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1966-03-03 第51回国会 衆議院 科学技術振興対策特別委員会科学技術行政に関する小委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    本小委員会昭和四十一年二月十日(木曜日)委員 会において、設置することに決した。 二月十日  本小委員委員会において、次の通り選任され  た。       菅野和太郎君   小宮山重四郎君       纐纈 彌三君    中曾根康弘君       西村 英一君    藤尾 正行君       前田 正男君    岡  良一君       河野  正君    田中 武夫君       原   茂君    三木 喜夫君       内海  清君 二月十日  岡良一君が委員会において、小委員長に選任さ  れた。 ————————————————————— 昭和四十一年三月三日(木曜日)    午前十時三十三分開議  出席小委員    小委員長 岡  良一君       菅野和太郎君   小宮山重四郎君       纐纈 彌三君    西村 英一君       前田 正男君    田中 武夫君       原   茂君    内海  清君  出席政府委員         総理府技官         (科学技術庁計         画局長)    梅澤 邦臣君  小委員外出席者         科学技術会議議         員       篠原  登君         参  考  人 山県 昌夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  科学技術行政に関する件      ————◇—————
  2. 岡良一

    ○岡小委員長 これより科学技術行政に関する小委員会を開会いたします。  科学技術行政に関する件について調査を進めます。  本件調査のため、本日参考人として日本海事協会会長、元東京大学教授山県昌夫君に御出席を願っております。  この際、山県参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は御多用のところ、本委員会に御出席をくださいまして、どうもありがとうございました。どうか忌憚のない御意見をお述べくださるようお願い申し上げます。  それでは山県参考人から御発言をお願いいたします。
  3. 山県昌夫

    山県参考人 近ごろ科学技術振興方策につきまして、あらゆる場におきましてあらゆる角度、たとえば科学技術行政科学技術教育あるいは研究体制研究投資、こういったものにつきまして十分御検討になっておられまして、私どもは、いわばこれらの結果の実現待ちということがいえるわけでございますが、本日は民間の人間といたしまして、平素考えておりますことを簡単に申し上げさせていただきます。  まず、科学技術定義でございますけれども、第一は、科学技術という意味科学技術でございます。第二は、科学技術の形容詞とする科学技術であります。これは御承知のとおりであります。第三の定義として、これを一つの名詞と見ることもできるのではないかと私は考えております。  と申しますのは、科学技術とをそれぞれ明確に定義するということでございまして、その間に一線を引くことは、これは不可能なことでございまして、現に漏れ承っておるところによりますと、科学技術基本法案におきましても、この二つのものを正面切って定義することは避けておられるようでございまして、裏から国策の目標によって区別をしておるようでございます。科学といいましても、技術といいましても、広い意味におきましては、目的研究対象でございます。たとえばいわゆる純正科学、ピュアサイエンスといいましても、いまでは単純に科学のための科学ではございませんで、その研究者は、それが文化的、社会的に持つ意義をいつも念頭に置いておられることでございましょうし、また現代においては、そうなければならないと考えております。少なくとも、純正科学者といたしましても、それの研究成果が人類のために悪用されるということのないように心がけねばならぬ責任があると存じます。要するに、真理の探求から出発しておりますか、あるいは国家社会の要請から出発しているかの違いでございまして、実際研究分野は幅広くオーバーラップしておるのが現状である、こう私は考えております。このようなわけでございまして、原則として科学技術とを分離して考えることは妥当ではないのでありまして、科学技術科学技術という一つことばである、こういう見地に立ってすべての施策が考えられるべきであると私は考えます。  きわめて素朴な考え方をいたしますと、科学の学という字と技術の術という字をつなぎ合わせますと、いわゆる学術ということばになるのでございまして、古く学術ということばが創造されました時代には、いわゆる近代的技術というものはございませんで、技術はいわゆる大工とか左官のたぐいの技術であったわけでございまして、そういった関係からこの学術ということばの響きが後の科学ということばに通ずるものであったわけでございますが、現代におきまする学術内容は、私の申します第三の定義による科学技術内容にひとしい、こう考えるべきであろうと私は存じております。たとえば現在の科学技術会議科学技術日本学術会議学術、これは人文科学のみにかかわるものの有無を除きますと、全く同じことばであると私は解釈しております。  このような立場から科学技術行政組織を論じますと、行政機構は当然単体、一つのものであることが望ましいわけでございまして、現在科学技術庁文部省と二本立てとなっている、こういう姿は理想的なものではないといえると思います。しかし、これは歴史的な理由、あるいは大学学術研究の場であるとともに教育の場でもあるという実際的の理由その他によるものでございまして、これを一元化することはなかなか困難であると存じます。結局、この現実といかに妥協するかということが問題であると思います。  この妥協方策としてはいろいろ考えられるわけでございますが、比較的実行容易と見られる私案として一つの例を申し上げますと、現在の科学技術会議任務人文科学のみにかかわるものを加えまして、会議強化していわゆる行政委員会にしてしまう。これに対応いたしまして、科学技術庁も改組いたしまして、行政委員会たる科学技術会議事務局とする。こういったような組織によりまして、基本計画長期安定性、公正妥当な調整研究自主性、こういったものが確保されるようになるだろうと思います。  一方、文部省はその内局は義務教育高等学校教育、こういったものの行政を担当いたしまして、現在の大学学術局学術行政機能を充実いたしまして外局といたし、常時、科学技術会議事務局との人事の交流をはかるとかそういった措置、さらに科学技術会議内に外局との科学技術行政に関する強力な連絡機構を設置いたしまして、両者を結ぶ太いパイプに役立たせる、これによりまして科学技術行政事務機構の二本立てによる欠陥をある程度緩和、解消できると私は考えております。  それから国立試験研究機関についてでございますが、現在における国立大学付置研究所あるいは各省庁試験研究機関、こういったものの最大欠陥は、物的施設人的施設との著しいアンバランスと研究費の不足ということだと思います。近来こういった研究機関物的施設は、必ずしも十分とは言えませんが、次第に整備されてまいりまして、だんだんりっぱなものになりつつありますが、これに伴う人的施設は、量におきましても質におきましても欠けるところが多くて、また、研究者はいろいろな雑用に追われ、あるいは研究費が不足する、こういうことをかこっておりまして、したがってこのまま放置いたしておきますと、せっかくの宝も持ちぐされになる、こういった心配が出てくる懸念が十分あると思います。基本法の案におきましても、研究者あるいは研究費確保について規定しておりまして、したがいまして、政府も今後これに対して十分な適切な措置を講ずることと思いますが、財政事情もあって、これにもおのずから限度があるのではなかろうかと私は考えております。このようなわけで、国立試験研究機関運営には、多少の差はあれ、何らかの形で民間経済的援助が必要となるのではなかろうかと私自身は考えております。たとえば研究施設を有料公開する、こういったことによりまして、民間における研究施設に対する政府との重複投資と申しますかが避けられましょうし、また受益者から何らかの方法によって実質的なひもつき徴税あるいは出資、寄付、こういったものによる資金導入、あるいは民間研究者の出向、そういったものを考慮いたしまして、物的施設に対する投資効果、これを改善することが必要と存じます。  このような考え方を実現いたしますためには、現在の特殊法人ではなくて、試験研究機関機能を十二分に発揮することができ、研究効率最大となるような、全く新しい構想の官民協力による特殊の研究法人制度、こういったものを考える必要があると思います。  国立大学付置研究所、それから各省庁試験研究機関、これらは大学における教育及び各省庁行政事務に直結するものは除きまして、必要に応じ整備集約いたしまして、ただいま申し上げました研究法人とし、これによって特に大学教授に対しましては、長期にわたって教育義務から離れて自主的な研究に専念する場を提供する、それから民間からの経済的支援受け入れ体制を整え、さらには官民共同利用研究所的性格のものにするということが必要ではなかろうかと思います。  これらの研究法人は、現存の理化学研究所、原子力研究所、これらと一緒にしまして、これらとともに、西ドイツにおけるマックス・プランク研究協会のような連合機構組織いたしまして、これによってあらゆる分野にわたる研究活動総合性確保するとともに、主管庁たる科学技術会議科学技術行政に一元的に密着することができると思います。  次に日本学術会議でございますが、御承知のように、日本学術会議は会員が任命制でなくて、選挙制になっておりまして、わが国における科学技術行政組織において特異な存在として、高くその業績が評価されるものでございます。  この学術会議任務といたしましては二つございまして、一つ科学技術に関する審議機関政府諮問に対して答申する、あるいは政府に対して勧告する、こういった審議機関としての性格、それからもう一つは、科学技術に関する内外の研究連絡実施機関、これは旧学術研究会議から引き継ぎました事項でありまして、たとえば科学国際交流及び協力、そういうような二つ性格がございます。一般には科学者の自由な意見を取りまとめる場といたしまして、日本学術会議は、審議機関として広く認識されておるようでございます。しかし審議対象は、科学技術会議審議対象と密接な関係にあるものが多く、したがいまして、科学技術会議行政委員会化機会に、総理府機関から内閣に移しまして、総理のブレーンとして、いわゆる独立してその職務を行なうという日本学術会議法立法精神を生かすようにしたのがよいのではなかろうかと私は考えております。  そこで、もう一つ日本学術会議任務、すなわち実施機関としての業務は、今後も科学技術振興のために強力に推進しなければならないわけでございますが、これは行政委員会たる科学技術会議に移管されるのが妥当である、こう考えております。  それからもう一つ、これは問題がたいへんこまか過ぎて恐縮でございますが、現在私ども数十億円の資金をもって船に関する近代的科学技術博物館を計画いたしております。こういう事情もございまして、近代博物館の問題について簡単に触れてみたいと思います。  博物館、特に近代科学技術博物館科学技術に関する教育研究及び普及の場とじて、科学技術振興のためにきわめて重要な役割りを持っておるわけでございます。元来、御承知のように博物館には二種類ございまして、南ヨーロッパあるいは中部ヨーロッパにございますような伝統的な博物館、それから北米あるいは北欧にございますような近代的な博物館、こういう二種類に大別することができまして、伝統的な博物館は古いということに価値をおいておる。それから近代的博物館は新しいということに価値を置いております。したがいまして、近代博物館におきまする展示物などの寿命は非常に短くございまして、一般に三年でもって展示品が一新される、こういうことがいわれております。したがいまして、博物館運営費、こういったものが非常にかかるわけでございます。現在博物館法が制定されておりますが、これに基づきまする国の施策というものはきわめて不十分で、特に私立博物館に対しましては、資料の国鉄運賃を軽減するといったようなことだけが具体的の措置のように思われます。一般私立博物館については放置されておるというのが現状だと思います。このような現状でございますので、博物館法立法精神、すなわち国民教育学術及び文化の発展、こういった立法目的のために、特に私立博物館近代的科学技術博物館に対しまして、必要ならば法律を改正してまで積極的な助成措置が講ぜられるよう、私、たまたま海事博物館の設立に関係しております関係から、この機会を拝借いたしましてお願いする次第でございます。  以上で私の意見の開陳を終わります。
  4. 岡良一

    ○岡小委員長 以上で参考人からの意見聴取は終わりました。  引き続き、科学技術行政機構に関して篠原科学技術会議議員より説明を聴取いたします。篠原科学技術会議議員
  5. 篠原登

    篠原説明員 科学技術会議議員篠原でございます。  申し上げるまでもありませんが、最近における科学技術の進歩は非常にすばらしいものがございまして、原子力開発あるいは宇宙開発のような先端的なもののほか、たとえばエレクトロニクスとか、あるいは石油化学とか、私どもの身近の問題につきまして非常に科学技術の恩恵を受けておる現状でございます。私はすでに一般によくわかっていることをダブって申し上げるかも存じませんけれども、いささか私見を申し上げまして御参考に供したいと思います。  このような科学技術時代におきましては、科学技術をほんとうに重く見ておる国が栄えまして、これを軽く見ている国はやがては国際間の落後者となるということは非常に明らかなことであろうかと思うのでありまして、わが国現状を見るために、まず諸外国の例をひとわたり簡単にながめていきたいと思います。  御承知のとおり、アメリカ昭和三十二年に、たまたまソ連人工衛星を打ち上げましたときに初めて大統領科学技術特別顧問を設置いたしました。それから昭和三十四年に連邦科学技術会議それから昭和三十七年に、これはアイゼンハワーからケネディ大統領に移ったあとでございますが、大統領行政府の中に科学技術局を設けまして、この一連の科学技術の新らしい体制アメリカは打ち立ててまいったので、ございます。  イギリスマクミラン内閣のときに、昭和三十四年でございますが、初めて科学担当大臣を設けましたが、その後昭和三十九年ヒューム内閣におきまして、特にこれを強化いたしまして、教育科学との間の連携を十分にとることを考えまして、教育科学省を設置いたしまして、この閣内相に当時の有力なヘイルシャム、これは名前がその後変わりましてホッグとなりましたが、このホッグ閣内相として教育科学大臣任命をいたしました。で、閣内相のもとにさらに二つ担当大臣を設置いたしまして、片方は高等教育及び科学担当大臣であります。もう一つ一般科学担当大臣でありまして、いずれも閣外相でございます。ところが、昭和四十年ウィルソン内閣になりましてから、この教育科学大臣のほかにさらに技術省を加えまして、ここで産業との連携をはかるために新しく技術大臣を置いたのでございます。  また、フランスにおきましては、ドゴール大統領のもと、昭和三十三年に初めて科学技術研究閣僚会議を設置いたしまして、議長は総理大臣で、関係閣僚が全部集まって会議を開催する。なお、そのうらはらに学識経験者十二名からなります諮問委員会を設置いたしまして、強力な総合体制を確立したのでございます。また、特に科学研究大臣も設置いたしましてドンシャンボンを任命し、さらにその事務局といたしましては、科学技術研究総務庁がこれに当たるというような体制を整えたのでございます。西ドイツにおきましては、昭和三十二年に科学会議が設置されまして、ドイツ研究協会、あるいは先ほどお話マックス・プランク協会とも連携をとりまして、科学技術水準向上に努力をしてまいっておりますが、特に昭和三十七年、従来の原子力省を昇格させまして、宇宙並びに一般科学技術を含めて科学研究省を新しく設ける等の措置を講じております。  ソ連におきましては、フルシチョフ時代でございますが、昭和三十六年、従来、科学技術国家委員会がございましたが、それを拡大強化いたしまして研究開発調整国家委員会が新しく設けられまして、副首相ルノメフ委員長になりました。ソ連科学アカデミー総裁等はその委員会のメンバーの一員ということで参加いたしております。  このように各国とも新しい体制のもとに科学技術水準向上をはかってまいったのでありますが、これら各国に共通した点を次に申し上げたいと存じます。  まず第一点は、トップレベル強化で、ございます。すなわち、科学技術に関する総合行政体制、特にトップレベル体制整備強化をいたしまして、重要事項調整と決定は、内閣レベルで行なわれる、こういうようになったのでございます。それまではトップレベル行政機関体制はございませんで、専門家にまかせておったのでございますが、そうではなくて、総理みずから科学技術に対する非常な関心を持ってトップレベル体制科学技術を論じようということになったのでございます。これは、いずれの国におきましても、そういう体制でございます。  第二点は、研究総合化でございます。各国によりまして、研究機関が、ある国は、たとえばイギリスとかオランダ等は全部一元化されまして、あらゆる研究機関一つ行政組織のもとに一元統一されておりますが、そういう国もございますし、またフランスやなんかのように、一元化されない国もございます。各省に分属されておる国もございますが、そういう国におきましては、総合調整機構強化せられまして、あたかも全体が一元的であるかのごとき運営がはかられておるのでございます。  それから第三点は、大学における研究との協調でございます。大学における研究とその他の国立研究機関、または民間研究機関との間の連携がきわめて密接でございます。そうして大学研究ざれた成果が、国立研究機関なり、あるいは民間研究機関なりに移っていきまして、そうしてこれが具体的に製品となってあらわれるという過程が非常に緊密な連絡のもとに行なわれております。あるいは最近の産学協同というようなことも、まさに各国ともこのような方針によってやっておるのでございまして、この点は学ぶべきであろうと存じます。  第四点は、長期的、総合的政策樹立でございます。これは最近の著しい状況でございまして、大学民間を含めまして、総合的な長期計画がいずれの国でも行なわれまして、政策全体としての措置がとられておる。それが継続的に実施されておるということが著しい特徴であろうかと存じます。  第五点は、研究投資の問題でございますが、各国とも多額の研究投資を使っております。大体世界各国におきましては、これは予算関係等もございましょうけれども政府が大体三分の二を負担し、民間は三分の一を負担するという現状でございます。その額におきましては、ことにアメリカは断然他を抜いております。大体昨年度は七兆円くらいでございますが、本年度は二百三十億ドル、すなわち八兆円をはるかにこえるような額になる予定になっております。これはわが国の約二十倍に当たる額でございます。また、イギリス西ドイツフランス等においては、大体わが国研究投資の二倍弱、まあ二倍前後というところであろうかと思います。御承知のとおり、政府投資国民所得に対する比率は、アメリカが三・六、イギリスが二・九、日本が一・七、これは昭和三十八年の数字でございますが、このように日本は劣っております。また、政府予算に占める科学技術予算比率につきましても、これも大方の御承知のとおり、アメリカが非常に多くて一五%、イギリスが六%、日本は三%と、これも一番低位になっておるのでございます。このように世界各国におきましては、科学技術重要性を認識いたしまして、特に政府が率先して研究予算を増額しており、民間これに相和して、全体としての研究投資が非常に多いのでございます。  以上、世界各国につきまして五点を申し上げましたが、さて、ここでひるがえってわが国現状を考えたいと存じます。  そこで、わが国現状につきましては、やはり五点を考えてみたいと思います。第一は研究投資の問題、第二が研究体制整備、第三が長期的、総合的計画樹立、第四が人材の確保とその待遇の問題、第五が民間研究助成、この五点につきましてこれから簡単に申し上げたいと存じます。  第一点の研究投資の問題は、先ほど外国の例を申し上げましたとおり、わが国では政府支出が三分の一、民間支出が三分の二と、ちょうど欧米諸国の逆のような場合になっております。これにつきましては、政府といたしまして、これからますます政府における研究責務がだんだん重大になってきつつある現在、政府予算をもっと増額すべきであろうかと考えます。たとえば民間ではできないような基礎科学の充実、それから公共的な研究、それから中小企業あるいは農林関係技術指導、あるいは民間でできない大規模な研究、こういうようにますます政府研究に対する責務がふえてきておりますときに、研究投資全体に対する政府予算が少ないことは時代に逆行であろうかと存じますので、この際予算の増額を必要とすることは当然でございます。これは何回も言われておることでございますが、たとえば国民所得または国家予算の一定の割合以上に科学技術に対する予算を出さなければならないということが今後検討されなければならない点であろうかと思います。一つの例を申し上げますと、科学技術振興費でございます。これは、国立試験研究機関等あるいは研究助成費等を含むものでございますが、これはもちろん大学研究は含んでおりませんけれども、その科学技術振興費昭和三十九年度の予算は四百二十七億でございます。その同じ三十九年に技術導入によって支払いました外貨は五百五十九億円でありまして、日本科学技術振興費よりも技術導入外貨支払いのほうがやや上回っているという点は、われわれ反省しなければならないかと思います。御承知のとおり、外国技術導入がだんだんむずかしくなり、根本的な技術導入はだんだん減りまして末梢的なものがだんだんふえ、また、それによって過当競争が起こる。国内における過当競争、それから株式の参加あるいは合弁会社でなければ技術を売ってくれない、また販路の制限を行なうというような、だんだん条件がむずかしくなってきておる現在におきまして、国内技術の育成に努力いたしまして、これから先、堂々と外国に対しまして技術輸出をむしろ助長していかなければならないときに、いたずらに外国にたよっているということはまことに遺憾であろうかと存じます。技術輸出昭和三十九年大体二十八億円でございますので、技術導入に対してわずかに五%の外貨獲得しかしておらないという点はまことにさびしい限りでございます。  次に第二点、研究体制整備について申し上げたいと存じます。国全体として研究を有効に行ないますためには、各部門研究を総合的に推進することが必要でございまして、それに対しまして研究体制整備もまたその線に沿ってやらなければならないと思います。民間部門政府部門との関係におきまして、両者研究分野を相当明確に分けるべきであり、また、協力すべきところは協力体制を確立すべきであろうかと思います。国といたしましては、先ほども申し上げましたように、基礎研究あるいは公衆衛生災害防止公共事業等研究、あるいは中小企業、農林業等についてのその指導の技術研究等は必要でございますので、こういうような面につきましてさらに一そうの総合体制整備をしていくべきであろうかと思います。従来ややともすると、わが国では基礎研究に対する認識が不十分でございまして、基礎研究に対する予算の配分等に欠けておりましたのでございますが、この際是正いたしまして、基礎研究、応用研究、開発研究に対して調和のとれた施策が行なわれなければならないと思います。  各研究機関相互の連絡、協調の問題でございますが、これはますますその連絡を緊密にいたしまして、特に最近は研究がだんだん大きくなってきております。また、複雑になってきております。こういうことでございますので、連絡、協調の面で一段と配慮の必要があろうかと存じます。特に先ほどのお話にもございましたとおり、大学研究国立研究機関民間研究機関等におきましては、ややともすると共通な広場がございません。それぞれ独立していろいろな研究を行なっておりますが、せっかくでき上がりました成果がそのまま埋もれてしまって次の段階に移っていかないうらみが日本では間々見受けられるところでありますので、大学国立研究機関あるいは民間研究機関の間でできるだけ共通な広場をつくりまして、そうしてそこでお互いに協調していくことが必要であろうかと思います。先ほど行政機構のお話がございましたが、このような共通な広場をつくって、研究体制をやりやすいように援助する意味におきまして、行政機構の改革が考慮されるべきであろうかと思います。  第三点は、長期的、総合的計画樹立でございますが、これは先ほども申し上げましたとおりでございまして、特に基本法が制定されました暁は、計画の面で一段とその成果の見るべきものがあろうかと存ずる次第であります。  第四点は、人材の確保とその待遇の問題でございますが、何といいましても、科学技術水準向上におきましては、人材が最後のポイントでございます。したがいまして、質量ともに十分にこの点を考慮しなければならないことはもう言うまでもございません。そのためには待遇の改善を行なう。また、研究公務員制度の検討等につきましても十分考える必要がありまして、たとえば採用の問題、勤務時間の問題、それから研修の問題、職務発明に対する報償等のいろいろな問題がありますので、この際、研究公務員特例法のような法律を制定すべきであろうかと存じます。  第五点は、民間研究助成でございますが、先ほどたびたび申し上げましたとおり、現在民間に負わされている研究投資は、国全体の研究投資の三分の二を民間が出しておる。これは将来政府がもっと出すであろうかとは思いますけれども現状におきましては民間の努力は並みたいていのものではございません。したがいまして、民間に対する研究助成政府は十分検討しなければならないと思います。もちろん補助金、助成費等の増額とか、手続の簡素化、合理化とかが必要でございますし、あるいは日本開発銀行、新技術開発事業団等の政府機関からの援助も必要でございましょうが、私個人で考えますと、何といいましても一番民間の会社の方が喜ぶもの、能率のあがるものは、税制上の優遇措置が一番適切であろうかと思います。こういう点につきましては、国会におきましてもしばしば熱意を尽くされておりまして、ある程度の優遇措置ができておりますけれども、今後とも民間研究に対しまして税制上の優遇措置はもっと大きく展開していかなければならぬものであろうかと私は存ずる次第でございます。  以上、たいへんわかり切ったことを申し上げた次第でございますが、私の考えを申し上げまして、諸先生の御参考に供した次第でございます。     —————————————
  6. 岡良一

    ○岡小委員長 質疑の通告がありますので、これを許します。前田正男君。
  7. 前田正男

    前田(正)小委員 山県参考人にちょっとお聞きさしていただきたいと思うのでございますけれども先ほどの御意見の中で、研究法人的なものをつくるとか、ひとつ研究機関のあり方というものに特別に方法がないか、こういうお話があったと思うのでございますが、われわれもかねてから、政府関係あるいは政府の出資しています特殊法人的な研究機関その他がいろいろと思い切った処置をしようと思っても、なかなか予算的にもあるいはその研究者の待遇の問題等においても十分な処置ができにくいというので、これを切り離した一つ研究特殊法人的なものにしてはどうか、こういうふうな感じもするのでありますけれども、そうするとまた身分の問題が非常に困る、官吏と離れてくるというふうなときに非常に困るとか、いろいろな意見があるわけでございますけれども参考人山県さんは前に大学におられたこともございますし、そういった研究の、あるいは学者の立場から見られまして、そういう特殊な組織というものに対して研究者が集まりやすいか、あるいはまた、そこにおって研究しやすいかどうか、こういったようなことについてのお考えをひとつお聞かせ願いたい、こう思うわけであります。
  8. 山県昌夫

    山県参考人 前田先生からのお話で、研究特殊法人と申しますか、私かねがねこれは何とか考えなければいかぬと思っておりましたのですが、手近に例を申し上げますと、戦前の理化学研究所と現在の理化学研究所と少し性格的に違っておりますが、さしあたり戦前の理化学研究所的なものでいいんじゃないか。と申しますのは、当時、理化学研究所の専属の主任研究員もたくさんおられましたが、と同時に東京大学その他の大学の方々が、いわゆる研究の場として理化学研究所の施設をお使いになって所員として非常に御活躍になっておられた。私あの当時のことを詳しく存じませんが、いわゆる大学教授ということと理化学研究所の所員であるということが世間的に見てどっちが優位であったかということでありますが、大学教授であることと理化学研究所の所員であるということは同じように学者として外部から見られておったのだろうと思います。御承知のような理化学研究所が科学研究所になり、いろいろ戦後困難な状況に立ち至りまして、そのためにいわゆる大学付置研究所というものが——本来、戦前の考え方ならば理化学研究所でやったほうが筋であったものを大学付置研究所でやるようにだんだんなってまいりまして、したがいまして付置研究所が非常にふえてきた。そこで、現在におきましては、戦争前のように理化学研究所の所員というものが学者として世間的に高く見られておるかどうか。この点についてはある程度疑問は持っておりますが、私率直に申しまして、たとえばドイツでプロフェッサー・ドクターという称号がございますが、ああいったものに似たような制度を日本でもおつくりになりまして、いわゆる大学教授というものと、研究所、特殊法人でございますか、そこの所員と身分上に研究者としての差をつけないもっと総合的な何か一つ組織をおつくりになりますと、わりあいにその点が解消されてくるのじゃないか、こういうふうな気がしております。  お答えになったかどうか存じませんけれども、かねがね考えておりますことを申し上げました。
  9. 前田正男

    前田(正)小委員 もう一つ聞きたいと思いますことは、先ほど科学技術会議みたいなものを行政委員会式にというお話がございましたが、実はこれについてもいろいろと意見があったのであります。大臣総理が出ていろいろと一般的な審議をしなければならぬ問題がやはりあるものですから、行政委員会的にはなっていないわけなのでありますけれども、臨時行政調査会の答申には、そのかわりに科学技術庁の中に科学技術会議の下部組織というような形で科学技術政策委員会といったような行政委員会を設けたほうがいいのじゃないか、こういうふうな意見が実は出ておるのでございます。この臨時行政調査会の答申についてどういうふうにお考えになっておられるか、ひとつお聞かせ願いたい、こう思うわけであります。
  10. 山県昌夫

    山県参考人 臨時行政調査会の答申に関しましては、お隣の篠原さんがたいへん御努力になっておられるようでございますので、直接いろいろなことは篠原さんから申し上げたほうがいいと思いますが、私いつも感じておりますことは、非常に入り乱れた行政組織を考えまして理論的に検討してまいりますと、いつも行政委員会というものが結論になります。それから研究機関につきましても、いろいろ検討してまいりますと、落ちはやはり研究特殊法人ということになってしまう。確かに理論的には行政組織として行政委員会というものは特色はございますし、また、研究施設研究所といたしましても、研究特殊法人というような特別なものを考えるということは、理論としては非常にすっきりして、私自身正しいと思っておるのでございますが、いろいろ実際行政をおやりになっておる方から伺いますと、たとえば行政運営の機敏性に欠けているとか、あるいは行政上の責任が不明確化するとか、いろいろ実際上の問題がございまして、どこかで妥協しなければならぬということで、おそらく臨時行政調査会の結論はああいう結論になったんだと思います。要は、実際問題と理想的に考えたこと、その妥協の結果だろうと私は考えております。  私、重ねて申し上げますが、行政組織を議論しますと、必ず行政委員会というものが一応は結論的に出てくる。一方において、研究所の議論をしますと、特殊法人というものが出てくる。しかし、これまた、反面、行政委員会なり特殊法人研究機関なりの持つ悪い面もございますから、そこで、やはりどこかで妥協しなければいかぬだろうというのが、私のいままでやってまいりましたことの結論でございます。
  11. 前田正男

    前田(正)小委員 篠原議員にちょっとお聞きしたいのですけれども、だいぶいわゆる基本法もまとまりつつあるようでありますけれども基本法がいま漸次まとまりつつありますと、今度は人文も含めて長期計画を立てるのですから、当然その受けていきますときの事務的な機構問題及びそれに伴って行政機構の改革というような問題が出てくると思うのです。これらについて科学技術会議のほうでいまどういうふうな検討をしておられるか、その点、基本法の制定に伴う行政機構の改革についてどう考えておられるか、そこをお伺いしたいと思います。
  12. 篠原登

    篠原説明員 前田先生の御質問にお答えを申し上げます。  基本法科学技術会議に関する二点があらわれてまいります。  第一点は、第七条でございますか、基本計画をつくります場合には科学技術会議の議を経なければならないという点でございます。それから二十一条かと思いますが、科学技術の振興あるいは科学技術水準向上のために科学技術会議を設置するとかいうことで、二点、科学技術会議があらわれてまいります。これを受けまして、それでは従来の科学技術会議をどのように変えて新しいものにしていくかという点につきましては、科学技術会議の昨年十二月一日の本会議におきまする答申におきましては、特に第一部会長の私から科学技術会議議長に対しまする「科学技術基本法の制定について」という題目で、左記のようなことを申し上げております。  第一は、先ほど前田先生のおっしゃったように、自然科学のみならず、人文、社会科学を含める。それから第二が、科学技術会議については、おおよそ次のような考え方に基づいて審議をしてまいるということでございます。これは総理府に付属機関として科学技術会議を置く、この科学技術会議は、基本法で申します科学技術基本計画の策定及び修正をする、それから科学技術に関する重要な政策に関することを審議する、それから日本学術会議への諮問及び日本学術会議の答申または勧告に関することのうち、重要なものに対して内閣総理大臣諮問に応じ答申する、こういうことでございまして、内閣総理大臣はこの答申及び意見を尊重しなければならない、まあ大体従来のとおりでございますが、特に人文科学が入った点が違うことと、それから新しく基本計画をつくるということが従来よりも非常に違った点でございます。  メンバーとしましては大体従来の線を踏襲いたしますが、人文、社会の各分野から大体二人くらい入れまして、現在の六人の学識経験者を二名ふやしまして、八名程度を置くというようなことでございます。  それから事務局をどうするかという問題につきましては、いま政府部内でいろいろ検討しておりまして、主として科学技術庁文部省の間でいろいろ案が出されて検討中でございますが、その点につきましては、ある程度政府部内におまかせをしているというのが、われわれ科学技術会議のほうの立場でございます。  お答えになったかどうかわかりませんが、以上申し上げた次第であります。
  13. 前田正男

    前田(正)小委員 先ほどその問題について、山県参考人のほうからもお話が出ておったのでありますけれども科学技術基本法が人文も入れる、科学技術へ統一してやるということになる以上は、新しく科学技術庁というものの性格を変えて、そうして科学技術庁自身がまとめていく、したがって当然文部省のほうからもそういう人たちに来てもらって、新しい科学技術庁として、科学技術会議全体の仕事を受けて事務的な仕事もやる。同時に、科学技術基本法に基づいて長期計画その他をこしらえていく。別に文部省の権限を減らす必要はないと思いますけれども、しかし科学技術庁自身としては、それだけの仕事は、科学技術会議できめることは全部やれるというような仕事をし、同時に、文部省から人も来ていただいてやっていくというのが当然の筋じゃないか、そういう山県参考人の御意見があったと思います。私もそう思いますが、こういう点については、まだ科学技術会議としてきめておられないかもしれませんが、篠原議員個人としての御意見でもいいですけれども、お聞かせ願いたいと思います。
  14. 篠原登

    篠原説明員 新しい科学技術会議が人文、社会を含めて新しく発足するという点につきましては、全く前田先生のおっしゃるとおりでございまして、人文科学に関しまして、文部省がいろいろな人文の研究所を持っておられますので、文部省の御協力を得て科学技術庁事務局役割りを十分果たしていかなければならぬじゃないか、かように考えておるものでございます。ただ科学技術会議、これは個人の意見議員意見か、その点は明確で、ございませんが、科学技術庁なりその他に関連する機構につきまして、この通常国会までに機構を十分に整えるということが、ちょっと時間がございませんので、まず基本法を通していただきまして、それに基本法を通すについての科学技術会議の改組を行ないまして、その後十分に一年間検討をされまして、科学技術庁なり文部省なりの体制につきましては、とりあえずは、一応は変えることはいいとしましても、根本的な問題はちょっと一年くらい十分に検討されたほうがいいんじゃないかと、私個人といいますか、そう思います。とりあえず必要なところだけ改正しまして、あとはそれに合うように少し時間をかけて検討するのが妥当じゃないか、かように考えております。
  15. 岡良一

    ○岡小委員長 ほかに御質疑はございませんか。——それでは私からちょっと一言だけ篠原議員にお尋ねいたします。  先ほど技術導入の問題に触れられましたが、国産技術の育成という立場から、技術導入については何らかの規制というもの——というときびし過ぎますが、対策が立てられなければならないのではないか。具体的にいえば、外資法の改正、ある  いはまた外資審議会の運営などについて何か具体的なお考えがございましょうか。
  16. 篠原登

    篠原説明員 ただいま岡先生の御質問でございますが、別にいま具体的の考えを持っているわけじゃ。ございませんけれども、外資法が制定されましたのは、たぶん昭和二十五年でございましたか、と思います。でございますので、それからもう約二十年たちますので、当時の事情とだいぶ違っております。当時は日本は無一物で、何もなくて、戦争のためにめちゃくちゃにやられてしまったのでございますから、その際、外国人が日本に投資をしやすいように、特に外資の支払いを必ずやるというような規定を設けましてこの外資法ができ上がりまして、それ以来、空白であった日本技術が今日に至るまで十分に進歩はしてまいったのでございますが、このような現在におきましては、日本技術レベルも相当上がりましたし、また、先ほど申し上げましたように、販路制限とか、あるいはジョイント・ベンチャーの要望とか、あるいは資本参加とか、そういうようないろいろな欠点がございます。技術導入にあくまでもたよるということは、これは時代が許しませんので、これに対しましては、私たち検討する必要があると思います。ところが、その反面に、開放経済という立場から見ますと、全然かきねを取っ払ってしまって自由に入るようにしたほうがいいんだというような説もありますので、二つの道がございますけれども、その点、どちらを選ぶべきかということはなかなかむずかしい問題でございますが、私個人は、やはり技術導入に対しましては十分に警戒をしながらやるべきである。これは法律をもって縛るのがいいか、あるいは各会社の社長さん方の良識にまって、その反省を求めてやるのがいいか、通産省でやっておりますいわゆる行政指導によって行なうのがいいか、その辺はなかなか問題でございます。私としましては、やはり独自の日本技術を発達させるために、技術導入は十分に考えなくてはならぬ、こういうふうに考えておりますが、たまたま通産省の工業技術院で、これに対してアンケートをとった結果がございますので、御参考のために申し上げたいと思います。  技術導入の現在の認可制度についてアンケートをとったのでございますが、従来技術導入を行なったことのある企業四百六十一社のアンケートの結果がまとまりました。それによりますと、第一は、もう開放経済のもと技術導入は制限する必要はない、かってに入れさせろ、認可なんか要らないというのが八十八社で一九%。それから技術導入の制限をする必要がある、こう答えておりますのが百四十社、三二%。それから第三でございますが、認可制度は現状のままでよい、やはり一定の審査を経て外資審議会でやって認可をしたらどうかというのが二百九社で四五%。これでございますように、会社の社長さん方がお考えになって、もうかきねを取っ払えというのがわずかに一九%でございますから、会社の首脳部も、わが国技術の国産化についてある程度関心があるということがいえると思います。こういうようなことを参考にいたしまして、政府ではいろいろ検討する必要があろうかと思います。
  17. 岡良一

    ○岡小委員長 昨日科学技術庁からいただきました資料で見ますると、昨年まで三カ年間に導入された外国技術のうち九八%はOECD諸国から入っておる。ところがOECD加盟に際して、技術導入については日本は留保しました。その理由は、国内における過当競争を防止するという立場、いわば現在の外来技術導入に対しては経済的な観点からの規制はあるけれども、国産技術の育成という観点からの規制が十分ではない、この点に何か具体的な対策というものがやはりあっていいのではないか、こういうふうに考えますが、この点については……。
  18. 篠原登

    篠原説明員 全く委員長のおっしゃるとおりでございまして、ポリプロピレン等、過去において例がございましたけれども日本のようなどっちかというと狭い国におきまして多くの会社が乱立して、そのいずれもの会社がそれぞれ外国から技術導入するために技術援助契約を結ぶ。そうしますと、したがいまして設備投資もふえ過当競争になりまして、それだけはみ出る。それが輸出されればいいのでございますが、輸出のほうは販路制限がございまして、こっちに輸出しちゃいかぬというような条件つきの技術導入でございますので、その辺日本の国産技術を育成する面におきましても十分に考慮しなければならない問題だと存じます。
  19. 岡良一

    ○岡小委員長 なお一問尋ねいたしますが、先年、私ども前田先輩のお供をしてヨーロッパ諸国における研究の実態調査に出かけたことがあります。そのときに、イギリスフランスなどでは、かなりな業種にわたって研究協同組合をつくっておる。しかも、これは鉄鋼であれば、単に大きな鉄屋さんだけではなく、小さなやすり屋さんまでも、そういうことで企業の規模のいかんにかかわらざる大きな協同組合をつくって、そうしてその共同研究の結果はあらゆる企業に公開をされるという方式をとり、英国はその研究協同組合に若干の補助をするという体制をとっておる。フランスでは、政府に依存しないで業者自体の資金によって研究協同組合を運営し、また、英国のようにあらゆる研究成果というものは公開をするということで、その業体自体の近代化のために非常に強力な協同体制がしかれておったわけです。アメリカは、資金のあるがままに大きな研究投資をビッグメーカーがやる。ソ連は、国家権力のもとに、先ほどおっしゃったような研究活動研究活動調整国内委員会などを設けてやっておる。その谷間にあるヨーロッパにおいては、民間業者の研究の共同というものを、非常に伝統もあり、また強力に推進をする。場合によっては政府がそれに対して助成をしておる。日本も、最近大体七十カ所余り日本の大きなメーカーにはいわゆる中央研究所等が設けられております。ところが、これらの各民間研究所の間には協力体制というものがどうも不足しているんじゃないか。むしろ商業上の秘密という形において研究成果というものがお互いに交流関係にない。その点は事実上設備の二重投資ともなり、マンパワーの足らない日本がマンパワーがますます足らないというような状態になって、一種の好ましくない状態にある。こういう状態に対して一体どうあるべきかという点、山県参考人の御意見をお伺いしたい。
  20. 山県昌夫

    山県参考人 ただいま何と申しますか、研究組合と申しますか、研究協同組合と申しますか、そういうものについて申し述べられました。実は私、造船でございますけれども、私、戦後海軍がなくなりましたので、何か造船に関する科学技術の中核体をつくらなくてはいかぬ、こういうことを考えまして、日本造船研究協会というものを、何年前になりますか、十数年前につくりました。ところがいまお話がございましたイギリスで戦時中からああいう研究組合をつくっておる、それが戦後私どもがつくりました後にそういう情報が入ってまいりまして、ちょうど私どもが考えておったと同じことをすでにイギリスが戦争中からやり始めておったということを知ったわけでございます。そこで、ほかの産業と違いまして、造船業はわりあいに業者といいますか、企業体もそう数は多くございません。したがいまして、共同研究ということが、造船研究協会を中心にして非常にうまくいっております。たとえばいま御承知のように十五万トン、二十万トン、さらに二十何万トンという船の引き合いまでございますが、それの基本になりましたものは、このわれわれの研究協同組合が中核体となって、むろんこれは政府がこれに対して研究補助金を出しております。それからおもな資金は、造船工業会が出しております。この造船工業会とか、われわれのほうでいえば船主協会とか、そういったような企業の団体が、自分自身が研究所を持つ場合と、こういった協同組合的の研究所を外に持つ、二種類のやり方があると思います。たとえば船主協会は海運の研究所を船主協会の中に持っておりますし、造船工業会は外に造船研究協会を持っている。むろんこの資金は、大部分は造船工業会が会員会社たる造船所からの会費を集めまして、それに流しておるわけであります。したがいまして、この共同研究ということは、ただいまお話がございましたように、非常に有効に造船業界では効果をあげたわけでございます。ただ、私、近ごろ感じておりますことは、いわゆる共同研究というものの対象は、基礎的なものあるいは普遍的なもの、共同的なものと申しますか、そういったものが対象になるのは当然だと思いますが、だんだんみんなでもってそういう研究をやっております場合に、具体的の問題と申しますか、実際の商売といいますか、工業に直接つながっていく、たとえば船の構造であるとか、そういった具体的の問題に入りつつあります。これはちょっと考えなければならぬことだと思います。と申しますのは、資本主義経済下でございますから、そういう具体的の問題になりますと、これはやはり各企業体が自分自身で研究されて、それを武器として商売をやるというのがほんとうだろうと思います。現在まではいま申し上げました基礎的、普遍的な研究に終始しておったのでございますが、だんだんそういった問題が出てまいりまして、これを共同的にやるということはなかなか問題があるというような感じを現在持っております。たまたま私ども戦後から研究協同組合たる日本造船研究協会というものをつくりまして運営してまいりました経験を申し上げまして御参考に供する次第でございます。
  21. 岡良一

    ○岡小委員長 この際、山県参考人に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり、貴重な御意見をお述べいただき、本件調査のため、たいへん参考になりました。  次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。    午前十一時四十五分散会