○愛知国務大臣
昭和四十年度の
文部省所管の
予算案につきまして、その
概要を御
説明申し上げます。
まず、
文部省所管の
一般会計予算額は四千四百六十九億八千八百五十一万八千円、国立学校
特別会計の
予算額は千六百七十五億八千九百七十万五千円となっており、その純計は、四千八百億千七百九十五万円であります。
この純計額を前年度当初
予算額と比較いたしますと、およそ六百四十九億円の
増額になりますので、その
増加率は、十五・六%になるわけであります。
この
増加卒は決して十分とは申せませんが、
一般会計予算総額の
増加率を考えますと、
文教予算に重点が置かれていることは明らかであろうかと存じます。また、内容的にも従来とかく見のがされがちでありました面につきまして、できる限りきめのこまかい配慮を加えたつもりであります。
以下、
昭和四十年度の
予算案におきまして、特に重点として取り上げました施策について御
説明申し上げます。
まず、第一は、初等中等教育の
改善充実であります。
前年度に引き続きまして、公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数を
改善し、施設設備の整備を進めることといたしましたほか、さらに教科書の無償給付を
推進し、学校給食の充実をはかる等の施策を進めることといたしておりますが、要保護、準要保護児童生徒に対する就学
援助、僻地教育及び特殊教育の振興につきましても特に留意し、教育の機会均等の趣旨に沿うようにつとめました。
そのうち、まず、学級編制及び教職員定数の充足につきましては、学級編制の基準を原則として小中学校いずれも最高四十八人に改めるとともに、標準法に基づいて教職員定数の充実をはかり、また、特殊学級担当教員及び充て指導主事の増員などを行なっております。次に、
給与の
改善につきましては、
給与改定、管理職手当の引き上げ等を行なうことといたしましたほか、僻地にすぐれた教員を配置するため、僻地勤務教員の優遇策について特例に考慮いたしております。
次に、公立
文教施設につきましては、既定計画の線に沿ってその整備を進めることとし、小中学校の校舎及び屋内運動場の整備、危険校舎の改築、学校統合に伴う校舎等の整備を行なうために、公立
文教施設整備費二百八億円を計上いたしました。そのうち、危険校舎、統合校舎等の事業量、建築単価及び構造比率の
改善につきましては、それぞれ、実情に即して配慮を加えております。
次に、父兄負担の軽減をはかる趣旨から、小規模学校の教材の充実を含めて教材費の
増額をはかりましたほか、国公私立学校を通じて、小学校及び特殊教育諸学校の小学部の第一学年から第六学年までの児童に、全教科書を国の負担において無償
給与することにいたしております。
また、学校給食につきましては、小麦粉について従来の補助を継続いたしますとともに、ミルク給食につきましては、酪農振興の見地から、国内産牛乳の大幅な使用
増加を前提として、所要の補助金を計上いたしました。
さらに、学校給食の施設設備につきましては、完全給食の
実施を目途として、従来に引き続き単独校の計画的整備をはかるとともに、最近特に要望の強い共同調理場の整備費について大幅な
増額を行なっておりますほか、新たになま牛乳の殺菌設備の補助を行ない、また、栄養職員の設置につきましても補助対象人員の
増加をはかっております。
このほか、
関係市町村のかねての要望にこたえて、小中学校の遠距離通学者に通学費を
支給する市町村に対し、新たに補助金を交付する道を開いて、義務教育の円滑な
実施をはかることといたしております。次に、僻地教育の振興につきましては、まず、僻地に勤務する教員の人事交流の円滑化に資するため、僻地勤務教員の優遇措置を講ずるとともに、教員住宅の建設について一そうの充実をはかり、また、僻地に勤務する教員の子弟の教育のために、新たに甲等学校の寄宿舎建設に対する補助を行なうことにいたしました。さらに、僻地の教育環境の整備につきましては、引き続き、スクールバス、ボート、視聴覚教育設備、僻地集会室等について補助を継続いたしますとともに、小中学校の寄宿舎の建設費及び
運営費に対する補助金の
増額を行なうなど、総合的、かつ重点的に施策を
推進することといたしております。
次に、特殊教育につきましては、養護学校及び特殊学級の計画的な普及と就学奨励費の内容の充実をはかるために必要な
経費を計上いたしますとともに、職業教育の一そうの充実を期するため、特殊学級の設備及び特殊教育諸学校の技術、家庭科の設備の充実について補助金を
増額いたしております。
また、要保護、準要保護児童生徒の就学
援助につきましては、それぞれの品目について補助単価の
改定を行ない、その内容の充実につとめております。
このほか、前年度に引き続き、道徳教育及び生徒指導の充実強化をはかるために必要な諸
経費を計上し、また、教職員の
研究活動を
推進するため、各種教育
研究団体の助成を強化するとともに、
都道府県に総合的な研修センターを設置するために必要な補助を行なうことといたしました。
また、幼児教育の重要性にかんがみ、多くの父兄の要望にこたえて、幼稚園の普及整備のために必要な施設、設備の補助を
増額計上いたしております。
第二は、大学教育の拡充であります。
国立学校
特別会計予算につきましては、前年度の当初
予算額と比較して二百八十一億円の
増額を行ない、約千六百七十六億円を計上いたし、ました。その歳入予
定額は、一般会計からの繰り入れ千三百四十五億円、借入金三十五億円、付属病院収入二百十七億円、授業料及び入学検定料三十七億円、学校財産処分収入十七億円、その他雑収入二十一億円であります。歳出予
定額の
内訳は、国立学校
運営費千三百十九億円、
施設整備費三百五十二億円などであります。
まず国立大学の拡充整備につきましては、公立一農科大学の国立移管を含む八学部の開設、三十五学科の新設及び拡充を行ない、特に多年の懸案でありました文理学部の改組を、まず四大学について
実施することといたしております。
また、教員養成
制度の
改善につきましては、
制度全般についてなお検討を進めておりますが、さしあたり教員養成大学、学部の入学定員の
改定、養護教諭養成所及び必要な養成課程の新設、宮城教育大学の創設などの措置をとることといたしております。
このほか、前年度に引き続き、中堅技術者の育成のため七工業高等専門学校を新設する計画であります。
以上の結果、大学及び短期大学の学化定員の
増加は、
合計約三千四百人となっております。
さらに、教官当たり積算校費、学生当たり積算校費、設備費等のいわば基準的な
経費につきましてその
増額をはかりますとともに、新制大学における大学院修士課程の拡充についても特段の配慮をいたしております。
次に、施設の整備につきましては、財政投融資資金及び不用財産の処分収入を財源の一部に含めまして
予算額の大幅な
増額をはかり、一段と施設整備の
促進をはかることといたしておりますが、特に土地の取得のために財政投融資資金を
利用いたしましたことは新しい構想であり、今後の成果を期待いたしたいと存じます。なお、施設整備のために、後年度分について四十五億五千万円の
国庫債務負担行為を行なうことができることといたしております。
次に、育英奨学につきましては、大学院奨学生及び教育特別奨学生の増員を中心として、引き続き事業の拡充をはかるとともに、日本育英会につきまして奨学会の返還業務の
促進に要する
経費を
増額し、約八十九億円を計上いたしております。
第三は、私学振興の拡大であります。
私立学校の振興は、
文教政策の今後の重要な課題でありますが、
昭和四十年度の
予算案におきましては、特に重点としてこれを取り上げ、格段の努力をいたしたところであります。まず、私立学校振興会に対する政府出資金及び財政投融資資金からの融資につきまして、合わせて百十億円と、これを前年度の二倍に拡大し、私学全般の施設の
改善充実をはかることといたしております。
次に、私立大学等理科特別
助成費及び私立大学
研究設備
助成費につきましては、合わせて五億円増の約三十億円を計上し、
科学技術教育の振興にも資するとともに、新たに私学の教職員の研修センターに対する建設費の補助を計上する等の施策を講じており、ます。
第四は、学術
研究及び
科学技術教育の振興であります。
わが国の学問及び
科学技術の水準を高め、ひいては国民生活の向上に寄与するため、学術
研究及び
科学技術教育の振興につきましては、かねてから努力を続けてまいっているところであります。明年度におきましては、まず、学術
研究について、重要基礎
研究の
促進をはかるために、科学
研究費の
増額を行ないましたほか、原子力、防災科学、宇宙科学等の
研究のために必要な
経費を計上し、また、電子工学
研究所の新設、海洋
研究所、宇宙航空
研究所等の整備をはかることといたしました。
さらに、国際的な学術
研究の
協力体制を強化するため、引き続き日米科学
研究協力事業等について所要の
経費を計上するとともに、南極地域観測事業の再開に必要な
経費を計上いたしております。
次に、初等中等教育の分野におきましては、中央産業教育
審議会の答申の趣旨に従い、産業教育
関係の施設設備の
改善充実をはかるとともに、自営者養成のための農業高等学校の寄宿舎、実習
施設等を整備することにいたしました。
なお、
科学技術者の養成につきましては、
昭和四十年度におきましても引き続き理工系学生及び工業品等学校生徒の増募を行なうため、大学、高等専門学校及び工業高等学校の充実整備をはかっておりますが、国立学校
関係につきましては、先ほど述べました学部、学科の増設等により約二千五百人の理工系学化の増募を行なうことといたしております。
第五は、青少年の健全育成と社会教育の振興であります。
働きながら学ぶ青少年の教育問題は、学校教育及び社会教育の両面にわたって深く意を用いるべきところであると存じます。
まず、学校教育の面におきましては、引き続き定時制高等学校の施設設備の整備、定時制及び通信教育手当の
支給、通信教育用学習書の
給与等に必要な
経費を計上いたしましたほか、夜間定時制高等学校につきまして、夜食費補助金及び運動場照明施設整備興補助金を
増額計上いたしております。
また、社会教育の面におきましては、勤労青少年に学習及び訓練の機会を与えるため、国立第四青年の家を新設いたしますとともに、引き続き公立青年の家の整備を進めることとし、さらに青年学級及び勤労青年学校の内評の充実をはかり、また、中学校卒業後直ちに就職する青少年のために研修を行なう
経費も新たに計上いたしました。
次に、社会教育は、広く国民の資質の向上に大きな役割を果たしており、その普及振興は、学校教育の充実とともにきわめて大切なことであります。このため、まず公民館、図書館、博物館等の施設、設備の整備を一そう
推進するとともに、家庭教育、婦人教育あるいは同和教育等の振興のために必要な諸
経費を計上いたしておりますが、同町に、すぐれた社会教育指導著の養成は社会教育振興のため最も必要なことと存じますので、新たに国立社会教育研修所の設置に関する
経費を計上いたしました。
次に、体育の普及奨励につきましては、広く国民一般に対し体育を普及奨励するため、水泳プールの整備に必要な
経費を大幅に
増額いたしますとともに、体育館、運動場のほか、新たに公立高等学校の柔剣道場を整備するための補助金を計上いたしております。
また、スポーツ
活動の指導者養成、スポーツ教室及びスポーツテストの普及、スポーツ団体の助成等について必要な
経費を
増額いたしましたほか、相次ぐ登山事故の防止のためすぐれた指導者を養成する必要を考え、新たに国立の登山センターを設置するための準備を進めることといたしました。また、オリンピック東京大会を記念いたしまして、選手村あとの施設を活用してオリンピック記念青少年総合センターを設立するための
経費一億二千万円を計上いたしております。
第六は、芸術文化の振興であります。
芸術文化の質的向上をはかるとともに、すぐれた芸術を広く国民に普及いたしますことは、国民生活の文化的向上をはかる上にきわめて必要なことであります。このため、近代文学館その他の芸術
関係団体の助成を強化し、芸術祭の開催等を行なうことといたしておりますほか、歌舞伎、文楽等のすぐれたわが国の伝統芸術の保存と振興をはかるため国立劇場の建設を進め、さらには、東洋美術の公開展示のための東洋館の建設を行なう等、
関係予算の大幅な
増額を行なっております。
次に、文化財保存事業につきましては、保存修理事業を拡充し、防災施設の整備をはかる等その充実について努力を重ねておりますが、特に最近、国土開発の急送な進展に伴って、史跡、埋蔵文化財等の保護対策の強化が痛感されておりますので、平城宮趾の買い上げ、発掘調在の
促進をはじめ、その他の史跡につきましても、その公有化、環境の
整備等をはかるため必要な
経費を
増額計上いたしました。
第七は、国際文化の交流であります。
国際文化交流
関係の
予算につきましては、まず、アジア文部大臣
会議をはじめ、教育、学術、文化、スポーツ等各種の国際
会議への積極的な参加及びわが国で開催される国際
会議に対する
援助を積極的に行なうことなどによりまして、国際機関、団体等との
協力提携をいよいよ密にするとともに、文化協定締結国等との学者、
研究者、学生の交換、学術の共同
研究、芸術、文化財の交流、スポーツを通じての国際交歓などをさらに
推進し、また国際文化団体への助成を強化いたしたいと考えております。
次に、各国の要望にこたえて、留学生の受け入れ体制、特に日本語教育体制の整備についてくふうを重ねますとともに、新たにアジア、アフリカの学生を主として受け入れるためユネスコ国際大学院コースを開設することにいたしました。なお、最近海外勤務者が激増しつつあり、その子弟の教育が切実な問題となっておりますおりから、その教育対策につきましては、これを一段と積極的に
推進することといたしました。
以上のほか、産炭地域における教育につきましては、放置できない実情がありますので、就学
援助費、給食費等について
援助を強化するため、一般の
予算措置のほかに特別の配慮を加えております。
そのほか、
沖縄の教育に対する
協力援助費につきましては、これを大幅に
増額して別途
総理府所管として計上いたしております。
以上、文部省所官
予算案につきましてその
概要を御
説明申し上げた次第でございますが、何とぞ十分御
審議の上、御賛同をお願いいたします。