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1965-02-25 第48回国会 衆議院 予算委員会第一分科会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月二十五日(木曜日)    午前十時十五分開議  出席分科員    主査 植木庚子郎君       井出一太郎君    稻葉  修君       小川 半次君    川崎 秀二君       八木 徹雄君    石橋 政嗣君       辻原 弘市君    泊谷 裕夫君       野原  覺君    村山 喜一君    兼務 大原  亨君 兼務 加藤 清二君    兼務 帆足  計君 兼務 玉置 一徳君  出席国務大臣         文 部 大 臣 愛知 揆一君  出席政府委員         総理府事務官         (中央青少年問         題協議会事務局         長)      赤石 清悦君         警  視  監         (刑事局長)  日原 正雄君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         文部政務次官  押谷 冨三君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     福田  繁君         文部事務官         (大学学術局         長)      杉江  清君         文部事務官         (体育局長)  前田 充明君         文部事務官         (管理局長)  齋藤  正君         文部事務官         (文化財保護委         員会事務局長) 宮地  茂君         運輸事務官         (観光局長)  増川 遼三君         海上保安庁長官 今井 榮文君         労働基準監督官         (労働基準局         長)      村上 茂利君         自治事務官         (財政局長)  柴田  護君  分科員外出席者         大蔵事務官         (主計官)   小田村四郎君         運輸事務官         (気象庁次長) 大森 重義君         自治事務官         (行政局公務員         課長)     松浦  功君         自治事務官         (財政局財政課         長)      岡田 純夫君         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本国有鉄道常         務理事     今村 義夫君     ————————————— 二月二十五日  分科員石橋政嗣君委員辞任につき、その補欠と  して泊谷裕夫君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員泊谷裕夫委員辞任につき、その補欠と  して村山喜一君が委員長指名分科員選任  された。 同日  分科員村山喜一委員辞任につき、その補欠と  して石橋政嗣君委員長指名分科員選任  された。 同日  第二分科員玉置一徳君、第三分科員大原亨君、  加藤清二君及び第五分科員帆足計君が本分科兼  務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和四十年度一設会計予算文部省所管  昭和四十年度特別会計予算文部省所管      ————◇—————
  2. 植木庚子郎

    ○植木主査 これより予算委員会第一分科会を開会いたします。  昭和四十年度一般会計予算、及び同特別会計予算中、文部省所管を議題といたします。  この際申し上げます。本日は質疑通告が十三名ありますので 質疑時間は 先に申し上げましたとおり、本分科会本務員については一時間、兼務員もしくは交代して分科員となられた方は三十分程度とし、時間厳守に御協力をお願いいたします。  質疑通告がありますので、順次これを許します。野原覺君。
  3. 野原覺

    野原(覺)分科員 文教政策の若干の問題で文部大臣お尋ねをしたいと思います。  まず最初にお伺いしたいことは、大学効外移転の問題です。  本年の二月二日の朝日新聞、「東大移転、前向きに文相発言閣議で了承」、同じく二月二日の日付で読売新聞が「東大移転の機熟す、冨士山ろくへ、田中蔵相談」、それから同じく二月二日の東京新聞を見ますと、「東大効外移転文相大河内学長一致」、こういう報道が次から次となされております。  そこでお伺いしたいのは、東大効外移転させるという方針政府は確認しておるのか。そういう方針をとっておるのかどうか。このことです。
  4. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはちょっとお答えが長くなって恐縮ですが、経過をこの際申し上げておきたいと思います。  御案内のように、四十年度の予算に関連いたしまして、大阪大学移転決定をいたしましたわけで、その所要土地購入等のために所要法律措置が必要でございますので、法律案の御審議をお願いすべく御提案申し上げているわけであります。  この法律案政府部内できめまするときに、これは大阪大学に限らず、将来大都市から効外大学移転、あるいは拡充するというような場合に、必要な土地買収等については同様の措置を講ずるということを、何と申しましょうか、内意と申しましょうか、そういうことを決定いたしたわけでございまして、東大については、ただいま御指摘のように、いろいろ新聞報道等もございますけれども東大移転決定をしたというふうにはまだなっておりません。
  5. 野原覺

    野原(覺)分科員 東大移転決定をしていないようでございますが、そういたしますと、この際、たとえば阪大というお話がございましたが、国立大学を、過密都市対策あるいは学校教育環境の面、そういう点を考えて、国立大学をやはり効外移転さすべきである、そういうような考え方をお持ちであるかどうか。  それから、もしお持ちであるとすれば、その計画がございましたら、文部大臣個人考え方でもけっこうでございますから、お述べいただきたい。
  6. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は事は大学でございますので、普通の工場等移転とは質が違う問題だと思っております。したがって、東大等につきましても、東大自身拡充計画、あるいは自主的な計画というものをあくまで尊重してまいりたい。そういう点から申しますと、過密都市対策であるから大学をまず追い出してかかれというふうな取り上げ方は、私はいたすべきものでない、こういう信念を持って今後も考えていきたいと思います。  それから、これに関連して、どういうふうな計画があるかというお話でありますが、御案内のように、研究学園都市を今後十年以内に完成をいたしたいという計画は、これは閣議決定をいたしておりまして、国立の諸研究所、いま考えておりますのは三十五カ所くらいございますが、そのほかに大学も、移転と申しますか、その際研究学園都市につくりたい。これもただいま申しましたように、大学の問題でございますから、大学自主性、創意というものをあくまでたっとんでいかなければなりませんけれども 東京教育大学というようなところが一番適当ではなかろうかということで、寄り寄り内相談をいたしておりますことは事実でございまして、研究学園都市東京教育大学を、この際りっぱなものにしてそこに移し、かつ拡充をしたい、こういう内々の計画がございますことは事実でございます。
  7. 野原覺

    野原(覺)分科員 研究学園都市と申しますと、教育大学だけではなかろうと思うのです。ほかに考えておる大学があるかどうか。  それから、いま政府がそういう方向をとりつつあるとすれば、その学園都市を設定する場所、それはどういうところを考えておるのか。
  8. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは御案内の茨城県土浦の周辺でございまして、現に関係閣僚懇談会の議を経て、閣議でも四十年度から向こう十カ年間に完成するということで、首都圏整備委員会等をはじめといたしまして、関係省庁で事務的にも連絡会議を開催いたしておりますし、ただいま申しました文部省、あるいは別途私の担当いたしております科学技術庁の関係をあわせて申し上げますと、ただいま申しましたように、一大学三十五研究所ということで、これはかなり具体的な検討を開始いたしております。
  9. 野原覺

    野原(覺)分科員 ほかに大学がありますか。
  10. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまのところはございません。
  11. 野原覺

    野原(覺)分科員 大学自主性を尊重されるということですが、教育大学学校側としては、その計画賛意を表しておるのかどうか、移転してもよいという意向であるのかどうか。  それから、新聞によりますと、東京外語も、その研究学園都市でございますか、そこに考えておるやに私、拝見をしましたが、外語のほうはどうなっておるのか、承りたいと思います。
  12. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま申し上げましたように、東京教育大学の場合におきましても、あくまで大学の自主的な計画を尊重してまいりたい。  それから、外語大学については、いま確たる話題にはのぼっておりません。  それから、東京教育大学につきましては、学内におきましても、研究学園都市移転するとすれば、こうこういうようなことをその際にあわせて措置してもらいたいというような希望条件等をもあわせまして、いろいろ研究中であるように聞いております。
  13. 野原覺

    野原(覺)分科員 研究学園都市計画を十カ年間でやるとすれば、総予算をどのくらい見積もっておられますか。
  14. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは全体の計画のことと、それから土地買収問題等もございますから、これは他のしかるべき閣僚事務当局からお答えしたほうが正確かと思います。
  15. 野原覺

    野原(覺)分科員 他のしかるべき閣僚といえば、これはどなたでございましょうね。大蔵大臣かと思うんだけれども大蔵大臣はきょう見えておりませんし、最もしかるべき閣僚総理大臣ではなかろうかと思うのですね。やはり文部省としての考え方はございませんか。
  16. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは別に隠しだてするわけでも何でもなく、土地買収その他の関係もございましょうし、それから、いま申しましたように、一応いまの段階で一大学三十五研究所というように考えているということでございまして、まだ、その土地買収費を別にいたしましても、この程度の金がかかるというところをお話し申し上げるだけの十分な用意ができていないわけでございますけれども、場合によれば、大ざっぱの見通し、見当というようなことは、そのほうを研究しておる者から申し上げることもできようかと思って、いまのようなお答えをしたわけでございます。
  17. 野原覺

    野原(覺)分科員 大学自主性を尊重されまして、その上に立ってこのような学園都市ができるということに私ども賛意を表したいと思うのです。賛意を表したいと思いまするがゆえに、私は、やはりもっと具体的な、十カ年計画でどれだけの予算で、どのような継続的な計画的な仕事を遂行していくのか、そういった綿密なものがお示し願えればけっこうではないかと思ってお尋ねしましたが、まだその時期ではないようであります。  いつごろそういう総合的な年度計画と申しますか、それはできますか。
  18. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは私の個人的な見込みなんでありますけれども、この学園都市の建設というようなことは、決心をすれば早く拍手すべきである、そうして十カ年以内で完成をしたいということをすでに希望としてきめておるくらいでございますから、四十一年度中くらいに具体的な青写真確定をして、そしてそれまでの間に、とにかく土地買収を進めておいて、都市計画をつくり、基本となるような土木事業と申しましょうか、環境を整えつつ具体的な施設の配置の青写真決定する。これはほんとうに私の個人的なあれでございますが、四十一年度中くらいにそういった青写真確定する。したがって、その際には、向こう十カ年あるいは九カ年の年次別予算財政投融資、あるいは民間の投融資というようなことの具体的な資金計画もきまる、そういうふうになりたいものであるなというように私は感じております。
  19. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで、次に尋ねしたいことは、その学園都市に、たとえば教育大学移転をする、あるいはどこそこの研究所移転をする。そうなりますると、現在使っておる、あのりっぱなビル、校舎等は、どういうようにこれはもっていったらいいか、お使いになるのか。お考えがあれば承っておきたいと思います。
  20. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど申し上げましたように、東大というようなものについては、これは全く未確定要素ばかり多いわけでございますから、たとえば東大のようなりっぱな建物をもし移転するような場合にどうするかということはしばらく将来の問題として、まだ現実の課題ではなかろうかと私は思います。  それから、たとえば教育大学等につきましては、中には新しいものもございますし、中には古い建物もございますが、これはやはり今度はそういう面においては東京都市計画という面からいって、たとえば公園にするのも必要な考え方でございましょう、あるいは図書館等にするのも必要でございましょうし、あるいは先ほど申しました大学の自主的な希望、あるいは条件というようなことから申しまして、歴史的な伝統のある地域に何らかの記念の施設は残したいというような希望もあろうかと思います。それらを十分勘考して考えてまいりたいと思います。
  21. 野原覺

    野原(覺)分科員 大阪とか東京といったような過密都市を何とかしなければならぬということが、やはり首都圏整備委員会あるいは近畿圏整備委員会等で問題になっておる。そこで、この学園郊外移転した場合に、その学園建物をどう使うかということは、私は、これはよほど慎重に考えないといけない。土地建物を売却してその金でその学園郊外移転させる、こういうようなことになりますと、そこには商社ができ、会社ができ、かえってそれは過密化防止対策にならない。建物をこわして公園にすれば、これは過密都市対策としては一番適当かと思うのでございますけれども、そういう点も十分配慮してやっていただかなければならぬのではないかと考えておるわけであります。  それから、新聞報道の誤りだといえばそれまででございますけれども田中大蔵大臣がえらい御熱心のようでありまして、富士山ろく東大はぜひ移す、その金は一千億円だ、こういうことを方々でお話しになっておる。このことが東大側に非常に敏感に反映をして、東大でも学内でいろいろ議論が沸騰しておるやに聞くわけですが、この辺はどういうことになっているのか。閣議でそういうお話が出たり、あるいはそういうような方向をとろうというお考えがどこかにあるのじゃございませんか。いかがですか。
  22. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほども申しましたように、最近におきまして閣議におきましての話といいますのは、法律案閣議決定に際しまして、文部大臣としては、先ほど申しましたように、過密都市から大学を追い出すのであるというような感覚でものをとらえては困るということを念のために発言して了解を得たわけでございまして、富士山ろくその他についてそういう具体的な話は閣議では全然出ておりません。
  23. 野原覺

    野原(覺)分科員 以上で東大移転問題は一応終わっておきたいと思います。  次にお尋ねしたいことは、教科書の問題です。  昭和四十年度の予算を見ますと、教科書無償措置公立、私立合わせて小学校の六年まで、その金額は五十九億円、こう出ておるわけであります。私どもがいろいろ今日までお伺いしたところによると、文部省としてはこれには御不満を持っておられて、中学校一年までこれは要求しなければならぬ、こういうことで大蔵省と折衝されたやに承っておりますが、その問の経緯を御説明願いたいと思います。
  24. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御指摘のとおり、今年度は六十億円ほどの予算を計上いたしております。そして六年までの計画を具体的に進めることができるようになりました。  当初、文部省といたしましては、前々から四十年度の予算には中学一年まで措置をしたいと考えまして、それに所要予算が約二十二億円でございますから、約九十億ほどの予算要求いたしました。それに対する大蔵省の査定は、小学校六年までにしてほしい、それからさらに、半額地方負担にしてはどうかという提案がございました。中学一年までの措置も大事なことでありますが、私どもとしてはこれを国庫で全額やるべきものであるという信念を持っておりますので、そのほうがまた比較的にいえばより大切な問題であろうかと考えました。そこで、いろいろ折衝といいますか、相談をいたしまして、全額国庫負担で、そしてことしはやむを得ずでございますが、六年で、中学一年から三年までの問題は来年度以降において措置をする、それから六年についてはもちろん全額国庫でやる、こういう決着になったわけでございまして、私としてもこの点は残念に思っております。  しかし、同時に、文教予算も実はたいへん多くの問題をかかえておりますので、公立学校義務教育関係で申しましても、たとえば僻地教育の充実というようなこともございますし、それからそのほか一々ここにあげるのもいかがかと思いますが、相当たくさんの問題をかかえております。これにきめのこまかい配慮をいたしたいと思います。それから一方におきまして大学の問題、私学の問題、社会教育の問題、あるいは国際文化交流とか、文化財保護とか、各般にわたる問題を持っておりますので、まあ何と申しますか、そういう点から、財政事情等大蔵大臣から十分承知をいたしました上で、最後のところでこの教科書中学一年ということは、私としては残念でありますが、あきらめた、後日に問題を残したということになっておるわけであります。
  25. 野原覺

    野原(覺)分科員 つまり大蔵省に押し切られたわけです。  そこで大事なことは、そういたしますと、昭和四十一度の予算には、一挙に中学三年までの無償措置予算を計上されるかどうか。いかがですか。
  26. 愛知揆一

    愛知国務大臣 文部省といたしましては、中学三年までぜひ四十一年度、あるいは四十一年度では一挙に片づかぬかもしれませんけれども、従来から考えておりますような年次計画でこれを完成していきたい。当然四十一年度の予算編成に際しましては強く要求をいたしてまいりたいと思っております。
  27. 野原覺

    野原(覺)分科員 政府国民公約をいたしましたのは五カ年計画であった。予算でいえば昭和三十七年度に小学校一年、それから三十八、三十九、四十、四十一年度まで。予算では実施年度は一年ずれるようでありますが、この政府の五カ年計画というのは、これはくずされてきたような印象を私どもは受けるのです。その心配は無用でしょうかね。
  28. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どうもこれは四十一年度、あるいはそれ以降の問題になりますから、野原委員かう御懸念をお持ちになるのもごもっともかと思いますけれども、私といたしましては、この既定計画を、ずれましたけれども終期はなんとか前の目標のとおりにやってまいりたい。現在のところはそういうふうに考えております。
  29. 野原覺

    野原(覺)分科員 これはよほど決意をもってやらないというと、これは政府公約違反として私どもは来年度はその責任を追及しなければなりません。これは公約をしておるのです。前の総理大臣池田さんが本会議公約をしたわけです。私はこの公約については、ここに速記も実は用意をしておるのです。とにかく小学校六年までに押えられたこと自体が、私は公約違反ではないかと思うのです。来年度にならなければ公約違反が問題にならぬかというと、そうじゃないのでありまして、昭和四十年度の予算では中学一年まで行ないますという約束を、教科書無償措置法案国会に出したときに、初中局長福田さんが文部大臣の前で答弁をしておるのです。ところが、今度は大蔵省に二十二億円削除されて、小学校六年までしかこの四十年度予算には計上できていない。私はこれはやはり大きな問題だと思うのですよ。この点について一応文部大臣の御見解を承っておきましょう。
  30. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ことしは、四十年度については中学一年分まで予算の計上をしたいということを前内閣以来考えておりましたことは、事実御指摘のとおりでございます。しかし、先ほど申しましたような事情で、私としてはまことに遺憾でもあり、申しわけないことに思いますけれども、六年まででがまんせざるを得なくなった、しからば前々からの考えのとおりに、できれば一年ずれただけで、しかし終期前々からの計画どおりに合わせて実行すべく最大の今後努力をしたい、まあ今日申し上げ得ることはそういうわけでございます。
  31. 野原覺

    野原(覺)分科員 この文教委員会会議録、これは昭和三十八年の五月二十二日です。自民党の上村委員が質問をしまして、「政府は五カ年計画で全児童生徒に無償給与するというふうに言っておられるが、そうであるのか。もし五カ年計画であるとするならば、その具体策はどういうふうになっておるのか。また財政当局はこれに対して裏打ちができているのか、了解がついておるのか、完全実施をした場合に大体どのくらい予算が必要であると見込まれておるのか、その点についてお聞きしておきます。」こう発言をしておるのです。  これに、当時の荒木国務大臣答弁をしております。こう言っておる。「五カ年と申しますのは、それに対応する予算年度で申し上げれば三十七年から始まりまして四十一年までの間に予算措置を完了」することであります。よろしいですか。だからして、中学一年までの要求が削られたのですから、来年度は中学三年まで一挙にやってもらわなければならぬのですよ。私は大臣議会答弁というものは、政府国民に対する公約だと思うのです。  それから、ずっと飛ばします。大事な点だけ申し上げますが、「ただしそのことにつきましては、」というのは五カ年計画です。「池田総理からも」——これは荒木国務大臣発言ですよ。「池田総理からも国会におきまして、五カ年で完了するという決意のほどは本会議で御答弁申し上げていることは御承知いただいていることと思いますが、その決意をもって」云々ということを述べておるわけです。  そして、ずっといきますと、上村委員がまたお聞きしました。「これは局長お尋ねをしておきますが、その五カ年計画の内容です。何年度は何年生というような具体的な問題についてお聞きしておきます。」福田政府委員「五カ年計画についてはただいま大臣からお答えを申し上げたとおりでございますが、三十九年は一年から三年まで実施する、二十七億六百万円はすでに予算に計上されております。これを既定の事実として考えまして、それ以後大体二カ年ずつ、二学年ずつ進行していくといたしますと、四十年度は小学校の一年から五年まで、」これは実施年度です。「それに要する経費は先ほど申しました現益の定価で推定いたしますと、五十一億四千六百万でございます。それから四十一年度におきましては」つまり四十年度の予算ですね。「小学校の六年までと中学校の一年ということを仮定いたしますと、総経費八十五億円、それから昭和四十二年度、これは完成年度でございますが、小学校から中学の三年まで全部実施いたします。」  だからして、四十年度の予算、四十一年度の実施においては中学一年までです、とこう言ったのです。これは法案を通すときに、私どもこういう答弁がございましたから法案をスムーズに通したのですよ。この公約に基づいて、大蔵省愛知文部大臣要求されたことは、私もこれは多といたします。当然だと思いますが、しかし、それを大蔵省から削られたからといって引き下がることは私は了解できない。これはほかの予算要求とは違うのです。本会議総理大臣が五カ年計画だと言い、委員会では文部大臣局長が四十年度の予算中学一年までだと、こう与野党の私どもに説明をしたことなんです。あなたは下がっちゃいけなかった。私はこの問題は文部大臣政治責任の一つだと思う。これは大蔵大臣田中さんに突きつけて、これはだめだ、すでに国会で約束しておることなんだ、こういうような主張を強くさるべきでなかったかと私は思います。御所見を承っておきたい。
  32. 愛知揆一

    愛知国務大臣 その四十年度において中学一年まで必要とする予算措置を講ずるということが前前からの計画でありましたことは、ただいま御指摘のとおりでございますが、先ほど申しましたようなことで、どうも遺憾ながらそれが達成できなかったということについては、私としてはたいへん残念に思い、遺憾に思っておるわけでございます。
  33. 野原覺

    野原(覺)分科員 文部大臣非常に残念がっておられますけれでも、私はこれは実は総括質問のところで佐藤総理に、田中大蔵大臣を前にして、政府国民公約したことをこのように軽々に変えてよいのかどうか尋ねたかった。時間がなくて触れることができなかったのですが、これは単に中学一年だけが削除されたという問題だけではありません。公約したことなんです。だからして、まだ予算の審議はこれからずっとあるわけでございますから、予算の最終までに文部大臣としても、やはりこれは分科会で問題になって、あなたもこれは公約したということをお認めになったのですから、何とかこの予算修正についてあなた自身が動くべきだと私は思う。  もう一つ申し上げておきますが、こうはっきり言っておるのですよ。これは福田政府委員初等中等教育局長、こう答弁しておるのですよ。「総理の本会議での言明によりますと、四十年以降は少なくとも小学校の四年、五年、その次は小学校の六年と中学校一年、それから最後には中学校の二年、三年というように、大体年次計画をもって進めて、そうして当初から五年以内には完全に無償を実施する。」  いわんや、何か予算折衝の過程をいまお伺いしましたら、半額地方負担だというような意見がいまごろ大蔵省から出るということ自体私は大問題だと思います。これはたいへんなことだと思うのです。これは全額完全に無償で国が実施をするのだ、五カ年計画だ、このことが繰り返し繰り返し本会議で総理からも言われ、それから教科書無償措置法案、これは荒木文部大臣のときに二本出てまいりましたが、その審議にあたってこういう説明が私ども委員会でなされておるわけです。これはひとつやはりその担当である文部大臣としては、相当強硬な決意で当たってもらわなければならぬですよ。しかるに何ぞやと言いたい。私どもは、これは中学一年までと実は期待しておった。このことは公約だから当然だ。ところが、金がないからというので簡単に二十二億円削除されて、小学校六年までであなたが引き下がったということは、どう考えても納得できない。私は了解ができません。だからして、もしあなたがそのことについての責任をお考えであれば、予算が終わるまにこのことはやはり修正してもらわなければならぬ。この点は強く要求いたしておきます。予算修正についてはまだその他にも若干ございます。私どもとしてはたくさんありますけれども、少なくとも政府公約したような予算というものは、国民に対してこれは修正する義務があると思う。野党の主張じゃない。これはひとつ文部大臣、相当な決意をもって当たってくださるように要請をしておきたいと思うのであります。  そこで、第三にお尋ねしたいことは、学校給食の問題です。  原料代がどんどん上がっていきます。その原料を加工する加工賃もどんどん上がっていきます。そのしわ寄せがことしからの給食代の値上がりということになってきたのではないかと思います。  一体、学校給食というのは、パンとミルクとおかずの完全給食の場合、どのくらいの値上がりになると大臣考えておりますか。小、中に分けて言ってください。
  34. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こまかい点につきましては政府委員から御説明申し上げたいと思いますが、よろしゅうございますか。
  35. 野原覺

    野原(覺)分科員 けっこうです。
  36. 前田充明

    ○前田政府委員 四十年度の価格につきましては、脱脂牛乳については最終的にまだきまりませんが、従来一ポンド五セントで買っておったのでございますが、それが去年から六セントになりまして、来年度、四十年度はできるだけ六セントでやりたいという気持ちでおる状況で、米国のCCCと目下外務省を通じて交渉中でございます。  それから、小麦粉につきましては、これは幾分の値上がりということでございますが、目下まだ農林省も最終的には決定いたしませんが、現在のところで一応申し上げたいと思います。小麦粉につきましては、小学校におきましては八十五グラムでございますが、国が八十五銭補助いたしまして、父兄が三円十一銭三十九年度においては出しておりました。それが四十年度におきましては、国は八十五銭、父兄のほうは三円五十四銭、すなわち小麦粉のほうでは四十三銭小学校については値上がりになるわけでございます。  それから、脱脂粉乳につきましては一円四十七銭、国庫が一円四銭補助いたしまして、四十三銭父兄の負担でございました。それが四十年度におきましては、国庫が一円二十銭、父兄が七十五銭、すなわち三十二銭の値上がりでございます。  それから、おかずの問題でございます。おかずの完全給食につきましては、準要保護児童を一応の標準として考えておるのでございますが、全体として父兄負担が、三十九年度におきましては小学校二十二円六十二銭でございました。それが四十年度におきましては二十五円八銭、そういうふうに見積りまして、一一%の増額でございます。中学校につきましては、父兄の負担が二十八円七十八銭でございましたものを、四十年度におきましては三十一円九十八銭でございまして、同様に一一%の増額。これは準要保護児童の積算でございますが、一応基準として私どもとしては考えておりますので、それより高いところもございますし、安い学校もある。そういうような状況でございます。
  37. 野原覺

    野原(覺)分科員 そこで、ただいまの政府委員の御答弁でございますが、そういたしますと、小学校は一カ月一人当たり幾らの増額か、これは金額でけっこう。中学校は一カ月一人当たり幾らの増額か。これをひとつお示し願いたい。
  38. 前田充明

    ○前田政府委員 見積もりといたしまして、一カ月大体二十日見当で考えております。年間おおむね二百日に少し足りない程度でございますが、小学校は約五百円、中学校は六百四十円、前年度に比べまして小学校につきましては月に約五十円、中学校につきましては約六十円の父兄負担の増額、そういうふうに考えております。
  39. 野原覺

    野原(覺)分科員 私ただいまの数字は信用できない。これは東京、大阪の小学校を調査したらわかると思う、現実に父兄が支払っておるわけですからね。私どもの調査によれば、小学校は一カ月百九十円よけいとられる、中学校は一カ月二百二十五円よけいとられることになっておる。どういうものかね。あなたの五十円とか六十円という数字は信用できませんよ。現実に私どもは子供を学校に入れておるのだ。そうして大阪の場合は、一カ月の給食代が小学校は七百四十八円、中学校は八百八十円、そうなっているじゃありませんか。だからして、これは控え目に控え目に御答弁をされておりますけれども、現実にそういう支払いをしている。  私は、こういうことを考えますと、高等学校の授業料は引き上げられるわ、給食代は百何十円も一人当たり上げるわということになれば、昔から貧乏人の子だくさんで、日雇い労務者が一万五千円か二万円そこそこの賃金で子供を三人も五人も小中学校に入れておる。都会においてはこれはたいへんなことであります。私はここでこういう点も考えて、政府は、人間尊重だ、物価を引き下げるのだということを佐藤総理も国民に約束をしておるときでもありますから、これはやはり国民の生活あるいは国民の負担能力というものも考えて、私は、もう少し国庫の負担を増額すべきではなかったか。引き上げる金額については、少なくとも国庫負担を増額して、なるべく国民に負担のしわが寄ってくるそのことを避くべきではなかったかと考えております。しかし、残念ながらそれができていない。  そこで、文部大臣にお聞きしたいことは、学校給食というのは今日非常に重要視されてきておる。当面あなたは文部大臣として、学校給食について改善すべき点があるとすればどの点だ、こういうことをお考えになったことがございますか。あるとすればひとつお教え願いたい。
  40. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私も学校給食の問題については非常な関心と意欲を持っておるつもりでございますが、ただいまも御指摘がございましたように、諸物価の値上がり等の関係もあって、父兄の負担がある程度ふえている、この点はこれまたまことに残念に思っておる点でございます。しかし、反面におきまして、要保護家庭、準要保護家庭等につきましては全部父兄の負担にかけないことになっております関係もございまして、そのほうにおきましても、おかず代等におきまして八%程度の値上がり分を補充することになっているというようなことで、できるだけの措置は講じつつあるつもりでございます。  それから、御案内のように、共同調理場を増設いたしますこととか、あるいは各都道府県における必要な物資の一括購入の方式などについても十分くふうを加えてもらうとか、いろいろな各方面の協力を得て、給食の問題についてはできるだけの努力を払いつつあるというのが実情でございます。  さらに、非常に将来を展望しての学校給食の問題については、私も一家言を持って寄り寄り検討をいたしておるのでございますけれども、長期の展望に立っていろいろの点からの国民体位の向上、あるいは格差の是正というような点について、ひとつ相当恒久的な科学的な研究を前向きにしていかなければならないということで、意欲をもって取りかかっておりますけれども、どういうふうにやっていったならば将来一番よろしいかということについては、おいおいに考え方関係の人たちにも示して、なお一そうよい案を充実していくようにいたしたい、たとえば保健体育審議会、あるいはまた科学技術庁の資源調査会等にまでいろいろとお願いをいたしまして、いい知恵を出し合っていただいているというような現状でございます。
  41. 野原覺

    野原(覺)分科員 なま牛乳の問題がございます。これはやはりなま牛乳でなければ子供の栄養にならない、そういう栄養学的なところからきておるわけですけれども、これを何とか全国の児童生徒に、あの脱脂ミルクでなしになま牛乳というものを無償で配付する、そういうこと私は研究してみてはどうかと思うのです。この点についての御所見を承っておきたい。
  42. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点は私も御同感でございまして、なま牛乳を学校給食にできるだけ広範に用いたい。これは農林省関係にもなりますが、酪農振興あるいは乳価の安定というような点から総合して考えてみても、一石二鳥、三鳥になるような施策ではないかと考えております。これはいろいろの見方はございますが、二百万石を学校給食に充当すれば理想的ではなかろうかと思いますので、これを一つの目標にいたしまして、漸次それに近づきたい。四十年度は七十数万石でございますが、一歩ずつそれに近づけていきたい。脱脂粉乳はなるべく使いたくない、こういう姿勢で取り組んでまいりたいと思います。
  43. 野原覺

    野原(覺)分科員 これはぜひ文部大臣が中心になられまして、農林大臣、運輸大臣の協力も得て、酪農地帯というのは限定されておりますから、やはり列車で輸送するということも考えていかなければなりません。そういう総合的な計画をお立てになられて、全国の学童生徒になま牛乳を飲ましてあげる、日本の酪農振興という点からいってもこれはたいへんいいことじゃないか。これはぜひひとつ緻密な計画をお立てになられて、すみやかな実現ができますように要望しておきたいと思います。  第二は、栄養士の問題です。私は、栄養士がいなくて千人も千五百人も二千人もある学校の子供が給食を受けておること自体いかがなものかと実は考えております。この点について、文部大臣どうお考えですか。
  44. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これも御同感でございまして、四十年度の予算の際にもこれに一つの重点を置いて私どもとしては努力いたしたつもりでございます。栄養士の数がたしか四百七十七人かになっておると思います。これもそう大した人数ではないという御批評もあろうかと思いますが、前年度までに比べますれば相当の努力のあらわれであるというふうに御了解いただきたいと思います。
  45. 野原覺

    野原(覺)分科員 これは理想としては、やはり私は一つの学校に一人、まあ小さな学校で百人や二百人の学校は別ですけれども、都会地の学校であれば一校に一人はいるのじゃないか。それは千人、千五百人のまかないをするのですから、栄養上の配慮、それから料理についてのいろいろなくふう、そういうものを当然考えなければならぬのじゃないか。そうなってまいりますと、四百七十七人なんというのは全くお話にならぬ数字なんです。これは私はぜひ実現してもらわなければならぬと思う。ひとつ来年度はそういうことでやってもらわないと、せっかく子供の家庭から七百円も八百円もお金を取っておきながら、給食代はどんどん上げておきながら、栄養士も配当してくれない、これじゃ私はいかがなものかと実は考えておりますから、これもひとつ来年度は特に重点施策の中に入れていただきたいと思う。  それから第三点は、給食に従事しておる従業員の問題です。この給食従業員は、かつてはPTAの金でその給料をもらっておった。日雇いですね。今日はそういうところも漸次なくなってきたようにお聞きいたしておりますけれども、しかし、その待遇は実によくない。朝の八時半ごろから出勤をして、千人、千五百人の者に、これは百人について何名といった配当がなされておりますが、大体私が見たところ、千五百人ぐらいの学校で五、六人ぐらいしかおりません。この給食のおばさん方が、従業員の方々が、昼にはそれをこしらえて そうして子供に与える。それは子供の当番があってもらいにきて、また配っておるようでありますけれども、そのあと始末その他をやると電気がついて夕方になる。もう疲れ切ってうちに帰る。翌日はまた出てこなければならぬ。献立をして、それで一つの料理をして、たいて、子供に食べさせるわけでございますから、食器の消毒等もしなければならぬ。疲労こんぱいしておるにかかわらず、その賃金は、大尉、お話にならぬのですよ。私はこんなことでは学校給食はよくならぬと思うのです。給食従業員の資質向上と申しますか、やはり待遇を改善して、その資質を高める。一方では栄養士を必ず配置する。そうしてなま牛乳の無償配付等も考えて、そういうお考えの上に給食代が若干上がるというならば、これは父兄が納得します。何もしないじゃないか、どうして一体百円も二百円も毎月よけい出さなければならぬのか、この物価価上がりにわれわれは困るというのが国民の勤労階層大多数の声なんです。  時間の関係もございますから、給食従業員の資質向上と待遇改善については格段のひとつ御配慮をお願いしたい。いずれまた文教委員会等で機会がございましたら、この点については大臣お尋ねをいたしたいと思うのであります。  最後に第四点として、大学の急増対策についてお伺いいたします。愛知さんは、大学急増なんというようなことばがきらいだというようなことを私はちょっと新聞で拝見いたしましたが、これはどういうことであったか知りませんけれども、しかし、あなたがきらいであろうと好きであろうと、たいへんな実は大学入学志願者の激増ですね。これはたいへんなものなんです。昭和二十二年に生まれた子供が来年の三月高等学校を卒業します。私ちょっと文部省の統計資料で数字を拝見いたしましたが、昭和四十年から増加してまいって、昭和四十八年に至ってようやく昭和四十年の水準に志願者が戻ってくる。八年間かかって昭和四十年に戻ってくる。  この点について、もっとこまかに申しますと、昭和三十三年の四月には高等学校を卒業した新卒で大学を志願する者が十九万七千、昭和三十四年の四月は二十一万七千、大体二万ふえている。昭和三十五年の四月になりますと二十四万三千、昭和三十六年の四月は二十五万三千、三十七年は二十八万三千、三千八年は二十九万四千、三十九年は二十六万六千、これはちょっと下がりました。ところが、四十年になりますとそれが一躍三十六万に上がってくる。そうして四十一年になるとその数字は四十八万一千に上がります。昭和三十三年には高校新卒の大学志願者が十九万七千しかいなかったのです。それが昭和四十一年には四十八万一千、四十二年になりますと四十八万五千、四十三年が四十八万五千、四十四年が四十四万五千、四十五年が四十万七千、四十六年は三十八万七千、四十七年が三十六万九千、四十八年が三十五万九千、これからずっと漸減になります。まあ、いずれにしても二倍半からの大学志願者がふえてくるわけですね。これに対する文部省対策を拝見いたしますと、志願者の率を昭和三十七年は三一・〇に押えて私の言った数字が出るわけです。ところが三十九も三一・〇、四十年も三一・〇、四十一年も三一・〇、高等学校を卒業した者に対して三一・〇で十年間押えております。これは、まあ高等学校の卒業生が非常に多いものだから押えたのだろうと思いますが、ところがずっと高等学校を卒業した者の大学希望者の比率を見ますと、三十年には二五・四です。卒業者の二五・四が大体大学に志願をしておる。三十一年は二五・四、これも同じ。三十二年には二六・五、そうなって、三十五年には二九・九、三十六年には三〇・五、大体一%ないし二%毎年高等学校を出た者で大学に行きたいというのがふえてきた。ずっとカーブを描いて上がってきておる。それを、とにかく子供の数が多いのだからというので十年間上ってきておるカーブを無理に押えて、文部省では三一・〇でずっと十年間持っていっておるわけですね。こういうやり方でこの大学生の急増対策を進めようとしておられます。私は、これははなはだ非教育的なやり方だと思う。この点について文部大臣のお考えがあれば承りたいと思います。
  46. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいまお示しになりましたのは、文部省でいろいろ研究しておりますその資料の一つでございますことは事実でありますが、この大学志願者が急増するという事態は非常に大きな問題でございまして、前々から申し上げておりますように、私としても非常に頭を痛めておる問題であります。同時に、これは人間の問題でありますだけに、どういうふうに数字を押えていくかということにつきましてもいろいろのファクターあるいはアンノンファクターもあるわけでございます。たとえば近年の趨勢からいたしますと、何年浪人してもかんばって大学へ入りたいというような傾向も非常に強かったわけであります。ことに一年浪人という程度の青年諸君は、一年後には必ずほとんど全部があらためて大学の入学試験を受けるというような状況になっておる。ところが、これは社会の移り変わりその他によりまして、そういう傾向線をそのまま見るのがいいのか、あるいはほかの見方もあり得るかどうかというようなことも、趨勢値を計数的に研究すること自体がまたなかなかむずかしい問題であることも御承知いただけることかと思います。同時に、これも前々から申し上げておりますように、大学は志願者がこういうふうな傾向線であるから、何十万ふえても入れものだけつくればいいということが、大学というものに対する見方としていいのか悪いのかというような点も考えなければなりませんで現に、たとえば私立大学の四十年度の新設あるいは拡充計画、あるいはそれが審議会等における審議の状況を見ましても、教授の陣容が足りない。あるいは大学教育の資質を低下させないようにするためにはどうしたらよいかというところに、また一つの制約が現実に出てきておるというようなことで、単純にこの対策考えることがなかなかむずかしい状況でございます。  そこで、四十年度につきましては、ともかくも趨勢植を一方において踏んまえながら、大学の資質を落とさない、教授の陣容等も十分考えるということで、四十年度は、私立学校につきましては一万五千人、それから、国立では三千四百人、そのほか公立合わせまして大体一万九千人程度の定員の増加ということで処理をいたしまして、それに対して一番大きな対策は、私学振興会を通す融資の拡大、これは前年度の倍以上になりますので、そのうち相当部分を大学志願者急増対策、定員の増加に対する施設拡充に充てるということでとりあえず措置をいたしておきまして、その間私学振興のための調査会もつくっていただきまして、いろいろの角度から早急に、またいろいろの御意見を承って、間に合うものは四十一年度に間に合わせ、さらに検討を続けて恒久的な大学に対するかまえ方というものをつくり上げてまいりたい。同時にまた、高等専門学校の問題あるいは後期中等教育のあり方、拡充の方法というようなことも総合的に考えてまいりたいと思っておるわけでございます。
  47. 野原覺

    野原(覺)分科員 お考えとしてはけっこうだと思うのです。ところが、大田も御承知のように、昭和三十九年に二十六万であった大学志願者が、来年はこの表で文部省は四十八万になると見ておる。来年は去年よりも二十二万ふえるのです。それをあなた、いまから考えていくといって、間に合いますか。私は、これは高等学校の急増の場合にも申してきたのです。教育のことはきょう言ってあした間に合わないのです。教師の養成だって、建物を建てることだって、一年や二年の期間はかかるわけです。特にこの人の養成というのは、四年も五年もかからないと、かりに文部省が、増募計画を二万人ふやすといま御答弁がありました。私立は一万五千人、これだって私立の大学がみんなオーケーしたのかどうかも疑問である。一つ一つの大学がよろしゅうございますと引き受けたかどうか。かりに引き受けたとしても、文部省としては教育担当の省ですからほんとうに五百人よけいふやすというのだが、それに見合うところの教授がおるのかおらないのか、そこら辺もお調べになったかどうか、これは私が質問したら答弁に困ると思います。たとえばどこそこの大学が千人増募を引き受けた、それではそれに見合う教授が何人おりますか。できてはいないと思うのです。こういう点の責任文部省にないのです。昭和四十一年に四十八万人にふえるという表をつくっておきながら、四十一年といえば来年ではありませんか。あるいは国立は、いま大臣の御答弁によると三千四百人の増募になるというけれども、その国立にしても三千四百名、来年は幾らになりますか。もっとふえていく。一体校舎の建造費というものは予算にどれだけあるか幾らひっくり返しても見当たらないではありませんか。私は、こういった教育の問題というものは何年も前から見通して——昭和二十二年に生まれた子供がとにかく平常の二倍半だ。それから十年間というものは非常にベビーブームで子供がふえてきているということは既定の事実である。既定の事実であるならば、それに見合う中学校対策、高等学校対策大学対策というものをなぜ文部省は立ててこないのか、私は愛知文部大臣だけを責めるのじゃありません。愛知さんは最近文部大臣になったばかりだ。一体文部省事務当局というのは何をしているのか。大学学術局とか初中局とかいうのがあって一体何をしているのだ。そういう計画を立てたらなぜこれを大臣に報告して、大蔵折衝あるいはこれを国の大問題として取り上げないのか。どろぼうをつかまえてなわをなうようなことで一体何ができますか。時間がありませんが、私はここで申し上げたいことがうんとあります。最初は急増対策の増募計画を十万としておったはずです。それがいつの間にか六万七千人に減って、今度は五万八千人に減った。十万と立てた計画が半分に減るということ自体がおかしいですよ。そうして大学志願率は同じように押えて、子供はどんどんふえてきておる。浪人が文部省の表によりますと、昭和三十三年には七万五千と見ておった。それが四十一年には十三万六千の浪人ですよ。この浪人がずっとふえてまいりますと、これは二十万をこすんじゃないかと思う。この二十万をこす浪人が大学をあきらめてどこかに行くだろう、こういうような甘い考え方をしておるかもわかりませんが、こういう浪人を二年も三年もほったらかして一体何が人的開発ですか。人間尊重ですか。せっかく大学に行きたいというなら、なぜ建物をつくってやって、それから先生をきちっと養成をして対策を講じないのですか。それをやるところが文部省じゃありませんか。私はこの点を特に要請しておきます。これはいまからでも、——おそいんですけれども、ほんとうに抜本的な対策を立ててあげてください。昭和二十二年、二十三年、二十四年に生まれた子供たちはかわいそうですよ。何も子供の責任じゃない。国が戦争したからあのべビーブームが起こったんだ。どうしてくれるんだ、大学にも行けぬじゃないか、就職でまた激しい競争、結婚でまた激しい競争、こういう国の責任によって生じたベビーブームに対する対策は、国が責任を持ってあたたかい配慮をして、やるということが政治じゃないかと私は思う。教育の面が全くなっておりません。大学急増対策はなっていません。私の言うことが言い過ぎならば、私は時間をいただいて論戦をしますが、急増対策はなっていないですよ。子供も親も、実にいま頭を痛めておりますよ。来年高等学校を出る子供も、親も、どうなるんだろうといって頭を痛めていますよ。それはだれかが落ちなくちゃいかぬ、ふるわれるんだから。やはりこのことはもっと親切な配慮を計画的になすべきではなかったかと思うのです。  最後に文部大臣にお伺いしたいことは、私は、総括質問で前の文部次官の内藤氏のことについてお尋ねをしております。あのお尋ねをした速記は、文部大臣はぜひひとつ読んでおいていただきたい。私はこれを委員長に総括質問で要請をしておりまして、私の言っておることが間違いであるのか、間違っていないのか、私学振興会の常任監事に対する監督権は、私学振興会法によって文部大臣にあるわけですから、だから文部大臣は、私があの質問をした以後においては、知らないということは許されないと思います。あの時点ではあなたに通告もしていなかったから、真相がわからないからということでありましたけれども、一体どう対処されるのか。これは公取の独禁法とも関連があるし、刑法とも関連があるし、公職選挙法とも関連があります。しかも私の調査したところによれば、あれは文部次官を退職してからのことであるとだけ見えることはいかがなものかと考えられる節もある。あれだけの教科書会社との結託というものは、かつて初中局長時代、かつて文部次官であった時代にも何らかのつながりがあったと思う。だとすれば、いまや文部省内の綱紀はびんらんその極に達しておるといっても言い過ぎではない。松本清張の文部官僚論を見てみなさい。文部官僚の筆頭に内藤氏があがっておる。しかも彼は道徳教育を主張し、道義の退廃を嘆き、教員の勤評を強行した。しかるに私があの質問の中で指摘しておりますように、はなはだどうも納得のできない行動が引き続き行なわれておる。私は、予算委員会の終了までに、文部大臣、それから法務大臣、国家公安委員長、公取委員長等から、私のあの質問に対する調査報告を求めることになっておりますから、この点もひとつ文部大臣としては、十分考えてくださるよう要望して、私の質問を終わりたいと思います。
  48. 植木庚子郎

    ○植木主査 大原亨君。
  49. 大原亨

    大原分科員 最初に質問を申し上げます点は、長野県と広島県に設けられるといわれております。地下実験の観測所に関する件でございます。あらかじめ質問を通告しておきましたから、質問の内容は御承知だと思いますが、長野県の松代地震観測所のほうは、気象庁でございますが、広島県高田郡白木町の白木山は、東大の地震研究所関係しているやにいわれております。これは文部大臣関係であります。したがって、最初は文部大臣のほうからいわゆる地下実験の観測所なるものについて、どの程度現在進んでおるか、この現状を簡単にお答えをいただきたい。
  50. 愛知揆一

    愛知国務大臣 現在地震に関する研究、特に基礎研究の推進が強く要請されておりますことは、御承知のとおりでございます。最近関係研究者の間に、地震予知研究計画が立案されまして、文部省としては、日本学術会議の勧告に基づきまして、地震予知研究を強力に推進することにいたしたわけでございます。東大の地震研究所の白木微小地震観測所もその一環として、昭和四十年度から設置されることになったわけでございます。もとより地震に関する研究は、国際的な協力を必要といたしますので、東大の地震研究所におきましても、アメリカの商務省にあります、沿岸測地局の標準型地震計による世界観測網計画というものがございますが、これに参加いたしまして、同一の計器による比較研究と、世界の地震観測所の記録の入手をはかることといたしたものであります。この標準型地震計による世界観測網計画は、米国の科学アカデミーによって立案され、米国商務省沿岸測地局が実施しておるものでありまして、地震計も十万倍の標準型であって、百万倍以上のものではございません。なお記録もすべての研究者に公開されておるわけでございます。さような状況でございます。
  51. 大原亨

    大原分科員 質問に対しまして簡潔にお答えいただきたいのです。  いまのお答えにもありましたが、いろいろとうわさをされ、疑惑がある点については、あとで具設体的に質問いたしますが、簡単に言うと、何の目的でこれは設置をしたのか、こういう点が一つであります。それからその白木町の地下実験の観測所というふうにいわれておる地震観測所は予算はどこからきて、幾らの予算で設立をいたしておるのか。目的と予算外の出所、金額についてお答えをいただきたい。
  52. 杉江清

    ○杉江政府委員 白木の地震観測所は、新しく四十年度予算で設置されるものでございまして、四十年度予算に、人員としては四名、運営費としては八十九万一千円、設備費といたしまして千八百六十四万、五千円が計上されてございます。ただここで観測を実施いたしますについては、標準地震計をアメリカの商務省より寄贈を受けて、その機械を使いましての観測をもあわせて行なうものでございます。
  53. 大原亨

    大原分科員 広島県の高田郡白木町の白木山というと、大体広島県一帯は温泉もなければ地震もないので通っておるのであります。それで地元の人は、地震も何もないのになぜ地震観測所が必要なんだろうか、もう少し必要なところがあるのじゃないだろうか、こういう疑惑を持っておるわけであります。なぜ無理にあのほうへ持ってくるのだろうか、こういうことであります。この点いかがですか。
  54. 杉江清

    ○杉江政府委員 日本の地震観測におきましては、日本各地にわたりまして、適当な地域に観測所を設けるという計画を持っておるわけでありまして、この白木に観測所を設けますのも、全国的な地震観測の見地からいたしまして地域的にここが適当である、こういう学問的な判断に基づくものでございます。
  55. 大原亨

    大原分科員 たとえば九州とかあるいは山陰地方とか——これは別にそれほどじゃまになるものではないから、それほど大きな問題ではないわけですけれども、軍事基地があって、爆音、騒音で悩まされて、そして農業、畜産業等にいろいろな影響があるというわけではないですから、それほど目くじら立てる問題ではないですけれども、大体一番平穏なところで、地震の観測としてはちょっとここではどうかと思う。こういう点は依然として問題があるわけです。  これはまたあとで質問するといたしまして、もう一つ次にお尋ねしたい点は、この地震観測所は、アメリカの国防省が発足させたベラ・ユニホームの計画の一つとして、お話のようにアメリカの商務省の沿岸測地局が中心となって世界に百二十五カ所の観測所を共産圏以外の地域につくる、こういうきわめて戦略的、軍事的な政策と表裏の関係にあるような、そういう関係でアメリカの国防省の一貫した計画に基づくものではないか、こういう問題が一つ出ておるわけであります。私もいろいろ調査いたしましたが、そういうことであります。商務省の沿岸測地局という形態をとっておりますが、その計画の根源は国防省にある、こういうふうにいわれておるのでありますが、その点についてどのように御承知になっておりますか。
  56. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点につきましては私も調査をいたしたのであります。気象庁等に調査を依頼いたしましたが、さような事実はない。なるほど一九五九年米国防省がベラ・ユニホーム計画——これは地表観測による地下核爆発の探知の研究計画だそうでございますが、これとは別のものである。文部省といたしましては一昨年日本学術会議の、先ほど申しましたとおり地球物理学研究連絡委員会、この中に地震分科会というもがございますが、そこでも御検討いただきまして、白木の観測所を設置すること、並びに先ほど申し上げましたような米国商務省の計画に参加をする。その機械は、一つ一つとすれば日本のほうに精度のいいものもございますようですが、全世界的に百二十五カ所でございますか、そういう地点において同一の機器によって同一の観測をしてそしてそのデータを国際的にも公表するものであるということなので、これに協力して差しつかえはない、かように考えた結論でございまして、国防省のベラ・ユニホームではない、こういうふうに私は理解いたしておるわけでございます。
  57. 大原亨

    大原分科員 文部大臣お答えと私の質問が一致いたします点は、国際的な百二十五カ所の二カ所の一つとして白木山があり、長野県の気象庁の研究所がある、こういうことですが、やはりそこに一つのつながりがあるわけです。それはまたあとで質問いたすといたしまして、標準地震計をアメリカの規格品を用いなければならない。私は、東大というところは学術研究をするところですから、やはり自主的な研究ということが貫かれなければならぬと思うのです。これは憲法の精神であります。したがって、わざわざそういうふうな寄贈を受ける、こういうことには一つの問題があるのではないか。大体予算額としてどれくらいな機械であるかということが一つ聞きたいところであります。それからその地震計の寄贈を受けるにあたって、アメリカ側との間においてどのような約束があるのか、こちらは義務を負担しておるのか、こういう点を突っ込んでお答えいだきたい。
  58. 杉江清

    ○杉江政府委員 まず、白木における地震観測は、貸与を受けます標準地震計による観測をも行ないますけれども、日本による機械をも備えつけまして観測をするわけでございます。その観測を貸与を受けました機械のみによって行なうものではございません。ではなぜその標準地震計の貸与を受けてこれを使用するかということでありますが、それは先ほど大臣も申されましたように、世界各地におきます観測の比較研究をすることが地震上きわめて有益なことである、こういう見地に立ってこの標準地震計を受け入れ、それによる観測をもあわせ実施することにいたしたわけでございます。  なお、この貸与にあたりましての契約というようなことでございますが、これは純学術的な研究でありまして、その資料は公開する、どこの国でもこの資料を利用することができる、こういう基本原則によって運営されるということになっておるわけでございます。
  59. 大原亨

    大原分科員 それではこういう疑惑はないわけですね。つまり白木町の地震観測所あるいは長野における地震観測のデータは、アメリカ側に一定の約束した条件でその測定結果を送るというものではなくて、その測定結果については東大の地震研究所が自主的に自由に発表することができるし、発表するのである。アメリカ側に対してはどういう約束をしているのですか。
  60. 杉江清

    ○杉江政府委員 先ほど申し上げましたように、資料の公開を原則といたしております。もちろん観測結果は報告はいたします。しかし、世界各国いずれもこの資料を利用することができるわけでございます。
  61. 大原亨

    大原分科員 それからその報告の資料とかその他費用というものはもらっているのですか、どうですか。
  62. 杉江清

    ○杉江政府委員 その費用にもいろいろあるわけでございますけれども、こちらでのその機械を使うことに要する経費はこちらで負担いたしますが、たとえばその報告資料その他について報告する用紙とかいろいろなものは一定の規格品があるわけでございます。そういったものはこの機械の貸与と同様に——同様というよりも向こうから送られた規格品を使うということになっております。
  63. 大原亨

    大原分科員 その他費用はどうなのか。
  64. 杉江清

    ○杉江政府委員 費用はそれ以外にはございません。
  65. 大原亨

    大原分科員 東大の地震研究所という学術研究の組織、そういう政府の機関が、アメリカの商務省やその他と、これは国防問題云々はまたあとで突っ込んで話をいたしますが、そういうところと沿岸測地局と約束をする、契約をするという法律関係政府政府がやるのですか、どことどこの法律関係なんですか。そんなことかってにできるのですか。日本のそういう学校その他の機関が外国との間において一定の義務を負うたりあるいはサービスを受けたり、そういうことの法律関係を設定することはこれはどういう関係でできるのですか。
  66. 杉江清

    ○杉江政府委員 これは学問上の共同研究ないし協力事業においては、実際問題といたしまして細部にわたるいろいろな運営上の取りきめは、当方でいいますならば東大の地震研究所の所長とそれから沿岸測地局の部長とで、そういった細部にわたる取りきめを行なうことにいたしております。
  67. 大原亨

    大原分科員 私はやはり日本でそのくらいの機械ができないことはないと思う、十万倍ですから。国際的な規格品の機械を日本でつくって、その程度までやるのはたいした予算ではない。それできちっと国際的に公開の原則で、そして交流をするということはこれは私はどこの国とやっても、これは純粋に学術的なものであればいいわけです。問題は私が指摘し、専門家が一部言っているように、国防省の対ソビエトの地下核実験の観測ということと軍事的な戦略配置との関係において、この問題が全体として結果的に運営されるようなそういう仕組みの中に、日本の学術研究の中心団体が入っていくというふうな、そういうことは私は問題があるのではないか、それからもう一つ憲法の精神からいっても学術研究の精神からいっても、やはりこの資料ははっきりと公開をされて、そしてこれがほんとうの意味において地震やある場合には地下実験もよろしいでしょう、そういう観測のためにこれが使われる。そういうことならばいいけれども、そういう点で私は一つ前に申し上げたように問題があるのではないか。  それから広島県の白木町、地震に関係のないあの山の中を選んだということが、私どもは常識的に考えて納得ができない。やはりもう少し大きな目的があるのではないか、こういう印象を与える。そういう点は、やはり問題点についてはひとつはっきり答えるようにしていくことが、疑惑を解いてこれに対する協力やあるいは研究の目的を達成することになるので、この問題については私は、大臣が私が指摘した点について十分ひとつ研究をしていただきたい。もう少し突っ込んで研究をしていただきたい。東大の学術研究の組織がこういう形で運営される点については、なお私は十分はっきりしない点がある。その点はもう少し突っ込んで研究してもらいたい。この問題についてはあらためて別の機会にさらに私も究明をしていきたい、こういうふうに思います。大臣の御答弁を求めます。
  68. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、私もあらためて追跡調査をしてみたわけでございますが、先ほど申し上げましたように、一昨年商務省の担当のほうからまず日本学術会議の地震小委員会のほうにアプローチがあって、純粋の学術上の研究を必要とするから協力してほしい、それからその精度の同一の地震計によって全世界百二十五カ所で調査をして、その結果は全部公表する、こういうふうな話であるということでありますから、学術会議でも協力すべきであるということになり、純粋な学術の研究ということで東大がこれを取り上げることになったというふうな私に対する報告でございましたので、さように私は信じておるわけでございます。当然そうあるべきだろうと思っておりますが、なおいまお話しになりましたような御懸念もございますようでございますから、それらの点については十分留意をいたしたい。また御説明の足らざるところは後日また御説明を申し上げたいと存じます。
  69. 大原亨

    大原分科員 この問題は終わるわけですが、広島、長崎にABCCという原爆の調査機関があるのです。これはアメリカの学術会議の委託を受けた研究です。しかしながらその予算は国防原子力委員会から出ているわけであります。そこで原爆の実態を調査をして、治療に役立てているんだ、そして調査の結果を発表するんだと言いながら、これはやはり原子力戦争の一つの資料をつくっているということは、ほとんど今日では間違いないと言われておる。公表をしておるのも、その一部の都合のいい点を公表しておる。そういう点がいわれておるわけであります。これは厚生省関係ですが、あとで時間があれば申し上げる。広島大学、長崎大学の原子力研究所関係もございますが、そういう疑惑を持っておる。そこで日本人の被爆者はモルモットになっている、こういう印象を持っておる広島であります。ですから私はこういう点については明確に、疑惑を一掃するためにはやはり歯に衣着せないでひとつ十分論議をする必要がある。したがって、この点は文部大臣におかれても虚心たんかいにこの問題についての究明をひとつしてもらいたい。純粋に学術研究だというふうなことは表面上言われても、いろいろ全体のシステムの中ではあるわけで、その点につきましてはあくまでも自主性がある、そして平和目的である、しかもだれも疑惑を持たない公開研究成果が、人類に適用できるような形で運営できるようなそういう形態を整えていかなければならぬ、こういうふうに私は思いますので、念のために申し上げまして次の問題に移ります。  次の第二の問題は学校警備員の問題であります。時間の関係であまり法律論やその他をやかましくは申し上げません。つまり小中高等学校などの教職員の日宿直の問題でございますが、これは先年広島県の福山市、沼隈郡などで、二、三の学校で日直をしている先生に対して不良青年というか、ぐれん隊が襲うて暴力行為を行なおうとしたという問題から特に大きくなった問題であります。  最初に私は、きょう御出席願っております労働省に御質問をいたしたい点は、日宿直の問題も終戦後よりもずいぶん変わってまいったと思うのですが、日宿直その他いわゆる営造物の管理を中心としたそういう警備上の問題について、特別の警備員その他の措置をとっている東京都その他全国のあらましの実態についてどのように把握しておられるかという点を最初にお答えいただきたい。
  70. 福田繁

    福田政府委員 お尋ねでございますので、現状を御説明いたしますと、現在学校におきまして、警備員を置いております町村数は百三十五市町村でございます。全体の比率から申しますと、非常にまだ低くて町村数に対して三・九%程度でございます。東京の特別区を含めますと、警備員の総数は四千七百二人という数になっております。これらはもちろん常勤の者もございますが、中には非常勤の者もかなりおるわけでございます。数は以上でございます。
  71. 大原亨

    大原分科員 それで私はお尋ねをしたいのですが、日宿直というのは、教育上の仕事もいろいろ言えばあるわけであります。これは四六時中が、二十四時間が、教師の仕事でしょう。しかしながら、学校教育法や教育基本法に定められておる教師の本務の延長というふうに考えて、日宿直をいままでの慣例に従って法律的に義務づけるということは、法律的にも実態的にも少し無理があるのではないか、行き過ぎがあるのではないか、私は時間があれば法律論争をいたしますが、率直にそういうように考えるのでありますが、これは大まかな問題ですから御研究になっておると思いますので、文部大臣のほうからお答えいただきたい。
  72. 愛知揆一

    愛知国務大臣 問題は、教職員が教務に専念できるようにするということ、それから日直、宿直の扱い方をどうしたらいいかということと、さらに警備員というものについてどういうふうに考えていったらいいかというような問題に分けられるかと思います。そして警備員というものについてどう考えるかということがお尋ねの重点かと思いますが、方向としては専門の警備員があったほうが望ましい、そういうふうに私は考えるわけでございますが、国家的な制度、機構としてそういうことを確立するということについては、いろいろの点からまだまだ研究を要する事項が多いのではなかろうか、かように考えておるわけであります。
  73. 大原亨

    大原分科員 これは労働基準局長が急いでおられるようですからお尋ねするのですが、勤務条件については憲法二十七条によって法律できめることが原則になっておるわけであります。日宿直につきましては、いままでの惰性というか慣例上そういうふうになされておるのであって、だんだんと僻地やその他の学校児童生徒が、いまのベビーブームが去っていきますと非常に少なくなってまいりまして、それでなくても農村から都会へ出て、規模の小さい学校が出てまいりますが、そうすると、一週間に何回も宿直がある。これはあとで実態は文部省に聞きたいのですが、一週間以内に何回も宿直をやっている。そして放火その他生命の不安にかられて、設備の悪いところで宿直をする、こういう事態は本務に対して私は支障があると思うのであります。憲法の話を申し上げましたけれども 労働基準法ではこの点についてはいままでいろいろと労働省とも議論いたしてきたのであります。国会の場ではあまり議論いたしておりませんが、個人的にいろいろと議論いたしましたけれども、労働基準法という法律を適用するのが、監督するのが市町村長ということになっておるが、そこにも一つ問題がある。しかし、労働基準法についての統一解釈をすべき責任官庁である労働省としては、教職員の日宿直についてはどのようにあるべきか こういう問題についてはやはり法律的な見解をある程度正していって、文部省あるいは大蔵省その他政府関係部内の意識統一に前進を期するべきではないか。教職員の日宿直本務との関係、超過勤務その他の問題があるけれども、以上申し上げたような趣旨に従って、基準局長としてはどのような労働省の見解をお持ちになっておるかという点をひとつ簡潔にお答えいただきたい。
  74. 村上茂利

    ○村上(茂)政府委員 宿日直の問題につきましていろいろ法律上の問題があるという点については、先生も御承知のとおりでございますので、これは省略いたしますが、要は、現実の運営につきまして、宿日直が労働者に過重な肉体的精神的な負担を与えるという点につきまして、労働基準監督署長が許可をいたします際に適正な宿日直でありますように通達を出しまして許可基準を示しておるところでございます。回数につきましては、原則として日直については月一回 宿直については週一回という原則を示しておるのであります。しかしながら 御指摘のような山間僻地におきまして勤務する労働者の数ないしは教育の数が少ないというような場合につきましては、その実態に即応した配慮がなされなければならないと思います。しかし将来の方向といたしましては、ただいま文部大臣からも御答弁がございましたように、本来の業務ないしは労働に専念し得るように警備体制を整備することが望ましいことであることは、これは当然なことであります。しかしながら、それを法律のベースで処理するか、あるいは指導で処理するか、あるいは労使の話し合いによって処理するか、いろいろ手段方法はあろうかと思うのでございますが、基本としては、労働時間短縮とかあるいは労働者に適当な休息を与えるという趣旨からいたしまして、この制度が乱用されるべきものではない、かように考えておる次第でございます。
  75. 大原亨

    大原分科員 一週間に回を原則とする、こういうことですが、実際には、あとでお聞きすればよろしいのですが、女子の先生も最近は多くなっている。女子の先生が宿直するわけにはいかない。そうすれば男の先生が一人、二人、三人というところがたくさんある。それでなくても、大きな学校でも問題はやはり出てくる。宿直をした宿明けの授業は実際上身が入らない、こう言う。精神的に非常に疲れる。特に最近は学校に対する放火事件等が非常に多いわけであります。精神病患者その他あるいは不良 ぐれん隊等が興味を持ってやるというふうな問題が次から次へと発生しておりますから、精神的な負担も非常に多いわけであります。そういう宿直の質の面と、実際上原則として週に一回、それをこえる場合には特別の許可が要るというようなそういうこと等を考えてみましても、たとえば教職員には超過勤務という業務の延長としての制度もないわけです。日宿直料はあるのですけれども、特別の契約の関係だといえば、やはり私は法律の根拠が要ると思うのです。問題はたくさんあるから、そういう法律論争だけでなしにそういう点については、いま基準局長は若干前向きの御答弁をなさったというふうに私は了解いたしますが、十分関係者のほうで意識統一をして、その中において前向きの解決の方法をお考えをいただきたい。こういうことを基準局長には要請いたしておきまして、基準局長のほうはお帰りいただきます。  それから文部省のほうにお尋ねしますが、一週間以内に一回以上宿直をしているというふうな実態がどのくらいございましょうか。
  76. 福田繁

    福田政府委員 私どものほうで昭和三十八年に抽出調査をいたしたことがございます。これは各都道府県について、その中の三十くらいの町村を選びまして抽出調査をしたことがございますが、その調査によりますと、宿直につきましては、週二回以上の宿直を必要とするような学校が大体四九%程度になっておりました。ついでに申し上げますが、日直につきましては、これは非常に少ないのでございまして、月二回以上というのは二二%程度でございました。
  77. 大原亨

    大原分科員 それから、金目だけでものを言うわけじゃないですが、日宿直料は、一年間、義務関係だけでよろしいのですが、どのくらいの予算が必要なわけですか。
  78. 福田繁

    福田政府委員 昭和三十九年度の予算で見ますと、総額五十二億円でございます。この半額を国庫負担をいたしておるわけでございます。
  79. 大原亨

    大原分科員 五十二億円、日宿直料があるわけですが、一晩なら三百円ですかね。これはやはり学校警備員を制度化しまして、日宿直料のこの予算をもって充当すれば、そういう点は逐次解決をする、まるで予算を支出しなくても解決をする一つの足がかりがあるのではないか。そういう点等をも総合的に考えて、やはり合理的に解決をすべきではないか。昔は、僻地のほうの先生方は、これは一つの余録、もうけじゃないけれども、月給以外の、僻地は交通費その他にかかるけれども、そういう僻地の収入のように考えておられた時代が一時あったと思います。しかしいまやそういうことよりも精神的な負担が多くて、そして二日に一回、あるときによったら、一人事故があれば毎日、こういうふうなことでは、とてもじゃないが、家庭生活だけでなしにやはり人間としての生活あるいは研究、出張その他そういう僻地からの活動におきまして非常に大きな支障があるわけであります。したがってそういう点を勘案し、そして学校長並びに教師が営造物の管理、教育施設の管理について全く無責任状態になるということはあり得ないわけですから、そういうこととは別に、やはり現業員制度その他にもあるわけですから、法律的な予算上の根拠を明確にした学校警備員制度を確立すべきではないか、こういう点につきまして、こういう点をも勘案いたしまして、文部大臣のほうでいま一度この点に対するお考えを、ひとつ記録にとどめさしていただきたい。
  80. 愛知揆一

    愛知国務大臣 先ほど来私も申しましたし、ほかの答弁もございましたように、警備員の問題については、私は方向としてはこれを実施するような方向に持っていきたいということをたてまえとして考えておりますが、法律その他で画一的な制度化をするということについては、まだ相当考えるべき問題がある。そこで実際上これにかわるようなと申しますか、そういう方法が、ただいまもお示しがございましたような考え方も現にございますから、そういう点につきましては、できるだけ御趣旨に沿い得るように今後とも考えてまいりたい、かように存じております。
  81. 大原亨

    大原分科員 文部大臣は、学校の教師あるいはPTA、教育委員会、市町村長、そういう関係者の御意見を、現場の教育をどうするという観点の上に立って十分お調べいただいて、そうしていま直ちにというわけには予算上の措置もあるからまいりませんけれども、一定の準備期間を置いて、そういう点を具体的に進めていく、こういうふうに御努力をいただきたいと思います。これは文部大臣もうなずいておられるので、御了承いただいていると思いますので、その点をひとつ特に強く要望いたしまして、この問題につきましては終わりたいと思います。  第三の点は、広島大学、長崎大学に原爆放射能医学研究所の問題があるわけであります。これは前の荒木文部大臣のときに私は予算委員会分科会で、この問題は一地域の問題じゃない、人類全体の問題で、やはり日本の文部省が歴史的に国際的に大きな役割を果たすべき立場にあるのではないか、こういう角度から質問いたしましたところが、荒木文部大臣は、当時の議事録にございますが、この点については全く同感であって、広島や長崎における被爆の体験は 世界でただ一つの問題でもあるし、その影響の研究、治療方法の研究については、国際的な構想の中で準備を進めてまいりたい、その充実を期していきたい、こういうお答えがございまして、広島、長崎大学に原爆病棟ができる際に研究スタッフ等を整備されたわけであります。この点につきましては、私は、愛知文部大臣もそういう考えにつきましては十分の御理解をされて、そういう方針を進めておゆきいただけるというふうに考えますが、大臣からその点に対する簡単なお答えをいただきたい。
  82. 愛知揆一

    愛知国務大臣 広島大学、長崎大学の放射能の被害、原爆の被害者についての研究等につきましては、申すまでもないところでございますが、前前からの方向を誠意をもって拡充、充実してまいりたいと思っております。
  83. 大原亨

    大原分科員 その中で、こういう問題が地元の学者やあるいはお医者さんの中から提起されているのです。広島、長崎には先ほど申し上げましたが、アメリカの学術会議あるいは原子力委員会の下請け機関としての調査研究機関、原爆の影響研究機関があるわけであります。そこで今日まで非常にたくさん死体の解剖をやってまいりました。それから広島、長崎には原爆病院が、御承知のようにお年玉はがきでできたのがございまして、日赤の付属機関になっておるわけであります。そこでもたくさん死体解剖をいたしました。その解剖いたしました死体の一部分——全部の死体は保存してあるわけじゃない、一部分の胃とか心臓とかあるいは肝臓とか、じん臓とか、そういうふうな死体のびん詰めがあるわけでございます。これが三千にも四千にも達しまして、ABCCはこれを廃棄したいということを最近言い出したのであります。そこで、これは人類の上においていまだかつて体験をしたことのないそういう被爆の体験の貴重な資料である、この放射能の影響を研究するということは、一面では成人病の研究にも役立つ、ガンやその他の成人病の研究、そういう側面も持っておる。したがって、そういう解剖死体の貯蔵のセンターを広島大学や、長崎大学に設けて、そしてこれを一定の規格で研究者に対して公表をして使用してもらう、あるいは大学自体も研究のために保存する、そういう保存の建物、センターを研究所につくるべきではないか、こういう意見が出てきておるのであります。放任をされますと、この死体が——これはスライドその他でアメリカに重要なものは資料としていっておるし、統計上の問題があるわけですが、しかし、この問題はやはり一つの国際的あるいは全日本的な背景を持った研究でもあるわけですから、この点は、各大学がそういう学術研究のセンターとして、ABCCその他にまかせないで——ABCCには予研の支所がありますが、これは付属しておって自主性がないからだめだから、大学がやはりこの死体の保存をすべきではないか、来年ぐらいを目標に考えてもらいたいという要望があるわけですが、この点に対する文部大臣の御所見のほどをお聞かせいただきたい。
  84. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は、まことに申しわけございませんが、その大学希望というものをまだ私聞いておりませんでしたので、至急実情を調べまして御要望に沿うようにいたしたいと思います。
  85. 大原亨

    大原分科員 大学の原爆放射能医学研究所に金がたくさん要るものですから、所長その他は言うのを遠慮しておられると思うのです。しかし、原爆の病院長とか各専門の医者、学者は、やはりこれを放棄するのは惜しい、こういう話でございます。十分調査していただきまして、いまの大臣お答えのように この主張する趣旨に沿うような措置をとってもらいたい。  それから、これも具体的な問題で、これが最後ですが、研究所はだんだんと整備されておりまして、私はしろうとですけれども、電子計算機は備えつけられたわけであります。私も現場を見たわけですが、聞くところによると、この電子計算機をもって、いろんな病院にいきまして原爆医療法でやったカルテを集めて電子計算機にかけますと、私はそこまで電子計算機の知識はないわけですが、原爆症の症態というか、どういう影響を人体に与えるかという点についてのめどをつけたり、あるいはどういうように治療すればよろしいかという大きな方向を出すことができるだけでなしに、その結果は個人個人の健康診断や病気の回復のために活用することができる。こういう非常に立体的多面的設備としてだんだん充実されつつある。しかし、昨年の話を聞きますと、資料を整備しるためのアルバイト代だけでも一年間で百万円以上かかって、予算のくめんがたいへんである。そして現にそのデータは非常に山積している。それを刻々と整理しなければならないのであるけれども、お役所仕事というのか、四年計画か何かで研究所の充実がなされつつあるが 建物ができ、電子計算機は入ったけれども、それの要員 研究要員とか事務要員、処理要員の二十四人を、来年か再来年かに充実させるというふうなことでは、せっかく機械があっても、アルバイト代その他予算の冗費になる。したがって、これはきわめてきめのこまかい話ですけれども、そういう点で、機械の持ち腐れにならないように、機械がすみやかに活用できるように、戦後二十年間たっておるわけですから、要員その他の措置においても、広島、長崎のそういう研究機関においては——特に本年は厚生省では五月一日か七月一日現在をもって三千七百万円くらいの予算で実態調資をするはずでありますから、そういうこととも関連いたしまして要員を確保してもらわないと、機械全体、設備全体が生きてこない。それをお役所仕事で、建物をつくった、機械を入れた、今度は人間だ、こういうふうな考え方では、少し形式的ではないか、私はこういうふうに関係者から聞いたわけです。そういう点について文部大臣が実情を十分聞かれて、大所高所から——これはきわめて小さな問題のようですけれども、影響するところは非常に大きな問題であるというふうに私は考えますので、善処されるように強く要望いたしたいのですが、それに対しまして文部大臣の見解をひとつお聞かせいただきたい。
  86. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、たとえば電子計算機で申しますと、四十年度にはさらに予算も五千七百万円要求いたしておるようなわけでございますが、現在、職員は教授が八名、研究部門が八部門になって、総計八十四名で広島大学研究所が運営されておるわけでございます。なお、人員等につきましてはこの上とも配慮いたしまして、十分実情を調べてまいりたいと思います。
  87. 大原亨

    大原分科員 以上をもちまして質問を終わります。   〔主査退席、八木(徹)主査代理着席〕
  88. 八木徹雄

    ○八木(徹)主査代理 泊谷裕夫君。
  89. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 国鉄の石田総裁、ごくろうさまです。お忙しいようなんで、質問ということでなしに、そのものずばりできょうはお願いしたいと思うのです。  お願いをする前にひとつ聞いていただきたいのですけれども、いま私の手元に子供の作文とその教師の作文が大衆参っておるので、ちょっとの間耳をかしていただこうと思うのです。  北海道の上沼幌中学校の一年生の田村静子さんの作文ですが、「たのしかった修学旅行」ということで、   私たちは網走に旅行に行った。汽車の中でトランプをしたりして遊んでたのしかった。   汽車の窓から海が見えたとき、初めて見たのだからすごいなあと思った。海の中に何かをとる網が張ってあった。   熱帯植物園でバナナやパインナップルなどがなってるのを見た。ほんとうになるのかなあと思った。   博物館に入っていったら、いろいろのものがたくさん並んでいる。私はびっくりした。水族館で、アオカメやトドの大きいのにびっくりした。ほんとうにいたのかなあと思った。   網走の旅館に行って寝るときは、ちょっと騒いで悪かったけれど、その他は全体にたのしかった。   それから、川湯ホテルでは網走にいたときよりもたのしかった。みんなで、夜を散歩してたのしかった。   帰るときは、みんなでバスに乗ってるときなどおもしろかった。ただ、第一展望台で摩周湖がはっきり見えなかったのは残念でした。こういう作文が寄せられているのです。  これに関して、その地域の観たちが「親の願い」としてこういうたよりを出しております。   また修学旅行のシーズンがやってきました。当校も本年は修学旅行の実施の年です。   子供らは喜んでおります。この様子を見ておれば、やらないわけにはまいりません。汽車もディーゼルカーも見たこともない山の子供だと思えば、何とかして参加させたいと思います。でも頭痛の種です。   いつも考えさせられることですが、なぜ山の農家は所得がこんなに少ないのでしょうか。ただ生産資材に運賃がかかり、生産物に一割の運賃がかかることだけではなく、農政に問題があるのではないかと思います。   その上、このような恵まれない土地に育っている子供が修学旅行や見学旅行に行くについても、少人数だから割引がないといいます。義務教育であり、同じ国民であります。都会も汽車も見たことのない児童生従のために、政府では運賃の割引その他の便宜を取り計らっていただきたいと思います。   いかに先生が絵や写真でお話をしても、子供は実感がわかず、他の世界のもののように思われるのではないでしょうか。   だから無理をしても参加させたいと思いますが、二人も三人も同時に参加させるのはたいへんなことです。全道平均の月生活費一人当り六千何がしと聞きましたが、その半分の三千円にも満たないのが私どもの現状です。   このような山村僻地の児童、生従の修学旅行については、ぜひ当局の御一考をお願いいたす次第でございす こういうたよりが来ています。  なお、これに関連する教師のことを、恐縮ですがもう一回聞いていただきたいと思うのですが、「教師の願い」として、これは千葉満さんというその学校の先生です。   私の現在つとめている学校は僻地四級指定の小中併置校、在校生徒わずか四十人という小規模な単複校です。   部落も十七戸、うち通学児童生徒のいる家庭はというと十二戸、したがって十二戸から四十人の児童生徒学校に来ていることになります。ほとんどが酪農一本、それも五年前に馬産と雑穀農から転換したばかりで、年間粗収入五十万円前後という不安定な経営状態なのです。   修学旅行は従来、小学五年から中学三年まで一緒に隔年実施してきましたものの、こうした家庭経済で、しかも一戸平均二名も一度に修学旅行に出すとなれば、なかなかたいへんなことで、三泊四日の旅館などとうていおぼつかないこと、釧路市、厚岸、阿寒国立公園など二日一泊の周辺コースがせいぜいでありました。近距離で、しかも二十名に満たない少人数では、団体割引なども学割も考えられないことです。それでも、今年は少し距離を延ばして網走市、北見市までコースを延ばし、八月の末に修学旅行を実施する計画を立てています。この次の修学旅行は、従来の方針を変更して三年後に実施の予定です。バスと汽車の利用となりますが、参加児童は全員で二十名、うち一月から兄弟三人というのが二組、兄弟二人が六組、児童生従一人当り所要経費三千円としても、なみたいていなことではありません。引率教師も万一のことを考えて二名にしています。一名については道費支弁になりますからよいようなものの、他の一名の教員については、どこからも経費のねん出しようもありません。でも、なんとかやりくり算だんしなけれればなりません。   こうして修学旅行のたびに家庭でも学校でも経済負担のことで顔を痛めなければならないのです。   それでも、やっぱり修学旅行は是非したいものです。大きな町を見たこともなく、汽車に乗ったことがなかったり、海を見たことがなかっという生徒が半数もいるのでは、わたくしたちがいくらやっかいでも修学旅行をやめるわけにはいきません。知らぬ他所に行って動きつつある社会の現実認識、生きた社会科の学習が本当に必要になってくるのです。   子供達も修学旅行を在学中の最大のたのしみにしていることを考え合わせてみれば尚更のこと、しかし、現在の諸条件では将来とて多級校のように札幌や函館まで三泊四日というようなわけにはとてもコースを組めそうもありません。精々二泊どまりの計画より立てられないのが残念です。   これがせめて旅費半額補助とか、割引(百キロ以内でも)など、へき地の子供たちの修学旅行優遇策を講じていただけるとずい分助かります。  こういう、いま子供の作文とそのPTAのお母さんとさらに教師の作文と手紙を聞いていただきました。この地方は、石田総裁よく御承知の、北海道の開拓の神といわれております依田勉三さん、総裁は静岡の人ですから、何か血のつながりがあるそうでありますが、慶応義塾を出られて、お兄さんは国会開設初代の代議士をやられた人で、その弟さんですが、ほとんど長雨の中で、そうしてひどい環境の中で今日の北海道を開いた方です。御承知でありましょう。総裁と身内の関係にあったといわれておられる方でありますが、その人の住んでおったところの東方になります。  文部省の統計を見ますと、こういう子供たちは、全国で小学校六千五百八十五、中学校二千六百二十一ありまして、地域的には北海道が最高で、東北、九州、四国地方が多いといわれております。  そこで、これからがお願いでありますが、本来この僻地の子供たち、かわいそうな子供たちが六年あるいは九年に一回旅行に出るための諸施策は、あるいは本来国で行なうべきものでありましょう。公共企業体といわれる国鉄といえども、独立採算制を強いられて公共負担が七百七十五億もある実情を承知してお願いすることは心苦しいのでありますが、時間もありませんので端的に申しますが、いままでの国鉄百年の歴史の中で、日本の文化と産業を育て上げてきた中核としての国鉄としてたいへんな問題でありましょうけれども、過去の歴史に立って、このか弱い子供たちのために、特に小学校六年間に一度、中学校三年間に一度でけっこうです、地方の教育委員会の証明ある修学旅行については、二十五名に満たない小人数の団体であっても、国鉄の鉄道、船舶、バスの団体割引の適用を受けられるように特に御配慮をいただけないかと思うのでありますが、総裁のお答えをいただきたいと思います。
  90. 石田礼助

    ○石田説明員 学童の汽車賃については、国鉄としてはできるだけのことをやっておるのでありますが、御参考までに大体現在の規則を今村常務から御説明いたします。
  91. 今村義夫

    ○今村説明員 ただいまお話がありましたように、現在は二十五人以上の団体でないと割引をいたしておりません。小学生につきましてもそういうかっこうで行なっておるわけでございますが、いまお話がございましたように、僻陬地の学童につきましては二十五人以上にまとまらぬ場合があろうかと思います。いまお話がるるありましたように、そういう非常に気の毒な立場にあらわれる子供さん方に対してわれわれも何とか考えたい。私どもの立場は、こういういわば文化政策上の立場からの問題でございますので、こういうものは本来ならば国に補償していただきたといいう立場、特にこれは公共負担の問題と関連いたしまして毎回お願いしておる問題でございますけれども、問題が問題でございますので、私どもといたしましては前向きの姿勢でこの問題を検討さしていただきたいと思っておる次第でございます。
  92. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 もう一言。要請になるかもしれませんけれども、総裁が就任されたのは三十八年ですね。三十八年に就任されてから、従来のこれら修学旅行に参加する子供たちの条件を下げてくれていることはよく承知しております。全体としては喜びを持っておりますが、逆に、僻地の子供たちが同じような恩恵を受けられない。本質的には国で保護すべきものとよく承知しております。ですが、いま常務からも、前向きにというお話がありましたけれども、何とか一日も早く実現していただくように、総裁のお気持ちをもう一度お聞かせ願いたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
  93. 石田礼助

    ○石田説明員 ただいまのお話に対して私は非常に同情するのでありまして、国鉄といたしましても、あなたの御希望に沿い得るようによく検討いたしたいと存じます。
  94. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 ありがとうございました。国鉄総裁はお忙しいようでありますから、以上でけっこうです。一日も早く実現するようにお願いしたいと思います。  次に、海上保安庁のほうにお願いしたいと思うのであります。実は時間の関係で読み上げるのは省略いたしますが、本木修次さんという、これまた中学校の教師が書いた「離島の生活」という本があります。この先生は全国の恵まれない島々をくまなく歩かれて一冊の本にまとめられたのでありますが、この中で利尻島の蘭泊のことが書いてあります。その要旨は、東京の教育大を卒業いたしまして、この恵まれない子供たちに一生を捧げようという崇高な気持ちで実は離れ島に臨んだのでありますけれども、現実があまりにもきびしくて戸惑っておるということが書かれておりますが、その一くだりの中に次のような文筆があります。   とに角、ニシンが来なくなった生活の打撃は大きいんです。汽車を見たことのない生徒が七〇%、電車はほとんど見ていません。いつかの修学旅行の生徒が稚内港に入るや〃稚内が火事だー〃と叫んだそうです。汽車の煙を見て火事だと思ったのですね。島に育って、常に海や舟を見ていても、まだ利尻丸や礼文丸に乗ったことのない生徒がほとんどなんですから。 こういうことがあります。いま国鉄の石田総裁にお願いをいたしました。この離れ島の関係についてもまた大きな問題がありまして、これはまた同じような基本的な打開策を求めなければならぬと思うのでありますが、当面の措置として、海上保安庁本来の業務に支障のない限り、地方教育委員会から要請があった場合に、これらについて御協力がいただけるかどうか、その方針をひとつお聞かせいただきたいと思うのです。
  95. 今井榮文

    ○今井政府委員 お答え申し上げます。  ただいま先生から非常に胸迫るお話をお伺いして、私ども全く同感に存ずる次第でございます。私どもの船は、いま先生もおっしゃいましたように、本来の業務である海難救助あるいはまた洋上のパトロールという業務に日常忙殺されておるような状況でございまして、本来がいわゆる人を輸送するというふうな設備等にもなっておりませんが、従来も、開庁記念日であるとか、あるいはまた海の記念日等におきましては、巡視船をできるだけ子供さんたちのためにも公開いたしまして、海事思想の普及という面から子供の勉強をさしていただいておるという状況でございます。いまおっしゃいましたような、ある特定の計画のもとにスケジュールを組んで旅行するというふうなことに使えるかどうかという点につきましては、はなはだ申しわけないと思いますが、海上保安庁法そのもののたてまえとの関係もございまして、それからまた、いつ何どき海難で出動しなければならないという問題もございますので、かえってスケジュールに組んでおかれては御迷惑をかけるというふうな場合も起こるのではないかと思いますが、私どもとしては、全国各地に、わずかではございますが、それぞれ巡視船を配置いたしておる状況でございますので、どうしても教育委員会のほうでこういう必要があってやりたいというふうなお話がございまして、私どものほうの仕事に支障がなく、かつまた、海事思想の普及その他に有益であるというような点で御便宜が与えられるというような場合には、できるだけ御協力申し上げたいと思います。ただ、一般的にいってそういうルールを立てるということは、仕事の性質上なかなかむずかしいのではないか、かように考える次第でございます。
  96. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 保安庁長官の、現状から協力体制が以上の幅であるということはよく承知いたします。先日も離島の子供たちを海上見学を含めて招いてもらったということが新聞に出ておりまして、感謝しておるのでありますが、離島の子供たちの修学旅行そのものがしょせん計画的にいかないという実情にあることを御承知いただいて、うちのほうの計画がくずれては相手に迷惑をかけるだろうという部分ははずしてもらって御検討いただいてよろしいのではないか。分校から本校に集結する。それが海洋条件でありますから、どうしても本校に集結してから行動を起こすということになっておりますので、いまお話ありました内容をさらにひとつ御協力賜わるようにお願いをしておきたいと思うのです。  次に、いま国有鉄道と海上保安庁の責任者の方の、その企業内なり、その役所内における幅において最大の御協力をいただくようにお話をちょうだいしたのでありますが、海ばかりではなくて、この子供たちが山村僻地から鉄道の接続駅まで出てくることがたいへんな問題であります。数多い例を申し上げる時間がありませんので 二つ、三つだけ、ただ単なる北海道とかあるいは東北という問題だけでないということを聞いていただくために申し上げたいと思うのですが、汽車に乗るために往復四十二キロ徒歩以外交通機関がないというのが、北海道の川上小中学校であります。駅まで数キロ以上ある学校にはトラック運送を認めてほしいという要請を出してきたのは、これまた北海道の鬼志別中学校でございます。国鉄の駅まで五十キロ以上ある、これは石川県の白峯中学校。トラックで運ぶため、はなはだ危険であり、また高価である、これは京都府知井小学校。全国的にこういう問題があります。そこで、去年の四月、運輸委員会で、自衛隊の車両で協力を願えないかという要請があったのでありますが、この地方の親たちあるいは教師の気持ちにすると、何でも利用できるものをお願いできないかという気持ちになることは私も無理ないと思うのであります。しかし、自衛隊といっても、いろいろ議論のあるところでありましょうから、教育委員会で年に一度の僻地の子供たちが計画を立てましたこの修学旅行には、地方行政機関として責任を持って車両で運んでもらう。その利用する車両は何であろうとかまいませんけれども、特にその御配慮をいただきたいと思うのであります。  これまた、ひまができましたらごらんいただきたいのですが、溝口謙三さんの書いた「へき地の子ども」というのに、東北の子どものことが載っております。この東北の子どものくだりをちょっと読ましてもらいますと、   暗いということは、とてもさみしいことです。新しく林をきりひらいたところで、部落の数は二十数戸しかないさびしい部落だが、かあさんは、「こんなところでも、電灯がついていれば、こんなにさみしい思いをしなくともいいのになあ」と、ため息まじりに話しています。わたしも、ほんとだなあと思います。毎晩ごはんのとき、家では、だれもものもいわず、下をむいてだまって、口をうごかしています。電灯のある明るい家なら、だれだってわらいながらたべるにちがいありません。この奥羽山脈のふもとの林をたがやしはじめたのは、明治二十二年からです。わたしはときどき、こんな暗いのは、百しょうをしているからにちがいない。百しょうでなければ、くらされないことはないと思うから、もっとあかるい生活ができるように、おとなになったらがんばろうと、今から心をきめています。それにしても、「原子ばくだんや、水素ばくだんができているとさわいでいるときに、まだ石油ランプで勉強しなければならないなんて、かわいそうだよ」と、ときどきかあさんは、私が勉強しているのを見ていわれます。わたしは、あんまり大きな望みはないが、明るい電灯の下で、ラジオをききながらくらせるようになりたいと思います。そうしたら、どんなに楽しいことかもしれません。  これは秋田の進藤英記子さんという人が書いた作文です。その近くにいます市町村の行政担当者として、こんな子どもたちを年に一回の修学旅行に責任を持って車両で運んでもらうという配慮ができないものかどうか、これについて自治省の考え方をお聞かせいただきたいと思うのでございます。
  97. 岡田純夫

    ○岡田説明員 自治省といたしましては、ただいまの問題につきまして、地方団体に対する指導ないし財政援助措置の面から配慮すべき立場にございます。修学旅行のうち、準要保護児童等につきましては、文部省とも連絡をとりまして、交付税の基準財政需要額算定上配慮いたしておりますし、今後ともそういう面は強化してまいりたいと考えております。  なお、全般的に基準財政需要を算定いたします場合に、僻地については三十九年度から特に補正要因として取り上げまして、基準財政需要が、僻地に、特に離島あるいは陸の孤島といったような面の地域に手厚く配分されるように、初めて三十九年度から考慮いたしましたが、これは今後ともさらに強化していきたい、また、いくべきものだと、かように考えております。  いろいろな運輸機関等に対しましての要請につきましては、関係各省とも連絡をとりまして、今後の指導方針なり、あるいはまた、地方団体のほうから協議を受けました場合の自治省としての態度について、要するに前向きで研究いたしてまいりたい、かように考えます。
  98. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 それじゃ、次に入る前にもう一度自治省に、これは事情があるかと思いますので、お願いをしておきます。  地方教育委員会が要請いたしました輸送については、自治省としては、当該市町村にこれにほとんど絶対的な協力をするようにさらに御指導を賜わりたいと思うのです。  次に、文部省関係についてお尋ねをしたいと思うのでありますが、いま申し上げました問題は、根本的には、また本質的には、その離れ島なり山村僻地の経済力を高めなければ打開されない問題だと思います。特にこの「しま」という雑誌にも出ておりますが、「かつての島は、帆船の寄港地として栄え、その頃の漁業からすれば、よき沖合漁業の基地でさえあった時代がつづき、本土と島の生活の格差はいまほど極端ではなかった。それが、近代に入って資本主義の大波に洗われ、船も大型化して小刻みな寄港地を不要とし、漁船にしても大型化し、冷凍設備の充実と船足のスピードアップで島の基地を不必要とするに及んで、島の性格はガラリと変わって急坂をつき落とされるが如く生活も下り、孤立化していった。」こういうふうにも指摘しておりますし、さらに、しかしその問題を解決するのは容易でないということも指摘しております。「本土に近く、或いは内海の島はまだまだ恵まれているが、怒濤よせる外海の島の生活をどう変えたらよいのだろうと迷う。そんな島は捨てて他に移住すればよいというきわめて単純な理論がそのまま行なわれない人間生活史のむずかしさに考えあぐむものがあるのである。」これまた東京都北区立赤羽中学校の先生が書いております。  きょうの分科会でこの問題を掘り下げようとは思いませんけれども文部省としても、昭和三十四年、文部省の努力によりまして、これに対する国庫補助制度が確立されました。それ以来、これらの子供たちの修学旅行に参加する数も多くふえておることは事実であります。ことしは、小学生一人千百円が千二百十円に引き上げになり、中学生二千七戸八十円は二千九百二十円になったことは、大いに喜ばしいことだと思うのです。適用範囲は、在学生徒の一割、しかし、その中の約三%が生活保護世帯であり、七%が準保護世帯であることは、御承知のところでございます。さらに、たいへん社会的な問題になってまいりました産炭地の加算が顧慮されたことも大いに喜ばしいことだと思います。しかし、全体予算で三百十五万修学旅行が削減になっておるというのはどうしたことかと私は疑問に思うのです。道徳教育は千三百七十六万上積みされております。道徳教育も必要でありましょう。だが、いま読み上げたような、実に道徳教育以前の、悲惨な子供たちの問題について特に文部省として考慮をいただかなければならぬと思うのであります。  なお、昭和三十七年には、学校教育課程の中で、修学旅行は学校行事と規定をされたものでありますし、具体的にいま次のことについて文部省として考慮をいただけないかと思うのです。  その一つは、補助ワクの拡大、国庫補助率の引き上げは、今回文部省の努力が認められておりますけれども、この配分の改善について、内容を具体的に指摘しなくても御承知おきだと思うのでありますが、この配分は、具体的に、苦悩する子供たちに、親たちに、教師たちに、なるほどと、社会に奉仕すべきだという、教壇に立って指導しております教師に、そのことばが子供にぴったりくるように配分の改善に考慮を払われてしかるべきだと思うのでありますが、いかがなものでしょう。
  99. 福田繁

    福田政府委員 先ほど来いろいろ御指摘になりました点は、一々ごもっともに伺っております。僻地あるいは離島などの学校におきます子供も、教育の一環としまして修学旅行の必要なことは、私どもも痛感をいたしておるところでございます。  ただいま御質問になりました点でございますが、文部省としては、修学旅行の経費につきましては、要保護児童生徒並びに準要保護児童生徒に対して、毎年修学旅行費の援助をいたしております。御指摘もございましたが、年々この単価も引き上げてまいっております。したがいまして、将来ともになるべく実績に見合うような単価に改善していきたいという基本的な考えは変わりはございませんので、将来とも、単価の引き上げ等につきましては、十分実情に即した単価を編成していきたい、こういうように考えております。  さて、実際のこの配分の問題でございますが、要保護生徒児童、大体総体の三%、準要保護児童生徒につきましては七%、合計いたしますと一〇%になっております。ところで、これらの教育扶助を受けなければならない世帯、あるいはそのボーダーラインにありますところの準要保護児童生徒の割合は、全国的に一〇%ということになっておりますが、その配分の実態につきましてはそれぞれの地域によって違うわけでございます。たとえば産炭地などにおきましては、最近の非常な経済状態から参りまして非常に多いわけでございます。したがいまして、配分にあたっては、それぞれの地域の実態に即するように配分をいたしております。万一当初の配分計画で不十分な点がございますれば、後にそれをさらに調整するというような作業をいたしておるわけでございます。したがいまして、全体としてはいままでのこの補助金の配分につきましてそれほど支障は起きていないと私ども考えております。全体として生徒児童の数が年々減っておりますので、したがいまして予算額としてはそれに伴って減少いたしておりますことは当然でございます。そういう意味で、先ほど御指摘になりました点も、生徒児童の減少に基づく減というように御了承をいただきたいと思います。
  100. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 文部省のいまこれに熱意を示していただいておる実情はわかりましたのですが、私が聞いておる範囲では、北海道教育委員会からやはり正式書面で配分の改善を強く求められているのです。時間的なズレがあって、改善されたかもしれませんが、この問題をさらに取り上げて御検討いただきたいと思うのですが、いかがなものでしょうか。
  101. 福田繁

    福田政府委員 具体的なお申し出がございますれば、十分それについて検討いたす用意がございますので、実情を調査いたしたいと思います。
  102. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 雑誌ばかり引用して恐縮ですが、もう一つこれは文部省の皆さんに聞いていただきたいのです。これは私が関係する雑誌の中で一番私としては感激したものでありますけれども、題名は「美女とネズミと神々の島」という、秋吉茂さんの書いた最近出た本でありまして、これも島のことを書いたものです。その一くだりに次のようなことが書いてあります。   赴任の船中で、私は多くの離島の先生の姿をみた。上原校長のように「心待ちし旅路なるかなおおわだの波あれるとも風すさぶとも」とはりきって任地にむかう人もある反面、島流しの不運をなげくように毛布をかぶってうなだれる人、やけに芋ショウチュウをあおる人たちもあった、そのなかに一組、病身らしい奥さんが夜どおし船酔いに苦しむのをかいがいしくいたわっている人がいた。諸島の一つ、中之島の朝日分校に赴任する岩田隼男先生(三五歳)と妻の三子先生(三四歳)。夜あけ方になって奥さんの船酔いがやっとおさまったらしく、夫婦は甲板のベンチで感慨深げに南海の夜明けをながめていた。私が同じベンチにすわると、夫婦は問われるままにぼつぼつ話しはじめた。   前に一度、薩南緒島の黒島に赴任したことがある。昭和二十六年五月だ。島の教育に夫婦はうちこんだ。翌年秋に局の生活がこたえたのか、奥さんが胸を患い、鹿児島の療養町に送還された。岩田先生はひとりでもせめて五年間はいたいとガン張ったが、県教委が心配して内地に転勤させた。奥さんはロッ骨七本を切除して今年の一月に退院したばかり。「離島教育には借りがある。どうしても」という夫の希望にしたがって、奥さんも夫とともに県教委に嘆願して夫婦赴任となった。  「妻には島の生活はまだ無理だと思うんです。ずいぶん、内地に残って身体をよくした上でくるようにいったのですが、きいてくれないのです」という岩田先生のかたわらで、奥さんはどうせ長生きできる身体ではないのです。だから、一日一日を思いのこすことのないように、精いっぱい生きたいのです。夫の希望は私の希望です。夫が島の教育にささげたいというのですから、私がついて行くのは当然でしょう。できれば、私の骨は、あの島影に埋めたい……」と美しくほお笑んだ。  こういうふうに書いております。先ほどの教師の手紙にもありましたが、付き添い旅費、何とかやりくり算段をして出なければならぬ、こういうことが書かれております。これほど崇高な気持ちで教育に携わっている教職員に、この旅費の補充くらいは当然考えてやってよいのではないかと思うのですが、いかがなものでしょう。
  103. 福田繁

    福田政府委員 教職員の旅費につきましては、おっしゃるように、修学旅行などの付き添い旅費も当然に含めて考えておるわけでございます。そういう場合の引率旅費あるいは一般の研修旅費、赴任旅費というものをひっくるめまして、文部省としては、従来から、これをなるべく実情に合うように引き上げてまいりたいという努力をいたしております。小中学校につきましては、御承知のように、昭和三十五年ごろは四千円くらいでございました。現在は八千円まで、約倍に引き上げております。昭和四十年度予算におきましても八千円を積算をいたしております。それから高等学校につきましても、昭和三十五年ごろはこれは五千円くらいだったと思いますが、四十年度におきましては、これも倍増いたしまして一万円に引き上げられております。そういうぐあいに、できる限り実情に沿うようにこれを努力していきたいという気持ちでございます。
  104. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 従来努力を払っておられるのでありますから、あまり詰め寄ることは好ましくないと思います。だが、どうしても子供の世話は二人要るといっているのです。二人が参加できるように何とか努力していただきたい。さらに、これらの学校は、御承知のとおり、教師というと、校長も含めせいぜい三人ぐらいです。二名が出ますと、残った子供の教育にも問題が残ろうと思います。わずかの日数です。何とかこの残った子供にも教育のそごを来たさないように配慮していただくよう、これはお願いとして申し上げておきます。  次は、運輸省の増川局長さんにお願いしたいと思うのですが、この子供たちは、総じて——増川さんのほうには関係ありませんが、少人数でバスも快く乗せてもらえませんし、旅館にも取り扱う数が少ないということで利潤が少ないのでございましょう、あまり歓迎されないのが実態であります。局長は、昨年努力をされまして、観光基本法の設定でも明らかにしておるように、数多い人々を楽しませようということを筋にしております。さらには、国際ホテル整備法で、いままで開銀なり北海道東北開発公庫なり中小企業金融公庫なりからこのホテルに対する融資をしております。本来的には外国の人々を招いて外貨をかせごう、そのために旅館に助成するというのが趣旨であることは承知しておりますが、オリンピックが終わりまして、理論ということでなく実態として出てきたことは、アメリカの人々も五十ドルくらい年間落としてくれるけれども、それは五十週で割って使っておるということが明らかになってまいりました。言いかえますと、一日一部屋八千円も一万円もする部屋というものは、あまり受け入れ条件がなくなってきたように思われるのです。だが、この議論は別にいたしまして、きょうは修学旅行の問題で、これらの往年からあります一般旅館、これに中小企業金融公庫なり北海道東北開発公庫の助成の道を開いて、交換条件といっては恐縮でありますが、非常口の整備など特に必要でありますが、子供たちの安全な旅行ができて、少人数だからといって拒むことのないように、具体的には、融資条件を一般旅館に拡大して、修学旅行の生徒を収容し、そのための設備を強化してもらうということのお考えがいただけないものかどうか、このことについて明らかにしていただきたいと思うのです。
  105. 増川遼三

    ○増川政府委員 修学旅行の生徒たちのための宿泊の施設につきましては、現在おおむね扱っておりますのが、国鉄の団券を扱っておりますあっせん業者というものが主体でございまして、国鉄の団券を扱っておりませんと全般的な仕事のお世話がいたしがたいという状況にございますので、これがやっておりまして、これを国鉄と提携いたしておりますのが現在七、八社程度でございますが、これらは旅行あっせん業者の中でも最も信用の置ける業者でございます。これが扱っておりまして、それによりまして、国鉄の推薦旅館あるいは交通公社の協定旅館あるいはその他のあっせん業者の指定旅館というものをこれにあてがっておるわけでございますが、これについての法的な規制というものは従来全くございませんで、はなはだ私も遺憾に存じておりますが、先ほどおっしゃいました観光基本法の趣旨にかんがみまして、これらについても適正な規制というものが必要ではないかということを考えまして、基本法に基づく子供の法律の制定につきましても現在検討を進めておる次第でございます。  なお、これらの修学旅行用の宿泊施設の整備につきましては、法的規制がないまでも、実際の行政面におきまして、業界の指導については従来も考慮を払ってまいりましたが、今後とももっと具体的に配慮いたしてまいりたいと考えておる次第でございます。
  106. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 先輩議員も見えましたし、時間の関係もありますので、文部省にあと二つだけお尋ねしたいと思います。
  107. 八木徹雄

    ○八木(徹)主査代理 なるべく簡潔に願います。
  108. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 一つは、教職員の当該地域住民の協力要請を願いたいと思うのです。やはり僻地はどうしても、町のボスといいますか、古老がおりまして、その意向で修学旅行に出ること自体に支障があるようにも感じられますので、これらの愛情ある協力指導の方針についてお考えを願えないかということが一つであります。経済力の関係がありましょうけれども、それははずして、精神的な問題でありますが、これがどうであろうかということが一つです。  二つ目は、都道府県教育委員会の積極的な協力体制を確立していただけないかと思うのです。いま申し上げたように、国鉄あるいは海上保安庁、それから観光局、これらの協力をいただいてやる場合でも、それから地方の教組の協力をいただいても、一元的にこれを計画するということの必要に迫られてくるのではないかと思うのでありますが、これらについてお考えがあればひとつお聞かせをいただきたい。  もう一つは、最近、修学旅行の内容が少々ぜいたくになってきたような気がします。華美に流れ、あるいは温泉地中心というようなことが間々見受けられるような感じがするのでありますが、これらの子供たちのことも考えて、これらの旅行はつとめて質素な服装で旅行するようにこれは何とか指導していただきたいと思うのですが、以上の関係について文部省においていかがお考えであるか、お聞かせを願いたいと思います。
  109. 福田繁

    福田政府委員 御質問になりました点につきましては、私ども全く同感に感じておる次第でございまして、特に僻地その他の学校の子供が修学旅行等に行きにくいいろいろな条件があるということは、私ども承知いたしております。しかしながら、冒頭にも申し上げましたように、修学旅行そのものが現在におきまして学校行事の一つとして考えられておるものでございますので、できる限り在学中にそういう機会を与えることが望ましい、そういう観点から、私どもとしては、今後それぞれの地方教育委員会に対しましても、あるいは都道府県教育委員会に対しましても、そういう立場で理解をいたしておると思いますけれども、できる限りそういう方面に今後も話し合いをしながら指導してまいりたいと考えております。  それから、修学旅行そのものの内容が非常に華美になりつつあるというようなお尋ねでございましたが、そういう傾向もあろうかと思います。私どもとしては、やはり教育上の問題としてできる限りそういう点を排除して、実質、教育的な効果をあげるような方法を考えたいと思っております。これにつきましては、私どもとしても検討している点もございますが、今後都道府県の教育委員会あるいは関係者と十分協議をいたしまして、そういう方向に導いていきたいと考えております。
  110. 泊谷裕夫

    泊谷分科員 これでおしまいにします。いま数多くのお答えをいただきましたが、文部省としてこれらはやはり体系づけて整理をしなければ、きめこまかい方策というものができないのではないかと思うのです。仮の言い方でありますが、修学旅行法などという関係法案用意されまして、これを体系づけて、政府もそして地域住民も、もちろん、関連する父兄、子供、教師の協力も受けるように考えていい時期ではないかと思うのでありますが、いま申し上げました修学旅行法などという法案用意される気持ちがあるかどうか、これを最後にお尋ねしたいと思います。
  111. 福田繁

    福田政府委員 関係者の間にはそういう声も出ておりまして、私どもとしても慎重にこれを検討したいと考えております。
  112. 八木徹雄

    ○八木(徹)主査代理 午前の会議はこの程度にとどめ、午後は二時より再開し、質疑を続行いたします。  この際暫時休憩いたします。    午後一時十二分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  113. 植木庚子郎

    ○植木主査 休憩前に引き続き会議を開きます。  文部省所管について質疑を続行いたします。辻原弘市君。
  114. 辻原弘市

    ○辻原分科員 最初に、教科書の問題についてお尋ねをいたしたいと思います。  けさ野原分科員からも大臣に質問が行なわれましたが、無償教科書中学校まで延長してやってもらいたいというのは長い間の懸案で、しかも、私どもも世界各国の例等も調べましたところ、すでに、いろいろなやり方がありますけれども、結果においては父兄なり本人の負担でなくて教科書が渡っているという制度が逐年多くなっていることは事実であります。したがって、当然本年度は中学一年までは実行せられるものと考えておりましたが、残念なことに、六年までということに限定をせられましたことは遺憾であります。しかし、前進をいたしておる点は私どもも大いに歓迎いたしておるのであります。ただ、私はいまここで無償教科書の問題についての各般の問題について議論をする時間がございません。ただ、その中に、きわめて小さいようではあるが、一つ問題を指摘をいたしまして、大臣の見解をお尋ねしておきたいと思います。  それは、約六十億の本年度の予算の中に、子供に交付する教科書代のほかに、約三千万円の教科書を入れる袋代というものが予算化せられておるようであります。それに間違いないと思いますが、念のためにお尋ねをいたしておきます。
  115. 愛知揆一

    愛知国務大臣 教科書の無償給付の場合に、四十年度予算におきまして、四十一年の前期用に給付いたしますものにつきまして、低学年用と高学年用に一括して給付することが便宜であると考えましたので これを入れる紙袋の予算として総額二千四百六十余万円、これは四十一年度前期用から実行いたしたいと考え予算要求をいたしておるわけであります。低学年用が一枚の単価二円十七銭、高学年用が単価二円五十銭、こういう予定でございます。
  116. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私は三十九年度の教科書の交付にあたってこういうことを聞いておる。それは、三十九年度は予算化ができないので、教科書会社に対して、いわゆる発行者に対して、入れる袋を準備しろ、しかもその袋には日の丸を表に書いて、それを教科書を入れる袋として子供にやるんだから、そういう準備をしろ、こういうことを申しつけたという話を聞いておる。これは事実でありますか。
  117. 福田繁

    福田政府委員 三十九年度の教科書無償配付につきまして、袋の調製を教科書会社に注文した、こういうようなお尋ねでございますが、私どもといたしましては、従来から特約供給所、あるいは教科書会社の一部になると思いますが、袋を使用している向きがございます。したがって、そういう場合に、数冊の教科書を一つの袋にまとめて子供に手渡すわけでございますから、できればそういうほうが便宜だというように考えております。したがいまして、これは経費もかかることでありますから、一律にやるわけにはまいりません。できるかできないかを検討してもらいたいということは申したことがございますが、もちろんそれの意匠等についてはきまったものはございません。
  118. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私は確かな話として聞いたので、ここであなたがもし言わないならば私は証人をあげてやってもいいんだが、業界に対して袋を準備してもらいたい、四十年度については予算化をするから、三十九年度はひとつ業者のほうでやってもらいたいと言ったことは事実です。しかも意匠等については云々ということを言われましたけれども、しかし、何らそういう考え方文部省側から発表してなければ、意匠については、特に日の丸の意匠をつけてということを業者の側で私は言うはずがないと思うのです。そういうことについては福田局長はお聞きになっておりませんか。
  119. 福田繁

    福田政府委員 教科書協会において研究願いましたことは事実でございます。しかしながらその意匠につきましては、ある特定の新聞が、日の丸の旗の図案をつけるであろう、こういうような想像記事を書いたものと考えております。
  120. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私は袋を使用すること、また、日の丸を使用することをあながち頭から否定するものではない。しかしながら無償教科書を国家が経費を計上して交付するということにはおのずから考え方があるはずなんです。これはいま私が大臣からお伺いするまでもなく、国家が子供のために教科書をくれてやるんだ、国のありがたさを知らせるんだなどという考え方に立っての無償教科書制度というものは出ておらぬはずです。そうでしょう、大臣。その点、お考えをひとつ承っておきたい。
  121. 愛知揆一

    愛知国務大臣 くれてやるなどというような考えではございません。
  122. 辻原弘市

    ○辻原分科員 これは、ある場合においては父兄の負担を軽減する、ある場合においては子供に対して平等な教育環境を与える、そういうことを主眼として無償教科書制度というものは先進諸国の間に声が高くなって生まれたものであるということは、これは何人も認めるところなんです。ところが、それに対して今回一括袋に入れて渡す、しかもそれには時の政府の好みに従った意匠をつけて、そうして子供に渡すというそのものの考え方の中に、無償教科書本来の考え方を否定する何ものかがひそんでいると私は考える。そこで私は、小さいような問題だけれども、あえてこの問題を取り上げたのです。しかし、そういう意匠のことについては考えておらなかったというなれば、それはそのまま承りましょう。  そこで私は四十年度に予算化をしておる袋代について一言申し上げておきたい。というのは、もちろんかなりの冊数ですから、それを入れて子供に渡すというからには、取りようによっては親切心から出たんだというならばそれまでの話なんですけれども、しかし、そういうことが国費でもってまかなわれなければならぬというならば、他にももっと親切にしなければならぬことがたくさんあるんじゃないかと思うのです。膨大な冊数一膨大な子供たちにその袋を一つだけやることがはたしてほんとうの親切心だろうか。そういうことに非常に疑問を持つのです。なぜそこまでして、少なくとも三千万という金を計上しなければならぬのか私は非常に疑問を持つのです。そこまで必要なのだろうか、いまはいろいろな入れものがあります。袋を渡さぬだって、袋で学校に通うのじゃないですから、子供はランドセルに入れましょう、あるいはカバンに入れましょう。あるものはまたふろしきに包みましょう。そういうことは、それでもって私は足りると思う。しかし、それでもって、もしその三千万に近いお金というものを活用するならば、文部省予算の範囲だってずいぶん使い道があることだと思う。公立学校施設についても足りない、大学急増についても足りない、私学振興はもとより、学校給食費はどうだ、われわれが議論するものはことごとく教育予算が足らぬということを論じておる。その中に、一枚の紙袋をあれするために、約三千万円の国費を計上するということは、私は頭からいかぬというが、ものごとの軽重について、はたして文部省の皆さんが真剣に考えられた措置であるのかどうか疑わしい。単なる親切心であるというならば、私はもっと活用の方法があるだろうと思うし、いやそうではないんだ、別の考え方があるのだというのならば、私はそれを承って了承いたしましょう。そこで私が考えるのは、何か恩恵的な意味で、どうも教科書を無償にするというその考え方の中に、どなたが考えられたかは知らぬけれども、何がし国というもののありがたさを知らせるんだなどという考えでもしこの無償教科書が交付せられているものとするならば、私は制度の根本的な考え方を変えるものだとすら考えるのです。一体、そういう計上が、はたして国全体の予算の中、また文部省全体の予算の中で絶対必要だというふうに文部大臣がお考えになりますが。これは私は与党とか野党とかという立場ではなくて、一人の国民として考えたときに、深い疑問を持ったのです。多くの人は知りません。私も同僚委員その他にも聞きましたが、そういうことを知っておるのか、みんな知りません。知らないうちにこの多額の金が計上されて、そして袋代として消えている。一体文部大臣はそういう予算の計上にはたして妥当性ありと、そういうふうに強調されるのかどうか、この点を私は後日の参考のために承っておきたい。
  123. 愛知揆一

    愛知国務大臣 教科書無償給付につきましては、たとえば四十年度までで累計いたしますと、約百三十億くらいの金がかかっておるわけです。それから、これから中学三年まで完全にやりますのには、もう百二十億ほど要るわけでございます。やはりこれは相当多額の経費でございますし、この無償給付の教科書は大切にひとつ扱いたいということで、親切心というお話もございましたが、親切、心もその中へ込めて、大切に扱いたい。これから、これは事務的ないろいろの御便宜ということを考えましても、相当の効果のあるものであると思いますので、そこで、一括して紙袋に入れて給付をしたい。全体の給付の総額からいえば、このくらいのことは教科書無償配付という大事業については比較的小さな額であって、なお一そうこの重要性というものを認識していただきたい、大切に扱っていただきたい、国からのいわば贈りものであるというような角度で考えました場合に、私はむしろ積極的にこれは私自身としても賛成をいたしたような次第でございます。
  124. 辻原弘市

    ○辻原分科員 ものを大切にするということは、私は袋に入れて教科書を渡すというようなことで完成されるものではないと思います。それは単なるおとなの気休めであって、むしろ教科書それ自体を日常扱う教育者の側においても、また実際にそれを使う学童生徒の側においても、日常の中で訓練づけられるものであって、それが単に渡すときに袋へ入れたからといって、そのものを大切にするというようなことがすぐ出てくると考えることは、これは教育の何たるかを知らぬ者の言い方だと私は思うのです。まあこれは議論になりますから、本日はそういう問題があるということだけを指摘いたしておきますけれども、しかしもしその袋に何がしか象徴的な意匠をこらしてやるということであるならば、これはわれわれも大いに考えなくてはならぬ。いま大臣が言われた単に物を大切にしたい、またその一方便として親切心から出でたものであるという程度のことでありますならば、予算上の問題だけでありますけれども、しかし、そうではなくて、これを何か別の目的で活用するというような考え方がひそんでおるということであるならば、これは事は小さい問題であるかのように見えるけれども、私は考え方としては大きな問題であると思います。福田さんその点について、意匠については何ら固定した考え方を持っておらないとさっきおっしゃいましたが、四十年度のそれらについても全然そういうことは考えておらないのかどうか、その辺のところをひとつ伺っておきたい。
  125. 福田繁

    福田政府委員 お答えを申し上げます。  四十年度の教科書につきましては、もちろん現在まだ袋に入れて配付するということをきめておりませんので、意匠等につきましては全然考えておりません。  四十一年度の使用教科書につきましては。ただいま御審議を願っております予算に二千四百万円程度を計上いたしておりますが、もちろんこれにつきましての意匠等は衆知を集めましてりっぱなものをつくりたいと考えております。
  126. 辻原弘市

    ○辻原分科員 それで私は次に問題を移したいと思いますが。これは文部大臣から的確な御答弁があるいはいただけないかと思います。しかし非常に重要な問題でありますから、文部大臣の見解なり、意欲いうものをこの際私は承っておきたいと思うのであります。  それは、一体いま盛んにいわれている、青少年の不良化というものの原因はどこにあるのか。まことに一般的、抽象的な質問でありますが、それについて大臣はどういうふうに認識をせられて今日わが国の教育の府をあずかっておられるのか。それを一度この機会にお尋ねをいたしておきたいと思います。
  127. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはまことに重大な問題でございまして、ひとり文部省のよくするところではないかとも思いますけれども、まず学校教育を中心にした教育のやり方ということが何といっても一番大きな問題であろうかと思います。同時にしかし、いわゆる社会教育と申しますか、その面においての努力もまだまだ足りないところがあると思いますので たとえば婦人学級とか、青年学級とか、あるいは公民館を通ずるいろいろの啓発というようなことにも、今回の予算にも相当の額を計上しておるようなわけでございますが、そういった面の、いわゆる人間形成の面においての努力なり考え方についてはさらに十分の努力をしなければならぬと思います。しかし同時に 社会的な環境、これはいろいろの面からつくられる。たとえばその中には経済政策の問題もございましょうし、あるいは情報といいましょうか、マスメディアと申しましょうか、そういうような問題もあろうと思いますが、こういう総合的な面で全国民的な世論の盛り上がりということを背景にしていかなければならない、こういう点も多々あると思います。同時にまた、取り締まりというような方向については、それぞれの官庁でも非常に苦心をされておるところと存じておるようなわけであります。
  128. 辻原弘市

    ○辻原分科員 いま大臣のお述べになられましたようなことは総括的な一つの考え方であろうと思いますが、私はごく卑近な問題として一つ例をあげたいと思うのであります。それは、やはり何といっても人間は環境の動物ですから、りっぱな、よい環境でなければ、これはよい子供もよい社会人も育つということはあり得ない。ところが、そういう目で現代社会をながめましたときに、いろいろなそれを否定する一方の要素が存在をしていると思います。特に私はその中で今日、目で受ける、また面接耳で受ける、そういった強烈な刺激というものは、これは何といっても子供の成長に、あるいは青少年の成長に大きな影響を与えていると思うのです。その中で私が最近非常に考えさせられている問題は、いまや一億総白痴化といわれておりますテレビの影響、その他映画、雑誌等の影響でありますが、なかんずく最近の映画についての問題は、これはわれわれとしてはかなり考えさせられる点があるんじゃないか。もちろんわが国の憲法のたてまえからいいまして、表現、製作の自由という問題は、これは厳として侵すことのできない原則でありますからそれに立ち入ってやるということにはなかなかむずかしい問題もございます。また、それぞれやっている営業権等の問題にも抵触をいたしてまいります。したがって私どもは映画を通じての教育あるいはテレビを通じての教育、そういうことに多大の期待を寄せているのでありますが、ところがはたして映画やテレビが今日、教育的効果、社会的効果だけを世の中に流しているかというと、必ずしもそうではない面が最近私どもの目に映るわけであります、  そこで文部省におきましては、文部省の選定映画の選定をおやりになり、あるいは視聴覚教育を進められる。ところが一方、町の興行館においては各種の映画がいろいろ上映せられておる。もちろん全部が全部子供が見るわけではありませんけれども、しかしながらそれらの中には必ずしも社会的に貢献をするとか、子供に対して教育的によい影響を与えるとかということを考えていないのではないかと思われる、そういった映画が最近かなり出ているように私は思うのであります。ここで一々名前をあげることは、これはやはり個々の問題に触れますから私はいたしませんけれども、そういう点で私どもの疑問として、映画については映倫がある、一体映倫はどういう活動、どういう機能をおやりになっているのか非常に疑問とするような傾向がしばしばわれわれの目に触れるという点について、大臣はどういうふうにお考えになっておられるか、この際お考えを承っておきたいと思います。
  129. 愛知揆一

    愛知国務大臣 このお尋ねに対しましては私も全くもっともだと思うのであります。そこで、映倫のことでございますが、この映倫管理委員会は御承知のように昭和二十四年に関係業界の自主規制ということで発足いたしまして、当初は日本の製作する映画だけを対象にしたようでありますが、三十二年以来は外国映画、輸入映画についても自主規制をやるということでずっと継続して仕事をやっておられるわけであります。われわれも大いにこれに期待をかけているわけであります。ところが昨年の九月と記憶いたしますが、一、二の、何と申しますか率直に言って愚劣なる映画が世論の問題にもなりましたので、文部省といたしましても、これは法律的な権限の問題ではございませんけれども、映倫の委員長以下を文部省に招致いたしまして、そして省内でも問題になりました映画をあらためてわれわれも現実に見て、それを素材にいたしまして、今後の映倫の行き方について大いに注意を喚起したわけでございます。そして映倫も特定のものについての審査にミスがあったことを認め、当時声明を発表いたしまして、製作業者の反省と審査の体制を強化することを明らかにせられました。先ほど申しますように、この活躍と申しますかそれに期待を寄せているわけでございますが、しかしその後の状況を見ましても必ずしも満足すべき状態にないということで実は心を痛めているようなわけでございます。  多少御質問を逸脱するかもしれませんけれども、そして他省庁の関係もございますけれども、私は映画というものの産業としての立場というものも十分尊重していかなければならない。ことに輸出というような面にも相当な期待がかけられている今日でありますから、そういったよい面、よい映画、ことに外国に進出いたしましても称賛を博するようなりっぱなものをつくってもらいたい。それについてはできれば国家的ないろいろの面の援助も惜しむべきではないと思いますけれども、そういったことを考えるにつけましても、ひとつ映画製作者方面におきましても十二分の良識を持って注意を払ってもらいたい。同時に映倫の活躍が世論を背景にして大いに効果をあげてもらいたい、こういうふうに考えておるわけでございますが、お尋ねにもございましたように、これはひとり文部省のみのよくするところではございませんので、あらためて関係各省庁の注意を喚起すると同時に、世論の盛り上がりというものをお願いいたしたいと考えております。
  130. 辻原弘市

    ○辻原分科員 いただいた資料によって見ますると、三十九年の一月から十二月までの間に映倫で審査をいたしました各社の本数の総数は約三百三十八件になっていますが、その中で、映倫の審査の結果、成人映画として指定されたものが集計いたしてみますると百九件ございます。このいわゆる成人向き映画というものの中に、私ははたしてこれが芸術を強調し、文化の先端をいく映画であろうかと深い疑問と、ある場合には憤りを感ずるようなものが実はあるのであります。今日このつくられたものを規制する法律的なものは何らございません。また私も本質的に表現の自由というようなものはそういう形で規制すべきではないという考え方を持っております。持っておるが、しかしどこかに製作者あるいはそれを上映する側あるいは行政府の側に、また国民の側に何らかの良識と良心があっておのずからそういうものが規制されてくるであろうと実はここ二、三年来考えておったのであります。ところが現実は必ずしもそうはいっておらない。そこで私は自主的機関であるとはいえ、一応の審査機関である映倫にもう少しそうした機能を発揮していただきたいということを考えるわけで、そういう立場から映倫の規程を見ますと、この規程の中には私ども考えているようなことはすべて盛られておるわけなんです。盛られておりながら現実にそれらのものが堂堂と上映をせられておるというのは一体いかがなものか、こういうふうに私は疑問を持つのでありますが、それらの従来の映倫の運営について、何か、これは行政指導というわけにはまいりますまいが、しかし何といいましても文部省がそういうことについてはかなりの責任を持っているわけでありますから、いま大臣お答えによりましても話し合い等が若干あったように聞くわけでありますけれども、具体的に突っ込んだ話がその後にありましたのかどうか、その辺のところをもう少し承りたいと思います。
  131. 愛知揆一

    愛知国務大臣 確かに御指摘のように、映画倫理規程というものは非常によくできていると申しますか、かなりこまかい点にわたって、行き届いたつくられ方がしておると私も存じます。そこで先ほど来お話がございますように、事は映画でございますために、いわゆる表現とか発表とかいうことの憲法で保障されておる自由ということが根本にございますので、なかなか法律的な規制その他は手段としてむずかしいと思います。したがって、現状においては、やはり映倫に期待をかけるほかに方法がない。そこで、先ほど申しましたように、昨年の九月にもわれわれとしても相当思い切ったことをやったつもりなんでありますけれども委員長以下全委員をお呼びしまして、しかもあらためて現物の試写を目の前でいたしまして、映倫の活動に対する厳重なる注意の喚起を求めたわけでございます。これを基本的な最近の態度として、まず第一歩を確立いたしまして、その後におきましても、内面指導というとことばが悪うございますが、できるだけ留意をしながらこの映倫の活動に対して、世論の動向をも背景にして、大きく期待をいたしておるようなわけでございます。なおこの点については、ただいまこうして本委員会におきましても問題を御提議いただきましたことは、私としても非常にありがたいことでございまして、こういったような最高の機関における御論議に本件が登場し、かつ私どもと全く御同感の御意見が開陳されましたことを背景にいたしまして、さらに一段と努力を新たにいたしたいと思います。
  132. 辻原弘市

    ○辻原分科員 非常にむずかしい問題であるということを、私も考えれば考えるほど、実は思うのであります。と申すのは、今日法律的規制というようなものが、これは別個の問題を生むことは周知のところであります。それでは一体どういうふうにこの問題を直接的に審査し、直接的にそういうことをコントロールするかと考えたときに、まずいまの段階では映倫以外には考えられない。ところがその映倫なるものは、これは申すまでもなく現在映画を製作しておる三十六社が寄って維持委員会をつくって、その維持委員会が四人の委員を委嘱いたしまして映倫というものを構成しておる。その維持経費等はあげて結局は製作会社の負うところになっているというのが現状だと思うのです。そういたしますと、何といっても映画という、別の一面から考えれば産業の、製作の一環に乗っかったものでありますから、できるだけ国内的にもまた対外的にもそれを出していかなければならぬ。できるだけ収益を高めていかなければならぬとするならば、映画会社としてはなるべくそういうようなチェックというものを少なくしていきたいという考え方に立つのは当然です。そうすると、どうしてもそこにせっかくの機関が設けられておりながら、やはり産業的な製作の面と、それから対社会的な反響という面の、二つの立場がぶつかって、どちらかというとおそらく厳密なものというよりもニュートラルなものになっていくというのが私は人情だろうと思います。そこにこの映画審査という問題が今日非常にむずかしい状態になっている原因があろうと思う。だからそうではなしに、政府の機関によらず、また強制的なものによらない、世論を背景にした、そういった一つの、審査のあり方というものはないだろうかというふうなことを私も考えるわけなんです。せっかくいい規程——これを読んでみますると、ほんとにこの規程の中から、この規程に押えられ、この規程によってコントロールされながら、どうしてああいう映画ができてくるのだろうということを疑問に感ずるほど、大臣もおっしゃったようにこの映倫の規程というものはりっぱなんです。まず最近一番いわれておるエロ、グロ、それに犯罪的要素を扱った映画等を見ますると、映倫の規程の中には犯罪の取り扱いには注意をし、摸倣の動機を与えるような表現をとらないと書いてある。また、殺人場面を刺激的には描写しない。残酷な殺人方法を詳細に描写しない等々、いわゆる犯罪的要因というものを摸倣させないためのこまかい配慮が規程の中にはあります。その他政治的な問題につきましても詳細な規定があって、性及び風俗については、性関係の取り扱いは結婚及び家庭の神聖をおかさないように注意する云々といささかこまかく規定をされております。ところが最近よく売れている映画、いわゆる成人映画というものの中には、これは芸術的色彩のあるものももちろんたくさんあります。ありますが、だれが見てもこれはほんとうにどこに一体社会的意義があるのか、どこに芸術的価値があるのか、普通の常識ではさっぱり考えられないようなものが、これがどんどん上映されておる。私はこういうことをあえて言うのは、せっかく文化の先端を行くという映画でありますから、もう少し世の中の親にもすべての人に歓迎をされて、映画が斜陽産業ではなくて、もっと盛んになることをわれわれも期待するがゆえに、何とかいまのそういう風潮を脱してもらいたいという念願から、このことをあえて申し上げるわけであります。どうかひとつ、この点は直ちに結論の出る問題でもございませんが、やはりどこかでそういう世論を喚起すると同時に、製作者並びに企画をされる人々の側においても、もう少し何といいますか、社会が望んでいることにマッチするような方向で、映画の製作というものを進めてもらいたいという点から、これは文部省だけではありませんけれども御配慮願いたい、わずらわしたいということを痛切に感ずるわけであります。私もかつてこれらの青少年の問題の協議会に二、三年籍を置きまして、いろいろこういうことも論じ合いました。せっかくいろいろな角度から青少年対策が進められておりながら、言いまするならばそれが逆に世の中に子供がほうり出された場合に悪い影響を受けて、百日の説法へ一つというような、悪い表現ですけれどもそういう形が生まれているということ、私も非常に遺憾に思うのです。この点は総理府が所管をされておりますから、総理府の側においても十分ひとつ検討していただきたいし、今日何がしかの対策がありますならば、この機会にひとつお答えを願いたいと思います。
  133. 赤石清悦

    ○赤石政府委員 青少年問題協議会の事務局長の赤石でございます。  ただいままでいろいろ文部大臣からお答えがございまして、それ以上特に政府として新しい何らかの対策というお話でございますけれども、目下のところ御承知のように政府といたしましては自主規制のたてまえで、映画製作者、興行者の積極的な自粛をまつという方針と、一方、政府は、直接関与いたしませんが、都道府県が青少年保護条例というものをつくりまして、それぞれ映画その他の問題をあわせまして、映画の観覧の制限等によって青少年に与える害悪を最小限度に食いとめたいということで努力いたしておるわけでございます。  映倫の問題はいろいろございますし、先ほども文部大臣からお答えがございましたが、映倫が全国民の立場に立って審査をしているかどうかという点につきましては、かつて総理府で一昨年マスコミ懇談会をいたしました場合も問題になりまして、映倫はいまのままの機構ではたして完全な自主規制ができるかどうかという点も問題になったのでありますが、しかし特に新しい結論を得たわけではございませんで、いまのたてまえのままで一そう努力していく。同時に、映画は斜陽産業でございますので、その映画の発展のためにやはりいい映画を国民が進んで見るという国民運動を一方において盛り上げる必要があろうといったような結論が出されておるのでございます。なおそれ以上にこの問題につきまして積極的に対策を立てるという問題になりますれば、いまの条例の問題もしくは映倫のいろいろな将来の組織の問題等ございますが、いまのところ中青協といたしまして結論を出している段階ではございません。
  134. 辻原弘市

    ○辻原分科員 私は、ただ見ちゃいけない、映画館に行かせるな、そんなことを申しているのではありません。結局はいい映画であれば、私は観客は動員できると思います。そうして一般の国民がもっと見やすくできるように、減税措置等も、これはイタリア等の例から考えて、われわれも大いに推進をしたいと思うのでありますが、そのためには、前提としてやはり国民に歓迎されるものでなくちゃならぬ。私はかつてこういうことを主張し、提言をしたことがあります。文部省では映画のライブラリー等を企画されて、いまやっておられるようでありまするし、なお文部省の推薦映画として、年間若干の予算をもって審査に当たられて、推薦もしておられるようでありますが、さらに必要とあらば、私は全国的にそういう文化映画あるいは青少年の、昔の観念に基づく教育映画ではなくて、ほんとうに新しい時代にふさわしいものをつくって、それを常設的にやれるような児童映画館の構想まで進めてはどうかというようなこともかなり主張してみたつもりでありますが、そういう積極面をあわし、一面においては映倫の運用の全きを期して、社会的に指弾を受けないで映画産業が産業的にも発展をし、また教育的にも大いに貢献をしてもらうような、そういうあり方をつくらなければいけない。そういうような時代的要請というものが、今日ものを言わない多くの父兄の心の中に秘められておるということを、ひとつそれぞれ関係される方々も、単におざなりのお考えではなくて、真剣に取り組んでいただきたいということを、私はこの際文部大臣なり総理府の所管の方方にも申し上げまして、この点については、いずれ必要とあらば私はいろんなそういう資料も持っておりますので申し上げたいと思いますが、本日は具体的な例等についてははばかりますから申し上げませんけれども、どうぞひとつ積極的に御研究を願いたいと思います。  時間がございませんから、あと一つ二つ別の問題でお尋ねをいたしておきます。  次に、私は私学振興の問題について大臣お尋ねをいたしておきたいと思います。すでにいろいろ議論をせられておりまするし、振興をはかるということは、これは愛知文部大臣特にかねがね御熱心でありますから、私はそれについての見解は承る必要はないのでありますが、特にいまあえて私がお尋ねをいたしますものは、四十年、四十一年に、文部省の統計によりましても、大学に進学をする生徒の急増は約五万名にのぼっております。これは国立に比較をいたしてみまするとかなりの数であります。言いかえてみると、私学のウエートというものが、いわゆる子供たちの進学に対する大きなコントロールの場所としてここに浮かび上がってきているという時代背景から、何とか私学が、先般来も当委員会で授業料値上げの問題について指摘をされましたように、父兄の負担に耐えられないようなそういう授業料の値上げとか、あるいは教育内容を落とさなければならぬような私学の経営のあり方とか、そういうことをなくしていくために一体どうするのか。もちろん国費をうんとつぎ込んでいけばいいに違いがないのでありまするが、また一面、私学というのは私学振興法なりあるいは教育基本法等のたてまえから推して考えましても、これは国が直接関与すべき性格の学校ではないとするならば、国費を投じても私学に対する制肘は加えてはいけない、こういう原則は、私学側にも、またわれわれが私学の将来から考えても当然あるわけでありますから、したがって、それ以外にとれる方策というものは最大限におとり願わなければならぬ。  そこで、毎年問題になる点でありますが、一体外国では、私学の場合に、授業料あるいは国費の投入等以外に大きなウエートを占めているものは、何といっても一般の寄付金であります。ところがわが国では、最近はやや進歩いたしましたけれども、従来とかくこの寄付金については税その他制約がありまして、なかなか思うようにはいかない。もちろん税だけではなくて、一般の方々の私学に対する協力というものも考え方として推進しなければなりませんが、とりあえずそれのさそい水になるのは、私学に対する、あるいはそれに関連をしている教育に対する寄付金については税を課さないのだという、原則が確立されるということが、何といっても私は必要だと思います。いまさらこれは言うまでもないのでありますが……。そこで具体的にお伺いをしたいのでありまするが、現在の指定寄付金の制度、またはそれ以外に全面的に免除されている制度、こういうものが十全に活用をせられておるかどうか。これはひとつ文部省なり大蔵当局から少し具体的に承っておきたいと思います。
  135. 愛知揆一

    愛知国務大臣 具体的に数字をあげてのお答えは別に関係政府委員から申し上げたいと思いますが、先般やはりこの席でも申し上げたとおり、率直に申しまして、私学の内外の発展の歴史をたどってみましても、本来私学というものは大体寄付によって運営をしていくというのが本則であって、そういう発展の歴史を持っているようでございます。したがって、私学に対する寄付等については、各国ともいろいろの税法上の取り扱いなどでもできるだけの便宜をはかっているように私は理解いたしておるわけでございます。日本の場合におきましても、税の当局も見えておりますから私から何もこまかく申し上げる必要はありませんが、いままでも相当の配慮はしてもらっておるわけでありますが、特に四十年度、四十一年度を控えまして、この際と思いまして、あらためて文部省といたしましては数項目に問題を整理をいたしまして、内閣に置かれてあります税制調査会等にも真剣に私どもの態度や考え方を訴えたわけでございます。その一部については実現の緒についておるようでありますけれども、私としては遺憾でありますが、私ども考え方は取り上げられる段階に至っておりません。これは私学それ自体の運営の状況を見てみましても、最近は借り入れ資本に非常な比重がかかっておる。また同時に、学生のいわば納付金が、年々歳々非常に比重が増しておる。こういう状態をこのまま放置するわけにまいりませんので、それはそれなりにいろいろの対策考える必要がございますが、同時に、寄付金あるいは授業料を負担する父兄あるいは雇用者の立場というようなところに、あたたかい配慮を税法上もしてもらいたいものである。なるほどこれは所得の控除その他ということになれば、一般的な控除の問題の中で吸収して解決すべきであるとか、あるいは学校へ行ける者の授業料についてのみ税法上の減免措置をとることは、税の体系上できないというようなことも、私も理解できます。できますが、同時に最近の進学率等が示しておりますように、まあそう言っては非常に率直過ぎますが、非常な低所得層の進学率も急激に伸びております。あるいはまた、働きながら勉学の道を進みたい若い有為の青年もたくさんあります。こういうふうな情勢をひとつあたたかく理解をしてもらって、税あるいは歳出予算それ自体、その他各般にわたってもう少しこの考え方を積極的に展開してもらいたいというのが、私の心からの念願であります。したがって、それだけの期待が充足できるかどうかは、またあまりに過大な期待をかけることはできないかもしれませんけれども、私学振興方策の特別の調査会をつくっていただきたいということを念願いたしておりますのも、この調査会等におきましては、そういう問題をも含めて、各界の権威の方々から積極的な御意見を承りたい、これを取りまとめて逐次実現の緒につかせたいというのが私の気持ちでございます。
  136. 泉美之松

    ○泉政府委員 私学に対しまする寄付金の制度につきましては、辻原委員御承知かと思いますけれども、個人の場合と法人の場合とで若干違っております。  まず個人のほうから申し上げますと、個人の場合には特定寄付金という制度になっておりまして、その支出いたします寄付金が個人の所得の三%をこえ、二〇%以内の部分につきまして、税率控除三〇%をいたすことになっております。それから法人の場合におきましては、まず第一は、法人の寄付金損金算入限度という制度がございまして、これは所得の百分の二・五と資本金等の千分の二・五と合計額の二分の一を損金算入することになっておりまして、その範囲内の寄付金でございますれば、私立学校に出した寄付金でありましょうと、あるいはそのほかの寄付金でありましょうとも損金に見られる、それが一つでございます。  いま一つは試験研究法人なんかを含めまして学校教育の助成あるいは育英のため、こういう制度でございまして、これは先ほど申し上げました一般の寄付金の損金算入限度と同額まで別ワクで損金算入を認めるものでございます。したがってこれも所得の百分の二・五と資本金等の千分の二・五の合計額の二分の一ということに相なるわけでございます。  そのほかに指定寄付金という制度がございます。これはさらに私学の場合に二つに分かれまして、一つは校舎が火災、地震あるいは台風等によりまして壊滅、破壊されました場合に、その校舎の復旧等のための寄付、これは全額損金に算入することになっております。  それからいま一つは、学校の敷地、校舎その他付属設備を施設するため、先ほどのは復旧のためでございましたが、今度はそういう敷地、校舎その他の設備を拡張する場合に適用があるものでございまして、これは大蔵省に届け出いただきまして、大蔵大臣の承認を経ますれば、その告示をいたしまして、それに基づいて支出された寄付金は全額損金に算入する、こういう制度になっております。  具体的な数字で申し上げますと、昭和三十八年の四月一日から昭和三十九年三月三十一日までの間に、私どものほうへ私立学校から、そういう学校の敷地、校舎その他の付属設備を施設するための寄付金として承認を求められましたものが、新規のもので総額で三十七億千五百万円、それから前年に承認しておりまして、寄付金が集まらないからさらに期間を延長して認めてもらいたいというものが二十八億九千五百万円、合せまして六十六億一千万円と相なっております。指定寄付金の総額が百三十二億七千百万円となっておりますが、これは全体の寄付金の約半額に当たっておるわけでございます。  なお先ほど申し上げました、第二のほうに当たります育英資金等の部分は、これはこまかく分かれておりませんのでわかりかねるのでありますが、教育または科学の振興というものの中に入っているわけでございます。このほうは新規分が十九億四千七百万円、延長分が五億六千七百万円、合わせまして二十五億一千四百万円と相なっております。この全部が育英資金ではございません。もちろん社会教育の分もこの中に入っておりますので、こまかくはこの件数の中を洗ってみないと、そのうちの育英資金の分が幾らかということはこの席でわかりかねますけれども、金額としてはそういう意味で相当大きな金額に相なっておると思う次第でございます。しかしながらなおこういった点につきましては、いろいろ改善を要望されております。先ほど文部大臣からもお話がございましたが、文部省からも御要請もございますので、私どもとしましてさらになお検討を続けてまいりたい、かように考えておるのでございます。
  137. 辻原弘市

    ○辻原分科員 時間がございませんからこまかい点は省略をいたしますが、いろいろな制度を逐年とりながらも、数字から見ますると、あまり大きな実績があがっておらないのですね。それにはどこかに欠点がある。一体それは手続の点に欠点があるのか、ないしは寄付を出すほうにやはりそれだけの認識がなくてお出しにならぬのか、あるいは損金算入の限度が足りないのか、あるいは経理上何がしの、たとえば指定寄付金でいいますと、証明書を交付される分はいいが、そうではなくて、全額損金に算入されるというようなことは、これははっきりしたものがないのでかえって出しづらい、こういうことに相なるのか、そこらにいろいろ私は問題があるように思うので、その点について両省とも今後さらに具体的に検討されるというお話でありますが、当面大蔵省としてはどういう点に改善を加えていったほうが実効があがる、こういうふうにお考えになっておられるか、その点をひとつ主税局長から承っておきたいと思います。
  138. 泉美之松

    ○泉政府委員 指定寄付金につきまして、実際寄付金を募集される方と、それから募集する側との意見をいろいろ拝聴いたしてみますと、やはり会社としてはできるだけ金を出すのはごめんをこうむりたいという気がありますものですから、寄付金をお願いに参りますと、指定寄付金の証明書を持っていらっしゃいということになります。実は証明書がないと寄付をお断わりするという口実に使われている傾向が多分にあるように見受けられます。そういう点からいたしますと、私立学校に対する寄付金は、無条件で損金算入という制度が望ましいというふうにも考えられますけれども、無条件では、そういう証明書が出ないということになりますと、かえって寄付が集まりにくい。むしろ証明書をもらって法人税の申告書にくっつけて、この分はこういう趣旨のものであるから全額損金算入をしてもらいたいという手続のとれるもののほうが損金算入が確実であるから寄付として出しやすい、これがはなはだおかしな事情でございますけれども、寄付を集める側あるいは寄付を出す側のほうの実情のようでございます。そういう点から見ますと、先ほど申し上げました寄付金の制度につきまして、今後改善していくのにはどうやったら、それでは会社が寄付金を出すのに出しやすいようになるか、この方法をもっと検討したいというのが一つ。それからいま一つは 寄付金につきまして、先ほど申し上げましたように、指定寄付金には学校の敷地、校舎その他付属設備ということになっております。そこでたとえばある講座を寄付したいというような場合、ここに対象にならないことになっております。しかし、外国ではよくこういう講座を寄付したいというのがございまして、一定の基金をつくりまして、その基金から生ずる果実をもちまして、年々一つの講座を学校でやっていくというような制度もあるようでございます。そういったことを今後日本としてどういうふうに考えていったらいいか、それにはどういう手段をとったらいいか、こういう点もあわせ文部省当局と御検討いたしたい、かように考えておるのでございます
  139. 辻原弘市

    ○辻原分科員 さらに、たとえば私学においてある事業を営んでおる、そういう場合に、その事業収益が確実に当該私学法人の教育のために使用されたというような場合も、かなり課税をされているような状況を聞くのであります。しかし、限度として三割まではそれを認めるのだということになっておるようでありますが、そういう点につきましても、実際教育事業の範囲で行なっている事業であるならば、そこまで厳密にする必要はないのじゃないか。かりにそのあがった収益が別途の目的で使われるということであるならば、これは捕捉して、一般事業法人と同じ扱いでよろしいかと思いますけれども、教育事業に使われるということは、それだけ学校としては父兄、生徒の授業料、納付金等を一面減らしていくという経営が可能なんですから、そういうことの見きわめがつけば、三割ということではなくて、もっと大幅にそれを認めていっていいのではないか、こういうことも私は考えるのであります。問題がこまかくなりますから、きょうはいろいろ申しませんが、大体行き当たっておる問題は両省ともよくおわかりだと思います。思いますが、総体的にいって、何で日本の場合にせっかく試験研究に対する寄付金の減免の措置がありながら、この方面が伸びないのか、なぜ育英資金に対する寄付金がもっと大幅に伸びてこないのか。私はこの点非常に残念に思っておるわけで、そういう点やはり税法問題として十分御研究を願いたいし、さらに先ほど大臣お答えになりましたように、調査会を設けておやりになるそうですから、これらも各界の意見等も十分反映されるような形をとって検討を進めてもらいたいと思います。  そこで、その問題について最後に文部大臣にちょっと伺っておきたいのですが、調査会はいつまでに結論をお出しになるつもりであるのか。それから調査会は、いま私が申し述べましたような減免措置等の問題だけでも、かなり各方面の意見を聞かなければならぬと思いますが 一体どの程度経費をもっておやりになるつもりなのか。この点を承っておきたいと思います。
  140. 愛知揆一

    愛知国務大臣 大体二年間で任務を終了していただきたいという気持ちを持っておりますが、いま諮問のいたし方も真剣に検討いたしておりますけれども、急いで御意見を出していただきたいものと やや恒久的なものとに振り分けまして、恒久的なものはある程度時間がかかってもよい案をつくっていただきたいと思います。さしあたり四十一年度が、先般来再々御論議になっておりますが、ピークでございますから、ものによりましては四十年度のむしろ前半くらいに中間答申でもいただきたいという種類の問題もあるわけで、そういうふうな運営のやり方をしていきたいと思っております。  それから経費は、特にこういったような種類の問題でございますから、関係の方々の精神的御協力を主といたしまして、ほんとうに会議の運営費だけ、当年度は二百数十万円という程度にとどまっております。
  141. 辻原弘市

    ○辻原分科員 金額といい期間といい、私どもはちょっとその点については不満であります。大臣も後段に述べられましたように、四十一年のピークにいまの私学の問題が間に合わなければ、これはせっかく調査会をやったその価値というものは半分の効果しか出ない。だからでき得べくんば二年という——それはゆっくり慎重にということもいい場合がありますけれども、この際はひとつ懸案の問題についてはすみやかにやはり結論を出して、すみやかに予算措置をすべきはし、制度の改正をすべきものはするという形に積極的運営をおやり願いたいと思いますし、また二百万そこらの経費でもっては、これだけ大きな問題をかかえて十分な活動は発揮できないと私は思います。名前は調査会ですから、それだけの調査をおやりにならなければ、単に人を集めて話を聞くというようなことだけでは、これは根本的に私学の問題を解決する方法ではなかろうかと思います。そういう意味で、ひとつ予算、それから答申の時期等についてはさらに研究を加えられんことを私は要望をいたしておきたいと思います。  私の持ち時間がまいりましたので、あと僻地教育の問題ないしは特殊教育の問題等も、めったに聞けない問題についていろいろ承ろうと思ったのでありますけれども、これはまた別の機会にいたしまして、私の質問をこの程度で終わりたいと思います。
  142. 植木庚子郎

    ○植木主査 帆足計君。
  143. 帆足計

    帆足分科員 私は平素外務委員会に所属しておりますが、予算分科会におきましては国民として痛感しておりますことを率直に申し上げまして、そして施政の参考にしていただくことが適切と思いましたので、きょうは特に出席させていただきました。したがいまして、文部大臣におきましては、おざなりにお聞き捨てにならずに、もし私どもの意見がもっともなことであるとおぼしめすならば、必要なる実行についての御協力をお願いしたいのでございます。  教育の問題は学校の教室だけの問題でなくて、家庭、社会環境、またこまかく申しますならば、学校の校舎の風格から学校の校庭の樹木の一木一草に至るまで、子供たちに大きな影響を及ぼすのでございます。そういう総合施策において伝統的に日本の教育に欠ける要素がありまして、たとえば学校の校舎一つ、校庭一つにつきましても、外国のミッション・スクールなどに見られますような一種の清潔な雰囲気、感じやすい子供たちに対して自然の恵みを与えるような機会に乏しいこと、そのような点に十分な配慮のないこと、国土の美しさ、それから空や花や木の美しさを毎日子供たちに感じさせるような環境の整備がないこと等を非常に残念に思っております。  きょう特に申し上げたいのは、ただいま辻原君が指摘しました映画の問題にも関連をいたしておりますが、全く同感でありまして、映画はただいまアヘン窟のような状況になって、ついに悪循環を起こして、このままではアヘン中毒になりまして、観客はますます強い刺激を求めまして、逆に観客層が減っておる状況でございます。一昨年「五番町夕霧楼」という優秀な人道主義的な映画が上映されましたが、ほぼあれが最後でありまして、その後の映画界の状況はもう驚くべき状況で、気違いさたでございます。最近「怪談」というすぐれた映画が上映されておりますが、その間の一年半の空白というものは、アヘン窟に入ったような思いがするのでございます。しかし、映画は行こうと思わなければ行かなくて済むわけでございますけれども、テレビになりますと、見ようと思わなくてもつい目に入るのでございますから、私は昨日郵政大臣に厳重な注意を促しました。私の家庭でも子供がちょうど大学の入学試験前後でありましたから、テレビを買うことを控えておりまして、昨年の秋、初めてテレビを買ったのでございます。おもしろくて、ついテレビにかじりついて、読書のいとまもない。一億総白痴とはよくぞ言ったものといいながら、ひまのときにはテレビをながめているという状況であります。中には非常に苦心をされたよいニュース、よい映画もございますけれども、しかし相当部分というものが、ほとんど犯罪映画。一時の、いわれなくインディアンを殺す西部劇は——まあ、西部劇の中でも、りりしい開拓者精神をたたえた西部劇はまことにさわやかなものですけれども、いわれなくインディアンを殺す西部劇は下火になりましたが、何といっても圧倒的なものは犯罪映画です。その犯罪映画もたとえば、ビクトル・ユーゴーが描いた「レ・ミゼラブル」、これはジャン・バルジャンの犯罪を描きましたけれども、犯罪の背後にあるのは貧乏であり、社会制度の欠陥を指摘した人道主義的な映画でありますし、「罪と罰」にいたしましても、描こうとしたのは、その背後にある人間の美しい心を描こうとしたのであって、犯罪そのものにそれほど重点を償いたものではありません。しかしいまは、犯罪そのものを愉快に思うというような悪弊が天下にみなぎっておりまして、まことに異常なことでございます。先ほど辻原君がこのことを痛烈に指摘いたしましたが、与党の皆さんが紀元節を考え国民に愛国心を植えつけようと御努力をなさり、また人間像を子供たちに示したいと御努力なさいましても、テレビや映画の状況がかくのごとく、しかもテレビに至っては、もう言語道断の状況を放置されておいて、何の人間像ぞやと言いたいところでございます。犯罪映画のウエートがあまりにも大き過ぎる。これは非常識に多いのです。しかも、大部分はアメリカの映画ですが、私はアメリカの恥部を他国民の前にさらしているようなものではあるまいかと思っております。こいねがわくは、世界各国、すぐれた映画があるのですから、私どもは世界の映画を知りたい。日本はアメリカとも大きな貿易をします。しかし、東南アジアとの貿易も大きいし、中国、朝鮮との貿易もまた重要です。さらに驚くべきことは、これほど距離が離れておって、ヨーロッパとの貿易も相当の比重を占めておる。すなわち、日本は世界を理解し、世界に理解されなければ生きていかれない国です。したがいまして、せっかくの映画ならば、私はインドの映画にもすぐれた映画のあることを知っておりますし、エジプトにも年に何本かはあります。ヨーロッパにもすぐれた映画はたくさんあります。選択に不自由はしないのに、なぜこのように片寄っておるのか、これも病的現象でなかろうかと思いますから、御注意をいただきたい。  映画編成の諮問委員会のようなものが渋沢秀雄委員長を中心としてできた話も伺いまして、郵政大臣もこのことには心を痛めておるということを昨日も承りましたが、何と申しましても、郵政大臣は技術関係から観察している大臣でありまして、これはやはり文部大臣が重要な助言をなされ、忠言をなさることは、私は必要であり、その責任であると思いますから、繰り返して申すわけです。  編成について欠陥があるほかに、コマーシャルですが、外国のテレビを見ましても、映画のまっ最中にインスタント・ラーメンなどといってわめくテレビは、まあ世界に類がないでしょう。先日、かの悲劇ハムレットでありましたか、オフィーリアの頭が狂おしくなる、その直前にインスタントラーメンとこられましたが、まことに辟易いたしました。人の心の流れはナイヤガラの瀑布ほどのエネルギーをもって流れておると、心理学者は言っております。その心の流れの最中に、ラーメンが出たり、お前、へそないじゃないか、というのが出たり、いいと思うよ、なんとわめかれたりしまして、これは人間に対する私は侮辱だと思うのです。こういうことを文部大臣がほったらかしておいて、何の人間像ぞや。私は冗談を申しておるのではありません。したがって、これ以上こういうことを続けるならば、私は文部大臣のおうちをおたずねして、応接間のラジオをたたきこわしてしまいたいような凶暴な衝動にかられる次第でございます。それほどまでにわれわれを憤らしめておるということを御承知願いたい。  各国のテレビに対する規定は、専門の事務局のほうでもお持ちでございましょう。英国ですら、一つの劇の始まる前か終わりに広告を許しておりますが、まん中には許しておりませんでした。最近少し緩和されましたけれども、それでもよほど注意して、どうしても入れねばならぬときには、適切なものを幕間に一つくらい入れてもいいということになっておると聞きましたけれども、それは例外中の例外でございます。わが国の映画でも劇でも、テレビの最中に四度も五度も出てくるのです。人の思考の流れを突如として何回か中断し、何千万の国民がそれを聞いておるときに、それが原因となって精神中断ノイローゼにならないと、どうして保証し得ましょう。ハムレットの悲劇の最中にインスタント・ラーメンというようなことを子供のときから植えつけられて、それで健全な偏理を持つ子供が育つでしょうか。冗談ももういいかげんにしてもらいたいと思います。しかも薬の広告が一番多いのです。私は、薬というものは冷静に科学の進歩の状況を国民に訴えるものであって、それは活字で広告すべきであって、一分間か二分間で叫び、わめくべき性質のものじゃなかろうと思うのですが、文部大臣はどうお考えですか。もちろん薬は広告に非常に大きく依存しておる。なるほど薬九層倍と言いますから、そうでしょう。しかし薬は科学の進歩の状況を私どもがよく理解するために、それが薬の前提条件であり、また医師の指導を受けるのが第二の条件であろうと思います。わが国における薬の宣伝の技術は、全く卑劣きわまるものである。しかしラジオとて、採算が合っていかねはなりませんから、それは別な方法で考えればいいのではないでしょうか。広告は幕間にしていただきたい。映画がときどき中断して、そしてラーメンが出てきたら、映画劇場に行く人はなくなるでしょう。ラジオでがまんしておる者は、NHKには料金を払っておるけれども、あとはただじゃないかというて、われわれが侮辱を受けねばならぬとするならば、これは基本的人権に対する侵害であると思います。したがいまして、文部大臣の裁断によりまして、別にラジオをいじめるわけではありませんけれども、広告は幕間に限る英国またはヨーロッパ流の規約に改めていただきたい。これをなさらないならば、あなた方の御勉強なさっておる百の人間像も、辻原君の言ったように、おなら一つにすぎないということになると思います。ましてや、これは子供たちが見るのです。きのう田原君は、少年少女のためのラジオ局を一つつくったらどうであろう——いま教育テレビでしたか何かが、最近ギャング映画にいつの間にか人がかわって変わっておる。最近水野さんがなったということを聞きましたから、改善されると思いますけれども、しかし教育テレビなどがほんとうに教育のことをまじめに考えてやるべきであろう。もちろん、それは教育テレビだけれども、半々だということも聞きますが、しかし半々であっても、教育テレビは教育テレビですから、ギャング映画などにあまり重点を置くべきでなかろうと思います。放送法の規定は皆さん御承知のとおりでありまして、さっき辻原君が読まれたとおりであります。人命を軽視する言動は是認しない。暴力行為は否定的に取り扱う。その表現は最小限にとどめる。犯罪を肯定したり犯罪者を英雄化してはならない。フィクションの場合には特に魅力的な感じを与えないように注意する。この規定にことごとく違反をしている。何のテレビ会社の社長ぞや、常務ぞや。政府は次の認可の機会にそれらの常務をやめさせる、社長をやめさせる権能があるはずです。認可を取り消す権能もあるはずです。私は突如としてそういう手荒いこととを要求するものではありませんけれども、目に余ることはやめていただきたい。これは与党、野党の問題ではなくて、党派を越えた国民の声であろうと思います。人生さまざまでございますから、悲劇もけっこうですし、喜劇もけっこうです。健全なエロチシズムも悪くはありません。しかし度を過ぎたことは、これはよくないと思うのです。ましてや、テレビにおきましては人が選択する余地なく、聴覚に入り視覚に入ってくるものですから、これは株式会社であろうとも公共の事業であるという認識をもっと徹底さしていただきたい。したがいまして大臣の御在任中に、もう演劇の最中の、映画の最中の広告はやめていただきたい。そして広告は幕間にする、これだけでもひとつきめていただきたいと思います。  広告ということは大切なことでありまして、新しい商品の生産、よき科学技術の進歩、それを知らせる手段でございますから、ほんとうは愉快なものであります。化粧品の広告などに、実に美しい広告だと思って私感心した広告も幾つかあります。家内に聞いてみましたら、あれはとても高いのよと言われてちょっと辟易いたしましたけれども、高くとも美しい広告は美しい広告だと思って私はよい感じで見ました。広告というものはそういうものであるべきで、最近スカラ座などで幕間にやっております広告は、広告というより芸術品を見ているような思いがして、まことに楽しいもので、広告によって商品に関する知識を啓蒙していただくならば、それはいいことだと思います。したがいまして、広告の方法に間違いがあるわけであります。第一、ああいうやり方では売れないと思うのですがね。あれで買うでしょうか。私は、反感を持って、多くの人たちはこんないやらしい会社の商品は買うまいと思うのですが、たぶん広告係が錯覚を起こしているのではないかと思います。最も遺憾なのは、三菱商事のような堂々たる会社が、宮沢賢治さんの「雨ニモマケズ」というあの歌をもじりましてばかげたことを言っております。あの歌は、子供たちのたくさんの教科書に出ている詩で、日本の詩の歴史に残る絶唱の一つです。それをああいう形でコマーシャルに使うのは、詩人に対する侮辱でありまして、三菱商事は相当の資力がありますから、宮沢賢治作品刊行会から侮辱罪として訴えられて、そして損害賠償を請求されたならば、一体どういうことになるでしょうか。さっそく三菱商事広告部長さんは首、と言えば気の毒ですから、これは人道的問題ですから、謹慎を命じ、反省を命ずべきであって、社長、重役といえどその責任を痛感して、今期のボーナスは半額に減らすことが必要であろうと思います。このようなことを国会で言われるような広告のしかたをひとつ反省していただきたい。  長くは論じませんが、とにもかくには大臣御在任中に、開幕最中の広告はやめていただきたい、それを続けておやりになるならば、私は軽犯罪法に問われようともがまんできませんから、郵政大臣文部大臣の応接間にすわりこんで、そして談判いたさねばならぬ、こう思っている次第です。まずひとつこれについて御答弁をお願いします。
  144. 愛知揆一

    愛知国務大臣 帆足委員からたいへんいいお話を承りまして大いに敬意を表するわけですが、御案内のように、放送法の関係は私だけではいかんともなしがたいので、これはすでに郵政大臣にも御意見をお述べいただいたようでございますから、郵政大臣その他とも相談いたしまして、全く劇の途中で広告が出てくる、オフィーリアとラーメンいうようなことは私も肝に銘じて頭に置きまして、できるだけの善処を申し上げたいと思います。
  145. 帆足計

    帆足分科員 率直な御答弁をいただきましたが、しかし言行一致は教育の基本でございますから、ひとつ大いに期待いたします。また幸いにして郵政大臣にはこの御注意を非常に喜んでいただきまして、確かに同感である、善処しようという御確約をいただきました。テレビのほうには、それで広告収入の減少で経営にお困りにならないように幕間における広告で十分な効果をあげることができます。よいデザイナー、よい演出家と御相談くだされば、絶対にそのほうが効果的であって、収入もふえるに違いありません。私は無体なことを申し上げているわけではありませんから、ぜひともひとつ御実行願います。  あと時間が幾らもありませんから一、二申し上げますが、私立大学の援助につきましては、もう辻原君が余すところなく申し上げたとおりです。私の娘が東大に入りたいと言いますから、女の子が東大に入る必要はなかろう、こう言いましたら、だっておとうさん、東大に入れば月謝が安いから親孝行じゃないの。おまえ、はいれる見込みがあるか。もう受けたわということで、三、四年前でしたか、できのいい子でしたから、すらっと入っておりました。しかし東大に入る理由が、ただ親孝行で入るとすれば、私大に入った子は親不孝かということになるわけで、それは結局親の負担が重過ぎるということでしょう。したがいまして、私も子供がたくさんおりますから、全部東大というわけにはまいりません。そうすると四月の授業料は頭痛の種です。そうすると、人はこういうのです。錯覚を起こして、代議士は月四十万円もらっているではないか。ところが何としよう、われわれの手取りは御承知のように十二、三万円です。東京の議員がそうですから、地方におる人はどういう生活をしておるでしょうか。そこでもうこれは私益と公益と一致するわけですが、この四月をどうして切り抜けるか。建築科と医学部におります。これは表口から入った子たちです。子供の名誉のために言っておきますが、そうすると約五十万円要るのです。卒業した者に対しても卒業の縁故で、卒業後また数カ年して寄付金を求められると、やはり子供がかわいいし、学びやがかわいいというのでまた応じます。それは政府がなすべきことを、私どもがかわって払っておるのですから、先ほどのように税金は免除してもらいたい、こう思うわけです。ところが先ほど法人所得税の免除のことを伺いましたが、個人にも免除があるということを私は初めて承った。私は見落としていたのではないのですが、個人所得税申告の際の説明書には、保険料とか医療費とかは入っておりますけれども、教育上寄付した金について書き出しなさいということはたぶん書いてなかったんじゃないかと思います。家内も、総合所得税に対しては必死でありますから、手伝いさんと一緒に税の入門の書物を読んで、いま書き込みに無我夢中のときでございますけれども、書いてなかったんじゃないかと私は思うのです。したがって、一般の国民には徹底していないんじゃないかと思うのです。また徹底していないことを大蔵省は望んでおられる、とまで言えばこれはちょっと失言でありましょう。そこでもう一度伺っておきますが、個人所得税の免税については具体的にどうなっておるか。大部分の人が知らないと思うのです。許可を得た寄付金先という制度があることは、法人のことは存じております。ちょっともう少し御説明を願いたい。
  146. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 お答えいたします。  所得税関係では、学校法人のうち第一条の学校、すなわち大学から幼稚園まででございますが、その設置を主とするものに対して、個人寄付の一定額が税額控除になっています。寄付金の限度は所得の二〇%を限度といたします。
  147. 帆足計

    帆足分科員 そのことは所得税の申告の紙に書いてありますか、その解説が。
  148. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 税の用紙にどう記載されているか、私存じません。
  149. 帆足計

    帆足分科員 新聞を通じてこのことが知られますれば、問い合わせ殺到で皆さん喜ぶことと思いますが、法人の場合にはそういうことがあると思っておりましたけれども、個人にそういう恩典があるということをわれわれは知らないでまことに残念でした。ぜひともこれは広く知らしたいと思います。  同時に、その寄付金の内容につきまして、月謝と入学金——寄付に近いような形で入学金が取られているのですね。そういう場合は入らないんじゃないかと思いますし、また成績や慈恵のようなよい学校、まあどの学校もみなよい学校ですが、それらのよい学校で、大部分はいまのように免除の申請を経て認可になっておりますか。それとも認可になっていなくて、われわれが寄付金にあえいでいるというのが多いのでしょうか。
  150. 愛知揆一

    愛知国務大臣 私もいまこまかい点をちょっと手元に持っておりませんので、あるいは答弁が間違うかもしれませんけれども、私の理解しているところはこうなんであります。先ほど主税当局から説明いたしましたものは、たとえば特定の学校に対しましての指定を受けた寄付金の場合に、個人の所得から免除されるというものであって、ただいま帆足委員のお話しになり御指摘になっているものとは、ちょっと性格が違うのではないかと思うのです。それでいま帆足委員の御指摘になられましたのは、たとえば帆足委員の御令息が慶応なら慶応にお入りになる、そのときに一律に父兄から取りますような寄付金のことは、私は入ってないんじゃないかと思うのです。したがって、そういうふうな一般的なものについて所得税の申告の用紙等には記載されていない、私はこう思っておりますが、その点は間違いがございましたらさっそく訂正いたします。詳細調べて御答弁いたします。
  151. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 いま大臣お答えいたしましたように、入学時に共通的に取るものはこの寄付の中には入っておりません。なお、所得税につきましては、ただいま申告しました法人のうち一条学校の設置を目的とするものにつきましては、先ほど申しましたように税額控除として三%の足切りと所得の二〇%限度ということであるわけでございます。そのほか大蔵大臣の指定の寄付金につきましても同様の税額控除があるわけでございます。
  152. 帆足計

    帆足分科員 大蔵省としては徴税のためのいろいろの御事情もありましょうけれども、今日の入学金、それから入学のときの一般的寄付というものは、一面月謝のようでもあり、その本質はもう月謝の域を越えて寄付金の一種になっているわけでございます。その金額も、普通の中産階級にとりましては非常に大きな負担でございます。したがいまして、これに対する多小なりとも減免措置を御研究くださることは、もはや私は必要な段階でなかろうかと思いますから、御研究を開始していただきたい、こう思います。また大臣も、その点はまだよく存じてないというようなことがあるならば、やはりその点は御注意を促してしかるべき問題じゃなかろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  153. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実は帆足委員のこの席におられませんでしたときに、私からもある程度詳しく御説明いたしたのでありますけれども、ちょうど帆足委員がいま御指摘になり、御希望になっているような種類の授業料とかあるいは入学金とかいうようなものについて、父兄の負担を軽減する意味において所得控除をしてもらいたいということを含んだ文部省としての提案というものを、昨年の夏以来つくりまして、そうして税制調査会その他にできるだけの努力をして、陳情と申しますか話し合いをいたしたのでありますけれども、いまだその結論が出ていませんことを非常に私としては遺憾に思っておりまして、これについては私ひとつほんとうの信念として努力を継続いたしたい、これが私はきめ手の一つではないかとすら思っているぐらいでございます。
  154. 帆足計

    帆足分科員 文部大臣の御誠実な御答弁をいただきまして、せっかくの御協力をお願いいたします。私どもも協力いたします。  それから、時間がありませんからあと簡単にお尋ねいたしますが、奨学金というものは返さねばならぬ性質のものでありまして、失業それから病気の方を除いては返す義務がある、後進のために必ず返さねばならぬということを、私は先年の分科会で主張いたしまして、幸いにして文部省当局及び育英会の適切な処置によりまして、さしたる摩擦もなしに成績が好転しておるということを伺いまして満足いたしておりますが、今後ともやはり、借りたものは返すということはひとつ明確にしてお取り立てを願いたい。ただし病人と貧困者、それから失業者などの届出のあった者に対しては寛大な措置が必要であろうと思います。しかし、今日なお一般の私立大学等におきましては、特に夜間大学におきましては、奨学金が足りないために支給漏れになっておるパーセントが非常に多いように承っております。私は、どうしても財源がないならば、非常な低金利で——A種、B種に分けまして、低金利でB種のものの貸し付けも可能である。A種が何割、B種が何割——ほんとうはそうまでしなくてもよいでしょう。それほどの貧乏国ではないと思いますけれども、そうまでしてでも青年たちを助けたいと思います。  それからもう一つ伺いますが、学校という以上は、本来ならば食堂と、それから病気に対して責任がある程度持てなければ、学長さんと言えないのではないかと私は思っております。本来ならば学生下宿というものは認可制度にして、かりに未亡人の方が片手間に青年の世話をしてくださるとしても、認可制度にする。そのかわりに下宿料のとどこおりに対しては学校責任を持つというような制度がしかるべきではないかと私は思っております。いま直ちにそこまではいけないでしょうけれども学校が認定した下宿というものに対して何らかの優遇措置を講ずる、そういうことはあってしかるべきではあるまいか。私は幼少のときに両親を失いまして、まことにいたましい青年時代を送りました。そのときに、ある下宿におりましたときに、家のあるじがたいへん親切にしてくれまして、そのためにみずから虚無的になることを防ぐことができまして、今に至るまで、大戦争のために行くえ不明になりましたから御恩返しするすべもありませんけれども、もしその方が生きておられたならば、何としてでもお礼を申したいという気持ちがあるくらいでございます。  それからもう一つは、健康保険に親御さんが入っておれば半額になる。また、国民健康保険に入る方法もあるでしょうけれども、学生健康保険というものがあってしかるべきであるまいかと思うのでございます。これは研究課題としてひとつ御研究願いたい。と申しますのは、私は高等学校のときにフットボールの選手でしたが、突然喀血しました。そのとき学校は私に対してどうしたかというと、校医さんというのが来まして頓服を飲ましてくれました。腹薬を飲ましてくれたのです。胃腸が丈夫になれば結核に対する抵抗力が増すという時代ですから、それも悪くはないでしょう。しかし、体操の先生は私にこう言うのです。療養中の私に対して、体操の点数をやるために、君ちょっとでもいいから三分間機械体操のあれにぶら下がってくれないか、形式的にぶら下がれば点をやるからというのです。まことに体育の何たるかを知らざることはなはだしいものだと思うのです。からだの弱い療養期の生徒には、みなが体操しているときに、君は安静を要するからクローバーの草原の上で清らかな空気を吸ってしばらく休んでいろ、これが現段階における君に対する体操である、これが私はほんとうの体操の教育だと思うのです。しかるに機械体操に無理にぶら下がらして、三分間ぶら下がっておればとにもかくにも及第さしてやる。日本の教育にはこういう致命的欠点があって、そういう欠点の数多くが今日の日本におけるいろいろの形式主議というか、公共心の欠除などを生んだのではないかと思いますが、青年の健康に対して学校責任をとれないような機構では——しかも大学病院を持っておりながら無料に近い値段でやることはできない場合が多いのでございます。したがいまして、学生健康保険の川問題を私はやはり考えていただきたい。幸い付属病院の多い総合大学もたくさんあるわけでありますから、経費の面からいってもそれほどのこともあるまいし、自分の学校の生徒のことですから、ぜひともごれは御研究願いたいと思います。
  155. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず奨学金の問題でございますが、これはおかげさまで最近は回収率が相当向上してまいりました。なお一そうその回収率を向上させたいと考えておるわけでございます。奨学金に金利をつけることも考えてはどうか、これも確かに一つのお考えであると思いますが、いまは奨学金の貸し付けの幅を大きくするということが一番私どもとしてやりたいところでございまして、金利をつけるというようなことは将来の問題ではなかろうか。無利子でできるだけ大きく幅を拡大したい。当面はこれになお一そうの努力を払いたいと思っております。  寄宿舎認可制というような点は、これは一律に国家的にどうということよりも、まずそれぞれの大学等におきまして、いろいろと学生の補導ということと合わせて検討さるべき問題じゃなかろうか。一部はすでにそういうことをやっておられるところもあると思いますが、そういったような場合に何らかの形で、そういった寄宿舎といいますか、下宿先といいますか、そういうところへの長幼ということについてはさらに検討いたしたいと思います。  学生の健康保険の問題につきましても御同感でございますが、現行の制度でも国民健康保険には入れるわけでございますし、また、ただいま御指摘のとおり、将来の研究問題として考えてまいりたいと思います。
  156. 帆足計

    帆足分科員 最後に御注意また御理解を願いたいのですが、芸能人の諸君で非常に長い間苦労をして、そしてすぐれた芸術家になられる方もあるし、近ごろは時流に乗りまして、少年少女諸君がきわめて安易に芸能の世界で花を咲かす場合もあります。それはとにかくといたしまして、そういう芸能の培養土としては弱い一面があるところに便乗いたしまして、暴力団がはびこりまして、暴力団が興行師と結託し、芸能人に触手を伸ばしておる。これに対しまして芸能界の自覚ある人が敢然として暴力団と手を切るというふうにいま立ち上がっております。私はみごとな心がまえであると思う。これは議員としても大いに御支援いたさねばならぬことではないかと思っております。こういう事態になるまで手がつかなかったというのは、私は警察当局の怠慢もやはりあったのではないかと思います。由来、日本の戦前の警察というものは、偏狭な国粋主義と結びつきまして、暴力団と悪因縁があるのが警察である。ある地方に参りまして、暴力団が横行濶歩しておりまして、そんなのは断わったらいいじゃないかと言いますと、それはだめなんですよ、警察に言ったってだめですよ、ツーツーなんですよ。こういう例は私はまれにある例じゃないかと思うのです。しかし、ないことはない。これも人生の矛盾でございましょう。警察と暴力団が仲がいいということは、あまりけっこうなことではございません。しかし最近警視庁が暴力団をなくすために非常な御努力をなさり、適切な措置を講じておられるのを見て、だれしもこれに対しては拍手を送っておると思います。芸能人の問題に関連してこういうことが明るみに出されましたから、警察当局においてもせっかくのいい機会ですから、これに対して御支援をお与えくださいまして、そうして日本の芸能界が清潔なものになるように御協力を願いたいのです。これについて文部大臣並びに警察、公安関係の方もお見えと思いますから御意見をお述べくださり、また、いい方向に向かって御支援いただくことをお願いしたいと思います。
  157. 愛知揆一

    愛知国務大臣 芸能人と暴力団の関係でございますが、これも全く御同感でございます。おそきに失したかもしれませんけれども、たまたま去る一月の二十日でございますが、文部省に直接間接関係があるものといたしましては、全国公立文化施設協議会というものがございますが、この全国大会におきまして、暴力団体の主催するような会合には公立の文化施設は貸さないということを申し合わせておりまして、これを実行しておるようなわけでありますが、今後とも関係方面とともに御趣旨のような方向で大いに努力をいたしたいと思います。
  158. 日原正雄

    ○日原政府委員 警察におきましては、昨年一月暴力取り締まりの強化対策要綱を作成いたしまして、あらゆる面から暴力団を追い詰めていく体制をとってまいってきております。これは警視庁だけではございませんで、各都道府県警ともそういう方針でまいっておりまして、いわゆる頂上作戦あるいは資金源の封鎖、検挙、あるいは凶器の取り締まり、あるいは対立抗争事犯の徹底的な検挙というようなことを進めてまいってきておるわけでございます。お話しの芸能界の関係につきましては、やはりこの資金源というものとある程度のつながりが見られるわけでございまして、幸いに先般ある有志の方々によって暴力団と絶縁する決意を表明されたようでございます。私ども取り締まりに当たる者にとりましても、まことに喜ばしい次第でございまして、私どもとしてもできるだけの御協力を申し上げてまいりたい、かように考えております。何ぶんにも芸能人の方々も人気商売と申しますか、弱さのあることはいなめないところであろうと思います。私どもも協力申し上げるわけでございますが、地方ロケその他で芸能人あるいは会社等から積極的に警察に連絡をとっていただいて、その保護の方法等について協議をしていくような形を取り進めてまいりたい。いずれにいたしましても、芸能人の方々と警察の方々とお互いに協力いたしまして暴力団と絶縁するような形がスムーズに進められていくように努力してまいりたい、それがためには私どものほうもできるだけの御協力を申し上げるという覚悟でございます。
  159. 帆足計

    帆足分科員 最後に重ねて確かめておきますが、各新聞はこぞってこの問題について、社説で国民の注意を促し、これを支援する論説を発表いたしまして、朝日新聞におきましても東京新聞におきましても同じような社説を掲げております。これを読みますと、たとえば東京で芸能プロとか興行社とかいわれる百三十社のうち、暴力団とおぼしきものが経営しているものが三十四社もある、こういう状況であるし、また福島県の警察当局で調べますると、昨年同県下で暴力団関係者が公共施設を利用して歌謡ショーなどをやって得た収益は、千二百万円をこえている。この数字を見て私どもは驚きました。したがいまして、芸能人がこの際こうして立ち上がって暴力団との悪因縁を切るのには非常な勇気も要るし、苦労も要ると思います。しかし幸いにただいまの警視庁、警察当局の御答弁のようなことであるならば、どれほど力強く感ずることでしょう。朝日新聞の社説では、こういう場合に幹事役になって業界を取りまとめて暴力団と絶縁しようという努力をする世話人たちには、身辺の危険すら予想されておる。それに対しては必要に応じてボデーガードをつけるくらいの当局の御支援なり思いやりがあってほしいということを書いております。私は全くそのように思いますので、重ねて、そのくらい正当な市民の権利に対しては御支援くださるものかどうか確かめておきたいと思います。
  160. 日原正雄

    ○日原政府委員 私ども暴力団を検挙していくためには、その証拠となる証人、参考人、この身辺の保護を十分にいたさなければ、検挙はとうていできないというふうな結論を得ております。そういう意味から申しまして、証人、参考人につきましては、従来からも必要に応じてボデーガードをつけたこともございますし、また特殊な連絡方法をつくったこともございます。その他巡回連絡の強化、あるいは保護責任者の指名というようないろいろな手段を講じております。今回の芸能人の関係につきましても、同じような方法で、必要に応じて、私どものほうも人数に限りがあることでございまするから、最少の人数で最も有効適切な方法、その場合、相手方によって、あるいは状況によって違おうと思いますが、いろいろの方法を講じて保護の徹底を期してまいりたい、かように考えております。
  161. 帆足計

    帆足分科員 最後に、御承知のように、人生というものはきびしいものでありまして、政治の世界におきましては、保守あり革新あり、おのずから政治の争いというものはありますので、警察権力も、ときとしてはそれに巻き込まれてあらぬ恨みを野党から受けるということもあり得ますけれども、これは人生の矛盾でございますから、あまり深くお気にとめくださらなくてもけっこうですが、刑事事件につきましては、ときに凶悪な犯罪の取り締まりとか、それから暴力団に対する適切な取り締まりとかいうことになりますると、もともと政治に欠陥があって、また社会制度に欠陥があって生まれたことのしりぬぐいを警察の皆さまがなさらねばならぬということで、しかも公務員として十分なる生活待遇に恵まれておられないにかかわらず、よく社会、公共福祉のために警察の皆さんが御努力されておるということに対しては、党派を離れて、与党、野党とも、これは心から感謝しておることと思います。したがいまして、この民主社会に暴力が横行するようなことであってはならない、また、凶悪な犯罪が横行するようなことであってはなりませんので、今後一そうの御努力をお願いいたし、その御努力に、私ども議員として感謝いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  162. 植木庚子郎

    ○植木主査 村山喜一君。
  163. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私は教育の問題につきまして、角度をかえた立場から文部大臣に質問をいたしたいのでございます。大臣は中央公論の三月号をごらんになったと思いますが、いかがでございますか。
  164. 愛知揆一

    愛知国務大臣 どの記事でございますか、ざっとは中央公論三月号を読んでおります。
  165. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私がここでお尋ねをして、ただしてまいりたいのは、大臣の教育に対する姿勢の問題でございます。  御承知のようにこの中央公論に、F項パージの復活力という見出しで教科書問題が取り上げられておりまして、中学校の四十一年度の教科書の第一次の検定が終了をした、そこで書き直し、修正の要求がきわめて多く出てきて、社会科が半数以上は不合格になった、さらに国語科についても三分の一は不合格になった、こういうようなことが報道されているわけでありますが、事実はどういう状態であるのかお知らせ願いたい。
  166. 愛知揆一

    愛知国務大臣 全体を総括してみますと、三十九年度の中学校教科書の検定でございますが、これは四十一年に使用されるわけでございます。これは現に検定を実施中でございまして、まだ私といたしましては最終的な結果を承知しておりません。前回、昭和三十五年に検定をやっておるわけでございますが、私の承知いたしておりますことは、三十九年度の第一次の検定の結果については、前回の場合と比較して特に変わった傾向は見当たらないというふうに報告を受けておるわけでございます。それから今回の第一次の検定で不合格となったものの理由はどういうことであるかという点でございますが、これは主として、記述の内容が正確でない、あるいは教材等の選択が適切でない、あるいは表記表現が不適であるというような理由によるものでございまして、従来の検定における不合格理由と特に変わった不合格の理由はないようでございます。   〔主査退席、八木(徹)主査代理着席〕  それからF項パージについていま御指摘がございましたが、これは五人の検定官が一つの原稿について検定をする、そしてそれ以外に何らかの理由によって不合格ということになるような点について、AないしEの五人以外のFであるというようなことから、昭和三十年あたりでこういったF項パージというふうなことばが出たようでございますけれども、私の報告を受け、調査いたしましたところでは、三十年当時におきましても、いわゆるF項パージといわれるような事実はなかったのであるというふうに承知をいたしておるようなわけでございます。なお詳細につきましては担当局長から御説明なり御答弁申し上げたいと思います。
  167. 福田繁

    福田政府委員 ただいま大臣からお答え申し上げたとおりでございますが、F項パージというおことばがございましたようですが、これは特定の新聞などが使いましたいわゆる興味的なことばでございまして、過去におきましても現在におきましても、さようなことはございません。数字をもってお答え申し上げますと、現在審査中の中学校教科書につきましては、まだ第一次検定の段階でございます。原稿審査あるいは校正刷りの段階での審査をやっておるわけでございますが、昭和三十五年当時の第一次検定の段階におきまして、全体といたしまして申請点数が四百七十五点くらい、不合格の点数が百八十三点、率といたしましては三八・五%というような率になっております。ところで、現在やっております申請点数二百三十七点に対しまして、一次検定で不合格となっておりますのは五十四点、不合格率は二二・八%でございますから——もちろんこれは最終段階ではございません。中間の段階でございますけれども、率から申しますと、さようなことになっておりまして、理由につきましては先ほど大臣が申し上げたとおりでございます。別に特別に変わった検定をやっているわけではございません。
  168. 村山喜一

    村山(喜)分科員 この問題につきましては、教科書問題が盛んに論議をされましたときから、現実の問題として、文部省教科書調査官が、この内容については望ましくない、あるいは、この点についてはとりだというこまかい指示——具体的な指示は口頭でなされる、こういうようなことによりまして、これは明らかなF項パージではないかということが論議をされたわけであります。その後ここに伝えております内容から見てまいりますと、いま統計的な数次を御説明いただきましたが、なるほど、第一回のときよりも今回の三十九年度の第一次検定の不合格率というものは下がっております。しかしながら、内容的には一体どうなのかということが現実の問題になりますが、中央公論に記載してあります内容として出されておりますものを取り上げてまいりますと、次のようなものが問題点として出されております。  それは、修正削除の例としまして、中国の人民公社の場合を取り上げて、「生産の計画化に努め、農業技術の改善を研究して生産を高めつつある」こういう表現が出されておりますが、これに対しまして、批判として、「人民公社はいまでも成果をあげているか。内容が不適切だ」こういうふうに、削除修正といいますか、批判が行なわれている。大臣も御承知のように、教科書会社というのはきわめて弱い存在であります。だから、文部省の調査官あたりから、あなたのところはこういうふうになっておるじゃないか、これは不適切だ、こういうふうな批判を受けますと、編集者に相談もしないで、自分たちのところでかってにそれを文部省要求する線まで引き下げる、こういうようなことが往々にして過去にありました。問題になったのは、そういうようなことからF項パージだという話が出てきたのであります。これに対しまして、こういう批判が現実になされたということを大臣は御承知なかろうと思いますが、担当の福田初中局長はこのことについては御承知だろうと思うのでありますが、いかがでございますか。
  169. 福田繁

    福田政府委員 教科書につきましては、検定の条件といたしまして、立場の公正とかあるいは正確性ということが絶対的に要請されるわけでございます。これは御承知のとおりでございます。いま御指摘になりました問題は、出版労協などで言っておるような事柄であろうと想像いたすのでございますが、人民公社の記述の問題につきましては、もちろん、各教科書に人民公社なるものの紹介はそれぞれいたしておるわけでございますが、その記述の内容といたしまして、これは教科書でございますので、人民公社の具体的な姿に触れつつ、それについての一応の理解を得させるということについての配慮は望ましいわけでございます。しかしながら、その価値評価についてまでいろいろと立ち入って記述するということは適当でない場合がございます。したがって、そういう場合におきましては、調査官といたしまして、教科書会社のほうに、生徒の発達段階、学習内容等とにらみ合わせましてその辺は必ずしも必要でないんじゃないかというような注意をいたしておったこともございます。それをさしたものと考えております。
  170. 村山喜一

    村山(喜)分科員 具体的にこういうような事実があったということをお認めになった。これは内容に立ち至っている。しかしながら、客観的な事実としてその問題が承認をされるようであるならば、それは事実は事実として教科書に載せて差しつかえない。私は昨年の十月中国に参りまして、中国の人民公社の実態も見てまいりました。今日においては、あの中国の個人的な所有形態による農業では生産性はもう向上し得ない、機械化できない、やはりそこには集団化して、一つの大きな経営体として経営をしていく、これに対して国が助成を与える、あるいは人民公社内部において改革につとめていく、こういうようなことを通じて明らかに増産をしているのをまのあたりに見てまいりました。これは今日日本の農業が行き悩んでいる姿とまさに対照的なものとして私たちはとらえなければならない。日本農業が自立経営農家という形で農業基本法が生まれてまいりました。しかしながら、一町五反程度耕している農家でも兼業農化していかなければならない日本の実態というものが、農業白書等によって示されておる。これはやはり経営の打開という方向を、もちろん農産物の価格の安定というような問題等にも求めなければならないけれども、農業の近代化の方向というものは、やはり共同化の方向を目ざしていくよりほかに、日本の場合でもあり得ない。こういうのが今日の農政の基本的な方針ではなかろうかと思う。といいますのは、大臣も御承知のように、今回農林省あたりが出そうといたしております農地管理事業団の問題にいたしましても、あるいは高性能の農機具の促進の問題を農業機械化促進法の改正案で取り上げようといたしておりますが、これらはいずれも算入対象というものは農協に、そして共同化の作業の方向に重点を注いでいかなければ解決ができない、こういうような方向を出しておる。そして現在の小農主義ではもうやっていけないということを考えるがゆえにこそ、農地管理事業団というような構想が生まれてきているわけですね。そういうような方向というものが、日本においても客観的な事実として——これはいい悪いは別にいたしまして、そういう方向をとらなければ農業の生産性の上昇というものは期待し得ない、こういうような形の中から、現実において、あの一九六〇年以降の大きな災害を乗り切って、現実に中国が、戦前は言うに及ばず、解放後におきましても、人民公社という制度をとることになったがゆえに生産があがっていることは事実なんです。ここに出されている「生産の計画化に努め、農業技術の改善を研究して生産を高めつつある」なぜこれが悪いのですか。私は、そういうようなことを率直に、共産党の国であろうが、資本主義の国であろうが、事実は事実として青少年の前に示していく それを批判し、それを今度は自分のものとして乗り越えて、美しい祖国をつくり上げていくのは自分たちなのだという気持ちをつちかっていくのが教育のあり方ではないかと思うのでありますが、「人民公社はいまでも成果をあげているか。内容が不適切だ」こういうような判り切り方というものは、思想的な偏見というものに文部省教科書調査行が思い込み過ぎているのではなかろうかというように考えるのでありますが、この点はいかがでございますか。
  171. 福田繁

    福田政府委員 ただいま御指摘になりましたような事柄が何だかF項パージというようにおっしゃるようでありますが、そうではなくして、この記述の内容につきまして調査するのが、教科書調査官の任務でございます。そういうことで、これは従来ともそういう具体的な内容について検定をいたしておるわけでございます。  それから、内容につきまして申し上げますと、先ほど申し上げましたが、この人民公社の問題につきましては、これはやはり一般の教科書でも取り上げておりますが、いろいろな考え方もあると思いますけれども、その価値判断というものが、私どもの常識ではまだ流動的でございまして、教科書においてこれをいろいろと結論づけた評価をするということ自体がまだ早いのではないかというように考えるわけでございます。したがいまして、ただいま仰せになりましたような記述の内容ではたしてあったかどうかは、私は確かめておりませんけれども、おそらくまだいろいろ書かれておったのではなかろうかと想像いたしております。そういうことでございますので、一般の教科書などの記述とも勘案いたしまし、考えますと、以上申しましたような観点から、教科書として適当か不適当かという問題が起こってくるわけでございます。
  172. 村山喜一

    村山(喜)分科員 私がいま申し上げた内容以外にも書かれているようなことを言われまして説明がありました。しかし、中国に渡りまして、現実に悪いところは悪いと私たちは言うわけです。衣料の問題を見ましても、これは日本の敗戦直後のような衣料の状態である。紡績工場に行ってみると、十年は少なくともおくれている。しかし、人民公社に参りますと、解放前と比べても、あるいは解放後のその後の生産の足取りをずっと見てまいりましても、着実に前進をしつつある。そしてよく働いておりますよ。そういうような制度というものは、中国のあの歴史的な中から、あの行動の中から生まれてきたこれは一つの生産形態だと私たちは思う。そういうような中で、向こうのほうがそういうような方向によって生産を上げつつあるのだから、それを現実に認める。そして、生産を高めて、日本の資本主義よりもすぐれているとかなんとか書いてあれば、これは内容的にも不適切でありましょう。しかしながら「改善を研究して生産を高めつつある」これは事実なのだから、そういうようなものまであまりにも小さな重箱のすみっこをほじくるような教科書調査官がおる限り、日本の教科書は正しいものが生まれない。現実には教科書の編集は文部省の一調査官によってなされているというような印象を国民に与えている。この点については、私が申し上げましたこの程度のものであるならば、別に資本主義を打倒しようとかなんとかいうようなことに通ずる問題でもありませんし、国民は、これはあたりまえじゃないか、こういう受け取り方をすると思うのでありますが、なお流動的なものとして大臣はお考えになりますか。
  173. 愛知揆一

    愛知国務大臣 この点については、私もとくと研究をしたことはございませんが、ただいま局長から御答弁をいたしましたような経過であるのでありますけれども、私も、この中国の人民公社を中心とする農業問題につきましてここで論議をいたしますことはいかがかと思いますので、それには触れませんけれども、たとえは農業生産をあげようとつとめているということは、私は事実だろうかと思います。
  174. 村山喜一

    村山(喜)分科員 この問題につきましては、まだまだいろいろな例が出てまいりますが、ここに出されておりますのは、ほんの二つくらいでありますから、そうたくさんの例をあげて申し上げませんが、次の問題は、「神話は朝延の権威を裏づけるもので歴史事実そのものではない」こういうものに対しましては、これは修正を命じておる。「はっきりしないことを断定的に書くべきでない」それを修正さしたということは、これは神話というものと歴史的な事実というものとの間には明らかに関係があるのじゃないかということになってまいりまして、紀元節の問題に関連性が私はあると思う。御承知のように、文部省教科書調査官の中には、そういうような考え方を持った学者の人が入っております。そういうような考え方で神話というものに対する見方、われわれはこれは歴史的な事実ではないと見ている。神話は歴史的な事実だという考え方に立ち、そしてまた、神話というものが御承知のように朝廷の権威というものを高めていくというような考え方ももって国史として編さんをされたという事実は、古事記を見ましても日本書紀を見ましても明らかにくみ取れるところであります。そういうようなものは断定的に書くべきでない、こういう指導が現実に行なわれて、修正を要求をされております。この事実はどうでありますか。
  175. 福田繁

    福田政府委員 その点も出版労協などの人たちが言っておるようでございますが、私の調査をしてもらいましたところによりますと、神話が歴史的事実そのものではなく、朝廷の権威を裏づけるためのものである、そういうような記述の教科書はなかったようでございます。しかしながら、もしかりにあったといたしましたならば、そういう扱い方がはたして妥当であろうかということは、私自身も考えるところでございます。
  176. 村山喜一

    村山(喜)分科員 事実はなかったということでありますので、それじゃこの事実関係の問題には触れませんが、ここで新聞は、文部省、法務省は省議を開いたところ、紀元節復活の問題については反対である行の報道がなされておりました。このことについては私は事実であろうと思うのでありますが、歴史というものを政治的な説話に従属させて、神秘的な神権天皇のもとに全国民を結集する役割りを持った紀元節が明治に生まれました。そういうような点から見まして、何といっても、歴史学あるいは考古学というような一つの科学を中心にした子供たちの教育が今日は行なわれております。教育の体系から見まして、紀元節復活というのは、これはそれにそぐわない体質を持ったものだと私たちは見ておるので、神武天皇が日向の国から大和のほうに東征をして、橿原宮において即位の礼をあげた、そういうような史実というものはない。こういうようなことを、われわれは現実において、また子供たちの教科書の中でも、日本のお互いの祖先というものを見てみますと、これは何万年ぐらい前か知らないけれども、われわれの祖先がこの日本列島に住みついた、そういうようなところから説き起こしまして、部落が生まれ、そして小さな国家が生まれ、日本の国家形成に至る科学的な記述が行なわれているわけであります。そういうような点から見てまいりますと、これは一つの神話として、われわれ日本民族の持っておりました一つの考え方というものはのぞき得るわけでありますが、科学的なものではない、こういうようなことから、教育の内容の中に空想やあるいはそういう政治的な説話というようなものを持ち込むことは、教育基本法や憲法の立場から見まして間違いである、こういう点から考えていくならば、紀元節復活というような問題は、教育になじまない性質のものだ、こういう立場で、文部官僚の諸君は省議を開いて、紀元節復活については反対だ、こういう結論を出されたと思うのでありますが、この点についてはどういうことでありますか、その事実について説明を願いたいのであります。
  177. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いわゆる国民の祝祭日についての問題でございますが、実は政府、与党の間で現在慎重に検討中でございまして、近く政府提案をいたしたいということで鋭意努力中でございます。その中でいわゆる建国記念日というものを考えておりますことは事実でございますけれども政府案というものがまだ最終的にまとまっておりませんので、法律案を提案することがきまりましてから私は政府の態度というものを御説明申し上げたいと存ずるわけでございます。  それから、いわゆる紀元節ということについて、一、二の新聞であると思いますけれども、ただいま御指摘のような記事が出ておりましたことは事実でございます。しかし、その事実は事実に反するのでございまして、文部省として、省議において、今回の国会に提出しなければならない法律案全体についてレビューいたしました。そしてこの国民祝祭日に関する法律案というものは、文部省所管あるいは文部省からの提案ではございませんけれども、ほかにも各省所管の法律案であるものも省議の議題にいたしまして、これらについて慎重に検討し、かつ所管のところから提案された場合に、十分にバックアップするように思想統一をし勉強をしておこうという申し合わせをしたのが事実でございまして、時期尚早とか、あるいは否定的とかいう結論を出したものではございません。
  178. 村山喜一

    村山(喜)分科員 非常に重大な問題であります。文部省だけは、いままでの新しい憲法に基づく教育体系の中で行なわれてきた、歴史というものが人文科学の一つのものとして正しいものを国民に教育していくのだという姿の中からこの問題については取り上げられ、そうして教育になじまないものとして、こういう考え方はどんなことがあっても許してはならない、こういう立場をとられたものだと、新聞を見て私はさすがに文部省だと敬服をいたしておったのですが、どうも話を聞いてみますと、きわめて逆の立場であるようであります。なるほど、そういうような考え方であればこそ、神話というものが歴史的な事実そのものではないことまでも教科書に書こうとしましても、それを削除を命ずる、こういうようなことに思想的に文部省考えられている。これは重大な問題です。文部大臣は、その政治的な説話と歴史的な事実というものとは今後教育においてどういうふうにされるつもりですか。
  179. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それにお答えします前に、いま中央公論に出ておりましたことは、先ほど福田局長からお答えしたような次第でございますけれども、これは事実が相違しておるということは、申し上げたとおりなんでありますけれども、紀元節問題とひっかけてそういう教科書の検定の問題の上に及んで、神話と歴史的、科学的事実というようなことの取り上げ方を関連させて考えたものでは全然ございません。
  180. 村山喜一

    村山(喜)分科員 文部省教科書調査官の中には、皇国史観に基づく歴史学者もおることは事実なんです。このことは私は数年前に委員会で述べておきましたが、いまここにきわめて重大な段階を迎えようといたしております。これは教育の問題、政治の問題という問題を考えますときに、説話というもの、それはなるほど日本民族が今日まで持ってきた一つのイメージが入っておるとは思うのです。そういうような意味において、われわれもその神話に対しましてはある程度理解ができるわけでありますが、しかし、日本の建国の歴史というものをずっと振り返って考えてまいります場合には、だれが何と考えましても、神武天皇が日向の国から大和の国に東征をした事実もないのだし、また、国家の形成というものが、そういうような、日本だけが特別な姿の中で形成されて、雲の上からおりてきたような形でなされたということは、これは子供たちに言わしたら、全くのナンセンスであり、おとなのおとぎ話にすぎない、こういうふうに受け取ることは事実なんです。だから、やはり説話と歴史的な事実というものとは科学的な分類という問題において考えていかなければならない、その点を混同するというようなことは許してはならないことだということ、それくらいは大臣としてもお答えになることはできると思うのでありますが、いかがでございますか。
  181. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いま問題が具体的にいわゆる紀元節の問題ということの御質疑でございますので、それについては、いましばらく政府決定をお待ちいただいて、その後にわれわれの考え方を申し上げたいと思ってお答えをいたしたわけでございます。それと離れて、何と申しましょうか、歴史科学と、それから神話、説話というようなことについてどう考えるかというようなお尋ねでございますれば、まあ私は私なりのしろうと考えを持っておりますけれども、別にたいした意見とも思いませんので、ここでわざわざ御披露するまでもないかと思います。
  182. 八木徹雄

    ○八木(徹)主査代理 村山君、お約束の時間がきておりますから簡潔に願います。
  183. 村山喜一

    村山(喜)分科員 この問題は重要であります。しかし、時間も主査から注意をされましたので、そうとりませんが、大臣、あなたは文部大臣なんだから、日本の教育の責任者なんです。教育が今日まで進められてきた問題についてまあ答えるのを逃げられたわけですが、私は、そういうような態度では、日本の教育が正しい方向で進められるとは思わない。もう少しそういうふうな点については、私たちはあげ足をとろうとかなんとかという考え方ではないのでありますから、明確に出してもらわなければ困ると思う。しかし、きょうのところはこれ以上触れませんが、今後検討を願っておきたいのであります。  そこで、一つだけ、せっかく自治省の方にも出てきてもらっておりますので、お答えを願いたいのは、地方財政計画の問題に関連をした問題でございます。  今回高校の教育を推進いたします教職員につきまして、急増に伴う増が五千七百五十名認められ、なお、学校基本調査によります教員数の是正分として七千三百十四名が認められております。これは昨年の地方財政計画に策定いたしました数字と、その後の実態調査に基づく、現実に配属された学校の教職員の数との差が、学校基本調査によりまして教員数是正分の七千三百十四名というふうに出てきたものだと思うのでありますが、それと同時に、この急増に伴う増というものは、昨年急増対策として高校を新設しあるいは増設をいたしました教職員の学年進行に伴う増と、なお、ことしは有史以来のきびしい競争率であるという新聞報道等もありますように、七二%程度までは進学率が伸びていくのではないかといわれておる。そういうふうな中にありまして、各都道府県が、公立の高等学校等につきまして、どうしても昨年程度の競争率以下にとどめたいということで、高校を増設いたしたり学級増等が行なわれております。これらの職員の増というものが、いわゆる本年の四月から配属をされるものとして地方財政計画の中で見られているのかどうか、この点についてお答えを願いたいのであります。  それと同時に、義務制の教職員につきましては、財政計画上七百五十七名の減となっておるわけでありますが、これは御案内のように、義務教育費国庫負担法あるいは交付税法の定数等によりまして算出をされました数が出されて、また学級編成の基準の改定等に伴うものも織り込まれているわけでありますけれども学校基本調査によります職員数というものによって是正をする必要はないのかどうか。高等学校の場合には現実にはそういうようなものが出てきております。これは富裕団体、いわゆる不交付団体まで含んだ財政計画でありますから、当然その職員数というものにおいて標準定数を上回る職員というものをある程度置いている都道府県があるわけであります。そういうようなもの等をやはりにらみ合わせて計画を立てていかなければならないのではないかと思うのでありますが、これについては、なぜ是正の必要はないということで計上されなかったのか、この点もお答えを願いたいのであります。  なお、交付税法の単価がまだ決定を見ていないわけでありますが、この点は、いままで都道府県の一般財源の中から教職員の給与費に超過負担がなされたというようなこと等もあって、かつては地方財政の窮迫を告げた時代もございました。しかし、今日においてはそういうふうになっていないものと私たちは見ているのでございますが、義務教育費国庫負担法上の教職員の単価と、交付税法上の基準単価との間にはどういう関係持ちながら策定を今後していこうと考えているのか、この点についても自治省のほうから考えを聞いておきたいのであります。  なお、高等学校の入学率は四十年度どういうふうになっていくというふうに見ておられるのか。この点については、この前文部大臣にお会いいたしましたときにも申し上げておいたのでございますが、文部省、自治省とで打ち合わせをいたしました国の高校急増に伴う計画と現実との間には約五年分の開きがある、そうして一〇%近くの誤差が生まれてきている、こういうふうになった見込み違いというものは、私立学校等の問題もありますけれども、しかしながら、所得倍増政策の結果、せめて高等学校までは進学させたいという、そういう父母の切なる期待がこういう形になってあらわれてきた。しかもこれから新しい技術革新の時代を迎えて、高等学校を履修しなければ国民としての生活ができないような段階まで日本の教育文化のレベルが上がってきた、こういうようなものがこの入学の競争率としてあらわれてきているというふうに私たちは受け取るわけでありますが、これにつきましては、昨年、御承知のように六十七億の起債措置がなされておったものが、ことしは二十億しか見てないわけであります。そこで緊急に措置をしなければならない場合等も当然出てまいりますが、これらについては、文部大臣は起債や特交等の措置等において考えられるように今後努力をされてしかるべきだと考えるのでありますが、これに対します大臣並びに自治省あたりの見解を承っておきたいのであります。
  184. 愛知揆一

    愛知国務大臣 高校に対する入学志願の率について、実績その他から見ました傾向値等から推測しましたものと、それから現実の姿に若干の相違が出てまいりましたことは、御指摘のとおりでございます。こうしたような状況に対処いたしまして、起債なりあるいはそのほかの措置なりによりましてできるだけの措置は講じなければならない、こう考えております。ただ、高校の進学率等は、午前中にもお話が出ましたけれども、どういうふうな見込みを立てるか、見通しになるかというようなことにつきましては、何ぶん人の問題でもございますし、さらにだに経済の見通しというようなものもなかなか立ちにくいくらいでございますので、いわんや、人の問題になりますと、そう的確に捕捉することができない。同時にまた、高校に対する入学の希望の現状等を見ますると、私はつくづく、後期中等教育のあり方ということ自体もこの際あわせて考えなければなるまい、かように考えておるわけでありまして、四十年度におきましては、たとえば農業高等学校拡充というようなこともあわせて措置をいたしておるような状況でございますことをあわせて申し上げておきたいと思います。
  185. 柴田護

    ○柴田政府委員 高等学校の教員数につきましては、学校基本調査によって教員数を是正いたしましたものが七千三百十四人、それから学年進行に伴いますものを五千七百五十人と計算いたしております。これは新しい学年進行でございますから、進行に伴う増が入るわけでございます。  それから義務教育職員の単価につきましては、交付団体と不交付団体との区別を廃止いたしまして、義務教育国庫負担金の単価を基礎にいたしまして平均単価を出して計算いたしております。交付、不交付の区別を取り除きましたのは、むしろ筋からいいますと、こういうものにつきましては計画上の数字としては一本であるべきだ、それを特別に交付、不交付を分ける必要は、むしろ計画の筋からいきましておかしいので、やめたのでございます。  それから義務教育職員の数字につきましては、公立義務教育諸学校の学級編成及び教職員定数の標準に関する法律、これによった数、特殊学校増設に伴う増、それから充て指導主事の増を加減して、五十八万八千六百四十九人と算定いたしました。  それから高等学校急増対策問題は、一応は昨年でもって終わりましたので、地方交付税上の特例措置は削りました。しかしながら、若干急増対策がおくれているところがございますので、その部分を顧慮いたしまして、地方債は十億ばかり存置したわけでございます。なお、従来の大体の充当率を基礎にいたしておりますので、一般財源等でもって不足を来たす向きがあるかもしれませんが、それは総合的な財政措置の中で顧慮したいと考えております。
  186. 村山喜一

    村山(喜)分科員 もう終わりますが、ただいま地方財政計画の中で新規の分は全然織り込んでない、こういうような状況を聞きました。このことは、現実にはそういうようなものがあるようでございます。もちろん、どのような姿で測定をするかということになりますと、きわめて困難ではございますが、当然来年度においてはこの財政計画も修正をされるということにはなりますけれども、しかし、その前に、そういうような現実にどうしようもないという状態が出てくる。この分については特交の措置等で考えていただくように、文部大臣のほうからも自治省に要請を願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  187. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは事態に即しまして適宜の措置をとらなければならない場合もあろうかと思いますが、十分自治省とも連絡というか、お願いをいたして善処したいと思います。
  188. 村山喜一

    村山(喜)分科員 終わります。
  189. 八木徹雄

    ○八木(徹)主査代理 次に、加藤清二君。
  190. 加藤清二

    加藤(清)分科員 お許しを得まして、私は、文教関係、特に文教の予算、しかもその予算のうちの設備費についてお尋ねしたいと存じます。   〔八木(徹)主査代理退席、稻葉主査代理着席〕  ことしのただいま審議しておりまする予算、その中に含まれまする学校設備費、特に義務教育の設備費は、文部省としての計画からいきまして十分であるのか、足りないのか、あるいは文部省計画を出したけれども大蔵省との折衝の間で削られたとか、いろいろございましょうが、目下のところ、大臣としては、この設備費が国の予算とにらみ合せてみて十分であるのか、足りないとお考えでございまするのか、もし足りないというならば、どの程度あったならば義務教育が満足に行なわれるとお考えでございましょうか、その点についてまずお尋ねをいたします。
  191. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こまかく申し上げるべきでありますが、端的に申しますと、まずまず何とかやっていけるという程度と申し上げれば、一番正直かと思います。
  192. 加藤清二

    加藤(清)分科員 先般野原委員の質問に対しましてこちらへ御提出になりました資料によりますると、一学級当たりの児童数でございまするが、文部省の提出資料によりましても、日本は一学級当たりの児童数が非常に多いようでございます。あなたまずまずとおっしゃられましたが、かりに文部省計画が完全に遂行されたとして、なお四十三年度におきましても一学級の児輩数は三十四・六人、中学校で三十七・九人、こういうことでございます。四十年度を見ますると、小学校で三十五・三人、中学校は四十一・一人。これは文部省提出の資料に基づいて見ますると、フランスの二十八、二十一、ドイツの二十九、二十一、イギリスの三十、二十、アメリカの二十九、二十二、ソビエトの二十六、十八、これと比較しまして、あまりにも多きに過ぎるではないか。だから、すし詰め教室ということばが起きるではないかと思われまするが、これでまあまあでございましょうか。
  193. 愛知揆一

    愛知国務大臣 繰り返すようでございますが、まあまあというのが、偽らざる私の感じでございます。大体三十人台になれば、この前野原委員にお答えいたしましたように、世界的な水準に近ずきつつありますと申し上げたのですが、そのとおりに私は考えております。
  194. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これを同じような調査を私は愛知県でとってみたのです。しますると、四十年度では、小学校三十七・九六人、中学校で四十三・〇三人で、目標四十三年度で小学校三十五人、中学校で四十名、こういうことになります。これと、先ほど申し上げました列強の優秀な先進国と比較しますると、日本のほうが約二倍のようでございます。これは数の多きをもってよしとしないようでございます。数の少なきほど教育がよく行き渡るように思われます。二倍でございます。世界的水準とあなたはおっしゃいましたが、世界水準の二倍が日本は水準でございましょうか。
  195. 愛知揆一

    愛知国務大臣 おことばを返すようで恐縮ですが、全国平均をとっておりますので、たとえば愛知県、ことに名古屋というようなところをとりますと多くなるわけです。それからもう一つは、差し上げました資料にもあるかと思いますけれども、教員一人当たりの児童数ということをとっていただきますと、たとえば四十年度におきましては、小学校で二十九・四人、これがフランスにおきましては、一九六一年、二十八人、ドイツが二十九人、イギリスが三十人、アメリカが二十九人、ソビエトが二十六人、この教員一人当たりの児童生徒数ということになりますと、これを比較いたしますると、もっと世界的水準に近い、あるいはほぼ水準に達しつつあると私が申し上げましたことか正確であるかと思います。
  196. 加藤清二

    加藤(清)分科員 残念ながら、私のデータによりますると、教員一人当たりの児童生徒数、これは全国平均はあなたのおっしゃったとおりです。ところが、愛知県にとってこれを見ますると、四十年で小学校三十二・六人、中学校二十八・三人、全部ありますけれども、四十三年に飛びまして、小学校は三十一・三人、わずかに一・三人しか減っておりません。次に中学校のほうを見ますると、二十五・一人、これは諸外国と比べますると、たいへんな格差があるように思われるわけでございます。決して私はうそのデータを言っておるのではありません。だから、山村地帯で単級とか複式学級をしているところを合わせれば、大臣のおっしゃるとおりの数字になるでしょう。ところが、問題は、平均よりも、大都会でほんとうに一学級五十人、五十五人というような、イモこじ、すし詰め、満員電車、それと同じように教室が満員教室、ここに問題があると存じます。ここの地区の子供に、いわゆる青少年の悪化、補導を必要とする生徒が一そうふえる傾向にあるようでございます。したがって、われわれとしては、平均がなるほど文部大臣のおっしゃるとおりだんだん減っていく、だからといって、てんで減らないところがある、むしろ人口増、特に自然増だけではなくして移転増、移入増、これによってすし詰めを余儀なくされなければならない学校が、これまた大都会には軒並みのようでございます。これに対する対策を一体どうお考えになっていらっしゃいましょうか。野原君の質問を一歩進めまして、四十三年になっても解消のできない地区の児童はどうしたらいいだろうか、これについてお尋ねをいたします。
  197. 愛知揆一

    愛知国務大臣 やはり全国的な問題でございますから、まず全国平均を押えて対策を講じてまいりまして、それから別途、都市を中心とする人口移動の状況などを十分にらんでまいりまして、これから先長い間のことでございますから、年度の途中その他で趨勢を見ながらこれはくふうをこらしていかなければならない問題であると思うのであります。たとえば、都会とまた全然別でございますけれども、産炭地でありますとかいうようなところではまた別の移動がはなはだしい。やはり一面において全国平均を押えながら、各地域別の特殊性ということを十分考慮に入れていかなければならない、その御指摘の点は、私もこれから十分念頭に入れておきたいと思います。
  198. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大都市、過密都市ないしはその周辺の地区、あるいは新産工業都市等々のいわゆる他の対策ですね、生産上の対策はそれぞれ相当の予算をもって行なわれているようでございますが、事学校施設に関する限り、この点が必ずしも十分であるとは思われない。あと、だんだん数字をあげて申しますが、必ずしも十分でないと思われる点が多いのでございます。こういう点について文部省としてはどういう対策を練っていらっしゃるのか、どういう目標で行なおうとしていらっしゃるのか、いかなる対策によって大都市のすし詰めを平均値に近づけようとなさっていらっしゃるのか、この点についてお尋ねしたい。
  199. 愛知揆一

    愛知国務大臣 こまかい点につきましては、別に補足的にお答えいたしたいと思いますが、たとえば昭和三十八年五月現在で四十三年度までの社会増による校舎の不足を、たとえば調査いたしております。   〔稻葉主査代理退席、主査着席〕 その結果によりますと、小中学校校舎の社会増に基づく不足というものは七十万坪、これは三十九年度を初年度とする第二次公立文教施設整備の五カ年計画がございますが、その中にその一環として整備することにいたしておるわけでございます。  なお、いま申し上げましたように、こまかい点につきましてはいろいろ資料もございますが、政府委員から御説明いたします。
  200. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 ただいま大臣お答え申し上げましたように、五カ年計画の中には約七十万坪を見込んであるわけでございますが、それは昭和三十八年五月一日から四十二年の九月三十日までの建設予定の集団住宅、これはいろいろなものがございます。公団のものもございますし、民間の分譲のものもございます。これを調べまして、当時の時点で五十八万戸ということでございましたので、それに必要な七十万坪を一応社会増に要する不坪数として計上したわけでございます。
  201. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、過去の公団住宅というものは、大体大都市の中ないしはその周辺につくられたわけでございます。したがって、そこから発生するあまたの社会問題というものは、その市、その町に吸収することが容易であったわけでございます。ところが、だんだん団地も膨大化していきます。そのことを建設省も極力推進するという、いま現にすでに人口一万戸数、二万戸数、大きは三万戸数が計画されて実行に移されつつあるわけでございます。こうなってまいりますと、その周辺補償そこから生ずるところのあまたな社会設備、いわゆる社会開発、これをしなければなりませんが、事学校もさようでございます。すでにいままで団地ができる、小学校をつくらなければならぬ、中学校もつくらなければならぬ。ところがその町だけでは負担がし切れない。文部省へいっても金はないという、起債もとれないという。やむなく公団の資金で学校ができておるのでございます。今度三万戸数の団地がすでに着工されておりまするが、そうなりますると、ここでは小学校だけで二十近くつくらなければなりません。それを、二万戸や三万戸の現在ある都市でいますぐに引き受けるなどという経済的余裕は全然ございません。このときに一体文部省としては建設省と交渉していらっしゃるのかどうか。私は建設省へ何度もこのことで行っておるんです。ところが、一向に話がない、こういうことなんです。これはどうなっておるのですか。あったと言うなら、だれと話されたか、全部聞きますよ。
  202. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 日本住宅公団の建設にかかるものにつきましては、公団が、簡単に言いますれば、かわって建てておきましたものを町村が何年かで買収していく、その買収費につきましては、町村自体が新増築する場合と同様に補助金を出す、それからそれに対して起債の措置をしているわけでございます、それから、さらにそれ以外の新住宅市街地の開発事業等につきまして、住宅金融公庫が施工者に土地の、取得造成資金を貸し付ける場合に、当該事業に伴いまして必要となる学校施設の建設資金も貸し付けができるように、住宅公団と同じような方式で、かわって建てておいて市町村が買収をしていくという場合にも、私どもといたしましては公庫の補助金をつける、こういうことになっておるのでございます。
  203. 加藤清二

    加藤(清)分科員 公団と話し合われたことがあるかないかということなんです。あなたまかせで、公団にぶっつけておけばいいということで、あなたたちは計画を持って行かれたことがないでしょう。そのことを聞いておる。
  204. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 公団につきましてのこのやり方、昭和三十二年の九月に関係各省の協議でこういうことができて、そして、それに必要なことは、公立学校の負担法におきましても、新増築のみならず、買収の場合にも補助するということに昨年できました法律におきましてはなっておるわけでございます。
  205. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私はあなたのほうからどれだけ提案されたかということを聞いておるんです。現に、かつては小学校だけでよかった、ところが団地が大きくなると、中学校もつくらなければならない。その費用が、文部省へ頼みに行ってもどうにもならないという。こんなものは相手にしておったってだめだから、それじゃ、ぼくが公団へ行ってかけ合ってやるということで、現につくった中学校があるのです。ところで、これはあなたに聞く。その中学校を建設するときに、あなたのいま言った法律が適用されるところとされないところがありますよ。それは御存じですか。相談したというから、法律があるというから。——それ、ごらんなさいよ。それがわからぬだろう。やっていない証拠だ。
  206. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 社会増によって不足の坪数ができますれば、全部補助することとなっております。
  207. 加藤清二

    加藤(清)分科員 ばかなことを言っておっていかぬよ。ほんとうにそうか。——ほんとうにそうか。できますね。——知らぬなら知らないと言ったほうがいいですよ。いいかげんなことを言って、責任とらせますよ。
  208. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 三十九年度の実績を見ましても、社会増によるものにつきましては、大体申請につきまして補助金を出すように処理をしておるわけでございます。
  209. 加藤清二

    加藤(清)分科員 主査、私の質問に答えさせてください。  いいですか。公団ができ、公団の団地の小さいときにはもともとある地区が児童も何も吸収してくれた。ところが大きくなりますと吸収できないから、独立校をつくらなければならない。その独立校をつくるにあたって、文部省は準備をしたかしないかというのが一点。ところが、答弁は、法律上できることになっておる、こうおっしゃる。しかしいまおっしゃったその法律は、適用できるところとできないところがあるが、それは御存じかと聞いておる。はっきりそれを答えなさい。いいかげんなすれ違い答弁をやっておると、時間が長くなりますよ。
  210. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと私からお答えいたしますが、私の承知いたしておりますところでは、三十九年度中におきましては、大体、文部省に御相談のあったところは、一〇〇%とは参りませんけれども、九割をはるかにこえるような起債の承認その他の措置をやっておると承知いたしております。
  211. 加藤清二

    加藤(清)分科員 いま言われたところの法律、それを適用できて、起伏も行なわれる、スムーズに学校ができていくというのは、これはずっと低い地区の農山村地帯、主として町制の行なわれているところなんです。もしそれが行なえるとあなたがあえて答弁なさるならば、名古屋につくってもらえますか。名古屋にできないのです。公団の法律は適用できないのです。六大都市には適用できないから、別途予算でつくらなければならぬ。現に鳴海中学校はそうやってつくったでしょう。あなたのほうの御恩になりましたか。これは小牧周辺基地、航空基地、これの周辺の防音装置と同じことなんです。できるというならつくってもらいますよ、今度春日井にできるのを全部。
  212. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 先ほど申しましたように、先般の調査で個々の市町村の計画を将来にわたってとって、それを五カ年計画に入れて、そしてその基準に合った不足坪数が出ます場合には、すべて補助することとなっておるわけであります。
  213. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私の質問に答えてもらいたい。何かこの場を言いのがれすればそれでいいというような考え方じゃいけませんよ。ほんとうにあなたの言う法律が適用できて、名古屋市内に大きな公団ができ、——名古屋市内と申しましても、合併したところがありますから、これは完全に農山村ですよ。そこに大きな団地ができ、その団地に中学校をつくるときに、その予算は公団で負担するということができないじゃないか。あなたはできると言うのですか。知らぬのだったら知らぬと言うたほうがいいのだ。そうしたら話が早い。できないからこっちは困ったのだから……。
  214. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 私の申しましたのは、社会増によって市町村がみずから……。
  215. 加藤清二

    加藤(清)分科員 そんなことを聞いているのじゃないじゃないか。何べん言うたらわかるんだ。こんなことだから時間がかかるのです。
  216. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 私は、農山村であろうと、都市周辺であろうと、社会増によって不足坪数ができるのは補助できるということを申し上げているのであります。
  217. 加藤清二

    加藤(清)分科員 よけいなことは言わぬでもよい。あなたのほうで費用が出ないから、公団の資金で学校を建設しなければならぬ。ところが、それは一部には適用できるけれども、六大都市その他には適用できないんです。こういうことです。——いやいや事実だ。それだったら、あなたがあえてそれを抗弁するんだったら、すれ違いの答弁じゃいけませんよ。私が言うているこのことについて、あなたがいいというのならことしからつくってもらいますよ。(発言する者あり)つくるといって許可するだけで予算はつけないんだ。
  218. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 私が申し上げているどの点をおしかりを受けているのか、私も率直に言ってわからないわけでございます。
  219. 加藤清二

    加藤(清)分科員 わからぬ、知らぬから、 つくったことがないからです。
  220. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 つくるのは市町村でございまして、あるいは市町村がみずから初めつくらないで、公団がかわってつくる場合には買収という形になる。その買収であるものも、みずからつくるということで申請がありました場合には、学級編制の基準に合ったものは補助するようになっておるということを申して上げているわけであります。
  221. 加藤清二

    加藤(清)分科員 六大都市にはそれが適用できない。——それじゃきょうはこういうことにしておきましょう。やれる、私の主張が間違いである、それでけっこうです。間違いを望んでおるんだから……。あなたたちはこの場をうまく言いのがれがしたいというのが目標だから、そのとおりにさしてあげます。しかしできなかった場合には腹切ってもらいますよ。(「意味がわからぬじゃないか、よく知らない質問をしたってだめだよ」と呼ぶ者あり)ぼくがつくっているじゃないか。知らないとは何だ。ぼくが鳴海の学校をつくったんだよ。知らないとは何だ。冗談言うなよ。
  222. 植木庚子郎

    ○植木主査 私語を禁じます。
  223. 加藤清二

    加藤(清)分科員 知らないとは何だ。現に春日井市はいまこれで困っておるんだ。   〔「基準に合わなければだめだよ」と呼ぶ者あり〕
  224. 植木庚子郎

    ○植木主査 私語を禁じます。
  225. 加藤清二

    加藤(清)分科員 この時間余分にあとでいただきます。  そこで、この問題は一度よく検討してください。いまの局長答弁が正しい、ぜひそうしてください。それで稲葉氏の言ったとおり私の間違いである、私の不勉強である、私がばかであった、それでけっこうです。それでけっこうですから、そう記録してください。ところが、もし一あとで具体的事実を調査した結果、現にあなたの言うとおりになっていなかったというならば、これは承知しませんぞ。  次に承りますが、全体の建設費を承ります。全国平均で一体児童生徒一人当たりの経費、建築費ですね、これは幾らになっておりますか。資料提出を要求してあるはずですから、大臣の手元にあるはずでございます。
  226. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 お答えいたします。  先生からお話のありました点でございますが、三十年、三十一年、四十年でかりに公立文教の関係予算額を一人当たりで割ってみたらどうかというお示しがありましたので申し上げます。三十年度は、小、中学校が二百六十九円になります。高等学校が二百八十六円でございます。三十一年度が、小、中学校が二百七十六円、高等学校が二百九十一円、四十年度が、小、中学校が千二百二十円、高等学校が九百十一円となっております。
  227. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これは全体の必要経費の何%に当たりますか。
  228. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 地方の経費の総額ということを割り出さないと、そのうちに国庫負担率が幾ら占めているかということがわからないわけでございます。これにつきましてはそういう調査のある年とない年とがございまして、お示しの年度がございましたけれども、それに合致するものがいろいろ入っておりまして、私どももその点が分析できなかったわけでございます。
  229. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私はあなたがお出しになったこのデータでお尋ねする。いまお出しになった児童生徒一人当たり設備費二百六十九円、二百八十六円、二百九十一円、これは一体何%に当たるか、同時にそれから十年たって物価が高騰して、小、中学校で千二百二十円、高等学校では九百十一円とあなたのほうは出していらっしゃるこの基礎数は、これは全体の何%ですかと聞いておる。
  230. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 四十年度の予算は、総額といたしまして公立文教で二百八億でございます。これは……。
  231. 加藤清二

    加藤(清)分科員 何%かと聞いている。余分なことを言うと時間がかかる。
  232. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 全体の経費の何%かという御質問の趣旨がわかりません。
  233. 加藤清二

    加藤(清)分科員 大臣、坪当たり単価は、確かに文部省の御努力、大臣の御努力によりまして、徐々に上がりつつあります。まことにけっこうでございます。ところが、それは今日的に考えますると、一体必要設備資金の何%くらいになるのでございますか。
  234. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これは構造単価、構造比率の問題と思いますけれども、三十九年度の実績で、たとえば鉄筋コンクリートで実際幾らかかったかというようなことを基準にして、せめて四十年度では三十九年度の実績に近い単価にしたい、こういうことでやっております。ですからその比率とおっしゃると、実際の単価に対して補助した比率がどれくらいになるか、これは……。
  235. 齋藤正

    ○齋藤(正)政府委員 国庫補助の負担率は現在は八〇%でございます。ただもう少し角度を変えまして、年間どれくらいの建物ができているかといえば、大ざっぱにいって一千億程度のものができております。
  236. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私が質問しているのは、大臣、こういうことですよ。突っ込もうとか立ち往生させようとかいう目的でやっているのじゃないのです。規定によって、法律によって小学校は何%、中学校は何%と設備の補助率がきまっておりますね。それを私がやりかけると重複しているということになるから、私はあえて抜いて話をしておるわけなんです。ところが、あなたのほうの坪当たりの単価が、これは文部省だけではございません。公団がうちをつくるときも同じことですが、特価と比べて低きに設定してあるので、たとえば三六%、義務教育の建物五〇%と、こう言うてもそれがそうならない。たとえば十万円かかるものを、今度あなたのほうは八万何がしと、こう設定されておる。はたして八万円でできるかというと、あにはからんや鉄筋コンクリートは八万円でできない、十万円、ところによっては十二、三万もかかる。その結果せっかくおたくのほうの与えられたパーセンテージが、実際に当てはめてみると、半額国庫負担とか三割六分国庫負担にならないということを、言うておる。私の言わんと欲する結論は、だから単価を時価に合わせる御努力を願いたい、こういうことなんです。おわかりになりますか。
  237. 愛知揆一

    愛知国務大臣 御趣旨はよくわかりました。したがって先ほど私が申しましたのは、鉄筋コンクリートの場合は、たとえば三十九年度——これまた平均というとおしかりを受けますけれども、実際に平均をとっておるのですが、三十九年度には全国で公立文教施設をやりました場合の、たとえば鉄筋でいえば八万九千円と出たといたします。せめてそれにぎりぎりのところで四十年度は基準の単価を計算したい。積算の根拠に置きたい。こういうことでありまして、その点は実績に比較いたしまして、ほぼ十割と申し上げていいのじゃないか。平均の実績に近いところを単価として認めてもらうことができました。しかしそれでも四十年度におきましては、諸物価の値上がりがございますし、それに補助の比率を掛けますと、三六%とかいうことがどのくらい下回るかということについては、私もちょっとここではっきり何割何分くらいになるということは計算しておりませんから、申し上げかねるわけでございます。
  238. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私の言わんと欲するところは、文部省の善意はわかるのです。その御努力もまことに敬意に値すると思う。ただ時価の値上がりがあまりにも急なので、単価が常にあとを追っかけている。その結果は、せっかく半額国庫負担とか三割六分国庫負担とかいうても、それがその数字どおりになっていない。その結果は町で、村でいろいろなトラブルを起こす。半額国庫負担ということになっておるではないか。三割六分国庫負担にこれはなっておるではないか。それじゃそれだけもらってくればいいじゃないか。単価設定があるということを没却しての理論があちこちで行なわれる。またそれを知らずに設備した。しかし学校はつくるときめた以上はつくらなければならぬ。その結果銀行融資を受けざるを得ないことになってきて、その銀行融資の金利返済に困ってしまって、ついに再建整備法を適用されて、町長がやめなければならない。のみならず父兄負担は予定よりはたいへんに増大しておる。こういうケースが、名前は申し上げませんけれども、ございます。だから実際の単価に追いつくように、常にその単価設定は物価値上がりにスライドするように御努力願って、決して予定してうそを言ったのじゃないけれども、結果として少なかったということのないような御努力をお願いしたい、こういうことなんです。これは当然の義務だと思うのです。その点について大臣
  239. 愛知揆一

    愛知国務大臣 それは私もよくわかるのであります。中には、もっと突っ込んで申し上げれば、たとえば木造で基準の単価を設定して、しかし実際にやはり地元の要望その他で鉄筋で建ててしまうということもあり得ると思うのです。そういう場合にはますます実際の負担率というものは実質的に非常に少なくなる。その場合に町村でも苦労するし、父兄負担も多くなる。またそういうふうな実情も現にある。そこで単価をできるだけ、先ほど来申しておりますように、せめて前年度の実績とほば同額にする、あるいはこういう時世にだんだんなってまいりましたから、木造の比率はできるだけ少なくして、そうして鉄筋の比率を多くするというようなことについて、その幅が父兄負担にならないように、町村長がたいへんな迷惑をされることのないようにしたいという基本的の考え方は全く同感なんでありますが、なかなか思うように至っていない、こういう点は私も率直に認めざるを得ません。
  240. 加藤清二

    加藤(清)分科員 それでは次にお尋ねいたしますが、文部大臣は歴代の文部大臣と違うて大蔵省のことはよく御存じのお方でございます。同時にまた通産大臣もおやりになりまして、経済のことはよくおわかりのはずなんです。与党では私は大もの中の大ものだと思っている。そのお方にあえてお尋ねしなければならぬことがございます。  あなたは院議の決定をどのようにお考えでございましょうか。院議で決定されたことはどうお考えでございましょうか。
  241. 愛知揆一

    愛知国務大臣 院議で決定いたしましたとは尊重をしなければならないと考えております。
  242. 加藤清二

    加藤(清)分科員 尊重ということは、それを具体的に実行に移す、行政府であればこれは政策として実行する、こういうことでございましょうか。ことばだけを神だなに上げてお参りするということでございましょうか。
  243. 愛知揆一

    愛知国務大臣 神だなに上げるのではなくて、実行にできるだけの努力をするということであります。
  244. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私もきわめて同感でございます。  引き続いてお尋ねしますが、一体、今、日本の数学者、物理学者等々が、主としてアメリカヘもらわれていってしまう、これは何人くらいあるでしょうか。
  245. 愛知揆一

    愛知国務大臣 ちょっと手元にいま的確な資料を持ってまいりませんでしたけれども、先般科学技術委員会でたしか私から数字を中間的に申し上げたのでございます。
  246. 加藤清二

    加藤(清)分科員 あなたは文部大臣であると何時に科学技術庁の長官でいらっしゃる。あなたの時期に科学技術、理科教育の振興ができなければ、もはやほかの大臣ではこんなにいろいろ条件の整った大臣を他に求めることは私は困難だと思う。したがっていま申し上げまするが、あなたは院議をもって決定されましたところの決議事項、昭和三十二年四月二十三日午後一時本会議決議、「教員養成機関の改善と充実並びに理数科教育及び自然科学研究の振興に関する決議案」これはお読みでございますか。
  247. 愛知揆一

    愛知国務大臣 承知いたしております。
  248. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これを具体的にどのように実現をなさろうとなさっているのか、あくまで具体的に計画をお示し願いたい。
  249. 愛知揆一

    愛知国務大臣 これはたくさんあるわけでございますか、たとえばまず人的な問題から申しますと、昨年八月の人事院勧告でもあらわれておりますが、研究職の初任給などを相当に引き上げました。それから各種の手当等につきましても、できるだけの措置を講じたいと考えております。それから大学の学長はじめ教授その他の俸給表の是正につきましても、かなりくふうをこらしたつもりでございます。人的の直接の待遇の改善については、逐次意を用いつつあるわけでございます。それから理科教育の関係におきましては、今回の四十年度の大学拡充、特に大学院の課程の新増設等にかなり意を用いておることもその一つと申し上げてよろしいかと思います。それから学術研究費等につきましても、時間の関係もございますから一一申し上げませんけれども、学術会議の要望、その他にこたえまして、各種の学術研究費については乏しい中をできるだけ新味をあらわすようにくふうをいたしております。さらには宇宙開発等の問題につきましては、ロケットの関係等についても従来とかく研究が二元化するおそれがありましたのを是正することにつとめまして、人的配置その他におきましても格別の配慮をいたしておるようなわけでございます。いまノートを持ってまいりませんでしたから的確に申し上げかねますけれども、技術者、学者の海外流出ということにつきましても、先般各省庁の協力を得て調査をいたしました。私も実はもっと多いのではないかと心配しておりましたけれども、四年間以上にわたって海外に残留した人の数というものは、私が心配したほどには多くなかったと記憶しております。
  250. 加藤清二

    加藤(清)分科員 では本年度の予算で科学技術の研究費はどのくらい予定されておりますか。
  251. 愛知揆一

    愛知国務大臣 科学技術庁と文部省だけでは的確に申し上げかねますから、ちょっとお待ち願いたいと思います。各省庁の関係の科学技術費が相当ございます。
  252. 加藤清二

    加藤(清)分科員 では時間の都合上、あとで調べて答えていただくとして、私と申しましょうか、わが党の政調会の調査によりますと、国民所得に対する科学技術研究費の対比、これがイギリスでは大体五%、アメリカでは八%、日本では二%、こう相なっておるようでございます。そこで大学の一講座の研究費が二十万ドル余、これは五年ばかり前の調査になりますけれども二十万ドル余。これを円に直しまして七千二百万円、日本は大体十六、七万円、こういうことになっておりますね。したがって実験用器具は自費で買わなければならない、世界学会のレポートも一部しか買えない、能率は低下する、結果、日本を逃げ出してアメリカに買われていく、こういう問題が事実起きているわけでございます。  いまのは学者の関係になりますけれども、今度は列強の科学技術の教育のほうを調べてみますと、英国はわれわれが院議でこの決議をするころに、大体五年間でもって上級の科学技術者の五〇%増を計画しまして、これに一億ポンド、一千億の金を使っております。ソ連は第六次五カ年計画でもって科学技術者を五〇%増、九十万人養成を目標に着々行なわれております。日本はどうかというと、こういう時期に日本は一体理工科系がどのくらいございますか。
  253. 愛知揆一

    愛知国務大臣 理工科系がどのくらいと言われるのは金額かと思いますが、大体七対三、国立系統で申しますと七を理工科系、三を法文系、ところが先ほど申しましたように、たとえばこれを学生の員数からいえば私立が非常に多い。ところが私立はどうしてもその比率が逆になりますから、全体を総合いたしますと理科教育の不足というものが痛感されるのではないかと考えております。
  254. 加藤清二

    加藤(清)分科員 お説のとおりでございまして、日本の理工系の教育しようとする目標の員数、これが全体の二五%から二八%、三対七、お説のとおりでございます。ところがこれが私立になりますとまたずっと下って一五%しかない。だから一割五分対八割五分ということになりまして、設備不足が痛感されるきのうきょうでございます。米国におきましては科学技術者拡充委員会が設置されまして、ソ連におくれないようにという努力が盛んに行なわれ、ついでのことに頭のいい学者ならば日本からもスカウトしようということで引っこ抜いていく、こういうことが行なわれているようでございます。  ところで日本はどうなっているか。これはあなたが科学技術庁長官だし、かつて通産大臣だったからよくおわかりだと存じますが、日本は学者を身売りさせるのです。ところがその学者が研究してつくったところのパテントは買っている。そのパテント料は一体どのくらい払っているか。通産大臣でしたからよくおわかりでしょう。これは幾ら払っていますか。
  255. 愛知揆一

    愛知国務大臣 十年前のことでありますから、ことしの数字はちょっと存じません。
  256. 加藤清二

    加藤(清)分科員 パテント料が何と一千億余になっている。たいへんなことなんです。せめてこの金の三割でも五割でも教育費に向けたならば、こういう人を身売りさせて、それが研究したものをあとで高い金で買うというようなことが行なわれずして済む。教育は確かに消費に違いない。しかしやがてそれ以上の大きな生産を生むもとだと思うのです。したがってこの点もよく御検討の上、特にあなたは科学技術庁と両方やっておられますから一番いいチャンスだと思う。しかもこの決議を実行なさるには一番いい地位にいらっしゃると思う。したがって特にこの点に御留意を願って、文部大臣愛知揆一という男があったということをぜひひとつ歴史に残してもらいたい。所見を承りたい。
  257. 愛知揆一

    愛知国務大臣 いやどうも、御激励いただきましてまことにありがとうございます。
  258. 加藤清二

    加藤(清)分科員 次にお尋ねしたいことは、確かに前向きでやっていらっしゃることは事実ですが、もしもそうでないということがあなたの手元にあったらあなたはどうなさいますか。
  259. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことに微力でございますから、そういう足らざるところも相当あるのではなかろうかとひそかに危惧いたしております。
  260. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私はそういうことをほんとうはここへ持ち出したくないのです。ないのですが、はしなくもそれと逆なことをおやりになったお方があったおかげで、私はこんなにたくさんの陳情書をもらわなければならぬことになりました。これは私だけではございません。愛知県に籍を有する代議士は、保守革新を問わず全部こういうものをいただいております。うそでない証拠にあなたに見ていただきます。——全部書いてあるのです。印刷じゃございません。これは陳情書なんです。どうぞ見てください。内容は、前略「つきましては四月の新学期を前に噂だけとは思いますが火の無いところに煙は立たぬ」云々ときまして、「と申しますのは愛知学大のことであります。現在岡崎に前後期、名古屋には前期のみ人口、学校数の上から申しましても今まで私共の地方はあまりにも恵まれていなかったのではないでしょうか。そこへもって来まして今後岡崎の方に小中学校養成課程の全部を御移しなさる御考えがありますとか。噂だけとしましてもこんなことがどうして考えられましょう。当地方の小中学校の先生方や子供達の今後が心配でなりません。何卒御賢察下さいまして加藤先生の御力によりまして名古屋にも義務教育課程を御つくり下さいます様心から御願いするものであります。」瀬戸祖東中学校PTA会長加藤九三という意味の、これ全部そうなのです。これを見てください。時間がかかりますから……。  先ほど申し上げました決議案文によりますと、御承知のとおり、第一が、教員養成機関の改善と拡充ということに相なっております。小、中、高等学校における理数関係の教育内容の向上と技能教育の振興、こういうことに相なっております。三番目が、先ほど申し上げました大学の科学技術者養成、こういうことになっているようでございます。これを御承知のとおり坂田道太君が与野党を代表してこもごも詳しきにわたって論じているわけでございまするが、その中に「まず第一に教員養成大学の改善充実でありますが、戦前の師範学校にかわるものとして発足いたしました教員養成の大学も、占領下早々の間に設けられ、十分な教授陣容もなく、施設、設備も整わないままに発足いたしましたがために、現在幾多の障害に直面していることは、皆様御承知の通りであります。」云云といきまして「その関係大学を卒業しても、その志を得られない卒業生が」云々と、こういきまして、時間の関係上途中抜かします。「クラス当り児童六十名にも及ぶ」ということがございまして「教育効果の上らない学級定員が至るところにあるという状態を解消いたしまして、」北欧は三十名ないし二十五名と、こうあります。そこで拍手と、こうきておる。「いま一つは、大学設立当時、画一的に一県一校を建前としたために、かえって教員需給のバランスを失い、教育の機会均等を失したところも生じてきたことであります。 もともと、教員養成の大学は、大学としての高いレベルを維持することの必要なことも」云々ときて、同時に考えなければならぬことは「児童と同じ歴史と環境のもとに育った教員が、次の世代を背負う生徒、児童とまた同じ環境のもとで教え導いていくところに、大きな意義があると存ずるものであります。」そこで拍手。「いわば地域性を持ったところに一般の大学と異なった教員養成大学の特徴があると考えられるのであります。」そこで「時代の進運につれて、臨時的二年制の課程も漸次四年制の課程に切りかえて、教育内容の充実改善をはかり、もって将来の教員たるべき資質の向上と、その教職としての重大なる使命の自覚とを促すことも」緊急の問題でございます。それで拍手がございまして、「政府は、従来の行きがかりにとらわれることなく、教員養成大学の使命にかんがみ、必要に応じては、その地域における伝統と実情を勘案し、教員の需給のバランスを考慮して四年課程の拡充をはかる等、教育の機会均等を失するおそれなきための適宜の措置を講ずべきものと考えるのであります。」そこで拍手ときている。つまり、いま読み上げましたように、終戦直後に全国単純平均的にできた一県一校、それでは不十分であるから四年課程の充実をはからなければならぬ、それに対してみんな拍手、拍手、こういうことになっているわけでございます。これについていま名古屋市の市議会、これでございます。こちらがそうです。それからこちらは名古屋市役所。ともに名古屋市をはじめとして町会、村会は全部決議してきております。市町村みずからが先頭に立ってこのことをやっております。そこで愛知学芸大学名古屋分校四年課程設置期成同盟役員杉戸清が先頭に立ちまして一宮市長から尾張部名古屋の市町村会は全部並んでおります。ちょっとこれ見てください。——にもかかわりませず、なぜこういうことになったか。  その前に、なぜこんな決議をしなければならぬようになったかをちょっと数字的に申し上げますと、陳情書にもあり、それから県会でも決議され、市議会でも決議された問題の内容は何かといえば、尾張名古屋で児童、生徒、教員ともに全県の三分の二を占めている。にもかかわらず教員数が少ない。児童、生徒数多く教員数が少ない。多数の教員の必要は、地域に四年課程の教員養成の学校があれば、志望者も多く、卒業の研修にも便利であるにもかかわらず、それがない。その結果こうなる。それからもう一つは、地区別の構成比はこれでよいのかという問題を検討された結果は、教員一級免許状所有者の比率は尾張名古屋が非常に低い。小学校教員のうち正規の小学校免許状を有しない者は尾張名古屋に多い。県内で小学校一級免を取得できるのはこの学芸大学だけである。尾張名古屋では男の先生が少ない。過去六カ年間の状況を調べると、教員採用の状況は非常に片寄っている。尾張名古屋の教員の移動はまた激しい。尾張名古屋は愛知大学卒で充足されている割合が少ない。最も肝心なことは、尾張名古屋の教員の不足が目立つ。今後は教員がますます不足する。時間がありませんから、データは差し上げておきます。見ていただきたい。これは、ほんとうは、与野党一致した意見でございまするので、保守党のお方も全部ここへ並んでいるはずでございましたが、まあまあ君にまかしておくから君やってくれよということでございますので、なんでございますが議員の名前を申し上げます。春日一幸、横山利秋、赤松勇、辻寛一、早稻田柳右エ門、久野忠治、丹羽兵助、江崎真澄、佐藤觀次郎、海部俊樹、これは全員連署でございます。しかも期成同盟の顧問にこれは祭り上げられておるわけでございます。私はみえや酔狂でこういうことを言うておるわけではございません。つまり、尾張名古屋にこれがない、後期がないということは、やがて教員層、すなわち資格その他にたいへんな格差を生じてきているということでございます。そういうことを申し上げますと、文部省の中には、それは派閥の問題だと常におっしゃられます。しかし、この決議案やらあるいは陳情には一人として岡崎をつぶしてくれなんということを言うておる人はおりません。そちらもぜひりっぱになってもらいたい。ぜひ拡充してもらいたい。私もここで申し上げます。ぜひ拡充してもらいたい。しかし尾張名古屋にないということ、これが格差をつくって、やがて児童生徒に及ばす影響が大きい。そこでこういう陳情なんです。これは全部一人一人書いてあるのですよ。印刷物じゃないのです。私はここで読み上げる時間が足りませんのでいたしませんが、あとでよく読んでいただきます。秘密書類でもございませんから。こういうことについて大臣としてはどうお考えでございましょう。
  261. 愛知揆一

    愛知国務大臣 実を申しますと、私のところへもたくさんの、ちょうどここでお示しいただきましたとおそらく同数、あるいはそれに近いはがきその他の陳情をいただいております。どうしてこういうふうになったかということをむしろ私も懸念しているくらいでございます。と申しますのは、私ども文部省といたしましては、名古屋の分校を廃止して岡崎に統合するというようなことは考えておりません。目下両方の分校が両立し得るように、ただいまもるるお話がございましたが、岡崎は岡崎とし、名古屋は名古屋としてりっぱなものにしたい、両々相まっていくようにしたいという趣旨で鋭意研究中でございますが、なおそういったような点につきまして、愛知県下において、これはいろいろ歴史的、伝統的背景もある問題であると思いますので、県内で地元の有力者の方々の間でも円満に両々相並列していくように、この上とも御協力をお願いいたしたいと考えます。
  262. 植木庚子郎

    ○植木主査 加藤君に申し上げます。持ち時間が終わりましたから簡単にお願いいたします。
  263. 加藤清二

    加藤(清)分科員 私はあえてこの席で名前は申し上げませんけれども、なぜこういうふうになったかということを大臣もおっしゃられる。私もこんなことは初めてでございます。いまだかつて、私十数年議席を有しておりまするが、こういうことを申し上げたのは初めてでございます。なぜこうなったか。それはあなたのほうの某局長さんがわざわざ学校へ行かれまして、計画のないところには予算をつけない、こちらのほうはもう高等学校課程をつくってやるから、小中学校のほうは全部引き上げさせるぞという、こういうお話であったわけでございます。そこで火がついてしまった。とんでもない話だ。これは決議違反のみならず、すでに文部省との約束違いである。公有地やその他を全部寄付せぬからいかぬ、寄付したらやってやるのだ、こう言われたので、この土地は寄付されて国有地になっているはずでございます。約束違いだ。どうしてそんなことをするだろうかということになって、いまさっき読み上げました議員、県会の幹部諸公みんな集まったわけです。これは明らかに県会の決議にも違反することだ。とんでもない話だ。そこで急遽PTAの会合が学校学校で開かれたわけです。その結果こういうことになったわけです。私はあえてそういうことを発言した人を、なぜ発言したとか、けしからぬではないかとか、何の根拠があったとか、院議の違反ではないかとか、そういう権限をいつどこで与えられたのかとは申しません。そんなことをするのが目的ではないのです。犠牲者を出すのが目的ではないのだ。岡崎も名古屋も両々相まって、先ほど読みました決議、これに合致すべく文部省に努力してもらいたいからです。しかし、学校へわざわざやってきて、学校の幹部を集めておっしゃったことが事実とするならば、きょうは私一人でございますがただではおさまらぬし、おそらくやこの父兄たちが絶対承知しないことに相なるでございましょう。あえて名前は申し上げません。が、そういうことがもしあったとしたらあなたとしてはどうなさいます。
  264. 愛知揆一

    愛知国務大臣 そういったことは私承知しておりませんけれども、いまもお話しいただきましたように、前向きにひとつ私どもにも十分考えさせていただきたいと思います。
  265. 加藤清二

    加藤(清)分科員 これで質問は終わります。終わるにあたりまして申し上げたいことは、どんなにりっぱな偉い官僚が見えたとしても、その命は、その努力は二十年か三十年、どんなにきつい文部大臣が見えたとしたって、それは二年か三年なんです。しかし教育の命は長い。どんなにいがみ合っておった者でもわが子の問題になれば必ず意見が一致してくるのです。いがみ合っていた夫婦だって、わが子の教育のことになれば一致してくるのです。本件はただ単なる経済問題だけではありません。親子の愛情につながる問題である。わが子をよりよくしたいという愛情につながる問題であります。あれほど文部省が日教組をきらって、けしからぬ、某々大臣などは一度も会わない、そういう時期において、その閣僚の中から、暮夜ひそかに日教組に行って、おれのところの子供だけは東大に入れたいから何とか進学指導のうまい先生を頼む、こう言っていらっしゃる事実も私は知っております。私はあえてそれを非難いたしません。それがほんとうの子供を愛する親の愛情であり、それがほんとうにおじいちゃんの孫に対する愛情のしるしだと思うのです。こういう問題につきまして、ただ単なる経済的見地から割り切っていくとか、あるいは伝統だとか歴史だとか全然わきまえずに、単に学閥であると割り切られるのはいかがかと存ぜられます。学閥の問題でいけなかったら、本省の行政府は成り立ちません。学閥の問題がいけなかったら医科大学は成り立ちません。病院は成り立ちません。が、それといえどもなお私はよろしいとは言わない。学閥はなきにしかずです。しかし何でもかんでも学閥にこと寄せて一方をぶった切るとか、一方をたたくということはいけないと思う。  最後に申し上げます。教育愛に立脚し、親子の愛情に立脚して、岡崎あるいは名古屋分校のみならず、教員養成機関は全国どこの養成所も、どこの学大もりっぱに拡充されることを私は要望いたします。それがこの決議にこたえるの道だと私は思うのでございます。大臣の御所見を……。
  266. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まことにごもっともでございまして、本件につきましては十分考えさせていただきたいと思います。  それから学大と申しますか、教員養成課程の大学あるいは学部の拡充につきましては、現在御提案申し上げております国立学校拡充におきましてもすでにいろいろの御提案を申し上げておるわけで、それらの点につきましても御協力のほどをお願い申し上げる次第でございます。
  267. 植木庚子郎

    ○植木主査 玉置一徳君。
  268. 玉置一徳

    玉置分科員 大臣お時間の都合があるそうでありますので、御迷惑にならないように率直に簡明に御質問申し上げますので、簡単にお答えをいただきたい、かように思います。  義務教育の施設国庫負担法の改正でございますが従来何回も私はこの席に立ちまして、文部当局の皆さんにお願いをしてまいりましたわけでございます。すなわち、義務教育の完全な国庫負担を貫く趣旨におきまして、補助率を大幅に引き上げること、補助対象基準を引き上げること、それから、ただいまも加藤先生からお話ございましたが、単価を実態に合わしていかなければ父兄負担が重くなる。同じことは大臣からも御答弁がありましたとおり、木造、鉄骨等の単価のワクをもらいながら、実際は鉄筋をやっておるというのが実情でございまして、この実態に合わして鉄筋率を高めてもらいたい。これに関連いたしまして、中学校の特別教室を特別にワクを増加しなければだめだ。あるいは小学校の屋内体操場を補助対象に織り込んでもらいたい。学校敷地、運動場等が非常に値上がりになってまいりました今日、校舎だけの補助では地方財政が非常に窮屈になりますので、これもすみやかに補助対象にしてもらいたい。ことに災害の認定を受けました分につきましては、保有坪数とは別個に関係なく補助対象としてもらいたい。なお僻地につきましては特別の考慮を払ってもらいたいというようなことにつきまして、今日までずっと質問を続け、お願いをしてまいったわけでありますが、御承知のとおり、昨年の国会におきまして、義務教育施設国庫負担法の一部改正を見まして、校舎につきましては、従来の一人当たりから一学級当たりということになりまして、平均にいたしまして三割ほどゆるくなった、上がったということで、非常にありがたく思っております。  そこで一つお願いがあるわけですが、本年から補助対象に組み入れることになりました小学校の屋体は中学校の屋体とともに、従来どおりの生徒一人当たりの基準坪数でやっております。御承知のとおり、いかに小さい生徒数の学校でありましても、屋内体操場ということになりますと、どうしてもおのずから一定の坪数を必要とするのです。それに生徒数を案分して増加していくというような形でやっていただきまして、ぜがひでもいまの基準の五割くらいは上がるようにしていただかないと、実情に合わない、かように存ますが、大臣の率直な御所見をお伺いしたいと思います。
  269. 愛知揆一

    愛知国務大臣 小中学校の校舎についての基準でございますが、三十九年度から児童生徒一人当たりの基準坪数を学級数に応ずる必要坪数とすることにいたしまして、相当大幅に改善を行なったつもりでございます。それから屋内運動場につきましても、基準について若干の改定を行なったのでございますが、根本的には従来の考え方と同じようになっておりますので、現在の教育課程に応ずる基準としては、まだまだ低いわけでございます。そこで私ども考え方としては、教育課程に定められた体育を行なうのに、十分でかつ実態にも応ずるような基準に、この次は改定をいたしたいと考えておるような次第でございます。
  270. 玉置一徳

    玉置分科員 ぜひとも来年度には改正案が上程されますように、ひとつ御努力をいただきたいと思います。  次に、ただいま大臣からも御答弁がございました鉄筋率の問題でございますが、これまた五%ほどアップしていただきましたので、七五%ないし八〇%程度になったと思います。事実は財政上から考慮いたしましても、実際は鉄筋にしたほうが長い目で見れば、国の財政からも地方財政からも得だというのと、隣近所全部鉄筋になってまいりますし、非常災害の場合その他を考えまして、約九〇%程度は実際は鉄筋をやっておるのではないか、かような実情を考えまして、これまた来年度はぜひとも実態に合うまでにひとつ引き上げるように御努力をいただきたい。  と同時に、時間の都合でもう一つお願いをいたしますが、土地取得については、現在縁故債でやっていただいております。かえってこれのほうが十分だということが、全額をカバーされるということからあり得ると思いますけれども、ことに都会周辺及び都会の中でございますと、校舎の建築費用よりもむしろ土地の取得のほうがあるいはむずかしいのではないか、高額になるのじゃないかというような点も考えますれば、ひとつ何らかの機会を見つけて、なるべくすみやかにこれが全額とは申しません、たとえば二分の一でもよろしゅうございますし、残りを起債で見てもらうというような階段を経て、将来補助対象になり得るように、その実態にかんがみて御努力をただきたいと思いますが、大臣の御所見を承りたいと思います。
  271. 愛知揆一

    愛知国務大臣 まず鉄筋、鉄骨の問題でございますが、昭和三十八年度には鉄筋が六一%、鉄骨が二〇%でありましたものを、三十九年度には五%それよりもアップいたし、それからさらに四十年度は三十九年度から五%アップをいたしましたので、だいぶ比率は高くなってまいりましたが、なお一段と実情に沿うようにいたしたいと思います。  それから土地の取得につきましても補助対象にするようにという御要請でございますが、これにつきましてもできるだけ検討を進めてまいりたいと考えております。
  272. 玉置一徳

    玉置分科員 次は、学校におきまするプール設置でございますが、私はオリンピックの二、三年前からこのことをここで御質疑をし、お願いを申し上げておったわけでございます。現在の計画ではややおくれるような感じがいたしますので、これにつきましてもひとつすみやかに中学校単位に一市町村一つだけは渡るような格好で充足されますように、思い切った措置を講じていただくことが、オリンピックその他で熱の上がりました日本の体育の振興に非常にいいのじゃないか、かように思いますので、ひとつ御努力をお願いいたしたい。この件に関しましては時間の関係で要望だけにいたしまして、お答えを御遠慮申し上げます。  そこで、義務教育諸学校通学費の国庫補助でございますが、従来とも御承知のとおり通学バス、スクールバス等の補助措置文部省でなされておったのでありますが、これとてもその設置のための二分の一の補助でございまして、維持に関しましてはガソリンの補給に精一ぱいくらいの金額だったと思います。ましていわんや、学校統合の際の統合条件等によりまして、通学費を実際に市町村費から補助をいたしておりますものにつきましてはなかったわけでございます。そこで私は文部省並びに自治省に行きまして、いろいろとデータを集めようと思ってさがしましたが、これがございません。京都におきましては非常に大問題になっておりましたが、全国的なデータが集まらなかった。再三お願いをいたしまして、三年前、とりあえず自治省におきまして文部省の僻地指定を受けておる学校の分につきましては、一つの基準単価をきめて特別交付税に入れていただいて、そのあくる年は実際にやっておると思われる町村の分を見ていただいたのであります。今年は三年目でございますが、私のほうの京都府の町村会あるいは教育委員会その他が全国の大会を持ちました。実に町村ごとに五百万円以上の金額を要しておるところがたくさん出だしました。こういうことになってまいりますと、これはいずれも僻村でございます。文部省並びに自治省なんかの御指導によりまして学校統合をしたわけでございますが、教育のためには非常にけっこうでございますけれども、町村財政その他は非常に圧迫を受けることになったわけでございます。そこで本年度、御承知のとおりの一億五千万をこの補助として御計上いただいたのでございますが、当局からこの補助対象、補助基準あるいは基準の単価をどのようにされるのか、ごく簡潔にひとつ御説明をいただきたいと思います。
  273. 福田繁

    福田政府委員 昭和四十年度に計上いたしております、いわゆる小中学校の遠距離通学児童生徒に対する通学費の補助のものでございますが、一応補助基準として考えておりますものは、年額三十万円以上の通学費を負担して実施をいたしております町村に限定するということ、それから距離は児童生徒それぞれ、小学校におきましては四キロメートル以上、中学におきましては六キロメートル以上、いわゆる遠距離通学者を対象とするということでございます。それから児童生徒の通学の用に供するためバス会社等とのスクールバスまたはスクールボートの運行委託契約に基づく委託料を出している場合、したがって市町村の経営にかかるスクールバスまたはスクールボートの維持運営費、これを補助対象にするという点でございます。大体現在市町村において実施しておりますところの交通機関の旅客運賃、またはいま申しましたような委託契約に基づく経費、そういうものを対象にして一応五年間を限りまして、この補助を実施しよう、こういうことでございます。
  274. 玉置一徳

    玉置分科員 そこで、この補助対象要綱の中で小学校四キロ、中学校六キロ以上というようにおきめなすっておいでになりますが、何かの基準がなければいかぬこともよくわかりますけれども、実際のいなかの地形によりまして、あるいは三・八キロというようなこともあり得ると思いますし、五・六キロというようなこともあり得るんじゃないか、こういうような点もひとつ実情に合うごとく——まず補助の基準をつくって、ことしは様子をみていただくんだと思います。学校の統合の条件でこういうことになったわけでありますので、基準はよくわかりますけれども、あまりしゃくし定木じゃなくて、ほぼ実態に沿うような御運営をひとつやっていただきたい。こういうことと、補助対象基準単価は、私どものほうの日吉町の殿田というところの中学校を見てみましても、京都府の調べがここに出ておりますが、一人当たり一万円になっております。いろいろとまた次年度はこれの実情を御調査の上、実態に合うように引き上げていただきたい、こういうように存じます。  もう一つは、自治省にお願いをしたいと思うのですが、従来交付税で見てやっていただいておるのは、二分の一、補助になりましたけれども、京都府の実例を申しますと和束町で八十八万円、京北町で五百七万円、美山町で五百三十三万円、園部町で四百二十万円、八木町で百十九万円、丹波町で百十八万円、日吉町で五百二十七万円、瑞穂町で二百七十七万円、和知町で百八十三万円、大江町で百二十万円、岩滝町が百十五万円、久美浜町で五十二万円等々、非常に多額になっております。これは実際に支出をしておるものを京都府庁が調べたものでございます。そういうような関係で、どうしても残りを自治省で、従来どおり特別交付税で見ていただかなければならないのじゃないか、かように思いますので、補助金額で全額が支払われるまでの問は、その残余を自治省で見ていただきたい、かように思うのです。ただいま申しました補助単価は、実際やってみて、来年度はその実態に合うように考え画していただく。二番目は小学校中学校のキロ数は、一応の標準でありまして、あまりしゃくし定木でない、実態に合うような形をとっていただく。自治省で残額を特別交付税で従来どおり見ていただく、この三つにわたりまして専務当局からのお答えをいただきたい。
  275. 福田繁

    福田政府委員 単価の問題につきましては、私ども調査いたしまして、大体実績が平均いたしまして、小学校の児童一人当たり三千七百十円、中学校におきましては、一人当たり七千二百八十円、という単価になっております。したがいまして将来、また実績等がこれ以上のものが出てまいりますれば、これは十分検討いたしたいと考えます。  なお通学距離の問題でありますが、学校統合の場合の一応の基準が四キロないし六キロということになっておりますので、現在実施いたしております。約五百団体ございますが、それらの実情を十分勘案いたして善処いたしたいと思います。
  276. 岡田純夫

    ○岡田説明員 お答え申し上げます。学校統合との関連でございます。通学費補助というので市町村がやっておりますことは、よく承知しております。従来は僻地指定校の関係だけ考えておりましたけれども、三十九年からは必ずしもそういう指定校に限定しませんで、通学費補助については特別交付税でもって算入いたすようにいたしております。文部省の補助金方式ともにらみ合せまして、極力地方負担が軽減されるように十分考えております。
  277. 玉置一徳

    玉置分科員 これからはひとつ大臣にお願いをしたいのですが、一しゃ千里にやります。  無形文化財、いわゆる人間国宝でありますが、私は三年ずっと続けてお願いをしてきたわけであります。昨年から、まあ十分でございましょうが、これの年金と申しましては語弊がありますが、伝承費の計上を願ったわけであります。大体二十万円から、人によりまして三十五万円というのが実績でございます。そこで、御承知のとおり、文化財保護法の第三条には、「政府及び地方公共団体は、文化財がわが国の歴史、文化等の正しい理解のため欠くことのできないものであり、且つ、将来の文化の向上発展の基礎をなすものであることを認識し、その保存が適切に行われるように、周到の注意をもってこの法律の趣旨の徹底に努めなければならない。」こういうように書いてあります。したがって財政的措置の伴うことも当然だと思います。もう一つ逆に、後継者の保護には、指定を受けました者に、こういったものの伝承責任を持たしておるのは御承知のとおりでございます。ところが大多数の方々は、大体もう現在では経済ベースに乗らないような、大島つむぎのおりかたとか、あるいは日本刀の打ち方だとか、普通の経済ベースに乗らないために、ほとんど稀少価値で、この方を逃がしては永久に日本の古来の文化が伝わらないという方を指定したわけであります。人間国宝という指定は非常にありがたく、名誉なことでございますけれども、それがためにかえって、従来のような経済ベースに乗る品物を製造することができないというようなことで、先年、大島つむぎだったと思いますが、これで人間国宝を受けました玉置何とかいうおばあさんの方が自殺されたような実例もございます。実例を見てみましたが、後継者が絶えそうな例といたしまして、有職織物の羅というのですが、喜多川平朗さんというのがある。狭義の内弟子の方が一人おられます。日本刀でも同じように、内弟子が一人、二人。まき絵のごときは、内弟子がゼロ、こういうふうになっております。せめて生活費だけは無事に差し上げられるような形の伝承費を渡していただかなければ、せっかくの御指定と文部省の企画にかかわらず、非常に無理があるのじゃないかということを心配いたします。  御承知のとおり、文化功労者には年金として百万円渡っております。この方々はいずれもりっぱな方々でございまして、生活にお困りになっておるという意味で渡しておるわけじゃございません。栄誉に対する裏づけでございます。あるいは芸術院会員については、手当という名前で五十万円ございますのも、御承知のとおりでございます。私は、ことし、どうしてもこの文化功労賞の五十万円を百万円に上げられるときに、それよりはほんとうはこちらを先に上げてやっていただきたかった、こう思ったのでございますが、大蔵省の折衝その他がうまくいかなかった。初年度だからというようなことでございますが、来年度はひとつどうしても、大臣、この点を十分御勘案をいただきまして、この方々がせっかく名誉ある人間国宝の指定を受けられて、そのままこれを後世に伝承でき得るような実待遇を与えていただくように願おいするわけでありますが、率直な御所見をいただきたいと思います。
  278. 愛知揆一

    愛知国務大臣 玉置委員のこの問題につきましての御熱意につきましては、私も全く御同感でございます。現在、人間国宝五十五名の方々に、ただいま御指摘のように、二十万ないし三十万程度、これではいかにもさびしい話でございますが、実はただいまお話もございましたように、この制度もようやく緒についたばかりである関係で、今年度の大きな増額を望めなかったわけでございますが、十分御趣旨を体して明年度以降措置いたしたいと考えます。
  279. 玉置一徳

    玉置分科員 時間の関係もございますので、実は文化財保護のうち、神社仏閣その他につきましての防災の完備につきましてお願いをしたく、御質問したいと思ったのですが、省略いたしますけれども、なおなお不十分だというように承知いたしますから、ひとつ十分御配慮をいただきたい、かように思います。  最後に、名勝史跡あるいは文化都市の保存をどうするか、こういうことにつきまして、御意見を承りたいのであります。まず、埋蔵文化も相当な数がございます。そのうちぜひとも残しておかなければいかぬものがございますけれども、近ごろのように近郊都市が開発されてまいるようになりますと、どうしてもしまいには国で買い取らなければならないのじゃないか。この間近畿圏の問題につきまして、近畿圏の整備本部長でございます小山建設大臣も申しておられたとおりであると思うのです。そこでその問題も含めてでございますが、名勝史跡、あるいは近ごろ非常にやかましくいわれております京都、奈良、鎌倉、こういうところの文化人が、この古都を守り、日本の歴史を守るためにどうすればいいかというので立ち上がっておるのは、新聞、雑誌その他で御承知だと思います。  そこで、その一つの例をとりまして御意見をお伺いしたいのですが、京都に宗教法人の仁和寺というのがございまして、その横の双ケ丘というのが非常に問題になっておるのは御承知と思います。この名勝に指定されております双ケ丘でありますが、終戦後国から宗教法人に払い下げを受けたわけであります。その節は宗教法人の目的に合致するように将来とも利用するというようになっておったわけでありますけれども、近くこれを某個人に売却するということになっておりまして、双ケ丘が名勝として非常にすぐれたところであり、付近の学校その他にもぜひともこの有名な双ケ丘を残してもらいたいという大きな運動が起こっておるわけです。ところが、法的にはその所有権が移転することをとめる法律がございません。したがって、この問題は市民の非常な関心事であり、反対であるにかかわらず、宗教法人が意図するところをとめるわけにいかないわけであります。京都市としましても、非常に悩んでおるわけでございます。ただ、この現状を変えるときには、京都府の教育委員会文化財保護課を通じてこちらの文化財保護委員会に願い出なければいかぬわけでありますが、京都府といたしましては、将来ともそういう場合には絶対に許可しないということを強くいま宗教法人に申し入れまして、市民の感情に合うごとく、そういう譲渡をしないで、財政上いろいろな問題があれば御相談に応じようじゃないかということを言うておるわけでありますが、文部省あるいは文化財保護委員会といたしまして、将来これが第三者に渡りましたときに、もしも現状変更を願い出たときに、どういうふうにされるか、ひとつ御決意を承っておきたい。
  280. 愛知揆一

    愛知国務大臣 由緒ある名勝史跡等の保存につきましては、一昨日本会議でも申し上げましたように、たとえば平城宮跡の買い上げというようなものは一番の適例であると思いますが、国として買い上げて保存の任務に当たるのが第一であろうと思います。さらに地方公共団体に対する補助の問題あるいは環境の整備、保存の問題等いろいろございますが、文化財保護委員会といたしましても十分考慮に入れて、また文部省といたしましても積極的にこれを支援する態勢でまいりたいと思っておるわけでございます。  それから双ケ丘の問題でございますが、この所有権の移転自体は、地元の方々もいろいろお骨折りをいただいたようであります。また、京都市が買収をするというようなこともその過程においてはお考えいただいたようでございますが、法律的には、ただいま御指摘のように、いかんともすることができない。万一さような場合になりましても、文化財の指定それ自体は、所有者が何人でありましても、国家的な必要から指定してあるものでございますから、その限りにおきましては、所有者が変わりましても、そしてまたいろいろの申請が出ましても、文化財保護の観点からの立場というものは堅持したい、承認しない、こういう決意でおるわけでございます。
  281. 玉置一徳

    玉置分科員 その御決意をひとつ御堅持いただきまして、将来とも目的に合致するような形で残されるように、市民の心配が杞憂になりますようにお願いを申し上げて、なお、要すれば買い取りその他の考え方が京都市その他にありましたら、行政的な御援助の措置をひとつお考えいただきたい、かように思います。  そこで、時間も非常に過ぎまして恐縮でございますが、最後に一点お願いを申し上げたいのであります。  きょうはこのことにつきましてゆっくり御検討をいただきたいと思ったのですが、京都、奈良並びに鎌倉というようなところで象徴されますこの文化観光都市と申しますか、こういう問題につきましては、文化財保護委員会の文化財保護法だけでは、これは御承知のとおり点と線を対象にするだけでございます。建築基準法あるいは公園法、その他たくさんの法律がございますけれども、それぞれそういった全般を包括してこの文化都市をどう守るのかということにはなっていないのが現状でございます。あるいは、そういう指定を受けますと、地価の値上がりを抑制されるとか、憲法上の問題もあるとか、むずかしい問題もあると思いますけれども、どこかで、何かで踏み切らなければならないんじゃないかということと、そうして住民諸君の、指定を受けた方々の被害を最小限でとどめるのにはどうすべきか。これは建設大臣であり、あるいは厚生大臣であり、文部大臣の御所管だと思いますけれども、これだけ声が高くなってまいりますと、どうしてもまとまった考え方のもとに立ちまして、一つの法制なり、行政の方向づけをしていただきたい。御承知のとおり、こんなものは法律だけでやれるものじゃございません。一般国民感情、市民感情の御協力がなければいけないことは当然でございますけれども、ほうはいとして起こっておりますこの世論にこたえまして、文部大臣からひとつ使嗾されまして、建設大臣あるいは厚生大臣その他の方々と御相談をいただき、こういったものを真に古都ローマのごとく整然として守っていくのにはどうしたらいいかということにつきまして、さっそく御検討に入っていただきたい、こういうことを切に私はお願いするわけであります。同時に私たちはまた、民間でも相当な募財をする方法を考えまして、国だけにまかしておくことはならぬ。有利に回っておるような企業から募財を受けて、これまた文化財保護委員会とタイアップして、この日本の文化をどうして守るかということにともに協力せなければならない。これに対して私も私なりの考え方を持っておりますが、この国会中に、議員の先輩諸氏と御相談を申し上げて、具体的な運動に入っていきたいと思っておりますけれども、ひとつ文部大臣のほうから各省大臣に御相談をしていただいて、なるべく早い機会にそういうものが固まってまいりますようにお願いを申し上げたいと思うのですが、御所見を承りまして、きょうの質問を終わりたいと思います。
  282. 愛知揆一

    愛知国務大臣 新聞でも御承知かと思いますが、実は前回の閣議でも、河野国務大臣からも発議がございまして京都、奈良、鎌倉等の史都全体の保護については、ひとつ関係閣僚協力してその保存に当たろうではないかという提案がございました。全くこれに関係者一同賛成でございます。今後関係の諸行政、たとえば現在申しましても、自然公園法による自然の保護、それから都市計画法による風致地区の保護、京都及び奈良の国際文化観光都市建設促進法による文化観光保存地区の保護、それから近畿県整備法による保存区域の保護といったようなものが、文化財保護委員会のほかに法律がたくさんあるわけでございますが、こういった関係を総合一体的に推進する必要があるという考え方で、鋭意検討を進めたいと政府全体として考えておるわけでございます。  しかしなお、そういう恒久的な措置はもちろん鋭意進めてまいりますが、文化財保護委員会の立場あるいは文部省の立場といたしましても、今日、次々と諸地域に開発計画がどんどん進んでまいります。政府や各種公団などの事業も目ざましく進歩いたしますだけに、事前の文化財保護、保存のための連絡協議がどうしても必要である、あるいはまた、指定の新しい範囲の拡張というようなことも必要である、こういう点につきましては、行政的にすぐにも着手できることでありますので、これは特に昨年の末以来努力を新たにいたしておるようなわけでございますが、御趣旨はまことにごもっともであり、また私どもも、いま申しましたような経緯で、内閣としても重大な決心をしつつあるようなわけでございますので、御趣旨に沿うようにやってまいりたいと考えております。
  283. 植木庚子郎

    ○植木主査 本日の文部省所管についての質疑は、この程度にとどめます。  明日は午前十時より開会し、皇室費、国会及び内閣所管、並びに防衛庁及び経済企画庁を除く総理府所管について質疑を行ないます。  本日は、これにて散会いたします。    午後六時五十六分散会