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政府委員(蒲生芳郎君) ただいままでの
審議の
内容につきまして大ざぱっに申し上げますと、大きく分けて三つの問題があると思います。一つは、ただいま先生のおっしゃいました
著作権法の全面的な
改正、それから二つは実演芸術家、レコード製作者、それから放送専業者等の保護、いわゆる保護で申します隣接権の問題、それからもう一つは、著作権に関します仲介業務制度の改善、問題を大きく分けてこの三つでございますが、
著作権法の全面的
改正について申し上げますと、保護を受けます著作物、著作者、著作権者、それから保護期間、著作権の
内容、著作権の制限、著作権の侵害に対する救済等のすべてにわたって全面
改正のための再検討を行なっております。
特に問題になっております事項を申し上げますと、保護を受けます著作物に関しましては、図案などの応用美術の著作物につきましてその取り扱いを明確にし、そうして意匠法との調整をはかるということが一点ございます。それから著作者、著作権者に関しましては、映画についてはそれが多数のものの関与によって、関係することによってつくられて、しかもそれが商品として国際的に流通するということも考え合わせまして、著作者、著権者を明確にするということが問題でございます。それから保識期間につきましては国際的な大勢に従いまして、それからまた者作者側の強い要望もありまして、その保識期間を先ほど来問題になっておりました著作者の死後五十年に延長することがはたして現在の日本で妥当であるかどうかということについても検討を続けております。
それから著作権の
内容につきまして申し上げますと、民間放送の発達あるいはFM放送の開始、テレビの普及でございますとか、有線放送等、今日の放送の
実情と将来の動向を予測いたしまして、放送に関する著作者の権利というものを明確にしようという問題がございます。また、それに関連しましてレコードは出所を明示すれば自由に無償で放送、興行をすることができるというたてまえを現在とっておりますが、そういう取り扱いを今日におきます音楽レコードの使用の
状況に照らして、また国際関係も考慮して改める必要があるのじゃなかろうかという点でございます。
それから著作権の侵害に対する救済につきましては、
工業所有権の侵害に対する罰則がございますが、それとの均衡も考えまして著作権侵害のそれに対する罰則を適正に定める必要があるのじゃないか、
それから隣接権の問題でございますが、美浜演奏芸術家のうちで、演奏者及び歌手につきましては現行法ではすでに演奏歌唱を著作物として取り扱うことによって保護をはかっておりますが、その具体的な権利
内容が必ずしも明確ではございません。レコード製作者についても現行法は一般にはこれを著作者とみなしまして保護をしているというふうに解されておりますけれども、その具体的な権利
内容は必ずしも明確でございません。また、放送事業者につきましては、現在、現行法ではこれを保護しております。こうしたものたちの保護につきましては、国際的には著作権とは別個の制度とするというのが一般的でございまして、その保護に関します国際条約としましても、著作権に関するベルヌ条約、万国著作権条約とは別に、先ほど申しましたいわゆる隣接権条約というものがございます。
著作権法を全面的に
改正するに際しまして、国際通念に従って別に隣接権の制度をつくって、そうして実演芸術家とレコード製作者を著作権によります保護から隣接権のほうへ移しまして、放送事業者とともに隣接権の制度によって保護するとしてはどうだろうかということについてただいま検討をいたしております。
最後に仲介業務の制度につきましては現行法では勅令で定めております。著作物の利用について仲介業務を行なうには文部大臣の許可を要するものとしておりまして、その事業の実施を規制しております。この
法律が制定されました
昭和十四年当時と今日では著作権に関する社会意識あるいは著作物の利用の
状況ないしは基
本法制等に大きな変化がございますので、また
著作権法の全面
改正とも関連し、この
法律の改善について検討していく、こういう
状況でございます。