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1965-03-11 第48回国会 参議院 予算委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十一日(木曜日)    午前十時三十九分開会     —————————————    委員の異動  三月十一日     辞任         補欠選任      木村篤太郎君     青木 一男君      田上 松衞君     曾祢  益君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         平島 敏夫君     理 事                 大谷藤之助君                 迫水 久常君                 日高 広為君                 村山 道雄君                 中村 順造君                 藤田  進君                 鈴木 一弘君     委 員                 青木 一男君                 植垣弥一郎君                 植竹 春彦君                 江藤  智君                 太田 正孝君                 草葉 隆圓君                 木暮武太夫君                 古池 信三君                 郡  祐一君                 佐野  廣君                 白井  勇君                 田中 啓一君                 鳥畠徳次郎君                 中野 文門君                 前田佳都男君                 森 八三一君                 山崎  斉君                 吉江 勝保君                 稲葉 誠一君                 大倉 精一君                 木村禧八郎君                 鈴木  強君                 鈴木  壽君                 瀬谷 英行君                 千葉千代世君                 永岡 光治君                 羽生 三七君                 米田  勲君                 浅井  亨君                 渋谷 邦彦君                 曾祢  益君                 向井 長年君                 佐藤 尚武君                 岩間 正男君                 市川 房枝君    国務大臣        内閣総理大臣   佐藤 榮作君        法 務 大 臣  高橋  等君        外 務 大 臣  椎名悦三郎君        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        文 部 大 臣  愛知 揆一君        厚 生 大 臣  神田  博君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君        通商産業大臣   櫻内 義雄君        運 輸 大 臣  松浦周太郎君        郵 政 大 臣  徳安 實藏君        労 働 大 臣  石田 博英君        建 設 大 臣  小山 長規君        自 治 大 臣  吉武 恵市君        国 務 大 臣  小泉 純也君        国 務 大 臣  高橋  衛君        国 務 大 臣  増原 恵吉君    政府委員        内閣官房長官  橋本登美三郎君        内閣官房長官  竹下  登君        内閣法制局長官  高辻 正巳君        警察庁長官    江口 俊男君        防衛庁防衛局長  海原  治君        経済企画庁調整        局長       高島 節男君        経済企画庁総合        計画局長     向坂 正男君        法務省刑事局長  津田  實君        外務省アジア局        長        後宮 虎郎君        外務省条約局長  藤崎 萬里君        大蔵省主計局長  佐藤 一郎君        大蔵省主税局長  泉 美之松君        文部省初等中等        教育局長     福田  繁君        文部省管理局長  齋藤  正君        農林大臣官房長  中西 一郎君        農林大臣官房予        算課長      太田 康二君        農林省農政局長  昌谷  孝君        農林省農地局長  丹羽雅次郎君        中小企業庁長官  中野 正一君        運輸省鉄道監督        局長       佐藤 光夫君        郵政省電波監理        局長       宮川 岸雄君        労働省労政局長  三治 重信君        建設省道路局長 尾之内由紀夫君    事務局側        常任委員会専門        員        正木 千冬君    説明員        日本国有鉄道総        裁        石田 礼助君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○昭和四十年度一般会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度特別会計予算内閣提出衆議院  送付) ○昭和四十年度政府関係機関予算内閣提出、衆  議院送付)     —————————————
  2. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) ただいまから予算委員会を開会いたします。  まず、委員の変更について御報告いたします。  本日、田上松衛君が辞任され、曽祢益君が選任されました。     —————————————
  3. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上衆議院送付の三案を一括議題とし、昨日に引き続き質疑を行ないます。米田勲君。
  4. 米田勲

    米田勲君 私は日本社会党を代表いたしまして、政府に対しただいまから質問を行ないます。  予定した質問の前に、私は緊急に実は質問をして確かめたいことがございます。それは、昨夜防衛庁から、三月十日の日付をつけられた「昭和三十八年度統合防衛図上研究三矢研究)について」という文書がわれわれの手元に配付になったわけです。そこでこの内容を見てみましたが、幾つかの疑問が起こるのであります。そこで防衛庁長官お尋ねをしますが、この資料提出した政府立場考え方を御説明願いたい。
  5. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 昨日付で提出いたしました資料は、ごらんのとおり、問題になっておりまするいわゆる三矢研究なるものがいかなるものであるかという事実を明らかにして、御理解を求めるために、説明資料として防衛庁において作成をしたものでございます。国会において御要求資料は、いわゆる三矢研究そのものを出せという御要求でございましたが、たびたび申し上げておりますとおり、いわゆる三矢研究なるものは幕僚想定のもとに行なった研究答案を集めたものであって、防衛庁としての見解をきめたものでもなければ、またそれが防衛計画その他のいわゆる資料となるべきものでもございません。防衛庁として決定をしたものでもないのでございますので、これは国会資料として提出すべきものではないという考え方に立ちまして、三矢研究なるものの御説明を申し上げたようなわけでございます。
  6. 米田勲

    米田勲君 参議院の予算委員会国政調査権を発動して、この予算委員会決定として、政府三矢研究そのもの資料提出要求したのであります。その資料にかかわるものがこれであると政府は考えているかどうか。
  7. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 先ほど申し上げましたとおり、いわゆる三矢研究防衛庁としての見解をきめたものでもなく、また計画の案でもございません。さような性質上これを国会資料として提出するわけにはまいりませんので、また資料としては不適当なものでございまするので、それにかわるべきものとして三矢研究なるものの真相を御説明申し上げ、御了解を得るために、こちらで説明資料として作成をして御提出申し上げたようなわけであります。
  8. 米田勲

    米田勲君 三矢研究がどういう性格と価値を持っているかは別であります。われわれは国政調査権の発動によってこの資料提出を求めている。そうして防衛庁がいま言っておるような結論的なものか、または今後これを問題にしなければならないものかを、その資料提出に基づいて検討をしなければならない、こういうことなのであります。それを一方的に、その価値を評価して、だから出さないということは予算委員会の意思に反すると思いますが、いかがですか。
  9. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 先ほど来申し上げておりますとおり、防衛庁として正式の見解でもなく、またその案でもございません。幕僚想定に基づく研究答案の集まったものでございますので、防衛庁として責任を持つ正式の書類でございませんので、国会資料として御提出いたしかねるということを申し上げておるわけでございます。
  10. 米田勲

    米田勲君 総理見解をただします。  総理は、先にこの問題について、できるだけ委員会審議に協力する意味で、この三矢研究資料提出するように努力をするが、いましばらく待ってもらいたい、こういうことでありましたが、いま防衛庁長官に聞くと、三矢研究価値のないものであるから出さない、そうして何かその資料の言いわけのようなものを出して、これにかえようとしているが、はなはだわれわれは承服はできかねるわけです。総理見解を伺います。
  11. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、国会審議に協力するという政府立場は、依然として変えてはおりません。もちろん協力するたてまえでございます。また努力もいたしております。しかして、いわゆる三矢研究なるものを見ますると、これはしばしば申し上げますように、いわゆる図上研究作戦研究、こういうものでございまして、しかも、その報告を一々……報告書を取りまとめたというのが、この研究の概要でございます。ただいま政府責任を持って提出する、こういう場合でありますならば、政府決定があるとか、防衛庁がこれを取り上げて決定をしたとか、あるいは内閣自身がこれを取り上げて決定をしたと、かようなものであるならば、私は出すべきものであろう、かように思いますけれども、実は防衛庁長官が申し上げているようなものでございますので、またこれを未決の状態において、そうして提出して、いろいろの論議を巻き起こすことは、私は適当でない、かような判断をいたしておるわけであります。ただいま防衛庁長官が非常に歯切れのいいお答えをいたしておりますので、その点は明瞭ではないか、かように私は思います。
  12. 藤田進

    藤田進君 関連。過般の当院における佐藤総理大臣の御答弁によりますれば、政府は、国会から要求のあった資料等について、政府自身責任の持てるもの、また、政府が差しつかえないものは出し得る、かようにいたしております。そこで本件につきましては、議事進行に協力する意味をもってできるだけ出すように現在考慮中であるので、その点もうしばらく待ってくれという御答弁でございました。そこで議事は進行いたしましたわけですが、昨日私ども手元に提示せられましたものは、要求しておりますものとは全然違うことも、これは政府もお認めになると思います。思い違いでこれを出されたとは思われません。総理防衛庁長官説明によれば、まだ防衛庁長官ないし防衛関係最高責任者である総理の決裁したものでないから、これを出さないという趣旨でありますが、各省庁にわたる資料につきましては、必ずしも当該所管大臣の決裁したものに限られてはいないのであります。この国会におきましても、ここに山積みされておりますものは、それぞれ部局において作業したもの等がこうして積まれております。  そこで私は、この議事進行に協力していただく意味においても、先般のしばらく待ってくれというものはこれで終りで、これで了解ということではなくて、資料提出にあたってはいろいろ説明はつけられると思います、いまのように。こういう事情下におけるものであるということは、自主的立場説明はつけられるかと思いますが、いずれにせよ、これが審議参考にいたしますためにも、基本的な問題というふうに解しながら要求していることですから、この点再考を促したいと思います。総理いかがでございますか。
  13. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 藤田君のお話は、経過的にそのとおりでございます。今回防衛庁におきましても、いろいろ検討した結果、これを小委員会提出したのでございます。ただいま小委員会におきましても、いろいろの論議がかわされておるだろうと、かように私は想像します。もちろんこれを提出し、防衛庁が最終的な決定をするにつきましては、いろいろの議論、研究した結果、これを出したのでございまして、ただいま再考しろとおっしゃる。これはもちろん、再考しろとおっしゃるのだから、再考いたしますと言うのが本筋かと思いますが、ただいまの状況では、再考いたしましても、ほかのものは出てこないと、かように私考えますので、ただいまの御要望ではございますが、今日の状況下におきましては、ただいま新しい考え方が出てくるとは、まず考えられない。そういう点だけお話をいたしまして、ただいま再考しろとおっしゃることは、その点は、私どもも、なお研究の余地があるかどうか、もう一度再考いたしましても、それはけっこうでございますけれども、多きを期待されないようにお願いしておきます。
  14. 米田勲

    米田勲君 ただいまの総理答弁は、結局、三矢研究資料提出できないということになりますかどうか、もう一度お尋ねします。
  15. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 私は、藤田さんが先ほど速記をお読みになりましたとおりに、政府として責任の持てるもの、また、政府が差しつかえないものと、こういう観点に立って、その資料を検討さしたと、かように私は申し上げておるのでございます。ただいま第一に申し上げますものは、これは政府決定をいたしたものでもないので、そういう意味では、政府責任を持てるものではない。したがいまして、その点は、私の主張から申しますと、まずむずかしい問題ではないかと、かように私は想像しております。あるいは、防衛庁におきましても私と別な考え方を持っているかもわかりませんので、防衛庁長官からあとはお答えさせたい、かように思います。
  16. 小泉純也

    国務大臣小泉純也君) 防衛庁長官といたしましても、いま佐藤総理大臣からお答えがありましたとおりでございまして、私どものほうでは慎重に検討いたしました結果、先ほど来申し上げますとおり、御要求図上研究幕僚答案そのものをお出しすることはできない。最大限の努力をいたしまして、昨日御提出申し上げましたようなものを資料として御提出いたしたような次第でございまして、現在の時点においては、総理お答えと私ども考え方も同じでございます。
  17. 米田勲

    米田勲君 ただいままでの政府答弁では、われわれが提出要求をした三矢研究資料は、提出しないという結論であります。これは、何としても納得ができません。資料提出をあくまでも拒むということは、われわれの国政調査権を侵すということになる。これは断じて許すことができない。しかも、三矢研究を出さないで、これを提出してきたが、その内容を調べてみると、ことさらに三矢研究を過小評価してみたり、内容にも幾多の予盾と疑問があるのであります。したがって、これを読めば読むほど、本物の三矢研究資料提出が必要であるということを痛感するのであります。したがって、もう一度総理に、われわれはあくまで三矢研究資料提出を求めるという強い要求を持っているが、総理見解を再度ただしたい。
  18. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) たいへん強い御要望、御要求でございますので、さらに検討いたします。
  19. 米田勲

    米田勲君 もう一つ総理お尋ねしたいのは、けさ九時五十分、佐藤総理李外務部長官と会見をされておられます。きのうまでの日韓会談は、農相会談で相当行き詰まっておる模様にあるが、この外務部長官との会談内容について御説明をいただきたい。
  20. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 韓国の李外務大臣は、御承知のように、ただいま渡米の途上日本に立ち寄られました。この機会に表敬をしたいということで私をたずねられまして、いずれ帰国の際、再度日本に来られます。そのときは正式に日本外交事案について交渉を持つということでございますので、きょうはほんとうに表敬意味お立ち寄りになった。したがいまして、朴大統領からの親書も持っておいでになりましたが、これは過日の、過般の椎名外相訪問に対して、基本条約案について調印のできたことを喜んでおる手紙でございます。別に詳しい、またこまかなお話などは、きょうは出ておりません。
  21. 米田勲

    米田勲君 それでは、これから中小企業問題について質問をいたします。  昨年の予算委員会でも、中小企業倒産が問題になりまして、政府答弁は、あらゆる施策を講じて万全の策を、ということでありました。その後一カ年、依然として記録的倒産が続いておるのであります。そこで私は、昨年一月以降今日までの倒産状況は一体どうなっておるのか、またその特徴点はどうか、ということを通産大臣からお答えをいただきます。
  22. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 昨年一カ年間の倒産状況は、七月以降非常に顕著になりまして、年末最高に達しております。で、この中小企業倒産原因には、一言でこうだと言えるようなものでなくて、非常にたくさんな原因があろうかと思います。たとえば、中小企業生産性が低いとか、あるいは最近において労働の需給が逼迫しておるとか、さらに技術革新が非常に進んでいるとか、こういうような中小企業をめぐる経済環境、そういうことに伴いまして、どうしても近代化合理化を急ごう、設備投資が過大になる、そういう無理が出ておるのじゃないか、こういう点がございます。そこに、御承知のような一昨年の十二月からの金融引き締めも加わりまして、その結果が、倒産するものが非常に多いと、こういうことであると思います。
  23. 米田勲

    米田勲君 通産大臣、昨年の一月から今日までの中小企業倒産の総数、負債総額の総計はどうなんですか。
  24. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 中小企業庁長官からお答えさせます。——いま、手元に十月以降この二月までの件数負債額がございますが、とりあえずそれを御報告申し上げます。  昨年十月が、四百四十九件の負債総額が四百十二億円、十一月は五百十八件の五百九十億円、十二月が五百九十六件の九百三十億円、本年一月の四百二件、四百二十億円、二月の五百二十一件、四百六十億円、これらは、負債金額一千万円以上の東京商工興信所調査でございます。
  25. 米田勲

    米田勲君 トータルにすると、どうなりますか。
  26. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) ただいま手元資料を持ち合わせておりませんので、後刻資料で御報告申し上げます。
  27. 米田勲

    米田勲君 通産大臣、あなたのところには中小企業庁もあるわけですが、ただいまの統計政府統計でなく、よそから借りてきておるわけです。こういうことは、どうもわれわれとしては納得ができないのですが、政府自体統計資料というものはないのですか。
  28. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 昨年度の総件数は四千二百十二件、負債総額は四千六百三十一億円でございます。  ただいまお尋ね政府自体資料がないのか。この点につきましては、実はただいまの統計でもおわかりのように、倒産の非常にふえてまいりましたのが昨年の上期以降でございます。政府自体が直接に調査をすると、こういうことになりますれば、そのためには相当な人員も必要でございますし、また、機構も必要でございます。これらのことは、昨年度の予算要求当時に想像もしておりませんでしたし、また、長い間、民間東京商工興信所という機関が相当確実にその調査をしておる、こういうものをひとつ資料として考えていこう、こういうふうに考えた次第でございますが、現在、私の記憶では、東京商工興信所全国に六十二の支社を持ちまして、約千五百人の人間を持って、そしてしかも多年の資料をもとに、この倒産実情調査しておると思うのであります。それで、現在急に政府がこれらの機能を持つことが適当であるかどうか、あるいはこれらの調査につきましては立ち入り検査等の必要も出てくる、そういうことをはたして政府がやるのがよいのかどうか、というようなことから、こういう民間資料あるいは別途全国銀行協会資料などを参考にいたしまして、また地方通産局を中心にして、それらの資料に基づいて、その地方地方倒産実情などの掌握につとめておる、こういう次第でございます。
  29. 米田勲

    米田勲君 総理お尋ねしますが、いまお聞きのように、中小企業倒産などについても民間機関をたよっているわけです。これは私、政府みずからが中小企業政策に本格的に取り組むならば、みずから調査をし、創意くふうをして、タイムリーにその政策を進めるためにも、みずからの調査機関が確立している必要があるのではないか。いま通産大臣の話を聞くと、どうもお金のほうが、予算のほうがないから人員機構も整備できない、こう言っているのですが、どうですか、総理総理見解はどうですか。
  30. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 政府自身が持つというのが、ただいまのように本筋お話かと思います。しかし、ただいま全国興信所からとっておりますものも、これも信憑すべき、信頼すべき筋のように思いますので、これを信頼していくというのも一つの行き方だろう。私どもは、やはり一面で正確な数字は把握しなければならない。それで初めて対策が立つ、かように思いますが、また一面、チープガバメントということも私ども考えていかなければならない。それで、世間でやられているものは一切信用はできない、みずからの手でやらなければ信用はできない、こういったものでもないだろう。その辺は二つの条件がございますので、十分考えて、その辺をうまく運用していきたい、かように思います。  ただ問題は、しかしこの中小企業の問題というのは、統計もさることですが、ただいまの状況、これについての認識は、政府も、また民間の方も、また皆さん方認識も同様なものを持っているのじゃないだろうか、かように思いますので、その政策の面からの御批判を特にいただきたいと、かように思います。
  31. 米田勲

    米田勲君 先ほどお尋ねしましたが、わずか五カ月の間にばく大な倒産件数負債総額が出ておるわけです。これは一千万円以上のものについてですが、通産大臣、一千万円以下のもので、どの程度の倒産があるかということの概括的なものはおわかりでしょうか。あればひとつ説明してください。
  32. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) きわめて遺憾でございますが、商工興信所においても、また全国銀行協会におきましても、一千万円以下の確実な掌握はできておらない実情でございます。
  33. 米田勲

    米田勲君 通産大臣、そういうこともあるので、民間機関では調査できない分については、当然やはり政府機関を整備して調査する必要があるのでないか。いかがですか。
  34. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 理想としては、そういうことも考えられますが、しかしながら、行政機構が非常に膨大になる、こういうことも一面考えなければならない。また、先ほど総理お答えのとおりに、一応、現在多年にわたっての調査をしておる機関もございますので、これらを活用していく、また御指摘の点につきましては、私としても今後全国銀行協会興信所等に対して、一千万円以下のものも掌握ができないかということをいま申して、せっかく調査をせしめておるところでございます。
  35. 米田勲

    米田勲君 非常に中小企業の現状はきびしい状態になっていますが、この倒産的な傾向というものは政府としてもあらかじめ予測し得たものではないかと、われわれは考えるのであるが、その点はいかがですか。
  36. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 先ほど冒頭に申し上げましたように、中小企業生産性が低いとか、最近の労働需給の状況とか、あるいは技術革新の進んだ点から見まして、中小企業の置かれた経済環境ということを考えていきますときに、それに加えての金融引き締め政策でございましたので、相当な影響があると、こういうことは考えられました。したがって、昨年のお盆の場合でも、年の暮に際しましても、特に中小企業に対する金融措置というものは、大蔵省とも相談して特段の配慮をしてまいったつもりでございます。
  37. 米田勲

    米田勲君 あらかじめ予測ができた問題で、いまの答弁ですと、金融等について対策を講じたと言っておりますが、しかし、先ほども出ておるように、数字の上にあらわれておるものは、ほとんど政府の施策は有効なものがなかったと言えるのではないかと思うのですが、どうですか。
  38. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 出た数字の実情からいたしまして、そういう御批判も受けるかと思います。しかしながら、対策といたしましては、われわれとして十分してまいった、しかし結果的には遺憾ながら期待に反したと、こういうことかと思います。
  39. 米田勲

    米田勲君 政府答弁をさせますと、中小企業倒産は、経営者の、ずさん、放漫な経営が倒産の主たる原因だと常に強調するわけです。むろん、私も確かにそういう点はあると思います。しかし、問題を、ただそういうことで片づけられてしまっては、これは承服ができないし、そんなことでは、これは政治不在だと言いたいわけです。  そこで、政府にただしたいのは、中小企業が今日のような苦境に立ち至っているのは、政府政策上の責任もあるのではないか、こういうふうに考えますが、通産大臣、いかがですか。
  40. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 御承知のように、いまのこの引き締めが、国際収支の改善ということから起きてまいりますから、大きな意味におきまして、そういうことの影響を受けたということの事実は否定することはできないかと思いますが、しかしながら、時代が大きく進歩しておるのでございまして、中小企業が、これがために、近代化合理化をはかる、そして国際競争力をつけていくと、そういう努力をしておる場合に、行き過ぎがあった、あるいは放漫経営というものが、この金融引き締めの結果、表に出たとか、そういうような要因もあるのでございまして、一概に政府の施策が悪いと、こういうふうには言えないと思います。
  41. 米田勲

    米田勲君 私は、一概に政府責任だときめつけたわけではない。しかし、最近、そういうことの問題に触れると、政府は、経営者がどうもまずいのだということを言うので、私はあえて政府中小企業政策そのものにも責任があるのじゃないか、だから今日このような中小企業の悲惨な状態が起こっているのではないかということを聞いているのであって、ほかのことを言い回して否定するようなことでは、ぼくは何を政府答弁しているのかわかりませんので、すなおにひとつ答弁してください。
  42. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) これは私すなおに申し上げておるのであります。企業者としてあらゆる努力をすべきであろうと思います。しかし、その間に放漫経営があって、そのことが原因だったとか、あるいは判断を誤って非常に過重な設備投資をした、こういうことまで政府責任である、こう言われると、これは問題だと思うのであります。そこで、一がいには政府責任だとは言えない、こう正直に申し上げているわけであります。
  43. 米田勲

    米田勲君 中小企業倒産は、考えてみますと、一昨年のころからだんだんその傾向が顕著になっている。昨年の一月以降、最悪の状態が今日まで続いていると見るべきである。このことは政府の高度成長政策の深まるにつれて状況が悪化してきたと私は見ているわけです。そこで、政府の高度成長政策、これがまたわれわれの立場から言わせると、大企業重点に操作された、こう考えられる。政府は、中小企業についてもいろいろ手は打った、こう言うが、しかし、しょせんこの政策のらち外に置かれた中小企業は、その構造的弱点を改善するための力と時が与えられなかったとわれわれは見ているのであります。そういう立場から特に私は、中小企業を今日の状況に追い込んだのは、政府のきわめて大きな責任があることを痛感してもらわなければならぬ、こういう立場ですが、通産大、白いかがですか。
  44. 櫻内義雄

    国務大臣櫻内義雄君) 私どもは、成長経済の過程におきましてひずみが出たということは認めておるわけであります。そのために中小企業のひずみをひとつ直そうということで鋭意努力をいたしまして、ことしの予算の上におきましても種々対策を講じておるわけでございます。昨年度倒産がふえた、これはむしろこの成長経済から安定経済に移して、そしてそこに金融引き締めを行なわざるを得なかったというような事態、遠くさかのぼっていろいろ考えてまいりますれば、お話のような点もあろうかと思いますが、しかし、昨年の実際の現象があらわれてきたというのは、一昨年十二月以降の国際収支の改善に伴う施策の結果であったかと思います。
  45. 米田勲

    米田勲君 どうも通産大臣はすなおに認めようとしませんが、私は何としても前の内閣から進めてきた高度成長政策が、大企業重点に操作され、中小企業はどうしてもらち外に置かれた、こういうことに今日の中小企業の条件が生まれてくる根本的な理由があった。そういう意味で、政府責任が相当強いぞということを指摘しているのであります。  総理は、一月二十日の日に内閣記者団と首相官邸で会見をしているわけですが、このときに倒産などの経済問題の質問に対してこういうことを言っているわけです。楽観はできない、政治家としてこんな状態は長くほうっておくわけにいかない。半年もすれば上向く方向で努力をする、あまり金融引き締めを続けていくと倒産が続出するので、倒産を救うために公定歩合を一厘引き下げた、しかし、引き締めの基調はゆるめられない。こういう発言をしておられるのでありますが、この発言の中にも私は、金融引き締めということを突如としてやらなければならなかった理由は、中小企業政策のためではなかった。しかし、そのあおりは一番中小企業に来ている、こういう認識をしているのですが、総理のこの発言と、われわれの考え方について、所見をただします。
  46. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一月に私が発言いたしましたものには多分に意欲的なものもあるということでございます。したがいまして、半年もすれば景気を上昇の方向に持っていきたい、言いかえますならば、経済を安定基調に乗せることもできるのじゃないか、各界の方々の協力を得て。こういうことを実は念頭に置きながら発言したものでございます。また、今日、それならばそのとおりになっているかどうか、かような見方がございます。少なくとも最近は落ちつきは見せてきておる。したがって、この席でも御議論がありますように、政府は一体成長に重点を置くのか、安定に重点を置くのか、こういうような質問まで出るように、この安定成長ということばについてもとやかく言われて、安定成長を言う、その結果は成長を鈍らすのではないか、こういうような疑念まで持たれる。しかし、少なくとも各方面において落ちつきを取り戻しつつあることはいなめない事実である。また、そういう方向が好ましいことであることも米田さんも御承知のことだと思います。私は、先ほど来政府責任ということを言われますが、もちろん政府は全般について責任を負うのだ、こういうたてまえでいま政治をとっておりますから、そういう意味責任はもちろんある、しかし、個々の会社の、甲の会社が破産したが、その責任はおまえのものだ、こう言われるとそれはやや無理ではないか。ただそういう観点から、政治のあり方というものについて私が少しく説明をつけ加えさせていただくならば、今日、一昨年来、経済金融引き締めをやってきた、そうしてその効果がただいま申し上げるように、先ほど言うように、やや落ちつきをもたらしておる、この状態がいましばらく続けば、必ず今度は本格的に伸びる形のほうに向かうだろう、かように思いますが、この間に一体どういうことが行なわれてきておるのか。いうならばただいまの倒産というものをいわゆる景気循環から引き起こされた倒産と、かように見るのか、同時にまた、この高度経済成長のもたらした構造上の変化、それから出てくる、こういう事業の不振とでもいいますか、そういうものか、これを考えてみたいと思います。私はいわゆる構造の変化と、同時にまた、景気循環、この両方が一緒になって今日の状態を起こしておると思います。今日まで大企業中心だと、かような言い方をされるのも、大企業は幸いにして科学技術をどんどん取り入れた、しかしながら、中小企業はなかなか思うように科学技術を取り入れないとか、あるいは労働力を大企業は遠慮会釈なしにどんどん吸収ができた、しかしながら、中小企業の面においては思うようにいかない、そういうような点がやはり中小企業の不振を来たしている、そうして、ある見方をすれば、この高度経済成長は大企業中心で、中小企業が取り残されるもの、こういう見方をされると思いますが、しかし、中小企業に対しましてはこのおくれを取り返すような、そういう意味の施策をいろいろやっている。これが金融の面であったり、あるいは税制の面であったり、また、予算の面であったり、その金額は私は十分だとは申しませんが、それぞれの対策を立てまして、いわゆる中小企業も大企業並みに生産性を向上さし得るような、そういう施策をとってきておるわけであります。言いかえますならば、大企業は今日の状態ならば、政府はあまり関与しなくともこれはひとり立ちができる、しかし、中小企業の面ではどうしても政府の施策、援助がない限り、ただいまのようなおくれを取り返すことができないのだ、かように私は思っておるのであります。ただしばしば私どもが申し上げますように、最近の経済成長から所得の平準化あるいは賃金の平準化、そういうものが急速に行なわれる、ここらに一つの足踏みが必要になってきているのじゃないか。最近の傾向などを見ますると、いわゆる所得の平準化あるいは賃金の平準化、それらの声がやや鈍っております。これは私必ずしもいいことだと、かように申すわけではございませんが、今日の大企業あるいは中小企業のあり方から見まして、あるいはまた、農業のあり方から見まして、ただいま急速にその点を主張すると、今日のような破綻、そういう意味の格差がまた逆に生ずるだろう、かように思いますので、とにかくこの際は経済を安定基調に乗せる、そしてことに弱い面については政府の施策を積極的に展開することだ、だからそういう意味で今度は逆に政府のやる安定成長というものは成長部門に対して力をかさないのじゃないか、だから安定の方向に重点を置いているのじゃないか、かような質問まで生じますが、ただいまの状況では落ちつかし、また安定、そういう基調にのぼせる、そうして弱いものに対しては先ほど来お話がありますごとく、政府が積極的な援助政策を実行する、そうして初めて均衡のとれた調和のとれた社会的発展になる。ここをねらっていかないといけないのじゃないか、かように私は考えるのであります。いわゆるそれが政治の部門である、純経済の部門ではなく、中小企業や農業の問題は、これは政治の部門だ、かように申し上げているのも、ただいまのような点に考慮を払っているからであります。私はいずれにいたしましても、今日中小企業あるいはお話の中にはただいま触れていらっしゃいませんけれども、農業等おくれておる部門、ことに力の弱いもの、こういうものに対しては政府の積極的施策こそ必要な望ましい姿である、かように考える次第でございます。
  47. 米田勲

    米田勲君 政府はこの白書の中で、中小企業の構造上の弱体性が最大の問題だと指摘をしておる。しかも構造上の弱点を解決することなくしては中小企業の安定は期待できないと断定しているわけです。ところで、今度の四十年度予算をもとにして立てられておる政府中小企業対策というものは非常に盛りたくさんで羅列されておるわけです。しかし、私に言わせると、中小企業の今日の現状を考えたとき、政府が看板だけをたくさん並べ立てても、決してこれは有効な結果を招来しないのだ。それなのに、どうも四十年度予算を見ると一般会計の中に占める中小企業対策費はわずか〇・三%、これでは総理が言われるような、政府が考えているような中小企業対策をいかに唱えても実行不可能なんだ、効果があがらぬのではないかということを直感するわけです。大蔵大臣いかがですか。
  48. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十年度の中小企業対策は、通商産業省、大蔵省、労働省関係等に二百十七億九千三百万円、こういうものを計上いたしております。これは比率から見ますと、昭和三十九年の百六十五億六千四百万円に対して五十二億二千九百万円もふえておる。比率は一般会計の伸びよりも非常に大きくなっている、こうは言いますが、あなたはそうではなく、この数字は一般会計の総額から比べると微々たるものである、こういう御指摘だと思います。中小企業の問題は一般会計でもってやる分野というものはおのずから限度がございます。中小企業に対するやはり施策というものは一般会計でどうするか、また金融制度の中でどうするか、もう一つは税制上どうするか、こういうことでございます。この企業の態勢についてはやはり税制と金融が主になっておるのが中小企業対策でございます。でありますから、二百十七億という数字が総予算に対して非常に少ないということだけで律せられる問題ではないと思います。率直にひとつ申し上げてみますと、中小企業というものは世界に例のないものである、日本の特性であります。でありますから、この特性が日本の力を培養する根源にもなっておるわけでありますから、中小企業の現状、歴史的に見た現状と将来の日本中小企業はどうしていかなければならぬか、こうやはり政策的には区分をしていかなければならぬと思います。まあ二百億のものを倍にすれば四百億でしかないわけでありますから、そういう金額ではなく、やはり中小企業の実態に対して現在と将来に分けて検討すべきものだと思います。私たちが予算を組むときもこういう問題を十分検討して、中小企業に対しての施策はどうあるべきか、こういうことを十分検討して予算を組んだわけであります。中小企業予算を組みますときにだれでも現状に対してだけ言うのでありますが、西ドイツなどは中小企業がありますが倒産をしないのに、なぜ一体日本倒産するのか、こういうと、もうかる仕事があるとわれもわれもで幾らでも無制限にできる。まあ西ドイツなどでは同じ企業というものは二つ以上つくらないという国民的な自立態勢が整えられておりますが、日本においては、もう部分品においても特許を取ればもうかるとすぐ企業化を行なう。ですから、この間問題になっておったアンプルの薬でも二百社もあるわけであります。なべがもうかるといえばなべばかり、かまがもうかるといえばかまばかりつくる、これではとてもやっていけるものではありません。ですから、やはり時代に即応した中小企業態勢という自覚も必要でありますし、政府がそういう企業者に対して強い行政指導も必要だと思いますが、それからもう一つ政府がやらなければならぬことは、これはまあ下請関係の問題でございますが、下請の遅延防止法がございますが、実際はざる法である。これは相当手きびしくこの法律を適用する必要があると思います。  それからもう一つは、企業と自己資本との関係、私が常に申し上げておるのでありますが、アイデア・マンでありますので、アイデアがあると金が一銭もなくてもすぐ看板を掲げる、こういうところにも零細企業の弱点があります。盲点がございます。ですから、自己資本と他人資本、導入資本との比率はどうあるべきか、こういう基準をつくって、そして自己責任の確立と政府や私ども責任という問題を明確にしないと幾らでも看板がかかっていくということでは中小企業、零細企業の対策も徹底しないという問題もございます。  なお一つ申し上げるのは、金がなくても手形を書けば何とか金が借りられる、事業が始まっていく、こういうものの考え方が非常にあります。私のところへも、あなたのところへも陳情があると思いますが、アイデアでもって仕事をやれば非常にもうかる、金がない、手形をひとつ書いてくれませんか、こういう融通手形といいますか、金融を不正常にしている。こういうものに対して一つのやはりけじめをつける。ですから政府が施策を行なうとともに、やはり国民的自覚、産業人としての自覚というものも持たなければならないと思います。まあ、私は歴史的に見て開放経済に向かって、いままでのように無制限に中小経営、零細企業が幾らでも誕生するということでもないと思います。また、中小企業は賃金が安かったというところに妙味があったわけですが、賃金の平準化が行なわれた。大企業よりもより待遇をよくしなければ中小企業に人が来ない、こういう事態になりましたので、中小企業自体の自立態勢に入っていると思います。まあ、そういう事態で看過していると倒産が非常に大きくなるということでありますので、いまの段階においては政府もできるだけの施策をして新しい態勢に即応する零細企業の態勢確立ということに資さなければならない、こう考えております。
  49. 米田勲

    米田勲君 大蔵大臣のお話を聞いておると、立場上そう言うのか、どうも経営者の諸問題あるいは構造上の問題に触れたりしますが、私はそれもある、それもあるが、政府はたくさんの中小企業対策を並べているが、しかし、どうも一般会計の中に占める予算は少ないんじゃないか、そう言うと、大蔵大臣は、いやそればかりでない、金融、税制の面でと言う。しからば金融の面でどうですか。中小企業に対して相当依存をしている都市銀行の中小企業に対する貸し付けは、現在のところ五%ぐらいでしょう、必要な額は。
  50. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) そうではないです。
  51. 米田勲

    米田勲君 長期融資について。そういう状態でありますので、なかなか大蔵大臣の言うようなわけにいかない。しかも現状は、中小企業は非常に困難な情勢にありますので、もっとしっかりした、腰を据えた中小企業対策なしには、幾ら中小企業に対してひずみの是正だとか、革命的なことをやるとかいっても、それは効果のあがるものでないということを、時間もありませんので特に指摘をしておきます。  次は農業政策の問題について。農業の生産性、所得格差にてこ入れをする画期的な立法だといって農業基本法が成立して、すでに四年余りを経過しております。自来、いわゆる革新的な農業政策によって育成されたはずの農業が、今日、政府の農業白書の中で全編を貫いて、重大難局に立つと訴えざるを得ないような農業になってしまっておる。一体これはどういうわけなんだということを私は赤城さんに聞きたい。
  52. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農業の生産からいいましても、あるいは農業者の生産性あるいは生活水準からいいましても、順調に進んでおります。順調には進んでおりますが、他の産業と比較いたしまするというと、まあ横ばいといいますか、そういう状況でございます。これは一つは国民所得倍増計画のもとで農業の近代化も進めたのでございまするけれども、他産業の伸び等が非常に高度であったためにまあ横ばいというような状況であったと思います。しかし、農業全体として決して停滞しておるというわけではないと信じております。
  53. 米田勲

    米田勲君 農林大臣として、はなはだしからぬ発言をしておる。あなたは農業白書の中で徹頭徹尾書いているじゃありませんか。農業はたいへんなことになっておるといって。それと、いまの発言はまことに違うのじゃないですか。いかがですか。
  54. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 農業基本法ができた当時、生産性等におきましても、御承知のように、あの中に書いてあるとおり二七%、いま三十八年では二九%、あるいは生活水準等につきましても七五、六か七七、こういう程度でございまするから、横ばいだというようなことを申し上げた次第でございます。これが、農業に対するいろいろな政策を推進しなかったとするならば、もっとこの格差が私は開いたはずだと、こういう点から見まして、相当農業につきましても順調に進んではきておる、こういうことを申し上げたわけございます。
  55. 米田勲

    米田勲君 農林大臣、やらなかったらもっと悪くなったんだというような話は政治家の言うことじゃないんじゃないですか。そういう話をしておったんでは困りますよ。あなたは一体今度の四十年度の予算の中で、この一般会計と財投からの金で、いま当面している農業政策のこの諸問題を十分四十年度はやっていけるという自信がありますか。お尋ねします。
  56. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 再々申し上げますように、農業に関する総予算が、満足すべきものだとは私は思っておりません。しかし、いろいろな事情から、こういうふうな予算になって、そうして御審議を仰いであるわけでございまするから、その予算の範囲内におきまして、十分活用して農業を推進していく、こう考えています。予算そのものからいいましても、総額につきましては思うようでございませんが、中には、あるいは生産基盤の整備というような問題とか、あるいは農業構造改善に対する費用とか、こういう点におきましては、相当前年度等に比較しまして予算を計上しておるわけであります。でありますので、この予算を全面的に、いい方面に、よく活用していきまするならば、相当な効果をあげる、しかし、決して満足すべきものであるとは私は考えていません。
  57. 米田勲

    米田勲君 私はこの予算の姿では、いかに効率的に進めたとしても、絶対量が不足しておる。どうも農林大臣は、現在の日本農業に対して、これだけの予算のかまえで納得をしているような、消極的な態度のように見れるが、その点はいかがか、もう一ぺんお尋ねをします。
  58. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほどから申し上げましたように、これで納得というわけにはまいりません。満足はいたしておりません。しかしながら、予算の策定も済んで、そうして御審議を願っておるのでございまするから、この予算が通過いたしましたならば、その予算の範囲内におきまして、十分効率的にこの予算を使っていきたい、こういうふうに申し上げておる次第であります。
  59. 米田勲

    米田勲君 満足してないということは、われわれの手で、予算の修正が行なわれて、農業関係の予算が増額されるということが望ましいという意味ですか。
  60. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 望ましいけれども政府といたしましては、現在のもので御通過を願うことが望ましいと……。
  61. 米田勲

    米田勲君 総理お尋ねをしますが、どうも赤城農林大臣の答弁は私は納得できないのです。積極性がないんじゃないかと。それで、予算の問題についても、何かしらその現在置かれておる農業の、日本農業の現状から見て、絶対量が不足していないか、政策を進めるのに。こういう考えが結論なんですが、いかがですか。
  62. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農林大臣は、この短時間の間に、農政全般についてのなかなか説明ができかねておるのだろうと思います。皆さん方の協賛を得てでき上がった農業基本法、これを骨子にして進めておることは御承知のとおりだと思います。言うならば、いわゆる自立農家をふやしたい、同時に自立農家は、専業農家のうちから自立農家というものを考えて、それをふやしていきたい、こういうことを考えておるようであります。同時にまた、現状においては、第一種兼業農家、第二種兼業農家、その数も非常に多いのだから、そういう意味において農家収入をふやしていく、こういう両面から、農家に対する政策を立てておるようであります。その意味においては、私は農林大臣は非常な経験家であり、非常な積極性を持った考え方を持っておるようであります。今回の公団設立等につきましても、そういう意味において新しい農政分野を考えていく、また、構造基盤の強化などについての積極的な意図、これは私は十分くみ取れると思います。ただいま米田さんの御指摘になります農業あるいは中小企業、これはまことにむずかしい部門であります。したがって、そういう意味においては、さらにさらに積極的なものが要望される、そこのところはよくこたえておるのでございますけれども、もうたびたびこの問題が論議されておりますから、きょうの答弁といたしましては、私はあまりにも簡単過ぎて、そのために農林大臣の熱意のほどが疑われる、あるいは誠意のほどが疑われる、かような結果になったのではないか、かように思いますが、非常な熱意を持って農政と取り組んでおる、これだけは私が保証いたしますので、御了承をお願いいたします。
  63. 米田勲

    米田勲君 それでは私は特に農業政策問題に触れましたので、この際、北海道農業の問題について若干触れてみたいと思います。  昨年はひどい北海道は冷害にあったわけですが、政府としては、農林省を中心にし、他の関係各省もこぞって冷害対策を進めてくれましたが、この際は、農林省関係の冷害対策の、いままで進めてこられたことを総合的にまとめてひとつお伺いいたします。
  64. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 北海道の冷害に対しまして講じた施策等を逐次申し上げてみたいと思います。  一つは、金融関係でございますが、天災融資法及び同法にかかる激甚災害法を適用するとともに、天災融資法の一部改正を行ないまして、重複被害者に対する五万円加算を含めない貸し付け限度を、北海道においては従来二十万円を三十五万円に、激甚災害法適用の場合は二十五万円を四十万円に引き上げました。なお、この融資条件は、融資総ワクは百十三億でございます。それから、自作農維持資金の災害特別ワクを設定するとともに、開拓者資金の融資措置を講じました。  それから、水稲、畑作物の種子の購入助成のために、水稲、畑作物につきまして二分の一の助成を行なった。  それから、越冬用の飼料、えさの確保をはかるために、政府所有の輸入ふすまにつきまして、総ワク一千トンほどを知事に払い下げました。六カ月間の無利子延納を認め、被災農家に売り渡しました。  それから、農産物の検査規格に特例を設けまして、未熟粒混入の玄米につきまして一定の規格を設け、政府買い入れの対象としたほか、大豆、小豆及びインゲンにつきましても下位等級を新設いたしましたということ、また、エンドウにつきましても、規格中に新たに五等級を設定いたしました。  米の時期別格差期限第三期を、北海道につきましては特に十一月四日までといたしまして、十五日間延長したことがございます。  それから、農業共済再保険金を十二月二十三日までに支払いを完了した。これは六十億八千万円になっています。  被災農家の被害程度に応じまして、三十九年産米の予約概算金の要返納額を二年または三年の元本均等償還といたしまして、これに伴う金利につきましては、四十会計年度から利子を補給する予定で、四十年度予算案に約千八百万円を計上しております。  それから、開拓農家についてでございますが、開拓農家のうち、冷害のため緊急に離農を必要とする北海道の開拓農家のため、当初割り当て五百戸分のほかに三百五十戸分を追加するため、十二月四日の閣議で予備費一億五百万円の使用を決定いたしました。  それから、救農土木事業でありますが、それにつきましては、被害農家の現金収入確保のため、労賃収入を得させるために救農土木事業として道市町村の起債所要事業費八億円の起債を承認した。  このほか、北海道開発局による直轄事業費約一億一千五百万円、国有林の土木工事、農地等の災害復旧事業等一億一千万円、国有林の稼用薪炭材の払い下げによって八千三百万円等による措置を講じた。  学校給食でございますが、学校給食につきましては、文部省で給食をすでに実施しておりまする学校で冷害のために準要保護児童の増加する分、八千名だと思いますが、それと、給食をいまだ実施してない未実施校で冷害後新たに給食を始めようとする場合であって給食費を支払うことができない児童分、約三万名でありますが、合わせて合計約三万八千人分につきまして所要経費の二分の一を助成することといたしました。これらの措置に伴いまして、従来冷害以前から補助給食を行なっている七千名を含めて計四万五千人分として、食糧庁では、文部省の要求どおり、一−三月分百三十四トン、四−六月分百五十四トンの小麦粉を道学校給食会に対しまして売り渡した。  また、冷害に強い品種の育成が、水稲のみならず、豆類につきましても要望されておる現状にかんがみまして、四十年度予算案では、北海道農業試験場の月寒への移転にあたりまして、ファイトトロンの施設を新設することといたしまして、予算を約九千六百万円を計上いたしております。  以上が、羅列的でございますが、北海道の冷害に対しましての農林省として講じた対策でございます。
  65. 米田勲

    米田勲君 いまの答弁の中で、融資ワクを拡大したがそれは百十七億だと言っておりますが、間違いではありませんか。
  66. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 申し上げたとおりでございます。
  67. 米田勲

    米田勲君 もう一つ。救農事業の実施について、これは道や市町村を通じてやらせたのだが、その際起債を認めておりますが、この起債の性格はどういうことになったのですか。
  68. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 政府委員から答弁いたさせます。
  69. 中西一郎

    政府委員(中西一郎君) お答えいたします。道で自治省が中心になりまして地方債の発行を認めておりますそれぞれの地方公共団体の単独事業としての起債のワクでございます。
  70. 米田勲

    米田勲君 その起債の性格、どういう性格の起債か。自治大臣。
  71. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 救農土木事業は単独事業として、先ほど農林大臣が話しましたように、八億か認めたと思っております。
  72. 米田勲

    米田勲君 利子や返済時期などについては特別の措置がないのですか。
  73. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) それらは、将来の交付税の際に、収入と需要とを見まして、その不足分につきましては交付税で見るつもりでございます。
  74. 米田勲

    米田勲君 赤城農林大臣にお尋ねしますが、北海道の農民が昨年ひどい冷害にあったんだが、これは一体どうしてこういう冷害にあったかということをあなたにお尋ねしたいのです。
  75. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) まあ、気象条件によりますけれども、政治的に見ますならば、まだ、何と言いますか、冷害地——寒い地帯の農業が確立してないと言いますか、そういう点にまだ欠くるところがあるということだと思います。
  76. 米田勲

    米田勲君 農林大臣が、まさか、寒いからだったのだというような答弁だけだったら納得しないと思ったら、あとでつけ加えましたが、北海道は、開拓使以来調査してみると九十六年間に二十三度冷害に当たっておる。これは四年に一度ずつやられておる。きのうからの気象庁の発表によると、ことしもまた去年と似たような気候らしい。こうなると、連続また冷害のおそれがあるわけです。こういう気象条件の中に置かれ、四年に一度たたかれているという北海道の条件を考えてみたときに、私は今日までの政府の農業政策、特に北海道の農業政策の指導の面に間違いがあったのではないか、こう考えるがどうですか。
  77. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 北海道の農業政策に間違いあったとは思いません。寒冷地向けのいろいろな施策等がまだ完備してないといいますか、その段階まで行ってなかったという点は私は認めます。たとえば、土地改良もずいぶん北海道には行なわれております。しかし、その土地改良も、土壌の改良という面を含めての土地改良でなければこの寒冷に耐え得るような土地にはなり得ない。こういう面で土地改良等も寒冷地向けの土地改良をどんどん進めて、土層の改良等も進めていくべきだった。あるいはまた、全体的に見ますならば、北海道におきましては畑作農業というものが最も進められるべきでございます。三十一年からそういう面におきまして畑作農業を進めるような方向で進めてきておるのでございますけれども、そういう点がまだ十分に進んでおらぬ。あるいは耐寒冷品種、これは稲につきましてもその他の作物につきましても寒冷品種の改良が進められてきております。でありますから、日本全体としましても、東北等におきましては冷害が非常に少なくなってきた。しかし、まだ北海道につきましては、耐寒冷の品種の育成等につきましても、なお研究すべき点が相当ある。こういうように、いろいろ事態をとってみまするというと、寒冷地農業としてもっともっと力を入れるべき点がある、その力の入れ方がまだ十分でなかったという点は私は認めておりますけれども、失敗だとか、あるいはまた、そういうことには私は考えておりません。
  78. 米田勲

    米田勲君 農業そのものが置かれている現状から見て、農家の収入が非常に少ない。所得が少ない。ですから、赤城さんの言われるように、あれもやってなかった、これも不足であったと、農業の安定のための諸施策がどうもうまく進んでおらぬかっただけでは、これはちょっと納得できないのですよ。それをやるのはだれか、やるのを助けるのはだれか、これをはっきりしてもらわなければ。やはり、北海道農業の安定した確立をさせるのには、農民にがんばれ、がんばれと言っても、限界があるんですよ。そこを私は言っている。そういう意味で、寒冷地北海道の農業の確立のために、本州一般の農政とはまた違った意味で力を入れるべきではなかったか。そういう点で責任があったのじゃないかと、こう聞いているのです。どうですか。
  79. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 責任があったかどうかということは見方でございますが、私どもは、先ほど申し上げましたように、寒冷地農業ということの立場から、北海道につきましては、内地とまた違った方法によりまして寒冷地農業を確立するという方向に進んできているし、また、これからも進めなくちゃならぬ、こういうことは強く考えているわけでございます。
  80. 米田勲

    米田勲君 今度の農業冷害で政府にいろいろ救済、助成の策をとってもらいましたが、農家で生活保護世帯に落ちているものが相当数にのぼっているわけです。その数がどのくらいになっているか、農林大臣お調べですか。
  81. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) いま手元にその数字を持っておりません。
  82. 米田勲

    米田勲君 そういう状況にあることだけは認識してますか。
  83. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは、冷害のときにも、その後にも、始終地元からの話も聞いておりまするし、現地の視察もしておりますので、そういう状況は知悉しております。
  84. 米田勲

    米田勲君 現状はこうなっているわけです。昨年の十二月末までに生活保護の申請をした農家が千二百五世帯、そのうち保護の決定したものが四三%で五百二十一世帯です。この数字でもわかりますように、厳冬期に入ってから非常にその度合いが強くなってきておって、四月末までにはこの申請件数は二千五百件に達するだろう、こう見込まれているのであります。政府は、北海道の農民が冷害に当たったと、たいへんなことだと言って助成をしてくれていますが、実情はかくのごとくであります。そこで、私は、赤城農林大臣に、今回政府のとってくれた冷害救済、助成の措置は、現状を見て非常に不十分なものだったということをどうしても批判せざるを得ないわけです。いかがですか。
  85. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御批判は御批判として率直に受けますけれども、私のほうでは、できるだけのことを手を尽くしたと、こういうつもりでございます。
  86. 米田勲

    米田勲君 そっけない言い方ですな。保護世帯にまでどんどん転落していく農家があるのに、私らはそれ相当の手を打ちましたでは、納得ができませんよ、あんた。惨たんたるものでしょう、農民が、農家が生活保護に転落していくという状態は。だから、十分でなかったというわれわれの批判は、すなおに受けるべきでないですか。そういう反省が必要でないのですか。もう一度お答え願います。
  87. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ですから、御批判は御批判として率直に受けるという前提を申し上げて、また、私どもとしてはやるべきことをやったと、こう先ほど申し上げたのであります。
  88. 米田勲

    米田勲君 御批判は御批判として自由だろうというような言い方は、これは納得していることではありません。私は、北海道の農民の実態は、政府がやってくれたけれども、それではまことに手が薄かったと、もっと実情を見てやってくれなくちゃ困るということを言いたいのですよ。それを、御批判は自由ですよというような言い方は何ですか。もう一度お答えを願います。
  89. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 御批判は自由だと私は申し上げません。御批判は率直にそのとおりに受け入れますと、こういうことを申し上げたわけであります。
  90. 米田勲

    米田勲君 それでは、大体一応政府の冷害対策は打ち切られているわけですが、今後、実情によっては、さらに追加救済助成の措置を講ずる考えがあるかどうか、この点を確かめておきたい。
  91. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) もちろん、実情によっては検討しなければならぬことはあると思います。
  92. 米田勲

    米田勲君 時間がありませんので、急いで開拓農政の問題をひとつただしたいわけです。今回の冷害で一番ひどくたたかれたのは、何といっても開拓農家であります。赤城さんは、北海道の開拓農家の現地視察をしたことがありますか。
  93. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) ございます。
  94. 米田勲

    米田勲君 開拓地への入植は、かつて政策として非常に奨励されたわけであります。しかし、その後の開拓農政を考えてみますと、現在の北海道の開拓農家の実情を見てみて、私は直感的にこういうことを感じた。人間を開拓地に捨てたと、こういう感じがするわけです。それは、総理、頭を横に振っているが、開拓農家のところへ直接足を運んでみなさい。そういう政治の貧困を感ずるのですよ。私は、赤城さんにお尋ねしたいのは、もっと開拓農政のあり方について再検討すべきでないか、こういうことを実情を見て感ずるわけですが、いかがですか。
  95. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 開拓農政につきましては、始終いろいろな実情を聞いておりますので、一歩一歩改善を加えておるのが現状でございます。
  96. 米田勲

    米田勲君 北海道の開拓農家の離農の問題でありますが、開拓農家二万三千戸に対して、現在もう離農させなければどうにもならぬと思われるものが三千数百戸あるわけです。これは政府政策としては、開拓農家の離農問題はどの程度までやり、どの程度までは残してこれを助成していくというようなことについて結論が出ておりますか。自然にまかせるということなのかどうか。
  97. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 開拓農家につきましては、開拓地に残って営農を続けられるもの、また、続けていってほしいというものにつきましては、その方向へ力を注ぐ。どうしても離農したい、もう開拓農家としてやっていけないというものにつきましては、離農資金等を出しまして他の産業に従事しやすいような方途を講じていることは御承知のとおりでございます。そういう数字、そういう実態等につきましてはそれぞれ調査をいたしまして、いま申し上げたような方途を講じておる。こういう次第でございます。
  98. 米田勲

    米田勲君 今度の冷害対策で離農資金は四十五万円ということになっているわけです。ところが、開拓農家を調査してみますと、北海道の場合は、平均して七十万からの負債を持っておる。しかも、離農をさせなければどうにもならぬといったのは、百万、百五十万の負債をしょっておるわけです。だから、政府の四十五万の離農資金では、これは、やめたら裸になって開拓地を出ていくというような状態になって、離農しようにもやはり離農できないというのが現状であります。農林大臣はどういうふうに見ておりますか。
  99. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 離農するにつきましては、離農資金ばかりでなく、他の産業にほんとうに進めるような方向をとっているのでございますけれども、その資金につきましては、いま足らぬような御指摘がございましたけれども、一応いまのところ四十五万円ということで、その他の方途ともあわせて離農に資するというふうにしている次第でございます。
  100. 米田勲

    米田勲君 農林大臣、いまの最もひどくなった開拓農民は、進むこともできず、退くこともできない、こういう姿だから、進むのであったら、もっと徹底した、開拓農民がやっていけるような助成策を講ずる。積極的に退かすのであれば、退くことのできるような条件を与えてやらなくちゃならぬ、赤城さんはいま、他の職にと言いますが、そういう点では相当政府が積極的に責任を負って世話してくれる考えですか。
  101. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 労働政策としても、農業の面から考えても、積極的に他の産業に入れるような方途を講じていきたい。ただしかし、農業面から見ますならば、いまの離農する人に離農資金の手持ちを持って行けるようなふうにしたいということ、あるいは、負債の整理等につきまして種々の方策を講じておりますが、それは御質問外でございますから、お話しいたしません。
  102. 米田勲

    米田勲君 まだただしたいことがたくさんありますが、最後に総理に。  いま若干質疑応答にあらわれたような現在の北海道の開拓農民の姿であります。これに対して、政府として今後積極的にどういう施策を進めてもらえるのか、総理の決意のほどをお伺いしたい。
  103. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 一口に開拓農民と言われますけれども、私は一番同情をするのは、戦後のあの混乱期に入植された方々、これらの方々は、条件その他もたいへん調査不十分のときに入植され、しかも、それに国家的の補助が全然なかった。こういう方が一番お困りじゃないだろうか、かように私考えます。最近の入植者については政府もいろいろ改善を加えておりますので、最近はよほど変わっているのじゃないか、私のわずかな経験から申しましてさような結論を持っております、よほど以前に入植された方々は、もう落ちついて、そうしてりっぱな村落をつくっていらっしゃるのですから。で、今日ただいま問題になるような方々に対して、いかに政府がこれに対処していくか。先ほど来農林大臣がお答えしているように、そういう考え方でよろしいのではないか。もちろん入植する以上、開拓農民としてりっぱに成功したいというその意欲は十分ある、しかし、その場所等において不適当なところもなお見受けられるようでありますが、そういう点につきましては、これは他にかわられることについても考えるとか、あるいは、それの基礎的条件が、あるいは土壌等の改良が十分できていない、あるいはまた、適当なる営農方法が指示されていないとか、そういう意味で資金等を欠除している、こういう点があれば、それぞれの方々の意向を十分尊重して、そうしてこれに対処していく、これが望ましいことではないか、かように思います。
  104. 米田勲

    米田勲君 次に私は、組織的暴力団の防遏対策についてお尋ねをいたします。  昨年の通常国会で暴力処罰法案の改正案が出た際に、この防遏問題についていろいろ論議をしました。そうしてわれわれは、政府、警察庁の積極的なこれに対する姿勢、機構の拡充、強化、そういうものの再検討を強く求めたのであります。当時は、警察庁の調べでこの組織暴力団体の数は五千二百十六団体、その構成員は十八万四千九十一人であったのであります。で、その際の審議警察庁長官はわれわれの質問に答えて、徹底した対策を実施して、誓ってこの数字を早急に下降、激減させてみせます、こういうことを発言しておるのであります。そこで私は、ここでまとめて昨年大体六月以降今日に至る組織暴力団の防遏対策はどのように進められ、成果はどのようにあがったか、現状はどうなっておるかについて、まとめてひとつ御答弁いただきたいと思います。
  105. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。  昨年のいわゆる暴力法改正の際に、その御審議の途中、これができれば私たちも非常に力を得、また、対策としてもその中心になり、暴力団の数もあるいは構成員の数も誓って減少せしめることができると申し上げたことは事実でございます。現在、その結果どれくらいの暴力団が減りどれくらいの構成員が減ったかということにつきましては、正確な数字を集計中でございますけれども、私の現在まで聞き及んでおる概略の数を申し上げますというと、やはり団体数にいたしまして五千何ぼと申し上げたのが、四千台に減っており、あるいは人員にして十八万幾らとこう申し上げたのが、十七万幾らというようなふうに急激に減少したということは申し上げられませんけれども、下降の線をたどっておるということは事実でございます。これがまず第一点でございます。それから、ただいまお話に出ました、あの法律の改正の結果、暴力団の対策としてどれくらいの検挙があったかというのは、ちょっと数字をまとめておりませんけれども、暴力団対策として昨年の正月から力を入れました結果、現在までに検挙をいたしました数は、率といたしまして、前年度に比べて検挙件数が一割五分、人員が約一割二分ぐらいの増加になっております。ことに昨年度の暴力法の改正に伴いまして、あの暴力法の適用をもって検挙いたしました数は、それより非常に上回っておりまして、約四割ぐらいの増加を示しておるというのが現状でございます。検挙件数はたぶん七万台でございます。人員にいたしまして六万近くである、こういうふうに考えております。
  106. 米田勲

    米田勲君 長官のいまの答弁ですと、組織暴力団の団体数、その構成員については、ほとんど現状を把握していないようですが、それはいかなる理由によって現状を把握できないのですか。
  107. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。現状を把握していないんじゃなしに、現状を把握した結果を集計中でございまして、何人という正確な数字じゃなしに、概数を申し上げて、現状は、団体数にして四千八百ぐらい、人員にして十七万五千ぐらいというふうに把握をいたしております。ただ、急激に減らないということは、暴力団対策に力を入れました結果、従来暴力団として把握していなかったものが、新たにこれは常習暴力の団体だということで、各府県警察の調べの中に新たに入ってくるというものもございまするので、ただ昨年中に消滅した団体の数及び構成員の数を一昨年から差っ引くというだけでは現在が出ないという関係で、近くはっきりした数字はお示しできると考えております。
  108. 米田勲

    米田勲君 法務大臣にお尋ねしますが、昨年一カ年の刑法犯罪がどれくらいあったか、総数。そのうち、暴力事犯がどれくらいを占めているか。さらに、組織暴力団の暴力犯罪はその暴力犯罪中どれくらいの率を占めているか。それをお答え願います。
  109. 高橋等

    国務大臣高橋等君) 刑法犯罪の数その他につきましては刑事局長から答弁させますが、ただいまの、刑法犯の中で暴力団の構成員によります犯罪を占める割合、これの的確な数字の把握はなかなか困難でございまするが、現在全国の行刑施設に収容されておりまする暴力団の数——関係受刑者の総数は、今年の一月末で八千二百四十六人でございます。この数は、全体の受刑者の約一六%に当たっておるわけで、大体それで状況を御推察願いたいと思います。
  110. 津田實

    政府委員(津田實君) ただいまのお尋ねでございますが、現在検察庁におきまして暴力事犯というものとして受理いたしておりますものは、大体におきまして年間三万一千件ぐらいでございます。それに対しまして、起訴いたしましたものが、約三分の一の一万一千ぐらいになりますが、この数字は、昭和三十四年ごろから見ますと、やはり五割程度ふえておるわけでございます。で、全刑法犯に対する割合でございますが、これは暴力事犯の把握のしかたの問題になるわけでございますけれども、まあ、大体申しまして五%ぐらいになるんじゃなかろうかという感じでございます。
  111. 米田勲

    米田勲君 最近、組織暴力団の問題については、自治体の自主的な協力の傾向が顕著になってき、また、芸能界その他の方面においても、積極的にこの暴力団と手を切る、そうしてその防遏に協力をするというような態勢が生まれてきているように見られますが、われわれは断片的に新聞の報道を見るしかないわけでありますが、一般的な傾向がどういうふうになってきているのか、また、それに対して組織暴力団はどういう出方をしておるか、これをひとつまとめて長官お尋ねします。
  112. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。私たち自身も、そういう芸能方面における暴力団の締め出しという事柄につきましては、みんな力を合わせてやっていこうという方針で、各地で同じことをやっておるということは承知いたしておりまするけれども、現在までのところ全国でそういう関係で何件そのために興行ができなくなったということで件数の集計はいたしておりません。各地でいろいろな別個の条件があるものですから、あるところでは興行ができ、あるところでは同じような内容のものでもできないというようなものがあるようでございます。ただ、公民館あるいは公会堂等で暴力団関係の芸能を締め出す傾向は全国的でございますが、これも条例等でそういうことがはっきり書いてあるところとそうでないところとでは多少の違いがあるようでございまするし、これはいまから各方面が協力をして推進していく題目でございまして、いままで十分そういうことが行なわれているとは私この席で申し上げかねる状態じゃないかと思います。私たちもそういうことには十分協力をして進んでいきたいと考えます。  なお、これに対する組織暴力の反応と申しますか、そういう反響につきましては、やはり従来のやり方の悪かった点は改め、あるいは一人か二人の組織暴力構成員が入っているために芸能団体全体がどこででも興行ができないという傾向があるということについては、そういう分子が自発的あるいは要請によってそういう芸能団体から身を引くというような傾向があらわれていることは事実でございます。
  113. 米田勲

    米田勲君 この組織暴力団のやり方は、お礼参りでもよくわかりますように、すなおではないわけです。だから、自治体あるいは芸能界その他の民間の協力態勢が生まれてきても、彼らはこれを反撃するためにさまざまなる行動に出るわけです。ですから、政府や警察庁もそういう国民の傾向に対してより積極的なかまえ方をしないと、せっかく協力態勢をとろうとしたが、逆手を食ってどうにもならなくなってきたというふうな悪い結果が予想されないわけでないわけです。その点をわれわれは心配をしておるのであります。この点について、警察庁長官から所見を伺いたい。
  114. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。  御承知のとおり、こういう対策が中途半端に終わりました場合に、協力をした人がばかをみる、あるいは、一ぺん後退した勢力がさらに勢いを増して復活するというようなことは、これはありがちなことでございますから、事不法に当たるものを排除するということは私たちのつとめでございまするから、国民の協力を一方において強く要請するとともに、その協力があだにならないように警察の努力というものは十分やっていきたいと考えます。現在までのところ、幸いにいたしましていわゆるお礼参りといいますか、そういう締め出しに対してその関係者にいやがらせをやったという事例は私まだ聞いておりません。むしろ、いままでの芸能界というものが、私詳しくはございませんが、相当の分野にわたってそういう組織の関係がありましたために、縁を断ち切ろうとしても、断ち切ったためにいかにして興行をやっていくかということについてむしろ悩みがあるという点の相談を受けた例は二、三あるようでございます。
  115. 米田勲

    米田勲君 頂上作戦に非常に成功したという報道が新聞にあるわけですが、これはどうですか。
  116. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。  頂上作戦というのは、もともと私たちそういうことばを使っておったわけじゃございませんが、いつの間にかその組織のおも立った者に手が及んだという数が数回出ましたためにそういうことばが世間に出たわけでございまして、現在は私たちも頂上作戦ということはそういう意味に理解をいたしております。これが成功したかまだ足らないかということについては見方があると思いますが、この点は特に小ものが犯罪を犯しました場合に常識的にその上に位する者までその事件そのものからいくというのはなかなかむずかしい点があるわけで、常識と法律との乖離と申しますか、世間はあの組の下っぱがやったのだから上のほうにも責任があるのだというようなことでございまして、なぜ警察の力がそこまでいかないかというのはいまでも方々で聞く議論でございますが、それは法律上そこまで関係づけられるものに限っておるという点でなかなかむずかしい点がございます。しかし、昨年いろいろな団体のあるいは総裁だとか会長だとかいうような者がひっかかりましたのは、その人自身の犯罪行為というものを摘発することによってかかったものでございます。この数がわりあいに多かったがために、世間では頂上作戦がある程度緒についているということばをいただいているような次第でございまして、今後とも犯罪のある限りにおいては、下部だけじゃなしに、中間であろうと頂上であろうと、しっかりやっていきたい、こういう所存でございます。
  117. 米田勲

    米田勲君 昨年の法案審議の際には暴力団の政党化の傾向について論議が行なわれましたが、その後の傾向はどうですか。
  118. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えをいたします。  昨年の暴力法の御審議の際に政党化の問題がございまして、たぶん十四、五のいわゆるやくざの団体が政治結社の届け出をして自分たちは政治目的で行動しているのだというふうな看板を掲げたのを御報告いたしましたが、その後の傾向は、またその後できたものもございますけれども、むしろあのころ非常な勢いで政治結社を名乗っておったものの中で、やはり政治結社だというためによけいに目をつけられる、あまり得にならなかったというようなことで政治結社の看板をはずしたのがたぶん三、四あったように思いました。現在、そういう傾向がふえているというのじゃなしに、むしろあの結果、政治結社の看板というのははずしていく方向にあると考えます。
  119. 米田勲

    米田勲君 同じくこの法案審議の際に問題になりました暴力団体と政治家のつながりの問題でありますが、その後の最近における傾向はどうですか。
  120. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えいたします。  先ほどいわゆる頂上作戦ということについてお答えをしたのと同様でございまして、世間的に常識的につながりがあるというようなことはわれわれもよく聞くところでございますが、そうじゃなしに、私たちの行動の基準になっている法律的な見地から申し上げますというと、昨年同様、特別に深くなっているとも思いませんし、また薄くなっているとも言えない、その点は何ともわからない状態でございます。
  121. 米田勲

    米田勲君 これは去年の法務委員会でもずいぶんわれわれは論議をしたのですが、その両者の関係の問題については警察庁も非常に憶病であるとわれわれは考えるのですが、いまの答弁から見てもそんな感じがするわけですが、どうですか。
  122. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) 先ほども申し上げたとおり、常識的にどういう組織はどういう政治家の系列にあるというようなことは、私たちもちろん内々に調査をする場合もございまするが、その結果、だれだれにどういうふうにくっついておったというのは、やはり犯罪行為を通してしか捜査というものはわれわれできませんので、現在どれくらいのあれにあるかということは明言をする状態でないということを申し上げたわけであります。
  123. 米田勲

    米田勲君 朝日の三月七日の記事ですね、「三十九年の暴力団狩りは、空前の成果をあげた。」という書き出しで、「しかし、このはなばなしい追撃戦のかげに、全国的な組織を持つ大企業暴力団は、厳然として生き残っている。」ということが書かれてあり、さらにこれらのものが企業暴力団という形で生き延びていっており、その暴力組織の資金源にメスを入れることがきわめて大切だということを述べ、最後に、「この面の追及は非常に因難の多い仕事とされ、政界や財界との結びつきにまで取締りのホコ先が向うことになるともいわれている。この辺の微妙な暗ヤミヘ、現在の警察がどこまでライトを当てうるか、大きな課題といえそうだ。」と、こう書いてあるのです。このことについて警察庁長官の所見をお伺いします。
  124. 江口俊男

    政府委員(江口俊男君) お答えします。  この結論について、これは大きな課題であるという点については同感でございます。ただ、政界、財界に大きなつながりがあるということについては、想像はもちろんできます。それからまた、ある程度どこからどうもらったかということも出てくるのもございます。しかしながら、これが任意という形で行なわれておる限りにおきましては、その分を警察の力で断つというわけにはいきません。要求をしてこれを断わった、断わったらこれをおどしたというような形で出てまいりますれば、だから、したがいまして、政治家なり財界の方々がそういう者にはそういういわれのない金は出さぬという状態になったときに初めてはっきりすることでございますから、その点は両々相まって私は大きな課題であると、こういうふうに考えます。
  125. 米田勲

    米田勲君 国家公安委員長お尋ねをします。いまの質疑応答でもわかりますように、組織暴力団の数並びにその構成員は、警察当局の努力にもかかわらず、依然として強力な組織を持って暴力犯罪が続けられておるというのが現状である。まだ大きな成果をあげているとは言えない、これからの仕事だと思いますが、国家公安委員長として今後の組織暴力団対策についてどういう決意を持っておられるのか、お伺いします。
  126. 吉武恵市

    国務大臣(吉武恵市君) 暴力団の組織につきましては、警察として最もその壊滅に努力をしておるところでございまして、今日警察の二つの問題として、暴力団の追放、もう一つは交通事故の防止ということを特に強調して私はやらしてきております。また、警察の第一線におる者もこの点につきましては熱心に取り組んでおると私は存じております。数は一挙には減りはいたしませんけれども、先ほど警察庁長官から申しましたように、漸次数も減っておりまするし、団体も壊滅あるいはまた解散をしておる数もふえておるような状況でございまして、今後とも一そう力を入れる所存でございます。
  127. 米田勲

    米田勲君 この問題について最後に総理お尋ねしますが、前の池田総理は施政方針の中でもこの問題を強く主張されたことがございますが、まだ佐藤総理からはこの組織暴力団の防遏問題で意見の発言を聞いたことがないわけですが、最後にまとめとしてどういう現状認識をされておるのか、また、政府としてどういう決意をもってこれに当たろうとしておるのか、お答えを願います。
  128. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) この点は、はっきり池田路線を踏襲しております。私は過般警察庁長官また警視総監等を呼んで、ただいま行なっている暴力犯またはその組織等の取り締まりについていろいろやっていることを詳細に聴取いたしました。同時に、警察官が各界から理解のある支援を得ていることについて、同時に警察官のたいへん難事と取り組んでおるそのことにつきまして、私も心から敬意を表し、感謝したわけでございます。もちろん、この種の事柄は、短期間の間にはなかなか効果をあげることは非常に困難だと思います。ある都市におきましても、三年かかってよほど変わった、こういうような話も聞きますし、このことをぜひとも各界の御協力のもとに推進していくように、かような私の基本的態度を話をして警察官の労苦を実は謝したような次第でございます。おそらくこういう点は各界各層の方々も明朗な社会の建設を心から願っておられる今日でございますので、あらゆる面において理解ある御協力を得ることだと、かように期待をする次第でございます。
  129. 米田勲

    米田勲君 次いで、私は文教政策の問題に一、二触れたいのですが、最初に、私学問題で私学に対する国の助成についてはいろいろな意見がありますが、積極的な意見と消極的な意見がございます。政府の基本的な方針はどういうことになっているのか、文部大臣からお伺いします。
  130. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私学の問題につきましては、ただいまも御指摘がございましたように、私学の当事者あるいはまたそのほかの方面からもいろいろの意見が出ておりますことは、ただいまもお話しのとおりでございます。しかし、私といたしましては、いろいろの意見があろうとも、四十年度におきまして相当大学入学の志願者がふえるこの現状を前にいたしますと、とにかくどなたから見ましてもこういう点についてはまずまず御異論なかろうというところを押えまして私学振興会等の事業の拡充をはかったわけでございますが、とりあえずそうやっておきまして、臨時私立学校振興方策調査会というものを御審議を願い、法律を早くつくっていただいて、各界の権威の方々から十分にひとつ御意見を聞いて間違いのない対策を考えてまいりたいと、こういうふうに考えておるわけでございます。
  131. 米田勲

    米田勲君 文部大臣は、この私学問題について積極的な取り組みをしておるということを言うことができますか。
  132. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは中身の問題になると思います。けれども、たとえばただいま申しました私学振興会に対する投融資、それによって私学の拡充に融資ができる。融資の一応のワクは百五十億となっておりますけれども、これは三十九年度あるいは三十八年度等に比べれば、ただいまの財政事情としては相当私としては努力をしたつもりでございまして、もちろんこういう問題については、十分過ぎるとか、これで満足とかということはございませんけれども、相当の私どもとしては努力を示しておるつもりでございます。
  133. 米田勲

    米田勲君 私の調査したところでは、イギリスなどにおいては、私学に対する国の財政補助、助成というものが大体その経費の七五%、ベルギー、オランダでは五〇%、その他の西欧の先進諸国は三〇%ないし四〇%の国の助成をしておるのが現状であります。ところが、それに引きかえて日本はどうなっているかというと、東京で見ますと約一〇%、全国平均で見ると約九%であります。こういう数字から見ますと、諸外国に比べて日本の私学振興に対する助成はどうも積極的な方針をとっておるとは言えないと思うのですが、いかがですか。
  134. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これも御指摘のようにごもっともの点が多々ございます。ただ、しかし、ここで議論を申し上げるわけでは毛頭ございませんけれども、一がいに外国と日本の場合を比較することもまた困難な点もあろうかと思います。たとえば、ただいまも御指摘がございましたが、イギリスでは国立の大学というものはございませんから、すべて私立大学でございます。そういう点にも一つの比較をいたします基準に国情の相違があるということも考慮に入れなければならない点かと思います。それからまた、たとえば大学生の現状というような点から申しまして、まあこれはいまさら申し上げるもない、よく御承知のことでございますが、大ざっぱに申しましても、大学生が現在でおそらく百万人をこす程度ではないかと思いますけれども、そのうちの約七十万人が私立大学であります。それから、これも年によって非常な相違がございますけれども、同一年齢層で大学に在籍する生徒の数も、たとえば二十歳なら二十歳の同一の年齢の中で、日本の場合におきましては、最近数カ年間で、多いときには百人について十九−九人、約二十人が大学に在籍している。最近数年の中のある一年をとってみますとそういう状況でございますが、これは世界的に申しますと相当に高い状況である。こういったようないろいろの事情がございますから、ただいま御指摘がございましたように、われわれとして考えなければならぬ点、さらに私学振興に大いに努力をしなければならぬ点、これについては全く御同感でございますけれども、いまのような事情もございまするので、こういったような点も、各国の実情もなお突っ込んでわれわれとしては調べてもみなければならないと、かように考えております。
  135. 米田勲

    米田勲君 学校法人の固定した負債は、大体総額どの程度になっていると把握しておられますか。
  136. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 正確な数字は政府委員から申し上げますが、最近の私学の経営の状況等は、先般も当委員会で申しましたが、たとえば債務償還費というようなものが非常に多くなっております。これは私学の経営のあり方といたしましても大いに考えなければならぬ点である。ですから、これを私学振興会等の長期低利の資金で置きかえていくというようなことももちろん必要なことだと思いますし、さらに、御指摘のございましたような点も相当憂慮すべき状況にあると、かように考えております。
  137. 齋藤正

    政府委員(齋藤正君) お答えいたします。  学校法人の固定負債は、大学あるいは高等学校以下を合わせまして九百億でございまして、うち、大学に関するものが五百六十八億でございます。
  138. 米田勲

    米田勲君 ばく大もない私学の固定負債が今日私学経営の非常に大きな問題であります。  ところで、文部大臣にお尋ねをいたしますが、文部省は、大学入学志望者の急増に対して、とりあえず四十年度二万七千人の増募計画を立てて、その割り当てを、国立四千四百、公立一千六百、私立大学は二万一千人、こういうふうに想定をして予算を立てられたようですが、結論は国立三千四百と千人切り落としてこれを私立大学に依存するような計画に変更されたようですが、この間の事情はどういう理由に基づくものか、お答えを願いたい。
  139. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) ただいまお話しのとおりでございまして、概算の四十年度の要求の当時における一応の想定といたしましては、ただいま御指摘のとおりの数字を考えまして、それから具体的にいろいろの計画を進めたわけでございます。  そして、国立につきましては、別途法律案等を御審議願っておりますが、やはり四十年度といたしましてはもう少しふやしたかったところでございますけれども、これでも最近といたしましてはいわば画期的な国立大学の新増設、学部の増設等をいたしましたわけで、まずこの程度で今年度はがまんしなければなるまいかと考えておるわけでございます。  それから私学のほうにつきましても、大体まあ二万人程度はこの際収容力を増していただけるものかという期待もございました。もちろんそれには財政的な援助の裏づけがなければなりません。しかし、同時に、実は大学設置審議会等の審議の経過をたどってみましても、大学というところをただ単に建て物を建てて増設するというだけで処理のできる問題でもございません。特に教授陣容等をそろえるということが現在非常に困難な問題に当面いたしております。したがって、大学設置審議会等におきましても基準に合うような審査をする、あるいは基準に合うような申請自体をするというような、これは一面において非常にけっこうな傾向であると思いますけれども、私学のほうの御計画においても先生の陣容等について非常に考えられた。で、申請自体が私ども予想いたしますほどは出てまいりませんで、そういうような事情もございますので、一万五千人というところでまずがまんしなければならない。同時に、一万五千人の増募につきましてはできるだけの援助をしなければならない。そこに何といいましょうか解決の接点とでも申しましょうか、それを求めたわけでございます。  なお、一言つけ加えて申し上げますけれども、大学の志願者をどう見るか、また、どう見るべきかということにつきましては、実にこれはむずかしいのでございまして、たとえば高校卒業者が四十年本年で言えば約百十六万人と、これはほぼはっきりした数字がつかめるわけでございますけれども、この中で大学を志願する人が三〇%であろうか、三一%であろうか、あるいは三二%であろうか、このいうところが非常に捕捉がむずかしい。それから同時に、いわゆる浪人のどのくらいが、一年浪人がどのくらい志願するであろうか、あるいは二年、三年の浪人がどのくらい志願するであろうかというような推計になりますと、非常に捕捉が困難でありますので、こういう点から言いまして、先ほども御指摘がございましたが、文部省としての推計もときによりましてかなり大幅に調整、修正をしなければならない、かような事情もございましたことも御了解願いたいと思います。
  140. 米田勲

    米田勲君 文部省で当初四十三年をピークに考えまして増募計画を立てられて、そして四十年度の予算要求になっていったのだが、結論的には、国立自体の増募計画も達成できず、それを私立に依存せざるを得ないということになり、私立のほうでも受け入れ態勢がないといって二万二千が実際は一万五千ということしか消加できない、これが四十年度の増募計画の態勢になっている。これは四十三年までずっと見通していくと、ますます増募計画が困難になってくるのじゃないか、こう思いますが、いかがですか。
  141. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) その点を私も非常に憂慮いたしております。そして、四十年度の先ほども申しました増募計画、約二万人でございますが、これと実際の私学の実情とを、これは正確に実績として把握できますから、それをも踏んまえた上で、たとえば四十年度と四十一年度との関係で見れば、四十年度には大体四ぐらいを解決して四十一年度で六くらいを解決しようと、こう考えておりました点を、三と七くらいの割合にせざるを得ない。せざるを得ないとすれば、それだけ財政的その他にも問題が次年度にロードがかかる、こういうことになりますのは事の成り行き上やむを得ないことでありまして、これらの点につきましてはいまから非常に真剣に取っ組んでいかなければならない覚悟を新たにいたしておるようなわけであります。
  142. 米田勲

    米田勲君 次年度以降予算措置の上で消化できる見通しを持っておりますか。
  143. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これはただ単に予算だけの問題ではございませんで、しばしば申し上げているので御理解いただけるかと思いますけれども、たとえば先生の面等におきましても、ただ単に大学それ自体に対する問題だけではなくて、父兄の負担というようなことのあり方なども積極的に取り上げなければならぬ問題もございましょうし、自信があるかというおことばでございますが、私は自信を持ってやらなければならない。ここでただ口で自信を持ちますと申し上げただけではから念仏になりますから、これはどうしても解決しなければならない問題でございますから、どうかして各方面の積極的な御協力によって解決ができるように、結果において自信ができたように解決をすべき問題であると、こういうふうにとらえてまいりたいと思います。
  144. 米田勲

    米田勲君 この問題についてもう少し質疑がございますが、時間の関係がありますので、最後に、日本の教育は国立、公立、私学という三本立てで進められているわけです。しかも、その数からいって私学には相当大きなウエートをかけて期待をしておる、こういう現状にありながら、私学それ自体の内容はどうかというと、きわめて財政的に困難な状態になっている。そしてそれがどこへいくかというと、授業料の値上げ、入学金の値上げ、あるいは学生に対する寄付金といったような方向に向かっていってしまう。これではどうも正常なあり方ではないと考えられますので、現状から見てももっと積極的な私学助成対策が必要だと思いますが、総理のお考えはいかがですか。
  145. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 国政の基本である教育の問題について、ただいま米田君といろいろ御質疑がかわされております。今後ますます大学への進学率は高まるだろう、あるいは二十年後においては全部大学を卒業するようになるかもしれない、日本の教育の普及度から申しましてそういう事態も考えていかなければならぬだろう、かように考えますと、ただいまの施設を整備する、これもまことに大事だと思います。私はそういう意味においての施設が整備された暁に、はたしてこれらの学徒を十分に教育するだけの教員がそろうだろうか、いわゆる教授陣容ははたしてこういう事柄に対応し得るようなものができるだろうか、かように私は心配をいたしております。ただいまお話しのように、官立、公立、私学等、施設の面ではまことに容易ではありますけれども、人にものを教えるということはなかなかむずかしいことだ。さような意味においても、両者を合わせて教育の問題に力をいたしたい、かように私は考えます。
  146. 米田勲

    米田勲君 最後に、私は、文教問題で二つのことについて文相にぜひ御考慮を願いたい。  日本の教育政策の上では、設備を十分にやり、施設を強化し、いろいろな条件を整備していくという仕事と、もう一つは、取り除いていかなければ教育が正常に伸びていかない、排除していく仕事と、二つ私は必要だと思うのです。その排除をしなければならないことの最大のものは、一つは入学試験地獄の現状であります。これは昨年私は前文部大臣の灘尾さんにこの問題を訴えたところ、弊害の大きなことを認めますので、ぜひ入学選抜方式については改善をいたしたい、こういう答弁がございましたが、その後、文部省内において、鋭意検討されておると思いますが、経過と現在の結論をお聞かせ願いたい。
  147. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 入学試験の問題につきまして特に問題なのは、大学の入学試験であると思います。同時に、大学の入学試験のあり方が結局幼稚園にまでつながるような、一つの教育の何と申しますか、問題を残しておると申しますか持っておるわけでありますので、ただいまお話しのとおり特にこの点については注意をいたしまして、一つはたとえば能力研究所に委嘱いたしまして能研テストというようなことをやり、これ身最初はどうも大学側はあまり乗り気でなかった向きもございましたけれども、その後追跡調査というようなことをやってそのメリットが相当高く買われましたので、大学側においても積極的にこれに対する関心を示し出してきてくれております。したがって、四十年度には間に合いませんでしたけれども、四十一年度以降におきましては、こうした能研の考え方、方法というようなものが取り入れられるようになることが望ましいのではなかろうかということで、さらにこういう積極的の面を進めてまいりたいと思っております。  それからこれはもう御案内のとおりだと思いますけれども、大学、短期大学への入学者の選抜実施要綱というものを文部省としては策定いたしまして、選抜方法の適正をぜひはかってもらいたい。そうしてこの大学の入学者の選抜が高等学校あるいはそれ以下の教育に悪影響を及ぼさないように配慮してもらうということで、いろいろと各大学当局に対しましてもいま申しました実施要綱というようなものを示しまして、現に協力を求めておるような次第でございます。あまり長くなりますので、一応この程度にとどめますが、詳しくはさらに御必要があれば申し上げます。
  148. 米田勲

    米田勲君 いま文相は大学の入学選抜の改善の問題に触れましたが、高校入学選抜の問題についてはいかがですか。
  149. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 高校選抜につきましても同様に積極的な関心を持っておるわけでございますが、ただ、全体から見ますと、高校のほうは志願者に対しまして入学率が全国的に見ての話でございますが大体九五%あるいはそれ以上占めておりますので、入学試験それ自体が一番問題でありますのは何としても大学のほうである、かような理解といいますか、とらえ方をいたしております。
  150. 米田勲

    米田勲君 これは文相と私とは認識が違っておる。いま、塾教育、家庭教師、あるいは予備校的なもの、それから小学校、中学校の予備校化的傾向、これは何から生まれてきているかというと、高校入学選抜のあり方からそういう姿勢が生まれてきているわけである。それはよく親の責任であるというが、しかし、これはとにかく入学選抜方式の改革なしにはこの流れを食いとめることはできないと私は思っているわけですが、いかがですか。
  151. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) これは原則のお話で、これは全く御同感なんであります。ただ、数字の上でちょっとよけいなことを申し上げたかもしれませんが、高校の入学率は全体の九五%になっておるということは御承知のとおりの状況でございますから、ウエートからいえば、大学の入学試験制度の改善ということはウエートからいえば現状としては重いのではないかというふうにとらえているということを申し上げたわけで、高校の入学試験につきましてはいまお話しのとおりでございまするので、高校の入学試験のあり方は、高校に入って勉強し得るように適性といいますかそれを見ること、それから中学校の内申をいまでも重んじておりますわけですが、中学校までの教育課程において十分の勉強をしてきた子供であるかどうかと、この点をテストすればよろしいのでございますから、その他いろいろの問題もございますけれども、高校の入学試験制度の改善ということをもちろん力を尽くしていかなければならないと考えます。
  152. 米田勲

    米田勲君 時間がなくなりましたので、もう一つ、これは後に一般質問や分科会でさらに質問したいと思いますが、文部省のやっておる一斉学力テスト、これをもうそろそろ目的を果たした時期であるからやめてもらいたい。これは全国の教育関係団体はあげてこの中止を要望しているわけです。現在学校ではもうテスト・ブームでどうにもならなくなってきちまっている、正常な教育のあり方がそのために阻害されているというのが現状なんで、この学カテストをもう目的を果たした時期でもあるし中止すべきだ、そして弊害を排除するように積極的に政府は対処すべきだと思いますが、いかがですか。
  153. 愛知揆一

    国務大臣(愛知揆一君) 私は、実は、就任直後からこの問題に私としては真剣に取り組みましたつもりでございます。そして、結果におきましては、中学においての悉皆調査も取りやめることにいたしました、二割にいたしました。そして希望調査を併用することにいたしました。この私の現在までにとってまいりました態度で御容赦を一応願いたいと思います。
  154. 米田勲

    米田勲君 まだこの問題でただしたいことがございますけれども、時間がありませんので、それは別の機会に譲ることにいたしまして、これで私の質問を終わります。
  155. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 米田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  156. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 委員の変更がございました。  木村篤太郎君が辞任され、青木一男君が選任されました。  午後二時再開することにいたし、これにて休憩いたします。    午後一時十二分休憩      —————・—————    午後二時五十四分開会
  157. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) これより予算委員会を再開いたします。  この際、理事会において総予算三案の一般質疑につきまして協議いたしましたので、そのおもなる内容について御報告いたします。  総括質疑終了後、一般質疑に入ることとし、来たる二十五日までにこれを終了することを目途といたしました。  次に、質疑総時間千九十分及びその各会派への割り当て並びに質疑順位につきましては、総括質疑と同様とすることにいたしました。  以上、報告のとおり取り運ぶことに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  158. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 御異議ないと認めます。     —————————————
  159. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 休憩前に引き続き質疑を行ないます。永岡光治君。
  160. 永岡光治

    ○永岡光治君 私はあまり触れられていない放送行政、電波行政の問題について所管大臣の所見をまずただしたいと思うのであります。  ことしはちょうど再免許の時期になっておるわけでありますが、したがって、この再免許の方針と申しますか、それらの問題を含めまして、二、三、まず郵政大臣の所見をただしたいと思うのであります。  先般、臨時放送関係法制調査会のほうから答申が出ておりまして、この内容を見ますと、まことに広範囲、多岐にわたっておるわけでありますが、それらの関連もありまして、郵政大臣がこれをどう受け入れて改正しようかという考えもおありだろうと思うのでありますが、それらの問題もおそらく答弁の中に出てくるのではないかと思いますが、そういう観点からまずただしたいと思いますが、今日、現行の法制では郵政大臣の権限にその免許の処分がゆだねられておるわけでございます。しかも、その最も重要であります審査基準、これが省令にゆだねられておるわけでありますけれども、あるいはまた通達にもゆだねられておりますが、いうならば郵政大臣の自由裁量と申しますか、そういうことは非常にウエートが高くなってきております。したがって、一般の先ほど申し上げました審議会の答申の意向からみましても、少しこれは郵政大臣に裁量されるということについては疑問があるのではないかという意見もあるし、また一方においては、郵政大臣の自由裁量についてはどうも態度がなまぬるいという意見もあるやに聞いているわけでありますが、これらの問題について、当面いまその時期にきているわけでありますが、再免許の方針について郵政大臣はどのように考えているのか、すなわち法制審議会で論議されております各種の意見、非常に心配されている、たくさんの意見がありますが、それらの意見をくんでやる方針なのかどうか。こういう点をまずただしておきたいと思うのであります。
  161. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 本年の六月一日が再免許を行なう時になっておりまして、ただいま先月の末までに一千二百七局すべてから再申請の書類が届いております。この書類がはたして免許いたしました当時の条件を実行しているかどうか、あるいはまた番組等につきましても、条件にかなうような処置をとられているかどうか、あるいは財政その他につきましても、申請当時のものと大きなくるいはないかどうか、今後の経営、企画におきまして間違いないかどうかというような問題を、いまの法律によりまして検討いたしている最中でございます。こうした再免許の方針につきましては、過去におきましても、現法規でやっておりますので、いささかもその間に不都合はないかと思いますが、そこに目こぼしがありましたり、不用意な点がございますれば欠陥が生ずるわけでございますので、そういうことのないように最善を尽くしたいと思います。同時に、答申がございますが、なるべく今回の再免許につきましても、もちろんこの答申の中には、法律化すべきものもございますれば、行政措置で十分行なうべきものもございまするし、多種多様でございますが、現在の段階におきましては、現法規に基づいて、さらに答申の趣旨に逆らわないように、なるべくそれに準拠するような方針で検討を加えたい、かように考えております。悔いを将来残すようなことはしたくない、かように考えまして、きわめて慎重な取り扱いをいたしておるわけでございます。
  162. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこで再免許ということになりますと、すでに多額の設備を投資しておる既設の放送会社があるわけでありますから、それらについて免許を取り消すということは、なかなかそれは問題が大きくなる。事実問題としてそういうことになろうかと思うのであります。したがって、再免許にあたっては、もう私の会社はすでに設立しているから、よもや取り消すことはないだろうという、そういうような気持がなきにしもあらずと私は思うのです。したがって、それが経営面に、あるいはまた特に放送番組の上でもいかがなものかと考えるものについても、あまり反省をせずに出てくるおそれもなしとしないわけでありますが、再免許にあたります、特に具体的な郵政大臣が持っておる免許の方針、どこに一番重点を置いて再免許をしようとするのか、そういう考えがあればただしておきたいと思うのです。
  163. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 免許いたしましたときの条件、つまり放送法四十四条に明記されておりますいろいろな条件がございますが、そういうものに違反をいたしておりますとか、そういうものに書きつらねていることを全然守っていないとか、あるいは最初こういたしますといって計画を出しましたものが守られていないとか、おそらくそういうものは少ないと思いますけれども、まずそうした条件の書きつらねてありますものが、はたして実行されているかいないかということが第一になります。それを十分果たしておりますならば、将来、放送法が改正されましても、それ以上な法律はおそらくあり得ないと思います。やはりこの免許の方針というものはそうぐらぐらするものではございません。基本というものは大体きまっておるのであります。まずそれに合格するということ、さらに放送番組等のことにつきましても、公平であることでありますとか、中立性を維持せねばならぬとかいうことがたくさんございますが、そういう問題において過去に問題を起こしておることがあるかないか。もし過去においてあるといたしますれば、従来ともしばしばそれとなく行政指導をいたしまして注意を行なっております。そういう注意に基づいて反省をしながら、公共性の強い事業でありますから、その趣旨に反しないようにやっておるかどうかというようなことを監査いたすわけでございますので、別に新規に新しい奇想天外の考え方というものはございません。やはり定められた条件、それに背反してないかどうかということが第一でございます。ただ、行政的指導面につきましては、ただいま申し上げました調査会の答申等もございますから、なるべくそれを取り入れまして、それに背馳しないように、その線に沿うような行政指導をいたしたい、かように考えておるわけであります。
  164. 永岡光治

    ○永岡光治君 次にお尋ねいたしますが、世に言われるFM放送であります。このFM放送の免許の方針なり、その時期はいつごろをお考えになっておるのか、その点をまず次にただしておきたいと思います。
  165. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) このFMの免許につきましては、数年来、長い間たくさんの免許申請もございます。しかし非常に重大なことでございまして、ただいまNHKをして実験的に幾分特定の場所を実験しておるという状態でございます。もしこれを全部に開放することになりますれば、あとに、さっきもちょっと申し上げました悔いのないような計画を立てねばなりません。方針もきめねばなりません。そこで、まだ郵政省ではその根本的な方針が決定いたしておりません。先般、答申がございまして、混信を解消するためにこれを使ってよろしい、ずいぶんただいま許可しておりましても、外国のものでありますとか、手近なものの混信によりまして聞こえないものがたくさんございます。そういうものにはFMを使って混信を防ぐようにという答申が出ております。もちろんこれは当然出すべきことでございますから、近く再免許の作業等も済みました後におきまして検討いたしまして、そうして郵政省としてのこのFMに対する根本的な方針を確立し、その確立の上に免許方針をきめるということになろうかと思います。したがって、ただいまのところではまだその根本方針をしゃべる段階に至っていない。しかし、なるべく早く、宝の持ちぐされもいけませんから、早くやはりその方針は郵政省として立てるべきだと、かように考えております。
  166. 永岡光治

    ○永岡光治君 なるべく早く免許をしたいという郵政大臣の答弁でありますが、なるべく早くというその時期のおおよその目途でありますが、本年中とか来年中とかいう一つの目途がないのかどうか。ただやってみなければわからないという、いま雲をつかむような程度の時期なのか、それともある時期を目ざして、いまそれを免許する方針で検討しておるというのか、その時期は明確にここではわからないのですか。
  167. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 先ほど申し上げましたように、非常に大きな事業でございますので、片手間にできないような事業でございます。そこで、先ほど申し上げましたように、何としても、六月一日の再免許にいま手一ぱいのような状態でございますから、一応その根本方針を立てるだけのいま人手と申しますか、余裕がございませんので、研究はいたしておりますが、将来に悔いのないような根本的な大きな計画を樹立いたしますためにはどうしても六月一日後の、そうした作業が済んだ後でなければ着手ができないと思います。これは決してむやみに延ばそうというわけじゃございませんので、長い間の懸安であり、各方面の要望も強いのでございますから、なるべく近い機会に、そうした作業が済みましたら、おそらく事務当局としては着手もするでございましょうし、政府も方針を決定するということになろうかと思います。
  168. 永岡光治

    ○永岡光治君 これ以上お尋ねいたしましても時期は明確に答弁できないかもしれませんけれども、少なくとも昭和四十一年度中までは見込みがないと理解していいのか、四十一年度中ぐらいには大体結論が出るという見通しなのか、その程度の答弁はできませんでしょうか。
  169. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 本年度はもう四十年に入るわけでございますから、そう長くそうした問題にかかるとは私は考えておりません。ただ答申にありますように、とりあえず混信を解消するためにこれを使えという答申がございますので、それ以外のものはなるべく凍結しておくようにというような意味が書いてございます。しかし、その当時の模様も聞きますというと、その答申をした当時と今日とはだいぶ時間的にも社会情勢も違っておりまして、郵政省で調査会に諮問いたしました当時、各委員のそれを受けとられて答申を審議された当時には、せんだってもお目にかかりましたが、日本で行なわれるテレビが、あのオリンピック等がアメリカや欧州になまで流れるというようなことは考えていない時代に実はそういうことを審議したというお話もございました。ですから、非常にこれは日進月歩になっておりますから、答申そのものを全部そのままで絶対に侵してはいけないのだというようには、当時の起草者の方々も、全部はそうは思っておられないようであります。したがって、やはり時勢の変化によっては、もっと豊かな気分で考えてもいいのだよというようなお話も最近は一部からございました。そういう関係もございますから、いずれそれが答申に多少でもはずれた方針をきめるといたしますならば、これは政府としてしっかりした見識のある考え方を立てねばならぬということ、それさえ立ちますれば、別に四十一年まで待たなくても作業はできるんではないかと思います。非常にこれは各方面に及ぼす影響も重大でございますので、そうした客観情勢等もにらみ合わして、政府はしっかりした方針を立てまして作業を開始いたしますれば、あるいはその見方と見通しによりましては、何も四十二年まで待たなくても、四十一年でもあるいは四十年中にでも作業はできるんではないかと私は考えますけれども、しかし、そうした答申と現実とは多少違うような点もございますので、そうした点は十二分に政府としては考えていかなくちゃならぬ、かように考えるわけであります。
  170. 永岡光治

    ○永岡光治君 私からまあ申し上げるまでもないことでありますが、FMの波はおそらく、放送の波の最終段階の、日本の大規模な放送界の改革をもたらす最終的な免許するときの波になるだろうと私は思うのであります。したがって、大規模になるわけであります。いま大臣の答弁を聞いておりますと、混信の入る地域については少しずつ使うけれども、全般的な、FMの全国的な免許ですね、これはすぐではない。いまのお話によりますと、いろいろ意見は出されておるけれども、何も四十二年度を待たなくてもいい、四十一年度でもやってもけっこうだと思うというお話でありましたが、非常にくどいようで恐縮でありますけれども、大体郵政当局としては何か目途があるのかないのか、ただ早くやりたいという意味だけで研究をしているのか、それとも一応のめどを立てて、四十二年度くらいにはぜひ実施をしてみたい、こういうつもりで検討をしておるのか、その点だけでけっこうですが、考えがありましたならば答弁を願いたいと思います。
  171. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) この問題はすべて答申待ちというような形でございまして、従来は事務的にはその答申に基づいていこうという考え方でおりました。したがって、別に事務当局で答申以外に考えてはいなかったわけであります。出てみましたらいまのような答申が出てまいったもんでありますから、ただそれだけで終始するということであれば、もちろんこれはもうたいした問題はないことであります。しかし、時勢の変化もございまするし、いま申し上げたように、答申をいただいた、起草された当時の社会情勢、進歩、これと今日のは非常に大きな隔たりもございますので、そこでそれだけにこだわらなくても、もっと幅広い考え方を持ってもいいんじゃないかという御意見も委員の中からもすでにあるわけでございますので、そうした点につきまして、政府は一応最後の腹をきめなくちゃならぬのではなかろうかというように考え、また各方面の世論等も考えながら研究すべきことだと思いますから、それがいつごろきまりますかは、そのきまり方のいかんによりましては時期が延びもし、またあるいは早目にもなると思うんです。事務当局ではいま事務段階を離れて、そうした問題がいかに解決せられるかと、政府筋でいかに最後に決定して作業を命ずるかという問題になろうかと思います。  ですから、そういうことが答申がきまるかきまらないかということによって作業の日取りもきまり、また最後の免許というものもきまると思いますので、いまにわかに政府でいっそういう方針をきめて、いっそういうことをいたしますというような明確なことは言われませんが、大よそ、先ほど申し上げましたように、六月の一日には大きな作業が済みますから、その作業が済んだところで政府でも腹をきめてひとつ研究いたしまして、そうしてこれはかくあるべしという結論を得ましたら、今度は事務当局に作業を命ずるということになろうと思います。
  172. 鈴木強

    鈴木強君 ちょっと関連。いまの郵政大臣の御答弁では、非常にまだ私納得できないのです。すでに日本におけるFM放送の免許の問題は、昭和三十七年にNHK九局、FM東海一局、これは純然たる運営の問題ですが、この二つに予備免許を与えて、FMの今後の検討を実験的にやらして今日に至っているわけです。その間、もう長い間逓信委員会等においても論議がされて、そうして三十八年のNHK十七局の予備免許の付与の場合、当然問題になっておりました技術基準、それから免許基準、この二つを決定されて、そうしてたくさん申請のあるFMに対して、日本の第三のメディアであるFM放送をどうするかということを検討していただくように準備が進んでおったと思うのです。現に当時の小澤郵政大臣は、NHK十七局の計画についてはそういう技術基準、免許基準がきまらなければやらない、こういうことまで明確に答えておるわけです。ところが、当時桜の花が咲くころということを三十八年の二月十五日ごろ言っておる。桜の花が咲いてもできないで、今日まで三年、四年と放置されて今日に至っておる。  私はいまの、いつかわからないような、雲をつかむようなことをあなたはおっしゃいますけれども、問題は技術基準の中でモノニッタについてはもうすでに結論が出ておると思う。ステレオ方式についてはどうするかということさえきめれば、あとは免許基準ですよ。免許基準がたくさんあるこのFMの割り当てを官営でやれという意見もあるし、それから有力新聞社やあるいはラジオ放送社からも申請がありますから、そういうものをあわせて、やはり日本の根本的な免許基準をきめなければならぬと思う。これは政治的にいろいろと問題があると思うのです。私は、この技術基準というものを早くきめて、その上に立って免許基準をやらなければならない。日本の電波行政は全く遅々として進まない、そこにはいろいろな政治的な問題がからんで今日まで来ておることをわれわれは非常に遺憾に思うのです。あなたは宝の持ち腐れだとおっしゃったが、そのとおりです。現実にいま混信があり、FMを期待しておる国民に対していつまでも遷延することは私は許されないと思う。ですから、もう少しあなたの明確な方針を事務当局にも明示して、そうしてやらなければ作業が進みませんよ。事務当局はやがてやるでしょう、そんな答弁では納得できません。ですから、もう少し政府としてFMの免許基準をどうするか、これを決定すると同時に、技術基準のステレオ方式についても意見を統一して、そうして私はすみやかにFMの免許をやってもらいたい、そういうように思いますが、もう少し確信のある答弁をいただきたい。
  173. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) かつて鈴木さんが、三十八年ごろの当時の郵政大臣に御質問になりましたときに、当時郵政大臣から御答弁申し上げましたことも速記で拝見いたしました。当時は小澤郵政大臣もしごく簡単にある程度お考えになっておったようでございますが、だんだんせんじ詰めてまいりますというと、なかなか容易でない事業であることもわかってまいりまして、そこで昨年のNHKの予算につきましてもいろいろ御議論はあったようでございますが、試験実験局を置くことに与野党とも御了解を得てあの予算を通したわけでございます。で、趣旨はお話のようなとおりで間違いないのでありますが、いざということになりますと、たいへんな大きな事業でございますために、基本的な方針をきめかねておったということが実態でございます。御質問考え方のとおりでございまして、一日も早くしたいのはやまやまでございましたが、そういうことで延び延びになっておった。たまたま調査会から答申があることになっておりましたので、その答申待ちという形で、かたずをのんで答申を待っておりました。その答申が一般のほうから免許しろといって八十幾つの新聞社をはじめたくさんのほうから申請が来ております。それとすぐマッチするような答申がございましたならば、あるいはもっと早目に方針も打ち出せたかと思いますけれども、先ほど申しましたように、答申がやや——そうした大きなたくさんの申請があるに反して、全く相反するような答申が出てまいりました。そういう観点で、その答申を尊重するということで考えてみますれば、そうした要望にもこたえられないということにもなるわけであります。  しかし、先ほど申し上げましたように、その当時審議された時代と今日とは、だんだんこういう問題に対する研究も進んでまいりまして、当時不可能と思っておったことも可能になってまいったものもあるし、作業の上におきましてもそんな御心配はないではないかというようなものもだんだんできてまいっておりますから、ただその答申だけにこだわらなくても、ゆとりのある、幅のある考え方をしてもいいじゃなかろうかというような考え方をただいま持って、内々に話し合いをしておる最中でございます。しかし、この大事業はなかなか、そう言いましても、きょう言って五日や十日でできるものではございません。したがって、人の関係等もございまするし、プランを立てる等につきましては相当の期間を必要といたしますので、私の先ほど申し上げましたように、あやふやではございません。こうした大きないわゆる先に作業は進んでおりますから、その作業が進みましたらば、おそらくこうした問題に対しても政府のほうとしては確固たる信念を持って方針をきめまして、その方針に基づいて作業をさせるということになろうかと思いますから、その作業に入るまでの期間、少し時間はかかりますけれども、お待ちをいただきたい、こういうことであります。決して何にもなくて手放しで待っていただきたいというわけではないのでございます。
  174. 永岡光治

    ○永岡光治君 佐藤総理お尋ねいたしますが、ただいま郵政大臣から答弁のとおりでございまして、事務段階をいうならば離れて、政治的な問題に入っていると私も理解するわけでありますが、したがって、一応六月の今日ある再免許が済みましたあと、早急にこれは手をつけらるべきものだと私どもは理解するのですが、総理はどういう考えなのか、総理としてのお考えを承りたいと思います。
  175. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) FM放放が云々されてもうすでに数年たっております。ただいまも郵政大臣からるる説明をいたしましたし、また永岡君、鈴木君等の御意見も拝聴いたしております。六月の再免許が済みましたら、事務的にも一段落はつくでしょうが、同時に、十分調査をいたしまして政府の基本的方針をきめるのが当然だと、かように考えます。
  176. 永岡光治

    ○永岡光治君 次に、これは郵政大臣にお尋ねいたしますが、実は放送の番組の問題であります。これは実は私から申し上げるまでもなく、すでに世論のみな一致した私は見解でないかと思いますが、この放送が特にテレビを通じて国民の目に映る、そういうために社会生活なり、文化生活なり、青少年の思想という問題に非常に大きな影響をこれは及ぼしていることは論をまたないところであります。したがいまして、子を持つ親になれば特にその感を強くしておるであろうと思うのでありますが、この番組の低俗なものはやはりかなりあると思うのです、これは残念ながら。その低俗な番組を向上させる具体的な対策と申しますか、これはどのように実は考えておるのかですね、もちろんこれも放送審議会のほうでも法制調査会のほうでも出ておるわけでありますが、どのように考えておるか。  これは実は問題があるわけでありますけれども、確かにこの番組の審議会の構成なり、それについてある種の是正を行なうということになれば、権力の介入ということにもなりかねないおそれもあるわけであります。この自主なり自由という問題、言論の自由というところから見ると、問題もかなりあるところであります。非常にむずかしい問題だと思うのでありますが、さらばといって、今日のままでいいという結論にはならないと私は思うのです。したがって、これをどのように考えておるのか、その番組の向上策についてどのように考えておるか、その点をまたただしておきたいと思います。
  177. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 放送番組につきましては、世論非常にやかましいものがございまして、私は就任して以来各方面から、どうしてこれをほうったらかしにしておくのだというような強い不満と不平が訴えられてまいりました。人つくり人つくりというが、国づくりにしましても、こんな放送をほうったらかしにしておいてどうして人つくりができるのだと、子供のためにまことに憂慮にたえないという、非常に胸を打つような意見書や投書もたくさん参っております。しかし、放送関係のあの法律に書いてございますように、何ものにも侵されず、何ものもこれに対して権力で押えることのできないような特殊的な事業でございますために、少しでもへたなことを言いますと、すぐ、それみろ、政府が干渉をしたと−政府はこのことに文句を言うのではない、低劣な番組のために言うのですけれども政府は権力を用いたという非難をすぐどこかからか受けるわけであります。非常に情けない話であります。しかし、各方面からは強くそれを要請されます。  そこで、この放送法にございますように、ずいぶん苦心されたとみえまして、その当時の立案には御苦労なさったと思いますが、それぞれ各事業者が自社内に自主的な放送番組の審議会をこしらえて、その審議会を通して放送番組を組むという、そうして自制をするのだということになっておるわけであります。しかし、だんだん調べてみますと、何しろその会社の専属した当事者、あるいはまあ雇われているとは申しませんけれども、多少関係のあるような方々が委員になっておられますから、あまりその事業者にふためになるような進言がなされていない、審査がなされていないのではないかと思われる節がちょいちょい見受けられるのであります。  一例をあげて申し上げますと、私どものほうに非常な強い不平を訴える方がございますので、それとなく行政的な立場から、こういうことを言っておられるがどうですかといって注意いたしますと、そういうことが耳に入っていれば、あるいは当然自主的な、番組審議会の諸君が活動しておれば、いやそういうことがございまして、調査してこういうぐあいに処置しましたと言われるべきでございますが、大体どの放送関係者に連絡いたしましても、ああそうですか、それじゃ調べてみましょうというようなことが大部分でございます。  したがって、私は、現在の法律の上では自主的にやれることになっておりますが、実際のほんとうの機能を発揮していないのじゃないかという疑問を持つわけでございまして、各組合等の諸君には強くそれを披瀝して、もう少し能動的に働いてほしいというお話をしております。ところが、昨年末から民放並びにNHK等とも寄り寄り御協議ができまして、なるほどそういうこともあるかもしれない、そこで両者で、民放とNHKで相談をして、そこに関係のない権威者の諸君に集まっていただいて、それに委嘱して放送番組の向上をはかるように懇談会をつくろうじゃないかということになりました。私のところにも報告がございます。まことにけっこうなことでございますと返事いたしたのであります。  その指名に当たられた七名の方々が、まことにりっぱな方でございます。しかし、あまりりっぱ過ぎて、ほんとうの下々の声が届かぬのじゃなかろうかと先般杞憂いたしましたので、そこで関係者においで願いまして、まことにりっぱな方でございますけれども、こういう方々だけの御審議では、雲の上のことはわかりましても、ほんとうの下々のことはわからぬように思うのですが、どうでしょうかというお話で、それよりかもっと裏の各層の、下のほうの声を聞くような方法はできませんかという御注意を申し上げました。そうしましたら、いや、それもなるほど聞けばもっともでございますから、働く主要なものは七人でございますけれども、意見を聞くのは各層、各職域、各方面に手を伸ばしまして、そうして長屋の方から、あるいは中層の方から、あるいはあらゆる方面からそれを取材して一つにまとめて番組をつくるような資料をつくりますと、決して私どもだけに偏するようなことはございませんということでございましたけれども、少しくらいの金はかかりましても、ぜひひとつ意気込んで国民の皆さんの御期待に沿うようにしてほしいという注文をいたしておきました。おそらく数回会合を開かれておるそうでございますし、そういう点について意気込んでそれらの諸君が努力されておりますから、漸次御指摘のような点は解消せられて、国民が期待するような放送番組が生まれてこようかと思います。私もそれを深く期待いたしておるのであります。
  178. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、結局郵政大臣の番組の向上に期待するところは、NHKなり民放の審議会の、何と申しますか、メンバーのその方々の審議と申しますか、意見と申しますか、そういうものに期待をしておるとまあ私ども理解されるわけですね。そうなりますと、審議会に大きな期待を寄せるということになりますと、そのメンバーについて、いま大臣もたまたま触れられましたように、りっぱな人物だけれども、雲の上のことはわかっても下のことはわからない人じゃ困るのだというような御意見もあったようでございますが、そういう意味で、庶民代表というか、労働代表というか、そういうものもどんどん入れるように指導していく方針は持っておるわけですか。
  179. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 放送法のたてまえが、先ほどから申し上げておりますように、無用の干渉、政府のほうのいろんな意見、そういうようなものはなるべく入れないようにして、自主的に何ものにも拘束されないような立場においてやっていくという一つの大きな旗が立ててございます。したがって、私どももえんきょくに、あるいは話のうちに、あるいは行政のうちにそういう話を交えながら話をいたしておるわけでございまして、もちろん手をこまねいて見ておるわけではございません。そういう指摘すべきような事件がございましたら、行政措置によりまして、こういう点は気をつけられたほうがいいではないかということも注意をしておりまするし、また、それによってそうでございました、今後は気をつけますというような話もしばしばしてございますから、決して手をこまねいておるわけではございませんが、大手を振ってこうしろああしろというような要するに立場にいま政府は法律上置かれていないという点はひとつ御了承をいただきたいと思います。しかし、きわめて重大でございますから、できるだけそういう権力や何かを用いなくても、自主的に受け入れるように努力をいたしたいと考えております。
  180. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこで、これはまあ番組の向上についての総理の意見を聞いてみたいわけでありますが、これは実はNHKと民放との経営上の問題等もやっぱりあると私は思うのです。民放がコマーシャルで成り立っておる以上、どうしてもそこに重点を置かざるを得ない。そのために番組もNHKに比べましてやはり低俗であることも、これは世論の認めるところだろうと思うのですが、そういうこの番組の向上について、いま郵政大臣は権力介入というようなことをあまりしたくない、まあ当然であろうと思うのでありますが、しかし、何かそれだけでは隔靴掻痒の感も私はあると考えますが、総理として、経験者でもあろうと思うのでありますが、何か対策はお持ちになっていないのでありますか。
  181. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 郵政大臣の先ほどの態度は望ましい態度かと思います。しかしながら、こういう事柄は、絶えず番組編成委員等と懇談することによって、そうして一般の批判を取り次ぐことも可能だと思いますし、いずれにいたしましても、ただいまのような強い批判の出ている際に、番組編成委員そのものが姿勢を正していくということが望ましいと思います。政府は、もちろんその立場においても、干渉がましいことはよろしくないと思いますけれども、正しい行き方についてはもっと積極的であってしかるべきではないかと思います。ことに編成委員等に各界各層の方々を集めるというようなことについては十分留意していくべきことだろうと、かように思います。
  182. 永岡光治

    ○永岡光治君 そこで、まあこれは私の私見でありますが、そういう番組の向上について権力の介入ととられる、また、そういう効果があってはもちろん。危険でありますから、排除しなければなりませんが、その番組の世論調査機関みたいなものをつくって、世論調査機関でありますから、政府のこれは干渉にならぬわけでありますが、そういうものを一つ設けまして、その反映される調査の結果をそれぞれの民放なりNHK等にどんどん反映さしていくという、そういうことは、できないものかどうか。これは私の私見でありますけれども、どのように考えておられますか。郵政大臣でけっこうです。
  183. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 先ほど申し上げました七人の民放あるいはNHK共同でできました委員、これがやはりいまお話しのような趣旨で世論等も十分調査をし、各層、各方面の意見も聞いて、そうして一つの案をまとめていくというような形、それを各事業者に提示し、また、指導をするという考え方で生まれておるわけでございます。  それから、先ほどお話がございました指導の関係でございますが、これはNHK等における経営委員会等につきましても、従来はただ経営に携わっておるだけで、その後はあまり政府筋とも関係なかったのでありますが、最近は私どももしばしば会合の機会をつくりまして、あるいは他の民放関係とも会合をつくりまして、そうして権力の介入にあらずしてお互いに理解し合う、話し合いの上でだんだん私どもの気持ちも解け合っていけるように、向こうの意見も聞けるようにという機会をしばしばつくっております。そういう機会におきましても、この番組を格段に向上するようにしかけておるつもりでございます。そういう点につきましては積極的に努力をしておるつもりでございます。
  184. 永岡光治

    ○永岡光治君 この問題についてはきわめて重大でございますので、権力介入は極力排除しなければなりませんし、また、あってはならないことでございますけれども、向上策については十分配慮していただくように要望しておきたいと思うのであります。  次に、放送の行政機構の問題について若干伺ってみたいと思うのでありますが、これは調査会の結論でもそうでありますが、申すまでもなく、電波はこれは国民のものでありまして、私すべきものではない当然のものでありますけれども、この調査会においても、したがって公正中立ということを一貫して確保するようにということがいわれておるわけです。私ども耳にしないわけでもありませんし、また、そういうことがあってはならぬと思うのでありますけれども、やはり免許を許可したり、あるいはまた取り消したり波を割り当てるというようなことになりますと、往々にして、いわゆる政治的な力と申しますか何と申しますか、そういうもののありがちなやはりものになると私は心配するのであります。そこで、この調査会でも、郵政大臣の裁量にまかせるのではなくて、一つ委員会をつくって、郵政大臣は執行機関にとどまっていいのではないか、そういう委員会があって、その委員会が免許を、あるいはまた取り消し、あるいは波の決定——割り当てですね、そういうものをしたらどうかと、こういう意見も出ておると思うのでありますが、これについて大臣はどのように考えておりますか。大臣で答弁がむずかしい問題であれば、これは佐藤総理の所見を聞かなければならぬと思うのでありますが、これは実は重要な問題であります。総理のほうからひとつ聞きましょうか——郵政大臣やりますか。
  185. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 過去におきましていろいろうわさを生みましたり、いろいろの非難があるということも承知をいたしておりますので、今後におきます再免許あるいは新免許につきましては、お互い姿勢を正し、身を清くして、かりそめにも世の批判を受けないように、指弾を受けないように相戒めておるわけでございます。私は、おそらく私の時代には、また、今後におきましてもそういうことはあってもならず、ないと思います。さらに答申に基づきまして、そうしたものを別個の審議会にゆだねるような方法をとったらいいだろうという答申もございます。しかし、現在すでに御承知のように審議会が郵政省内にはございまして、すべてその審議会の議を経て免許をいたしているわけでございまして、ただ、形が今度は別個な、いまの審議会をやめて違った形の審議会をつくるということになるわけでありますが、はたしてそういうことが——いまの審議会がもうすでにあるわけでございますからへその権限を多少強化しながらそれでいくのがいいか、それにつきましては、まだ総理に裁断を得るまでには至っておりませんが、両論あるわけでございます。いまこの点については研究いたしております。少なくとも、こういうことは今度の法案の一番大きな山になろうかと思いますので、いずれ総理の御意見を聞き、政府全体の責任において解決したいと思っております。
  186. 永岡光治

    ○永岡光治君 それとあわせまして、今日の電波関係の科学技術の進歩発達によりまして、電波監理事務というのは非常な複雑多岐になり、また、事務量も非常にふえていることは郵政大臣御承知のとおりだと思うのでありますが、そのわりに、やはり政府全体の認識が私は薄いのではないかと思うのですね。要員面について見ましても、ほとんど見るべきものがないのでありますが、こういう問題について、大蔵大臣も、予算折衝については折衝で受けておると思うのでありますが、あなたもかつての経験者だろうと思うのでありますが、これではこの重大な電波監理事務の取り扱いには不十分と私は思うのでありますけれども、どうしてこの程度にとどまったのか、認識が不足しているのか、あるいは認識を改めて将来やろうという決意を持っているのか、その辺のところをひとつ郵政大臣からでけっこうですが、答弁いただきたいと思います。
  187. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 非常に御同情のあるお話で感謝いたしますが、事務当局では少しぐらいふやしてほしいという要望をしばしば言うのでありますけれども、まあ政府の方針といたしましても、なるべく節約をし、事業の合理化をはかり、部内の調整もはかりまして、ふやさない方針でいこうという政府の大きな方針もございますので、ただいまでは本年もふやさずにまいっておりますが、しかし、今後だんだんに事務も量がふえてまいりまして、さきのようなFMの問題がありましたり何かしますが、これは必然的にふえることもあると思います。しかし、いまの段階では相戒めて、そして少しぐらい量が多くてもなし遂げるように努力をし、そして節約をしながら人を割りざいてやっておるわけでございます。しかし、これがためにいま非常にお気の毒というような状態でもございません。相協力してやっておりますから、まあ今後ふやすといたしますれば、事業量が非常にふえたときというように考えておりますので、そのときには政府も考えておりますし、皆さまの御協力もいただきたいと思います。
  188. 永岡光治

    ○永岡光治君 認識をひとつ深めていただきまして、機構の拡充、適切な運営というものについて十分考えてもらって、増員を行なうものはどんどん増員してもらう、こういうひとつ方針をぜひ郵政大臣、大蔵大臣に要望して、次の問題に移りたいと思うのです。  次の問題は、NHKと民放との放送界における位置づけと申しますか、この問題について郵政大臣はどういう認識を持って、そしてどういう今後運営方針をしていこうというのか、その点をひとつ郵政大臣に答弁をいただきたいと思うのです。
  189. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 放送におきまするNHKの地位、これは御承知のように、放送法に基づいてできております特殊法人でありますが、これは利害のみ考える営利的な事業ではございません。非常に大きな義務も持っております。そして、もうかるからあの地域にはうんとサービスをよくする、もうからないからこの地域には中継所も置かない、こういうことが許されません。これは全国一様に、たといどういう場所ででも見えるように、聞こえるようにという大きな義務を持っておるわけであります。しかし、予算等の関係もございますので、国民全部の要望にすみやかにこたえたいと思いながらもできない分もございますが、しかし、順次そういう点は解消されつつありまして、NHKは全地域にわたって、もうすでに九〇%以上いっていると言っておりますが、日ならず大部分聞いたり見たりしていただけるようになろうかと思います。そうして、その経営内容におきましても、あるいは財政的な計画にいたしましても、それは法律上非常に大きな制約を受けることは御承知のとおりでございます。民間放送のほうは、これは公共性があることは御承知のとおりでございますし、また、放送番組等につきましても、これは一つの大きな制約のあることも御承知のとおりでございます。しかし、あまり多くこの営業関係におきましては制約を受けている面がございませんで、ある程度まで自由に営業面ではできるというような面が多いのでございます。そういう両面の放送をかかえて指導しておるわけでありますが、郵政省といたしましては、こうした精神を生かしつつ、いろいろな義務はございますけれども、NHKの健全な発達をこいねがい、さらに付随して民放にも相ともに発達していただきたいということで指導しておるわけでございます。
  190. 永岡光治

    ○永岡光治君 私の質問が少し抽象過ぎたからそういう答弁になったのであろうと思うのですが、実は民放とNHKを比較いたしますと、収入の上で、御承知のとおり、NHKは料金を国民からいただいて、それが収入として運営されている。ところが、民放の場合はスポンサーからの収入によって、それをコマーシャルとしてやっているわけであります。そういう差はあるんだけれども、しかし、放送という公共性においては何らこれは変わりはないわけですね。そういう商業ベースで運営している民放だから、それだからどういう番組を出してもよろしいとか、どういうことをやってもよろしいということにはやっぱりこれはならぬと思うのですね。そこで問題になるのは、NHKはそういう収入が確保されているじゃないか、したがって、製作費もずいぶんりっぱなものをつくるために大きな経費を使う、だからりっぱな番組ができるのだ、われわれ民放はそれだけの収入がないからなかなかいいものができないのだ、それだけ世論がやかましく言うなら、少し政府も、NHK並みと言わぬけれども、何ぼかの金は一つぐらいよこしてもらってもけっこうではないか、こういう意見も出るだろうと思うのですね。無理からぬことだと思うのですけれども、そこで、そうなると、NHKと民放というものについての位置づけ、割り切り方について郵政大臣はどういう割り切り方をしているのか。いまの御答弁は、その意味で私の理解する限りにおいては、とにかくNHKにはどんな難聴地域でもどんどん放送局をつくれという義務が課されているから、それだからそれは違うのだと、こういうふうに答弁されているのですが、それだけでいいのかどうかという問題です。何かNHKと民放と区別する位置づけについて何かあなた方に大きな方針があるのかないのか、その点を聞きたかったわけですが、答弁ができないのですか。あるいはまた何か私のような質問について、こう考えているのだという意見があれば承りたいと思います。
  191. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) あるいは御質問を考え違いした点があるかもしれません。ただ、巷間いろいろ説もございまするし、民放とNHKとの意見の対立も私も承知をいたしております。ただ、しかし、現段階におきましては、まだ日本全国義務づけてNHKにやらせねばならぬ仕事も相当量ございまして、いまにわかにここで過去の実績、過去の行き方を急に改めるということは困難ではないかと考えております。したがって、本年度の御審議を願いますNHKの経営に関する予算につきましては従来どおりになっておりますけれども、まあ商業ベースで一方はやっているわけでございますから、NHKとは全然経済の基本の立て方が違うわけでございますが、たとい相互に意見の相違はございましても、いまの法の精神からいいまして、そしてNHKには課せられた大きな義務があり、それがまだ完成されてない、ずいぶんこれからまだ努力してもらわぬというと、国民全部に聞こえ、全部に見せるということはできない。せめてNHKだけでも早くどんなに不便なところであっても、どんなに商売上成り立たないところであっても、これはもちろん商売ではないのでありますから、どんどん早く中継所を建設させ、放送局を建てて、そして全部に行きわたらせるという段階に至るまでは、まず私どもこの問題はしばらくたな上げにして考えていかなきゃなるまいというふうに考えて、本年の予算もそういうような点から国会提出したわけでございます。いずれはまたそういうことに対して論議される時期があると思いますが、現段階では私どもさように考えているわけでございます。
  192. 永岡光治

    ○永岡光治君 全国的に普及させる義務をNHKに課しているというところに大きなウエートを置いているということでありますが、それならばお伺いしたいのでありますが、これは予算の関係でそこまでいかないというのであれば、それも一つの理屈にはなりますけれども、もうNHKができましてから非常に長い期間がたつわけでありますが、先般私は兵庫県の豊岡に参りましたところが、あそこは兵庫県知事の演説は聞けないんだと、いつテレビを回しましても鳥取県知事の演説と、鳥取県の候補者の演説ばかりしか聞いてない、あの大都市でですね。それから鹿児島県に参りましても、あそこも囎唹郡だと思うんですけれども、宮崎県知事と、宮崎県の県会議員だとか、代議士の演説は聞くけれども、鹿児島県の知事の演説は聞かぬと、聞けないという、ああいう大きなところで放置されているというのは一体これはどうしたことなんでしょうかね。これはやはりもう少ししりをたたいて、早くこれを改正するようにしなければならぬと私は思うんですが、その点について大臣はどう考えておりますか。   (「具体的に答弁しなさいよ、まだそんなとこ    ろがあるの。」と呼ぶ者あり)
  193. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) 過去にはいろいろの関係もあったかと思いますし、したがって、中継所ができなかったり、あるいは地方局の免許交付がおくれまして片手落ちになっている場所もあるように見受けます。私自身も参りましてそういう非難、そういう陳情をしばしば受けております。私は、そういう点はすみやかに解消するように政府の方針も掲げねばならず、また、そうすることにおいて地方民の方々にそういった不正を解消するように努力しなければならぬ、かように考えております。   (「四十年度やるの。それをはっきりさせなさ   い。」と呼ぶ者あり)
  194. 永岡光治

    ○永岡光治君 本年度の見通しは。
  195. 徳安實藏

    国務大臣徳安實藏君) もちろんNHKも督励をいたしますし、私どもも、現行法によりましてできる範囲でできるだけ努力をして、そうした不平、不満を解消するように努力いたします。
  196. 永岡光治

    ○永岡光治君 ひとつ促進をして早く実現するようにしてもらいたいと思うんであります。  次に、宇宙通信の開発研究の体制強化の問題であります。すでに太平洋海底ケーブルでかなり便益は受けているわけでありますけれども、宅宙通信の開発というのは日進月歩の発展ぶりだと私は思うんです。ところで、日本はこの前のオリンピックでもかなり成果をあげたわけでありますけれども、しかし、まだ諸外国に比べてその研究体制というのは非常に低いと見なければならぬと思うのでありますが、これらの問題についてどういう対策を考えてみるのか、昭和四十年度においてどういう考えを持っておるかですね、これをひとつただしたいと思います。
  197. 宮川岸雄

    政府委員(宮川岸雄君) お答えいたします。宇宙通信につきましては、日本は相当な成果をあげたのでございますが、さらに四十年度におきましても、電波監理局の関係の電波研究所におきまして、鹿島の送受信所を使いまして、さらに研究を進めていきたい。また、国際電信電話株式会社の十王の研究所におきましても、また近く行なわれるであろうと思うところの商業通信を目ざしまして研究を進めていく、さらに郵政省もその他の関係機関も常に共同いたしまして、協議をいたしまして、アメリカ側とも適切な処置をしながら実験その他も進めてまいりたいというふうに考えております。
  198. 永岡光治

    ○永岡光治君 ぜひその体制の強化、整備を要望して、次に、物価問題について若干質問をいたしたいと思います。  まず、先般閣議決定をされました中期経済計画、これによりますと、物価の三十九年から四十三年までの上昇を年平均二・五%と見ておるように書いてあるわけでありますが、ところが、実際はそうではないのではないかと私は思うのです。三十九年度の物価の上昇が四・八%と聞いております。それから今度の四十年度の計画におきましても、これは四・五%の値上げということで計画を組んでいると思うのでありますが、この点を間違いないかどうか、間違いないとすれば、この中期経済計画では一年平均二・五%の上昇と見ているのでありますから、これを五年間として一二・五%になるわけです。すでに三十九年度と四十年度で九・三%の値上げ、そうなりますと、残りの三・二%を三年間で上げるということになると、一年一・一%ということになるわけですが、そういう経済計画を立てておるのかどうかですね、佐藤総理、あなたの総理大臣のときの閣議決定でこれは承認されたことになっておるわけでありますが、間違いございませんか。
  199. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 一月二十二日に、中期経済計画につきまして答申のありましたのを基本的な考え方として、その他、前文をつけましてこういう決定をいたしました次第でございます。しこうして、この点はこの席でも何回か御答弁申し上げたのでございますが、中期経済計画自体が、四十三年度において、経常収支において均衡をとるということでありまして、それからいま一つは、消費者物価を年率二・五%程度にする。この二つの基本的な前提条件をおきまして、そういうふうな経済にもっていくのには、いろいろな経済諸元をどういうふうに運営したらいいのかという趣旨の諮問をいたし、そういうふうなたてまえからでき上がったのが中期経済計画でございます。したがって、この二つの目標が達成できますように、永岡先生よく御承知のとおり、日本は終戦後何回かこの国際収支の壁、それから、最近においては消費者物価の上昇というこの二つの問題にぶつかりまして、そのために何回か引き締めをやってまいったような次第でございますが、そういうふうなことがないように、その壁にぶつからないように行き得るように、その二つの前提条件をおいて、それを達成するのにはいかなる経済見通しをしたらいいだろうかということで諮問をし、その回答を得た次第であります。もちろんそのほかに、その過程におきまして、いままでの高度成長政策の過程において生産性の格差が非常に大きくありますところの農林漁業でありますとか、中小企業、これらの急速なる、つまり生産性の上昇を必要とするということがあるとか、または労働の流動化を促進するとか、または、佐藤内閣になりましてから社会開発ということを非常に強く要請してまいっておるのでございますが、社会開発に関連する面も、その間相当立ちおくれが生じておりますので、そういうふうな問題についてもそれぞれ答申が出ておるのでございますが、そういう考え方のもとにでき上がったのが中期経済計画でございます。しこうして、ただいま御指摘のとおり、三十九年度が初年度でございますが、答申が出ましたのは、この初年度のほとんど終わらんとするときに出たわけでございます。ところで、昭和三十九年度におきましては、当初の政府の見通しは実質四・二という見通しを立てたわけでございますが、経済の成長率そのものが実質七%の予想でございましたものが九・四というふうにこれを訂正せざるを得なくなったというふうに、経済の実態が変わってまいりましたために、四・二を四・八というふうに訂正をいたしたような次第でございます。もちろんこれは、四・八という数字は全都市の消費者物価指数でございまして、農村を含めた総合物価指数ということになりますと、これよりもある程度低くなってくる。四・五程度になるのでございますが、いずれにいたしましても、当初の見通しよりも改定いたしたような次第であります。しこうして、昭和四十年度におきましても、ただいま御指摘のとおり、全都市については四・五という数字を目標として、見通しとして立てたような次第でございます。これは御承知のとおり、物価という現象は、どうしても過去のいろいろな経済政策の実態が影響をずっと残してまいっておりますために、その時間的なズレから、どうしてもそういう影響が残っていくという関係がございます。そういうことで相当な成長率の高さが三十九年度中ずっと続いておる。そういうふうな結果が昭和四十年度にも影響を残しますので、そういう関係から昭和四十年度においてはどうしても四・五程度にはなるであろうという見通しから四・五という見通しを立てたような次第でございます。しかしながら、われわれの考えとしては、中期経済計画の答申のありましたような方向に、何とかして消費者物価を二・五に押さえられる、押さえるという方向に向かって、あらゆる経済運用をそういうふうな方向に向かって努力していこうというのがただいまの政府考え方、態度でございます。
  200. 永岡光治

    ○永岡光治君 そういたしますと、これは、中期経済計画というのは修正せにゃならねと私は思うんですね、この計画は。いまのような御説明があったにしても、これはやっぱり、この計画は間違っているということになるわけですし、大幅にこれは修正せにゃならぬ、こういうふうに理解していいわけですか。
  201. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) ただいま申し上げましたとおり、時間的なズレが、どうしてもいままでの影響が、つまり影響が時間的に残ってきておるという趣旨から、四十年度においては四・五という見通しを立てざるを得なかったということを申し上げておる次第でございます。しかしながら、経済の運営方針全体としては、あの答申にあらわれているような方向であらゆる努力をしていきたい。したがいまして、年率二・五というふうなことになるような方向にこれからの経済運用をやっていきたい、こういうふうな考え方でございます。
  202. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。  企画庁長官、四十年度四・五というのは、三十九年に四・二という場合に四・五、こういうふうに想定したのじゃないですか。そうしますと、四・八に訂正したということになると、それをもとにして四十年の消費者物価の値上がりを推定すると、五・一になるのじゃないですか。前に、大蔵省の泉主税局長は、私が四十年の物価調整の問題を伺ったときに、その計算の基礎としてそういう説明をされまして、五・一の消費者物価値上がりとして六百八億の物価調整ということになる、こういう計算でしたよ。四・五は五・一に訂正しなければいけないのじゃないですか。三十九年四・二のときに、四十年度が四・五ですから、それを四・八に修正したのですから、当然これは五・一になるべきはずじゃありませんか。
  203. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり昨年の暮れに、経済閣僚懇談会で四・二の見通しを四・八に訂正いたした次第でございます。そのとき同時に、四十年度につきましては四・五という見通しを立てたわけでございます。それを正式に、本年の一月二十二日に入りまして閣議で確認いたしまして、それを閣議決定といたした次第でございます。したがって、四・五をこれから訂正するという必要もなければ、またその意思もございません。
  204. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それじゃひとつ、この間資料として出していただきました大蔵省の物価指数ですね。あの物価調整の計算の基礎は五・一になっているのですよ、そこのところは違いますよ。大蔵省に資料があるはずですよ。資料がありますから、資料を見れば……。
  205. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  206. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 速記をつけて。
  207. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 五・一%というのは、主税局長が、この間減税と物価調整の計算をした場合、どういう数字を使うかというようなときに、六百八億の数字の計算基礎になるものは五・一%でございます、こう説明したわけであります。四・五は実績対見込みでございますし、三十九年度の実績に対する四十年度の物価上昇の見込みが四・五%。五・一%は当初対当初でございます。なお詳しいことが必要であれば、主税局長を呼びます。
  208. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは詳しく主税局長に……、と思いますじゃしょうがない。はっきり言わなければ……、いままで何かあいまいなまま進んでしまいますから、けじめをはっきりさせながら質問をしていきたい。
  209. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) あとから呼びますから、続けてください。
  210. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 とにかく事態さえはっきりすれば、あとでもぼくはかまいませんが。
  211. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 先ほどもちょっと申し上げましたが、四・八というふうにいたしましたのは、これは全都市の消費者物価でございまして、農村等を含めたところの総合消費者物価ということ、この総合物価指数というものを中期経済計画は見ておるわけでございますが、そうなりますと、農村の上昇率は低いものでございますから、農村におきましては結局総合消費者物価といたしましては四・八に当たるものが四・六になるわけでございます。しこうして、四十年度について四・五に該当するところの総合消費者物価は四・三に相なるわけでございます。
  212. 藤田進

    藤田進君 経済企画庁長官、永岡委員が指摘している点について、十分なお答えがないわけでありますが、要するに、経済中期計画の示す三十九年度ないし四十三年度の五カ年については、物価は二・五%、対前年度比がですね。そういうふうになっていて、閣議は、これについて、弾力的にということばはついているけれども、この答申を尊重していこうという計画のようである。ところで、三十九年度はいま言われたように四・五%、さらに四十年度は四・三%という総合物価上昇率をこれを見るならば、二・五をすでに昨年度と来四十年度で相当オーバーする。これが基礎になって、対前年度でまいりますと四十三年度における物価というものは、予期したような物価上昇よりもはるかに大きいものになる可能性が経済の実勢から見ても思われる。四十一年度あるいは三年度に急激に物価が下がるということは予想されないと考えてみれば、臨時国会の補正予算以来、企画庁長官は、この中期経済計画は電子計算機で多元的なものを取り入れて結論が出ているので、完全であり、かつ、これを局部的に動かすことはむずかしいという答弁を私いまだに記憶している。ところが、物価の一角からくずれるということは、諸般の面ですでにこの中期計画はくずれ去っていると解するのが適当ではないかと、この辺の説明は一体どうなるのかという点が私どもの質疑の主眼点でまずあるわけであります。
  213. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 先般もお答え申し上げたかと存じますが、昭和三十九年度のほとんど大部分が経過したころに実は答申が出ましたような次第でございます。したがって、三十九年度の経済見通しについて、また、経済の基本的な運営方針としてはどういうことを閣議決定したかと申しますと、先ほどもお答えしましたように、実質成長率を七%、また、消費者物価の上昇率を四・二というふうに想定をいたしたわけでございます。ところが、その実績は、これを改定いたしましたように、実質が九・四というふうな数字になってまいっておるのでございます。これはもちろん輸出が前年度比較において二割二分も伸びるというふうな状況が出てまいりましたり、その他鉱工業生産の伸びも予想よりもはるかに大きく出ているというふうな事柄がそれぞれ相関連し、また、特に個人消費の伸び率が相当大きく相なっておるのでございます。したがって、総需要の面からも物価を押し上げるという形が出てまいっており、また、人件費の高騰等によりまして、コスト・プッシュの点からも相当物価上昇の原因が出てきておると、そういうふうな、結果としてその段階にまいっておるものでございますから、今年度、正確に大体私どもの見通しとしてどこまでいくであろうか。もちろん物価に対しては、政府は非常な強い決意をもって対処はいたしておりますが、努力をいたすにいたしましても、努力目標というものは、不可能なことをやってみてもこれはいかぬわけでございますので、可能な限度を考えましたときに、全都市の消費者物価では四・八までこれはやむを得ぬであろうということで、三十九年度の改定をいたした次第でございます。しこうして、四十年度につきましては、物価というものはどうしても前年度のずっと影響を残してこざるを得ぬ。と申しますのは、たとえば、昭和三十三年度または昭和三十七年度という年においては、相当成長率は低くなってまいっておるのでございますが、したがって、卸売り物価は相当低下をいたしておりますが、その他の消費者物価については、やはり前年度、前々年度等の影響が残ってまいりまして、そうして、たとえば昭和三十七年度におきましても六%台の非常に急激な消費者物価の上昇を残してきたような実績を持っておるわけでございます。したがって、政府といたしましては、何とかして消費者物価というものを中期経済計画の答申にあります年率二・五%のところまで持っていきたいというところから、しかしながら、可能なる範囲というものを考えてみますときに、昭和四十年度においては、やはり全体として総合物価、消費者物価といたしましては、四・三程度まではこれはやむを得ぬのじゃなかろうか、まあ特に御承知のとおり、公共料金等につきましても、昭和三十九年度においては一年間オール・ストップをかける。今回は抑制の態度は変えておりませんが、しかし、これを最小限度においては認めざるを得ぬというふうな事情もございます。そういうふうな観点から現実に見通し得るところの、政府があらゆる努力をしながら、現実に見通し得るところの程度は、四・二程度、それを四十一年度においてはさらに安定的な方向に持って行くということで、まあ中期経済計画の見通したような経済の安定的な成長を基調に持っていくということをいたしていきたいというのが政府考え方でございまして、したがって、中期経済計画の精神と申しますか、考え方、基本的な考え方を改定するとか、これに反するとかいうことは絶対ない次第でございます。
  214. 藤田進

    藤田進君 じゃあ、お伺いいたしますが、中期経済計画の柱というものがあったですね。物価の問題あるいは国際収支等ね。で、これの、まず最も国民が関心を持っておりますし希望している物価の安定、上昇の抑圧というものに対する回答として、いまのような数字が出るということは、これは非常に失望いたします。しかし、三十九年度ないし四十年度では、四%をはるかにこえるが、いまちょっとあなたが触れたが、四十一年、二、三年では、中期経済計画のいう五カ年の物価上昇というものには大体とんとんになるという経済物価の見通しなんですか。四十一、二、三年については、過去三十九、四十で四%以上になったけれども、中期経済計画が示すような五カ年を通しては、四十三年には中期経済計画の大体とんとんのところにまではいき得るというそういう見通しで中期経済計画は尊重していると、こういう結論なんですか。
  215. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 別に逃げ口上を申し上げるわけじゃございませんが、経済は生き物でございまして、したがって、たとえば輸出が非常に伸びると、そのために総需要が相当大きくなるというふうな場合もございます。しかしながら、経済運営の基本的な考え方としては、中期経済計画が目途といたしました経常収支においてバランスをとると、もう一つは、消費者物価は年率二・五%に落ちつくような経済の運営をやるのだと、(「柱がある」と呼ぶ者あり)この二つの点はこれはもう基本条件でございますから、お話しのとおり柱でございますから、これにあらゆる努力を結集していきたいと、こういう考え方でいっている次第でございます。もちろんこれは、そういうことのためには、総理からもたびたびお答え申し上げておりますように、経済全体の基調を安定的な基調に持っていくというような事柄、それからその他低生産部門における生産性の上昇に大きな力を注ぐというようなこと、または労働の流動性をもっと円滑にして、そして労働の需給を円滑にするというふうな、そういうふうな問題が四十年度の予算におきましても重点として取り上げられて、これが担当に実現しておる次第でございますが、そういうふうな方向であらゆる政策的な努力を続けていきたい、こういう考え方でございます。
  216. 藤田進

    藤田進君 そこで四十一年だ、答えなさい。
  217. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) しこうして四十一年、四十二年、四十三年、そういうふうに漸次物価の問題を安定さしていく、こういう考え方でございます。
  218. 藤田進

    藤田進君 それで二・五に戻すの。
  219. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 二・五というものがこの中期経済計画の目標でございますから、この目標を達成できるような方向にあらゆる政策的な努力を続けていきたいと、かように考えるわけでございます。
  220. 永岡光治

    ○永岡光治君 いまの答弁を聞いていると、私は言わんとするところはわかっているけれども、こういう計画を立てましたけれども、そのとおりいけませんでしたと、これはもうたよりにならぬ計画ですという証明にはなるんです。そうでなければ四十一年、四十二年、四十三年は毎年一・一%しか上げられないということになる、総合計画であなたが企図されている二・五%にとどめようとするならばそうなるが、そうはいかないんじゃないですか。最初考えた二・五%ですら三十九年度四・八%になり、四十年度は四・五%になったと。今後努力する気持ちはわかるけれども、そこまでいきそうにないから、この計画努力をするという気持ちは、目ざしてやったんだけれども、この計画は誤りだったと、こういう結果になったんじゃないかということなんです。それを認めるのか認めないのかという私の質問なんです。
  221. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 御承知のとおり昭和三十六年度から八年度まではずっと年度で申し上げましても全部六%台の上昇でございました。しこうして昭和三十九年度は、ただいま申し上げておりますように、四・五程度に総合物価指数で達成できるというただいまの見通しでございます。それで暦年で申し上げますならば、昭和三十八年は七・六の上昇でございましたが、昭和三十九年は三・八でとどまっておる次第でございます。したがって政府としては、これはもう急激に一度にここに持っていくということは、物価の問題はなかなか経済は生きものでございまして、そう急にいくものではございませんが、その方向に何とかして持っていこう、安定的な状態に持っていこうという非常な強い決意のもとにあらゆる経済運営の方針を立てていきたい、こういうことを申し上げておる次第でございまして、失敗だったとか改定するとかというような気持ちは全然なしに、漸次その方向に必ず実現するようにしていきたいと、かように申し上げておる次第でございます。
  222. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 関連。簡単にやりますがね。永岡さんが質問されておるその結論としては、もし、ただいま長官が二・五%の消費者物価の上昇率が目標であるから、なるべくそこへ持っていきたいと言われるのですよ。それがごまかしだと言うのですよ。そんなことできますか。もうすでに三十九年、四十年度四%以上上がっておって、もし二・五%にしようとすれば、八・一%の成長率で、一%あるいはそれ以下の上昇率にしなければできませんよ。そんなことできますか。できないようなことを、持っていけるがごとくここで答弁するから、われわれは承服できない。困難なら困難、いままで三十九、四十ですね、三十九年度途中でやったので、これは実際は困難でないかと思うと、こうおっしゃるならいいのですよ。それをできもしないことをできるがごとく——子供じゃございませんよ、参議院は。まるでそんな詭弁みたいなことを言われるが、実際問題としてできますか。八・一%の成長率で、一%の消費者物価の値上げでできますか。何かそういうようなごまかすようなことを言いますからね、これはどうしても承服はできませんよ。
  223. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 私は性格上、ごまかすというようなことはできぬ人間でございまして、率直に事実を申し上げておる次第でございます。したがって、三十九年度は、なるほど答申が出まして、その答申に基づいて経済の基本方針を四十年度の基本方針としてきめたのが本年の一月二十二日の閣議決定でございます。しこうして三十九年は、したがって計画期間としては、答申としては入っておりますけれども、現実にその方向に政策意欲が十分に浸透できなかったということは御了解願えると思います。しこうして、四十年度につきましては、この中期経済計画の基本的な考え方をそのまま取り上げてやったわけでございますが、先ほど来申し上げておりますとおりに、時間的に前年度の影響というものが、その次の年度、しばらくの期間というものはどうしても残るという観点からこれは四・五、二・五というような数字を出しましたところで、皆さんもおそらくは御信用くださるまいし、われわれとしても可能な数字を出して、そうしてそれに向かってあらゆる努力を傾倒して、そこに何とかして消費者物価を安定さしていくということがまじめな政策態度である。かような観点から四・五、総会では四・三という数字を見通しとして政府として決定いたしておる次第でございます。しこうして、ただいまのお話のように、それじゃあと残った分がわずかじゃないかと、五年間通じて言えばわずかじゃないか、したがってそれを残った八・一の実質成長で一%程度でいけるかという、そういうただいまの御質問かとも思いますが、これはもう三十九年度は、ただいま申し上げましたとおり答申が年度の途中で出ましたために、ここでは除算して考えていくより道がないかと、かように考えるわけでございます。しこうして四十年度以降四年間になるわけでございますが、われわれとしては、なおこの中期経済計画の答申いたしました年率二・五というこの目標を捨てたくない、何とかしてこの方向に持っていきたいという、そういう決意のもとに政策の運営をやっていきたいと、かように申し上げておる次第でございます。
  224. 藤田進

    藤田進君 それで、あとですね、四十一、四十二、四十三をどうするかと言っておるんです。
  225. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) そういう努力目標のもとに経済の運営をやっていきたい、かように申し上げておる次第でございます。
  226. 永岡光治

    ○永岡光治君 その長官のいきたいという気持ちはわかるのです。努力したいという気持ちはわかるけれども、実際問題としてできないのじゃないか。不可能なことをやりたいやりたいと言っても、そんなでたらめなことはないのじゃないか。もう少しほんとうにあなたがまじめならまじめなように、数字がここに出なければいかぬじゃないかということになるわけですよね。最初二・五と考えておったけれども、すでに四・八になり四・五になっておるのだから、これ以上残ったあと三カ年間を一%くらいでやろうといったってそれはできやせぬじゃないか。そういうできもしないことをやりたいやりたいと言っても無意味じゃないか。そうすると、この経済計画というものは今日ではあまり問題にならない資料にしかならないじゃないか、こういうことを私は言っておるわけです。これはやっぱり資料になるのだ、このとおりになるのだとおっしゃるのか。このとおりになるとすれば、今後いま言ったように三年は一・一%かそこらにしかならぬが、それだけの自信があるか、こういうことになるわけです。
  227. 高橋衛

    国務大臣高橋衛君) 先ほど申しましたように、三十九年度は実は経過しましたので、この点はそろばん上はずしまして考えますと、四十年度は総合では四・三ということになります。それで四カ年度間年率二%ということは一〇ということです。それで四・三を差し引きますと、結局五・七残るわけでございます。五・七を三カ年度間で達成できるかどうか、こういう問題になろうかと思いますが、この程度は何とかして私ども努力すべきだ、こういう考え方を持っておるわけでございます。
  228. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは論議をしてももう長官がそういう考えなら——だめじゃないかと言えば努力したいんだ、いかないだろうと言えば、いくように努力するというのだから、これはもうのれんに腕押しみたいなことになりますけれども、これは中期経済計画というのは物価というのが大きな中心になっておりますから、その根本がくずれておるのに、できもしないことを努力しますと言っている。それは架空じゃないか。もう少し慎重に考えてこれを修正するなり何かするのが妥当なものじゃないかと私ども思うのだけれども…。それじゃもうこの問題は一応この程度にとどめますが、とにかくこの計画は、言っておきますが、でたらめだったと、結果的にですよ。最初の出だしのあなた方の熱意は多としても、結果的にはこれは絵に書いたもちだと、こういうことになったから、これはもう根本的に改革を、修正しないと意味がないということを申し上げておきたいと思うんです。  そこで物価の問題ですが、今日も国民は物価の値上がりで非常に生活も苦しくなっている、不満を持っているのだけれども佐藤総理にひとつお尋ねしたいんですが、物価を下げたいという気持ちはだれもあると思うのです。政府ももちろんこれは真剣に考えているだろうと思うんだけれども、そのとおりにならない。この原因と、それから具体的にどうするのか、どうしたら物価が下がるのか、国民はこれを知りたいと思うのです。おそらく国民は佐藤総理が物価を下げる方針を、こういうものを持っているのだと、非常に希望を持つような答弁ができるだろうと私は理解するわけですが、どういう物価の下げる具体策を持っておるのか、国民にひとつお示しいただきたい。
  229. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 物価問題のむずかしさはよく事情はおわかりだと思います。私は最近の経済動向を見たときに、最近経済は安定基調にとにかく向かいつつある。そういう意味でいわゆる卸売り物価、これはほとんど横ばいといいますか、微騰の状況を続けている。それからまた消費者物価におきましても、最近くふうその他がありまして、一時非常に心配したような状態からは解消しておると、かように思います。このことがはたしていいのか悪いのか、長続きするのかどうか、これが一つの問題だと思います。いままでしばしば取り上げられる公共料金、そういうものが上がっていくと、そういう点は目に見えますが、いわゆる消費者物価そのものが、それでは非常な変動を来たしておるのか、それに追随しての上がり方をしているか、必らずしもそうじゃないように思います。私この辺のことを勘案いたしまして、今度は経済全般についての一つの心配が生じてまいったような気がします。われわれが経済を安定基調へ乗せると、かように今日まで言い、それは最近の金融その他でまずまず成功しつつある。一方において、物価の問題と取り組みながらも破産、倒産、そういうような事故を防止したい、そういうことを言いながらも、二月が最低であり、三月が相当の数にのぼると、かような状況を見ますると、経済自身の変動がやはり襲いつつあるような気がしてならないのです。政府自身がこれはもうどうも楽観はしない、十分動向について見きわめる、かように私どもは態度をしばしば声明しておりますが、いまちょうどそういうところへきているんじゃないかと思います。今日のこの状況が一番の底であってほしいし、また物価等もさような意味においても動揺がないことを心から願っておる、かように私はいまの経済動向を見ておるような次第でございます。もっとはっきり申しますならば、いまの経済の鎮静状態、これは本物なのかどうなのか、さらに含みがあるのではないのか、こういうような点が一つ出てくる。いままでしばしば言われておりますように、景気上昇の前における物価の変動、これは物価が相当高くなりつつある、こういうことが言われてまいりましたが、今度はただいま申すような経済が鎮静してきた、そういう状態において、はたして物価が維持できているのかどうか、こういう問題に、私は逆の意味で当面しているような気がしてならないのであります。先ほどから申すように、公共料金はこれはまた別な観点で申し上げたい。ただいま言われるようないわゆる消費者物価そのもの、これは今日騰勢を続けておるかどうか、この点は十分見きわめをつけていただきたい、かように私は申し上げたいのです。私自身はいわゆる一般消費者物価は、これもやはり卸売り物価の動向等から見て、ただいまは鎮静の状態ではないか、かように見ております。
  230. 永岡光治

    ○永岡光治君 その現在の物価の状況、鎮静の状況であるかという問題については、これはまたいろいろ見方もあると思うのです。米の値段が上がってまいりますし、医療費も上がってくるという、それにつれてふろ代も散髪代もというようなことでどんどん上がってくる。おそらく公共料金といえどもこのままには据え置かれないような実態になるのではないかと私も想像いたします。したがって、少なくともこのムードだけでも物価が上がってくるであろうことは予想にかたくないと私は思うのです。そうなりますと、国民がやはり心配なものですから、一体佐藤内閣はどういう手を打ってくれるのだろうか、具体的な手ですね、それはおれにまかせろだけでは国民はわからぬと思うのです。ですから具体策をどうするのだ、公共料金についてはここ三年間上げないとか、あるいは上げる場合はこういうふうにするのだとか、あるいはまた消費物価については倒産の問題もあるでしょうけれども、こういうふうにして押えていくのだ、鎮静よりは国民はまず下がるほうがいいのですからね。まだまだ下がっていくのが望ましいのですからね。だから、そういう問題についてどういうふうに具体的に政府は考えておるかということを、納得のいくようにひとつ説明していただきたい。
  231. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) ただいまの私の見方、この動向についてはいろんな批判があろうと思いますが、私の心配は、正直に申し上げたとおりでございます。そこで公共料金等についていろいろいま言われております。消費者米価を上げた、その結果公共料金も全部上がったのじゃないか、しかし、これはもちろん関連のないことは永岡さんも御承知のとおりだと思っております。公共料金自身も現在のような資本経済、自由経済のもとにおいては、これはやはりオール・ストップというわけにはいかない。これがオール・ストップであり、賃金もオール・ストップである、かような状態のことは私も考えません。またそういうところは借金をすればいいじゃないか、かような意味で賃金はどんどん上げろ、こういうことも言えないのだと思います。やっぱり経済自身は、経済の流れそのものにさからうことは大体間違っておる。だからそういう私企業あるいは公企業にいたしましても、企業単位にそれぞれのものがきめていくべきことはそうしなければならない。私ども政府がとりたいことは、たびたび申し上げておりますように、この企業の合理化、これはひとつ徹底してほしい、また設備等において低利の金が借りられるようなことは、これも十分努力してもらいたい、そうして最後に残るところは、料金を引き上げざるを得ない、かような立場でものごとを見ていくならば、公共料金もいまいわれるようにどんどん上がる、こういうような野方図なものではない。ことに庶民生活に非常な圧迫を加えるものですから、もちろん慎重にやらなければならないのだが、いずれを先にすべきか、そういう点はありましても、最後のところにおいては料金というものに逃げざるを得ないのじゃないか、こういう点が経済の実態なんです。したがって、一年間とどめた結果がいい結果をもたらしておればけっこうですが、かえってこれが今日重荷になっておるような状況になっていないか、この辺では私どもも大いに反省すべきものだと、かように実は思っております。  また、いままで言われておりますような消費者そのものの食生活についての問題、これが一番庶民生活を圧迫しておるのでありますから、食生活については少なくともより豊富にして、より低廉な方法でいこうじゃないか、こういうわけで、いわゆる流通の円滑化その他のくふうをこらしているわけでありますが、私がいま申し上げるのは、そういう意味のいわゆる生活必需物資、その生活の面においてのものは順次下がりつつあるのだから、税制におきましても、いわゆる電気ガス税等がやはり台所にも相当の影響を及ぼしているのではないか、かように考えます。一面において今度は水道料金はどうだ、こういうお話も出てまいるでしょうが、これなどもただいま都議会で非常な議論を呼んでおるのは、そういう意味における庶民生活の圧迫、これをとにかく最小限度にとどめたい、こういう意欲から出ている論議だ、かように私は思うのでございます。ただいま何ごとによらず公共料金はもっと三年間もストップしたらどうか、かような話もございますが、国民はどうもそういう考え方には賛成できない。あらゆる面についての御苦労をかけるとか、あるいは、ひとつごしんぼう願いたい、かように申しましても、なかなかそうもいかないのじゃないか。ことに、私ども一番心配しております構造変化、これからくるといわれておるいわゆる労働力の移動の問題、この需給の問題、これなぞは今後中小企業その他のあり方等について、特にわれわれがくふうしなければならない問題ですけれども、これなぞも私がしばしば申し上げるように、いまのような状態のままでは中小企業等は労働不足を来たすことは火を見るよりも明らかである、かように思います。そういう点がちょうど春闘を控え、いろいろ頭を悩ましておる問題でもございます。ただいまの物価問題、これはお互いが苦労するのであり、ただ単に生産者、労働者というだけじゃなく、全部の消費者、その消費者の立場において苦しんでおる問題でありまして、かような意味から、政府自身もこれとは積極的に真剣に取り組んでいく、かような状態でいきたい、かように思っております。しかし基本的な態度は、何度も申し上げますように、これは経済の成長を安定基調に乗せることがまず第一である、その観点に立ちまして、そうして合理化をはかっていくということで、これは直接の問題ではないように見られますけれども、経済自身が正常化されない限り、物価だけをとらえてどうこうしようという、そういうわけにはなかなかいかないということを何度も申し上げておるような次第でございます。
  232. 永岡光治

    ○永岡光治君 その佐藤総理の気持ちは理解できないでもないわけでありますが、しかし現実の問題として、たとえば物がどんどん合理化されて、ある会社がどんどん合理化されて、生産がふえておるはずなのに物が下がらないというこの問題ですね。やっぱりこれは国民が納得しないわけです。これを一体どういうふうに、政治の指導か何かでできないものかどうか、そういうものを、それは私はどうしてもあると思うのです。  それからもう一つは、独占価格的なもの、これはやっぱり下げる必要があるのではないか。下がるべきものではないか。そのものがあるではないか。それが一向に下がらない、こういう問題については全般的に考えるのだというふうにいえばそれまでに尽きるわけでありますけれども、何か具体的に企業別に、そういう特に物価の上昇を来たすような独占的な生産品についての抑制方法について、たとえば公取委員会の活用をはかるとか、あるいはその機構を整備するとか、あるいはそのメンバーをどうするというような問題もあるでしょうが、何かそういうような方法で下げていくような方法はとれないものでしょうか、政府としては。
  233. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 経済のあり方、一つのたてまえを申しましたが、これは、いま御指摘になりますように、価格形成の条件を整えるということ、これも必要なことであります。私どもが総合対策を講じて初めて物価対策の効果をあげ得る、成果をあげ得る、かように申したのもさような点でございます。ただいま公取、いわゆる独占価格というものがどのようにあるかは別といたしまして、少なくとも寡占企業というものはある。そういうものは生産を非常に上げておる。本来なら下がるべき筋のものなんです。だが、それが一体どういうことになっているか、賃金と利潤の配当だけにそれが還元されているか、あるいは社内留保になっているか、同時に、消費者自身にこれを還元するようなたてまえで、労使双方が企業の経営に協力しておるかどうか、それなども一つの問題だと思います。私が、いまも言われる寡占産業、寡占工業というようなものは、とにかくもうかっている、そういうような意味で、それがやはり労使双方に分けられており、第三者である消費者、最終の目的者である消費者のほうに還元されていない、こういうところが一つの欠陥ではないだろうか。そうして、他の面において、必ず所得の平準化ということが唱えられる、これは悪いこととは思わぬですよ、お互いの生活をぜひとも向上させたいのだから。これは所得の平準化、それははかるべきだ。これはまた働く者の立場になりますと、所得の平準化ではなくて、賃金の平準化ということが言われる、こういう事柄がだんだん、ただいま言うような、サービス業までが上がらざるを得ないということになる。これは私は理の当然だと思います。しかして、先ほど冒頭に申しましたような、経済が鎮静してきた、こういうことの中には、ただいま申すような所得の平準化ということについても、やや制約的な、制限的な考え方が動いているようだ。また賃金の平準化ということも、いわゆる急速に理論的だけには動かないという時勢がそれぞれの立場の方にあるように見受ける。そういうことも手伝って、ただいまの物価の鎮静への方向、それをたどるべきだ、かように私は実は申しておるのであります。しかし、これは一つのきめ手、これで一〇〇%効果のあるというふうな対策はまずないのであります。いわゆる総合的な対策を講じて、そこで初めてお互いがしんぼうし合っていく、そうして、物価が鎮静していく、かような方向以外にはない、かように思いますので、一月の半ばでありましたか、私どもが物価に対する総合対策というものを立てまして、そうして、各方面から検討しておるゆえんもここにあるのでございます。これらの点に誤解のないようにお願いしたい。よろしくお願いいたします。
  234. 永岡光治

    ○永岡光治君 まあ物価の問題は、とにかく国民の重大な関心事であり、それがどういうふうに下がっていく、安定していくかということは、非常に期待するところでありますから、さらに積極的な対策を具体的に講じてもらわなければならぬと思うのでありますが、私は公取引の問題とか、カルテル式な価格の問題とかということはちょっと触れましたけれども、いま総理がはしなくも触れました日常の生活に必要な生鮮食料品関係の価格の問題でありますが、これはたとえば流通機構の改革だということをよくいわれるわけです、これについては。そういたしますと、たとえば公営市場みたようなものをつくって、それに役立たせるという一つの案が、私見としては考えられるのだが、政府はそういうことを考えておりますが、どうですか。
  235. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) そういう点を考えて今回のこの国会でも御審議願っておるように思っております。ただ私は、いま申し上げるような、かたい意味のものよりも、新聞で出ているのを読んでみますると、民社党は、民社大根だとかというように銘打って、みずからお世話をしながら、消費者のところに安い大根を配る、試食してみたらたいへんよかったというような記事まで出ております。あるいはまた、牛乳自身の配達にいたしましても、これは主婦の方々が組合等を結成することによって、団地の集配を手伝う、そういう意味のくふうもされているように聞いておりますが、とにかく、こまかいくふうがそれぞれ要るのではないだろうか。ただいまの市場を各地につくる、これも確かにいいことには違いないと思います。これだけ、九千万国民、一千万の都市に、ただ中央卸売市場一つでは困るだろう、青物などは五カ所も六カ所もありますが、今日のような状況ならば、さらにその数をふやしたらどうだろうかということもございます。これがはたして、いわゆる官営がいいか、もっと民営のものがいいのか、そういう点については、これまた別の御審議があるだろうと思いますけれども、いずれにいたしましても、いわゆる公共の流通機構として、ただいま不十分だ、こういうことはいなめない事実でございますので、そういう点でメスを入れる、あるいは集配の便をはかっていく、こういうような事柄も今後考えていかなければならないのじゃないか。ただ中間だけの機関をたくさんつくればこれまた困りますから、しかして、実際の市場の実情等を見ますると、その市場の配給、配送範囲と申しますか、たとえば神田の市場ならば、東京一円に相手にするものはその六割である。その四割は他府県に及んでいる、こういうようなことを伺いますと、市場の機能そのものも、私どもが考えるようなそう単純なものじゃない。したがって、ただいま永岡さんが御指摘になりましたような市場、これはきわめて現地に即したそういう配送機関、そういうようなものが要るんじゃないか。集荷場、そういうようなものが要るんじゃないか、かように私は思います。
  236. 永岡光治

    ○永岡光治君 物価問題について、まだ実は質問したかったんでありますが、時間があまりないので次の問題に移りたいと思うのですが、とにかくこの物価の問題は、冒頭申し上げましたように、国民の非常に関心の深いところでありますから、しかもまた、これが政治的な力によって解決する面が非常に多いわけでありますから、一段と努力を払うように要望しておきたいと思うのです。  次に、農林大臣にちょっとお尋ねしたいと思うのですが、今朝来、日韓の会談が開かれたのではないかと思うのです、どういう形式にしろ。そこで、昨日も実はわが党の阿具根委員からもいろいろ質問されておりましたが、どうもはっきりした答弁が得られないわけであります。あなたは、十五万トンを一応の目標にして、それが多少一割ぐらいのものは出入りがあるんだと、こういう話をしている。また、漁獲量よりもむしろ隻数のほうに重点を置いている、それでいま折衝中だと、こうおっしゃっているわけです。ところが、私はやっぱり、韓国側の意向は非常に李ラインにこだわっているような印象を受けるわけです。日本政府も、わが国も李ラインは絶対撤廃しなきゃならぬと思うのですが、この点についての見通しはどうですか。今朝まで折衝してまいりました過程での向こうの意向はどうですか。これは私はやはり基本だと思うのです。基線を引く場合でも、あるいはまた基線を引いて六海里なり十二海里にして共同規制海域をつくったにしても、やっぱり私は李ラインという問題が最終的にこだわる一つの問題になろうと思うのですが、この点についてどういうように、あなたはおそらく撤廃をするんだという決意には変わりないと思うのでありますが、今日までの経過と見通しは、一体どういうことになっておりますか。国民の知りたいところだと思います。
  237. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) きょうは会談をやりませんが、毎日続けてやっているわけでございます。しかし、進展の度合いというものを卒直に申し上げますと、進展はいたしておりません。  そこで、李ラインの撤回ということが最終的なねらいであると、わがほうのねらいであるということは、御説のとおりで、そのためにいろいろな折衝を続けておるわけでございますが、いまもお話がありましたように、ことに専管水域の設定あるいは共同規制水域の設定、その中における規制は、双方平等公平にやるべきだというようなこと、あるいはまた、取う締まりとか、そういう一連の話し合いというものは、李ラインの撤回ということをねらいとして、その目標に向かって折衝いたしておるのでございます。現在のところ、基線の引き方等につきましても議論がありまするし、あるいは、いま申し上げました漁獲量、魚類保存の面から漁獲量というようなきめも、他国との間にあるわけでございますが、あの水域内におきましては非常に問題の起こしやすいことでございますので、隻数できめていきたいというようなことなども進めておるのでございますけれども、まだとてもいまのところでは話が進行しておりません。一進一退ということではなく、進まずに停滞しているといいますか、同じところを回っておるというようなことでございます。
  238. 永岡光治

    ○永岡光治君 これは私は非常に重大な問題だと思うので、おそらく漁獲量だとか隻数の問題がとやかく言われても、最終的には、ここでやっぱりひっかかるような気がする。私はそういう気がする。そこで、これは生命線——生命線というか、一番重大な問題だと思うのです。絶対引いてはならぬ線だと思うんですね。これは撤廃しない限りは妥結のできない内容だと思うのですが、いまお話によりますと、一進一退だというよりは進まずと、こういうことでありますが、いまの重点は李ラインのほうが先——話の対象には李ラインの問題が重点が置かれて話し合いされておるのか。きのう来の話を聞いておりますと、漁獲量が一応のめどと相なって話し合いができて、隻数の問題でいま話し合いしているのだという、こういうお話があったように思うのですが、何が一番重点に置かれて議題の中に——李ラインの問題は議題にのぼっていないのですか。どうも非常に危険だと私は思うのですが、これは、これだけをひとつぜひ重点に置いてやっていただいて、これが解決すればおのずから解決すると私は思う。話は逆だと思うのですね。そうじゃないですか。
  239. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 先ほどから御説明といいますか、申し上げておるように、李ラインの撤回ということにすべての問題が集中しているわけであります。漁獲量というような問題はそれほどではございません、御指摘のとおり。専管水域を設定するということは、これは一つの李ライン撤回と同じことになります、専管水域でなければ漁業を専管的に韓国側はやらぬということになりますから。あるいはまた共同規制の区域をきめていくというようなことも、これは李ラインの撤回につながることでございます。あるいはまた共同規制区域内における両国間の漁業問題の取り締まりとか、裁判管轄権、こういうような問題等も、李ラインの撤回に直接つながるわけでございます。そういう意味におきましてすべての話し合いが、李ラインの撤回ということを目標として話し合いを進めていく、こういう段階でございます。
  240. 藤田進

    藤田進君 関連して。この際外務大臣にお伺いいたしますが、李韓国外務大臣の訪日によって一段と進展するという雰囲気も察知せられるのであります。ことに赤城農相の折衝経過については、若干部分当委員会にも質疑に答えられての報告がございましたが、外務大臣の李ラインに関する認識なり態度、また、関連しては基線の引き方、ことに国際社会通念である十二海里というものを曲げて、直線基線というところにまでいって済州島周辺を中心とする基線の引き方に対立がある。これも農相会談では、もう段階的に見て困難であるから、外相段階における政治的解決にゆだねたいという雰囲気さえ私どもうかがうのであります。そこで、次の二点をお伺いしたい。  第一は、李ラインに関する韓国の態度というものは、数日前すでに韓国内における声明から見ても明らかであります。撤廃をしないということを野党にも公約された。わがほうは、ただいま農相の言われるとおり、李ラインの撤廃は大前提であると、こう言われる。外相は、この点についていかなる所見であるのか。  第二の点は、いま妥協せられるとさえ伝えられている基線の引き方について、農相が従来主張してきたと言われるものを、あくまでもわがほうの案として最後までいかれるのか。すでに若干の含みを持ちつつ交渉せられるのか。外相の態度は若干どうも、訪韓されたいろんないきさつもございましょうが、私ども憂慮にたえないものを思うのであります。  以上の点について明快な御答弁をいただきたいと思います。
  241. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 李ラインの問題につきましては、ただいま農林大臣がお答えしたとおり、われわれは全く同じ意見を持ってこの問題に当たっておる次第でございます。  それから基線の問題につきましては、これはもう一切農林大臣におまかせをしてその折衝の結果を待っておる、こういうことでございます。
  242. 永岡光治

    ○永岡光治君 ただいま農林大臣、外務大臣からそれぞれ答弁があったわけですが、これはもう日本の国民の一致した私は願望であり、また譲られない最低線であると思うんですが、日本政府をあずかる佐藤総理としてもそういう決意があるのかどうか、あらためて答弁をいただきたいと思います。
  243. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 農林大臣並びに外務大臣が答えたとおり、私も同一な意見であります。
  244. 永岡光治

    ○永岡光治君 とにかくこの問題は重大でありますから、絶対にこれを曲げてはならない、このように私ども強く考えておるということだけは表明しておきたいと思うんです。  次に、労働問題について少しばかりお尋ねしておきたいと思います。この前の、昨年の暮れの臨時国会で、私は当時国鉄総裁の出席を求めまして、仲裁委員会にあなたが出席をして賃金の引き上げについて何とか考慮してほしいということを陳情しておったけれども、これは当事者能力のないところからきているのではないか、あなたが当事者能力を持っておれば団体交渉においてそれは解決できるんだが、まことに不見識な話ではないか、団体交渉では二又も上げないと言い切っておきながら、仲裁委員会のほうでは何とかしてくれ、そういう不見識なことがあるか、だからこれは現在の制度に欠陥があるのではないか、こういう質問をいたしましたところが、あなたはその答弁で、いや現在の制度でよろしいんだ、当事者能力なんかなくてもいいんだ、こういう答弁を私は聞いて、非常に残念なので、それで石田労働大臣及び佐藤総理に、やはり当事者能力を持たすという方向でいくべきではないかという質問をいたしましたところが、いやそういう方向で建設的に、各省の次官ですか、何かそういう方面に検討させているのだという答弁があったわけです。ただいま賃金の要求が出まして、調停委員会にかかっている段階でありますが、国鉄の総裁の所見をここで明確にしたいと思うんですが、あなたは当事者能力は要らないんですか、当事者能力を持たしてもらったほうがいいのじゃないですか、それをただしておきたいと思うんです。
  245. 石田礼助

    説明員石田礼助君) 労使間の問題の解決は、これは労使の話し合いできめるということが最も望ましいことであります。しかし、国鉄に関する限り、これは第一が予算上、第二に制度上において種々の制約がありまして、実際はできない。そこでやむを得ずその裁決を第三者機関に依存しておるというのが現状であります。予算上というのはどういう意味かというと、御承知のとおり、ベースアップのごとき人件費につきましてはかたいワクがついておる。一歩もそれからはみ出すわけにはいかないのであります。もしあえてはみ出す場合においては、大蔵大臣、さらに国会の承認を経なければならない。その場合に、両者の承認を得られるかどうかそれはわからない。わからないのに、チャンスをとって組合と手を握るということは国鉄としてはできない。そこで、われわれとしては仲裁裁定に持ち込むということであります。というのは、その裁定は労使両者を拘束する、かつその裁定というものは大蔵大臣及び国会もこれに対しては敬意を表してくださるというわけで、問題の解決はこれが公平でかつ実効のあがる一番よい行き方だと感じておる、仲裁裁定へ持っていくということが。さらに制度上の問題でありまするが、ベースアップのごとき多大の資金を要する問題について組合と手を握るためには、多大の資金を要するのであります。よって、かりに予算規定が改正されて国鉄が自由にやってもいいということになりまして、国鉄がその責任において支出することができるようになりました場合においても、独立採算制の上に立つ国鉄としては、その資金をどこから一体持ってくるかということを考えなければならぬ。結局、収入面において自主権の拡大というものを必要とする。たとえば運賃の値上げの問題、さらに借金の限度の問題、この二つについて国鉄というものはいまや手かせ足かせになっていかんともすることができない。これは御承知だと思うのですが、こういうふうになった日には相撲はとれぬですよ。以上のような次第でありますからして、労使の間で仲裁に持ち込まないで解決し得るためには、予算に関する法律の変更をやってもらわなければいかぬ。人件費というものはちゃんとワクをつくってこれより一歩もいずるべからず、これはもういかんともしがたい。金が要るというので運賃値上げというと、国会が握っておってわれわれとしてはいかんともしがたい。どうして一体その金を持ってくるかというようなことで、これはもうこの二つが縛られている以上は国鉄としてはやりたくてもやれない、こういうことなのであります。政府及び国会予算上の制度を一体変えてくれるのかどうか、また国鉄の自主権というものを拡大してくれるのかどうか、これに対してあなた方がイエスと言わない限りは、いまの既定の制度のもとにおいては、第三者に持ち込んで公平な裁定を下してもらい、これに従うということがやむを得ない唯一の方法であると私は確信しております。
  246. 永岡光治

    ○永岡光治君 いま国鉄の総裁がはしなくも答弁の中で言っているようなことだから、当事者能力を与えるべしということを私どもは主張しておる。その裏づけは、もちろん財政もあるわけです。国会の法律の改正すべき問題もありましょう。そういう裏づけを得て——ただあなたにやれやれと言ったって、足かせ手かせじゃだめなんです。それをはずすことが当時者能力を与えることになるわけです、裏づけとして。そのことをあなたは望まないのかと私は言っているわけなんですよ。望みそうないまの答弁です。そうしてほしいということですから、わかりました。あなたの答弁は間違いないですね。念のために押しますが、当事者能力をほしいわけでしょう。
  247. 石田礼助

    説明員石田礼助君) 御承知のとおり、国鉄は公共企業体でありますので、これは私企業と違う。だからして、自主権の拡大とかあるいは予算の問題なんかにつきましても、当事者能力を付与してもらわんがために直ちにこれを改正してくれということは、私はもう少し検討しなければわからぬ。この際ここでもってこれを、どうぞひとつ予算制度を変えてくれとか、あるいは自主権を拡大してくれということは、これはこの際申し上げる立場にありません。これはひとつ国会なり何なりで私は議論してくださればそれでいいんじゃないかと思う。(「あなたの意見を聞いているんだよ。あなたはどうかという議論をしているから、あなたのを参考にしたいんだ」と呼ぶ者あり)
  248. 石田礼助

    説明員石田礼助君) それはひとつ慎重に検討した上で……。
  249. 永岡光治

    ○永岡光治君 あれでは答弁にならぬじゃないか。それでは国鉄総裁にお尋ねいたしますが、有額回答されたと思うんです。有額の回答。第一次回答は、賃金要求に対してゼロ回答されたんですか、ある程度の金額を示したんですか。
  250. 石田礼助

    説明員石田礼助君) お答えいたします。国鉄の回答というのは例年はゼロ回答、これはいかにももう冷ややかで冷酷な回答です。ということで、ことしは金五百円也、こういう回答をいたしたのであります。
  251. 永岡光治

    ○永岡光治君 金五百円也を出したそうです、従来は冷酷だったから。その五百円は冷酷を抜け切ることにならぬと思うんです。その金は予算に盛り込んであったわけですか。
  252. 石田礼助

    説明員石田礼助君) 五百円というものは予算には盛り込んでありません。しかし、盛り込んでありませんが、そのくらいのことならば労使の間に握手ができました場合に大蔵省へお願いすれば大蔵大臣も御承認くださるものだと、こういう仮定のもとにわれわれ五百円というものを回答した次第でございます。
  253. 永岡光治

    ○永岡光治君 これ以上話を詰めてっても、まあ国鉄総裁には少し無理だと思うんです。なかなか、当事者能力がないと言うと語弊がありますけれども、どうも答弁、私少し問題がありそうでありますから、時間もきたことでありますから、一応これでとめますが、労働大臣にいまの件について、この前の答弁では、建設的に前向きで検討していると、こういうことでありまして、どういうふうにそれが進んでどういう結果になったのか、そしていまどういうふうにまたさらに努力をしようとしておるのかですね、これはひとつ労働大臣の所見を明確にしておきたいと思う。
  254. 石田博英

    国務大臣石田博英君) 労使の間に生じまする紛争は、これは労使の話し合いによって処理されることが最も望ましい原則であります。しかしながら、先ほどから御議論があるとおり、三公社五現業その他におきましては、その事業の特殊性から、制度上は労使の間で合意に達した場合は、その合意に達したものが予算上、資金上不可能であった場合においては国会の議決を経るという制度はありますけれども、財政運用その他、他の制度の上から強い制約を受けていることは、先ほどから国鉄総裁の御答弁にもあり、御承知のとおりであります。  そこで、その労使関係を、正常ないい形の労使関係を求めてまいります上から申しますと、当事者能力を経営者に付与することが望ましいのでありますが、他の面の問題とのかね合いがあります、予算の編成権、予算審議権その他のかね合いがあります。そのかね合いをどう調整していくかということがこの問題の解決のかぎだと思います。その事業の性格上、民間と全く同一に置けということにはいろいろ問題があろうかと思いますが、そこの調整をどこに求めていくか。そこで、昨年四月十七日の、当時の池田総理と総評幹部の諸君との話し合いによって、この問題を当事者能力を付与する方向に向かって検討する。具体的な方法については、関係次官会議を開いてずっと検討してまいりました。その結論は、法改正を要する問題、あるいは恒久的な施策につきましては、ILO関係案件として提出いたしておりまする公務員制度審議会で御検討をいただく。その恒久的な解決が行なわれまする間は、現在の制度の合理的な運営において、なるべく当事者能力を持ち得られるように、合理的な運営ではかっていく、こういう方針を決定をいたしまして、したがって今回は、従来の公社、現業の態度と違って、有額回答ができるように努力をいたした次第でございます。で、公務員制度審議会が、これだけではございませんけれども、公務員及び政府関係機関の労使関係のあり方について、諸般の問題を、各方面の御意見を調整しつつ取りまとめいただくことを私どもは希望いたしております。われわれ労働行政を担当しておる者の方向は、冒頭に申し上げたとおりであります。
  255. 永岡光治

    ○永岡光治君 時間がまいりましたから要望だけしておきますが、ぜひ当事者能力を与える方向で早急に結論が出るように、また、その出ない段階、法的な解決ができない段階においても、法的な解決ができたと同じように実質上はなるように、ひとつぜひ労働大臣としてもそういう指導をしてもらいたいと思うのであります。  以上要望いたしまして、私の質問を終わります。
  256. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 先ほど保留になっておりました答弁を申し上げます。  四・五%は実績対見込みでございます。  それから五・一%は、私が先ほど申し上げましたとおり、当初対当初の数字でございまして、私が申し上げたとおりでございます。
  257. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 永岡君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  258. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 次に、青木一男君。
  259. 青木一男

    青木一男君 私は、高速自動車国道の計画について、二、三政府の御所見を伺いたいと思います。  わが国の高速自動車道路の計画としては、昭和三十二年公布されました国土開発縦貫自動車道建設法をはじめ、その後制定された東海道幹線自動車国道建設法、関越自動車道建設法、東海北陸自動車道建設法、この四つの法律があるわけでございます。  ところが、高速道路というのは、わが国の産業経済の基盤となる陸上輸送の大幹線動脈でございます。したがいまして、この建設については、国の長期経済計画全国開発計画などとにらみ合わせまして、総合的な視野に立って、そうしてすみやかにその高速道路の構想というものをつくる必要があると思います。いままでのように、行き当たりばったりと言っては失礼と思いますが、総合計画なしにやるのでなく、今後はそういう国土計画の一環として、総合的見地からその構想を立て、計画を具体化していく、こういう順序にこの問題を運んでいかなくてはならない段階にきておると思いますが、建設大臣の御所見を伺いたいと思います。
  260. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) 高速自動車国道は、これは国土の開発のために、あるいは地域格差是正のためにぜひ必要でありますので、いま仰せになりましたように、建設省としましては計画を立てておるのであります。われわれが示しました国土の基本構想におきましては、昭和五十五年までに、北海道から鹿児島並びに四国の道路を含めまして、全体で六千七百キロメーターの計画を持っておるのでありますが、いまお示しになりました法定された道路の総延長は、そのうち四千七百キロメーターになっております。これは今後、われわれのほうで逐次調査をいたしまして、そうして全体の計画にまとめ上げたい、こういうことで計画を進めておる段階であります。
  261. 青木一男

    青木一男君 最近策定されました道路整備五カ年計画四兆一千億円の投資規模のうちに、高速道路の建設費というものは、わずかに五千五百億円を計上しておるにすぎません。この高速道路が、将来の幹線道路である、動脈である。木でいえば、幹になるべき部分でございますが、その部分はあとになって、その枝葉の線の整備が先に進んでおるという現状でございます。これは、わが国の従来の道路が悪いから、急いで国道、地方道の改良をしたという点で、国民も非常に喜んでおる施策でございます。しかしながら、ガソリン税の収入がどんどんふえてまいりますと、既存の国道、地方道の改良舗装が、これは自然にでき上がる段階にも来ておるのでございます。したがいまして、今後のわが国の道路政策といたしましては、重点を高速道路の建設に置かなければ、道路政策意味がなくなってきておるのではないかと私は思うものでございます。ことに、地域格差の是正、あるいは大都市の人口集中排除、こういうような焦眉の問題を考えてみましても、いままでのように、大都市付近の道をよくすると、こういうようなことでは、目的に沿わない。やはり地方の開発のおくれた地域にいい道をつけるということに、今後は重点を置かなければならぬと私は思うものであります。ただいま建設大臣の言われたとおり、全国的にこの高速道路の法律はあるわけでございますが、かりに青森から鹿児島まで高速自動車道一本つけたといたしまするならば、それだけで日本の国土の体質は変わってくると私は思います。それから、いろいろの産業立地条件も、それだけで変わってくると思うのでございます。いろいろのいま時代の懸案となっておる問題の解決の糸口は、この一本の高速道路の建設から開けていくのではないかと私は思うものでございます。したがいまして、この重要な意義を持つ高速道路の建設計画は、いままでのように、道路整備計画の端っこにちょっと頭を出すというようなことでなしに、私は、そういう一般の既存の道路の改良計画とは別に、高速道路建設計画というものを具体的に作成していただきたい。しかも、この計画は、最低十年の期間をもって実行していただきたいと思います。私も先年、欧米の高速道路を視察に参りましたが、たとえば西ドイツ、イタリー、フランス、イギリス等の例を見ましても、大体十年計画でございます。あれだけの大事業でございますれば、そのくらいな長期計画でなければ、私はうまくいかないだろうと思うものでございますから、日本の高速道路計画も、最低十年の具体計画をひとつ立てていただきたい、こういうことを考えておりますが、この点について、建設大臣と総理大臣のお考えを伺いたいと思います。
  262. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) いま仰せられましたように、高速自動車道路が、北海道から鹿児島まで、あるいは四国一円にということになりましたならば、産業の立地条件からほんとうに革命的に様相を一変するというふうに考えられます。そこで、これはできるだけ急がなければならぬのでありますが、御承知のように、まだ日本の道路は整備されておりません。われわれの計画によりましても、四十三年度までに一級国道が概成をし、そうして二級国道が七〇%程度舗装される、こういう程度でありまして、県道以上を舗装できますのは、昭和四十八年くらいまでかかりはしないかというふうな現在の道路の状況でありますので、高速道路のほうにいきなり全力を集中して十年以内にということは、なかなか困難であろうと思いますが、しかし、一方、先ほど申されましたような縦貫道路の別の使命があるわけでありますから、この面については、財源的な措置というものについて、政府として十分な検討を加えて、これが完成を、十五年をさらに短縮するという方向に向かうべきであると考えます。
  263. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) お答えいたします。青木委員の仰せられるように、この国土計画あるいは交通網の整備、かような立場に立ってものごとを考えろとおっしゃる、これはしごくごもっともだと思います。私はかつて鉄道にいまして、当時は、鉄道こそ経済、文化の根幹をなす、その鉄道がそういう意味で非常に貢献していると、かようにみずから誇っていたのでありますが、かつての鉄道の時代はすでに過ぎまして、ただいまは道路の時代だと、かように思います。この観点に立ちまして、国土開発はもちろんのこと、わが国の産業を興し、同時に文化の発達に貢献する、寄与する、こういう立場になると、近代的な交通機関である道路の整備、これこそが近代国家の一つの使命ではないか、かように私は思います。ただいま言われますごとく、現存する国道あるいは県道、それらを整備するのも、この国力でなかなか思うようにいかないのだ、かような意味で、国力相応のことを考えていると、かような答弁が建設大臣からございましたが、なるほど、国力を無視するわけにはまいりません。ただいま、高速道路を整備する、あるいは高速自動車道路を整備する、こういう考え方は、非常な大きな国の目標として基本的な計画を立てる、こういう観点に立って初めてこの高速道路の整備が意味がある、かように私は考えますので、ただいま言われるごとく、長期を要する工事だとは思いますが、そういう意味においては、基本的な調査に十分取りかかりまして、そうして、ほんとうに産業の開発、また文化の先駆になる、こういうような本来の交通の使命を達するような高速道路を整備する、その計画に取りかかることが最も必要なことだと、かように考えますので、ただいま私は、青木さんの御所見に対して賛同いたしますと同時に、ただいま申し上げますように、ただいまの国力相応のことをわれわれは考えていく。ただ、相当時日はかかるだろう、この点も御了承を得たい、かように思います。
  264. 青木一男

    青木一男君 建設大臣は、私の質問意味を多少違えたかもしれませんが、私は十年間で完成せよと言ったのではないのでございます。計画として、少なくも十年の計画で区切ってやっていただきたい、こういう意味質問申し上げたのでございます。ただいまの高速道路の建設計画は、政府財政資金を融通して、そうして有料の道路として、その収入で投下資本の元利払いをするという採算制の上に行なわれておるのでございます。この点に、私は、非常に今後の高速道路建設には問題があると思うのでございます。本来、道路というものは無料であるべきものと思うのでございます。ことに、先ほど来申し上げたような日本の産業、経済の根幹をなす動脈の道路については、私は無料が理想であると思います。まあ、しかしながら、いろいろの事情から、今日まで財政資金によって採算制のもとに建設されておりますが、私は、もしその線の収益によって元利払いをするというような方針をとっていったならば、これからほとんどそろばんに合う線というのは、そうないのじゃないかと思うのでございます。まあ建設省ではプール制を考えておるようでございますが、それにしても、私は知れたものであると思います。ところが、高速道路は、先ほど来申し上げたようないろいろの国家的政策を具現する意味を持っており、ことに国土の開発、地域格差の是正、そういうものの一番の有効な手段でありまして、いわば先行投資的の事業がこの高速道路であります。したがって、いままでのように、交通量を基本として、その採算制というようなことにこれからは重点を置くべきではない。やはりそういう国策の重要性からこれは建設するのであると、こういう方針をきめて、私は全部すぐ無料にせよと申しませんが、やはりそういう独自の採算制という観念を離れて建設すべきである。  それからその次に、財源の問題になるわけでございますが、いままでのように、政府財政資金の余裕だけをこの高速道路につぎ込むというようなことでは、これは私はもう何十年たってもできないと思います。そこで、これは財政事情にもよりますけれども、やはり国道の建設には、当然いままででも公共事業として予算を使っているわけでございます。私は今後とも、やはりこういう国家的な意義の高いものには、当然公共事業費を使ってよろしいと思います。これはもちろん、ほかのいろいろの財政事情にもよりますけれども、原則としては公共事業費を投下していけないという理由は私はないと思う。  それからもう一つは、一昨年の国会でも、私は池田総理に詳しく御質問申し上げたのですが、建設のための道路公債はある程度認めていいのではないか、こういうふうに私は考えております。もちろん、私も健全財政論者でございますから、歳入の不足を公債でどんどん補てんせよというような議論をするものではございません。しかしながら、これだけの国家的の大事業、その効果は子孫末代までも及ぶような大事業を、そのときのわれわれの時代の負担だけで建設するということは、必ずしも私は必要がない。外国の例を見ましても、大部分の国では、やはり借金で建設をいたしております。また、あるいは借金と、それから国費との総合でやっているところもあるわけでございます。私は、これは将来の財政にもよりますが、また、限度にもよりますが、こういう国土の根本建設に関係する道路にだけは、やはり建設公債の観念を取り入れまして、財政を乱さない限りにおいて、私はこれの建設を促進すべきものであると思います。あるいは交付公債というような案も考えてよろしいのじゃないか、こういうふうに思うのでございまして、いま、本年度の予算をどうこう申すのではございませんが、この将来の大問題である日本の国土を貫く高速道路網を建設するという以上は、そこまでやはり腹をきめて国家計画として出発する必要があると、こういうふうに私は思うのでございますが、この点の、建設大臣、それから大蔵大臣、総理大臣のお考えを伺っておきたいと思います。
  265. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 道路に対するおことばは、十分理解できます。また、無料公開の原則に立つ道路に、有料道路制度を二十八年から採用したわけでございますが、有料道路の中にも、一般財源の投入をするということは必要であるということも理解できます。まあ人間が生活するために必要なものは、道路、港湾、鉄道、航空、こういうものでありますが、道路は昔から、各国においても無料公開の原則であります。あとの鉄道、航空、港湾、海運は有料制をとっております。近くは各国でも、道路を急速に進めるために、有料道路の制度をしいておるわけでありまして、日本も二十八年からこの制度を採用したわけであります。まあ、いままでは投資効率ということを重点に置きましたので、やはりどうしても混雑をするというところに重点的な投資が行なわれます。行なわれた結果、過大に人口や産業や文化が集中するという結果にもなったわけであります。でありまするから、これから将来の投資ということに対しましては、有料でペイするものは、また、国が長い間恩恵を与えておるという、先行投資を行なったという面は、できるだけ有料でこれに対処し、政策的には、地方開発や僻地、離島等の開発を行なわなきゃならぬというようなものに対しては、やっぱりペイしないところでございますから、こういうものに対しては、国民の税金をもってまかなうというように、いままでの財政的なものの考え方からウエートを置いて考えなきゃいかぬだろうと思いますが、太政官時代から、北海道に対してば全額国庫負担の制度を長く採用したということが、今日もまた考えられるわけであります。有料道路の制度をとったことと、ガソリン税を目的税的なものにしまして、道路整備財源等に関する法律をつくってから十二年間でございますが、御承知のように、昭和二十八年の道路の全予算は百八十六億円であります。まあ、これが十二年間で少なくとも四兆一千億、五カ年計画ということが採用できるようになったわけでございます。今度きめた三十九年から四十三年までの四兆一千億の内訳は、一般公共事業が二兆二千億、有料道路が一兆一千億、地方単独事業八千億、計四兆一千億ということになっておるわけであります。この一兆一千億の中に、高速道路に関して予定しておりますのが五千五百二十五億、わずか五千五百億、こういう御指摘があったのであります。この中でいま計画をしておりますものが、一般公共事業の年率の伸び率は一〇・一%、約一割ずつよくなるということであります。有料道路につきましては、二七・八%、約三〇%ずつよくなると、こういう計画を立てておるのであります。  道路公債論につきましては、長いこと議論もされておりますが、いまのところ、四兆一千億の計画というものは、二兆一千億から一挙に四兆一千億になったのでありまして、この数字の中で、政府出資金が千百五十億と見ております。道路債券が五千六百五十億を予定いたしておるわけであります。いまの状態で、これ以上に道路公債といわれるものが一体発行できるかどうかというのが、公社債市場の問題その他の関係でなかなかむずかしい、こういう考え方でございます。いずれにいたしましても、いまの道路整備に対しては、最も重点的な施策として、四兆一千億計画を樹立し進めておるわけでございまして、いま先生御指摘のように、一般会計の政府出資金の千百五十億を倍にできるか。あるいは非常にむずかしい状態でございますし、道路債券の約六千億というものが一兆円発行できるかどうか。いずれにいたしましても、今後は四兆一千億が二兆一千億、五カ年計画の改訂版でございます。現在の四兆一千億も、時代に即応して改訂をしていこうという基本的姿勢でございますので、いまにわかに具体的にお答えはできませんが、先生が強く言われております道路整備の重要性は十分認識をして、これが計画遂行に対しましては、重点的に万全の処置を講じてまいりたい、こう考えております。
  266. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) いまお話のありましたうちで、新しい五カ年計画をつくる場合には、高速道路の計画計画の片すみにあるようでは困るというお考えについては、私もかねがねそのように考えております。同時にその場合に、計画を大きくするためには財源が必要なのでありますが、いま大蔵大臣が申されましたように、いまにわかに道路公債を云々するということは、これはまだ時期尚早であるかもしれませんが、いずれにいたしましても、先ほど申しましたように、昭和四十八年度見当ぐらいになりますと、ガソリン税でもって大体県道以上のものの舗装が完成されるという時代が参るわけでありますが、その場合には、そのガソリン税を引き当てにして外債をつのるということが、あるいは可能になるかもしれません。そういう意味で、新しい計画の場合には、そういう背景を踏まえながら考えていきたい、こういうふうに考えておるわけであります。  なお、有料高速自動車道路は、全部これを国の負担においてという、無料にできないかというお話でありましたけれども、これは建設費をまかなうための有料道路のための料金、つまり、たとえばそれを二十年間で償却するための料金ということになりますと、なかなか骨が折れますが、いまの高速自動車道路は、すでに着工しております東名、あるいは完成しました名神というふうな、すでに盛んに利用されておるものも一緒に含めて、いわゆるプール制になっておるわけでありますので、したがって、新しくつくります道路がいわゆるペイしない道路でありましても、全体の利払いその他のものは、償還期限をきわめて長くとることによって、これは不可能ではない、こういうふうに考えております。
  267. 佐藤榮作

    国務大臣佐藤榮作君) 大蔵大臣並びに建設大臣がお答えいたしましたので、私、別にお答えしなくてもいいと思いますが、青木さんは大蔵省の大先輩でもありますし、ことに財政についてもりっぱな御意見をお持ちでございますので、先ほど来の点は、十分私ども参考にいたしたい、かように考えますが、何よりも大事なことは、衆参両院におきまして超党派できまりました高速自動車国道法、この法律を守りまして、そうして幹線道路、これをつくること、これは国策の第一と——あるいは第一とは言わないが重要なる国策の一つだと、かような意味で、これと真剣に取り組むべきだ、こういう御指摘は、私はしごくごもっともだと思います。こういう意味で私どもも、これは衆参両院、超党派と申しますか、ほんとうに意見が一致しておるこれは重要国策でございますので、この立場に立ちましてこの事業の円滑な遂行をいたしたい、かように考えます。もちろん、先ほど来建設大臣等がお答えしておりますように、十分用意もし、その調査にも万全を期し、そうして、いわゆる百年の大計を立てる、こういう立場から取り組んでいきたい、かように考えます。
  268. 青木一男

    青木一男君 それじゃあ、佐藤総理がこの問題の非常な重要性を認識されて、やはり国の重要政策としてこれを取り上げていくのだと、こういうお話を伺いまして、私は満足するものでございます。  それから、私が本来道路は無料であるべきだと言ったのは、これは理想を言うたのでございまして、すぐ無料にせよという意味ではございません。かりに国費で建設したものも、受益者負担の観念で、ある程度の料金は取っても私はよろしい、そうして建設を進めたほうがいいと思うのです。ところが、いまのように、この交通量から採算制をとっていきますと、どうしても非常な高い料金になってしまいまして、せっかく高速道路をつくっても利用が少ないというようなことになっちゃ何にもならない。それでございますから、私は、政府の資金を投入してコストを下げる、全体の投下資本の利率を下げるということを考えるべきだと、こういう意味で申し上げておるわけでございます。  それから道路公債の問題でございますが、一昨年池田総理も、ガソリン税を引き当てとした公債の発行という意味ならば考える必要があるだろうと、こういう答弁をされておるわけです。私も、本年、来年からすぐ道路公債を発行せよという意味質問ではございません。これは、国民の要望する大事業をなし遂げるには、いままでのような財政資金の余りを使ってやっていくということじゃ、何十年たってもこれはできませんよ。いま総理が言われたような重要政策ならば、そのくらいな思い切った政策——公債政策まで踏み切る時期があってよろしいのじゃないかと、こういう意味でございますから、政府においても十分これは検討していただきたい。  それから、いま大蔵大臣から外債の話がございましたが、これも私は歴代大蔵大臣に申し上げておるのでございますが、外債ならば健全財政のワク内だ、内債をやれば健全財政をこわすというような考え方は、私はどうしてもわからない。これは、歴代の大蔵大臣がそういうことを言っておる。その点についても、もっと、この通貨金融に対する影響その他から見て、私は区別がないと思うものでございますから、その点も根本的に御検討を願いたいということをつけ加えておきます。  それから、その次に、この高速道路網をつくる場合に、一番心配になるのは、用地の対策であるわけでございます。高速道路の建設計画と工事の着工との間に期間がありますと、その間に土地の値上がりがするということが、こういう事業の遂行上非常にこれが障害になるわけでございますから、何かここへ特殊な法的措置によって、そういう不当なる値上がりを防止するということが私は必要であると思うのでございます。フランスでは一九六二年に地価の騰貴の抑制と土地の買収手続を簡略にするために法律をつくっておりますが、この法律によりますと、道路計画が最終的に確定しますと、百キロメートル以上の長い道路については国会がきめる、それからそれより短いものは公共事業大臣の承認を得て公益宣言をするという法律なんです。この公益宣言をいたしますると、その土地の値段が凍結される、それ以上高く売ることはできない、また土地の使用も制限されて、結局国に売るほかないという法律でございます。そういうような法律がフランスでは最近できたのでございますが、イタリーにも同じような法律が最近できております。私は、わが国におきましても、この高速道路をなるべく安くあげようとするならば、こういう土地政策についても考える必要があると思うものでございます。その点について、建設大臣のお考えを伺っておきたい。
  269. 小山長規

    国務大臣(小山長規君) 今日までつくりました名神にいたしましても、非常に道路のキロメーター当たりの費用が高過ぎるという非難があるわけであります。したがって、今度かかります東名道路からは、これは新しい方式でいきたいという考えで進んでいるわけでありますが、その内容は、建設前に、土地改良事業とか、あるいは区画整理事業、あるいは新産都市や都市計画事業、そういうものを併用していって、まあ近辺の都市づくりをやっていくという考え方と、もう一つは、区画整理事業を縦横に駆使しまして、そうして両側の広い地域から道路用地を出されるような方式をとりまして、そして区画整理方式をとっていきたい。同時にもう一つは、いままで高架方式でやっておりましたが、高架方式じゃどうしても高くなりますので、そこでこれを、平面高速自動車道路方式といいますか、低くとりまして、農道などがいままでは高架道の下を通っておりましたのを、区画整理によりまして道路を整理して、そして高速自動車道の上を通すというような方式をとりますと、われわれの概算では、名神の場合と比べまして三割ぐらいは用地費、築造費が安くなるんじゃないかというふうに計算をしておりますが、そういうふうにキロメーター当たりの構造費を安くするような方式をとっていくということが一つ。それからもう一つは、やはり道路が通りますところの関係市町村、あるいは商工団体、あるいは農業団体というものの協力があるかないかでずいぶん用地費が違ってまいりますから、そういう方々の協力を得られるような方式を考えていきたい。さらには、ただいまおっしゃいましたような将来はあるいはフランスあたりがとっておりますような公益宣言の方式を検討しなければならぬ時代が来ると思うので、その辺の検討も進めているわけであります。
  270. 青木一男

    青木一男君 ただいま建設大臣は、将来の高速道路を平面を走らせる、こういう御答弁を伺いまして、私満足するものでございます。実は一昨年の二月の予算委員会で私は当時の建設大臣に、高速道路の建設費を安くするためにやはり平面を走らせることにすべきじゃないかという質問を申し上げたのです。当時建設大臣は、趣旨はそのとおりだが、日本の農村の関係その他から見て、日本では実行できないのだという当時御答弁でございますが、ただいま建設大臣は、今後はそういうふうに改めるという御答弁を伺いまして、私もその点は満足いたします。ただ、そういうふうに平面を走りますというと、いまちょっと大臣も触れられましたが、ほかの道路との関係、さらにこの周辺地区における土地の改良事業、あるいは区画整理事業、都市計画事業、そういうものとの関連が一そう必要になってくるのでございまして、道路計画だけを先に進めるわけにまいりません。私は、そういう意味におきましても、ことに市町村に行きますというと、農道、用排水路その他のこまかい問題が、すべて道路のやはり計画の一環としてこれが進行しなければならぬ、したがって府県市町村等の協力を求めることは私は非常に必要になってくると思うのでございますから、これは経済企画庁あたりも、その点について、この高速道路の建設計画及びその遂行にあたっては、国の総合計画としての機能を十分発揮していただきたい、これは私はいまから希望として申し上げまして私の質問を終わります。
  271. 平島敏夫

    委員長平島敏夫君) 青木君の質疑は終了いたしました。  本日はこの程度にいたしまして、明十二日午前十時に委員会を開会いたします。本日はこれにて散会いたします。    午後五時五十四分散会