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大出委員 それでは時間がたいへん貴重でございますので、増子さんにひとつ
人事局長という立場できのうの
——これは
安井さんがおられる席ではっきり申し上げたいのですけれども、残念ながらおられませんし、
答弁された御本人ではございませんから……。速記を私はちょっと調べてみましたが、私が申し上げることに間違いないので、そういうたてまえで、ひとつそうでなければそうでないということを御相談を賜わって明確にしておいていただきたいことがございます。
ちょっと
趣旨を申し上げておきます。きのう
安井さんが言われたのは、
田口委員から
質問を申し上げたことに対しまして、つまり
質問の要旨は、
人事院というのは
公務員が
ストライキ権を失った
代償機関だという
趣旨の話をして、したがって
完全実施をするのは当然だ、法律
解釈はいかようにあろうとも、それが筋だという話をしたところが、
安井長官の言い分としては、理屈を申し上げて恐縮だけれどもという前置きのもとに、そうではない、つまり
公務員というのは全体の
奉仕者だから、したがって本来的に
ストライキ権というのはない。しかし、それでは守れない、だから
人事院という制度ができて
公務員を守っていく、こういうたてまえで、しかし、法律的に何ら拘束されているものではない、こういう
趣旨の御発言があったわけでありますが、私はこれは事きわめて重大な問題だと
考えているのであります。そこで申し上げますが、後ほどひとつこれははっきりものを言っていただきたいのでありますけれども、日にちを申し上げますと、四十年、本年の二月二十日の
予算委員会におきまして、私法務大臣並びに最高裁判所の事務総長、さらには石田博英労働大臣等々
関係者のおられますところで、ILOとの関連並びに司法行政全般ということでの
質問をいたしましたが、その席上で、これから申し上げることは、これは法務省の各種控訴審等の上告趣意書等に載っていることを引例しているのでありますけれども、
昭和二十年に例の旧労組法、この時代は民間も
公務員も労組法の適用を受けておりましたから、
ストライキ権はもちろんあったわけでありますが、これが二十一年の十一月の新憲法の制定、この新憲法の第十五条で初めて、国際的にこれは例がないのでありますけれども、全体の
奉仕者という理論が出てまいりました。これから法務省等の
解釈が二つに分かれてまいりました。
一つは、憲法二十八条によるグループ、組、こういう
解釈の方々、それからもう
一つは、憲法の十五条、これは二項でありますけれども、十五条による組、グループ、こういうふうに分けてものを
考える論旨が出てまいりました。これはさっき申し上げました上告趣意書等にたくさんあらわれております。このことを前提といたしまして、高橋法務大臣に、私は国家
公務員というのは一体どっちのグループに入るんだ、こういう
質問をしたところが、かわって蒲原説明員という方から、「勤労者の団結権、」
——団結権しか言っていない。「団結権、これは憲法二十八条にございます。それから、一般の
公務員は、これとは全体の
奉仕者という意味で若干違う
取り扱いを受けておるというふうに解しております。」、こういう
答弁が出てまいりました。違う
取り扱いを受けていると解しておりますという
答弁が出てまいりました。これがつまり法務省の一方を代表する見解であります。これでいきますと、憲法十五条は全体の
奉仕者という定義をしているから、本来的に
公務員はスト権がないんだという理論なんであります。したがって、私はこれに対して、法務省がILOに川井さんという人を立てて、これは刑事局の参事官でありますけれども、ILOの喚問にこたえてジュネーブで説明をされた中の引例をいたしました。それはどういうことかといいますと、大臣が来られるまででございますから、ごく簡単に申し上げますと、これは法務省の刑事局参事官、証人川井英良さんでありますけれども、「わが国においても、世界に例を見ない規定といわれる憲法二八条をもって、このことを明言している。そして、労働組合法等の一連の法律において、この基本権の保障を具体化しているのである。」こういう前置きをいたしまして、「憲法二八条にいう「勤労者」に
公務員が含まれることはわが憲法の
解釈上の通説というべく、したがって
公務員も建前としては労働三権の保障を享有するものといわなければならない。しかし、他面、わが憲法は、これも世界に類を見ないといわれる一五条二項の規定を有し、およそ
公務員は「国民全体の
奉仕者」であって一部の
奉仕者ではないと宣言され、このことから
公務員は労働三権につき特別の取り扱をうけるのも当然のことと理解されている。」つまり制限されるというわけであります。これが法務省という立場で、刑事局参事官でございますが、証言をされている。このことを例にとりまして、一体
政府の統一的見解は何だと言ったところが、高橋法務大臣は御
答弁ができない。そこで御相談の結果、かわって石田労働大臣から
答弁がありました。それを申し上げます。憲法二十八条における勤労者の中に
公務員は入ります。しかしながら、憲法十五条の二項によって制限を受けます。受けますが、これは無条件で制限を受けるのではなくして、それに対してはいわゆる代償措置というものが講ぜられなければならぬわけであります。つまり、労働三権というものは二十八条によって保障されておるけれども、特定の職務にいる人は十五条の二項、あるいは場合によりましては十二条、十三条との関連において制限を受ける場合はあり得るわけであります。しかし、それは無条件ではない、
代償機関が明確に保障されなければならない、現にそれは保障されておる、こう
考えております。こういうのが
統一見解として出てきたわけです。そういたしますと、昨日の、しかも
給与担当大臣である
安井さんの
答弁としては、私も後ほど調べてみましたが、どこから
考えても、あれは誤りである。ここまで明確になっているものを、かりにもああいうものの言い方をされるということは、しかも当面
代償機関が保障されているという前提であるということを労働大臣が言っているわけでありますから、確かに法律的に完全拘束はいたしません。いたしませんけれども、
代償機関たる性格からいけば、最近はILOの問題がやかましく論ぜられておりますし、私もILOに提訴した張本人でありますけれども、ともかくILOの
趣旨からいくならば、いまの日本の
公務員の労働
法規制が不備である、こういう理解が成り立つわけであります。したがって、当面は完全拘束は受けていない。これは事実であります。でありますけれども、法の不備は将来において
公務員制度
審議会その他において御
検討をいただく筋合いかと思いますけれども、当面ここまで論議が発展してきている
段階であるならば、代償措置であるということを明確にお
考えの上で
人事院勧告に対処する、そこに
完全実施というものが生まれてくると私は
考えておるのであります。その辺のところを大臣がお
見えになってから御相談を賜わって明確に御
答弁をいただいておかないと、先ほど総裁にもお願いいたしておきましたが、今月の中ごろですか、
公務員の皆さんがそういう行動に訴えられたときに、理論的にやはりこれは明確にならない。問題が幾つも残りますから、私は明らかにしておいていただいて、その上で相互の
責任というものをじっくり
考えて問題の解決に当たるという立場をおとり願いたいし、私どもとりたい、こういう気持ちでございますから、御
答弁を賜わるようにお願いを申し上げておきます。