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1965-05-17 第48回国会 参議院 大蔵委員会 第28号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十七日(月曜日)    午後零時三十二分開会     —————————————     委員異動  五月十三日     辞任         補欠選任      柴谷  要君     大和 与一君  五月十四日     辞任         補欠選任      青木 一男君     中野 文門君      太田 正孝君     山崎  斉君      田中 茂穂君     久保 勘一君      津島 壽一君     二木 謙吾君      村松 久義君     田中 啓一君  五月十五日     辞任         補欠選任      林屋亀次郎君     大谷 贇雄君  五月十七日     辞任         補欠選任      山崎  斉君     村松 久義君      大和 与一君     柴谷  要君     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         西田 信一君     理 事                 佐野  廣君                 西川甚五郎君                 成瀬 幡治君                 中尾 辰義君                 田畑 金光君     委 員                 大竹平八郎君                 大谷 贇雄君                 岡崎 真一君                 久保 勘一君                 栗原 祐幸君                 田中 啓一君                 鳥畠徳次郎君                 中野 文門君                 日高 広為君                 二木 謙吾君                 堀  末治君                 村松 久義君                 木村禧八郎君                 佐野 芳雄君                 柴谷  要君                 野々山一三君                 野溝  勝君                 鈴木 市藏君    国務大臣        大 蔵 大 臣  田中 角榮君    政府委員        内閣法制局第四        部長       田中 康民君        総理府総務長官  臼井 莊一君        内閣総理大臣官        房臨時農地等被        買収者問題調査        室長       八塚 陽介君        大蔵政務次官   鍋島 直紹君        大蔵大臣官房財        務調査官     吉國 二郎君        大蔵省主計局長  谷村  裕君        大蔵省主計局次        長        中尾 博之君        大蔵省証券局長  松井 直行君    事務局側        常任委員会専門        員        坂入長太郎君    説明員        大蔵省主計局法        規課長      赤羽  桂君        大蔵省理財局国        庫課長      原  秀三君        大蔵省銀行局特        別金融課長    徳宣 一郎君     —————————————   本日の会議に付した案件証券取引法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付) ○農地買収者等に対する給付金の支給に関する  法律案内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 西田信一

    委員長西田信一君) ただいまから大蔵委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十三日柴谷要君が辞任され、その補欠として大和与一君が選任せられました。去る十四日青木一男君、太田正孝君、田中茂穂君、津島壽一君及び村松久義君が辞任され、その補欠として中野文門君、山崎斉君、久保勘一君、二木謙吾君及び田中啓一君が選任せられました。去る十五日林屋亀次郎君が辞任され、その補欠として大谷贇雄君が選任せられました。本日大和与一君が辞任され、その補欠として柴谷要君が選任せられました。また、山崎斉君が辞任され、その補欠として村松久義君が選任せられました。     —————————————
  3. 西田信一

    委員長西田信一君) 証券取引法の一部を改正する法律案議題といたします。  前回に引き続き、質疑を続行いたします。御質疑のおありの方は順次御発言願います。
  4. 野溝勝

    野溝勝君 私は、ただいま議題になりました証券取引法改正案につきまして、二、三お伺いしたいと思います。同僚委員から技術的な問題につきましてはいろいろと質疑をされましたので、私はそれらはなるべく省略いたしまして、これが目的としておりまする証券界健全化とか投資家保穫とかいう基本的な点について質疑いたしたいと思います。  大蔵大臣は昨年の春、特に金融体制、ひいては当然証券体制にもつながると思うのですが、その構想等を表明されたことがありました。あなたはこれを全国銀行協会新年昼食会等において表明されております。その内容とするところは、金融構造改革、再編成構想と見られる演説をされたのです。特に普通銀行の合併であるとか、農林系統金融のあり方とか、政府金融機関の再編成の問題であるとか、相互銀行、信用金庫の体質的改善、さらに日銀法改正など触れております。そのときの考え方気持ちですね、そのときの金融体制に対するあなたの考えと今次証券取引法改正にあたっての考えとどういうつながりがあるのか、それと一連関係あるものと解釈してよいのかどうか^これについてまず最初見解をお聞きしておきたいと思います。
  5. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融正常化に関する具体的な問題に対して十分検討をし施策を進めなければならないということは、これは当然のことでございまして、日銀法改正銀行法改正、そういう問題も含めまして、金融正常化を進めなければならないということは考えております。  それから、証券取引法金融正常化に関する一連施策との関連はどうかということでありますが、いままで高度成長を戦後続けてまいったわけでございますが、この高度成長に必要とした難業資金のおおむねは、銀行資金、すなわち間接資本によってまかなわれた面が非常に大きいわけでございます。しかも、その間接資本という銀行からの融資の実態は、都市銀行に関する限り日銀信用によってまかなわれたということも事実でございますし、そういう意味でオーバーローンというような現象が起きまして、金融正常化を進めなければならないという状態に立ち至っておるわけであります。でありますので、これからの中期経済計画を通しましても、将来の日本産業資金状態考えますときに、間接資本である金融に偏重した状態を是正して、長期資金等自己資本比率を上げて証券及び社債等によってまかなう、金融資本証券及び社債資本とのバランスをとりながらいかなければならない、こういう結論に達するわけでございます。  いずれにいたしましても、これから日本資本市場拡大強化をはかっていくためにも、証券取引法の抜本的な改正が必要であるということで手をつけたわけでございますが、その及ぼすところ非常に大きいわけでございまして、現在の第一回目の改正ですべてのものを合理的に改正をするというわけにはまいりませんので、第一段としてこの改正案をお願いをいたしました。  この改正案の主眼も、この前に申し上げたように、証券会社を強化するというのが主点でございます。この次、第二段に一体どういうことになるか、これは証券取引所機能とか、また大蔵省企業会計に対する検査権とか、公認会計士制度とか、こういう問題の調和をはかりながら合理的な改正点考えてまいりたいということで、一段、二段、三段というような状態で本法を整備してまいるという基本的な考えでございます。
  6. 野溝勝

    野溝勝君 大臣の新年初頭における金融体制に関する構想、その考え方につきましては、大体ただいまの御説明でわかりましたが、その説明の中に、そういう考えは持っておるけれども、今日の場合はその序の口と申しましょうか、その目的を達する意図で証券取引法の一部改正もねらったということでありますが、大体あなたの気持ちもわかりました。  そこで、いま大臣はこの法案の提案理由内容にまで説明を及ぼされたのでありますが、現在の証券業界が、何といっても産業資本のいわば倉庫としての機能を発揮するには、まずもって、この法改正が大事だと、こういう考えでございます。しかし、はたして今日の日本証券業界に社会的、経済的にそのように機能する力があるのかないのか、まことに疑問とするところだ。特に現下のような経済情勢にあっては、そうその感を強くする。すなわち、政府、国のあと押しで、共同証券証券保有組合に二千億もの金を出してめんどうを見てやらなければならぬという状態にあるわけなんです。そうすると、将来産業資本を創出する場所である、機関であるということをねらうなら、そういう一つ期待をしておるならば、第三章の証券業者関係のただこれだけの部分的改正では、そういう期待を寄せ得るところへは参らないと思うのですよ。その点、あなたが、今後の証券取引所の問題、流通面に関する問題、証券金融あるいは粉飾決算に関する問題、これらも一貫して総合的に考えておるというのですが、しかし、真剣に考えておるというだけじゃ、私はこの問題は済まされぬと思います。また、あなたの構想から見ても、それでは私は目的を達するわけにはいかぬと思います。そこで、先ほどあなたが、金融体制一環の問題として今後の数々の問題を言われましたけれども、それらを真剣に——むしろこれを出すより私はそれを先に出さなければ、証券業界健全化あるいは投資家保護、すなわち証券市場安全化をはかることはむずかしいと思っているのです。そういう点について、私の見解が間違っておるか、あなたの見解からいえば、いやこのあとでそれをやるのだというようなことになるのか、その点、私はあいまいでございますから、ひとつお聞きしておきたいと思う。
  7. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融正常化をはからなければならぬということは、これはだれでもそう考えておりますが、具体的な問題としてはいろいろな問題がございまして、日銀法改正案銀行法改正案等考えてはおりますが、日銀法等は、成案を得ましても、本国会で御審議をわずらわすということにならなかったわけでございます。また、金融正常化につきましては、金の偏在面を是正いたしましたり、日銀依存態度をやめて自立態勢をとらなければならないということを、金融機関に対しても強く行政指導も行なっております。まあこの金融証券市場は車の両輪のようなものであるということを先ほどから申し上げておりますが、金融正常化は徐々に行なう、行なわなければならない問題でありまして、金融正常化が全部終わってから証券市場をよくすればいいというわけにはまいらないわけであります。また、金融正常化を進める過程において証券市場が発達をするというような状態にならなければ、金融正常化も行なわれないわけであります。  日本産業資金のことを考えてみれば、すぐにもうおわかりになるとおり、産業資金を必要としないというように成長がとまってしまうか、そうなればもちろん資本は急激には必要といたさない状態もできるわけでありますが、少なくとも中期経済計画に示しておりますように、八・一%アップの成長を続けるということになれば、これからも相当大きな産業資金が必要となるわけであります。その必要となる資本資金を、いままでと同じように金融資本からだけ仰いでおれば、永久ともいうべく金融正常化はなしがたいわけであります。でありますから、必要な資金を、自己資金の充実というような面も拡大しながら、間接、直接、両資本バランスをとるということになると、まず証券市場育成強化をまっ先に始めなきゃならぬということは、これはもう当然のことでございます。  ただ、証券市場拡大強化というものには、この法律改正案に示しておりますように、証券業者だけをよくするというだけでできるものでありません。もちろん、証券市場拡大には、企業自体に力をつけなきゃなりませんし、企業粉飾決算などを絶対にできないような状態にしなければなりませんし、また、取引所そのもの上場株に対しての公示の責任、公表した数字に対する責任を持てるような状態にしなければならぬことは、これはもう当然でありますが、何もかも一緒にできるものでありませんし、非常に大きな問題を含んでおりますので、まず今回は、証券業者育成強化するという改正に思い切って踏み切ったのであります。これはもう免許制ということで大きく踏み切ってまいりました。また、第二の、証券市場取引所の問題につきましては、法律改正しなくても、審議会の議を経て、いろいろ内部の規定を変えるというような問題につきましても、検討の余地もございますし、いまよりも是正することができますので、これらの問題は第二段の改正というものにいたしたわけでございまして、いまの証券取引法改正、これはもう時期からいったら最も重要なる法律である、もう全くこれは最大の重要案件である、このように私は考えておるわけであります。
  8. 野溝勝

    野溝勝君 何だか、あんたの言うことがちょっとひとりよがりに聞こえるんですが、私がこういうことを聞くのは、大臣、あんたのほうの前の池田内閣高度成長政策を進めた、そしてその所得倍増計画中期経済計画ということで修正した。まあ、これは前の計画がまずくて再検討されたということだと思うのだけれども、相変わらずひずみはひずみとして認めて、逆算して少しく成長率を引き下げたというだけなんだ。そして佐藤総理は、これを施策基本とする旨を国会で表明した。こういうことでは佐藤内閣経済安定路線という方針政策態度は矛盾するのだ。これでは経済界産業界は戸惑う、判断に苦しむのは当然です。加えて、今日の不況深刻化であってみれば、経済界産業界はお先まっ暗なんですよ。そうでしょう。大体、前の高度経済成長を踏襲するような印象を与えているのですよ。そして一方においては、産業界がこの深刻な不況なんですから。月五百件も倒産し、毎月倒産がふえる一方というような状態なんです。倒産するのは前は二流会社といわれておりましたが、今日ではやはり一流メーカーにも及んでいるわけです。こういう状態を見て、このような政策態度では一体どうなるのかという不案なんですよ。だから、私は、その不安については、大蔵大臣はこの経済の動きを十分よくわかっていると思うのです。  そこで、この金融市場と一体の証券市場の問題については、これだけのやり方でやっていったのでは、私はとても産業界経済界、あるいはいろいろ関係を持っている人々は、安心ができないと思うのです。こんなことではめどが立たない、こう思うのですよ。大体、この証券市場なんというものは、投資信託なんというものを最初野放しにしたことがいけないんですよ。私はあんたを責めるのじゃないんですが、その結果こういうことになったんでしょう。こんなものは四千億、五千億、幾らつぎ込んだって、とても目鼻がつくなんていうものではないんですよ。基本的に今日の経済政策としては、中期経済計画基本とするなんていうようななまぬるいことを言うのじゃなくて、思い切った方針政策基礎を出さないというと、えらいことになると私は言いたいのです。  同時に、証券対策についても同じです。大蔵大臣は特にそういう方面については非常にさといといいましょうか、非常に明敏でございますから、現実の経済界がどういうように動いておるかよくわかっている。だから、その点についてあなたが、これだけでなく、この次にすぐ証券取引所なり、あるいは紛飾決算の問題なり、軌道に乗せて、ひとつ明朗なる形において証券取引を盛んにせしめ資本市場としての目的を達成せしめる、こういうことを具体的にテーマを言ってくれなければ、こんなものを出されても私は信頼できません。だから、あなたが考えておることを明確に発表願いたいと思うのです。
  9. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 証券市場育成強化施策につきましては、皆さんからもこの委員会でいつでも御意見があるわけでありますから、そういうものを十分勘案をいたしまして、まず証券取引法の第一段改正として本案を提案をしたということは、先ほどからるる申し述べておるわけであります。  日本経済の現状というものに対する分析をされましたが、私は、高度成長の結果、確かに企業設備投資が過度に行なわれたりして、資本圧力というものがありまして、フル稼働というような状態にならないということはよくわかるわけでありますが、いままで非常に高い成長率を続けておりましたので、徐々に安定成長に移行してこなければならないということも事実でありますので、その間に非常に不況感というものを感ずるのは、これはやむを得ないことでございます。西欧諸国の平均四%成長に比べて、この不況感の中でも九・四%も年率伸びておるのでありますから、いままで一五%、二〇%伸びておったのに比べまして不況感ということに驚いて、これでもって急激に緩和政策をとるというようになれば、また国際収支が逆転するというような状況になるわけでありますから、そこはひとつ十分安定成長路線に行くまで努力するということでなければならないと思います。  それから、国際的に見ますと、確かに個々企業資本圧力その他によって収益率が下がったりしておりますが、まあ輸出も伸びておりますし、いまのことばでいってマクロ的に見たら、非常に自信のある、国際経済に対応できる日本経済体制がしかれつつあることも、これは何ぴとも否定できない事実でございます。そういう意味で、個々企業実態には十分目を通しながら、きめこまかな施策を続けながら、大きな変動を避けながら、安定成長路線に追い込んでいく、こういう基本的な考え方は変わっておらないわけであります。こういう見方で金融政策を進めてまいるという考え方でございます。  それから、いまあなたが端的に申された証券市場育成強化のために企業会計紛飾決算等をなくしなければならないということでありますが、これはもうそのとおりでありまして、どう取り締まるかという問題でございます。これは取引所の監査をどうするかという問題、それから公認会計士制度をもっと拡充して、罰則も強化すると同時に、公認会計士が集団的に検査ができるように措置したり、公認会計士会、そういう面に対してどう規定するかという問題もございます。また、証券取引法規定いたす大蔵大臣検査権というものを一体どうするか、こういう問題もありますので、いやしくも上場しておる企業粉飾決算をして市場から金を集めるというようなことは絶対にないように、そういうことは厳重に規制し得るような法律改正考えたいということでございます。できれば、企業会計法というものがあれば、これは一番簡単なんです。ところが、いままでのどんな学者でも考え方は、もう商法に書いてある、間違った決算をすれば商法罰則があるので、他に単行法は必要としない。ちょうど名誉棄損法と同じような考え方で今日までずっと来たわけでございますが、私は、これは非常に大きくなれば、私鉄などは鉄道営業法鉄道会計法によりまして非常にこまかく縛られておりますから、粉飾決算をやりたくてもやれないようになっております。ですから、そういう意味企業会計法式なものが必要ではないかということをわれわれも考えたこともございますが、いかにも自主的、民主的なものを拘束する、そういう考え方で、それは商法にゆだねべきだということで今日までまいりましたが、企業会計法までつくって、粉飾決算した者は十年以下の徴役になるのだというふうなものまで必要かどうか、これは問題がございますが、いずれにしても、証取法にある大蔵大臣検査権とか、証券取引所がみずから上場基準をきめて上場した以上、それに対して責任を負えるような法制上の措置、これは必ずやりたい、こういう考えでございます。
  10. 野溝勝

    野溝勝君 それでは、大臣証券問題についてのお考えはわかるんですが、大臣、どうですか、たとえば証券市場育成強化する、これもいいんですが、それと同時に、その対象となる産業界に対していまのままの無政府的なやり方でいいんですか。私はそのほうも——何も統制的な表現をするんじゃないんですよ、そういうことばを言うんじゃないんですが、産業界がいまのようなだらしのないていたらくのままで証券市場育成ばかりしたって、軌道に乗っていきますか。この点はどういうふうに考えておりますか。  もう一つ私は申し上げますと、日本銀行調査によると、いわゆる企業間信用は本年三月で総額二十二兆円に達していますね。この三年間に約十兆円ふえたんですね。そのうち六兆円は売り上げの増加に見合ってふえたものだが、残り約四兆円は設備投資の行き過ぎ、販売競争の激化などにより支払い条件が悪くなってふえたものですね。日本銀行調査結果が明らかにしています。そうすると、産業界自体考えなければならぬし、また法改正をして証券市場に力を入れようとしても、一方の産業界がこんな状態じゃうまくいきっこありません。この点はどう考えるんですか。あと追いなんですよ。だから、私は先ほど言ったように、粉飾決算の問題でも、あるいは取引所の問題でも、証券金融についても、そういうところに思い切ったメスを入れて改革をしなければ問題にならぬ、こういうことを言っているわけです。どういうようにお考えですか。
  11. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ですから、先ほど申し上げましたように、企業粉飾決算をするなどということはいいことではないので、これは当然商法規定によって処罰を受けるようなことになっているわけであります。ありますが、処罰を受けたような人がないので、粉飾決算といえば、大体だれでもやっているのだ、こういう感じが今日多くなっていると思います。しかし、今度の山陽特殊鋼のように、いまの管財人が過去にさかのぼってその当時受けた月給まで徴求する、これもいまの法律の中でえらいことをやっているなあ、こういう気持ちがありますが、こういう状態が出てまいりましたし、検察や警察もこういうものを徹底的に調べる、こういうような体制ができましたので、私は、企業責任者というものの責任感というものはこの山陽特殊鋼、サンウェーブの問題を契機にして一挙に非常に強くなった、こう思います、おそらく、感じだけの問題でございまして、それでどうにもなるわけじゃありませんが、だから、そういう問題に対して証取法改正を第二段に考えまして、公認会計士の問題、それから証券取引所改革の問題、証券取引法に書いてある大蔵大臣検査権の問題、こういう問題の調和を十分考えながら、法律改正が可能であるならば可能な限度一ぱい第二段において法律改正等をいたします、こう申し上げておるわけでございます。  しかし、根本的には日本企業そのもの内容をよくしなければならない問題でありますから、無制限に借金をしたり、またもうかるといえば無計画に同じものをつくったり、また国内消費水準というものを考えないで拡張をどんどんする。いまから十年前にテレビは、もうつくればつくるだけ、間に合わぬように売れたわけでありますが、いまも、テレビは国民の九五%持っておっても、幾らでもまだつくれば売れるのだ、こう考えて、昔売れたからいまつくるという企業者があれば、これはもう売れないにきまっておる。ですから、そういう問題も、内容的に、国内消費という面だけではなしに、国際的な視野にも十分その目をはせながら、合理的な経営態度に徹するということになれば、日本企業も私はいまのような段階から脱して上向き、長期的拡大安定の線に入る、またそうしなければならないと思っております。  こういうことでありますから、今度こればかりの改正をして、これは通しても通さぬでも同じだ、こういうことではなく、これはもう証券業者免許制度にするだけでもたいへんな問題だ。三年前に、私は証券業者免許制にしなければだめですと大蔵委員会で答えましたら、たいへんな問題が起こったわけです。これまた大問題なんです。ですから、この法律をまず通していただけば、これは相当画期的な前進だ、こう思っておりますから、こればかりではとおっしゃらないで、これがワン・ステップになり、次に次にと合理的なものになる、そういう意味で御理解賜わりたいと思います。
  12. 野溝勝

    野溝勝君 これは、この法案が資本市場の問題ですから、われわれから見たら階級的にはたいしたえらい問題ではない、資本市場から見れば、少しはいい程度である、そういう階級的なイデオロギーで私はものを言っているのじゃなくて、現実のありのままから私は申しておるのです。  そこで、問題は具体的になるのですが、特に私の心配することは、いまの経済界は紛飾経済です、すべて。紛飾ということばは、新聞社、マスコミあたりが言いだしたのか何か知らないけれども、でたらめなんだな、実際。そうしてタコ配ばかりやっておるのだね。だから、私はこのタコ配にもかかわらず徴収している税金をタコ税といいたい。実際弱ったもんなんですよ。このタコ配をやって、そうして投資者の目をごまかしてぼろいもうけをする、こういうわけです。いままで証券問題が、ようやく最近になって証券局ができたのであって、それまで一部長が日本証券界をリードしていた。これは田中君の功績だ、局長をつくってこれからやるという姿勢を示しただけ。しかし、姿勢を示したとたんに、見ると哀れな状態なんです。この法案だけではとてもだめだ。いま、トヨタにしても、日産にしても、成長株といわれた自動車メーカーは、その主要な十二社は、五年間に資本金は四倍以上、売り上げは三倍以上、利益は五倍以上という成長ぶりだが、こういうものの決算はどうか。よければよいで、そこにはやはり紛飾がある。一度調べてみたらどうか。まして、悪ければ紛飾決算山陽特殊鋼の問題は先ほどお話があったし、これは始終話題にのぼっておりますから省略いたしますが、とにかくいま紛飾決算は常識化している。今日ではもうあらゆる会社がこういうことをやっておる。  私は前に本委員会で法定監査についても少し触れておきましたが、ここにも是正すべき問題があります。端的にいって、一つの大きな会社と公認会計士という個人との契約だけじゃ、法定監査などうまくいくわけがないんです。私は、公認会計士協会なら協会という特殊法人と会社なら会社というものと四つに組んで、りっぱな会計監査報告ができるようにしなければいかぬということを言っている。これがやはり一つの基礎ですから、日本経済の動向の基礎になりますから、こういう点を私は強く主張しておったのです。ですから、大臣、誤解をしないようにひとつ願っておきたいことは、公認会計士罰則を強めればいいというふうに、公認会計士がだらしがないからというようなことだけにとることは、私は誤りだと思う。むしろ、税務調査権のある大蔵省もだらしがないのだ。だから、公認会計士を責めれば、大蔵省へ反発してきますよ。だから、これは大蔵大臣が十分証券局長に注意を与えて、この次の抜本的な一つのそういう改正法を出す場合においても、その点のあんばいを十分留意をされて出されぬと、また大きな反撃を受けますから、そういう点もこの際注意しておきたいと思います。  そこで、時間の関係もありますから、私はこまかいことはあまり申しません。大臣が、来たるべき国会におきましては、いま申しました監査報告の点やら、あるいは取引所の問題その他、そういう問題を十分検討して出すと言われますから、必ず私はそういうりっぱなものが出されるものと大体了承しまして、最後になお若干お聞きしておきたい。産業資金の調達、資本調達の場としての証券市場と一体たるべき金融市場、特に今日のひどいオーバーローンの状態にかんがみ、今日までは金融市場により比重がかかっていたと思うが、大臣、この際私はひとつ聞いておきたいのでございます。最近、金融機関の本流であるべき銀行があまりにもだらしのない醜態を演じております。ちょうどこの機会でございますから、私は伺っておくのでございますが、何も吹原事件だけではございません。都市銀行をはじめ多くの銀行が、非常に不祥事件を起こしているのです。この点は大臣も十分御了承ができていると思います。これは今日に限ったことではないのですけれども、最近非常に多くなってきましたから、その点、大臣に伺っておきます。どういう原因で多くなってきたのですか、これは。
  13. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 銀行の中でいろいろな問題が起こるということは、これは実際、国民からの公的機関としての信用をつなぐという面からも、はなはだ遺憾でございます。ですから、日銀とかその他の銀行から金が紛失したというような問題に対しては、厳重に注意を行なっておりますし、また銀行当局にも、そういうことが起こらないように注意を喚起いたしております。  また、今度の吹原事件とかいろいろの問題のように、どうも一銀行支店長が三十億も二十億も手形を出す、金券を出す。金券に対する観念、こういうものが欠如しているのだ、こういうことは言い得ます。インフレになると、確かにそれはそうなんです。われわれ子供のときは十銭玉でも非常に大切にしたものですが、どうもこのごろの子供は、千円やらないと、言うことを聞かぬ。こういうところに大きな問題があるのじゃないかと思います。ですから、インフレ・マネーといいますか、いわゆる通貨価値の安定ということがいかに重大であるかということを、この種の問題を考えるときに特に感を強くするわけでございます。このごろ一円玉が道路に落ちていても拾わない、こういう思想そのものが間違いである。そういうことだと私は考えておりまして、国民全体がまずみずからの気持ちを引き締める。千円札は取るけれども、一円玉は取らない。一円玉が基礎でございますから、一円の千倍が千円だ、こういうことを親も子供に教える、こういうことをやり直さないと、戦後どうも少しすべてのものが行き過ぎている、こう考える。  特に金融機関などは、新しいマンモス機構というのができて、しかも下の話——下克上というか、大体民主主義というのは下克上なんですが、大体において、それが上のほうは自分の責任上あまり強いことを言わない。自分のほんとうの責任を果たさない。そして下のほうから来るものは全部のんでおけば民主主義が行なわれるという。こういところが非常におかしい。大臣がどんどんと指示をすると、大臣は政治的にかってなことをするから、とにかく積み上げてきたものは大臣が変更をしないではんこを押すのが、こういうのが民主主義だと、こういう考え方がびまんしておる。そういうものは私は明らかに間違いだと思います。そういうところからこういう問題が起きておる。  ですから、今度の金融機関に対しても、大臣通達、依命通達として、少しこまかいのですが、こまか過ぎると言われるようなもので逡巡もしましたが、一ぺんぴしゃんと言っておかないとこういうものは直らない、こういうことで、この間、逐条依命通達を出したわけです。こういう問題で私は一番の問題は、国民の信を失うということは非常に大きなマイナスでございますから、国民の信用をつなぐために、大蔵省も日銀も各金融機関もここでひとつ態勢の立て直しを行なう、こういう気持ちでひとつやってもらいたい。私は、逆にある一定限度以上——支店長などの権限が一定以下であるならば、一定以上というものは、その本人が知らなくても、問題が起きたときには最終責任者が負うというような体制をきめなさい、責任の限界がどこにあるかわからぬ、こういう考え方はよくないと、まあ非常に強い態度で出ておるわけでございまして、金融機関の自粛だけではなく、大蔵省銀行行政につきましても、少なくとも信をつなげる、責任国会に持てる、こういう体制を確立してまいりたいと思います。
  14. 野溝勝

    野溝勝君 大体予定の時間も参っておりますので、先ほど申したとおり、私はあまり技術的な問題にわたっての質問は省略しておるのでありますが、最後にもう一つお聞きしておきたい。  いまの銀行との関連でございますが、私はあなたの在任中にこれは徹底しておかなければいかぬと思うのですよ。というのは、ほかの人がやるとみんな何か黒い煙幕があるように思われる、黒い霧が立つように思われるのです。あなたはそこは比較的明朗だから、あなたは得だよ。ほんとうに得だよ。普通の人があなたのような答弁をすると、私はしゃくにさわる、ふざけるなということになる。  それは何かというと、大蔵大臣、きょうは私はざっくばらんに言うと、とにかくあなたのところの大蔵省銀行局の調べで、四十年二月三日、これは秘密文書だかもしらぬが、とにかく横領事件、盗難等の統計で、合わせて銀行関係で七十二件、その金額が——金額のことは言わないが、相互銀行で四十一件、信用金庫で六十八件、合計トータルで百八十一件、いろいろ当たりさわりがあるから名前はあげないが、いやしくも一にも信用、二にも信用という金融機関でこういう横領なり盗難事件がこんなにあるということは、これは重大な問題です、金融機関のルーズ、倫理低下あるいは当局の怠慢として。けれども、あなたなるがゆえに、比較的大蔵大臣は黒い霧が出ておらぬだけに、あなたは得をしておる。だけど、それで満足していちゃ困ると思うのです。重大な問題ですよ。特に某相互銀行支店長のごときは、一億四千万円も不正の貸し出しで手形を乱発をしておる。吹原事件のようなことは続々とあるのだな、金の額は違うけれども内容的には。こういうことはあなたは知っておると思うから一々は言わないが、言わないからこれでいいんだということでは困る。特にあなたの在任のうちに思い切ってやりなさい。ほかの者がやると、いろいろしりを出していかぬので、あなたならできる。ところが、私が言うとおり、あなたはいつまでも大蔵大臣をやっておるのじゃないのだな。どうだ、ひとつこの際思い切ってやっておいて、そうしてあなたは幹事長になるがいい。(笑声)それをひとつ頼む。  それと、もう最後に私はあなたにだめを押しておくが、この証券取引法改正は最善の努力を払ったような表現をあなたはされたけれども、しかし、だんだん話を聞いていると、これだけじゃだめだということなんだね。それで、先ほど申した取引所の問題、あるいは監査報告の問題、あるいは日銀との問題、あるいは流通面の問題、そういうものを総合的に、来たるべき機会には何かこれに対する法律案を出したいという意思があると私は認めたが、それでよろしいかどうか、それを聞いておきたい。
  15. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融正常化及び金融機関体制確立に対しましては、勇往邁進いたしたいと存じます。  それから、第二点の証券取引法改正は、これをもって万全なものじゃありません。全くもって第一段のものであるという考え方でございますから、この次の改正までには大蔵省の有価証券に対する態度をどうするか。これはまあ不実記載の場合には罰則もございますが、罰則よりも商法罰則のほうが強い、こういうことにもなっておりますので、まあ単行法としての証券取引法に基づく大蔵省に出す有価証券届け出というような関係をどうするか。先ほどあなたが申されたとおり、公認会計士をただいじめる、罰則を強くするだけではだめなんだ、公認会計士企業会社に対抗できるような新しい制度をつくるか、共同的な体制にするかということでありますが、こういうものとか、公認会計士法律上もっと強くするとか、いろいろの問題もございます。まあ報酬の問題もございます。でありますから、個人対個人の契約に基づく監査業務ということではなく、これは対立的なものにするかどうするか、また証券取引所制度上場基準とかそういうもので法律に移せるものがあるか、またいまのように法律に移さなくともできるものは、その法律を出さなくとも、直ちに前向きで規則等を改正する、こういうような態勢でまいりまして、本法の改正が通過すれば次のできるだけ早い機会に第二段の改正を急ぎたい、また改正案が出るまでの間にも現行法でできるものは思い切ってひとつ改正をしてまいりたいという考えでございます。
  16. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちょっと関連して。ただいま野溝委員から、この証券業法の改正案に関連しまして、銀行の経営の健全化の問題、また金融正常化の立場からの質問があったのです。私も前に塩谷財務調査官に対しまして、金融正常化の立場、あるいはまた銀行の経営の健全化の立場から、この法律案改正について質問したわけですが、事務当局として答弁し切れない面があったわけです。で、大蔵大臣に質問するということで保留してあったわけです。ですから、この際大蔵大臣にお伺いいたしたいと思うのです。  先ほど野溝委員も申されましたが、最近の銀行の経営が非常に不健全である、吹原廃業の問題あるいは山陽特殊鋼の問題等起こっていますが、この根本の原因は一体どこにあるか。で、大蔵省はこの間、大蔵大臣が通達を出しましたですね、銀行に対しまして。しかし、さらにさかのぼって、この根本の原因に対してやはり手を打たなければ——もちろんこの間大蔵大臣が出しました技術的な通達は必要であります。しかし、さらに政策的に銀行の経営が不健全になる基本的な原因に対して手を打ちメスを入れなければ、私は問題は解決しないと思うのです。で、一番根本の原因はどこにあるかといえば、要するに金融が非常に非正常化状態にあるということだと思うのです、根本はね。非正常化の原因としては、一体どういう点にあるかといえば、ただ銀行の預貸率を見てもわかりますし、また特に短期資金をもって長期資金をまかなっておるという点にあると思うのですよ。それで、高度成長のための資金を短期資金でまかなう、そうして預金競争をやり、そうしてまた貸し出し競争をやる、そうして短期資金で融通しておりますから、金融が引き締まると山陽特殊鋼のような問題が起こり、預金競争をやるために吹原廃業のような問題が起こってくる。そこで、金融正常化ということを大蔵大臣はもう当然のことであると言われましたが、しかし、これは抽象的に言うだけではなく、具体的にやはり手を打たなければならぬと思うのです。  そこで、この金融正常化の具体的な突破口として何が必要であるか、この点についてこの間、塩谷財務調査官に質問したわけですけれども、事務当局の立場としてはよう答弁し切れない点があったのです。それで大蔵大臣に伺うわけですが、これは結局いまの金利の不均衡ですよね。貸し出し金利と公社債金利、そういうものとの不均衡、これが一つ。これを是正すれば突破口になるのじゃないかと思うのですね。しかし、金融界あるいは興銀等に相当反対があるというふうに聞いておるのです。公社債市場正常化する、その発行条件を引き上げると、今度は銀行の貸し出しのほうの、短期貸し出しのほうの金がそういう公社債市場に流れてくる。そうなると、銀行は、いままで高い金利で貸しておったものが高い金利をかせげなくなる、そういう採算の点から渋る点もある。そこで、金融機関は依然としていままでのような安易な貸し出し、短期資金をもって長期資金をまかなう、貸し出しするような安易な、そうして高利の利潤を得ようとする、そういうような安易な態度を変えていないのではないか。そういうことが直らなければ、金融正常化といっても、これは私は具体的に解決されないと思うのです。ですから、具体的にこの際何か、もう吹原産業の問題、山陽特殊鋼の問題が起こったのですから、この際正常化に踏み切らなければ踏み切るチャンスが私はないと思うのですよ。そこで、具体的に公社債市場、これを私はここで、何といいますか、育成していく。それには、現実の問題としていまの発行条件を変えなければだめだと思うのです。これに対して具体的な手を打たなければ、幾らもう抽象的に言ったって、具体的に突破口がちっとも出てこないと思うのです。ですから、私はこういう点について具体的に、金融正常化の具体的な突破口の一つとして公社債発行条件についてどう考えられるか。これは引き上げなければ問題が解決しないと思うのです。  ところが、もう一つ大蔵省考えとして、貸し出し金利と公社債の発行条件とのギャップですね、開きを直す方法として、公社債の発行条件を引き上げるのじゃなくて、今度は逆にいままでやってきた低金利政策、金利を下げて、そうして金利を下げることによっていまの公社債の発行条件との開きを縮める、こういう考え方があるのではないか。二つの考え方があるわけです。そのどっちを選ぶのか。  どうもこの間、運用領かりの規制を強化すると一これは質問したのでありますが、そうなると、証券業者が運用預かりによってコールを取っていたのですが、コールの取り高が少なくなる、金融がゆるんでくる、そういう形で金利を下げることによって正常化していく、そういう方法もほかにあるのではないか。それともう一つは、今後公債を政府が発行する場合のいわゆる条件を有利にしたいというところから、そういうことからいまの公社債の発行条件を引き上げることを渋っておるのではないか。その点をはっきりまず伺いたいと思う。  私、時間がございませんから、要点だけ申し上げますが、その点が一つと、それから、公債の発行につきまして、これは最近財界で減税公債の発行が非常に要望が強いし、宇佐美日銀総裁も、日銀引き受けでなければ公債発行は弾力的に考えてもいいんではないかと言っております。しかし、佐藤総理大臣は、昭和四十三年まで公債発行をしない、こう言っているんです。その四十三年まで発行をしないのかするのか。これ、やはり全体の金融正常化の問題と関連する重要な問題です。この点が第二。  それから、第三は、直接この法案とも関係があるのですが、われわれの手元に証券に従事している労働組合から非常にいろいろな陣情があるわけです。この法律改正案を実施することによりまして中小証券あるいは証券業者の整理を促進することになるのではないか。この中小証券に従事している労働者は非常に不安を感じているようなんですね。ですから、この中小証券の整理によって失業その他の不安がないようにこれはもう指導をしなければならないと思うのですが、そういう点について不安がないように措置するにはどういうことを考えていられるかどうか。  それから、最後にもう一つ、これは直接関係ありませんが、しかし、全体の金融正常化から見れば関連があるわけですけれども、最近の円安の問題ですね。円が非常に安くなっている、為替相場が。これは今後の重大な問題です。大蔵大臣、この原因をどう考えられるか。特に、私の見方としては、ドル防衛につきまして、大蔵大臣は、アメリカの利子平衡税について一億ドルのワク内においてはこの適用を免除するというので、非常に喜んで帰られた経過があるのですよ。ところが、その後の情勢を見ると、そんな一億ドルのワク内の特別的な優遇措置を講じてもらって喜んでいるような事態ではないのですね。御承知のように、ジョンソンの国際収支に関する教書によりましてアメリカのドル防衛態度が非常に強くなりまして、連邦準備銀行のアメリカの市中銀行に対する融資規制が非常に強化されているわけですね。昨年の実績の大体五%増にこれを規制する、こういう非常にきつい、アメリカの市中銀行の対外貸し付けに対する規制が非常に強化されているんでしょう。ですから、私はインパクトローンが非常に困難になってくると思う。それから、ユーザンスのリファイナンスについても非常に規制があるように聞いているんです。これは私は重大な問題で、一般に十分まだ知らされていないと思うのです。これはちょっとなまやさしい問題じゃないと思うのですよ。アメリカのドル防衛態度としてのアメリカの市中銀行の融資規制ですよ。いま貿易が好調であるのに、円がどんどん安くなる。これは、ユーロダラーの引き揚げもしておりますが、もっと根本的には、私は貿易外につきましてアメリカからのインパクトローンの借り入れ等、これは非常に困難になってくる。あるいはそういう長期の借り入れだけでなく、短期的にもユーザンスのリファイナンスも非常に窮屈になってくるというようなことになると、たいへんなことになる。それで、日本はアメリカに対して非常にドル預金をたくさんしているんですから、こういうことに対してもっと強力にアメリカに対して要請する必要があると思うのですよ。たくさんのドル預金をアメリカにしておるにもかかわらず、このようなアメリカの市中銀行の融資規制ですね、それが非常に強化され、それから貿易のユーザンスについても非常に制限を受けているんですから、こんなばかな話はないと思うのですよ。こういう点についてどうお考えになっておりますか、お伺いいたしたいわけです。
  17. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) 金融正常化につきましては、もう毎度申し上げておりますが、都市銀行のオーバローンの解消の問題、それから資金偏在、金が偏在をしておるというような問題がございますが、こういう問題の是正とか、コールレートの引き下げとか、公社債市場育成とか、こういう具体的な問題がたくさんあるわけでございますが、こういう問題を一つずつ取り上げまして、金融正常化の道を急がなければならないという基本的な考え方に立っておるわけでございますが、公社債市場につきましては、発行条件の弾力化という問題がございます。これは金融の不正常という問題、先ほどあなたが御指摘になったように、短期の金融をもって長期をまかなっておるというような問題がありますから、長短資本というものはこれはもう明確に分けられれば、一番正常化が進むわけでございます。そういう意味で社債市場育成をはかりまして、長期投資等は社債市場から資金を得るというためにも公社債市場育成をはからなければならぬ。はかるためには金利体系をどうするかという問題がございます。発行条件をどうするか。この問題は金利を下げることによって差が開くという問題と、発行条件を上げることによって消化をよくするという問題は確かにあります。これは非常にむずかしい問題です。検討はいたしておりますが、まだ明確な結論を出しておらないということで御了承いただきたいと思います。  それから、いま時期的に非常にいいときですから、弾力化でもってその制限を幾らか緩和をしても、金利が上がるというような大勢には比較的にないような状態でありますから、そういう場合にいま社債市場育成するには非常にいい時期だという見方、しかし、原則的には金利や発行条件の弾力化ということが即金利を引き上げることになるんだ、こういうことが明確なときは、やはりなかなか弾力化はできないということで今日までずっと引っぱってまいりました。しかし、長短金利の間に幅が非常に少ないという問題もございますので、こういう点をいろいろ考えて慎重に検討をしておりますということで、ひとつ御了解いただきたい。これらの問題はいつどうしますなんと言うと、公定歩合の問題と同じことで、いろいろな問題がございますので、大蔵省検討しておるんだな、こういうことでひとつ御了解いただければはなはだ幸いでございます。  公債を四十三年まで出さないという問題でございますが、これは総理が四十三年まで出したくないという基本的な姿勢を申し上げたということは、本会議でも言われたとおりでございます。これは中期経済計画に、四十三年まで公債は発行しない、こういうことになっておりますので、その意味で申し上げたわけでございます。とにかく、いま発行論がございますけれども、公社債市場ができておらないときに公債発行をやったって、できないわけでありますから、そういう問題も前段の公社債市場育成と全く密接不可分でございまして、将来公債を発行するようなことを考えても、公社債市場育成がまず先だという考えでございます。いま公債を発行するというような考えはありませんので、まあ当分の間発行しないという在来の言明をそのまま御承知いただければ幸いだと思います。  もう一つありますが、中小証券の問題は、本法において整理が促進されないか。そうではなくして、これは経過規定もつくっておりますし、中小証券のあり方、内容その他十分見まして、本法が中小業者の整理法案にならないように十分な配慮をしてまいりたい。整理法案というよりも、中小証券そのものを含めて証券界そのものを整備拡充することを目途といたしておりますので、中小証券の整理促進というようなことは絶対考えておりませんし、またそういう不安のないように適切な行政指揮をしてまいりたいと考えます。  最後に、ドル防衛にかかる諸問題の提起がございましたが、円安の問題については、ユーロダラーの問題とか、いろいろな問題があると思いますが、現在、表に出ておりますように、インパクトローンの問題、ユーザンスの問題その他について、アメリカの市中銀行等が相当しぼられておるというような認識でのお話がございましたが、内容的にはそういうことはありません。これは一億ドルのワク内免税発行の大統領令が出ます前に、私と米当局との間にも十分に連絡がございますが、低開発国に対しましてはアメリカからの貸し出しが促進されるような方向でいかなければならないし、先進国に対してはいままでのものよりも押えると、こういうことでいくべきであるという基本的な態度が決定されておりますが、特に日本に関しましては、日米間経済交流の面もあって、日本はこの適用を除外する、こういう考え方に立っておりますので、いままであなたが言われたような、これから市中金融機関等から急激に締められて、日本の外資導入というものが長短両面において非常に困る、円安がだんだんに強くなっていくような状態が起こる、という可能性はないというふうに感じております。まあしかし、これらの問題については重要な問題でありますし、国際金融情勢、国際経済の関連もございますので、慎重に情勢を見守りながら万全な態勢をとってまいりたいと考えております。
  18. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 円安に対してどういう……。これは放任しておくのですか、うっちゃらかしておくのですか。
  19. 田中角榮

    国務大臣田中角榮君) ですから、先ほど申し上げましたように、アメリカ当局とも、また市中銀行等との話し合いも続けておりますし、外資に対する不安、そういうものも感ぜられないという基本的な態度をとっておりますので、これから円安が続くというような状態はないというふうに考えております、こう申し上げております。
  20. 西田信一

    委員長西田信一君) それでは、以上で本案の質疑は尽きたものと認めて御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  21. 西田信一

    委員長西田信一君) 御異議ないと認めます。よって、本案の質疑は終局することに決定いたしました。     —————————————
  22. 西田信一

    委員長西田信一君) 農地買収者等に対する給付金の支給に関する法律案議題といたします。  本案は、去る五月十四日衆議院から送付され、本委員会に付託せられました。  なお、本案は衆議院におきまして修正議決されておりますが、その修正点は、附則第一項の「この法律は、昭和四十年四月一日から施行する。」とあるのを、「この法律は、公布の日から施行し、昭和四十年四月一日から適用する。」と改めるものでございます。  それでは、まず本案の提案理由説明を聴取いたします。臼井総理府総務長官
  23. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) ただいま議題となりました農地買収者等に対する給付金の支給に関する法律案につきまして、その提案の理由と法律案の概要とを御説明いたします。  戦後行なわれました農地改革は、あらためて申し上げるまでもなく、農業生産力の発展と農村の民主化の促進を目的として、百八十万町歩にのぼる農地を国が買収し、これを農民に売り渡すことによりまして、わが国の農業及び農村に大きな変革をもたらしたものであります。この結果、農村の民主化は進み、農業生産も終戦後の混乱を脱し、ひいては今日に至る農業生産力の飛躍的発展、農家経済の安定向上の基盤を確立したのでありまして、今日の農業、農村は、この画期的な農地改革を抜きにしては考えることができないといっても決して過言でないと存じます。  さらに、戦後今日に至る農業、農村のわが国社会、経済におきます地位から申しまして、この農地改革は、ひとり農業、農村のみならず、わが国の民主化、戦後経済の再建、ひいては今日の日本経済の繁栄に大きく寄与したことは、これまたここにあらためて申し上げるまでもないことと存じます。  しかし、この農地改革の輝かしい成果の反面におきまして、それが画期的な変革でありましたことから、農地改革により農地を買収された人々の中には、その生活や経済状態に大きな変動を来たした者も少なからず存在いたしまして、これらの人々が、その後の経済変動と相まち、農地を手放したことに対して相当の心理的影響を受け、これを現在まで持ち続けてきたこともまた否定することはできないのであります。  このような事情を背景といたしまして、政府は、この問題の公正な解決をはかるため、昭和三十八年総理府に臨時農地等被買収者問題調査室を設けて調査検討にあたる等、鋭意かつ慎重な努力を重ねてまいったのでありますが、ようやく三十九年度に入りまして、これらの調査検討を了したような次第であります。  この結果、政府は、この問題に対する世論の動向等を勘案いたしまして、この際、農地改革における農地被買収者の貢献を多とするとともにその受けた心理的影響をも考慮して、これらの人々に対する報償を実施することが適切であると考え、この法律案提案することとした次第であります。  以下、この法案の概要について御説明いたします。  まず、第一に、給付金の支給を受けることができる者といたしましては、農地被買収者とその者が法律の施行前に死亡したり解散したりしております場合のその遺族や解散法人の一般承継人とを定めておりますが、ここで農地被買収者と申しますのは、旧自作農創設特別措置法によりまして農地を一畝以上買収された者をさしております。この場合に、一方で旧自作農創設特別措置法により農地の売り渡しを受けている農地被買収者につきましては、買収された面積から売り渡された面積を差し引いて被買収農地の面積を計算することとしておりますが、これら買収された農地や売り渡された農地の面積はいずれも、畑につきましてはその面積に六割を乗じ、北海道の農地につきましてもその面積に一定の割合を乗じて計算することとしております。  また、給付金の支給を受ける遺族の範囲は、死亡した農地被買収者の配偶者、子、孫及び父母としておりますが、これらの者の間の順位は、おおむね相続の順位に準じて定めておりますので、子、孫、父母の順となり、配偶者は常に先順位者と同順位となる次第であります。なお、農地被買収者やその遺族等でありましても、外国人とか政令で定める一定の法人、団体などは給付金の支給を受けることができないものとしております。  節三に、給付金の額についてでございますが、これにつきましては、前に述べました面積の計算方、法によりまして、その被買収者の面積が一反歩以上であるか、一反歩未満であるかによって二様の定め方をいたしております。  まず、一反歩以上の者につきましては、三万円にその被買収農地の面積の反数を乗じて算定することとしておりますが、その面積が一町歩をこえます場合には、一町から二町までは五割、二町から三町までは三割、三町以上は一割というように、この二万円を逓減いたしますとともに、これらの計算の結果、支給金額が百万円をこえることとなります場合には、百万円で頭打ちすることとしております。  次に、一反未満の者につきましては、一律一万円を支給することとしております。  なお、遺族や解放法人の一般承継人につきましては、これらの者にかかる被買収農地について、いま御説明いたしました方式で計算した金額と同額を支給することといたしております。  第三に、給付金の具体的支給の方法、手続でございます。  給付金の支給は、有資格者の申請に基づいて行なうこととしておりますが、この申請は昭和四十二年三月三十一日までにしていただき、この期間内に請求しない者については、給付金を支給しないこととしております。  また、給付金は、一反歩以上あっては十年、一反歩未満にあっては五年の償還とし、無利子の記名国債をもって支給することとしております。  以上のほか、給付金を受ける権利や国債についての譲渡等の制限、給付金についての所得税や所定の書類についての印紙税の非課税、不正手段により給付金を支給した者に対する措置、給付事務や償還金の支払いの実施機関に関する定め等所要の事項を規定いたしております。  以上がこの法案を提出いたしました理由と法案の概要であります。何とぞ慎重審議の上、すみやかに御可決くださいますようお願いいたします。
  24. 西田信一

    委員長西田信一君) 以上で提案理由説明は終わりました。  引き続き、補足説明を聴取いたします。臨時農地等被買収者問題調査室長八塚陽介君。
  25. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) ただいまの長官の提案理由説明につけ加えまして、簡単に補足説明を申し上げたいと思います。当然のことでございますが、いま提案理由説明の中にありましたのを法文にいたしただけでございますが、法文に即しまして申し上げたいと思います。  第二条で、いろいろ法律の名前が書いてございますが、この法律はいずれも農地改革を行ないました法律でございます。旧自作農創設特別措置法に基づきまして、一定の所有制限あるいは不在地主等の農地を買収し、あるいは自作農創設特別措置法が終わりましてから、なおそれ以前に手続の進んでおりましたものを農地法施行法で買収したわけでございます。そういう買収された者、そういう法律によって買収された者の一畝以上買収された人を被買収者というということでございます。そういたしまして、第二項で、買収をされた面積から旧自作農創設特別措置法等によりまして売り渡しを受けた面積を差し引く。農地改革の際には、買収をされると同時に、今度は自作農に精進するという資格において売り渡しを受けておる場合があるわけでございます。そういう面積は差し引く。その他、田の面積に対しまして畑の面積は六割にするとか、北海道の区域内の面積は内地の面積に対して政令の定める一定の割合にするとか、あるいは買収されたあとで旧所有者に返された場合がございます、そういうものは買収された面積に加えないというようなことを規定をいたしておるわけでございます。  それから、給付金の第三条は、どういう人に支給するかということ、これは先ほど長官の説明があったとおりでございます。なお、その第三条の第二項の第二号、外国法人、株式会社その他の政令で定める法人等は除くというふうになっておりますが、私どもの現在考えておりますことは、この法案の性質上、個人に準ずる人は除かないようにしようというふうに考えておるわけでございます。それから、この支給は資格者の請求にまって基づいて行なうわけでございますが、これは四十二年の三月三十一日までにしていただく、それ以後は一応請求されても権利はないというふうに考えておるわけであります。  それから、遺族につきましては、先ほど長官からの説明があったとおりでございます。この場合の遺族というのは、ただ、やや特殊な扱い方と申しますか、つまりこの適用日が昭和四十年の四月一日でございます。その日をもって被買収者であるかまたは被買収者の遺族であるかということを判定することにいたしておりますので、四十年の四月一日以降に被買収者がなくなって、そうして通常のことばでいえば、遺族というのはむしろここでは相続人と言うべきでございます。ここで遺族というのは、要するに、四十年の四月一日現在をもって遺族であるかないかということを考えていくというふうになっております。順位等は先ほどお話があったとおりでございます。  なお、第五条の二項では、同順位の人が、遺族等で子供さんが三人あるとか四人あるとか、たくさんある場合がございますが、何ぶん短時日の間にたくさんの件数を処理するというようなこともございまして、どなたか一人がその請求をされた場合には、政府としては全員のために請求をしたものとみなします。また、その一人に対して支給したものは、全員に対して支給したものとみなします。ただ、実際問題としては、そういう関係の方がたくさんある場合には、同意書その他を添付してもらって、いわばそういう問題がないように処置したいと思いますが、一応全員に対してしたものとみなすというふうになっております。  それから、給付金の額について第六条にきめてございますが、これは先ほど長官から御説明があったとおりでございます。一町以下の面積は百分の百、二百万円というふうにございますが、これで計算いたしますと、内地の田で三十五町歩になりますと百万円ということになりますので、内地の田で考えました場合に、一三十五町以上お持ちの方は百万円で頭打ちになるというふうになっておるわけでございます。それから、あと一反未満は一万円等々は先ほどの御説明のとおりでございます。  十年無利子の記名国債でお渡しをする。ただし、一反歩以下の一万円の方は五年ということになっております。  それから、七条の四項に「政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」ということで、一般的に流通を禁止いたしております。これは、これが報償といういわばその方に政府が差し上げるというものであると同時に、^国債市場その他の関係から、国債の何といいますか、いわば保護というようなことを考えておるわけでございます。ただ、「政令で定める場合」とは、これは将来のことでございますが、政府が買い上げを、償還を一定の方に対してするとか、あるいは特定の金融機関等に担保に入れることを考える場合に、政令で定めようということでございます。なお、ただいま申し上げましたのは給付国債についてでございます。交付されました国債についてでございますが、もちろん第九条にありますように、「給付金に支給の受ける権利は、譲渡し、又は担保に供することができない。」、これは政令等でもちろん穴をあける必要のないことでございますので、そういうふうになっております。なお、差し押え禁止その他、従来こういうふうな国債で交付いたしましたものにならって書いてございます。  なお、第十二条に「国債の償還金の支払に関する専務は、郵政大臣が取り扱うことができる。」、これは何といいましても、全国に非常にたくさんの方がおられます。約六割が農村に在住されておると考えられますので、郵便局にお願いをする。こまかいことは郵政省令で定めていただきます。  十三条は、これは一般民事上の手続ではなくてやっていく、国税滞納処分の例によってやっていくということでございます。  なお、この事務は内閣総理大臣が当然行なうことになっておりますが、実際問題としては非常にたくさんの件数を処理しなければなりませんし、全国におられる方に対する便宜ということからいいましても、都道府県知事等に権限を委任するというふうに第十四条になっておるわけでございます。  それから、附則でございますが、附則の第二項で、「国債の発行の日は、昭和四十年六月十六日とする。」ということになっております。したがいまして、この法案が通りまして、国債が現実に被買収者に渡るといたしますと、来年の、四十一年の六月十五日、前日応当日に第一回の償還金をやるということに相なるわけでございます。  以上で大体補足説明を終ったわけでございますが、いま申し上げましたように、来年の六月十五日に第一回の償還が始まるわけでございますから、第一回の償還金の財政的な措置は四十一年度に措置をする。現在予算的措置といたしましては、総理府にあります事務経費を主として約四億八千万円でございますが、地方、府県市町村等に出す交付金、それから、これの証明等について経費を要しまする法務省の登記所の経費等が大部分でございます。  なお、お手元に配付いたしました参考資料は、第一は、三十七年の五月にいただきましたいわゆる工藤調査会の答申の本文、それから、三十八年度に私どもの総理府のほうでやりました世論調査あるいは生活状況調査等の概要をつけてございます。なお、農地改革の実績、たとえばどれだけ買収したか、現在どれくらい小作地が少なくなり、あるいは小作人と考えられる者が少なくなるかというような資料、それから、先ほどの長官の説明にございました交付金の見込み額の試算あるいは実際の事務の実施経路等についての資料をお手元へお届けした次第でございます。
  26. 西田信一

    委員長西田信一君) 以上で補足説明を終わりました。  午後三時より再開することにし、暫時休憩いたします。    午後一時五十八分休憩      —————・—————    午後八時三十九分開会
  27. 西田信一

    委員長西田信一君) 委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農地買収者等に対する給付金の支給に関する法律案議題とし、これより本案の質疑に入ります。  御質疑のおありの方は順次御発言を願います。
  28. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は、いわゆる農地報償法案ですね、正確には農地買収者等に対する給付金の支給に関する法律案につきまして質問をいたします。  私は、四月の二十三日の本会議で一応質問をいたしましたが、委員会質疑を行なうのは初めてでございますが、この法案は、御承知のように、政治上また財政上も非常に重大な法案であることは周知のとおりでございます。この問題はあらゆる面から慎重に検討しなければなりませんが、私はまず最初に、いままで比較的突っ込んで質疑がなされておらないと思われる財政法と今後の日本の財政との関連について質問をいたしたいと思うのですけれども、その前に臼非総務長官に伺っておきたいと思います。  この政府提案理由の中に「政府は、この問題に対する世論の動向等を勘案いたしまして、この際、農地改革における農地被買収者の貢献を多とするとともに、その受けた心理的影響をも考慮して、これらの人々に対する報償を実施することが適切であると考え、この法律案提案することとした次第であります。」と述べておるわけです。この中で、世論の動向等を勘案したということが述べてありますが、具体的に世論の動向につきましてはどういう点を勘案いたしたのですか、まずこの点から伺っておきたい。
  29. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 御承知のように、いわゆる工藤調査会におきましても、本問題につきまして調査をして報告をいたしましたが、ただ、その際には、農地被買収者の生活の状態とか生業とかという、そういう問題に重点を置いて調査をいたしたのでありますが、その後総理府で、三十八年におきまして、この農地被買収者問題につきまして、臨時農地等被買収者問題調査室を設けまして、さらに調査を進めることになったわけでありますが、それは政府、議院の内部にも、また世間でも、この問題につきましていろいろ論議がございまして、これは工藤調査会の前からの問題でありまして、それで工藤調査会というものをやったのでありますが、このいろいろの論議が続いておりますので、いま申し上げたように、政府調査室を設けて調査をいたしました。その今度の政府調査室におきましては、工藤調査会と同様に、旧地主の生活状況の調査とか、それから被買収者、つまり旧地主の実態調査その他基本問題とともに、世論調査をいたしました。この世論調査の結果を見まして、そこで今回の法案を出すことになったのであります。  その世論調査の結果でございますが、要点だけ申し上げますと、一体この農地報償問題ということを知っているか知らないかというのを調べましたところ、知らないという者が四二・八%、知っているという者が五七・二%で、この五七・二%の知っている者というものから、さらに報償をすべきかどうかということについて問いを発しましたところが、すべきだという者が三三・四%、またはしてもよいという者が二八・四%、合計六一・八%というものがまあ報償というものに賛成、一方、しないほうがよいという者は一二・二%、またはすべきでないとはっきり申したのが一〇・三%で、合計いたしますと二二・五%、そのほかわからないとする者が一五・七%、 こういう結論が得られたんです。さらに報償に関するそういう替否両論について意見を聞きました後に、結論として、報償に関する意見は、すべきだという者が二一・八%、またはしてもよいという者が二八・九%で、合計すると五〇・七%がしてもよろしいということに全体としての回答を得たわけであります。一方、しないほうがよいという者は一四・七%で、またはすべきでないという者が一一・四%、これを合計いたしますと二六・一%、そのほかわからないとする者が二三・二%、こういう世論の状態が出ましたので、そこでこれを報償をする、こういうことになりまして、本案をつくったような次第であります。
  30. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  31. 西田信一

    委員長西田信一君) 速記をつけて。
  32. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ただいま臼井総務長官は、いわゆる世論調査をもとにしてこの法案を提出したと、それに重点を置いて。工藤昭四郎氏の調査もあるわけですね、あの会長の。まあこういう点についてはだんだんに伺っていきますが、いま総務長官は都合のいいところだけ世論調査を読んでいるでしょう。これは重大ですよ。いま総務長官は、いわゆる世論調査をもとにしてこの法案を提出したと。それで、いまお読みになったこの資料はわれわれもいただいております。もう一度確認しておきます。この法案は、いまあなたが御説明になったこの世論調査に重点を置いてお出しになったと、それでよろしいですか。
  33. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) もちろん、これはまあ参考といいますか、決定する一つの資料でございまして、ただこの調査がこう出たからばかりということではございません。と申しますのは、いま申し上げたように、基本的な調査とか、また被買収者に対する調査も、他の調査も行なっております。そこで、工藤調査会におきましても、やはりこれらの問題につきましての議論も出ております。ただ、まあ工藤調査会におきましては、すべきだとかすべからずというようないろいろ両論がたくさん出ておりますので、そこでまあこれについての結論は差し控えるという結論が出ております。  そこで、この調査室におきまして調査いたしたのでありますが、なおそのほかに、政府がこれを踏み切りました理由は、何といっても、この三年間くらいに急激に農地解放を行ないまして、しかも、まあ四百たしか五十万世帯くらいの自作農をつくった、そうして旧地主から法律によって強制的に没収をした、解放した、こういうために、しかもその後の経済的変動もございまして、旧地主が心理的に非常な影響を受けた、むしろ衝動を受けたというようなことで、中には首をくくったり気の狂ったりというような者まで出るようなこともありましたし、またもう一つは、申し上げるまでもなく、この農地解放によりまして、農業に関する民主化、これはひとり農村、農地ばかりでございせんで、これがもとになってやはり戦後の日本の全体の民主化というものが非常に進んだ一つの大きな原因であるとともに、戦後の食糧事情が緊迫して、一体日本人は多くの餓死者が出るのじゃないかというぐあいにいわれた食糧不足が、この農地解放によって自作農になった方々が非常な生産意欲を燃やし、これによって生産増強もできまして食糧の確保ができ、さらに今日の日本の復興の非常な原動力ともなった。したがいまして、これに対する功績といいますか、そういうものを多といたしまして、報償をしよう。これらの総合した判断に基づいてこの法案を出すに至ったわけでございます。
  34. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうしますと、いまの臼井長官の御説明によりますと、第一は世論調査、第二が工藤調査会の調査、第三が、急激な農地改革によりまして、いろいろショックを受け影響を受けたということに対する、ショック賃というのですか、そういうこと、それから第四が、農地改革によりまして日本の国民主化が進み、そして農民の生産意欲が非常に高揚して食糧の増産が可能であった、こういうことですね。
  35. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) まあその重大さの順序というものについてはいろいろ意見があるかと存じますが、私の発言の順序から申せばそうかもしれませんが、まあその重大順位ということになれば、順位も違いますし、むしろその逆のほうにも考えられると思います、その順位につきましては。しかし、総括しての本法案を提出するに至りました動機といいますか、あるいはその基本的な考え方については、お説のとおりであります。
  36. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 順位につきましては一歩譲りましょう。先ほど世論調査に非常に重点を置いたというような御説明がありましたが、それは補足されましたから、あげ足をとるような質問はいたしません。そこで、この四つを総合して勘案し、そしてこの法案を提出するに至った、これが提案理由である、そう了承いたします。  そこで、この四つの点についてこれから具体的に質問してまいりますが、この四つが根拠がないということがはっきりしましたら、この提案は、これは撤回されますか。
  37. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 政府といたしましては、いま申し上げたように、これらの考え方から発しまして、高度の政治的な判断をもちまして最終的には決定したわけでございますから、まあそれはいろいろお立場あるいは考えの相違から御意見等はございますと存じますが、しかし、それ、意見は意見といたしましても、政府といたしましては、そういう考え方に基づいて出したのでございまするし、その判断に従ってやったのでございますから、いろいろ御意見はあるかと存じますが、それによって直ちにこれを撤回するというような考えは現在持っておりません。
  38. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その御意見は御意見だと言われますが、ただいま臼井長官は、これを提案するに至った理由として四つ述べられたのですよ。そのウエートあるいは順序については、これは必ずしも最初述べられた順序に従ってウエートを置いておるわけではない、総合されたというわけですが、しかし、その理由が理由として成り立たないということが客観的に見てはっきりした場合、それでも撤回しないと。それは高度の政治的判断と言うが、高度の政治的判断というのはどういうことなんですか。世間では、これはあらゆる点からいって提案の根拠がないけれども、高度の政治的理由としていわれているところは、参議院選挙を控えて党利党略から出ているということがいわれておるのです。そのことが高度の政治的な判断ということですか。
  39. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) これは別に目先に参議院選挙があるからということではございませんで、すでに、いま申し上げた調査につきましても、三十八年から調査をいたしまして、昨年の春、大体その結論を得ましたので、昨年春の通常国会に、まあ終わりぎわでございましたけれども、これを提出いたしましたわけでございます。別に選挙対策のためと、こういうわけではございません。
  40. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは、高度の政治的考慮というのは具体的にどういうことですか。
  41. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 高度の政治的判断と申しますのは、政治的考慮というのは、選挙のことではございませんで、一体こういうことを報償をすることがいいか悪いか、こういうことにつきまして、先ほど概略四つばかりの考え方基本のあれを申し上げたのでありまするが、まあそれを政治的に総合判断してと、こういうことでございます。
  42. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何か少し答弁おかしいのですよ。先ほど、総合的判断に基づいてやったのかと質問しましたら、そればかりでなく、やはり——で、一つ一つその論拠が成り立たないという場合にどうするかと御質問しましたら、そのほかに高度の政治的考慮に基づいておやりになったというのですよ。そういうふうに答弁されて、じゃ、高度の政治的考慮とは何かと言ったら、この四つの点を総合判断してと、こうおっしゃるのです。説明にならないわけですよ、御答弁でですね。ですから、四つの理由以外に高度の政治的判断というものはどういうことですかと聞いているわけです。その選挙目当て以外にどういうことがあるのですか。選挙目当てじゃないとおっしゃるのならばですよ、その高度の政治的判断というのは具体的にどういことか、これは国民に十分に納得のできる御説明を願いたいと思います。
  43. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) もちろん、まあ四つ一応あげておりますが、全部そればかりだとは考えられませんけれども。ということは、逆にこれを、もし農地解放を行なわなかったということなども考えてみますと、そうすると、さっきも申し上げましたように、非常に食糧逼迫のときであるばかりでなく、第一次大戦争後におきましては小作争議が非常な増加をいたしてまいりました。それがために、今日でもその地主、小作という間における感情的な疎隔も、いまだに全部は払拭し切れないような点もあるというくらいに深刻なものもございまして、したがいまして、この第二次というか、太平洋戦争後における状況を見ましても、そういう状況に拍車をかけることは想像にかたくない。そういたしますと、国内においてのそういうトラブルのために、食糧増産等についても支障を来たし、それがために国民全般も非常に困るし、国民経済的な面から見ましても、これは非常に重大なことになり得るということは想像にかたくないのであります。それが農地解放によりまして、そういうこともなく、少なくとも従来のような小作争議というようなものは農村方面において払拭されたような状態になったのであります。また一方、解放された方々の心理的影響ということは、経済的変動ということを申しましたけれども、これも昭和二十七年には従来禁止されておりました譲渡ということも許された。これについてはいろいろ批判なり問題もございましょうけれども、それがために、せっかく農地として解放せられたものが、強制買収されたものが、数百倍、数千倍というふうなことで、宅地とかあるいは工場の敷地になっていると、こういうことについては非常に心理的影響を受けたという、こういうこともいろいろございまして、そこで、これはひとり旧地主に、そういう功績があったことに対しても、あるいは相当な物心的にも非常な苦難があったことに対して、そのままにしておくということはいかがなものかと、こういう判断に立ちまして、政治的に考慮してやったと、こういうことだと考えます。
  44. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 何か非常にあいまいでして、前にこの法案を提案された理由として四つあげましたが、そのほかにまた、当時非常に食糧の危機のときに農地解放によってそれが救われたようなお活であり、それもかなり重点を置かれて、そういうことに対して報いるという意味もあるというお話がありましたが、しかし、事実認識が少し違っているんじゃないですか。  私は当時インフレ研究をやっていまして、当時の食糧難というのはインフレの大きな原因であるということで、一つのインフレの要素であるという意味でインフレを研究した。農地改革はあのころ食糧増産にはあまり役立たないということが言われたのです。というのは、農地を細分化したのですね。ただ所有権の改革だけであったのです、あのころ。それに対して増産の資金とか、その他の増産のための手当て、いろいろなものが伴わないで、ただ所有権を変えて、それを細分化したために、あまり農業の増産に役立たない。それから、山林解放が十分に行なわれなかったことも、農地改革が不徹底だと言われておったのですよ。この食糧危機を打開したのは、やはりアメリカから日本に食糧、綿花の援助が行なわれたということが、あの食糧の危機を緩和した最大の原因です。農地改革にあったのじゃないのです、直接の原因は。そしてあの当時新円切りかえというものがありまして、食糧不足のときに食糧の買いあさりが行なわれるとますます食糧価格を引き上げるというので、あそこで新円切りかえをやったのですね。そして購買力をあそこで一応吸収する、押える、そして食糧の暴騰を防ぐというのが新円切りかえの効果、一つの政策だと言われているんですよ。あの当時の記録を見ますと、何といってもアメリカからの食糧援助、小麦、綿花、そういうものでありまして、ですから、地主の方々の農地改革に対する協力といいますけれども、あのときは占領下であって協力するもしないもないのです。ですから、そこにあまり重点を置かれるのは私はおかしいと思う。事実認識において少し誇張されていると思うのです。  それは百歩譲って、地主の方の農地改革に対して暴動を起こしたりレジスタンスをしたりしなかったことは、これはしようとしてもできなかったと思うのですけれども、多少貢献があったとしても、それが主たる原因じゃないですよ。やはりあのときは、ただ所有権の改革だけであって、それに伴って農業生産を増強するためのいろいろな資金とか資材その他の裏づけが十分でなかったということは、ずいぶん問題になったわけですよ。その事実認識において少しどうも違うのじゃないかと思うのです。この法案を合理化するために、全然間違っていないとしても、かなり誇張されて功に報いるためと言っているように思うのですが、その点いかがですか。もう少し正確に事実認識について伺いたい。
  45. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) お説のように、終戦直後のあの極端な食糧不足、これに対しましてはアメリカの食糧の援助ということが非常に役立ったことは、これはもうどなたもおそらく異議のないことだと思います。しかしながら、これは生産力、ことに農作物につきましては相当長期的なプランが必要でございまして、したがって、これがことに農業の生産力が回復するまでの期間、それまでの一時しのぎといいますか、それについてはアメリカの食糧援助、余剰農産物の放出、こういうことが非常に効果のあったことは、これはお説のとおりだと存じます。  しかし、まあその後のずっと状況を見ますと、農地解放されて、従来小作料で他人の土地を耕していたというものに比べますると、自分の土地になった、自分の土地であるから、これを肥えた土地にすれば、これはもう自分のそれだけの利益になると、こういういわゆる農民心理と申しますか、こういうものが相当影響されて、土地に対する愛着から非常に土地も改良せられて肥沃な土地にもなったでありましょうし、それからまた増産意欲も燃えてきた、こういうことは私は考えられるのじゃないか。現実に、事実その後日本の食糧事情というものが、アメリカの余剰物資がなくなり、もちろん一方においては輸入というような問題もありまするけれども、いずれにしても非常な食糧増産ができた。もとよりこれはまあ農作物のことでございますから、天候によって影響されて、過去数年間の、あれは非常に天候に幸いされて増産もできたというようなこともございましょうし、いろいろな原因が総合して増産になったことではございましょうけれども、しかし、何といっても農地解放というものが日本の農民の生産意欲を非常に強めて、そうして非常な農業の回復、生産増強になったということは、私はこれはもうすなおに認めてよろしいし、またそれに、農地解放によって、これが自作農がそれだけできたのでございますから、旧地主がそれに、強制的ではございましたけれども、それにとにかく結果においては協力して、そうしてこれができたということについての功績は認めてよろしかろう、こう考えるわけでございます。
  46. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この問題については、まだ議論は尽きないわけです。たとえば農業問題研究会議、これはもう今日の日本の一流の農業学者ですが、そういう農業学者が政府に対してこの報償法案について要望書を出しておりますし、国会に対しても出しておるのですが、この点についてはまだいろいろ学者の方々も意見を述べておりますし、必ずしも地主の協力も、そんな大きいウエート、千四百五十六億も国民の税金を報償として払うだけの理由づけとして、それが合理的であるかどうか問題があると思います。  その点はまたあとで同僚が詳しく質問するとしまして、前に戻りまして、この法案を提案された四つの理由のうち、世論調査について先ほど説明がありましたが、この世論調査は、政府からわれわれに出されたこの参考資料によりますと、これは中央調査社というところがやったわけですね。長谷川才次君が代表者で、ここに委託してやったわけです。この調査のうち、先ほど臼井長官は、この法案提出に都合のいいところだけを説明された。この資料の一番最後のところを見ていただきたい。一番最後、この資料の二一ページです。どういうふうに述べてあるかといいますと、「もし仮りに旧地主に対して報償するとしたら、農地を買収された旧地主全部に対して報償すべきだと思いますか。それとも現在生活に困っている人だけに報償すればよいと思いますか。……それともそのほかのお考えがありますか。」、こういうアンケートですね。これに対して、困っている人だけに報償すべきだという回答が全回答の五九・六%、約六〇%ですよ。かりに旧地主に報償するとした場合、困っている人だけに報償すべきだという回答が約六割。これに対して、全部に報償すべきだという回答が二三・二%ですね。その他が二・二%、わからない、意見なしが一五%。先ほどの長官の御説明ですと、報償すべきだという意見が非常に多い。また、してもよいという意見も非常に多い。こういうところだけを、この法案を提出した理由としての世論の動向としてあげられた。この点はいかがですか。
  47. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) お説のように、この調査に基づきますとそういうふうに出ております。ただしかし、この法案はいわゆる社会保障的な見地から出した法案ではございませんで、その点につきましては、工藤調査会が調査いたしました際には、生活困窮者とか、それから生業に困難な者、こういうような見地から、あるいは学資、子弟の教育に困難な者には融資をしたらいいだろうというような意見もございまして、そこで、いま国会で御審議をいただいておりまする国民金融公庫法の一部を改正する法律案によりまして二十億の融資をして、そういう方々に対する社会保障的な見地から手当て、施策をひとつ講じよう、こういうことになっておるのでございますが、この法案は、先ほど申し上げましたように、とにかく農地解放によって日本の国の復興に非常に役立った、こういうことに対する旧地主に対する貢献を多としてという、そういう見地からいたしておりまするために、そこでまあこの困っている人にということは一応社会保障的な見地からすれば当然でございましようけれども、貢献を多とするという見地からいたしまして、いわゆる所得制限を置かないというのもやはりそういう見地からでございまして、確かにそういう意見は出ておりまするけれども、この法案にはそれを取り入れなかった、こういうことでございます。
  48. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 おかしいじゃないですか。さっきはこの世論調査をやはりもとにしたと言いながら、世論調査の一部ですよ、これはそれで非常に重要な問題でございまして、わざわざさっき申しました中央調査社に依頼してそれで世論調査したのでしょう。これは取り入れなかったとおっしゃったですよ。おかしいじゃありませんか。世論調査は何のためにやったんですか。取り入れなかったということは問題ですよ。なぜこの点を取り入れないのですか。
  49. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) でございますから、これを社会保障的な見地から、困っている旧地主にやるという点ではなくて、貢献を多とする、こういうことで、この結果を勘案してという表現を使っておりますが、世論の動向を勘案してこの法案をつくった。でございますから、これにあらわれているそのままを全部取り入れたということではございませんで、先ほど申し上げましたように、心理的な影響とか、それから貢献を多とするとか、そういうことを主眼としての法案でございますから、そこでまあその点は取り入れなかった。  ただしかし、これにつきましても、全然、報償でございまして補償ではございませんから、最高は百万円にこれをとどめるとか、それから減退率を掛けてまいりまして、そこにまあただ坪数に比例してということばかりにとらわれないということは、これもまた勘案いたしておるわけでございます。
  50. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 またどうもおかしいですね。提案理由によりますと、「この農地改革の輝かしい成果の反面におきまして、それが画期的な変革でありましたことから、農地改革により農地を買収された人々の中には、その生活や経済状態に大きな変動を来たした者も少なからず存在いたしまして、これらの人々が、その後の経済変動と相まち、農地を手放したことに対して相当の心理的影響を受け、これを現在まで持ち続けてきたこともまた否定することはできない」、このような事情を背景としていろいろこの調査会をつくった、その調査会の結論に基づいてこういう法案を出したということになっているんですが、だから、生活や経済状態に大きな変動を来たしたという点は、やっぱりこれによって生活上のいろいろ打撃を受けたということも含まれているんじゃないですか。全然考慮しない、社会保障的なことは考慮しない、こう言っておりますが、しかし、この世論調査では、そういう社会保障的なことを考慮しろという世論調査なんですよ。そうでしょう。かりに報償するとしても、生活に困っている人だけにしろということなんです。だから、いま長官は、社会保障的なことは考えないというけれども、世論調査はそういうところを考えてやれという世論調査なんですよ。その世論調査を無視しちゃっているんでしょう。そこに問題があるのです。
  51. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) この調査をいたしました際には、もし社会保障的な見地を取り入れるならば、それについては世論はどうかと、こういうことももちろん考えましてこの調査をいたしたわけでございます。したがいまして、この調査もそういうふうに出てきたわけでございますが、しかし、まあ工藤調査会等の意見に基づく社会保障的な面につきましては、二十億の融資という点である程度前にその法案で出してございますので、そこで一応調査はそれに入れましたけれども、この法案につきましては、その点は特に強く取り入れなかった、こういうことでございます。
  52. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もとに戻りますけれども、政府提案の理由としまして、「この問題に対する世論の動向等を勘案いたしまして、」という提案理由について、世論の動向とは具体的に何かということを質問いたしましたら、さっき四つの理由をあげたのです。その世論調査のうちにおきまして都合のいいところだけを述べておりましたから、都合の悪い点を指摘したわけです。そうしてこれも世論調査ですから、世論調査内容に、これはいま長官は、社会保障的なものは考慮しないのだ、こう言われておるから、この世論調査はむしろ社会保障的なことを考慮しろという回答が出ているのですよ。したがいまして、世論の動向を勘案いたしてということについては、世論調査では社会保障的な点に重点を置いて、かりに報償するなら報償しろというそういう世論であるけれども、この世論を無視して提案したのである、こういうことになるんですよ。そういうことになるじゃないですか。
  53. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 決して全然無視しているというわけじゃございませんが、いま申し上げましたように、二十億の融資、これは必ずしも多額とは申されませんが、とにかくそういうことで、生活に困っておる者あるいは生業に困っておる者についてはそちらで融資をする、こういう点で補っておりますので、したがいまして、今回のこの提案につきましては、その社会保障的な見地というものはあまり強く取り入れなかった、こういうわけであります。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 これは押し問答をしても同じ答弁だと思いますが、ここではっきりしておきたいことは、いまの質疑応答を通じてはっきりしたことは、先ほど提案した理由の基礎として、この中央調査社の世論調査を理由にあげまして、しかも都合のいいところだけを説明して、私が指摘しなければ黙ってその点はほおかむりをしたところであります。ところが、一番最後で、政府にとっては都合が悪いことには、「仮りに旧地主に対して報償するとしたら、農地を買収された旧地主全部に対して報償すべきだと思いますか。それとも現在生活に困っている人だけに報償すればよいと思いますか。」というアンケートに対して、困っている人だけに報償しろというのが全体の約六〇%、こういう回答が出た。これには重点を置かない、こういう御答弁があった。  そこで、次に伺います。もう一つ、この法案を提出するにあたりまして世論の動向を勘案したと申しましたが、その世論の動向のうち工藤調査会の調査をあげました。工藤調査会の調査によりますと、この被買収者の生活は買収者及び一般世帯に比べて決して低くないという答申なんですよ。ですから、もしこの中央調査社の世論調査の中の生活に困っている人だけに報償せよということになると、この工藤調査会の答申によれば大部分の旧地主は生活に困っていないので、これは報償しなくてもいいということになる。  それと、もう一つ、この工藤調査会の答申の一番最後です。一番最後に「なお、農地改革が被買収者に与えた心理的影響が強く残っていることは調査の結果からも明らかとなっているが、それにしても、巨額な金額を被買収者に交付することは諸般の情勢上摘当でないとする見解が多かった。」というんですよ。こういうことになってるんですよ。千四百五十六億は、これは巨額と思われないですか。これは非常な巨額じゃないですか。そうした「巨額な金額を被買収者に交付することは諸般の情勢上摘当でないとする見解が多かった。」というのです。多かったというのは、五〇%以上だということですよ。こういう工藤調査会の答申があるにもかかわらず、この巨額の報償をするということは、この答申を無視しているということになるでしょう。  さっきあなたは、この工藤調査会の答申も世論の動向を勘案する場合の第二の根拠としてあげたんですよ。これも、この報償を行なうについてはむしろ反対の答申になっているんです、結論としまして。それだのに、なぜこの法案を提出した理由の第二にあげられたんですか。これはおかしいじゃないですか。理屈に合わない。
  55. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 工藤調査会の答申は、お説のようにそう書いてございまして、「巨額な金額を被買収者に交付することは諸般の情勢上適当でないとする見解が多かった。ただ意見の相違がある状況にかんがみ、これについての本調査会の結論を差し控える。」ということで、調査会としてこういう意見が多かったということは言っておりますけれども、これは交付すべからずという結論を出しているわけではございません。  そこで、この千四百五十億と申しますと、これは確かに少額な金額じゃございません。ただ、何ぶんにも該当者が百六十七万人になっておりまするし、そこで、まあさっき申し上げましたように、最高三十五町歩以上を買収された者、これはもうそれ以上何十町歩でも百万円で頭打ちにする。しかも、ごく少ない一反から一畝までの間でございますか、これはまあ平均して一万円と、こういうことで、個々に割りますると必ずしも巨額ということもいえないではないかと。しかし、何ぶんにもこれだけ大きな問題でございまするし、いま申し上げたように非常な人員にのぼっておりまするので、そういうわけでございますので、なおこの結論を差し控えておりましたので、この点につきまして、さらに、さっき申し上げましたように、政府で臨時農地等被買収者問題調査室においてさらに調査をいたしました。調査室において調査をした結果、いまのような資料によってまた総合判断してやることにきめたわけでございます。  先ほどの御質問にございましたように、事実、社会保障的な見地をとるならば、これはもう少し所得制限というようなこともここに盛り込んだほうが適当であったかも存じませんが、しかし、これは何も資料を政府で悪い点は隠しておいて、そうしていいところだけとったということでは決してございません。でございますから、資料につきましても、お配りしてございます中にちゃんとそれは記載してございます。ただ、私が説明のあれで、所得制限を置かなかったというような問題についていきなり御説明をしなかったことから、そういう疑問が生じたかとは存じますが、決してそういうわけではございませんで、ただ、今度の法案をとりましたのが、いま申し上げたような趣旨から、そこでその問題には私としては触れなかったわけでございます。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いまの御答弁伺っていますと、何か詭弁みたいなんですけれども、何も私は、提案理由に世論の結論を勘案してと、こういうふうに提案理由で述べていると言っているのではないのですよ。世論の動向と言っているんでしょう。テンデンシイですよ。大多数の意見が、この巨額の報償をしてはいけないとか、大多数の意見は、生活に困っている人だけにすべきだ。これが動向ですよ。いわゆる傾向でしょう。私は何も、結論を勘案してと政府提案理由で延べていると言っているのではないのですよ。ですから、工藤調査会でも、この結論は「差し控える」となっておりますけれども、その前の「巨額な金額を被買収者に交付することは諸般の情勢上適当でないとする見解が多かった。」ということは、この調査会の委員のメンバーの多くの人たちが、かりに採決してみたら、これはこんな巨額な報償をすべきではないという結論になるのです。そういうことでしょう。そういうのが世論の動向というものなんですよ。そうでしょう。ですから、大体世論の帰趨するところを政治は察知して、それを念頭に置いて、その動向に従うというのが、この民主主義の政治じゃないかと思うのですね。  政府のほうでせっかくこういう調査会をつくって調査をさせ、それから総理府のほうでも調査をさせ、そうしたところが、その結果が政府にまずいところが出てきて、政府にこの法案を提出するのに都合の悪い点が出てきたので、よした。これはさっきあなたはお述べにならなかった。資料を出したと言いましたけれども、私が質問したら。一番大事な点をちゃんとあなたは報告されない。われわれ資料を見たから——これは速記にちゃんと載るのですよ。もしそういうことを指摘しなかったらそのままじゃないですか。そうでしょう。そういう点について、これは世論の動向を勘案してということは、世論は、こんなに巨額の報償をしちゃいけないと、それから社会保障的な見地で報償すべきだと、困った人にのみ報償すべきだと、そういう世論なんですよ。それをその世論の動向を勘案してということは、そう勘案していないということになるのですよ。世論の動向を勘案していない。政府の政治的考慮によってやったということでしょう。世論をちっとも勘案していないじゃないですか、結論として。世論は、いまお話ししたように、二つですよ。社会保障的な見地でやれ、困った地主だけにやれと。もう一つは、こんなに巨額の交付をすべきではないというのが世論ですよ、調査の結果。これ、そうなんでしょう。時日を費し、費用を使って、こうやって、世論の動向を調査したのじゃありませんか。その結果がこのような巨額の報償を、しかも生活に困っていない人に行なうということは、世論の動向に反している。ですから、この提案理由は事実と相違しているわけですよ。その点、いかがですか。
  57. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) それは確かに社会保障的な見地を取り入れるとすれば、当然いまのお説のようにそうなるかと思うのでございますが、ただ、まあ先ほど申し上げましたように、その点については二十億の融資という問題で手当てをしておるので、そこでこの提案といたしましては、この心理的影響ということ、また、この貢献を多とすると、こういうことを強く取り上げておりますので、それで、いま申し上げたように、本法案につきましては、所得制限でもつければ、これは確かに社会保障的な見地も強く取り入れたと、こういうことにはなったかと思うのでありますが、いま申し上げたような理由で、社会保障的な見地というものを特に強く取り上げないと。まあいま申し上げたような理由からでございますので、そこでそうなったのだと。  で、この結論を何も私のほうで隠そうというあれは決してございませんで、これは衆議院におきましても、やはり御同様な意見も強く出たところでもありますし、資料にもそれはちゃんと書いて配付をしておるわけでございます。ただ、当初に私のほうから御説明を申し上げればよかったじゃないかと、こうおっしゃられれば、それはそのとおりかと存じます。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 この世論調査をずっとごらんになりますと、長官ごらんになったでしょうがね。この報償していいかどうかということは、だんだんに聞いているわけですよ。  それで、この報償を行なうべきだ、行なったほうがいいという意見は、行なうべきでないという意見よりも多いということは、これから出てきているわけですよね。しかし、全部が行なうべきだという意見じゃないですよ。反対の意見もずいぶんありますよ。旧地主に対する報償に国の税金を使うべきでないという意見もあるのですよ。しかし、使うべきだという意見のほうが多いということをずっと長官も言われたのです。この調査もそうなっています。  しかし、最後に——結論ですよ、これは。最後に、かりに旧地主に対して報償する場合に、全部に対してやるべきか、あるいは生活に困っている人だけにやるべきかと、こういうのは最後のまとめだと思うのですよ、これは。ですから、報償してもよろしいという世論調査になっているのですが、じゃ報償するとしたらどういう範囲でやるかということが、最後の結論ですよ。それは、生活に困っていない人じゃなくて生活に困っている人だけに報償すべきだというのが約六割である。大多数の意見である、こういうふうに解釈すべきだと。これはすなおな解釈じゃありませんか。その一番大切な結論のところを長官はさっき言われなかったから、私は問題にしたのですが、いかがですか。
  59. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) ちょっと私から申し上げます。参考までに申し上げますが、この調査をいたしましたのは三十八年度でございます。その際までの政府のこれに対する気持ちというものは、必ずしもどうしようというふうに考えてその上での調査ではもちろんございません。端的に申し上げますと、やるように結論が出るかもわからないし、やらないように結論が出るかもわからない。そこのところは、特定の姿勢をもって実は政府としては当時やっていなかった。したがって、もちろんいろんな聞き方をいたしておりまして、この聞き方も、ある読み方をいたしますならば、この順序で聞いていくと、一種の誘導にならないかというようなことも考えられ、実際は、半分は逆の順序で聞いたりいたしております。そういう意味で、私ども調査をいたしました段階では、できるだけいわば先入見を持たない、あるいは特定の結論を尊き出したというそしりを受けないようにしたつもりでございます。そういう意味で、端的にいまの政府の立場からいいますと、明らかに都合の悪い調査もいたしておるわけです。  ただ、今度の法案は、先ほど来長官が申し上げておりますように、この問題をどういう角度から取り上げるか、いろいろな角度があるわけでございます。一つは、従来の経過からいたしますと、農地改革当時の買い取りの価格は安かったという意味で補償をしろという考え方もあるわけです。あるいはまた、工藤調査会のような立場で、そういうことは問わない、社会的あるいは生活の状況に着目して検討しようというふうな立場もあるわけです。で、最後にこの法案を作成いたしました過程での政府の立場というのは、そういう立場をとらないで、論議になってはおりますが、農地改革に対する貢献である、あるいは心理的影響というようなことに着目して、そうして世論の動向等を勘案したということでございますので、経過を申し上げまして若干の御参考にした次第であります。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そんなこと参考にならぬですよ。私が聞いているのは、賛成、反対のあることは承知しているのですよ。工藤調査会の答申でも、賛成、反対あるということは言っているわけですよ。だけれども、世論の動向ということは、賛成、反対があるけれども、大多数の意見はこうだというのが結論なんですよ。だから、賛成、反対がある。インフレになりまして、非常に農地改革によって安く買われた、それに対して当然やられるという意見もある。いろいろあるのですよ、議論が。そのことは承知しておりますし、また、先ほど申しました農業学者のいろんな反対意見もありますし、わが党としてもいろいろ反対の理由を持っているわけであります。そういうものは一応またあとでいろいろ質問するとしましても、一応ここで世論の動向を勘案してこの法案を提案したと言いますから、大多数の世論の動向は、政府の出しました資料によっても、大体二つの結論になっているではないかということなんですよ。その世論の動向をどうして無視して提案され、しかも提案理由には、世論の動向を勘案してということになっているが、それは矛盾していないか。つまり世論の動向は二つですよ。大多数の意見は、巨額の報償をすべきでない、もう一つは報償する場合は生活に困っている人にのみすべきだ。これが世論の動向じゃありませんか。反対、賛成の意見はいろいろありますけれども、多くの意見が、大多数の意見が、その世論調査、工藤調査会の答申と中央調査社の世論調査でこういうことを言っておるのです。だから、提案理由に矛盾があると思う。その点をさっきから伺っているわけです。矛盾していると思うのですけれども、いかがですか。
  61. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 先刻来御説明申し上げておりますように、まあ所得制限を置くか置かぬかということについては、この立案の当時にもいろいろ議論があったところだとは想像するのでありますが、そこで、当初申し上げましたように、社会保障的な見地をとれば、これはもう所得制限をして、困っている人だけにする、こういうようなことも確かに一つの方法でございますが、今度はこの農地解放に対するまあ功績でございますね、それを多とする、それと心理的影響、これの二つを取り上げていたしましたために、社会保障の見地に立って困っている人だけにやるということはしなかった、こういうことでございます。  もう一つの工藤調査会の点につきましても、先刻お答え申し上げましたが、まあこれは何しろ数が多いのですから、総額においては確かにこれは巨額でないとはいえないかと存じますが、しかし、個々に割りますると必ずしも巨額のものではない、こういうことの判断でいたしたようなわけであります。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはまあ見解の相違になりますけれども、巨額でないというのはおかしいと思うのですが、財政的の見地からいえばですね。それは最高百万円でも、これは人によっては巨額と見る人もありますし、また、見るべきだと思いますけれどもね。  まあ質問をもっと進める意味で、いまの御答弁ですと、前には工藤調査会の答申、それから世論調査、もう一つは心理的影響に対する報償、いわゆるショック賃といわれておりますね。ショックを受けた、それに対する報償、ショック賃。で、このショック賃につきましても、これはまだ非常に問題があると思います。ショックを受けたのは、そうした旧地主だけではないと思います。ことにインフレによって、あのころもう土地も高くなったでしょうが、しかし、インフレによって今度は非常にまた打撃を受けた人もあるのですね。たとえば、生命保険に入っていた人とか、あるいは定額的な所得を受けていた人とか、恩給をもらっていた人とか、非常にそういうショックを受けた人はいるのですよ。まあそのショック賃につきましては、またあとでほかの同僚も質問すると思います。それから、もう一つは、この農地改革に対する貢献ですか、貢献ということですね。この貢献につきましても、これは旧地主のみが貢献したのじゃないと思いますが、この点についてはあとでまた同僚が質問すると思います。  そこで、主として私はきょう質問いたしたいと思いましたのは、財政法及び財政面からの問題点なんですが、大蔵省政府委員の方がお見えになっておらなかったので、お見えになるまで、この提案理由の「世論の動向等を勘案いたしまして」という点についていままで御質問したのですが、まだまだいろんな角度から、政治的にも法律的にもいろいろ質問しなければならぬ点がございますが、それはあとでまた同僚が質問するとしまして、これから財政法及び今後の財政との関連について御質問したいと思います。  この千四百五十六億は交付公債で支払うということになっておる。この交付公債の性格はどういうものですか、公債なのか。
  63. 臼井莊一

    政府委員(臼井莊一君) 詳細は大蔵省のほうからお答え願うことといたしますが、交付公債というのは、歳入の源泉として発行される国債ではなくて、財源負担を将来にこれを延ばして平均化する、こういう理由で国が現金支出にかえて交付する国債である、こういわれておるのでありますが、でございますから、財政法上でも規定されているように、これをすぐ現金にして支出をすると、こういう国債とは意味を異にしておるんだ、こういうようなことで、過去にも数回出されたことがあるのです。これはひとつ専門のほうの大蔵省からお答えを正確に申し上げることにいたしますが、まあ私の従来聞いておりましたのはそんなような考えでございます。
  64. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) ただいま総務長官からおっしゃったようなことでございますが、木村委員が公債であるかというふうにお尋ねであるとすれば、公債の一種であると申し上げることができると思います。
  65. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 公債ですから、公の債務でしょう。国の債務ですわね。国の債務にはいろいろありますわね。国庫債務負担行為、あれも一つの債務ですね。で、いま公債の一種であると言われたのですね。それで間違いないですか。公債の一種で間違いないですか。
  66. 谷村裕

    政府委員(谷村裕君) 公債ということばの使い方にもよりますが、交付公債ということばを使っておりますように、国債証券を発行いたしまして、その国の債務と称する国債証券を相手方に交付いたします。で、いずれそれは国債の償還等によって現金化されることになると思いますが、発行いたしました際におけるその証券の性格はいわゆる国債であるというふうに申し上げられると思います。
  67. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その際はすぐ現金にならぬけれども、今度は十年均等償還でしょう。そうすると、四十一年度に償還をしますですね。そうすればもう現金になって、四十一年度の予算に計上されるわけですね。そういうことになるでしょう。だから、国の債務。ただ、これが売買とか担保については規制されております。しかし、政令の定めるところによればこれはあるいは売買、担保に供してもいいということになるように規定されていますね。  ついでですから、そこのところも聞いておきますと、これは第七条の四項、「第二項の規定により発行する国債については、政令で定める場合を除くほか、譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」となっていますが、政令で定める場合はいいということになるでしょう。この政令の内容はどういうのですか。
  68. 赤羽桂

    説明員(赤羽桂君) ただいまおっしゃいました第七条の「政令で定める場合」、担保権の設定、譲渡の禁止の解除をするという旨の政令を定めることができることになっております。これは過去におきまして、同じ交付公債をもって未亡人国債、引き揚げ打公債といったものを発行した場合がございます。もちろん、その場合におきましても、災害あるいは困窮者に対してまして特別な措置をいたしまして、事前の買い上げ償還をいたすという措置をしているわけでございます。そういった措置をこの農地被買収者に対しますところの交付公債につきましても考えているという意味でございます。したがいまして、譲渡の禁止の場合は、国が買い上げ償還をするといったような場合を考えているわけであります。それから、担保権の設定のほうでございますが、これはずっと御審議を願っておりますところの国民金融公庫法の改正法律案でございますが、それとの関連におきまして、まあこの国債に担保権を設定し得るというような場合も、その法律案との関連において考えているという意味でございます。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 担保権を設定し得る場合も考えているというのですが、この政令の内容を明らかにしてください。
  70. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 私どもでただいま政令案の中身として考えておりますのは、国に譲渡する場合、これはいま赤羽法規課長が申しましたように、災害であるとか生活困窮者の場合に国が買い上げ償還するというのが国に譲渡する場合、それから大蔵省令で定める金融機関に対し担保権の設定をする場合、たとえば国民金融公庫等で金を貸すときの担保に取れるというような場合だけを考えているわけです。これは従来の場合もやはり、ただいま答弁がありましたように、従来引き揚げ者給付金等の例においてそういうことを考えております。それ以外の譲渡、担保等は、従来も例がございませんし、われわれといたしましてもそういうことは考えておりません。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 考えておりませんのほうを重点に聞いているのじゃないのですよ。担保に供することができる場合というのはどういう場合であるか、具体的に政令の内容を言ってくださいよ。それがわからなければ——ただ「政令で定める場合」と。ただ、譲渡のほうはこれははっきりしましたね。政府が買い上げ償還する場合のみであると。その買い上げ償還についても、生活困窮の場合のみであるのか、生活困窮の度合いをどの程度に考えるか、これはもっと具体的にここで明らかにしなければ、ただわれわれうのみにすることはできませんよ。
  72. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 買い上げ償還をなされる場合は、従来は生活保護あるいはそれに準ずる場合そういう人たちの債券を買い上げするということで、私どもの場合もそういうふうに考えております。  それから、担保権の設定は、大蔵省令で定める金融機関に対してのみ担保権の設定を許す。その場合大蔵省令で定められる金融機関はどういうものかということにつきましては、もちろん大蔵省のほうからお答え願うのが筋でございますが、私どもといたしましては、国民金融公庫等をお願いするということになろうかと存じます。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 その場合も、生活困窮者にのみ限るのですか。その生活困窮者というのは、生活保護を受けている人及びそれに準ずる人だけに限るのですか。
  74. 八塚陽介

    政府委員(八塚陽介君) 国民金融公庫でございますと、これは生業資金としてほかの金融機関から借りられない場合というようなことで、現在の段階では生活困窮者に限るというふうには必ずしも考えておりません。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこが問題じゃないですか。ですから、ここで「政令で定める場合を除くほか」と掲げていますが、政令が非常に問題ですよ。生活困窮者でない場合でも、国民金融公庫等で担保にして金を借りることができるということになれば、この「譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」、この規定が非常に弱くなるわけですけれども、それがまた財政金融上やはり問題が生じてくるわけですよ。だから、それは重大な問題ですよ。また、今後国民金融公庫に対して政府の出資をふやすとか、そういうことは必ず出てきます。その資金量は今度中小企業のほうに当然貸し出しできるべきものがここで制約されてくる、こういうことになってこざるを得ないと思うんです。これをどんどん金融公庫に揖保にしたらどうなります。千四百五十六億ですよ。
  76. 原秀三

    説明員(原秀三君) ただいまの室長の説明を補足して御説明申し上げます。  譲渡、担保権の設定、その他処分できる場合はどういう場合かという御質問でございますが、この国債が出ましたあとで、生活困窮者としてどのくらいの該当者がありますかを調査いたしました上で、必要がございます場合には、生活困窮者に対しまして従来遺族国庫債券、引き掲げ者国庫債券または特別給付金国庫債券につきまして買い上げをいたしました例に準じまして、その買い上げを実施することを考慮したい、こう考えております。したがいまして、この政令におきましては国に対する譲渡ということだけをきめる予定でございますが、これに対します根拠といたしましては、国債証券買入銷却法という法律がございまして、国が随意契約によりまして買い入れができる、その場合には大蔵省の告示をもってこれを告示する、こういうことが法律できめられておるのでございまして、この手続によりまして買い入れ消却を実施する、こういうことを考えておるわけでございます。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 買い入れ消却を聞いておるんじゃないですよ。国民金融公庫に担保にして金を借りることができるという場合、そのことを聞いているのですよ。それが必ずしも生活困窮名——さっき内容を言われまして、生活保護を受けている人及びそれに準ずる人と言われたのですが、それに必ずしも限定しない、国民金融公庫に担保を供して金を借りるときには必ずしもその生活困窮者に限らないと、こういうことになっておるから、もっと政令でその場合を明らかにしてもらいたい。「譲渡、担保権の設定その他の処分をすることができない。」とあるけれども、そこに大きな抜け穴があるのですよ。
  78. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 関連。いまお話がありましたけれども、たとえばかつてありました遣族国債、これもいま言うように担保権の設定はできないはずなんですけれども、国民金融公庫のほうへ必要な場合談渡するというのですが、これは生業資金の名においてほとんど貸し付けしているわけです。したがって、今度の場合でも、いわゆる困窮者でなしに、必要な場合には生業資金ということで五十万円でも三十万円でも貸せると、こういうことに結果としてなると思うのです。したがって、ざっくばらんにいうと、千四百億は全部現金化されるかどうか知りませんけれども、少なくとも相当額は税金化される、十年を待たづして。こういうことをわれわれは感ぜざるを得ないわけです。したがって、いま木村君が言うように、政令で明らかになる道を開いてもらわないと困る。一緒に答弁してください。
  79. 徳宣一郎

    説明員徳宣一郎君) 従前の交付公債につきましての扱いから、まず御説明さしていただきますと、たとえば、遺族国債につきましては、発行総額約一千億、このうち現在までにおきまして国民公庫の貸し付けをいたしました金額は十八億円でございます。それから、引き揚げ者国債、これは現在までの発行総額は四百九十九億円でございますが、これに対しまして国民公庫で担保貸し付けをいたしました金額は六十七億でございます。それから、未亡人に対しましての特別給付金国債、これの国債の発行総額は現在まで七百四十八億円でございますが、現在までに国民公庫で担保貸し付けをいたしました金額は九億円でございます。  それで、ただいまの御質問でございますが、国民金融公庫、これは法律の趣旨によりまして生業上その資金を要する場合でございまして、事業計画のあるという場合でございまして、かつ銀行その他の一般の金融機関からその融資を受けることが困難である場合、こういう場合に限りまして、ただいま申し上げましたような交付公債担保貸し付けを実行しておるという状況でございます。
  80. 佐野芳雄

    佐野芳雄君 いまのあなたの数字は、国民公庫から貸し付けられた数字だけをおっしゃっておると思うのですが、町の高利貸しがどのように公債を担保にして金を貸し付けておったかということについては、あなたのほうでは御承知ないわけです。なぜ国民公庫のほうで借りないのか、高いけれども高利貸しのほうからなぜ借りるのかというと、国民金融公庫へ申し込みをすると、二週間ないし三週間かかる。したがって、高くとも高利貸しから借りる、こういうケースがここ二、三年前ずっと多かったのです。そのつづりを私は持っておる。いま資料を持ってきておりませんが、明日十分はっきり申し上げます。あなたのおっしゃる数字の少なくとも十数倍になっておる。神戸の国民公庫は幾らになっておるか知りませんけれども、貸し付けた金額は三倍くらい私のほうで貸し付けております。したがって、そういう数字はこの際あまり大きな顔をして言わないようにしてください。
  81. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほどのは資料として出してください。先ほど報告したでしょう。あれを資料として出してください。
  82. 徳宣一郎

    説明員徳宣一郎君) けっこうでございます。
  83. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから、まだこれからだいぶ質問ございますが、この際資料として出していただかないと質疑困難な問題がありますので、一応申し上げますが、いまこれはすぐ大蔵省としては出せる資料です、そんなむずかしい資料ではございませんから。まず、全体の国債の現在額、その中で交付公債分がどのくらいあって、それをいま説明されたように交付公債の種類別に出していただきたい。それから、今後の償還額を年次別に出してもらいたい。まあそうですね、今後十年間くらいですね。これが十年ですから、十年間くらい。それで、その償還額。それから、この農地報償法に基づく今後の年次別償還額です。来年から始まりますね。ですから、今後の全体の公債の償還額と交付公債の償還額、これの年次別ですね、それを出してもらいたい。それから、もう一つは今後の税収——税金収入ですね、税収の見込み。まず三十九年度は予算に対してどのくらいの収入ぐあいであって、どのくらいの税収不足であるか。それから、新聞にもうすでに出ておりますが、四十年度の税収見込み。できたら、これは正確にはなかなか困難と思いますが、今後の景気動向とも関連がございますので、今後の税収見込みにつきまして伺いたいのです。それだけの資料を出していただきたい。その資料に基づいてまた質問いたします。  これから財政法四条の質問をいたしたいと思ったのですが、時間もおそいですから、その資料を出していただいて、あとでまたこの質疑を続けたいと思います。
  84. 西田信一

    委員長西田信一君) 資料要求、よろしいですね。
  85. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) ただいま御要求のございました三十九年度の税収見込みは、私どももいまとなってはわかっておりますから、提出はよろしゅうございますが、四十年度は経済見通しの想定がまだはっきりいたしておりません。見通しが非常に不確定でございます。その関係で、四十年度以降ということはむずかしいと思いますので、三十九年のもので推定願うということで、三十九年度は正確にお出しする、かように考えますが、よろしゅうございますか。
  86. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 もうすでに新聞に出ているのですから、この推定を。大まかな推定でいいです。それから、三十九年度の税収見込みを出す場合ですよ、いままでの大蔵省令を改正して、四月一日を越えた分は次年度になるはずだったのを、今度は当該年度の収入にできるように改正したわけでしょう。だから、改正しない場合とした場合の二つに分けて、出していただきたい。
  87. 吉國二郎

    政府委員吉國二郎君) はい、わかりました。
  88. 原秀三

    説明員(原秀三君) 木村先生の国債の現在高についての資料要求でございますが、さっそく調製して提出いたします。ただ、この中には、出資国債の償還要求等で、どのくらい年度中に相手方の要求が出るか、それが出るまで償還の見込みが立たないものがございます。それで、財政法二十八条による調書といたしまして私どもは国会に報告いたしております資料、これには交付国債の内容が落ちておりますので、それを加えましたもので御提出いたしたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  89. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体年次別の償還額……。
  90. 原秀三

    説明員(原秀三君) ただ、未確定のものだけ落ちるわけでございます。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは備考として説明しておいていただけばいいです。
  92. 原秀三

    説明員(原秀三君) それでは、そういうことで……。
  93. 西田信一

    委員長西田信一君) 本日の質疑はこの程度にいたします。  散会いたします。    午後十時十一分散会      —————・—————