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1965-02-12 第48回国会 衆議院 予算委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年二月十二日(金曜日)    午前十時二十九分開議  出席委員    委員長 青木  正君    理事 赤澤 正道君 理事 稻葉  修君    理事 二階堂 進君 理事 古川 丈吉君    理事 加藤 清二君 理事 川俣 清音君    理事 辻原 弘市君 理事 今澄  勇君       相川 勝六君    荒木萬壽夫君       荒舩清十郎君    井出一太郎君       井村 重雄君    植木庚子郎君       江崎 真澄君    大橋 武夫君       上林山榮吉君    仮谷 忠男君       川崎 秀二君    重政 誠之君       正示啓次郎君    田澤 吉郎君       登坂重次郎君    中曽根康弘君       中野 四郎君    西村 直己君       野田 卯一君    古井 喜實君       松野 頼三君    水田三喜男君       淡谷 悠藏君    石田 宥全君       石橋 政嗣君    大原  亨君       岡田 春夫君    小松  幹君       高田 富之君    中井徳次郎君       中澤 茂一君    野原  覺君       山田 耻目君    横路 節雄君       稲富 稜人君    永末 英一君       林  百郎君  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君         自 治 大 臣 吉武 恵市君         国 務 大 臣 小泉 純也君         国 務 大 臣 高橋  衛君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣官房長官 橋本登美三郎君         内閣官房長官 竹下  登君         内閣法制局長官 高辻 正巳君         総理府総務長官 臼井 莊一君         総理府事務官         (行政管理庁行         政監察局長)  山口 一夫君         防衛庁参事官  麻生  茂君         防衛庁参事官         (教育局長)  島田  豊君         防衛庁参事官         (人事局長)  堀田 正孝君         防衛庁参事官         (経理局長)  大村 筆雄君         防衛庁参事官         (装備局長)  國井  眞君         防衛施設庁長官 小野  裕君         防衛庁事務官         (防衛施設庁総         務部長)    沼尻 元一君         防衛庁事務官         (防衛施設庁労         務部長)    藤本  幹君         総理府技官         (科学技術庁原         子力局長)   村田  浩君         外務事務官         (アジア局長) 後宮 虎郎君         外務事務官         (アメリカ局         長)      安川  壯君         外務事務官         (経済局長)  中山 賀博君         外務事務官         (経済協力局         長)      西山  昭君         外務事務官         (条約局長)  藤崎 萬里君         外務事務官         (国際連合局         長)      星  文七君         大蔵事務官         (主計局長)  佐藤 一郎君         大蔵事務官         (主税局長)  泉 美之松君         厚生事務官         (保険局長)  小山進次郎君         通商産業事務官         (通商局長)  山本 重信君         郵政政務次官  服部 安司君         郵政事務官         (大臣官房長) 淺野 賢澄君         郵政事務官         (電気通信監理         官)      畠山 一郎君         郵政事務官         (人事局長)  曽山 克巳君         労働事務官         (労政局長)  三治 重信君  委員外出席者         日本専売公社総         裁       阪田 泰二君         日本国有鉄道総         裁       石田 礼助君         日本電信電話公         社総裁     大橋 八郎君         専  門  員 大沢  実君     ————————————— 二月十二日  委員登坂重次郎君、岡田春夫君、田中織之進  君、中井徳次郎君、永井勝次郎君、山花秀雄君  及び佐々木良作辞任につき、その補欠として  大倉三郎君、安井吉典君、山田耻目君石野久  男君、小松幹君、淡谷悠藏君及び稲富稜人君が  議長指名委員に選任された。 同日  委員大倉三郎君及び山田耻目君辞任につき、そ  の補欠として登坂重次郎君及び田中織之進君が  議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  国政調査承認要求に関する件  小委員会設置に関する件  参考人出頭要求に関する件  昭和四十年度一般会計予算  昭和四十年度特別会計予算  昭和四十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 青木正

    青木委員長 これより会議を開きます。  この際、国政調査承認要求に関する件についておはかりいたします。  きのうの理事会協議に基づき、予算実施状況に関する事項につきまして、議長に対し国政調査承認を求めることとし、その手続等につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認めます。よって、さように決しました。  直ちに委員長において所要手続をとることといたします。      ————◇—————
  4. 青木正

    青木委員長 それでは、この際、小委員会設置の件についておはかりいたします。  去る十日の本委員会における岡田春夫君の質疑において問題となりました防衛図上研究問題等に関する論議にかんがみ、理事会において協議の結果、本委員会に小委員十三名よりなる防衛図上研究問題等に関する予算小委員会を設置いたしたいと存じますが、これに御異議はありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認め、さように決定いたしました。  次に、ただいま設置することに決しました小委員会の小委員及び小委員長の選任につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、これに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認め、さように決します。  小委員及び小委員長は追って指名することとし、公報をもってお知らせいたします。  なお、十三名の小委員の各会派別割り当て数は、自由民主党八名、日本社会党四名、民主社会党一名でありますから、御了承ください。      ————◇—————
  7. 青木正

    青木委員長 これより昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、質疑を行ないます。  なお、念のため申し上げますが、理事会の申し合わせにより、質疑者の持ち時間は、永末英一君一時間三十分、林百郎君一時間でありますから、御了承ください。  それでは永末英一君。
  8. 永末英一

    永末委員 私は、民社党を代表いたしまして、過般の日米共同宣言予算にあらわれました税制改正、さらにまた医療費問題等を通じて、佐藤内閣政治に対するかまえを国民の前に明らかにしていただきたいと存じます。  第一は、佐藤さんは今度内閣を組織されたのでありますが、それぞれの内閣日本政治に対してある一定の役割りを果たしてきておるとわれわれは考えております。したがって、いま国際情勢が非常に変動しておる中で内閣を組織せられた佐藤総理としては、この佐藤内閣の使命の一番重点がどこにあるかということをお考えだと私どもは思います。内閣は十年も二十年も続くものではございませんし、いまの時点における最重点をどこに置いておるか、これはスローガンではなくて、この問題だけはひとつ佐藤榮作はからだを張ってでも実現する、こういうものがあるべきはずだと思うのであります。そういう点について、ひとつ最初に総理決意をお伺いいたしたい。
  9. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私の政治的な基本のかまえは、施政演説その他においてしばしば説明したところでございます。私は、新生日本、それがすでに二十年たっている、この二十年たった立場においてわれわれが考えるべき事柄が今日あるだろう、それと真剣に取り組んでこそ、初めて日本が過去二十年間営々として努力してきたそれが報いられるものではないか、かように私は考えます。申すまでもなく、完全独立、その独立にふさわしい立場にありたい、かように思っております。今日まで、あるいは内政において外政において、私自身基本的方針を示しておりますのも、こういう意味合いでございます。もちろん、これは佐藤内閣が何年続くとかいうような問題ではなくて、これこそわれわれ国民がこの事態について十分認識を持ち、そうして今後の進むべき方向国民がきめるべきことだ。私が申しておるわれわれはというのはそういう意味合いでございまして、私はその点について、総理として果たすべき役割りを十分果たしてまいりたい、かように考えております。
  10. 永末英一

    永末委員 ただいま総理新生日本という点を踏んまえられて、その中の特に重要な内容として、独立日本にふさわしい体制をつくるという趣の御意向を申されたと拝聴いたしました。私は、最近の日本政治の中で一番欠けているものをさがしますと、経済の問題が政治の一番最重要問題であって、あるいはまたそれですべてが尽きるのだという風潮がびまんしておるのではないか。もちろん経済の問題は重要です。しかし、同時にまた、特に昨年の夏以来の国際情勢の激変から考えて、日本の平和と安全の問題についてなおざりにしておるのではないかと思われる節がございます。この三年有半にわたる前内閣仕事の中において特にこのことが顕著にうかがわれてまいったと思うのです。わが予算委員会を二日間にわたってストップせしめましたいわゆる三矢研究なるものも、内閣日本の平和と安全について明確な方針を示し、その方針の中で防衛庁ないし自衛隊の実施部隊方向を差し示すならば、あるいは実施部隊の中における研究国事事項にわたってまで研究をすることはなかったのではないかと私は思います。むしろ、国防会議が実体にわたって、日本憲法上一体どういうことが考えられるのかという方針をいわば明確にしなかったことがその一点ではないか、こういうことも考えられるのです。私はこの際、独立日本と言われましたが、平和と安全について佐藤総理が真剣に取り組まれるのかどうか、この点をひとつお伺いいたしたい。
  11. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私が申し上げるまでもなく、国政を担当する者として、平和と安全、これに十二分の意を用いる、これはもちろんのことであります。しかも私どもは、新しい憲法のもとにおいて、わが国基本的方針はきまっております。その観点に立って、いかにして安全また自由を守り抜くか、こういうことが基本的な態度だと思います。私はこの際反省を要すると、かように思いますのは、戦後二十年と、かように申しております。また、その間におきまして、しばしばいわゆる占領政策なるものも是正されてまいりました。しかしながら、いまなお占領中における政策の残滓は残っておる。こういうものが順次回復される、みずからの力できめられる、自由意思できめられる、こういう方向でありたいと思います。ただいま防衛庁各種図上演習その他についての御意見がございましたが、今日は、申すまでもなく、総理大臣自身がその最高責任者になっております。その立場において問題が研究されてしかるべきだ、かように思います。私が過日の岡田春夫君との質疑応答においても明らかにいたしました点は、総理責任、こういうことにおいての基本的な考え方からこれが出発しておる、この点を御了承いただきたいと思います。
  12. 永末英一

    永末委員 わが国の平和と安全について第一の責任者は、いま総理がおっしゃったように、総理責任がある。当然な話だと思います。ところが、われわれは、歴代の自民党政府総理がこの責任を十分に果たしてきたかと思うと、どうもそうは思えない節がある。たとえば、日本の平和と安全というのは、何よりもまず日本国民の支持と協力を得られなければ、これは全うし得ない問題である。さすれば、第一にわれわれ日本国民に対して、日本の平和の条件が一体どういうものであるのかということを明確に国民に知らさなくてはならない。ところが、この点についての政府措置はまことに不十分であって、あいまいである。したがって、まあ昔の漢語で申せばいわゆる処士横議とでも申しますか、とんでもない戦術論戦略論、そういうものが横行して、国民は不安にかられておる、こういうことが実情ではないか。どこの国でも、自国の平和と安全について、政府がその現状を明らかにして国民協力を求め、国民の租税によってそれぞれの国の兵力を養うのでございますから、当然やっている仕事、これをわが国においては何か避けて通ってきた気配が濃厚であると私は思います。そこで、総理はこの際、日本の平和と安全に関する現状、たとえばまあ白い紙で包めば白書ですが、国防白書のごときもの、そういうものを政府責任において出して、国民にこの現状を明らかにし、ともに平和と安全を考える、こういう御趣旨はございませんか。
  13. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまの御意見、私はしごくもっともだと思います。ただいまは総理一人がいかにがんばったからといって、これはとやかくできるものではございません。しかし、総理責任は、先ほどお答えしたとおりでございます。もちろん、国民自身がこれをきめることであり、国民自身の積極的な協力なくしては、これもできないことであります。したがいまして、十分ただいまのような御意見のあることを念頭に置きまして、さらに検討をしてみたい、かように私は考えます。
  14. 永末英一

    永末委員 私は、そういう基本的な総理のお考えを承ったところで、ひとつ日米共同宣言を手がかりとして、これらの問題に対する総理考えを明らかにしたいと存じます。  総理は、この共同宣言の第八項において、「アメリカ大統領は、米国が外部からのいかなる武力攻撃に対しても、日本を防衛するという安保条約に基づく義務を順守する決意であることを再確認した。」こういうことをお取りきめになったようでございます。ところで、この問題は過般の予算委員会に少し出ましたが、「いかなる武力攻撃に対しても、」こういう文句の挿入は、あなたが提案されたのか、アメリカ側からの申し出があったのか、明らかにしていただきたい。
  15. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは両者意見が一致いたしたのでありまして、そのいずれがこれを発案したということは、ただいまお尋ねではございますが、私は答えることができません。御承知のように、わが国の安全、これは基本的には日米安全保障条約によっている、そうしてわが国は、憲法の許すところに従いまして、国力、国情に応じて所要防衛力を整備しているというのが現状でございます。この点はまことによく御理解をいただいておると私は確信をいたしております。もちろん、この種の状況につきましては、国内においてかような状態を解消する原因もあろうかと思いますが、同時にまた、わが国をめぐる国際情勢、これが変わることによりましてもこの点は必要がなくなってくる、かように思うのでありまして、この状態自身が、いまやってはいるが、最も望ましい方法なのかどうなのか、こういうことについてはいろいろの御意見があろうかと、かように思います。
  16. 永末英一

    永末委員 安保条約の第五条に同様の規定があるわけです。つまり、アメリカ日本が、「日本国施政の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃」これは日本側に対する武力攻撃も含まれるわけでございますが、こういう場合には、アメリカ側が「行動することを宣言する。」こういう文句になっておる。この日米安保条約ことばがあるにかかわらず、この第八項目を挿入された意味は何ですか。
  17. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 簡単にお答えいたしますが、これは再確認したということでございます。
  18. 永末英一

    永末委員 この安保条約第五条の文句は、北大西洋条約におきましてもその第五条に同様の規定がある。同様の規定があるにかかわらず、これら双方ともいわゆる核戦略体制が完備をしていない時代の条約であったために、北大西洋条約機構では、御承知のとおりに、ドイツを中心にするMLFの問題、さらにまた、独立核抑止力をたくわえようとするフランスの問題、同時に、核兵器を所有しながらアメリカとの間に密接な体制をとろうとするイギリスのANFの問題等が生起をいたしております。わが国の場合には、総理委員会で明らかにされたように、非核武装を貫くというのでございますが、同様の文句でありながら、なぜヨーロッパにはそういう問題が生起し、わが国においてはことばで再確認するということだけで終わるのでしょうか。国民は、日本だけが特別に天国の状態にあるなんということは思っていないと思うのです。その辺をひとつもう一度明らかにしていただきたい。
  19. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私どもは、一方で憲法がはっきりいたしております。また、日米間のこの関係におきまして、今日想像されるいかなる攻撃、また、将来新しいものもいろいろ考えられるかわからぬが、そういうものをも含めて、いかなる攻撃に対しても日本を守るというこの態度をはっきりさせたわけであります。これは、日本憲法というものが特殊なものでございますから、そういう意味で、アメリカとしてもそれより以上のことは要求できない、また日本としても、これより以上のことは要求できない、こういう立場でございます。これは、欧州諸国のNETOの関係とはおよそ違っておる。それぞれの国が憲法を持ち、また、それぞれの国が国情に応じてそれぞれの特異な国防体制をとっておる。そういうところと、この極東における状況はやや相違がある、かように私は考えて、今日、日米安全保障条約の第五条に基づいて、さらにその中身を再確認したということは、わが国安全保障上これは適当な処置であった、かように考えております。
  20. 永末英一

    永末委員 過般の予算委員会で、総理は、この「いかなる武力攻撃」の中に、中共からあるいはあるかもしれないところの核攻撃も含まれるような御見解があったと拝聴をいたしました。問題は、核戦力というのはアメリカ自体にとっても、これを使用するということは、同時にあまり時間をおかないで自国攻撃にさらされるということである。したがって、同盟状態における、同盟国の安全を守ろうとしましても、アメリカ核兵器を使うということは、同時にアメリカ国が反撃をされることだと決意をしなければできない。この核兵器の性格が、私どもヨーロッパにおけるいま申し上げたいろいろな問題を生じたと考えておる。そこで、私どもは、この第八項というのは、そういうことを含んでの再確認でなければこれは意味がない、あたりまえのことだから、安保条約にあったからまた確認したんだ、これでは意味がないと思う。やはり問題はそこにあるのだ。日本国民に、五年前にあった安保条約の五条を、佐藤さんが新しく総理大臣になられたから、新しい大統領ジョンソンと再確認をしたという形式的な問題ではなくて、もっと実体的な問題を含んでおるとわれわれは判断をしておりますが、もう一度総理の御見解を伺いたい。
  21. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、いろいろ御意見は御自由でございますが、日米安全保障条約第五条、それに基づいての第八項、この点はたびたび申し上げるとおりでございます。私はこの際明らかにしておきたいことは、日本は絶対に攻撃的な軍備は持たないんだ、他国に対して脅威を与えるようなことはしないんだ、これは、新しい憲法の主張するところでありまして、これが非常に明確になっておる。この基本を十分御理解いただくならば、ただいまのような問題もおわかりができるだろう。私どもが今日世界に対しましていろいろ外交を展開しておりますが、申すまでもなく自由を守り平和に徹する、これは、ほんとうに耳にたこができるほどこの席で私が申し上げておるのですが、その立場に立って、そして各国がそういう立場であるならば、将来はかようなものは必要でなくなる、こういう事態が一番望ましい事態なんです。その事態はなかなかこない。しかしながら、今日われわれは嵩高なる理想のもとに国をつくり、また行動しておる。誤解を受けないように、そういう態度であるということを重ねて申し上げ、またその立場に立てば第八項がちゃんと御理解がいただける、かように私は思います。
  22. 永末英一

    永末委員 総理はしばしばこの予算委員会で、平和の問題については崇高な理想を語られる。私は、理想を語られるのはあたりまえだと思うのです。しかし、現実日本人は命をあなたに預けておるのだから、現実措置についてもやはりお考えのほどを国民に聞かしていただく、あるいは国民のほうからいえば、聞く権利がある。あなたのほうは明らかにする義務があると私は思うのです。  そこで、私どもは、この八項を取りつけたことについて、何か日本政府が新たないわば反対給付アメリカ国に与えたのではないかということを心配いたしております。たとえば、その第六項に、ベトナム情勢について両者意見が一致した、こういうことが書いてある。これは、見方によりますと、アメリカ南ベトナムでとる一切の措置について、日本国総理大臣は同意をいたしました、こういうぐあいに受けとれるわけなんですね。この点をひとつ明らかにしていただきたい。
  23. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ベトナム住民のいまの塗炭の苦しみ、これを十分認識してほしい、その点については、アメリカ側におきましても私どものその気持ちをよく理解してくれた。私は、ベトナム住民がほんとにその生活にも苦しんでおる、これに心から同情を持つ者でありまして、これは、おそらくわが国の各政党とも同様だろうと思う。したがって、これが一日も早く安定政権ができ、そうして平静な国民生活が送れる、こういうことを心から願っておる、そういう点について、アメリカもこれは一致したわけであります。したがって、もちろん戦争不拡大、これはぜひともやってほしい、こういうことを実は申して、それはよくわかったということで両者意見が一致した、こういうのでございます。もうそれより以上の何ものもございません。私どもも、日本平和憲法のあることをよく知っておりますし、アメリカ政府も、平和憲法の存在を非常によく認識しておりますから、こういう点について何も要求がましいこと、またこれに対応する給付など向こうは私ども要求はいたしておりません。この点は非常にはっきりしている、もうしばしば申し上げたところでありますが、そういう誤解がないように願っておきます。
  24. 永末英一

    永末委員 この七日以来、アメリカは、南ベトナムにおけるアメリカ軍軍人の宿舎をベトコンが攻撃をしてアメリカ軍軍人を死傷せしめたということを理由にして、報復ということで、北ベトナムに対して爆撃を三回にわたって開始をいたしました。これは、北ベトナム国とアメリカ国とのいわば国際戦争の形をとっておるわけである。この一連の事件について、日本政府としてはアメリカに何か申し入れをされましたか。
  25. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 大使館とよく連絡をとりまして、戦争不拡大、これをわれわれは念願しておるんだ、かような立場にあることを再三——再三でもございませんが、申し入れをいたしております。
  26. 永末英一

    永末委員 私どもが新聞で知る限りにおいては——外務大臣、聞いておいてくださいね。あなたに質問がいくと、私は聞いておらなんだ、こう言われますと、また質問しなければいけませんから。  八日の午前中にアメリカ大使館の公使が外務省を訪れて、次官に七日における事件の報告をやったと伝えられておる。昨日午後四時半、ライシャワー大使が椎名外相を訪れて、きのうのことについて報告をやった。攻撃は午後二時半に行なわれた。ライシャワー大使が来られたのは四時半である。こういうことが行なわれておるわけです。つまり、アメリカ国からやってきておることはあっても、日本側から一体積極的にこのアメリカ北ベトナム攻撃をやろうということに対して措置をしたということは、われわれにはわからない。この点についてひとつ明らかにしていただきたい。
  27. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 おっしゃるとおり、八日の午前にエマーソン公使が次官を訪れて、報復攻撃のてんまつを報告いたしました。これに対して、かねて日本が申し入れてある不拡大の方針を話したことはもちろんであります。その他これらに関連して若干の質問をいたし、これに対して向こうから回答があったのでありますが、その内容はしばらくお預けを願います。  それから昨日の午後四時半の大使の来訪は、過般アメリカにおいて沖繩問題を中心にして話し合いがございました。これらの問題について近く両者の間で会議をしよう、そういったような事柄の相談でございまして、昨日の報復爆撃の問題は、午後六時半にエマーソン公使がアメリカ局長を訪れまして、そうして、第一回、第二回にこれは関連するものではない、新しい挑発行為に対する報復攻撃である、しかしながら、依然として、アメリカは従来の不拡大の方針を続けておる、こういう報告を受けまして、これを了承した次第でございます。
  28. 永末英一

    永末委員 非常に小さい声で言われた部分に、かねて日本が申し入れた不拡大の方針について云云、こういうことがありましたが、いつ申し入れたですか。
  29. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 かねて日本が申し入れてある、不必要に拡大するというようなことはもちろんないでしょうなというような点を確かめ、その他関連の……。
  30. 永末英一

    永末委員 それはいつやったのですか。
  31. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 八日です。
  32. 永末英一

    永末委員 八日ですか。八日の会談で、かねて不拡大を申し入れた、こういうことを言ったと言われたのだから、私どもは二月八日のもっと前の話だと思うのですが、どうなんですか。かねて不拡大を申し入れておいた、こうあなたが言われるから、私が聞いているのは、あっちから来たことばかり受けておられるが、日本としては積極的にこのベトナムにおける混乱収拾のために何かしたかと総理大臣に言ったら、そういうことをやったという。あなたも申し入れたと言われるから、いつだと聞いておる。
  33. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 そういう方針はいつ幾日ということはございませんけれども、われわれの考え方は十分に伝えてあるのです。
  34. 永末英一

    永末委員 いつ幾日かわからないが、伝えたということでは、これは非常にあいまいだと思う。もっとはっきりしてください。政府意見を正確に相手方の政府に言うのでしょう。それならば、やはり何月何日、どういう資格で、そうして一体両国の取りきめておる何らかの根拠の法令等に基づいて、ベトナムの問題についてはこういう申し入れをしたということでなければ、この委員会で、かねて日本が申し入れた不拡大の方針に基づき、そんな答弁は出てくるはずはないと思う。明らかにしていただきたい。
  35. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 ベトナムの問題については、たびたび、総理大臣が向こうに行かれたとき、あるいはその前に私が国連の総会に参りまして、その途次、ワシントンにおいてラスクと会談をいたしました。向こうからも話があり、またこちらからもそういう考え方を申し入れてあるのでございまして、そのために特別の格式ばった会談というものは特別に持ちません。しかし、このベトナムの問題は重大な問題でありまして、終始われわれも非常な関心を持っておる。このことにつきましては、絶えずドラスティックな報復は避けてもらいたい、拡大はそうしてもらいたくないということは、すでに申し入れてあるのであります。
  36. 永末英一

    永末委員 いまの答弁を承りましたが、まことにあいまいもことしております。これだけにかかずらわるわけにはいきませんが、八月に行なわれましたトンキン湾事件のときは、ライシャワー大使が池田総理大臣に対してこのことの報告をしに参りました。ところが今回は、いま明らかになりましたように、アメリカ大使館における公使が第一回は外務省の次官へ、第二回はアメリカ局長へ向けてこれを言っておる。この一連のことを並べて考えますと、私は、佐藤さんとジョンソン大統領との会談において、もうアメリカがやる軍事行動については日本文句は言いませんのだというようなことがあったのではないかと、国民は疑ってもしようがないのじゃないですか。重大なことですよ、明らかにしていただきたい。
  37. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ御心配のようですが、絶対にそういうことはございません。ただいま外務大臣が御報告申し上げましたように、国連の場においても、またジョンソン大統領と会見の際も、不拡大を心から願っておる、こういう話がしてあります。  しかし、御承知のように、爆撃が始まった。その爆撃直後において当方から、絶対に不拡大であってほしい、こういうことを申し入れてあります。これは、人を派遣したというわけではございません。しかしながら、その他の連絡で幾らでもできるから、これはやっておるわけであります。  したがいまして、その後の情勢の変化については、向こうからそれぞれの人が来て、そして事情を説明しておる。ただいま申し上げるように、第三回目は前の継続ではない、新たなる報復行為だ、こういうことを申し入れております。私はこの席でも申し上げましたように、不拡大であること、しかし報復攻撃であること、これはいわゆる侵略行為と、かように断ずるわけにいかない、報復攻撃だということを申して説明をいたしましたが、また今回の第三回目は、報復にしても非常に多いじゃないか、こういう疑問を持ちますので、彼らは、新しい攻撃に対する報復だ、かように事を分けて説明しておるわけであります。
  38. 永末英一

    永末委員 共同宣言で、佐藤総理は、その第二項において、アジアの問題について両者が一そう常時密接な協議と連絡を行なうことに合意した、こういうことですね。今回のアメリカ公使の連絡はこれに該当するものですか。
  39. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 これは、第四条の随時協議であります。
  40. 永末英一

    永末委員 トンキン湾事件のときにも、外務大臣は、安保条約第四条に該当する随時協議だと言われておる。そして、随時協議は事後でもよろしい、こういうことを言われた。いままた同じことが行なわれておる。  総理大臣、原則としてこの不拡大の意向をあなたが大統領にも言ってある。そして、あなたの部局はそれぞれ言っておる。ところが、現実に事件が起こる、その起こった判断について、日本政府としてこれが一体どうなるか。われわれはアメリカに軍事基地を貸しておるのでありますから、拡大し得るかどうかということについては、日本政府としての独自の判断があるはずだ。それをアメリカ側の連絡があるまでは黙って見ておるという佐藤内閣の御方針ですか。
  41. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 佐藤内閣というのは、そういう消極的な行動はしないということをしばしば申し上げておる。アジアにおける平和を確保する、こういうことについて積極的な働きをする、また自分たちの役割りをそういう意味で果たすのだということをしばしば申し上げております。したがいまして、政府は、必要がある、かように考えれば、もちろん連絡をとっていろいろの申し入れもする、こういう状態でございます。
  42. 永末英一

    永末委員 外務大臣、安保条約の第一条はこういうことをきめておるわけです。武力の威嚇ないし行使はいかなる国の領土保全または政治独立に関するものも慎むことを約束する、こうなっておるわけです。われわれはあのときに、極東の範囲というのでいろいろ議論いたしましたが、ベトナムがあの当時における極東の統一見解のらち外であることは、本院の外務委員会でも明らかになっておると思う、予算委員会でも明らかになっておると思うのです。ところが、あなたはこの北ベトナムに対するアメリカ軍の攻撃安保条約の四条の随時協議に該当すると言われる根拠は、一体何であるか伺いたい。
  43. 椎名悦三郎

    ○椎名国務大臣 あれは原則論でございまして、その範囲外においても、極東の平和と安全に関係を持つような事件が起こったならば、その場合には必ずしも行動の範囲は、いわゆる原則で定めた極東の範囲に限るべきものではないということがあそこに申し添えてあるのでございまして、今回のベトナムの問題はその例外的な部分に入る、かように解釈しております。
  44. 永末英一

    永末委員 例外をたくさんつくっていきますと、とんでもないことになる。  総理大臣南ベトナム国内部においてアメリカ軍が、われわれは疑っておりますけれども南ベトナム政府の依頼を受けて国内の治安を維持するために兵力を用いておる。そのために日本安保条約上、あなたの政府は基地を使用さしておるわけでありますけれども北ベトナムという別個の国に対して国際戦争をしかけるという場合には、もっと厳格にひとつ日本の主張を貫いていただかなければ、もし報復ということを理由にしてアメリカ軍の北ベトナムに対する攻撃をあなたが是認されるならば、逆にかえって日本に対してそのことが行なわれるかもしれないという、論理はもろ刃の剣みたいなものでありますから、あなたが、いやおれは相手方の言うがままにはならぬのだ、もっと独立独歩の姿勢でやるのだというのでありますが、一番むずかしい平和の問題について、過般私どもの西村委員が、ベトナムの戦闘を終結せしめるためにチャンスだから乗り出しなさい、こう申しましたところ、あなたは、いやまだ時期にあらず、とたんに北ベトナムに対する爆撃が始まった、こういうことなんです。真剣にひとつ取り組んでいただきたい、要望をいたしておきます。  次に、私は、同じくこの第八項のことについて、沖繩の問題について非常に重大な疑惑の念を持つわけでございます。沖繩の問題については、総理大臣はこの委員会でも申されました、施政権返還が沖繩を包む事情の変更によって可能だ、こういうことを申された。  しかし、私どもは、それがそうであるとするのなら、次の二つの場合しかあり得ないのではないかと思う。つまり沖繩にアメリカ軍の軍事基地があるまま日本施政権が返還される場合と、第二は、沖繩の基地をアメリカが不必要とする、こうやって沖繩からアメリカ側の基地がなくなる、そういう場合に返還される。逆に裏を返せば、基地がある限りは日本には返還されないのだ。このどっちかしかないのではないか。  いろいろ総理大臣が申されましたが、一体施政権返還について実体的には何を約束されたのか、もう一度ひとつ明らかにしていただきたい。
  45. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 あの訳したのは、ちょっと日本語として日本語らしくないことばを申しましたが、極東における自由世界の安全保障上の利益がこの住民の願望を許す日を待望しておる、心待ちしておる、こういう言い方を相手がしておるということを申し上げました。  しかし、私は、そういう事態は、これは国内の問題だけではなくて、やはり日本をめぐる国際情勢からわれわれが判断していかなければならない問題だ、かように考えますので、いますぐというわけにはいかない、かように思いますから、いまのような施政権がアメリカにある状態において沖繩住民が非常な苦しい状況に置かれている、その状況をできるだけ私どもが是正していく、改善していく、こういう努力をしようということで、その政治的な自由を回復するように、あるいはまたその生活自身に対しての福祉厚生の実をあげ得るようにいたしたいと、かように考えまして、こういう点についての一さらにまた、主席公選とかいうような問題もあるようですから、こういう問題をめぐるその交渉が、この出先において話し合いが進め得るような状況にしよう、こういうことで日米協議委員会の権限を拡大する、こういうことに両者が一致したわけであります。  したがいまして、ただいままでは弁務官が担当しておる範囲の仕事と、いわゆる外交上の問題として交渉する問題と、二つに分けておったのでありますが、今回は、この日米協議委員会の権能を拡大することによりまして、いわゆる外交ルートというものを、これが現地において交渉し得る、こういうことになるのだ、かように思います。したがいまして、ただいまライシャワー大使が帰ってみえましたので、ライシャワー大使ともこの協議委員会の権能の拡大について具体的な打ち合せをしていく、こういう段階でございます。  その主たるねらいは一体どこにあるのか、かように申しますと、故ケネディ大統領の行政命令と申しますか、指摘いたしました項目、これなどをまず第一に実現することが沖繩住民に対して利益がある、かように考えますので、こういう点を先に取り上げ得るようにいたしたいものだ、かように私は考えておるのであります。ただいま申し上げましたように、施政権返還、その直接の状態を招来することが望ましい、これは心から願うが、それが実現するまでの間は、ただいまのような処置によりまして沖繩住民がより日本人らしい生活ができるようにいたしたいものだと、かように考える次第でございます。
  46. 永末英一

    永末委員 総理大臣が引用されましたジョンソン大統領のこの点に関する言明は、一九六二年の成ケネディ大統領の声明と同じでございますが、それがようやくいま初めて、総理大臣のお話を聞いておりますと具体化してきたと私ども判断して、非常にいいことだと思います。  ただ、ここでもう少し明確にしていただきたいのは、日米協議委員会の権限を拡大する——従来までの日米協議委員会は、住民の安寧と福祉、日本語の訳になりますとそうなりますが、それが主たる対象であって、何か経済的なこと、技術的なことに局限されておるのではないか、こういう雰囲気が強かったのでございますが、今度の総理の訪米によって、主席公選までこの権限に含む、こういうことになりますと、いわゆる私どもが主張してまいりました自治権の拡大、こういう問題をも含めてこの日米協議委員会を舞台にして行なっていき得る、こういう道が新しく開かれた、このように解釈してよろしいか。
  47. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま御指摘になりました主席公選をも含めて議論はもちろんいたします。そういう意味の中身を持つ、そうして、いわゆる自治権の拡大という点がどの程度まで実現していくか、こういうことに落ちつくのでございます。問題は、これからの具体的な交渉にまつということでございますから、この点を誤解のないように、また私どもの熱意のあるところをおくみ取りいただいて、この上とも御鞭撻のほどをお願いしておきます。
  48. 永末英一

    永末委員 議題になってこれがこのままきまると私ども申し上げるわけではございませんが、自治権の拡大に関する件について、たとえば主席公選は、アメリカ大統領の行政命令の改定を行なわなければできない。そこで、そういういわば含みを持ちつつ、いままでとは違った性格のもとに、日米協議委員会が自治権拡大、理想としては施政権返還を目ざして動いていくとわれわれは了解してよろしいか、もう一度ここでお答え願いたい。
  49. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これから具体的に交渉するつもりでございますが、政府としてはそこまでも話をしたい、かように考えておるわけであります。いまのプライス法自身も一つの限度がございますが、こういう事柄ももちろん考えて、これをもっと金額をふやすようにとかいうようなこともいたしたい。いろいろやっていける方法があるでしょうが、とにかくいわゆる対立抗争でなくて、いかにすればより沖繩住民の理解協力のもとに米軍が行動できるか、また、沖繩住民がいかに日本人らしい生活方向へ前進ができるか、こういうことで私ども考えてまいりたいということを申しておるのであります。
  50. 永末英一

    永末委員 この共同宣言第八項によって、総理は、中共からの核攻撃に対してアメリカのかさが借りられるようになったというぐあいに考えておられるようでございますが、私ども日本はこの核攻撃——そんなことは内閣としては予想していないのだと言われるかどうか知りませんが、何もせぬでよい、こういうぐあいにお考えですか。
  51. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのアメリカ安全保障条約、この申し合わせにより、中共の核攻撃に対しても安全だ、これは少し、お尋ねにしても意見が言い過ぎはしないか、誤解を受けますから申し上げておきますが、中共もそういうことは考えてないだろう。もしそのとおりであるならば、それは中共自身にも考え直していただきたいと思うが、私どもは、どこまでもみずからを守るということには非常な全力を注ぎますけれども、他に対して脅威あるいは攻撃的な意図はないということ、これをはっきりしておいて、そのもとにおける安全の確保ということを考えておるわけであります。核武装については、かねてからたびたび申し上げたように、わがほうとしては核兵器は持たない、また持ち込まない、持ち込まさない、こういうことをはっきり声明をいたしておりますから、わが国の平和的な態度に十分の理解をいただけば、ただいまのようなお尋ねは起こらないのではないだろうか、かように私は思うのでございます。
  52. 永末英一

    永末委員 最初に総理に伺いましたように、平和と安全の問題は現実の問題である。私どもは、中共がわが国核攻撃をかけてくる、そんなことはあり得べからざることだとは思いますが、しかし、防衛の責任者としてはいろいろなことを考えられるのはあたりまえだ。  たとえば、イギリスもまた新しい労働党内閣のもとで、この中共の核爆発以後、インドないしマレーシアに対することを配慮しつつ、ヒーリー国防相は次のような意見をこの十二月十七日に申しております。すなわち、英米仏ソ四カ国は核の脅威ないし攻撃から非核保有国を守るため厳粛かつ効果的な保障を与えるよう協力すべきである。この方針に基づいてイギリスの外交は動いておるわけでありますが、こういう構想について、総理大臣はお考えはございませんか。
  53. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ウィルソン首相にも、首相になられる前に私もお目にかかって、いろいろ意見を交換しました。また、フランスのドゴール大統領ともいろいろ意見を交換いたしました。それがひとしく申しますことは、相手の国が核兵器を持つという場合において、当方が核兵器を持たない、そういうことはあり得ないのだ。また、ドゴール大統領のごときは、だれよりも一番フランスのことを考えるのはこのおれだ、だれがどう言おうが、このおれが一番フランスのことを考えるのだ、かようにまで申して、そうして核拡散の方向へみずからが走ったわけであります。  しかし、私は、私自身が全責任を負ってわが国の安全を確保する、かような立場にありますが、ただいまのドゴール大統領のような考え方には、私は同一の意見見解ではございません。しばしば申し上げたように、私どもは、幾ら自衛のためといっても核兵器を持たないというのが唯一の被爆国である日本国民のこれは念願だと思うのであります。この点は、一番大事なことでありますし、おそらく民社党の方々も、また社会党の方々も同じような考え方じゃないだろうか。幾ら自衛のためといっても核武装はしないのだ、これがはっきりしたわが国態度だということを申し上げておきたいと思います。
  54. 永末英一

    永末委員 私どももフランス式の、小さな核兵力による限定抑止戦略に基本的な誤りがあると思います。その理由は、たとえ予想敵国の対都市報復だけを考えるといたしましても、武器だけで国の安全は守れるものではない。武田武士の歌ではございませんが、人は石垣、人は城、人間がもとである。人間尊重の精神が私はもとじゃないかと思うのであります。日本の場合には、特に過密した人口が都市に生活をしておる。この場合に、核兵器などで守れるともし考える人があったら、とんでもない誤りだと思います。  しかし、私は国防会議議長、防衛の責任者佐藤さんに対しては、被爆国だからわれわれは核武装しないことを念願しておるということだけではなくて、われわれ日本国が核武装しないことがいかに日本国にとって利益かという積極面の主張をひとつしていただきたい。お考えがあると思うのです。伺いたいと思います。
  55. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ世界も動いている、そうして二つの対立した考え方がある。その二つというのは一体何なのか。せんだってもこの席で発言をされておりましたが、核兵器は自由の女神だ、こういうような考え方がある。それに対して全面的に反対するのは、核武装、核兵器、これは一切使用禁止だ、核兵器をこの世界からなくすることだという、いわゆる軍備撤廃、全廃の方向への努力。この二つの努力があるわけです。  日本はどちらの方向をとっているのか。申すまでもなく最後に申し上げたような方向をとっている。人類自身、その平和のためにも、また安全のためにも、核兵器などを使用すべきではない。だから、そういう立場に立っての議論でございます。私は、核兵器を使用しない、核兵器をなくする、こういう立場に立って、わが国が、国連におきましても十五回、十六回と、同様な非核武装の諸国と共同して、そうして決議を提案し、いろいろ努力していることは御承知のとおりでございます。私は、こういうような人類を最悪の事態に追い込むような兵器、これを文明諸国がみずからの手によってつくらないということ、こういうような方向が一番望ましい、またそういう方向でわれわれは努力すべきだ、かように実は考えておる次第であります。  実は、日米安全保障条約によってそういう点についての一応の安全確保はできております。しかしながら、ただいま永末さんが言われるように、先制攻撃を受けたらどうしようもないじゃないか、こういうような話になってくれば、これは、もうもともとその国の性格にもよることでありますから、そういう議論は発展途上としてはいろいろ発展はするかもしれないが、そういうことの懸念をしないほうが私は望ましい行き方で、誤解を受けない方向ではないか、かように思います。
  56. 永末英一

    永末委員 私は、総理、先制攻撃を受けたらなんて一つも申しておりませんよ。核兵器というのは防御兵器ではないのであって、防御能力はございません。抑止力はある。そうなりますと、核兵器を保有するというのは、要するに相手方の攻撃を思いとどまらせる効果しかない。そこになりますと、核兵器を持たずして攻撃を思いとどまらせる方法は他にあると私は思います。  ただ、一つここで伺いたいのは、全面軍縮というのが目的だと言われるが、これはあまり理想です。私は、その前に内閣としてお考え願いたいのは、軍備管理ということを真剣に考えていただきたい。核拡散防止は内閣の希望だということではなくて、もし核兵器の拡散防止をしようというのであれば、これに対する国際的な世論をキャッチして、制度としてこれをひとつ取りまとめていく、こういうことを実行していただきたいと提案申し上げます。  一つは、核保有国が最初の使用をしないということをお互いに協定させる、中共が核爆発をいたしましたときにそう申しました、これを推進せしむることが一つ。  第二は、核保有国になりそうな国、能力を持つ国がございます。これは、アメリカのマクナマラ国防長官も例をあげて申しておりましたが、これらの国々に日本国から呼びかけて、もちろん核保有国も加わってもよろしい、つまり核拡散禁止条約をつくる。核保有国に対しては、そういう核を持たない国に対していかなる援助も行なわないことを義務づける、さらに核を持たない国は、われわれは持たないということを義務づける、こういう条約を結ばせる。こういうことはお考えになりませんか。
  57. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろの段階のあることは御指摘のとおりであります。私どもは、そういう意味で部分的核爆発禁止条約、これを批准したわけであります。また、そういう条約に入ることを中共に対しましてもすすめておる、こういうような状態でございます。そのいかなる処置が適当なのか。ただいま言われるような管理の方法、これも一つの方法だろう。そういう意味で、わが国をはじめ、その他の各国におきましても、非核武装国はいろいろの点につきまして検討もし、またその具体性についてもいろいろ相談をしておるはずであります。ただいまのところ米英ソ、この三カ国で締結されたあの条約を段階にして、さらにそれを発展さしていくことが一番実際には合っておるのではないだろうか。そういう意味で、われわれもこの条約に核武装国ではないが賛成をした、それを批准をした、こういうことであります。  この核兵器に対しての憎しみ、これは人類がひとしくしておる、かように思いますので、その具体的な方法につきましては十分考えていき、またそれが段階的な方法によって初めて実現できるものだ、かように私も考えますから、そういう意味の努力は続けていきたい、かように思います。
  58. 永末英一

    永末委員 この核兵器拡散防止について、現在日本は国際原子力機関に加盟をいたしております。これは、主としてはなはだ技術的な運営が行なわれておりますけれども、この目的が核の平和利用にあることはちゃんと憲章にもうたわれておりますから、たとえばこれを利用して、核原料の分配等もこれを経由するようにする。したがってまた同時に、この管理規制というものを、ここに権限を持たせるようにする、こういうことは原子力委員長としてはお考えになりませんか。
  59. 愛知揆一

    ○愛知国務大臣 ただいま御指摘がございましたように、国際原子力憲章第二条によりまして、平和利用のために提供されあるいは国際協力をいたします場合の核物質、原子炉施設、資材等が軍事目的に転用されないように保障措置を設定しているわけでありますし、わが国もこれに参加をいたしまして、日本としては原料になるような核物質を外国から協力によって受けるわけでありますから、これが国内において絶対的平和利用に限定するように保障措置の中に入り、場合によりましては査察を受けることも受諾いたしておるわけであります。こういったような国際協力の国際原子力憲章というようなものがさらに進んで核兵器自体についての規制も行なえるようになれば、ただいま御指摘のように、これは非常に世界のためにけっこうなことであると私も御同感をいたします。現在のところは、国際原子力機関はそこまでの任務を持っておりませんものですが、しかし、幸いに日本はいま申しましたようにこれに参加いたしておりますから、ただいまの御提案というようなこともわれわれとして非常に参考にいたしまして、いろいろと検討をいたしたいと思います。
  60. 永末英一

    永末委員 この核兵器拡散防止については、あらゆる手段を尽くして、日本としてはひとつそういう御努力を願いたい。  次に、私は、中国の問題で中国の核武装を問題にいたしましたが、日本と中国とはいわゆる兵器を中心とする関係にあるのではなく、もっと大きく友好関係に入るべき筋道を考えるのが大筋だと私は考えます。したがって、総理は、この前の共同宣言のときに、政経分離の原則をアメリカ大統領に敢然として申し述べた、これは成果であった、こういうような御報告をされたのでございますが、総理、一体この政経分離ということは日本にとってどんな利点があるのでしょうか。その利点をひとつ明らかにしていただきたい。
  61. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 御承知のように、七億に近い住民が中国大陸にはいるわけであります。この七億に近い住民、これは、私どもの隣国に住む人、またわれわれの隣人でもある。向こうから言えば、やはり日本は隣国、隣人だという関係だ、今日までの歴史的ないろいろの交渉を持っておるというのは、一にこの隣国、隣人であるその関係においてであると思います。これらの方々と文化的あるいは経済的交流をするということは当然のことであろう、そういう意味で、ただいま政経分離——これはなかなか理屈を言うとむずかしいことばのように思います。政とは何だ、経とは何だ、こういうことを言うのはずいぶんむずかしいことだとは思いますが、これは、とにかく七億に近い住民と文化的、経済的交流をする、絶えず接触を保つのだ、これがただいま言っておる政経分離の実態と、かように御理解をいただきたいのであります。
  62. 永末英一

    永末委員 私どもはこの政経分離で理解されることは、日中両国並びに両国民の交流を深めるためには商売のことはどんどんやりましょう、しかし、佐藤内閣としては政治に関することはちょっと手控えさせていただきたい、こういう態度ではないかと思うのです。そうですね。
  63. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 政治というのはどういうことなのか、そこら辺になりますとよほど疑問があると思うのです。皆さん方が御自由に向こうに行かれるわけでもないのだ、やはりちゃんと旅券を交付して行くのだ、そういう意味のもちろん政府自身が関与することはあるわけでありますから、そう政治に関することは一切つき合わないのだ、こうも言えないのじゃないか、かように私は思います。
  64. 永末英一

    永末委員 なかなか幅の広いことでございまして、政治に関することも何ぼかやろう、けっこうなことだと思うのです。ところでいわゆる経済は、日本はあなたの内閣のもとでは自由主義経済でございますから、一応政治関係のないのが商売だ、経済だ、こうなっている。大きくいえば政治関係のない経済なんてありはしませんけれども。だといたしますと、中国との貿易については、これが経済の範囲で行なわれるものならば、政府がこれを大いに拡大することを期待しておるのが政経分離の考え方ではないかと思う。ところがこのごろ重大な問題になっておりますのは、御承知のとおりに、池田内閣時代にはLT貿易でも鉄鋼、塩安、さらにまた機械等に輸出入銀行の融資をつけてまいっております。さらにまた、倉敷紡績のビニロンプラントの輸出についてもそれをつけました。これは事実です。ところが佐藤内閣になられてから、ニチボーのプラント輸出についてはどうも輸銀の融資がもたもたしている。あるいはつけないと言ったとか言わないとかということが問題になっている。つまり経済だけやろう、政経分離だといって商売のことを考えても、そういうことが一つ入ってきておる。しかもその理由として、中国側が、これは陳毅外相の言うことを、新聞に報道せられたところでわれわれが読みますと、それは、佐藤内閣が台湾政府からの言い分を受け入れてそうしているのだからいかぬと、こういうことを理由にしている。これじゃどうも経済の中に横から政治が入り込んでおるではないか、こういうことをわれわれは心配する。もしあなたが政経分離でいくのだとされるなら、事貿易の問題については経済でしゃんとやられていく、それがやはりアメリカ大統領に対してもしっかり言ってきたということを実証することになるのではないかと思いますが、この点をひとつ伺いたい。
  65. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いろいろ貿易を遂行していく場合にいろいろの方法があると思います。それを自主的にきめれば問題はないと思います。これは、国民政府がどう言ったとか、あるいは北京政府がどう言ったとか、それでこうするのだとかああするのだとか、こういう議論は私はとらないので、これは日本政府が自主的にきめることだ、その態度であって、ただいま申し上げるように文化、経済はこれは進めていくのだ、こういうことを申し上げておる。これをとやかく外国から言われることがいろいろの誤解を受け、また日本国民がそのはね返りで、そうして、中共はこう言っているがどうするのだとか、あるいは台湾はこう言っているがどうするのだとか、これはずいぶん日本国民自身としておかしい話じゃないか。これは、やっぱり私どもがどこまでも自主的にきめるべきことだ、日本国民が、また日本政府が本来の姿において決定すべきことで、これはとやかく言う筋のものではない、かように私は思います。
  66. 永末英一

    永末委員 私もそのように思うわけです。私も、日本政府がこの種の問題については他国からとやかく言われる筋合いはないと思います。もう総理の御決心、まことにおみごとです。ところが外でどう言われているかというと、何か台湾のほうで万歳と言うてみたり、それが気にかかるわけです。自主的におやりになるなら、日本が外国貿易をするについて、ひとつその貿易条件を、日本の貿易業者なりメーカーが他国の貿易業者と競争するについて負けないようにしようというので輸出入銀行をおつくりになったと私は思うわけであります。それが、こういう件について保証する、融資をするということがいかぬですか。ちょっとひとつお考えをお聞かせ願いたい。
  67. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまのような気持ちをはっきりしていただくと誤解がないと思う。私どもが、たとえば官房長官が記者会見をする、何だかその記者会見が本来の姿でものごとを取り扱っていないような感じがする。また、私がこの席でいろいろお答えをいたしましても、社会党の皆さん方からも、またきょうもそうですが、お尋ねになるのは、中共でこう言っておるとか、あるいは国民政府がこう言っておるとか、こういう話が引き合いに出されて、そしてわが国政治のあり方はどうなんだ、こういうお話になっておる。すでに御承知のように、国民政府に対しては、私ども条約上の権利義務がある、このことははっきりしております。また中共に対しては、今日まで国際的な国交回復というような状況にはなっておりません。ここに問題があるわけであります。この関係を十分御理解いただいて、日本本来の姿でいろろい交渉を持っておること、これは一体どういう結果になるのか、その辺の御想像をいただけば、ただいまのような疑問はなくなるのではないか、私はさように思います。問題は一に、私の得意な自主外交というものはこういうところに出てこなければいけない、他国からとやかく言われない。いままでしばしば言われておりますのは、きょうの質問にもそういうのがやや出てきているのですが、アメリカから何か言われて、アメリカのほうに追随しているのじゃないかとか、貿易その他においてもアメリカから指図を受けているのじゃないか、あるいはまた国民政府から指図を受けているのじゃないか、こういうようなお話が基本的な問題をこんがらがらかしているゆえんだと思う。これは、もちろん私どもが今日あるこの国際的な地位、それを十分考えなければならないことなので、それから後の処置については、私どもが自主的にものをきめていく、こういうことでありたい、かように思います。
  68. 永末英一

    永末委員 私は外のこと、外で伝わっていることが真実だという前提のもとであなたに質問申し上げているのじゃないのであって、たとえば、この委員会でも問題になりました吉田さんの書簡というようなものは、これはあなたが道義的に拘束されるかされぬかわからないようなことを言われましたが、内閣総理大臣として拘束せられるものは日本国が機関行為として行なうものに限っている。そこで、私どもはそういう問題とは別に、このいまの日中関係の峠を切り開くためには、やはりいままで池田内閣時代にやってきた輸銀融資というものを佐藤内閣で一体ストップさせていくのか、それともこれは前向きに考えていくのか、このあなたの御決意がなければ動かないと見るからであって、私は何も中共の人の言うたことを言っているわけじゃない。民社党として判断していることを申し上げている。そこの御決意を伺いたい。
  69. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 今日まで実際に処理していることを御承知願えれば、私どもはどこの議論にも拘束されないでやっている。それはどういうことをやっているかということはおわかりがいくだろう、かように思います。
  70. 永末英一

    永末委員 ものわかりの悪いほうではございませんが、非常に慎重にお答えになっております。それではこういう問い方をいたしましょう。日中貿易について、LT貿易、さらにまた倉敷紡績の実績等を十分に勘案をして、あなたは今後の日中貿易の問題に対処をされますか、お答えを願いたい。
  71. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまの支払い方法その他が、一番外国に対しましていろんな疑問あるいは疑惑を投げかけている、そういう大事な問題でありますだけに、ただ単に国内法だけの、国内的な問題だけとして処理するわけにいかない。したがって、私は非常に慎重な答弁をいたしておるわけであります。もちろん、こういう事柄について、それを詰めてみたいというお気持ちもよくわかりますが、これより以上は、私のほうとしてもお答はいたしません。問題を紛糾さすだけであります。その点をはっきり申し上げておきます。
  72. 永末英一

    永末委員 内政の問題が残っておりますので、あまり外交問題に時間を費やすことができませんが、問題を紛糾さすだけと言われますが、問題は紛糾しておるのであって、あとは総理としての決断いかんである。このこと一つによって、おそらくはここ近い将来における日中関係の一つの進路がきまるとわれわれは判断しております。この点はひとつ十分に熟慮をされて、あなたが言われるように、ほんとうに前に向いて進んでいただきたい。あなたのりっぱな目を開いて、前向きにあとずさりをする、こういうことがないようにひとつやっていただきたいと思います。  これは大蔵大臣になるのでありますが、高度成長から安定成長に切りかえる手は財政を縮小せしめること、その縮小せしめるためには所得者減税を行なっていくべきこと、こういうことが私は一番重要なかぎだと考えております。ところで所得者減税ということを考えます場合に、やはり租税体系というものを片一方考えなければならない。租税体系を考えます場合には、一番大きく守られなければならない原則は、租税負担の公平原則、これをひとつ守っていただかなければ、このむずかしい経済状態の世の中で、納税者が喜んで税金を払うという態勢にはならぬと私は思うのです。  そこで、租税特別措置法については、税制調査会が、この公平負担原則をそこなうというので早くやめたほうがいい、こういうことを言っておりますが、この点について、今度新しく配当分離課税なるものを国会の予算案につけて御提案になっております。私は、どうもこの点が少しわからない。いままでの進み方と逆になっておると思います。配当所得というのは、いまの国民の中で所得百万円以上のいわゆる中堅以上の高額所得者に多い所得でございまして、所得百万円以下の者の九六%は、これは給与所得者です。だから、言うなれば恵まれた条件にある者が配当所得を持っている。こういう人々をまず対象にしておる。  次は、今度のいわゆる配当分離課税というのは、これは私のほうから説明を申し上げる筋合いはないのでございますが、予算委員会できっちり説明がございませんから、私のほうで便宜説明をしておきますと、五万円以下の小額配当所得者については一切これを免除する。源泉は一〇%取る。それから五万円以上五十万円以下の配当所得の人については、一銘柄について——あとはちょっと省略さしますが、これは分離してやってもよろしい。だから分離することはできるという法律になっておる。こういうことになりますと、課税所得が百八十一万円までの人は分離しようとしまいが大体同じことになる計算になる。したがってこれが実施されますと、実質的に利益を受けるのは課税所得百八十万以上の人、この人が利益を受けるのです。総理大臣、聞いてくださいね、いいですか。百八十万円以上の人が何人いるかといいますと、わが国でわずかに二十三万人程度しかいないのです。この人に減税をしようというこれが提案でございます。  そこで大蔵大臣に伺いたいのですが、いろいろ想定がございますけれども、五百万円程度の所得者で、大蔵省の調査によりますと六%程度が配当所得でやっておる。これは統計が出ております。したがって、四百七十万円が給与所得、配当所得は計算しまして三十万円、その三十万円の配当所得が、五十万円以下のものが五〇%、一銘柄五万円以下のものが五〇%といたしまして、十五万、十五万、この場合には五万一千円の課税減になるわけです。ところが一千万円以上の所得のある者で——一々答えてもらうといいのですが、時間がありませんから、私のほうから申し上げますから、間違っておったら大蔵大臣訂正してください。一千万円の所得のある人は、大蔵省の調査によりますと、その所得のうち一二・六%が配当所得である、こうなっておる。これは統計平均値です。したがって、百二十六万円が配当所得であり、八百七十四万円が給与所得である、こうなっております。この場合に五十万円以上の配当所得は五%、それから五十万円以下五万円以上のものが七五%、五万円以下のものが二〇%と計算をして、そうして今度のこの措置によってどれだけ減税になるかと計算をいたしますと、二十五万二千円の減税になります。これが総理大臣、一億円の場合にどうなるか。非常に数は少のうございます。一千万円以上の所得者はわが国において何人おるか。大体七千七百人しかおりません。一千万円以上の所得者というのは一握りです。しかも、いま申し上げましたように、この一千万円以上の所得者に対してこれが非常な減税になってくるわけであって、一億円になりますと、これは一応の想定として、配当所得は多くなりますからその七割が配当所得だと考えますと、三千万円が給与所得、七千万円が配当所得、そうしてその配当得所が五十万円以上と五十万円以下と五分五分に分かれたと計算いたします。五十万円以下は銘柄を分散いたしますとみんな隠されるわけです。そこで、そういう想定をいたしまして幾ら減税になるかといいますと、国税分につきまして実に千八百三十七万五千円減税になる。ところが小説家、芸術家等が勤労所得、文筆によるそういう活動によって、たとえば七千万円、八千万円かせぐ人があったとして、その人の減税はわずかに二、三万円にしか今度の税制改正でならないのです。これでは租税の負担公平の原則に反するのではないかと私は思われてなりません。ひとつ大蔵大臣のお考えを伺いたい。
  73. 田中角榮

    ○田中国務大臣 税制上租税公平の原則を尊重しなければならぬことは当然であります。私も、あなたと同じ公平の原則を守っていきたいという姿勢であります。しかし、この問題を強調するあまり、理論に倒れて現実問題の処置を誤るということは避けなければなりません。その意味で、国内的に考えますときにはもちろん租税公平の原則を貫いて税制を運用すべきでありますが、国際的に考えたときに、相手のあるものに対して国際競争力をどうしてつけなければならないか。また国際競争力をつけることによって国民経済の面で利益が得られ、それによって源泉所得を払っておるような人々にも恩恵が及ぶということを考えるときには、当然相手の状況を見ながら、税制上処置をすべきものについては税制上の措置を必要とするわけであります。もちろん石炭企業一つとってみてもおわかりになるとおり、まず国民経済の面から見まして、どうしても……。
  74. 永末英一

    永末委員 時間がございませんのでひとつ…。
  75. 田中角榮

    ○田中国務大臣 非常にむずかしい問題に対して御質問がございますので、間違うと悪いので十分お答えをいたします。  そういう意味で、企業の力をつけなければ所得の源泉というものが確保されないわけでありますから、その意味で企業の国際競争力をつけたり、また企業自体を長期にわたって安定的に成長せしむるために、必要なものについては税制上の特別措置を行なうということでございます。また今度の源泉選択の問題等につきましても、私は、現在の資本市場の状態考えますときに、OECDにも加盟し、資本の自由化も迫られつつあるときにこのような状態で一体いいのかということをまじめに考えていくべきだと思います。私は、そういう立場で慎重に検討した結果、資本蓄積や貯蓄増強というものが最も重要な施策であるという認定に立って税制上の措置を行なったのでありまして、公平の原則をくずすというような範疇のものではない、このような認定であります。
  76. 永末英一

    永末委員 時間が少なくなり、まだもう一つあるのでお答えも簡単に願いたいのですが、私が敬愛する田中大蔵大臣が、初めから租税の公平原則を破ろうなんて考えてやったとは思いたくございません。あなたは企業のほうを中心にものをお考えになっておる。去年投資信託の分離課税をやったでしょう。そうして一体企業が盛んになりましたか。株価の問題がこれに関連して語られている。株価の安いのは、われわれの判断するところによれば、企業の収益能力が下がっておることが根本であって、一税制の問題ではない。いま数を明らかにいたしましたとおり、この分離課税によって益を受けるのは、個人所得一千万円以上の高額所得者わずかに七千名だ、そうして、これによる被害を私は一つ申し上げます。これで株を分散していくことになって、もし五万円をこえ五十万円以下の者について、その申告義務をちゃんと負わせないということになるならば、これは政府が法律で脱税を認めたことになるではありませんか。元本を隠すことを認める、こういうことになれば、それが譲渡せられた場合に、いまわが国の税法できめてある譲渡税は、一体どうやってかけるのです。これが相続せられた場合に、相続税は何をもって一体やるのですか。いま日本の国で百銘柄ぐらいのものを持っておる人はたくさんございます。五十万円で百銘柄なら、五千万円はごまかせるということになるではありませんか。いまわれわれ日本の勤労者は、一万三千円ぐらいになったら税金を取られておるのだ。しかるにかかわらず、こういう高額所得者が五千万円までごまかせるということを法律で、政府が、佐藤内閣できめたなんということになったら、佐藤さん、人間尊重だと思うでしょうか。企業の力をつける、国際競争力をつけるのにはいろいろ方法はございます。私は、こんなことまでしてやるべき問題であるとは思いません。さらにまた納税、徴税に関する職員が、もしこういうことが行なわれるのなら、自分たちは徴税に対する情熱を失うとまで私に言ってきた者がございます。そして、それを理由にして、自分たちが徴税に行った場合に、おまえのところの政府はこういうことをやっておるじゃないか、税金を払わないといういわゆる反税運動が起こった場合、一体自分たちはどうしてこれに太刀打ちできるかと私に泣いて訴えました。私は事重大だと思う。一握りの減税者、しかも日本経済全体に対して大きな影響力はない。おそらくは利子と配当の公平ということを考えられたと思うが、もっとやはり別の大きな日本経済を回し、その一番むずかしい徴税の仕事に携わっている徴税職員の士気の問題も考えて、お見合わせになっていただきたいと思いますが、いかがですか。
  77. 田中角榮

    ○田中国務大臣 御発言の状態は十分慎重に検討いたしました。ここが政府として、高い立場で総合的にものを考えていく責任の地位にある者の非常にむずかしいところであります。私自身も批判の起こるような税制をとりたくないという考えは、あなたと同じであります。しかし、日本の二十年の過去を振り返ってみますと、私が財政演説でも述べましたとおり、量的拡大から質的拡大に移ってこなければならない。民族の運命というものは、国際競争力を培養するという一点にかかっておるのであります。でありますから公共事業費をふやせとか、また社会保障費をふやせとか、社会開発に大きな費用を増せとかいっても、これは大蔵大臣が紙幣を印刷することによって片づくものではないのであります。皆さんの中でも御指摘になっておるように、ドゴール大統領が言っておる金本位性にも返ったほうがいいのではないか、管理通貨制度さえも変えよという意見もあるのでありますが、一体その金はどこであがなうのかという問題を十分ひとつ検討していただきたいと思います。私は、そういう意味で、現在資本蓄積と貯蓄の増強というものが政策の中の最も緊要な事項だと考えておるのであります。私はその意味で、戦前六一%であった自己資本比率が二三%に落ちておる。また皆さんは金融の正常化を促進するように御発言でありますが、金融の正常化を促進するにしても、自己資本比率を上げる以外にないのであります。私は極端な言い方で、短い時間に答弁をしろと言えば、私は、あらゆる政策の中で現在の時点における最も緊要な政策は、どうして自已資本をふやし、貯蓄を増強するか、こういう一点にかかっておると言っても過言ではないという考えのもとにこの施策をとったのでありまして、これをやめようというような考えはありません。
  78. 永末英一

    永末委員 私は、審議に協力しておるのでありますが、大臣が非常に懇切丁寧に御答弁いただくので……。  それで、これはひとつ佐藤総理に伺いたいのですが、私は、大蔵大臣の熱意を疑っているものではございません。しかし、手段が間違っていると思う。いつも言われることですが、税制政策で経済の全体を動かすということはむずかしい。一つの要素ですよ。しかもその税制を動かすことによって与える被害、これとひとつ比較勘案をして判断をしていくということでなければ間違ってくる。しかし、大蔵大臣は当面の当事者である。総理大臣として、特に人間尊重を言われる総理大臣として一言お答えを願いたい。
  79. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この問題を提起した政府が世論からいかような批判を受けているか、これは、賛成もあるし、反対もございます。いずれの立場に立ってもいろいろな議論が出ている。しかし、今日の全体的な処置としてはこれが望ましいというのが世論の最後の判断ではないか、私どもはかように考えております。したがいまして、ただいま大蔵大臣が申しましたように、これを変える考えはございません。
  80. 青木正

    青木委員長 永末君、時間が参っておりますから、どうぞ結論を願います。
  81. 永末英一

    永末委員 この問題については、世論は二手に分かれておるわけであって、税制調査会という政府の機関はやはり尊重していただきたいと思います。  時間がなくなりましたが、ちょっとお許しを得まして、医療費の問題で二点だけ伺いたい。  一つは、医療費はこじれました。これを何とかして引き戻さなければどうにもならぬ、こういうことで、過般官房長官が支払い者側とひとつ話をしようではないかと、こうやった。しかし、いままでこれは厚生大臣が担当してこられたのであるけれども、厚生大臣段階で動きがとれぬとおそらく総理大臣も判断されたのではないか。これは、官房長官が一人で動くことはないと私は思う。そこで、この重要な問題について、総理大臣自身がひとつ十分にこれらの関係者の意見を聞いて、そうして判断をしようというお気持ちはございませんか、伺いたい。
  82. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま官房長官がいろいろ動いていることは、御承知のとおりであります。私は、内閣としてもこれは基本的な問題だ、かように考えておりますので、厚生大臣をただいまバックアップしている、こういう立場にございます。ただいま、官房長官の話し合いのいかんによりましては、もちろん私自身もお目にかかるということを考えておるわけであります。
  83. 永末英一

    永末委員 もう一点だけでございますから…。  この問題の中で、いままで見落とされてきて非常に重要になった問題がございます。それは、国保の赤字の問題である。国保の赤字はどうにもならぬ状態になっている。この問題について、自治大臣は——赤字にいろいろ原因がございますが、赤字処置を一体どうしようとしておられるのか。  それから第二点は、政府仕事を地方団体に押しつけておるのである。したがって、その事務費については、法律の示すところに従って、私どもは全額負担であるべきだと考えている。ところがこれについて、政府予算折衝ということを口実にして、厚生省と大蔵省とが認めた単位二百八十八円、これでも少ないと思いますが、それを二百円まで削られて出しておる。一体全額負担をしないでいいという理由がどこにあるか。この二点について自治省と、それから厚生大臣とお答え願いたい。
  84. 神田博

    ○神田国務大臣 国保の問題につきまして、いまお述べになりましたような事情でありますことはまことに遺憾でございます。本年度、いわゆる四十年度の予算編成にあたりましても、できるだけ町村の財政支出をカバーしたい、こういうことで折衝してまいったわけでございます。事務費の国庫全額負担は、これはもう当然のことでございますが、御承知のように、長年、毎年一年十円ずつというようなことをここ五年ほど継続して上げてまいったわけでございます。今度は思い切って五十円上げた。これは一年でなかなか解決できませんから、ここ二年くらいでひとつ解決いたしたい、こういうことで五十円を一ぺんに上げたということでございます。いま二百八十八円でございますが、これは全国平均でございますから、町村になりますと満足のいくまでのことはございますが、特に京都のような、あるいは六大都市というようなところになると、いまお話がございましたように、二百八十八円でも安いじゃないかという御意見のあることは事実でございます。できるだけひとつそういうことをやってまいりたい。その他の問題につきましても、できるだけ予算措置をいたしまして、そして、ここ数年の間に解決してまいりたい、こういう打ち合わせにいたしております。
  85. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 国保の赤字の問題でございますが、やはり国保は、国保の会計の中で健全に処置していくようにしていきたいと思います。そこで、現在のところ実は赤字が相当ございまして、国保だけの赤字が三十七億、そのほか、県なり市町村から繰り入れておりますものを合わせますと百三十二億ということでございます。そこで、漸次これを健全化していこうという考えでございまして、先ほど厚生大臣からも答えましたように、事務費にいたしましても、従来一人当たり百五十円でございまして、それは結局市町村財政から繰り入れなければならないという状況でありまして、昨年の暮れの予算折衝におきましてもこの問題を特に取り上げまして、単価を二百円にしてもらったような状況でございます。なお不足する分はございますけれども、一挙にというわけにまいりませんから、漸次これを健全化に持っていきたい、かように存じております。
  86. 永末英一

    永末委員 ちょっとぼくの聞いたことと答弁が違うから、それだけ……。
  87. 青木正

    青木委員長 ではもう一点だけ……。
  88. 永末英一

    永末委員 自治大臣、あなたは事務費を二百円にしてもらったなんと言っていますが、私が聞いているのは、一体自治省としては、国保の第六十九条に基づく国民健康保険の事務に要する費用というのは、全額国庫負担と考えているのかどうかを聞いているのです。予算で少しもらいまして漸次……、そんな問題じゃないでしょう。もし地方団体がこれを理由にして、前の法律には、補助の場合にも十分の十補助するときめてある、負担ということになった——考え方は同じです。もうくだくだしく申し述べませんが、その点をはっきりしてください。訴訟されたらどうしますか。
  89. 吉武恵市

    ○吉武国務大臣 お話のとおり、事務費は国が持つということになっております。しかしながら、実際の施行にあたりましてはだんだんと事務費が重なってまいりまして、そういう欠陥が出てきたわけでございます。したがいまして、私どもとしては、これは全額国庫が負担するようにあらゆる努力を払っておる次第でございます。
  90. 青木正

    青木委員長 これにて永末英一君の質疑は終了いたしました。  次に林百郎君。
  91. 林百郎

    ○林委員 私は、日本共産党を代表して、当面する内外の重大な情勢について、総理並びに関係閣僚に対して若干の質問を行なうものであります。  質問を始めるにあたって、私は、まず佐藤内閣が成立以後の日本の人民の生活現状についてどうしても触れなければならないと思います。  毎日の新聞を見ますと、一日として物価の値上がりを伝えない日はございません。ことしは、元旦早々消費者の米価の値上げで年が明けました。厚生大臣は、人民の負担による診療報酬の引き上げを職権で告示しました。健康保険料を引き上げ、薬代の半額を大衆に負担させると発表しました。全国の各地で、水道料金、私鉄、バスの運賃等、公共料金が次から次に値上げされ、また値上げが予定されております。保育料に至るまで、人民大衆の生活を直接脅かす物価値上げの動向は、とどまるところを知りません。大衆は非常に不安にかられております。ちまたには佐藤内閣に対する不信と怒りの声が満ちてまいりました。しかも総理は、物価値上げを抑制する措置を具体的には何一つとっておりません。その反面、労働者の賃金に対しては、くぎづけの方針を述べております。人民の生活をこのように塗炭の苦しみにおとしいれておいて、どうしてこれが人間の尊重と言えましょうか。社会保障制度を根本からじゅうりんしていながら、どこに福祉国家、社会開発ということがあり得ましょうか。しかも総理は、内閣を組織して以来、アメリカの原子力潜水艦の二度にわたる寄港を認めております。中国敵視政策をますます強化しようとしております。日韓会談を促進しようとしております。アメリカのベトナム侵略、戦争への全面的な協力をあえて行なっております。これらはすべて国の独立と民主主義、平和と中立を破壊するものであって、日本人民が強く反対しておるところであります。私は、最初に申し上げますが、これらの事柄はすべて一つの根源からきておる、こう思います。すなわち佐藤内閣の今日の失政の根源は、総理がいろいろ弁解はされておりますけれども、この一月ワシントンにおもむきまして、ジョンソン米大統領に対して日米安保条約日本国政の中心に据えると誓った、まさにここにすべての失政の根源があると私は考えます。そこで、一昨日以来、社会党の岡田議員によって追及されました防衛庁のいわゆる三矢作戦問題について、実に日米安保条約に根源があることは、これもまただれの目から見ても明らかであります。そこで、この問題は非常に重要な問題でありますので、私は総理にこの点について最初にお聞きしたいと思います。  まず総理は、いま問題になっております昭和三十八年度統合防衛図上研究、統幕3第38−30号、いわゆる三矢作戦、こういう重大な図上作戦作業を自衛隊の中枢部がやっておったということを政府は知っておりましたか、この点についてまず総理にお尋ねいたします。
  92. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん三十八年のことですから、私がお答えしたとおりですが、政府最高責任者がこういうことを知っているかどうかということでいま確かめてみますと、全然これはないようでございますし、ことにこれは、図上演習の報告書の総合であるという実情でございます。
  93. 林百郎

    ○林委員 ちょっとはっきりしないのですけれども、結局政府は全然知らなかった、こういうことですか。
  94. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理大臣は知らなかった。
  95. 林百郎

    ○林委員 総理大臣は知らないと言っても、総理大臣国政最高責任者なんですよ。それがこういう重要な問題を知らないと言いのがれることはできないと思うのです。そこで私は、内閣の連帯の責任にある防衛庁長官にまず伺いますけれども高橋防衛政務次官は、昨日、これは全体で千六百ページあると言っておる。ちゃんとページ数まで言っておる。しかもこれは、読んでいなければこういう数字が出てくるはずがない。また岡田君の質問に対して、海原防衛局長も即座に、この三矢図上演習の文書番号も知っておる、こう答えております。あなたはどうですか、知っておらなかったのですか、知っていたのですか。
  96. 小泉純也

    ○小泉国務大臣 高橋防衛政務次官がページ数を申し上げましたことは、これが岡田委員より指摘されまして、私が指示してこの文書を詳細に検討することを命じまして、その調査の結果、合計千四百十九ページ、五分冊よりなっておるということが判明いたしましたので、そういうことを申したと存じております。  またこれは、あくまでも各幕の研究員がグループに分かれましての図上演習の想定のものでございまして、長官決裁のものでもございませんので、総理大臣にも報告をする必要がなく、また私も、この点は一昨年のできごとでございますので、これが問題として提起されるまで存じなかったのであります。
  97. 林百郎

    ○林委員 全く驚くべき答弁なんですけれども、それならば総理は、この委員会で、このようなことは絶対に許せないことだ、これはゆゆしいことだと思う、こうはっきり言っております。事態の重大性を十分ここであなたは解明しております。このような重大なことをあなたが知らなかったことに対する責任はどうなるのですか。あなた自身、この委員会で、このようなゆゆしいことは絶対に許せないのだと言っている。そんな重大なことを知らないということに対するあなたの責任はどうなるのですか。
  98. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 そういうようなことであればそれは許せない、こういうことを言った。だから、いろいろ御議論がありまして、ただいま小委員会もつくる、こういうことで十分問題を明らかにしよう、こういうことでございます。もちろんそれは御承知のとおりだと思う。
  99. 林百郎

    ○林委員 小委員会で逃げられるということは、総理らしくない答弁です。御承知のとおり、共産党は小委員会には入っておらないのです。われわれは、この問題について政府責任を追及するのはこの機会しかないのですよ。それを正々堂々と答えられることを逃げて、小委員会で逃げを張るというようなことは男らしくないと私は思う。  それで、次の質問に移ります。この三矢作戦というものは、日米安保条約からも、またMSA協定からも、また総理が表明されました日米共同声明から見ましても、このような重大な日米合同作戦の想定を、これは日本の自衛隊だけでかってにやったとはとうてい考えられない。政府にはっきり聞きますけれども、この研究については、アメリカ側とはどういう関係があったか、そのことについて総理にお尋ねします。——総理に聞いているのですよ。
  100. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 総理が答える前に、やはり事務からよく聞いてお答えしないと、私も実情をよく知らないのです。ただいま聞きましたら、アメリカとは関係なし、かように申しております。
  101. 林百郎

    ○林委員 この研究は、御承知のとおり、新たな朝鮮戦争を想定してつくられたものであります。現に岡田議員がこの委員会に参考までに配付されました資料を拝見させていただきましたけれども、この計画の第三動、七月一日から七月三十一日の状況の口の項は、「日本防衛のため必要な準備作戦」……(発言する者あり)ちょっと委員長、発言を押えてください、「(哨戒、偵察、警戒、作戦準備等)については、現在すでに在日米軍司令官のコントロールが承認されており、今後起るべき日本直接防衛のための作戦については特別のものを除き、在日米軍が指揮する。」と、こう書いてあります。在日米軍が指揮するというような研究が行なわれているのに、アメリカ側と全然関係なくしてアメリカ側のコントロールに入る、在日米軍の指揮に入るということが一体想定できますか。この想定作戦が、自衛隊だけで策定できるというはずはないと思う。はっきりもう一度、アメリカとの関係について総理責任ある答弁を求めます。
  102. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共産党の方が、これは関係があると言われても、責任のある政府関係がありませんと、かように答えているのですから、これをひとつ信用してもらいたいです。
  103. 林百郎

    ○林委員 —————————————————あなたの言うことを信じられない。   〔「何を言うか」と呼び、その他発言する者多し〕
  104. 青木正

    青木委員長 用語に御注意願います。
  105. 林百郎

    ○林委員 そもそも自衛隊は、アメリカの軍事顧問団等によって事実上常時アメリカの指揮下にある。(発言する者多し)だんだんわかるから聞いていらっしゃいよ。常時アメリカの指揮下にある。第二に、この作戦計画をつくる直前に、当時アメリカの国防次官であったギルパトリックが来日して、朝鮮の……(発言する者あり)よく聞いていらっしゃい。朝鮮の南半分は近い将来日本の防衛分担区域になる、こうギルパトリックがはっきり言っている。さらに、六三年四月に彼に随行した随員の一行は、相当の期間にわたって自衛隊の中枢幹部と協議している。さらに、バンディ米国務次官補は……(発言する者あり)質問をどうします。続けますか。(発言する者あり)政策的な意味で言っているんだよ。   〔「質問する必要ないじゃないか」と呼び、その他発言する者多し〕
  106. 青木正

    青木委員長 静粛に願います。  林君の発言中不穏当な用語がありますので、その点はお取り消しを願います。
  107. 林百郎

    ○林委員 委員長、私は、政策上たびたび言行不一致だ、こういうことですよ。決して不穏当じゃないです。
  108. 青木正

    青木委員長 その前に申したことばの中に不穏当なことばがありますので、その点はお取り消しを願います。
  109. 林百郎

    ○林委員 速記録を調べてください。
  110. 青木正

    青木委員長 とにかく質問を継続してください。   〔発言する者多し〕
  111. 林百郎

    ○林委員 自民党の諸君がこう言っているんじゃ質問ができないのです。
  112. 青木正

    青木委員長 質問を継続してください。——静粛に願います。
  113. 林百郎

    ○林委員 第二に、この作戦計画をつくる直前に、当時のアメリカの国防次官だったギルパトリックが来日して言ったことはもうお話ししました。さらに、バンディ米国務次官補は、今度三十八度線で紛争が起これば、日本の軍事力が出動しよう、こう述べております。私は、総理にこういうことを言っているわけです。この発言に基づいて作戦計画の研究がされているわけですよ。これは明らかにアメリカが背後にあるということは、こういう政治的な発言から明瞭じゃありませんか。これでもアメリカ関係なくてこの作戦計画は研究されたと総理は言い張るのですか。
  114. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 これは、はっきり米軍と関係なし、かように申しておりますから、これを国民は信用なさると思います。  また、ただいまギルパトリックがどう言ったとか、あるいはバンディがどう言ったとか言われますが、そういうことは日本憲法でできないでしょう。日本憲法で第一できないことを——アメリカ憲法はよく知っているのです。共産党はできるような言い方をされるなら、共産党ならやるつもりですか、私はそれを反問したい。これは、日本憲法でやれない。はっきり言っている。
  115. 林百郎

    ○林委員 総理は何を言っているのですか。憲法を破壊するようなことがいま現に行なわれているから、あなたに聞いているんじゃないですか。だから問題にしているんじゃないですか。何を言っているんだ、君。  それじゃ総理に伺いますが……(発言する者あり)だんだん聞いていきますよ。防衛庁の統合幕僚会議事務局首脳部と自衛隊の陸海空各幕僚会議の首脳部に、国民に対する徴用、徴兵をはじめ、郷土防衛隊の動員、交通、運輸、通信、放送、報道から国民経済などのすべての統制、国会の機能の否認、このような戦時の国家総動員の体制を企画し、準備する、こういう現行憲法を全く否認するようなことを計画する、そういう職務権限がそもそもあるとお考えになるのですか。これこそ憲法違反じゃありませんか。こういうことが現に行なわれているじゃありませんか。
  116. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうも、社会党の岡田君の質問のほうがたいへん要領がよかったように思うのです。共産党の林君としても少し……(発言する者あり)それは、私はとんでもない話だ、かように思います。先ほど来これは問題になっておりますから、そういうような点が理論的じゃないというので、一部でそういう話があるから、それがただいま小委員会を設けるという話になっている。だから、とにかくただいまのような話は、ちゃんと自分で前提をきめ込んでそうして質問することは、それが間違っているのです。そういうことはもうなさらないように……。
  117. 林百郎

    ○林委員 まず総理に申しますが、あなた、失礼じゃないですか。(発言する者あり)あなただって失礼じゃないですか。だれの質問よりだれのほうが要領がいいとは何ですか。取り消しなさいよ、そんなことは。何ですか。   〔「委員長、注意しなさいよ」と呼び、その他発言する者あり〕
  118. 青木正

    青木委員長 静粛に額います。
  119. 林百郎

    ○林委員 委員長、私がこのことを聞くのは、これは、国会議員全体にとっても非常に重要な問題なのですよ。現に官房長官は、関係者を処罰するとまで言っているじゃないですか。総理だって、これはゆゆしい問題だって言っているでしょう。自民党の中だって、良識ある諸君はこう言っているじゃありませんか。これは、国会議員として無視できますか。  そこでお聞きしますが、この三矢計画なる作業は、憲法に保障されている日本国民の権利を圧殺して、国家の民主的権能を破壊し、憲法そのものを暴力で破壊するという、こういう計画が立っているわけですよ。これは、笑いごとじゃありませんよ、総理。いいですか。憲法をきびしく守るべき責任を持つ政府が、そして政府の機関がみずからこのようなことをやっているというところに問題の重大性があるわけです。憲法を根本的にじゅうりんし、破壊するようなことを政府自体がやっている、政府の機関自体がやっているということに非常に事の重大性があるわけです。政府は、このことについてどう考えるか。これは、国の最高責任者としての総理責任が当然あるはずです。その点を私は聞いているのです。
  120. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 もちろん私が最高の責任者、最高の責任を負うのであります。そういう意味合いでただいま小委員会を設ける、こういう結論が出ている。
  121. 林百郎

    ○林委員 小委員会の審議の問題ではなくして、政府自体が、総理自体がゆゆしい問題だ、捨ておきがたい問題だ、官房長官自体が関係者を処断するとまで言っている。これに対して、総理みずからの責任はどのように明らかにするかということを聞いているので、小委員会の審議の問題じゃないのですよ、私の聞いているのは。
  122. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 仮定のような事実があるならばと私は岡田議員に答えた。そういうような実情があるならば、それはたいへんなことです、こういうことを申しました。これは、いずれ小委員会においてその結果がはっきりするだろう、それを私は待っているということであります。
  123. 林百郎

    ○林委員 この問題は、関係者を処分するとか、ゆゆしい問題だというようなことだけで済まされない問題です。具体的に申しますと、法案を各グループに分けて、国会は、委員会は二週間の間に通過させるとか、あるいはなんとかいうようないろいろな問題もあります。これは国会自体にとっても重大問題ですよ。それは、国会議員としてだけでも許しがたい問題です。ましてや憲法の根本的な破壊という重大な問題で私は聞いているんだから、あなたももう少しまじめに聞いてください。私は、この問題は特定の幹部に責任を転嫁するような問題じゃないと思うのです。政府自体の責任をどうしても明らかにしなければならない問題だと思います。重ねてこの点は政府責任を明らかにすることを要求して、次の問題に移ります。  これまでの審議で明らかになったように、この三矢作戦は、単なる防衛庁の一グループの空想した作戦計画ではない。六〇年の安保条約の改定のあと、六二年十二月の日米貿易経済合同委員会でのケネディ米大統領の中国封じ込め発言があり、これに基づいて翌六三年一月にはアメリカの原子力潜水艦の日本寄港の申し入れと、これに対する日本の受諾が行なわれました。こうした中で、安保条約に基づいて日米両国政府の指示のもとにこの秘密計画がつくられたことは明らかでありますが、さらに、私は、ここでそのことにつけ加えたいのは、さきに防衛庁は、わが党の岩間正男議員の参議院の質問におきまして、治安行動草案をつくっているということを明らかにしました。これは、人民弾圧の体制を準備しているものであります。その内容は、防衛力整備に関する基本見解というものをつくって、明らかに軍が政治介入をする陰謀がたくらまれておることが暴露されました。この三矢作戦にも、民主勢力を弾圧するための自衛隊の防衛出動がはっきり打ち出されております。このすでに参議院で明らかにされました治安行動草案とこの三矢作戦とは、まさに一体のものであります。安保条約国政基本に据える自民党内閣のもとで、憲法違反のこのような自衛隊が戒厳令下の日本の軍部独裁政治をたくらむに至ったのは、決して偶然ではないと思います。これは偶然のことではない。これはまさしく安保条約の必然の結果だ、われわれはこういう考えております。これこそが安保条約の正体だ、ここに事の重大性がある、私はこのことを総理に指摘しているのであります。  そこで、次の問題に移りたいと思いますが、日韓会談の問題であります。  佐藤内閣は日韓会談の早期妥結を非常に急いでおります。予算審議の最中に椎名外相をしゃにむに訪韓させようとしております。現に、三矢作戦の朝鮮における武力戦に備える戦時体制の第一項目としては、日韓会談の即時妥結をうたっております。三矢とは、正確に言えば、米、日、韓の三本の矢を合わせるいわゆる三国軍事同盟を象徴したことばだ。これは明らかであります。わが党がこれまで再三指摘したように、日韓会談の真のねらいは、アメリカに従属しながら東北アジア軍事同盟をつくるということであります。そうして、すでにだれの目から見ても明らかなような崩壊寸前にある朴正煕一派をささえて、日本の大資本の南朝鮮への進出をしようとする野望がこれに結びついております。このような日韓会談は、日本の人民はもとより、南北の朝鮮の人たちも、アジアの平和と安定を願うすべての人たちは絶対にこれを承知しないのであります。  そこで、この際総理にお尋ねいたします。一体、椎名外務大臣をこの二月の早々韓国へ派遣しようと考えていられるようでありますけれども、この椎名外務大臣の前歴を参考までに私のほうで調べてみました。それは、朝鮮人民と日本の人民の友好親善に椎名外相が朝鮮へ行くことが寄与するかどうかということについて重大な関心を持っているから調べてみました。ところが、椎名外務大臣は、第二次世界大戦当時軍需省の軍需統制局長をして、戦時総動員法をつくりました。そうして、朝鮮人民の強制送還や土地の没収などをしております。朝鮮人民に対して、はかり知れないいろいろな戦時中の罪悪を犯している、こういう資料が出てまいりました。また、旧満州国の高官でもあります。朝鮮から追われた在満朝鮮人民に対して抑圧の限りを尽くしている人物であります。その張本人がこの十七日に平然としてソウルに行こうとしております。乗り込もうとしております。このこと自体が朝鮮人民に対して重大な侮辱にならないとだれが言えましょうか。日朝両国民の真の友好親善に反することは明らかであります。この際、この椎名外相の訪韓計画を当然打ち切るべきだと思います。そうして、このような日韓会談は打ち切るべきだと思いますが、これに対する総理の明確な答弁を求めます。このような人物を朝鮮へ派遣することは、決して日朝両人民の友好にはならない、かえって朝鮮人民に対して重大な侮辱を与えることと同じことであります。現に高杉発言であなた方は痛い目にあっているでしょう。この愚をまた繰り返すことです。直ちにやめるべきだと思いますが、総理、どうですか。
  124. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 椎名君を親善訪問にやるつもりでありますので、せっかくの申し出がありますが、私はさようなことはいたしません。——とめないということです。
  125. 林百郎

    ○林委員 そうすると椎名外務大臣が訪韓することによって起こる今後の一切の事態に対して、当然総理責任を負うべきだと思いますが、どうですか。
  126. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共産党の方がお考えになるような状況ではないと、私はかように確信しておりますので、椎名外務大臣を親善訪問につかわす、こういうことは計画どおり実施いたします。
  127. 林百郎

    ○林委員 すでに高杉発言その他で痛い目にあわされているのに、まだ気がつかなくて、そのような愚かさを繰り返すなら、それでけっこうでしょう。そのかわり、今後起こる重大事態に対して当然総理責任を負うべきだと思いますが、そのことを警告しておきます。  次に、非常に重大な事態に発展しております今日のベトナムの問題について質問したいと思いますが、今日ベトナムの状態はきわめて重大になってきております。アメリカは先般来数回にわたってベトナム民主共和国に不法な爆撃をしております。特に昨日のごときは百五十六機という大規模な爆撃が加えられております。この爆撃は、かつて太平洋戦争当時アメリカ日本に対して行なった機動部隊の攻撃に匹敵しております。それは明らかに、報復爆撃などということばではとうていごまかすことのできない重大な事態に発展しております。これは明らかに、どう見てもアメリカによる挑発戦争以外の何ものでもないと思います。総理は、さきの日米共同声明において、アメリカのベトナム政策を支持する、その点で意思が合致しておるということを表明しておりますが、このような重大な今日の局面に直面しても、なおかつアメリカの暴挙を支持する。さらには、アメリカが戦争を拡大してアジアの平和が根本から破壊されそうになっておる重大な事態が生じた場合でも、なおかつこのアメリカの政策を支持されるのかどうか、この点について総理の答弁を求めます。
  128. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 この席におきましてしばしば私が声明いたしておりますように、私は不拡大を心から願っております。
  129. 林百郎

    ○林委員 先ほどの永末君の質問に対しましては、外務大臣は、アメリカのエマーソン公使の説明を聞かれた、そして、新たな攻撃についても、これは報復的な行為だということで説明を受けて了承した。こういう意味のことを言っておられます。しかし、それに対して総理は、日本立場はそのようなただアメリカ側の言うことを承諾するという消極的な立場ではなくして、さらに積極的な面を持っている、こういうような意味の答弁もされております。この問題に対する積極的な態度、積極的な方策というのは、具体的には何をなさっているのですか。
  130. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいま申し上げたように、この戦乱を拡大しないようにあらゆる努力をいたしております。もちろん、わが方としてできることは、わが方の意思をしばしば声明することによって相手方に十分考えていただく、こういう態度でございます。
  131. 林百郎

    ○林委員 具体的に何をしようとしておるのか、また、具体的に何をされたのか、また、具体的にいつだれに対して総理がいま言ったような意思の表明をされたのか、こういうことを聞いておるわけです。
  132. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 私は戦乱が拡大しないことということを心から願っておりますから、これに関係を持つもの、それぞれの国々も私と同じ態度であるならばやはり御協力を願いたい、こういう観点でございます。いつ何をするか、いつどういう人をどこに持っていくのか、こういうことは、私があなたにえお答する筋のものではないと思います。
  133. 林百郎

    ○林委員 総理の御答弁は全く抽象的で、しかも責任のがれで、ごまかしだと思います。  そこで、もう少し具体的にお聞きしておきますが、総理アメリカのとっている手段は部分的報復手段だと言われますけれども、これはアメリカの一方的な戦争行為であることは、そのような大規模な大空襲が行なわれておるのでありますから、だれが見ても明らかであります。そこで、侵略者であるアメリカの一方的な戦争行為であるこの事実に対して、こういう事実を前提にして、一体総理アメリカがベトナムに侵略しているという事実を認めるのか、あるいはベトナムがアメリカを侵略している、こう言うのか、総理はどちらの考えを持っておられるのか、この点をはっきりされたい。すなわち、ベトナムがアメリカから侵略をされているのか、あるいはベトナムがアメリカを侵略しているというようなことを総理は言っているのか、どちらを言おうとするのか。
  134. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 どうもお話がこんがらがっておるようですが、アメリカがベトナムを侵略したということはない。南ベトナム北ベトナムとの間にいろいろの紛争が起きている、こういう状態でございます。これは林君も十分おわかりだと思います。
  135. 林百郎

    ○林委員 事態はすでに部分的な報復手段というような段階じゃない。百何十機というような大空爆の実施がなされている今日、そのようなことで言いのがれができない事態になっている。政府としても明確な認識を持たなければならない段階なんですよ。そこで、私はいまこの質問をしているわけです。  それで、いまの問題に関連いたしまして、南ベトナムにおけるベトナム人民の戦いは、これはだれが考えられましても、民族の解放と祖国の独立を目ざす正義の戦いです。これを否定することはできないと思います。南ベトナムにおけるベトナム人民の戦いが民族の解放と祖国独立を目ざす戦いでないとは、いくら総理も言えないでしょう。そこで、このことは、ジュネーブ協定によっても、このようなベトナム人民の神聖な権利について、関係各国はこれを保障する、そういう義務を負っているわけです。まずこの立場から、総理はこのジュネーブ協定を正当なものと認識されるのかどうか、まずこの点から出発しませんと質問がかみ合ってきませんので、その点をまず総理にお尋ねします。
  136. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまのジュネーブ協定、ジュネーブ会議よりも、その前からひとつ話をしなければいかないようです。  南ベトナムの人民、これは平和的な人民だ。一部のテロやあるいは武力攻撃によって治安を乱すということ自身は、私ども賛成ができない。それによって政治的野望を達しよう、こういうことは私は賛成できないのです。この点が、ただいま言われるように、人民がみずからの意思できめるのだ、こう言われるが、そこにたいへんな相違がある、私はかように考えるのです。ただいま申し上げたように、テロ行為やあるいは武力行為によって政治的な野望を達成しよう、これは私は賛成できない。
  137. 林百郎

    ○林委員 総理の言うことはちっともわけがわからないのです。ベトナム人民がみずから民族の解放と祖国の独立と統一を目ざす戦いをゲリラだとかなんとか言うことは、どういうことなんですか。しかも、ベトナム人民がみずからの解放を戦いとっているときに、それにあれこれくちばしをいれて介入すること自体、ジュネーブ協定はこれを禁止しているじゃありませんか。それを、ベトナム人民自身にまかせるべきだと言っているのでしょう。あなた、一体何を言っているのですか。  そこで、まずあなたは、このジュネーブ協定の精神を順守しようと考えているのかどうか。さらに、このジュネーブ協定に基づいて関係十四カ国会議を即時開催して、平和的解決のために、そのためにこそ誠実な努力をする考えがあるかどうか。ジュネーブ協定の立場に立って関係十四カ国会議を直ちに開いて、そうしてこの問題を平和的に解決する。アジアの全人民の望んでいるこの線に沿って、日本総理としての努力をされるかどうか。これは笑いごとじゃないですよ。あなたは、日でどんなにアジアの人民の幸福を願うとかなんとか言ったって、アジアの人民の願っていることと逆なことを言っている。その正当な行為を弾圧することを支持して、何でアジアの人民と協調できますか。
  138. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 いまベトナム人民の名においてと言われますが、私は、ベトナム人民の大多数の意見だとは思いません。これが違うのです。共産党の方の認識と私の認識が根本的に違っているのです。それをはっきり先ほど申し上げている。
  139. 林百郎

    ○林委員 笑うべきことでね、南ベトナムの情勢がベトナム人民の真の意思でないなどということをあなた平気で日本の国会で言えるのですか。驚くべき総理大臣だと思いますな。  そこで、総理のそういう答弁にかかわらず、現実には、日本アメリカのベトナム攻撃のための基地となっている。そして、日本政府は事実上これに協力している。ジュネーブ協定をじゅうりんすることについて共謀しているわけです。現に、立川をはじめ各地の空軍基地や横須賀や佐世保の軍港からは、アメリカの軍用機や軍艦のほとんど全部が出動している。これは、日本のラジオが報道しているわけです。総理、よく聞いてください。政府は、このような事実を第一知っていますか。知っていていまのようなことを言っているのですか。また、ベトナムを攻撃するためにアメリカの軍用機がどんどん立川から飛び立っている。横須賀や佐世保からベトナム人民を殺戮するためにアメリカの軍艦がどんどん出港している。こういう事実を日本総理大臣は一体知っているのですか。また、アメリカからの相談を受けているのですか。
  140. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 日本を作戦基地として使う場合だったら、もちろん話があると思います。しかし、ただいまのところ、作戦基地として日本を使っていない、私はかように理解しております。また、もちろんそういう意味の相談はございません。
  141. 林百郎

    ○林委員 ベトナムでこのような大戦争が起こり、そこに行く飛行機が日本の基地から飛び立ち、それから、日本の横順賀や佐世保からベトナムに行く軍艦が出港しているというのに、これが、日本が基地に使われていないとあなたは言えるのですか。しかも、こんな重大な事態に、ことによれば日本がのっぴきならない全面的な戦争に巻き込まれるというときに、アメリカの軍用機や軍艦が日本の基地を使っているときに、日本総理大臣は何も知らないのですか。アメリカから何のあいさつもないのですか。そんなのんきなことで日本の人民の運命をしょって立てますか。いいかげんなことを言っては困りますよ。
  142. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 ただいまえお答いたしましたように、作戦基地ではない。作戦基地としては使っていない。これははっきりいたしておきます。
  143. 林百郎

    ○林委員 このような厳然たる事実を、口先だけでそのように言いくるめられるのは全く遺憾です。いまの総理の答弁は非常に重大であります。日本の国土と人民は、直接いま戦火にもう巻き込まれているわけです。現実に巻き込まれているわけです。そして、危険な破滅のふちにおとしいれられようとしているわけです。政府は、アメリカのこの侵略戦争に対する協力を直ちにやめて、アメリカのこのような危険な軍事基地をむしろ撤去するということをこの際総理要求すべきです。そのような態度をとるか、それとも、なおあくまで日本をベトナム侵略戦争の基地として提供して、この不法な、無謀な戦争を支持して加担するものであるかどうか。問題ははっきりしている。ごまかしはきかない状態なんですよ。最大の爆撃が行なわれているときょうの新聞に一斉に出ているわけですよ。そういうような事態のもとに、ほんとうに日本の人民の運命を考えれば、ごまかしができない段階なんですよ。だから、はっきり私はあなたにものを聞いているのです。
  144. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 とんでもない認識をしていらっしゃるのですが、これは、日本国民としても重大な問題なんです。これは、林君と私とではたいへんな認識の相違があります。日本国民は、第一、ただいまのベトナムの戦乱に巻き込まれておりません。これははっきり申し上げます。これは巻き込まれておらない。これを巻き込まれておるという前提で御議論なさることは、非常に迷惑なんです。また、ただいまの補給基地その他が作戦基地であるようなお話だと、基地という名前で作戦基地であるという、そこへ飛躍しておられる。これはたいへんなことだ。だから、作戦基地というのなら、もちろん総理は、これは大事な重大な問題ですから、先ほど来、作戦基地ではない、かように申しておるのです。だから、この辺は、ただいま断定なさるのもいいですけれども国民に極端な不安を与えるような言動は慎んでもらいたい。
  145. 林百郎

    ○林委員 とんでもない話ですよ。いいですか、日本のラジオですら、立川をはじめ日本の空軍基地からアメリカ攻撃用の飛行機がベトナムに出動している、横須賀や佐世保の軍港からは、修理の軍艦を除いては、アメリカの軍艦は全部出動していると報道している。現にLSTの乗り組み員が殺されているという事実。笑いごとじゃないですよ、総理。これで何で日本が戦争に巻き込まれていないのですか。あなたが戦争に巻き込まれると言うのは、一体どういう場合のことを考えているのですか。しかも、ベトナムの戦争は全面的に拡大しようとしている。これが何で戦争に巻き込まれないと言うのですか。もう公然と日本の船がやられている。しかも、アメリカの原子力潜水艦もどんどん日本に寄港している。どうですか、総理、こういう事態なんですよ。総理、笑いごとじゃないぞ。あなた、不謹慎な。そうした総理態度こそ、安保条約にしがみついて、アメリカの中国封じ込め政策に協力して、日韓会談の妥結を急いで、憲法改悪をはじめとする軍国主義の復活の反動政治の本質を示しているのです。また、ここにこそ今回の三矢作戦なるものを生み出す根源があると思う。  私は、この問題について最後に質問しますが、いままでの政府の答弁を聞いて国民は絶対に納得できないと思うのです。そこで、わが党は次のことを総理が直ちに実行に移すことを要求します。そのことについての総理の所信をただしたいと思います。  第一には、日本憲法をじゅりんし、日本を国家総動員体制に移行するようなこういう危険な計画をたくらんでおる三矢作戦に関する文書の提出を必ずすること、これが第一であります。  第二に、三矢作戦計画の責任を明らかにすべきであります。さらに、自衛隊がいかなるものであるかということがはっきりされました以上、このような危険なことを計画する自衛隊を直ちに解散させなければいけない。そうして、これが平和産業に就職する保証を考えてやらなければならない。こういう方向へ切りかえなければならない。  第三に、椎名外相の訪韓はこれを直ちに取りやめなければならない。朝鮮の人民に対する重大な侮辱を与えることになる。即時これを取りやめなければならない。  第四に、ベトナムに対する一切の協力援助をやめて、軍事基地の使用を拒否し、アメリカの原子力潜水艦の寄港を断わって、中国封じ込め政策をやめて、日本を恒久的な平和の状態に置かなければならない。  第五は、それらのすべての根源、そういう日本を戦争の危険に追いやっているすべての根源である安保条約を破棄しなければならない。すべての問題の根源なんです。  この五つのことを実行すべきだと思いますが、このことについての総理見解をお伺いしたい。
  146. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 共産党の御要望でございますが、遺憾ながら大部分は反対でございます。ことに、最初に申し述べられたものは、ただいま小委員会で調査することになっておりますから、これは、その予算委員会内の小委員会の調査にまちます。その他の御提案は、私は遺憾ながら同調するわけにまいりません。
  147. 林百郎

    ○林委員 ただいまの政府の答弁は、国民が真剣に考えている重大な問題について誠意を持っているとはとうてい考えるわけにいきません。私たちは非常に真剣にこの問題を総理に聞いているのであります。私のいま要求したことは、国民要求を私がかわって総理に質問しているのであります。  そこで、私は、日本国民大衆の名においてはっきり申しますけれどもアメリカの帝国主義の侵略と戦争の政策は、アジアにおいても必ず孤立する。敗北を招く。これに追従する日本の反動勢力、自民党政府は、日本人民の戦いによって必ず打ち破られる。これはもう明らかであります。日本共産党は、国会外の大衆の戦いと結びついて、国会の中においてあらゆる機会に引き続きこれらの問題を徹底的に糾弾することを明らかにして、この私の質問を終わりたいと思います。   〔「答弁の必要はない」と呼ぶ者あり〕
  148. 佐藤榮作

    佐藤内閣総理大臣 答弁は要らぬと言われますが、私は、そう軽々しく国民大衆の名前を使ってもらっては困る。国民大多数は、ただいまのような考え方に賛成しておりません。これだけははっきり言っておく、何かと言えば、人民だとか国民大衆だとか言われるが、そんなになまやさしい国民大衆じゃないということをはっきり認識してもらわぬと、たいへんな間違いが起こる。
  149. 林百郎

    ○林委員 総理はいまそのようなことを言われましたけれども、(「もう時間がない」と呼び、その他発言する者あり)まだ時間がある。時間があります。それじゃ総理にお尋ねしますけれども、私は総理の政策を聞いておるわけです。一つとして……。
  150. 青木正

    青木委員長 林君、あなた質問は終わったと申しましたが……。
  151. 林百郎

    ○林委員 時間がありますから、もう一つ。いま言うこと、聞き捨てならぬわけです。答弁に納得できない。(「答弁に納得できなければやればいい」と呼び、その他発言する者多し)総理はそういうようにいきり立っているけれども、私は総理の政策を言っているのですよ。総理の政策は何一つとして、物価一つとして下げていないじゃないですか。平和の方向へ一つだって手を打っていないじゃないですか。そして、自衛隊の三矢作戦を見ても、明らかに憲法を破壊するようなことを現実にやらしているじゃありませんか。総理の政策のどれ一つを見たって、人民大衆が内容を知って支持する政策が一つもないじゃないですか。その政策が反人民的だ、反国民的だ、こう聞いているわけです。どうですか、総理。笑いごとじゃないです。私のこの質問に答えてください。あなたのとっている政策は、人民の生活を豊かにし、日本の平和を確保し、憲法を保障するという政策が一つもとられておらないんだ。この点についてどうするんだ。国民もまた、みな心を痛めておることなんです。そこで私はあなたに聞いている。もう一度答弁してください。   〔発言する者多し〕
  152. 青木正

    青木委員長 答弁の必要ありません。  あらためて申し上げますが、先ほどの林君の発言中、—————————————————との言辞は不穏当でありますから、この際取り消しを命じます。  これにて林百郎君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして、昭和四十年度総予算に対する総括質疑は終了いたしました。  午後は本会議散会後再開することとし、昭和四十年度総予算について一般質疑に入ることといたします。  この際暫時休憩いたします。    午後一時五分休憩      ————◇—————    午後三後二十六分開議
  153. 青木正

    青木委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  昭和四十年度一般会計予算昭和四十年度特別会計予算昭和四十年度政府関係機関予算、以上三案について、これより一般質疑に入ります。  なお、理事協議により、一般質疑の持ち時間は一時間三十分になっておりますから、御了承願います。  それでは、山田耻目君
  154. 山田耻目

    山田(耻)委員 本日は、最近におきまして、労使問題のうち特に三公社五現業、政府関係特別法人の公社、公団、こういう関係の分野につきまして、当事者能力がないことによって幾つかの混乱を惹起いたしております。こういう事柄につきまして、抜本的な解決をいたさなければならないという条件もだんだんと強まってまいっておると判断をされます。特に昨年の春闘で池田総理と総評の太田議長が、いろいろと、予定されたストライキを中止するために必要な事項について会談をいたしました際の中身にも、三公社五現業関係の当事者能力について検討いたさなければならない、こういうことが約束をされております。その後、佐藤総理が就任をされましたときにも、総評の幹部、公労協の幹部と会いまして、同様の趣旨を話し合っておられるわけであります。こうした関連の問題につきまして、本年になりまして一月二十八日に次官会議が開かれました。そこで、公共企業体の当事者能力等について意見交換がされ、将来の方向についての一つの具体策、今日の現行法下における運用上の合理的な判断、こういうものが取りまとめられておるやに伺います。しかも本年になりまして、新しい賃上げ要求を三公社五現業が今日いたしておるわけでございますが、これをめぐりまして公社側と組合側との団体交渉が今日続けられておりますけれども、これに対して当事者能力との関連において二月五日、大蔵大臣、労働大臣、橋本官房長官の三者の間で何らかの取りきめが行なわれ、しかもそれが新聞に公表されておりますが、こういう一連の動きを見まして、長い間懸案になっておりました当事者能力の問題について一段と前進のきざしを見せておると考えておりますけれども、これらについて労働大臣のお考えを伺いたいと思います。
  155. 石田博英

    石田国務大臣 公労法、地公労法におきましては、労使間の友好的な話し合いによって労使関係の安定を導いて、そうして、それによって業務の運営を円滑ならしめるという目的を持っておる法律でございますが、しかし一方、その労使間の話し合い、交渉をいたすにつきまして、公社、現業が他の面においていろいろ制約をされておるのでありまして、その制約されておりまするために、当事者能力に限定があるために、団体交渉が円満にいかないという事態がしばしば問題になってまいりました。公労法の目ざしております労働条件その他については、労使関係で話し合うことをたてまえとするということを生かしてまいりまするためにも、あとう限り当事者能力を付与するようにすべきである。こういう考え方のもとに、先ほど御指摘のように、昨年の四月十七日の事態収拾のために行なわれました池田総理と総評幹部の会談あるいは本年に入っての佐藤総理と総評幹部の会談等の経過にかんがみまして、それを受けて関係事務次官会議でその対策を協議してまいりました。まず、そういう制度全体について根本的な検討と改革を行なう必要は認める。認めるけれども、しかし、それを具体的にどうするかという点については、これは今度ILO関係の法律案の一つとして公務員制度についての審議会が設けられます。その審議会でひとつ検討してもらいたい。しかしながら、それができ上がるまでの間どうするか。それは、現行制度の合理的な運用によってこれをまかなっていくというような方針をきめた次第であります。それを受けまして、先般大蔵大臣及び官房長官協議をいたしまして、今回の公労協の賃上げの要求に対しまして、これに対しはあとう限りの、それぞれの公社におきまして合理的な運用をはかることによって有額回答をなすのが妥当であるということを決定いたした次第でございます。これは今回の措置でありますが、長い将来は、先ほどから申し上げておりますとおり、他のいろいろな問題とともに公務員制度審議会においてひとつ早く結論を得てもらいたい、こう考えておる次第であります。
  156. 山田耻目

    山田(耻)委員 こうした問題は公共企業体の体制全般にわたらなくては解決できない多くの要素がありますから、きわめて適切な機関を設置して、そこでいろいろな角度から検討したい、その機関をいま政府が御提案なさっておりますILOに関係する国内法改正の中の公務員制度審議会の中で検討することが適当であるというふうに御判断なさっておるものと思います。それは、私は、いずれの機関が適当であるかという意見を申し上げますよりか、昭和三十二年にもこうした問題について深い議論をいたしておりますし、その後、行管等におきましてもいろいろ指摘を受けておる部分もあります。あるいは委員会等でも指摘を受けておりますので、この際、政府としても長い間の懸案を解決するという立場に立って、この制度審議会をその機関として言っておるのだ、こういう立場政府の気持ちをお伺いしてよろしゅうございますか。
  157. 石田博英

    石田国務大臣 この問題は、御説のとおり長い間の懸案であります。そして公労法の指向しております方向と、それからその他の法律、制度との間の調整ということもこの懸案を解決するために必要欠くべからざる前提であります。したがって、今度の審議会においては、その必要欠くべからざる前提を解決しつつ、多年の懸案を処理するという強い決意を持ってこの審議会の動向を見守っていきたいと思っておる次第であります。
  158. 山田耻目

    山田(耻)委員 そこで大蔵大臣に二つばかりお伺いしたいのでありますが、今日の日本国有鉄道法なりその他の公社法を見てまいりますと、予算総則というもので職員の給与その他ががんじがらめに縛られておりまして、もちろん若干弾力条項というものはございますけれども、こうした事柄が当該年度の予算をこえてきめられる職員の給与その他をきめさせない方向に規制をしておるのでございますので、こういう予算総則の関係を含めて、この制度審議会の中では当然審議されるものだというふうに受けとめてよろしいかどうかというのが一点です。  それからいま一つは、若干さきの話と関係がごさいますが、あなたの所管されておる特殊法人の中にも金庫関係がございますが、政府関係機関、特殊法人が約三十二くらいあると思いますけれども、たとえば住宅公団であるとか、あるいは東海村の原研であるとか、そのほかたくさんございますが、こういう政府の特殊法人の公団、公庫が、法律的には昭和二十八年からでございますか、労働法が適用されておりまして、労働三権を持っております。ところが、これらの経営者も当事者能力をきわめて大きく欠いておりまして、労働者側と経営責任者の側との話し合いの中で、事給与問題になりますと、大蔵大臣の認可がなければ一切身動きできない。こういうように、その分野からしばられております。昨年一年だけ見ましても、こういう公社、公団が賃上げ要求をして解決せずにストライキに突入しましたのが延べ九十四日ございます。住宅公団だけで二十一日もストライキをいたしておりますけれども、当事者能力の分野で押えられておりますために、きわめて労使関係というものは健康状態でない、混乱の度合いをますます強めておるというのが今日の実情でございますが、三公社五現業の問題とあわせて、今日の日本の官公労働法体系の持っておるこういう矛盾というものを、特殊法人を含めて、三公社五現業とからめて、解決への御努力をいただくというふうに理解してよろしいかどうか。
  159. 田中角榮

    ○田中国務大臣 三公社五現業は、御承知のとおり国有法人でございます。非常に公共性の高いものであり、国会の審議権という問題もございまして、非常にむずかしい問題ではございますが、いずれにしましても、より現実的であり合理的なものがあるとしたならば、当然検討しなければならないということであります。労働大臣も述べましたように、ILO関係法律の中に公務員制度審議会を設置することになっておりますから、ここで可能なものに対しては十分審議が行なわれるということございます。もちろん団交と予算との関係でございますから、その過程において結論が出れば、予算総則に現在書かれておるようなものがどうあるべきかというような問題にも検討が及ぶであろうことは論をまたないことであります。それから特殊法人その他公庫等の問題につきましても、民間と同じような状態にすることがむずかしいということは、これはもうその性質上言うを待たないことでありますが、三公社五現業に対して検討を進められるということであれば、それからより民間に近いという色彩を持つこれらの給与の問題に対しても、当然検討が行なわれてしかるべきだという考えであります。
  160. 山田耻目

    山田(耻)委員 問題の解決を前進させるという立場での御発言、たいへんよく理解できます。  労働大臣にお伺いしたいのでありますが、この特殊法人の問題につきましては、昭和二十四年から二十七年までは国家公務員として扱っております。そうして二十七年から特殊法人として公社、公団に組織されてまいりました。そのときに労働三法が適用される労働組合になっておるわけであります。このことと、公共企業体という一つの立場の中にスト権の制限を受けておる三公社五現業の労働組合との間に、いまの大蔵大臣がおっしゃったきわめて官庁システムに近い国家の法人であるという立場からそうだというお気持ちと、労働法の立場を主管され、そうして幾つか指導をなさるあなたとして、ここに不自然さというものをお感じにならないであろうか、ここに不自然さというものをお感じになるならば、そういうことにふさわしいようにすべての形態を一致させなければ、労使ともに健全な受使関係というものが確立されないということになると私は考えますので、その点について、あなたのお考えをひとつ伺っておきたいと思います。
  161. 石田博英

    石田国務大臣 労働行政をお預かりいたしておりまする者の立場といたしましては、労組法あるいは公労法、地公労法というようなもののたてまえを堅持していくのが当然であります。特に特殊法人については、労組法に載っておるのでありますから、したがって民間と同じような権利の上に立って、労使双方の話し合いによって労働条件が決定されることが望ましいことは言うまでもありません。ただ、御承知のごとく、特殊法人は民間と違いまして、国の財政から交付金あるいは補助金その他のものが支出されて、それによって運営されていくのであります。したがって、その部門において財政当局あるいは国会の審議権、そういうものの拘束を受けることは、その性格からいってある程度はやむを得ないのじゃないかと思います。問題は、その調整点をどこに見出していくか、したがって、今度の公務員制度審議会においてその調整点をどこに見出していくかということに期待をかけていきたいと思っておる次第であります。
  162. 山田耻目

    山田(耻)委員 それでは問題の提起が労働関係でございますので、公労法の現行の運用、解釈というものを合理的にしていきたいという一月二十八日の次官会議の決定の第二項がございますので、この合理的運用の中身について御用意がございますなら、ひとつまず聞かしていただきたいと思います。
  163. 石田博英

    石田国務大臣 詳しいことは、私は当事者じゃありませんから、それぞれ当事者からお聞きいただきたいと思うのでありますが、たとえば給与総額内の流用あるいは企業努力による剰余金の使用というようなことなど、現行法規の中でくふうし得られる点を最大限くふうして出してもらいたいということであります。どういう款項目があり、どういうところにひねり出す余地があるかということについては、これは私は存じませんので、それぞれ担当者からお聞きいただきたいと思いまするし、具体的な法律解釈については政府委員からお答えをいたしたいと思います。
  164. 山田耻目

    山田(耻)委員 こういうふうに中身ができておるわけですね。二番目には、「制度の抜本的改善までの間は、公企体等の当局が適切にその当事者能力を発揮できるよう現行制度の合理的運用をはかる。」となっておりますので、将来に向かって公務員制度審議会等で広範囲な角度から検討しようということとは違いまして、二番目は、現行法制下において当事者能力が十分発揮できるように、現行制度の合理的運用をやるのだ、こうなっておりますので、従来の法体系の中でやられてきました当事者能力、これ以外のものが、あるいはこれをもっと強めた合理的な運用というものがこの中にあるものと私は判断するわけです。それをひとつお聞かせいただきたいということです。
  165. 石田博英

    石田国務大臣 いま申しましたとおり、詳細な内容は私は知りませんけれども、合理的な運用ということでありますから、たとえて申しますならば、給与総額内の流用とか、企業努力による剰余金の捻出とか、そういうようなことで、ひとつでき得る限り財源を見出して、そうしてその可能な範囲内において交渉に応じてもらいたい、こういうことであります。
  166. 山田耻目

    山田(耻)委員 大臣、それはいままでもやっていたことでございます。新しい合理的運用の中身として取り上げられるというのには、これは少し古過ぎるという気がいたします。ですから、あなたは次官会議の当事者ではございませんけれども、特にこの種の労働問題につきましては、あなたは労働大臣でございますから、私は熟知なさっているものだというふうに考えてお聞きしたわけでありますけれども、あなたの御答弁は、それは古い話でございますので、合理的運用とはこれをプラスしたのだ、このようにこの解釈を広げたのだというふうなことを具体的にささせなければ、これは抽象的な文句であったということにしかすぎないのでございますけれども、その点をひとり……。
  167. 石田博英

    石田国務大臣 労働大臣といたしましては、当事者能力をでき得る限り付与すべきであるという観点の上に立って、したがって、今回の賃上げ要求に対処するためには、有額回答をなすべきであるという方向に従って努力をいたした次第であります。現行法規上いかなる方法で捻出できるか、その公社が捻出しようとすることが現行法の中で合法であるか、あるいは不法であるかという点については、それぞれ公社内でいろいろ事情も違いましょうし、私は、そういう点についての検討ではなくして、そういう基本的な方針について主張し、決定したということであります。内容については、私のほうの政府委員というよりは、公社、現業の内部の法規上、制度上いろいろ違った点もありましょうし、詳細な点については、私はどうも具体的にどうこうということを差し示したわけではありません。
  168. 山田耻目

    山田(耻)委員 この第二項の具体的な内容というものは、あるようでないような、あるとすれば古いもので、気持ちがここに書き上げてあるのだというふうな程度にあなたのお答えをいただく以外にはないのでございます。これは、きょうここでこれ以上申し上げることはどうかと思いますので、私はやめます。  そこで、いまあなたのことばの節にちょっと出てまいりました、二月五日に有額回答をするように指示をした、これは一つの新しい事実でございますけれども、ちょうど昭和三十六年でございましたか、有額回答がございました。このときには、官房長官のほうで、いろいろと公社当局と連携をとられながらその措置がとられたものと私は判断いたしておりますが、今回の場合は、あなたと大蔵大臣と官房長官と、いわゆる当事者能力に直接かかわり合いのある関係大臣も含めて有額回答の一つの結論が出されたということは、私は観念上は非常に前進だと思うのです。しかし、この有額回答をお示しになりましたいわゆる根拠、今日の予算総則上から見る根拠、こういうものには何も変化のないままそういう態度をおとりになったのか、そこらあたりをちょっと一言お聞かせいただきたいと思います。
  169. 石田博英

    石田国務大臣 三十六年のときも私は労働大臣をいたしておりました。こまかいことは忘れましたけれども、たいへん私ども立場としてはやむ得ないことを御了解いただきたいのでありますが、基本方針は指示はいたします。しかし、法解釈やその具体的運用の内容は、担当者がそれぞれ折衝してきめることでありますので、私どもは、あとう限り合理的な運用によって出せということでありまして、その出し方について具体的な指示をしたりなんかはいたしておりません。
  170. 山田耻目

    山田(耻)委員 この種の有額回答というものが、労使間における団体交渉というものをどのように推進させる役割りになるとお考えになったのでありましょうか。これは、それぞれは要求の条件の整備をして持っておりますし、経営者のほうはいろいろと制約を受けております中でそういう有額回答を示せという態度をおきめになった背景には、労使間の団体交渉というものが、これを契機に好転をするというふうに御判断になったのであろうか、それとも、一つのアリバイをつくるという立場でお出しになったのであろうか、ここらあたりは、きわめて将来の方向上、重要なことがありますので、ひとつお聞かせいただきたいと思います。
  171. 石田博英

    石田国務大臣 これは、山田さんもよく御存じのことで、あらためて申すまでもないことだと思いますが、公社、現業及び特殊法人は、一般の民間と違う諸条件の中で運営をされておるのでありまして、その諸条件というのは、結局、国の財政との関連が非常に強いわけであります。したがって、予算編成権、あるいは予算審議権、そういうものとの関連は当然あるわけであります。しかしながら、その中にあっても、労使関係というものはでき得る限り労使の交渉と合意の上で運営されることが望ましい。したがって、その望ましい範囲をできるだけ広げていくことが労働行政の正しい方向だ、こう思っております。したがって、今回の処置は、その望ましい方向へ、やむを得ない制約はむろんこれは当然のこととしても、その中にあって望ましい方向へ前進をすべきだという方向に向かってなされた処置と御理解をいただきたいと存じます。
  172. 山田耻目

    山田(耻)委員 一つの意思表示ということでなされたというふうに受け取るわけでありますが、しかし、それでは今日の、この問題を解決するにあたって、特に組合も公社当局に対しまして要求を出しておるこの時期に、これは抜本的に解決への道を開くという手だてにはならなかったということについては、いまあなたの意思表示をしたという程度ではイコールされるものだと私は思うわけであります。したがいまして、この話については、大いなる期待というものが持てないのをいかにも私は残念に思いますけれども、こうした事柄が今日以降の労使間の問題になお多くの混乱を呼び起こさないように、前向きの姿勢でより一歩前進させていただくように、これはひとつ期待をいたさなくてはなりません。  そこで、現行法の問題について少し解釈をただしてまいりたいと思うのでありますが、公労法の第一条は、御存じのように、スト権の奪われてまいりましたいまの三公社、五現業の人々に対して、マッカーサーのほうから政令二〇一号という筋を通しながら生まれてきた占領政策のこれは落とし子であるということは明らかでございますが、いずれにいたしましても、これが憲法二十八条にいうスト権を奪っておるという立場からの違憲性、これに対する追及というものは今日まで続けておりますけれども、きょう直ちにこの点について議論を深める気は私はございません。現在の現行法につきまして、特に現行法の一条は、そういうストライキ権というものを奪い去っておる公社労使に対して、紛争を友好的かつ平和的に処理するために、団体交渉の手続、慣行というものをみごとに確立をすることがきわめて大切なんである。それが究極の目的としてある公共の福祉に貢献をする道なのだ。ストライキ権を奪っておるこうした三公社、五現業の労働者に対しては、団体交渉というものの慣行の確立、手続の確立に大きな力を注げというのが、この一条の第一項であろうと思いますし、第二項のほうでは、経済的紛争をできるだけこうした努力を通して少なくしていかなくちゃならぬという立場を明らかにし、経営者の義務が明らかにされております。こういう立場からながめてまいりますと、今日八条一号、二号、三号、四号と、団体交渉をとり行なっていく対象というものが明らかにされておりまして、この団体交渉をとり行なっていく中でまとまっていったことについては労働協約を締結しなさい。旧法では妨げないとあったのでありますが、それが改められて締結をすることができるんだと明らかにされております。  そこで、労働大臣にお尋ねするのでございますが、この八条一号の中には、賃金その他の給与について団体交渉をすることができると明らかにされております。もちろん、賃金並びにその他の給与というのは三公社五現業に働く労働者にとっては基本的な労働条件でございます。当然団体交渉の対象として団体交渉をとり行なっていくのでございますが、そこで二つに分けてお答えいただきたいのでありますけれども、この団体交渉でまとまっていく事柄は協定される。まとまらなかった場合は調停、仲裁という段階に進んでいくわけでございますけれども、今日までの経緯の中では当事者能力というものが災いをして、本来行なっていくべき賃金等に関する団体交渉がなおざりにされて、調停、仲裁にストレートで移行していったという過去の幾多の実績について労働大臣はどのようにお考えになっておられるか。  二番目に、当事者能力という事柄が災いをして、予算上、資金上不可能な支出について労働協約が締結をされたときには、この協約というものは労使双方は拘束するけれども、それが直ちに政府を拘束するものでない。そのために具体的な手続をとらなくてはなりませんので、開会中は十日以内、閉会中は開会後五日以内に所要手続を国会にとって、そうして認められて、調停時期にさかのぼって実施をするんだという手続が残されております。私は、いまこのことの正しいとか誤ったとかいう議論はいたしません。こういう賃金の交渉につきましても、予算上、資金上不可能なということが当事者能力とからんでございましても、労働協約の締結はできる。このことが今日なぜ行なわれてこなかったかということについて、ひとつ労働大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  173. 石田博英

    石田国務大臣 賃金その他の労働条件、特に賃金についての労使関係の話し合いによる合意が得られなくて、そしていままで調停、仲裁の段階で処理されてまいりましたことは御指摘のとおりの事実であります。先ほどから申しましたとおり、労使関係の処理という点から見ますと、これはもう労使関係で話し合ってきめることが望ましいのでありますが、しかし、公共企業体及び特殊法人の場合は、先ほどから申しました国の財政との特別の関係があります。したがって、そういう条件のもとにおいて国の財政を拘束するのは仲裁裁定の実施義務ということであります。それは三十二年から、仲裁裁定は完全に実施をするということによって、政府はこのたてまえを貫いてまいりました。例外規定であるこの予算上、資金上不可能な場合ということを使わないたてまえを今日まで貫いてまいりましたし、その方針には変わりないのであります。したがって、できれば労使関係の間で話し合いがついたほうがよいのだということについては私も同感でありますけれども、しかし、そういう条件下において調停、仲裁に移行せざるを得なかったということは、これはやむを得なかったことだと考えております。政府は、その条件のもとにおいて、仲裁裁定完全実施ということによって、公労法のたてまえを生かしてまいったつもりでございます。  それから後段の場合、なぜいままで仲裁裁定の完全実施よりも、労働協約で予算上、資金上不可能な場合において国会の議決を得るという手続をとられなかったか、こういう議論でございますが、これは現実に公社、現業側で、現在の制度のもとにおいて話し合いがまとまるような、合意点に達するような金額の捻出が不可能であったから、結局、労働協約を締結するに至らなかった結果だろう、こう思うのであります。しかしながら、これを無制限に付与するということは、これは先ほど申した特殊のたてまえからむずかしいことであると同時に、公社、現業は、それぞれの経営責任の上から、おのずから限度があって話し合いの合意に達しなかったということ、これもまたやむを得なかったことだと思っております。
  174. 山田耻目

    山田(耻)委員 純粋な立法の趣旨から私お尋ねをしてみたいと思うのでありますが、やっぱり公労法の適用を受けておる組合並びに公労法そのものを含めてでありますけれども憲法二十八条によっておる団結権、団体交渉権は全くそのとおり付与されておる。これは憲法上の保障があるんだ。ただ争議権については、これはもって書かれておるような理由で与えられていない。その憲法二十八条にいう団体交渉権を発動いたしまして、八条百万にいう賃金の団体交渉をする。そうして一つの結論を得る。その結論が予算上、資金上不可能なものであったといたします場合には、所要手続をとって追加予算なり、あるいは補正の予算なり、あるいは大蔵当局とのいろいろな折衝の過程で移流用の措置をとるということもあるでしょうけれども、そういうふうな過程に立ち至るための団体交渉、そういう事態が起こり得ることもあり得る労働協約、こういうものが全く現行法上可能なこともあるというふうに私は考えておるのでございますけれども、この点は大臣、いかがでございましょう。
  175. 石田博英

    石田国務大臣 法律上はそうだと思いますが、他の法律がございまして、現実に妥協するような条件が生まれてこないということもやむを得ない、こう思うのであります。
  176. 山田耻目

    山田(耻)委員 それならば、三十五条にいっておる強制仲裁の結論も、やっぱり資金上、予算上不可能な場合には、十六条に立ち返ってその手続をとることになるわけであります。一体これとどこがどう違うのでありますか。他の力ということになりますと、俗にいう当事者能力でございましょう。当事者能力が、その当該年度の予算をこえて職員の給与を支払うことはいけないのだととめられておるからこそ、第十六条の規定が生まれてきたのではございませんか。私は第十六条はきわめて親切に書かれておると思うのです。この十六条の手続に従って措置する労働協約があり得たならなぜいけないのかと私は聞いておるのであります。
  177. 石田博英

    石田国務大臣 したがって、労働協約を結ぶためには、合意に達しなければならぬわけですから、合意に達する条件があって合意に達し得るならば、それはいけないことではないだろうと思います。
  178. 山田耻目

    山田(耻)委員 いままでこの種の議論というものが、国会の中であまり多くやられておりませんし、ここではっきり確認をいたしておきたいのは、現行法の中で労使双方が賃金その他に関する団体交渉を行なうことは当然であるし、そうしてまとまった事柄が、資金上、予算上不可能な結論であっても、それは労働協約として労使双方は拘束するものである。ただし当該年度における資金上、予算上不可能であるから、それが十六条に基づいて所要手続をとるのである、こういう確認については、労働大臣並びに三公社の総裁はきょう御出席と思いますけれども、そのように御理解確認としていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  179. 石田博英

    石田国務大臣 その法律、公労法の八条によって労働協約ができた場合、そのできたものが予算上、資金上不可能な場合は国会の議決を求めるということは可能であります。しかしながら、現実にいままでその前提である合意に達しなかったということであります。
  180. 山田耻目

    山田(耻)委員 労働大臣、私は、そのときの理由というものはいろいろありますでしょうが、いまそれを伺っているんではなくて、やっぱりあなたは公労法を担当されておる担当の大臣でございますから、法律解釈にいろいろとからんだものが入りますと、それを実際にやっていく公社の労使当局は混乱を防ぐことができませんから、やっぱり法律上はすっきりさせておいてほしい。その法律上すっきりした解釈というのは、いま私が申し上げましたように憲法二十八条にいう団交権の保障から生まれてきた団体交渉をやっておるのであって、そこでまとまる事柄については、当然協定が結ばれていくであろう。特に労働者の労働実態を一番よく知っておるのは、少なくとも私は仲裁委員会じゃないと思う。やはり公社当局と労働組合が一番労働実態をよく知っているものだと私は思うのですよ。この両当事者が、社会的な物価の変動等によって起こる諸事情、あるいは労働再生産に必要な要求、あるいは経営者にとっては企業能力というものも考えて、収支採算の度合い等も考えて、そうしてまとまっていった結論というのが、この三公社五現業の労使間が一番円満にまとまった結論であろうと私は思うのです。そのまとまった結論が、当事者能力がないがゆえになぜまとめたのかというものの言い方が起これば、これも間違いでありましょうし、まとまった結論が資金上、予算上不可能なときには、当然十六条をもって所要手続をとればこれはいいことでありますので、そういうことは本来ならば今日まで正しく育て上げられてこなければならなかったと私は思う。これから将来に向かってそういう一番公労法をすなおに解釈をした運用解釈というものが推し進められていくべきことが、私は問題を非常にスムーズに解決をする道筋だと思いますので、そのような解釈を労働大臣みずからもひとつとつていただいて指導にあたっていただくようにお願いしたいと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  181. 石田博英

    石田国務大臣 労使関係の処理は、いまおっしゃるとおり、それぞれ労使の間の話し合いでまとまって処理せられることが一番望ましいのであります。公共企業体においても、八条に示されておりまする条項は、八条で労働協約ができれば、それが予算上、資金上不可能な場合は十六条で国会の議決を得るということでありますから、したがって第一の段階として労働協約でそれがまとまることは、それは法律上可能でありますし、先ほどから申しました労使関係の一般論としてはそれがけっこうだとは思います。しかし、それ以外のことはおまえの所管でないから言うなとおっしゃいますけれども、しかし、私は労働大臣であると同時に国務大臣でもございます。したがって公社、現業あるいは特殊法人というものが国の財政によって交付金を受け、補助を受け、融資を受けて運用されておるという特殊な条件のもとにある程度の制約を受けるということは、これはやむを得ないのではないか。そこのところのかね合いをどういうふうにつけて将来よい労使慣行を進めていくかということが、今度公務員制度審議会に課せられる任務ではなかろうか、こう思っております。法律のたてまえと、それから労使関係の処理の基本的な方向については同意でありますが、同時に特殊的な性格というものを私どもは認めていかなければならない。したがって、われわれの立場としては当然、当事者能力をできるだけ拡大するようにするという方向で努力をすることは言うまでもないのであります。
  182. 山田耻目

    山田(耻)委員 どうも話が途中から横にいっていけないのでありますけれども、一つだけきちんと……。前段のほうは問題がないのでございますね。当然そういう労働協約を結んでよろしい。結んだ場合には、十六条に基づく所要手続をとるべきである。そこで過去幾つか例がございました、俗に言う強制仲裁の結論が国会に持っていかれる場合であります。このことの法律的な持っておる意義と、そうしていままでやられておりませんけれども、労使双方で結締した労働協約が国会に上程されていく意義と全く同一のものである。少なくとも資金上、予算上ということに関しては全く同一のものであるというふうに御理解いただくというわけにはまいりませんか。その点、いかがでございますか。
  183. 石田博英

    石田国務大臣 この強制仲裁が行なわれた場合、労使双方を拘束するということは、これは公共企業体がその公共性のために労働三権のうちの争議権を奪われている、それに対する代償処置だと考えております。それから八条の労働協約が締結された場合、それが労使間を拘束するということは、これはもう一般の民間の場合でも同様でありますから、これとはちょっと違うのではなかろうか、そう存じます。
  184. 山田耻目

    山田(耻)委員 三十五条が、いまあなたのおっしゃる争議権を奪われた代償としてできた仲裁の制度が、結論をつけたときにはもちろん労使双方を拘束します。しかし、これが資金上、予算上不可能であるということになりますと、十六条の手続に従って国会に所要手続をとるのである。資金上、予算上不可能な場合は、十六条に基づいて国会に所要手続をとるというのは、スト権を奪った代償制度としての仲裁の結論にも十六条が所要手続としてきめられておるし、労使双方が妥結をした労働協約も、資金上、予算上不可能とした場合においては十六条が適用されておる。これは、いずれの場合からも当事者能力に関連をしてきておるのでございますから、どの道も今日の公労法の解釈からは分け隔てなく進められていく指導体制がとられていいではないか。当事者能力とそれがどこに関係があるのか。問題は十六条によって所要手続がとられるところに関連があるのではないかという立場が現行法の正しい解釈ではあるまいか。それをあなたも否定はなさっていないのですから、それを肯定する立場で、今日の労使問題について公労法のたてまえを正しく指導をしていただくという立場を、ぜひともとっていただきたいということを私は申し上げておるのでございますから、そのようにひとつこれを御理解いただいていいのではないかと思うのです、いかがでございましょうか。
  185. 石田博英

    石田国務大臣 十六条の規定は労使関係というか、政府予算編成権、それから国会の予算審議権、そういうものとの関連で設けられた規定だと思っております。ただその労働協約で問題が処理せられる場合、これは一番望ましいのでありますが、この場合は民間の場合と労働者の権利は同一の立場で行なわれるわけであります。しかしそうでない場合、つまり強制仲裁によって行なわれておるという場合というのは、話し合いがつかない場合においては民間の場合においては争議権を行使したり、経営者はロックアウト権を行使したりしますけれども、公共企業体はそれが許されておりませんから、三十五条の仲裁裁定というものによって、それに労使双方が拘束されるということによって代償処置がとられておる、こう私ども考えておる次第でありますが、さっきから何度も申しましたように、話し合いでものがまとまることが一番望ましいことなんだということは、労使関係一般の基本的方針であります。
  186. 山田耻目

    山田(耻)委員 これは大蔵大臣にもお答えいただきたいと思うのでありますが、いまの労働大臣のお気持ちは、労使間の問題はやはり話し合いで、団体交渉でまとまることが一番望ましい、こういう筋を追っていくことは正しいと私も思うのです。だからこそ公労法一条には、あのように団交の慣行をきちんと確立をして、平和的友好的に解決をしなさいよ、こういう立場が明らかにされておるのでございますから、今後、将来労使間における団体交渉がきわめて近い日に賃金問題等で起こってくると思いますけれども、こういう事態に立ち至りましたときには、労使間で団体交渉でまとめることを、労働大臣はあのように原則的に正しいとお認めになっておるのでございますし、大蔵大臣のほうも幾つか予算総則上の問題はございましょうけれども、話し合いでまとめて労働協約を締結することを妨げることのないような、むしろ推進をするような、援護措置といいますか、指導といいますか、そういう立場をとっていただきたいと思うのでございますが、いかがでございましょう。
  187. 田中角榮

    ○田中国務大臣 大蔵省といえども、労使間がまとまることをじゃまするようなことは絶対考えておりません。労使間が円満にまとまることが一番いいことだと考えています。
  188. 山田耻目

    山田(耻)委員 ありがとうございました。今後は、過去にありましたような団交を拒絶したり、あるいは当事者能力がないからということを理由に、当該予算をこえての団体交渉を断わるというふうな事態は、うしろに三公社五現業の責任者がお見えになっておりますので、私は二度と起こらないものだということを期待をいたしております。当然資金上、予算上こえる事柄について、団体交渉でまとまりまして協約が締結をされますと、十六条の定めに従って所要手続がとられる事柄が今後は起こり得て、しかも労使間の話し合いというものを通してでき上がるのでございますから、労使関係は円満にその企業の目的にも労働者の要望にも沿えることになるものだと私は考えておりますので、三公社五現業の責任者の方たちも、今後はひとつ心を安らかにして団交をやっていただくようにお願いいたしたいと思います。名大蔵大臣で、たいへんありがとうございました。  それからもう一点お伺いしておきますが、これも長い間国会の中で議論されておりました、例の仲裁の結論が十六条の手続によって議会にかかってまいりますと、議会は、その仲裁の結論というものが労使双方を拘束しておるものであるから、議会において行なうのはこの補正予算なり、追加予算なり、あるいは予算上の移流用というものを認めるということだけの手続、仲裁裁定の中身がいけぬとかいいとか、こういう事柄を言うべきでなくて、持ち出されましたその結論を補正するのか、追加するのか、移流用でやるのか、これだけを議会としては取りきめるべきであるという意見とが今日までかなり交錯いたしております。  そこで、ILOの問題にちょっと触れて、ともに意見を聞きたいのでございますが、ILOから出ております五十四次報告の四十一項、五十九、六十項の中に、この種の強制仲裁の結論はスト権を奪った代償措置としてのものであるだけに、この結論というものは国会の予算の留保権によって内容が変えられるべきであってはならない、国会で行なうべき任務は、当然どういう方法で実現をするのかということについて国会は取り扱うべきである、こういう意味のことが日本政府に向かって示唆され勧告をされております。この勧告の引例といたしまして、一九五四年でございますか、国際司法裁判所が国連の予算の留保権に対して触れまして、いまのような立場を例として立証いたしております。私は読み上げればいいのでございますが、長くなりますから省略いたしますが、そういう引例をいたしながら、スト権の代償制度として生まれておる強制仲裁の結論は、そのように国会で取り扱うべきであるという立場に対して、従来の経緯等もございますから、この際労使の相互信頼を取り戻して、民主的な労使の慣行をつくり上げていかなくちゃならぬというのがいまの総理施政方針の一端でもございますし、先般見えましたドライヤー委員会に対する政府を代表しての総理の意向でもございましただけに、この問題も長年の懸案でございますだけに、この際ひとつあんまり古きにとらわれないで、さっきの名答弁の調子で大蔵大臣の見解をお伺いしたいと思います。労働大臣でもけっこうでございます。
  189. 石田博英

    石田国務大臣 法律解釈としては、私は仲裁裁定が出たものについてはむろん補正でやるか、あるいは移流用でやるかというようなこととともに、予算上どうしても不可能だというような、その金額を実施することは不可能だというような処理のしかたも法律解釈としてはあると思います。しかしながら、先ほどから申しましたように、またILOでも五十四次報告にも示されておりますように、この法律は争議権を奪った代償処置としてできておる条項でありますから、政府は当然これに対して努力義務がむろんありますし、政治的なたてまえとしては、これを完全実施の方向で処理すべきものだと考えますし、同時に昭和三十二年以来完全実施をいたしてまいりました。またその完全実施をわれわれがやってきたということは、先般のドライヤー委員会の審問の際においても、その五十四次報告の指摘をされた事柄を満たすものだと解釈されたと考えております。
  190. 山田耻目

    山田(耻)委員 じゃあ大臣、法律上の解釈についてはまだまだ幾つかあるけれども、実際問題として私が申し述べたような立場で完全実施をしていくのだ、そういうことを三十二年以来やっておる、将来もやっていくのだ、こういうことをいまおっしゃっておるわけなんです。これはあなたとか、田中大蔵大臣とか、松浦運輸大臣とか、りっぱな方がいらっしゃる間はいいけれども、やはり法律解釈をいずれはっきりしていただかなければならない問題だと私は思います。これはあらためて、また場所を変えてこれから議論をしていきたいと思いますので、この点についてはこれ以上触れないことにいたしておきます。  それから運輸大臣にひとつお伺いしたいのでございますが、さっきたとえばの例として、国鉄労働組合なり動力車なり、いろいろ組合がございますが、資金上、予算上をこえて労働協約を結ぶことが将来起こり得ないとは保証できません。これが起こり得たときには、日鉄法五十四条によって、あなたの監督権を発動されて、そんなおまえけしからぬぞ、そういうふうなことをしたらいかぬというふうなおしかりをなさることは、よもやあるまいと思いますけれども、それはよろしゅうございますか。
  191. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 お答いたします。  それは事の事情によるものであって、仮定論に対してはお答えすることはできません。
  192. 山田耻目

    山田(耻)委員 私は仮定の話というよりか、現行法の今日的解釈を通して、日鉄法五十四条の立場で、あなたの監督権と並べていまお聞きしているのでございまして、これは、やはり法律上の立場でお尋ねをしておるのでございますから、仮定ということで逃げてもらっては困ります。  私は、昭和二十四年にこの公労法が制定をされます前の第三臨時国会、第四回の国会議事録を読んでみました。そのときは増田さんが労働大臣でございました。それに対して自民党の中曽根さん、わが党の山花さん、辻井さん、こういう方たちがやはり同様の質問をなさっておるのです。その中で資金上、予算上をこえていく立場で労働協約は当然締結をされ得る、またされる、その場合には運輸大臣は日鉄法五十四条の監督権について、そのことについて文句をつけるわけにはまいりません、両当事者間で締結をした協定というものは両当事者を拘束をするものでございます、そのことについて私はいろいろけちをつけるというわけにはまいりません、ということで、時の運輸大臣は小澤さんでございましたか、答弁なさっておりますが、あなたはどうでございますか。やはり仮定の問題ということでお逃げになりますか、このことは法律解釈上きわめて具体的な答弁を求めることでありますので、お答えいただきます。
  193. 松浦周太郎

    ○松浦国務大臣 仮定の問題と申しましたが、いまお話しになりましたように、具体的な法規に基づいて法律的な要求のあるものについてはこれを制止する考えはありません。
  194. 山田耻目

    山田(耻)委員 たいへんありがとうございました。  大体私の予定の質問はこれで終わるわけでございますが、最後に三公社五現業の責任者に、これは私のお願いでございますが、だんだんと春闘の賃上げも起こってまいりますし、それ以外にいろいろと労使間の問題もあろうかと思います。今日当事者能力というものが決して十分でございません中で、たいへん御苦労なさっておると思いますが、それ以上に働いておる労働者の諸君はみじめな思いをいたしております。どうかひとつ、いままで三大臣のほうからいろいろと当事者能力なり、団体交渉のあるべき労働協約との関連について事態が明らかになってまいりましたので、しかもこの団体交渉は憲法二十八条にいう団体交渉権の保障のもとに行なわれる団体交渉でございますので、どうかひとつ事情を十分御理解の上、円満な、りっぱな労使関係が確立をされますように心からお願いをして、私の質問を終わりたいと思います。
  195. 青木正

    青木委員長 これにて山田君の質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  196. 青木正

    青木委員長 この際、参考人の出頭についておはかりいたしたいと存じます。  昭和四十年度総予算の審査のため、来たる十五日、淡谷悠藏君の質疑の際に、東北開発株式会社の総裁に参考人として出頭を求めたいと存じますが、これに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  197. 青木正

    青木委員長 御異議なしと認め、さように決定いたします。  次会は来たる十五日月曜日、午前十時より開会いたします。  十五日の質疑者石野久男君、淡谷悠藏君、安井吉典君であります。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時三十四分散会