運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-08-06 第49回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年八月六日(金曜日)     午前十一時十六分開議  出席委員    委員長 吉田 重延君    理事 天野 公義君 理事 金子 一平君    理事 原田  憲君 理事 坊  秀男君    理事 山中 貞則君 理事 有馬 輝武君    理事 堀  昌雄君 理事 武藤 山治君       岩動 道行君    大泉 寛三君       奥野 誠亮君    木村 剛輔君       木村武千代君    小山 省二君       齋藤 邦吉君    田澤 吉郎君       谷川 和穗君    地崎宇三郎君       西岡 武夫君    藤枝 泉介君       毛利 松平君    渡辺 栄一君       渡辺美智雄君    只松 祐治君       平林  剛君    藤田 高敏君       横山 利秋君    春日 一幸君       竹本 孫一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 福田 赳夫君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤井 勝志君         大蔵事務官         (主計局次長) 鳩山威一郎君         大蔵事務官         (理財局長)  中尾 博之君         大蔵事務官         (銀行局長)  佐竹  浩君         大蔵事務官         (国際金融局         長)      鈴木 秀雄君  委員外出席者         専  門  員 抜井 光三君     ――――――――――――― 八月五日  委員西岡武夫君及び藤田高敏辞任につき、そ  の補欠として古井喜實君及び永井勝次郎君が議  長の指名委員に選任された。 同日  委員古井喜實君及び永井勝次郎辞任につき、  その補欠として西岡武夫君及び藤田高敏君が議  長の指名委員に選任された。 同月六日  委員稻葉修君及び川崎秀二辞任につき、その  補欠として小山省二君及び奥野誠亮君が議長の  指名委員に選任された。 同日  委員奥野誠亮君及び小山省二辞任につき、そ  の補欠として川崎秀二君及び稻葉修君が議長の  指名委員に選任された。     ――――――――――――― 八月五日  国家公務員等旅費改定に関する陳情書  (第四号)  税法改正の時期に関する陳情書  (第三八号)  国有地払い下げ適正化等に関する陳情書  (第三九号)  一般輸出に対する外国為替基準相場変動による  為替差損補償措置に関する陳情書  (第  四〇号)  農林漁業用ガソリンの免税に関する陳情書  (第一二二号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第一号)      ――――◇―――――
  2. 吉田重延

    吉田委員長 これより会議を開きます。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の通告がありますので、順次これを許します。有馬輝武君。
  3. 有馬輝武

    有馬委員 最初にお伺いいたしますが、IMF協定第三条の第三項で、金の割り当て額について二五%と規定したこの根拠についてお聞かせをいただきたいと思うのです。
  4. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 IMF協定によりますと、払い込み割り当て額の二五%を金で出資するということになっておりますが、これもいろいろ理由はあるかと思います。私ども日本といたしましては、当時のブレトン・ウッズ会議に出ておりませんので、そこいらの詳しいいきさつは存じておりませんが、要するに、金というものがやはり国際通貨の、少なくとも現実的なかっこうではまず基礎になるといっては語弊があるかもしれませんが、相当重要な要因になっているということは否定できない、こういうことがまず第一あろうかと思います。  それから、なぜ二五%で、全額でないかというようなことになりますと、これは全額をもし金で出すということになりますれば、各国流動性がそれだけIMFに移ったということで、IMFとしての信用供与の、何と申しますか、量がちっともふえないわけでございます。したがいまして、それでは意味がないということ。それから、それじゃどうして金をIMFに持たせる必要があるかということでございますが、先ほど申しましたように、やはり金が最終的には国際通貨基本と申してはこれも語弊があるかもしれませんが、従来の自国通貨でないという意味で、金を対価とした場合には各国は喜んで自国通貨を出すであろう、そういうことも考えられます。したがいまして、IMF基礎を確立する意味でも若干の金を持っているということが必要だ、こういう判断からできたものだと私どもは解釈しています。
  5. 有馬輝武

    有馬委員 二五%を金にして、あとドル本位制にしたということの一つ矛盾というものが現在いろんな形で出てきておるのじゃないかと思うのでありますが、その点についてまず私は最初にお伺いしたいと思います。IMFといいながらも、ドル支配圏にある国々しか——何と申しますか、影響を及ぼし得る国々しか加盟していない、この根本的な不安というものがあるのじゃないかと思いますけれども、これについて、日本加盟以来この矛盾の克服のためにどのような方向で、どのような努力をされたか、こういう点についで、お聞かせをいただきたいと思うのです。
  6. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 IMF体制ドルを主軸といたします国際的な、俗に金為替本位制といっておりますが、それとは必ずしも厳密には一致しないものではないかと私は思っております。ただ、現実金為替本位制というものがドル等中心として行なわれているということは、これはもちろん否定できませんし、また当初IMFが発足した当時は、実は世界通貨ドルしか交換可能の通貨はなかったわけでございます。したがって、その他の国が二五%以上の七五%を自国通貨で払いましても、その自国通貨というのは何ら使用できなかったわけでございます。その後西欧主要国自国通貨というものは交換性を回復しまして、したがってIMFに振り込みました自国通貨というのもそれだけ利用される。日本も昨年四月に八条国になりまして、したがって日本の円というものも交換性回復——回復といいますか、交換性を取得したわけでございますが、そういった過程におきまして、最初IMFのできた状態とその後の状態というのは、時代の変遷につれまして若干変わってきた、こういうふうに考えるわけでございます。したがいまして、現在の国際通貨基金協定というのは、必ずしも世界ドル支配するということではございませんで、ドル圏——もちろん世界基軸通貨としてドルがあるということは私は否定いたしませんが、ドルが支配している国というのはどういう国か私もよくわかりませんが、もし共産圏を除いているという意味なら、それはユーゴあたりを別にいたして、現在加盟していなということは事実でございますが、しかしIMF加盟国の中には社会主義政権が支配しております多くの国も現実には加入しておりますし、それらもIMF利用をしているわけであります。こういうふうに思うわけであります。したがって、日本としては、もちろん世界の、単にドルを支持するということではなくて、現在の通貨制度に不必要な——もちろん信任をゆるかせるような行動はしたくないということは、世界経済の発展あるいは貿易の伸長というようなことを考えますと、当然世界のためにもあるいは日本のためにも必要なことだというふうに考えておりますし、またこういうようなIMF参加することによって、後進国が、たとえば一次産品の値下がりを一時的な補償融資でもって切り抜ける、こういうようないろいろな面もございます。あるいは日本として国際収支がもちろん安定的にいいのにこしたことはございませんが、場合によっては、国際収支の赤字になる場合にはIMF利用できる、こういうことかと思うので、われわれとしてはIMFというものを単にドル中心ということでなくて、世界的の立場で見て、こういったものをもっと強化するというようなことが、日本のためにも世界のためにもいい、こういう確信を持っている次第でございます。
  7. 有馬輝武

    有馬委員 私が御質問申し上げておりますのは、先ほど申し上げたようないわゆる性格があることは否定できないと思うのですね。これを本来のIMF趣旨にのっとった形で運営するために日本政府としてはどのような努力をしてきたかということをお伺いしているわけです。
  8. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 日本といたしましては、日本のいわゆるゴールドトランシュというのは、現在五億ドルのうち一億二千五百万ドルでございますが、イギリスインドセイロン等その他のいろいろな国々IMFに金を借りに参ります場合には、それに日本日本円の使用を認めるというやり方をしておりますし、また、総体的には確かにアメリカの地位というものが経済的にはまだ依然として大きいことは事実でございますが、特別増資というようなかっこうで、過去におきましても、西ドイツも特別増資をこの前もやりましたし、今回もやる、日本もやる、あるいは昨年イタリアも特別増資をやるということで国際間のアンバランスを是正すべきだということを絶えず主張してきておるわけでございます。
  9. 有馬輝武

    有馬委員 それから、先ほどの御答弁の中で、社会主義国利用状況について若干触れられたのでありますが、それに関連して、国を限定いたしまして、加盟国でありますポーランドそれからソビエト、これらの最近の利用状況についてちょっとお知らせをいただきたいと思うのです。
  10. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 私、社会主義国と申しましたのは、まあ社会党と申しますか、社会主義政権があるという国で、いま有馬委員の御指摘になりましたソビエトポーランドIMF協定参加しておりませんので、利用状況はございません。
  11. 有馬輝武

    有馬委員 協定ができましたときに、これらの国々に対しましても一応の割り当てをしておりますね。しておりませんか。
  12. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 私も戦争中のことでございましてよく記憶がないわけでございますが、おそらくIMF協定というものの会議をします例のブレトン・ウッズ会議というものは、国連あたりとの若干の関係もあって開かれたというふうに理解しておりますので、何といいますか、会議の招請はしたかと思うのでございますが、現実にはソビエト参加しなかったというふうに記憶しております。
  13. 有馬輝武

    有馬委員 局長でなくてもどなたでもけっこうですが、これらの国々が当初参加しなかった理由はどこにあったのですか。
  14. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 ただいま私の申し上げましたことはちょっと間違っていたそうでございます。ソ連チェコユーゴについては割り当てをしたそうでございますが、ただソ連がそれを引き受けなかった、こういうことだそうでございます。  それから、それじゃなぜソ連が出なかったのかということでございますが、これはもちろん当時の世界情勢というようなものもございましたと思います。それからもう一つは、IMF協定をごらんになりますと、加盟国義務というようなものもいろいろ規定されております。たとえば、ある程度の資料を出すとか、コンサルテーションを受けるとか、そういうようなコンサルテーション年次協議でございますが、そういうようなことについてもソ連としては受けたくないという希望もあったのではないか、こういうふうに考えております。
  15. 有馬輝武

    有馬委員 附表のAの割当額によりますと、チェコが一億二千五百万ドルソビエトが十二億ドルユーゴが六千万ドルの一応の割当額になっておるわけです。問題は、私がお伺いしたいことは、その本来のIMF体制というもの、これがソ連の不参加その他によって機能がゆがめられてくるんじゃないか、そういう場合において日本が果たすべき役割りがあるのではないか、こういうことでお伺いをいたしておるわけです。私の質問はわかりますですね。
  16. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 わかります。
  17. 有馬輝武

    有馬委員 その中で日本はどのような努力をされてきたか、また今後されようとするのか、これをお聞かせいただきたいということなんです。
  18. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 ソ連IMF参加したほうが世界として望ましいか望ましくないか、あるいはソ連等共産諸国が入るように日本が何か努力をしたかと、端的にいえば、私はいまの先生の御質問をそういうふうに理解したわけでございますが、まず第一に、一つ日本のそういった役割りを果たす前提といたしまして、ソ連がこういったものに入るということの希望がないという場合に、それでは何とかして入れてやろうということを日本としてやるということもできないという事実がございます。しかし、いまの国際通貨基金協定のあり方からいって、もしソ連参加をしたいという場合に、しかも、IMF協定のいろいろな義務を守るという意思表示をする場合に、こういったものについては十分考慮余地がある問題ではないかと私どもは考えております。現に私どもは、そういった通貨の問題あるいは後進国援助問題等については、むしろソ連のような国も入ってくるということも望ましいことではないかということも考えられるわけでございます。現実に進行いたしておりますアジア開発銀行等の問題につきましても、いま九ヵ国の代表がエカフェ域外各国をぐるぐる回ってバンコクに帰ったわけでございますが、その際にもソ連に参りまして、そのアジア開発銀行参加を要請したというような事実もあります。したがって、もしソ連のほうで参加したいということであれば、私は考慮余地のある問題ではないか、こういうふうに考えております。ただ、御存じのとおり、国際通貨基金協定によりますと、各加盟国投票権各国割り当て一票でございまして、あとクォータ十万ドルにつき一票ということで加重平均を行なっております。日本投票だけでは、法律的な問題でございますが、そういう賛成とか不賛成とかいうことを申しましてもきまらない。そういう表決によって加盟を認めるということになっております。御参考までに申し上げておきます。
  19. 有馬輝武

    有馬委員 先ほどのチェコなりユーゴなりはどういう形になっていますか。
  20. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 チェコにつきましては、最初加盟して、その後義務違反強制脱退というかっこうになったというふうに記憶いたしております。義務違反と申しますのは、情報提供その他のことでございます。それから、ユーゴは現在でも加盟国でございます。
  21. 有馬輝武

    有馬委員 その利用状況を……。
  22. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 一九六五年五月三十一日までに過去において引きました累積が一億三千六百九十万ドルでございます。回数にいたしますと、一九四七年から五五年の間に九百万ドル、それから五十八年に二千二百九十万ドル、それから六一年に七千五百万ドル、一九六三年に三千万ドル引いております。もちろんこのうち返したものもございまして、一九五七年に九百万ドル返しております。一九六一年に七百五十万ドル、一九六二年に七百五十万ドル、一九六三年に七百九十万ドル、一九六四年に三千万ドル、それから一九六五年五月三十一日までに千五百万ドル返しております。したがいまして、借り入れ総額が一億三千六百九十万ドルに対しまして、現在までに買い戻し、いわゆる俗に言う返済でございますが、これが七千六百九十万ドル、こういうふうになっております。
  23. 有馬輝武

    有馬委員 いまお尋ねしたこととじかに関係してくるわけでありますが、すでにアジア開発銀行構想については、昨年日本政府のものの考え方もある程度明らかにされて、積極的な意欲を示しておったことも事実であります。その際に域外から幾らくらいというようなことまで聞かされておりましたが、現在の進捗状況についてこの際お聞かせいただきたいと思います。
  24. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 アジア開発銀行につきましては、かねてからそういった地域的な開発機関をつくるべしという議論はあったわけでございますが、昨年のエカフェのウェリントンにおける総会におきまして九ヵ国が共同提案をいたしまして、そういったものをつくる準備的な諮問委員会をつくろうということが決定されたわけでございます。それに従いまして、ことしの六月でしたか、バンコクで第一回の会議が開かれまして、日本からは大蔵省顧問であります渡辺武、それから私の前任者でございますが、やはり大蔵省顧問であります渡辺誠の両氏が参加いたしまして、その後その九カ国が二班に分かれまして、一班は日本を含めまして、オーストラリアとかフィリピンとかアメリカとかカナダとか、そういったような国を回りまして、それから第二班のほうは日本が団長となりまして、域内ネパールインド、パキスタン、イランあるいは西独、フランス、イギリス、そういったようなところを回って、現在その結果を持ち寄りましてバンコクでまた会議をしております。その目的は、そういった各国がこの前の諮問委員会でつくりました一応の設立趣意書みたいなものについての各国の意見を聞いてきた、それからその後の資金についてのサウンドの段階でございますが、それらあたり情報交換をしている、こういう段階でございます。  先ほど有馬先生の御質問域外国域内国の比率というのは、実は九カ国でつくりました——まだ政府そのもの会議ではございませんで、いわゆるエキスパートとしての会議で、域内の比重を高からしめる上で資本金十億ドルの場合には域内資本金が六億ドルであって、域外が四億ドルくらいが適当であるという結論を出して、それをもって回ったわけでございます。すでにアメリカは一億ドル出資をするということの意思表示をしております。日本も過日、これももちろん国会の御承認等も将来は得なくちゃならぬ問題でございますが、一億ドルを限度として出資をするということをその席上で述べたわけでございます。ほかの国につきましては、また的確なりアクションがわかっておりません。いろいろ一応の説明を聞いたという段階であろうか、こういうふうに考えております。
  25. 有馬輝武

    有馬委員 各国をたずねられた際に、ネパールその他について言及されたのですけれども中国最初から入っていたのかいないのか、この点を明らかにされると同時に、少なくとも現在日本政府の態度として、私は、三木通産大臣などの動きというもの、やはりこういった点にも現実的な側面として考慮されてしかるべきだと思うのでありますが、そういった立場からいまの点についてお答えをいただくと同時に、将来の見通し等についてもあわせて明らかにされていただきたいと思います。
  26. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 先ほど申し上げましたように、本準備委員会というものがエカフェ諮問によって設立されておるということを申し上げたのでございますが、エカフェ国連下部機構でございます。したがいまして、現在回っております国はすべて国連加盟国に限られているということでございまして、それはエカフェ性格上そういうふうになっておる、こういうふうに理解しております。
  27. 有馬輝武

    有馬委員 エカフェ加盟国でなければアジア開発銀行の中に組み入れられないという基本的なものがあるかどうか。私が先ほどソビエトの問題なりチェコの問題なりユーゴ問題等を尋ねましたのも、やはり現在のIMFの運営というもの、性格というものが当初想定されたものよりもゆがんできておるのではないか。それはやはりこういった加盟国のカラーによって勢いそういう形に自然に流れてくる、今度アジア開発銀行構想がのぼせられる場合には、そういったものを払拭する地域的な問題をやはり考慮すべきじゃないか、また根本に立ち返るべきではないかという考え方が私自身の中にあるわけです。そうなった場合には、エカフェ加盟国だけにということでは、そういった点が出発点からすでに狂いが生じてくるのじゃないか——狂いといってはおかしいですけれども、限定されたものになってくるのじゃないか、こういう考え方がありますのでいまの点をお尋ねしておるわけです。ですから、質問趣旨は、アジア開発銀行の発足にあたってはエカフェ加盟国だけに限定されるのだ、そういうもので進められておるのかどうか、この点をいま一度お聞かせをいただきたい。
  28. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 非常に国際的にむずかしい問題で、一国際金融局長のよく答えられる問題ではございませんが私ども事務的あるいは専門家立場からいいますと、今回のアジア開発銀行構想エカフェによって初めて基礎ができ、それの指示に従って現在作業をしているものですから当然そういった観点で、根本的な問題としてはいま有馬先生のおっしゃるような問題があろうかと思いますが、私どもは、単に国際金融なり経済交流ということの観点から、そういうところまで論ぜずにやっておるわけでございます。
  29. 有馬輝武

    有馬委員 この際お尋ねしておきますが、想定されておるところの、あるいは進められておる一ころのアジア開発銀行中国を含めることが何かネックになるものがあるかどうか、この点をいま一度お聞かせをいただきたいと思います。
  30. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 繰り返し申し上げますように、現在国連下部機構でございますエカフェ主導権を握ってやっておる限りにおいては非常にむずかしい問題ではないか、こういうふうに私は考えております。
  31. 有馬輝武

    有馬委員 いまの点はわかりました。これは一ぺん、特に三木通産大臣等においでを願いまして今度三木さんがヨーロッパ各地を回って帰ってきて、佐藤総理に対して提言した問題、これは現在までの政府基本方針に対して非常に重大な影響を及ぼす発言だったと私は見ておるわけです。その発言一つのレールを敷くためには、やはり具体的な側面から入っていかなければいかぬ。そうなりますと、やはり今度考えられておるところのアジア開発銀行その他を通じて日本の果たすべき役割りというものが出てくるのではないか、こういうぐあいに考えておりますので、ひとつこの点については、大蔵省当局としても基本的な構想について打ち合わせておいていただきたい。  それから、一応二班に分かれて調査された結果がどういう形で、いかなる時期にまとめられるのか、これもあわせてこの際お聞かせおきを願いたいと思うのです。
  32. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 前段の質問につきましては、通産事務当局にもよく伝えておきます。  それから、この後のスケジュールでございますが、現在九カ国がバンコクに集まって作業をしております。何を作業しておるかというと、定款案のようなものを一応つくってみようじゃないかということをやっておるわけでございます。これはあくまでもまだ専門家段階でございますので、この秋に政府間レベル会議——その場所もまだはっきりしておりませんが、一説によればフィリピンでやるとかいう説もございますが、そういうことを、やって、そうしてその際に——一体どこを入れるかというようなこともまだきまっておりませんし、まだ実は出す国も確定していないわけでございますが、しかしスケジュールとしてエカフェのほうで考えておりますのは、政府間ベース条約案といいますか、協定案議論をしよう、それからもしうまくいけばなるべく早い機会に調印なりをして、その後に各国予算措置なり条約批准をやって、正式なアジア会議ができるということをもくろんでいるわけでございます。しかし、何ぶんにもまだはっきりとどこの国かどれだけ出すかというようなこともきまっておりませんので、その予定自身がそのとおりいくかどうかということは、私はここで明言できないのでございます。
  33. 有馬輝武

    有馬委員 次に、昨年の十一月から顕著になりましたイギリスポンド危機でありますが、これの原因をベテランである鈴木さんはどのように見ておられるのか。実はこういう点をお尋ねしますのは、一九六〇年のロンドンの金相場の非常な高騰に対してIMFがその機能を十二分に発揮し得なかった一つの歴史的な事実があるわけです。ですから私は、IMFの果たし得る役割りというものについて検討したいという立場から、昨年十一月からのポンド危機原因と、それから現在イギリス政府としてもそれなりの対策を立てておりますが、それに対してIMFが動き得る範囲というもの、こういう点について、ベテランである鈴木さんのほうからお聞かせをいただきたいと思います。
  34. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 よその国のことでございますから、こういった席でどれだけはっきりとしたことが申し得るかわかりませんが、私の印象といいますか、大体の感じだけを申し上げておきますと、イギリスは従来低成長のために設備の更新その他がおくれて、しかもいろいろな生活水準が高いというようなことで、企業あるいは商品の国際競争力が弱っておった、そこでこれを何とか直さなきゃならないということで、相当の成長政策に保守党政権が踏み切ったと私は思っております。したがいまして、その結果、相当国内における最終需要というものが強まって、そこでまず貿易収支という点で、輸入が非常にふえる、輸出はそういった設備投資を積極的にやっておる段階でございますからそうはふえない、こういったところに労働党内閣ができたわけでございますが、御存じのように、労働党内閣も多数ではございますけれども、非常に少ない議席の差しか持ってないというようなことで、若干の政局の不安がある。それから労働党がいろいろ公約しておりました政策というものが相当意欲的で、従来のイギリスはストップ・アンド・ゴーと申しまして、国際収支が悪くなれば締める、こういうようなやり方をしておったのがいかぬというわけで乗り出したわけでございますが、それに対する大陸諸国の政府というわけではございませんが、ある程度の金融筋の批判もあったかと思います。したがいまして、イギリスの問題は、構造問題が一つと、それからそういった、何と申しますか、国内の最終需要が非常に強いという問題が一つと、もう一つはポンドが基軸通貨であって、相当大きなスターリングエリアのバランスをかかえておって、外貨準備がそれに比べて非常に少ない、こういうことで、ポンドの信任という問題、この三つがからみ合ってポンド危機という実際の状態を起こした、こういうふうに思うわけでございます。その後、いろいろなポンドに対するアタック等がございまして、これは西欧諸国といたしましても、そういう投機家に極力立ち向かうという意味で、昨年三十億ドルの緊急的な中央銀行の借款ができたわけでございます。中央銀行の性格として長い金を貸すわけにはいかないということで、これが三カ月でございましたが、一回だけ更新されまして、その後IMFの引き出し、最初に十億ドルいたしまして、その次に十四億ドルいたしまして、これによって置きかえられた、こういうのが現状でございます。したがいまして、IMFとしては、もちろんイギリスのクォータは十九億五千万ドル程度だと記憶しておりますが、現在二十四億ドルを貸しているということは精一ぱい貸しているわけでございまして、ボンド保有額はクォータのほとんど二〇〇%になっているわけでございますから、これ以上借りるわけにいかないという問題がございます。したがって、IMFとしては現在のイギリス割り当て額一ぱいだけは十分に貸しておるという状況でございます。したがってこれ以上借りられないというところにIMFの限界があるわけでございますが、それはIMFというものでも無尽蔵に信用供与をするということはできないという性格上、いたし方がないのではないか、しかし、さればといって、そのIMFが二十数億ドル貸しておるということの事実は、少なくともいままでの段階においてポンドの安定に非常に役立ったものと、こういうふうに私は考えておる次第でございます。
  35. 有馬輝武

    有馬委員 先ほど局長が述べられた三点ですね。少なくともここ十年くらい私が知っておる限りにおきましては、ボンドの持っておる意義というものは、おっしゃったような意味でのあれは変わってないんじゃないか。与件が変わらなくて、昨年十一月からことさらにポンド危機ということが言われる。その点についてはもう少しほかの理由があるのではないかと思うのですが、その点どうですか。
  36. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 一番顕著な理由は、私は最終需要が急に伸びて、貿易のバランスが悪くなったということが、従来の状況とは非常に違う問題ではないかと思います。これは昨年十月あたりまでイギリス自身はそういうことを認めなかったわけでございまが、その後のいろいろな統計等によりますと、昨年は設備投資はもう一0%以上伸びておるというような数字も出てまいりまして、その結果引き締め措置ということを労働党内閣に入りましてからやったわけでございます。ただ、それが何せ、景気刺激策もそうかと思いますが、引き締め措置というものも時間がかかります。それで、その間にやはりどうしても輸入課徴金等の短期措置をやって若干泳ごうと思っていたのですが、やはりヨーロッパなり外国の圧力によってそれを引き下げざるを得なかったというようなことで、実はことしの一−三月は相当貿易収支も改善されたわけでございますが、四−六月に輸入課徴金を引き下げたためにその裏目が出た。その数字の結果また非常に悪化したようなことになっております。イギリスのたびたび言っております説明、あるいは西欧諸国としても認める態度としては、来年一ぱいに国際収支を均衡させるんだ、こういうことを言っておるわけでございますが、どうもやはり気の早い人が多いものでございますから、なるべく手持ちのポンドは圧縮しようという動きが強いもので、実際の貿易収支なり国際収支の悪化以上にポンドが一種の投機の対象になっておるということは否定できないのじゃないか、こういうふうに思います。
  37. 有馬輝武

    有馬委員 それから次にお尋ねしたいのは、私きょう資料を持ってきておりませんが、これは日本の場合ですが、ユーロダラーが近ごろ顕著な動きをしております。そのおもな原因は何ですか。
  38. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 世界の金というものは金利によって動くのが普通でございます。過去におきましてアメリカが銀行等に対する行政指導をしなかった場合、あるいは直接投資についても何ら規制をしなかった場合には、アメリカの企業がヨーロッパに自分の国から相当送金いたしまして運転資金等を保有していたわけでございます。それがことしの二月のジョンソン国際収支教書によるいろいろな施策によりまして、アメリカの各企業は相当の流動資金をヨーロッパから引き揚げた。それのみならず、場合によってはアメリカの企業自身が資金の取り手になる、こういうふうな状態がまずあったわけでございます。したがいまして、需要と供給の面におきまして相当の変化があった。そういった関係で、先行きのドルの強さというようなことを反映いたしまして金利が上がってきたということも一つの顕著な原因かと思います。したがいまして、現在の市場は、過去におきますようなどんどんとユーロダラーの総量がふえるというかっこうではないわけでございます。したがいまして、日本のほうに入ってまいりますユーロダラーの量も、これは昨年あたりは相当伸びたわけでございますけれども、ことしになってからは横ばいないしは減少の傾向をたどっておる、こういうのが事実かと思います。
  39. 平林剛

    ○平林委員 関連して。ユーロダラーの取引の推移は、私の調べたところでは一九六〇年九月ごろは一億千九百万ドルほどでありまして、その後漸増して、一九六四年三月では四億一千二百万ドル。いまのお話ですと、減ってきた、あるいは横ばいだということでございますけれども、最近の資料はどういう数字の経過をたどっておりますか。私の承知しておるのは六四年の三月まででございますので、それ以降九月、それからことしの三月、どういう数字をたどっておりますか、御発表願いたいと思います。
  40. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 現在幾らユーロダラーがあるかということについては、実はいま平林先生のおっしゃった数字自身もどこからおとりになったか私存じないのでございますが、政府としては、為替銀行の営業上の内容でもございますし、発表しないということにしております。ただ、傾向といたしましては、ことしに入りまして、私どもがもっと減るかと思っておったほどは減っていない。四月、五月ぐらいまでにおきましては横ばい程度であった。この六月、いろいろな外国銀行の仮決算等の機会に例のシッドイヤーファクターと申しまして、六月の場合にはそれを引き揚げるという傾向がございます。その際に相当減った。それから昨年の例で申しますと、七月ごろにはそれがまた還流するというような状況があったわけですが、ことしの七月についてはそういう状態もなく、むしろ減少ぎみであった、こういうことが日本に関する限りはいえるわけでございますけれども、ただ、的確な数字を申し上げますのは、私の記憶している限りでは国会等においてもごかんべん願ったというふうに思っておりますので、ごかんべん願いたい、こういうふうに思います。
  41. 平林剛

    ○平林委員 私が申し上げた数字は去年の三月十三日に日本経済新聞に公表されたものであります。そして一九六四年三月四億千二百万ドルというのはその月の末の普通銀行七十八行の集計でございます。だから、私はそういう意味から商業新聞にさえ公表せられているのですから、差しつかえないのじゃないかと思ってお尋ねしたわけです。いまのお話、きわめて抽象的でわからないのですよ。横ばいだとか、思ったほど減っていないとか、何を聞いていいのか。そんなことわれわれいろいろな審議をする場合に参考になりはしません。差しつかえないのじゃないでしょうか。新聞社でもこうして発表しておるわけでありますから、私はそのために悪い影響を与えるということは考えられない。
  42. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 新聞社はどこのソースから取ったか私存じませんが、大蔵省として発表したことはございませんというふうに記憶しております。したがいまして、非常に抽象的な言い方で申しわけないのでございますが、先ほどの答弁でごかんべん願いたいというふうに考えております。概略のことでございましたら、先ほどの四億の数字よりは多いということを申し上げておきます。
  43. 有馬輝武

    有馬委員 次にお尋ねしたいのは、ドゴールの、フランスのIMFに対する批判というもuの、その根拠がどこにあるのか、これをこの際お聞かせをいただきたい。
  44. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 ドゴール大統領のアメリカの批判の根拠というものは、非常に高い政治的な意味の根拠というものにつきまして、私何かあるのかと思いますが、そういうことを私がここで推察してもいたし方がないことでございますから、それはさておきまして、経済的な面で申しますと、要するに、フランスの立場というのはまず第一に、現在の国際通貨制度というのは、アメリカ及びイギリス国際収支の赤字が出た場合にでもその赤字を矯正する歯どめがない、そこにおいて各国に対して平等のものでない、こういう議論一つあるわけでございます。というのは、アメリカが赤字を出す場合にはドルを相手国に渡せばいいわけでございます。日本とかフランスのような場合には、外貨が減るとかあるいはどこかへ行って金を借りてこなければならない一つのアクションがあるわけでございますが、アメリカの場合には、自分の国の通貨をよそに押しつければいい、そういうことで、歯どめがなくて、フランスのことばによれば、そこで公平でないという議論、これは理屈の問題としてあろうかと思います。現実の問題としては、一つアメリカ国際収支が赤字になりましてフランスにドルがたまる、そういった場合には、当然第一段階では民間にドルが入るわけでございます。それを中央銀行、フランス銀行に売り上げますと、そこでフランスが増発をされる、したがって、アメリカの赤字があるために輸入されたインフレーションというものが起こる、その結果フランスは物価なり賃金が上がって困っておるのだ、こういう議論があるわけでございます。  それからもう一つは、アメリカの直接投資というものがフランスについて相当積極的な動きをしておる、しかしフランスとしては、ドルを持っておるということは、ドルは金でないという考え方をしておりまして、アメリカの借金証文だ、人に自分が貸しておる金でもってアメリカ人が自分のところの企業なり産業をどんどん支配していくのはおかしい、こういう議論があるわけでございます。しかし、さればといって、フランスがそれでは直接投資に対する規制をできるか、こう申しますと、これはEECの関係で、一国だけではできない。したがって、アメリカ国際収支の節度をもっと重んじろ、こういうことが根本になっておるわけでございます。したがって、フランスといたしましては、ドルが累積をした場合には、もし金にかえてしまえばアメリカは困るから赤字を出せないだろう、そういうことで金にかえておるというのがフランスの立場である、私はこういうふうに解しております。
  45. 有馬輝武

    有馬委員 局長は非常に正直であり、その点では正確にものを見詰めておると思うのです。いまの御答弁、的を射ておると思うのですが、結局いまの御答弁の中でも明らかなように、金の管理者がIMFではなくてニューヨークだというところにIMFの現在の性格のゆがみの根本的な点があるのじゃないか、私はこう見ておるのです。その点どうですか。
  46. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 通貨制度というものをどういうふうに考えるかということでございますが、歴史的に発展した制度でなければ、いかに人知、英知をもって考えても、話し合いだけではできない、非常に現実的で申しわけないのですが、現状のような世界状態ではそうではないかという考えを私は持っておりますので、結局、現実に確かに戦後におきましてアメリカが圧倒的な経済力を持っておった、いまでも一国ベースで考えれば圧倒的な経済力を持っておることは事実でございます。それから、自国通貨を金にかえるという宣言をしておる国も実はアメリカ一国でございます。よその国はそういうことはいやだということを言っておるわけでございます。したがいまして、その事実を否定できないといたしますれば、フランスの態度としては、アメリカをゆさぶる——ゆさぶるといいますか、アメリカ国際収支節度を守らすという観点からいえば、私は非常にりこうな方法であったと思います。現実に、その結果、アメリカ国際収支節度について非常に認識を新たにいたしまして、国際収支の改善措置をしたわけでございます。したがって、アメリカ国際収支改善対策というものは、ヨーロッパからの攻撃に対してそれを防御するというようなかっこうで出発したというふうに見るのが正しいと思うのでございますが、さればといって、フランスのような態度を世界各国が全部した場合には、やはり現行の国際通貨制度というものは全く崩壊する、そういうようなことでは、日本のように外国貿易その他について非常なウエートの高い国としては、一がいにフランスの態度を肯定してそれと同調するというようなわけにもいかないということが現実的な私の考えでございます。あるいは違っておるかもしれませんが、私の考えとしてはそういうふうに思っております。
  47. 有馬輝武

    有馬委員 アメリカの態度に対して崩壊させるという意味じゃなくて、やはり各国が自主的な態度をとるということが、現在の、さっき私が申し上げました金の管理者がIMFではなくてニューヨークだというこのゆがみを是正することになるのじゃないか。かってにアメリカは三回にわたって金を売却するというような措置をとる、あるいはカナダに対して特別の措置をとるというようなことを、自分の都合のいいときにはそういうことをやって、都合が悪くなれば自国は損をしないようにという形で運営されておるところに、現在のIMFの一番大きな欠陥があるのじゃないかと思うのですが、どうですか。
  48. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 金の管理者がアメリカであるかどうか、それは私は見方だと思います。御承知のように、現実に金を持っておりますのは、大陸とアメリカとではおそらく大陸のほうがふえてしまったような状態でございます。ただ、確かに過去においてアメリカが相当の赤字を出した。それにつきまして、公的な外国の政府なり中央銀行に対するドル債務というものは相当ある。それに比し、アメリカの金の保有量が、少なくとも自由に処分し得る保有量が少ないというところに現在の問題があろうというふうに考えておるわけでございます。ただこれは、過去においてもそういった事実は、いかなる基軸通貨——戦前のイギリス等におきましてもそういった状態でございましたので、むしろ不必要にそういった面を強調して、銀行でいえば、預金はいつもすぐ引き出されるものだ、貸し出しはすぐ返ってこないからこの銀行はつぶれるというような解釈をするということは、私は不必要に世界通貨制度というものの信頼をゆるがさせるのではないかという考え方を持っておるわけであります。
  49. 有馬輝武

    有馬委員 さっきの答弁とは違ってくるので、これは短時間では論議され得ない問題ですから、私機会をあらためていまの点については大蔵省というよりも日本政府の態度として論議をいたしたい、このように考えております。  本日は、以上をもって私の質問を終わります。
  50. 吉田重延

    吉田委員長 午後零時五十分より委員会を再開することとし、この際、暫時休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ————◇—————    午後一時五分開議
  51. 吉田重延

    吉田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。平林剛君。
  52. 平林剛

    ○平林(剛)委員 ただいま議題になっておる国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律案、これは結局国際流動性を増加させて、国際的にいろいろな仕事をやっていこうとするための出資を内容とする法律案であります。私は、昨年の秋行なわれたIMF東京総会におきまして各国代表がそれぞれ演説した中で特に印象に残ったことは、オランダの銀行の総裁が述べられたことばであります。それは、いかなる形で国際流動性を増強しようとしても、健全な通貨政策が前提にならなければ無意味である、こういうことばであります。そういう意味で、今日政府がとっておられる財政政策というものは、私はこの法律案と比較いたしまして無関心たり得ない。  そこで、若干初めに公債の問題についてお尋ねしようと思う次第であります。公債発行の問題につきましては、私は率直に言って、政府考え方というのが絶えず変貌しておると思うのであります。佐藤総理大臣が四十三年までは発行しないということを述べられたことは、これは論外にいたしましても、福田大蔵大臣の言明も時間とともに変わっているのでないか。私はそういう意味で先回も福田蔵相のお考えをただしたのでありますけれども、赤字公債は発行しない、あるいは追い詰められた公債は発行しない、公債の発行というのは不況克服をしたのちのことである、物価の安定が第一で、その見通しをつけて公債の発行を考える、こういうことが、先般私の質問に答えて述べられた要素であります。昨日の予算委員会におけるあなたのお答えを聞いておりますと、結局赤字公債的な傾向に走ろうとしておる。こういう意味では私は大蔵大臣の考えが時間とともに変化し、積極化し、そしてまたわれわれの心配に向かって進んでおる、こういうことを考えるのであります。こういうふうに時間とともに変化する理由は一体どこにあるのでしょうか。
  53. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 少しも変化はしておりません。具体化はしておりますが、変化はしていないのです。この前この委員会で私が、赤字公債は発行しない、そういう趣旨のことを申し上げたいということですが、そのとおりでありまして、それは今後の財政経済運営の中核として公債政策を採用する、それは健全財政の方針をいささかもゆるがすものではないということを申し上げておるわけですが、何か私が当面、たとえばことし考えてみますと、えらい歳入不足になる形勢なんです。それに対しては、当面の問題として臨時的に臨時の考えをとらなければならぬかどうか、その財源不足の対策としては、これは借り入れ金にするか、公債にするか、いずれにしても借金政策を使わなければならぬ。臨時緊急のことを言っておるのです。その二つのことは厳重に区別し、私はあくまでも健全財政方針は堅持していくということについてはいささかも変わりはないと御了承願います。
  54. 平林剛

    ○平林委員 それでは、かって大蔵委員会で私の質問に答えて、赤字公債は発行しないということ、第二は、追い詰められた形の公債は発行しない、第三には、公債の発行は当面の不況を克服した後の考えであるということ、第四には、物価の安定というのが何といっても第一であるから、その見通しをつけて公債の発行という政策には踏み切るつもりである、これの基本的な考え方についてはいまでも変わっていない、こうおっしゃるのですか。
  55. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 変わっておりません。
  56. 平林剛

    ○平林委員 それでは、昨日の予算委員会で大蔵大臣がわが党の小松幹委員質問に答えて、現在補正予算についての審議を受けておるけれども、ことしはこの秋、次の国会であるいはもう一度補正が必要である、その財源をどうするかというときに、借り入れ金か公債という形を考えておる、これは借金政策に踏み切るのだ、こう言明されました。私がいま確認をした四つの事項は、将来の公債政策に対するワクであるというふうに私は理解をするのでありますけれども、では財源不足を補うために借り入れ金か、公債を考えているというのは、どういうわけです。
  57. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 この不況が克服されました後におきましては、ただいまあなたのお話のような原則によって積極的に公債政策を導入していく、こういう考え方をこの前申し上げたわけなんです。ただ、ことしあたりはまだ不況が克服されておらない。何といいますか、前の経済状態の反動がきておるというような状態である、つまり、前の、いままでの経済情勢が続いておる、その終末期に当たっておる、こういうわけで、この際におきましては臨時的な考え方をとらざるを得ないのであって、これは私が前に申し上げた考え方とは別のものである、こういうことなんです。
  58. 平林剛

    ○平林委員 私はそれはわかっているのですよ。しかし、少なくとも当面この不況乗り切り、財源不足を補うために借り入れ金と公債のいずれかを検討中であるけれども、いずれにしても借金政策をとる、こう言われておる。並んでいるのは借り入れ金か公債ですが、本格的公債であるか、公債のはしりであるか、これは別ですよ。別ですけれども、当面財源補てんあるいは財源を確保するために借り入れ金かもしくは公債を考えているということはおっしゃっているじゃありませんか。そうすれば、本格的公債という問題は別にしても、当面公債政策のはしりが出ているということは間違いないじゃないですか。しかも、それは財源確保のため借り入れ金か公債——借り入れ金は別にして、公債を出すということでありますれば、さっき私が申し上げた四原則に触れるじゃないでしょうか。
  59. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 あなたがおっしゃられる四原則に基づき今後財政運営の当分の間の方針としての公債発行、それとはいま私が今年度に考えておる借り入れ金または公債というものは性格的にまるっきり違う、こういうことを申し上げております。
  60. 平林剛

    ○平林委員 性格的に違う、こうおっしゃる意味は、積極的な公債発行政策かあるいは財源を補てんするための公債発行かということでありまして、公債を発行するということにはちっとも変わりないじゃないですか。それはあなたが混同しておるのだと思うのです。無理に区分けをしようとしている。公債発行ということにはちっとも変わりないじゃないですか。
  61. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まだ私はことし公債を発行する形をとろうかあるいは借入金という形をとろうか、これは検討しているのです。かりに公債発行という形をとった場合におきましては、その公債というものが、国家の債務であるという点におきましては、これから安定経済、安定財政下における公債とそれは同じことでありまするが、その意味合いが違うのだ、その機能がまるっきり違うのだということを申し上げておるわけです。
  62. 平林剛

    ○平林委員 意味合いというものは、あなたは頭の中で区分しているだけであって、一たび公債発行ということがことしとられれば、来年もその財源が足りなければ引き続いて行なわれるわけでしょう。あなたがいつも言われているように、積極的な公債発行というものも、今度もし、かりに公債発行に踏み切るとすれば、来年も財源不足というものは十分予想されるから、ずるずるといくわけであります。そこに荷札をつけて、これは建設的な公債だ、これは財源不足の公債だなんという区分けがつけられますか。むしろ、あなたが健全な公債ということを考えておられるならば、ことしいかに財源が苦しいからといって公債発行というようなことは考えないほうがいいのじゃないですか。そうでないと、かりにどこで消化されようとも、公債には変わりはないのです。これは建設的なほうの公債である、これは財源確保のほうの公債であるというような、そんな区分けは国民はしませんよ。そうだとすれば、私はことしの財源確保のためには借り入れ金か公債を考えているなんということをおっしゃらないで、ひとつ借り入れ金でもって乗り切ろうと思っている、こういうふうにはっきりしたほうがいいんじゃないですか。私は、この混乱した議論というものが、将来、あなたの側に立って考えれば、公債そのものに対する印象を、追い詰められた公債である、財源補てんのための公債である、しかもこれは結局日銀にしりが回る結果にならざるを得ないとあなたは見通しているんですから、それは赤字公債であるということになりまして、すっきりしないじゃないですか。今度もしやろうとすれば、借り入れ金でしょう。
  63. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これは私の頭の中ではまことに明瞭に理解しているんです。いま考えておりますのは、ことし財源が予定に比べまして非常に落ち込むんです。これはあなたも想像されると思う。それから一面において歳出要因というものがある。これを総合しますと、財源不足というものが予想外になるわけです。これをあれやこれやひねくり回せば何とかなるかもしらぬ。しらぬが、そういう小細工を私は弄すべきでない、いまの状態に率直に即応するような形でこの不足対策を処理したほうがよろしい、こういうふうに考えているんです。  そこで、その不足は借り入れ金というような形でいきますか、あるいは公債発行というような形をとりますか、そのいずれをとりますにいたしましても、私はこの借り入れ金なり公債のしりがなるべく日銀にいかないようにというふうに考えるわけでありまするが、しかし、結果におきまして一部が日銀に回っていくということも、これはやむを得ない傾向かと思うわけです。そういう意味におきまして、ことしは臨時的な処置としてそういう一つ考え方が実行されるのに借り入れ金がいいかあるいは公債という形をとるほうがいいか、それも私の結論をきめる上において重要な資料になるわけであります。
  64. 平林剛

    ○平林委員 われわれは、今日政府がとりつつある公債政策への方向というのが、結果的にはインフレの懸念を増大させるだろうと心配しておる。国民も、あなたの言うように、これは建設公債、これは財源のほうの穴埋めの公債だなんといって、区分けをしてものを考えませんよ。ことし、とにかく予算の補正の財源が足りないということで、どんな形にせよ公債ということが出されれば、それはもう政府の言っていた公債発行、こう見ますからね。あなたは、おれは明瞭に区分しているんだと言うけれども、国民はそんなに明瞭に区分しません。その結果、国民に心理的影響をどう与えるかということを考えますと、私は、あなたが公債か借り入れ金かと考えているということで公債というもののイメージをインフレ的要素、追い詰められた要素、赤字公債、こういうことは避けねばならぬ、そう考えておるのです。いかがでしょう。
  65. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 だから、私も平常時において発行を考えておる公債、それからいま臨時緊急の問題として考えておる公債ですね、これはなるべく形においてもはっきりしたほうがいいと思っているのです。そういうことを考えておりますが、いまのところ、はっきりさせるというような考え方も含めまして、公債という形をとるがいいかあるいは借り入れ金という形をとるがいいか、それはまだ結論を得ていない、こういう状態でございます。
  66. 平林剛

    ○平林委員 賢明な大蔵大臣でありますから大体結論をいいほうに持っていくだろうと思うのでありますが、いずれにしても、そうすれば借り入れ金——私は借り入れ金と、こう考えますけれども、その借り入れ金のワクというのは、補正を必要とする財源の範囲内と考えてよろしいですか。
  67. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これは歳入の現実の不足額と新しい追加支出、それの総額に対して行なうということになりましょう。しかし、その場合におきましても、通常財源、これもできる限り考えてみたい、そういう考え方であります。
  68. 平林剛

    ○平林委員 結局、今後補正要因として考えられるのは、食管会計の赤字処理、医療費値上がりに伴う国庫負担、公務員のベースアップあるいは国保の赤字対策、その他今後起きるいろいろなことが考えられますけれども、大体二千五百億円あるいは三千億円の範囲内、こう理解してよろしゅうございますか。
  69. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まだ数学的にここで申し上げることはできないのです。できませんのは、この財源の不足がどうなりますか、これは今後の経済の動きに非常に関係あると思うのです。それから、支出要因のほうも御承知のとおりの状況で、どうするかまだ結論を得ておりませんから、大ざっぱなこともただいまのところは申し上げかねるような状態であるが、ただし相当多額のものが出る、こういうことだけは私も覚悟せざるを得ない状態であります。
  70. 平林剛

    ○平林委員 この場合借り入れ金に主としてしぼって考えますと、一部にこういう意見があるわけです。公債発行というようなことよりも借り入れ金ということを主として考えたらどうか、その借り入れ金をどこから借り入れるかというのはいろいろ問題があるけれども一つの考えとして財政投融資の中にいろいろの金融債がある。これを日銀引き受けという形において一般会計に繰り入れるという形で借り入れ金をしたらどうかという考えがございますけれども、これについてはいかがですか。
  71. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 借り入れ金という形をとります場合に、その借り入れ先を預金部の資金に求めるか、これも私は一つの着想だ、こういうふうに思っております。おりますが、その借り先をどこに求めるかについてはまだいろいろ考えなければならぬ、かように考えています。
  72. 平林剛

    ○平林委員 いずれにしても、私はある程度考えられての上で借り入れ金が公債か、こう言われているのではないかと思うのであります。しかしいずれにしても、もしこれをおやりになる場合には、議会に出してこういう措置をとるという単独立法が必要でないだろうか。現在の法律の制限などから考えますと、単独立法を必要とするんじゃないですか。
  73. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私が申し上げている二つの問題ですね。一つは、経済が回復してからの積極的意味における公債発行、これはもう財政法に準拠してやっていくということになると思うのです。それから、今度この年度においてとろうとする財源不足対策ですね。そういう意味の公債なり借り入れ金、これは財政法の規定に準拠して国会の承認を経るという形がとれないこともない、あるいはこれは非常に性格が違うものだから、明らかにするという意味において特別立法でやるということも考えられないことはないのです。そのいずれをとりますか、もう少しよく検討してみたい、こういうふうに考えております。
  74. 平林剛

    ○平林委員 かりに単独の特別立法を必要とするならば、次の臨時国会に考えをまとめて提出をされると理解してよろしゅうございますか。
  75. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 補正予算がいつ一体どうなるかということでございますが、それからまたその補正予算の規模がどういうふうになるか、その補正予算の規模いかんによりましてはあるいは通常財源のほうでまかない得るかもしれない、またその規模いかんによってはまかないきれないで、ただいま問題の借り入れ金を使うとかあるいは公債を使うということになるかもしれませんが、いずれにしても、その公債なり借り入れ金を使わなければならぬという際には国会に御審議をお願いせざるを得ない、かように考えております。
  76. 平林剛

    ○平林委員 その時期が、次に予定される臨時国会あるいは通常国会かということをお尋ねしておるわけであります。
  77. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 だから、いま申し上げますように、補正の規模が非常に小さいのだということで、通常財源もないことはないわけですから、それで間に合うのだというのであれば、あるいはこの公債あるいは借り入れ金を使わぬで済むかもしれない。つまり予ての補正を洗いざらい出して、最後の補正としてお願いをするという時期をどこにするかというようなわけなんですが、これはもう少しこの推移を見てからきめねばならぬ、こう考えております。
  78. 平林剛

    ○平林委員 ぼくはそういう判断はいずれせねばならぬと思うのでありますけれども、できれば国会が開会中のときにして、そうしてわれわれがそれを十分審議し、あるいはあらかじめ政府の考えを知って国民の心配を解消するという努力を傾ける必要があると考えておるのです。いつごろそういう方向がきまるのですか。
  79. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ですからこれは来年度の予算とも関係してくるのです。来年度の予算のきめ方は当然前の予算の姿というものを基本にして考えるわけですから、それとも関連して総合的に考えなければならぬ、まあ四十一年度の予算の大綱とにらみ合わせながらきめていく、こういう段階をとると思うのでありますが、そうしますと、大体平林さんにおかれましてもそういう諸種の問題が具体化する時期は御推察を願えるのではないかと思います。
  80. 平林剛

    ○平林委員 まあ私は当面の問題で公債の点について——本格的な公債政策という問題についてはまたあらためて議論をする機会があると思いますが、できればそういう議論を避けて、健全財政を貫いて、福田さんのときにとうとう日本の経済がインフレ拡大に向かった端緒をつくったなんといわれないようになさるほうがいいと思うのであります。しかし、いずれにしても、最近議会の中で議論をされておる問題を考えてみましても、私はもう一度将来に向かって大蔵大臣のお考えをただしておきたいと思うのであります。  それは、公債を発行してもインフレの心配はない、この意味は、本格的な公債のことで議論があると思うのでありますけれども、そういう御意見を述べられています。しかし私は、現在インフレ傾向なんじゃないか、公債を発行してもインフレになる心配はないというけれども、乗っかっている土台がすでにインフレ的な傾向の中にあるんじゃないか、こう考えるのであります。大蔵大臣自身も、現在の日本の経済はデフレとインフレとの共存の中にある、こう言われておるわけですね。デフレについては、山一証券はじめ、いろいろな財政金融措置をとる、しかしインフレにはインフレとして象徴される物価問題についてはほとんど見るべき策がない、こういう段階、つまり、すでにインフレ傾向が存在している中で公債を発行する、あるいは今年度の措置にしても私は同じことが言えると思うのでありますけれども、公債を発行してもインフレの心配はないという議論は、私は少しおかしいんじゃないかと思うのですがね、そういうものの言い方というのは、現実の経済というものについて、深刻なる態度に欠けているものと、失礼ですが、私そう考えますが、いかがでしよう。
  81. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 二つのケースのことを一緒に申されておるようですが、私は、今日の経済はデフレ的要素が非常に強く出ているこういうふうに思っているわけです。もとより物価の問題、また賃金の悪循環の問題、そういう問題がありまするけれども、経済界全体をおおう調子というものはデフレ的色彩である。御承知のとおり、経済も横ばいのような大勢でありまするし、また、ことに設備投資は前年よりもさらに落ちるというような傾向でございます。そういうような民間の資金需要の少ない時期でありまするから、私は政府におきまして積極的な施策が進められましても、これは決してインフレにはならぬ、これは確信をしております。それから長期の一般的な議論といたしましては、経済がその物資の需給におきまして、また資金の需給におきまして均衡さえ得ておりますれば、財政のほうの財源が、公債でありましょうが、あるいは借入金でありましょうが、あるいは均衡財政でありましょうが、これは決してインフレ的影響というものをもたらすものじゃない、こういうふうに考えておるわけであります。現に、諸外国でも公債政策というものを使っていない国のほうが少ないです。アメリカのごときでも、アメリカの国民総生産に対して今日公債の発行類は四二%といわれておる。イギリスのごときは八三%ですか、それくらいの公債を出しておるわけです。わが日本におきましても、明治以来公債というものをずいぶん出して建設をやってきておるわけでありまして、戦前の標準年次といわれる昭和九年−十一年のああいう時期をとらえてみましても、財政の需要の三八%ですか、そのくらいを公債に依存してやってきておるのです。どれもそれはインフレ的な結果がそこからきておるというような事態ではないのであります。つまり、根本は公債を消化する資金、それが通貨の増発からくるかどうかという点に非常に大きな問題点があるわけでありまするが、私は、本格的な、積極的な意味における公債、これはあくまで通貨増発という形によらないで、国民によって消化されるという形をとっていきたい、そういうためには減税もこれと並行してやっていきたい、減税によって余裕ができ、貯蓄も伸びる、そういうことによってこれを消化するということを堅持してまいりたいという考えであります。
  82. 平林剛

    ○平林委員 将来の議論になると思うのでありますが、アメリカイギリスに公債の発行数が多いというのは事実でしょう。しかし、それは戦費調達のための公債が今日累積して残っておるということでございまして、あなたがただこれを日本の場合に比較することは適当でないと思うのです。特に日本の場合だってあったけれども、あの戦後のインフレ政策によって今日はその荷が軽くなったにすぎない。そのインフレ政策のために、これは故意にやったのか、必然的の環境として生まれたインフレか、これは別にいたしましても、それが今日では大きな負担になっていないというだけで、イギリスアメリカには日本に見られたようなインフレの促進はなかったにすぎないのです。ですから、私は、政府のかじとりによっては、公債というものがおそろしい結果を招くことになると考えているので、大いに議論しなければならぬと考えておるわけであります。まあこれは将来いろいろ議論しなければなりませんけれども、さしあたり年内において借入金や公債、いずれになるかにいたしましても、三千億円以内くらいでございましょう。あるいはその他の現在の政府の不況克服のための措置が行なわれました結果、私はこれが物価上昇の理由にはなり得ないかどうかという点を心配するのであります。昨日も予算委員会議論をされておりましたが、一体池田さんのときの高度成長政策と佐藤内閣におけるところの安定成長と、どこが違うんだ。つまり、財政金融の面においていずれも情勢の違いはあったとしても、現象としては積極的な財政金融政策というような形がとられているじゃないか。今日不況に対する程度、この認識は別にいたしましても、いまお考えになっている程度ならば物価の上昇はない、こう保証していただけますか。
  83. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 財政政策の結果物価に悪影響があると考えておりません。
  84. 平林剛

    ○平林委員 財政政策の結果ではない、こういうのですか。それはどういうふうにしてけじめをつけますか。
  85. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 つまり、いま平林さんは、公債を発行するから物価が上がるんじゃろう、端的に言えばこういうお話なんだろうと思うが、いま今年度において私が公債なり借入金を財源とするという始末をいたしましても、それが物価の上昇につながる、こういうふうには考えておりません、こういうことです。
  86. 平林剛

    ○平林委員 結局、いまお考えになっている借入金なりあるいは公債については、今年度はしりは日本銀行にいくんだというお話でしょう。そうすれば、今日までの経過が示しておるように昭和三十三年当時、日銀の貸し出し残高がわずかであったころ、三千七百億円くらいであったころは物価はわりあいとたんたんとしておったわけですね。ところが、昭和三十五年から池田さんが出現をして高度成長政策をとったころから日銀の貸し出し残高が一兆二千億円になって、それ以降一兆一千億あるいは二千億というふうに高い水準にあった。これと比較して対応するように物価が上昇していったわけですね。だから、そういう意味の、いまおとりになる公債発行あるいは借入金というのは、いわゆる信用の造成ですから、やはり私はこれが物価が上がらないということの保証をもらいたいのです。それを、いや財政のほうではないのだ、ほかのほうではあるかもしれぬというようなことでは、ちょっといまお考えになっておる借入金、公債の行方から考えてみて納得できないのです。
  87. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 平林さんは、今度公債なり借入金を今年度やる、これが全部日銀にしわ寄せされるようにいまおっしゃられるけれども、私はそうは言っていないのです。私が申し上げておりますのは、できる限りこれを民間消化ということを考えます。しかし、回り回って日本銀行にしりがいく部分が出るであろう、こういうことを申し上げておりますので、出す公債の額または借入金の額がそのまま日本銀行の通貨増発となる、こういうふうな前提はとっていないのです。いないのですが、それは何がしかはいくでしょう。いくでしょうけれども、いま経済が非常に落ち込んでおる。日本銀行に対する資金需要なんかも少ない時期であります。つまりデフレ基調の経済であります。そういう時期に日本銀行の通貨がわずか財政の影響を受けてふくれ上がりましても、国全体としての資金量がバランスをとれておりますれば、それが直ちに物価騰貴というものにはつながらない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  88. 平林剛

    ○平林委員 私はその点は非常に疑問に感じておるのです。たとえば、市中消化もある程度あるとおっしゃるけれども、どのくらいあるとお考えになっておりますか。
  89. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 私が先ほど平林さんの御質問に対して煮え切らぬ返事をしておりますが、借り入れ金か公債か、それはどういうことを考えておるのかというと、あなたがおっしゃるように借り入れ金という形をとると、あとで出す公債とけじめが非常につくのです。そういう点においては非常にいいわけなんです。ところが、ただいま私が申し上げておるように、これを市中で消化しようとか、あるいは日銀がこれをオペレーションに使おうというようなことを考えると、証券の形にしたほうが有利な点もあるのです。そういうようなことを考えながら、どっちがいいかというようなことをいま検討しておるわけなんですが、できる限り多額のものを日銀へいかないで措置できるようにというふうに努力していきたいと思っています。
  90. 平林剛

    ○平林委員 まだ聞きたいことはありますけれども、ほかの将来の問題についてもう一、二お尋ねしまして、この問題はやめたいと思います。  これは、将来の問題ですけれども、これは国民に大いに休会中にでも世論を起こして勉強してもらわなければならぬ立場から私は聞きたいのですけれども、公債というのは結局税の前取りですね。この間も議論しましたが、孫や子供の分をいまかわってやってやって悪いことはないじゃないかということで、いわば税の前取りという形になっていくと思うのです。これが、公債の発行の額がふえればふえるほど、税収という面については従来に比較して少なくなっていく、あなたも公債をやるときには大減税ですか、減税というのも進めていくということになりますと、税収に期待する分が従来に比較して少なくなる、その穴埋めのために間接税の増徴というようなことをやられたのでは同じだ。つまり直接税である法人税や所得税の減税は行なわれても、それにバランスするように間接税が増徴されるということになっては、これはしり抜けになる。この間接税について増徴されるかもしれぬという心配は国民は抱かなくてもよろしいのでしょうか。
  91. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいま私は税は全体として減税を行なうということは考えているけれども、増徴ということ、特に間接税について目をつけてこれを増徴するんだということは考えておりません。
  92. 平林剛

    ○平林委員 苦しくなるとやるのじゃないですか。
  93. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 ただいまは考えておりませんですから、御安心願います。
  94. 平林剛

    ○平林委員 もう一つ、公債発行によって財源を確保するということは、結局いまお話しのように、所得税あるいは法人税の税収は比較的減少してくる。そうすると、今日の地方財政というものは国の税に従属をして一定の率ができていますね。そうなると、公債発行がふえていけばいくほど、税収の面においての不安ができて、それが地方税にはね返ってきて、地方税の収入が少なくなってくる。そうなりますと、地方財政がそれでなくても赤字のところに、ますますそれが輪をかけてくる。しからば、そういう手当てについてはどういうことを考えているのか、その考えがなくて、ただ国だけ都合がよければいいのだ、こういうわけにはいかない。こういう地方財政に対するはね返りについてどれだけの用意があるか、これも私問題だと思う。
  95. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 減税をすれば、これはもう当然交付税に響いてくるわけであります。それからまた同時に地方税におきましても、これと均衡をとってのいろいろな減税問題というものが起こってくる。そういうようなことから、地方財政においてもその経常財源が減ってくるという問題をどうするかということ、これは非常に大きな問題なのです。しかし、これはまだこれをどういう方法で処理するかということをきめている段階ではございません。これはいずれ経済の当面の問題を解決した後にきめていかなければならぬ重大問題である、いまからその構想は考えておかなければならぬ、そういうふうに考えている段階であります。
  96. 平林剛

    ○平林委員 私がこれをあげましたのは、結局安易な気持ちで公債発行、それが建設公債であろうとあるいは健全な公債政策であろうと何であろうと、名前はどうでもいい、しかし、一たびこれに飛び込んでいけば、税の面においても地方税においても大きくなってくる、そうして地方財政を埋めるためには、結局国家の予算の中から交付金をふやしていく以外にない、そうすれば予算の規模というものは増大していくことになるわけです。もうどういう名前をつけようとも、結局国家財政の膨張を通じてインフレ的傾向は促進をしていくということに十分腹に入れてかからなければならぬ問題ではないかと思うのであります。そういう意味で、私は二回にわたってこの公債の問題について、政府に慎重に、できればそんなことをやらないで切り抜けるようなことを考えなさいと申し上げたのであります。  そこで、当面の不況対策を講ずるにあたって、私は財界の態度についてちょっと大蔵大臣の見解を聞いておきたいのです。当面この不況を克服するために政府はいろいろな手を打っておりますね。もう国会でも野党からやたらいじめられて気の毒なくらいやっておりますね。しかし、そういう中において、民間人の、特に産業界、金融界、こういうところの人々の不況克服についての協力体制というのが欠けているのではないか。今日まで高度成長のしり馬に乗って、そうして日本の経済をここまで持ってきたのは、政府にも責任があるけれども、今日の財界人、産業界の幹部の人にもやはり責任を負うてもらわなければならぬ面があるのです。ここは国会ですから、そういう人に文句を言う機会はないわけでありますが、ほんとうは責任を痛感してもらわなければならぬ。ところが、こうした面における積極的体制というものが政府の半分も三分の一もないのじゃないかと私は見ている。かってなことばかり言っている。やれ何の公債を出すだの、老朽施設については買い上げをして、それで公債を出したらいいとか、まるでかってなことを言っているから、腹が立ってしようがないのです。  そこで、私はこの間こういう新聞を読んだのであります。東京電力が、この不況の中においていろいろな面で下請中小企業が苦労しているだろう、そこで東京電力も半公共的な機関ではあるけれども、その余裕財源といえばおかしいけれども、できるだけ政府に協力する形で、使った金があれば早目に下請に出してやるとか、余裕資金を出してやって、そしてそれによって現在うんとひずみ込んでしまっている景気というものにせめて少しでも協力するというようなことをやりたいとか、やるとかいう話を私は新聞で読んだわけであります。私はこれは一つ考え方だと思うのでありまして、政府がその中心になっててこ入れをやると同時に、やはり小さくともそういうそれぞれの企業で余裕があるところはそういう体制をとって、一緒に不況を乗り切るというような心組みがなければならぬと思う。そんなことをたな上げをして、かってなことばかり言っているわけです。私はそういう面の行政指導というものをもう少し政府はやる必要があるのではないかと思うのです。いかがでしょうか。
  97. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これは全く同感でありまして、いま経済がこういうような状態だけれども、経済界において患者の立場は財界なんだ、その手術を受け、施療を受ける患者がみずから立ち上がる意思がない、養生をする意思がない、こういうのでは政府で幾らやったって、それはきき目があるはずがないじゃないか、この不況の最大の問題は、財界みずからが立ち上がりの熱意と気魄を示すことである、こういうふうに思っております。そういうふうに私は財界に望んでおる次第でございます。
  98. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。武藤山治君。
  99. 武藤山治

    ○武藤委員 福田大蔵大臣、いまの公債を発行した場合どこが引き受けるかということが、これからの日本の経済にどういう影響を与えるかという重大な問題点であります。平林さんは、いま産業界をこういう景気にしてしまった最大の原因、責任が産業界にあるんだ、したがって、産業界にもこの際そういう公債発行をされた場合には、それを引き受けるとかなんとかしてもらいたい、しかし重病人でそれができない、こういう認識を大蔵大臣がしている。  そこで、ひとつ提案でありますが、銀行はもうかっていますね。企業家はみんなもう重病人になって、いまや倒れんばかりの状態にあるのに、銀行だけは相変わらず利益率は非常にいいですね。銀行の純利益だけでもたいへんな金額になる。一割配当を全部各銀行がやっておる。こういう他の財界が重病人のときに銀行だけがもうかっているというこの姿をわれわれは見のがしてはいけない。そこで、もし公債発行なんということをする場合は、これが国民大衆に物価騰貴となってはね返らぬような考慮というものは、私は大蔵大臣としてしかるべきだと思う。これは私の持論でありますが、そこで、銀行の利益でどんどん支店を鉄筋でものすごいものをつくるとか、そういう資産をふやすほうに銀行の利益を使わせないで、やはり社会的使命を痛感させて、銀行の利益で公債を引き受けさせる、しかも、できることならば配当も三年間くらいはストップさせて、社会的使命をこの際銀行に負わせるくらいな強力な手を大蔵大臣として打つべきではないか、こういう私の見解に対して、大臣どう考えますか。
  100. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 今日経済界が非常に不況でありますが、これはもう産業界も金融界も一体だと思うのです。もう全部が責任一体の感覚を持ってこれに取り組むべきものであって、ひとり銀行だけが健全でありましても、他の産業が疲弊するということであれば、銀行自体もそのはね返りを受けなければならない、そういうふうに思います。公債問題でも起きますれば、これは金融界にどうしたって全面的な協力を願わなければならぬわけでありまして、いま具体的にいろいろお話がありますが、その具体的な問題は別にしまして、金融界には十分協力をお願いしたいと考えております。
  101. 平林剛

    ○平林委員 次に、私はLMF、世銀の増資割り当てに応ずるための財源措置について、少しお尋ねをしたいと思うのであります。  今回このための補正予算の歳入財源として日銀の特別納付金五十三億七千九百万円、外為資金の受け入れ百六十一億五千六百万円が用意をされました。この財源措置は、私はいま議論をいたしましたように、わが国の経済事情あるいは政府の進めつつある公債政策の構想などから考えてみまして、看過し得ない問題点が含まれていると考えているわけであります。第一に、日銀の特別納付金五十三億七千九百万円をはじき出したというのは、これは日銀の手持ち金十三・四トンの再評価による差益なんですけれども、一体こういう日銀の保有金は幾らぐらいまだあるんですか。これは大臣でなくてもけっこうです。
  102. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 日銀の保有金といたしまして、現在すでに外貨準備等に入っております金は、政府の貴金属特別会計が持っております二十七トンを除いてほかのものでございますから、金額にして大体三億ドル、これは一部アメリカに預託と申しますか、連邦準備銀行に日本銀行が持っております金庫に持っているものも含めて、そういった数字であります。
  103. 平林剛

    ○平林委員 そうすると、この再評価をして差益を生み出すような金の卵はもうこれであとはないんだ、こういうことなんでしょうか。
  104. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 銀行局の所管かと思いますが、まだ若干接収貴金属の未解除の分があるやに聞いております。まだ確定しておりませんものですから、その点については正確なことは申し上げることができないのですが、一・五キロだそうでございます。
  105. 平林剛

    ○平林委員 一・五キロじゃもう金の卵はないですね。間違いありませんか。一・五キロじゃ金の卵とは言えない。政府関係機関の中にもまだこういうような金の卵があるんですか。
  106. 中尾博之

    ○中尾政府委員 政府関係機関と申しますよりも、政府そのものに貴金属特別会計で金の新産金を持っております。これは二十七トンほどあります。ただし、これは新産金の値段で買ったものでありますから、その意味において再評価の余地はありません。  なお、一部接収未解除の金があります。これは貴金属特別会計所属の金でございます。接収を受けまして、その処理がまだ済んでおりません不特定分でございますから、その金額といいますか、量目がまだ確定いたしませんけれども、これが出てまいりますと、従来の評価でわれわれが経理をいたしております再評価といったような形に政府部内で処理するということは困難かと思います。もしこれを処分いたしまするときになれば、益というような形で処置する余地があるわけです。そのほか、特別会計関係の従来の金資金特別会計、現在の貴金属特別会計でありますが、それの所属でない金で接収されている分もあります。それらの分も将来量目が確定いたしますと返ってくる分もあります。しかし、評価関係につきましては、いま申し上げました分と同じ関係になります。
  107. 吉田重延

    吉田委員長 関連質問を許します。有馬輝武君。
  108. 有馬輝武

    有馬委員 接収貴金属の問題については、これは前に本委員会で処理した経緯もありますし、それからいまの答弁を聞いておりますと、なかなかあいまいでありますから、数量だけはこの際明確にしておいていただきたい。
  109. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 先ほど私は日銀の勘定では被接収分で未解除の分につきまして、ちょっと単位を間違えました。日銀の勘定では、全量としては一・四九六キログラムでございまして、純金量としては一・四七キログラムでございます。もっともこれは先ほど申しましたように、まだこういうふうに返えるかどうか、確実にきまっているものでもございませんが、一応そういうことであります。
  110. 有馬輝武

    有馬委員 いまのは正確ですか。
  111. 鈴木秀雄

    鈴木政府委員 いま申し上げましたのは日銀の分だけで、一般会計の分については、先ほど理財局長が答えたようなことでございます。
  112. 有馬輝武

    有馬委員 じゃ理財局長のほうから……。
  113. 中尾博之

    ○中尾政府委員 ただいま申し上げました政府の金のうち貴金属特別会計所属の金でございまして、接収されました分で申し上げますと、金で五千三百十六キロ二百十七グラム一五、こういうことになっております。ただし、これは接収金で不特定分であります。最終処理におきまして若干の欠減が出てまいると思います。大まかなところで見当つきませんけれども、これは若干下回る、多くは下回らないと思います。四トンと五トンの間くらいになるかと存じます。  それから同じような形で一般会計の分がございます。これは一般会計所属の金で接収をされまして、返ってまいりました暁にはどうするかというと、貴金属特別会計に帰属せしめることもできることになっておりまするが、とにかく現在のところは一般会計の所属金として、そのまま接収された分があります。これはいま手元にこまかい資料が全然ございません。接収された分が約九トンでありまするから、やはり若干の欠減があるかと存じます。これらが返ってまいりますのは、おそらく処理がつきますのは今後約一年、必ずしも一括して処理されないで、部分的に逐次返ってくるかと思いますが、約一年くらいかかるだろうと思います。そういうことであります。
  114. 有馬輝武

    有馬委員 いまの点について、私もここに資料を持ち合わせておりませんが、七年前に私たちが実際に見に行ったときの感覚と、いまのあげられた数量の間には、私の感覚ではちょっと懸隔があり過ぎるように思いますので、その当時からの管理状況について、資料として提出を願いたいと思います。  関連質問を終わります。
  115. 平林剛

    ○平林委員 こういうようなやり方で再評価をして、その差益で財源を得るというようなことは、大蔵大臣、インフレマネーでしょう。
  116. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 これはインフレでも何でもないのです。水の流れるような処理なんでございます。つまり、日本銀行で持っておる金を再評価する、それを政府に収納する、その金でまた日本銀行からドルを買う、そのドルIMFに持っていく、こういうので、通貨の関係は起こらないのです。そういうことで、財政操作上は全く中立のものである、こういうふうに考えています。
  117. 平林剛

    ○平林委員 しかし、一つの評価益による差益というものが信用の創造になるわけですし、特にこの場合に私は国内政策との関係から考えるのですけれども、インフレマネーでしょう。私は中正のものだなんてどうも理解できないのですがね。
  118. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 通貨はこれは全然増発にならないのです。したがってインフレもデフレも起こるはずがないのであります。
  119. 平林剛

    ○平林委員 佐藤総理大臣がかつて大蔵大臣になったときに、そういうことをやることはインフレマネーだと言っていますよ。
  120. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 今度これを使うというのは、ドルを買ってそしてこれをIMFに提供する、ワールドバンクへ出す、こういうことなんでございまして、これをもし再評価して、その益を一般会計に繰り入れて、これを何か公共事業にでも使うということになれば、そこで通貨も増発し、またその金が経済界にぴんぴんと生きて動いていくわけでありますが、今度の措置はそういうのじゃなくて、また日銀から受けた金で日銀が持っておるドルを買って、そしてこれを国際金融機関に出そうというのですから、何ら経済界には影響ないのであります。
  121. 平林剛

    ○平林委員 そこに出した融資が今度は回り回って日本に返ってきて、産業開発やその他にも使われるわけでしょう。やっぱりあなたインフレマネーじゃないですか。だから佐藤大蔵大臣のころはっきり言っているのです。「ただいまのような経済情勢のもとにおきましては、いわゆるインフレ・マネーは使わない。いわゆる赤字公債であるとか、今また御指摘になりました金の再評価差益だとか、こういうものはいわゆるインフレ・マネーでございますが、そういうものは使わない、こういう基本的なはっきりした主張をいたしております。」ということを、この大蔵委員会で、昭和三十四年十二月十一日、横路節雄委員質問に答えているのです。当時もやはり災害復旧だとかあるいは伊勢湾台風だとかで財源がなくて苦しくて、そういうときに、おまえやるかと言ったら、いやこれはインフレマネーだからやりません。こう言っている。いまやその人が総理大臣、あなたは大蔵大臣。そうすると、こういうものも感覚が違って、中正なものだ、こういうことになるのですね。私はその感覚がこわいのです。そういう感覚でおやりになることが、今後の膨張財政、インフレ傾向に拍車をかけるのじゃないでしょうか。ゆめゆめ私は福田大蔵大臣は警戒を怠ってはならぬと考えておるのです。これははっきり言って、あまり健全なやり方じゃないのですよ。本音をどうぞ。
  122. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 本音を言えば、先ほど申し上げたとおりなんでありまして、これは使い方でどうにでもなるのです。これを国内のものを買うというような方向で使いますれば、おっしゃるようにインフレの作用もしますが、そうじゃないのです。これは日本銀行から納付した金はまた日本銀行に返してしまうのです。そういう単純な手続だけの問題でありまして、経済界には何らの影響はないのです。
  123. 平林剛

    ○平林委員 どうも私は納得しかねます。しかし時間もございませんから、最後に、外為会計のインベントリーファイナンス、これを一部を取りくずして財源にしておるわけでありますけれども、この取りくずしで外為会計の資金が不足になったときはどうするか、それから、こういうやり方をとるのも健全均衡の原則を乱すことになりませんか。
  124. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 いまの外為の状況では資金に不足を来たすというような状況ではございませんし、またことしは外為資金で大体十三億円くらいの益金を見込んでいるのです。今度の処置によりまして三億円くらい減ろうかと思いますが、十億円は益金が残るという状況でございまして、この会計健全性に何らの支障はない、さように考えております。
  125. 平林剛

    ○平林委員 どうもお答えは納得できません。かなり重大な問題が含まれていると思いますけれども、約束の時間がございますから、これで私の質問を終わりたいと思います。
  126. 吉田重延

  127. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、一昨日質問をいたしました質問事項に関連をして、留保した二、三の点について大臣に率直にお尋ねをいたしたいと思います。  その一つは、先ほどの平林委員質問にもあったのですが、今次臨時国会を通して予算委員会等を中心に論議をされてまいっております公債発行についての見通しなり、考え方であります。私どもも、私自身の考えからいきますと、やはり昨年度、三十九年度の決算が、例の国税収納金整理資金法の政令改正による分を含めて約八百億の赤字、今年度の歳入欠陥ないしは補正予算の組み方にもよりますけれども、大体どの程度の歳入欠陥が出るだろうかという点については、若干の数字の相違がありましょうけれども、大体三千億程度の歳入欠陥といいますか、財源不足というものが予見されるのではないだろうか。こういう見通しの中から、いわゆる公債発行論なるものも急速な形で提起されておるというふうに判断をするわけです。その場合に、第二次佐藤内閣が組閣をして、その直後の方針としては、この財源難をいかなる方策において克服するかという点について、公債発行というような形ではなくて、むしろ既定予算の経費削減と申しますか、これは画一的な削減ではなくて、一昨日の質問でも私はやや具体的にこれは例を列挙して政務次官から御答弁をいただいたところでございますけれども、私は、やはり旅費、物件費、庁費、こういったものの節約、経済効果のあまりあがらない、マンネリズム化しておる各種の補助金の整理、不要不急と目される経費、あるいは防衛庁関係の予算の中でかなり大幅に削減できるものを削減をしていく、あるいは交際費等のこれまた大幅削減、こういったようなことを大胆にやって——第二次佐藤内閣の組閣完了後に政府の方針として発表いたしました約一割程度の節減を大胆にやりさえすれば、三千五百億程度のいわゆることしの歳入欠陥と目される程度のものはそれによって補てんできるのではないか、そういう方針を当初とっておったと思うのですけれども、急に一カ月そこそこの間にそういう削減方策というものが転換をして、そうして公債発行論に踏み切られる方向に方針が転換したように思うわけであります。これは、私の判断なり考え方が間違っておれば、その点を御指摘いただきたいわけでありますが、私はやはり正攻法としてはまず既定経費の節減ということを中心にして、今日当面しておる財政難を克服することが正しいのではないかと思うわけでありますが、それについての大臣の所見を伺いたいと思います。   〔委員長退席、金子(一)委員長代理着席〕
  128. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 一割削減は、改造佐藤内閣後の問題ではないのです。その前の段階におきましてそういう方針がきわめられたわけなんです。それで、それをやりました趣旨は、どうも税が減りそうだ、これに対策を講じておかなければならぬというのでそういう一割削減というような措置がとられたわけでありますが、改造後の段階になりますと、急に経済界に非常な不況ムードが出てくる、こういうようなこともありまして、財政支出を繰り上げなければならぬ、財政投融資も繰り上げなければならぬとか、さらには財政投融資のワクの拡大もしなければならぬとか、そういうような段階になってきたわけであります。そういう段階になりますと、一割削減という問題は、経済的に見ましてつり合いがとれないというふうに考えられるに至ったわけであります。そういうような環境の変化もありますので方針を変更するに至った、こういういきさつでございます。
  129. 藤田高敏

    藤田(高)委員 基本的な考えとしては、いわゆる景気刺激策といいますか、需要喚起というか、そういう考え方に沿って既定経費の節減方針というものは変更した、こういうふうに理解してよろしいわけですか。
  130. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 大体さようなとおりでございます。
  131. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私は、そういう意味の方針からすれば、主としてその対象にあがるものは公共事業の関係ではなかろうかと思うのです。私がいま指摘をし、一昨日もやや具体的な事例をあげて質問をしましたような事柄は、私は、そういう景気の刺激とかあるいは需要喚起というものにはあまり関係がないと思うのです。これは本来的に公債発行をしなければいけないような財政事情になっておるとか、景気が非常に悪いから景気刺激策をとるためにやるとかいうものではなくて、むしろ本来的にもそういう冗費節約的なものはやらなければいかぬと思うのです。たしか一昨日の政務次官の御答弁では、百五十億程度の冗費節約をやる方針だ、こういうことであります。皮肉な例かもわかりませんが、例の専売公社の選挙違反の六百万も七百万もの資金需要ではないけれども、やろうとすれば、今日の庁費、物件費、旅費あるいは交際費、先ほど言ったような支出を一割程度今日の情勢の中で節減しようと思えばできるのではなかろうか。そういう点については、百五十億程度ということでなくて、もっと大幅な削減、節約方針というものを新大臣のもとに打ち出して、今日の財政難を克服する重要な要素にすべきではないかと思うのですが、それについての見解はどうでしょう。
  132. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 国の財政のことでございますから、これはもうほんとうにつつましやかにやっていくべきものだ、こういうふうに考えます。しかし、この百五十億円を既定の予算から留保をするということでも、これはなかなか容易ならざることなんでありまして、精一ぱい努力してそのくらいか、こういうふうに見られる次第でございますが、なお、お気づきの点等がありましたならば御教授願いまして、せいぜい努力していきたいと思います。
  133. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この点については、本日この程度の額を直ちにということも無理であろうかと思いますが、私は、先日の財政方針の中で新大臣が述べられた、冗費を節約し、限られた資金を最も効率的に運用していくんだ、こういうまじめなお考えに対しては非常に傾聴して方針を承ったわけなんですけれども、そういうことは単に財政方針で言うだけではなくて、具体的に、やはり目に見えるように国民の前に明らかにしなければならない。また、特に先ほど指摘しましたような財政難におちいっておる段階では、なおさら国民的な要望としてそういうことを強く政府に対して求められると思うのです。そういう点で、これは具体的な数字をきょうどの程度ということまでは申し上げませんけれども、百五十億なんという、私どもの感覚からいえばみみっちいワクにこだわらないで、積極的な合理化方策をとられることを要望しておきたいと思います。  次に、公債発行の是非については、これは借り入れ金でいくか、公債発行でいくかということは、最終的にまだ決定をしていないんだ、こうおっしゃっておりますし、私ども基本的に反対の立場にあるわけでありますが、私一つ昨日の予算委員会あるいはきょうの先ほどの質疑応答を通して感じておることなんですが、政府は今日段階で、すでに公債発行でいくか、それとも借り入れ金でいくかという態度決定、これはもうやっておるような気がするわけです。それはなぜかといいますと、少なくとも今日段階で、この臨時国会を迎えた段階でそういう方針がきまっておらないということ自体が私はおかしいと思うのです。これは一つの私なりの判断でありますが、内閣総理大臣の施政方針においても、あるいは福田大蔵大臣の財政方針においても、やはり公債発行の問題は具体的に触れられておるわけなんですね。総理の施政方針では「公債の発行を準備する等、長期的な財政経済政策を推進する」ということで、具体的な公債発行の問題にも触れられておる。したがって、私がここで感じますことは、これまたたいへん皮肉な言い方かもわかりませんけれども、日韓会談の調印は、ああいう閉会中に、こそどろ的な、政治的にはあまり正攻法でない時期をねらって政府はおやりになる。あるいは国税収納金整理資金法の政令の改正についても、一昨日私は指摘をしたのですが、われわれは四十年度の予算審議にあたってすでにその段階でことしの予算というものは歳入欠陥が生まれてくるのじゃなかろうかというようなことを指摘をしたときに、田中大蔵大臣を中心にしてここに並ばれておる人たちは、そういうことはないんだ、いわゆる均衡健全財政でいくんだ、いけるんだ、こういうことをおっしゃっておりながら、その年度末の三月三十一日に、これまた何かいままでそういう歳入欠陥が出ることは十分わかっておりながら、三月三十一日ぽっと予算が国会を通過する段階になって国税収納金整理資金法の政令の改正をおやりになる、こういう一連の政府のやり口、やり方というものを見ますると、たいへん悪意に満ちたような言い方でありますけれども、私はいま大蔵大臣が、公債を発行するか、借り入れ金でいくかというのは方針がきまっておらない。こうおっしゃるのだけれども、実際腹の中はもうきまっておるんだ、そして臨時国会が終わったとたんに公債発行をやるんだ。こう出られるような気がするわけです。これは福田大蔵大臣個人に対する人間のいい悪いとか、そういうものでなしに、政府のやり方として私はそういう危惧を抱くわけです。したがって、先ほどの平林委員質問にもありましたように、やはり今日段階で公債発行をやるのであればやる、こういう一つの条件と性格のもとに、いつ公債発行の時期を設定をしてやるんだ、こういう政府の方針というものを率直にお話しになられて、そうしてその是非をこういった議会を通して論議することが一番私はいいんじゃないかと思うのですが、くどいようでありますけれども、公債発行の問題についてのほんとうの真意というものをひとつ聞かしてもらいたいと思います。
  134. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 借り入れ金にしますか、公債にしますかということは、先ほどどういう立場からきめ方がむずかしいのだということを申し上げたわけですが、ただいま私ほんとうにきめていないのです。また、これは国会を終わって一、二日できまるべき性格のものでもありません。私もそう急いでおりません。
  135. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、借り入れ金でいく場合と公債政策をとる場合について、借り入れ金でいった場合にはどういう面がむずかしい、公債でいった場合はその点はどういうふうに克服できる、こういう点を具体的にひとつ判断材料として説明していただけませんか。
  136. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 経済的側面から見た場合にはそういう違いはないのですが、形式として借り入れ金の形をとった場合におきましては、長期構想における積極的な意味の公債発行と、いま臨時に不況対策としてとる借金、これの性格が形式上きわめて明瞭になるわけです。ところが、先ほど平林さんにも申し上げたのですが、私は、この借金は日本銀行にしりを持っていかないようにしたいということもまた考えており、最善の努力をしなければならぬわけなんでありまするが、そういう面から見ますると、国債方式をとるほうが便利であるという一面があるわけです。そういうような面をいろいろ考えなければならぬわけでありますが、その利害得失等をいま考えておる。これは私はそう急いでいないのです。いないゆえんのものは、いま決して財源には事欠くような状態ではございません。  〔金子(一)委員長代理退席、委員長着席〕 大蔵省証券の発行限度もいただいておるわけでございまするが、これもそう使っておらぬというような状態で、また必要な段階はよほど先である、それまでにゆっくり、間違わないような結論を得ておいたほうがいい、こういう考え方からいま検討しておるというわけなんです。
  137. 藤田高敏

    藤田(高)委員 非常に短期の不況対策として公債でいくか、あるいは借り入れ金でいくかという場合に、短期の不況対策の施策としておやりになるのであれば借り入れ金でいくほうがいいのではないかと思うのですけれども政府は、借り入れ金でやった場合に、その返済の見通しが立たないから公債でいこうという方向にお考えが進んでおるんじゃないでしょうか。
  138. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 さような観点考慮は払っておりません。これは借り入れ金にいたしましても公債にいたしましても、それはきめ方でございまして、この借り入れ金は十年以内に返すとか、いろいろその条件のきめ方の問題でありまして、それが中心になって借り入れ金か公債かというようなことを考えておるわけじゃございません。
  139. 藤田高敏

    藤田(高)委員 これは常識的に考えて、一般の借り入れの場合であれば、その返済期間はおのずから制限がある。公債の場合は長期に返済ができるということで、やはり安易な公債政策のほうによりどころを求めておるんじゃないかと判断するわけですが、その点はどうでしょう。
  140. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 さような考慮は毛頭いたしておりませんです。
  141. 藤田高敏

    藤田(高)委員 この点は、おそらく水かけといいますか、見解の相違といいますか、そういうことに落ち着くと思いますから、これで質問を終わります。  私は次に、政府が先ほどの御答弁にもありましたけれども、既定経費の節減策を、一割削減というようなものはとらないで、むしろ公共事業の繰り上げあるいは財政投融資のワクの拡大、こういうものによって積極的な需要喚起をやっていくのだ、こういうふうにおっしゃられておるわけですが、私はそういう需要喚起をやられるという方針であれば、その最も代表的なものとして、東西貿易のワクの拡大、そういう政策を積極的におとりになることが本来的な有効需要の拡大につながると思うのです。過般商工委員会におきましても、通産大臣が、例の吉田書簡にはこだわらないで、中共貿易の問題についても今後前向きでやっていきたい、こういう答弁があったようでありますが、私は、大蔵省の立場からいえば、今日のこの景気を刺激さしていく、あるいは財政的に特にそういう刺激策をとらなければいけない、とろうとしておる立場からいっても、この吉田書簡の問題については、吉田書簡にこだわらないんだということだけでなくて、そのことは即輸出入銀行の融資をつけるんだ、今日まで問題になってきたこの輸銀の問題については吉田書簡にこだわらないということは、即輸銀融資をつけて、そうして中共との貿易についても軌道に乗せるんだ、こういうことが当然のこととして決定をされるべきだと思うのですが、新聞その他で拝見をいたしますと、その問題は輸出入銀行それ自体の自主性にまかすとおっしゃっておるんだけれども、私はあまりにもこれは形式論に過ぎると思うわけです。したがって、今日はこの問題に対する大蔵大臣並びに政府の統一見解というものをお聞かせをいただきたい。
  142. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 共産圏貿易じゃなくて中共貿易ですか、中共貿易につきましても、共産圏貿易に対する一般原則、つまり政経分離の方針のもとにできる限りの交易を行なう、こういうことでございます。吉田書簡のお話もありますが、吉田書簡にこれは法的に拘束をされておるというような状態ではございませんです。  それから、輸銀は一体どういうふうに使うのかということでございまするが、輸銀は、中共貿易だからといって全部輸銀でなければならぬというふうには考えておりません。これは一般の貿易についても同様であります。また中共貿易だからといって輸銀を使ってはならないとも考えておりません。要は、中共と日本との貿易につきましては、先ほど申し上げました政経分離の原則のもとに、日本政府が自主性を持ってこれをきめる、こういうことで御了承願います。
  143. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私がいまお尋ねしておるのは、そういう一般的な基本方針ではないわけです。やはりこれは現実の問題として、いま少し焦点を合わせて、まじめな御答弁をいただきたいと思うのですが、この吉田書簡の問題ついては法律的に拘束力はないとおっしゃるが、実質的に政治的な拘束力というものは法律的な拘束力以上のものを、この中共貿易の例の日立の貨物船の問題とか、あるいはニチボーのプラントの問題については、いわば吉田書簡というものによって政治的にがんじがらめに縛りつけて、そうして輸出入銀行の融資をつけなかった。これはもう現実の問題として周知の事実であります。したがって、今度の臨時国会になって通産大臣の発言というものが政治的に非常に大きくクローズアップされたのも、吉田書簡によって実質的に拘束されてきたこの輸出入銀行の取り扱いを吉田書簡に拘束されないということは、即輸出入銀行の融資についても考慮するのだ、つけるのだ、こういうことで、いわば筋を通した施策というものがとられなければいけないと思うわけですが、それについての具体的なお考えを聞かしてもらいたい。この種の問題は、一通産大臣の言明であるとか、あるいは大蔵大臣の考えであるとかということでなくて、今日政府が景気喚起策を当面の経済政策の最重点施策としておとりになっておるのだから、むしろそういうことを積極的にやることが当然ではないかということをお尋ねしておるわけなんで、したがって、大蔵大臣の立場から政府の統一見解というものを聞かしてもらいたい、こういうふうにお尋ねしておるわけです。
  144. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 具体的に申し上げたつもりなんですがね。政府は中共貿易について輸出入銀行を使ってはならないとは考えておりませんし、また中共貿易だからといって全部輸出入銀行でまかなわなければならぬとも考えておりませんし、はっきり申し上げておるつもりです。   〔「名答弁」と呼ぶ者あり〕
  145. 藤田高敏

    藤田(高)委員 同じメイ答弁でもしんにゅうのかかったメイ答弁もあるわけですから、これはいわゆるメイ答弁にもピンからキリまであるわけです。私はやはり、いまの大臣の御答弁の中にはある意味において非常な含みのある発言であったように思うわけです。中共貿易だからといって使わさないとか、そういうことではないのだ。それでは、一番問題になっておった日立の貨物船それからニチボーのプラントなど、一時キャンセルになっておったこれについても使わすということですね。
  146. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 個々の具体的のケースにつきましては、それをいかように扱うか、これはもう中共の関係、国民政府の関係あるいはどこのだれの関係ということに何ら拘束されることなく、自主的にこれをきめる、こういうふうに御了承願います。
  147. 藤田高敏

    藤田(高)委員 それでは、この一時キャンセルになっておった、私がいま指摘したこれらの取引についても輸出入銀行の融資がつけられるというふうに判断してもよろしいですか。
  148. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 先ほどからはっきり申し上げておるのですが、中共貿易だからといって輸出入銀行が必ず発動しなければならぬ、そうは考えておりません。しかし、中共貿易だからといってこれを特に排除するというふうにも考えておりません。要は、個々のケース・バイ・ケースで、日本政府が何ものにも拘束されずに独自の自主的判断できめる、こういうことでございます。
  149. 藤田高敏

    藤田(高)委員 一般的なことではなくて、現実吉田書簡にこだわって、その吉田書簡というものによって政治的に私がいま指摘したような取引が一時中断されておったというこの事実の上に立って、そういう事実が今日まで続いておったわけですから、そういう状態は通産大臣の言明以来吉田書簡には拘束されないということで、いわゆる輸銀の問題についてもそういう政治的なワクというものが排除される、こういうふうに具体的に、今度の通産大臣の発言に関連をする吉田書簡の問題と輸銀との関係についてはどうでしょうか。
  150. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 先ほどから申し上げておるとおり、自主的にきめるのであって、何ものにも拘束されるという考えは持っておりません。わが日本政府の自主的な考慮においてこれをきめる、こういうことであります。
  151. 藤田高敏

    藤田(高)委員 大臣の時間がないようでありますので、この間から留保しておりました問題点がいま一つあるわけでありますが、簡単にこれはお尋ねしておきたいと思うのです。  過ぐる通常国会における佐藤内閣の重要な方針は、ひずみ是正と社会開発、こういうところに力点を置いておったと思う。ところが、一昨日の質問で、これまたあれこれの材料を提起して、私は、ひずみ是正というものは少なくとも今日段階までは効果をあげておらない、むしろひずみというものは拡大の様相をとってきた、少くともひずみ是正という成果はあがってないというふうに判断をするのだけれども、それについてはどうかという点をお尋ねしたわけです。これについては十分なお返事を私はいただくことができなかったと思うわけですが、それについての大臣の見解を承りたいのと、いま一つは、ひずみ是正というくらいなことでなくて、今日あらわれているいろいろな経済現象を分析してみると、これは高度経済成長政策の失敗であったのではないか。失敗だというふうに私どもは思うわけですけれども、一昨日の御答弁では、それは失敗ではなくて、やはりひずみだ、こうおっしゃるのですが、ひずみと失敗との限界はどこで引かれるのですか。専門家の大臣、ひとつ聞かせてもらいたい。
  152. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 高度成長政策の残した功績というものは大きなものがあると思う。ともかく日本の経済の量的拡大をここまで持ってきたという点は大きな足跡だろうと思うのです。ただ、お話のように、それに伴っていろいろなひずみ現象が出てきておるわけです。その第一は国際収支、また第二は物価の問題またいろいろの産業部門における格差の問題あるいは地域格差というような問題もあるわけであります。そういう問題でございまするが、国際収支の問題は、御承知のように改善をされてきた。しかし物価の問題はなかなかそこまでいっておらない。それから各種不均衡の問題、これは今後に残されておる問題である、こういうふうに理解をしております。
  153. 藤田高敏

    藤田(高)委員 私の質問時間が制約されておりますので、十分私自身が理解できるような答弁はどうもいただけないような気がするわけですが、私は、やはり今日の企業間信用の膨張、あるいは中小企業の倒産状況、あるいは製品の在庫指数の異常な膨張あるいは山一証券に代表されるような証券恐慌ともいうべき経済現象、あるいは労働力の絶対不足、あるいは先ほど大臣が指摘された各産業間あるいは企業間の格差、こういう格差の増大、こういうものをずっと拾ってみますと、これは私は単なるひずみなんというようなものによって理解できるしろものではない、やはりこれは経済の専門家からいえば恐慌的な経済状態におちいっておると思う。したがって、こういう状態を招いたことは、やはり私は池田内閣から佐藤内閣にわたる今日の政府の経済政策の失敗であったというふうに率直に認められてしかるべきではないかと思います。それについての御見解をひとつ承って、私の質問を終わりたいと思います。
  154. 福田赳夫

    ○福田(赳)国務大臣 まあそれは表現の問題であり、見解の相違であり議論は尽きないと思いますが、私どもは今日の状態は恐慌だとは考えておりません。あくまでもひずみである、こういうふうに考えております。
  155. 吉田重延

    吉田委員長 本案に対する質疑はこれにて終了いたしました。     —————————————
  156. 吉田重延

    吉田委員長 これより討論に入ります。通告がありますので、順次これを許します。武藤山治君。
  157. 武藤山治

    ○武藤委員 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、社会党を代表して討論をいたします。  第一に、国際流動性強化のため、国際連帯の責務を果たさんとする今回の増資には、各国家の国家的利益の主張が露骨にあらわれております。特別増資の責任をのがれたアメリカ、フランス、イギリス等々もございます。日本政府は安易に許諾し、今日の国家財政の窮状を強く訴えながら、国家的利益の追求という態度に欠けており、われわれの不満とするところであります。  第二に、通常国会に提案すべき時間も十分あったにもかかわらず、財源難からこれができず、会期の短い今臨時国会に提案をいたし、大臣の出席のもと十分審議する時間が持てない結果となりました。このような法案提出の時期、財源の事情からやむを得なかったとは申すかもしれませんけれども、われわれとして十分審議を尽くせないかような時期に提案をしたということに対しては、非常な不満を持っておるものであります。  第三は、今回の出資に対する財源にインベントリーの取りくずしを行ない、本年三月に決定した外為特別会計を半年もたたないうちに変更するという変則事態を招来いたしました。特別会計はそれぞれの必要に応じて均衡健全予算を組んでいるはずであります。この趣旨から見ましても、今回の外為特別会計からの財源捻出は無理があり、承認するわけにはいきません。  わが党は、今日の財源難に日本財政をおとしいれた政府の責任を追及し、国家国民の利益を守るため、本財源の捻出に対して反対の意を表明するものであります。  簡単でありますが、本法案に対する社会党の態度を表明して、討論にいたします。
  158. 吉田重延

    吉田委員長 竹本孫一君。
  159. 竹本孫一

    ○竹本委員 ただいま議題となりました、国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案に対し、私は民主社会党を代表して、反対の討論を行なわんとするものであります。  この法律案は、いわゆるIMF及び世界銀行に対し、政府はそれぞれ二億二千五百万ドルまたは一億六百六十万ドルの追加出資をすることができることとしようとするものでありますが、国際流動性の増強には、わが国も協力することが必要でありますので、この大筋については異論はありません。  ただ問題は、この追加出資の払い込み財源であります。その一部は前回の増資のときと同様に、日銀保有の金でいまだ再評価を行なっていない分を再評価することによってまかなうのであります。残りの部分は、外為会計のインベントリーファイナンスの一部を取りくずすことにしております。政府が現在財源難で四苦八苦している窮状は十分わかりますし、その責任の大部分は池田内閣にありと思うのでありますが、一般会計と特別会計を通じて総合的な健全均衡財政を堅持しようとつとめてきた政府往年の意気込みは今日どこへか消えうせて、健全均衡原則は大きくくずれ去ろうとしておることをわれわれは憂うるのであります。減債基金の繰り入れは二分の一から五分の一に減じました。利子補給というずるい手を考え出して、十億円で三百数十億円の財源捻出もいたしました。大蔵省証券、借り入れ金から公債発行への道をも政府は不況克服の名においていまばく進しようといたしております。  福田大蔵大臣は、いまの日本経済にはインフレ要因とデフレ要因が混在しているものと規定しておられましたけれども、池田インフレに続くデフレ的、構造的不況の中で、その切り抜けのために、福田財政が、経済の社会化や計画化の路線ではなく、インフレ的手法に走ることをわれわれは心配するものであります。  この意味におきまして、本案にあらわれた金の再評価とか、インベントリーの取りくずしの措置は、政府の方針が無原則なやりくり算段、無計画なインフレ体制に通じるものであるとして、賛成することができないのであります。  以上で私の反対討論を終わります。
  160. 吉田重延

    吉田委員長 これにて討論は終局いたしました。  続いて採決に入ります。  本案を原案のとおり可決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  161. 吉田重延

    吉田委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決いたしました。  ただいま議決いたしました本法律案に関する委員会報告書の作成等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  162. 吉田重延

    吉田委員長 御異議なしと認めます。よって、さよう決しました。   〔報告書は附録に掲載〕
  163. 吉田重延

    吉田委員長 次会は、来たる十日、午前十時より理事会、十時三十分より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。    午後二時四十八分散会