党に対する大きなる断圧、抑圧、干渉です。はっきり返事をしていただきたい。
  121. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日本のただいまの中共に対する立場をはるかに越えることにこれはなるのでありまして、この際は認めるわけにいかぬ、こういう判断に到達しました。
  122. 穗積七郎

    穗積委員 ちょっとお尋ねしますが、私は社会党政府自民党との関係を聞いているのですよ。われわれはあなた方に何ら制肘される必要はない。われわれは政党です。だから外交のことについて外国の人と話をするのは当然の権利であり責任であります。それをなぜ抑圧するのですか。そのことを聞いているのです。社会党に対する態度を聞いているのです。自民党政府中国の外交思想、政策についての批判を聞いているのではありません。社会党の政治的自由に対する問題として聞いておるのです。とぼけちゃいけませんよ。
  123. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 社会党そのものを抑圧するというような考え方は全然ないことは、私が言うまでもないことだろうと思います。ただ、おやりになることにたまに適当でないことがあるので、これをおやめになったらいいだろう、こういうわけであります。
  124. 穗積七郎

    穗積委員 適当でないかあるかはわれわれ自身が判断すべき問題だと思う。要らぬお世話です。われわれはここで政府に対して、適当でない、国益に反すると思って幾たびか言っても何らあなた方は聞かぬじゃないか。政治的自由の問題ですよ。合法政党に対する権威の問題です。中国がかってに来ようと言ったんじゃないのですよ。われわれがわれわれの判断で提案をし、われわれの判断で今度はぜひ日本を見、かつ聞きながらゆっくり新しい情勢のベトナム問題なり、核の問題について話し合いをしましょうということなんです。さらに、許されるならば、日本の経済不況を背景にして、世界第五位の順位にまでのし上がってきた対中国貿易、社会主義諸国との十億ドルをこえる貿易のうち半分をこえるに至った中国貿易、これは日本の不況対策の根本的政策としてわれわれは確信を持っている。そういう問題について話し合いをしましよう。その社会党の計画、社会党の国民外交の実践に対して妨害をするとは何事だということです。社会党がやっておることですよ。
  125. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 社会党のおやりになることはすべて尊重してまいりたい、協力してまいりたい、こう思いますけれども、たまにどうも協力のできないことがある。日本の政治を預かっておる責任ある政党として、これはやはり自主的に判断して、そして限界を越える場合には、これはどうもお気に召さないだろうけれども、許すわけにいかぬ、こういうわけなんです。
  126. 穗積七郎

    穗積委員 一体何を基準にして限界を越えるとか越えぬとか言うのですか。越えるか越えぬかを判断すべき者は有権者、主権者です。われわれ自身が判断すべきことです。それが成功であるか失敗であるか、正しいものであるか誤りであるかは社会党自身が判断をし、社会党自身が責任をとるべきことであります。さっきも言ったように、出入国問題というものは、これは単なる一行政事務です。それがそういうような自民党の対米関係あるいは国内における党のエゴイズムのために社会党のこの正しい方針が抑圧される。あなた方は正しくないと見ておるか知らぬが、審判は二人できめるべきものではなくて、有権者がきめる、国民がきめるべきものです。そういうふうにあなたは言っているじゃないか、国民の判定に待つというふうに。だから社会党の政治的自由を認めたらいいじゃありませんか。あなた方も一緒になってこの方針を認めてくれと言うんじゃないんですよ。われわれと中国と話をするときに、われわれが出す方針にあるいは中国の提案するものに対して、自民党がこの中へ入って賛成をしてくれと言っているんじゃない。それなら協力できないこともあるでしょう。協力するも協力しないもないのだ。出入国問題というのはそういう公平な立場に立って、自由を原則としてやるべきです。さっきの中村次長が読まれたとおり、法律にのっとってやるべきだ。その法律には、公安を害し、日本国益に反する相当の顕著なる理由がなければいけないとある。そんな一方的な、独断的なあなた方の立場でこれを抑圧するということは間違っている。これは取り消していただきたい。再検討していただきたいのです。どうですか。
  127. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 法務大臣がお見えになるでしょうから——所管は法務大臣でございます。  ただ、繰り返して申し上げますが、野党第一党である社会党の、しかも賓客として招いた形になっておりますので、そうであればあるほどその人たち日本の国内における政治行動というものはきわめて重大な意味を持ち、われわれは関心を持たざるを得ないのです。しかし、それが日本の内政、外交の根幹にわたって批判攻撃されるということは、もうこれは明らかなことでございますから、それはこの際はお断わりしたい、こういう判断でございます。
  128. 穗積七郎

    穗積委員 さらに、先ほど来外務大臣は、わが政府政経分離をとっておる、それであるのに政治的な目的を持って入ることは好ましくない、こう言われるわけですね。政経分離というようなことはそういうことに使わるべきではないのです。そういう意味で答弁をされるべきではないのです。日本政府外交政策中国に対して行なうときには、対アメリカ、対台湾政府との関係上、一挙に国交回復という政治段階まで入ることはできない、したがって政経分離ということにして、経済、文化、人事の交流を積み上げていくという対中国外交政策について政経分離方針でいきたいということを説明されたわけですね。この政経分離は、われわれは政経不可分だと思って、間違いだと思っておりますが、政府がいままで言ってきたというのは、中国に対する日本保守党政府外交政策は、政経を分離して積み上げていきたい、こういうことを言われたのであって、それを国内の合法政党、団体または一般の国民にそんなことを強要すべき性質のことではございません。政経分離なんということばを、これに反するものはすべて日本の利益に反するかのごとくばかばかしいことを援用されては困ります。その誤りを私は指摘をして、外務大臣のお考えをこの際明確にしておいていただきたい。政経分離原則というのは、自民党だけが言っておる中国に対する外交政策のプロセスを言ったにすぎない。国民にそんなことを強要したり、しかも政党であるわれわれ社会党にそんな原則を押しつける、そんな権限はありません。そんなことで政経分離原則というものがあるのではないのです。わかりましたか。
  129. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ここでまた政経分離の定義を中心にして論争する価値はあまりないと思います。結局、日米提携が日本の現実の外交の重要なる基調ともなっておるのでございまして、これに対して非難攻撃をするというたてまえの人たちを表玄関から堂々と迎え入れるということは、この際やめてもらいたい。これは日本のいまとっておる重要な政策に対する非難攻撃ということになる。それを政府が許すというわけにいかぬ、こういうことであります。
  130. 穗積七郎

    穗積委員 それは非常な誤りです。政府の誤った対中国外交プロセスを表現したのが政経分離方針だということなんです。それを国内のわれわれ社会党の政治活動に強要するということはもってのほかのことである。これは明瞭になりました。  次に言いたいことは、政治的目的云々ということを言われましたが、これは前々々に当たると思いますが、中垣法務大臣当時、われわれは、出入国問題の二十数段階の懇談会と、正式折衝をしたことがあります。そのときの政治的目的云々ということは、内政に干渉しないということなんです。そして来た以上は国内法に従う、そういう意味で政治的行動はしないという意味であって、外交のことは日本だけの問題ではなくて、相手国に重大な利害関係のあることですから、その利害関係のある国が外交問題について意見を交換することを抑制するものではない。それはここでいう出入国管理をされるときに、法務省の所管ですけれども、政治的行動はしない、政治的目的の行動はしないという、いろいろなことばで言われましたことは、内政に干渉をしない、入っている間は国の法律に反しない、そういう意味です。あなたは、外国人がその国のナショナルインタレストに立って外交について意見を述べることが、一体何が内政干渉なんです。禁止すべきものは内政干渉だけであって、外交上の意見の発表は自由であるべきです。だから、われわれが中国へ行っても、中国の政策について反対をしたり、あるいはその修正を求めたりすることは自由であります。そういうことを言ったからといって、すぐ出ていけなんということは一言も言ったことはない。ソビエトへ行ってもそう、アメリカへ行ってもそう、ヨーロッパへ行ってもそうです。ここでいう出入国管理をしておる行政措置の中で、政治的目的云々ということは内政のことですよ。外交は相手にも利害関係のあることです。そんなことを抑圧するなんて非常識のことが日本外交政策として許されていいでしょうか。いままでは、そのことは中垣法務大臣以来ずっと理解され、合意に達し、受け継がれてきている原則です。それを佐藤内閣になって椎名外務大臣が政治的云々なんていうことで、政治的目的がある、政治的言動が予定されているということで抑圧の理由にするなどということは、われわれ承服するわけにいきませんし、それは非常な誤りです。理解できましたか。何とか答弁してください。
  131. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 外交は内政でないという、これは初めて聞くわけでございますが、やはりその国の政治の重要な部分でございまして、いわば内政に胚胎している、外交は内政の延長である、その間にもう不可分の関係がある。これはそういうふうに、とうふを切ったように明瞭に区別するということは初めて伺う説でありまして、われわれは内政も外政も不可分一体のものである、これがその国の政治である、そう考えております。
  132. 穗積七郎

    穗積委員 それでは法務大臣が来られましたので、お時間がないようですから、ここで外務大臣に対する質問は中断しまして、先に法務大臣にお尋ねをいたします。  実は、いままでの論議をお聞きいただくとよかったのですけれども、昨日私ども党を代表して法務省に参りまして、中国人民外交学会代表団入国拒否の御通達をいただきましたので、即座にその席上で、これは法律的な取り扱いとしても、外交上の政治的判断から見ても不当なものであるということで、これを受けて帰るわけにはいかないというので、これを拒否して、再検討を強く要望して帰ってきたわけでございます。実は、このことは、いままでも申し上げましたが、いままで一九五六年以後一九六四年に至る間に第一次から第四次までわが社会党使節団が中国外交学会の招きで訪問いたしまして、両国に関係のある問題並びに両国に共通した外交問題等について忌憚のない話し合いをいたしてまいりました。その中には政治の問題だけではなく、御承知のとおり、経済、文化、人事の交流まで含んでおります。そこで一昨年は、一方交通では外交上の相互平等の原則に反する上に、常にわが国も新しく変化発展をしているから、したがってその新しい日本も見、かつ聞きながら日本において十分な懇談をしたいという趣旨でございました。のみならず、今度特にいままでにない新しい問題として国交回復とか、経済、貿易の問題以外に新しく第四次使節団以後われわれの緊急の問題として関心を示しておりますのは、ベトナム問題を戦争に至らせないで、これを阻止し、アジアの平和と独立をかちとりたい。もう一つ大きな問題は、経済の問題でございます。これは、また大きな新しい問題である。第三の問題としては、御承知のとおり日中の貿易が日本の不況の一つの大きな解決策として強く登場してまいっております。そういう国益をすべてわれわれが踏まえて、そうしてこの際ベトナム問題を解決するためには中国日本とがよく話し合いをする必要がある。日本外交の唯一のメリットは、中国外交に対してイニシアチブをとることができることである。特に日本は、東西関係、南北関係のちょうど交差点に立っております。そういう意味で私どもは、自民党の中においてすらこの目標については同調者が多いと確信している、国民の圧倒的多数はこれを期待しておる、そういう信念に基づいて実は合理的にかつ静かなる話し合いをしようということで迎えたわけです。大衆に向かってアジ演説をしてもらうために呼んだり、あるいは選挙応援になるような含みで呼んだなんということは全然ございません。しかるにかかわらず、先ほど来伺っておると、何のことやらわからぬ。一つはアメリカ帝国主義を批判することは日本国益に反する、もう一つは、内政干渉に至る危険があるというから、内政問題は関係しない、相手国にも関係のある、そしてまたアジア全体に共通した外交問題について話し合いをしようというだけでありますから、内政には干渉する考えはこちらもないし、向こうもありません、これは認められた原則です。したがって、いままで討議されましたところでは、さっぱり納得のいく理由を明らかにしていただいておらぬ。そういうことですから、昨日竹内次官お立ち合いの上で、ここにおられる八木入管局長からお考えを伺いましたが、納得がいかぬということで、私どもは即座にいただいて帰ることを拒否いたしまして、再検討を強く要望してきたわけです。  それで、あなたはむろん昨日の討議を御承知だと思いますけれども、あらためて整理して申し上げまして、そしてこの問題はぜひ大所高所に立って、一入管事務、ビザの発注の事務ということでなくて、あなたは自民党内における有力なる幹部で、この問題は日本中国との全体にこれから影響を及ぼしますから、単に社会党の問題ではありません、それを乗り越えた大きな問題になると思いますから、そして同時に経済の今後の発展に大きな影響も及ぼすと思う、そういう意味でひとつ再検討をわずらわしたいと思うのであります。  私のお尋ねしたい要旨は、お時間がないと言われるから一括して申し上げまして、これはいままでに外務大臣とそれから中村次長との間でやり取りいたしましたことの重要な部分の総括でございますから、それらを踏まえてひとつこの問題に対する再検討のお考えを明瞭にしていただきたいのです。
  133. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 よくお話はわかりました。この問題は、この願いが出ましたときからずっと研究を続けてまいっております。中共から日本へ、日本から中共へという人の往復が、いまお話しのように、文化、経済等に及んでたくさんな人が行ったり来たりしている。経済、文化において特に非常な発展をし、また時々交流をしておるという状態でございます。スポーツ面においてもそうでございます。というようなことでございますので、今度の問題にかかる前におきましても、昨年の夏ごろ政治家の見える場合においても、私はできるだけ寛大な入国処置をとるような方針でやりましたけれども、今度の場合においても偏見ない態度で臨む、そういう気持ちを持って受けてみたのであります。そうしてずっといろいろなものを拝見いたしました。そうしていろいろ検討いたしました結果は、残念ながら昨日皆さん方に関係者からお答え申したように、そろって入国をお断わりすることが日本としてはやむを得ぬことであるという結論に到達したわけでございます。社会党のあなた方がおいでになってお話しになりました説明によりますると、両国間の友好親善をはかるという点を力説されておりまして、この点からしますれば何らの問題点はないように思えるのでございます。ところが、あちらから参りました社会党に対する電報として参考に提出されましたものによりますと、もうすでに外務大臣から申し上げたか知りませんが、この中には、この会の目的がはっきりとうたわれておることは御承知のとおりであります。まあ二重になるかわかりませんが、読み上げてみますと……。(穗積委員「わかっております」と呼ぶ)わかっておりますか。——これにはアメリカ帝国主義に反対する闘争をさらに展開し云々ということが私はこの中の主眼だと思います。そうすると、おっしゃることと少し違うと思うのであります。社会党の方々は内政干渉がましいことはさせない、穏やかに話し合いをして、これは立場が違うのだからよく話し合うということをおっしゃっておりまするけれども、私は中共の諸君が日本にこういう趣旨で見える以上、この線を逸脱されることはないと私は思っております。昨年の夏のある人の言動を見ましても、そういう感を深めるのでございます。でありまして、いろいろな角度からさらに検討いたしましても、残念ながら私はこれをノーと言えば、両国間のいままでずっと築いてきました友好の道が少し阻害されはせぬかということも勘案いたしまして、いろいろと考えてみたのでありまするが、しかしこれで皆さん方、こういう人たちを許して、そうして日本に来てこういう論議をされて、そこで、それじゃ困りまするからやめてください、お帰りくださいというような問題になったほうがさらに私は両国間の関係は悪化するものだと思います。というようなことを考えますと、今度は初めからおいでいただかぬほうがよろしい。こういうような意味の政治目的であれば、どうか今度はひとつやめていただきたいということに結論的になったわけでございます。これが私どものこういうことを残念ながらお答えせざるを得なかった理由でございます。
  134. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員長代理 穗積委員にちょっと申し上げます。法務大臣は、参議院のほうで予算分科会をやっておりまして、十分間ということでこちらに御出席を願ったわけでありますが、もうすでにだいぶたっておりますから、そのお心づもりでひとつお願いいたします。
  135. 穗積七郎

    穗積委員 時間節約のために、足らざるところはこの次にして、重要な点だけ一括してお尋ねいたしますから、石井法務大臣、御退席前に、法務大臣だけの立場でなくて、自民党の重要な領袖として私はお答えをいただいておきたいと思います。  第一、お話しのことは先ほど外務大臣との間でやりとりをいたしましたから繰り返しません。ただ一点申し上げておきたいことは、向こうはアメリカ帝国主義の問題がアジアの平和と独立を脅かす根源であると考えておる。私どももそう考えております。それはおのおのの政治的な思想の自由の問題でございます。自民党がこれを相手に対して、または国内において、合法的な政党である社会党に対して干渉し、抑圧すべき性質のことではありません。ただあなた方がおそれるのは、国民に与える影響云々ということでございますけれども、われわれは初めから立ち会い演説会みたいなものをやろうというのではない。心を割ってほんとうに両国の団体の代表が十分話し合いをしよう。それは公開ではございませんよ。その話し合いの討議の会議というものは、いままでもそうです。それで、すみからすみまで全部が一致するわけではない。向こう中国共産党、われわれは日本社会党ですから、思想にもおのおのの限界があるわけです。違いがありましょう。政策についても事によって一致せざるところがいままでもありました。ただ違いを荒立てるのでなくて、一致したものをまず先にさがし求めるように努力しようという、非常にトレレートな態度向こうも持ち、われわれも持っているわけです。したがって、意見が一致した点、しかし重要で意見が一致しなかった点、たとえばこの前における核実験の問題については意見が一致しませんでした。そういう点は紳士的にそのままコミュニケに書いて、大部分が一致点をのみコミュニケに書く、こういうことでやってくるわけです。そういう状態ですから、さっきの御説明の認識とちょっと違うと思うのですね。意見が違うから引き離される、そんなことはありません。意見の違いがあればより話し合いをする。友だちの話というものは、けんか別れをするためじゃない、より近づくために話し合いをするわけです。両国の友好と平和と独立ということは、これはおのおのの至上命令でございます。それを逸脱するようなことは、われわれ社会党、小なりといえどもありません。そんな御心配は要りません。そういう会談ですよ。そこで、その御判断の基礎認識がちょっと違うということ、この使節団の滞在中の行動について。  それからもう一つは、先ほど言っておったのですが、政府政経分離ということはわれわれは間違いだと思っておりますが、それをとやこう言うわけではない。そういうことを理由にして、政府立場に、アメリカ帝国主義に反対するということは、アメリカと組み、アメリカに追随しておる日本としては困るということを自民党としてはお考えになるでしょうが、社会党にそのことを強要される権限はないはずです。われわれは自由です。したがって、社会党に対する思想の自由、国民外交の行動の自由、そして与党、野党、政党政治を行なっておるこの国における反対党に対する信義、礼儀の問題もあります。それを今度一挙に踏みにじるということに対する責任は、一体自民党として一方的におとりになる決意でございますかどうか。それならそれでわれわれも考えがあります。それが一点。  それから、第二点は、この使節団を踏みにじったということに対してわれわれも大きなる怒りを持っております。それから中国もそうです。あなたは都合よく、こんなことは一入国の問題だから、押えても中国は理解してくれるだろうというような、かってなことを言っておられますが、たとえば、一例だけとりましょう。先年日本共産党の大会に北京の彭真市長を中国の代表として招請をして、これは断わられた。その当時ここにおられる黒田壽男さんが北京におられたときに、つぶさにそのときの中国に対する反響を見てこられたわけですね。これはあなた方がお考えになっておるより、この一社会党に対する抑圧の問題が日本中国全体に大きな影響を持っておる、いわばエポックメーキングなケースであるという自覚に立って法務省は検討されたかどうか。このことは必ず今後の日中の友好に影響をし、大きな障害になるということを踏まえて御検討になったかどうか。その責任も自民党が一方的にかぶる決意でおやりになったかどうか。それがお尋ねの第二点です。  それから第三点は、今後これに引き続きまして、国内におきましては他の経済交流あるいは文化交流、それからその他の人事交流、この三つに日本国民として大きな熱望を持っておりますが、中国との経済、文化、人事交流の発展に大きな障害になるという認識に立ってこれをおやりになったかどうか。その責任も自民党としておとりになるつもりであるかどうか。  以上三点について責任のあるお答えをいただきたい。それは単に法務大臣としてではなく、きょうは総理が来ていただくといいのですが、まだお見えになりませんから、総理にかわるような政治的判断のもとで御答弁をいただきたい。  第一は社会党に対する政治的自由の問題、反対党に対する信義の問題、それから第二点は中国日本との友好に大きな障害になるという点、第三点は経済、文化、人事の交流に大きな障害になる、その三点について自民党としての、あるいは政府としての責任のある御回答を順次いただきたいと思うのです。
  136. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 お答えいたします。  第一の、あちらの申し出がこんなに強いのであるから、社会党のほうでそれは穏やかに話をするという説明があったけれども、なかなか向こうは聞かぬであろうというのが私の考え方でございまして、それがあなた方のおっしゃるとおりになるかどうかということは、これは別でございます。考え方はそのとおりであるに違いないのでございます。そういう問題が論議されないとは私は言えないと思うのであります。当然論議され、そしてそれがそのまま消えてなくなるとは私は思っておりません。これは意見の相違でありますが、社会党がそんなに微力だとも私は決して思っておりません。社会党のお力をうんと信じております。  それから第二の、中共日本との関係でございますが、中共日本との往復のいろいろな問題が、いままでもお互いの友好関係を尊重し合って、文化交流あるいは経済提携というような方向にだんだんと進みつつあります。それが年ごとによくなってきつつあることも事実でございます。これは私どもも続けていきたいのであります。しかし、こういう問題が起こって、さっき申しましたようにいろいろ考えたのでございますが、それならば何でもかでもおっしゃるとおりに、こういう人たちが来るのだから入れろとおっしゃると、すべてそのとおりにすれば満足はされるでありましょうが、日本政府としてこれをいろいろな点から考えます場合に、必ずしもそれは日本のしあわせになるとは思っておりません、正直にそう思っております、というわけでございます。そのために両国間の関係がそう簡単なものじゃないぞ、おっしゃるとおりでありまして、そう簡単だとは私も思いません。なかなかえらいと思います。けれども、隣と隣の国がいつまでも、それじゃといってにらみ合って、にらみ合いっぱなしでおれるものではありませんし、悪くなったら悪くなったで、それから先にまたわれわれは努力してよくしていくようなことをやっていかなければならぬ。これはわれわれの責任でもあり、また日本人全体で考えなくちゃいかぬ、こういうふうに考えておるわけであります。  それから文化、経済の面にいろいろな悪影響を及ぼすであろう、それの責任政府がとるかとおっしゃるのでありますが、これは国のためになる、そして大きな長い目で見れば、それがやがて文化の面にも経済の面にも利益をするにはそのほうがなるという眼で政府がこういう決断をしたわけでございますから、一時の蹉跌ということでみんなもしんぼうしてもらい、そしてそれが一歩二歩後退したならば、それをやって早くもとへ戻すかという努力に官民力を合わしていくというよりほか手はない、こういうふうに私は思っておるわけであります。
  137. 穗積七郎

    穗積委員 それでは最後に、あなたはこの問題は、外務省、法務省のみならず、内閣の相談云々ということでございましたが、内閣を代表する立場で橋本官房長官は、内政に干渉しないものであるならばこれを拒否するものではないという談話発表を昨日の決定後、われわれに通告後なすっておられます。そうであるなら、内政に干渉とは一体どこまでをいうかということを、これはわれわれ社会党政府の間で話をする必要がある。その当面の責任は、行政区画上、法務省でございます。ですからその問題について話し合いをして了解に達するならば再検討するということは、当然橋本官房長官の談話の中には含まれておるわけですね一われわれはそのことを今後も粘り強く続けるつもりです。そういう御意思はありませんかどうか。もしこれを拒否されるなら、私どもは昨日も社会に向かって明らかにいたしましたように、院内外におけるあらゆる——入国を実現するために今後その目的を達するまであくまで政府に対しては強く要請をし、あるいは抗議をし続けるつもりでございます。そのわれわれの決意を踏まえた上で、いまの橋本官房長官が内政に干渉しないものであるならば、そういう保証があるならば、これは拒否するものではないということを、昨日われわれに政府通告があった後に談話を発表しておられる。これに対して当面の所管責任大臣としての石井法務大臣に伺っておきたいのです。われわれはその問題について話し合いをする用意があります。政府はいかがですか。
  138. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 そのことを官房長官と話し合ったことはないのでありますが、内政干渉ということはわれわれも一つの旗じるしにしております。しかし、今度の問題で社会党の方々の説明には、中共から来たら話し合う問題は、ベトナム問題も話し合うということでおいでるというような話をしたように聞いております。これが外交問題であるから内政問題じゃないという説明になるのかもわからぬ、そういう見方があるかもわかりませんが、ベトナム問題がいろいろ論議されて、これが内政——日本の政治に関係ないということがどうして言えるでありましょう。私は、これは当然日本の政治の問題だと思います。よその畑の問題で外交事情を聞いておるものではないのであります。日本の内政、外交に当然関係があるものと私は思っております。
  139. 穗積七郎

    穗積委員 そういうこまかいことについては、一々ここでやりとりしようというのではない。だから……。
  140. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 おっしゃったことばに対して答えたのです。
  141. 穗積七郎

    穗積委員 今後もその問題を中心にして話し合いをする用意があるかどうかということを聞いておるのです。
  142. 石井光次郎

    ○石井国務大臣 私のほうはお断わりをいたすつもりで代理申請をされまする方々に申し上げたのでありまするが、今後も同じ態度を持するつもりでおりますが、お目にかかることは、関係者において、そうして説明をいろいろされる問題がありますれば、当然喜んで承ります。
  143. 穗積七郎

    穗積委員 はなはだしく不満ですが、時間がないんですからあと外務大臣に伺います。  もうすぐ済みますから、ちょっとお尋ねいたします。  いま石井法務大臣からおっしゃいましたが、ベトナム問題については、平和的解決、早期の解決をしたい、戦争に拡大しないようにしたいということは、われわれ社会党政府も同じだと思うのです。中国も同じだと思うのです。そういうことに対してわれわれは重要な問題点の一つとして話題の中に取り上げるつもりでございます。それはそういう態度、共通したアジアの平和と独立を実現するための話し合いというものは、政府はこれを歓迎して、国益に反しない、政府あるいは自民党の共通の目標ではないですか。
  144. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 アメリカが先般四十日をこえる北爆停止をやって世界の各国に人を派遣して和平工作を熱心にやったにもかかわらず、北越はこれに応ずる気配を見せなかった。問題は要するに、もう北ベトナムが武器を置いて平和な話し合いに入るという決意をすれば、少なくとも戦闘状態はなくなるわけです。それから今度は両方の言い分がいろいろありましょうから、そうしてそれが合致すれば、今度は恒久的な平和というものが訪れるということになる。ところが、いまのところは非常な違いがある。片一方は帝国主義の侵略であると言うし、片一方は北の南に対する侵略、浸透に対し、要請によって協力しているのだ、こういうことを言っておる。言うことがもう全く食い違っておる、ここが問題なんです。両方とも自分に有利に解決をしたいということは、これはそういう点では一致しているということも言えるかもしれませんけれども、基本的な態度が違っておる、その点が重大な点だと思います。
  145. 穗積七郎

    穗積委員 それは違っていますよ。それは一回の努力が形の上では行なわれた、それで永久なものではありません。また違った角度から違った国とやる。あらゆる努力は、次々にやり、双方の理解のもとにその和平への原則なり提案というものが変わっていくわけですね。現にアメリカで変わっておるじゃありませんか。野党ではない与党のブライト、マンスフィールドをはじめとするその他の与党を支持している学者、評論家、ことごとくあなたのいま提案された方針とは違った、この問題解決のための提案がどんどん行なわれている。アメリカの国内においてすら行なわれている。しかも日本からアメリカを訪問したいろいろな政治家または評論家によって、あなたやアメリカのジョンソンが考えた和平の交渉とは違った提案がどんどん自由に、批判的に行なわれている。それを歓迎しないということは、これでもう打ち切って戦争を拡大する、それしか道がないということを日本政府は支持しておることを表明するものですね。そんな間違った態度は許しませんよ。あらゆる努力は、一回が永久の終わりじゃありません。一回の失敗、誤りは——誤りあらばこれを正して発展をする。アメリカにおいても行なわれておる。それを日本において行なうことが大きな眼目である平和と独立の問題に役立つことであるなら、何ら私はこれを拒否すべき理由はないと思うのですが、もう一ぺんお答えください。  それから時間を超過いたしておりますから、続けてお尋ねしますが、ベトナム問題が一つ。第二には最近になりまして、日本では、核、安保あるいは中国の核開発あるいは米ソの独占をねらった核拡散禁止協定等が新しく提案されている。そういうやさきに、核を拡大するのではなくて、核をやめるために、中国はそのことをもうすでに実験をした即座に提案をしておる。全面禁止、完全廃棄に向かってやる以外に核の問題の解決はないということを言っている。われわれもそれに全く同感であります。ところが事実はそれに逆行して、いま核の問題が危険な問題として国民に不安を与えておるわけです。その問題について話し合うことがなぜ国益に反するか、そういう話し合いをすることは日本の多くの者が関心を持っておることです。なぜ国益に反するか、具体的に言っていただきたい。  それから、去年の国連における中国の代表権問題は、これは四十七対四十七ということですが、実際は、あれは四十六対四十七であるべきなんです。負けておるはずです。ことしはさらにこの問題が、最近の情勢から、中国の参加、軍縮のみならず、中国の国連参加の問題は、アメリカにおいてすらもう議論が始まっておる。その問題について、われわれが意見を交換することが何が国益に反するか、外務大臣としてお答えをいただきたい。  それからもう一つ、第四番目には、日本の経済の不況を、戦争拡大の方向で、特需または軍需産業の復興で解決をしていく、それで武力を背景とする、資本を背景とする対外的進出、これが帝国主義または新植民地主義です。そういう方向でやるか、そういう戦争への方向でなくて、平和な貿易の方向でやるかという大きな岐路に立っていると思うのですね。そこで、先ほども私が指摘したように、政府のあらゆる妨害にかかわらず、日中の関係は離れることのできない宿命的な両国の経済と生活の関係があります。そういうことで、社会主義国との貿易というものは十億ドルになり、その半分は中国であり、国際貿易全体から見れば第五位にのし上がってきておる。これを進めるためにやることは、日本の経済の繁栄、国民生活の引き上げ、それがすなわち貿易の構造的改革によって日本の不況の打開の道になる。平和の道です。平和経済外交の道です。それを話し合うことがなぜ国益に反しますか。  さらに、両国の理解を深めるために、人事、文化の交流を発展せしめる話し合いをする、これがなぜ一体国益に反しますか。これはいままでの共同コミュニケを見ていただけばわかりますが、この両国間の戦争を再びしないという平和保障の条約を結ぶ、あるいはアメリカ、ソビエトを含むアジア太平洋における非核武装地帯の宣言をする、そういう積み重ねられた新しい問題としての、以上ベトナム、それから核の問題、国連の問題、経済打開の問題、相互交流の発展の問題、何が国益に反しますか、外務大臣、お答えください。
  146. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 日中貿易は悪いとは言っていない。これは従来の方針に従って経済の交流をどんどん進めることは私は賛成であります。  それから不況克服のために軍需面に走るとか走らぬとかいろいろあげておられましたが、そういうような気持ちで日本の不況対策は講ぜられておらない、これははっきりいたしております。  それから核拡散の防止の問題、これは筋としてはけっこうなことであります。中共がすみやかにこの国際条約というものに賛意を表することがわれわれは望ましいと考えております。  そういう問題について、私はおあげになった大部分はいいことだと思う。ただしかし、米帝国主義に対する闘争をさらに拡大するというような意気込みで大ぜい乗り込んでこられるということは、日本の外交からいってもこれは適当でない、この際はお断わりしたい、こう考えております。
  147. 穗積七郎

    穗積委員 きょうの御答弁は不満です。われわれ了承いたしません。これからは国会の内外においてわれわれはこれをかちとるまで抵抗をし、話し合いをいたしますから、そのつもりでおっていただきたいと思います。
  148. 鯨岡兵輔

    ○鯨岡委員長代理 本日はこれにて散会いたします。    午後一時三十六分散会