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木村禧八郎君 私の提案いたしました
所得税法案の
修正は、
配偶者控除を基礎控除と同額にするための
修正案であります。
修正案を朗読いたします。
所得税法案に対する
修正案
所得税法案の一部を次のように
修正する。
第七十七条第一項及び第二項中「十二万円」を「十三万円」に改める。
附則第四条の表中「十二万円 十一万七千五百円」を「十三万円 十二万五千円」に改める。
提案理由を
説明いたします。
この
修正案提案の目的は、税制面から家庭内における妻の座を引き上げようとするものであります。このことは、男女同権を
規定している民主憲法の立場から申しましても、また夫の家庭外の労働も妻の家庭内の労働も、家庭への貢献ということから見まして同等であるということからいたしましても、当然の措置であると思います。自民党は
昭和三十五年の総選挙にあたり、妻の座を引き上げるためにも基礎控除と
配偶者控除を同額にするということを公約いたし、
昭和三十六年の税制
改正におきまして、従来
扶養控除として取り扱われ、常に基礎控除を下回っておりました妻の控除を改め、
配偶者控除を初めて新設いたしました。しこうして、
配偶者控除と基礎控除と同額の九万円にいたしたのであります。ところが、その後の税制
改正におきまして
配偶者控除と基礎控除との間に再び格差を生ぜしめ、
配偶者控除は基礎控除を下回るに至りました。
そこで、私は、三十九年三月十六日の参議院予算
委員会で、
配偶者控除と基礎控除とを同額にすべきことを
政府に求めましたところ、泉
主税局長と
田中大蔵大臣は次のように
答弁をいたしました。すなわち、泉
主税局長は、
配偶者控除と基礎控除を同額にするということについては、「理論的には、両者は区別すべきでなく、できるだけ一致することが望ましいということは、お説のとおりと思っております。しかしこれを、さらに
配偶者控除を一万円引き上げますには、平年度百億円の減税財源が要るわけでございます。そこで、今回の減税財源が相当大きくて、歳出との関連から、これ以上減税財源をふやすことは困難ということからいたしまして、
配偶者控除の引き上げは、今回は五千円引き上げにとどめざるを得なかったのでございます。将来におきましては、衆議院の
大蔵委員会で、中山調査会長が言われておりますように、
配偶者控除と基礎控除とは同額に持っていくように今後考えていきたいと、かように考えておるのでございます。」、このように泉
主税局長は
答弁しております。続いて、
田中大蔵大臣は次のように
答弁しております。「来年度の財源の問題を今日ここで申し上げるわけにはまいりませんが、来年度減税がまたやれるような状態であれば、いまのお説のようなものは優先的に考えるべきだというふうに考えるわけでございます。」、このように
政府は
国会の場で公に約束しているわけであります。
しかるに、四十年度の税制
改正におきましては、当然この約束を守って同額にしなければならないのでありまして、私はそれを期待しておったのであります。ところが、四十年度の税制
改正では、御
承知のとおり、基礎控除は十三万円、
配偶者控除は十二万円となり、一万円がた基礎控除を下回るに至っているわけであります。これは明らかに公約違反であります。
国会で約束したことを守っておらないのであります。
そこで、私は、去る三月六日の参議院予算
委員会で、佐藤総理大臣に対しまして、
政府が
国会で公約したことは責任をもって守るつもりであるかを
質問いたしました。これに対して、佐藤総理大臣は次のように
答弁しております。「公約した事項——
国会において、
国会の場で公約した事項、これは忠実に実行する責任が
政府にある、かように考えております。ただいままでも、そういうことについては最善の努力を払っておると、かように確信いたしております。」、こう
答弁しております。これに関連して、米田勲君がさらに総理の見解をただしたところ、総理は米田君の
質問に対して、このように答えております。すなわち「約束事項はこれは誠意をもってそれを処理しないと、これから後の信用にも関する、かように私は思います。それで私は、率直に私の所信を表明いたしたのであります。」、このように、総理大臣は
国会で約束したことは責任をもって守るべきであるというふうに
答弁しております。
田中大蔵大臣はこれに対して、「私は、
配偶者控除につきましては、妻の座をより向上せしめるためにやりたいという姿勢でございまして、主税当局にもこの問題に対しては十分考えるようにということでございましたが、税制調査会の答申で、必ずしも妻を同額控除すべきであるというような答申がなかったことと、御
承知のように、基礎控除を一万円引き上げるということをいたしましたので、私は、将来こういうものは最重点的に考えなければならないとは考えておりますが、」と述べ、さらに、「やりたい、こういうことでございましたが、約束じゃありません。」、こういうふうに
答弁されているのです。しかし、先ほど私が
速記録をもとにして申しましたように、来年減税がまたやれるような状態であれば優先的に考えると言われたことは、これは約束でないとどうして言えるでありましょうか。このように、非常に
国会で約束したことを守っておらないわけであります。
また、
田中大蔵大臣は、税制調査会の答申が必ずしも
配偶者控除と基礎控除を同額にする必要がないという答申があったと言われますが、前回の税制調査会では、すなわち中山伊知郎氏が会長であったときの税制調査会では、同額にすべきであるという答申であります。ところが、今回の答申は必ずしも同額にしなくてもよろしいとあるので、そこで税制調査会の答申は尊重して同額にしなかったと言われますが、そんなに税制調査会の答申を尊重するならば、税制調査会で配当の分離課税を答申していないのであります。答申していないものに対して
政府は分離課税を強行しております。また、税制調査会のわが国の税制の基本的あり方の答申におきまして、利子とかあるいは配当等の一部の高額
所得層に対する特別措置は廃止すべきであるという答申があるにかかわらず、廃止するどころか、逆にこれをいままでよりも優遇する措置を講じておるのであります。したがって、税制調査会の答申があったから増額しなかったということは理由にはならないわけです。
政府にその意思があればできるわけです。
大蔵大臣は、一万円
配偶者控除を引き上げると約百億くらいの予算が必要であるから、できないと言われるかもしれません。しかし、四十年度の予算は予備費五百億ございまして、前年度よりも予備費が二百億多いのであります。ですから、やろうという意思があるなら、
国会で約束したことをほんとうに守ろうとするならば、百億の財源がないことはないのであります。また、前に約束しておるのでありますから、税制調査会の答申どおりに税制
改正をやりますならば、
政府案よりは初年度四百億、平年度六百億も財源が浮いてくるのであります。したがって、どういう面から見ましても——これは自民党が
昭和三十五年に公約してあるのです。また、税制調査会の答申もあるのです。また、大蔵大臣も約束されたのです。それにもかかわらずこれが実現されないということは、私は非常に遺憾でございます。
それで、福沢諭吉先生は、正しいことは何回でも繰り返してこれが実現されるまでは主張すべきであると言われましたが、私も絶対に私のこの主張は正しいと。妻の座を引き上げ、基礎控除と
配偶者控除を同じにする。妻の控除を
扶養控除から
配偶者控除というものに改めたのじゃありませんか。これに対して
政府は誠意をもってこれを処理をしなかったことに対して、非常に私は遺憾の意を表する次第であります。
この
修正案にもし反対される方がありますならば、それは婦人の権利の伸長、妻の座を引き上げることに反対であるというふうに解されるわけでありまして、どうか私の
修正案に対しまして皆さま方の満場の御賛同をいただきまして、可決せられんことを
希望する次第であります。