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1965-05-13 第48回国会 衆議院 本会議 第43号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年五月十三日(木曜日)     —————————————  議事日程 第四十一号   昭和四十年五月十三日    午後二時開議  第一 寄生虫病予防法の一部を改正する法律案   (社会労働委員長提出)  第二 著作権法の一部を改正する法律案内閣   提出参議院送付)  第三 昭和四十年度における旧令による共済組   合等からの年金受給者のための特別措置法等   の規定による年金の額の改定に関する法律案   (内閣提出)  第四 昭和四十年度における公共企業体職員等   共済組合法規定する共済組合が支給する年   金の額の改定に関する法律案内閣提出)  第五 国有会議場施設管理委託等に関す   る特別措置法案内閣提出)  第六 九州横断自動車道建設法案馬場元治君   外六十一名提出)  第七 日本国グレートブリテン及び北部ア   イルランド連合王国との間の領事条約締結   について承認を求めるの件     ————————————— ○本日の会議に付した案件  日程第一 寄生虫病予防法の一部を改正する法   律案社会労働委員長提出)  日程第二 著作権法の一部を改正する法律案(   内閣提出参議院送付)  日程第三 昭和四十年度における旧令による共   済組合等からの年金受給者のための特別措置   法等規定による年金の額の改定に関する法   律案内閣提出)  日程第四 昭和四十年度における公共企業体職   員等共済組合法規定する共済組合が支給す   る年金の額の改定に関する法律案内閣提   出)  日程第五 国有会議場施設管理委託等に   関する特別措置法案内閣提出)  日程第六 九州横断自動車道建設法案馬場元   治君外六十一名提出)  日程第七 日本国グレートブリテン及び北   部アイルランド連合王国との間の領事条約の   締結について承認を求めるの件  日米航空協定改定促進に関する決議案長谷川   峻君外六名提出)  赤城農林大臣沿岸漁業等振興法基づ昭和   三十九年度年次報告及び昭和四十年度沿岸漁   業等施策について並びに林業基本法基づ   く昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度  林業施策についての発言及び質疑    午後二時八分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  日程第一 寄生虫病予防法の一部を改正する   法律案社会労働委員長提出
  3. 船田中

    議長船田中君) 日程第一は、委員長提出議案でありますから、委員会審査省略するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。  日程第一、寄生虫病予防法の一部を改正する法律案議題といたします。
  5. 船田中

    議長船田中君) 提出者趣旨弁明を許します。社会労働委員会理事小沢辰男君。   〔小沢辰男登壇
  6. 小沢辰男

    小沢辰男君 ただいま議題となりました寄生虫病予防法の一部を改正する法律案趣旨弁明を申し上げます。  御承知のように、日本住血吸虫病は、山梨、岡山、広島、佐賀県などにおいて広く蔓延し、農耕その他住民の日常生活に重大な障害を与えておりますが、この疾病の根絶をはかりますためには、病原虫中間宿主でありますミヤイリガイを絶滅する必要があります。  このため、昭和三十二年度より十カ年計画ミヤイリガイ生息地帯における溝渠コンクリート化を行なってきたのでありますが、この計画の最後の年であります昭和四十一年度までに当初の計画を完了するのは困難な状況にありますので、本案は、溝渠新設基本計画昭和四十年度以降七カ年に改め、日本住血吸虫病の撲滅をはかろうとするものであります。以上が、本法律案趣旨の概要であります。なお、本案は、社会労働委員会において各派協議の上成案を得たものでありますので、何とぞ慎重御審議の上すみやかに御可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)     —————————————
  7. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案可決いたしました。
  9. 船田中

  10. 渡海元三郎

    渡海元三郎君 ただいま議題となりました法律案につきまして、文教委員会における審議経過とその結果を御報告申し上げます。  本案は、現在暫定的に三十三年となっている著作権保護期間を当分の間三十五年とし、公布の日から施行しようとするものであります。  本案は、去る二月十二日予備審査のため当委員会に付託され、同月十七日政府より提案理由説明を聴取いたしました。以来、慎重に審議をいたしましたが、その詳細につきましては会議録によって御承知を願いたいと存じます。  かくて、五月十二日、本案に対する質疑を終了し、討論省略、直ちに採決に入り、本案全会一致をもって原案のとおり可決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  11. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案委員長報告のとおり決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案委員長報告のとおり可決いたしました。
  13. 船田中

    議長船田中君) 日程第三、昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案日程第四、昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律案日程第五、国有会議場施設管理委託等に関する特別措置法案、右三案を一括して議題といたします。     —————————————
  14. 船田中

  15. 藤井勝志

    藤井勝志君 ただいま議題となりました三法律案につきまして、大蔵委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  初めに、昭和四十年度における旧令による共済組合等からの年金受給者のための特別措置法等規定による年金の額の改定に関する法律案について申し上げます。  まず第一に、旧令及び旧法基づ年金につきましては、従前と同様に、恩給法改正措置にならい、一律二割の年金額引き上げを行なうほか、今回新たに、新法基づ年金につきましても、恩給法改正措置に準じ、受給者の退職時の俸給を、いわゆる二万円ベースに換算し、その額を基礎とした年金額を二割引き上げた額に増額することといたしております。  第二に、今回の改定による増額分の支給につきましては、これまた恩給法改正と同様に、七十歳未満の者は、三年にわたって段階的な年齢制限を受けることとなっておりますが、新法規定による年金のうち、新法施行日以後の期間に対応する部分につきましては、保険制度のたてまえ上、直ちに全額支給することといたしております。  第三に、今回の年金額改定に要する費用につきましては、旧令、旧法及び恩給法にかかるものは、従前と同様に全額国負担するものとし、新法施行日以後の期間に対応するものについては、いわゆる三者負担といたしております。  第四に、年金額改定には別に、職員団体等に専従する組合員長期給付に要する費用のうち、従来職員団体等負担とされておりました百分の十五に相当する額を、他の社会保険と同様に国が負担することとするほか、現に在職する組合員旧法適用期間中に常勤的非常勤職員として在職した期間を、組合員期間または年金受給資格期間として取り扱うこととする等、所要の改善措置を講ずることといたしております。  続いて、昭和四十年度における公共企業体職員等共済組合法規定する共済組合が支給する年金の額の改定に関する法律案について申し上げます。  この法律案は、公共企業体共済組合が支給する旧国家公務員共済組合法及び現行公共企業体職員等共済組合法規定による既裁定年金につきまして、今回の恩給法等改正措置に準じて、年金額引き上げを行ないますとともに、職員団体等に専従する組合員に対する長期給付に要する費用負担割合を改善しようとするものでありまして、さきに申し述べました国家公務員共済年金改定の場合とほぼその内容を同じくするものであります。  終わりに、国有会議場施設管理委託等に関する特別措置法案について申し上げます。  この法律案は、かねてから京都市に建設中の国際会議場施設に関しまして、その管理を効率的に行なうため、次の措置を講じようとするものであります。  すなわち、まず、京都市に存する国有財産である国際会議場施設管理関係地方公共団体委託することができることとするとともに、その施設管理上必要があるときは、施設に備えつける物品を無償で貸し付け、または譲与することができることといたしております。  次に、管理委託を受けた地方公共団体は、管理委託を受けた施設を使用し、または収益することができることとし、さらに、その施設管理に関し通常必要とする費用負担するとともに、施設収益行為から生ずる収入当該地方公共団体収入とすることといたしております。  以上三案は、審査の結果、昨五月十二日、質疑を終了し、直ちに三案を一括して採決いたしましたところ、いずれも全会一致をもって原案のとおり可決となりました。  なお、以上のうち、共済組合年金改定に関する二法律案に対しましては全会一致をもって附帯決議を付すべきものと決しました。  附帯決議の要旨は、年金額についてのスライド制、将来における共済組合の自主的な年金額改定、七十歳未満受給者に付されることとなっている年齢制限の緩和並びに共済組合短期給付に要する費用についての国庫負担の諸点につき、検討の上善処するよう要望するというものであります。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  16. 船田中

    議長船田中君) 三案を一括して採決いたします。  三案の委員長報告はいずれも可決であります。三案を委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  17. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、三案とも委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  18. 船田中

  19. 廣瀬正雄

    廣瀬正雄君 ただいま議題となりました馬場元治君外六十一名提出九州横断自動車道建設法案につきまして、建設委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、国土開発縦貫自動車道たる九州自動車道と相まって、九州地方の総合的な開発をさらに強力に推進し、あわせて域外との産業経済等関係を一そう緊密にするため、起点を長崎市、終点を大分市とし、主たる経過地佐賀附近、鳥栖市、久留米市附近甘木附近及び日田市附近とする路線を基準として九州を横断する幹線自動車道建設しようとするものであります。  本案は、去る五月十一日本委員会に付託、同十二日、提案理由説明を聴取した後、主として中国、四国における横断道路との関連等について質疑が行なわれたのでありますが、詳細につきましては会議録に譲ることといたします。  次いで、自由民主党日本社会党民主社会党を代表して、建設委員長森山欽司君より、この種の法案趣旨より見て、あまりに詳細に経過地を定めることは必ずしも適当とは思われないので、第二条第二項中「甘木附近」を削る旨の修正案提出され、討論省略して修正案並び修正部分を除く原案についてそれぞれ採決の結果、いずれも全会一致をもって可決、よって本案修正議決すべきものと議決した次第であります。  右、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  20. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案委員長報告修正であります。本案委員長報告のとおり決するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  21. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案委員長報告のとおり決しました。      ————◇—————
  22. 船田中

    議長船田中君) 日程第七、日本国グレートブリテン及び北部アイルランド連合王国との間の領事条約締結について承認を求めるの件を議題といたします。     —————————————
  23. 船田中

  24. 毛利松平

    毛利松平君 ただいま議題となりました案件につきまして、外務委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  政府は、連合王国との間に領事に関する事項を規定する条約締結するため、昭和三十七年以来交渉を行なっておりましたが、最終的に合意に達しましたので、昨年五月四日本条約の署名を行なったのであります。  本条約は、領事館の設置、領事官の任命及び職務範囲領事館の享有する特権免除領事館及び領事館職員が享有する特権免除等規定しております。  本件は、二月三日本委員会に付託されましたので、政府から提案理由説明を聞き、質疑を行ないましたが、詳細は会議録により御了承を願います。  かくて、五月十二日、本件についての質疑を終了し、討論を行ないましたところ、日本社会党を代表して穂積七郎委員より反対の意見が述べられました。次いで、採決を行ないましたところ、本件は多数をもって承認すべきものと議決いたしました。  右、報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  25. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本件委員長報告のとおり承認するに賛成諸君起立を求めます。   〔賛成者起立
  26. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本件委員長報告のとおり承認するに決しました。      ————◇—————  日米航空協定改定促進に関する決議案長谷川峻君外六名提出)           (委員会審査省略要求案件
  27. 海部俊樹

    海部俊樹君 議事日程追加緊急動議提出いたします。  すなわち、この際、長谷川峻君外六名提出日米航空協定改定促進に関する決議案は、提出者要求のとおり委員会審査省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  28. 船田中

    議長船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  日米航空協定改定促進に関する決議案議題といたします。     —————————————   日米航空協定改定促進に関する決議案  右の議案提出する。       提出者        長谷川 峻  田邊 國男        細田 吉藏  大西 正男        久保 三郎  矢尾喜三郎        内海  清       賛成者        有田 喜一 外五十二名     —————————————   日米航空協定改定促進に関する決議   わが国国際航空企業ニューヨーク経由世界一周路線を実現することは国民の長い間の熱望である。   しかるに、現行日米航空協定においては、米国航空企業に対しては、東京乗入れ及び広範な以遠権を認めているにもかかわらず、わが国には、米国西海岸までしか乗入れを認められていない。   よつて本院は、政府に対し日米航空協定改定に当たつては、協定廃棄をも辞せずという堅い決意をもつて不平等を是正し、正しい日米友好関係を確立するよう強く要望する。   右決議する。     —————————————
  30. 船田中

    議長船田中君) 提出者趣旨弁明を許します。長谷川峻君。   〔長谷川峻登壇
  31. 長谷川峻

    長谷川峻君 ただいま議題となりました日米航空協定改定促進に関する決議案について、その提案趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。    日米航空協定改定促進に関する決議案   わが国国際航空企業ニューヨーク経由世界一周路線を実現することは国民の長い間の熱望である。   しかるに、現行日米航空協定においては、米国航空企業に対しては、東京乗入れ及び広範な以遠権を認めているにもかかわらず、わが国には、米国西海岸までしか乗入れを認められていない。   よつて本院は、政府に対し日米航空協定改定に当たつては、協定廃棄をも辞せずという堅い決意をもつて不平等を是正し、正しい日米友好関係を確立するよう強く要望する。   右決議する。   〔拍手〕  日米航空協定は、昭和二十七年四月サンフランシスコ平和条約が発効した直後、同年八月東京において調印されたものであります。しかも、第十三条に連合国に対する航空協定交渉開始の義務と既得権益はそのまま四カ年に限り認めるとの規定があったため、日本は非常に不利な立場交渉に臨まなければならず、今日のような経済力の復興、国力の発展を予想できなかったので、きわめてわずかな権利しか獲得できなかったのであります。  日米航空協定は、米英間で締結されたいわゆるバーミュダ協定と同様の形式をとっております。協定附表において、相互相手国航空企業路線を指定し、その路線上の自国領域において着陸し、貨客を積みおろす権利を認め合っているものであります。  この附表において、日本は、米国より太平洋経由東京及び以遠路線と、沖繩から東京への路線を認めておるのであります。これによって、米国航空企業は、米国を発し、東京を経て中近東、欧州、米国という世界一周線と、並びに、ソウル、マニラ等東京以遠路線を運営しているのであります。しかるに、日本に対しては、ロスアンゼルス及びサンフランシスコ以遠という利用価値の限られた権利を認めているのみであります。このため、国際航空企業上、日本米国に対して非常に不利な結果に甘んじて今日に及んでいるのであります。  すなわち、一つには、米国航空会社東京及び以遠乗り入れているのに比べて、日本米国政治経済中心である東部都市及び以遠への乗り入れを認められていないということであります。  二つには、その後日本が結んだ二十一カ国との航空協定は、すべて首都または政治経済中心都市との相互乗り入れという国際航空基本原則に従っているにかかわらず、米国だけが例外となっているという事実であります。  三つには、米国世界主要諸国と結んでいる航空協定ニューヨーク乗り入れを認めていないのは日本だけであるということであります。  以上のように、日米航空協定は、当時の両国間の実勢力を反映し、占領時代の遺物として締結されたものであって、全国民がひとしく遺憾としているものであります。(拍手)このため、現在日本乗り入れているところのパンアメリカン及びノースウエストの両社が、ロンドン、ニューヨークとともに世界三大要衝の一つである東京国際航空市場における価値を利用し、その利益の大半を太平洋横断線からあげているのに対し、日本航空は強大な米国航空会社に圧迫され続けていることは、国民的利益を追求するわれわれとしてはとうてい黙視できないところではありますまいか。(拍手)  政府は、このような不平等を是正せんとして、すでに二回にわたって交渉してきましたが、米国は、三十六年の第一回交渉においては、大圏コース、アラスカ経由ニューヨークストップを、昨三十九年の第二回交渉においては、ロスアンゼルス経由ニューヨークストップ提案し、しかも、サンフランシスコ及びシアトルヘの乗り入れ権米国以遠のすべての権利を放棄せよ等々のきびしい逆条件をぶつけてきて、日米航空協定不平等性を意識的に無視する態度を露骨に示してきたのであります。  日本国民として、かかる不平等協定をこれ以上認めるわけにはまいりません。(拍手)忍耐にも限度があるというものです。  したがって、政府としては、近々再開される交渉において、米国がまたしても日本要求を受け入れない場合は、ひとまず現行協定廃棄を通告し、白紙の状態から対等の立場交渉を始める必要があると断定せざるを得ないのであります。(拍手)  航空協定廃棄通告することにより、相手をして冷静に反省させ、改定を有利にした国際的事例は幾らでもあります。  一九五三年、英国は、フィリピンとの航空協定で、マニラ東京を獲得するために廃棄し、五五年に新協定に成功しております。一九五八年、フランスは、米国との協定で、北極経由米国西海岸への路線を獲得するために廃棄し、五九年新協定を獲得しております。一九五四年、インドも、米国第三国間輸送を多く運び過ぎるとして協定廃棄し、五六年ついに米国経由世界一周線を獲得するに至っております。  当然のことでありますが、期間の定めのない航空協定においては、一時的に期限をつけるというのが廃棄であり、各国の例を見るまでもなく、政治上、経済上の一般的友好親善を妨げるものではありません。したがって、航空協定廃棄することによって、日米安保体制漁業綿製品交渉等に悪影響を及ぼしたり、日米親善に支障を来たすなどと考えるのは杞憂でありまして、正しい日米協力関係を実現するためにこそ、不平等航空協定廃棄し、新しい航空協定締結する必要がある考えるものであります。(拍手)  昨年の過酷な米国の逆提案をのんだり、不平等をこのまま認めていくようなことがあれば、日本が将来、米国以外の国々に対し今後発生するであろう現行協定改定ないしは新協定締結交渉にあたって、著しい不利を招き、禍根を永遠に残すおそれがあるのであります。  この意味からしても、政府は、国際航空機会均等米国との関係において確立させるというかたい信念のもとに、日米交渉に当たられんことを強く希望するものであります。  本院においては、昨年八月は運輸委員会、本年四月は外務委員会にて、航空協定改定促進に関する三党共同決議を採択したことがありますが、現行協定廃棄までは論じたことはなかったのであります。  ここに、私は、国民の長い間の熱望にこたえるとともに、交渉に当たる政府を鞭撻するため、自由民主党日本社会党及び民主社会党を代表して、日米航空協定改定に際しては廃棄まで決意して当たるべしという決議案趣旨賛成されるよう要望いたしまして、説明を終わるものであります。(拍手)     —————————————
  32. 船田中

    議長船田中君) 討論の通告があります。これを許します。肥田次郎君。   〔肥田次郎登壇
  33. 肥田次郎

    肥田次郎君 私は、自由民主党日本社会党及び民主社会党を代表して、ただいま議題となりました日米航空協定改定促進に関する決議案賛成し、現行協定不平等の源を究明するとともに、忍びがたき実害について申し述べ、諸君の御賛成を得たいと存ずるのであります。(拍手)  そもそも、日米航空協定は、いまを去ること遠く、日本がいまだ占領下にありしころ、時の連合軍最高司令官が、パンアメリカン及びノースウエスト航空会社に、無条件にて日本への定期空路を許したに端を発しております。昭和二十七年四月締結平和条約第十三条に航空に関する特権規定されるに及んで、アメリカ航空会社の一方的有利な権益が確定して、ついに二十七年八月の日米航空協定となって今日に至ったのでありまして、占領支配下協定であるということは、疑いの余地のないところであります。  さて、社会の進歩に停滞はありません。一九五五年ごろから、世界各国は産業開発に力を注ぎ、特に宇宙開発の面では人類の世界観を大きく転換させたといえるのであります。航空開発もまた旧態を一変して、百数十人乗り以上の大型ジェット機に次いで、時速三千キロをこす超音速旅客機の開発も数年後と伝えられておりまして、今日の航空界の実情がこういう現状にあります以上、いまだ候補地もはっきりはしておりませんが、三千億円を投じて建設をする新東京国際空港も、この超音速旅客機を受け入れるためのものであります。ジェット機の開発は、世界を著しく時間的に短縮いたしましたので、世界各国間の政治経済、文化、観光を目的とする人たちの往来は、航空機利用に変わってまいりました。三十五年日米間の航空旅客は十四万三千人でありましたが、三十八年は二十五万五千人にふえ、日本人旅客も三十五年は三万三百五十一人でありましたが、三十八年一には五万四千二百九十二人で、約八〇%も増加しておるのであります。このうち二万三千五百人はニューヨーク行き、さらに大西洋を横断した数は一万二千人と推定され、まさに今昔の感に打たれるのであります。航空旅客の激増は、日米航空協定日本にとっていかに不利なものであるかということを数字ではっきり教えてくれました。  協定による双方の航空便をわかりやすく言いますと、日航便は、アメリカの西玄関口までを限って十一便で押えられておるのに対し、パンアメリカンノースウエストには、アメリカ大陸の航空旅客は、アメリカのどこからでも東京以遠に輸送ができる航路を二十九便も許しておるのであります。  この絶対的な条件は、経営上にひどい収入差をもたらしております。一九六三年度のパンアメリカンの純益は約六千万ドル、ノースウエストも一千万ドル以上の純益を出したと聞くのであります。一方、日本航空の国際線は、赤字の累積なのであります。  前に述べましたごとく、ニューヨークヘ向かう日本人は、三十八年中に二万三千五百人、大西洋を横断する者が一万二千人以上、こうなっているのでありますから、これらの日本人客が支払う旅費の額も六百万ドルをこえているのであります。三十九年以降は、OECD加盟等によりまして、二ューヨーク−欧州間往来の日本人は今後倍加することは必定であります。この日本人旅行者が支払う航空運賃は、これまたばく大な額にのぼることがいまから予想できるのであります。もしそれ、これが日本航空機によって輸送した場合には、赤字を解消し、外貨の保有と獲得の一石二鳥となるのでありますから、国際空路を担当する日本航空としてはもちろんのこと、国策上放置できない大問題であるといえるのであります。  以上によって明らかなごとく、日米航空協定の問題は、要約すれば三点あると考えます。  その一つは、国と国との協定は、すべて互恵平等の原則に基づき、これを相互に順守してこそ共存和平の世界が実現するのであります。わが国はこの民主主義より一段高い理念に徹しているのにもかかわらず、アメリカがこれを理解しようとしないのは、けだし征服者の態度というべきでありまして、協定以前の問題として、アメリカのすみやかな反省を求めるゆえんであります。(拍手)  次は、アメリカを横断して世界一周の日本航空路が拒否される上に、国際線を赤字におとしいれているのは現協定のゆえであります。日本の要望である世界一周航空路の開設による利益はきわめて大きいことが予想されるのでありまして、日本人が日航機を利用する、日航機を愛用するのと相まって、日航国際線が一そう経営成果を高めることも火を見るより明らかなのであります。アメリカの現行協定固執は、国際航空の発展を阻害する以外の何ものでもございません。  三つ目は、日本の持つ国際航空路の条件は絶対であるということであります。アジアにおいて日本を除外して国際航空路の中継点を求めること一は、今日のアジアの情勢上不可能でありますし、アジアにおいて日本の産業上の条件を無視することもできません。いわんや、協定廃棄してもなお予後効力と行政ベースの措置が残され、しかも、日本にとって実害なしとする現状におきましては、政府は自信を持って互恵平等の新協定実現に邁進すべきでありまして、ゆえなき気がねは卑屈と知らねばなりません。(拍手)  いまや世界航空界の前途は予断を許さない実情にあります。フランスは北京ルートを、イギリスもソ連、中共を経て東京ルートの折衝中と伝えられております。オランダはモスクワ−アムステルダム−カラチ・ルートの協定をもうすでに済ましたと報じられております。「航空時報」が、民間では日ソ、日中ルートの開設に積極的動きを見せているのであるから、この際、日米航空協定改定と並行して処理すべきであるということを提言しておりますが、まことに注目に値することばであろうと思うのでございます。  以上、本案に関する問題点の若干を取り上げましたが、いま私の胸中に去来するものは、自由民主党日本社会党民主社会党の三党を代表しまして日米航空協定改定促進に関する決議賛成討論を行なう光栄もさることながら、この決議が実現した際の意義の偉大さに静かに思いをいたすとき、感激の念を禁じ得ないのであります。(拍手)すなわち、現協定改定されることは、日本の被占領政策の一環の壁を破ることになるのでありまして、これによって国民の精神的対等感を強く認識させることになりますし、さらには悲願やみがたき沖縄や北方領土の返還に対しても、実現の希望や期待を新たにする情熱の盛り上がりも期して待つべきものがあると思うのであります。(拍手)  政府の格段の努力をもって新協定が結ばれるよう強く期待いたしまして、私の賛成討論を終わる次第であります。(拍手
  34. 船田中

    議長船田中君) これにて討論は終局いたしました。  採決いたします。  本案可決するに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  35. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、本案可決いたしました。  この際、外務大臣及び運輸大臣から発言を求められております。順次これを許します。外務大臣椎名悦三郎君。   〔国務大臣椎名悦三郎君登壇
  36. 椎名悦三郎

    ○国務大臣(椎名悦三郎君) 政府は、一九六一年及び一九六四年の二回にわたり、日本航空路線の延長を強く要求して米国政府交渉いたしましたが、米国側がニューヨーク以遠権利わが国に与えることを拒否したため、合意に達せず、昨年夏以来交渉は休会となっておる次第であります。その間、本年初頭、佐藤総理が訪米せられた際、ジョンソン大統領との間に、本件交渉についても、日米双方が受諾し得る公正な解決が得られるよう両国政府間で緊密な協議、協力をはかることが重要であることについて、意見の一致を見ております。このため、現在日米間で随時意見の交換を行なっており、米国政府部内におきましても種々検討を加えていると承知しておりますが、政府といたしましては、本決議の御趣旨を体して、なるべく早い機会に本件交渉を再開し、全国民の宿願を実現すべく一そうの努力を傾ける所存であります。(拍手
  37. 船田中

    議長船田中君) 運輸大臣松浦周太郎君。   〔国務大臣松浦周太郎君登壇
  38. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) ただいまの御決議に対しまして、所管省として所信の表明を申し上げます。  現行日米航空協定不平等を是正し、国民の宿願であるわが国航空企業による世界一周路線の実現をはかるため、昭和三十六年以降二回にわたり米国政府との間に交渉が行なわれてまいりましたが、いまだわが国要求がいれられないことはまことに遺憾に存じております。私といたしましては、現在中断されておる交渉をなるべく早い機会に再開し、ただいまの御決議の御趣旨に沿い、現行航空協定の破棄をも辞せずという強い決意を持って交渉に当たり、もってニューヨーク以遠権を獲得し、全国民の御期待に沿うことのできるよう全力を尽くす所存でございます。(拍手)      ————◇—————  赤城農林大臣沿岸漁業等振興法基づ昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度沿岸漁業等施策について並びに林業基本法基づ昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度林業施策についての発言
  39. 船田中

    議長船田中君) 農林大臣から、沿岸漁業等振興法基づ昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度沿岸漁業等施策について、また、林業基本法基づ昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度林業施策について発言を求められております。これを許します。農林大臣赤城宗徳君。   〔国務大臣赤城宗徳君登壇
  40. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 先般、国会に提出いたしました昭和三十九年度漁業の動向等に関する年次報告及び昭和四十年度において沿岸漁業等について講じようとする施策について、その概要を御説明いたします。  これらの報告及び文書は、沿岸漁業等振興法第七条の規定基づいて政府が毎年国会に提出するものの三十九年度分であります。  まず、昭和三十九年度漁業の動向等に関する年次報告について申し上げます。  この年次報告は、「第一部 漁業の動向に関する報告書」と、「第二部 沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」とに分かれております。第一部の「漁業の動向に関する報告書」におきましては、昭和三十八年における漁業の動向を説明いたしております。  その概要を申し上げます。  第一に、漁業生産について申し上げます。わが国経済の高度成長に伴い、水産物に対する需要は引き続き増大し、質的にも高級化しつつありますが、三十八年の漁獲高は、異常冷水等の影響もあって、約六百七十万トンと、前年よりわずかに減少いたしました。このため、水産物の価格は上昇し、水産物の輸入も、供給量全体から見れば、わずかでありますが、増加いたしました。わが国漁業生産は、三十六年までは沿岸漁業の停滞、中小漁業、その他の漁業の発展という傾向をとってまいりましたが、三十七年以降においては、沿岸漁業の生産量が増加し、漁業生産全体に占める比重が高くなってきていることが注目されるのであります。  第二に、漁業の就業者数と経営体数の動向について申し上げます。両者とも引き続き減少の度を強め、特に中小漁業の雇用者と経営体の減少が目立っております。また、沿岸漁業、中小漁業のいずれにおいても、比較的上層の経営が増加しているのに対し、下層の経営は減少し、漁業経営の階層構成が変わってきているのが目立っております。  第三に沿岸漁家経営の動向について申し上げます。漁業所得及び漁家所得は、水産物の価格の上昇にささえられて大幅に増加し、三十八年には前年よりそれぞれ一八%及び一五%の顕著な伸びを示しました。そのうち、養殖漁家の所得の伸びがやや停滞的であったのに対し、漁船漁家の所得が著しく増加したことが目立っております。しかし、所得額の絶対水準はなお低位にあります。また、無動力船を使用する経営階層、三トン未満の漁船を使用する経営階層、すなわち、零細規模の経営においては兼業の比重を高めておりますが、三トン以上の漁船を使用する上層経営は逆に専業化の傾向を強めております。  第四に、中小漁業経営の動向について申し上げます。中小漁業においては、水産物の価格の上昇等により漁業収入が増加したため、経営収支はかなり改善されたといえます。しかし、総じて物的生産性の伸びが停滞していること、カツオ・マグロ漁業等の業種において収益性が低下していること等に問題があるのであります。階層別に見ますと、上層の一部の経営を除いては、収益性は低く、また、労働条件の近代化もおくれております。すなわち、下層の経営では特に資本装備率や生産性が低く、中ないし上層の経営では自己資本が不十分なため、利子の負担が大きいという実情にあります。  第五に、漁業就業者の一人当たりの生産性は、前年より二三%増加し、その伸び率は、第二次、第三次産業就業者のそれもかなり上回りました。しかし、絶対水準ではなお低位にあり、特に沿岸漁業就業者の一人当たり生産性は、第二次、第三次産業の就業者のそれに比べて約六割の水準に達したにすぎません。  以上は第一部の概要であります。  次に、第二部の「沿岸漁業等について講じた施策に関する報告書」について申し上げます。これは、昭和三十八年度を中心とし、三十九年度にも触れつつ、政府沿岸漁業等について講じ施策を、おおむね沿岸漁業等振興法第三条の項目の分類に従って記述したものであります。  最後に、「昭和四十年度において沿岸漁業等について講じようとする施策」について、その概要を申し上げます。  この文書は、年次報告にかかる漁業の動向を考慮して、四十年度において政府沿岸漁業等について講じようとする施策を明らかにしたものであります。  最近における漁業の動向はただいま御説明したとおりでありますが、政府といたしましては、このような動向を考慮しまして、沿岸漁業等振興法に示されました沿岸漁業及び中小漁業についての施策の基本的方向にしたがって諸施策の推進をはかることといたしております。  四十年度において沿岸漁業等について講じようとする施策の重点といたしまして、  まず第一は、水産資源の維持増大につとめ、水産物の供給の増大と漁業生産の継続的発展をはかることであります。このため、沿岸漁場の改良造成、遠洋漁場の開発、海外漁業の育成等に特段の措置を講じますとともに、保護水面の管理、水質汚濁の防止等の対策を強化して、沿岸及び内水面における魚貝類の繁殖を保護し、また、引き続き、サケ・マスの人工ふ化放流、内水面魚類の増殖、沿岸魚類の稚魚の放流等を実施することといたしておるのであります。  第二は、漁業の生産基盤である漁港の整備を促進することにより、漁業生産の安定的発展をはかることであります。漁港の整備につきましては、事業量の拡大とともに、沿岸漁業の構造改善に資するための補助率の引き上げを行ない、また、新たに漁港関連道の整備等の措置を講じて、その促進につとめることとしております。  第三は、沿岸漁業及び中小漁業の近代化と合理化をはかることであります。沿岸漁業につきましては、構造改善事業を拡充実施いたしますとともに、新たに中小漁業について実態調査を行ない、これに基づいて業種別の振興対策を策定することといたしております。また、漁業経営の発展に大きな影響を及ぼす漁業金融につきましては、農林漁業金融公庫の融資ワクの拡大等を行なうほか、中小漁業融資保証制度について保険料率の引き下げ等の改善措置を講じ、沿岸及び中小漁業金融の円滑化をはかることといたしております。  第四は、水産物の流通及び加工対策を充実し、その供給の円滑化と漁業者の所得の安定をはかることであります。最近における流通及び消費形態の変化の動向にかんがみ、農山村に対する冷凍魚の普及、産地における魚体処理方法の改善等について新たに助成措置を講じますとともに、従来に引き続き流通及び加工施設の整備取引の合理化等につとめ、さらに水産加工業の実態に即応した適切な対策を講ずるため詳細な実態調査を行なうこととしておるのであります。  この文書におきましては、これらの昭和四十年度において講じようとする諸施策を、おおむね沿岸漁業振興法第三条の項目の分類に従って、農林省所管事項にとどまらず、各省所管事項を含め、沿岸漁業及び中小漁業に関する施策全般について記述いたしております。  以上、昭和三十九年度漁業の動向等に関する年次報告及び昭和四十年度において沿岸漁業等について講じようとする施策について、その概要を御説明いたした次第であります。(拍手)  引き続き、林業基本法第九条の規定基づきまして、昭和三十九年度林業の動向等に関する年次報告及び昭和四十年度において講じようとする林業施策について、同法制定後初めて報告書を国会に提出いたしましたが、以下、その概要を御説明いたします。  第一に、戦後、特に三十年以降を中心といたしまして、林産物の需給、林業経営の態様等、林業の動向について申し上げます。  まず、林産物の需要の動向について見ますと、戦後におけるわが国経済の高度成長に伴って、需要の増大と需要構造の変化を来たしております。すなわち、建築の増加、パルプ生産の進展等に伴う木材需要の増大と、坑木及び薪炭需要の激減であります。木材に対する需要は、経済の高度成長に伴い引き続き増加し、三十八年には、三十年の一・四倍に当たる約六千四百万立方メートルに達しております。これに対しまして、国内における木材生産の動向を見ますと、三十八年は、三十年の一・二倍に当たる約五千万立方メートルとなっており、伸び悩みの傾向を示しております。このような木材需要の増大と国内生産の伸び悩みを反映いたしまして、三十六年には木材価格の高騰を招き、その結果、米材、ソ連材等の外材輸入が急激に増加し、三十八年には外材輸入量はついに一千二百万立方メートルをこえ、木材総需要量の二〇%を上回ったのであります。御承知のとおり、わが国の森林は、国土の六八%にあたる約二千五百万ヘクタールという広大な面積を占めているのであります。しかし、その開発は必ずしも十分でなく、生産性の高い人工林は、全森林面積に対し二八%にすぎない現状であります。したがって、林業生産の増大をはかるためには、林道の開設及び造林を一段と推進する必要があるのであります。  次に、林業生産の主体である林業経営の態様について申し上げます。  わが国の林業生産を担当している経営体は、きわめて多様であります。すなわち、全国の森林の三〇%余りを占めている国有林をはじめとしまして、都道府県、市町村などの公有林、林家、会社などの私有林、さらには特殊な経営体である入り会い林野などがあります。これらにつきましては、それぞれ経営上の諸問題が存しているのでありますが、わが国の林業生産の大半をになっております私有林経営の状況について申し上げます。  私有林経営は主として約二百七十万戸の林家によって行なわれています。この経営規模はきわめて零細でありまして、五ヘクタール以下が全林家の九〇%を占め、その平均規模は二・四ヘクタールとなっております。このため、経営の基盤が脆弱であります。さきに申しましたとおり、林業生産の伸び悩みの原因は、林業生産の長期性など、林業の特殊性に基因するところも多いと思われますが、基本的には、生産基盤の未整備、規模の零細性、資本装備の低さなど、林業経営構造の近代化のおくれにあるものと思われます。したがって、林業生産の増大をはかり、あわせて林業経営の安定をはかるためには、林業構造の改善が必要となるのであります。  次に、林業生産のにない手である林業従事者について申し上げます。林家のうち九四%が農家であり、また、林業労働者の約八〇%は農民、特に山村の農民であります。この山村の農民の流出が近年著しくなってきておりまして、その結果、林業労働力はその不足とともに、質的劣弱化が進行し、林業労賃も上昇を見ております。したがって、今後林業の発展と林業従事者の地位の向上をはかるためには、労働環境の改善、労働条件の不利の是正が必要であります。  以上申し上げましたのが、戦後における林業の主要な動向であります。  第二に、「林業に関して講じた施策」について申し上げます。  これは戦後、特に三十年以降において、政府が林業振興上実施した主要な施策を、林業基本法の指向する新たな観点から整理して記述したものであります。  第三に、「昭和四十年度において講じようとする林業施策」について、その概要を申し上げます。  政府といたしましては、ただいま御説明しました林業の動向を考慮し、林業基本法に定められた基本的方向に従って、諸施策の推進をはかることといたしております。  四十年度において講じようとする林業施策の主要なものといたしましては、  まず第一は、林産物需要の動向に応ずるよう林業生産の増大及びその生産性の向上をはかることであります。このため、林業に関する基本計画を策定し、これに即応して、まずその生産基盤の整備拡充をはかるため、山村振興林道の補助率の引き上げ、農林漁業用揮発油税財源の身がわり林道事業の実施等、林道の整備拡充につとめるとともに、造林等の諸施策を推進することといたしております。  第二は、林業構造の改善を積極的に推進することであります。このため、三十九年度から林業構造改善事業促進対策を開始いたしましたが、本年度からこの事業を計画的かつ強力に実施するとともに、林業機械の導入、国有林野の積極的な活用、分収造林の促進、入り会い林野の近代化等の諸施策を講ずることといたしております。  第三は、林産物の需給の安定、流通の合理化等をはかるための施策を充実することであります。このため、林産物の需給及び価格の動向を把握する体制を整備し、流通の合理化及び外材輸入の適正、円滑化等の施策を進推することといたしております。  第四は、林業従事者の養成確保をはかることであります。このため、教育訓練の充実につとめ、林業従事者の養成確保をはかるとともに、林業労働力対策の実施、労働条件の改善、社会保障の拡充等、林業労働に従事する者の福祉の向上につとめることといたしております。  以上の諸施策に関連して、農林漁業金融公庫資金の各事業に対する融資ワクの拡大等、林業金融の充実をはかるとともに、山林所得に対する所得税の課税の特例等、林業に関する税制の改善を行なうことといたしております。  なお、この文書におきましては、農林省所管の事項にとどまらず、各省所管事項をも含め、林業に関する施策全般について記述いたしております。  以上、昭和三十九年度林業の動向等に関する年次報告及び昭和四十年度において講じようとする林業施策について、その概要を御説明いたした次第であります。(拍手)      ————◇—————  沿岸漁業等振興法基づ昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度沿岸漁業等施策についての発言に対する質疑
  41. 船田中

    議長船田中君) ただいまの発言に対して質疑の通告があります。順次これを許します。松井誠君。   〔松井誠君登壇
  42. 松井誠

    ○松井誠君 ただいま御報告になりました、いわゆる漁業白書に関し、佐藤総理はじめ関係閣僚に対し、社会党を代表して数点お尋ねをいたしたいと思います。  今回の白書は、昨年度第一回のそれに比べまして改善されてはおりますけれども、それにもかかわらず、依然としてやはりわれわれは根本的な不満を抱かざるを得ないのであります。それは、この白書が分析の焦点をはずしたために、日本漁業の真の苦悩を浮き彫りにすることができず、かえって、むしろ問題の所在をおおい隠しておるからであります。  日本漁業は、御承知のとおり、零細な沿岸漁業、中小漁業、あるいは国際的な大資本漁業と、規模の異なる漁業が並存する特殊な構造をなしております。そして国家権力は、これに対して、漁業制度という名において許可あるいは免許を通して介入し、漁業総生産の約九〇%がそれによって規制されておるのであります。  もともと白書の現状分析の役割りが、沿岸や中小漁業の振興政策を打ち立てるにあるとしますならば、当然この日本漁業の特殊な構造、各階層間の複雑な対立相克、その中で果たす漁業制度の役割り、そういうものに分析の焦点を合わすべきであったのであります。ところが白書は、この観点を全く欠いておるのであります。当然の結果として、分析は現象の平面的、羅列的な解説に終わり、その本質を究明し、その振興対策を立てるという肝心なところでほとんど沈黙してしまうので−あります。  そこで、まず私は、白書が沈黙したその最大の問題点、すなわち、日本漁業の二重構造の是正について、総理及び農林大臣にお伺いいたしたいと思います。  戦争によって壊滅的な打撃を受けた日本の大資本漁業は、国家の強力なバックアップによって急速に復活いたしました。それは、単に復興金融金庫や、あるいは開発銀行の融資を通してだけではなくて、漁業許可を圧倒的に大資本漁業に集中するという漁業制度の運用によってそれが可能になったのであります。かくして、資本金一億円以上の十三社のみで漁業生産の四〇%を直接あるいは間接に支配するに至りました。その頂点に立つ水産三社あるいは五社といわれる一握りの漁業独占資本は、許可制度によって守られた独占的な漁場の中で膨大な超過利潤を獲得し、そのおかげで、いま文字どおり七つの海に雄飛しておるのであります。  そして一方、全国二十五万世帯に及ぶ零細な沿岸漁民の状態はどうでございましょう。白書によりますと、昭和三十八年度の沿岸漁民の漁家所得が一五%の伸びを示し、他産業従事者との格差も改善されたと報告しております。しかし、それでもなおかつ全都市勤労者世帯に比べて三割も低く、しかも、その低い漁家所得の約四〇%は漁業外の兼業所得であること、また、漁業所得の伸びも、そのほとんどが水産物価格の上昇という不安定な要素によってささえられておるということを注目すべきでございましょう。しかし、最も重要なことは、この低所得の沿岸漁民の中に起きておる激しい階層分化の状況であります。沿岸漁民の中で漁船を持たない漁民、あるいはせいぜい無動力船という前近代的な生産手段によって生活をささえている漁民が、全体の三分の一近くを占めておりますけれども、その無動力船層の世帯当たり年間の漁業所得は十八万円、兼業所得が三十三万円、低い漁業所得の中で兼業化が急速に進んでおることを示すこの数字の中に、漁業外に締め出されまいとして必死にしがみついている漁民の姿があるのであります。そして、それ以下の漁船を使用しない漁民に至っては、漁業政策の対象ではないという意味でございましょうか、白書は分析の対象にさえもしていないのであります。  この日本の底辺ともいうべき沿岸漁民とその上にそびえ立つ漁業独占資本、まさに繁栄の中の貧困といわなければならないのであります。(拍手)ひずみ是正の政治がもしも本物であるならば、この典型的なピラミッド型の二重構造の矛盾を放置しておいてよいはずはございません。  われわれは、かねてから、大資本漁業の規制なくして沿岸中小漁業の振興はあり得ないと主張してまいりました。漁業においては、漁場と資源の拡大に対して自然的な制約が強いという漁業生産の実態だけからいっても、われわれの主張は当然の結論だと思うのであります。私は、総理及び農林大臣に対して、漁業政策の最大の眼目は、この二重構造の是正にあるとお考えになるかどうか、もし、そうとするならば、大資本漁業の規制は必然ではないか、御所見をお伺いいたしたいのであります。  次に、沿岸漁業について二点、農林大臣にお尋ねいたします。  その一は、沿岸漁業の中核としてどんな経営組織を育成しようとするのかということであります。  農業政策においては、とにもかくにも自立経営農家を中核とすることを明らかにしております。ところが、漁業においては、従来必ずしも明瞭ではなく、そのことがまた沿岸漁業政策混迷の一因をなしておったのであります。  元来、漁業は農業と異なり、土地私有に縛られないだけに、協業育成の条件はより整っているはずであります。われわれは零細漁民を切り捨てず、しかも、生産力を発展させる組織形態として、民主的な漁業協同組合を中心とする協業方式を提唱してまいりました。しかるに、最近政府においては、個別経営としての中核的漁家を育成するという考え方が固まりつつあるやに見えるのであります。この考え方は、中期経済計画においては、すでに明瞭に打ち出されておりますけれども、白書においても、使用漁船三トンないし五トンの漁家が、主として家族労働に依存し、かつ漁業所得のみで生計をまかなえるところがら、これを中核的漁家と規定して、この考え方を示しておるのであります。  しかしながら、この考え方は、すでに農業において破産宣告を受けたにひとしい自立経営農家方式の漁業版ともいうべきものでありまして、われわれの断じて容認し得ないところであります。それは、それ以下の規模の漁民を漁業外に無理に排出する切り捨て政策に通ずるばかりではございません。農業におけると同じように、漁業においても自立可能な経営規模は常に上昇しつつあるのでございまして、このことは白書自身も認めておるところであります。にもかかわらず、中核的漁家の規模を固定的に考えるとすれば、それは単なる切り捨てに通ずるばかりでなく、生き残った沿岸漁民を沿岸に縛りつけておくものだといわなければならないのであります。農業の苦い経験に照らしまして、大臣の御意見をお伺いいたしたいのであります。  第二点は、養殖漁業の問題であります。  沿岸における漁船漁業は、漁業制度の壁が主要な原因となって、いまだに過剰人口に悩んでおります。そこで政府は、この沿岸にあふれる漁民を沿岸で消化するための一つの方策として、最近、とる漁業から育てる漁業へというスローガンのもとに、養殖漁業をはなばなしく登場させたのであります。養殖漁業は、政府の政策によって斜陽化した漁船漁業にかわって、漁業構造改善事業の中心にすわったのであります。これは、漁業における選択的拡大政策ということができるでございましょう。  ところが、この養殖漁業も、白書自身が認めておるように、昭和三十六年以来所得の伸びは鈍化し始め、沿岸漁業のホープに早くも暗い影がさし始めておるのであります。原因はいろいろございます。たとえば、白書によれば、カキ養殖は生産が一八%伸びたにかかわらず、いや、むしろ、不幸にも伸びたがゆえに価格は下落し、所得はかえって五%の減少となったのであります。また、ノリ養殖は、いま韓国ノリの年間五億枚にのぼる大量輸入の声におびえております。水産王国といわれる日本の水産物輸入が、自由化を契機として昭和三十八年には文字どおり倍増しておるという事実、そして、それがまたほとんど沿岸漁業の漁獲物と競合するという事実が、これらの不安に拍車をかけておるのであります。農産物の選択的拡大政策とまさに同じ運命が漁業にも待っておるのであります。  沿岸漁民は、失敗を二度繰り返す力はございません。この漁民のだめに、責任を持って進めておるこの養殖漁業を取り巻く多くの不安をいかにして除去しようとするのか、特に、最近行なわれた日韓貿易協定に伴い、韓国水産物の輸入に対し、いかにして日本沿岸漁業を守るのか、具体的にして責任のある御答弁を期待いたすものであります。  最後に、漁業労働者の問題について、農林、運輸、労働の各大臣にお伺いいたしたいと思います。  中小漁業においては、使用漁船トン数十トンないし三十トンの経営体がその過半数を占めておりますが、そこに働く労働者の賃金は、白書の報告するところによれば年間二十三万円、同規模の製造業の労働者に比べてはるかに低いのであります。そればかりでなく、賃金形態も、全歩合制という漁獲高だけによって賃金額が決定される古い形態が、中小漁業の三割を占めておるのであります。また、賃金のみならず、他の労働条件や労働環境も他産業に比べてきわめて劣悪であることもまた周知の事実であります。いまこれらを早急に改善することは、ただに人間尊重のたてまえから当然であるばかりでなく、中小漁業当面の最大の課題ともいうべき労力不足を解消するためにもきわめて必要であります。  そこでお伺いをいたしたいと思います。漁業法によれば、労働法規を順守しない経営者には漁業許可を与えぬことを明記してあり、昭和三十七年、漁業審議の際、附帯決議にもうたわれておりますけれども、その運用の実態は一体どうなっておりましょうか。また、一九五九年に成立いたしました漁業労働者に関するILO条約百十二、百十三、百十四の各条約は、まだ批准を見ておりませんけれども、批准の意思があるかどうか、あるいはまた、漁船労働者に対する船員法の適用範囲をさらに拡大するとともに、労働保護法規除外の規定を廃止する意思があるかどうか、その他、労働条件や環境改善のためにいかなる具体的な措置をとるおつもりか、関係各大臣の詳細な御答弁をお伺いして質問を終わりたいと思います。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  43. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  さすがに、松井さんは佐渡の御出身で、漁業についてはたいへん専門のようでいらっしゃいます。御承知のように、漁業の形態につきましても、沿岸漁業あるいは中小漁業あるいは遠洋漁業等の表現であらわしておりますように、その形態によりまして必ずしも大資本を要するものばかりではないのであります。したがいまして、その資本だけから見まして、大資本、あるいは小資本、こういうので区別することもいかがかと思います。しかし、御指摘のように、いわゆる沿岸漁業や中小漁業が、大資本の漁業と比べ、また他産業と比べて格差のあることは、私どももこれを認めるにやぶさかでございません。かるがゆえに、この格差をなくするために近代化、合理化等を推進していく、あるいは新しい漁場をつくるとか、こういうことをいろいろやっておるわけであります。私が申し上げるまでもなく、これらの漁業相互に絶えず競争するばかりではなく、その活動の分野をそれぞれ分けておりまして、同時にまた、相互に協調してそして事業自身を繁栄、育成していく、こういうような立場にあることも見のがすことができないと思います。したがいまして、農林省におきましては、これらの特性を生かして、そうしてお互いに活動分野を侵すことなく、また、相互に協調し得るような許可制の運用によりまして、漁業の健全なる発達を期しておるような次第でございます。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳君登壇
  44. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 二重構造の是正につきましては、私どもも、御意見のとおりぜひこれを実現したいと骨折っておる次第でございます。ただ、中小漁業とか沿岸漁業、こういうものにはおのおのの分野があります。あるいはまた協調すべき点がございます。大資本の漁業が必ずしも、漁場等の関係がありますので、中小漁業あるいは沿岸漁業を圧迫している、こういうふうには私どもは一がいには考えておりません。しかし、その所得の上におきましてたいへんな格差がある、こういうことは十分是正していかなければならない問題であると思います。そのために、中小漁業あるいは沿岸漁業等につきましては、御承知のように、沿岸漁業の構造改善等の事業の推進とか、あるいは漁業金融の充実とか、こういうことによりまして中小漁業等の振興対策を講じている次第でございます。同時に、大資本と中小あるいは沿岸漁業との格差の是正等もありまして、大資本漁業をばっこさせるということばはどうかと思いますが、そう放置ばかりはしておりませんので、漁業の許認可制度等を活用いたしまして、大資本と中小あるいは沿岸漁業との調整をはかっていく、こういうふうに考えております。  それから、中核的の漁家経営を育成するというよりは協業でやっていったほうがいいのではないか、こういうような御説であります。私どもは、自然の形態である家族労働力を中心としたかなり高所得をあげる中核的な漁家経営というものを強化していく、こういうことを中心といたしておりますが、もちろん、その中には脱落をするというようなものもございます。そういうもの等を含めて、協業を進めていかなくてはならない。あるいは養殖——まかぬ種ははえないではないが、漁業におきましてもやはり養殖漁家というものの育成につとめる、こういう方針でございますので、御説のとおり、協業等につきましても十分配慮いたしております。  第三に、養殖でございますが、いま申し上げましたように、漁業も養殖のほうに相当力を入れなければならぬことになっております。御指摘のカキ等につきましても、非常に生産がふえまして、需要に見合って生産するというような調整が必要でございます。あるいはハマチ等につきましても、相当種苗の生産者と養殖業者と自主的な調整をするというようなことを考えなければなりませんし、また、えさでございますが、餌料の入手困難に対しましても、あるいは冷蔵庫の設置、あるいは予約取引の制度、あるいは人工餌料の開発、こういうところに力を入れておるわけでございます。でございますので、養殖につきましては、調整をしながらさらに進めていくべき漁業形態だ、こう思います。  それに関連しまして、ノリの輸入量等につきましてのお話がございました。ノリの輸入量ばかりでなく、あるいはブリ、あるいはするめ、こういう韓国の水産物の輸入等につきましては、日本漁業を阻害することのないように、十分な配慮のもとに輸入をする、こういうことをいままでもやっておりましたが、これからも、もしふやすということでありますれば、そういう配慮の基礎に立ってやっていきたいと思います。労働関係でございますが、漁業法による労働法規の実施状況、あるいはどういうふうにこれから考えるかということでございます。  労働関係の法令につきましては、船員法とか、船舶職員法とか、船舶安全法、こういうものがありますが、これらの法律を順守する精神を著しく欠いておる者、こういう者に対しましては、従来とも漁業法の規定を厳格に適用してまいったのでございますが、今後ともこれらの規定を厳格に適用してまいりたい。また、労働関係法令違反者、こういう者に対しましては、近く許可をやりかえますそういう許可の際に、優先順位の判定等にあたりまして、十分こういうものを考慮に入れて許可をしていく、こういう態度で進みたいと思います。  その他の労働関係は、他の閣僚から御答弁いたします。(拍手)   〔国務大臣石田博英君登壇
  45. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 私に対する御質問は、漁業に従事している勤労者諸君の福祉関係の向上、労働条件の向上、それからILO条約の批准の問題であると承知いたしておりますが、前段につきましては、確かに御指摘のとおり問題が多いと存じます。その改善につきまして、関係各省と協議の上、努力をいたしたいと存じております。  また、ILO百十二、十三、十四の条約、これは現在わが国の船員法あるいは基準法は、おおむねこの条約に合っておるのでございます。しかしながら、幾つかの問題が残っております。たとえば百十二に対しましては、条約では十四歳以上の人しか乗船できない規定になっておりますが、わが国の基準法は十二歳以上に相なっております。また、同居の家族は、わが国におきましては適用除外されているのでありますが、この条約では、同居の家族も適用しなければならなくなっております。そういうように、他の条約につきましても幾つかの問題が残っているのでありまして、それぞれの歴史的な経過もありまして、にわかに改めてまいるという点については困難なこともございますが、強力な行政指導によりまして、条約の企図する効果をあげてまいるように努力をし、その後において条件を整えて、できる限り早く批准に進みたいと思っておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣松浦周太郎君登壇
  46. 松浦周太郎

    ○国務大臣(松浦周太郎君) 私に対する御質問は、船員法の適用範囲の拡大をはかる考えはないかということでございます。  漁船員に対する船員法の適用については、昭和三十七年、船員法改正について、従来からの船員法の適用があった船員と同様な労働を行なっている二十トン以上三十トン未満の漁船の船員等に対しては、新たに船員法を適用することとし、船員法の適用のない船員は労働基準法が適用されており、現在のところ、船員法の適用範囲を拡大する必要はないと考えております。  また、漁船員に対する労働保護法の関係あるいは適用除外規定の廃止を考えることはないかということでございますが、労働保護法のうち、労働時間等に関する規定は、漁船員に対しては適用が除外されております。これは、漁業においては、労働時間の規定を設けることは著しく困難であることに基因しております。しかし、現在中央労働委員会においては漁船員の労働時間について審議が行なわれておるわけでありますので、その結論を待って所要の措置を講じたいと思っておる次第でございます。(拍手)      ————◇—————  林業基本法基づ昭和三十九年度年次報告及び昭和四十年度林業施策についての発言に対する質疑
  47. 船田中

    議長船田中君) 森義視君。   〔森義視君登壇
  48. 森義視

    ○森義視君 先ほど報告されました林業の動向に関する年次報告、いわゆる林業白書、並びに昭和四十年度において講じようとする林業施策につきまして、私は、日本社会党を代表して、主要な問題点について総理並びに関係大臣の所信をたださんとするものであります。(拍手)  わが国の山林原野は、国土総面積の六八%を占め、EEC六カ国の総林野面積とひとしい世界でも屈指の森林国であるにもかかわりませず、その有効かつ高度な活用に対する政治施策の適切を欠くため、最近の経済成長に伴う木材需要の急増に対応できないのみか、逆に生産が停滞し、石油、綿花に次ぐ年間四億ドル以上に及ぶ外材の輸入を仰いでやっと需給のバランスを合わせさらに今後一そう外材への依存度を高める傾向にあることは、国民経済的に見て、貿易収支の上からも、また国内資源の高度利用の見地からいっても、きわめて大きな問題といわざるを得ないと思います。  政府は、かかる事態に対処するため、おそまきながら去る第四十六回国会において林業基本法を制定し、従来の資源偏重政策を改め、新たに経済的側面を重視した政策の推進をはかることにより、林業を産業的見地からとらえようとして、今日その資料としてこの白書を提出し、わが国林業が現在当面している課題を明らかにしようとしたのでありますが、その内容は単なる事象の羅列にとどまり、わが国林業のみすぼらしさを示しただけで、そのよって来たる原因については何ら明らかにしようとせず、加うるに、開放体制下において当面する林業のビジョンを国民の前に示すという意欲が全くうかがわれないのは、まことに残念なことであります。(拍手)  そこで、私は、まず最初に総理にお尋ねいたします。  わが国林政の基調は、さきに述べましたとおり、林業基本法にのっとり、産業として自立する基盤を整備することにその施策を指向するとしながら、現実には、白書その他施策に見られるとおり、外材の無定見な輸入、労働力の流出等、およそ当初の目標と異なる事象があらわれております。これらの実情に対し、総理は、林業を国民経済発展のためどのように推進されようとするのか、その所信を明らかにしていただきたいわけでございます。  次に、農林大臣並びに通産大臣にお尋ねいたします。  わが国の林業が、膨大な森林資源を持ちながら、拡大する需要に対応できない要因として、白書は、生産基盤の未整備、資本装備の低さ、経営規模の零細性など、構造的な特質に基本的な要因があると指摘しておられますが、これらの要因を克服するためにどのような具体策を持っておられるのか。また、これらの要因を克服して国内産木材で需給のバランスをとれるのはいつごろと考えておられるのか、まず承りたいと思います。  その答えを正しく出すためには、当然需給の見通しと国内産木材の自給率を策定した上で、その自給率を基準にして必要な諸施策、たとえば、まず生産を確保するための価格をどうとらえるか、また林道の開発をどう推し進めるか、造林をどのように推進するのか、労働力の確保をどうするか、あるいは外材の輸入量を幾らに押えるか等の施策が出てこなければならないと考えますが、白書はこれら政策の基準となる自給率の問題について全く触れておりません。それでは無定見な外材の輸入を認めることになりまして、かつてイギリスが植民地材の輸入に依存して国内林業政策を誤ったためにおかした失敗を繰り返すことにならないのか。現に、無計画な外材の輸入が国内木材市場を圧迫し、流通秩序を混乱させ、林業家の生産意欲を減退さす結果となっており、政府のてこ入れで生産基盤を整備いたしましても、国内材の市場が失われ、林業に対する魅力が失われるという結果を招かないのかどうか。具体的には、最近のように国内材と用途を同じくする米材、ソ連材の輸入の激増により、製材業者がこれらの外材を対象として、従来の山元型工場から臨海型工場の新設拡充に乗り出し、資本の新たな移動が行なわれ、いまや製材工業は再編の段階を迎えているといわれておりますが、その再編が終わってしまった段階で林業の生産基盤の整備が行なわれましても、内地材を受け入れる体制が失われている状態では、林業が企業としての意義を失うと思うがどうか。また、わが国の製材工場は、この再編の過程で外材工場に転換あるいは新設することのできない零細工場が、原木高、製品安の中で最近続々と倒産を続けておりますが、その実情と対策についてもあわせて承りたいと思います。  さらに、外材対策について、白書は米材、南洋材、ソ連材に対する考え方が全く同一視されておりますが、貿易政策という視点、国内の産業政策の視点から、これを正しくとらえる必要があると考えます。たとえば、米材はドルの流失になるし、製材で入ってくるので、極力これを押えるとか、南洋材は後進国対策として輸入の増大をはかるとか、あるいはソ連材についてはバーター貿易という立場からどうするとか、少なくとも国際経済立場から問題をとらえる必要があると思います。ところが、近々五カ年間の外材の輸入の動向を資料によって見ますと、米材が一番大きく伸びて七・五倍、ソ連材がこれに次いで二・五倍、南洋材すなわちラワン材は一・七倍しか伸びておりません。このことはわが国の外材政策が全く無定見である証拠であり、しかも、用途において国内産木材と競合するソ連材あるいは米材の輸入増加は、いわゆる外材インパクトとして作用しているが、今後の外材対策についてどのように考えておられるのか、承りたいと思います。  次に、国有林野問題について、総理、大蔵、農林各大臣にお尋ねいたします。  白書は、国有林野事業の概要について簡単に経過を述べているにとどまり、当面の重要事項である国有林経営のあり方とその役割りについては全く言及せずに、近く中央森林審議会の答申が出されるので、その答申の趣旨を尊重して、国有林野事業運営の抜本的対策を講ずることとしている、このように述べておりますが、すでに去る三月三十一日、答申が出されておりますので、この答申にかかる政府の態度について、以下お尋ねしたいと思います。  その第一は、政府はこの答申をいつごろまでに検討し、具体化施策はいつごろ出されるおつもりか。さらに、検討するための機関の設置や構成等をどのように考えておられるのか。特にこの答申は組織等を含めてかなり思い切った考え方を打ち出しておりますが、これらが具体的に実現されるとなれば、国有林労働者を含め、関係者等に重大な影響をもたらすものと考えますが、今後、組織、労働問題等の検討について、労働者代表はもちろん、関係者の意見を聞く用意があるかどうか。  その第二番目は、この答申は徹底した企業性の追求を基本的なねらいとし、治山治水等、行政協力が国有林野事業の企業的運営の範囲を越える場合は、政府は何らかの財政的措置を講ずる必要があるとして、従来国有林野事業の負担で実施してきたことを、公共的事業についてはこれを一般財政資金によるよう勧告しておりますが、大蔵大臣はこれについてどう考えるか。また、国有林野事業によってもたらされた資金をできるだけ多く国家財政に寄与させるよう勧告しておりますが、これは十九世紀のドイツ官房学の思想であって、現在の、山の収入は山に返すという国有林野事業特別会計の精神にもとることとなると思われるが、これらをあわせて大蔵大臣の意見を承りたいと思います。  その第三は、答申の中からはとうてい考えられないことではございますが、国有林を地元へ開放せよという運動が執拗に続けられております。政府のこれに対する態度もきわめてあいまいでございますので、この際、総理から直接国有林の開放について明確な所信を承りたい。  次に、林業労働力の確保について、農林、労働両大臣にお尋ねいたします。  わが国の林業は、拡大する需要に対応するための生産増強を至上課題としておりますが、生産のにない手である労働力が最近のごとくどんどんと都市に流出し、特に青年労働者が山村に住みつかない状況のもとでは、労働力の老化をもたらし、いかなる施策も実を結ばないことは言うまでもありません。白書の中で明らかにしている産業別就業人口の推移によりますと、昭和三十年五十六万人の林業労働者が、三十八年には三十七万人に激減しております。このような傾向は、現状のまま放置すればさらに深刻の度を深めることが予測されるにもかかわりませず、白書では、山村の自然的、経済的、社会的諸条件が他の地域に比して劣悪である限り、労働力の確保には限界があると思うとし、このような確保対策について全く無策ぶりを告白していることは、まことに無責任な態度といわざるを得ないと思います。林業基本法は、その第十九条において、「国は、林業労働に従事する者の福祉の向上、養成及び確保を図るため、就業の促進、雇用の安定、労働条件の改善、社会保障の拡充、職業訓練の事業の充実等必要な施策を講ずる」と、国の責任を明らかにしておりますが、このような事態の中で一体どのような施策を講じたのか、また現在講じようとしているのか、具体的に両大臣から御答弁を願いたい。  国土保全、治山治水等公共的使命と、木材の円滑な供給という経済的使命をになって、文化から隔絶された山村で災害の脅威にさらされながら重労働に従事している山林労働者が、都市の一般営利企業で働いている労働者との間に、社会保障等労働条件の面であまりにも差別的な取り扱いを受けている矛盾をすみやかに解消することを強く要望いたしまして、質問を終わる次第でございます。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作君登壇
  49. 佐藤榮作

    内閣総理大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。  わが国林政のあり方は、林業基本法の示すところであります。これは別に私がつけ加えなくてもいいと思います。ただ、この際に明らかにしておきたいと思いますのは、外材が非常にたくさん入ってきた。これは、御承知のように、わが国経済が短期間に非常な高度の経済成長をした、そして木材の需要が非常に高まった、そのために、国内生産だけではこれに流動的に応ずることができない、そういうような実情のもとにおいて外材が入ってまいったのでございます。私どもも、本来、お説のように、外材に依存するような考え方は毛頭ございません。国内の自給度を高める、そういう方法でありたいと思います。だからこそ、いわゆる森林資源につきましても、基本的計画を立て、また長期の需給計画を立てて、これに応ずるような方法でその生産計画を進めていくことにしたい、かように私ども考えております。それで、生産対策を講ずると同時に、構造改善事業にも積極的な意図を持っておるわけであります。これらは、先ほど御指摘になりました林業基本法の示すところでございます。  次に、国有林野の開放の問題についてのお尋ねでございます。国有林野の開放、これは開放ということばを使われたので、必ずしも払い下げを意味するものだとは私思いませんが、いわゆる農業構造改善あるいは林業構造改善等について、必要な場合には、これらについても十分慎重に考え、対処すべきだ、かように私は思います。本来から申しますと、国有林野は、国土の保全や、あるいは林業総生産の増加、またその他にもいろいろ重要な使命を持っておると思います。したがいまして、国有林野自身が無条件で開放されるというものではないと思います。十分国有林野が適正な管理運用によりまして本来の効用を発揮するようにすべきものだ、かように私は考えております。したがいまして、先ほど冒頭に申しましたように、開放自身は、払い下げという場合にはなお一そう慎重に私ども考えてまいりますが、その他の場合におきましても、特別の国有財産についての制限を加えるということでありますから、これは慎重に善処してまいるという考えでございます。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳君登壇
  50. 赤城宗徳

    ○国務大臣(赤城宗徳君) 木材の需要が非常に多くなった、それに対応して供給が不十分だ、御指摘のとおりであります。その理由等につきましては、いま総理から申し上げましたように、経済の成長に木材の供給が間に合わぬ、こういう状況でございます。でございますので、これは短日月にその供給を増加するというわけにはまいりませんが、何といたしましても、森林資源の基盤の整備、あるいは資本装備の近代化とか、あるいはことしから始まりました経営規模の拡大等による構造の改善、こういうことでございますが、さしあたりといたしまして、林道網を相当張り詰めるといいますか、林道網をふやしていこう、こういうことで、御承知のとおり、各種の林道、あるいは山村振興林道、あるいは御審議を願っておりますところのいわゆるスーパー林道等によりまして、この基盤を整備して供給を増していくということにつとめております。  なお、そういう面で自給率が非常に低い、輸入が非常に多い、こういうことでございますので、林業基本法もおかげで昨年できました。その基本計画に従って需給の見通しをつけまして、その見通しのもとに輸入等も計画的にいたしたい。現在におきましても無計画の輸入をいたしておるわけではございませんで、需給の見通しに応じて輸入をするように指導はいたしておりますが、何といたしましても輸入が相当ふえておる、こういうことは避けるような方向で自給率を増していくということにいたしたいと思います。  次に、過日の中央森林審議会からの答申のあった国有林野の経営のあり方、これにつきましていつごろ実施の具体策を講ずるのか、こういうことであります。これらの答申は、いずれも国有林野事業の運営上の重要な問題でありますので、早急に検討の上、逐次所要の改善措置を講じていきたいと考えます。この場合に、組織、機構等の具体的事項に関しましては、成案を得次第広く学識経験者の意見を聞くことにいたしております。  国有林野の問題につきまして、利益が出ました場合に、一般会計へ繰り入れております。これを林業振興のための財産として使用すべきではないか。事実はそういうふうに使っております。しかし、国有林野は国民の財産でありますので、国民の財産からあがった利益というものは、やはり国民の税金が減るような形で、利益があがったものを一般会計において国民負担軽減のほうへ回すということも一つの大きな考え方だと思います。しかし、それほどの額ではございませんので、いま林業振興の方向に事実上は使っておる、こういうのが実態でございます。  林業労働者に対する対策、これにつきましては他の閣僚からも答弁があるはずでございますが、本年度から実施しております林業構造改善事業及び林業労働力対策等の施策を通じまして、労働環境の整備改善、就業の促進等をはかることといたしております。なお、各種の社会保障制度の拡充につきましては、労働省等関係各省との連絡を密にいたしまして改善措置を進めることにいたしております。また、林業労働災害防止につきましても、すでに設立を見ておりまする林業労働災害防止協会に対する指導を強化すること等によりまして、一そうつとめていきたいと考えております。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇
  51. 田中角榮

    ○国務大臣(田中角榮君) 私からお答えをいたすものは二点でございます。  その第一点は、去る三月三十一日に出された中央森林審議会の答申、及びただいま農林大臣からお話がございましたが、非収益事業に対する負担の問題でございます。この答申は出されたばかりでございまして、現在種々検討中のものであり、確定的な意見を申し上げられる段階にはございません。とにかく地元に対する行政的要請による非収益事業という費用につきましては、その事業の性質に応じまして一般会計なり国有林野特別会計なりが負担すべきものであるという考え方でございます。しかして、企業としての国有林野特別会計の収益全部を地元に還元するというお考えには、遺憾ながら賛成いたしません。  第二点は、今後の国有林野のあり方についてでございますが、財政上の見地のほか、経営上の見地あるいは国有林野事業の果たすべき公共的使命等、総合的な見地から慎重に検討すべきものと考えます。(拍手)   〔国務大臣櫻内義雄君登壇
  52. 櫻内義雄

    ○国務大臣(櫻内義雄君) 外材輸入について御意見でございましたが、通産省としてその御趣旨は十分尊重したいと思いますが、南洋材、米材、ソ連材と、それぞれの使途に応じてコマーシャルベースで輸入をしておるのが現状でございまして、米材を南洋材に振りかえることは、材質上困難だと存じます。(拍手)   〔国務大臣石田博英君登壇
  53. 石田博英

    ○国務大臣(石田博英君) 林業労働力が漸次老齢化し、また非常に減少しておるのは、御指摘のとおりでありまして、この改善のためには、まず労働環境の整備、雇用関係の近代化、労働条件の向上等、関係各省と協力をいたしまして努力をいたしたいと考えております。(拍手
  54. 船田中

    議長船田中君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  55. 船田中

    議長船田中君) 本日は、これにて散会いたします。    午後四時一分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         外 務 大 臣 椎名悦三郎君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         文 部 大 臣 愛知 揆一君         厚 生 大 臣 神田  博君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         通商産業大臣  櫻内 義雄君         運 輸 大 臣 松浦周太郎君         労 働 大 臣 石田 博英君         建 設 大 臣 小山 長規君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君         内閣法制次長  吉國 一郎君      ————◇—————