○有馬輝武君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいまの
大蔵大臣福田赳夫君
不信任決議案について、提案の趣旨を明らかにいたしたいと存じます。(
拍手)
まず、主文を朗読いたします。
本院は、
大蔵大臣福田赳夫君を信任せず。
右決議する。
〔
拍手〕
福田大蔵大臣は、本年六月三日の内閣改造で、
田中前蔵相の
あとを継いで
佐藤内閣に入閣されました。
福田君のあやまちは、すでにこのときから始まったと申し上げなければなりません。
福田君は、政務においては農林大臣を長くつとめられ、党内にあっては幹事長、政調会長として重きをなされ、また、野にあるときには、自由民主党、保守党のよき批判者として、党内から保守党の刷新、脱皮を叫び、その姿勢の孤高さと高邁さにおいて、私たち野党の者から見ても一極のさわやかさを感じさせたことが、ときたまありました。ところが、その
福田赳夫君が、事もあろうに、国民の批判きびしい、何ら経済政策を持たない
佐藤内閣の、しかも経済閣僚のかなめである大蔵大臣に就任されたのであります。日ごろの
福田君の面目、その孤高さも、その高邁さも、単なる見せかけのポーズにすぎず、口の当たるところへの登場をあせる俗心の前には、たちどころにかなぐり捨てるあさましい姿を露呈したのであります。(
拍手)なぜかなれば、
福田蔵相入閣の六月三日は、
佐藤内閣の経済政策の無能ぶりが、政権担当半年にしてすでに明々白々となりつつある時期でありました。経済財政政策に対する抱負と自信があるならば、保守党のためにも、むしろ野にあってきびしい批判を浴びせることが、一つの良心の灯をともし続けるゆえんであったはずであります。
佐藤総理は、その就任の日に、日本経済の安定成長をはかり、ひずみの是正につとめ、特に国民生活を脅かす当面の消費者物価の上昇に対しては、全力をあげて解決に取り組むと言っていたのであります。あれから一年経過した今日、その実効がどれだけあがっているでありましょうか。最近の経済不況の深刻さは、大企業においても、レイオフ、いわゆる一時帰休にとどまらず、ついに解雇者を出し、中小企業に至っては、倒産が日を追って増加しておるのであります。公定歩合引き下げ、金融緩和、有効、需要喚起のための諸施策を講じているものの、その効果はなかなかあがらず、いよいよ公債発行という財政の大転換に踏み切らざるを得なくなっておるのであります。また、物価の面では、消費者米価、国鉄運賃などの公共料金の引き上げも必至となっております。
これらが
池田高度成長政策のつまずきに基づくものであることはもとよりでありますが、その後一年、
佐藤政権の打つ手は、迷いと判断の狂いの連続でありました。いま、ちまたに満ちておる
佐藤政権への、物価その他を通じての批判と怨嗟の声は、耳をおおうものがあります。(
拍手)これひとえに、内閣の主柱であり、経済閣僚の締めくくり役である蔵相
福田赳夫君の責任でなくて、何でありましょうか。自信も抱負もなく、場当たり的に大蔵大臣という重職を汚した
福田君の出発点のこの誤りこそが、不信任の理由の第一であります。(
拍手)乃公出ずんばといううぬぼれが、もしそのときあったとすれば、その後の財政金融政策の誤りは、国民の名において、なお許しがたいものがあります。
これらの財政金融政策の失敗については、いま少し詳しく述べて、この不信任
動議がいかに緊要かつ適切なものであるかを明らかにいたしたいと存じますが、ここで明らかにしておかなければならないことは、経済閣僚として、今回の不当な日韓条約の中でも、
請求権の放棄、友好どころか、むしろ両国の紛争の種をまく
経済協力に関する大蔵大臣の責任についてであります。
まず、
請求権の放棄でありますが、政府は
日本国民の在韓
財産を放棄したが、政府は国の利益という名のもとに国民の所有権をかってに犠牲にしたもので、絶対に許し得ないところであります。平和条約第四条(b)項は、
日本国民の
財産権の所属変更、移転の承認ではなく、外交保護権の放棄にすぎないことは、特別委員会における質疑を通じて明らかにされたところであります。外交保護権の放棄だけなら、個人が持っている在韓
財産はあることは明瞭であるのに、椎名外務大臣及び政府委員は、実際問題として韓国で取り上げられないだろうと、とんでもない答弁を繰り返し、また、向こうの政府が認めないのだからしかたがない、しかし日本政府としては放棄していないと、支離滅裂な答弁をいたしておったことは、天下周知の事実であります。
福田大蔵大臣は、もしこのような政府部内における混迷があるならば、当然国民に向かって、外相とともにこの疑義を解明する責任があるにもかかわらず、外相、政府委員が立ち往生しておっても、まるでよそごとみたいな顔をして、われ関せずの態度で終始したことは、言語道断と申さなければなりません。憲法にも国民の生命、
財産を保護する政府の責任を明記してあるところでありますが、蔵相のこの態度こそ、不当不合理な今次の日韓会談の端的な証左と申さなければなりません。
経済協力についても同断であります。去る六日の特別委員会における自由民主党の暴挙によって、ついにこの大事な
経済協力についてもその本質をただす機会が失われ、国民の期待が完全に裏切られたのであります。私たちがこの
経済協力に関してただしたいと存じておりましたことは、まず第一に、
請求権八項目の内容と金額、そして
経済協力との関連。李韓国外務部長官は、無償三億ドルの半額は原資材、商品を受け入れ、正常な貿易取引との転用を可能にしたと言っているが、無償三億ドルは資本財で供与するとの政府方針との関連、また、
請求権支払いの一般貿易への振りかえを認めるのか。韓国側の契約窓口は、韓国政府使節団または同政府の認可を受けたものとなっているが、認可を受けたものとは何か、朴政権と結ぶ政商が入り込む余地があるのではないか。日韓貿易は大幅な日本の輸出超過となっているが、その決済状況、この決済と関連して、
請求権の先取りが行なわれておるのではないか、在日韓国人を通じて無為林・無関税の不正貿易が行なわれているのではないか。韓国の低賃金を利用する保税加工方式が日本の労働者や中小企業を圧迫しないのか。これらの問題とともに、たとい八億ドルの
経済協力が行なわれたといたしましても、韓国経済に寄与することに真になるのか。現在、私たちの知る限りにおいては……