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1965-03-11 第48回国会 参議院 文教委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十一日(木曜日)    午前十時四十二分開会     ―――――――――――――    委員異動  三月十日     辞任         補欠選任      栗原 祐幸君     北畠 教真君      塩見 俊二君     木村篤太郎君      大谷藤之助君     中上川アキ君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         山下 春江君     理 事                 久保 勘一君                 二木 謙吾君                 吉江 勝保君                 小林  武君     委 員                 近藤 鶴代君                 笹森 順造君                 中野 文門君                 中上川アキ君                 野本 品吉君                 千葉千代世君                 豊瀬 禎一君        発  議  者  小林  武君        発  議  者  千葉千代世君        発  議  者  豊瀬 禎一君    政府委員        文部政務次官   押谷 富三君        文部大臣官房長  西田  剛君        文部省社会教育        局長       蒲生 芳郎君    事務局側        常任委員会専門        員        渡辺  猛君    説明員        文部省社会教育        局著作権課長   佐野文一郎君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○教育職員免許法の一部を改正する法律案豊瀬  禎一君外四名発議) ○公立盲学校聾学校及び養護学校幼稚部及  び高等部整備に関する特別措置法案小林武  君外四名発議) ○高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一  部を改正する法律案秋山長造君外四名発  議) ○女子教育職員出席に際しての補助教育職員の  確保に関する法律の一部を改正する法律案(千  葉千代世君外四名発議) ○学校教育法等の一部を改正する法律案千葉千  代世君外四名発議) ○著作権法の一部を改正する法律案内閣提出)     ―――――――――――――
  2. 山下春江

    委員長山下春江君) ただいまより文教委員会を開会いたします。  まず、委員異動について報告いたします。去る三月十日、栗原祐幸君、塩見俊二君、大谷藤之助君が辞任され、その補欠として北畠教真君、木村篤太郎君、中上川アキ君がそれぞれ選任されました。     ―――――――――――――
  3. 山下春江

    委員長山下春江君) 教育職員免許法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を願います。豊瀬委員
  4. 豊瀬禎一

    豊瀬禎一君 ただいま議題となりました教育職員免許法の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及び内容概要を申し上げます。  現在、科学技術振興方策の推進に伴い、科学技術教育が重要視されておりますことは世界的風潮であります。わが国においても、その具体的施策の一つとして産業教育及び理科教育に対する国家予算が年々増大を見るに至りました。申すまでもなく、科学技術教育の根幹をなすものとして理科教育分野がありますが、この理科教育を直接に担当し、推進する者は理科教諭であり、その理科教諭職務を助ける者は理科実習助手であります。ところが、高等学校における理科実習助手は、現代的課題や要請にこたえる意味からも、きわめて重要な職務を帯びておりますにもかかわらず、他の実習助手と比較して、その待遇はなお不満足な状態に置かれているのであります。すなわち、農業水産工業または商船にかかわる科学技術教育に携わる実習助手は、つとに産業教育手当支給を受けておりますが、同じく科学技術分野に属する理科実習助手はこの手当を受けていないのであります。また、家庭、農業工業、商業、水産また商船実習教諭にかかわる実習助手に対しましては、明和三十六年の教育職員免許法の一部改正によって実習教諭としての免許状を取得できる道が開かれましたが、理科実習助手につきましては、いまだこのような措置が講ぜられていないのであります。  本来、理科教育自然界基本的原理原則理解させることを目的とするものでありますから、その理論面とともに、実験実習による指導が、他の教科に比べてより強く要請されております。したがって、理科実習助手は、単に授業の前後に実験実習のための準備やあと始末をしたり、教諭助手として生徒実験実習指導に当たるばかりでなく、特に最近の理科教育の発展に伴う教材に関し、常にその理論や学説についての研修につとめなければなりません。また、担当教諭の欠勤、出張等の場合など、みずからこれにかわって生徒指導に当たることもまれではありません。このように、理科実習助手職務内容は、他の教科実習助手のそれに比較してまさるとも劣らぬ重要なものであります。  現在、理科実験実習助手は、全国で約五千五百人にも及んでおりますが、さきにも述べましたとおり、特別手当支給対象にも含まれず、また、教諭への昇進の道も開かれておりません。このような状況のまま放置されますことは、彼らをしてその職務に対する熱意を減退させることとなり、特に、日進月歩の科学技術の進展に即応していかなければならない理科教育に、大きな支障の生ずることで予想されるのであります。それゆえに、みずから研さんを重ねて学問的向上を遂げ、一定の経験を積み、所定単位を取得して適正な能力を具備するに至った理科実習助手に対しては、その昇進機会を与えて将来への希望を化かすことにより、人材開発措置を講ずることが、相次ぐ工業界等への転職に伴う理科担当教職員の手薄を補う意味においても、現在最も必要な措置であると信ずるものであります。  以上申し述べました理由により、高等学校における理科実習助手に対しましても教諭への昇進の道を開くことが、高等学校理科教育充実に資するため適切な措置であると考え、ここに本法律案を提出した次第であります。  法案内容は、高等学校において理科実習を担任する教諭職務を助ける理科実習助手で、一定基礎資格を有する者が、所定在職年数及び単位数を充足した場合には、高等学校理科を担任する教諭の二級普通免許状を取得できるように規定することを骨子とし、その他必要の改正を行なうことといたしております。なお、この法律案公布の日から施行することといたしております。  以上がこの法律案提案理由及び内容概要であります。何とぞ十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  5. 山下春江

    委員長山下春江君) 以上で本法案についての提案理由説明聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  6. 山下春江

    委員長山下春江君) 次に、公立盲学校聾学校及び養護学校幼稚部及び高等部整備に関する特別措置法案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を求めます。小林委員
  7. 小林武

    小林武君 公立盲学校聾学校及び養護学校幼稚部及び高等部整備に関する特別措置法案提案理由。ただいま議題となりました公立盲学校聾学校及び養護学校幼稚部及び高等部整備に関する特別措置法案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  御承知のとおり、盲、聾、養護の諸学校はそれぞれ幼稚部小学部中学部び高等部に分かれておりますが、その運営は多くの場合一人の校長のもとに統轄されている現状であります。ところが、これらの学校においては、公立の場合には、小学部中学部については、義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法によって、給与費教材費及び建築費等経費の半額が国庫負担されることになっておりますが、幼稚部高等部については、これらの経費の全額が地方公共団体によって負担されることとなっております。このように版行的財政措置がなされておりますことが、これらの学校幼稚部高等部における教育振興をはばむ要因となっておりますし、ひいては、特殊教育の全般にわたって教育効果の渋滞を招く結果をもたらしております。  特殊教育において幼稚部がになう役割重要性は、いまさら申すまでもないことであります。盲児は視力の障害によって正常児に比べその生活圏が著しく狭く、聾児はその聴力の欠損によって言語活動から隔絶されておりますために、彼らに基礎的学力を習得させるには、教育課程の編成に慎重な考態が払われなければならないことは当然でありますが、わけても、幼稚部設置を促進して早期に教育を始めることが最も肝要であります。それにもかかわらず、幼稚部教育の実態をながめますと、聾学校にあっては分校を含む百六校中すでに六十校が設置されましたけれども、盲学校にあっては同じく七十七校中にわずかに三校、養護学校にあっては同じく百二十校中に三校を数えるに過ぎない現状でありまして、しかも、その設置運営等に、要する経費がもっぱら地方公共団体負担にゆだねられておりますことは、まことに遺憾であります。  高等部設置状況は、養護学校が百二十六校中、最近ようやくその十六校に高等部の開設を見るに至り、やや立ちおくれの姿でありますほかは、盲学校聾学校にあってはほとんどの学校設置されているのでありますが、これまた、建物教職員給与教材等に要する経費があげて地方公共団体負担とされておりますために、極度に貧困な予算による運営を余儀なくされ、建物設備教材等の一部を小中学部から流用したり、教職員についても小中学部から割愛して兼務させるなど、各部が相互に少なからぬ不自由を忍んでいる状態もまれではないと聞いております。特殊教育において最も重視されますことは、幼稚部から高等部までの一貫した教育を施すことであります。一貫教育最終課程であり、やがて社会人として巣立っていく生徒に、独立生活を営むための能力を授ける職業教育にも力を注がなければならない高等部の大切な使命にもかかわらず、なおこのような実情にありますことは、まことに寒心にたえないところであります。  以上申し述べました理由により、公立盲学校聾学校及び養護学校幼稚部及び高等部に勤務する教職員給与について、国がその実支出額の二分の一を負担すること、教材費及び施設費について、設置者たる地方公共団体に対しその二分の一を限度として国が補助するものとすることの二点を骨子とし、これらの学校幼稚部及び高等部における教育充実振興をはかる目的をもって本法律案提案いたします。なお、この法律昭和四十一年四月一日から施行することといたしてあります。  何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛同くださいますようお願いいたします。
  8. 山下春江

    委員長山下春江君) 以上で本法案についての提案理由説明聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  9. 山下春江

    委員長山下春江君) 次に、高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、発議者から提案理由説明を願います。小林君。
  10. 小林武

    小林武君 ただいま議題となりました高等学校定時制教育及び通信教育振興法の一部を改正する法律案について、提案理由内容概略を御説明申し上げます。  最近、技術革新を基軸とした社会改革が急激に進行する中で、国民の資質及び能力展開向上に対する期待が一そう高まり、教育責任はいよいよ重大になってきております。すなわち、義務教育はもとより、後期中等教育大学教育拡充整備が切実な課題として取り上げられております。特に、後期中等教育については、高等学校各種学校、その他の教育訓練施設に学ぶ青少年が年々増加しており、いまや後期中等教育義務制化が真剣に論議される段階となりました。このような情勢の中で、戦後の新教育制度として発足した高等学校定時制教育及び通信教育は、一段の飛躍が期待されておりますものの、実は、問題を数多く含んでおり、伸び悩み状態にあります。  その理由としては、国全体として勤労青少年教育に対する理解、認識がいまだ不十分であるということに尽きるのではなかろうかと考えます。すなわち、各種施策がこれらの教育施設に対して行なわれてきましたが、画竜点睛を欠くといいますか、一番根本の所にまだ手が届いていないと思うのであります。その第一の点としては、御承知求人難人手不足の深刻な現在、使用者は好むと好まざるにかかわらず、勤労青少年労働過重に追いやり勉学機会や学習の意欲を阻害しております。また、すでに就学している勤労青少年も、昼間の労働、夜の通学というぎりぎりの生活の中で疲労こんぱいしております。したがって、使用者側理解、協力を一段と促進し、通学勉学の諸条件整備してもらいたいのであります。  第二点といたしましては、この教育施設を経労する側、主として地方公共団体並びにこれに援助している国の責任として、全日制高校に劣らない適切な施設設備整備することは勿論、生徒教育指導する教師その他の職員に対する配慮を一段と厚くする必要があると信じます。現在、校長及び教員並びに政令で定める約半数の実習助手に対しては、定時制通信教育手当てとして、本俸の約七%の手当支給され、国はその三分の一を補助しておりますが、実習助手について政令支給制限していることは不合理であり、また、特に夜間定時制高校においては、校長教員実習助手のみならず、事務職員その他の職員ともどもに、困難な条件の中で勉学している生徒指導する必要もあり、この手当事務職員その他の職員にまで拡大する必要があると思います。  また、定時制通信教育手当は、先にも申しましたように、現在、昼夜の別なく支給されております。しかし、夜間課程に勤務する教職員は、昼間勤務者に比べて、本人はもとよりその家族をも含めて、肉体的にも精神的にも苦労や疲労が非常に多いのであります。帰宅が毎晩おそいこと、食事もしたがって一日四回となり、しかも、家族と一緒にとることがほとんどないありさまであります。このような職務内容の困難度という観点に立てば、昼間定時制にも支給されている手当を若干、夜間に限って増額することも当然であり、この際、定時制通信教育手当増額措置を講じたいと考えるのであります。  以上、本法律案提出理由を申し述べましたが、次に、本法律案内容について、簡単に御説明いたします。  本法律案は、第一に、勤労青年を使用する者に対し、勤労青年定時制教育または通信教育を受けるのに支障がないように、労働条件に関し特別の措置を講ずるように努める等の義務を課することにいたしました。第二には、本務として夜間において授業を行なう定時制課程事務その他の職務に従事する事務職員その他の職員及び本務とし定時制教育または通信教育に従事する実習助手で、従前、定時制教育手当支給されなかった者に対し、定時制通信教育手当支給することといたしました。第三には、夜間において授業を行なう定時制課程教育に従事する校長教員事務職員その他の職員に対し支給する定時制通信教育手当ての額を一律五千円増額することといたしました。第四には、本法律施行期日昭和四十年四月一日といたしました。  以上でありますが、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  11. 山下春江

    委員長山下春江君) 以上で本法案についての提案理由説明聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  12. 山下春江

    委員長山下春江君) 次に、女子教育職員出産に際しての補助教育職員確保に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、提案者より提案理由説明を願います。小林委員
  13. 小林武

    小林武君 ただいま議題となりました女子教育職員出産に際しての補助教育職員確保に関する法律の一部を改正する法律案について、提案理由及び改正内容を御説明申し上げます。  昨年の第四十六回国会における本法の一部改正によって、女子実習助手が法の対象に含まれ、国立及び公立の小学校、中学校高等学校盲学校聾学校養護学校及び幼稚園に勤務する女子教育職員のすべてが、この法律適用を受けるに至りました。その結果、いまや学校教育の現場に勤務する教職員のうち、ただひとり事務職員のみが産休補助職員適用ワク外に取り残されることとなったのであります。  事務職員は、その名称の示すとおり、学校事務を担当し処理することがその本務でありますが、その事務内容は、文書の整理、起案、統計などの庶務的なものから、職員給与学校給食費物品購入等に伴う会計の分野施設設備の管理の面に至るまで多岐多様にわたり、教員教育活動と相まって有機的に学校運営を推進するための、きわめて重要な使命をになっているのであります。たとえば、一人の事務職員出産のための休暇に入った場合、その事務は一括してクラス担任外教諭が代行したり、教頭と教諭が分割して処理に当たったり、あるいはまた養護教諭に充当するなど、種々の方法がとられましょうが、いずれの方法によるにせよ、一人の専門家事務量のすべてを、本来不なれな教諭に課さなければならないことは、おのずから教育プロパーの面に手不足を生じて、児童生徒の自習時間を設けたり、事務職員の代理として養護教諭教育委員会等への出張中、児童生徒負傷事故手当が粗略に流れるなど、しばしば正常な学校教育を阻害する要因をもたらしております。  このように、学校教育をより正常に運営し、より円滑に推進して、その教育効果の荷揚を期するための陰の力となっている事務職員重要性にもかかわらず、事務職員配置現状をながめますと、必置制が規定されている高等学校においては比較的充実しており、国立及び公立高等学校に勤務する者一万三千五百余人を数えますけれども、中小学校においてはいまだ十分な配置を見るに至らず、国公立をあわせてその数約一万二千四百人にすぎない状態にあり、かつまた、その代替職員臨時任用の道も開かれていないために、女子事務職員は安心して出産することができない状態にあるのであります。ちなみに、女子事務職員の概数は、義務教育学校において約四千人、高等学校において約三千四百人であります。  ここに、昭和三十九年の義務教育関係事務職員出産状況を申し上げますと、年間出産者九十二名のうち、産前六週間の休暇を完全にとれた者は、わずかに一〇%にも達しない九名にすぎず、休暇日数、十日以内の者は三十七名、実に全体の四〇%を超えるという実情でありますから、出産者の大半が、虚構においてはほとんど皆出勤、時間出勤、あるいは自宅執務を余儀なくされているのであります。これらはすべて複雑な事務を不なれな教員に依頼することの不安、給与事務報告書提出期限の切迫、地教委の監査、学校行率授業への影響に対する心づかい等事務職員の旺盛な職能的責任感に基づくところであり、その教育に対する献身的態度を雄弁に物語るものであると申すべきでありましょう。  以上申し述べました理由により、女子事務職員出産の場合について、女子教育職員の場合と同様に職員臨時任用を行なうことができるように措置して、学校教育の正常な実施の確保に資する目的をもって、ここに本改正案を提出いたしました。  改正案は、第一に、法第二条第二項の法の対象に新たに「事務職員」を加えることといたしました。この改正を行なうことにより、女子事務職員出産の場合、補助職員臨時任用を可能にするものであります。第二に、法の題名及び本則中の「女子教育職員」の字句を「女子教職員」に改め、「補助教育職員」を「補助教職員」に改めることといたしました。  従来、事務職員は、その給与の面では教員と同様に義務教育費国難負担法及び市町村女学校職員給与負担法適用を受けておりますけれども、「教育職員」とは呼ばれず、他の法律においても「教職員」と称されております。それゆえに、事務職を本法適用対象に加えるにあたり、題名及び本則中の「教育職員」、「補助教育職員」の字句を、事務職員をも含めて「教職員」、「補助教職員」に改めようとするものであります。なお、この法律は、公布の日から起算して三月を経過した日から施行することといたしてあります。  何とぞ、十分御審議の上、すみやかに御賛成くださいますようお願い申し上げます。
  14. 山下春江

    委員長山下春江君) 以上で本法律案についての提案理由説明聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  15. 山下春江

    委員長山下春江君) 次に、学校教育法等の一部を改正する法律案議題といたします。  まず、発議者より提案理由説明を願います。小林委員
  16. 小林武

    小林武君 ただいま議題となりました学校教育法等の一部を改正する法律案につきましてその提案理由内容概略を御説明申し上げます。  学校教育におきまして、寮母養護助教諭実習助手並びに助手等は、それぞれ重要な戦費を持っております。それゆえ学校においてはこれらの職員を置くことができることを明確にするとともに、その身分を確立する規定を設け、法の整備をはかることによりまして、学校教育運営を一そう円滑にするため本法律案を提出いたす次第でございます。  まず、寮母について申し上げます。近時、特殊教育に対する関心が深まり、これが充実拡大施策は、着々と進められておりますが、これらの学校の寄宿舎に置かれている寮母の果たす役割とその教育的効果はきわめて大きいのであります。従来、寮母学校教育法施行規則によりまして、盲、聾学校のみに置くよう規定されておりましたが、去る昭和三十二年十二月の改正により、養護学校にも置くことに改められました。また、従来、寮母資格については何ら規定がなく、その身分につきましては教育公務員特例法施行令第三条により特例法準用規定されていたのでありますが、今回、学校教育法において、盲、聾学校養護学校には寮母を置くことを規定し、その職務規定を定めるとともに教育公務員特例法において身分を明確にいたそうとするものでございます。  次に、養護助教諭実習助手について申し上げます。従来、養護助教諭はその資格に関しましては教育職員免許法規定がございます。また、実習助手につきましては国立学校設置法施行規則第十二条並びに高等学校設置基準第十二条におきまして、これを置く規定がございます。また両者とも教育公務員特例法準用を受けることは寮母と同様、施行令第三条により定められておりますが、特例法規定する教育公務員には含まれていないのであります。なお、従来両者職務につきまして、学校教育法施行規則には何ら規定がなかったのでありますが、これも昭和三十二年十二月の学校教育法施行規則改正によりまして、養護助教諭は第四十九条で、実習助手は第六十四条の三でそれぞれ職務規定を追加いたしておりますが、法律による定めはないのであります。  これらの養護助教諭実習助手がそれぞれの学校におきまして果たしております職務が、それらの学校教育に欠くことのできない重要性を持っておりますことは、ここにあらためて申すまでもございませんが、特に近時、科学技術教育振興のために、実習助手必要性が痛感されているのであります。したがいまして、先に述べました寮母と同様に、その学校教育法及び教育公務員特例法におきまして、養護助教諭実習助手を加え、その職務身分国係を明確に規定いたそうとするものでございます。  最後に、助手について申し上げます。現在、学校教育法には、大学並びに高等専門学校助手を置く規定がございますが、その身分に関しましては教育公務員特例法施行令第二条第一項の特例法準用することになっておりますので、これを改めまして特例法上の教育公務員にしようとするものでございます。  以上が改正点の要旨でございますが、これらはいずれも重要な学校運営に大事な役割をになっている人々の職務責任身分を明確にしようとするものでありまして、これによりまして、これらの職員職務についての責任感と自信と希望がより一そう高められ、さらに、その資質が向上し、待遇等も漸次改善されますならば、学校教育振興上、きわめて適切な措置であると信ずるものであります。  何とぞ、十分御審議の上、御賛成くださいますよう御願い申し上げます。
  17. 山下春江

    委員長山下春江君) 以上で本法案についての提案理由説明聴取は終わりました。     ―――――――――――――
  18. 山下春江

    委員長山下春江君) 次いで、著作権法の一部を改正する法律案議題といたします。  本法案についてはすでに提案理由説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  御質疑のある方は順次御発言願います。  なお、政府側より押谷政務次官、西田官房長、蒲生社会教育局長が出席いたしております。
  19. 笹森順造

    ○笹森順造君 著作権法の一部を改正する法律案提案理由を聞いたのでありますが、これについて若干の質問をいたしたいと思います。基本的なことでは実は大臣に聞きたかったのですけれども、責任を持ってお答えくださるならば、これは政務次官でも差しつかえないと思いなす。もし不満足であればまた追ってお尋ねすることがあるかもしらぬことを初めから申しておきます。  著作権法整備は、文化向上を促進するために必要であることは申し上げるまでもないのですが、本法が明治三十一年にできてから、すでに十回も改正されておるのでありますけれども、なおまた現在全面的な改正が必要とされて、著作権制度審議会が審議しておるような様子に見えるのでありますが、過去三年の年月を費やしてまだその成案を得ていない、そこで、さらにまた成案を得るために審議する必要上、二年もかかるであろうから、そういう理由で今度は一足飛びに保護の期間も二年間延長しようというのがこの法律のようであります。このことからすると、きわめて簡単なようでありますけれども、そのこと自体はきわめて簡単であっても、これは氷山の一角みたいなもので、その底に著作権全体に関する検討がなされなきゃならないと思うのです。そういうものが伏在しているように思うわけです。そこで、その実態に触れて明らかにする必要を感ぜざるを得ない。それらのものについていろいろと審議する前に、この保護期間の問題がいまここで問題になっておりますが、一体、保護期間というものの長さについて政府の基本的な見解をただしておきたい。一口で言うならば、保護期間、長いのがいいのか短いのがいいのか、これは私、著作権というものを考えるためには、根本的な文化活動、文化向上の上における考え方がなければならない。現政府が、文部省が一体著作権というものの保護の期間というものを長くするのがいいか悪いかという根本的な考え方について次官の、政府の見解を聞きたいと思います。
  20. 押谷富三

    政府委員(押谷富三君) 著作権の保護制度の目的は、笹森先生御承知のごとく、文芸、学術、美術、音楽の著作権の創作者に対する財産的な保護を与えようというのが一つの目的でありますし、また他面において、学問、芸術、文化の向上発展に資するという公共的な目的も加わっているのであります。そこで、著作権の期間、権利の期間につきましての定めにおきましても、やはりその他の制度の内容におきましても、この私権の保護と公共の利益というかね合いを考えまして、協調をしながらその制度を確立をしていかなければならぬと考えておるのであります。ところで、その著作権の期間でありますが、今日、国際基準といたしましてはベルヌ条約の原則によりまして、大体五十年というのが世界の立法例であります。著作権者が死亡後五十年間著作権の権利を持続するというのがおおむね世界の立法例でありますが、わが国もこのベルヌ条約に加盟をいたしておりまするので、世界の立法例等も勘案をし、また、ベルヌ条約の条約内容にも従いまして、今日はおおむね五十年というところを基準にいたしまして、ただいま検討を続けているという状況にあります。
  21. 笹森順造

    ○笹森順造君 著作権の保護は、いまお話しのごとく、著作権そのものは著作者の要するに苦心の産物でありますから、これを保護する、それに報いる、それによってさらにりっぱな著作物がどんどん出るようにしていきたい、そういう奨励の意味と保護の意味のあることは、むろんこの法律の真精神だと思いますが、ところが、またお話しのごとく、この著作物の著作者が報いられるのは、一般社会公共がこれをどう受け入れるかということによって、やはりその価値が出てくるのですから、いまお話しのごとく、公共性というものも考えるという考え方、これもまた適当だと思う。そこで、私は特にお聞きしたいのは、いまの著作者が生きておる間から保護されて、さらに死後何年間保護されればよろしいかということなんですが、三十七年までは三十年できていた。ところが、いまベルヌ条約等を勘案して、諸外国の例を考えて五十年がよかろうという考え方、これは第二段の社会公共のためにという方面を、むしろ反対的にものを考えているのじゃないかという気がする。そこで、それをさらにこの前に三年延ばして、根本的な審議をしておるようですけれども、さらにまた二年延ばすという、そうすると、むしろこの世の中がだんだんに変わってきておる、社会公共の利益というものが先行し、あるいはそれと一緒になることによって著作権というものの価値が上がるので、それは科学にせよ、文芸にせよ、演芸にせよ、歌謡にせよ、そういうものがやはり大衆に受け入れられるようにするためには、できるだけ早くこれを開放したほうがいいのじゃないかという気がする。いまお話のベルヌ条約で五十年というけれども、これは万国著作権の条約では二士五年を下らないようにという、そういう明確なこともあるのです。ですから、必ずしもそういう五十年ということを考えていいのかどうか、これがいま現政府の態度が一体どこにあるのかということを明確に知りたい。つまり個人の無体財産である著作権に重きを置くか、社会公共がこれを利用するという社会性並びに公共性に一体重きを置くか、それに対する認識を実はいまの文部省としてどう持っているかをお聞きしたいというのが根本なんで、それが根本的な議論のあるところで、初めから五十年にしようというようなことを一体文部省で考えておるのかということをお聞きしたいと思うのです。
  22. 押谷富三

    政府委員(押谷富三君) お説ごもっともなところでありますが、大体、先進国の立法例は全部五十年であり、アメリカもいま五十年というところで立法をいたしておるようでありまして、日本も世界の条約に加わり、世界の文化の仲間入りをして、そうして世界の創作者の権利を保護するという場合において、日本だけが特に短い期間をという考えを持つことにつきましては、よほど慎重に考慮をせなければならぬ、こういう考えを持っておりまするので、ただいまでは確定ではありませんが、方向といたしましては、ベルヌ条約の趣旨に基づいて死後五十年間ぐらいこの権利を持続せしめるという方向にあるわけでございます。
  23. 笹森順造

    ○笹森順造君 ただいまの話でありますが、大体、死後五十年の保護期間というのがあるようですけれども、国によっては永久的な国もある、ヨーロッパで。そういうものの考え方は、つまり無体財産を有体財産と同様に考えているんだが、この著作権というものはそれとは少し違うのではないか。だから、むしろ日本が文化国家として国際的に進出するなら、もっともっと早くこれを公共の用に供せしめるというふうに、国際上において、先進国、先進国と言わずに、日本の国自体が文化の先進国になって――少なくとも東洋文化におけるもの、この文化というものはお話のごとく科学もあるし、ことに理学、工学のような最新の学問においても日本が先鞭をつけているものが相当ある。そういうような面において、日本がむしろこういうものをもっと積極的にやるというぐらいの心がまえがないのか。自主外交、自主外交と言いながら、先進国、先進国ということばかり言いておって、日本自体が条約改正についての主導権を持つぐらいの考え方が一体ないのかどうなのか。私はむしろそういう方面について、これはいまあなたと議論しても始まらぬけれども、政府の態度というものは、もう少し国際全体の情勢を見ていかなければならぬ。特に演劇であるとか、あるいは舞踊、歌謡その他のマスコミのものは非常に新しいものがどんどん出てきている。これらのものが国際的に、日本のものが外国にいき、外国のものが日本にきておりますから、こういう面でもう少し、ただ引きずられておるというようないまの答弁のように聞こえるのですけれども、もう少し日本の独自の東洋文化としてどんどん出していくのに、日本の文化を外国に紹介するというような方針について一体長いのがいいのか――あなたのお話のように長いのがいいということもあるし、しかし、開放したほうがいいのではないかという考え方もある。この点については全然反対なら反対と言ってあなたの態度を、政府の態度を示せばまたわれわれも考えますが、全然そういう考えを無視するのかどうか、もう一度だめを押しておきます。
  24. 押谷富三

    政府委員(押谷富三君) この著作権の保護間期というものは、大体、著作権の性格が最近の国際情勢ではすべて国際的になってきておりまして、日本の著作権が外国において保護をされて、また外国の著作権を日本が保護をするという、一つの相互的な国際的な状況においてこの制度が行なわれている今日でありますから、そこで日本の学術、技芸、美術その他の文化についての著作権について外国で保護をしてくれるのがおおむね五十年であるというこの世界の立法例を考えますと、決して先進国のまねをするとか、引きずられるとかいう意味ではなくて、日本独自の考え方から、日本の著作権を外国で保護をしてもらっているその制度はやはり一応参考として、これは重要な課題として用いなければならぬと審議会においても考えているようであり、文部省におきましても著作権の保護期間というものについては、国際情勢において国際的なものである、こういう立場に立っておりますので、笹森先生のおことばのごとく、短い期間に開放して、そうしてそれを公に供するというのも一つの方法でありますが、しかし、日本の著作権者の権利が外国で保護をされておる期間というものがおおむね五十年であるということの考慮の上に立ちますと、やはりこの条約加盟の関係もありまして、一応五十年というところが目安になると実は考えておるようなわけであります。
  25. 笹森順造

    ○笹森順造君 その話は別にしようと思ったけれども、いまお話しですから、もう一つ申し上げておきたいのですが、これは国際条約ですから、そのきまったことに従うのは当然の話です。ところが、日本が三十年あるいは三十三年、それ以上日本の国が長くし七これを保護する必要はない。日本のものが三十年あるいは三十三年であるならば、向こうの五十年保護の法律をヨーロッパのある国が持っておっても五十年保護する必要はない。これは条約なんです。つまりその国の国内法を尊重して、その国内法によってのみ条約が生きているのですから、どうもいまの話だけでは不満足なんで、ちょっと食い違っているような気がする。しかし、それはここで追及しても始まらぬからそれはそれでやめておきますが、そういう考えであるということだけは承知して、必ずしもそれで私は納得しておらぬということだけは申し添えておきます。  それからもう一つここでぜひ明らかにしておきたいことは、元来三十年というのは一世代、ワン・ゼネレーションというわけで、死んでから子供が生まれたときには三十になるのですから、それを五十年まで無体財産を延ばしておくという必要が一体あるかないかということ。それからもう一つ、この法律について疑問な点は、すでにそういう長くしようとする意図があるから、法律改正において、これが初めから審議されるべきはずのものを、また審議期間が必要であるから、二年間この権利の保識の延長もしなければならぬ。そういう理由は一体どこにあるか。三十年に戻るかもしれない。あるいは三十三年でいいということになるかもしれない。それから特にこの二年というものをここにつけ加えて延ばすということは、提案者自身がこれを延長する必要があると認めて、すでにこれを出したでしょうけれども、その点は、本来の審議権に対して、初めから先入主になっておって二年また延長しようということは、この法案審議に対して不当じゃないか、もっと国会において自由に審議をする態度をとるべきじゃないかという点、この点をひとつお尋ねしておきます。
  26. 押谷富三

    政府委員(押谷富三君) 従来の制度からまいりますと、国会審議の途上におきまして、せっかくの著作権が失効するおそれがありまして、失効してしまったものは、あとでかりに四十年になり、あるいは五十年になって、その著作権が当然生きてこなければならぬ形になりましても、法律上失効したものを戻すわけにはいきません。そこで、一応そういうことも考えられるので、われわれは決して五十年になるであろうということをはっきり予測しておるというわけでありませんが、結果がどうなるかわからない多くの不確定要素を持っておるこの結論につきまして、結論が出るまでにせっかくの著作権者の権利がなくなっては、これは気の毒でもあり、しかも、文部省あるいは制度審議会において非常に努力をして調査をしてまいっておるのでありますが、こういうことのないように、期間内にぜひとも結論を出したいと努力をしておるのですが、何分にも重要な問題であり、複雑多岐であり、しかも国際的にもまたがっておりますので、今日まで会議を重ねること、大体二百回くらいにもう及んでおるのです。この著作権制度審議会の会議は二百回以上も会を重ねて、ぜひとも期間内にある結論を出して、そうして国会で審議を願いたいという努力をしたのですが、それだけ努力をいたしましても、なお今日困難な重要な問題がありますので、審議を続けております。そうすると、この審議を続けておる間に、審議の結論が出たときに、すでに審議期間の間に入って、しかも失効をする、効力を失うという人があっても、これはお気の毒にも存じますので、さような人を保護する目的をもちまして、これは重ねての延期でありますから、まことに恐縮なお願いなのですが、二年間延長をしていただいて、これは文部省も審議会も非常に努力をしまして、しかもなおかつ結論に到達をいたさなかった、この事情も御了解をいただきたいと存じている次第であります。
  27. 笹森順造

    ○笹森順造君 たいへん苦心をされて、数百回やっているということですが、これは政務次官でなくても、事務当局でもよろしいんですが、この著作権制度の審議会の構成並びにこの実際の各委員なり何なりの審議の進捗の状況、はたしてあと二年でいいのかどうか、いままでのようなことで、これでほんとうにいいのか。また足らないから五年延ばせというようなことがあってもはなはだ困るので、ですから実際のこの委員会の構成並びに審議の進捗の状況について、そう詳しくも要りませんから、われわれは確信を持ってこの法律を通し得るような確信ができるまで、二年でいいというような確信がつくようなことでなければ、これまたおかしな話で、ですからその点をとにかく聞いておきます。
  28. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 著作権制度審議会の構成でございますが、いま六つの小委員会に分かれましてそれぞれ審議をいたしております。第一小委員会というのが文芸、学術及び共通事項でございます。それから第二小委員会が美術、応用美術、建築、写真、第三小委員会が音楽、第四が映画、第五が隣接権、第六が仲介業務制度というふうに分かれまして、それぞれ審議をいたしております。なお、ただいまの進捗状況から見まして、この更には答申が出るように努力をいたしたいという予定で審議が進められているのですが、その答申を受けまして法律案の作成にかかり、次の通常国会にはぜひとも提案をいたしたいというふうに考えております。
  29. 笹森順造

    ○笹森順造君 それでは次官にお尋ねしますが、いまの局長の答えのように、この二年で目的ははっきりと遂げられる、国会に提案までできるという運びになっておるということは、これは確認していただけますか、どうですか。
  30. 押谷富三

    政府委員(押谷富三君) ただいま局長からお答え申し上げたように、この夏に審議会の結論は大体得られるものという確信を持ちまして、この法案を提出いたしておるのでありますが、答申を得ますれば、その答申に基づきまして、政府はこれから著作権制度全体についての一つの法案の作成作業に入りまして、そして来国会には出したいと、こういうことをかれこれ考えまして、二年間、こういうことのお願いを申し上げているのであります。
  31. 笹森順造

    ○笹森順造君 いまの話と先ほどの話とまた多少一緒の考え方になるかもしれませんが、先ほど次官のお話で、人間の文化活動は国際的である、まことにそのとおりだと思います。諸外国では死後五十年の権利の保護ということをしているのだが、日本は現有においては三十三年、そこでこの前に三十年にきめてしまうべきであったのを三十三年にしたことについて、やはり国際交流の上で関係が出てくる。つまり、それがために三年延ばしたために日本が外国の著作権に対して支払ったところの金というのはどうか。あるいはポンドならポンドでいい。日本の著作権が外国で利用されたために、日本人の手に入ったその財的な計数そのものを明らかにしていただかなければ、延ばすのがいいのか、延ばすのが悪いのかという判定がつきにくい。その資料があるならここで提出してもらいたいと思うのです。
  32. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) 三年間延長したことに伴いまして、著作権の消滅を免れました著作者について申し上げてみますと、文芸関係では梶井基次郎、詩人でございますが、梶井基次郎さん、三宅やす子さん、宮沢賢治さん、小林多喜二さん、それから巌谷小波さん、これが日本でございます。外国人ではマルセル・プルーストがおります。これら日本の著作者につきましては、条約関係にある外国で、翻訳その他に利用されますことは、ほとんどないものと考えられるのです。また、ブルーストにつきましては、現在日本で行なわれております翻訳出版は、翻訳権の十年留保の制度によりまして、翻訳権が消滅したものとして取り扱われております。したがいまして、延長措置によりまし  て、これらのものについて特に外国との著作権の使用料の出入りが影響されたことはないと思うわけであります。なお、今度は音楽関係につきまして申し上げますと、日本人では文部省唱歌の「月」あるいは「牧場の朝」を作曲されました船橋栄吉さん、それから「勇敢なる水兵」の作曲者でございます奥好義さん、外国人ではサン・サーンス、それからフォーレ等がおります。これら日本人の著作者に関しましては、外国で使用されることはまずないというふうに考えられますが、サン・サーンスあるいはフォーレ等の外国人の著作者についてみますと、日本音楽著作権協会がこれらのもののために分配しました昭和三十九年度におきます演奏権に関する使用料の分配額は、約七十三万円でございまして、これはこの同協会の外国演奏権団体に対する演奏権使用料の分配総額約二億四千万円に比べますと〇・三%に当たっております。
  33. 笹森順造

    ○笹森順造君 ちょっと別の話になりますけれども、著作権の保護の年限の変わっておる国の人と共著した場合に、一体どういう取り扱いになるか。たとえばアメリカ人と日本人とで共著したそのものの保護の対象が、一体どっちが優先するのか、どうなるのかということを、ややこしい問題ですけれども、実例がありましたら聞いておきたいと思います。条約上どういうふうになるか、わかっておったら知らせてもらいたいと思います。
  34. 佐野文一郎

    説明員佐野文一郎君) お答え申し上げます。まず条約関係では万国者作権条約とベルヌ条約とあるわけでございますが、日本の場合はベルヌ条約と万国著作権条約の両方に加盟しております。そこで、いわゆる両方の条約がダブって適用になるような場合、たとえばイギリスはやはり万国著作権条約とベルヌ条約と両方に入っております。日本も両方でございます。イギリス人と日本人が共著をしたというような場合、これはまず発行されたところが問題になります。発行されたところがイギリスであるならば、もっぱらベルヌ条約が適用になる。そしてその場合には発行地がイギリスであれば、イギリスの保護期間の適用があるわけでございます。アメリカでもって最初に発行された場合には、これは万国著作権条約が適用されるということになります。日本人とアメリカ人が共著をしまして、アメリカで発行したというふうな場合には、これは万国著作権条約の適用の問題になります。しかし、日本人とアメリカ人が共著で、日本で発行したということになりますと、これはベルヌ条約が適用されるということになるわけでございます。
  35. 笹森順造

    ○笹森順造君 そこで、こまかいことですけれども、発行はアメリカ人と日本人で発行をして、向こうのほうで発表されたけれども、印刷は日本でやられたというふうな場合はどうなりますか。
  36. 佐野文一郎

    説明員佐野文一郎君) 発行と申しますのは、やはり相当部数複製物が公衆に提供された場合に発行ととられますので、著作の場所ではなくて、やはりそれが世に出た場所を問題にするわけであります。
  37. 笹森順造

    ○笹森順造君 つまりあるものを共著した。そこで発表は向こうの学会でやった、アメリカで。しかし、そのものは印刷の都合上日本でそのものを著述した。これはむろん著述した場所から翻訳料、印税が入るからそれは問題がないのだけれども、つまり共著したものをアメリカで発表する。学会などで発表する。もうすでに著作権があるわけです、発表してあるから。ただ、それを印刷する場合に、日本で印刷にして本は日本でできたというそういう例があるのです。そのときにどうなるかということをちょっと仕分けして聞いておるわけです。
  38. 佐野文一郎

    説明員佐野文一郎君) 学会等でもって演説いたしまして、講演をいたしたというふうな場合には、条約上は発行されたことになりません。そこで、日本で印刷物でもって出版された場合それを発行ととられますので、その場合には日本が発行国になり、したがって、日本を本国とするベルヌ条約の適用のある著作物ということになります。
  39. 笹森順造

    ○笹森順造君 わかりました。大体私の尋ねようとしたことはこれで終わります。
  40. 二木謙吾

    ○二木謙吾君 ただいまお聞きするというと、著作権制度の全面的改正審議するために文部省に著作権制度審議会が設置されておりまして、すでに回を重ねること二百回も重ね、いろいろ審議されておる。また六つの小委員会に分かれてそれぞれ審議されておると、こういうことを聞いたのでありますが、著作権の根本的な改正事業について、各委員会におけるところの改正の方向、根本的な改正の方向というものが大体おわかりであればひとつお聞かせを願いたい。
  41. 蒲生芳郎

    政府委員(蒲生芳郎君) ただいままでの審議内容につきまして大ざぱっに申し上げますと、大きく分けて三つの問題があると思います。一つは、ただいま先生のおっしゃいました著作権法の全面的な改正、それから二つは実演芸術家、レコード製作者、それから放送専業者等の保護、いわゆる保護で申します隣接権の問題、それからもう一つは、著作権に関します仲介業務制度の改善、問題を大きく分けてこの三つでございますが、著作権法の全面的改正について申し上げますと、保護を受けます著作物、著作者、著作権者、それから保護期間、著作権の内容、著作権の制限、著作権の侵害に対する救済等のすべてにわたって全面改正のための再検討を行なっております。  特に問題になっております事項を申し上げますと、保護を受けます著作物に関しましては、図案などの応用美術の著作物につきましてその取り扱いを明確にし、そうして意匠法との調整をはかるということが一点ございます。それから著作者、著作権者に関しましては、映画についてはそれが多数のものの関与によって、関係することによってつくられて、しかもそれが商品として国際的に流通するということも考え合わせまして、著作者、著権者を明確にするということが問題でございます。それから保識期間につきましては国際的な大勢に従いまして、それからまた者作者側の強い要望もありまして、その保識期間を先ほど来問題になっておりました著作者の死後五十年に延長することがはたして現在の日本で妥当であるかどうかということについても検討を続けております。  それから著作権の内容につきまして申し上げますと、民間放送の発達あるいはFM放送の開始、テレビの普及でございますとか、有線放送等、今日の放送の実情と将来の動向を予測いたしまして、放送に関する著作者の権利というものを明確にしようという問題がございます。また、それに関連しましてレコードは出所を明示すれば自由に無償で放送、興行をすることができるというたてまえを現在とっておりますが、そういう取り扱いを今日におきます音楽レコードの使用の状況に照らして、また国際関係も考慮して改める必要があるのじゃなかろうかという点でございます。  それから著作権の侵害に対する救済につきましては、工業所有権の侵害に対する罰則がございますが、それとの均衡も考えまして著作権侵害のそれに対する罰則を適正に定める必要があるのじゃないか、  それから隣接権の問題でございますが、美浜演奏芸術家のうちで、演奏者及び歌手につきましては現行法ではすでに演奏歌唱を著作物として取り扱うことによって保護をはかっておりますが、その具体的な権利内容が必ずしも明確ではございません。レコード製作者についても現行法は一般にはこれを著作者とみなしまして保護をしているというふうに解されておりますけれども、その具体的な権利内容は必ずしも明確でございません。また、放送事業者につきましては、現在、現行法ではこれを保護しております。こうしたものたちの保護につきましては、国際的には著作権とは別個の制度とするというのが一般的でございまして、その保護に関します国際条約としましても、著作権に関するベルヌ条約、万国著作権条約とは別に、先ほど申しましたいわゆる隣接権条約というものがございます。著作権法を全面的に改正するに際しまして、国際通念に従って別に隣接権の制度をつくって、そうして実演芸術家とレコード製作者を著作権によります保護から隣接権のほうへ移しまして、放送事業者とともに隣接権の制度によって保護するとしてはどうだろうかということについてただいま検討をいたしております。  最後に仲介業務の制度につきましては現行法では勅令で定めております。著作物の利用について仲介業務を行なうには文部大臣の許可を要するものとしておりまして、その事業の実施を規制しております。この法律が制定されました昭和十四年当時と今日では著作権に関する社会意識あるいは著作物の利用の状況ないしは基本法制等に大きな変化がございますので、また著作権法の全面改正とも関連し、この法律の改善について検討していく、こういう状況でございます。
  42. 山下春江

    委員長山下春江君) 他に御発言もなければ、本案に対する本日の質疑はこの程度にいたします。  本日は、これにて散会いたします。    午前十一時四十九分散会