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1965-03-30 第48回国会 参議院 予算委員会 第20号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月三十日(火曜日)    午前十時四十六分開会     —————————————    委員の異動  三月三十日     辞任         補欠選任      岡田 宗司君     羽生 三七君      小宮市太郎君     山本伊三郎君      横川 正市君     鈴木  強君      北村  暢君     永岡 光治君      浅井  享君     小平 芳平君      白木義一郎君     中尾 辰義君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君     委 員                 井川 伊平君                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 久保 勘一君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 竹中 恒夫君                 野本 品吉君                 二木 謙吾君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 稲葉 誠一君                 木村禧八郎君                 鈴木  強君                 瀬谷 英行君                 永岡 光治君                 羽生 三七君                 山本伊三郎君                 小平 芳平君                 中尾 辰義君                 高山 恒雄君                 向井 長年君                 岩間 正男君                 山高しげり君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        人事院事務総局        給与局長     瀧本 忠男君        内閣総理大臣官        房公務員制度調        査室長      岡田 勝二君        行政管理庁行政        監察局長     山口 一夫君        防衛庁長官官房        長        小幡 久男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        防衛庁教育局長  島田  豊君        防衛庁人事局長  堀田 政孝君        防衛庁経理局長  大村 筆雄君        防衛庁参事官   麻生  茂君        防衛施設庁施設        部長       財満  功君        科学技術庁長官        官房長      小林 貞雄君        法務省入国管理        局長       八木 正男君        外務大臣官房長  高野 藤吉君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省アメリカ        局長       安川  壯君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省理財局長  佐竹  浩君        文部省管理局長  齋藤  正君        厚生省公衆衛生        局長       若松 栄一君        厚生省薬務局長  熊崎 正夫君        厚生省社会局長  牛丸 義留君        厚生省保険局長  小山進次郎君        社会保険庁医療        保険部長     坂元貞一郎君        農林大臣官房長  中西 一郎君        水産庁次長    和田 正明君        通商産業省通商        局次長      今村  昇君        通商産業省公益        事業局長     宮本  惇君        中小企業庁次長  影山 衛司君        運輸省港湾局長  佐藤  肇君        運輸省鉄道監督        局長       佐藤 光夫君        運輸省鉄道監督        局国有鉄道部長  深草 克巳君        郵政大臣官房長  浅野 賢澄君        電気通信管理官  畠山 一郎君        電気通信管理官  野口 謙也君        建設大臣官房会        計課長      多治見高雄君        建設省計画局長  志村 清一君        建設省都市局長  鮎川 幸雄君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君        建設省住宅局長  尚   明君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    説明員        日本電信電話公        社総裁      大橋 八郎君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、岡田宗司君、小宮市太郎君、横川正市君、浅井享君、白木義一郎君が辞任され、羽生三七君、山本伊三郎君、鈴木強君、小平芳平君、中尾辰義君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括して議題といたします。  これより三案の締めくくり総括質疑に入ります。藤田進君。
  4. 藤田進

    藤田進君 いよいよ予算審議も終盤を迎えたわけでございますが、衆議院審議を経て当院審議の過程におきましていろいろ承り、あわせて前臨時国会以来の総理議会における御答弁等と関連いたしまして、この際、まず第一に、日韓会談についてお伺いをいたしたいと思います。  池田内閣以来、議会にはしばしば確約されていた問題の中に、領海に関するわがほうの基本的態度が、六海里、これを堅持するということでありましたが、今回日韓妥結と見られるその合意は、先般農林大臣からの説明によりますると、十二海里、ことに済州島を含む十二海里の接点が、御承知のような状態で一種の内水化したわけであります。この六海里を十二海里として、わがほうがここにあらためて変更した態度を持つということは、今後他の諸国に対する交渉におきましても非常に問題が残る。しかし、将来ともわがほうは六海里説は捨てて十二海里説に、これを内閣統一見解としてきめていくのかどうか、この間のいきさつを、総理から、内閣の首班としての態度をお聞かせいただきたい。
  5. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ただいまの御質問の中に、私の申し上げたのと違っている点がございます。十二海里を領海として認めたというわけでは私のほうはございません。十二海里は漁業専管水域として認めた、こういうことに相なっております。それから済州島と本土の間を内水化したというふうにおとりのようでございますけれども、これは専管水域が大部分でございます。入り組んだところは専管水域並みに取り扱う、こういう協定上の地域でございます。それから領海につきまして、韓国領海を何海里としてとっているかということでございますが、それにつきましては、しばしば前国会等におきましても、正確には知悉し得ないけれども、三海里説を韓国側はとっているのではないか、こういう答弁はいたしたことがございます。  以上、ちょっと私の関係で違ったことを釈明をいたしておきます。
  6. 藤田進

    藤田進君 いや、これは衆議院段階でも先般質疑がなされて、結局、総理の統一した見解を求めることに相なっているわけであります。これがいわゆる領海ではなくて単に漁業専管水域であるという、排他的なラインであるということのようでありますが、入会権としての問題から発展いたしまして、世界海洋法学その他で漸次領海の距離が増大してきたことはわかるけれども、しかし十二海里ということは、国際会議においてわが政府が初めて出した線として私は重要視するわけであります。この意味で、総理からの御答弁をいただきたい。
  7. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 衆議院段階において、赤城農林大臣は十二海里を将来持ち込まれた場合に直ちにこれを認める腹であるか、という質問がございまして、私がたまたま、十二海里は今後とるべき原則ではない、いわゆるケースバイケースで処理してまいりたい、こう言ったのと農林大臣答弁と違うじゃないかという話がございまして、いや、農林大臣のは、これに応ずるということは、話し合いに応じて協議を進める、こういう意味だろうと思う、十二海里ということを、今後これを堅持するという意味でこれに応ずると言ったのではなかろうと思う、したがって、私と農林大臣との間に非常な見解の相違があるということではない、ということを私は申したいきさつがございますので、このことを御参考のために申し上げておきます。
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 御承知のように、漁業専管水域は、漁業に関し沿岸国の一方的な管轄権を行使し得る水域である、その水域のアウター・シックスへ出漁し得ることを認める漁業協定先例はあります。それら出漁の実績があり、かつ沿岸国がその実績を認めて入漁を承諾した場合に出漁し得ることになるという性格のものである、こういうことを衆議院外務委員会で御答弁申し上げて、専管水域国際先例によりまするというと十二海里、これは領海とは別でございます。そうして、こういう専管水域を設けたいという申し入れが、他の国から申し入れがあった場合にどうするか、こういう御質問がありました。そういう質問がありましたので、他の国から申し入れがありましたならばその申し入れに応ずる、こういうことを申し上げております。応じた上においてどういうふうにするかということは、その後の問題だと思いますが、申し入れられましたならば一応応ずる、こういうことを申し上げたのでございまして、外務大臣答弁と食い違っておる、こういうふうには私は考えておりません。
  9. 藤田進

    藤田進君 いや、総理から統一した見解をいただきたいのですが、従来、六海里説を堅持していくという議会に対する答弁です。どこかに先例があるといわれるが、これは局地的、局部的なものであって、それが今回の基線を画し、かつこれからさらに十二海里というような先例があるならば、私は示していただきたい。私は寡聞にして、いろいろ調査したけれども、そういうものはまだ見つかっておりません。そういう、いわば日韓に関する限り、唐突の間に重大な譲歩をして、将来に影響を持つ六海里説を十二海里にしたという点について、総理から確たる御答弁をいただきたいんです。
  10. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 領海の問題については、先ほど農林大臣から申し上げたとおり、韓国は三海里説をとっておるように思われるというふうに私も考えております。それから、今回専管水域を十二海里に認めたということについての御質疑でありますが、これは一方的であるとはいいながら、長年の間にわたって李ラインとういものを想定して、そうしてこれを侵すものは遠慮なく、すべて漁船を拿捕するというような、まことに不当きわまる実力行使を従来ともに行なってまいりました。これに対して平和裏話し合いをもって解決すべく努力いたしましたが、がんとして聞きいれない。不当不法なものであるけれども、かような事実が長い間続いて、わが国の漁民が非常にこのために損害を受けたのでありまして、さらに、あらわれた損害のみならず、操業の不安定状態というものが続くのでありますから、その損害は実にはかるべからざるものがあったのであります。かような状況が、今回の漁業会談によって、とにかく合理的に、すべての従来の障害がなくなるということは、これは日本にとっては非常に大きな問題でございますので、これらの点を考慮に入れて、今回の専管水域に関する合意に応じたような次第でございます。   〔「総理答弁」と呼ぶ者あり〕
  11. 藤田進

    藤田進君 再三、総理の御答弁を求めておる。きょうは締めくくり最後質問ですから。もう各担当大臣には、この間一般質問で聞いたわけです。
  12. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま外務大臣並びに農林大臣からお答えをいたしたとおりに当方は考えておるのでございまするから、藤田さんのお尋ねのうちに、前総理が六海里説を主張していたと、かような御意見でございまするが、私は、前総理はいわゆる李承晩ライン、こういうものを撤廃しろ、これは国際法上不法不当なものである、こういうことを強く言っておられたと記憶いたしております。まあ、今回私どもは、この李承晩ラインというものが国際法上不法不当なものである、こういうことで、ようやく実質的にこの李承晩ラインをなくすることに目的を達したように思います。  ただいま専管水域等についていろいろ御議論がございまするが、私が、この日韓交渉妥結する上から、そうして大筋において国際法上の原則を守る、こういう方向で手がけて、ただいま李承晩ラインについての妥結ができ、さらにまた、専管水域等につきましても、当方として朝鮮海域において納得がいくというか、その解決を見たことを実は非常に喜んでおるのでございます。ただいま、この種の方法が他の水域にもあらゆる場合において適用されるかというお尋ねでございますが、私は、先ほど農林大臣から答えましたように、その他の水域におきましてもかような提案があれば十分考慮するというか、そういう態度に出る、これは当然のことではないだろうか。もちろん、そのまま承認するというものではない。ただ、その六海里、またその外側の六海里、そういうのが場所によりましては国際慣例ともなっておるようでありまするので、そういう点については当方として主張すべきことは当然主張したい、かような意向を漏らしておりますので、十分御了承をいただけるのではないか、かように私は思って、実は立ち上がらないでいたのでございますが、ただいま重ねてということでございまするので、いままでの経過並びに私の考え方を率直に御披露いたしたのであります。
  13. 藤田進

    藤田進君 それではお伺いいたしますが、わがほうとしては、池田内閣以来、当初から十二海里というものを基本方針でやってきたんだということでございますか。
  14. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) まず第一は李承晩ラインの問題だと、そうしてその他の意向については十分話し合っていこうと、かような立場で池田内閣以来きたんだと、私は理解いたしております。
  15. 藤田進

    藤田進君 わがほうの案はなしに、話し合いの中で自然に六海里ないし十二海里が出るという、そういうものではなかった。私は、この問題については小坂外相以来ずっと検討を進めてまいっております。所管大臣でもけっこうです。
  16. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 領海の問題につきまして、韓国領海が何海里であるかということにつきましては必ずしも明確ではございませんが、三海里説をとっているというふうに思うと、こういう答弁をしたことはございます。六海里であるというふうに申し述べたことはないと私は思っています。そこで、今度の漁業協定におきましては、国際先例に従いまして、たとえば一九五九年のイギリス・デンマークの漁業協定、あるいは一九六一年のイギリス・ノルウェーの漁業協定、一九六四年の欧州漁業条約、こういう条約あるいは協定等によりまするというと、漁業専管水域は十二海里、こういうように認めている国際先例がございますので、日韓関係漁業の問題を協定していく上におきましても、十二海里の専管水域を設ける。この専管水域のいろいろな線の引き方等につきましては、問題がございますけれども、そういうふうな態度で臨んだのでございます。でございますので、領海を十二海里と認めた、こういうふうには私どもは考えておらない次第でございます。
  17. 藤田進

    藤田進君 それじゃ総理にお伺いしますが、先ほどの御答弁では、自今将来とも、他の国においてそういう要求等があれば十二海里でいくんだと、これを機会にそういうふうに切りかえになるのですか。さっきそういうふうに私は承った。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この十二海里の原則をすべての国に適用すると、かようには申しません。相手方がそういう問題を出してきたときに、これを全然考慮の余地なし、かように言うわけにはいかぬだろう、もちろん十分その際に当方主張主張として述べたい、だから、そういう問題も一応議題になるということを了承した、かような意味でございます。もちろん、この種のことは、それぞれの国におきまして特殊な利害関係を持っておりますから、欧州等の非常に入り組んだところと申しますか、そういうところでいま先例もあるように説明をいたしておりますが、場所によりまして、また水域によりまして特別の交渉をするということがしかるべきではないかと、かように思います。
  19. 藤田進

    藤田進君 農林大臣が引例されたことは、それぞれ相互関係があってのことです。今度の日韓のは一方的に十二海里で、しかも最も漁場として豊富なところ、しかもようやく共同規制水域になったといったようなところは、さして魚族がいないというような、きわめてわがほうにとって条件の悪い、一方的なものであるという点にも大きな問題があるのであります。しかも、総理の御見解を聞けば、他の国についてはケースバイケースだ、いろいろ話が出れば絶対知らないということはないのだとおっしゃるが、農林大臣はこの委員会における答弁で、さような引例をしつつ、これが是なりとするならば、これはもう自今どこの国に対しても十二海里以上に譲らざるを得ない例を残すことになると思いますが、いかがですか。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、漁業交渉経過的にもすでに御審議をいただいたことだと思いますが、まず漁獲量、あるいは漁船の隻数、そういう問題からだんだん詰めていき、最後にその水域についても、いわゆる基線の引き方等について話を進めてまいったのでございますが、ただいま言われますような一つの原則を立てて、そうしてその原則に基づいて処理したと、こういう結果ではないということは御了承いただけるだろうと思います。ただいま申し上げるような順序を追ってそれぞれのポイントを押えていったが、その際に主張すべき原則原則として主張してきたと、そうして双方で折り合いのついたところで妥結すると、こういうような方法をとっておりますので、その辺の経過をひとつもう一度御参考までにお考えをいただいて、そうしてその関係人たち漁民等が、これらの経過において、一応当方としてもまあ満足すべきこと、まあこの辺で大体了承すべき点ではないだろうか。まあ一に両国間のこれからの親善関係をつくり上げたい、こういう意味双方納得のいく線——かようなものを見つけたと、かように私は思っておる次第でございます。
  21. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ただいま総理からお答え申し上げましたように、日韓漁業協定を結ぶということにつきましては、諸外国等の国際的な先例に基づこう、その先例に基づけば、専管水域に十二海里ということに先例がなっておりますので、専管水域十二海里をきめていこうと、それをきめるにつきましては基線が必要でございますが、基線は、沿岸の低潮線を通常といたしますけれども沿岸線が深く入り込んがおったり、沿岸の近いところの水域に一連の島々があるところにおいては、基線を引くにあたりまして適当に島を結ぶ直線基線方法を用いることができると、こういう先例になっておりますので、そういう先例にのっとった専管水域の設け方をした、こういう結果でございますので、その専管水域の中に漁場が入っておるというところもございます。しかし、専管水域を設けようとする場合には、やはり先例に基づいてやるのが適当であろう、国際先例に基づいてやるのが適当であろう。こういう考え方から直線基線あるいは低潮線基線として十二海里の専管水域を設ける、こういう話し合いになっておるわけでございます。
  22. 藤田進

    藤田進君 この問題は、また委員会を通じてやりますが、李承晩ラインが実質上撤廃できるということで、いまのような十二海里等も含めて、話し合いが落ち着いたように響くわけで、総理にお伺いしますが、赤城農相漁業問題についていろいろ折衝をされて、結局合意に達したという、その中身には李ラインというものは実質的ということばを入れてこれを撤廃することになった、そのことは合意議事録、記録にとどめるということであります。そうだとすれば、いま問題になっているわがほうの李ラインの被害を受けた多くの人たち、あるいはこれが損害金等については、当然要求をし、解決するという、あわせての答弁にもかかわらず、これは李ラインが撤廃されるということであるから、わがほうは要求を引っ込めた。われわれは、韓国船舶要求と相殺されたと思っていたところ、外務大臣は相殺じゃなくて、李ラインの撤廃の代償としてこれを引っ込めたと言う。私は時点が違うと思う。農林大臣予算委員会における答弁では、すでにこの問題は他のほうに譲った。補償問題を譲った、その譲った補償の問題とは別に、李ライン問題はもう解決したのだ。解決しているのに外務大臣段階において補償問題を引っ込めるということでは、われわれ国民、議会をまことに愚弄するもはなはだしい。総理のところにはどういう報告で、総理がこれを決裁したのですか、お伺いしたい。
  23. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いま、私が李ラインを撤廃する代償として拿捕漁船に対する損害賠償請求権を追及しないというふうにきめたというお話でございましたが、私はさようには申した覚えはないのであります。
  24. 藤田進

    藤田進君 分科会では言っているじゃないか。
  25. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 在籍船舶、それから在水船舶、これに対する先方の請求権と相殺したのではないかというお話がございましたが、それも違う。在籍、在水船舶請求権というものは、すでに大平・金了解によってあれが実行された場合においては随伴的効果として諸般の請求権が消滅する、こういう了解になっておるのでありますが、これがあくまで両国の間で今日尊重されて、これに基づいて審議が進められておるのでありますが、先方はこの他の請求権とは違うのであって、在籍、在水船舶に関する請求権はまだ生きておる、こういうことを言ってなかなか譲らない。わがほうとしては、それにもかかわらずこの問題については、すでにもう大平・金了解によって消滅する運命にあるのであるという説を堅持して、そしてその請求には応じない、こういう態度をあくまで貫くことにしてこの会談に臨んでおります。でありますから、相殺ということはもうすでにそういう観念は成り立たない。が、しかしながら、諸般の政治的な考慮の結果、この拿捕漁船に関する賠償請求権はあくまで追及するということはもう断念した、こういうことを申し上げておるのでございますから、どうぞその点は御了承を願いたいと存じます。
  26. 藤田進

    藤田進君 政府として、七十二億といったような金額になる、八人も死んでいる、国民にかわって他国との交渉をする際に、そんなに諸般の事情といったようなわけのわからない理由で簡単に引っ込めてしまう、これはその諸般の理由を聞かなきゃなりません。
  27. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まず、この拿捕漁船に関連する損害額の問題は一応七十何億ということで出しておりますけれども、かなりその内容については検討が加えらるべき性質のものである——たちのものであると考えておりますが、これを諸般の事情とこういつて、ばく然たる表現では了解がしにくいというお話でございますが、とにかくかような不法、不当な損害の原因というものが今回の会談成立によってなくなるのでありますから、諸般の政治的な考慮を加えてこれを終局的に追及しない、かようにきめたわけであります。
  28. 藤田進

    藤田進君 率直に答えてくださいね。そのことは総理と十分相談の結果、わがほうの最終態度にしたのですか。
  29. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) もちろん総理並びに関係閣僚の意見を徴して、かようにきめたわけであります。
  30. 藤田進

    藤田進君 総理にお伺いしますが、総理の出身地でもある山口県下関、あるいは北九州ですね、一番関係者も多い、非常に惨たんたるものがあった、せめてその損害補償は請求してくれる、わがほうの国庫による弁済というよりも、そういった外交交渉の中でこれが解決するというところにも、また大きな意義があるわけであります。李承晩ラインというものがまことに不当であったということを総理漁民に対しても証明することになるのであります。しかし諸般の理由でということで、これが引っ込められたということは、単に金額のみならず全く屈辱外交といわざるを得ないのでありますが、総理はどういう理由でこれが請求を引っ込められたのか、お伺いしたいのであります。
  31. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの問題、これは確かに日本国民として、また日本漁民として当然その請求権韓国政府要求しろ、そういう気持ちは多分にあるだろうと思います。ただいま外務大臣答弁があったばかりでございますが、ただいまこの問題は全体を含めての折衝をしておる実は最中でございます。ただいまその結論まで申し上げることはやや早いのではないかと、実は先ほども答弁を聞きながら私も感じていたのでございます。これは最終的にどういうことになりますか、双方でいろいろの議論が出ておる。当方請求権、これは非常にはっきりした李承晩ラインを侵したということで拿捕、さらにまた死亡した、こういう場合に、この不法不当なものを正当なものとして主張をしている韓国に対しまして、当方から請求をする、そういう請求権、これは一つあるわけであります。また同時に、相手方からもいろいろな請求権を出してきておる。それが一々理屈があるかないか審議をしておるわけでございますが、そういうような入り組んだ両国の関係におきましては、なかなか議論をそう簡単に片づけるわけにいかない。いまお話にございましたように、相殺というような、双方請求権があるから相殺するのだ、いかにも簡単なことのように思いますが、中には、その請求権の性質から議論をしてかからなければならない、こういう問題もあるわけですから、単純な意味合いで相殺というわけにはいかない。しかし、ただいまいろいろな問題を出してきておる。双方請求権をぶっつけ合っている、そういう際に、解決する方法をいかにしたらいいか。いわゆる相殺という仕組みがいいのか、あるいは双方が、請求権はこういう際にお互いに放棄しようということで解決する方法がいいのか、その解決の方法について椎名外務大臣がいろいろ苦心しているというのが現状だと思います。  私は、日本漁民に対しての損害賠償といいますか、損害を補てんするというようなことは、ただいまの韓国政府の金で処置をつけてくれ、こういう強い要求のあることはわかっておりますが、とにかく、救済方法はまた救済方法として考えていけばいいんじゃないか。ただいま申し上げるような外交上の一つの技術的な問題ではないか、こういうので椎名外務大臣は率直にただいま答弁をした、こういうように私はそばで聞いていたのであります。  ただいま申し上げる点は、これは藤田さんのお話でも、二通りの解決方法をまず御指摘になったと思います。いわゆる相殺方法、これは請求権をそのまま認めておる。そうして、その関係において相殺する。それからもう一つは、それぞれが請求権を放棄する、そういうことによって解決する。そういうような方法があるのだと思います。だから、そのいわゆる技術的な問題として、この点を御了承いただきたい。また同時に、ただいま私が申し上げておりますように、ただいまどういうような技術的処置をつけるにしても、どういうような方法によろうか、ただいま双方で相談をしている最中でございます。この点も御了承おき願いたいのであります。
  32. 藤田進

    藤田進君 総理の言われますのは、まだ話し合い中で、決着はついてない。だから、両方で請求権を放棄する方法がある、あるいは相殺する方法もある、こうおっしゃいますが、外務大臣答弁は、これは大平・金メモにおいて韓国請求権はすでに解決をしている、請求権放棄でもなんでもない、請求権はりっぱに行使したのだ、韓国は。いいですか、三億ドルの無償以下、そういう一連の中に含まれておる。このことは、韓国も十分認めたといま外務大臣は言っておる。そうでしょう。とすれば、わがほうが一方的に諸般の事情で請求権を引っ込めた、ただ単にそれにとどまる、これじゃいけませんがどういう理由ですかということをお伺いしておるのであります。外務大臣違いますか。
  33. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この金・大平了解は、大体において両者が了解をしておる、九分九厘まで了解をしておるが、違う点が一点あるのであります。それがすなわち、置籍、置水船舶請求権であります。向こうは、当の当事者であるその当時の金鍾泌部長は、これは三億、二億によって消滅しないものであるということを主張して、それを韓国の現政府が継承しておる、現首脳者が継承をしておる。わがほうは、大平前外務大臣が、これは解消しておる——この解消しておるという説をわれわれはとっておるのであります。そういうわけで、向こうは、これは放棄したとはまだ言っておりません。われわれのほうの態度としては、あくまでこれを認めないという態度をもってこの会談に臨んでいる、こう御理解をいただきたいのであります。
  34. 藤田進

    藤田進君 さっぱりわからなくなりましたね、あなたの言っていることは。もう合意した、わがほうは請求権を諸般の事情で放棄したというのでしょう。まだまだ向こうは一部が残っているのですか、請求権は未解決のまま。
  35. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 諸般の請求権は放棄するということになっております、この了解を実行する限りにおいては。しかし、その諸般の請求権のうち、ただ一つの例外がある、それは置籍、置水船舶請求権である、こういうたてまえを終始とっているのが、韓国のほうの態度であります。日本は、これは他の請求権と同時に消滅すべき運命のものである、とにかく、まだ妥結しておりませんから、消滅したとは言えない。消滅すべきものである。こういうふうな、その置籍、置水船舶請求権の点において、両者の間に終局的な意見がまだ対立している、これをどう解決するかというのが今回の会談でございます。
  36. 藤田進

    藤田進君 わがほうのは、もう一方的に放棄したのでしょう。それから、いまの置籍船舶の請求権、これはまだ全然残っている。そうなんですか。
  37. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 放棄するというたてまえでこの会談に臨みたい、拿捕漁船に対する損害賠償請求権は。そういう態度を申し上げているのであります。まだ会談が成立しておりませんから、まだお互いの見解が対立のままである。これが、今回の会談によって解決を見るはずでございます。
  38. 藤田進

    藤田進君 やかましいことばで言えば、まだ途中だと言われるかもしれませんが、仮調印ができない理由は、それではなしに、法的地位とか、また、話し合いがついたやつをまた向こうがぶり返してきているのでしょう。この問題に関する限り、話し合いはついて、ただ仮調印をしないというだけではありませんか。
  39. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ見込みは立てられますけれども、厳格に言うと、すべての問題が同時に解決されるのでございますから。見込みは一応立てておりますけれども
  40. 藤田進

    藤田進君 これはどうも全く問題にならない話し合いをしているように国民は思う、私もそう思うが。請求権は諸般の事情で——これは続いて追及しますよ。しかし、それは明確に譲ったにもかかわらず、まだ置籍船舶請求権というものは、あくまでも向こうは主張していてどうにもならないようなことを言っている。結局、向こうの請求権も引っ込めたんじゃなのいですか。
  41. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 向こうの主張は、今回の会談が妥結しても、なおこの問題は残るべき性質のものであるというようなことをまだ言っておるのであります。さようなことは絶対にこれは認めないという方針でございます。
  42. 藤田進

    藤田進君 それなら、早くから放棄して待たなくても——相手の外交交渉態度はわかったでしょうが、今度。どうなのですか。一体何をやっているのですか。
  43. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ちょっといま表現が正確でございませんでしたが、今回のこの請求権問題が、三億、二億の経済協力によって大部分消滅する、しかしながら、置籍、置水船は消滅しないということを言っておりますが、いずれにしても、今回の会談ですべて終局的にこれを解決するつもりでございます。
  44. 藤田進

    藤田進君 大蔵大臣はなかなかさいふのひもが固いということをよく聞くのですが、どうですか、これ簡単に、こんなことで一般の財政資金から出すことをあなたは了解しましたのですか。
  45. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は拿捕漁船の請求はあくまでもやりたいと、こういう姿勢で今日までまいったわけでございます。いま外務大臣が述べましたとおり、大平・金メモによりまして二億、三億ドルを提供した場合は、一切の対日請求権は消滅する、こういうたてまえをとっておるわけでございます。そういう面で、とっておるわけでありますが、韓国側は、文化財と船の請求権の問題だけは、大平・金メモの消滅の中に入っておらない、こう、私から率直に申して、強弁しておる、こういうふうにとっておったわけであります。ところが、最後になりますと、大平・金メモの線に沿って向こう側も消滅をさせるというような話があったようであります。その場合、日本側としても、漁業権等が、漁業問題等も全部解決するのでありますから、この際、拿捕漁船の請求もしないということにしてはどうかというような話があるようでございます。私は、とにかく、向こうの請求権というのは、もう大平・金メモで消滅するという原則になっておるわけですから、それと相殺ではないのです、向こうも消滅させるということになれば、相殺ではないけれども、国民側から見た、相殺と同じような感じの、請求をしないということは、はなはだ遺憾だ、こう思ってまいったわけでございますが、何ぶんにも外交問題でございますから、最終的には外務大臣を中心とした外交交渉にまっておる、こういうことでございます。
  46. 藤田進

    藤田進君 いや、国内で補償するのですか。金が出ますか。それが質問だったわけです。
  47. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この問題がどう解決するかによって、それから検討しなければならない問題だと思います。
  48. 藤田進

    藤田進君 閣内の統一された意見としては、日本が放棄しないかもしれない、放棄するかもしれないという、まだいずれともつかないというのが現状なんでしょうか、いまの段階で。
  49. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) いずれ最終結論に達する場合には、すべて一致してわがほうの態度を決定するわけであります。
  50. 藤田進

    藤田進君 めどがついているとさっき言ったじゃないですか、外務大臣。これ、前に言うこととあとで言うことと違っている。これでは質問の割り当て時間制度が大体おかしい。めどがついた、こちら側が放棄して、そして云々と——集約してやってくださいよ。一つのものを基礎にして議論をするわけにいかないじゃないですか。基礎がぐらぐらしている。どうなっているのですか、いま、実態というのは。
  51. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) めどがつきかけております。それで、それまでにははっきりと、この拿捕船舶の請求権をどういうふうにするか、先方の、ありと称しておる置籍、置水船舶請求権をどういうふうに向こうと話をつけるか、こういうことがすべて終局的に解決するわけであります。
  52. 鈴木強

    鈴木強君 関連。この問題は私も赤城農相に対して先般質問をいたしました。その節、漁業交渉から一応椎名外務大臣のほうにこれは移行した問題なんです。で、私はそのときに、特に李ラインは不法不当のものであるし、このラインを越えたことによって不当に逮捕された日本の漁船に対する補償は必ずやるようにしてもらいたい、こういうことを特にその際申し上げたはずであります。特に私はここで注意しなければならないのは、これらの拿捕された方々は非常に零細な方であります。零細漁民であります。したがって、これを救済しなかったということになりと、非常にこれは重大問題が今後残ると思います。そこで赤城農林大臣にもお伺いしたいのですが、あなたは、その漁業交渉の中でできなかったので、外交折衝のほうにまかしたわけですね。したがって、現在あなたは、どういう心境におられるか。幸いにして、われわれは、新聞、ラジオ報道によりますと、すでにきまっているんですよ、これは。いまこの委員会で、きまっておらないがごときことを言っているんですが、われわれはその報道を信頼するならば、もうきまったとこれは判断しているわけです、われわれは。そういう立場に立っていま藤田委員質問を展開している。ところが、総理の御所見によりますと、まだこれはさまっておらないという御答弁にうかがえます。そうであるならば、この際私は、これらの零細漁民に対する補償ということは、何が何でもやってもらいたいし、また、韓国外務大臣に対しても、必ずこれが実現してもらうようにやるべきですよ。その決意を私は総理からと、それから赤城さんは移行した責任者ですから、あなたが少しここらでおこって、そうして交渉をこっちに有利にするようにやってもらいたいと私は思うのです。お答え願います。
  53. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ほかめ請求権等の問題もありますので、そういう問題との一括解決を希望するがゆえに、外交ルートのほうで解決をしてもらいたい、こういうことで私は外交ルートのほうにこの問題を移したわけでございます。移した結果につきましては、こういうふうに承知しています、まだ交渉中の段階だということでありますので、はっきりしたことは私から申し上げかねますけれども請求権問題につきましては、韓国側主張する各種請求権の問題と、わがほうが有する各種請求権の問題とが、すべて解決または処理されたものとすることを合意しよう、こういうことで、その方法等につきましてただいまいろいろ折衝中だ、こういうふうに聞いております。しかし、いずれにいたしましても、この損害を受けた人に対しましての補償は、どういう形においても私はしなくちゃならぬ、こういうふうに考えておりますが、この処理が、韓国の処理がきまった上におきまして、それの措置をとるべきだ、こういうふうに考えております。
  54. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま赤城農林大臣がお答えしたとおり、ただいまの零細漁民あるいは漁民損害というものに対して、政府は何らかのめんどうを見なければならない、それは先ほど来お尋ねがありますような、韓国政府から出してくれることが一番望ましい、かような立場でいろいろ折衝を持って、それが先ほど来ここで議論しておるように、最終的にどうしたのか、ただいまのところ、大体両方で、双方話し合いがついた、こういう前提ではありますが、まだ、いよいよイニシアルまでする段階になっておらない、こういうところでございますから、なかなか答弁がしにくいのだ、こう思います。この答弁答弁として、外交交渉の問題は外交交渉の問題とし、同時に、漁民に対する損害補償、賠償、補償というような問題は、これは別途にもう考えられる。ただいま大蔵大臣が、いろいろむずかしい問題がありますので、いかにするかということをいろいろ考えております、こういうことを言っておりますが、この点は閣議でもいろいろ議論をいたしたわけであります。韓国に対する問題とこれは別に、当方としては漁民に対しては、漁民に対する考え方も一度考えておかなければいけないのだが、これは向こうが幸いにして当方請求権を認めて現実に金を出してくれればもう分配という方法もありますけれども、そういう方法がないとすれば、この零細漁民に対する今日まで受けた損害、これに何らか報いるものがなければならない、こういうことで、政府はそのほうはただいまの交渉が成功することを期待いたしますが、この交渉自身がなかなか困難だから、これはひとつ分けてでも考えようということで、いろいろ研究し、くふうしているただいまの段階でございます。ただいま大蔵大臣もそういう点に触れたようでありますから、これは政府の、私ども考え方としては、この漁民に対する考え方は一応別なものとしてでも処理しなければならない、かように考えております。
  55. 藤田進

    藤田進君 そういたしますと、まあこれは合意されて仮調印をするということが、他の問題で仮調印になっていないというふうに報じているが、これは誤報のようなことをおっしゃるのですが、これは私は報道のほうが正しいと思う。きのう来分科会における答弁から見て、急にここでまだこれから国民は期待する余地があるようなことをおっしゃるわけですが、一方国内的に財政措置をどうするかという相談まで閣議でおやりになっている、こんなような率直でない答弁では困るので、過去の李承晩ラインというものがいかに国際法上も不当であったか、違法なものであるかということの証明は何もないことになった。また、これは韓国としては、生命線としてこれを日本側に頑強に抵抗したことだろうと思う。何によって過去の不当なものを、結局、日本が国際法李ライン、平和ラインというものは不当なものであると言っておこったことは一方的なことであって、日本がこれを認めて請求権も撤回したということになる。金額の問題でなくて、大きな問題があると思ったので、何か李ラインが過去において不当なものであるという、非合法なものであるというものが、この交渉妥結においてどういう形で、何かが残るとすれば説明をいただきたい。
  56. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 李ラインというものを、わがほうとしては当初からこれを認めておりません。しかし、実際問題として、非常な損害、被害をこうむっております。この今回の会談の妥結によりましてかような根源が一切なくなるのでありまして、形を変えてなお残るというふうなことは一切ないことになるのであります。
  57. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは農林大臣からお答えしたほうがいいかと思いますが、この李承晩ラインがあったばかりに拿捕あるいは監禁というような問題が起きた。今回の場合には、この李承晩ラインが実質的にはなくなるということを申しておりますが、そのことは、いわゆる拿捕あるいは監禁というような問題がなくなる、いわゆる専管水域、同時にまた共同水域等においての取り締まりについては、それぞれの漁船の旗が示しておる旗国主義、それによって処理するということになってまいるのでございまして、今後はいわゆる日本の監視船によって日本の漁船についてはこの申し合わせが守られるように、また韓国の船については韓国のほうで取り締まる、かようなことになるわけでありまして、いわゆる国際法上の不法、不当な行為というものはこれからはなくなって、今回の申し合わせによって双方が処置していくということでございますから、よほど在来の関係とは見違えるような処置になってくる、かように思います。ただいまそういうような漁業交渉の全体を取りまとめるについて、いわゆる共同水域あるいは専管水域という問題が一部国民からも不満である、だから、全然李承晩ラインというものが不法不当という立場に立って、領海についても三海里あるいは六海里説を主張しろとか、こういうような主張双方にあるわけであります。双方にあるわけですが、先ほど来申し上げますように、今回は十二海里、また同時に基線の引き方において双方合意に達しよう、かような努力をしておるのであります。だから、言われておる李承晩ラインがあったがために生じたところのものは、そのラインを越した場合に、それが拿捕、監禁等の事態を引き起こした、そういうものは今後はなくなるだろう、そういう期待がかけられる。そうしてその過去のものについての補償は一体どうするのか、これは先ほど来請求権の問題として技術的にいかに扱っていこうか、こういうことにただいま弔う大体きまったとは言いながらも、それがまだ最終的にイニシアルまでしておりませんから、残っておる、かように先ほど来御説明申し上げておるのでございます。
  58. 藤田進

    藤田進君 いま長く言われても、肝心なことが抜けているんです。農林大臣、国内処理で補償するという信念を吐露されたが、政府の見たところ、国内処理における財源所要量、補償額は幾らです。損害補償。
  59. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私のほうで向こうへ請求しなくちゃならぬということで計算したのは、七十二億余ございます。もっともそのうちには、日本で見舞金として払ったようなものもありますけれども損害としては七十二億、こういうふうな見積もりでございます。
  60. 藤田進

    藤田進君 国内で処理する金額ですよ、請求したことを聞いておるんじゃない。
  61. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 国内で処理するといたしますならば、そういう中から見舞金その他において、保険金とか、そういうもので払ったものとの差額——その額を引いたものに相なろうかと思いますが、まだそういう計算厳密にはやっておりません。
  62. 藤田進

    藤田進君 ざっとでいいです。七十二億とか何とか言われておるわけですが、ざっとしたところで幾らです。
  63. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 計算の方法をちょっと申し上げただけで、ざっとしたものもいま申し上げるには相当責任がございますので、これは計算をしてみてからにいたしたいと思います。
  64. 藤田進

    藤田進君 総理も、そうなるとすれば結局国内で処理していかなければならぬということをおっしゃいましたが、国内でこれに見合う補償をするつもりであるのかどうか。
  65. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま農林大臣がお答えいたしましたように、問題を十分——金の問題ですから、慎重に検討いたしまして、そうして善処してまいるつもりであります。
  66. 藤田進

    藤田進君 その理論としては、国際法上不当違法なものである、これに対して損害賠償、補償要求をしたけれども、外交上の事情で国としてこれを放棄した、よって国に責任が存在することになったので、国でこれを補償する、こういう筋書きになるわけですか、理由は。
  67. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 問題は、いわゆる外国に対してなら、はっきりこれは請求権という形で出てきます。また、それがいろいろの事情で、ただいまものの考え方等については、農林大臣がお答えしたとおりであります。私どもは、日本の国民が現実に損害をこうむり、またそれらの事情について非常に心から同情すると言えば、これは当然あとでめんどうを見る。これは、その場合、災害のような場合だって全部同様でございます。そういうような措置をとる、かような考え方でございます。
  68. 藤田進

    藤田進君 前提として国際法に反する、そうして国がこれが請求を放棄したということが理由になりませんのですか。
  69. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) これは、当方でそういう考え方をいたしましても、相手の国がそれを認めないということでございますれば、また相手の国がそれに沿っての処置をしないということでありますれば、ただいまのその結果においてどうということはできない、別な関係におきまして当方がめんどうを見よう、こういうような次第であります。これは、一般の場合におきましても、同様な事態が他の原因におきましてもいろいろあるだろうと、かように私は思います。
  70. 藤田進

    藤田進君 いや、これは戦後処理その他のことをずいぶん議論されたようで、大蔵大臣も波及するだの何だのということを聞くのですが、そんなことでぼやかしておるのでしょうか、どうなんですか、そんなにぼやかさなくちゃいけないのですか。たとえば原爆も戦時国際法に反する、これは明確です、そう思いませんか。しかも、日本はこれは平和条約で放棄しているのです。当然これらについては、最もひどい、数十万の人が一度に殺される、こういう事態です。そうして後遺症が残る、子孫にまで影響が残っている。どうなんですか、これはどうします、これは当然でしょう。
  71. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 本件に対しては、もう毎々御質問いただいて、政府考え方を述べておるわけです。戦争行為が行なわれておったとき、国民は大なり小なり大体全部犠牲になっておるわけであります。こういう問題に対して、直ちに政府が補償するというような考え方、判例から見ましても補償しなければならないという責任ということはないようでございますが、現実問題に対処して、財政上可能な限り最善の処置をいたしておるということは、ひとつ御了解いただきたいと思います。  前段の拿捕漁船の問題につきまして、いま藤田さんは、あるいは賠償等国の意思によって個人の請求権が消滅をした場合は国が当然補償しなければならない、こういうお気持ちを出されておりますが、今度の場合どういう解決になるかは、まだそこまで私は申し上げられませんけれども、これは向こうの請求権と相殺をしたとか、それから賠償を担保にして国がその請求権を押えた、こういうようなものではありませんから、国がこの額をそのまま補償しなければならぬという法律のたてまえはとれないと思います。しかし、現実の問題としてどうするかという問題は、政府の部内で慎重に検討をいたしたい、こうお答えしておるわけでございます。
  72. 藤田進

    藤田進君 総理にお伺いしますが、これを契機に、人道問題である国際法に反する原爆被害者に対しては、これは特段の補償をされることが、ますます国民としても強く要求することにもなると思います。だから、国内の被害を受けた船員あるいは船主等に対してという、その方向性を変えるわけじゃありませんが、それも当然であろうが、これはまた、日韓間でまだきまっていなければ、韓国にこれを請求をあくまでもされるべきものです、筋から見て。もし百歩を譲ってそうならない場合でも、国内で処理されるとおっしゃるわけですから。とすれば、同様に、さらに人道問題である原爆被害者については特段にこの際方策を財政的に考えようと言わなければ、筋が通らないと思う。総理いかがです。
  73. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) こういうような問題は、政治の立場に立って見ましたときに、いつも正義公平の原則ということがあると思います。この正議公平の原則が私どもの政治のあり方だと、かように思います。その観点に立ちまして、そうして処理していこうというのが、今回のこの漁民に対する考え方であります。  ただいま原爆に対するお尋ねでございますが、そういう立場からただいまの援護措置をとっているわけであります。これが厚いとか薄いとか言われるようでございますけれども、今回の法律改正なども、そういう意味でいわゆる正義公平の原則に立って処理していく、かような考え方でございます。
  74. 中村順造

    ○中村順造君 関連質問いたしますが、いま総理のお答えの中で、正義公平の原則だと、こうおっしゃったのですが、この原子爆弾というのは、これは第二次世界大戦で人類の上に原子爆弾が落とされたのは日本だけなんです。私はこの前も本会議でこの原爆医療法の改正で総理お尋ねいたしましたが、本会議でありますからきわめて木に竹をついだような答弁でありましたけれども、いかんともしがたいので引き下がったわけです、時間的な制約がありますから。あなたの言われることは、おそらく、艦砲射撃や爆撃と同じような趣旨だから公平の原則だと、こういうふうにお答えになりたいところでありましょうが、原子爆弾というものは、この前本会議の私は質問の中でも引用いたしましたように、昭和三十八年の十二月のあの東京地裁の判決でも、とうていその災害の比はほかのものには類例がない、こういうきめつけ方をしているわけです。しかも、艦砲射撃やあるいは爆弾で被害を受けた者と、現状白血病で苦しんでおる者と、どこが一体公平なんですか、不公平なんですか、明確にひとつお答えを願いたいと思います。
  75. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま申しましたのは、拿捕船舶やそのあとの補償というような問題です。原子爆弾の障害者、いわゆる病院に入院治療、加療しておる、こういうような問題については、このままいわゆる正義公平の原則から見てどうかという御議論は残るかもしれませんが、私はただいまのようなたてまえで入院治療その他につきまして特別な措置を政府はいたしておる、かように考えております。
  76. 中村順造

    ○中村順造君 再び関連でたいへん恐縮ですが、その公平ということは一体どういうことですか。公平というのはつり合いですよ、何とつり合わなければいかぬということですか。原子爆弾の被爆者というのは、何とつり合ってしかるべきだとおっしゃるのですか。
  77. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの第一に私が申しましたのは、今回の拿捕船舶等については、これははっきり言えると思います。ただいま、この原爆の障害者等の入院加療、これらについてこの程度にして、どうももう少し積極的にやるべきだと、こういう御議論もあるということをいま申しましたが、しかし政府自身とすれば、ただいまのような処置がただいまの公平の原則から見てもやむを得ない措置だと、かように私は考えておると、かように申しておるわけであります。
  78. 藤田進

    藤田進君 公平の原則は、実体的にこれから追及したいと思います。  椎名さん、竹島はもう譲ってしまったのですか、保安隊も上がって長年いる。
  79. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 竹島はわがほうの領土であるという主張はあくまで堅持しております。
  80. 藤田進

    藤田進君 これは一括妥結の中に入っているのですか。
  81. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 少なくとも、この領土の帰属がはっきりきまり得るという方法も講ずることによって、一括妥結の中に加えたいと考えております。
  82. 藤田進

    藤田進君 その方法の中のわがほうの案は、何を向こう側に示しているのですか。
  83. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 従来から、国際司法裁判所に提訴し、向こうが応訴する、こういうことによってめどをはっきりつけたいと、かように考えております。
  84. 藤田進

    藤田進君 総理、いま外務大臣答弁で、国際司法裁判所に提訴する、これはまあ最近出てきたことばですが、これが条件としては、手続上韓国が応訴するということが条件になろうと思います。これは最終的な案として堅持しますか、総理は。
  85. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これが唯一の解決方法であるとは、考えておりません。ただいまのところは、これが一番有力なる解決方法であると考えておりますが、他に絶対にかようなめどをつけるという方法がないということは、もちろん断定できないのでありますが、この方法があるいは成功の見通しがつきにくくなった場合におきましては、他の方法によらざるを得ない。しかし、その他の方法は、ただいまのところまだ十分に検討を完了しておりません。
  86. 藤田進

    藤田進君 そんなことをここで言っておるから、またそういう腹でやっているから、もう——領土をそんなに簡単に扱っていいのですか。領土なんでしょう、これは間違いもなく。それを国際司法裁判所に、——このこと自体がおかしいのだけれども、しかし、それもいけなければ第三国かどこかの話でしょうが、だれかにまかそう、そんなことでいいのですか、総理韓国が聞くわけないですよ。もう次に、待っていれば譲るのだということはさまっているのだから、ここでもう。
  87. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまのお尋ねにありますように、これは無人島でも領土権というものについては、国民的関心が非常に強いのでございます。政府といたしましても、国民のその期待にこたえたい。ただいま第一案を外務大臣が申し上げたとおりでございます。私はそういう方向でやりたいと、かように思います。
  88. 藤田進

    藤田進君 伝えられるところによると、第三者のまず調停をといったようなことがもうすでに出ているのです。韓国はそれを最終的に出しているということなんです。どうなんですか。
  89. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まださような提案は、韓国から何も出ておりません。
  90. 藤田進

    藤田進君 それじゃ、交渉の残っているのは何と何ですか。
  91. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま残っておりますのは、請求権問題漁業権問題、在日韓国人の法的地位の問題及び竹島の問題であります。文化財の問題につきましては、これは残っておるといえば残っておるのでありますが、大体特に懸案として特別の委員会等を設置してこの問題を協議するという程度のものでなしに、他の諸懸案の仮調印の際には、この文化財の問題もきまり得る見通しがついております。     —————————————
  92. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 委員の変更がございました。北村暢君が辞任され、永岡光治君が選任されました。     —————————————
  93. 永岡光治

    永岡光治君 関連。ただいまの藤田委員質問に対して、竹島の帰属問題ですが、私どもは、従来、政府答弁ではこれは同時解決と、このように理解しておったはずであります。政府もそのようにしばしば答弁してきたはずであります。そこで、同時解決とは、竹島は日本の領土なりという結論を出すことが同時解決の中の項目と、私どもは理解するわけです。ところが、いまのお話を聞きますと、国際司法裁判所にこれをかける、そのことが同時解決だというような答弁をしておりますが、裁判にかけた結果がどうなるかわからないのでしょう。それは同時解決に私はならぬと思うのです。したがって、従来の政府答弁なり、私どもが理解し、国民が理解していることは、竹島は日本の領土なりという明確なる韓国が結論を出すこと、この会談においてそのことが同時解決と理解しておりますが、そうでないのかどうか、明確にしてもらいたい。
  94. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 韓国もこの竹島は自分の領土である、こういう主張を捨てないのでありますから、もう平和的な解決の方法は全くないのであります。でありますから、(「それじゃ戦争じゃないか」と呼ぶ者あり)でありますから、これをあくまで平和的に解決するためには、国際司法裁判所に提訴し、向こうが応訴するということによって、解決のめどをつけるという以外にはないのであります。
  95. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) なるべく簡単にやってください。
  96. 永岡光治

    永岡光治君 私の理解は、明確に答弁してもらいたいと思うのですね。竹島は日本領土なりという結論を出すことを、同時解決の項目の中に入れるのかどうかということなんです。そういうことなんです。
  97. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 竹島問題を含めて一括解決の方針はあくまで捨てません。しかしながら、竹島問題については、いま申し上げるとおり、向こうもわが領土であるということを言っておりますので、少なくとも竹島問題を解決する的確なる方法をきめるということ以外にはないのでございまして、今日の場合においては、このめどをつけるということによって一括解決をはかりたいと、かように考えております。
  98. 藤田進

    藤田進君 どうなんですか、めどをつけると、もう明らかにそのイエス、ノーがきまるという方法は、これはまあ従来言われてきた国際司法裁判所に提訴する、それは最後までがんばるかどうかわからない、ほかにもう一つぐらいと、こう言うのだが、ほかにそんなにきめ手がありますか。教えてください。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいまのところは、あくまで先方の応訴というものをひとつ導き出すように、こちらからかけ合うつもりでございます。しかし、どうしても応訴しないという場合には、別の方法を考えざるを得ない。ただいまのところは、具体的にその方法を十分に突き詰めておらない、かような段階でございます。
  100. 藤田進

    藤田進君 それじゃ秘密外交じゃありませんか、明らかに。われわれが議会で正式に聞けないだけの話で、もう相当はっきりと伝えられているのです。ええ。ところが、ちっとも秘密外交じゃないと言うなら、はっきり言いなさい。総理、どうなんですか、そんな腰の弱いことでどうするのですか。領土問題についても、国際司法裁判所に提訴だ応訴だと言って、それでいくのだが、同時にそれがだめなときにはほかの方法を考える、そんな外交交渉がありますか。そうでしょう。
  101. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど申しますように、国際司法裁判所に提訴したい、この気持ちでこれを実現するように交渉する、したいということを先ほど来申しておるのであります。ただいま外務大臣もいろいろ言っておりますが、外務大臣も、やっぱり鞭撻するのは私ですから、私はさよう考え方でありますので、この点を御了承いただきたいと思います。
  102. 羽生三七

    羽生三七君 関連。問題は非常に明白だと思うのです。いろいろな議論はあるけれども、国際司法裁判所に提訴することを含めて——韓国が応訴する場合に、それを含めて懸案一括解決の条件とするということは、過去二、三年答えられておりましたから、それはそれでいいとして、それがもしできない場合には他の方法も考えるといま述べられた。他の方法とは、世上伝えられている第三国の調停または仲介。そこで、国際司法裁判所の提訴に応訴をしないような国が、第三国に調停をまかした場合、どうして日本に好ましい形で解決するか。それはどっちかに解決はしますよ。しかし、日本に好ましい形で解決するかどうかというと、国際司法裁判所の提訴に応訴しない国が、どうしてそんなことをやりますか。であるから、これは私はきのうも外務大臣に申し上げたけれども、李長官の滞日中にすべてを解決しようという時間的制約でせき立てられて解決する性質の問題ではありません。ですから、当初の所信を貫いて、国際司法裁判所提訴並びに応訴、その線をくずさないように最後までひとつがんばっていただきたいと思います。総理に御要求をいたします。
  103. 藤田進

    藤田進君 はっきりしなさいよ。そうまでして譲らんでいいじゃないですか。
  104. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いや、よくわかりました。ただいま言われるように、最近の交渉がどうも日本が譲っておるじゃないのかと、一部新聞等でもそういう報道をしております。しかし、またこれは韓国側にも同じようなことがあるようですから、まあこの辺はあまりむきにならないで、ただしかし、いま言われますように、一定の時限があってその間に何もかも片づけたいというので、政府は非常にあせっておるんじゃないか、こういう御注意のようですが、そういう点は誤解のないように、政府はこの上とも慎重に対処してまいるつもりでございます。
  105. 藤田進

    藤田進君 私どもが論旨とするところは了とされ、これに対して忠実に進んでいただくことがわかりましたので、次に進みます。  法的地位については、所管は法務大臣であった。ところが、法務大臣は全然知らないうちにそれがきまってしまったといわれる。法務大臣、知っていますか、詳しく。
  106. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 事務折衝の過程におきましては、私の指示によって、十分法務省側の主張を述べております。その後外務大臣の政治折衝の段階におきましては、私から、ただいまきまっておりまする範囲の法的地位につきましては、その範囲を最終線としてお取りきめ願うように外務大臣お話を申し上げ、そして政治折衝へ上げたわけでございまして、私としましては十分存じておりますし、また責任を持っておるわけでございます。
  107. 藤田進

    藤田進君 それじゃ聞きますが、どの辺までを譲るんですか。いまかなり詳しい報道もなされているので、私はその報道の範囲しか知りませんが、戦後来た者とか、これらについて懸案になっておるように伺いますが、どこまでは日本として譲る、どの辺からだめだという点を明確にしていただきたい。
  108. 高橋等

    国務大臣高橋等君) お尋ねの趣旨は、永住権を許可される人の範囲に関する問題でなしに、むしろいわゆる処遇の問題ではないかと思います。
  109. 藤田進

    藤田進君 いや、範囲と処遇と一切を。
  110. 高橋等

    国務大臣高橋等君) この範囲につきましては、もう新聞等で御存じだと思いますが、申し上げてみたいと思います。この外務大臣と向こうの外務大臣とで取りきめをいたしました点は、終戦以前から引き続いて日本国に在留する者、それから、その在留する者の直系卑属で、終戦以後協定発効後五年以内に日本国で生まれ、引き続いて在留する者、これがまあこの永住申請を許可する範囲の第一でございます。次に、ただいま申し上げました者の子供であって、協定発効後五年より後に日本国で出生し、引き続いて在留する者、これがやはり永住申請を許可することになっておるのでございまして、これらにつきましては、ただいま申し上げましたように、この範囲におきましては十分外務大臣のほうへ法務省は、法務大臣としてのこの範囲を最終の範囲としてお取りきめを願うようにお話を申し上げて、外相会談に出ていただいておるわけでございます。  次に、社会保障あるいは教育あるいは持ち帰りの金とかというような問題でありますが、それは、たとえば文部大臣あるいは厚生大臣あるいは大蔵大臣という方面の主管に属しております。したがいまして、私のほうもそれについて十分なる御意見を承っておりまするが、外相会談をおやりになる外務大臣のほうで所管大臣の意見を十分に聞きまして、会談へ臨まれることと思うのでございますが、承りますところによりますと、まだこれは交渉中でございます——いや、まだこの外相会談ではまだ交渉がなされておらない、こういうことに私は承っております。詳しくは、外務大臣からお聞き取りを願いたいと思うのであります。
  111. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この法的地位の問題は、二つに分けまして、永住権の範囲の問題及びこれらに対する強制退去の条件、これをまず第一の問題といたします。これ以外のつまり国内における処遇の問題は、第二の問題として引き続いて事務折衝を開始しておりまして、その解決のめどがかなり時間を要するのではないか、かように私考えております。
  112. 藤田進

    藤田進君 これはどうです、処遇問題はあと回しにしてということがまたぶり返してきたというのですが、それは事実ですか。それからですね、その処遇については、国民健康保険であるとか、社会保障制度の一つである生活保護であるとかいった一連の現状を認めるというにとどまるのか、また、例を見ない在日外国人処遇と若干違うとしても、いま申し上げた点は違うとしても、この際また向こう側の要求している日本人並みといったようなところなのか、その辺のわが方の確固たる腹づもりをお聞かせいただきたい。
  113. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま各省の事務段階で折衝が開始されたばかりでございまして、どの程度一体認めることになるかならぬかというような問題につきましては、まだ申し上げる段階ではございませんが、なお、事務当局から申し上げ得る点は申し上げたいと存じます。
  114. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) いま大臣がお答えになりましたとおり、この処遇の問題につきましては、まだ具体的の話し合いに入っておらない状況でございますので、細部にわたって内容、交渉方針等まだ御披露できない段階でございますが、ただ、御質問ございましたように、一般的にすべて内国民待遇を与えるということは承知できないことは、これは当然のことだと思っております。
  115. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 関連。いまの法的地位の質問に対する答弁を聞いておったのですが、外務大臣答弁を聞いてみてもちょっと不明確なのは、一体法的地位というのは、何と何を法的地位というのですか。それがもう根本的にはっきりしてないわけですね。  それから、非常に何かおくれるという話があったのですが、それはそれとして、じゃなぜ法的地位というものと別個な処遇というものを韓国側が急にこの段階になって出してきたんですか。その辺の経過はどういうところにあるのでしょうか。結局、韓国側が非常な無理をいまの段階になって言ってきている。こういうことから、その問題がまとまらなくなってきておるのでしょう。そういうふうに承ってよろしいのじゃないですか。
  116. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 政府委員から答弁させます。
  117. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 法的地位協定の範囲にどういう内容のものを盛るかということにつきましては、問題があるところと存じますが、従来過去十年近い交渉を通じまして、先方との間ではこの永住権の範囲というか、狭い意味におけるこの法的地位の問題と、そういう永住権を与えられました者にどういう処遇を与えるかという具体的な待遇の問題と、両方が議題として並行して事務ベースでずっと会議が続いてきたわけでございます。ところが、いよいよ今度の最終段階の外相会談になりまして、まず基本的な問題である永住権の範囲の問題について話し合いがずっと続きまして、一応の了解に達したわけでございますが、引き続いて処遇の問題に入ろうとしましたときに、もう時間切れになるということになりまして、なかなか両方の立場が対立しておりましたので、したがって処遇の問題については、引き続き協議を続けることにしよう、こういうことになっておりましたので、初めからこの処遇問題は会議の範囲外だったということではなく、十年来ずっとやはり並行して進んできている、こういう経緯でございます。以上です。
  118. 稲葉誠一

    ○稲葉誠一君 関連ですから長くやりませんけれども、共同コミュニケを見ましても、「法的地位並びに処遇」というので、法的地位と処遇とはっきり分けておるのじゃないですか。それがいまの段階になってきて急に処遇をも含めて解決をしろというのは、韓国側から出てきたのであって、それははなはだしい日本に対するいわば不信的なものとして韓国側から提起されたのじゃないですか。これは居留民団からの突き上げでそういうことが起こってきたのでしょう。はっきりその点、言えないですか。そうじゃないですか。日本の政府としてはどうするんですか。永住権問題と強制退去、この問題といわゆる処遇というのは切り離した形で解決をしたいと、こういうのですか。あるいは一緒にして解決をしたいと、こういうのですか。そこはどうなんですか。
  119. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) この問題は、もし他の諸懸案の一応の合意に達する時期までに、この処遇問題のたとえ大綱についてでも合意ができれば、一緒に一応の区切りをつける。もしそれができなければ、これを区切りをつけないで引き続き処遇問題について両国の間に審議を進める、かような方針でございます。
  120. 藤田進

    藤田進君 どれを取り上げても——いまのもそうですが、突き上げでぶり返され、また引きずり回されて、見ちゃおれぬじゃないですか。全く、もっとしっかりしてもらいたいです。  大蔵大臣に伺いますが、民間ベース、コマーシャル・ベースということが、先般の一般質問で明確になりましたこの協力関係一億ドル以上というのが、三億ドル以上でなければいかぬとまた言い出しているようです。これもまた延びそうだ。大蔵大臣はこれについて必ずしも賛成でないようなふうにも出ておりました。どういう基本的な態度でございますか。
  121. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大平・金メモによります(ハ)項のものでございますから、これは民間が信用供与するわけでございます。でありますから、この条項自身が友好的宣言条項だと、こう申しておるわけでございまして、民間がこれにプロジェクト別に政府に持ち込むと、こういうことで輸出許可をするということでありまして、この内容を一億ドル以上ということでありますから、三億ドル以上も一億ドル以上であることは事実でありますが、私は一億ドル以上でもっていま三億ドル以上となぜ言わなければならないのか、その事の性質上理解に苦しむわけであります。一億ドル以上でありますから、五億ドル以上でも、十億ドル以上でも、三億ドル以上でも同じであります。やはり一億ドル以上であります。向こうがきちっと一億ドル以上というよりも、三億ドル以上というほうが、何かよけい民間供与が行なわれるというふうに感じの上で理解しているのかもわかりませんが、私は一億ドル以上という大平・金メモの(ハ)項に属するもの以外に存在しないのでありますから、一億ドル以上でもいいのではないかというどうも感じを捨て切れないわけであります。
  122. 藤田進

    藤田進君 総理はいかがですか。
  123. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま大蔵大臣のお答えしたとおりでございます。私は大体両国間にいいプロジェクトがあるなら、それはもちろん話し合い、これは五千万ドルかまたは一億ドルとかいうよりも、それはもっと金額が多くてもいいかと思いますけれども、ただいまは一億ドル以上、かような表現をしております。問題は、両国の経済関係で適当なものがあるかどうかということのように思っております。また、そういう意味では、私どもも協力していきたいとかように思っております。ただ、金額をはっきり書くことはいかがかと思っております。
  124. 藤田進

    藤田進君 私は、大蔵大臣は非常に軽く見ておられるようだけれども韓国の従来のやってまいりました態度等から見て、なかなか他に派生する問題の発火点ともなるわけで、民間ベースであろうと、金額を明示されて、しかもそれが一億ドルか三億ドルかどちらでもいいというようなことでなくて、これはなかなか将来に問題を残すように思われますから、十分御注意いただきたいと思います。
  125. 羽生三七

    羽生三七君 ちょっと関連。この機会にちょっとお伺いしたいと思いますが、一億ドルか三億ドルかどうか、それは別として、かりにそうなった場合、これは純粋な民間供与ですね。その場合、韓国の将来の経済上、社会上、政治上等の状況から見て、返済または支払い等に困難を生じた場合、日本政府がその対韓供与をした関係者に対して補償することはありませんか。外務大臣はそれは絶対に補償しません、関係者の責任において処理すべきものである、——将来もしそういうことが起こってくると、実際は有償、無償五億ドルですが、対韓の民間供与すらも非常に大きな国内上の負担になってくる。でありますから、この点はぜひ明確にしておいていただきたい。これが第一点。  もう一点は、十二月の緊急対韓援助の二千万ドル、これはまだ全然使っていないそうです。そういうように受け入れ態勢ができていないのに、どうしてこういう膨大な金を消化できますか。この二点だけお伺いしておきます。
  126. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 民間ベースで信用供与をしたものにつきましては、責任は民間でございまして、政府がその補償を行なうことはあり得ないわけでございます。それから二千万ドルの対韓緊急援助というものは、五分七厘五毛だったと思いますが、そういう条件で、両国の間でもって民間同士でいろいろ検討いたしておるようでございますから、御説のとおりまだ進んでおらないという状態でございます。そういう状態で、一体、一億ドルとか、三億ドルとかできるのか、こういうことでございますが、それはまあ友好的宣言条項をもとにして、お互いが大いに協力しよう、こういう姿勢を出しているわけでございますので、将来は日韓問の貿易、経済交流等は、いまよりも大きく進むであろうということは考えられるわけであります。
  127. 藤田進

    藤田進君 総理にお伺いいたします。  一般質問では、各閣僚の意見は聞きました。ベトナムの情勢は、私はまことに遺憾なことに、予想のようにだんだんと深刻、拡大されてきます。このことを憂えて、イギリスにおいても主要なる閣僚が南北ベトナムその他に派遣されてくる。テーラー大使は本国に帰る、重要な段階になる中で、中共あるいはソ連、北ベトナム等の動きというものは、報じられる現地報道から見ても、まことに容易ならぬものがあるのであります。総理は、四十八回——この国会冒頭の施政方針演説でも、特にこの平和というものについて、さらにアジアの平和について非常に説かれているのであります。こういう時期において、日本を軍事基地としているという特殊な安保体制の中において、ベトナムの戦火の拡大というものはひしひしとわが身の事情として感じなければならぬと思うのであります。国民は非常な深刻な心配を持っております。これに対して、具体的にこれが拡大しつつある中に、アジアにおける日本の地位、これは、モスクワの報道等から見ても、大きな期待を持っているように思われる。総理として、力強い平和への、この施政方針にあるような具体的施策を、この際早急にとられるのが至当であろうと思います。どういう具体的措置をとられようとするのか、この際お伺いしたい。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま藤田君からのお尋ね、御意見がございましたが、私も、ベトナムの情勢につきましては非常な関心を持っておるわけでございます。一日も早く戦火がおさまるように、このことを心から願っております。そういう意味でアメリカに対しましても、大使館との間には緊密な連絡をとりつつ、いろいろ情報も受けておりますが、同時に、当方としても、アメリカ大使館を通じましていろいろの意見を述べておるような次第でございます。しかし、今日までのところ、不幸にしてそれらのことが実現しない。だんだん爆撃もたび重なり熾烈になってくる。まことに心配にたえません。しかしてまた、北からの南に対するいわゆる工作あるいは進攻と申しますか、そういうものも依然続いておるようであります。きょうなども、大使館が爆撃された、あるいは爆弾が破裂したというような情報も入っております。そういうように依然として北からの南へのいろいろな事態もあるようであります。また、ただいま御指摘になりましたように、ソ連あるいはイギリス等が、これに対してとっておる態度もまことに冷静な態度だと、かように私思いますが、新聞などはそうは報道しないで、北に対してソ連は特別な武器援助等をしている、中共がそれをはばんだ、こういうこともありますが、このソ連が私どもに対して申し出たところのものといえば、日本は軍事基地を提供しておるじゃないか、ジョンソン大統領と佐藤会談では、そういう点が明確に、ベトナム問題を発展さすなということを盛んに言ったように報道されております、どうも事実はそのとおりなのか、ただいまも軍事行動は日本の基地が利用されておるのじゃないか、そういう意味でそういう疑惑を持つ、同時にまた、日本政府自身は、これは大国であるし、こういう問題については深い関心を示しておるから、積極的に、戦争にならないように、また、今日の爆撃が続かないような、これを鎮静さすようなことについて、積極的な努力を払ったらどうか、こういうような話を持ってまいっております。私は、ソ連がただいまのようなことを申しておることについて、もちろん予算委員会等でしばしば私が声明しておりますように、いわゆる軍事基地を提供しておらないことを申すと同時に、ジョンソン大統領と私との会見では、ソ連が認識しておるとおりに、平和への努力をすることをそのとき話し合った。また、今日もそういう考え方でいるから、今後の情勢の変化等について、日本が果たすべき役割りがあるならば喜んで果たしたい、かようなことも申し出た、伝えたような次第でございます。私はかつてこの予算委員会等で申し上げましたように、こういう事態が起きたということ、そうしてこの行動は、アメリカの爆撃行動は、これはどこまでも報復的な、反射的な行動だと、かようにアメリカは申しておりますが、これが今日までの事態から申しますと、そういう事態があるのではないか、これは報復的な、反射的な爆撃行動ではないか、かように思いますが、しかしいずれにいたしましても、アジアでこういう事態が起こり、そうして不安に襲われるものが、日本などは最もそういうような不安を持つわけでございます。みずからが平和に徹する、そういう立場に立っておりましても、四囲の状況がそれを許さない、かように思いますので、このベトナム問題を、北からの南に対するもう進攻は一切やらない、ゲリラ的な行動もしないのだ、そういうような保証が与えられれば、アメリカも北の爆撃はしない、これはもうもちろんそういう事態が望ましい。私としては、いわゆる双方がその範囲を侵さない、そういう意味が厳密に守られ、そうしてそのことが国際的に保証される、お互いにその分を侵さない、その地域を侵さない、こういうことが保証される、そういうことが望ましいので、そういう意味のものを取りつけたい。各国がみんなそういうことを考えているのだと思いますが、ただ現状そのものは相当深刻な不信の、相互不信の状態になっておりますので、ただいま申し上げるような保証を取りつける、こういうことが非常に困難である、これがいまの現状ではないか、分析はただいまのように私は見ております。しかし、これが困難であればあるだけに、一そう国際社会の関心をここに向けて、そうしていわゆる国際世論の動向によって処置していくということが望ましいのではないか、かように思いまして、そういう方面でも私どもは努力したい、かように思う次第でございます。今後、もう一度取り上げられた国際連合の場においてのこういうものの議論というものが、また現状等におきましても、また時間的に長くなるような状態においては、またそういう議論も出てくるんじゃないか、そういう意見が述べられるんじゃないか。私どもはそういう機会には、日本としては平和を愛好しているその立場から、真に私ども主張をも明らかにしてまいりたい、かように思います。
  129. 藤田進

    藤田進君 ベトナムの事情は、私も現地を前には見ておりますが、アメリカのためにも、私はああいうやり方を惜しむので、結局ベトナム——南北のベトナム人をみな殺ししなければこの戦争はおさまらない。夜と昼は違う。これはどういう人がどこにおるかわからない。これは従来の状態とは違う。北ベトナムにおいてフランスがついにほこをおさめて引き揚げたという先例もあるわけでございます。国連云々と言われても、今日の国連はもうすでに無力化してしまっている。この九月まで総会を招集できないような状態。脱退する者あり、別の国連をつくろうとする者あり、どうにもならない。カンボジアの提案については、どう評価いたしますか。
  130. 後宮虎郎

    政府委員(後宮虎郎君) 御承知のとおり、先般カンボジアでインドシナ人民会議と申すものが開かれまして、各インドシナ三国から、いわゆる左翼系統に属する団体、政府の代表が集まりまして、このインドシナ問題の終息の方法を討議いたしたわけでございます。その当初にシアヌーク殿下が発表しておりました方針では、双方——米国も北越等も、このメンツを立てて妥結し得るような解決方法を考えるという、わりに両方ののめそうな案を出しておったわけでございますが、その後会談が進みますに従いまして、非常に強い、無条件でまず米軍が撤退することが先決条件だという北越等の主張が結局勝ちを制しまして、会談の最終結論がそういうふうになって、したがってそれに応じまして、シアヌーク殿下も、もう自分が会談の最初に主張していたような、双方のメンツを立てながらという案が、もう実際動かなくなった。結局もう米軍の即時撤退のみがこの終息条件であるという非常に強い線になってまいりましたので、いまのところ、カンボジアの独自の案のうまみというものは消えているんではないかと、そういうふうに観測しております。
  131. 藤田進

    藤田進君 総理はどう思いますか。じゃ、それがだめ、これがだめならどうするのか。長々言われましたが、具体的に、あしたとは言いませんが、あさってでもいいが、こうしたいというものがなければならぬ。
  132. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いろいろ長々しくお答えをいたしましたが、問題は、しからばただいまがそういうチャンスか、かような結論ですが、私は、ただいままことに遺憾ながらまだ提案をいたしましても、それを採用されるような時期でない、かように思っております。ただ、私どもは遠ぼえしているのかもわかりませんが、心から平和を希望している、そういう意味の国際世論を動かすということ以外はないのではないかと思います。
  133. 藤田進

    藤田進君 LSTに日本人船員が数百名、これは約九隻で、一隻に、四、五十人乗っておるようですから相当なものです。先般これが負傷をした、攻撃を受けた、こういうことですが、日本人の生命財産の保護といったような見地から、どう対処されますか。
  134. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本人船員がいろいろな物資の輸送に従事しているという事実はございます。しかしながら、これはその事実が、ベトナムの軍事輸送に日本自身が協力しているということにはもちろんならないと思います。ただ、非常にこの国内がいつどういうところでどういう事件が発生するか——生命財産の安全を期し得られないというもし状況になりますれば、それらを、その事態を船員に通告して、そうしてその進退をみずから判断してみずから決する、こういうような
  135. 藤田進

    藤田進君 私も引き続き追及を各委員会でいたしたいと思いますので、十分ひとつ御調査おき願いたいと思います。時間がないようですから、まことに残念ですが、これで打ち切ります。
  136. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 藤田君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十五分再開することにし、これにて休憩いたします。    午後一時九分休憩      —————・—————    午後二時三分開会
  137. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き質疑を行ないます。中村順造君。
  138. 中村順造

    ○中村順造君 午前中、同僚の藤田委員から総括締めくくり意味におきまして、日韓問題を中心にして質問が展開されました。私も社会党の立場から、今日までの予算委員会審議の過程を通じまして、先ほどの日韓問題の経緯を聞くにつけましても、私としては全くこれが後退外交であり、納得のいかない点もあるわけでございますが、同じ問題をやるわけにもまいりませんので、いままでの経緯を振り返りながら、主として内政の問題に入りたいと思いますが、まず冒頭に、当委員会で三矢問題の資料の提出など、まだ決着のついておらない問題がありますが、それはそれといたしまして、日韓会談の問題、あるいは緊迫するベトナムの問題、さらに教育、医療、社会保障、広範な論議が展開をされまして、冒頭、まず総理が先ほどことばの中にちょっとお漏らしになりましたが、新しい情勢として、本日十二時ごろ、ベトナムの現地におきまして、アメリカ大使館の爆破というふうな情報が入っておりますが、これは非常に重要な要素を含んでおると思うのです。いままでの単なる報復的な北爆というものが進行しておる中で、こうした非常に緊急事態として発生しておる事態につきまして、一体今後の見通しが、いわゆる北爆が単なる報復に終わらずして、ますます緊迫の度合いを加えるという可能性もあるわけでございますが、この点につきまして、総理並びに外務大臣からお答えいただきたいと思います。
  139. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 今日南越の首府において、アメリカ大使館に爆弾が投ぜられたという情報がございましたが、詳報がさらにまいりまして、大使館の北側の道路上のトラック内にしかけられた爆弾であって、大きさは約百キロと見られる、こういうのであります。死者は通行人を含めて約二十名ではないかといわれております。ちょうどジョンソン次席大使が館内におったのでありますが、軽いけがをしたほか、女性の秘書を含めて二、三十名の職員が負傷したものと見られております。  かような情報が入りました。
  140. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) サイゴンにおいて、ただいま外務大臣が報告したような事故が起きた。私はいままでのアメリカの爆撃、この態度は急にこの事件でどうこうなるとは思いません。たぶん在来の態度をそのまま主張していく、こういうことだろうと思います。したがって、この事件が起きて、急に北との戦いが始まるとか、こう考えなくてもいいんじゃないか、かように思います。  ただ、こういうようなことを指摘したいことは、南から米軍による爆撃もあるし、ベトコンによるこの種の動きもある。したがって、いずれにしても双方とにかく鎮静さすという、そういう方向に向かって努力をしない限り、簡単におさまるものではない。日本の立場としては、双方に対して、こういうことがないように、いままでの行動そのものは米軍のほうを支持するにしましても、現にこういう事態が起これば、なおさら米軍の行動というものについての同情はあるだろう、かようには思いまするが、いずれにしても、とにかく困った問題だ、この一言を申し上げる以外にはない。一日も早く双方が鎮静していくことを、われわれも努力していく、こういうことしかないように思います。
  141. 中村順造

    ○中村順造君 これ以上発展の可能性があるなしは別にいたしまして、これはやはりアジアにおけるできごとであります。フランスのドゴール方式だとか、あるいはイギリスなりソ連はそれぞれの考えを持っておるわけでありますが、テーラー大使が帰国いたしまして、新聞の伝えるところによりますと、ますます爆撃を強化する。ハノイの近くまで爆撃が敢行されるという、こういう事態の中で、また新しいこういう一つの問題が提起されまして、同じアジアにある日本として、日本の総理大臣として、これに対してどうするのかという考え方は、かねてからもあったであろうし、この機会にまたお示しをいただけるのが、国民の一つの方向づけとして、明確になるものかならないものかお答え願いたい。
  142. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) きょうも午前中に私ども考え方は明らかにしたように、お聞きとりいただいたと思います。私は鎮静するように、平和への方向をたどるように念願はいたしておりますが、ただいまのような事態が起きて、われわれが行動に出るというか、双方に呼びかけるとか、こういうことが必要だと思いますが、どうもそのチャンス、その時期でないのではないか、やはり双方が非常な不信の状況にある、こういう事態では、私どもが発言をいたしましても、これが双方を歩み寄らす、こういう機連にならないように実は思うのであります。適当な機会に、そういう際に発言をして初めて効果があるのではないか、かように私は思っております。何でもいいから自分たちの態度をはっきりさしたらいいじゃないかというだけでは、おさまらないように思っております。
  143. 中村順造

    ○中村順造君 時間がございませんから、この問題だけ取り組んでいるわけにもまいりませんが、双方と申しましても、いままでの自民党政府のあり方としては、総理もこの前アメリカにおいでになって、いろんなことを言ってこられたと思います。こういうことになっておりますから、これはアメリカの行き過ぎなら行き過ぎと、この前のガス使用につきましても外務大臣見解も私ども納得できないところでありますが、しかし、それなりにアメリカに対しては強力な私は発言できると思うのです。  これはその点であとでまた一緒にお答え願えればけっこうですが、きょう、私は、いままで外交上の問題が主として行なわれましたので、総理の言われるこの社会開発の見地から、一つの問題がいま国内にあると思うのです。これは公社、公団等の現状であります。政府がこの前、私は二十三日の本委員会関係者十七名の出席を求めましていろいろな事情を伺ったのであります。大蔵大臣の所信も伺いましたが、たまたま一般質問でありますから、総理がお見えになりませんでした。そこでまず総理お尋ねいたしますが、大蔵大臣の説明では、これら政府機関に対する政府の出資額は総額一兆四千億という膨大な出資がなされておる、その数もまた百に及ばんといたしております。この国会ではおそらく百をこえるのでありますが、この構成なりあるいは公社、公団、公庫、事業団、こういうものの運営の内容を見ますと、これはまさに日本のいまの社会の吹きだまりだ、こういうふうな現状であろうと思います。この点につきましては、先般の臨時行政調査会の答申の中にも多くの意見が出ておるわけでありますが、まず総理の言われる社会開発という見地から、この吹きだまりをどうするかという考え方が当然わいてこなければならぬと思いますが、総理のお答えをいただきたいと思います。
  144. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま伺っていましたが、公社、公団と社会開発というお話であったかと思いますが、ちょっと何だか結びつきが私わかりかねておりますが、どういう意味でしょうか、たいへんお尋ねをして恐縮ですが。
  145. 中村順造

    ○中村順造君 それでは重ねて申し上げますが、これは社会開発と私は広範な意味で申し上げたので、直接あなたには答えてもらわなければならないが、いわゆる百に余る公社、公庫、公団、事業団いわゆる政府機関なるものがあるわけです。これらの運営は、やはり考え方は違うにいたしましても、その設立された趣旨というものがあるはずなんです。これがこの趣旨どおりに運用されないところに、やはりこういう面も掘り起こして開発をしなきゃならぬ、こういう考え方にはなりませんか。
  146. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん失礼いたしました。私この行政責任というほうから申しますならば、本来、公団、公社等も政府機関で、政府が直接行政の衝に当たるということが望ましいのだと思います。しかしながら、政府が公務員の形においてこの種の事業を遂行していくということよりも、やはり公社、公団をつくることによって、より効果的、より能率的な事績があがる、こういうので、実は政策遂行の面ではあるが政府みずからはやらないで、公社、公団をつくっておる、かように私は理解いたしておるのであります。しかして、この公社、公団をつくっても、どうも事業そのものが十分の効果をあげることができないとか、あるいは公社、公団につとめておる人たちが特別にどうも待遇上その他から見ても恵まれないとか、こういうような問題が指摘されるのかと思います。しかして、私は第一段から申して、公社、公団等で取り扱う仕事は、本来が行政機関がみずからやるよりも、より能率的あるいは効率的、より効果をあげると、こういう意味で選ばれたのだと思いますので、その内容、仕事の面においては、私はおそらく御指摘になるような点はないのではないかと、そういう意味では、さらに本来の職務を通じてその仕事を完全に行なっていただくように一そう監督の強化なりあるいは事務、人事管理等において注意していくべきじゃないか、かように思います。  第二の問題の、こういうところにつとめておる人たちがそれでは非常な恵まれない状況にあるかどうか、その辺も考えてみますると、現状においては、そういう意味のあまり類はないのじゃないか、もちろん春闘だとかあるいはその時期時期による要望等は出ております。そうしてしかも、それらがいわゆる当事者能力がないというような立場において十分にその身分が保護されないとか、給与その他の面において支障があるとか、こういうような不平はしばしば聞きますが、しかし、たてまえそのもの、制度そのものから見て、他の公務員に準じて扱われておる現状においては、そう問題がないのではなかろうか、かように私は思います。そこで、いわゆる吹きだまり説というようなものに対しては、実は私はあまり理解しないわけであります。
  147. 中村順造

    ○中村順造君 この前二時間ばかり時間をかけて質問いたしましたが、ちょうど総理はおられなかったのでおわかりにならないと思う。きょうは、ひとつ具体的な例をあげて吹きだまりであるかどうか、恵まれておるかおらないか、そういう具体的な例をあげて各所管の大臣にお尋ねをいたしますから、総理はしばらくそこでお聞きになって、一つずつ済んだら総理の所感を伺います。  まず第一に、もう一点これは総理に初めにお尋ねしておかなければなりませんが、公社、公庫、公団、事業団、こういうものは本来その本質は、この前、藤田委員からも関連質問質問がされましたが、大蔵大臣は答えられたわけでありますが、総理お尋ねしますが、この自由主義経済、資本主義体制の中では、この公団、公庫、事業団、公社、こういうものはその性格からいれないのじゃないですか、この点はどうですか。
  148. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 自由主義経済と公団、公社、こういうものは矛盾するのじゃないだろうか、あるいは自由主義経済のもとではいれられないのじゃないだろうか、こういう御意見でございますが、私は国有鉄道公社あるいは電電公社等をつくった当の責任者でございますが、その当時考えましたことは、いわゆる国有、あるいは公務員がみずからやる国有形態よりも、完全な民業形態、そのほうがより能率的ではないか、しかしながら、歴史的にも沿革的にも直ちに完全な民業形態には変わり方ができない、変わるわけにいかない。そこで、公益性その他の観点から、中間的機能をとって、いわゆる公社、公団等をつくった、そうして、それによって十分能率的な働きができた、かように実は思います。これはできたそのときどきによって、時期によって、鉄道の場合と電電公社の場合とは明らかにその時期がやや違っております。鉄道よりも電電公社ができたときのほうが、より自由裁量の余地があるように見受けられます。だから、こういうものをせっかくつくるなら、もっと自由裁量の余地のあるような形態が望ましいのじゃないか、かように私は思います。しかしながら、これらの公社、公団、事業団その他が国の予算に縛られる、こういうところでその制約が、もう根本的な制約があるために、公社、公団、事業団等は、十二分にその機能を発揮することができない、こういうことだと思います。しかし国の予算に縛られる、そういうところは一体どうなのか、これはどうも事業の性質上から、予算に縛られざるを得ない。これは国会等におきましても御審議等をいたしましても、あるいは料金等は全部公社、公団等におまかせするというわけにはいかない。これはやはり重大な公共性から見て、料金等は国会においても審議する。と同時に、それだけの公共性があるだけに、予算もわれわれが十分審議する、こういうことで、現状においては、これはやむを得ないのだと思うのです。だから私は、現状で、さらにこれらにくふうが与えられ、もう少し自由裁量の余地ができるような方法があるか、どうも事業の性質上、現在のような制約下に置かれることはやむを得ないのだと、かようないま結論を持っておるわけでございます。ただいま中村さんの御指摘になりますのがそういう点であれば、どうもある程度の制約はやむを得ないだろう。ある程度でなくて、これは基本的な制約、大きな制約を受けざるを得ない、かように私は思います。
  149. 中村順造

    ○中村順造君 私の申し上げておるのは、これはいわゆる自民党の政策の中で、特に自由主義経済、資本主義体制の中では、これはむしろ私は必要があるかどうかということを検討しなければならぬ問題だと思います。もちろん私の立場から言えば、少なくとも基幹産業を国家管理の中に入れるという基本方針からいえば、これは有効に管理され、運用されるということなら、私の立場からは、これは望むべきことであって、決してこれは否定すべき問題ではないと思うのです。しかし、いまの自民党の政策の中では、極端な端的なことばで表現すれば、必要ないのじゃないか、あるいは両立し得ないものじゃないか、これは論争を繰り返しても、時間がたちますからいたしませんが、この前の臨時行政調査会で、その内容の一部は民営に移管してもよろしい、あるいは整理統合すべきだというような御意見も出ておるわけでありますから、そういう面につきまして、この臨時行政調査会の答申について、どういう考え方を持っておられるのか、これは総理でなくとも所管大臣でけっこうですからお答えいただきたいと思います。
  150. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 臨時行政調査会の答申は、これを一応行政改革木部で受け取りまして、現在答申をかみ分けた具体的な調査をやっておるところでございます。この調査に基づきまして、統廃合その他の措置を考えてまいりたい、現在は調査の段階でございます。
  151. 中村順造

    ○中村順造君 調査というのは、私はわからぬのですが、私の手元には昭和四十年三月に行政管理局から「臨時行政調査会の「行政改革に関する意見」に対する各省庁等の意見一覧」という資料が入っておりますが、これはどういう性格の書類ですか。
  152. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) お手元に配付したものは、臨時行政調査会の答申全般につきまして各所管省庁の一応の回答をとったわけでございます。公社、公社等につきましては、さらに具体的な臨調答申を基礎にした調査をいまいたしておるという段階でございます。
  153. 中村順造

    ○中村順造君 これは抽象的では進みませんから具体的に入ります。  まず水資源の開発公団につきましてお尋ねをいたします。この前大蔵大臣は、私がたまたま役員の待遇の問題についてお尋ねをいたしましたところ、それぞれの公社、公団というものは広く有能な人材を、民間人を登用してやらなければならないので、相応の給与を出さなきゃならぬというお答えをいただいたわけであります。ところが、この水資源開発公団を見ますと、民間人が起用されておるかどうか、この点だけをひとつ申し上げますが、この構成の中には、元建設省の次官が一人、それから建設省からほかに所長、課長が二人、経済企画庁から局長が一人、大蔵省から元造幣局長が一人、通産省から特許庁の部長が一人、農林省から元林野庁の部長が一人、農地部の参事官が一人、行管から元局長が二人、都庁から公社の理事が一人、十二名中十一名の元公務員、官僚がこの公団の中に入っておるわけですが、この点はどうなんですか。
  154. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 水資源開発公団は建設省の所管でございますが、いま御指摘に……(「企画庁」と呼ぶ者あり)企画庁及び建設省それから通産省等の共管になっておるわけであります。これは現在御指摘のとおり民間人はあまり入っておりません。入っておりませんが、この種のものに民間人を登用するといってもなかなか民間人の登用はしにくいのであります。御承知の水資源開発公団ができました経緯は、大阪の水とかそれから東京の水とか、こういう問題を主にしてつくられたわけでありまして、厚生、農林それから大蔵、建設、通産、こういうものの共管でつくったわけでありまして、民間人を水資源開発公団の理事等に登用すると、こういいましても、この種の問題に対しては非常にむずかしいという特殊な状況がございます。これは民間のほうへ建設省等の技術官が出るとうい例はございますが、民間から水資源開発公団に登用するということになれば、水の権威者というか学者とか、そういう方々以外に民間からなかなか入りにくいという経緯もあったわけであります。
  155. 中村順造

    ○中村順造君 大蔵大臣、それでいいですか。私がいまからあげるのがどのくらい官僚でこれが構成されておるか、以下あげますからよく聞いておって下さい。建設大臣来ていますか。——建設大臣呼んだのにどうして来ない……時間が経過いたしますから、私は時間をかせぐ意味でやっておるわけじゃないのですから、進めます。あと来られたらまたお尋ねいたします。  海外経済協力基金に入ります。私はこの前は時間がありませんでしたから、内容について、役員の待遇などについてこまかくやるわけにいきませんでした。一つの例をあげました。言うならば、この三公社あるいは公団、公庫、事業団、こういうものが五つのランクに分割をされて、最高が総理大臣と同様の俸給の四十万円が与えられるということをこの前申し上げたわけでありますが、そのときも大蔵大臣は、やはり民間人を起用するとかいろんなことを言われたわけですが、海外経済協力基金はどういう構成でなっておるか。元大使が一人、それから大蔵省の次長が一人、通産省の部長が一人、それから経済企画庁の秘書課長が一人、日銀の支店長が一人。六人のうちに五人までがこういう構成になっているわけですが、これはどうなんですか。
  156. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ公社公団等に広く一般の有識、多識の人を求めたいという基本的な原則はそのとおりでございます。しかし、いま御指摘になりました海外経済協力基金等につきましては、これは全く政府施策とこん然一体となっておるものでございますし、その意味で、民間から登用するといってもなかなか登用しにくいということでございまして、御指摘のとおり、柳田誠二郎理事長は日銀の出身者でございまして、あとは政府関係者がおおむね占めておるということでございます。
  157. 中村順造

    ○中村順造君 民間から登用するために高い給与を払わなきゃいかぬ、待遇をよくしなきゃならぬ、こうおっしゃる反面、なかなか民間から入り手がないということは、どういうことです。私はちょっと理解ができないんです。待遇をよくしたら民間人が入るというならわかりますが、待遇はウナギ登りによくしてやってもなお民間人が入らない、こういうことは卵とニワトリの繰り返しですか。どういうことなんですか。
  158. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 確かにこの公社公団の給与というものは民間の給与よりも低いし、また、一般の公務員よりも高いし、ちょうど民間との中間にあるわけであります。これは原則として民間の有識の人たちを登用できるためには当然こうしなければならないということが原則であるということは間違いございません。しかし、いろいろ公社公団、その他の事業団等を見ても、民間からの登用が非常に少ないじゃないかということもございます。ございますが、先ほど申し上げたとおり、政府と一体になっておる、政府の施策を行なうものであるということで、民間から登用はなかなかむずかしいということも事実でございます。でありますから、あなたのお考えから言うと、民間人を入れるからといって一般公務員よりも高い給与を出しておって、実際は民間から入っておらないで官公吏の横すべりというようなものだけじゃないかということの御指摘だと思いますが、私が申し上げておることを前提として給与体系がきめられておる。しかし、民間人の登用は、民間人でなければならないというようなものもございますが、比較的政府と近い、政府施策の中の一環というようなものに対しては、政府関係のあるものからの登用というものが非常に多いということもまた事実であります。
  159. 中村順造

    ○中村順造君 待遇の話が出ましたからこの際申し上げておきますが、私は、この理事長、総裁、こういうものの待遇があまりにかけ離れておると思うのです。たとえば国鉄に例をとりますと、国鉄の労働者は、退職手当などはいわゆる一年分を計算する場合に、十年までは一カ月分の百分の百。ところが、総裁になるとどうです。一年分が一カ月分の百分の六十五の十二倍ですよ。約八カ月分ですよ。一般の労働者は、わずかな賃上げでも、これはもうそれをするためには処分をしたりなんかしすまが、あまりにもかけ離れているじゃないですか。しかも、退職手当というのが、公団、公社、公庫、事業団、一番の役員のねらいなんです。二度も三度ももらっている人がたくさんいますよ。この点どうですか。
  160. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 給与もそうであるとともに、退職手当につきましても民間のおおむね例にならって民間よりも多少少ないということでございます。民間は大体勤続年数、その間に受けた報酬の六割、六割五分、七割、七割五分というところがございます。現在公庫、公団につきましては六五%程度でございます。しかし、この制度につきましては、現実的に政府等から行っておる人が多いのと、また、公庫、公団、事業団を横すべりをしておるという例もございますので、この退職金につきましては、いろいろ議論があることは承知いたしておりますが、民間と公務員とのやはり中間を目途としてつくられたものでございます。
  161. 中村順造

    ○中村順造君 所管の大臣が来ておられませんですが、いま大蔵大臣がいろいろなことを言われるのですが、私はどうも理解ができない。たとえば日本原子力研究所の構成を見ますと、中に内閣の賞勲部長、それから愛知用水公団、こういうところが来ておられるわけですが、これはどういう関係があるのですか、天下り、横すべりでないとおっしゃるならば。
  162. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 原子力研究所にどういう方がおられるか、私いまさだかに記憶しておりませんが、そういう御指摘の点もあると思います。これは私も政府から行っておる者が多いという事実は認めておりますし、また、公社、公団、事業団等を横すべりをしておる事実も認めておるわけでございます。
  163. 中村順造

    ○中村順造君 運輸大臣にお尋ねいたしますが、鉄道建設公団というのは、あなたの監督下にあるわけですか。
  164. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。鉄道建設公団は私の担当しておる公団でありますが、この公団の役員は、できる限り広く民間から人材を登用して、民間企業の経営の実績を公団運営の能率下に反映させたいということが望ましいのでありまして、日本鉄道建設公団総裁の任命にいたしましてもこの方針をもって進めておるものであります。
  165. 中村順造

    ○中村順造君 建設公団の理事長は太田利三郎さん、名前をあげて恐縮でありますが、事実でありますからやむを得ませんが、この人は日本開発銀行の副総裁、総裁、かつておやめになるときに千八百八十一万円の退職手当をもらって公団の総裁に就任なさっております。これは建設公団をおやめになられればまた相当額の退職手当、こういうことになるわけです。労働者が夢にも見ることができないような多額の金額をわずか三年か四年の任期で何回も取られる、こういう結果になるわけです。それからもう一つは、この建設公団の理事に、名古屋の税関長、警視庁の警視総監、こういう人がどういう関係で入っておられるのですか。
  166. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お答えいたします。副総裁は篠原さん、理事は向井さん、根本さん、山崎さん、渡辺さん、市嶋さん、監事は川合さん、平松さんということでありまして、いまのお方は入っておられないと思います。
  167. 中村順造

    ○中村順造君 川合さんは元警視総監ではありませんでしたか。
  168. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) そうです。警視総監でありました。
  169. 中村順造

    ○中村順造君 警視総監と鉄道建設公団とどういう関係がありますか。
  170. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 適材と思ってこれを採用いたしました。
  171. 中村順造

    ○中村順造君 税関長とどういう関係がございますか。
  172. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) これも同様、税その他すべて経済に精通しておられますから適材と思って採用したのであります。
  173. 中村順造

    ○中村順造君 全くまじめに質問ができなくなりました。税金と関係があるから税関長が入ったというのはどういうわけなんですか。大蔵大臣、これでも天下りでも横すべりでもないですか、どうです。
  174. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 鉄道建設公団等公社、公団の監事の制度をより強化しななればならないということで、警察出身者等が登用される場合には監事につくということでございます。また、各省から入る場合も監事ということが非常に多いわけであります。いま御指摘でございました根本理事のことでございましょうが、これは名古屋の税関長の経験者であるというだけであって、大蔵省の出身者でございます。鉄道建設公団の性質をごらんになればおわかりになるとおり、経理担当として特に大蔵省から求めたいということで、根本君を理事に就任せしめたわけでございます。非常にりっぱな人でございます。国有財産局の貴金属処理部長最後に退官をいたしまして、鉄道の建設公団に入ったわけでございますが、これはもう鉄道建設公団がある意味においては不採算線というようなものを政策巨的を達成するためにやらなければならないというような特殊な公団でありますから、これは経理担当の有能な人材を必要とするということは言うをまたないと思います。
  175. 中村順造

    ○中村順造君 大蔵大臣、鉄道のことでごまかし言われたってだめですよ、鉄道建設公団の不採算線を建設してどうしますか、建設したら国鉄に譲渡または無償でやるわけでしょう、それで建設公団とはどういうととですか、不採算と関係ないじゃないですか、建設後における不採算と鉄道建設公団とどういう関係がありますか。
  176. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この建設公団は、私と前の運輸大臣である綾部運輸大臣との間に設立を認めたものでございます。御承知の日本国有鉄道だけではどうにもならない鉄道建設がございます。これは独立採算制の中でやることのできないものもあります。それは北海道開発とか、離島振興とか、低開発地の開発とか、こういうものの交通網の整備に鉄道が必要であるということはもう論がないところでございます。しかし、これを現在の日本国有鉄道の職制の中でできないということで、新たに政策目的をもってつくられるものの新線に対しては鉄道建設公団の設置を見たわけでございます。でありますから、中には政策的には地方開発等で当然必要な線であっても、その線の建設を行なう過程において、不採算線といういわゆる俗にいわれる赤字線ということである場合もあり得るわけでございます。その意味で、かかる公団、事業団の経理というものに対しては非常にきびしい目で見なければなりませんし、対処しなければならない、こういうことを申し上げておるわけであります。
  177. 中村順造

    ○中村順造君 赤字線でも建設したあとは国有鉄道にやらせるのですからね、建設公団とは直接関係ないでしょう。それはいいです、それは議論しませんが、これは鉄道建設公団は構成がわりかた、警視総監だとか、税関長とか、私は人柄のことは申しません。ただ前歴を見てそれぞれのおい立ちに対する経験なりそれらの問題が、その公団、公社の中で十分に生かされるかどうかというその経歴、おい立ちから申し上げておるわけであります。個人の人柄でどうだこうだということを申し上げておるわけではない。この鉄道建設公団は構成においてはわりかた、いまいろいろ申し上げましたけれども、たくさんある中で比較的構成は部内を登用するとかいろいろ配慮されておると思うのでありますが、次に新技術開発事業団というのがあります。これはこの間理事長に来てもらいまして、内容を聞きましたところ、政府の出資金は二十億七千万、従業員は四十名、ところが現在の損益は損失七千万、入金見込みのうち一千万、こういうことであります。これの構成を見ますと、元次官であった人で大蔵省の次官、科学技術庁の次官それぞれ一名、局長は科学技術庁一名、それから課長が科学技術庁一名、こういう構成になっておりますが、これはどうです。
  178. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 新技術開発事業団の役員は鈴江さんという人が科学技術庁事務次官の経歴がございます。しかし、その前歴は東大の講師とか科学技術庁の審議官という経験でございます。専務理事が原田久さんという人でございますが、これは科学技術庁の科学審議官及び科学技術庁の振興局長の経験者でございます。理事の阿部武夫さん、理化学研究所の開発部長の経験者でございます。池田亀三郎さん、三菱油化株式会社の社長、岩佐凱実さん、同じく理事ですが、富士銀行の頭取、監事長沼弘毅氏、国際ラジオセンター取締役会長、これが昔の大蔵次官ですな。これは非常勤の監事でございます。こういうのが新技術開発事業団の役員であります。以上であります。
  179. 中村順造

    ○中村順造君 これは佐藤内閣になって始まったことであるかどうか知りませんが、いずれにしても私はまだあとたくさんあげますが、みんなこういうケースなんですね。ここらあたりでひとつ総理大臣答弁願えますか。どういうことですか。
  180. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほど来大蔵大臣がお答えし、また、中村さん御指摘のとおりのような陣容でございます。私はしかし基本的なお考え方で、ただいまの新技術開発公団などは私がかつて科学技術庁長官をいたしておりまして、その陣容の鈴江君が入るときにも、これは相談にあずかっております。私、これは必ずしもいわゆる天下りといってただ非難するだけではいかないように思うんですが、できるだけ先ほどお話にありましたように、一つの公団から他へ移ること、これはよほどよくよくの場合でないとそういうことはやるべきでない、これは慎むべきことだ、かように思います。先ほど太田君の点についてお触れになりました。これは名前を言ってまことに恐縮ですが、またその他の理事等におきましても、他の公団等に一度勤務してそうして他へ移る、こういうのはよくよくの場合でないとそういうことをしてはいかぬ、かように私も考えております。また、役所の関係で大蔵省はこういう、ことに予算的な支出をするからという、そういう意味でどうしても公団に人を送り込み得る地位にあるというようなことをいわれます。大蔵省も出かけることはちっとも悪くはないと思いますが、できるだけ各省の人たちが、やはり公団というところには出かけることがいいのではないか、かような意味で登用の範囲はよほど最近は拡大してきた、かように思います。民間人の登用が思うようにできていないということはまことに残念に思います。また、組合等の関係の人でも適当な人があるならば、そういうことも考えてしかるべきではないか、私はさように思います。これは必ずしも排他的なものではございません。問題はそういう人を入れて、そうして全部がうまく調和がとれ、その事業を遂行していくのに十分の効果をあげる、こういう関係であるならば、いかようなところからでもとってちっとも差しつかえない、また、そういうように門戸を開放することが望ましいのであります。かように思います。しかして、先ほど来私が冒頭に申しましたように、本来ならば役所がそのまま、各行政機関そのまま遂行するほうが適当だというような仕事を、特に公社、公団等をつくってやっておるのでありまして、そういう意味では予算的にこれを縛っていく、あるいはまた、鉄道建設公団のごとく、これは必ずしも採算点だけで見ていかないで、地方開発等の立場においてこれをやっている。だからそういう意味で経理等については国民負担をこういうことでふやさないように十分その効果をあげる、こういうような立場で運営に当たっていく、かような点を気をつけておると思います。私は、ただいままでの人選等が一部からごらんになりまして非常に片寄っている、かような非難がないように今後とも一そう気をつけてまいりたい。ことに御指摘がありましたように、ばく大もない退職金をもらって、そうして退官していく、こういうこともこれはいかがかと思います。  もう一つ運営上非常に困りますのは、この種のものが特殊な地位である、かような立場から非常に長く同一の仕事に勤務する、これはなるべく避けたい。また、ただいままでは別にこれという内規があるわけではありませんが、同一の人が同一のポストについてその期間は大体八年、これはものによりましては四期、四年の任期というものがあるならば、大体二期くらいでやはり新しくかわってもらうわけであります。そうしてこういうようなことが自然にきまるように指導をしておるつもりでございます。しかしながら、なかなかこういうものは特殊地位である、特別な収益があがるという、そういう立場から見て、非常な特権を与えたような印象を与えておりますことはまことに遺憾に思いますけれども、しかしながら、先ほど来、給与のたてまえから民間と公務員との中間くらいのものと、かような点も御了承いただきまして、問題はこれらの公社、公団等が真にその目的、その事業を完全に遂行して、そうしてりっぱな業績をあげ、国民に対して負担をいたずらに重からしめるというような印象を与えないように、十分気をつけてまいりたいと、かように思います。
  181. 中村順造

    ○中村順造君 いま、一つの公団からまた次の公団ということは望ましくないと、こうおっしゃるのですが、現実はそういう傾向が非常に多いわけです。農林大臣お尋ねいたしますが、この農地開発機械公団というのはあなたの所管ですか。
  182. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) さようでございます。
  183. 中村順造

    ○中村順造君 あなたのところの理事長はたしか愛知用水公団の監事から来られたわけですね。
  184. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農地開発機械公団の理事長といいますのは、理事長はいまは違います。前は成田努君が機械公団の理事長をしておりましたが、これは愛知用水の理事長に回りまして今度やめました。いまは神奈川の副知事だったですか、松本烈さん、こういう人でございます。
  185. 中村順造

    ○中村順造君 ちょっとしつこいようですが、しばらく総理も聞いておってもらいたいのですが、成田さんは農地開発機械公団をおやめになったときに八百五十五万九千四百円という退職手当をもらって、それからどこへ行かれたのですか。
  186. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 先ほど申し上げましたように、機械公団の理事長から愛知用水公団の理事長にかわりました。いまはやめました。
  187. 中村順造

    ○中村順造君 それからどこへ行かれたのですか。
  188. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いまはやめて民間におります。民間で何もやっていないと思います。
  189. 中村順造

    ○中村順造君 農地開発機械公団というのは、私の調べたところでは民間人は一人もおられないようですが、どうですか、そのとおりですか。
  190. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いま理事が三人、監事が一人、理事長松本烈、この理事長は民間人でございますが、あとは前歴が官僚というか、公務員でございます。
  191. 中村順造

    ○中村順造君 私が先ほど申し上げた松本理事長は愛知用水公団の監事から機械公団の理事長にこられたのかと私がお尋ねしたら、いまは違っておるということですが、どうですか。
  192. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) いま違っておるというのは成田努さんです。この人は機械公団の理事長をやっておりまして、それから愛知用水公団の理事長に回りまして、いまはやめております。それからこの機械公団の理事長の松本烈という人はもとは神奈川県の副知事から東北開発株式会社の理事、東北開発株式会社の理事から機械公団の理事長になった、こういうことでございます。
  193. 中村順造

    ○中村順造君 農林大臣の所管でしょう、この日本中央競馬会というのは。この中で理事長は、森林開発公団の理事からおかわりになり、さらに常務理事の土屋さんは農地開発機械公団から入られ、さらに監事の太田さんは経済企画庁の審議官から専売公社の監事になり、日本中央競馬会の役員をしておられますが、その関連はどうなっておりますか。
  194. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 中央競馬会の理事長は石坂弘君でございます。これは前に——前々歴でございますが、森林開発公団の理事長をいたしております。副理事長の森茂雄、これは前々歴は農林省の畜産局長でございました。常務理事の土屋四郎という人は、これは農地開発機械公団の理事でございました。前々歴でございます。それから檜垣好文、これは前々歴が食生活改善協会の常務理事でございます。それから亀井由男という常務理事、これは日本中央競馬会の総務部長から上がりました。それからその他の理事は競馬会から上がった者等が、常務理事でない普通の理事をいたしております。監事といたしましては、やはり中央競馬会から上がった者、経済企画庁の審議官から上がったものなどが監事をやっております。
  195. 中村順造

    ○中村順造君 この理事の方々にはそれぞれ専門家ですから、私も納得できるのですが、もう一回お尋ねしますが、森林開発公団——先ほど総理の御答弁にもありましたように、公団から公団という見地から、農地開発機械公団だとか、極端な場合には専売公社の監事などからなぜ中央競馬会に人を入れなければならないかという、それをお答え願いたいと思うのです。
  196. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) ちょっと正確に開き及びませんでしたので、おそれいりますが……。
  197. 中村順造

    ○中村順造君 理事長の石坂さんは森林開発公団の理事長、これは前々歴です。それから後に日本中央競馬会の副理事長になられ——公団から副理事長になられて、またこの中央競馬会の理事長になられた。それから土屋さんは農地開発機械公団の理事から海外移住振興株式会社の常務取締役になって中央競馬会の副理事長になられた。さらに監事の太田さんは、前々歴は経済企画庁の審議官で、日本専売公社の監事になられて、中央競馬会の監事になられた。まん中のほうは専門家で構成されておるからいいが、この三人の方は、公団から公団に、ことばを悪く言えば、渡り歩く、いわゆる公団屋とも言うべきことが、これは中央競馬会だけじゃないのですが、公団、公社、たくさんあるわけです。しかも、この中では、私はこの内容を聞きましたら、積み立て、国庫納入等、それはかなりの成績をあげておられます。しかし、一方一千万円の退職手当をもらってやめられた人がこの中に三人過去にはあるわけです。こういう見地から私はお尋ねしておる。
  198. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 私が関係する前の人事でございましたが、それぞれまあ有能といいますか、理事長の石坂君のごときは、私も森林開発公団理事長時代によく知っておりますが、さっき総理から申し上げましたように、あまり長く一つの職にとどめていてはどうかということで、やめたにつきまして、有能な才能を拾って中央競馬会のほうに持ってきたのではないか、こういうふうに思います。その他企画庁の審議官、あるいは農地開発機械公団から移った者等の御指摘がございましたが、大部分は、中央競馬会としては、中央競馬会に経験のある、下から上がってきたということでございますが、中に、そういう才能を認めて採用した、こういうことに相なっておるかと存じます。
  199. 中村順造

    ○中村順造君 私は納得、了解はできませんが、時間がかかりますから次に移りますが、運輸大臣にお尋ねしますが、国鉄の中に、日本国有鉄道役員の退職手当基準、これは三公社ともみな政府機関には全部あるわけですが、これは法律であるようになっておるのですが、この中で、鉄政第何号というような番号をつけて改正しているのですが、鉄政第何号というのは、これは何ですか。
  200. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 私もよく研究いたしておりませんから、係員から答弁させます。
  201. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 鉄政第何号とおっしゃいましたのは、鉄道監督局の財政課の略称でございまして、発簡番号につける名前等であります。
  202. 中村順造

    ○中村順造君 役員の退職手当のことでお尋ねいたしますが、これは役員に、もちろん国鉄に入って、国鉄から局長でやめる。そのときには当然職員としての退職手当が出るわけです。それから理事になって何年かするとまた別の退職手当が出るわけですか。
  203. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先ほど退職の問題に対しましては、六五%というお話がありましたが、月額に在職月数をかけ、それに六五%の割合を乗じた相当額を支給するということになっておりますが、その他の点に対しましては、局長から答弁させます。
  204. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) お答えいたします。お尋ねのとおりでございます。
  205. 中村順造

    ○中村順造君 これは計算すればわかることですが、先ほども私申し上げましたが、職員の場合は、十年つとめても十カ月分しかない。かりに役員が十年つとめたらどうなるかというと、七十八カ月分あるわけです。しかも、四十万円という基本給。私は十河さんとかつて同じ職場、国鉄の中におったことがあるわけですが、私は十河さんの退職金を見て驚いた。二千百二十一万円という退職手当をもらってやめられた。これは労働者としてはもう夢にも考えられない。おそらく国鉄職員も初めて聞いたらびっくりすると思いますがね。しかも、いまの石田総裁はかつて監査委員長として何年かおつとめになりまして、千百八十五万六千円という退職手当を国鉄からもらって、今度また国鉄の総裁に就任をされている。これはどういうわけですか、どういう関係ですか。
  206. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 民間における長い間の経済に対する体験を持ち、また仰せになりましたように、国鉄の監査委員長を長くやっておられましたその経験を生かし、困難なる国鉄を経営させるに適任者であると思いまして、これを採用したものだと思います。
  207. 中村順造

    ○中村順造君 運輸大臣、ちょっと私の質問と御答弁が違いますがね。私が申し上げたのは、いまの石田総裁の人柄とか力量手腕のことを言っているのじゃない。この制度の問題を言っているわけです。一たん退職手当を一千万円ももらって国鉄をやめた人が、今度またやめていくときには二千万円なり三千万円もの退職金をもらってやめていくが、その制度がそれでよろしいかどうかと言っている。
  208. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先ほどから各公団、公社に対しまして御批評がありましたような、ただ単に、石田さんの場合のみならず、そういう例がたくさんありますが、先ほど来、総理大臣がお答えになっておられますように、一ぺんには改められないとは思いますけれども、今後順次これはやはり改正すべきであると思います。しかし、いまの石田さんは毎月の月給は取らないのでございます。でございますから、私は、石田さんには期するところがあるのじゃないかと思います。
  209. 中村順造

    ○中村順造君 月給を取らないとか、取るとかということは本人のかってじゃないか。それはどうなっているか説明してください。
  210. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 石田総裁は俸給を辞退しておるというようにわれわれは聞いております。(「どういう処理になっているか」と呼ぶ者あり)その処理の状況については、いまつまびらかにいたしておりません。直ちに調べまして……。
  211. 中村順造

    ○中村順造君 鉄道監督局長、直ちに調べて…。いままで何年間——いまに始まったことじゃないでしょう。いままでどうしたのですか。給料を取らないというのなら、供託をしておったのかどうか。そういう規定が国鉄にあるのかどうか説明してください。
  212. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 先ほど来申し上げておりますように、いまのところは、退職手当をもらった人が再び公団、公社の理事長並びに理事になることを得ずという規則がないものでありますから、これはやはり一つの経験を持っている人がその事業を行なうために便利である、また、その経験は生かすべきであるということから、前に退職手当をもらったから云々ということじゃなくて、その仕事をほんとうに生かするためにやっていることだと私は思っております。石田さんの場合には、まさにそのとおりだと思います。給料を遠慮して取られないのは本人の自由意思ですが、その御意思は認めていただきたいと思います。
  213. 中村順造

    ○中村順造君 答弁が違う。取らない給料をどうしているか。給料を取らないということはどうするか。そういう度制があるか。
  214. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いま事務的に調べて御答弁申し上げます。
  215. 中村順造

    ○中村順造君 待ってますから調べてください。
  216. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記とめて。   〔速記中止〕
  217. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をつけて。
  218. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) いま佐藤監督局長から答弁させます。
  219. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 国鉄総裁の俸給の件でございますが、ただいま国鉄に連絡して調査をいたしましたところ、三十八年十二月に国鉄総裁から毎月の俸給を辞退したいという申し出がありまして、それに基づきまして、現実に毎月の俸給は支給しておらぬ、こういう状況になっておるようでございます。
  220. 中村順造

    ○中村順造君 そうしたら、その毎月四十万円というのはどうなるんですか。どうしているんですか。
  221. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) したがいまして、俸給予算上はその分だけは残額になっておるわけでございます。
  222. 中村順造

    ○中村順造君 受け取る受け取らないは本人のかってですが、事務的処理がどうもぼくは納得できないんですが、もう少し詳しく説明してくれないかな。
  223. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) いま一部お答えしましたが、現実に総裁の分に該当する分だけは現実に支給をしていない、しかし、毎月の俸給でございますので、昨年末の期末手当等は支給いたしました。したがって、俸給手当の全額でございませんで、その一部が現実に支給しない状態にある。こういうことでございます。
  224. 中村順造

    ○中村順造君 これは何回言っても同じですが、受け取る受け取らぬは本人のかってですが、この前の委員会で私は当事者能力の問題について電電の総裁と国鉄の裁総に来ていただきまして、やはり労働組合その他の関係もあり、当事者の能力は十分に持たしていただくべきじゃないかという議論をしたんです。そうしたら、仲裁裁定の制度が一番いいなんて、おそらく常識では考えられない答弁をしているわけです。いま聞くと、自分の俸給も受け取らない。これは変則的なものの考え方ですよ。そういう人にこの大国鉄をまかしておいていいのかどうか。運輸大臣ひとつ答弁してください。
  225. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) 私はいま仰せになりました、受け取る受け取らぬの問題でなくて、私は、そういうことを推測するのはよくありませんけれども、いま御指摘になっている問題は、前の監査委員長をやめる時分に退職手当を取っておるというような関係からそういうような心境になられておるのではないかと思っておりますが、しかし、これが当事者能力云々の問題につながった問題ではございませんで、国鉄総裁自身の心境でありますから、私は当事者問題その他とつながっている問題ではないと思います。
  226. 中村順造

    ○中村順造君 当事者能力の問題とはつながっておりませんよ。おりませんが、そういうものの考え方ですよ。おれは給料もらってないからおまえたち少なくてもがまんしろという考え方につながってくる。そういう変則的な考え方は、これはノーマルな考え方じゃない。正常な人間の行為だとお考えになりますか、運輸大臣。
  227. 松浦周太郎

    国務大臣松浦周太郎君) お説、そういう説は立つと思いますが、私は、石田さんの考えは相当謙譲な考え方であると思っております。いま仰せになりましたような、そういう悪びれた考えでやっておるのではない。石田さんのおっしゃるのは、これは公共企業体の公労法によるものは武器を持っていない、だから、これは仲裁裁定によることが一番公平であるとおっしゃっておられたのでございますから、別にそういう、おれは取らぬからおまえたちも安くやれ、そういうふうな考えでお答えでなかったことは、当時私どもも一緒におりましたから、この石田さんのお答えは相当謙譲な立場から現在の態度をとっておられると思っております。
  228. 中村順造

    ○中村順造君 運輸大臣は謙譲だとか謙譲の美徳だとか言わているが、そんなことは謙譲じゃない。謙譲だと考えるあなたの頭もまたおかしくなっているのじゃないか。どうです大蔵大臣、国鉄総裁給料返上しているそうですが、よその総裁連中にも全部返上させたらどうですか、それが現状なら。
  229. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) これはもう法制のたてまえ上総裁にもみな月給を差し上げるということになっておるわけでありますから、いただいたほうがいいと思います。ただ、石田さんは、いまあの性格を見ましても、国鉄の再建ということに非常に全身全霊を傾けておられるようでありますから、私はそういう意味で、私がもらわないから諸君もがまんせよというのではなく、老骨を引っ下げてやっているのだから、月給だけは辞退しながら懸命にやろうというお考えだろうと思います。やはりすなおにおとりになっていただくほうがいいと思います。ただ、私のほうでは、月給はもらわぬ人がたくさん出ればいいなどという考えは持っておりません。正常な支払いは受け取るのが、すなおだと思います。
  230. 中村順造

    ○中村順造君 老骨を引っ下げてやるということは非常に勇ましいのですが、私どもは、いまの考え方を聞きまして、現実に俸給も受け取らない、そこには人を管理する面に無理がある。大蔵大臣、老骨を引っ下げて勇ましいかもしらぬが、逆に私に言わせますれば、それは電電の総裁にしても、この間私が受けた印象から、もうよわい八十歳におなりになろうとしておる。日本の国には少壮気鋭の人材が雲のごとくあるのです。本来ならば、八十歳にもなろうとする国鉄総裁なり電電総裁は、あのものの考え方をするならやめてもらって孫の守でもしてもらったらどうかと思う。決して正常でもなければ、老骨を引っ下げて勇ましいことでもないと思います。総理大臣どうです。いまのような形ですが、三公社。専売は別ですが。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) しばらく質疑応答を聞いておりましたが、大体退職金が多いのではないかというところからいつの間にかいまのような議論に発展したように思うのですが、私はもっと本筋から見て、退職金、これはどうも一般の職員の場合と、それから重役の場合と、これは民間においても区別しておるようであります。したがって、鉄道の場合に、理事になる、これは一応身分が変わってくるんだ、かように私は思います。したがって、これはもう局長から連続しての給与だと、こういうたてまえじゃないだろう。これはやはり民間の給与と同じようなたてまえで考えてしかるべきじゃないか。石田総裁の場合に、前職が監査委員会委員をしておられた。そのほうの退職金は退職金として出ております。これは私が指摘したいわゆる公団を右から左に回ったというのとは違うんです。これはいわゆる監査委員としてりっぱな才能を持っておられる。そういうところで総裁になられた、かように私は思いますので、その謙譲の徳そのものは別としても、とにかく退職金はそのほうをとられたということはちっとも差しつかえない。今日また総裁としてやめられるときに退職金をとられても、ちっともとやかくは私は思いません。こういうことは、やっぱり民間の場合のように、重役とかそういう意味の経営の衝に当たる者と、それから一般職員の退職金と、これはどうも常識的に見まして違っておる。違うたてまえできておる。これが世の中の常識的なものではないかと、かように私は思います。したがいまして、これは別に弁護するわけでもありませんが、先ほど来議論のありましたいわゆる右の公団から次の公団に移ると、こういうのとは違う、かように私は区別しております。  また、退職金が多いと言われますが、これは幾らの率がそれなら適当かと、こういうことはなかなか申し上げかねますけれども、民間の場合でも、重役さんの退職金というものは特別計算をしておられる、かように思いますので、それに準ずる扱い方、かように御了承いただきたいと思います。
  232. 中村順造

    ○中村順造君 おことばを返して恐縮ですが、民間とおっしゃるけれども、民間は、これは自分が金を出して出資をして、ある場合には社長だとか役員はですね。そうしてそれでも左前になったときには借金をして回らなきゃならない。私が声を大にして申し上げておるのは、これは政府機関ですから、一律にそういうふうな資金を政府が冒頭申し上げましたように一兆四千億という膨大な国費をつぎ込んだ経営体なんですから、それが格差だとかいろんなことを言われても、私は納得できないわけですよ。おのずからこれは分に過ぎていると思うんですよ、退職手当にしたって。金のことでたいへん恐縮ですけれども総理大臣、あなたと同じ月給ですよ、Aクラスは。何人もおりますよ。私どもは、総理大臣というのが、あなたが最高くらいに思っておったが、同じ政府出資の公団、公庫、公社、事業団、こういうものにはあなたと同じ俸給、それから副総裁、理事で大臣と同じ人がたくさんありますよ。それはあまりにもひどいじゃないか。国民が黙っておっても、国民はそれは真相がわかれば納得しません。私のところにもたくさん投書が来ておりますがね。その点ではどうお考えになるですか。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 総理大臣の給与とこれはまた別だろうと思いますが、大体総理大臣は一番たくさん給料をとっておるものか、かように考えると、必ずしもそうでないとおっしゃる。ただいま、民間の場合に、いまの国鉄くらいの事業量を持っているところの会社、これに匹敵すると、必ずしも四十万という月給は高い月給ではない。しかし、いま中村さんが御指摘のように、政府の予算でやっておるじゃないか、あるいは財政投融資で特別のめんどうを見られているじゃないか、いわゆる資金を集めるというような苦労はよほど違う、こういう御指摘は、そのまま当たっておると思います。私は、最近、日銀総裁、これをきめましたが、これなどは、日銀総裁は銀行の頭取でいたほうが給料はよほど上じゃないか、かように私は思います。いわゆる三菱のほうが上ではないか。しかし、これはその給与ばかりでなくって、やっぱり仕事の性格から見て、その仕事を引き受けていただいたと、こういうので、必ずしも給料だけでその仕事に対する熱意を買うと、こういうようなことはないと思います。だから、その点は御心配いただくことはたいへんけっこうですが、それぞれのその仕事の性格、それを十分了承して、また、国家国民に奉仕すると、こういうような立場で働かれるんだと、かように思いますので、石田総裁の場合なども特にそういう点を感ずるわけであります。しかし、その見方についていろいろ感じ方も人によっては違いますから、先ほど来のように御議論が出ておると思います。私もそれについて一々どうこうとは申しませんが、中村さんの見方のような方もある。同時に、私どものような見方をしておる者もある。先ほど運輸大臣もそういう意味で指摘したのではないかと思います。問題は、ただいまの退職金を一体どのくらい差し上げ、どのくらいとるのがいいのかと、こういう点が結局退職金をきめる場合にいつも問題になるのであります。私はただいままでのところ一応当を得ておるのじゃないかと、かように思っておりましたが、ただいまのように、前総裁のとった退職金が非常に多いと、こういうような御非難もあるようですから、退職金自身が適正なりやいなや十分事務当局において検討させて、これは私がやってみたいと、かように思います。必ずしも直ちにあれは多いとか、こうきめてかかることはやや事実に適合しないのじゃないかと、かような私は感じを持っております。しかし、十分精査すると、かようなことはお約束できると、かように思いますので、そのほうの担当者に十分各公団、公社等の退職金はどんな割合で支給しているか、つまびらかに調査してみたいと、かように考えます。
  234. 中村順造

    ○中村順造君 いままでの質疑で国民はよくわかったと思うんです。構成が非常に不明朗である。天下り、あるいは横すべり、たらい回し、しかも巨額の金額が全額政府出資の一兆四千億というこういう政府機関にもっていってそういうことがなされておるということは、本委員会を通じて私は国民がよくわかったと思います。  金のことはこれでよしますが、総理お尋ねいたしますが、私立学校振興会というのがございまして、これは文部大臣の所管ですが、これはこの前文部大臣に私は具体的な例を引いてお尋ねいたしましたが、何かお聞きになりましたか。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 文部大臣から、この監事をしておる人の問題について報告を受けました。たぶんお尋ねになる御意見もこの監事についてのお話ではないかと思います。この点は、文部大臣は十分調査をし、そうしてこの処置をすると、かように私は聞いておりますが、どういうふうになりましたか、その後の結果はまだ聞いておりませんが、十分慎重に取り組んですべきものと、かように存じます。
  236. 中村順造

    ○中村順造君 この人は——今度は、総理でありますが総裁にお尋ねしますが、総裁としてお答えをいただきたいんですが、自民党の次期参議院選挙の公認候補じゃないですか。
  237. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そのとおりでございます。
  238. 中村順造

    ○中村順造君 文部大臣は、この前私の申し上げたことにつきましては若干了承しまして措置すると言っておりますが、こういう問題の措置は、これはどうなんですか、法制局長、法律的に考えてそれでいいのですか。
  239. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) 公団、公庫のそれぞれ役員、監事等につきましても、身分保障がありますと同時に、また勤務の関係についての基準も掲げられております。そういうものに該当すれば、話はまたその法律の示すとおりのことになりましょうが、その事実の内容を私は的確にわかりませんので、大体のたてまえだけを申し上げたわけであります。
  240. 中村順造

    ○中村順造君 事実の内容がおわかりにならないということは、法制局長官、おかしいではないですか。いま自民党の総裁が、公認候補者だと、こうおっしゃっている。これは事実です。総理がそうおっしゃったとお考えにならないんですか。私学振興会の現職監事として十四万円を私学振興会から報酬を受けている。仕事はこれは常勤のはずですが、何をなさっているか知りませんが、一方では働いておりながら俸給は返上する制度も認められる。一方では、仕事をなさっているかどうか知りませんけれども、おそらく常識的に考えれば六月の選挙に出るいまの段階で何にもせずにいるということはないと思うが、どうですか。
  241. 高辻正巳

    政府委員(高辻正巳君) ただいま承ったところでは、自民党の公認候補というふうな指名といいますか、公認候補の推薦があったということでございます。私立学校振興会等の法律に関して、そのこと自体が役員としての勤務についての制約として何かしなければならぬというようなことにはならないと思うのです。公認候補に推薦されたという事実そのことだけでどうということには私はならないように思います。
  242. 中村順造

    ○中村順造君 私はこれは国民が判断すると思いますから、これ以上は私はこの問題はやめますが、いずれにいたしましても、政府機関、私のいう公社、公団、公庫、それから事業団、一切含めて、またこの国会でも若干できるようでありますが、今日まで九十九、その全出資額は一兆四千億、こういう国民の血税が注がれた内容が、運営の面でもたくさん問題があります。きょうは時間がございませんから、そのそれぞれの政府機関の運用の面について私は申し上げる時間がなかったわけでありますが、ここに一通りの資料をそろえて来ておりますけれども、いずれにしても、その機構、それから運営、管理、それから現実に行なわれている非常に不明朗な点、こういうものは早急に総理にひとつこの公団、公庫、政府機関については解明をしてもらわなければならぬし、また、そういうことがあっては国民に私は相すまぬと思う。ひとつ総理にこの際この考え方に対して決意をひとつ披瀝してもらいたいと思う。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 公社、公団、事業団等につきましては、私の考え方を長々とお話しいたしました。ただいまは中村君から各点についてまた具体的に例をあげられて御指摘になりまして、御注意を賜わりましたので、十分その注意された点について政府といたしましても誤解を生じないように、また、今後とも一そう厳正にこれらの事柄について対処してまいりたい、かように思います。
  244. 藤田進

    藤田進君 関連。中村委員の集約で私もその点は何も申し上げることがないのですが、ただ、お答えの中に含まれているかどうかで、これは総理からお答えをいただいておきたいと思うのですが、御承知のように、もう雨後のタケノコのように戦後だんだんふえてきた公団、公社、事業団、そこで、その出発のときにある程度総裁あるいは理事長といったようなものを想定しながらまいりましたために、あの人の社会的地位その他から見て、前歴から見て、この程度の手当はしなければならぬだろうといったようなことのウエート、かなりその部分も買ったわけであります。しかし、戦後すでに二十年、だんだんと二代、三代、四代になってきまして、いま資料全体を精査いたしますと、その資本金において、規模において、したがって重要度においてかなりの序列にあろうと思われるものが、見ると、総裁の給与なるものは案外低くて二十四、五万。ところが、当初非常に古老の、エキスパートであったかどうかは別として、社会的地位の高かった人が来たところは、案外規模が小さいのに三十五万、四十万というようになって、どういうわけでこれがきまっているかということが不明確である。それで、全く支離滅裂になって、いま見ますと、このことから退職金というものがむろんそういった格差、差等がついてくる。そこで、国鉄中心に事務当局にも命ぜられて検討してみたいという総理のせっかくの御決意でありますから、いまのお答えと関連いたしまして、そういった一連の役職員、ことに役員ですね、総裁あるいは理事長以下、そういった役員クラスを、各公社、公団、事業団一連の一つのものとして、この際もう再検討される時期にきているように思うので、これはぜひ、中村委員が指摘いたしましたのもある意味では一つそこにあるわけでありますから、その点も含めてこの四十一年度予算あたりまでには一つの成案を持たれたいと希望するわけであります。
  245. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま藤田君から御指摘がありますように、公社、公団その他事業団と、一口にさように申しておりますが、高いのは四十万、また少なくとも二十二万とか、その間に全部が入っておるということでございます。また、退職金等の支給の率等もそれぞれまた変わっておるのではないかと思います。そこで、ただいまお話しになりますように、一度全部をまとめて、そうして調べてみて、そして適正なものをつくったらどうかという御意見でございますが、まず、その規模としても、総裁あり、副総裁あり、また理事長というような形であったり、あるいは理事の数もそれぞれによりまして多いのと少ないものがありますので、それぞれ一律にはなかなか言えない。これはむしろ差等があるほうが望ましいのであって、そういうことが適正なりやいなや、役員の数まで含めてその規模は適正なりやいなやというようなことを一度見るのが適当かと思います。しかし、大体公団ができる際には国会の御審議をいただいておるので、ただいま申し上げるような点は、十分皆さま方も御了承のものではないか。ただ、最初から退職金だけは幾らやるかというところまでは言われておりません。先ほど来の議論では退職金の問題ではないかと、かように私は単純に考えたのでございますが、しかし、公団を一度に全部そろえて審議したわけではなし、それぞれ順次公団が出てきておる。今日公団の数も非常に多くなってきたんだから、さらに十分その連係をとってみて、そうして公平な立場にあるかどうか、一度注意する必要があるんだと、こういうお話は、そのまま私どもも伺っておいてしかるべきだ、かように思いますので、これからできるものについては十分御審議をいただくことではございますが、今日までできたものをもう一度内閣等において適当な機関で全部を一度一表につくってみることも一つの方法ではないかと思います。せっかく御意見もあり御注意もございましたから、そういう点は十分ひとつ政府におきましても考えてみたい、かように思います。
  246. 中村順造

    ○中村順造君 時間が参りましたから、私はきょう最後に、先ほど関連質問でいたしました原爆被爆者の問題を申し上げておきたいと思うんですが、この前本会議で申し上げましたので、多くは申し上げませんが、十分おわかりをいただいておると思う。特に厚生大臣に私は申し上げたいんですが、あなたの前任者は広島で一日厚生省というのをお開きになって、かなりいろいろなおみやげをあそこに残してきておられるわけです。これはこまかくはまた委員会などでやりますが、あなたのこの前の本会議答弁では、それらの点は一つも触れておられない。私が聞いておらないいわゆる医療法、援護法に改正する用意があるかどうかというようなことをあなたは想定して答えられようとしたけれども、もちろんこれは現在の医療法では救われない。どうしてもこれは生活援護まで含めて、援護法に発展させなければならないという私の主張なんです。けれども、それはあなたに答弁をもし求めれば、あなたはいままでの経緯をよく御存じでないから、医療法でよろしいと、こういうような答弁を本会議でなさってはたいへんだというわけで、私は質問しなかったわけです。いずれにしても、一日厚生省で前の小林厚生大臣は援護手当を被爆者一律五千円支給する、ここまで明確に記者会見などしておっしゃっておられるわけです。これは、総理大臣、先ほど公平の原則などとおっしゃったけれども、人間が原爆に被爆をしたというのは、日本人だけなんですよ。しかも、私はしばしば現地に参りましたけれども、これは要するに中身より急を要する問題です。被爆をしてもう二十年たっております。どんどん死んで行くわけですよ。これはいわゆる緩急よろしきを得なければたいへんなことになると思うのです。これはひとつ十分大蔵省とも折衝されて、手厚い手当てをこの被爆者にしていただかなければ、私は公約違反になるという言い方はいたしませんけれども、この点は、ひとつ総理大臣もう一回、御苦労でも大蔵大臣からもあるいは厚生大臣からも答弁をお願いしたい。  時間が参りましたから、答弁を承りまして、終わります。
  247. 神田博

    国務大臣(神田博君) 原爆の被爆者対策につきましては、両院の決議もございますので、これを十分尊重いたしまして、また、いまお述べになりましたように、小林厚生大臣が現地における談話などもよく承知しております。十分検討いたしまして処置をいたしたい、こういうように考えております。
  248. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 原爆障害対策につきましては、政府もつとに前向きで対処いたしておるわけでございます。三十九年度当初予算の十三億一千百万円に比べまして、四十年度予算におきましては御存じのとおり二六%増、十六億四千五百万円を計上いたしておるわけでございます。残余の問題につきましても、十分検討してまいりたいと思います。
  249. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この問題は、御指摘のように、唯一の被爆国、そうしてその処置はもちろん十分私どもも対処していかなければならぬと思います。幸いにして衆参両院におきまして決議された事項もございますので、その趣旨に沿って私もこれから対処してまいりたい、かように思います。
  250. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 中村君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  251. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、山本伊三郎君。   〔委員長退席、理事村山道雄君着席〕
  252. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、本国会の予算審議も最終段階になりましたので、この国会の重要な一つの問題でありますが、医療費の問題ですね、一応これで結着をつけてみたいと思います。  そこで、実は総理にまずお尋ねいたしますが、私は時間を節約したいほうですから、具体的に率直にお尋ねします。  二月二十七日に、支払い者代表と官房長官との間に了解事項ができたのであります、その前文に、今次医療費問題収拾についてはその取り扱いに対して佐藤総理にあずけると、こう言っているのですが、佐藤総理はあずかられたそのことがあるかどうか。
  253. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 官房長官が協議をいたしましたその事項等において十分報告を伺い、そしてこの第一項は、総理にあずける、こういうことで話が両者——両者というか三者の間の話ができましたと、こういうようなことを報告を聞きました。
  254. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこに問題があるのです。そう言われるだろうと思っておったのですがね。支払い者代表は、この五項目に対する問題は政府は了解をした、こう思っている。あなたは報告を受けたと言っている。私はそうじゃない。あなたが了解されたということですね。
  255. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいま山本さんは、その全部について政府は了承したか。私のは、いまお答えしたのは、第一項だけについてお尋ねのようでしたから、第一項についてお答えしたのですが、これは全体として官房長官が政府を代表して交渉いたしたわけであります。私はその立場において報告を受け、それを了承した、かように申しておるのでありまして、別に食い違いはございません。
  256. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その点は、私はいろいろと議事録なんか見ておりますが、その点がまだわからないのですが、第一項が全部にかかっておるのですよ。当面の措置、恒久措置ということで、支払い者代表との間に、橋本官房長官、自民党代表との間に了解ができた。その処置については佐藤総理にあずけたと言っておるのです。ここに私問題があるので聞いておるのです。あずけたということは、あなたが、政府が了解をして、オーケーしたかどうかということを聞いておるのです。
  257. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 全部の申し合わせ事項、第一項は全部にかかるという仰せでございますが、第一項については佐藤総理にあずけると、こういうことのように私は了解しております。
  258. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これを読まれたのですか。
  259. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) はい。
  260. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは、一々言わんといけないですかね。当面の措置として一、二にいま言われたやつがあるのです。二には、「各種医療保険財政の健全化に資するため、財政事情の許す限り、極力、国庫負担の増額等、必要な措置を講ずる」、国保、日雇健保の医療保険財政については特段の配慮をする、これについてはどうですか。総理にです。これはあなた了解しているかどうか、それを確認しておる。
  261. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 了解事項を順守しない、それでただいま読んでいるかと言われるから、これをはっきり読んだんですが、(1)は、「今次医療問題収拾の取扱いについては佐藤首相に預ける。」ということで了承しましたと、かように申し上げております。これはおわかりいただけたでしょう。それに第二項はこれから必要となる措置を講ずると、こういうことでございましたが、これから財政事情の許す限り必要な措置を講ずるということで、いわゆる政府の今後のあり方、処置等についての方向が示されておるわけでございます。大蔵省並びに厚生省等におきまして、そういう意味で十分検討したいということでございます。第三は「保険三法の改正案については政府は審議会の答申を待ち、これを尊重する。」と、これはこのとおりであります。あとは省略いたします。
  262. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ大体この了解事項は政府も、いわゆるおのおの総理自体がわかったというか、これに承諾をしたということに解していいですか。もう一ぺんちょっと済まんですが、いいですね。そこはっきりしておかぬとね。
  263. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 先ほども申しましたように、官房長官から報告を受け、私自身が了承したわけでございます。
  264. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこでいよいよ本題に入りますがね、これは厚生大臣でいいですが、この前、一月一日に職権告示によって九・五%上げられた際に、現在の薬価基準価格と、それから実勢価格の調査をしてそれを参考にされたかどうか。
  265. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。中医協に御承知のように薬価改定も諮問いたしておりますが、この薬価改定は昨年の十月一日を基準といたしましてその実勢価格を調査いたしまして、しかるところ三%ほど出てまいっておりまして、これを有沢委員長の御意向に基づきまして医師の技術料に振りかえたいと、こういうことを中医協に諮問いたしております。三%、こういうことでございます。
  266. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 きょう本委員会に出された厚生省関係病院における主要医薬品の購入価格状況、これ見られましたですか。
  267. 神田博

    国務大臣(神田博君) それちょっと私承知しておりませんから、政府委員にちょっと聞いてみます。
  268. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 御要求によって、厚生省関係でいま調べられる社会保険病院とか、あるいは船員保険関係の病院のうちおもなものについて、それが現実に薬品をどういう価格で購入しているかという実際の姿をまとめたものでございます。
  269. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、それあなたに聞いているんじゃない。厚生大臣見たか。あなた見てなければだめですよ。これからあなた答弁するんだから。三月二十九日現在だと思います、この表は。これを見ると、主要二十品目によって出してもらったのですね。相当大きい値開きがあるんですが、これはどうですか。三%という……。
  270. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。先ほど申し上げましたのは、昨年の十月一日の薬価の実勢調査をして三%出たということを申し上げたのであります。その後、御承知のように、貿易の自由化等がございまして薬価の値下がりがきております。それから製薬業者の設備投資が完成してきておりまして、いわゆる近代化、合理化が進んでまいりまして、それらに伴いましてやはり下がってきております。これを今年の三月一日を基礎にいたしまして実勢調査をいまいたしておる途中でございます。
  271. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや、あなた、そうじゃない。出ているのですよ。この出ているやつは三%くらいで、たくさん大きい開きがあるから。で、従来は違いますよ。一ぺん保険局長説明してやりなさい。わからない。
  272. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先ほど大臣から申し上げ、またいま申し上げていることは、全体としてどの程度の値下がりが期待できるか、こういうことを申しておるわけであります。三%と申し上げているときは、薬価について見ますと、ほぼ一〇%でございます。薬の値段が平均して一〇%程度下がれば、医療費との関係においてはほぼ三%程度の節減が期待できる。また、それ以上下がればおよそ薬価の下がった割合の三分の一程度が医療費として節減ができる、こういうことでございます。  それからお手元に差し上げてありまするのは、これは各病院の実際に購入している価格でございまして、これが薬価基準と隔たっておりますのは、これは当然でございます。いまの薬価基準のきめ方が九〇%バルクできめられておりまするので、病院のように比較的有利な立場で薬を買うことのできるものは、当然のこととして薬価基準よりも相当低い価格で買い入れをしておるわけでございます。
  273. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなた言われたバルクライン九〇方式についてはあとで聞きますが、ぼくが尋ねておるのは、このあと出されたこの実際購入費と、それから薬価基準価格の差というものはきわめて大きいですよ。一つの例をとりますと、デキサメサゾン錠で〇・五ミリグラムをとりますと、購入価格はたったの五円ですよ。薬価基準は六十一円だ。十二倍ですよ。薬九層倍といいますけれども、十二倍も聞きがあるのですよ。これ一ぺん平均して——これは主要品目ですから、医者は使わなくてはならぬものです。しかも、量的にウエートが強いわけです。これ一ぺんどのくらい差があるか計算してください、この二十品目。何%差があるか。
  274. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 御要求の計算は後刻いたしまして提出をいたします。  それから繰り返し申し上げましたように、これは現実の若干の病院についての調査でございます。たとえば国立病院などは一括購入を、しかも非常に強い資金の背景を持っていたしますので、これは非常に安く購入しておるわけであります。そういうような事情からいたしまして、ここに出ておりまするものが薬価基準と違っておりますることは、これはもう傾向として当然出ることでございます。ただ、先ほど来、大臣が申し上げておりますように、かりに全体の平均として考えてみても、いまの薬価基準と実際の価格との間には相当の開きがある。一〇%をこえる開きがあるというのはもう事実でございますので、そういうようなものは早急に解決をいたしたい、こういうふうに考えているわけでございます。
  275. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたがそう言われましたが、しからば厚生大臣、あの九・五%の医療費値上げのときに、そのほかの病院あるいはまた医師会関係の問題、薬価の調査をしたんですか、あったら出してください。ないから、これだけ私のほうは指摘したんですよ。あれば出してください。調べたことがあるんですか。
  276. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 医療報酬の引き上げのいろいろな作業をしております当時においても、十月一日現在で調べた実勢価格がどうなっているかという調査はございました。で、これは全体からかなり正確にサンプルを取りまして、病院についていえば三分の一、それから診療所については三十分の一ということで任意抽出で医療機関をきめまして、その医療機関が一定の定められた二カ月間においてどれだげの価格でどれだけの数量の薬品を買っているかと、代表的なもの二百品目について調べまして、それをもとにしていろいろな作業の方向をきめておったわけでございます。したがって、その当時において、いまお手元でごらんをいただいておりまするこの具体的な病院の実際の購入価格が幾らであったかということは、特に調べたものもあり、調べてないものもございましたけれども、当然わかっておったわけでございます。
  277. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それ、あったらくださいよ。
  278. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 十月一日現在でのものでございますね。このうちどれだけがあるかは当たってみまして合ったものがあれば差し上げます。
  279. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いや全部ください。十月一日、調べたのを全部ください。
  280. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) お尋ねは、ここに例示いたしました病院全部について十月一日では幾らであったかと、こういう御趣旨でございますね。——そういうふうな調査をしておったかどうかを確認しておりませんですけれども、しておった分については早急に提出をいたします。
  281. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは、これも厚生省やったんですがね。昨年十月一日から今日までわずか半年ぐらいですね。これが一〇%程度ではないですよ。で、あなたがここに抽出された社会保険病院関係、その他の病院は安く買っておると言うけれども、その根拠はどこにあるんですか。私は民間の病院が、そうあなた公立病院が安う買っているのに、民間の病院が高いものを買っているというのは常識で考えられないが、その根拠のデータを出してください。
  282. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 御指摘のように、公立の病院だから安く買えて民間の病院だから高く買っているというような事実はございません。金の支払いがよくて、しかも薬品の購入にあたる担当者がいろいろと工夫をしている、こういうようなところは概して非常に有利な買い方をしております。それから、そうでない条件のところは悪い買い方をしております。大体の傾向といたしまして、病院は薬価基準と比べまして、ほぼ八〇%程度の値段で購入しているところが多いようであります、平均しまして。それから診療所は病院よりも購入の条件が悪うございますので、平均をいたしましたものと薬価基準とを比べると八五%ぐらいになっている。こういうような傾向を示しております。
  283. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 もうあんたの答弁は全く納得しないです。それじゃ現在の、いわゆる薬価基準と実勢価格との相違は何%あるか、これを聞いておきます。
  284. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 昨年の十月一日をもとにして比較いたしましたときは、先ほど申し上げましたように薬価基準と実勢価格との間にほぼ一〇%程度、したがって、総医療費との関係でいえば三%程度、これが推算されておったわけでございます。その後さらに、現実に下がっているものがございます。たとえば副じん皮質ホルモン系統の薬でありますとか、あるいは抗生物質、こういうものは相当値下がりをしているわけであります。こういうようなものをはじめといたしまして、そういう傾向のあるものについて目下三月一日を起点にいたしましてどのくらい下がっているか、あるいは下げ得るかという調査をしているわけであります。結果については、そういう調査が完了いたしました上で言うべきことでございますが、これが通常一%をこえる、一%と申しますのは総医療費との関係でございます。多く見る人は二%程度、少なくとも一%はこえるだろう、こういうふうに達観的に言われているわけでございますが、これは薬品の品目個々について固めました結果として出てくるものでございますので、いまその調査を進めておりまして、結果がわかったところで確定的に申し上げる、こういうことになるわけでございます。
  285. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生大臣に聞きますが、ぼくが計算したんですよ、あなたの資料で。これは第一番目から、ずっとパーセンテージついておりませんが、一番上が三六%、三〇%を割っているものがわずか四つですよ。はなはだしいのは一二〇〇%、十二倍。二四〇%です。これを平均いたしますと三五%以下ではないんです。薬価基準といまの実勢価格、この二十品目で、こういう実態をあなた認めますか。
  286. 神田博

    国務大臣(神田博君) この資料は私もいま拝見しておりますが、厚生省の出した表でございますから間違いなくお説のとおりでございます。
  287. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 認めますね。
  288. 神田博

    国務大臣(神田博君) 認めます。
  289. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうすると、大臣、現在の薬価基準ですね、これは三十五年にきめたままなんです。厚生省怠慢なんです。三十五年からほってある。その基準と、いま三五%の値開きがあるんですね、平均して、この表によりますと。三五%あると、総医療費が一兆三十五億、それで大体医療費の総費用の薬代、注射代が三〇%以上だと思うんです。少な目に三〇%、そうすると、三千億上回ります。それに対する三五%ですから約一千億という金が薬代の値開きに残っているんですね。これを認めますか。あんたこれを認めた以上は、一千億というものが浮いてきているんですよ。
  290. 神田博

    国務大臣(神田博君) 御承知のように、健康保険に登録されておる医療薬品は五千三百近くございます。ただいまごらん願っているのは約三十種類でございますが、特に医療品は値が下がっている、極端な例をごらんに入れても、こういうふうでございまして、全体から申しますと、先ほど私もちょっと触れましたが、保険局長も述べたとおりでございます。しかし、実際いま三月一日を基準として調べておりますから、この調査が完了いたしますればはっきりしたものがわかると思います。
  291. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 薬価基準をきめる基礎として従来ともバルクライン九〇をとっているんですね、それ自体問題がある。これをとって、先ほど保険局長言ったとおりの、何といいますか、差があると、こう言っている。三%とるといったのは、そうじゃないんです。ぼくの言ったのは、実勢価格、現在の病院で買うている薬代との比較がそれだけあるかというんですよ、実際問題。もし、それでないというなら資料を出しなさいというんですよ。その資料ないでしょう。ぼくのこの二十種類の問題を言っておる。あんたの出したやつ。これ以外に、これよりパーセンテージの少ないものがあるなら、お出しなさい。ないでしょう。資料の問題だ。
  292. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先生の仰せになっておられる実勢価格との関係でどうなるかというのは、結局実勢価格というものを平均というふうにつかんで考えますというと、九〇バルクというものできめた価格に対して平均できめます場合には、およそ一五%程度薬代として下がるわけでございます。したがって、両者の間にさらにそれだけの開きがあり得るということは傾向として仰せのとおりになると思います。
  293. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくのを認めたのですか。ぼくの言っているのは、あなたの資料がないから、ぼくがもらった資料で計算すると、現在厚生省が使用しておる薬価基準価格と実勢価格、病院お医者さんが購入する価格の間に平均三五%の値開きがあるというのですね。もしそうでなければ、どういう点でそれがないか。これがそうなっておるのですから。
  294. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 先ほど申し上げましたように、九〇バルクで考えた場合、昨年の十月一日で実勢価格をもとにして九〇バルクできめた場合と現在の薬価基準との間に、薬の値段にしてほぼ一〇%の開きがあるわけであります。それから、その上に九〇バルクというもので考えた場合と実際の平均で考えた場合、つまり実勢価格で考えた場合との間にほぼ一五%程度の開きがあり得る。したがって、両者を合わせれば二五%、こういうことになるわけであります。したがって、数字の三五というのはこれは別としまして、傾向としてはおっしゃるとおりだと、こういうふうに申し上げたわけです。
  295. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体それで問題が一致できた。あなたの二五%、あれはバルクライン九〇を入れるとそうなるでしょう。しかし、ぼくの言っているのは、現在実勢価格、お医者さんあるいは病院が買う購入薬価と厚生省の使用している薬価基準価格と比較すると、私は三五%ですが、これ三〇%にいたしましょう。ちょっと私のは半分とって折り合って三〇%にして、どういう計算になるか、厚生大臣、一ぺん計算してください。四十年度国民総医療費は、衆議院予算委員会では一兆三十九億と、こう言われておる。それに三〇%を掛けたら幾らになりますか。三千億ですが、間違いございませんか。
  296. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 通常、総医療費といっておりますものの中には、たとえば全額自費でありますとか、あるいは売薬、あんまというようなものも入っております。これは年度によって若干の動きがありますけれども、ごく達観的に申しますと、ほぼ五百億見当でございます。したがって、総医療費といわれるもののうちからそれを除いたものについて、ほぼ三〇%程度が薬の値段であり、それについてその二五%なりあるいは三五%なりがどうだと、こういうことになれば、それで自動的に出てまいるわけでございます。
  297. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あのね、いまちょっとぼくも説明が足らなかったけれども、一兆三十九億の総医療費のうちに薬代、注射費というものは大体三五%といわれている。病院は低いです。病院は低いですが、一般の総医療費との割合というものは、各国とも、日本も平均いたしまして三五%といわれているのです。これは間違いですか。あなたの言われた五百億は……。
  298. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 三五%きっちりということになると、少し多く言い過ぎると思いますけれども、通常三分の一前後、こういうことでございます。私少しあいまいに申し上げましたが、かりに先ほど申し上げましたいまの薬の議論に直接関係のない総医療費が一兆円だとすれば、そのうちの薬代というのが三千億から三千三百億程度、その三千億なり三千三百億程度について薬価基準との関係でどうなるか、こういう議論になります。
  299. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それで、三千三百億円が、これがいわゆる薬代、薬価である。そこで、いま私が言った三〇%のいわゆる値開きがあるということから見ると、一体これは幾らになるのですか。
  300. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) これは前提が先生のほうでお設けになったわけでございますから……
  301. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうです、そうです。
  302. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) それに従って、かりにその薬の値段が三〇%程度下がるとする。こういう前提そのものについて若干の議論はありますけれども、それはおきまして、そうだということになれば、おっしゃるように三千億にその程度掛けたもの、九百億ないし千億程度、こういうものになると思います。
  303. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そうするとね、千億としましよう。私は九百九十六億と言っているが、千億にいたしましょう。千億が結局この値開きですよ。これが薬から得るところの利益になる、これは取っているかどうかは一応別としてですよ。そうすると、中央医療協が、技術料として医者に見なくちゃならぬ——これはわれわれは主張しております。これは薬代に依存しておるということは、医療からいえばおそらく反則ですから、   〔理事村山道雄君退席、委員長着席〕 技術料を見なければならぬが、技術料を二五%見ても二百五十億ですね。二百五十億。残りの七百五十億というものは、結局薬価基準と実勢価格との差として認められるんですね。これは厚生大臣、認めますか。
  304. 神田博

    国務大臣(神田博君) 大事な数字ですから、保険局長に。
  305. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) たいへん恐縮でございますが、ちょっと正確にとりかねましたので、もう一回お願いいたします。
  306. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あのね、中央医療協が、医師会が要求している技術料というのがあるでしょう。それを二五%程度見なくちゃならぬと。それをぼくがまた引いてやってもいいと言うのです。引いた残り、薬代の差額は七百五十億ほどあると、こういうのですね。
  307. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 二五%程度見てやってよろしいとおっしゃっている意味がどうもわからないのでございますが、これは先生のお考えですね。
  308. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ええ。
  309. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) これは非常にますますそういう前提で議論を申し上げるというのがむずかしいのでございますけれども……。
  310. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ幾ら見て……。あんたの思うだけ見てもいい。厚生省が技術料をどれだけ見ているか。
  311. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) いま厚生省で考えておりまするのは、先ほど申し上げましたように、薬価にいたしましてほぼ一〇%程度の値下がりがあり得る。これは総医療費との関係において、ほぼ三%程度になるかならぬかで、この分は技術料に振りかえる。その後において下がる分がさらにある程度あり得る。その分についてはこの際そのまま引き下げをしたい、こういうことで考えている、こういう数字でございます。
  312. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体、ぼくは厚生省は研究が足らぬと思うのです。従来のことだけに固執して、一切研究しておらない。大臣、さっきから局長ばかり答弁させて……。あなた上げた張本人でしょう、九・五%。何も知らぬじゃないですか、あなた。答弁もできぬのに、一体だれに相談して上げたのですか。保険局長が上げたのですか。
  313. 神田博

    国務大臣(神田博君) 九・五上げたということは、一昨年の暮れに御承知のように中医協に、医療費が三年有余上がっておらないから医療費の増加をしなくちゃいかぬというようなことで、これを緊急是正しようということで中医協に諮問したことは御承知のとおりだと思うのでございます。その中医協の答申が昨年の四月になりまして、一昨年の暮れに諮問したのが昨年の四月になりまして、その答申なるものがいわゆる通常八%値上げしたほうがいいという答申のあったことを、これは本文にはございませんが、これは議論がございます。議論がございまするが、いわゆる通常八%、こういうことを言われておる数字でございます。これは議論は診療側と支払い側では違いますが、そういうことを言われておる。その八%を基礎にしまして——基礎といいますか、その当時それを医療費に振りかえるということになりまして、これを計算いたしますと、自動的に、物価指数等が変わってまいりまして、計算の数字が九・五になる、こういうことでございまして、これは保険局長が中心になって計算した数字でございまして、それを中医協に御相談した。中医協の公益委員もそれをお認めになった、こういうことでございます。それにのっとって告示をした、こういうことでございます。
  314. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 中医協の問題については、あなたそう言うけれども、そう公益委員が認めたと言うけれども、あなたの政治的な圧力で認めたということはわかっておりますよ。  そこで、言いますが、少なくともぼくの調査言うけれども、厚生省も調査しなさいよ。現在の実勢価格がどうなっておるかということを実際に調査しなさいよ。そんな、抽出方法でやっておるというけれども、薬なんか抽出方法でいかないですよ。国民医療費の値上げによってどれほど問題になっておりますか。保険経済はもちろん、市町村財政にまで大きく影響しておるのですよ。それを保険局長が三%云々と言ったからあなたやったと言う。もっとあなたが指導的な立場に立って、これはどうかということをあなた調査さしてからやりなさいよ。私はお医者さんの医療費が上がることを反対しておらないのですよ。国民が納得するような方法でやらなくちゃ……。私の計算を反駁をしてください。あなたの出した数字からいくと一〇%とか一五%じゃないのですよ、これだけ見ましてもね。少なくとも正確に計算すれば四〇%くらい差がありますよ、実勢価格とね。それだけがむだな費用として使われておる。むだというか、どこかに行っておる金ですよ。そういうものを調査せずに、医療費をいま言われたような簡単な方法で上げること自体が、あなた、厚生大臣の責任だ。それで、あなたに不信任案を出す。あなたは全然そういうことを知らないのですよ。保険局長の言うたことをやって、それで大臣の責務がつとまりますか。
  315. 神田博

    国務大臣(神田博君) お答えいたします。  これは一保険局長だけでなく、厚生省の省議を経まして下から積み上げた、また上からも計算をいたしまして積み上げた、そうしてその数字を基礎としてやったわけでございまして、別に公益委員に圧力を加えたというような事実はございません。
  316. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、あなたにもう一ぺん聞きますが、薬価基準の改定を昭和三十五年から今日までやらなかったということは一つの大きな問題です。これはどうです。
  317. 神田博

    国務大臣(神田博君) 三十六年に一部改正をいたしておりますが、大体大筋としてはいま山本委員のおっしゃるように、やらないというようなことだと思っております。これはやらないにはやらない事情がやはりあったようでございます。それを十月一日の実勢価格に合わせて今度改正しようということにしたわけでございますが、その間の事情は、私の在任中でもございませんので、詳しくいろいろ事情があるようですから、政府委員答弁させます。
  318. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) ただいま大臣から申し上げましたように、三十五年まではほとんど毎年薬価基準の全面改正をやっております。三十六年以降は、ちょうど医療費の問題がいろいろもつれておった事情等もあり、そういう事情がずっと続いておりまして、これを改定するということについて医療担当者側の協力が得られなかった、こういうような事情からいたしまして、行なわれなかったわけであります。その間、三十八年の十月には結核の治療指針が改正になりまして、新たに採用される結核薬、あるいは従来の結核薬で使用量のふえるもの等がありましたので、これは当時医療担当者側から強い反対がありましたけれども、引き下げをいたしました。
  319. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生省はなんですか、薬価基準を改正されないのは、厚生省がやるんですか、それともそのほかの団体の意向によってやるんですか。それだけ将来のために聞いておきたい。いまの法律はそうなっていますか。
  320. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) 技術的なことだけ私から申し上げます。  薬価というのも、これは診療報酬の一部でございます。したがって、筋道としては厚生大臣が中央社会保険医療協議会の意見を聞いてきめるわけであります。その際にきめられました点数表の中で、薬というのは医療機関が購入した値段で計算をするという趣旨のことが規定されてあり、その医療機関の購入する薬の価格というのは厚生大臣が別に定めると、こういうふうにきめられておりまして、それで厚生大臣に薬価基準の決定ということがまかされているわけであります。その際、中央医療協議会としては、厚生大臣が薬価基準をきめる原則として先ほど来申し上げている九〇バルクというものをもとにして薬価基準を機械的にきめる、したがって品目は五千数百品目になりますけれども、その原則に従って処理する限りは、個々の薬の値段をどうきめるかということについては特に中央社会保険医療協議会にはかる必要はない、しかし、これを変更しようとする場合、あるいはこの原則と違ったきめ方をしようとする場合は、中央社会保険医療協議会にはかる、こういうような了解で処理しているわけでございます。したがって、そういう原則で処理される限りにおきましては、厚生大臣限りでできるわけでございますが、現実の問題として、やはり全体の保険医療というものが円満に処理される必要がありまするので、なるべく関係者全体が納得するような方法で進めよう、そういう事情からして見送られてきた、こういうことでご上さいます。
  321. 神田博

    国務大臣(神田博君) いま政府委員の述べたとおりの事情でございます。
  322. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくはもう、厚生省の医療行政については全く信頼はできません。今日この薬価基準というものが大きく医療費にのしかかってきております。それは認められておるでしょう。その十分な対策もなしに医療費だけ引き上げるということは、私は国民に対して不親切だと思うのですよ。私の計算だけ言っておきます。今後あなた方研究してください。  現在のところ、いまの薬価基準でいきますと、実勢価格の間の差の医療費総額から計算をしていきますと一千億の差額がある。それだけの一千億の財源があるとして、技術料を厚生省がどれだけ出すかというのは別問題ですがね、技術料を出して、しかも、今度の保険料引き上げもほとんど半分ぐらいで済む、しかも、各種団体——あとから国保の問題は質問しますけれども、国保の財政もそう逼迫しない、こういう関連性があるのです。そういうことについて、厚生大臣は、単に省議できめたからといって、あなたはひとつ医療行政に見識を持ちなさいよ、なければやめなさいよ、失礼な言い方だけれども。国民はほんとうに困りますよ。われわれから見たって、納得する説明なんてないですよ、どの方面に聞きましても。私は医者を責めておるのじゃないですよ、医者の立つようにしなければいかぬですよ。だけれども、それがひとつも納得するような方法で上げてないから、私は、あの臨時国会でも、代表質問佐藤総理とあなたに質問したのだけれども、何にもわからぬような答弁をしていますよ。どうですか、これは。
  323. 神田博

    国務大臣(神田博君) 先ほどもお答え申し上げますように、中医協の答申による意見を尊重してやったということでございます。ということは、薬価基準が数年来変更しなかったということはおっしゃるとおりでございます。そこで、有沢委員長は、これは医師の技術料に振りかえろ、こういうような御意見でございましたので、そのほうは技術料に振りかえる。それからおおむね八%という計算といたしまして、自動的に九・五というようなものが出た。今後の問題は、いまお述べになったように、これはもう上がるものは上がる、下げるものは下げるということでやっていきたい、こういう考え方です。割り切った考え方で考えておるわけでございます。ですから、この三月一日現在の薬価の変動を調整いたしまして、このほうは保険財政に寄与させたい、こういう割り切った考え方をいたしております。
  324. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、三月一日のいわゆる実勢価格をこの薬価の基礎にしてやるのですね、もう一ぺんそれを。
  325. 神田博

    国務大臣(神田博君) これは、いまお話ございましたように、保険財政に寄与するように下げる、こういう考えでございます。
  326. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 その方法はどうですか。
  327. 神田博

    国務大臣(神田博君) 御承知のように、中医協にすでに三%振りかえは諮問中でございます。これとの関連がございますので、幾ら出ますか、あわせてこれを実施いたしたい、こう考えております。切り離せるものなら切り離すことも考えたわけでございますが、先般いろいろ検討した結果、統一見解で、それはむずかしいというようなことになっておりまして、詳しい事情は保険局長のほうから答弁させたいと思います。
  328. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、最後にこの薬価の問題を聞いておきます。医療費の問題を聞いておきますが、将来、一体この医療費はどこまで厚生省としては増高する見通しを持っておるのですか。
  329. 神田博

    国務大臣(神田博君) 将来、医療費がどこまで上がるかということは、これは他の物価の問題等にも関連することでございます。あるいは賃金の問題にも関連することでございますから、一がいに幾らまで上がるということは、これはここで明らかにするわけにはまいらないと思います。ただ、医療費をどういうふうにするかということになりますと、薬価の問題もございますが、薬価は、御承知のように、工業製品ですから、下がっていく傾向があると思います。競争が激しいと申しますか、設備投資をいたしておりますから、そこに下がる要因がございます。そこで、まあ中医協の有沢答申にもございましたが、できるだけ将来は医師の技術料をみるというような考え方考慮しながら、これは年々是正していくべきものじゃないか。少なくとも、薬価の問題は、やはり一年一ぺんはやっていくというように考えていく、また、物価の非常な上昇があって医療費が困るというならば、医療費の中で検討するという方針を立てていくべきものじゃなかろうか、こういうふうに考えております。しかし、いま、先般の調べであると、政府与党との先ほど来例示された協定もございまして、いろいろな基本問題等も、ひとつ調査会をつくって、根本的にルールをつくってみたい、こういうようなことになっておりますから、そういうところでひとつこの問題をさらに検討していただくということになろうかと思います。
  330. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 いろいろありますが、もう時間も大体過ぎたから、国保財政について、これは大蔵大臣、それから自治大臣その他に聞いてみたいと思う。これは党と党の間の話し合いもあるようでありますが、現在、国保の赤字が、市町村段階で三十九年度の累積赤字が幾らあるか、ちょっともう一ぺん確認するため聞いておきたい。
  331. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 私ども自治省で計算をしておりまするところによりますと、三十八年度の決算で見るほかございませんが、国保自体の赤字が三十七億でございまして、そのほかに、地方団体から繰り入れをいたしておりまするのが九十五億でございます。これを合わせますと百三十二億がまず赤字と見ておる次第でございます。
  332. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これの百三十億程度の赤字のこの分類——国保法六十九条の事務費補助、七十条の療養費補助、調整交付金の三つに分けて、ひとつちょっと知らしてください。
  333. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) これはまあ私のほうで計算したのでございまして、厚生省のほうでどういうふうな計算をなさっているか存じませんが、いま申しました中で、六十七億は事務費の赤字になっております。そのほかは医療費の赤字でございます。
  334. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 じゃ、厚生省どうですか。この医療費を、調整交付金と療養費と分けて——法律体系が違うのですから、これをあげてもらわぬと、あとの問題処理できない。これは大蔵大臣、お願いします。いや、この分けたの、厚生省持っているでしょう。条文からいくと、六十九条の事務費に対する赤字、それから七十条の療養費に対する赤字、七十一条の調整交付金の不足、これはどうなんです。その区分はしてないのか。
  335. 小山進次郎

    政府委員小山進次郎君) ただいま自治大臣から申し上げたのは三十八年度のことを申されたのでありますが、さっき私お聞きしておったら、先生は三十九年度のことをお聞きになっておられたように承りましたが、三十九年度については、目下計数をいろいろ整理しておりますけれども、三十九年度については、どうも三十八年度の二倍半ないし三倍強程度の赤字に拡大しそうだと、こういうような予想でございます。そういうところからいたしまして、国のほうで本年度国庫補助金として元来用意すべきものについてかなり不足が生じている。これも最終的に決算をしてみないと数字が詰まらないわけでありますが、国保中央会あたりは直接に市町村にいろいろ照会をいたしまして、達観的にまとめまして、およそ百三十億をこえる程度に国の補助金がいま不足をしている、こういうふうに言っているようであります。その場合の百三十億の内訳は、ほぼ九十五億程度のものが二割五分という、あの低率の国庫負担金の予算不足でございます。それから、三十二億程度のものが、調整交付金が本来年度当初に実際に所要医療費を正しく見積って計算しておれば、もっとよけいに計上されておったはずだと、こういうような数字でございます。それ以外のものはいろいろの雑件的の補助金でございます。事務費の問題は、当面の問題としては出ておりません。これは法律に基づいて毎年政令できめておりますので、事務費の議論というのは、もしそれが出てくるといたしますならば、これはさらに百三十億の外にその議論が出てくる、こういう考えでございます。
  336. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで明らかになったのは、事務費が大きいウエートを占めている。これはいまいろいろと話をされておる百三十億がいろいろ政府は考えるという言質を得ておるようだが、一体事務費というのはどれくらい市町村がかぶっているか、その推算はありませんか。
  337. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 先ほど申しましたように、三十八年度についてでございますが、事務費の国庫負担額が五十八億でございます。しかし、実際の事務費は百二十六億でございますので、差し引き六十七億赤字になっておる、かように考えております。
  338. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 三十九年度のは。
  339. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 三十九年度は、実は私のほうはわかりません、決算が三十八年度しかございませんので。
  340. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大体の推測もこれより少なくならぬと思うのですが、その見解はどうですか。
  341. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) お見込みのとおりと思いますが、正確な数字は存じません。
  342. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこで、問題を二つはっきりと政府とここでしておきたい。大蔵大臣に責任があると思うのですが、いま言われた三十九年度の赤字、療養給付費の負担、それから調整交付金、これを合わせた百三十億を大体大蔵省はみよということに話は大体落ちつきそうですね、この点ひとつ。
  343. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 国が法律上負担すべきものについては、いずれ財源的に措置をする、こういうことでございます。
  344. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 そこが実はこの前、加瀬君の質疑の中でもちょっとあいまいだったので、これははっきりしておきたいのですが、九十五億のいわゆる療養給付については、これは当然やらなくちゃならぬものですが、調整交付金というものは法律上そうできないような状態に置かれている。それが百三十億は実は政府がみるのだという市町村長なんかの意向なんですが、それは間違いですか。政府がみるのは幾らですか、それをはっきりしてください。
  345. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まだ数字がきまっておりませんから申し上げるわけにはまいりませんが、法律上、当然精算補助としてみなければならない分についていずれ措置をするという考えでございます。
  346. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それだけだったら大蔵大臣答弁にならぬです。今度の問題は医療費、先ほど言ったように、国のほうが無理に九・五%上げた被害をこうむってこうなってきているのだから、政府はこれをみるということを、百三十億はみるかということを私は聞いておる。当然法律できまったものは出すのはあたりまえでしょう。そうでない赤字があるから問題なんです。
  347. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私のほうは、私がただいま申し上げたとおり、当然国が負担すべき事務費については、精算補助分については当然予算的措置を何らかの方法でいたします。しかし、四十年度の予備費でみるか、また補正予算を組むかというようなことはいまここで申し上げられません、こういつもお答えしているわけであります。
  348. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 大蔵大臣、金額は大体大蔵省はふんでおるのですよ。そういう抽象的なものではできないのですよ。これはもう市町村財政に大きく影響しているのです。これはいま言われたように、法律上認められたのはあたりまえですよ。法律上認められたものは認めなければ政府は違法するのだから、これは問題だ。いま出ているこの百三十億のやつをどうするかという問題がいま大きい問題になっている。それを全額やはり政府がみるのだというこの考え方でみなおるのだから、それはないならないということをそう言ってもらいたい。
  349. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私は、いままで明確に申し上げておりますとおり、国が当然精算補助するのについては予算的措置をしなければならないというふうにお答えをしているわけでございまして、残余の問題に対して国がめんどうをみますということを言ったことはございません。
  350. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 あなたが言ったとか言わないとか言っていない。そうすると、そういうことになると具体的に聞きますが、そんな逃げるような答弁ではなくして、九十五億というのは、当然ぼくは政府が負担すべきものだと見ている。調整交付金はいまのような状態で、やれないような状態であるから、これはできないということですか。
  351. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 百三十億程度とみますと、九十四億から九十五億ということになります。その分だけは予算措置をしなけなればらない、こういう考え方でありまして、あとの分は考えておりません。
  352. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それはたいへんなことですね。自治大臣、先ほど言われた事務費、これも大蔵省はみない、調整交付金もみないということになると、あなたは地方財政は悪い悪いと非常に言われますけれども、こういうものは当然国の事業を引き受けて市町村がやっているわけでしょう。人件費は二分の一しか出していない、それを市町村にしわ寄せして地方財政が悪い悪いと言っている。こういう問題を自治省はどう考えているか。
  353. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 国保の事務費が実は足りないということで、昨年の暮れの予算折衝におきてましても、従来の一人当たり百五十円を値上げをしようということで最後まで折衝をし、また、同僚議員等の力添えをいただきまして二百円にしていただいたわけでございます。
  354. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 二百円にして、自治大臣、それで何ですか、パーしますか、私はそれを言いたいのです。自治省が当然これだけ要るというものを持っておらないですよ。現在二分の一ですよ、五十円上げたって物価が上がって、きょう上がったということだけであって、何も前からの比率は変わっておらない、これによってますます市町村財政は悪くなってくる、方々で問題になってくる。市町村会は国保の問題を返上しようと言っている。こういう事態について総理は一体どう考えますか。
  355. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 地方財政と国の事務費の問題等の関係につきましては、大蔵当局、また、自治省等におきまして十分検討している次第でございます。また、この国保の問題についての基本的に事務的配分をいかにするかという、こういうことにつきましても十分考えられております。かように私は承知しております。
  356. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総理は、きわめてぼくのこの問題については誠意あるかどうか知らないが、いまの答弁から見ると、非常に私は冷淡だと思います。ぼくらは地方財政をいろいろ専門的に見ておりますが、これだけで全部かりに毎年二月ごろに補正して出しますが、これはもう調整交付金と事務費は別ですが、出すけれども、その間の利子はみな市町村が負担している。先に払っているんですか。だから、大蔵大臣はこれだけ法律上みると言うが、実際はみていない、全部市町村がかぶっている。相当大きい金です。こういう現状は政府はどういう認識をしているか、私は非常に遺憾なんです。国民皆保険といっていろいろ宣伝されました。しかし、実際市町村のほうに全部しわ寄せですよ。しかも自治省は、これは事実はこうだというだけで、百五十円を二百円にしてもらえましたと、手柄のように言っておる。当然のことですよ。そういうことで総理、一体この国保の問題どうするのですか。
  357. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど申し上げたとおり、義務負担分に対しては財政上の措置をいたしますと、こう答えておるわけであります。まあ医療費がふえたからと言って国がこれを負担するというわけにもまいらないわけであります。国や地方公共団体、また患者というような負担になるわけでございます。三十九年度においてもこれがために十二億円の特別補助をやっておりますし、四十年度に対してはそれを十五億にしております。まあ現在の保険の状態を見ましても、国が負担しておる面が非常に多いということは、これはお認めいただけると思います。まあ世界各国から見ましても、日本の保険財政の中における国の負担というものが低いものではありません。私は、いまの状態において、もちろん保険制度を伸ばしていかなければならない、こういう考えに立っておりますが、国は財政上可能な限り措置をいたしておるのでありまして、これが事情をひとつ御理解賜わりたいと思います。
  358. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ぼくは、地方財政のしわ寄せ調整して済むのだとは言いませんが、保険税の大幅な引き上げがいまやられようとしております。農家なんかその負担もうやめてもらいたいというような意向がある。これはもう非常に深刻ですよ。もう一万円に近づいているような保険税のところが相当ある、こういうものを政府はどう見ているかということです。厚生大臣どうですか。
  359. 神田博

    国務大臣(神田博君) 医療の伸びに従いまして、保険財政が悪化いたしまして、保険税が伸びているということはお話しのとおりでございます。まあ私どもも、このままではなかなかこれは長期目標を立てるにはたいへんだろうと考えております。だいぶ地域格差も多くなってまいっておりますから、市町村単位ではむずかしいのではなかろうかというような考えも持っております。根本的にひとつ考えたい、こういうような気持ちでございます。
  360. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 根本的にというのはどういうことなんですか。
  361. 神田博

    国務大臣(神田博君) 市町村単位でいくか、府県単位にするかというようなことをひとつ検討してみたい、かように考えております。
  362. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それは重要な問題ですがね。総理はそういう点についてどう考えられますか。
  363. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いわゆる国民健康保険あるいは国保あるいは健康保険その他組合保険等いろいろ医療保険の制度がそれぞれございますから、基本的に将来の恒久的な対策として、ただいま国保についても厚生大臣が申すように、あるいはプールすることが可能かどうか、こういうようなことを研究してみたいと、かように申しているのではないかと私は思いますが、今日までの医療費の、医療保険のあり方をみますと、それぞれのものはそれぞれに発達してきておりますので、その総合的な関連という点において欠くるものがあるのではないか、かように思いますから、やはり恒久的の措置として医療費、医療保険と真剣に取り組む、その態度からいろいろくふうされることは当然のことである。かように私は考えております。
  364. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 最後に、総理に聞きますがね。先ほど厚生大臣といろいろと論争しておりましたが、適正医療費については、まだまだ私は問題が相当あると思っておるのです。したがって、私の推算では、薬価基準の改訂によりまして、今度の政府が考えているような保険三法の改悪、改正、いわゆる薬代半額負担あるいはまた掛け金、保険料の値上げということをやらずともいけるという考えを持っているのです。薬価の問題、医療費のそういうものを相当検討したのちに、どうしてもいかないということが国民全般にわかってから、そういう薬価の半額負担ということをやるべきであって、いまそんなことをやるべきでないという考えですが、その点の見解をひとつ聞いておきたい。まあだれでもいいですよ、責任のある人……。
  365. 神田博

    国務大臣(神田博君) いろいろそういう議論も、私どもも十分承知いたしております。御承知のように、いま健保改正案は社会保険審議会、社会保障審議会等に十分御審議を願っておりますので、いろいろ御審議になると思います。この答申を待って研究したい。かように考えております。
  366. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ、もう一つ念を押しておきますが、社会保険審議会の答申を尊重してやるということに間違いないですね。
  367. 神田博

    国務大臣(神田博君) そういう姿勢でおります。そういう考え方でおります。
  368. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 まだまだ薬価基準の問題でやりたい問題が相当ありますが、いろいろの問題を取り上げたいと思いますが、この問題はこの程度にしておきます。  最後に二つだけ。公務員の給与についてちょっと増原国務大臣に聞いておきたい。毎年これは人事院勧告が出たときに問題になります。そこで、四十年予算審議の中で、やはりこの程度の一つの見通しというものをつけたいと、われわれは思っているのですが、この前のあの問題のときには、勧告時期がいろいろ問題で、根本的にこの問題を考えるということが言われておったのでございますが、その点についてどうなっていますか。
  369. 増原恵吉

    国務大臣(増原恵吉君) 御承知のように、昨年勧告に基づく改定を閣議できめまする際に、いまお述べになりましたように、人事院の勧告の時期について人事院で検討してもらうことについて、政府として検討をしようという決定があるわけでございます。これについて人事院のほうへ何と申しますか、正式の形では申し入れはしなかったのですが、事実上話をいたしまして、人事院としても検討をしてもらったわけであります。具体的には、政府関係省庁の事務次官、人事院の事務局長等で検討をしてもらい、さらに政府のいわゆる六人委員といいまするか、でも一応の検討をしてみたわけでございます。しかるところ、これは一応四十年度予算を編成する前にという形でそのことについての検討をしてみたのでございますが、勧告時期をどういうふうに調整してもらうか、してもらうことによって勧告の実現をスムーズにするということについてなかなか結論を得ることができないで、予算の編成の時期は残念ながら経過をしたというのがただいまの状態でございます。
  370. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それじゃ来年度、四十年度の問題をどう処理しようというお考えですか。人事院総裁は四月現在で調査されるのですから、いまからどうこうというわけにいかないのですが、いまの実勢から申しますとおそらく勧告をしなければならぬと思います。この措置について人事院としてどう考えられておりますか。
  371. 佐藤光夫

    政府委員佐藤光夫君) 給与勧告の完全実施ということは、われわれのかねての念願でございますし、むしろ執念と申すべきかもしれないと思うくらいに深い執着を持っておるわけでありますが、いま増原国務大臣お尋ねの点に関連しまして、私どもとしては、いまのようなわれわれの根本の立場から少しでも完全実施がスムーズにいくような方法があれば、これにこしたことはないわけでありますから、先ほど御指摘になりました閣議決定にああいう文言が出る前から、われわれとしてはひそかに検討しておりました。その閣議決定を経て、増原国務大臣等とも連絡をつけながら、さらに鋭意検討いたしましたけれども、いろんな案を考えましたけれども、いずれも一長一短ございまして、今日のところまだこれはという名案を得ておりません。したがいまして、もう例年の時期が切迫しておりますから、少なくともことしは従来どおり四月の調査でいかざるを得ないということで、もうその方針で仕事を、準備を進めておる次第でございます。
  372. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 総理、公務員給与の問題ですね、いま増務国務大臣と人事院総裁は、いわゆる本年も大体八月勧告しかやむを得ないというような意味にとれる答弁ですが、人事院は五月実施ということを、他の民間の給与その他の実態を見て勧告をするのでございますが、いつも政府はこれを九月なり十月に値切ってやっておるわけです。いつも財政の関係だということは、大蔵大臣がしょっちゅう言われるんですが、しかし、給与というものはやはり賃金ですからね、やはり人事院が五月から上げるべきであるという、生活実態その他の給与の実態調査をしたやつを、財政の関係だけでいつも値切るということについては、私は長年の問題があると思うんですが、この点について、初めてあなたもその問題に遭遇するのでございますが、どういう措置を考えておられますか、完全実施をするということで。
  373. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) このたてまえから申しまして、人事院というものができておるのでございますから、人事院の勧告を政府は忠実に尊重していくという、そういうことでありたいと思います。もちろんそういうことには私もその政治的態度は変わりはございません。しかしながら、御承知のように、給与の問題になれば予算上、財政上の問題がございますから、ただいま私が、基本的態度としてこれは尊重する、完全実施の方向で尊重してまいります、かように申しましても、制約を受けることは当然であります。そういう点に処しまし七できるだけの善意の処置をしてまいりたいというのが私の態度でございます。
  374. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これは毎年繰り返しているんですね、もう過去五回とも五月実施がおくれているんですね。したがって、いまここでこの法律体系の中で、あなたは、勧告だから尊重する、しかし、財政その他の関係ということでしょう、ここではっきり約束できない。そうなれば、実際いまの公務員の、何といいますか、労働法関係から見ると、これは納得ができないのです。だから、政府はその点の、自分らが使っておるというようなことでなくして、やはり公務員は生活をしておるんだから、この点について、制度はまだ変えられないというならば、やはり人事院の勧告を完全に実施するということくらいの考えを持ってもらわなければ困るのです。
  375. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまお答えしたとおりでございますが、政府は誠意を持って善処してまいりたい、これより以上のことはもう申し上げかねますが、これは山本さんもよく御承知のことでございまするから、その点は誠意を持って善処していきたい、かようにお答えいたしておきます。
  376. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 最後に、ILO八十七号条約の問題についてちょっとお伺いしておきたいのですが、もうこの国会で承認を得るという方針は、佐藤内閣としてきめられたということは、たびたび新聞報道で聞いておるのですが、おくれておる理由はどこにあるのですか。衆議院では一応特別委員会の設置は認めたけれども、まだ審議に入っておらない。どこに問題があるか、その点をひとつ。
  377. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 実は私も非常に不可解かつ不満に思っております。年来の問題であり、しかも今回は二月の中旬に、全会一致で特別委員会が設置されたのに、社会党の委員の名簿提出が一カ月半おくれて、しかも名簿を提出されて、そうして委員長、理事の互選が行なわれて、なお審議の日程がきまらないというのは、この国会でILO八十七号条約を批准ぜひしたいという政府の熱意と決意から申しましても、たいへん残念なことであると思いますので、政府といたしましては、関係者にすみやかに審議を始めていただくようにお願いを申し上げている次第でございます。
  378. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 社会党が云々という話でありますが、どこが問題になっておるかということです。
  379. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) 委員会審議が始まらないというところに問題があると思っております。
  380. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 これはあまり冗談じゃなしに、もうすでにドライヤー委員会も調査を終わって帰っておりますし、問題がなければ、それは国会ですから、審議が始まらないということはないのです。意見の合わないところはどこなんですか、政府のほうから見て。私は党から聞いておりますよ。
  381. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) ドライヤー委員会が行ないました提案、政府がこれを受諾いたしました提案は、まず第一に、八十七号条約の批准と、それに直接関係のある公労法、地公労法の改正に注意を集中すべきだ、これが一点であります。  二点は、今回政府が提出しました国内法は、最終的な意見を言う段階ではないけれども、提訴者並びに九月に行なわれましたドライヤー委員会の審問の過程を相当組み入れてあるということを認める。問題がこじれて、長い間経過をしてきたのは、公共部門においては双方の相互信頼が欠けておるということが大きな原因である。したがって、総理大臣がイニシアチブをとって定期的な会談を行ない、共通の問題について意見の交換をすることが必要だろう。そうしてその意見の交換のうちで意見の一致をみた部分については、あるいは成果をみた部分については、国会に報告し、さらに六月に行なわれるILOの総会に労働大臣と総評の代表が出席して、勧告、提案を行なったあとの進行状態を報告すべきである、こういう提案が行なわれたのであります。  そのうちの第一点は、国会の審議の進捗であります。政府はすでに条約の批准案件及び国内法を一緒に国会に提出しております。そうして、同時に特別委員会が設けられております。したがって、前段第一の案件の処理については、審議が進められることをわれわれは熱望するのでありまして、それが行なわれないということは、われわれとしてははなはだ遺憾に思っております。  第二の問題、定期的な会談につきましては、政府はこれを受諾いたしましたことに伴って、直ちに官房長官から総評幹部に対して、定期的会談を行ないたい旨の申し入れを行ないまして、それに対して総評側は、それに応ずるためには五つの条件について返事がほしい、こういうことがございました。それに対して政府態度をさらに表明をいたし、そうしてこれについていろいろいま意見の交換を行なっておるところでございます。しかし、定期的会談を行なうということと、国会の審議ということとは、これは別の問題だと思っております。また、国会の審議が行なわれる過程を通して、そうしていろいろな問題が処理されることが国会のあり方であろうかと思っている次第であります。政府としては特別委員会審議ができる限りすみやかに進捗することを熱望いたします。と同時に、定期会談につきましても、いろいろな意見の相違あるいは懸隔というものを、この会談を通して繰り返すことによって相互の理解を深め、信頼を高めていくことを熱望いたしておる次第でございます。
  382. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 わが党の事情は聞いておりますから言いませんがね。大体責任者の労働大臣として、話し合いが済んで問題がいく見通しに現在立っておられるかどうか、これは一にかかってあなたのほうの態度によると思うのですが、その点はどうですか。
  383. 石田博英

    国務大臣(石田博英君) われわれはドライヤー提案の差し示された内容をそのまま、それにのっとってそのまま提案をいたしております。したがって、われわれは誠意を持ってその提案の趣旨を実行に移すべく努力をいたしておるのでありまして、私どもはそれが実現されることを確信しつつ努力をしておりますが、私どものほうの責任で云々ということは、私どもはドライヤー提案が示しているとおりのことをやっている次第でございます。
  384. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ドライヤー提案の問題、論争するとまたいろいろ問題がある、私も会いましたけれどもね。要するに欧米各国の指導者の考え方と、日本自体の考え方に相違があるのです。そこに一つの提案に問題があるのです。そういうことをやっていては時間がないから、あなたの言うのは、ドライヤー提案をそのまま信じてそれを出したから、社会党がこれに言うことを聞かなければ進まないと、こういう意向に聞こえているんですがね。それではおそらく結局は進まないと私は思うのです。ここにやはり政府として何らか考え方を変えてやらなくちゃいかないと思う。まあそれを聞きたかったんですけれども、一応そういう固守された態度だけはわかりました。それについて総理、もう間違いないですね。打開の道は私はないと思うのです。
  385. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) いま労働大臣がお答えしたとおりでございますが、私はこのILOぜひともこの国会において審議を開始し、そうして批准に持ち込みたいと、かように心から念願しております。このILO問題は、かつては政府あるいは自民党の責任において審議しないんではないか、かような言われ方をしておりました。少なくとも社会党の方々も、ILOはぜひ通せという強い御主張であったように思います。今回ドライヤーが来た機会に、ようやく動き出し、政府も熱心にこの問題を取り上げて、そうしてその勧告の線に沿って審議を始めようと、かように申して国会に移したわけですが、国会の審議が軌道に乗らない——おそらく近く乗るんだと私は思いますが、またそれを期待しておりますが、ただいままで審議が始まらないことはまことに私は遺憾に思います。しかし、これはぜひとも関係の各党ともこの条約批准はぜひともしたい、そういう気持ちであるように思いますので、必ずや審議にはいれ、また軌道に乗るものと、かように期待しておりますので、この上とも努力してまいりたいと、かように私は思います。どうぞよろしくお願いします。
  386. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 それでは総括として、きょうの問題の焦点の、医療による保険財政の問題について、これは国保だけではないのです。健康保険も、あるいは各種共済組合も全部赤字になりつつあるのですね。これは単に——総理ね、保険料とか掛け金を上げて済むという状態ではなくなってきた、もう非常に大きな掛け金を上げなければ保険財政が持たぬという状態になってきておるんです。これについて、いままでの答弁を聞きますと、大蔵大臣は、法律に示したやつは国が見るのだ、それ以外はかってにやりなさいというがそれではこの保険行政と申しますか医療行政、医療保険の問題の解決にはならぬと思うのですよ。厚生省は率直にどうするかという、この医療費の問題について、この対策をはっきりと自信を持ってやる自信があるのかどうか、これを私はもう心配しておる。その点どうなんですか。これは自治大臣にも関係ありますがね。地方公務員の共済組合の短期給付も、国家公務員の短期給付も全部赤字に転落しようとしておるのですがね。掛け金をそんなに無制限に上げられませんよ。この点はどうなんですか。
  387. 神田博

    国務大臣(神田博君) 各種保険が非常な財政の収支のバランスを失ってきておりまして、容易ならぬ段階であることは全くおっしゃるとおりで、私どももさように考えております。でございまするから、先ほども申し上げましたように、これは抜本的な考え方をもって対処しないと、将来保険の崩壊を見るおそれがあるのじゃないか、このくらいに考えております。そこで、私ども与党といたしましても、基本問題のひとつ調査会をつくりたいというような声も出ておりました。また先般の支払い側と、政府並びに与党の協議会といいますか、折衝の際にも、政府においてもそういう調査会をつくって、そうして根本的にひとつ取っ組んでこの解決をしたい、こういうようなことでございます。厚生省といたしましては、むろんこれは大蔵省、自治省とも十分連絡をとりまして、十分な資料を提出いたしまして、その根本的なひとつ対策を樹立いたしたいと、かような考えでございます。
  388. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 先ほどからいろいろ触れなかったのですがね、ぼくはいろいろな団体に配慮したんですが、ここの最初に戻るわけなんですが、了解事項の中の「今後の医療費の改訂は医業経営実態調査に基づいて行う方針の下に、その円滑な実施方法について検討する。」、これは相当問題が複雑になるから言わなかったのですがね。この点については厚生大臣はどう思いますか。
  389. 神田博

    国務大臣(神田博君) そこにも書いてありますように、円満なる実施をするようなひとつ努力をさらに一そう続けまして、これは的確につかむということになれば、問題の解決を根本的にはかるためには、やっぱり医業経営実態調査ができなければつかめないと思います。
  390. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 やりますか。
  391. 神田博

    国務大臣(神田博君) やるつもりでございます。ただ、問題は、これは厚生省の手だけではやれないものですから、医師会と相談し、また学界の協力を得てそうしてやりたい、これは十分その心がまえで折衝いたしております。
  392. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 厚生大臣、やるつもりだと言うけれども、まだやるつもりだけであって、厚生省ではきめていない……。
  393. 神田博

    国務大臣(神田博君) 厚生省もやることにしておりまして、……。
  394. 山本伊三郎

    山本伊三郎君 ああ、そうですが、それでいい。それじゃどうも。
  395. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 山本君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明三十一日午前十時に委員会を開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時二十八分散会