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1965-02-26 第48回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十六日(金曜日)    午前十時三分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       井村 重雄君    大原  亨君       加藤 清二君    高田 富之君    兼務 上林山榮吉君 兼務 稻村 隆一君    兼務 小林  進君 兼務 華山 親義君    兼務 村山 喜一君 兼務 横路 節雄君    兼務 吉村 吉雄君 兼務 玉置 一徳君  出席国務大臣         厚 生 大 臣 神田  博君         労 働 大 臣 石田 博英君         自 治 大 臣 吉武 恵市君  出席政府委員         総理府事務官         (賞勲局長)  岩倉 規夫君         厚生事務官         (大臣官房長) 梅本 純正君         厚生事務官         (大臣官房会計         課長)     戸澤 政方君         厚 生 技 官         (医務局長)  尾崎 嘉篤君         厚生事務官         (薬務局長)  熊崎 正夫君         厚生事務官         (児童家庭局         長)      竹下 精紀君         厚生事務官         (援護局長)  鈴村 信吾君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (大臣官房会計         課長)     岡部 實夫君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         自治事務官         (大臣官房長) 松島 五郎君         自治事務官         (大臣官房会計         課長)     芦田 一良君         自治事務官         (行政局長)  佐久間 彊君         自治事務官         (選挙局長)  長野 士郎君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君         消防庁長官   松村 清之君         消防庁次長   川合  武君  分科員外出席者         総理府事務官         (内閣総理大臣         官房審議室長) 松永  勇君         警  視  長         (警察庁保安局         保安課長)   海江田鶴造君         警  視  長         (警察庁交通局         交通企画課長) 宮崎 清文君         大蔵事務官         (主計官)   平井 廸郎君         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君     ————————————— 二月二十六日  第一分科員小林進君、第二分科員稻村隆一君、  華山親義君、村山喜一君、横路節雄君、吉村吉  雄君、第四分科員玉置一徳君及び第五分科員上  林山榮吉君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算厚生省労働省及  び自治省所管  昭和四十年度特別会計予算厚生省労働省及  び自治省所管      ————◇—————
  2. 相川勝六

    相川主査 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算及び昭和四十年度特別会計予算厚生省所管を議題といたします。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑持ち時間は一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代で分科員となられた方は三十分程度にとどめることになっております。質疑者がたくさんでございますから何とぞ右御協力を願います。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に要領よく、簡潔に行なわれますよう、特に御注意申し上げます。  稻村隆一君。
  3. 稻村隆一

    稻村分科員 実は私麻薬問題で厚生大臣並びにその他の取り締まり当局に対してお尋ねをしたいのですが、私は麻薬専門家でも何でもないのですが、かつて麻薬患者の世話を偶然のことでやったことがあります。実におそるべきものであるということを考えまして、三十七年の二月に、やはりこの予算委員会分科会において法務大臣並びに厚生省当局に、どうも取り締まりのやり方がなまぬるいじゃないか、法規が少し軽いのじゃないか、予算は少ないのじゃないかということをお尋ねしたのです。その後罰則も改正されて、無期まで刑期を強化した、それからまた予算もだいぶふえまして、いろいろ取り締まりに対して万全の措置当局としては講じておられるようでありまして、しかもだいぶ効果があがっているという話を聞いて、喜びにたえない次第なのでありますが、最近の麻薬取り締まり状況、それから違反者検挙数処分数とか、その他更生保護指導、そういうふうなことについて現在はどうなっているか、できるだけ詳細にひとつ御説明を願いたいと思っております。
  4. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 麻薬取締法の大改正をいたしましたのが三十八年の七月でございます。従来最高刑懲役十年、罰金五十万円を、終身懲役及び罰金五百万円に改めまして、また麻薬中毒者医療施設最高六カ月間措置入院させるという制度を新たに開いたわけでございます。  改正後の麻薬取り締まり状況推移でございますが、改正当時は大体四万人と推定されておりました麻薬中毒者は、現在一万ないし一万五千人に減少しております。しかし現在でも毎年千五百人程度中毒者が新しく発見されておるような状況でございます。  麻薬事犯につきましては、昭和三十八年約二千七百件、検察庁に送致されましたもの三千百人を最高にいたしまして、現在では大体半分、千三百件程度に減少しております。それから押収ヘロインも、三十七年の約八キロを最高にいたしまして、現在は五分の一程度、一キロ六百グラムまでに減少いたしました。したがいまして、密売ヘロイン価格も当時に比べまして——当時は三年前約六百円でございましたが、現在では五千円程度になりました。非常に取り締まりが厳重になりましたために、ヘロインやみ価格も相当上がっておるというようなことで、きわめて入手困難なような状況になっております。現在のような取り締まり方法でやってまいりますと、私どもは大体ここ五年の間に戦前の程度取り締まりができるのではなかろうかという期待をいたしておるわけでございます。  なお麻薬中毒者医療施設状況は、大体七百床程度整備をいたしたわけでございますが、取り締まりが非常に厳重になりましたと同時に非常に徹底してまいりまして、現在は中毒者の数が少なくなって百五十名程度を収容しておるという程度でざごいます。  以上簡単に御報告申し上げます。
  5. 稻村隆一

    稻村分科員 それはたいへんどうもけっこうな話でありまして、私は、取り締まりが非常に強化をしまして減っているということは、いまの御説明でよくわかるわけであります。非常にけっこうなことだと思うのでありますが、それでも私はいろいろな点においてまだ多くの杞憂を持っておるわけであります。その点についてお尋ねをしたいと思うのですが、まず暴力団麻薬関係ですが、三十六年の警察庁統計によりますと、検挙数の三〇%が暴力団関係者で、それらの所属する暴力団が百十余にのぼっていたわけです。そういう事態に対する対策は一体どうしてきたかということ、検挙実態の中で暴力団が背後に存在するという事態が逐次明らかになってきているようにも聞いておりますが、それに対する有効な対策をどういうふうに講じてきたか、こういう点をひとつお聞きしたいと思っております。
  6. 海江田鶴造

    海江田説明員 御質問に対しまして警察庁のほうからお答えいたします。  麻薬犯罪の中で占めまする暴力団の比率は、さっきおっしゃいましたとおり三十六年、七年ごろは非常に多く暴力団麻薬犯罪に加わっておりまして、三十六年度が百十四団体、三十七年度が百四十団体、三十八年度が二百十八団体と非常な増加を示しておったのでありますが、昨年度、昭和三十九年度中におきまする暴力団麻薬犯罪関係しておった団体数は百三十五団体と減少いたしております。一番暴力団麻薬犯罪に関与しておることの多かったのは三十七年と三十八年の両年でありまして、それからは逐次暴力団の介入の数が減ってきておるのが実情でございます。昨年昭和三十九年中に検挙された暴力団関係者は、一昨年が七百六十二名であったのに比べまして、昨年は三百十三名と半減いたしております。ただこの三百十三名という麻薬犯罪の総検挙人員の中では、約一八%でございますけれども、いわゆる麻薬密売関係犯罪でつかまった者の中では約半数を占めております。昨年度は暴力団関係者検挙は七百六十二名でありまして、この七百六十二名は一昨年の麻薬密売検挙されたいわける密売検挙の中の八割を占めておるわけであります。このように検挙率は、暴力団麻薬密売組織に占める率は非常に高かったのでありますが、この率も昨年はかなり減ってきておる、検挙される暴力団の数も減ってきておるというのが実情でございまして、その理由は、昨年、一昨年あるいは一昨々年と非常に暴力団に重点を置いた麻薬取り締まり効果を上げてきたせいであろうと考えておる次第であります。
  7. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 私は、いま厚生省の方が、麻薬取り締まり強化のために非常に効果をあげておる、この状態ではもう絶滅も近いのであるというふうな御答弁をされておりますが、そこでほんとう中毒患者が減っておるかどうか、こういう点について心配するわけなんです。しかし麻薬関係事犯実態は、わずか三年で検挙数推移厚生省の推定する常用者中毒患者の激減という楽観がほんとうに許されるかどうか、確実な根拠はどこにあるかということを非常に疑問に思っておるのです。麻薬撲滅運動に長い間貢献してきておりました厚生省麻薬対策推進委員会菅原通済会長とも実はきのう電話でお話しして聞いたのですが、取り締まり当局実態は好転しているといっているのは、世論の盛り上がりをバックにして取り締まり関係予算が増加された事情があるために、実情以上に好転を強調している点があるのではないか、その証拠に、世論が盛り上がる前にもやはり常用者中毒患者の数を少なく推定していたという事実がある、こういうことを言っておられました。この点に対しまして厚生省のお考えをお聞きしたいと思っておるのであります。
  8. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 先生のお説のとおり、私どもも先ほど申しました数字によりまして、新しい通報が、三十九年の一月から十二月まで届け出、通報が千二百ございまして、そのうち措置入院したのが先ほど申しましたように百五十六という数字になっておりまして、これは私ども行政報告でもって把握した数字でございます。ただ菅原先生が非常に心配しておられる点も私どもはよくわかるのでございますが、現在麻薬犯罪といいますか、そういったものが非常に少なくなったという陰には、やはり犯罪自体が非常に巧妙化してきておる、それでむしろ都市の中心部から周辺のほうに移動しつつあるのではないかという、これは推定でございます。それから中毒者も現実には法改正前には相当おりましたのが、麻薬入手されないために、たとえば従来非常に多かったという町の売春その他の方々も、事実上の実態としましては、やみ価格が高いためにそれが入手できない、したがいまして麻薬中毒者でなくなっておるというような実態方々にあらわれておりまして、とにかく私ども麻薬取締官の目にあらわれる麻薬犯罪並びに中毒者というものは、先ほど数字は申し上げましたように非常に激減しておるというのがこれは偽らないところでございまして、私ども数字予算上その他の関係で操作しておるというようなことは絶対いたしておりません。
  9. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 むろんそれは厚生省としてはそういうふうないいかげんな数字を発表しているとは絶対思っておりません。しかし実際統計にあらわれないものが最近の傾向ではないか。いまもお話しのように、東京、横浜大阪神戸北九州等犯罪は減少するように見えても、今度ほかのほうに、いなかのほうに全国的に分散していく傾向があるのじゃないか、そういう点はなかなか統計にあらわれないのじゃないかと思うのです。麻薬取締法麻薬関係違反者職業別分類について、船員職業とする者が三十八年の六人から三十九年は三十四人にふえている。これが重大問題なんです。この点については厚生省の五十嵐さんも専門雑誌の「薬局」という特集号に論文を書いております。麻薬密輸入事犯の最近の傾向について「密輸入地点が変わってきた。従来神戸大阪横浜などの港湾において密輸入が行なわれていたが、最近では鉄鉱石鉄屑、農産物などを積載した船舶が利用され、かつそれらの物資を処理する工場の近くの港、たとえば八幡とか若松などで、あまり取り締まりが厳重でないところが利用されている。」つまり、いままで客船をしばしば利用したのが、客船を利用しなくなって貨物船を利用している。最近は、密輸入に利用される船舶はほとんど貨物船だ。つまり密輸入を行なう者は船員が多いが、これは比較的隠匿が可能である貨物船を使う、こういう傾向が多くなっておる。それからまた密輸ルートは中小の卸が多くなって、ピラミッド型の中底辺が膨張するなど、複雑多岐となっておる。密売の手口は密売所を分散、移動し、取引は深夜を利用するようになっておる。それから隠匿場所は駅の荷物一時預かり所、共同便所、他人の家などを利用する。またその場所を常に移動している。相当巧妙になっておるわけです。しかもヘロインの品質が低下してきた。ヘロイン末端価格が高くなってきた。つまり麻薬禍地域地方にも広まっておるのじゃないかというふうに言われておりますが、たとえば厚生省統計によりましても、三十九年度で、中毒地域分類別では、北海道、東北で四五・八%に上がっているわけです。しかもその麻薬違反で法人が三件以上もあげられておる。こういうふうに非常に巧妙になって、巧妙というよりも地方に分散して統計上見えない、こういうふうになっていると私は思うのであって、表面はいま厚生省説明のとおりでしょうけれども、実際にはそう簡単に麻薬の売買が減っているとは考えられないのですが、こういう点はいかがでしょうか。
  10. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 御指摘のような節が各地方に見られるということは、私ども情報としてこれをキャッチいたしておりまして、先生のおっしゃっておられることは私どもも十分予測して、取り締まり体制強化をいたしておるわけでございます。特に私どもが最近注目いたしておりますのは、いわゆる正規麻薬ルートといいますか、医療用麻薬を、医者回りと称して中毒者医者のところを回っていって、麻薬入手をはかるというふうな傾向も見られておるところでございまして、やはり大都市及びその周辺から地方のほうに分散しておるというふうな事実は、私ども情報としてキャッチいたしております。しかし、それがかつての大改正以前のような非常に大きな目立った犯罪としてあらわれるということはきわめて少ないわけでございまして、傾向としてはおおむねそのような傾向になっておるということは私どもも十分認めております。
  11. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 麻薬の大元締めというような、そういうものはどうなんですか。これはどういう関係になっているのですか。外地はどこであって、日本にもその中心がありますか。
  12. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大体日本麻藤は、先生お話ヘロインを御指摘だと思いますが、この麻薬入手その他につきましては、むろん国内では製造は一切禁止されておりますし、あげて全部輸入というふうに考えられるわけでございます。それで従来香港にヘロイン密売組織があったということは、これはもう十分はっきりいたしておるわけでありますが、それがその後取り締まりが各国徐々にきびしくなってまいりまして、現在その組織はマカオからさらにバンコクのほうへと移動いたしまして、最近ではケシの密培地区の多いタイ、ラオス、ビルマ等の奥地のほうに移動しておるというのが実情になっておりますが、そういう方面で密造されましたヘロインが、密輸ルートを通って輸入品として入ってくるというふうに推定いたしておるわけであまりす。
  13. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 そうすると日本の内地にはそういう元凶らしい、つまり大元締めのような有力な者はあまりないわけですか。
  14. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 さようであります。
  15. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 それからきよう週刊朝日を見ますと、麻薬大麻の問題が出ておるわけです。これは最近ジャズとか楽団方面大麻麻薬の使用が非常に流行しているのですが、こういう問題はどうなんですか。
  16. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大麻につきましては、大麻取締法によってこれを取り締まっておるわけでございますが、ヘロイン取り締まりは非常に徹底してまいりまして、ヘロイン入手は困難になったということに反応しまして、一部楽団関係者芸能関係者の中で、大麻たばこを使用しておるのではないかという推定は、私どもここ一、二年来予測をいたしておったわけでございます。ところが昨年あたりから外人日本に入ってくる楽団の連中が、明らかに大麻たばこを携行しておるという事実をつかみまして、それで鋭意ここ一年、この方々の尾行をいたしておったわけでありますが、それが昨年からことしにかけてあらわれました、外人楽団の一部の方々大麻違反という形になってあらわれたわけでございまして、これは外人楽団方々がそういうことをやっておるということとあわせて、日本国内においてもそういう大麻ただこの常用が、ある程度行なわれておるのではないかという点を、私ども非常に警戒いたしておりまして、今後もやはりそういうことのないように十分警戒してまいりたいと思っております。
  17. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 それでその大麻栽培を、農家が知らないで栽培しているという話もあるのですが、そういう事実はありますか。そういうことはあなたのほうで調査し、気をつけておりますか。
  18. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 大麻草栽培は、主として関東以北東北等に行なわれておるわけでありますが、これは大麻取締法によりまして耕作者の厳重な届け出管理をするようにいたしておるわけであります。しかし不用意にそれが使われるという点も十分私ども注意しなければなりませんので、これは私どもとしましては、その管理等につきまして今後とも十分厳重に取り締まりをやっていきたいと思っております。
  19. 稻村隆一

    稻村(隆)分科員 まだいろいろお聞きしたいこともありますが、このくらいにいたしまして、とにかくいやしくも日本文明国家なんですから、麻薬天国なんていわれることはまことに私どもとしては遺憾にたえない。そういう事実がだんだんなくなってきたということに対しては、私は当局の努力に対しまして心から感謝を捧げるのでありますけれども、とにかく麻薬などというものを徹底的に取り締まって、ほんとに絶滅するような基本的な対策当局に対して切にお願いいたしまして、私の質問はこれで終わりたいと思います。
  20. 相川勝六

    相川主査 玉置一徳君。  玉置君に申し上げますが、恐縮ですけれどもあなたの持ち時間はどうか十一時までにひとり……。
  21. 玉置一徳

    玉置分科員 まず私は最初に本国会に提案されました母子保健法案内容につきまして御質疑を申し上げたいと思います。  従来児童福祉法の中で妊産婦という場合に限りまして母性保護の条項が見あたったわけでありますが、今般母性乳幼児保健という意味で、母性に関しましても保健という点につきましては一段の進歩を見たことは喜ばしい限りでございますが、私たちが従来母性保障の点について主張し、その立法措置お願いを申し上げておったのは、わが国の憲法にも男女両性の本質的平等をうたっておりますし、労働基準法にもまた同一賃金を規定するなど、男女は法のもとで平等でなければならないことを明記しているわけであります。しかしながら、女性は肉体的にも精神的にも男性と異なりまして、女性であるがゆえの非常に保護を加えなければならない点を多々有しておることは御承知のとおりでございます。あるいは出産とか乳幼児保護というような重要な使命を有しますと同時に、これに伴います子女教育あるいは家事担当など女性のみに課せられておるいろいろな仕事がございます。このような女性のみに課せられました責務を全うするためには、肉体的に精神的に男性よりも弱い面を保障してあげなければならないのじゃないか。ここまでまいりますことがほんとう母性を守るゆえんだ、こう思うのです。そういう意味におきまして、私たちが今日までずっと提案し、皆さんにお願いをしてまいったのは、女性男性に劣らない生活を営み、女性特有妊娠とか分べんとか乳幼児の保育、子女教育、生理、家事担当というような女性に固有なる母性と申しますか、これを国が保障するように立法してもらいたいというのが私たちの願いでございます。さような意味から見ますと、ここに提案されております母子保健法は、健康という面におきましては、ことにそれが乳幼児に非常に密接な関係のある点につきましては、いままでに比べ一段飛躍でございますことは率直に認めなければならないと思いますけれども、必ずしも母性保障というところまでは進んでいない。将来この問題については十分の御研究をされまして、さらに一段飛躍をしていただきたいということと、保障につきましては従来の各法律にまかしてあるわけでありますが、それも充実強化していくとともに、将来はひとつ母性保障も含めまして一本の法案にまとめていただきたい、こういうように思うのですが、これにつきましての当局のお考え並びに大臣の御見解を承りたいと思います。
  22. 神田博

    神田国務大臣 いま玉置分科員から母子保健法の問題につきましていろいろお述べになられましたことは、玉置分科員の言われたようなことを私も基盤にいたしまして、考慮いたしたわけでございます。しかし、御承知のように一躍そこまでいかなかったということについては、私ども残念に思っておりますが、考え方といたしましてはまことに同感でございます。そういう時期の到来を早くしなければいかぬ、男女平等の原則に立って、また女性の特質から考えまして、これはもう当然そういうところに向かわなければならぬ、こう考えております。詳細は政府委員から申し上げます。
  23. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 今回の母子保健法、案につきましては、中央児童福祉審議会母子保健対策部会におきまして検討されましたのが中間報告として一月二十七日に出されております。これに基づきまして母子保健法案をつくったわけでございますが、その中間報告は、ただいまお話がございましたように非常に広範囲に、特に母性保障ということにつきまして関連した事項がたくさんございますので、そういう面にも言及いたしております。たとえば妊娠手当の支給ということがございますが、これにつきましては、現在検討中でございます児童手当の創設と同時にこういうことを行なうというふうなことを中間報告の中で述べておったわけでございます。また労働基準法の適用を受けない勤労者婦人がたくさんおるわけでございますが、こういった方々に対しましての休暇あるいは手当というような問題がございますけれども、これにつきましても本部会におきまして引き続き研究を行ない将来の適切な対策につき検討を加えたい、こういったこともございまして、さらにこの特別部会は継続されておりますので、その検討を待ちまして内容改善充実をはかっていきたい、かように考えている次第でございます。
  24. 玉置一徳

    玉置分科員 ひとつお伺いしておきたいのですが、お産の手当でございますけれども現物給付でやっておる国々がどのくらいあるのか、そしてこれは現金給付でなくて現物給付にするような検討をされておるか、将来どういうようにお考えになっておるか。
  25. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 お産の給付につきましては、少なくとも先進諸国においてはほとんどの国が現物給付でやっておると聞いております。また、日本におきましては、現在現金で手当を支給いたしておる状況でございますが、この現物給付による問題につきましては従来とも検討を加えておりますし、今後内容の充実の際には当然そういうことに考えていきたいと存じます。
  26. 玉置一徳

    玉置分科員 各国の例が現物給付が多いということになりますと、まだまだ未組織あるいは零細なところにお働きになっておる方も多いと思いますので、将来健康保険その他の現物給付ができ得るような措置をお考えいただきたい、こう思うのです。  そこで、もう一つ簡単にお願いしておきたいのですが、この母子保健法を実施するにつきまして、伊藤先生からもお話がございましたが、市町村がそこまでは充実してないから、これの指導を十分保健所あたりにさせていただく、たとえば、これは各カ所にあるのですが、第二十二条には、母子健康センターというようなものがございまして、十分保健指導を行なえ、こうなっておりますが、町村ではなかなか手が届きません。したがって民間の病院その他医者の協力を得るようにひとつ十分な御配慮をいただきたいと思うのですが、いかがでしょう。
  27. 竹下精紀

    竹下(精)政府委員 今回の市町村に対しましての従来保健所でやっておりました妊産婦、乳幼児に対しまする権限の委譲につきましては、予算といたしましても都道府県が市町村の事務委譲につきましての講習に約四百万円程度の金額を出しておりまして、それによりまして十分こういった例につきましての指導を行ないたいと思っております。御承知のように市町村がやります際には、当然医師会、助産婦会、保健婦会あるいは民生委員、児童委員、こういった方々の民間の協力ということが大事なわけでございますので、あわせてこの指導も考えてまいりたいと思っております。
  28. 玉置一徳

    玉置分科員 時間の関係もございますし、先ほど御質問もございましたので次に移りたいと思います。  看護婦の不足対策でございますが、滝井先生から昨日御質問があったように新聞で見ておるわけでありますけれども、看護婦が医療機関の向上とともに、毎年必要人員の絶対数としては増加しておるにかかわらず非常に逼迫しておるというのが現状だと思います。この対策につきましても種々御配意をいただいておることは十分承知しておりますが、私はこの際看護婦の社会的地位の向上とか給与、待遇というものも根本的に考慮に入れなければ無理じゃないだろうか、こういうように思うわけです。  そこで、一つは夜勤の処遇でございますが、労基法の百分の二十五で公務員並みの処遇を与えられておることは事実でございますけれども、勤務の特殊性にかんがみまして−夜勤と申しましても、あるいは時間が延長になりましても非常に心配で、ことに夜間のほうが医者も宿直のお医者さんだけでございます。大事な病人の生命をほんとうに第一線で預っておるのは看護婦さんの方々だと思うのです。この夜勤の処遇を将来改善することが、また看護婦の充足の問題にも非常に大きい影響があるのじゃないか、かように思うのですが、当局の所見を承りたいと思います。
  29. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 看護婦の待遇の改善、特に夜勤の問題につきましては、われわれも心配しておるところでございますが、特に夜勤につきましては特に時間の問題がまずあると思います。従来は大部分が二交代制をとっておったのが、三十二、三年ころから三交代制がずっと広く行なわれるようになりまして、この点労働時間という点からいえば改善ができましたが、同時に回数が多くなったという問題が一つ残っております。手当の問題は百分の二十五でございますが、これは普通の一日八時間働きます時間が夜間にいっておるので、そのための百分の二十五でございますが、これを上げるという問題につきましてはわれわれも努力し、大臣も実は人事院のほうにお話し願ったくらいでございますが、今年はこの改善ができませんでした。将来引き続いて改善するように努力いたしたいと思っております。
  30. 玉置一徳

    玉置分科員 私が京都の府会におりましたときに総務委員長当時、府立の大学病院にまいりまして事務長とお話しいたしましたのは、寄宿舎でございますが、勤務の関係で校内もしくは校外の適当なところにあるのはやむを得ないといたしまして、昔のように大部屋にたくさんそのまま収容しておるというような姿は、これから変えていくべきではないか、できれば校外のもよりの場所でアパートのような形で最小限一部屋二名くらい、そして自治会でもっていろんな規制をするというような形にしてあげなければ、いままでのような形では長くおってもらうということができないのじゃないかということを申しておったわけです。なお、調べてみますと、結婚をしてからでも長期にわたってやってくれる方もたくさんできております。そういう方々はやはり勤務にまいりますについて、託児所でも置いてあげなければ勤務がしにくい。大きな病院になりますと、こういうことが歩どまりの問題にかなり影響してくると思うのですが、これについてどういうようにお考えになっておりますか。
  31. 尾崎嘉篤

    ○尾崎政府委員 看護婦の宿舎関係でございますが、昔は全員を宿舎に入れるというような考え方でありましたが、いまはこの考え方が改まりまして、ほかの方々の宿舎と同じような考え方が漸次進んできつつあります。しかし同時に看護婦さんが夜交代するとか、また患者で重い方ができたときにすぐに応援を願いたいという考え方から、病院の近くに宿舎をつくっておるのが実情でございますが、お話のようにできるだけ宿舎の設備をよくするということには努力しております。一般的にお話のような鉄筋のアパート式のものがこのごろできております。二人部屋、ときには一人部屋の宿舎もできつつあるようでございまして、この点処遇の改善という意味でもわれわれも一そう努力していきたいと思っております。  それから託児所の問題でございますが、これは従来地域的に託児所をつくっていくというので、職域的につくるという考え方はあまり児童局のほうでとっていられないようでございますが、しかしいまお話のような事情、ことに家族持ちの看護婦さんなどにもできるだけ働いていただこうという意味から、試験的といいますか、託児所を病院内につくっていくというような試みが行なわれております。現在国立の関係で私が承知しておりますのは、愛媛、東京、邑久、旭川、岡山、こういうふうな六、七カ所のところで託児所が始まっておるという状態でございます。
  32. 玉置一徳

    玉置分科員 一番大事なことは、これから申し上げるわけですが、看護婦さんに対する社会的な地位の一般の認識だと思うのです。軍隊のときのことを申し上げて申しわけありませんが、私が応召しておりました当時、お医者さんは、正規の大学を出てきた者はすぐに中尉になりました。専門学校を出てこられた方は少尉になる。看護婦さんは二十年ほどしまして、婦長になったときに准尉さんの待遇を与えられておる。よくよく聞いてみますと、昔日赤の看護婦さんは、高等女学校を出まして三年間やってきたわけであります。薬剤士は四年間やられて少尉だった。お医者さんは四年間やって、一年間インターンをやって、五年間やったら中尉になったわけです。そういうようなところを見まして非常にふしぎに思いましたのは、それから後アメリカの進駐軍がまいりまして、女性の少尉が非常に多い。何だと思ったら看護婦さんだった。そういうようなところから見ましても、現在も同じような意味のことが言えるのではないか。一般社会通念が、看護婦さんは医務局員というよりはその手助け人のように考えておるところに大きな誤りがあるのではないか。そういう意味で私がひとつ提案申し上げたいのは、社会通念を打破する意味からも一いまも正看は高等学校を出てから三年でございます。これを将来思い切って四年制度にせぬかこういうことであります。そして在来の看護婦さんはある一定の年限を経過いたしますと、五年なら五年経過しました者は一年ほどまた教育するか、あるいは終戦後学校の教員が、学芸大学になったものでございますので、在来の教員免状をお持ちになっておる方々には夏休みに補講を三年間続けまして、そしてそれを正規の免状に引き上げたわけであります。そういう措置が在来の方にはとれるので、准看護婦さんの進学コースというような点についてもそういった配慮がなされてしかるべきじゃないか。こういうようなかっこうにいたしまして、先ほどの寄宿舎その他いろいろな勤務の状況、医局員、看護婦さんの詰め所、ああいうもののあり方につきましても、医者医者で診断するのであり、治療の方向を示す、それを実地に病院についてやってくれているのは看護婦である。職業のあり方が違うだけであって、人によって、職種によって人間の差はない。ましてこういうように人材が払底してまいりますと、この点を特に留意しなければむずかしいんじゃないか。これが一番看護婦さんの充足対策の根本的な問題じゃないか。このごろ各省ごとに自治大学、建設大学、何大学というのをずいぶんお建てになっております。看護婦大学を建ててあげてやっていただいて、定期的にある時期に集めて、そしてさらに教養を深めていくという制度もあってもいいんじゃないか、こういうように考えるのですが、当局並びに大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  33. 神田博

    神田国務大臣 いまの玉置委員の、看護婦の教養を高めて、そして待遇の充実等をはかれ、また宿舎その他についても万全を期したほうがよいのではないか、将来そういうような考えを持っておるかどうか、こういうような御意見のように承りましたが、私も同感でございます。これはいままではいままでの事情があって、制約された環境に置かれてあったと思います。しかし先ほど来いろいろ御質問もございましたように、だんだんと文化が進んでまいりまして、やはり職業の選択というようなものも厳選されてくると思っております。ことに医療に従事されております看護婦の地位を向上し、その処遇をよくするということは、国民が文化的な活動をする、また天命を全うする、病魔から守るという立場から考えまして、私は当然考えなければならぬことじゃないかと思っております。一流国におきましても、すでに看護婦あるいは助産婦等について、そういう大学を開校して教養を高め、万全を期している例は多々ございます。日本としても適当な機会にそういうことまで踏み切るべきだ、こう私ども考えております。
  34. 玉置一徳

    玉置分科員 医療がますます近代化してまいりまして、むずかしい問題もございますが、それに並行して看護婦さんや保健婦さんの知識、教養を・高めていかなければならないと思います。看護婦さん、保健婦さん等の待遇あるいは社会的地位の向上、そういうことにも御配慮をいただきまして、十分な保健活動、治療活動ができるようにせっかく御配慮いただきたいと思います。  それでは次に、簡単に老人対策をお伺いしておきたいと思うのです。時間もございませんので、端的に御質問申し上げたいと思います。だんだんと老人人口が日本の人口構成の中で多くなってまいります。その傾向をますます今後も示していくと思います。高齢者世帯数の推移もまた同じような様相を示しております。こうなってまいりますと、先般制定されました老人福祉法にあります「老人は、多年にわたり社会の進展に寄与してきた者として敬愛され、かつ、健全で安らかな生活を保障されるものとする。」あるいは「老人は、老齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して、常に心身の健康を保持し、その知識と経験を社会に役立たせるように努めるものとする。」「国及び地方公共団体は、老人の福祉を増進する事務を有する」と書いてあるのは、まことにもっともだと思うのです。こういう意味で、先般来から老人福祉の問題につきましていろいろと対策を講じていただいておりますことにつきましては、心から敬意を表するわけでございますが、第一点といたしまして、老齢福祉年金が月額千百円であります。世界各国の例を見まして、せめて三千円程度までは、どんなにおそくも五カ年くらいでは完成する決意を厚生省としてはひとつお示しいただきたい。この際大臣の率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  35. 神田博

    神田国務大臣 環境の整備や、また医学、医療の進歩、その他いろいろの改善も加わりまして、老人の寿命が非常に延びてまいりましたことは、非常に喜ばしいことだと考えております。わが国の人口も、いわゆる老人といわれる六十五歳以上の総人口に占める割合が約一〇%だ、こういうことになっておりまして、近年非常な寿命の延びがそういういい面をあらわしていることと思っております。そこで、いまお尋ねがございましたこういうような姿でございまして、しかも社会の建設に非常な長年努力をされてまいったわけでございます。そのあとまたみんな続いていくわけでございますから、こういう老人に国としてできるだけの処遇を与えるということは、私は当然のことだと考えております。いまお話がございました、わが国の老齢福祉年金が非常に低額であるということは、まことに遺憾に思っております。三年間でいまお述べになったような数字までいくかどうか、あるいはそれ以上にいけるかどうか、とにかく私どもといたしましては、できるだけ年々処遇を改めまして、老人が楽しめるといいましょうか、励みがあるような生活ができるようにいたしたい、こういう念願でございます。
  36. 玉置一徳

    玉置分科員 ただいま申し上げましたのは、五年間に三千円ですから、そうむずかしい数字じゃございません。われわれはもっと早くやっていただかなければいかぬことはよくわかっておるのですが、いまのままでは少し足りなさ過ぎるのではないか、こういう意味で、せめて大臣のおっしゃるように、三年間に三千円まで到達するように御努力願いたい、かように思います。  そこで、老人ホームのこともお伺いしたいのですが、時間がございませんので、これの充実につきましては一そう御努力をいただくことにいたしまして、次に飛びまして、老人クラブの実数でございますが、これが三十六年に九千七百五十五、三十七年に一万四千六百五十四、三十八年に三万五千八百七十三、三十九年に四万七千六百十二、こういうように伸びております。内容その他につきましてなかなか十分でないものもあると思いますが、予算措置がだんだんそれに追いついて伸びておりますが、ちょうど実数ができたあくる年のものの査定を受けたような形で伸びておるわけでありますので、一回どこかで飛躍しなければ、ちょうどあとを追っておるように数字がうまく符合しております。大蔵省の査定はなかなかきびしいもので、ある意味ではうまくやっておるなと思って感心するくらいでありますが、来年はさらに一そうの飛躍お願いをして、実数にほぼ合わすように御努力いただきたいと思いますが、どうでございましよう。
  37. 神田博

    神田国務大臣 老人活動が活発になってまいりまして、いまのように年々その充実を見てまいったわけでございますが、これに助成が伴っていないということでございます。これは私どももまことに遺憾に思っております。御承知のように、国、県、市町村、こういうように三分の一ずつ負担するということになっております。今年も努力はいたしたのでございますが、いまおあげになったような数字でございまして、残念に思っております。これは大蔵省との交渉でございますが、むろん来年度あたりになりますれば、大体全国普及が終わるのではないかと思っております。終わりますと、的確な数字は当然つかめるわけでございますから、ぜひひとつ来年度におきましては、そういうような実態と助成が合わないようなことのないようにいたしたい、こういう考えでございます。
  38. 玉置一徳

    玉置分科員 時間もまいりましたが、簡単にあと五分ほどで終わりたいと思いますので、お許しいただきたい。  そこで、老人クラブもいよいよここまで数がまとまってまいりまして、これから内容の充実だと思います。それにはやはり指導者と申しますか、府県に存置する指導者、大きな市なんかの指導者、これがこれからいよいよ養成される体制に入っていかなければいかぬのじゃないか。まず数が伸びたことは非常にありがたいわけでありますが、その次は、今度は指導者の養成だ、こう思います。どういう内容でどういうふうに楽しんでもらい、どういうふうに教養を高めてもらうのか、これもむずかしければちっともおもしろくありませんし、またここにございます老人家庭奉仕の方々でも、できれば当地の老人の方で、豊かな家で非常に離れのいいところがあるとかいうようなところを貸していただけるように考えていただければ、もう満点でございます。こういうような意味で、これから内容の充実のほうにも徐々に頭を向けていただかなければならぬ。まず当面は、活動の指導者の養成、その次は老人の方で指導者が求められればこれが一番いい、こういうことになると思います。  その次に、来年あたり大体みんなの満足がいけるような数になれば、今度は予算措置をもうちょっと実態に応じて充実していくという段階になると思います。この二点につきまして、大臣の御所見を伺いたい。
  39. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになりましたこと、まことに適切でございまして、厚生省といたしましてもそういうような考えを持っておりまして、ことに社会の経験者でございますりっぱな方々でございますから、押しつけがましいことはしない。同時にまたこれを生き生きとしたものにするにはどうしたらいいかというようなこまかい配慮をはかって万全を期したい、こう考えております。  それから、いまいろいろ例もおあげになりましたが、公の施設以外にそういった有無相通ずるような、お互いの開放的なことをすることがまた老人クラブとしてのあり方としても好ましいことだと思っております。これはいろいろな考え方をまとめまして、そして適切に手を打っていきたい。予算の問題につきましても、先ほどお答え申し上げましたように、来年度以降においては十分ひとつ配慮いたしたい、こう考えております。
  40. 玉置一徳

    玉置分科員 保母の問題につきましてお願いしたがったのですが、時間がございませんので……。非常に待遇が悪かった、給与が低かった保母さんの方の待遇改善につきましては、ここ数年非常な努力をいただきまして、非常に進歩したことは事実でございますが、必ずしもまだ満点ではございませんので、なお一そうの御検討をいただきまして、その他の給与に引き合うようなところまで充実してあげていただきたい、かように思います。  母子福祉法案にしろ、医療の進歩に伴います看護婦の充足にろ、あるいはただいま申しました老人ホームにしろ、厚生省の行政というものは各般国民の生活に直結しておる重大なことばかりでございますので、十分ひとつ皆さんの御努力と御奮起をお願いいたしまして質問を終わりたいと思います。
  41. 相川勝六

    相川主査 高田富之君にお願いします。  この際申し上げますが、高田委員は十分程度質問を終了するとのお申し出でございます。御協力のほど感謝申し上げます。御発言を願います。
  42. 高田富之

    ○高田分科員 私はこの機会に一点だけ薬事行政につきましてお伺いしたいと思います。この問うち市販されておりますアンプル入りのかぜ薬の問題で、国民がいま市販されておる薬に対する信頼感を非常に失い、非常に動揺しておるわけでございまして、今後薬の製造販売に対しまする規制というものを相当思い切って強化すると申しますか、要するに薬事行政の抜本的な強化を望む声は、きわめて大きいと思うのでありますが、これにつきまして根本的な、こまかいことはけっこうでありますが、考え方を一言お聞かせ願いたい。
  43. 神田博

    神田国務大臣 薬事法をこういう機会に抜本的な改正をはかって、整備をしたらどうかという御意見のように承りました。御承知のように薬事法はだいぶ古い法律でございまして、最近では昭和三十六年に思い切った改正をしたわけでございます。その後五年ほどたっておるわけでございますが、しかし今日の一年一年というものは大した変化でございます。改正して五年間だから、もう改正しないというような考えは毛頭持っておりません。今回のような事件で、ずいぶん国民の皆さまに御迷惑、御心配をかけたことは、私どもといたしまして、十分反省のいい機会でもございますので、こういう機会をとらえまして、いろいろ御意見を寄せられる方も多うございます。われわれとしてもまた再検討する必要がある、こういうふうに考えまして、目下それらの点につきまして打ち合せをしており、検討中でございます。
  44. 高田富之

    ○高田分科員 ぜひこれはこの機会にひとつ思い切って強力な刷新強化お願いしたいと思います。  それから今国会におきまして、たいへん問題になり、いろいろと各委員から質問等もございました健康保険の問題でございますが、患者に薬代の半額を負担させるという問題については、政府も再検討されるというようなことを聞いておるわけでありますが、万一にもこういうことがありますと、実際必要な治療も受けられないという者がたくさんできるわけでありまして、ぜひこれはひとつ再検討を願いたいと思うのであります。  この健康保険の医療費の中に占める薬代の割合というものが非常に高くて、お医者さんの技術料というもののパーセンテージが非常に低いと聞くのでありますが、私は専門家じゃございませんけれども、よその国で、大体日本程度以上の健康保険制度の発達しております先進国と比較いたしまして、日本の医療費の内容というものは、いま申しましたように薬代が圧倒的に多い。比較にならぬほど他国より多いというのは事実でございますか。
  45. 神田博

    神田国務大臣 いまお述べになりましたようなことは、事実だということを申し上げる段階だと思います。そこで、これは保険に限らず、医療におきましては、技術というものが高く評価されるべきものであって、薬価でこれを補っていくということは不自然だ、これは私は当然だと思います。私どもといたしましても、そういうような弊害を十分指摘されておりますし、またわれわれ自身も十分これは了承できることでございますので、今後の保険行政、医療行政といたしましては、いまお話のございましたように、技術をひとつ確立していきたい、そして薬というものは正当なあるべき価格にしていきたい、こういうように考えて行政を進めていきたいと考えております。
  46. 高田富之

    ○高田分科員 そこで、日本は特に薬の販売がいろいろ宣伝等も徹底しておりまして、新しい大衆薬が売られておる。お医者さんがどんどんこれを利用するということなって、非常な弊害をもたらしておるというわけでありますが、専門家の意見を聞いてみますと、たとえば全然きかないものが薬品として宣伝をされて、宣伝によって大量に売られておる。また、先ほど来のように、有害なものさえも売られている。かりに有害でないまでもきかない薬というものは相当大量に売られているということを、専門家は口をそろえて現在言っておるわけでございます。ただ有害でさえなければきかなくても人間の病気というものはほとんど精神力が大部分だというようなわけですから、きくと思って飲めば、それが精神的作用をして幾らかきくということもあるのでしょうけれども、だから必ずしも有害じゃないと思うのですけれども、しかしこれが健康保険を食い荒らして結局保険財政をこのために破綻におとしいれているということは、これはゆゆしい問題だと思うのです。そこでどうしても健康保険制度というものを健全な基礎の上に立て直さなければならないという重大なときにあたりまして、きかない薬を使わせるというようなことは、万々が一もあってはならぬと思うのでございます。私は実は専門家でございませんから、議論をしてもなかなかあれはできませんけれども専門家たちの言うところを申し上げますと、たとえばアリナミンとかビタミンなどのいわゆる活性という文字のついた活性ビタミン剤、その他の保健薬というものは、これはもう全部きかないものと言っていい、こう言うのです。これは相当の権威者が異口同音に言っておりまして、驚くべきことだと私はしろうとながらびっくりしたのでありますが、そのために西欧の文明諸国はどこへ行ってもこんなものは病院でもどこでも使いやしない。日本だけは大衆がだまされて宣伝の力でこういうきかないものを、大量に製造され、大量に売りつけられている、こういうことだというのです。この日本独特のいわゆる大衆保健薬というものを、これは何とか処置しなければならぬじゃないか。大都市あたりに行きますと、お医者さんの健康保険の請求も、この大衆保健薬がその中身の大部分をなしているというのです。ですから、これを何とかしてしまえば保険財政はこの面からも十分立て直しができるのだ、こういう有力な御議論があるわけでございます。そういう点についてはどういうものでしょう。
  47. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 薬の製造許可をする場合には、効能、効果をデーターに基づきまして、臨床データその他を集めまして、効能、効果を判定した上で許可をいたしておりまして、決してきかない薬を許可しておる、こういうことにはなっておらないわけでございます。ただきかないあるいはきくということにつきましては、そのデータ自身について学者のほうでも意見はございますけれども、私どもは効能、効果があるものを許可しておるということでやっておるわけでございます。  それから御指摘のアリナミン等につきましては、これは一応大衆保健薬であると同時に、また健康保険にも採用されておる薬でございまして、アリナミンの効果等につきましては、これは相当外国にも大量に輸出されておるように、外国でもその効能、効果は相当あるということは定説になっておりまして、ただその中身につきまして、医家向けの場合、それから大衆向けの場合とそれぞれ剤型によって区別いたしております。たとえば五ミリにつきましてはこれは大衆薬、それ以上のアリナミンの成分の多いものについては、これは医家向けというような区分をいたしておりまして、その辺もいろいろ問題はあるとは思いますが、私どもとしましては発売方法自体につきましても、そういう面での規制指導をやっておるわけでございます。
  48. 高田富之

    ○高田分科員 私はしろうとのためにそういう議論を反駁できないのはたいへん残念なんです。ただ非常に権威ある方が——これはほんとうに権威者でございまして、そういう方々が一人や二人じゃなく非常に憂えておることは事実なんでございます。それで外国のりっぱな病院や何かでは、幾らすすめてもそんなものは全然相手にしないということも言っておる。日本独得のものだ、こう言うのです。ひとつさらに御検討願いたいと思うのですが、それできかないということは、そういう良心的な学者たちからは相当今まででも主張されたそうですか、しかし政府で徴します意見を出される方々の中には、やはりそれはきくかのごとき意見を述べる学者等もあって、結局現在きく、きかないは水かけ論的になっている、しかしほんとうはきかないものなのだということを、心ある学者や専門家はみな言っておる、こういうわけです。  そこで一つお尋ねしたいのでありますが、この問題をどうお取り上げになったのですか。やはりある程度真実性があるとお考えになったものと私は思うのでありますが、今回政府が出されようとしております案の前につくられました原案でございますが、この原案は大蔵省と厚生省の係官との間でつくられたものである。そしてその中身は、医学専門雑誌のみに広告しておる薬は医薬として健保の全額を支払う、それから医学専門雑誌以外たとえばテレビやラジオや週刊誌、日刊紙などに広告しておる薬は大衆薬ということにして、このほうは健康保険では半額しか見ない、こういう原案を作成をした。これは専門家——先ほど申しましたような事態を憂えております権威者たちは、非常にりこうな案だといって非常に評判がいいのだそうです。これは非常にうまいところへ目をつけた、要するに専門雑誌だけに出しているやつなら医薬だ、大衆雑誌やテレビや何かでじゃんじゃん宣伝するやつは大衆薬だということで区別をして、大衆薬のほうは半分だけ見てやるということになれば、勢いそのほうの使用量も減ってくるし、結局保険財政というものを健全化する非常にいい案だ、名案であるというわけなんですが、この案があったということは事実かどうかということと、この原案に対しましては、薬屋さん、薬の製造業者その他各方面から猛烈な圧力が加わって、とうとう日の目を見ずに終わった、非常に残念であるということを言っておるわけなんでありますが、もし事実とすれば非常に私もこれは残念なことだと思うのでありますが、そういう原案があったことは事実でありますか。
  49. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 私どもそういう話は実は承っておりません。あるいは薬務局長が知らない段階でそういう話が出たかもしれませんが、正式の話としては私どもは全然承っておりません。
  50. 高田富之

    ○高田分科員 全然お知りでないというのはちょっとおかしいのですが、しかしそういうことが相当の権威者から言われておるのですから間違いないと私は思うのですが、かりにそういうのだとすればどうです。これは名案の一つと言えますか、いかがですか感想は。
  51. 熊崎正夫

    熊崎政府委員 いろいろ問題がありますので、慎重に検討をする必要があると考えます。
  52. 高田富之

    ○高田分科員 しかしこれは非常に重大だと私は思うのです。もし御存じないとすれば、その前の段階——といってもあなたが御存じないとは信じられないのですが、ひとつお調べになっていただきまして、この権威者の方は私は名前は申し上げませんけれども、その事実をはっきりつかんでおられまして、特に大蔵省あたりの立場からいろいろ考えられたのだろうと思うのです。厚生省の係官の方々も一緒になってそういう案をつくった、こう言っておるわけなんで、技術的になかなかむずかしい点もあるのだろうとは思いますけれども、一つのおもしろい案だろうと思うのです。いきなりそういう大衆薬というものは売っちゃならぬとかつくちゃならぬとか宣伝広告してはならぬといってみてもちょっと飛躍があるようですが、こういううまい方法で段階的にやっていくということはなかなか名案だなという感じが、私しろうとでもするのでありますが、事はきわめて重大な段階にありますから、薬の問題は国民の大きな関心事でありますので、この際こういうふうな問題についてひとつ抜本的に考え、そして保険制度そのものの健全化という上においては、何といってもネックは薬にある。ききもしない薬をどんどん広告して売りつけて、医者がまるで薬の小売り屋になっているこの現実、これを直さなくちゃ問題にならぬと思いますので、ぜひこの際、その点について、抜本的な薬事行政の強化ということを、最初に申し上げましたが、やっていただきたいことを強く御要望申し上げまして、重ねて一言大臣からおことばをいただいて、質問を終わりたいと思います。
  53. 神田博

    神田国務大臣 最近の健保の赤字問題等にからみまして、薬のあり方というものについて、非常な論議がありますことは御承知のとおりでございます。いまお述べになりましたような事情も私どもいろいろ耳にいたしておりまして、先ほど来お答え申し上げておりますように、こういう機会でございますので、いろいろと検討を加えまして、そうしてこの批判なり世論なりにおこたえしたい、そうして堅実な薬務行政を打ち立ててまいりたい、あるいはまた、社会保険がりっぱにその目的を達成できるようにしたいというのが私どもの念願でございます。いまお述べになりましたことは私どもも共鳴できる点が多々ございますので、ひとつ十分検討いたしまして、できるだけ早い機会にそういう実施をしていきたいと考えております。
  54. 相川勝六

    相川主査 小林進君。  小林君にお願いしますが、三十分程度で……。あなたの持ち時間は十一時五十分までです。
  55. 小林進

    小林分科員 それではひとつ厚生大臣にお伺いいたしますが、御承知のとおり、私は社会労働委員会の委員をいたしております。社労は今通常国会ではまだ一回も開かれておらない。ということは、例の中央医療協の三者構成に基づく答申案を大臣が正しく、忠実にお守りにならなかったということが支払い者側を刺激いたしまして、これが法律違反である等々の問題でもめておる。そこへきて、また屋上屋を重ねるように保険審議会や制度審議会の答申も待たないうちに、大臣と大蔵大臣と自民党の三役でございますか、そこで文書を取りかわされて、社会保険の薬代の半額を徴収するの、あるいは総報酬制を用いてボーナスからも保険料を取るし、五万二千円の限度を引き上げて、十五万円が二十万円、何でもいい、収入に全部保険料をぶっかけようといういささか社会保障に逆行するような施策を打ち出されたものでございますから、われわれ社会労働委員会ではそういう大臣のお経は拝聴するに至らないということで、まだ大臣の所信表明も承っていない。こういうさなかに予算委員会分科会が開かれた。本来なら、分科会でも御質問を申し上げないでいたほうがいいのではないかという意見もあったのでありますが、それではあまりかたくなになりまするので、こうやって質問をさせていただくのであります。本質に関する問題は、何かきょうあたり、内閣と政党と一緒になって支払い者側七団体お話しなさるそうでありまするから、そこら辺で話がまとまって医療行政が軌道に乗って、それに基づいて社会労働委員会でも開かれることになれば、またその席上で本質的な問題をゆっくり拝聴いたしたいと思うのでございます。きょうはなるべく本質を避けて、やわらかいところで一、二時間質問いたしたい、こう考えているわけでございます。  どうも軌道を一つはずれると、ものごとは次から次へはずれていくものでございまして、二、三日前かぜを引いて寝ておりますると、どうもいまの中央医療協の答申では、医療費の問題やら医療行政その他で不完全だから、何か医療審議会ですか医療協議会ですか、専門学者だけを集めて医療問題を中心研究審議する会を設けるような案を、大臣もお知りにならないうちに自民党の幹事長かあるいは党で打ち出された、そういうことで今度は大臣のほうが、いままでは攻勢であられたのが受け身の立場になられて、私の知らぬところでそういうことを党が打ち出すのはけしからぬじゃないかということで、あわ食って幹事長や党の首脳部のほうにじゃんじゃん電話をかけて問い合わせていられたということが新聞に出ておりましたけれども、あれは一体どういうことを意味していられるのか、這般の事情をお聞かせいただきたいと思います。
  56. 神田博

    神田国務大臣 いま小林さんのおっしゃられた医療問題がこじれておりますことはまことに遺憾なことでございまして、何とか軌道に乗せたいという考えのもとでいろいろお願いしていることは、御承知のとおりでございます。そこで、その一つの考え方といいましょうか、この医療問題はなかなか根が深くて、しかもこれは重大な問題であり、専門的な問題であり、思いつきや何かではいかぬ、当面の問題また将来の問題というようなことでございまして、何らかひとつ話し合いで打開をしたいというような前提のもとで、いろいろ施策を練っておることは事実でございます。いまもお話しございましたような、いろいろ中央医療協議会とかあるいは社会保険審議会、社会保障制度審議会というようなのがございまして、なおいまのような抜本的なことを考えるにはもっとひとつ利害関係のない達識の方に入っていただいて、何かひとつ協議会というか審議会というか、内閣にも置いて、ちょうど党にもつくるという意向になっておりますものですから、その当時から自民党でつくる、そうするとそれと見合ったものを内閣に置いたらどうだということは前々からあった議論でございます。たとえば党につくるといたしますと、おのずから入ってくる方が制約を受けます。内閣でございますれば、そういう制約がなしに置けるのじゃないだろうかというようなことで、党に置くと考えた場合に政府にも置いたらどうだろうかというようなことが、ずっと前から論議されておったのでございます。ただ、私といたしましては、屋上屋のきらいがなかろうか、よほどこれは検討する必要があるのじゃなかろうか。支払い側、診療側がみんな一致して、これは必要だからひとつ置いたほうがいいというような段階でならこだわらないが、こういう際に政府側なり党側から、内閣に置くのだというような高姿勢な考え方、ではどうだろうか。よく議を尽くしてする。そうでありませんと、幾らいい顔ぶれを集めても、結論がりっぱなものであってもうまく通らないおそれもある。そうすると事志と違うようなことになるので、ひとつ慎重に考えたらどうでしょうか、こういうような私の考えでございました。これらの点、いろいろ話し合いがございますから、話し合いが熟してまいりまして、そうしてできることには、これはどなたも異存がなかろう、私はこう考えておる次第でございます。
  57. 小林進

    小林分科員 大体それで事情がわかったのですが、実はあいうのを私ども見ますと、非常に憤りを感ずる。実に同じことを繰り返している。ここに井村さんもいらるけれども、いま大臣お話のように、審議会というか協議会というか、専門の学者を集めて内閣なりあるいは厚生省の諮問機関を設けようという意味でございましょう。そういう構想は前にもあった。あなたのおっしゃるとおりなのです。それは前の灘尾さんのときだ、灘尾さんのときにいまの中央医療協というのが設けてあったのです。その中央医療協議会が三者構成で八、八、八であったときに、これではだめだというので、あれがもめて、いまありますとおり八、八の四、計二十人の新しい構成になったときに、同じく灘尾さんが、三者構成の中央医療協ではどうもぶつかってうまくいきそうもないから、その中央医療協と並立——その下部機関ではないが、並立の関係で別個に置く、学者だけの、専門家だけの医療協議会あるいは医療審議会をつくろう、こういう中央医療協の改組と同時に、医療審議会という構想を出されたわけです。そのときにまっこうから反対したのは医師会です。社会党も反対したのです。いまあなたのおっしゃるとおり、屋上屋を重ねるから、そういう医療費を含めて、医療行政を三者構成で協力してやろうじゃないか、なぜ委員会をつくる必要があるのかということで——古い廃案になった法案がありますよ、もう法律が出ていたのです。灘尾さんは、今日医療協議会が支払い者側と医療担当者側ともめるということは一応予想されたのでしょう、非常に灘尾さんはがんこです。あなたよりもがんこですから、あくまでもがんばられて、一国会それでもめ抜いた経験があるのですよ。そういうような経験の上に立って、ついにああいう専門家に基づく医療審議会というものが廃案になって、中央医療協だけが改組した上で法案が通過した。これは二、三年ばかり前です。ところがそういう経験を知らないしろうとが、また思いつきのようにああいうことをぼんと出した。だから私ども見ますと、実に政治家なんという勉強しないやつが、ほんの思いつきでああいうことを出して、平地に乱を起こすように問題を混迷させているじゃないか。私は寝ながら新聞を見て、実に義憤にたえないわけだ。こんな忙しい世の中に、日進月歩で一日一日世の中が進歩していかなければならぬのに、また歴史を昔に繰り返すようなばかなことを言っている、こういうことを感じたのでありますけれども、たまたまあなたが憤慨せられたと言うが、その憤慨せられた理由はどこにあるのか、ちょっと私の言うのと感じが違うようでありますけれども、そういう経験をあなたはとらえて、ばかなことを言うのじゃない、同じことばかり繰り返すのじゃないというふうにあなたの党の幹部にも教えてやっていただきたい。その点を参考までに申し上げます。  ところで、医療行政の問題はそれくらいのことにしておきます。ただ私は、医療費をきめる場合に、三者構成でいくことがいいか悪いかということに非常に疑問を持っている。これは大臣、ひとつ考えていただきたい。これは私のかねがねの持論なんです。というのは、医療費というのは薬代は別にして医者の技術料です。医者の技術料というのは、別なことばで言えば労働賃金なんだ。医者の労働に基づく報酬なんです。だから広い意味における労働賃金だ。こんなことを言うと、お医者さんは非常におこるんだ。われわれ高度の学者をつかまえて労働者とは何ぞ、こういうみとで医者はおこりますけれども、それは昔の意味の労働者ではなくて、総理大臣厚生大臣もみんな労働者であるという、広い意味の労働者とみなして、医療費も、医者の技術、学識経験、あらゆるものを総合した、その上に立った労働の報酬なんです。労働の報酬であるという定義が成り立つならば、これはやはり労働法に基づく労働賃金と同じだ。労働賃金はどういうふうにきめるかと言えば、労使対等の話し合いできめるということになっている。これはもう賃金をきめる原則なんだ、報酬をきめる原則ですね。というならば、お医者さんの報酬も、支払い者側と医者が正当な話し合いできめればいいじゃないか。それを、第三者が入って、むしろがちゃがちゃやるところに私は問題があると思うのです。特におかしいのは、いまもブルジョア新聞と言っちゃ悪いですけれども、一流新聞紙なんかも、医業の実態調査をせい、医業の実態を調査した上で医療費をきめるべきだなんと言っているが、ばかな考え方だと思っている。学者の報酬をきめるときに、学者の生活の実態を調査しなければ学者の報酬がきまらない、画家の横山大観の絵の価値をきめるときに、横山大観の生活実態を見なければその絵の価値を定めるわけにはいかない、そんな理屈と同じですよ。そんな実態を見なくても、医療費というものは、医者の高度の学問と長い間の経験と、専門の知識と患者に対する愛情とか、いろいろのものを総合した中から正当な医療費は生まれてくる。その人の生活がぜいたくであるかぜいたくでないか、その人の生活が成り立つか成り立たたないかということを調査した上で医療費をきめるというのは、私は変なことだと思う。国会議員の報酬だって同じですよ。われわれの生活の実態を見なければ国会議員の報酬をきめられないなんてばかな話はないじゃないですか。その意味において、いま少し医療費というものを、医者という一つの特殊な職業に基づく労働賃金であるという定義の上に立って、労使対等の話し合いの原則においてきめるべきだ。きめて、まとまらないときには、初めてそこで公労協のような仲裁裁定が出るとか、あるいは人事院勧告のような第三者機関が最後に軍配を入れて、いいのか悪いのかきめるのはいいだろうが、初めから中央医療協なんという三者構成の中で話し合いをきめていこうとすることが、私は非常に無理があると思うのです。こういうように言うと、あなた方は、いや労働者の賃金と違う、学者の賃金と違う、大学の総長の報酬と違う、国会議員の報酬と違う、国民全般に影響する問題だから、社会的に非常に影響するから、医者の報酬だけはほかの報酬をきめるのと別個な形、こういう三者構成できめなくちゃならぬとおっしゃるかもしれませんが、そこに一つ無理があると思う。だから私は、ここで結論を言おうというのじゃありませんけれども、そんな医療協議会だの医療審議会だのというような屋上屋を架するようなばかなことはやめにして、いわゆる医療費、医療の報酬というものは、学者や国会議員やあるいは絵かきや芸術家の報酬と同じ性格のものだから、ほかのものをきめると同じような態度で医者の報酬もきめなければいけない。それを、医者の報酬だけを別個な特殊な形できめようとするところに無理があるのだという点を十分御勘案をしていただきたいと思うのでございますが、いかがでございますか。私は、問題を解決する道はここにあると思うのでございます。
  58. 神田博

    神田国務大臣 小林さんから、いまいろいろと御教示に富んだ御意見を承ったわけでございます。率省にお答え申し上げたいと思いますが、いかがでしょうか、せっかくいま微妙な段階でございますので、厚生大臣ときどき舌禍問題を起こしておるわけですから、この際慎重にものごとを取り計らいたいと考えておりますので、御意見を拝聴した、御高見を十分お聞きしたということでひとつ御了解をお願いしたいと思います。
  59. 小林進

    小林分科員 わかります。時間もございませんし、大臣の御答弁しにくいことはわかりますから私は深追いをしませんが、しかし大臣、これだけは覚えておいてください。前に大臣をおやりになっておるからこれは釈迦に説法ですけれども、最初中央医療協議会が、医者の報酬をきめようということで、三者構成で八、八、八、支払い側代表八名、医療担当者八名、学者の中立代表八名、二十四名で出たわけだ。ところが、二十四名ではどうも医療担当者の比率が損だ、中立委員というものはすぐ支払い側について医者の意思は十分表明できないというので、大もめにもめて、数年もめてどうにもならない。それで、中央医療協を改組しなければこの運営はできないといってこれを改組した6そして中立委員の八名を四名にして、八、四、八の二十名に縮小した。これでいいのかと言ったら、灘尾さんは、これでも心配だからというので医療審議会ですか、いわゆる専門家の協議会みたいなものをつくろうとしたら、それは屋上屋を重ねるからやめようということで中止した。それでもみにもみ抜いて二十名で発足した。今度はそれでうまくいくかと思ったら、どうですか、発足した第一回目に、医療費の問題で医療担当者のほうが中央医療協から脱退する、辞職する、出常をしないといって大もめにもめた。一回もスムーズに進行したことがないのです。それで二回目になって、お医者さんのほうがようやく医療協議会にも出てくださると思ったら、今度は反対側の支払い側が、御存じのとおり、全部脱退してしまう、出席はしない、厚生大臣の不信任だ、あなたがやめなければ出席しないなんて大騒ぎしている。だから、せっかく改組すればうまくいくということでもみ抜いて改組した、その改組した中央医療協が一回もうまくいっていない。お医者さんのほうが出席しないか脱退をするか、お医者さんのほうがうまくいけば、支払い側が脱退するか出てこない。そのうちには中立委員が辞表を出したり引っ込めたりして、これも一回もうまくいかない。一回もうまくいかないようなこういう法律は、害があって益がないのです。中央医療協というものは、観念的には考えてみたけれども、まずまずこの歴史が始まって以来満足にいったことがないわけです。そこにやはり本質的な欠陥があるのですよ。ですから、これをひとつよく考えていただいて、こんなものはそのままもっていったところで決してうまくいかない。ようやく支払い者側が出て話がうまくいったかと思えば、おそらく医療担当者側のほうで、また出てこないという問題が出てくるに違いない。医療担当者側、支払い者側、中立委員が辞表を出そうか出すまいかということで、有沢さんが怒った、何々先生が怒ったということで、またこんな話になってくることは目に見えている。それは、医療費というものを三者の構成できめようとするところに本質的な間違いがあるのですよ。だからやはり報酬賃金、俸給をきめる原則に立って労使対等できめる。これできまらなかったら、そのとき初めて、第三者機関、仲裁裁定なり調停機関なり、あるいは人事院みたいな第三者機関を設けてそこできめる、こういうことを考えられたらどうか。これは私は思いつきじゃないのですよ。医療費をきめる長い間の経験に基づいて私は申し上げるのですから、どうぞひとつ大臣、慎重にかまえて研究していただきたいと思います。  この問題はこれだけにしておきましょう。  次に私がお伺いしたいことは、例の慰霊祭の問題。これも終戦後いろいろなことがあったでしょうけれども、慰霊祭はずっと休んでおいて、一昨年からですか復活をした。一昨年は日比谷の公会堂でおやりになった。御承知のように、慰霊祭は、戦争でなくなられた犠牲者をお慰めしょうという国民的行事で、厚生省が主催でおやりになるということでございましょう。われわれも、実は国民的行事ですから、そこに政治が入っちゃいけないということで、非常にその点を慎重にかまえていただくようにお願いしたわけです。しかしその点、われわれの要望もいれられて、第一回は不完全ながら日比谷の公会堂でおやりになった。ところが去年の第二回目です。去年も日比谷の公会堂でおやりになるものと思っていた。ところが突然それを変えられて、靖国神社を会場にして慰霊祭をやられた。これは了承できないのです。靖国神社というのは一体何だ。そこでこの問題が非常に問題になりまして、国民的行事に反するのじゃないかということで、私どもは厳重な忠告を申し上げたのであります。当時は、内閣の法制局長官が林さんだった。いまやめて何とかいう人がなっておりますけれども、林さんも靖国神社で慰霊祭をやることに対しては疑義があるということで、ああいう茶坊主のような人でしたけれども、この問題だけには野党の言い分も非常に受け入れて、慎重にかまえられていたのでありますけれども、ことしは一体これをどういう形でおやりになるのか。私は順次聞いていきますが、大臣、靖国神社というのは一体法人格は何であるか、そこからひとつお聞かせ願いたいと思います。
  60. 神田博

    神田国務大臣 靖国神社の法的性格は、宗教法人ということになっております。
  61. 小林進

    小林分科員 おっしゃったように宗教法人ですが、靖国神社も宗教法人。伊勢神宮は何ですか。
  62. 神田博

    神田国務大臣 たしか宗教法人のような記憶をいたしておりますが、これは文部省の所管でございまして、決して逃げるわけではございませんが、御了承願いたいと思います。
  63. 小林進

    小林分科員 それじゃ私のほうでお教えしてもよろしゅうございますが、あれは特殊法人の宗教法人でございます。御承知のとおり、終戦後マッカーサーが来て、宗教というものを国の祭典としてはいかぬ、いわゆる国と宗教との関係は切り離さなくちゃならないというので、全部あれは特殊法人です。宗教法人はいわば私法人でしよう、どうですか。宗教法人は私法人でございましょう。公法人じゃないでしよう。
  64. 鈴村信吾

    ○鈴村政府委員 仰せのように、私法人だと解しております。
  65. 小林進

    小林分科員 そういうあいまいなことではいかぬのですよ。あれは私法人なんですよ。公法人じゃないのです。だから、いわば私法人であって特殊宗教法人。東本願寺も西本願寺も、あれはみな宗教法人、私法人なんです。それから天理教も、あるいは創価学会もみんな法人なんです。その私法人を、国民的行事を一私法人のところで行なうというところに問題があるのですよ。それをそういう法律上の解釈ができなくて、まだ総理大臣や何々大臣大臣に就任すると、神田先生もそうですけれども、伊勢神宮にお参りしなければならぬ、ああいうことをおやりになると、何か総理大臣と伊勢神宮というものは、国の欠くべからざる一つの行事のように考えられる。国民は錯覚を起こすのです。あんなのはそうじゃないのだ。だからあなたが伊勢神宮という一つの宗教法人、一つの私法人、伊勢神宮教というあの宗教を信じられて、あなたの信ずる神さまにお参りするのはけっこうです。それはけっこうだから、それを阻止する理由はないけれども、昔流の国教、国がつかさどる国の神社で国の大臣がお参りするような形を示されることは、これは新憲法のもとでは非常に迷惑なんです。これが新憲法下における新しい制度なんですから、そういうことを混合せぬようにしてもらわなくちゃならない。そういうことをちょいちょい為政者みずから間違いをおおかしになる。昔は、戦争などということになると伊勢神宮にお参りをして、かしわ手を打って、み国のたてとなり、ほことなるといって出ていったけれども、ああいう形をともするとそのまま残そうとするような間違いをおかす。河野一郎先生は、元旦にどうしても伊勢神宮にお参りしなければ気が済まないといってお参りする。あれは伊勢神宮教という一つの私法人を信仰していただいて、自己の信仰に基づいてお参りになるならけっこうですけれども、国務大臣が国事を行なう前に、国の元祖であるところの伊勢神宮をお参りするというような形を示されることは、国民に大きな誤りをおかすことになる。憲法を間違って国民に示すことになる。そういう間違いは厳として慎んでもらわなければならない。いいですか、私がこういうことを申し上げるのは、伊勢神宮のことを言うのではないのです。問題は靖国神社です。そういう意味で靖国神社は国の行事とは関係ないのです。何も関係ない。一個人の私の法人なんです。その私の法人で国の行事たるいわば慰霊祭というものを行なうことは、これは憲法上に混迷を来たす大きな間違いなんです。そういう間違いを、昨年は、法制局長官までもこれはどうも疑義があると言われるにもかかわらず、ああいうところでおやりになった。これは大きな私は間違いだと思うのでありまするけれども、一体ことしは、そういう間違いをまだおやりになる考えがあるのかどうか。  私はちょっと予算書を見ましたけれども、去年は、たしか慰霊祭をおやりになる費用は五百万円、ことしは一千万円、倍額だ。国民の血税の中から倍に値する金を取っておいて、私の宗教法人の宣伝をするような、そういう不謹慎な間違いは、私ども困ると思うのであります。そういう点について、明確に大臣のお考えをお聞かせ願いたいと思うのです。
  66. 神田博

    神田国務大臣 いろいろ御意見があったようでございますが、私も伊勢神宮を信じております。これは閣僚であるといなとにかかわらず、私は伊勢神宮を信仰しております。お参りしております。これは誤解のないようにしていただきたいと思います。靖国神社もまたしかりでございます。  そこで、ことしの慰霊祭の費用を去年の倍取っているということ、それからどこで慰霊祭をやるかというようなお尋ねでございました。一昨年は、いまお述べになりましたように日比谷公会堂、昨年は靖国神社の境内でやりました。まず、ことしは予算を倍ちょうだいしたということは、これは理由のあることであります。ということは、ことしは戦争が終わってちょうど二十年でございます。やはり私は、慰霊祭を執行するという場合は節々をつくっていいんじゃないか。われわれ個人にしましても、一年忌、三年忌、五年忌あるいは十三年忌だとか五十年忌だとかやりますが、とにかく戦争が終わって二十年、ここでひとつ節を入れて英霊を安らかにお慰めしたい、こういうことで予算が倍になった。この倍を来年も再来年も置くかということまで考えたわけじゃございません。ことしは二十年祭だから、特にひとつ節を入れて厳粛にやりたい、こういうことでございます。まだ予算をどういうふうに施行するかということは、今後の問題になるわけでございます。  それから式場をどこにするかということでございますが、今年はまだきめておらない、これからきめる、こういうことでございます。
  67. 小林進

    小林分科員 おっしゃるように、節々を設けて国民的行事をやりたいというその主張は、私は賛成です。それは二十年祭ですから、あの誤った戦争の思い出を改めて、そういう過去のあやまちがないようにしよう、あわせて国家の犠牲になられた方々の霊魂を心から弔っていこう、あらゆる山々の鐘、寺々の鐘を打ち鳴らして、国民的な敬虔な行事を設けるということは賛成です。一千万円では少ないですよ、五千万円でも、一億でも出しますからおやりなさい。それは非常にいいが、その行ない方というものは、国民各層各宗、何々宗にとらわれず、すべての国民が参加し、心から敬虔な祈りをささげ得るような行事でなければいけないと私は思うのです。いいですか、大臣、それが大切なところなんです。  そこで、私どもが最初から条件をつけたのは二つなんです。一つは、いま申し上げましたように、何宗何派を問わず国民の全部が参加し得るような行事にしてもらいたい。さっきから繰り返し申し上げるように、戦争中は靖国神社、伊勢神宮、いわゆる神道というものは宗教の上に存在する超宗教だといわれた。だからキリスト教であろうと、門徒宗であろうと、日蓮宗であろうと、みずから信ずる宗教の上に神道はあるものと思え、靖国神社には必ずぬかずけ、伊勢神宮には必ずぬかずけといって、御存じのように神道というものを強要したのです。ところが、自分の信ずる宗教が唯一絶対のものでなければ、信仰というものは存在しないのです。だから宗教の中でも、日蓮宗というものはやおよろずの神を包含している絶対唯一の宗教だと思っておる人、日蓮の教え、宗教を信ずる者は、靖国神社を信ずる必要もないし、伊勢神宮にお参りする必要もない。南無妙法蓮華経を唱えればやおよろずの神を全部信頼したことになるのだから、これでよろしいといって靖国神社や明治神宮に参拝しなかった。そうしたら東条さんに、おまえは不忠の者である、国の宗教を信ぜざる者であるということで監獄にぶち込まれた。ぶち込まれてその人は獄中において死んだのです。戦争中はこういう宗教の圧迫が至るところで行なわれた。それは牧口という人です。その死んだ人の考え、宗教の教えを説いたのがいまの創価学会です。創価学会の初代というのはその人です。彼は神道を信心しなかった、靖国神社にお参りしなかった、伊勢神宮にお参りしなかった。おれは、伊勢神宮を信じ、靖国神社を尊敬するがゆえに、その上に超然たる日蓮宗のために生きるのだと言ってお参りしなかった。それはおまえ不忠だということでぶち込まれて死んだ。ぼくは宗教の原理を説くのですよ。そのように、戦争中そういう超宗教的な教えを強要しても靖国神社にお参りしなかった。ところが、戦争が済んだら、憲法に基づいてその宗教の栄誉ある組織というものは瓦解してしまった。靖国神社も一宗教、伊勢神宮も一宗教、日蓮宗も一宗教、キリスト教も一宗教、なんまんだぶつも一宗教、大本教も一宗教、これはみんな並列した対等の宗教になったのです。ですからいまは、日蓮宗を信ずる者は、何で靖国神社にお参りする必要があるかということで、われわれの宗教が正しいと思えば靖国神社にお参りしませんよ。キリスト教が唯一絶対の宗教だと思っている者は、伊勢神宮にはお参りしません。これがいまの日本の宗教のたてまえなんです。あなた方が一私法人の靖国神社でそういう国民的行事をおやりになるとすれば、靖国神社という宗教法人を信ずる人たちは、喜んで、あなたのように靖国神社にお参りするでしょうけれども、ほかの宗教を信ずる人はお参りしません。だから現実に、去年はもろもろの人たちがお参りしませんでした。私の子供は国のために死んだ、その私の死んだ子供のために国が宗教行事をやってくださるのはありがたいけれども、靖国神社という、われわれが信仰しない、われわれが反対する宗教法人でその行事をお祭りするならば、われわれの宗教の教えに反するから、国が行なうかわいい子供のお祭りには参詣したいけれども、みずから信ずる宗教の道に反するがゆえに、私は靖国神社にはお参りできないといって多数の国民は行かないのです。キリスト教徒も行きません。日蓮宗の信者も行きません。自分の子供をなくし、自分の夫をなくし、自分の親をなくした、そういう方々がたくさん行かないのですよ。それを、宗教的においがない、国民的行事を行なう適当な場所である日比谷公会堂でおやりになったときは、これは宗教的感じがありませんから、何宗教を信ずる者でもみんなあなた方のおやりになった行事に賛成しておいでになった。
  68. 相川勝六

    相川主査 小林君、時間がはるかに超過しましたから、どうか結論をひとつ……。
  69. 小林進

    小林分科員 はい、わかっております。もうやめますが、大臣、いいですか。これは国民的行事の重大な問題ですよ。そこをひとつ混同しないようにやってください。何宗教、何信仰を問わず、子供をなくした遺族が喜んで参加できるような場所で慰霊祭をやるという、この原則をきめてください。これはあなた、間違っているのです。それをおやりにならなければ、とても二十年のお祭りなどはできません。それが一つです。  いま一つの条件は、好むと好まざるとにかかわらずいまは政党政治なんです。だから、英国あたりの国民的行事になりますと、光栄ある野党の第一党の代表というものをそうした国家的行事、国民的行事には必ず席を設けて参画せしめる。ところが、日本の民主政治にはそれがない。だからこういう国民的慰霊祭をおやりになったときには、だれが出ますか。総理大臣、それから衆議院議長、参議院議長、それから三権分立だから最高裁長官が出る。それで国民的行事ができたものとお考えになっておる。光栄ある野党の党首というものが参画する余地がない。これがいわゆる官僚的なものの考え方なんです。三権分立だから、行政府の長官、立法府の長官、それから司法府の長官さえ出れば、それで国民的行事だと思っておる。光栄ある野党の党首を国民の代表として参画せしめるという考えがない。こんなことではだめなんです。参画した者はみんな、国民的行事だから野党の代表の先生方もおいでになると思ってのこのこ行ったにもかかわらず、あんなおもしろくない池田勇人みたいな顔ばかり、船田中とかそんなのがいたり、どうも国民的行事の感じがしないではないかと言っている。やはりそういうことは、国民の胸に響く、こういう国民感情というものを考慮しなければならぬ。お祭りごとなんというのは、そういう国民的感情というものをちゃんと見抜いてやらなければならぬ。そういう点をひとつおやりになる気があるかどうか。この二つの条件についてどうか。靖国神社なんという一つの法人、他の宗教が参画できないような、そういう場所を選ぶことは厳にひとつやめてもらいたいということで、お答えを願いたいと思います。
  70. 神田博

    神田国務大臣 ただいま小林さんから、なかなかうんちくのある御意見を承りまして、非常に参考になりました。私ども今後行事を行なう上の一つの御議論だと考えております。先ほど来お答え申し上げましたように、まだ場所等もきまったわけじゃございません。今後検討いたしまして、ひとつ一またこれについてはいろいろ御意見もございますから、小林さんのような御意見の方もあれば、またそうでない御意見もあると思います。十分ひとつ御意見を取捨いたしまして、そして公正に決定をいたしたい、かように考えております。  また、式次第等についてもこまかい御配慮がございましたが、十分検討していきたいと思います。
  71. 小林進

    小林分科員 大臣なかなか慎重にかまえられて、私の要求するような回答をお出しにならぬ。非常に残念でありますけれでも、時間がありませんからこれ一つで終わりますが、実は援護局長、去年あなた方が靖国神社でおやりになったときには、結果はよかったのですか、国民の反対の声はありませんでしたか。当時おやりになったときも国民の反対があったものですから、靖国神社の境内をお硬いにならないで、あの広場の中の露天に天幕を張っておやりになって——それはそうでしょう、やはり世論はおそろしいから、あなた方もずいぶん気を使って遠慮せられておやりになった。その結果は、いま申し上げましたように多くの人が行かなかった。現に私どもの知っている遺族なんかたくさんいるのです。いるのだけれども行かない。せがれの行事をしていただくのはありがたいけれども、私どもは他宗へお参りすることを禁ぜられております。みずからの宗教をお参りするようにしか教えは説かれていませんから行きませんと言って、多くの人が行かなかった。それが一つ。それからお参りに行っても、あの広場の天幕の中に入って、そして大臣や何か立ったけれども、うしろのほうでは話も何も聞こえないし、さっぱり宗教らしい荘厳さとか威厳さがないと言うのです。話も聞こえなければ、せっかく笈を負うて行ったけれども期待に反したことが多かった、こういうことを言っておる。実際あなた方、主催された方としてどうですか。靖国神社でおやりになって効果があった、十分な演出的効果があったとお考えになるかどうか。あなた方、そばにいて、大臣によく当時の状況考えて進言して、誤りをおかさないようにしなければなりません。どうですか、去年の結果は反対者がどのくらいありましたか、世論がどのくらい強かったか、それをあわせてお答えを願いたい。
  72. 鈴村信吾

    ○鈴村政府委員 昨年靖国神社の境内の一部を借りましていたしたわけでございますが、法制局等の御意見も十分伺いまして、大村益次郎の銅像の前で、しかも天幕を張りまして、靖国神社の施設等が背景にならないように区画を設けてやったわけであります。いまおっしゃるような宗教的な関係の方からの反対ももちろんございました。それから若干都電の音が喧騒であるというような御意見も確かにございましたし、いろいろ批判もございました。もちろん非常に賛成する方もあったわけでありまして、賛否両論というのが実態かと存じます。大臣が先ほど申されましたように、本年の行事につきましては慎重に検討してきめたいというふうに考えておる次第であります。
  73. 小林進

    小林分科員 もう時間もありませんから、これで終わります。大臣、お聞きのとおりです。国民的行事が賛否両論というのは、あまりほめたことではありません。いまお話しのように、大村益次郎の銅像のところに天幕を張った、実にそれは権威のない話なんだ。そういうことを繰り返さないように大臣の御努力を切にお願いいたしまして、私の質問を終わります。
  74. 相川勝六

    相川主査 午前中の厚生省所管に対する質疑はこの程度にとどめます。
  75. 相川勝六

    相川主査 次に、昭和四十年度一般会計予算及び昭和四十年度特別会計予算中労働省所管を議題とし、質疑を行ないます。  なお、質疑者に申し上げますが、質疑持ち時間は一応三十分程度となっておりますから、御協力をお願いいたします。  吉村吉雄君。   〔主査退席、井村主査代理着席〕
  76. 吉村吉雄

    吉村分科員 きょう私は、職業病のうちの騒音性の難聴の問題についてお尋ねしたいと思うのです。この間、本会議における質問で、私が石田労働大臣を老獪にして巧妙なということを申し上げましたらたいへん御立腹のようでございますから、きょうは練達たんのうな石田労働大臣お尋ねをしたい、こういうふうに考えます。  実は、職業病につきましては各方面からたいへん今日注目を受けておるわけですけれども、労働者が長い間労働をすることによって資本からの収奪を受ける、そればかりではなしに、自分の身体までむしばまれる、こういうことが非常に多いことは御存じのとおりです。これを救済するために労災補償法があるわけですけれども、私がいま取り上げようとするのは、 この労災補償からの適用、それすらも受けられない、その理由は政府の怠慢からその適用も受けられないで苦しんでいる三十万ないし四十万というふうにいわれますけれども、これまた政府のほうの怠慢から、実際の数字は明瞭になっておりませんけれども、騒音性の難聴、このことについて、労働大臣はきわめて練達たんのうな大臣ですから、いままでも労働大臣に何回も就任をされておりまするので、この騒音性難聴というものを大臣自体は一体知っておるのか、どういうふうに認識をされ、どう対処しようとしておられるのか、まずその根本的なことをお尋ねしておきたいと思うのです。
  77. 石田博英

    ○石田国務大臣 たいへんおことばに御注意をいただきまして恐縮でございますが、私が気にしましたのは、私はまだ若いつもりでございますから、老ということばを使われたのを心外と思ったのでございます。  いまの御質問でありますが、各事業場、作業場において、その作業の性質あるいは設備の不完全その他の事情から非常な騒音を発するものが実在し、その騒音によって聴神経に異常を来たし、そして難聴という状態になる労働者諸君がかなりあるということは、よく承知いたしております。これに対しましては、そういう症状を呈しました人々に対して、労災補償法によって適切な処置をとることはむろんでありますが、それ以上に、やはりそういう症状を起こさないように、職業病が発生しないような予防措置をとることが必要であると考えておるのでありまして、ただいま、たとえば造船所あるいは金属機械工業というようなところについての実情を調査いたしますと同時に、それらに対する具体的な予防措置の指示等につとめておるところでございます。
  78. 吉村吉雄

    吉村分科員 騒音性の難聴ばかりでなしに、労災補償法によりますと、難聴については適用をして救済をするという条項がございます。それで、この労働者災害補償保険法が施行されてから、いわゆる騒音性難聴によって適用を受けて、そして救済、補償金がもらえたというような例は何件くらいになっているのか、事務当局から伺いたい。
  79. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 たいへん恐縮でございますが、ただいま難聴で補償した数を手元に持っておりませんので、さがしておりますから、しばらく御猶予を願います。
  80. 吉村吉雄

    吉村分科員 時間がかかるようですから、ではその次にお尋ねいたします。  労災保険法の施行規則の別表第一に、障害のいろいろな事例をあげて、これは何日分というようなことが書いてあるのですけれども、この中で難聴の問題についてだけは、ほかの条項と違った表現がとられておるわけです。どの条項とも「鼓膜の全部の欠損その他により両耳の聴力」云々、こういうふうに書いてあります。このその他の事由によりという表現が使われておるのは耳に関することだけなんです。全部調べてみましたら。これは一体どういう理由でこういうふうになったのか、これもお尋ねをしておきたいと思うのです。
  81. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 施行規則別表第一が制定せられましたのは非常に昔のことでございまして、そのときの正確なるいきさつは私も承知しておりませんが、ここに「その他により」という表現が人っておりますのは、鼓膜の大部分の欠損だけではなくて、難聴につきましては非常に複雑な要因がありまして探求し尽くされておらない点もありますので、包括的にいわゆる難聴を含ましめるために「その他」という表現を使ったのだと思います。
  82. 吉村吉雄

    吉村分科員 そういたしますと、耳に対するところの障害についてだけその他の事由というふうに入っておるのは、難聴ということを騒音性難聴あるいは化学薬品によるところの影響、こういうものを事前に想定をしておるというふうに考えていいだろうと思うのです。私、そのようにこれは理解をします。  そこで、さらにお尋ねをしたいのは、耳の障害については十一級どまりで、あと十二、十三、十四は該当の事項がないわけです。これは一体どういうわけなのか、これもひとつお尋ねしておきたいと思います。
  83. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 障害等級の十三級、十四級につきましては、御承知のごとくたとえば手の指が一本なくなったというようなケースでございますが、難聴につきましては、多少耳が不自由であるというものは非常にたくさんございます。それにつきまして職業病に基因するものであるかどうか、また労働にどう影響するかという点につきましては、一般的な場合といたしまして何とも言いがたいので、相当ひどい労働能力に影響する程度のもの以上を含めておるという趣旨と存じております。
  84. 吉村吉雄

    吉村分科員 そうしますと、相当程度という、その判断の基準が非常に問題になると思うのです。大体この十一級というのは、私の調べによりますと、六十デシベルのところで区切ってあるというふうに説明されてあるのを聞いておるのですけれども、大体そのように理解していいのですか。
  85. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 ただいまのところでは、六十デシベル以上七十デシベル未満というふうになっております。
  86. 吉村吉雄

    吉村分科員 これはお医者さんでなくてはわからないと思うのですけれども、六十デシベル以下四十デシベルあるいは三十デシベルで日常の生活に支障がないかどうかということについて、これは検討されたことはございますか。
  87. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 その点につきましては、吉村委員も御承知のごとく、難聴の障害等級及び認定方法すべてについて非常に問題がたくさんございます。労災保険審議会の中で専門家会議を設けまして検討をいたしておりまして、現在の等級の定め方が争う余地のない確固不動のものではない、結論の出次第改める可能性のあるものというふうに考えております。
  88. 吉村吉雄

    吉村分科員 この専門家委員会というのですか、専門家会議というのはいつ発足しましたか。
  89. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 専門家会議は、最初三十一年に専門委員会として発足いたしまして、三十七年に専門家会議というふうに切りかえまして、若干委員の構成等も改めた次第でございます。
  90. 吉村吉雄

    吉村分科員 大臣、ちょっとここで注意をしておいていただきたいのですけれども、この専門家委員会あるいはその後会議というふうに変わったそうですけれども、発足してから約十年になろうとするわけです。私は、こういったものをつくって、それで専門的に検討していこうというそのこと自体には全く賛成なんです。しかし、五年も十年も放置されているとするならば−放置はしていないとしても、結論も何も出ないでずっと引き続いておる。いままで私がこのことについて何回か調べましたけれども、ほとんどと言ってもいいくらい、同じ状態の中で議論が続けられておるようでございます。そうなってまいりますと、労働省としては、これらの問題についていろいろ世間がやかましくなっている、したがって、このような委員会をつくることによって隠れみのにしているのじゃないかという疑いを持たれてもやむを得ないだろうと私は思う。ですから私は、この際大臣に特にお尋ねをしておきたいのですけれどもこの種委員会が幾つもできるのはいいのですけれども、五年も十年も放置しているということについて、放置ではないにしても結論が出ないということについて設置の目的にかなっているのかどうか、こういうことについて大臣はどのように考えられるか、お尋ねをしておきたい。
  91. 石田博英

    ○石田国務大臣 御説のとおり、時間がかかり過ぎるという感じは私も同感であります。あまり時間がかかるということは、むろん設置の目的にかなってはおりません。問題によっては簡単に結論の出ないものもむろんございましょうけれども、でき得る限り早く結論を出すように進めてまいりたいと存じております。  なお、ただいまの御指摘の難聴、職業病についての専門委員会の結論は、ごく近く出る予定でございます。
  92. 吉村吉雄

    吉村分科員 近く出るということなそうですか、この近く出るというのは、二年くらい前にも同じような話がありましたので、これも信用していいのかどうか私もわかりませんけれども、とにかく発足をしてから八年も九年も過ぎて、そうしてまあここで私が指摘したからではないだろうと思いますけれども、近く回答が出る、こういうお話ですが、そういう状況にあるとするならば、今回この労災保険法については改正の機運にもあるわけです。そういう中で全面的な、いま回答が出そうな問題について取り入れてやっていくという、そういう努力と熱意というものがあって、初めて言っていることとやっていることが一致すると私は思うのです。そういう点はどうなります。
  93. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 難聴の専門家会議につきましては、御指摘のごとく非常に時間がかかっておりまして、私どもとしましても、専門家の委員の方々にできるだけ早く結論をお出しいただくようにたびたびお願いをしております。ただいまの見込みでは、本年度一ぱいには各先生方が研究をしておられる事項の結論が出るので、それを急遽まとめるというような手はずになっております。先生方も、そういう時間的な進行でできますというふうにおっしゃっていただいております。したがって非常に近く、十年越しの難問題でございましたが、結論が出るかと思います。  それからなお、労災保険法改正との関連の御質問でございましたが、現在の十四等級に分けております障害等級表そのものが、かなり古いものでございまして検討の要があるということ、現在厚生省と労働省と共同いたしまして障害等級表全般の再検討をいたして、もっと近代的なものに改めたいというわけであります。これは法律そのものではございませんで、規則でございますので、今回の法律そのものには載りませんが、かつまたこれもむずかしい問題でございますので、半年やそこらでは結論が出ないと思いますけれども、早急に全般的に洗いたいと思っております。しかし難聴の問題につきましては、あと一、二カ月で結論が出るということでございますので、その全般検討とは切り離して、結論の出次第それに従った処置をいたしたいと考えます。
  94. 吉村吉雄

    吉村分科員 大国、実は私は、二、三の難聴に苦しんでいる話を多く知っておるのです。現在の六十デシベルを境にして適用するということでは、先ほどから調べていますけれども、私は、この法律が施行せられてからでもほとんどその適用者は少なかろうというふうに推定をします。どうしてそうなるかと言うと、やはり六十デシベル以上というところで切ってあるところに問題がある。そこでいま全造船その他の関係の労働組合からは、二十五デシベル以上くらいから適用しろという要求も出ておることは、労働省でも御存じのとおりだと思うのです。私の知っている範囲では、とにかく長い間騒音を発する職場におって、そうしてこの適用申請をしてみた人の例を言いますと、ほとんど話ができない。うちへ行って女房と話をするのも困る。家族の者からは、おとうさんはつんぼなんだからと言ってばかにされる、そういうような人でも現在のあれでは適用にならないというのが実情なんです。それを何とかしてもらいたいという要求がずっと前からあって、専門家会議になったんだろうと思うのですけれども、八年も九年もこのままになっておる。ですから、現在の状態の中では、これらの問題を担当する労働省としては、これではやはり酷過ぎるとか、もっとどの程度から適用しなければならないと思うとか、そういう一応の見解というものはあってしかるべきではないか、私はこういうふうに考えますので、そういう点についてはどのように事務当局として判断をされておりますか。
  95. 石黒拓爾

    ○石黒政府委員 六十デシベルというのが過酷であるという御意見につきましては、そういう見解も専門家の中にももちろんあるわけであります。ただ、そもそもこの測定方法につきまして、六分法がよろしいか三分法がよろしいか四分法がよろしいか、これにつきましても学界で非常に争いがある。この測定方法を変えることによりまして、デシベル値それ自体を変えなくても非常に結果が異なってまいります。それからもう一つは、そのデシベルではかるだけではなくて、言語をどの程度明瞭に聞き得るか、大きな音、小さい音は聞くけれども、そのことばの区切りがはっきりわからないという問題もあるわけでございます。それとかみ合わせて一緒に測定しなければならないのではなかろうかという意見も有力にあります。その測定方法がどうかということになりますと、これまた定説がなくて非常にむずかしい。そういうことで非常に時間をとったわけでありますけれども、そういう問題を全部御検討の上で近く御結論をいただくということでございます。
  96. 吉村吉雄

    吉村分科員 お医者さんの中でもいろいろ議論がある問題だそうです。しかし、だとしますならば、外国にもそういう先例というものもあるはずです。外国でも困っておるところもあります。しかしアメリカ合衆国あたりも、各州ごとにそれぞれの補償制度というものがある。その中では相当参考にしていいものもあるはずです。これは別にアメリカ人だから、日本人だからといって、そう差異のあるものではなかろうというふうに考えるわけです。私が特にこのことをこの分科会で申し上げようとするのは、とにかくこういったことで非常に多くの人が苦労しておる。労働省が一度調査をした数字もある資料で読みましたけれども、労働省の調査によると、大体十二万何千人ということだそうです。しかし、これはある部分部分の事業所を調査した推定値でございますから、ほんとう数字ではないというふうに私は思うのです。おそらく全国的に言えば三十万から五十万の人が苦しんでいるであろう、こういうふうにいわれておるわけですから、したがってこういう問題については、ひとつできるだけ早い機会に結論を出して、そうしてそれらの人たちの困難というものに対して経済的に少しでも援助していく、こういう制度を確立していくというのが労働省の本来の仕事だというふうに思うのです。私はそういう事務的な話でこのことを質問したわけですけれども、事は事務的でありますが、これに該当しておる人たちの苦労というものはとても容易なものではない。これだけはひとつ大臣にも十分に肝に銘じていただいて、近く結論が出るということだそうですから、この結論につきましては尊重していかなければならないでありましょうけれども、ややもすると学者あるいは専門家の立場でだけ議論をしておって、毎日の日常生活に困っておるという実態を無視されるきらいなきにしもあらず、こういうふうに考えますので、もっと実態というものを調査した上で、非常に苦労をしておる、こういうことを考えてこの制度を改めてもらいたい、このように考えますけれども大臣のそれらに対する決意といいますか、今後の方向といいますか、それをお尋ねしておきたいと思うのです。
  97. 石田博英

    ○石田国務大臣 六十デシベルというのが、どの程度の難聴であるか私にはわかりません。しかしながら、単に学問的な問題だけでなくして、実態に即してこれを実施しなければならぬという御趣旨は賛成でございます。そういう趣旨にのっとって善処いたします。
  98. 吉村吉雄

    吉村分科員 労働大臣のそういう見解に私は信頼をしていきたいと思うのですが、大臣が前の労働大大臣当時から問題になっていた問題です。私は、こんなに長くかかるというばかな話はない、大体労働省が熱意がないからじゃないかということを再三指摘もしてきましたし、この会議が開かれた回数だって、たいした回数開かれているわけでもないのです。ですから、このことについては、何かいろいろの問題があるとそれにふたをするように、専門機関で検討する、検討するというようなことをやるのじゃないかという疑いすら私は持ってきたのですけれども、いまは、結論が出るという話ですから、その結論を待たなければならないと思いますけれども、強く要望をしておきたいのは、いま申しました実情に即したそういう施行規則の改正をやってもらいたい。でき得ることならば、今後の労災法の改正の中でそういうようなことがある程度芽が出る、こういうようになっていなければならないというように私は考えておったわけですけれども、他の職業病との関連もあるでしょうから、これ以上は申し上げません。しかし、施行規則の改正だけで済む条項もあるわけですから、私がいま申し上げましたことを十分に実情を考慮された上で、できるだけ早い機会にこれらの方々に救済の道を講じていただくように特に要望したいと思うのです。いいですか。
  99. 石田博英

    ○石田国務大臣 承知いたしました。
  100. 井村重雄

    ○井村主査代理 午前中の質疑はこの程度にとどめます。午後は本会議散会直後再開して、自治省所管に対する質疑を続行いたします。この際、暫時休憩いたします。    午後零時三十四分休憩      ————◇—————    午後三時五十二分開議
  101. 相川勝六

    相川主査 休憩前に引き続き、会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算及び同特別会計予算中、自治省所管を議題とし、質疑を行ないます。  この際分科員各位に申し上げます。質疑持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめることになっておりますので、右御協力を願います。  なお政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますので、答弁は的確に要領よく簡潔に行なわれますよう、特に御注意申し上げます。  上林山榮吉君。
  102. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 私は消防関係について、特に質疑を試みてみたいのであります。消防とこう一口に言いますけれども、これは火災が起こったときは、ひどいときは命がけで防火につとめなければなりませんし、火災のないときは火災がないようにという予防のために、これまた苦労しておるわけです。ことに災害基本法ができてからは、水害あるいは風水害、あらゆる災害に対しても法の規定するところによって、それぞれ広範なるむずかしい仕事をしておるわけです。しかるにこれに物質的にも精神的にも十分に報いているかというと、私は必ずしも十分に報いていない、こういうように考えまして、従来からこういう問題について政府にも再三要望してきた一人でございます。  まず第一に私がお伺いいたしたいことは、消防を充実するために、その設備の基準というものを定めまして、自治省が、あるいは消防庁がそれぞれ指導をし、あるいは法の整備なども加えまして、それぞれ国としても相当の応援をしてきておることは私、承知をいたしておりますが、いつまでの間にあの設置基準を完成するつもりであるか、しかも現段階においてはどれくらい、まず全国平均は設置基準を目標にしてどの程度の整備ができたか、それから一番よく整備をしておるところと一番悪いところは、どの程度の整備基準になっておるか、このことからまずお聞きしたいのであります。
  103. 川合武

    ○川合政府委員 消防力の基準に照らしまして、現段階の消防力は全国平均いたしまして、ポンプについては五九%という状況でございます。昭和三十六年から十年の計画をもってやっております。十年の計画をやっておりますが、はなはだ残念でございますが、その十年計画につきまして現在まだ五九%の達成の状況でございます。なお最高のものはほぼ八〇%くらい、最低のものは、私ちょっと推定でございますが四割程度であろうかと存じます。
  104. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 最高とか平均とかいう点は、ほぼあなたのおっしゃるとおりであろうと思いますが、最低のほうは四割もいっていないところがあるわけですね。ことに中都市において、あの設置基準からいきますと、消防車が三十六台なければならぬ。それが十六台しかない。これは四割にならないでしょう。中都市でそういう状態であるから地方の小都市もしくは町村に至っては、もっとひどいのではありませんか。その点はどうです。
  105. 川合武

    ○川合政府委員 御承知のように消防力の基準は、各都市、各町村別々に具体的に判定をいたしまして、個別に基準を立てております関係から、案外に中都市が対象が多い。お察しのように町村は対象が少ない。そのわりに消防力の充実が来たされていないというために、中都市に非常に低いというところはあるかと存じます。町村におきましてもむろん非常に低いところがございますが、そのわりに町村が必ずしも低いとも申せないかと存じます。
  106. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 非常に答弁が抽象的ですけれども、大都市に化学消防車とかあるいはその他近代的ないろいろな設備をされたことは、私は多といたします。化学消防というものが、近代消防の一つの新しい方向として充実しつつあることはことに大都市なりあるいはそういう危険物の多い、いわゆる工場地帯などに対する消防庁ないし自治省の考え方は、これはことしの予算面を見てもふえておるので、この点は私は非常に前向きのいい姿勢だと思って及ばずながら楽屋裏では私ども応援した一人でございますが、しかしいま言うように中都市においても基準が非常に低い。ことに小都市、町村においては、この充実が平均してまだ悪いのです。そこでこれを何で補おうとしておるかというと、言うまでもなくいわゆる自衛消防といいましょうか、義勇消防といいましょうか、非常勤の人たちが、国の幾ぶんかの補助と町村の補助とその部落の人々の応援を得て、寄付金を得て、消防車を買い、それぞれ無理をしてやらなければならぬというのが、現在の状態なんです。私は国だけの力で消防を全部充実せよとか、あるいは府県、町村だけでこれを充実せよと、必ずしも言うのじゃないのです。それはバックボーンとして、一つの大きな消防充実の柱が通っておれば、方法はどんな方法をとってもいいとは考えるのですけれども、しかしいま申し上げるようにちぐはぐです。あなた方の指導方針あるいは消防庁の指導方針もちぐはぐなんだ。金がないからしかたがないから、ある程度はやるけれども、それ以外は自衛消防にまかしておかなければしょうがない。ところが自衛消防に対するカバー、応援が足らない。これは私はまことに残念だと思うのです。どうでしょうか。もう時間がないですから、端的に言って、いわゆる設置基準にはるかに足らない、一八〇%があるかと思うと、あなた方は四〇%と言うが、三〇%のところも事実ある。こういう状態はどこに欠陥があると思いますか、大きな隘路は。一口でいいですよ。
  107. 川合武

    ○川合政府委員 その点につきましては国、市町村ともども、さらに努力が足りないというふうに思うのでございます。
  108. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 これは国も県も市町村もその地域の人々も、みんなが精神的に消防というものはお互いが守らなければならぬといういわゆる意識に徹底することが第一でしょう。第二は、何といったって設置基準を充実するためには、いまの消防車等の設備に対する三分の一の補助を、思い切って三分の二にするというように、大幅の補助金引き上げをやっていく。こういうことをもっと徹底して一つは考えるということではないでしょうか。いまの三分の一を、せめて二分の一は国が持ってやる。設置基準に達する間、十年間はせめてひとつ五割の国庫補助をやる。これは普通の補助と違います。これは地方におって実際郷土を守り、災害を守り、火災を守りしていくこの公共的な情熱というか、これに対しては国が二分の一くらいの補助を、この基準が充実する間だけはやりますよ、それで頼みますよ、というくらいの消防庁あるいは自治省、大蔵省−きょうは主計官はお見えになっていないようですが、そういうところをもう少し考えてもらわなければならぬというのが第一点です。  それから第二点は、もう私から申し上げますが、これにあとから答えてください。第二点は、常備消防はいまは申し上げません。これも充実することがいいのでございますが、これはさておいて、さっき申し上げた非常勤、自分で農業をやっている、商業をやっている、工場につとめている、そういう人たちがそれこそいざというときには、命がけで働かなければならぬわけでしょう。この人たちに対する物心両方面の待遇というものが、あまりにも低いと私は思うのです。だから私は自治省に伺いたいことは、これは残念ながら特別平衡交付金が、積算の基礎には消防も入るとか何も入るとかいうふうにやっていますけれども、それが市町村役場にいくときには、それにも使いますでしょうが、結局これが明確を欠くために、ほかの必要なものに流用されて、消防の充実あるいはそうしたような人たちの待遇の改善というものに回っていかないです。だからこの辺をひとつしっかり考えてもらいたい、こう思うのです。  それから第三番目には、これはいま申し上げたように、私どものように率直に言うほうは楽なんですけれども、あなた方になるとほかとの比較をする考えがあるからね。同時にまた大蔵省としても、同じような気になって削ってしまうというくせがあるわけですが、これは交付税の積算の基礎をただ増すというだけでなくて、もっと明瞭な方法をとれないかということを含んでの質問ですが、これは消防に使いなさい、あるいは待遇改善に使いなさい、こういうことなんですが、この点からまずお答え願っておきます。
  109. 川合武

    ○川合政府委員 御指摘のとおりだと思いますが、現在、たとえば例にとりまして、消防団員の手当でございますが、一回二百円ということでございます。来年度は、まだ最終の決定というところではないかもしれませんが、大臣のお許し、御決断を得ておりますのは、三百五十円に引き上げていただくことになっております。また消防全般の単位費用は現在四百四十七円でございますが、来年度は五百三十九円、すなわち二割増ということにしていただいておるわけでございます。全体の交付税のワクと申しますか、並びに単位費用におけるところの積算の基礎の、たとえば先ほど申し上げました出動手当等にも、率直に申しましてまだ不十分とは思いますが、前向きに努力しておる次第でございます。
  110. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 大臣が非常に御苦心をいただいておるのは、私ども敬意を払うわけですが、二百円の出動手当を三百五十円に引き上げた、これは率からいいますと相当の割合の増なんですね。しかし最初が二百円なものだから、三百五十円に引き上げてみたところで、それこそ昔の義勇消防といいましょうか、義勇消防の精神に返らなければ、とてもこんなものではやれないわけなんです。しかし義勇消防に返っても、たくさんの子供をかかえている消防団員、たいていが中堅層の働き盛りですが、その人たちが職場をほうっておいてやらなければならないのです。そういう場合については、ことしできなければ、四十一年度はさらにこれを大幅に上げてやろう、ひとつこういう前向きの姿勢で御奮闘を願っておきたいと思います。われわれも応援を申し上げます。どうかそういう趣旨でこれもやってもらいたいと思います。  なお退職消防団員の報償に必要な経費が盛られておりまして、私ども多とするのでありますが、非常勤消防団員が退職報償金をもらえるのは、いま十五年以上でしたね。これも私は五年以上と言いたいけれども、そんなに一ぺんに飛躍的にできないとすれば、月給をもらわずにやっているのですから、せめて十年以上の者に対しては私は退職報償金を出していいと思うのですが、この点は前向きにお考えになったのかどうか、あるいは大蔵省との折衝は難航したのか、その点をひとつ……。
  111. 川合武

    ○川合政府委員 財源の点につきましては、これは地方交付税の措置で行なうわけでございますが、先生承知のように何ぶんにも本年度から実施いたしましてまだ一年にも満ちませんので、残念ながら完ぺきな形になっておるとは思いませんが、お話の点を十分体しまして、前向きで進んでいきたい、検討いたしたいと思っております。
  112. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 それから私は特に思いやりが足らないと思いますのは、消防団員の遺族年金制度がないということです。ほかの公務員にしろ、その他のいろいろなものにしろ、いろいろと待遇されているのですが、これらの人が、たとえばけがをして死んだ場合どうなりますか。その当座は現職の警察官に準じて相当待遇をしておりますが、これも私はまだ足らぬと思うのですけれども、しておりますが、いずれにしましてもその遺族に対しては何もないのですね。しかも三十代、四十代、今日は団員がなかなか獲得できないというので、やむを得ず五十代の人もやっておりますが、主として三十代、四十代の子供のいる家族で、もし団員がけがをして死んだ場合においては、これはもっと考えてやっていいのではないか。たとえば消防団員の遺族年金制度の創設、こういうものを考えたことがあるのかないのか。ただ義勇消防一本やり、財源がないの一本やりでは、これは私はしっかりやってもらいたいという激励のことばがなかなか出ないのじゃないかと思うのですが、この点、いかがでございましょう。
  113. 川合武

    ○川合政府委員 現在殉職といいますか、なくなった方に対しましては、公務災害補償としての措置、それから特別功労のありました場合におきましては賞恤金というような制度がございますが、いまお話のように、これの精神的な処遇といいますか、そういうような形では、まだ十分でないと私も存じます。あげられました年金の問題でございますが、考え方といたしまして私ども消防団は郷土愛が基本原理でございますから、個々の行為に対しまして多額の労務報酬をうんとはずむことには限界があるにしても、お話のようになくなった方に対しましては、われわれもさような特別な年金というような考え方をして、これに報いなければならないという考えでございます。財源その他に大きな問題がありますけれども、真剣に取り組みたいと思っております。
  114. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 消防団員がなくなった件数、ことに非常勤の消防団員がなくなった件数は一年に幾らくらいですか。
  115. 川合武

    ○川合政府委員 年間平均いたしまして約三十名でございます。
  116. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 義勇消防なら義勇消防一本やりで、日本の消防がやっていくのだというなら別です。一方には常備消防というのがある。市町村の自治体消防があるわけでしょう。これと比べてみなければならぬ。一方にはあなた方設置基準をつくっておって、こちらを充実していこうとするわけでしょう。こちらは月給をもらっている。また警察官にしても月給をもらって、そういう公務を執行しているのです。こちらのほうはもらっていないでやっているわけです。だから私はまず第一点聞きますが、現職の警察官が公務でなくなった場合と消防団員が公務でなくなった場合、その待遇はどういうふうに違うか、それを簡潔に説明願いたいことと、それからいま一年に三十名、月給もくれないでおいて大事な人の命を公のためとはいいながら失っている者に対して、いわゆる消防団員の遺族年金あるいはこれに類した制度の創設がないということは、私はほんとうに末端に血の通う行政が行なわれていないという気がしてならないのです。この点、いかがですか。
  117. 川合武

    ○川合政府委員 消防団の殉職いたしました場合、警察官と対比いたしまして、ここ二、三年、この点につきましては改善を加えておりまして、むろんその立て方が違いますから、比較は困難でございますが、警察官がなくなりました場合と消防団がなくなりました場合との処遇というものは、おおむね同一水準にまで至っております。なお年金等、根本的な処遇の問題につきましては、ただいまの御激励もございましたので、私どももさらに努力いたしたいと思います。
  118. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 私が申し上げた消防団員の遺族年金制度の創設、これは消防庁としてはもちろん、自治大臣におかれても、あるいは大蔵省の平井主計官がお見えのようだが、こういう点はひとつ前向きに来年度は努力するように御善処願っておきたいと思います。強く要望申し上げておきたいと存じます。  次に消防団員に対して藍綬褒章とか黄綬褒章とかいうことをやっていただいて、これも私は精神的な優遇措置としてけっこうなやり方であるとかねて考えておりますが、これは一年に幾らくらい藍綬、黄綬を授序しているということになっておりますか。
  119. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 昭和三十五年から三十九年までの授与の合計を見てみますと、三十五年は黄綬が三十二名、藍綬が十四名の計四十六名でございました。三十六年が黄綬が三十九名、藍綬が十六名と五十五名でございます。三十七年が黄綬は三十七名の藍綬十六名で五十三名、ところが昭和三十八年がちょうど制度開始の十五周年にあたりまして、このときに黄綬を四十名、藍綬を二十一名というふうに増加いたしまして、六十一名と出ております。それで普通の場合でございますと、その翌年はまた再び前年に、記念すべきとき以外の年の五十名台に戻すべきであったわけでございすけれども、消防の功労の特殊性にかんがみまして、十五周年のときのワクと申しますか、六十名台を維持いたしまして、三十九年、昨年は黄綬が三十八名、藍綬二十二名と六十名出しております。本年も三月三日に発表されるわけでございますが、これはさらに増加いたしまして六十六名というふうに、逐年増加して褒章を授与されておるわけでございます。
  120. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 わずかずつではあるが、ふやしていっているということに対しては私も敬意を表しますが、これはさっき申し上げたように、ほんとうに十年以上、二十年以上、三十年以上、人によっては五十年、実際手当をもらわないで貢献してきたということは、これはよほどの考え方でなければできぬのではないかと思うのです。私も国会議員を長くやらしていただいておりますが、おまえはこれから消防団長になってひとつ精神的に大いに貢献せよと言ったって、なかなかおいそれと行く気になりません。ましてや多忙な仕事を持って経済も悪くて働いておる人々は、もっと歯をかみしめてやっていらっしゃるだろうと思います。私はその意味でこれはもっと拡大してもらいたい。ワクを拡大してもらいたい。何も五百人とか千人とかというような、そんなことは言いませんが、少なくとも一年間に百名程度くらいのものはワクを拡大して、奨励をしていくということが、あるいは報いるということが、政道を生かすゆえんではないかと思います。さらにこれは大臣賞勲局長に申し上げたいことですが、現在生存者の叙勲が行なわれるようになりました。けっこうなことだと思います。これが一部の人に偏したものでなく、いま申し上げるように消防団員の功労者、たとえば黄綬、藍綬の褒章を受けたような人々に対して、あるいは特別の功労のあった人に対して、私は生存者の叙勲をもっと前向きで御検討になる必要があるのではないかと思いますが、この点を大臣賞勲局長両方からまずお答え願っておきます。
  121. 岩倉規夫

    ○岩倉政府委員 昨年の春から、春、秋の二回に叙勲が行なわれるようになりました。民間消防と申しますか、そういう方々はほかの自治功労を兼ねていらっしゃる方もあるわけでございます。したがいまして純粋に消防だけの方の叙勲の数を申し上げますと、昨年は春に三名、秋に三名でございます。そのほかに市町村会議員でありますとか、県会議員でありますとか、そういうことで叙勲された方の中に、消防功労も一緒に含んでおられる方も相当おるわけでございますけれども、純粋に消防だけの数は六名でございましたが、今度ことしの四月のいまの予定の進行状況から申しますと、これが相当大幅に、過去の藍綬、黄綬の褒章の受章者の中から功績の高い方に、いまのところ少なくともやはり二、三十名は授与されるのではないかというふうに、まだ三月になりませんと自治省から候補者が推薦になりませんので、はっきりわかりませんが、かように逐次ふえていくようになると思います。
  122. 上林山榮吉

    ○上林山分科員 時間がきたようでございますから、結論を大臣からお答え願うという意味で、ただいまの精神的な待遇改善、あるいは物質的な待遇の改善、あるいは設備に対する国庫補助の問題等々、重要な問題について、ひとつ前向きの御答弁を願って、私の質問を終わりたいと思います。
  123. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいまの御質問は、それぞれみなごもっともの事項にわたって、私どもも大いに考えさせられるところがございました。実は私就任いたしました際にも、特に民間消防といいますか、いわゆる奉仕的に挺身されておりまする消防団員の労苦に報いなければならぬということで、いろいろ検討してみますると、御指摘のように出動しても今日二百円だ、こういうことでありまして、消防団員は全国それぞれみな、そういう手当を目途とされておる方は一人もおいでになりませんけれども、しかし今日の状況においてこれはあまりひどいではないかということで、予算の際にも特にこの点を強調いたしましたが、先ほど次長から申しましたように、三百五十円程度にしか上がりませんので、はなはだ遺憾でございますが、しかし私は、この点はもっと機会あるごとに上げていくべきであるという感じを持っております。なお消防の基準についての補助が、今日二分の一でございますけれども、大都会地は別といたしまして、今日地域格差もだんだんひどくなっておる地方の農村等の自治体におきまして、この程度であとは地元が負担していくということは、なかなか容易ではないと思いますので、この点の引き上げにつきましても、今後特に努力をしたいと思っております。なお民間消防の精神的な方面につきましては、御指摘のとおりでございます。あの長い間とにかく奉仕的に働かれております労苦につきましては、物質的に十分でないのはやむを得ないといたしましても、精神的にでもこれはひとつ処遇をしなければならぬという感じを持っております。先ほど来それぞれの係官から答弁をいたしまして、藍綬褒章、黄綬褒章、あるいはまた生存者叙勲につきましても、特に御指摘の点につきましては考慮していくつもりでございます。
  124. 相川勝六

    相川主査 それでは横路節雄君。  横路君にお願い申し上げます。あなたの持ち時間は大体五時までです。
  125. 横路節雄

    横路分科員 私は主として消防についてお尋ねをします。本来から言えば、時間がもう少しあれば一々ゆっくりお尋ねをしたいのですが、消防の問題というのは、佐藤内閣の一枚看板である人命の尊重の政治という点からいって、非常に大事だと思うわけです。昭和三十八年の火災の件数をいろいろ消防白書で調べてみますと、一日平均九十二件で、十六分ごとに発生をして、死者は一日二人で、負傷者は一日二十名、損害は三百六十四億八千万円、こうなっておる。   〔主査退席、井村主査代理着席〕  これはなかなかたいへんなわけです。ところが私はぜひきょうお尋ねしておきたいのは、ことしの一月二十一日から、一定の敷地があれば、ビルの高さの制限が撤廃されました。しかしこの問題は、一応昨年の七月に三十一メートルのビルの高さの制限が撤廃されて、ホテル・オータニは十七階ですね。私はそこで調べてみたわけです。人命尊重というたてまえから、東京の消防庁で、一体こういうぐあいのはしご車がどういうふうにあるのだろうと思って調べてみたら、四階から五階の十七メートルのはしご車が四台、五階、六階の二十三メートルから二十四メートルが二台、七階、八階の二十八メートルのはしご車が一台、三十メートルのはしご車が九階までが十台、ホテル・オータニは十七階なんです。一体十五階、十六階、十七階で火災が起きたとき、何で救助するのですか。何で消火するのでしょう。こういう点はどうなっていますか、その点一つ。
  126. 松村清之

    ○松村政府委員 現在消防の諸機械は、昨年まで制限されておりました三十一メートルまで、地上から消火するのが一応の限度になっております。それから上の階数につきましては、下から消火ができませんので、建物自体に消火せん等を設置いたしまして、上のほうはその建物の中の器具で消火をする。そして避難階段等も設けられるようにきめられておりまして、これで避難をはかる、こういうことでやっております。
  127. 横路節雄

    横路分科員 これで完全にやれますか。あなた、長官としてやれますか。いまのところ三十一メートルまでの制限だったから、ここで十台あったわけですね。今度は制限撤廃になったのです。
  128. 松村清之

    ○松村政府委員 三十一メートルまでが大体地上からの消火、避難等の限度でございますから、それ以上のところはいまのような方法によってやらざるを得ない。
  129. 横路節雄

    横路分科員 やれますか。
  130. 松村清之

    ○松村政府委員 これはできるだけそういう装置を完全にやってやるよりかしかたがありません。
  131. 横路節雄

    横路分科員 自信がありますか。
  132. 松村清之

    ○松村政府委員 これは機械あるいは人間のやることでございますから、地上でやることも同様でございまして、これはできるだけ人命が救助できるように、火災が消えるようにやるというほかに、しょうがないのではないかと思います。
  133. 横路節雄

    横路分科員 十七階からの人命救助については、自信があるのですね。
  134. 松村清之

    ○松村政府委員 それにつきましてもいま申しましたように、建物自体に避難階段等を十分整備しまして、これはもちろん建築のほうの法律できまっておりますが、それによって避難する、こういうことでございまして、地上から救助するということは、そういう階層になれば不可能でございます。
  135. 横路節雄

    横路分科員 主計官お尋ねしますが、昭和四十年度の消火面及び避難活動の面について、いま一月二十一日で高さの制限が撤廃されたのですよ。その場合において、昭和四十年度の予算で何か組んでありますか。なければないと、時間がないのだからはっきり言ってください。
  136. 平井廸郎

    ○平井説明員 現在のところ、そういう高層において起きました火災について研究するというような段階でございまして、率直に申し上げて現在の段階で、具体的にこういう施設、こういう機材という形でついておるものはございません。
  137. 横路節雄

    横路分科員 いま言ったとおり、研究の段階なんです。研究の段階で火事が起きて、いまから研究してみたってしょうがないのです。四十年度予算には、消火面や避難活動の面で四十年度予算措置はしてないですよ。  そこで私は第一番目にひとつ問題にしておきたいことは、一月三十一日のこういう高層建築についての制限が撤廃されたのですから、そういう意味で私は対処しなければならぬ。これは二月十七日のある新聞の社説ですが、高層建築の消火対策について取り上げておる。昭和四十年度の予算については触れてないのです。人命尊重というか、研究している。しかし予算では何ら組んでない。やれるものではない。こういう点を私は指摘しておきたい。これは消防庁の責任でないかもしれない。これは自治大臣だって責任があります。大体こういう予算が一つも組んでないということは、大蔵省の無理解もあるかもしれませんが、自治大臣の力がないということも言えるかもしれません。ほんとうですよ。笑いごとではない。  そこで私はこれからひとつこの問題でお話をしたいことがある。高層建築についてはどんどん制限が撤廃されてやるわけですから、この点は来たるべき補正予算ではどうしても組まなけれならぬ。これは自治省予算ですから、自治大臣、ぜひ補正予算で組まなければならないですよ。
  138. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話のとおり、だんだんと高層建築が出てまいりまして、この点に対する人命救助というものもあわせ考えなければならぬことは、御指摘のとおりでございます。私も実は就任いたしまして、消火施設等をも見まして、今日の消防力は非常に充実し、相当高層建築までのはしごポンプもできておるようでございましたが、これ以上高いところはできないものかと、現地を見まして、実は話をしたのですけれども、今日では世界的に見ても、この程度最高であるということでございました。しかし、人命救助ということは、かりに一人でも生命を助けなければならぬ使命を持っておるということでございます。それではしごポンプとしての能力が限界であるとかりにいたしましても、いわゆる高層建築のそれ以上の地点において、それではどうして人命が救えるか、どうして避難をするか、あるいはどういうふうな処置をすべきかということは、これはとにかく検討すべき問題だと思います。いまのところ、予算さえきまればこれ以上のものができるということよりも、今日の機械力の限界としては、せいぜい三十メーターくらいが限界のように承っておりましたけれども、この点はなお私どもといたしましても検討を続けていきたい、かように存じております。
  139. 横路節雄

    横路分科員 そこで長官、あなたは当面の担当者だから、消防法施行令の第二十五条に避難器具に関する基準というものがありまして、いま大臣から避難の話があったが、一つは消火のこと、これは高層建築になったのだから、消火については別途考えてもらわなければならぬ。それで避難のことなんですが、私もかつては学校につとめておりまして、その当時消防署から来まして、年に春と秋の二回、消防避難訓練をやるわけです。学校では必ず相当火災が起きる。そこで私は一体どんな避難器具があるだろうと思って、消防法施行令二十五条の二項を見ましたら、まず病院、養老施設というのが一つになっておりまして、これには二階からすべり台、三階からすべり台、こうなっておるわけです。それから二階から緩降機となっております。その次に劇場、キャバレー、百貨店、旅館、それから学校その他はいわゆるすべり台が三階で、それから緩降機というもの、これはあなたのほうで告示したから、私はこれから長官、自治大臣に、あなたが告示したのだから知っておると思うから、お尋ねをします。工場、事業場でもすべり台が三階、緩降機というのが六階以上——緩降機というのは、これは工場、事業場では六階以上、こうなっておる。ここでまず私はお尋ねしておきたいのだが、長官、あなたは三階からすべり台でおりられますか。あなた、ここは三階ですよ。あなた、ここから病院、養老院、幼稚園の者たちがすべり台でおりられますか。私はこれを見たときに、何と一体実際にわけのわからぬ人が書いたものだろうか。ここは三階ですよ。私も小さいときはたまに町の小公園に連れていってもらって、すべり台をすべりました。そこからのぞいてごらんなさい。そこの三階からすべり台でどうやって——一体病院、養老施設、幼稚園の者が、三階からすべり台でおりられますか。長官、言ってごらんなさい。すべり台でおりられますか。
  140. 松村清之

    ○松村政府委員 これは同じ三階でも、建物に高下がございまして、そこで……。
  141. 横路節雄

    横路分科員 病院もありますよ。
  142. 松村清之

    ○松村政府委員 それはいろいろなものがありますから、この書いてありますように、すべり台だけでなくて、いろいろ選択できるということにしておるわけでございます。
  143. 横路節雄

    横路分科員 あなたはそういうことを言うから、あなたが選択的と言うから一なるほどあなたの言うとおり、ここの第二十五条の第二項の第一ですか、「前項各号に掲げる階には、次の表において同項各号の防火対象物の区分に従いそれぞれの階に適応するものとされる避難器具のいずれかを、収容人員が三百人以下の場合にあっては一個、三百人をこえる場合にあっては一個に三百人までを増すごとに一個を増す。」もちろんこの別表第一の場合にはどうするとか、別表二の場合にはどうするとかとなっておる。しかし、私はそれではあなたにお尋ねをしますが、あなたはどれでも選択できると言うが、あなたのほうはこの間官報で、自治省令第三号、「消防法第二十一条の二第二項の規定に基づき、金属製避難はしごの技術上の規格を定める省令を次のように定める。」まずはしごですね。はしごについてはあなたのほうはやったけれども、しかしこれは病院の三階とか四階とか、それ以上のものについては、いまのところ規格がないでしょう。ないじゃないですか。
  144. 松村清之

    ○松村政府委員 ありません。
  145. 横路節雄

    横路分科員 何もないのですよ。そうするとあなたのほうでは、まずここで避難はしごを使うのは、劇場、キャバレー、百貨店——百貨店というのは、私もこの間久しぶりでお祝いものを買いに百貨店に行ってみた。そうしたらほとんど女の方ですね。火事の場合に、三階から避難はしごでおりるとする。避難はしごでもいいわけですね。避難はしごというのは、私は現物を見てないが、こういうふうに折りたたんであるわけでしょう。それがばらばらと開いていくわけでしょう。普通のこうなったはしごでさえおりるのに容易でないのに、それがこういうふうに重なっておるのがぱらっぱらっといった場合に、どうして女の人がそれにつかまって三階からおりられるでしょうか。デパートの三階はたいへんですよ。一体消防庁の職員のうちで、女の人をおろしてみたのですか。ばらっぱらっと開くものでやってみましたか。
  146. 松村清之

    ○松村政府委員 避難はしごといいましても、一本になっておるものもあるわけでございまして……。
  147. 横路節雄

    横路分科員 それは知っていますよ。折りたたみのばらばらになるものもあるでしょう。
  148. 松村清之

    ○松村政府委員 実はこの規格をきめるということと、避難器具の中でどれを選んでもいいという問題とは、別個の問題でありまして、この検定制度によって規格をきめられるということになりますまでは、これは規格なしでどれでも使ってよろしい。今度規格が設けられるようになりました場合には、そのものを使うときにはそういう規格によりなさい。いま御指摘の金属はしごの規格を最近きめましたが、金属はしごを使うときには、その規格による分にしなさい。規格がきめられてないものは、おいおいすべてに規格をきめていくつもりでございますが、規格のきめられてないものは使ってはいかぬというわけではなくて使ってもよろしい、こういう趣旨でございます。
  149. 横路節雄

    横路分科員 あなた、つりはしごのばらばらというほかに、固定はしごのことを言っているが、一体ビルだとか百貨店だとかいうところで、固定はしごを初めからかけておれますか。なぜ固定はしごを初めからかけておれないと私が言うかというと、初めから固定はしごをかけておいたらどうなるか。盗難のおそれがある。そんなことができますか。一体三階に初めから固定はしごなんかかけておけますか。そういうことをあなたのほうで警察庁と十分相談してやりましたか。  それからもう一つ私はあなたに聞きたいのですが、たとえば北海道等ではちょうどいまごろ、春先に火事が多いのです。明け方四時か五時ごろ火事になって、寝巻きのまま飛び起きて、病院、養老施設で金属製のはしごをおりる。その場合に、金属製のはしごをこう握った場合に、どうなるか知っていますか。長官、知っていますか。零下五度以下でこう握った場合にどうなる。
  150. 松村清之

    ○松村政府委員 これはもちろん仰せのように寒い日に金属はしごを使うことはできない。私は知らないのですけれども……。
  151. 横路節雄

    横路分科員 いやいや、握ったらどうなるか。
  152. 松村清之

    ○松村政府委員 おそらく握れないだろうと思います。
  153. 横路節雄

    横路分科員 握れないじゃないのですよ。
  154. 松村清之

    ○松村政府委員 そこで私が先ほど申しましたように、これはそこの土地、風土の実情に応じて、いずれを選択してもよろしいということでございまして、一つに限る趣旨ではないのでございます。
  155. 横路節雄

    横路分科員 それではなぜ金属製のはしごだけを先にきめたのです。あなた、握れないのじゃないですよ。零下五度以下になって素手で握ったらどうなるのです。皮膚が全部くっついて離れないのですよ。その金属に皮膚が全部とられるのですよ。そういうことを一体、たとえば北海道の北大にある低温科学研究所等で実験しましたか。してないでしょう。あなたはきめてない以上はどれを使ってもいいのだと言うが、あなたのほうできめたから私は聞いているのです。あなた、握れないでしょうではないのです。握ったらたいへんなんです。握ったら、零下五度以下のそういうものをこうやって握ったら、皮膚が全部その金属にとられてしまう。すっかりめくれてしまう。皮膚がそこに全部とられてしまう。一体そういう試験をやってないでしよう。風土によるといったって、あなたのほうではこれしかやってないから、私はそのことを言っているのです。  その次にまた私は聞くのですが、吉武さん、私はこの際、佐藤内閣の一枚看板が人命尊重だから聞いているのですよ。  その次に避難緩降機です。緩降機というものはギアでぶら下がっているわけですね。あなたのほうのこれを見ると、何階からでもいいのでしょう。あなた、ぶら下がってみましたか。私はお目にかかりたいのです。消防庁の人に、恐縮だが、あの衆議院の七階からあの下にひとつ緩降機でぶら下がってもらいたいのです。これはあなたのほうから私のほうが資料要求してやった結果、はっきりしている点はこういうことなんです。緩降機については三十二年八月から十月にかけて、性能及び強度に関する試験を行なった。その金は一万八千四百七十円です。三十九年三月から三十九年六月まで、緩降機検定協会が緩降機の部分品の試験をA社工場−消防研究所ではないですよ。A社工場で行なった。出張旅費二千二百十五円ですよ。主計官も聞いてくださいよ。火事のとき、自分の命を託するのに、二千二百十五円の出張旅費で、いまA社工場というのはどこだか聞いてみるが−…。それからロープですからね。そこに水がかかっていくわけですね。水がかかった場合にどうなるかという、含水試験を主とした全般的試験は、やはりA社工場で行なった。費用は前の二千二百十五円に含まれているという。長官、笑いごとじゃないですよ。一体消防庁というのはどれだけの機構を持ち、機関を持っているのか知らないけれども、自分の生命を託するのに、これを見ると三百人までは緩降機一個でいいわけです。三百人増すごとにもう一個だ。この緩降機は三階以上何階でもいいわけです。衆議院のあそこの七階を、長官、見てごらん。あの七階から緩降機でおりてもらったらどうでしょう。しかも吉武さん、まず第一番目にだれを避難させるのです。デパートであるとか、そういう場合にはだれを避難させるのです。第一番目に避難させる者は女子供ですよ。その点、消防庁、間違っていませんか。第一番目に避難させるのは、女子供なんですね。女子供を避難させるのに、安心して避難できるかどうか。なるほどあそこの七階に、いま大学から山岳部の人を連れてきて、やってくれと言ったら、岩登りをまねてやるかもしれない。大阪の消防局でこの間検査したというのでしょう。六階から十人おりてみたら、過熱をしたというのがある。三百人に一個ですよ、吉武さん。それを一体二千二百十五円の出張旅費だけで、消防研究所ではなしに、長官、どうしてA社工場というのでやったのです。私があなたのほうからもらったのに、あるのですよ。ここにある。これはあなたのほうからもらった。A社工場というのは何です。どうして消防研究所でやらないのです。私はあなたが、どれでも選択できるというから、だから聞いている。人命尊重ならば、デパートその他で一番最初に避難させる者は女子供ですよ。女子供が安心しておりられる——その緩降機というのに、吉武さん御存じかもしれませんが、ここにギアがありまして、井戸のつるべと同じです。そこにぐるぐる回らぬようにギアでもってしてある。それにつかまって、縛ってぐっとおりるわけです。七階ですよ。十階ですよ。女子供がおりられますかね。私のところにあなたのほうから出した資料だから、間違いないでしょう。長官、こういうところから消防庁はとやかく世間から多く疑いの目をもって見られるのです。どうしてこういうことを堂々とうしろの主計官に、大蔵省に要求して、あなたの力で足りなければ自治大臣言うて——わずか二千二百十五円のそんな旅費で、A社工場の何階からだれがこれはやったのですか。A社工場というのはどこです。そうして何階からやったのです。これはおりたのはだれなんですか。あんまりひどいですよ。それを官報にこういう告示をして、これであなた、一体日本全体の百貨店だとか学校だとか、それからこれからの大きな高層建築だとか、その他のものが三百人に一個で助かるだろうなどと、こういうものの考え方は、基本的に佐藤内閣の人命尊重の政治とは全く違う。これはどこでやったのですか。
  156. 松村清之

    ○松村政府委員 詳細なことはわかりませんが、検定協会の職員が、その御指摘の工場が唯一の緩降機の製作所でございますので、そこへ参りまして、これは検定ということでなくて、実験をやってみたということです。
  157. 横路節雄

    横路分科員 自治大臣、お聞きのように、これはあなたの名前で告示したのですよ、一月十二日に。そうしてこれは消防法の施行令二十五条のところにあるのです。いずれか一個となっておるのです。長官、あなたこれで人命が守られると思っていますか。こういうことであなた、責任が負えますか。まずここで問題にしたのは、一つは避難はしごであって、初めから立てかけておけば、これは警視庁のほうで文句を言いますよ。それはこれを伝わって必ず盗難が発生してくるから。そうすると必ずだらっとかけておくでしょう。その場合に必ずこういうようになってくるのだから、これは女子供がそれでおりれるものではない。しかも三階以上何階までも緩降機でなどということを、一月十二日になぜもっと慎重にお考えになってやらないのですか。吉武さん、あなた御存じなかったでしょう。だから私はほんとうはこの分科会にまで出てこのことを言うということは——前には私は地方行政委員会に長くいたのですから、ほんとう地方行政委員会に行って、このことを二時間くらい時間をいただいてやるのが至当だと思ったのです。しかし今度の予算委員会の当初から、佐藤内閣の政治の姿勢は人命尊重だと言うから、そこで私はこの問題を、特にこれから春先にかけて——現に起きておるわけですね。いま上林山さんが言ったように、鹿児島でも大火が起きておる。さっきから言うように、去年は死者は一日に二名、負傷者は一日に二十名出ているわけです。私はこのことを、ただ単に長官だけを責めたり、自治大臣だけを責めたりしょうとは思わぬ。主計官、あなたもよく聞いておいてくださいよ。これは決して自治大臣が私に言われたり、消防庁長官だけが言われたりしているのではないですよ。ほんとうはこういうことを一般質問でやってもいいくらい、これだけでも私は人命尊重からいって大事な問題だと思う。これはぜひひとつあなたから主計局長に話をしておいてもらいたい。昭和三十九年度予算でも一円も計上していない。昭和四十年度の予算でも一円も計上していない。計上してないほうも計上してないほうだが、要求したのやら何やら、削られても黙っているというほうもどうかしている。長官、これはどうなんです。あなた、あの七階からやれますか。あなたはやれる。それでは横路委員が言うのだから、おれが責任を持つから、消防庁の女の職員に、あの七階から緩降機でおりてみろと言えますか。あの三階からぐらんぐらんする——ぐらんぐらんするのは、必ず窓にそのつりはしごがこう寄っているのですよ。それを女の人がそれに体重がかかって、かけるたびにガラスにばんとぶつかってくるのですよ。あなた、あそこを見たらいい、七階なんだから。あれから女が緩降機でとてもおりられるものじゃないですよ。それをどうしてこの一月十二日に、こんなにあたふたとやるのですか。さっき言ったように、北海道はこれからが火災のシーズンです。午前四時、五時、六時、あなた、御存じのように午前六時、日の出の前が一番気温が下がる。零下五度以下になると金属性は、これはくっついたまま絶対離れないのだから。それをあなた、いわゆる試験さえ行なっていない。まあこれで時間が三十分来た。大臣の意見をひとつ聞いておきたい。
  158. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ただいま横路先生から非常にこまかい点まで検討された御質問でございまして、私どもも大いに教えられるところがありました。消防は、私ども最近の新潟における昭和石油の火災なり、あるいは南品川等の消防等にかんがみまして、従来の消防よりも思い切って近代的と申しまするか、感覚を変えてかからなければいけないということで、実は昨年末における予算折衝におきましても相当努力もし、また獲得もしたわけでございますが、しかしいまのように人名尊重というのは、これはもう佐藤内閣の非常に重点を置いているところでございますが、それは別といたしましても、とにかく人の命というものはこれは大事なことでございまするし、その援助についても安全を期するということは、もう言うまでもないことでございます。いま御指摘になりました数々の点につきましては、これは確かに考えさせられるところがございますので、この点につきましては今後特に注意をいたしまして、改善の方途を講じたい、かように存じております。
  159. 横路節雄

    横路分科員 長官、私はあなたに聞いておきたいのです。あなたの決意を。あなたの内部ではいろいろなことがあるのですよ。私がさっき指摘したように、おやりになるなら消防研究所でやればいい。それでなかったら、思い切ってあの消防庁の七階——あなた、何階なんですか。
  160. 松村清之

    ○松村政府委員 五階です。
  161. 横路節雄

    横路分科員 五階からやったっていいのですよ。A社工場の何階かわからないところで、しかも検定協会というて、何階だか、だれがおりたかわからない。やるならば、女の職員をおろしてみて、これで安全なら安全だと、あなた、ここで言い切れないでしょう。言い切れないじゃありませんか。この施行令の二十五条のここにあるのは、このうちのどれを一つとってもいいのだというけれども、いまあなたは官報で告示をした以上はみんなこれは、これが一番いいのですと持って歩いていることは間違いない。やはりそういう意味で——私は長官は非常に良心的な方だと承っているのです。ほんとうですよ。長官のそういう点、私どもは期待している。おせじではなしに。ですから、そういう意味でひとつこの問題はこういうあやまちを二度と繰り返さないように——これはあやまちですよ、私から言わせれば。きょうはまあ三十分ですからこれでやめますが、もしもこれが、こういう問題が、あなた、予算の全体会議でこの問題だけやっても、佐藤内閣、これで答弁できませんよ。それくらいな問題である。一消防庁が簡単にさっさっと机上でつくってやれるものではないのです。しかも人命尊重とは、デパートにおいても病院においても、病院ならまず病人から、デパートにおいてはまず女から、学校においては子供から、そういうことを先にやって、それから一番最後に屈強の者が——それをA社工場では屈強の者だけがやって、これがこの試験になっているのです。これは根本的に消防庁の誤りですよ。これは二度とこういう誤りをしないように。以上で私の質問を終わります。
  162. 井村重雄

    ○井村主査代理 次に村山喜一君。
  163. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私は地方公共団体の交通安全の問題について、一点だけにしぼりまして質問をいたします。  きょうの毎日新聞にも出されておりましたが、事故の件数が五十五万二千二百四十四件、死者が一万三千三百十八名、負傷者は三十九万三千二百四十名という、たいへんな交通災害が今日起こっておるわけであります。一月から六月までの交通違反検挙件数を調べてみますと、これまた二百六十二万三千六百四十八件という膨大な数でございます。片一方四十年度のいわゆる予算内容を調べてみますと、罰金収入が百六十七億八千九百八十三万四千円という予算が立てられている。まことに膨大な罰金の収入額であります。このうちの八〇%が交通違反と推定されているということであります。とするならば、百三十四億円という膨大な罰金収入が国家にはあるわけであります。そういう立場から、実は具体的な問題をこの場で私は大臣に申し上げまして、見解をお尋ねをするわけでありますが、ちょうど昨年の十月、鹿児島市に河頭という中学校がございます。これは一級国道に沿いました中学校でございますが、その河頭中学校の前で、三年生の小浜正人君というのがトラックにはねられて死にました。小浜君はその河頭中学校の先生などと一緒に、登校途中の生徒の安全誘導のために、国道におきまして交道整理をやっていたのであります。ブレーキがきかないそのトラックが小浜君を殺したばかりでなく、一緒におりました河頭中学校の先生も負傷をさせました。これはいろいろ調査をいたしてみますと、勤務時間ではございません。しかしながら校長の話では、教育の特別活動として、担任の先生が勤務時間外に交通整理に当たっていたということであります。しかし三年生の担任がそれに当たることになっておりますから、男ばかりではございません。女の先生もそういう交通安全の処理に当たっておる。ところがあまりにも責任がある。重過ぎる。そうして勤務が朝の七時半ごろから行なわれますので、非常に過重な労務になりまして、ノイローゼになって病院に入院をいたしました。そういう事件が出ましてから、組合あたりでもやかましく申し入れを教育委員会にいたしまして、市の教育委員会も、ついにこれを認めまして、中止させたのであります。ところがその結果、鹿児島市内に、シグナル灯もございません地域で、あるいは横断歩道等も十分行なわれていない、安全施設がない危険な区域が十五カ所ございます。しかし学校のほうが、いままで児童生徒の安全のために、上級生の生徒並びにその学校の先生がそういうような補導に当たっておったのでありますが、しかしながらこれをやめるということになりましたので、市におきましては、PTAに相談をいたしました。そうしてPTAの中から補導員を選びまして、市の嘱託員として今日、月に三千円という金額で、登校途中の七時三十分から八時三十分までの間の交通安全の業務に当たらしているのであります。この人は市の嘱託員で身分も不安定であります。そこで、こういうような事態に立ち至りましたので、市の議会としては、国民の生命を守るために交通の取り締まりに当たっておる警察に対しまして、補導を行なってもらいたいという要請を行なったのであります。ところが、これに対しまして警察当局が言うには、登校のときは時間的にちょうど交通ラッシュになるときでございます。それは警察署の交代勤務の時間に当たる。なるほど警察の業務内容から考えまして、徹夜等の業務も行なわれますから、そのときがちょうど警官の勤務の交代時期に当たるので、したがって交通関係の警察官というのも不足をしているし、そういうような事情があるので申し入れについては御期待に沿うことはできないと答えてしまったのであります。  そこで、こういうような状態の中でいま地方の住民が地方自治体に対して期待をしておりますのは、一昨年、昭和三十八年の法九十九号によりまして地方自治法の改正が行なわれました。第二条の三項八号によりまして「交通安全の保持」というのが地方公共団体の行政事務として地方公共団体が責任を負うことになったのであります。しかしながら、大臣、ふしぎなことがあるのです。地方自治法の上ではそういうふうにされましたけれども、今日に至るまで、自治省がこの交通安全の保持に対しまして指導を行なった事実をわれわれは知らないのであります。行政指導がなされた事実がない。市町村のこれくらいの規模のところにおいてはこういう基準でやりなさいというその基準を示されたことも知らない。しかもこれにはやはり人を雇ってやる仕事もありましょうし、あるいは道路管理者が構造物を営造しなければならない場合もありましょう。こういうようなものに対して財源措置がなされていないのであります。ことしに至るまで放置されてきた。この事実は一体何を物語るのかと私は言いたいのであります。本年の一月、総理も人命尊重の立場から、いまも横路委員のほうからお話がございましたように、人命を尊重するという政治をやるということによりまして、まことにけっこうなことでございますが、総理府に対策本部ができた、交通安全の国民会議というのを来月発足させるそうであります。まことにけっこうなことでありますが、その委員の顔ぶれを新聞が発表しているのをのぞいてみましたら、これには知事会の代表は入っておりますけれども、現実にそういうような仕事を仰せつかりました市町村の代表は一人も入っていないのであります。今日警察が行なっておりますところの交通行政は、もう取り締まりと事故の処理に追われておりますがゆえに、とても交通安全対策、予防対策、予防対策というところまで手は出し得ない段階に来ていると私は思う。ことしの予算書を見てみますと、安全施設の補助というのが三億九千七百八十九万円あるようであります。わずかにこれだけです。先ほど私が冒頭において申しましたように、交通違反の罰金の収入額が百二十四億円もあるのに対しまして、交通安全対策予算の補助というのは、四億足らずでしょう。こういう姿の中で住民はシグナルや横断歩道やあるいはオーバー・ブリッジ等の建設をしてもらいたい、学童の生命を守るための要求をたくさん持っております。それについて市町村長に話にいこうと思いましても、それを受け付ける窓口がないじゃありませんか。しかし市町村はそういう住民の期待にこたえて、やりたいという気持ちは十分に持っております。持っておるけれども、一体何をやったらいいのか、どういうふうにやればいいのかさっぱりわからない、こういうのが今日の姿でございます。そこで予算措置につきましても、法制的にも盲点になっているのが地方自治法第二条の三項八号で定めますところのこの内容の規定だろうと思うのであります。そこできょうの毎日新聞に出ているように、これは交通安全に対するところの死角になっている、まさにこれは死角になり過ぎておる、そういうことを私は現実の状態の中から見まして、次のような問題について、大臣からお答えを願いたいのであります。  自治省といたしましては、こういうような予防措置について、交通安全の措置についてやらなければならないということが、法律の中で規定されたにもかかわらず、なぜ今日まで行政指導として行なう方向をおとりにならなかったのか、もう二年たったわけでありますが、財源措置はなぜなされなかったのだろう、この点についてまずお答え願いたいのであります。
  164. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 交通事故は最初御指摘のとおり、昨年の状況はいままでにない最高の記録を示しまして、ことしの年頭に総理から特に閣議でも発言がございまして、人命尊重のたてまえからとにかく交通事故をゼロ化することはできないかというようなことで、いろいろと検討をいたしておるところでございます。いま御指摘のように、地方自治法の二条にも交通安全の保持について規定がございます。実情は御承知でもございましょうが、警察関係取り締まりの衝に当たっておりまするので、これが、単なる違反を取り締まるということでなくて、実際は警察官は事故をなくそうということに非常に懸命な努力をしております。したがいまして、違反も取り締まりますが、事故を防止する要件は、そういった交通暴力といいますか、交通違反を徹底的に取り締まると同時に、交通施設が必要である。私も先般東京都内の事故の多いところを見てまいりまして、実際に見また聞きまして、施設がやや完備しているところは事故はその後減っているという。これは統計的にも出ております。したがって、これは東京都内だけをとりましても、目下警視庁の交通当局はこの施設にたいへん熱意を持っておりまして、東京都あたりと折衝して、必要な個所には安全信号機をつくる、あるいは横断歩道橋をつくらせる。ガードレールをつくらせるというような努力をやっておるわけでございます。  自治省としては、この交通について特別な指導はいたしておりませんけれども、実際に警察当局においてそれぞれ自治体と連絡をとりながらそういうことをやって、問題は財政処置は自治省が講じなければならぬということであろうかと思います。自治省といたしましても、この点につきましては一般の行政費等の中において地方団体を指導されるでありましょうし、また施設につきましては主として横断歩道橋、その他は道路施設として予算が組まれ、それによって行なわれているような実情でございます。ただ交通信号機につきましては、目下のところ警察がこれに当たりまして自治体と折衝しながらつくっているような実情でございます。  ただいま御指摘になりましたように、今日交通は都会地ばかりでなく地方各地におきましても相当ひんぱんになってまいりましたし、また事故もむしろ都心部よりも地方に多くなっているというような実情にかんがみまして、今後ともこれらの施設につきましては、自治省といたしましても、財政措置を国自身ができませんければ地方自治体の中においてまかない得るような措置考えていきたい、かように存じております。
  165. 村山喜一

    村山(喜)分科員 大臣は、なぜ財源措置がされないのか、なぜ大蔵省あたりが非常に冷たい立場をとるのか、この点については御承知ですか。これは、東京都に緑のおばさんというのが生まれましたね。そういうように現実に事実行為として生まれてきたものだから、法律の上で制定をしなければならないということで法律改正をいたしましたときに、自治省は大蔵省と事前にこの問題について話をしていないでしょう。そういうようなところから予算がつきにくいのだ、こういう話をわれわれは聞いている。現実に自治省として新しい法律が制定されたら、これについてはこういうような基準でやりなさい、財源についてはこういうふうに自分たちのほうとしては考える、だからとりあえずこの点については今年はこういうふうにやったほうがいいのじゃないかという行政指導というものが私は必要じゃないかと思う。法律はつくったわ、それは野放しでほったらかしておいておく。市町村はそういう新しいものが法律の上で義務づけられたわけです。交通安全の保持ということで、これは市町村の国有事務として義務づけられたのです。とするならば、それについて指導してやる。しかも、大臣がいまお話しのようにみんなやる気一ぱいなんです。だけれども、現実はまことに困ったことに窓口がない。こういうことでは、これは今日の行政に対する国民の期待に沿い得ないことになるのではないかと私は思うのでありますが、四十年度の地方交付税の配分にあたりましては、単位費用の費目等を新しく設定されておやりになるお考えがあるかをこの際お聞かせ願いたいのであります。
  166. 柴田護

    ○柴田政府委員 村山委員の御質問の中に、財源措置が全然講じられていないというお話でございますが、三十八年六月に法律が通りまして、その三十八年度は警察費だけについて道路交通標識関係の経費が認められております。これに合わせまして三十九年度からは、道路費の中で県も市町村も道路交通標識等これに関連する経費を見ております。金額は十分でないかもしれませんが、県で三百万、市町村で十万円程度の標準経費を見まして、これは補正をいたしております。現在の段階で、これを独立の単位費用として設置するかしないかという問題は、若干検討に値する問題であろうと私は思っておりますけれども、今日までの段階では、警察費と道路費の二つのものによって財源的な措置をしてきておるわけでございます。なおこれだけでは足りませんので、道路交通標識等につきましては必要な地方債を考えております。   〔井村主査代理退席、主査着席〕  三十九年度からは特に損保の金を引き当てにいたしまして、道路交通標識、大型の信号機等につきましての整備をはかるように財源措置をいたしております。  また警察等につきましては、四十年度の予算といたしましては、道路交通関係の信号機なりあるいは標識なりにつきまして、それぞれ所要の単価の増加をはかっております。  御質問になっております点は、道路交通の安全に関する一般事務費かと思いますが、一般事務費につきましては、その他の行政費の中で一括算定いたしておるわけでございます。
  167. 村山喜一

    村山(喜)分科員 だからそういうものの考え方をされているところに問題があると私は言うのです。やはり一般道路の行政費の費目の中にそういうようなものが入っている。なるほど道路管理者が道路の施設については責任を持つことになるわけなんです。しかしそれ以外に、そういうような交通安全のための経費が現実に必要なんです。私が具体的な例を申し上げましたようにあるのです。それについては一般行政その他行政の費目の中に入れ込んでしまって、どこに目があるのかわからない。法律に規定された以上は、やはり国民の生命を守り、大事にする政治をやるのだから、今日このように激発をしている状態の中で、しかも罰金は百三十四億もあるのでしょう。その中から交付税の中ではっきり単位費用をきめて、こういうようなのに使いなさいという形で行政指導をされることが私は正しいのではないかと思う。  そこで警察庁お尋ねいたしますが、ことしの四億足らずの補助金の内訳で、信号機や道路標識や道路標示がなされるという話でありますが、一体これだけの金で先ほど吉武国務大臣お話になりました交通安全の立場から、必要数に対する施設がどの程度できるのですか。
  168. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 ただいま御指摘の点でございますが、昭和四十年度の交通警察に関する予算といたしまして、補助金として一応五億七千万ばかり計上されております。そのうち先生のただいま御質問になりました交通安全施設に投入せらるべき予算額といたしましては、一応三億九千七百万程度見込んでございます。内訳を申しますと、信号機が約一億八千万、これは普通の信号機を五百基と、それから自動感応系統信号機、自動的に青が出てくるものでございますが、これが三セット、その分といたしまして約一億八千万、それから道路標識でございますが、この分といたしまして、これは六万七千本分といたしまして一億四千万ちょっと、それから横断歩道を設けますのは警察の責務になっておりますので、横断歩道用の道路標示、つまりペイント代でございますが、これが約七千五百万程度計上されております。
  169. 村山喜一

    村山(喜)分科員 だからこれだけの予算が必要だ、あなた方がこれだけ信号機をつくりあるいは道路標識等をつくったら交通安全に対してだいじょうぶという一つの目安をお持ちでしょう。それに対することしのこの予算で幾らくらい達成できるのか聞いている。
  170. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 たとえば信号機でございますが、現在の時点におきましては、私たちは最小限度大体五千基が必要であろうかと思っております。これに対して現在昭和三十九年末には約四千三百基すでに設置されております。本年の五百基を加えますと四千八百基になるわけでございますが、なお多少不足しておりますし、また将来交通量の増加等に件いましてさらに増設する必要がございます。その点は先ほど自治省の財政局長からも御説明がありましたように、自治省と相談いたしまして、ワク外起債による信号機の増設を考慮いたしております。
  171. 村山喜一

    村山(喜)分科員 そこで私は警察庁の方にお尋ねをしますが、すでにそういうような交通違反事件の取り締まり等でほとんどもう手一ぱいであるがゆえに、ことしまた新たに交通警察官、刑事警察官三千五百名をふやす、こういうのが出されている。そういう立場から見ました場合に、交通安全の予防措置という問題については、あなた方はどの程度責任をお持ちになりますか、どの程度可能だという自信をお持ちになりますか。先ほど吉武大臣お話のように、警察行政として、これを今後やっていけばそれで足りるというようにお考えになっておるのですか。その点いかがですか。
  172. 宮崎清文

    ○宮崎説明員 私たちも交通警察の立場から交通事故の防止、それから特に交通事故の原因となるような悪質な交通違反の取り締まりに重点を置いておりますが、やはり先生が御指摘になりましたように、警察の力だけで完全に交通事故が防げるとは思っておりません。それ以外に、たとえて申しますと、道路の整備であるとか、そういうものも非常に重要であろうと思われます。
  173. 村山喜一

    村山(喜)分科員 時間がありませんので急ぎますが、総理府の対策本部で市町村代表を交通安全国民会議から抜かれたのはどういうわけですか。
  174. 松永勇

    ○松永政府委員 御承知のように、この交通対策というものをいかに進めていくかということにつきましては、政府は異常な決心をもってこれに取り組んでおる状況でございます。その一環といたしまして、ことしになりまして道路の交通事故防止の徹底をはかるための緊急対策というものを閣僚懇談会にはかってきめたわけでございます。その中で交通安全国民会議というものを設ける、開催するということをきめたわけでございます。もちろんこの交通事故を防止するということは、政府は非常に大きな責任を持っております。そういうことでやっておりますが、この交通安全国民会議というのは、政府だけでなしに、交通事故を防止するためには国民みんながこれに立ち上がっていただきたい、関係している方々みんなに参加していただく、いわゆる総決起と申しますか、そういう考え方からこの会議を持ったわけでございます。人数を非常に制限いたしましたのは、こういう会議を開く関係上、非常に多くあっては会議の運営が非常に困難であるということから、四十数団体に一応制限したわけでございますが、この国民会議というものは今後も行なっていく予定でございます。したがいまして、こういうことに関係のある方々は本来みんな参加していただきたいというのが本旨でございます。しかしながら、そういう関係から、今回は一応全国知事会議の代表者及び交通安全都市の代表者ということでこの会議に参加していただくことにしたわけでございます。したがって、市町村長の代表者を特に入れないとかいうようなことをここにきめたというよりは、今後そういう方々にも参加していただきたいというふうに思ってはおりますが、さしあたりはそういう会場その他の制限から一応その二つにしぼったということでございます。
  175. 村山喜一

    村山(喜)分科員 わかったようでわからない答弁です。これはあなた方が落とされたのだと私は思うのです。地方自治法をよく勉強していないから、そういうふうに地方公共団体の固有事務として義務づけられている。そして現実に各市町村においては、そのような住民の安全を守るために日夜苦労をしている。しかしながら、先ほどから私が申し上げますように、また自治省のほうの答弁にもございましたように、交付税の中においてはその他一般の行政費の中に埋没をしてしまって、十分な財源措置もされない、基準も示されない、こういうような形でまことに困ったことだと市町村長は嘆いている。私は今度も市町村会の大会等に帰ってみますと、罰金刑がこんなにたくさんあるじゃないか、何でこの金を道路施設を整備するために使わないのですか、児童たちが安全に横断ブリッジを上がっていけるように、生命の保障ができるように何でしてくれぬのですか、こういうような声が住民の声として非常に強く出ている。この点については、私は交通安全国民会議の四十の委員が内定をしたということを見まして、この中から取り残されておる、これはあなた方のミスだと思うのです。ここで取り消すわけにもいかぬでしょうから、まだあと四、五名のワクがあるようですので、この中に入れてちゃんとおやりになっていただきたい。その仕事の責任を持った者が抜かれて、いろいろな業界の代表などが入っている。そういう人も必要ではありましょうけれども、あんまり名前ばかりが通るような人たちばかり出さないで、もっと行政の上にこまかい配慮方を要望申し上げておきたいと思います。  私の時間がもうありませんので、これでやめますが、自治大臣担当大臣として市町村行政に対してそういう固有事務を明示されたわけでありますので、すみやかに基準等を示して指導されるよう要望申し上げて終わりたいと思います。
  176. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 村山さんの交通事故防止に対する熱意に対しましては、まことに敬意を表する次第でございます。罰金の件につきましては、実はいろいろな方面からずいぶん御忠告がございまして、大蔵大臣ともしばしばこの問題で話し合っておるのでございますけれども罰金が入ったから、その罰金をすぐ自治体に入れるというのは、性質上思わしくないという話でございましたので、それは別として、それだけの収入があるのだし、交通安全施設について国がもっと金を出したらどうかということは言っているわけでございます。私どもも、施設をすればそれだけ事故が防止できるというのは、もう各方面の実証の結果でございますから、今後ともこの予算獲得につきまして、また市町村の指導につきましては十分考慮をしていくつもりでございます。
  177. 相川勝六

    相川主査 華山親義君。  華山君に申し上げますが、ひとつ持ち時間を六時十分ころまでにお願いいたします。
  178. 華山親義

    華山分科員 ちょっと伺いますが、過日、倉敷市の財政がああいうふうに困った状態になっておることについて、朝日ジャーナルに記事が出ておりました。その朝日ジャーナルの記事の中で市長さんが、こんなことにしたのは国の責任じゃないか、国がちっともめんどうを見てくれないから、われわれのほうはやむを得ずこういうことをやつたのだ、当然これは国が見るべきだ、それについては、私は自分の政治生命にかけても特別交付税をもらってくるのだ——文章は違っておるかもしれませんが、そういうことを言っております。ああいうことに、特別交付税ですか、地方交付税というものが出せるものですか。
  179. 柴田護

    ○柴田政府委員 倉敷市の問題につきましては、ああいう状態になりましたことについてはいろいろ原因がありまして、これが国の責任であるかどうかという問題もあると思います。しかしいずれにいたしましてもこれを財政的に分析いたしますれば、赤字を交付税で見足らなかったという点もあるかもしれません。あるいは財政の運営よろしきを得ざることによって出たのかもしれません。したがって、当然国で責任を負うべきものについては責任を負うべきものと思います。しかし財政運営よろしきを得ざるものについては国が責任を負うべき原因がない、かように考えております。率直に申しまして、倉敷市がああいうことになりましたのは、私どもの感覚からいいますならば、財政運営のよろしくなかったということも大いなる原因でございますが、もう一つは、やはりああいう大きな地域開発を進めていくについて、県、市町村、国と三拍子が合っていない。そこに一つ大きな問題点があると思います。これは今後新産業都市の建設を進めてゆく場合におきましてはああいうことではいけないので、法律ができ、これからいよいよ実施されるといたしますれば、その間の調整をとって、均衡がとれた形で進める体制をとっていかなければいけないのじゃないか。きのうも地方行政委員会で質問がありましたが、やはり実施計画というものを考えて、それに従って所要の財源措置も、自治団体側でもそれを頭に置いて財政を運営していく。こういう体制がいいのだというふうに考えておるのでございます。
  180. 華山親義

    華山分科員 持ち時間が少ないから簡単におっしゃっていただきたいのですが、私がお聞きしているのは、交付税というものでああいうふうな借金を国が見てやっていいものかどうかということなんです。
  181. 柴田護

    ○柴田政府委員 借金は見るわけにまいりません。
  182. 華山親義

    華山分科員 そうしますと、来年あたりからああいう、ことばは悪いかもしれませんが、不始末なことにつきまして、交付税等でめんどうを見るということはないのでございますね。
  183. 柴田護

    ○柴田政府委員 財政上の欠陥が生じたことについて、その原因に国で交付税の算定その他にあやまちがありますれば、その分は直していきたいと思います。
  184. 華山親義

    華山分科員 時間もありませんからまた別の機会に伺いますが、私どももよくわかりません。交付税の財政需要額、そういうものに入るものかどうかちょっとわかりかねますので、またあとでお伺いいたします。  それで、私は最近大臣のいろいろなおことば等を聞いておりますと、都市の開発とか、おっしゃって、それに取り残された特に山村地域等については、あまり御熱意がなくなってきているのじゃないか。そういう方面にばかり頭が向いているのじゃないかというふうな気持ちが、失礼でございますけれどもいたすわけでございます。今度のこの地方交付税法の一部を改正する法律案にも五項目出ておりますが、見たところ僻地の貧弱市町村につきましては補てん税の漸減に伴う措置のことは書いてありますけれども地域格差ということについて強くうたっておらない。これはどういうことでございますか。交付税の本来の目的からいえば、行政水準をできるだけ均一にしていこうという作業を交付税に求めているわけでございます。そういう点に触れておられないのはどういうことでございますか。もうあたりまえのことだから書かなかったということでございますか。
  185. 柴田護

    ○柴田政府委員 財政計画の策定方針にもたしか書いておったと思います。交付税の趣旨の御説明の中にも述べておいたと思いますけれども地域格差の是正について財源の傾斜配分を強化するということをうたっておるのであります。それは一つは、補正係数で従来態容補正係数の十種地以下の割り落とし、つまり種地が下がるに従って係数を割り落としてまいりましたが、これを取りやめる方向で年次計画で措置してまいりまして、それが昭和四十年度で完成をいたします。これによって相当額の財源が貧弱市町村に流れるわけであります。それからいまおっしゃいました減税補てん債の漸減分の地方交付税への振りかえは、まさに実質は貧弱市町村の財源強化になります。市町村民税を高く取っておりましたところはおおむね財政貧弱なところでございます。それを一応減税補てん債でカバーしておりますけれども、それを漸減的に交付税の中に織り込んでいくということは、結局貧弱市町村にかわり財源を与えるということになるわけでございます。したがって両々相まちまして、直接的には貧弱市町村の財源強化ということを考えているわけであります。  なお地方交付税法の改正等におきましては、たとえば小中学校費あるいは市町村の農業行政費といったようなものについて単位費用を引き上げておりますのは、総体的に見て財源が貧弱な市町村のほうに流れることになるわけであります。これらの措置を講じておりますので、決して前年に比べてテンポをおくらせたとか、前年と全然変わって考えないということではありませんで、従来の態度をさらに進めるという態度でございます。
  186. 華山親義

    華山分科員 交付税の問題に触れましたが、そのほかについて明年度地域格差の是正について自治省がお考えになっておることがありましたらお伺いいたしたい。
  187. 柴田護

    ○柴田政府委員 従来からやっておりました辺地の公共施設の整備につきましては、昨年と同じように十五億のワクを用意いたしまして整備を進めるつもりでございます。
  188. 華山親義

    華山分科員 ただいまお話のありました辺地対策事業は、きのうの新聞でしたか見ましたところが、明年で一応打ち切るというようなことが書いてございますけれども、これはほんとうでございますか。
  189. 柴田護

    ○柴田政府委員 打ち切るわけではありませんで、一応当初五十億のワクをもって五年計画で出発したわけでございます。それを辺地の実情に応じまして、また社会の進運に伴いまして辺地の公共施設の整備のスピードを上げたのであります。したがって十億ずつ五年間というものを、最初二年間十億ずつ、あと二年間を十五億ずつにいたしまして、スピードを上げてやる。それで四十年度で当初予定いたしました五カ年計画が四カ年で終わる。そこで来年からどうするかということは、昨年から引き続いて実態調査をいたしておりますので、その結論を待って考え直す、つまり発展的にものを考えたい、こういうつもりであります。
  190. 華山親義

    華山分科員 そうしますと、さらに発展的にこういう僻地に対する施策は考えていくという御方針でありますね。  それで、最近の山村、漁村というものは人口が非常に減少しつつあります。それから産業は停滞しております。そういうふうなことで、国の行政というものはやはりこういうところに及ばなければいけないのではないか。格差の是正ということであれば、やはり最低の人と最低の地域を上げていくということが一番大切なことではないか、こう考えるのでございます。政府の御処置によっていろいろおやりになっておられるようでありますけれども、私にはあまり目立って見えておりません。そういうふうな意味からも、山村というようなところをかかえる市町村の財政については、特段な御配慮をお願いいたしたい、そういうふうに考える次第でございますが、何か新しい構想でもございましょうか。
  191. 柴田護

    ○柴田政府委員 山村僻地の財政強化の問題につきましては、いままでやってまいりました措置のほかに、先ほど言い漏らしましたが、昭和四十年度におきましては隔遠地行政、非常に遠隔の地にある市町村の行政でありますが、隔遠地行政の強化をひとつ考えております。しかし、これで措置が終わったわけではございませんで、さらに地方団体全体の財成需要、それから全体の地方財源というものとのにらみ合いにおきまして強化をしてまいらねばならぬと考えておりますが、そういうところは要するに財源がないわけでございますから、どんなに税制改正をしてみましても、結局はうまくいかない。結局は財源といたしましては交付税の配分のしかたというもの、基準財政需要額の算定のしかたというものを合理化していく、充実していく以外にはないだろうと思います。ただ、そういうところの公共施設を強化していくということになりますと、交付税の基準配分だけではスピードが十分ではございません。勢い地方債というものも兼ねまして考えていかなければならぬだろう。両々相まって考えていかなければならぬだろうと考えております。  なお人口の減少の問題につきましては、来年、昭和四十一年度からは国勢調査がありますので、人口も置き変わります。そうすると、御心配のように、非常に需要が激減するということになります。その問題につきましては、どうするかということをよく検討いたしたいと思います。
  192. 華山親義

    華山分科員 この僻地山村の振興についてはいろいろの面がございます。それで、これは建設省にも関係がございます。文部省にも関係がございます。いろいろな面で仕事を分割してやっていられるわけでございますが、臨時行政調査会の答申におきましても、僻地の問題については、これは統合してやるべきだということが勧告の中にも出ております。それで、この問題につきまして、大臣どういうふうにお考えになりますか。
  193. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 華山先生地方、特に山間地に対する御熱意につきましては、私も実は同感でございます。  私は昨年七月自治大臣を拝命いたしましたときに、第一に声明をいたしましたのは、地域格差の是正という、それは私どもずっといなかを回りましてだんだんと疲弊の度が目についてくるわけでございます。したがって、これを何とか地方自治としては考えなければならぬ、まだ検討はいたしませんけれども、率直に感じたのであります。自治省に入りまして検討すればするほど、実は地域格差の問題が相当大きくございまして、私は先ほど御指摘がございましたが、決して都市の再開発に重きを置いているわけではございません。これはほうっておけない。つまり東京でいえば、水がなくなってはほうっておけないからやるということであって、むしろ重点は地域格差の是正をどうしてやるか、つまり山間僻地に対してどれだけの充てんをしたらいいかという点に実は頭を悩ましております。  地方交付税の問題等につきましても、これはそう簡単に、それじゃ山間僻地というわけにはいきませんけれども、その配分につきましては特に考慮し、それから辺地におきまする傾斜配分につきましても、私は財政局長にもしょっちゅう言っておることは、これをもっと重点的にやることはできないか、こういうふうに言っておるわけでございます。先ほどの辺地債の計画も大体四十年度で一応終わるようですけれでも、これは計画として平均水準にまで上げるという計画で進んでおりまするけれども、しかし格差はほうっておくとだんだんひどくなる傾向がございますから、私は今後も続けざるを得ないのじゃないか、かように存じておる次第でございます。
  194. 華山親義

    華山分科員 いまお尋ねしたことにまだお答えになっておりませんが、各省にまたがる問題ですね。これは農林省関係もございまいます。それから運輸省関係もあります。建設省関係もあります。文部省関係は山村僻地の学校としてございますし、厚生省もあります。そういうふうなことを各省ばらばらにやっておる。それでこういうことについては統一してやるべきでないのかということを臨時行政調査会等でも言っておるわけでございます。何かこの辺につきまして統一したところのやり方、そういうふうなものが必要であるのではないか、しかし現在私は政府に対しまして、いまここでこれらの仕事を一本にまとめて山村僻地対策局を設けてやれと言ったって、なかなかこれはおやりにならないだろうと思う。やっていただきたいのでございますけれども、おやりにならないだろうと思います。各省からその権限をよこせと言ったってこれはよこさないと思う。それで私昨年もお願いしたのでございますけれども、何らかここに委員会のようなものでもつくって、そこで山村僻地対策振興要綱というようなものでもつくって、その要綱に基づいて計画を毎年毎年つくって、これを各省がうちに持って帰って、そうして大蔵省に要求してやるとか、あるいはそれをまとめた予算としてこれを出してやるとか、何らかいたしませんとばらばらになるのではないか。また山村僻地対策を推進するところの中心体というものをそういうところに求めるべきではないか、こういうふうな趣旨で昨年地方行政委員会でお尋ねしたところが、時の政務次官はごもっともでございます。善処いたしますとおっしゃいましたけれども、少しもそのこともあらわれておりませんが、ひとつ何か力強い機関で推進していただく方法を考えていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  195. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 ごもっともでございます。しかし私はいまの農村といいますか、僻地といいますか、地方の問題を考えていかなければならぬという、これは政治全体の姿勢だと思います。佐藤総理が特に社会開発ということばを使われておるのも、実はその点をさされておると思います。これは御指摘のように、農林省としては農村対策としてただ農業生産という経済的なものでなくて、いわゆる山間僻地をどうするかという問題を含めてお考えになっておるようでございます。したがって閣議におきましても社会開発というものは何まで含まれるかということを論議した際にも、当然農村対策というものも入る、中小企業対策も入るということでいっております。道路にしましても教育にしましても、あらゆる問題がすべてこれに指向されていく、またいかなければならないと思います。大蔵大臣地方地域開発については非常に熱意を持っております。私どもしばしば会って話をしておりますけれども地域開発はこれはもっと重きを置いてやらなければならぬという熱意を持っておりますので、これは予算のっけ方にもよることでございまして、何か一つの委員会をつくってやるというのも一つでありましょうけれども、これは内閣全体としての姿勢の問題だ、私はかように考えます。
  196. 華山親義

    華山分科員 私お尋ねのしかたが悪いからかもしれませんけれども、私は特に山村僻地のことを申し上げておる。これは特別なものなんですね。もう御承知と思いますけれども、道も十分でない。自動車はもちろん通らない。そこの部落に参りますとほとんど産業らしい産業もない。そういうところが山の中に散在しておるわけであります。それから学校にいたしましても、小学校は分校である。分校も置けないようなところがあって、山を越えて子供は通わなくてはならぬ。医者はもちろんおらない。医者があるところまで一日に一つの車の往復もない、こういうふうな非常にへんぴな場所のことを私は先ほどから申し上げておるのです。それで文部省では、山間僻地の学校の問題を処置しておられる。厚生省厚生省で、そういうところの医療はどうするかということを研究しています。対策をやっておられるが、大きく農村全般という意味でなしに、たいへんな山の中の部落、山村僻地として、私は申し上げているわけであります。それについてひとつ総合的な機関でも設けて推進していただきたい。日本地域的な底辺の部分を上げていただきたい、こういうことで申し上げているわけでございますので、大臣にもう一度。
  197. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 よくわかります。わかりますけれども、一番極端なのは、山間僻地、離島であると思います。離島には離島の振興が特に講ぜられる。山間僻地についても同様の処置を講ぜられるべきものだ、私かように存じております。十分今後とも検討いたしたいと思います。
  198. 華山親義

    華山分科員 私は自治大臣の御答弁は、あまり御熱心じゃないのじゃないかと思うのです。それは離島にもあるし、山間僻地にもあるから、もうそれでいいのだというふうなお考え方じゃ困る。あの辺の住宅地の様子をごらんなさい。自分のことを言うとたいへん悪いのですが、私は山間僻地というものを四十カ所以上回っておる。その辺に行きまして、一晩泊まってきたら、妙なにおいが、失礼かもしれませんけれども、うちに帰ったって一週間ぐらい洋服からとれません。そういう生活をしておる人はどうだと私は言っている。衛生部長と一緒にそういうところに私は行きますと、衛生部長は、全部の人がみな栄養失調だ、こう言うのです。そういうところを置くということは、一体日本として恥じゃないか、何かそこに手を差し伸べるべきじゃないか。とにかやヤギの十頭もあれば、そこで草でも食わしておけば、それで学校の子供はヤギの乳でも飲める。そういうふうなことは県なんかではやりますけれども、そういうことにちっともおかまいにならない。火事が起きたって、自動車の通る道がないのです。そういうところが散在しておるのです。そういうところをどうするかということをお聞きしているのです。もう少し御熱意を持ってお考え願いたい。特殊部落としてそういうところについてどういう手を伸ばしていただけるか、こういうことをお聞きしているのです。そのためには、とにかく国のほうでも各省ばらばらに多少ずつのことをやっているのだから、それをまとめて、その推進力になる委員会でもおつくりになったらどうか・こういうことを私は申し述べているわけでございます。
  199. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 よくわかりましたので、検討いたします。
  200. 華山親義

    華山分科員 少し感情が高ぶってまいりましたが、都会と正反対の場所がある、こういうことをお考えになっていただきたいのであります。私は特殊の問題を申し上げておるわけであります。昔は、とにかくそういう部落でも、荷車が通る時代には、荷車の通る道をつくったんです。いまは自動車が通るんだったら、自動車の通る道をつくったらどうですか。徳川時代よりもひどいじゃないですか。そういうふうに私は考えます。ほんとうにひどいもんです。学校だってひどい。中学校に通うにも、ほんとうに何キロの道を通って通わなければならぬ。そういう場所が散在している。そういうところを私は申し上げておる。離島もございましょう。しかし、まだ山村僻地振興の制定ということも聞いておらない。離島と同じだとおっしゃるならば、離島と同様に山村僻地振興法というものをおつくりになるお考えはございませんか。
  201. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 いまその問題も検討中でございます。
  202. 華山親義

    華山分科員 私はこういうことで大体終わりますけれども、自治大臣お願いいたします。日本の現在の状況が、都市の過密化によってその方面にたいへんな問題が起きておるようでございます。そういうことはおわかりにならないと思いますが、そういうことはないとおっしゃいましたから、それを信じますけれども、そういうことに自治省が目を奪われて、もっとひどい状態で人間が住んでいるということをお忘れにならないようにお願いいたしたい。
  203. 相川勝六

    相川主査 本日の質疑はこの程度にとどめ、明二十七日午前十時より開会いたしまして、厚生省労働省及び自治省所管について質疑を行なうことといたします。  本日は、これにて散会いたします。   午後六時六分散会