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1965-05-19 第48回国会 参議院 外務委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十九日(水曜日)    午後三時二十三分開会     —————————————   出席者は左のとおり。     委員長         小柳 牧衞君     理 事                 井上 清一君                 森 元治郎君     委 員                 木内 四郎君                 黒川 武雄君                 杉原 荒太君                 山本 利壽君                 和田 鶴一君                 岡田 宗司君                 佐多 忠隆君                 羽生 三七君                 曾祢  益君                 佐藤 尚武君     国務大臣        外 務 大 臣  椎名悦三郎君     政府委員        外務省条約局長  藤崎 萬里君     事務局側        常任委員会専門        員        結城司郎次君     説明員        外務省国際連合        局外務参事官   滝川 正久君     —————————————   本日の会議に付した案件 ○千九百六十三年十二月十七日に国際連合総会決  議第千九百九十一号(XVIII)によって採  択された国際連合憲章改正批准について承  認を求めるの件(内閣提出衆議院送付) ○日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルラ  ンド連合王国との間の領事条約の締結について  承認を求めるの件(内閣提出衆議院送付)     —————————————
  2. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) ただいまから外務委員会を開会いたします。  千九百六十三年十二月十七日に国際連合総会決議第千九百九十一号(XVIII)によって採択された国際連合憲章改正批准について承認を求めるの件を議題といたします。それより質疑に入ります。質疑のおありの方は、順次御発言を願います。
  3. 森元治郎

    森元治郎君 非常に問題が大きいのに国会の期限はきょう一日という非常に短かいので、質問するほうも要領を得たことはむずかしいと思うので、ひとつ勉強した政府委員あたりからはっきりした御答弁をもらいたいと思います。その議論を伺う前に、事実関係をひとつ伺いたいと思います。  いままでにこの国連憲章改正というのは何回くらいあったのか、どういう件名であったのか、その成り行きはどうなったのか、ちょっと聞いておきたいと思います。
  4. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 正式の提案がございましたのは、これだけでございます。ただいま御審議をいただいております理事会議席増加の問題でございます。
  5. 森元治郎

    森元治郎君 この批准の見通しというのか、最近の数字は知りませんが、少し前の数字では、まだ一番肝心の安保理事会国々、これが批准をしたということを聞いておらない。しかし、これは九月一日までかどうか、締め切りがあったと思うのですが、安保理事会、いわゆるアメリカソ連フランス国民政府イギリス、全体の数の三分の二の批准を了しなければならないと思うが、それが達したのか、達しないのか。
  6. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 批准の総数は、百十四のうちの加盟国の三分の二、七十六カ国を必要とするわけでございますが、現在までに六十九カ国が批准しております。常任理事国は、五カ国のうちソ連だけが批准しておりますが、ほかの四カ国も近々に批准する見込みであるということでございます。したがいまして、残っておる国のうちから常任理事国を引いた非常任理事国としましては、あと三カ国で足りるという状況になっております。
  7. 森元治郎

    森元治郎君 これは締め切り期日があったと思うのだが、もしその締め切り期日に間に合わないという場合には、あるいはその締め切りの日を、何らかの議決というのか、手続で延長できるのか。それから、その非常任理事国参加国はどこであるか。
  8. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 九月一日までに改正ができるように希望するということが決議にあるわけでございますが、しかし、これは法律的な意味での締め切り日ではございませんで、かりにそれまでに実現しておらなければ、その以降でも法律上は別に差しつかえはないわけでございます。  それから、非常任理事国として近々に批准する見込みのあるものはどこかというお尋ねでございますが、まあ日本以外で、イタリア、オーストラリアがその見込みが多いという状況でございます。
  9. 森元治郎

    森元治郎君 この常任理事国が、あるものは反対し、あるものは棄権したような経緯もあったんだろうけれども、全部賛成することに間違いありませんか、批准することには。アメリカフランスイギリス国民政府ですか。
  10. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) これはごく最近に出先大使館等でそれぞれの政府外務省に確かめた情報でございまして、私どもは間違いないものと確信いたしております。
  11. 森元治郎

    森元治郎君 このアメリカイギリスフランス国民政府のそれぞれの反対理由というのはどういうのであったか。経済社会理事会安保理事会問題別にもよりますが、大体審議の日数が足りない、もっと慎重審議にしたいというような共通の反対ないし留保の意見もあるようだが、それを分類してわかるように話してください。
  12. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 現在における安保理事会常任理事国態度は、条約局長の御説明のとおりでございますが、この決議が、改正が問題になりました当時におきましてとった態度は、必ずしも賛成ではなかったのでございまして、そのときの態度を申しますと、ソ連反対でございます。アメリカ棄権でございます。イギリス棄権でございます。フランス反対でございます。中国安保につきましては賛成経社につきましては棄権、すべての常任理事国が、これは国府が安保賛成した以外は、全部棄権ないし反対というのが事実でございます。それでソ連反対いたしましたのは、これは中共中国代表権問題にからませまして反対をしたのでございまして、その態度は、これは第十八回総会でこの決議案が出たときに出されたのでありましたが、国連において中国を代表する政府中共政府であり、その正当な代表権が回復されない限り憲章改正を要する議席増加には応じない、各地域諸国の公正な票数を確保するためには、現在の議席を適当に再配分すれば十分ではないかという態度でございました。これが当時の反対理由でこざいました。これが現在賛成に回りまして、すでに批准をしております。常任理事国のうち現在やっておりますのはソ連だけでございます。いろいろ推測があるのでございますけれども中共の問題にからませていたのですが、中共側はその後安保の非常任理事国議席増加には自分たち賛成であるということを申しまして、ソ連中共のかわりに国連の中で発言したものと思われていたのにかかわらず、中共のほうは実はそうではない、こういうような事態、それを聞きまして、ソ連側は初めから中共がそういう態度であるならば、ソ連はこの改正には初めから賛成したはずであるというようなことを申しまして賛成に踏み切ったというような実はいきさつのようでございます。それからアメリカでございますが、これは、現在の非常任理事国議席数は実情に合わなくなり、加盟国の数がふえたのに応じまして合わなくなった事態は認めますが、一挙に今度改正になりましたような大幅な増加には、必ずしも賛成できない。あまりふえますと、理事会機能が低下するというようなことがあるので、AA案が出ます前にラ米案が出まして、そのときには、安保二つ議席をふやす、経社三つ議席をふやすというような中間的な案でありましたけれども、このくらいなら一応賛成していいという態度でございましたけれどもAA側が出した案をそれを上回る議席増加でございました。しかも、この増加案総会の末期に提案されたような次第でございまして、各加盟国の間でも十分な打ち合わせができていないのだというふうなことで当時は決議案棄権をいたしました。イギリスアメリカと大体同じ態度でございました。フランスも大体アメリカイギリスと同じようでございましたけれども、十八回総会で結論を出すのをやめようじゃないか、十九回総会——次総会までの間に各地域配分等の問題がございますので、もっと十分協議をした上でこの問題を審議すべきである、こういう態度から反対に回ったのであります。中国は、安保に関しましては賛成したが、経社につきましては多少いきさつがございまして、従来は、安保理事会常任理事国は、経社理事会のほうではまあ慣行的に理事国に選出されておったわけでございます。憲章の規定にもございませんし、そういう規則があるわけではございませんけれども総会の投票による実際の慣行から申しますと、五カ国はみな当選しておったわけでございますが、その前に中国が落選いたしまして、安保常任理事国でありながら、経社に入れなかったというような事態があったわけであります。これは中国の席をアフリカ諸国が取ってしまったというようなことを申しまして、今後は中国経社にも議席を得るように、そういうふうな保障を取りたいというようなことを言いまして、経社のほうにつきましては棄権をした次第でございます。これが五常任理事国の従来の態度であります。現在はいま条約局長から申し上げたとおりであります。
  13. 森元治郎

    森元治郎君 まあ表面的な理由は、発表された理由はそれですけれども、これだけの大きな問題を議するのに、そろいもそろって常任理事国賛成をしない。それは友だちの中共の腹を聞いてみたらいいと言うから、安保理事会のほうは反対から賛成に回ったというような、しかも反対棄権でいながら批准をすると、ここらは非常にわれわれすっきりしないのですが、ほんとうのところ、この議席増加ということ、しかも、増加した議席配分される国々地域別でだんだんに入るようになるのでしょう。これに対しておもしろくないのか、ほんとうのところはどういうふうに理解をしておられるのですか。
  14. 滝川正久

    説明員滝川正久君) これはすべて推測を出ないことでございます。断言するのははばかりますけれども、現在において加盟国の数が非常にふえた。ことにアジアアフリカが五十九カ国にわたっておりますが、これが国連の半数以上を占めておる、こういう事態でございます。これがみんな賛成しているという場合に、現在の常任理事国がいま言った程度の理由反対するということがこれらの国にとっていいことか、悪いことかという判断から申しますと、必ずしもそうではないのではないか、まあいまの反対理由も、基本的にけしからぬという反対理由ではございませんので、国連全体の趨勢を見詰めました上に賛成に踏み切ったのだろうと観測しておるわけでございます。
  15. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、もう一ぺん聞きますが、これは予定の九月一日までに三分の二の七十六カ国をこえると、こういうふうに考えてよろしゅうございますか。
  16. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 条約局長答弁したとおり、大体間違いないと思います。
  17. 森元治郎

    森元治郎君 この増加された国々がどことどこに割り当てられ、地域別に分ければどうなるのか、経済社会理事会安保理事会に分けてちょっと知らしてもらいたい。
  18. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 憲章改正しましたときの決議案の中にすでに出ておるわけでございますが、安保につきましては四議席ふえますが、AAについては五議席ということが出ております。それから、東ヨーロッパが一つ、ラ米二つ西ヨーロッパ二つと、これは安保のほうでございます。  それから、経社のほうは九つふえるわけでございますが、アジアアフリカから七議席、それからラ米から一議席、西欧その他から一議席という配分がその文書に載っておるわけでございます。
  19. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、大臣にお伺いしますが、佐藤内閣になってからやはり国連中心主義なんですか。
  20. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大体池田内閣の政策を踏襲しておりますので、私どももさよう考えております。
  21. 森元治郎

    森元治郎君 踏襲しているというと、もう二つばかり何だか柱があったようでしたね。アジアの一員ですか、国連中心主義、それから自由陣営か。やはりその三本の柱ですか。四本あるのですか。あまり三本ということを強調しないんで、踏襲したんなら三本だし、椎名外相が就任されて四本なければだめだということになっておるかもしれぬ。この点どうですか。
  22. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは岸内閣のときからこういうことばが用いられておりますが、とにかく国連中心の問題については、佐藤内閣においても踏襲しているものと考えております。
  23. 森元治郎

    森元治郎君 国連中心主義とはどういうことなんだか、会期末でございますから、ひとつ詳しく明快にお示しを願いたい。
  24. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 主義ということを言うのはどういうものか知りません。とにかく外交方針の基調として国連中心方針をとる、こういうことのようでありまして、国連中心とは、結局、現在の国連が万能であるということは言えないだろうと思うんであります。とにかく平和機構として国連以外にないという見地から、国連、すなわち国連憲章というものをあくまで尊重して、その線に沿うて外交の路線を進めていくと、こういうことだろうと思います。
  25. 森元治郎

    森元治郎君 そういうふうに、現在の国連を、いまおっしゃったような意味で立てていくというのですが、にもかかわらず大臣は、総理もそうですが、このごろわりに国連憲章を全面的に再検討することが大事な課題であると言ったり、それから国連ができてから二十年たったので憲章を再審議することが必要である、こういうことをおっしゃっているのは、どこをさして言われるのか。同時に、その構想ですね、御用意があってこれだけの大きな発言をされたと思うので、お伺いをします。
  26. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 最も問題になっておるのは、安保常任理事会は満場一致でなければいかぬ、五常任理事国のどの一国でも反対をするというと、いわゆる拒否権を行使させることになりますと決議が成り立たない、こういうことになっておるので、せっかく平和維持機能をこの常任理事会に認めておりましても、一国でも反対すれば決議が成立しないというようなことは、何といってもこれは万全ではない。もちろん、しかし、それだから国連機能というものはだめなんだとみなすべてきめてしまうということは、これは行き過ぎでございますけれども、少なくともこういったような国連憲章上のたてまえでは、どうも円滑に機能を発揮することができない、こういうような状況になっておるのでありますが、なかなか、いろいろな制約がありまして、簡単にこれを改正することができない。改正することができないけれども、しかし、実際問題として、運用上とにかくできるだけ効果あらしめるような方向に進めていくという余地は十分にあるのでありまして、たとえばこの問題のように、憲章の上において相当にくふうしなければならぬ点があるように思います。そういう点を考慮しての発言であったと、こう思います。
  27. 森元治郎

    森元治郎君 たいへん大胆にずばりの憲章改正のポイントだと思うのですが、日本政府は、この拒否権の問題について、国連の場で、過去において、あるいは現内閣になって、発言したことがありますか、何らかの機会に。
  28. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 日本がかつて安保理事会メンバーであった際に、大国拒否権乱用を控えてもらいたいということを一度ならず発言をしておるのであります。
  29. 森元治郎

    森元治郎君 それは安保理事会の運営の場での話であって、憲章として拒否権という制度、これは先ほどおっしゃった平和機構平和維持活動を円滑にならしめるためには、一国の拒否権によってほかの国が全部賛成しても通らないということは困る、したがって、これは憲章上の制度上の問題として検討をすべきである、改正すべきである、日本政府は、拒否権は認めるべきでないという発言をされたことはありますか。
  30. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 制度上の問題として提案したことはないようでありますが、これは憲章そのものからいって、まず五常任理事国がいずれもこれに承諾を与えない限りは憲章改正ということもできないと、こういうようなことになっておるのであります。いわば、まあ制度上の問題を持ち出してみてもほとんど不可能だと、こういうことになっておるんで出さなかったんだろうと私ども考えております。
  31. 森元治郎

    森元治郎君 それほど、私が憲章改正構想はいかがですかと伺った場合に、大臣の頭にすぐ出てきたのは拒否権、これは非常にいいとこだと思うんですがね、ですから、これはどうもまずいという立場をとられるならば、正式の場で発言すべきだと思う。しかも、何も案も構想もなしに、憲章を全面的に再検討することはわれわれの任務であるようなラッパを吹いたのでは、少し吹き過ぎではないかと思うんですが、どうですか。
  32. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) がんじがらめでどうにもならぬようになっておるんですが、それでもとにかくこれは改正すべきだすべきだということをしょっちゅうおりあらば発言しているということになると、幾らか、全然むだでは私はないと思います。
  33. 森元治郎

    森元治郎君 私への答弁ばかりで幾ら言ったところでだめなんで、国庫の場でみんなに聞こえるように責任のある場でおやりになる御意思がありますか。
  34. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 実は、先般の十九回総会がただいま休会になっておりますが、休会寸前に、三十三カ国をもって構成する特別委員会が設置されました。この委員会国連機能というものをいかにすれば最も発揮できるかというようなことを、これはまあ制度改正の問題も全部含めての委員会が設置されまして、日本もそのメンバーの一国として選ばれております。まだその委員会活動はこれから始まるわけでありますが、このちょうどいい舞台ができ上がったのでございますから、ここを舞台にして将来大いに日本としてはこの問題と取り組んでまいりたい、こう考えおります。
  35. 森元治郎

    森元治郎君 それはそのとおりですが、平和維持に関する特別委員会は六月十五日までに報告書を提出すべしとなっているんですね。残すところ、あなた、幾らもない。ですから、その短い間にでも拒否権に関して政府国連憲章検討に当たり拒否権問題について日本方針を打ち出してみんなで審議しようじゃないか、検討しようじゃないかということを発言されるかどうか。その際に、ただ検討しようじゃないかということで強化する案もあるし、ドゴールのような五大国でいけというような国連ができたときの気持ちもあるし、ですから、やはり立場をその場でもはっきりしなければならぬ。いわゆるこれはいけないと、結局政府はやめるべきである。何か代案をもってお話をするんだと思うんですが、どういうふうですか。
  36. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 委員会が開催されるためには加盟国がみんな——まあ、みんなじゃなくても、相当集まらなければ成立いたしませんが、もうだいぶ期日も迫っておりまするので、そういう可能性がはたしてあるかどうか、もしなければ、それよりもおくれても差しつかえないものと考えますが、いずれにいたしましても、日本としては、委員会成立早々の際にこれらの問題を持ち出してみたいと、まあ、こういう考えを持っております。
  37. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、国連代表部に対しては外務大臣訓令としては向こうに渡っておる、拒否権制度についてはかくすべしと、日本政府態度を相して世界に訴えろという訓令が行っている。ただそれをいつ行使するかは出先代表部もタイミングを見る必要もあるだろうし、それにおまかせになっていると了解してよろしいですか。
  38. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、運用の円滑を期するという意味におきまして、平和維持機能の発揮のためにどうすればいいかという問題、その運用上の問題としては、総会において、総会がそういう平和維持活動を行なうように運ができますようにまず持ち出してみろと、こういったような指令を出しております。それからまた、それに引き続いて今度は、運用の問題もさることながら、根本的に、問題を基本的に解決する方法はその次に続いて考えてみたいと、こう考えております。
  39. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、だんだん後退されて、最初私が、この憲章改正構想はどうだと伺ったら、拒否権だと言っているうちに、だんだん運用のほうになって、拒否権には触れないで、拒否権安保理事会のほうですから総会のほうだと、これは運用上の問題なんですね。拒否権そのものを伺ってから運用を伺いますから、大臣拒否権についてはこれはだめという、これはやるべきだとお考えになりますか、その点だけを。
  40. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ実際問題としては、まずこの拒否権が存在しているために憲章改正ということができない、こういう二重に拒否権のために縛られておる。でありますから、まず総会運用というものによって拒否権を無視というか、これを避けてもなお相当の働きができるんだというまず方法考えるのが実際的だと思うのであります。しかるのちに制度論にだんだん入っていくべきだと、こう考えておるわけであります。
  41. 森元治郎

    森元治郎君 だんだん後退されて、国会の取引みたいな話になってしまわないで、やはり拒否権をどうするんだということを、たとえ拒否権のために憲章改正ができないにしても、だからこれはこうあらねばならぬという声を大にする必要があると思うんですね。これは何べん聞いてもはっきりしないんですが、制度はよいものではないとはお考えになっているんですね。そう了解してよろしゅうございますね。そうすると、ただ制度を言ってみたところで、拒否権のために現実にはできない。しかし、政治は生きものですから、全体の空気がそういうふうになった場合に、どこだろうと、アメリカでもソビエトでも、なかなかそれを押さえ切れることはないと思う。憲章改正方法は、いろいろ法律上の国連憲章の上からいっても、手がなくもないと思うのです。  そこで移ります。それでは、拒否権は悪いと、これは直すべきだというお考えだと了承して先へ進みますが、先ほどの大臣の、憲章を再検討せにゃならぬという気合いを示したもんだ……こまかい問題はほかにはないんですか、——思い出すほど小さい問題ですか。
  42. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) あとはまあ、そうたいしたものはございません。
  43. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっとそれに関連して。いまの問題ですが、さっきちょっとお触れになったようですが、安保理事会平和集会との問題ですね。この問題が、いま国連憲章の改定の問題として重要な問題になるのじゃないですか。それはどうですか。
  44. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 平和……何ですか。
  45. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 平和統合といいますか。
  46. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 朝鮮戦争のときに、安保理事会拒否権行使にあって、国連の軍を派遣することができないという場合、総合でございましたですね、あのこと……。
  47. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうそう。
  48. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは私はさっきから申し上げているように、安保理事会拒否権のために動けないという場合に、運用総会活動によってこれを補うという方法をこれからたびたびこいつを円滑に運用できるようにしなきゃならぬ、こういうふうな考え方を先ほどから申し上げておるわけであります。賛成でございます。
  49. 森元治郎

    森元治郎君 私は、政府の言う国連中心主義というのは、決してその憲章のほうじゃなくて、運用のほうの総会主義ですね。安保理事会主義じゃなくて総会主義、いわゆるアメリカ方式ソ連がうっかり欠席したばっかりに、ソ連も一本とられて、こういう総会をうまくリードしていったんですが、日本政府のほうは総会主義と判断していいんですか、運用は。もう平和維持安保理事会だけにまかせても動かない。ある場合には併用だが、ある場合には総会に重点を置くというふうに見ていいんですか。
  50. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 大体それで行くよりしようがないと思います。
  51. 森元治郎

    森元治郎君 そうしていくと、私のさっき伺った拒否権をどうするという問題からは、これは直接積極的にさわらないで置いといて、やはり直そうという意気込みはそこに感じられないわけですね。そんなふうに感じるが、どうですか。
  52. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 不可能であって、これを是認するという意味は、ごうもないのであります。
  53. 森元治郎

    森元治郎君 そこで私考えるんですが、安保理事会の場合、いろいろ憲章規則上困難ではありますが、一国の拒否権で全部が動かなくなってしまうかわりに、絶対多数主義、九割主義というか、九割八分主義、五分の四主義、絶対多数が反対した場合は、たとえ一国が拒否権を使おうと思っても、それは使えなくなるというふうなことを考えるのですが、考えただけに終わるかもしれませんが。
  54. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 現行の憲章では不可能でございますが、いかに解釈を変えても、現行憲章では不可能でございます。
  55. 森元治郎

    森元治郎君 やはり拒否権制度は直さなければならぬというときは、いろんな考えをつくって世界に訴えるということは必要だと思うのです。一カ国のために、残りの十カ国あるいは十四カ国が全部だめになってしまうのではだめなんで、十四カ国が反対ならば、一国が押えられるとか、そういうふうに意見をどんどん出していかなければならぬと思います。  それから、憲章改正に関連して、大臣はたいしたことがないとおっしゃいましたが、主権の平等ということが最初の原則、目的のところにしつこく書いてあるわけです。これはそのとおりだと思うのですが、どうも新しく入って来る国、新興国、あるいはアジアアフリカの中には、主権平等と言いながら、大きい国がわがままをしているじゃないか、こういう非難で、インドネシアなんかもいろいろ理屈はあるけれども、そういうことも一つの理屈として自分の脱退の場合に使っている主権の平等ということを、大臣はどんなふうにお考えになりますか。
  56. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) これは読んで字のごとく、平等——国が大きくても小さくても、一国である以上はその主権に差等はないと、こういうことになるかと思いますが。
  57. 森元治郎

    森元治郎君 ところが、ドゴール大統領あたりは、やはり第二次大戦前の考え方が強くて——といっても五大国が中心だという思想を強く最近の新聞記者の会見とかその他でも発表しているのですが、これはどういうふうにお考えになりますか、依然国連ができたときのように、五大国中心で行くべきなのか、いや、国の中に甲乙、上下はないんだと、こういうことで行ったほうがよろしいとお考えになるのか。
  58. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 個人でも平等の原則だろうと思うのです。しかし、おのずからその間に指導的な人物があらわれるというようなものです。国においても実際の国際社会においてもおのずからそういう区別が出てくるのであろうと思うのです。しかし、この場合には、主権が不平等というのでない、平等ではあるけれども、おのずから見識、力というものが備っているところが指導的な立場をとる、みんながそれを認める。認めることによって指導的な立場をとることができる。こういうようなものだろうと思うのです。
  59. 森元治郎

    森元治郎君 大臣のお話わかりますけれども、この指導的立場というのは、椎名さんは偉い人物だと言ったら、自然に椎名さんが政界の重要人物になってくる、閣僚のいすにすわると、こうなるのですか。そうでなくて、初めからだれとだれとだれときめておった。いわゆる第二次大戦終息にあたってのとにかく主要な五大国日本、ドイツ、イタリアを倒したこの五大国だけというのは、三十年の今日依然今後も続けていこうということは、国も大きくなり、世間の目も広がってくる、大人物がほかにいるかもしれない、大国——あるいは日本なんかもその中に入れてくれるかもしれませんが、この思想はだんだん是正していくべきではないかと思うが、どんなふうにお考えになりますか。
  60. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 世の、甲がはっきり認めてそしてその指導的な地位を与えられるのであって、自分で初めからそうきめてかかるということは、これはどうも僭越だと思います。
  61. 森元治郎

    森元治郎君 私は、自分で日本がという意味じゃないので、自然、かりに全部が平等に、百十四カ国が平等になった場合、五大国がおのずからだれか立てられてくると思うのです。アジアの親分はだれ、西ヨーロッパじゃあの国がまあ人気があるといいますか、そういうふうなことで今後やっていくような方向に持っていくべきではないだろうか。実際問題としてはなかなかむずかしいですが、そういうふうなことを弱小、いわゆる新興国その他は考えているのじゃないか。入らない、不満を持っている人はそれに火をつけて離反させるようなことにもなってくるのじゃないかと思うのです。憲章改正で、よく鹿島さんなんかは本にも書かれておりますが、例のあの敵国条項といいますか、日本が戦争を終わった後なおかつ敵国扱いをされている条項、あれは何だったか、ありましたが、ああいうものについてほどういうふうにお考えですか。
  62. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) これは憲章が全体として再審議される機会にはぜひ削除されるように日本としては希望いたしておるわけでございます。
  63. 森元治郎

    森元治郎君 これに関連してちょっと専門家に伺いたいのだけれども、例の沖繩と国連との関係で、アメリカ政府国連に信託統治として申し出るまでの間はアメリカをただ一つの施政権者とする政治をやるのだということが平和条約に書いてありますが、国連に加盟をした国の地域に対しては信託統治はできないのだということが歴然とうたってある。アメリカもあの条約を結んでもう十数年、発効したのは二十七年ですから十三年にもなりますが、国連に持ち出すという気配は毛頭なく、かえっておだやかになったならば沖繩を日本に返そう、しかしいまは返さない、こういう立場できているのですが、この両方のぶつかり合いというものをどういうふうに解釈するのか。国連加盟国にはしない。——当時は日本はまだ国連加盟国にはなっておりませんでしたから、平和条約のときにはそういうことがあったかもしらぬが、間もなく、日ソ国交回復と同時に国連加盟ができたとなると、この点を条約局の専門家はどういうふうに解釈しますか。
  64. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 憲章第七十八条に「信託統治制度は、加盟国となった地域には適用しない。」とありますのは、ある国の地域全体に信託統治がしかれている場合に、それが加盟国になったあとまで継続されるということは主権平等の原則に反するという趣旨でございまして、ある国の一部の地域について信託統治制度があって、それがその国が加盟国となったあとまでも継続されることを封ずる趣旨ではない。これは日本の場合には関係がないことでございますけれども、そういう意味であるということは、憲章制定当時の諸文書あるいは憲章の解説書等すべて一致しておるところでございまして、日本政府としてもそういう解釈をとっておるわけでございます。  それから平和条約第三条の関係でございますが、仰せのとおり、信託統治の提案をしそれが可決されるまでという形になっておりました。それはそのとおりでございますが、日本政府としましては、そういう信託統治の提案が行なわれないように、信託統治にされないようにということをアメリカ政府に要望しておる関係にございます。したがいまして、もう提案はいままでしていないのだから返せという意味合いではなくて、そういう信託統治なぞという回り道をしないで、返せる日が来たらできるだけ早くまっすぐ日本に返してもらいたいというのが従来から日本政府がとっている立場であったのでございます。
  65. 森元治郎

    森元治郎君 いま第一点のほうの、当時いろいろアメリカの文書その他から、主権平等の見地から国連加盟国に信託統治が行なわれないと、一部の地域という場合はそれに入らないのだというような解釈云々については、何か書いたもの、発表になったものの解釈から出てくるのですか。はっきり書いたものがあるのですか。
  66. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 第七十八条の規定がここに置かれました趣旨から、アメリカ政府の文書というよりは、サンフランシスコの国連憲章制定会議の諸文書からそういうふうに解されるわけであります。それは当時、中近東のレバノン等、委任統治地域になっておった新独立国が国連加盟国になるということがありまして、そういうことを念頭に置いて書いた条項であるというふうに会議の文書に示されております。
  67. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、資料として私はほしいと思うのですが、国会が終わってからでもけっこうですから、その点のをほしいと思うのです。  もう一つは、第二点の、十三年もたっているのです、平和条約を結んで。アメリカ国連に信託統治として持ち出すまではと、「までは」と言っても、持ち出さないということははっきりどなたにでもわかるような事態になってきたので、いま条約局長の御答弁では、信託統治にならないように、もみ手かなにか知らぬが、裏工作を一生懸命やったようにも聞こえる答弁があったのですが、しかし、もう十三年ですから、これはあすこに書いてあるつもりはないという念書ですね、黒金念書ではないけれども、正真正銘の念書を取ってもおかしくはないのじゃないか。いつまでも何かあやふやな、大きな世界的弁護士であるダレスさんがつくったような、きわめて法律の中に政治性を加えたような表現は、私は読んでおってきわめて不愉快な感じがするのです。おやりになっておってもいいのだと思うが、その点はどうか。同時に、大臣からやってもいいと思うのですが、いかがですか、伺いたいと思います。専門家からまず。
  68. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) アメリカ政府はこれまで信託統治の提案は沖繩についてはいたさないというふうなことを公に言ったことはございません。また、日本側からそういうことをはっきり確言してもらいたいというふうに要望したこともございません。これはただ日本側からは、とにかくそういう信託統治などはしないで早く返してくれと言うのに対して、こちらで述べている願望の後段だけに答えまして、まあ極東の平和安全が許すならばというような条件で、そういう日が早く来ることを希望するというような答え方をいたしておるわけでございます。
  69. 森元治郎

    森元治郎君 それだけ「返す」というほうに重点を置くならば、返すつもりだから、もちろん信託統治などにはするつもりはないのだと一言つけ加えてくれれば明瞭なことになると思うのですね。どうですか大臣、はっきりひとつ。
  70. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 信託統治をするまでは——「までは」ということは、別に期限があるわけではないのございますから、法律的にどうもひっかかりが出てこない、こう思われます。
  71. 森元治郎

    森元治郎君 どうしても私はそこらのところがもやもやしていて、やはり法律関係の文書なり何なりというものは、適時に古いものは是正していって前に進むというのが政治的にも、それから法律の面から見てもたいへんいいことだと思うのです。この点がどうもうっちゃってあって、いつもあれ読むたびに私は不愉快な感じがするので、適当なおりにやはり明快な形で打ち出してもらいたいと思うのです。
  72. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 その点で関連してちょっと。これは外務大臣及び条約局長に聞きますがね。いまの国連憲章七十八条の問題ですが、ただいまあの条項はレバノンのことを念頭に置いてやったものであるということを言われておる。まあ、普通法律をつくるとき、あるいはまた条約の条項をつくるときに、ある種の具体的な事実、それに基づいてそういうものをつくることが間々ある。しかし、その表現というものは常に具体的でなくて、かなり抽象的、一般的になって、それがただ一つの事例に適用されるものでなくて、多くの事例に適用されるようになる場合が多いと思うのです。で、もしレバノンだけのことならば、その七十八条にそういうふうに一般に適用されるような形で挿入されるということはなかったと思う。おそらくそれが挿入されたのは、やはりそういうふうな一般的な問題に対する一つの考え方が——それができた最初のきっかけはレバノンのことであったかもしれないが、私どもは、すでに二十年たっているが、それはそのまま残っておって死文になったものとは思わぬのであります。レバノンだけでそれはもう役に立たなくなったものとは考えておらない。そういたしますと、これはやはりわれわれとしても、いまの平和条約の三条の問題として関連させて考えていい問題じゃないか、こういうふうに考えるのですが、あなた方は、その問題はもうサンフランシスコで国連ができたときにレバノンのことを考えてそうやったと、そのときの文書がそう示しているから、それはもうレバノン以外にはそういう問題は適用されないのだ、そういうふうなお考え説明されたようですけれども、しかし、それが一般的な形でとしてこの中に残っている以上、われわれは今日いろいろな事態から、それをやはり新しくいま日本の当面している沖繩関係の問題と関連させて考えて悪い、そうしてまた、その一般的なものをそういうふうに解釈して、それに基づいてわれわれが要求して悪い、そういうふうにお考えでそれはできないと、こういうふうにお考えなのか、これはひとつ外務大臣からまずお伺いしたい。
  73. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 法律の解釈でございますから、条約局長のほうがもっと明瞭にお答えできるのじゃないかと思います。
  74. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) さっきレバノンだけを名前をあげましたけれども、ほかにも確かに国はあったと思います。シリアなどもその一つだったと思います。なお、フランス文もこの憲章の正文なわけでございますが、この場合には、加盟国となった国には適用しないとはっきりうたっております。そういう趣旨であったことは確かなわけでございます。その後、それを、まああとからつけ加えた解釈として広げる可能性はないかという御趣旨かと思いますが、ここに「主権平等の原則の尊重を基礎とするから、」という立法理由みたいなものが書いてございます。したがいまして、それじゃ、ある国の一部の地域が信託統治になっていると主権平等の原則の尊重ということに反することになるかという問題になるかと思うのでございますが、その点につきましては、第七十七条のC項で、「施政について責任を負う国によって自発的に信託統治制度の下におかれる地域」というような規定もあるわけでございまして、憲章考え方全体といたしましては、一部の地域が信託統治に置かれることは主権平等の尊重ということの原則にははずれないという考え方でできているように解すべきかと存じます。
  75. 岡田宗司

    ○岡田宗司君 第一おかしいのは、その七十八条の条文の、まあ信託統治に付される云々ということは、その国全体であって一部でない、その一部の場合じゃないのだ、それは主権平等ということと矛盾するからしたがってそれはその一部がそういうことになるということの解釈はできないのだ、こういう考え方ですが、何もそこに全部とか一部とかってはっきり書いてないのですよね。平等ということばがある。そうすると、沖繩が日本の領土だとしていた場合に、その全部とか一部とか書いてないから、われわれにしてみれば、何もそこをそういうふうに解釈しないでいいんじゃないかということにもなるのじゃないでしょうか。  それから、第一あとになっていろいろな解釈の変化が起こる。適用の広げられる問題も起こるということは、これはよくあることなのです。たとえば昔——戦争前に暴力取締法が制定されたのです。そのときには、やれ労働運動には適用しない、小作争議には適用しない、これは暴力団狩りだけに使うのだ、こういう立法の趣旨で、ちゃんと国会の速記録にも載っているし、そのときの、できましたときの法務大臣、そのあとの法務大臣発言もそうだった。できてしまったら、どんどん小作争議にも労働争議にも適用されて、それで引っぱられて監獄にほうり込まれた者がたくさんいるのです。そういうようなことで、あなたの言うようなことじゃないのですよ。条約上の問題でもいろいろそういうことはあるでしょう。ずいぶん条約局長のような頭のいい、そうして練達たんのうの人が集まってつくった条約が、あとになって解釈が問題になったり、そして十年前につくった条約、五年前につくった条約が、新しい事態との関係においてたいへんむずかしくなったり、解釈を変えなければならないようになったりしているでしょう。そうすれば、この七十八条が一般的な形で出ている以上、またいま私が言ったような事態が平和条約第三条との関係である以上、われわれは新しい事態としてこれが一体国連憲章との関係でどうなるかということを検討して、そして私どもはこのいまある事態について新しい解釈なり、あるいはその適用の拡大というか、何というか、とにかくそういうふうにして検討してもいい問題だと思うのですがね。それはもう検討のできない問題なのか、検討する必要がない問題なのか、そしてこの問題について外務省としては、もうその問題は全然検討しないでいいんだと、アメリカさんが沖繩をいまのような状況で占拠しているのは、これはやむを得ないことなんだから、あるいはまた、極東の平和のために喜ばしいことなんだから、とにかくそういうことで、どうぞもっといてください、こういうことなんでしょうかね。これは外務大臣、ひとつ、そういう条約の解釈との関係を外務省では、あなたの考えとしてははっきり、もう必要ないんだと、こういうことなんですか。
  76. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そういう法文の解釈からそういう政策論は出てこないと思います。それを離れて、この三条は別に違反ではない、信託統治を信託に付するまではということに、別に期限の長短の意味というのはそこにないのでありますから、現状で差しつかえないと思います。
  77. 森元治郎

    森元治郎君 そこで伺いたいのだが、これはちょうど国連の機関である国際司法裁判所に持ち出す一つの大きなよい問題だと思うのです。おそらく国際司法裁判所へ出せば、冷厳な頭でいけば、いまの平和条約の第三条はぐらぐらすることは確かだろうと思うのです。もし、われわれの言うようなほうに国際司法裁判所の判定が下されたとすると、沖繩というのはいかなる法律的な根拠でアメリカがこれを使用できるかも疑問になるのじゃないですか。安保条約にも入らないし、また、おれは施政権者だというだけでは、きわめてアメリカは不安定な占拠状態になると思うのです。  そこで伺いたいのは、国際司法裁判所に憲章の研究という問題としてこれをかけることもきわめておもしろいし、よい問題である、かけるべきだと思うが、どうですか。
  78. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国際司法裁判所にかけようという政治的な根拠は何もございません。
  79. 森元治郎

    森元治郎君 政治的根拠ではない。国民の気持ちとして、どうもすなおに読んでも疑問がたいへんあるので、だれを私はいじめようという気持ちはないので、憲章の中にれっきと書いてあることと平和条約とのこの問題は大きな問題だと思うのです。条約局長、専門家の話を聞いても、読み取るというような解釈だというようなことでありますから、解釈となれば幾とおりの解釈も出てくるので、これは十分司法裁判所もよい問題を持ってきたとこれはほめられると思うのですよ。ということは、あそこは政治的判断をするところでありませんから、法律法律として調べてみようという裁判所ですから、これはひとつ出してみたい。  そこで伺いたいが、条約局長、こういう問題を、椎名さんはやらないけれども、かりにわれわれの見解をとりまして、日本政府の名において持ち出すと、これは当然受理される問題でしょうね、どうですか。
  80. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 第七十八条の解釈の問題……。
  81. 森元治郎

    森元治郎君 と、沖繩の施政権ですね、現在の。
  82. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) これはどういうふうに問題をつくるかということだと思います。と申しますのは、現在の状態は、憲章第七十八条と直接関係がないわけでございます。平和条約の第三条の解釈問題としてしかできないのじゃなかろうかと私は考えております。
  83. 森元治郎

    森元治郎君 まあ政府委員に出すわけじゃないから、どういうお答えがあってもそれはかまわぬけれども、これは大きな問題だろうと私は思うのです。そして、次に移ります。  外務省で、あるいは政府では、国連の全面改正をやるべきときであるという外務大臣のたいへん強い発言、総理の発言、合わせると、研究機関でやっておられますか、恒常的に。そして、ある結論を得られた、あるいは得られる近い状況にあるのか、大臣からお聞きしたい。
  84. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 絶えず研究はいたしておりますが、特別の機関を設けてやっているわけではありません。
  85. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、大臣だけがハッスルしちゃって、大いに憲章改正の要がある。全面検討はだれも格別やっていない。外務省の機構はごらんのとおり、条約局もあり、国連局もある。局長は大使から来たり行ったりでなかなか忙しい。とてもこんな大問題は取り組む機構はできていないのですね。まあカーネギー財団とか、あるいはロックフェラー財団からの、よその国から金の補助も得て、何か英文の二、三百ページのものをつくってやったことはあるようなんですね。しかし、それはもう十年前ぐらいの話で、さっぱりどうも根本的な勉強をしていないということは、これは怠慢だと思うのです。これからおやりになりますか。
  86. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それに関連して。  私は本会議でその問題を質問をしたのですが、椎名外相は第十九回の国連総会の演説で、「国連を強化するため、現実に則して憲章を全面的に再検討することもわれわれの重要な課題である。」、「国連創設二十周年を控えたいまこそ、憲章の再審議を真剣に考慮すべき好機といえよう。」ということを非常に明瞭に言っておられるのですね。これだけの発言をされるならば、その背後には十分な用意があってしかるべきなんです。それを背景にしてお述べになったことだと思うのだが、そういうこともなしに、ただこういうことをべらべらと言われたのかどうか。政治的な責任は非常に重大だと思うのです。
  87. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 特別の機関はつくっておりませんが、絶えず勉強しております。そして、こういうことはやはり仲間を誘ってやらなきゃ効果のあがらぬ問題でありますから、ああいう場において大いに力説強調して、みんながそういう気持ちになって、そして初めてこういう問題がだんだん実現性を持ってくる。そういう意味で演説に加えたわけです。
  88. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 具体案を持って初めて仲間ができてくるのでね。
  89. 森元治郎

    森元治郎君 佐藤尚武さんも、しばしばこの軍縮の問題についても、外務省は勉強をしろと、鞭撻を二、三度された。それで、前外務大臣大平さんも、まことに佐藤委員のおっしゃることはと、エビのようにからだを曲げて言った。これも全然やっていない。国連は断固改正なんて言って、これはまず空気を起こしてなんてのじゃちょっとひどいですね。これからやはり準備をしなければならぬと思うが、どうです大臣。軍縮、国連、これはほんとうに取り組まなければならぬと思うのですが、機構的におやりになるのでしょう。そうでなければ大臣の御返事聞いてもしかたがない。
  90. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 外務省機能的にみなそれぞれの局や部課がございまして、手分けして絶えず研究しております。
  91. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならもっとましな答弁ができそうなものだな。
  92. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、いま佐多さんのおっしゃるように、これはすっと裏からふろしきあけて出てきそうなものですが、それが出てこないで大臣だけの御答弁ではちょっと怠慢のような感じがするので、どうも軍縮と国連というのははでな問題ですが、ほとんど実のある結果が出てこない。これは予算を取り、学者を集め、そして外務省の多くの行政事務をやっている方では手がいっぱいですから、外務省の方も集め、みんなでひとつそういう機関をつくって、その上に立ってお話をして初めて重みのある発言になると思うのです。大臣どうです。そう思いませんか、まさしくそのとおりと。
  93. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 案をつくって、それが実際に実効のある場において審議されるということによって初めてできるのですが、今後はいわゆる三十三委員会の場においてこういったような問題を検討されることになると、こう考えております。
  94. 森元治郎

    森元治郎君 三十三委員会というのは。
  95. 椎名悦三郎

  96. 森元治郎

    森元治郎君 十分ひとつやって、表面に出るようにお願いをしたいと思うのですが、そこで、最近はアジアアフリカ会議を通じてたくさんの国々が集まる。そこで第二国連でもつくろうか、中国がこの指導をとるのかどうかよくわかりませんが、とにかく不満だという人の数もありますし、こういう動きをどんなふうに判断されておるか。まず状況をお知らせ願いたいと思います。
  97. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) だんだん第二回AA会議の開催日も近づいてきておりますが、われわれはまだ一向、この第二AA会議において第二国連の提案が行なわれるというようなことに関しましては、何らの徴候も見とることができないような状況であります。これは世上の推測にすぎないものではないか、こう考えております。なお、多くの国はその必要なしというような意見を持っておるようであります。
  98. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 AA会議の問題が出ましたが、AA会議に対して日本政府はどういう態度でお臨みになるつもりか。まずそれから御説明願いたい。
  99. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) ただいま太平洋公館長会議を開いて、これらの問題に関しましてもいろいろ意見を徴し、討議をこれから行なおうとしておるのでございます。第一回のバンドン会議における十原則、そういうものも検討して、そしてこれを現在の情勢に合わしていかにこれを遵守し、これを励行するかというような点がまず問題であると思うのであります。いずれにいたしましても、AAグループのいわゆる共存共栄をいかにしてはかっていくかというような建設的な方向にこの会議が進められることを、われわれとしては期待いたしたいと考えております。
  100. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうもバンドンの十原則を再確認をするということをばかの一つ覚えのように繰り返しておられるようですが、これはもうすでにあの十周年記念祭典においてこれを主張されて、これが全然効果をあらわさなかった。ただこれを繰り返すだけでは失敗するにすぎないということははっきりなったと思うのですね。したがって、もっと根本的に検討をされなければならないと思いますが、社会党としてはいま論議しておるのは、次の三つの原則を立てたらどうだ。第一は、植民地主義反対、帝国主義反対。第二は平和共存。第三はアジアアフリカの経済開発。この三原則を押し立てて、日本はこれを強く主張をすべきだ。そうすれば、第一の原則において、中国の周恩来なりあるいはインドネシアのスカルノが主張していることはそれでいれられ、同時に、インドその他の非同盟諸国が主張をしている平和共存の、問題は第二原則として強調をしてこれの意向をかなえてやる。同時に、日本政府が、これは椎名外務大臣が最も強調したいとお考えの点だろうと思いますが、アジアアフリカの経済開発の問題、この三つを組み合わして積極的に主張をするということがいま具体的に日本としてなさるべきだという意見を持っているんですが、これに対して外務大臣はどういうふうにお考えですか。
  101. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まだほんとうの土俵に上がらないうちにここで予行演習みたいなことをやることになるのでありますが、よくお説は拝聴いたしまして、これからどういう準備を進めるか、それの貴重なる参考にいたしたいと思っております。
  102. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、これは少し差しさわりがあるかもしれませんが、あえて申し上げますと、十周年記念の日本国代表は決して代表として成功をしておられない。私むしろ失敗だったと思うのです。そういう意味では、代表をかえる必要があるんじゃないか、こういうふうに考えるのですが、どうお考えになるか。しかも代表をかえる場合に、これも率直に申し上げますが、ホストとしては総理が行かれることが一番適当だと思いますが、人的に言ってこれはちょっと不適当である、こういうふうに考えます。さらに率直に申し上げれば、外務大臣が行かれることも同じだと思います。そこで、それじゃだれだということを具体的に言えば、私はやはり総理級の人として河野一郎氏かあるいは藤山愛一郎氏。河野一郎氏は申し上げるまでもなく、藤山氏は第一のアジアアフリカ会議に民間顧問団として、私たちは政党顧問団として行きましたが、そのときに日本商工会議所の会頭として顧問団の一人として行かれた。しかも、向こうで周恩来総理との会談その他で非常に大きな役割りを果たされたと思うのですが、そういう過去の実績もあるし、その後のアジアアフリカ諸国あるいは中国の周恩来総理の受け取り方等から考えて適当ではないかと、こういうふうに思うのですが、これらの代表のことについてはどういうふうにお考えですか。非常に率直なあれですが、少し差しさわりがあるかもしれませんが。
  103. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) よく承りまして、しかるべき方面に伝えておきます。
  104. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは国連の問題に返りますが、先ほどちょっと出ましたが、周恩来総理が第二国連をつくろうとしているし、あるいはインドネシアが国連を脱退をしてこれと同調する、あるいはむしろインドネシアがイニシアチブをとってそういう方向に持っていくという気配もあるのですが、ことほどさように国連は威信を失墜をしておると思うのですが、日本としてはこの失墜した国連の威信を回復するためには積極的にどういうことをやるべきだとお考えか、御説明を願いたい。
  105. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 国連の威信失墜の問題についてはいろいろ見方の相違はあると思うのでありまして、少なくとも威信が健全に維持されておる状況ではないと思います。その原因はまあいろいろありましょうが、さしあたり平和維持機能というものが十分でないということ、それからまた、そういうような事柄が原因になって財政問題もさような原因からああいったような事態が発生しておるのではないかと思われます。でございますから、毎度どうも同じようなことを申し上げるようでありますが、平和維持活動に関する特別委員会というものがいろいろな角度から必要性が認められて、そして生まれたものだと思うのであります。この場において率直な意見の交換を行なって、これの対策を確立するということが一番手っとり早い方法であると、こう考えております。
  106. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 国連が威信を失墜していることの最大の原因は、インドネシアが脱退をしたこともさることながら、最大の原因は、何と言っても、中国がこれに加盟をしてないということだと思う。そこで、この中国代表権を中華人民共和国に与えるということが何としても威信回復の最大の案件になると思うのですが、これについて現在の時点において外務大臣はどういうふうにお考えにたるか。これを努力することなしには、第二国連その他の問題が出てくるのもまた理のあることだということになりかねないので、これらの点をどうお考えになるか。
  107. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 中国問題はこれは日本一国がどうしようもない問題でありまして、やはり国際世論のもとにきわめてスムーズな方法によってこの問題が処理されなければならぬ、こう考えております。
  108. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 スムーズな方法で処理されなければならないことは当然であります。しかし、同時に、現在のベトナム問題に関連しても、あるいは軍縮の問題、非核武装の問題等についても、中国を入れることなしには問題は一歩も解決をしないし、しかも、いまあげたような諸問題が解決を要すること非常に緊急なものがあると思う。したがって、それらの問題と関連さして中国の加盟問題を、代表権問題をあらためて取り上げなければならないと思うのですが、その方法はもちろんスムーズにやる必要があると思いますが、取り上げてスムーズにやるには具体的にどうすべきか。どうお考えか御説明を願いたい、大臣に。
  109. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 申し上げるまでもなく、一方台北政権というものがございまして、とにかく国際世論というものが期せずしてこの問題について大体歩み寄りができなければ解決は不可能である。しからば、どういう方法で国際世論というものを歩み寄らせるかということでございますが、これは一朝一夕になかなか実現できる問題ではない、かように考えております。
  110. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 おっしゃるとおりに、台北政権が介在をしているということが非常にやっかいな問題になっていると思うのですが、そこで、これは政府委員のほうにお尋ねしますが、台湾政府は現在一体この常任理事国として国連でどういう機能を果たしているのか。少し最近の活動状況等を説明をしながら詳しく御説明を願いたいと思います。
  111. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 従来どおり安保理事会常任理事国として活動しておりますけれども、格別特に国府が主導権を持ってやっているというような問題はございません。従来どおりのことでやっております。
  112. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 安保理事会においてはどういう活動をしているのですか。
  113. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 安保理事会自体の活動常任理事国として参加しているわけでございまして、特別に国府がきわ立ったことをしているということはございません。
  114. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、社会経済理事会においてはどうなんですか。
  115. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 先ほど申しましたように、現在メンバーでございません。入っておりません。
  116. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 入っておりませんね。常任理事国でありながら理事会にも入っていないというのはどういうことなんですか、安保理事会常任理事国でありながら。
  117. 滝川正久

    説明員滝川正久君) これは必要な数が整いませんで、当選しなかったわけでございます。
  118. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 選挙に落ちるような常任理事国であるわけですから、すでに常任理事国としての、何と言いますか、資格を失っているものだとも思うのですが、そういう意味で、もう重要なメンバーとしての資格を失っているので、そういうものとして扱いながら問題を処理する、円滑に。外務大臣のことばで言えば円滑にでしょうが、あれにかわって中華人民共和国が出てくることを処理すべき時期であり段階であると思いますが、これは外務大臣にお尋ねしますが、どうなんですか。
  119. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) まあ、その経済社会理事会理事国の推薦が得られなかったという一事をもって問題を論ずるわけにはいかぬと思うのであります。いずれにいたしましても、極東の現状に非常に変更を加えることでありまして、これがひいては世界全体の平和あるいは安定というものに重大な影響を与える問題でありまして、各国がこれらについて十分の確信を得るということがまず何よりも大事である、そのためにどういう努力をすべきかというようなことになりますと、これはきわめて多岐な問題であると思うのであります。ただいまは号、ういう機運がまだ十分に起こっておらない、この現状ではきわめて困難である、こう考えております。
  120. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 キリ一葉落ちて秋を知るということばがありますが、まさに理事になれなかったことは、そういう意味で斜陽を意味する非常に重大な意味を持つものだと思うのですが、これを外務大臣みたように軽く評価することは非常な間違いじゃないか、もう少しその点は深刻にお考えを願いたいと思う。  それならば、国連平和維持に関する特別委員会ですね、これの今日までの活動状況と今後の成果の見通し、そういうものをどういうふうにごらんになるか、これは政府委員に。
  121. 滝川正久

    説明員滝川正久君) すでに大臣から概要お話がございましたが、平和維持活動委員会のまず目的でございますが、国連平和維持活動に関しまして、これは現在、過去、将来、あらゆる問題をいろいろな角度から検討していく、そうして現在平和維持活動が御承知のとおり麻痺状態になっておりますので、これをどういう方式でやったらいいかということが一番問題でございます。これに関連しまして経費分担の方式をどうするかというような問題もあるわけでございまして、これは第十九総会が終わりました最後の日にできました決議によって、すでに活動を開始しております。中国を除きまして常任理事国四、西欧七、アジア六、アフリカ六、ラ米五、東欧五という配分でございますが、日本ももちろん入っております。すでにおもな国がいろいろ意見を述べ合っておりますし、これに関連しまして事務総長もいろいろなあっせん案を出しております。それで問題点の一番大きいところは、先ほど申しました平和維持活動の方式でございますが、憲章の規定するとおりに、安保が第一次責任を持つから、安保でやれという意見もございますが、同時に、拒否権のために、しかも五大国が意見を一致しない問題が多いために拒否権が乱用され、事実上安保というものが動かないというところから、先ほどお話のございました平和結集決議——あれは臨時のものでございますが——あれを恒久化してやっていったらどうだろうという案も出ております。それに関連しまして、従来の総会でやりました平和維持活動の経費についてこれは払いたくないという国もございますし、これは義務的に払うべきものだという国もございます。すでに相当の滞納額がございますので、過去の問題としてのこの滞納額をいかに処理するか、これがきまりませんと、二十総会も十九総会と同じようなことになりますので、さしあたり、まずこの滞納額をどうするかという問題が焦眉の問題でございます。しかしながら、この平和維持活動の目的はもっと遠いところ、あるいは高いところにございまして、国連平和維持活動はどういう方式でやるか、どういう機関がやるか、安保総会との機能の調整はどうするかという点でございまして、先ほどからいろんな拒否権の問題が出ておりますけれども、すべて平和維持活動に関連のある問題でございまして、この成り行きが非常に重要であると思ってわれわれも注視しておりますし、必要な訓令を出し、また、省内でもあらゆる機会に検討をやっておる次第でございます。
  122. 森元治郎

    森元治郎君 新聞記者が記事を書くときのような話で、評論家的なお話で非常に残念だと思う、もっと内容がなくちゃ。きわめて重要なことでございますのでというのは、新聞記者が書くので……。  そこでいまお話の中で、平和維持活動は、いま何か総会中心主義のほうに移行するようなお話だが、アメリカは、なるほど最初は安保理事会でやってきたが、これじゃ動かないというので平和結集会議をやったらうまくいった、今度は総会だ。ところが、最近は加盟国が多くなるにつれて、アメリカ反対の国も小さい国々に多くなってくると、こればかりでもいけない。私はアメリカは、あなたのおっしゃるように、アメリカの場合ですよ、総会中心主義安保理事会の併用、いろいろときによりどっちか使うと、ドゴールはもう安保理事会一本、ソビエトも安保理事会一本とはっきりしておる、こういう傾向と判断するのですが、違いますか。
  123. 滝川正久

    説明員滝川正久君) お示しの、ただいま申し上げましたのは概要を申し上げたので、あまり時間をとってもまたと思いましたので、こまかい点に入れなかったわけでございますが、いま森先生のおっしゃいましたフランス態度ソ連態度は大体そのとおりだと思います。アメリカ態度につきましては、これは平和結集決議以来の態度を持続しております。もとよりアメリカといえども安保理事会の権能を否定しておるわけでございませんで、憲章の規定にありますように、平和維持についての国連の責任を負う機関はもとより安保理事会である、第一次的責任は安保理事会にあることは当然初めから認めておるわけでございます。ただ、実際問題としまして、安保理事会が動かないという事態が非常に多いわけでございます。ことに重要な問題につきまして五大国の意見の一致が得られないという事態がございますので、そうかといいまして、安保が動かないから国連として平和活動を放てきするということはできない。そこで現在、総会——従来ともかなりの実績を示しております総会を動かしてやりたいという考えは、いまでも変わっていないと思います。ただ、まあ御指摘のように、加盟国の数が非常に多くなりまして、何でもかんでも数だけでやってもらっちゃ困るという問題もあるいは起こるかもしれません。しかし、公式にはアメリカは、どういう意味か知りませんが、先生がおっしゃった安保総会を併用するというようなことを言っておるわけではなくて、安保の責任は認めるけれども、それが動かない場合におきましては、総会をして平和維持活動をやらせるという態度を一貫してとっておる次第でございます。
  124. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そこで、いま問題に出ました総会であるとか、安保理事会であるとか、平和統合の機関であるとか、あるいは平和維持活動特別委員会、こういうものをあらためて国連憲章の組織して組織的な改革をやるという必要が出てくると思うのですが、これらに対しては根本的な改革の一つとして政府はお考えになっているかどうか、これは大臣にお尋ねしたい。
  125. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 特別委員会は、まずさしあたりの問題を打開するためにというのでつくられたようでございますけれども、しかし、大体の情勢からいいますと、かような委員会が長く常置されて、そして国連機能を次から次へと強化することについて具体的な検討を進めていくということは必要だろうと思うのでございます。おそらくそのまま二十総会以降においても存置されるのではないか、また、日本といたしましてもさような主張をいたしたいと考えております。
  126. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうしますと、それらの特別活動であるとか、特別機関の活動であるとか、そういうものを制度的に確立をする。したがって、そういうものとして国連憲章改正をする。制度改正、機構的改正をするというようなことも必要になってくると思うのですが、それらの点をひとつ外務省としては十分に御検討になって、少し具体的な案を、一つだけでなくてもいいのですが、お示し願って、もう少し具体的に討議ができるように、審議ができるようにしたいものだと思いますが、どうでしょう。
  127. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 事務的な点からお答え申し上げます。  先ほど平和維持特別委員会が場合によっては将来に続くかもしれないと大臣おっしゃられていましたが、それはそのとおりでございますが、これは総会決議によってできましたものでございまして、その任務は従来ある機関、安保なり総会をいかにして動かすかということでございまして、それが安保なり総会と並ぶような平和維持活動をやる機関ではないわけでございます。したがって、その委員会の勧告をまた総会に出すわけでございますが、総会でこれは採択いたしました場合には、普通であれば、その憲章改正を必要としない現存の機関をどういうふうに動かすかということでございます。直ちにその平和維持特別委員会というような、別途の安保とか総会に並ぶような機関をつくるというような意味ではございません。
  128. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 一問だけ簡単にお尋ねします。  いま日本として軍縮あるいは軍備管理の問題について発言し得るのは国連の場のみですね。その国連においての日本発言というもの、それについて、よほどやはりこれは研究をした上で発言しないというと、権威がないばかりでなく、その発言の内容いかんによっては恥ずかしいような、笑われるようなことになる結果もあると思う。そこで私がこれから質問したいと思うのは、そういうことを前置きにしてお尋ねするのですが、軍縮あるいは軍備管理の中で、その目標から見て一番大事なのは何といったって核兵器の使用の問題ですよ。使用禁止の問題ですよ。核兵器の使用即核戦争だから、何といったってこれが一番大事な柱ですよ。少なくともこの核兵器の使用の禁止の問題についてぐらいはよほど研究をして発言しなければいかぬ。まずこの問題について、核兵器の使用禁止の問題についての基本的な態度は、従来とってきている態度はきわめて消極的ですが、しかし、私がここで言うのは、消極的態度というのも一つの方針だから、それ自体はいまここでどうこう言わない。言わないが、消極的の態度をとるならとるで、その理由づけというものは笑われないようなものでなくちゃいかぬと思う。いままであそこで発言しているのを見るというと、核兵器の使用の問題に消極的の態度をとっておるが、その理由づけは、この核兵器の使用の禁止の問題というものは、これは核兵器の生産やあるいは貯蔵の漸進的の削減の問題と関連すると言って、あるいは核兵器の実験問題と関連すると言って、そういうものをからませて、このからませているこのからませ方ですがね、いま言ったようなそういうのとからませるというのは一体どういうわけですか。私には理解できない。
  129. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 非常に重要な問題で、私から答えるのもどうかと思いますが、すでに、いまもおっしゃいました国連軍縮委員会で三、四日前にわがほうの態度を松井常駐代表が発言をされまして、いまお手元に、全部そろっておりませんが、お配りしたわけでございます。それで、この中で、まあおもな点が出ておりますのでちょっと……
  130. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 私の質問にだけ答えてください。こういうのは要らんですよ。いままで政府が正式に政府の見解としても国連事務総長に出しておるし、また、あそこで国連の代表が発言しているその内容をぼくはいま引用したのだからその点だけ。
  131. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 核兵器使用を禁止するということを直接言ったことはありません。
  132. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それは答弁にならん。私の質問に答えていないじゃないか。私はだ、核兵器の使用禁止の問題は、核兵器の生産やあるいは貯蔵の漸進的削減やあるいは核実験禁止の問題と関連があるということを根拠にして立論しておるから、一体それはどういうわけだと。
  133. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 詳しいいきさつを私はちょっと存じませんですけれども、この問題は一番重要問題でございまして、核兵器使用禁止に至るまでにはいろんな段階があるべきだというのが御承知のとおりわがほうの態度でございまして、と申しますのは、ただ直ちにいま核兵器使用禁止を申しましても、これはおそらく実際に核兵器を使用いたしております、保有しておる国が全部賛成しましてそういう協定に達するという見通しはまずない。力の均衡ということを考えながら、いわゆる十八カ国委員会……
  134. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 そんなことを質問しているのじゃないから、質問に答えなさい。答えられなければ答えられないと言ったらいい。そんなことに時間を費やす必要ないですよ。そんなことを尋ねているのじゃない。
  135. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 あらためて質問してください。重要な問題だから。
  136. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 いま二回も繰り返して質問しているのです。その関連事項の選定をそこにとったのはどういうわけかということを——私にはこれは理解できない。
  137. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 一番重要なポイントだといろことに関連さしたのです。
  138. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 冗談じゃありませんよ。これが、この核兵器使用の問題はですよ、そのとき、他の何かのことにからませる、関連せしめるというならば、その関連事項の前提はほかのところに求めるべきじゃないですか。いまのようなところに、いま言ったような点に求めるのは、私には全然理解できない、これは。まだ、これがたとえば通常兵力の削減の問題と関連があると言うならば、その消極的態度はそれとしてまだ話はわかる、それで。それはわかる。あるいはこれをただ単に一般的の軍備管理と関連があると言うなら、これも一つの言い方として私はわかる。しかるに、核兵器の生産や貯蔵の削減と関連があるなんて、そんなのは軍事理論のイロハに属することじゃないですか。冗談じゃないですよ。そんな珍妙な議論がありますか。こういうことをああいう場で言うことは、おそらくはかの国の代表も奇異の感じを持っただろうと思うから尋ねている。
  139. 滝川正久

    説明員滝川正久君) お説ごもっともでございます。それで生産禁止や貯蔵の漸進的削減にからませていることは事実でございますが、同時に、先生の御指摘になりました……
  140. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 同時じゃない。その点は主要な事項として特にあげている。それがおかしい。それがほかの一般的の管理とただ単に言っているなら、それはそれとして話はわかると思うのです。
  141. 滝川正久

    説明員滝川正久君) 先生のおっしゃている点ももちろん入れております。
  142. 杉原荒太

    ○杉原荒太君 それを入れたこと自体がおかしいと私は言っている。実におかしい。そんなのは笑われますよ。要するに、今後外務省でももう少し勉強してやっていく必要があるということだ。
  143. 佐藤尚武

    佐藤尚武君 先ほど佐多委員の指摘された中に、中国経済社会理事会議席を持ってないという点を指摘されたと思うのですが、私も実はその問題についてどういうわけで中国議席を持たないのであるかということについて疑問を持っておったのであります。しかし、詳しく調べる機会を持たなかったのですが、偶然、外務省から配付された書類を見ているうちに、特別の何か事情があるように見受けるので、ちょっとその点に関して簡単に説明を添えておきたいと思うのです。  これは五月十四日の日付で「国連における両理事会議席増加問題審議の概要」という書類が回ってきておりますが、その中でアメリカイギリス中国、ソビエトなどが投票の際におのおのその投票の理由説明しておりますが、中国経済社会理事会に関する決議には参加しておりません。その理由としてここに説明を行なっております。短いから読んでみますと、「安保常任理事国は、すべて経社理事会に常時席を有すべき慣行にも拘らず、中国は現在この席を有していない。これは中国がその席をかつてアフリカ諸国の利益のために譲渡した結果であるが、議席増加後には事情が異なるので、この場合の議席回復についての説明を求めたい。もし議席回復についての保証がない場合には中国は投票に参加しない。」、こういったような説明がついたもののように見受けられるのであって、これか読んでみるというと、中国議席を現に持っていないのは、いつのことか存じませんけれどもアフリカ・グループの利益のためにこれを譲ったからだ、こういうことになっておるのです。ですから、経済社会理事会における中国の地位ということについては、もう少し研究をする必要があるように思われますので、ちょっとそれだけ注意を喚起しておきたいと存じます。
  144. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 速記をとめて。   〔速記中止〕
  145. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 速記を始めて。  本件に関する質疑は一応この程度にとどめます。     —————————————
  146. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 次に、日本国とグレート・ブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約の締結について承認を求めるの件を議題といたします。  これより質疑に入ります。質疑のある方は、順次御発言を願います。
  147. 森元治郎

    森元治郎君 まず第一に、一番問題になりそうなのが第二十四条(1)項(b)だと思うので、これを説明願いたいと思います。この「国民的服役義務」とはどういうことか。「国民の身体検査を行なうこと。」、この身体検査はどういうことか。それから、領事官は国民の身体検査を行なうそういう「権利を有する。」「権利を有する。」ということはどういうことか、あわせて一ぺんにひとつ御説明願いたい。
  148. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 「国民的服役義務」と申しますのは、徴兵その他の義務のように、国民全体にひとしく課される役務、こういう趣旨でございます。それから「身体検査」の点につきましては、これは領事官自身がこれを執行する趣旨ではございませんで、派遣国の国民が国民的服役義務に関連しまして身体検査を受けるために医師のあっせん等を行なう、そういう便宜を供与することの意味でございます。
  149. 森元治郎

    森元治郎君 戦前、日本が海外におる者の徴兵検査というか、徴兵に関して身体検査をやるとかそういうことはどういうふうになっていましたか。
  150. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 戦前は、外国に行きますというと、徴兵義務がその間は免れると申しますか、日本政府としては何ら手が及ばなくなっていたという状態だったと思います。
  151. 森元治郎

    森元治郎君 だいぶ衆議院でも問題になったかと思うんですが、こういうことが今度椎名大臣が行かれて結んだ日韓基本条約の第一条に、日本の領事館を設置する。そうなれば日英、その前の日米領事条約のパターンに従って、やがて日韓領事条約も結ばれるんじゃないか、こういうことが一応十分想像されるんですが、その点ほどうですか。
  152. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 領事館を設置するということに基本条約にいたしておりますけれども、これは必ずしも領事条約を締結するという意味までを含んでおらないのでございまして、領事条約を締結するというような考えは持っておらないのでございます。
  153. 森元治郎

    森元治郎君 もし相手国——韓国から、ひとつ、あなたが結んでいるアメリカイギリスと同じような領事条約を結ぶことがたいへん必要だと、あなたのほうの説明にも、在留民も非常に多い、ことに韓国は日本においては数十万の韓国籍を取るであろうと思われる韓国人がいるとなれば、条約上の権利として領事を日本で楽に働かせたいということになるだろうと思う。したがって、あなたがやったようなあの型に従って私のほうも結びたいと言ってきたときにはいかがなされますか。
  154. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) まず第一に、その領事条約というものは、特に領事の特権免除関係をあまりはっきり認めない英米法系の国の場合に必要とされるということでございまして、韓国の場合には、特にその必要を認めておらないわけでございますが、かりにそういうことの申し出があったとしましても、これはその派遣国の国民の便宜のために設けた制度でございまして、したがいまして、本国まで帰る距離がそれほどもないとかいうようなことも当然考慮に入れられるべきことでございます。  それから、先ほど、領事官の権利としてとかいうようなことを仰せになりましたけれども、これはそういう領事官の権限とかいう観念は全然ないのでございまして、そういう通知に応じない国民に対しては何ら施す手はないわけです。何ら強制力は持っておりません。ただ、国民が自発的に身体検査を受けようというときに、わざわざ遠い本国まで帰らないでも済むように便宜を供与するというだけのことでございます。そこには領事官とその派遣国の国民との間の権限関係というような、公権力行使みたいな関係はないのでございます。
  155. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、韓国は何系なんですか。英米法でなければ日本系か、あなたの法律の頭では。
  156. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 英米法系以外ということでございまして、普通のことばで言えば、大陸系。大陸系というのは、ヨーロッパ大陸系と考えたらフランス、ドイツ、そういうところでございます。
  157. 森元治郎

    森元治郎君 大臣から承りたいが、いまは専門家の政府委員の御答弁でありますが、韓国からこのようなことがもし申し込まれたらいかがなされますか。また、条約を結んだときには十分この点は含んで結ばれたと思うのだが、同じような型に領事条約を結びたいと……。
  158. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) どうもいまのところ、向こうはそういうことの必要を認めていないようでありますし、仮定の問題なんでございますが、そのときはそのときなりに考えてみたいと思います。
  159. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、政府委員との答弁がたいへん違うので、そのときはそのとき考えてみよう。ところが、いま政府委員のお話では、そういうことを結ぶことを考えることはない一たいへんな違いなんですが、それはどうですか。
  160. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 私が申し上げました趣旨は、日本側としてそういうものを締結する考えは現在持っておりませんということで、いまの先生の御質問は、先方から申し出があった場合にはどうするかという御質疑であったので、いまのようなお答えが出たわけでございます。その間に特別に食い違いはないと存じます。
  161. 森元治郎

    森元治郎君 そこで、それではあなたは、大臣はいまのところそういう考えはない、申し出があったときにはそのときに考える、こういうのでたいへん、不安心なのですが、こういうものはいまからもうやらないと言っても、政府の言う日韓国交回復ということになりますと、やはり文明国並みの型の条約関係を結びたいというふうに言ってくるのは当然だと思う。   〔委員長退席、理事井上清一君着席〕 ですから、いまのところといっても、これはなかなか不安心なんですが、あなたが韓国に行かれたときに、この点に関して合意議事録といいますか、何かそれを裏づけるようなお話し合いがありましたか。
  162. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 全然ありませんでした。
  163. 森元治郎

    森元治郎君 いまのところ結ぶ考えはないとおっしゃいまするが、三十九年の——去年の四月ごろ、藤崎政府委員の下の条約局参事官——政府委員は、向こうから申し出があったらば、領事条約を結ぶような場合にそのような申し出があったらば、けっこうだというような答弁をしておる。これは政府委員の行き過ぎか、間違いか、どちらか。異存はないか。
  164. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 私、どういうふうにお答えしたか、はっきり記憶しておりませんが……。
  165. 森元治郎

    森元治郎君 須之部参事官が……。
  166. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 私が申し上げていることと趣旨において違うようなことを申しているはずはないと存じます。
  167. 森元治郎

    森元治郎君 その「はず」というものは、何とでも「はず」になるので、それはまあ法律家らしい御答弁ではない政治的御答弁で、申し出があれば、この条項を領事条約を結ぶときに入れたいと向こうさんが言うならば異存はない。大臣は、そのときになって考える。たいへん違うのですが、大臣どちらがほんとうなんですか。それはあなたのわきにいて答弁を補佐した政府委員です。
  168. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) いろいろな、その御質問の趣旨によって、その御質問にぴったりするようなことをお答えしょうと思って、いろいろな側面から申し上げるので、いろいろ答弁の間に角度の相違ができてくるだろうと思うのでございますが、結局、まとめて、申し上げますというと、領事条約を結ぶという考えはない、その必要性もおそらく先方も認めないであろうと、これが一つ。それから第二に、その領事条約を結ぶという場合に、この身体検査に関する規定みたいなものを入れるかどうかという問題については、現実の必要、要するに便宜の供与でございますから、距離の関係とか、そういう現実の必要を考慮して決定されるべきことである、これが第二点だと思います。第三点として、かりに須之部参事官が仰せのようなことを言ったとしますれば、これは別に公権力を行使するとか、そういういかめしい関係でも何でもないのだから、かりに、まあほんとうの仮定の問題としてそういう規定が入ったとしても、別にどうという問題は起こらないじゃないかという、その二重、三重の仮定でお答えしたのじゃないかと思いますが、私もちょっとその場に居合わせませんので、はっきりしたことは申し上げられませんが、理論的に言えばそういうことになるかと思います。
  169. 森元治郎

    森元治郎君 先ほどの政府委員の御答弁では、距離が近い、地理的に現実的考慮を払う場合には、さようなことは申し出するだろうと、これは向こうのことですから、あるかないかはあなたの御答弁の範囲ではないわけですね。それを基礎に、われわれは、はいそうですかとは、これは引けないので、その点はどんなふうに考えますか。
  170. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) いまの第二点で申し上げましたことは、距離の関係等でそれほどの必要性も認められないから、日本としてアメリカイギリスの場合に、領事条約に入れたからといって、当然韓国の場合にその条項を入れることを容認しなくちゃならないという関係ではないであろう。向こうは言うかもしれません。これもまた仮定になりますけれども、   〔理事井上清一君退席、委員長着席〕 その場合に、日本はこういう例にとらわれないで、またケース・バイ・ケースで、その場の、その日韓関係について判断したらよろしいだろう、こういうことでございます。
  171. 森元治郎

    森元治郎君 いまのお話、少し変わってきて、領事条約をかりに結んでもと、初めは、領事条約は結ぶつもりはない、かりに結んでもと、だんだん変わってきたのだけれども、その点はどうですか。
  172. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 最初の答えだけでよろしいのでございますが、いままでいろいろ答弁をしているという仰せでございますので、そういう答弁はこういう関係からの御質疑に対してお答えしたものだろうという想像で申し上げているわけなんです。
  173. 森元治郎

    森元治郎君 この意味はよくわからないから、もう少し説明してもらいたいのは、二十四条の(1)は「領事官は、次のことを行なう権利を有する。」。そして徴兵検査で国民の身体検査をやるのだ。木国政府から派遣国に行っておる領事に対して命令が来て、そこに住んでおる派遣国籍を持った若者あるいは必要とする人間の徴兵検査を直接どこへ集めてやるのですか。だれかにさせる。これは説明をしてもらいたいのは、私が見ると、何か領事官がいて、何月何日、金君は日本のどこの連隊へ行けとか、どこの公会堂に集まれ、そして身体検査をし、おまえはからだが甲種だからひとつ韓国へ帰ってくれ、こういうようなことになるのか。向こうに兵役の法律もあるから、あるいは向こうの憲法は徴兵がもちろんあるのですから、二十歳以上四十五歳の身体強健な者でお医者さんの検査を受けてオーケーになった者は帰ってこい。それを領事館に集めてやるのですか。その間はどうなんですか。
  174. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) これは条文上は「派遣国の法令により必要とされるところに従い、」とございますので、向こうのきめることでございますが、おそらくだれか医師を指定しまして、イギリス人かオーストラリア人か知りませんが、神戸あたりに船員を見たりする医師がいるようでございますけれども、実際問題としては、そういうものを指定して、その医師の検査を受けるようにということになるのじゃなかろうかと存じます。
  175. 森元治郎

    森元治郎君 そうすると、たとえばお医者さんのあっせん、本国政府から身体検査しろと言われてやるのでしょうから、そのあっせんをするだけで、その人が韓国へ帰って兵役に入るその手続とか登録とか、そういうことは領事官の仕事じゃないのですか。
  176. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) ここにございますように、「通知を発し」、「届出を受理」するというようなことがいろいろあるわけでございます。したがいまして、その本人が自発的にそういうものに応ずる限りは、そういう必要な手続をとるすべての便宜が与えられるということでございます。
  177. 森元治郎

    森元治郎君 それじゃ、身体検査で持っていかれてしまうのはいやだ、これは本国政府からのきつい訓令で、兵役の問題ですから重大問題です。領事官は、逃げましたではこれは済まない。日本国警察の協力を求めて、金君、李君の何とか捜査に御協力願いたいと言われれば、その場合はどうなんですか。
  178. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) それはもうどうにもならないのでございまして、そのことは従来どおりでございます。ここで規定しておりますことは、単にそういう便宜の供与の道が開かれたということでございます。
  179. 羽生三七

    ○羽生三七君 大臣にちょっとお伺いしたいのですが、これと関連してですが、この前日ソ間の領事設置についてお尋ねしたことがあるのですが、まだ確定的ではないというお答えだけでしたが、だいぶ進んでおるようにも聞いておるんですが、どうですか。具体的に、場合によっては大阪と新潟とか、向こうはナホトカ、オデッサですか、かなり具体的に進んで、成文化して話しい合いをするようなところまで行っておるように聞いておるんですが、その間の事情を少し聞かしてください。
  180. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 設置の場所についてのお話でございますが、まだきまってないようです。
  181. 羽生三七

    ○羽生三七君 かなり進んでおるように聞いておるんですが、そうすると、それは憶測ですか。相当進んでおるんじゃないですか、実際問題として。
  182. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) 実際問題としては、進んでおりません。
  183. 森元治郎

    森元治郎君 大臣、こういうかりに日韓間で同じような領事条約に、この同じ日英の第二十四条第一項などのものがあるとすると、国内で徴兵検査のテストがあっても、日本が条約上の権利として領事官が動くということになりますと、しかも、それは人間が兵力に変わるのですから、それは韓国にどんどん帰るというような事態になると、やはり北のほうとかその他は大きな反響を呼んでむずかしいことになるような事態が想像されるのですが、いかがですか。これがもしあるとすれば。
  184. 椎名悦三郎

    国務大臣椎名悦三郎君) そうですな、すべてが想像でございますので、どうも御指摘のような事態になる場合もあるいはあるかもしれませんが、そうじゃない場合もあるだろう。必ずそうなるということは言えないと思います。
  185. 森元治郎

    森元治郎君 そのころ大臣が健康でおられるかどうかも、先の話だからわからないので、仮定々々で言えば。しかし、日韓という、ことに基本条約の第一条で相互に領事館を設置することになっておるのならば、主権国家として、しかも兵隊を当然持っている韓国は、当然人間の数がきまっているんですから、徴兵検査を海外にいる者からでも人的資源としてすみやかに仰ぎたいという事態は起こると思うので、非常な先例となるおそれもあるやにわれわれは危惧をするわけです。危惧までするなというのは、これはなかなかそこまで行きません。われわれとしては、隣のことですから、たいへん心配するわけで伺っておるんです。この前、日米領事条約があったときには、もちろん、韓国とのこういう基本条約第一条というような領事館設置の話はなかったのでまずまずでありましたが、こうなってまいりますと、この先例というのは、必ず韓国が、イギリスにこれだけやったのじゃないか、われわれとしてもこれだけはぜひ必要だと言われた場合に、なかなか政府としてもそれはいけないということは言えない。言えば、また大きな問題になると思うので、われわれ心配をしているわけです。
  186. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ちょっと関連しますが、先ほど条約局長は、第二十四条は領事官の公権力を規定するものじゃないというようなお話でしたが、この(1)によると、「領事官は、次のことを行なう権利を有する。」、非常に明瞭に規定してあるのですが、それはどういうことなんですか。
  187. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) なるほど日本文ではちょっと誤解されるおそれもあるかと存じますけれども、要するに、この「権利を有する。」というのは、日本国でそういう職務を行なうことを日本国が認める。日本国との関係においてはそれに文句を言わないという意味でございまして、この趣旨は英文ではわりにはっきり出ておりまして、シャル・ビー・エンタイトルド・ツーという表現になっております。
  188. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうするともっとそれを日本語に正確に訳すとどういうことですか。
  189. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 私もはっきりどういう表現が一番適当か申し上げかねますけれども、そういうようなことをやってもよろしいという意味であることは、この英文からはわりにはっきり出ていると思います。  それから、ついででございますが、「身体検査を行なうこと。」と日本語ではわりに簡単にやっておりますけれども、英文では、プロバイド・フォア・サッチ・メディカル・エグザミネーションズ、それのあっせんをするといいますか、そういう世話をするという意味のことがわりにはっきり出ておるのでございまして、ここの点も、どうも前からこういうふうにいたしておるものですから、こういうふうにやっておりますけれども、英文のほうがぴったり感じをあらわしているといつも考えております。
  190. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どうも、その御説明を聞いても、翻訳が適当でないのじゃないかという感じがします。少なくとも、条約局長の御意見によると、日本語としては正確でないようにとるのですが、そういうことも翻訳をやる場合に慎重にやるように、大臣、御注意を願いたい。  それから、日本領事条約を締結されている国はどことどこですか。
  191. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) アメリカ一国だけです。
  192. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本からイギリスに、領事としてどことどこに何人いるのか。逆にイギリスから日本にどことどこに何人出しているのか。
  193. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 日本側では、在ロンドン総領事館、これは大使館内に設置しておりますが、館員三名、いずれも大使館員と兼任でございます。香港総領事館、館員十六名。それから南ローデシアのソールズベリーの総領事館、館員三名、これが本人でございまして、ほかに名誉総領事がイギリスのリバプールに一名ございます。  それからイギリス側の設置状況としましては、在京大使館領事部、これは館員四名。横浜領事館、館員二名。大阪・神戸総領事館、これは一つでございますが、館員は大阪事務所が四名、神戸事務所が一名。それから門司の領事代理事務所、館員一名。そのほかに名古屋に名誉副領事一名がおります。
  194. 森元治郎

    森元治郎君 五十余年もの聞こうやって日英間では、こんな条約を結ばないできて、急に何だか補足説明か何かのときには、旅行者をまぜるとロンドンでは何千人も来るからたいへんだという御説明があったようだが、いままでどおりでいいんじゃないかね。何か便宜供与がたいへん得になるという能書きが書いてあったけれども、それほどのこともない。五十余年もの間、大きな既定事実といいますか、条約みたいなものだ。何でいまごろこんなことをやるのか。
  195. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 前に御説明いたしましたことのほかに、一般に国際条約といたしましても、いままで慣習法にゆだねられてきたことが法典化される。たとえば外交特権とか、領事特権とかいうものはそうでございましたけれども、それもだんだん国際法委員会等で研究した結果を法典化するという傾向があるわけでございますが、それと同様に、二国間でも、いままで一般国際法、国際慣習法にゆだねてきたことを明確に条約の形で統一しようじゃないかということが広く行なわれることになってきた、そういう傾向の一つのあらわれということもあるだろうと思います。
  196. 森元治郎

    森元治郎君 やはり一種の官僚化だな。一種の官僚化だと思うのだ。そこでイギリスもそうだよ。戦前の領事というのはたいへん偉くて、それは殿様みたいなものだったが、近ごろは総領事館といったってお客さんはだれも来ません、日本人。それを変にこのごろ領事館、領事館と言うのは官僚主義。仕事がないはずだ、戦前から見るとぐっと減ったのだから、それは帝国憲法と新憲法の相違で。これはやることもないのにひまに飽かせてシャル・ビー・エンタイトルドというようなことを言うから、これはわれわれはあまり賛成しないのだな。
  197. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 イギリスが結んでいる領事条約はどことどこですか。
  198. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 十二カ国ございまして、ノルウエー、アメリカフランス、スエーデン、ギリシア、メキシコ、イタリア、西ドイツ、オーストリア、ベルギー、スペイン、デンマーク、そういうところでございます。それで現在ユーゴスラビア及びソ連領事条約の締結の交渉をいたしております。
  199. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 イギリスがそれらの国と結んだのは最近のことですか、これはほかの国とはすでに前からあったのですか。
  200. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) すべて戦後でございます。
  201. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると、イギリスがいまの諸国と結んでいる領事条約と日英の領事条約との主要な相違点はどこか。
  202. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 特に主要な相違点はないように存じております。
  203. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 ない。
  204. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) はい。
  205. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それに準じてやっている。  それじゃ、日米の領事条約と日英の領事条約との相違点はどこですか。
  206. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) あまり大きな相違点はないようでございますが、細部の相違点といたしましては、役務職員の地位、重罪の範囲、領事の任命、管轄区域決定についての接受国側の発言権、外交官が領事職務を行なう場合の特権、領事館敷地内の接受国官憲による立ち入り権、領事封印袋の開披要求及び返送権、そういうようなところが少しずつ違っております。
  207. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 どう違っておりますか、少しずつ。全部通じてでいいです、ひとつ。
  208. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 第一の役務職員の地位につきましては、日米間のものは、領事館職員の中に含まれており、したがって、若干の特権を条約上認められておるわけでございますが、日英間の条約では、領事館職員の中に含まれておりません。したがって、何らの特権も条約上認められていないと、こういうことでございます。
  209. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから、よく領事に関する一般条約ということがいわれるのですが、これは一般条約というのはどういうものですか。それから、それとこの日英の条約との関係はどうなるのですか。
  210. 藤崎萬里

    政府委員藤崎萬里君) 一般条約と申しますのは、さっきちょっと御説明いたしました国際法委員会というのが国際連合にできております。これは国際法の専門家によって構成されておる委員会でございますが、そこでいろんな国際法の法典化の仕事をやっておりまして、ここで研究してつくった草案をもとにして、今度は各国の代表が集まった国際会議をやる。ウィーンで外交官に関する条約をつくり、また引き続いて領事官に関する条約をつくったわけでございます。これのことを言っておるわけでございますが、これは何と申しますか、最大公約数をとったような条約なわけでございまして、いろんな国がいろんな意見を述べて、最後には結局十分に満足行かないので、まだ領事に関する条約についてはイギリス日本も入っておらないわけでございます。入ったらそれで規律できるわけでございますけれども、結局、それを待つよりは、日英間で特に合意したほうが手っとり早いということで、今度の条約をつくったわけでございます。
  211. 小柳牧衞

    委員長小柳牧衞君) 暫時休憩いたします。    午後六時二分休憩   〔休憩後開会に至らなかった〕