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糠沢参考人 お答えいたします。
ただいまの私の「原子力工業」に書きました
放射線管理の
問題点につきましての御質問でございますが、まずこの本が書かれました
経過から申し上げますと、これは
東京大学の医学部の吉沢助教授が、
放射線管理につきましての講座を一年間以上にわたりまして「原子力工業」に載せております。その
あと、各
事業所におきます
放射線管理の実態についてゼミナーの形で載せてほしいということで、私のところへも参りまして、実際の姿を載せてほしい、そういうことでございました。私としましては、一応
研究所の
放射線管理のあり方がいかにあったほうがいいかという問題から書き起こしまして、実際の姿がこうである、今後こういう問題が残るというところまで書いたと記憶しております。
ただいまの御質問の中の焦点は、どういうところに問題があるというふうに考えて書いたのかという御質問だと思います。その点につきましては、具体的に何ら「原子力工業」では触れてないと記憶しております。ただ、私が実際にやっております
管理の
立場から痛切に感じております
問題点を申し上げますと、まず第一番目は、やはり
放射線管理の
仕事は、お互いの信頼の上に立たなければ何も行なえないということが第一原則であります。それはなぜかと申しますと、
放射線管理というのは決して警察権を持っておるわけでもございません。そういう形であっては決していけないわけでして、やはり
研究が安全にスムーズに進むようにサービスするというのがこの精神であります。そのためには
研究を進めていく
研究者の
方々の良識がわれわれにとっては非常に重大な問題になります。ですから
放射線管理にとりましては、何がやりたいか、どういうことが行なわれているかということを逐一御相談していただきたいということが
放射線管理の第一原則でございます。そのためには
研究所の中のヒューマンリレーションというのが非常に大きな問題でございます。ですから私は、
放射線管理の大きな柱としてヒューマンリレーションと、それから
研究所の職員の健康
管理という大きなテーマを掲げております。それでそれぞれにつきましていろいろ書いてあったと思います。その具体的なことは、また具体的な御質問がございましたらお答えできると思いますが、結論から申し上げますと、要するに
放射線管理というものに対する認識が非常に低いということがまず第一でございます。
研究者の
立場に立ちますと、自分のやりたいことも規制されるのではないかあるいは何か探られるのではないか、まあそういうような
立場もございましょうが、
放射線管理というものは決してそういうものではないということを認識していただきたいということが第一の問題であります。
それから第二の問題は、やはり
予算とか人手の問題でございます。と申しますのは、いろいろの
放射線管理上の測定器械というものをたくさん持っております。しかも一応自動化された
管理方式というものをとっておりますが、これが非常に問題でございまして、自動化ということは決して人手減らしにはならないということ、その認識が足りないのではないかと思います。と申しますのは、自動化するということは決して人手を少なくするために自動化するのではない、自動化することによって逆にその自動化された機械を保守するための人手が非常に要るということ、そういうものに対する認識というものが若干欠けているのではないかと考えられます。
それから次には、いろいろな測定の基準、これはもう
研究所だけの問題ではございませんで、
一般的に
放射線管理業務に携わる者の大きな悩みでございますが、一体測定の基準というものをどこに置くか、それの記載はどうするか、それの評価はどうするか、そういう問題が統一されていないことが大きな悩みでございます。ですから各
研究所間の横の連絡というのはなかなかとりにくい。たとえば大きな
研究所ですと相当の
技術者がおられる、専門家も相当たくさんおられて、そこでやられた測定というのは相当高度のものでございます。ところが私
どものような
研究所でございますと、ある程度やっておりますけれ
ども、やはり大きな
研究所に比べて測定
技術というものに若干開きがございます。ですから私
どものところでやった結果がその大
研究所でやった結果と直接比較できるかというと、なかなかむずかしい問題だと思います。そういう
意味で
研究所間のそういうデータの横の連絡というのはなかなかスムーズにまいりません。そういう
意味で私
どもは測定基準の統一というものが何らかの形で行なわれる必要があるのではないかというふうに考えております。
それからいろいろの
管理上の装置、たとえばエアフィルターのようなもの、そういうものの維持
管理の基準というものはございます。私
どももいろいろと寄り寄りほかのいろいろの
研究所との間で
研究会を設けておりますけれ
ども、非常にむずかしい問題で、もちろん
経済的に余裕がある場合にはどんどん金をかけて取りかえるなり、あるいは新しいものを補給するなりという形がとれるのでございますけれ
ども、やはり安全
管理はそこにもう一つ
経済的な安全
管理ということも考えなければならない、そういう
意味でそういう維持
管理の基準というものがいかにあるべきかということを確立することも大きな問題だと思います。
それから次には、ただいまお話にも出ましたように、
放射線取扱主任者の職分というものがきわめて不明確でございます。これは法律に書かれている職分は非常にあいまいと申しますか、非常に抽象的でして、実際には各
事業所がその
放射線取扱主任者をいかに考えるかという問題にかかってくると思います。ですから、この問題はあくまでも
事業所自体の問題でございますけれ
ども、ただそれを
事業所の中できめますときに非常に裏づけが弱いためになかなか職分を明確にできないという悩みがございます。そういう点をはっきりする必要があるのではないか、そういうふうなことを書いたように覚えております。
以上でございます。