運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1966-02-17 第51回国会 衆議院 運輸委員会 第12号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十一年二月十七日(木曜日)    午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 古川 丈吉君    理事 壽原 正一君 理事 關谷 勝利君    理事 田澤 吉郎君 理事 田邉 國男君    理事 山田 彌一君 理事 久保 三郎君    理事 肥田 次郎君 理事 矢尾喜三郎君       有田 喜一君    浦野 幸男君       小渕 恵三君    川野 芳滿君       木村 俊夫君    草野一郎平君       高橋清一郎君    高橋 禎一君       中馬 辰猪君    増田甲子七君       山村新治郎君    井岡 大治君       小川 三男君    勝澤 芳雄君       泊谷 裕夫君    野間千代三君       山口丈太郎君    内海  清君       竹谷源太郎君  出席政府委員         運輸事務官         (鉄道監督局         長)      堀  武夫君  委員外出席者         参  考  人         (評論家)   小汀 利得君         参  考  人         (武蔵大学教         授)      蔵園  進君         参  考  人         (一橋大学助教         授)      坂本 二郎君         参  考  人         (全日本交通運         輸労働組合協議         会議長)    堀井 利勝君         専  門  員 小西 真一君     ――――――――――――― 二月十七日  委員竹谷源太郎辞任につき、その補欠として  小平忠君が議長指名委員に選任された。 同日  委員小平忠辞任につき、その補欠として竹谷  源太郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 二月十六日  三陸縦貫鉄道久慈線、盛線及び小本線の建設促  進に関する陳情書  (第  二二号)  東北本線複線化電化工事促進に関する陳情書  (第二三号)  東北本線複線化電化及び電車化促進に関する  陳情書  (第二  四号)  智頭線の赤穂市まで延長に関する陳情書  (第二五号)  野岩線建設促進に関する陳情書  (第二六号)  海難救済並びに予防体制確立に関する陳情書  (第六七号)  港湾整備及び港湾機能充実に関する陳情書  (第六八号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案(内閣  提出第一六号)      ――――◇―――――
  2. 古川丈吉

    古川委員長 これより会議を開きます。  国有鉄道運賃法の一部を改正する法律案を議題とし、審査を進めます。  これより本案に関して参考人から意見を聴取することといたします。  本日御出席参考人は、評論家汀利得君、武蔵大学教授蔵園進君、一橋大学助教授坂本二郎君、全日本交通運輸労働組合協議会議長堀井利勝君、以上四名の方であります。  参考人各位には本日御多忙にもかかわらず御出席を賜わり、まことにありがとうございました。本法律案につきましては、深い御識見を有せられる参考人各位からそれぞれの立場に立って忌憚のない御意見を承り、もって本案審査参考に供したいと存ずる次第であります。御意見開陳はおおむね十五分程度におまとめいただくようお願いいたします。なお、御意見開陳は、委員長指名順に御発言を願うことといたします。なお、御意見開陳のあと、委員から参考人各位に対して質疑を行ないますから、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、小汀参考人にお願いいたします。
  3. 小汀利得

    ○小汀参考人 たいてい参考人というのは学識経験者ということのようですが、私は学識のほうはないので、だいぶ利用している経験者だから、その立場から申し上げたいと思います。  私どもの一番願うところは、ボーイング727みたいに、水杯で鉄道利用する、汽車に乗ることだけはかんべんしてもらいたい。安心してあれに乗れるようにしてもらいたいということが一番大事なことであります。三河島や鶴見のような惨害をもう一度繰り返すのだけはかんべんしてもらいたい、こういうつもりでいるのです。  皆さんのほうがお詳しいですけれども、私もずいぶん朝早く電車に乗りますが、私は幸いに、まだ洋服が上等だからボタンがちぎれたことはないけれども、仲間の連中の話を聞くと、ボタンはちぎれて、会社か工場かに行ってみたら全くボタンがなかった。これはちょっと古い、いたんでいたのだろうとは思うけれども、どうも悲惨な話だし、女の子のハイヒールが、はずれたならかまわないけれども、どこかにあればいいけれども、ついに見出すことができないままはだしでおりていった、こんなことを毎日繰り返していると、近ごろだいぶ日本の民情も悪いようですが、だんだん殺風景になって、これは鉄道責任があるというか、鉄道が非常に状態が悪いということが相当関係があると思う。もう少し楽に乗っていけて、利用できて、民族性を向上させるようにしたい、こういうのが私の願いであります。  これは皆さんのほうがお詳しいから、あんまりよけいなことは申しませんが、第三次長期計画というもの、これはたいへんな大事業でありまして、簡単にいうと、若い人にはぴんとこないが、四つ身と本裁ち、子供がだんだん大きくなると——われわれ子供のときには四つ身の小さな着物を着た、それが大きくなるに従って本裁ちというものになる、つまり子供に適した着物を着せてもらわないと困る。今日の日本交通事情、これから見れば、いつまでもいままでの程度でこそくなことをやっておられては困る。まあ、新幹線のごとき思い切ったこともやりましたけれども、あれをできることならもっと全国的に広げるくらいな勢いでやってもらいたい、こう思いますから、この第三次計画というものに、私は全面的に賛成をしております。したがってこの第三次長期計画をやるについて、採算的に合わない投資の一兆円くらい、何とかこれを補うことができるようなやり方をすべきものである、こう思うので、平均二割五分の運賃改定率は認めようと思うのです。  運賃の問題と物価問題がいろいろ世間の話題になっており、ここでもいろいろ論議されておるようでありますが、私は一般物価問題を運賃問題にからますということはよくないと思う。そういうことをすると、もう何もかもほとんど解決がつかなくなる。大きな物価問題、これは経済の一番大きな問題でありますから、そんなやっかいな問題を運賃問題にからまして、だからできないのだというようなことを言うと、ほとんど何にもできないことになる。こういうようなわけでありますから、なるべく——なるべくじゃない、これは大所高所に立ってこの問題を考え直すということが必要だと思う。  私の知っている横浜の市長の飛鳥田君が、これは社会党でもわれわれ左のほうと了解しておったのですが、せんだって、去年の暮れでありましたか、「中央公論」に一大論文を書かれて、われわれ大いに啓発された。やはり実際をやってみると、なかなか抽象論のようなわけにいかない。ああいうえらい人が出て、どんどん実際をやってみられて、経験を積まれるということは、私どもをたいへん啓蒙してくれるいい材料だと思います。  そこで実は、これはここで申し上げなければならぬことではないが、かねがね私の考えている一つの案を申し上げたいのですけれども物価を下げるというのは、そんなに骨が折れないと思うのです。それはやるべきことをやれば簡単に下がると思うのです。これは抽象論をやったってしようがないから、具体的な問題を取り上げますが、たとえばいまゴルフにきわめてわずかな地方税をかけております。私は前から非常に大幅な引き上げ論をやっているのですが、池田君が総理大臣であったときに、これを二百円の使用料か何か、何というのかぼくはあんなたわけたことをやらないから知らないけれども、それを四百円にしたことがあるが、今度また六百円に上げるそうですけれども、そんなことはくだらないことである。ゴルフなんというものについては、あの棒を振る人間どもに対して少なくとも十万円前後の税をかけてよろしい。特に若ければ若いほどそれを高くする。たとえば二十代は三十万円。この間その説を述べたら、ある人がお前に似合わず安いんじゃないか、百万円でどうだと言うから、百万円けっこう、ただしどうも百万円という金はなかなかたいへんな金だから、そこまでやると何となく茶番じみてくるので、ぼくは実際家だから、まあ三十万円くらいでいい。それで三十代二十万、四十代十五万、五十代十万、六十代五万、七十代ただ。私は七十代でありますけれども、そのただの恩典を受ける考えはさらさらない。あの世へ行くまでゴルフなんてたわけたことをやる気はないのだから、ああいう棒を振るやつらから取ることだけでも相当大きい。それから企業者からと両方から思い切って取ると、一兆円の税を集めることは易々たるものだ。これは目的税として、それを運賃とかなんとかに利用してよろしいと思うのです。そういうことをやるべきなんです。  そのほか私は実は……。  その前にもう一つNHKがわれわれから一種の税金を八百億円近く取っております。NHKのたわけぶりというものは実に言語に絶するはちょっと大きいけれども、はなはだばかばかしいことである。こういうものはすみやかに四百億円以内に下げる。二、三年たったら、また二百億円に下げる。こういうふうにすれば、あの神宮のところの森林公園予定地にでっかい建物なんか建てるようなばかなことはしなくていいはずである。そういうような身分を知らない、身のほどをわきまえないようなたわけたことをやるやつに痛棒を食らわす必要がある。それでときどき変なことをやっているから、なおそういうものも国会で監督していただきたいけれども、これは運輸委員会の問題じゃないから、ちょっと脱線でありますが、そういうのをやるほうがいい。それから百貨店なんかでもちゃんとやれる相当の余地がある。  私は元来——いま何分ですか。(「まだいいよ」と呼ぶ者あり)十五分以上しゃべりたくないから……。  元来私はいまの日本の税制に反対であって、批判的であって、間接税本位にすべきである。現在の日本では、かせげば必ず税金をとる。そういうやり方というものは、はなはだよくないことである。  イタリアのごときは八割まで間接税でやっており、フランスが三分の二間接税でやっておる。英国やドイツのような、昔日本がまねをした直接税本位の国が、どんどん間接税のほうへ傾いておる。アメリカは、ケネディが減税するまでは、御承知のとおり、八割が直接税でありましたが、いまやだんだん形勢は変わりつつあって、いまちょっと戦争等のために行き悩んでおりますけれども、これも変わるだろうと思う。  日本なんかは、地方税を入れて六割八分が直接税である。こんなべらぼうなことはない。何であろうと、人間は、働く面においては税の負担は軽い。その金を使うという面においては必ず税をとられる。つまり汽車に乗っても電車に乗っても、その程度がいかになるものであろうと、利用する種類が何であろうと、それは多少のしんしゃくは必要であるが、何らかの行為でもって消費行為をやれば、それが税を負担する。こういう間接税本位にしなければいかぬということを考えておる。それをやれば日本の国情がたいへんによくなるくらいであるから、私は税制問題について、皆さんにもぜひ御一考願いたいと思うのです。  これをこの国鉄運賃の問題にもからめて、利用者は何がしか必ず犠牲を払う。利用しない者が、つまり国税収入から国鉄に補助するなんというようなことをやれば、これははなはだ私の考えに反するものである。そういうやり方をしたほうがいい。そういったようなことはいろいろあります。  とにかく、いませっかく案を立てている国鉄値上げ案というものは、はなはだ控え目で、私には少し気にいらないけれども、どうも世の中には一どきに払うのがつらい者もある。  私のうちでも、これは私鉄でありますが、四人定期を持って通っている者があるけれども、それはなかなか出が多いということは知っておるが、しかしいたし方がない。どうしても力がなければ動かないでいるか、でなければ近くの学校なり——会社は近くへ通うということは、どうも相手があるからそうはいかないけれども、そこらのところを考えて、利用する者は何がしかの犠牲を払って、利用程度の低い者、全くない者が、それがために直接負担をかけられるということだけは避けなければいかぬ、こう思っております。  それじゃ一応この程度で……。(拍手
  4. 古川丈吉

  5. 蔵園進

    蔵園参考人 私は大学で交通を研究している者であります。したがいまして、いまお話のようなおもしろい話というわけにはまいりませんけれども、私がふだん専攻している関係上、特にこの際考慮しておいていただきたいということを述べさせていただきたいと思います。  まず第一は、今回の運賃値上げ理由が、赤字ということと、もう一つ建設資金をどのようにして調達するかという、この二点にしぼられるだろうと思います。ところがこの二点につきまして私の疑問を申しますと、まず第一に赤字であります。三十九年度に赤字が出たという資料が流されておりますが、しかしながらこの際減価償却が非常にふくれてきた。その中で、たとえば従来取りかえ法で行なっておったものを、半額法償却法をやるというようなことを新しく始めている。これは長い国鉄の歴史の中では、減価償却をやらないで、そして半額法などということもやらないで、取りかえ法だけで今日二兆円近い資産というものができ上がってきたわけであります。したがって、このような減価償却方法をやらないでもいいではないか、そういう疑問があるわけであります。あるいはまた定額法でなしに定率法を採用するというようなことが実際上行なわれていると思いますが、そうすると建設が済んだときには非常に高い減価償却をやらなければならぬ。だんだん建設して古くなればなるに従って次第に減価償却が少なくなっていくというようなことになって、その建設が済んだとき、あるいは建設を始めようとするときに非常に大きな負担国民は負わなければならない。こういう点も考慮してしかるべきじゃないか。これは民間企業と違いまして、公共企業であります。国家企業であります。したがって、国家企業には国家企業としての運営のしかた、やり方があるのではないか、この点がまず今回の赤字に対する疑問であります。もちろん利子負担が非常に多い。特に借金をして利子負担が多くなるということがいわれております。借金すれば利子が多くなることは当然であります。しかしながら、利子を下げようとする努力、この努力がやはりなされてしかるべきではないか。特にそれは国鉄であります。したがって、皆さんもこれは関係しておられるところでありますから、利子を下げようという努力をすればできないことはないだろうと私は思います。  それから建設資金調達についてであります。ここでは、国鉄運賃法では、原価に対する料金、運賃という規定がございます。ところが、その原価の中に建設資金までも入れていいかどうかということについては、これは非常に大きな疑問があると思います。もちろん法律上の問題でありますから、原価の中の算定の基準というものにどういうものを持ち込むかということについては、いろいろ研究をされておられるようでありますけれども、しかし、この場合でも、こういうような原価の中に新しい資金調達のしかたというものを持ち込むということは、これは民間私企業の場合であろうとも私は間違いではなかろうかと思う。また今回採算がとれない投資を行なう、安全のための投資——なるほど先ほどのお話のように、われわれ国民は安全な輸送ということを心から望んでおります。安全を確保してもらいたい。そういう安全を確保することについて、現在の交通情勢は必ずしも国鉄だけの責任で安全の確保が行なわれるというような事態ではない。これは道路との立体交差、そういうこと一つ考えてみましても、あるいは事故の非常に大きなものが自動車との問題であることを考えてみまするならば、必ずしも国鉄だけの責任とは言えない。それを国鉄責任においてそういうものをやろうとすることは、少し国家がそういうみずからの無責任国鉄に押しつけるというようなことになりはしないか。  また輸送力増強だということを言われる。これも採算がとれないということを言われているわけであります。ところが、山手線にいたしましても、輸送力増強しなければならないところは黒字である。といたしますならば、輸送力増強ということだけで新しい建設資金調達しなければならぬという理由は非常に薄くなるのではないか。なるほど通勤、通学は非常に混雑をしております。これをなんとかもっと緩和してもらいたいということも、多くの国民が望んでいることであります。そのことをぜひ国鉄にはやっていただきたい。しかし、そういうことをやるところでは実際はもうかっている。もうかっているにもかかわらず、なおかつ運賃を上げるということには非常に疑問がある。そうではなしに、たとえば、まあいまはそういうことはないと思いますけれども一般世間ではサルしか乗らないじゃないかというようなところを手がけておられる。そういうところでむしろ輸送力増強するということについては、これはもっと全体の交通政策の上から考慮していただきたい。一方で鉄道をつくり、片方で自動車道路をつくる、そういうむだなことを何とか調整してもらいたい。これも国民の切実な願いであると思います。  そういうようなことを考えてみますと、建設資金調達ということにつきましても、それぞれの責任の所在なり、あるいは国鉄経営のあり方なり、そういうものをもう少し検討していただく、そういうことをやっていただかなければ、やはり国民というものはなかなか納得しがたいということを私は述べさしていただきたいと思います。  またさらに、今回の運賃値上げは、先ほど申しましたように、特に旅客運賃につきまして、その中でも普通旅客あるいは定期にいたしましても、ともかく混雑するところ、もうかっているところの値上げが非常に大きい。そういうことを国民がそれほど簡単に納得するかというと、それは少し納得ができないだろう。まあ貨物への影響ということもございます。物価への影響ということもございます。そういう国民に与える影響、あるいはどのような人々がそれを利用するか、その利用する人々によって今回の運賃値上げ上げ方というものが非常に違っている。不公平な取り扱いが行なわれている。この点についても十分考慮していただきたい。  そのほか、経営上にいたしましても、膨大な建設資金を投下する。しかしながら、土地買収につきましては、多くの疑惑が国民の間に流れているわけであります。一体どういうことをやっているかということについて、あるいはいろいろな土地買収のしかたについて、もっと国家考慮すべきではないか。そうしなければ、公共事業というのは、新しく建設を行なえば行なうほど土地所有者が非常に有利なことになる。これは私だけではなくして、運輸省のある人は、現在の土地所有者というのが非常にわれわれを搾取するんだということを言っているわけでありますが、そういう点の配慮というものをぜひやっていただきたい。そういうことを抜きにしては、どんなに建設資金調達したにいたしましても、それは実際上はたいした建設は行なえないということになりはしないか。そういう点の考慮をお願いしたい。  要するに、私は皆さんに幾つかの点をお願いしたわけでありますけれども、一口で言うならば、国民が持っているところの国鉄なり政府なりに対する不信感信頼感が非常に薄いということ、その点について十分考慮の上今回の問題を処理していただきたい。たとえば国鉄計画を立てた第一次計画、第二次計画、今度は第三次計画でありますが、第一次計画、第二次計画でも何を言ったかというと、通勤輸送を緩和させます。そのときに値上げをやっております。ところが、その後通勤輸送は少しも緩和されておらない。これでまた第三次計画通勤輸送を緩和するから値上げをいたします。一体国民は何を信じて運賃値上げに賛成すればいいかということを私は考えるわけであります。国民のそのような不安というものを、不信感というものを取り除くような、そういう政策態度、そういうことが最も望ましいのではなかろうか。私はそういうことをお願いすると同時に私の意見を述べさしていただきました。(拍手
  6. 古川丈吉

  7. 坂本二郎

    坂本参考人 国鉄運賃値上げに基本的に賛成いたします理由三つございます。第一は、事故の防止という点でございます。それに運賃値上げが少しでも役に立てばたいへんけっこうだ。第二の理由は、住宅難及び地価高騰を防止する一つのきめ手が鉄道建設だという点であります。それに運賃値上げが役立てば、これまたたいへん喜ばしい。第三には、日本経済の景気を本格的に引き上げる次の主導産業部門として、われわれは鉄道住宅と都市の再開発を考えておりますが、そういう産業については抑制措置をとってはいけない。この産業を促進するようないろいろな手をとっていただきたい。運賃値上げに反対することは、事実上、そういうことを抑制することになりますので、われわれはそういう態度をとっていない。この三つの点でございます。三つ理由の中で多少強弱がございます。あるいはタイミングがございます。第一に申し上げましたのは比較的緊急の理由でございます。第三に申し上げましたのは、少し中期的、長期的な観点に立っての理由でございます。  まず第一に、東京都の世論調査によりますと、東京という町が持っております不愉快さ、それの第一位は、昨年までは物価高でございました。東京はいろいろ便利だけれども値が高い。しかしことしになりまして調査をいたしますと、交通事故の危険というのが、東京が持っておる不愉快の第一位になってきております。多くの方々もばく然とではありますけれども、このままでは非常に大きな事故が起こるのではないだろうか、人命の殺傷が起こるのじゃないかという御心配が世論調査に出ておるわけであります。われわれはそのことを何とかして防ぎたい。値は安いにこしたことはありませんけれども人命ほど高いものはないということを御注意願いたいわけであります。人がなくなってから涙を流してもしようがないので、なくならない前にあらゆる手を打つべきだ。その手の内には直接規制もございます。たとえば乗車効率が二〇〇%か二五〇%をこえれば、どんな理由があっても乗せない、こういう直接規制もございます。もう一つ方法は、運賃を上げることによって需要供給を調整する。そして供給力をなるべく早く増強する、そういう案でございます。われわれ、経済学者でございますから、どちらかといえばお金に訴えてそういう問題を解決するほうに傾きがちであります。それ以外の方々は、それ以外の方法、たとえば時差通勤とか、いろいろな方法があると思います。しかし率直に言えば、安全性を金で買うべきだ、そういう態度を失ってはいけないそれが第一の理由でございます。  第二の理由は、現在、これまた大都会においてたいへん深刻な一つの問題は、住宅難あるいは地価高騰でございます。多くの方々が長期的に働く勤労意欲の根源は、自分の住むべき家を持って、家族仲よく暮らしたい、そのために普通の能力のサラリーマンは一生懸命働くわけであります。それが現在かなり絶望的な状態に近づいております。ところが宅地の材料、つまり農地でありますが、それは東京周辺に限りましても非常にたくさんございます。たとえば東京周辺で申しますと、東京東北地区の部分でありますが、この辺ですと三十キロ参りますと坪三、四万円でございます。東京の西南地区でございますと、四十ないし五十キロ参りますと坪三、四万円でございます。ところがわれわれは幸いに、新幹線というものすごい技術を持っております。その技術をもし都市近郊の通勤用に導入いたしますと、一時間五十キロから百キロ行くのは決して不可能ではありません。そういう技術を持っておる。その技術をどうして導入しないのか。これを妨げておるのは公共料金全体に対する抑制措置であります。現在農地は非常に上がっている。その上に一時間ないし一時間半で通える鉄道が導入されれば、そこは住宅用地になる可能性があるわけであります。そういう鉄道の導入が地価というものを、住宅難というものを克服する非常に大きなきめ手でございます。そういう意味で、われわれは都市の通勤鉄道にもっともっと多くの投資が行なわれるように、そういう方向を皆さん考えていただきたいと思うわけであります。われわれは通勤定期については比較的安いので得をいたします。しかしそのために現在四、五十キロ圏内で土地を探さなければいけない。そうしますと、ずいぶん高い土地を買っておるわけであります。一方では得をしたつもりでありますけれども、他方では非常に大きな損をしておる。通勤定期が、たとえば月千円から二千円に上がれば千円損であります。しかしわれわれは家賃を月々四千円から五千円も払う。もっと払っておる人が一ぱいありますが、そういう損を何とかして減少したい。そのきめ手の一つ鉄道、なかんずく都市高速鉄道の導入であります。日本経済がそういうことを怠ってはいけない。以前、鉄道は三回抑制されております。一つは戦時中であります。もし戦争がなければ昭和の初めにかけて鉄道の大復旧があったろうと思います。二番目には戦後の復興でございます。農業及びエネルギー産業を伸ばさないといかぬということがございましたから、都市のほうの鉄道は少しおくれがちになりました。その次は重化学工業であります。昭和三十年代は重化学工業のところに重点を置きました。これがためにまた大都会の鉄道体系を改善するというチャンスをあと回しにしたわけであります。現在公共料金を押えることによって、物価対策の一環としようという議論が起こってまいりますと、ここでまた鉄道の発展が妨げられるわけであります。そのことが、なるほど物価という点からいえば、若干の効果があるかもわかりません。しかしそれによって失うものは非常に多いと言わなければなりません。  第三の理由、これが日本経済全体の次の主導部門を探さなければならぬ、そういう理由に関連してまいります。ごく大まかに申しますと、二十年代の主導産業は農業とかエネルギー産業でございます。国民に最低限度のおなかをふくらましてもらう、国民の発展の基礎であるエネルギー産業を大いに伸ばしていく、政策の重点がそこに置かれました。昭和三十年代になると自由化と重化学工業を推し進め、日本経済全体の雇用力を高める関連効果を持っておる戦略産業、鉄鋼、石油、石油化学、機械を十分に伸ばしていこう、ここでかなりわれわれは成功いたしました。昭和四十年代のリーディング・セクター、主導産業として、われわれは都市に関連する鉄道住宅、都市の生活環境や都市の再開発全体、こんなものを考えております。皆さんにお願いしたいことは、特に国会議員の先生にお願いしたいことは、われわれ農業に対してどういう手を打ってきたかということをお考え願いたいと思います。事業税はわりあいにまけております。固定資産税は現在わりあいに低く取っております。減税をやっております。一方農地改革のためにはいろいろの直接、間接の補助金を出しております。しかもそれが、つくった品物については二重価格で、なかんずく米についてはやっております。同じことを次の主導産業である鉄道住宅についてやっていただきたい。鉄道住宅については、たとえば減税措置を、たとえば一般的な意味での補助金を、そして二重価格を、こういうセンスでやっていただきますと、日本経済全体の現在の不況、これはたいへん深刻でありますが、それをもう一度大きく伸び上がらせるための新しい主導の部門、住宅はある意味で総合産業でありますから、われわれは多くの人の望んでおる住宅を与え、その上快適な生活環境をつくる。このことは目の前の消費者物価の上昇という苦痛に比べて、潜在的に支払っておるいろいろな大きな苦痛を取り除く。われわれ経済学者は、国民方々が短期的に目をお向けになって、短期的な意味で公共料金引き上げに反対になる気持ちはわかりますけれども、しかし長期的、社会的、全体的な観点に立って、そういう大きな利益があるのに、それを獲得できないでいるという状況を改善していただきたい。こんなふうに思うわけであります。それが基本的に鉄道というものの運賃値上げに賛成する理由でございます。  ただ、いま国鉄がやっておりますすべての事柄にわれわれ賛成というわけではございません。いろいろな点で改善していただきたい点が一ぱいございます。まず第一には公共サービスでありますが、独占性を一部持っております。独占的な力を持つものは、それだけほかの産業に比べて、より多く経営能率の改善に努力する義務があるわけであります。特権は義務を伴うと申します。そういう意味で経営能率の改善については、いままでよりも一そうきびしい態度で、皆さんがいろいろな勧告なりあるいは批判なりをしていただきたい。そういうものが要る。それと公共料金全体の値上げとの関係をもっともっと前向きにしてお考えをいただきたい。これが第一の提案であります。  第二の提案は、非常にダイナミックに変わっております社会にわれわれ住んでおりますが、そういうダイナミックな社会の中では、たとえば公共サービスの料金全体についてスライディング制を御検討願いたいという点であります。ほかのいろいろなものの値段は、たとえばわれわれの賃金で申し上げますと、年一〇%前後上がります。いろいろな消費者物価についてもかなり上がるものがございます。ところが公共サービスは議員の先生方の月給をはじめとして全部絶対額できめるという習慣があります。これは戦前国民所得が平均四%伸びて、民衆の生活水準が平均二%ぐらいしか伸びない、そういう場合にはふさわしい方法であります。現在のように激しく変わりつつある時代においては、スライディング制というものを公共セクター全体について御検討願わなければならぬのではないか、そんなふうに思っております。  三番目には、国鉄が現在持っておりますいろいろな資産をもっとじょうずに利用するという方法、たとえばわれわれは前から時間別運賃ということを御検討願いたいというふうに御提案しております。比較的すいているときには安く乗せる。込むときには高く乗せる。そういう時間別に運賃を区別することによって、現在持っておる資産を生かして運賃を上げ下げして混雑を緩和する、乗客のからだの疲れを少なくするとか、そういう経営のくふうが要るのではないかと思っております。  さらに全体として、われわれは長期の展望をした上で、日本経済全体の動向というものを考えなければならない。公共料金の引き上げは一つ方法でありますが、それ以外に、たとえばさっき申しましたように政府の施策の重点を変えていただくこと、あるいは公債——建設公債でありますが、国鉄利用する人に公債を買うてもらう、そういう方法、いろいろな方法で現在は消費者物価を上げるように作用しているお金を公共セクターのほろに誘導してくる。同じお金が現在は需要の側に回って消費者物価を上げております。その同じエネルギーを供給側に持ってくる方法、いろいろな方法があります。それには公債を買うてもらうのも一つ方法ですし、公共料金を上げるのも一つ方法ですが、そういうようなことについて積極的な提案があったら、公共料金の引き上げについてはもっと小幅で済むかもしれません。あるいはどういう方法でもかまわないと思います。しかし日本経済全体の基本的な方向が都市に向かってきております。都市についてのいろいろな施設の改善に積極的に取り組む、その一つとして、われわれは公共料金の値上げに現在賛成をしておる。私の気持ちはそういうものでございます。(拍手
  8. 古川丈吉

  9. 堀井利勝

    堀井参考人 先ほど委員長のほうから御紹介がありましたが、私は全国的な労働組合の代表という立場と同時に交通機関の利用者という立場もございますので、そういう角度から今回の国鉄運賃値上げについて意見を申し上げたいと思います。  原則的には今回の国鉄運賃値上げには反対をいたしたいと思います。国鉄の当局は、昨年の四月からいわゆる第三次長期計画を実施しておりますが、聞くところによりますと、この計画には総資金約三兆円というきわめて多額な投資を要しまして、七カ年にわたってこれを実施するという計画のようでございます。今回の運賃値上げ理由は、この膨大な大計画を実施するための必要な資金を確保する、こういうことが目的のようでございます。実は私ども国鉄が現在考えておる第三次長期計画そのものについて若干の問題があるように考えている次第でございます。確かに現在の国鉄には早期に解決をしなければならぬという問題がきわめてたくさんございます。特に私たちの立場から申しますならば、通勤輸送や長距離列車の混雑の緩和、こういうことは非常に焦眉の急として、毎日の体験の中で感じておる次第でございます。さらには、運転事故の防止でありますとか、安全輸送施設の改善、こういうものはむしろ一刻の放置も許すことのできないようなきわめて切迫しておる状態だと考えておる次第でございます。また、こういった対策を早急に実施するためにはかなりたくさんの金が必要だ、資金の投入が必要であるということも十分に考えておるところでございます。しかし、これらの資金を確保するために、これをあげて運賃に依存をする、こういう考えに立っているところに実は問題があるのでございます。御承知のとおり国有鉄道は文字どおり国の所有であります。同時に政府の監督を受けまして、かつ日本国有鉄道の資本そのものは全額国の投資、こういう形になっておることも御存じのとおりであります。したがいまして、そういった角度から考えますならば、国鉄がほんとうに必要とする資金というものは、原則的に全額国家資金の投入によってこれをまかなうというのが、まずたてまえでなければならないと考えておるのでございます。また同時にこの計画そのものをこまかく検討してみますと、たとえば通勤輸送にいたしましても、今日非常に急速にふえてくる乗客をまず吸収するということだけが精一ぱいのところだと思います。この現状を大幅に緩和して楽な通勤輸送ができる、こういうことはまず今回の計画によってもほとんど望み得ないような計画になっている感じがいたします。しかし一方では、山陽新幹線とか、あるいは新線の建設とか、かなり別な角度からの意欲的な計画がされております。言うなれば計画全体を見ますと総花的といいますか、そういう感じがしてならないのでございます。こういうときにはむしろ私たちの気持ちでは重点をしぼりまして、緊急なものから逐次解決をしていくという立場が望ましいのではないかと実は考えておる次第でございます。これがまず反対の第一の理由であります。  反対の第二の理由といたしましては、やはり国鉄運賃値上げによりまして誘発する物価高騰ということを非常に問題にいたしております。ここ数年来の諸物価の上昇はまことに顕著でありまして、総理府などの物価指数の統計を見ましても、三十五年を一〇〇としますと、四十年の十月には一三八・八%というきわめて高い高騰率を示しております。特に国鉄運賃というのは、同じ各種の公共料金の中でも家計を圧迫するという点におきましては、最も高い比重を占めておるのではないかという感じを強く持っております。国鉄の資料によりますと、運賃値上げをしましても物価の上昇にはそれほど大きな影響がないのだ、こういうふうに説明をしておるようでございますが、かつて三十二年の運賃値上げのときには一三%の値上げをしまして、その当時の消費者物価へのはね返りが大体三%ぐらいあったという実績がございます。国鉄運賃影響は私どもの感じからいたしますと、かなり大きなものがある、こういうような印象を強く持っておる次第でございます。すでに米価、私鉄運賃が上がりまして、国鉄運賃に続いて電信、電話、さらには郵便料金の引き上げ、こういう問題も実は予定されておると聞いております。これはまさに政府の、言うなれば高物価政策ということになるかもしれませんが、これらの中核として国鉄運賃値上げというものが今後さらに国民生活に対して大きな影響を持つ。そういうことをどうしても私どもは否定することができないと考えておる次第でございます。特に最近のように経済全体がインフレ含み、こういう関係になりますと、一そう国鉄運賃値上げというものが互いに作用し合うという要素をこの際見のがすことができないのではないか、こう考えておる次第でございます。  次に、反対の第三の理由といたしましては、今回の値上げ率が平均でも二五%というかつてない高率の値上げでございます。国鉄はさきに第一次の五カ年計画の際に、平均一三%の値上げをいたしました。さらに三十六年には東海道新幹線の建設を中心とした第二次五カ年計画の費用として、平均一四・六%の値上げをいたしました。このいずれにいたしましても、今回の値上げがいかに高率であるかということはきわめて明らかであります。国民生活に与える影響もそれだけ大きくなるものと考えなければならぬと思います。しかも今回の値上げの特徴を申しますならば、貨物に比べて旅客運賃値上げ率が非常に高いということであります。加えて、特にこの定期運賃が実際上約二倍にはね上がるという点につきましては、それはどうも私どもの感じからいたしますならば、日本国有鉄道の念願とする国民の福祉増進、あるいは公正妥当な運賃の原則、こういう点から言っても、なかなか納得しがたい値上げの内容だと考えている次第であります。これは国鉄原価計算書によっても、貨物はまさに収支すれすれでございます。旅客の黒字でようやくこの貨物のすれすれの分を補って運営をしておる、こういうのが実態だと思います。もし国鉄の言うごとく、値上げが必要であるとするならば、貨物運賃こそこの値上げの対象になるべきでありまして、これを旅客運賃、中でも定期運賃の高率値上げで補うということにつきましては、国民大衆にとってこれはきわめて大きな問題だと言わざるを得ないと思うのであります。また定期運賃原価を割っているということを言われておりますが、しかし私たち毎日定員の二倍、三倍で詰め込まれて通勤をしているという立場から言うならば、むしろ運賃は半分か三分の一くらいで済ましてもらいたいというのが実際の感じだと思うのであります。  いま一つ定期客の一番多い東京山手線国鉄で一番もうけている線であるという事実に至っては、国鉄の御当局に対して、こういう点どういうふうに説明をしていただくのか、実はお聞きをしたいと思うのであります。  反対の第四の理由は、このような高率の値上げによりましても、国鉄経営が抜本的に立ち直ることはできないのではないかといろ点であります。数年を経ないうちに、さらにまたもう一度運賃値上げが強行されるという公算も実は心配されるのであります。三十二年度から始まった国鉄の近代化計画では、ことしで十年目になっております。この間二度の運賃値上げをしながらも、国鉄の借り入れ金はだんだん増加をいたしまして、最近ではついに一兆円の大台をこえておるというように聞いております。この結果、年間に返還する借金及び利子の償還額は四十年度の予算を見ますと、それぞれ四百七十八億円、六百四十一億円となっておりまして、合計千百十九億円という巨額にのぼっております。国鉄の年間運輸収入は約六千六百五十一億円であります。実にその約一六%強を占めるような状態にまで立ち至っております。四十一年度においても、かりに運賃値上げをするといたしましても、その増収分は約千六百億円程度と見込まれておりますが、一方、利子償還分七百七十七億円、借り入れ金の返還分が七百十九億円で、合計約千五百億円になりますから、実際に値上げをして増収される分とほとんどとんとんになりまして、消えてしまう結果になろうかと考える次第であります。しかも第三次長期計画資金、三兆円の半分は借り入れ金によってまかなうということがいわれております。そうなることは結局国鉄経営のむしろ破綻につながっていくような気がしてなりません。これを避けるためには、何としても国民犠牲にするような今日のびほう的な運賃値上げをやめまして、今日の時点においてすみやかに国家資金の投入と、将来の展望に立った抜本的な交通政策を樹立するようにお願いしたいと思います。  最後に一言、国会議員の先生なり、国鉄の御当局にお願いしたいのでありますが、実はこういう政府事業なり政治の姿勢といたしまして、国民の階層の弱い部分に対する思いやりをぜひ持っていただきたいと思うのであります。今回の運賃値上げやり方にいたしましても、資金調達するという発想にいたしましても、実は貨物運賃にたよらずに旅客運賃を上げて、その旅客の中でも定期券を上げる、こういう発想のしかたについて、非常にうがった見方かもしれませんが、弱い層にほこ先が向けられて、言うなれば、いわゆる弱い者いじめをするという感じが実は強くしてならないのであります。定期券の運賃は、今日大きな会社では会社負担しておりますが、むしろ自分のふところから金を出して電車に乗る人にほんとうに零細な収入しかない人が多いのであります。そういう人にこそ実は何らかの思いやりのある——運賃をもし上げるとすれば、そういうところからひとつ御心配を願いたいものだ、こう考えておる次第であります。卑近な例でありますが、八百屋さんが家屋を広げるから野菜の値段を上げる、こういうことになれば、そのお客さんはよそへ行って買うことができますけれども国鉄の場合には、どうしても必要ならば運賃が高かろうが安かろうがそれに乗らなければならない。先ほどのお話にもありましたが、いわゆる特権を持ったものであるだけに、そういう思いやりの御配慮を特にいただきたいもの、こういうことを最後に申し上げまして、私の公述を終わります。(拍手)     —————————————
  10. 古川丈吉

    古川委員長 これより質疑に入ります。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。關谷勝利君。
  11. 關谷勝利

    ○關谷委員 諸先生方から、いろいろそれぞれのお立場からの貴重な御意見を拝聴いたしまして、非常に参考になったわけであります。いろいろ賛成、反対の御意見はありましたが、全体で一致をいたしました点は、国家資金の投入が望ましいということであります。それはもとよりでありますが、いまの日本の国の財政状態から申しまして、さようなことにもまいりますまいと思います。まず私がお尋ねをいたしたいと思いますのは、いろいろ運賃のことについて御意見があり、あるいは資金関係で御意見がありましたが、その根本的な解決について、いまの国鉄のあり方をどうするか。いまのままであるがゆえに、私はいろいろと意見が分かれてくるのであろうと思いますが、いまの国鉄は、公共性と独立採算と両方相反した性格のものを含めてやっておるところから、いろいろな議論にわかれてくるのであろうと思います。いまの国鉄のあり方は、これをすっきりした国有にすべきものか、あるいはまた民有というような方面に持っていくべきものか、これはどちらが問題の解決になるのであるか、皆さん方のいまの御意見を実現する上においてどれがよいのか、この点につきまして、権威者が四人もおられますので、この点を伺ってみたいと思います。皆さんの御意見をお一人ずつ……。
  12. 小汀利得

    ○小汀参考人 それでは私の意見を申し上げます。  私は、国家資金投入問題はやらなかったのです。何も一致した意見ではありません。私一人は少なくとも国家資金投入反対論であります。  それから、民有にするということは、なかなか大きな問題でありますが、過去のいろいろな実例から見ると、国有を民有、民有を国有ということは、どうもいろいろ弊害が伴って、それがいいとは限らない。大体収入が足りないでみんなふらふらしておるようなときに、制度の根本である、どこが経営の衝に——国家が当たるか民間が当たるかというようなことは手をつけないほうがいいだろうと、こう思うのです。  なお、ついででありますが、私の若いときには青木鉄道次官というのがいて、あれはだれのときでありましたか、大正の初めでありますけれども、てんぐ鉄道ということばを使った。むやみやたらにてんぐしか乗らないような線路を敷くじゃないかということです。もっともだと思った。やはり国有であればこそいわゆるてんぐ鉄道も敷いたが、これがやはりいわゆる国力の増進に相当大きく力を注いでおりますから、ある短期間に、考えるといけないようなことでも積極的にやったのは、あとから見ると利益が多い。そういう点からいうと、民営のほろに傾くよりも、現在の国有のままでやったほうがいいだろう、こう思っております。簡単でありますが……。
  13. 蔵園進

    蔵園参考人 私のほうからお答えいたします。  国家資金の投入が望ましいという点については、私御指摘のとおりであります。これは資金がないということは、新聞紙上を見てみますと、運輸大臣がそういうふうに資金がないからということをお答えしておられるようであります。しかし、国家資金がないということは、国鉄にやらないということであって、七千数百億の公債を発行して、それからあるいは山一証券に対する融資あるいは造船に対する融資、そういう全体の中で国鉄というものをはっきりと位置づける必要がある。つまり国鉄にはこれだけだ、ほかのところにはこれだけだ、同じく景気政策、あるいは景気対策という面で申しますならば、それは国鉄資金を投下することも、あるいはほかのところへ投下するということも、それは景気政策については私はあまり変わりないばかりか、国鉄の場合にはかなり大きな意味があるのではないかと思います。そしてそれは借金でありますから、返していけばいいわけであります。また返せるような、そういうところに投下すべきでありましょう。  それから第二の点でありますが、民営か国営かという点では、私は国営のほうがいいという意見であります。なぜならば、鉄道というのは、これは世界的に見ましても、大体国営の方向をたどっていく。なぜ国営にしなければならないか。日本ではかつて民営が非常にあった。それを国有化してきた。そのときの事情からいたしましても、国営のほうが有利ではないか。特に独占的なそういう企業であるがゆえに、また全国で統一的な経営が行なわれるべきである。それだけではなしに、現在国鉄は競争の問題に非常に悩んでいるわけであります。そういう問題を解消していくためにも、また国有ということが必要ではなかろうか。そればかりではなくして、運賃の問題にいたしましても、こうして私たちが皆さんの前で意見が述べられるということは、これは非常にいい制度だと思います。もし民営であるならば、私たちは意見を述べる機会が非常に少ない。したがって、そういうような意味からいたしましても、私は国営のほうが望ましいというふうに思っております。
  14. 坂本二郎

    坂本参考人 私は、民営にすべきか国営にすべきかという形での割り切った議論は、議論がすっきりするというふうにおっしゃいましたけれども、必ずしもそういうふうに思っておりません。もしそこですっきりしたら、また別のものすごい困難が起こってくるであろうというふうに考えておりますので、やはり現在の体制の中でのくふうをもっともっとわれわれはやってみるべきではないだろうか、こんなふうに考えております。日本は比較的ゆるやかな混合体制とわれわれは呼んでおりますが、そういう資本主義的なことを基礎にしながら、国家のいろいろな意味での直接間接の指導や統制やそういうものが入った経済体制でございます。その中でいろいろなくふうをしていくのが日本の生きる道であって、どっちか一方に一〇〇%固めてしまうということは、なかなか実行ができないだろう、そんなふうに私考えております。現在の体制の中でいろいろくふうをする点については、私先ほど、もっともっと積極的に取り組むべきだということを申し上げたつもりでございます。
  15. 堀井利勝

    堀井参考人 私は原則的に国有化をぜひ取り上げてほしいと思います。現在の国有鉄道経営のあり方は、いわゆるコーポレーション制度でありまして、実はこのコーポレーション制度によりまして独立採算制を強調するところに、一つの問題があるように思うのであります。御承知のように、今日交通機関のいわゆる大量輸送方法としては、国鉄、私鉄などがその中心になっておりますが、国鉄が現在の公社制度の中で独立採算制を強調するのあまり、いわゆる民間のほうまでいろいろな影響を持つということが、今日の交通事情をある意味では混乱におとしいれるという感じもいたします。したがって、もしできますならば、今日のあいまいなそういうコーポレーション制度ではなく、むしろ国有化のほうが私はすっきりするのではないか、こういう考えを抱いているのであります。
  16. 關谷勝利

    ○關谷委員 小汀先生のお話では、国家資金の投入に反対だと言われるけれども、御発言の終わりのほうを見ますと、間接税のような利用者負担が当然だという関係から、最終的には第三次長期計画資金については一兆円を補わなければならぬということでしたので、これは国家資金の投入というふうなお話があったものと思いましたので、申し上げた次第です。
  17. 小汀利得

    ○小汀参考人 私のことばが悪かったかもしれません。そんなつもりじゃなかったのです。どうも……。
  18. 關谷勝利

    ○關谷委員 それから蔵園先生にお尋ねいたしたいのでありますが、土地買収方法考え土地利用者があまりにも無理を言い過ぎる、それを解決しなければ国民の信頼というものは失なわれる、こういうようなことでありますが、これは、蔵園先生のお考えによりますと、土地買収方法はどういうふうにしたらいいのか、この点ひとつ教えていただきたいと思います。
  19. 蔵園進

    蔵園参考人 私土地につきましては必ずしも十分確信があって申し上げたわけではございません。現在土地収用法がある。しかしその土地収用法というものが十分にいま行なわれているわけではございません。その場合の土地の評価というものが非常にまちまちであるというようなことがいわれております。そういうことだけではなく、私は、そういう土地問題につきまして、たとえ土地問題というものに触れないにいたしましても、土地買収のしかたというものについて、たとえば非常にブローカーが暗躍している。そういうブローカーの暗躍を防ぐようなことをしただけでも、かなり違ってくるのではないか。そういう収用法が適用された時期、買収の決定したときの価格と、それから新しく建設が発表された時期と、この二つの時期を——建設計画が発表されますと、とたんに土地の値段が、これは所有者ばかりではなくて、ブローカーも介在すると思いますが、そういうものの中で実際上土地買収が行なわれるときには、もう三倍、四倍というような値段になっている。この辺のところでひとつくふうすべきではあるまいかということをいま考えただけでございまして、それ以上のことは、私特に専門でもございませんし、あまり深く考えておりません。
  20. 關谷勝利

    ○關谷委員 坂本先生に御質問申し上げたいのですが、スライディング制をとりたい、こういうふうなことであります。私たち、これはタクシーその他交通機関の運賃というものは、米価のようなことを、年に一回ずつ標準運賃をきめて、そうしていろいろな条件をパーセンテージによって考え合わせますと、そこに公正なものが出てくるというような気持ちでいろいろ考えますが、非常にむずかしいことですが、何か坂本先生にスライディング制の名案がありましたら、教えていただきたいのであります。
  21. 坂本二郎

    坂本参考人 私は、皆さん——われわれも一緒ですが、そういうことを検討すべきだということを申し上げたのですが、その検討の内容をいまお伺いされたと思います。われわれは、公共料金が全体として、たとえばこれから所得が七%伸びていくとかりに仮定いたしますと、その中で消費者の消費水準もやはりそれ近く伸びていく。そういう場合に、毎年毎年、あるいは二年に一ぺんずつ絶対金額で値段をきめるという方法は好ましくないと思っております。かりに引き上げの結果その値段になったといたしますと、その値段を一般の消費水準の上昇にかけ合わせて、ずっと上げていくということをやったらいい。それがまず第一次の提案でございます。ことし値段をきめますと、値段が家計の全体の中で占める比率がわかります。その比率をずっと連ねていく。そこに標準ということが出てくる。その標準というものを御検討いただければいい。それが第一次の案でございます。しかし、私は、それだけではおそらく大都市の持っております公共サービスの供給不足はなかなか補えないであろうというふうに思います。大都市の供給を増すためには、スライディング制のほかに、先ほど申しましたようなほかの重点産業に対して国がやったような施策をだんだん加味していただきたい、その二つをかみ合わせていただきたい、そんなふうに考えております。
  22. 古川丈吉

    古川委員長 ちょっと質疑通告者の委員に申し上げます。坂本参考人は所用のため十二時過ぎに退席せられますので、坂本参考人に対する質疑を先にお願いいたしたいと存じます。小汀参考人も御同様だそうでございます。  肥田君。
  23. 肥田次郎

    ○肥田委員 まず、きょう国鉄運賃値上げ問題で四名の方々からこうして貴重な意見を聞かせていただいておることに、私もお礼を申し上げます。  参考人方々には、それぞれひいき筋がありまして、私のほうは社会党のほうでございまするから、自民党のほうでお迎え申し上げた小汀先生と坂本さんに若干お伺いしたいことがあります。  先ほど關谷委員から問題が提起されました国営にすることの是非について、これは御承知のようにイギリスの労働党内閣が戦後にできましたとき、全部鉄道とバス、トラックに至るまで国営にいたしましたが、その後また保守党内閣にかわったときに、これが全部漸次解体をされた、こういう経過があります。ですから、およそ鉄道の国営問題は、これは保守と革新との政策の相違であろう、こういうことにもなるわけであります。そこで、現在私は、日本鉄道というものが国営であるならば、国有鉄道でありながら国が金を出さない、このことを前提にしてお伺いしたいことが一つあるのであります。  先ほど小汀さんも言われたように、今度の国鉄運賃値上げ率は控え目だ、こういうふうにおっしゃいましたが、控え目だとするならば、どれくらいというふうにお考えになっておるのかということが一つであります。  それからその次に、これも値上げを認めるということではなしに、現在のように保守党政権のもとですから、金を出さないで国鉄経営をやらそうとすれば、国鉄運賃にたよらざるを得ない、こういうことを前提にして私はお伺いしたいのです。三十二年には御承知のように一三%、それから四年たって三十六年に一五%、それからさらに今度三一%、こういうふうな経過をたどっております。そこで私は疑問が起きるのです。三十六年の一五%の値上げのときには新幹線の建設をやりましたし、それからこのたびの一三%の値上げについては、これは御承知のように山陽新幹線と、それからその他のいろいろな計画を持っておる。いわゆる長期計画を持っておる。そこで国鉄の出しておる通信におもしろいものが出ておるのです。それはどういうことかと申しますると、国鉄は今度約三兆円投資することによって、生産誘発が六兆七千億くらいあるのだ、だから国鉄の今度の三一%の運賃値上げによるところの経済不況克服と申しまするか、不況刺激と申しますか、景気刺激あるいは将来に対する国鉄投資というものは、きわめて大きな利潤を生むのだ、こういっておるのであります。そうすると、おかしくなるのですね。国鉄赤字でやれないといいながら、将来に対する、まるで国の肩がわりをしたような大投資計画しておるという矛盾が生じてきます。私はこれはともかくといたしまして、こういうことが起こってくるのは、実は三十六年に運賃値上げをして、それから五年たっている。五年の間に三一%今度値上げをしようとする。三一%の値上げの内容は、旅客が三一%。貨物運賃は一七%、平均して一五%で、しかも実質収入は一二%の見込みだ、こういうのです。そうすると、何のことはない、貨物運賃値上げは一二%ということになる。旅客運賃は三一%、こういうことが起こってきておりますが、私は、この矛盾をなくするためには、これは不本意なことではありますけれども、もっと小刻み値上げというものをやるべきではないか。それをやらないで、今日一挙に三一%という旅客運賃値上げをした。私は、小汀さんが常に言っておられる例の小役人どもが一時のがれのことをやって、その累積がきたからこういうことになったのだ。国民に対して不届きしごくだと私は思うのです。そこらについて小汀さんのお考えを聞かしてもらいたいと思います。  それから、坂本さんのほうには、これは簡単に申し上げますが、あなたのアイデアとして、混雑するときの列車と閑散時の列車とについて、ひとつ運賃価格の格差をつけたらどうか、こういうアイデアがありました。これは私も確かに検討すべきものだと思うのですが、技術上非常にむずかしいと思うのです。それから特に品物の場合ですと、よく売れる品物は安くなるのです。売れない品物はコスト高になって高くなる。ところがこの場合は、満員の電車は高くして、すいてる電車は安くしないと乗ってくれないでしょう。こういう矛盾した関係が出てきますので、どういう着想を持っておられるのかということが一つ。  特に問題になりますのは、通勤列車というもの、それから盆だとかあるいは年末だとか、こういうときの帰省列車、こういうときに起きる異常な混雑というものは、これは時間に拘束されてどうにも避けがたい人々がここに殺到してくるのです。この本質的な問題がありますから、アイデアとしては大いに傾聴に値するのですが、国鉄としてはそういうことは簡単にやれないと思うのですが、この点についてお考えを簡単に聞かしていただきたい。  私はこの二点です。
  24. 小汀利得

    ○小汀参考人 私は大体社会主義じゃない、資本主義のほうですけれども、さっき申し上げたように、いまの国有を民有に移すのに反対でありますから、社会党さんのほうはお気に召すだろう。それは問題は簡単でありまして、右から左へ河岸をかえるというようなことはよほど気をつけにゃいけない。その間に船が転覆することがあるから、やはりじょうずに実情に適したようにやるべきだ。国有鉄道がたいへんに理想だというわけではないけれども、明治三十九年以来国有鉄道の方針でどんどんやって今日まできたものを、ここに民有にするということはかえって弊害があろうと思って、さっき關谷先生にお答えしたわけであります。その点はこれでいいと思うのです。  それから運賃値上げ、おっしゃる点がいろいろあるのですが、確かに国鉄の小役人どもが低能でまずいことをやったことはほんとうなんです。それは十河、石田両君が国鉄の総裁になる前に、国鉄の小役人というものは意気はなはだ上がらないもので、何をしてやがるかわけがわからなかった。ところが、ようやく二老人総裁が出て、断固として新幹線もやるわ、何でもやるということになった。彼らもやや生きがいを感じた。そこで近ごろは人間らしい態度をとるようになった。こんなわけでして、どうも仕事をさせるからには、いたずらに束縛をしてはいけない。やってみろ、しかしそのかわりきさまやり損なったら責任をとれ、こうやらなければうまくいかない。私なんか新聞記者ですから、ちゃんとそういうふうにやって勝負は毎日つくのだ。あくる朝、よその新聞を見ると、こっちが悪かった。おい、ちょっと来い。おまえ何をぼやぼやしていた。それをやらなければいかぬのに、前の寝ぼけていた国鉄なんというものは、せいぜい三年くらいたったときに、どこかにちょっと転任させるくらいのことだ。そういうことで、全く御同感であります。しかし、値上げの割合なんというものは、それはいろいろなものを考慮しなくてはならぬ。あんまり理想的に上げられても、今度は上げられるほうはたまらないし、そうかといって、物価が値上がりになるから上げないのだというのでは困る。だから、物価の問題は、さっき申し上げたように、全体の物価問題に鉄道運賃をからませて、たいへんな重要性をここへ置くということは、私は間違っていると思う。だから、まあこの程度の妥協案がしかるべきところで、どうも人間の社会ですから、あんまり学問的な、紙の上の理想論をやってもしようがない。七十六年何カ月も生きていると、たいてい世の中のことはわかるから、まあここいらかなというところなんですね。
  25. 坂本二郎

    坂本参考人 私はまだ若いのだ、そういう経験もございませんが、御指摘のように、矛盾があることはもうそのとおりでございます。しかし、それでは、現在の矛盾と比べて、いま御指摘のような矛盾のほうが、より困難が大きいかどうかという比較になると思います。多くの方々は、いまのように非常にひどい状態で運んでおいて、運賃を上げるのはけしからぬという悪循環を御指摘になります。これは文字どおり悪循環でありまして、安かろう悪かろうという言い方もできるわけであります。われわれは、どちらかといえば、運賃は安いからたくさん乗る、たくさん走るから込む、込むからサービスが悪くなる、そっちのほうをより重く考えておるわけであります。  第二に申し上げたい点は、長期、短期という点でございます。現在の著しいアンバランスを直す長期の方策は、やはり供給力をふやす以外にはないと思っております。したがって、根本的な対策は、長期の供給力をふやすようにいろいろ手を打っていただきたいという点であります。ただ、それは時間がかかります。しかもそれは、できるまでの間は何かしなければなりません。したがって、短期の対策の一つとして運賃を変えればいいということを言っておるわけであります。その運賃の変え方は、いま御指摘がありましたように、貨物や年末について適用することを実は考えておりません。むしろ大都市の通勤について考えております。現在でも時差通勤を呼びかけておりますが、それを多少強化する意味において、われわれは運賃を動かすことを考えております。それは、われわれ申しておるのは原則でありますから、技術的には非常に困難のあることは明白だと思います。しかし、これは国鉄当局がいろいろなことをくふうして、ある意味でエラーをおかしながらだんだん改良を重ねていくべきものであって、技術的に困難であるからといって、それに取り組まないということは、あまり積極的でないと思います。私は、何かの一つのくふうをやって、だんだんよりよき方向に行くものだと思う。  能率の点から申しますと、あんな悪いサービスをしておいて値上げということは矛盾するようでありますが、しかし事故の防止という観点を導入してまいりますと、それを防ぐために、できるあらゆる手を使うべきだ。それは私の気持ちでございます。
  26. 古川丈吉

  27. 泊谷裕夫

    泊谷委員 坂本参考人に三点お尋ねをしたいと思うのです。  四人の参考人が一致して安全確保のことを訴えられておることは私どもも了解するのですが、蔵園参考人坂本参考人の特徴的な違いです。安全確保のために今回の運賃値上げを結びつけられるのでありますけれども、しかし、専門的にごらんのとおり、鉄道は諸外国に比べて七倍列車を走らせています。踏切は、アメリカの場合千九百二十メートルに一カ所ですね。イギリスの場合千四百七十メートルに一カ所、日本の場合には四百八十八メートルに一カ所ですね。ですから、追突とか脱線事故は世界的に見ても一番少ないのです。一番多いのは踏切事故です。他動的なものによる踏切の障害は世界第二位の発生を見ております。踏切の区間キロの長い短いから考えても、それだけいまの国鉄企業は地域の産業開発に寄与していると言えると思うのです。であれば、当然、運賃国家権力が介入してきめるという措置がとられている限り、この措置については、国鉄企業、それを利用する大衆だけで始末をさせるということは片手落ちではないかと思うが、これに対する坂本教授の考え方を明らかにしてもらいたい。  もう一つは、公共料金抑制措置は、私も政治的に何らかの措置がない限り問題があると思いますが、しかし、坂本参考人通勤地帯の投資を強く訴えられましたね。ところが、昭和三十七年の国民総生産十九兆円の支出別内訳では、三七形が投資に向けられ、その大半が東京−神戸間につぎ込まれている。その結果この地帯が急に過密化しておりますのに、あなたの説は、運輸ジャーナルを読みますと、ここに国鉄のピストン輸送をして回転を高めろとおっしゃるのでありますが、どんどん人が集まってくるところ、土地の取得が困難なところ、そこの輸送要請をこれまた国鉄企業だけで始末をさせるという論拠はいかがなものか。これについてひとつ明らかにしてほしいと思います。  もう一つは、土地開発と地域開発を強く訴えられました。時間別運賃の問題が提起されたのですが、公平な採算ベースを求めるとするならば、なぜ旅客と貨物——貨物の中に等級別にあります輸送物資による価格差、この問題はそう困難なしに整理がつくはずであります。時間差運賃というものはたいへん技術的に困難であっても、貨物のほうはあなたの言うように公平な採算ベースで設定しようとすればできるはずなんです。なぜそれを埋没させておいて時間別のものを取り上げるかということと、いま言うように、もし地域開発をするとするならば、道路公団に対する投資は、すでに国が四百五十億やってますね。首都圏整備については百三十三億の投資をしておる。であるのに、あなたの説は、一切あげて利用者にその財源を求めて日本経済活動を圧迫するという理論は、何か国家権力が介入して、財政法三条に基づいて運賃をきめるというような現行の行為からいけば、肝心のところが落ちているような気がしてならないのです。なぜかならば、私は国会議員でありまして、イギリスでは、パン一つ、牛乳一本の値段を動かすことによって時の内閣がかわるといわれるほど深刻なものでありますだけに、これは単なる経済理論じゃなくて、政策上の問題として、からめて考えなければならぬ問題と思うのでありますが、坂本さんの数次にわたる書物を見ましても安い安いという話だけで、この部分について何ら触れられていないということに、私は大いなる不満を持っているのですが、この際詳細に聞かしていただきたいと思います。
  28. 坂本二郎

    坂本参考人 第一の点でございますが、踏切の事故が多いというお話、そのとおりであります。しかし、私が心配しておりますのは、満員の列車が衝突したり脱線したりする場合の事故のほうを、より私は心配しております。幸い現在まではそういうものがあまりなかったのですけれども、今後ないという保証はないわけでありますし、二分間隔で走っておりますから、もし脱線が起こりますと大変な事故が起こる。したがって、長期のことは別としまして、短期において、まず乗車効率を少なくするような一切の手を使われるべきだ。一切の手の一つが時間別運賃でありまして、できれば直接規制の手も使うべきだということを申しております。
  29. 泊谷裕夫

    泊谷委員 事故防止のために国家資本の投下はどうなんですかということを聞いておるのです。
  30. 坂本二郎

    坂本参考人 国鉄だけに土地その他の開発をゆだねようとは思っておりません。東京経済圏のことを考えますと、鉄道の中の私鉄と国鉄の分業が起これば、それはそれでけっこうだと考えております。  それから、最後にお話がありましたけれども、私は公共料金だけでやろうという意見を申したことは一ぺんもございません。いろんな財源措置はあると考えております。しかし、事実上、現在の国鉄の能力や国会審議の状況で、国鉄のほうに長期資金の必要なものを全部国の財政で持っていくことは、なかなかむずかしいだろうという判定をしております。それができればなおけっこうだということも、いつもつけ加えて申しております。それができるまでの間、われわれは公共料金により多く依存しなければならぬ。混合体制でありますから、公共料金に依存する方法税金を持ってくる方法とどちらがよいかという、その方法が十分検討が行なわれましたら、われわれはその間に両方使ってもいいのじゃないか、こんなふうに考えております。一方だけで割り切って考えておるわけではございません。  全体として貨物と旅客の話がございましたけれども、私がきょう申し上げましたのは、大都市の通勤のことが中心であります。ぼくの専門は交通全体の専門でございませんので、その点については意見を差し控えたいと思います。
  31. 古川丈吉

  32. 竹谷源太郎

    竹谷委員 私は民社党でございますが、参考人の御推薦を申し上げておりませんので、四人の方々に対しては中立的立場であります。公正な立場からでありますので、率直にお答えを願いたいのですが、私はただ一点御質問をいたしたい。坂本さんと蔵園さんにお願いいたしたいと思います。  今日の日本の陸上交通の現状から見て、国鉄の安全輸送のための保安対策を十分にやらなければならない。また国民の活動、産業経済の発展に即応して、輸送力を大幅に増強しなければならない。かつまた大都市を中心とする過密交通の問題の解消、いずれも焦眉の急でございまして、そのために三兆円の第三次長期計画、これは私はやらざるを得ないものだと考えるのでございますが、専門家の話によりますと、そのうち四〇%くらいは企業として成り立たない分である、すなわち国家の要請に基づく犠牲的なものである、こういうことであり、また一方一兆円にのぼるところの現在の国鉄の借金というもの、おそらくこれは従来までの犠牲的な企業としての公共負担——昨日私が国鉄のほうと政府に質問した際に、昭和三十二年から昭和四十一年までの十カ年間における公共負担の額は七千五百億円にのぼる、こういう国鉄からの答弁があり、政府もこれを認めておる。したがって現在の借金も、そうした犠牲的な、私企業ならばやると破産をするような仕事、そういうことで一兆円の借金ができておる。また今後七カ年間に行なうところの第三次長期計画も三兆円にのぼりますが、そのうちの四〇%が採算がとれない、こういう国民のための犠牲的な仕事をしなければならぬ。さてその資金をどうして求めるかということになりますと、これは民間会社でも同じでありますが、国鉄もやはり自己資金でできるだけまかなうようにしなければならぬ。十分に元が取れるような仕事は借金をしてもいいかもしれませんが、できるだけ自己資金ということになると、出資なりあるいは事業収入にまたなければならない。今回政府運賃値上げを提案してきたのは、それを全部国民負担において実行しようというところに、私どもは非常に不満を持っておる。それでいいかどうか。国鉄運賃値上げは、われわれ国民生活を圧迫するばかりでなく、諸物価に連鎖反応を起こし、またこれに便乗して、また心理的な影響を与えて、非常な悪影響を与え、今日の日本物価高、また不況、経済危機に拍車をかけるような結果になる。このときこの際このような手段で資金調達すべきではない。国家の要請による犠牲的な仕事であるから、国家の出資なりあるいは利子補給なり、そういう負担でこの際やれば、国鉄経営の安定からいいましても、国民のためにも、また輸送力増強と安全なる輸送、そういう方面から万全を期し得ると私は考えるのでありますが、この点について、資金の全部を国民負担運賃収入だけでまかなおうとするのはいいかどうか。当然国家が少なくともかなりの分を負担する、そういう思いやりがあってもいいのではないか。実は御承知と思いますが、そういう赤貧乏の国鉄が、他の公団、すなわち日本鉄道建設公団あるいは帝都高速度交通営団その他に対して九十四億円も逆に出資をしておる。出資をもらわなければならぬのに、逆に出しておる。そうかと思うと、鉄道公安官のような国家的な警察を行なうところのものの費用は約三十億円に近いのでありますが、これを全部国鉄の経費でまかなわせるというような問題、あれやこれや考えますと、どうも政府のやることは逆じゃないかと思う。この点に関しまして、坂本さん並びに蔵園さんの御意見を承りたいと思います。
  33. 坂本二郎

    坂本参考人 国鉄が公共性と独立採算性を守らぬといかぬという二つの矛盾した性質を持っていることについては、先ほど申し上げました。いまの御指摘は、公共性の部分について国家がもっと出資をすべきだという御趣旨だと思いますが、その部分についてはわれわれは賛成でございます。ただ、それができない間じっと待っていればいいかという点について、公共料金でもいいからお金を集めるべきだというのが、ぼくの現在の気持ちでございます。もし国家がもっと積極的に都市の開発のために必要な鉄道住宅について投資を回してくださるならば、たいへんけっこうなことだ。われわれそれを早く望んでおります。  ただ国有論ではございませんので、先ほど申しましたように、公共性と採算性両方あるわけですから、両者を適当に組み合わしていかなければならぬという点については、前の議論と一向に変わらぬのであります。その組み合わせの程度はどのくらいがいいかということは、それぞれいろいろな人の意見が分かれるところだと思いますけれども、それは公共性をどれだけ重く考えるか、採算性をどれだけ重く考えるかという程度の差だと思います。  一番最後に御指摘になりました国鉄経営のあり方についての改善策は、まさにもっともっと積極的にみんなで議論すべきテーマだと思います。  たいへん済みませんが、ぼく一時から学校がありますから……。
  34. 蔵園進

    蔵園参考人 安全の問題につきましては、私は、まさに皆さんと同様に、国鉄に安全輸送をしてもらいたいということを心から願っているものであります。ただ、そういう安全輸送をやるために、なぜ運賃値上げをしなければならないのかということには、非常に多くの疑問を持っているものであります。それは、言うならば、私はまずその点につきましては、第一点といたしまして事故の問題を取り上げてまいりますと、現在の踏切事故というものをなくしていかなければならぬ。ところがその踏切事故というものがはたして国鉄だけの責任かというと、私は国鉄だけの責任と言うわけにいかないのじゃないかと思う。したがって、そういう意味で、国鉄ではなしに、国家がそれだけの、安全の問題についてもっと積極的に考えなければならない。また輸送力増強、二分間隔というような点で輸送力増強が必要だということを言っております。ところが、二分間隔で運行しなければならないところ、そういうところではもうかっているではないか。そういうもうかっているところで、今回の運賃値上げが、ますますそこでもうけようというような運賃値上げのしかたをやっている。この輸送力増強ということは、国全体をとって輸送力増強ということを言っているのであって、必ずしも通勤輸送ということだけを取り上げて言っているのではないのじゃないか。かつて第一次、第二次五カ年計画で、通勤輸送というものを一つの柱にいたしまして運賃値上げをやった。ところがそれが少しも解決しなかったという、そういう二の舞いを繰り返すのではないか。岡山まで新幹線をつくる。あれがはたして採算に合うかどうかというようなことはわからない。また、もうかっているところで輸送力増強するのだ、こういうふうにいたしますならば、借金をしても返せるのじゃないか、こういうふうに思っているわけであります。そういう点についても、もう少し国鉄のほうでも政府のほうでも十分にお考え願いたいということを言ったわけでございますし、そのほかの点につきましては、これはいま御質問の方とあまり意見の食い違いはあるわけではございませんので、そういう点で私は言っているのであります。  ただ、公共負担の問題については触れなかったわけでありますけれども、この公共負担の問題については、国鉄だけにその責任を負わせるということは、非常に筋違いな面があるわけであります。たとえて言うならば、通勤定期を非常に上げるといっても、国家公務員の場合で申しますと、千百円まで免税だ。ところが現在の通勤手当というものは千百円で十分かどうか。今度の運賃値上げによって、従来は九百円であった、それが千百円までになるわけですが、その差二割ぐらいしか上がらない。ところが運賃値上げのほうは三割もいっている。これはしかも定期の場合には五割というようなことをいっておる。そういうこまごました点で、もっと思いやりのある政策というものが必要ではないか。そういうことをつけ加えまして、別に意見の違いはないと思います。
  35. 古川丈吉

    古川委員長 蔵園堀井参考人に一言申し上げます。本日は御多用中のところ御出席ただき、長時間にわたってきわめて貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。(拍手)  この際暫時休憩いたします。    午後零時十二分休憩      ————◇—————   〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕