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安井吉典君 ただいま御
説明を受けましたいわゆる
地方財政白書は、
地方財政の新しい
危機にある
実態を、なるほどそれによって知ることができるわけでありますが、その真の
原因は何か、またそれならば、どうすればよいかについては、何らの解明がないのであります。私は、
日本社会党を代表し、以下、
政府に対し、若干の質問をいたしたいと思います。
まず最初に、
政府の御
見解を特に伺っておきたい問題があります。
最近、
東京都議会で
議長選挙をめぐる
贈収賄事件があり、
現職議長を含め
自民党議員九名が逮捕される不祥事が起きました。もっとも、
東京だけでなく市長の職を一千万円で取引した大月市長問題をはじめ、各地で
地方自治体の住民に背を向けた
不正事件が起きていることはきわめて遺憾であります。(
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東京都議会の
事件の
原因は、
議長の職の
たらい回しに始まっております。全国的に
地方議会で、
地方自治法の
規定を無視した
交代制の慣行が意外に多いようでありますので、
自治大臣は、この際、
議長職の権威に関しもっとはっきりした
見解を示し、指導を行なうべきであると思うがどうでしょうか。(
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私はさらに、
佐藤総理に伺いたい。
新聞で、ある作家は怒りを込めてこういっております。「
自民党の
総裁選挙で数億の金が動くといわれる。それがなぜか取り締まりの対象にならない。
都議会の
自民党議員が
議長選挙でそれをまねしても不自然でない。だからまず、政治の大もとを正していかなければならない。」こういっているのであります。(
拍手)また、ほかの
新聞では、「
自民党の一部
都議会議員の中には、いまでも、党内の
予備選挙の段階でこれっぽっ
ちの金が動いたからといってなぜ大騒ぎするのだ。
自民党の
総裁選挙なんかもっとひどいと私見を振りかざす者がいる。」と、
新聞は率直に伝えているのであります。(
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佐藤総理は、私は古いことは言いませんが、
地方がお手本としております昨年七月の問題の
自民党総裁選挙をあなた自身がおやりになっているのですから、私はこのことに関し、
総理みずからの御
見解をぜひお聞かせ願いたいと思います。(
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さて、三十八年度
地方財政の分析の結果、
白書は、
地方税の
伸びは鈍化する一方、
物価騰貴のため
人件費、
扶助費等の
義務的経費の
増加、国の施策としての
国庫補助公共事業費の
増加のため
歳出規模の拡大が著しく、
財政収支は悪化し、
財政構造の
弾力性が減少し
赤字が増大したことを指摘いたしております。
たとえば、
地方の
人件費は
歳出決算額の三六・二%に増大しており、この比率は特に都道府県において高く、
一般財源に占める
人件費の
割合は全国平均が五二・五%に及んでおり、県の予算は、職員の
給料を払い、国の押しつけ仕事をしたら、あとは本来の自主的な住民福祉のための仕事の予算はゼロにひとしいということであります。一方、国の予算での
人件費は一割そこそこで、そこで組まれた
事業予算を
地方の
人件費で実施させているのであり、いわば県庁や市役所は、中央
政府の何々県支所、何々市出張所といっていいような
実態であり、住民の創意と
責任を基調とすべき
地方自治本来の姿は全くじゅうりんされているといわねばなりません。(
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国の仕事と
地方の仕事とけじめをはっきりつけよという声はきわめて高く、国と
地方の事務再配分について、
さきに臨事行政調査会の答申もあり、
地方制度調査会での検討では、すでに労働、厚生などにつき一部をまとめ九月ころには正式答申の予定と聞くが、問題は答申を受けての
政府の態度であります。なわ張り根性旺盛な官僚機構の中の自治省と関係省との折衝にまかせておいては、何一つ解決できません。事務再配分のための強力な
総理直轄の行政機関を設け、実施に当たるのでなければ成功できないと思うが、
佐藤総理の率直なお考えを伺いたいのであります。(
拍手)
次に、
地方税など
地方の固有財源の
伸び悩みの問題でありますが、三十八年度
決算では、
地方交付税をもらわなくてもやっていけるレベル以上のいわゆる不交付
団体はただの四・七%しかなくなってしまいました。町村の場合、ごく少ないのはいたし方ないといたしましても、四十六都道府県中四都府県のみ、七大都市では二市のみ、五百四十七市中六十六市のみという現状は、
財政の
中心である
地方税が少な過ぎることを
意味していると思うのであります。私は、都道府県と市の少なくも半数以上が不交付
団体となり、
地方税だけでまかなうところまでいかなければ、その名に値する
地方自治の確立はないと思います。
そこで、私の主張したいことは、国と
地方との事務再配分とも関連させつつ、また、国民に新たな税負担をかけることを避けつつ、国税の一部を
地方税に移譲し、
地方の基幹的な自主財源を充実強化する、これにより都市部の自治体の財源が充実すれば、農山漁村部の自治体には
地方交付税の濃密な配分が可能となり、なお、右の
措置により、現行の補助金
制度についても、整理統合の抜本的
措置を講ずる。以上の私の主張に対し、
政府のお考えはどうか、大蔵、自治両大臣のお答えを願いたいと思います。
なお、昨年税制調査会に、自治省が国税のうち二千八百億円を
地方に移す試案を出しておるわけでありますが、これについて大蔵省ではどのような
見解をお持ちか、あわせてお尋ねを申し上げたいのであります。
なお、
地方自治体の側にも
財政の放漫な運営や、むだな
支出がなくはありません。しかしながら、
政府は、
地方財政法の、国は
地方に対し、当然の国の仕事の
経費を負担させてはならない、あるいは、国の負担金、補助金等の
支出金は、その事務を行なうのに必要かつ十分な金額を基礎として算定しなければならないという
規定に違反し、実に八百六十五億円にのぼる超過負担を
地方にさせておるのであります。
政府みずからが
法律違反を犯していては
地方を戒める
資格なしといわざるを得ないのでありますが、大蔵大臣の超過負担解消のためのお答えを願いたいと思います。
地方自治体で
赤字が増大し、
破産的な
財政状態のものが再び
増加する
傾向にあります。その中で工業開発に狂奔する都市
財政の悪化が目立っております。工業化のための先行投資や、都市構造の激変のため
支出が膨大となり、たとえば新産都市のチャンピオンとされておりました瀬戸内海のK市では、十二億円をこえる
赤字で、ついに
財政再建団体の
適用申請をいたしましたし、石油コンビナートとして発展しているかに見えるY市も、十七億円をこえるやみ起債と産業公害でにっちもさっちもいかぬ状態であります。私は、過密都市問題の解決や、後進
地域開発は、当然積極的に進めなければならないと思いますが、
政府が現に進めつつあります開発行政の
あり方では、
地方にいたずらに幻想を振りまき、大
企業の産業基盤
整備に
地方を奉仕させ、その上、不況のために最近
企業はなかなかやってこない。かくて、住民に幻滅と
地方財政の破壊を与えるのみであり、
政府の新産都市や工業
整備特別地域等の開発建設計画には、根本的な再検討が必要ではないか、
経済企画庁長官の御答弁を願います。
この春の定例
地方議会ぐらい全国的に荒れに荒れた例は私は知りません。
東京では警官の議場内導入があり、大阪でも警官の出動を見、予算の年度内通過ができなかった例が全国できわめて多いようであります。しかも、その紛糾の
原因は、高校授業料の値上げ、水道料金値上げ、国民健康保険税引き上げ等、公共料金の値上げ問題に対する住民の強い反発に端を発している点が
特徴的であります。水道、交通、病院等の
地方公営企業の問題は、三十八年度末の累積
赤字が五百七億円にも達する
危機的
実態を示している上に、
人件費、物件費等の増大、急激な施設拡大のための起債償還費の増高等で、自治体当局は料金値上げの羽目に追い込まれました。この
赤字やコスト値上がりの
原因は、
政府の
高度経済成長政策による社会資本の急速な充実の無謀な強行に基づくものにほかなりません。
国民健康保険事業につきましても、
白書は、三十八年度
決算で、全体のうち四二・二%が
赤字であることを示しており、国保中央会の最近の調べでは、いま終わったばかりの三十八年度は、
赤字団体は六八%に及ぶのではないかと推定される異常な事態が起きているのであります。これに追い打ちしたのが、
政府の例の
医療費緊急是正であり、市町村当局は三十九年度で全国平均二七%もの国保税の引き上げを行なっている上に、新年度重ねての大幅値上げ提案であっては、住民が騒ぎ立てるのも無理はないのであります。そして、ここまでに至った
原因をさかのぼってみますと、国保
事業は国の社会保障の一環であるにもかかわらず、全く不十分な
財政措置をもって
地方に押しつけている
政府の無
責任きわまる態度こそが、今日の混乱を巻き起こしたものと断じて差しつかえありません。(
拍手)
私は、自治、厚生、大蔵の各関係大臣に対し、
地方公営企業及び
国民健康保険事業に関し、当面の問題をどう解決するか、抜本的な改善のための長期的見通しはどうか、お尋ねいたしたいと思います。
最後に、一点つけ加えてお尋ねいたしたいのは、最近の報道で、
自民党が、国鉄、電通、専売の三公社職員が在籍のまま県市区町村議会の議員を兼任することを禁止する方針をきめ、法案の検討に入ったと伝えられることについてであります。
地方の小都市や農村漁村等では、そう大きな民間工場はなく、郵便局、役場、学校、農協等、官公庁や公社等の相当数の勤労者とその家族がおります。現在、国家公務員や
地方公務員の
地方議員兼職が禁止されております関係で、国鉄や電通の職員がそれら勤労者である住民の代表とし、議員に出ているというのが
地方の実情であります。したがって、三公社職員にも兼職を禁止することは、このような地域では、その地域における勤労者全体の
地方議会への
発言権を事実上完全に奪うことに通ずるのであります。近づきつつある参
議院選挙で、相変わらず各省の次官、局長級のいわゆる高級官僚出身者が
自民党公認として出馬するため、これまでの地位を最大限度に利用しつつ事前運動に狂奔していると
新聞は伝えております。これから生ずる弊害を除くため、高級官僚の立候補制限の立法化の問題が出てまいりますと、
自民党はそれは憲法違反だと反論してまいりました。これを憲法違反という同じ
自民党が、三公社職員までも
地方議員から締め出し、小さな地域社会の議会にも勤労者の意思の反映を一切拒もうとしているとすれば、これほど大きな矛盾撞着はないと思うのであります。(
拍手)私は、この際、この問題に関しても
政府の御
見解を明らかにすべきことを要求し、質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣佐藤榮作君
登壇〕