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1965-03-29 第48回国会 参議院 予算委員会第二分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月二十九日(月曜日)    午前十時二十四分開会     —————————————    委員異動  三月二十七日     辞任         補欠選任      木村禧八郎君     稲葉 誠一君  三月二十九日     辞任         補欠選任      羽生 三七君     大倉 精一君      稲葉 誠一君     木村禧八郎君     —————————————   出席者は左のとおり。     主 査         吉江 勝保君     副主査         北村  暢君     委 員                 江藤  智君                 太田 正孝君                 古池 信三君                 木暮武太夫君                 日高 広為君                 稲葉 誠一君                 大倉 精一君                 木村禧八郎君                 羽生 三七君                 白木義一郎君                 向井 長年君                 岩間 正男君    国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        国 務 大 臣  愛知 揆一君    政府委員        防衛庁長官官房        長        小幡 久男君        科学技術政務次        官        纐纈 彌三君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        科学技術庁長官        官房会計課長   木戸 四夫君        科学技術庁計画        局長       梅澤 邦臣君        科学技術庁研究        調整局長     高橋 正春君        科学技術庁原子        力局長      村田  浩君        外務政務次官   永田 亮一君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務大臣官房会        計課長      谷  盛規君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  莊君        外務省欧亜局長  北原 秀雄君        外務省経済協力        局長       西山  昭君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        文部省管理局長  齋藤  正君    説明員        外務大臣官房書        記官       奈良 賀男君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) ただいまから予算委員会第二分科会を開会いたします。  まず、分科会担当委員異動について御報告いたします。  去る二十七日、木村禧八郎君が委員辞任され、その補欠として稲葉誠一君が選任されました。     —————————————
  3. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 昭和四十年度総予算中、外務省所管を議題といたします。  説明は、時間の都合上これを省略して、お手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお、説明資料は、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 御異議がないと認め、さよう決定いたします。  これより質疑に入ります。順次御発言を願います。
  5. 羽生三七

    羽生三七君 まあきょうは分科会でありますので、実はこまかい問題を伺うつもりでおったのでありますが、日韓会談も重要な局面に際会しておるようでありますので、最初にこの問題に触れて、もし時間があれば、あとこまかい問題に触れたいと思っております。  会談もいよいよ大詰めに来たようでありますが、政治的にも経済的にも重要な日韓交渉長期にわたって政府がやってきたわけでありますが、その最後の瞬間で、李外務部長官の滞日中という、そういう理由で非常な短い時間的な制約にせき立てられながら、この十年間にわたる長期交渉最後の一瞬で簡単に——簡単ということばは語弊があるかもしれませんが、最後の一瞬で重要な譲歩を行なって、短時間に片づけようとしているその真意は、一体どこにあるのか。十年間非常な努力をしたと政府が言いながら、最後の一瞬で、この長官の滞在中という時間的な制約の中で簡単に片づけようとしておる。しかも、重要な譲歩を行なおうとしておるその真意は、どこにあるのか、まずこの点からお伺いいたします。
  6. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 短い時間的制約のうちに、きわめて重要な譲歩を行なっておるのはどういうわけかというお尋ねでございましたが、われわれはあくまで国家利益を基礎にして折衝をしておるのでありまして、たとえ長かろうと短かかろうと、重要な譲歩を行なって国家利益を犠牲にしてまで、日韓会談妥結させなければならぬという理由はどこにもないのでございまして、あくまでも主張すべきものは主張し、また、譲るべきものは折衝でありますから譲り、相互平等の立場において折衝を重ねておるつもりでございます。
  7. 羽生三七

    羽生三七君 私もすわったままでやらしていただきますから、大臣もどうぞすわったままでけっこうです。  順次、具体的に伺っていきますが、最初に、この基本条約を案文化する場合に、北鮮との関係はどういう表現考慮されておるのか、国連決議等関係もあるでしょうが、どういう形で朝鮮の中の韓国の位置づけをされようとするのか、その点をお聞かせいただきたい。
  8. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは、北鮮のことは全然基本条約の条項には、どんな形でも表現されておりません。ただ第三条で、国連総会決議を引用しております。その国連総会決議とは、旧朝鮮人民の……。
  9. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと大臣、待っておってください。ちょっとことばが聞こえないから、こっちのほうへ来ますから。
  10. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 朝鮮人民の大多数が現に居住している地域を支配する政府を相手にしておるということをうたっておりますが、この決議を引用したその反面において、北鮮の問題がこう映ってくるわけであります。結局、北鮮の問題は、この条約に関する限り白紙の状態である、こういうことでございます。
  11. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、韓国の支配の及ぶ地域ということにも全然触れていないわけですか。
  12. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 結局、現在の管轄権の及ぶ範囲条約適用範囲である、こういうこと  でございます。
  13. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、この会談も、表現の方法などを残して、ほぼ——たとえば請求権問題等妥結したように聞いておりますが、この場合、大平金了解事項による、特に民間経済協力一億ドル以上を含みとするというのが、三億ドルになったそうでありますが、これは事実でありますか。
  14. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大平金了解というのは、この会談進行過程において、相当意味を持っているものでございますが、これをそのままわれわれは踏襲する必要はない。まだイニシアルもできておるものではございませんから。でありますけれども、しかし、この了解事項は概括的には相当に尊重し、これに基づいてさらに会談を推進しておるような状況でございますから、この問題にあくまでとらわれなければならぬというものではないと思うのであります。ことに請求権問題の根幹に触れるものが、無償三億ドル、有償二億ドル、これなのでありまして、このほかに、この請求権問題を離れて、一般民間ベースによる資金というものが相当多額に期待される、こういうのがこの真意であって、その多額資金貸し付けが期待されるという中には、この会談成立といなとにかかわらず、そういうことがこのほかに期待されると、こういうことを言っておるのであります。きわめて自由な立場でこれが行なわれることになっております。それがただ数字表現がないと何か、何といいますか、全然具体性がないように映ってもいかがかと、それで向こう側としては、これを一億ドル以上、こういう表現を用いて差しつかえないというわけであります。そういうようなことを用いる必要が国内的にあるならば、それも御自由であろうと、そういうことで了解を与えたのでありまして、一億ドル以上というのは、別に二億でもよければ三億でもよいということになる。あまり数字が違うと、きわめて非現実的なものであって、いかにもそれが世間を、あるいは国民の目をただいたずらに奪うというような、非現実的なものになるおそれがあるという、まあ懸念があるにすぎないのでございます。今回、当初一億ドル以上と、こう言ったのが、漁業資金あるいはその他の具体的な向こうプロジェクトによりまして、相当形を整えてきております。これを従来のものと合わせると三億ドル以上ということを言っても、別にそう非現実的な感じもいたしませんので、その程度ならば、それを修正しても差しつかえないのではなかろうか、こう考えております。
  15. 羽生三七

    羽生三七君 一億ドル以上の含みというのが、まあ以上であるから、二億になっても三億になっても、そうたいしたことはないというような御答弁ですが、これはいかがかと思います。一億ドルが一億一千万ドルになるとか一億二千万ドルになるというなら、これは話はわかりますが、これが三億ドルになってもそんなものはたいしたことはないという、そういうお考えでこの問題をお扱いになるのはいかがかと思う。それは、問題は確かに有償無償五億ドルに重点がかかっていることは、これは事実であります。しかし、それにもかかわらず、民間借款経済協力の一億ドル以上を含みとするという、それが三倍にふくれ上がっても何でもないということはいかがかと思いますが。これはたいへんなおおばんふるまいと言っても差しつかえがない。
  16. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) でございますから、私がお断わりしたように、これが五億ドルだとか、あるいは七億ドルであるとか、あるいはまた十億ドルなんということになると、きわめて非現実的なものになって、何かただいたずらに数字を羅列して、自国民に空虚な一つの希望を与えるというようなことになりますので、やっぱり現実性というものはなければならぬ。おのずからそういう制約があるのだろうと思うのであります。その条約の一応の有効期間というものは、十年なら十年と仮定すれば、十年間にこのくらいのものは、民間ベースであろうと、とにかくそう夢ではないという程度のことは、やっぱり言っても差しつかえないのではなかろうかと、こう考えてきておりますので、一億ドル以上だから、だから幾らでも、百億ドルでもいいという、そういう考え方は出てこない。やはり現実的な性格はどこまでも持たなければならぬと、こう思います。
  17. 羽生三七

    羽生三七君 それはね、外相とわれわれとの感覚の違いで、一億ドル以上というのが三億ドルになっても問題ない、五億ドル、七億ドル——百億ドルなら問題だと、そんな感じで一億ドルが三億ドルになるのは問題ないというのは、これはたいへん問題だと思います。  そこで、その表現をどうしようというのですか。一億ドル以上というのを三億ドルとかなんとか。
  18. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ字句の点の取りまとめまでいっておりませんので、はっきりした表現はこれからしたいと思っております。
  19. 羽生三七

    羽生三七君 それでもし、この三億ドルの場合、民間供与の場合ですね、これが三億ドルにかりになった場合、その場合に、これは民間がどういう形で、それから内容的にはどういうもので、その中のまあ内訳は、漁業関係とか船舶建造とか、いろいろあるようですが、それはそれとして、純粋の民間供与する場合、それが将来韓国事情によって、政治的経済的な諸事情によって、この借款支払いが不可能になる、あるいは困難になる、そういう条件が起こったときには、それは、日本政府としてはどうするのですか。それは契約者自身個人責任になるのか、その辺はどうですか。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういう返還能力まで危ぶまれるようなものが、自由な契約でございますから何とも言えませんけれども、とにかくお互い貸そう、借りようということになって成立するのでありますから、あまりそういう点は懸念のないものになる、かように考えております。
  21. 羽生三七

    羽生三七君 まあ貸借関係ですから、一応貸す以上は、返還の能力あるものとして見て貸すんでしょうが、しかし、韓国の現在の事情を見ても、また、将来の借款期間を展望しても、そう必ずしも安心した条件ではないと思います。そういう場合に、非常に支払いの困難が起こった場合に、日本政府としては、その契約者自身に対して、何らの政府自身としての政治的な立場における保証等はない。はっきりそういうふうに断言されておられるものと考えて差しつかえありませんか。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もちろん差しつかえありません。
  23. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、これはあくまで民間個人責任ですね。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはもう他の東南アジアに対する諸国への民間借款と全然同じでございます。
  25. 羽生三七

    羽生三七君 たとえば借款の場合の、民間供与の場合の内容検討されておりますか。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 内容と申しますと……。
  27. 羽生三七

    羽生三七君 具体的にどういうものが供与の対象になるか。たとえば漁業協力とか、船舶とか、いろいろありますが、それ以外にですね、漁業は九千万ドル、船舶で三千万ドルとか言われておりますが、それ以外に、具体的にどういうものがあるか。何もなしに総額三億ドルというものが出てくるはずはないと思いますから、内容を少し聞かしていただきたいと思います。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは大体の総額を押えたものでありまして、これに先方が持ち込もうとしておるいろいろなプロジェクトは、予想はいたされますけれども、それをいまはっきりとこれこれであるということになりますと、向こうのほうにもいろいろ御迷惑をかけることになると思いますので——ただ、はっきり申し上げることができるのは、漁業協力資金、それから船舶建造資金、こういうことははっきり言えまするが、その他の問題については、まあおよそこれこれの範囲のうちからというのでございますから、これはまだこの段階では、こういう公の席上では申し上げにくいかと思います。
  29. 羽生三七

    羽生三七君 昨年の十二月の対韓緊急援助二千万ドル、これもまだほとんど使われていないというのですが、それはどうですか、この実情は。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その実情に関しましては、アジア局長から……。
  31. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 御指摘のとおり、あの対韓援助は、先方国会手続関係でおくれておりましたが、最近の情報で、たしか先週、国会手続を経ましたので、これから動き得るようになる、そういう状況でございます。
  32. 羽生三七

    羽生三七君 これは、いまの国会手続もあったでありましょうが、二千万ドルの緊急援助——緊急というからには、非常に緊急性があったと思う。政府があの際、御説明なさる場合にもそうだった。その緊急援助というものが、いまに至るまでそれを消化することができない。これは韓国受け入れ態勢にも問題があると思う。ですから、三億ドルの大づかみな、大ざっぱな計算をされて、しかも、その内容はここでは言えない。具体的にどういうふうにそれが韓国計画とマッチしていくのか、それの御説明もできずに、ただ向こうからの大ざっぱな要求、三億ドルを持ってきて、それをのむなんということは、非常に不見識なことじゃないですか。
  33. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうにはやはり経済建設五カ年計画がございまして、この経済建設五カ年計画は、韓国としては、ぜひともこれをやらないと、経済計画というものが固まらないという性格のものだろうと思うのであります。この五カ年計画内容を見ましても、もう、どうころんでも、ともかくこの程度のものは、ぜひともやらざるを得ないというものを考慮しながら、自余の一億七、八千万ドルというものを想定して、かような程度を見ていこう、こういうふうにうたい上げたわけであります。
  34. 羽生三七

    羽生三七君 この問題は、また時間の関係で別の機会にしまして、次に、漁船補償日韓相殺ということで最終的な決定をしたようですが、この日本相当補償を、政治的取引で、取引の場の具にするというのは、非常に不当ではないかと思う。特に安全操業は、すでに漁業協定の中で確認されておるわけですね。でありますから、何か聞くところによると、日本側のこれは安全操業との取引ということばは、誤弊があるかもわかりませんが、そういう安全操業ということによる政治的取引、こういうように言われておるが、これは明らかにおかしいと思う。これはすでに漁業協定の中で安全操業は確認されておるはずで、全体の問題の解決の中で、これが日韓相殺ということは、私は明らかに不当と思いますが、いかがでしょうか。
  35. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはかねがね私どもが主張しておりますとおり、有償無償五億ドルの経済協力というものでありまして、そうして、その随伴的効果として、韓国側の対日請求権というものは消滅する、こういう金・大平了解がありまして、重要なここに合意ができて、この合意の精神をくんで会談を続けてきておるのであります。そこで、朝鮮置籍船舶に関して特別の請求権を主張するということは、われわれとしては認めない。認めないというたてまえで来ておるのでありまして、これをいま認めて、そうして、われわれの拿捕漁船に対する損害賠償請求権というものと相殺するというような考え方をわれわれはとっておるものではないのであります。この向こう側請求権を認めない、われわれのほうの拿捕漁船に関する損害賠償請求権というものは、これ自体として政治的考慮を加えて処理する、こういう考え方でございまして、これを相殺するという考え方ではありません。ただ、法律的な相殺ではないけれども、俗にいう相殺というようなことで場合によっては表現されておるかもしれませんが、これはそういう意味ではございません。
  36. 羽生三七

    羽生三七君 表現はどっちでもいいのです。実質上はそうなるわけですね。日本からは韓国側請求はしないということでしょう。それははっきりしておりますね。
  37. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そのつど損害賠償の申し入れをしておりまするが、この会談の際、これをまとめてさらに請求するということは、いろいろな政治的な考慮から差し控える、こう考えております。
  38. 羽生三七

    羽生三七君 それで、日本韓国請求したものは、いままでそのつどお話があったから総額はわかっております。韓国日本に求める賠償損害要求というものは、どの程度だったんですか。
  39. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうからの隻数と、われわれの承知しておる隻数と合致しませんし、したがって、向こう金額に見積もった請求というものもはっきりしない、こういう状況であります。
  40. 羽生三七

    羽生三七君 それが補償の問題が国内的にどういうことになるかということは、これはあとの問題として、国際的な関係でいえば、韓国請求というものがある程度明白になって、日本側に対する隻数なり、あるいはそれを金額に評価した場合、それは明細でないが、それが明らかになって、バランスのとれた金額である場合に、国際的にこれを相殺するという場合には、これはとにかく理屈には合います。ところが、それもわからないのに、日本が一方的に対韓漁業関係請求実質上放棄するという、それがどういう角度からなされようとも、漁業関係の問題は、あるいは懸案一括処理の中の一環としてであろうと、いずれの形にしてでも、これを放棄するということは、これは筋が通らない、おかしいじゃないですか。
  41. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) でありますから、相殺という厳格な観念に当てはめてこれを解決しようとすることは無理であります。でありますから、われわれはこれを相殺ではない、向こうのほうからはっきり金額の申し出があるわけでありませんから。しかし、損害額、いろいろなこれは向こうから検討すれば、さらに訂正される余地はあるとは思いますけれども、一応はこちらからは申し出てある。でありますから、二者の間に相殺という観念は成り立たない、厳格に申しますと。ただ、われわれとしては、あくまで向こう返還請求というものに応じない、こういう考え方をいたして、また、こちらも、損害賠償についても、あくまでこの際、向こうに対して請求をするということをしない、かような立場をとって全般の処理をいたしたい、かように考えております。
  42. 羽生三七

    羽生三七君 それは表現技術上の問題であって、実質的に相殺であることは間違いない。それはそれとして、それじゃ、そういう場合に、今度は日韓間の問題は別として、国内の問題としては、いままで政府がそのつど、おおよそこの程度金額になる、請求をする金額はこの程度と言われたその金額を、日本国内漁民なりあるいは船舶保有者、その損害をこうむった人々に補償をするわけでありますか、日本政府が。そうしなければ筋が通らない。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 拿捕漁船損害補償の問題の国内的な取り扱いについていまお話がございました。今後、政府部内におきましても十分に協議いたして検討いたした上で、この問題の解決に当たりたい、かように考えております。
  44. 羽生三七

    羽生三七君 それは今後の検討にまかせるなんということでうやむやになった場合には、これは漁民としても、あるいは船舶保有者としても、私はたいへんな問題だと思う。それはやはりこういう問題を処理する場合には、日韓間の話し合いの中で、その会談の進行する過程で、ある程度めど政府がつけて、漁民に対する補償というものを明らかにしながら、いまのような表現はいずれであれ、相殺であるという観念が出てくればこれはわかりますが、そうでなしに、将来の検討にゆだねるようなことでこれを扱われていって、将来政府が十分な処置ができなかった場合には、これは被害者はたいへんな損害です。でありますから、この問題は、当然ある程度めどをつけた上で交渉すべきものだ。いかがでありますか。
  45. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いずれにしても、日韓間の交渉問題、交渉妥結一環として、この問題の処理をいたしたいと思います。
  46. 羽生三七

    羽生三七君 これは外務省は前々から、この補償を認めることになると李ラインを承認することになるから、損害補償は適当でないという意向をしばしば外務省は出されておったと思います。しかし、それは今度、日韓交渉がかり妥結した場合には、すでに李ラインというものはないはずでありますから、そんな心配は要らないわけです。でありますから、当然これは政府としての、政府損害賠償韓国から取ってそれを支払う場合は別ですが、それを放棄した以上は、それは政府の当然の責任になると思う。この点はぜひ明確にしておいていただきたい。
  47. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま申し上げたように、日韓問題の妥結一環としてこの問題の処理をいたしたい。
  48. 羽生三七

    羽生三七君 日韓処理するんじゃなしに、政府責任を持って国内問題の、つまり、韓国請求した額に相当する部分日本韓国損害賠償請求した部分相当する額、これを日本国内漁民補償するという、あるいは漁船保有者損害を受けた人に補償するということを明白にしないとこれはいけないと思うのです。はっきりしていただきたい。
  49. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) でありますから、妥結に伴う国内問題の一つとして、この問題の解決をいたしたいと考えております。
  50. 羽生三七

    羽生三七君 責任を持ってやると理解してよろしいですか。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 関係閣僚と十分なる協議を遂げまして、責任を持って解決したい、かように考えております。
  52. 羽生三七

    羽生三七君 これはですね、その点はもう明白にしていただいて、ちゃんとした方針を確立しないと、この問題一つとってみても、これは私は、なかなか日韓会談というものは重要なことになると思います。これはあくまで責任を持って処理されることを、これは要求をいたしておきます。  次に、竹島問題ですが、これは、きょうまでこの問題は長い間論議されてきた問題ですが、そのつど、非常な大きな変化をしております。一番最初はですね、これは、竹島が日本領土であることは明白であるから、絶対にこれを返還してもらう、それを含めて懸案一括解決をすると、こういうことだったわけです。それがその次には、なかなかそれがむずかしいので、国際司法裁判所に提訴して、韓国がこれに応諾することが条件である、こうなっていたわけです。ところが、また最近は、それすらも何か困難で、第三国の仲介あるいは調停ということも考えられるような、そういう説も出てきた。二転、三転、もう際限のないこれは譲歩であります。それで、これは昨年の当院の外務委員会でわれわれの質問に対して椎名外務大臣はですね、国連提訴、韓国の応訴、これがもう最終的な問題だ、これが懸案一括解決の場合の、竹島問題における最終的な決着である、こうはっきり答えられている。これは間違いありません。どうぞ速記録をお調べください。でありますから、第三国の仲介とか調停なんというと、それはたまたま出てきたどこかの説であって、政府の方針としては、あくまで既定の方針に変わりはないと、そう了解してよろしいですか。
  53. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今国会におきましてもしばしば申し上げておるとおりに、この問題の終局的な結論を得るということは、もちろん一番望ましい形でございますけれども、それが得られなければ、少なくとも終局的にきめ得る方法について、はっきりしためどをつけておいて、そうして全体解決の際の一つの事項として取り扱う、こういうことが必要である。そこで、われわれとしていま考えておるのは、国際司法裁判所の裁定にゆだねるということが一番よろしいと思うのでありますけれども、それには相手方の応訴ということが必要であります。でありますから、あくまで、韓国の、日本側の提訴に対して応訴ということを求めなければならぬと考え、その方向に従って努力をするつもりであります。しかしながら、まだその問題の見通しが十分に立たぬうちに、他の方法を考えるということはどうかと思いますけれども、少なくともこれが唯一絶対のものであると考えてはおらないのであります。いまとしては、これが最良の方法である、こう考えて、この方向に努力をいたすつもりでございますが、しかし、もしこれが不幸にしてなかなか見通しがつきにくいという場合には、他の方法を考えざるを得ない。それはただいま検討中である、こう申し上げておるわけであります。
  54. 羽生三七

    羽生三七君 それはね、それなら韓国が応訴しなければ、いつまでも待ったらいいじゃないですか、韓国日本の提訴に対して応訴しないという場合。それがむずかしければ、次の方法を考える、それだから際限なしに譲歩が続くわけですよ。だから、応訴しなかったら、政府の多年の、これは十年にわたる政府の方針で、国会でそのつど明らかにしてきた問題なんですから、韓国が応訴しなければストップして、向こうが提訴に応ずるまで待っておったらいいじゃないですか。それをまた他の方法で急に何とかして話をまとめようなんというのは、それは私はいままでの政府の約束に反すると思う。
  55. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 少なくとも懸案の一括解決をするというたてまえをとっておりまして、国会に対してもそのことをしばしばお約束申し上げておるような次第でございますから、もし見通しがつかなければ、他の方法によらざるを得ない、こう考えております。
  56. 羽生三七

    羽生三七君 それがいけないというのです。見通しがつかなければお待ちくださいと私は言っている。待ったらいい。それですから、一億ドルが三億ドルになり、あるいは漁業の損失補償を放棄したり、あるいは、いまや竹島問題も国際司法裁判所提訴という条件が、いままさにくずれようとしておる。こんなことですから、日韓会談に対する反対というものも自然強くなってくる、当然だろうと思う。第一、国際司法裁判所の提訴に応じないのが、どうして第三国の調停で日本に望ましい形で解決がされる可能性がありますか。あるはずがないでしょう。日本に望ましい形で解決されるなら、少なくとも日本の提訴に韓国が応訴すべきです。その場合だって、わかりませんよ、決着は。しかし、それが長年の政府の方針であるというなら、国際司法裁判所に対する提訴並びに応訴、この形でもある程度やむを得ないでしょう。しかし、それすら認めないという場合に、どうして第三国の調停なんかで日本に望ましい形で——どっちみち解決はしますよ、しかし、日本に望ましい形でどうして解決しますか。そんなことはわかり切っている。ですから、この問題はあくまで日本のいままでの主張を続けるべきだ。そう簡単に、うまくいかなければ第三の方法を考えるなんていうような、そんな簡単なものじゃない。
  57. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 竹島の帰属問題も、これは領土問題でございますから、きわめて重要な問題でございますが、他の問題が合理的に諸懸案が解決したのに、この問題だけで日韓両国が従来どおり不正常な関係のままに果てしなく続くということは、これは国家利益から言って、とるべからざる方法である。かように考えますので、国際司法裁判所によって決定されることは望ましい方法であるが、これ必ずしも唯一の方法じゃない、他の方法があれば、その方法を選んで、そうして両国の国交正常化をはかるべきである、こういう大方針のもとに、この問題を処理したい、こう考えております。
  58. 羽生三七

    羽生三七君 これはね、政府の大方針のもとに竹島問題が影を没するわけですね。これはいままでの多年にわたる国会に対する政府の答弁、あるいは国民に対する約束を全く変えて、懸案一括解決の中の重要な一条件だったわけです。それを、日韓正常化の大条件の前に、こんなことぐらいはやむを得ないという、そういうお考え方はどうかと思う。これはやはり私はあくまで提訴に対する応訴の条件をとりつけるまで、外務大臣はがんばることを要求いたします。そんな簡単な問題じゃありませんよ。大条件の前は竹島問題ぐらいというような、そういうことは私はいかがかと思う。どうです。
  59. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 竹島問題ぐらいとは申し上げませんが、領土権の問題でありますから、きわめて重要な問題ではございますけれども、他の諸懸案が片づいて、ただこのめどがつかないということのために、じんぜん両国の国交正常化を先に延ばすということは、私はほんとうの意味国家利益ではない、かように考えておるわけであります。
  60. 羽生三七

    羽生三七君 これはね、ほんとうなら、ここで昔はあれですよ、昔と言っては変ですが、国会の時期と条件によっては、この問題一つでも委員会がストップするぐらいの問題です。私は協力をしてそれは議事は進めますが、こんな重大な問題を簡単に扱われて、しかたがなければ他の条件なんということは、私はいかがかと思う。しかし、そんなことを水かけ論をやっていてもしかたありませんから、次の問題に移りますが、ここで、先ほどの漁業関係する問題ですが、専管水域の問題は、ジュネーブ協定、一九五八年のジュネーブの海洋会議で採択された領海及び接続水域に関する条約、これとの関連でどうなるか、これはもちろん発効はしているが、日本は署名はしておりません。しかし、この条約からいきますと、これは一般的に、国際的に通用している条約でありますから、これでいきますと、これはたしか、原則としては第三条ですが、この「領海の幅員を定めるための通常の基線は、……沿岸の低潮線とする。」、しかし特殊性を認める場合もあるので、四条では、「沿岸線が深く入りこみ、かつ、切りこんでいる場所においては、」つまり、海岸が曲がりくねってぎざぎざになっている場合、この場合には「沿岸に沿って至近距離に一連の島があるときは、……基線を引くに当たって、適当な地点を結ぶ直線基線の方法を用いることができる。」、こうなっておる。しかし、この「直線基線は、沿岸の一般的な方向から著しく離れていてはならず、また、直線基線の内側の水域は、内水とみなし得るほど陸地と密接に関連していなければならない。」、こうなっておるわけです。ですから、今度のような場合、済州島のように韓国本土から四十海里も離れたような場合、このいまの条件と比べてみてどういうことなんですか。私はこれは、はたしてこれを専管水域として認めることがいいのかどうか、これは非常に疑問だと思う。専管水域と認めた例は、ニュージーランドかどっかにたしか国際的に一つ例があります。例がありますが、それは特殊性を認めた島の距離、本土からその島までどのくらいの距離があるか、調べておりませんので、それはわかりませんが、この韓国のような場合、済州島との関係でいうと、この領海及び接続水域に関する条約の精神と非常に違うのじゃないか。これは条約の解釈上の問題になるから、これは大臣おわかりでなければ、条約局長でもけっこうです。
  61. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) この第四条の直線基線の引き方に関する規定は、非常に抽象的になっておりまして、場合によっては紛議の種になるということで、海洋法会議でも、日本としましては、この直線基線が引かれる島と陸地の距離を制限すべきである。島とみさきを結ぶ場合、あるいは島と島を結ぶ場合、一本の直線の距離を制限すべきであるというような主張をいたしたのでございますが、四カ国で共同提案として出した主張が否決されまして、現在のこの条約のような、いわばばく然たる規定になっておるわけであります。したがいまして、実定法の問題としては、島と陸地の間がどれくらいでなければならないというような制限がない、至近というような抽象的な表現にとどまっておる、こういうことであります。
  62. 羽生三七

    羽生三七君 そこで、この済州島東西の禁漁線は、将来この付近の基線問題が最終的に解決されるまでの暫定的な取りきめ、こう言われておるのは、そういうことですか。
  63. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) そういうふうに交渉しております。
  64. 羽生三七

    羽生三七君 そうすると、将来はこの基線は動くことがあると了解してよろしいわけですね。韓国側に有利になるか、日本側に有利になるかは別として、いまの協定は動くわけですね。将来、たぶん、その期間は、暫定期間は三年くらいと見ておるようですが、それが過ぎれば、もう一度交渉があって動くわけですか。
  65. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 両者の協議によってきまるわけでございます。
  66. 羽生三七

    羽生三七君 これはやはり明確にしておいていただかぬと、あくまでいまの基線は、済州島関係の基線、これは暫定的なもので、将来あらためてもう一度この協議をする、やり直す、そうすると、両者がこれは合意した場合だけですか。その表現はどうなんですか。暫定的という表現を用いる以上、これは両者は、当然日本が再検討を求めた場合には、当然韓国も応じなければうそだと思う。協議がととのった場合では私はいかぬと思う。暫定ということをうたう以上は、当然三年後に——暫定期間を三年と認める場合は、三年後には当然あらためてもう一度基線の引き方を再検討することになる、いかがですか。
  67. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) そのあたりの表現を、この点を目下詰めている段階でございます。
  68. 羽生三七

    羽生三七君 実は、これから私が質問を始めますというと、来月二日衆議院——これは、日韓会談はこれで一応終わります。
  69. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) ちょっと速記をとめて。   〔速記中止〕
  70. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) それでは速記をつけて。
  71. 羽生三七

    羽生三七君 来月二日、沖繩と北方領土、それぞれ衆議院で超党派の決議案を出されるということを聞いておりますから、それに関連をして、実は承りたいことがあるわけです。あるわけですが、時間を見ると、それをやり出すと非常な長い時間かかるし、他の議員の発言の障害になってもいかがかと思うのでこれでやめておきます。ただ、そういう問題についてわれわれがいま十分関心を持っておるということだけを申し上げて、それからあと、実は日米航空協定、それから日ソ航空協定、日中その他の問題についてもかなりこまかくお伺いするつもりで用意してきましたが、時間の関係で、それじゃこれで省略させていただきます。
  72. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日韓会談に関連をして、時間の関係で要点だけお伺いをいたします。  韓国日本請求しておる船舶請求権というのは、どういうふうなものなんでしょうか。
  73. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 大きく分けまして二種類ございまして、終戦のときに韓国の港に登録船籍を持っておりました船で、その後日本に帰ってきたものに対する請求権、それから船籍問題は別といたしまして、当時韓国領水に物理的におりました船に対する請求権、置水船と申しますこの二種類に分かれるわけです。
  74. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは日本の船ですか。
  75. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 所有権の関係からいうと、大体みな日本の船だったと了解しております。
  76. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いま外務大臣が言われました船舶請求権には応じないというふうなことを羽生さんの質問に言われたのですが、それはどういう根拠なんですか。そういう韓国船舶請求権というのは理論的な根拠がないと、こういう意味で、それに応じないと、こう言われたわけですか。
  77. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 請求権の根拠として、御承知のとおり八項目向こうから……。
  78. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 船舶請求権です。
  79. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ですから、それから言わないと——それを出したわけでございます。それはしかし、きわめてあいまいな根拠のものが非常に多い。何となれば、朝鮮戦争がありますし、時間もたっておりますので、それで、それをいたずらにせんさくしておったのでは、なかなか解決がつかぬ。そこで、金・大平了解というものによりまして、三億の無償有償二億、この経済協力をするという約束をして、この随伴的効果として、向こう請求権は消滅すると、こういう了解に達して、途中でまあそれを受け継いでいまやっておるわけであります。でありますから、置籍船、置水船、両方ともこの大原則によって請求権は消滅したものと、こう解釈して、従来国会に対しましても歴代内閣が説明をしてきておったのでございます。でありますから、われわれはこの従来の説明を正当なものとして、もはや三億、二億の経済協力というものが成立するとすれば、これは独立して請求権という命脈を保つことはできないものである、こういう解釈をとっております。
  80. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは、八項目の中に入っているわけですか。
  81. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) ちょっと大臣の御答弁の中の思い違いの点、訂正さしていただきますと、八項目は一般請求権で、船舶のほうは、別ワクで向こう請求してきております。
  82. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、船舶請求権に応じないという根拠をひとつお知らせ願いたいわけです。いま大臣の言われたのは違うでしょう。
  83. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 御承知のとおり、そういう置籍船というようなものについて有効な請求権があるかどうかという点が問題であるわけでございまして、したがって、数年前から船舶委員会で、その点、日本側のほうは、法的根拠についても、韓国側に、申し分をいれることができないということを申しております。また、数字についても、向こうの言い分とこちらの言い分と違うということで、これも両方対立したままになって、ずっと対立が続いておったわけでございます。そこで、この請求権問題、これは八項目を含めて、全部、金・大平了解解決するということになりましたときに、いま大臣が申されましたとおり、そういういろいろ法的根拠あるいは数字等について、双方の見解の対立があるけれども、ともかく今度、この金・大平了解ができるときに、一環としてこの請求権の問題も同時に解決した、そういうたてまえをこちらはとってきたわけでございます。
  84. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本の船が、日本に帰ってきて、それで、韓国がそれに対して請求権を持つなんて、そんなばかな話ありっこないじゃないですか。それは日本の見解でしょう、きわめて常識的な見解を日本はとっているわけでしょう。どうですか。あたりまえですよ、これはね。
  85. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 政府の従来とっておりました見解は、先ほどアジア局長が述べたとおりであります。先方は、それと異なった見解を主張しておりまして、そういうような問題が、しばしば、分離された地域ともとの本国との間には起こりがちでございますので、そういう問題を協議によって解決するために、平和条約第四条のような規定が設けられていることは、御存じのとおりでございます。
  86. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 あなたのほうも、だいぶ苦しいというか、ごまかしていますがね。戦争のときに韓国のそばにあったとしても、それは日本の船だというのじゃないですか。それが日本に帰ってくるのはあたりまえであって、それに対して韓国請求権を持つなんて、そんなばかな話は、どこへ行ったってないですよ。それは別として、向こう李ラインをつくって、それによって、日本漁船が拿捕されたり、あるいは沈没したり、あるいは殺されたり——八人死んだでしょう、射殺された者もおりましたね、こういう人たちに対する日本韓国に対する補償請求権、これは法律上の権利として認めているわけですか。
  87. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 一般論としては、当然そうなると思います。
  88. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、日本側漁船の拿捕によるものは、法律上の権利である、韓国側日本に対する請求権というものは、法律的には権利ではない、こういうようなものの中において、それが法律上の相殺ということはあり得ないということはわかるけれども、事実上の相殺をされるということはあり得ないことじゃないですか。基本的におかしいことじゃないですか。外務大臣、どうお考えになりますか。
  89. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国の領海内にあった船あるいは置籍船、こういうものは在韓財産の一つであるということ、軍政府から没収される運命にあった。それが、たまたま逃げてきているので免れた。まあ、いわば、事態の成り行きにまかしておけば、韓国がこれを譲り受けるはずのものであったというような解釈のもとに、請求権を持っておる、こう主張しているのじゃないかと私は考えておったわけでございますが、法律上の理屈はよくわかりませんけれども、そういうような根拠のもとに、これは金・大平了解の中において処理さるべきものではないということを、この了解を取りかわした当の金鍾泌氏が、盛んに国内においてこれを主張しておった形跡があるのでございます。これに非常に執着をして、向こうが当方に要求を出しておる、こういうようなのが従来の経過でございますが、われわれは、これは認むべきものではない、こう主張してきた次第でございます。
  90. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だから、認むべきものでないものと、認むべき日本韓国に対する権利と、それを事実上相殺をするような形で結末をつけるのはおかしいじゃないですか、こう私は聞いているわけです。だれが見てもおかしいですよ、それは。
  91. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) でありますから、これは相殺ではないと、こういうふうに申し上げております。諸般の政治的考慮を加えた結果、これをあえてこの際、こちらの要求を通すということは断念をする、こういう態度になったわけでございます。
  92. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、現段階で、日本漁船の拿捕その他による損害賠償請求権は、韓国に対して放棄したのですか。そういう意思表示を日本政府はすでにしているわけですか。
  93. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだ、折衝の最中でございますから、固まったわけではございません。
  94. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それで、政治的な配慮を加えて、それを放棄するというような意味じゃないですか、いま外務大臣の言われたのは。だから、羽生さんの質問に対しても、国内補償の問題について、いろいろあなたが責任を持ってやるという答弁をしているじゃないですか。そうでなければ、国内補償の問題なんか起きてこないじゃないですか。すでに放棄ということの意思表示をしているじゃないですか。それを前提のもとで答えじゃないですか。筋が通らないじゃないですか。
  95. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) でございますから、そういう態度で折衝に臨んでおるわけでございますが、ただ、まだ固まったわけではない、両国の間に取りきめが固まったわけではございませんが、以上申し上げるような態度でこの問題の処理に臨んでおる、こういうわけでございます。
  96. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、いま大臣が、妥結後の国内問題の一つとして解決すると言われましたね、妥結後の国内問題。かりに妥結した後における国内問題というのは、どういうようなものがあるのですか。
  97. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 種々あることと存じますが、こういう問題に関連の深いものとしまして、要するに、一般に在外財産の補償の問題というのがからんでくることと思います。
  98. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 在外財産の補償の問題というのは、軍令三十三号に関連してくるわけでしょう。いわゆるVESTの問題にね。これはいろいろありますが、ここでやっている時間がありませんからやりませんが。  それから、時間の関係で非常に残念なんですが、そうすると、いまの漁船の拿捕その他に対する損害賠償請求権というものは放棄することがあり得るんですか。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さような態度をもって臨んでおります。
  100. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 話は別になりますが、大平、金メモというものは、これは日本政府に対する拘束力はあるんですか。
  101. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ法律上の解釈はしばらくおくといたしまして、とにかく両国の代表者間において取りきめられた問題でございまして、たとえ、これが終局的な結論にはなっておりませんけれども、かなり各方面から検討を加えた結果かような、暫定的ではございますけれども、合意に達したわけでございますから、いわゆる国際道義の上からいって、両国においてやはりこのたてまえを尊重して、そして会談に当たるべきものであると、こう考えております。
  102. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、韓国政府もこれに国際道義上というか、あるいは国際法律上というか、拘束力があると、こう見ていいわけですか。
  103. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国もこのたてまえは尊重していくという態度をもって今回の会談に当たっておる次第でございます。
  104. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その大平・金メモのときに、請求権の問題に関連をして、日本韓国との間に解釈の違いがあったんですか。なかったんですか。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 朝鮮置籍船舶及び朝鮮の領海内にあるいわゆる置水船舶、この問題は別であると、一般請求権は、二億の経済協力が成立すれば、随伴的効果として消滅するのであるけれども、これは消滅しないということを向こうは言っておる。しかし、当の相手方である大平前外務大臣は、これもやはり一緒に消滅したんだ、こういう解釈をとっていたわけであります。その点で非常に大きな食い違いがあったわけであります。
  106. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういう解釈の食い違いというものは、あれですか、十分そこで論議されなかったんですか。日本としては、それはもうその中に入っておるんだというふうに考えて、大平外務大臣は閣議等においてもそういうふうな報告をしたわけですか。あるいは国会に対してもそういうふうにしっかり答弁したわけですかな。
  107. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大平大臣は、これはもう当然随伴的効果として消滅すべき請求権の中に入っておるということを国会においても答弁しておるし、もちろん閣議に報告しておるようであります。
  108. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうするとですね、それが請求権のあの中に入っていないので、別個のものだという韓国の主張というものは、日本側から見れば全く理由のないものなんだ、こう考えてよろしいわけですね。
  109. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) それは大平大臣のそういう解釈を正当なものであるという前提で、従来これを支持しているわけでございます。
  110. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうなってくれば、ますます、われわれ日本の漁獲補償に基づく損害賠償請求権というものとが事実上相殺をされ、あるいは相殺ということばが悪ければ、政治的判断のもとにかもしらぬけれども、それが放棄されるというふうなことは、全く日本政府として意にかなわないやり方であるというふうに考えざるを得ないじゃないですか。
  111. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ両国の主張が、そこでまっ正面から食い違ったわけでありますが、外交折衝は、従来の理屈をどこまでも主張しておったのでは折衝になりません。これは金・大平了解事項が食い違っているけれども、前大平大臣の主張が正しいものとして、これに対しては支払いをしない、こうきめているわけであります。
  112. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、その漁業の、日本側の対韓補償請求権といいますか、これに関するところでは、日本側は大幅に譲歩をした、こういうふうに受け取らざるを得ないことになるのじゃないか、そういう結論でしょう。理論的にいえば、そうなるじゃないですか。見解の相違ですか。
  113. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはいわゆる相殺というような観念ではなくて……。
  114. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そういうこと聞いてないです。相殺のことはいいですよ。
  115. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この点はまあ譲歩でございますね。やはり譲歩です。
  116. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 譲歩と言える。まあ、いまそういう点を大臣認められたわけですがね。どういうわけでそれじゃ譲歩するようになったのですか。あとからあとから続いてきて、ちょっと、たいへん恐縮ですけれども。
  117. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 御承知のとおり、向こうはきわめて不法不当に李ラインというものを想定をして、韓国のあたかも領海なるがごとくに考えて、そしてわがほうの漁船の拿捕を続けてきたわけであります。拿捕されないにしても、きわめて不安定な操業状態に追い込まれて長い間苦労をしてきたのであります。これらの問題は、もともと不当ではありますけれども、とにかく事実上、そういう状態が今回の全面会談によって合理的な線で解決されるということになっているのでありまして、この点に考慮を加えて、その合理的な妥結というものがほんとうにもう確定するということを前提として、この問題について深くこれを追及することをやめるということが、全局の上からいって、国民利益、国家利益に合致するものである、こう考えて譲歩するということにした次第でございます。
  118. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 不法不当なものが、合理的に解決されるというのは、どういうわけですかね。そんなことあり得るのですかね。変じゃないですか。
  119. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 用語は間違っておれば訂正いたしますが、そういう状態がとにもかくにも十数年間ですか、続いた。それを今度は、そういう不法不当な状況が一切なくなるということであるならば、そのことを前提としてこれを深く追及をすることをあきらめる、そういうことが現状に即して国家利益に私は合致するものと考えております。
  120. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 大平・金メモのあの民間協力資金の問題がありますね。これはきのう大平さんが国会討論会をテレビでやったのを聞いたのですが、これは書いても書かなくてもいいと言っておりましたね。書いても書かなくても同じですか、これは。きのう大平さんはそういうふうに言っていました。
  121. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 両国の国交が正常化して、お互いの間に信頼関係を樹立して、そうしてそのもとに経済の交流もどんどん行なわれていくということになりますと、こういうものはあってもなくても私はいいのではないかと思います。しかし、いままでがいままででありますから、こういったようなことを書いておくことが何らかのやはり利益になる、こういうことだったろうと思うのであります。もともと請求権問題に関連しては、無償三億、有償二億、これが根幹であって、そのほかに、全面妥結ができてもできなくても、これは両国の間においての民間資金というものの出し入れが行なわれるというのは、何というか、本体ではないのです。それを今度は向こうが一億以上と言わせてくれ、こういう話し合いで、これも御随意にということで、やはり運営のほうが青天井でございますから、元来がそう意味のあることではない。しかし、やはり従来の日韓の両国の間を幾らかでも今後好転させようとするならば、こういったような法律的にはあってもなくてもいいものでありますけれども、両国の間の改善を推進するというような気合いのもとに、こういうものがあったほうがいい、こういうことであったろうと思います。
  122. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そのあってもなくてもいいものを韓国が希望したというのは、韓国国内向けの一つの放送というか、対策というか、そういうことのために、民間協力を一億ドル以上というような形にぜひ書いてくれ、こういうようなことから出てきたのじゃないですか。
  123. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ほかの理由もあったのかもしれませんが、主としてそういう理由のもとにこれが生まれたということを聞いております。
  124. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 きょうは、外務大臣なかなかいつもと違って正直なことをずっと言ってくれる、こう思うのですがね。この調子でずっと答弁していただきたい、こう思いますが、そこで無償供与三億ドルをなぜ日本韓国に対してやらなければならないのでしょうか。
  125. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来の経過はアジア局長から……。
  126. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 いやいや、従来の経過というよりも、むしろなぜそういう……。
  127. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 私の解釈をそれじゃあ申し上げます。  これはいろいろな請求権があるのだということで向こうから申し出たものがずいぶんあったようでありますが、時間も経過して、その間に朝鮮事変というものがありまして、物的証拠によってこれを確認するということがなかなかできない。しからば、そういうことができなければ、じゃ向こうの申し出をそのまままるのみにして請求権というものを認めてこれを支払うということになるかと、そういう場合いいのかというと、そうはいかない。そこでそれを、不可能な問題をいつまでも審議しておっても果てしのないことである。そのために日韓の国交が正常化しないということは非常に損失ではないかということに気がついて、いわゆる経済協力の話が出て、そして三億、二億と固まって、これを行なうことによって従来の個々の請求権というものはあきらめる、こういう合意に達したわけであります。
  128. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはわかっています。それはいままで答弁されてわかるのですが、お聞きしたいのは、共同コミュニケの中に、こういうふうな経済協力ができると日韓両方に著しい利益があるということが書いてありますね。では無償三億、有償二億を韓国にやった場合にどういう利益が日本の経済にとってあるのですか。
  129. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはいろいろな利益があると思いますが、個々に申し上げてもそれはなかなかなんでありますから……。結局、韓国の教育状態、普及程度がほとんどアジアにおいては日本に次ぐもののように思われます。経済もやっぱり建設は教育にあるとすら近ごろは言われてあります。そうして、二千何百万の韓国の人民がおる。で、これは経済交流の非常に最大の基本条件であると思われます。でありますから、これを生かして、そうして韓国経済建設に協力するなり、今度は逆に韓国の経済というものが日本の経済のプラス面にはね返って作用しておるということは、これはもう疑う余地がない。そういう意味において、日本は非常な長期的な観点からいって、いまのうちに韓国の復興に協力するということがきわめて日本の非常に大きな利益になってくる、こういうことだろうと私は確信しております。
  130. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 外務大臣は、ことしの三月十五日の予算委員会で、私の質問に対して、その点で韓国の市場についていま言ったようなことを言われておりまして、「これはもう非常に大きな日本にとっても市場ではないか、日本の商品にとって非常に大きな市場である、かように考えるのであります。でありますから、育成されるまではこれは相当にやはり肥やしをつぎ込まなければならぬと思いますが、しかし、これがほんとうに実りを見るというふうになりますと、非常なまあ日本にとっては大きな市場である、そういうことを私は考えざるを得ないと思います。」と、こう答えておるのです。これは速記録を読んだのですから……。そうしますと、いま無償三億、有償二億、あるいは民間協力ということは、韓国に対するあなたの見解によるとやはり肥やしをつぎ込むことになるのだ、肥やしをつぎ込むと、あとで実りをもたらすし、日本のために大きな市場になってくるのだ、無償三億、有償二億は韓国市場に対する肥やしなんだ、こうあなたはお考えですか。そういうふうに答弁されておるのですよ、ぼくに。
  131. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一口にどういう利益があるかという、こういう御質問でしたから、顕著な利益の一つをとらえて申し上げたので、これがすべてではないと私どもは考える。また韓国にとっても、これによって非常に大きな利益がもたらされる、かように考えております。
  132. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 問題をそらさないでくださいよ。「相当にやはり肥やしをつぎ込まなければならぬと思いますが、」と、こう言っているわけですね。ですから、三億、二億というのはいわゆる韓国市場を育成するための肥やしなのかと聞いているのですよ。
  133. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 戦争のときの東南アジア諸国に賠償を払ったのです。これは賠償だけの意味がある。しかしながら、同時に、この賠償金を支払うことによって日本の生産物あるいは技術あるいはその他のプラント類というものが向こうに行きます。それが今度は相手国の経済建設のもとになりますから、賠償そのものはいわゆる賠償なんですけれども、見ようによってはこれも肥やしになる、こういうことになるのでありまして、ただやる理由がない、ただ将来の経済的利益のための呼び水であり、肥やしである、こういうふうにのみ限局して解釈することは、私の真意ではございません。いろいろな意味が、いろいろな面をたくさん持っておるのでありますから、同じものでも見ようによってはそれは肥やしであり、それからまた当然の損害賠償であるとも見えますし、いろいろな作用がそこに含まれておるということに御了承を願いたいと思います。
  134. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 御了承願いたいと言っても、よく聞いていてどうもはっきりしないのですが、肥やしをつぎ込むというのは、無償有償のものを韓国につぎ込んで、それが将来日本の利益になって相当大きくはね返ってくるのだ、そういう目的もあるのだと、こういうことですか。
  135. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうことは当然、あなたがどういう利益があるかと、こうおっしゃるから、こういう利益があるということを申し上げたのです。利益だけのこれは仕事でやっているわけではない、そういうわけです。
  136. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 利益だけの仕事でないとしても、共同コミュニケに書いてあるのです。日韓両方に著しい利益があると書いてあるじゃないですか。日韓全権会談の目的は日韓両国にとって著しい利益であるばかりでなく云々と書いてあるから、では著しい利益とは何かと言って聞いたら、あなたはそういうふうなことをやれば肥やしになるのだ、それから将来大きな市場になって日本経済にとって利益になるのだと言われるから、聞いている。だから、有償三億、無償二億ということは肥やしになって、日本の市場に大きな利益になってはね返ってくる、日本に有利なのだ、こう言われるから、私は聞いているのです。それならそう、違うなら違うと、はっきり答えてください。
  137. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) さようでございます。
  138. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうですが。それはあとで非常な問題になってくることだとこう思うのですが、直ちにそれが植民地搾取とか何とかいう意味ではないのですけれども、これは大きな問題になってくるいまの答えだと思うのです。  そこで、時間の関係のために話を進めまして、たとえば基本条約に国連決議を援用されましたね。国連決議を援用されたのですが、唯一合法の政府として見ている。しかし、その前に、一九四八年十二月十二日の第三回国連総会決議ですか、それに書いてあるのは、「朝鮮人民の大多数が居住している朝鮮部分に、有効な支配と管轄権を及ぼす合法的政府が選挙民の自由意思で樹立されたことを認める」、そう言っているのではないですか。ですから、日本も、大韓民国というものが限定政権である、部分的な政権であるということを認めて基本条約を結んだと、こう見ていいのじゃないですか。
  139. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 条約の解釈の問題になりますから、条約局長から……。
  140. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 国連決議に仰せのような趣旨があることは、事実でございます。ただ、そういうことを、限定政権というようなレッテルをつけて呼びますと、いろいろ誤解を生じます。限定政権ということばは国際法上の観念でもございませんので、国連決議に書いてあるとおりでもう事態は明らかであると私どもは考えておりまして、したがいまして、決議そのものを引用したわけでございます。
  141. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 しかし、この基本条約の第三条では、大韓民国政府は云々と、こう明らかに示されているとおり、朝鮮にある唯一のと、こう書いてありますね。ところが、韓国文には何と書いてあるのですか。ぼくは日本文と英文と韓国文のものをくれと言ったら、韓国文のはないと言って外務省はくれないのですよ。韓国文にはこの点はどういうふうに書いてあるのですか。
  142. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) イニシアルいたしたものは英文だけでございます。このイニシアルされたものが実はソウルのほうで漏れまして、通信にキャリーされましたので、それを日本語の仮訳を出した。日本語も仮訳でございまして、これについても公表はいたしておりません。したがいまして、日韓間でイニシアルされた対象は英文のみでございます。
  143. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはちゃんと日本語のものは、仮訳かしらぬけれども、正規に発表されてここに来ているじゃないですか。韓国語の仮訳も当然あるはずじゃないですか。それは日本にはないんですか。
  144. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 仮訳はあるかもしれませんけれども、日本文と同じように、相互の間で確認された訳文はないわけでございます。日本語文も韓国側で了承しておりませんし、韓国語文も私どもとしては全然関知しておらないわけでございます。
  145. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 日本側に言わせれば、三十八度線以南のところに現実に支配を及ぼしているということは日本も認めているわけですけれども、韓国語文によると、朝鮮というのを韓半島というふうに訳している。大韓民国の憲法の第三条では、あれでしょう、韓半島及び島嶼に及ぶということになっておって、だから、朝鮮というのは全半島の、全朝鮮の唯一の合法政府だという形に韓国文は書いてあるんじゃないですか。
  146. 藤崎萬里

    政府委員(藤崎萬里君) 韓国文はどうなっているか存じませんけれども、国連決議の趣旨は非常に明らかでございまして、そうしてこの基本条約第三条では、決議そのものをずばりそのとおりの意味における韓国にある唯一の合法政府と言っているわけでございますから、その点については、私どもは誤解のおそれはあり得ないはずであると、かように考えております。
  147. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これはもっと基本的に論議をしたいんですけれども、時間の関係で、法的地位の二、三の問題に移りますが、一九四五年の九月二日を境にした根拠はどこにあるんですか。     —————————————
  148. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) この際分科担当委員異動について御報告いたします。  本日羽生三七君が委員辞任され、その補欠として大倉精一君が選任されました。     —————————————
  149. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 御承知のとおり、まだ法的地位についてはテキスト等は固まっていないのでございますが、従来の話し合いでは、一応その時間のとり方を、終戦という字を使いまして、終戦以前から住んでいた者ということで標準をとっております。
  150. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 発表されているものには、一九四五年の九月二日となっているでしょう。九月二日が終戦ということなんですか。九月二日以前から日本にいる者というふうにちゃんと書いてあるじゃないですか。
  151. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 一応今度の外相会談等で話し合いをしておりますときに、その結果を固めていく、あるいはその前の法的地位委員会でずっとお互いに、試案と申しますか、草案、試案のようなものを交換して、それを基礎にして議論しているわけでありますが、そのときにはみな終戦という字を使って、具体的の日にちには触れていないのでございます。
  152. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 その点は、草案なんか発表されているのを見ても、みな九月二日になっているわけです。そうすると、それを終戦にしても、終戦前に日本にいる者と終戦後に日本に来た者とはその処遇上どういうふうに違うわけですか、法的地位の中で。
  153. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 予想されております法的地位に関する協定の中では、終戦前から日本にずっと住んでいた者は、それが特別の環境、特別の歴史的理由がありますので、これに特別の待遇を考えるというのが趣旨でございまして、終戦後入ってきた者については、その協定の対象とは考えていないわけでございます。
  154. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 終戦後入ってきた者は協定の対象と考えないということを、外務大臣、しっかり貫きますか。また変わるんじゃないですか。貫きますか。
  155. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) その趣旨でただいま折衝いたしております。
  156. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そうすると、終戦前から日本にいる朝鮮人と、終戦後入ってきた者との間には、いろいろな差別があってもいたし方がない、処遇上、地位上差別があってもいたし方がない、こういう見解だと承っていいわけですね。
  157. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうことでございます。
  158. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それから、国籍を選別するときには、具体的にどういうふうにやって選別をするという行き方をとるわけですか。大韓民国の国民だとか、そうでないとか、いろいろどうやって選別するのですか。
  159. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 御指摘のとおり、その点が一つの問題点でございまして、これはどういう手続をとるということについては、まだ話が詰まっておりません。
  160. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ただ、基本的には、国籍選択については、国連憲章とか人権宣言にもあるように、国籍選択の自由、自由意思に基づいて国籍選択をさせるということは貫くということですか。これは当然でしょう。
  161. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 従来の交渉——中において、いずれにしましても一方的に国籍を押しつけるというような態度はとってはいけないということでやっております。
  162. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 だけれども、現実には、日韓の協定がかりに発効した後において、在日朝鮮人の韓国人以外の者が婚姻届けを出そう、こういうようなことになってきた場合にですよ、日本の役場に。そうすると、本国の戸籍謄本を取れということになってくる。本国の戸籍謄本ということになると、南に本籍がある者が相当いるわけです、本籍からいうと。そうすると、韓国の代表部へ行って韓国籍を取得しないというと、その南朝鮮のところの本籍から戸籍謄本が取れないということになってくる。その戸籍謄本がないと婚姻届けを受けつけない、あるいは相続を受けつけないということになってくる。そこで、現実に戸籍謄本を取るためには、韓国の代表部へ行って韓国民とならなければ取れない。そうでないと日本では婚姻なり相続というものを受けつけないということが結果的に起きてきて、そこで韓国籍の強要ということが事実上日本政府韓国の共同という形の中で行なわれてくるのじゃないですか。そこのところはどういうふうになるのですか。絶対そういうことはないというのですか。これは一番大きな問題なんですよ。
  163. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) いわゆる大韓民国の国籍を取得しようとしない者、その者に対する処遇の問題をどうするかという点は、これは確かに協定成立後の実際行政面において問題点でございます。御承知のとおり、先般参議院の予算委員会におきまして、この質問に対しまして、法務大臣のほうは、治安その他現実の情勢を考えて理論の問題は別として実際的な考慮をする、こういうふうに答えているわけでございまして、いろいろな点でどういうふうに実際的な取り扱いをするかということを各担当の部門が研究しておるわけでございますが、婚姻届け等戸籍の面につきましていま法務省がどういうふうなあれをしているか私ちょっと研究しておりません。
  164. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 そこで外務大臣日本政府としては、国籍の選択は当事者のあくまで自由意思によるものであるから、それに関連をして、国籍選択について圧迫であるとかあるいは疑いを持たれるようなことはしないということは、これは約束できるわけですか。
  165. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あくまで自由意思を尊重して国籍の選択を行なわせるということにつきましては、わが国、日本としても協力いたしたいと思います。
  166. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは国籍の選択は自由意思によることは当然なことであって、それが現実に韓国籍の強要というものが間接的にしろ起きてくる危険性が非常にあるわけです。だから私は質問しているので、きょうは法務省関係来ておりませんけれども、そういうことを日本政府としてはしないというならば、それは私はそのとおり受け取りますが、これは今後の大きな問題となってくるので、きょうは時間がありませんから、また別なあるいは法務委員会なりあるいは外務委員会なりその他のところで詳しく質問していきたいと思いまして、日韓会談関係は時間の関係でこれで一応終わりまして、時間があるもんですから、ちょっと私が前に質問いたしました、外交官の交通事故による殺人といいますか、マレーシアの大使館員が日本の早稲田の学生をひき殺して、その後その問題は未解決になっておるわけです。外務省はこれに対して責任を持って解決をするということを言っておる、二月二日に私に対して。その後さっぱりそれが進行しておらないのですが、これについてその後外務省としてどういうふうにマレーシアの大使館なり何なりに対して交渉なり何なりをとってきたのかどうか、まずこれを明らかにしていただきたい、こういうふうに思います。
  167. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) その後、外務省といたしまして、当事者間で穏便に解決するように勧奨しておりますし、また大使館に対しましても、またマレーシアの外務省に対しても、わが方の大使館から本件を連絡いたしまして、早く解決するように申しておる次第でございます。聞きますところ、保険会社は現在二百八十万円の保険金を払ってもいいというようなことを申し出ているそうですが、まだ御遺族の方はそれでは満足できないという状態にあるように聞いております。
  168. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 具体的に、私が質問した後に外務省としてはどういう態度をとったか、いつ幾日だれを呼んでこういうふうにしたとか、こっちから行ってこういうふうにしたとか、それを日を追って説明してもらいたい。これは責任を持って、誠意を持って解決すると言われたのですが、具体的に日を追って説明してもらわないと、ただそういうふうにやったというだけでは問題にならぬ。ぼくはそういうことではいかぬと思う。具体的に説明してください、日時を追って。この問題は、私はどこへ行っても聞かれるのですよ。あれを質問して、そうして非常にけしからぬ。ところが、具体的に一体その結果どうなったということを全然未知の方から聞かれたり、それから手紙がくる。いろいろとされているのです。どうしてもぼくははっきりした説明が、外務省はこういうふうな態度をとったということをはっきりしてもらいたい。向こうはこういうふうに返事をしているんだということを。
  169. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 本件を交渉しております儀典長室の奈良書記官が見えておりますから、奈良書記官から詳細に……。
  170. 奈良賀男

    説明員(奈良賀男君) ただいま官房長が御報告になりましたように、二月の三日、外務大臣から在マレーシア甲斐大使に対しまして訓令を出して事件の全貌を知らせて、国内では非常な問題になっておるのですみやかに穏便な解決をはかってもらうよう訓令いたしております。また一方、二月の五日に、南西アジア課長及び私が東京にあるマレーシア大使館の書記官カウという人に外務省に来てもらいまして、二月の二日参議院の法務委員会で稲葉委員からきわめてこの問題がシリアスに取り上げられて質問があったということ、それに対してわれわれはこういう返答をしたということを説明して、本国に報告してほしいということを頼む一方、東京での大使館の活動を責任を持ってやっていただきたい、やってほしいという申し入れをいたしました。その後、二月の十一日同じく参議院の外務委員会で杉原委員からもこの問題で御質問があり、また二月の二十日衆議院予算委員会委員の先生からも御質問がございまして、外務省としては重々この問題を軽視してはいけないという印象、覚悟は持っておりまして、従来努力してきております。
  171. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それは二月のお話であって、三月になってからはさっぱりないですな。向こうはどういう返事をしたのですか。
  172. 奈良賀男

    説明員(奈良賀男君) まだこの問題は交渉中でございますので、最終的なお話ということで申し上げるわけではございませんが、ごく中間的な御報告として申し上げますと、マレーシア外務省は次のような態度を表明しております。すなわち、日本国内ではアヤトリ書記官をきわめて誤解している。すなわち、切り捨てごめんというような態度で帰っていってしまったという印象であるけれども、それは事実に非常に反する。少し長くなりますけれども、先方の申しておることを……。この事故のあったときに、暴走した、ジグザグ運行をしたというけれども、当時三十五キロのスピードで、ジグザグ運転をしたことはない。
  173. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 要点でいいですよ、時間の関係で。
  174. 奈良賀男

    説明員(奈良賀男君) 事故の起こったあと、深夜を過ぎるまで病院におって、医者からあなたたちがいても何にも役に立たぬからもう帰っていいんだと言われるまで病院に残っておった。翌日、お通夜にはアヤトリ書記官がみずから出た。そのあとの葬式には、行くつもりだったけれども、お通夜の際に日本人からどっと取り囲まれまして、非常に強迫感を得たので、大使館の者に香典を持たして、自分では出なかったことは事実である。それから、その後の訴訟の問題も、自分としてはできるだけの解決をはかるべく遺族とも折衝した。ただ、先方が千二百万を希望し、自分は一万ドルの保険、すなわち三百六十万の保険であるので、その差が非常に大きかったので、金額については御遺族の満足のいくような線が出せなかった。それから、帰るにあたりましても、黙って帰ったわけでなく、遺族のお宅を訪問して、仏前に弔意を表し、自分が帰っても、この問題が未解決であるのは非常に残念だけれども、大使館のこういう書記官があとを引き受けたのだというあいさつをして帰った。まあこのようなことを申し述べまして、全く切り捨てごめんで帰ったというふうに言われているけれども、心外である、こういう先方は申し立てをしております。
  175. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 最後ですが、そうすると、外務大臣としては、いまのマレーシア大使館員の日本の学生をひき殺してしまったというこの事件については、あなたとしてはどういうふうに今後措置を進めていきたいというふうに考えておられるのか、外務大臣の見解を聞いて、私この質問を終わりたいと思います。
  176. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) かような事故が起こらないことが最も望ましいのでございますが、最近の日本、特に東京における交通地獄と申しますか、まことに寒心すべきものがあるように思います。その点につきましては、今後当局者に十分に一段の注意をしてもらうように希望いたしますると同時に、かようなことが外務省関係に起こらないように切に希望するものでございます。  今回の事件につきましては、関係者の間に深い理解と、これに対する善後措置を十分に尽くすように勧告をしまして、円満に収拾したい、かように考えております。
  177. 大倉精一

    大倉精一君 外務大臣にお伺いしますけれども、日韓会談内容については、もうすでに論議も相当尽くされておりますから、私は質問しませんが、国民が非常に心配しておる。ことに、毎日の新聞、テレビを通して国民が見ておりまするというと、二転、三転、四転、解決したように見えても、さらにはだめになってしまう。あるいはまた、韓国の外務大臣も、招待しておいたその滞日の日にちを延ばしてまでも変更する、こういうことで、一体こういう状態でもって、どうしてこの外交といいますか、日韓会談を進めなければならぬかという疑問を持っております。さらにまた、この前も私は外務省の前に行きましたところが、警官輸送のトラックですか、これが一ぱいおる。何だと言ったら、日韓会談が開かれておる、こう言うのです。いわゆる警官の包囲のもとに外交交渉をやる、異例の措置であります。こういうことをやってまでどういうわけでこの日韓会談をやらなければならぬかという疑問を持っております。そこで、やはり政府としては、これは三月の妥結、五月の調印、そういう方針を現在も厳守しておられますか、さらにまた、そうだとするならば、その理由はどういう理由か、この点をひとつ明らかにしていただきたいと思います。
  178. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ十数年来の懸案でございまして、幸い両国の間に機運が盛り上がっておりますので、できるだけこの機運に乗じて懸案解決ができれば幸いである、かように考えておりますが、何しろ相手のある問題でございまして、お互いにこの対立した関係において問題の収拾をはかろうというのでありますから、スケジュールを組んで五月署名というような計画をあらかじめ設定するということは、これはきわめて困難であり、あまり意味のないことではないか、かように考えておりますが、今回は、幸い李外務部長官が来日せられまして、この機会に大綱についての話し合いをぜひしたいという向こうの切なる申し出でがございますので、できるならばこの滞在中にその希望をかなえ、また、われわれといたしましても、主張すべきは主張し、譲るべきは譲って、そして早期妥結の線に沿うてともに協力したい、かように考えておる次第であります。
  179. 大倉精一

    大倉精一君 まあこれは譲るべきものは譲るということですけれども、国民の印象は、一歩後退、二歩後退、三歩後退、四歩後退、どこまで一体後退するのか、こういう印象を受けておる。しかも、明治以来の無軌道外交である、あるいは型破り外交である、こういうことまで言われておる。さらにまた、現在ベトナムの状態は非常に緊迫をしておりますけれども、この情勢の中で、韓国の外務大臣がアメリカへ行く、その帰りにまた寄る、さらにまた滞日日程を際限もなく変更をしております。何かそういうふうなところに関係があるのではないか、こういうことを国民は疑問を持っております。したがって、この日韓会談には第三国の何か力が及んでおるのではないか、あるいは影響されておるのではないか、こういうふうに国民は疑惑を持っておりまするが、そういう点についても、ひとつこの際明らかにしてもらいたい。
  180. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ベトナム状況等は何らの関係はございません。また、たびたび申し上げるように、第三国の圧力というようなものでこれが無理な推進をはかられておるというようなことも、毛頭ございません。
  181. 大倉精一

    大倉精一君 あなたが韓国へ行かれたときに、アメリカの国務省の極東担当地域局長のメンデレオ氏ら三人が韓国へ行ってあなたと合流をされて、そして日韓会談めどをつけるために側面的に援助をする、こういうことがあったと思うんですが、あったとすれば、このメンデレオ氏はどういう任務を持って韓国に行かれましたか。
  182. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先般もこの問題についてどなたかから質問を受けたのでございますが、私はそういう高官といまだ会ったこともなければ、名前を聞いたこともない、いわんやその当時ソウルに来訪しておったというようなことは、その質問を国会において受けるまで私は何も知らなかったのでございまして、これについて申し上げる事実というものは全然ないわけでございます。
  183. 大倉精一

    大倉精一君 これは二月十六日の日本の各新聞に出ておりました。朝日新聞に出ておりまして、十五日のソウル放送によって、韓国の外務部当局者が十五日の午前に談話として発表したものです。おそらくこれは、大臣韓国へおいでになる前にこの新聞の記事をごらんになっていると思いますが、ごらんになっておりませんか。あるいは外務省の役人諸君がこれを見てあなたに耳打ちしたということはありませんか。こういうはっきりした記事が載っているんですから、あなたが全然知らぬということはおかしいと思うんですよ。
  184. 安川莊

    政府委員(安川莊君) 私は、その記事は新聞で拝見いたしました。ただ、メンデレオ極東局長と申しますけれども、実は私もそういう方は全然知らないのでございまして、極東局長ということならば、現在バンディという人がちゃんと局長の席におります。私も全然知らないような人間でありまして、私、新聞を見まして、全然重要性を認めませんでしたので、大臣にももちろん御報告しておりません。
  185. 大倉精一

    大倉精一君 重要性を認めないといいますけれども、あなたは認めないかもしれないけれども、これを国民が見たら、いかにもアメリカが韓国へ行って、そうして日韓会談の仲立ちをして入れ知恵をする、こういうぐあいに国民は思いますよ。こういう重要な記事ですよ。確かに新聞は非常に小さく扱っておりました。扱っておりましたけれども、こういう記事に対しては、こういう重要な問題でありますから、もっと神経を配ってもらわなければならぬ。あなたが知らぬとおっしゃればそれまでになりますけれども、この日韓会談を進めるにあたりまして、閣内、特に自衛隊、防衛関係との打ち合わせ、あるいは情勢の分析等について、外務大臣としても話し合いをしておられるか、あるいは協議をしておられるか。防衛関係には何ら関心を持たずに、ただ表面へ出ておる、あるいは新聞に出ておるその問題だけでもって推進しておられるのかどうか。もしそういうふうに関係してない、相談してないということになれば、現在ベトナムの問題という非常に重要な問題があるのにもかかわらず、これは詭弁だと思うんですけれども、おそらく相談しておられると思うんですが、いかがでしょうか。
  186. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どういうふうに御質問いただいても、該当する事実は全然ないのでございます。ただ、私が向こうに参りまして外務部長官を表敬した際に、ベトナムに対して軍隊を派遣するということを新聞記事等によって承知しているのは、一体どういう事情であるか、参考のために聞いておきたいということを話しましたところが、   〔主査退席、副主査着席〕 これは非戦闘部隊である、そうして、橋梁であるとかあるいは道路というものとかが長い間の戦乱によって相当にこわされておる、それは国民生活にとってもまことに不便であるというので、その点に協力するいわゆる非戦闘部隊を二千名近く送るという状況である、こういう説明を受けて、それをただそうかと言って他の問題に話題を移した、こういうことだった。  それから、私が向こうに滞在しておる間に、板門店の状況視察と、それから仁川付近の工場視察と、どっちを選ぶかという話があった。私は、国境の緊迫状態をいま見るよりも、日韓会談にこれから入ろうという場合には、韓国の経済状態を見るほうがむしろ参考になる点が多い、こう考えまして、仁川を希望しておった。ところが、向こうのほうとしては、ぜひそういうことを言わずにということで、向こうがスケジュールを変更して、ぜひこのとおりに承認してくれという話がございましたので、まあ親善訪問でございますから、あまりどうも向こうの意思にさからってもいかぬだろうというので、それじゃ板門店に参りましょう、こういうようなことで、あとは国防の問題に関連して空気に触れあるいは会談をするというようなことは一切ございませんでした。
  187. 大倉精一

    大倉精一君 それで、この日韓会談妥結、調印されて国交が正常化される、こうなってくると、極東の軍事情勢等を勘案しまして、常識的にいって、日本の自衛隊と韓国の軍隊、両者の軍事関係というものが変わった形でもって出てくるのではないか。つまり、三矢研究を見ましても、やはり韓国に派兵するという計画を持っております。そういうものを見ると、国民が、日韓会談妥結によって日本の自衛隊と韓国の軍隊とがあるいは共同作戦をするようになってきやしないかというような、こういう心配をするのですけれども、そういう点は外務大臣としてどういうぐあいに考えておりますか。
  188. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 正常化いたしましても、防衛関係につきましては、従来の方針をそのまま変更しないというたてまえをとるものと私は了承しております、
  189. 大倉精一

    大倉精一君 この点については、防衛庁長官がきょうは見えておりませんが、防衛庁のほうで、日韓会談妥結、調印、正常化に伴うところの韓国軍との協力関係、こういうものについては、いままでは全然無関心であり、あるいは研究をされていない、あるいはこれはもう全然ノータッチである、こういうことなんですか、わかっておったら御説明を願いたい。
  190. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 防衛庁といたしましては、現在のところ具体的には何も考えておりません。
  191. 大倉精一

    大倉精一君 ほかの新聞には出ておりませんでしたけれども、けさ私は中日新聞を見ますと、韓国の国防相、国防大臣ですか、金聖恩という人が南ベトナムの戦線に行くために、二十八日にノースウェスト機で日本の羽田に立ち寄った。このときに、こういうことを言っておりますね。「日韓会談妥結すれば、韓国軍と日本自衛隊の協力関係も自然に生れてくるであろう。」と、こういうことですね。こういう談話を発表しているということは御存じなんですか、大臣いかがですか。
  192. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 先般板門店を訪問した際に、途中からほかの用事があって別かれましたが、国防長官と初めて会いました。何らそういったような問題については先方から話が出ませんでした。ただ、いわゆる儀礼訪問に対する一つの儀礼的な会見であるというにすぎなかったのでございます。ただ新聞で、ベトナムに行く途中に立ち寄ったということは、先ほど私が報告を受けただけでございまして、全然会ってもおりませんし、いわんや意思表示、その会談も何もしておりません。
  193. 大倉精一

    大倉精一君 これは外務大臣、こういう重要な談話を日本国内で発表されておりながら、外務大臣、全然知りません、これじゃ済まされぬと思うのですよ。私は前の、いわゆる韓国へアメリカの高官が行ったかどうか、これはあまり追及しませんけれども、現に羽田におり立っているのですね。新聞にもちゃんと発表しているのですよ。これを外務大臣知らぬとは言わせぬですよ。ほんとうに知らぬですか、これは。
  194. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ほんとうに知りません、ほんとうに。
  195. 大倉精一

    大倉精一君 そういうことだから、こんなこと言いたくないが、どうももっと外交問題は、相手方の動勢、意向というものを十分知って分析しなければ外交交渉はできないと思うのですよ。こういう重大なことを発表されておって知らぬということは、これはもう、知らぬというのをこれ以上言ってもしようがありませんから、これは防衛庁官房長どうですか、知りませんか、これは。
  196. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 私も新聞で了承した程度でございます。
  197. 大倉精一

    大倉精一君 官房長は新聞で了承しておられる。そこで、日韓会談妥結、調印、正常化すれば、当然こういうぐあいに韓国の軍隊と自衛隊との協力関係も新しく生まれてくる、自然に生まれてくる、こういうぐあいにやはりお考えになっておるのですか、外務大臣いかがですか。
  198. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国交正常化されましても、従来の日本のこの防衛上のたてまえからいいまして、この点が日韓の間に新しい関係が生まれてくるということは期待し得ないと思います。いわんや外交上の問題においては、何らそこに新しい関係は生まれてこない、かように考えております。
  199. 大倉精一

    大倉精一君 官房長どうですか。
  200. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 私もそのように考えております。
  201. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 ちょっと関連さして。外務省でも防衛庁でもいいのですけれども、いま駐在武官が行っているのはどことどこですか。
  202. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 現在十四人行っておりまして、おもな国は、アメリカ、ソ連、ドイツ、フランス、イギリスそれからタイ、台北ですね、それからインド、大体そういうぐあいになっております。
  203. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 台湾でしょう。台湾も行っているのでしょう。
  204. 高野藤吉

    政府委員(高野藤吉君) 行っております。
  205. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 それはどういう関係で行っておるわけですか、何のために行っておるわけですか。
  206. 安川莊

    政府委員(安川莊君) 防衛駐在官は、これは各国いずれも同じだと思いますが、どこにどういう目的で行くということではなしに、防衛駐在官と申しますのは、世界的には駐在武官と申しまして、この場合相手の国と特別な軍事協力をするという趣旨では全然ないのでございまして、一般的に相手国の軍事事情を調査して情報を得るということが任務でございますから、したがって、この派遣国がどこであるということは政治的な意味はないのでございます。日本の場合にも、自由圏、共産圏、中立圏を問わず駐在官を置いている。それは各国共通の慣例だと思います。
  207. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 これで終わりますが、そうすると、日韓がかりに妥結したとすれば、日本の防衛駐在官もソウルに行くということはあり得るわけですか。
  208. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これはまあ防衛庁の申し出によって初めてこの問題のスタートが切られるのでございます。でありますから、外務省からここへ防衛駐在官を置いたらよかろうというようなことはないので……。
  209. 稲葉誠一

    稲葉誠一君 申し出があれば。
  210. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 防衛庁のほうからそういう申し出があれば、これは他に支障がなければ従来どおりの扱いにしたいと思います。
  211. 大倉精一

    大倉精一君 特別の関係が出ないというぐあいに、外務大臣そう言われておりますけれども、出ないと考えるのは間違いですよ。これはそんなことはない。あなたほんとうに本心から特別の関係が出ないというふうに考えながらこの外交を進めておるということは、これはどうも詭弁ですよ。私は、現在まで、李ラインだ、あるいは漁獲量だ、あるいは在日韓民の法的地位だ、こういうものが表面にあらわれておりますけれども、こういう韓国の国防長官日本の本土へやってまいりましてこういう重大な声明を発表するということは、やはり日韓会談の裏に何かあるのではないか、国民はこういう疑惑を持ちますよ。しかも、韓国の金聖恩国防相は、南ベトナム国防関係者とも会い、テーラー米大使とも会い、ウエストモーランド米軍司令官とも会う、こういうぐあいにタイに行って国防相と会談をする、これはあなたの言う親善旅行じゃないですよ。これは親善旅行じゃありません。そうすると、立ち寄る過程において、自然にそういう日韓の、日本の自衛隊との関連も生じてくるのだ、こう言っておるのですよ。私はこの際、あなた国民に、そういうことならこうなるのだ、こういうことを予想されるとはっきり示したほうが、国民が安心するのじゃないですか。何も関係起こらぬなんというのは、これは詭弁じゃないですか。いま稲葉君の質問にも、求められればこれは駐在官を置く、こういう発言ですけれども、求められればという、そういうことを想定して外交交渉折衝しなければならぬと思うのですけれども、この韓国の国防相の発言というものは、これは否定されますか。
  212. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本の従来の防衛に対するたてまえをくずすようなことは、一切これは認めるわけにはまいりませんでございます。
  213. 大倉精一

    大倉精一君 そうしますと、韓国との共同関係というものは、これは将来ともにないということですか。日本は独自で、たとえば日米安保条約はありますけれども、韓国との共同関係というものは生じない、こういうことですか。
  214. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 共同防衛というような関係は一切生じない、かように考えております。
  215. 大倉精一

    大倉精一君 これは、防衛庁長官おらぬのは重大なことだと思うのだが、官房長どうですか。
  216. 小幡久男

    政府委員(小幡久男君) 御承知のように、自衛隊は日本の本土を防衛することが主要任務でございます。外務大臣おっしゃいましたように、共同防衛してどうこうという立場にはないと思います。
  217. 大倉精一

    大倉精一君 そうしますと、この韓国の金聖恩国防相が、日本の自衛隊の協力関係も自然に生まれてくる、こう言う意味は、どういうふうに解釈すればいいのでしょう。一ぺん国民にかわって、政府はこういうぐあいに解釈するということを明示してもらいたい。どういうぐあいに解釈すればいいのですか、全然わからぬでしょう。
  218. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういうような申し出が韓国からあり得るはずもありませんし、現実にはそういうような申し出すら何もないのであります。そういったようなことがはたしてどういう機会に言われたのか存じませんが、全然われわれとしては関知しないことでございます。
  219. 大倉精一

    大倉精一君 これはもうこれ以上聞いてもむだですがね、そういう無責任な発言というものはないですよ。事国防に関する限りは、もっと自信を持って発言してもらいたいと思う。相手の発言者は韓国の国防大臣ですよ、国防大臣がいいかげんなことを言うはずはない。しかも日本の国に来て言っているのですから、あなたはきょう、新聞記事も知らなんだ、こう言うのですけれども、しかしいまはそれで知ったはずなんだ。だから、将来ともに韓国の軍隊と日本の軍隊との協力関係というものは出てこない、こういうぐあいに確認していいのですか。
  220. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 共同防衛の関係は一切生じないと考えております。
  221. 大倉精一

    大倉精一君 共同防衛とは言っておらぬですがね。協力関係、いろいろな関係があるでしょう、協力関係は。協力関係というものは生じないとすれば、この発言に対して、日本政府は、日本国内に非常に大きな疑惑を生みますから、取り消しの要求なりあるいは抗議なり何かしなければならぬ。言われっぱなしでもってほうっておくという手はない。
  222. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 一切のあらゆる形において共同防衛というようなものは生ずることはございません。
  223. 大倉精一

    大倉精一君 何か言われっぱなしでほうっておくのですか、これは。
  224. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) われわれとしては関知しないことでございます。
  225. 岩間正男

    ○岩間正男君 連日の交渉で疲れておられますので、そこにことばを正して言うのは非常にきびしいことになるわけですが、最初に私は質問に入るにあたってまず伺いたいと思うことは、日韓会談のことです。日韓会談が日朝両国の人民をはじめ、アジア諸国民の激しい反対と抗議にあいながら、政府は一方的にこれを退けて弾圧と懐柔と取引によって強引にこれを妥結しようとしております。しかも、大詰めを迎えて、依然としてごたごたを繰り返している。きのうきょう繰り返している。この醜態というのは、これは正視にたえないものがあると思うのです。舞台裏のサル回したちは、さぞやこれは苦笑しているだろうということは考えられます。まるでキツネとタヌキの化かし合いと言おうか、腹の探り合いと言おうか、いずれにしても自国人民にうまく説明する、そういう形で、初めから道義と信頼の上に立たないもの、仕組まれたものの会談であり、のろわれた条約の将来がここにあります。表面上いかにていさいをつくろっても、歴史の歯車は必ずこれを失敗させずにはおかないものであることを私ははっきり言っておきます。この点について、椎名外相、あなたは一体考えたことがありますか。あなたがいまみずから果たしている笑えないこの役割りについて、ほんとうに真剣に胸に手を当てて考えてみるべきだと思いますけれども、いかがですか。
  226. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 考えれば考えるほど、日韓会談は早期に妥結すべきものである、かように考えております。
  227. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう答弁を繰り返していますが、日韓の早期妥結は、何よりも朝鮮人民の多年の宿願である南北朝鮮統一を妨害し、水をさし、分断を半永久化することに、最大の問題があります。朝鮮統一の根本は一切の外国勢力の介入を許さないことにあり、当面最大の問題は米軍の即時撤退をかちとることであります。しかるに、他民族抑圧と干渉は、アメリカ帝国主義者たちの伝統的なアジア政策の一環として行なわれているのであります。アメリカ帝国主義者は、アジアの至るところで民族の分裂をはかっている。二つの中国、二つのベトナム、二つの朝鮮、そしてわが日本までが二つに分断されておる。それは沖繩を本土から切り離している事実だけをさすのではございません。思想戦、心理戦の上にも分裂を策している、こういうことを意味している。こうして二つのアジアをさい然と区分し、その一方を軍事ブロック化することによって民族相互間の相克と対立を深め、みずからの帝国主義的支配を維持しようとする醜い野望のあらわれであります。だがこれは成功するであろうか。私は絶対に成功しない。現にベトナムや朝鮮を見れば明らかなように、至るところで彼らの政策は破綻しています。アジアの諸国人民は正義と自国の統一をかちとる国際連帯をますます固めて立ち上がっているからであります。帝国主義者が軍事的おどしによってアジア諸国人民に侵略的野望を押しつけることができた時代はもはや永遠に過ぎ去ろうとしている。これははっきりそうなっている。こういう現実と歴史をよく見きわめて、私は日韓会談をやめるべきだ、こういうふうに思うのでありますが、この最後のどたんばではっきりこれは外相の答弁を伺いたい。
  228. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日韓会談をやめるというような理由は、われわれはどこからも見出すことができないのであります。
  229. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は次に、具体的に事実をあげて日韓会談との関連の問題を追求します。  昨年十二月に取りきめました二千万ドルの対韓援助は、これはその後どうなっていますか。
  230. 椎名悦三郎

  231. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 二千万ドルの取りきめにつきましては、手続といたしまして、韓国側国内の所要の手続を完了して日本政府にその旨を通告いたしてきまして発効する、こういうことに相なっておりますが、韓国政府の内部で、国会に報告の手続が済んでおりませず、今日までおくれていたわけでございますが、聞くところによりますると、先ほどアジア局長から説明いたしましたように、先週国会に報告の手続をとったそうでございますから、それで動くことに相なるかと思うのであります。
  232. 岩間正男

    ○岩間正男君 手続をとっただけで、承認はまだ得ていないわけですか。
  233. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 私が知っております限り、今日まで正式な国内手続完了の通告を受けておりません。
  234. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、これは否決をされることもあり得るという、非常にこれはこんとんとした状態なんですね。そういうことになっていますね。
  235. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 私どもが韓国政府責任者から承知いたしておりますところによりますと、本件は、韓国政府の見解としまして、政治的に韓国議会に事後報告をするということになっておりまして、否決、承認の問題ではないというぐあいに見ております。
  236. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは四カ月たつのでしょう。この前緊急援助だ、こういうことだったと思います。これは臨時国会で問題になったのですが、最初政府部内の答弁に食い違いがあった。あとで意見を統一して、この緊急援助大平・金メモとは全然無関係の別ワクだ、さらにこれは一衣帯水の間にある隣国韓国の苦しい経済状態を見るに忍びず緊急に行なう援助であるということを何回も繰り返して答弁されたはずです。しかも、われわれの反対を押し切ってこれは妥結を見た。ところが、それほど急いでおった緊急援助が、すでに四カ月たっても全然進んでいない。こういうことなんですが、これは単に手続だけだというのですか。その手続がなぜおくれたか、その間の事情についてお聞かせ願いたい。
  237. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 韓国の内部の問題でございまして、私どもは責任を持って事情を詳細に御説明できない立場にございますが、私どもが承知しておりますところでは、国会の開会中にいろいろな議案がふくそうしておったり、あるいは大統領がドイツを訪問されたり、その他いろいろな関係がございまして、また最近発表されました韓国の貿易関係の為替の新しい制度というような問題もございます。そういうような問題が相重なって、やむを得ず遅延したものと了解いたしております。
  238. 岩間正男

    ○岩間正男君 椎名さん、これはいまそういう答弁で言っていますけれども、大体あのときはすぐ出すはずだったのでしょう。緊急必要性というのは、再三再四もう強調した。韓国の状態を見るに忍びないとか、田中蔵相のごときは、三十六年間の支配の責任からいっても要請にこたえねばならない、まことにこれは人情大臣らしいそういう言い方までして説明したはずです。ところが、いまになって、韓国自身の都合だけで通らなかったといって四カ月も放置された。緊急性なんというのは、これは少しも意味がなくなってくるのです。これでいいのですか、椎名外相いかがですか。
  239. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いろいろな事情があるようでございます。あの当時としては緊急にこれは手当てしなければならぬという考えのもとにかような施策がとられたわけであります。
  240. 岩間正男

    ○岩間正男君 それじゃあらためてお聞きしますが、韓国が援助を求めてきた理由はどういう理由だったのですか。その求めてきた理由内容、それからいつごろこれはやったのか、いつごろこういう何を求めてきたか、これは外相から答えてもらいましょう。これはだいぶ問題になったのです、臨時国会で。
  241. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 過去の事情でありますから、担当局長から申し上げます。
  242. 西山昭

    政府委員(西山昭君) この始まりは、昨年の春過ぎに韓国で学生デモその他がございまして、経済状態も非常に落ちておるということでございまして、隣国としての日本といたしましてはこれに経済的な支援を与えてしかるべきではないかという見地から話が起こりまして、具体的には日本政府のイニシアティブで本件は行なわれたわけでございます。当時の私どもの気持ちからいたしましては、韓国の経済事情が非常に不振をいたしておりますので、何とか応援したいということで、いろいろの案を検討しました結果、失業の救済その他、最も韓国の経済に適切な措置としては、調印されました二千万ドルのごとき内容のものが最も適切ではなかろうかという結論でございまして、韓国側もこれにつきまして非常に強い希望を表明いたしまして、折衝の結果十一月の終わりに調印されたわけでございまして、そのあと実施がおくれておりますのは遺憾でございますが、先ほど申し上げた事情でございます。
  243. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうすると、日本のほうからむしろ言い出して、そして向こうを納得させたということですか。そうすると、事前に緊急と言っておるんですから、その受け入れ体制がちゃんと整っていなければならないはずだ。全然先にそういうような瀬踏みをやらないで、それで一方的に押しつけたということになるんですか。国会の答弁とは非常に違っておる。臨時国会では、非常に緊急だ、どうしても韓国のほうでこれは必要だ、こういうことであのときはあなたたち大わらわになって説明したはずです。ところが、いま聞くと、四カ月これが放置されておる。こういう状態の中では、まるでその点の食い違いが出てきておるんです。これはどういうことなんです。これは外務大臣はっきり答弁してください。あなたがあのとき答弁しているんですからね、衆参両院で答弁している。あなたは大平・金メモのワク内だと言った、そうでしょう。それがそうでないということになって、これは政府見解を統一して、そしてあらためてワク外だということになったはずだ。だから当事者です。当事者が答えてください。
  244. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いろいろ韓国事情も情勢が変わって、とにかくこれは要らないというのじゃなくて、いやが上にもこれを効果のあるような使い方をひとつやって、拙速よりも巧遅と申しますか、去年はだいぶ米も豊作だったようで、韓国は春は一昨年の不作というものの影響でかなり困窮の度が激しかったようでございますが、去年は幸いにして豊作で、日本に対しても相当、八万トンないしは十万トンぐらいの米を輸出するかというような話も出ておりましたが、その問題は実現はしなかったのでございますけれども、それぐらいの勢いで、たいへん経済も持ち直した。それに加えて政治情勢の変化もあり、まあせっかくの二千万ドルだから、少しはおくれても効果の大きいような使い方をしようというのではないかと存じております。
  245. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもその点、われわれは非常に釈然としないものがありますよ。豊作なんということは、これは秋だからわかるでしょう、十月ごろだから。ところが、緊急援助をきめたのは十二月でしょう。だから、いまのような答弁をやっているというと、全くこれは国会における質問に対する答弁としてはなってないと私は思うんです、非常に。何のためにこんな押しつけ援助をやったんです。緊急なんていうけれども、押しつけ援助ですよ、これは。向こうがそれほどほしがってもいないようなんです。それなのに出して、それがなかなか進まない。  私、次にお伺いしますが、この二千万ドルの中身はどういう仕組みで援助されることになったんですか、それをお聞きします。
  246. 西山昭

    政府委員(西山昭君) この二千万ドルの内容は、条件としましては五年間の延べ払いでございまして、金利は五分七厘五毛でございます。そして、輸出用ないしは産業用の部品、あるいは補修資材、輸出用原材料、そういうものを日本から供給しまして、韓国側がこれを加工する、こういうたてまえになっておりまして、二千万ドルまで商談がまとまりますれば、日本政府はこれを許可する、こういう内容に相なっております。
  247. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは三月二十七日の日本経済新聞にこの内容の一部分について記事が載っていますね、これは御存じでしょう。
  248. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 承知をいたしております。
  249. 岩間正男

    ○岩間正男君 第一に動植物繊維、第二は織物及び同製品、第三に鉄鋼及び同製品、第四は機械及び同部品、付属品、こういうやり方だが、これは何ですか。具体的に完成品としてはどういうものなんですか。いまの動植物繊維品とか、織物及び同製品、こんな抽象的なものではわからないですよ。この具体的内容はどういうのですか、簡潔に答えてください、時間の関係がありますから。
  250. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 繊維の関係で、化学原料を基礎にした繊維、あるいは天然原料を基礎にした繊維、こういうぐあいになっております。
  251. 岩間正男

    ○岩間正男君 鉄鋼及び同製品というのは、これはどういうものですか。
  252. 西山昭

    政府委員(西山昭君) これは、鋼材その他の機械の部品、あるいは補修資材、こういうぐあいに相なっております。
  253. 岩間正男

    ○岩間正男君 機械及び同部品、付属品、これは何です。
  254. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 小規模な産業機械その他でございます。
  255. 岩間正男

    ○岩間正男君 これはあなたのほうにリストがあると思うのですが、どうなんです。
  256. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 一応のリストはございます。
  257. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは出していただけますね。
  258. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 後刻お手元に差し上げます。
  259. 岩間正男

    ○岩間正男君 これは具体的に見ればわかると思うんですがね。最近送る場合に、ノックダウン方式ということをやっているんじゃないですか、分解輸送がされておる。向こうに着いてから組み立てる、こういうやり方が非常に使われておると思うのですね。だから、この中身というのは実際はどういうものかという点について、私たちは非常に疑問を持っておるんです。そういうものと、それからあとの二千万ドルについては、まだ全部できていないのですか。
  260. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 商社間で商談が進行しておりますけれども、正式の政府間の許可等の手続は、先ほど申し上げましたような事情で行なわれておりません。
  261. 岩間正男

    ○岩間正男君 この三月二十七日のやはり同じ日経の報道によりますと、   〔副主査退席、主査着席〕 韓国駐日李公使は、この取りきめは議会の承認は要らないんだが、議会に説明して了解を得る必要があるから云々ということを答えておりますね。議会の承認が要らないものをなぜかけなくちゃならないか、ここがよくわからないのですが、これはどういうことなんですか。
  262. 西山昭

    政府委員(西山昭君) 私どもが承知しておりますところでは、政治的に国会に報告して、日韓協力を堂々と促進したほうがよろしいという韓国政府立場了解しております。
  263. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもそこのところがおかしいでしょう。非常に経済的に苦しくなっている。そうすればのどから手が出るほどそういう援助はほしい。しかも国会にかけなくてもいいということになっているんなら、すぐにこれはできるわけだと思う。それが四カ月も放置されておいて、しかも国会へかけるのをいろいろためらっていた節がこれあると思うのです。承認を何とか得なければぐあいが悪いということで、あとでもしも問題になればたいへんな問題だということで、これは当面承認を得ていると考えられるわけです。そうするとこれはどうなんです。私はこの問題、最近の情勢の中でやはり、軽々しく見のがしておくことのできない問題だと思う。それは昨年の十二月にジョンソンアメリカ大統領がその親書によって、韓国軍隊のベトナム派兵を要請している。これは皆さん——あなたでも御存じだと思う。どうも時期から見て同じ十二月で時期が合っているんだが、これとこれは関係がないのかあるのか。あるんじゃないですか。この点どうなんですか。
  264. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全然ありません。
  265. 岩間正男

    ○岩間正男君 ないということは言ってますけれども、ベトナム派兵のことについては、本年一月八日の韓国国会でもたいへん問題になった。そしてこの内容相当明らかになっているはずですね。これとの関連でどうもこの問題はそう軽々しく見のがすことはできないと私は思うんです。こういう問題と関連しまして、最近の韓国の憲法というものが一九六二年ですか、これは改正されていますね、これは御存じでしょうな、韓国憲法。
  266. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 御承知のとおり政変が続きましたので改正二、三回されていると承知しております。
  267. 岩間正男

    ○岩間正男君 その改正の重要な点は、どういうところにありますか。何か軍事問題で改正になっていますか。ここに持ってきてないのですか。
  268. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) いまちょっと手元に最近のテキストを持ち合わせておりません。
  269. 岩間正男

    ○岩間正男君 そうなんですか。こういうことがあるんじゃないですか。第六条に「大韓民国は、すべての侵略的な戦争を否認する。国軍は国土防衛の神聖な義務を遂行することを使命とする。」、これが古い改正前の憲法です。ところが新しい改正後の憲法第五十六条によりますと、「宣戦布告、国軍の外国への派遣または外国軍隊の大韓民国領域内の駐留に対しても国会は同意権を有する。」、こういう個所については——いまお持ちにならないでしょうけれども、これは御記憶あるでしょう、どうです。
  270. 後宮虎郎

    政府委員後宮虎郎君) 記憶はございます。
  271. 岩間正男

    ○岩間正男君 こうしますと、これはいま二千人の韓国軍のベトナムへの派兵が非常に大きな問題になっている。これは先ほども同僚議員から質問されたところです。さらにまた夕べ羽田に寄ってベトナムにたった、先ほど話の出ました金国防相、金参謀総長、この両人が行かれたようですが、こういう問題の中で、新たな派兵の問題というのは、これ問題になってきております。今日このような事態がすでに予想されて、事前の準備が十分になされておった、こういうふうに考えられるところがあるのです。これはわが国の情勢を考えましても、一九六二年十二月というと、ちょうどギルパトリック国務次官補が日本にやってくる直前です。それからさらに歴史的に見ますと、日本でもそれから二、三カ月後には三矢作戦がこれはつくられた。そういうことになっているのですね。この日本韓国を含むアメリカのアジア政策に非常に大きなこれは曲がり道になっているといいますか、そういうところに当面している。そういう点をどうも指摘をせざるを得ないのでありますが、こういうものとの関係は、これどうなんですか、外務大臣にお伺いします。
  272. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日米間の共同防衛とかそういったようなことは、全然日本従来のたてまえから言いましてあり得ないことでございます。
  273. 岩間正男

    ○岩間正男君 さっきからあなたはそういうふうに言われておりますが、これはここで議論する時間はありませんけれども、この前の防衛委員会あたりで実は十分問題になっているのです。自衛隊の守る守備範囲とか用兵の範囲だって、単に四つの島なんていま答弁されていますけれども、違います。その周辺海空域でしょう。それから三矢作戦によると、さらに必要によって行動するそういう地域はきめられている。ただし韓国国内の情勢が、いまのかいらい政権の弾圧によって人民ががまんができなくなって、あるいは南北の統一を非常に心から望んでいる、そういう事態が起これは、非常にこれは国内にそういうような要素が出てくる。これに対して日本の現閣僚の中にだって、そのときに日本の自衛隊を緯国に派遣すれば非常に効果的である、現にそういうことを言っている。明白にそれを言っているのです。そういう思想を持っている。そういう事態の中で、いまのようなことを外務大臣がほんとうに一つ覚えみたいに言ってみても話にならぬと私は思うのですがね。こういう問題と二千万ドルの緊急援助、これは関係ないというふうにひたすら説明されても、われわれは了解ができない。ことにそういうことどうですか。海外援助なり非常に経済援助問題になっていますね。その性格を今度は政治援助だと、経済援助じゃなくて政治援助の性格を持ってきた。それで椎名さん、あなたはアジアの国づくり、人づくりをやらなければならぬ、こういうことを言っているでしょう。こういうことを考えると、援助の問題と私はこの現情勢の中のこの問題というものは切り離すことができない問題があると思うのです。いかがですか、もう一度お伺いします。
  274. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あくまで日韓両国の経済発展という問題に即して考えられているのでありまして、共同防衛体制などというようなことは、全然問題外でございます。
  275. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は理由をあげていろいろ情勢を明らかにして、その上での——つまり、このように四カ月も空白を置いているというか、しかも、国会では大急ぎに、しかもあのときに八百四十億でしたか、補正予算は公務員の給与を削ったり、あるいは医療費を増額し、米価を上げ、こういうような人民の要求にこたえない形でつくられた。私はあのとき予算委員会でも討論したのですが、そういうような中でなぜ七十二億の金を緊急に回す必要があるか、こういうことは当然国民の声でもあったわけです。ところがあなたたちは、どうしてもこれは韓国、隣国の窮状を見るに忍びずということで押し切ったのでしょう。そうしてこれが四カ月も空白になっているという事態を国民は黙って見ておられると思いますか。私はとてもいまのような答弁でここのところをほおかぶりするといっても、そういうわけにはいかぬと思う。これはこういう点から考えると、兵員の派遣は韓国がになう、兵たん器材の提供は日本がやる、これが二千万ドル緊急援助内容ではないか、したがって、ノックダウン方式という秘密輸送方式をとって何が行なわれているか、全くこれは内容がわからない、こういうようなやり方にこれはなっているんですよ。こういう点、どうなんでしょうか。もう一度これは外務大臣の明快な答弁を求めます。
  276. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは韓国の軍事援助には全然関係はございません。
  277. 岩間正男

    ○岩間正男君 関係がないといったって、現にベトナムに対してもいろいろな物資が送られ、さらに船員が向こうに出かけていって輸送に当たっている。そうしてその中で、これは射撃をされてけがをした、こういう事態も起こっているんでしょう。だから、私たちはこれは軽々しく見過せない問題です。私はこういう中でまた死の商人の手先のような役割りをして、戦争誘発、その上で日本の経済的進出をはかるなどという、こういう考え方では全く問題にならないと思います。  私は次に韓国軍のベトナム派兵、この問題はアジアの平和にとりましてきわめて重要な問題だと思います。この点について外務大臣はどういうふうにお考えになっていらっしゃいますか。
  278. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは南ベトナムの政府の要請によりまして、二千人の非戦闘部隊を向こうに送りまして、そして長年の間、兵乱のために荒廃した道路あるいは橋梁その他の公共施設を修復いたしまして、そうしてベトナムの国民生活に寄与する、こういうためのものであるということを、私は先般韓国訪問の際に、直接向こうの当局者から聞いたのであります。
  279. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう説明で一体まかり通ることはできますか。第一に、これは正規の韓国軍でしょう。正規の韓国軍ですよ。戦闘部隊ですよ。そしてこれは公然とベトナムに介入している。すでにもう死傷者が何人か出ているでしょう。こういう事態を御存じないのですか。こういうことで、しかもこの韓国派兵が、国内のいろいろな破壊されたそういう復旧に当たっているのだなどという、それはまるで日本の自衛隊が災害出動のときに説明して、いかにも自衛隊の性格をそれでカムフラージュすると同じようなやり方でいろいろ言われても、これは話にならぬと思います。  私は、さらに次のような事実についてもお伺いしたいと思います。季東元外相は、三月十三日訪米中、みずから朴大統領が五月に訪米するまでに一個師団以上の派兵を検討中であるということを語っております。また、三月二十八日、金国防相、金参謀総長、二人は四日間にわたって南ベトナムのために出発した、先ほど問題になったあのような発言を羽田でやったわけです。これは南ベトナムの派遣軍の士気高揚のためだと言っておりますけれども、韓国のベトナム参戦と関係があることはあまりにも明白だと思います。駐韓南ベトナム大使も、この大量派兵を否定しないとわざとほのめかして語っている。こういうやり方は、明らかにアメリカのアジア侵略戦争がその規模を拡大し、その一環として韓国軍をベトナムに投入し、日本がその兵たん補給を引き受けるという新しい段階を歩もうとすることを示している。こういう形で、不法、不正のベトナム戦争に日本が加担しても差しつかえないというふうにこれは考えておられるのですか。私はいま非常に国民がこの問題に注意を払っています。ベトナム戦争はどんどん拡大して、果てしない様相を呈してきている。そういう中で、日本が実際具体的にこういうような経済面、あるいは軍事基地使用、さらに船団を派遣するというような形でこのような協力が行なわれている。これがもっといまのような形で体系づけられてきた場合には、たいへんな事態だと思っているのです。これはどういうふうにお考えですか。われわれは、こんな形で戦争の推移いかんでは、韓国日本がこのような中に巻き込まれないという、そういう保障はないと思うのです。これはもう日本の基地から米国の軍用機や艦艇が出動している、こういうこととあわせて非常に重大な問題だと思いますが、いかがですか。
  280. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本の基地から直接ベトナムの軍事行動に参加するために、艦船、航空機が発進しているという事実はございません。  それから経済的な関係を新たに設定することは、ベトナムに対する軍事協力であるというふうな見解のようでございますけれども、われわれはそういう見解とは同調するわけにまいりません。これはあくまで経済的な協力であります。
  281. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういうことを言われていますけれども、同時に日本から発進していないなどと、そういう答弁を形式論理の上だけで何とか組み立てようとしても無理じゃないですか。クッションをつくって、そこからまた行くのだから、そのときは在日米軍ではなくなったのだからというような、そういう言い方、それから経済援助だ、純粋な経済援助だと言うけれども、その中身というものは公表できない形で、そして実際はノックダウン方式などということで最近やられている、こういう事実はあげればきりがないと思いますが、現にどうですか。佐藤総理は一月訪米の際に、外人記者との会見で精神的以上の何ものかを援助したいということを述べておりますが、これはどういうことですか。
  282. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは経済力あるいは日本の有する文化力というものによって、日本が自由陣営の独立と平和というものを強化するように協力したいという意味であろうと考えております。
  283. 岩間正男

    ○岩間正男君 そういう解釈をされているようですが、精神的以上の何ものかというのは何です。何ものです。こういうふうに、決して軽々しく見のがせない具体的内容が、先ほどのような事実になって現われつつあるという現実を、われわれは無視することはできない。  次に移りますが、アメリカの今後の戦略構想はすでに早くから仕組まれ、準備されていたものであることは、次の事実で見れば明らかだと思います。第一に、二千万ドル援助が問題になったのは昨年の春、政府間でこれが取りきめられたのは十二月、これに先立って丁一権韓国総理は、アメリカのウィリアム・バンディ国務次官補の訪韓のときにあたって、韓国は要請さえあれば、義勇軍をベトナムに派遣するということを言っております。公言しております。この丁総理は、十二月十二日台北で韓台条約を結んだが、そのとき次のように抗議しております。蒋介石その他の台湾高官との間で、南ベトナムから要請があれば義勇軍を派遣することを合意した、しかもこれは要請したのは、さっきも述べたように、韓国国会で問題になったジョンソン大統領の親書でも明らかなように、まさにアメリカです。アメリカは困難な韓国国内情勢と日本国民の強い反対を無視して、強引に韓国派兵を押しつけたのです。その結果、それぞれの形でベトナム侵略戦争への参加と分担がきまった、これがほかならない二千万ドル援助の正体ではないかと思う。私はこういうように背後の情勢を分析する。そういう中で私はこのことを問題にしているので、これに対するあなたたちの説明というものは納得させるに足らない、単に一つ覚えみたいにそれを繰り返している。そういうことでは、これは国会論議は進まないというふうに思うんですが、外務大臣いかがですか。
  284. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 何か御質問の要旨がはっきりしないので……。
  285. 岩間正男

    ○岩間正男君 私は事実をあげているんですがね、先ほどから。そうして、これはちゃんともうアメリカの戦略構想というのは組み立てられて、そしてベトナムのこういう事態に即応するようにちゃんと考えられている。そういう証拠というものをあげて、そしてこの緊急援助の問題、それから韓国の派兵の問題、こういう問題との関連についてお伺いしているんですが、これについて何か具体的に、それを私のあげたそういうものをほんとうに具体的な事実を十分捕捉して反駁できるような答弁を願いたい。
  286. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) すべての対韓の経済協力が軍事的な協力である、アメリカの戦略構想というものの一環にすぎないというようなことを独断しておられるようでありますが、われわれはさようには考えておりません。
  287. 岩間正男

    ○岩間正男君 それではこれからの政府援助は、これは非常に政治的な性格を持つんだということを言っておられますけれども、ここはいままでの池田さん時代の経済援助とどう違うんです。この違いをはっきりさせてください。
  288. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 二千万ドルの経済援助はあくまで経済援助でございまして、ただ向こうの都合で、これが実行が延ばされておるというだけのものであります。われわれは決して他の目的を持ってこの施策を講じたのではございません。
  289. 岩間正男

    ○岩間正男君 私はお聞きしているのは、最近のこの援助、これは政治的な意味を持つんだということでしょう。そうすると、いままでの経済援助とだいぶ違ってきている。どこが違う、どこが性格として違ってきているか、この点の違いを明らかにしてほしい。
  290. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 東南アジア全般に関する経済援助はあくまで経済援助でございまして、これによってひいて向こうの政治的な同意をも取りつけることができれば幸いであろうと、かように考えております。
  291. 岩間正男

    ○岩間正男君 韓国の政情が非常に困難だ、経済条件が困難だというところで、これは政治的な援助じゃなかったんですか。台湾の一億五千万ドル、これはどうですか。
  292. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) とにかく低開発国に対する経済援助は、長い目で見るとその地方の経済力の育成でありまして、それがまたはね返って日本の有力な輸出市場にもなっていくのでありまして、あくまで経済的な見通しのもとにこれは行なっておるのであります。しかし、それがひいては政治的な効果を生むということは、もちろん当然考えられることであります。しかしながら、経済の法則を破って、そして援助をするというようなことは、すべての場合にないのでありまして、これがグラントであるとか一方的にこれを緊急援助、すなわち借款にあらずして、もう一方的な援助という場合でも、これは長い目で見ると日本の繁栄のためにやっておることでありまして、その他の特殊な軍事的な、あるいは純粋に政治的な意図を持ってやっておるのではありません。
  293. 岩間正男

    ○岩間正男君 あなたは経済援助だと盛んに言っていますけれども、この内容についてはしばしば論議されたと思うんですね。はたしてこれは朝鮮の人民の役に立っていますか。これはばく大な援助がアメリカからも、そしてその後ドル不足になってから日本からもなされている。これは人民の手に落ちていますか。途中でこれは全部ボスたちに横取りされて、そしてそこで腐敗、堕落、汚職ができている。これが大問題になっているんです。韓国政界の腐敗のこれは根源になっているんです。一方では非常に失業人口も多い。非常に生活に困難をきわめている。失業者は増大している。この韓国人民の手に落ちていない。ここにも今日の問題があるんでしょう。そうして日本の独占はどうですか。そういうところを巧みに利用して、そうして実はうまい汁を吸っている。それがさらに最近のこの緊迫した情勢の中では、経済援助といいながら、軍事的な性格をはっきりしてきている。現にそういうことについても、この緊急援助の正体というものは、非常に国民は疑惑を持っている。私はこういう態勢の中で、日本の現情勢と、こういうものをほんとうにもっと検討して、この問題を的確にこれはあくまで追及しなければならぬと思います。まあ三矢作戦見てください。三矢と関連して、先ほど私述べたような戦略構想ということをほんとうに検討すれば、一目瞭然なものがあると思います。私はこういう中で、このベトナムに対する政府の態度、これはこの前も私は予算委員会一般質問で外務大臣にお伺いしましたけれども、これは全くどうもあいまい、国民は信頼していません。非常に心配している。口先ではアメリカの不拡大方針を支持するなどということを言っていますけれども、アメリカ政府は、いかなる目標に対しても無制限な爆撃をいまや許しており、テーラー大使自身も北爆に限界なしと高言しているのが最近の姿じゃないですか。このような事実をごまかして、陰ではこういうたくらみをしているようなやり方、どうして一体これで国民に対して、ほんとうにこれは政府の態度を説明することができますか。私はこれは国民立場にほんとうに立つなら、このベトナムの戦争、これに対してほんとうにこのような戦争の不拡大を心から願うなら、その一切の根源であるアメリカ軍の即時無条件撤退、そうしてそのためにはっきり政府がこれに対して明確な意思を表明する、これ以外に戦争解決の道はないと思うんです。ところが、日韓会談を無理やりに妥結させ、そしてこのような陰謀にますますはまり込んでいく。こういうやり方では、日本政府の態度としてははなはだこれはけしからぬと思うんですが、これはいかがですか。
  294. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 遺憾ながら、どうも御意見に同調できないのでございます。われわれは、そういう一方的な解釈をとるべきでないと考えております。
  295. 岩間正男

    ○岩間正男君 どうもはっきりしなかったんですが、私は日韓会談の早期妥結というのは、こうしたやり方の総仕上げであり、合理化であり、そうしてそれは朝鮮人民に加えられた許すことのできない侮辱だと思います。だから先ほども私がはっきり言ったように、これはこの日韓会談というやつはやめるべきだ。もう一つの問題は、これは緊急援助、二千万ドルの緊急援助。こんなにあいまいになっている、宙ぶらりんみたいなかっこうで、何だかかんだかわからぬ。こっちがほんとうに無理に、押しつけ援助みたいな形というものが、この質問の中で、過程で明らかになってきたんですが、こういうものをやめたらどうか。これは人民の要求のほうに回すべきだと、こういうふうに考えますけれども、この二点についてはっきり答弁を願いたいと思います。
  296. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日韓会談は早期に妥結すべきものである、こう考えておりますから、遺憾ながらお説に同意はできませんし、緊急援助は、やはり韓国の現状から見て、これは撤回すべきものではない。たとえおくれても、従来の方針に従って実行を進めていくべきである、かように考えております。
  297. 岩間正男

    ○岩間正男君 あくまで筋の通らないやり方にしがみついて、そうしてその結果はどうなるかということは明らかだと思う。われわれはあくまでこの日韓会談の早期妥結を了承することはできないのです。これの紛砕のために戦うし、非常にあいまいな二千万ドルの緊急援助は、こういうやり方は、その他の不明瞭な援助とあわせて即時打ち切ることを要求して、私の質問は終わります。
  298. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 他に御発言はございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  299. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 以上をもちまして外務省所管に関する質疑は終了したものと認めます。     —————————————
  300. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) この際、分科担当委員異動について御報告申し上げます。  本日稲葉誠一君が委員辞任され、その補欠として木村禧八郎君が選任されました。  ちょっと速記とめて。   〔速記中止〕
  301. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 速記をつけて。     —————————————
  302. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 昭和四十年度総予算中、科学技術庁所管を議題といたします。  説明は、時間の都合上これを省略して、お手元に配付してあります資料をごらん願うこととし、なお説明資料は、これを本日の会議録の末尾に掲載することにいたしたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  303. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 御異議ないと認めさよう決定いたします。  これより質疑に入ります。順次御発言を願います。
  304. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は二つの問題について御質問したいと思います。  第一は、科学技術庁の所管についての分科会ですから、科学技術と人間像との問題ですね、期待される人間像、これにはかなり科学技術と人間像という点に触れている点があると思いますので、この点についてまずお伺いしたい。もう一つは、私立大学の入学時におけるいろいろな納付金が非常に多くなりまして、大臣も御承知のように、慶応義塾の入学に際して非常な問題になりまして、大きな社会問題にもなった、それに関連して私立大学の債務の軽減措置について御質問したいのです。  まず最初に、私立大学の債務軽減措置についての問題からお尋ねしたいのですが、文部省から資料をいただいたわけですが、この私立大学で短期大学または高等専門学校を設置する法人の債務は、これは昭和三十八年度末の数字ですが、大体九百七十一億円ぐらいあるわけですね。そのうち固定負債が五百六十八億でありまして、その固定負債の中で市中の長期借り入れ金というのが二百七十三億であります。全体の負債額の二八・二%でありまして、固定負債の約半分が市中から借り入れておる。この市中借り入れにつきましてこの条件がどうなっておるか。金利あるいは償還年限等につきましておわかりになったら、大まかでいいですが、どの程度の金利負担になるのか御質問したいのです。大臣、こまかいことがおわかりにならなければ事務当局の方でけっこうです。
  305. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この中身、ことに市中銀行からの借り入れ金につきましては、何といいますか、大学によりまして非常に様相が異なるようでございます。ですから的確にこまかくお答えできるかどうか、実は私も徹底して調べたいのですけれども、まだ十分私自身も調べがついておりませんが、概略は齋藤管理局長からお答えいたします。
  306. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) ただいま大臣からお答えいたしましたように、市中銀行等の長期借り入れ金につきましては、大学により、あるいは大学の借り入れる資金の使途により、また銀行その他の金融機関等により非常にさまざまでございまして、今回の私どもの調査では究明はいたしておりません。それから個々に聞きましても、かなり複雑でございまして、その点を明らかにすることはできませんでした。ただ一つ材料がございますのは、私学振興会の貸し付けの中に高利債のものについて肩がわりをするというのが一部含まれておるわけです。それを過去の実績を調べますと、私学振興会は日歩二銭七厘以上のものを高利債として、そしてそれについてその年度で元金について支払うべきものの中から肩がわりをするということを一部とっております。いわゆる振興会でいうところの高利債の平均利率は、これは二銭七厘から多いものは非常に高いものもございますが、平均いたしまして日歩二銭八厘八毛という数字が出ております。これが高い部分の平均であると見ております。実態につきましては、こまかい点はわかりかねますので御了承願います。
  307. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この点は、こんなに私立大学の入学時におけるいろんな納付金、特に授業料、入学金、寄付金を一時に納めなければなりませんし、その中で寄付金がかなり多くなっているわけですね。その点が非常に大きな問題になっておりますので、これは国立大学と比べた場合非常な差があるわけですから、もう少しこれは何とか御調査のしかたがないものか、実態把握をもう少しさるべきではないかと思うのですが、その点いかがですか。
  308. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それは全くごもっともな御意見でございまして、先ほど申しましたように、私もう少し徹底して私学経営の実態を掌握いたしたいと考えております。ただ、これはこれからの根本問題にも非常に関連するわけでございますけれども、授業料とか入学金というのは届け出制度になっておりますし、それからそこが遠慮が少しあり過ぎたと言えるかもしれませんが、やはり事が大学でございますし、学校法人でございますので、よほど問題でも起こりましたところ以外は、そう常時経営の内容についての権限に基づく監査権もございませんし、事前調査が行き届いておりません。これは御承知のように現在私学振興助成方策調査会というものをつくっていただきたいという御提案をしておるわけでありますが、そこでいろいろ御審議をいただくにしましても、当然基礎的な調査が必要であると思いますので、現在一生懸命掌握につとめておりますので、いずれそういうことがだんだん判明しました場合におきましては、いろいろとまたあらためて御説明を申し上げる機会もあるかと思います。
  309. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま一部の点について伺ったのでございますが、私学振興会の高利債に対する借りかえの場合の資料につきまして大体平均二銭八厘八毛、そうすると一割以上ですね、平均が一割ですね、そうしますとかなり高いもの、それ以上のものもあるということになると、かなり高利の借り入れ金になっているわけですね。政府のほうの昭和四十年度の貸し付け計画百五十億ですね、内容を見ましても、一般施設費、大学生の増募施設費等は年六分五厘ですね、それから理工系の学生増募施設あるいは高校生の急増施設費五分五厘、大体五分五厘ないし六分五厘ですね。そうして今後、昭和四十年度以降の貸し付けについて五分五厘ないし六分五厘のかなりの低利の貸し付けになるわけです。その旧債ですね、古いこれまでの借金ですね、これまでの負債について平均一割以上の金利を市中から長期の借り入れを行なっている、それが二百二十三億にのぼっておりまして、固定負債額五百六十八億の約半分を占めておるということになりますと、私は私立大学の財政難の大きな原因はここにあるのじゃないかと思うわけです、もちろんその他にもいろいろあると思いますけれども。ですから私立大学の入学時に非常に多額の納付金を納めなければならない、それが非常に大きな父兄の負担になって、慶応義塾の例で見ますように社会問題を起こすまでに至ったのでありますが、この問題については放任しておくわけにはもちろんまいりませんし、愛知文部大臣も非常に私はいろいろ配慮をされておることを私もよく存じておりますし、心を痛められておるのはよく存じておるのですが、それで四十年度以後につきましては私は五十億の貸し付け計画がある、これで十分かどうかまだ問題があるのじゃないかと思いますが、とにかく前向きに取り組まれておりますね。しかし今度は旧債ですね。旧債についての問題を何とかここに処理する必要があるのじゃないか、何か手を打つ必要があるのじゃないか。大体一割以上の利率に対しまして政府資金をもって借りかえできましたら、かなり私は負担軽減になるのじゃないか。そうしますれば授業料の値上げは全然しないで済むかどうかわかりませんが、かりに値上げするとしても、そんなに多額の値上げをしなくてもいいですし、あるいは寄付金についても多額の寄付金をしなくても済むのではないかと思うのです。その点について文部大臣の特段の御配慮を願えないかと思うわけなんですが、いかがですか。
  310. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 今回四十年度の場合は、ただいまも御指摘がございましたが、まあ三十九年度の倍の出資といいますか、をやって、百五十億円の融資計画を立てておるわけですが、これで、御承知のとおり、学生の定員増が私学で約一万五千人でございます。これはよく御承知のように、いろいろの数字の傾向線をたどって実態を掌握しようとつとめたのでありますけれども、四十年度で理想的と申しますか、入学難を三十九年度以上に激化させないようにするというような点だけから言いますと、二万人ぐらいの実は私学の定員増を期待しておったわけなんですけれども、これには金の問題だけではありませんで、実は教授の何といいますか、充実が期待できないというようなことで、私学自体からの申請のほうも一万五千名でとどまったといいますか、そのくらいなんです。それと合わせて、その一万五千名の増募を、私学側の希望をいろいろ考えて、そのうち約六十五億をそのために充当しようということで、ようやく話しが落ちついておるわけであります。どうやらこうやら四十年度はこれで手配ができる、その間に、先ほど申しました調査会等を中心にして緊急の四十一年度対策と、それから恒久的な私学の助成に対しては、どういう姿勢で、どういうプリンシプルでやるべきかということをひとつ徹底して、よい対策を考えたいと思っておるわけであります。四十一年度については、私学関係でも、今年度の何といいましょうか、倍以上ぐらいの定員増を期待しなければならないというのが、大体の従来の傾向線からいいますと、そうなりますので、その面から申しましても、私学振興会の運用計画というものは、これまたたいへんな増額をしなければならないと存じます。そこで財政計画との関連もございますが、その際に旧債の返還ということについても、先般予算総括質疑のときにも御指摘がございましたので、ぜひひとつそういう線で考えていきたいと思っておりますが、これを両々合わせてやっていきたい、とにかくこれは私立大学の助成方策というものは、少し大げさにいえば、四十一年度の大問題だ、大問題であると言ってもいいぐらいに思いますので、政府はもちろんでございますが、各方面の御認識と御理解をいただいて、徹底したひとつ考え方をつくり上げていきたいと思っております。  それからなお、官学といいますか、国立との間では、申し上げるまでもありませんが、第一、授業料が、四十年度はまだはっきり私も掌握しておりませんが、三十九年度でいえば、一万二千円と平均して六万二千円ぐらいの開きがございます。  それから慶応の問題については、よく御承知のとおりでありまするが、実はそれ以外の私立の医科大学等においては、相当なこれはもう父兄の負担になっておる、そういう実情からいたしまして、一面で私学の経営をもっと楽にしていくと同時に、どうしても都立、国立に比べて高からざるを得ない授業料等については、父兄負担の軽減という点からいっても、私は、できれば所得から控除をする税制上のくふうもやっていただきたいものだと考えまして、税制調査会等にもいろいろお願いをいたしたわけでございますが、こういう問題があるということを答申に作文が出ただけであって、四十年度には具体策は進みませんでしたので、これは特にその道にお詳しい木村委員におかれましても、ひとつわれわれの考え方に御協力、御指導をいただきたいと思っておるぐらいでございます。  そのほか、いろいろな点からこうせめていきませんと、この私学の育成ということはたいへんな問題だと思い、非常に心を痛めているわけでございます。
  311. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 税制調査会が答申をされて、政府がこれを受けて立っているのですが、政府は税制調査会の答申にないのまでやっているのですよ。たとえば配当の分離課税とか、答申にあるものはやらないんですよ。ですから、それは税制調査会の答申にあまりこだわる必要ないと思うのですよ。こだわるなら、なぜ税制調査会で配当の分離課税をやるべきじゃない、利子や、配当分離課税は今後基本的に特別措置は廃止すべきだという答申が出ているにかかわらず、政府は逆のほうの改正をやっているわけです。ですから、これはやはり文部大臣が大蔵大臣に圧力といいますか、われわれも国会側としてその点を要望しているわけです。その機会が得られないのは残念ですけれども、今後われわれもひとつ努力したいのですが、国立、私立を含めて全体どうしても多額の納付金を納めなければならないという客観的な情勢にあるならこれは別ですよ。また、やむを得ない点もございますけれども、国立と私立の間に、いまお話しのように、一万二千円から六万二千円ですか、これまでの差がある。ですからその点は、いま私立といっても、大学生の急増対策につきまして、かなり私立にウエートをかけなければならぬというお話がありましたが、昔のように国立と私立だからこんなに差があるというのは、一般国民としても非常に割り切れない。それから実際にいろいろ父兄に聞いてみたり、いまの実態を多少調べてみますと、低所得層の子弟ほど私学に入る傾向にあるのですよ。これは東京の高校なんかについてもそうだと思うのです。都立高校に入れる家庭はかなりいい家庭で、家庭教師を十分につけ、そうして勉強する余裕もある。ところが、貧困家庭になりますと、お店の手伝いをさせられたり、あるいは生活環境が静かでないというようなこと等もあって、落ちついて勉強ができない。どうしても生活に余裕のある家庭の子弟よりは学力が劣る。そこで、競争率の激しい都立高校に入れない。これは大学においても大体そういうような事例は当てはまると思うのですよ。そこで、東大の例をとりますと、東大は授業料は幾らぐらいなんですか。
  312. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一万二千円。国立が全部です。
  313. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 授業料以外にどういう入学費が要るのですか。
  314. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 入学金が千五百円、それと受験料が千円。ですから二千五百円で試験を受けて合格できれば入れるわけです。
  315. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、千葉千代世委員予算委員会要求して文部省から提出された資料があるわけです。「私立大学入学時諸納金一覧表」というのがありまして、これを見ますと、たとえば慶応義塾大学は、昭和四十年度援業料は八万円ですよ。それから早稲田が五万円、立教大学八万円、明治大学が五万円ですね、法政が六万円です。中央大学が六万円、学習院大学八万円、日本医科大学に至っては十五万円です。このような多額ですよ。それから入学金が慶応義塾大学が七万円です。それから早稲田が三万円、立教が五万円、大体四、五万円ですね。ことに医科系統は非常に多額ですが、日本医科大学が十万円、そのほかに寄付金があるわけですね。慶応義塾では問題になりましたが、日本医科大学では寄付金が二十万円です。そうしますと、国立と私立の間にものすごい差があるわけですね。こういう状態は、これは私は放置できないと思います。これはもう文部大臣も十分その点は御存じで、先ほどもいろいろ努力されておることを承ったのですが、しかし、私は私立出なわけです。私立出で私立のいろいろな教授たちともしょっちゅうお目にかかり、絶えずそのことをいろいろ訴えられるわけですね。そこで、先ほど御質問しました、このような多額の寄付、入学金を徴収しなければならない原因としましていろいろあるけれども、その大きな一つの原因として、これまで借りた借金の利息が非常に高いということが非常に大きなやはりガンになっておるのじゃなかろうかということなんです。ですから、愛知文部大臣は今後の問題について非常に御配慮され、特に四十一年度はたいへんだというお話でございますが、やはり私は、旧債務の問題について、古い債務の問題について、一割以上も高い金利を払ってあったんではとても経営困難であると思う。ですから旧債務について、何かひとつ処理をする御意思がないか。いろいろな、政府は利子補給とか、あるいは低利貸し付けを公庫がやっておるわけなんだから、たとえば私企業で営利を目的とするような造船につきましては、御承知のように造船利子補給をやっておるわけです。もちろんこれは輸出振興という重要な政策目的がありますから、そういう点からやっておると思うのでありますけれども、しかし文教、学術は単なる営利事業とは違うわけでございます。非常に重要な文教政策であると思うのです。したがって、ほかのそういう振り合いから考えても、私は、こんな高い、営利会社ならとにかく、営利を目的としないこういう学校でこんなに高い金利を払っておったんでは、とてもこれは経営が成り立たないし、勢い父兄に大きな負担をかけることになる。ですから、そういういろいろな各方面の均衡というようなことからも考えまして、ひとつ旧債務の低利借りかえ、これにひとつ着目される必要があるのじゃないかと思うのですが、これについていかがですか。
  316. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 先ほど申しましたように、実はもうこれは恥をお話しするようでありますけれども、この前予算の総括質疑のときに、木村委員から御提案というか、御質問的御提案がありましたときには、私もそこまで実は考えておりませんでしたけれども、たいへんごもっともな示唆のある御発言でございましたので、これは、なるほどここを一つの焦点にして問題解決一つの筋にすることがいいことだなというふうに考えまして、そういう線を一つのよりどころに考えてみたい、率直に申しましてこういうふうな気持ちでおります。それでひとつ——何も調査会を隠れみのにするわけではございませんけれども、できればそういうことにも明るいような方にひとつ御参加をいただいて、積極的な案をつくりたいと思っております。
  317. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私学の、私は慶応ですけれども、その他の私学のそういう経営面について、いろいろ苦心されている方にひとつよく実情を十分に聞いていただきまして、その点について御配慮を願いたい。ただいま古い借金についての低利借りかえの問題について、大臣も積極的な関心を示されましたので、ぜひその点について努力を願いたいと思うわけなんです。  それからもう一つ、高校の問題ですけれども、同じ問題があると思うのですよ。高校につきましては、どのくらいの債務があるかの資料をまだいただいてないのですが、何かそういう御調査がございますか。
  318. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) 高等学校についても調査したものがございますから、あとで差し上げるようにいたしたいと思います。
  319. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あとで資料でけっこうですが、やはり高校につきましても、負債総額、流動負債、固定負債に分けまして、それから市中の長期借り入れ、高校についても、私学振興会の借り入れがございますか。そういうもの、あるいは外債とか、その他に区分しましてひとつ資料を提出願いたいと思います。  それから次に、これは少し抽象的な質問になるわけですが、科学技術と人間像との関係なんです。これはいつか私は文部大臣に質問したいと思っていたんですが、あるいはまた一、二論争もしてみたいと思ったんですが、これは予算委員会等でも問題になりましたが、文部省の中教審の「(中間草案)期待される人間像」の中で、「今日新たな人間像に対して期待がもたれるのは、現代社会、現代世界における人間像の分裂、さらにはその喪失に深い根拠がある。」、こう述べておりまして、特に「科学技術の一方的重視は、人間性の喪失を招く。」「特に今日の機械文明は多分に人間性をゆがめる恐れがある。」、こういうふうに答申されているわけですね。そこで、文部大臣に伺いたいのですが、その「期待される人間像」については、大臣もしばしば申されますように、これは何ももうこれで確定された案ではなく、文部省がこれに基づいて人間像をつくれるわけでもない。今後あるべき人間像についての一つの試案みたいなもので、これをたたき台にして、各方面にいろいろな批判なり論議なり行なわれることは、私はむしろ積極的な意味があるのだと申された。この点について、大臣はどういうふうにお考えか。私は、機械文明が人間性をゆがめるおそれがある、このことはこれは産業革命以来、そういうことは言われてきておりましたし、最初、労働者は機械文明が発明されたときに、自分たちを失業させるのは機械だというので、機械をこわしたということもあったわけです。また、どんどん機械が発達しますと、労働が非常に単純化されてきますね。それで労働の喜びというもの、一つの完成されたものをつくるということが労働の一つの喜びだと思うのです。それが非常に単純化されちゃって、そうしてオートメ化され、あるものの一部しか、非常な単純作業を繰り返していくというような非常な人間性の失われたものになってきていると思うのですが、したがって、そういう機械文明の発達が、人間性の喪失を招く原因になったと思うのですが、私はそれだけではないと思うのです。もっと基本的なものがあると思うのです。そこで伺いたいのは、佐藤総理大臣は、人間専重の政治をやる、高度経済成長のもとで生産力は非常に高まった、技術も非常に進歩したが、そのもとで人間性が失われつつある、この失われつつある人間性を取り戻す政治をやる、こう言われているんですね。そこで人間性を失わしめている原因を、大臣はどういうふうにお考えになっておるか。単に科学技術の一方的重視というようなものにあるとごらんになるのか、あるいはもっと掘り下げて、根本的に深いところに原因があるのか、これはずいぶん長い間、もう社会学者あるいは経済学者、哲学者等によって論争されてきている点でもあるんですけれども、たまたま「期待される人間像」が中間草案として発表されて、その中で人間性の喪失について科学技術との関係をそこで述べておりますので、この機会に大臣の御所見を伺っておきたいと思います。
  320. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) いまお話がありましたように、人間像の問題は、中教申の一つの部会の中間の草案で、執筆された方々が全く、何といいますか、自主的といいますか、それらの方々の総意によってお書きになったものであって、それをそのままなまで世に問うたといいますか、たたき台にしていただいて、人間像論議が大いに活発になる、それ自体に大きな意義があろうと思って私も期待しているわけであります。したがって、ここの中に書かれましたことについて、まだ私としても、自分の意見というものを、かりにありとしても申し上げる時期ではないと思うのでありますので、この人間像の中間答申についての意見として申し上げるわけではございませんので、その点を前提として、お許しいただきたいと思います。  そこで、いまのお話でございますが、この佐藤総理の人間尊重ということは、この答申にあらわれた多少科学技術優先的になり過ぎていたことに対する反省であるかのような表現がある、それとの関連はどうかというような御質疑と思うのでありますけれども、総理大臣の人間尊重ということは、これは直接本人からお聞きいただかないと正確なことは申せないかと思いますけれども、深遠な、哲学的な発想ということも、もちろんでございましょうけれども、戦後二十年間、ことにその後半期において、とにかく生産力を拡充して、そして生産を活発にし、所得の基本になるもののますを大きくするということに非常な努力を傾けてきている。それはそれなりに相当の効果があると思うわけであります。しかし、この際非常に卑近な例でいえば、交通が発達し、いい道はできるけれども、歩行者優先というようなことが忘れられつつあるのではないか。また、政治面でいえば、まあいわば人間疎外的な風潮が出てきているのではないかということを優慮して、これをひとつの政治哲学の基本にとらえていると、こういうふうに私は理解しているわけでございます。それで、それならその人間疎外に対する反省といったようなことはどういうところから発想したかといえば、これは私流の解釈になりますけれども、いわば世界的な現象かもしれませんが、プラグマチズム的なこういった風潮がいつとはなしに非常にはびこってきた。そうして同時に、これは精神面でいえば、自分だけよければいいのだというような、人生観的にいえば、孤独な人間というようなことにもなるでしょうし、同時に、自他ともに、われ人とともに調和して、もっとお互いに楽しい生活を追求していこうということも、どうもこのままでいくと忘れられてしまうんではないかというようなところから発想して、調和というようなこともあわせて説いておられるのであろう、まあこういうふうに考えるのでありまして、率直に言って、人柄からいっても哲学者でもございませんし、私もそうでございますから、あまり突き詰めてこういうようなものであるとまでは申せませんが、政治の姿勢としては、いまの時期においては、たいへんいい発想ではなかろうかと、こういうふうに思っているわけでございます。
  321. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もちろん私も、政治の姿勢としては最高の姿勢だと思うのですよ。しかし、この発想につきまして、愛知大臣がいま御答弁になりましたが、かなり基本的な点にやはり触れておられるわけです。もちろん哲学者でないからというかなり謙遜されましたが、非常に愛知さんよく勉強もされ、有能な方だと思いますが、やはり政治には一つの哲学というものがやはり裏づけされなければ、厚みが出てこないと思うのです。そこで、ただいま確かにこのプラグマチズムの風潮、それからまた非常な個人主義的な、自分だけよければいいというようなそうゆうような考え方個人主義的な考え方というところに人間性が失われる非常な原因があるのじゃないかというお話でした。単に科学技術の、あるいはまた機械文明の発展が人間性の喪失を招く、こういう単純な考えじゃないことはわかったんですけれども、しかしこれは、人間を疎外させ、あるいは人間を孤独化させている根本の原因は、一体どこにあるかという問題が非常に私はもっと基本ではないかと思うのです。で、私も哲学者じゃないんですが、やはり政治を行ない、あるいは経済の問題を論ずるにいたしましても、やはり絶えず一つの哲学を持たなければならないわけです。私は私なりに哲学を持ち、そうして経済の問題なり政治の問題に取り組んでいるわけですが、たまたま「期待される人間像」を出されましたので、これについて私も、非常に重要な問題でありますし、こういう問題がこれから政治に取り入れられ、また、それがいろいろな経済政策の裏づけ、裏打ちとされるということになりますと、これは長期的に見ましても、非常に重要な意義を持っておりますので、この際にもっと突っ込んでお聞きしてみたいと思うわけです。それでもっと問題点を明らかにしてみたい。私は自分が国会におりながらそう申してはあれですが、今国会でこの問題が非常に大きく取り上げられるのじゃないか。自分はまあ教育者でもないし、哲学者でもございませんから、経済専門にやっておるものですから、こういう問題をお聞きするのはいかがかと思っておったのです。しかし、やはり何かの機会にこの問題については、もっと根本的に掘り下げて議論しておく必要があるのではないか。特にわれわれ社会党は、一つの哲学なり、思想なりを持っておるものですから、それがいろいろ御批判もあろうが、そういう立場に立って、いろいろまあ国会活動をやっております。この問題について、もっと掘り下げて質問してみたいと思ったのです。そこで、愛知さんには、先ほど人間疎外ということばを使われましたが、このことばは、ずいぶん長い間使われておるわけです。御承知のように、もうすでにマルクスの時代から人間疎外ということばが使われておる。最近これはドイツの学者で、まあアメリカ等でまた教授なんかやっている人ですが、パッヘンハイムという人が「近代人の疎外」という本を書いているのです。お読みになっておりますか、私も翻訳で見たのです。岩波新書です。ここで人間疎外の問題を歴史的にずっと取り上げておるわけです。そして、この著者によりますと、やはり人間疎外の一番基本になっているものは、いわゆる現代社会、現代社会というのは資本主義社会。だから、この資本主義の制度、資本主義の仕組みというものに、一つの人間を疎外させる、人間を孤独化させる、孤立化させる一つの大きな要素があるのじゃないか。一つの大きな要素というより、それが基本でないかと思うのですが、この点について、大臣はどうお考えになりますか。
  322. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私の考えをもう少し敷衍して申しますと、まあいまのお尋ねに直接のお答えにならないかと思いますけれども、人間尊重ということをもう少し掘り下げていえば、お互いの人間としての謙虚な自己反省というようなことが、まず第一に人間性から出てくる問題じゃないか。謙虚な自己反省ということが自己の充実でもある。そこで、その次にというか、それに並んで、われ人ともによき社会をつくるという調和の考え方をそこに加えていく、同時に、そこから先に一つのビジョンを、お互いに夢とビジョンを持つというのが、この人間を中心とした考え方である——私のいわば哲学ですが、三つの要素のつもりでございます。そうしてそういうことから、たとえば経済政策や経済の基本理念からいきまして、たいへんことばは練れませんけれども、社会開発というようなことが、そこに結びついてくる。それには必ずしも旧来のいわゆる資本主義というものだけを是なりとする考え方ではない。私は、そういう発想でいわば、これもことばが練れませんけれども、ソシァリゼーションというようなことも新しい意味で取り上げてしかるべき問題じゃないかと思います。私は、そういう意味で社会開発ということをやはり広い範囲で掘り下げていろいろの部面で考えていく必要があるのじゃなかろうか。それから、いま私、申しましたビジョンという問題については、これは調和ということとも関連いたしますけれども、あくまで平和であるべきである、何としても人類社会の終局のターゲット、理想というものは、あくまでそこに置かなければならないということも同時に含めておるわけでございます。たとえば科学技術政策にいたしましても、そういうふうな考え方から、われわれの進むべき道を取り上げていくべき政策を考えていったらいいんじゃなかろうか、こういうふうな大ざっぱな考えでございますけれども、考えを持っておるわけでございます。
  323. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体まあ愛知大臣の考えは、また、その人間尊重の発想のしかたですね、これはまあはっきりしましたが、これは多分に主観的ですね。また主体的といってもいいですよ。非常に主体的、主観主義的だと思います。そこで、われわれとの考え方の非常な違いは、われわれは非常に客観的に、人間がなぜ疎外されるのだ、非常に孤独化されて、人間と人間との愛情的な結びつきがどうして失われていくかということは、現代資本主義社会の構造というものに求められるわけです。資本主義社会では、もう愛知大臣に言うまでもないわけですが、人間と人間との関係が売り手と買い手という関係になるのです。いやがおうでも、たとえば労働者は資本家に労働力を販売する、資本家は労働力を買うと、こういう関係があって、この中間媒介機構として貨幣というものがある。貨幣が全能的な支配力を持ってきておるわけですね。地獄のさたも金次第ということになってきて、そして実際にあらわれている現象は、人間が自分の同胞を自分の生活手段とみなしておる。場合によっては、自分自身をも手段に下落さして、そしてほかのいろいろな勢力も道具となっているような状態、さらにもっと日常的なことに即して申しますれば、たとえば入学試験につきましても、人の不幸によって自分がしあわせになる仕組みになって、おるわけですよ、実際は。とにかく、だれか落第すれば自分が及第する。就職の場合もそうです。現実はそうです。そういう客観的な構造であり仕組みであるために、おのずと主観的には自分の能力をみがき、自分の努力をすることによって、自分がかりに成功、ということばはあまり使いたくないのですが、重要な地位にのぼるという努力を怠って、何か策略によって自分がいわゆる出世しようと、そういうことが起こり得る。それからまた、台風でいろいろな被害が起こると、いろいろな住民の人が非常に苦しみ悲しむ、そういう不幸がある場合に、土建会社がもうかる。材木が高くなってそして建築で土建会社がもうかる。疫病がはやって病人がふえればお医者さんがもうかる。それはお医者さんは疫病を何も期待し、好んでいないのですが、結果としてそうなるのですね。そういう仕組みですよ。何か他人の不幸によって自分がしあわせになるというような側面が非常にある。このことは、非常に人間性を失わしめ、人間疎外の状態をもたらす基本的な原因になっておるというふうに見ておるのです。ですから私は、人間尊重といわれる政治をやる、人間を尊重する政治をやる場合には、いまの現代の資本主義社会の構造にメスを入れなければならぬ。そこで大臣に伺いたいのは、「期待される人間像」だけではなくて、もう一つ諮問をしていただきたいと思うのです。それは、「期待される社会像」というものをひとつ答申を求められたらいかがか。そうすると「期待される人間像」と「期待される社会像」と両々相まって、そこに愛知大臣の言われる一つのビジョンというものが生まれてくるんじゃないか。人間像だけでは、かなり主観主義的ですよね。ですから、もう少し客観主義的に人間疎外の原因をもっと突き詰めて考えていく必要があるんじゃなかろうか。これはもう基本的に考えれば、人間としてそんなに意見が私は違わないはずじゃないかと思うのですよね。いろんな立場や党派にとらわれない、根本的な人間の問題として、また、人間といっても孤立してないから、社会に生きているのですから、社会の問題として、もっと突き詰めてこの点を追求してみる必要があるのじゃないかと、私はこういうふうに考えるのですが、その点についてはいかがですか。「期待される社会像」というものを答申を求めていくという御意思はないか。
  324. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) それは、いますぐに「期待される社会像」というものを諮問するかどうかということについては、突然のことでもございましたし、よくまた考えてみたいと思いますけれども、その前提となるお考えについては、私ももっと討論をしなければ、相当、木村さんのお考えと違うように思えるのですけれども、しかし、「期待される社会像」というおことばについては、非常に理解できると思うのです。私は、社会開発という命題に対して、こういう社会がつくり出されればいいがなということが、当然やはり社会開発のターゲットとしてなければならないと思います。これについては、政府としてもなんでございまして、また、社会開発懇談会なども二度ほどやっておりますが、いろいろの御意見が出ておりますが、こういう点から、だんだんと期待される実際の社会像というものがつくり上げられて、そしてそれをつくり上げるのにどういう現実の政策が適当であるかということになってくれば、たいへん明るくなってくるのではないかと、こういうふうに考えております。いま申しましたように、いますぐに、あるいはこれは社会像ということになりますと、われわれだけのことではなくて、内閣全体の大きな問題となろうと思いますので、よく私どもも考えてみたいと思います。
  325. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ぜひ、その点取り上げてほしいと思うのですよ。人間像だけでは、これは、ほかにいろいろ、ずいぶん論議されていますから、そういう批判もすでにあるかと思うのですけれども、私は私なりに読みまして、いまの社会制度、社会機構なりの面に触れている点が非常に弱いと思います。それから特にこの人間性の問題につきましては、いまの現代資本主義社会の構造に一つ問題があるということ、これをどう変えていくかということについては、これはそれぞれ立場によって違うわけですよ。愛知大臣も、現在の資本主義の仕組み、構造がよろしいとは考えていないのじゃないかと思うのですよ。欠陥があると、どう直していくかということについては、われわれとまたいろいろな見解が違ってくると思うのです。いまの現実の社会を見まして、決して喜ぶべきことでないことがたくさんあらわれている。たとえば青少年の非行の問題なり、そのもとを突き詰めていけば、やはり社会の一つの、いまの仕組みなり構造等にも原因があることは、これはもう明らかだと思うのです。だから、それを率直に認め、反省し、そしてどうこれを変えていくかということについては、これは革新政党なり、あるいは保守政党なり、それぞれ違うと思うのですけれども、しかし、問題点を明らかにするという点については、これはお互いにやらなければいけないと思うのですね。その点ひとつ、いわゆる謙虚に着目して、「期待される社会像」、社会的な側面についての諮問をやりませんと、私は、これは片ちんばじゃないかと思うのです。くどいようですが、重ねて御所見を伺っておきます。
  326. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 御趣旨の点はよくわかりますので、先ほど申しましたように、いろいろとまたわれわれなりの考え方で発展させてまいりたいと思います。
  327. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 あまり時間がありませんので、もう簡単にあと質問いたしますが、私は私なりに、人間性なり、人間の問題について、これまでいろいろ勉強してきてみておるのですが、最近ずいぶんいろいろなそういう評論なり文献が出てきておりますね。これはもっと積極的に、いい機会でございますから、「期待される人間像」そのものがいいものか、これは議論はありますけれども、一つのいいきっかけになりますから、たとえば「ライト・ミルズの世界」と、こういう本が出ているのです。これはアフセーカーという人が書いたのですが、ライト・ミルズという人の書いたものを批判しているのですが、これは愛知大臣も御存じのように、パワーエリート、大衆社会論を問題としているのです。アメリカを例にとって、アメリカでは、三つの力がアメリカを動かしているというのです。たとえば財界の力、政府の力、それから軍部の力、それで大衆はつんぼさじきに置かれていくようになってきている。そういう政治にタッチできないような機構、仕組みになってきているというようなことも問題になってきておりますし、これはずいぶん前にいっていたのですけれども、フランツシュタイディンガー、これはドイツの新カント派の人ですが、道徳の経済的基礎について、かなりこれは基本的に人類の起源から文章を説き起こしまして、そうしていまの社会がゲゼルシャフトですか、の社会で、利益社会、これは資本主義社会、そうしてそのために人間がお互いに人間を利用し合って生きておるのだ、つまり商業社会である。それで、そのゲマインシャフトの世界ではない、共同社会、真の意味の社会ではないということをいっています。この問題については、ずいぶん古くから、いろいろ論じられておるわけですから、ぜひその点について、もう少し、どうもこれではちょっとお粗末のような気がしますので、もっと厚味を加える意味でそういう御検討を願いたい。  それから、ついでですが、「期待される人間像」ですね、執筆された方、高坂正顕、どういう方ですか、愛知大臣、御存じでしょうか、どういう方……。
  328. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一口に申せば、京都哲学派とでも申しましょうか、西田幾多郎先生などと親しいといいますか、その系列に属する方ではないかと思います。現在東京学芸大学の学長をやっております。
  329. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、田中惣五郎という人の書いた「日本ファシズム論」という本があるのです。それを見ましたら、高坂さんは戦時中に言論報国会の理事をやっておりまして、田中さんの論文によれば、軍部や官僚の手先となって、大いにそういう点について活動された方ということが書いてあるのです。私も、田中さんの「ファシズム論」を読んで、そこで初めて、ああ高坂さんという人はそういう人だったのか、そういう人が「期待される人間像」を書いたということになると、どうも私は、何も——現時点において高坂さんがりっぱな方であればいいと思うのですけれども、そういう過去の経験があるのです。この点、大臣、御存じですか。
  330. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 一々のこまかい経歴等はいまここでつまびらかに申すだけの資料も持っておりませんけれども、先ほど申しましたように、日本の哲学界における権威者と目されておる人であって、たとえば、最近の著書も私読みましたけれども、これは主として西田幾多郎先生などを中心に書かれたものであります。たいへん敬意を表して私としては読んだわけでございます。りっぱな方であると私は信じております。
  331. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの私が申し上げた田中惣五郎さんの「日本ファシズム論」は、大臣は御存じないのですか。
  332. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは、私まだ読んでおりません、田中さんの著書は。
  333. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ということは、お知りになっていないわけですね。高坂さんが戦時中に……。
  334. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 戦時中云々というところまでつまびらかに私は承知しておりません。
  335. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこれで、ほかの方の質問もありますからやめますが、しかし、そうした点を私は慎重に考慮される必要があるのじゃないかと思ったのです。私も、最初はこれを読んで、そういう点は気がつかなかったのです。田中惣五郎さんの著書を読みまして、そういう人であったかと、そうしますと、いま「期待される人間像」というのは方々から注目されているのですから、執筆者の人選については、私はかなり慎重を要するのじゃないかと思うのです。これはどういう経緯でこういう高坂さんがお書きになるようになったのか知りませんけれども、そうして考えますと、何か中にそういう、どうも戦時中における高坂さんのいろいろな行動と符節するような個所もないわけではない気もするわけですが、この点については、今後やはり十分に注意される必要があるのじゃないかと思います。これは、ただ私は御注意を申し上げるだけです。  私はこれで質問終わります。
  336. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣に質問を申し上げる前に、いま非常に大事な問題が木村先生から御発言がありまして、「期待される人間像」、それに対して「期待される社会像」、非常に観念的な抽象的なお話があったわけですが、もちろん私も、その資本主義を全面的に認めるわけではありませんし、またさらに、社会保障が伸長していかなければならない。しかし、社会主義の完成に近い西欧諸国では、非常に自殺が多い、また国民も無気力であるというような現実を見まして、また、ゆりかごから墓場までといわれているイギリスの社会保障制度、これは大きに参照していかなければならない点でありますが、いずれにいたしましても、経済の面から見た人間像、また社会の社会機構の上からながめた人間像、そういうような議論が尽きなく行なわれたわけですが、非常に興味深く拝聴したわけです。われわれとしては、あくまでも人間の立場から人間を中心にして政治を論じ、経済を論じなければならない。そういう観点から論すれば、人間尊重もさらに具体的に研究し尽くされなければならないし、また、社会像も今後その優秀な人間尊重から生まれた優秀な人々によって期待される社会がつくり上げられなければならない。これがわれわれ公明党の——社会の繁栄と個人のしあわせを一致さしていかなければならない、こういう考え方があるということを御披露申し上げて、質問の本論に入りたいと思います。  きょうお伺いしたいことは、最近問題になっております頭脳の流出ということについてでありますが、近年科学技術の著しい発展に対して、専門家また研究家が、あるいは技術家が非常に不足してきている。大学の学者や、あるいは研究者が、大学または研究所をやめて海外へ渡航してしまう。あるいは国内民間研究所へ移る人が多くなってきている。いわゆる人間頭脳流出ということが問題になっておりますが、その実態はどのようになっているか。簡単に御説明願いたい。
  337. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 頭脳の海外流出につきましては、私どももたいへん心配している問題でございますが、そこで、最近科学技術庁と文部省で共同いたしまして、科学技術関係の研究者にまず対象をしぼりまして、海外渡航に関する調査を行ないました。この調査によりますと、昭和三十四年度から三十八年度までに、六カ月以上の期間にわたって海外に渡航した研究者が、総計で約四千七百名でございます。そうしてそのうち国公立の研究機関の人たちが七百三十名、民間の企業から行かれた人が、これとほぼ同数、大学などが三千二百名ばかりになっております。これらの研究者の大部分、約八割に相当する人たちは、二年未満で日本に帰国して、もとの研究所なり大学に復籍いたしております。それから海外にそのまま就職いたしました者は、全体の約三%でございまして、大学関係が約百三十名、国公立研究機関及び民間関係は十五名という現状でございます。それから民間のいわゆる流出については、人事院の調査がございます。三十八年度に辞職いたしました研究公務員が三百八十五名で、全体の約四%と聞いておりますが、これは民間に官公庁から流出した人たちでございます。
  338. 白木義一郎

    白木義一郎君 われわれは、わが国の学問的水準は決して低くないと思っておりますが、しかるに、いま御説明がありましたように、非常に多くの学者また研究者が海外に渡航しており、またさらに、そのまま外地に住みついて就職し、あるいは永住を希望する人が次第に多くなってきておる。非常に憂慮すべき現状のように思いますが、その海外渡航の理由について、どのようにお考えになっておりますか。
  339. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これはいろいろの原因があると思うのでありまして、私どもとしては、国際交流、特に科学技術の面におきましては、外国側と二国間なりあるいは複数国間との間の国際協力ということが非常に必要であると考えますので、その面から申しますと、あながち、海外に日本の優秀な頭脳が流出するということは、あながち、何といいますか、不適当なとも言い得ないと思います。しかし、原因として考えられますことは、やはり一つは待遇の問題でございます。一つは研究環境の問題ではないかと考えているわけでございます。したがって、対策といたしまして、こうした待遇の改善とか研究環境の整備ということについては、できるだけ今後とも努力を新たにしなければならないと思っております。
  340. 白木義一郎

    白木義一郎君 そのようにどんどん海外に渡航してしまう一方、国内でもやはり大学の教授あるいは助教授、そういうクラスが民間の研究所あるいは企業の研究所へ移っていく学者が多い。国立大学では、教官の五%が毎年民間企業その他に転向してしまっている。いまそのおもなる理由は、大臣から御説明がありましたごとく、まず第一に、非常に待遇がよくない、それに反して民間の研究の条件が比較してすぐれている、こういう現状でありますが、しからば同一年齢で国立、公立、私立大学等において、私企業の研究所等とどれほどの俸給の差があるかおわかりでしょうか。
  341. 梅澤邦臣

    政府委員(梅澤邦臣君) 先般、人事院で研究公務員の改正をしていただきましたが、その際の人事院の、大体の平均の予算傾向で見ますと、まだ八%から一〇%ぐらいが平均として下がっているというようなことかと存じております。
  342. 白木義一郎

    白木義一郎君 大学の教授は特殊な職業といわれるのは当然ですが、この教授は研究と教育に専心するのが大学教授の職責であるということが教育法に明記されております。しかし、実際に国立大学の教授のうちの三分の一はようやく本俸で生活できる程度である、あとの三分の二はほとんどがアルバイトをしなければならない、そういうような状況と聞いております。すなわち最高の教育に携わる教育者が、自分の子第の教育すら十分にできない、そういうような待遇を与えられているわけです。また、ある大学では、医学部の教授が欠員してその補充がないために理学部の教授を招いている、そういう事実も聞いております。今後の日本の発展のために、文部大臣また科学技術庁長官として、この現状をどのように考えられているかお伺いしたいと思います。
  343. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 実は待遇の改善の問題につきましては、私ももう数年以来人事院などにしばしば陳情いたしておりまして、四十年度におきましても若干の改善はできました。たとえば初任給、若い人たちがまず大学の教官に助手ぐらいからスタートしていくわけでございますが、その初任給をよくするということ、それから五万円以下ぐらいの俸給になるやはり若手の人たち、こういうところをまずよくすることが一番必要なことと思いまして、これらの点につきましては、他の一般国家公務員に比べましてある程度格差がつくようにいたしました。それから、研究室などの責任者として室長というような立場にあるような人に対しては、特別研究調整費の全部が対象になるような措置を講じたわけでございます。  それから、これはまあ少し方面が違うかもしれませんが、大学の学長等につきましては、かなり大幅な待遇改善をすることができるようになったわけでございまして、これらの点につきましては、なお一そう努力をいたさなければならぬと思いますが、特に佐藤総理からもいろいろの指示がございまして、積極的にひとつ関係当局の協力を求めて、待遇の改善についてできるだけのことを今後積極的にやってまいりたいと思っております。
  344. 白木義一郎

    白木義一郎君 大臣として、科学者の優遇について積極的な気持ちをお持ちであるというようなことを伺ったわけですが、若干の待遇改善が行なわれたにしても、非常にみじめな現況である。日本学術会議から発行された科学者生活白書の内容なんかによりますと、非常にソ連では学者が優遇されている、それに反してアメリカでは野球の選手とかそれから映画スターとか、そういうような人たちと比べてインテリや科学者や思想家に非常に関心が薄い。したがって、アメリカ等も非常に科学者たちの待遇がソ連等に比べると低い。そのアメリカに比べてさえもわが国の学者、科学者についてはさらにそれを下回る待遇をされている。こういうことでは、科学者がわが国の経済発展のための有力なにない手としての力を発揮するわけにいかない。こういう現状が憂慮されるわけですが、また学生の中でも、優秀な成績の者がその待遇の低いのに対してどんどん民間のほうへ走ってしまう、学者になろうとする者が非常に少ない。したがって、今後の指導者階級、すなわち科学者が待遇問題から非常にレベルが低くなる心配がある。そういう関係で国立大学の教授をはじめとして、日本学術会議では、国家公務員としての類似の職務に従事している裁判官等と同様な待遇にしてほしい、こういう声が強い。私も当然その意見に賛成するものでありますが、さらに大臣の御答弁を伺いたいと思います。
  345. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 大学の教授について、裁判官と同じような特別の給与制度といいますか、給与表をつくってほしいということにつきましては、学術会議もそれから大学方面からも年来御要望のある点でございます。裁判官と同じように、何と申しましょうか、法律制度上特殊の制度にすることがはたして妥当であるかどうかということは研究課題であると思いますけれども、とにかく、少なくとも当面の目標は、裁判官等と大体同じくらいの待遇が得られるようにということを目標にいたしまして、先ほど申しましたような、大学の学長の大幅給与の是正等から初任給の待遇改善ということを逐次実現しているわけでございますが、さらにもう一つは、研究の環境をよくする、条件をよくするというようなことから申しまして、正式な外国の留学とか、在外研究員制度を拡充するとか、あるいは表彰制度を行ないますとかいうような点についても、ただ単に俸給一本というだけではなくて、研究に対して意欲を燃やし得るようなそういう諸制度もあわせて必要かと思いまして、そういった方面におきましてもできるだけのくふうをこらしつつあるわけでございます。
  346. 白木義一郎

    白木義一郎君 私は大臣が在任中こういったような問題を大きく解明して、そうして日本の教育界あるいはまた科学技術振興の立場から、大きく政策、また事業を確立されることを期待すると同時に、またさらに、その方向へ努力されることを確信している一人でございますが、いずれにいたしましても、国立大学の教官は約二万七千人、この大幅の待遇を改善して、判事、検事あるいは裁判官、そういう人たちと同等にしたとしても、大ざっぱに百億円程度あれば解決する。それによって今後の科学日本のため、また次代をになう青少年育成のために大きな貢献をするであろう、このように考えておるものですが、さらに大臣の強い決意を伺いたいと思います。
  347. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは非常に強い私も決意をもっておるわけでございますが、同時にこの俸給表の改善とともに、先ほどもちょっと申しましたが、一つは勤労所得税の関係におきましても、月給が上がったら実質的にその幅が相当上がるように、これは一般の問題でございますけれども、そういうこともひとつ大いに推進してみたいと思っておるわけでございます。  それから、これは民間関係に主としてなるわけでございますけれども、やはり研究準備金制度というようなことも、非常に科学技術の発展あるいは科学技術者の研究の環境をよくするということから申しましても、相当効果のある問題であろうと、かねがね思っておりますわけでございますが、これらにつきましても、四十年度は間に合わなかった面がございますが、来年度ではぜひ実現をしたい。そして一面においては、たとえば産学協同というような面ももっとうんと広げてまいりますことが、いろいろの意味で官民を通しての科学技術研究の促進に非常に役立つ環境をよくするゆえんではなかろうかと考えまして、その方面にもあらためて努力をしてみたいと考えておるようなわけでございます。
  348. 白木義一郎

    白木義一郎君 佐藤内閣の最も強力な領袖としての文部大臣から、わが国の勤労所得税が非常に高いと、こういう御発言がありまして、あらためて認識をし直した次第でございますが、いずれにいたしましても、この科学振興という立場から重大な問題であります。ただ単に待遇問題を解決すればという狭い視野だけでもないわけです。待遇と同時に、その学者の頭脳を開発する施設、あるいはまた研究所の設備、そういうような点が民間の研究所に非常に劣っている。こういう点もあわせて力を注いでいかなければならないと思います。あるいはまたそういう研究所の門を開く、そして国家的な立場で科学者が協力をしていくような体制にもしなくちゃならない。非常に幅広い、あるいはこの施策いかんによっては、大臣がおっしゃっている将来に大きな希望と夢を抱けるか、あるいは現実の現状に屈していくか、大きな問題だろうと思います。  そこで、わが国の科学技術が健全に発達して、国民の福祉を向上し、さらに世界の平和及び文化の向上に貢献するために科学技術基本法を制定すべきである。そしてわが国の科学技術の基本的方向をはっきりと決定して、その体制及び財政的の裏づけを明らかにして、基礎科学あるいは応用化学等の総合体制をとり、あわせて調和のとれた科学技術の開発をやらなければならない。以前から科学技術庁で基本法の制定が論議されておるようですが、現況はどのようになっておりますか。
  349. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 科学技術基本法につきましては、よく御案内のように、科学技術会議を中心といたしました研究も非常に進んでおります。それから学術会議における研究も進んでおりますし、それから衆参両院の科学技術特別委員会、小委員会等におきましても非常な御協力をいただいております。これは私としては実は今国会にも間に合うくらいにスピードを上げていただきたいと思っておったのでありますけれども、多少まだこなれないところもございます。もう少しいろいろの研究の成果を取りまとめたい、もうちょっと時間がかかりますかと思いますけれども、できるだけすみやかに成案を得て、私としてはできれば政府提案で国会の御審議を願いたいと思っておりますが、方法論等につきましては必ずしもこだわりませんで、早い時期によい案が策定される、これが一番望ましいことと考えておるようなわけでございます。あわせて、長期計画につきましても、作業を相当急いでいただいておるわけでございます。これらにつきましても確たる時期のまだ見通しがつきませんが、遠からざる時期に成案を得て発表をしたい、かように考えておるわけでございます。
  350. 白木義一郎

    白木義一郎君 基礎研究と応用研究の関連が非常に密接になってくる、また部分的な研究から総合研究へと研究分野が科学の分野で拡大してきております。したがって、総合化された科学技術の振興が強く要請されて久しいものがあるわけですが、基本法が制定されたといたしましても、多数部門の協力による総合的研究の推進といったような点がいま申し上げたように多くの不合理を持っております。この不合理をなくして、国家的な見地から研究体制を整えて、それで真に近代的な科学技術の発展をはかるためには科学技術省を設置して、そうして政府として強力な指導、また行政組織の簡素化を通じて科学技術の発展をはからなければならない、このような考え方を持っておるわけですが、これは非常に遠大な、またぜひ実現しなければならない国家的な事業であろうと思いますので、将来の科学振興という見地から長官としての決意といいますか、抱負をお聞かせ願って、私の質問としたいと思います。
  351. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) たいへん適切な御意見を伺いまして、まことにありがたいのでありますが、この科学技術庁の拡大強化につきましては、実は私どもとしては、大体臨時行政調査会の答申の御意見を尊重してまいりたいと考えておるわけでございます。この考え方は、実は政府部内でもいろいろいま御提案のような考え方も積極的に検討したのでありますけれども、臨調の御答申の線というのが科学技術会議というものを非常に強力なものにし、そうして科学技術庁というのは、まあ何といいましょうか、執行機関となって、そうして総理大臣直属の機関として、各省庁を科学技術の研究開発等については指導すると申しますか、連絡調整よりも一歩進めました指示をどんどんやれるようにしたほうが、もっと能率があがるのではなかろうかという考え方を臨調の答申はとっているわけでございまして、いろいろ検討いたしましたが、われわれとしてはその臨調の御意見のほうがいいのではなかろうか。もっとざっくばらんに申しますと、各省並みに位するよりは、一段とその上に立つようなかっこうにしたほうがいいんじゃなかろうかというような気持ちで、こうした考え方を意欲的に推進したいと考えているわけでございます。  なお、これに関連いたしますが、原子力委員会の強化、あるいは宇宙開発推進の強化というようなこともその基本の構想と相関連いたしまして、それぞれ格上げといいますか、強大なものにしてまいりたい。これなくしては大きく科学技術の未来に対する発展は期待し得ないのではなかろうか、そういう気持でおるわけでございまして、ただいまお述べいただきましたような御趣旨は、これによって、これがもしうまくまいりますれば、御趣旨に沿うて非常な効果を上げるのではなかろうかと考えております。
  352. 向井長年

    ○向井長年君 大臣にお聞きいたしますが、いま白木委員が言われたこと、私も質問の中でしようと思っておったところですが、従来、科学技術庁長官は、これは内閣改造とか、あるいはまた各大臣任命の中で、ほんとうに本腰を入れてやるという体制があまりにも少なかったんじゃないかという気がするのです。担任された方はそうではないと、こう言われるかもしれませんけれども、事実上何だか隠居役かあるいは兼務役で、愛知長官は非常に優秀な大臣ですから、文部あるいは科学技術庁は関連があるから一生懸命取り組んでおられると思いますけれども、しかし、どうもそれがいままでの長官が、悪く言えばおざなり的な形があったんではなかろうか。ここにやはり日本の科学技術の今後の振興という問題についての問題点があるんじゃないか。非常に重要な、いわゆる何といいますか、科学技術庁であるにもかかわらず、若干軽視されたような感じがわれわれするわけでございます。そこで、いま白木委員も言われたように、少なくとも今後の科学振興あるいはこれが実用化、いろいろな角度から考えて研究あるいは実用化を考えていくならば、やはり一つの単独の責任を持った省というものが私は必要でなかろうか、こういう感じをわれわれは従来からしているわけです。もちろん、これはもっと最高の、いま言った科学技術会議というようなところでいろいろとやり、役所はいわゆる執行機関であると、こういう事務官的な、そういう感じを持たれるけれども、これは一方において、まだ出ておりませんが、防衛庁なんか今度防衛省にするということを政府では言い切っておるようですが、ところで、防衛会議というものがあるわけですね。そういう観点からいえば、やはり一つの省という政府機関が、その推進する研究あるいは実用までもっていくという一つの方向というものがどうしても必要じゃないかという感じがするわけです。ただ臨調がこういっているから臨調の方向でと、いま大臣の答弁ですけれども、これは政府自体としても、この問題をもう少し掘り下げて真剣に考えなければならぬと思います。これは、いま直ちにあすからつくるという——大臣として答弁はむずかしいと思いますけれども、この点われわれはそういう感じを持っておるので、所見がございましたら再度お聞きいたしたいと思います。
  353. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) まず第一点の、こういった仕事は何といいますか、パーマネントな、責任長期にわたってとれるような責任者が必要である。私は実を申しますと全く御同感でございます。たとえば、別の機会でも申したのでありますけれども、原子力委員会について、産業計画会議からも非常に積極的な御意見もございますが、原子力委員長は独自の立場を保持すべきである、こういうことも含めた非常に建設的な御意見もあって、私も御同感なんで、現在の佐藤内閣のもとにおいてプラクティカルにできることと思いまして、先般の原子力委員の交代に際しまして、実質上その趣旨に合うような編成にしたいと思いまして、一応のかっこうはとられつつあるように思います。  それから省の昇格の問題は、そこのところはよく私わかりますし、私も初めはそういう考えもかなり強く持ったのでありますけれども、むしろ前向きに新しい仕事をやるときには、各省庁に関連することが非常に多うございますから、一段上に立つ機構といえば、結局総理大臣の直轄というのが一番いいんじゃないかということで、たまたま臨調の答申がそういうものであったものでありますから、現在のところはその線に沿うた成案をつくろうと思いまして、いま寄り寄りやっているわけでございますが、これは他の行政組織の改正とも関連いたしまして、いずれ御審議を願う時期があろうかと思うわけでございます。と申しますのは、たとえば原子力一つ取ってみましても、いまもうこれは総合エネルギー対策の一環として非常に重要な役割りを持っておるわけでございますから、その面だけを取り上げてみると、通産省の行政と今後大いにぶつかり合ってくるところもあるのじゃなかろうか、あるいは原子力船の問題になれば運輸省の関係にもなってまいりますが、そういう点を大所高所から指導というとおこがましいかもしれませんが、そういう体制になるほうがより早く時勢の要請にこたえ得るゆえんではないだろうかと、そんなふうな考えでおりますのですが、先ほど来申し上げておりますように、まだこれについては十分の成案を得ておりませんから、御趣旨のありますようなところは、さらに今後十分意を体してまいりたいと思います。
  354. 向井長年

    ○向井長年君 特に私原子力問題で若干お聞きしたいと思ったんですが、あまり時間もございませんので、かいつまんでお聞きいたしますが、さきの国会予算委員会大臣に私質問いたしまして、明確な答弁が時間の関係でなかったんですが、結局昨年のあのジュネーブの平和利用会議ですね、あすこで日本の代表の諸君が、まあ各国と比較して非常に立ちおくれであるということを痛感して日本の代表が帰っておる、この立ちおくれという感じは、これは研究そのものが立ちおくれであるのか、研究はある程度進んでおるけれども、しかしながら、いわゆる利用開発といいますかね、実用的な開発、これの立ちおくれであるのか、どういうことを感じて帰られたのか、この点いかがでしょう。
  355. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは私の受けた印象からいいますと、ただいまお話の両面とともにあると思うのです。研究それ自体にも非常におくれを来たしたのではないかという反省があるようでございますし、それから同時に先般も申しましたように、とにかく前期、後期十年計画というようなものがありますけれども、その計画を産業政策として実行を進めていく上のおくれというものもございますので、計画自体もだいぶ大改正をしなければならないのじゃなかろうかと、これは私は直接参加いたしませんでしたけれども、出席されたもう全員こぞっての非常に強い印象を受けて帰られて、それをなまに伺いますと、これはこうしてはいられないという感じが私も痛切にしたわけでございます。ですから、たとえば総合エネルギー対策の問題としても、原子炉開発懇談会というものを直ちにあの直後につくりまして、これもいま活発に論議をしていただいておりますし、それから同時に研究体制それ自体の問題としては、先ほどもちょっと申しましたが、原子力委員会の過半数の方が交代されたこの時期に、新風をもって新しい意欲で、ひとつ旧来の考え方にとらわれずに、積極的でもう伸び伸びとした意見と計画をつくっていただきたいということを私も特にお願いしているようなわけでございますので、両面にわたってどうも何かこう心細いような感じがあの当時いたしましたことは、事実否定できなかったわけでございます。
  356. 向井長年

    ○向井長年君 先ほどから大臣言われておるこの原子力委員会という委員会のいわゆる性格というか、任務というか、これと科学技術庁との関係はどうなんですか。ただ単なる諮問機関じゃないと思うんですよ。
  357. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは諮問機関ではございませんで、いわゆる行政委員会で責任を持っているわけでございます。これはよく向井委員も御存じのように、最初はこの原子力委員会、そして原子力局というものが発足して、それからあとで科学技術庁ができて、一つの行政官庁としての中の原子力局ということに改組されました。そういう沿革がありますだけに、率直に言ってなかなかむずかしい。そこで、先ほど申しました産業計画会議などでは、原子力委員会をクローズアップして、その下に事務局を自主的に持つべきであるという意見が献策されているわけでございます。そこで先ほど申しましたように、これは行政組織全般にも影響する問題で、すぐに取りかかるわけにもまいりませんから、まあ原子力局の一部は原子力委員会の事務局的な気持ちで運営をしていきたい、かように考えているわけでございまして、組織としてはあの当時の改組のときに、科学技術庁長官が原子力委員長を兼ねる、そして原子力委員会というのは別個にあり、そうして長官の下部機構としての原子力局、こういうふうになっておりますが、なかなかそこのところは微妙で、運営に苦労をいまいたしておるようなわけでございますが、まあしかし現在のところは、原子力委員の方々のお気持ちも、それから原子力局の職員の気持ちもぴったりいっておりますので、いまのところは心配なく運営できるのじゃなかろうかと考えております。
  358. 向井長年

    ○向井長年君 そうすると、このいわゆる原子力研究所、これの所管というものは科学技術庁直接の所管であるのか、あるいは原子力委員会がその中に入るのか、この点いかがですか。
  359. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) この点は科学技術庁ができましてからは、科学技術庁の行政責任に属しておりまするので、実際上のお世話は原子力局がいたしておるわけでございます。
  360. 向井長年

    ○向井長年君 きょうの新聞に、これは研究所の施設拡大ですか、大洗に第三研究所ができる、こういうのが出ておりますが、これは事実なんですか。
  361. 村田浩

    政府委員(村田浩君) 御承知のとおり、原子力研究所は東海村研究所のほとんど全部の施設を設けてございます。それから三年ほど前に高崎に放射線科学のための専門の研究所をつくりました。四十年度からいよいよ研究が動き出すことになったのですが、さらに今後原子力研究所としての特に開発研究、あるいは工業核研究、こういったものを進めていくためにはいろいろとまだ施設が必要でございますが、東海研究所の中ではもう相当たくさんの原子炉等もできておりますので、新たなる場所にそういう施設を設けていきたい。たとえばいま具体的に考えられておりますのが、将来わが国が大きな原子炉を国産化する上にぜひとも必要な道具である材料試験炉、こういったものをつくっていかなくちゃならぬわけでございますが、その場所としまして、東海村の原子力研究所に近くて、連絡もよくとれやすいというような観点から、大洗地区に新たに土地を購入いたしまして、そこに東海研究所に相対応するような開発を中心とする研究所をつくっていきたい、こういうことでいま計画を進めておるわけでございます。
  362. 向井長年

    ○向井長年君 じゃこの大洗というのは決定したわけですね。
  363. 村田浩

    政府委員(村田浩君) そのとおりでございます。
  364. 向井長年

    ○向井長年君 そこで大臣、従来から特に原研のいわゆる研究部門と管理部門が非常に何といいますか、問題があったわけなんですよ。最近は徐々にこれも理事長がかわられて云々ということを言われておるのですが、これは今後やはり研究部門、それと管理部門というものが専門的に分離されて、ある程度やらなければ問題点を残すんじゃないかと思うのですが、現状どうなっているか、今後どうしようとしておるか、その点ちょっとお伺いしたいと思います。
  365. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 詳しくは原子力局長からお答えいたしたいと思いますが、いまのところ原研は、丹羽氏が理事長に就任されましてから、鋭意原研全体を掌握して、あるべき姿はどうかということについて非常に熱意を持ってやっておられますので、私のほうからこうしてもらいたいということより、自発的な原研のほうのまず御意見を固めることが第一である、こういうふうな状態で見守っておるわけでございます。  それから、先ほどちょっと私ことばが足りませんでしたが、原子力委員会はいわゆる国家行政組織法の第八条機関であって、諮問機関ではございませんが、行政機関に準ずるものであるというのが法律的な公式の解釈でございますので、念のため申し上げたいと思います。
  366. 村田浩

    政府委員(村田浩君) 原子力研究所の管理部門と研究部門の件につきまして、若干補足して御説明申し上げますと、従来原子力研究所において、これは原子力委員会の立てました基本計画に基づいて毎年度の研究計画を立てておるわけでございますが、発足の当初、要するに原子力のいろんな部門について、人も養成しなくてはいけませんし、いろんな問題が、やっぱりわが国としてどのように手がけていくかというようなことで、研究のテーマも相当多岐にわたってきたわけであります。そのために若干最近では研究関係の組織が非常に複雑化して、そのためにまた管理部門との関係も必ずしも円滑にいかない、こういった点が見受けられましたために、先ほどの向井先生の御質問のように、原研としては東海研究所、高崎研究所のほかに、さらに大洗に新しい研究所も考えていかなければならないようなことも考えておりますので、内部組織としての管理部門と研究部門との間の円滑化をはかる必要がある、こういうことから丹羽理事長就任以来特にその点に意を用いて、いろいろ御検討の結果、去る二月の二十一日から新しい機構を考えまして、これを施行するようにされたわけであります。  そのポイントをごくかいつまんで申し上げますと、従来研究部門では、研究室単位といいましょうか、研究テーマごとに研究室が続々とできていく、で、それぞれの間の関連が十分にとられないというようなきらいもございまして、決して多額でございません研究費並びに研究者を有効に使って、原研としての研究開発を進めていく上に、これはよいということでもございませんので、その点を特に意を用いて改められたのでありますが、たとえば、従来研究室というものが三十四あったわけでございますが、これは高崎等も含めてでございますが、今回二月二十一日にはこれを十八に減らしまして、そうして決して研究関係の人を減らしたわけじゃございません、そういうシステムとしての管理関係に重点を置いて数を減らして、有機的、能動的に動けるような、そういう体制に改める。それから研究所長というものの責任をはっきりさせまして、理事会に対する研究所長としての、管理者としての責任、これをまた明確にして、さらに理事会においては、従来九名の理事者がおられるわけでありますが、必ずしもどの理事がどういう仕事をはっきり担当するということでなくて、どちらかというと組織分担式になっておりますので、これを機能別な分担ということに明確にされまして、そういった面で管理と研究との間の円滑化と申しますか、そういった点を新たに加える、こういった趣旨で今回改組されたわけであります。
  367. 向井長年

    ○向井長年君 これは希望ですけれども、過去見ておりますと、やはり研究の統轄をやらなければならないところの理事長、専門家がですよ、いわゆる管理部門に力を取られて、そういう本来の業務を阻害されるということは、どなたが理事長になっても非常にむずかしい問題だ、そういう点から、やはり管理部門は明確にして運営できるようにという考え方をわれわれは従来から持っておりますので、今後もそういうことを強く希望しておきたいと思います。  あまり時間がございませんので、もう一点最後に伺っておきますが、公社の問題ですが、特に燃料公社、これは当初発足したときには、資源開発という趣旨から発足したと思うのです。現状もやはりそういうことであろうかと思いますが、今後大きく実用化され開発されてくる中で、いわゆる燃料の今後の取り扱い、したがって、これは民間も入ってくるかと思いますが、こういういわゆる使用済みの燃料をどう処理しようとするのか、燃料公社でやるのか、民間でやるのか、この点どういう計画を持っておられるのか、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  368. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 使用済み燃料の再処理の問題は原燃公社でやると、専担をするというたてまえで、現在もその具体的な進捗をはかっておるわけでございまして、ただいま民間処理ということは考えておりません。
  369. 向井長年

    ○向井長年君 まあ基本的にはそれで非常にけっこうだと思うのですが、ところが、これに対する予算といいますか、いわゆるこれに対する施設、これは相当大きいのじゃないですか。この点十分やはり国がみるというかっこうになるわけですね。
  370. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) そういうことでございます。
  371. 向井長年

    ○向井長年君 終わります。
  372. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 他に御発言はございませんか。——それでは、以上をもちまして、科学技術庁所管に対する質疑は終了したものと認めます。  以上をもちまして、本分科会の担当事項であります昭和四十年度一般会計予算、同特別会計予算、同政府関係機関予算中、総理府のうち防衛庁、経済企画庁、科学技術庁、並びに外務省、大蔵省及び通商産業省所管に対する質疑は終了いたしました。これをもって本分科会の審査を終了いたします。  なお、予算委員会における主査の口頭報告の内容及び審査報告書の作成につきましては、これを主査に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  373. 吉江勝保

    主査吉江勝保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十四分散会      —————・—————