運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1965-05-18 第48回国会 参議院 大蔵委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十八日(火曜日)    午前十一時五十一分開会     —————————————    委員異動  五月十七日     辞任         補欠選任      久保 勘一君     津島 壽一君      田中 啓一君     増原 恵吉君  五月十八日     辞任         補欠選任      増原 恵吉君     熊谷太三郎君      野々山一三君     亀田 得治君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西田 信一君     理 事                 佐野  廣君                 西川甚五郎君                 成瀬 幡治君                 中尾 辰義君                 田畑 金光君     委 員                 大竹平八郎君                 大谷 贇雄君                 岡崎 真一君                 栗原 祐幸君                 熊谷太三郎君                 津島 壽一君                 鳥畠徳次郎君                 中野 文門君                 日高 広為君                 二木 謙吾君                 堀  末治君                 村松 久義君                 亀田 得治君                 木村禧八郎君                 佐野 芳雄君                 柴谷  要君                 野溝  勝君                 鈴木 市藏君    国務大臣        大 蔵 大 臣  田中 角榮君        農 林 大 臣  赤城 宗徳君    政府委員        総理府総務長官  臼井 莊一君        内閣総理大臣官        房臨時農地等被        買収者問題調査        室長       八塚 陽介君        法務政務次官   大坪 保雄君        法務省民事局長  新谷 正夫君        法務省刑事局長  津田  實君        法務省訟務局長  青木 義人君        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵省主計局次        長        鳩山威一郎君        大蔵省証券局長  松井 直行君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵省主計局法        規課長      赤羽  桂君        大蔵省理財局国        庫課長      原  秀三君        農林省農地局管        理部長      石田  朗君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○証券取引法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○農地買収者等に対する給付金支給に関する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西田信一

    委員長西田信一君) ただいまから大蔵委員会開会いいたします。  委員異動について報告いたします。  昨十七日久保勘一君及び田中啓一君が辞任され、その補欠として津島壽一君及び増原恵吉君が選任せられました。本日野々山一三君及び増原恵吉君が辞任され、その補欠として亀田得治君及び熊谷太三郎君が選任ぜられました。     —————————————
  3. 西田信一

    委員長西田信一君) 証券取引法の一部を改正する法律案議題といたします。  これより本案討論に入ります。御意見のおありの方は賛否を明らかにしてお述べを願います。
  4. 鈴木市藏

    鈴木市藏君 私は、日本共産党日本の声を代表して、この法案に反対をします。  この改正案は、一見単純であり、大蔵省監督規制強化投資者保護立場に立っているように見えます。しかし、証券界恐慌状態ともいえる事態に対しては、この改正案は本格的に取り組んではいません。  証券界今日の危機事態はきわめて深刻であります。そのよって来たる原因は種々なものがありまするが、基本的には、高度成長政策の破綻、過剰設備過剰生産、これを助長した不正常な金融政策資本コストの上昇による企業内容の悪化の反映であることは言うまでもありません。この危機状態を持ち来たした自民党内閣、その政策的推進者であった大蔵大臣責任はきわめて重大であると言わなければなりません。それにもかかわらず、この改正案による手直しなどであたかも事態が好転するかのような安易な幻想を大衆に与え、より大きな矛盾を内包しながら破局へ進む危険が予想されるのです。  そして、この改正案の適用は、大証券会社にやすく中小証券会社にきびしく、大証券と大銀行国家権力の癒着という形の国家独占資本主義体制強化を目ざす手段に使われ、さらに山陽統制化方向に拍車をかけるものとなるに違いありません。これがこの改正案の本質的な性格であると考えます。  以上がこの改正案に反対するおもな理由であります。
  5. 日高広為

    日高広為君 私は、自由民主党を代表し、証券取引法の一部を改正する法律案賛成いたします。  本案は、今日証券投資一般大衆にまで普及せられ、公共性の高いものとなっております証券業について改正を行なおうとするものであります。証券業経営免許制にすること、免許制採用に伴い証券業者監督規定等を整備すること、証券外務員登録制とし、外務員取引行為に対する証券会社責任を明確にすることの三点を骨子とするものであります。  わが国証券業は、戦前は免許制でありましたが、戦後二十三年に現行証券取引法が制定されるに伴い、アメリカの制度に範をとりまして、証券業登録制採用されたのであります。以来、要件充足主義のもとに、証券業者存廃はまことに激しく、ややもすれば証券業信用を低下せしめ、投資者保護等に欠けるうらみがあったのであります。証券市場のにない手である証券業者がかかる状態にあることは、長期資本市場発達のためにも、また投資者保護のためにも、決して好ましいことではありません。  今回、証券業営業開始前の段階におきまして不適格者を予防的に排除するために、免許制に切りかえることは適切な改正であり、付言すれば、むしろおそきに失した感さえするのであります。さらに、業務別免許制は、性質の異なる業務兼業に伴う弊害を排除し、職能分離への移行も将来可能である体制を整備しようとするものでありまして、今後の証券業あり方を指向するものでもあり、適切な措置と考えます。  免許制移行に伴い、免許事業性格にかんがみまして、監督規定を整備することは当然でありまして、また、従来とかく不十分であった証券会社内部留保充実のため、三準備金規定を設けましたことも、証券会社体質改作のために当然の措置であります。  また、従来とかく不当な事故を起こしがちでありました外務員につきまして、この際登録制として大蔵大臣監督下に置き、外務員行為についての責任を原則として証券会社に帰属することにしたことにより、今後証券事故防止を有効に行ない得るものと考えるものであります。  以上、改正部分につきましての賛成意見を簡単に申し上げましたが、今回の改正は、証券業者の姿勢を正し、その社会的地位向上をはかり、投資者保護の、万全を期しようとする基本的な改正であり、まことに当を得たものとして賛成するものであります。  しかしながら、証券業界実態に着目いたしますと、三十五年から三十七年にかけての好況下で業容を著しく拡大した証券会社は、ただいまその整理合理化に鋭意努力いたしております。かような状況のもとで、免許制への移行のため、証券業界、特に中小証券会社に不当な摩擦をしいるごときことは、かえって禍根を今後に残すことになります。  また、証券業者についての今回の改正は、長期資本市場育成のために一歩前進しようとする基本的な改正でありますが、短期資金調達の場である金融市場との調和を考えながら、今後さらに業界自己責任体制整備等にも意を用い、証券取引法全般にわたりまして検討を加える必要があると考えます。  したがいまして、私は、この際、各派共同提案にかかわる附帯決議案提出いたします。決議案内容はお手元に配付いたしてありますとおりでありまして、  一、改正法の施行に当っては、証券業実情にかんがみ、証券業信用向上投資者保護等に万全を期するとともに、併せて中小証券会社の行き過ぎた統廃合等推進により、業界並びに中小証券従業員整理を促進し、徒らに混乱を生ずることのないよう配慮すべきである。  二、資本市場育成強化のため、今後とも証券取引法改正が必要であるが、このため政府においては、証券業協会及び証券取引所あり方証券発行流通に関する制度、さらに証券金融制度等について十分検討を加えるべきである。    右決議する。 というものであります。御賛成くださるようお願いいたします。
  6. 成瀬幡治

    成瀬幡治君 私は、社会党を代表いたしまして、本法律案茶並びにただいま日高委員提案にかかわる附帯決議案賛成をいたします。  本法律案は、免許制職能分離、あるいは外交員の問題についての制限、あるいは保全命令等、非常にいろんなことを内容とした画期的な法律案だということがいえると思います。  ところが、そのよってくるところは、なぜかと申しますならば、投資家保護というようなことを一つの大きな理由にしておみえになりますが、もともと、株価がこういうふうに暴落をしてきたということは、なるほど制度的に見ればいろいろな問題がありますから、これを免許制にせよということでありますが、根本の問題は、やはり政策的に高度成長政策のもとにこういうふうな、よってくる資本市場混乱というものを引き起こしたということは、何と申しましても、この責任を免れることはできないと思いますが、そういうことに対して、今度その第一着手として、政策的な問題は別個といたしまして、まず免許制採用をしようじゃないかという点について私たち賛成をするものでございます。  二つ目理由は、さきにも指摘いたしましたけれども、職能分離でございますが、ブローカーディーラー兼業がされておることによって、株価操作というものは百二十五条によって一応は禁止されておるようなことになっておりますけれども、実際の運営面から申しますと、なかなか容易なものではない。あるいはまた、株価混乱をもたらしたその原因は、勧誘員あるいは販売負あるいは外交員が、株を買ったらもうかるというようないろいろなことをやったというようなことも一つの大きな問題になっておるわけですが、今回の第二十九条の改正に基づいて、原則的にディーラーブローカー兼業を認めないという点は、私たちの党もこの主張でございまして、こういうような点が取り入れられたという点について賛成をするものでございます。  三つ目に申し上げておきたい点は、こういたしますと、今後大蔵省が大きな権限を持つことになるわけでございます。したがって、証券市場の、いわゆる直接資本市場責任大蔵省が負うというようなかっこうになる。したがって、大蔵省責任というものは非常に重大なものでございます。そして、そのものが一歩誤ったらたいへんなことになると思いますから、十分これが今後育成の上において注意をされるように、権限をふるうのか大蔵省の役人の仕事ではなくて、この直接資本市場がどういうふうになっていくかという点が——ですから、運営の面において、その法の示すところ、そのよってくる今回の改正される趣旨を十分生かしていただきたいと思うわけでございます。  それから、附帯決議の点に特に触れておきたい点は、参考人意見を聴取した場合にも、中小証券の問題についていろいろとございましたが、そこで、附帯決議案の中には、中小証券会社の行き過ぎた統廃合はやらないように、あるいは業界並びに中小証券会社従業員のこれが打切りにならないように、あなたのほうでは、こういうような場合には、それ資本金がどうなければならぬというような強圧的なことをやってくれば、当然そういうことになってきますけれども、そういうことのないように、いたずらに混乱を生じないように、十分配慮するということについて、こういう点についても、今後の運用の面で十分大蔵省は配慮していただけるものと、われわれこの附帯決議を尊重してやっていただけるものと前提をし、また、このこと、だけで全部問題が解決したわけじゃなくして、今後、当然証券取引所の問題あるいは証券業界問題等についてもいろいろとあとから法律案が出てくる、あるいは金融制度そのものについても根本的な検討が加えられて、何らかの形で法律になるものものなら法律として、本委員会にあるいは国会に提案されるという点をわれわれは期待をいたしまして、賛成をいたします。
  7. 中尾辰義

    中尾辰義君 私は、公明党を代表し、証券取引法の一部を改正する法律案及び附帯決議案賛成をいたします。  登録制度のもとにおける証券業の変動はまことに著しく、その指導監督の面におきましても限界があり、証券市場不況化とともに、制度弊害を次第にあらわし、投資者保護の面でも欠陥が露呈されておるのであります。改正によりまして証券業免許制に転換することは、むしろ必然的なものと考えられるのであります。また、業務別免許制採用しようとすることは、ブローカーディーラー等の兼営による弊害を防除し、今後わが国証券業社会、風土に即して職能分化を進めるビジョンを示したものでありまして、まことに適切な改正であると考えるものであります。  免許制に移るにあたりまして、監督規定等をおおむね銀行等に準じて整備しようとしておりますが、預金と投資の本質的な相違、安全と確実のシンボルのような銀行等に対する証券会社地位等を比較いたしまして、私は経過的にさらにきびしい規定があってもいいのではないかと考えますが、他方、証券会社自己責任体制ということも忘れてはならないことであって、今後何らかの法的措置が講じられることも予定されておりますので、一応賛成をいたすものであります。  特に、証券外務員についての責任関係を明確にしたことは適切な改正であります。世上、シェア拡大のための販売競争はまことに熾烈であり、ややもすると、善良な顧客を欺瞞するような不正な商取引が横行しております。有価証券取引等証券外務員行為も、これらとは同断とは申しませんが、顧客に迷惑や損害を与えることも遺憾ながら皆無とは申せません。今回の改正によりまして、不当な事故が根絶され、一般大衆が安心して証券投資に応じ得る慣習が次第に培養されていくことを願ってやまないのであります。  現在、証券業界整理合理化のあらしに吹かれており、免許制への転換によって、業界に不当な波紋を捲き起こすことは、さらでだに微妙な証券市場にとっても厳に慎まなければならぬことであり、日高委員提出附帯決議案は適当なものであります。  以上の理由によりまして、私は改正案及び附帯決議案に賛意を表するものであります。
  8. 田畑金光

    田畑金光君 私は、民主社会党を代表いたしまして、証券取引法の一部を改正する法律案並び日高議員提出附帯決議案賛成の意を表します。  証券業は、国民経済的立場から見て、非常に重要な事業であるだけでなく、近年証券投資が普及するとともに、投資者層が広く一般大衆に拡大して、社会的にも著しく公共性の高い事業になっております。  しかるに、証券業昭和二十三年に登録制採用されて以来、業者実態を見ますと、その存廃はまことに激しく、なかんずく、最近における株式不振の状況下証券業者経営はとみに悪化し、登録制のもとにあって好況期に急増した業者の廃業が続出するに至っております。  このような実情からして、本改正案は、証券取引審議会が昨年十二月に行ないました答申内容を取り入れ、第一に、証券業免許制にすること、第二に、免許制採用に伴い証券業者監督規定を整備すること、第三には、有価証券外務員登録制にして、外務員行為に対する会社責任を明確にすること等を規定しております。  これら三つの主要な柱を内容とする本改正案の実施によりまして、証券会社社会的地位向上がはかられ、従来とかく軽視されがちでありました投資者保護が一歩前進し、証券市場長期資本調達の場として、また公正な価格形成の場として、さらには国民の健全な貯蓄の場として機能する上に、それ相応に寄与するであろうことは率直に認めるものであります。  しかしながら、質疑の過程で明らかなとおり、証券市場の健全なる発展のためには、本改正案証券業者に関する規定改正であって、証券取引審議会報告にもありましたように、引き続き、証券取引所制度の改善、証券業者自主的規制機関たる証券業協会機能充実をはかることなどが必要であり、本改正案はこれら一連の諸制度の改善とまってその所期の目的が達成できるものと考えます。  ただ、特にこの際行政当局に望みたいことは、附帯決議案の中にもありますように、登録制度証券業者企業としての自己責任体制を重んじた制度でありますが、免許制度は不適格業者を予防的に指導監督する制度であります。それだけに当局行政裁量の分野と責任の度合いが拡大強化されますが、これがため必要以上に中小証券会社統廃合を促進して業界混乱従業員整理を招くことのないように、厳に戒めていただきたいと考えております。また、業務別免許制採用についても、職能分化は今後の進むべき方向であることは率直に認めますが、これは証券業務自律的発展にまつべきであって、ただ行政指導によってこれを強制するようなことはかえって証券業界実情に反し、あるいは沿革に反し、その機能の正常な発展をそこなう危険もあるわけであります。また、免許の審査にあたりましても、地域的妥当性過当競争防止などの名において大証券会社の支店あるいは営業所が優先し、地場業者である中小業者が不当な扱いを受けることがないように留意すべきであると考えます。  以上二、三の点について持に希望を付しまして、証券取引法の一部を改正する法律案並び日高委員提出附帯決議案について賛成の意を表するものであります。
  9. 西田信一

    委員長西田信一君) 他に御意見もないようですから、討論は終局したものと認めます。  それでは、これより採決を行ないます。証券取引法の一部を改正する法律案を問題に供します。本案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成者挙手
  10. 西田信一

    委員長西田信一君) 多数と認めます。よって、本案は多数をもって可決すべきものと決定いたしました。  次に、討論中に述べられました日高提出附帯決議案議題といたします。日高提出附帯決議案賛成の方の挙手を願います。   〔賛成挙手
  11. 西田信一

    委員長西田信一君) 全会一致と認めます。よって、日高提出附帯決議案全会一致をもって本委員会決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、田中大蔵大臣から発言を求められております。これを許します。
  12. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ただいま証券取引法の一部を改正する法律採決にあたりまして、二点につきまして附帯決議が行なわれましたのでありますが、政府といたしましては、当委員会の意を体して、今後この法律を運用してまいる所存であります。
  13. 西田信一

    委員長西田信一君) なお、議長に提出すべき報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  14. 西田信一

    委員長西田信一君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  それでは、午前はこの程度とし、午後は一時に再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時十四分休憩      ——————————    午後二時八分開会
  15. 西田信一

    委員長西田信一君) 委員会を再開いたします。  農地買収者等に対する給付金支給に関する法律案議題とし、質疑を続行いたします。  質疑のおありの力は順次御発言願います。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 総理大臣出席になりませんか。本来なら、こんな重要法案を審議するのに総理大臣がお見えにならないということは、非常に遺憾でございます。しかし、事情やむを得なければ、またあとで御出席をわずらわすといたしまして、とりあえず大蔵大臣臼井総務長官に御質問いたします。  昨日に引き続きまして、いわゆる農地報償法案に対し質問をいたしますが、昨日、臼井総務長官にこの農地報償法案提出された理由について具体的に質問いたしましたが、その答弁ははなはだ不十分でございました。  大体、提案理由としては、第一に、世論動向を勘案したと言われましたが、世論動向内容として、工藤調査会答申、もう一つ内閣調査会が委嘱しました中央調査社世論調査が、世論動向の資料になっているようでございますが、その内容は、きのう申し上げましたように、すなわち工藤調査会のほうではこのような巨額な報償をすべきではない、それから中央調査社のほうの世論調査では、生活困窮者に限って報償すべきだというのが六割なんですよ。かりにまあ報償はやむを得ないとしましても、生活困窮者に限り報償すべきだ、こういう調査になっておるんです。それにもかかわらず、世論動向を勘案して、全体に、しかも巨額の報償をしている。したがって、政府提案理由は矛盾している。「世論動向等を勘案いたしまして」と言っていますけれども、まあ矛盾していると言わざるを得ないんです。  その他、心理的影響あるいは農地解放に協力された貢献に対して報償するということが理由であったようでございましたが、まあこういう点についてはあとでまた同僚が質問されると思いますので、ただ、この際伺っておきたいのは、心理的影響及び農地改革に協力した、その貢献に対して報償すると。これはどういうふうに具体的に測定されまして、そうしてこれを基準単価に織り込んだんですか。
  17. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) まあこの報償につきましては、いまお説のように、旧地北の非常に受けた心理的影響とか、また農地解放によって農村の民主化、ひいては日本一般民主化、したがって今日のまた経済復興等に尽くされた貢献を多として報償をするということでございまして、したがって、この報償をどういう方法でやるかということにつきましては、いろいろ意見はあるところだと存じます。たとえば、まあ勲章でも出すのもひとつの報償ではないか、こういうこともあるわけでございますが、しかし、やっぱりそのもとはといえば農地ということに農家にとりましては大切な財産強制買収されたということから起こっているわけでございますので、そこでやはり、必ずしも多額でなくても、先ほどまあ多額というお説がございましたが、昨日も申し上げましたように百六十七万人からの旧地主に報償するわけでありますから、総額にすれば千四百五十億、これば十年間の償還ではございまするけれども、これはまあ総額としては必ずしも僅少ということはできないことは事実でございますけれども、しかし、まあ一人ずつにすれば平均すると八万円と、こういうことでございますから、考えようによっては決して多額ということも個々にすればいえないかと思うんであります。そこで、いま申し上げたように、財産強制買収に対する報償でありますから、そこでやはりこれを、十年間に割ってではありますけれども、もちろん二万円以下についてはこれは五年でありますけれども、やはり金銭でこれを報償することが一番適当ではないかと、まあこう判断いたしまして、交付公債ですると、こういうことになったのであります。そこで、それにしても、いまお説のように、多額報償ということについては工藤調査会意見もございまするので、頭打ち百万ということ、また段階を設けてと、こういうことでございますが、大体その基礎になる三万円の単価をどうしたかといういきさつにつきましては、調査室長のほうから、言申し上げるようにいたさせたいと存じます。
  18. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 基準の反当二万円と申しますのは、まあ端的に申しますと、これは補償ではないという私どものきわめてはっきりしたたてまえからまいりまして、何らか、農地の地価というものから、何掛け、何割というふうには出てまいりません。ただ報償というこの目的からいたしまして、しかもそういうことの動機が、ただいま長官からも申し上げましたように、農地を買収されたということ、それに基づくショックと申しますか、それに基づいておるわけでございますから、やはり面積というものにある程度対応はさせなきゃいかぬだろう、しかし、もともと物的なものを何らかの形で補償するということではなくて、いわば無形と申しますか、無体のものでございますから、そういう算定はできない。  ただ、これはあまり適切な例でないかと思いますけれども、たとえばわれわれの子弟が高等学校に入った、そういう場合にごほうびをやるということを考えてみますと、もともと力があって高等学校に入るわけでありますから、そのこと自体に何らか報いてやるということは、いわば賃金を払うというような筋合いのものではございませんで、やはりその子供の一生懸命勉強した、あるいはまあリクリエーションにある程度やってやろう、あるいは金持ちの家であればオートバイを買ってやる、しかし自分の家がそれほどでなければそういうこともできないから、まあわずかのもので親の気持ちはあらわせるというようなことで考えていったわけでございます。  したがいまして、直接の、逆に申しますとこういうものであってはならないというものはあるわけであります。先ほどから申し上げましたように、農地の価格というものであってはならない。したがって、たとえば現在時価が反当価でありますれば二十万程度しているとか、あるいは固定資産税の評価額が六、七万になるとか、あるいは引続税の評価額が七、八万になるとか、そういういろいろな他に、あるいは農地の価格というものが客観的にございますが、そういう価格であってはならないというふうに、いわばこれは消極的なメルクマールでございますけれども、そういうことを勘案いたしまして、しかも、せっかく出すのでございますから、やはりある程度もらった持ち重みのするということもこれは考えなければなりませんので、そういうことを勘案いたしまして端的に申しますと試行錯誤の過程で反当二万ということがきまったわけでございます。  ただ、反当二万がそれ自体きまったということではなくて、やはりこれは長官が申し上げましたように、累退率でありますとか、頭打ちであるとか、そういうことを同時的に考えてきめてまいるということでございます。
  19. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 全く答弁になっていないですよ。個人的な、勉強して学校に上がったからどうとか、金持ちのむすこがどうとか、そんな問題ではないのです。重大な社会問題です。そんな個人の方のむすこの学校に上がったごほうびをやるとか、そんなことを例にとって説明するなんて、もってのほかですよ。  私は具体的に聞きますが、なぜこういうことを聞くかと申しますと、大体具体的な報償の対象としては、心理的影響を受けたと。これをショック賃とわれわれは呼んでいるのです。もう一つ貢献賃だね。農地改革貢献賃。このショック賃なり貢献賃をどういうふうな基礎で見積もったか。われわれ予算審議の場合積算の基礎というものを重要視するわけです。それが今度ほかにも影響してくるのです。今後またそういう問題が起こった場合に、また起こり得るわけです。今後そういう戦後の、終戦後のいろいろな処理、にあたりまして、いろいろショックを受けた人がたくさんいるわけです。あのインフレでうんとショックを受けた人、がおりますし、また財産税によりまして非常にショックを受けた人もおりますよ。また、財産税を取られるときに、これは抵抗したりなんかしたら協力しないということになりますが、あの財産税をおとなしく納めたということになれば、農地改革と同じですよ。それに対してもこの報償をしなければならない。あるいは軍事補償打ち切りをやりました。あるいはまた、保険金を一律で切り捨てをやりました。また、封鎖をやったときに切り捨てもあるのです。そういうことに対してみんな心理的なショックを受けているわけです。あるいはまた、戦後処理に協力しているわけです。そこで、ショック賃と貢献賃をどういうことを根拠にして算定したか、これを具体的にここで承っておく必要があります。そういうことがはっきりわかれば、今後それではそれを根拠にして、そうしていまお話しのようなことに対して報償ですね、を求めるということになるやもしれませんから。また、その他に、戦争犠牲に対しては、もしこれを認めたら、正式に次々と出てきますよ、こういうあいまいな根拠でここで出してまいりますと。そこで、いましっかり聞いているわけですよ。  補償ではないのだ、報償だと。そこで心理的な、非常に抽象的なものです。あるいは貢献度合い。それをどうして何を根拠にして算定したか。そしてショック賃は何割であるのか、貢献賃はどのくらいであるのか、そういうこともこれは明らかにしてもらいたい。明らかにできなければ、このあいまいな根拠によって、そうして計算されたものを、わわれは国会で審議できませんよ、国民が納得するように。まるで腰だめじゃありませんか、いまの答弁は。
  20. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) この給付を、報償を行なうに至りましたことは、いま申し上げて御理解をいただいたことでありますが、一体この支給金額をどうするかということは、これはもうお説のようになかなかむずかしいわけでありまして、お話のようにショック賃のものさしということになると、なかなか……。それからまた、貢献の度合いということも、ものさしで、あるいははかりではっきりはかれると、こういう事柄でないだけに、非常にむずかしいわけなのです。しかも、この運動が、要求する側の方面におきましても、これは古くから起こっている問題でございまして、二十年にわたってごたごたした問題でありますが、したがって、そういうショックを受けた人々、また貢献をした人々の気持ちも、ある程度、納得まではいかぬでも、どうやらこういう運動というものにしても、あるいはこういう報償などという問題は、今後もうこれで打ち切りだ、こういうはっきりしたこともしなければならない。  そこで、なかなか、一方また財政的な考慮というものが必要でございますので、そこが非常にむずかしいので、昨日いろいろ給付をするについても総合的な高度の政治的判断に従ったということを申し上げたのでございますが、この金額をきめるにつきましても、この問題の緊要性といいますか、それから社会的公平というような立場、さらにはいま申し上げたような財政的事情、日本経済日本の財政の負担にたえないようなことであってはいかぬし、また、これによってインフレを起こすようなことであってもいかぬし、そういうようなことを総合的に判断して、まあまあこれくらいのところが至当であろう、こういうことで、先刻お話にも申し上げましたように、世上ではよく数千億円というような話もいろいろ出たりなんかしたのですが、そういう工藤調査会の言われるような「巨額」というのは、いま申し上げたような千四百五十六億が決して少額というのではございませんけれども、これを十年間に分割するという意味において、しかも一人当たりにすれば八万円、こういうことで、まあまあ適当ではなかろうかと、そういう総合的な判断でやった、こういうこと、だと考えます。
  21. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま総務長官も——私は前に、この工藤調査会答申の中で「巨額」と言っているのを私は総額で言っていたんですが、いま長官もこの総額について触れたでしょう。ですから、巨額でないとはいえないと言っているわけですよ。前から私はそう言いましたら、あなたは一人当たりではたいしたことではないと言う。これは一人当たりの問題と、財政全体との問題を勘案する場合には、総額もやはり勘案しなければいけないんですよ。財政の問題につきましてはあとで質問しますが、日本の財政にとってこれがマイナスにならないか。政府もお考えになったかもしれませんが、その後情勢が変わっているんです。あとで具体的に聞きますよ。日本の財政は歳入面で大きな変化が生じてきているわけですよね。そういうことを考えますと、この千四百五十六億、年にして百四十何億くらい毎年これは償還していくんですよ。たいへん大きな問題になってくるんです、今後。この点はあとで具体的に聞きます。  そこで、いまのお話ですと、積算の根拠というものはもうきわめてはっきりしていない。まあまあというところだ。いろいろのことを考えて、まあまあだ。腰だめですよ。これで一体国民は満足しますか。中には非常に不均衡を生ずる。一アールの人は二万円です。十アールで二万円でしょう。これは非常に不均衡を生じている。そういう点はどういうふうに調整するんですか。
  22. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) そういうこまかい点になりますと、何事にもこのわずかの差というのは、選挙でも一票の差で全部だめになってしまうこともあるわけでございます。これはひとつまあまあちょっと足りなかったというところはおあきらめ願う、こういうことになったり、とにかくどっかで区切りをしなければならないわけでございますから、そういうわけで、これもまあまあと言うとあるいはおしかりを受けるかもしれませんけれども、どっかで区切りをつけるということで、逆に、少なかった方はがっかりされるけれども、ちょっとのところで上になった方は、とにかくよかった、こういうことで、ひとつそういうところでがまんを願うよりしかたがないと思います。
  23. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはあなた自身はがまん願うと言うけれども、かなりがまんできない人が多いかもしれませんよ。実際問題として、〇・一アール違って倍になっちゃうんですからね。わずかじゃないですよ。これを実施する場合、いろいろな心理的影響、これは相当問題が出てくると思うのです。あなたはわずかわずかと言っていますけれども、やはりこういうものを実施する場合には、そういう末端における影響を受ける人、それから国民の考えというものをよく考えなきゃだめですよ。それはあなた、机上ではわずかかもしれません、が、受ける側になると、お隣の人は九アール半、あるいは九アール九で一万円になる、片一方は〇・一アール違って二万円になってしまう、倍に。こういうようなこまかいように思われることを質問するのは、もともとこういう報償は無理だということなんですよ。そういうことの論証として質問したわけなんですが、それじゃ、次に伺いますが、農地財産税として物納したものは入っていますか、この中に。
  24. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) それは入っておりません。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、これはどうなるのですか。非常にそこにまた不権衡を生ずるでしょう。その問題はどうします。財産税のときに農地を物納した、そういう人があるわけです。そういう人からショック賃なり貢献賃を要求されたらどうしますか。
  26. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) その際には納める方々の自由意思で、その農地で物納あるいは宅地等で物納していただかないでも、金銭ならばなおよろしいわけなんですが、しかし、そういう納める方の便宜を考えてそういうこともできる、こういうことにしてあったのかと存じますので、納めるほうの側の自由意思でなされたのでありますから、そこでこれは除いた、こういう次第かと存じます。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 自由意思だといって、あなたは自由意思のように思いますけれども、現実には税金がないから物納せざるを得なかったでしょう。当時の価格で納めたのです。ところが、その後インフレでずっと高くなるでしょう。政府はうんともうける。そういうことに対してやはり非常なショックを受けたのですよ。また、物納することによって財産税を納めた。あのころの財産税で物納するよりしかたがないでしょう、あれだけの財産で。そういうところも問題になると思うのですよ。これはずいぶんいろいろ問題になると思いますが、議論していますと時間がなくなりますから、それじゃ、次にまた移ります。  きのう問題にしました担保の問題、これについてもっと政令の内容を明らかにしていただきたいのです。この資料をいただきましたが、きのうの御答弁では、交付公債のうち、遺族国債千億のうち国民金融公庫の担保貸し付けは十八億、引き揚げ者国債については四百五十九億のうち六十七億、特別給付金国債については七百四十一億のうち九億担保貸し付けになっていると、こういう資料を提出していただきましたが、この法案の七条四項によりますと、政府関係の金融機関においてこれを担保に取って貸し付けすることができる。だから、国民金融公庫だけじゃないわけですね。
  28. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 具体的な政令そのものはまだできておりませんけれども、いま考えておりますのは、ただいまお話しの点につきましては、大蔵省令で定める金融機関に対し担保権の設定を許すという形で、まあ文章はもちろんそのとおりでございませんが、形では大蔵省令で特定の金融機関を定めていただくというふうに政令はなると思います。  そこで、大蔵省令でどういう金融機関を定めていただくかということになるわけでございますが、昨日一般的に政府のそういう金融機関というふうに申し上げましたけれども、なお具体的には、これは従来引き揚げ者等がそうであるように、国民金融公庫以外はただいま大蔵打のほうも考えておられないと思いますし、私どものほうもそれ以外をお願いするということはございませんし、従来も例がないというふうに任じております。
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣に伺いますが、国民金融公庫におきましては、四十年度、この資金計画出されておりますが、国民に対しての生業資金に対する融資の円滑化をはかるため、四十年は一般会計の出資三十億、それから資金運用部資金及び簡保資金の借り入れですね、八百六十八億円、及び自己資金千四百六十二億円によって、総額二千三百五十億円の貸し付けを行なうという予定になっていますね。そこで、もしこの千四百五十六億の交付公債が出て、そして国民金融公庫でこれを担保にして貸し付けができるということになると、そのほうの貸し付けがかりに多くなった場合ですね、四十年度の資金計画は狂ってきますよ。そうして一般生業資金のほうを圧迫する。あるいはまた、中小企業のほうの、特に零細企業が多いようですが、そういうような資金を圧迫する。そういうことになると、今後これは千四百五十六億ですから、全部すぐにこれが担保貸し付けということにはならないかもしれませんけれども、かなり担保貸し付けを申し込んでくる可能性もある。また、こういう法律で道を開いておるのですから、当然これは利用してきますよ。その場合これを拒否すること、が一体できるのかどうか。制限することができるのか。それから、今後そういう生業資金等、あるいはまた一般零細企業に対する貸し付けを圧迫するという問題ですね、それ、どういうふうに考えられておるのですか。
  30. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この農地被買収者の問題につきましては、さきに本委員会で御審議をいただいておりまする、国民金融公庫法の改正案をお願いしておるわけであります。この国民金融公庫法の改正案が通りますと、御承知の二十億の限度でワクを設けて貸し付けよう、こういうことになっておったわけでございますが、この法律はまだ御審議中でざごいまして、成案を得ないわけでございます。今度この給付金法案が通りまして給付をし、交付公債を出す、それを担保にして貸せるということになりますと、どこでやるか。国民金融公庫以外は考えておりません。  国民金融公庫でもって行なうという場合も、無制限に、一般の貸し出しワクというものに影響がある程度にこれがアグレッシブになる、圧迫要因になるといううことは全然考えておりませんが、この給付公債が、交付公債が担保になるというふうにするには政令もしくは省令でもって規定をしなけばならぬわけでございますが、これを対象にする場合でも無制限にやるということを考えておりませんから、一般会計からそういう特別のワクを繰り入れるというような法律がいま出ておりますので、この法律が通ればこの法律の関連ということも当然考えられますが、通らない場合でも担保貸し付けということがあり得るわけでございます。その場合は一般の貸し付けに圧迫にならないように、ある一定のワクをきめてこれに対処しなければならない、一般的にはそう考えております。  その場合に、制限をするといっても、一般の一定のワクをきめるといっても、実際には幾ら要求が来るかわからぬじゃないか、こういうことになると思いますが、これは先ほど申されたとおり、遺族国債千億に対して十八億、引き揚げ者国債四百五十九億のうち六十七億、特例給付金国債についても七百四十一億のうち九億でございますから、大体、平均すればどの程度の貸し付けワクというものがあれば足りるかということは、おのずからわかるわけでございます。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵大臣はごまかしていますよ。生業資金のあの国民金融公庫法の改正の問題は、あれは生活に困る人については生業資金を貸し付けるたてまえであったでしょう。これとは別建てであったのですよ。別建てなんですよ。これはその上にさらに報償という問題が出てきているのです。それをごっちゃにしているのですよ。
  32. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ごっちゃにしていません。
  33. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ごっちゃじゃありませんか。これは別じゃありませんか。  それじゃ、これを、今度は報償のための交付公債を出すでしょう。それで、これを担保として借り入れる場合、これは必ずしも生活困窮者に限らないのですよね。片一方は生活に困っている人に対する生業資金ということになっているんですよ。たてまえが違うんですよ。それを大蔵大臣ごっちゃにしているんじゃありませんか。
  34. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私はごまかしてもおりませんし、私のしゃべっていることをひとつよくお聞きいただければ、よくわかるわけです。ごっちゃにはしておりません。あなたのほうがごっちゃにお聞きになっているにすぎないわけでありますから、そこでひとつ明確に聞いていただきたい。  私の申し上げておりますのは、農地被買収者に対しまして、さきに本委員会で御審議をいただいておる国民金融公庫法の改正がございます。この改正はまだ通っておりませんが、これが通れば、本法との調整といいますか、調和ということも考えられます。しかし、これがいま通らないということを考えても、この法律だけを中心にして考えても、国民金融公庫法を対象にして担保貸し付けということができます。また、できるとすれば、省令もしくは政令を改正して、国民金融公庫という機関を指定しなければなりません。しかし、その指定して、この納付金法案による交付公債を対象にした貸し付けを行なう場合でも、一般貸し付けに影響がないように十分配慮いたします。十分配慮いたしますということはどういうことかということに対しては、一定のワクがきめられます。一定のワクをきめても、これだけ大きな金額に対してきめられるかというこういう問題が起きますから、これに対しては例がありますように、一定の限度をきめますということを申し上げておるのでありまして、前の問題、国民金融公庫法の改正案が出ておりますが、これが通りますれば、これとの調整ということは考えられますが、これが通らなくても、全然別にこの法律案だけを考えても、国民金融公庫法を対象にして貸し付けのワクをつくることができますと、こう申し上げておるのでありまして、混淆して申し上げておるわけではございません。
  35. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、混淆もしないで、全くわからない答弁ですよ。それじゃ、たてまえが大体違うんですよ、たてまえが。
  36. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) では、前の国民金融公庫法というものを別にして、私の答弁を切り捨ててもけっこうです。
  37. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 切り捨てたって、これは出ているんでしょう。政府は二重に出してきているんですよ。前は、この報償の問題が具体化しないので、一応生活困窮者に対して生業資金として出すと、それでこの問題をおさめるつもりであったのです。ところが、旧地主が、どんどん騒ぎだして、そうして運動を始めて、そうしてこれまた盛り上げて、参議院選挙をまた控えてきたので、わいわい騒ぎだして、とうとうこういうものを出すことになってきたのです。そうして生活困窮者に限らないのですね。  それじゃ具体的に伺いますが、大蔵大臣はこの資料、過去のこの資料によって大体規制できるというが、そんな保証ありませんよ。ですから、規制するなら、はっきり政令の内容を出してください、政令の内容を。
  38. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 十分おわかりであると思って私も答弁しておるのでありますが、政府国民金融公庫法の改正もあきらめてはおらないわけであります。御審議をいただいておるのであります。これはこれ、これはこれというふうに、別に分けておるわけであります。国民金融公庫法もどうぞお通しください、給付金法案もぜひお通しください、あわせて非常にいい法律だと、まあやらなければならぬことだと、こういう考えでございますから、これはひとつ、この法律が通れば国民金融公庫法はいいのだという考えではございません。  また、あなたの御質問のように、国民金融公庫法が通らない現在でも、この給付金法案だけ通るとした場合、国民金融公庫でもってどの程度の貸し付けを行なうか。これはもうあなたの質問では、これはこの交付公債をもらった人全部を対象にするというお考えかもわかりませんが、それは国民金融公庫法の規定がございますから、国民金融公庫の創立目的に沿わない貸し出しはいたさないわけであります。ですから、これはもう国民金融公庫法によっておのずから対象のものはきまっておるわけでございます。ですから、あとは政令でどの程度のワクをつくるか、どういうことにするか、また業務方法書でどうするかという問題は残ってはおりますが、国民金融公庫で貸し出す、また貸し出すということは無制限ということではありませんから、従来の一般貸し付けのワクを圧迫をして、一般の貸し出し先に迷惑をかけないように十分努力をいたしますと、こういうことで御了解願えませんか。
  39. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 御了解できませんね。と申しますのは、さっき申しましたように、これは資金計画が出ているのですよね。四十年度の資金計画には、これの交付公債を担保にして貸し出す資金、これは人っていないわけですよ。だから、その資金計画を変えないと、それだけそのほかのほうの生業資金を圧迫することになるわけです。こういうことです。
  40. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十年度はもう国民金融公庫のワクはきまっておりますし、これに対する貸し出しの計画もきまっておりますので、この法律が通りましても、いまの資金の状態で、ほかのものを削ってまで、この給付金法案で国から出る交付公債を担保にしての貸し出しを行なうということは考えておりません。おりませんから、国民金融公庫でやるとすれば、例の国民金融公庫法の改正案がありますから、あれが通れば、二十億どこから——まあどこからというよりも、何から出すか、予備費でやるかは別といたしまして、一般会計から二十億出してやるという道は開かれますが、現存の時点における国民金融公庫の貸し出し先の中には、これは入っておらないわけでありますから、これを入れるつもりはございません、いまの時点においては。これを入れるということになると、まあこれから一ヵ月、二ヵ月、三ヵ月たってから、この給付金法案が通って交付公債農地被買収者の手に渡って、それが国民金融公庫のほうに持ち込める時期、ちょっといま申し上げられませんが、そのころ回収金が非常に多かったとかで貸し出せるという状況になりますか、それとも一般会計から金を国民金融公庫に入れるか、どっちかの条件が具備されなければ、いまの状態国民金融公庫から貸し出すという状態ではないということを申し上げたのです。
  41. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますとね、この法律に戻るわけですが、この法律では、政令で定めた場合は国民金融公庫においてこの農地報償による交付公債を担保にして貸し出しできる、こういう法律なんですから、しかもこれはいつ——この交付公債は六月十六日ごろ発行するということになっているのでしょう。
  42. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) はい。
  43. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) かりに法律が通りますと、それぞれ請求を出していただきます。それで、全部を一応二ヵ年間のうちに請求を出していただくように計画しておりますが、初年度は約百万と考えております。ただ御承知のように、非常に……
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 百万じゃないでしょう。
  45. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 初年度は百万人くらい出るであろう、全体で百六十七万でございますから。ただ、御承知のように、過去のかなり古い時期の面積等を確定して請求してくるわけです。こちらも相当その認定をするのに手間がかかります。そういう意味におきましては、まあ年に何回か分けるというような便宜的措置をとると思いますが、まず八月以降にぼつぼつ渡していくというふうになると思います。  それから、なお、この政令でございますが、この中でどうしてもすぐきめなければ、つまり法律公布と同時にきめなければならないところと、それから、いまのように、国民金融公庫の資金事情その他から見まして、すぐきめなくてもこれはいいという部分とございます。そうしまして、この七条四項の部分、特に大蔵省令にもう一ぺん譲って、そうして端的に申しますと、国民金融公庫のいろいろな事情で、大蔵省の省令でやる、もう一ぺん具体的にやっていただくという段取りになろうかと存じます。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この法律では、「国債の発行の日は、昭和四十年六月十六日とする。」、こうなっておる。ですから、やはり国債は四十年度内にこれは発行されると考えていいわけですか。
  47. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 日付が四十年の六月十六日になるわけでございまして、請求は三年でやっていただく。したがって、四十一年に請求されるものもあるわけであります。現実に渡すのが四十一年になり、場合によっては四十二年になるものもある。それでも公債の日付は四十年の六月十六日にするということでございまして、実際第一回の償還は、かりにことし国債を渡しましても、第一回の償還はもちろん来年度の六月十五日になるわけでございます。そういうことで、実際渡す、物理的に渡す時期とそれから日付とは違うわけでございます。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわかるのです。わかりますけれども、四十年度内に交付を受ける人があるわけでしょう。どうなんですか。
  49. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) それは先ほど申し上げましたように、四十年度内にむしろ私どもは約百万人に対して渡せる、ただ六月のすぐには渡せませんけれども。それはもうおっしゃるとおりでございます。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわかりました。ですから、交付を受けた人が国民金融公庫に担保に持っていけば貸し出しを受けられるということになるのですよ。そこでさっきの質問をするわけです。  それでは、この点はもっとはっきりしないと非常に問題なんですが、じゃ大蔵省はそのための貸し出しの規制をするのですか。規制をすればだいぶ法律の趣旨と違ってくるわけです、政令の内容によりますがね。先ほど、この法律で政令に譲るというから、いまここですぐに明らかにしなくてもいいというのですが、われわれが法律を審議する場合に、あらかじめ政令についてできるだけ十分われわれが知った上でないと、賛成、反対の態度をきめにくいわけです。政令に譲るという場合は、なるべく政令の内容をあらかじめわれわれは明らかにしてもらっておかなければならないわけです。そうしないと、この法案に対する評価なり態度なりがきめられないわけです。
  51. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 私、政令を明らかにする必要がないというつもりで申し上げたのじゃなくて、すぐきめなければいけない政令と、それから政令を実際に発動する時期が必ずしもすぐでなくてもいい時期がございます。これは後者のほうでございます。
  52. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 第七条の第四項、「第三項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」、こういう制限を付加しておるわけであります。この制限外の、政令で定める場合には処分してもよろしい、こういうわけでございます。  政令とはどうか。政令とは、大減省令で、定める金融機関に対してという金融機関の名前をきめるわけであります。金融機関の名前は国民金融公庫ということしか現在は考えておりません。国民金融公庫というよりほかの金融機関というものを考えておりません。ですから、この七条の四項を受ける政令の内訳というものは、国民金融公庫という状態になるわけであります。そうすると、国民金融公庫の担保に供する場合は担保に供してもよろしい、その他はいかぬ、こういうことになるわけであります。政令は非常に単純なものでございます。  そういうことをあなたは御承知で、国民金融公庫の現時点における資金計画を見ると、国民金融公庫の資金計画の中には農地被買収者に貸すという条項は何も書いていない、書いてないから、どうするのか、こういうことでございますから、これはことしまあ相当な人たちに公債が渡っても、すぐ国民金融公庫に担保に持っていくということは、あるかないかはまだわかりません、現在のところは。これがどうしても貸し付けを必要とするというような場合が起きても、国民金融公庫の貸し付け資金量が現在の時点よりも増して新たに原資ができたとき、及び大蔵省国民金融公庫に対して、財投計画の変更等がありまして、財政投融資の変更で国民金融公庫に原資を新たに提供する、こういういずれかの場合がない以上は、国民金融公庫がこれを担保として農地被買収者に貸し出しのワクを設けるということはできないわけであります。貸し出すという場合には、新たな原資ができるかもしくは財投計画の変更等によって原資を入れるか、いずれかのことがなければ、今年度の計画としては国民金融公庫では貸し出さないということになるわけであります。
  53. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは貸し出さないということを何か規定するんですか。貸し出さないと言ったって、それを担保にして貸し出すことができることになったら、国民金融公庫の貸し出しの条件があるわけでしょう、それに合った場合は貸し出さないわけけにいかないのじゃないですか。
  54. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政令も一緒に出しておれば、もう制限することはないということになれば、国民金融公庫に当然持っていかなければならないということになるの、でありまして、政令は出さないというわけでありますから。おわかりですか。国民金融公庫の財源内措置を行なわない以上は政令で指定しないわけでありますからそうすると、七条四項の本文が生きておりますから、譲渡や担保には供しられないというままいくわけでありまして、財源措置ができたときには、政令を出せば、国民金融公庫というものを指定すれば、国民金融公庫にその場合にはある一定のワクが設けられる。設けられるような段階にならなければ政令で指定しないということですから、相当しぼってある。それはもう七条の四項がもとであるということを考えていただきたいと思います。
  55. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 しかし、いつまでもしぼれないでしょう。ですから、かりに四十年度にまた資金計画で国民金融公庫の資金をふやす、一般会計から支出かなんかしていただくということになれば、政令を出す、こういうことですね。そうなりますか。
  56. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政令で国民金融公庫というものを指定すれば、当然この七条四項の規定の除外例を政令で認めるわけでありますから、そうすればそのまま持ってくるわけでありますから、持ってきたときに金がありませんと、こういうことではだめでありますから、政令で指定する道を開くというときには何らか貸し出し財源措置を行なう。行なうといいますか、貸し出せるような財源が出てくるといいますか、どっちかだと思います。一つは、前段は、財政投融資の計画を変更して原資をもう少し繰り入れる場合があります。そうでなければ、償還金その他が入ってきていまの計画よりより以上に原資ができたとき、そういう特別な場合を除いては七条四項の原則が生きておる、そう考えております。
  57. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはわかりましたが、いつまでも政令で指定しないわけにはいかないでしょう。そうしますと、結局は、この交付公債は政令で定める場合においては国民金融公庫において、担保力を有する。  そこで、問題にしなければならないのは、工藤調査会でやはり答申されました資料の中で、この被買収者の所得を見ますと、一般世帯より所得が多いのですよ、ずっと。それからまた、これを見ますと、耐久消費財の普及率というの、がこれに出ております。それは被買収者のほうが一般より普及率が高いのですよ。こういうところから見ると、この一般世帯よりは生活水準の高いそういう人たちのほうに生業資金として流れていくことによって、被買収者よりも生活水準の低い人のほうの生業資金、そういうものをやはり制約することになるんですよ。こういう影響が出てくると思うんですね。ですから、そういうことは私は好ましくないと。なぜこれを最初——ほんとうに困っている人なら別ですよ。だから、困っている人についてはいまの国民金融公庫法改正が出ているでしょう。改正が出ているんですよね。じゃ、なぜこれを政令で担保力を有するようにするのか。これはする必要がないじゃないですか。その点、いかがですか。
  58. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあ本文、この交付公債というものは譲渡、担保等を禁止しておる七条の四項がもう原則でございます。しかし、これは何にもないということだと親切が足らぬと、こういうことでありますから、政令で指定する場合は除外例として担保に供することができると。それは一体どこかと。それは国民金融公庫だと。国民金融公庫は金持ちに貸せるところじゃございませんから、いずれにいたしましても、国民金融公庫法の精神を逸脱しない範囲のものを対象として担保に供するということになるわけでございます。あなたは、いまの国民金融公庫法の、工藤調査会のほうの答申にもあるように生活困窮者というようなものの生業資金等は別の法律で貸せることになっているんだからと言われますけれども、あれはまだ通っていないんです。あれを一緒に通していただければ、これは今度この政令条項を削れと、こういうこともございますが、前の国民金融公庫法をいつ通していただけるかさっぱり皆目わからないような状態で、全然交付公債というものに対して除外例というものを設けないというわけにもまいりませんし、ですから、まあ一体ことしはどうかという問題でありますが、例を申し上げますと、未亡人公債等につきましては、法律の施行が三十八年の四月であり、それから省令公布は三十九年の七月であります。一年半ばかりおくれている。実際の担保貸し付けを開始したのは、その省令公布の三十九年の七月からということでございます。実際この法律が通って交付公債がある時期にわたって、すぐ担保に供するというような必要は出てこないだろうと、こういう例から申しているのであります。しかし、結局の問題として、担保の貸し付けの道を開くという場合、一般の零細な対象に対してやっぱり圧迫になると、こういうことであれば、圧迫に絶対にならないようにしなければならないということになれば、財投の原資を入れるというような制限をつければそういう心配はなくなる、こういうことでございます。
  59. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは非常に政治的な問題なんですよ。あとでもこれは質問したいと思っているんですが、佐藤内閣の社会開発の中でひずみを直すというのが一つの大きなたてまえになっているんですから、ひずみを直すなら、被買収者よりは生活の水準の低い人のほうに企業資金が流れていくようなそういう配慮をすべきですよ。同じ原資の配分の問題になってくるんです。やっぱりそういう政治の姿勢との問題とも関連してくるわけです。  じゃ、次に伺いますが、一応この公債は六月の十六日に発行するという法律になっています。これは交付公債ですが、この交付公債というものは財政法上どういう取り扱いになっているんですか、交付公債は。
  60. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 財政法上どういう取り扱いになっているかという御質問でございます。財政法第四条に「国の歳出は、公債文は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」という規定がございますわけでございます。これはいまさら申し上げるというほどのことでもございませんが、まあこれで健全均衡財政を保つということでございます。問題は、ここにいうところの公債に交付公債が該当するかいなかという、こういう問題であろうかと思います。  昨日、先生のほうから、交付国債は公債ですかと、こういう御質疑が出たわけでございますが、学問的一般論といたしまして、もちろん公債でございます。しかしながら、この財政法第四条にいうところの公債とは考えておらないわけでございます。と申しますのは、この交付公債と申しますのは歳入の財源といたしまして発行される公債ではございません。まあ財政負担を将来に延ばすという証文みたいなものでございます。財政の平準化のために行なわれるのが常なわけでございますから、そういった公債でございまして、国がいわば現金支出にかえて交付をいたすと、こういう意味で交付公債という名前を昔から使っておったわけでございます。かような意味におきまして、この交付公債というものはいろいろと例があるわけでございますが、いまさら申し上げるまでのこともないと存じますが、戦没者遺族弔慰金のための交付公債でございますとか、引き揚げ者の交付公債でございますとか、あるいは連合国財帳の交付公債でございますとか、いろいろ例があるわけでございます。かような意味の公債でございまして、財政法第四条にいうところの「公債又は借入金以外の歳入」というその公債には入らないという解釈をとっておる次第でございます。
  61. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 第四条ですね、いま言われましたように、はっきりと「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。但し、公共事業費、出資金及び貸付金の財源については、国会の議決を経た金額の範囲内で、公債を発行し又は借入金をなすことができる。」となっておりますが、問題なのは、公債または借り入れ金というのは、これは国の一切の債務を一般的にはさすものですよ、一般的には。しかし、この四条で規定している場合は、これは国の債務全体をさしているものとは思えないんですね。じゃないと。それでは、この四条で規定している「公債又は借入金」というのは、内容は一体どういうものであるか。二つあると思うんですよ、二つ。その第一は、歳入の不足を補うための金銭の借り入れをするための債券、これが一つでしょう。もう一つは、歳出にかわる手段としてなされる債務負担。この二つしかない。この二つだと思う。さっきのお話は、この第二段のほうの歳出にかわる手段としてなされる債務負担。そうでしょう。そうなると、これは一種の国庫債務負担行為に非常に似ているんじゃないですか。そうでなければ、一体どういうふうにこれを財政法上規定するのか。四条にいう公債でもない、借り入れ金でもない。それでは何なんですか。
  62. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 交付公債は第四条で規定してございます公債ではないというところまで先ほど申し上げたわけであります。これは国庫債務負担行為と似ているではないかといま先生おっしゃいましたが、おっしゃるとおりでございます。債務負担をいたすわけでございます。たとえば、当該年度におきまして税金の歳出を伴わないということでございますが、これは繰り延べてと私のほうの答弁で申し上げましたが、財政平準化のためこの場合十年間なら十年間ということで債務を負担するわけであります。  財政法第十五条の規定でございますが、国庫債務負担行為という規定がございます。「法律に基くもの又は歳出予算の金額」、カッコ書きは除きますが、「若しくは継続費」云々とございまして、「国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以つて、国会の議決を経なければならない。」と、こういう規定がございます。これが予算書にいっているところのいわゆる丁号の国庫債務負担行為でありますが、この交付公債というのは実質的に丁号の債務負担行為ではないかというお尋ねでございますが、おっしゃるとおりと考えてよろしいかと存じます。  そこで、第十五条に「法律に基くもの」と、こういう規定があるわけでございます。したがいまして、交付公債によります場合には、過去の前例をずっと見てまいりましても、そのたびごとに今回のことき単行法をもってお願いを申し上げるというかっこうで行なわれているわけでございます。「法律に基くもの」というところを読んでいただきたい。
  63. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 「法律に基くもの」のほかのほうに入らないんですか。法律によってやる。
  64. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) ここの十五条にいっておりますのは、「法律に基くもの」のほかは予算総則なりなんなりに書いて国会の議決を経なければならない、かように書いてあるわけです。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 わかりました。そこで、問題になるのは、この「法律に基くもの」も、これはあらかじめ予算をもって国会の議決を経なければならないんじゃないですか。
  66. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) それをよくごらんいただきたいと存ずるわけでございますが、「法律に基くもの又は歳出予算の金額」、カッコ内は読みませんが、「若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外」と、こう書いてあるわけでございまして、「ものの外」は「予め予算を以て」国会に提出する、かように書いてあるわけです。「国会の議決を経なければならない」というのは、「法律に基くもの又は歳出予算の金額若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外」、こういう表現でございますので、法律に今回のごとく書いてお願いをいたすというかっこうでよろしいかと存じます。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると、法律に基づく場合は、予算総則にその限度やなんか書かなくていいのですか、法律に基づく場合は。国庫債務負担行為ということを言われましたね、実質は国庫債務負担行為であると。これは予算の中には国庫債務負担行為も入っているでしょう。予算総則、歳出入予算、国庫債務負担行為、継続費、明許繰り越し、これが予算ですよ。そうすると、やはり予算総則にこれは書かなければならぬと思う、限度を。そうしなければ私は財政法違反になるんじゃないかと、こう思うのですが、どうですか。
  68. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) 国庫債務負担行為的なものと申し上げたわけでございまして、予算書におきますところの形式的な意味におけるところの国庫債務負担行為、丁号国庫債務負担行為といっているものとは違う。「法律に基くもの」、これがいまここに申し上げておるところの国債でございまして、その総額もその法律に書いてございます、かように申し上げたわけでございます。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 財政上、それじゃ何なんですか。借り入れ金か公債か国庫債務負担行為なのか、それ以外なんですか。それ以外だったら、どういうものなんですか。いまのお話ですと、実質は国庫債務負担行為、実質はですね。それはそうだと思うのですよ。予算をここで要求しても、すぐに歳出が伴わない。契約の時期が来たときにこれは歳出予算に納まれるわけですからね。この交付公債ですと、発行してもすぐ予算に計上しなくていいのですよ。四十一年度、の予算にこの償還期限が来たものを歳出予算に計上すればいい。国庫債務負担行為と同じですよ。しかも、中身は契約でしょう。あんた、借り入れ金じゃないと言うのですから、公債でもないと言うのだから。一つのこの法律に基づく給付金というものを支給する契約なんです。国庫債務負担行為。契約がそこで実行される段階において予算に計上する。国庫債務負担行為ですよ、実質は。そうすると、これはやっぱり予算総則に限度を私は設けなければならないと思う。  ここに法律に、第七条の二項ですね、「前項の規定により交付するため、政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。」となっておるのですよ。だから、「必要な金額を限度として国債を発行することができる。」、必要な金額の限度をこれは予算総則に私は書いておかなければ、載っけておかなければいかぬと思うのですよ。どうですか。
  70. 鳩山威一郎

    政府委員鳩山威一郎君) たがいま法規課長から御答弁をいたしましたとおりでございますが、なお若干ふえんして申し上げます。  ただいま形式的な国庫債務負担行為、これは予算総則に掲げる、形式的に国庫債務負担行為という形式で丁号予算としてお願いをいたしておるものでございます。これは債務負担の限度をこの形式でお願いをするというものでございます。ただいまは法律で定めた債務負担というのがございます。これはたとえば恩給のような場合、これは恩給証書を発行いたしまして、これは恩給証書といっておりまして、公債とはいっておりません。ただ、これは恩給受給権というものをそこではっきり確定をいたしまして、これを郵便局を通じて払うという制度でございますけれども、これは私、実態を申し上げますと、これは国が債務を恩給証書という形で債務負担をいたしておりますが、その負担の要件というものは恩給法で全部詳細にきめられてあるわけでございますから、これは丁号国庫債務負担行為には書いてないわけでございます。これは恩給法で全部その金額がはじけるまでに詳細に規定がされておりますから、したがいまして、この形式上の国庫債務負担行為というものはとってなくて、法律規定によりまして国庫が債務を負うということになるわけであります。これがただいま申し上げました法律の定めるところによりまして国が債務を負う、こういう場合に該当する一番端的な例かと思いますが、今川の場合はこれが公債という形で出ておるわけでありまして、これは実体的には恩給証書とこの交付公債とどこが違うかということになりますと、これははなはだ似たような面がございます。しかし片っ方は恩給証書といいまして、公債とはいっておりません。公債という以上は、やはり一定の金額を明示した確定的な債権というものになっておりますが、恩給の場合は所得制限がありましたりいろいろございます。これは個々の債権債務という形になっております。法律の定めというだけで形式的な国庫債務負担行為という形式はとっていない。  しからば公債であるかどうかというお話でありますか、これは形式は国庫債務負担行為に非常に似ておりますけれども、形式上公債という杉をとっております。これは公債は、先ほど第四条にいっている公債というものは、これは公債についての規制をいたしておるわけでありますが、その規制のしかたといたしまして、この公債を発行しまして財源を調達するという場合のことを書いてあります。これは予算というものは、いま一般会計の予算は現金主義で書いてありますので、一切の歳出とかあるいは歳入は、これは現金の収納をもって歳入といい、また支出の面は現金が支出される場合をもって歳出といっておるわけでありまして、この現金の収納のために発行するものが四条の公債であります。で、それ以外のために発行しておりますのが交付公債という形をとっております。これは現金の収入を伴わないものでございます。したかいまして、四条に申す公債——公債は公債でございますが、四条の規制を受ける意味は、現金収入を伴う公債という意味で四条が書いてございます。したがいまして、公債には違いありませんが、現金収入のための公債ではない、こういうふうに解釈をいたしておる次第でございます。  まあいろいろ法規課長の説明と実体は同じことを申し上げておるのでありますが、ややふえんをいたしました。誤解があるといけませんので……。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大蔵省がこの四条の規定についてそんなあいまいな解釈のしかたではだめですよ。いままで、従来解釈のしかたがあるじゃありませんか。ずっと大蔵省が出している文献をぼくは見ましたよ。そうしましたら、さっき言いましたように、四条でいうところの公債及び借り入れ金は二つなんですよ。一つは、いま言われたような歳入の不足を補うための金銭の借り入れをしたための債務、これが一つです。もう一つは、歳出にかわる手段としてなされる債務負担行為。だから、この交付公債は明らかに第二の公債及び借り入れ金に該当すると私は思うのです。  それで、これは国庫債務負担行為に非常に似ているわけです。いますぐに歳出予算に計上しなくてもいい、契約の償還の時期が来たら歳出予算に計上する、これはよく似ているんですよ。もっとはっきりしなきゃいけないと思うのです。しかも、この法律によりまして、「政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。」こういう形で白紙委任で、われわれはうんと言っていいんですか。なぜここにはっきり限度を書いておかないんです。われわれこういう白紙委任で予算を、いかに法律に基づくとはいえ、そういうことをわれわれ承認したのでは、これは財政を乱すものですよ、財政を。みんなごらんなさいな。みんなそこに厳重に、国庫債務負担行為についても、公債についても、これはちゃんと予算総則に限度を規定して、国会の議決を経なきゃいけないということになっているんですよ。それにもかかわらず、交付公債に限って、このような「政府は、必要な金額を限度として国債を発行することができる。」と書いてあって、限度が何ら示されていないんです。こんな法律規定のしかたでいいのですか。もし法律で出すなら、ここに金額をはっきり出すべきです。金額を出すならば、法律によってそれではっきりするでしょう。そうしなければ、かりにこれを実行して、交付公債という形で出しても、次年度にずっとこれは歳出予算になってくるんですから、全体の日本のこの財政の長期的見通しにおいてその影響を見る場合に、限度をはっきりしなければ判定しようがないじゃないですか。  また、白紙委任でこれ通っちゃったら、政府は一応見積もりとしては千四百五十六億千八百万円になっていますけれども、しかし、はっきり法律に書いてないんですから、必要とする場合にはもっと出すかもしれませんよ。いま一応見積もられている千四百五十六億以上になるかもしれませんし、以下になるかもしれません。しかし、それははっきりここに限度を、もし大事をとるならばその最高限度を出しておいて、それで発行しなきゃいいんですからね。しかし、今度限度をこえた場合には、国会で批判を受ける、また財政法違反になる、この法律違反になるから、出せない。何かここに規制をしなきゃならないと思うのですよ。こんな形で交付公債というものをむやみに出して、国会でさようでございますかというので認めて、一体これはいいかどうかですよ。それも金額がわずかじゃないのです。いままで私、資料を出していただきましたが過去において交付公債として出たものは大体七百億くらいですよ、全体で。それが一挙に千四百五十六億ですよ。たいへんな額ですよ。過去において出したのは大体百億くらいのものです。それを一承に千四百五十六億を出すなんて、何かここにやはりはっきり限度をうたうべきではないか。そうしなければ、国会としてこんなような政府に白紙委任を渡すような形の法律を通すことは、私は問題だと思うのです。
  72. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) この第四条には、公債を出す場合の制限を明確にいたしておるわけでございますが、いま御審議をいただいておりますものは交付公債ともいい、交付国債ともいい、未亡人加給も同じものでございますが、財政法四条にいう公債ではないということは明らかでございます。じゃ一体何かといえば、これは十五条に規定をしておる債務負担行為に類するものである。将来に国が……。(「国庫債務負担行為しか書いてない」と呼ぶ者あり)
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 債務負担行為ですね。
  74. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) でありますから、債務負担行為です。これは恩給法でいえば恩給の受給権になりますし、これは今度この法律に基づく受給資格になりますし、それから未亡人加給は未亡人加給法に基づく受給権になりますから、これは口では交付公債ともいい、交付国債ともいいますが、国庫債務負担行為ということは事実でございます。  債務負担行為に関する財政法の規定はどこにあるかというと、十五条にございます。十五条には二つ書いてあります。一つは、法律によらないものは予算総則、予算書に書いて、そこで国会の議決を経なければいかぬと書いてありますから、予算書に書いてあって議決を経たものは適法であるということは言うまでもありません。もう一つ法律によるもの、こういう規定がございます。でありますから、法律によるものとは何ぞや。これは恩給法とかこの農地買収者等に対する支給法とか、こういうものを十五条の法律がさしておるわけでございますから、この十五条に基づくこれらの行為は、法律が制定されれば予算書に計上しなくても当然財政法はそれを許しておる、こう解釈しております。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それならば、財政法十五条によれば、「法律に基くもの又は歳出予算の金額若しくは継続費の総額の範囲内におけるものの外、国が債務を負担する行為をなすには、予め予算を以て、国会の議決を経なければならない。」、もし法律に基づく場合は、その法律が国会の議決を経ればいいわけです。でしょう。ですから、やはりその法律に限度をやはり書くべきだと思うのです。それでなければこのつじつまが合わないんですよ。そのかわり予算のほうには、予算総則には書かなくてもよろしい。しかし、法律にはやはり限度を書かなければつじつまが合わない。この精神が生きてこないと思うのです。
  76. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) それはわかります。それは、あなたが財政法というものは厳密でなければならないということで、十五条を受けて、法律でもって制定をされた場合には予算書には書かなくてもいい。これは当然でありますが、しかし、それには限度を付すべきであるという、これは付すべしとは書いてありませんが、当然そうあるべきだ、財政法の精神はそうだ、こういうお気持ちはわかります。わかりますが、限度を書き得ないというものもあるわけでございます。まあおおむね書き得ないということばないけれども、書くには非常にむずかしい。  というのは、この農地の被買収者、これも何百万人だということにはなっておりますが、これはなかなか調べてみるまではたいへんなことであります。千四百五十何億といいますが、ある人は九百億ともいうし、ある人は千三百億だろう、ある人は千四百億だろう。こういうなかなか計算のしかたによっていろいろな問題があると思うのです。ですから、これは(「おかしいぞ」「でたらめじゃないか」と呼ぶ者あり)でたらめじゃありません。これは皆さんも十分おわかりになるとおり、被買収者の調査は総理府でやりましたが、そんなに明確な、しかもその中でもらわない人もありますし、そういうものをもらってもわれわれ返納します——これは赤城農林大臣などは被買収者でございますが、私は受けません、こういうことでありますから、こういう人は非常にたくさんありますので、実際においてこまかい計算をして、千四百何十億になる、これは一応いままでの調査の結果出た数字でありますが、これは明確な数字は出てこないわけであります。ですから、非常にこまかい制限をして条件を付して、これによって徹底的に調べて、それでその受給資格というものを十分認定しなければ交付公債を出しませんと出ておるのでありますから、あなたの言うお気持ちはわかりますけれども、千五百億を限度としてというような、限度としてというような総体的な金額を盛る、法律規定するということは非常にむずかしい状態であります。  これは恩給法においても同じことなんです。未亡人加給の場合もこの議論が出ましたが、同じことなんです。ですから、単価を書てある。一人に対してこういう条件の場合幾ら、二万円、こういうことになっておりますから、総額法律に明示しなくても国損を来たすというようなおそれはないわけでありますから、財政法の精神にも適合する、こういう立場をとっておるわけでございます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大蔵大臣、矛盾していまますよ。さっきは財政法の精神からいって、やはり限度を法律に書くのも気持ちはわかると大蔵大臣は言いながら。それじゃ、普通の鉄道の工費とかその他の公共事業費なんかの場合、国庫債務負担行為をやりますね。そのときの限度を設定するほうがよほどむずかしいと思うんですよ。そうでしょう、物価の変動その他によって。それにもかかわらず、予算総則にちゃんと最高の限度はそこにはっきりと設けなければ、記載しなければいけないことになっているのですよ。そんなにはっきりするなら、なぜここにはっきり限度を書けないのですか。これは限度以内ならいいのです。限度をこえてはいけない。だから、限度をちゃんと設定することによって、ルーズな予算の使用というものを国会が縛るわけなんですよ。そこの限度というものをはっきり設けないで、「必要な金額を限度として国債を発行することができる。」、こういうような形では、十五条の精神はここにはっきり生きていないと思う。ですから、今後の問題もありますよ。もし大蔵大臣がさっき言われたように、気持ちはわかるというなら、今後そういうふうにすべきじゃないですか。今後法律をもって予算にかえる場合は、やはり限度をはっきりさせるべきじゃないですか。
  78. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 限度をはっきりすることがよりベターであるということはよくわかります。非常によくわかりますが、予算書は御承知のとおり限度をきめておりまして、予算のもとできめた限度以外は支払うことはできません。これはもう予算の性質上当然のことであります。ところが、これが千四百五十六億ですかと言っておりますけれども、この法律の条件に適合するものが出てきた場合に、千五百億でも、支払いをしないというわけにはいかないわけであります。そこが予算と法律でやるものとの違い。  また、予算の場合は総額がきめてございますが、単価やその他の内訳は出しておりません。また、法律できめるものは単価がきちんときまっております。条件は法定されておりますから、この法律の条件を満たすもの、だけこの法律によって精算をして交付金が出されるわけでありますから、お気持ちはよくわかりますが、まあおおむねどの程度になるのかという予想数字は御説明で申し上げるということで御了解をいただくということのほうが、やはり現実的だ。これは未亡人の給付金国債の場合も、引き揚げ者の場合も、遺族の場合も、こういう問題はなかなか的確に法律でもって限度をきめるということはできない。単価をきめて今日に至っておるということでございますので、そういうことで御了解いただければ幸いであります。われわれは、できるだけ法定するといっても、国民に、どのくらいかかるのか、限度を法定できればより合理的だという考えはよくわかりますので、検討はいたします。
  79. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 検討しますと言いますけれども、しかし、今度は国会の——大蔵大臣だって国会議員でしょう。特に大蔵大臣は計数に明るいし、大蔵大臣はよく御存じのはずでしょう、国会の立場で予算についての規制は十分しなければいけないのです。その限度というものをやはり設けて、たとえば、少し極端なことをいえば、給付金交付見込額試算というのがありますが、これを見ますと千七百七十八億なんです。そうして交付の見込み額千四百五十六億ですよ。だから、そこで千四百五十六億を少しこえるかもしれないというなら、それを少し上回って限度を設けておいて、その範囲外だったら、これは支出がもし足らなかったら、今度は国会でまた法律改正するなり、予算として改正するには補正予算が出てくる、こういう形にしなければ、国会の立場で、国民の非常に多くの税金を支出するのですから、そこについてはあらかじめ限度というものを設けなければいかぬと思うのです。それじゃ何か白紙委任するようなものじゃないですか、これだけでは。  普通の国庫債務負担行為には、ちゃんと財政法で、予算総則にちゃんと限度を設けている。ほかの公債についても限度をちゃんと明記するわけでしょう。この点は私は財政法の精神にとにかく違反する。法律規定すれば何でもできるということになってしまう。法律やれば何でもできるということになっちゃうのです、これでは。それを多数でもって強引に通してしまう、そうすれば何でもできるということになってしまう。財政法というものがあるのだから、その精神にのっとって、国庫債務負担行為なら国庫債務負担行為規定にのっとってやるとか、公債借り入れなら公債借り入れの規定にのっとってやる、そうしなければだめだと思います。これは非常に問題があると思います、この法律。どうですか。
  80. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) よくわかりますが、現実問題としまして、未亡人に対する加給法、同じ法律が出たわけです。同じ法律なんです。引き揚げ者に対する給付金もそうです。五百億程度だろうという説明をしておったわけでありますが、引き揚げ者に対して全部交付したのが四百五十九億というものが出たわけであります。未亡人は大体七、八百億だろうということで、当時、そういう数字がおおむね真実に近い、こういうことで同じような法律をお願いいたしましたら、七百四十一億という数字になったわけです。ですから、私は、まあ単価もはっきりしている、条件もはっきりしている、しかもその総額というものがわかって、法律に、本法による支給限度額は千五百億であるということが書ければこれはいいわけですが、どうも一人でも二人でも多くて、同じ法律の条件を満たしているという場合に、法律改正しなければ払えないということは必ずしも必要であるかどうか。これはもうこの法律で条件というのは非常にきびしく明確に書いてございますから、いままでの例から見ても——あなたの、言われることはよくわかります。これは憲法に背反してはならない、財政法の精神を曲げてはならないと。これは当然のことでありますが、私は今度の法律総額規定されておらないということで財政法の精神をゆがめているのだということはないのでありますから、これはひとつ事実等も考えていただいて、将来総額が明示できるものはもちろん総額を書くことがいいことかもしれませんが、この種のものに対してはいまの条文で御了解いただきたいと思います。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は総額をきちんと書けと言っているのじゃないのです。千四百五十六億一千八百万円できちんと済むとは思っていない。しかし、限度というものを明らかにすべきだというのですよ。それは財政法の精神ですよ。きちんと総額を書くことは、幾ら計算したってそれば無理ですよ。ですから、限度というものを、この年度内においてはこのくらいじゃなければならないいとう全体の財政との関連で、公債を発行したり国庫債務負担行為をするのでしょう。ですから、全体のバランスをにらんで国庫債務負担行為はこのくらい、国債はこのくらいというふうな、全体をにらみながら、そこで限度を設けるわけでしょう、それ以上発行しちゃいけないから。そういう意味で限度と言っているのですよ。それは限度は、財政法十五条にちゃんと規定しているような精神に基づいて、法律によってこういう予算を伴う内容のものを出してくる場合——そうでなければ、法律によれば何でもできるということになると非常に財政法を乱すものだから、国会の立場としてはそういうたてまえをとらざるを得ない。  次に伺いますが、もちろん千四百五十六億というのは全体としては非常に巨額ですよ。そこで、将来の日本の財政との関連を十分勘案されたと思うのです。また、勘案しなければいけないわけです。そこで、この農地報償法案日本の今後の財政との関連を質問したいのです。  そこで、資料としていただきましたが、今後の国債の償還につきまして伺いたいのです。ざっとですね、この資料に基づいて今後の全体の国債の償還と、それから被買収者国庫債券の償還ですか、償還との関連について説明していただけませんか、この資料を。
  82. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) お手元にお届けしましたように四十年五月十八日現存の国債の総額は四千九百四十二億四千四百万円ございます。この中には外貨債も全部人っております。換算率は現在の換算率を使っております。これを法律規定によりまして大体どのくらいずつ償還するかということになりますと、昭和四十年が二百十四億、四十一年が二百七十三億、四十二年が八百四億、四十三年が四百六十二億、四十四年が三百四十二億、四十五年が四百六十六億、四十六年が六百四十八億、四十七年が三百五十七億ということに一応計算せられるわけでありますが、こういうふうにしますと、四十八年、四十九年、五十年は、四十八年が九十三億、四十九年が五十一億、五十年が五十二億、ほとんど国債はゼロになってしまう、こういうことになるわけでございます。  この中には普通国債、農地証券、遺族国債、引き揚げ者国庫債券等ございまして、農地被買収者の問題、またこの国会で通りました遺族弔慰金の問題等は含んでおりません。含んでおりませんが、これは四十一年度で仮定の数字を見ますと、農地が百四十七億、特別弔慰金が九億六千万円程度でございまして、いま申した数字に自動的に、計算をしますと加えられるわけでございます。しかし、一般会計に対する国債の比率というものは、先進諸外国と比べると非常に小さい数字でございます。ございますが、いずれにしても国債償還の純技術的に見た数字は、いま申し上げたとおりでございます。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの大蔵大臣の御説明を伺いますと、四十年、四十一年はそうですね。多くないですね。ところが、四十三年になると八百四億でしょう。これにこの農地被買収者国庫債券の償還額、それに特別弔慰金国庫債券償還額を加えますと、大体九百六十億くらいになる。これに対しまして償還財源が不足するということはないですか。
  84. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 四十年、四十一年は先ほど私が申しげましたとおりでありますが、四十二年になりますと、八百四億プラス百六十何億ということになるので、千億近いものになる、こういうことでありますが、これはただ、いま発行しております条件をそのまま単純累計した数字でございますから、こういうように九百億も八百億も四十三年になって急激に償還するのかということになりますと、これはその年度において、情勢を見て借りかえをやったり、平準化を行なって大体いままでもやってきたわけでございます。いまの数字は単純に、いま発行しておる条件をそのまま積み重ねた数字を申し上げたわけでございます。この間財政法の改正をやっていただきました。これは二年間に限るということでありまして、二年間はもう国債償還に必要な財源はございます。ところが、まあ三年目からはどうするかということは、財政制度審議会の答申を得ましたり、慎重に検討して、将来の体制をひとつ整備をしてまいりたい、こういう考えでございます。
  85. 原秀三

    説明員(原秀三君) ただいまの大臣の御説明に若干資料の点で補足して御説明申し上げます。  きのう木村先生から御要求がありました資料でございますが、財政法第二十八条に基づきます調書、これをもとにしてこの資料を作成しております。ただ、昭和四十年度におきましては私どもの国債償還計画、これをもとにするわけでございまして、したがいまして、昭和四十年度とそれ以降の資料の間に若干の数字の立て方の相違がございますので、その点をあらかじめ御説明しておきたいと思います。  つまり、昭和四十年度におきましては、普通国債の合計のうち、これは十一億となっておりますが、日本銀行の所有しております国債は原則として借りかえをするというたてまえから、日量所有分の二百八十億を除いた計数でございまいます。ところが、昭和四十一年、内国債の普通国債の償還年次上の額につきましては、日本銀行の所有分がそのまま入っておるわけでございますが、ちょっと計数を申し上げさしていただきますと、四十一年度日本銀行所有分が八十五億、四十二年度は三百九十億、四十三年度は三百二億、四十四年度が二百十四億、 四十五年度が三百四十八億、四十六年度が五百十八億、四十七年度が二百十八億と、この計数が四十一年度以降の計数として含まれておるわけでございます。  先生御承知のように、昭和三十六年度までは市中所有の、市中金融機関の持っておりました国債を全額借りかえしていたわけでございますが、昭和三十七年度におきまして市中金融機関の所有分のうちの、三分の一だけを現金償還いたしまして、三分の二を借りかえしたわけでございます。昭和三十八年度以降は、市中金融機関の所有分の内国債が全額現金償還をしております。ただ、日本銀行の所有国債につきましては、昭和三十七年度以降も一全額借りかえをしておると、こういうところでございます。  なお、もう一つこの資料につきまして、きのう先生にお断わりしたところでございますが、出資国債の償還、つまりIMFとIDAに対します出資国債のうち、どのくらいの償還要求がございますかにつきましては、先方からの要求がございません限りにおきましては、これがはっきり確定いたしませんので、その見込み額はこれを一切落としておるということでございまして、その点あらかじめ御説明申し上げたいと思います。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 こういう状態で、一般会計から公債償還財源を補てんするような必要が出てこないですか。一般会計から、償還財源。
  87. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 必要なだけ一般会計から入れるということでございます。これはいままでは前年度の剰余金の二分の一以上ということでございましたが、それを今度五分の一に二ヵ年間だけ修正をしていただいたわけでございます。しかし、三年以後の問題につきましては、その時点における将来の国債に対する展望、こういうものもございますし、財政の姿もございますから、その時期までの間に、まあ二年間の間で、財政制度審議会で十分検討していただいて、どの程度繰り入れをするかということをきめていただくと、きめると。まあそれまでに結論が出なければ、また前年度剰余金の二分の一以上ということに戻るわけでありますが、まあどういう状態がいいのかというのは、その時点で、その将来の財政の展望もございますので、そこで検討して結論を出したいという考えでございます。いずれにしても一般会計から償還財源を繰り入れるということでございます。
  88. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この間財政法六条ですね、六条の改定によりまして、そうして「二分の一」を「五分の一」に変更したばかりなんですけれども、いずれにしてもこの四十二年はこれはもうずいぶん公債償還が多くなるでしょう。そのほかにまた一般会計からの歳出も多くなってくるし、それから、今後のこの歳入面を見ましても、いままでのように毎年自然増収を期待するようなことは今後まあできなくなってくると思うのです。ですから、そういう財政上の全般的なことも考慮して、勘案して、この被買収農家に対する交付の問題も考えなければならない、報償の問題も考えなければならないと思うのです。  そこで、いま国債償還について伺ったのですが、この今後の歳入の見通しについて伺いたいのですよ。三十九年度のは資料いただきましたが、三十九年度の歳入の見積もりについて御説明願いたいのです。結局、どういうふうになったか、三十九年度は。
  89. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 大体補正後の予算額に対しまして二百億程度の減収でございます。数字を申し上げると、補正後の予算額は三兆百四十五億六千万円という数字でございますが、収納領は二兆九千九百二十九億八千百万円、こういうことでございまして、二百十五億七千九百万円でございまして、収入歩合は九九・三%、こういう数字でございます。このなぜ減収になったかという事情、大体御承知だと思いますが、必要があれば申し上げます。
  90. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは、この政令改正による納付期限の延長分、これは入っていないわけですね。これ入れるとどのくらいになりますか。
  91. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 政令改正の分は、どのくらいかといいますと、三百三十六億二千万円でございます。
  92. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、政令改正をしないで従来どおりであると、三百三十六億を加えた五百七十億くらいの歳入不足と、こういうことになるでしょう。
  93. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 加えた額でございますが、五百五十一億余でございます。
  94. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 過去においてこういうこと一体あったのですか、こういうようなこと。
  95. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 昭和三十三年に二十一億の欠損額——欠損額といいますか、歳入、税収が少なくなったということがございますが、まあ四、五年この方に比べますと、ちょっと収入が少なかった、こういう異常な状態だというふうにいえます。
  96. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまのこれは戦後異例のことですね、五百億以上の歳入不足を生じたということは。これまでの財政推移から見まして、こんなにたくさん歳入不足が生じたということは、これはもう異例のことだと思うのです。前は私、池田さんが大蔵大臣やっているときに、過小見積もり、過小見積もりと言いましたが、今度は逆に非常に結果としては過大見積もりになってしまったわけですよね。  そこで、四十年度の見通しを伺いたいのです。これは毎日新聞に出ておりましたのですが、四十年度は、これは手数百億も不足するのではないか、こういうこれは観測記事ですが、しかし、これについてはかなり詳しく報道されておるのです。四十年度の見通しについては、大蔵大臣、どういうお考えですか。
  97. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあいままでのように自然増収があったものに比べると異状な状態であるということでありますし、いままでのほうが異常であって、これが大体正常なのか、こういう見方もあるわけであります。安定成長に入ってまいりますと、大体いままでのように補正予算を組んで、その上なお自然増収が計上されるというような状態はないと思います。まあ三十九年が減りましたから、四十年度予算も減るのじゃないかと、こういうことでございますが、これは非常にむずかしい問題でございます。経済状態その他を十分に見なければならないことでございますが、三十九年が減ったから四十年もそのまま減るということを即断はできない。それは三十九年の税収見積もり弾性値は一・七見たわけでございます。ところが、四十年度は一・三二でございますから、三十九年の見積もりというものは対前年度に比して少し大きかったということはいえますが、四十年度は伸び率比べますと一・七と一・三二の差があるわけでございます。しかし、いずれにしましても、補正予算を組むような楽々とした税収が見積もられるような状態でないということは言い得ると思います。
  98. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最近の法人の決算状況を見ましても、非常によくないですね。四十年度の予算を編成する当初に見通したときと非常に私は変わっていると思うのです。変わっているというのは、悪く、決算が予想以上に悪いと。それから、今後の成長率についても、当初の予算より私は悪いと思うのです。ですから、今後歳入面について非常に問題が起こってくると。やはり、はっきり金額として幾らといえませんけれども、大体三十九年度、に劣らず予算に対して歳入不足する、こういう状態がやはり見通されるのじゃないですか。
  99. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) まあそういう考え方でいるほうが堅実であります。私自身はそんな考えでもってやってみて、そういう基本的な考えで、財政はきびしいという考え方でいなさいということを事務当局にも言ってございます。言ってございますが、三月のまだ法人決算の数字を全部つかんでおりません。大蔵省でわかるもの、銀行とか、そういうものを見ると、われわれの考えておったよりも決算の状況はいいことは御承知だと思います。まあ総体的に考えて、企業収益というのは、下がっておると思います。いままではタコ配やっておった人がみんな裸決算をやろうという気運になっておりますね。こういう状態をすなおに考えると、政府が当初見面した税収よりも、相当大きな税収があることを考えるよりも、税は減りかげんであると考えることが妥当だと考えます。しかし、根拠は、いま三月の決算の詳細を持っておりませんから、明確な根拠はないのであります。いずれにしても、私はそういう基本的な姿勢でこれからの財政には対処すべきだという考え方を、私個人は持っております。
  100. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その上に歳出要因としまして、歳出の面では四十年度の、今後さらにたとえば世銀の、IMFの増資とか、国民健康保険の赤字補てん、公務員給与の改定、生産者米価の引き上げと、いろいろと数えあげれば出てくる、こういうふうに新聞で報道されておるわけです。そうしますと、四十年度の財政というのは非常に私はピンチになってくると思う。四十一年を見た場合、なおさら、今後の景気の動向いかんにもよりますけれども、困難な状態が出てくるのではないか。そこで、インベントリーを取りくずすとか、あるいはまた公債発行等の問題が起こってくると思うのですよ。そういう当初予想したときと比べれば財政状態か非常に、悪くなっている。過去の高度成長のもとにおける財政と比べて、とにかく非常な大きな変化を生じてしまっているわけです。  そういう財政情勢の変化というものも十分に考慮に入れて、この千四百五十六億にのぼる巨額の交付公債を発行するということにした、あえてですよ。いまお話しのように、歳入の面でも歳出の面でも、いままでと違って非常に変化を来たしておるわけです。そういうもとで、千四百五十六億、それでもう毎年大体百四十七、八億くらいの歳出要因があるわけですね。歳出の要因になるのですよ。ですから、そういう最近の財政状態の変化及び今後の日本の財政を考えた場合ですね、このような——これは不急のものですよ。急を要しないものですよ。こんな急を要しない農地報償なんてすべきじゃないと思うのです、いまの日本の財政状態を考えたらですね。さらにまた、政府報償内容もはっきりしたわけです。これについて各種新聞の論説等ごらんになりまして、非常にきびしい批判ですよ。こんなものはやるべきじゃない。世論動向を勘案したって言いますけれども、この案が発表された後の世論動向も、これは調査してみる必要があると思うのです。そうすれば、何も急いでここでこの農地報償法案を通す必要はごうもないと思うのです。もっと慎重に、そんなに日本の財政が重大な大きな変化を遂げてきているときなんですから、もっと十分にこの問題に国会で審議を尽くし、また十分にこの世論にもよくこれを問うて、そうして慎重に私は対処すべき問題ではないかと思うのですが、大蔵大臣の率直な御見解を承りたい。
  101. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 高度成長から安定成長に移行していく過程にある現在といたしまして、長期な観点に立って財政負担をするというようなことに対しては慎重な態度でなければならないということは、もう御説のとおりでございまして、私もそのような考えでございます。まあ財政はだんだん苦しくなる。苦しくなるのが、これはもうあたりまえのことでありますから、いままでのように歳出、要求があればそれを満たすだけの自然増収があったというような、安易なといいますか、そういう態度でおるべきものではないという考えでございます。  しかし、まあ本件は、せっかくの御発言ではございますが、十数年の検討の結果内閣として最終的な態度をきめたものでございますから、財政の上からはいままでのように豊かでないことは事実でございますけれども、財政に対する姿勢を正す、緊張度を高めるということと対策を行なうということは、やはり調和をせしめていかなければならない問題でありますので、その間の事情を十分ひとつ御理解いただきたいと思います。
  102. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 時間が経過しましたので、まだいろいろ質問あるんですが、次に、三つだけ重要な問題について質問したいと思うのです。それは、いまの佐藤内閣のいわゆる社会開発という基本政策との関連なんです。  で、佐藤総理大臣は、人間尊重の政治を行なうと、高度経済成長のもとで失われた人間性を取り戻す政治を行なう、こういうことをはっきりと声明されました。で、人間尊重とは何かと質問したら、それは具体的には社会開発だと言われたわけです。社会開発は何かというと、これは経済企画庁で社会開発に関する作業をしたものもございますが、それを見ますと、いままでの経済開発と違って、社会開発は——経済開発のほうは、日本経済をどんどん大きくする、分配するもとのパイを大きくするのが、これが経済開発である。社会開発というのは、大きくしたパイ、これを公平に分配する分配関係です。ところで、高度経済成長のもとで、国民所得の分配、あるいは所得、生活水準に非常にひずみが出てきたと、そのひずみを直すということが社会開発の一つの大きな重点であると思うのです。その他いろいろ具体的なことが出されておりますが、そうしますと、この農地報償は、佐藤内閣の社会開発の観点から見ると矛盾しているわけです。  工藤調査会答申によりましても、農地の被買収者は生活水準は一般世帯よりもいいのです。いいほうに千四百五十六億も報償という形で、所得を分配する。これではひずみはますます拡大されます。もし、ほんとうに社会開発をやるなら、これを減税に回すなり、あるいは生活扶助その他農地被買収者より困っている人のほうにこの予算を向けるべきだと思うのです。そうじゃなければ、人間尊重の政治とか、失われた人間性を取り戻す政治、この具体的内容は、社会開発といっても、これはうそになってしまいますよ、見せかけのスローガンにすぎないと思うのです。この点、こういう観点からやはり考えられたのですか、農地報償の問題は。(「総理」と呼ぶ者あり)総理大臣から御答弁をわずらわさなければならぬのですが。
  103. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 私からお答えしていいかどうかわかりませんが、御質問でございますから、内閣で検討いたしたことを率直に申し上げてみたいと思います。  人間尊重、社会開発、こういう看板を掲げておる佐藤内閣として、うしろ向き政策ともいわれるべきものに歳出を使うということは一体いいのか、こういうことでございますが、これは一体うしろ向きかどうか、こういう問題も検討いたしました。それから、人間尊重、社会開発というようなものに逆行する政策かどうかということも検討いたしました。また、困った人、もっと社会保障その他に大いに歳出面をふやさなければならない事態にありながら、こういう政策に対する歳出とどう調和をするかという評価もいたしました。純農政との関係も評価いたしました。いたしましたが、結論的に、この法律は自由民主党を基盤とする内閣としてはこれを国会に提出をして、これを成立せしむるべきだ、こういう結論に達したのであります。  まあその間に、過程におきましては、相当激論もし、慎重かついろいろな観点から検討いたしまして、どういうことか、率直にこういう機会でありますから申し上げますと、こういうものは一体三重補償という。これは二重補償ではない。これは補償はしない。補償は適法にされたものであって、最高裁の判決とおりである。この報償というものに対してなぜ一体やるのか、この問題は、ただ農地解放というの、か非常に犠牲が大きかったというようなものではなく、農地報償と各種の戦後補償といいますか、これらの問題と区別して、農地報償は戦争被害とは直接な関係はない、こういう認定をまずいたしました。  それから、農地報償に対してなぜこんなことをするか、農地報償はどうしてやるのか、こういうことになりますと、世界的な歴史を見るまでもなく、農地の解放というものは、これは非常に大きな問題であります。ですから、農地報償に対してのいろんな問題があっても、農地解放の実績、農地解放が行なわれたために、農村の民主化のみならず日本民主化が行なわれ、今日の日本経済的な発展の基盤をなした、何びともこれをいなむ者はないというまず判断をいたしました。  この農地解放という問題は、自作農をつくる、小作と地主の長い闘争の歴史、こういう歴史に徴するまでもなく、自作農をつくろう、こういうことでこの法律ができて、農地解放が行なわれたわけです。ところが、自作農のために行なわれたのですから、自作農以外の用に供する場合は、さきに売り渡したところの地主に先取特権を与えるとか、国がこれを取り上げるとか、こういうことが法律に書いてあれば、私はまだまだ問題は小さかったと思うのであります。初めはもちろん、自作農創設のためでありますから、自作農以外の用途に供するものは国に返さなければならない、こういうことであったのですが、御承知のとおり、昭和二十九年から法律改正されて他に転売することができるようになった。ところが、インフレなどがあって、まあこういうことでどんどん転売された、こういうことであります。でありますから、そのときに、そのときを契機として旧地主との間に非常に問題が起こってまいったわけであります。そしていろいろな支障が起きる。ですから、そのときから、御承知のとおり転売利益を、差益を徴収してこれを報償の財源に使うべしと、こういう議論もありました。そんなことはできるものではありません。これは憲法上条件のない法律として承認されたものに対して、それから差益金を徴収する、そんなことは憲法上できるはずはありません。  いろいろな道行きがありましたが、最後にどうなったかといいますと、これだけ大きな事業が行なわれて、その結果二十年たってみて、どうもいなかには昔と同じ対立がある。もう小作もないのですから、小作と地主の対立があろうはずがない。ところが、その対立がある。御承知のとおりあるのです。地主というものは社会的に、工藤調査会の調べによれば、一般のレベルよりもいいというものの、自分たちから二百五十円とか三百円とか、そういう非常に安い値段で解放したものが、坪当たり何十万円にも売れる。こういうところに、闘争があろうはずがない農村に、農村の民主化をはばんでおる事実があります。あるいはもうあそこには絶対に嫁をやらぬ、婿ももらわぬ、こういう実態をそのままにしておいていいものか。  私たちはそういうところをこまかに、しさいに検討して、これだけの大事な事業に有終の美をなすには、国民の税金をもってあがなうということはいろいろ議論もございましょうが、これに何らかの措置を行なおうというのが、この農地報償法案なのです。ですから、ただやろうということではない。  まあどこの歴史を見ましても、この土地の問題というのは流血の惨であります。血で血を洗い、民族同士が粛清し合っている。こういう世界の歴史に比べると、敗戦の結果とはいえ、日本農地解放は思い切ってやられた、行なわれた。ですから、私たちはいろいろなことを考える前に、西ドイツのあのとにかく戦後の国民の全責任でまず犠牲者に一切のものをやって、しかる後にわれわれが分配しようというほどにわれわれは思い切った措置はとれないにしても、これだけの大事業が行なわれたために、当時の地主がその相当の数、相当高い生活程度を維持している、一般の人全体よりもレベルは高いというだけをもって、これで何もしなくてもいいということでは、どうも政治にはならないのではないか。こういうことを十分考えて、ほんとうに農政も行ない、それから社会保障も行ない、人間尊重も行ない得る、人間尊重の最も大きな問題としてこの大事業の陰にあるトラブルをなくしよう。そうでも考えなければ、国民の税金をこんなに使おうという勇気が出るものではありません。そういう意味で非常に慎重に考え、あらゆる角度から検討した後にこの法律をあえて成立せしめようと、こういうことになったのであります。  ですから、これはひとつ、これ以上私は申し上げませんが、与党が、政府がこういうものを提案をした立場も、考え方もひとつ御理解賜わりまして、まあひとつ別な角度からも御検討、この法律案の評価、価値判断というものも、そういう意味からもお願いをできれば幸いだと思う。われわれはただ地主に対して何かしよう、二重補償をしよう、こういう単純な考えでこの法律を提案をしたのではございませんから、十分佐藤内閣でも検討して、検討した結果いま申し上げたような結論に達して、この国会において成立せしめたい、皆さんにお願いしたい、こういうことでございますから、もう二度とは申し上げませんが、御理解願いたい。
  104. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 農地改革との関連につきましては、野溝先輩なり亀田さんからも、その道のべテランがおりますから、あとで詳しく質疑していただきたいと思うんですが、私の質問としては、最後にもう一つ日本のいまの全体の経済政策との関連においてこの農地報償の問題をやはり考えるべきであると思うんです。と申しますのは、いま不況といわれていますが、いま日本経済全体は、御承知のように設備過剰、過剰生産というのがこれがやはり基盤だと思うんですよ。そういう場合、工藤調査会答申でも、被買収者よりも一般世帯のほうが耐久消費財なんかの普及率が低いんですよ。ですから、景気政策からいっても、そういう低いほうに購買力を多く与える、こういうほうがこの過剰生産の問題として有効需要をそちらのほうにつける、そのほうがやはり経済政策としては賢明であると思うんですよ。そういう点もやはり考慮されるべきだと思うんです。これに対してもう大蔵大臣の答弁をいただいても、結局同感はかりにされても、それはそうだと言われても、実行されないんですからね、しようがないんですが。  それと、もう一つ、これは最後ですから総務長官に伺います。総務長官、よく言われるんですが、なぜ所得制限をしなかったかということについて聞いたことがあるんですよ。たとえば老齢年金ですね、七十歳以上千三百円、あれについても三万円という所得制限があるんですよね。所得制限、これはやはり私は考慮されるべきだったんです。また、考慮されるべきだと思う。その点を伺います。
  105. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) この点は、この立法の際にも議論せられた一つの問題でもございましょうし、また、昨日御質問のございましたように、調査室においてもその問題を調査をしたわけなんでありますが、やはりこの点は、昨日もお答え申し上げましたように、その重点とするところが農地解放によって農村の民主化、それから日本民主化、したがって食糧の増産とか、日本の復興に役立った。大蔵大臣もお答え申し上げましたように、これらの貢献ということに対する評価に重点を置いたと申しますか、もう一つは、心理的影響というものも重点を置いたということで、そこで、社会保障的な所得制限というような点については、これは三十億の融資の面で施策を行なうということで、本案につきましては、そういう社会保障的な困っている人を救う、こういうことでなく、重点の置き方が違っておりましたために、したがって、社会保障の見地はとらなかった、こういうわけでございます。これに対しましてのいろいろ御批判はもちろんあろうかと存じますが、政府の考え方はいま申し上げましたような点からいたしまして、所得制限は行なわない。ただ、そういうような点を全然考えなかったということでない点からいたしましても、最高は百万円、それからこれはもちろんその点ばかりではございませんで、補償という点でなく、報償という点から累退率を設けて、いまお説のような点につきましてもある程度頭の中にそれを入れてこの法案をつくったと、こういう次第でございます。
  106. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私はこれで終わりますが、いままで質疑を通じまして、どうもこの法案世論動向から考えても、また、財政法あるいは日本の今後の財政との関連から見ましても、あるいはまた、佐藤内閣の社会開発という一番重要な政治的な理念あるいは立場からいっても、また、現任の景気対策から見ましても、きわめて不適当な法案である。どう考えても、いろいろ御答弁いただきましたけれども、これは参議院選挙を控えての党利党略的なにおいが非常に濃厚であると言わざるを得ない。十分な国民を納得し得る御答弁がなかったのを非常に遺憾といたします。  私の質問は一応これで終わります。
  107. 西田信一

    委員長西田信一君) 都合により暫時休憩いたします。    午後四時二十一分休憩      ——————————    午後七時正分開会
  108. 西田信一

    委員長西田信一君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農地買収者等に対する給付金支給に関する法律案議題とし、質疑を続行いたします。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  109. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣に最初にお尋ねいたします。  農林大臣は、この法律案が通ったと仮定して、この法律に基づく報償金を請求する意思があるかないか。
  110. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私の個人のことと思いますが、私は意思を持っておりません。
  111. 亀田得治

    亀田得治君 もらわぬということですか。
  112. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 意思を持っておりませんから、もらいません。
  113. 亀田得治

    亀田得治君 せっかくこれだけ紛糾しながら、しかも、政府が閣議決定だとしてこれはぜひ要るものなんだ、こういうことで出されておる。農林大臣もその閣僚の中の有力な閣僚なんです。有力者なんです。その人も参加してきめて、自分はもらわない、そういうことなら、その閣議において堂々と反対すべきじゃありませんか。そこら辺の理由をもう少し明確にしてもらいたい。
  114. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは私自身の問題ならば、反対あるいは賛成いたしませんけれども、これは多くの人々の問題でございます。でございまするから、多くの人々に対しまして報償金を農政とは別個の意味において出すということにつきましては、私は賛成をいたした次第でございます。ただし、私個人にどうかということでありまするならば、私自身は御辞退申し上げようということでございますから、政策と個人の問題は別と思います。
  115. 亀田得治

    亀田得治君 いや、それは別じゃないです。あなたが賛成されたのは、これはいい法律だ、こういうことで賛成されたに違いないわけです。実際は、農林省の事務当局などでは非常な反対意見のあることは、これは農林大臣もよく知っておられると思う。やはりそこに心理的な矛盾があって、法律が通ってももらいたくない、実際はそういうことじゃないでしょうか。
  116. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 私は、個人的にいえば、農地の解放を進んでやったほうでございます。でございますから、精神的な痛手もあまり私としてはございません。しかし、多くの人にはそういう痛手等もありますので、この制度をしいて報借金を出すということでございまするから、多くの人々に対して出すことには賛成する。私自身としては別に精神的に痛手も何もないんですから御辞退してよかろうと、こう思います。
  117. 亀田得治

    亀田得治君 いままでのこの政府の説明を拝見してみますと、いろんな理由がたくさん並べてあります。まあ整理すると、三つか四つになります。しかし、その一つとして、農地改革の意義を強調し、そうしてそれに協力をした、そういう意味でごほうびを出すんだ、こういう意味のことも一つ理由になっておるわけであります。あなたが大いに農地改革に協力して、積極的におやりになったんですから、当然その線に沿ってすなおにもらうべきものじゃないかと思うのですが、どうなんでしょうか。
  118. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 勲章でも辞退する人がございます。でございますので、ほうびであっても、別にもらうようなことをしておらぬと、こう思いますので、ほうびであるといたしましても御辞退しよう、こういういう気持ちでございます。
  119. 亀田得治

    亀田得治君 これはもう、つじつまのく合わぬことはどうしてもつじつまが合わないんです、どないに答弁しても。いま勲章の話をはしなくも出され、この社会党の私たちが辞退をしておるということを暗々裏にさされておるものだと思います。しかし、これはなぜ辞退をするのか。いろんな意味からいまの段階でそういうことをしては社会の進歩に弊害になる、こういう理由があるからこれはもらわないわけです、理由があるから。だから、やはりあなたもこれを辞退されるということは、反対の理由があるわけでしょう、出そうということに対する反対の理由が。その点を率直にもっと明確にしてほしいと思う。  世間の人は、農地改革をやった、それに対する報償金が出る、農林大臣がまっ先にこれを辞退される、それほどこれが矛盾を含んでおる、実際には。あなたは勲章のことをいま例に出されましたが、これは明確に理由があるわけなんです。理由はいままでいろんな人が述べておるとおり。そういう意味の、筋の通った説明というものは何も聞かれんじゃないですか。どういうことなんです。
  120. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 勲章でも、保守党にもございます、御辞退が。社会党ばかりじゃございません、辞退した人が。そういうもので、この被買収地生に対する報償を出そう、こういうことに対しては私は反対はいたしませんが、私個人的には別に精神的の痛手もこうむったわけでもなし、解放という自体そのことは二十年前に済んだことでございまするから、そういう意味におきましてほうび的なものを私としてはもらう必要がない。しかし、一般の人々にはそういう制度によって報償金を出そう、報償金をほしい、こういう者もあろうかと思いますので、制度としてこれを行なうのと、その制度の中で私が辞退をしようというのは個人的な理由でございますので、私はそこに矛盾はない、こう考えます。
  121. 亀田得治

    亀田得治君 農林省の部内の人たち意見はどうでしょうか。
  122. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) これは農業政策プロパーの問題として農地改革の手直しをするとか、あるいは農地改革制度をここでうしろ戻りしていく、こういうことであれば農林省内におきましても反対は相当あるはずです。しかし、今度の報償金の制度は農業政策プロパーのものではございません。農林政策といたしましては、農地改革の基礎の上に立ってそれを進め、さらに最近におきましては農業基本法等によりまして農政を進めておるわけでございます。でございますので、今度の報償金をしようということは農政プロパーの問題ではなくて、別個の観点から、農地解放をした人々のまあ報償といいますかそういうことをしようということでございますので、農林省としても農政としての問題としては、取り上げておりませんので、これは別の問題としてこの問題につきましては賛成をしておる次第でございます。
  123. 亀田得治

    亀田得治君 そんな、名称を呼びかえたから本質が変わるものじゃない。あとから、最後にこの問題にはさらに触れていくことにいたします。一応まあ聞いておきます、そういうふうに。  それから、各論的な問題からぼつぼつひとつ確かめていきたいと思うのです、本日は。それで、まず最初に、現在の農地価格ですね、これがどういうふうになっておるか、明確にしてほしいと思います。
  124. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) 事務当局から……。
  125. 石田朗

    説明員(石田朗君) お答えいたします。  現在の農地価格、これは戦後かなり上昇を毎年してまいってきております。最近の情勢におきましては、三十九年の数字でございますが、田におきましては、普通田で全国平均十九万八千円、畑におきましては、普通畑におきまして約十二万円、こういうふうになっております。で、いまも申し上げましたように、最近ずっと上昇を来たしてまいっておりますけれども、ここ数年におきましてやや頭打ちの傾向を見せておりまして、県によって停滞ないし微落というような傾向も見られておるわけでございます。
  126. 亀田得治

    亀田得治君 いまの価格は反当ですね、もちろん。
  127. 石田朗

    説明員(石田朗君) 失礼申し上げました。反当たりの価格を申し上げたわけであります。
  128. 亀田得治

    亀田得治君 もう少しさかのぼって、十年分ほど明らかにしてください。
  129. 石田朗

    説明員(石田朗君) それでは申し上げますと、年々もいかがかと存じますので、反当たりの普通田の価格を申し上げますと、十年前の二十八年におきまして六万三千三百円でございます。それから、途中をとりまして、三十三年の数字をとりますと、十六万五千五百円ばかりになっております。
  130. 亀田得治

    亀田得治君 ずっと言ってください、飛ばさないで。
  131. 石田朗

    説明員(石田朗君) そうでございますか。それでは申し上げますが、三十八年がいまも申し上げましたとおり六万三千三百円、二十九年が九万三千五百四十円、三十年が十一万六千円、三十一年が十三万五千七百円、三十三年が十五万二千五百円、三十三年が十六万五千五百円、三十四年が十七万四千七百円、三十五年が十八万六千六百円、三十六年が十九万四千三百円、三十七年が十九万四千五百四十円、三十八年が十九万三千八百六十円でございます。端数は多少切り捨てた部分がございますが、大体の傾向はそういうふうになっております。
  132. 亀田得治

    亀田得治君 農林省のほうから出された資料だと思いますが、この農地法八十条による売り払い価格ですね、これは反当幾らになっていますか。
  133. 石田朗

    説明員(石田朗君) 八十条の価格でございますが、これは原則として旧所有者またはその承継人に売り渡されるわけでございますので、その場合には買収の場合の価格でやっております。
  134. 亀田得治

    亀田得治君 反当幾らになるのですか。
  135. 石田朗

    説明員(石田朗君) この値段は、したがいまして、その時期によって違いがございます。買収いたしましたる時期によって違っておりまして、農地改革の当時におきましては七百六十円で、反当たり田にいたしまして七百六十円になっております。それから、昭和三十五年以降はその七倍で買収をいたしておりますので、その値段で所有者に売っておるわけでございます。
  136. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば三十八、三十七、三十六と表が出ているわけですが、これは反当に直すと幾らになりますか、具体的におっしゃってください。
  137. 石田朗

    説明員(石田朗君) いま先生のおっしゃいますものは、いまの八十条売り渡しの数字でございますか。
  138. 亀田得治

    亀田得治君 そう。売り渡しの価格。
  139. 石田朗

    説明員(石田朗君) いまも申し上げましたように、もとの所有者に売り渡します場合には、そのもとの、所有者に売り渡す売り渡し時の価格ではございませんで、その所有者から買いましたときの買収価格をもって売り渡しておりますので、三十八年に売り渡しましても、田によって価格が違っておるわけでございます。
  140. 亀田得治

    亀田得治君 たとえば三十八年度をとってみますと、三百三十五町歩ですか、それが三億六千万円くらいになっているわけですが、反当にすると八万弱になるわけですね。これが中身ば全部違うというわけですね。幾らと幾らになって総計がこういうふうになるのか。
  141. 石田朗

    説明員(石田朗君) ただいまお話ございましたが、私の御説明も十分でない点があったわけでございますが、この八十条による売り払いは原則といたしまして旧所有者に売り払いますが、旧所有者が買い取らないというような場合におきましては、これは新たにそれを使いたいという方に売り渡す場合がございます。したがいまして、それらの価格がこの三百何町歩の中には入っておるわけでございまして、第三者に売り渡す場合はその土地の時価をもっていたしておるわけでございます。
  142. 亀田得治

    亀田得治君 そういう場合の実際の値段はどの程度で処理されているんですか。
  143. 石田朗

    説明員(石田朗君) その値段は、その地域における近傍類似の価格を適正に評価いたしまして売り払いをいたしておりますので、地域によって相違いたしますが、全体平均いたしますれば、先ほど私が申し上げましたような平均の数字に近いかと存じます。
  144. 亀田得治

    亀田得治君 先ほど農地価格の説明がありました、平均値段ですね。それはどこの調査ですか。
  145. 石田朗

    説明員(石田朗君) 不動産研究所の調査によってお答えいたしたわけであります。
  146. 亀田得治

    亀田得治君 それから次に移ります。  この法律案によりますと、百万円で頭打ちということになっておりますが、百万円をもらうというのは何町歩に当たりますか、この計算でいきますと。
  147. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) 三十五町歩でちょうど百万円になるわけであります。
  148. 亀田得治

    亀田得治君 三十五町歩以上というのは何名ありますか。
  149. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) この法案によりますと、畑では六割で計算することになっております。なお、北海道は倍率を掛けてさらに小さくすることになっておりますので、田にいたしまして三十五町歩ということでございますが、これ以上に、頭打ちになる戸数は、推定でございますが、七千戸程度あるように存じます。
  150. 亀田得治

    亀田得治君 この七千戸の実態調査というものは特に調査されましたでしょうか。
  151. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) これに着目して調査をいたしたことはございません。
  152. 亀田得治

    亀田得治君 このわずか七千戸程度ですから、これほど異論がある金を出すわけですから、一体百万円もこの法律によってもらえるのが七千戸あるということなら、特にその部分について調査をしてみる必要があるのじゃないでしょうか。これ、どうですか、長官。
  153. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) 財政的な点も考慮いたしまして、また、工藤答申案にあるように、巨額な報償というものはすべきでないという意見も多くございましたので、そこで百万円という限度を置きましたので、それ以上のものにつきましては調査いたしませんで、それで打ち切ったかと思うのであります。
  154. 亀田得治

    亀田得治君 いや、以上というのじゃなしに、七千戸というのは百万円もらう人を含めて言っているわけでしょう。百万円もらうというのは、三十五町歩以上の解放者……。
  155. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) そうであります。三十五町歩以上の解放者は百万円になりますが、百万円で頭打ちになる方が七千戸でございますから、田に換算いたしまして三十五町歩以上の被買収者ということでございます。
  156. 亀田得治

    亀田得治君 それが七戸……。
  157. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) はい。
  158. 亀田得治

    亀田得治君 いずれにしても、百万円もらうのか七千戸と理解していいのですか。
  159. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 亀田先生のおっしゃるとおりでございます。
  160. 亀田得治

    亀田得治君 私、問題にしたいのは、三十五町歩以下の三十四町歩とか、あるいは三十三町歩とか、この辺も百万円に近いわけですからね、もちろんこれは問題にしなきゃならぬのです。しかし、各種の調査から見て、少なくとも百万円をもらうこの層というものは、そんな必要がないわけなんだ、絶対に、実態的に見て。それで、特にこの調査をしたかせぬか、こう聞いておるわけです。していないのですか、そういう調査は。
  161. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) この問題は、工藤調査会におきましては、その生活の状態や、また生業の状態を重点に置いて調査いたしたのでございますが、三十八年度につくりました、政府につくりましたところの臨時農地等被買収者問題調査室におきましては、もちろんその点も調査をいたしましたけれども、そのほか基本的な問題とか、世論とか、そういうものを調査いたしました結果、さらにはまた、その報償を出すことになりましたのが、たびたび申し上げておりますように、この農地解放によりまして、農村の民主化ばかりでなく、日本民主化を築き上げる基礎になったわけであります。それによって、また経済も今日のような復興、成長ということになりました。その貢献というものを評価いたしまして、これは報償を出す。また、心理的影響というものが非常なものであったということに対して、それをねぎらうという、こういう意味でございますので、したがって、どの辺まで出すかという、その功をねぎらうということになりますと、やはり財産強制買収されてのことでございまするから、やはり量的に考えれば、よけい買収された者が一応はまあ形の上では功績が多かったとも考えられるのでありますが、しかし、これは報償——補償でございませんので、報償でございまするから、適当なところで打ち切るのがよかろう、こういうことで、まあ百万円ということで頭打ちで、あとは、それ以上はしない、こういうことをいたしましたので、したがって、それ以上の者に対する生活云々ということについての調査も必要なかろうということでおそらくやらなかったのだろうと、かように考えております。
  162. 亀田得治

    亀田得治君 この七千戸というものは一体どういう生活をしていると政府の人は考えているのですか。私の聞く意味は、その報償だとか、補償でないとか、そんな説明はもうさんざん聞いておる。そんなごましの説明は、これは幾ら言ったってそれは通りはせぬのですよ、政府が言っておるだけで。それで、実質的に考えてほしいのは、七千戸という数字が出ておるわけだ、この法律で百万円もらう人がね。これがちっとも困らない生活をしているという実態が出てきた場合には、これはたいへんな問題じゃないですか。ことに政府の説明なら、報償、ほうびだ。ほうびなら、ほんとうならこれは御苦労さんと言うだけでも感謝の意味になるわけだ。百万円といったら、あなた公金を使うのですよ。この七千戸ぐらいは調べてごらんなさい。私は二、三知っています。政府がそういうものを調べないということは一体あるのですか。常識的にこの辺はやるのだということかもしれませんが、それなら、百万円で線を打つのも、五十万で線を打つのも——しかし、非常に困っているというなら、場合によっちゃ百五十万くらいで線を打たなきゃならぬ場合もあるだろうし、調某もしないで、まあこの辺でというそんなばかげた話はないでしょう、税金を使うのに。しかも、これはあなた、百万円をもらう人は絶対そんなに困ってやせぬよ。あなたも知っているでしょう、これは。どうなんです、それは。
  163. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) でございますから、この法案社会保障的な見地からやろうというのではございませんで、いま申し上げましたように、貢献したことを多としてそれに報ゆる、こういうことでございまするから、したがって、生活に困らない者にはやらないというのではないわけです。でございますから、おそらくこの七千戸という、三十五町歩以上も買収されたという、まあいわゆる大地主というものですね、これはおそらく平均いたしましても、調査によると、旧小作人よりは生活はややいいという統計さえ出ております。でございますから、ましてこの三十五町歩以上の買収された被買収者と、こういうことになりますると、これはもうそう生活に困っておるというような方は少ないと思うのであります。しかし、この法案の目的が、生活に困っている者にやろうという意味でございませんので、そこで——かといって、これを三十五町歩以上を反二万円平均、あるいは逓減いたしましても、それ以上するという必要はなかろう。ですから、全然その社会保障という見地ではないにしても、これはやはり財政上の見地からも限定がある。そこで、百万円というものを限度にいたした。  で、百万円を限度にしたことが多いとか少ないとかいう、そういう御批判はあろうかと思うのでありますが、一応しかし、三十五町歩以上も売却した、こういう君に対してはそれぐらいがよかろうという、こういう判断で、そこで打ち切る、こういうことでございます。
  164. 亀田得治

    亀田得治君 だいぶ基本的な考え方がまじっていやせぬかと思うのですね。非常に多くを買収されたから、それだけ貢献したいというふうな言い方もされておる。大体、政府にはそういう基本的な考え方があるようです。しかし、この農地改革なり、それに至るまでの歴史というものをもっと真剣に考えてほしいのですよ、私たちは。この問題はややもすると戦後処理とか、そういうことに関連させて考えられがちですが、そうではないのです、これは。三十五町歩以上も持っていた人は、それだけたくさんの小作人をしぼっていたことになるのです。そのことを真剣に考えなきゃうそなんです、それは。  それは戦前、農林大臣もよく御存じなわけですが、実物で五割以上も小作料としてもらっちゃっておったわけですね。あのころの小作人の生活はどうなんです。これは首をつったり、娘を売ったり、どれだけ働いたって、あなた、自分で米をつくりながら、米も食えないのでしょう。よけい持っておった人は、それだけよけい苦しめていたのです、たくさんの人を。経済学者の計算によれば、十年間あの当時の小作料で納めておれば、十分その農地を全部もらえる権利がある、新しい計算をすれば。そう言っているのです。だから、そういうことが農地改革の基礎になっておるわけでして、その点がはっきりせぬものですから、多く買われた者によけいやらなきゃならぬとか、そういう考えが出てくるわけです。そうして何かえらく地主が農地改革貢献したようなことを言いますけれども、あの当時すべて地主が率先してやりましたか。不承不承でやっているのではないですか。  だから、農地改革のほんとうの基礎というものを考え直してもらわぬといかぬ。それをどうとるかによって具体的なこまかい問題の処理が全部違ってくるわけなんです。そこがほんとうにわかっていたら、こんな法律案なんか出てきませんよ。そういう点は一体ほんとうに反省されておるのかどうか、政府として。農地問題を扱っておる皆さんがそれをまず、これはもう総理大臣に私来てほしいと言っていたのはそこなんです。それはほんとうにああいう制度を持っていたということは、これはもう恥ずべきことなんです。敗戦という機会にそれが直ったにすぎないわけなんです。その点はどういうふうに考えているのですか。あんなべらぼうな、小作人の人権を全く無視した制度を、どう評価しているのか、それからまず聞きましょう。
  165. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) それは大ぜい、何しろ百六十万から二百万といわれるくらいの間でございますから、人さまざまで、地主にはいろいろの方もあったと思います。しかしながら、逆に考えて、もしああいうような農地改革をしなかったとしたならば、それじゃどうなったかということを考えてみますと、やはりそれは従来のようなそういうようなことが続いていたということは考えられるわけです。しかも、これをやろうとすれば、それこそ過去の小作争議とかいろいろの問題が、激しい階級的な対立というものも考えられる。これがわずか三年のうちにスムーズにできた。なるほど法律によったことではありますけれども、とにかくそれが一つの革命ともいわれるような農地改革ができたということについて、この功績というもの、効果というものは、これは認めなくちゃならぬ。でございますから、全部のおそらく地主がそういう人ばかりでもなかったと私は考えます。したがいまして、やはりこれは実質的な、道徳的な面とか、 いろいろな面は別にいたしまして、やはりその時代時代における——別に法律に違反してやっていた者ばかりがあったとも考えられませんので、そこで、確かにお説のように過酷な小作料によって小作料によって小作人が非常に苦しい立場にある、こういうようなことは小説なり劇なりにもいろいろ仕組まれていることは一般にも一応は知られていることでございます。しかし、全部が全部そうばかりとも考えられませんし、いま申し上げましたように、とにかく短期間にこれが成就したということについては、やはり形の上においては一応これはこの改革に協力をした、こう考えてもよろしいでございましょう。  しかも、心理的影響と申しましたが、その後経済変動によりまして、非常なこれは心理的影響を受けたことは、ことに二十七年に転用を許されていなかった農地が、このやったことについての善悪は別といたしまして、転用を許した。これもやはり国会で一応立法でやったのでありますけれども、それによって売却した値段の数百倍、数千倍という値段で売られていくということで、よけいに心理的影響を受けましたし、これがひとり大都市の周辺ばかりでなく、御承知のように中小都市までが、内陸の開発とか産業開発によって非常にそういう傾向が出てきた今日でありますから、そういう影響というものが非常にあった。  それらを全部総合判断して、いわば高度の政治的な考慮からこういう法律案をつくってやった、こういうことでございます。ここにいろいろとらえれば、亀田先生お説のように、非常にいろいろの問題は過去においてはあったかと思うのでありますが、とにかく解放後の状態というものを私どもは考えてこの法案を出すべきものと、こういうふうに考えた次第でございます。
  166. 亀田得治

    亀田得治君 まあそういう議論をあまり広げないようにして、私が尋ねた部分をひとつ答えてほしいわけです。で、ほかの問題が同時に出ますと、どうしても論議が深まりませんから、そして私のほうも注意して、まず部分的にはっきりしておきたいというところをいま確かめておるわけです。  そこで、いま私のお尋ねしたのは、戦前の農地制度、これを一体、私は全くこれはべらぼうなけしからぬ制度だ、そういうものをずいぶん長い間やったのだというふうに評価しているわけですが、その点の評価を聞いておる。あとのことを聞いておるのじゃありません。前のああいう地主制度、小作制度というものをどう評価しておるか。
  167. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) これは小作制度というものの弊害がたくさんあったことは周知の事実でございます。そこで、まあこの農地改革というものを戦後においてやった一つ原因だ、かように考えております。
  168. 亀田得治

    亀田得治君 農林大臣、どうですか、その点の評価は。
  169. 赤城宗徳

    国務大臣(赤城宗徳君) その時代時代で農地制度もいろいろありました。徳川幕府時代、あるいは明治政府時代、この時代における法律的な制度では、賃貸借の制度でございますけれども、地主対小作人という関係によりまして、非常に高い小作料、高額小作料で、賃貸、賃貸しをしておった、こういう制度は私はよくないと思います。国全体から見ましても、孫文の話じゃないですけれども、耕す者がその田を有す、耕者その田を有すというのが一番理想的な姿でございます。そういう理想的な姿でなかった。だから、耕作者がその土地を所有するという形が一番いい。そういう意味におきましては、明治時代、あるいは徳川時代から続いておりましたが、地主対小作人の関係という制度はよくなかった制度だと、こう思います。
  170. 亀田得治

    亀田得治君 やはり赤城さんは農村のことはよく知っておられるので、お答えも非常にわれわれとしては納得できるわけなんです。総務長官は、これはもう全然そういう点についての評価がなっておりませんね、これは。そういう感覚でこういう重大な問題を扱われちゃ、それは困りますよ。笑いごとじゃないですよ。悪い制度を長年やっておったわけです。耕作者をいじめておったわけなんです。その身になって考えてみなさい。あなたは先ほど、何か小説に書いてあるとかなんとか、例外的なような、軽く考えるようなお話もされましたが、私もこういう運動を始めたのは、学生時代にそういう農村の事情を見てから感ずるところがあったわけなんです。全くそれは悲惨なものですね。一体そういう実態に総務長官は触れたことがあるのですか。そういう体験のない人にこういう農地問題を扱う資格がないと私は思う。どうなんです、長官。
  171. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) 私自身は農業をやった経験はございません。まあただ、戦時中は土地を借りて菜園をつくったとか、そういう点はありますけれども、しかし、まあ私どもの祖父のときまでは、やはり茨城県の筑波山のふもとで農業をいたしておりました。やはりその農業のつらさというものは、それは私どもも私なりに承知をいたしております、が、しかし、この法案農地解放というものそれ自体が……
  172. 亀田得治

    亀田得治君 よろしい。あとのことは言わぬでいい。
  173. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) その罰則的な意味でやったというわけでもないようでありまして、ただ、いま農林大臣のお話のように、自分の耕す土地というものは自分で持っていることが、食糧増産にも一なるし、本来の姿である、こういうことで、ことに戦時中からは非常に小作料も安くなってきたのでありますけれども、本来の趣旨に従って解放をした、こういうふうに考えておるのであります。  私、自分自身で百姓をやっておりませんから、それはそういう御体験のある方とは違いますけれども、しかし、私どもも政治をやる以上はやはり農業だというので、昭和十三年ごろから千葉県で農村更生連盟というものをつくりまして、そうしてその運動をやった方々と一緒に、そういうことの一応は勉強だけはいたしたわけであります。
  174. 亀田得治

    亀田得治君 自分で直接農業をやったとかやらぬとか、そういうことを聞いているのじゃないのです。当時の小作人の人たちの非常に困っておる実態というものに触れたこと、があるかどうかということをお聞きしているのです。ないようですから、私は、あなたはこういう問題を扱う資格がないと、こう言っているのです。ともかく農林大臣はきわめて明快にお答えになっているわけなんですが、悪い制度なんです。悪いものは悪いとはっきり言わなければ、だめなんです。  悪いということが前提になれば、何もあなた、三十五町歩以上も、百町歩も持っておれば、悪いことをよけいやったことになるのですよ、はっきりいえば。なぜそういうものは金額をふやす一つの基準となるのですか。ほんとうに悪いということを反省してみたら……。その反省がないのじゃないですか。あれだけ農民の人をいじめておきながら、どうなんです。悪いという意識が一つもないのです、制度的に。現在、あなた、農民の方は農地解放されてずいぶんいい生活をしておりますよ。うれしいですよ、私たち見ると。ところが、それが三十年以前にはまるきり違っていたのです。これは総理大臣が来て、本気にこれはこの考え方を披瀝してほしいと思うのです。そういう基本的な考えをどう持つか、いろいろなところに響くのです。  たとえば、農地解放をされた農民の方方がその土地を他に売る、そうすると現在であれば相当高い値段で売れる。これは私も知っております。しかし、本来耕作しておる人が持つべき農地であったということが前提になれば、自分の待つものが社会情勢によって幾ら値段が高くなろうと、そんなことは他人からかれこれ言われる筋合いではない。そうでしょう。いろいろなところに考え方が影響してくるわけです。私は、農地とかいろいろな物価は安いほうがいいと考えておる、すべて。しかし、これは全体の経済情勢によって、私から言わなくてもおわかりのとおり、これは響いていくわけでして、農民だけに、実際に農民のものをおまえだけ安くしておけといったって始まらぬ。ところが、そういう問題についてなぜ農民に対してだけ容喙していくか、そういうような考え方にも関連していくわけなんです。ほんとうに日本民族として恥ずかしい制度を持っておったんだという反省に立てば、たとえば転売の問題にしたって、そういう議論は出てきませんよ。すべてそういう根本的な旧制度に対する反省というものがないところに、何んだ、安く取って高く売りやがってと、こういう農民の議論が出てくるわけなんです。それじゃ、ほかの場合どうなんです。宝石にしたって何にしたって、それがぽんといろいろな情勢で値上がりしたって、文句を言えますか。なぜ農民に対してだけその問題を特に強く言わなければならぬか。土台が間違っておるんじゃないですか。総務長行、それひとつ。悪い、恥ずかしい制度を持っておったんだという考え方になるかならぬかということは、私はこれから議論があらゆる問題に影響する。あなたでわからなければ佐藤さんを呼んできて、ひとつはっきりしてもらわなければいかぬ大事なことですよ。
  175. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) 私は決して、従来の小作制度がいいということは一言も申しておりません。でございますから、これは私ばかりでございませんで、これはだれでも認めるところだと思います。でございますから、その農地解放というものが、戦後あれだけの規模のものが、法律によって戦後のああいう際実行しようと、こういうことに踏み切ったわけでございます。また、あの改革をやったおかげでその悪いことが一応断ち切れたと、こういうことで、今日農村というものが非常にそういう点ではよくなってきておる。この点は農林大臣もお話しのように、そういう制度というもの、社会制度はやはりそのときどきのものを反映いたしておりますから、今日でもそれはいろいろな点で問題な点、があろうかと思います。いまでも高利貸しというようなものもある。しかし、だからといって、これはやはり私有財産制を基としておる現在のわが国の憲法におきましても、そういうふうな搾取的なことをやるからそれはみんな没収してしまうんだとか、あるいはみな安く手放せとか、そういうことについてはやはり別の問題でございまして、それでまあ全部、全体的に考えれば、やはり手放したということについて、そのときの地主、またその承継者についてのその功を多として、そして精神的にねぎらう、こういうことが必要であろうと。  これはさっきも申し上げましたように、一つは見解の相違もありますし、それからまた、そういう良心的な問題になりますると御本人の問題でありまして、赤城農林大臣のように、良心的にみずから進んで協力された方もほかにもあるわけでございまして、ですから、一般的に全部が悪いんだからあのままでいいということについては、これは政治的な見解の相違でございますから、何とも申し上げられないと思いまするけれども、私としては、さっき申し上げたように、この長年の地主と小作人、現在でもそういう感じがありまするので、それでこの際にこれが解決することが日本の将来のためにもよかろうと、こういう政治的な判断も加わってやったことでございます。
  176. 亀田得治

    亀田得治君 ともかく、そういう口先だけで、何かことばのあやで適当に答えていこうというふうな問題じゃないわけなんです、端的に私はお聞きしている。旧地主制度、小作制度、これは私は全く悪い制度、こういうふうに評価しているわけです。この点だけ答えてください。
  177. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) それはただいまもお答え申し上げましたように、その制度については、決してよくないということは重ねて申し上げます。
  178. 亀田得治

    亀田得治君 ことさらによくないということじゃなしに、私の言うのは、悪い制度だと、悪制度だと、こう言っているわけなんです。
  179. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) よくないの反対は悪いですから、そういうふうに申し上げてもよろしゅうございます。
  180. 亀田得治

    亀田得治君 普通そういうふうには取らぬです。悪いかどうかと聞いている場合に、そのとおり答えないで、いいとは思わぬとか、そういうふうな答え方をすれば、多少はその中間をさしているような印象を与えるわけですね。どうなんですか。悪いなら悪いとはっきりおっしゃったらどうですか。
  181. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) でございますから、いまそのとおり申したわけでございます。
  182. 亀田得治

    亀田得治君 悪いとはっきりおっしゃらぬでしょう。そのとおり言いましたか。
  183. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) よけいなことを申し上げたかと思うのでありますが、よくないという反対は悪いのであるから、悪いのであると、こう申し上げたわけであります。
  184. 亀田得治

    亀田得治君 おかしいですね。もうちょっと諭理というものは……。悪いと思っているなら悪いと答えてください。私のほうでかってに、悪いと同じだというふうに理解していいんですか、あなたの答えを。
  185. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) そう御判断いただいてけっこうでございます。
  186. 亀田得治

    亀田得治君 それならば、よけい解放したほど悪いことをよけいやったということになるのですがね。決して私はあげ足をとって、どうこう言うのじゃないのです。皆さんが何か、よけい解放したのだが、何か非常に大きな貢献をしたようにきめてかかっておりますから、むしろ逆ですよと。事例はたくさんありますから。私の地元の大阪にもありますし、いまだに耕作者に対して訴訟を起こしていじめている人もたくさんある。農林省の人がよく知っておりますわ。それはどうなんです。悪いということになったのですね。そうしたら、大きな地主ほどよけい悪いことをやったことにならぬですか。
  187. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) 私の申し上げましたのは、旧地主制度というものが悪いと、こういうことを申し上げたのでございまして、側々の者が必ずしもみんな悪いことをしていたと、こうも私は考えられませんし、事実また、非常に悪い例とともに、また地主におきましても相当温情を持ったりっぱな地主もあったと、かように見ております。
  188. 亀田得治

    亀田得治君 それは温情を持ってやったといったって、制度そのものが悪いわけですから、基本的には悪いことをやっているわけなんです。本人は必ずしも意識しておらぬかもしれません、その自体としては。で、あなた個人としては、温情を持ってやったということ、悪いことをやりながら、多少また特別かわいがる。それは金を寄付する場合もあるでしょう。それだけたくさん搾取しているのですから、寄付する財源は幾らもありますよ。そんなことをいったって、それは小さな善じゃないですか。そんな小さな善をやるために、もっと大きいことをしている。人間的にはりっぱな小作人であっても、いわゆる小さな善とか、そういうことをしたくたってできやせぬのですね、これだけぎっちりしぼられたら。そういうことを一体考えてみたことがあるんですか。地主でもいい人があるというのはどういう意味なんです。もっとこういう問題に取り組むには、そういう基本をはっきりしっかりつかんでやってもらわぬと困るです。いま地主でもいい人があるとかいうような意味のことをおっしゃったが、どういうことなんです。はっきり言ってください。
  189. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) それは高い小作も取らぬで、小作もまけてやるとか——それはまあ土地を提供して、ただ不労所得を、取るというような、そういう基本的な問題が悪いのだ、こういえば、現在の利子制度やなんかについてもいろいろ議論はございましょうけれども、しかし、それは別といたしまして、そのときにおける社会通念上から見て、やはりそれぞれの立場において、それぞれの時代においてりっぱな人はあったと。私は、地主であるから、日本人の当時の者はみな悪人であったとか、こういうふうにばかりは考えておりません。
  190. 亀田得治

    亀田得治君 まあだいぶん頭の構造が違うから、そういう点はその程度にしておきましょう。ともかくまあ悪い制度である。それを出発点としてずっと考えてもらいたい。敗戦後の、たまたま農地改革に進んだそういう時点を出発点として考えるべきものじゃこれは絶対にないわけなんです。  で、次に、そういう悪い制度をやめるために、農地改革が戦後やられたわけですが、そのときの対価ですね、これはどういうふうにきめられたのですか。
  191. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) これは当時の自作収益価格から土地を所有するということにどれだけ帰属するかという地代分を算出いたしまして、それを利回りで還元したということでございます。なお詳しく数学的に申し上げる必要があれば申し上げますが……。
  192. 亀田得治

    亀田得治君 次の質疑に関連があるので、明らかにしてください。
  193. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) まず国につきましては、反当の玄米収量を二石、これは昭和二十年現在でございますが、前五ヵ年、昭和十五——十九年の平均の収量でございます。そうしまして、当時もちろん供出と自家保有分がございますが、供出分、つまり販売分が二石のうち一・一四三石、これは収量の五七・一六%で、自家保有をその残りということでやりまして、もちろん供出分と自家保有分は単価が違うわけであります。供出分は生産者に対する奨励的意味もございますから、単価が違うわけであります。自家保有分は消費者価格で計算するということで、その三石の価格二百三十四円三十六銭のうち、供出分は百七十円八銭、自家保有分は六十四円三十八銭ということになるわけでございます。なお、副収入がございます。わらであるとか、そういう副収入がございますから、その分十四円三十九銭ということで、反当粗収入が二百四十八円七十五銭というふうに計算をいたされます。それから、当時の食糧管理局——現在の食糧庁でございますが、それの二十年産米の生産費調査を用いまして、反当生産費用二百十二円三十七銭ということで、それを差し引きますと、反当の純収益が三十六円三十八銭ということになります。農家でございますから、当然経営者としての利潤部分がある。これを四%と見まして八円五十銭。これは経営者としての利潤部分です。そういたしますと、純収益から利潤部分を差し引きますと、それが地代部分、まあ土地を所有しておるということに帰属する部分というふうに計算をいたしまして、結局自作収益価格としては反当七百丘十七円六十銭ということになるわけです。つまり、地代部分の二十七円八十八銭を、当時の最近の国債利回り三分六厘八毛で還元いたしますと、ただいま申し上げました七百五十七円六十銭ということに相なります。  これは収用以前の価格でございまし、全国いろいろな価格があるわけでございますから、当時の標準賃貸価格十九円一銭でこの価格を割りますと、つまり賃貸価格に対するただいま出ました自作収益価格の倍率というものが出るわけでありますが、それが四十倍弱、三十九・六五倍ということになるわけであります。田は、こういうつまり賃貸価格の四十倍ということで考えておる。なお、畑は、当時の勧銀調査によりますと、田の五九%ということになっておりますので、また標準賃貸価格は九円三十三銭ということになっておりますので、賃貸価格に対する倍率四十七・九倍——四十八倍という打算で、畑は賃貸価格の四十八倍で買収をするということでございます。
  194. 亀田得治

    亀田得治君 それで、いまお答えになった計算方法によって、自創法の第六条ですか、それによって買収価格がきめられたわけでありますが、当時このほかに報償金が出されましたね。この間の事情を説明してください。
  195. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) そのほかに報償金といたしまして、たしか反当たり二百二十円支払ったと記憶しております。この二百二十円の当時の報償金は、土地を政府に売り渡す、これがすみやかに円滑に行なわれるようにという意味で、促進するための、円滑に行なわれるためのこれは奨励金という意味で出したわけであります。
  196. 亀田得治

    亀田得治君 その報償金の交付は自創法の十三条三項、四項ですね。
  197. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) そうでございます。
  198. 亀田得治

    亀田得治君 ただいま長官も説明されましたように、農地改革を容易にするために、その奨励の意味で、田について反当二百三十円、畑について百三十円、これを出したというのですね。当時ほうびがちゃんと出ているじゃないですか。一ぺんほうびを出して、十数年たってまた出す、そんなことは一体筋が通るのでしょうか。これとの関係はどうなんですか。基本的な対価というものはちゃんと、先ほど説明されたようにきわめて論理的にきまって、ほんとうはそれだけでいいのです。私らの気持ちで言わしたならば、ちゃんと計算をして出ました七百五十七円六十銭、その半分くらいにしてほしいところなんです。なぜならば、それまでに長い間悪い制度のもとで悪いことをやられてきておるわけなんです、小作人に。しかし、一応数字が七百五十七円六十銭と出た、それを値引きしないまでもさらに奨励の意味で二百三十円を出した。それでいいじゃないですか、何でほうびを二度も三度も出すのですか、税金で。これらとこの法律との関係はどうなんですか。
  199. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) この農地を買収いたしました際に出しました二百二十円、それから畑は百三十円、の報償金につきましては、ただいま御説明申し上げましたように、短期間に農地解放を完了するようにと、こういう配慮から奨励の意味で出したわけでございます。しかし、今度の法案につきましては、これは先刻来から申し上げておりますように、性格が奨励金と違う。今度のこれは解放によってのねぎらい、心理的影響に対する。これもねぎらいという意味でございましょうか、それとは意味が違いますので、そこで意味が違うということでございます。
  200. 亀田得治

    亀田得治君 意味はどうしてそう違うのです。皆さんは報償報償と言っておったでしょう、いままで通俗的に。補償金じゃなしに報償なんだ、何べんも総理大臣以下そう説明している。まさしくその報償ということばを当時の自創法の十三条は使っておるわけなんです。「報償金を交付する」と、こう書いておるわけなんです。報償じゃないですか。どう意味が違うのですか。あなたはえらい違うようなことをおっしゃるけれども、ちっとも違わぬじゃないですか。
  201. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) それはいま申し上げましたように、法文に当時報償とはっきり書いてございましたが、それの意味で、いま申し上げましたように、これをスムーズにすみやかに実行が終わるようにという、そういう奨励という意味で出したのであります。今度は奨励ということでこざいませんで、すべて完了した後におけるいま申し上げたような理由によって、その貢献を多とし、心理的影響についてねぎらうということで出すのでございますから、性質が違います。  したがいまして、これはまあ報償ということばを使っておりますが、今度の法案には別に字句では報償という字句は使っておりません。しかし、報償ということは、貢献を多としねぎらうということをことばに簡単にあらわせばやはり報償である、こう考えてそういうふうに御説明を申し上げたわけだと考えております。
  202. 亀田得治

    亀田得治君 それは法案ではわざわざ納付金と、こういうわざわざ違った名称を使っておりますけれども、法案では。だけれども、あなたは本会議その他の委員会では報償ですと、補償じゃありません、報償ですと、そういうことばを何回も使ってきているじゃありませんか。あるいはそういうことに気づいて、自創法十三条で一ぺんすでにこれはほうびを出してしまっているということをあとから気づいて、ここは特に給付金というふうに画したのかもしれませんが、いままでは報償報償と言うてきておりますよ。提案理由説明書にも、ちょっと拝見しますと、二枚目の六行目ですね、「これらの人々に対する報償を実施することが適切であると考え、この法律案を提案することとした次第であります。」、そうなっているじゃないですか。総理の答弁も、それは何回もこれは同じことを言うております。「私どもはこれに対して報償の気持ちを持つべきだ、かように私は考えます。」と、木村さんのせんだっての本会議における質問に対して総理大臣がこう答えているわけなんです。これは終戦直後の自制法においてそこまで考えてすでに払っておるじゃありませんか。  しかも、その金額が正規に計算した買収対価の約三分の一あまり払っているじゃありませんか。大きな金じゃないですか。金額としては、ほうびとしては過ぎたる金額です。率からいって三分の一もの報償金というものを出している。報償にそんな二つの意味があるものですか。これはどういうふうになるのです、この矛盾は。
  203. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) 私の申しましたのは、提案理由にはそのとおり書いてありますが、本文には書いてございません。しかし、報償といっても差しつかえないと考えております。報償と称しても差しつかえございません。その点は、先刻申し上げましたように、報償におきましても、報償を出した意味が違うから、それで報償と使いましても差しつかえない、やはりごほうびならごほうびといっても、ごほうびの内容が違いますから差しつかえないと、こういうふうに、これは決して別に詭弁で申し上げるわけではございません。
  204. 亀田得治

    亀田得治君 そういうでたらめな答弁で、これだけ批判のある法案を無理やりに通していこう。そういうことをしたら、なるほど多数なら押し切れるかもしらぬが、押し切ったほうがかえって傷がつくのですよ。ほんとうによく考えてごらんなさい。こういう、前に報償金を出しておらぬでも、十数年もたってこんなことをやるのははなはだ問題があるわけですが、いわんや前に本価格の三分の一程度に相当する金を出しながら、なおかつ、これだけの批判を受けながらこれだけのものを出してくる。あなたのほうで、われわれが聞いていて、ああなるほどというような説明があるんなら別ですが、一つもないじゃないですか。聞いているほうじゃみんな一緒ですよ、前の報償も、いまの報償も。ことばをちょっと違えれば違ったものになると、そんな子供だましみたいなことは通らぬ。本体の価格以外に出せる金というものは  一体何なんですか。本体の価格以外に出せるもの、どんな名称を使おうと、それは一緒ですわ。同じことですわ。  それから、前回の自創法のときには、自創法の二百二十円と百三十円の報償金は、特に中小の地主が困るだろうということで、三町歩まで解放した人に対してだけ出されておるわけなんです。三町歩以上はもう報償金出しておらぬのですよ。打ち切っておるのですよ。もし出すとしても、これがほんとうの出し方ですわ。なぜならば、三町歩以上も持っておった人は、最初にも言うたように、悪いことをよけいやっているわけなんです。個人的な人のよさは別です。そんなことをいま言っているんじゃない。したがって、この自創法では奨励金は三町歩まで出そうということで出しておるのです。ところが、何です、今度のあなたの出しているのは。さっきの計算でいうと、三十五町歩までやっているじゃないですか。これはどうしてこんなに違ってくるんですか。前の報償と今度の報償が違うとしたら、まさしくこういう悪い違い方ですわ。どうしてこういう違いが出てくるのですか、同じ政府がやりながら。
  205. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) そればやはり同じ報償といいながらも、前回と今回で意味が違うと。当時はやはり三町歩以下のほうにつけたためにスムーズにそれが実行できると、こう考えてやったものと思うのでありますが、今回は、それと同じことばでありましても、内容の意味が違うわけであります。(「どういうふうに違うのか」と呼ぶ者あり)違う意味において出す報償であると、こういうことです。同じほうびでありましても、そういう意味でございます。
  206. 亀田得治

    亀田得治君 この三町歩までの人は三回もらうことになりますな。これは矛盾ありませんか。
  207. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) 先ほど申し上げましたように、スムーズに行なうための奨励金というのと今度とは意味が違いますから、たとい重なっても、その点については別にさしつかえない、かように考えております。
  208. 亀田得治

    亀田得治君 三町歩までといいましても、三十五町歩以上解放した人にも幾らか行くわけなんですよ、三町歩で打ち切るにしても。打ち切りの頭打ちが早く来るというだけの話でありまして、全然やらぬのじゃないわけです。なぜ、農地改革の当時三町歩で打ち切っているのに、こういう批判を受けながら、十数年もたって三町歩からさらに三十五町歩まで引き上げなければならぬのですか。これは納得のいく説明をしてください。スムーズにやろうというときほどよけい出さなければならぬのじゃないですか、現実にそこに問題があるのですから。ほんとうの心持ち、お礼というなら、少なくてもいいのでしょう、逆に。済んでしまっているのですから。ほんとうは、総理大臣が心からお礼を言うても済むわけです。いわんや、これが逆になるというのはどうなんですか。納得のできる説明あるまで、何べんでもこれは聞きますよ。全くこれは筋が通らぬ。
  209. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) この点につきましては、何回お答え申し上げても同じかと思います。前回はスムーズに実行に移すために報償金を出した、今回はそれとは違う意味において出す報償であるということでございます。その意味は、農地買収はすでに完了しておりまして、今度はそれをスムーズに行なわれるための報償ではなくて、その解放した結果に対する貢献を多とするということと、その心理的影響、ことに経済的変動等によって受けたそういう心理的影響について報償する、こういう点の違いであります。
  210. 亀田得治

    亀田得治君 だから、私の聞くのは、これは国費を出すのですから、あなたのポケットマネーを出すのじゃないのです。国策遂行のためにこそ、そこをスムーズにやろうというなら、三町歩でなしにもうちょっと上まで含めたほうがやりやすいのだ。筋は通らぬけれども、それがやりやすいという議論が生まれても、済んでしまったものについて、どんなにこれは弁解しようとも、これのお礼だという意味のことを、前回よりもさらに、ちょっとやそっとならまた別ですが、ゼロ一つ違うのです。そういう段階にまでぱっと頭打ちを上げるというのは、これは一体どういうことか。どうしても説明がつかぬじゃないか、逆じゃないか。前回は三十五町歩までやったけれども今度は一律にするとか、あるいはそれも何だから、もっとあげたいが財源がないから、またみんなの批判があるから、三町歩程度で頭打ちさせるという説明なら、なるほどと……。逆ですわ。あなたの言うことは。自分だけわかっているのでしょう。総理を呼んできて。総理の出席を求めますよ。そんな答弁じゃだめだ。
  211. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) これは何べん申し上げても同じ答弁になるわけであります。(「まじめに答えろ」と呼ぶ者あり)私はまじめに答えております。決してふまじめに答えているわけじゃない。どうもその点は、何回もお答えいたしましたように、やはり前回の報償と今度の報償というものの差を申し上げたわけでございます。それについては、何回申し上げましても、同じことを繰り返し言うことになるわけであります。
  212. 亀田得治

    亀田得治君 総理大臣出席を求めますわ。問題は二つある。一つは、旧制度に対する評価の問題。これはもういろいろな各論の問題に響いてくる基本的な議論だ。もう一つは、報償問題。総理大臣もみんな報償報償と言うてきているわけだ。その点は明らかにしてほしい、総理大臣から。(「総理大臣を呼べ」と呼ぶ者あり)
  213. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記をとめて。   〔午後八時三十六分速記中止〕   〔午後九時二分速記開始〕
  214. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記起こして。  亀田委員の質問に対しまして、十分理解がいかないようでございますから、もう少し納得のいく御答弁をお願いいたします。(「委員長総理大臣を呼べと言うのに」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  215. 臼井莊一

    政府委員臼井莊一君) それでは、重ねてお答え申し上げます。  なかなか解釈の点につきまして御納得がいかないようで、まことに恐縮でございますが、まあ当時におきましては、やはり値段の点についても納得のいかない点もあり、したがって、これを円滑に行なわせるためには何らかの方法を講じなければならないと、こういうことで、代金を支払う際に報償という名称で奨励金を出したものと考えるのであります。今度の点につきましては、すべてまあ一応済んだのでありますけれども、(「何をしゃべっているか」と呼ぶ者あり)御承知のように、このもし農地解放が行なわれなかったとするならば、これはまあ小作争議というもののさらに連続があるのでございましょうし、したがいまして、今日もそのあるいは社会不安というものが続いていたかもしれない。そういう点につきまして、この農地解放というものの効果というものは非常なものであったということはいえると存ずるのであります。  しかも、最初に申し上げましたように、これによって戦後の食糧事情というものが、非常に増産によってこれが改良せられた。この増産によって食糧事情が緩和せられたというそのもとをたずれるというと、やはり農地解放によりまして自作農の創設が進み、そして自分の田畑の耕作によって(「だめだぞ、そんなことじゃ」と呼ぶ者あり)非常な農民の間に生産意欲が増大した。まあこういうわけで、したがいまして、その解放の貢献というものにつきましても、旧地主というものの(「何時間でもしゃべらせろ」と呼ぶ者あり)貢献というものを十分認めてよろしいのではないか。  そこで、まあこれが長い間問題になっていたのでありまして、いつまでもこういうものを未解決におくことは、現在でも旧地主と小作人との間にやはり対立感情がある今日でございますので、そこで、これを何とかできるだけすみやかに解決いたしまして、そして平和な農村と、旧地主も、また旧小作人である現在の自作農も、なごやかなうちに農村の改善、また食糧の増産、こういうものに励んでもらうことが、この際、相当な金はかかることでありますけれども、することがよかろう、こういうことに政治的な判断をいたしまして、そこで今回報償ということをいたしたわけであります。  で、まあたびたび申しますように、この逆を考えまするならば、これは非常な日本においてのあのような、戦後の解放後のような平和な農村というものは来なかったであろう、こうも考える次第でございまして、そういう意味においては、この農地解放というものの効果というものは非常に各方面で評価をされておるわけでございます。そういう意味と、もう一つは、やはり心理的な影響が非常に多かったために、中には首をくくって死んだ、あるいはまた気の狂った者も出てきた、こういうことで、(「何を言っているんだ、同じことじゃないか」と呼ぶ者あり)こういう心理的影響というものをねぎらうという、こういう意味におきまして、今度報償ということを、交付金という法律的には名称——納付金という名称を使っておりまするけれども、やはり一つのねぎらい、くだいて言えば、ごほうびと、こういうような意味も含めまして、報償と御説明申し上げたわけであります。
  216. 佐野廣

    佐野廣君 委員長、議事進行……(「委員長委員長」と呼ぶ者あり、その他発言する者多く、議場騒然)
  217. 西田信一

    委員長西田信一君) 暫時休憩いたします。    午後九時十分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕      ——————————