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1965-01-25 第48回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年一月二十五日(月曜日)    午後三時四分開議     —————————————議事日程 第二号   昭和四十年一月二十五日    午後三時開議  第一 国務大臣演説に関する件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  一、故議員牛田寛君に対し弔詞贈呈の件  一、故議員牛田寛君に対する追悼の辞  一、請暇の件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件     —————————————
  2. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 諸般の報告は、朗読を省略いたします。      ——————————
  3. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) これより本日の会議を開きます。  議員牛田寛君は、去る十日逝去せられました。まことに痛惜哀悼の至りにたえません。  同君に対しましては、すでに弔詞を贈呈いたしました。  ここに、その弔詞を朗読いたします。    〔総員起立〕  参議院議員牛田寛君の長逝に対しましてつつしんで哀悼の意を表しうやうやしく弔詞をささげます      ——————————
  4. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 温水三郎君から発言を求められております。この際、発言を許します。温水三郎君。    〔温水三郎登壇拍手
  5. 温水三郎

    温水三郎君 議員一同を代表いたしまして、故牛田寛議員に対し、弔詞を呈したいと存じます。  公明党議員牛田寛君は、去る一月十日、満四十九歳の若さで逝去されました。同僚議員として、まことに痛惜のきわみであります。  牛田君は、大正四年四月二十二日東京市に生まれ、現横浜国立大学の前身である横浜高等工業学校機械工学科を卒業、株式会社東京計器製作所に入り、機械工業の実務に携わりつつ技術理論を研究され、昭和二十二年七月、都立機械工業専門学校教授となり、同二十四年四月、都立大学工学部の講師となられたのであります。しかして、去る三十四年の第五回参議院議員通常選挙にあたり、全国区より立候補、本院議員として議席を得られたのであります。  当選後は、逓信委員商工委員会理事科学技術振興対策特別委員会理事を経て、農林水産委員法務委員となり、後に大蔵委員となられましたが、病のため出席不可能のまま他界されたのであります。  この間、昭和三十八年の北陸・新潟地方等雪害の際には、公明会を代表して実情を調査し、雪害対策推進努力され、また、昨年の新潟大震災の際にも、急遽現地におもむいて被災者救援活動に当たられました。また、農林水産委員会におきましては、輸入原糖の割り当てをめぐる砂糖問題の審議に、ドミニカ移住者の救済、移民行政推進に、さらに、さきの第四十六回国会におきましては、食料品総合小売市場管理会法案等の質疑に活躍されるなど、常に卓見をもって法案審議と国政の推進に当たられたのでありますが、いまはすべて過去の思い出となったのであります。  牛田君は、その性質きわめて温厚な政治家でありましたが、他面、政治理念としては、議会民主政治に基づいて、全世界の恒久的平和と、人類福祉のために、不正を憎み、是を是として譲らない信念の持ち主であったのでありまして、このような若い政治家を失ったことは、まことに惜しい限りであります。  なお、牛田君の生命を奪ったものはガンであります。同君自身科学技術振興対策委員でありましたが、わが国科学技術が、一刻も早く、ガン早期発見と、その治療の方法を確立することを、期待してやまないのであります。  ここに牛田君の霊に対し、つつしんで弔意を表し、心からその御冥福を祈り、あわせて御遺族の皆様の御多幸をお祈り申し上げる次第であります。(拍手)      ——————————
  6. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) この際、おはかりいたします。  赤松常子君から、病気のため五十四日間請暇の申し出がございました。これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。よって許可することに決しました。      ——————————
  8. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 日程第一、国務大臣演説に関する件。  内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、大蔵大臣から財政に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。佐藤内閣総理大臣。    〔国務大臣佐藤榮作登壇拍手
  9. 佐藤榮作

    国務大臣(佐藤榮作君) 施政方針を申し述べるに先立ち、一言、チャーチル英国元首相の逝去に対し、哀悼の意を表したいと思います。  チャーチル氏は、二十世紀の傑出した政治家として、英国民のみならず、世界の尊敬と親愛を一身に集めてこられました。私は、チャーチル氏のその歴史的生涯を終えられましたことに対し、ここに、国民の皆さまとともに、心から御冥福を祈りたいと思います。    〔拍手〕  第四十八回通常国会の再開に際し、当面する内外の諸問題について、政府の所信を率直に申し述べたいと存じます。  私は、先般訪米し、ジョンソン大統領はじめ米国の指導者と国際情勢一般について忌憚ない意見の交換を行ないました。世界の平和維持のためには、アジアの安定が重要であることを強調し、平和に徹する精神のもと、民生の安定と生活水準の向上を通じて、アジア諸国民の福祉増進に貢献しようとするわが国の方針を説明し、米国側も賛意を表しました。また、わが国の安全の確保がアジアの平和維持に不可欠であるとの確信のもとに、日米安全保障条約体制を今後とも堅持することを再確認いたしました。中国問題については、それぞれの立場に立って意見の交換を行ない、今後情勢の重要な変化に応じて、常に緊密な連絡をとりつつ話し合っていくことに、意見の一致を見ました。さらに、沖繩、小笠原諸島の施政権の返還が日本国民の熾烈な願望であることを強く主張しました。特に、沖繩については、日米協議委員会の権限を拡大し、今後は、経済援助の問題にとどまらず、住民福祉の向上のための諸問題についても協議することといたしました。また、小笠原島民代表の墓参については、好意的に検討する旨の確約を得ました。私は、米国が従来にましてアジアの問題について深い関心を持ち、解決への努力を行なおうとしているとの強い印象を受けたのであります。また、米国当局者の態度から、相互の立場と国家利益を十分尊重しつつ、世界平和の達成のために協力し、同町に、日米間の懸案事項の解決に当たろうとする強い意欲を感じました。単に抽象的な問題についてではなく、切実な個々の問題につき、具体的に、胸襟を開いて話し合いを進めたことが、成果をあげることができたゆえんであると信じます。(拍手)私は、今回の会談を通じて日米関係は新しい発展段階を迎えたものと信じて疑いません。  今日のアジアは、紛争が各地において継続しているのみならず、地域内には開発途上にある諸国が多数存するなど、世界の悩みを集約している感があります。アジアの安定を確保するためには、まずアジア諸国民の健全な民族的願望を理解し、その上に立って、これら諸国の政治的不安の除去につとめ、その社会的、経済的発展を助長することが肝要であります。アジアにあって、自由民主主義体制のもとに高度の経済成長をなし遂げたわが国は、ともすれば自由民主主義に対する自信を喪失しがちなアジアの諸国民に対し好個の模範を示してきたのでありますが、今後は、さらにアジアの緊張緩和と平和的建設に寄与すべき使命と責任の重大さを深く感ずるものであります。したがって、わが国は、アジア諸国民との接触を一そう密にし、相互の理解の増進につとめねばなりません。このため、私は、機会を見て東南アジアの諸国を訪問し、各国首脳との接触を深めるとともに、経済技術協力等につき積極的な話し合いを進めたいと思います。なお、工業、農業等の技術を身につけた青少年が、東南アジア等開発途上にある国々の青少年と起居をともにし、ともに働きつつ理解を深め合い、親善の実をあげることは、意義深いと考え、これら青少年の派遣準備を進めております。  現在の国際政治において、中国問題の占める重要性がきわめて大きいことは多言を要しません。特に中国とは、歴史的にも地理的にも近いわが国にとっては、この問題は、影響の大きな重要な問題であります。したがって、わが国としては、いたずらに結論を急ぐことなく、自主的な観点から慎重に対処すべきであると信ずるのであります。現在の段階においては、わが国は、正規の外交関係を有している中華民国との友好関係を維持しつつ、中共に対しては、政経分離の基本方針に立って、経済及び文化面での交流を促進していきたいと考えます。  韓国との国交を正常化し、両国間に善隣友好関係を確立することは、きわめて重要であります。諸懸案の解決に当たり、両国は、両国国民大多数の支持を得られる方向で互いに歩み寄りをはからねばならないと考えます。私は、大局的見地に立って、多年にわたる交渉を早期に妥結させるため、最善の努力を傾注する決意であります。  先般、コスイギン・ソ連首相から個人的接触を希望する趣旨の書簡を受領しましたが、私は、機会があればその招請に応じ、両国の親善を深めるとともに、国際情勢及び当面の諸案件につき、腹蔵のない意見の交換を行ないたいと考えます。ソ連が今後ますます日ソ諸懸案の解決について、積極的かつ具体的な態度を示してくることを望むものであります。また、現在まで未解決のまま残されている北方領土問題については、今後もあらゆる機会をとらえてソ連との間に話し合いを進める所存であります。  私は、今回の訪米中、ウ・タント国連事務総長と親しく会談の機会を得ました。世界が多元的な傾向を示しつつある今日、諸国の行動を調和するための中心となる国際連合の果たすべき役割りは、きわめて大なるものがあります。創設後二十年に当たる本年、国際連合は、重大な試練にさらされております。インドネシアの国連脱退は、国連史上初の事件であり、まことに遺憾であるといわねばなりません。国際連合の権威と機能を高めるため、積極的に貢献することは、わが国外交の基本であります。私は、ウ・タント事務総長に対し、国際連合の強化につき、日本が全面的に協力していくことを話し合ってまいりました。  私は、自由と正義を基調とした世界平和の確立と維持を最高の目標としつつ、自主外交を推進し、わが国の安全と国家利益を十分に追求していく考えであります。もとより、私の求める国家利益は、あくまで世界平和と結びつき、国際協調を基礎とするものであります。私は、国際社会においてわが国の正しい利益を堂々と主張するとともに、向上した国際的地位にふさわしい責任を果たしていきたいと存じます。(拍手)  一昨年以来、政府は、国際収支の改善と物価の安定をはかるため、経済を引き締め基調で運営してきましたが、その効果は、漸次各分野に浸透し、国際収支は改善の方向に向かい、国内経済も落ちつきを取り戻してきました。しかし、この間、経済構造の変化に景気の調整が重なり合って、企業倒産の増加など、憂慮すべき現象が生じております。一方、消費者物価は、なお騰勢気配を続けており、また、今後の国際経済の動向については、昨年のような飛躍的な拡大を期待することはむずかしく、国際収支の見通しは、必ずしも楽観を許しません。政府は、このような内外の情勢に対処し、弾力的、機動的な配慮を払いつつ、健全にして慎重な経済運営を行ない、経済構造の変化に適応し得る能力を充実するための施策を推進する所存であります。  政府は、中期経済計画を基本として、長期的な経済運営をはかりたいと考えます。昭和四十年度については、政府民間相携えて努力すれば、わが国経済は、実質七・五パーセント程度の安定した成長を達成し、国際収支の均衡を保つとともに、消費者物価についても、逐次、安定の方向に向かうことを期待できると信じます。  開放経済体制へ移行した今日、わが国経済の安定した成長を確保していくためには、産業の国際競争力を強化し、輸出の伸長をはかることが、ますます緊要な課題となっております。政府は、対外経済交渉の推進、海外市場調査網の充実をはかって輸出環境の整備につとめる一方、財政、金融、税制の各般にわたって、輸出振興施策を強化いたします。また、開発途上にある諸国、特に東南アジア諸国の健全な発展に寄与するため、一次産品の調査開発及び買い付けにつとめるとともに、延べ払い信用供与を推進するなど、これら諸国に対する経済協力施策を拡充いたします。なお、輸出振興及び経済協力の重要性にかんがみ、新たに通商産業省に貿易振興局を設けるなど機構を強化する所存であります。また、輸出入物資の安定した輸送を確保し、貿易外国際収支の改善をはかるため、外航船舶の増強につとめたいと存じます。  消費者物価の安定をはかることは、当面の最も重要な課題であり、政府は、本問題解決のため、格段の努力をいたす決意であります。  わが国の消費者物価は、三十五年以降上昇を続け、経済の調整期においても依然騰勢を持続しております。これは、近年の高度成長過程における消費需要の堅調な伸びがその一因でありますが、生産性の格差が存在する中で、賃金、所得の平準化が急速に行なわれ、それが原価を押し上げ、消費者物価の上昇を招くという、構造的要因によるところも大きいと考えられます。  したがって、物価対策としては、経済を安定基調に導くことが肝要であります。このため、四十年度予算の編成にあたっては、重点施策について十分な配慮をいたしつつも、極力、規模の圧縮をはかり、健全均衡財政を堅持することといたしましたが、さらに金融面においても、慎重かつ弾力的な運営を行なうなど、総需要を適切に調整してまいります。また、農業、中小企業サービス業など生産性の低い部門の近代化、流通機構の合理化、労働力の流動化などの構造対策を推進するとともに、公正な価格形成のための条件整備、生活必需物資の円滑な供給等をはかり、さらに地価の安定について、根本的な対策の検討を進めたいと考えます。  公共料金等については、最近、米価、医療費、バス料金等の最小限度の値上げを認めましたが、これらは、いずれも自由経済のもとに、それぞれの分野における正常な運営を確保するため、やむを得ずとった措置であります。したがって、国鉄運賃その他の公共料金については、慎重な態度で、値上げの抑制につとめてまいります。  なお、政府は、消費の健全化をはかるため、消費者教育の充実、消費者保護行政の拡充等の施策を推進する所存でありますが、国民各位においても、健全な消費活動を通じて物価安定に協力されんことを望む次第であります。  金融政策については、さきに、公定歩合の引き下げを行ない、引き締め政策の緩和をはかったのでありますが、きびしい国際経済の現状にかんがみ、今後再び経済に行き過ぎを生ずることのないよう、引き続き慎重な運営を行なうことを適当と考えます。もとより、中小企業に対する金融の円滑化、重要な産業資金の確保などにつきましては、今後とも十分な配慮を行なってまいりたいと思います。さらに、経済情勢が落ちつきを示している現在、産業界、金融界の努力と相まって、多年の懸案である金融正常化の実現及び資本市場の育成を逐次はかってまいる考えであります。  最近における国民負担の現状及び経済情勢の推移にかんがみ、所得税、法人税を中心として平年度総額一千二百四十億円に及ぶ一般的減税を実施いたします。この際、特に低額所得者の負担軽減に配慮し、標準世帯の勤労所得につき、従来その免税点が約四十八万五千円であったのを、今回の改正で約五十六万四千円に引き上げました。さらに、企業の体質改善、国際競争力の強化に資するため、法人税率の軽減を中心とずる企業減税にも格段の配意をいたしました。なお、今後も引き続き税負担の軽減をはかるため、財政事情の許す限り減税を検討してまいります。  経済社会の安定した繁栄のもとに、国民ひとしく豊かな生活を享受する高度の文明社会の建設こそ、政治の理想であり、われわれに与えられた歴史的課題であります。私は、この課題にこたえるため、民族のたくましい発展力を生かしつつ、経済成長の成果が国民の真の福祉と結びつくよう、社会開発を積極的に推進することを政策の基本といたします。  このため、来年度予算においては、特に、住宅、生活環境施設の整備、公害の防止、地域開発の促進につとめるとともに、社会保障の拡充、人的能力の向上、教育の振興、交通事故の防止等の施策を推進し、また、農業、中小企業の近代化をはかってまいります。さらに、長期的見地に立って、社会開発に関する各界有識者の意見を求めた上、総合的な対策を強力に推し進めたいと存じます。  住宅対策については、低額所得者及び都市勤労者に重点を置いて賃貸住宅を供給いたします。さらに、主として中堅勤労者を対象に、「いこい」と「やすらぎ」の城ともいうべき持ち家への夢を実現さすべく住宅供給公社を設立して、持ち家建設のための資金の計画的な積み立てと住宅の供給を行なわせる考えであります。なお、近年の宅地需給の不均衡は、国民の住生活を圧迫し、健全な市街地形成の障害となっていますが、政府は、特に宅地難の著しい大都市周辺において、大規模かつ計画的な宅地の開発供給をはかるとともに、建設省に宅地部を新設する等、機構の整備を行なう決意であります。  生活環境施設については、上下水道及び清掃施設の整備を促進するとともに、産業の発達等に伴う公害の発生を防止するため、新たに公害防止事業団を発足させる等、対策を強化し、住みよい町づくりにつとめてまいります。  わが国の大都市は、いまや、集中の利益よりも過密の弊害が顕著となり、一方、地域格差は、引き続き拡大する傾向にあります。政府は、各地域の均衡ある発展をはかるため、新産業都市工業整備特別地域の整備並びに山村、離島その他の未開発地域の開発などの施策を講ずるとともに、産業、文化、人口等の大都市への集中の抑制と地方への分散をはかるよう、研究学園都市を設ける等、総合的な過密都市対策を確立したいと考えます。  国土の総合的開発効率的利用をはかるため、治山治水及び港湾事業について、新たに総額一兆九千億円に及ぶ五カ年計画を策定し、他方、特に国民生活に密接な関連のある道路の舗装を、四十三年度までに約五万キロメートル施行して、舗装率を現在の二倍以上に高める等、道路の抜本的な整備を行なうことといたします。  政府は、農林漁業の近代化をはかるため、生産の維持増強、構造改善、農林水産物の価格安定及び流通合理化等の施策を強化いたします。特に、自立農家を育成するため、農地管理事業団を設立して、経営規模の拡大をはかるとともに、生産の基礎である圃場、林道、漁港等の整備を推進いたします。また、酪農の振興、野菜供給の安定的増大をはかるための施策を拡充し、さらに、中央卸売市場の整備、食料品総合小売市場の設置等によって、流通機構の合理化を促進し、農業所得の増大と国民消費生活の安定向上を期する決意であります。  中小企業については、税負担の軽減に特段の配意をいたすほか、財政資金の確保を通じ、設備の近代化、事業の共同化をはかるとともに、経営の合理化、技術水準の向上のための施策を講じます。また、小規模企業については、特に配慮し、新たに共済事業団を設けるとともに、担保も保証人も得がたい小規模零細業者に対し、簡易な信用保証を通じて金融の円滑化に資する制度を創設する等、経営の安定とその従事者の生活の向上をはかるための施策を画期的に拡充する考えであります。(拍手)さらに、金融については、特に、黒字倒産、連鎖倒産の防止に重点を置き、弾力的な措置と下請取引適正化対策を適時適切に講じてまいります。  社会保障については、国民皆保険、皆年金の制度が実施され、逐年着実な前進を続けておりますが、なお、制度間に不均衡が存する等、改善充実を要する点が少なくありません。政府は、均衡のとれた社会保障制度の整備を目標に、長期的な観点に立って社会保障の充実をはかる所存であります。所得保障については、国民の生活水準の向上に見合い、厚生年金保険老齢年金額を画期的に引き上げるとともに、福祉年金の改善、生活保護基準引き上げ等を実施いたします。医療保障については、国民健康保険の世帯員七割給付の年次計画を推進する一方、医療保険の財政の健全化をはかりたいと存じます。また、児童、母子、老人、心身障害者等の福祉の向上につとめ、さらに、児童手当の実現についても検討を進めたいと考えております。特に、日本の未来をになう児童とその母親に対しては、あたたかい配慮が必要であります。このため、総合的な母子保健対策を推進し、低所得層の妊産婦と乳幼児に対し無料でミルクを支給するとともに、保育所の画期的な整備拡充を強力に進めてまいります。  経済の長期的な発展をはかり、完全雇用を達成するためには、人的能力を開発向上させ、それを有効適切に活用することが重要な課題であります。政府は、地域別産業別の雇用に関する計画を策定して、労働力の適正な流動化をはかり、中高年齢層労働者の雇用促進、中小企業の労働力の確保を期するとともに、技能労働者の養成確保と技能水準の向上につとめるなど、積極的な雇用対策を推進いたします。  また、勤労者の生活の長期的な安定をはかる見地から、勤労者が、住宅、貯蓄等の財産を形成することのできる施策を検討し、わが国の実情に適するものから逐次実施していきたいと考えます。  近年、社会の一部に、安易な享楽的風潮が見られ、また、青少年の非行が増加するなど憂慮すべきものがあります。私は、青少年諸君が、未来に連なる人間像を心に描きつつ、世界の中の日本人となり得るよう力強い努力を続けることを心から期待します。(拍手)政府は、このため必要な諸条件を整え、適切な指導を行なうことこそ文教の基本であると考え、家庭教育、道徳教育の強化、育英奨学の拡大及び勤労青少年教育の推進につとめ、さらに義務教育費の父兄負担の軽減について一そう努力いたします。なお、民族の原動力であるたくましい体力と気力を養うため、体育、スポーツの普及奨励、青年の家の建設等の施策を講じてまいります。また、現代は技術革新の時代であります。政府は、長期的視野に立って、原子力の平和利用や宇宙開発などの科学技術の振興、優秀な科学技術者の確保とその処遇の改善をはかってまいります。  暴力の存在は、国民生活に暗い影を投げかけております。私は、社会のあらゆる階層に暴力排除の気風を醸成するとともに、暴力組織の根絶をはかり、もって明るい社会の建設につとめる覚悟であります。  昨年中の交通事故による死者の数は、戦後最高を示しました。交通事故は、今や個人の不幸をこえて、大きな社会問題となっております。寸時も放置できません。私は、交通安全教育の徹底、道路環境の急速な整備等、具体的施策の推進に格段の努力をいたすとともに、広く、国民諸君の協力を求めるため、交通安全国民会議を開催して、本問題の解決に真正面から取り組む決意であります。  子供たちが何の危険もなく、明るく伸び伸びと育つことができる社会、青年が未来に対して夢と希望を持ち、その知恵と力を正しく発揮できる社会、そして老人がいたわられ、豊かな知識と経験を公共のために生かすことができる社会、このような、希望にあふれ、平和で住みよい社会の実現に向かって、私は国民諸君とともに全力を尽くしたいと存じます。(拍手)  ILO八十七号条約について、その早期批准を期する政府の方針には変わりなく、一日も早く関係案件の成立をはかり、多年の懸案であるこの問題に終止符を打ちたいと考えます。  今日、労働運動は、全体的には正常化の方向をたどりつつありますが、私は、この際、労使双方に対し、国民経済的見地に立った話し合いによる問題の合理的処理を一そう期待するとともに、その機運の醸成につとめたいと存じます。(拍手)  私は、公務員諸君が、その職務に専念し、国民全体の奉仕者として、その職責を果たすことを強く希望いたします。また、行政制度全般に検討を加え、臨時行政調査会の意見の趣旨を尊重して、実施可能の部門から行政の改革を逐次実現したいと存じます。  議会政治のよき伝統をつくることは、民主政治の基盤であります。私は、政治に対する信頼を高めるとともに、わが国の繁栄と国民の福祉を願う共通の立場に立って、野党各派との建設的な話し合いを進めていきたいと考えます。  選挙区制等、選挙制度の基本については、選挙制度審議会の答申を待って改正措置を講ずる考えであります。また、選挙度制の改正とあわせて民間団体と協力して公明選挙運動を強力に推進し、特に、来たる参議院議員通常選挙につき、真に公明化の実をあげるよう努力いたします。  地方自治の確立は、国勢進展の基礎であります。私は、地方自治を尊重し、その充実強化をはかるとともに、国と地方公共団体との間における協力関係を一そう緊密にしてまいりたいと考えております。  戦後二十年、われわれは、かつて経験したことのないきびしい歴史的な試練にともに耐え、それに打ちかってまいりました。二十年前、われわれは、廃墟の中で、その日その日の暮らしに追われたのでありますが、二十年後のいま、われわれは、明日の日本を思うべきであります。いまこそ、日本国民として、ともに苦しみ、ともに喜ぶ新しい連帯のきずなを、お互いの心の中につくり上げ、新しい日本の進路を確立すべきときであります。(拍手)  愛するに足る祖国は、国民一人一人がその責任を自覚し、努力することによってつくられるものであります。日本の未来は、他から与えられるものではなく、営々たる汗と力によって、みずからの手で切り開くべきであります。日本の現状は、国民に対して新しい愛国心の喚起を期待しております。わが国のすぐれた伝統と文化を愛し、繁栄と進歩に貢献し、世界の平和と人類の福祉を願う心こそ、真の愛国心であります。国民が、社会や国家に対する責任感や使命感を失い、建設への気魄と向上への意欲に欠けるときは、社会の沈滞と国運の衰退は免れません。経済の危機よりも、さらに恐るべきは、精神力の欠如であります。  一国の真の偉大さは、国土の大小によってきまるものではありません。わが国の国土は狭く、かつ、天然の資源にも恵まれていませんが、豊かな創造力と旺盛な勤勉の意欲に満ちた国民が、その力に強い自信を持ち、決意を新たにして事に当たれば、若い日本は限りない繁栄の可能性を蔵しております。  私は、国民諸君と手を携えて、わが国に、人間尊重の精神に裏づけられた高度の文明社会を築き上げるため、こん身の努力を注ぐことを誓うものであります。(拍手)     —————————————
  10. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 椎名外務大臣。    〔国務大臣椎名悦三郎君登壇拍手
  11. 椎名悦三郎

    国務大臣(椎名悦三郎君) 現下の国際情勢と、これに対処すべきわが国外交のあり方について、所信を申し述べたいと存じます。  今日の世界においては、依然、東西間の対立という基本情勢は変わっておりませんが、この間にあって、東西いずれの側においても、各国がそれぞれ自主的主張を強め、いわゆる分極化、多元化の傾向が生じてきております。また、開発途上諸国と先進工業諸国との間のいわゆる南北問題も深刻化し、今日の世界における一つの不安定要素を形成しております。  一九六五年を迎えた世界情勢は、このように多元化した東西関係と深刻化した南北関係が相互にからみ合って、きわめて複雑かつ流動的であります。このような国際情勢もとにおいて、あくまで自由と正義に基づく世界平和を求めつつ、同時に民族利益増進をはからなければならないわが国外交の任務は、ますます重大となってまいりました。  世界の平和は、一つであり、これを分割することはできません。同じく世界の繁栄も、一つであって、分割することができません。しかも、今日の世界平和は、米ソ二大国のみの動向に左右されるものではなくなったのであります。また、貧困に悩む諸国が存する限り、世界の安定は実現できないのであります。世界の平和と繁栄を実現するためには、各国がそれぞれの国力と国際的地位にふさわしい貢献をしなければならないのであります。  わが国は、世界の平和の中に日本の平和を見出し、世界の繁栄の中に日本の繁栄を見出さなければなりません。いまや戦後二十年、わが国は増大した国力を背景として、国際社会において、正しい権利、利益は、これを堂々と主張し、確保しなければなりませんが、同時に、世界全体の平和と繁  栄のために、向上した国際的地位にふさわしい責任を果たさなければなりません。私は、このような認識のもとに、世界平和の維持確立を最高目標としつつ、積極的に自主外交推進してまいりたいと存じます。そのためには、われわれは、複雑かつ流動的な国際情勢の現実を冷静に認識しつつ、自由陣営の一員としての、また、アジアの一国としての立場に立って、真の世界平和を確立するための方途を真剣にさがし求めて行かなければならないと存じます。  このたび、佐藤総理が訪米いたし、ジョンソン大統領会談を行ないましたのも、わが国の安全と繁栄にとって重要な米国との関係をますます緊密化するためでありました。その際、大統領は、わが国の安全を確保することがアジアの安定と平和に不可欠であるとの確信に基づき、外部からのいかなる武力攻撃に対しても日本を防衛するとの米国決意を再確認されました。わが国にとって当然のこととはいいながら、まことに心強い限りであります。この会談において、沖繩問題、経済問題等、日米間の重要な問題についても討議されたことはもちろんでありますが、より重要なことは、国際情勢一般について忌憚ない意見交換を行ない、相互理解を一そう深め得たことであります。さらに日米両国首脳は、日米両国が信条と目的とを共通にする盟邦として、単に両国関係にとどまらず、世界全体の平和と繁栄のために今後一そう緊密な協力を行なうべきことを確認いたしました。これは、日米間に新しい重要な局面を開いたものでありまして、このように日米間の協力関係が従来よりも一そう高い次元において、ますます強化されつつあることは、まことに意義深い次第であります。  また、流動する現下の国際情勢もとにおいて、西欧諸国の動向はきわめて重要でありますので、わが国が自由世界の有力な一員として外交政策推進するにあたっては、西欧諸国との間にも十分な意思疎通をはかる必要があると考えます。私は、このような観点から、西欧諸国との友好関係を一そう緊密化すべく努力する考えであります。私は、日米首脳会談に列席した後、第三回日英定期協議のため英国におもむき、ウィルソン首相はじめ英政府指導者と有益な意見交換を行ないました。今後おりを見て、フランス、ドイツ等との定期協議も実施する予定であります。  最近アジアにおいて、国際的緊張と対立がとみに高まるような現象が見られることは遺憾であります。同じアジアに位置するわが国として、重大な関心を抱かざるを得ません。わが国がかかる緊張を緩和し、平和への脅威を除くために勢力することは、単にわが国の安全と繁栄のためばかりでなく、世界の平和に貢献するゆえんでもあります。このためわが国は、アジア国民願望に深い理解と同情を寄せ、その直面する困難の克服に率先協力して、これら諸国の安定と進歩に寄与するよう一段の努力をなすべきものと考えます。かかる使命の遂行にあたっては、アジアにおけるわが国独自の立場を十分に生かして、これら諸国との間に、経済協力はもちろん、あらゆる分野にわたって、相互理解基礎とする永続的な親交関係をつくり上げるよう努めるべきであると信じます。  アジアにおける恒久的平和を確立するためには、中国問題の解決がきわめて重要であります。特にわが国としては、中国とは歴史的、地理的にきわめて密接かつ特殊な関係にありますので、とりわけ真剣かつ慎重な態度をもってこの問題を取り扱う必要があります。わが国が正式な外交関係を有している中華民国政府友好関係維持していくことは申すまでもありません。同時に、中国大陸とは従来どおり民間における貿易及び文化面での交流を進めていく考えであります。そして世界情勢の推移を見きわめつつ、アジアに平和と安定をもたらし、ひいては世界平和の樹立に貢献する方向に沿って、中国問題に対処してまいる所存であります。  日韓国交正常化のための交渉について、政府は、相互理解と互譲の精神に基づき、その早期妥結をはかる方針をとってきております。昨年十二月に再開された第七次全面会談においては、漁業問題を中心として、基本関係及び在日韓国人の法的地位の問題について鋭意討議が進められておる次第であります。交渉妥結の機運は盛り上がっており、双方が、日韓関係の正常化両国のためのみならず、アジアの繁栄と平和のために有する意義を意識しつつ、相互理解と決断をもって交渉に当たるならば、交渉は遠からず妥結するものと期待しております。私は、近く韓国を訪問する予定であります。私はこの訪問が、両国間の友好親善関係を増進する上に役立つよう微力を尽くす所存であります。  昨今ベトナムの政情と治安はとみに困難の度を加え、ベトナム国民の窮状にはまことに同情すべきものがあります。また、インドネシアとマレーシアの紛争は、依然として平和的解決の機運に立ち至っておりません。しかもインドネシアは、マレーシアが安全保障理事会理事国に今回選出されたのを契機として、国連脱退の挙に出るという不幸な事態も生じております。わが国は、このような東南アジア地域の緊張を深く憂慮し、事態の鎮静化を強く望むものであります。わが国がマレーシア紛争の平和的解決のため累次側面的協力を行なったのも、また、スカルノ大統領に国連脱退決意を再考するよう要請したのも、かかる考慮から出たものであります。  最近、中近東及びアフリカの新興独立国はその国際的発言力を著しく強化してまいりました。これらの諸国はいずれもわが国に大きな期待を寄せておりますので、政府としては、これら諸国との友好関係増進に一段と努力する所存であります。  また、近年著しい発展を示している中南米諸国との関係は、政治経済、移住の各面において、ますます密接になってきております。政府としては、これらの諸国との伝統的な友好関係を一段と増進したいと存じます。  ソ連の新政権は、いわゆる平和共存を基調とする従来の外交政策を変更せず、わが国とも友好関係増進していきたいとの態度を示しており、昨年末の佐藤総理あてコスイギン首相の親書にもその旨が述べられております。わが国としても、日ソ間の諸懸案解決すべく積極的に取り組んでいく考えてあります。  本年は、国際連合成立二十周年という記念すべき年に当たります。しかし、この意義深い年は、国際連合平和維持活動のあり方についての加盟国間の意見の対立と、インドネシアの脱退という、二つの不幸な事件をもって始まったのであります。わが国としては、このような対立が解消され、第十九回総会が現在の変則的な状態より脱して、一日も早く実質的審議を開始することを希望してやみません。また、インドネシアの脱退が国際連合の危機につながることなく、かえってこの事件を契機として、すべての加盟国が国際連合創立の理念を再確認いたし、国際連合強化のために新たな決意と団結を固めるよう、衷心希望いたす次第であります。  国際連合が、加盟国の増加と世界情勢の推移に応じて、漸次その機構を改革すべきことは当然であります。国際連合は過去十年以上にわたってこのための努力を行なってまいりましたが、前総会において決議されました安全保障理事会及び経済社会理事会の議席増加を目的とする国連憲章の改正は、まさに、その努力が最初に結実したものであると言えましょう。政府としては、本国会が、この憲章改正の批准につき、できるだけ早く承認されるよう希望する次第であります。  今次国連総会が、昨年末、国連貿易開発会議機構に関する決議を満場一致で採択した結果、いよいよ本年より同会議及びその下部機構を通じて、国際経済面における南北問題の解決への努力が本格的に行なわれることとなりました。開発途上にある諸国経済の安定と繁栄は、その政治的安定に不可欠のものであり、それなくしては、先進諸国の繁栄も不可能であります。今日主要先進国が一致して南北問題に積極的に取り組む姿勢を示しておりますのも、かかる基本的認識に基づくものであります。  このような観点より、政府は、開発途上諸国、特にアジア諸国に対する経済協力を積極的に推進したいと考えております。政府としては、内外の要請を十分勘案して、目先の利益のみにとらわれることなく、世界の平和と繁栄という広い視野に立って、経済協力の一そうの拡充をはかりたいと考えております。  開発途上諸国は、開発所要資金とともに、開発に不可欠な人的資源と技術にも不足しております。わが国アジア諸国との間には、地理的、民族的、歴史的に親近感と連帯感が存在いたしますので、わが国は、この分野において独自の貢献を行ない得る立場にあるのであります。政府は、このような認識に基づきまして、今日まで積極的に技術協力推進してまいりました。本年はその規模をさらに拡大するとともに、新たに青年海外協力隊の派遣、職業訓練センターの設置等を予定しており、アジア中心とする開発途上諸国における人つくりに一そう貢献できるとの期待を持っておる次第であります。  これらの経済技術援助と関連して、政府は、さらに、従来より海外移住について積極的に各種の援助措置を講じております。これは、海外移住が、国際的に発展しようとする日本民族の将来にとって、きわめて高い意義を持つという認識に基づくものであります。また、開発途上にある諸国へのわが国民の移住そのものが、農業技術中小企業等の分野においてこれら諸国に対する協力推進する結果になるのでございます。この見地からも、政府としましては、今後とも移住の振興に一段の努力を払いたいと存じます。  国際経済の面においては、昨年は世界貿易の飛躍的拡大を期するガット関税一括引き下げ交渉、いわゆるケネディ・ラウンドを初め、国連貿易開発会議などきわめて多彩な動きのあった年であります。また、わが国にとりましても、昨年は、IMF八条国への移行、OECDへの正式加盟等を通じ、国際経済社会において先進工業国としての地位を確立した意味深い年でありました。同時に、わが国は、世界における有数な先進工業国として、世界経済全体に対する責務も加重されてきたことを知らねばなりません。  私は、世界経済の繁栄なくしてはわが国の繁栄もあり得ないという国際協調の観念に立脚しつつ、ケネディ・ラウンド等、多角的協議の場を通じ、あるいは二国間交渉を通じまして、わが国立場を十分に主張し、あらゆる機会を利用して積極的に貿易の伸長をはかっていきたいと考えます。また、依然として残っているわが国に対する差別待遇の撤廃を強く要求する等、わが国の貿易環境改善のためにも一段の努力を傾ける所存であります。共産圏貿易につきましても、自由主義諸国との協調をくずさない範囲において、わが国資金力や国際情勢等を勘案しつつ、できるだけこれを進めていく考えであります。中国大陸との貿易は、いわゆる政経分離の原則のもと発展をはかっていきたいと考えております。  全世界にわたり民主主義が高揚し、世論の力が強まりつつあるこの時代には、各国との政治経済関係をより密接にし円滑に推進するためにも、これら諸国民わが国に対する理解を深め、友好感情を醸成することがますます必要となっております。かかる観点から政府は、諸外国に対するわが国の広報文化活動を積極的に展開すべく努力してまいり、その成果はかなり見るべきものがあると存じます。わが国としては、今後特にその重点アジア・アフリカ諸国に指向いたし、留学生の招致、諸外国の大学における日本学科の設置など、これら諸国教育と結びついた文化協力推進努力いたしたい所存であります。他方、近年わが国とヨーロッパとの結びつきがますます強まってきたことにかんがみ、本年秋におきまして歌舞伎を文化使節として初めてヨーロッパへ派遣することになっております。このようにして、伝統ある日本古典演劇の精髄を紹介することは、日本固有の文化に対する認識と評価を高めるのみならず、ひいてはわが国との友好関係促進に資するものと考える次第であります。  いまや、わが国は、政治経済文化あらゆる分野において、アジア日本世界日本としての国際的地位を確立するに至りました。私は、この増大した国力と向上した国際的地位を背景として、わが国自主外交を強力に展開していく所存であります。しかし、そのためには、わが国世界の平和と繁栄のために、いままでよりも一そう大きい貢献をなすべき責務を有するに至ったことを十分に認識していただきたいと存じます。私は、国民各位が、政府推進する自主平和外交方針及び施策に対し、深い理解と積極的な協力を示されるよう期待する次第でございます。(拍手)     —————————————
  12. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 田中大蔵大臣。    〔国務大臣田中角榮君登壇拍手
  13. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 第四十八回国会に臨み、昭和四十年度予算の御審議を求めるにあたり、その大綱を御説明いたしますとともに、財政金融政策の基本的な考え方について所信を申し述べたいと存じます。  本年は、昭和四十年代の始まる年であります。戦後二十年、新生日本は、荒廃の中から立ち上がり、急速に経済の復興をなし遂げ、その後もたくましい成長力をもって発展を続けてまいりました。二十年のうち、初めの段階は、いわゆる傾斜生産方式等によりまして窮乏経済から脱却し、生産及び国民生活を戦前水準に戻すことを目ざして努力した復興の時期でありました。それに続く段階は、経済の拡大と近代化を進めて、国民総生産が自由世界の五指に数えられるようになった時期であり、同時に、貿易為替の自由化が次第に進み、国際経済社会における地位が向上してきた時代であります。  これから始まる四十年代は、開放経済体制に本格的に移行したわが国が、引き続き着実な成長を続けつつ、先進諸国に比肩し得るような質的強化をなし遂げ、世界の繁栄にも一そう積極的な貢献をしていくべき時代であると考えるのであります。  これに関連して、まず申し述べたいのは、わが国が開放体制に踏み切ったことの意義を、あらためて明確に把握しておきたいということであります。  申すまでもなく、わが国は、人口密度が高く、しかも資源に乏しいのでありますから、貿易、特に加工貿易によって国を立てなければなりません。そして、わが国の貿易を伸ばすためには、世界貿易が自由化され、拡大していくことが必要なのであります。近年、世界貿易の自由化、国際協力の緊密化は急速に進展しつつありますが、わが国がみずからの門戸を開放することによって、この世界の動きに伍し、これを積極的に推進しながら、一部に残存する対日制限等の撤廃を求めていくことは、わが国にとってきわめて重要なことであります。このように考えてくれば、わが国が開放体制への本格的移行に踏み切ったことは、過渡的には若干の困難を伴うとしても、結局は、前進を続ける世界経済の中にあって、わが国経済をさらに伸ばしていくため、みずからが選んだ道であったことは明らかでありましょう。  この開放体制への移行に伴い、わが国は、国際経済社会の有力な一員として活動することとなったのでありますが、わが国が、その国際的地位の一そうの向上をはかっていくためには、国際的視野に立った健全な財政金融政策の運用によって、通貨価値の安定につとめていくことはもちろん、常に国際収支均衡とその健全化に留意することが肝要となるのであります。このためには、海外市場の開拓をさらに推進するとともに、わが国の輸出力を一段と増強していくことが最も大切であります。近年、高度成長の過程において、わが国産業の輸出力は急速に強化されてまいりましたが、今後さらに輸出を伸ばしていくためには、企業体質の改善強化、産業構造の高度化、産業秩序の確立並びに科学技術の開発向上等について、一そうの努力を積み重ねていかねばならないのであります。  次に申し述べたいのは、経済合理性に徹するということであります。開放体制に移行することにより、貿易為替が自由化されることを契機として、自由な経済原則が、わが国経済の運営の全面にわたって、より強く働くようになるのであります。わが国企業が、今後、世界市場における品質、価格の競争と国際経済の波動に耐えて、一そうの発展を期するためには、自由な経済原則のもとに、効率を重んずる合理的な経営態度に徹することが最も肝要であります。いたずらに業容の拡大に走ることなく、過当な競争を排するとともに、技術と信用の向上をはかり、労使協力の基調のもとに、真の競争力と抵抗力を涵養することが、みずから頼むところのあるりっぱな企業に成長する道であると申さねばなりません。私は、この際、わが国の企業が、広く国際的視野に立って、新しい経済環境にふさわしい合理的な経営感覚を身につけ、収益を重視し、蓄積を厚くして、その質的充実につとめられんことを、強く期待したいのであります。  以上、時あたかも昭和四十年代を迎えた年の初めにあたり、わが国経済の進むべき方向と課題について、所懐の一端を開陳した次第であります。次に、最近における内外の経済動向について申し述べます。  昨年の世界経済は、米国においては一九六一年以来の拡大基調が続き、西欧諸国においてもかなりの成長が見られるなど、おおむね順調に推移をいたしましたが、特に世界貿易は好調であり、その伸びは一〇%をこえているものと見込まれるのであります。しかしながら、年末に至り、英国の国際収支改善対策、英・米・加の公定歩合引き上げ等、注目すべき措置が相次いで行なわれました。本年の世界経済及び世界貿易は、昨年におけるような大幅な伸びを期待することはむずかしい状況にあり、かつ、米英の国際収支対策をめぐる動きもあって、きびしさを加えつつあるものと思われるのであります。  一方、わが国経済は、昨年一年にわたる調整の過程を経て、安定化に向かいつつあります。今回の調整措置は、直接には国際収支均衡回復を目途としたものでありましたが、同時に、開放体制への本格的移行に備え、安定成長の基調を確保し、国際経済の波動に耐え得るような、質的強化の地固めを行なうことをも意図したものであります。  調整の効果は、経済の各分野に次第に浸透してまいりましたが、昨年秋以降、生産の動向、設備投資の意欲、並びに金融市場の動きなどには、おおむね平静な推移が見られるに至っており、経済は自律的な調整過程に入ったものと思われるのであります。また、国際収支も、輸出の好調、輸入の落ちつきによって、その均衡を回復しつつあります。昨年中のわが国の輸出は、前年に比して二割以上も増加し、国際収支改善の大きな要因となったのでありますが、これは、さきに述べたように、海外市況が好調であったことによるとともに、わが国産業の輸出力が強化されたことにも基づくものであります。  本年の海外環境は、さきに申したとおり、きびしさを増すことが予想せられますが、世界の経済と貿易は、全体としては、なお着実な拡大を続けるものと思われるのであります。また、わが国の輸出力は、ここ数年の近代化合理化投資の成果に基づいて、年を追って強化されていくものと考えられ、さらに今回の調整過程を経て、輸出意欲が増進されつつあるのであります。したがって、本年も、輸出を大きく伸ばし、貿易収支の黒字確保を中心として国際収支均衡をはかることは、一そうの努力を前提とするならば、十分可能であると考えるのであります。  このような情勢にかんがみ、昨年十二月の預金準備率の引き下げに続いて、去る一月九日には公定歩合の一厘引き下げが実施されました。今後、わが国経済は、落ちついた歩みの中で次第に明るさを増していくことが期待されますが、政府といたしましては、この際、過度の安易感によって再び経済に行き過ぎが生ずることのないよう、財政面における健全均衡方針の堅持と相まって、金融政策においても、なお引き続き慎重かつ機動的な運営を行ない、内外の経済動向の推移に備える所存であります。  さて、今回の予算編成にあたりましては、きびしい国際経済環境の中で、通貨価値の維持と国際収支均衡を確保し、わが国経済の長期にわたる安定成長の路線を固めることを主眼といたしました。このため、財政面から経済を刺激することのないよう、引き続き健全均衡財政の方針を堅持するとともに、極力予算規模の圧縮をはかることといたしましたが、その際、特に意を用いたのは、次の諸点であります。  まず、安定成長を前提とする以上、従来のような大幅な租税の自然増収を期待することはできず、他面、歳出増加の要求は依然として強く、国民の要望である減税を行なうことには、かなりの困難があったのであります。しかし、種々くふうをこらすことによりまして、広く、国民一般の租税負担を軽減するため、平年度一千二百億円をこえる一般的減税を行ないますほか、当面の要請にこたえ、貯蓄の増強、資本市場の育成等のため、政策的減税をも実施することとしたのであります。  私は、常々財政事情の許す限り減税を行なうことが必要であると考えているのであります。本格的減税の始まった昭和二十五年度以降の国税の平年度減税額を単純に合計しましても、約一兆二千億円になり、しかも、そのうちの八〇%余は、国民に最も関係の深い所得税であったのであります。この減税が、国民生活安定向上経済の発展に与えた効果は、まことに大きなものがあったと思うのであります。(拍手)  次に、歳出の面では、わが国経済の長期にわたる成長の基盤をつちかい、国民生活向上発展に資する分野には、できる限りの配慮を加えることといたしました。特に、国民生活向上とその環境の整備、低生産性部門の近代化地域格差の解消、過密都市対策の促進等、社会開発を推進する重要施策を積極的に展開し、社会経済の各分野、各地域にわたり、均衡のとれた発展、開発を期することをもって基本としたのであります。  なお、歳出に関しましては、この際、財政需要の充足状況を勘案しつつ、その合理化と重点化を一段と推進することといたしました。このため、既定経費につきましても、その内容と効果を再検討して、非効率的な補助金の整理合理化など、一そうその節減につとめるとともに、新規の経費は、特に重要かつ緊急なものに限定することとしたのであります。  私は、今後とも、財政支出の対象が漫然と増大し、財政に過度に依存する傾向が広がっていくことは避けなければならないと考えております。したがって、財政支出の対象とするについては、それが、個人や企業など、私経済の責任と能力をこえるものであるかどうか、政府で行なうことが効率的であるかどうかを、十分吟味して初めてこれを取り上げるべきものと思うのであります。  次に、財政金融を一体として運営すべきことは、私が従来から申してきたところでありますが、このような趣旨から、今回の予算編成にあたりましては、財政投融資計画を通じて民間資金を活用することに一そう留意いたしました。このことによって、国民の蓄積資金の適当な部分を、社会資本の充実等、公共部門の整備に振り向け、資本形成における民間部門と公共部門との調和を保つことを期した次第であります。  さて、今回提出いたしました昭和四十年度予算について御説明いたします。  一般会計予算の総額は、歳入歳出とも三兆六千五百八十一億円でありまして、昭和三十九年度当初予算に対し四千二十六億円、さきに成立いたしました補正予算を加えた予算額に対しては三千百七十六億円の増加となっております。  また、財政投融資計画の総額は一兆六千二百六億円でありまして、昭和三十九年度当初計画に対し二千八百四億円の増加となっております。  政府が昭和四十年度において特に重点を置いて措置した重要施策につき、その大綱を申し述べます。  まず、減税を中心とする税制改正であります。減税の考え方につきましては、さきに申し述べたとおりでありますが、中小所得者に重点を置いて所得税の負担を軽減すること、及び、企業の体質改善国際競争力の強化に資するため、中小企業負担軽減に配意しつつ、企業課税の軽減を行なうことにより、平年度千二百四十億円に及ぶ一般的減税を実施するほか、貯蓄の増強、資本市場の育成等、当面要請される諸施策に対応する税制上の措置を講ずることとしているのであります。  すなわち、所得税におきましては、国民生活の安定に資するため、諸控除を相当大幅に引き上げることといたしております。この結果、たとえば、標準世帯である夫婦及び子三人の給与所得者の場合、所得税を課されない限度は、現在の約四十八万五千円から約五十六万四千円となり、中小所得者の負担は相当程度軽減されることとなります。  法人税におきましては、本格的な開放体制への移行に対処し、自己資本の充実と企業基盤の強化に資するため、法人の留保分に対する税率を、特に中小法人の負担の軽減に重点を置いて引き下げるほか、同族会社の留保所得課税の控除額の引き上げを行なうことといたしました。そのほか、貯蓄の増強、資本市場の育成等、当面要請される諸施策に対応する税制上の措置を、この際、思い切って講ずることといたしたのであります。  なお、地方税につきましても、地方財政の苦しい実情にもかかわらず、個人事業税の事業主控除の引き上げ、電気ガス税の免税点の引き上げ、その他、所要の負担の均衡化、合理化をかはることといたしたのであります。  また、関税率につきましても、最近の内外経済情勢に応じ、所要の調整を行なうことといたしております。  国民経済均衡ある発展を期するためには、農林漁業及び中小企業等、低生産性部門の生産性向上と経営基盤の拡大強化を推進し、その近代化、高度化をはかることが肝要であります。このため、まず、農林漁業につきましては、農業構造改善事業、農業基盤整備事業等を大幅に拡充して、農業経営の近代化、生産基盤の強化をはかるとともに、新たに農地管理事業団を創設して、自立経営農家の積極的な育成を助長することといたしたのであります。  また、中小企業につきましては、中小企業高度化資金等を飛躍的に拡充して、構造の高度化、経営の集団化・協業化を推進するほか、小規模企業共済事業団の新設、特別小口保険制度の創設等、小規模事業対策に特に重点を置いて予算を増額いたしております。  さらに、税制面におきましても、さきに申したとおり、中小企業者の税負担の軽減に配意いたしましたほか、予算及び財政投融資計画を通じ、農林漁業及び中小企業金融円滑化のため、政府関係金融機関等において、新規融資ワクの大幅な拡大をはかることといたしたのであります。  国民福祉の向上をはかるため、経済力と調和を保ちつつ社会保障施策を推進することは、福祉国家にとって重要な使命の一つであります。このため、生活扶助基準の引き上げ、福祉年金制度の改善等を行なうとともに、低所得階層の妊産婦・乳幼児に対するミルクの無償給付を開始して、低所得者層に対する施策について、その一そうの充実を期することといたしたのであります。  医療保険につきましては、国民健康保険世帯員に対する七割給付の着実な推進をはかりますほか、既定の方針に従い、財政再建対策を講じますとともに、政府管掌健康保険等について、この対策を円滑に実施するため、特別の補助を行なうことといたしたのであります。  恩給につきましても、民生安定の一環として、昭和四十年十月から三カ年計画で、恩給年額の改定等の改善を行なうこととしております。  なお、産業構造の変化等に即応いたしまして、雇用対策を強化し、労働力の流動性を高めることといたしております。  調和のとれた国民生活と住みよい社会を築くためには、衣食に比べ、従来立ちおくれをみせていた住宅及び生活環境施設を、すみやかに整備することが当面の急務であります。  まず、住宅につきましては、予算及び財政投融資を大幅に増額して、政府施策住宅建設の促進と質の向上につとめるとともに、特に勤労者持ち家住宅の建設を推進するため、住宅供給公社の発足を予定いたしております。  また、生活環境施設につきましては、上下水道、終末処理施設等に重点を置いて、その整備を促進いたしますほか、公害防止事業団を新設する等によりまして、公害対策にも格段の配慮を加えることといたしましたのであります。  文教を刷新して健全な青少年の育成と人的能力の開発につとめるとともに、科学技術振興して現下の要請にこたえることは、政府の責務であり、従来とも最も意を用いてきたところであります。  これがため、昭和四十年度におきましては、引き続き教育水準の向上と教育環境の整備を推進するとともに、父兄負担の軽減にも配慮を加えることにいたしました。また、昭和四十年度以降に予想される大学志願者の急増に対しましては、国立大学の定員及び施設の拡充と私立学校振興会に対する財政投融資の大幅な拡充等により、対処することといたしております。  さらに、最近の科学技術の動向にかんがみ、原子力平和利用産業公害防止等の重要研究を推進して、科学技術の一そうの向上を期することといたしました。  次に、公共投資につきましては、引き続き、社会資本を計画的に整備し、地域格差の是正につとめる等、その拡充をはかることといたしております。すなわち、道路整備につきましては、新たに石油ガス税を創設して道路整備財源の充実をはかる等、道路整備五カ年計画の重点的かつ着実な推進を期しております。次に、治山治水対策及び港湾整備につきましては、新たに昭和四十年度を初年度とする新五カ年計画を策定して、事業の大幅な進捗をはかることといたしました。また、将来の航空機輸送の増大に対処して、新東京国際空港公団を設立することとしております。なお、日本国有鉄道につきまして、安全輸送の確保と輸送力の増強をはかるため、工事規模を大幅に拡充するとともに、日本電信電話公社につきましても、電信電話施設の整備拡充をはかることといたしました。  さらに、新産業都市建設等地域開発の促進のため、予算及び財政投融資の配分につき重点的に配意するとともに、新たに新産業都市等建設事業に対し、特別の財政援助を行なって、事業の促進をはかることといたしておるのであります。  輸出の振興等により国際収支改善をはかり、また、国際経済協力を推進することの重要性は、さきに述べたとおりであります。  このため、企業課税の軽減を行なうことにより、一般企業の国際競争力の強化をはかるほか、日本輸出入銀行を通ずる輸出金融を大幅に拡充いたしますとともに、日本貿易振興会等の事業活動を強化すること等によりまして、一段と輸出の伸長を期することとしておるのであります。同時に、貿易外収支については、外航船舶建造量の大幅な増加等をはかって、その改善に資することといたしました。また、海外経済協力基金に対し追加出資を行なう等、経済協力体制の整備充実につとめることとしております。  以上のほか、流動する国際情勢に対応して外交活動の強化充実をはかりますとともに、国力に応じた防衛力の自主的かつ計画的な整備につとめることといたしました。  また、法秩序の維持と交通安全の確保に資するため、司法活動の強化、警察力の充実等につきましても、相当の配慮を加えておるのであります。  地方財政は、しばらく良好な推移をたどってまいりましたが、最近、地方税収入等の伸びの鈍化、人件費等、経常的経費の増加等、悪化の傾向が見られるのであります。これが改善は、歳出増加を極力抑制するなど、本来地方団体自身の努力にまつべきものでありますが、国といたしましても、困難な財源事情にかかわらず、今後における地方財政の一そうの健全化をはかる見地から、今回特に地方交付税の率を現行の二八・九%から二九・五%に引き上げることといたしました。これにより、地方債の増額等と相まって、地方の行政水準と住民福祉の一そうの向上が期待される次第であります。  財政投融資につきましては、以上それぞれの項目においても触れたところでありますが、計画の策定にあたりましては、住宅の建設及び生活環境施設整備農林漁業及び中小企業関係金融の充実に重点を置くとともに、輸出の振興及び道路、鉄道等、社会資本の強化等にも特に配意いたしております。  次に、今後の金融政策について申し述べます。  過去一年にわたる調整の過程を通じて、行き過ぎた企業規模の拡大は必ずしも収益の向上をもたらすものではないということが、広く経済界に認識されつつあります。  企業の側にあっては、経営の重点を量的拡大から質的充実に移して、資金需要を適正化しつつ、その体質の改善を一そう推進することを切望してやみません。金融の側においても、過去の金融緩和期に見られたように、積極的な貸し進みによってせっかく落ちつきをみている経済の基調をくずすことのないよう、慎重かつ堅実な融資態度を固めることを期待するものであります。  政府といたしましても、このように金融情勢が落ちついていくことを見きわめつつ、金融正常化の条件を順次整えてまいりたい所存であります。  長期資金の確保によって企業の資本構成を是正することは、今日の急務であり、このため、貯蓄の増強と資本市場育成をはかることの重要性は、一そう高まりつつあります。この見地から、政府といたしましては、今回、企業及び投資家に対する一連の税制上の施策を実施することとしておりますが、今後とも、資本市場を拡大強化するため、公社債市場の育成、証券金融拡充等、各般の施策を積極的に推進していく所存であります。  なお、資本市場の健全な発展が、企業、投資家及び証券業者の、それぞれの立場における、努力とくふうにまつものであることは申すまでもないところでありますが、特に、証券業界の体質改善とその機能強化が今日ほど急がれているときはありません。政府といたしましても、証券業の登録制を免許制に切りかえて、その経営基盤と信用の強化をはかる等、所要の措置を講ずる所存であります。  国際経済面におきましては、かねてより各国間に検討が進められている国際流動性問題は、先般のIMF・世銀の東京総会において、IMFの増資に関する決議が採択されたことを契機として、新たな進展を遂げたのであります。一方、先般来の英国の国際収支危機に際しては、世界の主要国は、英国のIMFからの資金引き出しにあたり、初めて一般借り入れ取りきめを発動し、また重ねて緊急借款を供与するなど、国際金融協力はますます緊密となりつつあるのでありますが、わが国としても、積極的にこれらの協力に参加し、応分の寄与をいたしているのであります。  また、今日、開発途上にある国々に対する経済協力は、世界経済の拡大発展のためにますます重要となっております。わが国としては、国連貿易開発会議における諸決議において取り上げられているような諸問題、及び、ガットにおいて後進国貿易拡大のためにその規定と機構を改正する問題等にも考慮を払いつつ、国力の許す範囲内で、協力と援助を行なっていきたい考えであります。ことにアジア諸国は、地理的にも経済的にも、わが国とは最も密接な関係にありますので、援助を行なうにあたっては、これら諸国を中心に考えていきたいと存じます。  なお、かねて懸案となっておりました、ガットにおける関税一括引き下げ交渉は、今般、例外品目表の提出を終わり、いよいよ本格化する運びとなっております。この一括引き下げ交渉につきましては、世界経済の発展とわが国貿易の伸長という見地から、わが国としては、かねて積極的に参加する態度をとってきたのでありますが、今後もできる限りこれに協力していきたいと考えております。もちろん交渉にあたっては、国内産業に対する影響に十分配慮するとともに、わが国の受ける利益と相手国に与える利益の均衡を確保するよう留意する所存であります。  以上、財政金融政策の基本的な考え方と予算の大綱を御説明いたしました。  初めに述べましたとおり、本年に始まる昭和四十年代は、わが国国際経済社会の主要な一員として、さらに経済力の充実進展をはかり、世界の繁栄にも一そう積極的な貢献をしていくべき時期であります。日本国民が、この際、決意を新たにし、戦後二十年にわたる経済発展の成果とそれに基づく自信の上に立って真剣な努力を続けるならば、経済の一そうの成長、及び、それと調和のとれた豊かな社会の建設は、必ず実現されるものと確信する次第であります。(拍手
  14. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) ただいまの演説に対し、質疑の通告がございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  15. 重宗雄三

    議長(重宗雄三君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。   午後四時四十一分散会