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1965-07-31 第49回国会 衆議院 外務委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    国会召集日昭和四十年七月二十二日)(木曜日) (午前零時現在)における本委員は、次の通りであ る。    委員長 安藤  覺君    理事 椎熊 三郎君 理事 高瀬  傳君    理事 野田 武夫君 理事 毛利 松平君    理事 戸叶 里子君 理事 帆足  計君    理事 穗積 七郎君       愛知 揆一君    池田正之輔君       宇都宮徳馬君    菊池 義郎君       鯨岡 兵輔君    佐伯 宗義君       園田  直君    竹内 黎一君       永田 亮一君    野見山清造君       濱野 清吾君    増田甲子七君       三原 朝雄君    森下 國雄君       岡田 春夫君    勝間田清一君       黒田 寿男君    河野  密君       西村 関一君    松本 七郎君       永末 英一君    川上 貫一君 ————————————————————— 昭和四十年七月三十一日(土曜日)    午前十一時四分開議  出席委員    委員長 安藤  覺君    理事 高瀬  傳君 理事 永田 亮一君    理事 野田 武夫君 理事 戸叶 里子君    理事 帆足  計君       菊池 義郎君    竹内 黎一君       橋本龍太郎君    濱野 清吾君       三原 朝雄君    森下 國雄君       黒田 寿男君    河野  密君       永末英一君  出席国務大臣         外 務 大 臣 椎名悦三郎君  出席政府委員         外務政務次官  正示啓次郎君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (北米局長)  安川  壯君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君  委員外出席者         運 輸 技 官         (気象庁予報部         長)      今里  能君     ————————————— 七月二十六日  委員椎熊三郎辞任につき、その補欠として小  坂善太郎君が議長指名委員選任された。 同月三十一日  委員鯨岡兵輔君及び増田甲子七君辞任につき、  その補欠として田中龍夫君及び橋本龍太郎君が  議長指名委員選任された。 同日  委員橋本龍太郎辞任につき、その補欠として  増田甲子七君が議長指名委員選任さ  れた。 同日  理事福田篤泰君六月三日委員辞任につき、その  補欠として田中龍夫君が理事に当選した。 同日  理事椎熊三郎君七月二十六日委員辞任につき、  その補欠として永田亮一君が理事に当選した。     ————————————— 七月二十七日  日本国グレートブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の領事条約締結について  承認を求めるの件(条約第一号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事補欠選任  国政調査承認要求に関する件  日本国グレートブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の領事条約締結について  承認を求めるの件(条約第一号)  国際情勢に関する件      ————◇—————
  2. 安藤覺

    安藤委員長 これより会議を開きます。  当委員会理事でありました椎熊三郎君が、去る二十七日逝去されました。まことに哀惜の念にたえません。  ここに衷悼の意を表し、黙祷をささげたいと存じます。御起立を願います。   〔総員起立黙祷
  3. 安藤覺

    安藤委員長 御着席を願います。      ————◇—————
  4. 安藤覺

    安藤委員長 国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  当委員会としては、国際情勢に関する件について調査を行なうため、規則の定めるところにより議長承認を求めたいと存じますが、御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認め、よって、そのようにいたします。      ————◇—————
  6. 安藤覺

    安藤委員長 理事補欠選任についておはかりいたします。  理事福田篤泰君が六月三日、椎熊三郎君が去る二十六日委員辞任されましたので、理事欠員が二名になっております。  この際、理事補欠選任を行ないたいと思いますが、先例により委員長において指名するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 安藤覺

    安藤委員長 御異議なしと認め田中龍夫君、永田亮一君を理事指名いたします。      ————◇—————
  8. 安藤覺

    安藤委員長 この際、正示政務次官から発言を求められておりますので、これを許します。正示政務次官
  9. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 一言ごあいさつを申し上げます。  先般、外務省政務次官に就任をいたしまして、かねて委員理事といたしましてたいへんお世話になりましたこの外務委員会に、いろいろまた今後御支援を願うことが多いと思います。何とぞよろしく御指導願います。(拍手)      ————◇—————
  10. 安藤覺

    安藤委員長 国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の通告がありますので、これを許します。帆足計君。
  11. 帆足計

    帆足委員 七月二十七日にアメリカ当局から日本政府に対しまして、B52の台風避難の点につきまして連絡がありました。それにつきまして、外務省当局として消極的に肯定されたかのごとき報道が伝わっておりましたところ、やがて沖繩嘉手納飛行場B52機二十数機、約三十機が参りまして、そのまま直ちにベトナムへの戦略爆撃を行なっておるということが伝えられております。この問題は、日本安全保障上きわめて重要な問題でありまして、現地沖繩はもとより、日本国民に重大な衝撃を与えておりますから、事の次第を明確にし、また論理を明らかにして、日本国民の安全と平和の見地から適切な態度をとり、自主的な心がまえを持ちまして対処いたしますことを政府に要求しますために、以下逐次御質問したいと思います。また国民各位も、この問題の筋道が明確になることを望んでおりますことは、昨日・本日の新聞がこぞって重大な関心を持ってこの問題を見守っておりますことからも、明らかでございます。  そこで、まず第一にお尋ねいたしますが、外務省当局に、B52が台風避難のために参るという通告がありましたのは、いつのことであって、何機ぐらいの機数のものが立ち寄ると言ってまいりましたのか、また、それに対しまして、外務省当局としてはどのように答えられたのか、まずこの点を明確にしていただきたいと思います。
  12. 安川壯

    安川政府委員 アメリカから通告がございましたのは、七月二十七日の午前でございます。大使館から私のほうに電話をもちまして、グアム島の付近に台風が接近しておるので、それを避難するためにB5爆撃機約二十五機程度板付飛行場に飛来するかもしれない——飛来するとは申しておりません。飛来するかもしれないということを通告をしてまいりまして、もちろんこれは台風避難の目的であるから、板付飛行場滞在中は何らの作戦任務にも従事しない、そして天候が回復次第、グアム島に帰るという通告がございました。同じような通告と申しますか、連絡が、約二ヵ月くらい前だったと思いますが、ございまして、そのときは現実台風が生じなかったためにそのままになっておりますが、これに対しましては、これは一時的な台風避難のための使用でございますから、安保条約上、日本政府との事前協議を要する問題でもございませんし、そういう関係で、これに対して特に異議を申し立てる筋合いではないと考えましたので、そのままその通告を了承した次第でございます。
  13. 帆足計

    帆足委員 そこで、私ども疑問といたしますのは、一つは、台風ということでそういう申し入れがあった。しかも作戦行動はしない。それが二、三日たたないうちに、今度は沖繩から、おそらく同じ編隊であろうと思われるB52から作戦行動が行なわれたというので、まずアメリカ申し入れに対して非常な疑惑と、それから不安を感ずるわけで、不信の思いもするわけでございます。台風と申しましても、御承知のごとく、いまベトナム中心にして戦闘が行なわれておりまして、気象条件が最大の戦略的条件であることは御承知のとおりで、孫子の兵法にも、天の時、地の利を利用するということは、これは戦略中心問題でございます。これが一体、台風があるからといって、グアム島からわざわざ板付に来ねばならぬという理由もよくわかりませんし、気象上の条件が、ちょうど難破船が近所に来ておりまして、緊急避難をするというのならわかるのでございますけれども、はるばるグアムから何も板付までおいでになるには及ぶまいと、しろうとして、だれしも常識としてそう考える。ハワイもあろうし、フィリピンもあろうと思うのでございます。また、グアムにじっとしていてもよかりそうなもので、そういう物騒なものが、しかも一個師団または数個師団に匹敵するような破壊力を持っておる戦力が突如として台風のためだといってほしいままに日本国土に飛来するということは、今日極東の事態が一触即発の状況のときに、だれしも不安を感ずることは当然であろうと思います。したがいまして、外務省当局としては、その電話を受けましたときに、まずこれがどのくらいの兵力であって、そして、はたして気象状況からもその必要があるかどうかということを確むべきであったと思います。  私はまず、今里気象庁予報部長が参っておりますから、政府のほうの御発言がある前に、これは純粋の物理的現象でございますから、気象庁からこの二十六、七日以後、今日に至るまでの気象状況の要点だけを伺っておきたい。先に気象庁から伺いまして、それから外務省当局にどういう食い違いがあったかをあとで伺いたいと思います。
  14. 今里能

    今里説明員 気象庁今里予報部長でございます。ただいまの御質問に関しまして、二十七日以後のグアム周辺気象状況について御説明を申し上げます。  七月二十七日の午前三時、これは日本時間でございますが、このときには中心示度が千四ミリバールの弱い台風グアム島の東南東九百キロのところにございまして、この台風は非常に大型ではございましたが、影響する台風のまとまった等圧線の範囲は大きいのでございましたけれども、中心気圧はそれほど低くなっておりません。  それから、翌二十八日の午前三時でございますが、この弱い台風——台風と申しますよりは熱帯気圧でございます。熱帯気圧は、グアム東南東四百五十キロのところに接近しております。中心示度は約二ミリバール低下いたしまして、千二ミリバール、依然として大型ではございますが、中心気圧はこのように、それほど低くございません。弱い熱帯気圧であったと思われます。翌七月二十九日の午前三時には、グアムのきわめて近いところを中心が通ったように思われます。そういたしまして、午前三時にはグアム島の北西二百キロメートルのところに達しております。中心気圧は千四ミリバール。  なお、七月二十八日飛行機観測によりますと——これは日本時間でちょうど正午でございますが、正午における飛行機観測によりますと、台風中心示度は千五ミリバール、それから台風眼もはっきりしない。したがいまして、眼の周囲の壁のように切り立った雲もはっきり見ることができない。こういうような飛行機偵察観測報告が参っております。  グアム島そのものにおける気象状況は、二十七日じゅうは資料が十分入っておりませんので詳しくはわかりませんけれども、二十一時ごろ、午後九時ごろには全天雲におおわれておりまして、普通の程度の雨が降っております。雨は二十八日にもずっと続いているようでございまして、午前三時には驟雨がございました。それから、午前三時から正午まで、ちょっと資料がありませんが、正午には風は北西から吹いておりまして、全天雲におおわれており、並み程度の雨が降っております。気圧は千六・一ミリバールでございます。それから三時間後の十五時には、やはりほとんど同じような気象状態でございますが、全天雲におおわれて、並み程度の雨が降り、ただし気圧は千四・五ミリバールに下がっております。  それ以後の情報がちょっとございませんですが、これまでの申し上げました経過を勘案いたしますと、台風中心は二十八日の——台風と申しますか、熱帯性気圧中心は、二十八日の十五時以後、数時間のうちにグアム島のきわめて近いところを通過いたしまして、東南東から西北西に進んでいったものと察知せられるのであります。  以上でございます。
  15. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御報告を承りますと、緊急避難をせねばならぬような台風状況ではなかったと思いますが、今里予報部長、純粋に科学者としてどのようにお考えでございますか。
  16. 今里能

    今里説明員 気象状況は先ほど申し上げたとおりでございますが、私ども、飛行機の性能につきまして詳しいことを存じませんので、このような気象状況がはたして飛行に差しつかえることかどうかということは、ちょっと判定いたしかねるのでございます。ただ、単機の行動編隊行動とではだいぶ気象状況の影響のしかたが違ってくるだろうということは考えられます。以上でございます。
  17. 帆足計

    帆足委員 飛行機専門家でない予報部長飛行機のことを伺うことは筋違いでありますが、気象状況は客観的に伺いまして非常に参考になりました。ありがとうございました。  そこでまず第一に、板付飛行場にそういう申し出がありましたときに、おそらく日本政府としては、外務当局としては善意に、ただ台風緊急避難ならばしかたがあるまい、こういう意味でお答えになったもの、かくども善意をもって考えるのですけれども、しかし伝えられるところによりますと、B5核戦略爆撃機板付への移動要請に対して、とにもかくにも事前協議は不必要であるという見解を持たれているように伝えられております。これは台風のための緊急避難でなくても、こういう大きな戦力を持っておる編隊移動いたします、そして日本基地から基地へ渡りますことが、しかも核兵器戦略爆撃も可能なB52が大挙して参りますことが、原則として事前協議対象にならないというようにお考えでしょうか、それとも台風が接近したから緊急避難としてつい軽くお認めになった、こういうことでしょうか。これは外務大臣から伺っておきたい。
  18. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 先ほど北米局長からお答えの中にありましたとおり、台風現実に弱かったということもさることながら、台風が来るであろうということがとにかく予知され、それがどういうふうな現実発展ぶりをするかということについては、まだ科学的に的確に予知されない今日の状況においては、緊急避難ということは必要な行動であると考えるのであります。それでどの方面に避難の場所を選ぶかということについてもいろいろ専門的な考え方があって、従来適当に行動がとられたことと思うのでありますが、日本にもそういう緊急避難の事例があったのでございますから、その予告がありました際にこれに同意を与える、移動することによって移動した地点から作戦行動を起こすというようなことはもちろんないという前提のもとに一時的な緊急避難という通報でございますからこれを了承した、こういうことになるのであります。
  19. 帆足計

    帆足委員 それでは問題を明確にしまして、台風が来るための緊急避難であったからとりあえずこれを許した、これを黙認した、しかし作戦行動をし、渡洋爆撃をするような大編隊、特にB52のような危険な戦力移動ならば、これは日本政府としては事前協議対象になる、このようにお考えである、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  20. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 大編隊であろうとなかろうと、とにかくそれが作戦行動とは関係のない一時的な避難のための行動であるならば、これは許して差しつかえないと私は考えております。
  21. 帆足計

    帆足委員 私は、そのことはもうよく理解しておるのです。そこで、出撃し、作戦行動に出るという編隊の場合は、政府はお認めにならない、または、事前協議対象になさる、こういうふうに当然ただいまのことばの側面はわれわれ理解されますが、そのように理解してよろしゅうございますか。
  22. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 でありますから、これは一時的な避難行為であるという前提であるならば事前協議対象にはならない。(帆足委員「その逆は」と呼ぶ)もしもそれが作戦行動に出るというならば事前協議対象になる。この場合にはそのことがないという前提でございますから、したがって事前協議対象にならなかったのでございます。
  23. 帆足計

    帆足委員 ただいまの御答弁は少なくとも半歩前進としてわれわれ多とするところですが、しからば政府としては、当時気象状況を念のためにお調べになりましたか。気象庁に御連絡になられましたか。
  24. 安川壯

    安川政府委員 気象庁とは特別に連絡はとっておりません。
  25. 帆足計

    帆足委員 私は、こういう問題につきまして外務省当局が多少不感症であることを非常に残念に思います。と申しますのは、現外務大臣にお尋ねしたことはございませんけれども、歴代の外務大臣によく私は戦略上の問題を質問いたしましたところが、戦略上のことはよくわからないからという御答弁でございましたが、今日は防衛庁のような旧軍人、すなわち、教育勅語前期に育った人たちの敗戦のエキスパート諸君の頭脳では、原爆時代戦略はわかりません。むしろ外務大臣総理等がその良識によって戦略を監視する、また、戦略上の知識をお持ちになっておるということはだれしも望むところでありまして、良識あらば大東亜戦争の被害ももう少し少なく歴史の運命を通過することができたであろう。これはだれしもそう思うところでありましょう。  ところで、その次に、七月二十九日、沖繩の場合におきましては、どういう通告がありましたでしょうか。または、世上伝えられるように、やはり沖繩飛行機が参る、沖繩から飛び立つのは、これは台風に対する緊急避難という連絡でありましたでしょうか、ちょっと伺っておきたい。
  26. 安川壯

    安川政府委員 先ほど申し上げましたように、二十七日の午前に板付に来るかもしれないという通告がございましたが、その夜になって板付には来なくなったという連絡がございました。そうしてその後沖繩に転進したということを知ったわけでございます。それで二十九日の午前七時半ごろであったと記憶いたしますが、アメリカ大使館から連絡がございまして、約一時間後くらいにグアム島を根拠地としてB52機が南ベトナムのベトコンの根拠地爆撃したということを発表する予定である、それでどこから発進したかということの質問があった場合には、沖繩から発進したと答える予定であるという通報がございました。しかし一時間後になっても発表がございませんので、その後アメリカ大使館に実際に発表したのかどうか、あるいは実際に爆撃に発進したのかどうかということを再三照会いたしましたけれども、ここの在京大使館でもその点が不明確でありまして、実際に沖繩を飛び立って爆撃したという事実は、その夕刻になりまして、サイゴンの現地米軍当局発表があって初めて知ったという経緯でございます。
  27. 帆足計

    帆足委員 それでは、そういう通告がありましたのに対して、外務省としては、それは望ましくないという返答をしたと伺いますが、その返答はどなたがだれに連絡し、そして時間的にはいっしましたのでしょうか。念のために伺いますゆえんは、すでに返答したときにはもう作戦行動が行なわれていた、あとの祭りであったと聞いておりまして、まことに無礼なことであると私は思っておりますが、それはとにもかくにも日本政府の責任でありませんから、申し入れば、だれから、どなたに、何時ごろなさったか、それに対して先方はどう答えたかということを伺いたい。
  28. 安川壯

    安川政府委員 先ほど申し上げましたように、通告がありました以後も発表がなされたのかどうか、あるいは現実爆撃がなされたかどうかが不明のままで推移いたしたわけでございますけれども、その日の午後に私がエマーソン代理大使を呼びまして、次のように申し入れいたしました。台風避難で来るということをわが方でも承知しておりましたので、これはもっぱら台風避難のために来るのであるということを説明しているやさきに、これはもちろん悪意とは思えないけれども、それと時期を同じくして作戦行動がもし行なわれるとするならば、非常に日本国民疑惑と申しますか、無用の混乱を起こすので、その点は十分気をつけてほしい、そしてその時点におきましても、実際にやったのかやらないのか不明でありましたので、もしいまだやってないのならば、その点を十分考慮して、でき得ることならば、この時点における作戦行動を差し控えるのが望ましいということを伝えまして、それに対して、先方はその趣旨を本国政府に伝えるということで別れたわけでございます。
  29. 帆足計

    帆足委員 私はそのただいまの御報告を伺いまして、日本国民として割り切れぬ感じが残るのですが、と申しますのは、那覇三十日発清水特派員による報道によりますと、「沖繩米軍当局は三十日午後「台風避難のため嘉手納基地にきていた約二十五機のB5戦略爆撃機は、グアム島に帰島のため同基地を離れた」と語った。」と、こういう報道があるのです。これには二つのことがある。一つは、やはり台風口実にしておる。第二にはグアム島に帰った。  そこでさらに確かめますが、B52が板付に参ろうといたしましたときに、二十九日来ましたあと、二十九日夜すでに気象庁が明らかにしておりますように、気象状況は、グアム島近辺にごく軽い熱帯性気圧があったけれども、激しい台風が同島を襲うという徴候はなかった。また外務省当局は、アメリカ台風避難ということばを一応すなおに耳に入れまして、純然たる台風避難であると理解する、台風が去れば直ちに退去する保証がある、このように当時新聞記者各位に語っていた、こう報道されております。したがいまして、グアム周辺台風徴候がそれ以上ない以上、B5爆撃機は、板付にしろ、または嘉手納にしろ、当然グアム島に帰るものとだれしも予想していた。しかるに実際は、渡洋爆撃がそのとき行なわれていたというならば、台風避難ということは口実にすぎなくて、今後とも同じ問題が繰り返されるおそれがある。だれしも心配することです。ここに問題がありますのは、日本本土の場合と、残念なことには沖繩基地とが差別的待遇をされるような況状に置かれておることでございますから、一応法理的には二つ差別されるでしょう。  そこでまず二つに問題を分けまして、第一日本国土、第二には沖繩基地、私ども日本国民としては、この二つのものに差別を置きたくありませんし、外務大臣が、二つの間に法的差別があろうとも、沖繩についてわれわれは割り切れない国民感情を持っておると語っておられることは、われわれもよくその気持ちが理解できるのでございますが、時間も限られておりますし、戸叶議員が同じ問題についてまた互いに足らざるところを政府に問いただす順序になっておりますから、簡潔にお伺いしますが、まず第一は日本国土の場合です。日本本土の場合、御承知のように、安保条約によってわれわれは基地を貸しております。しかし安保条約を改定しましたときの合意議事録によりますと、もし沖繩を含むこれらの島々に対して武力攻撃が発生し、または武力攻撃の脅威がある場合には、日米両国は、もちろん安保条約第四条の規定に基づいて緊密な協議を行なわなければならぬ、合衆国政府はこれらの諸島の防衛のために必要な措置をとる、さらに日本政府の方針としましては、武力攻撃が発生し、または発生するおそれがあるような場合には、日本政府は島民の福祉のためにとることのできる措置合衆国とともに検討する意図を有する、こう書かれておるわけです。したがいまして、まず第一に、本土の問題といたしまして、先ほどの明確な御答弁のように、もう台風等緊急避難、これはまた別問題として、この客観的妥当性に対してこういうことがあれば検討を加えねばなりませんけれども、しかし戦略行動として、すなわち、単なる生物学的、物理学的行動としての避難ではなくて、戦略行動としての日本基地移動がある場合には、当然事前協議対象になるという御答弁がありましたから、一応問題は明らかになりました。ただ台風ことばをかりて、こういうことが今後繰り返されることはおそるべきことでありまして、もし嘉手納からでなくて板付から出撃していたならばどうであるか。もちろんその場合の衝撃はもっと強いというようなことをわれわれは言うわけでありません。沖繩日本も同じでございますし、沖繩の同胞もわれわれも同じ兄弟でありますから、国の安全に関して国民が心配しております気持ちは同様でなくてはならぬ、またそのような気持であります。ただ、法制的に言うならば、残念ながら区別があるということを申し上げただけであります。とにかく台風ということを口実にして、こういうことが繰り返されて行なわれることに対して、せっかく外務大臣の明確な御答弁にもかかわらず、われわれはなおかつ不安を感ずる次第でありますから、この問題については、また後日私どもも専門的に検討いたしまして、そして御質問いたしますから、政府台風に名をかる戦略行動に対して、もう少し警戒を怠らないようにしていただきたい。たとえば直ちに気象庁連絡するというようなこともなされていなかったそうでありますけれども、そういうことではちょっと準備において欠くるところがあるような気がいたします。  それから第二に、それでは沖繩嘉手納基地の場合には、外務大臣が言われましたように、国際法的にはもう厳密狭義に解釈するならば、施政権はアメリカの手に移っているからどうにもならない。しかし大局的に言えば、戦略的に言いましても、国民感情から言いましても、われわれには非常に不安を感ずる。外務大臣ことばから言えば、遠慮して御発言になったのでしょうが、割り切れない心持ちが残っておる。もっと率直に言えば、戦略的に、また国民感情として、また同胞に対する一体感情として、板付にわれわれが許さないことを嘉手納に許すことはできない。それは当然でございます。しかるに、沖繩は米国の管理下にあって、日米安保条約の範囲外になっておるから、沖繩から直接出撃することは事前協議対象にならない、かりにこう明確に言われるとするならば、われわれとしてはこれを補う措置を超党派的に講ぜねばならぬ。現に琉球立法院におきましては、与党野党の別なく、満場一致、この問題に対して政府に警告し、また琉球立法院から日本政府に対して懇切な要望があり、またワトソン弁務官に対して強く抗議が行なわれていることは御承知のとおりでございます。八月中旬総理が沖繩に参られるとすれば、こういう問題に対して日本国の首相として明確な腹がまえなしに、いたずらに沖繩の同胞を心配させるような、落胆させるような結果を生むようなことがあってはならぬ、これは党派を越えて私ども心配するわけでございます。したがいまして、しかし今日の事態を考えますと、B52が台風避難のためという口実のもとに、それを口実にして、やはり現地アメリカ報道部の報道によりましても、やはり台風避難ということばを使っておりまして、それを口実にして沖繩に足をとどめて、沖繩からベトナムを一これは戦略爆撃でございますから、きわめて危険な盲爆の一種でございます。沖繩から北京までジェット機ではおよそ一時間半、グアム島から北京までは三時間半以上、したがいまして、沖繩は、もしベトナムの事変の戦争のエスカレーションが広がってまいりますれば、きわめてきびしい戦略状況になるわけでございます。  したがいまして、当然この問題につきましては沖繩を犠牲基地にせず、前線基地にしないために、すなわち沖繩及び日本本土のために日米安全保障条約があるとするならば、日本アメリカの王の前に置かれた歩のような状況になることを避けるために、外務省としては戦略をよく御研究になって、そして必要なときはいつでも広義の事前協議ができる、すなわち極東の範囲について、また条約上は施政権を奪われておりますけれども、潜在主権を持っております沖繩の特殊状況に対して警告を発し、何人もうべなうような論理的要求ができるような準備をなさっておいてしかるべきと思います。私はこれに対して、外務大臣が歯切れのよい答弁をしてくださるかどうか疑問だと思いますが、しかしこれをいいかげんに済ましておきましても国民に空疎な期待を与え、また遺憾な御答弁があったとしたならば、国民に警告を与えるという意味において、やはり真実に直面さしたほうがよかろうと思いますのであえて言うのですが、ベトナムの事件が中国との国境地帯で大体おさまって、そして適当に、もしジェネバ会議が示しておる方向に基づいて問題解決のかぎをつかみ得るということは、いろいろなあらゆる立場に立つ人がともどもに願うところでありますけれども、万が一にもエスカレーションが限度を拡大したということになりますれば、直ちに連鎖反応的に沖繩は報復爆撃を受けねばならぬし、国際法上見ましても、こちらが出撃しておる以上先方から報復爆撃を受けることに対して抗議をする根拠が見当たらぬということになりますから、事はきわめて深刻にしてかつ重大でございます。  したがいまして、ここで問題をあいまいにしておきますよりも、道義的にも、そして国際連合憲章、日本憲法それから安保条約の広義の日本の安全に関する諸規定、それから極東の範囲についてのいろいろ政府が御努力になって、日本の安全に有利な諸規定等を援用されて、そして、この沖繩がかりに現状においてにらみをきかすための基地であるとしても、現実に出撃基地として、すなわち連鎖反応爆撃を受けるような状況沖繩が使われてならぬという意思、すなわち外務大臣がどうも心残りがある、割り切れぬ心持ちがあるという穏やかな表現でございますけれども、その中に含むところの日本国民共通の憂慮すべき問題を、外務省アメリカに交渉し得るようにいまから研究し、いまからではおそいくらいですけれども、準備し、腹がまえを整えておく必要があろうと思うのであります。もしその準備と腹がまえなくして、佐藤総理が那覇におもむかれるとしたならば、それは非常な困難に当面するものと思われます。  以上に関しまして外務大臣の御答弁をお願いしたい。
  30. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 質問の要点が必ずしも明確でございませんが、とにかくベトナム戦争はある一定の限界を越すことは万々あるまい、こう考えて、一定の限界とはアメリカは北からの浸透、こう言っておりますので、万々、この中共の国境を越えて戦火を拡大するというようなことはもう絶対にあり得ない、かように考えておる次第でございます。もしわれわれの考えと違って、さような場合には、これは沖繩の前途というものはここに性格を新たにするものである、かように考えるものであります。ただいまさような前提でものを考える必要はない、かような考え方を持っております。したがって、沖繩が戦火に巻き込まれるという事態はただいまのところはわれわれは考える必要はないのではないか。ただし実際問題として、そういうことはあり得ないこととは考えておるけれども、沖繩国民感情からいって、相当な不安を与えるというような事態であるならば、これに対してわれわれとしては慎重に考慮を払う必要がある、かように考えておる次第であります。
  31. 帆足計

    帆足委員 椎名外務大臣ベトナム事件の前途に対してエスカレーションがある限界を越える心配はあるまいという希望的観測を下したことについて、私どもそれについて客観的根拠もありませんけれども、だれしもそうあってほしいとは思うでしょう。しかし、これから戸叶さんがかわって質問をされますから、最後に私は御注意を促し、御答弁を得たいと思いますが、ちょうど一九五五年三月八日のマニラ会議におきまして、なくなったダレス国務長官がアメリカの極東戦略について述べました。アメリカ防衛のために自分らはNEATOの線でいく、台湾、沖繩日本、韓国を前線基地に使わなければならぬということを述べております。昨今のアメリカ軍部の戦略を見ますと、弓形に、この基地を飛び石伝いに使っておる。まさにダレスの戦略を裏書きする状況が目の前に出現しております。しかして沖繩にはすでに核兵器が貯蔵されておりますことは周知のとおりであります。さらに最近におきましては、新型原子力潜水艦が那覇の泊港に到着しております。それにつきましては毎日新聞に詳しい報道が出ておりまして、アメリカの新型原子力潜水艦パーミット号、それはスレッシャー級である、二十八日から那覇の軍港に停泊している。同艦は水中速力三十五ノット以上、水中排水量四千三百トン、全長八十五メートル、魚雷発射管四門を備え、核弾頭も装備できる「サブロック」を発射できるといわれる「スケート級」や「スキップジャック級」より性能がはるかにすぐれているという。最近同港には、原潜の長期停泊が目立ち、スヌー号が七月九日から十七日まで、ソードフィッシュ号が二十三日から二十八日まで停泊した。」こう伝えております。そこで私は、外務大臣が希望的観測を申し述べられましたけれども、私どもとしては希望的観測をいうだけでなくて、ベトナムの事件がジュネーブ協定の趣旨に従って終息するように各人それぞれの立場に従って努力をせねばならぬ。しかるに、沖繩は現在軍事戦略台風の目になっておる。台風は、気象庁をいまさら呼ぶまでもなく、むしろ防衛庁を呼ばねばならぬ。しかし防衛庁の時代おくれの敗戦のエキスパートに聞いたところで何の益するところがあるか、こう思う次第ですから、これは意味をなさない。敗戦エキスパートの集団など相手にしたところでナンセンス。したがって、エスカレーションの台風の目はむしろ現在沖繩に移りつつある。沖繩の問題を私どもがいいかげんにして済ますならば、アメリカ軍の戦略台風の目が沖繩移動してくる、そのために、アメリカの国務省自身もいまアメリカ軍を押えかねておること、アメリカのフルブライト上院外交委員長報告書に詳しく書いてあるとおりでございます。いわば若き日の近衛公と東條軍閥とが最初一時的にはバランス状況を保っていた。近衛公は結局東條軍閥の看板娘になるか、または日本でいえば宇垣陸相のような立場のドゴール大統領同様に、逆に東條軍閥または関東軍司令官を馘首するか、その分かれ道に立っていた。今日、どちらかといえば、ケネディなきあとのジョンソン大統領は正体の知れぬ海坊主のようにわれわれの日に映りつつある、こういうような状況のときでありますから、沖繩のエスカレーション、これこそが台風の目である、こういう状況のときでありますから、沖繩について外務省としては広訪の事前協議、すなわち日本本土から見た作戦上、日本本土の防衛上、沖繩というものを戦火の巻き添えにしないように、九十六万同胞に対して心を砕くべきときではあるまいか。まさに一党一派の利害よりも国家の運命は重いわけでありまして、世間で商業新聞といわれる新聞が鼓を鳴らしてこの問題を警告している、この良心的態度に私は敬意を表する次第でございます。したがいまして、これは社会党だけの問題ではないと思うのです。民社党の声明書も読みました。それで椎名さんもまた与党の責任者として非常に苦しい立場にあられると思いますが、それでも勇敢に——やはり党利だけでは割り切れぬ問題がある、何となれば沖繩はわれわれの同胞の島であるからという意味のことを述べておられる。その気持ちは、われわれによくわかるわけでございます。しかし気持ちだけではいたしかたがありませんから、外務省当局はこの際緊褌一番、問題の本質をおとらえくださって、アメリカに強く交渉するように強く要望する次第でございます。外務大臣の心づもりのほどだけでも承って、外務大臣の態度のなまぬるいところは私どもが大いに叱吃激励もし、大いにやろうとする面については応援するのにやぶさかではないわけであります。いま申しておりますことは、緊褌一番、大いに、心のふんどしを締めていただきたいという意味のことを申し上げているのでありまして、その点につきましては、われわれも、おのれをむなしゅうして協力するのにやぶさかでないのであります。私の質問も、以上のように、かくも穏やかに、かくも論理的に述べておりますのは、このためと御了承願いたい。そこで、外務大臣にはっきりした御答弁をわずらわしたいと思います。
  32. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御意見はよく拝聴いたしました。
  33. 帆足計

    帆足委員 具体的な所感を述べてください。ただ拝聴されただけでは……。
  34. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御意見のほどはとくと拝聴いたしました。
  35. 安藤覺

  36. 戸叶里子

    戸叶委員 私は、ただいま帆足委員B52戦闘爆撃機事前協議の問題についていろいろお聞きになりましたので、この問題にもう少しあとから触れたいと思いますが、その前に外務大臣に、ベトナムに対する態度、姿勢というものについて少し伺っておきたいと思います。  この間、アメリカにおきまして日米貿易経済合同委員会というのが開かれました。そのときに日本の閣僚がたくさんいらしたわけでございまして、そのときの内容等については、またの機会に伺うことにいたしまして、ともかくベトナム問題についても当然何らかのお話し合いがなされたいと思いますけれども、そのときにベトナム問題についてアメリカからどういうような意見が出たか、そしてまた日本はどんなふうにベトナム問題についてアメリカと話し合ったか、この点をお伺いしたいと思いします。
  37. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ベトナム問題については、今年の一月に佐藤総理が訪米をいたしまして、ジョンソン大統領ととくと話し合いをしたわけであります。これはすでにその当時新聞発表されておる問題でございますから、詳しく繰り返す必要はないと思うのでありますが、とにかく東南アジアの平和の回復のために一日も早くこの事態が平静になることを日本としては希望する、しかし場合によっては必ずしもそう簡単に片づかぬかもしれない、とにかく無原則な撤退はやってもらいたくない、場合によっては長引くかもしれぬが、今日のアメリカ行動が非常につらいだろうけれども、しんぼう強くあってほしい、こういうことであったのでございます。それで日本考え方は、今日の事態に照らしてこれを変更する必要はないのであります。やはりそのワク内においてわれわれとしては考えていかなければならぬ。戦局が激しくなってまいりますにつれて、ベトナム問題に対する世界の考え方は、また一そう切実感を増してきておる。そして見ようによっては、問題の解決に焦慮しておる様子が見えるのであります。この情勢に照らして、非常にこれに近接しておる日本といたしましては、事態の収捨のためにあらゆる努力をしなければならぬというふうに考えておるのであります。したがって、さような考え方を私からも述べたのであります。アメリカとしては、今日世界に安全保障中心とした協約を結んでおる国が四、五十ある、今日無原則なベトナムからの撤退をやるならば一斉にこれらの国の不信感を招き、ひいては世界全体の混迷を来たすことになるおそれが多分にある、こういう考えのようであります。したがって、アメリカの無条件話し合いというものにすなおに応じてくれればよし、応じない場合にはアメリカとしても簡単に撤退をすることはできない、こういう考え方のようでありました。
  38. 戸叶里子

    戸叶委員 アメリカ考え方は大体そういうことであるということも私どもはいろいろなことを見て知っております。ただ、そういうふうなことをアメリカとの話し合いで言われたときに、日本はアジアにおけるアジア民族をよく知っている国として、どういうふうな情勢分析をされたか。そのアメリカ説明に対して、日本外務大臣としてどういうふうなお話なり意見を述べられたか。積極的な意見を述べられずに、まことにごもっともなことでございますという程度に終わったのかどうか、この点を伺いたい。
  39. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 すでに、いま申し上げたように、佐藤・ジョンソン会談において大きな線が引かれておりますので、短い時間の折衝でございますから、この問題だけをしゃべっているわけにはいかない。それでこれを徹底的にまた繰り返して話し合いをするということよりも、なおほかに当面の緊急な問題もありますので、この問題についてそう長い時間をかけるわけにいかなかったのでございますが、しかし述べたか述べないかということを離れて、われわれの考え方を申し上げるならば、一九五四年のジュネーブ協定の精神に立ち返って、実力行使を両方ともやめて、そして平和的な話し合いに入っていくということが、これはもう何と言ってもこの問題の解決の焦点である、こう考えておるわけであります。
  40. 戸叶里子

    戸叶委員 いま外務大臣が短い時間であったから一応の線が引かれてあるので話をするような時間もなかったということでございましたが、私たち日本の国民としてはベトナムの問題というのは非常に重大な問題です。日本は、今度のB52のような問題が起きてきますと、よけい戦争の渦中に巻き込まれるのじゃないかというような不安感を持つのでございまして、緊急な問題の中に当然これも入れて、日本の意見というものを積極的に述べてもらいたかったというふうに私は考えるわけでございます。  そこで外務大臣がいまおっしゃいました、その平和的な解決というような問題をもう少し掘り下げてみたいと思うのですが、きのうの外交演説の中で外務大臣のおっしゃったことは、直接的には、南ベトナムに対する北からの浸透と、これに伴う南ベトナムの組織的破壊活動があるから、だからこのアメリカの北爆はしかたがないんだというような説明をしておられるわけでございますけれども、私どもがその前にやはり考えていただきたいことは、なぜそういうふうな事態になったかということ、こういうことを考えた上での分析をやっていただきたい。いま外務大臣は、一九五四年のジュネーブ協定の精神に戻っていかなければならない、こういうふうなことをおっしゃいましたが、そのジュネーブ協定できめられた統一選挙もやらないで、アメリカのほうから、この協定に反してどんどん軍事援助をしてきた。そして統一を望む者とか左翼系と見られる者には恐怖政治を行なって、こういうふうな政治に対する反抗運動がだんだんに強くなってきて、ベトコンが強くなってきたわけです。こういうふうないきさつをよく見たときに、単純に、アメリカが言っている、北からの侵略があったからアメリカの北爆があったというような考え方は、何か原因追及というものに欠けているんじゃないかというようなことを、私はきのうの外交演説を伺っておりまして感じたわけでございます。この辺の原因追及というものの立場に立っての外務大臣としてのお考えをまとめていただきたいと思いますが、この点はいかがでございましょうか。
  41. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 結局、一定の政治的目的を達するために、あくまで平和的手段によるということでなしに、破壊活動その他の実力行動をとるということが世界平和を回復あるいは維持するために非常に有害である、そういうことをやめようじゃないかというのがアメリカ側の趣旨であって、それをもしやめるならば、もちろんアメリカも喜んで武力行為をやめる、そして話し合いに入る、こういうのであります。もともとがベトナム戦争の起こりは、ある一定の政治的目的を達するために実力を行使する、こういうことによってこの問題が巻き起こったものと私は考えておるのでございます。
  42. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうふうな外務大臣の分析のしかたであっては、やはりこういう問題の解決ということは私はないんじゃないかというふうに考えるわけです。と申しますのは、アメリカのほうは極端に、共産主義というものに対してはその脅威をなくして、自由主義社会に全部をしてしまおうというような考え方を持っているわけでございますけれども、しかし今日の国際社会というものは、すべてがアメリカにとって好ましいような、そういう体制だけの国家ができるということは言い得ないと思います。たとえば資本主義の体制があり、社会主義の体制があり、あるいはまたこれらを折衷するような体制があったり、あるいはまた共産主義の体制をとるというような、そういうふうないろいろな考え方があって、私は一様ではないと思うのです。それをやはり自分たちの都合のいいような形にしようとする、そういう意図で内政の干渉をするというようなこともあると私たちは考えるのですが、そういうような分析をしないで、ただ自分たちの意に沿うような形でないものは国内の干渉をしていくというような、そういう考え方に対して、やはり日本の国としては、しかもアジアの指導的な立場にある日本の国としては、その分析を誤らずに、よくした上で、アメリカにそういう進言もしていくべきではないか、こういうふうに考えますけれども、この点はどういうふうにお考えになるか。  さらに私は例を引きますと、いかなる政治体制をとるかはその国民の選択することであるということは、今次大戦中、米英で行なった有名な一九四一年の共同宣言であり、そして四二年にもその趣旨を引き継いだ大西洋憲章があり、ある国がどういうような体制をとるかということは、やはりその国内においての自主性にまかせていくべきである、こういうふうなことがすでにきめられてあるのであって、そういう立場からいえば、私はやはりアメリカの内政干渉というものはやめなければならぬじゃないか、こういうふうに考えますけれども、この点についての外務大臣のお考えはどうでございますか。
  43. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 共産主義の国も、武力革命をまだ信奉しているところと、ある一定の発達した国内体制ができ上がったので、それ以後はもう平和共存主義というものに徹底しようというふうに、方向を多少修正した国と両方あるようでございますが、とにかく武力革命であろうが、平和共存であろうが、その国民全体が選ぶ政体ならば、それはもちろん内政干渉はすべきじゃないと思います。ただ、ベトナムの国民の相当な部分が南ベトナムにおって、そして北との十七度線ですか、停戦ラインというものを引いて、そしてみずから平和主義の政治をやろうとしたが、いろんな直接、間接の実力行使によってやれない、目的が達せられない。そこでこれの対抗策をアメリカに助成を頼んだ、こういう形でアメリカが南ベトナムに入っておる、また南ベトナムにおける軍事行動をしておる、こういう状況でありますから、私はこれは内政干渉ではない、こう思うのであります。これはベトナム国民全部がその武力革命方式というものを選ぶ、だからよけいなことをしてくれるな、北の言うことを聞くんだ、こういうことなら、それはアメリカはそれ以上あそこへとどまる根拠は私は何もないと思うのです。
  44. 戸叶里子

    戸叶委員 いまの外務大臣の御答弁の中にも、私たちと根本的な考え方のズレがあるように思います。その問題のズレというものをいまここではっきりさせていくというのにはいろいろ議論しなければなりませんので、いたしません。  それでは具体的にお聞きしたいが、きのうの施政方針演説にしても、外務大臣の外交演説にしても、ベトナムの問題に対しては平和回復への道が開かれることを望んでやまない、政府もできるだけの努力をする覚悟であると外務大臣はおっしゃり、そしてまた首相は、必ず平和的に解決すべきであり、政府は全面的な努力と協力を惜しまない決意である、こういうふうなことを述べられているわけでございますが、これだけでは一体平和的にどうやって解決するのか、政府はできるだけの協力を惜しまないと言いますけれども、具体的にどうやってくれるのかということを国民は聞きたいだろうと思います。またそれがわからないと思います。したがって、やはり具体的にはこういうことであるぐらいのことを説明していただきたい。もしもそういうふうなことばを使われないならば、国民はそれほど期待しないと思います。しかし、いま申し上げましたようなことばを使っていらっしゃるだけに、何かあるのじゃないかというようなことを期待していると思うのですが、この点について何か具体的な案がありましたらおっしゃっていただきたいと思うのです。
  45. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 これは私がすでにきのう申し述べたことの繰り返しになりますが、結局両方で戦っておる。アメリカは無条件話し合いに応ずる、しかしながら、あくまで南ベトナムの国民の大多数の要請によって政治の独立と平和を招来するまでは無原則の撤退はできない、こういっておる。それから、北越及びこれにつながっておる南ベトナムのベトコン、民族解放戦線、この人たちは、いずれこれは武力戦争においてわれに有利である、であるから、絶対にアメリカが無条件撤退するまでは戦う、いまはこういっておるのでありまして、この両当事者が、戦争は引き合わない、やはり平和な話し合いに入るという気持ちにならなければどうにもならない、私はそう思うのであります。これを第三者が実力をもって両方とも押えつけるということになったら、これは大戦争になってしまいます。結局、そのきっかけをできるだけ敏感にとらえて、国際的な協力のもとにこのきっかけをとらえてこれを拡大し、推進して、そして平和を持ち来たすという努力をする、こういうこと以外に私はないと思うのであります。ただ、その具体的な方法についてはいろいろあるかもしれませんが、概括的に申し上げるならば、そういうこと以外には、平和収拾の方法といってもほかにないのではないか、こう考えます。
  46. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、結局は、いまのところ、平和的な解決を望みたい、そうしてできるだけ日本も協力をする、こういう考えではあるけれども、別にどういうことはない、しばらくこのままにして成り行きを見るというふうな結論になるわけでございますね。
  47. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ほかに方法があるならば、むしろこちらのほうから教えていただきたいと思っておるのであります。
  48. 戸叶里子

    戸叶委員 私たちは私たちなりの考えがあっても、やはりいま政権をとって外交をやっていらっしゃる外務大臣ですから、外務大臣のお考えを聞きたいと思ったのですが、よくわかりました。いまのところ、しかたがないからこういうふうに成り行きを見ているということなんです。  そこで問題になりますことは、平和的な解決を望んでおりながら、今回のようにベトナム爆撃B52の戦闘作戦隊というようなものが飛び立つのを、一応は外務大臣として遺憾であるという気持ちは持たれたにしても、このままにしておくということは、戦争の片棒をになうという意味ならわかりますけれども、平和な解決を望むという日本政府としてはおかしいのじゃないかと思いますが、いかがでございましょう。
  49. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 B52の問題につきましては、これは台風に対する緊急避難であって、それで板付飛行場を使いたい、こういう申し出があり、それに対して了承を与えたい、こういったようなことをすでに新聞に明瞭に報道されておる。今度はそれが急に沖繩に変わった、変わったが、やはり避難行為である、そう思っておったところが、急に北越に対する攻撃に参加しておるというようなことが、めまぐるしく一両日の間に変わっていったのでございまして、これに対する国民一般としては、何か割り切れないものがある。いわんやその当面の沖繩の人民にとっては、一そう不安やら割り切れない感情があったとわれわれは推察いたしまして、まことにその点は遺憾である、こういうことをアメリカ側に表明したわけであります。——北越じゃなくて、ベトコンの攻撃にもうすでに立った、進発した、こういうことでありまして、それがどうも出たのか出ないのかしばらくわからなかった。もし出ないとすればこの際慎重に考慮してもらいたいということを言ったのであありますが、結果においてはそれはもう間に合わない、出かけたあとであったということになったのであります。そういうことでありまして、日米安保条約のたてまえからいいまして、これは条約違反とかなんとかいうものではない、やはり厳密な意味において極東内部のできごとではないけれども、極東の安全に重大な影響を与えるベトナムの戦争、それに出かけたのでありますから、条約違反とかいうようなことでこれをアメリカに抗議をするということはできないのでありますけれども、とにかく極東の内部というよりも周辺に起こった問題であって、そしてかなり爆撃というものに対しては敏感な経験を持っておるその日本国民なり沖繩の人民なりに対する関係からいって、できることならという政治的考慮をひとつ求めた、こういうわけでございます。そういうふうにわれわれは状況を了解しておることを御了承願いたいと思うのであります。
  50. 戸叶里子

    戸叶委員 次の質問に入る前に、ちょっとさっきはっきりしなかったことで伺いたいのですが、板付に最初に台風避難申し入れがあって、そしてその後板付に来ないという通告があって、今度は沖繩へは台風避難のために行くというような知らせば何にもなくて、板付へは寄りませんということになったのですか、それとも沖繩台風避難のために行きますという通知があったのですか。その辺のことがちょっとわからないのです。
  51. 安川壯

    安川政府委員 先ほど帆足先生の御質問お答えしましたように、台風避難のために板付に来るかもしれないという連絡がありましたのは二十七日の午前、そして二十七日の夜、あるいは二十八日に入っておったかと思いますが、夜中過ぎだったと思いますけれども、板付には来なくなったという連絡がございまして、連絡はそれきりであるわけでございますから、沖繩に行ったということはその後事実として私どもは承知したのでございまして、沖繩に行ったということ、何のために行ったということはあらためてアメリカ側から連絡があったわけではございません。事実上沖繩に行ったということを知ったということでございます。
  52. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますともう一度念のために伺うのですが、板付へは来ない、事実上沖繩に行ったということは知った、知っているときに外務省としては、あくまでもこれは台風避難のために沖繩へ行ったのだなというふうに考えていらしたのですか。
  53. 安川壯

    安川政府委員 そのとおりでございます。
  54. 戸叶里子

    戸叶委員 そこで先ほどおっしゃたような外務大臣の政治的な配慮から、そしてまた日本の国民的感情を考えて、こういうことはまことに遺憾であるから、やめられるものならやめてほしいという気持ちを持ったけれども、もう出てしまっていかんともしかたがなかった、こういうことでございますが、それではその旨をやはり正式にアメリカのほうに申し入れをされる必要があったのではないか。条約上はいずれにしても、自分たちはこう思うのだということを率直にお話しになったかどうか、この点を伺いたいと思います。
  55. 安川壯

    安川政府委員 正式かどうかということになりますと、先ほど御説明しましたように、いま大臣が言われましたような趣旨は、私が日本政府を代表いたしましてエマーソン代理大使を呼んで伝えたわけであります。
  56. 戸叶里子

    戸叶委員 そうしますと、今後においてももうそういうことはしてほしくないということまで申し入れていられるかどうか、この点も伺いたい。
  57. 安川壯

    安川政府委員 私が申し述べましたのは、将来のことには触れませんで、あくまでも今回の爆撃に関して申し入れたわけであります。
  58. 戸叶里子

    戸叶委員 聞くところによりますと、さっき帆足さんがちょっと触れられましたけれども、私の聞きたいような形の質問でなかったのでお伺いしたいのですが、いままで沖繩においての司令官が言われていたことは、沖繩は直接の戦闘作戦行動基地には使わないということを言っていられたということを聞いておりますけれども、この点ははっきりしておりますのでしょうか、どうでしょうか。
  59. 安川壯

    安川政府委員 沖繩の司令官が言った言明を私は正確には記憶しておりませんけれども、たしか、そう言ったときには、将来に使うとか使わないという将来のことを言ったのでなくて、現在沖繩は戦闘作戦基地には使われておらないという現在のことを説明したのにとどまっておると私は了解しております。
  60. 戸叶里子

    戸叶委員 それではやはりアメリカとしてはそう言っておりながら、しかも台風避難という形で沖繩に行きながら、戦闘作戦行動に出たのですから、やはりこれは相当問題だろうと思うのです。沖繩にとっても、また日本のわれわれ同胞にとっても、これは重大な問題だと思いますけれども、これは済んだことだからしかたがないというような形で解決できない問題だと思いますが、この点はいかがお思いになりますか、外務大臣に伺いたいのです。
  61. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 御質問の要旨は、今後沖繩を使うか使わぬかということの問題ですか。——これは重大な問題でございますが、これはそのときの状況にもよるし、もっぱら国民感情を基礎にしての取り上げ方をしておるのでございまして、条約上の問題としては、そういうことはアメリカに対して約束させるということはできません。ただ、国民感情としてこれを取り上げておるのでございまして、これはそのときの状況等にもよることであります。一律にこの問題についていま申し上げることは控えたいと存じます。
  62. 戸叶里子

    戸叶委員 国民感情というものは、私は今後においても変わらないと思うのです。だから、そうであるならば、やはりこういうちょうどいい機会ですから、そうして沖繩は問題になっているときでもありますし、佐藤総理以下たくさんの方が今回沖繩に行かれるときでございますから、やはりこの国民感情を率直に沖繩に今回伝えておく必要があるのじゃないか、そのことがやはり沖繩日本本土が守る唯一の道じゃないかと思いますけれども、こういうような点はどういうふうにお考えになりますか。現在の段階においての沖繩を守る道じゃないかと思います。けれども、そういうふうな将来のことは全然触れない、もう一度、今回の問題に対して、国民感情として、ああいうことをしてもらっては困るんだというふうに言っただけで、将来の問題はまあ黙っておこうというお考えでございますか。やはり私たちとしては、国民感情というものは変わらないと思いますから、今後もそういうことはしないようにということは、くぎをさしておいていただきたいと思いますが、この点はいかがでありますか。もちろん条約上はそれはできないということは私もよく知っております。知っておりますけれども、いま外務大臣が政治的あるいは国民感情という面からおっしゃったので、ぜひこの際、そういうことをアメリカ側と話し合ってほしい、こういうように思いますが、この点についての積極性をお持ちになるかどうかを承っておきたいと思うのです。
  63. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 国民感情現実の安全の問題とはしばしば食い違うことがあるのでありまして、われわれとしてはあくまで現実的に日本本土、また、これに劣らず沖繩の平和、安泰ということを考える上において、これはもっと冷静に現実的にこの安全保障の問題を考えなきゃならぬ、こう考えております。  国民感情の問題は、いろいろ情勢にもよることでありまして、いまこの問題を将来に向かっての折衝の基礎に置く、あるいはまた、安保条約というものの性格まで変えて、この国民感情をあくまでこれを守っていかなきゃならぬというふうには私は考えるべきではない、むしろ安全保障という立場に立つならば、もっと冷静に、もっと厳密に、現実的に考えたい、こう考えております。
  64. 戸叶里子

    戸叶委員 どうもその点が私は納得できないのです。沖繩を将来も戦闘作戦行動基地に使ってもらいたくない。これは日本の国民としてだれでも感じることだと思うのです。外務大臣自身も心の底じゃそういうふうに感じていらっしゃるのじゃないかと思うのです。だとすれば、そういうふうなことを、沖繩を守るという意味から当然アメリカに向かって、ちょうどいい機会ですから、この機会を利用して、こういうふうなことは日本の国民の立場というものも考えて今後においてはなるべくやらないでいただきたいということぐらいはおっしゃってもいいのじゃないですか。時期によってはそういうこともあり得るかもしれないし、そういうことまで言うと困るような場合もあるかもしれないしなんというような、そういうふうにお考えになる問題じゃないのじゃないかと思うのです。いまのような外務大臣の御答弁を伺いましたら、沖繩人たちは不安で不安でたまらたいと思うのです。だれが一体自分たちを守ってくれるんだろうかというような気持ちで、やり切れない気持ちになると思うのです。やはりこの点をはっきりさしていただきたいと思うのです。
  65. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ほんとうに不安でないように考えるということが、必ずしも国民感情に沿う場合とは限らない。国民感情に順応していくということも大切でございます。しかしながら、それによってほんとうの安全保障というものがそれてしまうというようなことでもこれは困る。どっちを選ぶかといったならば、片一方は政治的にこれを対処し、片一方は現実の問題としてあくまで安全保障を貫き通す、この二道をかけていかなければならないと思います。しかし、安全保障といっても国民感情を全部無視してよろしいということを私は言っているのじゃございません。しばしばこれが一致しない場合もあるのでありまして、そういう点は真に沖繩——日本安全保障という問題を厳密にとらえて、そしてそれからはずれないことが非常に大切である、こう考えます。
  66. 戸叶里子

    戸叶委員 これ以上いろいろ申し上げてもどうかと思いますけれども、ただ、いまの御答弁を伺っておりますと、国民として、また、沖繩人たちとしてはとても納得がいかないと思うのです。いまおっしゃったのを逆にひっくり返して言えば、あるときには国民感情なりあなた方の不安を考えるかもしれないけれども、それは犠牲にしてもらって、私たちはこういうほうが安全だと思うから戦闘作戦行動基地に使ってもがまんをしてもらいたいというふうなことにもとれるわけでありまして、そういうときには沖繩の人なり日本の国民がある程度犠牲にならなければならないような場面が出てくるような表現をされますので、私は、この点は非常に不満だと思います。こういう点は、できるだけ強く沖繩を今後においての戦闘作戦行動基地として使うことはやめてもらいたいという運動は私たちが続けていかなきゃならない、こういうふうに考えるわけです。外務大臣とこのことを言ってみてもしかたがないと思います。そこで先ほど帆足議員が伺いましたことで、今回B5爆撃機板付へ立ち寄った。それはあくまでも台風避難というためであったから事前協議対象にならない、こういうふうなことをおっしゃったのですが、結果的に言いますと、これは台風避難のためでなかったわけですね。結局板付へ来ようとしたけれども、板付を避けて、沖繩へ行って沖繩から飛んで行ったことになるのですから、戦闘作戦行動に入ったのですから、一応の台風避難という形じゃない。口ではそうおっしゃったかもしれませんけれども、事実はそうじゃないと思うのです。結果的に見ればそうじゃないと思うのです。  そこで、そういうふうな場面も今後において出てくると思いますので、伺っておきたいことは、どんな装備をしていても、どんなにたくさんの飛行機であっても、その目的が台風避難という場合であるならば、事前協議対象にならないか。一体どの程度飛行機なり、どういう装備をしている場合には事前協議対象になるか。これは安保条約の問題もからんでいますけれども、いまこの起きた事件について私は伺っておるのです。先ほどの帆足委員に対しての答弁を伺っておりますと、台風避難するためだったら、これは事前協議対象にならない。しかし、もしも日本基地として戦闘作戦行動に出る場合には、これは事前協議対象になるのだ。これは安保条約の交換公文に書いてありますから、そのとおりのことをお答えになったにすぎないと思う。ただ、今度のような場合に、重要な装備、配置の変化ということにならないかどうかというようなことを私は考えるわけですが、目的さえ台風を避けるためということになれば、どんな配置なり、装備に変更があっても全然かまわないのかどうかということを念のために伺っておきたい。
  67. 安川壯

    安川政府委員 その前に、御質問の前段で、台風避難の名目で来ながら、実際は爆撃、戦闘作戦行動についた、結果的にはそのとおりでございますけれども、とりようによりますと、台風避難だといううそをついてきて、それで作戦行動に出てきたのだというふうにもとれるかと思いますが、私のほうは、実はそういうふうに解釈しているわけではないのでございまして、これは私の推定でございますけれども、初めはやはり台風避難だ、純然たる台風避難板付に場合によって来るということを考えておったのじゃないかと思う。ちょうどその時期を同じくして、どういう事情か、軍事的な背景は知りませんけれども、これは推定でございますけれども、その時期を同じくして作戦任務に必要性が生じたために、そこで急に板付に来るのをやめて沖繩に来たというのが私は真相ではないかと思います。これはあくまでも私の推定でございます。でございますから、私、政府としましては、アメリカ台風避難といううその名目をつけて、ごまかしておいて、作戦行動に従事したのだとは解釈しておりません。その点を誤解がないように申し上げたいと思います。  それから、どんな装備をしてきても事前協議対象にならないかという御趣旨の御質問と思いますが、これは申すまでもないことでございまして、たとえば核装備をして来るというようなことがかりにありとすれば、それがかりに台風避難であっても、これは事前協議対象になるのは当然であると思います。しかし、核装備をしていない限りは、台風避難という一時的な目的で来る場合には、事前協議対象にはならない。逆に申しますと、これは配備の変更ということにはならないという解釈でございます。
  68. 戸叶里子

    戸叶委員 核装備をしているかしていないかというのは、どうしてわかるのですか。アメリカが良心的に核装備をしていますがどうしますかと聞いてくるのを待っているのですか。これは安保条約のときにさんざん審議した問題ですが、念のために伺っておきたい。  それからもう一つは、どんなにたくさんの飛行機であっても、その目的がそうであればいいのですか。この点も伺っておきたい。
  69. 安川壯

    安川政府委員 核装備の問題につきましては、前々から何回も申し上げておりますように、日本側が直接検査するという権限は持っておらないわけでございまして、アメリカ側としても、かりに核装備をしている場合には事前協議を必ずするという約束になっているわけであります。  それから、どんなにたくさん来てもという御質問でございますけれども、これはおそらく現実問題としまして施設の収容力その他がございませんから、無制限に何百機も何千機も飛行機が来るということは実際上私は考えられないと思います。
  70. 戸叶里子

    戸叶委員 それは常識の問題ですよ。一機とか二機の場合には、いまおっしゃったようなことも言えるかもしれませんけれども、三十機となれば相当の飛行機だと思うのですけれども、そういうような場合にも事前協議対象にならないというのは、やはり私たちからすると配置の変更ということになるんじゃないかというように考えますけれども、目的さえはっきりしておればそれでいいという言い方は、あくまでもそういうふうにお考えになっているわけですね。  そこで、それじゃ今度の場合のB52戦闘爆撃機というのは、当然アメリカと南ベトナムとが一緒になってベトコンをやっつけるために一つの計画を立てて使う戦闘機でしょう。そうだとすれば、そういう計画を持って、そういうふうなことの一貫した計画の中に入っている飛行機なんですから、戦闘爆撃機なんですから、当然こういうものが日本に来たということになりますと、一応日本事前協議対象にしてしかるべきではないか、こういうふうに私は考えます。その点についてどうか。  それから、それじゃもう一つ伺いたいことは、そんなことは仮定のことだからというように外務大臣はおっしゃるかもしれませんけれども、今度のようなことを見ておりますと、日本には台風避難のために来るかもしれない、しかし上へ飛んでしまってから急にどっかから命令が来まして、これが戦闘作戦行動に出るかもしれません。こういうふうなときには一体どういうふうに解釈されるわけですか。目的はあくまでも台風避難という形で来るかもしれませんけれども、途中まで飛んでいったらば、それが戦闘作戦行動に出るような指令になっていくかもしれないと思います。それでもなおかつ事前協議対象にならないわけですか。もう飛んでいっちゃったんですから間に合わないのですけれども、そういうふうなことも考えられるんじゃないですか。だから、したがってこういうふうな明らかに一つの計画を持ち、意図を持っている戦闘爆撃機というものが日本に来る場合には、しかもたくさんの数をなしてくるような場合には、やはり一応日本事前協議対象にしておくべきではないか、そのくらいのことは私はアメリカと話し合ってしかるべきではないかと思いますけれども、この辺のことを外務大臣にお伺いしたいと思います。
  71. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 この二十五機がかりに四十機とか五十機ということになりましても、台風避難であるならば、これはあくまで事前協議対象にはならない。これは常時その施設を使用するという状態があらわれないと、配置の変更ということにならないと解釈しておるのでございまして、ただ一時的な緊急避難行為が、それが本来どういう使命を持っておるものであろうと、緊急避難行為である以上はあくまで事前協議対象にならない。ただ避難をしようと思って飛び立ったその直後に、無線電話か何かで一応目的地に着いておるならば、一時間なら一時間、三十分なら三十分後にすぐ飛び立って作戦行動に出よというような、そういうきわどい指令というものが一体あり得るのかどうか、よくわかりませんけれども、そういう場合になりますと、軍事専門家の知識を要しますので、しばらく研究さしていただきたい、こう思います。
  72. 安藤覺

    安藤委員長 戸叶君、だいぶ時間が経過しましたから……。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 私はもうこれでやめますけれども、いまの外務大臣の御答弁はちょっと少しピントがはずれているというか、人をばかにしている答弁じゃないかというふうに私はまことに残念に思います。しかしあとでこの問題は聞くにしまして、けさラジオを聞いておりますと、アメリカが今回B5爆撃機沖繩からの出撃について日本がたいへんに驚いているというので、向こうのほうがそのことに対して驚いているというような報道がされました。それほどアメリカというのは、日本基地から飛んで行っても別にたいしたことはないのだというくらいにしか簡単に考えていないと思うのです。というのは一体どういうことかといえば、日本国民感情というものが正式にアメリカにこれまでの外交で伝えられておらないのじゃないかと思うのです。だから、そういうことをやはり、今後においてもっと強く、しかも日本基地沖繩を含めて使われることは非常にこわがっているのだ、非常に不安を持っているのだということをはっきり訴えていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。      ————◇—————
  74. 安藤覺

    安藤委員長 次に、日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約締結について承認を求めるの件を議題とし、提案理由の説明を聴取いたします。椎名外務大臣。     —————————————    日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約締結について承認を求めるの件   〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  75. 椎名悦三郎

    椎名国務大臣 ただいま議題となりました日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。  この条約は、第四十八回通常国会に提出されましたが、審議未了となったのであります。  政府は、連合王国との間の領事の分野における関係を規定するための領事条約締結につき、昭和三十七年八月以来同国政府との間で交渉を行ないました結果、最終的合意に達し、昭和三十九年五月四日に東京において大平外務大臣と日英閣僚定期協議に出席のため来日中であったバトラー英外務大臣との間でこの条約に署名を行なった次第であります。  この条約は、本文四十一カ条からなり、これに条約と不可分の署名議定書が付属しております。その内容は、昭和三十九年八月に発効した日米間の領事条約とほぼ同様のものであり、領事館の設置、領事の任命手続等のほか、派遣国が接受国において領事館について享有する特権免除、派遣国の領事や領事館職員が接受国において享有する特権免除について規定し、また、国民の保護、船舶、遺産等に関する領事の職務の内容について規定しております。  わが国と連合王国との間の経済的、文化的及び人的な交流はきわめて盛んであり、その領事関係も複雑かつ多岐にわたっているのでありますが、連合王国は、伝統的に領事特権を領事条約の規定を根拠として相互主義により認めることとしておりますため、従来わが国の領事に対して認められる特権は、きわめて制限的なものでありましたので、この条約締結により領事の職務や特権について両国において具体的に取りきめておくことによって、わが国の領事の地位及び活動に条約上の保障が与えられることとなることは、有意義なことと考える次第であります。  よって、ここに、この条約締結について御承認を求める次第であります。何とぞ御審議の上、本件につきすみやかに御承認あらんことを希望いたします。
  76. 安藤覺

    安藤委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせすることとし、これにて散会いたします。    午後零時五十分散会      ————◇—————