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1965-02-24 第48回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十四日(水曜日)    午前十時八分開議  出席分科員    主査 相川 勝六君       青木  正君    井村 重雄君       大原  亨君    加藤 清二君       河野  正君    小林  進君       五島 虎雄君    只松 祐治君       八木  昇君    兼務 田口 誠治君 兼務 華山 親義君    兼務 谷口善太郎君  出席国務大臣         労 働 大 臣 石田 博英君  出席政府委員         通商産業事務官         (石炭局長)  井上  亮君         労働政務次官  始関 伊平君         労働事務官         (大臣官房長) 和田 勝美君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         労働事務官         (職業安定局         長)      有馬 元治君         労働事務官         (職業訓練局         長)      松永 正男君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   船後 正道君         文部事務官         (社会教育局青         少年教育課長) 石川 智亮君         厚 生 技 官         (大臣官房統計         調査部統計調査         官)      角田れい作君         通商産業事務官         (鉱山保安局管         理課長)    森田三喜男君         運輸事務官         (港湾局参事         官)      河毛 一郎君         労働基準監督官         (労働基準局労         災補償部長)  石黒 拓爾君         労働事務官         (職業安定局失         業対策部長)  住  榮作君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     松浦  功君         自治事務官         (行政局給与課         長)      胡子 英幸君     ————————————— 二月二十四日  分科員高田富之委員辞任につき、その補欠と  して八木昇君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員八木昇委員辞任につき、その補欠とし  て五島虎雄君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員五島虎雄委員辞任につき、その補欠と  して小林進君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員小林進委員辞任につき、その補欠とし  て只松祐治君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員松祐治委員辞任につき、その補欠と  して河野正君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  分科員河野正委員辞任につき、その補欠とし  て高田富之君が委員長指名分科員選任さ  れた。 同日  第二分科員華山親義君、谷口善太郎君及び第四  分科員田口誠治君が本分科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一般会計予算労働省所管  昭和四十年度特別会計予算労働省所管      ————◇—————
  2. 相川勝六

    相川主査 これより会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算及び昭和四十年度特別会計予算労働省所管を議題といたします。  この際、分科員各位に申し上げます。質疑持ち時間は、一応本務員は一時間程度兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度にとどめることになっておりますので、右御協力を願います。  なお、政府当局に申し上げます。質疑時間が限られておりますから、答弁は的確に要領よく、簡潔に行なわれますよう特に御注意申し上げます。また時間は必ず厳守を願います。労働省出席がきわめて不成績であります。  八木昇君。
  3. 八木昇

    八木(昇)分科員 初めに、実は大臣に基本的な態度を伺ってからと思いますが、貴重な時間でございますから、最初に若干局長に伺いたいと思います。  失業保険法改正について、昨年あたりいろいろな議論があったわけでございますが、昨年の臨時国会予算委員会、あるいは本年度の予算委員会あたりにおきまして、社会党の各委員からいろいろ質問がございました。それに対して石田労働大臣は、現在失業保険法期間延長等を急に改正するという意思はないという答弁があったのであります。したがって、失業保険法そのもの改正について、当面その意思はないといいながらも、一方においては実質的に失業保険給付制限というものがきびしくなされておる実情でございます。各種通達が、昨年の一月ごろから矢つぎばやに労働省の、主として職安局長名前でもって出されておるという実情にあるわけであります。一体どういうわけでそのように失業保険給付制限をきびしくやらなければならないかということについて、理解に苦しむ点がございます。といいますのは、失業保険特別会計財政状態は悪くない。各種社会保険関係財政状態が非常な赤字に苦しんでおるという実情にもかかわらず、ただ一つ失業保険会計は非常に豊かな内容を持っておる。それにもかかわらず、給付制限をかくほどまでに、従来にも増してきびしくやらなければならないという理由はないじゃないかというふうに考えますので、最初失業保険特別会計についてお伺いしたいと思います。  昨年度、私の知るところでは、失業保険特別会計は六十億円の黒字が出ておるのではないか。昨年度までの黒字累計と申しますか、現在失保特別会計状況、これをまず簡単に御説明いただきたい。
  4. 有馬元治

    有馬政府委員 昨年度までに失業保険剰余金として積み立てたものが、累計で千三百十億円ございます。
  5. 八木昇

    八木(昇)分科員 昨年度までの失業保険会計黒字累計、積み立てたものが千三百億という、これはたいへんに豊かな会計内容ということに相なるわけでございます。今年度の失保特別会計予算、これを見ますると、歳入の合計が千四百八十四億円、その歳出の予算を見ますると、あらかじめ予備費として九十七億八千万円が組んでございますが、予算そのもの、当初からこういう百億からの予備費を組むというのはどういう意味でございましょうか。この予備費というのはどういう形かということをちょっと説明しておいてください。
  6. 有馬元治

    有馬政府委員 毎年、大体この程度予備費を計上しております。予備費は、御承知のように、予定しない事態が発生した場合に予備費を充当しておるわけでございますが、失業保険会計は、毎年支出規模が増大してまいっておりますので、予備費を毎年充当してまかなっておるわけでございます。
  7. 八木昇

    八木(昇)分科員 それで、どういう場合に備えてのものでしょうか。
  8. 有馬元治

    有馬政府委員 これは不時支出に充当するために予備費を計上しております。
  9. 八木昇

    八木(昇)分科員 不時支出といいますと——実際には、昨年度の場合も、先ほど申し上げましたように六十五億円くらい黒字になっておるわけでしょう。それで去年の場合には、予備費予算で七十四億円組んであって、そうして黒字が六十五億出ておる。ほとんど予備費の必要はなかったのだろうというふうに考えるのですが。
  10. 有馬元治

    有馬政府委員 今年度七十三億九千万円の予備費を計上しておりますが、これは現在保険金給付が非常にかさんできておりますので、この予備費を充当してなおかつ不足するのではないか、こういう事態に今年度は当面いたしております。昨年三十八年度は、御指摘のように約五十億の剰余金が出ております。
  11. 八木昇

    八木(昇)分科員 そこで、一体どういうつもりですか。一年間の現在の失業保険特別会計というのは千数百億の予算規模でございますが、それなのに千何百億も黒字を持っておるというのは一体どういうつもりですか。当然こういった社会保障的な性格を持つ保険制度というものは、本来被保険者から保険料を取って運営をしており、政府は、これは実際にはほとんど何も援助をしていない。それにもかかわらず、それの中から千何百億も黒字を出して積み立てていくというセンスというものは根本的に誤りじゃないか、当然それは、それだけの黒字があるものならば、給付改善であるとかその他各種内容充実に充てて、文字どおり社会保険としての任務を果たすというのが、常識的に考えてごくあたりまえの話である。一方、健康保険あたりにつきましては、あれほどの政治問題になっておるように赤字になっておる。それにもかかわらず、国民医療というものがきわめて重大なるがゆえに給付をどんどんやっておるということと引き比べて、あまりにもこれはおかしいじゃないかと考えざるを得ないので、その点について考え方を聞いておきたい。
  12. 有馬元治

    有馬政府委員 御指摘のように、失業保険短期保険でございますので、そんなに大きな剰余金なり積み立て金が発生すべき性質のものではないと思います。しかし、三十六年、七年ころに二百億から百五十億程度剰余金が出まして、それが累計いたしまして先ほどの千三百億円に達しておるわけでございますが、これまで給付改善相当行ないまして、御承知のように三十八年には扶養加算制度、今年の四月からは通算制度というふうな形で給付改善に今日までつとめてまいったわけでございます。昨年からはほとんど剰余金が出ないという状態になりまして、ことしはむしろ、剰余金どころか足りなくなるのじゃないかということでいろいろ心配をしておるわけでございますが、今後の保険会計運営につきましては、そう多額な剰余金が出ないように運営をしてまいりたい、かように考えております。
  13. 八木昇

    八木(昇)分科員 そうしますと、失業保険特別会計黒字の累積が千億をこしておるということであれば、そういった失業保険特別会計財政事情から給付制限が行なわれておるということには当然ならない。したがって、これは別の要素からだというふうに思うのでございますが、それはいわゆる労働省の最近の労働力流動化政策というものに根本があって、こういうことが行なわれておるといわざるを得ないのです。その流動化政策なるものが、非常に無理なやり方をやっているというふうに考えざるを得ない。  そこで、実は私は、今月の中旬から秋田のほうへ実情調査に行ってきたのですが、いろいろな点で、必要でもないのに、少なくとも失保特別会計財政面からは必要でもないのに、流動化政策の無理押しの必要上、非常に無理な失業保険給付制限が行なわれているという実例を幾つか見たと申し上げておきたいのでございます。その点について一、二お伺いをいたしたいと思いますが、まず第一に、この法律の解釈の点について若干疑義がございますので、ただしておきたいと思います。  昭和三十九年八月二十八日に、局長名前でもって省都道府県知事やその他にあてて、「失業保険給付適正化について」という通達を出されました。それの中にいろいろなことで指示をしてありますが、「受給資格決定及び失業認定適正化」という項目がございまして、その中に「結婚妊娠出産育児老病者看護その他家事家業等手伝いのために退職した者は、一般的には労働意思及び能力がないと推定され、また、農業、商業等家業繁忙期手伝いをするため他に就職し得ない事情にある者(農閑期を利用する出稼労働者が離職して帰省する場合は、これに該当することが多い)は、労働能力がないと推定されるので、これらに該当すると思われる者については、この推定をくつがえすに足りる事実の立証により、失業状態にあることについての確証が得られない限り、受給資格決定を行なわないこと。」こういう項目がございますが、ここで私はちょっと矛盾を感ずるわけであります。といいますのは、結婚妊娠のために会社をやめたような場合には、労働意思及び能力がないと一般的には推定をされるから、そこでこれに対しては失業保険受給資格決定をするな、こう言っているわけですね。ところが、あとの実際の運営等を考えると、たとえば結婚のためにやめた、そうして一定の時期は就職意思及び能力がないものと認定をしても、ある期間がたつとまあ就職できるという事情が生まれてくるというような場合等には、事実上の取り扱いとしては、保険給付制限行為といいますか、これが行なわれているという実情にございます。そうしますると、受給資格がないものが給付制限条項に当てはめられて給付制限が行なわれるということは、これは相互矛盾ではないかと考えるわけであります。具体的に例をあげますと、ある女の人が会社につとめていた。ところが御主人さんが病気で、どうしても休みがちにならざるを得なかった。そうして御主人さんの病気相当重かった時期に相当長期に休んだ。そうすると、雇い主側が小企業でありますために、働いている人もわずか二十人ぐらいしかおらない、敷居が高くなって、どうも会社に行けない気分になってきたので、家事の都合ということで退職願いを出した。そうして今度職業安定所に出かけていったところが、どういう事情であなたはおやめになりましたかと言ったところが、主人病気で、どうもときどき休んで、会社へ顔を出すのが敷居が高くなったのでやめました、それじゃあなたは失業保険給付を受ける資格はありませんよと言うと、頭から資格なしとしてはねられた。またひとつつとめられるような事情になったら、おいでなさい。それで、まあ事実上この給付制限という条項の適用を受けて、一カか二カ月たってから後に、今度は保険給付を始めてくれた。こういうことは、結局おたくのほうの通達に基づいてそういう取り扱いが行なわれているわけです。これは法の解釈として誤りであり、相互矛盾ではないか、その点についての考え方を伺いたい。
  14. 相川勝六

    相川主査 八木君に申し上げますが、あなたの持ち時間は大体四十分であります。そのおつもりでひとつやってください。
  15. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま御指摘のような事例の場合には、御説明がありましたように、看病をする必要がなくなって再び就職して働けるというような状態になりましたときに、なおかつ失業していれば失業保険支給する、これは失業保険制度として当然のことだと思います。まあ八月通達のお話がございましたけれども、これは二十六年当時からきめられておる現行の手引きの趣旨と全然異なるものではなくて、それを再確認して制度運営に万全を期するという意味で出した通達でございますので、従来の考え方と違っているわけではないというふうに御理解いただきたいと思います。
  16. 八木昇

    八木(昇)分科員 それは、東京役所あたりの机の上にすわって言う抽象的な説明としては、そういうことは成り立ちますよ。しかし実際の職場の場合を考えますと、相手が、たとえば電通であるとか電力会社であるとか、そういうばんとした企業につとめておる場合には、御主人病気だから週に一回くらい休む、それもできる限り有給休暇の範囲内で休む、そのくらいのことは会社の同僚もちゃんと理解をしてくれるし、また当然の権利としてある程度保障されておりますから、そういう事情であってもつとめに差しつかえないわけです。ところが、たった二十人くらいの人を使っているような小企業では、実際問題としてそういうことは許されないのですよ。だからやめるわけでしょう。しかし、そういうことが許されるような事情職場があるならばつとめたいわけです。それならば、そういう泣く泣くやめたのに、しかも本人は何カ年間か失業保険金の掛け金をしてきているのに、あなたは資格がありません、就業の意思能力がないじゃないですか、御主人病気のためにつとめをやめざるを得なかったじゃないですか、いまつとめられる条件にないじゃないですかということで、はねるなんということは間違いでしょう。根本的に間違いだといわざるを得ないのです。
  17. 有馬元治

    有馬政府委員 いまのようなケースは、はねているわけじゃなくて、それはおそらく看病をする必要がなくて働けるという状態になれば、一、二カ月たった後に保険支給を開始しているという事例だと思います。
  18. 八木昇

    八木(昇)分科員 初めからはねるべきでないじゃないですか。支給制限を一カ月なり二カ月なりするということ——その御主人は持病ですから、その会社をやめるに至るまでも、もと帝国石油につとめておった人で、何カ年間も病床に伏しておった。おそらくこれから先も、二カ月や三カ月で病状が急によくなるわけのものじゃない。ついには死に至るかもわからない。そういう人に、一カ月なり二カ月なりの保険金給付制限をやっている。そして二カ月くらいたってから支給するなんということは、おかしいじゃないですか。当初から制限すべきではないじゃないですか。私はその点を言っている。
  19. 有馬元治

    有馬政府委員 看病というような場合は、非常にお気の毒な事情があることはよくわかりますが、その間看病でどうしても働きに出られないという場合には、失業保険制度としては、労働意思能力がないわけでございますから、その間は保険支給を遠慮願うことは当然のことだと思います。したがって看病は必要であっても、そろそろ働きに出られるというふうな状態になれば、保険支給を受ける期間は一年間ございますので、その間一、二カ月ずれた時期において保険支給が開始されるということは当然考えられるわけでございます。しかし、看病でどうしても出られないという状態のときに失業保険支給しないというのは、これは情において忍びないところがございますが、制度上はそういう支給はできない。実際上の運営は、相当その辺は第一線において実情に合ったようにやっていると思いますが、筋道としてはいま申しましたような制度でございますので御了解いただきたい、かように考えるわけであります。
  20. 八木昇

    八木(昇)分科員 就職意思能力がないということを一がいに言いましても、それはあなた、就職意思能力はありますよ、病夫をかかえているのですからね、実際にこの病状はよくなったり悪くなったりする。それでもう全くつとめに行けないというのならば、それはしようがないですね。だけれども職場事情条件によっては即刻行けるわけです。それが一カ月か二カ月かおくらしたからといって、条件が特別に改善されも何もしない。それなのに給付制限条項を適用して、二カ月なりは給付をしないということは法解釈上の間違いじゃないか、私はこう考えます。また、かりに法解釈上間違いでないにしても、実際の運用においてそういう行き過ぎが、従来は少なかったと思うのですが、この通達が出て以来は、やはり出てきておると思います。実際にはどういう連中がやっているかと言うと、職業安定所相談員の人が来ているわけでしょう。それも、みながそれだけ心得のある連中ばかりじゃない。秋田あたりになると、応接に追われておりますから、ぱっぱっと何分間かで処置していかなければならないから、詳しく聞いている時間、その人の家庭の状況を個々にケース・バイ・ケースで厳密にやる時間なんかとうていありませんと、職業安定所の職員が現に言っているのです。その点はひとつ十分に御注意願いたいと思います。  もっと突っ込んでやりたいのですが、時間がありませんから次に進みます。  もう一点伺いたいと思いますが、この同じ通達の中にこういう項目があります。「労働意思又は能力がないと認めて受給資格の否認を行なう場合の事務手続きは、手引V−一四三〇一により行なうものであるが、この場合には失業保険審査官に対して審査請求をすることができる旨を教示すること。教示を行なうに当っては、あらかじめその旨を記載したゴム印を作成して、これによることも一方法であること。」こういうことが書いてあるのですが、これも私は若干の疑問を感じておるわけであります。受給資格認否、これを審査することが失業保険審査官にできるのでしょうか。失業保険審査官任務の対象の中に、失業保険給付受給資格認否そのものをやる権限があるのですか。
  21. 有馬元治

    有馬政府委員 争いになれば、審査官認否審査をいたすわけでございます。
  22. 八木昇

    八木(昇)分科員 それは失業保険法で、失業保険審査官任務については、第四十条ですかに規定してあります。これによりますと、被保険者資格の得喪の確認、これと認否は別の問題ですね。いわゆる被保険者になったかならなかったか、それから被保険者でなくなったかどうか、それの確認もしくは保険給付に関する処分、たとえばあなたの保険給付は金額で一日幾ら幾らでございます。そういうふうなものの処分、それのよってきたる根拠についての不服、それから「第二十三条の二第一項の規定による処分又は特定」云云、こういうことについて保険審査官に対し再審査を請求することができる。こうなっておるわけでありますけれども、当然この給付を受けるいわゆる受給資格の問題は、十五条によっておのずと自動的に従来もきまってきたし、そのように運用されていたわけなんです。そういう意味合いで質問をしているのです。
  23. 有馬元治

    有馬政府委員 審査官任務は四十条の規定ではっきりしております。それで、御指摘のように、認定についても当然、不服があれば審査官に不服の申し立てをすることができる、こういう制度になっておるわけであります。それで新たにつけ加えましたのは、従来の手引きにはございませんでしたが、この八月通達であらかじめ審査請求ができるという旨の教示をした点が、従来の手引きと違っておることで、これは不服審査について親切に教示をしろということを特に申し添えたわけでございます。
  24. 八木昇

    八木(昇)分科員 従来は、そんな認定とかなんとかというようなことは問題がなかったわけですね。十五条によって自動的に、まず離職票を持ってきたならば、そうなっていたわけですが、いまのように無理な通達を出したので、こんなことをつけ加えてぴしゃっと書かなければならなくなった。ところが、そういう事態を予想していなかったので、第四十条にはそういうことが書いてない。それを非常に無理にこじつけて、そういう通達をあらためてやらなければならなくなっていると私どもは考えるわけです。というのは、この失業保険法が始まってからもう何年になりますか、相当の年限がたっておるのに、いまあらためて本省からこの専門家の各下部機構に対して、そういう場合には保険審査官に対して審査請求をすることができる云々を教示するなんということを通達するということ自体、不見識きわまる、私どもはそういうふうに感ずるわけでございます。といいますのは、その実情を聞きますると、第一、離職票を出していないところすら最近雇い主で出てきております。そうして、もう頭から窓口ではねておる。昔はそういうことかなかったのです。窓口で頭から受け付けられずに、はねられるという事態が起こるようなことを指示しましたものですから、だからそういう場合ですらも、それが不服ならば保険審査官に申し出なさい、こういう通達をしなければいかぬようになってきておると考えざるを得ないのです。といいますのは、こういう通達が出ておるからでございます。労働省の各府県知事に対する通達に基づいて、県が公共職業安定所長殿あてに、これは昨年の十二月十四日、東京の近県のある県です。その県の労働部長公共職業安定所長に出した通達の中に、こういう項目があるのです。「資格喪失届を提出する場合には離職証明書(票)を添付することが原則であるが、任意退職者の中には離職票を必要としないものもあり、これらの者に対しては喪失届のみで足りるので、女子の結婚出産育児病人看護等で再就職意思のないもの又は転職のためなどで就職先がすでに決定している者に対しては、離職票を不要として届出ることが、相互事務処理簡素化となり、併せて不正受給の防止にも役立つことも考えられるので、事業主任意退職の場合には必ず離職理由確認して真に離職票を必要とするものについてのみ離職証明書資格喪失届に添えて提出するよう協力を求めること。但しこのことを事業主が退職者に対する感情や懲罰手段として利用せぬよう、特に留意せしめること。」こう書いてあります。いいですか、自己退職をしたという場合に、雇い主は、あなたはどういう理由でやめるんですかと理由を確かめて、そうして失業後も就職意思能力ありやいなやということを雇い主が判定して、そういうものが明らかにならないと雇い主に思われる場合には、雇い主離職票を出さぬでいい、そのようにせよという通達を出している。  そうしますると、離職票がなくては問題にならないですね。従来、そんなばかげたことはなかった。そうすると、職業安定所へ出かけていってもどうにもならない。そういう事態が現出されてきているわけですが、これはどう思いますか。
  25. 相川勝六

    相川主査 質問者に申し上げますが、もう時間が来ましたから、あと一問くらいにしてください。
  26. 八木昇

    八木(昇)分科員 大臣が来なかったから……。
  27. 相川勝六

    相川主査 大臣質問してください。時間厳守を願います。
  28. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま仰せの県の部長から所長に対する通達は、実際上の運営としては適正な通達だと思います。ただ、離職票をどうしてももらいたいという場合には、いまのような事例に該当する場合でも、もちろん、昔の雇い主離職票を発給すること自体について拒否する理由はございませんで、そういう場合には、いまのような事例の場合でも離職票を請求して、そうして安定所に給付の手続きをとりに来れば、いつでも認定をして給付する、こういう段取りになるわけでございます。
  29. 八木昇

    八木(昇)分科員 それもあなたの答弁を実態は全く違いますね。抽象的に言うと、言いのがればかり答弁を先ほどからしておりますから、名前をあげて言いますよ。東京に京橋運送という会社がある。そこへ秋田県から約二百人の人がトラックの運転手として雇われて行っている。
  30. 相川勝六

    相川主査 約束の四十分の時間が来ております。
  31. 八木昇

    八木(昇)分科員 その会社には約七百人従業員がおる。それは秋田職業安定所の職業紹介でみな来ている。臨時雇いの期間約三カ月を経たならば本雇いにするという職業安定所の紹介にもかかわらず、ほとんど全部が本雇いになっていない。そういうことでは話が違うし、それから将来の生活の安定が期し得ないという理由が一つ。もう一つは、労働組合をつくろうじゃないかということでやったところが、にらまれていやがらせをやられる。そこでいや気がさしてやめて、秋田県に帰った人がある。そこで、失業保険をもらおうと思って、何度も離職票会社に請求するが、もう半年になる。給付を受ける期間がもう過ぎてしまう。それで三度催促の手紙をやったが、離職票を書いてくれない。それは労働省のそういう通達がずっと影響をしてきて、そうして雇い主側でこういう措置をやる向きが非常にふえてきておるということに考えざるを得ないのです。そういう点についてどうお考えですか。
  32. 有馬元治

    有馬政府委員 ただいま御指摘の京橋運輸の場合は、事実が先生の御指摘の事実と多少違うのですが、私どもの報告を受けた範囲では、ことしの一月二十五日に離職いたしまして、離職票の交付が多少おくれましたけれども、二月の十九日には安定所に証明書を添えて提出しております。会社側にいろいろ経緯を調べました結果、離職票の交付が若干おくれたということについては明らかに会社側の手落ちだと思います。しかし六カ月も離職票の交付が遅延したという事実はないように報告を受けております。
  33. 八木昇

    八木(昇)分科員 事実に若干の食い違いは、それは私もあると思います。あると思いますが、また本人の言うことをそっくりそのまま受けているわけではありませんが、そういう事態が非常にふえておるということはいなめない事実だと私は思います。   〔主査退席、井村主査代理着席〕 そういう点は、ひとつ厳重に注意をしてやってもらいたい。これは、時間もありませんから、具体的には社労委員会でさらにやりたいと思います。  そこで、実は質問を始めました段階に労働省の御出席がありませんでしたし、また大臣もまだ御出席になっておりませんでしたから、大臣にお聞きしたいと思っておった事項がほとんど聞けなかったのですが、一括して二つばかり承って、あとの委員と交代をしたいと思います。  第一点は、昨年の臨時国会やあるいは本年のこの通常国会のそれぞれ予算委員会において、社会党側の委員質問に答えて大臣は、現在、失業保険法期間延長等を急に改正するという意思はないという答弁をしておられるわけでございます。失業保険法そのものについては、現在急に改正する意思はないという意味は一体どういうことかということを確かめておきたい。現在急にということを言っておられるが、それは一体どういう意味か。というのは、秋田に例をとりますと、職業安定所窓口を経て季節労働に出かけていっておる人たちが大体三万人、それから職業安定所窓口を通らない人たちの推定が三万ないし四万、七万人近くの人たちがおるわけなんです。そうして秋田県内だけで年間二十七億円の失業保険金給付をこういう人たちは受けておる。これは秋田県の実情からしますと、この二十七億円でもってこれらの人たちはかろうじて生活を維持しておる。その金額は非常にばく大でございます。ところが、もしかりに失業保険法改正して——従来は、年間を通じて六カ月以上働いた人は失業保険金給付を受けられたのだけれども政府がいま考えておりますように、それを一年間働かないと保険金給付が受けられないというようなことにかりになるとするならば、こういう季節的な労働者は完全に失業保険金給付対象からはずされる。そうしますと、理屈はともあれ、実際問題としてこの人たちの生活は一体どうなるのであるか。秋田県内だけで二十七億円の金がこれらの人たちにもう入らなくなってくる。こういう事実となるわけでございます。そこで、こういう問題をそのままにしておいて法の改悪などということは、これは実際問題として考えられないと思いますが、大臣のお考えとして、現在急に改正する意思はないということは、少なくとも大臣労働大臣である限りは、そういうことはおいそれと手はつけられぬというお考えであるかどうか、承っておきたい。
  34. 石田博英

    石田国務大臣 これは理屈はともかくとおっしゃいましたけれども、法の運営は、やっぱりその法のたてまえに従って行なわなければならないと思うのであります。およそこういう種類の保険というものは、偶発的な事故に対して補償するのが保険であります。火災保険でも傷害保険でもそのとおりです。失業保険でもそうであります。当然予想されるもの、毎年当然予想されるものに対する補償、それが必要であるならば別個の方法で行なうべきものであって、失業保険という性質のもので行なうべきものではないというのが、これはたてまえであります。いまおっしゃいました数字、秋田県の場合は二十七億とおっしゃいましたが、二十二億ぐらいであります。それに対して納付額がたしか四億二、三千万円であったと思います。それからもう少し代表的なところは青森でありまして、三億七千万円ぐらいの納付に対して三十九億ぐらいの支払いが行なわれております。北海道は四十億未満の納付に対して百四十億円の支払いが行なわれておる。この失業保険会計に対する政府支出は二百九十数億円でありまして、本年度の支払いの予算は千四、五十億であったと記憶しておりますが、その中の二百九十数億円というものは政府支出しております。そうしてその中にこういうアンバランスが生じた。アンバランスの埋め合わせば、それは政府の出しておる補助金だけではなくして、よその、たとえば東京あたりは九十億円ぐらい余裕があるわけですが、他の地域の犠牲において行なわれる。もしこういうものが是正されるならば、他の地域を含めた場合にはもっと失業保険一般の給付内容改善が可能なのであります。したがって失業保険会計としては、その保険を、元来持っておる使命と役割りに徹するように指導をいたしておる次第でございます。ただし、いま御指摘のように、現在相当な人人がこの失業保険の受給によって生活をささえていることは事実であります。そこで、そのたてまえを貫きますための他の条件、たとえば雇用というものは元来年間雇用にすべきものだ。そこで建設業等におきましては通年作業が可能になるように建設省及び業界に働きかけ、検討をさせる、あるいはこれが東北、北海道の農村の生産性の低さを補っておるなら、それを他の行政によって補いをつけていく。そういうような諸般の他の条件の整ってくるまでの間というものは、あるいはそれと見合わないで現在急にこれを行なう意思はないのだ。現在急にという意味は、たてまえとしてはいまの運用は間違っておるのだ、間違っておるけれどもこれは現実はいかんともしがたい。現実がそれを可能ならしめるまで、可能ならしめるような他の諸施策が進行するまではこれは手をつけない、こういう意味であります。
  35. 井村重雄

    ○井村主査代理 八木君に申し上げますが、もう時間をかなり過ぎましたから簡潔に。
  36. 八木昇

    八木(昇)分科員 あと一つ、二つで終わります。  いまの御答弁でだい意味がわかりました。いま大臣の言われたとおりだと私も思うのです。それで、やはりもう少しこういうような条件労働者を使う側において、通年雇用、完全に通年雇用といかないまでも、そこに雇われることによって何とか暮らしていき得るような条件で雇う、そういう方向に何とか条件をつくり上げていくということがきわめて大切だ。やはりそういうもののある程度の推進、具体的成果というものがあがるのとにらみあわせつつ、失業保険法改正というものは行なわれないと無理である。現在そういう正しくない受給がなされておるとはいいまするものの、完全に正しくないものはやはりもらっておりません、どう考えてもおかしいというものはやはりもらっていないわけです。季節労働に出て行っておる、帰ってきたならば農業が文字どおり本業だという明らかなのは、現在だってもらっていないはずなんです。その人は三十歳くらいの堂々たる壮年ではあるけれども、その人のおとうさんが、長年すきくわとった人でもう五十幾歳ではあるけれども、お百姓さんとしてまだ十分に一人前の実力がある。その人がやっておる。そのむすこさんというふうな場合であって、そういう人でもらっておる人はあるでしょう。でありますから、現在まさしく正しくない支給がなされておるというわけのものでもないわけですから、その辺の実情はひとつ十分御勘案の上、今後対処していただきたいということを要望するわけでございます。  時間がないそうですから、あと労働災害の問題を二つ伺って終わりたいと思います。それは、今後北炭の夕張であのような惨事が発生をしたわけであります。そこで、この夕張の悲惨事がここで起こったことから、私は一昨年の三池炭鉱の惨事を思い出すわけでございます。三池炭鉱に去年の八月私は実情を調査に行ったのですが、非常に実情は悲惨であります。朝日新聞のみならず、ほかの新聞にも載っておりましたが、それによりますと、今度の夕張の災害に対しては三池事故並みの措置をするということが非常に麗々しくうたわれております。ところが三池並みの措置では、私はもう労働者は救われないと実は思うのです。といいますのは、むろん労災補償法によるところの各種給付やその他を直ちにやってもらわなければならぬ。それから、現在ガス中毒になっておる人の応急対策というものを急いでもらわなければならぬというのは当然でございまするが、三池に例をとってみますると、現在のこの労災補償法による措置では、事故の起こる前三カ月ですかの平均賃金の八〇%掛けの金額が支給をされるわけです。そうなりますると、坑内夫であのような災害にあって一酸化炭素中毒になって、そうして今後何年間と療養をしなければならない人が月に一万数千円しかもらっていない。はなはだしい人は月に一万二千円です。それでもって妻、子を養い、しかもみずからは療養生活を続けなければならぬ。これではあまりにも悲惨過ぎる。  それから第二の実情は、これは三池炭鉱に例をとりますると、三池で二百数十名の方が一挙になくなったわけですが、この死亡者に対する遺族給付金の平均が三池炭鉱の場合六十八万円です。でありますから、今度の夕張炭鉱の爆発でなくなった人、すでに六十名近くはなくなられたようでありますが、そのなくなった人が一体幾ら金がもらえるのかと言うと、労災補償保険法によってもらえる金の平均は、三池より多いか少ないか知りませんけれども、多かったところで平均七十万円か八十万円くらいしかもらえないのだろうと思います。一瞬にして生命を失い、残された妻と子がこれから一生涯を暮らしていかなければならないのに、わずか七十万円くらいの金ではどうにもならぬ。かりに月三万円の生活費が要るとすれば、七十万円というのは二年分にしか当たらない。本質的に言えば、これは私は年金制度にしてもらわなければならぬ、こういうふうに思いますが、まあそういうことについては社労委員会でやりたいと思います。  それから三番目は、ああいう災害で死亡された方の遺族の就職あっせん等についても、三池の場合満足に行なわれていない。それで先般予算委員会でも滝井委員がちょっと問題にしましたように、あそこのアソニット工場等は、ひどいのになると、死亡した人の未亡人が一日働いてもらっておる金が一日にわずか百二十円。これは三池炭鉱の会社が、会社のふところから別に三百円ずつそういう人には金を出してくれている。しかもこの百二十円というのは、六カ月間の職業訓練を経て就職をしておる未亡人が百二十円しかもらっていない。それはまだ技術が未熟だから、ほんとうはこれはまだ仕事にはなっておらぬのだという理屈をつけて、そんなめちゃくちゃな金しか出していない。まだ仕事になるとかならないとかいうことを言うならば、それはもう普通一般の女の子の新制中学を出て就職した人でも同じでありまして、就職した当初から存分の仕事はできないのはあたりまえです。そういう実情にございますので、端的に申し上げたい点は、三池事故並みというような考え方ではいかぬのじゃないか。それで、今後もいろいろ災害も発生するわけですから、労災補償法の抜本的改正をしてもらわなければならぬ。近く政府が国会に提出を予定されておられると承っております労災補償法の改正法案によりますると、給付内容改善、すなわち死亡した場合の遺族に対する給付金額をベースアップするとか、その他内容改善というものに一切触れられていない、そういうふうに感じます。対象範囲を広げるとか、部分的なものはありますけれども。もしそれを考えておられるとするならば、いまのこの三池の実例、今度の夕張の事件の発生等にかんがみて、いま私が指摘したような事柄についてどういうふうに対処しようと思っておられるか。それから特に船員の場合には、いろいろな点で一般の労働者と切り離して社会保障措置がありますが、坑内労働に従事する炭鉱労働者の場合も今日では船員にまさるとも劣らぬ、むしろ船員以上ですね。そのいろいろな点で、災害にあう率から、それから実際に坑内夫になろうとだれだって希望しないという事情等からも船員以上でございますから、炭鉱労働者に関する各種社会保障政策というものは別途に、一般労働者と切り離してこの法を設けるなり何なりするという、そういう思い切ったことを考える必要があるのじゃないか、それらについてのお考えというものを承っておきたいと思います。
  37. 石田博英

    石田国務大臣 夕張の炭鉱の事故は、まことに痛恨きわまりないことでありまして、まず犠牲になられた方々に対して心から哀悼の意を表したいと存じます。  この事故に対して三池並みの対策を講ずるというのは、政府としての心がまえを表示いたしたのでありまして、三池炭鉱の災害の措置に対して不行き届きであったとか、あるいはあとで改善された部分については、むろんそれは参考として万全を期したいつもりであります。  それから三池炭鉱事故の際におけるなくなられた方の遺族給付金でありますが、これは平均金額は多少違っておると存じます。平均金額は八十七万円くらいになったと私は聞いておるのであります。ただし、その程度の一時金で遺族の生活が保障されるとは思っておりません。したがって、今度の労災保険改正案にはこれを年金制に切りかえること、それからその基準となります金額、賃金につきましては、原則はむろん過去三カ月の平均賃金でありますが、それが著しく不当な場合においては、労働大臣がこれを訂正し得られるような制度を採用いたしております。  それから、先ほど御指摘をいただきました遺族の就職あっせんの事例でありますが、昨年の十二月に監督をいたしまして、現在ではかなりな程度、三倍近くの程度に修正されておると報告を受けております。  それから坑内労働に携わっておられる諸君の社会保障を船員並みにしろ、こういう御議論でありますが、これは先般の有沢調査団の報告の中にも、住宅その他について特別の考慮を払うようにということのほかに、現在でも厚生年金の支給は他の一般よりは率が高くなっておりますが、これについてさらに考慮をいたしたい、こういう考えで、各関係方面と折衝に当たっている途中でございます。
  38. 八木昇

    八木(昇)分科員 私も、ちょっと時間がなくて、今度の政府が出そうとせられる労災保険法の改正案の具体的な大綱、内容というようなものを十分にまだ検討ができておりませんが、いまおっしゃられたように、こういった災害で死亡した場合の遺族補償について原則として年金にしたい、それから金額面についても相当ふやしたいというような御答弁でございました。いまあらためて見てみますと、そういうような意味も入っておるようでございますから、ひとつぜひこの点は——これはまあ法案の審議に当たっても十分にやりたいと思いますが、実際悲惨ですね。炭鉱へ行って遺族の人たちといろいろ懇談をしてまいりましたが、これは十分にお考えを願いたいと思います。  それから、いまのアソニット工場の実例なんかのように、実際利にさとい業者が、炭鉱で死亡した人の未亡人の低賃金労働力を目ざしてやってきて、人道上実にひどいやり方をやっておるようであります。これは単に三池のみならず、各地で、多かれ少なかれ、こういった炭鉱地帯等において見られる現象であります。今後ともひとつ厳重に行政指導をやっていただくようにお願いを申し上げるわけであります。  そこで、このことに関連してですが、炭鉱保安は、原則的にはむろん通産省の鉱山保安当局がやるわけでありますけれども、これと労働省労働基準局との相互連携関係がどういうふうに行なわれておるのか、その点を実はちょっと伺っておきたいと思います。というのは、実際実情を聞いてみますと、通産省の鉱山監督局の措置というものは実に手ぬるいですね。   〔井村主査代理退席、主査着席〕 それでいろいろと要望をしておることの中に、第一は、鉱山保安監督官の検査で、時には抜き打ち検査をやってもらいたいということを、働いておる労働者は強く希望しておるのですが、抜き打ち検査というのを今日に至るまでほとんど行なった事例がないということであります。それからもう一つは、たとえば大牟田なんかのような、三池炭鉱は日本一の炭鉱でございますから、ああいうようなところには鉱山保安局の一つの出先というものを設けて、監督官が一名なり二名常駐するという措置をしてもらいたいということを強く要望しておるにかかわらず、いまだにそれすらも実現しないということがある。それからもう一つの点は、これは労働省との関係も出てくると思うのですが、やはり経営主側とだけ接触をしていたのではどうにもならない。実際に働いておる労働者の立場を考えておる労働組合あたりと、相当緊密に連携してもらいたい。それで、基準局の場合も鉱山保安監督局の場合も、ときどき労働組合あたりにも立ち寄ってもらって、どの辺の部分が危険だと自分らは思う、そこの部分のうちでも、部門別にはこういう部門のところが非常に危険だと思うというような意見なりとも聞いてもらいたいというような希望を持っておるようですが、一回も立ち寄ってもらったためしがない。それから実際検査をやってから後も、労働組合に話をしてもらったためしがない、こういうわけです。三池ほどの大災害のあったところにおいてそうなんですね。そこで、もう労働者は、自分たちは本能的にはどの辺があぶないんだということがわかっておるから、あそこには入坑したくないんだと思っておってもどうにもならぬのだ、こういうことを言っているのです。それで、三池の場合には、ずっと有明海の地下のほうに行きますと非常に温度が高い。三十三度以上のところには入ってならぬことに法律上なっておるそうですが、実際にはそれ以上のところに入らせられておって、引きつけやその他がどんどん起こっておるというような場合も、どうにもならない。そういう保安やらその他の監督に当たる人たちが、経営主側とのみの一方的な接触であるために、どうにもならぬという不満を述べております。こういう点について、労働省としてどう考えておられるか。労働基準局と鉱山保安監督局との連携関係というのをどうお考えになっておるか、これをひとつ。  それから、最後にもう一つで終わります。もう一つは、この前の昨年の通常国会で、前労働大臣との間に、実は数項目労働災害についての約束をしたわけです。その中で一つだけ、あとは社労委員会でやりますが、承っておきます。あの中で、私たちが非常に要求をした大きなポイントの一つとして、いま申し上げましたように、労働災害については、労働者の発言権というものをもっと強化しないと、ほんとうの労働災害防止に、実際問題としてはなりかねるという実情にあるではないか。そこで、労働者によるところの労働災害防止パトロール制度というものを設けてもらいたい。それで労働者代表が各事業場に立ち入って、そうして労働安全という問題についていろいろ実情を調査したりする権限を与え得るような、そういう制度をひとつ考えてもらいたい。いわゆる労働安全パトロール制度を採用してもらいたいということを強く要求したのですが、これに対してわれわれの主張と政府側との間に合意に達した点は、一つは、労働基準監督官を増員したい、もう一つは、全国で三百人ないし六百名の人を——現在の制度でありますところの労働基準監督局のもとにある労働安全指導員制度というものを活用して、現在労働安全指導員は約二千人全国におるが、これに新たに三百人ないし六百人の人員を追加したい、その追加する人間は、各県の総評とか地区労とかの労働組合の役員をもってこれに充てるということでわれわれの要望にこたえたい、こういう約束ができ上がっておるのですが、本年度の予算面を見ましても、また、その他の面を見ましてもこれがまだ具体化していない。非常に急を要する問題であると思います。どうするつもりであるか、この点だけを問うておきたいと思います。
  39. 石田博英

    石田国務大臣 炭鉱保安行政は、御承知のごとく戦前から通産省の所管になっておる。同時に、戦後石炭を増産するということに集中的に施策をやらなければならなかった実情、あるいは監督する人に技術的な教養を必要とするというような実情から、現在通産省にあることは御承知のとおりであります。ただ、通産省は、何と申しましても生産を担当する役所であります。人命、人間を担当すべき労働省が本来保安行政を担当すべきであるというのは、私の個人としての持論であります。ただし、諸般の事情で実現を見ないことははなはだ残念だと思っておる次第でありますが、それにかわる措置として、基準局及び基準監督署との連携を常に密接に行なわせているつもりであります。特に監督に行くに際しては、労働組合あるいは労働代表との接触を保つように指示はいたしておるのであります。大牟田の場合は、いろいろ組合関係等やっかいでありますので、必ずしも御満足のいくようにいっていないかもしれませんが、他の場合にはいっておるつもりであります。  それから、安全のために労働代表をパトロールさせるという問題は、いま基準審議会で検討中でございます。  それから、安全指導員の増員は、いままでの二千人を今度三千人に増員することに決定をいたしておる次第であります。それから、基準局の監督官も約二百名増員をするというような措置をとりました。
  40. 八木昇

    八木(昇)分科員 いまの二千人を三千人にふやす中に、三百ないし六百というのが入るのですか。
  41. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 その数の前に、基本的に安全管理体制をどうするか、従来の安全管理者、衛生管理者をどうするかという問題がございまして、それとの関連において安全推進員をどのような機能のものとして考えるか、それから、いまのパトロール制度をどうするかというのが実は安全管理組織全般の問題につながります。そういう角度で中央労働基準審議会ではきわめて熱心に、相当の回数にわたりまして検討を続けてまいりまして、だんだん案が固まりつつあります。そこで、たとえば安全指導員にいたしましても、労働組合の代表で安全に詳しい人を選ぶという姿勢はすでにとっておるのでありますが、その果たすべき機能をさらに基本的に整えるという、ただいま申しました審議会検討中の問題とも関連いたしまして、できるだけ近い機会に固めたい。とりあえず予算措置といたしましては、三十九年度二千名でありましたものを、千名ふやしまして三千名にするという体制にしておるわけでございます。したがいまして、三百名云々の問題につきましても、そういう問題とあわせまして措置してまいりたいと考えておる次第でございます。
  42. 八木昇

    八木(昇)分科員 終わります。
  43. 相川勝六

    相川主査 次に、五島虎雄君。  五島君に申し上げますが、あなたの持ち時間は十一時五十五分まで、約三十分程度にしていただきます。
  44. 五島虎雄

    五島分科員 私は、この分科会のことですから、法律案のことについてもいろいろ細部にわたって質問したいと思いますけれども、時間も、いま主査が言われたように、できるだけはしょらなければならぬというようなことで、質問の要点を一項目にしぼって質問しておきたいと思うわけです。  その一項目質問は、港湾の労働法に関連する予算上の問題であります。二億三千万円を一般会計から港湾労働法関係として予算が上程されております。この予算が承認され、決定されますると、その予算は生きて動くわけです。ところが、これを動かすのには法律案が必要なわけであります。それで予算案と法律案との対照をしてみますと、この点についてはこの予算案はむだになるのではないか、こういうように考えられるわけです。これは非常に抽象的なことになるけれども、具体的に言うならば、われわれは、かつて昭和三十一年から港湾に働く労働者の雇用安定に関する法律案という法律を策定し、そして議会に提案をしてまいりました。そして、具体的に国会において提案をいたしてまいりましたのが、数年に及ぶわけであります。ところが、われわれがこの港湾の労働者の雇用安定に関する法律案を提案してきた当時のわが国の経済状況というものは、今日と全く位置が転倒しておったわけであります。仕事はない、したがって毎日毎日労働者はあぶれる。行き倒れも生じる。その中に暴力支配というものが行なわれまして、ある港湾の労働者は、手配師に野球のバットでなぐり殺されるというような事件さえ起きました。そうして労働者は、苦汗労働者として条件の悪い港湾の仕事に従事しておったわけです。ところが次第に、高度成長の中に貿易量もだんだんふえてまいりまして、それとともに雇用労働労働市場の問題にしましてもいよいよその位置が転倒いたしまして、いまや売り手市場の様相を呈するということに相なったわけです。そうして労働条件の悪いところの港湾労働者として港湾に働く労働者の数は必要を満たすことができない、こういうようなことになりました。しかもこういうような社会情勢、経済情勢の中においてもなお港湾の労働者の地位は向上しない、生活は安定しない、そうして国際的に見るならば非近代的な運営が行なわれている、こういうような状況にだんだん転倒してきましたが、その後われわれの要望もいれて、労働省が中心となられて港湾労働等対策審議会というものが総理府にできました。それも四年前にできたわけであります。そうして、二年間かかってその審議会で審議されて、やっと去年の三月三日に答申が行なわれました。私は、昨年の予算委員会の一般質問の中で、二月の下旬でしたか、特に三月にその港湾労働等対策審議会におけるところの検討が終わって、答申が間もなく出るだろうと思うけれども労働省も運輸省も、この答申の趣旨に対してそれを尊重して、すみやかに港湾に対するところの労働雇用安定のために法律を提出するかというようなことを聞きましたところが、当時の労働大臣は大橋労働大臣であります、大橋労働大臣も、それを尊重してすみやかに作業を進めます、運輸大臣のほうは、当時は綾部健太郎運輸大臣でしたけれども、趣旨は尊重いたしますと、こういうようなことでした。ところが、質問をいたしまして一週間足らずの後に、われわれが検討しましても相当に満足するような答申が出たわけであります。したがいまして私は、直ちに法律案の策定に手が染められる、そうして、この国会にはすみやかにわれわれの満足するような法律案となり、あるいは予算づけが行なわれるだろう、こういうように期待を、私たち社会党はしておったわけです。ところが、なるほど、さいぜん申しましたように、昭和四十年度の予算の中には二億三千万円何がしかの一般会計予算が上程されました。あるいは失業保険関係において少々、それから福利厚生施設において少々というような予算が上程されたわけですけれども、しかし、この法律案の策定をめぐって、われわれはあれよあれよと思っていたのです。それは、いろいろの問題がこの中に派生したようであります。しかし、いろいろの問題が派生したからといって、その問題を取り上げて私はおかしいじゃないかというようなことを言う気持ちはございませんが、私たちは、できるだけその審議会の答申を尊重してこの法律案が制定され、そうしてそれが、すみやかなるうちに港湾労働者の地位の安定と向上というものを法律上実現せしめなければならない、こういうように私たちは思っておる。したがって、われわれが満足する法律であるならば、一日も早く、これはすみやかに国会を通過させて、そうして非近代的といわれるところの港湾労働者の生活を安定し、港湾行政を近代化しなければならないと、こういうように考えるわけであります。ところが、さいぜん申しましたようにいろいろの問題があって、だんだんその法律の内容というものは審議会の答申から遠ざかっているのではないか、こういうように考えます。しかも、最も重要なことは——法律案の内容についていろいろ質疑をすることは委員会に譲らなければなりませんけれども、最も重要なことは、予算とこの施行期日の問題であります。「施行期日は、公布の日から起算して二年をこえない範囲内において、各規定につき、政令で定める。」ということに相なっておるわけであります。ところが、この法律案が通ると仮定いたしましても四月か五月になるでしょう。それから二年というと昭和四十一年になるわけでございますが、そうすると、ことし予算に頭を出したところの予算上のこの施行の問題と、この二年もかかったあとに二年以内ですから、それが一年以内になるか、各規定によってそれぞれ短くもなり長くもなると思いますけれども、最大の期間は二年を待たなければ施行できない。こういうようなことでは、最も急がなければならないところの港湾行政の安定、近代化に対して、大臣はこの点について自信を持ってこの法律案を出される気持ちがあるのですか。
  45. 石田博英

    石田国務大臣 いわゆる石井答申を得ましてから、政府、特に労働省といたしましては、その実現について立法上の準備を鋭意進めてまいったことは事実でございます。ただ、この法律を提出いたします場合に、労働省所管以外の部面においての調整が問題になり、足並みをそろえていくということが問題になりまして、それを調整いたしますためにいろいろの修正が行なわれ、あるいは特に時間的に施行期日を延ばすという問題も生じてまいりました。私としては、むろん不満であります。不満でありますが、行政が一方的に跛行いたしますことは、これは必ずしも得策でございませんので、やむを得ず、現在諸般の事情を勘案して、次善の策として法案を提出した次第であります。
  46. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、大臣の気持ちというものは、はなはだ不満であるという意向でありますが、そのお気持ちは、私よくわかるわけです。この法律が閣議決定になるまでに、私はずっと横から見ておりますると、何というか最後にはこの法律案が芽を出して、一体法律として閣議決定ができるかというような心配までしたわけです。ところが、その心配の重点というのは、他の関係省との調整という問題があるわけです。そうすると、その調整というものは一体どういうところにあるのかと疑わざるを得ないわけです。綾部運輸大臣のごときは、さいぜんも申しましたように、答申がありましたならばその答申は尊重して、すみやかに労働省と相談の上に実施することはやぶさかではございません、こういうように言いながら、今度は運輸大臣がかわってくれば、調整で、われわれの企図するところの早期実現と非常にうらはらの、逆行するようなことにならざるを得ない。これは私も、はなはだ遺憾に考えるわけでございます。ところが、二年間の延期のうちに、四十年度に盛られたところの一般会計あるいは特別会計、あるいは財政投融資、それらの予算というものは、この法律が予算上は認められるけれども、今度はそれを実行運用できない、こういうようなことになると、この予算は一体どうなりますか。
  47. 石田博英

    石田国務大臣 心中不満であることは御了察いただけると思うのですが、しかし、いずれにしても閣議で調整して決定した以上は、不満であるけれども賛成したには違いないので、ただ、いま御指摘予算に計上してある分については本年度実施をいたします。具体的なことは局長からお答えいたします。
  48. 有馬元治

    有馬政府委員 法律と予算との関係でございますが、法律は二年以内できるだけ早く施行期日をきめる規定になっております。そこで、来年度予算との関係ですが、法律の施行といたしましては、登録の問題とそれから調整手当の問題、こういうところが多少準備に時間がかかりまして、福祉施設その他の問題は、全部法律が成立と同時に公布、施行するという考え方でございます。したがって、予算上問題になりますのは、調整手当として計上しておりまする一億七千八百万円の金額がどうなるかという点だろうと思いますが、これは雇用促進事業団に対する補助金として交付する仕組みになっておりますので、本年度の予算の執行としましては、事業団に交付をする調整手当の支給が、実施の時期いかんによっては四十一年度になるということもあり得るわけでございまして、その場合には、四十年度としましては、事業団に交付した後においてその金額を次年度に繰り越す、こういうことに相なるかと思います。
  49. 五島虎雄

    五島分科員 調整手当の問題だけがあれをするというようなことですが、運輸省から河毛参事官が来ていらっしゃいますね。そうすると、いろいろの問題でこれが予算上に盛られ、かつまた労働省と運輸省とが大体調整をされたと思いますけれども、私はその原案を知っておるわけですけれども、原案では一年以内にこれを実施するということになっていた。ところがこれがその倍の二年かかる、こういうようなことは、運輸省関係としての考え方が二年にあらわれているのじゃないかというように私は考えます。そうすると、どうしてそういうようなことが必要であったか、調整上こういうことにならざるを得ないところの考え方の中心点は何かということを、ここで説明をしておいていただきたいと思うのです。
  50. 河毛一郎

    ○河毛説明員 ただいま御質問のございました施行期日の問題で、労働省と運輸省の関係もございますが、全体の政府としての立場からそのように定められたものである、こういうふうに私どもは考えております。  ただ、運輸省の立場といたしまして、この法案の実現に関連して一番心配いたしておりますのは、三・三答申の趣旨が港湾労働の近代化というものを中心にいたしておりますが、それと同時に、港湾運送事業の近代化ということを考えております。この港湾運送事業の近代化という問題につきましては、御承知のとおり、現在港湾運送事業法という法律がございまして、港湾運送事業を一般に規制いたしておるわけでございますが、港湾運送事業の現状を答申にございますような姿に持っていきますためには、私どもとしては相当の研究と日数が要るというふうに考えております。それからまた、同時に港湾運送事業の近代化と申しますもの、その他の近代化というものが調和よく実現されて、初めて港湾全体の近代化の実現が理想的に参るのではなかろうか、こういうふうにも考えております。したがいまして、現在の私どもの気持ちといたしましては、港湾労働法の施行状況を勘案いたしまして、でき得る限りの早さにおきまして港湾運送事業の近代化に関する行政措置をとってまいりたい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  51. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、その調整の困難なことがずいぶん長い間かかったのですけれども、港湾運送事業の近代化をしなければならない、そうすると時間が足りない、こういうことになったのですね。ところが私は、さいぜんまくらことばに、この港湾労働法の提案までに至るところの簡単な歴史を述べたわけです。私たちは八、九年ばかり前に、港湾の労働者がまことに悲惨である、そうしてあぶれてそれが罪悪の温床となる場合もあった、こういうようなことですから、すみやかに安定と向上をしなければならない、しかし港湾労働法を制定するためにはいろいろの難関がある、難点がある、したがって港湾運送事業法のほうから手を染めたほうがいいということで、港湾運送事業法改正を提案したのは昭和三十一年です。そうして昭和三十二年——年が間違っているかもしれませんけれども、越えて一年あとに運輸省から港湾運送事業法の改正が提案された。それに社会党は賛成している。その内容というのは、中間搾取の排除である。そして中間搾取の排除とともに、第三次、第四次の業者というものが机と電話一本で業ができる、その中に手配師が介在して労働者を雇用するということになって低賃金が行なわれる、どんぶり勘定が行なわれるということを排除しなければならないというので、港湾運送事業者を規制しなければならない、そうしてこれは認可許可にしなければならぬ、こういうようなことになったわけです。あれから何年たちましたか、八年たっておるわけです。ところがいま、港湾運送事業関係者の数が全国で幾らありますか。
  52. 河毛一郎

    ○河毛説明員 いまの御質問にお答え申し上げます。  現在、港湾運送事業者の数は、三十九年の十一月末におきまして全国で千八百五十九店社でございます。
  53. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、港湾運送事業の近代化をはからなければならないというのは、千八百五十九の港湾事業者を認めながら近代化ができるわけですか。
  54. 河毛一郎

    ○河毛説明員 ただいま御説明いたしましたように、店社の数は千八百五十九店社でございます。これによって港湾運送事業というものが理想的に行なわれるかどうかという御質問であろうと考えておりますが、確かに私どもも、現在の状況におきましてもう少しすっきりした形で企業の数が整理され、また企業単位も大きくなるということが近代化に通ずる道である、こういうふうに考えております。ただ、御承知のとおり、港湾運送事業法は、ただいまお話しのございましたような時点におきまして登録制度から免許制度に切りかわった。登録制度時代にある程度の規制はございましたけれども、これは戦争中、一港一社ということで事業形態としては非常にすっきりした形でありましたものが、戦後そういった法律がブランクになりまして非常に乱立するというような形から、ようやく登録制度にまで整理をしてまいった、さらにそれを免許制度に切りかえたということで現状のような状況になっているわけでございます。したがいまして、私どもといたしましては今後早急に、先ほど申し上げましたような形におきまして港湾運送事業の近代化というものに強力な施策を考えてまいりたい、こういうふうに考える次第でございます。
  55. 五島虎雄

    五島分科員 そうですね、港湾運送事業法が三十二年に改正されて、そうして経過措置というものを二年間とって、その後港湾運送事業の事業者の近代化とその整理統合というものを見てきたわけですけれども、一向に進まない。法律の期限が切れているのに、千八百五十九社でいまもなお行政上すみやかにこれをしなければならないということは、できないのと違いますか。できないのに、労働省と運輸省の港湾の労働者に対するところの安定と、近代化と、そうしてその地位の向上のために調整の難関になったということは、まことにけしからぬ問題じゃないか、こう考えるのですね。だから運輸省は、そういうことが調整の難関にならないで、みずからの行政上の非力というか、これはあまり言い過ぎかもしれませんけれども、それらの方面に重点を注ぐ方針をすみやかに樹立されて、そうして港湾労働者に対するところの港湾労働法等は、二年とかなんとか言わないで、すみやかに実施するように運輸省は協力しなければならない立場にあるのじゃないかと私は思うのだが、まあ参事官ですから、運輸大臣でもここに来ておられたらそう言いたいのだが、参事官のお気持ちを聞いておきたいと思いますが、いかがですか。
  56. 河毛一郎

    ○河毛説明員 ただいまのお話で、ございますが、私どもといたしましても、登録制度から免許制度に切りかえましたことに関連いたしまして、切りかえ措置を早急に終了するよう努力いたしております。現在八〇%に達しておりますが、あと二〇%の部分につきましても、これを少なくとも半年以内程度に片づけるよう、さしあたって措置を講じておる次第でございます。また、この切りかえ措置にあたりましては、基準に達しない弱小企業につきましては、行政指導その他によりまして、合併等の措置を講じておりますので、この点も御了承いただきたいと思います。
  57. 五島虎雄

    五島分科員 具体的に法律案が労働委員会にかかってからそういう問題はあらためて聞くことにいたしまして、河毛参事官の立場から努力をしていただきたいと思うのです。ところが、さいぜんも一部触れましたけれども労働者の雇用は、需要のほうが多くて供給のほうが少ない、こういうような立場になって、その中の産業分野としての港湾に関する労働力というのは、なかなか入手困難になっているんじゃないか、こういうように考えられます。佐藤内閣の施策としては、貿易に重点を置いて日本の経済を発展せしめる、こう言う。輸出輸入の輸入は制限し、輸出は極力振興していく立場にある。しかもなお貿易外収支というものは赤字を免れない、こういうことになっておるわけですね。ところが、赤字を免れないというその貿易外収支の中の一つのファクターを形成するのは、いま言うところの港湾労働者の荷役料金等々が大きなファクターとなっているんじゃないかと思われるわけです。しかも、貿易外収支を一生懸命かせぐところの港湾労働者の賃金というものが、長時間労働だ、だからわれわれはそれを近代化しなければならないと主張しておるわけです。ところが、そういうような重要な産業分野におけるところの労働者の供給というものは、非常に少ないのじゃないかと思うのです。行き詰まるのじゃないかと思うのですが、有馬局長考え方を、今後労働力の供給について法律案ができたらできる、こうおっしゃるかもしれませんけれども、見通し、そうして現在の状況を聞かしていただきたいと思います。
  58. 有馬元治

    有馬政府委員 現在六大港で常用が約五万九千、それから登録日雇い労働者が二万四、五千ございます。この状態では、現在の荷物の状態からいたしましても、二〇%前後労働力が不足しておるという事態でございます。港湾の整備五カ年計画が樹立されておりますが、この五カ年計画の見通しからいたしましても、貿易の伸びその他を考えまして、港湾運送事業がさらに一段と近代化され、機械化され、能率化されても、私どもの見通しでは五年間に大体三六%程度の不足を生ずる。これは、もちろんこのまま放置すればという前提でございますが、そういう需給の見通しのもとに今度の港湾労働法をお願いいたしまして、労働力の確保をはかってまいりたい。もちろんこの法律だけで労働力が確保できるものではございませんけれども、この法律を背景にして必要労働力を確保しようというのがこのねらいでございます。
  59. 相川勝六

    相川主査 五島君、相済みませんが、時間がまいりましたからお急ぎ願います。
  60. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、このまま放置しておけば三六%、現在二〇%程度の不足ということは、外貨獲得上下貿易上支障を来たしておるということにほかならないわけですね。したがって、日本経済の発展のために大きな支障を来たしておるということに相なるわけであります。しかも、その業界においての整理統合というものが近代化されないということは、運輸省としての行政の不足を証明するわけですから、さらにこれを要望しておきます。  ところが、労働者が二〇%拡充されて現在の貨物の積みおろし、あるいは倉庫業、沿岸業その他が満足にいったと仮定いたしましても、今後この法律案に盛られるような雇用促進手当というものが支給されるのは、本人の積み立てと政府の補助と、そうして業者がこれを負担されるということに相なろうと思います。その比率についてもお尋ねしたいと思いますけれども、現在の業者にこれを負担する能力があるとお思いになるわけですか。これは運輸省の河毛さんにお願いしたいと思います。
  61. 河毛一郎

    ○河毛説明員 今回の手当によりまして、相当部分が業者の負担ということに相なる次第でございます。全体といたしまして新しい制度が実施されました場合に、それが事業者にとってどの程度の負担に相なるかと申しますと、具体的にこの制度が設けられて、港別の労働者の数及びその中の日雇い労働者の数というものが決定されなければ的確なことは言えないというふうに考えておりますが、労働省ともいろいろ御相談いたしまして一応の試算をいたしております。これは一つの線で試算することは、仮定条件が非常に多くございますのでむずかしゅうございますが、一つの幅をもって直接手当のみがどのように現在の料金にはね返るかという点を御相談しました結果は、二%ないし五%弱というような幅でいまのところ一応見通しができるのじゃないか、こういうふうに考えております。したがいまして、そのような負担増というものを今後運送料金にどのように取り入れていくかということにつきましては、私どもといたしましても具体的に研究をいたしたい、こういうふうに考えております。
  62. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、二%から五%というものは、現在の公定料金の幾らを占めるわけか。それからまたもう一つは、急げ急げと言われますから質問をはしょって急ぎますが、現在の荷役料金は幾らになっておるか。   〔主査退席、井村主査代理着席〕 それから諸外国との比較はどれだけか。それから、二%から五%値上げをした場合、この法律案をまかなうに十分である、こういうことだったらそれは幾ら上げたら——大体算術計算として幾らぐらいの費用が要るのかということですね。そういうものが、やはり調整の一つの柱ではなかったかと推測されますから……。
  63. 河毛一郎

    ○河毛説明員 ただいま二%ないし五%弱と申し上げましたのは、現在の料金の総額に対するパーセンテージでございます。それで一トン当たりどの程度の荷役料と相なるかと申しますことは、御承知のとおり、主として労務作業が中心になりますのは沿岸なり船内でございます。的確な数字は、いまのところちょっと記憶いたしておりません。船内で貨物一トン当たり概略百五十円でございます。大体の見当でございます。
  64. 五島虎雄

    五島分科員 外国はどうですか。
  65. 河毛一郎

    ○河毛説明員 外国の資料につきましては、ただいまのところすぐ持ち合わせておりませんので、大体のところを申し上げますと、やはり欧米諸国は日本に比べて非常に高うございます。それから東南アジア方面は、大体日本と同率あるいはちょっと安い、こういうような状況でございます。
  66. 五島虎雄

    五島分科員 欧米諸国は非常に高い。そうすると、日本の貨物を欧米諸国の労働者が取り扱っていると、それから五倍、十倍の荷役料を払わなければならぬ、アメリカの品物が日本の港にやってきたときはその十分の一くらいで日本の労働者が作業する、こういうことになる。しかも東南アジアが日本と同じであるということは後進諸国であるということ、それなら池田さんが大国であるとかなんとか言うようなことと、この面については全く逆の立場に立って、後進諸国と同じだということになりますね。私は去年の予算委員会で綾部運輸大臣に、もっと上げたらどうだ、そうすると外貨獲得にもなるじゃないか、そうして今度は貿易外収支の七億ドルとかなんとかは優にその大部分をまかなうことができるのではないか、こう言ったら、アメリカから報復されると言っておる。全く戦争みたいなことです。そうすると、この点については二%から五%というと三円から七円五十銭程度ですね。そういうふうに公定料金を変更すれば、この雇用促進手当を事業主が負担して十分である、こういうことになるわけですね。そうすると、外国に輸出する品物を港湾労働者が取り扱う、それから外国から輸入する物品をわが国の港で日本の労働者が取り扱う、それは年間何億トンばかり取り扱っているのですか、毎年毎年貿易量はふえてきておるわけですから。
  67. 河毛一郎

    ○河毛説明員 大体、ただいまの全国の貨物の取り扱い量は約六億トンでございます。
  68. 五島虎雄

    五島分科員 それは往復六億トンであるということですね。その六億トンは、わが国の全国の港湾で作業をする量が六億トンと推測するわけですが、そうすると、この法律案の対象の港は全国を対象とされるのかどうかということです。指定をされるわけですか。この点については、有馬さんどうですか。
  69. 有馬元治

    有馬政府委員 六大港をさしあたり指定する予定にしております。
  70. 五島虎雄

    五島分科員 六大港だけを指定するということになると、その六億トンの貨物輸送をやるのは全国の港湾労働者ということになるわけですか。六億トンは六大港で全部を作業されるわけですか。六大港ではどのくらいですか。
  71. 河毛一郎

    ○河毛説明員 大体六大港で半分取り扱うということであります。
  72. 五島虎雄

    五島分科員 そうすると、綾部運輸大臣に申しましたように、いまの大臣が来ておられませんからどう考えておるかわからないけれども、外国と比較して、そして日本の労働者の地位の向上、安定、そしてまた業者の経営の近代化をするためには、運輸行政としては公定料金はもっと上げられるわけじゃないですか。私たちは、物価値上げには全党をあげて反対をしておるけれども、審議会委員長の石井先生等は、この公定料金を上げることは国民一般の生活を圧迫しない、だから圧迫しない料金の値上げ等々は物価値上げにならないであろう、こういう説を立てておられると私は思うのです。そうすると、物価値上げを抑制する意味においてこういうところを極力制限するということは、これは外国の労働者に比較して日本の労働賃金を圧迫するということに相なりはしないかと思うのです。したがって、そういうような観点を勘案されて、公定料金の値上げには英断を持って踏み切るべきでなかろうか、こういうように私はかねて考えておりますけれども、その点について河毛参事官の意見を伺いたい。
  73. 河毛一郎

    ○河毛説明員 私どもといたしましては、港湾運送料金の改定につきましては、港湾運送事業法にございますように、能率的な経営形態のもとにおきまして適正原価を償うという観点から従来も行なっておりました。今後もそのようにいたしてまいりたい、こういうふうに考えております。
  74. 井村重雄

    ○井村主査代理 五島分科員に重ねて申し上げますが、時間がまいりましたから、どうぞ結論をお急ぎください。
  75. 五島虎雄

    五島分科員 私の質問はすべて結論です。  この雇用安定法の内容になるところの一つの柱というものは、雇用促進手当です。雇用促進手当と失保の関係というものは、一体どういうように解釈したらよろしいのですか。港湾労働者が登録をされる、そうすると、もしもあぶれたというような場合は雇用促進手当ということになるのですか、直ちに失保になるわけですか。
  76. 有馬元治

    有馬政府委員 今回の雇用調整手当は、失業保険の日雇い保険を上回る制度になっておりますので、失業保険制度をこの雇用調整手当制度の中に吸収いたしまして、これ一本で手当を支給するという考え方でございます。
  77. 五島虎雄

    五島分科員 よろしゅうございます。  それでは、いろいろ問題を関連してごっちゃにして答弁がしにくいだろうと思うのですけれども、石井委員長の諮問委員会の答申の中には、港湾労働に働く者を常用化しなければならない——もちろん常用化をして雇用を安定するということが、大体この考え方の柱をなさなければならない、こう考えております。雇用が非常に変動するというようなことは、働く者にとってもまことに安定度がない。こういうようなことから、常用化をしなければならない。ただし、常用化は、全部を一〇〇%常用化はできないだろうから、大体二五%程度を日雇いとして認めてもいいんじゃなかろうか。こういうような趣旨の答申が行なわれておったわけですけれども、今度考えられるこの法案の考え方としては、これがそのとおりに盛り込んでありますか。
  78. 有馬元治

    有馬政府委員 答申の四分の一の日雇い依存度の問題は、今度の政府提出の法案には、法律制度としてはこれを取り込んでおりません。ただし、実際上の行政運営としましては、各港の実情に応じて労働者の常用化の促進という趣旨に従って運営をしてまいる予定でございます。
  79. 五島虎雄

    五島分科員 この港湾労働法の問題の内容に触れるということは、これはさいぜん申しましたように、委員会においていろいろ逐条的に質問をしていきたいと思いますが、この問題についていろいろ調整困難な問題ということは想像されるわけで、その中に労働省自身が、運輸省関係ともよく調整をされてここまでもってこられた。だから私たちは、いい法律案に対してはいい法律案として批判はしたいと思います。しかし、進めなければならないことは、われわれ社会党は極力進めていきたいと思う。しかし、私が数点について質問をしたことは、審議会の答申の内容どおりにいっていないということで、まことに残念な気がする。労働大臣が、二年に延びたことはまことに残念であって、不満ではあるけれども調整をした以上は賛成した立場になるから、こういうようなことになりますのは私もまことに残念だと思うものです。したがいまして、この会期の中にでき得る限りこれを変えて、そして審議会の答申の内容を法案の中に尊重するように労働省も運輸省もしてもらいたい、こういうように思うのです。それを要望して質問を終わりたいと思います。
  80. 井村重雄

    ○井村主査代理 華山親義君。
  81. 華山親義

    華山分科員 出かせぎ者の問題につきまして御質問をいたしたいと思いますが、その前提として聞きたいのですが、最近の状況から申しますと、将来非常に労働力が少なくなると思うのでございます。それにつきまして、今後二、三年でそのときがくると思うのでございますが、現在の青少年は、労働——工場労働者、土木労働者、そういうほうに向かうという気持ちはあまりございません。やむを得ず、中学校を出ただけでしかたがないから、なろうというのが多い。そういうふうな状態では、日本の将来の工業は、私はもたないと思う。高等学校を卒業しても工場労働者になるのが当然だ、それがあたりまえの道なんだ、こういうことでなければ、私は日本の労働力はとうていもたないと思います。そのためには労働者になることについての青少年の矜持、希望、そういうものを与えなければいけないと思うのでございますが、最近労働賃金が高いとか、そういうことばかり言われて、私はこういうふうな状態では、とうてい青少年は労働者に向かないと思う。その点について大臣がどういうお考えを持っておられるか、青少年に対して、労働者になることが人生として非常にりっぱなものであるということをどういうふうにしてPRされ、教育されるお考えであるか、伺いたい。
  82. 石田博英

    石田国務大臣 労働力の需給は、いま若年労働、技能労働については明らかに不足の状態を呈しておりますけれども、なお中高年齢層についての再就職は困難な実情にあります。また身体不自由者、そのほかの条件の悪い人々の就職は依然として困難であります。この状態が、ヨーロッパのような絶対不足の状態にいつごろなるのだろうか。私は、現在は世間で言うほどの不足の状態だとは思っておりません。昔の労働力過剰の時代の考え方を経営者が抜け切れないから、そのために生じてくる不足の状態だと思っておりますが、しかしながら、逐年、新規労働力から離退職したり、死亡したりした労働力を差し引きました純増の労働力は、減少しつつあります。いま百六十万くらい純増が見られますが、昭和六十年になると八十万くらいになると思います。そういうことから、ほど遠からず不足の状態がくると思います。それからそれに対応いたしますためには、やはり人の力を貴重なものと考え、新しい条件のもとにおける労働経済、労務管理を経営者が考えていってもらわなければならないと存じますが、同時に、いま御指摘のように、単純労働あるいは工場労働に向かおうとする青少年が少なくなってきておることも事実であります。これは国家経済の将来に向かってまことにゆゆしいことだと考えておるのでありまして、一面において教育が普及して中学校卒業者の七割までが高等学校に進む状態になってきつつあるとき、高等学校卒業者といえども、進んで工場に行って生産に従事するという気持ちを養成していかなければならないことは言うまでもございません。それには勤労に対する世間一般の評価を高めていく、あるいは技術に対する世間の評価を高めていく、これがまず第一であろうと存じます。そうして労働賃金は、その労働がかせぎ出す生産の量及び価値に比例して行なわるべきが当然でありまして、一般的に次第に、そういう不足な、しかも貴重な労働力というもののほかの職業に対する相対的な比率の上昇というものが行なわれてくるのは当然であり、またそれが必要であろう。いわゆる精神的な誇りだけでは人はそこに働きに行かないのであります。実質的な保障を与えていかなければならないのであります。行政の面におきましてそういう実質的な保障を与えますと同時に、各企業におきましても、たとえば紡績工場において高等学校卒業生を工場と事務に別々に採用する場合に、その間に、それこそ衣服にまで差別を行なわないというような心がまえ、これが私は必要であろうと思う。工場労働者は、誇りと同時にその誇りに裏づけられる代価と安定性を保つように、これから努力してまいりたいと思っております。
  83. 華山親義

    華山分科員 現在、全員高校入学ということがよくいわれますけれども、あの人たちの父兄の心理はどういうことかと申しますと、高等学校を出れば事務員になれる、中学校だけでは労働者にしかなれない、そういう心理が強いのであります。私は、そういうふうなことではだめなんじゃないか。かつて日本の労働力が不足したのかどうか知りませんけれども、朝鮮の人をたくさん入れて仕事をした、そういうふうなことはできまいと思う。そうすれば、労働者の地位を向上して、そして喜んで青少年が、労働者になるのも銀行の職員になるのも同じだという考えに徹しなければ、私は日本の将来の工業はあぶないのじゃないか、その点十分に御留意を願いたいのでありますが、現在出かせぎ者は多数の子供を持っております。総理大臣の言われるように、悲惨な状態で仕事をしておる。彼らがうちに帰ってどういうことを子供に言うだろうか、奥さんに言うだろうか。これらのことばを聞いたところの子供が、はたして労働者というものになる気になるかどうか。私はそういう意味からも、出かせぎ者の問題は真剣に取り組んでいただきたい。  それで、私伺いますが、現在労働力が足りないから、あのような形の出かせぎ労働者があると思いますが、出かせぎ労働者の労働力というものを、大臣はどういうふうに価値づけておられますか、それを聞かせていただきたい。
  84. 石田博英

    石田国務大臣 最近、きわめて急速に、いわゆる出かせぎ労働がふえてまいりました。これは公共事業その他が特定地域に集中されて行なわれる、そこに急速に労働力が必要となった結果だろうと思うのであります。それからもう一つは、やはりその裏でありますが、自分の住居地に適当な仕事が見つけられないと農外収入が得られない、そこでやむを得ず出かけていく、こういう結果になるのでありまして、私は、出かせぎ労働というものが多いという実情は、近代工業国家としては適当な状態でないと考えておる次第であります。したがって、必要な労働力を経営者が確保するためには、原則として数を雇用のたてまえとして確保すべきであると思いますし、逆に申しますと、これからは労働力のある地方に事業を行なっていくということが必要であろう、そういう施策を国家として総合的に行なうべきだろうと思っておるのであります。しかし同時に、現に出かせぎ労働というものが実在いたしております。農林省の調査では、六カ月未満のもので約三十万、それ以上のものを加えますと六十万近いんじゃないか、五、六十万あるんじゃないかといわれておるのであります。いわゆる季節労働失業保険受給者が五十二万ございます。そういう実情なんでありますから、その実情の上において出かせぎ労働者が働いておる。働く場所において労働条件が適正に維持されますように、基準行政を通じて監督の強化につとめますと同時に、留守宅におきましても、留守宅の相談に応ぜられるような態勢を整えていきたい。  それから、出かせぎ労働の保護をいたします前提は、その出かせぎ労働の実態、行き先その他を私のほうでつかむということが大切でございまして、それには職業安定所あるいは少なくとも各市町村に委嘱をいたしております職業安定協力員というような人々を通して、機関を通して出ていってもらうということが大切である。現在のところ、職業安定所を通しております数は二十万未満であります。十八、九万だと称しております。これでは困るのであります。そういう面につきまして監督指導を強化してまいりたいと思います。
  85. 華山親義

    華山分科員 私は昨年、この問題につきまして秩序立ててこの分科会でお尋ねをした。そのときの御答弁から見ますと、ただいまの大臣の御答弁は一応進んでいられるようでございますが、昨年私がお尋ねしたことをまたもう一度お尋ねしたい。  昨年お尋ねしたことは、政府は出かせぎのこれだけの社会問題、量的の問題であるのに対して、ほとんどなす手がない、全くなすところがない。これだけの現象が起きるならば、当然閣議等で問題になっていいはずだと思うのですけれども、閣議で問題があったか、何か話に出たことがあるのかということに対して、大橋労働大臣は、そういうことは一度もございませんとお答えになった。何か予算があるのかということにつきましては、予算はありませんということをおっしゃった。その後、一生懸命に閣議等でも問題を提出してやりますというようなお話もございましたが、閣議の問題につきましては、昨年の八月でございますか、失業保険問題について、出かせぎ者の問題にも触れて池田総理大臣がおっしゃったということは見ましたけれども、何か閣議にお話しにでもなったことがあるのか、要綱でもおつくりになったものでもあるのか、ひとつそれを伺いたい。
  86. 石田博英

    石田国務大臣 閣議で出かせぎの問題が話題になりましたことは、ときどきございます。たとえば出かせぎ者の中で行くえ不明者が生ずるという問題、それから出かせぎ者の出かせぎ先において不当な取り扱いを受けた事例、そういうことが議題にのぼりました。また今年度予算の中には、先ほど申しましたように、出かせぎ者の留守家族の援護措置、相談措置、それから出かせぎ者が出かせぎ地において基準局あるいは職業安定所と連絡をとりやすいような措置、あるいは各出かせぎの多い地区における出かせぎ相談所の設置、それから現住地及び出かせぎ地と私どもの機関との連絡強化というようなことを予算化いたしておるのであります。
  87. 華山親義

    華山分科員 私が申しましたから予算化したわけでもございませんでしょうが、私はそれはたいへんいいことだと思う。ほんとうにやっていただきたい。もっと予算を多くしてやっていただきたい。  それから出かせぎ者の数でございますが、出かせぎ者の数くらいはわかっていらっしゃると思うのでございますが、実際私は農村に参りまして出かせぎの実情を調べようと思いましても、私自体がわかりません。ある村に火事が起きまして、そこで集まるべき消防夫は二十五人であるのにかかわらず、二十人しか集まらないというのが実態なんです。実際わからない。それで本会議でもあるいは三十万、五、六十万というふうなお話がありましたけれども、私はそれではきかないと思う。昨年、委員会で私は百万をこえるであろうということを申し上げたのでございますが、いまでは、よく出かせぎ者の数は百万、百万ということを言う。私は決して百万は当てずっぽうに言っておるわけではございません。死んだ人はわかる。この死んだ人とそういうふうな災害事故等の計数等から見ましても、比例等から見ましても、私は百万をこすのではないか、こんなふうな気持ちがいたしておるわけであります。よくひとついま大臣のおっしゃったような実態を調査していただきたい。  次に、私はここで申し上げておきますけれども、出かせぎ者が、先ほど大臣のおっしゃったとおり、土木工事等においては、これは土木工事そのものを進めるために労働力として使われておる。工場労働者はどうか。工場労働者から見ますと、現在の雇用関係がやや安定はいたしておりますけれども、安定しておりません。したがって新しい人が採れる間、労働力のその工場工場によって不足するのが、ちょうど十月ころから来年の三月ごろまでなんです。それに充てるために出かせぎ労働者が出てくる。もう一つは、新しく学校を出た人が、初めは仕事をさせられませんから雑務をやっておる、その雑務の練習期間が過ぎて本職につく、そうするといろいろな雑務をする人がなくなった、そこに出かせぎ労働者が入ってくる。これが出かせぎ労働者の、私が大臣にお尋ねしようとしました労働者の労働におけるところの地位、いろいろお聞きいたしましたが、その点なんです。出かせぎ労働者というものが、工場労働についてもいかに重要な地位を占めているかということを私は申し上げたいわけなんです。それで、安定所を通じてこなければだめだ、安定所を通じてこなければ世話のしようがないというようなことも、労働大臣が本会議でおっしゃいました。私たちも一生懸命に、出かせぎ者は安定所を通ずるようにということを言っております。県庁も役場も言っております。なおかつそれができない。しからば伺いますが、安定所の組織で五十万、百万の人を世話し切れますか、それだけの自信がありますか。事ごとに安定所が、人が少ない少ないと言っておられる。それだけの多数の人、約一カ月とか二カ月の間に処理しなければいけないところの出かせぎ者を、安定所で出かせぎの五十万、百万の人を世話し切れますか、伺いたい。
  88. 石田博英

    石田国務大臣 安定所がいまお世話をいたしております出かせぎ者の数は、先ほど申し上げましたとおりでありますが、これがわれわれの呼びかけに応じて激増をいたしてまいりますれば、それに応ずるような充員の措置を講じてまいるつもりであります。それと同時に、安定所だけではなくて、各市町村にあります出かせぎ相談所とかあるいは職業安定協力員、そういうところに御相談をいただくということも含めますならば、現在の設備で相当の量の消化ができるものと考えております。
  89. 華山親義

    華山分科員 昨年大橋労働大臣は、農村におけるところの職業安定所の活動、組織網、それが薄いためにまだ十分にお世話のできないのははなはだ遺憾であるとおっしゃった。この一年間に、そういう方面について特段な組織網の拡大、あるいはそういうことをなすって自信を持っておっしゃるのでございますか、伺いたい。
  90. 石田博英

    石田国務大臣 私どものほうとしては、あとう限り機構の整備はいたしております。私どものほうの能力がないために、やむを得ずよその道を通ると言うよりは、むしろもっと安易な慣習的なものに引きずられて、いわゆる手配師とか縁故関係に行く例が非常に多いのであります。そういうところで、手配師などはこれは不法な存在でありますから、取り締まりの対象になっているのはむろんでございますが、縁故関係で就職をされ、働きに行く場合においても、届けだけはして行ってもらいたい。そうすれば、むろん保護も監督もできるのだということであります。一年間に、本年度の予算においてはかなり充実をしているつもりでございます。
  91. 華山親義

    華山分科員 私は、安定所にそれだけの能力がないのじゃないかということを追及したのではございません、あるかどうかということをお聞きしただけです。  その次に伺いますが、職場の問題でございますけれども、私はひまのあるごとに飯場、そういうところを回ってみた。惨たんたる状態です。総理大臣の言われるように、悲惨な状態の場所が幾らもあります。そうでないところもありますけれども、ひどい、全く法律外の場所にある。私の見たところを一々ここで申し上げるのもなんですけれども、私の見たところで一番ひどいところは、一畳に一人の寝室などというものは、これはもう当然、あたりまえのことなんです。いわゆる土木飯場でございます。私の見た一つの例でございますか、便所には紙が捨ててない。なぜか。便所のくみ取りがめんどうだから、紙は捨てないでくれということなんです。その紙が累々として便所のわきに積んである。そういう状況なんです。いわゆる大企業の飯場とは言えないかもしれませんけれども職場におきましても、五十畳の部屋に五十人ぐらいの人が寝ている、押し入ればない、天井には針金を張って、そして着物なんかは全部ぶら下がっている、そういうようなところばかりでございます。私はいつでも御案内申し上げる。決して誇張などを言っているわけではない。大臣がああいうところをごらんになったならば、ものの考え方がお変わりになるのじゃないか。そういうふうな状況でございますけれども、ああいう飯場というものに対しては、労働基準局等は、あれはもうあのままのものであって、手の届かないものなのでございますかどうですか、伺いたい。
  92. 石田博英

    石田国務大臣 飯場の実情がひどいことが非常に多いということは、私どもも方々から聞いております。したがって監督行政を強化させているのでありますが、と同時に、私自身も、議会でも終わりましたらぜひ視察をしたいと思っておるのであります。しかしながら、私どもの監督官というものは、対象事業場の数に比較いたしますと非常に少ない。これは警察や何かでも同様の場合が多いのでありますか、したがってそういう事例を生じた場合、事例に出っくわした場合、その当事者であろうとなかろうと、一々基準局のほうへ積極的に申し出ていただきたいと思うのであります。私どものほうから監督官は回ってはおりますけれども、正直に申しまして、対象事業場を一々回って歩きますと、一年間で十分の一くらいしか回れないという状態であります。十分の一回ったとしましても、一年に一度行く程度ではなかなか不十分でありますから、そういう事例に出っくわした当事者あるいは見た人、これは遠慮なくひとつ基準監督署へその事例通達していただきたい。即刻措置をいたさせるようにするつもりであります。むろん飯場は基準法の支配する範囲にあります。
  93. 華山親義

    華山分科員 何か通告しない者が悪いんだみたいなお話でありますけれども、そういうものじゃないと思う。しかし、それがぽつりぽつりあるというなら通告でもいいのですけれども、私が見たところでは至るところにある、至るところにそういうところがある。例外的にぽつりぽつりあるというなら、これは行政の人手が足りないために見のがされたというようなことだと思うのでございますけれども、そういうところが至るところにあるということになっちゃ、これは通告等で間に合うものじゃない。やはり労働基準監督が、人手が足りないことは別といたしまして、不十分だと私は思うのです。徹底してやっていただきたい。ところどころにあるのじゃありません。そういうところが大部分なんです。  それからもう一つ伺いたいのでございますが、私がある職場に行きました。ところが、出かせぎ者は多く外に出て働いている、その留守の状態でございますけれども、そこでばくちをやっているのですよ。おそらく棒がしらだとかなんとかいう連中だと思うのです。大臣も農村出身の方とお聞きしておりますが、東北の農村ではばくちはやらない、花札は持たない。ああいうふうなことが東北の農村にでも——全国の農村に浸透するようなことがあっては、私はおそるべきことだと思う。そしてそこには青年がたくさん来ているのです。棒がしらのような連中にばくちに誘われて、それを断わったためにどうこうしたというような話がよく小説等に出てくるのでございますが、まともにそういう状況を見たような気がする。私は農村を守るために、それから将来の労働者を確保するために、出かせぎ者の問題は、その見地からも十分に飯場等については取り締まり、きれいにするように努力していただきたいと思うのでございます。  それから、先ほどピンはねというふうなことは違法だとおっしゃいましたが、これはもう幾らもあります。私、言えますよ。三人世話すればもらえるのだと言っているのですよ、あるいは五人もらえば一人分はもらえるのだと言っているのです。そうしたならば、その連中が一生懸命に農村に行って人集めをする。職業安定所の活動等はかないっこありません。そして私は、その証拠を歴然と見ている。労働帳簿、そういうものを見せてもらうと、ちゃんと労働者に払っただけの賃金が書いてある。労働者の出身地なり何なり全部あって、そのほかに五人や十人は、山谷という名前で別な人の名前が書いてある。この集団のほかにほかの人が来て働いているかと聞きますと、働いておらないと出かせぎ者の連中は言うのです。ですから、帳面だけはそういうふうにして金をもらって、そして山谷の分だけは自分のふところに入れる。会社のほうはおそらくそれに見合うようなふうにして、一般出かせぎ者のほうからは賃金を低くしているに違いない。それは明確なピンはねです。そういうところは、回ってごらんになればちょこちょこありますよ。われわれは職権を持たない。職権を持たないでさえも、そういうことが見つかるのです。もっと労働基準のほんとうにしっかりした面を——一番労働基準の抜け穴は出かせぎ者の面にありますから、ほんとうに気をつけていただきたいと思う。  それから、賃金不払いのことがしばしば起こる。賃金不払いの問題につきまして、法律をもって——昨年もお尋ねしたのでございますが、まだそういう気配もございませんが、法律をもって土木事業等につきましては、元請者が賃金については責任を持つという法律の御改正はできませんでしょうか。
  94. 石田博英

    石田国務大臣 先ほどから違反事件があり、ひどい事件があったら通告をしてもらいたいと申し上げたことは、通告をしないほうが悪いというようなことを言っておるものでは毛頭ございません。これは警察、刑事事犯の捜査でもそうでありますが、やはり一般の協力を得ないと得られないのであります。特に証拠等がないとできませんので、一般の人がそういう事犯を見て見ぬふりをするということでなくて、あるいは泣き寝入りするということでなくて、どんどん摘発するという気風を持ってもらうことが、監督行政の効果をあげるゆえんなんだということを申し上げているのであります。  それから、お話のごとく私も東北農村の出身者でありますが、私どものほうには、いわゆる花札賭博というものはずっと見たことがありません。今日も見たことがありませんが、こういうことが農村に入ってくるということはたいへんでございまして、そういう点についてもやはり同様な——これは直接私どものほうの事犯ではございませんが、きびしくわれわれも監督いたしますが、これもやはり一般の御協力をひとつお願い申し上げたいと思います。  それから賃金未払い事件、これは最近において、これを防止いたしますために職業安定所では相手方の雇用主の調査を厳重にいたしますほかに、その雇用主が条件をあらかじめ事業場に明示するというようなことをいたさせております。ただ、先ほどのいわゆる手配師その他との関連でございますが、そういう手を通してまいります場合はそういうことがなかなか実行できませんし、そういう者に限っていいかげんなところへ就職させることになります。そこで、先ほどお話しのような事案は、山形県でも失業保険の不正支払いに関連をいたしまして暴露いたしたことを承知いたしております。このやみ手配師の摘発ということは、われわれのほうとしても厳重にやらせておるつもりでありますが、これまた非常にあまりにも対象が大き過ぎますので、御協力を得て実績をあげてまいりたいと考えております。  それから賃金支払いの関係、つまり元請が下請の賃金支払いの責任を持つというような関係、これはいろいろ検討させておりますが、それだけでなく、たとえば労災保険あるいは損害の賠償、失業保険、そういう事案についていろいろ不届きな、力のない不誠意な下請業者がいろいろな事件を起こしていることも事実であります。この土木事業者の中小関係事業その他における請負関係の是正ということについては、これは労働行政の上からも改善をすべきものだと思いますので、目下関係各省と連絡をして検討をさせております段階であります。
  95. 華山親義

    華山分科員 いま時間もありませんので、賃金不払いの計数を申し述べることは差し控えますが、わかっているだけでも相当なものでございます。そしてこういうふうなことになりまして、私は法律をつくるということが、なかなか政府のほうは、いま大臣がおっしゃったとおり各省とも相談中であるというふうなことでございますが、私は一ぺんに多少でもできる方法があると思う。と申しますことは、公共事業、公団の事業、それから都道府県の事業、そういうものについては、請負契約をする際に、請負契約の約款の中に、そういうものについては下請をさせた場合にそういう問題が起きたときには、おまえが責任を持つのだという約款を入れられたらどうか。そのことによって、先ほど、現在公共事業が多いのだとおっしゃいましたが、よほど助かるのじゃないか。今日の土建業におきましては、二番目、三番目の下請がやっておるような状況が非常に多いのでございます。私は、この点こそ閣議等におきまして決定をされれば約款にも入れる、そういう約款がいやな請負業者はやらなければいいのですから、簡単にできると思いますが、その点につきまして労働大臣はひとつお考えになってお進めいただけないかどうか、お伺いいたします。
  96. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 その問題は、賃金不払い、特に出かせぎ労働者の賃金不払いの実態はどうなのかという現状把握の上に立って、いろいろ私どもも対策の検討をいたしておるわけであります。特に中央労働基準審議会におきましても、この賃金不払いの問題を重視いたしまして、いろいろ検討を重ねてきたのであります。行政の実務をやっておりますと、一番困惑いたしますのは、賃金不払いがあったということがあとになってわかる、特に東北など、自分のくにに帰りましてから、賃金をもらわなかったということを監督署等に申し出る。そこで、その事業場を管轄する監督署に移送しまして調べにかかったところが、その建設業者はどこに行ったかわからぬ、あるいは夜逃げをするというようなケースがございまして、この対策の第一は、賃金不払い事件が発生いたしましたら、即刻もよりの監督署に御連絡願いたいということ。それから第二は、ただいま大臣が申し上げましたように、自分が幾ら賃金をもらうかわからないということではならぬのでありまして、この点、特に賃金に関する条件を明確にする、あるいは見やすい場所にそういう協定を張り出す等、明らかにする。これは監督の際の一つの基準にいたしておるような次第でございます。現在われわれが扱いました、これは建設業全体の賃金不払いの件数ですが……。
  97. 華山親義

    華山分科員 時間がないものですから、なるべく簡単に……。
  98. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 はい、わかりました。それで私どもは、実態把握の上にいろいろやっておるわけでございまして、いまの元請の賃金支払い義務ということになりますれば立法措置を要する。その前に、私ども行政的になすべきことがかなりあるという認識に立ちまして、目下努力しておるような次第でございます。
  99. 石田博英

    石田国務大臣 いまの御質問の中にありました元請と公共事業発注者との契約の中に入れるという問題、これは非常に効果があることだと考えますので、検討したいと思っております。この問題は、かつて鉄道新幹線の事故がございました際に、その請負関係を調べましたら、やはり三番目くらいの請負でありまして、私はこれは直ちに閣議の議題といたしまして、検討を進めておる次第であります。
  100. 華山親義

    華山分科員 私は昨年労働基準局長にお願いいたしまして、各地方に対して、すみやかに通知を出していただきたいということをお願いいたしました。通知を出していただきまして、各地方の労働基準局が一生懸命に、少なくとも私の気持ちでやってくだすったことには感謝しております。それですが、先ほどのことにつきましては、ぜひひとつ大臣にお願いしまして、政府の力でできる範囲で契約書からひとつ変えていく、入れていくということにお願いをいたします。  それから、この有給休暇でございますが、私、労働基準法のことはあまり詳しく存じませんが、六カ月間とか四カ月間とかつとめている間に、有給休暇というものはやらなければいけないものでしょうか、どうなっておりますか。
  101. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 有給休暇につきましては、一年間まず働くというのが第一の基礎条件になっておりますので、六カ月の場合には、有給休暇の請求権は発生しないということであります。
  102. 華山親義

    華山分科員 そうしますと、日曜日も祭日もなしに毎日働いているというのが原則なんでございますね。
  103. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 御承知のように、労働時間なり休日については、基準法に規定がございまするので、休日は休日として与えなければならない。年次有給休暇は、休暇をとっても賃金は支払うという特殊な休暇制度であるわけでございまして、その制度は、基準法の三十九条に「一年間継続勤務し」云々という条件がついておりますので、六カ月の場合には三十九条の適用はないという関係があるだけでございます。
  104. 華山親義

    華山分科員 その点につきまして、出かせぎ者は出てきて働くのでございますから、百円でも千円でも、一円でも多くうちへ持って帰りたいということで、自分で好んで残業もするという状態、自分で好んで休日も働くというふうな状態をやっております。それがまた使うほうのつけ目なんです。私はこういうものに対しましては、いまの法律でないとすれば、何らかの形で有給休暇というものを与えるような措置をお願いいたしたいと思います。全然できないものでございますか。
  105. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 有給休暇制度は、「年次有給休暇」と「年次」という文字がついておりまして、各国とも年次有給休暇制度、こう相なっておるわけでございまして、それ以下の期間について特殊の有給休暇を認めるかどうかという点については、いろいろ問題があろうかと思います。ただ先生御指摘のように、有給休暇ではなくして、当然の休日が適正に与えられるかどうかという点については、まずこれは基本的な問題でございますので、そういった点、さらに十分ただしてまいりたい、かように考える次第でございます。
  106. 華山親義

    華山分科員 私は昨年、青少年の問題につきまして、現在農村におきましては一月十五日の成年式というものはやれない、と申しますことは、一月十五日前に成年に達する人が出かせぎに行っていて、十五日には人がいないからなんです、そういうふうな状況であるわけでございます、そして青少年がああいうたくさんのおとなの人とまじり合って仕事をする、先ほどのような賭博というふうなこともございましょう、そういうふうな状態では私は困ると思うので、将来の青少年のために、また労働者としての将来の誇りを持つという意味からも、出かせぎ者の青年を集めて一つの職場をつくってもらいたい、そこで規律正しい労働をしてもらいたい、国は直轄事業を請負先にみな出さなければいけないという規則は何もないはずだ、自分でもできるはずだ、そういうふうな職場を一つつくってもらいたいということをお願いしたのでございますけれども、まだ何のお話もございません。青年のみならず、できれば私は、農村の人たちも集団的な労働ができれば一番いいのじゃないか、そういう意味で、特に青年を中心として、なおそうでない人をも考えて集団的就労のできる場、そういうものをひとつお考えを願いたいと思いますが、労働大臣、それから文部省のほうでおいでになるとすれば文部省のほうから、御答弁を願いたいと思います。
  107. 石田博英

    石田国務大臣 公共団体が独自の立場で発注をいたしまして、そういうことが実際的に可能であっても法律的に可能であるということは、これは十分検討を要する問題だと思うのでございます。しかしながら、現在行なわれておる出かせぎの状態改善するために、集団的な指導あるいは集団的な雇用関係、そういうようなものを締結する方向へ指導してまいりたいと思っております。
  108. 石川智亮

    ○石川説明員 現在、学校を出ました青少年に対しましては青年学級という、振興法に基づきます青年学級が四十二万の学級生を持っておりまして、このうちの年少の労働者の数は大体八万くらいと想定されております。これにつきましては現在、一億四千万の三分の一につきまして、いわゆる職場関係にも流動をする青少年の労働人口にこえる施策をるるやっております。このほかに、三十八年度から、いわゆる十五歳から十七歳までの後期中等教育の段階におります高等学校に行けない生徒につきましては、現在三十五校の勤労青年学校というものをつくりまして、これは年間三百時間という、いわゆる勤労青少年が学習し得る限界の時間数を設定いたしまして、この中で農村、家庭、商業、工業のコースに分かれまして、高校進学の生徒の学習活動をさせておるわけでございます。これは来年度六十校まで伸ばしまして、さらに需要にこたえるようにしたいということを考えておるのが一つであります。  もう一つは、現在後期中等教育で中央教育審議会に諮問中で、答申がまだ出ておりませんが、これの一環と考えまして、来年度から、私どものほうの社会教育の青少年局から——公立の青年の家を現在七十九持っております、これは集団訓練の場でございますので、来年度から農村に残る者、それから百人以下の中小企業に入る者、つまり大企業並みの研修なり、今後労働者としての誇りの研修の機会を持たぬ年少労働者につきましては、三泊四日で私のほうで、中学を卒業して職場につくと同時に、全国の七十九の青年の家で集団訓練をしたい、かように考えております。
  109. 華山親義

    華山分科員 私、そういうことをお尋ねしたのではなかったのです。青年学校とおっしゃいますけれども、農村には青年学校はできないのですよ、いまやろうとしても人がいないのですから。冬の間みんな東京へ出てきちゃって働いているのです。青年学校をやろうとしたってできないのが現状なんです。あなた方のほうで幾らつくると言ったって、それはできませんよ。それだから私は言うのです。そういうふうな集団的労働の場を国でつくって、賃金を与えてそこで働かして、そうして青年教育なら青年教育をやったらいいじゃないか、青年の家なんかをつくるよりよほど役に立ちますよ。妙な教育をされちゃ困りますけれども、そういうことを私は言ったのです。そういうことをお考えにならないかどうかということを私はお聞きしているのです、どうですか。幾らあなたのほうでやろうとしたって、それはだめですよ、青年学校なんというのは、農村では青年学校に行く人がいないのですから。
  110. 石川智亮

    ○石川説明員 青年学校のほうは、先生がおっしゃいましたように市町村単位で開設いたしておりますが、確かに、流動人口のために青年学級をつくるまでの青年がいないという御指摘があったということで、私のほうも青年の集まり方についてはいろいろ検討いたしておりますが、今後とも広地域にわたりましても集団的に青年が集まって、学習し得る場を何らかの意味で考えていきたいというふうに考えております。
  111. 華山親義

    華山分科員 あなたの言うことは、私はなお文部大臣に聞かなければいけないのですが、学習の場をつくれというのではない、働く場所をつくれということを言っておるのです。働いて勉強する場をつくれ、こういうことを申しておるのです。東京には働くところがある、そこに一万でも何でもいいから農村の青年を集めて、そうして働く場所に出して正当な賃金を得させて、あるいは国が補助金を支給して、そうして夜は夜でそこで教育をやったらいいじゃないか、そういう場所をつくるお考えがないかどうかをお聞きしているのです。私は事務当局ですから何もわかりませんと言うならわかりませんでいいですけれども、私の質問にお答えにならないからお聞きしているのです。
  112. 石田博英

    石田国務大臣 これは事務当局では無理な問題であります。そういう形で労働の場をこしらえ得られるかどうか、法律上は可能であっても、実際の運営としてどうであるかということについては、それは工事の発注関係あるいは工事の指導関係等をも勘案して検討しなければなりませんけれども、しかしながら、若い人々が、現在全く放任されたままの形において都会地で働いておるという状態改善するために、具体策は検討したいと思っております。
  113. 華山親義

    華山分科員 終わります。
  114. 井村重雄

    ○井村主査代理 午前中の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分より再開することといたします。  この際、暫時休憩いたします。    午後一時二分休憩      ————◇—————    午後一時三十七分開議
  115. 相川勝六

    相川主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  労働省所管に対する質疑を続行いたします。小林進君。  小林君に申し上げますが、だいぶ質問者が多くて、なかなかさばけるかどうか心配でございますから、大体持ち時間を三十分程度にお考え願いたいと思います。
  116. 小林進

    小林分科員 私もかぜを引いておりまして、非常にぐあいが悪いものでございますから、まことに願ったりかなったりで、なるべく簡潔に終わりたいと思いますので、ひとつよろしくお願いをいたします。  きょうも大臣は、午後の四時でございますか、例の総評の岩井氏が出された予備折衝の五項目に対する回答等を兼ねて会見されるという、重大な御用事もあるようでございますから、その会見に支障を来たさない程度質問を重ねてまいりたいと思うのでありますが、第一番には、若干時期がずれましたけれども、直接大臣からお聞きをする機会がございませんでしたので、この分科会をおかりいたしまして、あらためてお尋ねをいたしたいと思うのでありまするが、それはドライヤー委員長の、日本を去りまする去る二十三日に、政府労働者代表に出しました調停案、その内容について、大臣の御解釈を加えた御説明を承りたいと思います。
  117. 石田博英

    石田国務大臣 ドライヤー委員会が政府代表及び労働代表に出されました調停案と申しますより提案、プロポーザルと書いてございましたので、そう御理解願いたいと思います。この要点は、八十七号条約の早期批准を望む。それに対しては公労法四条三項、地公労法五条三項というような、直接関連のある法律の改正に注意を集中してもらいたい。それからそれが行なわれれば、近代工業国家としての日本のILOにおける立場は、非常に変わるであろうということがあります。これが第一点であります。  第二点は、日本の労使関係には相互信頼が欠けておる。その相互信頼を回復するために、政府、使用者、労働者の代表者たちが、共通の問題について定期的に会合を開いて、意見の交換を行なうことが望ましい。その意見の交換の場で結論が得られたならば、これは結論が得られ、進歩のあとが見られたら、それを国会に報告してほしい。なおドライヤー委員会が去ったあとで、本年の六月にILOの総会が開かれるのでありますが、その総会には労働大臣労働代表が出席をして、そうしてその後の経過について報告をしてもらいたい、こういうことが提案の要点でございました。
  118. 小林進

    小林分科員 いまの大臣の御説明にもありましたとおり、批准を早期に行なうことと、労使関係改善のために総理の指導のもとに、イニシアチブのもとに、定期的に政府、労使三者の会合を持って、なおその結果を適当に国会に報告するように、こういうことになっていると思うのでございまするが、私が特にその中でお尋ねをいたしたいということは、その政府、使用者、労働者三者が、特に政府のイニシアチブにおいて、政府の責任において会談を持て、こういうことを言われているのでございまするが、その持てということが何を一体意味しているのか。申し上げるまでもなくこのドライヤー委員会が参りまして、煮詰めてまいりましたその結論は、文部省、政府の言ういわゆる中央交渉、これが大体つまずきで、非常に問題の解明に苦労したわけであります。私はこの三者で話し合いをせいというのは、すなわち一番問題の中心である中央交渉を総理の責任でおやりなさい、こういう勧告であると私は解釈するのでありまするが、大臣、この点はいかがでありましょう。
  119. 石田博英

    石田国務大臣 この八十七号条約批准の大きな障害になったのは、文部大臣と日教組の代表が会うという問題であります。これは中央交渉ということばが私は適当であるとは思っておりませんが、要するにこれについて会って話し合いをするということが、大きな難点になっているということは御指摘のとおりであり、ドライヤー委員会もその認識においては変わりはなかったであろうと思うのであります。ところがそれがなぜ難点になったかという、それのもう一つ先を考えますと、それは相互の信頼関係が欠けておるということである。そういうドライヤー委員会の判断のもとに、労使関係を回復するために、まず共通の課題について、先ほど申しましたような会合を持って、意見の交換の場をつくりなさい。それを政府のというか、総理のイニシアにおいて行ないなさい。こういう行なうことが望ましいという勧告と承っておるのであります。そういう経緯もあり、それからその後のお話し合いもございましたことから勘案をいたしまして、その政府及び労働代表、使用者の代表との話し合いというものは、直接的に文部大臣と日教組との交渉というものを含んでいるものとは考えないのであります。その難点の問題を処理するための足場をつくることとして、こういうことをやりなさい、こういうふうな勧告と承っておるのでありまして、またそこのところがはっきりと、いま御質問のようなことと受け取れないために、総評側がこの提案を受諾するのをためらったものだ、こういうふうに私は考えておる次第であります。
  120. 小林進

    小林分科員 そこが実に問題のポイントでございまして、労働大臣のほう並びに政府のほうでは、そういう直接交渉を示唆したものではない。至る一つの過程の足踏みといいますか、足場をつくるという、そういう意味の三者構成の定期的な会合である。ところが私どもと言ってはなんでありまするけれども、組合側のほうでそれを受けなかったのは、確かに中央交渉ということばを大臣がお好きでないとするならば、政府と地方公務員の団体交渉——話し合いでよろしいわけでありまするが、その話し合いを示唆したものである。したものであると一応は考えられるけれども、いま大臣の御答弁のように、示唆したものでもないという、そういう不明確の点があるから、その点をいま少し明確にしてくれ、これがドライヤー委員長以下調査団の方が帰られるまでの労働者側の意向だったわけです。けれどもドライヤー委員長以下の方々は、これ以上ことばを具体化することは、日本国の行政その他に関する内政干渉になるから、これ以上は詳しく言えない、あとは双方のいわゆる解釈に、最も良識に富んだ、良識ある解釈に待つほかはないということで、これ以上具体化しなかったわけであります。ただそこで私の解釈とすれば、これだけの抽象的なことばの中には、大臣と違うのです。違って、やはりそこにいわゆる中央交渉、文部大臣と日教組との交渉を事実上おやりなさいという、こういうことを示唆したものであると私は解釈するのであります。この点、大臣、いかがでしょう。大臣はどうしても違うとおっしゃるのですか。
  121. 石田博英

    石田国務大臣 私はその提案自体が、直接的にいまお話のようなものを示唆しているものとは考えておりません。懸案を解決するための土台をつくる第一段階として、こういうことをやることが有効だろう、そういう提案と解釈しております。
  122. 小林進

    小林分科員 これは私だけの解釈ではないのでありまして、私もこの点が非常に重要な問題だと思いまして、当時のあらゆる新聞の切り抜き等をやりまして、それぞれ世論の動向も調べたのでありまするけれども、やはり権威ある中央紙などは、一応私の解釈に立っている、こうみなされるのであります。かりにここで毎日新聞の一月二十四日の切り抜きを見ましても、「これは、現在の紛争の焦点になっている日教組の中央交渉問題について「労使関係改善政府の主導権の下でなされるべきである」との示唆を与えたものであり、事実上の中央交渉として国(文相)および当局は労組(日教組)と話し合うべきであるとの見解の表明である。したがって「陳情なら会うが日教組と交渉する必要はない」としているこれまでの政府の対日教組問題への態度を抽象的ではあるが、きびしく批判している。」これはほんの一例でありまするけれども、こういうふうに各紙とも解釈をしているわけであります。ところが政府だけは依然として頑迷、労働大臣はそれでも土台づくりまでという、やや進歩した解釈をしておられますけれども、他の閣僚に至っては、なお陳情の部類に属さないという解釈すらされているというものがあるのでありますけれども、この問題は単なる解釈論だけの問題ではなくて、今後から六月の総会に至るまで、ずっと尾を引いていく問題でありますから、私はここで大臣と論争することになりますけれども、私は私の解釈が正しいと思うのであります。いかがでありましょう。
  123. 石田博英

    石田国務大臣 二十四日の段階は、二十三日に極秘で取り扱うという条件のもとに提案がなされております段階ですから、提案の全容について発表をされていないときであります。憶測の域を出ないものであります。私も十分全部読みましたので、大体覚えております。まだそういう段階、つまり正式に発表されない段階であります。  それからこの提案のそういう文句が、ただいま御指摘のようなことを意味するものであるかどうかという質問も、行なわれなかったのであります。二十五日に総評側からいろいろ質問がありました。そのときにも、文部大臣と日教組が会うということを意味するのかという質問はございませんでした。ただ意見の交換というのは、団体交渉であるか、あるいは陳情であるか、話し合いであるか、どういうことなんだという質問はありました。それに対してドライヤー氏は、ことばはどうでもいいのだ、ただ共通の課題について意見を交換するということを意味しているのだ、こういうお答えがありましたので、つまり直接的に日教組との団体交渉を意味するということは、質問にさえ出なかったことでございます。
  124. 小林進

    小林分科員 それではこの問題は、またひとつ特別委員会でも設けられれば、その席でさらに掘り下げてみたいと思いますけれども、なおこの案の中に示されておる定期的に会合を持って、そして国会に報告せよという、こういうことばを具体的にあらわしたらどんな形になるものか、大臣の構想をひとつお聞かせ願いたいと思います。
  125. 石田博英

    石田国務大臣 これは政府はこの提案を受諾いたしました結果に伴いまして、御承知のごとく官房長官から岩井総評事務局長に対しまして、この提案に従って政府と使用者の代表、あるいは労働者の代表、これの定期的な会談を開きたいという旨の申し出をいたしました。これに対して、その提案にいくまでの間の基本的な理解点とでも申しますか、条件とでも申しますか、そういうものについて総評側から質問がございまして、本日四時から四時半だと思いますが、回答を官房長官からいたします。私は同席をするつもりでありますが、政府としてお答えをするのであります。そのお答えをする内容については、これは直接答えるのが礼儀であろうと存じますので、ここでは御遠慮させていただきたいと存じます。そこでそれに従って実施してまいりまして、その意見の交換の結果、両者の合意を得た具体的なものが生み出された場合は、その合意を得られた形を国会に報告する。その国会に報告するという形は、質問に答えるという形でもよろしゅうございますし、あるいはまた報告書のようなものを配付するという形でもよろしゅうございましょうが、そういう方法については具体的な指示はありませんし、そういう方法は労使の間で話し合ってきめていけばいいものだろう、こう考えておる次第であります。
  126. 小林進

    小林分科員 国会に報告するということも、いわゆる三者の話し合いを権威あるものにしようという含みがあるとぼくは考えておりますので、その意味からいっても、単なる陳情的な扱いをしてはならないという、裏側の一つの示唆があるものと考えられるわけであります。ただ三者で話し合うという、その話し合いの労使の問題になりますと、いまも申し上げるように陳情の形です。これは自民党の先生方がよくお使いになります陳情の形。それから一つの団体協約まで結ぶ、団体交渉権まで至っておる話し合い。しかし団体交渉権には至ってないで、話し合いをして両者が妥結点を見出す。それは陳情というよりも、一つの拘束力を持った強いものです。そういう話し合いと、大体三つの形がこの問題をはさんで考えられるのではないかと思いますが、私どもはここで言われておる話し合いというものは、あくまで団体交渉権をさしておるものと考えるわけですが、一体大臣はどのようにお考えですか。
  127. 石田博英

    石田国務大臣 労働協約締結を目的とした団体交渉とは解釈しておりません。しかしながらいわゆる陳情——一方的に御意見なり御注文を聞くだけにとどまるものでもないと思っております。提案の中に書いてありますように、意見の交換でありますから、議題についてそれぞれの意見を述べ合う。そして述べ合うことによって合意点に達するものがあり得る。合意に達するということがやはり問題によっては望ましい。達しないこともございましょうが、達することが望ましい。そういう目的を持って開かれるものと考えておる次第であります。労働組合法上にいう団体交渉というような、いわゆる任命権者と被用者の代表の間に行なわれるものではないと考えております。
  128. 小林進

    小林分科員 ちょっと話が横にそれるようでありますけれども、ドライヤーがこちらに参りまして、自治大臣と自治労の代表とがしばしば話し合いをしておるのを見ながら、同じような立場にある文部大臣が、日教組との交渉を拒否せられておることに非常に驚いた。こんなような形が先進国といわれておる日本にまだまだ残っておるのか、非常に驚いたということが言われておりまして、私どもが希望しておるようにそれを法文化せというようなことまで、明確にドライヤーがこの中に書いていったかどうかは別にいたしまして、少なくとも文部大臣と日教組とは、自治労のごとく話し合うなんということは、もはやあらためて、言わぬ先のきまりきったことじゃないかというふうな感じ方をしておったというのでありますけれども、この点は、大臣は、いろいろの交渉の過程においてどうおとりになったか、お聞かせ願いたいと思います。
  129. 石田博英

    石田国務大臣 八十七号条約の批准に関する経緯内客については、ドライヤー委員会は十分承知しておられた。したがって驚いたということはないと思います。あらかじめ全部承知しておったから、驚いたということはないと思います。また文部大臣、自治大臣との話し合いについて、どういう具体的なことがあったかは、私は立ち会っておりませんから承知はしておりませんけれども、私が接した範囲においては、やはり法文化の問題等が議題になりましたことは事実であります。その際に、法文化は必要ないというような意見を漏らされた委員もございました。どなただということは申し上げませんけれども、そういう方はございました。それから今回直接的に私の耳には入りませんでしたが、五十四次報告の中に一応の意見が述べられておることも承知しております。
  130. 小林進

    小林分科員 それではここで角度を変えてお伺いしたいのは、十九日でありますけれども、彼らが分かれて地方のそれぞれ問題のあるところへ現地調査に参りましたときに、福岡へコール委員が行っておるのでありますが、そのコール委員が十九日の午後七時過ぎ、福岡で例の地方公務員の問題について、地方公務員には八十七号条約の精神にのっとって、このコールの発言の要旨によれば、組合に団体交渉権を与えるべきだと考えるかとの質問に対して、八十七号条約の精神には、結社の自由、団結権の保護と団交権を認めることは含まれている、だから当然組合には団体交渉権を与えるべきである、こういう発言をしている。そこでまた重ねて、しからば地方公務員の組合員にも団交権を与えるべきだとの意見かどうか、こういう質問に対して、そのとおりである。われわれはストライキ権を与えるべきかいなかの問題は、八十七号の問題ではないと思う。しかし団体交渉は当地としても行なわれておるし、われわれもそのことについては調査したのである。地方公務員にも与えるべきである。重ねて彼は言明いたしているのでありますが、これは労働大臣、いかようにおとりになっておりますか。
  131. 石田博英

    石田国務大臣 コール委員が岐阜でしたかで答えられた記事が、ある特定の新聞に載っておる事実は承知いたしております。ただその内容がかなり違ったものでありましたために、他の新聞はそのようには取り扱わなかったといように聞いておりますが、あるいはコール委員がどういうことを言われておるかということについて、私は正確に承知いたしておりません。したがってコール委員の意見を基礎にした御質問には、どうもちょっとお答え申しかねるのであります。制度として任命権者との間に交渉権は、現在でも国家公務員も地方公務員もございます。その相手方の問題になるのだろうと思うのでありますが、任命権者との間には、現在日本でもあるわけであります。協約締結権というものは、各国ともそれぞれ法令保証をしてあったり、あるいは法令違反の場合には無効という規定がしてあったり、いろいろありますが、日本も同様に取り扱いをしている場合が非常に多いのであります。おそらくそのことをさしてコールさんは言われたのではなかろうか、こういうふうに考えますが、それは日本でも現にそうなっている。任命権者とは交渉いたしております。
  132. 小林進

    小林分科員 いまおっしゃったのは、確かにこの問題は直ちに地方公務員たる日教組が文部大臣と中央交渉ができるという問題の解明にはならないと思いますが、ただし地方公務員に団体交渉権を与えるべきだという原則が成り立てば、次にはやはり地方公務員たりといえども、教職員の賃金から俸給から、その定員まで左右する権限を持っている文部大臣に、事実上の団体交渉を行なうべきであるという道は、ここからもやはり通じていくのではないかと思うのでありますけれども、その点は別にいたしましても、いよいよ大臣はこれから御回答をなさるのでありますけれども、一体この中央交渉の問題をどういう形できょう午後四時に回答されるのか、お差しつかえない程度に漏らしていただけないかどうか。少なくとも組合側は、五項目を重ねて、文書をもって大臣に、政府に回答をお願いしているわけであります。おまえに聞かせるわけにはいかぬというなら別ですが、先ほどから私繰り返しておりますように、国会に報告すべしとちゃんとドライヤーさんが言われております。事後に報告せよとか、事前にせよという制約はございません。国会に報告せい、こういうことになっておりますので、まあ、ひとつ支障ない程度にお漏らしいただきたい。口頭でなされるのか、文書でなされるのか、五項目を一項目項目ぴしっとお答えになるかどうか、ひとつお聞かせ願いたい。
  133. 石田博英

    石田国務大臣 あと二時間ほどたちますと回答いたすわけでございますが、回答をいたす相手方、当の相手方にお渡しする前に、事前に申すのはどうかと思われますので、この点は礼儀上お許しをいただきたいと存じますが、文書でいたします。それからわれわれは、誠意をもってこの三者の会談がシールに乗って開始されていくことを熱望いたしておりますから、そういう観点で回答をいたすつもりでございます。
  134. 小林進

    小林分科員 どうもILOのドライヤーの問題は、つかみどころがございませんので、これはこの程度にひとつ打ち切らざるを得ないと思うのでございますが、それにいたしましても、予算の審議の過程においても、ILOの特別委員会がどういう形で再開運営されていくかということは、今後の国会審議の過程に重大な影響があるわけであります。御承知のとおりわが社会党は、まだ委員の任命をしていないくらい、党内は非常に強硬論が横溢をしておるわけであります。強硬論は、大臣承知のとおりどこにあるかといえば、いわゆる政党と政党との信義に基づく例の河野・倉石案、この両党を代表するチャンピオンが、それぞれ多年両党の了解を得ながらつくり上げたその案を、われわれは固執いたしまして、どうしてもそれを譲るわけにはいかない、かように考えているわけでございまして、そこへ政府のほうでは、そうした河野・倉石案というものを一顧の考慮もなさらないと言ったらことばが過ぎるかもしれませんが、尊敬すべき野党第一党のわが党に何らのあいさつもなしに、今度は政府の原案に称するものをちゃかちゃかと国会へ提出された。これがそもそも野党第一党の社会党を硬化せしめておる根本の理由になっておるのでありますけれども、一体石田労働大臣は、こうした過去における、両党の話し合いにおける河野・倉石修正案というものを、どういうふうにお考えになっておるか、お聞かせを願いたい。
  135. 石田博英

    石田国務大臣 これは二つ考えなければならぬ問題があると存じます。その一つは、国会の審議を拘束する、つまり両党の約束としての倉石修正案、それからILO八十七号条約批准に関連する国内法改正についての、両党の意見を調整したという意味における倉石修正案、この二つ意味があると思うのであります。前者の点につきましては、当時の与党幹部は、合意点を実現すべく極力努力をいたしましたけれども、不幸にして党内取りまとめができませんので、したがってそういう旨を社会党に通達いたしました。これをもってやむを得ず打ち切らざるを得ないということを、当時の前尾幹事長から、社会党の成田書記長に通達をいたしました。その結果として御承知のごとく前国会の終わりに、それを理由として内閣不信任案が提出せられました。そしてこれらは否決を見ました。したがって私は国会の審議を拘束する両党の約束としての倉石修正案というものは、これは白紙に戻ったものと私も考え、政府もそういう考えでおるのであります。しかしながら両党の対立した意見の調整案としての倉石修正案というものは、これはやはり内容は残っておるのでありまして、特に前の特別委員会において私の前任者である大橋前労働大臣が、この倉石修正案についていろいろ質疑にお答えいたしました点、これは私ども新しい政府の原案に十分可能な限り盛り込んでまいったつもりでございます。可能な限りというのは、政府与党内の意見の調整のつく限りこれを盛り込んでまいったつもりでございます。
  136. 小林進

    小林分科員 そこに一つ重大な意見の相違があるわけでございます。私どもは倉石・河野修正案というものは、やはり両党の存在する限り、客観的な社会情勢、世界情勢が大きく変わらない限りは、両党の存在と同時にそれはやはり永久に続いていくものである、このように解釈をしておるわけであります。大臣は御承知のとおり、それは幹事長から書記長に対する申し入れ、前国会における不信任案、こういうことでそれはもう帳消しになっておる、もう白紙あるいは無に帰したのである、こういうような解釈をせられておるわけでありまするが、法的にはそういった解釈も成り立つかもしれません。長い間夫婦生活をしたが、いや別れよう、手切れ金をやったからあとは白紙だ、こういうこともそれは法律上は言い得るかもしれませんけれども、やはり人間の生活、集団の生活には、そうとばかりでは割り切れないものがあるのでございまして、その点がいわゆる大臣解釈とわが党の解釈は違うわけです。あるいは自民党が改組したとか、社会党が分裂をしたとか、あるいは新たなる形の変わった主義主張を持つ政党に生まれ変わったというなら別でございますけれども、人的構成において変わりがない限りは、単なる国会におけるそうした申し入れや不信任案だけによって、問題がすりかえられるような性質のものではない、これが一つであります。  それからいま一つの問題は、今度国会にお出しになったいわゆる新しい政府案でありまするが、その提案のしかたが、前に一年半なり二年なり両党で話し合って、練りに練ったという一つの形があるならば、今度の案に対しても野党第一党に対して、事前にせめてそれくらいの了解運動か、あるいは手続があってしかるべきじゃないか、今度だけはまるで木で鼻をくくったように一言のごあいさつもない。ばんと議長を通じてお出しになっただけであります。私どもは一年半、倉石・河野修正案をつくるときに、両党の信頼を裏切ったような行為は何もないのであります。政府側の要望に対しても、唯々諾々として信義を重んじながらつとめてきた。その一年半、二年にのぼる実績を一つも認めないで、今度はすばっと出してきた。文句があったら特別委員会をつくろう、その委員会の中で野党の言い分も聞こうではないかという、こういうやり方は、いかにも従来の慣行を土足にけったやり方ではないか、かように私ども解釈をいたしておるのでございまして、この点、いかがでございましょう。
  137. 石田博英

    石田国務大臣 結局現実的な判断でございまして、私どもはこの国会で八十七号条約の批准を早期に行なうということは、日本政府の公約でもありますし、また与野党を通じての共通の願望でもあります。そのためには法律案を提出しなければなりません。そして倉石・河野修正案というものをめぐりまして、両党の意見のあるところもおおよそわかりました。しかもその最後の段階にいくと、かなり煮詰まった討論もされておったのであります。そういう状態のもとにおいてまた合意点に達しようと思っても、早期に議会に提出するということと矛盾をいたしまして、その目的達成に障害を与えることと相なります。それからもう一つは、議会で審議をして、そうしてその可否を決するという場合に、あらかじめあまりにもものごとをきめ過ぎておくということは、両党で話し合いをあらかじめつけ過ぎておくということは、一体議会の審議権との関係もいかがと考えまして、それより何よりも現実に法律を早く提出するということが、審議促進の前提であると考えてさよういたしましたが、政府原案の中には倉石修正案に盛られておりましたものを、あとう限り含めるように努力いたしたつもりであります。
  138. 相川勝六

    相川主査 小林君、時間がまいりましたから、どうかひとつ……。
  139. 小林進

    小林分科員 そうですが。それでは大体大臣のお考えもわかりましたから、決して時間を引き延ばすことはいたしませんけれども大臣は、おっしゃったように、ドライヤーもおりまするし、早期批准をやる、こういうことで、ございまするから、対外的なゼスチュアも兼ねて、早く議長の手元へ法案を提出したほうが映りもいいという、そういう考えもあったかもしれませんけれども、いずれにいたしましても野党の存在というものを土足にけられた。もしいま大臣がおっしゃるように、国会提出、審議する前に、あまり両党で打ち合わせしたり、練っておくことは、むしろどうかと思われるならば、その他の法案もみなそうしてくださればいいのです。政府提案なんという法律は、そこにうしろにいらっしゃる方がてこてこ法案を持ち歩いて、野党のほうに漏れなく説明したり、話し合いをしたりして、事前の工作を全部おやりになっている。それくらい親切にあらゆる法案を手がけていらっしゃるにもかかわらず、このILO批准にかかる国内法の改正だけに対しては、従来の慣行までも、他の法律に対する慣行も全部これを土足にけって、唐突として野党を無視しながらお出しになったというところに、問題があるのであります。大臣はその必要はないとおっしゃるならば、ほかの法律も全部そのようにやっていただくのなら、まだわれわれは了承するところでありますけれども、定められた時間だというのでございまして、どうせきょうここでおさまるわけの問題ではございませんし、また別の委員会でたくさん論議をしなければならぬのでありますが、時間もございませんので、それではたった一つでありますが、大臣、簡単な原則論を一つ申し上げます。  現在問題になっている出かせぎの問題です。これは先ほども午前中あったそうですけれども、事は出かせぎの問題だけとは言えない。原則論として、現在出かせぎの中心は農村です。農村はまず大別いたしまして五、三、二。五がいわゆる第二種兼業農家で、家計の主たる生計費を農業以外の収入、日雇いなり賃労働に基づいて収入を得ている。この第二種兼業農家が五割です。第一種兼業農家が三割、専属農業、専従農家がまさに二割、こういう農村の大きな変革を来たしているのでありますけれども、私はこの第二種兼業農家、これはだれがつけたか知りませんけれども、生計の主たる収入を労働賃金やそういうものに得ているものは一体農家なのかどうか、労働者なのかどうか、この定義といいますか、原則論といいますか、これを明確にしていただかぬと、いまのように出かせぎ者のやれ失業保険をどうするとか、労災保険をどうするとかいうのだけれども、そういう本質論からいかなければ、第二種兼業はもはや労働者だというなら、農林委員会や農林省からこれを全部取り上げて、労働省として登録して、労働行政の中心にしなければならぬと私は思うのです。やはりこれは農民である、農業のひまを利用していわゆるパートタイム的な労働に従事しているというなら、やはり農業の政策の中心にしてやらなくてはならないと思うのであります。一体この本質をどうとらえていくべきか、私は大臣にこれをお聞かせ願いたいと思う。
  140. 石田博英

    石田国務大臣 これはたいへんむずかしい問題だと思います。数字的に、五割二分を農外収入に得て、四割八分を農業収入に得ているという場合、五割二分のほうが多いのだからこれは農業でないのだというような断定も、これはむずかしい問題だと思うのであります。元来経常的な将来にわたっての生活の本拠をどこに置いているかということによって、判断をすべき問題ではないだろうか。現在のところは第二種兼業農家というような、農家という扱いを一般的にいたしておるものと考えておりますが、しかし今度は逆に七割、八割までも農外収入に得ておって余暇に農業をやるという場合は、これはもちろん労働者と解釈すべきものと考えております。
  141. 小林進

    小林分科員 これはしかしいまここで問題を解決すべき問題ではないのでありますけれども、やはりぼくは問題を掘り下げて定義からきめていかないと、こういう出かせぎ農家や兼業農家に対する生きた政策は出てこないのであります。農林省は農林省でじゃま者扱いにしておるし、労働省労働省で失対賃金ばかりしわ寄せされて、われわれのきめられた失業保険の財政からこんなに持っていかれてはたまらないという、どっちからも責任のなすり合いになりまして、ほんとうに生きた抜本的な行政というものは出てこない。これがほんとうに農家なのか、労働者なのか、そこら辺をひとつぴしっときめて行政を進める、これは私は赤城農林大臣にも言うつもりでありますけれども、ひとつこれを明確に定義づけてやっていただきたいと思うのであります。時間がありませんからこれで終わります。
  142. 相川勝六

    相川主査 只松祐治君。  只松君に申し上げますが、大体三十分程度にしてあなたの持ち時間は二時五十分ごろです。
  143. 只松祐治

    ○只松分科員 近来医学や薬学がたいへん進歩しまして、あるいは生活環境もおいおいとよくなっておって、わが国の平均余命というのが非常に長くなっている。そこで戦前の平均余命と現在の平均余命率とをひとつ対比して伺いたい。
  144. 松浦功

    ○松浦説明員 お尋ねの点でございますが、私ども手元に詳細な数字を持ち合わせておりません。
  145. 角田れい作

    ○角田説明員 平均寿命につきましては、明治二十四年から三十一年の事実につきまして、第一回の生命表がつくられております。この当時は男が四十二・八歳、女が四十四・三歳でございます。その後数回つくられておりまして、戦前の最後を申し上げますと、第六回の生命表でございますが、それは昭和十年から十一年の死亡の事実につきまして計算いたしましたのが、男が四十六・九歳、女が四十九・六歳でございます。戦後になりまして第八回生命表が二十二年につくられておりまして、ここで初めて男が五十歳の線を越しまして五十・一歳、女が五十四歳になりました。その後寿命革命といわれるほど寿命が延びまして、現在第十回の正確につくりました、いわゆる完全生命表、昭和三十年につきましては男が六十三・六歳、女が六十七・八歳でございます。この生命表は非常にむずかしい計算でやっておりますので、もっと簡単にアップ・ツー・デートにつくるために、簡易生命表を戦後厚生省でさらにつくっております。その一番最近の結果によりますと、昭和三十八年の事実についての結果でございますが、男が六十七・二歳、女が七十二・三歳でございます。これを通じて見ますと、明治あるいは戦前は五十歳に達しなかった。四十二歳あるいは四十三歳でございましたのが、二十五年ばかり延びまして六十七歳、七十二歳、女がいわゆる七十歳、古稀、古来まれだといわれておるのが平均寿命になった、こういうふうになっております。以上いわゆるゼロ歳の平均寿命のことでありますが、各年齢別にこれを見ますといろいろな問題が含まれております。   〔主査退席、井村主査代理着席〕
  146. 只松祐治

    ○只松分科員 大臣、いまお聞きのとおり、明治以来わが国の平均余命というものは非常に延びております。いま最後にお話がありましたように、ゼロ歳の平均余命がこんなに長いわけですから、まして常識的にいって命というものは、まだ七十以上生きておる人がたくさん多くなってきておる、こういうことです。ところがわが国の定年というのは、明治以来依然として五十五歳でございます。そこで昔、日本の一番残酷な挿話として、うば捨て山の話というものがございます。大臣は風流を解されておると聞いておりますが、うば捨て山の話というのはどうです。残酷な話とお思いですか。それともそれほどではない、こういうふうにお思いですか。
  147. 石田博英

    石田国務大臣 むろん文明国家にはあり得べからざる話だと考えております。
  148. 只松祐治

    ○只松分科員 しかし五十五歳の定年というのは、事実上昭和の近代のうば捨て山の、話ではなくて現代版ではないか、私はこういうふうに思っております。私が昨年国会に出てきましてからこの問題に、一生懸命に研究し、あるいは取り組んできております。政府のほうでも若干こういう問題に討議を進められてきておる、こういうふうに聞いて、自治省なんか二、三日前に何かそういう発表もいたしたようであります。こういうふうに平均余命が長くなってきておるのに、また自民党政府は口を開けば、世界の先進資本主義国の一つになった、あるいは工業生産がこう上がった、賃金の場合でも若干上がったとおっしゃいますけれども、定年制は依然として昔ながらの五十五歳であるということは、きわめて不合理なものである。私がちょっとたとえ話を申しましたけれども、これは昭和のうば捨て山の現代版である、こういうふうにお思いになりませんか。
  149. 石田博英

    石田国務大臣 五十五歳の者の平均余命が戦前男子で約十五年半ぐらい、いまそれが二十年延びて、一般的な平均寿命もただいま御説明がありましたとおり延びておる状態、そういうような状態のもとにおいて、依然として五十五歳の定年というものを実施しているということは、私は現在の状態から見て、そういう面からも不合理だと思います。それから各国の例を見ますると、各国はこれを社会保障と結びつけております。保障の開始時期までが大体定年ということになっておるのでありまして、それを結びつけて日本も考慮すべき問題だと考えておるのでございます。また一方、労働力の全体の需給状態を見ましても、若年労働というものが非常に不足を来たしてまいりました。年齢別人口構造を見ましても、戦前のような底辺の長い三角形ではなくして、各年齢層ごとにほぼ大差のない人口を持つようになってまいりました。そういうような状態から考えまして、中高年労働力を活用しなければならないという観点から見ても、考慮を要すべき問題だと思っております。ただしこれは法律で民間その他に対してどうこうという問題ではないのでありまして、そういう状態のもとにおいて、全体として改善せられるように考慮を求め、行政指導をしていくという考えでおる次第でございます。
  150. 只松祐治

    ○只松分科員 いま大臣のほうから外国の話もちょっと出ましたが、たとえばアメリカで大体六十五歳から七十五歳、平均七十歳、イギリスで六十歳から六十五歳、西ドイツでは六十五歳、フランスは職種によってだいぶ幅があるようでございますが、大体六十歳、こういうふうに諸外国を見ましても、全部六十歳以上なんですね。これに相違ございませんか。
  151. 石田博英

    石田国務大臣 大体おっしゃるとおりだろうと思っております。
  152. 只松祐治

    ○只松分科員 さっきのお答え、あるいはいまの諸外国の定職年齢、定年制というものを認められたわけでございますが、繰り返しお聞きいたしますが、なぜ日本だけこうやって五十五歳でやめなければならないのか。時間がございませんから、そのやめた内情、その他こまごまとしたことを言おうと思っておりません。いま民間のことをちょっとおっしゃいましたけれども、民間では鐘紡のように定年制をなくしていく、あるいは全労災のように五十八歳にした。いろいろそういう実情が出てきております。しかし私は民間のところまできょうは言おうとしているのではなくて、労働大臣ですから、民間のほうも私が述べるような趣旨で、大いに六十歳、六十五歳までなる御努力を願うことは当然でございますけれども政府関係の労働者、あるいはいわゆる公務員、地方公務員、こういう人々の定年というものを、もっと真剣に検討する必要があると私は思う。去年私がお聞きしたときに、民間の約八割が五十五歳だから、政府もこうしているのだ、こういう答弁があったのですが、何かのときには官が率先して仕事をするくせに、こういう答弁のときに都合が悪いと、民間がこうだからああだからと言いのがれをするわけであります。そういうことではなくて、民間もそういうふうに指導していただきたいと思いますが、公務員がなぜ五十五歳でやめなければならないのか、ひとつ大臣から御答弁願いたいと思います。
  153. 石田博英

    石田国務大臣 この五十五歳定年制というものがしかれました背景というものは、いろいろあったと思います。しかし私の承知している限りにおいては、公務員制度においては五十五歳という定年制というものは、制度としてはございません。政府関係機関ではそれぞれ持っておりますが、その場合は私のほうの所管の政府関係機関は大体六十歳になっておるそうであります。これは職種その他によってもいろいろ事情が違うと思いますが、職種その他によって、若くしてやめなければならないような人に対しては、はやりその自後の生活を考慮してやる必要がむろんあると考えます。それから比較的若いときに定年制を実施し、それを一般的になかなか切りかえられない理由は、一つは年功序列型賃金という制度にもあるだろうと思うのであります。鐘紡あたりでは定年延長と同時に、一定年限以上については、いわゆる昇給制度を実施しないということも考慮されているように聞いておりますが、そういう諸般の事情を勘案いたしまして、老後の生活が保障されるように、少なくとも社会保障の開始時期と結びつくように、運営してまいらなければならぬものと考えております。
  154. 只松祐治

    ○只松分科員 いまお答えになりましたように、公務員あるいは地方公務員に定年制がないけれども、事実上いわゆる勧奨退職ということばによって、首切りが行なわれておるわけです。そこでひとつお尋ねをしておきますが、私のほうから言えば、何の根拠で五十五歳で勧奨退職をしておるか、事実上の首切りをしておるかということになるわけであります。これはいわば慣例と人事配置、そういうものの都合だけでありますか。その法律的根拠なり何なり、五十五歳で勧奨退職させ得る権限というものは官側にございますか、ございませんか。
  155. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 制度論的に五十五歳で勧奨退職をするという制度は別にございませんが、五十五歳を過ぎますと退職金がふえるのはございます。そういうことで退職金もふえるからという趣旨でというのかもしれないと思いますが、特に制度としてはございません。
  156. 只松祐治

    ○只松分科員 それでは重ねて聞いておきますが、結局本人が希望しなければ、六十になろうが六十五になろうが、一切やめる必要はない、こういうことで確認してよろしゅうございますか。
  157. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 大臣からお答えしましたように、定年制というものが国家公務員にはございませんので、普通の場合はいまお話のようなことになっておるわけであります。
  158. 只松祐治

    ○只松分科員 それでは五十五歳でやめろと退職を勧奨することは不当労働行為になる、いわば官側の越権行為である、こういうふうに解釈してよろしゅうございますか。
  159. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 越権行為とか不当労働行為というものとは質が違うのではないか。といいますのは、こういうことだからどうだろうということを相談的に言うことでございまして、不当労働行為というものは普通組合活動をやったからやめろというようなことで、そういうことではないと思います。越権行為といいましても、命令的に言うことでもない。そういう性格はないのではないかと思います。
  160. 只松祐治

    ○只松分科員 それは全くの詭弁なんですよ。実は私のところにも二、三日前に御相談が国鉄の人からあった。ところが五十五歳というのは、事実上五十四歳のときに言うのですよ。五十五の中途でやめるわけですから、五十四歳のときに、来年あたりぽつぽつどうだということを言ってこられるわけです。たとえば四十歳のときに子供ができた者がおると、十五歳の中学生の子供がおる。このときに、君、やめないかと言ってこられることばはいろいろありましょうが、しかし日本国じゅうの労働者がほとんど五十五歳でやめておるということは、事実上首切りが強制的な形で行なわれておるということじゃないですか。あなたがいま言うように、別にそれほど圧迫も加えない、不当労働行為にも当たらない、勧奨もしない、越権行為にも当たらない、そういう形で、どうですか、ひとつやめていただきましょうか、こういうふうなことを言って、中学生や小学校の子供をかかえてやめる人がありますか。そうじゃないでしょう。あなたがいま政府側の答弁に立っておるから、そういうことを言うのであって、それはわれわれは定年がございません。しかしここにおられるまわりの人、民間の人々は、ほとんど五十五歳になれば首になるのですよ。もう少し答えるときには正直に答えて、できないならできない、越権なら越権であるということを、ひとつここに明確にしていただきたい。
  161. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 民間の場合は、先ほど申しましたように定年制がありますから、これは当然です。しかし国家公務員の場合にはそういうものがございませんが、ただこのくらいの年になったらどうだろうかという相談をすることは、別に人事担当者として越権でもないのではないかと思います。
  162. 只松祐治

    ○只松分科員 だから、あなたは五十五が慣例になっておるからそう言うが、実際五十歳のときに、どうです、来年はぼちぼちやめていただきましょうか。四十五歳のときに、どうです、やめていただきましょうか、こういうことをあなたに言ってこられてごらんなさい。どういう気持ちになりますか。あなたはどういう心境になりますか。あなたくらいえらくなれば、やめても行く先がありますが、一般の労働者の人が、どうですか、来年やめてくれないかということを、行く先もなければ全然そういう精神的な準備のないときに言われてごらんなさい。ただ言われた。それがどの程度の圧迫になるか。だからそういうでたらめの答弁をするものじゃないですよ。もう少し正直に答えなさい。
  163. 和田勝美

    ○和田(勝)政府委員 いま年齢の高い人の問題について御論議がなされておるわけですが、四十代というのは多少あれと思いますが、ある程度の年齢になったときに、そういうような話も出てくるだろうというのが、おそらくそこはかとなく職員の力も考えておる向きがあると思います。そういうようなことでございますので、人事管理者側からどうだろうという話をしますことが、直ちに権力の乱用とか越権ということには、なかなかなりにくいのではないかと私どもは考えます。
  164. 只松祐治

    ○只松分科員 一般論、抽象論を言っているのじゃない。一番最初お聞きしましたように、平均余命が昔の、明治時代のように四十一歳であるとか、あるいは昭和の初期のように四十五、六歳のときは、官をやめてすぐ死亡される人が多い。このころは五十五歳でもいいわけです。いまみたいに平均余命でさえ六十二、三歳になったというときに、五十五歳でやめるということとは違うのですよ。明治時代の五十五でやめるのと、昭和四十年の現在五十五でやめるというのは、客観的な情勢が違ってきているわけです。時間がございませんから例を引きませんが、千円しか持たない人に千円の寄付をしろというのと、百万円持っている人に千円の寄付をしろというのは、全然内容が違うのですよ。だから私はそういう意味で、もっと実質的なほんとうの答弁をしなさいと言っているのです。
  165. 石田博英

    石田国務大臣 私がお答えいたします。いま越権か越権でないかという御質問でありましたから、官房長からいまのような答弁をしたと思うのであります。ただ平均寿命が延びて働ける余地がずいぶんある。特に地方公務員、国家公務員は、別の目的として憲法十五条ですか、全体の奉仕者という役割りもある。しかしその役割りに十分たえられるだけの体力はまだ残っておる、そういう状態のもとにおいて、昔と同じような年齢でものを考えるということは、現在の段階では必ずしも適当でないと私も思います。法律上の取り扱いとして、越権か越権でないかということは別でございますが、ただしもう一つ別の観点から申しますと、全体の奉仕者として、こういう機構がある程度若い年代で運営されることが望ましいという観点からの、人事管理上の考慮が行なわれる場合もあると私は思います。それから人事の交流その他を円滑に、あるいは適当な期間で行なわないと、その機構が活力を生じないという場合もあり得る、そういう観点からのいろいろなことがあると思いますが、しかしそういう場合においても、いままでの五十五歳定年というように、五十五歳からあとは遊んで暮らすという観念でなくして、やはり新しいその年代にふさわしい職業を世話をするという観点から、そういうことを伴って処置せらるべきものだと考えております。同時に一般的社会保障の効果ある活動とにらみ合わせて、考慮さるべきものだと私は考えておる次第でございます。
  166. 只松祐治

    ○只松分科員 一般論なり抽象論としてはそういうことも言えるし、ある側面からはそういうことも言えるわけなんです。しかし具体論を展開する時間がきょうはございませんからあれですが、先ほど言われたように、年功序列型賃金になっておりますから、五十五歳でやめるときは、最低係長なり課長なり、一定の地位に立っておられるわけですね。それでやめられる。それでほかのところへ行かれる場合には、会社でいえば第二会社へ行かれたり、あるいは警察でいえば、署長をやっておったような人がどこかの守衛をやられたり、こういう形になっていくわけです。だからこれは当然に社会保障制度と結びついて考えていかなければならぬ、論議しなければならぬ問題ですけれども、私は時間がありませんからそういうことは言ってないのです。そういう定年制ということは、ただ単にやめるということではなくて、現在の置かれている五十五歳の地位、社会的立場、そういうものと全然別個の形の生活というものがここで始まる。しかもなお私が言っているように、子供も中学校とか高校生あたりの者を何人かかかえておる、こういう状態の中で別な生活が始まっていくわけなんですね。そういうことを全部含んで、私は昭和のうば捨て山ではないか、こういうことを言っておるわけなんです。したがって昭和のうば捨て山をなくそう、あるいは佐藤総理が繰り返し言っておる社会開発をして、ほんとうに社会の不安をなくそうというならば、一番真剣に取り組まなければならぬ問題はこの定年制の問題なんです。この問題について本格的に取り組もうという気がまえが、現在の政府には見えないことを私はたいへん残念に思うわけです。ひとつ大臣のほうで本格的にこれと取り組むということをここで——官はもちろんですが、民間に対してもやればできるわけです。鐘紡は確かに業績はいいというけれども、業績がいいところだけじゃない。ほかのところでもできる。私の知っているところでも、民間で五十八歳になっているところがたくさんあるわけです。やればできるわけであります。ひとつ積極的にやるということをお答えいただきたい。
  167. 石田博英

    石田国務大臣 これはやはり行政指導としてやらなければならぬことでありますが、それと同時に企業それ自体の必要性からも出てくる問題だと思っております。したがってこれは行政指導としても、当然そういう方向で指導していきたいと思っております。それから公務員の場合、これはやはり人事の回転というものの速度も考えなければならないと思うのです。いままでたとえば五十五歳になれば普通の人なら課長か係長になる。その地位を維持させるということになると、全体として間隔を延ばすというような問題も当然考慮しながらやっていかなければならない。少なくとも恩給と結びついて、それによっていままでの生活程度を十分維持できるという範囲で、転職は考えなければならぬと私は考えておりますが、しかしそういう官公庁における人事の回転の速度、そういうものはやはりそれぞれ人事担当者とともに協議いたしまして、十分年をとっても役に立つ限り働けるように考えなければならぬ問題だと思っております。
  168. 只松祐治

    ○只松分科員 人事管理とか交流とかいろいろなことを言われますが、外国ではすでにできているのです。七十五歳あたりまでも働いている。日本だけできないことはないのです。たとえば六十歳まで延ばす。一挙に延ばす方法もありましょう。しかし法律には猶予期間というものをいろいろ置きますように、その回転を一年ずつおくらしていって、五年かかって六十歳まで延ばす方法もあるのです。一年ずつ延ばしていけば、同じところに一年よけいおるからといって、それほど人事の停滞はしないわけです。一挙に五年といえば、五年間同じところに停滞するといえば、これは確かに停滞するということもありましょう。やろうと思えばやる方法というのは何ぼでもあるわけなんですから、そういう意味で、言いのがれではなくて、前進する方向で、どうやってこの定年制というものを延ばしていくことができるか。当然それは退職金の問題なり、あるいは共済組合の関係なり、いろいろなものが出てまいります。こういうものは少し研究して直していけばできると思う。わからなければ外国へ行けば、外国では全部やっているわけです。外国へみんなどんどん行っているでしょう。ぼくは外国に行かぬだって、国会図書館で少し勉強したら、そのくらいのことはすぐわかった。だからそういう意味で前向きの姿勢でやっていただきたい。  最後に聞いておきたいと思いますが、自治省が、何か地方公務員の給料がかさんだからとかなんとかいうことを前提にして、五十八歳で定年制をしく、こういう発表がされております。これは私がいま申しましたように、いわゆる日本人の平均余命が長くなっている。いわゆる前向きの形で、この実社会に対応して延ばそうというような、あるいは多少そういうことがあるかもしれませんけれども、そういう観点からではなくして、何かマイナス的な、公務員の給料が上がったから定年制を早くしくのだ、こういうことを言っておりますけれども、これはまことにけしからぬ話だと思うのです。自治省関係の人がお見えになっておったらなんですが、ひとつこういうことを、労働問題担当の大臣もお見えになっておりますから、こういうことが正式に政府として討議され、あるいは決定されたのかどうか。まことに軽軽しくけしからぬ話です。
  169. 石田博英

    石田国務大臣 政府として閣議の議題になったことはございません。
  170. 松浦功

    ○松浦説明員 自治省といたしましては、おそらく産経の記事をおさしになっておるのではないかと思いますが、自治省としては、そういう事実を取りまとめたことはございません。
  171. 只松祐治

    ○只松分科員 私の新聞は日経です。いまのこの新聞記事については、あずかり知らないということですが、ずっと前に、去年の秋ごろ事務次官会議で連絡会議があって、これで五十八歳くらいの線の討議があった。一説には六十歳くらいも出た。こういうことが載っておりますが、そういう形の定年制の論議をされたことがありますか。
  172. 松浦功

    ○松浦説明員 政務次官会議で定年制の問題が研究をされたという事実はございました。
  173. 只松祐治

    ○只松分科員 そのときの定年制のおおよその話というのは、いま申しましたような線でございますか。
  174. 松浦功

    ○松浦説明員 政務次官会議で検討されました内容は、ごく概略を申し上げますならば、労働力の活用、それから退職後の保障というような観点から、いろいろと検討をなされたようでございますが、何歳を目途にするかというような、具体的な結論は出ておらないように伺っております。
  175. 只松祐治

    ○只松分科員 時間がまいりましたので、最後に大臣にお尋ねと要望をしておきたいと思います。いま申しますように、これはきわめて重要な問題であるから、慎重に取り扱わなければならぬと同時に、この長くなった私たち日本国民の命の前に、ある面できわめて緊要な問題だと思うのです。したがって取り急ぎぜひ政府に、特に労働省が中心になると思いますけれども、定年制の問題について具体的な対策を立てていただきたい。それについてのお答えがあったらいただきたいと思いますが、それと同時に五十七歳がいいとか五十八歳がいいとか、こういう線を軽々しく出されますと、民間などでそれより先に出したり、そういうことになると思いますから、そういう線は軽々しくお出しにならないように、さらにもし線を出すならば、これは世界のどこを見ても五十七、八歳なんというのは、先進資本主義国にないのです。どんなにしても六十歳です。また政治家は、私たちはたいてい年寄りはおやめいただいたらいいと思っておりますが、七十でも八十でも国会に席を持ち、おれはぼけておらない、仕事ができるのだと、こう国民に対してぶつわけです。一方、公務員だけは五十五になったら働けないのだ、君らはやめたまえ。あるいは公務員だけでなく、一般の新聞社の方等もおいででございますが、こういうところでも、五十五になったらやめろ。これはたいへん矛盾した話だと思うのです。こういううそがあるところに、日本のいろいろな社会の根本的なひずみというものもあるわけですから、ぜひこういう社会の諸情勢の変化に対応して十分に慎重に、しかもたいへん虫のいい話ですが、緊急にこの対策を立てていただくことをお願い申し上げたいと思います。
  176. 石田博英

    石田国務大臣 国家公務員及び地方公務員に限った問題になりますと、これは公務員制度担当の増原国務大臣の所管に属する問題になります。しかしながらこれは労働問題としても考えなければならない問題であることは、私もしばしば申し上げるとおりでございます。そういう方向で前進的に、しかも緊急に処理できるように努力をしたいと思っております。
  177. 只松祐治

    ○只松分科員 これでやめます。
  178. 井村重雄

    ○井村主査代理 次は田口誠治君。
  179. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がありませんので、明確にひとつ御答弁を願いたいと思います。私は総合職業訓練所の問題についてお聞きをいたしたいと思うわけですが、その前に、いまの只松分科員質問に関連をして、ちょっと確認大臣にしておきたいと思います。  定年制の問題につきましては、現在民間事業場におきましては、男子と女子と年齢に差がある。男子は五十五なり六十歳の定年であるのに、女子は三十歳、はなはだしいのは二十五歳、こういうような定年制をしいておるところがあるわけです。戦後、新憲法下において、同一賃金同一労働、職業選択の自由、それに男女平等の原則、こういうものが打ち立てられておるのですが、女であるがゆえに職場を早く去らなければならないという定年制は、私は憲法並びに関係法規に違反をしておるというように考えておるのだが、その点、大臣はどういうようにお考えであるか。   〔井村主査代理退席、主査着席〕
  180. 石田博英

    石田国務大臣 私は法律論としてそれが違法であるかどうかということを、いまにわかにお答えをする用意はございません。ただ各企業がその職種に応じて、それぞれの方針をお立てになっておることだろうと思うのでありますが、現実の問題として、特に女子の労働力についてそういう考え方をするのは、もはや時代に合わないのではないかと私は考えております。若年層の女子労働力は男子同様、あるいはそれ以上に非常に窮屈であります。しかも女子の場合は、二十歳未満の場合の各年齢ごとの就職率は、日本は各国より高いのでありますが、それ以上の年齢になるに従って先進各国のほうが高くなってまいりまして、特に四十代、五十代の就職率は外国では相当高いのに、日本では低いのであります。こういうところに目をつけなければ、労働力の確保ということが、経営の面からいってもむずかしくなってくるのであって、いまだにいま御指摘のような制度をとっておることは、長い——長いといってもそう長くありませんが、間もなく迫ってくるわが国の労働力の需給状況についても、見識がない考え方だと私は考えております。
  181. 田口誠治

    田口(誠)分科員 法律論的にいろいろお答えをいただくことがむずかしいということでございますが、端的に考えまして、現代の時代において、そして新憲法下において、男子と女子があらゆるところで平等の取り扱いをされる原則が打ち立てられておるにもかかわらず、定年制を女子は三十歳、男子は六十歳、こういうようなきめ方をすることは、憲法並びに関係法規に触れるものである、こういう判断を私はいたしておりますので、きょうその結論は出ないと思いますけれども労働省のほうではこの点は研究をしておいていただきたい。  それでは次に移ります。御承知のとおり日本の経済も発展をいたし、産業の発展、生産性の向上が著しく伸びておりますが、その反面には機械の近代化、精密機械によって非常に生産性を上げるような状態に今日相なっておるわけであります。したがって今日の状態では、そうした近代機械を十分にこなし得る技術者を養成することが必要であり、また各事業場でもその点を要請されておるわけです。したがって政府といたしましてもそういう点を考えられまして、昭和三十三年に総合職業訓練所というものを設置し、そして各県では一般職業訓練所を設置をして、そうして技術労働者を養成をしておるわけなんです。ここへ入所して出る生徒は、非常に売れ行きがいいし、そうしてまた、歓迎をされておるわけなんです。したがってこういうことから私は今日の近代的な機械化された、また近代的な機械によって生産性が向上しておる状況の中においては、ますます技術的な労働者、技能労働者というものは必要であろうと思うわけなんです。したがって昭和三十三年におつくりになった総合職業訓練所にいたしましても、一般職業訓練所にいたしましても、拡大強化をしていく必要があろうと思うわけです。したがってその点につきまして、今年度の予算を見ましても、日本の経済が発展をし、そうしてそれに即応した諸施策を、法律をつくったり、予算化をする。その予算化と比較をしてみますれば、この総合職業訓練所に対するところの予算というものが、ベースアップによって職員の給与は多くなるという程度で、あまりそうした訓練所の拡大強化というようなもの、また必要な機械を備えつけるというような予算に、多くの予算が取られておらぬというきらいがあるわけなんです。したがって私はまず最初お聞きをいたしたいことは、昭和三十三年には、これは基礎教育をする程度のものでございましたけれども、その内容を見ますると、基礎教育、専門教育、転職者に対するところの技術訓練を行なっておりまするが、昭和三十五年から三十九年まで、三十九年のは数字が出ておるかどうか知りませんけれども、どの程度生徒がふえており、そうしてこの訓練所もどの程度当初よりふえておるかという点について、ちょっと数字をお示しをいただきたい。
  182. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいまの総合職業訓練所でございますが、昭和三十五年におきましては、訓練所の数が四十カ所でございます。ここで訓練をいたしております職種の数が三百十二職種でございます。訓練定員は一万三千百六十人でございます。これに対しまして三十八年におきましては、訓練所の数が五十五でございます。それから訓練職種の数が三百九十七、訓練定員が一万九千七百六十五人でございます。三十九年度におきましては、訓練所の数は同数、五十五でございますが、職種が増加をいたしまして四百七十二、訓練定員一万七千五百六十でございます。ただ三十九年度におきましては、まだ年間の訓練全部が済んでおりませんので、一万七千五百六十という定員は、三十八年度に比べて低くなっておりますが、実際はこの訓練の定員の中には、半年訓練で、一年に二回転するものがございます。したがいましてこの二回転が全部年内に終わりますと、三十八年度の一万九千よりはずっと多くなる予定でございます。以上でございます。
  183. 田口誠治

    田口(誠)分科員 いずれにいたしましても、三十四年と比較いたしますると、三十九年は訓練所へ入る生徒の数が大体倍になっておるわけなんです。したがってこうした生徒が非常に多く熱望しておるわけでございまするが、いまのところでは施設が少ないために、希望する者が全部入所できないという、こういうきらいがあるわけなんです。このことを解消しなければ、近代的な産業開発にマッチすることはできないと思うのです。そういう点につきまして今後どのような計画を持っておられるか、ひとつお示しいただきたい。
  184. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいまの御質問は、総合職業訓練所についての御質問でございますが、先生すでに御承知のごとく、公共職業訓練におきましては、総合職業訓練所とあわせまして、県立の一般職業訓練所がございます。数におきましては、県立の一般職業訓練所のほうがはるかに多うございまして、昭和三十九年度におきましては二百七十八カ所ございます。この五十五カ所の総合職業訓練所と二百七十八カ所の一般職業訓練所と両方合わせまして、さらにそれに身体障害者の職業訓練所、それから中央職業訓練所、これを合わせたものが公共職業訓練の全般の計画になるわけでございます。  ただいま御指摘のごとく、入所希望者は基礎訓練、専門訓練については相当多うございます。一方におきまして、高等学校の入学希望者も、定員を相当に上回った希望者がございます。あわせまして一方におきまして産業界における技能労働者に対する需要というものが、非常に大きい数になってまいっておりますので、これらをにらみ合わせまして、総合職業訓練所、一般職業訓練所を合わせ、総合的に将来これを拡充の計画をしてまいりたいと考えておるのであります。昭和四十年度におきましては、総合職業訓練所を三カ所新設いたし、それから一般職業訓練所を十カ所新設をいたします。それとあわせまして既設の訓練所の職種をふやしまして、新設はいたしませんが、職種をふやしてまいる予定でございます。職業訓練につきましては長期計画を、各計画の長期計画と同時につくりまして、それに基づきまして、公共職業訓練所において養成すべき技能労働者の数の計画を持っております。あわせまして民間の事業内訓練において養成すべき数の計画もいたしております。これは労使公益三者構成でやっております中央職業訓練審議会におきまして、審議をした結果できた計画でございますが、この公共職業訓練と事業内職業訓練と合わせまして、その結果が技能労働力の供給について見合うようにいたしたいというのが、この計画でございます。これに基づきましてやっておりますが、大体公共職業訓練につきましては、計画数に近い実績を示しております。
  185. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大体計画どおりいっておるということでございますが、いま数字でお示しになりましたように、総合職業訓練所の数が非常に少ないというのと、設備がまだ足りないということで、一般職業訓練所というのは県単でつくっておるわけであります。したがって県単で二百七十八カ所もつくらなければならないということは、政府にたよっておっても、とても各事業場から要請されることに沿うことはできないというので、県単でそうした訓練所をつくっておるわけなんです。それだけに中央の行政というものは、この方面に対しては、悪いことばで申しますれば、軽視しておるというように考えられるわけなんです。大体国の予算を編成するときに、編成の内容を見ますると、大きな政治的な問題になるようなものは、これは相当余裕を持って予算獲得をいたしまするけれども、こうしてほんとうに日本の産業を発展させる要素になる、そうしていま各事業所から要請されておるところの技能者の養成等は、これはどちらかといえば十分に予算獲得というものはできないというのが、実態であるわけなんです。したがって私はほんとうに現在の実情にのっとって予算要求をされる場合には、わずか全国で三カ所新設するというようなことでは、これはなかなか追っつかないと思うのです。だからいま職業訓練所へ入っておる人が、正規の年限を訓練を受けて、そうして職業につくということを待ちかねて、半分ぐらい訓練をして、そうして職場へ入るという人が多いわけなんです。したがって早く入り過ぎて、また二回目入ってくる人もあるわけなんです。こういうような実情であるから、こうした問題は政治的に大きなウエートを持って政府のほうとしても考えられておりませんし、予算要求なんかも非常に控え目の予算要求をいたしておるのですけれども、実際はこういうものこそ十分に予算を取って、各事業所の要請にこたえられるよう、そうしてせっかく機械の近代化を行なっても、それを操作する技術職員のないというようなことになっております今日、非常にこれは急務であろうと思うわけなんです。したがっていまつくりましても、これは一年ないし二年先でないと供給できないということになりますので、こういう点の問題は政治的に非常に置き去りにされておるわけなんですが、労働大臣、いまの数字的な面もお聞きになって、将来こういう問題につきましてどう処理をしていかれるか、大臣としてのお考え方をお示しいただきたい。
  186. 石田博英

    石田国務大臣 この総合職業訓練所を計画的に全国各都道府県に配置するという昭和三十三年の計画は、実は私、最初労働省におりましたときに樹立した計画でありまして、職業訓練の重要性というものを認識し、その上に立って強力に実施いたしました。現在では京都府一府を除いて、他は当初の計画どおり全部完了いたしました。当初の計画は、総合職業訓練所は北海道と九州福岡県を除いては各都道府県一カ所ずつ、東京はそのほかに中央職業訓練所をつくるという計画であります。それは一応京都だけを除いて完了したのであります。京都が残っておるのは、特別の事情がまた別にありまして残っておるのです。しかし近年の技術労働に対する不足の状況というものを勘案いたしまして、本年から新たに必要なところについてはいままでの一都道府県一カ所という原則に従わないで、追加して建設するという計画で、三カ所を予算に計上したわけであります。むろんこれは非常に少ないことは申すまでもございません。不満でございます。ただし職業訓練所の増設ということは、金があって、場所があって、建物があって、機械がございましても、教師の訓練、教師の獲得というものを伴わないといけないのでありまして、いま教師の、指導員の獲得というものが、非常にむずかしい状態でございます。しかし本年から中央総合職業訓練所は、職業訓練大学校というふうに昇格をいたしまして、当初昭和三十五年に入校いたしました学生が本年から出ます。これは教員の養成が目的でございますが、それが本年から出てまいります。そういうものとにらみ合わせながら、拡充を積極的にしてまいりたいと思っております。それから各都道府県でやっております一般職業訓練所、これは半額国庫が補助をいたしておるのでありまして、全部県単でやっておるわけではございません。しかしいずれにせよ、現在の状態では不十分であることは、もう御指摘のとおりでありまして、御激励、御支援を得て、その拡充につとめますと同時に、もう一つはやはり教員の訓練、教員の護得というものと並行しなければならないという点も、ひとつ御了解をいただきたいと存じます。
  187. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大臣が計画されて七年前にこういう法案をつくり、そうして実施に移されたということについては敬意を表しまするが、七年前と今日とは、ここ数年間に相当事業体の実態が違ってきておるわけなんです。だから七年前に計画されたものが、大体その計画どおり行っておるといいましても、現実に即応して考えてみますると、先ほど来私から申し上げておるように非常に不足をいたしておるということなんです。したがってそういう点は十分にうなずいておみえでありまするので、来年度の場合にはこうした方面への予算も十分に取られ、そうして実態を調査されて、適切な指導と設備の拡充強化をされるであろうということを期待をいたしておりますが、どうかそういう考え方で、この総合職業訓練所あるいは一般職業訓練所を拡充強化してもらいたい。この点は強く要請をいたしておきます。  そこでいま大臣からも先回りに答弁がございましたが、指導員が非常に不足をいたしております。それでこの指導員が不足をいたしておるのだが、私これは別に電話でちょっと聞いたのですけれども、生徒の伸びより指導員の伸びのほうが率からいうとまだまだいいのだということなんです。私どもは実際現場へ行ってみますると、非常に指導員が不足をいたしておると思うけれども、生徒数の伸びと比較してそのわりにいいということなんです。そうしますると、最初の職員の定員をつくるときの積算基礎のつくり方が誤っておったものじゃないか、こう思うわけなんですが、その点、どういうふうにお考えになりますか。
  188. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま御質問にございましたように、昭和三十三年に比べますと、定員増加率に対しまする職員の増加率、大体同じでございます。ですからその限りにおいては、バランスがとれておると思います。そこで定員の配置の基準はどういうことかということでございますが、考え方といたしましては、大体訓練の単位を一応三十人といたしました場合に、三十人に対しまして一単位について三人の指導員を置くという場合と、それから五十人を、これは職種に、よりあるいは専門科、一般科によりまして違ってまいりますが、五十人を単位といたしました場合に四人の指導員を置く。それから中高年の指導につきましては、これは前歴、経験等まちまちでございますので、十人に一人置くというような基準を立てまして、大体その基準に基づいてやっております。ただ先ほど大臣からも申されましたように、現在技術者不足が日本の全般の状況でございまして、訓練所におきましても技術者不足ということについては例外でございませんので、優秀な技術を持った指導員を獲得するということにつきましては、今後とも努力をしてまいらなければならないと考えております。なお外国におきましても、やはり私どもの持っております資料では、大体十人から十五人くらいに一人の指導員を持っているというのが、外国の訓練所の実情のようでございます。
  189. 田口誠治

    田口(誠)分科員 訓練規模の拡大も行なっていただかなくてはなりませんし、それから指導員の養成もやっていただかなくてはならないのですが、規模の拡大ということについては、予算を取って、それぞれ必要な地域に建物を建て、必要な機械を備えつけて、そして開所すれば幾らでも生徒がくるわけですけれども、指導員の養成については、これは現在不足しているということなんですから、これをどうして解消するのか、何か名案をお持ちになっておられますか。
  190. 石田博英

    石田国務大臣 詳細は訓練局長からお答えをいたしますが、現在東京に職業訓練大学校というのがございまして、昭和三十五年に中央職業訓練所といたしまして一回生を入所せしめまして、そして本年それが卒業いたします。ここで養成をしてまいりました。給費等をいたしまして、それが訓練所の教員で一定年限つとめれば、返還をする必要はないという制度をつくって奨励をし、訓練をしております。
  191. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま申し上げましたような訓練大学校における養成を中核にいたしておりますが、この定員も、四十年度におきましては定員増をいたしております。三十九年度は四百人ございますが、四十年度は四百四十人というような定員増をいたしております。これもなお拡充をいたしてまいりたいと思いますが、同時に現在現職でおります指導員につきまして、必要な技術上あるいは指導上の再訓練、これの制度をとっておりまして、この再訓練もいたしております。新規の指導員の養成と再訓練とをあわせまして、指導員の質の向上ということをはかってまいりたいと考えております。
  192. 田口誠治

    田口(誠)分科員 昨年の四百人がことしは四百四十人になって、四十人確保できたということですけれども、各都道府県へ配分してみますれば、一訓練所に一人ずつもない。だから数字は四十人ふえたようですけれども、一つの訓練所に一人の増員ができておらないという状態。だから現在の実情は、そういう程度のなまやさしい定員不足ではないわけなんです。これは行って実情をごらんになればわかりますが、なかなか仕事というのは骨の折れる仕事でございまして、指導員も汗みどろになって指導の衝に当たっておりまするし、その内容を見ますると、いかに今日の程度では定員不足かということが、もう一回行ってみますればありありと認識がしてこられるわけです。こういうような状態であるから、定員を増加する方向にひとつ努力をしてもらわなければなりません。これは単なる国会の予算委員会で注文をつけたり、またそれに対する回答で、これで終わったということでなしに、このことは現在の産業構造の上において非常に必要な問題でございますから、これは大きく取り上げてもらわなくてはならないと思いますので、その点も強く要請いたしておきます。
  193. 相川勝六

    相川主査 田口君、時間がまいりましたから……。
  194. 田口誠治

    田口(誠)分科員 時間がございませんので、まだ突っ込んでこの点をお伺いしたいのですが、そこでせっかく設備ができて、そして指導員がおりましても、必要な機械器具が不足をいたしておるわけです。そういうことから、心はあせっておっても、実際に生徒に訓練をさせられないというのが実態であるのです。こういう点の把握も、労働省としてはどの程度把握されておるか。私はこの点が非常に認識不足であるのじゃないか、こういうように考えておるわけなんですが、その点、いかがでございますか。
  195. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 ただいま御指摘のように建物と機械設備と指導員と三位一体になりませんと、理想的な運営はできないわけでございます。したがいましてそれぞれにつきまして努力をいたしておるのでございまして、建物の整備、機械設備の整備につきましても、労働省でつくりました基準に基づきまして、この基準に達するような設備を早く持ちたいということで、整備を急いでおるところでございます。ただ先ほど御説明申し上げましたように、逐年施設数がどんどんふえてまいりますので、その施設個所をふやすことと、施設の整備ということと、全く歩調が一にはまいりませんで、やや整備のほうがおくれておるというような事情もございますが、昭和三十五年ごろに比べますというと、機械の整備率もぐんと上がってまいっております。なお今後とも努力いたしたいと思います。
  196. 田口誠治

    田口(誠)分科員 ただいまの答弁を聞いておりますと、機械器具の必要なものは相当整備されておるというように伺われるわけなんですが、これは大臣、行ってごらんになればわかりますが、非常に不足いたしておるのです。だからこの方面へも、これは来年度予算のときには努力をしていただいて、そして必要な機械器具の備えつけをやってもらわなければ、せっかく指導員がおりましても心だけあせって、実際に生徒に訓練をさせるということに大きな支障を来たしておるわけなんですが、この点についてもお約束をいただけるかどうか。
  197. 石田博英

    石田国務大臣 機械器具等が決して十分でないということは、先ほどから局長答弁しておるとおりでありますので、御趣旨に沿って鋭意努力いたしたいと存じております。
  198. 田口誠治

    田口(誠)分科員 そういうことでひとつこの点は努力をしていただきたいと思います。  それからただいま申しましたように、一般訓練所の場合には県が半額予算を見ておりますし、国が半額ということになっておりますが、さてここに働いておる労働者が待遇を改善しようと思いましたときに、この訓練所の所長にどんな交渉をしてみたとて、これは話にならないわけなんです。すなわち団体交渉の当事者がどこにあるか。この点が現在非常に問題になっておるわけなんです。したがってこういう当事者能力の問題につきましても解決をしていただかなくては、現在行って見ていただけばわかりますように、残業、宿直、こういうものはありますけれども、基準法に沿ったところの手当というものは、払われておらないというのが大かたであります。こういうような労働条件のもとに働いておる指導員や職員たちを、せめて労働基準法に沿った待遇をさせなければならないとするなれば、だれかに組合が要求しなければならない。労働組合は労働三権を獲得しておる労働組合です。その労働組合が相手に交渉しても、相手が交渉能力がないということになりますと、どこにぶつけたらよいかということで、この問題で非常にごたごたしておるわけなんです。したがってこういう点を明確にしてもらわなくてはならないと思うのです。これは自治省からも給与課長さんも来ておられまするが、自治省にも関連のあることでございまするし、ひとつどこへどう持っていったら解決してもらえるのか、この点を明確にしてもらいたいと思うのです。
  199. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 総合職業訓練所は雇用促進事業団が設置、経営をいたしておる訓練所でございます。したがいましてこの総合訓練所の労使関係は、事業団の従業員としての労使関係になるわけでございます。賃金その他の労働条件につきましては、労働組合法の適用がございますので、雇用促進事業団と、全総訓という組合を組織しておりますが、全総訓との間の団体交渉によってきまるというのが原則でございます。それから県立の訓練所につきましては、県の一般職員と同じ扱いでございますので、これと同じように扱われております。
  200. 田口誠治

    田口(誠)分科員 大臣が何か時間を切って出ていかれるようですので、あとの質問者の要望も、ございますので、私は質問を保留するような形でやめるわけなのですが、いまのところだけもう一つ念を押しておきますけれども、事業団と交渉することが原則になっておるということですが、事業団と交渉をしてみても、事業団に金があっても、賃金の引き上げ等は事業団独自でやれないということです。これは労働省なり大蔵省に了解を得なければやれないというのが、現在の実態であるわけです。だから労働三権を持っている労働組合が、労働条件改善を交渉した場合に、ぐるぐると回って歩いても問題が解決しないというのが実態であるから、この問題はあくまでもその当事者能力がどこにあって、どこでやられるのか、当然私は事業団でやれるものだと思いますけれども、この事業団は賃金一つきめるのでも、大蔵省とか労働省の了解、オーケーがなければ、労働組合にオーケーができぬというような仕組みになっている。こういうものでは労働三権を持っておる労働組合が、労働条件を引き上げようとしましても、容易に問題は解決することができない、こういうことに相なるわけでございますので、質問が中途はんぱになりましたけれども大臣が出ていかれる時間があるようでございますので、あとの質問者の気持ちも考えまして、途中で保留をしてきょうのところは一応終わります。
  201. 相川勝六

    相川主査 次は谷口善太郎君。  谷口君に申し上げますが、あとの質問者の関係もありまするし、厳格に四時までに終わってください。
  202. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 時間が制限されておりますので、端的に伺いますから、大臣も端的にお答えいただきたいと思います。  夕張炭鉱のことに関連して、労働災害、そういうことでありますが、最初にこれを見ていただきたいと思います。これは災害の現場からきょう飛行機で送ってきた被害者の衣類その他であります。これはマスクです。これはシャツです。これはどうやら被害者がはな紙にしておったらしく、ポケットに入っておりました。これをお見せしましたのは、こういうものがあった穴の中で爆発が起こったというのではなくて、これを着ておった人間が百何十人おったところで起こったということです。この事件はそういう点でわれわれが考える以上に非常に重大で残虐なものだ、こういうふうに思います。ところでこの事件の起こる前に、すでに必ず事件が起こるだろうということが明らかであったのであります。その証拠に、これもけさ飛行機で送ってきたのですが、共産党の現地の細胞が今月の十二日に、この炭鉱の状況を、直ちに緊急対策をとる必要があるということで訴えたビラがあります。こういうふうに、いつ爆発するかわからない状況にあったのでありますが、これに対して政府はどういうことをなさっておられるか。これは労働大臣、直接御関係はないようでございますけれども、まあ労働大臣としての責任もございましょうし、それから通産省からも出てきていただいておると思いますから、この点、最初に伺いたいと思います。
  203. 石田博英

    石田国務大臣 夕張の事故は、まことに残念かつ遺憾なできことだと存じておりまして、犠牲者の方々の御冥福を祈りますと同時に、労働省としまして事後の処置に万全を期したいと考えております。ただいま御指摘のような、事前にそういう事情がわかっておったのではないかということでございますが、直接担当に当たる立場ではございませんけれども、閣議等における通産大臣の報告等を承りますと、監督庁である鉱山保安局としては、それ相当の指示、警告をしたように聞いておりますが、当該者からお聞きをいただきたいと存じます。
  204. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 時間を惜しみますから、同じことを繰り返してもらう必要もないと思いますので進みますが、警告されたということは私どもも新聞で知っております。調査もされたということも知っております。会社に警告されただけですか。危険な状況になっておるから、直ちに作業を中止させよとか、あるいはガスを排除するための、そういう直接的な具体的な勧告を実行なさったかどうか。
  205. 森田三喜男

    ○森田説明員 ただいま保安局長が現地に飛んでおりますので、私かわりましてお答え申し上げます。  夕張の問題につきましては、昨年度六回、巡回監督、総合監督等、監督をいたしました。ことしに入って一回やりまして、計七回やりました。その間今回問題になりましたガスの問題については、四回警告を発しております。さらに警告を発します場合に、この点はこういうふうに改めろ、たとえばある部分においてはハッパをしてはいけない、それから通気をよくするために坑道を切り開けろ、さらに通気関係をうまくやるためにガス抜きをやれというような措置をいたしまして、それができておるかどうかをチェックいたしたわけでございます。そういう措置をいたしました。
  206. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 何回も警告されたり、いろいろされたのでありますけれども、そのこと自体非常な危険な状況にあったことの証明になるだけであって、皆さんがそういう危険な状況にあることを見ながら、実際の措置はとられなかったということであります。そういう危険なところに労働者を働かせるという、そのことを中止させて、具体的に危険がないように事前に配慮することをやられなかったのじゃないか。それはどうです。
  207. 森田三喜男

    ○森田説明員 鉱山保安法上の命令といたしまして、操業を停止するとか、あるいはその部分に立ち入ることを禁止するというようなことはいたしませんでしたが、先ほど申し上げましたように改善の方法を指示して、それをやらせて、それを確認するという努力をしてまいったわけでございます。もちろんそれをもって責任を免れようとは思いませんけれども、懸命の努力をいたしたわけでございますけれども、残念ながら事故が発生したというのが現状で、ございます。
  208. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 そういうことでは、あなた責任を免れぬと言ったって何にもならぬじゃないですか。ここにあの日の朝日がありますが、北大の磯部教授があそこの状況のことについて言っておる。これはあなた方もごらんになっておると思う。あそこでは爆発が起こるような状況であった、しかも前に起こった場合と違って、切り羽で起こったという今度の実情からいったら、ここでは非常に危険な状況があり、手抜かりがあったというふうに見るべきだと言っております。これは鉱山保安の専門的な学者だそうです。あなた方それを見ているわけです。見ていて、そして実際上の処置はとらなかったということですね。証拠は爆発している。百ぺん警告しようと、あるいは千べんそこに入ろうと、何にもならぬじゃないですか。実際に生きた労働者が、こんなふうになるようなところにおった。それに何もやってないということは、どういう責任をとるというのです。責任は免れぬというのはどうするのです。
  209. 森田三喜男

    ○森田説明員 ただいま御指摘がございましたように、この山の自然条件、特に第一坑は自然条件が、炭層がもめておりまして、ガスの発生が非常に多いところでございまして、私どもは常々特に注意をしておったわけでございます。もちろん十分な注意をいたしたわけでございますが、今回のようなことになるに至ったわけでございます。道義的な責任、あるいは将来、これを機としまして、今後も十分安全対策をやっていきたい、こういうように考えております。
  210. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 労働組合も、この事故の前日かその前の日かに職場大会をやって、そして要求書を決議しておる。そういう非常な危険な中におったことは事実なんです。私は時間がないから非常に残念ですけれども、きょう届いた資料がみんなここにあります。向こうのいろいろな人たちの調査したものがあります。こういうふうにあるのです。あるけれども読みませんが、そういう状態にあるのです。将来どうする、こうする、そういうことじゃなくて——現にそういうところはあそこだけじゃないでしょう。夕張のここの坑は爆発しましたけれども、他のところでは月に一人ずつ死んでいる、同じところで同じ作業で。それをあなた方は知っているでしょう。それに対して一体何をしているのですか。事故が多くてたいへん責任がある。将来何とかする。人を殺しておいてあとで何をやるか。ただそういうことでは責任にならぬと思いますが、どうです。大臣、あなたはどう思います。こういうことをやられているのです。
  211. 石田博英

    石田国務大臣 私は技術的には全くしろうとでありますけれども、それだけのものが予知せられておるなら、もう少し効果的な方法がなかったろうかということは、非常に残念に思います。それからこういうことを繰り返さないためには、これもしろうと考えでありますが、いま申しますガスの許容量というもの、つまり警告し勧告すべき許容量というものを、もっと低いところに押えて考えなければならないのではないだろうか。直接の責任者ではございませんが、そういう点を痛感いたしておりまして、今後警告のしかたというものを、もっと徹底しなければならないということを痛感をいたしておる次第であります。
  212. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 ガスの許容量の問題が出ましたから、これにちょっと触れておきます。時間が非常に惜しいのですが。実際は調査に行かれたときに、全部なさったかどうかという問題については、これは疑いがある。行った連中はああいう石炭山を——私は実は去年の暮れに行ってよく知っている。山へ入ろうと言ったら、さっそく私に飲ませに来ました。そういうところに監督官は行くのだ。何をやるかわかりませんが、現地の報告によりますと、実際に、ガス量を調査したと言っているけれども、一部分しかやっていない。まして今度爆発が起こった現場なんというのは、ほんとうは行っているかどうかわからぬ。あなた方は国会だから、そういう非常にきれいなことを言っているけれども、事実は、そういう状況にあることに対して、適当な責任ある監督をやってない。だから将来のことにつきましては、時間内で私も聞きたいと思いますが、今後の対策について若干聞きます。これは労働省にも関係がございますから、項目別に聞きますが、第一に家族が非常に困っておる、低賃金ですから。だから皆さんの要求としては、こういうふうに言っております。直ちにやってもらいたいことがあるのです。現にいますぐ。それは労災保険の手続が煩瑣でなかなかおりない。早くおりるようにしてくれ、手続を簡素化すること。それから簡易保険、生命保険等の即時支払いをやってもらいたい。それから遺族及び負傷者に対しましては直ちに生活保護をやってもらいたい。生活援助をするという、そういう措置をとってもらいたい。それからすぐに一時金の見舞金といいましょうか——慰謝料とか、これについての災害補償とかいう問題はあとからゆっくりやりますが、午前中に何か話がありまして、九州の三池のあの災害並みにという話があったようです。大臣はそれより少しよけい出すと言われたそうですけれども、そんなことでは済みません。政府が手落ちでやった、いわば政府が人殺しをした——ですから慰謝料の問題はあとでやります。けれども、いま直ちにやってもらいたいのはこの四点です。これは関係当局どうです、すぐやってもらえますか。
  213. 石田博英

    石田国務大臣 私の直接の所管であります労災保険の支払いは、二十七日に行なうつもりであります。あとはそれぞれ所管者からお答えいたします。
  214. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 郵政省がいませんし、生命保険だったらこれは大蔵省だからなんですが、しかし政府はどうしますか。この会社に対して、政府としてもこういうことをやったのだから直ちに一時金を出して、この被害者の生活を保障すべきだ。あるいはこれに対して相当の慰謝料を出すべきだと思います。金がないから直ちにほしいのです。こういうことについて何かお考えですか。
  215. 石田博英

    石田国務大臣 経営者に対して適切な措置をとるように、労働省としてむろん連絡はいたします。
  216. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 それから医療対策と申しましょうか、もうすでに犠牲者の中には、一酸化炭素の中毒症状が出ているという報告も、向こうの医者の団体からきております。ところが御承知のとおり政府会社も、一酸化炭素の中毒はない、メタンガスの中毒だということを盛んに新聞で宣伝しています。こういうことから考えまして、この問題は聞きのがす、見のがすというような、そういう簡単な問題ではないように思うのです。これに対して早く対策を講ずるという必要があると思います。それから後遺症の問題も、三池の経験から申しまして、たとえば三池だったら——またここの経験もありますが、救援に行ったような人まであとから出る。したがって現在病気になってない人、あるいは負傷してない人、救援に行った人にまで、やはり相当厳重な医療対策といいますか、そういうものが必要だと思いますが、そういうお考えはありますか。
  217. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働省といたしましては、先ほど大臣が申し上げました補償費の支払いと並行いたしまして、一酸化炭素中毒という観点から療養に万全を期したいと存じております。そのためにたとえばバード式循環蘇生器といったような特殊な医療器械が、北海道にはあまりないという情報も、昨日の朝すぐ調査いたしまして、緊急輸送をする手配を講じたような次第でございます。また所要の不足の救急医薬品につきましても、労働省から送るという処置も講じております。また入院患者以外の当時の入坑者につきましても、近い機会に健康診断を実施いたしまして、その健康状態確認いたしたい、かように考えておる次第でございます。なお専門医のことにつきましても、専門医を急派するということにいたしております。
  218. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 大事な問題点がありますから、一つのことにとどまるわけにはいきませんから、先に進みます。先ほど申しましたようにこの夕張の炭鉱を見ましても、毎月一人くらい死んでいる。あるいはガス爆発は非常に危険な状況にあるというのはもう明らかなんです。これは夕張だけじゃないと思う。そこでこれに対して、やはりこういう事態になったら、単なる警告を発するとか、あるいは人が行くとかいうのではなしに、あるいは会社にやれといって督励するというのではなくて、直ちに作業中止をやって、まず人命の尊重に対する政府の責任を果たした上で、ガスならガスを排除する、そういう防災措置をやる、手段をやる、そういう態度をとるわけにはいきませんか。その点、どうですか。
  219. 森田三喜男

    ○森田説明員 現在の状態におきましては、災害の発生個所の関係もありまして、全鉱がとまっておるわけでございます。そういう関係上、私たちとしましては今後の再開の問題については、十分に整備をいたし、通気の問題あるいはガス抜きの問題等、万全を期した上で、これが再開の問題を考えていきたい、それまでは実際上の問題として、休鉱と同じような状態が続く、こういうふうに考えております。
  220. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 ことばではないのでして、こういう緊急な事態になることがわかるという時期に、これに対して万全の措置を講ずるとか、誠意を持ってとか言われましても、これは何にもならない。去年例の災害防止法案というのが出ました。私はあのときに言ったのですが、あれは大臣も御承知のとおりに、災害の防止を業者が集まって責任を持ってやるという、そういう点で責任を持つことは非常にいいのでありますが、いわば災害防止における業者間協定であって、悪名高い最低賃金、あれと同じであると思う。ほんとうに災害を防止する責任を持ち、それに対して関心を持っているのは、命をかけて働いている労働者ですよ。したがって、これは誠意を持ってやるとか、今後いろいろ考えてみるとかいうのではなくて、ほんとうに災害防止を完全にやろうと思ったら、資本家にまかすのではなくて、あるいは資本家に対して警告を発するのではなくて、ほんとうは労働者がこういう状態に対するいわば摘発権とか、あるいはこれに対して必ずこうやれという、災害防止に関する法律的な権限を持つというやり方をやらなければ、だめだろうと思う。そうでなければ、ネコの前にカツオを置くようなものです。ネコはカツオを食うにきまっている。ほんとうにカツオを守るためには、そこにはっきりと労働者という主人を置かなければならぬ。そういう態勢を労働者に持たせるような、そういう権限を持たせるような考え方はありませんか、そうあるべきだと思うのです。
  221. 石田博英

    石田国務大臣 労働災害防止団体等に関する法律に基づきます団体は、業者ばかりではございません。労働者の代表もそれに参与し得るようにしておるのであります。これは監督行政だけにたよっておりましたのでは、何と申しましても手が届かないところがございますので、一般的に人命尊重の観念を人々が持つように、そして安全衛生の思想の普及につとめるようにという趣旨で、でき上がったものでございます。それから安全監督をいたしますために、勤労者の代表がパトロールのようなことをやったらどうかという提案が前国会からございまして、いまそういう具体的方法については、基準審議会において検討中でございます。
  222. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 午前中にも大臣はそういうふうにおっしゃったようであります。私の言っておりますのは、そういうきれいごとではないのです。代表を出すとか、あるいは委員を出させる、そういうことではなくて、労働者全体が——大臣職場にいらっしゃればよくわかる。どんなところに行きましても、危険にさらされて実際に仕事をしているのは労働者です。こうやってくれぬとあぶない、ガスがこうなってくるとこうしてくれぬとあぶないという、自分の命をかけてぶつかっているのが労働者なんです。こういう人たちがそういう状態になったときには、資本家に対して、雇い主に対して、あるいは政府に対してこうすべきだという、そういう権限を持つような方向を打ち出さなければ、いまのような状態では、ことばでは言うけれども、なかなかやりはせぬです。そういうことをやるべきではないかというふうに私は思うのですが、そういう意味での考え方はありませんか。
  223. 石田博英

    石田国務大臣 現在でもそういう事態を発見した場合は、政府の監督機関にそれをお申し出をいただけば、所要の措置はとり得るようになっておるのでありますし、経営側にもそういう危険を強制する権利はないのでございますから、そういう点について経営者に要求する権利は当然あると思います。その運営にあたって保安行政は通産省の保安局がやっておりますが、同時にそういう労働者の生命を守り、条件の維持につとめるのは私どものほうでありますから、いずれともお申し出をいただきたいと思うのでありますけれども、しかしそれをさらに有機的に効果ある方法を発見しなければならない、こう考えております。
  224. 谷口善太郎

    ○谷口分科員 この夕張の炭鉱を見ましてもわかりますとおり、これは非常な労働強化と無理がなされている。先ほど申しましたように、昨年暮れ私が向こうへ行きましたときの話では、第二有沢調査団が行きまして、北海道の炭鉱地帯でどれくらいの炭を掘り出せ、夕張ではどうだということを要求したらしい。ところで自民党政府はすでに二、三年前に炭鉱合理化でもって、炭鉱の労働者をたくさん首切っている。夕張だって同じです。労働者が減って、三十五年当時から考えますと三倍の炭が実はいま掘られている。掘ることを強制されている。人間が減って出炭量を三倍にするという残酷な合理化の中に、彼らはいるのです。そういう状況であることは、大臣、百も承知です。こういう状況におれば、災害が起きるのはあたりまえなんです。あたりまえなところに命をかけておる人たちが、これについての最高の権限を持つ必要があるというのが私ども考え方です。ですから問題は、石炭産業のこういうふうな合理化をやった根拠には、この間私が申し上げましたように、石油にエネルギーのすべてをまかせてしまうというような、アメリカ帝国主義に従属的な日本の自民党政府の経済政策があるわけです。そのもとでせっかく持っているエネルギーの石炭をつぶしてしまい、いままた人間を減してよけい出せというようなことを言っている。そんな無理をすれば災害を受けるにきまっています。問題は政府のそういう政策にあると私たちは思っている。したがって政府に全責任があるので、単に口先だけでなく、当面の救済事業、また事後の対策、鉱業災害防止等を、ほんとうに労働者の権限でやっていく、そういう革命的な政策をとるべきだし、そういう要求が労働者の要求だということをここに申し上げておきたいと思う。そうしませんと、こういうことはあすもまた起こるかもしれないのです。そういう状況なんです。毎月一人ずつ死んでいるということは、容易なことじゃないのです。これをよく見てください。これは人間が着ていたものです。これをよく見て、ここで口先だけでなく、ほんとうに人間の命を尊重するという態度を明らかにすべきだと思う。態度で、行動で。このことを強調して私は質問を終わります。
  225. 相川勝六

    相川主査 それでは河野君。  この際申し上げますが、労働大臣は四時十分に退席されます。あらかじめ御了承の上御質問をお願いいたします。
  226. 河野正

    河野(正)分科員 午前、牛後にわたって災害問題がいろいろ論議されてきたのでございますが、わが党も北海道の夕張炭鉱におきまする爆発問題につきましては調査団を派遣して、あらためていろいろ論議をする機会があると思いますので、私は大臣が四時十五分には退出ということでございますから、問題をしぼってお尋ね申し上げてみたいと考えるわけであります。  御承知のように夕張で大爆発が起こりまして、多数の犠牲者を出しましたことを遺憾に感じます。今後それらの災害を防止するための強力な措置がとられると同時に、一方におきましては不幸にして災害をこうむった人に対しまして、どういう対策を講じていくか、この点も私はきわめて重大だと考えるわけであります。そこで今後夕張の大爆発に対します対策に対しまして、遺憾なきを期するためにも、私は一昨年の三池の変災、このあと始末につきましても、ここで明確にお聞きする必要があろうかと考えております。と申し上げますのは、なるほど三池三川鉱の爆発事故で、一酸化炭素中毒にかかったいわゆる後遺症患者、これらに対しまするいろいろな施策が行なわれてまいったわけでございますけれども、その中の一つでございますリハビリテーション対策、この対策がきわめてずさんであるという点でございます。と申し上げますのは、一つには専門医がおらない。それからもう一つには、訓練計画が全く無方針だ。こういう点でございます。  そこで荒尾におきましては、大牟田の労災療養所の荒尾回復指導所というのが設立されまして、そうしてこの指導所におきましては、十二月の七日から訓練指導が行なわれる、こういう段取りになっておったわけでございますけれども、今日まで一部訓練が開始されるということでございますけれども、なお予定されております軽傷患者が入所するに立ち至っておらない。こういう点はいま申し上げまするように、一つには専門医がおらないというような問題、一つには訓練計画というものがまだ充実されておらない。そういう不安等も手伝って、せっかく労働福祉事業団で回復指導所をつくりながら、なおその機能を発揮することができない。この点は労働災害のあと始末を講じていく政府としても、私はきわめて遺憾だというふうに考えざるを得ないのでございますが、こういうリハビリテーション対策に対して、労働大臣がどういう御見解を持っておられるのか、この際率直にお聞かせをいただきたい、かように考えます。
  227. 石田博英

    石田国務大臣 三池の爆発事故によりまして傷害を受けられた人々の社会復帰を早めるために、労働省としてはでき得る限りの努力をいたしておるつもりでございますが、その施設がまだ十分に利用されていないことは、たいへん遺憾であります。その具体的な事項等につきましては、基準局長よりお答えをいたしたいと存じます。
  228. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 大牟田の荒尾の回復指導所につきまして、御説明申し上げます。十二月に開所いたしましたが、いろいろの事情で患者の収容がおくれまして、去る二十二日から八十数名の患者が初めて入りました。今後続けて順次予定数まで、早晩収容することができるものと考えております。御指摘のございました専門医の問題につきまして、専門医に限らず、いろいろ入所がおくれたことにつきましては、御承知のごとく問題がございまして、昨年来現地におきましても、また本省におきましても、しばしば組合の方々にお目にかかっております。それで大部分の問題は片づいて、御了承を得たものと考えております。前述の専門医の問題につきましては、三名のうち専門医が一人だけであるというような指摘が組合からございましたので、私どものほうから、神経一名、内科一名のほかに、もう一人所長が俗に内科といっておりますけれども、これは神経内科であって専門医である。しかも経験から申しましても、一年間療養所の医務局長をやった方であって、これはいわば専門医と同様に考えてよろしいのではないかというような御説明をして、御了承を得ました。まだ問題がなくなったわけではございませんので、引き続きいろいろとお話し合いをしまして、近く御納得が得られると思います。
  229. 河野正

    河野(正)分科員 二月の二十二日現在で、八十数名が入所したということでございますけれども、実際には予定されておりまする訓練生というものは、二百五十名前後おるはずでございます。しかもその中で、いわゆる第一組合に所属いたしておりまする予定者が百三十名、これらの人々が、いろいろいま問題になっておりますような諸懸案が解決しない限りは、入らないという方針のようでありまして、この三池三川鉱の大変災のあと始末、つめの傷あとというものは、一日も早く払拭しなければならぬ。そのためには、この荒尾の回復指導所という施設は、いま申し上げますような二百五十名前後の予定されておりまする訓練生を入れるというのが目的で設立されたわけでございます。ところがそれらの人々を収容するということをたてまえでつくっておきながら、それらの人々が納得ずくでも入るわけにいかないということには、私は労働省として大いに反省すべきであろうと考えるわけです。  そこでいま労災部長のほうから、専門医の問題等が出てまいっておりますけれども、私どもいまのような説明では納得するわけにまいりません。もともと御承知のようにこの一酸化炭素中毒に基づきまする後遺症に対する専門家というものは、ほとんどいないわけです。日本にはおらぬわけですよ。そこで実は大変災が起こりました当座、私参りましたけれども、当時非常に誤った認識で患者の措置が行なわれた。たとえばいままで日本では大体一過性の一酸化炭素の中毒についての経験者とか、あるいはまたその方面の研究者というのはおったわけですが、長い時間一酸化炭素のもとに置かれたいわゆる慢性的な患者と申しますか、そういう方面における権威者というものは、ほとんどなかったわけです。そこで当初一部の学者のごときも、一過性の一酸化炭素中毒についての経験しかございませんから、そこで時間がたてば必ずなおるものだ、こういうような意見というものが述べられた。そこで現地におきましても、必ずこれはなおるのだ、ある程度の時間がたてば。こういう判断で実は推移していったという経緯があるわけです。そこで私は、どうも三池の場合は長い時間、一酸化炭素のガスのもとに置かれておるわけですから、これはオーガニズムも相当変化があるだろうということで、一過性の場合とはこれはちょっと趣を異にするであろう、そういう判断をして、いろいろ助言したという経緯もございます。そういうことで、いま所長にしても経験があるというお話で、何かいかにも鬼の首でも取ったような御発言でございますけれども、現在日本ではそういう方面の専門家というのは非常に少ないと申しますか、ある意味においてはほとんどないといっても過言ではないのです。ですから、この一般の訓練を受けるべく予定されております方々が、専門医がおらぬということで、非常に不安を抱かれておるということは、私はこれは率直に受け入れるべきだと思うのです。要は、できるだけ予定されております訓練生の納得を得る形で収容する、そういうことが望まれるわけでございますけれども、たとえば現地の労働基準監督署長の談話等を見てまいりましても、何かもう一部でも入っておれば、すぐ訓練を開始するのだ、入らなければいたし方ないという意味の発言もせられておるかのようでございます。それで大牟田の場合は、予定されております二百五十名前後の方々の収容を目的として設立されたわけでございますから、二百五十名の方々が喜んで入っていただく、そういういう内容を持った施設をつくるということに、労働省としても最大の努力をされる、私はこういう責務が必要だというふうに考えるわけでございますけれども、どうもいまの数字を見てまいりますと、それらの人々を納得させることはできない。したがってせっかく国が経費を出して、予算を出して、金を出してつくりましたけれども、活用することができない、こういうことでございますから、私は入られまする訓練生の方々の納得のいくような形で、ひとつ労働省が取り組まれることを強く要望するわけでございます。その点、大臣、いかがでございますか。
  230. 石田博英

    石田国務大臣 むろんでき得る限り訓練生の人々の納得がいくように努力をするのは当然でありまして、いままたその努力をしているところでございます。ただ、いま河野さん御自身でおっしゃったとおり、日本の持っておる条件の中で、むずかしいものもあるのであります。それはやはり御理解をいただかなければならない。そういう点を勘案しつつ、でき得る限り御納得のいくように、鋭意努力をいたしておるところでございます。
  231. 河野正

    河野(正)分科員 いま大臣から、訓練生の方々が納得される方向へ努力をいたしておるということでございましたけれども、なお私ども疑問に感じまする点が数点ございます。たとえば、これは訓練生のほうからもいろいろ申し出がある点でございますけれども、この回復指導所に収容して訓練をするわけでございまするが、その訓練に当たりまする訓練員というものが、六名予定されております。医師が二名、看護婦が二名、訓練員が六名、ところが訓練をする人が、それぞれその方面の技術なり、能力なりを持っておるような専門家であればけっこうでございます。ところがその六名の訓練員のうち、三池の会社から五名派遣されるということでございます。これにはいろいろな見解がございますが、その五名というのは、回復指導のための専門家であるのか、技術家であるのか、その辺をここでひとつお伺いをいたします。
  232. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 訓練員につきましては、先ほど河野先生からも御指摘がございましたように、医者そのものにつきまして、ほんとうにこういった一酸化炭素の慢性中毒につきましての専門家がいないと申してもよいような状況でございます。いわんや荒尾回復指導所の訓練員のごときは、これはそういう専門家は見当たらないと申してもよろしいかと存じます。したがってただいま訓練の補助員として予定しております者も、専門家ではございません。
  233. 河野正

    河野(正)分科員 専門家でないのが、どうして訓練ができるのですか。
  234. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 リハビリテーションは、医師の指導のもとに、大牟田の労災療養所で訓練をいたしました。その経験に基づきまして、経験のある訓練員の指導のもとに、学校の教師その他の経験のある人を、率直に申せば速成教育をして、訓練補助員というふうに申しておるわけでございます。
  235. 河野正

    河野(正)分科員 このリハビリテーションについては、日本全体がおくれておるわけですから、相当高いものを要求するということは困難だと、私ども理解をいたします。しかし少なくともこの患者を訓練するわけですから、これは医師でなくとも、ある程度その方面の技術を体得した人でなければならぬことは当然だと思うのです。ところがいま速成教育をしたというお話でございましたが、どういう教育をなさったのですか。
  236. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 訓練指導員の教育の具体的な内容につきましては、私まだ報告を受けておりません。
  237. 河野正

    河野(正)分科員 どうも納得がいかぬわけです。というのは、この問題はいまここで私があらためて提起した問題ではないわけです。これは十二月の七日から荒尾の回復指導所を発足させるということで、いろいろいままで当局側と訓練所のほうと話し合いがなされてきたわけです。その中で、この訓練員の六名のうちの五名が会社側から派遣される。これは本来の訓練員ではないわけだから、そこでそういう訓練員のもとで訓練を受けることは納得できぬということで、それぞれいままで論議されてきたわけです。ですから労働省としても、これはここであらためて提起をした問題ならば、それはいまのお答えのようなこともけっこうかもわかりませんけれども、しかしすでに長い間、この問題がどうだということで、論議されてきた問題です。にもかかわりませず、その訓練員というものがどういう実態であるかわからぬというのは、少々お粗末ではないかと思いますし、また無責任きわまりないと考えるわけですが、その辺はいかがですか。
  238. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 訓練補助員の問題につきましては、御指摘のごとく十二月以来、たびたび患者の代表の方とお話し合いをいたしました。たとえば御指摘のございました五名につきまして採用を決定いたしましたのは、ごく最近でございます。候補としてのぼりました五名のうち、訓練員として採用するのが適当でないと思われる者二名はのけまして、現在手に入るところでは、まあこの程度でがまんするよりしかたがあるまいと思われる三名を採用いたしました。この点につきまして、関係の労働組合にもお話をいたしまして、御了承を得たと私どもは思っております。
  239. 河野正

    河野(正)分科員 これは日本全体からいっても、さっき申しまするようにリハビリテーションがおくれておるわけですから、なかなか優秀な訓練員を求めるということは至難なわざだということは、私は理解をいたします。しかしながらそれならばなぜ広い範囲から、この訓練に適当と思われる方をお選びにならなかったのか、なぜわざわざ三池の炭鉱からのみ選考しようとなさったのか、この点が問題だと思うのです。この点はいかがですか。
  240. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 御指摘の点、まことにごもっともでございます。ただ当時の状況におきましては、非常に急いで回復指導所を開設するようにという関係者の強い熱望がございましたので、訓練補助員につきましても、とりあえず、手近からというふうに選考の方針をきめたわけでございますが、結果といたしますと、二カ月も延びましたので、これほど延びるならば、もっと初めから期間をかけて、広く求めればよかったかもしれないというふうに反省しておりますが、しかし採用になりました三名につきましては、もちろん完全に百点満点をもらえるような指導員は、いずれにしても非常にむずかしいわけでございますが、まずこれくらいならばよかろうという医者の意見があり、また関係者も、まあまあこのくらいならばしかたがあるまいということであるという報告を受けておる次第でございます。
  241. 河野正

    河野(正)分科員 関係者が、まあまあこの程度ならよかろうということであれば、おそらくこの問題は、いまごろは円満に解決しておるだろうと思います。まあよかろうということにならぬから、この問題がもつれておるわけです。入らぬのだからそうでしょう。それではこの回復指導所には、全員入りますか。
  242. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 二、三日前に、炭労の古賀委員長と三池労組の宮川組合長とがお見えになりまして、その際に指導員の問題、専門医の問題及びそのほか数点につきまして、いろいろとお話し合いをいたしました。ほかの問題がまだ若干残っておりまして、そのときの御希望では、二十五日にもう一度会おうということに相なっておりますが、夕張の事件もございまして、炭労もたいへんなようでございますから、あしたはたして現実にお会いできるかどうかわかりませんが、とにかくごく最近にお会いするわけであります。残った若干の問題につきましてまだケリがついておりませんから、全体として全部よろしいというふうには表明されませんでしたけれども、その際のお話し合いによりまして、専門医の問題及び指導員の人選の問題につきましては、御納得が得られたものと私は了解いたしております。
  243. 河野正

    河野(正)分科員 これは炭労が納得しましても、専門的な立場から私どもは納得するわけにまいりません。それはたとえば先ほど労災部長の御発言の中にあったわけですけれども、所長は専門医であるとか、あるいはあと所員二名のうちの一人は専門医であるとか、いろいろ御発言がございました。ございましたけれども、それはごまかしの御発言であって、私どもはまともにそのまま率直に受け入れるわけにいかぬのです。ですから炭労のほうで納得しても、私ども専門家の立場からは納得できぬということを、はっきり申し上げておきます。  それからこれは訓練計画がいまだ樹立されていない、確立されてないということでございますが、訓練計画というのはすでに確立されておりますか。
  244. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 訓練計画につきましては、すでに現地において医療委員会で了承を得てつくられております。ただしこれは初めてのケースでございますから、それで最終的ということではなくて、もちろん今後経験に応じまして逐次改正されていくものと考えますが、一応のものはできております。
  245. 河野正

    河野(正)分科員 どういう計画ですか。
  246. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 訓練計画のそのものにつきましては、ただいま手元に持っておりませんのですけれども、ごく要領を申し上げますと、患者は原則として毎日通院せしめる。回復訓練は午前、午後二回に分けて行なって、一人の患者が当分の間は午前か午後かどちらか一回だけである。土曜日はもちろんあれであります。訓練は医師の指示に従って、種目と実施密度が決定される。それから心身の故障によって訓練しがたい者は、医師の診断を受ける。この辺はあたりまえのことでございますが、患者を症状によりまして区分いたしまして、区分ことに適当な訓練時間割りを作成して、そして訓練を実施する。訓練の種類は、講話または学習——講話につきましては、その内容はいろいろございます。それから体育訓練、これについては室内競技、屋外競技、それから耐久訓練、それから技芸の訓練及び職場環境に順応させる訓練といったものがあげられておりまして、初期の間の時間表といったようなものも一応できております。
  247. 河野正

    河野(正)分科員 具体的にはどういう計画か、一応の荒筋だけですから、私ども判断するわけにまいりませんけれども、大体目安としてはどの程度収容して、すべての計画を消化していくという方針でございますか、その点をひとつ伺っておきたい。
  248. 石黒拓爾

    ○石黒説明員 現在の見込みにおきましては、二ないし三カ月をもって一応の目途といたしますが、これをもって卒業と言い得るかどうか、これはその訓練の効果、進行状況によって判断をすることといたしております。また個人差も当然出てまいるわけであります。
  249. 相川勝六

    相川主査 河野君に申し上げますが、そろそろ時間がきますから、ひとつそのつもりで……。
  250. 河野正

    河野(正)分科員 予定の時間だということでございますので、まだいろいろ問題点がございますけれども、一応あとは、北海道の夕張の問題もございますから、その際あわせてお尋ねをすることとして、結論を急ぎたいと思います。  具体的に計画の内容等についてお聞きすることはできませんので、それらの点については、われわれの立場からどうだこうだと言うわけにはまいらぬだろうと考えます。そこでいまいろいろお答え願いましたことは、当初いろいろ考えられておりましたこととは、だいぶ修正されておるようでございますので、いずれ今後の推移を見守ってまいりたいと思うわけでございますが、ただ非常に慢性的な経過をたどっておりますから、いまお答え願いましたように、一応の訓練の目安というものが二カ月、三カ月ということは、私は若干問題があろうと思います。しかしこれも実際具体的計画がわかりませんから、ここでいろいろ論評することは差し控えたいと思いますが、いずれにいたしましても私は日本全体的な点から見てまいりましても、リハビリテーション対策というものが非常におくれておる。特に厚生省がやっとPT、OT法案を今回の国会に提出をして、そうしてやっとフィジカル・セラピストあるいはオキュペーショナル・セラピストができるという段階でございますから、ある程度やむを得ない点もあろうかと思います。しかしそういうようなPT、OTの養成が非常におくれておるから、それだから現時点ではどうでもいいということではないのでございまして、われわれはやはりこの災害の犠牲者に対して最善の対策なり、努力をしなければならぬ義務があるわけですから、そういう意味ではできるだけ医者は専門家を集める。それから訓練員もひとつできるだけ優秀な技術を持った人を集めてもらう。そうしてせっかく国が施策として予算を出してくるわけですから、最大の成果と効果というものをあげてもらわなければならぬ。特に今度夕張でもかなりの重軽症者ができて、そうしてリハビリテーションを考えなければならぬ段階がくると思うのです。そういう問題もございますから、私は、やはりこの三池の問題の中で十分対処してもらう。そうしてまた次から次へ災害が起こることは、私どもも遺憾でございますけれども、不幸にして起こったならば、それらの被害者に対しては万全の対策で救済をしていく、こういう方針で臨んでいかなければならぬというふうに考えます。そういう意味で、今後ともこのリハビリテーション対策につきましては、ひとつ科学的な立場から、最大の努力をしてほしいと感ずるわけでございます。そこでこの点につきましてはひとつ政務次官から、大臣にかわって所信のほどを伺っておきたいと思います。
  251. 始関伊平

    始関政府委員 リハビリテーションということが日本では経験が少ないために、なかなか思うようにまいらぬ点も多いのでございますが、労働省といたしましては、だいぶ予算もつきました。ただいまお話のございました点も十分留意しながら、今後万遺憾のない対策の推進をいたしてまいりたい、このように存じておる次第でございます。
  252. 河野正

    河野(正)分科員 まあ万遺憾なく対処していきたいというお答えはけっこうですけれども、具体的にこの訓練生なり、あるいはまた専門家が見て聞いて納得いくような万全の対策というものを、ひとつぜひ確立してほしいと思います。いずれまた夕張の問題等もございますから、自余はあらためてまた質問をいたしたいと思います。委員長から時間ということでございますから、一応本日のところはこれで終わっておきたいと思います。
  253. 相川勝六

    相川主査 次は大原享君にお願いします。
  254. 大原亨

    ○大原分科員 私は雇用、賃金の問題について石田労政の考え方、こういうふうなものをお尋ねしよう、こういうふうに思っておったのでありますが、労働大臣はおられませんから——もっとも労働大臣に聞きましても、大体各大臣は五月にはみなやめるわけですから、きょうここで一生懸命議論しておっても、やりますやりますと言ったところで、大臣、次官がかわってしまうと、これでは話はまた、議事録には残っておるが、消える可能性もある。   〔主査退席、井村主査代理着席〕 次にまた大臣になったときをねらってやろうということにもなるし、非常に問題だと思う。これはまたあとで予算委員会等で——私は岸さんの弟の佐藤榮作はけしからぬと思っておる。こんなに一生懸命議論して、予算委員会その他で議論しておるのに、五月には全部かえてしまう。あと残る者はおりはせぬ。大臣で一人、二人くらい残るでしょうが……。だからこれは非常に便宜的な国会対策のために大臣を置いておく、そういうことはおかしいと思う。たとえば高度成長政策の池田内閣の政策と、社会開発を提唱する佐藤内閣が雇用政策、賃金政策、労働政策、人間や労働を尊重する政策で、どこがどう違うのか。これは佐藤さんも公約をしておるわけですけれども、その大きな方針のもとでどうやっていくのだ、こういうこと等についてもこれは質問しなければならぬわけでありますが、そういうことでいま質問の時間をとりましてもどうかと思いますので、ひとつ具体的な問題でしばらく質問を続けていきたいと思います。  労働力の流動性とか、若年労働者の絶対的な不足とか、いろいろな問題が今日あるわけですが、昭和三十五年に身体障害者雇用促進法というのを、御承知のようにつくったわけです。身体障害者雇用促進法というのをつくりまして、いろいろと討議をし、附帯決議をつけたと思うのです。身体障害者雇用促進法通過にあたって、附帯決議があると思うのですが、ちょうど私、さがしておりまして見つからないのですが、そこに手元にありましたらこちらへひとつ見せていただきたい。身体障害者雇用促進法に基づきまして、国やあるいは国の機関、三公社五現業や政府機関あるいは民間企業に対する一定の法律上の責任を課しておるわけですが、労働省はこの法律が実施されまして後に、法律に基づいて報告を受けておるはずですけれども、身体障害者、重度障害者等が、政府の機関、地方公共団体の機関、三公社五現業の機関、あるいは政府関係機関において、あるいは民間企業において、法律に基いて報告の義務を課しておるけれども、それに基づいて実態の把握をどのようにしておるか。国家公務員のほうから逐次ひとつお答えをいただきたいと思います。
  255. 有馬元治

    有馬政府委員 身体障害者の雇用の促進につきましては、雇用促進法を背景に、雇用率の設定がなされております。官公庁におきましては原則として一・五%、民間におきましては原則として一・一%、実は昨年の暮れでもって一応——この法律ができた当座の雇用率の達成時期としましては、昨年の三月末を目標にしたのですが、その当時はこの雇用率が達成できませんでして、その後民間についても官公庁についても、雇用促進について一段と努力をいたしました結果、今日におきましては民間についてはおおむね雇用率の達成ができておるものと推定をいたしております。推定と申しますと非常にあれですが、資料が一年おくれで非常に古いわけでございますが、三十八年の十月一日現在で、民間には約六万一千人の身障者が雇用されております。その雇用率が〇・九九%、一年前の雇用率が〇・八四%でございますので、〇・一五%一年間に率が伸びております。この推定からいたしますと、民間については先ほど申しました原則として一・一%の雇用率が達成されておるという推定をいたしております。官公庁につきましては、同じような時期における雇用率を申し上げますと一・四%で、実員にしまして約三万四千名が官公庁関係に雇用されております。前年度の雇用率が一・三三%でございますので、今日現在におきましてやや目標率を下回っておるかと推定しておりますが、官公庁の採用につきましていろいろと障害もございまするけれども、身障者については特例扱いの措置を大幅に認めてもらいまして、この雇用率の達成に努力をしておる状況でございます。
  256. 大原亨

    ○大原分科員 いろいろと当時議論したわけですが、エレベーターを操作する人とか、あるいは机にすわりまして一定の事務をする人とか、それぞれ身体障害者あるいは重度障害者でできる仕事を選んで、そういう職種を選定して、そして結果的に身体障害者が雇用されたということでなしに、計画的に新しい採用等においては一定のワクをきめて採用する、そういうことを計画的にやりながら雇用率の達成をして、そしてこれはしり抜け規定で訓辞規定になっておるけれども、これを義務規定にしなければならぬ、こういう方向で私は確かに当時議論をしたと思うのです。労働省自体は結果的にどうこうというような数字を出すのではなしに、おひざ元で労働省の関係機関においては、具体的にどういう政策をやっているか、こういうことについてひとつ法律に基づいた措置として明らかにしてもらいたい。
  257. 有馬元治

    有馬政府委員 労働省自身につきましては雇用率が二・〇六%で、目標より相当上回っております。
  258. 大原亨

    ○大原分科員 どういう仕事をやっておるのですか。つまり一定の職種をきめて、ちゃんと身体障害者であってもできる職種をきめながら、身体障害者に対して特にワクをきめて呼びかけて、そしてそれを採用していく。一般的な人と同じように競争させるというのではなしに、そして若い人、高等学校あるいは大学卒というものを頭から採っていくということになれば、たとえば必要なところにおける必要な労働力が足りないわけでありますから、そういう労働力の全体の充足あるいは有効な活用、こういう面から考えても、私は結果的にどうこうというのではなしに、具体的に身体障害者をどのような職種や、どのような方法をもって採用しているか、そういうことについてはっきりした政策がなければ、結果的にどうこうといったって、それはどんな身体障害者についてどの程度——身体障害者にはいろいろなこともあることだし、そういうことは身体障害者雇用促進法の趣旨ではないと思うのです。当時私どもは附帯決議をつけていろいろ議論をしたと思うのですけれども、具体的には身体障害者の雇用を促進しながら、全体では若年労働その他が足りないわけだから、必要でないところに若い労働者がたくさんおるというようなことでなしに、必要なところに、身体障害者であって働く能力と働く場所がふさわしいところに対しては、計画的に雇用を進めていく、こういうことを人事院その他と連絡をとりながら、当然労働省は先進的なそういう雇用政策を立てる必要があると私は思う。漫然とそういうことでなしに、必要があると思うのだが、どういうことをやっているのですか。
  259. 有馬元治

    有馬政府委員 御指摘のような職種別の雇用率、あるいは職種別に身体障害者以外は採用してはいかぬというふうな指定職種の制度は、原則としてとっておりませんが、いま申しましたように、全体としての雇用率でもって、身障者の雇用の促進をはかってまいる、こういう基本的な態度で今日までまいってきております。その際に、やはり身障者でございますので、能力に応じた適職職場のあっせんということを一番重視いたしまして、専門的なケースワーカーを中心に窓口において慎重な指導をして、身障者の雇用の促進につとめておる段階でございます。
  260. 大原亨

    ○大原分科員 雇用促進法の十四条には、身体障害者の雇い入れに関する計画、そういう雇用義務と一緒に計画等を言っておるし、十五条には、重度障害者の雇用率を設けて努力するように言っておるわけです。だから、比較的身体障害者で軽度の者をどれだけやっておるというのではなしに、片手がなくても片足がなくても、ある場合には両足がないという人であっても、適当な職があればその職場を積極的に選定をして、身体障害者が働ける場所を与える、こういうことを官庁はじめ三公社五現業や民間企業がやっていけば、身体障害者の生活の問題も相当これは権利として保障されて、これは雇用全体から見ても大きなやはり前進になるのではないか。そういう身体障害者の雇用計画を立てて、これを報告するようになっておるけれども、そういうことをやっておるのですか。行き当たりばったりでなくて、計画を立ててやっていかなければだめだ。
  261. 有馬元治

    有馬政府委員 十四条の雇い入れ計画に関する命令の問題ですが、これはすでに三十八年の暮れの審議会の議を経まして、雇い入れ命令を作成する準備はいたしておりますが、今日までの達成状況を見ますと、その作成命令を発動しなくても、行政指導でもって雇用の促進は十分できるということで、具体的にこの命令を発動したケースは今日までいまだないわけでございます。十五条の重度障害者に対する問題、これは今日までのところ、あんま、はり、きゅう師につきまして、七〇%の雇用率を設定して、この職種についてだけ指導しておる状況でございます。実績は、八〇%の雇用率が実績として出てまいっております。
  262. 大原亨

    ○大原分科員 そんなおざなりなことではだめだというのです。十一条に「雇用に関する国等の義務」と書いてある。十一条「国及び地方公共団体の任命権者並びに日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社の総裁は、職員の採用について、当該機関に勤務する身体障害者である職員の数が、当該機関の職員の総数に、政令で定める身体障害者雇用率を乗じて得た数未満である場合には、身体障害者である職員の数がその身体障害者雇用率を乗じて得た数以上となるようにするため、政令で定めるところにより、身体障害者の採用に関する計画を作成しなければならない。」計画を作成しなければならないと、ぴちっと義務を課しておるのだ。計画を策定をして、そうして政府並びに政府関係機関、三公社五現業は、身体障害者を計画的に雇用しろ、こういうことがあるわけです。あなたの答弁では、おざなりなことで、結果的にこうなっておりますということだけじゃないですか。計画を策定しなければならない。策定をして、これは義務としてやらなければならない。
  263. 有馬元治

    有馬政府委員 御指摘のような十一条の規定に基づく官公庁の省庁別の計画の作成は、現実に立ててやっております。昨年の五月の次官会議申し合わせによりまして、具体的な計画を立てまして、まだ計画どおりの雇用率が達成できていないところにつきましては、千三百三十三人の目標を設定いたしまして、各省庁別に指導をしておる状況でございます。それが積もり積もって先ほどの雇用率という数字になるわけでございます。
  264. 大原亨

    ○大原分科員 計画を作成しなければならない、計画をやって次から次へと十一条、十二条、十三条というふうに、少ししり抜けであるけれども相当きびしい条件を付して法律もつくっておる。だから、たとえば片手がないとか片足がないという人であっても、適当な働ける職種においては、積極的にそれを雇用していくということが、全体の雇用政策を進めていくだけでなしに、身体障害者に働く場所を与えて、そうして人権を尊重するということになるわけです。これは法律をつくっただけで、次官会議でどういうことをやったか知らぬが、計画、計画、計画——各省の計画、三公社五現業の計画、労働大臣の報告を受けた計画、それを私のほうへ出してください。
  265. 有馬元治

    有馬政府委員 それは各省庁から出てきておりますので、後刻お届けいたします。
  266. 大原亨

    ○大原分科員 身体障害者の雇用につきましては、日本は非常におくれておると思うのです。だからこれは義務規定にして、もう少し率を上げて、交通戦争やこういう炭鉱災害やその他一ぱい災害が今日あるわけです。交通戦争では、日清、日露戦争や関ケ原の戦いを調べてみたけれども、日清、日露戦争や関ケ原の戦いどころではないのだ、いまごろの死亡者、傷害者というものは。戦後死亡者だけで二十万をこえておるわけです。ひどいものですよ。それは広島、長崎の原爆なんかの場合とは別だけれども、ものすごい死亡者、傷害者があるわけです。そういうことから考えてみても、そういう身体障害者を社会的な責任において雇用を安定させて、人権を尊重して、働く場所と生活の安定をはかっていくということは、きわめて重要な問題であるけれども、三十五年につくったなりであって、何ら新しい政策はない。本年度だって新しい政策はないのです。これではだめです。これを一歩進めて、当時の附業決議があるはずですから、義務規定にして、重度障害その他の障害に応じて、もう少し科学的な研究の上に立った雇用を保障する、こういうことをまず官庁みずからがやりながら、民間に対してもそういう計画を進んで策定して実施するように、企業の義務も課する、こういう年度をきめて、もっとそうういふうに法を整備していくということでなければ、身体障害者の雇用促進については、ILOその他の問題で批判を受けるから、こういうようにつくっておりますという言いのがれだけになったのでは、これは何にもならない。これは今日のそういう交通戦争やその他の状況から見まして、そういうおざなりなことではいけないわけです。これはひとつ次官から答弁をいただいておいて、あとで労働大臣からも、この問題は十分省内で討議をして、具体的に身体障害者の雇用促進についてはどういうふうに前進をさせるか、こういう問題について私は近いうちに、総括質問くらいまでに、われわれいろいろ打ち合わせするから、そういう点について明確な答弁ができるようにしてもらいたい。
  267. 始関伊平

    始関政府委員 身体障害者の雇用を促進いたしますために、適職をきめて、これを計画的にその雇用を推進する、さらにまたこれを義務づける必要があるのではないか、こういう御意見でございます。御趣旨はごもっともでございますが、大体法律の趣旨に即した運用をいたしておりまして、実績も相当にあがっておるように存じますので、これを義務づけるかどうかという点につきましては、慎重に検討してみたい、かように存じております。
  268. 大原亨

    ○大原分科員 昭和三十五年に法律をつくりまして、実績の報告を聞いたわけです。しかしおそらく国鉄、三公社五現業その他の実績を聞いたって、あまりはっきりしたものはわかりはせぬ。だから、これは実際は雇用率を、御答弁のように下回っておるわけです。一・五%というのが一・四%であったり、一・一%というのが〇・九九%であったり、下がっておるのです。したがってこれは相当年数もたっておるし、毎年毎年年次計画を立てて、そして一定の雇用率以上の身体障害者を、官公庁が率先をしてやるべきである。民間に対しても報告を求めて、適切なる指導をすべきである。そしてこれらの蓄積の上にこれを義務化していく、こういう方向で身体障害者の雇用と生活の安定を期するということを、いまやるべきである。   〔井村主査代理退席、主査着席〕 このことはいま次官から答弁がありましたが、この問題はなお金曜日、土曜日に、まだ残っておりますから、雇用と賃金の全体の問題につきまして、これらの問題を含めまして、私は予算通過前にいろいろ議論をしたい、こういうふうに考えておることでございますので、質問のはしりをちょっとなにいたしまして、私の雇用と賃金の問題に対する質問は、ここらで保留いたしておきます。  次にもう一つ、また別の質問を簡単にいたしたいと思います。いまの問題は雇用全体の問題です。そこで各局長が見えておると思うのですが、各局において本年特に努力をしてやろうという、そういう重点の努力目標、各局の大臣の施政方針演説、それを簡単なことでよろしいから、本年はどういう点に力点を置いてやるのだ、こういうことをひとつできるだけ簡単に、明瞭なほうがよろしい。長々と時間をかけるのはいけないから、おられる局長から逐次、本年度の各局における重点目標を、それぞれここで開陳をしてもらいたい。
  269. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 労働基準行政全体の中で、来年度特に重点を指向いたしたい問題が三つございます。  第一は何と申しましても人命尊重の観点から、労働災害防止対策を飛躍的に充実したいということでございます。この点につきましては、組織並びに監督官の定員増等の問題がございますが、本省に労災防止対策部を設置すると同時に、第一線機関には二百名の監督官を増員する等、行政体制を整備すると同時に、中央労働基準審議会等を通じまして、法令の整備を一そう充実してまいりたい。また昨年度七月に制定公布せられました労働災害防止団体等に関する法律の施行をさらに促進いたしまして、自主的な災害防止活動をさらに強化いたしますと同時に、特別規制措置等を適正に行なってまいりたいと考えております。結論的に申しますならば、労働災害防止対策につきましては、総合的、計画的にこれを推進していきたい、かように考えておるわけでございます。幸い機構、定員、予算等につきましては、もちろん一〇〇%十分とは申せませんが、かなりの増額を見ておるような次第でございまして、鋭意努力してまいりたいと存じております。  第二点は、災害が発生したあとの災害補償の問題でございます。近く国会に労働者災害補償保険法の一部を改正する法律案を提出をいたしまして、労災保険の適用の改善、それから保険給付の大幅な年金化等、従来の労災保険法の給付状態を飛躍的に改善いたしまして、国際的な水準に近づけたいというふうに念願いたしておる次第でございます。  また労働基準行政の中におきまして、賃金問題がございます。最低賃金につきましては、御承知のように昨年十月に最低賃金を実施すべき業種の選定及び目安の決定をなされたのでございまして、その最低賃金審議会の答申に従いまして、実効性ある最低賃金をさらに勢力的に進めてまいりたい。すでにこの点につきましては各県ごとの計画を、労使公益の三者構成よりなる審議会において御検討いただきまして、逐次計画を確定いたし、これを実施していくということにいたしております。  なお賃金問題一般につきましては、賃金制度のあり方等につきまして種々御議論があることは御承知のとおりでございますが、賃金研究会の場におけるいろいろな報告、結論等を参考にいたしまして、これを民間に普及いたしますと同時に、所要の資料を整備いたしまして、これを労使及び関係方面に配付いたしまして理解を深めたい、かように考えております。  なお労働基準一般の問題につきましては、労働時間の問題、週休制の問題等、各般にわたる問題がございまするが、これも現在中央労働基準審議会の場におきまして、それぞれお取り上げいただきまして、検討願っておるところでございます。それらの結果と相まちまして、一般労働基準監督につきましても、前向きの姿勢をもちまして、極力進めてまいりたいと考えておる次第でございます。
  270. 相川勝六

    相川主査 政府委員の方に申し上げますが、質問者の御意向は重点的に何かというので、あなた方のやること全部言っておったら時間がかかってしようがない。その局で最も重点的には何をやるかということを、簡潔に願います。
  271. 有馬元治

    有馬政府委員 労働力がだんだん不足いたしますので、その有効活用をはかるために、一つは地域別、産業別の雇用計画を策定いたしたいと思います。これは三年計画で進めております。二番目には労働市場センターの整備を、今年度は重点的に行なってまいりたいと思ます。それから先ほど五島委員からも御質問がありました港湾労働法の成立を期しまして、港湾労働体制の整備をはかってまいりたい、かように考えておる次第でございます。
  272. 松永正男

    ○松永(正)政府委員 職業訓練局におきましては、最近の労働力の不足の状況にかんがみまして、労働力の個々の質の向上、開発ということを、最大の重点に置きまして仕事をいたしたいと思います。その手段といたしまして公共職業訓練、事業内職業訓練、技能検定、この三つの施策がバランスがとれて、ともに発展するというところに重点を置きたいと考えております。
  273. 大原亨

    ○大原分科員 大臣が施政方針や予算説明したのとは違うのをやらなければだめですよ。それを頭に置きながらこれをやるのだということを、もう少し的確にやってくれなければいけません。各局長、おられぬ人も多いし、きょう来ておらぬとはどうもけしからぬ。そこで私は雇用と賃金の問題——総括していえばみなそうなるわけですが、その本質的な問題を議論をしたい、こういうふうに思っておりましたが、きょうは時間の関係、それから労働大臣もおられぬし、これは保留いたしまして、あと同僚の委員質問をやられる間を見まして質問をやるということで、きょうはちょうど五時になりましたし、与党の諸君がやかましいから、これで終わることにいたします。
  274. 相川勝六

    相川主査 本日の質疑はこの程度にとどめます。  明二十五日は午前十時より開会して、厚生省所管について質疑を行ないます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会