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国務大臣(
佐藤榮作君) 一月に私が発言いたしましたものには多分に意欲的なものもあるということでございます。したがいまして、半年もすれば景気を上昇の方向に持っていきたい、言いかえますならば、経済を安定基調に乗せることもできるのじゃないか、各界の方々の協力を得て。こういうことを実は念頭に置きながら発言したものでございます。また、今日、それならばそのとおりになっているかどうか、かような見方がございます。少なくとも最近は落ちつきは見せてきておる。したがって、この席でも御議論がありますように、
政府は一体成長に重点を置くのか、安定に重点を置くのか、こういうような
質問まで出るように、この安定成長ということばについてもとやかく言われて、安定成長を言う、その結果は成長を鈍らすのではないか、こういうような疑念まで持たれる。しかし、少なくとも各方面において落ちつきを取り戻しつつあることはいなめない事実である。また、そういう方向が好ましいことであることも
米田さんも御
承知のことだと思います。私は、先ほど来
政府の
責任ということを言われますが、もちろん
政府は全般について
責任を負うのだ、こういうたてまえでいま政治をとっておりますから、そういう
意味の
責任はもちろんある、しかし、個々の会社の、甲の会社が破産したが、その
責任はおまえのものだ、こう言われるとそれはやや無理ではないか。ただそういう観点から、政治のあり方というものについて私が少しく
説明をつけ加えさせていただくならば、今日、一昨年来、経済
金融引き締めをやってきた、そうしてその効果がただいま申し上げるように、先ほど言うように、やや落ちつきをもたらしておる、この
状態がいましばらく続けば、必ず今度は本格的に伸びる形のほうに向かうだろう、かように思いますが、この間に一体どういうことが行なわれてきておるのか。いうならばただいまの
倒産というものをいわゆる景気循環から引き起こされた
倒産と、かように見るのか、同時にまた、この高度経済成長のもたらした構造上の変化、それから出てくる、こういう事業の不振とでもいいますか、そういうものか、これを考えてみたいと思います。私はいわゆる構造の変化と、同時にまた、景気循環、この両方が一緒になって今日の
状態を起こしておると思います。今日まで大企業中心だと、かような言い方をされるのも、大企業は幸いにして科学技術をどんどん取り入れた、しかしながら、
中小企業はなかなか思うように科学技術を取り入れないとか、あるいは労働力を大企業は遠慮会釈なしにどんどん吸収ができた、しかしながら、
中小企業の面においては思うようにいかない、そういうような点がやはり
中小企業の不振を来たしている、そうして、ある見方をすれば、この高度経済成長は大企業中心で、
中小企業が取り残されるもの、こういう見方をされると思いますが、しかし、
中小企業に対しましてはこのおくれを取り返すような、そういう
意味の施策をいろいろやっている。これが金融の面であったり、あるいは税制の面であったり、また、
予算の面であったり、その金額は私は十分だとは申しませんが、それぞれの対策を立てまして、いわゆる
中小企業も大企業並みに
生産性を向上さし得るような、そういう施策をとってきておるわけであります。言いかえますならば、大企業は今日の
状態ならば、
政府はあまり関与しなくともこれはひとり立ちができる、しかし、
中小企業の面ではどうしても
政府の施策、援助がない限り、ただいまのようなおくれを取り返すことができないのだ、かように私は思っておるのであります。ただしばしば私
どもが申し上げますように、最近の経済成長から所得の平準化あるいは賃金の平準化、そういうものが急速に行なわれる、ここらに
一つの足踏みが必要になってきているのじゃないか。最近の傾向などを見ますると、いわゆる所得の平準化あるいは賃金の平準化、それらの声がやや鈍っております。これは私必ずしもいいことだと、かように申すわけではございませんが、今日の大企業あるいは
中小企業のあり方から見まして、あるいはまた、農業のあり方から見まして、ただいま急速にその点を主張すると、今日のような破綻、そういう
意味の格差がまた逆に生ずるだろう、かように思いますので、とにかくこの際は経済を安定基調に乗せる、そしてことに弱い面については
政府の施策を積極的に展開することだ、だからそういう
意味で今度は逆に
政府のやる安定成長というものは成長部門に対して力をかさないのじゃないか、だから安定の方向に重点を置いているのじゃないか、かような
質問まで生じますが、ただいまの
状況では落ちつかし、また安定、そういう基調にのぼせる、そうして弱いものに対しては先ほど来
お話がありますごとく、
政府が積極的な援助
政策を実行する、そうして初めて均衡のとれた調和のとれた社会的発展になる。ここをねらっていかないといけないのじゃないか、かように私は考えるのであります。いわゆるそれが政治の部門である、純経済の部門ではなく、
中小企業や農業の問題は、これは政治の部門だ、かように申し上げているのも、ただいまのような点に考慮を払っているからであります。私はいずれにいたしましても、今日
中小企業あるいは
お話の中にはただいま触れていらっしゃいませんけれ
ども、農業等おくれておる部門、ことに力の弱いもの、こういうものに対しては
政府の積極的施策こそ必要な望ましい姿である、かように考える次第でございます。