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1965-03-16 第48回国会 衆議院 本会議 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和四十年三月十六日(火曜日)     —————————————  議事日程 第十六号   昭和四十年三月十六日    午後二時開議  第一 北海道開発法の一部を改正する法律案   (内閣提出)  第二 国立学校特別会計法の一部を改正する法   律案内閣提出)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  農地管理事業団法案内閣提出)の趣旨説明及   び質疑  日程第一 北海道開発法の一部を改正する法律   案(内閣提出)  日程第二 国立学校特別会計法の一部を改正す   る法律案内閣提出)  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律   案(内閣提出)    午後二時八分開議
  2. 船田中

    議長船田中君) これより会議を開きます。      ————◇—————  農地管理事業団法案内閣提出)の趣旨説明
  3. 船田中

  4. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) 農地管理事業団法案について、その趣旨を御説明いたします。  農業と他産業との間の生産性格差及び従事者生活水準格差を是正することは、農業基本法に掲げられたわが国農政基本的目標でありますが、必ずしもその是正が進みつつあるとは言いがたい状況にあり、他方、開放経済体制のもとにおいて生産性の高い農業経営育成急務となっているのであります。  このような農業を取り巻く内外情勢に対応し、他産業従事者に劣らない所得を上げ得るような農業経営育成するためには、自立経営育成及び協業の助長に関する諸施策強化し、特に、自立経営を指向して農業経営改善しようとする農家、及びこれに準ずる効率的な協業経営農地取得を促進することが肝要と考えられるのであります。  しかるに、近年における経営耕地規模別農家戸数推移を見ますと、経営規模の大きい農家増加傾向は微弱でありまして、また、農地についての権利移動は、現在年間七万町歩程度に達し、農業就業人口減少等契機として増加を続けておりますが、その内容においては、必ずしも経営規模拡大方向に沿って移動が行なわれているとは言いがたいのであります。  そこで、以上のような情勢に対処し、農業生活本拠を置き、農業によって自立しようとする農家が、生産性の高い農業経営基礎を確立し得るよう農業経営規模拡大を促進するためには、これらの農地移動をそのまま放置することなく、このような農家経営規模拡大に役立つように方向づけを行なうことが必要であり、このため農地取得あっせん売買その他農地移動円滑化に必要な業務を行なう公的機関を設立する必要があるのであります。  このような観点から、農地等権利取得農業経営規模拡大等農地保有合理化に資するよう適正円滑に行なわれることを促進するために必要な業務を行なう機関として、農地管理事業団を設立することとしたものでありまして、この法律案は、農地管理事業団組織業務財務等に関し、所要の事項を定めたものであります。  以上がこの法律案を提案する理由でありますが、以下、法律案のおもな内容について御説明申し上げます。  第一に、農地管理事業団組織等につきましては、全額政府出資法人とし、当初の資本金を一億円とし、政府は必要に応じ追加出資をすることができることとしておりますほか、役員の定数、任免等につき所要規定を設けております。  第二に、事業団業務に関する規定であります。  まず、業務範囲につきましては、農地採草放牧地及びこれらの土地付帯施設について、売買または交換あっせん取得に必要な資金貸し付け、これらの買い入れ交換及び売り渡し、これらの借り受け及び貸し付け並びに信託引き受け業務を行なうこととしております。  次に、事業団は、農林大臣の指定した業務実施地域内にある農地等について業務を行なうものとしておりまして、この業務実施地域は、都道府県知事関係市町村に協議の上申し出た場合、土地農業上の利用の高度化をはかることが相当と認められる農業地域で、農業構造改善をはかるため農地等権利取得を適正円滑にすることが特に必要な地域を指定することとしております。  次に、事業団業務執行方針につきましては、自立経営になることを目標として農業経営改善しようとする農家、及びこれに準じて農業経営改善をしようとする農業生産法人農地等取得を促進するように業務を行なわなければならないものとしております。  以上のほか、事業団業務運営方法につきましては、貸し付け金及び売り渡し対価償還条件は、年利三分、償還期間三十年以内の年賦償還とし、一定の場合における一時償還及び償還の猶予に関する規定を設け、また、農地等を売り渡す場合は一定の基準により買い戻しの特約をつけ、売り渡し農地耕作をやめた等の場合には買い戻しを行なうこととしたほか、農地等信託引き受けについての信託法特例金融機関及び地方公共団体に対する業務委託等に関する規定を設けております。  第三に、事業団財務及び会計につきまして、予算事業計画等についての農林大臣の認可、借り入れ金交付金交付等について所要規定を設け、また、事業団農林大臣が監督することとし、監督命令、報告及び検査に関する規定を置いております。  その他の規定といたしましては、まず、事業団は、業務実施地域内の農地等所有者がその農地等所有権を移転し、または賃借権等を設定しようとするときに、あらかじめ通知を受けるものとし、自立経営になることを目標として経営改善をしようとする農家等にその農地等を譲り渡すようあっせんをし、または事業団がこれを買い入れる等の申し出をするものとしております。  次に、税制上の特例といたしまして、事業団農地等を譲り渡した者については、租税特別措置法の定めるところにより、譲渡所得についての所得税を軽減することとし、また、事業団あっせん融資事業団からの売り渡し等により農地等取得した者等に対する登録税及び不動産取得税を軽減することとしております。  また、事業団業務に関連して農地法特例を設けることとしておりまして、事業団買い入れ売り渡し及び借り受け、貸し付けについては許可を不要とし、事業団農地等を借り受け、これを貸し付けた場合について、小作地所有制限を適用せず、更新拒否等について許可を不要とする等の措置を講ずることとしております。  以上のほか、附則におきまして事業団の設立に関し必要な手続規定を設けております。  なお、本法律案提出に関連して必要となる予算措置等につきましては、昭和四十年度予算におきまして事業団に対する出資金一億円及び交付金等三億円を予定するとともに、昭和四十年度において事業団資金運用部から二十億円の借り入れを行なうことを予定しております。  以上が、農地管理事業団法案趣旨でございます。(拍手)      ————◇—————  農地管理事業団法案内閣提出)の趣旨説明に対する質疑
  5. 船田中

    議長船田中君) ただいまの趣旨説明に対して質疑の通告があります。順次これを許します。小枝一雄君。   〔小枝一雄登壇
  6. 小枝一雄

    小枝一雄君 私は、ただいま趣旨説明のありました政府提出農地管理事業団法案につき、自由民主党を代表し、政府に対し、質疑を行なうものであります。  現下、わが国経済のひずみである農業と他産業との生産性及び所得格差を是正するためにも、また、開放経済体制下の諸情勢に対処して、生産性の高い農業経営の急速な育成をはかるためにも、わが国農業構造改善の問題に取り組むことは、農政推進に携わる者の緊急の責務であると考えるのであります。  いま、最近におけるわが国農業の動向を見ますと、農業労働力流出に伴いまして、次第に他産業所得への依存度を高めつつある農家増加いたしております反面、農業経営によってその生活基礎を確立しようとする農家は、漸次その力を養いつつあるとは言いながらも、農業をめぐる諸条件の急速な変化のもとにあって、その発展途上には、なお幾多の問題があるのであります。このように、産業としての農業が重大なる段階に当面しておるとき、今後長期にわたる農業構造政策基盤を築くことこそ、わが国農政急務であると思うのであります。  そこで、まず農業にその生活本拠を置き、農業経営によって自立しようとする熱意を有する農家について、その所得を向上し、その生産性を向上させ、わが国農業生産中核たるべきものとしてこれを育成すべきであるのであります。このためには、農業立地条件に応じ経営近代化のため必要な資本装備を促進いたしますとともに、できる限りすみやかに農業経営規模拡大を進めることによって生産性の高い農業経営基礎を確立し、農業に専念しようとする者にとって農業を真に魅力のあるものとすることが肝要と思うのであります。  以上のような観点に立つとき、従来の各種施策充実強化と合わせて、構造改善政策の名に値する施策が直ちに講じられなければならないと考えるのでありますが、特に、農業によって自立しようとする農家育成するよう経営規模拡大をはかるため第一になすべきことは、現在の農地移動をそのままに放置することなく、これを農家経営規模拡大に確実に方向づけることは必要欠くべからざる要件であるのであります。このためには、強力な財政金融的援護と、力強くこれを推進する中核体が必要であると考えるのであります。今回、政府農地管理事業団を設立しようとして関係法案を提案いたしましたのも、このような基本的考え方に立つものと考えるのでありますが、本制度に関する考え方なり運用については、以下私の申し述べる点がきわめて重要であると考えるので、これについての所信を明らかにせられたいのであります。  まず第一にお伺いしたいことは、農業構造改善政策推進についてであります。  いままで述べましたように、わが国農業を取り巻く内外情勢を見れば、農業構造改善推進するための施策にいまや本格的に取り組むことが、農政に携わる者の重大な責務であるのであります。諸外国におきましても、後進性の強い農業を発展させるためには、すでに農業基本法または農業法等を制定いたしまして、国が責任を持って他産業との均衡をはかるよう努力いたしておるのであります。さらにまた、この法律のあるところ、必ず構造改善熱意を持って努力いたしており、これは実に表裏一体ともいうべきものであります。いまや、わが国におきましても、農業基本法が制定されてすでに五年を経て、まさに具体的実践のときを迎えておると思うのでありますが、これに対する所信総理大臣及び農林大臣よりお伺いいたしたいのであります。  第二に、この事業事業規模についてであります。  われわれは、この事業によりわが国農業構造改善を本格的に推進するためには、経営規模拡大等農地保有合理化に伴うところの農業近代化の機運が高まりつつあるような地域をすべて対象として、全国広範囲にわたって実施すべきものであると考えるのであります。構造改善は、実をいえば、一部の市町村や一部の部落のみでなく、国内全農家、すなわち、自立経営農家たらんと欲する者全体に及ぼし、民主政治精神に徹して、無差別、公平な施策をもって、真にしあわせな農家をつくらなければならないのであります。  政府は、当面、パイロット的にこの事業実施するものとしておるのでありますが、それならば、できる限りすみやかに本格的実施に移るべきものと考えるのであります。また、売りたいという農地が出ても直ちに買い手のない場合、しかもそれが重要な農地である場合におきましては、しばらく公団がこれを保有して、時期を待って適当なる農家に売り渡すような措置については、いかなるお考え農林大臣はお持ちであるかということをお伺いいたしたいのであります。  第三にお伺いしたいのは、この事業推進にあたって、地元農民意向をどのように尊重していくのかということであります。  この事業は、農地移動につき、あっせん売買等の手段をもって、公的機関が、農業により自立しようとする農家育成しようとするのでありますが、農地農家の貴重な財産でもありますので、このような事業農村において円満に推進するためには、地元農家及び関係者意向を十分反映して、民主政治精神に徹し独断的行政におちいらないよう配慮して行なう必要があると考えられるのでありますが、これに対して政府はどのような運用考えておられるのであるか。また、農地を手放して他産業への転業を希望しておる農家については、農業からの離脱が円滑に進められるようあたたかい援護措置が必要であり、転業して農業をやめる者にも幸いの得られるような措置を行なうことは、政治の要諦であるのであります。農林大臣はこれらの点についてどのような考えを持っておられるのか、お伺いいたしたいのであります。  第四には、農業により自立しようとする農家以外の農家に対する施策についてであります。  自立経営たらんとする農家育成することは、わが国農政の最も肝要な問題でありますが、一方、基幹的な労働力が他産業へ従事することによって農業への依存度を弱めつつある農家についても、その農業部門生産性の向上をはかるとともに、農業外所得の増大及び安定をはかる施策が必要であると考えます。この点についていかなるお考えをお持ちになるか、農林大臣のお答えをお願いいたす次第であります。  第五には、農業構造改善推進するためのその他の施策についてであります。  農業を取り巻く現在の情勢に対応してわが国農業構造改善推進するためには、農地移動方向づけを行なうこの事業実施するのみでなく、生産基盤整備や、機械化その他農業経営近代化を行なうとともに、価格対策等をすみやかに整備して、いやしくも豊作貧乏というようなことなく、増産をすればそれだけ所得がふえるような施策を行なうことはもちろん、他の諸施策をもこの際大いに拡充して行なう必要があると考えるのであります。この点についての農林大臣の御所信はどうであるか、お伺いいたしたいのであります。  第六に、農地管理事業団業務範囲についてであります。  農業構造改善推進するためには、現在の農地移動について、それを経営規模拡大方向づけるばかりでなく、生産基盤である農地整備とともに、農用地拡大が重要であると考えるのであります。したがって、将来の構想としては、この事業団は、土地基盤整備事業等についても関与いたしまして、この面からも農業構造改善を促進することを検討すべきであると考えますが、これについて農林大臣はいかなるお考えをお持ちになっていますか、お伺いいたしたいのであります。  最後にお伺いいたしたいのは、農地法改正についてであります。  昭和三十七年、農業基本法実施に応じて農地法改正が行なわれたのでありますが、その際においては一部重要な問題が取り残されておりますし、さらに、その後の時代の推移とともに、農地法改正が識者の間に論ぜられるに至っております。これに対しまして、今回のこの法案の提案を契機農地法の一部を改正せられるということでありますが、これをさらに推し進めて、根本的な問題について触れられる御意思があるかどうか、このことをお伺いいたしておきたいのであります。  以上、私の質問を終わりますが、この法案は、農業基本法施行の上からも、構造改善を行なう立場からも、きわめて重要であります。政府当局におかれましては、熱意を持って本法案の通過に対し努力せられんことを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  7. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) お答えいたします。  わが国農業に関しましては、すでに五年前に農業基本法がつくられ、農政あり方をこれで明示いたしております。しかしながら、農業基本法による近代化あるいは高度化等がはかられましても、農業構造拡大方向に向かわない限り、十分この目的を達することができない。ただいまは御承知のように、後継者流出の問題すら起こしておるような農業の実情であります。専業農家でなくて兼業農家が増大する。かような立場に立ってつくづく考えてまいりますと、今後の農政あり方としては、真剣に構造改善の問題と取り組むこと、ただいまいろいろ価格政策その他にも触れられましたが、構造政策に触れて初めて農業一本立ちのできる近代産業育成できるということになると思います。この点は欧州各国におきましても同様の歩みをたどっております。今回農地管理事業団法案を御審議願うのも、ただいま申し上げるように、農業をりっぱな一本立ちのできる産業育成強化したい、これで初めて農村の繁栄もあり、農民の幸福がもたらされる、この信念に基づいての結果でございます。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳登壇
  8. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お答え申し上げます。  お話のように、農業基本法ができまして、農業基本法自立経営農家育成ということをうたっております。でございますけれども、なかなか自立経営農家の進み方が鈍いのでございます。そこで、構造改善事業といたしまして、土地基盤整備とか、あるいは作目を選定しまして共同施設等を進めておりますが、経営規模拡大とか、あるいはまた、資本装備強化していくという方面に、構造改善対策としていまだ非常に欠くるものがあったと思います。本格的にその経営規模拡大資本装備強化ということを進めていく段階にただいまきていると思いますので、そういう構造政策の基本問題を推進するために農地管理事業団を設立いたすことに相なったわけでございます。  第二は、この事業が全国的に行なわれないでパイロット的に行なうということにいたしましたについての御質問でございます。構造改善事業が熟したところからパイロット的にこの事業を進めていきたいという考えでございます。何といたしましても、この事業は初めての事業でございますので、そういう体制整備する必要もありますので、初年度といたしましてはパイロット的に事業を進めていくということでございますが、これは全国的規模実施していくということの前提でございます。でございますので、将来全国的規模において実施したい、こういうふうに考えています。  第三は、こういう事業をするにつきまして、地元意向というものを尊重しなければならぬじゃないかという御指摘でございます。もちろん、七万町歩から移動しておりまするところの土地経営規模拡大方向づける、こういうことでございまするし、それがまた、パイロット的にやるといたしましても、地元意向というものは非常に大事でございます。でございますので、市町村とか農業委員会とか、あるいは農業団体等意向をよく聴取しまして、その実施方針に従って進めていきたい、こういうふうに考えています。  第四は、こういうふうに事業をするにつきまして、離農に対してどういう措置をとるかということでございます。これは雇用の促進とか就労の安定とか、こういうことがございますけれども、農地を手放していくという者に対しまして相当手厚い保護措置をとることが必要だろうと思います。ただいま発足当時でありますので、その点につきましての対策をいま並行して持っておりませんが、この事業が進むに従いまして、離農に対する措置ということもうらはらとして強く講じていかなくてはならぬと思います。  第五は、第二種兼業農家に対してどういう措置をとっていくか、どういう政策をとっていくかということでございます。第二種兼業農家が四二%を占めておるという現状でございます。そういうことでございますので、兼業農家等のふえていくということは、私どもは農業政策によほど力を入れていかなければならないということの反省に相なるわけでございますが、現状といたしまして、兼業農家生産性は落ちてきておるわけでございますので、農業に精進していこうという兼業農家につきましては、これは共同化を進める以外にないと思います。さしあたり農協等大型機械等を与えまして、そうして協業化のほうに兼業農家を結集していく、こういう方針でございます。  第六の点におきまして、この管理事業団が、農用地拡大とか、あるいは生産基盤整備のほうにまで事業を進めていくべきではないか、こういう御意見でございます。ごもっともでございまして、この管理事業団が軌道に乗って相当進むに従いまして、農用地拡大とか生産基盤整備等にも携わるようにいたしたい、こう思っております。  第七点は、農地法改正でございますが、農地管理事業団発足に従いまして、これに伴っての農地法改正を行ないますが、本格的にどういうふうに考えるかということでございます。本格的には、借地による経営面積拡大とか、あるいは権利移動制限を緩和するというような面、そういう面から農地法改正していかなければならないと思っています。ただ、耕作権保護という面もありますので、いろいろむずかしい面がありまするけれども、農地法を根本的に改正する時期に達しておると考えて目下検討を加えておりますので、その成案を得まするならばその改正を提案したい、こう考えております。(拍手)     —————————————
  9. 船田中

    議長船田中君) 湯山勇君。   〔湯山勇登壇
  10. 湯山勇

    湯山勇君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま御説明のありました農地管理事業団法案について質問をいたします。  ただいまの御説明によりますと、政府は、今日の農業の行き詰まりを打開していくためには、経営規模拡大していく以外に道はない、こういう観点から今回新たに農地管理事業団を設置して、そうしてさしあたり明年度は百カ所をパイロット地区に指定して実施をする、その面積は大体千町歩ということでございます。つまり初めてのことだからまずやってみて、ためしてみて、それから本格的に取り組もうというのでございますけれども、しかし一方、農民の側から見ますと、これはためすとかやってみてというような甘いものではございません。自立農家になるために、借金をして土地を買う農家も、農業を離れて他に転業していく農家も、ともかくも一家の重大事でございますし、一生の運命を決する命がけの問題でございます。(拍手自立経営農家をつくっていくということは、一方からいえば離農を推し進めるということと一体でございまして、かつて所得倍増政策が発表されましたときに、農民が敏感にこのことを察知いたしまして、これは農民の切り捨てであるとして強い警戒を示したことは御存じのとおりでございます。いよいよ今回事業団をつくって、政府が積極的に乗り出すというのでありますから、農民は、農業に残るか農業を捨てるか、最後の決断を迫られているような迷いと不安にかられているのが今日の状態でございます。政府は、何をおいてもまっ先に、このような農民の不安や迷いを解消するために、十分納得のいく説明をする必要があると思いますし、そうすることが政府の当然の責任であり、義務であると思うのでございます。  そこで、私は、最初に、これらの農民政府にただしたいことをそのまま農民にかわってお尋ねすることといたします。  まず、自立農家になろうとしておる側でございます。以前には一町歩つくっておればりっぱな専業農家であるし、一町五反もあれば大きな農家であったのが、いまは二町になっても兼業している例が少なくありません。いま借金をいたしまして土地を買って自立農家になったとしても、はたして十年先、二十年先、さらに借金の期限の切れる三十年先までも自立農家としてやっていけるだろうかどうだろうか。やがては、いまの政策のもとでは二町五反の転落農家になる心配はないだろうか。これがその心配の一つでございます。  次は、自立農家になって一体どういう経営をしていったらよいだろうか。米作は安定しているようであるけれども、赤城農林大臣のスライド制というのは生産者米価の引き下げのようであるし、機械や農薬を使って労働時間を少なくすればそれだけ米の買い上げ価格は下がってくる。基本法ができて、選択的拡大というので果樹、畜産の奨励をしてくれたけれども、果樹は生産がふえる一方、自由化等によってだんだん引き合わなくなってきている。あのだいじょうぶだといわれたミカンさえも昨年あたりからすでに不安がつきまとっております。畜産に至ってはもう全くお手上げの状態で、えさ代は上がる、牛乳も安い、卵も安い、牛をやめた農家、鶏でつぶれた農家も決して少なくありません。豚も値段が不安定のためにどうしても安心して取りつけない。政府は奨励はしたけれども、一向責任をとってくれてはおりません。一体、借金を返しながら働きがいのある経営ができるように保証してくれるのかどうだろうか。これが農民の第二の疑問でございます。  次に、買う土地が安いならともかくも、時価というのでは高過ぎます。いまの土地の値段は決して農業で引き合う地価ではございません。二重価格という話もあったけれども、一体なぜそれをやめたのでしょう。田を五反買えば百万円の借金ができ、一町も買えば二百万円の借金ができます。開拓農家の中には、やっていけなくなって開拓地から離れようとしても、借金に縛られてやめることさえできないものがあるということであります。そんなことになる心配はないだろうかどうだろうか。これがその三つ目でございます。  農業が将来よくなるという明るい展望があれば、それは子供にもあとを継いでくれと言えますけれども、いまの状態では全く希望が持てません。これでは子供にあとを頼むといっても聞き入れるはずもないし、無理に農業をやらせても、へたをすると借金の苦しみまで子供に引き継ぐことになりかねないのであります。国は一体どこまで責任をとってくれるんだろうか。こういう心配経営拡大しようとする側にございます。  一方、離農する側には、農業をやめても適当な就職先はない、賃金は安い、臨時や日雇いではいつやめさせられるかわからない。やめたとき、年をとって働けなくなったときの生活の保障もはっきりしない。土地を売った金は、いまのように物価が上がるのでは、いつまで、どれだけたよりになるか全く心細い限りである。この土地を手放しても、安心して生活できるという見通しがはっきりするまでは、家族には気の毒だけれども、出かせぎでもしながらいまの農業を続けるしかないのではないだろうか。こういう心配がございます。  総理から、これらの素朴な農民がほんとうに安心できるように、これらの人たちに直接お話しになる気持ちでよくわかるような御説明をいただきたいのでございます。(拍手)  五年前に農業基本法ができまして農業構造改善を進めようとしたにもかかわらず、これが成功しなかったことは、総理もひずみということばでお認めになっております。池田前総理が革命的な農業、革新的な農業、こういうことばを使われたのも、これはたいへんなことになったということを端的にあらわしたことばだと私は思います。高度成長政策の中で、雇用の機会も条件もよかったときに農地法、農協法を改正して構造改善政策を進めようとしたにもかかわらず、政府政策の誤りから経営規模拡大しないで、兼業の増加という変則的な結果を招いてしまったのであります。そのため生産は伸びないで、機械化貧乏あるいは荒らしづくり、冬作の放棄、そういう事実が増大したことは、農業構造改善がいかに困難なことであるかを実証いたしております。総理はほんとうにこの困難と取り組む御決意があるのかどうか、この点をはっきりしていただきたいと思います。  私がこの点に不安を感じますことは、いま農林大臣の御説明にあった来年度の計画でございます。当初、農林省は十年間で三十三万町歩を対象にして、事業団に五千六百億円の資金手当てをしよう、そうしてまず四十年度には六千町歩を対象として百五億の資金を要求いたしております。貸し付け条件は年二分、四十年償還、こういうことであったにもかかわらず、むざんにも査定の結果は、資金は要求の五分の一の二十億円、面積は六分の一の千町歩貸し付け条件も三分で三十年と、全く後退してしまっております。かりにこのテンポで進んだとすれば、農林省が計画しておった三十三万町歩移動には三百三十年かかる計算になります。所得倍増計画による二町五反の自立農家百万戸達成に必要な七十八万町歩土地移動させるには、実に八百年近くもかかるという計算になります。幾らこれがパイロットである、初年度である、こういうことをおっしゃっても、これではあまりにひど過ぎます。ほんとうにこれでやる気かどうか、私は疑問を感ぜざるを得ないのであります。  総理は施政方針演説におかれまして、特に今年は自立農家育成するため、農地管理事業団を設立して経営規模拡大をはかる、こう明言しておられます。大蔵大臣は構造改善政策を進めたときの当時の自民党の政調会長であったはずでございます。農地管理事業団は赤城農政の生命線である、こう大臣は宣伝されております。これだけの人がそろって、農業のひずみを直すという基本政策を持っておる内閣で、こんな貧弱な予算しか組まれなかったのは全く了解に苦しむところであります。(拍手)これは一体熱意が足りなかったのか、あるいは自信がなかったのか、農林省に説得する力がなかったのか、総理、大蔵大臣、農林大臣からはっきりしていただきたいのであります。  なお、農林大臣からは今後どの規模自立農家をどのくらいの数、どれくらいな年次計画でつくるかをはっきりさせていただきたいのであります。と申しますのは、農民には三十年先あるいは一生の決断を求めておきながら、政府が来年のことは来年にならなければわからない、これでは私は通らないと思うのでございます。  次に、本法案に関連して特に指摘しなければならない点は、農地拡大と表裏一体の関係にある離農対策が何ら示されていないことであります。農林大臣は、ただいまの御答弁で、進むに従ってということをおっしゃっておりますけれども、わが国農家がわずかな農地にたよって、いざというときのみずからをみずから保障しておることは御存じのとおりであります。この命の綱の農地を手放す者に何ら対策が示されない上に、国の駐在員が町村に配置せられてこれを推進するというのであります。わずかばかり譲渡所得税を考えるといったって、全くそれは問題になりません。まさにこれは農民の切り捨てであります。水のないプールへ飛び込めと言うのと同じであります。どこに一体総理の人間尊重の政治がございましょう。(拍手)本来ならば、政治の姿勢としては離農対策が先であって、それから後にこれが出るのが政治の常道でございましょう。一体、離農対策はいつ出されるのか、そしてその内容はどういうものか、当然この場において明らかにする責任があると思いますので、それをお示しいただきたいのであります。(拍手)  なおまた、農業を続けていく農民に対して新たに農民年金をお考えになっておられれば、その内容もお示しいただきたいのであります。  最後に、政府はいまもなお、先ほどの御答弁にもありましたように、自主農家のくいぜを守ってこれに執着しておるために、単に現在売買されておる農地方向づけをすることによって目的が達せられるような、実に甘いお考えを持っておられるようでございます。確かに農業人口の三%は毎年動いております。農家戸数も〇・三%程度は減少しております。この傾向が増大さえすれば、方向づけだけで目的が達せられる、このようにお考えになっておるのであれば、それは大きな間違いでございます。  御存じのように、若い人が農村にいなくなっております。生産意欲は低下し、荒らしづくりや冬作放棄が激増して、すでに一昨年あたりからわが国農業は体質の弱体化による生産低下の徴候を示し始めております。農家戸数がいまのようなまま、ずるずる減っていって、それで適当な数に減少したときには、それよりも先に農業自体が崩壊しておるのではないでしょうか。現に農村は社会機能の麻痺によって手のつけられなくなっている事例も少なくございません。このことに目をおおっては構造改善は進められないと思います。健全な、将来に明るい展望のある農業構造改善を行なうためには、農業や中小企業の犠牲において高度成長を遂げてきた日本の経済体制そのものにメスを入れなければなりません。農地政策、農産物の価格対策等農業政策はもちろん、貿易、物価、賃金、雇用、社会保障等、あらゆる総合的な対策を打ち立てなければならないのであります。それがいまの政府の案では、事業団は役人のポストづくりの事業団であるといわれてもいたし方がないのではないでしょうか。農業構造改善は、一事業団、一農林省の問題ではありません。総理以下政府が総力をあげて取り組まなければならない重大な問題であります。そうしていま直ちにそうしなければならない段階に直面いたしております。総理は直ちに強力な総合機関を設けて真剣にこれと取り組む御決意を持っておられるかどうかを最後にお尋ねいたしまして、私の質問を終わります。(拍手)   〔内閣総理大臣佐藤榮作登壇
  11. 佐藤榮作

    内閣総理大臣佐藤榮作君) 最近の経済発展から見まして、農業あるいは中小企業、これらはいわゆる事業が弱体だ、この新発展に伴わない、随行していけない、こういう悩みがございます。いわゆる経済のひずみを直そうと政府考えておるわけでありますが、この農業の実態を見ますると、いわゆる専業農家、あるいは第一種、第二種兼業農家、こういうような分類をしてみますると、最近は第二種兼業農家がだんだんふえておる、また、お話にもありましたように、後継者すら得がたいような状況になりつつある、こういう際に農業は一体どうなるのか。したがって、農業と他の産業とのひずみを是正する意味におきまして、また、農家生活環境をひとしくするような地元勤労者の従事者一人当たりの所得及び世帯員一人当たりの家計費等と見合うように農業をいかに指導していくか、これがただいま問題になっておると思います。先ほどお答えいたしましたように、こういう場合に地元の勤労者と同じような収益だといった場合に、まず六十万円以上、これを農家農業所得として取らなければならない、こういうことを考えておるのであります。中期経済計画ではさらにそれが八十万円にもなる。また、この中期経済計画の四十三年時分には、そういう形においてこの専業農家自立農家育成強化していこう、これがただいま問題であるのであります。  先ほどお答えいたしましたように、いわゆる農業基本法をつくり、そうして近代化高度化をはかってまいりましたが、なかなか思うようにいかない。ただいまのような形において農業収入をふやしていけば、農業農業として存在の意義、その価値があるようになる、かように考えますので、今度は耕地の所有のたてまえから見まして、まず二町前後以上の耕地であるならばただいまのような所得が可能ではないだろうか。もちろん、これは他産業との比較の問題でありますので、ただいまお話がありましたように、他の産業が進んでくれば、もちろん農家の収入もふえ、また耕地も拡大していかなければならない。耕地については、もちろん作物等の問題がございますが、さような意味で今日固定するわけにはいかない、かように思います。  また、もう一つ農政の基本の問題で中心になるのが価格安定対策だと思います。この価格安定対策につきましては、米麦、あるいは畜産物、あるいはでん粉等、農業生産額の約七割までは、これは国費を使い、そうして育成強化し、安定への方向をたどるように特別な努力をいたしておることは御承知のとおりでございます。さらに、最近におきましても、畜産物や野菜等につきましていろいろくふうをいたしておるような次第でございます。しかしながら、社会党の方は、この価格安定政策を中心にものを考えていけ、かような御主張のように伺っておりますが、私どもは、価格安定政策も大事ではあるが、何よりも農業生産性を高めることなんだ。農業自身の近代化をはかり、あるいは構造拡大をはかっていって、そうしてりっぱな経済力を持ってこそ初めてわが国農業は健全だ、かように一声えるのであります。したがって、価格政策と同時に構造政策を併用していかなければならないと思います。  かような意味において、今回の農地管理事業団発足いたすわけでありますが、その農地取得の価格について、時価では高い、二重価格にしたらどうか、こういう御意見でございますが、この両者を検討いたしてみますと、ただいま年利三分、三十年間の償還、かようなたてまえでございますので、延べ払いをいたすならば、耕地を拡大したことによる生産性の向上によってこの農地取得の返済は十分できる、かような考え方を持ったのであります。私は、ただいまのこの案に盛られている政策こそ、真に農村の実情に合うもの、かような意味において強く皆さま方の御支持をお願いするわけであります。(拍手)もちろん、農家の負担の問題につきましては慎重に考えなければなりません。同時に、国の財政負担、また行政処理の問題等も関連を持ちまして、ただいまの二重価格の問題と現行の延べ払いの方法と両者を検討いたしたわけであります。  最後に、もしもうまくいかなかったらだれが責任を負うのか、かようなお話でございますが、今日この農業構造改善をしようという事柄は、その機運の熟した農業地域で、農業をりっぱにやっていこうという意欲のある農民、同時に、技術と能力を備えた方々に、ただいまのような国から長期の融資をしてそして農地拡大をはかろうというのでありまして、ただいまの御心配は要らないと思います。  また、まず離農対策考えて、しかる後にかような政策考えろと言われますが、もちろん、離農対策につきましては、農林省といわず、労働省、これまた緊密な連携を持ちまして対策を立てておるようでありますので、その成り行きをごらん願いたいのであります。  また、今回この管理事業団を提案したのがいかにも規模として小さい、こういうことでありますが、先ほど農林大臣から御説明いたしましたように、これはパイロットであるから、まずこの程度で、また同時に、管理事業団自身の機構を整備するのにもこれは時日を要するわけでありますから、一どきに大きなものを必要としない、しばらくこの育成強化の方法に目を向けていただきたいと思います。  最後に、構造改革の仕事は、もちろん農林省だけでできる問題ではございません。私が声を大にして農業改善の必要を説いておりますのも、総理はもちろんのこと、内閣全体が協力一致しまして強力にこれを推進する考えでございます。ただいまは、そのために特別な機関を設置しろ、かようなことのお話がありましたが、私は、特別な機関をつくる必要はない、各大臣協力することによって、また農村の協力を得まして、ただいまの構造改善を進めていく、かように考えておる次第でございます。(拍手)   〔国務大臣赤城宗徳登壇
  12. 赤城宗徳

    国務大臣赤城宗徳君) お答えいたします。  農業白書等に述べてありますように、他産業との生産性格差是正あるいは生活水準格差を是正するということが、われわれ農業担当の者としての大きな課題であります。そこで、その中にもありますように、一般的にいいますと、他産業との生産性格差などは二九%ぐらいでございます。ところが、一町五反以上の農家でとりますると、生産性等につきましても四〇%から五〇%になっています。あるいは生活水準等につきましても、一般的には非常に低いのでありますけれども、一町五反以上等につきましては、地元の人と比較いたしますと九〇%程度になっています。でありまするので、だれが見ましても、経営規模が大きいということが、生産性においても、あるいは生活水準所得においても、よりいいということは免れない事実であります。そういうような関係から、自立経営農家がより多く育成されるということは非常に望ましい、これは言うをまたないと思います。  そこで、しからば自立経営農家というものも時代の変化に伴ってだんだん変わってくるじゃないか、いまは二町五反でも、五年先には二町五反では足らなくなるじゃないか、あるいは五町でも足らなくなるじゃないか、こういう御指摘でございますが、もちろん、そういう時代に対応して変化してくると思います。でありますので、現在におきましてま自立経営農家というものをどういうふうに見るかといえば、経営規模の面あるいは所得の面、両方から見ていくべきだと思いまして、面積でいえば、標準でございますが、大体二町五反、これも平均でございます。あるいは所得からいいまするならば、年収六十万円以上の農家、こういうものが自立経営農家というふうにわれわれは規定しておりまするけれども、この自立経営農家がいまの御指摘のように減っておるということではございません。兼業農家はふえておりますけれども、一面において、自立経営農家も、テンポはおそいけれども、相当増加しておるというのが事実でございます。でございますので、この自立経営農家をさらに一そう育成するために事業団を設立していく、こういうことでございますので、これはいまの日本ばかりでなく、フランス等、世界でもそう考えておりますが、特に日本においては、経営規模拡大、こういうことが必要であるので、構造改善の基本的な問題としてこれを取り上げて進めていきたい、こう考えております。  第二番目には、価格政策、選択的拡大を指向したけれども一向だめじゃないかということでございますが、選択的拡大によって相当農業面において進んでいるものがたくさんございます。悪い面ばかり見ていますと悪くなるかもしれませんが、いい面がたくさんございます。そういう面を見落として、悲観的な面ばかり指摘されても、農業政策としてはまことに困るわけであります。  価格政策等につきまして総理からも答弁がありましたが、日本の農産物の七割程度は価格政策を行なって支持をいたしております。その点において、強い価格支持をしておるものも、また価格支持が十分でない面もございまするので、たとえば牛乳等につきましては間接的な価格支持でありますけれども、今度本格的に価格支持制度を進めていくというようなことを考え、これは価格支持政策は並行して行なっていくつもりでございます。  それから、農地取得の価格につきまして、時価では高い、二重価格でやるべきではなかろうかというような御指摘でありましたが、これも総理からいろいろ御答弁がありましたけれども、検討の結果、三分、三十年賦で資金を供給するということが適当であろうということで、そういうふうにきめたわけであります。  あるいはまた、これを全国的にやらないから、あるいはまた、計画を持たないから何十年も何百年もかかるじゃないか。これは計画経済で土地の収用でもして、そうして社会主義的なあるいは共産主義的なやり方でやるならば、あるいは三年か五年でできるかもしれませんが、私ども、土地移動経営規模拡大のほうに方向づけよう、こういうことでやっておりまするので、そういうふうに簡単にできないのは申すまでもありません。でありますので、とりあえずパイロット的にやっていこう、これは初めての事業でありますので、そういう計画を持っております。  そこで、計画をどういうふうに立てるかということでございますが、これは中期経済計画にもありますように、四十三年ごろになりますならば、いまの自立経営規模でございますが、いまは六十万円でありまするが、そのころになりまするならば八十万円以上の収入ということにいたしたいと思いまするし、あるいはまた、百万戸の平均二町五反でございまするから、全部が二町五反というわけではございません。これはだんだん伸びてきておりまするけれども、この方向に向かって計画を進めていくことは申すまでもありません。  離農対策でございますが、この事業農民を追い出してそうしてその土地を収用するというような考え方に立ってはおりません。現在確かに七万町歩移動がございます。そういうのを経営規模拡大のほうに方向づけようということでございます。しかしながら、兼業農家につきましても、離農等をしたい、農業よりも他産業へ入りたいという者もなきにしもあらずでございます。そういう者につきましては、労働対策として就業の安定、あるいはまた、いま開拓者にとっておりまするように、あるいは移民にとっておりまするように、離農資金というような制度もありまするが、本年はそういうことは考えておりませんが、行く行くそういうことも考えていかなければならぬと考えております。  それから、それと関連いたしまして、農民年金というようなものの制度を考えないか。これはフランス等におきまして、離農する者に対しまして、その老人に養老年金のような制度を設けております。こういうことでありますので、この年金制度につきましてもずいぶん検討を加えたのでありますが、これはさらに検討を加えて、そういうことが私は必要であろうというふうに考えております。  それから、農業の面におきまして社会保障の面あるいは労働政策の面、これが必要じゃないか。もちろんそうでございます。実際、農業者といっても、これは労働対策の対象となるもの、あるいはまた、生活水準が非常に低くなりまして社会保障の対象となるものが相当ふえてきております。でありますので、農業対策だけで解決できない問題、すなわち社会保障対策の対象として考えなければならないもの、あるいは労働政策の対象として考えていかなければならない面が相当出てきております。でありますので、農業政策も、こういう社会保障政策あるいは労働対策と密接な関連を持って農業対策を講じていくということが、お話のとおり必要でございますので、そのほうに進めていきたいと思います。(拍手)   〔国務大臣田中角榮君登壇
  13. 田中角榮

    国務大臣(田中角榮君) 私からお答えいたしますのは二点でございます。  その第一点は、今回御審議を願っております農地管理事業団の構想は、当初の構想よりも非常に後退をして縮小されたということでございます。本件につきましては総理大臣及び農林大臣が詳しくお答えを申し上げましたが、とにかく、農地の流動化を促進し、自立経営農家をつくるために農地管理事業団の制度が開かれることは、画期的なことであります。(「反対したじゃないか」と呼ぶ者あり)最終的には賛成をいたしたわけであります。農地の流動化に対しましては、御承知のとおりいろいろ問題がございますが、流動化促進のためにこの制度を開いたわけであります。しかも新しく大事業を行なうことでありますので、四十年度につきましては、慎重を期するために、農地売買を行なわず、農地取得あっせん資金貸し付け等を行なうことにいたしたわけであります。しかも当初の四、五年間は、パイロット地区を設定しまして、十分慎重にこれらの成果を見ることは、本制度を採用したことにつきましては当然のことだと考えておるのであります。  第二の問題は、雇用の促進その他税制上何らかの措置をしたかということでありますが、他産業へ転出を希望する離農者の雇用問題につきましては、職業相談、職業紹介等を積極的に行なっております。特に就職の困難な中高年齢層につきましては、就職訓練を実施いたすに際しまして、必要に応じて手当を支給する等をいたしておるわけであります。また、広域職業紹介による就職者には移転資金を支給する等をいたしまして、就職の促進のための措置をとっております。  それから、社会保障の問題でありますが、いま農林大臣が申し上げたとおり、社会保障対策の問題につきましても、社会保障制度全般の問題として十分検討してまいりたいと思います。  税制上の問題でございますが、農地管理事業団に対して農地等を譲渡した者につきましては、その譲渡所得に対する所得税を軽減する等、税制上において所要措置を講じておる次第であります。(拍手
  14. 船田中

    議長船田中君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  日程第一 北海道開発法の一部を改正する法   律案内閣提出
  15. 船田中

    議長船田中君) 日程第一、北海道開発法の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  16. 船田中

    議長船田中君) 委員長の報告を求めます。内閣委員長河本敏夫君。     —————————————   〔報告書は本号末尾に掲載〕     —————————————   〔河本敏夫君登壇
  17. 河本敏夫

    ○河本敏夫君 ただいま議題となりました北海道開発法の一部を改正する法律案につきまして、内閣委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。詳細は会議録によって御承知願うこととし、以下簡潔に申し上げます。  昭和四十年度は、第二期北海道総合開発計画の三年目に当たり、北海道開発局の事業量は相当増大する見込みである上に、同局においては、昭和四十年度から一級河川の管理事務を新たに行なうことになっておりますので、これらの事務を円滑に処理するため、北海道開発庁の職員の定員を八十人増員しようとするものであります。  本案は、一月二十二日本委員会に付託、二月四日政府より提案理由の説明を聴取し、慎重審議を行ない、三月十二日、討論もなく、直ちに採決の結果、本案は全会一致をもって原案のとおり議決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  18. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  19. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  日程第二 国立学校特別会計法の一部を改正   する法律案内閣提出
  20. 船田中

    議長船田中君) 日程第二、国立学校特別会計法の一部を改正する法律案を議題といたします。
  21. 船田中

    議長船田中君) 委員長の報告を求めます。大蔵委員長吉田重延君。   〔吉田重延君登壇
  22. 吉田重延

    ○吉田重延君 ただいま議題となりました国立学校特別会計法の一部を改正する法律案につきまして、大蔵委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案は、国立学校の移転が人口の過度の集中に対する対策に資すると認められる場合、その移転先の用地の取得費を支弁するため必要があり、かつ、その移転に伴って不用となる財産の処分収入をもって償還することができる見込みがあるときは、当分の間、この会計の負担において、いわばつなぎ資金として借り入れ金をすることができることとしようとするものであります。  この法律案につきましては、審議の後、去る十二日、質疑を終了いたしましたが、日本社会党を代表して藤田高敏君が討論を行ない、本案の実施にあたっては、当該大学における教育の自由が侵害されないこと、過密都市解消を有力な目的とする以上、あと地利用については十分配慮すること、借り入れ金の返済が授業料の値上げにはね返ったり、あるいは教育水準を引き下げることのないよう配慮すること等の条件を付して賛成する旨を述べられました。次いで、採決いたしましたところ、本案は全会一致をもって原案のとおり可決となりました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  23. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  24. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案内閣提出
  25. 海部俊樹

    ○海部俊樹君 議事日程追加の緊急動議を提出いたします。  この際、内閣提出訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題となし、委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  26. 船田中

    議長船田中君) 海部俊樹君の動議に御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  27. 船田中

    議長船田中君) 御異議なしと認めます。よって、日程は追加せられました。  訴訟費用等臨時措置法等の一部を改正する法律案を議題といたします。     —————————————
  28. 船田中

    議長船田中君) 委員長の報告を求めます。法務委員長加藤精三君。     —————————————   〔報告書は会議録追録に掲載〕     —————————————   〔加藤精三君登壇
  29. 加藤精三

    ○加藤精三君 ただいま議題となりました法律案について、法務委員会における審議の経過並びに結果を御報告申し上げます。  本案は、第一に、最近における経済事情にかんがみ、差し押え、競売等についての執行吏の手数料等を増額し、第二に、一般公務員の恩給の増額に伴い、昭和三十六年九月三十日までに給与事由の生じた執行吏の恩給について、その年額を十五万三千六百円を俸給年額とみなして算出した額に引き上げようとするものであります。  当委員会におきましては、二月十二日本案が付託せられてより慎重審議を重ね、その間、弁護士、執行吏等三人を招いて意見を聴取いたしました。  かくて、本十六日、質疑を終了し、討論なく、採決の結果、本案は全会一致をもって政府原案どおり可決すべきものと決しました。  なお、本案に対し、自由民主党、日本社会党共同提案にかかる附帯決議が付されました。すなわち、政府はすみやかに執行吏制度の根本的改善をはかるとともに、暫定的措置として、執行吏代理等に対する処遇の改善等、格段の努力をいたすべき旨の附帯決議が付されました。  以上、御報告申し上げます。(拍手)     —————————————
  30. 船田中

    議長船田中君) 採決いたします。  本案の委員長の報告は可決であります。本案を委員長報告のとおり決するに賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  31. 船田中

    議長船田中君) 起立多数。よって、本案は委員長報告のとおり可決いたしました。      ————◇—————
  32. 船田中

    議長船田中君) 本日は、これにて散会いたします。    午後三時二十三分散会      ————◇—————  出席国務大臣         内閣総理大臣  佐藤 榮作君         法 務 大 臣 高橋  等君         大 蔵 大 臣 田中 角榮君         農 林 大 臣 赤城 宗徳君         国 務 大 臣 増原 恵吉君  出席政府委員         内閣法制局長官 高辻 正巳君      ————◇—————